第32回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2021年7月12日(月)15:00~16:02

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

【委員】
丸山座長、新川座長代理、山本委員長、片山委員長代理
【オブザーバー】
柄澤委員、大石委員、大阪大学大学院法学研究科教授 清水真希子氏、京都大学法学系(大学院法学研究科)教授 原田大樹氏
【説明者】
一橋大学大学院法学研究科 生貝 直人 准教授
【事務局】
加納事務局長、渡部審議官、太田参事官、大岡企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 共同規制に関する有識者ヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○太田参事官 本日は、皆様、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから消費者委員会第32回「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を開催いたします。

本日は、片山委員長代理が遅れての御参加と伺っております。

それから、清水オブザーバーにおかれましては、16時ぐらいに御退席と伺っております。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。不足等ございましたら、事務局までお知らせください。

なお、本日の会議は、ウェブ会議による開催となります。公開で行いますが、感染拡大防止の観点から、一般傍聴者を入れず、報道関係者のみ傍聴をいただいての開催となります。議事録につきましては、後日公開することといたします。

次に、ウェブ会議による開催に当たりましてお願い申し上げます。

1つ目に、ハウリング防止のため、御発言いただく際以外は、マイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。

2つ目に、御発言の際は、あらかじめチャットでお知らせください。座長に御確認いただき、発言者を指名していただきます。指名された方は、マイクのミュートを解除して、冒頭でお名前をおっしゃっていただいた上で、御発言をお願いいたします。御発言の際、配付資料を参照する場合は、該当のページ番号も併せてお知らせください。

なお、御発言の際には、可能であれば映像、カメラのマークのミュートを解除いただけましたら、どなたかお話しになっているのか分かりやすくなりますので、御協力をお願いいたします。

3つ目に、音声が聞き取りづらい場合には、チャットで聞こえない、聞こえにくいなどを御記入いただきまして、お知らせいただきますようお願いいたします。

それでは、丸山座長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。

○丸山座長 了解いたしました。

座長の丸山です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

本日の進行についてですが、途中で私の回線が切れた場合は、復旧するまでの間、新川座長代理に、新川座長代理の回線も併せて切れた場合は、事務局に進行をお願いします。


≪2.共同規制に関する有識者ヒアリング≫

○丸山座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、共同規制についてのヒアリングを行いたいと思います。

参考人として、一橋大学大学院法学研究科の生貝直人准教授にお越しいただいております。

本日は、大変お忙しい中、ありがとうございます。

それでは、15分程度でお話しいただきますよう、よろしくお願いいたします。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 御紹介にあずかりました、一橋大学大学院法学研究科の生貝直人と申します。

本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

私自身は、消費者法を専門としているわけではなく、いわゆる情報法、インターネット、オンラインに関わる様々な法政策を研究しているものなのでございますけれども、特に、今日、主題とさせていただいている自主・共同規制によるルール形成の在り方というものについて、研究をしているものでもございまして、そういった観点から、こちらのワーキング・グループにも、少しでも御参考としていただける部分があれば、有り難いものと考えております。

まず、自主・共同規制というものについて、2ページ目をおめくりください。

こちら前提として、正にこういった自主・共同規制と呼ばれる方法論が、なぜ重要性を、特に近年、デジタル領域で増しているのかということについて書かせていただいております。

こちらは、私自身が簡単に整理したものではあるのですけれども、やはり、特に私が専門としているようなインターネット、デジタル経済という中では、国が法律によって詳細に直接的な規制を行うということが、技術、ビジネスのイノベーションあるいは専門的知識の官民の逆非対称性等々、様々な理由で困難であると。

それでは、他方で民間に全てを委ねれば問題が解決するのか、抑制されるのかと言うと、そうでは全くない。民間による純粋な自主規制の困難というのも、やはりそもそもルールが作られないということから、そのルールの内容あるいはエンフォースメントあるいは特にデジタル分野では、業界団体等が形成維持困難といったような理由も含めて、様々な理由があるところでございます。

そして、次の3スライド目を御覧いただきますと、今回主題とさせていただく共同規制、ちょっと自主・共同規制という言葉を併せて申し上げておりますけれども、いわば、中間的な手法というものをどのように作り出すかという考え方だと私自身は整理しているところでございます。

自主規制の持つ柔軟性等の利点と政府規制が持つ信頼性等の利点を組み合わせて、イノベーション親和的かつ確実なルール枠組みを作り出すための政策手法であろうと。

そして、1つ、正にこのタイトルのところに関わる点であるのですけれども、これらの下に書かせていただいているような規制なし、自主規制、共同規制、政府規制というもの、こちらは、特に英国等の定義を参考にして書かせていただいているものでございますけれども、一定の定義は様々な形で議論されてきているのですけれども、やはり、民間の作り出すソフトローあるいは自主的な取組に対して、政府がどのような強度や方法での介入を行うのか、それはやはり、非連続的ではない、連続的なコンティニュームの中にあるものでございますので、これらの間に明瞭な、厳密な区分というものがあるわけではございません。

特に、この政策手段として自主規制、共同規制というものを用いるときには、あわせて自主・共同規制、正に上に書いてございます、self-and co-regulationと合わせて称されることも多いところでございます。

そうした枠組み、正にこれまで自主規制か政府規制なのかという、ある種の2項対立で語られてきた部分が少なからずあったであろう、こういった規制、政策の在り方というところに対して、混合的措置により問題を解決する手法というものは果たして何なのか。

そして、ここでもう一つ重要な点は、右に少し動的対応というところを書き加えておりますけれども、やはりこの問題状況というのは、特に、こういった手法が対象とする分野というのは、常に時々刻々と変わり続けるものでございます。

そうしたときに、問題状況あるいは市場の環境というものをしっかりと精査しながら、モニターしながら、この介入の強度というものを強化したり、弱化したり、あるいは介入の手法を変えてみたりと、そういったようなことが、まず大きな前提となっているということでございます。

4ページ目をおめくりいただきますと、参考として、欧州連合における自主・共同規制の定義というものを引いてきております。

こちらは、前ページで申し上げた定義と大きく変わるところではないのでございますけれども、大きくは、特にこういった取組について、活発に様々な施策を行っている欧州連合のほうでは、大まかに、こういった理解でいるという御参考です。

ただ、ここで引いておりますEuropean CommissionのInterinstitutional agreement on better law-makingという政策文書が、こちらに少し書いているとおり、2016年に、これ自体は失効しているものでございますので、何か厳密な定義というものが、欧州連合でも共有されているというわけではないという認識であります。

この間に、明確な区分というのが、必ずしもあるわけではないと申し上げましたけれども、こちらの記述からも見られますとおり、法律による明確な補強措置の有無というものが、1つのメルクマールだというものが一般的な理解だと認識しておりまして、さらに、両者総称して、そういった自主・共同規制的なアプローチを総称して「ソフトロー」アプローチという言葉で呼ばれることも少なからずあるということでございます。

5ページ目をおめくりいただきますと、自主・共同規制によるルール形成、各国・各分野での実践ということで、やはりデジタル分野に限らず、消費者分野に限らず、こうした方法論というのは、様々な形で使われるものでございますので、例えば、欧州委員会のほうですと、2013年から、よりよい自主規制・共同規制のための実践コミュニティ、コミュニティ・オブ・プラクティスというものを作りまして、ここで挙げているような、様々な分野におけるベストプラクティス、そこで見えてきた課題や可能性というものについて共有するということを活発にやってきたところでございました。

そして、下に書いてございますのは、少し古い内容にはなりましたけれども、私自身、2011年に情報社会と共同規制という形で、アメリカ、ヨーロッパ、そして、我が国における内容というものを比較しておりますので、御参考としていただけることがあればと思います。

なお、こちらの研究といいますのは、本日、オブザーバーでおいでいただいております、京都大学の原田オブザーバーの『自主規制の公法学的研究』という名著に、非常に影響を受けておりましたところで、本日、このような形でお話をさせていただくこと、大変恐悦至極にいるところでございます。

さて、6ページ目に移っていただきまして、少し分類というところを参考まで申し上げておきたいと思います。

非常に様々なバリエーションがあるものでございますので、非常に多くの分類というものが、議論の仕方があるわけでございますけれども、特に、私自身が最近関心を持っている分類の軸というところの意味では、1つは、上にございます官製ソフトローと民製ソフトローということでございます。

基本的には、当然後者、民の側が作るソフトロー、自主規制というものが主題となり、それを取り巻く共同規制構造というものをどう考えるかということになるわけでございますけれども、少し後で見ますように、両者の多層的なソフトロー構造というのも、少し見受けられるところでございます。

さらに、こういった特にソフトローアプローチ、自主規制、共同規制というところですと、2つ目の軸として、業界自律型ソフトローと関係者協定型ソフトローといったようなものも挙げられるかと思います。

業界自律型というのは、例えば、ある業界団体等が、自らの業界では、このような形で消費者保護等をやっていこうということについて、しっかりと官と協力を一定程度しながらルールを作っていくというものでございますけれども、例えば、今回の主題ではございませんけれども、著作権分野などでは、利用者と権利者側といったような、異なる利害を持ったステークホルダーの間の協定、調停といったような形で、こういったルールが作られることもあるということを対比的に申し上げております。

さらに、恐らく今後非常に大きな論点になってくるであろうところが、業界団体型ソフトローとプラットフォーム型ソフトローというところでございます。

従来、このソフトローあるいは自主規制や共同規制というものは、いわゆる業界団体というものを主役に置いて議論されてきたといってもよろしいかと思うのですけれども、デジタル領域、恐らくこの消費者取引というところでも非常に重要な役割を果たしてきている、これからの分野におきましては、プラットフォーム型ソフトロー、プラットフォーマーが業界団体等よりも、あるいはそれに代わってルール形成、維持の主体として重要な役割を果たすようになってきている、この点については、少し後でも補足を申し上げたいと思います。

さらに、もう一つ、御参考までというところでございますけれども、行政規範型ソフトローと民事規範型ソフトローといったような区別も最近はなされるところであります。

言うまでもなく、本日の御議論を含めまして、主眼は行政規範に関する議論というところが、1つは大きいのかと思うのですけれども、民事規範に関わるソフトローというのも、最近は、特に様々な形で議論されるようになってきている。

次の7ページ目のところに、ちょうど今年の4月に知的財産戦略本部の構想委員会というところにおきまして、私も少し参加をして、このソフトローの活用、知財分野における議論というものがなされたところで、こちらは、そのときの事務局資料というものでございますけれども、抽象的な民事規範ガイドライン等で具体化するようなタイプのアプローチ、抽象的な行政規範を民間自主規制等で具体化するようなアプローチということで、両者の特徴というものが、それぞれ書かれているところでございまして、場合によりましては、こうした消費者分野におきましても、こういった両面から見ていく必要性も出てくるのではないかというところでお示ししているところでございます。

8ページ目、こちらも少し御参考というところでございますけれども、この図の構造自体は、いわゆる共同規制的アプローチとして、しばしば見受けられるところであるかと思います。

官の側が一定の原則等によって働き掛けを行い、そして、民の側が、具体化あるいは執行、維持するような仕組みを整え、具体的な各個別の利用者ですとか、企業といったようなものが、それに適切な形で従うといったような形。

そういった中で、当然、民製ソフトロー、真ん中の部分というのは、業界団体やプラットフォーム等が形成・維持するもので、ソフトローなのでございますけれども、やはり、それと対応して、国内外様々な事例を見ておりましても、この官の側が、様々な自主規制の参照軸となるようなプリンシプルでありますとか、あるいはガイドラインでありますとか、そういうものを定める、この部分もかなりソフトな形で形成されることが多いといったようなことを、ここでは少しお示ししているところでございます。

さて、9ページ目でございます。

そうしたときに、こういった自主・共同規制において、政府の役割というものは、果たして何なのか。

これは、様々な議論があるところでございますけれども、やはり、一番重要なところとしては、私自身は、そのためのインセンティブ提供だとちぢめて申し上げることが多くございます。

なぜ、先の整理でいうところの、民製ソフトローというのは、適正に形成・維持され得るのか、そのことというのは、言うまでもなく、形成・維持主体に、そのインセンティブがあるからということに他ならないと。

そのようなときに、何も政府がしない状態で、そのインセンティブというものが存在すれば、それは、政策課題にはなり得ないわけでございますけれども、それが存在しないから、そのインセンティブをどのように提供するかというのが、正に政策課題であり、政策手法そのものとなるわけでございます。

インセンティブの種類、こちらも非常にいろいろあるところでございますけれども、私自身は、主にこの4つを挙げることが多くございます。

1つ目だけでも非常に様々なバリエーションがあるところでございますけれども、政府や法律等により、公式あるいは暗黙に求められているから。

ルールの不確実性を解消し、予見可能性の高い事業環境を作りたいから、これは、比較的事業者の内在的なインセンティブであるともいえると思います。

顧客や社会の評判、あるいは、何かしらのお墨付きを得たいから。

4つ目に、よく我々は、規制の影理論という言葉を使ったりするのですけれども、自主的にやらなければ、規制強化が起こるから。こうした部分というのも、インセンティブとしては、重要な部分として論じられるところであろうかと思います。

それを10ページ目のところで、少しブレイクダウンをしてみたというところに近いわけでございますけれども、この関与手法というもの、大きく分けて重要なところは、ルール形成段階での関与と、そして、ルールが運用されていくプロセスの中での関与、この両面からしっかり見ていく必要があるということでございます。

やはり、こういったルールを作ること、作り終わった辺りが、やはりルールと呼ばれるものの、大体2割から3割ぐらいの進展であると。

多くのコスト、あるいは多くの政策手段としての様々な取組というのは、むしろそこからが本番であって、どうそのルールが回っていく状況を作るか。

そうしたときに、例えば、形成段階ですと、ソフトロー形成の要請でございますとか、あるいは、改善要請や公的承認(お墨付き)、マルチステークホルダー性の確保、極めて重要なところでございますし、業界団体や中立第三者機関というものも、こちらは、場合によっては、官の側が、その創設というものに、様々な形で関与する必要があるものかと思います。

さらに、参照軸となる原則や、官製ソフトロー。

そして、運用プロセスの関与というところにおきましては、やはり、何より継続的なモニタリングというものが重要でございます。

果たして、その政策、ソフトロー政策の中で提示された目的というものが、適切に達成されているのか、いないとしたらなぜなのか、そして、その改善というものは、いかに行えるのかということは、継続的なモニタリングというものによってこそなされるものでございます。

更に重要なこととして、どうしてもブラックボックスになりがちな民間ソフトローの透明性確保というもの、そして、関係者間にも様々なパワーバランスがございますので、その是正、必要な場合には、根拠がある場合には、深刻な違反等への罰則、その他必要な支援策というのも大変重要なところであり、こうしたことの整理を、我々は、しばしばキャロット・アンド・スティックという言葉を使うこともございますけれども、正と負両面でどのようにインセンティブ提供していくかということが課題になるわけでございます。

11ページのところでは、先ほど少しお示しした欧州委員会の自主・共同規制実践コミュニティというところで、非常におびただしい実例を基に、よりよい自主規制、共同規制のために、どのようなことが共通していえるのかというプリンシプル群を作って公表しておりますところで、上で申し上げところと、かなり近しいところではあるのですけれども、是非、こういった制度を実際に政策として考えられていく中では、大変参考になるところが多いかと思いますので、是非御参照いただければということでございます。

ちょっと読み上げは、省略いたします。

少しプラスアルファーの論点を申し上げたいと思います。12ページでございます。

特に、さっき申し上げたとおり、ここは、およそ10年ほどの、いわゆる自主・共同規制アプローチ、様々な変化があるところでございますけれども、一番大きいものというのが、このプラットフォームという主体の重要性の拡大、おおよそ多くの取引、消費者も含めて、このデジタル・プラットフォームの上で行われるようになってきていると。

そういったときに、さっき申し上げたとおり、従来の自主・共同規制は、いわゆる国内の業界団体におけるルール形成を国家が後押しすることが、大きな前提であり、主眼としてきたわけでございますけれども、プラットフォーム経済においては、以下の点が重視される。

1つ目といたしまして、長期的な官民関係におけるインフォーマル要請の困難化ということでございます。

やはり、国内、かつ、比較的長く活動していらっしゃる事業者及びその団体といったようなものは、やはり官がインフォーマルに、あるいは行政指導等で求めることによって、そのとおりに行動するということも、しばしば見受けられるところ。

他方で、国外であり、なおかつ事業者の入れ替わりも激しくは、必ずしもないのですけれども、プラットフォームと言われる分野では、やはり、そのことが困難である、非常に大きな変化だと思います。

こういったことからも、純粋の自主規制、法的根拠が必ずしも明らかでない自主規制から、やはり大枠というものは、しっかりと法律の根拠を定める、そして、その法律における域外適用というものをしっかり含む、法に基づく共同規制へ比重がだんだんと移行してきているということでございます。

さらに、2つ目として、正に上で申し上げたのと近い意味においてですが、業界団体を前提としない自主規制、共同規制というものが、非常に前面化してきている。

例えば、検索エンジンというものについて、業界団体を作って、検索エンジンに関るルールを作るということは、余り考えにくいところでございますし、あるいはOSと呼ばれる分野も、ほぼ2社の世界でございます。彼らが、非常に強力なゲートキーパーとしての役割を担っていると。

あるいは、SNSのような世界といったようなものも、フェイスブック、ツイッター、それぞれによって、サービスの性質というようなものが極めて異なるものでございます。

そうしたときに、サービスごとの特性に応じた、場合によっては、個社ごとの非標準的な対応の必要性というものが極めて重要になってきている。

さらに、今後、特に難しいところでございますけれども、AI、アルゴリズム、そして、データというものに基づく事業活動というものが、極めて多くなってきている中で、それを政府といえども、外形的に、正確に把握する、モニタリングすることが極めて困難になってきているといったところでございます。

そうした中で、各国の共同規制政策の中では、最近、特にモニタリングの強化というものが非常に重要な課題として認識されているところでございまして、専門的な、技術的な専門家も含めたモニタリング組織を作ったりでございますとか、あるいは、外部の監査の義務を課させていただく。

もう少し踏み込んだところですと、その内部に関わるデータの提供でありますとか、そういったことも含めて、モニタリングの体制というものをしっかり作っているということでございます。

さらに、もう一つとしては、民民間で、当事者の協議と交渉に委ねてルールを作ると、当然強い方々の声というものが強く反映されるものでございますけれども、そういったものを、特に、プラットフォームという文脈でどうしていくかということも大きな課題かと思います。

不均衡があるのであれば、そこに対して、政府が関与していく必要性というのも、おおよそ高まってくるであろう。

もうそろそろお時間のほうも近づいているところでございますので、あとは、事例のところは、簡単にでございますけれども、そういった中で、このページ以降は、ヨーロッパの取組を中心にして、幾つかの事例を挙げているところでございます。

例えば、13ページの著作権指令のところでも、かなり包括的な専門的注意義務の高度な業界標準を守る形で、この著作権保護というものを行わなければならないとした上で、その具体的な内容というのは、最終的に司法で、こちらは民事でございますので、闘われるわけでございますけれども、欧州委員会が、マルチステークホルダーを主導してガイダンスを策定するという手法を取っていたりですとか、14ページのフェイクニュース対策というところは、まだ各国においても、法的な根拠をどうしていくのかということが大きな課題であるところでございますけれども、特に、欧州等の民主主義に関わる大きな課題であるとして、ここでは、一定の行動規範というものを、最低限の共通事項というものを行動規範として欧州委員会が示した上で、グーグル、フェイスブック、ツイッター、あるいはその他の事業者に対して、それぞれが、こういったプリンシプルに基づいて、どのような対応をしていただくかということについてのコミットメントあるいはベストプラクティスを示していただいて、そのことをしっかり頑張っていただくというようなアプローチをしていたりもする。

これについては、やはり、非常に社会全体にとっても重要なところということで、ほぼ純粋な自主規制に近しいところから、今、正に共同規制への移行というものが、欧州のほうでも検討されているところでございます。

15ページは、そのイメージといたしまして、行動規範に基づく各社ごとのベストプラクティスの提示というものをお示ししております。

そのほかにも、次のページのデジタルサービス法案というところでは、正に、非常に大きな規模のプラットフォーマーに対して、様々なリスクに対応するための、このリスクのアセスメント、リスク評価、そして、それに基づく合理的、比例的、効果的措置の実施というものを法律によって求めた上で、それに関わる外部監査の義務付けですとか、データアクセス等を義務付けたりといったような枠組みを作り、そして、そのモニタリングをしっかりやっていくといったようなことに、かなりの力点が置かれているところ。

そして、17ページは、2019年に成立して、昨年適用開始されたものでございますけれども、いわゆるP2B規則、こちらは事業者保護の共同規制の枠組みでございますけれども、モールですとか、あるいはアプリストアといったような、非常に重要な経済基盤のサービスの公正、透明性というものを担保するために、様々な契約ですとか、事業活動に関わる透明性、そして、救済、モニタリング、この3つを主軸としたプラットフォーマーに関わる共同規制というものを作っているところでございます。

18ページは、御参考までに、こちらは、その規則が策定されたときのインパクトアセスメントからの、少し引用なのでございますけれども、ここで若干申し上げたかったことというのは、特に、こちらは、欧州委員会等で、新しい規則案というものを作るときに、必ず詳細なインパクトアセスメントというのを行うのですけれども、その際に、ある特定の問題を解決するために、これらのオプションがあるということを示す。そして、多くの場合、そこには自主規制、共同規制、直接規制等を中心としたオプションというものが示される。

それぞれのメリット、デメリットというものをしんしゃくした上で、今回、このような規制手段を採用したといったような形での政策形成を行うことが多いところです。

最後に、19ページのところでございますけれども、幾つかの論点ということで、少しだけまとめに変えてということで、雑ぱくでございますが、まず、やはりこういったことを、日本で自主規制、共同規制的なアプローチを考えていく上で、今、申し上げたような、自主、共同、直接規制等のオプション、そして、そのメリット、デメリットというものを精査していくことが、まず、望ましいだろう。

そして、重要なこととして、自主・共同規制というものが、常に最適な選択肢ということがあるわけではなく、問題状況の変化や、必要な規律の明確化に伴い、動的に介入強度を変更することが大きな前提となっている、そうあるべきだと。

それから、その前提としてのモニタリング体制・手段というものを、しっかりとどのように作っていくのか。

最後に、こういった方法論というものは、既存の法学でいうルール形成というところは、少なからず異なる、かなりある種経営学的といいますか、実際に有機的なルールの形成、維持というものに、政府がどう関わっていくかというところでございますので、分野横断的なベストプラクティスの共有といったものが、欧州のコミュニティ・オブ・プラクティスの実践等も参考にしながら行われていくべきかと考えているところでございます。

少し時間を過ぎまして、申し訳ございません。

私からは、以上でございます。御清聴ありがとうございました。

○丸山座長 ありがとうございました。

これより、35分程度質疑応答の時間とさせていただきます。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は、御発言をお願いします。

御発言される際には、チャット欄に、まず、御投稿ください。

それでは、原田オブザーバーより質問をよろしくお願いします。

○原田オブザーバー 原田でございます。

生貝准教授、貴重な御報告をありがとうございます。

今日のお話を伺いまして、興味深いと思ったとともに、もう少し教えていただきたいと思った点が2点ございますので、それについて質問をさせていただければと思います。

1つ目は、分類論の中で業界団体型とプラットフォーム型という区別をされた点で、これは、おっしゃるとおり、業界団体を使わない自主規制ないし共同規制というものが増えてきているというのは、非常に大きな変化だなと思っているところです。

他方で、プラットフォーム型の自主規制は、先ほどの御報告にもありましたように、その対象になる事業が、1社とか2社とか、非常に少なかったりするわけで、その場合に、従来の自主規制というのは、ある程度の事業者がいて、その中で、例えば組織を作るなり、あるいは認証制度を作るなりというようなものをイメージしていたのが、対象が非常に限られてしまいますので、それを自主規制なり共同規制とネーミングすることに、どこまで理論的な意味があるのか、なかなか評価が難しいところだなと思っているところです。

つまり、規制手法の柔軟化といいますか、その内容についての自由度を上げて規制するということと、余り変わらないような感じになってきて、自主規制なり共同規制という言葉を使うことの意味がどこにあるのかというのが、特にプラットフォーム型の場合にはなかなか見つけにくいなと思っているところです。

この点について、もし、何かお考えがありましたら、お教えいただければというのが1点目の質問です。

もう一点は、民事規範と行政規範の形成という形の区別を示された点で、これも従来から多分あったのだとは思うのですけれども、このような形で明確化すると、両者が持っている特質が非常に明確化されて、理論的な発見にもつながるのではないかなと思います。

そこで、特に民事規範としてのソフトローというものが持つ意味ですとか、あるいはその民事規範であればできるけれども、その行政規範といいますか、その行政上のソフトローになり得るものであればできないとか、そういう両者の違いについて、現時点でお考えがありましたら、お聞かせいただければと思います。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 大変貴重な御質問をありがとうございました。

まず、1点目に関しましては、おっしゃるとおり、このプラットフォームというところで想定されている自主規制や共同規制と言ったようなものが、やはり実際的にもあるいは理論的にも従来の団体を前提とした活動というところとは大きく異なっている。

そうしましたときに、私自身も御指摘に対する明確な回答を現時点で御提示できるわけではないのですけれども、およそ2つ論点があると思っておりまして、1つは、正に内容について、例えば先ほど挙げたような専門的注意義務の高度な業界標準でございますとか、あるいは透明性、そしてその手法について政府がモニタリングしながら、しかるべき形というものを事業実態に合わせた形で実現していただくといったような、しっかりと枠を作りながらも、内容についての一定の柔軟性を求めるといったような性質というものが1つは大きいのだろうとは理解しているところでございます。

そうしましたときに、私自身、やはり自主規制、共同規制的なアプローチというものが通用しづらい分野、通用しやすい分野ということについても様々議論がされてきているのを承知しているところでございますけれども、1つ言えることといたしまして、比較的自主規制に特に近いタイプのソフトローアプローチというものは、どういう場合に機能しづらいかと言いますと、やはり小さな事業者あるいは場合によっては個人といったようなところを含めて、非常に関係するステ―クホルダーが小さく多過ぎる場合に機能しづらい。

なぜならば、その間での、いわばゲーム理論的でいうところの自律的な強制メカニズムというものが、働きづらいところであるからです。

そうしたときに、プラットフォーマーの世界というものは、逆に極めて数が少ないがゆえに、そうしたある種の、部分的には紳士協定的なところに近いようなアプローチというものが、むしろ普通の業界団体よりも使いやすい部分がある、そのような意味で、特にこういった形で、自主・共同規制というものを、このプラットフォーム分野においても応用していこうという動きが増えてきているのかというところでございます。

2つ目といたしまして、やはり、他方で、ここでは業界団体以外の方法というところを強調しましたけれども、やはり、それぞれプラットフォーマーが様々いる中でも、最低限共通する部分というのは、その政策目的によって、しばしば見えるところなのだろうと思います。

まさしく私の今回の資料でいいますところの、14ページなどでお示ししたフェイクニュース対策というのは、具体の取組に落とし込んでいこうとすると、かなり各事業者によっても異なるのだけれども、その中で、ここの15ページの左側の列に書いてございますような広告ですとか、サービスのインテグリティですとか、消費者エンパワーといったような、そうしたプリンシプルレベルでは共通する部分というものが出てくる。そういったものを、業界団体とは呼ばないのだけれども、何かしらの形で枠組みを作り、その中で、実効性を確保していくといったような形のアプローチが出てきている。恐らくこの業界団体と呼ばれてきた団体という性質の、ある種の変化というのも、もう少し理論的に掘り下げていく価値があるのかなと感じております。

少し長くなりまして恐縮でございますけれども、2点目の民事規範と行政規範というところは、すごくおっしゃるとおり、これから理論的な深化というものも極めて重要なところかと思っております。

1つだけ申し上げるとすれば、やはりこういった共同規制的なアプローチというものは、行政の側が、ある種能動的に、機動的に、その権限を発動することができる行政規範のほうが、比較的機能しやすいところというのはあるのだろうと思います。

そのアプローチというものを民事規範の側にも、どう関連付けていくのか。しかし、実態を見てみると、この民事規範型のソフトローというのも、かなり機能している部分というものは、どうも多いようでございまして、そのメカニズムの把握と、そしてその応用というものが、特に私自身も関心を持っているところでございます。

お答えになっているかどうか定かではございませんが、ひとまず、以上でございます。ありがとうございます。

○丸山座長 ありがとうございます。

それでは、引き続き、新川座長代理より質問をお願いしたいと思います。

○新川座長代理 新川でございます。

本日は、生貝准教授、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。

2点ほどお伺いしたいのですが、1つは、自主・共同規制ということで規制類型を出していただいていたのですけれども、少し自主規制と政府規制との間で、動的な位置付けだということで御説明いただいていたのですけれど、政府規制のほうを考えていましても一般法的な規制もあれば、業界法的なところに入っているものもあります。その中身というのが、法的な強制を伴うようなケースから、方針を示すようなもの、計画を示すようなもの、さらには、ガイドライン的なものまで、どちらかといえば、理念的なものから、実際の法的な効果を伴うようなものまで、いろいろとパターンがあります。

逆に、こういう政府規制というか、行政規制と、それから自主性との組合せの中で、共同規制の類型のようなものが違ってくるのかなと思いながら、お話を聞いていたのですが、もし、准教授のほうで、何がしか、共同規制のパターンのようなものが、整理がされていれば、ちょっと教えていただければ有り難いなと思いながら、お話を聞いていました。

2点目は、特に今日モニタリングの重要性ということを強調される、モニタリング組織あるいは外部監査等々のお話もいただきました。

私たちは、一応、消費者保護法というのを中心に考えていますので、逆に消費者サイドから、どういうふうに、こうした取引の問題について介入ができるかといったようなところも考えたいと思っているのですが、それぞれにしましても、こうした監視機能というのがしっかりしていなければとも思っております。

具体的にこのモニタリングや、あるいは外部監査の仕組みとして、特に自主性あるいは各事業者の側のモニタリング、それから、共同規制の場合の、恐らく民と官の双方に、こうしたモニタリングの義務というのは、一定出てくるのだろうと思っているのですが、あるいは、既に、他のところで研究がされているのかもしれないのですが、もし、知見があれば、お教えいただきたいというのが、2点目でした。

以上、よろしくお願いいたします。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 ありがとうございます。

まず、1点目の共同規制のパターンというところに関しましては、まさしく、こういった政府規制、法的規制といったようなところにおきましても、非常に様々な強度やスコープといったようなものがある中で、まさしく、この部分は比較的共同規制的である、この部分は、比較的、かなり自主規制に近いものである、そういったようなことが、常に混在して、なおかつ明確に区分が難しい中に置かれているのであろうと思います。

そうしたときに、非常に様々な分類というのが、今日、挙げたところ以外にも議論をされているところであるのですが、例えば、ボトムアップアプローチでございますとか、トップダウンアプローチというところでございますとか、少し、今日は、私の方で一番御参考になりそうな分類が、今すぐ出てくることがないのが恐縮なのでございますけれども、まさしく、この消費者法という分野の中だけでも、非常に様々な類型や、そのバックグラウンドになっている法的装置というものがあるはずである中で、それをしっかりどう整理して、見通しをよくした上で、政府の介入の在り方というものを考えていくのか。やはりざっくりと共同規制アプローチというだけではなく、そうした正に丁寧な作業というものが大変重要になってくるのであろうということ、非常に一般論的で恐縮でございますが、非常に重要なところだと考えているところでございます。

そして、2点目のモニタリングというところに関しましても、これもかなり、それぞれの政策フィールドに応じて、非常に多くの努力というのがなされているところだろうと思います。

その取組というものを、例えば、私が、こちらの消費者委員会のオンラインプラットフォームに関する取引に関する専門調査会でも、少し参加させていただいたときもそうでございましたけれども、やはり、事業者の自主的な取組というところに関して、しっかりと継続的に情報提供をいただいて、そして、それに対して、消費者でございますとか、あるいは有識者というところを含めて、様々な形で、ある種のコミュニケーションというものをしっかりしていった上で、実態というものをよく把握する。

それに加えまして、やはり、さっきも申し上げましたとおり、近年のデジタルプラットフォーム等に関わるものというのは、消費者取引に関わるところを含めて、テクニカルに、どうしても外形的に把握しづらいものというのが増えてきている。

例えば、こちらの消費者法分野ですと、消費者の苦情ですとか、そういったようなデータを今まで、特に重視されて、実態の把握というものに努めていらっしゃる比重が大きいと承知しておりますけれども、そういったところに、よりアクティブだといいますか、能動的な、果たして取引の中で、何が起こっているのかということを、しっかりと様々な形で、技術的な部分を含めて把握していく、そのような装置というものをしっかり作っていくこと。

そのためには、先ほど、正に専門組織の設置といったようなことも、これは、各国で作られているところでもございますし、そういった部分との関係で、やはり、行政機関の側における専門的な人材の育成と確保というところも分野に応じて必要になってくるところであるかと感じているところでございます。

○新川座長代理 ありがとうございました。よく分かりました。

○丸山座長 御発言ございますでしょうか。

お待ちしている間に、では、私のほうから質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。

今の新川座長代理の質問にも関連するのですけれども、IT部門など、非常に専門性が高いような分野において、外部監査をしていくというところは、非常に興味深く聞いていたのですけれども、その前提としまして、一定の自主規制の作成というものと、あとは、何らかの中立な外部機関などによる監査をしなければいけないという、この義務付け自体は、法律で行うというイメージでよろしかったのかという点が第1の質問になります。

第2点の質問としましては、12ページのところなのですけれども、特定の場合には、政府による強い介入というのが、やはりこういったプラットフォームのような場合には、必要ではないかということが指摘されています。

この強い介入をすると言った場合に、生貝准教授の著作にもありましたように、例えば、個人情報の分野ですと、米国のFTC法であるとか、英国の場合だと、不公正取引に関する消費者保護法のような、いざとなったら介入ができるという枠組みが紹介されていたと思うのですけれども、こういった何らかの介入するための権限というのが、法令に定められているということが前提となりますでしょうかというのが、確認でございます。

最後に、消費者取引分野の問題になりますので、お答えできればということで構わないのですけれども、昨今の立法としまして、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律というDPF消費者保護法というものができたと思います。

ここで、官民協議会というものが設定される予定であるのですけれども、法令を見る限りでは、自主規制の義務付けであるとか、いざというときの行政の介入権限というものが、一般的に全領域についてあるわけではないと見ております。

こういう場合でも、官民協議会におけるルール形成や執行というのが実効的に行われると考えてよいのか、それとも、やはり何らかのもう少し補強措置というのが必要だという印象を持たれるのか、この辺りを可能であれば、お聞かせいただければと思います。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 ありがとうございます。

3点とも非常に重要かつ難しい問題であろうかと存じます。

まず、第1点目の、いわゆるオーディット、監査というものが、法的な義務付けを持つのかと申しましたとき、まさしくこのことというのも、強度な義務付けがなくても、その政策目的が、つまり透明性や、その客観性というものがしっかり担保されるのであれば、自主的なやり方でやっていただくということになり得ましょうし、それで不十分であるということであれば、まさしくそこに対して法的な介入をしていく。ある種のそういった立法事実に基づく法的介入をどのように考えるのかということになってくるのかと思います。

例えば団体自主規制というような中ですと、私が関わらせていただいている団体も含めて、これは彼らの自主的あるいは政府からのインフォーマルな働き掛けもあってか、いわゆる外部第三者委員会というものを設けて、その客観性とか、中立性とか、そういったものを担保する形でうまくいっている場合もある。

他方で、やはりそうではなくて、特に今のデジタルプラットフォームを含む、高度に技術的な側面も併せたオーディットというものが必要な場合には、例えば実際にどういった情報に、データにアクセスできなければならないのかといったようなところも含めて、法的な義務付けを行うといったような選択肢もあろうところ、最後のほうで少しお示しした欧州の立法例の中ですと、特にそういった側面については、重視されてきているのかと思います。

私自身の私見でございますけれども、一般論として、やはり過度に形式的な規制というものはイノベーションを損ねる、あるいは利用者の保護にも場合によっては資さない場合というのもあるという議論がなされますところ、それが事業者の行動を縛るタイプの規制というものについては、非常にその性質というものが強い一方で、透明性ですとかあるいはアカウンタビリティーを確保するための介入というものは、そういったところよりも一歩踏み込んで考える意義ということがあるし、特にこういったソフトローアプローチというものを安定的に回していく上では重要なのではないか、そのようなことを各国の立法例等も見ながら、感じているところがございます。

2点目といたしまして、こちらの介入についても、法的な根拠の有無というところがございました。

こちらについては、基本的には第1点目と同様の論点になってくるかと思うのですけれども、しっかりと自主的な形で頑張っていただけるところがどこまであり、そして、その限界というものが、どこにあるのか、そういったことを丁寧に見ながらやっていくということになるのかと思います。

そして、3点目の取引デジタルプラットフォーム官民協議会については、私自身、不勉強な部分も大きいところではあるのですけれども、おっしゃるとおり、エンフォースメントというところは、現状の立法の枠組みの中ですと、かなり自主規制よりの自主規制に委ねられているという部分が強いのかなと想像しているところではあるのですが、やはり、そこにおいて、ある種の強制力のような追加的な措置が必要なのかどうかということを、正にしっかりとしたモニタリングの上で、立法事実というものを明らかにしていきつつ、他方で、やはり今作られた法的な装置という中ですと、私が介入手法というところで、例えば、あくまでも例えばでございますけれども、9ページのところで挙げさせていただいたうちのインセンティブの種類、ここに書かせていただいているようなことのうち、法律により求められているといったようなところ以外の様々なインセンティブの在り方というものを整理、精査した上で、そこに対して、政府が、いかなる役割を果たしていけるのかということを、様々な形で考えながら実践をしていく、そのことが望ましいのだろうと思います。

分けても、やはりこういった本当にソフトロー的なアプローチというのは、特に3番目の顧客や社会の評判、こういったいわゆる情報的手法と表現されることも多かったでしょうか、いわゆる評判メカニズムというところが大きいところでございますので、正に、しっかりやっていらっしゃるベストプラクティスをどのように推奨するのかということも含めた手法というものが必要であろうかと思います。

○丸山座長 ありがとうございます。

それでは、大石オブザーバーから御質問をよろしくお願いします。

○大石オブザーバー ありがとうございました。

大変詳しくお話しいただいてありがとうございました。

私のほうからは、1点だけ質問をさせていただきます。

最初に、生貝准教授のお話の中で、取引デジタルプラットフォーマーの場合は、多分、業界団体を作るのが大変困難ではないかというようなお話があったような気がいたします。

准教授の御説明いただいた資料の3ページのところで、自主・共同規制が書いてある中で、自主規制のところは業界団体等による自主的な規制によって、当該問題が適切に解決されていると書いてあるということは、デジタルプラットフォーマーの場合、業界団体を作るのが困難であるということは、この自主規制というのがなかなか働きにくいということになるのでしょうかという質問と、なぜデジタルプラットフォーマーの場合は、その業界団体を作るのが困難であるということなのか、実際、今までいろいろなところでヒアリングとかをさせていただいている中で、実際に、デジタルプラットフォーマーの皆さんは、それぞれの活動は知ってはいても、やはりそこに干渉しないという態度がとても見えてしまうわけで、そこが逆に言うと、消費者にとっては、なぜ業界で統一したものができないのかなという疑問もありましたので、是非、その辺りを教えていただきますと有り難いです。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 ありがとうございます。

まず、このプラットフォーマーの分野について、自主規制、共同規制というものが比較的通じづらいのかということに関しましては、先ほど原田オブザーバーの御質問に対して、お答えしたところとも関わるところかと思うのですけれども、やはり1つは、今までの手法の自主規制、共同規制というものは比較的機能しづらい。それは、やはり、長期的な官民関係でありますとか、やはりこの事業速度の変化の速さといったようなところを含めてあるところかと思うのですけれども、やはりこの作り方によっては、正に法的な根拠というものをしっかり定めた上で、そして、比較的この自主・共同規制というのは、ステークホルダー、政府を含めたプレイヤーの間での、ある種のコミュニケーションというものが重要になってまいりますところ、このプレイヤーの少なさというのは、逆にこういったソフトロー的手法をよく機能させ得る可能性というのもあるのではないか、正にそれをどうよく機能させていくかということが大変重要かと存じます。

そして、デジタルプラットフォーマー分野において、業界団体というものが、なぜ難しいのかということは、私も非常に関心のあるところでございまして、恐らく連合を組むというものは、やはり、共通の利害、関心を持っており、そのことについて表明をしたりでありますとか、あるいは、共通のルールを作り、業界の健全な発展を促すといったような目的があろうところ、そういったようなことについて、やはりプラットフォーマーの間の様々な利害の相違というところも少なからず影響しているのか、あるいは彼ら自身がやっているビジネスというものが、それぞれプラットフォームというところでは共通しつつも、やはりやっていることはかなり違う、いわゆるGAFAMと呼ばれる中でも、ビジネスモデルは大きく異なっているといったような中で、なかなかそういった広範な枠組みというものが作りづらいというところがあるのかとは考えているところでございます。

そして、まさしくそういったことを、団体という形ではなく、協議会という形で共通にやらなければならないことというものをしっかり認識を作った上で、それを各プラットフォーマーに、具体的なことをやっていただき、そのことをしっかり共有していただきながら、よりよい形に改善を図っていく、ある種、今回の取引法というものは、そういったところが目指されているところでございますところ、非常に注目しているところでございます。

○丸山座長 ありがとうございます。

それでは、続けて、片山委員長代理より質問をお願いいたします。

○片山委員長代理 ありがとうございます。

大変分かりやすい御説明をいただき、本当にありがとうございました。

私は、9ページのところのインセンティブに政府がどう関わっていくかというところを大変興味深くお聞きしました。中でも3つ目のポツのところ、先ほど、評価メカニズムともおっしゃったかと思いますが、このインセンティブというのを、政府、官の関与の下で、どういうふうに実現してくのかという、そのアプローチが大変興味深いのですが、イメージが自分の中ではうまくできないというところでありますので、もう少しお教えいただければ、有り難いと思います。

これとも関係するかと思うのですが、そういうアプローチは、日本と、それからヨーロッパ諸国との間の、もともとの消費者とか、社会、市場全体の背景の違いが、この問題で、今後、共同規制を進めていく上で、どういうところに影響してくるかということについて、准教授のほうで何かお考えがおありであれば、お教えいただきたいと思います。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 どうもありがとうございます。

まず、9ページの3番目のインセンティブというところへの政府の関わり方という意味ですと、これも非常に様々なアプローチがあるところと思うのですけれども、例えば、何々マークといったようなもの、プライバシーのマーク等も様々ございますけれども、この企業はちゃんと、そういったような枠組みにのっとっているのだから、消費者や関係の方々も含めて、安心して使っていただいて大丈夫だといったようなことを発信できるような仕組みというものを、どのように作っていくかでございますとか、あるいはそういったところに関する、ある種の評価といったようなものを、これは官が直接行える場合と、そうでない部分というものもございますけれども、なかなか消費者だけでは評価できないところについて、しっかりと力のある主体というものが、良し悪しといったようなことについて考える枠組みというものを提示するといったようなことなどの様々な手法があろうかと思います。

それから、もう一つのところにつきましては、まさしく、そもそもの制度環境の違いに応じて、しかるべきソフトロー的アプローチのやり方というものが大きく変わってくるところでございます。そういう中で、特に違いというものを挙げると、デジタル分野に私の自身の知識は限定されますけれども、やはり相対的に言って、特にもともとアメリカ、最近は特に欧州でも、このデジタル分野というのは、いわゆる市民団体ですとか、消費者団体の力というものが非常に強く活発になってきているなと感じるところでございます。

そのことというのが、正に、今、1点目の御質問でございましたような顧客や社会からの評判メカニズムというものを、より強くしていくことに、まさしく他ならないという中で、まだ、やはり我が国においては、そういうデジタル分野における市民、消費者の活動というのが、率直に申し上げて、そんなに強くないなというようなことを感じております。それを今後どのように力強いものにしていくのか、そこに対して、正に政府、行政等はどのように関わっていけるのか、全体を通じて極めて重要な論点だと認識しております。

○丸山座長 ありがとうございます。

他に御質問ございませんでしょうか。

それでは、時間が来ておりますので、生貝准教授へのヒアリングは、この辺りにさせていただきます。

生貝准教授におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。

○一橋大学大学院法学研究科生貝准教授 どうもありがとうございました。

(一橋大学大学院法学研究科生貝准教授退室)

○太田参事官 丸山座長、生貝准教授が退室されましたので、引き続き、よろしくお願いいたします。

○丸山座長 それでは、本議題については、以上としたいと思います。

本日は御議論いただき、ありがとうございました。

事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○太田参事官 本日は長時間にわたりまして、ありがとうございました。次回の会合につきましては、確定次第、御連絡いたします。

○丸山座長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)