第14回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2018年11月20日(火)14:00~15:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、山本委員
【説明者】
獨協大学法学部准教授 宗田貴行氏
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 有識者ヒアリング
    獨協大学法学部准教授 宗田貴行 氏
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○坂田参事官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第14回会合を開催いたします。

本日は、所用によりまして、樋口委員が御欠席との御連絡をいただいております。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料は、議事次第に配付資料一覧を記載しております。本日は、資料1のみとなっております。

不足の資料がございましたら、事務局へお申し付けいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、鹿野座長に以後の議事進行をお願いいたします。


≪2.有識者ヒアリング≫

○鹿野座長 おはようございます。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、消費者法分野におけるルール形成の在り方の重要な論点のうち、違法収益剥奪制度に関する検討を行いたいと思います。

検討に当たり、御意見を伺うために、本日は、参考人として、獨協大学法学部准教授の宗田貴行様にお越しいただいております。

宗田准教授の御専門分野は、経済法及び消費者法であり、特にドイツにおける集団的消費者被害救済制度や違法収益の剥奪制度などについて、集中的に御研究をしていらっしゃいます。

ドイツにおける消費者団体の役割については、当ワーキング・グループの前半の議論でもヒアリングを行ったところですが、本日は特にドイツにおける違法収益を剥奪する手続に関連して、宗田准教授からお話を伺いたいと思います。そして、宗田准教授からは、ドイツの話だけではなく、我が国において違法収益を剥奪するために活用できる制度の御紹介や法制度に対する重要な示唆をいただけるものと期待しているところです。

まずは、20分程度でお話しいただきますよう、お願いします。

○獨協大学法学部宗田准教授 御紹介にあずかりました、獨協大学の宗田と申します。本日は、お呼びいただき、ありがとうございます。

さて、早速ですけれども、まず、<ドイツ>のところから説明させていただきます。

今回は、消費者法分野の違法収益の剥奪というところでございますが、私の研究を踏まえますと、被害者の救済ということも、それを通じて違法収益の剥奪にもなるのだという見地から、まず、被害者の救済というところから見ていきたいと思います。

消費者の集団的な金銭的被害の救済としましては、①消費者団体の集合的な訴訟がございます。しかしながら、団体負担の費用が過大であることや、手続の長期化による費用の増加と請求権の時効消滅の問題等があり、これらを解消するために、本年11月1日に施行されましたムスタ確認訴訟というものがありまして、事業者が多数の消費者に対して負う一般的義務の確認という手続が、ドイツ民事訴訟法に用意されました。それだけではなくて、3つ目としましては、不正競争防止法上の消費者団体の妨害排除請求権に基づく返金請求も、被害者の救済というものとして挙げられます。さらに、こういった民事的手法だけではなくて、競争法上、独禁法上の競争制限禁止法上のカルテル庁の違法状態排除処分に基づく返金命令が認められております。これらは、いずれも被害者の救済を行うものでありますけれども、違反行為者が違反により獲得した利益を吐き出させることにもなるわけであります。

端的に違法収益を剥奪する手段としては、以下のものがあります。⑤GWB違反、それから、テレメディア法、これは要するに迷惑メールですけれども、それに加え、UWG違反の一部ですね。これは電話勧誘などの不招請勧誘です。これらについては、行政上の制裁金が認められております。非常に限定的な形で、そういった行政的な制裁金が認められているというのが、ドイツのやり方です。

これらのほか、これは民事の話ですけれども、不当表示、不当勧誘、不当約款に関しましては、後でまたゆっくり説明しますが、UWG上の消費者団体の利益剥奪請求権というものもありまして、こちらは違法収益の剥奪のための機能を有しているということになります。

上記のうち、①が、上記のように限界がございます。②が、まだ施行後間もないわけでありまして、成果は未知数ですから、今回は③以下について見ていくということになるわけであります。

次に、消費者団体の妨害排除請求権に基づく返金請求を見ていきたいと思います。まず、不当表示につきましては、違反行為者の故意・過失といった有責性の立証が難しいという問題がありました。それが妨害排除請求権の必要とされる理由の一つです。

もう一つ目としましては、従来、認められて許されてきた差止請求権というものは、将来の不作為を請求するものに尽きるということになります。要件としましては、違反のおそれがないという限り無力なのですね。さらに、不作為を求めるに尽きるわけですから、作為を求めるときには無力ということから、妨害排除請求権が必要なのだということで、ドイツにおきましては、法律上の規定で、差止請求権が規定されているところに常にそれを補完するために妨害排除請求権が別途認められていると考えることが、判例・通説になっています。

近時は、判例上、不当条項につきましても、UWG上の法違反だと考えられまして、消費者団体の妨害排除請求権に基づく返金請求の対象行為とされていますので、この妨害排除請求権に基づく場合には、一定の作為を求めることができるわけでありますから、その作為の一つとして返金請求というものができるのだというのが、近時の判例になっています。

すなわち、不当条項によって不当に支払われた状態が妨害状態だと捉えられて、その排除が返金を意味すると考えて、これが認められるということになる。返金請求が認められるということになります。もちろん個別の事例において、十分性、必要最小限という要請に応える必要があるし、さらにそれが訴訟上行使される場合であれば、特定性の要請に合致した、すなわち、申立ての特定性に合致した形で請求されるということになるわけであります。

3つ目ですけれども、GWB上の返金命令であります。こちらは、まず、説明しなければいけないのが、民法違反の不当条項は、それを含む契約が、市場支配力又は当該条項を使用する者の優越した力の発露である場合には、GWB上の市場支配的地位の濫用であると最高裁が述べております。このため、不当条項も、要するに違反排除の行政処分や、もちろんそれに基づく返金命令や、行政上の制裁金の対象にもなると考えられています。

もっとも、従来、カルテル庁は、公共料金の不当な値上げの事例で、BGB上の違法性の判断を経ずに、当該値上げをGWB上の市場支配的地位の濫用と認定して、違法状態排除の処分に基づき返金を命じてきております。このように、不当条項も、このような範囲でありますが、行政規制の対象となっているのが現状になっています。

続きまして、消費者団体の利益剥奪請求権に基づく違法収益の剥奪に入ります。従来から、UBG上の不当表示、不当勧誘、この2つにつきまして、同法上の利益剥奪請求権が認められてきました。しかし、例えば、不当表示を例に取れば、利益の算出というのは非常に困難でありまして、ここでは実体法上の信義則に基づく情報請求権というものが認められていて、それによって利益額算定のための資料の請求を行います。それが情報請求訴訟で、仮に原告サイドが勝訴したとしましても、次の話として、違法行為者が判決に従わないのですね。それで、履行強制金、間接強制金の支払いのみをするだけで、肝心の情報を提出しないという問題がありました。これでは実質原告が敗訴することになってしまうではないかという問題があったわけであります。これに対し、上記のように不当条項も、近時は、UWG上の違法性を有するとされておりますから、不当条項も利益剥奪請求権の対象となるとなっております。

そこで、近時、不当条項に対する利益剥奪請求権の事例で、高額の和解案件、勝訴案件が出てきていることが注目されます。この不当条項につきましては、先ほども不当表示の場合と違いまして、利益額の算定は比較的容易です。と申しますのは、不当条項に基づいて支払った額がそのまま利益になるということですから、算定が比較的容易ということであります。

具体例でございますが、まず1つ目としましては、和解事例からいきますと、携帯電話会社が、顧客消費者に対して、顧客の口座残高不足の場合、平均的な損害を超える額の請求をすると約款条項が書かれていて、結果として、平均的な損害額を超える額を事業者が消費者に対して請求できるという約款条項があった場合ですね。それがBGB違反だと認定されまして、それがUWG上の違反性を持ちますので、利益剥奪請求権の対象となり、1250万ユーロで和解したというケースがあります。

もう一つは、原告団体が勝訴したケースですが、携帯電話会社の顧客である消費者が、3カ月以上通話しない場合には手数料がかかるのだという不当な手数料を事業者が請求していた。そういった約款条項があって、それがBGB上違反になると、民法上違反になる。それがUWG上違法性を有する。そこで利益剥奪請求権の対象になるということで、原告、消費者センター総連盟が訴えまして、41万9000ユーロで勝訴したというケースがあり、今、最高裁で上告中です。

このように利益額の算定が困難ではない行為への適用範囲の拡大により、利益剥奪請求権の有意義な利用が見られるようになってきていると言えるかと思われます。

以上が、ドイツにおける簡単な説明になるわけです。

ところで、我が国についてはどのように考えたらいいのだろうかというところを、私なりに考えてみましたので、お聞きいただければと思います。

まず、景表法、特商法、消費者契約法違反に基づいて損害賠償請求等をするという場合、これについて、消費者裁判特例法に基づいて特定適格消費者団体が訴えるという場合、これはなかなか難しいわけでありまして、特例法は、施行後2年たっても、まだ一件も提訴事案が残念ながら出ていないわけでありまして、なかなか難しい。民事的救済は難しいというところが現状ではないかというわけであります。その理由についてはさておき、とりあえずそこだけ指摘しておいて、それで景表法上の課徴金制度における返金促進策というものもありますよね。しかしながら、これは微力なものだと言えるわけです。

といいますのは、当然課徴金が課される事例に限定される促進策なわけでありまして、それから、売上額の3%の返金に応じれば、あくまで法的な議論のベースですけれども、法的な義務は免除されてしまう。あるいは、具体的な最近の事例で明らかになったのは、被害者全員へ全額返金するよりも、売り上げの3%だけを支払って済む課徴金のほうが、事業者としては経済的な負担の軽さに鑑みそちらを選択するだろうと。そちらのほうが有利であるから、そちらを選択するであろうということになるわけであります。したがいまして、この返金促進策は微力なものだということであります。したがって、景表法違反について消費者救済が不十分でありまして、それによる違法収益の剥奪が不十分なのではないかと考えています。

続きまして、特商法違反に関して、行政の指示によって、行為の是正を求めるわけであって、それを基に消費者が取消権を行使して返金を求めるということを期待するのみでありますが、被害者救済ということはなかなか難しい。それから、もちろん同法上、課徴金制度はないわけでありますね。消費者契約法上は、当然行政規制は入っていませんから、行政処分も普通の違反排除の行政処分も、あるいは課徴金制度もないわけであります。

そのような現状があって、適格消費者団体の妨害排除請求権に基づく返金請求が考えられるのではないかということを次に書いておきました。差止請求権には、現行法上、予防的差止請求権、侵害反復・継続差止請求権に加えて、妨害排除請求権というものも「必要な措置」という文言に基づいて認められるのだろうというのが私の見解であります。

先ほども既にドイツのところで説明しましたから重複になりますが、この予防的差止め、侵害反復・継続差止めの要件及び内容の限界というものがありまして、それに基づいて妨害排除請求権が認められるのだということになるわけであります。

そこの論理構成としましては、消契法や景表法、特商法上の適格消費者団体の妨害排除請求権に基づく返金請求は、違反により生じなお現存する妨害状態が、違法に超過して支払わされているという状態であるという場合に、その排除として、十分性・最小限性・特定性の要請にかなう形で、妨害排除請求権に基づいて可能なのだということになるわけです。

例えば、ドイツの例などを勘案してここに挙げてみたのですが、不当条項に基づく銀行口座差押手数料の違法な徴収での手数料返還請求とか、あるいは、これは京都の適格消費者団体のケースを参考にしましたが、老人介護サービス団体の入会契約金不返還に係る不当条項の事例での入会契約金の返還請求、あるいは携帯接続料や公共料金の不当な値上げに係る不当条項の事例における超過支払額の返還請求も考えられるわけであります。

そこで、我が国としましては、短期的な課題として、以下の立法をすべきではないかと考えます。すなわち、消契法や景表法や特商法の適格消費者団体の差止請求権の規定、消費者契約法12条等において、もうちょっと妨害排除請求権をより分かりやすく書くということが考えられるのではないかということになるわけであります。

さて、行政処分に基づく返金命令ですけれども、景表法、特商法上には行政処分がありますので、それには、予防的処分、違反反復・継続中止処分、違法状態排除処分というものがあります。この違法状態排除処分に基づいて、違反により生じなお現存する違法状態が、違法に支払わされている状態である場合には、その排除として、十分性・必要性・特定性の要請にかなう形で、返金命令が可能であると解されています。

例えば、不当表示により誤認した消費者に当該商品を購入させたことを違反として規定して、その上で認定するという手順を踏めば、違法状態の排除として、(i)当該表示の撤去、(ii)誤認解消措置、(iii)返金を命じ得るということが考えられるかと思われます。そこで、我が国が短期的な課題として以下のことを立法すべきではないかと考えます。

景表法・特商法違反に対し、処分に基づく返金命令が、上記一定の場合に可能であるが、従来行われてはいないため、違法状態排除の処分に基づく返金命令が可能であることをこれら諸法に明記するほか、実効性確保のための事項も含めた包括的パッケージとして返金制度を明文化すべきではないかと考えます。消費者契約法の平成30年改正の附帯決議10項後段に、消費者被害の回復について至急検討することという文言が盛られております。

グリー事件等、利益率が30%を超える事例は課徴金抑止にならず、返金命令のほうが抑止になると考えます。このため、課徴金算定率を見直すことはもちろん必要だし、課徴金額については、利益率に応じて柔軟な対応が可能となるように制度を改正すべきではないかと考えます。また、不当表示の事例におきましては、返金命令の場合には違反行為者の主観的要件が許されないというメリットもあるのではないかと考えます。

続きまして、課徴金の対象の拡大についてです。上記のドイツの消費者団体の利益剥奪請求権は、日本の課徴金納付命令と同様の機能を、違法収益を剥奪するという意味で有するものであります。我が国の被害状況を見ますと、多くの違法収益を上げている事例がある割には、違法収益剥奪の対象行為が少な過ぎると考えます。そこで、我が国としては、短期的課題として、以下のことを立法すべきと考えます。すなわち、返金命令の限界に鑑み、違法収益剥奪のために、特商法にも課徴金を導入すべきだと考えます。

すなわち、返金命令は、個々の被害者に金銭が支払われるというメリットがある一方で、支払先が不明である場合には無力なのですね。それから、返金のためのコスト、費用がかかり過ぎて、返金額が非常に低くて、釣合いが取れない場合、これにも無力なのですね。そういった限界を補うために課徴金が必要なのだと考えます。

続きまして、課徴金は国庫に金銭が支払われ、被害者の救済にはならないが、他方、返金命令は被害者個人に金銭が支払われます。しかし、支払先が不明である場合には無力です。このように、返金命令と課徴金とは、違反抑止の観点では、相互に補完する関係にあると言えるのではないでしょうか。

続きまして、これは将来的な課題になります。不当条項規制の新たな在り方について、少しばかり考えてみました。まだこれは確定した考え方ではないので、一応検討中ということでお聞きいただければ幸いです。

我が国では、中長期課題として、以下のことを立法すべきだと考えられるのではないか。1つ目としましては、不当条項に対する違反排除の行政処分の導入というものを考えてみたわけです。

第1に、取引対象となる商品・役務に関する十分な情報を与えられ、当該取引の機会及び判断の自由を確保することは、消費者の欲求を反映した民主的市場経済秩序の前提条件と言い得るものである。これは、要するに、経済学でいう消費者主権の考え方を法律学的に捉え直した考え方になります。インターネットの普及・進化、それに伴う情報技術・インフラの発達、デジタル化の進行による新たなビジネスモデルの登場、いわゆるプラットフォームを支配するGAFAなどの情報企業の出現、個人情報の適切な保護の必要性の増加等を踏まえれば、従前に比して今日においては、不当条項の有する均一多数性がより顕著なものとなり、不当条項の内容の適切性の確保による係る民主的経済秩序の前提条件の整備が、より必要とされてきていることは、既に明白なものとなっているかと思います。このため、不当条項も、事業者と消費者から成る市場の機能不全を生じさせる行為として捉えられ、民事的手法の対象とされるだけではなく、それに対する行政介入も是認され得るのではなかろうかという将来的な課題です。

第2に、このように、より多数の者に同種の被害が生じやすくなっているという現状を反映して、不当条項の事例も対象として近年制定された消費者裁判手続特例法上の共通義務確認訴訟ですが、こちらは多数の消費者に対する事業者の一般的な義務を認定するものでありまして、機能的には、行政処分に基づく違反認定と同様のものがあるのではないか。例えば、EU指令案や、諸外国の国内法においても、事業者の多数の消費者に対する一般的義務の確認訴訟が用意されているということは、今日において、不当条項に対する行政処分も必要であることを示唆しているのではないかと考えてみたわけです。

第3に、これらの点に鑑み、諸外国において既に不当条項も、先ほどドイツについて見ましたように、行政規制の対象とされてきております。

第4に、特定個人の被害救済のために行政処分が行われるのではなくて、これは返金命令も可能となるわけですから、特定個人の被害救済のために行政処分が行われるというのではなくて、不当条項という一定の広がりのある行為により、多数の被害者が同種の被害を受ける状態にあることが必要とされるため、不当条項に対する行政処分は公的財源により賄われ、全国あまねく、平等にサービスを提供する行政機関の任務の範囲を超えるものではないはずです。これらに鑑みますと、今後は、違反排除の行政処分を対象に、不当表示及び特商法違反だけではなく、不当条項も含めていくべきではなかろうか。すなわち、従来、民事法として構築されてきた消費者契約法ですが、将来的には、同法に違反排除の行政処分を導入すべきである。すなわち、消費者契約法に行政庁の違反排除処分、予防的処分、違反反復・継続中止処分、違法状態排除処分を規定し、違法状態排除処分に基づく返金命令を可能とするべきではなかろうか。

例えばということを書きまして、これは先ほどと重なりますので、妨害排除請求権の場合とも同じような例が挙げられるのではなかろうかということになります。

続きまして、不当条項に対する課徴金の導入について考えられるかなと思います。

第1に、消費者契約法上、不当条項について、違法状態排除処分に基づく返金命令だけでは、上記の返金命令の限界に鑑みますと、違法収益の剥奪のために十分ではない。

第2に、既に、諸外国においては、不当条項も、行政上の制裁金の対象とされております。このことは、違法収益の剥奪だけではなく、不当条項に対して、制裁を科すことの必要性を示しているといいます。

これらに鑑みますと、従来、民事法として構築されてきた消費者契約法でありますが、同法へ不当条項に対する違反排除処分だけではなくて、将来的には、課徴金も導入をすべきではないかと考えてみました。これは将来的なことなので、今すぐという話ではないということになります。

簡単ですけれども、私からは以上になります。

○鹿野座長 ありがとうございました。

宗田准教授には、ドイツの御紹介だけではなく、我が国の法律の運用の可能性及び立法的な課題について、御指摘をいただきました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。いかがでしょうか。

それでは、池本座長代理。

○池本座長代理 池本でございます。

本当に限られた時間で非常に内容盛りだくさん、ありがとうございます。

ドイツの法制度が妨害排除という一つの考え方によって、将来の違法行為を差し止めるだけではない、言わば既存の契約者も救済するということを、そういう立論の中で取り組んでいるというのは非常に参考になると思います。

質問の前提として、こういう理解の仕方でよいのか。我が国の法制度ですが、景品表示法は、違法な不当表示をやめなさいという、差し止めるという意味ももちろんありますけれども、行政処分の場合は、中止した場合でも措置命令ができるとある。これは既存の契約者がその不当表示で誤認している、それも解消する必要があるということが、法目的あるいは措置命令の中にも取り込んで、現在、既に取り込んである。

問題は、そのさらに一歩先で返金命令まで踏み込めるかというところが今のドイツ法との比較ということになろうかと思うのですが、特商法では、つい先般の法改正で、既存の契約者に対しても、例えば、不実告知であったことを通知しなさいという指示処分ということでそれができるとして、既存の契約者の保護のためにというのが盛り込まれたのですが、新たな被害防止の必要性があるときに業務停止命令をかけ、そのときに併せて指示処分をする。業務停止命令が指示処分の前提要件になっているために、純粋な意味での既存の契約者保護のために業務停止処分ということを独立してかけるとはまだなっていない。その意味では、景表法よりも一歩手前にあるのかなという感じを受けています。

それに対して、適格消費者団体の差止請求は、昨年のクロレラ最高裁判決でも周知されているように、中止をすると差止請求はできないという形で、一刀両断で、新たな被害防止だけであるとされています。その意味でも、先生が御指摘されたように、取引の公正や消費者の保護は、新たに発生する人だけではない、既存の違法状態に置かれた人の保護も含むのだと、それを妨害排除という理論構成で御説明があったのですが、そういった我が国の現行法の不足するところを一歩超えるというような位置付けで理解してよいのかどうか。

そのときに、返金命令という民事的な命令というところまでいくというのは、現行の解釈ではなかなか難しいと思う。先生のおっしゃるのは、これは明文規定を置くべきだという指摘につながると、こう理解してよろしいでしょうか。私自身の頭の整理の話と質問がちょっと混在して、申し訳ありません。

○獨協大学法学部宗田准教授 私の考えでは、景表法上も特商法上もどういうふうに規定するかは別にしまして、例えば、指示処分の規定とか、措置命令の規定などを見てみますと、これは違法状態排除処分が規定されているのだと読めます。

そうであるならば、不当に支払わされている状態が、違反により生じなお現存する違法状態であるというケースであれば、その違法状態を排除するために返金をやらざるを得ないだろうと、これは考えられて、現行法の規定でもできると私は考えられると思います。

しかし、今までそんなものは。もちろん特商法や最近の改正で、購入者の利益の保護のための措置ができるという文言も加えられた。その説明資料によりますと、それは返金というものを命じることも一応予定されていたわけでありますね。ですから、現行法も可能なのですが、しかし、前例もないところ、今までの事例も、特商法の改正後もそういう事例もないですから、返金命令の事例がないですから、そういったものは、私としては、今、述べたような理論でできるのだから、ちゃんとそれができるように、立法でやりやすくしたらどうかなと、こういうことになります。

○鹿野座長 よろしいですか。

高委員長、お願いします。

○高委員長 私は法律の分野が専門ではないので、私の理解はこれでいいのか。それから、こういう問題をどう考えるのかということを幾つか質問させてもらいたいのですけれども。まず、違法に得た収益を剥奪するということ、今日のテーマはそうなのですけれども、そのために、2つの方法があると。1つが、返金してもらう。返金命令という話と、それから課徴金という2つを挙げられた。それぞれ3つの法律が挙げられて、景表法と特商法と消契法を挙げ、それぞれの法にその2つを入れようというのが、先生の今日の御発言だったかなと理解しました。

景表法については、特に全体を通して、不当条項についても返金請求ができるように、その理由としては、金額がはっきりしているから、請求額も明確だから、ここも取り込むべきだということが1つ柱にあったと思います。不当表示と不当勧誘、それだけではなく、不当条項も入れて、3セットでやれば、かなり柔軟に使えるのではないかというお話だったと思います。景表法については、現在、課徴金制度があるのですけれども、これは抑止力不十分だということで、返金命令というのも必要ではないかということでしたが、まず1つ質問ですが、現在の景表法であれば、返金すれば、その分を課徴金から割り引いてもらえるという仕組みになっているのですけれども、先生が御指摘のとおり、多くの事業者は支払って割り引いてもらうよりも課徴金で済ませたほうがいいということで、返金には動いておりません。このため、返金命令という行政処分を導入すべきだというお話だったと思うのですけれども、この2つの関係は、今後も残しておいたほうがいいのでしょうか。例えば、課徴金だけで対応すべきことなのか、返金命令でやるべきなのかと、そこをお聞きしたいです。現在、2つの関係が入り組んでいるので、その2つをこのままの形にしておいたほうがいいのか、それとも一方をやめて、課徴金額を、例えば3%ではなくて、もっと上げたほうがいいのか、それをお聞きしたいのが1点目です。

それから、特商法についても同じく返金命令と課徴金制度、これらを導入すべきだというお話だったと思うのですけれども、恐らく余り返金しないだろうから、課徴金のほうにウエートを置くべきだという話だったかと思ったのですけれども、執行する側から言うと、全てとは言いませんけれども、特商法が適用される事業者は、課徴金納付命令を受ければ、そこで事業をやめてしまう可能性があると言われています。だから、課徴金を導入してもあまり意味がないのではないかという執行する側の声も聞こえてきます。それをどう思われるかというのが2番目の質問です。

最後、消契法のところに、返金命令、課徴金云々という話が出てきたのですけれども、結局、消契法も、民事ルールとしてだけでなく、行政規制としても利用していくことを積極的に考えるべきだとおっしゃったと思います。そういう理解でよろしいのでしょうかというか。これが3番目でございます。

○鹿野座長 それでは、お願いします。

○獨協大学法学部宗田准教授 ありがとうございました。

まず、景表法で返金命令か、課徴金か、どっちかを残すのか、どうしていくべきなのかというお話について、これは先ほど申し上げましたように、両者の相互補完関係に鑑みますと、両方とも残すやり方がいいはずだと考えます。つまり、返金先が不明である場合に返金命令は無力ですよね。誰に返したらいいか分からない。だけれども、課徴金というものは国庫に支払われるけれども、被害者救済にならないというところが弱いところですね。返金命令であれば、被害者にお金が入るということです。相互補完する関係にあるので、両方必要なのですね。そういうことになります。

○高委員長 全体に関わることなので、そこを確認させていただきたいのですけれども、そうすると、既に課徴金でもって国庫にお金を払いますよね。その上で更に返金するとなると、二重に払うような形になるのですけれども、国庫から被害者に支払うべきだとお考えなのでしょうか。それとも、両方あってよろしいということなのでしょうか。

○獨協大学法学部宗田准教授 ドイツなどを参考にしますと、課徴金として取られた国庫に入っているお金を、被害者がどんな請求権に基づいてそれを請求して返してもらえるのか。それはおかしな話ですね。それは無理なのですね。それはなかなか立法するとしても理屈的には難しいのではないかと思いますね。私人が国庫のお金を返してもらう。なかなかそれは難しいと思う。それは私も論文に書きましたし、他の先生もおっしゃられていることなのですよね。その点と、あとは。

○高委員長 2問目は、特商法に課徴金を導入することですけれども。

○獨協大学法学部宗田准教授 今の説明で御納得いただけたなら、それ以降はそこの話はしないとして、2番目の質問にお答えしますね。

2番目につきましては、特商法について、課徴金を出すと事業者が事業をやめてしまうのだという話ですか。

○高委員長 はい。

○獨協大学法学部宗田准教授 これは、私は、最近というか、前からですけれども、つれづれ思うことなのですね。悪徳業者がいろいろな違法行為をやるということは当然念頭に置かなければいけない。我々の健全な資本主義経済を維持するために、これは重要ですね。そのことについての説明かなと思いまして、つまり、課徴金を出されたので、事業をやめてしまえ、あるいはとんずらして消えてしまえということになりますね。

しかし、我々の日本社会では残念ながら悪徳業者だけが不当表示をやるわけではないですね。そこが私は一番のこの国の問題だと思っています。つまりは、普通の顔をした企業が、しれっと違法行為をやるのですよ。消費者から何も言われないことをいいことに、どんどんだまし続けて利益を得ていく。そういう国ですよ。これは何も日本だけではない。ドイツもそうでした。フォルクスワーゲン社の事件もそうでした。

ですから、そういう資本主義は、私の考えでは、資本主義経済を内側から腐食させるような、そういった行為が多々見受けられるのです。それらに厳しく対処していかなければいけないと思っていて、ですから、こういった課徴金を課したら、全ての事業者が事業を投げ出してやめていくだけではない。

3つ目ですけれども、消契法を、今後、行政規制を主としてやるものだと捉えるべきかと考えているかという質問かなと思ったのですけれども、決してそうは思っていなくて、それは契約ですよね。私的自治の原則に基づいて、我々が資本主義の経済の下で自由に契約をやるという、取引の自由が確保された領域ですよね。

それを民事のルールでやることが大原則だと私は思っていて、しかし、先ほど言ったいろいろな現代型の企業が、GAFAとか、いろいろ出てきている中で、不当条項は民事的な手法だけでは手に負えないというのが現状なのではないか。それがドイツやフランスの行政規制が出てきていることなのではないか。理由なのではないか。そういうスタンスなのですね。あくまでも足りないところを補うというのが私のスタンスなのですね。

もちろんその規定の仕方とかも、当然一般条項などというものを行政規制に入れたら大変なことになりますから、それはできない。それは将来行政規制と民事が併存するという法律に消契法がなったとしても、それは分けて規定しなければいけないですね。当然、民事であれば一般条項と、民事だからできるわけですね。そういったものは残しつつ、行政は個別具体的にこういう場合には行政規制がかぶるのだという設計にしなければいけないのではないかなと、将来の話ですからあれですけれども、そういうふうに考えていったらどうかと。

ありがとうございます。

○鹿野座長 他にはいかがでしょうか。

それでは、私からも質問をさせてください。まず、第1の消費者団体による差止請求の一環として返金を請求するということについてです。私も、およそ一般的な妨害排除請求権というものについては、不作為を求めるというだけではなくて、事案によっては妨害状況を除去するということでその妨害排除請求権の行使として原状回復を請求できるような場面がありますし、そういう意味では、妨害排除というような理論構成で違法状態の除去を求めるという考え方はあり得るのかなと思いました。先ほど池本座長代理がおっしゃったように、クロレラなどの事件に関しましても、もう改めているから、今はやっていないから終わりということではなくて、もっと積極的に消費者の誤解を解くような作為義務を課すということも含めて考えられるのではないかというヒントをいただきました。

ただ、一方で、返金まで含めてこれを認めていくということになったときに、少なくとも日本では、現在、消費者裁判手続特例法が既に制定され施行されているわけなのですが、その制度との役割分担はどういうふうになるのでしょうか。その点をお聞かせください。

○獨協大学法学部宗田准教授 こちらは論文で、「獨協法学」の105号、106号で指摘させていただいていますけれども、現行法の特例法との比較検討というところで、これは非常に面白い論点ですよね。ありがとうございます。

それで、例えば、損害賠償請求権との比較と考えてみたのですよね。妨害排除請求権は有責性、主観的要件が不要なのですね。そこで大きな意義があるのではないかと考えています。つまり、どういうことかというと、不当表示などは、過失の立証が非常に難しかったりするわけで、損害賠償請求権の成立が非常に難しいという問題がある。

それから、不当利得返還請求について言えば、法律行為の無効までは要されなくて、違法行為が存在することで足りるというのが、妨害排除請求権構成の特質になっていて、契約が無効であるとかということを言わないでいいところが違いとしてあるのではないかとか、あとは、共通義務確認訴訟段階ではいいのですけれども、簡易確定手続のほうだと、結局、授権が要るわけなのですけれども、非常に面白いのが、それも研究していておっと驚いたのが、適格消費者団体の妨害排除請求権であれば、従来ずっと機能してきたオプトイン、オプトアウトという議論がばかばかしく見えるほど、そんなものは要らないわけです。授権などという議論は。そこが一番の強みかなと思ったりもします。

○鹿野座長 質問の仕方が悪かったかもしれませんが、妨害排除請求構成でやったときには、他の手続よりかなり容易に返金を求めることができるということをお考えなのは、一応は理解しているつもりだったのですが、そうすると、結局、もう一方の、日本で言うところの消費者裁判手続特例法というものは、およそ必要ないことになりますか。それとも、先ほどおっしゃったように、差止請求として妨害排除を求めるためには、十分性・最小限性・特定性という要請が必要だということなので、その要請ないし要件を満たさない場合には、こっちの手続でいってくださいということになるのでしょうか。あるいは、その要件を満たす場合について、ある程度限定的なイメージがあって、そのような問題群についてのみ、個別の不当利得の返還請求権などの成否を問わず、その要件をたとえ満たさないとしても、この妨害排除でいけるというようなことになるのでしょうか。

○獨協大学法学部宗田准教授 おっしゃるとおり、3つの十分性とかの要請がもちろん個別の事例で必要なのですけれども、本来の妨害排除請求権の目的からの要請として、そもそも返金を請求するときに違法状態の排除というものが返金を意味しなければいけないわけで、かなり場面としては限定されていますので、おっしゃるとおり、それ以外の場合には、特例法はもちろん今までどおり必要ですしということになるのかなと思います。

○鹿野座長 しつこくてすみません。

そうすると、この妨害排除請求構成の差止請求で返金を求めることができる場面というのは限られているけれども、その限られた場面においては、かなり要件的にも手続的にも使い勝手がいいというようなイメージをお持ちだと理解してよろしいでしょうか。それとも関連するかもしれないのですけれども、例えば、違法状態と言っても、不当勧誘行為とか、不当条項の問題とか、あるいは不当な表示広告の問題とかあると思うのです。そのとき、当該消費者の個別的な事情によって、少なくとも民事的な請求権については違いが出てくるような問題もあると思うのですが、そういうものは、この妨害排除構成にはなかなか載っかりにくいと。そういうイメージで捉えてよろしいでしょうか。

○獨協大学法学部宗田准教授 ありがとうございました。

正直、そこまで考えたことはなかったので、今、感じたことを述べさせていただくと、例えば、不当表示を見て、取引に入った消費者群というものが一定のグループというものが策定できる。その人たちが、その表示を見てだまされて購入したという事実が見受けられるのだということで、先ほど書いたような違反行為を規定して認定するのであれば、不当表示を見てだまされた人が購入したというところまでが、それを購入したことまでを含めて違反行為として規定して認定すれば損害の返金が請求できるという場合ですから、私がイメージをしているのは、個別に、いわゆる特例法上の支配性要件に当たるような、そういった縛りというものは、普通に存在していると言ったら変ですけれども、常に誤解をして購入したという、そういう一定の消費者があるということは、今あると言ってしまったけれども、ないと言ったほうがいいのかよく分からないし、つまり、一定の集団がだまされているのだ、購入したのだということが分かりさえすればいいわけですから、特例法上の支配性の話ともまた違うような気もしますし、だから、個別に相当程度の審理を要するとかということは別にないわけだと思うのですよね。ただ、それを一緒にすると議論がぐちゃぐちゃになってしまうのかなと思ったりします。

○鹿野座長 そうすると、個々の消費者ということではなくて、集団としての消費者を捉えて、その集団としての消費者との関係で事業者が違法な収益を上げており、集団としての消費者が定型的な不利益を被っていると、そういうふうな考え方をするということですか。

○獨協大学法学部宗田准教授 そうですね。そういうことになりますね。

○池本座長代理 今の議論に関連して質問なのですが、日本の集団的被害回復制度は、第2段階で個別の授権が必要であると。第1段階の訴訟で共通争点について違法性が認定され、しかもその主張立証過程で大体どのくらいの顧客層に対してどのくらい契約が繰り返されたかということもある程度出てくるかと思うのですが、第2段階で実際に申出があるかどうかという話になると、例えば、金額が少額多数の場合には、まあいいやというので出てこないところもある。そこが全然見通せないので、これはどういう範囲でどう立件していいのか分からないというのが特定適格団体の非常に悩ましいところなので、これは現行制度の非常に実務的な難しさということになるのかもしれないのですが、ドイツのこの消費者団体が返還請求を行うという場合は、そこの集団としての違法性あるいは損害を認定して返金請求をするという話と、実際に被害者へ返金配当するということとの関係はどう整理されているのか。あるいは、実際に申出がないお金はどういう扱いになるのか。

○獨協大学法学部宗田准教授 消費者団体の妨害排除請求権に基づく返金請求がドイツで行われている事例は、例えば、不当約款の事例なのですよね。不当約款に基づいて、違法に手数料、口座の手数料を支払わせられたという顧客がいるときに、それは何百人もいるというときに、それらに対して返金を求める。返金せよという請求を立てるということなのですよね。それが、何人の人が手を挙げてくるかとかという不確定な要素が出てくるかという話とどういうふうに同じか違うかという話だと思うのですが、そういう契約をしている人というのも事業者からすれば明白で、返金すべき銀行口座も明白で、誰に幾ら払うかも明白で、誰が申し出てくるかということは必要ないわけで、返金されるということなのですが。

それと関連して、学会でもちょっと指摘しました。ここにちょっと書きましたけれども、要するに、返金命令、返金請求の限界として、支払先が不明である場合あるいは返金のためのコストがかかり過ぎてしまう場合は無力なのだと、限界があるというところと関連して、政府が最近推し進めようとしているいわゆるキャッシュレス決済が進めば、誰に対して誰が何を見ていつ何を購入してということが全てデータとして残っている、こういう世界であれば、誰に返すべきかという宛先も分かるし、返金するというコストもかなり削減されますよね。そういうことで、機能するのではないか。それは将来的な話ですけれどもということを考えています。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

山本委員、何かありますか。

○山本委員 先ほど高委員長が少し言われたことと関わるのですけれども、ドイツの場合、民事上の請求権と、ここで言う利益剥奪の制度と、もう一つ、日本流に言うと過料が併存するような場合があって、そのときに、ある程度金額を調整する規定にたしかなっていたと思います。

日本の場合には、そこはばらばらという理解を今のところはしていて、それは、行政上、執行上の問題等からすれば、むしろばらばらのほうがやりやすいという面があるとは思うのですが、他方で、考えてみると、共通、言わば重なり合うと考えたほうが、例えば、課徴金として徴収したものを、消費者のために使うといったロジックはむしろ立てやすくなる面もあると思うのですけれども、宗田准教授が今日報告をされた中で、これからもっと課徴金であるとか、あるいは返金という制度を拡充させていこうというときに、それらの相互関係をどういうふうに構想していくことが望ましいとお考えなのかという点をお伺いしたいと思います。

○獨協大学法学部宗田准教授 非常に重要な点だと私も考えていて、そもそも大前提として、恐らく委員も同じ御意見だと思いますけれども、被害者に生じた損害と違反行為者に生じた利益というものは一致しない。さらに、課徴金だと、不当な利得に上乗せして制裁金もという制度設計らしいですから、そうしますと、それとこちらの損害とは一致しない。ということは、課徴金として巻き上げられた国庫に入ったお金と、損害の累積は一致しない。だから、国庫に入ったお金について、消費者が損害賠償請求権を持っているということで請求されても一致しない。これは困るわけですね。足りることは多いけれども、足りないこともあるかもしれない。一致しないのですから。そもそも性質が同じものではない。そういう話だと思うのですね。私もそのように考えています。

行政の目的で、課徴金を課す。それは目的が民事の損害賠償とは違いますから、それはそのとおりなのですよね。ドイツで調整規定がある。置かれている。そのとおりですね。例えば、UWG上の利益剥奪請求権の中の規定を見てもそうなのですね。それをどういうふうにやっているのかというと、2パターンが当然出てきて、1つ目から説明してみると、まず、事業者が国庫に利益剥奪請求権でお金を支払ってしまっている。いっぱい持っていかれてしまった。かつ、民事で損害賠償を食らった。お金を払いますね。そうすると、本来、利益剥奪で利益というものを出させるということをやった上に、さらに損害賠償で利益を持っていかれているとなると、やり過ぎなわけで、その部分は国庫にちょっと返してくださいという権利がある。そういう調整が一つある。自分が払った部分、損害賠償に応じた部分については、そっちが払ってしまった分、返してねと。これは事業者が請求するという権利がある。これは分かるのですね。

もう一つも、だから、つまりは先に損害賠償を払っている場合ですね。その場合、幾ら払っているのと。不当な利得というものは、これぐらいあったものがこれぐらい払って減ったのね。それだったら、利益剥奪の利益のところを算定するときに、そっちに払っている分を勘案しましょうねと。これぐらい減ったのね。それの部分を利益として出せばいいですよと、こういう調整です。事業者が国庫に払うときに、そういうものはあるのですね。

ですから、先ほど言ったように、消費者が国庫に対して損害賠償請求権なり何なりに基づいて請求することはできないという仕組みになっているということです。

○鹿野座長 確認なのですけれども、もちろん民事の損害賠償請求権、あるいは国が課すところの制裁とは、性質も違う、目的も違うということではありましょうけれども、ただ、違法な収益を吐き出させるという点においては、同じ、共通点があるので、そのため一定の調整の可能性がある。このように理解してよろしいですか。

○獨協大学法学部宗田准教授 そのとおりだと思います。

○鹿野座長 他にはいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

それでは、時間も参りましたので、本日は、違法収益剥奪制度について、宗田准教授より御報告をいただき、検討を進めてまいりました。本日の検討はこの辺りにさせていただきたいと思います。

宗田准教授におかれましては、本日は、お忙しい中、御報告をいただきまして、誠にありがとうございました。

それでは、本日のヒアリングはこれにて終了とさせていただきたいと思います。


≪3.閉会≫

○鹿野座長 本日以降につきましては、未定の部分もありますけれども、次第に報告書のまとめに向けての検討作業を進めていきたいと考えているところでございます。 最後に事務局から何かありますか。

○坂田参事官 本日も、長時間にわたりまして御議論いただきまして、誠にありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○鹿野座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)