第9回 消費者関連情報の提供の在り方検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2021年7月7日(水)13:00~16:01

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

【構成員】
新川座長、受田座長代理、片山委員
【オブザーバー】
生駒委員
西田佳史 東京工業大学工学院教授
高巖   麗澤大学大学院経済研究科教授
【事務局】
加納事務局長、渡部審議官、太田参事官、大岡企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者問題解決のDXについて(西田委員御発表)
  3. ワーキング・グループ報告書(案)に係る審議
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○大岡企画官 定刻になりましたので、会議を始めさせていただきます。

本日は、皆様、お忙しいところ会議に御参加いただきまして、ありがとうございます。

ただいまから、第9回「消費者関連情報の提供の在り方検討ワーキング・グループ」を開催いたします。本日は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、テレビ会議システムにより開催いたします。

本日は、新川座長、受田座長代理、片山委員、生駒委員、高委員、西田委員がテレビ会議システムで御出席です。八木委員は御欠席です。

テレビ会議システムによるワーキング・グループの開催に当たりまして、委員の皆様にお願い申し上げます。

1つ目に、ハウリング防止のため、発言者以外の方はマイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。

2つ目に、御発言の際には、マイクのミュートを解除し、お名前をおっしゃっていただきますようお願いいたします。発言が終わりましたら再びマイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。

なお、御発言のタイミングがつかめない場合には、チャットに「質問」や「発言」などと入力していただきましたら、座長から発言者を指名していただきます。

3つ目に、音声が聞き取りづらい場合には、チャット機能でその旨をお知らせいただきますようお願いいたします。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お手元の議事次第に、配付資料一覧が記載されております。資料に不備がございましたらお知らせください。

よろしいでしょうか。

以降の議事進行は新川座長にお願いいたしますが、今後、もし新川座長が未接続になり受田座長代理が接続されている場合の進行は、受田座長代理にお願いしたいと思います。また、新川座長、受田座長代理がともに未接続になった場合の進行は、事務局で行いたいと思います。

それでは、新川座長、議事進行をお願いします。


≪2.消費者問題解決のDXについて(西田委員御発表)≫

○新川座長 それでは、本日の議題に早速入らせていただきたいと思います。

このワーキング・グループは、消費者関連情報につきまして、事業者等と連携した新しい情報提供のルートについて検討するということで進めてまいりました。

本日は、ワーキング・グループの報告書(案)の御審議をいただかなければならないのですが、その前に、一連の情報提供の議論の中で、AIの活用や、あるいは新たな情報技術の活用といったところが大変重要で、そこの参考とさせていただくために、消費者問題解決のDXということについて西田委員から御発表をいただきたいと思っております。

それでは、大変恐縮ですが、15分程度で西田委員から御発表をお願いできればと思います。西田委員、よろしくお願いいたします。

○西田委員 よろしくお願いします。

お時間を取っていただいてありがとうございます。

今日は、データの活用の可能性ということで、少し話題提供に近い部分になるかと思うのですけれども、こういうことができるのではないかということについてお話しさせていただきたいなと思っています。

消費者問題解決の支援のためのデジタルトランスフォーメーションということで、全部AIで何もかもできると私は思っていないのですけれども、人とAIのハイブリッドということでよい活用というのは可能なのではないかと思っています。

これはちょっと込み入った図なのですけれども、これまで議論してきて、左上のところなのですが、事業者や消費者、行政というのがステークホルダーでいて、どちらかというとバーサスに近いような、対立関係というわけではないのですけれども、そういう構造があることから今回のこの会議体では脱却して、おのおの3者が持っているよい側面を使って、安全な市民生活を共創、デザインしていこうという方向を目指していきましょうというような方向なのかなと思っています。

事業者は消費者とつながるいろいろな場とか、既に消費者によく知られているメディアをお持ちということで、そういう力がある。

消費者に関しては、実際に事業者とか行政がなかなか把握できていないような実際のいろいろな生活場面での詳細な情報、どういうふうに不具合が起きているかとかという情報をお持ちである。

行政に関しては、これは言わずもがなですけれども、いろいろな集約された情報、行政でしか持っていない情報もあるし、合意形成という意味でやはり信頼のある動き方ができるということで、3者いろいろな力をもっているということで、これを結集するというのは大事なのだろうと思っています。

データに関してなのですけれども、PIO-NETのデータが一つの代表例ですが、たくさん集まっているけれども有効に活用されていないというか、分析可能なオープンデータとして使われていないものというのは国内にいろいろあるかなと思っています。PIO-NETのデータ、消防庁の救急搬送のデータ、日本スポーツ振興センターの学校事故のデータ、国センと消費者庁がやっている医療機関ネットワークのデータ、こういうものは行政でしかアクセスできないし分析できないというような位置付けかなと思っています。

従来、分析しようと思っても人手では、なかなかできないということがあって、PIO-NETは100万件、東京都の救急搬送は10万件、学校の事故データも100万件という感じで、膨大過ぎてなかなかできなかったのですが、最近は人工知能を使うことでテキストマイニングを使えて、人が全部読み込まなくても、人が解釈できるというか人が利用できるようなものに加工することが可能になってきています。ここは多様なコンテンツと書いてありますけれども、そういうものができるようになってきているのかなと思っています。

なので、こういうものを使って、プライバシーがあるような個人情報は落としながら、しかし、典型的で重要な事例に関してパターン化して分類して、それを知らせていく。そういうことは大分できるのではないかなと思っています。

一番下のところですが、そういうデータソースがあれば、PIO-NETをそのまま生で公開するのは難しいとしても、個人情報はなくし、わかりやすく加工されてパターン、分類化されたものであれば、事業者がイノベーションに使って本業のほうのサービスを改善していくであるとか、消費者団体とかコミュニティーでいろいろな危険情報や消費者被害の情報を啓発として使っていくということは十分できるのだろうと思います。それから、最近であればLINEやスマホ、AIスピーカーなどから、AIを使って整備された知識にアクセスして問い合わせるというようなこともできるのかなと思っています。

具体的な事例ということで、PIO-NETのデータは我々もなかなか分析ができないということなので、これは学校事故のデータです。だから、中身は大分違っているのですけれども、100万件近く集まっていてなかなか有効に利用されていないという点で共通しているかなと思います。

表に書いてあるのですけれども、「小学校」「捻挫」のほか、「体育の時間、走り幅跳びをしていた。踏切の時右足を捻り負傷した」と状況が自由記述文で書かれている部分があり、この自由記述の部分がなかなか従来分析できませんでした。左側の「小学校」とか「捻挫」、「骨折」というのは統計処理がしやすかったのですけれども、右端の状況記述文のところはなかなか難しかった部分です。これがテキストマイニングで、分析できるようになってきたということです。

今日はその一例なのですけれども、典型的でかつリスクが高いものという分析ができないかということで、これは私の研究室でたまたまやったものですが、状況リスク比分析というものをやってみたということを御紹介したいなと思っています。

まず、99万件の事例から機械学習により表現の学習を行います。どういう表現が事故状況を説明するのに出てくるのか。どういう単語はどういうものと似ているのか。例えば衝突するとかぶつかるとか、同じ概念を違う言葉で表現されていたりするのですが、これを、従来の方法だと人が広辞苑みたいな辞書を作って定義しないと、これとこれは同じ、例えば、先ほどの衝突とぶつかるは同じ意味であるという関係を、基本的には人が全部定義しなければできなかったのですけれども、最近はこれを、ある程度、機械学習で分析できるような手法が出てきています。

詳細は省くのですけれども、そういうものを使った例を示します。これは鉄棒の事故というものが8,031件あります。一個一個は鬼ごっこをしていてくぐろうとして頭にぶつかったとかということが書いてあるのですけれども、それをテキストマイニングを使って分類したものが中央の図になります。この中央の図の一点一点、これは8,031点あるのですけれども、一点が一つの事故事例の文章です。何百字かで書いてある文章がこの一点に変換されるというふうに理解していただけるといいかなと思います。

この真ん中の図の中で近い位置に配置されると文章が似ているということを表していて、それを30個に色分けしたものです。これは30色あるのですけれども、オレンジ色とかピンク色とか緑色とか、それは大体似ているという意味です。最近の技術を使うと、ここまで自動でできます。一つ一つ見ていくと、鬼ごっこをしていてぶつけたとか、例えばオレンジのところだったら手が滑って落下して手をついたとか、こういうものが出てきて、鉄棒もいろいろなことが起きるのだけれども、典型的にはこんなことが起きていますよというのを割と瞬時に出すことができます。

その中で特に重症になるものというのは何なのかという軸で見たのが右下の図です。赤色のところが骨折しやすいということを表していて、ちょっと見づらいのですが、中央の図と右下の図は座標軸が同じになっているので、右下の図で赤色のところと中央の図で赤色に相当するところを見ると、どれが重症を起こす状況かというのが分析できるという手法です。この場合は手が滑って落下して、手を付くと前腕骨折するとか、こうもり振りという危険な遊び方があるのですけれども、それをして地面に落っこちて骨折したとか、そういう状況が危険性が高いですよというようなことが出てくるというものです。

こんな感じで、雲ていの事故とか、滑り台の事故など同様に分析できます。滑り台も同じですけれども、鬼ごっこをしていて滑り台をくぐろうとしたときに頭をぶつけたとか、階段で登ろうとしたら落っこちてしまったというものが典型的な状況として出てきています。

砂場も事故が多いのですけれども、調べてみると、実は走り幅跳びをたくさんしていて、走り幅跳びのときに着地を失敗して骨折するとか尾てい骨を骨折したというのが典型的ですよとか、スコップですくった砂が目に入るとかというのが結構起きていますねというようなことが出てきます。

こんな感じで、データをうまく分類してくれる。それから、この日本スポーツ振興センターのデータの場合、自由記述による状況説明の他に、骨折など傷害に関するデータがありますので、どれが重症につながっているかということも分析できます。消費者の問題の場合には、何か費用的な情報があったり、ほかの軸でこれは大事な問題だという指標があれば、それを使うことによって、典型的かつ重要なものを見付けるということが比較的自動でできるのかなと思っています。

これは市民の還元の例ということで、遊具の場合は学校関係者に典型的な事故はどういうものかというのをこういうワークシートにして配付しました。これは今年の春に全国の学校に向けて公開したものですけれども、こういうもので還元しているという例です。

ここまでがテキストマイニングを使うことで、ビッグデータ、たくさんのデータがあると適切に分類をしてパターンを見付けることができますよという話なのですが、その応用についてもお示ししたいと思います。これは、最近起きた事例を入力すると、近い将来というか、これに関連したもっと重症事例を見せてくれるというソフトです。これはあまり見栄えがよくないのですけれども、同じように遊具の事故で、例えば、「体育の授業中に前回りをしていたところ、手が滑り落下した」と入力すると、それに似ているもので、もっと重症な事例として、ここに書いてあるような、鉄棒をしていて落下するというのはたくさん起きているのだけれども、その中では骨折とか捻挫に至っている。たまたま学校で起きたのはインシデントって何も起きなくて痛いぐらいで済んだものかもしれないけれども、実は給付金額が1万1904円の捻挫とか骨折になっている事例がありますよということで、似たようなものの中で、更に重症の事例というものを検索し見せてくれることも可能です。これは、ある種の予測、こういう重傷事故が起き得ますよということを予測してくれる技術ということもできるかなと思っています。この辺りも遊具以外に、消費者問題であっても、類似事例があるはずなので、消費者のいろいろな課題でも使えるのかなと思っています。

これも、滑り台の事故に関しても、何か入力すると、実はこういう同じような状況で骨折に至っている事例がたくさんありますよというようなことが出てくるということです。

この図は、消費者の相談データというものが何に役に立つかということを示したものです。大きく分けて、いろいろな危険情報とか被害の情報を市民、消費者に伝えて啓発していくという方向と、もう一つ、企業側、事業者側で本業のほうのサービスを市民が安全になるように、ある意味市民が気を付けなくても大丈夫なようにサービスや製品の方を改善していくというイノベーションの方向と2つあるかなと思います。本当は社会側で集められたデータというのを企業のもの作り側にうまく還元できる、フィードバックできると、いろいろな応用ができるのだろうと思っています。現状では、こういう知識循環というかデータの循環というのがなかなかできていないと思います。安全基準を作ったり、イノベーションを起こしたりということはなかなかできていない。この図ではコミュニティーとか消費者団体の知識循環のループが抜けていますけれども、この図にそういう消費者支援の知識循環というのも加わるようなものが一つの理想形かなと思っております。

ということで、以上ですけれども、私のほうから消費者問題解決のDXということで話題提供をさせていただきました。御清聴ありがとうございました。

○新川座長 どうもありがとうございました。貴重な情報をいただきました。

学校事故の事例がどんなふうに役に立つのかというのをお伺いしていて、これはPIO-NETの情報なども本当にうまく使えば、こういう新しい組立て方や注意情報というのをより機動的に提供していける。それから、提供先などのターゲティングもうまくできるかななどと思いながらお話を聞いていました。

それでは、各委員からそれぞれ御質問や御意見をいただいていければと思います。どうぞ御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いします。

どうぞ。お願いします。

○高委員 高です。

西田先生、ありがとうございます。

今の話をお聞きしていたら、これはデータさえ利用を許してもらえれば、消費者問題に関わるところのDX化というのは十分進めていける。また、企業の方々にもメリットのある形で進めていくことができるのだなという印象を持ちました。既に先生はそういうことをやっておられるので、先生御自身が汗をかいてくださるかどうかは分からないのですけれども、かいていただけるとありがたいと思って話を聞いておりました。

それで、1点お聞きしたいのですけれども、先ほど事故のケースを1つ入れると似たようなものがばーっと出てくるという話だったのですが、そのもう一歩先に行ったところで、例えば、こういう被害の兆候が出ている。そうすると、今後、ある消費者問題が顕在化してくるという予測が期待されるはずですが、これに関する取組は、先生御自身もやっておられるかもしれませんけれども、消費者の分野でほかの方々がやっておられるのか。もちろん、その予測の精度が高いかどうかというのは、使えるデータにも要るのでしょうけれども、そういった研究というのも、いくつかあるのでしょうか。

○西田委員 コメント、御質問、ありがとうございました。

大きな問題と僕が感じているのは、消費者問題というのが工学とか情報科学の分野では知られていない点です。全く知られていません。なので、まず消費者問題というものがあるということを知らせていくことが必要かなと思っています。今、先生がおっしゃられた予測に関するものとかは、例えば経済の分野とか、ああいうところでは結構進んでいます。やる気があれば、データがあればそういう技術というのはあるのだろうと思っています。現時点で取り組んでいる研究者がいるかというと、これは非常にないというか、現状はないのではないかと思っています。

○高委員 そういう意味では、新しい、攻める分野でもあるということですね。

○西田委員 そのとおりで、技術的にはかなり可能だと思います。それから、何でもかんでもAIにやってもらうということではなくて、うまく使いこなしていく方向も大事で、人側もAIを使いこなしていくという態度を持っていれば、応用がたくさんあるのだろうと思っています。

○高委員 分かりました。ありがとうございます。

○西田委員 どうしても消費者問題というと、どちらかというと文系の問題という感じなのです。理系では特に、大学等では、全然何も聞いたこともないという人が多いと思います。

○高委員 そういう意味で、こういうAIの技術などを応用できればいろいろなことができるのだなと思うのです。あまり研究者がいないということは、西田先生、これからますますこういった分野で研究を進めていただけるとありがたいと思います。

○西田委員 是非そういうところでお手伝いしたいと思っていますけれども、それは研究仲間を増やしていくということもできるといいなと思っています。研究者は助成金を付けるとすぐ動く側面もあるので、ちゃんとこういう課題があって、何とかせえと設定すると、かなり動くと思います。

○高委員 ありがとうございます。では、それは報告書に書きましょう。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

では、受田先生から先にお願いします。

○受田座長代理 生駒さんの前に失礼いたします。

西田先生、ありがとうございました。とても可能性を感じるプレゼンでわくわくして聞いておりました。

それで、今の高先生の御質問にも関わるのですけれども、PIOの情報をこのようにAIを使ってテキストマイニングの手法等で分類あるいは見える化していくということができれば、一つ消費者問題をしっかりと消費者のほうに啓発していく、また、自分事として捉えていただくという意味では極めて有効だと思うのですが、今回お示しいただいた学校事故の分析のように、PIO-NETの情報を同じように見える化するために、要は、必要なことといいますか、乗り越えていかなければいけないことを改めて伺いたいと思います。PIOをこういうふうにするために、今、どういう制約があると考えたらよろしいでしょうか。

○西田委員 一つは、まず誤解を解くというのはかなり必要かなと思っているのですけれども、PIOの話をすると生データが出てしまうのではないかと必ず誤解を受けるのです。オープンデータというと特にそういう話になるのですけれども、僕の理解では、もちろん生は貴重で、それが出せるならそれはそれでいいのですけれども、そうではなくて、パターンを見付けるということで取りあえず十分ではないかと。そこで意義があるのではないかなと思っています。

その場合は、パターンを見付ける作業をする分析者のところまでデータが来たら役に立つ分析は可能であり、いきなり国民にデータを出す必要はなくて、分析者が加工して出す。その際AIを使ってパターンが出てきて、100パターンとか30パターンとかって出ると、100とか300とかそういうものであれば、もう分析者が読めるようなデータサイズなのです。それを問題がない状態に加工するというのは人ができます。AIが全自動で個人情報を適切に消すというのは結構ハードルがあって、名前なのか、渋谷さんなのか、駅の渋谷なのか分からないなどということもあったりするのですけれども、200から300になれば全部人がやれます。100万件を200から300のパターンに縮小する部分は、AIがやる。そういう役割分担でやれば十分できるのではないかなと僕は思っています。そういうふうに使うのですよということを相談センターの方とか国民生活センターや消費者庁の方に理解してもらうといいのかなと思います。生がそのまま出ることはない。それでも十分役に立つ、予測にもなるよというところをお伝えするといいかなと思っているのです。

○受田座長代理 その誤解の部分を解いて、言葉が適切かどうか分かりませんけれども、個人情報というものがひも付けされていない形へ前さばきをしていく。そこにAIが機能していきという理解ができれば、今のようなことは、同じ100万件ぐらいのデータですから可能であるという認識でよろしいですか。

○西田委員 そういうふうに理解しています。

○受田座長代理 その上で更に伺いたいのは、このお示しいただいた、例えば鉄棒の8,031件のこういうパターン化に関して、動的に動いている様子を時系列によって更にこれに重ねていくということも可能なのでしょうか。

○西田委員 可能です。

○受田座長代理 それは技術的には全く。

○西田委員 そうです。増えていくときに分類し直すということは可能です。

○受田座長代理 実際にこうやって分類されていったときに、消費者関連情報で、まずいろいろな消費者トラブルが発生して、それがまずある時間では1つ2つ発生しているものが、ある時間間隔で見たときに異常に増えていったり、広がりの面で異常な動きを示していくと、それは明らかに新たな消費者関連トラブルを予見させていることになると思うので、こういう動的な動きが更に見えると、このPIOの情報というのがより有効に活用できるような気がしたものですから、今質問させていただきました。

○西田委員 おっしゃるとおりで、一部は既にできているのではないかと思うのですけれども、あらかじめキーワードが設定されている場合には、それだけ見ておくとぐーんとそれが伸びてきたというのが分かるので、既に応用は始まっていると思うのですが、こういうテキストマイニングを使って、今まで全く気づかなかったキーワードに対しても、最近これが増えてきているねということはできるのだと思います。

○受田座長代理 ありがとうございます。これは消費者問題解決掛けるDXという意味では、すごく画期的な技術だと思いました。

○新川座長 どうもありがとうございました。

それでは、生駒委員、よろしくお願いします。

○生駒委員 西田委員、御説明ありがとうございました。

私も消費者問題に関しては、未然に防ぐということが何より大切だと思っております。その観点から、このPIO-NETに既に集められている情報の活用について、日頃もっと有効な活用法はないのかなと思っていたものですから、今説明してくださったようなDXの力で消費者被害の事例が統計的に分析されることと、予測される事故の可能性といったものが浮かび上がってくるというのは非常に有益だと思っておりまして、大きな可能性を感じましたというのがまず一つ意見なのですけれども、質問もございます。

一つは、PIO-NETに入ってこない事故情報というものを集める方法、あるいはすくい上げる方法というのは西田先生のほうでも何かお考えでしょうかということが一つ。

もう一つ、実際にDXの力で分析されたデータを活用していく可能性なのですけれども、例えば一般の消費者が何か起こったときに検索するような機能がこのDXのデータを載せているプラットフォームでできるとなると非常に便利といいますか役に立つものになると思うのです。あるいは、教育機関の方や企業の方など、消費者向けに何かお考えになるときに、事前に予測される事故例をちゃんと把握して、それが起こらないようにされるというのが理想的かなと思いますので、分析されたデータを消費者、それから、民間の一般の方々がどのように活用できるか。あるいは、活用する方法があるのかといった点について、もしビジョンをお持ちでしたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○西田委員 生駒先生、ありがとうございました。

1つ目のPIO以外のデータソースはどうなのかということなのですけれども、PIOはやはり意識的に問題だということに気がついて、かつ、それをちゃんと報告しようと思ったというバイアスがかかったデータなのです。バイアスという言い方はあれかもしれないですけれども、そういうフィルターをちゃんと突破できた人たちのデータになっているということで、やはり抜けているものが数多くあるのではないかなと思っています。

事故に関しては、それを補完するものとして、冒頭で少しお話ししたのですけれども、いわゆる医療機関ネットワークというもので、日本だと30病院ぐらいでしたか。30弱だったかもしれないのですけれども、とにかくけがをした人は病院に行く。病院の場合は、訴える気があるとかないとかというのはなしで、けがしたものは全部収集できるので、ある意味バイアスがかかっていないデータが集まるということで、それを併用しています。問題は、医療機関ネットワークのデータも未公開なのです。全くアクセスできない点は問題だと思うのですが、一応集まる仕組みはできていると思います。医療機関ネットワークではけがの情報だけなので、詐欺とか金融商品というものは入ってこないのです。だから、それに関しては、SNSとか別の情報を使って取るというようなことも必要なのかなと思っています。これは1つ目の御質問に対する答えかなと思います。

2つ目の活用方法なのですけれども、これはおっしゃるとおり、プラットフォーマーと協力をして、消費者が商品を選択して購入するときに安全性をチェックできるような機能を入れるというようなことは、やろうと思うとできるのではないかなと思っています。その辺もDXの一つの機能かなと思います。メルカリとか、ヤフーなどの会社では、安全に関する情報を取り込もうとして頑張っていますよね。ああいうプラットフォーマー、eコマースの人たちなどとタイアップできると非常にいいのかなと思います。

もう一つは、海外の消費者団体は製品に対する発信をウェブで結構やっているのです。この商品を買うとこういう危険がありますよというような、そういう消費者団体はたくさんあります。だから、日本でも消費者団体と言われている人たちと協力をして、そこから情報を発信していく。消費者がそこにアクセスすると、企業とは独立した評価が得られる。二段ベッドを買うのはどういうものを選んだらいいのかなと、そういうチェックをする役割も担えるのかなと思います。これは消費者団体のDXです。可能かなと思います。

もう一つは、本当はこういうものがだんだんオープンになってくると、これをコンサルティングで食っていこうというような人も出てきたりすると更にいいのかなと。もちろん消費者団体の方もその役割を担えると思っていますけれども、そういうコンサルティング会社みたいなものも出てきてもいいのかなと思っています。なので、その辺りで活用が広がるといいのかなと考えています。

もう一つ、何度か言っているのですけれども、認証制度を作って、それでアクティブな高齢者が利用されるときに、サービスが備えるべきガイドラインがあるとよい。だます気満々の人に見られるパターンとか、注意すべきチェックリストを作って、こういうものをちゃんとクリアされているサービスしか扱っていないとか、そういうものがちゃんと選ばれていますよというようなことを評価する制度で作るとよいと思います。そういうことをすると消費者も選択しやすくなるし、それから、データもそこで活用され、フィードバック、PDCAサイクルが回るような仕組みにもなるのかなと思っています。これはそういう可能性もあったらいいなということで、何回か提案させていただいていますけれども、そういう認証制度という出口もあるかなと思います。

以上です。

○新川座長 ありがとうございました。

生駒委員、よろしいですか。

○生駒委員 とても分かりやすく御説明いただきましてありがとうございました。

とにかくDXの力はすさまじいものがあると思うのですけれども、今御説明いただいたように、消費者被害を未然に防ぐためにこれだけの可能性があるということを今日知りまして、すごく可能性を感じておりますし、西田先生の御研究がこれからきっとお忙しくなるかなと思いながらお聞きしておりました。

私、実は日本エシカル推進協議会という、エシカル購入ですとかエシカル消費を推奨する、今後、エシカル認証のようなものも協議会から提案していく予定にしておりますが、今おっしゃってくださった認証制度というのは、私が今申し上げたエシカル認証的なもの、あるいは消費者安全認証ラベルなのか、そういうものに向かっていくとよいのかなと思いました。またそういったことでも意見交換をさせていただければと思います。

どうもありがとうございます。

○西田委員 ありがとうございました。

○新川座長 ありがとうございます。

そのほか、いかがでしょうか。

片山先生、お待たせしました。すみません。どうぞ。

○片山委員 片山です。

大変わくわくする御報告をいただきまして、西田先生、ありがとうございました。

今までテキストマイニングで分類というような、言葉では聞いていましたが、実際にこういうふうに目で見える形で資料をお示しいただいて、すごいなと改めて強く感じました。

私は質問というよりも意見ですが、こういう分析をすることによって、10ページに遊具の安全ワークシートというものをお示しいただいていますけれども、このワークシートに書かれている注意事項の説得力がものすごく強いと感じましたし、そのことの意義を是非多くの人に知っていただきたいなと感じました。

私たち、いろいろなところで啓発とか行うときに、ここではこうしてはいけないとか、電気のコンセントはこういうふうに使っては駄目だとか、いろいろな啓発、注意のパンフレットを頂きますが、この10ページはまさに学校事故の実際にあった事例を分析して出てきた注意項目であって、ここに書いてあるようなことをすると、こういう事故が現に起こるんですよという説明ができますよね。そのことの力というのは、多分注意を受ける子供のほうも、それから、注意をする親の側も、学校の先生の側も、単なる注意ではなくて、それは本当に事故に直結するということが大変強く伝わってくる。情報分析の効果の力が大きいなと改めて感じました。

そういう意味で、やはりPIOの情報もこういうに見える化で、注意喚起の裏にはどういう実際の事故がどんな形で起こっているかということとうまくリンクして消費者に説明していくことができるよう、分析と見える化というのがすごく大事だということを改めて認識しました。本当にありがとうございました。

○西田委員 ありがとうございました。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、いかがでしょうか。

西田先生、お伺いしたかったのですが、今、片山先生からもありました学校の事故の分析ですけれども、回答として出していただいているものでの注意事項というのはそうだなと思いながらつい読んだのですが、こういう分析で、全体では8,000件ぐらいの事故情報から引き出してくるというプロセスになります。けれども、当然、分析途上で有意度の高いものとそうでないものというのが出てくるのですが、どういう範囲でその事故の危険な状態、例えば鉄棒を使っている子の下に入ると事故に遭う可能性、確率が高いとかというのか。それは、実際の分析の上では、それ自体が事故全体の中での発生頻度が高かったり、あるいは事故の程度が、骨折だとか重大な事故につながっているとか、幾つかの基準があると思うのですが、実際にはそういう影響基準みたいな、分類をしていったり、あるいは有意度というのを確認していくような基準というのは、発生頻度だけではなかなか見切れないかなと思ったのです。先生の場合には、どういう基準をまずは設定されてここまで引き出されたのかというのをお伺いしたかったのですが、どんなものなのでしょうか。

○西田委員 ありがとうございました。

今おっしゃられたように、プライオリティーをどういうふうに決めるかというのは一つの大きな課題かなと思っています。この資料を作るときには、我々としては典型的なものを数十例お示しするということをして、その後、人の手作業で意味がありそうなものを、しかも、この一枚の紙に入るように限定して、10ページ目のを作ったというのが現実なのですけれども、そこをもう少し科学的にピックアップしようとすると、いわゆる製品安全の分野ではよく使われるのですけれども、R-Mapというような手法があります。重傷度と頻度というのを取って、右上が一番まずいということでプライオリティーを付けるというやり方があると思うのですけれども、同じことができるので、定量的にピックアップするということはある程度できるかなと思います。このときはそこまでやっていません。

○新川座長 分かりました。

むしろ、PIOデータなどを使う場合には、そういう頻度と被害の程度の大小みたいなもので一定区分ができそうという気はするのです。ただ、案件の性質によってそのマップ自体の相対的な位置付けだとか、それから、マップの中での優先度の線引き度合いとか、最後の出口として注意情報を出していくときに、どういうレベルから注意情報を出したらいいか、この辺りはまだ検討しないといけないのかなと思いながら聞いていたのです。その辺りはむしろデータソースがきっちりあれば、今後の分析で相当程度整理ができていくというような考え方でよろしいのでしょうか。

○西田委員 そう思います。ある意味そこまで自動でできるので、こういうリストがありますよというか、こういうものがあるのですよということをAI側が人に示すことはできるのかなと思います。消費者庁もそうですけれども、結局、ピックアップは実際かなりヒューマンパワーでやっているところがあって、そこから何をピックアップするというのはやはり合意を取ったり、人のいろいろな知恵が入る部分も最終的にはあるのかなとは思うのですが、人への支援技術として、こういう重傷度と頻度という、その掛け算からこういうプライオリティーが考えられますよというのは出せるのではないかと思います。

○新川座長 ありがとうございます。

もう一つ、PIO-NETの情報の使い方ですけれども、外に出したくないというのと、企業名や個人名、機微情報がどうしても出てくるというようなことがあります。それから、今日の学校事故等の記述でもありましたけれども、既述の仕方がかなり実際の入力者の個々のそれぞれの考えで、テキストデータそのものが必ずしも標準化しにくい記述になっているケースもあって、この辺りもAIが機械学習してくれれば相当程度解消はできるのかもしれないのですが、ともかく、一つは国センなりPIOのシステムの中の人しかそれができないかもしれないということ。もう一つは、実際にそういう分析ができるような生データになっているかどうかというのも僕らも確認はできないので何とも言えないのですが、この辺りの心配。

それから、実際にそのデータを使って分析したとして、それ自体が注意喚起情報として、僕らがやはり考えておかないといけないのは、やはり実際に生命、身体、財産に影響があるようなケースをできるだけ予防するということが基本になります。ですので、そういう基準をかけるということと、製品安全そのものとかとの関係で言うと、必ずしも事故情報がそのまま被害につながるのではなくて、そこの判断というのはやはり最後は人がするのかなとかと思いながら、機械と人間のインターフェースの仕組み作りみたいなものを誰がどこで適切にやれるのかというのは悩みながらお話を聞いていたのです。この辺り、PIOの使い方や実際のデータのクリーニングの問題、最終的な判断など、もしできるとして、先生はどんなふうにお考えなのかなと思ってお伺いしたかったのですが、いかがでしょうか。

○西田委員 おっしゃるとおりで、全部自動で加工されたものをまんま出すというのは一つの理想かもしれないのですけれども、そこに至るのは当面難しいかなと思っていまして、やはり案をAIに作ってもらう。その後、合意を取る。これは何らかの委員会なのか、最近はコミュニティーベースとか市民を交えてということになっているので、そこに市民も少し入ってもらったような会議体で精査をして出していくというようなことをするといいのかなと思います。一番マイルドなやり方としては、そういうやり方が現実的かなと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

そのほか、先生方からいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

西田先生の提案を本当はそのまま国センにやってもらいたいという気はしているのですが、なかなかそうはいかないかもしれないので、私たちもどういう方向で報告書に今日のお話をしっかり踏まえて入れ込むか、また御相談させていただければと思います。

○西田委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。

○新川座長 それでは、西田先生のお話は以上にさせていただきます。

予定しておりました時間になりましたので、改めて西田先生に感謝を申し上げまして、次の議題のほうに進ませていただきたいと思います。

もう1時間近くたちますので、大変恐縮ですけれども、一旦ここで休憩を置かせていただきます。今、私の時計で13時55分でございますので、5分程度休憩を置かせていただきまして、14時から再開させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(休憩)

≪3.ワーキング・グループ報告書(案)に係る審議≫

○新川座長 それでは、引き続きまして、本日のワーキング・グループを再開させていただきたいと思います。

次の議題は、ワーキング・グループの報告書についてでございます。このワーキング・グループでの議論、これまでの経過を踏まえて、事務局のほうで報告書の案、これまでにも素案のような形でお示しいただいておりますけれども、これまでの御意見も踏まえまして、改めてかなり充実したものをそろえていただきました。整えていただきました事務局案について、50分程度で説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大岡企画官 事務局です。

それでは、報告書案の説明をさせていただこうと思います。

資料2を幾つかお送りしておりますが、まず、目次を御覧いただきたいと思います。目次で報告書全体の構成、流れについて御説明させていただこうと思います。

その前に、今回の報告書ですが、社会貢献活動などのよい取組を行っている事業者とつながりましょうと。消費者関連情報も他の分野と同様に事業者に活用してもらおうということを目的として、そのためにどのような方策が必要かヒアリングや審議を行ってまいりましたが、このようなことを報告書として取りまとめていきたいと思っております。

それでは目次です。まず「第1 事業者による地域や社会に貢献する自主的な取組の広がり」では、社会貢献などの取組をしている事業者がどうして生まれてきたのか。SDGsなどの説明も踏まえて、背景を説明しております。

「第2 事業者の自主的な地域・社会貢献の取組」では、ヒアリングに基づいた実際の取組事例について紹介をしております。

続きまして、「第3 共創・公民戦略連携の取組」では、事業者に目を向けるだけでなく、行政と事業者が連携している取組について御紹介しています。また、第3の3では見守りネットワークというのも置いております。共創・公民連携に加えて、行政、民間の連携の代表例として見守りネットワークの取組もここで紹介しております。

ここまでが背景、現状、ヒアリング事例の紹介となります。

第4、第5では現状やヒアリング結果を踏まえての検討、提案になります。

「第4 事業者に消費者関連情報を活用してもらうための方策の検討」では、これまでモデルという言い方をしてきましたが、ヒアリング審議に基づき、行政と事業者の役割や情報提供のフローについてのモデルを提案しています。こちらでは、対話による行政と事業者の取組を共創型と打ち出しております。事業者に情報提供の場で活用してもらうためのフローを提案するということで記載しています。

続きまして、「第5 事業者による自主的かつ持続可能な消費者関連情報提供に向けた環境整備」では、モデルを提案するだけでは実行されずに終わってしまいますので、第4で提案したモデルを持続可能でよりよくしていくため、「環境整備」という言葉で提案しております。第5の「2 環境整備のための方策の検討」として、(1)(2)(3)(4)と4つ打ち出しております。(1)国と事業者代表との対話の場の設置、(2)事業者における消費者教育の推進、(3)事業者の取組を応援する仕組み、(4)事業者への消費者関連情報提供方法等の工夫ということでございます。

ここまでで大きな流れ、構成の説明となります。

続きまして、同じく資料2ですが、「はじめに」から始まる資料を御覧いただけますでしょうか。

こちらは報告書の目的を凝縮しております。最初のパラでは、問題意識としまして、消費者庁等の行政においては、消費者に対し、ホームページでの注意喚起情報等の公表、PR動画、ポスター、リーフレット等、様々な方法により消費者被害・トラブル、消費者事故の未然防止等の消費者の安全・安心な生活のために役立つ情報を多く発信しているが、消費者には十分に届いていない、または、消費者には届いているが、消費者側において自分事として受け止めていない、関心を持っていないケースが見られる。このような状況をどう改善するかを考えるに当たり、まず、マーケットにおいて消費者と一番近い位置で相対している「事業者」に目を向けたということです。

次に、なぜ事業者に目を向けたかということになります。昨今、SDGsやESG投資等を背景に、地域や社会に貢献する事業者が増えている。加えて、単なる地域・社会へ貢献するだけでなく、経営トップの強いリーダーシップの下、大企業を中心に本業を通じた地域・社会貢献を行う事業者が現れている。このような事業者では、行政から発信・提供される顧客や消費者等に向けた情報について、地域・社会貢献活動として必ずしも本業とは直接関係のないものであっても、行政から依頼される形式ではなく、自主的に顧客や地域の消費者に向けて提供しているということです。

一方、地域の行政においても、本業を通じた地域・社会貢献を行おうとする事業者の力を生かす“共創”や“公民戦略連携”といった取組が増加しています。

しかし、事業者による地域・社会貢献活動や地方公共団体の新たな取組では、福祉や防犯等の他の分野と比較し、安全情報、財産分野の注意喚起情報やエシカル消費に関する啓発情報等の消費者関連の情報はあまり提供されていません。そこで、消費活動の中で消費者と多くの接点を持っている事業者と連携することにより、より多くの消費者に対し、消費者関連情報を届けることができるのではないか。

以上のような観点を踏まえ、本報告書では、このような新たな取組を行う事業者や地方公共団体を紹介するとともに、事業者に消費者関連情報を活用してもらうための方策について検討を行い、目指すべき姿とその対応策を示すということでございます。

消費者市民社会の担い手としての役割も期待されるこのような事業者を、消費者行政としていかに支援し、事業者と連携した消費者関連情報の提供体制を構築・整備し、消費者被害防止に向けた公民連携体制が更に充実・強化されたものになることを期待するということで「はじめに」としております。

続きまして、2ページです。「第1 事業者による地域や社会に貢献する自主的な取組の広がり」ということで、1つ目が「事業者による地域や社会に貢献する自主的な取組の背景」ということです。2015年9月に国連サミットでSDGsが採択されまして、社会が抱える大きな課題について、事業者が本業を通じて取り組むという考えが世界的に広がっています。

また、企業経営という観点からは、企業の安定的かつ長期的な成長には、環境や社会問題への取組、ガバナンスが少なからず影響しているという考えが広まり、ESG投資が世界的な潮流となっております。

社会的課題解決への取組は、SDGsが目指す持続可能な経済・社会・環境作りに不可欠であるととともに、企業価値あるいは社会的価値をはかる指標と考えられておるということで、世界的な潮流ということを記載しております。

2では、「事業者による地域や社会に貢献する自主的な取組の広がり」ということで、我が国においても、SDGs等の影響により、事業者による自主的な地域・社会貢献活動が数多く行われています。加えて、大企業を中心に、経営トップの強いリーダーシップの下、地域・社会貢献を本業の一つの柱として据え、本業を通じた地域・社会貢献を行う事業者が現れています。

この点、我が国において、SDGsの実施指針では、ビジネスの役割について「それぞれの企業が経営戦略の中にSDGsを据え、個々の事業戦略に落とし込むことで、持続的な企業成長を図っていくことが重要である。また、官民が連携し、企業が本業を含めた多様な取組を通じてSDGs達成に貢献する機運を、国内外で醸成することが重要である」と掲げられ、本業あるいは本業以外の多様な取組を通じた社会課題解決が推進されています。

なお、教育分野におきましても、SDGsの目標の12「責任ある生産と消費」については、エシカル消費が基本的な考えとなっており、小学校等の教育においても積極的に学習が進められております。

また、企業経営という観点からは、中長期的な視点で企業価値を評価する際に、ESG要素を考慮する投資家が増えており、上場会社においても、ESGに関する取組や情報開示を充実させる動きが出てきております。2015年に策定したコーポレートガバナンス・コードにおいて、上場会社に対して社会・環境問題をはじめとするサステナビリティー課題への積極的・能動的な対応を、2018年の同コード改訂時には「非財務情報」にESGに関する情報が含まれることを明確化し、2020年3月には「ESG情報開示実践ハンドブック」が公表されております。

このように、SDGsやESG投資という世界的潮流が、我が国のビジネス・社会全体においても具体的なものとして浸透しており、本業を通じた地域・社会貢献を行う事業者の後押しになっているということで、事業者の取組の背景、世界と日本の企業の潮流について記載しております。

続きまして、4ページ、「第2 事業者の自主的な地域・社会貢献の取組」ということで、こちらは事業者の具体的な取組事例のパートになります。

事業者における地域・社会貢献活動は、本業を通じた取組、本業に付随する取組、例えば芸術・文化活動等のように本業とは別の取組があり、取組内容についても教育・福祉・医療等様々であります。この様々な地域・社会貢献活動の中で、どうすれば消費者に適切に消費者関連情報を伝えることができるか、消費者が賢い消費者として行動するためにはどうすればよいかという観点に着目し、事業者における「情報提供」に関する取組について、以下で検討します。

事業者による本業とは直接関係のない情報提供の取組ということで、昨今、地域住民や顧客等に対する地域・社会貢献活動として自社の店舗や配送網等の顧客とのインターフェースを活用して、自社の本業とは直接関係はないが地域の住民や顧客に役に立つ情報を提供する取組を行う事業者が現れており、主に福祉、防犯、健康等の分野の情報提供が中心となっています。

例えば、防犯の分野では、警察との連携により、特殊詐欺防止や詐欺被害防止等の未然防止に向け、事業者が自らの取組として地域住民に情報提供を行い、福祉や健康の分野では、高齢者や認知症の方が暮らしやすい町作りに向けて、事業者が認知症の方や家族を対象とした講習会を開催することなどであります。

続きまして、取組の事例でございますが、ワーキングにおいては、配送網、店舗等の様々な場を活用して、地域・社会貢献活動を行っている事業者からヒアリングを実施しました。

事業者が行う地域・社会貢献活動やそれを支える社内体制、地域・社会貢献活動での情報提供の取組や情報分野、地域行政との連携等について、以下で紹介するということで、ヒアリングを実施しましたイトーヨーカ堂をはじめ、各社の取組について紹介をしております。7ページを御覧いただけますでしょうか。

イトーヨーカ堂のワーキングとしてのまとめですが、各社のまとめのところ、委員の皆様から、事業者のメリットや情報提供の取組について少し拡充したらいいのではないかという御意見もございましたので、まず各社のワーキングのまとめのところを少し見やすくするということと、例えば情報提供の取組・行政との連携という項目をくくり出してみたり、下にあります取組の意義というところでメリットを書くというようなことで拡充をしております。

各社のワーキングとしてのまとめはこのように少し拡充して追記しております。

次に、30ページを御覧いただきたいのですが、30ページには事業者ヒアリングの結果まとめということで、ヒアリングした企業の全体の整理、集約という結果をまとめております。

まず取組の目的としまして、全ての事業者は地域に密着し、地域社会や住民の社会的課題解決、地域作りのために取組を実施している。

社内体制・取組体制としましては、社内体制として、本社が主導し全国に取組を実施しているもの、会社の方針や経営トップの強いリーダーシップの下で実施しているもの、単なる地域・社会貢献から一歩進めて事業化しているもの、地域の販売店等の地域・社会貢献活動の支援策として行っているものなどがございました。

取組の特徴としましては、全ての事業者は、店舗や配送網等の「場」を活用し「本業を通じ」自ら企画・立案して自主的に地域・社会貢献活動を行っていました。

地域・社会貢献活動の中での情報提供の取組としまして、多くの事業者では、セミナーや学習会の実施やチラシを手渡しするなどの方法で、直接顧客や地域住民等に情報を提供しております。提供する「情報」は、高齢者向けの福祉や防犯の分野が多く、消費者関連情報の活用は少ないという特徴がございました。

行政との連携につきましては、多くの事業者が、事業者や販売店等と地域行政との間で、包括連携協定や連携協定を締結しています。

事業者の場において、顧客や地域住民等に情報を提供するに際し、地域行政、警察、地域包括支援センターや社会福祉協議会等と連携して取組を実施しておりました。

取組の意義・社会貢献活動としまして、地域社会や住民との間で信頼関係が醸成され、それにより企業価値が高まることで、従業員の意識や満足度が向上するとともに、本業への集客効果・利益還元が見込まれるということ。

取組の意義・行政との連携としまして、行政との連携により、地域社会や住民からの安心感・信頼感が増す。次に、自社にないリソースやノウハウの活用が可能となるということ。

次に、社会貢献活動を行う際の行政への要望としまして、一つは、事業者向け窓口を創設し、地域・社会貢献活動に関する取組について相談・交渉する窓口を一本化してほしい。もう一つは、事業者と地域行政との一層のコミュニケーション・対話が必要であり、行政側に事業者の考えを理解してもらい、その上で地域・社会貢献の取組を実施したいということで、事業者ヒアリングの結果をまとめさせていただいております。

続きまして、31ページですが、「第3 共創・公民戦略連携の取組」でございます。

社会課題が複雑化、多様化し、少子高齢化が進み、経済面・財政面で制約が課される中、行政でこれまでの住民サービスを維持しながら、行政のみで様々な社会課題を解決することが難しくなっています。このような背景の下に、新たな公民連携手法を取り入れる地方公共団体が増えつつあります。

従来の公民連携・公共事業は、一般的に行政が自らの知識・経験の範囲内で最適と考える事業スキームを構築し、詳細な条件をあらかじめ行った上で民間事業者を募集するケースが多く、行政主導型でありました。

この行政主導型公民連携から、新しい公民連携、すなわち、民間が主体的に参画し、行政と民間との対等な関係で「対話」を行うことにより、新たな価値を生み出す取組が進められており、原則として行政側の費用負担がないことが従来の公民連携と異なる点でございました。

このような公民連携の取組は、事業者との連携を更に進める必要があり、かつ予算等に制約がある消費者行政の現状においては、今後一層活用が期待される取組でございます。

「2 取組事例」としまして、横浜市と大阪府についての紹介をしております。

まず、横浜市のワーキングのまとめです。35ページを御覧いただけますでしょうか。

横浜市のワーキングのまとめとしましては、「共創」とは、企業、NPO、大学などの多様な民間の方々と行政とが「対話」を通じて連携を進め、それぞれが持つアイデアやノウハウ、資源などを活用することで、社会や地域の課題に対し、新たな価値や解決策を“共に創り”上げていくこと。

次に、共創フロントは民間からの相談や提案を受け付け、連携をコーディネートする窓口。「対話」を行い、実現性を見極め、民間と庁内各部局を結び付けています。

次に、機会の公平を担保しており、公募によらず提案事業者と連携することも可能としています。

次に、原則として行政側の費用負担がないということ。

また、行政から提案を募集する場合、「提案を募集する背景・課題」「希望する提案」「想定する提案例」「民間に提供できるメリット」等、詳細に提示する必要があるということでまとめております。

次に大阪府ですが、39ページを御覧ください。

大阪府のワーキングのまとめを中ほどに記載しております。

一つは、「公民戦略連携」とは、民間と行政とが「対話」を行い、スピード感や社会変化への対応力、多様な資源といった企業の強みと、信頼性・信用性や公共性、安定性・継続性といった行政の強みを束ね、新しい価値を生み出すこと。

公民戦略連携デスクにより、府民、企業や大学等の民間、行政の3者が「三方良し」となる取組が生まれることを目指しています。

公民戦略連携デスクが窓口となる場合、行政側の費用負担はありません。

主に、教育、健康、環境、防災等の消費者関連情報以外の分野の取組が多いということでまとめさせていただいています。

次に、「3 消費者行政における事業者を経由した情報提供の取組」として、先ほど目次のところでも申し上げましたが、こちらで見守りネットワークを活用した事業者を通じた情報提供、行政と民間の連携の代表的な例ということで、こちらに記載をしております。

見守りネットワークにつきましては、まとめが43ページにございますので、御覧いただけますでしょうか。

ワーキングとしてのまとめでございますが、徳島県は様々なルートにおいて、事業者経由での情報提供を行っている。見守りネットワークを通じた情報提供ルートとしては、市町村見守りネットワーク及びとくしま消費者見守りネットワークが設置されており、とくしま消費者志向経営推進組織やとくしまエシカル消費推進会議から事業者団体を通じた情報提供ルートもございました。

情報提供の方法としまして、県や市町村から構成員である事業者に「依頼」することにより、ネットワークに情報を提供しています。

とくしま消費者見守りネットワークでは、高齢者だけでなく「若者」も含めた幅広い世代を対象としたネットワークとするため、教育委員会やPTA連合会等の「教育機関」を情報ルートに加えているというところが特徴でございました。

続きまして、資料2の「第4 事業者に消費者関連情報を活用してもらうための方策の検討」の資料を御覧いただきたいと思います。

こちらでは情報提供のフローについての検討、提案ということになります。

まず1でヒアリング結果の分析を記載しています。これまでのヒアリング結果からどういったことが言えるのかということで、多くの事業者では本業を通じた地域貢献や社会貢献を自ら企画・立案して、その中で情報提供をしています。情報提供は「場」をインターフェースとして活用しており、福祉や防犯等、顧客や地域住民等にとって有益で価値のある情報を届けています。また、必要に応じて地方公共団体とも連携協定を締結するなどの連携をしながら進めています。

このような取組において、事業者は、顧客や地域住民等にとって有益で価値のある情報を届けたいと思っており、地域・社会貢献につながり、そのような情報が増え、自らの取組で扱えるようになることは望ましいことであります。消費者行政においても、顧客や地域住民等にとって有益で価値のある消費者関連情報を事業者に提供すれば、十分活用してもらえる可能性があります。ヒアリングで可能性ありという回答も多かったと思います。

ヒアリングからは、事業者のメリットに関する話も得られました。このような取組を展開しようとする事業者が増えている背景として社会的な潮流があることは先に説明したとおりですが、加えて、顧客・地域住民・従業員等との関係強化や本業へのプラスの影響に関する次のようなメリットがあることも挙げられます。

枠囲みのところです。事業者のメリット(自主的な取組を行うメリット)としまして、集客効果や顧客からの信頼獲得につながる。次に、地域の発展により地域住民が豊かになり、住民が自社を更に利用してくれるようになる。次に、自社のイメージの向上につながる。従業員が自社の地域貢献・社会貢献を誇りに思い、自社への帰属意識を強めたり、満足度を高めたりする。その結果、離職率の低下にもつながる可能性があるということです。

また、多くの事業者は行政と連携して取組を行っています。本来、事業者が自主的な取組として行っているものであるが、行政と連携することによって、自社だけで取り組んでいるときよりも、上記のメリットを更に高めることができるとしまして、また黒囲みですが、事業者のメリット(行政と連携して取組を行うメリット)として、自社の取組の場や業種・業態等に合った情報を、行政の知見を活用して入手できる。行政と一緒に取り組むことで、顧客から見た事業者の安心感、信頼感が増し、顧客に参加してもらいやすくなる。その結果、本業の集客効果が高まる。行政と一緒に取り組むことで、自社の地域貢献や社会貢献のアピール効果が高まる。

そして、このような取組は、事業者だけでなく行政や消費者にとってもメリットがあります。

2ページになります。行政のメリットとしましては、事業者の店舗や配送網等のネットワークを活用して消費者に情報を届けることができる。身近でふだん付き合いのある事業者が顧客に直接コンタクトして分かりやすく情報を届けてくれるため、ポスター掲示やチラシ配布だけよりも消費者に届きやすくなる。全国各地の個々の店舗等に提案しなくても、本社・本部等に提案して効率的に全国各地に広げることができる。また、ポスター掲示やチラシ配布等と異なり、事業者で一度取組が定着すれば、継続して消費者関連情報を活用してもらえるというメリットがあります。

次に、消費者のメリットですが、身近でふだん付き合いのある事業者から情報が届けられるため、安心して情報を受け取ることができる。ポスター掲示やチラシ配布等と異なり、事業者が直接コンタクトして分かりやすく情報を届けてくれる。

以上のメリットを踏まえると、有効な情報提供の一つの方法として、消費者行政も事業者の自主的な取組において消費者関連情報を活用してもらえるようにすることが必要である。

その際、メリットが最大限もたらされることが理想的であります。そのためには、消費者行政が提供できる消費者関連情報やデータ、人材等の資源を有効活用することが必要であります。

次に、2として、行政と事業者との“対話”の必要性です。

事業者に消費者関連情報を活用してもらうためには、次のようなポイントに留意する必要があります。

1つ目ですが、行政が事業者の取組に合わせて消費者関連情報を提供すること。現在、一般的な情報提供(事業者の店舗にポスターを掲示したり、チラシを配布することなど)では、「行政が届けたい情報」を行政が選択して事業者に提供しています。しかし、自主的な取組においては、事業者は「その取組で扱いたい情報」を届けており、行政は事業者が扱いたいと思うような、自主的な取組に合わせた情報を提供する必要がございます。

次に3ページです。行政と事業者が相応に分担して情報提供を行うこととして、消費者行政分野の専門家ではない事業者が、消費者関連情報を探したり、顧客に分かりやすく伝えるために加工したりすることは難しい。行政が担える部分は担い、提供できる資源を有効活用して行政と事業者が相応に分担して情報提供を行う必要があります。

これらのポイントを満たすためには、行政が事業者と“対話”を行うことが必要である。この“対話”は、行政から情報提供の依頼をするものではなく、事業者の要望を聞き取ると同時に、行政からも提供できる資源について提案をして、自主的な取組における情報提供を実現するために行政に求められることを明確にしていく作業であります。

具体的には、以下のような項目について話し合い、すり合わせていくということで、図にありますように、行政では提供できる情報の内容や形式、顧客や地域住民等への提供手段など、事業者においては、情報を届けたい顧客層、取組の頻度、取組の場所、情報を伝える媒体などを対話によりすり合わせていくということが必要となります。

続きまして4ページです。「3 “対話”による消費者関連情報提供フローの提案」でございます。

事業者の自主的な取組に合った情報や、それを顧客や地域住民等に届ける手段を、“対話”に基づいて行政が事業者に提供する形式を、本報告書では「共創型情報提供」と呼びます。

(1)に共創型情報提供フローの提案ということで基本形を載せております。

次に5ページでございます。情報提供のフローとして、事業者に提供できるように、国が作成した情報の中から、地方公共団体が事業者との“対話”に基づいて選定し、事業者に提供するもの。

国の役割としましては、地方公共団体が事業者に提案できるように情報を作成しておき、用意した情報メニューを地方公共団体に周知する。

地方公共団体の役割としましては、事業者と対話を行う。対話に基づいて事業者の取組に合った情報を提供する。必要に応じて顧客への提供手段等も提案する。情報の内容を説明する説明者の提案などです。

次に(2)地域や目的に応じた共創型情報提供フローですが、さきに示した情報提供フローと国・地方公共団体の役割は、共創型情報提供の基本形でありますが、次のような視点も考慮することが必要であります。

1つ目としまして、消費者被害はその内容や件数等に地域差はあるものの、全国的に発生しており、全国の地方公共団体で消費者への情報提供は不可欠なものであります。しかし、実際には事業者との連携実績の違いから生じるノウハウの差や、地域に存在する事業者の業態や規模の違い等、様々な地域差があります。そのため、共創型情報提供にすぐに取りかかることができる地方公共団体もあれば、事業者との連携実績が少なくノウハウがないため、実行に移すのに時間がかかる地方公共団体もあると思われます。

6ページです。そこで、後者の地方公共団体でも事業者に提案しやすいような工夫をし、各地で早期に事業者に消費者関連情報を活用してもらえるようにする。

2つ目として、事業者の自主的な取組において消費者関連情報を扱ってもらうには、消費者にとって有益で価値のある情報を提供する必要がある。有益で価値のある情報とは、例えば被害防止に役立ち、最新の情報であることが望ましい。そのような情報を適時に提供できるようにデータ分析をする。将来的には、AI等を活用し、タイムリーかつスピーディーに情報を提供することも考えられる。

3つ目としまして、消費者関連情報を全国で扱ってもらえるように、国も地方公共団体や事業者団体・事業者の本社等と対話を行うということで、これらの視点を踏まえたフローを以下に示していきたいと思います。

7ページです。1つ目としまして、地方公共団体が事業者に提案しやすい工夫をし、早期に事業者に消費者関連情報を活用してもらえるようにするフローということで、地方公共団体と事業者が対話を行い、それに基づいて地方公共団体が事業者に情報提供をすることをベースとしますが、地方公共団体によっては事業者の要望を聞き、情報を探して提供することに時間がかかることも考えられます。

そこで、国が事業者の要望を想定して、あらかじめ消費者関連情報を作成し、事業者に提案しやすいように用意しておく。単に用意しておくだけでは地方公共団体もどの情報がどういう自主的な取組に適しているのか判別がつかないため、事業者の要望で想定されるような、例えばターゲット別、顧客や地域住民等への届け方別等に情報を整理する。また、国は地方公共団体に情報を提供するだけでなく、情報ごとに想定する情報提供先の業態や提案する際のポイント等を示す必要があります。

次に8ページです。2つ目として、データ分析を行い、適時に情報提供をするフローとしまして、国においてPIO-NET等のデータを分析し、例えば被害額が大きくなりそうなもの、被害者数が拡大しそうなもの、被害回復が困難になりそうなものなどのパターンを想定しておき、パターンに基づいて被害拡大の傾向が見えるときなど、適時に情報を提供する。

地方公共団体は事業者と“対話”を行い、事業者の取組の中でどのような提供手段で顧客や地域住民等に情報提供できるかなどを聞き取り、それに合わせ情報を提供する。

さらに、発展形としてAI等を活用した分析を取り入れることも考えられ、例えばAI等の分析で提供する情報の候補を選び出し、候補の中から事業者に扱ってもらうことを想定して最終的に人が選ぶといった、AIと人とのハイブリッドで情報を提供することも有効であります。

次に9ページですが、3つ目に、国も地方公共団体や事業所団体・事業者の本社等と対話するフローでございます。

事業者の店舗や販売店等と地方公共団体が連携し情報提供をしますが、消費者関連情報を全国で扱ってもらえるように、国が事業者団体や事業者の本社等と“対話”を行います。

国は、提供してほしい情報や提供手段、行政に求める支援等を事業者等から聞き取る。さらに、地方公共団体とも対話を行い、地方公共団体と協力的な事業者をマッチングし、事業者の取組に合った情報を提供する。

地方公共団体は、地域で連携する事業者と対話を行い、事業者の取組に合った情報を提供するということでございます。

続きまして、(3)地方公共団体の共創や公民戦略連携等の取組の活用でございます。

共創型情報提供を実施するために、公民連携をコーディネートする専門部局が設置されている地方公共団体では、当該専門部局を活用することも有効であります。事業者との連携事例が乏しい消費者行政において、地方公共団体の消費者行政部局自身が連携できる事業を一から探し、相手のニーズを把握してそれに合わせて取組を提案することは容易ではないと思われます。そこで、民間の動向やニーズを把握しており、コーディネート経験豊富な専門部局の助言を得られることは大きなメリットであり、消費者行政もこの枠組みを活用して事業者との連携を目指すことは有効であります。

しかも、このような専門部局は近年全国的に増えており、事業者と連携できるチャンスが広がっています。地方公共団体の消費者行政部局が積極的に専門部局を活用することはもちろんのこと、連携を後押しするために、国においても事業者に提供できるメリットや消費者関連情報等を考え、地方公共団体に周知するといった支援が求められています。

続きまして、10ページで、目指すべき姿の実現に向けた対応策ということで、ここからが第4の提案ということになります。

まず、基本的な考え方です。自主的な取組を行う事業者が増えている中、消費者行政も事業者に消費者関連情報を扱ってもらえるようにすることが必要である。そのためには、行政が事業者との“対話”により自主的な取組に合わせて消費者関連情報を提供することが大切である。この情報提供は少ない予算でも取り組めるところが特長の一つであり、いち早く消費者に情報を届けられるように、各行政には早期に取り組むことが求められる。そのためには、地方公共団体が時間や手間をかけずに事業者が扱いたい情報を提案・提供できるようにする必要がある。

その工夫の一つとして、事業者への提供を意識した情報整理をすることが挙げられる。国民生活センターでは、「くらしの危険」や「見守り新鮮情報」など、消費者に伝えるポイントが簡潔にまとまったリーフレット等を作成・公表しており、啓発資料として誰でも自由に使うことができる。一方で、事業者目線で考えると、自主的な取組に合わせるために、「高齢者」「子どもを持つ親」といったターゲット層や、「イベントでの説明に適したもの」「手渡し配布できるもの」といった顧客や地域住民等への届け方等が分かりやすく整理されていることが望ましいが、必ずしもそのようにはなっていません。そこで、情報を作成する国が、地方公共団体にとって事業者に提案・提供しやすいように情報を整理した上で、メニューとして示すことが必要であります。さらに、その情報がどのような事業者にどのように使ってもらうことを想定して作成されているか、地方公共団体に分かるように周知することも必要であります。

これらの取組は、時間をかけて検討して一度に実現を目指すのではなく、まずは時間・手間がかからず少ない予算でも取り組めるところから始め、次に体制を整えて実施していくものへとステップを踏んで進めていくことが望ましいということを基本的な考えとしております。

次に11ページですが、取組の方向性ということで、こちらも意見になる部分でございます。

消費者庁は、自主的な取組を行う事業者に消費者関連情報を扱ってもらえるよう共創型情報提供の枠組みを構築する。そのため、まず、例えばあらかじめ事業者の取組の場で活用してもらうことを想定した、消費者の関心が高く有益な消費者関連情報をメニュー化やパッケージ化といったことで幾つか用意し、地方公共団体へ提供する。

地方公共団体は、メニュー化・パッケージ化された消費者関連情報を事業者に提案・提供し、事業者の取組に合うように双方で“対話”を行い、協力して消費者へ情報提供を行うよう取り組むことが望ましいということで、取組の方向性として考えております。

次に「5 共創型情報提供の活用例」でございますが、これまで共創型情報提供フローにおける国・地方公共団体の役割、そして、実現に向けて国・地方公共団体がそれぞれどのような取組を行っていくべきかについて述べてきましたが、この情報提供のメリットを発揮させ、効果的な情報提供が行われていくためには、事業者と「共創」により情報提供していくことが重要となります。そこで、ここまで述べてきた情報提供フローや行政としての役割を、事業者の取組の中でどう生かしていくのか、以下、活用例という形で業態別に示しております。

まず、小売業における活用例としまして、店舗や販売店等で開催するイベントや、対面販売において顧客や地域住民等に情報提供を行う場合に活用できる。

店舗や販売店等で開催するイベントは、買い物客や地域住民等を集客した集客型の情報提供であり、さらに、高齢者向けや子供を持つファミリー向けなどターゲットが定められています。そこで、地方公共団体は店舗や販売店等と“対話”を行い、集まった人への提供に適した形式でターゲットごとに合わせた内容の情報を、国が用意した消費者関連情報のメニューを基に提供する。

集客型の情報提供では情報の内容を説明することが必要でありますが、消費者行政分野に詳しくない事業者が説明することは難しいため、地方公共団体の職員、消費生活センターの相談員、地域の消費者団体等、地域の実情に応じて現地で説明することが必要であります。

対面販売では、店舗スタッフが対面で情報を提供できるため、ターゲットに合わせた情報を個別に説明できるといった特徴があります。地方公共団体は店舗や販売店等と“対話”を行い、この特徴に合った情報を国が用意した消費者関連情報のメニューを基に提供する。

全国各地に店舗を持つ事業者に対しては、消費者関連情報を全国各地の店舗で扱ってもらうために、国は本社や本部等と“対話”を行い、事業者の要望を聞き取り、行政から提供できる消費者関連情報のメニューを提案する。本社や本部等が、全国各地の店舗に情報提供プログラムの一つとして消費者関連情報の提供を提案し、支援するということでございます。

以下、生協や宅配における活用例、及び金融業における活用例として例示させていただいております。

第4の説明は以上となります。

続きまして、「第5 事業者による自主的かつ持続可能な消費者関連情報提供に向けた環境整備」の資料がございますので、御覧いただきたいと思います。

こちらは、第4で提案したモデルを持続可能でよりよくしていくための環境整備として提案していくというところでございます。

まず、環境整備の必要性です。地域や社会に貢献する自主的な取組を行う事業者と、消費者行政も連携したい。前章までに述べてきたように、このような事業者と協力し消費者被害防止に向けた取組を行うことは、消費者行政はもちろんのこと、消費者にとっても大きなメリットがあるからである。

このような事業者と地域における協力体制を構築するためには、行政と事業者の“対話”が必要であり、協力体制におけるそれぞれの役割について前章で示した。前章で示した体制の構築が早急に望まれるが、同時に構築した体制を維持し、よりよいものにしていくためには環境整備の取組が必要である。

環境整備の方策としまして、委員の皆様からいただいた意見を4つの柱にまとめております。一つが「国と事業者代表との“対話”の場の設置」。2つ目に「事業者における消費者教育の推進」。3つ目に「事業者の取組を応援する仕組み」。4つ目としまして「事業者への消費者関連情報提供方法の工夫」について、以下、検討を行っております。

「2 環境整備のための方策の検討」としまして、今述べました4つの柱について基本的な考え方等を記載しております。

まず、基本的な考え方の国と事業者代表との新たな対話の場の必要性でございます。

地域や社会に貢献する自主的な取組を行う事業者の協力を得るには、行政からの依頼という従来の形で事業者に消費者関連情報の発信を求めるのではなく、事業者にとってもメリットのある情報を事業者の取組に合った形で提供する必要があり、そのためには行政と事業者の“対話”が必要であると述べてきました。そして、このような“対話”の場は、何も地域の行政と事業者だけに限った話ではない。大企業を中心としたこのような事業者の本社(経営者や担当部署)の多くは首都圏等大都市にあり、“対話”を行うために地域の地方公共団体が事業者の本社のある大都市に遠征して個々にアプローチするよりも、むしろ国等が“対話”を行った方が効率的であり現実的でもある。とはいえ、国も個々の事業者と“対話”を行うのは非効率であることから、国と事業者の代表との“対話”の場を設けるという方法が考えられます。

実現性や効率性の面だけでなく、国が事業者の代表との新たな“対話”の場を持つことは、ほかにも大きな意味がある。消費者被害の防止は高齢者問題とも重なる大きな社会的課題であることなど、消費者行政の重要性を事業者に伝える機会を増やすことにもつながります。消費者行政の重要性や今後の方向性等、事業者代表を通じて多くの事業者に認識してもらい、その上で消費者行政が事業者と社会的課題解決に向け共に考え取り組むことは、消費者市民社会の実現に向け大きな意義があり、SDGs等の流れの中で社会的インパクト・周知という面でも双方に大きなメリットがあります。

2ページでございますが、国の“対話”の相手となる事業者ということで、国の“対話”の相手である事業者の代表としては、まずは経済三団体が考えられます。事業者の自主的な取組の多くは経営者の強いリーダーシップの下で行われていることから、経済三団体に対し、消費者被害防止の重要性、高齢者問題とも重なる社会的課題であることなどを丁寧に説明し、社会的課題解決に向けて一緒に取り組んでほしいことを伝え、理解を求める。同時に、国も消費者に有益な情報コンテンツ、消費者行政の持つデータ、消費者関連情報について講演できるプレゼンター等といった、消費者行政が持つ貴重な資源があることを説明し、これらを活用して取組を行う事業者を支援・育成していきたい、そのための方策を一緒に考えてほしいと訴えてはみてはどうか。その上で行政と事業者が一緒に検討していく“対話”の場、枠組みを構築し、継続的なものに発展させていく。このような取組はまさに国でなければできないものであり、地域や社会に貢献する自主的な取組を行う事業者と消費者行政が連携するためには、実行し実現が望まれるものである。

続きまして、“対話”の場の参加者の拡大としまして、国と事業者代表の“対話”の場には、実際に地域で事業者と連携する地方公共団体の参加と意見の反映も必要である。さらに、消費者教育・啓発のスキルがある消費者団体やNPO等も、目的や必要に応じて適宜参加できるような枠組みとなっていくことが望ましい。ただし、参加者を拡大すれば必ずよい“対話”の場になるというわけではないため、目的等を踏まえ、相手側である事業者代表と共に決めていく枠組みとすることが重要である。“対話”での意見交換は、消費者行政が持つ貴重な資源を説明し、国や参加者はこういうものを持っている、こういうことができるので活用してもらいたいということを説明することが前提となるため、国や参加者から事業者に対する要求等を一方的に伝えるような場にならないよう留意する必要があります。

次に、様々な階層(業界・業態・地域等)への対話の場の拡大でございます。国の“対話”の相手となる事業者代表は、経済三団体のほかにも業種・業界・地域に応じた様々な団体が候補となります。身体・生命に関わる安全情報に関わる業種・業態においては、それぞれの事業者代表と国等が連携してリコール情報をはじめとした安全情報を発信する枠組みが複数存在しています。既に構築されているこのような事業者団体等とのつながりを生かし、新たな“対話”の場が設けられていくことが望まれます。このような事業者の中にも、自社の製品・商品には直接関係のない情報発信等の地域・社会に貢献する自主的な取組を行っている、または行おうとする事業者もいるのではないか。既につながりのある事業者団体に対し、安全情報だけでなく財産分野の注意喚起情報やエシカル消費に関する啓発情報など、様々な消費者関連情報をはじめとした消費者行政の持つあらゆる資源を活用し、そのような取組を行う事業者を支援・育成していきたい、そのための方策を一緒に考えてほしいと訴えてみてはどうか。国との“対話”の場が、順次このような事業者団体等、様々な階層に広がっていくことが期待されるということで、取組の方向性としましては、消費者庁は前述の基本的な考え方を参考に、国と事業者代表との“対話”の場を設置するということですが、また後で御意見等頂戴したいと思っております。

次に、2つ目の事業者における消費者教育の推進でございます。消費者に身近で信頼されている事業者から提供される情報は、消費者にとって安心感があり受け取りやすい。事業者の様々な地域・社会貢献に向けた自主的な取組において消費者関連情報を活用してもらうには、事業者の経営層並びに従業員が消費者関連情報を理解していることが必要であります。ただし、誤った情報が消費者に提供されないように、情報の正確性を担保する必要もあります。正しい情報をより多くの事業者における取組で活用してもらうためには、事業者が消費生活関連の知識を理解していることが必要であり、そのために行政は事業者における消費者教育を推進する必要があります。

事業者における地域・社会貢献に向けた自主的取組の中で、実際に高齢者向け取組を行っている事業者では認知症サポーターの養成に取り組んでいました。このように、自社の取組として行うためには、事業者内における経営層の理解と従業員の関連知識の習得が必要であり、これらを基盤として様々な取組が行われています。

消費者行政においても、消費生活関連知識を学ぶ講習会や資格等が存在していますが、今回ヒアリングした事業者においては積極的な受講や資格取得は行われていませんでした。事業者の自主的な取組の中で消費者関連情報の活用を促すには、今後、事業者における消費者教育のさらなる推進が求められます。

事業者における消費生活関連知識の活用例として、第2章でも紹介したトヨタ自動車では消費生活アドバイザー資格の取得を会社として積極的に推進し、様々な業務で生かしており、この取組について取り上げたということで、ここからはトヨタ自動車のトヨタ消費生活アドバイザーの会の取組を紹介しております。在籍者数304名、目的、活動とありまして、具体的な活動例としましては、発売前の車両カタログを確認し、お客様に分かりづらい表現や誤解される表現がないかチェックし、カタログ作成部署へフィードバックといったことに取り組まれておりました。

また、事業者・経営層のメリットとしまして、消費生活アドバイザー資格者の豊富な知識・感性を生かすことにより、お客様が見て触れるツール(カタログ、車両取扱書など)をより分かりやすいものにし、お客様の満足度が向上する。

カスタマーサービス部門だけに限らず、製造部門や影響部門など幅広い部門の従業員が資格を取得することにより、消費者の視点を取り入れながら様々な業務が行われる。

また、自社の従業員が資格を取得することにより、多くの資格取得者がいることを地域や社会へアピールすることができる。

従業員が資格取得によって知識を習得することにより、従業者自身の消費者被害防止に役立つ。日常生活に悩み等があると業務の生産性が下がるおそれがあり、資格の取得は従業員の心の健康や生活の維持に寄与している。

次に、事業者・従業員のメリットでございます。

資格が個人に付与される。単なる講習受講とは異なり、知識が身に付くだけでなく資格を持つことができる。

資格の取得費用の負担がない。

自らの業務に資格で得た知識・感性を生かすことができる。

従業員自身の消費者被害防止にも役立つ。

そして、まとめとしましては、上記のとおり、従業員の消費生活アドバイザー資格により得られた知識は、顧客向けツールを始め様々な顧客対応局面において重要な役割を果たしており、事業者の経営層や従業員自身にとって様々なメリットがある。ただし、消費生活アドバイザー資格の取得が直接地域・社会貢献の取組に結び付いているわけではなく、資格取得は環境整備の一つの要素として必要であるものの、消費生活アドバイザー資格の取得だけで事業者の自主的な取組が可能となるわけではない。さきに述べたように、消費者関連情報発信の取組につなげるためには、事業者の経営層に対しては、消費者被害防止の重要性、高齢者問題とも重なる社会的課題であることなどを丁寧に説明し、社会的課題解決に向けて一緒に取り組んでほしいことを伝え、理解を求めることが必要である。また、取組の担当者に対しては、消費者行政が持つ貴重な資源(有益な情報コンテンツや消費者行政の持つデータ、講演できるプレゼンター等)を説明し、取組における消費者関連情報の活用方法を“対話”により一緒に考えることが必要となります。

続いて、5ページですが、②目指すべき姿の実現に向けた対応策としまして、基本的な考え方です。、事業者にとって、消費生活関連の知識の習得は、顧客や消費者に直接接する部署において役立つだけでなく、直接接点がない部署においても、自社のカタログや製品・商品を作る上で分かりやすいものや使いやすいものとする等の品質向上に寄与し、顧客や消費者の満足度向上にも寄与する。

また、自社の従業員が資格を取得することにより、多くの資格取得者がいることを地域や社会へアピールすることができる。

さらに、従業員の知識の習得は、従業員のコンプライアンス意識を高め、従業員自身の消費者被害防止にも役立つ。

次に、事業者における消費者教育の推進は、事業者の経営層のみならず、行政や消費者にとってもメリットがある。事業者と消費者の間のトラブルは悪質業者だけに限ったものではなく、事業者側の知識不足や説明不足などに起因するものも多く発生している。顧客や消費者と直接やりとりしている従業員がそのつもりではなくとも知識不足等でトラブルになることもあり、また、たとえ事業者の経営層が熱心に従業員教育を行ったとしても発生してしまう。このようなトラブルは消費者側の知識不足に起因するものも多く、完全になくすことは不可能ではあるが、従業員への消費者教育により減らすことは期待できる。消費生活関連知識の習得は、現場で顧客や消費者と接する従業員の消費者理解を進め、より適切な対応が可能となり、事業者も望んでいない要らぬ消費者トラブルの減少に寄与する。

また、トラブルが減り、そのような事業者が増えることによって、より公正な市場の形成に寄与することもメリットである。

地域・社会へ貢献する自主的な取組を行う事業者において、消費生活関連情報を活用してもらうためには、事業者が自らの取組でどのように消費者関連情報を活用できるのかを判断する必要があり、そのためには、事業者の従業員が消費生活関連知識を習得する必要がある。

次に、福祉や防犯等既に事業者の取組で活用されている行政分野のように、消費者行政においても事業者へ資格取得を中心とした消費生活関連知識の習得を促し、そのような事業者に対する促進策・支援策に取り組む必要がある。

事業者の従業員が自主的・積極的に学ぶためには、講習会等への参加のような従前のやり方だけではなく、資格のような従業員自身にとってもインセンティブとなる方策が効果的である。

次に、事業者における消費者教育が一層推進されるためには、事業者の経営層に対して国等からそのメリットや取組の意義を伝える必要がある。国と事業者代表との対話の場をベースとし、経営層向けの講習会等様々な機会で訴え理解を深める取組が求められます。

6ページですが、事業者における消費者教育を一層推進するためには、消費者庁だけでなく、事業者団体、消費者団体、地方公共団体、関係省庁等が、消費者庁を中心に相互に連携しながら取組を進めていくことも必要である。

取組の方向性としまして、消費者庁は、前述の基本的な考え方を参考に、資格の取得など事業者が消費生活関連知識の習得を促す取組を一層推進する。取組においては、事業者の従業員へ資格取得のメリットをアピールするだけでなく、経営層に対しても事業活動においてメリットがあることをアピールするということです。

3つ目ですが、事業者の取組を応援する仕組みで、基本的な考え方としましては、消費者志向経営優良事例表彰制度のように、事業者の自主的な取組を応援する制度について、さらなる充実・強化と認知度向上が望まれる。

ただし、現在の消費者志向経営優良事例表彰制度は、事業者自らが応募する仕組みであるが、地域・社会の消費者に向けて自主的な取組を行う事業者を行政が見付け、それを表彰し消費者に周知するような方策も望まれる。今回ヒアリングした事業者では、自主的な取組により防犯等に寄与した従業員等が警察に表彰されたことが従業員等の励みとなり取組の一層の推進力となっており、同時に事業者としても地域へのアピールにつながっていました。消費者行政には推薦により表彰する消費者支援功労表彰制度もありますが、この制度を消費者関連情報の活用による地域・社会に貢献する取組を行う事業者を表彰するものへ拡大、または新たに事業者専用の表彰制度を創設してはどうか。これまで事業者との対立した構図として捉えられる印象のあった消費者行政が事業者との協働を目指すに当たっては、その意図を明確に表すインパクトのある施策が必要だと考えられます。

次に、消費者関連情報を活用して自主的な地域・社会貢献の取組を行う事業者を発見し、表彰により消費者等社会へ周知する仕組みの構築により、事業者の自主的取組における消費者関連情報の活用を促すことが望まれます。

また、このような表彰・周知の仕組みは、消費者のみならず他の事業者にとっても参考になります。先進的な地域・社会貢献を行う事業者で行う取組を表彰し紹介することは、これからの事業者の在り方を示し、他の事業者のイノベーションや成長を促す。消費者行政として、単に事業者を応援する制度という意味合いだけではなく、消費者市民社会の実現に向けて、大企業だけでなく多くの事業者に対しこれからの事業者の在り方や方向性を示すことが必要ではないか。

このような視点の下、どのような表彰制度が必要かなど、国と事業者(の代表)は一緒に制度を検討することが望まれます。

7ページです。取組の方向性としまして、1つ目として、消費者庁は、消費者志向経営優良事例表彰制度のさらなる充実・強化と認知度向上に引き続き取り組む。

2つ目としまして、消費者庁は、前述の基本的な考え方を参考に、地域や社会に貢献する自主的な消費者関連情報発信等の取組を行う事業者を発見・表彰し、消費者や他の事業者等に周知する仕組みを構築する。その仕組みは事業者の代表と共に検討し、事業者、行政、そして、消費者に有意義なものとなるようなものを目指すということです。

4つ目の柱として、事業者への消費者関連情報提供方法等の工夫でございます。

まず、基本的な考え方ですが、事業者の自主的な取組において消費者関連情報を扱ってもらうためには、消費者にとって有益で価値のある情報を提供する必要があります。有益で価値のある情報の一つとして、例えば被害防止に役立ち、最新かつ正確なものであることが望ましい。また、そのような情報がタイムリーかつスピーディーに提供されることも必要であります。

そのような情報提供を行うには、被害の発生や深刻度合いを予測しスピーディーに分析を行う必要があるが、これを行うにはAI等のIT技術の活用が有効であることは論をまたない。実際、既に事業者ではテキストマイニングツールの活用によるスピーディーな分析に基づき、対策や改善が行われています。

消費者行政においてもこのような分析に基づく情報提供を行うには、例えばPIO-NETの活用や、SNS等からの被害情報の発見等が考えられます。また、分析に基づく情報を、タイムリーかつスピーディーに様々なルート・ツールを使い、消費者に提供する体制を構築する必要がある。そのルートの一つとして、消費者の身近にいて、自主的な地域・社会貢献活動を行う事業者を経由した消費者への情報提供も、消費者へ情報を届けるための有効なルートである。

取組の方向性としまして、消費者庁は、前述の基本的な考え方を参考に、AI等IT技術を活用したハイブリッド行政により、消費者にとって有益で価値のある情報を、事業者にタイムリーかつスピーディーに提供する方法や体制を検討するということで、特に取組の方向性につきましては意見の部分になりますので、委員の皆様から御意見を頂戴し、拡充したいと考えております。

報告書案の説明は以上となります。

○新川座長 どうもありがとうございました。

時間も大分押しておりますので、このまま続けて各委員から御意見をいただいていきたいと思います。

報告書の素案について、丁寧に御説明いただきました。ありがとうございました。

それでは、各委員からそれぞれ御意見をいただいていければと思います。特に最後のほうでは、具体的な提案のところに少し御意見をいただきたいということで事務局からもお話がございましたので、その点も踏まえて御質問、御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

生駒先生、どうぞ。お願いします。

○生駒委員 生駒です。

御説明ありがとうございました。

大量な内容でしたので、私も今までいろいろ会議でお話しされてきたことが集約されているなと思って拝聴していたのですが、1つ、ピンポイントで申し訳ないのですが、「対話」という言葉を繰り返し使われておりまして、ダイアローグということで、これからの時代、ダイアローグがすごく重要だというのは私も承知しておりますが、ここまで対話を強調されるということは、今まで対話があまりなかったということなのではないかと推測しております。国と事業者であるとか、事業者と消費者の方であるとか、対話がとにかく必要だと、あるいは対話ができるプラットフォームを構築したいとおっしゃっているのですが、具体的に対話というものをどのように、会議といいますと、やはり一方的に何かお伝えするだけではなくて、例えばですけれども、ワークショップをするのか、意見交換ということですね。一方的に伝えるだけではなくて、消費者や事業者の方からの意見も吸い上げる。そして、意見交換をして循環させて、実際の消費者の方々に添う、課題に添うようなことを提供していくということではないかと推測しているのですが、対話という言葉がかなり繰り返し使われておりましたので、それに対しての具体的な活動のイメージがありましたら教えていただければと思いました。

○新川座長 ありがとうございました。

それでは、事務局から少し御説明いただければと思いますが、いかがでしょうか。

○大岡企画官 まさに生駒委員がおっしゃっていただいたとおり、意見交換をして、その情報が循環して、事業者の課題に添うということを対話により実現するということでこちらでは考えております。

○新川座長 対話といいますと、単に双方が意見を出し合うというよりは、対話を重ねる中で新たな発見であるとか相互の理解の深まり方であるとか、その中で本当に伝えるべき情報というのを双方が納得する形でこういうものを伝えないといけないですよねというようなある種の合意や共感が達成できるというようなところまで進むと、対話も本当にダイアローグらしくなるのですが、その辺りの意味まで含めた対話というイメージだろうと思います。ですが、なかなか報告書にはそこまで書けていないのですが、生駒委員、いかがですか。

○生駒委員 今、オンラインセミナーでもとにかく対話をしようということで、基調講演があった後に皆さんにお考えいただいて、班ごとに意見をまとめるようなワークショップ形式というのがすごく普通になってきて、参加された方が終始黙ってただ聞くだけで終わるのではなくて、必ず発言していく、コミットしていくということが日常になりつつあるので、対話は皆さんすごく慣れてきていらっしゃると思います。ですので、余計に一方通行の情報提供だけだと、効果は薄いかなと思われる点がありますのと、是非省庁間でも対話していただきたい。ある種縦割りの弊害で対話がやはりないということで情報が一本化されにくいところもあります。ですので、横のつながりでの対話も是非設けていただきつつ、事業者や消費者に対しても、今、新川先生もおっしゃったように、意見交換、単に聞くだけではなくて、本当にそこから更に次のアイデアが生まれてくるような対話できる場作りをしていくことを期待しております。

ありがとうございます。

○新川座長 ありがとうございました。

各委員からいかがでしょうか。

片山先生、どうぞ。お願いします。

○片山委員 片山です。

まだ私の読み方が不十分なのだと思いますが、この仕組みを実現していく上で、国と事業者代表との対話というものがやはり必要だというのはそのとおりだと思います。その対話の場というイメージもポンチ絵等で示していただいているのですが、私はやはり消費者側でいろいろ見てきた中で、この対話の場に、消費者団体であるとか、消費者の心理だとか消費者が必要とする情報というのがどういうものなのかということ、あるいはどういう形でそれを提供してもらうと一番効果が上がりますよということを消費者サイドで意見を言える人も本当は加わっていくと、より充実した形での情報提供につながるのではないかなと思っています。その辺のところ、イメージとして将来的にはそうするということなのか、どういうイメージを持てばよいのかというところを教えていただけますでしょうか。

○新川座長 ありがとうございました。

事務局、いかがでしょうか。

○大岡企画官 消費者団体につきましては、第5の資料の2ページの中ほどに“対話”の場の参加者の拡大という部分に記載しております。さらに、消費者教育、啓発のスキルがある消費者団体やNPO等も目的や必要に応じて適宜参加できるような枠組みとなっていくことが望ましいということで基本的な考え方としては考えております。

○新川座長 ありがとうございました。

片山委員、いかがでしょうか。

○片山委員 取組の方向性といういわゆる意見に当たる部分にはそこが書かれていないので、要するに、それは将来的な検討事項というお考えと受け止めたらよろしいでしょうか。

○新川座長 事務局、いかがですか。

○大岡企画官 具体的には、まずは消費者庁と事業者の代表で検討してもらうイメージと考えています。

○片山委員 分かりました。そこはもう少し考えてみたいと思います。ありがとうございます。

○新川座長 ありがとうございます。

片山先生の御意見としては、やはりこうした対話の場、もちろん、国、事業者代表がまずはということですが、むしろ早い段階から積極的に消費者団体あるいは関係の専門家の方々に入っていただくような設定も必要ではないかという御意見でしょうか。

○片山委員 消費者団体でなくてもいいのですが、例えば消費者相談の現場にいる人とか、消費者教育を専門に扱っている消費者専門家という人たちが現場でたくさんの経験や情報の取扱いをしてこられているので、やはり入っていただくのは有効ではないかなと思う部分が正直あります。

○新川座長 ありがとうございました。特に取り扱う情報の種類によっては、そうしたところも留意しなければならないかもしれないと私も今思いました。

そのほか、いかがでしょうか。

受田先生、どうぞ。

○受田座長代理 受田です。

御説明ありがとうございました。

今、御説明をいただいて、全体の構成とポイントになるところが私なりに理解できたと思っております。

その上で、例えば「第4 事業者に消費者関連情報を活用してもらうための方策の検討」の一連のページの中でいうと、このワーキングの報告書をポンチ絵一枚にするときに使う図としては、7ページにある図を使っていくことになりますでしょうか。もしポンチ絵一枚で説明するとしたらどれを使うかというのがまず一つ質問です。

それから、恐縮なのですけれども第4の4ページに戻っていただいて、そこに“対話”による消費者関連情報フローの提案というのがあります。ここも重要だと思うのですけれども、依頼型情報提供という言葉と共創型情報提供という言葉があります。依頼型情報提供も対話によって行われる、対話という手段が依頼型の情報提供につながっていくこともあると思うし、共創型の情報提供につながっていくこともあると思うのです。さっき、生駒委員が対話という言葉について御質問されたのですけれども、対話という言葉、それから、ある場合は対話の場という言葉が出たり、対話ということが意味している内容が共創していく場の手段であるとどこかで捉えておかないといけないのかなと思いました。

さらに、この対話に関してもう2点申し上げたいのですけれども、この対話の場における重要な役割として、通常はファシリテーターとかコーディネーターという役割が重要ではないかと思います。このファシリテーターとかコーディネーターが不在の場合、意思疎通が十分できず、対話があったとしても何かを生み出すことができないケースが間々あるのではないかと思います。コーディネーションやファシリテーションをスムーズに進める具体的モデルが横浜市さんや大阪府の事例のように、大阪府では公民戦略連携であり、横浜市さんの場合は共創フロントということではないかと思っております。そういう意味で、対話、それから、コーディネーション、そのモデルとしてこういう自治体の例があり、それによって事業者と地公体との意思疎通がスムーズにいくというような流れが明確になることを考えていかないといけないのではないかなとまず思いました。

2つ目のことなのですけれども、今の点と関連するのが、「はじめに」のほうに戻っていただいて、ここにいろいろな事例がございます。行政との連携という形で各事業者のヒアリングの結果をまとめていただいています。ここが一つ、その後の対話、あるいは地公体との連携が十分でないということをあらかじめ示唆する部分ではないかと思います。したがって、各事業者ヒアリング結果のまとめにおいて、行政との連携という墨付き括弧の部分が対比関係でどれぐらい不十分であるのか。あるいは、ここは特徴があるというような点を少し布石的に示しておかないといけないのではないかなと感じました。

その上では、まとめの墨付き括弧に情報提供の取組と行政との連携をまとめて記述している部分があったり、行政との連携だけを個別に書いてある場合がございます。また、行政との連携においては、協定締結のことが一つ盛り込まれておりますけれども、協定締結が実質化されているかどうか、すなわち、対話が十分で共創の場として資するのかどうかというようなところが更にここの前段の部分の事例において少し記述として盛り込んでおく必要があるのではないかなと思いました。

いろいろ申し上げてすみません。混乱しているかもしれませんけれども、対応をよろしくお願いいたします。

○新川座長 ありがとうございました。

御指摘いただいた点につきまして、事務局のほうからもし現時点で何かお答えいただけることがありましたらお願いします。

○大岡企画官 ありがとうございます。

まず、ポンチ絵一枚という点につきましては、まだあまり検討はできていなかったので、もちろん御指摘いただいた7ページも重要だと思いますし、4ページの基本形ということもあるかと思いますので、少し検討したいと思います。

次に、ファシリテーターやコーディネーターの件につきましては、受田委員から御指摘がありましたとおり、横浜市や大阪府の例を我々としては一番参考にしておりますので、対話ということも同じでございますが、横浜市や大阪府の公民の連携の場での対話やコーディネートといった部分が一番参考になるのではないかと考えております。

また、ヒアリングのまとめのところで、行政との連携についてですね。もう一度見直してみたいと思いますが、個社のワーキングのまとめのところで、行政との連携について示唆できるようなことを盛り込めれば盛り込んでいきたいと思います。

○新川座長 受田委員、いかがでしょうか。

○受田座長代理 よろしくお願いします。

○新川座長 ありがとうございました。

最初のほうで御指摘いただいた対話ということと、あるいは対話の場とこの共創型と言っていることとの関係とか整理というのは、これまた事務局のほうでお考え置きいただければと思います。

また、行政との連携というところで、各事業者の方々から問題指摘があった点、この辺り、連携はしているけれどもというそこでの問題を踏まえて、私たちの対話、共創の場という議論につながっていくようなところをクリアに問題指摘を出してみていただくといいのではないかと私も思いながらお話を聞いていました。よろしくお願いいたします。

そのほか、いかがでしょうか。

高先生、どうぞ。お願いします。

○高委員 高です。

事務局の方々、これだけのものを、先回の委員会からあまり期間はたっていないわけですけれども、その中でここまで仕上げていただいて、心から感謝いたします。心から敬意を表させていただきます。

これはほぼ完璧なものができたという印象を持っています。それで、2点申し上げますけれども、これは変更してほしいというようなことではなくて、そういう意見も入れてみようかということであれば、入れるという程度で受け止めていただければと思います。

1点目は、第5章の2ページに事業者代表との対話というところがあります。それで、事業者団体の名前を出しておられるのですけれども、正直に言いまして、事業者団体を通さないわけにはいかないのですけれども、本当に事業者に動いてもらいたいと思ったら、私は団体よりも個別の会社のほうがいいと思っているのです。というのは、事業者団体というのはある意味でクッションになってしまう可能性があるからです。

では、個社を選ぶとすれば、どういう会社がいいのかというと、できれば消費者志向経営などで表彰された会社のトップと直接対話をするといった提案のほうが、実際に動くのではないかなと思っています。ですから、経済団体との対話をしないということではなくて、それプラスで書くとするならば、消費者志向経営で受賞された会社さんとの対話とかといったものを入れてもいいのかなという印象を持ちました。

もう一点は、今日、西田先生にお話をいただいたので、この部分は既にできているように思います。原稿を見させていただいたら、書くべきところは全てできている。4章の6ページとか8ページできちんと整理していただいている。それを受けて、第5章の最後の7ページ目でもう一度言及していただいているということで、流れはできていると思うのです。

あえて5章の7ページに追加するとすれば、最終的にこの報告書を読んでいくと、被害のパターンの整理というのを当然やらなければいけないのですけれども、私は、これに加え、こういう被害が出始めていますねというところで、予兆をつかんで事前にウォーニングを出すようなところまでAIツールを使えればいいと考えています。もちろんテキストマイニングでもってやれるところは相当進んでいるのですけれども、例えばジャパンライフやケフィアなど、ああいった被害者が少し出てきたところで、同じような兆候があるなら、これは過去のデータの分析になるのですけれども、そこから今後こういうことが起こるであろうということを予測するためのツールを開発すべきと考えております。そのためには、やはりデータ分析をやるような専門部署を設けるとか、こういう記載があってもいいのかと思います。

さらには、これは難しいかもしれませんが、そういった研究をやる方々、研究者の方々、及びこのために研究助成を出すとか、そういった仕掛けもあってもいいのではないか、そういう提案を書けるものなら、書いてもいいかなと思いました。

以上2点です。

○新川座長 ありがとうございました。

事務局、いかがでしょうか。

○大岡企画官 ありがとうございます。

まず、経済団体の件ですが、本日御欠席の八木先生から経済三団体ということで強い御意見もありまして記載しておりましたので、再度座長とも検討させていただければと思います。

○高委員 その記載を消してほしいということではありません。それを抜きにするわけにはいきませんが、実際に機動的に動かそうと思ったら、個社との対話を図る仕組みもあった方がいいかもしれないということです。

○大岡企画官 承知しました。

次のデータ分析の専門部署についても、御意見は承りましたので、検討させてください。

○高委員 ありがとうございます。

○新川座長 研究助成はどうしますか。

○高委員 私はあったらいいと思います。

○新川座長 一応そういう御提案があったということで、事務局も検討してみてください。

○大岡企画官 承知しました。

○新川座長 そのほか、いかがでしょうか。

片山先生、どうぞ。

○片山委員 何度もすみません。

もう一点なのですが、第4の1ページで、私はこのスキームがうまく動くためには、事業者さんがやはり消費者関連情報を広げていくこと、そこに関与することにメリットがあるということを本当に心の底から理解をし、腹落ちしてもらってやろうというふうになることが一番だと思っています。経済三団体もそうですし、そのトップクラスの人たちにいかに大事な社会的課題であるかということを理解してもらうのが一番のテーマだと思っていて、その意味で、第4の1ページの事業者の自主的取組を行うメリットのところをもう少し補充してもらったほうがいいかなと思っています。ここにある集客効果、もちろん接点が増えますから、お客さんを集めるということにもなりますし、それから、顧客からの信頼獲得という表現で書かれていますけれども、なぜ信頼されるようになるのかというところをもう少し掘り下げて、この報告書の中でも経済界を動かすようなアピールをしておかれたらいかがかなと思います。

私として思うのは、やはりそういう消費者情報に業界、事業者の皆さんが触れること、それから、それを学ぶこと、知ることによって一番大きな消費者視点、消費者はこういうことを考えてこういうことを望んでいて、消費者が目指す社会というのはこういうものなのだということを知ってもらう。それを知っている事業者だからこそ消費者が信頼するわけであって、要するに、安全安心で公正な社会というのがこういうものであるということをちゃんと認識している事業者に事業者自身が変わっていく。それが顧客からの信頼獲得につながるというところをどこかでもう少し説明をしてもらって、消費者問題に心から取り組む事業者というのは、真の信頼獲得を長期にわたって維持できるのだというような大切さを強調されてはいかがかなと思います。そのことを経済三団体や個々の事業者のトップを通じて理解してもらい、この取組に参加する企業が増えてくるというふうになってほしいなと思いますので、そこをもう少し工夫していただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

○新川座長 ありがとうございました。

事務局、いかがでしょうか。

○大岡企画官 ありがとうございます。

事業者のメリットのところですね。御意見は承りましたので、どこに記載するかも含めて追記をしようと思いますので、検討させてください。

○片山委員 よろしくお願いします。

○新川座長 よろしくお願いいたします。

そのほか、いかがでしょうか。

特に今の事業者のメリットのところは、確かに御指摘のように集客や信頼獲得という書き方をしていただいているのですが、もう少し具体的にどういう活動が集客になったり、信頼獲得になったりして、そのことを通じて事業者にとっては目先の利益、それから、中長的な利益も含めて、それが充実してくるというような、一応4つのポツでメリットを書いていただいているのですけれども、そこのところのつながりも含めて、構成の仕方も考えてみていただければと思いました。よろしくお願いいたします。

○大岡企画官 承知しました。

○新川座長 そのほか、いかがでしょうか。

西田委員、報告書についてはまだ御発言がございませんでしたが、いかがでしょうか。

○西田委員 西田です。

内容はすごく充実していて、僕もいい報告書になってきたかなと思っています。

それで、すごくいい内容が埋め込まれているところがあるので、面白い内容が書かれているよということが「はじめに」というかそういうところにあって、読んでもらうための工夫が何かあるといいかなということで考えてもらっていいかと思いました。それは概要という感じになるのか、別立てでするのかもしれないのですけれども、面白いこういうモデルの話が出てくるよとか、そういうところまで関心を持ってもらえるように、最初のほうに何か分かりやすいメッセージ的なものを出しておくといいのかなと感じました。

○新川座長 ありがとうございます。

事務局にお伺いしますが、今、御指摘のあったような概要版だとか、全体を通じてのポイントのようなものは何か作成される予定などはおありなのでしょうか。

○大岡企画官 概要につきましては作成したいと思っております。また、西田委員の御発言に関しましては、本日御発表いただいた内容を含めて、アピールできるように追記したいと思います。

○新川座長 ありがとうございました。

○西田委員 ちょっと補足ですけれども、日本スポーツ振興センターのときにも分厚いレポートが出たのです。でも、絶対にそれは読まないので、特に大事なワークシートは1ページ目に出したことをしたことがあったので、今回のは別に分厚いわけではなく、内容もどれも大事なところだと思いますが、何かそういう工夫があるといいなと感じました。

○新川座長 ありがとうございました。概要版を作るときの工夫も必要かもしれませんね。

○大岡企画官 承知しました。工夫してみたいと思います。

○新川座長 今日の西田先生のAIのお話は、また本文の中でも少し生かしていただければと思いますので、よろしくお願いします。

○大岡企画官 承知しました。

○新川座長 そのほか、各委員からいかがでしょうか。

時間も過ごしてきて、予定の時刻が近づいてまいりましたが、特に、今日最後になるかもしれません。御発言があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

特になさそうですので、今日は本当に長い時間ありがとうございました。

少し事務局から出していただきましたプランにつきまして、若干やはり概念、考え方の整理、対話であるとか、あるいは共創の考え方であるとか、この辺りをどう整理していくのかということについて御意見をいただいておりますので、ここはきちんと分かりやすく整理していくということになろうかと思います。

それから、対話の場の提案につきまして、これ自体は積極的にということですが、こうした対話に当たっては、対話というのを進めていく上でのファシリテーションや、あるいはコーディネーションといった機能が大変重要だということで御指摘もいただいておりました。少し対話に必要な条件設定のようなところ、対話を促進し、そして、本当の意味での対話にしていくような仕組み作りをしていくこと、その際に、2つ目に、対話につきましては、やはり行政と事業者にとらわれず、様々な専門家や関係団体にも入っていただくようなことも考えてもよいのではないかということで御意見もいただいてございます。

こういう対話がどうしても必要なのだということについては、少し事例等のところでも連携の内容の問題として、本当の対話になっていないというところをしっかり踏まえて、この対話の必要性、そこでの場作りの在り方といったところをクリアに出していくということになろうかと思いますので、ここはもう一度事務局のほうでも検討してみていただければと思っております。

なお、それ以外にも事業者の方々のメリット、特に自主的に関わっていくことでどういうメリットがあるのかということについて、もう一度体系的に説得的に説明ができるように、組立てを考えていただきたいということ。

また、AIの活用につきましては、今日、西田先生から貴重なお話をいただきまして、この辺りもしっかり入れておいていただければと思いました。

それから、ちょっとばらばらになってしまいましたが、対話に際しましては、特に国が関わるような場作りに際して、経済三団体だけではなくて、むしろ消費者志向経営で表彰を受けられたような企業さんのトップともう少しきちんと具体的に話し合ったほうが効果があるのではないかといった御指摘も併せていただいております。

いずれにいたしましても、こうした対話というのが促進されていくような条件を考え、提案をしていくということが一つ私たちの役割としてある。もう一つは、やはりデータ分析というのをきちんとやっていくことができるということを私たちとしても提案していく必要がある。データ分析の部門を設けるとか、研究助成あるいは認証制度ができるかというところはまた少し議論もあろうかと思いますが、そんなことも一応どこか頭の片隅で想定しながら、より実践的にやっていただける提案に結び付けていければと思っております。

しゃべっている間に時間になってしまいまして、申し訳ありませんでした。

本日のワーキング・グループにつきましては、以上にさせていただきます。


≪4.閉会≫

○新川座長 事務局から何かございますでしょうか。

○大岡企画官 特にございません。

○新川座長 ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の第9回消費者関連情報の提供の在り方検討ワーキング・グループは、閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、御参加くださいましてありがとうございました。

(以上)