第47回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録
日時
2023年6月30日(金)13:00~14:56
場所
消費者委員会会議室及びテレビ会議
出席者
- (構成員)
- 【会議室】
- 後藤座長
- 黒木座長代理
- 【テレビ会議】
- 木村委員
- (オブザーバー)
- 【会議室】
- 中川丈久 神戸大学大学院法学研究科教授
- 板谷伸彦 特定非営利活動法人消費者機構日本専務理事
- 【テレビ会議】
- 大石委員
- 丸山絵美子 慶應義塾大学法学部教授
- 山本和彦 一橋大学法学部教授
- (事務局)
- 小林事務局長、岡本審議官、友行参事官
議事次第
- 開会
- 報告書素案について
- 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
≪1.開会≫
○友行参事官 大変お待たせいたしました。皆様、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
ただいまから、消費者委員会第47回「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を開催いたします。
本日は、後藤座長、黒木座長代理、中川委員、板谷委員は会議室にて御出席、その他の皆様はテレビ会議システムにて御出席でございます。
なお、川出委員は本日御欠席でございます。
議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第に配付資料を記載しております。不足等がございましたら、事務局までお知らせください。
報道関係者を除く一般傍聴者の皆様には、オンラインにて傍聴していただいております。議事録については後日公開いたします。
ウェブ会議の御留意事項を申し上げます。ハウリング防止のため、御発言いただく際以外はマイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。御発言の際は、あらかじめチャットでお知らせいただけますと幸いです。座長に御確認いただき、発言者を指名していただきます。指名された方はマイクのミュートを解除して、冒頭でお名前をおっしゃっていただき、御発言をお願い申し上げます。御発言の際、配付資料を参照する場合は、該当ページも併せてお知らせいただけますと幸いです。また、御発言の際には、可能であればカメラのマークをオンにしていただけましたら幸いでございます。音声が聞き取りづらい場合など、チャットで「聞こえにくい」、また、その他についてもチャットでお知らせいただければと思います。
会場にて御出席の皆様におかれては、御発言の際、挙手にてお知らせいただければと思います。
それでは、後藤座長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
≪2.報告書素案について≫
○後藤座長 座長を務めております後藤です。本日もよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に入らせていただきます。
本日は、最終的な報告書の取りまとめに向けて、報告書素案について意見交換を行いたいと思います。
議論を整理する観点から、本日の意見交換につきましては、資料1の報告書素案の記載順に従って、2つのパートに分けて行いたいと思います。
それでは、まず事務局より、報告書素案の「はじめに」、「第1 本報告書が念頭に置くいわゆる「破綻必至商法」の事案の実態」、「第2 制度的手当の必要性」及び「第3 制度の対象とすべき「破綻必至商法」について」、この部分について説明をお願いいたします。
○友行参事官 それでは、資料を御覧いただけますでしょうか。
「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ報告書(素案)」となっております。
1ページおめくりいただきまして、「はじめに」のところでございます。公正な市場が確保されることは、消費者にとって自らの意思に基づき安全かつ安心して消費行動を取ることができ、事業者にとっては公正な事業活動が適切に評価される環境が確保されるという意味を持ちます。
消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループでございますが、まず平成30年において設置されております。
このページの上から四つ目の段落の「報告書では、」というところですが、最初に設置されたワーキング・グループでは、消費者法分野におけるルール形成の在り方としては、自主規制、民事ルール、行政規制が被害の予防・救済という目的からベストミックスされることが重要であること、ルール形成の実効性確保のためには、行政と民間の関係主体が適切に役割分担・連携できるメリハリある仕組みが重要であること。また、事業者の自主ルールを含む自主的取組、民事ルールでは対応し切れない悪質商法や不当な取引行為に対しては、行政による厳格な対応が必要であることなどが示されております。
その下の段落でございますが、引き続いてワーキング・グループでは検討がなされ、2回目のワーキング・グループでは事業者の自主的取組について検討がなされ、一番下の段落でございますけれども、令和3年の8月に取りまとめが行われております。
3ページ目にまいります。
「近年、」というところからですが、消費者取引の国際化、急速なデジタル化の進展の下、消費者被害はこれまで以上に複雑化・多様化していると記載しております。
二つ目の段落のところでございますが、消費者委員会は、以上のような状況を踏まえて、自主的取組や民事ルールでは対応し切れない悪質商法に関して、実効的な法整備や違法収益の剥奪、財産保全等の制度について検討するために、消費者委員会本会議においてワーキング・グループを再開するということを決めており、令和4年8月に「中間取りまとめ」を出しております。その後、引き続いて検討がなされ、本報告書として取りまとめられたという経緯でございます。
本報告書の構成は次のとおりとなっております。近年の多数消費者被害事案について、行政の対応と被害実態という観点から検討したものが第1に、それから、新たな制度的手当を行う必要性を基礎付ける事情について第2に記載しております。さらに、新たな制度の対象とすべき事案、ここではいわゆる「破綻必至商法」と総称しておりますが、それがどのようなものかについて第3にまとめております。その上で、破綻必至商法について、その事業を止めて被害を回復するための具体的方策について第4に記載しております。第4は五つに分けております。最初に破綻必至商法の禁止の明確化でございます。次に、それを停止するための行政処分の創設。次いで、被害を回復するためのものとして、行政庁による破産申立権限の創設。違法収益剥奪のための行政手法及び会社法の解散命令の活用・拡充という順番で記載しております。そして、最後に第5といたしまして、第4に記載した行政による具体的な方策を実行するために行政が必要な情報を取得するための方法などについて整理しております。
4ページ目にまいります。
第1の「本報告書が念頭に置くいわゆる「破綻必至商法」事案の実態」でございます。
一つ目として、近年の事案と行政の対応でございます。
(1)はジャパンライフについてです。最初の「ジャパンライフは、」という段落は、これまでも何回か御紹介しておりますが、ジャパンライフの商法、スキームについて、1個100万円から600万円という健康器具を顧客に販売し、レンタル料から6パーセントの配当が得られるとして顧客を誘引しておりました。実際には商品数が著しく不足し、顧客から支払われた商品購入代金を原資として他の顧客への配当が行われる自転車操業となっておりました。
ジャパンライフに対しては、平成28年の12月から平成29年の12月までの約1年余りに4回の行政処分がなされております。4回目の行政処分が終わった後に銀行取引の停止処分などがなされております。1回目と2回目の行政処分は、預託等取引、連鎖販売取引、訪問販売を対象とする業務停止命令となっております。3回目の行政処分は、2回目の行政処分の効果が切れる前に業務提供誘引販売取引を停止するためになされたという形になっております。
ジャパンライフは業態を変えておりますけれども、当初の預託取引と本質的には異ならない商法を続けていたということが考えられます。
その下の(2)はWILLでございます。WILLの商法、スキームはそこに記載のとおりでございますが、テレビ電話専用のアプリが読み込まれたUSBメモリを顧客に販売し、それの賃借料を支払うスキームとなっておりました。実際は貸出しにより収益は得ておらず、賃借料の支払いはUSBメモリの販売代金に頼っておりました。
このWILLは特商法に基づき行政処分を受けておりますけれども、その後、事業を承継したVISIONでありますとか、また、別の名義、別の役務の名称でWILLが違反認定されたというような事実がございます。(3)のすぐ上の行でございますけれども、消費者安全法に基づく注意喚起を何度かなされております。
(3)はケフィア事業振興会でございます。こちらは消費者と買戻し特約付売買契約を締結しておりますが、新規のオーナーから調達した資金から利息や事業経費などの支払いを行うなど、やはり自転車操業に陥っていたということになっております。
6ページ目にまいります。
2ポツの消費者の被害実態、括弧として被害者数や金額についてでございます。ここの記載は、主として、脚注の5にございますように、以前消費者委員会で調査報告として取りまとめましたものから大部分を引用しております。
最初の(1)の豊田商事につきましては、被害者数が2万9,000人で被害総額は2,000億円と甚大なものになっております。豊田商事自体は昭和60年の6月に破産宣告の申立てがなされており、刑事事件としては、その取締役が昭和62年の3月に逮捕されたという時系列になっております。
(3)のジャパンライフのところを御覧いただけますか。ジャパンライフは被害者数が7,000人となっており、被害総額は2,000億円と言われております。また、ジャパンライフにつきましては、平成30年に破産手続開始の申立てがなされ、そして、刑事事件としては令和2年の9月に逮捕されるといった流れになっております。
一番下の行でございますが、3ポツのこれらを踏まえた現行制度の課題のところでございます。
7ページ目にまいります。
行政庁は、破綻必至商法を行う事業者の法令違反を発見した場合には、現行法が規定する権限を活用して対処してきたものと評価できます。また、令和3年には預託法が改正されて、一定割合を占める販売預託を原則禁止とするなど、破綻必至商法を行う事業者への対処として有効な制度が導入されたものと評価できると考えられます。
他方で、ジャパンライフは当初の預託取引と本質は変わらない情報を形式上業務提供誘引販売に転換するなどしておりました。また、WILLは行政処分の対象事業を別会社に承継されるなどしておりました。
三つ目の段落の「また、」のところでございますが、破綻必至商法は昭和の時代から今日に至るまで、多数・多額の消費者被害を出し続けております。既存の法律による対応では不十分な点があるということをうかがわせるとここでは記載しております。
不十分な点としてまず考えられるものが、被害回復のための手段が欠けているという点であります。預託法が改正されまして、販売預託は原則禁止されております。そのため、内閣総理大臣の確認を受けない売買契約と預託等取引契約は無効ということになりますが、その後、この規定により被害を受けた消費者は個別に裁判を起こして被害回復を図ることになりますが、情報面、経済面から十分にそれらに対して被害者が対応することが可能なのかという問題は残っております。
また、「さらに」のところでございますけれども、先ほど豊田商事やジャパンライフで御紹介いたしましたように、破産手続と刑事手続の時系列に着目すると、先に破産が起きて、その後、刑事的なことで手続が行われるというような順番になっております。一般的に、刑事手続は破産などといったものよりも後になるというようなことが実際として見受けられるところであります。
第2の「制度的手当の必要性」のところです。
8ページ目にまいります。
最初の1ポツは設置法の附則の検討条項のところでございます。
それから、2ポツとして横断的・一元的な対応の必要性でございます。既存の個別法、例えば特商法や預託法には、業務停止命令やそれに違反した場合の刑事罰などがございます。ただ、法人格を消滅させる形で事業を完全に止めて被害回復を実現させるための規定は設けられておりません。また、既存の個別法が対象としないものについては、一定の要件を満たせば消費者安全法の隙間事案として勧告や措置命令の対象となりますが、そこにおいても事業を完全に止めて被害回復を実現させるといった規定は設けられておりません。
既存の個別法が対象とする業態も、対象としない業態も、破綻必至商法として同様の悪質性、危険性を有するものについては、横断的・一元的に対応する必要があると考えます。
3ポツの新たな被害者の発生抑止のところであります。破綻必至商法は新規の顧客からの出資を配当ないし利益の提供に回すとの特徴があります。そのような状態では外部からは事業者の破綻状態を認識することが困難であります。事業者とすれば自らの破綻状態を隠して延命を図るためさらなる顧客の獲得を目指すため、時間がたつにつれて被害者が増えることになります。このような破綻必至商法については、業務自体を停止させる必要性が高いと考えられます。
9ページにまいります。
行政庁は、破綻必至商法を行う事業者の法令違反を発見した場合には、業務停止命令などを発するなどの対処をしていることが見てとれます。他方で、行政処分を潜脱して営業を継続していたと見られる事案もあります。このような行政処分を潜脱した営業ができないような仕組みが必要であると考えられます。
四つ目として、消費者の被害回復です。現在のところ、既に発生した被害の回復は消費者の個別の権利行使に委ねられております。しかし、個々の消費者が通常の裁判を起こして被害回復を図ることは、事業者との間に情報の格差があることや訴訟手続を利用することの時間面、費用面などの負担の問題から困難が伴うと考えられます。
消費者裁判手続特例法による被害回復は、消費者の時間面や費用面の負担を軽減させるものであって、制度導入以降、成果を上げてきたと考えられます。しかし、この制度においても、回収可能性の問題などからその利用を断念した事案もあるとされております。
このように、既存の各制度、特に民事的手法による被害回復は十分ではない部分があると考えられます。こうした状況を続けるということは、事業者が利得を保持し続ける、事業者がやり得を続けるという状況が続くのではないかと考えられます。
五つ目として、行政の主体的・迅速な対応であります。これまで大規模消費者被害の回復は、民間セクター、例えば弁護団を構成する弁護士のボランティア的な活動に依存してきたと考えられます。ただ、この弁護団方式による方法は限界も指摘されております。そちらについては、脚注の14、15のところに記載しております。
10ページ目にまいります。
行政は、行政処分を出す段階で、例えば預託等取引であれば預託物について運用実体がないなど、事業者の事業に実体がないことを把握していることがあります。
脚注の16でございますが、10ページの下のところの脚注を見てみますと、ちなみに、預託法違反及び特商法違反の関係ではありますけれども、ジャパンライフに対する2回目の行政処分では、契約によれば預託を受けていたはずの磁気治療器は平成27年9月末当時2万2,400個存在するはずでありました。ところが、レンタルされていたのは2,700個余り、倉庫に保管されていたのは95個ということが分かっており、大幅に不足していたことが消費者庁によって認定されております。
上に戻りますが、事業者の事業に実体がないことを把握していることがこのようにあります。そうした時点で、事業停止命令などの行政処分よりも更に強力な手段を行政が持っていれば、より早期に更なる被害の拡大防止のための手を打てた可能性があります。
「なお、」のところでありますが、行政が破綻必至商法を認定して迅速に動き出すには、情報収集能力、実効性のある調査権限が必要になります。
第3の「制度の対象とすべき「破綻必至商法」について」でございます。
1ポツは中間取りまとめにおける整理であります。
2ポツが中間取りまとめ後の議論を踏まえたものとなっています。
11ページ目にまいります。
「次に」のところでありますが、対象事案の範囲との関係では、例えば研究型のベンチャービジネスのように当初は利益が上がらない基礎的な研究を行う場合には、経済活動と言えず事業の実体を欠くと言えるが、確実性がないベンチャービジネスであっても育成していくことが日本経済にとって非常に重要であり、この点を阻害するような制度は成功しないといった指摘も議論の中で行われております。
(2)のワーキング・グループにおける対象事案のところでございます。いろいろな議論を踏まえまして、ここで言う破綻必至商法は以下のマル1からマル4を全て備えることが必要と考えるという形で整理させていただいております。マル1として、金銭の出資若しくは拠出又は物品又は権利の提供をすれば事業(事業の実施のために必要な行為を含みます)の収益により、一定期間経過後に金銭その他の経済的利益の配当等を行う旨を示して消費者を勧誘し、マル2として、多数の消費者に金銭出資等をさせ、マル3として事業が行われていないことその他の事業の実体がないことにより、マル4として、新たに消費者を勧誘して金銭出資等をさせ、当該金銭出資等を原資として先行の出資者への配当等を継続的に行わざるを得ないスキーム、このマル1からマル4を全て備えたものをいわゆる破綻必至商法と総称してはどうかということであります。
マル3の事業の実体がないことというところに脚注の21を付けております。「事業の実体がないこと」の判断は、例えば事業が対象とする取引・契約類型において本質的要素とされているものが大幅に欠けている、物を運用して物を貸し出すといった場合にその物自体がないですとか、また、事業に必要な人員が大幅に不足しているかなどの事情を総合的に判断して行うことになると考えられます。
(3)の対象事案についての説明では、この定義付けを少し補足して説明しております。「具体的に対象事案の範囲を検討すると」というところであります。資金繰りに窮した中小企業が弁済期にある債務を支払うために借入れを繰り返すような自転車操業は、まっとうに事業を行う限りはマル3を満たしません。また、債務の弁済が出資者への配当でなければマル4を満たしません。
次に、ベンチャービジネスとの関係では、仮に配当を賄うだけの利益をまだ生んでいないとしても、事業活動を行うなど事業の実体があるベンチャービジネスについては、マル3を満たさないと考えられます。また、当初は利益が上がらない基礎的な研究を行うような研究型のベンチャービジネスについても、マル1で事業の実施のために必要な行為も事業に含むと定義したことにより、マル3を満たさないということになります。
他方で、実体がないとは名称や外形に対する実質がないことを意味しますので、事業活動の実績が極めて過少なケースは、外形に対する実質を欠くとしてマル3を満たすと評価できるので、制度の対象となり得ます。
また、虚偽の事業計画やずさんな事業計画で出資を募ったが、配当まで至らず音信不通になるようなケースについては、それだけで直ちに制度の対象にはなりませんが、ほとんど事業を行っていないために事業収益が見込めず、音信不通にならなかったとしても配当流用するほかないと言える場合には、制度の対象となると考えられます。
一旦御説明は以上でございます。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、これより40分程度意見交換の時間とさせていただきます。ただいまの説明を踏まえ、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。
御発言をされる際にはチャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。
板谷委員、よろしくお願いします。
○板谷委員 このパートの議論の中心は恐らく第3のほうになると思いますので、そこにいく前に、第2のところで一つ意見を述べさせていただきたいと思っております。
第2の制度的手当の必要性のところでは現行制度の足らざる部分を指摘しているのですが、ここにもう少し大きな視点からの記述を補ったほうがよいのではないかと思います。というのは、この提案に対して、もしかしたら、なぜ市場経済の国で行政が私法の領域に踏み込むのか、といった受け止めもあるかもしれないと思うからです。そもそも伝統的な公法・私法の二元論を乗り越えて連携、協働させていこうというのがこのワーキング・グループの出発点で、極端な議論にするのでなければ、そんなに異論のある考え方ではないのではないかなと思われます。この辺りは学識の先生方のお考えにもよるのですが、むしろ学問的に見ても最先端の議論なのだろうと思うので、やや抽象的であっても、大きな視点からの必要性、又は許容性と言うほうが合っているかもしれませんが、ここに書き加えたほうがいいのではないかなと思います。第2に1項追加してそういうことを書くか、又は「5.行政の主体的・迅速な対応」のところに加筆するか、どちらかと思っています。
もう1点なのですけれども、これはワーキング・グループの議論としてはなかったように思いますが、消費者をめぐる環境変化の視点から破綻必至商法への対策強化の必要性ということを言うことができれば、それも加えてもいいのではないかなと思います。
例えば一昨年の消費者庁の「消費者契約に関する検討会」の前書きのところには、最近の取引環境の変化や消費者の脆弱性とかリテラシーの限界といった視点から、セーフティーネットを整備していく必要性が書かれていて、それが現在進行中の「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」につながってきています。今回の制度的手当の必要性の根っこにも同様の背景もあるのだろうと思うので、有識者懇談会の場でも議論していただけるといいのかなと思います。
こちらのほうは、加筆するとしたら、第2というよりも「はじめに」の3ページ目の最初のところに2行ほど環境変化からの必要性のような記述があるので、そこを膨らませるというのが適切かなと思います。
以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。非常に重要な点を指摘していただいたと思います。
この点について、委員の方々から何か御発言はございますでしょうか。
黒木座長代理、よろしくお願いします。
○黒木座長代理 黒木です。
板谷委員、本当に重要な御指摘をありがとうございました。その点はやはりもう少し明示的に加筆するべき論点というか考え方だと思いますので、事務局で少しその点を踏まえて、現在の御指摘の部分を踏まえてお書きいただくようにお願いしたいと私からも思います。
○後藤座長 行政による対応ということなのですけれども、事業者と消費者との間の取引ということであっても、このワーキング・グループで重ねて議論されてきたところなのですが、一定の場合には行政がそこに対して対応していく。具体的には破産手続申立てとか、あるいは解散命令とか、そういうことを行政が権限行使するということは大事なことであって、行政の側から見るとそこまでして大丈夫か、なぜ行政サイドで例えば破産手続申立てができるのかという不安感というのでしょうか、行政は謙抑的であるべきだという考え方、これは伝統的な考え方ではありますが、現在は克服されてきていて、そのことを前提としてこのワーキング・グループも展開してきているということでありますので、「はじめに」のところに少しその点は書いてあるのですが、やはりもう少し前面に出すような形で提示する必要があるのではないかと思います。
よろしいでしょうか。
中川委員、よろしくお願いします。
○中川委員 今の点は「はじめに」にも書くといいと思いますが、具体的には7ページの真ん中辺りです。「また、」の次ですか。「不十分な点と」というところの1点目です。ここが被害者が自分で訴訟を提起することは限界があるという書き方になっていて、これを受けて9ページの4ポツが入っているのかなと思うのですけれども、ここの書き方として、民事救済が不十分だから行政が代わりにやってあげますということなのか。それとも、ちょうど9ページの4ポツの最後の2行ぐらいです。やり得を許す限り同じ被害は出続けるということで、繰り返し防止のために不法収益を取り上げて、それは国家が持ってもしょうがない金銭なので被害者に返しますという意味で、結果的には民事訴訟を助けていることにはなるのだけれども、民事訴訟そのものを代わってやっているわけではない、効果の部分でたまたま合致しているという整理にするのか。後者は、あくまで行政は公益のためにやっているのだという整理です。その公益は何かというと、やり得を許さないことで違反の繰り返しを抑止する。業務停止命令というだけではなくて、違法に取った収益を没収する、取り上げたうえで、プラスアルファでもう少し制裁金を掛ける。悪いことをしたら儲けがなくなるどころかもっとお金が出ていきますよという形で、繰り返しを予防する。繰り返しを予防するというのは公益ですので、そういう書きぶりを加えたらより明快かなと思います。
今の書き方だと、確かに4ポツの最後に出てきているのですけれども、公益のために被害回復に手を貸すという書き方になっていますけれども、7ページの「不十分な点としてまず」というところは単に消費者で個人個人で訴訟するのは大変ですとしか書いていないので、その結果、訴訟が起きないので不法収益が事業者の手元にたまって繰り返しが促進されるといいますか、抑止されないというか、そういう一言をこの7ページの「不十分な点としてまず考えられるものが」のパラグラフの最後に書いてはどうかなと思います。それで今の点もかなり説明ができるのではないかなと思うのですけれども。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
事務局、そういう方向でよろしいでしょうか。
○友行参事官 承知しました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
山本委員、よろしくお願いいたします。
○山本委員 ありがとうございます。
私は、この報告書の11ページ、第3の2の(3)のところです。(2)で今回対象事案について明確化を図っていただいて、特に事業について事業の実施のために必要な行為を含むということを明らかにしていただいて明確になったものと思いまして、この(2)のところは基本的に賛成です。
(3)の説明についての意見なのですけれども、ここでは(3)の第1段落、最初の段落で資金繰りに窮した中小企業の話が書かれており、次の段落、12ページ冒頭のところでベンチャービジネスのことが書かれているのですが、私の意見は、ここは今の案はマル3とマル4の要件に当たらないということが主として書かれているのですけれども、マル1、マル2の要件との関係も書いたほうがいいのではないかという意見です。
私の理解では、資金繰りに窮した中小企業、金融機関から見捨てられているような企業が消費者に出資を募って金銭出資等を多数の消費者からさせるというような事態は通常想定されない、そんなことはできないのではないかと思っています。それから、ベンチャービジネスとの関係でも、私、前回だったか、その前だったか忘れましたが、この点を提起したときに、黒木座長代理から確かベンチャービジネス等が資金を集めるときは基本的にはエクイティなのではないかと。デットで資金を集めるというのはむしろレアではないかという御指摘があったように記憶しています。それは私も確かにそうかなと思いますので、そういう意味では、ベンチャーとの関係でこの要件が問題になるというのは通常あまり考えられない。マル1、マル2との関係でも考えられないということです。
何でこんなことを言うかということですけれども、こういう窮境にある中小企業とかベンチャービジネスは、通常はこれに当たらないだろうということは明らかなのだと思うのですが、通常はということではなくて、基本的にはかすりもしないというように言っていく必要があるのではないかなと私は思っていて、窮境にある中小企業の事業再生とか事業承継、あるいはこういうベンチャービジネスについてのスタートアップとか、これは今、日本の国家政策のある意味中枢にある事柄で、新しい資本主義との関係もあろうかと思います。そうだとすると、それに萎縮効果を及ぼすようなことがもしあるという意見が出てくると、そして、そういう意見は出てくるのではないかと私は思うのですが、それはこの制度を作る際にかなり大きな障害、ハードルになる話なのだろうと思っています。そういう意味では、そういうまっとうなビジネスをやっている限りにおいてはこの要件はかすりもしないのだということを強調していく必要性というのはすごく大きいように思っています。そういう意味では、今の書き方は、ここに書いてあることは私はそのとおりだと思うのですけれども、もう少しいろいろな他の要件、要素との関係でもおよそ当たらないのだということを強調したほうが、萎縮効果とかに関する反対論をより抑制するというか、予防するということが可能になるのではないかと考えます。ということで、今のような意見を申し上げました。
以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
黒木座長代理、よろしくお願いします。
○黒木座長代理 今の山本委員のお話は全く同感でして、脚注の22に無理算段説を認めた判例の紹介がなされているのですが、マル3とマル4を満たさないということではないと思っています。高松高裁の案件はそもそもマル2が全くないわけでして、あれはメインバンクをだましたという話なのでマル2の要件が欠けています。その辺りのところも含めて、脚注の判例の評価のところも少し変えたほうがいいかなと思っています。だから、無理算段をやっている事業者で、支払不能が認められた事例はマル1もマル2も要件が欠けていると思うのですよね。だから、そういう形でマル1、マル2、マル3、マル4は全部当たらないよと。無理算段説で支払不能であると。だから、破産の申立てと後の話につながるのでしょうけれども、その場合の無理算段説の中ではほとんど判例に表れたものはマル1、マル2、マル3、マル4は全部当たらないので関係ないことを明示すべきだと思います。ただ、無理算段という形を取っていると、支払不能という認定はできるというエッセンスは残すけれども、今までの判例上はマル1、マル2、マル3、マル4の各要件に該当していませんという明示のほうが、僕もその点は山本委員のおっしゃるとおりだと思っています。
以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。非常に貴重な御指摘をいただいたと思います。
この点について、委員の方々。
中川委員、よろしくお願いします。
○中川委員 正にここは一番重要なところで、まともな人に反対されてしまうという困ったパターンですよ。悪質対策をしているのに、まともな人に反対されて結局何もできない。
山本委員がおっしゃったかすりもしないというのをどうやって出すかというところが考えどころかなと思いまして、今から申し上げるのは本当に単なる思い付きですが、マル1、マル2、マル3、マル4というこの11ページの順番を変えて、例えばマル3をマル1にする。事業の実体がないにもかかわらずというのをマル1に置いて、今のマル1をマル2としていって、そして、ベンチャーや中小企業はそもそもマル1ではないのだからおよそかすりもしません、最初から関係ありませんとしたほうが、いいのかなと思い付きました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
事務局、今御指摘いただいたような対応でよろしいでしょうか。
○友行参事官 承知しました。
○後藤座長 委員の方々もよろしいでしょうか。特に御異論がなければ、今の中川委員の御提案の方向でということにいたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
他に御指摘、御意見等ございましたらよろしくお願いいたします。
黒木座長代理、お願いいたします。
○黒木座長代理 これは本当に軽いところですけれども、4ページから5ページに書いてありますWILLですが、このWILLにつきましてはまだ一応事業体みたいなのが移っていろいろ現在進行形なので、情報をアップデートされたほうがいいと思っています。まず加えていただきたいのが、厚生労働省の医薬・生活衛生局生活衛生課が、令和3年5月18日付で全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会宛てに、WILLの関係の47事業者と関係者9名を特定した上で、こういう方々がホテルなどを利用して展示会とかそういうセミナーを開かないようにするために止めてくださいという通知をなされています。これは消費者庁からの参考情報を受けてということになっていますので、そういうふうに広がっているということが第1点。
それから、第2点ですけれども、特定の固有名詞はここでは申しませんが、WILL、VISIONの関係者2名について、特商法違反で令和5年1月24日に逮捕され、4月19日に有罪判決が出ています。これも公開情報ですので、現在進行形の話だとして脚注に加えていただくようにお願いしたいと思います。
○後藤座長 どうも御指摘ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
○友行参事官 事実関係を確認しまして、記載するようにいたします。
○後藤座長 どうもありがとうございます。
他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、「はじめに」、「第1 報告書が念頭に置くいわゆる「破綻必至商法」事案の実態」、「第2 制度的手当の必要性」及び「第3 制度の対象とすべき「破綻必至商法」について」、この部分についての意見交換はこの辺りにさせていただきます。
それでは、引き続き事務局より報告書素案の「第4 破綻必至商法を止めて被害を回復するための具体的方策」、「第5 第4の方策の実効性を高めるための方策」及び「おわりに」について説明をお願いいたします。
○友行参事官 それでは、素案の12ページでございます。
第4の「破綻必至商法を止めて被害を回復するための具体的方策」のところです。
一つ目に、破綻必至商法の禁止の明確化であります。経済的に無価値だけでなく、消費者被害を拡大するという悪質で危険な破綻必至商法については、被害の拡大防止の観点から速やかに事業を停止することはもちろん、市場から排除すべきとしております。そのため、破綻必至商法が禁止されることを明確化することが必要とここでは記載しております。
[説明]のところでありますが、破綻必至商法は事業の実体がないため事業による収益が見込めず、約束した配当を行うためには配当流用をせざるを得ないスキームとなっています。配当流用は出資された金銭を事業に投資しないので経済的な価値を生まず、配当流用しなければ明るみになっていた配当の遅延を隠蔽して新たな出資者の獲得を可能にして、新たな被害者を生み出す悪質なものとなっています。
13ページ目にまいります。
配当流用により破綻状態を隠蔽して新たな出資者を獲得した結果、配当すべき金額が増大になります。配当を実施するため更に多くの出資者を獲得する必要が生じ、被害が拡大していくというものであります。
以上のことから、必要性と許容性が認められると考えます。
2ポツとして、破綻必至商法を停止するための行政処分の創設が必要です。破綻必至商法を行う事業者に対して、事業の全部又は一部を停止する旨の行政処分を創設するとここで記載しております。また、行政処分の潜脱を防止するための手当てを行うほか、行政処分の実効性確保のため、報告徴求や立入検査等の調査権限を与えることが必要と考えます。
[説明]のところでございます。破綻必至商法は消費者被害を拡大する悪質で危険なものであります。現に破綻必至商法が行われている場合には、新たな消費者被害の発生を防止するため、速やかにその事業を停止させることが必要であります。被害者である出資者は、少しでも多くの消費者が出資して被害に遭えば自分に配当が行われる可能性が出ることになり、自ら事業を止めるために行動する動機に乏しいと考えられます。そのため、行政が主体的に事業を止める必要性があります。
また、破綻必至商法では、配当流用により破綻状態の隠蔽を続けます。更に多くの出資者を獲得し続けなければならないが、事業による収益が見込めない中で増え続ける配当金を履行するだけの配当流用を続けることは極めて困難で、いずれ破綻する性質のものと考えられます。そのような性質を有する破綻必至商法に対象を限定して、業務停止の対象としようとするものであります。いずれ破綻する事業者に対して、対象を破綻必至商法という形に限定して、行政が消費者被害の拡大防止という公益的な観点から事業を包括的に停止することは、許容性があると考えられます。
「また、」のところであります。行政処分の創設に当たっては、実効性を確保するため、聴聞又は弁明の機会の付与が必要とされているところ、聴聞又は弁明の機会の付与の手続を行っている間にその事業者が、14ページにまいりますが、財産を隠す、費消するなども懸念されます。この点について、当該業務停止命令が公益上緊急性を有するという場合に、聴聞又は弁明の機会の付与を省略する余地もあると考えられます。
脚注の27に、公益上こういうことができるということの典型例として、聴聞又は弁明の機会の付与を省略しつつ、事後的に弁明の機会を行う例として医療法30条などの規定もございます。
本文に戻りまして、その他行政処分の実効性担保のために、行政処分に違反した場合に罰則を設けることなども考えられます。他にも、行政処分の対象事業者を別会社に承継させる又は別の事業者名義で事業を継続することなどにより処分を潜脱しようとする事業者に対して、業務停止命令の対象となった事業者の役員に対する停止の対象業務と同様の禁止命令制度を創設することも考えられます。また、別の事業者に行政処分の対象事業を継続させるだけの資金を与えないようにするための措置を創設することを検討することが考えられます。
その措置としては、脚注の29にございます。例えば業務停止命令の実効性を確保するため、その対象事業の用に供される財産を特定した上で、当該財産の処分を禁止する旨の行政処分の創設なども考えられます。
本文に戻りまして、「もっとも、」のところであります。業務停止命令を始めとする行政処分は、将来の被害の発生防止には役立つが、それだけでは被害回復にはつながらないという点に留意が必要で、以下3ポツから5ポツまでの方策を検討すべきというような形でございます。
3ポツの行政庁による破産申立権限の創設であります。行政庁は、破産必至商法を行う事業者に破産手続開始原因がある場合は、破産手続開始の申立てをすることができる旨の制度を創設することが必要であると考えます。
15ページの[説明]のところにまいりますが、破産手続は債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図ることを目的としています。破産財団の換価及び配当手続を通じ、消費者の被害回復を実現することができます。また、破産手続には包括的な保全制度が用意されています。破産手続開始決定がされた場合には、破産管財人にその破産者の財産の処分権が専属して、法人については解散することになります。
その次の段落の「破産手続開始決定を得るには、」というところでありますが、支払不能又は債務超過という破産手続開始原因の証明が必要になります。
その下の「また、」というところですが、破産手続開始決定後の手続の一部について、個別消費者を代理するような立場として適格消費者団体を活用する可能性があるということもこのワーキング・グループでは議論されたところであります。
ここのところは脚注の35に記載しております。行政による対応というテーマからは離れるけれども、特定適格消費者団体の活用に関連して、特定適格消費者団体に破産申立権限を付与したらどうかというような意見もワーキング・グループの中では見られました。
本文に戻りまして「なお、」のところであります。行政庁に破産申立権限を付与することについては、以前より課題が指摘されていたところでございます。以前、消費者庁のほうの検討会等でも検討された際に、幾つかの論点、課題が指摘されておりました。そのうちについて、以下(1)から記載しております。
まず、(1)として破産手続の目的との関係についてです。
16ページにまいります。
破産手続の本来的な目的は、債権者に対する配当を最大化して公平な配当を行うことであります。破綻必至商法を行う事業者に係る事案においては被害者保護、被害回復が本来的な目的となります。加えて、被害の拡大予防も破産手続の付随的な目的として位置付けられると考えられます。そして、付随的な目的である被害の拡大防止は、公益的な事項として行政庁が担うべき事項と考えられます。
それから、(2)としまして、行政が事業者の生殺与奪を決めることが適切かについてです。行政庁による破産申立ての対象とするのは破綻必至商法を行う事業者であり、破産手続開始原因を有する全ての事業者ではありません。さきに述べたとおり、破綻必至商法は経済的に無価値です。消費者被害を拡大するという悪質で危険なものであります。このようなものに対象を限定すれば、行政庁が生殺与奪を決めることになったとしても不適切とは思われないというのがこのワーキング・グループでの考え方であります。
(3)として、金融庁等以外の省庁が破産申立権限を有していないことについてとの関係であります。省庁の破産申立権については、現行破産法の制定時には一般的な規定として導入されることは見送られたとワーキング・グループの中でも御紹介がありました。それは金融庁以外の省庁に破産申立権を認めないという趣旨ではなく、各省庁において自らの監督権限の行使及び債権者保護の観点から判断するということで、ボールが各省に投げられた状態にあるというような御説明がございました。
監督権限との関係では、破綻必至商法は消費者被害を拡大する悪質で危険なものとして禁止することを明確化し、事業停止の行政処分の対象とするなど、破綻必至商法を規制対象とするものであります。破綻必至商法を行う事業者が自己破産申立てをすることは期待できません。他方で、債権者である消費者も財政面や情報面で弱い立場にあり、債権者申立てをすることも実際には難しいと考えられます。このような状況下では、行政庁が債権者保護の観点から監督権限の行使として破産申立てをすることが考えられます。
17ページにまいります。
金融庁等で破産申立権限が認められている対象事業者は金融分野に限られております。これは、債権者保護の観点から、行政庁が破産申立てをする必要性が生じるのが、多数の消費者が事業者に信用を供与する場面であるからと考えられます。
(4)にまいります。他の優先債権との関係で消費者への配当が少額となることについてです。破産手続開始原因が認められる以上、そもそも消費者が出資等を全額回収することは不可能であります。ただ、いかにその配当の原資を多くして、かつ債権者間で平等の配当を行っていくかという点に破産手続の使命は存在すると考えられます。そのような使命は破産債権の優先順位にかかわらず存在し、できるだけ早期に、適時に破産手続を開始するということの制度的な必要性が基礎付けられるということであります。
また、破綻必至商法を行う事業者との関係では、早期に破産申立てをすることにより、当該事業者の構成員として消費者被害の拡大に加担していた従業員の労働債権が積み上がることを防止できるという点も重要であります。
この点、脚注の42のところに、例えばジャパンライフの破産事件でも多額の労働債権が積み上がったと指摘されています。ジャパンライフの債権者集会の報告書によると、財団債権(労働債権)として3億7,000万円以上が支払われております。
(5)として、破産申立てのための調査権限についてです。破綻必至商法を行っていることの認定は裁判所が行います。認定のために必要な資料は破産申立てを行うところが裁判所に提出することになります。裁判所が破綻必至商法について迅速、適切に判断するため、行政が必要な調査権限を持つことは重要であると考えられます。
その調査権限の内容を含めた実効性を高める方策については、以降の第5で述べております。その調査権限については、行政庁による破産申立権限に伴うものではなく、行政処分に伴うものと整理されています。そして、2ポツの行政処分と行政庁による破産申立ては、同一の行政庁が破綻必至商法を止めて消費者被害を防止するという同じ目的の下で行われるので、2ポツの行政調査により得た情報を活用して破産申立てをすることは可能であるとここでは考えております。その参考となるような考え方として、脚注の46にも記載しております。
本文の「また、」のところでありますが、また、既存の個別法に基づいて行政調査・行政処分を行った場合に入手した情報を破産申立てに際して使用ができるかについての問題はあります。その場合、行政による破産申立てが犯罪捜査と同様の厳格な規律に服すべき手続とまでは言えないことに鑑みると、そこによって得た情報が結果として破産申立てに使用されることは許容されるものとこのワーキング・グループでは考えております。
4ポツの違法収益剥奪のための行政手法の創設であります。ここでは違法収益の返金計画措置命令、また、その命令に従わない、見込みがない場合の行政型没収の制度、そして、財産保全のため権利移転せずに事業者の財産を凍結する制度、加えて、繰り越しの違反行為を抑止するための一定割合を乗じた額を加算金として納付させる制度などについての創設が必要だと整理しています。
[説明]のところでございます。「加算金については、」というところであります。将来的な繰り返しの違反行為を抑止する趣旨でこういったことを整理しています。事業者が得た違法収益を奪うだけでは事業者にとって損が生じないということから、破綻必至商法を行えば利益が得られないだけではなく損まですることを示す必要があるということであります。
19ページにまいります。
違法収益の剥奪の方法について、まず原状回復を内容とする違法収益の返金計画を立てさせます。そして、その履行についての措置命令を出すことが考えられます。その措置命令を履行した場合には被害回復がされることになりますが、悪質事業者がそれを実施するかどうか、措置命令の内容を実施するよう直接に強制することはできないと考えられます。その際、命令に従わない場合、事業者が初めから措置命令に従う見込みがない場合には、事業者の意思に反して違法収益の額に相当する財産を取得する制度が必要になり、そのため、行政型没収が考えられると整理しています。
その違法収益の額に相当する財産を取得する制度、その違法収益の額をどういうふうに考えるのかということについては、脚注の50のところで少し補足的な説明もしております。
本文に戻りまして、剥奪した違法収益をどのように分配するかについては、マル1違法収益を国庫に入れつつ消費者に対して国への請求権を設定する方法、マル2として、基金を創設して剥奪した違法収益を移して基金の管理者が事業者の帳簿に基づいて、又は消費者の債権届出を受けて分配する方法などが考えられます。
(1)として、事業を継続するつもりのない事業者等に対して、実効性を確保する方法についてでございます。行政手法のうち原状回復を内容とする違法収益の返金計画措置命令について、名宛人となる事業者が命令に従わなければ意味がありません。破綻必至商法を行うような事業者は、その命令に従うことがあまり期待できないと考えられます。
その際の行政型没収とは、破綻必至商法を行う事業者の財産を行政が強制的に取得する手法のことであります。例えば現金や金塊など価値がある有体物について、即時強制として見付けた時点で押さえるということも考えられます。また、銀行口座の預金債権などについて、権利の移転を内容とする行政処分を行うことでその権利を業者に移転させるということも考えられます。行政型没収の制度の在り方については、行政が自ら行う場合だけでなく、行政が没収の履行を求めて裁判所に訴訟を提起するということも考えられます。
行政型没収の実効性を確保するために、没収すべき違法収益額について一定の見込額を概算で算定するということも考えられます。
(2)といたしまして、個々の被害者の被害額の認定についてです。剥奪した違法収益を被害者に分配する場合には、その前提として被害金額の認定が必要になります。具体的な方法として、マル1として、事業者が保有していた帳簿に基づいて認定する方法が考えられます。マル2として、被害者に被害金額の届出をしてもらって認定することが考えられます。事業者から整備された帳簿などが得られない場合には、マル1とマル2を組み合わせるといったことも考えられます。
次に、5ポツの会社法の解散命令の活用・拡充についてです。21ページに参りますが、現行制度の活用として、破綻必至商法を行う事業者に会社法の第824条第1項各号に該当する事由がある場合には、行政庁が826条の法務大臣への通知を行うこととするということも考えられます。
加えて、現行制度を拡充して、破綻必至商法を行う会社に限り、会社法の特例として解散命令の申立権者に関係省庁の主務大臣を追加するということも考えられます。
以下、[説明]であります。会社法の解散命令は一定の解散事由が認められる場合に限定されておりますが、解散命令が出された場合には法人は解散します。また、破綻必至商法を行う事業者の事業を確実に停止させることができます。会社が解散した場合には清算手続に入るため、消費者は清算手続を通じて弁済を受けることもできます。会社法の解散命令は現行制度にあるものであって、必要な要素を多く備えていると考えられます。
「また、」のところですが、現行制度である会社法の解散命令が活用できるのであれば、新たな制度的手当てを実現するよりも早期に消費者被害を回復することができると考えられます。現行制度の活用が難しい場合には、その難しい理由を踏まえた上で新たな制度的手当てを検討するということも必要になると思われます。
まず(1)として、現行制度の活用についてです。現行制度の活用状況を見ますと、会社法については、平成27年度以降、解散命令の申立てがされたものが9件となっております。9件全てがその会社の活動実績がないことを理由とする申立てとされております。
「このように、」というところですが、件数を見る限り、現行制度は十分に活用されていないと評価することもできます。22ページの「その理由としては、」というところですが、法務省は個々の会社を監督しておりません。また、個々の会社に関する情報を十分持っておらず、個々の会社に対する調査権限も認められていないため、会社法の解散命令を機能させるためには、それぞれの会社の状況を知り得る関係省庁が解散事由の存在を立証できるだけの証拠をそろえて通知することが必要になります。
現行制度の活用を促すためには、まず会社法826条の通知を官庁等が行うよう促すことも考えられます。
(2)として、現行制度の拡充についてです。最初の段落ですが、関係省庁の主務大臣に解散命令の申立権限を認めることが一つ考えられます。その理由として、関係省庁の主務大臣のほうが対象事業者の情報を知り得る立場にあるからであります。特定の分野に限った特則として位置付けることで、法制度全体の整合性という観点からの問題も生じないとも考えられます。
「なお、」のところですが、行政処分による一般的な解散命令制度の創設も考えられます。現在のところ、解散命令の対象となる法人の根拠法を除いては先行の立法例はないというところでございますが、手続を迅速に進めるというような利点としてはあり得ると考えられます。
23ページの第5の「第4の方策の実効性を高めるための方策」であります。
1ポツとして、第4の方策の実効性を高めるための視点です。破綻必至商法を行う事業者は、取引の時点では適正で利益の出るビジネスモデルであると偽装しています。そして、消費者を勧誘するため、外見から一見して破綻必至商法であると判断することは難しいとなっております。そこで、破綻必至商法であることを認定するためには、事業の実施状況を分析することが必要で、その関係では事業計画や資産と債務の状況、収益の状況などを分析することが必要となります。そして、できる限り早い段階で破綻必至商法を探知できるようにするためには、このような分析に必要な情報を早期に行政が入手することが重要となります。事業報告書、事業計画、決算書類、固定資産台帳、従業員のリスト等、こういったものの正確な情報が必要となると考えられます。また、これだけでなく、情報収集について制度的な手当てを検討することも必要ということであります。
2ポツとして、第4の方策の実効性を高めるための具体的な方策であります。
(1)として、現行制度の運用に関係する方策です。「まず、」のところですが、事業者の内部に調査への協力者を確保することが重要とも考えられます。そのための方策として、例えば公益通報者保護制度に基づく公益通報を活用することも考えられます。
「また、」の段落ですが、破綻必至商法を行う事業者についての情報に接し得る主体は複数考えられ、例えば国民生活センターや消費生活センターなど、24ページにまいりますが、その他、警察、他に業所管官庁がある場合は当該官庁などが相互に連携することで、早期発見に資すると考えられます。
破綻必至商法の早期探知に資するように、運用面で更に改善を図ることも検討すべきであります。PIO-NETについて、相談員の入力の際のサポート・バックアップ体制を整備することも考えられます。PIO-NETについては、破綻必至商法の特徴や、それを行う事業者について寄せられた相談情報を参照しつつ、それを行っていると疑われる者をあぶり出す新たな指標の開発なども考えられます。また、過去の破綻必至商法と類似の相談が入力されたときに、入力情報を自動的に分析してアラートが立つような仕組みを開発することも考えられないでしょうか。
(2)として、制度的手当てが必要な方策であります。破綻必至商法を停止するための行政処分に必要な限度で、報告徴求・立入検査等の権限を行政に与えることが必要であります。その調査権限の名宛人については、その本人だけではなく、その関係者も対象とするようなことができないか検討すべきであります。
破綻必至商法を行う事業者は行政による立入検査を拒否する可能性もあります。顧客リスト、従業員名簿、固定資産台帳など、事業者の内部に立ち入って調査しなければ得られない情報もあります。そこで、任意で行われる立入検査を更に進めて、例えば臨検といった形の権限を行政に与えるべきか検討することも必要ではないでしょうか。仮に臨検の権限を認める場合には、憲法の趣旨に照らしてあらかじめ裁判官の許可を得ることが必要となるということであります。
さらに、景表法の手法を使って、不実証広告規制類似の制度を設けることも考えられます。また、非常に難しいかもしれませんが、「高利率をうたう取引」については届出義務を課すということを検討することも必要と考えるとここに記載しております。
最後に、「おわりに」であります。最初の段落の真ん中の辺りでありますが、本報告書においては、今後の様々な検討に資することも考え、具体的方策相互の優先順位などは付けておりません。ワーキング・グループで御議論いただいた内容について幅広にまとめ、ワーキング・グループの委員、オブザーバーからいただいた御意見については、できる限り記載するというような方針で取りまとめられております。
検討を行う上で特に困難であったと考えられるのは、第1に、破綻必至商法をどのように定義付けるかという点であります。ワーキング・グループでは、過去に多数消費者被害をもたらした事案をできる限り分析し、正常な経済活動へは一切影響を与えないということにも配慮して一定の定義付けを行っております。
第2に、多数消費者被害に対して既に幾つかの制度整備が行われているにもかかわらず、更に強力な制度を行政が持つということをどのように考えるかという点であります。ワーキング・グループでは、多数消費者被害が繰り返し発生していることを踏まえれば、消費者の被害の回復のため、対象を限定して行政がより強力な権限を持つことが許容されるのではないか。その上で司法手続を介在させる制度となれば、権限行使への一定の歯止めがかかるのではないかと考えられたところであります。
26ページにまいります。
第3に、破綻必至商法は消費者が取引を行う時点では適正取引であるかのように偽装されています。事後的に、あるいは途中段階で破綻必至の疑いが強いと判明することが多いという点であります。ワーキング・グループは、こうした商法を行政がどのように探知し、どのような行政処分を行うことができるかについて、実効性の確保を踏まえた検討を行ったというところであります。
その上で、まだ以下のような課題が残されております。その点については留意が必要ということであります。
第1に、破綻必至商法の定義との関係では、正常な経済活動への萎縮効果を生じさせてはいけない。要件裁量が小さくなるよう更に具体的な要件とするなど、対象を明確化することを検討することが必要だと考えられます。
第2に、具体的方策との関係では、被害の拡大防止、被害回復といった観点から、ここで挙げられた各方策の内容や有効性を更に検討していく必要があると考えられます。
また、第3として、調査権限との関係では、各方策を実効的なものとするためにどのような調査権限が必要か、そして、その調査権限を行政が持つことが許されるのかという点も含めて検討する必要があると考えられます。
この点、留意する必要があると「おわりに」のところで記載しております。
御説明については以上でございます。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、これより30分程度意見交換の時間とさせていただきます。ただいまの説明を踏まえ、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。
御発言をされる際にはチャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。
山本委員、よろしくお願いいたします。
○山本委員 ありがとうございます。
2点ですけれども、第1は15ページから16ページにかけての(1)破産手続の目的との関係についてという部分です。ここでの整理は、破産手続の付随的な目的である被害の拡大予防という点を捉えて、その点で行政庁に申立権限を付与する。それは公益的な事項だという形での整理になっております。
このこと自体は私はそのとおりだと思っていますが、先ほど前段で御議論があったこととの関係ですが、私自身は本来的な目的、被害救済自体を援助するということにおいても、この行政庁の申立権限というのは正当化できるのではないかという意見を持っております。これは、この報告書でもその下の(3)のところで書かれていることではないかと思うのですけれども、債権者の性質、不法行為債権者ということで、この16ページの下から4行目あたりですが、財政面、情報面で弱い立場にあって、債権者申立てをすることも実際には難しく、そういう点からすれば、行政庁が債権者保護の観点から破産申立てをすることが考えられるということが書かれていて、この被害者保護というのは私は正面から行政庁が行うべき事柄のような気がしております。
そのことは、この被害者というのは、多くの場合、こういう破綻必至商法というのは犯罪に該当する部分、重なる部分が多いのではないか。これまでの例からも多くは刑事訴追等がされているという状況にあるように伺いました。そういう意味では、この不法行為債権者というのは一方では犯罪被害者である。それと重なり合うことが多いわけですけれども、これは私の専門分野ではありませんが、犯罪被害者等基本法の中でも、例えば12条で国が犯罪被害者の損害賠償請求について適切かつ円滑な実現を図るため、損害賠償請求についての援助を行う、援助の施策を講ずるものとするというような国の義務といいますか責務が定められているように承知しています。そういう観点からすれば、こういう被害者の損害賠償請求権の回復のために破産手続の開始を申し立てるというのは、十分正面から破産手続の目的との関係で正当化ができるのではないかと私自身は思っています。
ただ、この点は私の個人的な意見ですので、どうしてもそれを変えてくれという趣旨ではございませんけれども、一応私自身はそう考えているということを申し上げたいと思います。
それから、第2点は、解散命令との関係で22ページの(2)現行制度の拡充についてという部分です。これは前段と後段に分かれていますが、前段の関係省庁の主務大臣に解散命令の申立権限を認めることについては全く異論はありません。十分考えられることだと思います。私が問題を感じるのは後段の行政処分による解散命令制度の創設という点であります。私はこれはかなり慎重に考える必要があることではないかと思っています。ただ、ここでは、要するに理由としては手続を迅速に進めることができるという利点があるということだけが書かれていて、要するに早くできるということで、それはそうなのです。裁判所に行くよりは早くできる。しかし、それは他方では中立公正な独立が認められている司法権の介在を経ずに、行政権、政府の判断だけで、要するに法人に対して死刑宣告をすることを可能にするということを意味しているわけでありまして、そのことは歴史的に見ても、あるいは国際的に見ても、政府が気に入らない団体について解散をさせるということ、その濫用による弊害のようなものはかなり大きなものがあるように私は見受けております。
そういう点から、もちろん検討することに反対するものではありませんけれども、ここに書かれてあることは非常に簡単に書き過ぎているのではないかという気がしておりまして、少なくともやはり慎重に考えるべきだという意見があるということは書いていただきたいような気がいたしました。
以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
第1の点でありますけれども、15ページから始まって(1)、(2)、(3)とあるのですが、(3)の16ページの下から4行目ぐらいの部分の記述をむしろ(1)のところに移す形で、(3)の下から4行目ぐらいで書いてあるところをより正面から記述するという御提案で、そうすることで、この報告書の内容をよりアピールできるという感じがするのですけれども、委員の方々、特に御異論がなければ、そういう形で対応したいと思いますが、反対や御疑問とかはありますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、破産手続の申立てができるという根拠付けをより強くすることができると思いますので、そういう方向で考えるということにしたいと思います。
それから、先ほどの22ページのところ、山本委員の2番目に御指摘いただいた問題なのですが、報告書全体としてワーキング・グループの中でされた議論を幅広に取り入れるということで、ここで取り上げているのですけれども、やはり内容的には慎重にということで、取り上げるとしてもかなり慎重に考えなくてはいけない内容だということは、やはり私も山本委員のお話を伺っていて思いまして、委員の方々で特に御異論がなければ、そういう慎重に扱うべき問題であるということを書くということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
事務局もそういうことでよろしいでしょうか。
○友行参事官 承知いたしました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、他に御意見とか、あるいは御質問とかがおありでしたら。
中川委員、よろしくお願いします。
○中川委員 先ほどの山本委員の御指摘とも重なるのですが、最後の今正に話題になった行政処分による解散についてのくだりは、多分私が言ったことでしょうかね。覚えていないのですけれども、もし私が言ったのだとすると、その趣旨は、行政処分単独での解散命令が理論的に駄目だというわけではないという程度の意味だろう思います。ここで迅速に進めることができると書いてあるのですが、実はそうでもないのです。行政処分は取消訴訟が来ますので、結局めちゃくちゃ長くなるのですね。効力停止がかかりますから、即効性もない。行政処分だけでおよそ解散をやってはならないとまでの割り切りはできないだろうとは思いますが、ただ、それが迅速というメリットがあるかというと、必ずしもそうではないので、最終的にそんな制度を作ってもしょうがないなということにはなるだろうと思います。それから、解散命令を行政処分だけですることになれば、恐らく準司法的手続を備えることになると思います。影響が大きい処分ですから。そうすると、やはり迅速というところを強調するのは不適切だろうと思います。では、結局何のために行政処分化するのだというので、行政処分単独での制度設計はやらなくていいかということになるかもしれませんけれども、なので、どうですかね。私が発言したとしても、そんなに強調して書いていただくつもりではなかったのですけれども。
○後藤座長 ここの部分は中川委員の御発言というよりは、私の記憶の範囲内ですが、ヒアリングの中でそういうような議論が出ていたということだと思います。
○黒木座長代理 脚注の68です。
○後藤座長 これまで何回かヒアリングをしていまして、ヒアリングをした弁護士の先生の御見解だったと思います。
○中川委員 自分が言っていたら申し訳ないと思って発言したのですけれども、私としては別になくていいのではないかなという感じもする記載です。先ほど申しましたように、結局、行政処分だから早いとは限らないし、行政処分単独でやるなら必ずこれは準司法的手続になりますので、これはこれで裁判と同じぐらい非常に時間が掛かりますので、ならば最初から裁判でやればいいではないか、現行法でいいではないかと。迅速性を考えるのであればそういうことになろうかと思います。
○後藤座長 そういう方向でよろしいでしょうか。
事務局、いかがでしょうか。
○友行参事官 ここのところはヒアリングをした結果なども踏まえてこういうふうに書いておりますところ、解散命令について検討することについては慎重に考えると書くので残すのか、いっそのこと削除してしまうのか、どちらかなというところがございます。
○後藤座長 どうもありがとうございます。
これは委員の方々の御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
○黒木座長代理 黒木です。
一応ワーキング・グループにお呼びして御知見を披露してもらっていて、それを全面的に消してしまうというのも、トーンは別として、およそそういう論点がなかったかのごとくするというのはまたいかがなものかという気もしますので、その辺りは全部消すというのはやめたほうがいいのではないかなと思います。
○中川委員 であれば、先ほど山本委員がおっしゃったように、やはり慎重な検討も必要であるというのと、私は迅速に進めることができるというのはやめたほうがいいかなと思います。
○友行参事官 そこの部分は事務局で文章を考えたいと思います。
○後藤座長 どうもありがとうございます。
黒木座長代理、お願いいたします。
○黒木座長代理 まず、いろいろこの件について私の論文とかも引いていただいているのですけれども、14ページからの行政庁による破産申立権限の創設については、ここの委員でもいらっしゃいます山本和彦委員の素晴らしい先行実績があって、現代消費者法のナンバー11、2011年のものがあります。この論文では、ここでこの後議論されているものについてはかなりのところが重複して既に先行実績として議論していただいていますので、これはやはり僕の拙稿を載せていただけるのであれば、是非山本委員の現代消費者法の論文は載せていただきたい、注で入れていただきたいと思う次第です。まずそれが先行していらっしゃる学問的な実績に対する対応かなと思っているという意見が一つ。
それから、あともう一つ、今日中川委員がいらっしゃるのでお尋ねしたいなと思っている最高裁の判決が出ていまして、令和4年5月17日の最高裁の情報公開に関する判例です。判決の要旨は、これは安愚楽牧場の関係なのですが、預託法違反及び景表法違反に係る調査の結果に関する情報について、当該情報を公にすることにより、消費者庁長官等が上記各法律の執行に係る判断をするに当たり、いかなる事実関係をいかなる手法により調査し、調査により把握した事実関係のうち、いかなる点を重視するかなどの着眼点や手法等を推知され、将来の調査に係る事務に関し正確な事実の把握を困難にするおそれ、又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあるといえるか否かという観点から、審理を尽くすことなく、当該情報が上記各違反に係る調査の結果に関するものであることから、直ちに情報公開法5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断には違法があるとして、破棄差戻しをした令和4年5月17日の判決があって、この行政調査の権限について幅広く集めて、それをある程度いろいろなところに使うということについても、積極的であるべきだというものと、この最高裁の判例でこういうことを幅広くいろいろ公開されてしまうと後の調査に影響を与えるかもしれないから、それを勝手に情報公開してはいけませんという判決との間で整合性が取れるのかなという点が私自身も少し疑問があって、まだ僕自身は整理できていないので、もしもよろしかったら中川委員の御知見をいただければと思います。
○後藤座長 お願いいたします。
○中川委員 まず、これは情報公開請求ですので、原審のように開示決定されると有無を言わさず全部出さなくてはなりません。今読み上げていただいたように、最高裁は、調査の手のうちが分かるようなところまではさすがに出しすぎでしょうと言った。手のうちが分からない範囲で限定して開示決定しなさいというような差戻しをしたものですね。
他方、今回行政処分用にした調査の結果を破産申立てに使うとか、あるいは会社解散に使うというのは、イニシアチブは全部消費者庁の側が持っていますので、自分たちの今後の調査に支障がない限りの情報を出すということになると思います。行政処分を打てばほぼ必ず取消訴訟になりますから、そうすると、そこで調査関係の情報は、裁判にある程度出さなくてはいけない。それを覚悟で処分を打ちますので、その範囲の情報であれば、他の破産申立てとかにも出してよい。そこら辺はやはり自分たち行政庁のほうでどこまで出すか、支障のない限りで出すという差配ができる点で全然違う。情報公開の原審判決は、さすがに出し過ぎでしょうと最高裁が言ったということですので、その意味では矛盾はしていないと思います。ですから、この判決はあるけれども、にもかかわらずこういう情報共有はできますよという一言を書いていただくと、黒木座長代理の御示唆が非常に報告書に反映されるかなと思います。
○黒木座長代理 多分そういうことなのだろうと思ってはいたのですけれども、やはり中川委員にそういうコメントをいただけるとほっといたしました。ありがとうございます。
それから、山本委員の論文も是非お願いいたします。
○後藤座長 山本委員には、NBLでお書きになったものを私は拝見したことがあるのです。
○黒木座長代理 そうです。その後、東西倒産検討会か何かのときの基調報告もそれでしていただいております。
○後藤座長 それでは、その文献を補っていただくということでよろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
他にございませんでしょうか。
中川委員、よろしくお願いします。
○中川委員 幾つか細かい点ですけれども、まず14ページです。14ページの真ん中少し下、「もっとも、」というところの2行目です。「それだけでは被害回復」ということですが、一応先ほど板谷委員の御指摘で不当収益の剥奪及びそれを用いた被害回復というような形にしましたので、ここもそろえてそういう書き方にしてはどうかなと思います。
先ほど山本委員がおっしゃった1点目の視点は非常に重要で、そもそも公益として被害回復というのはあるのではないかと。これはあり得る考え方だと思うのですけれども、そこに今議論を拡大するとそこでストップしそうなので、これを受ける側が受けやすいように、繰り返し防止という公益のための不当収益の剥奪というのをまず置いて、それを用いた被害回復という形で、異論のより少ないであろう書き方に一応行政処分のところはしております。ただし、山本委員がおっしゃったことはそのとおりで、いやいや、そんなに一歩置かなくてもいいのではないのかというのはあると思うのですけれども、そこは逆に言うと非常に反対もされやすい論点ですので、いやいや行政とは公益を実現するものであって、と言われやすいところなので、そこで反対されないように、不当収益の剥奪は繰り返し予防のためであるというのを念のためにここでも入れておいていただければなと思います。それが1点。
それから、あちらこちらで出てくるのですけれども、悪質でかつ危険というのが破綻必至商法は結構キーワードになっていると思うのです。悪質とは何を意味し、危険とは何を意味するかというのが、冒頭で書いてあったかもしれないのですけれども、それを最初に出すときに強調して説明していただければと思います。悪質かつ危険というのは非常にいいキーワードだと思いますので、例えば悪質というのは意図的にもやっていることで、繰り返す、逃げる、隠すという悪質性という意味なのかどうか書いていただいて、危険ということは、消費者にとっては釣られやすいし、一度入るとどんどん深みにはまっていって帰ってこないとか、今、適当に想像して言っていますけれども、悪質かつ危険とはどういう意味でそれぞれ使っているのかという説明が最初のほうにあると、より何とかしなくてはいけないという説得力につながるのかなと思いました。
それから、細かい点で3番目ですけれども、18ページの脚注47です。加算金の類似制度というのが18ページの脚注47で、類似の制度は地方税法と国税通則法の加算金、加算税のみです。他方、独禁法や景表法の課徴金は不当収益プラス加算金というイメージで計算しているのです。なので、そこは書き分けていただいたほうがよろしいかと思います。
それから、もう1点なのですが、19ページの脚注49に対応する本文ですが、これは被害回復ですかね。措置命令の内容を実施するよう直接に強制することはできないと言って脚注49なのですが、実際に直接強制するのであれば、恐らくここに書いてあるような財産を取って、差し押さえて、自分で汎用するというのが恐らく直接強制なのではないかなと思うのですけれども、だから、あえてこの本文は書かなくてもいいかなと思いました。直接強制の定義論になっても、それがしたいわけではありませんので。
それから、これは技術的な問題かもしれません。20ページの2段落目の最後から2行目ですかね。脚注55に該当する本文ですが、行政が没収の履行を求めて裁判所に提訴するというのは、没収請求権が既にあるという前提で給付の訴えをするというイメージなのか、それとも裁判所が判決で没収するという刑事みたいに、言わば形成判決のような感じでやるということなのか、それであれば多分履行を求めてという言葉は使わないと思うのですけれども、どちらもあり得るのかもしれませんが、両方の形で書き分けてもいいと思いますけれども、ここは書き方に工夫が必要かなと思いました。
私からは以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
1番目の違法収益の剥奪のところですよね。どこでしたか。申し訳ありません。
○中山委員 14ページの真ん中、「もっとも、」というパラグラフの2行目です。
○後藤座長 ここを御指摘いただきましたが、委員の方々、いかがでしょうか。御指摘の方向でよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それから、2番目の悪質とか危険とかということなのですが、ここはこの報告書でどの程度言葉として使われているのでしょうか。
○友行参事官 もう一度見直しまして、整理させていただいてもいいですか。
○後藤座長 分かりました。
御提案いただいた方向で委員の方々から特に御異論がなければ、そういう方向で考えたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それから、3番目の加算金とか加算税の問題ですが、これも特に御異論がなければ、御指摘のとおりということでよろしいでしょうか。
それから、19ページの本文や脚注の49も関係しますけれども、書かなくてもいいのではないかというお話がありましたが、これも特に御異論がなければよろしいでしょうか。
それから、5番目は20ページですが、黒木座長代理、御自由に御意見をお出しください。
○黒木座長代理 僕はあまり行政に関して詳しくはないのですけれども、これは父権訴訟みたいなことをイメージしていらっしゃるのですか。この脚注55、僕もこのワーキング・グループの45回の議事録をもう一回見たいと思いますけれども。
○中川委員 多分これは私ですかね。僕のイメージだと、むしろ刑事の没収と一緒で、要するに裁判所で没収してしまう。だから、判決によって没収する。義務の履行を求めるのではなくて、没収するとの判決を求める。その判決の効力として財産の収益がなくなってしまうというイメージで私は理解していました。
○友行参事官 座長、今の行政が没収の履行を求めた裁判所の訴訟というところは、中川委員の御意見を踏まえて記載したところですので、中川委員の御意見を正確に記載するように議事録をもう一度確認して記載し直します。
○後藤座長 あと、6番目もありましたか。6番目はどういう問題でしたか。すみません。あと一つあったような気がするのですが、よろしいですか。
○中山委員 以上だと思います。四つだと。
○後藤座長 分かりました。どうもありがとうございます。
お願いいたします。
○友行参事官 座長、先ほど中川委員から御指摘いただいたことの補足なのですけれども、悪質と危険の定義について何か所か出てきているので、どういう考え方ということについては、もう一度事務局のほうで全体的に見直したいと思いますが、12ページの一番下の行に悪質なものというような言葉が最初に出てきておりまして、下から4行目ぐらいから始まっていて、配当流用は出資された金銭等を事業に投資しないので経済的な価値を生まず、配当流用しなければ明るみになっていた配当遅延を隠蔽して新たな出資者の獲得を可能にして、新たな消費者被害を生み出す悪質なというようなことで1回あって、そういう意味で、この報告書では悪質なというのを使っていますというのを最初に定義し、あと、13ページの上から始まったところで、配当流用により破綻状態を隠蔽して新たな出資者を獲得した結果、金額が増大し、配当を実施するため更に多くの出資者を獲得する必要が生じ、被害が拡大していくという危険なものであるということで、最初に出てきたところで、一応ここでいう悪質がこういうことを指し、危険なというのはこういうことを指すという形にしております。
もう一度全体的に確認いたします。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
悪質とか危険の前に悪質、危険の説明が個々のところで付いているということであれば、一般的に悪質は何なのかということは書かなくてもいいかなという感じもするのですが。
○中川委員 見落としていました。ありがとうございます。
○後藤座長 よろしいでしょうか。
それでは、他にいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、「第4 破綻必至商法を止めて被害を回復するための具体的方策」、「第5 第4の方策の実効性を高めるための方策」及び「おわりに」についての意見交換はこの辺りにさせていただきたいと思います。
本日も非常に重要な根本的、基本的な指摘をいただきまして、大変有り難く思っております。私のほうで特にまとめるということはしませんけれども、定義に関わる部分について非常に重要な御指摘をいただいて、定義のマル1、マル2、マル3、マル4のどこに当てはまるかということについて、記述自体の変更というよりはマル1、マル2、マル3、マル4の順序を変えて、正常な事業に影響を与えないということはしっかり確保されているのだということを表現するということですね。これは非常に重要なことだと思います。
それから、行政が私人間の関係、事業者-消費者間の関係について一定の権限を持つということについても、このワーキング・グループでは基本的にはそのことを前提として考えてきたと思いますけれども、そこの部分については行政の側で、行政がそこまでの権限があるのかという対応というのも考えられないことではありませんので、ワーキング・グループとしてこういう検討をしたことの意義をきちんと示す形で記述をすることが必要だと思います。
ありがとうございました。それでは、本日の議論は以上にしたいと思います。
≪3.閉会≫
○後藤座長 事務局から最後に御連絡をお願いいたします。
○友行参事官 本日もいろいろと御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。
なお、会議終了した後に事務局から御連絡事項がございますので、回線は切らずにそのまま残っておいていただければと思います。
○後藤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございました。
(以上)