第15回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2018年12月13日(木)10:00~11:50

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員、山本委員
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 今後の進め方について
  3. 取りまとめに向けた検討
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○坂田参事官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、誠にありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第15回会合を開催いたします。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第に配付資料を記載しております。

不足の資料がございましたら、事務局へお申し付けいただきますよう、お願いいたします。

それでは、鹿野座長に以後の議事進行をお願いいたします。


≪2.今後の進め方について≫

○鹿野座長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。

本日は、まず、本ワーキング・グループの今後の進め方について検討したいと思います。

本ワーキング・グループでは、本年3月から「消費者法分野におけるルール形成の在り方」と「ルールの実効性確保に資する公正な市場を実現するための方策」の2本を柱に据えて、これらに関する各論点について検討を行ってまいりました。

特に前半では、有識者等からのヒアリングを行い、ワーキング・グループ委員の問題意識に即して多方面の専門家から御意見等を頂戴しました。そして、そこで出された多様な視点を取り入れて検討を行い、本年8月には中間整理を取りまとめて、今後の検討において重点的に検討すべき論点を整理し、その上で、後半の議論を重ねてまいりました。この間、最終的なまとめの報告書案についても作業を進めてきているところではございますが、取りまとめに向けて更に幾つかの点について議論を行い、論点を深掘りしていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

具体的に深掘りが更に必要だと思われる論点としては大きく3つほどありまして、第1に民事ルールと行政規制の役割分担、第2に適格消費者団体の権限の強化・充実、第3に事業者の取組を促す仕組み作り、いわゆるコンプライアンス体制整備などが挙げられるかと思います。これに付随して、その周辺のことについても若干気になるところもございます。

このため、当初は年内をめどに取りまとめを行うということを一応予定していたところではございますが、来年1月以降も引き続き、こうした論点について議論を重ねてはどうかと考えているところです。

具体的な今後のスケジュール案についてですが、資料1がお手元にあろうかと思いますので、こちらを御覧ください。資料1でお示ししておりますような形で、年度内の取りまとめを予定させていただければと考えているところです。

このような進め方につきまして、御意見のある方は御発言をお願いします。いかがでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

この間、14回にわたってこのワーキングで様々なヒアリングを行い、それとは別に委員間での議論もしてきて、取りまとめに向けた議論をしてきたわけですが、今、座長からも説明がありましたように、今回のこのワーキングは、この法律のこの規定を入れてくれ、どう入れるかという個別論点ではなくてもうちょっと幅広い、それこそ5年、10年先を見渡したあり方を議論していく必要がある。ただ、現実に幾つかの法制度については見直しの課題が迫っているということもあって、もちろんその課題に対しての直接の答申のようなものではないけれども、現実的なことも意識しながら、しかも5年、10年先も見通すということで言うと、もうちょっと深掘りをしておかないと説得力に欠けるのではないかというのが率直なところです。例えば、民事ルールと行政規制の関係というところも、もうちょっと法学者などの意見もお伺いする必要があるのではないかというのが率直なところです。

それから、適格消費者団体の役割ということも、ヒアリングは重ねてきましたけれども、特定適格消費者団体という制度ができて2年余りたって、直接の立件がなかなか上がってきていないということと、ただ、事前の申し出段階で自主的に対応しているところがあるというのは、これはこれで評価できる動きがある。その辺をどう受けとめ、今後どう方向性を打ち出していくのかという辺りも、もう少し議論をしていく必要があるのかなと。

それから、今日後半で提起される事業者の取組を促進するという意味でも、本当に関連する法制度、いろいろなところに影響してくるので、この辺ももう少し議論を重ねてみたい。いろいろな課題をちょっと欲張って議論しているうちに、もう少し深掘りをして3カ月ほどずれ込むとしても、いつのどの法律の、いつまでにということが間近の締切りではないことで、ちょっと楽観視しているところがあるのですが、その代わり説得的なものをまとめていけたらと私は思っております。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

他にいかがでしょうか。御意見はありませんか。

ありがとうございます。

今、池本座長代理からもお話がありましたように、このワーキング・グループは、各個別法についての具体的な答申を出すというわけではありません。個別法も意識しながらということではありますけれども、より長期のスパンにわたる今後の考え方について検討して整理をしていきたいということで開始し、今まで議論を重ねてきたところでございます。そういうことですので、この機会にさらに深く検討をして報告書をまとめたほうがいいのではないかということで、今日の先ほどの御提案をさせていただいた次第です。

他の委員からも御賛同いただけるということでよろしいでしょうか。

それでは、御賛同いただいたということと理解しまして、本日御確認いただきました内容で、今後、更に検討を進めたいと思います。よろしくお願いします。

≪3.取りまとめに向けた検討≫

○鹿野座長 それでは、本日の次の議題に移りたいと思います。

本日は、取りまとめに向けた検討の一つとして、事業者の取組を促進する仕組み作りについて検討を行いたいと思います。中間整理におきましては、事業者のコンプライアンス体制の整備を今後の重点的に検討すべき論点として掲げておりましたところ、これに関して、高委員長から既にこれまでの会議の中でも、コンプライアンス体制整備へのインセンティブと違反行為者(悪質事業者)に対するディスインセンティブについてお話をいただいたところであります。

そこで、本日は、この論点について更に集中的に検討を行いたいと思っているところです。高委員長には、プレゼンテーションの準備をお願いしておりますので、30分程度でよろしいでしょうか。御説明をいただいた上で意見交換を行いたいと思います。

それでは、高委員長、お願いします。

○高委員長 ありがとうございます。このような機会をいただけて、さらに、年度内の報告書の取りまとめということで時間的に余裕を設けていただいて、大変ありがたいと思っております。

先ほど鹿野座長が、深掘りをする分野、必要な分野として主に3つあるという御説明をいただきまして、その3番目のものとしてコンプライアンスへの取組の促進、促すような仕組み作りについて、まだ深掘りしなければいけないということで、今日は私のほうで資料を用意させていただきました。今後、これをたたき台にして、いろいろなところ、不十分なところを指摘いただいたり、使えるところについては実現可能性等を検討していただければと思います。

それでは、レジュメを使いまして、1ページからお話をしてまいります。

最初のところに書きました「事業者の取組を促進する仕組み作り」ということで、これはこれまで中間報告までで議論してきました大枠に沿って整理をしたものです。3つあったかと思いまして、1つは積極的な取組の普及ということで、一般的な議論ですけれども、今、消費者志向経営に対する表彰制度等がございます。この取組は今年スタートしたわけですけれども、今後、全国各地に広げていくというような、こういう方法もあるでしょうということを1番目に書きました。

2番目は、なかなか難しいかもしれませんけれども、自主宣言する企業の数はそれほど増えていないわけで、これを増やすための運動というものも、特に教育等で取り得るアプローチかなと思っています。消費者は自主宣言する企業を応援することで社会を変えられる、企業の意識を変えられるというような、そういう教育をやってもいいのではないかと。もちろんそれはリスクを負うかもしれませんけれども、恐らく応援される企業側は自主宣言したことの責任の重さを更に自覚して、取組を進めるという効果もあると思って2番目のところを書きました。

3番目はエシカル消費の話ですけれども、エシカル消費の意義そのものはいろいろなところで教育がされているのですが、では、何を積極的に購入すれば、例えば価格がほとんど同じであれば、どういうものを選ぶことで、それは持続可能な社会に貢献できるのかという、そこのところの情報はほとんどないのですね。そういう意味で、エシカル消費に関わる商品やサービスといったものを、これは消費者庁がやるのは難しいでしょうから、何か評価委員会みたいなものがあってそこのサイトにアップするとか、こういう応援の仕方もあるのではないかということです。

4番目に書いたことで、これが今日の話とつながってまいりますけれども、不利益処分を行う場合、例えばコンプライアンスの体制が整っていて問題を起こす会社というのも当然あるかと思うのです。そのときに不利益処分の内容、措置命令の中でいろいろ説明する中で、例えば体制が整っていたことで早期発見・対応が可能であったというようなことも言及してはどうかということです。これは企業側にとって大変大きなメリットになると私は思っております。

2)に書いたことですけれども、コンプライアンスの取組というのは大企業あるいは上場企業では進んでいるけれども、それ以下のところではなかなか進まないのではないかということで、いろいろ知恵を出す必要があります。これまでのところ、そこの議論は余り進んでおりません。例えば公的年金の運用に対して投資先をこのようにしたらいいというような話をしても、それは結局、大企業の話であって、中小のところにまでは至りません。中小企業まで含めて考えてるとなると、やはり次に述べる3)の部分が重要となってきます。コンプライアンスに取り組むことのインセンティブと、取り組まないことに対するディスインセンティブということですね。

マル1に書きましたけれども、米国にあります連邦量刑ガイドラインというものに示されているアイデアを参考にすることで、行政処分に関して「不利益処分ガイド」というものを導入する方法があり得るのではないかというのが1番目。

マル2に書いたのは、行政処分全般についてこんなことをやろうという話になると、とても話は進まない。なかなか動かしがたいと思いますので、特定分野に限定して、特に消費者行政の特定分野に限定して、ある意味、試験的にこういう取組を行ってはどうかと。その中でコンプライアンスに取り組むことが明確に報われるということが見えるようになれば、予測可能性が高まれば、事業者の行動は、中小についても変ってくると思っております。

今、申し上げたことが中間報告に沿って簡単に申し上げたことですけれども、具体的に何を考えているのかというのが1ページの下からとなります。

まず、問題意識でございますけれども、消費者行政に投入できる予算というのはほぼ横ばいで推移しており、これは国だけの話ではなくて地方においても同様の状態にある。横ばいで維持できればまだいいのですけれども、今後、社会保障関連とか、あるいは外国人を受け入れる社会、そういう方向にありますので、そうすると外国人の生活者増に伴う負担が、地方自治体で膨らんでいくだろうと思います。こういう状況にあるというのがマル1に書いたことです。

これを前提として、マル2マル3ですけれども、今後起こってくるいろいろな変化、例えば社会の超高齢化・デジタル化、これは何度もここで言われていることですね。それから、マル3に書きました、ここ数年で一気に進む変化というのは、成年年齢引下げによるいろいろなトラブルというのもあり得るでしょう。それから、外国人観光客の増加というのも消費者問題につながっていきますし、あるいは労働者の受け入れが拡大することで、外国人労働者の方々が被害を受けることもありますし、また逆に、加害者になることだってあり得る。

一番下に書いたのですけれども、2)このまま現状維持を続ければというのは、消費者行政に割ける資源、予算、人等が制限される中で、いろいろな問題が増えてくるということが、こういう状態を放置していけば、2ページの上になりますけれども、投入可能な行政資源と課題との間に溝ができ、それが時間の経過とともに広がっていくことになる。

この問題を緩和するには、あるいは解決するにはどういう方法があるかというので、3つあげておきました。1番目は、より多くの予算を獲得してきて消費者行政に投入するということ。2番目は、消費者行政にかかわる職員が、これは国も地方もですけれども、より多くの消費者課題に優先的に取り組むように仕向けていくということ。3番目は、これは相手があっての行政ですから、消費者行政に対する事業者側の協力を引き出すことという、大ざっぱに言うとこの3つの選択肢しかないと思っているのです。

実現可能性というのを書きました。1番目のやり方、より多くの予算を消費者行政に投入することというのは、先ほども言いましたように、際限なく増やすのは多分難しいだろうということです。2番目、職員数が増えない中で、取り組むべき行政課題は消費者問題だけではなくていろいろな課題が増えていく中で、消費者課題について優先的に取り組むことを求めても、なかなかこれも厳しいと。ただ、(1)と(2)のアプローチをこのように評価してしまうと、これはギブアップせざるを得ないということになってしまいますので、その下に書きました。(1)と(2)の方法は全く議論の余地がないわけではない。だから、これは別途議論する必要があるけれども、とりあえず(1)(2)を採用できないとするならば、3番目の方法でしょうというのが私の問題意識です。消費者行政に対する事業者側の協力を引き出すこと。

この議論というのは、15年前の国民生活審議会消費者政策部会の「21世紀型の消費者政策の在り方について」という報告書の中にも出ておりまして、15年前に指摘はされたのですけれども、結局それは一般論として指摘されているので、つまり行政処分全体についてどうするかということを言っているので、なかなか議論が先に進まなかった。ただ、ここに書きましたように、部分的であれば、この議論は、私は可能なのではないかと。さらに、一部その仕組みはもう導入されていると思っています。後で述べますけれども、景表法の課徴金に関しては、自主申告があった場合に半額にするというような仕組みが既に入り込んでいるのですね。ですから、ここで議論することが可能ではないかということで、(3)の方法が考えられるということを言いたいのです。

3)を見ていただきたいのですけれども、一般の企業側が考えるコンプライアンスの取組というのは、ただのコストとして認識されているということです。

まず1番目ですけれども、会社法において内部統制、これはコンプライアンスの体制が含まれているのですけれども、それは構築義務が課されている。関係法令を遵守する合理的な体制を作れということになっておりまして、もしそれを作らない場合は任務懈怠ということで、これは民事上の責任ですけれども、構築せずして会社に大きな損害が生ずれば、株主代表訴訟が起こる可能性がある。だから、そのリスクを回避するために体制を作らなければいけないという意味で、コストとして意識されている。

2番目の金商法についても内部統制を構築する義務がある。特に財務報告の信頼性確保が求められる。財務の話は、法令遵守と深く関わっていまして、違反行為を行うときには、通常、お金の処理に関して正確に記載することを避ける傾向があるからです。例えば、賄賂を渡すときに、賄賂といって記録を残す会社はないはずです。他の名目にして、例えばピーナッツ1袋とかそういう言い方でやってしまうわけです。ですから、これもコンプライアンスの取組を促すものであると言えます。

虚偽記載があった場合には、現在いろいろ、カルロス・ゴーンさんの話で問題になっていますけれども、故意犯であれば刑事罰を科される。故意でなくても、有価証券報告書等に不実記載があった場合には、株式や社債で調達した資金の総額に応じて課徴金が自動的に課される。だから、そういったリスクを避けるために、会社側としては内部統制の仕組みを作る。これもリスクを回避するためのコストとして、体制を作るということです。

マル3に書きましたけれども、大企業・上場会社に対する構築義務。これはコストなのだけれども、作らなければいけないということで、やると。大企業・上場会社に対してそれが法的に求められているのに対し、法的に求められていないところについていえば、中小企業とか非上場については、それがコストであるわけですから、基本的に取り組まないほうがいいと考えられるわけです。

それで3番目、こういったことを前提にして議論を整理していきたいのですけれども、まず、事業者というのは、5つに分類して整理していく必要があると思っています。黒マル1は良識的な事業者。例えば関係する法令の改正があれば、それに対応する仕組みをきちんと作っていくような会社。それから、黒マル3を先に言ったほうがいいでしょうけれども、そういった法令の改正とか新しい法律の施行に全く無関心の事業者。黒マル2に戻って言いますと、ある程度体制を敷こうとする事業者、その中間にいるところということです。黒マル4は、要は法の網の目をくぐり抜けるような脱法的なことを考えている悪質な事業者。最後のところは、これは事業者とは呼べないでしょうけれども、詐欺集団、オレオレ詐欺のような、こういう5つに分類して考える必要があると。

問題が会社の中で起こった場合、黒マル1の事業者、黒マル2の事業者、黒マル3の事業者はどのように対応するかというのを簡単に書きました。まず1番目の黒マル1の事業者、良識的な事業者は、3ページに行きますけれども、内部管理体制が大体整っております。ですから、社内の相互確認の過程とか、あるいは専門部の監査とか検査といったところの調査によって、あるいは内部通報の仕組みが動いていれば、それを通じて問題の発見、違反の事実を特定することになる。これを是正するとともに、違反の事実があった場合には所管庁等に迅速に報告するということになっている。

現状、若干、酌量するところもあるのかもしれませんけれども、行政処分というのは基本的に、違反があったかどうかで処分を機械的に決定することになっているわけで、黒マル1の事業者がこれを報告すれば、処分に値するということであれば、機械的に処分を行うことになります。

黒マル3の事業者を先に書きましたけれども、機能する体制は敷いていないので、自ら問題を発見することも、また是正することもない。基本のスタンスは、監督官庁あるいは消費者団体等から指摘があれば、是正するというところだと思います。行政規制の場合には、是正に応じなければ厳しい不利益処分を受けることになるので、指摘を受ければこういう事業者はそれなりの是正はする。ただし、基本は自らそういう体制を作っていこうではなくて、言われれば応じますというスタンスです。これが黒マル3の事業者だと思います。

黒マル2の事業者は中間体ですけれども、一定程度の管理体制を整備しているわけですから、黒マル1の事業者ほどではありませんけれども、違反の事実、問題行為を黒マル3の事業者よりも高い確率で発見することになります。ただ、所管庁に報告した場合、先ほど言いました黒マル1の事業者に対する行政措置、処分等を見ており、機械的に処分されることを見ていますので、黒マル2の事業者の場合には事実関係の調査には、やる必要はあると思っていても、余り積極的に動かない。あるいは所管庁に対する報告も控えて問題解決を先送りする傾向にある。例えば、よく聞かれるのが、ソフトランディングでいくといった、何か訳の分からない解決方法を提案されることになります。要するに、状況を見ながら、周りが動くのだったらやろうというような形で、問題の解決を先送りしてしまう。

3)に行きます。今、申し上げました事業者側の黒マル1のタイプ、黒マル2のタイプ、黒マル3のタイプの行動パターンを前提とした場合の行政効率はどうなるかというと、まずマル1に書きました現状、黒マル2と3の事業者の問題行為を行政が見つけ出して是正を求めることはかなり困難だろうと思います。仮にこの状況を放置すれば、消費者利益の保護・増進にはつながらない。また、行政が積極的に問題を発見・指導・是正するには、また前の話に戻りますけれども、投入する行政資源を更に増やさなければいけない。

もしそれができないと、マル2に書きましたけれども、消費者側の利益保護の問題だけではなくて、事業者間の不公正も招くことになる。黒マル2と3の事業者は、内部管理コストを低く抑えているわけですから、黒マル1の事業者よりも競争上優位に立つという意味で、不公正になる。

マル3に書きましたけれども、起こり得る更なる深刻な問題というのは、黒マル2と3の事業者との激しいコスト競争にさらされているわけですね。その中で、黒マル1の事業者は消費者対応部門とか法務部門、品質、監査などの担当部がこれまで一生懸命努力しているわけですけれども、そういった担当部の努力にもかかわらず、社内の圧力、別のところからの圧力でやがて内部管理の体制は緩んで、手続の軽視とか所管庁報告の軽視が起こってくる。

最後に、これは主観的な印象なのですけれども、大手企業の検査データ改ざんなどがかなりの数続いていますが、この背景の一つにもこういったことがあるのではないかと思っています。

マル4に書きましたけれども、先ほど言いました黒マル23事業者との不公正な競争状態が放置されると、更なる深刻な問題が起こると。少なくとも黒マル1の事業者からの報告もなくなる。そうなれば、行政のパフォーマンスは更に悪化する可能性がある。

そこで、4)に行きますけれども、消費者行政の効率を高めるための措置は、内部管理体制を整備すること、あるいは問題を迅速に報告することに事業者が大きなメリットを感ずるような仕組みを構築・公表する必要があるのではないかということです。

マル2に書きましたけれども、そうした仕組みができれば、事業者は行政に対しより協力的な行動をとる。協力的な行動を取るというのは、4ページに書きましたけれども、大きく分けると4つでして、自主的に報告する、調査に全面的に協力する、責任を早い段階で受け入れる、再発防止の体制を整備する、こういう協力が得られるということです。

マル3に書きました事業者の協力を評価する仕組みが、確かにこれは動いているということが見えてくれば、黒マル2の事業者も、さらには黒マル3の事業者も協力的な行動を取るようになると思います。

マル4に書きましたけれども、そうすることで行政に投入する資源はある意味で節約できるわけですね。それが節約できるのであれば、もっと有効活用する方法がある。例えば、消費者団体の育成に充てるとか、消費者教育に充てるとか、さらには、これは一番重要な問題でしょうけれども黒マル4の事業者あるいは黒マル5の集団の捜査・摘発にこの資源を回すということができるのではないかと。

若干話はずれるのですけれども、いろいろな法規制、法改正をやろうと思っても、反対の意見があって、そこから先になかなか進まないことが多いわけですが、その理由はこういうことなのかなということを5)に整理してみました。

問題を起こす事業者というのは、大体黒マル4の事業者、あるいはときに黒マル3の事業者だろうと。消費者団体などは、黒マル3と4の事業者がいろいろな問題を起こすので、取り締まるために規制強化を求めてくると。当然これは強化しないわけにはいきません。ただ、そこで強化しても、ターゲットとされる黒マル3と4の事業者は、実は規制の強化というのはそれほどおそれていない。なぜかというと、そんな動きに対してほとんど関心を持っていないからです。

ただし、マル3に書きましたけれども、こういう規制の強化が始まると、先ほど言いました黒マル1の事業者、黒マル2の事業者はそれに対応しようとしてコストをかけるわけです。黒マル3と4の事業者が対応しないのとは対照的です。

このため、マル4に書きましたけれども、法改正の議論に参加してくるのは、およそ声をかけてきてくださるのは黒マル1の事業者です。その事業者は、自分たちの更なるコスト負担ということになりますから、規制強化に反対する。無理を通して規制強化して、これが通ったとしてどうなるかというと、多くの場合、今言いましたように、黒マル3と4の事業者の行動はそのまま放置される可能性が高いということです。

マル5は結論、繰り返しになりますけれども、コンプライアンス体制を定着させるための仕組みに知恵が必要ということで、黒マル1と2の事業者がメリットを感じられるもの、黒マル3と4の事業者についてはデメリットだということが感じられるような仕組みを作ることではないですかと、冒頭申し上げましたことの背景にある考え方でございます。

その後のⅣ.を見ていただきたいのですけれども、行政処分ガイドラインの導入可能性はあり得るのかということです。

まず、1)に書きました。これはアメリカの連邦量刑ガイドラインの話ですけれども、アメリカでは「組織に関する連邦量刑ガイドライン」というのが1991年に施行されていまして、『量刑ガイドライン』の中の第8章になります。その背景なのですけれども、何でこんなものができたかといいますと、90年代初頭、連邦裁判所が下す量刑にかなり裁判官による恣意、裁量の幅が大きく働き、一貫性が見られなかった。だから、公正さを欠くということで米国議会が量刑委員会というものを組織して、そこの委員会で量刑にある程度の合理性が与えられるような、一貫性が与えられるような仕組みを作るべきという議論があって、連邦量刑ガイドラインができ上がっております。

最初に個人に対する量刑ガイドラインができまして、その後、先ほど言いました組織に関する量刑ガイドラインというのができます。

このガイドラインの基本的な考え方ですけれども、マル4に書きました。罰金額などを決めるときの算定手続を明確にして、それを公表してしまうということなのですね。その計算式ですけれども、犯罪行為があった場合のそれぞれの基準罰金額をあらかじめ決めておいて、それに対して有責点数というのを掛け合わせます。有責点数というのは1から10までの幅があって、それぞれ1から10のところに一定の乗数を割り当てています。0.何ぼとかですね。それで掛けてやるわけです。問題といいますか、我々が一番注意を払わなければいけないところは、この有責点数をどうやって決めるのかということですけれども、代表的な要因は以下に書いたようなことです。

まず、不正に関与した人物がどういう職位の人かと。簡単に言うと、上の職位の人が関わった場合には有責点数が上がるということです。4ページから5ページのところに書きました。要するに、人数に応じて、自分の部下がどれくらいいるのかということで、そのポジションの人が上の人か下の人かということが分かりますので。

マル2に書きましたけれども、過去に同様の不正はなかったかというのも、10年、5年とか3年とかそれぞれ時間を区切って、有責点数が上がるのは、例えば過去3年ぐらいのところは上がりますね。5年、10年になると若干下がるということ。

マル3に書きましたけれども、不正を意図的に隠そうとしなかったかと、捜査妨害、司法妨害があったかどうかで評価します。

マル4は、不正行為を発見した後、迅速に報告したかと。

マル5は、当局の捜査に協力的であったかと。こういった事業者側の問題があったときの対応行動を見る。つまり、プロセスを評価するという話と、それからマル6に書いたのは、プロセスというよりも体制そのものの評価ということです。有効な倫理コンプライアンスのプログラムがあったかというところで、それも評価の対象にします。

中身は3)に書きましたけれども、コンプライアンスに関する基準をきちんと設けているかと。それに従って社内の職員が行動するような手続が確立されているかと。

あるいはマル2に書きましたけれども、これに関する責任者を置いているかと。責任者は役員以上であること。

マル3に書きましたけれども、そもそも不正に荷担するリスクを持ったような人物に権限を与えない仕組みを設けているかということです。

マル4は、教育の参加を義務付けているか。

マル5は、モニタリングの仕組みがあるか、あるいは通報できる仕組み、これは公益通報の仕組みということですけれども、ヘルプラインというものがあるかと。

それから、そもそも社内にきちんとした賞罰の仕組みがあるかということです。

マル7は、若干プロセスに関わるのですけれども、発見した後に再発防止の措置をきちんと講じたかと。これらを有責点数5点から始めて、上に上がったり、下に下がったりというような仕組みを作ることで、めり張りのあるガイドラインを公表したということです。

最終的な罰金額はどうなるかというのを4)に書きました。これは最低額を1とした場合、最大はその80倍になることを示しています。かなりめり張りがはっきりしている。金額で言いますと、例えば1,000万ドルの基準罰金額であれば、最大はその4倍で、最低は50万ドルになるということです。

これによってアメリカがどう変わったかといいますと、アメリカ企業のコンプライアンス体制整備は大きく進展しました。大企業は当然ですけれども、中規模の会社も相当こういう取組を進めてまいりました。それから、これは司法省とかSECが言っていることですが、行政のパフォーマンスも大幅に改善されたということです。行政機関による捜査については、かなり合理的に捜査を進めることができるようになったと。裁判所における求刑においてペナルティがどれくらいになるかを事前に算出し、これを被告企業などに示すことができるようになったからです。もちろん、多くの場合、和解ということで決着しますが。

5)に参ります。アメリカの話は量刑、刑事罰の話なのですけれども、私はこういう印象を持っておりまして、アメリカの社会においては、市場と社会の公正さを担保・実現する制度として司法システムが十分基本的なインフラになっている。そういう中で量刑ガイドラインを導入したというのはかなり合理的なアプローチだったのではないかと思います。

日本についても司法の役割は非常に重要かと思いますけれども、ある意味で、日本の強みと言えるかもしれませんが、行政組織に対する国民の信頼は、非常に厚いものあると思っておりまして、それから、行政が動くほうがかなり迅速に物事を解決できますし、しかも、産業界も比較的行政の指示することについてはそれを受け入れる傾向もあると思いますので、行政処分に関して類似するような、アメリカのものと似たようなものを導入するのは合理的ではないかと思っています。

マル3に書きましたけれども、行政処分における恣意的運用という話ですが、そもそもそういうガイドがないほうが恣意的になってしまうのではないかと私は思うのです。もちろん、今までそれで争われたことはなかなかないのでしょうけれども。いずれにせよ、このときにはこういう処分を行いますということが明確に示されているほうが、恣意性を排除することになると思っております。

6ページのⅤ.に参ります。こういうものを導入するということですけれども、1)に書きましたが、冒頭申し上げましたように、行政組織全体に関して適用できる「処分ガイド」を作るというのは、今のところ非現実的な話です。

マル1に書きましたように、こういう議論は15年前もありましたけれども、小さな政府を作って事後チェック機能を働かせるのだといったところで、この2つは相矛盾することであって、小さな政府であれば事業者側の協力を引き出すしかないと。そういう意味で、連邦量刑ガイドライン的な仕組みを考える必要があるという議論があったわけですけれども、具体的に、その後、議論は進まなかった。

進まなかった理由というのは、今、考えてみれば、行政組織全体の話になってくるわけですね。行政処分に関するガイドをどう作るかと。こういう野心的なことをやろうとしても、これはかなり無理があるということです。

ですから、2)に書きましたけれども、まずは消費者行政の分野においてこういうガイドの導入を検討してみてはいかがかと。この処分ガイドの発想、連邦量刑ガイドラインのような発想と親和性を持つ分野というのは課徴金制度にあるだろうと。そこに絡めるべきだと思っています。

消費者行政の分野において課徴金制度があるといえば、景品表示法ということになるかと思います。これも冒頭に申し上げましたけれども、既に景表法の中には、自主申告については課徴金を2分の1にするという規定がありますし、返金実施については、実施した場合には課徴金を減額するという手続を用意しているわけです。

この2つがうまく機能しているかということですけれども、現行、景品表示法においては2つの目的に余り貢献していないのではないかと思っています。2つの目的とは何かというと、行政パフォーマンスを改善するということについて、余り貢献していない。それから、事業者による内部管理体制整備を促す、あるいはそれに基づく行動を促すということ。この2つの目的を促すような方向で貢献しているかというと、現行景表法ではそれは十分ではないと思っています。

理由なのですけれども、マル3に書きました。基本的に課徴金を課す場合は、評価の仕方はAll or nothingでやっている。つまり、知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を怠った者でない場合には、課徴金納付命令を出すことができないということになっているのです。ですから、どちらなのだということを判断する。事業者側は、知らなかったこと、あるいは注意を払ったこと、怠ることはなかったということを主張するだけで、どちらに当たるのかということを判断してもらう。知らなかった者ということになれば、課徴金は課さないというイチ・ゼロで判断していく形になっているからです。

したがいまして、行政が確認する事項というのは、正常な商慣習に照らして必要とされる注意を払っていたかを確認すること。あるいはもう一つ、管理措置指針というのがあって、こういう体制を敷いていたかどうかということを確認して、知らなかった者か、あるいは相当の注意を払った者かどうかということの判断材料としているわけです。

ですから、いろいろ項目はあるのですけれども、7ページに参りますが、この評価の仕組みは結局イチ・ゼロで判断しているということです。先ほどの自主申告の話は別として、協力的な企業であろうと、非協力的な企業であろうと、基本的にあった行為に対して同じ処分で臨むというのが今の景表法の基本の運用になっています。

マル7に書きましたけれども、現行の仕組みでは不十分と。どうしてかというと、先ほど言いましたように、事業者側の協力は十分に引き出せないでいる。それから、悪質な事業者に対する抑止効果は小さいということです。

4)事業者の協力を引き出すために、例えば考えられる方法です。これで是非ともということではないのですけれども、具体的なものを示さないとなかなか議論が進まないので、考えられる方法です。現行、問題があった商品の売上げの3%に対して課徴金をかけるということになっていますけれども、3%を基準にして上下それぞれ2%広げてみる。1から5%というふうにしてみる。

マル2に書きましたけれども、最初にプロセス評価をやる。自主申告。これは社内の監査で問題を把握した場合とか、あるいは内部通報の仕組みで、社内の通報窓口で問題を発見して自主申告があった場合の評価を行う。ですから、外側から、例えばマスコミや行政機関から問合せを受けてというのは評価しない、この辺はいろいろな工夫ができると思うのです。それから調査協力。調査全体を通じて協力的であったかと。あるいは責任を早い段階で受け入れたかどうかという、プロセス評価を最初にやって、そのプロセス評価のところでどれか1つでもイエスがあれば、それでは体制の評価を行おうということで、体制評価を追加的に入れるという方法があるのではないかと思うのです。

例えば、先ほど言いました管理措置指針というのは、既にこれは表示対策課のほうで用意されているわけですから、それを評価のメルクマールにするという方法もありますし、あるいは消費者志向経営でかなり具体的な要件を提示しているわけですね。ガバナンスのところから、あるいはお客様の声を受け付ける窓口、それを受けたら関係部署との連携とか、いろいろなアングルでの項目があるわけで、これを体制評価に入れるという方法もあるのではないかと思います。

最後に過去の経歴評価というのは、例えば2年前に同じようなことがあったとか、5年前、10年前と、これも評価の対象として入れていく。それでもって3%から上下どちらにでも動くという、あるいは0から6%でも構わないのですけれども、関係者の方々が納得するところの幅を設けるというのは、議論する価値があると思います。

5)と6)は、今日参考資料でついておりますけれども、既に消費者委員会のほうで中間報告と答申を行っておりまして、同じような議論がされてきたと。5)のところで言いますと、これは中間報告です。故意の違反行為とか再度の違反行為、公益通報のもみ消しなどがあった場合には加算すべきだと、自主申告があった場合には減算、減免があっていいだろうと。あるいは自主的な返金とか寄附を行った場合には減算、減免があっていいのではないかという意見。それから、景表法というのは広く適用される法律ですので、マーケットに与えるインパクトは非常に大きいと思いますので、裁量は極力排除されるべきという指摘を行っております。

ここで言う裁量が何を意味するのかということですけれども、現在、裁量が働くのは、知らなかったのか、知っていたのか、あるいは十分な注意を払ったのかどうかという、そこの判断だけの話になっているわけで、そこにもある意味では裁量が働いているわけですね。ですから、先ほどの処分ガイドのようなものを設けて裁量幅を小さくする必要があるのではないかと思います。

6)は答申です。同じような指摘を繰り返しております。6)の内容については、同じような内容なのですけれども、最終的にマル4に書きました。こういうところを議論すべきだということを、いろいろ重要な点が指摘されたわけですが、結局時間切れとなって、答申の中で指摘された内容、特に処分ガイドに関わる意見は、法制度の中には組み込まれていなかったというのが現状かと思います。

7)に書きましたけれども、これは施行されてまだ2年しかたっていないので、改正の議論をするのは早いということなのですが、法改正そのものの議論よりも、今、申し上げましたような行政処分のガイドラインというようなものを作り上げていくことになると、相当時間を割かなければいけないと思うのです。ですから、将来世代の利益を考えるということが1番目。2番目は事業者間の公正な競争を促すという意味での健全市場の形成のために、できるだけ早い段階からこういうアプローチについての基本方針を固めていくべきではないかと思います。

最後、Ⅵ.に書いたことですけれども、これは大至急ということではなくて、今の制度について、こういう問題があります、というのを委員間での非公式の勉強会でやらせてもらいましたので、ここに整理させていただきました。

まず、現行の減免措置ですけれども、7ページから8ページに行きます。過去3年間に34件の課徴金納付命令が出ている。その中で自主申告は3件しかないということで、どう評価していいか分かりませんけれども、事業者側は、自主申告に関し余りメリットは感じておられないのではないかということです。

もう一つ、マル3のところに書きましたけれども、インセンティブになっていないという話と、そもそも課徴金の減免そのものよりも、レピュテーションリスクというのですか。措置命令を受けたこと、あるいは納付命令を受けたこと、この事実の公表が企業にとっては非常に重いと考えられていることです。つまり、公表される限り、事業者は、自主申告する意味というか、メリットを余り感じないのではないかとの意見も出ておりました。

それに対応する一つの方法としては、マル4に書いたことなのですけれども、不利益処分を行う場合でも、仮に先ほどの評価のところで追加的にコンプライアンス体制の評価を行って、ある程度の体制が整っていれば、早期の発見とか、調査に非常に協力的であったというようなことについて言及するのも、新たな処分の方法の1つになるのではないかと思っています。これでレピュテーションリスクは若干抑えることができますし、更に言いますと、代表訴訟のリスクも軽減できるのではないかと考えています。つまり、課徴金納付命令の一つの理由として体制が整っていなかったということになりますと、取締役は善管注意義務をきちんと果たしていなかった、そういう体制が整備できていなかったということで、損害賠償を求める株主代表訴訟が起こるリスクが出てくるわけです。ですから、体制は、合理的な水準で、整備できていたが、こういう事業プロセスの中でミスが起こった、そのために課徴金を課されたという説明を、行政側がつけることになれば、事業者側は、これを歓迎するのではないかと個人的には感じています。

2)の返金措置ですけれども、過去3年間、同じく34件中返金を行ったのは2件のみで、他のところはほとんど行っていないということです。返金を行えば課徴金の納付額はその分だけ控除されるわけですけれども、ほとんどこれを使うところはない。

マル2に書きましたけれども、返金の手間を考えれば、課徴金のほうが有利だと考えられているおそれがある。もともと課徴金制度、そもそもこういう制度を設けたのは自主的に返金をしていただきたいというところが目的であったかと思うのですけれども、それが起こらないとすると、この議論をすぐにやるべきだとは言いませんけれども、3%の基準そのものが返金をしようという行動を起こすには足りないレベルにとどまっているということになります。

これまでの公正取引委員会の動きを見ておりますと、実際に返金等が起こるところにまで徐々に基準を引き上げていって、状況を見ながらその合理的な基準を決定するというのが従来のアプローチだったかと思います。

それから、マル4に書きました。若干話は変わりますけれども、返金措置を講じていない事業者に対して、現在、特定適格消費者団体などが「今度、返金などについては、どのようにされる予定なのですか」と問合せをしているようでございます。その結果、事後的に返金を進める事業者も出てきているわけですけれども、それが本当に全体に対する返金になっているのかどうなのかを確認する方法は何もない状況です。ここに一つ限界があります。

それから、マル5に書きましたけれども、適格消費者団体がこのように返金を促しているわけですけれども、その行為に対して、特定適格消費者団体に何らの見返りもないというのでしょうか。それなりの活動をやっているわけですけれども、それに対して一切活動費を負担してもらえるような仕組みにはなっていないということです。この点を考えますと、課徴金の一部をそこに還流するという考え方もあり得るのではないかと思います。

3)に書きましたけれども、対象商品の細分化問題という指摘を受けまして、なるほどなと思いました。同種製品でありながら、例えば100錠入りの健康食品が問題になったというケースを考えた場合、50錠とか30錠で売っている別のパッケージのものがあった場合、それぞれのパッケージごとで最低基準を確認するわけです。つまり、規模基準として、課徴金額が150万円以下かどうかを確認するわけですから、販売価格が安いパッケージの商品については、同じ問題商品でありながら、課徴金納付命令の対象から外れてしまうという問題が起こっています。

ですから、例えば先ほどの課徴金の幅を1%から5%にすると、これまでは売上げ5,000万円以上しか対象にならなかったわけですけれども、仮にこういう幅を設ければ、3,000万円ぐらいまで課徴金納付命令の対象に入ることになります。もちろん別なアプローチもあるのでしょうけれども、課徴金額に幅をもたせることで、細分化問題にもある程度まで対応できることになります。

4)は消費者委員会の答申の最後のところに書いた議論で、それは採用されることはなかった話ですけれども、課徴金を消費者行政のために活用することに、一定の合理性があるのではないかということです。消費者行政にこれを使うべきではないという当時の議論ですけれども、間接的に聞いたことですが、特定財源を作るというのは、政府が進める方向に逆行するということだったそうです。しかし、例えば、現在、起こっていることですが、消費税の増税について、政府は使途を明確にしようとしています。社会保障関連のところに充てるという目的を明確にしようとしています。

マル2に書いたことですけれども、特定財源はよろしくないということなのですが、大体これが一般財源化するというのは、当初の目的がおよそ達成された場合に一般財源に移行されるという話になっているはずです。そうすると、消費者行政についてまだ発展途上にあり、体制整備はほとんど進んでいません。したがって、「特定財源になるからいけない」という理由で持って、課徴金の活用可能性を否定するのは、かなり無理があると感じています。

マル3に書きましたけれども、消費者個々人が特定できなくて、被害者個々人を特定できなくて返金できない場合。この場合というのはたびたび起こってくるわけですから、この回収した課徴金については消費者全体の利益のために使うべきではないかと思います。こういう議論をもう一度改めてやっていいのではないかということを感じております。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

高委員長からは、事業者の取組を促進する仕組み作りについて御報告を改めていただきました。最初のところは、事業者の取組を促進するということの重要性、必要性について改めて御指摘をいただいたところであります。その中で、消費者行政に対する予算あるいは人を確保し、あるいは増やすということは、直ちには困難だからという御発言がありましたが、これについては、高委員長御自身もおっしゃったように、それ自体課題であり、検討しなくていいというわけではありません。ただ、これは別の検討事項だということで、このワーキングでは、まずできるだけ行政コストを上げずに考えられる方策ということで、事業者の取組を促す仕組みについてお話しいただいたという趣旨と理解しました。

それから、2ページ以降のところで、事業者といっても様々な事業者があるということでお話をいただきました。4ページ辺りにも書かれていますように、従来の個別法の改正においても、あるルールを作っても、ターゲットとしたい事業者にはうまく効かず、その一方で、ルールを守らなければいけないという意識の高い事業者のほうにコストを増大させるというような、言わば一種のミスマッチ的な現象が起こってきたところも御指摘いただきました。その上で、事業者の取組を促す仕組みとして、真面目に取り組もうとする事業者にメリットが感じられ、そうではない事業者にはその取組をしないことのデメリットを感じさせる。そういう仕組み作りが必要だということでお話をいただいたところです。

さらに、その後のところは行政処分のガイドラインの導入可能性ということで、より具体的なお話をいただきましたけれども、具体的には景表法を念頭に置きながら、プロセスと体制の両面からこれを評価するという仕組みが必要なのではないかということでお話をいただきました。

もちろん、現在もガイドライン、処分ガイドというものが導入されており、そこに一定の基準が示されてはいます。そして、行政処分においては明確さ、公正さが重要だということではありましょう。けれども、それは確保しながらも、コンプライアンスを促すような方向で、より柔軟な基準の導入が必要だというご提言があったものと思います。

今日のお話のうち、特に後半では景表法の課徴金制度を中心にお話しいただいたのですが、これは景表法の課徴金ということに恐らくとどまらず、将来的には場合によっては他の行政処分等について、あるいは課徴金は今、景表法にしかありませんが、他の法律にもこれが導入されるという可能性もありますし、そういう意味では、景表法が取っかかりですけれども、景表法に限定されず、より広がりのある今後の方向性について考えるというお話であったと思います。

なお、7ページで言及されました過去の消費者委員会からの中間整理あるいは答申につきましては、本日の参考資料1と2において付けられているところですので、そちらも御覧いただければと思います。

それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。いかがでしょうか。

それでは、池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

本当に魅力的な提案で、しかも、細部も含めてしっかり検討されているすばらしい分析だと感じました。そのことを前提に、更に肉付けというか、どういう形で提示していくかということの前提として、幾つか、本筋ではないところも含めて意見を述べたいと思います。

2ページの、今後なかなか人と予算を際限なく増やしていくことは難しい。まさしくそうなのですが、喫緊の課題としてはむしろ人と予算が不足していて、特に地方自治体の場合には逼迫して、本来やるべき課題ができていないという問題があるので、両方とも同時並行でやっていく。まずこちらの問題をやって、その後、執行体制ということではない、そちらもより重要だということを念のため申し上げておきたいと思います。

というのが、消費者庁ができる前に10年間、平成10年から20年というスパンで取ったデータが消費者庁の以前の資料にあるのですが、消費者行政担当職員が、約1万人が5,600人と45%減になっているというのがあるのです。同じ10年間で地方自治体の一般職行政職員が11%減であった間に45%減という正に半減に近い状態、崩壊に近い状態。それじゃいかんということで何とかしようというのが例の交付金などに関係するのですが、交付金は特定財源で、職員を増やすということに直接は使えないので、実は消費者庁ができた以降の9年くらいの間で職員は全く増えていない。微増微減で横ばいなのですね。

だから、そういった消費者行政の職員、あるいは独自予算を増やすという課題は、ここでの議論というよりは別途行うことですが、そこの切実さということも再確認した上で、行政の役割は喫緊の課題としてもっと強化すべきだけれども、際限なく増やしていくということは将来像、5年先、10年先を見据えた消費者行政の在り方としては、やはり困難な課題になってくる。だとすると、一方では消費者団体に権限を与える、力を与えること、他方で事業者の自主的取組を促進するという位置関係になるのかと思いました。それがまず2ページに関連するところです。

それから、2ページの末から3ページに、事業者を5つに分類するという、これまでなかなかこういう議論を明示的にした議論はなかったので、これは非常に貴重な分析の手法かなと感心しました。ただ、私もいろいろな消費者問題の事件に関連して相手方事業者の法務部の方と話をするというようなことの経験からすると、この黒マル1と2と3、あるいは黒マル1から5とある中でも、これはもちろん高委員長も理解された上でのあえての分類だと思うのですが、実は連続的なのですね。例えば黒マル1と2で言うと、企業の中の法務部門とか顧客対応部門があるところ、中堅以上のところは大体あるのですね。ただ、やはり企業としては、営業利益をきちんと確保していかなければいけない、売上を達成しなければいけないという、企業としての持続という大目標があるために、どうしても法務部門なり顧客対応部門の声が小さくなって、かき消されてしまう。そこのせめぎ合いでいろいろ大変なのですよと。企業の中にはそういう問題意識を持っている人もいるという意味では、黒マル1と2辺りは本当に連続的、あるいは大企業で体制は整っているけれども機能しないという意味では、純粋な意味での黒マル1の機能までしているというところは、実は我が国の現在の大企業でもむしろ少なくて、ほとんどが黒マル2に評価されてしまう。この辺りは公益通報者保護法の見直しで内部の統制、あるいは相談窓口を整備して、そこを機能させていくという話にもつながっていくのだろうと思います。

同じことは黒マル3と4辺りのところも、全く最初から最後まで違法にもうけて逃げてやれということをもくろんでやっている黒マル5は論外としても、中間層から無関心層というところも、営業利益を上げるということと、それで本当にいいのかなという層が若干ある。そういう中で、黒マル1から4辺りの全体を通じて、自主的改善の芽を広げていくという意味で、正にこれは委員長が提案された自主的取組を評価する。あるいは違う言い方をすると、違法収益は剥奪されることになるのだぞと。結果として違法収益剥奪の制度をどう作るかということとは別に、そうならないための自主的な体制整備あるいは機能する体制整備をするためにどうしていくかというのが、今日提案された非常にきめ細かな提案だろうと思います。その意味で、今回の提案は非常に魅力的なものだということ。

あと、各論的なところで幾つかありますので、後でまたお話ししますが、全体的な位置付けについての私の感想です。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

最初に御指摘のあった消費者行政のための必要な予算と人の確保が、とりわけ地方行政にとって重要な課題であるということについては、私もそう思っておりますし、恐らく高委員長もそのように認識していらっしゃるのではないかと思いますが、高委員長のほうから何かございましたら、お願いします。

○高委員長 いや、もうごもっともで、そのとおりです。ですから、それは別途議論する必要があるかと思っています。

ただ、それとの関連で、1つ知恵を出したらいいのが、今日最後に申し上げました課徴金の使い方、使途というもので、もっとここに融通性を持たすことができれば、地方の消費者行政等にも予算を回せることになる、その可能性が出てくると思っています。ですから、最後のところで申し上げたことですが、今後、課徴金として入ってきたものを、地方自治体の消費者行政も含め、これを消費者全体の利益のために使うべきと考えており、そういう思いで本日お話ししました。

もう一つ、このように分けているが、それは連続的だと。おっしゃるとおりで、それらは連続的なものと解釈すべきだと考えます。

それから、池本座長代理がおっしゃったとおり、会社の中で法務の担当者とか消費者対応の部署の方は一生懸命仕事をされているのですね。ところが、そういう取組そのものが評価されないと、その人たちの声も会社の中で小さくなっていきます。それゆえ、行政処分ガイドのようなものを作成し、公表すると、それが、それぞれの会社の担当部の方々を後ろから押してあげることになる、背中を押してあげることにもなる、と私は思っています。ですから、ご指摘の点は、全く同感でございます。

○鹿野座長 今、全体的なことについて池本座長代理から御意見等がありましたけれども、他に全体的なところについてはいかがでしょうか。池本座長代理からは、個別的なところについてはさらに言いたいところもあるけれどもということでしたが、まず、全体についてはよろしいですか。

では、山本委員、お願いいたします。

○山本委員 全体的なことですけれども、行政処分の際にマクロの視点と申しますが、つまりコンプライアンス体制が企業内に構築をされていて、例えばそれが機能したために違法行為が早期に発見されたような場合について処分を軽減するという形で、企業内のコンプライアンス体制と行政処分とを結び付けていくという考え方は、私は十分あり得るだろうと思いますし、社会全体におけるコストを軽減するという意味でも非常に有効なのではないか。行政資源を節約するという面もあるでしょうし、社会全体において早期に違法行為が発見されるというメリットもあるわけですから、それは十分あり得るだろうと思います。

そして、こういった考え方が全ての行政処分について当てはまるわけではないけれども、課徴金に関しては、本来は非常によく当てはまるのではないかと思います。つまり、具体的な問題状況に対して、あるいは具体的な危険がある状況に対応するといったような行政処分ですと、なかなかこれは調整することが難しいということがあります。

例えば、違法状態に対する是正命令といったものについては恐らく調整をすることが難しいのでしょうけれども、例えば課徴金であるとか、あるいは非常に重大な処分としては許認可の取消しであるとか、そういったものについて、こういう考え方を導入することは十分あり得るだろうと。ただ、許認可の取消しになりますと、これはかなり極端な話になりますので、余り実効性がないといいますか、使えないと思いますけれども、課徴金は本来、そういう意味では非常に使いやすいのではないかと思います。

他方で、先ほどお話がありましたように、課徴金の制度自体が日本では、だんだん変わってきているとはいっても、かなり固い制度として考えられているところが、諸外国と比べても非常に顕著なところがあって、そこのところがもう一つの壁になってしまっている。それが今日の後半の話だったのではないかと思います。

とりあえず、そのようなことです。

○鹿野座長 ありがとうございました。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 私も高委員長の御提案に基本的に賛成しています。

具体的に新しい制度を作っていくときの方法論としても、課徴金というところに着目をして、全体としての考え方、思想の問題に関わってくるわけですけれども、そこを具体的な方法で改善していく。将来的には、先ほど座長のお話や今の山本委員のお話にもありましたけれども、他のいろいろな処分の問題との関係とか、基本的な処分のガイドラインについての在り方の問題は議論する必要があると思いますが、しかし、一番なじむところでしっかりそういう仕組みを導入するということが消費者行政全体にとってもプラスになる可能性があると思います。

それから、財源論の問題ですが、これも財政当局が特別の考え方を持っていて、財政法上の制約があってこういうものは使えないとかいうふうに決まっているわけではないと思うのです。立法措置があれば、財源としては、十分広く使うことも、消費者全体のために使うことも可能ではないかと私は個人的に思っております。立法に至るまではいろいろ議論があると思いますけれども、そこは立法府においてそういうことについての合意ができれば、財源問題についても、最後に委員長がお書きになっている部分ですけれども、十分現実性があるのではないかと。そういう意味で、そこについても議論しておくということが非常に重要ではないかと思っております。

○鹿野座長 ありがとうございました。

全般的な方向性については御支持いただきました。また、特に山本委員からは、マクロな視点からもこのような考え方にとても意味があるという御指摘もいただいたところです。

それでは、個別的なところについて議論を進めたいと思いますが、いかがでしょうか。

池本座長代理。

○池本座長代理 後ろのほうの7ページ、これは賛成意見ですが、よくこの調整をしていく、特に体制整備があるかないかで調整していくという議論をすると、形式的に体制を整えておけば軽くなるというふうに脱法的に使われるのではないかという批判的な意見が出てくることについて、4)のところでプロセス評価と体制評価を分けておられるところは、恐らくそこを配慮された趣旨かなと。後で確認的にお伺いしたいところですが、ちゃんと今回のこの問題について社内で把握し、申告するなり、あるいは調査全体について協力をする。そういう動きが今回の違反行為についてもあったというときに、それが評価され、なおかつそれがふだんからの体制もあるとなれば、軽減理由としてもしっかり評価されるという書き分けをしておられるのかなと。

そうでないと、例えば公益通報窓口もあるけれども、機能していなくて問題が大きくなるということがこの間、出てきているので、そこに対する課題を意識しておられるのではないかと感じました。その辺の点を確認したい点が1点です。

それから、5)あるいは次のページにつながる課徴金を有効活用できないかということとの関係で、特に自主的返金を公的な寄附、例えば消費者被害防止などの活動への寄附に使えないかというのは、たしか景表法に課徴金を入れるときに、国民生活センターでプールして使えないかという議論が若干出たと思うのです。ただ、そのときは時間が余りなかったこともあって、そのまま煮詰まらないでおしまいになったかと思うのですが、特に自主的返金、損害を受けた消費者への還付、返金を優先するということからすると、何でもかんでもどこかへ一定額を寄附したから免除されるということは、やはりちょっと制度としてはいびつになっていく。

だとすると、例えば会員であるとか契約先、顧客がちゃんと住所、連絡先が分かっている場合はそちらを原則にし、店舗の取引で購入者が把握できないと。だからといって、領収書とか袋とかを持ってきたら返金しますといっても、何カ月の前の人は残しているわけもないので、結局返金のしようがない。かといって、申出があれば返金しますというと、SNSで拡散して、誰でも言えばいいという、これも困ると。

そのようなときに現実の売上高を勘案して一定額を、要するに自主的返金はしたいけれども、あるいは本当に資料がある人は返金するけれども、資料も何もなくて返金対応ができないところを補完的な制度として適切な先への寄附を課徴金の減免事由として考慮する。そんな感じで位置付けておくと、議論としてしっかり返金原則ということともかみ合うのかなと感じました。その辺りの制度設計論について、何かまた補足御意見があればお伺いしたいと思います。

○鹿野座長 高委員長、お願いします。

○高委員長 ありがとうございます。

1点目の7ページのプロセス評価を行った上で体制の評価を行うという形にしたのは、正に御指摘いただいたとおりで、体制評価の話だけを出すと、形さえあればいいのだろうという話になりかねないので、プロセス評価を最初にやるべきだと。そもそも自主申告とか調査協力、責任を早く受容するという行動を取る会社は、大体その後ろで体制ができているものなのですね。ですから、まず責任ある対応があったかどうかというプロセスを見た上で、さらに、その体制がきちんと動いていたかどうかを評価してあげるということです。私はこういう順番でやるのが合理的だと思っています。

さらに、先ほど少しだけ触れたのですけれども、体制そのものがある程度機能していたと評価するというのは、代表訴訟が起こることはないとはあまりないと思いますけれども、これは訴訟を回避する意味で、経営者側にしてみれば大きなメリットになるはずです。任務懈怠がなかったということになりますので、そういう意味で、体制評価を行うことの意義は大きく、2番目に持ってきたわけです。そのように理解していただき、ありがとうございます。

もう一つの返金する対象者が特定できない場合の補完的な措置として、寄附ということもあるのではないかという質問ですが、この議論は正に答申の中で述べられていることでした。ただ、答申でこう書いていたにもかかわらず、そういった制度ができなかったことを考えれば、もう一度同じ議論をぶり返して、寄附でもって、課徴金から免除の対象にするという議論は、やはり、難しいかなと思っています。ですから、むしろ、真正面から、課徴金そのものを消費者行政に充てられるようにしていく、特定財源にするという意味ではなく、その一部を消費者行政に充てられるというようにしていく、そうした議論を始めてもよいのではないかと思っています。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

私も、この課徴金を導入するときの専門調査会に入っていたのですが、いろいろな問題点は既に当時から出されていたところではありますけれども、何分にも消費者法分野においてこのような課徴金制度を導入するということ、それ自体が画期的だということでありまして、まずは第一歩を進める、課徴金の導入にこぎ着けることで時間的にもかなりいっぱいで、その他、御指摘をいただいていた点については、残された課題と整理されたように私自身は認識しているところです。

この改正については、改めて課徴金制度の導入に関する改正法が施行された後の状況等もにらみながら考えるということになろうかと思いますけれども、使途問題というのは非常に重要です。しかも、先ほどから御指摘があったように、現在の仕組みであると、自主返金をしたいという場合でも、それが困難な場合があります。顧客が、例えば自動車の販売における顧客とかであれば顧客リストがかなりしっかりあると思いますし、あるいは通信販売などの場合にも、その顧客に対する連絡もつきやすいのだろうとは思いますが、その他のいろいろな販売形態の中には、誰がその対象者なのかを確認することが難しいということもあります。

レピュテーションの問題もあるので、事業者のほうとしては、自主返金はできればしたいのだけれども、それが実際には困難だというようなところをも受け止め、どのような形でうまく事業者の積極的な取組につなげていくのか。あるいは一方で不当な利益が残るということになるとすると、それをどういう形で消費者の利益に還元していくのかということについて、改めて検討する必要があるのではないかと私も思っているところです。

他に御意見等はございませんでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 先ほどの減免の問題の中に自主的返金を公的な寄附へ回すというのはどうか。これは前の制度導入のときにも一応議論されたけれども、実現できなかったので、それよりは課徴金そのものの使途の議論で進めていくことがどうかという提案だという趣旨でしたが、私は、やはり両方議論する必要があるのかなと思います。前のときの調査会そのものには、私は関わっていたわけではないですが、その後、当時の報告を聞いたり、あるいは読んだりしていても、時間切れで十分議論ができていなかったというのが率直なところかなと思います。

その意味で、当時はそもそも課徴金制度がこの分野には全く入っていなかったわけですから、まず導入してということでしたけれども、制度が実現できた中で、これを本当に消費者被害防止・救済の全体の中で機能していく制度にするために、一方では事業者による自主的返金ということを制度の中にも積極的に位置付けることの一つの表れとして、返金不能な場合に一定の寄附によってそれに代えるという制度を入れる。他方で、課徴金そのものが将来の消費者被害防止に機能する形で一定のものを使う。国の制度として特定財源を未来永劫作るものではないよというのをどう明示的に出すのかという工夫のしどころがあると思うのですけれども、私はやはり両方とも何とか提案できればなと思います。

○鹿野座長 高委員長、何かございますか。

○高委員長 それに反対するわけではありません。そういうものができるなら、是非やりたい。ただ、どこまでやれるかなと、ちょっと弱気になっているところです。

これまでも返金の制度はあったわけですし、あるいは寄附をできる機関もあるわけです。実際にそうした機関を作ったこともあります。ただ、消費者運動に理解を示し、返金できない分を寄付しようという事業者はほとんど出てきませんでした。もちろん、そうした行動を取りたかったけど、やれなかったという事業者も中にはいるかもしれませんが、なかなか機能しないというのが私の印象です。

それから、寄附する先についてもどうするのかと。例えば、国民生活センターの中に独立の基金などを設けてそこに入れてもらうということも考えられるでしょうけれども、国民生活センターに入るような仕組みでは困るという人たちも必ず出てくると感じています。そういう意味で、いろいろな議論が出てきて、時間のかかる難しい課題だなと思っています。

ただ、池本座長代理がおっしゃるように、できるのだったら是非とも作りたいですね。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

それでは、山本委員、お願いします。

○山本委員 今、課徴金の話が出ましたけれども、まず、景表法に課徴金が入ったことは、それ自体として非常に意味が大きかったわけでして、私も当時、消費者委員会の委員でこの議論には参加しておりましたけれども、今ちょうど、全く別のところですが、厚生労働省の厚生科学審議会で、医薬品医療機器等法上の虚偽広告等に対する課徴金の制度を導入するべきであるといった議論をしています。そこにおいては、景表法の議論が非常に参考にされているところがありまして、これは大変意味があることであると思います。

他方で、日本の場合には課徴金の制度が一般的に入っていないものですから、個々に導入をするたびに大変な労力をかけて、その都度議論をしなくてはいけない。景表法のときもそうだったわけですけれども、本当の基本的な部分から、初めから全部議論しないといけないというところがあって、それ自体が構造的な問題です。ただ、そういっても始まりませんので、とりあえず個々の法律、景表法に関して更にバージョンアップした制度を考えていくということは非常に意味があると思いますし、それが他の分野にも波及をしていく効果は十分あるのではないかと考えています。

あと、返金措置等々の問題に関してですが、印象で申し訳ないのですけれども、当時はとにかく景表法の分野に課徴金を導入することが喫緊の課題で、スピードをもってこれをやらなくてはいけないということがあったものですから、自主返金等との関係について、十分議論をするだけの余裕が、とてもなかったと思います。先ほども話をしましたけれども、まずは課徴金の制度を入れるというだけで大変な労力がかかるわけで、それに加えてさらに返金制度等との関係をどのようにつけていって、あるいは返金制度等の制度をどのように彫琢していくかという部分までなかなか議論が回らなかったということがあります。

結果として、現在の返金制度が課徴金の制度とどのように関係をしているのかという点をもう少し議論ができたら、あるいはもう少し深い制度といいますか、工夫された制度ができ上がったのかもしれません。あるいは寄附制度との関係についても、寄附と単純に言われてしまうと、それは課徴金とどのように関係するのかということになってしまうので、ここのところも制度をかなり細かく、手続であるとか、実体要件であるとかを詰めていかないと、なかなか入れにくい制度ではないかと思います。

しかし、それを詰めていけば、入れることは十分可能ではないかとも思うのですが、当時はそこまでとても手が回らなかったと思います。

したがって、これは将来的な課題になってしまうのかもしれませんけれども、課徴金の制度と返金の制度といわゆる寄附の制度とがどのような関係に立つのかということについて、もう少し基本的な部分から議論をして、では、具体的にどういう制度設計が考えられるのかということを、すぐにやることは難しいかもしれませんが、将来的には考えていかなくてはいけないのではないかと思います。

感想程度の話になって申し訳ないのですが、以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

今、山本委員から将来の検討課題として位置付けるべきだという非常に心強い御発言をいただいたのに勢いを得てというわけでもないのですが、鹿野座長からも一言、先ほど言葉がありましたが、消費者法分野においてコンプライアンスを促進する上で、法務部門や顧客対応部門と営業部門との力関係ということで言うと、違反行為を行ったときに経済的なリスクにもつながるのだということ、それの一つの表れが課徴金というものだろうと思うのです。だとすると、表示の分野で景品表示法がありますが、取引分野についても本当は必要ではないか。取引分野というと、景表法に見合う消費者取引全般についての行政規制を伴う横断的なものというのは実は我が国にはなくて、比較的それに近い、一歩手前のものが特定商取引法で、トラブルの多発している取引形態をピックアップして作っているのが特商法です。

だとすると、これも将来の課題ということで、全部を一斉に直ちにやれという課題では決してないのですが、特定商取引法についても課徴金制度の導入を是非検討していただく必要があるのではないか。先ほど医薬品医療機器等法で既に検討が始まっているという話もありましたし、特商法でも違法行為を中間層、無関心層辺りが改善する、一段上に向かおうという動機付けとして課徴金制度の検討ということも是非将来の課題として位置付ける必要があるのだろうと思います。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 今、池本座長代理からお話がありましたが、やはりバランスから考えると、特商法等についても検討しなければいけないのではないかと。このワーキングの検討範囲というものはあると思うのですけれども、全体としてどういう体系を、どういう考え方で整理するのかと。消費者法関係についての、あるいは課徴金の問題についても、一般的なルールというのをここで定義して、その上でそれぞれの分野での検討のこれまでの蓄積もあると思いますので、それらを組み合わせていくというのが本来のこのワーキングの趣旨ですから、そういう意味でも、私もそういった点についても考慮していくことが可能であれば是非検討したいと思います。

○鹿野座長 今、課徴金制度を他の法律に導入する可能性ということも含めて考えていくべきではないかと。その際、課徴金制度というものの考え方をここで整理して、その基本的な考え方を他にも応用することができればということについて御発言がありました。

ひとつ悩ましいところではあるのですけれども、このワーキングは個別の法律について、具体的にこういうふうに改正をすべきだという答申をまとめるような場ではないのですが、一方で、やはり将来像を描くときにどうしても重要な幾つかの制度ないしその制度に関わる法律があります。課徴金に関しても、最初にも申しましたが、現在は消費者法分野で景表法が唯一これを導入している法律なので、これに即していろいろと考えていくということにはなりますけれども、ただ、それに限るものではないので、課徴金制度がどういう性質のものであって、どういう分野に対して親和的なのか。その際、課徴金制度としてどういう仕組みが、今日のテーマであるところの事業者の自主的な取組を促進するという観点からも有効な制度となり得るのかということについて、検討を更に進めたいということであります。

これについて、何か他にありますか。

池本座長代理。

○池本座長代理 何度も申し訳ありません。

4ページの行政処分のガイドライン、量刑ガイドラインを参考にしたそういったガイドラインを検討してはどうかということで、これは行政の裁量を無制約なものにするものではないことと、それから事業者に対するインセンティブを明確化するという意味で提言されています。基本的な方向性としては、これは有効なものかなと私も感じているのですが、1つだけ、現在の我が国での消費者行政の中での実情と、それから、そこをこれからどう移行していくのかという課題があるということを申し上げます。

というのが、特定商取引法の行政処分については、現在、ほとんどの国あるいは都道府県も細かい処分の基準は公表していません。消費者庁は本当に法令に書いてあるような抽象的な、こうこうこういうことを考慮して判断するというごく抽象的なことしか書いてありませんし、都道府県の中には、具体的な処分基準を公表することは脱法行為を助長するおそれがあるので公表できないということを表示して、処分基準はそもそも公表しないのだと。それは行政手続法の中でも、そういう場合には公表しなくてもいい、画一的な義務付けではないからという説明付けをしています。正にどういう事業者層を想定したか。先ほどの黒マル1から5の中の、どちらかというと黒マル4とか5に近いところを想定すると、一から十まで書いておけば、その処分を受けそうになった直前に何か手当てをするとかというふうになるのもどうかなと感じつつ、黒マル2と3の層に向けてだと、やはりある程度明確化したほうがいいのかなとも考えています。

いずれにしても、何をどう示すかというのは程度の問題なのかなとも思っています。その辺りの現在の運用との関係では悩ましい制度の考え方の問題、あるいは運用の移行の問題があるというところでちょっと申し上げておきたいと思います。

○鹿野座長 あと、細分化の問題についても高委員長から御指摘いただいたのですが、これについて何かございますか。これを導入するときには、過去の違反事業者の売上高とそこにおける利益率をもとにしてパーセンテージ、3%という課徴金のパーセントにしても、あるいは裾切りについても考えた。そのようなデータを基にしたということだったと思います。

ところが、実際にこの課徴金を課すときには、特に裾切りで問題になるのかもしれませんけれども、この事業者がどれぐらいの規模かということではなくて、たとえ非常に近い名称であっても異なるものであれば、その個別の商品についての売上げを基準に課徴金が課されるというような形になっているので、かなり多くのものについて裾切りに遭ってしまって、およそ対象にならないというような問題もあるようです。

あるいは、もともとデータがなかったということもあるかもしれませんけれども、3%という数値が果たしてよかったのかということも検討の余地があるかもしれません。、ここで3%を5%にするべきだというような具体的なところを決めるということではないのですが、基本的な考え方として、先ほど高委員長から御報告いただいたような形でコンプライアンスを促すような仕組みを考え、その一環としてパーセンテージにしても、少し柔軟で、かつ明確な仕組みを設けるべきだということは、全体の仕組みに関わる問題としてあると思います。さらにまた、細分化問題ということで現実に生じている問題もありますので、その辺についても何かもしございましたら御意見をお願いできますか。

山本委員、お願いします。

○山本委員 この問題について、もし本格的に議論しようとするともう少し細かく検討しなくてはいけないと思いますので、非常に大まかな感想だけ申し上げますと、商品ごとに区切ることに余り論理的な必然性はないのではないかという気がしていまして、筋からいえば、要するに違法性の同一性といいますか、同じような違法行為をもって一区切りにするほうが、本筋なのではないかと思うのです。

ですから、こういう運用をされていること自体、私はいささか理解できないところがあるのですが、非常に大まかな感想ですので、もう少し具体的な事例に即して検討しなくてはいけないかもしれません。

○鹿野座長 池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 意見の方向性は、今の山本委員の御発言と全く同じです。例えばということで言いますと、ある製品について、中に素材あるいは成分としてこれが入っていますよと表示しているけれども、実は入っていなかった、あるいはごく微量で全然意味のない分量だった、効果のない量しか入っていないとかですね。そうすると、それは、これこれが入っているものだ、あるいはこういう素材を使っているものだという表示と実際が違うということになると思うのです。ただ、措置命令の場合、この製品やこの製品に入っているものを不当表示だからやめなさいというときには、やはり商品を特定しないと、何と何について不当表示があったのかを示すという意味で特定は必要なのだろうと思うのですが、正に違法行為としての類型でいえば、これこれの素材が入っていないのに入っていると表示した行為が違法なわけですから、そうすると、これが入っているよといった素材に、例えばパッケージの大きさが100個入り製品と10個入り製品で違いはないわけですから、多少、パッケージや、あるいは他の成分がもう一つ加わっているかどうかはともかく、共通の違法行為は併せて考えていく。

問題は、これはもう解釈運用の中で是正、軌道修正できる話なのか、それとももうそれで固定的にやっているから何らかの制度的な措置が必要なのかという、そこは私は分からないのですが、早急に見直していただきたいポイントなのかなというような気はしています。

○鹿野座長 ありがとうございます。

パーセンテージ云々というより以前に共通の、あるいは同一の違法行為をどのように捉えるのかということも考え方を整理しなければいけないということでございました。

他に何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、ほぼ時間も参りましたので、本日の検討はここまでとさせていただきたいと思います。


≪4.閉会≫

○鹿野座長 本日の議事は以上です。

最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○坂田参事官 本日も長時間にわたりまして御議論いただき誠にありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。

以上です。

○鹿野座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)