第29回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2021年5月26日(水)13:00~14:45

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

出席者

【委員】
丸山座長、新川座長代理、片山委員長代理
【オブザーバー】
柄澤委員、大石委員、大阪大学大学院法学研究科教授 清水真希子氏、京都大学法学系(大学院法学研究科)教授 原田大樹氏
【説明者】
内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官
【事務局】
加納事務局長、渡部審議官、太田参事官、大岡企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」についてのヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○太田参事官 本日は、皆様、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第29回「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を開催いたします。

本日は、所用により、山本委員長が御欠席という御連絡をいただいております。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。不足等がございましたら、事務局までお知らせください。

なお、本日の会議はウェブ会議による開催となります。公開で行いますが、感染拡大防止の観点から、一般傍聴者は入れず、報道関係者のみに傍聴いただいての開催となります。

議事録につきましては、後日、公開することといたします。

次に、ウェブ会議による開催に当たりまして、お願い申し上げます。

1つ目に、ハウリング防止のため、御発言いただく際以外はマイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。

2つ目に、御発言の際はあらかじめチャットでお知らせください。座長に御確認いただき、発言者を指名していただきます。指名された方はマイクのミュートを解除して冒頭でお名前をおっしゃっていただいた上で、御発言をお願いいたします。御発言の際、配付資料を参照する場合は、該当のページ番号も併せてお知らせいただけると幸いです。なお、御発言の際には、可能であれば、カメラのマークのミュートを解除していただきましたら、どなたがお話しになっているか分かりやすくなりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。

3つ目に音声が聞き取りづらい場合には、チャットで、「聞こえない」、「聞こえにくい」などと御記入いただきましてお知らせいただきますようお願いいたします。

それでは、丸山座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。

○丸山座長 座長の丸山です。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の進行について、途中で私の回線が切れた場合は、復旧するまでの間、新川座長代理に、新川座長代理の回線も併せて切れた場合は事務局に進行をお願いします。


≪2.「デジタル広告市場の競争評価最終報告」についてのヒアリング≫

○丸山座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、本年4月27日に公表されました内閣官房デジタル市場競争会議の「デジタル広告市場の競争評価 最終報告」についてヒアリングを行いたいと思います。

この最終報告は、デジタル広告市場の実態、意義、競争構造、課題などを整理したものであり、本ワーキング・グループの関心事項とも関係の深いものと思います。

本日は、内閣官房デジタル市場競争本部事務局、安東参事官にヒアリングをさせていただき、その後、委員、オブザーバーの皆様でヒアリングを踏まえた意見交換を行うという、これまでのヒアリングと同様の形で進めたいと思います。

まず、内閣官房デジタル市場競争本部事務局へのヒアリングを実施します。

御入室していただきますので、委員・オブザーバーの皆様は、準備が整うまでお待ちください。

(内閣官房デジタル市場競争本部事務局入室)

○丸山座長 本日は、参考人としまして、内閣官房デジタル市場競争本部事務局、安東参事官にお越しいただいております。本日は、大変お忙しい中、ありがとうございます。20から30分程度でお話しいただきますようよろしくお願いいたします。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ただいま御紹介にあずかりました、内閣官房デジタル市場競争本部事務局参事官をしております、安東と申します。

本日は、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。

時間内で、4月に公表させていただきましたデジタル広告市場の競争評価最終報告のうち、パーソナルデータの取扱いに関する内容を中心に簡単に御説明させていただきたいと思います。

資料をお手元にお持ちかと思いますが、1ページ目を御覧ください。まず、このデジタル市場競争本部ができた経緯、その後の活動について、簡単に触れたものでございます。一昨年、令和元年9月に内閣全体としての政策取りまとめという意味で、このデジタル市場競争本部が設置されました。その以前から、経済産業省、総務省、公正取引委員会の3省庁でデジタル・プラットフォーマーに対する対応で、主に競争政策の観点から検討を進めておりましたが、内容が政府全体で横断的に関わる話ということで格上げされたものでございます。このデジタル市場自体の拡大は、多くの利便性、また、ビジネスチャンスを与える肯定的な点は大きな特徴でございますが、他方で、ネットワーク効果などから独占・寡占に陥りやすく、また、ロックイン効果が働きやすいというデジタル・プラットフォーマーの特性もございます。こういった点を踏まえまして、プラットフォーマーと利用者・消費者の側面、プラットフォーマーと取引先事業者の側面から、様々な施策を連携し構築してまいったところでございます。具体的には、下のマル1からマル5がこれまでの取組でございまして、例えば、マル1でございますと、取引先事業者とプラットフォーマーの関係について透明性・公正性をもたらすためという目的の下、デジタル・プラットフォーム取引透明化法を制定し、今年の2月に施行されたものでございます。そのほか、個人情報保護法の見直しは利用者・消費者保護の側面でございます。また、公正取引委員会における独禁法のガイドラインの策定ということで、消費者とプラットフォーマーの関係性に着目した優越的地位の濫用に関するガイドラインも策定いただいております。そのほか、企業買収においてのデータの価値を捉えた独禁法のルール整備ということで、企業結合審査ガイドラインの改定がマル3であります。このような政府横断的な取組を進めている中で、今般、一番下のマル5でございます。デジタル広告市場の競争状況の評価を行ってまいりまして、4月27日に最終報告を公表しました。都合1年半検討を進めてまいったところでございます。

2ページ目を御覧ください。デジタル広告の意義と市場規模というページでございます。この広告市場は、中小企業等への顧客アクセス、店舗を持たなくても顧客が商品へのアクセスができることと、ユーザーから見れば、広告でのビジネスモデルの中でインターネットの無料のサービスを受けることができるという、いわゆる「インフラ」と言われるような役割も持っていると考えられます。また、実際の広告費自体は、下の2つのグラフにございますとおり、2019年に初めてテレビメディア広告費を抜いて2020年には年間約2.2兆円、前年比106パーセントの伸びでございました。コロナで一時期下がっておりましたが、巣籠もり生活もございまして、伸びが大きくなっております。現在は、日本の広告費全体の36パーセントを占めるまでになっております。この右側の円グラフ、赤い部分でございますが、とりわけ下の囲みで書きましたが、運用型広告と呼ばれる手法が全体の82.9パーセントを占めております。これはウェブサイトに広告枠がございますが、そこに広告主が広告を出すという契約をした後に、その広告の出稿にかかる要件が、例えば、入札によってどんどん料金が決まっていくなど、変動しながら、ウェブサイトに広告を載せるという運用を行う「運用型広告」が大半を占めている状況でございます。皆様におきましても、ウェブサイトを開きますと、右上又はスクロールをしている途中にたくさん広告が挟まっているのを御覧になっているかと思いますので、この点は非常になじみが深いものではないかと思っております。

この広告市場をデジタル・プラットフォーマーとの関係で整理して競争の評価を行うという点につきましては、3ページを御覧ください。デジタル広告の市場構造を簡単に御説明します。一言で言うと、大変複雑でございます。右側のパブリッシャー、いわゆるウェブサイトを運営する事業者と、何かの商品を売りたいという左側の広告主のマッチングを、プラットフォーム事業者又はアドテク事業者といった仲介事業者が行っている市場でございます。上の四角の3ポツ目にございますけれども、複雑でございます。例えば、個人があるウェブサイトを開けた瞬間に、そこに載せる広告について、広告主、パブリッシャーの間の入札をアルゴリズムに基づいてプラットフォーム事業者やアドテク事業者が瞬時に行った上で、ある広告がそのパブリッシャーの枠にマッチングされていく。瞬間的に、世界中で膨大な入札取引が行われているということでございます。この取引においては、下に公正取引委員会が2月に発表されましたデジタル広告の競争実態に関する最終報告を踏まえまして、幾つかの広告の類型ごとに大手の事業者のシェアを記載してございます。実際はこの広告主とパブリッシャーの間には多数のアドテク事業者や関係事業者が含まれており、機能分化が進んでおります。その分、この仲介に対する理解が大変難しくなっております。しかし、広告市場の拡大の中で、マッチングを行うプラットフォーム事業者が関係するアドテク事業者などを買収していくことなどにより垂直統合が進展しており、徐々にここにあるシェアのように、大手のプラットフォーム事業者にある程度集約してきているという状況がございます。

この中で、4ページ目と5ページ目でございますが、こういった市場の特性を踏まえて、大きな課題の整理を昨年6月の中間報告の際に行っております。大きく3つの考えがあると捉えております。すなわち、赤字で書いておりますが、競争環境の状況がどうかという点、また、下の赤字でございますが、市場の透明性に係る課題がどうかという点、さらに、5ページ目のデジタル広告市場における「質」の問題、広告の質の問題をどう捉えるかという問題、この3つの分類の中で課題を特定して行くべきではないかと考えます。

4ページ目の競争環境の状況はどうなのかという点で考えますと、広告仲介事業者は、広告主とパブリッシャーの間を仲介するという側面がございます。これは両方の関係者と市場を構成している、いわゆる二面市場を観念し得るということで、その両面で、パブリッシャーが増えれば更にそれを踏まえて広告主が増えるというネットワーク効果が働いていて、そういう仲介を提供できる事業者は寡占化しているのではないかという声がございます。また、そういう寡占化した特定のプラットフォーム事業者による市場の設計が行われ、影響力が強まっているという評価もしています。こういう中で、競争環境をどう捉えていくかという点でございます。2つ目の透明性に関しましては、繰り返し申しましたとおり、この広告市場のシステムそのものが非常に複雑で、また、この10年を眺めましても、多くの変化、システム変更が行われております。市場の実態全体を理解することは大変困難な状況でございまして、とりわけその画面をユーザーが見た際に、リアルタイムで入札を行うマッチングのシステムやアルゴリズムにより次々に処理されていくという過程については、ブラックボックス化しているのではないかという声もございます。また、広告仲介における機能が垂直統合されていく結果、一部のプラットフォーム事業者において右の市場と左の市場の間の利益相反、又は、そういう事業者自身も広告を出すという実態がございますので、その関係で自社媒体の優遇という懸念の声も聞こえてまいります。

5ページ目にまいりますと、広告市場における広告の質の問題という点でございます。サービス自体は、この急速に発達した市場においてまだ未成熟で問題が多々ございます。例えば、広告主の観点から申しますと、ブランド毀損リスクを負っているということがあります。ある企業がちゃんとあるサイトに広告を載せたいと思っていますけれども、マッチングの結果、例えば化粧品を売ろうとしているのですけれども、全然違う性的なニュースが載っているようなサイトに広告が載ってしまうことによる問題、ブランド毀損であったり、広告はクリックされると広告の費用が発生するということなのですけれども、そのクリックを不正に行う者がいることによって広告収入を不正に取得するアドフラウドの問題など、様々な問題がございます。また、今日の本題になりますけれども、矢印の3つ目でございます。消費者自身の7割が、このデジタル広告で対応されておりますターゲティング広告に対して、なぜ自分の見ているサイトにこういう広告が載るのだろうかということを含めて、「煩わしい」、「どちらかというと煩わしい」という声が消費者庁アンケートなどから明らかになってございます。また、このデジタルの世界でターゲティング広告の利用に当たって使われます視聴履歴又は個人属性などのデータは、ユーザーからプラットフォーム事業者など関係者に渡されることになりますけれども、こういうデータの取得の仕方、利用の仕方に関して、複雑なシステムの中での話ということもありまして、消費者自身からは、どのように取得され、どのように使われているかというパーソナルデータの扱いに対しての懸念が生じております。その結果、例えば、下の右の円グラフでございますが、消費者の8割はターゲティング広告に対して事前に設定を変えることができたら外したいと思っている状況もございます。このように、デジタル広告自体は、多くのユーザーにブランドサービスを提供するための「インフラ」的な基盤でございます。また、広告主から見たら、多くの関係者、消費者、利用者にその広告をリーチできる。ビジネス機会の拡大につながっております。多様な利便性を提供している中で、振り返りますと、このような課題が同時に大きくなってきているという市場でございますので、健全にこれからも発展していくという観点からも、競争上の課題、また、消費者との関係を、今の段階から是正していくことが非常に重要ではないかということでございます。この問題意識は、グローバル企業であるプラットフォームと向き合う様々な国においても同様でございまして、EUにおいても関連するような規制の規定の整備であったり、アメリカにおいても訴訟が起こったりしているということでございます。大きな問題意識については、政府ないしは業界の問題意識は共有されているのではないかと考えております。

こういう問題意識を踏まえまして、6ページでございます。我々は、昨年6月にデジタル広告市場の競争評価の中間報告を行っております。その中で、10の課題を特定しております。下の図においては、大きく分類しますと、まず、「透明性」における課題、先ほどのアドフラウド、ブランドセーフティの問題です。次に「データの利活用」ということで、ユーザーから取得されたデータを関係者がどのように使っているか。ないしは、それがもともと広告を出稿した広告主にまでそのデータが適切に提供されているか、されていないかという問題。また、先ほど言及いたしました「垂直統合」に関しての課題。さらには、システム変更などの「手続等の公正性」の問題。今日の本題でございます、「消費者の視点」から見たパーソナルデータの取得・利用に係る懸念。このような10の課題を特定し、この4月に向けて約10か月ほど関係者へのヒアリング又は関係制度の整理などを進めながら、具体的な対応の方向性を一つ一つ丁寧に整理してみたものでございます。

7ページ目を御覧ください。このデジタル広告市場の対応の基本的な方針を取りまとめております。この市場自体は、様々な課題が凝縮しております。先ほどから申しておりますとおり、もちろん大きな利便性を提供する側面がございますが、それと同様に、様々な課題も凝縮しているということでございます。このデジタル広告市場の競争状況については、もっと広い意味でのデジタル市場のルール整備の在り方を考える上での試金石になり得るということでございます。更に言えば、広告市場におけるビジネスが、データの収集と相まって、例えば、プラットフォーム事業者の方々の競争力がより増していくような状況もあり得るということがございます。このデジタル市場の中でもとりわけデジタル広告の市場における対応をしっかりした考え方に基づいて整理していくことが重要であること。また、この広告市場は様々な関係者がおります。プラットフォーム事業者が全てを決めているということでは必ずしもございませんが、大きな影響力を持っています。それに加えて、アドテク事業者の皆さん、広告主の皆さん、パブリッシャーの皆さん、様々な関係者が同様にこの課題の解決に取り組む必要があります。そういう環境が整わない限り、大きな意味でのこの広告市場の発展は継続しないと考えておりますので、プラットフォーム事業者のみならず、関係する様々な方々の取組も求めていきたいということでございます。これを踏まえまして、ルール整備の基本方針といたしましては、まず、真ん中の箱でございます。1)公正性、透明性の確保、向上、さらには、一般消費者を含めた各市場関係者が選択ができるという可能性、選択の可能性を確保していくこと、この3点が重要な要素であるとしています。さらには、2)変化の速い市場ということで、ルール整備を行うに当たっても、イノベーションによる課題の解決を促す。逆に言うと、イノベーションを過度に阻害することなく発展を促していくということでございます。そのほか、3)パーソナルデータの扱いに関しましてもそうでございますが、利用者視点、事業者視点、そのほか様々な視点がございますので、横断的な視点を踏まえた対応をしていくことが重要としております。具体的な課題解決のアプローチとしては、一つに、このデジタル市場において、公正性、透明性を高めるためのアプローチとして、1ページ目で御紹介いたしましたデジタル・プラットフォーム取引透明化法というものが、共同規制として事業者と政府が一体として協力して課題に対する対応を行う、さらにはイノベーションの阻害をしないという枠組みとして、有力な枠組みではないかとしております。今後、デジタル広告市場を透明化法の対象に追加するなど、それ以外も含めた必要なルール整備を進めていくことが適当であるとしてございます。さらに、例えば、個別の競争の案件で独禁法違反が認められる場合には、その独禁法を公正取引委員会において厳正に適用する。さらには、その他のアプローチ、例えば、個人情報保護法、電気通信事業法による利用者保護アプローチなども活用していくという、政府全体のツールを使いながら10の課題の対応を進めていくことが適当であるというまとめにしてございます。

8ページ目は、デジタル・プラットフォーム取引透明化法のポイントでございます。これは、欧州においても同様の規律がございます。主に事業者保護の規律の枠組みでございます。あくまで、基本理念にありますように、プラットフォーム事業者の自主的な取組を進めていただくことを基本とし、大枠を政府が定めつつ、そのやり方の詳細は事業者に委ねる共同規制の手法を取りつつ、大規模なプラットフォーム事業者を対象とするということで、現在は大規模なオンラインモール・アプリストアを当面の対象として、今年2月以降、法律が施行されているところでございます。この法律に基づきますと、指定を受けた特定デジタル・プラットフォーム提供者は、この取引条件の情報の開示、自主的な手続・体制の整備を行い、自分の評価を付した報告書を政府に毎年提出する。行政庁は、その報告書に基づいて、運営状況のレビュー、また、評価を行い、関係者からもよく意見を聞きながら、プラットフォーム事業者と関係者の間での課題共有や相互理解を目指すということを目的としております。この規律は、内外の差別に適用されるということでございます。

このようなツールを用いつつ、9ページにございますが、デジタル広告市場で特定した10の課題について、対話の方向性を整理しております。左側の表にございますとおり、透明性の問題、データの囲い込みの懸念、利益相反・自主優遇の懸念、手続の公正性等に関する懸念につきましては、右にありますとおり、先ほど御紹介した取引透明化法を適用する方向で法整備の検討を進めることが適当であるとしております。これによって広告主又はパブリッシャーといった取引を行う事業者とプラットフォーム提供者との関係について、透明性、公正性を確保していくことが適当であるというものでございます。今日の本題になりますパーソナルデータの扱いにつきましては、例えば、パーソナルデータの取扱いの分かりやすい開示などを行うことが適当としておりますけれども、これにつきましてどういう解決のアプローチで取り組んでいくかという点につきましては、右にございますとおり、まず、総務省ガイドラインと書いてあります。これは電気通信事業法における利用者保護の体系でございます、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」を活用して、大手プラットフォーマーを含む幅広い関係者に利用者情報の保護を求めていくことが適当であるということで、まずは利用者保護アプローチをうたっているところでございます。これとの関係で、一部取引透明化法に基づく事業者保護のアプローチが必要になるので、そちらも検討することになってございます。そのほか、一番下の検索に関しましては、引き続き法制的な検討であったり、独禁法違反に関するものについては公正取引委員会で対処を行うという全体の整理を行っているところでございます。

長くなりましたけれども、本題の部分でございますが、パーソナルデータの扱いについて触れさせていただきます。10ページ目を御覧ください。この課題10、パーソナルデータの扱いについては、今回、最終報告は全体が約250ページでございますが、そのうちの60ページを割いて詳細に整理しております。本日は、その概要を御説明させていただきます。まず、この10ページ目にございます「問題の所在」でございますが、一番問題としておりましたのは、ターゲティング広告を行う際にプラットフォーム事業者などが取得・利用するパーソナルデータの扱いがどういう状態に置かれているかということでございました。例えば、ユーザーがサイトを見て、視聴履歴又は属性情報などをプラットフォーム事業者などに渡すことになる。そのデータを事業者が利用する場合も、情報が取られる場合の状況の透明性であったり、渡しますよと認めた後、やはりやめますということも含めて、実際に同意のコントロールに関する実効性が適切に担保されているか。すなわち、ユーザーにおいてこのターゲティング広告におけるパーソナルデータの扱いについて、自分の置かれている状況がしっかり理解できるか、さらにはそれをコントロールできるかというところについて、問題があるのではないかということでございます。そのほか、ユーザーといいましても、全てのシステムの仕組み、また、法律の仕組みを理解しているわけではございません。もちろん一定の認知限界がございます。こういう限界を踏まえながら、ユーザーがマル1で全てちゃんとできますというばかりではございませんので、事業者側に適切な配慮や取扱いを求めていくことも必要ではないか。実際に、現在、その適切な配慮、取扱いが行われているのかという点について、明らかにする必要がある。それによって、先ほど冒頭に御紹介しました7割という懸念・不安を消費者から払拭することが求められているのではないかとしています。また、様々なアンケートで、各事業者の取組などを踏まえた上で、評価を行っております。プラットフォーム事業者については、いろいろなヒアリング、また、彼らの取組を調査する中で、パーソナルデータの取得・利用については、一定の情報提供を行っております。例えば、プライバシーポリシーにおいて、このようなケースにおいてこのような情報を取っているということを比較的分かりやすいホームページの形式を取って提供しております。消費者自身の立場から見ますと、複雑なデータの流れ、例えば、携帯電話、パソコン、そのほかのデバイスでそれぞれ自分が視聴履歴を持つ中で、デバイスをまたぐクロスデバイスでのデータの利用がどうなっているのか。また、取得されたデータがどのように処理され、どういう要因によりそれを広告の表示につなげているのか。事業者がプライバシーポリシーで提供している情報を消費者が十分に理解できているのかという点でございますけれども、これは必ずしも十分に理解できていない状況がまだあるのではないかという状況でございます。また、実際にデータの取得に同意をした後に、やはりやめますという場合、ターゲティング広告をやめてほしいというのが典型的な例でございますが、こういうオプトアウトの機会が十分に提供されているかという点についても、業界団体のJIAAの取組も含めて、一定程度の機会の提供がなされているということでございます。しかし、ウェブサイトに行って、プライバシーポリシーの画面を見て、更にその先にという具合になり、実際にオプトアウトを使用しようとする場合、そのページにたどり着くための認知や実際の活用が必ずしもまだ十分ではないのではないか。「提供されている」ということと、「分かっている」、「使っている」ということとは、まだ差があるのではないかという認識でございます。さらには、パーソナルデータの扱いに対するユーザーの懸念は、何で今この広告が自分の見ているサイトで出ているのかということです。ゴルフが好きな場合にそのサイトにゴルフの広告が出るというのはまだましですけれども、何か視聴したときに、必ずしも自分にフィットしていないと思うような広告がマッチしてくることについて、広告そのものに対して消費者がネガティブな受取を行ってしまうこともあり得ると考えますと、広告主にとってもこのようなターゲティング広告のデータの扱いについての消費者の不安、懸念は、ブランド毀損のリスクにもつながり得るということです。ユーザーから広告主までは距離があるのですけれども、回り回ってそのような懸念にもつながり、リスクにもなるのではないかという点に触れさせていただいております。

このような点を踏まえまして、11ページでございますけれども、対応の方向性を整理しています。最初にございました「問題の所在」の2点のうちの1つ目でございますが、透明性、同意のコントロールの実効性を確保するためには、大規模なプラットフォーム事業者に限らず、アドテク事業者、パブリッシャーなど、関係者が取り組んでいくことがより重要になっています。このための対応といたしましては、この秋に総務省の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」がちょうど見直される予定になってございます。これは改正個人情報保護法を受けた取組の一環でもございますし、広く利用者情報の取扱いを適正化するという議論をしている中で見直しをするということでございますので、この見直しの中で、我々がデジタル広告において特定いたしました対応策についても、同様に検討し、位置付けていただこうとしてございます。この「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」は、個人情報保護法における関連ルール、また、電気通信事業法に基づく電気通信事業者に求められる利用者情報の扱いに関するルール、この両方を含んだガイドラインになってございます。個人情報保護委員会が出来上がる前の段階から、金融や通信などにおいては、詳細な利用者情報に関する対応をガイドラインで取りまとめてきた経緯がございます。個人情報保護法の制定、委員会の設置後も、その各分野においては一定の連携関係の下に対応しておりまして、この「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」において、結果として、個人情報保護法における対応も規定するという形になっておりますので、このガイドラインが利用者保護を進めるための一つの適切なツールではないかとしております。この見直しに当たっては、個人情報保護委員会、また、このターゲティング広告に関わる業界団体であるJIAAといった関係者とも連携していくことが重要と考えております。具体的には、下のチェック、4つの項目について検討しております。取得する情報、どういう情報やデータを取得しているのか、また、そのときの取得・利用の条件をプライバシーポリシーで適切に開示してほしい。また、ターゲティング広告を実施する場合、その実施する旨、事前にそれを受け入れるかどうかという設定ができる機会の提供、さらには事後にやめますという意味でのオプトアウトをする機会の提供について、適切にこういう取組をしているということの開示。さらには、消費者が「私はターゲティング広告にこのデータを使ってほしくない」ということでノーを押した場合に、その対価としてのサービスを提供しないということではなくて、提供することが望ましいと考えられますけれども、そのデータの提供、取得・利用を拒否した場合に、プラットフォーム事業者などのサービスが使えるか使えないかということについては、しっかり開示をしてもらうことが必要ではないかとしております。さらには、そのユーザーのデータ、取得されたデータについて、データ・ポータビリティが行われることによってよりユーザーが関係事業者に囲い込まれる懸念を緩和することができるという観点から、データの移動、データ・ポータビリティについて、実際に視聴履歴ないしは関連するデータを他の事業者に移せるかどうか、データ・ポータビリティを提供する場合にはその方法を開示することが適当ではないか。こういう4つの事項を開示することによって、先ほどから申しておりますような、透明性、同意のコントロールの実効性などの課題に一定の対応が図られるのではないかとしております。プラットフォーム事業者、アドテク事業者、パブリッシャーなど、電気通信事業を行う多くの事業者が広告ビジネスに関係しておりますので、このガイドラインに基づき事業者に取組をお願いしていくことになります。とりわけその内容の適切性をチェックする、モニタリングをするという意味では、大きな事業者に対しては消費者の理解やオプションなどの認知・利用が進んでいるかについてのモニタリングを行うことが適当ではないかとしております。これが利用者保護の観点からのアプローチとなります。さらには、先ほどブランド毀損を広告主にも起こし得ると御紹介しておりますけれども、そういうことが生じた場合においての事業者保護が必要な場合においては、3ポツ目でございますけれども、広告主を保護するという観点で、必要な情報の開示、モニタリングについては取引透明化法の適用の余地もあると考えております。しかしながら、事業者保護、利用者保護の2つの観点から別々のチェックが入り、別々の方向性が示されるとなりますと、事業者のコンプライアンスに支障が生じる可能性がございます。こういう懸念もございますので、両者を整合させるという観点から、上記の総務省のガイドラインの見直し結果で、どのようにガイドラインに盛り込まれていくかということを踏まえて、整合的な形で取引透明化法を運用する。モニタリングについても、例えば、総務省のガイドラインを運用する場に、取引透明化法は経済産業省の所管でございますけれども、その担当が参加するという形で、モニタリングについても連携する。さらには、取引透明化法の中で、他に関係する施策がある場合には、その適用は必要最小限という規定もございますので、この取引透明化法の実施に関しては、上記ガイドラインの実施状況を勘案しながら必要最小限とするという整理を行いながら、利用者保護、事業者保護、その両者が矛盾しないような形で運用されていくべきであることを整理しております。また、これまでの中身は、総務省のガイドラインであれ、透明化法であれ、政府と関係事業者が一体となって努力するという意味で、共同規制の枠組みで運用していくものでございますが、これに閉じずに、業界団体におかれましても、例えば、JIAAは、オプトアウトに関しての行動ターゲティング広告に関するガイドライン、プライバシーポリシーに関するガイドラインなどを長らく策定・運用しておりますので、こういう業界団体の皆さんの自主的な取組とも連携を図ってまいりたいと考えております。この中で、多くの事業者の皆様にリーチし、適切に対応を進めていただくことが望ましいのではないかということでございます。そのほか、機微情報の扱いなどについても記載させていただいております。このような整理により、この課題に対して効果的に取り組んでいくことが必要ではないかとしているところでございます。パーソナルデータの扱いにつきましては、技術的な進化は続いておりまして、報道でも御案内のとおり、アップルの広告識別子の取扱いやグーグルのプライバシー保護に関する取組、そのほか様々な取組が進んでいるところでございますので、こういう変化の激しい状況の中で、行政としても、適切なルール整備を行いつつ、業界団体ともしっかり連携しながらこの課題に取り組み、また、モニタリングを行い、デジタル広告自体の健全性を確保していくことが必要だと認識しております。今般最終報告を取りまとめましたけれども、実際の法の適用、ルールの適用、整備はこれからでございますので、関係省庁とも連携しながら、また、消費者の皆様にも理解を求めながら進めてまいりたいと考えております。

ちょっと長くなりましたが、説明は以上でございます。

ありがとうございます。

○丸山座長 ありがとうございました。

それでは、これより40分程度、質疑応答の時間とさせていただきます。ただいまの御説明を踏まえ、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。御発言をされる際には、チャット欄に御投稿ください。

それでは、柄澤オブザーバーから御質問をお願いします。

○柄澤オブザーバー ありがとうございます。柄澤です。

3点ほど質問がございます。御説明いただき、ありがとうございました。よく分かりました。

3つのうち1つ目は、このデジタル・プラットフォーム取引透明化法の中で示された共同規制という考え方について、資料の12ページ、13ページに説明があるのですけれども、この共同規制の考え方について、海外の外国当局においてどのような評価がされているのか。また、海外の各当局間で、当然デジタル・プラットフォーマーはグローバルですから、規制のイコールフッティングを目指すという動きがあるのかどうかについて、差し支えない範囲で御教示いただきたいというのが1点目。

2点目が、資料の4ページ、競争環境の状況の中で、最後に矢印であります「消費者が自らの広告にどのように反応したのか等のデータがPF事業者から広告事業者に提供されない。」というものがございますけれども、これは一般的にこういう実態なのかどうかをお聞きしたい。本来ならば広告主にはどのような効果があったのかはフィードバックするほうがマーケットが活性化すると思うので、なぜこういう状況になっているのかということがもしお分かりであれば。

3点目が、非常に雑ぱくな質問で申し訳ないのですけれども、この報告書で提示されたいろいろな問題点、課題を踏まえ、こういう課題を解決しますよというビジネスモデルというか、事業者が現れたときに、相当せっけんしていく可能性があるのではないかと思うのですけれども、むしろそういう問題点を解決するためにこういうデジタル・プラットフォームを創設しますという事業者の出現は期待されるのかどうかというところ。

以上、3点です。お願いいたします。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 個別にお答えしていってよろしいでしょうか。

○丸山座長 御回答をお願いできればと思います。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 柄澤オブザーバー、御質問をありがとうございます。

1点目の取引透明化法の共同規制の考え方は、途中で御説明いたしましたが、デジタルの世界は変化の激しい世界でございます。イノベーションを前提として発展してきた市場でございますので、これまでのように政府各省庁が行動の詳細まで省令に規定するというやり方では、この発展の芽を摘んでしまうのではないかということがございます。このため、大枠を定めて詳細は事業者が行うという意味で、全く自由ではないですが、箸の上げ下ろしまでは言わないという共同規制の考え方を取ったものでございます。今日は説明を省略しました12ページ、13ページにありますとおり、各国でも似たような考え方が取られております。例えば、欧州でございますが、先ほどの説明でも少しだけ言及しましたプラットフォーム規制である、P to B規則を制定して、去年の夏から施行しております。こちらは、プラットフォーム事業者がビジネスユーザーと一般利用者の間に立って仲介を行うことを念頭に置いて、この関係性の中で、プラットフォーム事業者とビジネスユーザーとの間の透明性、公正性を確保するという、日本の取引透明化法が参考とした制度でございます。こちらも共同規制の考え方でございまして、イノベーションの阻害はしないのだけれども、課題の解決については一定の方向性を政府と関係事業者が一緒になって取り組んでいく必要性をうたっているものでございます。こういう状況において日本の取組に関しましては、例えば、EU当局との関係でも、意見交換をする中で、評価を受けているところでございます。また、EUのP to B規則との関係で申しますと、あちらの適用対象は仲介業務を行っているデジタル・プラットフォーム事業者となっておりまして、規模要件などがございませんので、対象となる事業者が欧州域内で6,000から7,000と言われております。非常に多くの関係者に適用されるということで、なかなかポイントを突いた対応は難しいところでございますが、日本の取引透明化法はそういう点も勘案しながら、実際の市場を特定しつつ、規模要件などを織り込みながら、共同規制の対象となる事業者を絞っていくということでございます。現在、オンラインモール・アプリストアに関して、既に市場の指定が行われておりますけれども、アマゾンやグーグルやアップル、日本のヤフーや楽天のような事業者に限って規制を行っているということでございます。関連する質問として、規制のイコールフッティングはあるのかという点でございますが、この点は、正直、様々でございまして、アメリカにおいては、法律、制度を作るより前に、FTCなどにおける法律に基づく訴訟が先行している状況でございます。制度作りの議論はずっと続いておりますけれども、現在は共同規制の制度を運用するというよりは、まずは訴訟が先行しております。欧州においては今御紹介したような共同規制の規律があり、さらには訴訟もありということでございます。さらには、もう一歩踏み込んだ規制、デジタル市場法という法案も、今、議会に提案されているという状況でございます。日本においては、ルール先行の欧州と訴訟先行のアメリカの間のようなところがありまして、対話を重視して行っていく共同規制の枠組みとして、取引透明化法を運用していく予定でございます。この点は、それぞれのグローバル企業に各国の制度を適用させていくようにしていくという意味では、イコールフッティングは目指すのですけれども、やり方はそれぞれ違うというところがあると言えるかと思います。いずれにせよ、各国当局との対話は継続して行いながら、グローバル企業としての事業者への対応を進めてまいりたいと考えております。

2点目、4ページ目の競争環境の項目において、オーディエンス・データの扱いについて説明させていただきます。これは柄澤オブザーバーの御理解のとおり、広告主がある広告を打った場合にどういうユーザーの反応があったかということについては、広告主にフィードバックをしてもらうことによって、次の広告キャンペーンを打つときの材料になってくるという効果がございます。プラットフォーマーは広告を掲載するための「管理画面」という操作画面を広告主側に提供しており、その中で「こういうデータが取れます」ということは、一定程度情報が取れるようにしているものでございますが、それが十分に認知されているか、又は、広告主側に本当に欲しいデータが十分に提供されているかという点は、広告主側の声として若干あるということでございます。突き詰めれば、一般的なツールとしては提供されているのですけれども、広告主のニーズと合うかどうかという点と、「安東」という人がこの広告をどこまで視聴したかなど、詳細になればなるほど場合によってはプライバシーデータと関連してくる部分もございますので、欲しいと言われることと出せるということの間にはおのずとギャップが生じるわけですが、それをどこまで埋められるかという点を含めて、このオーディエンス・データの扱いがあるということかと理解しておりますので、ここはこれからいろいろな適用を考えていく場合には、広告主側の考え方、また、プラットフォーム、アドテク事業者の皆様の考え方をよくすり合わせていく必要があると考えているところでございます。

3つ目でございます。ここで10の課題を示しておりますけれども、これに対して対応の方向性を示した結果、ある新しいパートナー事業者がそれに対処して「こういうことができます」と新しいビジネスモデルを提案してきた場合、この市場をせっけんしていく可能性があるのではないかという点でございますが、あり得ると思います。例えば、プライバシーにおいても、ダックダックゴーという会社が、プライバシーデータを吸い上げないで広告を打つということを始めておりますし、似たような取組や新しいビジネスモデルは、様々なアドテク事業者なりプラットフォーム事業者が提案し始めております。こういう点からいいますと、その事業者がこの市場をせっけんするかどうかは分かりませんが、例えば、「プライバシー競争」のようなものが起こり得ると考えております。これは、事業者が適切なプライバシー保護をしていることをアピールすることによって、回り回って消費者、広告主、パブリッシャーからより選択されるようになるということでございますので、デジタル広告市場の健全性については、一定のよい方向への効果が期待されるのではないかと思っております。その結果、市場をせっけんする大きな事業者の立場が変わるだけ、Bという事業者がまた市場をせっけんするとなった場合には、その場合における課題が出てくるかもしれませんので、常に競争が促されるような環境を作っていくことについて、我々は対応していきたいと思っているところでございます。

○柄澤オブザーバー ありがとうございました。

○丸山座長 それでは、新川座長代理より御質問をお願いします。

○新川座長代理 新川です。今日は、ありがとうございました。

幾つかお伺いしたい点があります。検討の状況は、大変よく分かりました。

1つ、視点が少し違ってくるかもしれませんが、原則論として、競争条件の評価ということでお話しいただいてきたのですけれども、同時に、競争が機能することを考えていったときに、どちらかというと、マーケットのサプライサイドの話はよく出てくるのですが、デマンドサイドというか、需要家というか、消費者の側のやり方、それに対する全体のシステムのインパクトは、この競争条件の評価の中でどう位置付けられるのかが気にかかっています。質問としては、こういう競争評価をされようというときに、言ってみれば、消費者利益につながるような競争評価の視点みたいなものがどういうふうに考えられてこられたのかというのが気にかかった点であります。もし何か検討の結果があればお教えいただきたいですし、あるいは、今回は少しそういうところの詳細は違いますということであれば、それはそれでそういう整理もあるかと思っておりますので、この辺りを1点目でお伺いしたいと思いました。

2つ目に、それとの関係で、特にこうしたデジタル広告や特にターゲティング広告などを見ておりますと、消費者にとって、もちろん適切な場合もありますが、もう一方では、消費者にある種誤った誘導をしていったり、場合によっては最終的な被害を及ぼすような広告もないわけではないと見ております。そういたしますと、こういうデジタル広告やターゲティング広告が持っております消費者にとっての利害も、どういうふうにこの競争政策の評価の中で考えていくのか。もう半歩進めて、そういう被害の問題をどういうふうに防止して、幾つか競争条件の中で出てきているような基本原則に盛り込めるのか盛り込めないのかが気にかかったので、この辺り、消費者にとっての競争政策の意味をどう考えるのかというのは、1番目の議論と重なるのですが、2つ目に気になりました。

3つ目に、今回のアプローチの仕方として、当然透明化法が前提にならざるを得ないのはよく分かるのですが、もう一方では、この透明化法の中で、今、申し上げたような消費者問題をどこでどこまで取り扱えるのか。とりわけ今回はパーソナルデータのところで言っていただいていて、ここは大丈夫かなという感じはするのですが、同時に、例えば、利益相反の問題とか、あるいは、手続の公正といったところも消費者利害に直結するので、この辺りは、今日のスライドでいうと9ページ目の問題、主要論点のところで、透明化法でどこまでこういう問題を消費者サイドから考えていくことができるのかということについて、御示唆があればお伺いしたいと思っておりました。

最後、4点目は、パーソナルデータについては考え方はよく分かりましたけれども、同時に、消費者自身がこういう個人情報をある意味では自分自身で管理する権限を確保していかないと最終的に問題解決はできないと思っています。同時に、有効な方法もないですし、これまでのところはなかなかそうした実績も実態もなかなかないので、今、プラットフォーマーの方々も含めてそういう努力をしておられるというのはよく分かってはいるのです。Cookie規制などは典型的にそうですけれども、この辺りは正にパーソナルデータの問題を扱う以上は技術開発も含めて考えていかないといけないと思っていたのです。この辺りは、今後の共同規制をするとしても政府としての大枠の考え方、それに対するプラットフォーマーや関連事業者、その中でのイノベーションの考え方、先ほども少し言及いただきましたけれども、例えば、リトアニアでやっているような、どちらかというと、正に情報の取得が始まるところからそうした個人情報についての承諾を一つ一つ取っていくようなやり方もあるのかななどと思いながら、どこまで実現可能性があるのかはよく分からないのですけれども、そういう技術開発も可能かななどと思っていたところがありましたものですから、この辺り、パーソナルデータの保護の問題も含めて見通しなどをいただければと思った次第です。

以上、4点、長くなりまして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

○丸山座長 お願いします。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 御質問をありがとうございます。

非常に重要な大きな視点を御提示いただきましたので、回答できる範囲で回答させていただきます。

まず、この消費者の側のインパクトについて、どのようにこの競争評価の中で捉えられているのかという点でございますが、今回の報告書は全体としてデジタル広告市場の競争状況を評価しているものではございますけれども、とりわけ課題10に関しましては、実質的には、消費者保護、利用者保護の観点からターゲティング広告を捉えていくことがメインになっており、その一環として、競争という側面での事業者とプラットフォームの関係も捉えていくこととしております。他の課題と比べて、課題10は競争の中でも利用者保護を正面から捉えたような項目になっていると理解いただければと思っております。大きな意味で、競争を促進すると、先ほどプライバシー競争という話をさせていただきましたけれども、それによってより適切なサービスを提供するということで、プライバシーに準拠した他社に負けないようなサービス、又は、広告主に選ばれるために利益相反をしないといった競争が進むことが期待されるわけであります。このような中で、ターゲティング広告でいうと、消費者にとって懸念や不安の軽減される提供の仕方がより生じるのではないかと思っております。もともと課題10は消費者保護がメインですけれども、その他の課題においても競争が促進された結果として消費者が利益を享受することは十分にあり得ると考えております。また、一番冒頭で紹介しました公正取引委員会においては消費者との関係で優越的地位の濫用に当たる場合については、競争の側面から消費者を保護していくという規律もございます。こういったものとも連携しながらということかと思っております。

2つ目の消費者に誤った誘導をしたり被害を生じたりする場合もあるということでございますが、この点に関しましては、我々も十分に配慮していかなければいけない、より消費者保護に取り組まなければいけないと考えております。例えば、報告書では言及しておりますが、消費者庁において、この取引を仲介するデジタル・プラットフォーマーの役割をどう考えるかという議論をしております。その中で、今回、新法を作って法律が成立したわけですけれども、その中には今回盛り込まれませんでしたが、ターゲティング広告におけるプラットフォーム事業者の責任をどう考えていくかという点もございますし、また、個々の法律でいうと、特定商取引法のような適用を厳格化することで、消費者に誤った誘導を行う優良誤認又は別の誤認を起こすようなものをどうするかという点もございますので、このデジタル広告のルールにおいては、関係省庁とも連携しながら、消費者にとっての利害、利益の確保にしっかり取り組んでいきたいと考えておりまして、報告書の中でもそういう関係する取組にもある程度言及させていただいているところでございます。

3つ目の透明化法が前提という点でございますけれども、1から10まで整理した中では、多くの課題が透明化法が想定しております事業者と一般事業者を仲介するプラットフォームに当たるという面がございますので、これは一つの有力なツールとして提示しておりますが、課題10に関しましては、利用者保護をまずは前提に置いた議論をしておりまして、その一環としてブランド毀損としての広告主、事業者の保護もあり得るのではないかとしております。課題10に関しましては、今日御説明の資料の9ページ目にございますとおり、この総務省のガイドラインの適用をまずは考えます、利用者保護をまずは考えますという整理にさせていただきます。その一環として、もしブランド毀損のような形で広告主にも被害が及ぶ、競争上の課題が及ぶという場合には、他の課題と同様に取引透明化法の適用もあり得るのではないかとしており、ここは利用者保護を前提としたものが多くを占めております。まずは、総務省の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」で検討していく。それに整合する形で、場合によって、広告主保護のための取引透明化法の運用もあり得るという順番でございます。御指摘の利益相反については、9ページでは取引透明化法の適用の方向で法制面の検討を進めるとしているところでございまして、この場合の利益相反は、片方に広告主、片方にパブリッシャーやウェブサイトの運営者、それをつなぐプラットフォーマーなどが関係し、この部分に透明化法の適用を検討するとしております。が、そういう利益相反を解決することによって、ユーザーへのメリットのひえきがあるのではないかという点は御指摘のとおりでございますので、まず、ツールとしては、広告主、パブリッシャーを仲介するという形でのプラットフォーマーの対応ということで透明化法を提示しておりますけれども、効果といたしましては消費者にも回り回っての効果があり得ると考えております。まず、直接的な課題にどう対応していくかという意味で透明化法を書いているということですので、大きなスコープは消費者にもひえきしていくということかと思っております。

最後の4番目、パーソナルデータに関して、消費者自身がコントロールする権限が必要ではないかということでございます。これは先ほどの御説明では簡単にしか触れておりませんが、オプトアウトの手段もそうですし、様々なアドブロックのような仕組みもございます。ユーザーから見て広告を止めることについての手続は大分普及し始めているところでございますけれども、今回の評価で明らかになったように、その認知、利用の状況は、まだ改善の余地はございますので、こういう点で実際にデータの扱いをユーザーがどこまでコントロールできるかということはしっかり求めていきたいと思います。この総務省のガイドラインの適用においても、いきなり全部が解決することにはならないと思いますので、モニタリングという仕組みを導入して経年的に取組を見て改善を促していくこととなると思われます。なお、先ほど御紹介がありましたリトアニアの例におきますと、データの取得の段階から承諾を取るやり方がございます。この点は、個人情報の規律に関して、ヨーロッパと日本では大きな違いがございますので、御説明させていただきます。ヨーロッパは、GDPRという個人情報保護に関する一般則において、個人情報データの取得は明確な形での事前同意が義務でございます。それに対して、アメリカや日本においては、個人情報データの取得の段階において、保有する事業者において承諾を取得する義務はございません。その上で、事後に関しての取組について一定の規律がある。第三者提供をする場合には本人の事前承諾が必要であるなどの規律がございます。この入り口のところの違いがございますので、リトアニアのような承諾の仕組みを日本でも作ろうとした場合には、法の立て付けが少し違うということでございます。他方で、今回、課題10で提示しておりますのは、そういう情報の取得に関して、知らぬ間に、又は、曖昧な形で行われることは、ユーザーのメリットにならないということで、透明性を確保しようということでございます。どんなデータがどのような形で取得され、どう利用されているかという情報は、プラットフォーム事業者、アドテク事業者、パブリッシャー、様々なデータを取得する事業者からユーザーに対して効果的に提示することで、取組の透明性を図っていく、判断の材料をしっかりユーザーにお渡しすることがその後のコントロールにつながるという意味では、ユーザー保護につながるのではないか。日本の個人情報保護法制を前提としてユーザーにコントロールの判断をしっかりしてもらえるようにするための提言を行っているところでございます。

雑ぱくですが、以上でございます。

○新川座長代理 ありがとうございました。

一言だけ、丸山座長、よろしいでしょうか。

○丸山座長 どうぞ。

○新川座長代理 御説明をありがとうございました。とてもよく分かりました。

もう一つ、ちょっとだけ気になるのは、透明化法で、それこそ透明性の規律あるいは囲い込みについての規制や公正な手続をやって、確かに取引そのものの公正さあるいは透明性は確保できるとしても、実際にはそういう取引を通じて消費者被害は公平・公正な取引であれ発生をする可能性があるとは思っています。もちろん自由市場が前提ですから議論はあろうかと思いますが、もう一方では、どうしても情報の非対称性が大きな前提としてあります。そうすると、この透明化法の趣旨の中でどこまでできるのかということについて、多少疑問があったことだけ申し添えさせていただきます。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ありがとうございます。

その点は重要な点ですので、少し補足をさせていただいてよろしいでしょうか。

○丸山座長 お願いします。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 我々は今回の課題の解決は透明化法1本で全て行うということまでは考えていない、有力なツールとしての位置付けでございます。例えば、課題1のようなところは、アドフラウド、ブランドセーフティのような問題がございました。これについては、透明化法でプラットフォーム事業者に対応を求めるのみでは全ての問題が解決しないところは確かにございます。この点については、今、デジタル広告に関係する業界、JIAA、広告主協会(JAA)、JAAAの関係3団体の皆さんが適切な広告の提示の仕組みについて認証を行うJICDAQという団体を立ち上げて、その適正化に向けた取組を開始したところでございます。こういう取組は多くの事業者を巻き込みながら進めておられる業界の自主的な取組でございますので、こういう点も大いに尊重させていただきながら、我々ができるところについては、我々の御提案の中で対応していきたい、うまく連携してその課題に対して取り組みたいということでございますので、透明化法で達成できる部分、透明化法で対応できない部分で企業又は業界団体の取組で対応する部分、それぞれございますので、うまく連携してまいりたいと思っております。

とりわけ広告で消費者被害が生ずる場合については、消費者庁との関係も非常に大きくなってまいりますので、この点は、消費者庁も、個々の事例に関しましては適切に指導されたりしてきておりますし、大きな意味での政策の方向性としてターゲティング広告を含めて検討されてきた経緯もございますので、消費者庁との連携も図っていきながら、個々の消費者被害に関しても対応していくことが政府全体としての適切な方向性ではないかと思っております。

情報の非対称性がございますので、例えば、透明化法でこういうことをしてください、こういう開示をしてくださいという場合に、それが十分かどうかというのはモニタリングの制度にかかっていると思っております。このモニタリング自体は、関係事業者、関係者又は消費者団体などの団体の声も聞きながら、政府として有識者を交えて、その指定されたプラットフォーマーの皆様から出てくる評価や報告書を吟味して対話して相互理解のための方策を考えていくということでございます。こういう取組を進めながら、情報の非対称性を何とか乗り越え、適切な対応、行動変容を促していく、また、相互理解を促していく、そういうことを進めていければということかと思っております。

長くなりましたが、以上です。

○新川座長代理 御丁寧にありがとうございました。よく分かりました。

○丸山座長 次に、御発言希望の委員の方はおられますでしょうか。

清水オブザーバー、御質問をよろしくお願いします。

○清水オブザーバー 清水でございます。

ありがとうございました。なかなか理解の難しいところ、いろいろと重要な点について勉強させていただきました。

簡単に一つお伺いしたいことなのですけれども、「消費者」という言葉が出てまいりますけれども、この「消費者」という言葉をどういう意味合いで使っているかについてだけ少し明確にさせていただけると有り難いと思います。課題10が消費者の視点になっておりまして、これは、例えば、個人情報保護法とかで使われている「個人」とか、先ほどは「ユーザー」という言葉が使われていましたけれども、そういう組織とは異なる何か独自の視点を持った言葉なのか、それと同じような意味で使っておられるのかということですね。その点について。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ありがとうございます。

この点は、確かに、報告書全体、10の課題全体でいいますと、「ユーザー」、「利用者」、「消費者」という3つの言葉があると認識しております。これは大変分かりづらさもあろうかと思っておりますが、ユーザーについては、透明化法の概念を全体に入れてしまっているものですから、AとBを仲介するときの事業者と一般利用者を仲介するという言い方をしておりまして、その点で、透明化法の議論をすると「利用者」ないしは「ユーザー」という言葉が出てくるということでございます。課題10は、総務省のガイドラインを書いておりますけれども、こちらについては、「ユーザー」、「利用者」、「消費者」、いろいろな書き方は十分に可能でございましたけれども、このデジタル広告を議論しておりましたデジタル本部のワーキングにおきまして、広く広告を目にする方々という意味で、実際に広告に基づいて物を買ったり、いろいろな機会を持つ方々を広く捉えようということで「消費者」という言葉を置いてみてはどうかということでございます。消費者そのものに「こういう定義です」ということをおいたわけではありませんが、広告を見て何かしらの対応をする、ないしは、広告を見て反応するという点を捉えまして「消費者」としているということでございます。

また、関連して、公正取引委員会の独禁法のガイドライン、消費者とプラットフォームの関係の優越的地位の濫用についてのガイドラインでございます。これもプラットフォーム事業者と消費者という観点で位置付けているということもございますので、こういう点でも少しそのような視点を持たせつつ、ここは「消費者」という言葉を置くことが課題10としては適当ではないかと考えております。その課題10の中でも「ユーザー」と書いてあるものに関しましては、例えば、消費者庁アンケートであったり、公正取引委員会アンケート、総務省アンケートの中で使っている言葉が「ユーザー」でございましたので、この点は、そちらの用語に従っているということでございます。

答えになっていない部分は多々あるかと思いますが、課題10だけは、意識的に「ユーザー」や「利用者」という言葉ではない「消費者」という言葉を使っていこうということで、議論した結果を盛り込んでいるということでございます。

申し訳ありません。このような回答でよろしいでしょうか。

○清水オブザーバー どうもありがとうございます。

確認なのですけれども、こういうところで使われている「利用者」や「ユーザー」という言葉はある意味狭すぎるということで、独禁法のガイドライン等で使われている「消費者」という言葉も考えて、広告を広く目にする個人いう理解、自然人という理解でよろしいでしょうか。そういう形で捉えられておられるということか。独禁法の場合は当然事業者に対応する消費者という概念が入っていると思うのですが、そういう意味ではなくて、広告を目にする自然人というニュアンスが強いという理解でよろしいでしょうか。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ここは確かに議論すると難しいところでございますが、今回課題10はパーソナルデータに関して着目して議論しているということもございますので、主眼は個人だと理解しております。公正取引委員会も、個人情報に関わるやり取りをすることにおいての消費者とプラットフォーマーの関係を見ているということではございますので、その点でいうと、より個人がメインではございますけれども、厳格にこれについてはこういうことを言っていますという外縁をきちんと決めるところまではいっていないと御理解いただければと思います。

○清水オブザーバー どうもありがとうございました。

○丸山座長 続いて、大石オブザーバーから質問をお願いします。

○大石オブザーバー 御説明をありがとうございました。

質問といいますか、意見に近いのですけれども、5ページのところにありますデジタル広告市場の特性と課題というところで、消費者の7割がターゲティング広告に対して「煩わしい」、「どちらかというと煩わしい」と感じているということで、その後に、パーソナルデータの扱いに対する懸念があると書いてくださっているのですが、実際に今回こういう広告の仕組みというのが初めてよく分かって、自分たちが見ている、直接自分に来るターゲティング広告以外に、このデジタルの画面で出ている広告を仮に自分たちがクリックすれば、その情報がまたいろいろなところに利用されるということが分かって、初めて更にパーソナルデータの取扱いに対する懸念を持ったところがあります。多くの消費者の方は、そういう仕組み、デジタル広告の仕組みを知らないまま、本当に自分が見えているところだけでパーソナルデータを気にしているというところがとても大きいのではないかなという懸念を持ちました。そういう意味で、直接こことは関係ないかもしれませんけれども、消費者にどういう情報を伝えていくか。もしかしたら消費者教育に関わってくるのかもしれませんけれども、そのような取組が片一方ではやはり必要かなというのを、お話を聞いていて思ったというところです。そういう意味で、質問といいますか、このパーソナルデータを取得するのは、ターゲティング広告に限らず、それ以外の広告においてもその可能性があることの周知は、どこかでなされているのか、今後そういう方向があるのかということをお伺いしたいというのが1点です。

あと、今回、デジタル広告市場の課題として、消費者並びに広告を出す広告主の課題も書いてあったのですけれども、社会全体の課題として、大きな課題もあるのではないかなと思っていて、私は以前家電リサイクルに関する委員会に入っていたことがあるのですけれども、家電の収集に関する広告を出す、消費者はそこで収集してもらえると思って申し込むのですけれども、実はこれは家電リサイクル法の中では違反行為であるということがあって、大きい目で見ると社会のそのシステム全体に対するマイナス面もあるので、そこら辺の課題も、これは本当に国としてというのですか、行政として見ておく必要もあるのではないかなと一つ思いました。

すみません。雑ぱくな意見ですけれども、以上です。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ありがとうございます。

御指摘大変示唆に富む面がございまして、可能な範囲でお答えしたいと思いますが、パーソナルデータの取得などの周知は、どこかで十分になされているか。また、利用者のリテラシーをしっかり上げていく取組はなされているのかという点は非常に重要な点でございます。この点は、我々はユーザーの認知限界という言葉で位置付けておりますけれども、その認知限界を前提としつつも、その認知を高めていく取組は重要ではないかというところがございますので、こういう点については事業者の対応を求めていくことを位置付けております。

さらには、消費者の皆様のリテラシーを上げていくという点で申しますと、先ほど総務省のガイドラインを紹介しましたけれども、この総務省の電気通信事業法における取組においても、リテラシーの向上について、同様に国としても事業者としても取り組んでいくべきということがございます。プライバシーポリシーをしっかり周知してくださいということはガイドラインにも書いておりますし、基本的に個人情報保護法においても同様の考え方かと思っています。さらには、消費者全体を守るという点で言いますと、消費者庁の取組、検討されている周知の仕方、消費者教育は、これまでにも大変実績がございますし、これからの新しい技術に対しての取組もますます期待されるところでございますので、こういう点は政府全体で様々な側面から認知を上げていく、リテラシーを上げていくことは進めていかなければならないと思います。特にデジタル広告は大石オブザーバーが御指摘のとおり、こんな仕組みになっていたのかというのを明らかにすることすらなかなか難しかったですし、これから2年たつとまた更に変わっているのではないかということもございます。常に進化している中で、消費者にとって不利益がないような、対抗できるように、そういう環境を作っていくことが、不断の取組として必要でございますので、そこはこれからもしっかり進めて、関係省庁、また、事業者、業界団体と連携しながら取り組んでまいりたいと思います。

もう一つ、社会全体の問題という意味では、家電リサイクル法の例をありがとうございました。こういう分野の個別の対応がたくさんこれまでもされてきたところでございまして、こういう点に関しましては、今回、デジタル市場競争本部という枠組みの中では、課題10でターゲティング広告という消費者の視点を盛り込んで少し拡張した対応をしているところでございますが、更に広い社会的な対応が政府全体の中で求められていると理解しております。そういう点も、必ずしもこの本部のスコープとしてということではございませんけれども、政府としてしっかり消費者の利益の保護という観点を含めて周知を行って被害を防ぐことは必要ではないかと思っております。

我々の視点からは、限定的ですけれども、そのように拝聴させていただきたいと思います。

○大石オブザーバー ありがとうございました。

本当に動きが早いので、なかなか消費者自身もついていけないところがあるのですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

○丸山座長 それでは、委員の方から御発言はございますでしょうか。

すみません。私からも2点ほど教えていただきたい点がございます。よろしいでしょうか。

先ほど新川座長代理の質疑のところで、ヨーロッパと日本とアメリカでは違いがありまして、事前同意の形は取っていないということを御説明いただいたのですけれども、業界団体で自主的にそういった事前同意を取っていく方向、あるいは、使ってよいパーソナルデータについて少しきめ細かな対応を取っていくというようなことについて、業界や事業者について積極的な姿勢が見られるのか、そこはちょっと消極的というような、ヒアリングや調査の状況であったのかという点が教えていただきたい1点目になります。

2点目としましては、ここの共同規制ということなのですけれども、その中身に関しまして、行政庁や総務省で主導的に設定されるガイドラインと、報告の中で機微情報の扱いなどについては、業界にまずは適正取扱いの問題を任せるような形で書かれていたと記憶しております。そういった行政庁が設計するようなガイドラインあるいは業界の自主的取組は、例えば、ガイドライン違反がある場合や自主的な取組が進まない場合に、規制の権限として、何かプッシュする、働きかけるツールは用意されているあるいは用意されるという方向なのでしょうか。勧告、公表などが予定されるという理解でよいのか教えていただければと思いました。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ありがとうございます。

2つ目の質問は、非常に有り難いクラリファイをいただいておりまして、先ほど日米欧それぞれルールが若干異なるということを申しました。日本には事前の同意という仕組みがないと申しましたが、これは個人情報保護法制としてはそういうことでございます。先ほど総務省のガイドラインを御紹介しましたが、電気通信事業法の中では、利用者情報を守るために、通信の秘密の規定がございます。御案内のとおりでございますが、この通信の秘密に関わる情報に関しましては、ユーザーからの情報取得に当たっては事前同意が必要でございます。ですので、個人情報保護法自体は、紙の情報も通信上の情報も、媒体、フロッピーディスクなどに入っているデータも全て個人情報であれば個人情報保護法によって規律がかかってまいりますけれども、電気通信事業法は通信の中身に関して着目して、一部事前同意の規律があるということを補足させていただきます。先ほどのガイドラインは、通信の秘密から派生しつつも、もう少し広い利用者情報一般に係る対応、プライバシーポリシーにしっかりこういうことを書きましょうということ、通信の秘密の外の部分ですけれども、同意の取組であったり、利用者情報の保護の在り方であったり、更に個人情報保護法における保護の規律をガイドライン化するということで、広い範囲で規律をしていくものもございますので、通信の秘密以外の部分は事前同意の規律はございませんが、そのような位置付けで御理解いただければと思います。

個人情報保護法として事前同意の仕組みがないとした場合に、業界の取組はなにかありますかということでございますけれども、こういう状況でございますので、通信の秘密に関しましては、総務省の法律、さらにはガイドラインを遵守していくことになりますが、業界としては、事前同意を取りましょうというガイドラインを持っているわけではありません。個人情報保護法でいうと機微情報に関しては、ある程度、規律が厳しくございますけれども、いずれにせよ、業界そのものが事前同意を取りましょうというところまで踏み込んだ取組をしているわけではないので、途中で御説明しました透明性を確保するという観点で、いろいろな情報をプライバシーポリシーなどに明記して、しっかり、ユーザー、消費者に情報を伝えて判断してもらうようにしようということが業界の取組としてございます。例えば、広告にマークをつけてこの広告はなぜあなたに出たのですかという情報を提供する「インフォメーションアイコン」という仕組みをJIAAは設けて、関係する広告主、パブリッシャーなどにそれを付与することを奨励しているところでございます。

使っていいデータの整理について業界で取り組んでいるのかということでございますけれども、これは機微情報とも関係しますので、一緒にお答えします。特に業界ごとに実際のデータの使い方についてある程度指針などを作っているケースがございます。報告書にも記載しておりますけれども、例えば、放送においては、視聴データを思想・信条を判断する、推知するために使ってはいけませんという形で、機微情報として捉えられるような利用者情報の扱いについて、総務省においても一定の考え方を示した上で、業界においても指針を作っているということでございます。金融においても、機微情報の扱いについては、例えば、口座の情報の関連で、その人の生活が分かる、思想・信条が分かるという点に関して、扱いを厳格化するというような意味で、金融庁と連携した指針が業界にはあるということでございます。使っていいデータの整理はどうなっているのかという御質問に関しては、逆から見て、機微データに関してはこういうふうにしましょうという指針は、全部の業界ではありませんけれども、幾つかの業界にあるということでございます。こういうものを担保するためには、例えば、個人情報保護法においては認定個人情報保護団体制度がございます。認定を受け業界として加盟構成員の行動をしっかりと見ていくために、認定団体としての指針を作る。それによって加盟者の対応を適正化していく。その運用に問題があった場合は個人情報保護委員会から措置を受ける。そういう仕組みもございますので、全く自主的な指針、ガイドラインを作るというケースもあれば、このように個情法の枠組みの中で認定団体として指針を作って、政府の一員である個人情報保護委員会との連携を制度的に行うやり方もございます。先ほど透明化法ないし総務省のガイドラインの2つだけ御紹介しましたけれども、様々なやり方がございますので、こういうものとも連携しながら取り組んでいくことが必要になるかと思っているところでございます。

雑ぱくですが、以上でございます。

○丸山座長 ありがとうございます。

他に御質問はございませんでしょうか。

片山委員、よろしくお願いします。

○片山委員 御説明をありがとうございました。

非常に大ざっぱな質問で申し訳ないのですが、先ほどの大石委員のお話にもありましたように、こういう仕組みが、消費者のほうには本当に知られていないといいますか、消費者が、どういうふうに捉え、考えるかということが、恐らく国のほうでもつかみにくいのではないかなと思っています。そこでお聞きしたいのは、本来は消費者が受容するわけですし、その消費者から見て、こういう仕組みに対して、どういうことが一番問題になるのかということを、一定の理解を持つ消費者からきちんと聞き取っていただき、その上で仕組みを議論するというのが本来あるべき姿ではないかと思っています。

そのためには、先ほど来お話の出ていたように、事業者の皆さんがこれをしっかりと消費者の側に伝えて、消費者との間で仕組みの在り方について、公正にといいますか、公平にというか、議論ができるようなそういう市場環境が望ましいのではないかと思っています。

質問は、そういう市場を深化させていく上で、事業者の取組を後押しする、事業者としてもそうせざるを得ないような促進を図る力は何でしょうか。何がそういう推進力になるとお考えでしょうか。

物すごく雑ぱくで申し訳ない質問なのですが、よろしくお願いします。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 ありがとうございます。

大きな視点からの御質問かと思っております。我々もそういう視点で頭を整理していかなければいけないなと改めて感じた次第です。

これは個人的な感覚になってしまうことをお許しいただきたいと思うのですけれども、消費者と関係する事業者との対話は非常に重要だと思っております。まず、一義的には、企業としてのステークホルダーへの理解を広めることは企業の価値を上げていくという点もございますので、その点では市場の競争の一環として消費者理解を高めていくことで、その企業の価値ないしはその企業の評価が上がっていくということでございます。そこは企業の取組としての活動が非常に重要になるのが大前提ではございますけれども、市場の失敗ではございませんが、それだけで全てが解決するわけではないということを考えた場合に、どのようにそういう状況へ持っていくか、事業者の取組をどう後押ししていけるか、どのような力があるのかという点は、確かに考慮する重要な要素だと思っております。

例えば、消費者庁の特定商取引法であったり、消費者保護の取組は、一つ、コンプライアンスのプレッシャーの中で事業者の適正な対応を後押しする大きな力になっていると思いますし、総務省のガイドラインもそうなのですけれども、総務省のサンクションとしては、その後に違反があった場合、場合によっては、電気通信事業者に該当する者の違反であれば、最終的に、電気通信事業法の業務改善命令、なかなかその要件に当たるほど重たい対応はないかもしれませんが、そういうサンクションが一つの後押しになるということでございます。そういう場合には、サンクションを取られた場合には公表することになりますので、そういう意味でのレピュテーションリスクを負っていただくということかと思います。

また、各国当局なども同様の対応をしておりますので、我々政府間連携も重要だと思っております。その中で、しっかりこういう取組が必要だという雰囲気作りないしは方向感を示す中で、Cookie制限であったり、様々な取組が進んでいると思っています。そういう政府連携の中での圧力というか、取組も効果があるとは思っております。いずれにせよ、消費者の皆様との対話、事業者との対話という意味で、政府が関与する場合は、消費者の団体の皆さんないしは場合によっては個々の消費者の皆様の声も聞きながら、その課題を特定していくことになってまいります。消費者委員会におかれましてもそういう観点で情報を集約されておられると思いますし、透明化法も総務省のガイドラインの運用も同様に、そのような消費者の皆様の声も聞きながら対話を促進されるような後押しを政府としてやっていくという仕組みでございますので、法律やガイドラインごとにそれぞれ目的はございますけれども、いずれにいたしましても、政府が関与する場合においては、個々ないしは団体の消費者のお考えを聞きながら対応していくことは、これまでも進めております。また、今後もこの変化の大きなデジタル社会においては、新しいサービスはその中身がよく分からないことが大前提になってきますので、そういうものについて解きほぐしていくまでは、不安がのこります。そうした何が分からないのかという点を特定するためにも、消費者の皆様の声を聞いていく、対話につなげることが重要であると思っております。

すみません。大変雑ぱくな回答で全く回答になっていないかもしれませんが、思いの一端を述べさせていただきました。

○片山委員 どうもありがとうございました。

○丸山座長 他に御質問はございませんでしょうか。

それでは、内閣官房デジタル市場競争本部事務局へのヒアリングは、この辺りにさせていただきます。

安東参事官におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。

○内閣官房デジタル市場競争本部事務局安東参事官 本日は、誠にありがとうございました。

引き続き、このデジタル市場競争本部の取組に関して、皆様との連携が必要かと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、これで失礼させていただきます。

(内閣官房デジタル市場競争本部事務局退室)

○丸山座長 それでは、安東参事官が退室されたようでございます。

ターゲティング広告に関する検討状況、競争規制による現状、方向性が理解できるとともに、恐らく実態を知りますと、問題だと思う消費者が増え、市場の反応に及ぶ可能性もあることが理解できました。消費者の理解を進める重要性も改めて認識されたと思います。

本ワーキング・グループにおきましても、関係省庁の対応について注視するとともに、引き続きターゲティング広告の自主規制・共同規制の在り方について検討を進めてまいりたいと思います。

それでは、本議案については以上にしたいと思います。

本日は、御議論いただきまして、ありがとうございました。

最後に、事務局から事務連絡をお願いします。


≪3.閉会≫

○太田参事官 本日も、長時間にわたりまして御熱心に御協議いただきまして、ありがとうございました。

次回の会合につきましては、確定次第、御連絡をさせていただきます。

○丸山座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)