第36回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録
日時
2022年5月13日(金)10:00~12:07
場所
消費者委員会会議室・テレビ会議
出席者
- (構成員)
- 【会議室】
- 後藤座長
- 【テレビ会議】
- 黒木座長代理
- 木村委員
- (オブザーバー)
- 【会議室】
- 山本和彦 一橋大学法学部教授
- 【テレビ会議】
- 大石委員
- 中川丈久 神戸大学大学院法学研究科教授
- (参考人)
- 【会議室】
- 石戸谷豊弁護士
- 【テレビ会議】
- 五十嵐潤弁護士
- 山口広弁護士
- (事務局)
- 加納事務局長、渡部審議官、太田参事官
議事次第
- 開会
- 財産被害の防止・回復に関するヒアリング
- 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
- 議事次第(PDF形式:169KB)
- 【資料1】 ジャパンライフ事件からみた行政庁の解散命令制度と破産申立権(石戸谷弁護士提出資料)(PDF形式:749KB)
- 【資料2-1】 MRIインターナショナル事件報告(説明資料)(五十嵐弁護士提出資料)(PDF形式:407KB)
- 【資料2-2】 MRIインターナショナル事件報告(弁護団活動報告)(補足資料)(五十嵐弁護士提出資料)(PDF形式:444KB)
≪1.開会≫
○太田参事官 本日は、皆様、お忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございます。
ただいまから消費者委員会第36回「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を開催いたします。
本日は、後藤座長、山本委員は会議室にて御出席、その他の皆様はテレビ会議システムでの御出席となります。
なお、所用により、丸山委員と川出委員につきましては御欠席との御連絡をいただいております。
議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。もし不足等がございましたら、事務局までお知らせください。
なお、本日の会議はウェブ会議による開催となります。感染症拡大防止の観点から、報道関係者を除く一般傍聴者の皆様にはオンラインにて御参加いただいております。議事録につきましては、後日公開することといたします。
次に、ウェブ会議による開催に当たりましてお願い申し上げます。
1つ目に、ハウリング防止のため、御発言いただく際以外はマイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。
2つ目に、御発言の際はあらかじめチャットでお知らせください。座長に御確認いただき、発言者を指名していただきます。指名された方は、マイクのミュートを解除して、冒頭でお名前をおっしゃっていただき、御発言をいただきますようお願いいたします。御発言の際、配付資料を参照する場合は該当のページ番号も併せてお知らせください。
なお、御発言の際には、可能であれば映像、カメラのマークをオンにしていただきましたら、どなたがお話しになっているか分かりやすくなりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
3つ目に、音声が聞き取りづらい場合などには、チャットで「聞こえない」「聞こえにくい」などと記入していただき、お知らせいただきますようお願いいたします。
それでは、後藤座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。
≪2.財産被害の防止・回復に関するヒアリング≫
○後藤座長 座長の後藤です。本日もよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に入らせていただきます。
本日の会合では、近年、実際に発生した消費者への財産被害事案を取り上げ、当該事案の被害弁護団をお務めになられた弁護士の方々をお招きして、被害の防止、回復を図るための方策についてヒアリングを行いたいと思います。
本日の進行ですが、前半では、ジャパンライフ事件をテーマとして、被害弁護団連絡会議代表も務められております石戸谷弁護士に、後半では、MRIインターナショナル事件をテーマとして、被害弁護団事務局長の五十嵐弁護士に、それぞれヒアリングをさせていただきます。なお、後半につきましては、弁護団団長の山口弁護士にも御同席いただいております。
早速ですが、前半の議題に入りたいと思います。
本日は、参考人として石戸谷豊弁護士に会場にお越しいただいております。
本日は、大変お忙しい中ありがとうございます。
それでは、20分程度でお話をいただきますようお願いいたします。
○石戸谷弁護士 石戸谷です。貴重な機会をありがとうございます。私のほうは、ジャパンライフ事件を通じて行政庁の解散命令制度と破産申立権について考えたものでございます。まとめについては後ほど申し上げます。
早速ですが、3ページからはジャパンライフの預託商法と破産に至る経緯などについて述べております。
4ページ、ジャパンライフの預託商法の仕組みですけれども、ジャパンライフが顧客に対して磁気ベストなんかの健康器具を販売すると同時に預託を受けて、預託の期間、短期6年なのですけれども、いつでも解約できるということになっています。毎月年6パーセントの賃料を支払うと。その原資は第三者に貸し出すレンタル料から生ずるという仕組みになっております。契約期間満了時あるいは解約時には、当初に顧客がジャパンライフに支払った売買代金の全額が戻るという仕組みになっております。
5ページを見ていただきまして、今の話を資金の流れから見ますと、この上の図のようになっておりまして、代金は全額返ってくるし、レンタル料はレンタル客から入ってきたものがそのままレンタル料として契約者に渡されるということなので、ジャパンライフには当初から何の利益も生まない仕組みになっていたということです。
であれば、商品があるとかないとかというのは、ジャパンライフにしてみるとあまり本質的な話でなくなってきますので、実態として、下の図のように商品を伴わない形で、単に顧客の金を使い回しているだけだという実態になっておりました。立入調査のときには商品が約1割しかないという状態でした。
6ページから営業停止処分とそれに従わない経過なのですが、第1回の行政処分が2016年12月で業務停止3か月、第2回が翌年3月16日付で業務停止9か月ということになっております。
しかし、ジャパンライフはこれに従わないために、7ページで、第3回目の行政処分が2017年11月付で出ております。ジャパンライフは預託取引を業務提供誘引販売取引に切り換えたとして営業を続けておりました。しかし、この契約は実体が伴っておりませんで、レンタル料の代わりに業務提供利益を提供しますという形式を取っているのですけれども、その業務とは何かというと、機会があるごとに随時商品の拡販・宣伝をしてもらえばいいということで、やってもやらなくても毎月年6パーセントの料金を支払いますということになっているので、全く名目的なものだということです。
8ページに行っていただきまして、こういう状態で営業が続いておりまして、第4回目の行政処分が出ます。この頃になりますと、ジャパンライフは、今度はリース債権の譲渡契約であるという形式をとって営業を継続しておりました。しかし、この形態はますます実体が伴わなくなるので、出資法違反などで12名起訴されておりますけれども、全員が実際にはこの契約の、特に第三者に対する賃貸借契約を割賦販売契約に切り替えるという作業が必要なのですけれども、それが行われておらず、実体のない契約であったということを認めております。
このように営業停止処分を出しているのにそれに従わずに営業するという事態は、ジャパンライフに限った話ではなくて、元従業員らが始めたWILLの預託商法、WILLを引き継いだというVISIONの預託商法においても同様のことが見られました。こういうことは法治国家としておかしいではないかというのが問題意識でございます。
10ページに行きまして、話をジャパンライフのほうに戻しまして、破産申立ての経緯なのですけれども、ポンジ・スキーム型の場合は、支払が続いている限り苦情は表面化しない。むしろ支払が破産で止まってしまっては困るわけなので表面化しません。2017年4月、6月、静岡県弁護士会が名指しで110番をやりますが、5件とか1件という件数で全然上がってこない。8月には愛知県弁護士会がやはり名指しで110番を実施しましたが、1件しか上がってこないということです。
実際に苦情が急増するのは支払が止まってからでして、2017年12月のことです。26日には銀行取引停止処分が出ます。
ということで、この段階になりますと苦情が出てきて、債権者になり得る方々が立ち上がってくれたということになるので、先物取引被害全国研究会が年明け早々に全国的な110番をやろうではないかということで呼びかけて、1月20日に連絡会を発足させまして、全国各拠点に相談拠点を設置するのと並行して破産申立ての準備をして、予納金は2,000万と言われてもしようがないという規模だったので、2,000万ぐらい集めないといかんということで、その集める作業を同時並行的に1月中にやろうということを目指しましたけれども、実際に申し立てたのは2月9日でありまして、債権者22名、4億5,000万余りで申し立てました。金額があまり少なくて払ってくるとややこしくなりますので、ある程度のまとまりが必要ですし、なおかつ債権の存在と金額が明確なものでなければいけないということで、争われない明瞭なものを全国から集めてピックアップして、それを金額にしたということであります。
以上まとめますと、破産申立てについては、被害者に支払っているうちはメリットがない、動機がない、立ち上がったときは支払が止まったときで既に決定的に遅れているということです。予納金も問題であると。
ちょっと誤解のないように申し上げておりますが、被害者のほうは2,000万のお金を用意するのはとてもできないことであるし、短期間というのは到底無理なので、被害者側には全く出していただいておりませんで、そういうことをやれるのは極めて特殊な例であるとお考えいただきたいと思います。いつでもこの保証金を集められるのではないかという誤解をされると大変困るということであります。
破産の関連で消費者庁の破産申立権についてここで言及しておきたいのですけれども、他省庁の所管法との隙間事案についての破産申立権につきましては、行政手法研究会で議論されておりまして、そこに書いてあるようなマル1マル2マル3ということで、監督官庁が存在する事業者の場合には監督官庁において検討すべきであるということで、消費者庁は隙間事案というようなことで、12ページですけれども、消費者庁も所管業法を持っているのですけれども、そこについての検討には踏み込まれていませんので、仮にこの意味での破産申立権が消費者庁にあった場合にジャパンライフの場合でどう想定されるかということを考えますと、破産手続開始の原因は支払不能又は債務超過がありまして、まず支払不能の場合は2017年12月ということになり、これは時期的には遅過ぎるということになります。これは弁護団申立とあまり変わらない。
債務超過ならもっと早くやれるだろうという考えがあるかも分かりませんが、確かに理論的にはポンジ・スキームというのは当初からある意味債務超過なのですけれども、数字でもってそれを明らかにしていくのは相応の時間を要することでありまして、実際の流れを見ますと、消費者庁の行政処分の中で公認会計士の監査を受けるようにということで指示が出まして、公認会計士が監査に入るのですが、資料が提出されないということで意見不表明となりまして、それでは困るということで、さらに指示を受けて、暫定的に平成27年度決算において50億円の黒字となっているけれども、266億円の債務超過となるということが報告されております。ですので、債務超過をもって破産申立てをすると、ここからの準備ということになるので、相応の時間を要するというのはそういう意味です。
以上を前提にしまして、本題に入っていきますけれども、その前に、解散命令と直接関連するものではないですが、金融分野のほうで解散と破産がどういう具合になっているかをまず見ておこうということで書いてあります。
14ページ、銀行法ですけれども、免許制になっておりまして、免許の取消し原因があるわけですが、取り消されても法人としては存続するということになるのですけれども、そういう場合に法人として存続させること自体もはや適当でないということで、免許の取消しを解散原因としてありまして、清算の特別規定を置くという流れになっております。
それとは別系統で破産に関する規律がありまして、更生特例法で当局が、破産申立てできるという立て付けになっております。
保険業法もほぼこれと同様です。
これに対して16ページは金商法ですけれども、金商法のほうは登録制ですが、登録を取り消しても解散の規律はないので、法人としては存続することになるのですけれども、金商法制定前は証券取引法であったわけでして、そのときは更生特例法の適用対象は証券会社だけであったと。しかし、金商法になって、後でお話が出ると思いますMRIインターナショナル事件などの非常に広範囲の金融商品取引事業者が金商法の適用対象となりましたので、証券会社だけでは足りないということで、監督庁に破産申立てもできるようにしたということで、2010年改正が行われました。
ということで、このところをまとめますと、2系統あると。解散に至る流れと破産の手続ということで、我々としても更生特例法で金融業者に広く破産申立てができるように改正したというのは高く評価しております。ただしながら、それが唯一のルートではないということがいえるのではないかということを付け加えて、これを前提として議論したいと思います。
17ページからが解散命令制度についての検討ですけれども、解散命令制度が現行法であるものをざっと見ていくと、ざっくり2つの類型に分けられるなということです。まず1つ目は、裁判所に対する解散命令を請求するというパターンでありまして、これは会社法の解散命令がその代表的なものでありまして、これは法務大臣の他に利害関係人にも申立権があるということで作られております。これについては後ほどまた見ていきます。
19ページはやはり同じような類型、宗教法人法の解散命令でありまして、これも所轄庁とか検察官、利害関係人の申立てで裁判所が解散を命ずることができる。これについても後ほど言及いたします。
裁判所に請求するという形ではなくて、2つ目の類型としては、行政庁が解散命令を発するというものが現行法の中にもいろいろとありまして、見てみますと3つのパターンに分類できるのではないかということでまとめてみたのが、これから先の話であります。20ページは、まず1つ目のパターンとして、設立に行政庁の認可が必要とされている法人類型。この場合、法律の例を挙げてありますが、A類型、B類型と分けてあるのは非常に便宜的なものでありまして、21ページで見ていただくと、B類型のほうが解散命令の要件が重くできているという違いがあるなと思ったので分けただけで、あまり意味はありません。
次に22ページでありますけれども、そういうものだけではありませんで、2つ目のパターンとしましては、法人の設立には当局の認可は不要であるということで、解散については会社法の解散命令の規定を準用するのだけれども、それとは別に、行政庁の解散命令権限を設けているという法律の類型であります。そこに挙げてあるような法律がそれに当たるわけでして、いずれも士業の法人制度に関するものです。弁理士法の場合でいきますと、弁理士法人に対して解散命令を出せるし、それと別ルートで会社法824条の解散命令の申立てもできるという具合になっております。
これについては士業ですので、監督庁が懲戒権を持っている特殊な類型ではないかという議論が出てくるかと思いますので、23ページでは、もう一つのパターンとして、設立について準則主義を取りながら、行政庁の解散命令もあるという類型を挙げてあります。令和2年に成立した労働者協同組合法がこれに該当いたします。まだ未施行でありまして、10月1日施行になっております。簡便な設立のために準則主義を採用しているのですけれども、別途、行政庁の解散命令の規定を設けているという立て付けになっております。
そうしますと、現行法である解散命令というのは、設立認可を要するとか懲戒権を有するとかいう特殊なものばかりではなくて、この3のパターンにもあるような解散命令権もあるわけですので、一貫した論理で全体を説明するには、行政庁が解散命令権を持てるのだと考えるべきではないかと思います。
24ページに解散命令の効果が書いてありますけれども、解散命令を出すとどうなるのかということなのですが、大体、会社法の清算に関する規定を準用して、必要に応じて特例を設けるという立て付けになっているということで、肝心なのは2つ目のマルでありまして、清算に入って手続を進めるのですけれども、清算人が債務超過の場合、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならないということなので、速やかに破産の手続に移行できると。そうしますと、消費者庁が直接破産申立てをする場合に時間がかかるとか、あるいは直接私人間の法律関係になぜ介入できるのかといったような論点を議論することなしにスムーズに破産の手続に移行できるようになるのではないか。
25ページはこれの関連で、独禁法8条の2の解散命令を挙げてあります。この場合、排除措置命令として解散命令が位置付けられていると思いますし、実際に実例もあるのですけれども、直接私法上の効果が生ずるようなものではありませんで、罰則で実効性を確保するという方法になっております。こういう効果の場合は、中川委員の3分類でいきますと、従順層の場合はこれでいいし、現にこれで運用できているということなのですが、ジャパンライフのような極悪層の場合は、やはり私法上の効果に直結するような意味での解散命令が必要だと思います。
26ページからは会社法の解散命令なのですが、これは現にある制度なので、これを使えばいいのではないかという問題があるので、それについて検討を加えてみました。
27ページは会社法の解散命令についての実務上の問題点なのですけれども、手続的な問題とかいろいろあるのですが、一応それはさておいたとしても、要件が厳格で、解散命令の申立てが仮にできたとしても、その審理に相応の時間を要するということでありまして、会社法の解散命令についての公表事例は見当たらないので、宗教法人法の解散命令の実例をちょっと見てみました。要件はそこに挙げているようなかなり規範的な要件になっております。
28ページに2つの事例を挙げてありますが、オウム真理教、大量殺人という非常に特殊な事件なので猛スピードで審理されたと思うのですけれども、それでも確定するまで半年ぐらいかかっていると。これはちょっと特殊事案かなと思いますので、むしろここで議論しているような事案の場合は、2つ目のマルの霊視商法の詐欺商法事件というのが妥当するのではないかと思います。平成11年の事件番号がついておりまして、申立日は分からないのですけれども、決定が出たのは平成14年1月で、2年余り審理にかかっているということであります。抗告審の審理でも8か月ぐらいはかかっているので、やはりかなり時間がかかっているということであります。
29ページは、仮にジャパンライフの事案で会社法824条1項3号を想定した場合にどうなのかということを考えてみたものでありまして、実際、824条に解散事由があるわけですけれども、やはり3号だと思うのですね。3号の場合、2つ目のマルの3つの点が立証されなければならないということになってくるので、このマル2、それからマル3は申立て前の話でありますので、消費者庁から法務省にいって、法務省で検討して、法務大臣が書面で警告して、なお継続的、反復して当該行為をしたという前提で申し立てるわけですが、この審理の場面においても、先ほど御説明しましたとおり、預託取引と業務提供誘引販売取引というのは全然別なのだうんぬんといったような主張が当然出てくるでしょうから、そういったものが果たしてそうなのかとかいうようなことで、相当程度やはり時間がかかるだろうということです。
というのは、仮にジャパンライフ側の主張を想定すると、我々としては業務提供誘引販売で業務停止処分したというのは、それはもっともなことだと考えておりますが、こういう場面になった場合には、行政処分としても、預託取引と業務提供誘引販売取引が違うからこそ、預託取引とは別途、業務提供誘引販売取引を取り上げて、行政処分という処分をしているではないかみたいな論争になって、そういうことを審理していくこと自体でかなり時間を取る。
宗教法人法も会社法の解散命令の場合も非訟事件手続法によるのですけれども、実務的感覚からいうと、非訟事件手続法の審理も訴訟手続による審理も、審議のやり方、かかる時間というのはそんなに違いがあるわけではないと考えております。
以上を前提としまして、まとめということなのですけれども、このところの私の活動の原動力になっているのは消費者庁を作るときの消費者行政推進基本計画でありまして、良質な市場の実現というのが新たな公共的目標でありまして、ここは今の日本にとっては根本的に大事なところだと。そのためには、今のような極悪層に対する措置はちょっと緩すぎると。貴重な資金が健全な事業者、日本の明日を切り開くような前向きな方面に使われずに、こういう極悪層にどんどん流れてしまうことを放置していては危ういという危機感を持って取り組んでおります。
結論としましては、行政庁による解散命令制度というのは、別に行政庁の破産手続開始申立権とか会社法の解散命令と矛盾するものではないと。したがって、私も行政庁の破産手続開始申立権とか会社法の解散命令について、これを整備して使えるようにすることについて反対しているものでは全くありません。しかしながら、ずっと検討してきますと、行政庁による解散命令制度は、ジャパンライフのような事案を通じて考えますと、迅速な対応という面で最も優れていると考えます。スピードが生命線な場面というのはあるわけですので。
なぜ、他の手続では時間がかかるという違いが出てくるのかということなのですが、小さく書いてありますが、破産手続開始原因というのは、そもそも行政処分に従わないからとかいうような要件と全く別目的の要件立てから成り立っているわけであります。したがって、本来公益目的で法人格を証明させようというときに別の要件を証明していかなければならないというところで時間のずれが出てきているのではないか。それと、会社法の解散命令による場合は、消費者庁から法務省に記録が行くという手続的な問題があるので、そこの手続規定は整備するという前提ですけれども、整備されたとして、法務省で調査して、調査の結果、先ほど申し上げましたとおり書面で警告して、一連の手続を経て申立てをすると。この段階で既にかなり時間がかかると思うのですけれども、申し立ててから裁判所で審理して決定までの時間というのも、申し上げてきましたとおり、相当な時間がかかる。これでは駄目だというのが実感でありまして、結論としまして、行政処分に従わないような業者に対しては、他の法律にもあるように、行政庁が解散命令を出せるような制度を入れるべきではないかということです。
最後ですが、罰則による抑止というのも当然必要なのですけれども、刑事捜査というのは更に時間がかかりますので、行政庁が迅速に対応できる制度はそれとは別途必要だということであります。
よろしく御検討をお願いいたします。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、これより35分程度、質疑応答の時間とさせていただきます。ただいまの御説明を踏まえ、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。御発言をされる際にはチャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。
中川委員、よろしくお願いいたします。
○中川委員 石戸谷弁護士、どうもありがとうございました。中川でございます。
最後のほうで、行政庁による解散命令の導入ということを御提案されたのですが、具体的なタイミングについてお尋ねさせてください。ジャパンライフの場合、どのタイミングで行政が、解散命令なのかどうかはともかくとして、もっと強力な手を打つべきだったのか。資料の6ページとか7ページの辺りですけれども、2017年の段階だとまだ財産もあって、かつ違法な無理な商法だということが行政側もそれなりに主張できたかどうかです。それが解散命令なのかどうかはともかくといたしまして、何らかの行政処分が打てて、かつ財産的な保全ができるというのは、タイミングとしてはいつかというのがなかなか難しいような気がしたのですけれども、石戸谷弁護士から御覧になっていつ頃なのでしょうか。
○石戸谷弁護士 ありがとうございました。何らかの処分というのはどういうイメージで。業務停止処分が出ているのだけれども従わないと。だけれども、解散命令ではなくて、その他の手段で何らかの処分ということですか。
○中川委員 解散命令でも構いません。とにかく、どのタイミングだとうまくいけるのかなというのが、結局、支払停止とか何とかならないと誰も何も言ってこないという段階で、だけれども、内偵をするとこれはおかしいというので、解散でもちろんいいのですが、場合によっては単なる業務停止だけれども、その後のことを考えて財産を保全する、凍結ですね。そういうこともいろいろな選択肢があると思うのですけれども、本件の場合だと2016年、2017年の早いぐらいだと何とかなったのでしょうかね。2017年12月ではもう遅いわけですね。
○石戸谷弁護士 そうですね。2016年12月、最初の行政処分のときに既に業務停止処分に従わずにやっているという状態で2度目の行政処分が出るわけですけれども、預託法に基づく行政処分の要件というのがあるわけですが、実態としては、既にポンジ・スキームで中身が伴わない、単に客の金を食い潰しているだけというのが実態として把握されているわけですから、そういう前提を踏まえて、なおかつ行政処分に従わないということだと、かなり早い段階で、私は解散でいいと思うのですけれどもね。
○中川委員 解散かどうかということよりも、どのタイミングかというのをお尋ねしたかったのです。かなり早い段階だと解散までいかなくても、例えば業務停止命令に従わなかったらそれに対する課徴金であるとか、あるいは従うまで幾ら払えという金銭的な命令にして、その金銭を保全するような形でやれば、財産は保全できるのではないかと。他方,解散命令というのはむしろ、どうしようもないというか、もうほぼ財産は空っぽになっているのだけれども、まだその残党がいて、それがまた何かしているという場面に最後のとどめで使うのかなという気もしているのですが、解散命令が重要なのか、それとも財産を保全することが重要なのかというのはいかがでしょうか。やはり財産回復という視点が重要でしょうかね。
○石戸谷弁護士 委員の問題意識は分かりました。営業を継続しているということは、新たな契約を取っているということなのですね。次々新たな被害者を発生させているということなのですよ。つまり、月間数十億ぐらいの金を新たに取り込んできているという状態が続くわけです。新たな被害を生じさせていて、なおかつそれに課徴金とか、ちょっと矛盾しているのではないかと思う。被害を止めなくてはいけないわけですね。だから、破産手続というと、一般債権のうち大部分がオーナー債権なのですけれども、1,500億ぐらいですね。業務停止を打って1年ぐらいやっているわけですけれども、月間数十億ぐらいずつ新たな被害が発生していっているというとかなりの部分になるので、それを容認した形で課徴金だとか、そのときあった資産を凍結するというだけでは、そこから先に被害に遭った人たちは納得いかないでしょうね。
○中川委員 分かりました。もう一つ確認なのですが、6ページ辺りの第1回、第2回、第3回の行政処分は、ジャパンライフが行政処分に違反したということでよろしいのでしょうか。それとも、いわば潜脱したというか、脱法したというか、従ったふりはしているけれども、命令には形式的に従っているけれども、何かいろいろ工夫をして違う業務をしているような形で脱法したので、経産省のほうも処分違反だという形での措置が取れなかったということなのでしょうか。
○石戸谷弁護士 我々としては完全にこれは従っていないと。脱法といってもいいのですけれども、正に違反そのものだと。当然ながら、消費者庁も現時点では業務停止処分以上の重い処分はないわけなので、業務停止処分違反は刑事罰で担保する形になっているのですね。ところが、最後にお話ししましたとおり、刑事捜査は刑事捜査でそれなりに時間がかかるので、これが果たして同じ取引なのかどうなのかとかいうものを立件する程度に証拠を集めていくというのは、それなりに時間がかかるだろうと推察しております。簡単であれば、もうそのときやっているはずだと思います。
○中川委員 分かりました。ありがとうございます。
○後藤座長 それでは、黒木座長代理、よろしくお願いいたします。
○黒木座長代理 どうも今日はありがとうございました。大先輩にいろいろお話しするというのはなかなかこちらもハードルが高いのですけれども、座長代理ですので、ちょっとお尋ねさせていただきます。
実は、日弁連が去年8月19日に「詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書」というのを発出しておりまして、石戸谷弁護士も当然それに関係していらっしゃると思うので、それとの対比で少しお話を聞かせていただければと思います。
まず、石戸谷弁護士のプレゼンの4ページ目と5ページ目なのですけれども、要するに典型的なポンジ・スキームであると4ページ目に書いてあるわけですが、日弁連の意見書の中では、ポンジ・スキームについて利益相反型と流用型という形で定義されているのですけれども、ジャパンライフは流用型という理解でよろしいでしょうか。
○石戸谷弁護士 私は部会が違うので、その意見書の作成には直接関わっていないのですけれども、ここで述べているのはジャパンライフのものを分析したものということで、ただ、意見書を拝見すると、ポンジ・スキームはおっしゃったような流用型という話になっているので、そういう整理になるかと思います。ただし、ポンジ・スキームというのは非常に広範囲なものを含んでおりますので、ジャパンライフはこうであるということをここでいっているだけであって、ポンジ・スキームの場合全体について述べているわけではないので、そこはすみません。
○黒木座長代理 ありがとうございます。
続いてなのですけれども、10ページの破産申立ての経緯と問題点というところを非常に興味深く読ませていただきました。ここで、ポンジ・スキームでは、支払が続いている限りは問題が表面化しないし、2017年12月に結局支払停止で苦情が増加して、26日に銀行停止処分、破産申立てが翌年2月だというような時系列を御整理いただいたのですけれども、先ほど中川委員の御質問でもあったと思いますが、2017年3月に第2回の行政処分が出されたわけで、仮に顧客有志で破産申立てを行ったとした場合に、支払が継続しているということになると、申立債権全額について事業者が弁済を行う可能性が否定できないと思うのですね。そうなると、ここから先が難しいのですけれども、事業者が申立債権全額を弁済した場合、弁護団は新たな破産申立てができるのかと。弁護士職務基本規程の42条で依頼者相互の利益相反という問題が出てくるのではないかなと思います。すなわち先に破産申立てを行った申立債権者は全額の弁済を受けている顧客ということになって、破産の申立てをしているわけですから、類型的に破産法162条の要件を全部満たしてしまっている。だから、弁護団とすると、再度破産の申立てをすると先行した申立債権者はみんな対象になってしまうということが分かっているので、弁護士職務基本規程42条によってできないのではないかと思うのですけれども、この辺りはどうなのでしょうか。
○石戸谷弁護士 最初のお話ですが、10ページにありますとおり、2017年4月と6月に110番をやったのですけれども1件とかで、これはどういうあれかというと、もともと契約として、解約したら返しますとなっているわけですので、解約が増えると、いやいや、大丈夫だからということで止めるのですけれども、どうしてもという場合は解約して返してしまうのですよ。なので、破産申立てという以前に潰されちゃうのです。なので、2017年の先ほどおっしゃったような時期だと、支払が一括で払えなくても分割で払います。ただし、第三者に公表しないという条項付きでみたいなことで潰していくのです。ですので、現実問題としては出ないだろうと思います。
ただし、1件目の破産申立てと2件目の破産申立ては御指摘のような問題があるので、それで22名、4億5,000万の債権を用意したというのは、御指摘の問題が起こると困るので、起きないように、ある程度、これは払えないなという金額にまとめ上げなければいけないということで4億にして出したということです。もうちょっと小さい金額であれば、もうちょっと早くできたかもしれませんが、その場合、御指摘の問題が出てきてややこしくなると。
ジャパンライフの場合は、既にそういう問題があるのは分かっていて、そういうふうにやって対応できたのですが、どうしても先に出さなければいけないという事案も中にあるかも分からないです。そういう場合は、初めから申立受任の段階で破産申立てして払ってきた場合も、次の申立てをして全体で配分されますよという同意の下に申し立てることになるかと思うのですけれども、それでも実際に払ってきた場合に、戻ってきたのだから直ちに返してくれという強硬な話になった場合には、すごく難しい問題になると思います。だから、そういうことは避けなくてはいけないということで、4億にしたということです。
○黒木座長代理 ありがとうございました。
ここで、弁護士的に非常に興味があるところは、予納金1,000万円納付ということなのですけれども、この予納金の分について、破産法23条の国庫仮支弁の申立てというのが実際上は検討されたのか。多分、国庫仮支弁はされずにいろいろな形で集められたのだと思うのですけれども、それをどうやって集められたのかという予納金の問題を教えてください。
○石戸谷弁護士 かなり実務的に大きい問題なのですけれども、国庫仮支弁を主張される方ももちろんおられて、全国的に意見交換して検討いたしました。目下のところの運用としては、そこに財産がこれだけあって、仮支弁しても後で財産的に焦げつくことがないというのが明らかな場合となっているので、それを立証するのは全く不可能なことで、そうでなくても出すべきではないかという議論になるのですけれども、そういう議論を裁判所とやっている時間的な余裕は全くない。一日も早く出さなければいけないと。2,000万と言われたら、ぱっと納付して包括的禁止命令を取ると。納めないと出ませんので、スピード優先でいったということで、最後はもうそれしかないという共通認識で一致したと。
したがって、お金を集めなくてはいけないのですけれども、集め方としては、ジャパンライフのあの状況だと、下手すると焦げつくかもしれないという状況なので、実際問題としてはなかなか各地で議論があったと思うのですけれども、先物取引被害全国研究会ないし証券の研究会参画の各地の研究会、弁護団、あるいは消費者問題に取り組んでいる研究会、様々な弁護団に呼びかけて、是非ということで集めていただいて、ジャパンライフが財産を処分しつつあるみたいな状況の中なので、ああいう極悪な層にいつまでもとどめを刺さないのは許されないということで熱意が結集して、集めていただいたということです。
○黒木座長代理 ありがとうございました。その辺りの雰囲気はよく分かるのですけれども、それは持続可能性が今後あるのかという問題なのですよね。いろいろなボランタリーのお金を集めて、第1号の財団債権なのでしょうけれども、財団債権としてどうなるか分からないようなものを今後集めきっていくだけのものというのは、パッションが続くのかという点についても石戸谷弁護士のお考えを教えていただければと思うのです。
○石戸谷弁護士 いや、続くどころか、これ自体、大変特殊だと考えていただきたいと思います。ジャパンライフをやったから、WILLとかVISIONも次々やればいいではないかとかそういうことは全く不可能な話で、持続可能性は全くありません。ジャパンライフも配当の見込みなしというところからスタートしていますので、次にやるときは本当に焦げついて返ってこないという覚悟で出さないといけないことになるので、全く無理です。
○黒木座長代理 ありがとうございます。
それから、29ページに会社法824条1項3号のシミュレーションをされていて、これも先ほどちょっとお話があって大変興味深く聞かせていただいておりますけれども、3要件の審理は非訟事件手続法によるけれども、相当な時間を要すると考えられるというところで、結局、先ほどおっしゃっていた特商法の行政処分の関係で、預託法での今回の問題点についての業法上の隙間の議論が非訟手続で始まってしまったら、いつまでたっても先に進まないというお考えだと理解してよろしいでしょうか。
○石戸谷弁護士 スピード勝負の事案なので、何か月もかかるということ自体がちょっと不具合だなと思うのですが、非訟事件手続法でも民訴法でも、申立てして受理して第1回期日が開催されるまでに1か月とか1か月半かかってしまうし、第1回期日で反論しますよと、次回までにこってり反論しますとなると、次の期日はまた1か月先とかいうペースでいきますので、実務的な常識からいうと、やはり何か月もかかってしまうし、現に明覚寺の事案なんかは2年ぐらいかかっているわけです。ですので、とてもではないけれども、そういう手続では使えないということです。
○黒木座長代理 ありがとうございます。よく分かりました。
最後にまとめのところですけれども、行政庁による解散命令、労働者協同組合法の例を23ページ、新しい法律を御指摘いただいていますけれども、会社法の行政命令とは別に、このような行政庁の、ある意味では幅広い解散命令を導入しましょうというふうにお考えだということでよろしいのかということです。23ページの例の読み方を教えてください。
○石戸谷弁護士 労働者協同組合法の解散命令の規定を引っ張り出したのは、消費者庁が解散命令を持つといっても、そんなことができるのかという議論が出てくると思うので、現行法にあるものを挙げたわけですけれども、第1の類型、第2の類型はそれぞれ特殊な類型ではないかという話になりがちなので、そうではなくて、そういう特殊なものでないものでもちゃんとありますよということで、したがって、現にあるではないですかということをいうために持ってきただけです。現実に解散命令をどういう法律に盛り込むかというのは、やはり個別に盛り込むことになるので、それは別途検討しなければいけない。預託は歴史的経緯で当然入れるとして、どの法律に入れるかというのは、消費者被害の発生の状況を見て決めることになるかと思います。だから、これだけで全部が解決するとはもちろん私も思っていませんので、他の制度も全く反対するものではないし、それはそれであっていいと思っています。
○黒木座長代理 ありがとうございます。今回の裁判手続特例法の改正では入らなかったのですけれども、2020年7月18日に日弁連では「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の見直しに関する意見書」というのを出していまして、その中で、行政庁の有する情報を特定適格消費者団体に提供して、特定適格消費者団体の破産申立権を付与したらどうかという議論をしているのですね。仮にジャパンライフのときにこれをもしも適格が持っていたとすると、もっと早い段階で仮差押えをして共通義務確認訴訟を提起するという方法で、一種のこのジャパンライフの業務を停止させることができたのではないかと思うのですが、その辺りについての石戸谷弁護士の御意見をいただければ有り難いです。
○石戸谷弁護士 特定適格消費者団体の解散命令の申立権については今回言及していませんけれども、それはそれでもちろんあっていいと思いますし、解散命令で全部が解決するとは思っておりませんし、特定適格のほうの破産申立てがむしろ目的からしてふさわしい事案もあると思います。そういう意味で、使い分けていくという道筋になるのかと思いますけれども、ジャパンライフの場合で言えば、業務停止処分にも従わないというところに対して解散命令を出すということは、目的からして、やはり監督庁がその段階で直接やるべきではないかと思っています。破産申立てだから、ちょっと別だなと思っています。早さという面から見ても、消費者庁が、それだけ資料があるのであれば、自ら対処できるのではないかと思われるのですけれども、ちょっとそこは、黒木座長代理がおっしゃるようなルートがふさわしい事案もあると思いますので、それはそれであっていいと思いますけれども、ジャパンライフに限って言えば、こういうけしからん状態のものは、やはり行政庁がびしっと息の根を止めるというところまでやるべきではないかと思っています。
○黒木座長代理 ありがとうございました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
他に御質問等ございませんでしょうか。
木村委員、よろしくお願いいたします。
○木村委員 木村です。御説明ありがとうございます。
今、石戸谷弁護士が最後に御説明されたところを実は質問しようと思っていたところでした。業務停止命令が何回も出ても、いろいろと形態を変えて業務を継続していたというところで、もっとここの辺りで、やはり行政庁ですとか何か手立てができなかったのかと思っていたところを聞こうと思っていたのですが、今、石戸谷弁護士が御説明されたので、そこは分かりました。私もここで問題があるのではないかなと思ったのは、一般的に業務停止命令が出たら、消費者は、ああよかったと思いがちなのですが、今回はその後があったということで、大変難しい問題なのだと思ったのが1点目です。
あと一つは細かいことで、資料の10ページ、破産申立てのところなのですが、2018年2月9日に22名で出されたということなのですけれども、これは実際の被害者の中のどのぐらいの割合になるのかをもし御存じだったら教えていただきたいということと、先ほど黒木委員の質問で持続可能ではないというお話だったのですけれども、この予納金というのは、破産後にどういう扱いになるのか教えていただけますか。
○石戸谷弁護士 ありがとうございます。一般債権者の数というか、被害者債権の数からすると、債権届出で管財人が認めている数は6,500人ぐらいです。国内が大部分ですけれども、香港の被害者も200人ぐらいいるということです。
それで、22名に絞るというのは、破産申立てはできるだけ早くやったほうがいいわけで、極めて証拠が明確で、そんなにたくさん人数が多くなると作業も多くなりますし、なかなか大変なことがあるので、人数は少ないけど金額が多いというのが一番早く申し立てられることになるので、そういう意味で絞り込んだ数です。極端に言えば1人でもいいわけですけれども、全国的な被害であるということのために、全国各地からピックアップしてそろえたと。
それと、予納金については、破産手続の中でお金が確保できれば戻ってきます。これについても、当初どうなるか分からなかったのですけれども、ちゃんと戻ってきています。
○木村委員 分かりました。破産申立てについては、そういうピックアップをしてというところで理解いたしました。ありがとうございます。
○後藤座長 それでは、大石委員、よろしくお願いいたします。
○大石委員 石戸谷弁護士、御説明ありがとうございました。預託法のことについてはもう本当に何度かお話をお聞きしていたのですけれども、私も今の御説明資料の10ページ、破産申立ての経緯と問題点のところで、ポンジ・スキームの場合は支払が続いている限り苦情は表面化しないということで、弁護士会が110番を開いても、2017年の4月、6月、8月辺りはほとんど声が出なかったという、ここのところがすごくこの問題の難しさを表しているかなと。その代わり、支払が止まってからは苦情が急増したということで、弁護士会が110番を開いたということは、既にいろいろな問題がある程度分かりかけていて、被害者に対して声をかけたのだけれども、被害者は被害者と思わなかったというところが今回の問題点ではないかと思うのです。この辺り、110番を実施する時期として重要だと思うのと同時に、もっと行政的に、さっきの手続的に事業者に対してこの時期に行えることはなかったのかというのが大変気になりましたので、もし何かこの時期にもっとこういうことができていたのではないかというのがあれば、教えていただけると有り難いです。
○石戸谷弁護士 ありがとうございます。なかなか難しい問題でして、これは手口とも関係するのですね。山口隆祥氏はもともとマルチの業者でありまして、勧誘にかけては非常に洗練された手口を練り上げてきているわけです。1970年代からマルチでやっていて、どうやって客に金を出させるか、あるいは表面化させないかということばかりやってきた人なので、濃密な人間関係を使って、なかなかだまされているということ自体に気がつかないように持っていくと。あと、高齢者が多いということも影響していると思うのです。
だから、消費者庁のほうも、顧客に不実告知があったことを通知しようということで、現に通知しているのですけれども、それについても、いやいや、これは全然問題ないんだみたいなことを物すごく濃厚にフォローするのですよ。そういう問題があるので、そこはケフィアみたいな通販型と、マルチ型みたいな濃厚な人間関係を経由して勧誘していくものとの違いだから、非常に難しいです。
○大石委員 分かりました。ありがとうございました。
○後藤座長 それでは、中川委員、よろしくお願いいたします。
○中川委員 すみません。もう少しお尋ねしたいのですが、1つは、会社法の解散命令は非訟なので、民事仮処分みたいなものはないと理解してよろしいのですか。審理に時間がかかるというので、であれば保全のようなことができれば少しは早いかなと思ったのです。これをお尋ねする理由は、英米では行政が裁判所に申立てて裁判でいろいろするということがよくあるのですけれども、ほとんどは仮処分で片がついている、ほとんどの人は仮処分がでれば観念するということを聞いたことがあります。立法論なのかもしれませんが、解散命令にそういう迅速な保全的なものがもしあるのであれば、少しは意味があるのかということです。
もう一つは、より根本的なのですが、こういう極悪層は何をすれば止まるのかというところの感覚をお尋ねしたいのです。例えば解散命令が裁判所から仮に迅速に出ても、行政処分の営業停止を聞かないのだったら、多分解散命令も無視するのではないか。そうすると、どういう強制的なことをしないといけないのかということです。行政処分の業務停止でいうことを聞かなかったというところで1つ思ったのは、現在は法制度としてありませんが、業務停止命令の間接強制、行政上の間接強制というのができるといいのではないか。これは1日の違反で幾ら払えという感じで取っていきますので、制度が今はないから分かりませんが、行政上の間接強制というのを作って、それで保全もできるようにすれば、要するに財産の流れを止めれば行動が止まるのかなと思うのですけれども、そう考えてよいのかというのが2つ目の質問です。よろしくお願いいたします。
○石戸谷弁護士 会社法の解散命令に規定としては保全の手続は規定してあります。だけれども、本体の実体審理が非常に重い手続で、それを立証してやっていくというのが大変なときに、保全命令はそんなに簡単に出せるのだろうかという根本的な疑問がありまして、実際に使えるものなのかという、そこのところは事例もないし何とも分からないのですけれども、恐らくちょっとそれは難しいのではないかなという感じはしております。
それと、解散命令を出しても従わないのではという点について、そこは清算という私法上の効果に直結して流れていきますので、清算・破産という手続の中で処理されるので、従わないといってもその手続で清算人とか、破産であれば管財人とかが処理していくことになるかと思います。
あと、感想ですけれども、山口隆祥氏の刑事事件をずっと傍聴していましたが、やはり裁判長から、行政処分が出て、ここで踏みとどまろうとは思わなかったのですかという話が出て、ああなったら突っ走るしかなかったと言っておりまして、最後に申し訳ない、心からおわびすると。ええっと、こちらもびっくりしましたけれども、要は、早く止めてやるというのはある意味、加害者のためでもあるなとそのときに思いました。
○中川委員 そのためにはやはりお金ですかね。金の流れを止める。
○石戸谷弁護士 あとは、実際こういうのをやっている人が怖がるのは刑事事件なのですよ。だから、罰則がきちんと機能していないといけないのだけれども、ちょっと罰則が軽過ぎるなというのが実際のところです。山口以外は出資法違反で起訴されているのですけれども、懲役2年ぐらいで全員執行猶予です。組織的な会社ぐるみの犯罪である、非常に甚大な被害を起こしたうんぬんかんぬんといろいろ言いながら、上限3年ですので、3年だと初犯執行猶予という相場感覚で、山口ひろみまで執行猶予になってしまって、我々としては全く納得がいかないし、軽すぎると思っております。そこが問題だと。
○中川委員 ありがとうございました。
○後藤座長 他にはございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、石戸谷弁護士へのヒアリングはこの辺りにさせていただきます。
本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。
○石戸谷弁護士 拙い話で、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
○後藤座長 それでは、御説明者を交代いたしますので、委員の皆様方は準備が整うまでしばらくお待ちください。
(石戸谷弁護士退室)
(五十嵐弁護士、山口弁護士入室)
○後藤座長 それでは、後半の議題に移ります。
MRIインターナショナル事件については、参考人として五十嵐潤弁護士に御参加いただいております。随行で山口広弁護士にも御参加いただいております。
お二人とも、大変お忙しい中ありがとうございます。
それでは、20分程度でお話しいただきますようお願いいたします。
○五十嵐弁護士 弁護士の五十嵐です。よろしくお願いいたします。報告は20分ということですが、少し押しているようなので15分程度でざっと説明をした上で、質疑をお受けしたいと思います。
お手元に私の拙いパワーポイント14枚物があると思います。1枚目が表紙でございます。
2枚目が2018年10月に傍聴した刑事陪審員裁判の絵でございます。
早速ですが、このMRIインターナショナル事件の特質について3枚目のパワーポイントで御説明します。MRIインターナショナル、MRI社といいますが、アメリカの会社でございます。アメリカ・ネバダ州ラスベガスの会社で、被害者はほぼ全員日本人8,700人、高齢者が多いです。50代から60代が大半を占めておりまして、10年前の事件ですので、もう60代から70代が占めておりますが、日本にいながら投資詐欺被害に遭ったという事件でございます。加害者がアメリカ、被害者がほぼ全員日本人の高齢者。2013年4月26日、もうこれは丸9年前、10年目に突入しておりますが、MRI社は金融庁の第二種金融商品取引業の登録業者ですが、その登録の取消しで破綻し、発覚し、弁護団が結成されたということでございます。
4枚目、事件の特質は、先ほど述べましたとおり、アメリカの会社に日本人8,700人が日本にいながら被害に遭ったという特質性がございます。日本から海外送金で、額面金額で1,300億円ほどの被害に遭ったということで、2013年に発覚しております。
MRI社については、日本の当局の行政監督が一応定められております。MRI社は1998年設立の会社なのですが、その10年後の2008年から金商法の改正に従って第二種金融商品取引業の登録業者ということで金融庁の監督下になりました。登録された4から5年後の2012年頃から内偵となったようで、2013年4月に登録を取り消されました。なぜ2012年頃から内偵されていたかというと、この頃から支払の遅延が生じておりまして、この辺りから多分、被害者からの苦情が金融庁に寄せられたのではないかと、これが端緒ではないかと、想像しております。
6ページ、四角の図でございますが、左側が日本、右側がUSと書いてあります。日本とアメリカをまたぐ事件ですので、民事の被害の回復に当たっても、日本国内での甲乙、上が甲、下が乙と書いてあります。ナンバーワン、首謀者は、Aと書いてありますが、アメリカにいます。ですが、ナンバーツー・スリーは日本の支店を使って日本人を8,700人、日本語でだましておりましたので、日本国内にも当然足場がございます。なので、金融庁の監督下にも服しているわけで、日本での財産回収とアメリカでの財産回収、双方をやらなければいけないということで弁護団が立ち上がりました。ちょっとこの図で全体を申し上げます。特に今回のヒアリングはアメリカの制度ということでございますので、アメリカのほうのAとBとはどういうことかといいますと、首謀者がアメリカにいるので、この首謀者ないしはMRI社本体からの回収というのが上側Aでございます。日本においての甲、アメリカにおいてのAの領域ですが、MRI社本体ないしは首謀者、エドウィン・ヨシヒロ・フジナガというハワイ出身の日系4世、アメリカ育ちで日本にはいなかった人で、当然日本に資産がないものですから、日本の甲のところからの資産回収はできず、アメリカの首謀者ないしMRI社本体の資産を凍結して回収するというのがアメリカのAの領域です。ここに関わっていたのがアメリカの証券取引委員会、SECでした。
下は日本における乙、アメリカにおけるBの領域ですが、ここはナンバーツー・スリーの日本人、鈴木親子といっておりますが、彼らが東京支社を日本の東京・赤坂に立ち上げて、そこを拠点にして8,700人をだましていたということで、この鈴木親子は日本にも資産がありますし、アメリカにも資産がありました。そこで、日本の乙の領域で日本での仮差押えから本裁判までやって回収するという被害者弁護団が考えるような通常の手続を行いました。そのほか、アメリカにおいてのBの領域というのは、鈴木親子がアメリカでも資産をため込んでいましたので、その凍結及び資産回収、被害回復を行うということで、このBの領域において主にクラスアクション手続を使って回収をいたしました。
7枚目ですが、今度は刑事の手続です。首謀者ないし鈴木親子というナンバーツー・スリーについて、最終的には実損の数パーセント、クラスアクションにおいては1パーセント程度、SECの配当はまだ実現しておりませんが、4から5パーセントといわれており、合計しても5パーセント程度の被害回収しかできませんでしたので、当然、刑事で処罰していただきたいと、牢屋に行ってもらいたいと活動しました。日本の警視庁にもお願いしましたが、そこは実質機能しなくて、Xと書いてありますが、アメリカにおいてFBI、連邦捜査局、日米をまたいでおりますので、DOJ、司法省も絡んで、そこに対する働きかけをしていました。大体このA、B、Xの領域がアメリカにおける弁護団の活動で、この実体を簡単に述べさせていただきます。
8ページ、9ページは国内のものですので簡単に述べます。8ページは首謀者ないしはMRI社に対する裁判を、発覚してすぐの2013年6月に東京地裁に起こしたのですが、裁判管轄であるとか準拠法の問題でうよきょくせつありまして、最高裁までいってやっと差戻しの一審で戻って勝訴判決になりました。しかし資産がありませんので、これは実質、功を奏しておりません。これはもともと弁護団としても、のろしを上げるという意味しか考えていませんでした。
9ページは乙の領域ですが、ナンバーツー・スリーに対するものについては、これは実がございます。彼らは日本国内に居を有しておりましたので、日本国内でも資産がある程度ありました。これについては御案内のとおり、まず個別の仮差押えから入って、預金であるとか不動産を2013年から14年にかけて1年、手を尽くして探して順次仮差押えをした上で2014年6月に提訴しました。その後、後から申しあげるアメリカのクラスアクションとの同時和解手続によって、極めて少ないですが、何とか日本でも仮差押えをしたものを元に、それを配当原資に回しております。
10ページにいきます。これがアメリカの手続ですが、SEC(A)と書いてありますが、これが首謀者ないしMRI社本体に対するものでございます。クラスアクション手続でもMRI社及び首謀者のエドウィン・ヨシヒロ・フジナガを被告にしたのですが、それと同時に、ないしは、その後の手続はそれより早くSECの違法収益吐き出し手続が進んでいきました。2013年4月に発覚した事件なのですが、SEC は2013年9月11日に提訴し、9月12日に資産凍結命令になっております。その後、違法性の認定等がその翌年10月で、損害額の認定がその3か月後になされました。2013年4月の事件発覚から2年足らずで損害額の認定までいって、違法性が確定し、損害額も日本円でざっというと1,000億円ぐらいという判決になりました。それと前後して、2013年9月の段階で資産が凍結されて、それを管理するためにレシーバーも選任されました。その後、違法損害の認定がされたので、レシーバーにフルレシーバーシップという配当原資の確保のための換価手続の権限まで与えられて、今、配当準備中です。結局、2015年1月に損害まで認定されて、今度は配当原資の凍結されているものについて換価手続をしてきたのですが、それから7年たっても、配当原資、日本円でざっというと34から35億の配当原資はもうレシーバーの手元にございますが、配当手続にはまだ至っておりません。
ですが、資産を凍結して、かつその違法損害の認定のところに至るまでは、日本で同様のものを考えたときよりは早いというのが実感でございます。ただ、その後の配当実施に至るまでに7年かかっているという意味では、非常に遅いなというのが実際のところでございます。
次に、クラスアクションは11ページでございますが、これについては(A+B)と書いてあります。首謀者及びMRI社本体も被告にしているのですが、それプラス、ナンバーツー・スリーである鈴木親子らのアメリカにおける資産も押さえたいということで、被告を増やした上で、これも、2013年4月末の事件発覚から数えると2か月とちょっと、2013年7月5日にクラスアクションの提起をしてもらいました。弁護団が働きかけをして、ロサンゼルスの弁護士に依頼をしてクラスアクション手続を提起しました。当然、初期の段階で資産凍結しないと、こういう極悪層との関係では実際のところは回収できませんので、資産凍結命令を目指してクラスアクションの提起をしたのですが、うよきょくせつございまして、実際に命令を得たのは1年2か月後の2014年9月です。
SECについては、2013年9月11日に提訴して、翌日、9月12日に資産凍結命令が出ています。SECは、後からちょっと述べますが、2012年の内偵頃から日本の証券取引等監視委員会と水面下で情報共有しておりまして、それでSECのほうは提訴した翌日には資産凍結命令を受けられるだけの資料を手元に置いて提訴しています。それに対してクラスアクション、11ページのほうは、我々弁護団が日本から持ち込んだ資料でアメリカの弁護士に説明して、2か月半後の7月5日に一般私人が少ない証拠を基に提訴してしまいました。提訴には持ち込んだのですが、凍結命令に至るまでには相当、被告側、鈴木親子側からの抵抗にあって1年2か月がたってしまいました。この間に一部資産が流出したというのはあったようです。
いずれにしても、何とか1年2か月後には資産凍結命令が出ました。資産凍結命令と申し上げているのは、SECの手続でもクラスアクションの手続でも同一ですが、全資産に対して包括的に資産の凍結をするというもので、日本の仮差押え、預金を特定する、不動産を特定するという形で一個一個特定しないと命令が出ないというものとは全然質が違います。
御案内のとおり、ディスカバリー手続というのがアメリカの法制度にございまして、このディスカバリー手続で証拠を入手していきました。SECのディスゴージメント手続でも同様にディスカバリーは使用しております。そして、提訴から3年を経過してしまいましたが、2016年にクラス認証の決定を受け、2018年には日本の東京高等裁判所と時期を同じくして、同時和解をいたしました。それで全体で10億円ほどの配当原資にしかなりませんでしたが、一応資産を凍結した上で和解にこぎつけております。その後の債権届出手続を経て、やっと今年の4月20日に弁護団の依頼者分の配当金を日本の銀行口座、預かり金口座で受領いたしました。来週、依頼者に送金予定というところまで来ております。
12ページですが、今度は刑事(X)です。刑事については、事件発覚後2年を経過しましたが、やっと詐欺罪で起訴をしてもらいました。首謀者の(a)、日本における代表者ら2名、鈴木親子といういい方をしており(b)と書いてありますが、この3名を起訴してもらいました。それで、首謀者については2019年5月の量刑審で50年の判決になっております。この社長は現在73歳ですから、120歳以上にならないと満期を迎えないので、もう刑務所のままでしょう。今、控訴審係属中でございまして、まだ確定しておりませんが、そういう状況です。ナンバーツー・スリーについては、日本にいたのですが、犯罪人引渡し条約に基づいてやっと2019年になされました。ただ、今年1月に司法取引を裁判所が認めましたので、4月5日の量刑審で懲役5年が確定しております。
もう一点だけ付け加えますと、刑事の事件ではございますが、被害回復・没収の命令まで受けております。13ページですが、首謀者、50年の判決を受けた米国会社社長に対しては、restitution、被害回復命令としての11億ドル、forfeiture、収益没収命令としての8億ドルほどの命令を受けております。これについては、ほぼ全てSECの配当原資に回っておりますので、これに基づく被害者への被害回復が現実になされるかどうかは極めて不透明です。ただ、2019年5月にこの命令が出たときに検察官側が熱く語っていたのは、13ページの一番下に書いてありますが、SECの違法収益吐き出し手続による配当原資以外の財産も確認しているから、11億ドルの被害回復命令を出してくれということでした。ただ、これはまだ現実化しておりません。
最後のページでございます、14ページ。日本代表者ら2名、鈴木親子といういい方をいたしましたが、先ほど申し上げたとおり今年4月5日に判決、量刑が5年ということになりました。それと併せて、今年6月28日に被害回復・没収の命令が出される予定になっております。どういう命令が出されるのか、というか、検察官側はこういうことを考えているということについて、検察官側からざっと聞いた内容をこのポチ「・」で記載しております。
刑事没収の対象となる被害というのは大体500人から1,000人ぐらいいて、被害額としては1.4億ドルぐらいになる。釈放された後でも20年間、刑事没収の手続ができるし、年金の15パーセントを没収できるのだということでした。その検察官は、この後も20年ぐらいこの刑事没収手続をやる所存だそうです。全米のデータで、刑事没収の実績は10パーセント程度の回復になっているというデータも御説明いただきました。ただ、本件ではクラスアクションであるとかSECの手続が奏功して、鈴木親子のものについてはクラスアクションで被害者側に還付されるので、ほぼ彼らの手元には残っていない。でも、残っていないものから更に没収手続をするということを考えているようです。サピーナの手続もできるということです。
以上、ざっと申し上げると、アメリカの手続において、SECのディスゴージメント手続やクラスアクションのナンバーツー・スリーとの関係での和解で配当原資を確保するというもの以外にも、刑事当局、FBI、DOJが懲役刑を求めてそれを実現するだけではなく、被害回復・没収の命令を受けて、特に鈴木らについては釈放された後、彼らは5年でそのまま出てきますので、出てきた後も年金から15パーセントを没収する等々の手続を今後もやっていく、という報告を受けています。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、これより35分程度、質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。
ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。御発言をされる際にはチャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。
委員の方々、いかがでしょうか。黒木座長代理、よろしくお願いいたします。
○黒木座長代理 ありがとうございます。アメリカの制度はよく分かっていないところがあるので、もう一回ちょっと基本的なところも踏まえて御質問させていただければと思います。
先ほど石戸谷弁護士にも聞いたのですけれども、日弁連は、去年8月19日に「詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書」というのを発出していて、MRIインターナショナルについて、まずその対象となるような事件類型なのかということを確認したいのです。
その関係でいわせてもらうと、この意見書の8ページの中ではポンジ・スキームについて、流用型と分別管理義務違反型という2つの類型を挙げているのですけれども、その関係で、MRIインターナショナルはポンジ・スキームになるのか、なるとしたときには流用型なのか、分別管理義務違反型なのか、その辺りのところについてまず御見解をお示しいただければ有り難いと思います。
○五十嵐弁護士 五十嵐です。お答えいたします。これは明らかに流用型でございますが、分別管理義務違反型にも当たるのではないかと思います。色彩としては完全に流用型というか、もともと詐欺をやろうと思って立ち上げた会社ですので、そういう意味では流用型になります。先ほど申し上げたとおり、実態は結局、日本の被害者のAさんから1,000万円の投資資金だよといって送金されたものが、それを投資に回すかというと、回さないで、翌日にBさんの配当期日だとしてBさんの配当のために流用されているという完全にぐるぐる回し。実態としては典型的ポンジ・スキームです。ただ、先ほど申し上げた2008年から金商法の第二種登録をしておりまして、その中では当然、分別管理しなさいよという法規制があり、それにも当然反している。分別管理をしていないというレベルが全然違いますが、そういう意味では分別管理違反型にもなるということです。
○黒木座長代理 分かりやすく御説明いただきまして、ありがとうございます。
事案の関係ですけれども、資料2-1の10ページ目で、アメリカのSECが2013年9月に提訴し、10月に違法性認定をしてという形で出ているのですけれども、五十嵐弁護士の資料2-2を見ると、2013年7月24日に、弁護団はワシントンDCにおいてSECと面談して、違法収益吐き出し手続による包括的な資産凍結及び日本の被害者の被害回復の要請をしたということになっています。これと日本国内における4月26日の第二種金融商品取引業登録取消しとの関係なのですけれども、これはどちらがSECとの関係では端緒になったとお考えなのでしょうか。もう少しお知らせいただければ有り難いと思います。
○五十嵐弁護士 これはいろいろ交渉した中での私の感想とか感触であり、当局はそこを直接的にはお認めになりませんでしたので、私の想像も交えて申し上げます。
日本の当局、SESC及び金融庁が、2012年ころから、アメリカのSECと情報交換をして、2013年4月26日の登録取消しに至った。日本の当局は、これがぐるぐる回しのポンジ・スキームだという資料を入手して、それで登録の取消しに至ったわけですが、ぐるぐる回しを日本の当局が立証するためにアメリカの金融機関でどうなっているのかということを調べなくてはいけない。それについて日本の当局はアメリカのSECの協力を求めていたようで、アメリカのSECがアメリカの銀行からサピーナ等で入手した預金の履歴を日本の当局に渡し、その資料を基に、日本の当局が2013年4月26日に登録取消しの処分をした。そうすると今度どうなるかというと、もう破綻ですから、被害者が顕在化する。
でも、資金は、先ほど言ったように1,300億円はせっせせっせとアメリカに送金されていて、主にアメリカで蓄財されておりますので、これはSECが動かなくてはいけない。そこで、日本の当局は、今度はアメリカの当局に日本の資料も含めて協力をした。アメリカで資産凍結命令を受けるために、ディスゴージメント手続をアメリカでしやすいように、日本の当局がアメリカの当局に資料を送っていたのは事実です。そういう意味で、水面下では日米の当局が協力していて、2013年4月の登録取消しにおいてはアメリカの協力、2013年9月のディスゴージメントの提訴においては日本当局の資料の提供という協力をしていたようです。
弁護団が2013年7月にワシントンDCに赴いて、SECに対し、日本の被害者はアメリカに送金してしまったのでアメリカのほうで動いてもらわなくてはいけないということで切実に訴えたのが後押しになったのも事実だと思います。また、クラスアクションで我々のほうが能動的に動いて2013年7月5日に提訴し、2013年9月12日にヒアリング期日が指定されていたことから、場合によってその日にクラスアクションの命令が出るということもあったものですから、そこが一応デッドラインになって、SECもその2013年9月12日までに何らかの命令を受けないとクラスアクションに先を越されまいと凍結命令を早めてもらったという効果もあったと思います。
ただ、先ほど述べた日米の当局との水面下のやり取りによるものが主だったと考えています。
○黒木座長代理 ありがとうございます。なるほどと思います。
11ページの先ほど言いましたクラスアクションの件なのですが、日本には当然のことながら、クラスアクションみたいなものはないのですが、特定適格消費者団体による仮差押えと共通義務確認訴訟という類似の制度があると思うのです。この時代はなかったのですが、仮にこれがあったとして、機能したでしょうかということについての御感想なり御意見をいただければと思います。
○五十嵐弁護士 私が特定適格消費者団体のほうに検討委員等で関わっていれば、少しその内実が分かって、よりよいコメントになると思うのですが、ちょっと私は日本では関わっていないのでその点はイメージでしか申し上げられません。先ほど申し上げたように11ページの資産凍結命令が2014年9月になってしまって、1年後になってしまったと申し上げました。ただ、アメリカの資産凍結命令は包括的なものなので、権限としては非常に強大です。いろいろな証券会社であるとか、銀行、年金機構も含めて、凍結命令が出たので凍結してくれという通知をばあっとするだけで凍結をすることができるのです。アメリカのこの手続を見てきましたけれども、非常にダイナミックな手続だという感想です。一方、日本の適格消費者団体の仮差押えは個別に特定しなくてはいけないはずですので、そうすると見えている財産しかできない。アメリカのダイナミックな手続が日本で実現できるかというと、実現できない、力としては相当弱い。
○黒木座長代理 ありがとうございます。
何かちょっとだんだんイメージが湧かないところがあるのですけれども、そこの関係で質問なのですが、先ほどの日弁連の意見書の中では、わざわざMRIインターナショナル事件等における米国の手続が功を奏しているという項を立てていて、その中で、刑事没収だけではなく、有罪判決を必要としない民事没収という制度を用いて、その資産から被害者の被害回復金を分配することが行われていると指摘されているのですけれども、これは先ほどの説明の中ではどこをどういうふうに見ていったらこういう説明になるのか、もう一回教えていただければと思います。
○五十嵐弁護士 結論から申し上げると、日弁連の意見書でいっている刑事没収だけではなくて民事没収も行われているというのは、MRI事件ではされていません。私の資料の一番最後、13ページ、14ページですが、MRI事件では刑事没収の命令が出ていて、鈴木らについては6月28日に出る予定ですが、これは刑事没収のことで、民事没収ではないと理解しております。
○黒木座長代理 分かりました。ありがとうございます。そこは日弁連の問題でもあるのですね。
それから、最後の14ページのところのサピーナなどの手続もできるということですけれども、これは具体的には先ほどの意見書の中の6ページに書いてあるようなことなのですかね。証券投資者保護の分野では、証券取引委員会の監督下にある証券投資者保護公社が、証券投資者保護法に基づく補償をして、破産手続において、SIPCの推薦に基づき裁判所が選任したSIPA管財人がうんぬんかんぬんということを書いてあるのですけれども、これということですか。
○五十嵐弁護士 違います。これは、私もアメリカの制度をちゃんと勉強したわけでもないので、実務でこういう言葉を使っているからサピーナと書いてしまったのですが、ディスカバリー手続の一環で、いろいろ質問するというだけのことです。日弁連意見書の6ページに書いてあるのは、正にSIPCが動くとか、そういう行政機関が動くという話なので、それとは質が全く違います。これは、被害回復・没収手続で検察官のほうが釈放された後もどこに資産があるのかとか、鈴木ら親子に関わった弁護士に対してあのお金はどこに行ったのかという質問書を送ってその回答を求めるという手続です。そのときちゃんと回答しなければ、裁判所に訴えて制裁を科してもらう等の形もできる、ディスカバリー手続の一環ということです。
○黒木座長代理 最後のほうの、これは半分御意見なのでしょうけれども、仮にこのMRIインターナショナルが全部ひっくり返って、日本に法人格があって、米国の消費者に対して投資勧誘を行って、その資産が日本にあるという場合、日本の法制度ではアメリカのような権限を日本の監督庁は持っていないのではないかと思うのですけれども、そのような場合は結局、アメリカの消費者被害は日本では放置されてしまう可能性があると考えていいのでしょうか。
○五十嵐弁護士 結局、アメリカ人が日本企業にだまされて、そのだまされたお金が日本国内にあるという消費者被害を考えたときには、日本人が日本企業にだまされて、その日本企業、詐欺会社が日本国内で資産を少なからず持っていますという状況と同じだと思います。そのときに相談を受けた日本の弁護士は、どこかの行政庁にそれを申告して資産凍結してもらおうなどということは考えないというか、考えられないというか、そういう制度がありません。相談を受けた弁護士は何を考えるかというと、8,700人のアメリカの被害者から委任状をもらった上で、その日本の詐欺会社の資産はどこにあるのかということを、調査会社を使って調べるのかよく分からないけれども、とにかく預金の仮差押えをしよう、不動産はどこにあるのか、名義があるのかというのを一個一個調べて仮差押えしようかと考える。警視庁に行って、日本のこういう会社があって、アメリカの8,700人がだまされたから何とかしてくださいと刑事告訴状の案を持っていって相談する。日本の会社であれば警視庁も少し動くかもしれませんが。いってみれば、そういうことを、今まで日本の弁護団が手弁当でやってきたことをアメリカ人のためにやってあげるというだけで、行政庁を動かすことは、法制度がないのでできないということだと思います。
○黒木座長代理 分かりました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、五十嵐弁護士に随行なさっております山口弁護士から御発言をお願いいたします。
○山口弁護士 ありがとうございます。3点だけ簡単に五十嵐事務局長の報告に追加させていただきます。
1つは、2013年4月26日に金融庁が登録取消し処分をしております。私どもは金融庁に、主務官庁なのだから、法令上、破産申立てその他の手続ができるはずだからやってくださいよということで強く申入れに行ったら、金融庁の担当者が申し訳なさそうに、登録取消しをしたので、金融庁の所轄の会社ではなくなったのですと。そんなばかな。悪いことをしていたのは金融庁の登録がされているときの行為なのだから、それは対象になるでしょうと言ったら、いや、ならないのですよということで、これは完全に制度の欠陥だと思いますが、実際はそういうことで、何じゃこれはと絶望したことが記憶としてございます。
それから、先ほども話がありましたけれども、私どもは、仕方がないのでアメリカの証券取引委員会、それから司法省に何回も、日本の被害者のためにしかるべき手続を取ってくださいということでお願いをしに行きました。そのときの発言を今でも生々しく覚えているのですが、日本の消費者のためにアメリカの国民の税金を使うことをアメリカの市民が了解するかどうか難しいのですよねということを非常に率直に言っていただきました。しかしながら、いや、それは日米の消費者の連携もあるし、マーケットも連携しているのだから、日本の消費者がアメリカの企業に引っ掛かると、逆のこともあるのだから、是非ここはアメリカの税金を使ってでもやってください、是非お願いしますとお願いしました。
日本の証券取引等監視委員会の当時の窓口は後に消費者庁長官になられる先生が担当しておられましたけれども、水面下では、アメリカのSECと日本のSESCが協力はしていただいていましたが、私どもに対してはそういう発言もなさりながら、アメリカの税金を使って日本の消費者のために被害を少しでも取り戻すというディスゴージメントの手続をやっていただいたのは事実でございます。先ほど黒木委員もおっしゃいましたけれども、そういう制度を日本でも、やはりきちんと体制を作るべきであると強く思います。
それから、最後にもう一つ、アメリカには、先ほど来お話があります弁護士がやるクラスアクションの手続のほかに、SEC、証券取引委員会のディスゴージメントの制度がございます。それから、州政府が自ら、場合によっては、このディスゴージメントと類似の手続で違法収益剥奪をする制度もございます。それから、刑事手続で、先ほど五十嵐弁護士も報告しましたような刑事没収手続もございます。何でこんなにたくさんあって、面倒くさくないのということを聞いたら、できるところからどんどんやればいいのだと、それで少しでも被害が回復できればそれでいいのだという割り切りで、制度の重複について私などは心配したのですが、全然問題ないということで、確かにやれるところからどんどんやっていくという制度として機能しているなというのは強く感じました。そこは日本の場合には、制度が重複するどころか、制度がないという寂しい実情ですので、ここはもう是非お考えいただきたいと思っています。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、中川委員、よろしくお願いいたします。
○中川委員 ありがとうございます。本日の御報告ありがとうございました。コメントが幾つかと、それからあと質問をさせていただきたいと思います。
コメントは、正に今の山口弁護士、それから座長代理のお話とも関係してくるのですが、MRI事件と逆のことが起きたらどうなるかということです。その場合,日本の弁護士はやることがないというか、伝統的な方法で戦うほかないとおっしゃったのですけれども、むしろSECが日本の加害者に対して域外適用してくるのではないかという感じがするのです。域外適用して、命令だけ打って、そして、その執行は日本当局にお願いするみたいな、そういうこともあり得るので、日本もちゃんと制度を作らないと駄目だよという気もするのです。これが1点目のコメントです。
もう一つ、登録を取り消したらもう金融庁の所管でありませんという、これもよく聞く話で、業法はあくまでも、許認可で参入規制するものは、許認可で入ってきたものだけ監督するのであって、それ以外のものに対しては実際に条文がないのです。私がいろいろなとこで最近よく問題にするのは、無免許、無許可の事業者が広告をしていても、その広告を止める手段がない。実は規定がないのです。常に許可を受けた事業者の広告が不当であるかどうか、それだけ規制をしていて、無免許の事業者がやっているということ自体は規定がないのです。多分、薬機法にその種の規定が1個あるだけで、あとはないのではないかと思います。
これは消費者委員会でも問題にしたほうがいいのではないかと。無許可業者に監督権限が及ばないというのは,私は思い込みだと思いますけれども、かなり根本的な業法の立法の仕方、それから執行の仕方に共通する、消費者法的には大問題ではないかと思います。
3点目のコメントですけれども、お話を伺っていますと、日本の法律家としては、金融庁の登録取消しが一番重要なポイント、最初の出発点で、しかし、それができたのは結局、SECがアメリカの銀行に対してサピーナでいろいろな情報が出て、資金の流れが解明できたからだと理解しました。そうすると、日本で同様の制度を作ることが重要ではないか。ディスゴージメントとかそういうこともありますけれども、まずは調査権限の充実といいますか、消費者庁も金融機関に対して軒並み個別の関係の資金の流れを教えろという命令権限がないといけないと思うのですが、それが今あるのかないのかよく分からない。消費者安全法はいろいろ包括した規定がありますので、ないわけではないのかもしれませんが、もう少しそれを他の法律で、あるいは消費者安全法で財産被害に関して整備するということもあるのかなと思います。以上はコメントです。
質問は、非常に細かな話なのですけれども、スライドの10ページの違法収益吐き出し型認定の後、レシーバーによる資産回収手続ということについてです。これは違法収益認定をしてこれだけディスゴージしますよという判決が出て、それの強制執行としてレシーバーによる資産回収が始まったと理解していいのか、判決の強制執行なのかというのが1点目の質問です。
2点目は、中川が自分で調べろと言われそうですけれども、ディスゴージメントと民事没収は両方できるのか、非常に似ている感じがします。これが2点目でございます。
それから、11ページのクラスアクションなのですが、2015年1月に違法収益、ディスゴージメントの認定がされているので、このクラスアクションに情報をSECから提供してもらうというのはないのか。日本ではよく消費者庁、行政が持っているのを適格消費者団体に渡してあげろという話をするのですけれども、アメリカの場合、これはクラスアクションですので、適格消費者団体とは大分違うということもあって、特に行政庁が何らかの情報をクラスアクションの原告側に、あるいは裁判所に対して出してくれるという手続はないのかというのが3番目の質問です。
最後は、先ほどの山口弁護士の御指摘と重なると思うのですが、13ページの刑事没収です。この被害回復命令は、既にクラスアクションとかSECのディスゴージメントで取られているものも含めて刑事として認定する,むろん実際に二重には取れないので、それはそれで問題ないというふうに運用されているという理解でよろしいかというのが最後の質問です。
○五十嵐弁護士 4つ目の質問からお答えいたします。11億ドルと書いてありますが、これは被害の認定の仕方が判決文に書いてあって、どういう判決文だったかはもう忘れてしまいましたが、これだけの被害だということを総体として認定したものです。その上で、でも、もうSECが押さえてしまっているから、それは刑事の被害回復に充てられないので、それ以外のところで何かないかということで、それ以外のものが見つかれば、この刑事没収、被害回復手続になるだけの話です。重畳的な手続になっていて、先行するSECが持っていってしまったら、刑事のほうの被害回復は結論としては出来ないというものでございます。
3つ目の御質問は、SECの手続での認定が先行して、これがクラスアクションのほうにどう利用されたのかということですが、御案内のとおり、裁判手続になると、主張書面や証拠が全て公開されていますので、これは誰でも見ることができます。私でも見ることができ、中川委員も見ることができるものですから、それを流用することも当然できます。あと、実際にクラスアクションでロサンゼルスの弁護士がSECに対してサピーナをかけました。サピーナをかけて、SECが持っている資料を、軒並み開示を受けました。この中には当然、SEC自身がアメリカの銀行に対してかけた銀行履歴やそれに基づいてこういう報告になっているというものがありますが、それだけではありません。MRIが東京・赤坂の事務所でアメリカとファクスのやり取りをしていたのですが、2013年4月26日に証券取引等監視委員会が強制調査に入り、物としての紙を押さえたのですが、それをSESC、証券取引等監視委員会がアメリカ側に渡していました。実は我々の弁護団は、霞が関まで行って、金融庁、証券取引等監視委員会が押さえているものをこちらに開示してくれないかと言ったのですが、開示できません、開示の制度もありませんと断られました。そのときに担当者がおっしゃったのは、アメリカに送っていますので、アメリカのほうから入手してくださいということでした。アメリカに送ったものをSECが分析していましたので、それをロサンゼルスの弁護士、クラスアクションの弁護士が、SECにサピーナをかけてどばっと開示を受けました。それを日本にも送ってもらいました。この資料はクラスアクションにも当然役立ちましたし、日本の東京地裁の裁判でも役立ちまして、それを全部出したのです。それを基にやっと勝訴判決を得たということがございました。SECが入手している資料について開示してくれるサピーナ、ディスカバリーの手続が非常に役立ちました。
2番目は、ディスゴージメントと民事没収の手続の関係については、私が中川委員にお伺いしたいぐらいなので、ちょっと私はそこに知識がございませんので、回答できません。ごめんなさい。
最後の質問1というのはレシーバーのところですが、これは違法損害額が認定になって初めてレシーバーが選任されたのではございません。2013年9月に資産凍結命令が出た後、10月か11月ぐらいだったと思いますが、配当するかどうかは別にしてもまず資産管理しなくてはいけない、証券取引も含めて事業をやってはいけないということになったので本社とか倉庫とかいろいろなMRIの資産を管理する人がいないと資産価値も減ってしまうので、まずレシーバーの選任命令で、4物件ぐらい大きなものがありましたが、資産を管理しなさいという命令が出ました。その後、違法性認定、損害認定になり、配当すべき根拠が裁判所で認定されたので、レシーバーシップが拡張されてフルレシーバーシップになりまして、換価及び配当の権限まで与えられて、今、配当準備中に至っている。簡単に言うと2段階になって、まずは管理しなさい、その後、換価して配当しなさいというところまでなりました。
○中川委員 ありがとうございました。よく分かりました。
○後藤座長 他にございませんでしょうか。よろしいですか。
それでは、五十嵐弁護士へのヒアリングはこの辺りにさせていただきます。
本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。
それでは、御退室いただきますので、委員の皆様は準備が整うまで少しお待ちください。
(五十嵐弁護士、山口弁護士退室)
○後藤座長 本日は、石戸谷弁護士からは、ジャパンライフ事件について御紹介をしていただくとともに、金融分野における解散と破産に関する制度や解散命令に関する様々な制度について比較・検討をしていただいた上で、今後、消費者被害の防止・回復を図るため、行政庁による解散命令制度を導入すべきとのお立場から御意見をいただきました。
五十嵐弁護士からは、日本に在住する被害者を、米国の違法収益吐き出しに関する諸制度を活用して救済を図ったMRIインターナショナル事件について御紹介をいただきますとともに、日本における違法収益吐き出し制度について問題提起をいただきました。
いずれの御報告につきましても、本ワーキング・グループの今後の議題において着目すべき重要な論点を含んでいると思われます。
本日、委員の方々からいただいた御意見も踏まえた上で、次回以降引き続き検討を進めていきたいと思います。
それでは、本議題については以上としたいと思います。
本日は御議論いただき、ありがとうございます。
最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。
≪3.閉会≫
○太田参事官 本日は、長時間にわたり大変御熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。
次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。
○後藤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。
会議画面の赤色のアイコンを押していただき、御退席ください。
(以上)