第2回 デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ 議事録

日時

2022年3月10日(木)13:00~14:48

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

  • (構成員)
    【会議室】
    後藤座長
    【テレビ会議】
    飯島座長代理
    清水委員
  • (オブザーバー)
    【テレビ会議】
    大石委員
    黒木委員
    板倉陽一郎 ひかり総合法律事務所パートナー弁護士
    丸山絵美子 慶應義塾大学法学部教授
    万場徹 公益社団法人日本通信販売協会専務理事
    独立行政法人国民生活センター
    一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構
  • (参考人)
    【テレビ会議】
    池本誠司氏 池本誠司法律事務所所長
  • (事務局)
    加納事務局長、渡部審議官、太田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. SNS等をきっかけとした消費者トラブルの相談事例
  3. SNS等をきっかけとした消費者トラブルと被害の防止・救済の課題
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

《1.開会》

○後藤座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「消費者委員会第2回デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」を開催いたします。

皆様、本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。

本日は私が会議室にて出席、飯島座長代理、清水委員、大石委員、黒木委員、板倉委員、丸山委員、万場委員、一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構の清水委員、独立行政法人国民生活センターの加藤委員がテレビ会議システムにて御出席です。

開催に当たり、会議の進め方等について事務局より説明をお願いいたします。

○太田参事官 事務局でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

本日は、テレビ会議のシステムを活用して進行いたします。発言時以外はマイクの設定をミュートにしていただきますようお願いいたします。また、画面は皆様オンにしていただければ幸いです。御発言の際は、混線を避けるため、まずはチャット機能を使用して発言する旨をお知らせいただき、それを確認した座長から指名がありました後に発言をお願いいたします。

また、感染症拡大防止の観点から、報道関係者を除く一般傍聴者の皆様にはオンラインにて御参加いただいております。

議事録につきましては、後日消費者委員会ホームページにて公開いたします。

配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。

お手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し出くださいますようお願いいたします。

以上でございます。


《2.SNS等をきっかけとした消費者トラブルの相談事例》

○後藤座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本ワーキング・グループは、SNSの投稿や広告を端緒としたインターネット社会特有の新たな消費者トラブルに対して、被害の防止及び救済の在り方をテーマにしております。

本日は相談現場から事例紹介をいただき、また、法律実務家からの本事案に関する御意見をいただいた上で、それぞれにつきまして意見交換を行います。それぞれ20分程度御説明いただいた後、40分程度の意見交換をさせていただきたいと思います。

まずは、相談事例等から消費者トラブルの実態を把握するため、本ワーキング・グループにオブザーバーとして御参画いただいております国民生活センターから御説明をいただきたいと思います。

国民生活センターの加藤委員から20分程度で御説明をよろしくお願いいたします。

○独立行政法人国民生活センター それでは、よろしくお願いいたします。国民生活センター相談情報部の加藤と申します。

本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、資料に基づきまして御説明をさせていただきます。

私どもからは、SNS等をきっかけとした消費者トラブルの相談事例、もうけ話に関する若者のトラブルを中心にということで資料をまとめました。

それではまず、3ページを御覧いただけますでしょうか。

既に皆様方の問題意識もありますとおり、SNSきっかけの消費者トラブルが非常に増えております。こうした相談事例を整理しますと、主に以下の3つのケースが分けられるのかなと思っております。イラストで示しておりますけれども、きっかけ別に見ますと、ケース1として、消費者がSNS上の報告を見て、事業者のサイトにアクセスして、商品等を注文してしまう場合。ケース2としまして、消費者のSNS上の投稿やコメントを見た相手方から連絡があるとか、逆に相手方のSNS上の投稿やコメントを見て興味を持って消費者のほうから連絡するケースもあります。また、ケース3ですけれども、消費者のSNS上の投稿、コメントを見た相手から取引をしないかと直接取引を持ちかけてくるケース、あるいは、お金を貸しますよと投稿していた相手に消費者のほうから連絡してしまうパターンが見られます。

やはり問題点としまして、情報商材や副業系のもうけ話に関する若者のトラブルが目立っているということ。また、こういったトラブルでは、事業者等の所在地や電話連絡先等が分からず、相手と連絡が取れなくなってしまうケースもあります。正直に申しまして、そういった場合には消費生活センターでもなかなか解決のお手伝いが難しいということで、非常に難儀しております。

では、具体的にどういったトラブルが寄せられているのかということで、事例を御紹介したいと思います。

5ページを御覧いただけますでしょうか。

幾つか事例を御紹介するのですが、国センであっせんした事例ではないものも含まれておりますので、詳細が分からないところもありますが、その場合は御容赦いただければと思います。

まず、1つ目の事例です。これはSNS上の広告がきっかけとなったものです。この当事者の方は、SNSの広告を見て事業者に連絡を取ったところ、不動産投資等でもうける方法を教えると言われて、25万円の資産形成オンラインサロンを無料通話アプリで勧誘されたということです。

補足しますと、「事業者に連絡を取った」のところなのですけれども、これは消費者のほうから無料通話アプリを登録して連絡を入れたようでございます。その後、事業者から不動産投資等でもうける方法を教えると言われて勧誘されています。ここはメッセージなのか、電話でなのかが明確ではないのですけれども、事業者のほうから勧誘を入れたということです。毎月2万円の分割払いで契約したのだけれども、説明と違い、会員を増やせば紹介料が入るなどのような内容だと分かり、支払いを中止したところ、未納料約10万円を請求された。契約時、クーリングオフ等が記載されている書面を受け取っておらず、事業者の住所や電話番号は分からない。契約を解除して返金を求めたいということでございました。

続いて、6ページを御覧ください。

こちらもSNS上の広告がきっかけとなった事例で取り上げたものでございます。SNS上に掲載されたマーケティングの広告を見て、起業に興味があったのでメッセージアプリを使って連絡をしました。すると、「企業のノウハウを教えるセミナーがある。コンテンツをもっていなくても大丈夫。起業できる」と言われた。

オンラインセミナーに参加しますと、「ビジネスのノウハウ、コツを教える。今日中に決済すれば安くなる」とセミナーの中で言われて、起業家育成プログラムの情報商材を購入し、代金約50万円はクレジットカードで決済をした。契約後、メッセージアプリを使ってスクーリングを受けたが、まずは自分たちの商材を販売して集客するようにと言われ、実際にはネットワークビジネスであることが分かった。

メッセージアプリに利用規約は届いたが、契約書面は届いていない、対面で起業のノウハウも教えてもらえるものだと思っていたが、話が全く違った。事業者の住所は利用規約にあったが、電話番号は分からない。解約したいという相談でございました。

続きまして、7ページを御覧ください。

こちらはSNS上の投稿がきっかけとなった事例でございます。SNSで「画像や動画を投稿するだけで簡単に儲かる副業」と投稿していた人がいて、その人の個人のアカウントに、詳細を知りたいですという連絡を入れました。すると、無料通話アプリの事業者の公式アカウントを紹介されて、それで事業者とやり取りを始めました。

副業を始めるには7,000円の教材の購入が必要とのことで、クレジットカードで購入した。教材は無料通話アプリ内で電子データで送られてきたということです。

「電話で説明を受けると」とあるのですが、ここを補足させていただきますと、事業者のほうから初めてのビジネスだからしっかりレクチャーしますよ等と言われて、電話連絡の日時を予約させて、業者のほうから電話連絡が入ったということです。その電話で説明を受けると、「AIを活用した無料動画アプリに動画を投稿するだけで簡単に収入が得られる。サポート内容によって複数のプランがある。高額なプランの方がサポート期間が長く、収益も高い」と言われ、250万円のプランを進められた。高額で払えないというと、20万円はクレジットカードで決済し、「1か月後に必ず返済できるから」と言って指定の消費者金融2社で約100万を借りるよう促され、従った。残金130万円は得られた収入で払うよう言われた。

しかし、契約後、全く収入が得られず、1か月後に消費者金融の借入れが返済できるとは思えない。解約したいと事業者に連絡すると、規約に記載された支払金額の半額も返金できない可能性が高いと言われた。解約して全額返金してほしいという相談でございました。

これについては、注釈を入れておりますけれども、あっせんの過程で電話勧誘の該当性を認めないということで、非常に交渉が難航した事例でございました。

続きまして、8ページを御覧ください。

こちらもSNSで知り合った相手からの誘いがきっかけとなったものです。SNSで友達登録をした人から1日10万円稼げる副業というメールが送られてきた。ホームページをつくり、アクセスを増やすことで誰でも簡単に稼げると書いてあったので興味を持ち、インターネット上でデビットカードを使って1万円で情報商材を購入しました。

その後、事業者から電話相談の予約をするよう催促され、電話予約フォームで予約した日に業者から電話があり、アクセス数を増加させるツールを90万円で契約するように勧められた。自分はお金がないので数万円のコースがいいと言ったが、「みんな90万円のコースを選んでいる。途中でやめても返金できる」と言われたので、事業者を信じてクレジットカードで決済した。

更に後日、事業者から電話があり、作業が進まないので新たな契約をするよう勧誘された。お金がないと断ろうとしたが、前回契約した90万円の代金を一部免除するので、新たに85万円の契約をするように威圧的に迫られ、断り切れずに契約し、現金で支払った。しかし、命がけでサポートすると記載があったのに実際はサポートがなく、言われたとおりにツールを使って作業をしたのにもうからないので、事業者に解約と返金を求めたが断られたという相談でした。

続いて、9ページを御覧ください。

こちらもSNS上で知り合った相手からの誘いがきっかけのものです。SNSで知り合った人から副業を紹介された。事業者の広告を見ると「好きな時間にできる」「月2から3万円の収入」「在庫を持たずに転売で差益で稼げる」という内容だった。電話で詳しい説明を聞くと、「仕入れサイトで商品を選び、フリマサイトに出品し、買い手がついたら仕入れサイトから商品を配送するので、無在庫で転売できる。仕入れサイトの商品代金とフリマサイトで売却した代金の差額が収入となる」との説明だった。この副業を始めるには、契約期間1年で毎月5,000円の会員登録が必要とのことで、クレジットカードで支払った。

契約後、仕入れサイトで数点商品を選び、フリマサイトに出品したが売れない。そもそも仕入れサイトに在庫がない商品も多く、選択肢が少ないので、広告にあった月2から3万円は難しいと思った。1年分の会費6万円を支払うよう事業者から請求されているが、支払わずに解約したいという相談です。

続きまして、10ページをお願いいたします。

こちらも知り合った相手からの誘いがきっかけのものです。SNSで「稼ぎ方を教えます」と消費者のところにダイレクトメッセージが届き、無料通話アプリで相手に連絡を入れました。そこで「ブログでアフィリエイト収入が得られる」「ビジネススキルを情報商材で提供するのでオンラインサロンで勉強できる」などと勧められ、約30万円でオンラインサロンへ入会することにした。

契約書はウェブ会議のやり取りで作成して交付された。実際にブログを始めたが、「オンラインサロンの人が○万円稼げました」などと偽りの発信を指示されるようになり、また、また、内容を稼げるものではないことが分かった。解約して返金してほしいという相談です。

続きまして、11ページを御覧ください。

こちらはインターネット上の検索結果がきっかけとなったものです。この方は、副業を探すためにスマートフォンのインターネットで検索して、ヒットしたサイトにアクセスし登録しました。その後、案内者のような女性とメッセージアプリでやり取りすることになり、予約を取って電話で説明を受けた。ネット報告を作成してアップし、その広告を顧客がクリックすれば報酬が得られるという副業で、ガイドブックの購入を勧められて申し込み、約2万円の代金を後払いで支払うことになった。

すると、説明サイトのリンクが送られてきて、内容について詳しく説明するので再度電話の予約を取るように言われて、予約した。2度目の電話があり、ネット広告作成のための複数のサポートプランがあるので選ぶよう勧誘され、約70万円のプランを選んだ。

電話をつないだままメッセージアプリでサイトへのリンクが送られてきたので、サイトにアクセスし案内されながら画面に入力し申し込んだ。代金は、送信されたリンク先で前払い金として約10万円をキャリア決済で支払った。残額は後で振り込むことになっている。その後、突然ブログをつくるよう言われ、報酬も入らないので、話が違うと思った。不審なのでやめたいという相談です。

12ページを御覧ください。

こちらもインターネットでの検索がきっかけになっています。副業をインターネットで検索し、スマートフォンを見ているだけで稼げると掲載しているサイトを見つけた。「応募する」をタップすると、メッセージアプリに追加するようにと案内があり、追加の操作をしますと、女性からメッセージが届いた。この女性から「稼げる会社を紹介する」と言われ、女性に約2万円の紹介料を払うことに同意し、紹介された事業者とメッセージアプリでやり取りをした。

その後、事業者の担当者からスマートフォンに電話があり、「FXで使うアプリをスマートフォンに入れ、後はこちらで対応する。アプリを見ているだけで稼げる」と言われた。プラン料金約10万円が必要と言われたが、学生で払えないと言うと、取りあえず3万円を送金するようにと言われ、指定された銀行口座に振り込んだ。両親に相談し、解約の申出を業者にしたが、何の返答もない。どうしたらいいかという相談でございました。

これらを「まとめ」として整理をしてみました。

14ページを御覧ください。

SNSをきっかけとした情報商材や副業のもうけ話に関する若者の消費者トラブルでは、次のような事例が見られます。

初めから高額契約を勧誘するのではなく、無料または少額の情報商材を契約させた後、情報商材等の説明をするためなどと称して消費者に事業者からの電話連絡の予約等をさせ、その電話によって高額なサポート契約等を勧誘しています。

2つ目です。SNS上のメッセージやウェブ会議システム等による勧誘も行われています。

3つ目、情報商材等の販売事業者との関係が明確ではない、SNSの投稿者等の第三者による勧誘も見られております。

4つ目です。SNS等でのやり取りのみの場合、消費者が事業者のアカウント情報等しか把握しておらず、所在地や電話連絡先等が分からないケースがあるといった問題点が見られます。

参考としまして、データをつけております。

16ページを御覧ください。

まず、SNS関連の相談件数の推移と年代別の割合でございます。図1を御覧いただきますとおり、SNS関連の相談件数は右肩上がりで増加傾向にございます。本年度はまだ終わっておりませんので4万件弱でございますけれども、全体として増えているなということが見てとれます。

図2は契約当事者の年代別の割合でございますけれども、突出して多いというよりは、20代から50代までほぼ幅広く相談が入っているなということが分かるかと思います。

17ページを御覧ください。

17ページでは、情報商材に関する相談件数とSNS関連及び契約当事者が20歳代の割合を合わせたものでございます。情報商材の全体の相談件数が大体7,000件から8,000件とずっと横ばいですけれども、非常に多く寄せられております。その中で、20歳代の割合が増えている。また、それに伴って、SNS関連の割合も増えてきていますので、やはりSNSきっかけで情報商材の相談も入っているということがこうしたデータからも見てとれるかなと思います。

図4では、棒グラフは情報商材のうち、契約当事者が20歳代の件数でございます。やはり増加傾向にあります。また、SNS関連の割合も同じように増えております。

18ページを御覧ください。

こちらは転売ビジネスに関する相談件数の推移でございます。2021年度は少し減少しておりますけれども、やはりこういった副業系のものは依然として多いと思っております。あわせまして、20歳代の割合も今年度は半分程度の43パーセントという非常に高い割合でございますし、SNS関連も53パーセントということで、やはり同じように割合も増加しております。

図6は、転売ビジネスのうち、契約者が20歳代に限定されますけれども、今年度は663件の相談がございます。やはり非常に多く、また、SNS関連の割合も57パーセントということで、SNSきっかけでこうしたビジネスのトラブルに遭っているということが分かると思っております。

簡単ですが、私からの説明は以上でございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。

御説明を踏まえまして、御意見あるいは御質問がありましたらお出しください。よろしくお願いいたします。

それでは、万場委員、よろしくお願いいたします。

○万場委員 ありがとうございます。

センターさんに聞きたいのですけれども、これは代金決済の方法を一部後払いというのもあったようですが、ほとんどがクレジットカード決済なのでしょうか。あと、キャリア決済というのもありましたけれども。

○独立行政法人国民生活センター キャリア決済とありましたけれども、やはりクレジット決済が多いです。その後、もっと高額になると、事例の中にもあったかと思うのですけれども消費者金融で借りさせる。「そんなに借りて大丈夫なのでしょうか」と言っても、「いや、すぐ稼げるから返せますよと言ったりと、サラ金強要といった手口も見られます。

○万場委員 その場合に、イシュアとかそういうところではなくて、決済代行会社が間に入っているとかということもあるということでしょうか。

○独立行政法人国民生活センター 決済代行はほとんど入っています。

○万場委員 クレジット業界は、加盟店審査というのはかなり厳しくやっていくというような話もあるのですけれども、それはスルーして、クレジットカードを使って消費者をだましている人たちがいるという感じですか。

○独立行政法人国民生活センター 協力してくださり「調査をかけます」と言ってくださって、例えばチャージバックをかけるということもあります。しかし中にはチャージバックが成立しても、2者間になって、販売業者のほうから消費者に直接請求するぞみたいなことを言う業者もいて、カードの決済が仮になくなったとしてもそのままでいいのかどうか心配なケースもなくはないと言えます。

○万場委員 ありがとうございます。

○後藤座長 それでは、丸山委員、よろしくお願いいたします。

○丸山委員 よろしくお願いします。丸山でございます。

私からは、参考資料の読み方に関して2点と、相談内容に関しての確認を2点お願いしたいと思います。

まず、参考資料に関してなのですけれども、SNS関連の相談全体につきましては、30代以下の若者層と40代以上の中高年層は同等の件数があるということでした。理解の仕方としまして、SNSをきっかけとした情報商材、そして、20代というのが目立って多数であるという理解でよいのか、それとも、資料の見方として、データによっては、例えば50代の投資は結構多いというように、同じく注目すべきカテゴリーが出てくるのか、教えていただきたい。もう1つは、情報商材、転売ビジネスというものについて着目していただいたのですが、消費者相談全体の中でやはり情報商材、転売ビジネスというの、件数として多いあるいは増加傾向だという評価してよいのかという点。まず資料の読み方として教えていただければと思いました。

続けてなのですけれども、相談内容につきましては次の点を教えていただきたいと思いました。明らかな詐欺や不実告知、断定的判断の提供ということで解決できるはずなのだけれども、連絡が取れなくなるというケースと、そうではなくて、詐欺とか断定的判断ということの立証自体が困難で、結果として、もうからないということで苦情が来ているという事例。これらは同等に存在するのか。それとも、どちらかの内容が多い傾向にあるのかという点を確認させていただければと思いました。

最後に確認なのですけれども、副業関係のビジネスを相談現場で解決する際に、消費者該当性、消費者性に関しては特に問題となっていない、解決の障害となっていないという理解でよいのか。つまり、事業を始めるのだから事業者と同等であると、事業者から言われるということは今のところないという理解でいいのか、この4点を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○独立行政法人国民生活センター ありがとうございます。

まず、1点目のSNS関連の相談件数なのですけれども、相談の中でSNSがきっかけといいますか、絡むものをキーワードとして入れているので、かなり広めにとっている相談件数と思っていただければと思います。ですので、そのうち、50歳代とかでもやはり投資系の詐欺的なものの被害もありますし、定期購入等は40代、50代もありますので、SNS関連の相談の内訳だけで見ると、比較的幅広い年代が入っているなと。一方、情報商材とか転売ビジネスのもうけ系は、やはり若い人に多いな、増えているなと考えておりまして、特に最近でも国民生活センターのほうから是非注意してもらいたいトラブル10選をまとめているのですけれども、美容系ともうけ系の2つは特に若者に多い。情報商材は20歳代が多いと御理解をいただければと思っています。20歳代の相談の内訳を見ますと、情報商材は上位にきております。

続きまして、相談内容の御質問のところですけれども、連絡が取れなくなるのか、それとも不実告知等の立証が難しいのかどうなのかというところですが、両方あるのかなと思っています。そもそも連絡が取れなくなるということもありますし、最初に連絡が取れても、そのうち折り返しの連絡もない、つながらなくなってしまうというパターンがあります。

一方で、そもそも立証が難しいというところで、最初に説明を受けた、聞いていたものと実際の商材の中身、サポートの内容が違うというところを丁寧に聞き取って、事業者側に申し出たりするのですけれども、証拠を出せだの、早く解決したいのだったら一部は返金するけれども、それで返金できないのだったら長期戦を覚悟しろ、訴訟するぞみたいな感じで、そもそもこちらの主張に対してきちんと反論をくれるわけでもなく、話合いや説得をそもそも聞いてくれないという感じです。我々としては、できるだけ証拠を残すためにアプリのやり取りがあるので、これをスクショで保存しておいてねということと、なるべく記録は残すようにはしています。一方、中には、通話しながらメッセージでこういうふうに送信しろ、例えばもっといいプランはないですかと送信しろとか、必ずお支払いしますとか、消費者も分からずそのとおりやってしまって、アプリ上は消費者のほうから高いプランを求めているみたいな証拠を事業者側がそろえているのかなと思われる手口もあったりして、まともにお話ができない。両方あり得るかなと思っています。

あと、先生からもう一つありましたね。もう一度お願いいたします。すみません。

○丸山委員 あと、最後にお伺いしていたのが、副業関係になりますと、消費者性の関係で、消費者契約法とかは使えないのではないかといった問題は現場ではありますかという確認でした。

○独立行政法人国民生活センター BtoBの契約なのだと言われることもありますけれども、どちらかというと、やはり初めての方、全くやったことのない方に対して勧誘しているし、先ほどの説明の中でも一生懸命サポートしますのでみたいな感じで事業者が言っていたりもしますので、感触ですけれども、そこが問題になることはそんなに多くはないかなと思っています。

以上です。

○丸山委員 ありがとうございました。

○後藤座長 それでは、板倉委員、よろしくお願いいたします。

○板倉委員 板倉です。

今の丸山先生とのやり取りでほとんどカバーされているのですが、事例を見ても、通販なのか、電話勧誘販売なのか、非常によく分からないですよね。ただ、割と拝見すると、最後の一押しは、電話勧誘販売の電話に当たるかどうかはともかく、通話をかけてきているみたいなのですけれども、それは結構そうなのですか。文字だけでは勧誘し切れなくて、最後は電話をかけてくるというのは多いのでしょうか。

○独立行政法人国民生活センター 文字だけでというのはなくて、やはり電話をかけてきている。あるいはかけさせていると言える。後半の池本先生のお話にも出てくるかと思うのですけれども、会議システム、オンライン会議アプリが電話勧誘に当たるのかというところで、大体は事業者のほうから、「説明するのでこのURLにアクセスしてくださいね」と言って、相談者のほうがアクセスするわけですけれども、そこの中で勧誘されている。これは、センターとしては電話勧誘に当たるのではないかと主張するのですけれども、いや、通販ですと言われます。

ちょっと話はずれますが、先ほどのビジネスがうまくいかないうんぬんの話で、例えば無在庫転売などもそもそもフリマアプリ業者はやめてくれと言ってはいるので、そもそも実現できないビジネスではないですかというようなことも主張したりするのですけれども、いや、そんなものはみんなやっているのみたいなことを言って、そもそも話にならないということが多いです。

○板倉委員 本格的な悪い人と比べて、対応がやはり違うのですかね。お手軽な悪い人というか、言い方があれですけれども。

○独立行政法人国民生活センター マッチングアプリで知り合った人からの暗号資産の詐欺的な、本当にどうしようもない、連絡もつかない相談よりは、一応連絡がつくだけましなパターンなのです。ただ、たちが悪いというところで、消費者のほうも長引くのだったら多少払ってとか、この辺りでいいですみたいな。中にはADRに行く可能性もなくはないですけれども、きれいにあっせん解決というのはなかなか厳しいかなと思っています。

○板倉委員 そこは、電話勧誘販売の電話がどういうところかにはかかわらず、電話勧誘販売に変われば大分楽なのですか。

○独立行政法人国民生活センター 事業者に説得するときの材料が我々は必要なので、できれば例えばどこかで処分事例としてこれは電話勧誘に当たるのだということを明確にしてもらえると、有り難いと思っているところなのです。こういうふうに考えられると言っても知らないと言われてしまうので説得材料がもっと欲しいという感じです。

○板倉委員 ありがとうございます。大変参考になりました。

○後藤座長 それでは、飯島委員、よろしくお願いいたします。

○飯島座長代理 飯島でございます。

貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

形式的な質問で大変恐縮ですけれども、3ページで3つのケースという分類をしてくださっています。①、②、③、それぞれ何が問題になりそうなのかというのは分かりそうなのですけれども、どのような基準での分類なのか。法規制に応じたものですとか、あるいは実際の相談に対する対応に応じて準備をされたのか、救済の在り方、何かリンクづけといいますか、そういうものがありましたらお伺いしたいと思っております。

この中でも恐らく非常に問題だと思っておられるところもあるかと思うので、そういう意味で、ここが例えば法規制で足りないですとか、お感じになっている部分も教えていただけますと幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○独立行政法人国民生活センター これは、どちらかというとトラブルから見て何がきっかけだったかというのを分類していったというイメージでございます。なので、定期購入が非常に多かったので、それはどういうきっかけだったのだろうというと、SNSで広告を消費者のほうが見てという感じで、トラブルをボトムにしてどういうきっかけだったのかというのを整理したものと御理解いただければと思います。

○飯島座長代理 ありがとうございました。

そうしますと、契約内容のほうがむしろ基礎にあるということでございますか。

○独立行政法人国民生活センター それでどういうきっかけだったのか、とどういう契約形態なのか、というところでは、個々に考えていく必要はありますが、トラブルの全体を通してSNS、ネット関連が多いので、きっかけとその先にどういうトラブルに遭ってしまうのかというのを見やすく、分かりやすく整理をしたというところでございます。法律的な立てつけとか分類を狙って整理したというよりは、消費者に分かりやすく、きっかけとしてどういうきっかけが多いのかというのを知ってもらうために図式化したというものでございます。

○飯島座長代理 ありがとうございました。

○後藤座長 それでは、消費者委員会清水委員、よろしくお願いいたします。

○清水委員 清水です。

御説明ありがとうございました。

現場を数値で表していただいて、大方そのとおりです。いかに消費者庁が処分していただき、それに基づいて、私たちがあっせんしていく繰り返しだと思っています。トラブルはスマホ、トラブルはSNSからと言っていいほど、今、消費生活センターではこの4から5年振り回されています。特に情報商材、副業はコロナ禍になって顕著に現れてきています。

もう一つは、国際ロマンス詐欺的な本当の詐欺は全て振り込みだったりして、弁護士の先生に頼むしかない。そこの問題というのは非常にあるのですけれども、私たちの今の問題は、こういった情報商材に振り回されて他の相談が取れていないというぐらい悪質だということです。業者も悪質なのですけれども、一般的な市民が相談できなくなるくらい、相談員が1件の案件の処理に時間がかかっているということなのです。それはなぜ問題かというと、クレジットカード会社の問題。クレジットカード会社から、ほとんどが国際ブランドを経て、決済代行会社が関わりますが、この決済代行会社の悪いところを何とかしたい。情報商材系は業者と結びついているのです。決済代行会社と言って、その後、業者だってかかってくると、同じ声ではないか、一蓮托生ではないかという問題があります。

ですから、副業に関して言えば、連絡が取れないのではなくて、先ほど加藤さんも言われたように、連絡はつくので連絡をして交渉をしないといけない。そして、そう簡単にクレジットカードがチャージバック、国際ブランドの規約を通してくれないので、私たち現場では、まずは話にならない業者、まず話にならないのは、先ほど丸山先生が御指摘されたように、いまだに事業者だと言って消費者契約法の条文を出して、相手方の弁護士がこれは消費者ではないだとかという議論があったり、立証の問題まで行きません。私たちはアドバイスして契約の取り消しの書面を消費者から出すのですけれども、まず中身の議論になりません。不実を告知だとか、断定的な判断の提供、こんな話はできません、ばか、あほとか、俺たちはまともにやっているのだと。こんなレベルの話にならないという現状がありますので、この問題は数多く問題点があります。

現場では、何でこれが電話勧誘ではないかと思っています。ほとんどが電話で予約して事業者から電話がかかってくる。これは来訪要請ではないのです。そのときには、まさか100万近くの情報商材、もしくは50万ぐらいのものを買わされるなんて全く説明がなくて、オンライン会議で何と3時間、4時間も、それも夜の9時から12時、1時まで、相手方は2人か3人出てきますので、それで長時間勧誘と言って対面式の勧誘となぜ認めないのか。私たちは別に法律で白黒つけるわけではないので交渉していますが、やはり最後、処分事例が出ない限りは聞いてもらえないというのが現状です。

失礼しました。

○後藤座長 よろしいでしょうか。

ほかにございますでしょうか。

どうもありがとうございました。


《3.SNS等をきっかけとした消費者トラブルと被害の防止・救済の課題》

○後藤座長 続きまして、本日は、SNS等を端緒とした消費者トラブルの事例の特徴、被害の防止、救済の課題につきまして、法律実務家の立場から御意見を伺うため、参考人として消費者問題を専門とされる弁護士であります池本誠司様にお越しいただいております。

本日は、お忙しいところ、誠にありがとうございます。

それでは、よろしくお願いいたします。

○池本氏 弁護士の池本と申します。

発言の時間をいただきましてありがとうございます。

今、国民生活センターから御報告がありましたSNSをきっかけとした消費者トラブルは、事例の手口も様々ですが、法律的な論点が非常に多岐にわたります。

レジュメを事前に資料としてお送りしましたが、14ページほどになっておりまして、20分でお話しするには本当に駆け足になります。前半は目いっぱい駆け足で、後半はやや駆け足でということで御理解いただきたいと思います。

まず、私のレジュメの1ページ目から2ページ目で事例1、2、3、4、5としました。国民生活センターの事例は10ありますが、SNSがアプローチのきっかけだけのものと、SNSそのものが契約意思形成の勧誘に関わるものとを分けました。

そういう意味で、勧誘に至るきっかけの部分、そして、契約締結の意思形成、ここにはSNSだけではなくて電話、テレビ電話システムとかも含む、あるいは動画サイトなども含むということになります。

それから、事例2と書いてあるのは、1とプロセスは同じようなのですが、第三者から、あるいはそもそも第三者なのか事業者の関係者なのかよく分からないというようなものがあるので、これは一つの特徴として2番目に書きました。

事例3が、先ほどの事例1の意思形成のところがSNSそのものではなくて、ウェブの説明会などに引き込んでそこで説明する、あるいは、オンラインサロンとかというような形で第1段階の契約を結んで会員にして、サロンで更に勧誘するというようなもの。あるいは、この頃はいわゆる動画サイトで商品説明、勧誘をするというようなパターン、録画を使うというものもあります。

それから、事例4というのは、国民生活センターの説明の中にもありましたが、ネットで検索してアクセスする。要は、アプローチがSNSではなくてネット画面上を検索していくということで、アポイントメントセールスの誘引手段がそこまで入るか入らないかという別の論点がありますので、それをここに少し区分けしました。

そして、事例5というのは、先ほどまでの幾つかのパターンそれぞれについて出てくるところですが、まず少額の契約を結んで会員になる。そこで更に勧誘をして、高額の契約に至る。中には2回3回とだんだんランクアップするというようなものもあります。

ちなみに、今日の紹介事例はいわゆる情報商材という言葉でくくられていますが、実はサクラサイトとか様々な詐欺サイトのトラブルも、基本の手口としては共通であると認識しております。その辺りも含めて問題意識として紹介していきたいと思います。

そこで、まず、特定商取引法上の適用関係がどうかというところから確認していきますが、通信販売というのは、皆さん御承知のとおり、消費者が郵便あるいはウェブなどの通信手段で申込みをして、消費者と販売業者との間の契約に至る。電話勧誘販売は除くとしてあります。通信手段の最後の申込み場面だけで定義をつけているわけです。それは、主体的に契約の判断をして申し込むであろうという前提です。

2番目の電話勧誘販売は、事業者から電話をかけて勧誘するという入口が特徴的なので、むしろ不意打ち勧誘なのでそこは別にして、最終的な通信手段で申し込むというところだけ見ると通信販売と共通ですが、むしろ特別規定として電話勧誘販売を入れた。ただ、ここには事業者から電話をかけるというパターンとは別に、勧誘目的を告げないで電話をかけさせて、そこで勧誘するというアポイントメント型の電話勧誘販売も規定がある。この辺りがどう活用できるかという論点につながっています。

そこで、具体的な適用に関する論点の問題に早速入っていきたいと思います。

まず、ウェブ会議システムに呼び込んで、そこで言わば音声で勧誘をする、オンラインサロンと呼んだり、あるいはウェブ説明会、動画説明会というような言い方をしたりします。これは、実は電話勧誘販売の現時点の定義でもほぼ取り込んでいるのです。消費者庁の特定商取引法の解説書の中に、電話というのはSkypeなどインターネット回線を使って通話するIP電話も電話に含まれる。録音の音声や人工音声も含まれるとなっています。テレビ電話会議ですから、ウェブ会議も全部含まれるし、録画した動画による勧誘も含まれるということになるのです。ただ、残念ながらそれが事業者側には十分周知徹底されていなくて、センターはどうしても強制力がありませんから、解決ルールとしてそれが定着していない。

そこの理解がなく、2番目の事業者から電話をかけて勧誘するではなくて、消費者がアクセスしたのではないかという言い方をしてくるわけです。それについては、(2)の4で書きましたように、政令で定める方法で電話をかけさせた場合には電話勧誘販売に当たると。ここが使われてよいのではないか。SNSで誘われて、ウェブ説明会に入っていくというときに、定義の中では勧誘目的を告げずに電話をかけるとなっています。ここの解釈の仕方の問題ですが、例えばすごくもうかる副業がある。その話を聞こう。その副業の話を聞く話と、そのためには情報商材の購入という契約が必要だというのは別のことですから、勧誘目的は告げていないと取れると思います。もっと厳密に言えば、例えば今日の会議もウェブ会議のURLを送っていただいてそれでアクセスしますが、URLを送っているところに情報商材の契約のためですとは書いていないです。そうすると、そもそもそこだけ見ても、形式的に勧誘目的を告げていないではないかという捉え方もできます。

その辺り、どちらの観点からいっても、これは実はアポイントメント型のものだということになると思うのですが、もう一つの厄介な論点が、国センの事例にもたくさん出ていましたSNSで知り合った知人というけれども、その知人というのが販売業者、または販売業者の関係者がSNSで誘い出したのか、単なる第三者、例えば自分も契約して、本当によかったから、業者から頼まれたわけではないのだけれども誘ってあげたというふうに言い抜けをする。これは正にSNSの匿名性の悪用の問題です。

匿名性の問題は後でもう少し踏み込んで議論していきたいと思うのですが、単なる第三者があそこのお店はいい店だよ、行ってみたらと言ったら、これは事業者が呼び込んだわけではない。そこの問題をどういうふうにするか。それこそSNSはニックネームでもやり取りができますから、通信をしている相手方には全く分からない。というか、むしろ登録をするときに実名や正確な住所を全部入れなくてもできるというSNSが多いですよね。そういう根本の問題になってきます。この辺りは後で論点として少し深掘りしていきたいと思います。

ということで、先ほどのようなウェブ説明会は電話勧誘販売の電話勧誘に当たり得るのだ。そこへアクセスするところの言わばきっかけとしてSNS等を使うということとの関係で、先ほどの国センの事例にもありましたが、もうけ話の検索サイトの広告を見て、ウェブ説明会にアクセスしたらそこで勧誘されたと。これこそ自分から検索サイトを見ていたのではないか。でも、検索サイトに情報商材を販売するということは書いていないではないかという議論になったときに、実はこれは現行法の解釈が狭いのです。それは、政令で定める方法で呼び出しという中で、電磁的方法で電話をかけさせと書いてあるのですが、消費者庁の解説によれば、電磁的方法というのは電子メール、ショートメール、SNSなどを対象者に送信する方法に限定されている。不特定多数に公開されたウェブサイトは含まないのだと。それは訪問販売一般でもビラやパンフレットを配って誘い出すのはいいけれども、ポスターが貼ってあるという全く不特定多数に置いてあって、それを消費者が自分で見るというのは含まないのだという、積極的働きかけの要素を必要とするという解釈をとっているのです。私はこれはむしろ狭いのではないかと。勧誘目的を告げないで電話をかけさせる。あるいは、営業所に呼び出すという販売目的を告げていないから不意打ちになるというところが大事なので、特定の一人なのか、複数名なのか、それが結果的に不特定多数なのかということは、一人一人の受け手からすれば本質的な違いはないのではないか。これは後で提案のところで踏み込んでいきたいと思います。

それから、少額の契約から更に高額の契約に進むという手口が非常に多いということも紹介しました。これについて、特にトラブル事例、相談員からの事例紹介を聞いたりというのもありますが、サイト弁護団の関係者からもいろいろ事例を聞いております。ネットの画面上に情報商材でランクを幾つか、それこそ数千円とか数万円とか10万、30万、50万と一応下のほうまで見れば書いてある。それで告げているのだという主張をするのです。ただ、最初に少額の契約でアドバイスをしてもらおうと思って電話をかけたら、そこで、いや、これはもっと詳しい高度な助言が必要だから、そのためには何十万かかると言ってくるのは、情報商材の新しい契約をしたいために電話をかけているのではない。むしろ少額の助言を受けるための電話をかけているわけですから、勧誘目的を認識してかけているわけではないとすると、正に不意打ちでアポイントメント型で呼び出されているのではないか。ただ、難点は、それがSNSのやり取りなどから電話での連絡をしたというならいいのですが、例えばウェブサイトに掲載されていて、それでそこへ電話をしたとなると、先ほどの前の論点、自分で検索してアクセスしたではないかという同じ論点が再び出てくる。

そうは言っても、近年、一連の勧誘行為として評価するというのが消費者庁の解釈の中でも出ています。例えば水漏れ修理3,000円とかと言って頼んでみたら何万もする、何十万もするというようなものとか、あるいは、ネット広告で強調表示と打消し表示の考え方で、いろいろ高い金額もあるということが下のほうへ書いてあるとしても、少額でもうかる方法を助言するというのが最初に言葉であれ、文字であれ強調され、高額の契約というのは、どういう場合か知らないけれども自分に当てはまるものではない感じで、たださらっと書いてある。これでは打ち消したことにならないという捉え方もできるのではないか。

特にそういう連続的な営業活動の流れの中で誘引していくというのは、全体を見て電話勧誘販売と評価できるというのは、東京地裁の従来の判決の中でもそういう考え方は示されていますので、ここも解釈をきちんとしていけば何も新しい規定を設ける必要はないと思うのですが、それがなかなか悪質業者に周知されていないという点をどうしていくかという課題だろうと思います。

駆け足ですみません。次に、SNSそのもので具体的な勧誘があって、意思形成につながる場面、特にSNSでのメッセージのやり取りの中で虚偽・誇大な説明で誤認をして契約した場合に錯誤取消しとか断定的判断提供や事実告知などの取消しができないだろうかという議論があります。これは、御承知かと思いますが、最高裁の平成29年1月24日の判決で、文字による広告であったとしても、それが契約内容、取引条件が具体的に認識できるような中身で、不特定多数に働きかけたとしても、個々の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るのだと。だから、広告表示は勧誘でないと言って一律に適用除外にするのは相当でないという判断が示されています。

SNSというのは音声ではなくて文字ですから、一般の広告表示の一つだと言えなくはないのですが、SNSは相手の反応に応じてまた言葉を投げかける。正に会話をしているわけですから、勧誘に相当する契約意思形成を働きかけるという要素が非常に強いのではないか。ただ、最高裁判決があるからそれで運用できるかどうかといっても、あの判決は一律に除外するのは適切でないと言っているだけで、どういう要件であれば適用されるかは何も書いてありません。

その点、大きな手がかりになるのが、昨年の特定商取引法改正で、通信販売の中に特定申込みという事業者の書式で申込みをした場合には、その画面で誤認させる行為を禁止し、 それに違反して誤認が生じた場合は取消しができるという規定が入りました。ただし、注意が必要なのは、特定申込み画面は、何を幾つ幾らで、解除ができるできないという要素を記載せよという表示義務はありますが、商品の効能・効果というのは申込み画面に書くものではありませんから、商品の効能・効果については取消し事由になっていない。逆に言うと、ある部分はできて、ある部分はできないという非常にアンバランスな事態が今生じていると言っていいと思います。

それから、国民生活センターあるいは相談の現場でも非常に困っておられる匿名性の問題です。これはサイト弁護団などでも訴訟を起こそうにも相手が特定できないという事例もあるし、あるいはSNSの誘引とその後の契約が同一業者であれば解決しやすいのに、そこが誰なのか分からない。そういう場合もそうです。これは先ほども言いましたが、とにかく連絡先を全然表示していない、ウェブサイトで表示していないというのは言語道断なのですが、SNSの場合には、アカウントを開設するときにそもそも本人確認義務が現行法上ありません。以前は本人確認義務がなかった携帯電話が犯罪に使われるということで、現在は携帯電話不正利用防止法によって本人確認義務があります。

ただ、SNSの中でも電話がありますよね。ただし、厳密に言うと、あれは音声通話の電話ではないのです。インターネット回線を使ったデータ通信をしているのを音声に変換するアプリケーションソフトで転換しているだけなので、現行法の携帯電話不正利用防止法には当たらないと解釈されているようです。ましてやSNSそのもの、文字のやり取りでは適用にならないということになりますから、本人確認義務が全然作用していないというところです。サイト弁護団にお話を聞いたら、弁護士を通じて、SNSの運営事業者に対して発信者情報、最近は少なくとも電話番号ぐらいは登録させるようにしているので、それを出してくれと言っても、いや、出せませんということで協力してくれないと言うので、実は昨年、埼玉弁護士会で本人確認義務や開示について積極的に応じるべきだというような意見書を出したりしているところであります。更に言うと、プロバイダ責任制限法も非常に要件が狭いために、なかなか情報開示が認められないという八方塞がりの状態であります。

時間が超過しかけていますが、ここまで問題点は指摘しましたので、対策のところはポイントだけ紹介していきます。

まず、SNSのメッセージが勧誘場面への誘引手段となる場合、言わばアポイントメントセールス型の電話勧誘販売になるかどうかというところは、先ほど申し上げたように、SNSの方法についても適用されるという解釈の周知徹底が必要な場面、法改正までしなくてもできるはずだと。それに対して、SNSそのもので勧誘して契約意思形成に結びついたときに、それが取消し事由になるかとなると、最高裁判決があるのだからということで解釈、運用をもっと周知するということも可能ではあるのですが、具体的な要件がはっきりしないために、やはりここは消費者契約法か、特定商取引法か、何か規定を設ける必要があるのではないかと感じています。

それから、第三者なのか、事業者なのか分からないというところについても、匿名性を悪用するという問題がある。ここをどうするかというところで、これは後でもう少し踏み込んでお話ししていきたいと思うのですが、最近、アフィリエイト広告に関して2月15日に報告書が消費者庁から出ていますが、そこでは、委託した先の広告表示については基本的にサイト業者、広告主が責任を負うのだと。そこの表示の適正化については、サイト事業者の責任として構成すべきだというようなことが提言されています。その辺り、まずは解釈運用の実施を促進していくということと、場合によってはそういうことを明示的な規定を設けるというのが必要ではないか。

それから、前半の質疑の中でも出ていましたが、SNSで誘引してウェブサイトで申込みをする。SNSでの誘引行為が実は勧誘の意思形成にまでつながっているような場合には、電話勧誘販売にならないだろうかというところです。これは、電話ではなくて文字による働きかけではあるのですが、一般の広告のようにこれを見て自分で判断してくださいではなくて、やり取りを繰り返す、返事がなければどうしたのと言って催促をして、会話を続けて契約をするという意味では、電話勧誘販売に当たる可能性も出てくるのではないか。ただ、非常に難しいところが、何となく会話が始まっていって、あるところから契約意思形成につながる働きかけになるという意味で、事業者から電話をかけるに当たるか、事業者からメッセージを発信したと言えるのか。ただ、これも言わば勧誘の場面、意思形成の働きかけの場面に引き込むまでの一般的な雑談と、いよいよ勧誘の中身に入っていく場面というので段階があるはずですから、それが消費者から中身が分かって積極的にそれについて問いかけているのかどうかで線引きはできるのではないか。

そうは言っても、最終的にこれは価値判断にも当たるのですが、電話勧誘販売は、電話をかけて、その電話で説得をして、事実上回答を引き出す。正に不意打ち性と即断を迫るというところが一体のやり取りですが、SNSは複数回のやり取り、催促はされるけれども、その日に回答しなくてもいい。その辺りを、反復継続する一連の執拗な勧誘手段と見るのかどうか。この辺りは皆さんでどう評価するかという観点で検討していただきたいと思います。

あと、ネット検索でアクセスしたというネット検索をアポイントメントセールスの要請手段に加えるべきではないかというのは、途中で御説明したとおりです。

あと、SNSの発信者情報の開示、本人確認でいうと、SNSの事業者の種類によっては、今でも契約時に確認したものについては出すという対応をしているところもあります。やっていない事業者も残念ながらあります。その辺りは、事業者に対して特に営業に関わる勧誘的なやり取りをしているところは、住所、連絡先というのは通信の秘密とかの問題ではない、匿名発信の自由の問題ではない。むしろ特商法で言えば表示義務の問題なのだから、そこを出すというのはプロバイダ責任制限法の問題以前のところとしてきちんと出すべきだというところは解釈運用としても現状でも言えなくはないし、むしろ明確にする意味では本人確認義務あるいは発信者情報の開示というところまで踏み込んだ検討をしていただけると幸いです。

あと、そもそもコミュニケーション型のSNSの場合は、営業活動に利用することは禁止行為として規約の中にある。大手のところを少し調べたのですが、営業活動に使用してはならないと書いてあるのです。事業者の公式アカウントと言って営業活動に使っていいパターンのアカウントの設定もありますが、逆に言うと、そこでも情報商材とかこれこれには使ってはいけないというような線引きがあります。

だとすると、そのコミュニケーションSNSで営業活動に利用している、規則違反をしているのであれば、そのことを通知したら速やかに利用停止措置をとるということをしていただいてよいのではないか。この辺りも検討課題ということになります。

あと、この間の問題意識のところでは触れていないのですが、いろいろなサイトがデジタル・プラットフォームの形で、余り大手はいないのかもしれませんが、中小も含めて、デジプラ業者あるいは検索サイトとか広告配信業者というところを通じて、いろいろ広告をあちこちに出している。となると、そういうところも、不適正な広告であるということが分かれば、そのことについてきちんと連絡先を確認して、それをトラブル防止のために消費者の側に対して連絡を密にできるように開示してあげるとか、あるいはそういう不適正な表示をやめさせるなど、努力義務ではあるけれども、デジプラ業者については一定の義務規定がある。それを少し活用する。

最後に、これは前半の質問にもありましたが、決済手段提供者の加盟店管理措置のことも是非検討していただきたいと思います。決済について言えば、アクワイアラーあるいは一部の決済代行業者については、登録制や加盟店調査義務という形で規定があるのですが、海外ルートで決済代行が国内に戻ってくるという中で、残念ながらきちんとそれが対応できていない無登録業者のケースは今もたくさんあります。経産省から国際ブランドに連絡して違法な決済ルートを是正するというような方法もあるはずなのですが、残念ながら実行されていないというようなところもあります。

そういう点も含めて、実態を可能な限り把握していただいて、様々な観点で問題を議論していただければと思います。

予定時間を超過しましてすみません。ありがとうございます。

○後藤座長 どうもありがとうございました。多岐にわたる問題点を御指摘いただきました。大変貴重な御意見をありがとうございました。

それでは、御質問、御意見をいただきたいと思います。意見交換の時間は40分程度を予定しています。よろしくお願いいたします。

丸山委員、よろしくお願いいたします。

○丸山委員 池本先生、本日は御説明どうもありがとうございました。非常に詳細に現在の問題の解決の方向性を示していただいていると思います。

その上で、私が思ったところと確認させていただきたい点を幾つか述べさせていただければと思います。

まず、資料の5ページの(3)検索サイトの広告表示を見てアクセスするというケースについて、法改正の課題があるのではないかという御指摘をいただきました。この点につきましては、確かに要請を受けて次に電話でのやり取りというのがもちろんありますので、この要請の段階というのを緩めてもよいのではないかという先生の御提案に共感はしたのですけれども、もし緩めたら真っ当な実務が困りそうな反論がきそうなポイントなどが何かございましたら、御教示いただければ有り難いと思いました。

次に、6ページで紹介していただいている、少額の契約を締結した後に高額の勧誘に進むケースというのは昔からあるところで、最近も非常に問題があるような商法ではないかと思っております。高額な契約を結局結んでしまう理由というのは、ケースによって多様ではないかとも思っております。水漏れ事故の場合の修理しなければいけないからともかくしてしまうという場面と、投資の場面とでは少し違うのかなという点もありますので、どういった対策が一番よいのかというのは詰める必要があると思っているのですが、7ページに指摘されている販売業者の営業目的が当初から高額契約に当たると評価される場合、これは消費者庁の指針ですが、最初から高額契約目的と評価できるというのは、現在の実務では、どういった事実から評価しているのか教えていただければと思いました。

次なのですけれども、実務の感覚として教えていただきたい点としまして、事業者の連絡先が分からないという事例が一つのケースとして問題だと御指摘いただきました。これは国センのご指摘にもあったのですけれども、仮に電話勧誘販売の規制というのがかかるとなっても、どうなのでしょうか。決済をしてしまって、業者と連絡が取れなくなるという場合に、全てそこで解決できるのか、それともアプリなどでやり取りしているときに何らかの事業者の正確な情報を表示させるような義務などを、仮に電話勧誘販売への規制を及ぼしていく場合でも、考えたほうがよいのかという点を感触でいいので教えていただければと思いました。

最後に、11ページのSNSによる誘引行為があってウェブサイトで申込みをするというところで、これをどうしたらよいかというのが、やはり課題になるだろうということは、御指摘のとおりだと思いました。法改正など、一定の対応を働きかけていく場合には、やはりそれに対する懸念や反論にも再反論していかなければいけないと思うのですけれども、先生も恐らく御指摘されておりましたように、電話と違うところがあって、例えばツールによってはブロックをしてしまって連絡をできなくするような対応も可能であったり、あるいは副業という自分の興味、関心に従ってもともとアクセスしたりしておりますので、訪問販売や電話勧誘販売とはやはり不意打ちと言っても出発点が違うのではないかという指摘を受ける可能性はあるのではないかと思っております。

そのときに、こういったメッセージのやり取り、私の経験では個別のやり取りというのは非常に親密性を増すというような要因もあると思うのですけれども、電話勧誘や訪問販売とは違うという指摘を受けたときに、SNSならではのこういった会話の問題性としては何を指摘することができるのか、補足的に教えていただければと思いました。

以上です。

○池本氏 御質問ありがとうございます。いずれも非常に重要なポイントになるところだと思います。

まず最初に、検索サイトからアクセスした場合に、その検索サイトが勧誘目的を明示していない場合に、アポイントメントセールスの誘引手段にそれが今入っていない。それを広げることに何か逆の懸念なり、広がり過ぎるというような、反論は想定されるのではないかというところがありました。実は、これは特商法の以前の議論のときに、現行法は紙ベースの場合もビラ、パンフレットと書いてあって、ポスターを入れていない。これは、最初の段階から積極的な誘引活動が始まっているという行為形態にしてあるのですと。そうでないと、広告一般について、それを見て電話をかけて、そこへ販売目的が明示していないと電話勧誘販売に当たるという拡大し過ぎるから、そこを線引きしているのですという趣旨の説明を事務局から聞いたことがあります。それがネットの場合でもSNSのように送信するケースと掲示するケースということになるのだろうと思います。

ただ、送信するSNSと言っても、SNSにもほとんど不特定多数に向けて、公開されたSNSもあるし、あるいはビラ、パンフレットはいいけれども、ポスターは駄目と言うけれども、それだけのものをどう配布するか。配布の一手段として掲示するということもあり得るわけで、勧誘に当たる積極的行為がスタートから始まっているかどうかという曖昧な基準を使っているだけで、そこは余り区別する必要はないのではないか。むしろ漠然と広告一般が特商法上規律対象になるというような不安、危惧の問題になっているのではないか。むしろ、販売目的を告げないで電話をかけさせる、あるいは呼び出すというところをきちんと説明していくことが大事なのかなと思います。これが第1点です。

2点目の、少額から高額へのところ、最初から高額契約であるものをというのは、過去の特商法による行政処分事例の中で3,000円で床下予防消毒とか、そういう訪問販売類型の中で、一旦契約をして実行しているのだから全くうそをついているのではないという主張に対して、そもそもその少額契約だけで訪問して何か作業をして点検してということが、営業としてそれ自体で採算を取る事業になっていないではないかと。それに対して、現実にそこで問題ですよ、その先がありますよというふうにしたトラブルが多発しているのではないかというような形で、違反認定を取ったというものがありました。

ですから、今回のケースも、その少額のものというのが、その少額のもので何をどれだけやるのか。実際にはそれは次の勧誘のための誘引の手がかりにすぎないというのはその実態から聞き出していくのかなと思います。

それから、事業者の連絡先が分からないという点ですが、まず、直接最終的に契約締結をするウェブサイトなどで表示がない。これは、仮にSNSを電話勧誘販売に入れれば、契約書面上記載がきちんとしていないということになるので、クーリングオフ起算日に影響するでしょうが、実はそういう問題だけではなくて、SNSをきっかけとして入口、勧誘場面にまで誘引するところでも、実は連絡先と事業者との関連性を解明することで解決できるのですが、それができないというということがたくさんあります。そういう場面では、電話勧誘販売の規律を入れるというようなことだけでは解決できない大きな問題が残ると思います。

最後に、SNSやウェブで契約するという、これはSNSそのもので直接意思形成に向けた勧誘があるという認定のことで、最終的には電話の場合、その会話の中でなかなか切りにくいという言わば一体の勧誘ということと、それから、不意打ち性という2つの要素が同時に認定できるということでしょう。それに対して、SNSの場合は、一回のSNSのメッセージで契約締結まで一挙にやるということはあり得ないわけで、正に電話の会話と同じように、こう言ったらこうなって、更にこう言ってというやり取りがあります。その返事をしない者に対してどうなっているのとまた催促をしたりすること、先ほど遮断するとありますが、遮断するという意味では、電話勧誘だって一回で一挙にだけではなくて何回かに分けていって、その電話番号を切ればいいではないかと言えば、電話勧誘販売も切ることができるのだと言ってしまえば成り立たないわけです。

問題は、SNSの連続性、必要性というようなものが電話勧誘販売の実態とどのぐらい近接性があるのかというところが、事例を集めた上で最終的な価値判断の問題になるのかなと思います。

以上です。

○丸山委員 ありがとうございました。

それでは、黒木委員、よろしくお願いします。

○黒木委員 黒木です。

池本先生、どうもありがとうございます。

9ページ以下の対策というのは、既にこのワーキング・グループにとっては答えではないかと思っているのですけれども、ただ、まだよく分からないところがありますので、その答えにどう骨づけするかという観点で、まず、10ページの(2)ですけれども、アとして消契法4条の「勧誘」と評価して、不実告知取消しのことを議論していただいていますけれども、ここについて解釈運用の周知、法改正の検討というのが検討課題だと赤にしてあって、矢印で先生の問いみたいに書いてあるのですけれども、これが一つの肝かなと思うのですがこの中身をもう少し詳しくお知らせいただければと思います。

続いてですけれども、今度は12ページです。(5)SNS事業者による発信者情報の開示・本人確認等の対策は非常に重要な問題だと思っております。8ページでも少し説明をいただいたと思いましたけれども、これがきちんとできれば半分以上解決するのかもしれませんので、もう少しこの辺りについての議論をお示しいただければと思います。質問の2点目です。

そして、最後は14ページ目の(8)です。これはキャッシュレス、つまり、SNSでいろいろな形をやったときに、リアルの現金のやり取りというのは、誰かがやってきて貸金業者のところに連れていくというのはまた別の議論ですけれども、基本的にはネット上で完結するとすると、やはりアのクレジットカードあるいはイのプリペイド決済という問題が出てくるだろうと思います。この中で、(8)のイの海外アクワイアラー経由の無登録決済代行業者について、今、本当にどうなっているのか、現状はどうなのかということについて、実情の検証と書いてありますけれども、この辺りについて先生の御認識をもう少しお知らせいただければと思います。場合によっては、この辺りは消費者委員会として経産省とかにもう少し具体的な内容を聞いて、この問題を深掘りする必要があるのではないかと思っておりますので、この辺りについて、先生の御認識を示していただければと思います。

以上3点です。よろしくお願いいたします。

○池本氏 御質問ありがとうございます。

3点いただきまして、まず最初のSNSのメッセージのやり取りで誤認した場合の、不実告知取消しがどうかと。これは先ほどごく駆け足で御説明したのですが、最高裁判決がありますので、その解釈論を周知するというのがまず一つ、直ちにできることだろうと思います。ですが、広告でも文字のメッセージの中身が具体的であって、それで契約締結の意思形成に影響を及ぼすようなときには勧誘と評価し得るという抽象論しか判決は言っていませんから、この場合もそれに当たるのだという規範として周知というふうにはなかなかならない。

実は、2番目の消費者契約法の勧誘の概念に含むべきだというのは、消費者委員会の消費者契約法専門調査会で以前にさんざん議論したところです。もちろんあれは最高裁判決が出る前に議論したことだから、もう一回議論する余地はあるのだろうと思うのですが、消費者契約法に入れるとなると、それこそ新聞折り込み広告だけではない、あらゆる広告全てについて適用されるという話になって、範囲や影響、それから、どういう場合がそれに当たるのかという規律は厄介な問題が出てくるのではないか。それに対して、私はこれは特商法改正が一番適切かなと思うのですが、通信販売だとその広告を見て電話なりネットなりで契約するから因果関係は明白ですし、特商法の場合は以下に列挙するような重要事項について誤認が生じたときというような特定商取引法の6条と9条の取消権をリンクさせるような形で要件を絞ることによって、事業者にとっても何でもかんでも適用されるわけではないのですよとできるのではないか、という特商法の見直しということです。

もっと言えば、効能・効果の部分は全くなくて、契約条件のところは特定申込画面のところに規制があるので、効能・効果の足りないところが物すごくクリアになっているという意味で、立法課題としてもかなり絞れるのかなという気がします。

2番目の発信者情報の問題です。これについては、丁寧に説明すると物すごく時間がかかってしまうのですが、本当は携帯電話不正利用防止法の対象が音声通話という言葉を使っていて、電話とはSNSのIP電話は含まれない、あるいはデータ回線でデータ通信をしたものを音声に転換しているアプリなのだという物すごく厳密な解釈でやっているのです。特商法の別の場面では、先ほど言った電話勧誘販売に当たるかどうかの入口のアポイント型の電話勧誘の誘引手段のところについては、IP電話でもいいという解釈を以前から既にとっているわけです。だから、そういう発想からすると、電気通信事業法上の登録制だとか、業態としての規制対象の枠組みの話と勧誘方法としての規律というのは分けて、実態に合わせて規律してよいのではないかと感じています。

最後、アクワイアラー、決済代行業者に無登録業者が多いということですが、御紹介したいのは、割賦販売法は2014年11月27日の割賦販売小委員会での審議を踏まえて平成28年改正につながっているのですが、この11月27日の小委員会では、Visaの日本法人を招いてヒアリングを行っています。そのときに、私たちの中心的な関心は国際ブランドのルール、チャージバックルールがどうなっているのかということを質問していたのですが、実はチャージバックだけではなくて、Visaのルールの中にVisa Global Brand ProtectionというGBPPというプログラムもございましてというような話から始まって、Visaはそのイシュア、カード発行会社とアクワイアラー、言わば加盟店のいる両方の国の法律で両方とも合法でなければいけない。それぞれの法律に従わなければならないとなっていて、審議上のやり取りでも、法令違反があったら、Visaは会員であるアクワイアラーに対してちゃんとそこは是正しなさいと指導して是正を求めていますというやり取りがありました。

だとすると、行政処分は海外業者に対してはできませんが、経産省がVisaに対してこの決済ルートは日本国内の決済代行業者を登録していない、海外業者も登録していない、このルートは全て違法な決済ルートですよ、それが今も継続していますよ、ということを経産省から国際ブランドに言えば是正されてしかるべきなのです。あるいは、少なくとも日本国内にいる決済代行業者は違法なことをやっているのだからやめなさいとできるはずなのですが、残念ながら、あるいはやっているのかもしれませんが、効果は十分得られていない。昨年、サイト被害弁護団が経産省に申入れをしましたが、その業者の中の一つは最近見なくなったと言っていますけれども、何か指導があったのかどうかは分かりませんが、それ以外のたくさんのところはいまだに同じようにやっている。だから、この辺りはもっと一つの政策方針として、きちんとやっていただければと思います。

以上です。

○黒木委員 ありがとうございました。

○後藤座長 それでは、板倉委員、よろしくお願いいたします。

○板倉委員 池本先生、ありがとうございます。

私の関心は専ら匿名のところを何とかせよという話で、先生の御解決の一つは、勧誘の段階で当然通販事業者は名前を出すべきなのでということで、13ページの検討課題イで書いていただいているのですが、恐らくこのSNS勧誘というのは、介入している手下みたいな人たちも連絡先とかを知らないでやっている人がいるのではないかというところで、これはどうしたらいいでしょうかということ。

その場合に、私は詐欺加担者開示請求権みたいなものをつくったらいいと思ってはいるのですが、どこまでの人を対象にするかというのももちろんあって、詐欺っぽいサイトだけれども、シェアしただけで全部開示されるとなると、さすがにそれは私もやり過ぎかなとは思うのですが、レンジで開示させるとして、そうすると加担してしまった個人も対象として開示させるしかないと思うのですが、どういう人であれば発信者情報開示みたいにIPとタイムスタンプを出してもらってというところからですけれども、出していいでしょうかというのが2つ目です。

3つ目は、確かに携帯電話防止とか本人確認を義務づけてもいいのですが、SNS事業者も基本みんな海外事業者なので、電気通信事業の届出は海外事業者も割と言うことを聞いてくれたみたいですが、本人確認とかをやれと言っても、結局、音声アプリと言ってもFacebook MessengerやZoomなどになると思うのですけれども、実効性をどう保ちましょうかというのが3つ目です。

以上です。

○池本氏 御質問ありがとうございます。そして、非常に悩ましい、難しいポイントを御質問いただきました。

まず、SNSの場合には、自らが契約主体という形でやり取りをして、最後まで自ら完結するというよりは、ウェブサイトを紹介したり、あるいはウェブ説明会などを紹介したりという正に取次ぎ役、紹介役にとどまっているケースが大半だと思います。その意味で、通信販売事業者そのものに当たるのだから、それを当然に開示せよという言い方もなかなかできない。ただ、SNSの規約を見ると、営業活動に利用することはいけないとなっていると、正に営業上の紹介活動をしているという認定ができれば利用差止めとか、規約上の違反の認定のレベルと法的な責任がどうかというのは恐らく線引きとしては違うのだろうと思います。

ただ、違うのですが、例えば弁護士法で開示を求めるにしろ何にしろ、民事の責任として追及していくというときには、正に被害を受けた者から見て、この者からこういう言い方をして勧誘されていたのだと。これは単にあそこはよかったよという感想ではなくて、こういうふうにすればもうかる、それについてはここでやっているという紹介活動に及んでいるという事実を出していけば、言わばどういう事実が出されたときにはそれについて勧誘者として開示するというルールの要件設定の仕方の問題辺りで、かなりのところは解決できるのかなと思います。

最後の海外事業者が多くてどうルール化していくかというのは大変悩ましい問題ですが、そこはむしろ昨年から今も取り組んでおられるデジプラの事業者について働きかけなどと同じように、逆に海外の事業者であってもグローバルな形でやっているところについては、国内での協議会のような形で来てもらって、しっかりとルールを徹底してくださいと言っていけば、ある程度対応する余地があるのではないか。ただ、今、現場のサイト弁護団などから聞くと、あるいは埼玉弁護士会の意見書でも紹介していますが、日本国内の事業者が一番対応がよくないというような実態も残念ながらあります。だから、ここはやはり線引きのルールをつくって実行可能な、こうやればこの範囲はちゃんと根拠を持って開示できるルールにしてよいのではないかというようなところで、まずはそういうある程度大手の事業者に見解を聞く。自主的なところでクリアな線引きができるのか、できなければ法的なルールを定めざるを得ないのだけれどもという辺りは少しやり取りをしていただく必要があるのかなと思っています。

以上です。

○板倉委員 ありがとうございます。

○後藤座長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

私も池本先生に1点お伺いしたいのですが、11ページの(3)なのですけれども、多岐にわたる問題を指摘していただきまして、その中で法改正の検討という形でまとめていらっしゃるところは余り多くないのですが、ここは法改正の検討ということで、SNSによる誘引行為プラスウェブサイトで申込みの事案を電話勧誘販売に位置付けるべきではないかという御提案です。私も迷うところなので教えていただきたいのですが、事業者側から電話をかけるとか、あるいは消費者に電話をかけさせるという態様ではなくて、ウェブサイト上で申込みをするという事案ですので、まず第一には通信販売の問題という位置付けが考えられるのではないかと思います。たしかに、通信販売の場合には表示・広告規制はありますが、電話勧誘販売で定めているような勧誘規制は規定されていないわけでありまして、そういう意味から言って、電話勧誘販売の規定を使うというのは非常にメリットがあるとは思うのですけれども、むしろ改正の幅としては大きくなってしまう、大改正になってしまうとは思うのですが、通信販売の中に勧誘規制に当たるものを位置付けていくという改正の方向性もあり得るのではないかと思います。そこのところ、言わば大きな改正を志すのか、そうではなくて電話勧誘販売というところで考えたほうがやはり現実的だというようなことでお考えになるのか、その辺について教えていただけたら有り難いと思うのですが、いかがでしょうか。

○池本氏 非常に示唆に富む御質問をありがとうございます。

実は、ここの考え方は電話勧誘販売以外は考えられない、通信販売で勧誘規制的なものを入れるということを検討し切った上でこれを選択したというところまでは、残念ながらできていませんでした。むしろ、通信販売の中でも、単に広告を掲示して、本人の判断に委ねるだけではない、そこへ誘引がくっつくというようなケースを考えていく余地はあるのかもしれません。

現在の通信販売の規律というものは、広告に書いてあるものを見て、主体的にアクセスして、申込みをして、そして、契約締結に至るというその最後の契約締結のプロセスのところだけで規律しています。そこだけで規律しているところへ、入口に何か勧誘行為というものを入れるというと、電話勧誘については電話勧誘販売という通信販売の中で除外して独立の規律を置いていますが、通信販売の枠の中でSNSのような、ここで言うSNSウェブサイト業者の関係者が誘引しているという場合を認定できる前提にしてはいるのですが、それを入れるというのが現在ある広告規制や申込み画面規制などというルールの枠の中で果たして埋まるのだろうか。そう考えたときに、私は広告表示を見て自ら判断をするというものなのか、積極的な勧誘、音声による勧誘なのか、文字、メッセージによる勧誘なのかはともかく、勧誘によって意思形成に至る。意思形成に至ったものを申し込む手続がこのウェブサイトだとなると、電話勧誘販売かなと。そういう大枠、現在の通販よりはこちらかなというだけで、その中間項の通信販売の中でもう一つの特則を置くというところは、残念ながらそれ以上の検討は私はできていません。むしろいただいた御指摘を含めて、私自身も少し考えてみたいなと感じているところです。

すみません。答えになっていないのですが、よろしくお願いします。

○後藤座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。

どうぞ。

○清水委員 今の件ですが、SNSのやり取りからウェブ説明会等で誘引する事案というのが、私たちもPIOにきちんと書けばいいのですけれども、不特定多数に対してという感じではないのです。明らかにやらせといいますか、昔ながらのSF商法ではないですけれども、周りには協力者がいて、でも、初めて参加します的にウェブ会議に出てきて、これはいいとかと言いながら、あなたのために、ここだけ、今だけ、あなただけという勧誘をしてきますので、池本先生が言われるのはそのとおりと。私たちはなかなか法律がなくても交渉しますので、ただ、情けないですが、事業者の弁護士が出て、悪質な弁護士が出てくると、何を言っているのだとけちょんけちょんに言われてしまうのです。実態としてこれから見ていっていただけたらと思いますので、相談員の私たちがきちんとウェブとかセミナーはいかにやらせであるかというのをPIOに書いていきたいと思います。

以上です。

○池本氏 池本ですが、今の御発言に関連してよろしいでしょうか。

今、指摘された実体論は全くそのとおりだと思いますが、実はこの11ページの(3)は、友達登録をしたSNSで相対のメッセージだけのやり取りをして、それで契約締結にまで意思形成を高めてしまうケース。だけれども、清水委員がおっしゃったのは、テレビ会議システムなどでほかの人も含めて、言わばその場面では今度は音声も含めてやっているので、それは解釈運用の中でも電話勧誘販売に当たるのだということは、解釈のところで明確に委員会としても打ち出していただきたいところで、それに入らない、その一歩先も何とかならないかなというところですので、よろしくお願いします。

○清水委員 会ってもいない、しゃべってもいないと言っても、今のSNSはチャットというかほとんどしゃべっているのと一緒なのですよね。会っていないのにウェブを見てというのも本当に現場でもありますので、これも電話勧誘と現場でやり合っているところです。

混乱してごちゃごちゃして、失礼しました。


《4.閉会》

○後藤座長 よろしいでしょうか。

国民生活センター様、池本様、御説明をいただきどうもありがとうございました。

SNSの利用が増えている一方で、本日、国民生活センターから御発表をいただきましたとおり、SNSが悪質な情報商材等のもうけ話のトラブルのきっかけとなっていたり、また、勧誘のツールとしても利用されていること、とりわけ若者が被害に遭っていることが分かりました。成年年齢の引下げが目前に迫っていることもあり、速やかな対応を要する重要なテーマだと改めて認識いたしました。

また、池本弁護士から御指摘いただいたとおり、現行法の枠内で対応できる課題と関係法令や業界等の自主的取組の在り方について検討が必要となる課題があります。今後、関係する事業者や団体有識者、関係省庁等からのヒアリングを行い、引き続き委員、オブザーバーの皆様から御意見をいただきながら、被害の防止救済の観点から検討を進めてまいりたいと思います。

本日の議論は以上になります。

最後に、事務局から今後の予定等について御説明をお願いいたします。

○太田参事官 本日は大変御熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。

次回の開催につきましては、日程が決まり次第、消費者委員会のホームページを通じてお知らせいたします。

以上でございます。

○後藤座長 それでは、よろしいでしょうか。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)