第42回 消費者委員会 議事録

日時

2010年12月17日(金)15:00~15:41

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 松本委員長、中村委員長代理、池田委員、佐野委員、
 下谷内委員、田島委員、日和佐委員、山口委員
【事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.有料老人ホームについて
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:64KB)
【資料1】 有料老人ホームの契約に関する実態調査報告
(資料1-1) 有料老人ホームの契約に関する実態調査報告概要(PDF形式:584KB)
(資料1-2) 有料老人ホームの契約に関する実態調査報告
【資料2】 有料老人ホームの前払金に係る契約の問題に関する建議(案) 【参考資料1】 委員間打合せ概要(PDF形式:10KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。
本日は、皆様、年末のお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第42回)」の会合を開催いたします。
委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

○松本委員長 それでは、議題に入りたいと思います。

≪2.有料老人ホームについて≫

○松本委員長 本日の議題は、「有料老人ホームについて」です。有料老人ホームにつきましては、入居一時金等契約に関する相談が増加しているという状況にかんがみ、第22回の当委員会や消費者基本計画の検証・評価・監視等の中でヒアリングを行うと同時に、有料老人ホームの契約に関する実態調査を実施してまいりました。今回、本調査の結果をとりまとめましたので、その内容について御報告するとともに、消費者委員会としての意見をとりまとめたいと思います。

○原事務局長 申し訳ございませんが、カメラの方はここで退室をお願いしたいと思います。

(報道関係者退室)

○松本委員長 それでは、お手元に配付しております「有料老人ホームの契約に関する実態調査報告」につきまして、山口委員から御説明をお願いいたします。

○山口委員 それでは、資料1-1が結果概要で、1-2が実態報告ですけれども、1-2に即しまして、ざっと内容について御報告申し上げたいと思います。
1枚めくっていただきまして、「はじめに」の部分です。老人福祉法第2条では、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする」と規定しております。
有料老人ホームは、多くの良質のサービスを提供する事業者の自主的な努力により、市場が拡大してまいりました。特に平成12年度には介護保険制度が開始したことに伴って、この10年近く、毎年の新規開設数は数百件にのぼり、施設全体でも約5,000件、施設定員数の合計も20万人を超えるなど、拡大しております。
同時に、有料老人ホームに関して、全国の消費生活センターや独立行政法人国民生活センターに寄せられる相談件数も急速に増加しておりまして、内容を見ますと、消費者にとって不当な入居契約に起因すると見られるトラブルが少なくありません。
こうした事情を背景としまして、平成18年には、改正老人福祉法が施行されまして、一定の規制強化が行われました。
消費者委員会としても、契約自由の原則を基本としつつ、市場の規範・秩序を維持するのに最低限必要な規制について、その実効性を確保する必要があるとの視点から、どのような対策が必要か等について審議・検討するために、法律に基づいて調査を実施いたしまして、その結果を以下のとおり御報告いたします。
本文が1ページからございますので、少しずつ抜きながら御報告させていただきます。
1ページの1行目ですが、改正老人福祉法が平成18年4月1日の改正法施行で、事業者に対しては倒産などの場合に備えた前払金の保全措置が義務づけられるとともに、「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」、以下「指導指針」と言いますが、これを根拠とする短期解約特例制度、いわゆる「90日ルール」が導入されました。
しかしながら、その後も有料老人ホームに関する相談件数は増加の一途をたどっております。2ページを見ていただきますと、平成17年の255件から21年の428件、今年も増える見通しであります。
特に注意すべきは、老人ホームに入ってしまいますと、なかなか相談に行きにくい、顕在化しにくい問題である。にもかかわらず、これだけの相談件数があり、また、増えているということは重視するべきであると考えております。特に、相談の中身は8割が契約や解約に関する相談になっております。3ページの表を見ていただきますと一目瞭然ですが、相談の内容では、圧倒的に契約や解約に絡む相談が多いのが実情です。そういうことで消費者委員会として、特に有料老人ホームに関して調査をする必要があるだろうと考えたのであります。
4ページの相談の内容を見ますと、返還金額に関するものが108件ということで一番多くなっております。
5ページですが、我が国においては、高齢者向けの住宅・施設も多様化いたしまして、高齢者専用賃貸住宅、グループホーム、特別養護老人ホームなど種々ございます。
しかしながら、平成17年度から20年度について見る限り、在所者数の伸びでは、有料老人ホームは、グループホームなどは勿論、公的施設も凌駕する大きな伸びを示しております。相談件数を見ても、有料老人ホームに関するものが圧倒的でありまして、そのような視点から消費者委員会としては、有料老人ホームについての対策の必要性が高いというふうに考えたわけです。
なお、現在、国土交通・厚生労働省で改正を検討している高齢者の居住の安定確保に関する法律の下で、登録制の「サービス付き高齢者住宅(仮称)」が、現行の有料老人ホームと高齢者専用賃貸住宅を統合する制度として創設され、一定の厳格な規制の下で、消費者トラブルを未然に防止し、同時に高齢者の住まいの供給形態として有力なものとなることが期待されております。
しかしながら、11月12日の消費者委員会における厚生労働省の担当課長の説明によりますと、「この制度の基準に該当しない有料老人ホームは非常に多いと思われる」とのことでありまして、多くの有料老人ホームは、「サービス付き高齢者住宅」として登録しないまま、老人福祉法の規制下に残るものと考えられます。
そこで消費者委員会では、今年の4月以降、厚生労働省、都道府県、事業者団体及び消費者団体などからヒアリングを重ねたほか、実態調査をして実情を明らかにし、対策を検討することにした次第であります。
7ページの表を見ていただきますと、施設数の増加傾向から言いますと、件数はグループホームが有料老人ホームより若干上回っております。しかしながら、下のグラフを見ますと、在所者数の増加は、グループホームは定員が少ないものですから、有料老人ホームの増加が非常に目立っているということがグラフからも明らかになっております。
8ページですけれども、その中で特に注目すべきは、相談件数の約4割が、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県に集中しておりまして、また、有料老人ホームの数や待機者数も格段に4都県に多い傾向が顕著です。
今後、他の都道府県においても、この4都県と同様の問題が顕在化することが予想されますので、消費者委員会としては4都県について集中的に調査して、実態を報告することにいたしました。
9ページですが、埼玉県、千葉県及び神奈川県内の有料老人ホームにつきましては、各県のホームページ上で公開されている最新の重要事項説明書から、東京都内の有料老人ホームについては、東京都福祉保健局が保管する重要事項説明書を閲覧しまして、以下の調査事項について集計を行いました。また、各施設のホームページも見て内容を補完した部分もございます。
そういうことで、かなり大量の資料に基づいて以下の分析をしたことをお断り申し上げます。
10ページです。したがいまして、4都県の有料老人ホームとしては、今年の11月末時点での1,357施設、8万4,927人の定員のうち入居者が6万4,119人という状態の中での調査になっております。
4都県の有料老人ホームは年々増加しておりまして、平成17年度は689施設だったものが、調査日時点では1,357件と約2倍になっております。その傾向は11ページの表を見ていただければ明らかでありまして、規模別施設構成比から見ますと、50~99人のところが44%を占めておりまして、それ以下の小規模施設が多いことがわかります。
12ページですが、一時金を徴収する施設が980施設、つまり70.2%を占めております。そのほかに、月払いか、一時金を納付するかを選択できるものが15.9%で、合わせますと約9割が何らかの形で一時金を徴収している。これがデータ上、明らかになりました。
また、下を見ていただきますと、入居一時金の金額の設定はさまざまでありまして、3万円から3億円まで幅広い分布となっておりますが、1,000万円台が一番多いということで、13ページの表を見ていただきますと、1,000万円台のところが高くなっております。
14ページ、入居一時金の初期償却についてでありますが、94.8%の施設が初期償却を行っております。この償却額の設定はさまざまで、50万円未満から4,000万円台まで幅広いのですが、100万円台と200万円台の価格帯に設定している施設が非常に多く見られます。
償却率の設定はさまざまでありまして、一時金の金額などもいろいろありますので、償却率を問題にするよりも、償却額を問題にするのが適当だろうというふうに判断いたしました。14ページの真ん中の表が償却額の分布です。
下の方に移りますと、償却の金額です。年齢によって入居一時金の額や初期償却額につき異なる設定をしている施設は3分の1しかございませんで、残りの3分の2は、一律の設定もしくは部屋のグレードや支払いプランによる料金設定となっておりまして、平均余命を勘案したとはとても言い難い実態であります。償却期間を5年としている施設が比較的多かったという実情がございます。
16ページですが、いわゆる「90日ルール」に関しての調査データです。重要事項説明書から90日ルールに関する規定が確認できた施設が69.1%で、確認できなかった施設も30.9%ございました。なお、確認できなかった施設のうち169施設が、平成18年4月以降の法律改正以降のものでありまして、運用指針を無視しているということになります。
下を見ますと、返金額から差し引く費用の内容について明示されているものが91.3%ございましたが、明示されていない施設も8.7%、72施設ございました。
次のページです。90日ルールを規定している826施設について見ますと、「90日の初日」につきましては「契約締結日」としているものが36.3%ですが、「償却期間の起算日」、あるいは「入居日」としている施設も22.4%ございました。
「90日の最終日」につきましては、「契約解除日」としているもの、あるいは「申入日」としているものも多いですが、「退去日」としている施設が10.5%とあったのは要チェックであると思います。
18ページです。90日ルールを規定している826施設について見ますと、予告期間を要さない施設もあるのですが、予告期間を設定している施設が63.9%ございまして、この期間が何と90日となっているものもある。つまり、これは90日ルールがほとんど実効性がないということになりますが、30日間の予告期間を設けている施設、つまり実質は60日ルールになってしまっている施設が83.0%ありました。
なお、死亡退去の場合の90日ルールの適用については、記載がないものが68.5%ございました。死亡時にも90日ルールを適用するとしている施設は14.8%しかございませんで、適用しないとしている施設も102施設ありました。死亡退会時の場合、90日ルールについては、余り適用されていないのではないかという実態がうかがえました。
次に、20ページですが、いわゆる入居一時金の保全措置の有無及び方法です。「保全措置あり」と明示している施設は47.1%しかありませんで、50.1%は「措置がない」としております。記載のないものもありました。
保全措置が義務づけられることになった平成18年4月以降の施設も519施設ありますが、それでも「保全措置なし」と明示している施設が137施設あるというのは、憂慮するべき事態であると言わざるを得ません。
「保全措置あり」としながらも、「銀行へ定期預金」とか、「専用口座に保管」というふうに回答した施設が11施設ございまして、これでは保全の意味がないと言わざるを得ないという実態もありました。
22ページですが、問題解決のために必要な措置等について若干報告させていただきたいと思います。22ページの箱の中の4行目以下ですが、入居後の慣れない環境の下で、死亡したり、急速に病状が悪化して入院したりする等の事情によって、短期間で契約を解除せざるを得ない場合などがかなり顕著にうかがえます。
23ページを見ますと、現実に入居前に退去する方も15.5%、90日以内に退去する方が21.2%ございまして、約3分の1が90日以内に退去しているという実態がございます。また、退去理由も、死亡、施設への不満、入院や病状悪化等、施設の指示ということで、やはり何らかの形で、やむを得ない事情でという方が半分以上いることがわかります。
また、先ほどからの報告で明らかなように、90日ルールが十分に遵守されているとは言い難い実態が確認できました。更には、予告期間を必要とする旨規定しているため、90日ルールの適用期間が実質的に90日より短い期間となっているものも多かった現実がございます。また、入居者が90日以内に死亡して契約が終了した場合には、適用がないという施設もかなりあることがわかりました。
24ページですが、上記の指導指針を読む限り、90日以内に解約した場合と死亡により契約が終了した場合とで、区別するというふうになっていないと思われますが、しかしながら、指導指針を無視した形の運用がなされている例もございました。
事例1としては、90日ルール適用の際に初期償却などを受領する規定もある施設がございました。
事例2は、返還されない額が過重となっていると考えられる例もございました。現実に、父親が入居した有料老人ホームの処遇が悪く、5日間入居したのみですぐ退去したけれども、2か月分の家賃や管理費を控除されたという相談もあります。
あるいは、ヒアリングを行った結果、一部の都府県では、90日ルールを法制化することが望ましいという意見もございました。また、事業者団体からは、90日ルールを徹底するには指導指針ではなく、老人福祉法に義務規定を置いた上で、都道府県に対し指導の徹底を要請すべきだという意見もありました。
26ページの下、「今後の課題」の中で、初期償却について何らかの意見を出すべきではないかということもありまして、検討したところです。事業者に対してその改善を申し入れるとともに、国に対しても改善を図るよう求める適格消費者団体の意見もございました。しかしながら、金額と率といろいろございますので、今回は建議の対象としませんでした。前払金に係る消費者苦情を抜本的に解決するためには、初期償却の問題についても徹底的に議論されるべきであると考えました。
27ページに移ります。2番目のマルですが、前払金の保全義務については、原則として平成18年4月1日以降に届け出た有料老人ホームに関して適用されるものでありまして、それ以前から事業を開始し、届けている有料老人ホームについては努力義務とされております。
一番下のマルですが、保全措置義務違反に対する罰則が、現状は間接罰となっておりまして、違反があった場合には、一次的には都道府県知事による改善命令があり、当該命令に違反した者に罰則を科すというルールになっております。それをまず踏まえておく必要があると思います。
次のページですが、保全措置を講じていないと思われる施設が137施設、約4分の1あったという事実。保全措置の方法が、決められた方法以外のものにとどまっているものが、11施設あったという現実も踏まえる必要があります。
相談例では、資金繰りが苦しいなどで、約束の期日から4か月たっても約束の一時金が返還されないという相談も出ております。
なお、前受金等の保全措置義務違反について行政処分のほかに直罰規定を設けている例は、割賦販売法、宅地建物取引業法などがありまして、立法例としては少なからずある事実も踏まえておく必要があると思われます。
31ページです。その他の前払金に関する規定について、確認する必要があると思いますが、改正老人福祉法の施行の際に、重要事項説明書の交付義務及び前払金の算定基礎を書面で明示することを、新たに義務づけている事実を踏まえておく必要があると思います。
償却年数については、指導指針において平均余命を勘案し決められていることも、重要であると思われます。しかしながら、年齢により償却期間の規定を変えていないものが約3分の2あるという事実も踏まえる必要があると思われます。
次のページですが、事業者側が返還時に受領することができる利用料等を明示していない例が72施設ございます。日割計算の際の1日当たり利用料の額や計算式などの、具体的かつ詳細な記載がされていない施設が60%ございました。
そういうことで、90日ルールの場合、返還する際に控除することがどの程度認められるのかということについて、ばらばらでございます。施設の中には、例えば「リフォーム費用」とか、「入居者に負担させることが適当と認められる諸経費」とか、「必要経費」等さまざまな名称で、その根拠を明らかにしないまま、返還金から控除するという内容になっているものも多数ございました。
介護保険法上は、市町村及び地域包括支援センター、更には地方公共団体の消費生活センターの相談窓口などがございます。しかしながら、各関係法令の内容や多様な事業サービスの内容を十分に理解して、個別の相談に的確に応えるためには、相当程度専門的な知識をこの分野は要すると思われます。しかし、この実情を踏まえますと、現在の体制では事後的な苦情・相談に終始していると見られまして、十分な事前相談の体制が整備されているとは考えがたい状態です。
したがいまして、消費者に対して、高齢者向けの住まい・施設に関する中立的な情報提供を行ったり、個別に相談に応じたりすることができる公的な仕組みを整備する必要性が高いと考えられました。
以上、調査結果の実情としての報告です。

○松本委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの実態調査報告につきまして、御意見がございましたら、どうぞお出しください。
特に御意見がございませんようでしたら、続きまして、「有料老人ホームの前払金に係る契約の問題に関する建議(案)」につきまして、下谷内委員より御説明をお願いいたします。

○下谷内委員 それでは、ただいまの報告書をもとに、第22回からの検討事項を踏まえまして、今回、「建議(案)」につきまして御提案したいと思います。
本日の資料は2-1に建議案の概要と、2-2に建議案があります。2-2につきましては、本体ではございますが、時間もかかりますので、概要をごらんいただきまして御説明させていただきたいと思います。
建議案の概要でございます。有料老人ホームにおいては、平成18年に改正老人福祉法が施行され、入居者保護の観点から、倒産の場合に備えた前払金の保全義務化や都道府県の立入検査権の付与等、一定の規制強化が行われました。
しかしながら、有料老人ホームに関する相談件数は増加の一途をたどっておりまして、全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は、施行される前の17年度と対比しても1.7倍に昨年はなっております。その中でも、先ほどの報告にもありましたように、8割が「契約・解約」に関する相談が含まれておりまして、家賃や入居一時金等の名目で徴収される前払金の返還金に係る苦情が多いことが明らかになりました。
他方、我が国社会では、今後、高齢化が急速に進展すると予測されております。
また、有料老人ホーム以外にも、先ほどの報告にもありましたように、高齢者向けの住宅・施設は存在するものの、有料老人ホームの所在者数の伸びが最も大きくなっていることがわかりました。
悪質な業者に関する風評の結果、優良な事業者が良質のサービスを提供しても、それを市場で正当に評価してもらえないという声が聞かれることなどの事情も踏まえまして、有料老人ホームの入居契約における前払金の返還に係る消費者苦情について、抜本的な解決を図らなければ、消費者被害が更に続くであろう。そして、市場の健全な発展も見込まれないと考えております。
そこで、私ども消費者委員会は、本年4月以降、厚生労働省、都道府県、関係業界団体及び消費者団体等へのヒアリングを行いまして、苦情件数の突出している1都3県、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県内の有料老人ホームに関するデータを網羅的に収集・整理する等の調査を実施してまいりました。
本調査から判明した事実に基づきまして、厚生労働大臣に対し、次のとおり、消費者庁及び消費者委員会設置法に基づいて建議してまいりたいと思います。
更に、消費者委員会は、この建議につきまして、厚生労働省に対して、平成23年6月までにその実施状況の報告を求めたいと考えております。
建議内容は3点ございます。
第1点は、「短期解約特例制度(いわゆる90日ルール)についての法制化・明確化」を求めております。
厚生労働省は、前払金を受領しながら短期解約特例制度(以下「90日ルール」という)を設けていない事業者が少なからず存在している状況に加え、前払金の返還に関する消費者苦情が絶えないことや、都道府県等からの要望も踏まえ、以下の措置を講じていただきたいということを言っております。
1つ目は、90日ルールを設けていない事業者に対して都道府県が適切かつ実効性のある指導等を行うことができるよう、同ルールの法制化等の措置を講ずることをお願いしたい。
2つ目は、上記法制化等の措置を行うに当たっては、90日ルールの趣旨を逸脱した運営を防止する観点から、マル1契約締結時点で入居可能でない場合の取扱いを定めること、マル2 90日以内に契約解除の申出を行えば、同ルールが適用されることを明確にすること、マル3死亡による契約終了の場合にも、同ルールが適用されることを明確にすること、マル4事業者側が返還時に受領することができる利用料等の範囲をより明確にしていただきたいと思います。
建議事項の2点目は、「前払金の保全措置の徹底」です。
厚生労働省は、老人福祉法第29条第6項の規定に違反して、前払金の保全措置を講じていない事業者が相当数存在している状況を踏まえ、保全措置義務の実効性を確保する観点から、直罰規定の導入など所要の措置を講ずるとともに、併せて都道府県に対し適正かつ効果的な指導等を行うことを要請いたします。
建議事項の第3点目です。「その他規定の明確化」をお願いしたい。
厚生労働省は、指導指針等の規定が徹底されていない事業者が少なからず存在している状況に加え、前払金の返還に関する消費者苦情が絶えないことも踏まえ、以下の観点から消費者苦情を解決するための対策を検討し、改善の措置を講ずること。
3点ございます。
1点目は、指導指針では、前払金の償却年数は平均余命を勘案し決められていることと規定されているが、入居時の年齢や要介護の程度等に関係なく一定に決められている例が相当数見られることから、償却年数が入居後の平均余命等を踏まえた相応のものとなるよう一定のひな型を設けるなどにより、当該規定の実効性を確保すること。
次いで、老人福祉法第29条第6項では、前払金の算定基礎を書面で明示することが義務づけられているが、指導指針において定める内容が明確性を欠くこと等もあって、事業者側が返還時に受領することができる利用料等を明示していない例、具体的な記載となっていない例、保全措置に関する記載が明確でない例が多数見られることから、都道府県に対し指導の徹底を要請するとともに、指導指針または施行規則で記載すべき事項等を明確に規定するなど所要の措置を講ずること。
3点目、消費者が有料老人ホームとの入居契約を行う前に、自らの健康状態や財産等を踏まえて、有料老人ホーム以外の施設とも比較して入居施設を選択するために必要な情報を入手したり、個別に相談を行ったりすることができるように公的な仕組みを整備すること。これには、既存の公的機関の活用も十分に含んでおります。
このように、私どもは建議事項3点を提案したいと思っております。よろしくお願いいたします。

○松本委員長 ありがとうございました。
ただいまの建議案につきまして、御意見のある方はどうぞ御発言ください。
佐野委員、どうぞ。

○佐野委員 有料老人ホームに関する相談数が非常に増えているという御説明がありました。一般的に、消費生活センター、国民生活センターに相談する人はほんの数%だと言われていますので、実際は相当数の方が有料老人ホームに関しての問題を抱えているのではないかということが、ここでわかりました。終の住みかである有料老人ホームですから、何としてでもいわゆる90日ルール、それから、ホームに入る前に相談できる体制を整えるというのは、今すぐにでもやっていただきたいということで、この案に私は、賛成しますというか、早急に対応してほしいということを強く要望します。
有料老人ホームに関する課題はたくさんあるわけですけれども、今回、入らなかった点、報告書の14ページにありますが、初期償却をどうするかという点については、山口委員からも御説明がありましたが、これを見逃してはならないというふうに思っています。償却年数に関しては、今回、きちんと建議には入ったのですけれども、初期償却をどう考えるかということです。ヒアリングをしている中で、初期償却とは何か、それはどういう位置づけにあるのか。また、14ページにもありますが、頭金のようにして30%も取られてしまうということで、その後、施設を変えたくても転居できない、お金の用意ができないという問題もあります。ここの点は、今回は建議には上がりませんでしたけれども、消費者委員会として重視していきたいと思います。
もう一つ、申し上げたいのは、今回は契約に関してだけ建議いたしましたけれども、私が常に思っているのは、高齢者施設などで起こる事故をどうするか。生命・身体の事故に関する不透明な部分というのが非常に多く、事故の報告を義務化して、収集・分析、そして公表することによって、事故が減るようになるのではないかと思っています。
特に、施設の事故に関しては表に出にくいということはよく言われておりますので、その辺りも大きな課題だと思っています。また、損害賠償保険制度というのも、各施設が入って、事故が起きたときに高齢者に対応できているのかということも、大きな課題だと思いますので、今回のこの建議事項を注視すると同時に、今、申し上げたような点も消費者委員会として考えていければと思っています。
以上です。

○松本委員長 ほかに、御意見はございませんでしょうか。
それでは、この案につきましては、皆様の御了解をいただいたということで、消費者庁及び消費者委員会設置法第6条に基づきまして、厚生労働大臣あてに建議を行いたいと思います。ありがとうございます。
また、佐野委員が御指摘になりましたように、ここに盛り込まれていなかった内容、施設の安全の問題、サービスの質の問題とか、契約問題でも、初期償却がこういう額でいいのかといった問題につきまして、消費者委員会として、今後も継続的に検討していきたいと思います。
本日の議題は以上になります。

≪3.閉会≫

○松本委員長 最後に、事務局より、今後の予定等について御説明をお願いいたします。

○原事務局長 今日は短時間での終了になりましたけれども、有料老人ホームについて建議を行うことにいたしました。本日、委員会終了後、ちょっと時間をおきまして、4時ごろから、消費者庁の記者会見室において委員長記者会見を行う予定です。
また、17時めどで、細川厚生労働大臣を、松本委員長以下、何人かの委員で訪問し、「有料老人ホームの前払金に係る契約の問題に関する建議」をお渡しする予定にしております。
次回の委員会は、今年最後の委員会ですけれども、12月24日(金曜日)の15時から行う予定としており、「健康食品の表示の検討について」を議題として取り上げる予定です。
事務局からは以上です。

○松本委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)