第13回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2018年11月14日(水)10:00~12:10

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員
【説明者】
消費者庁消費者政策課 内藤茂雄課長
消費者庁消費者制度課 廣瀬健司課長
消費者庁取引対策課 佐藤朋哉課長
消費者庁表示対策課 岡田博己上席景品・表示調査官
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 関係省庁ヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○坂田参事官 おはようございます。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第13回会合を開催いたします。

本日は、所用によりまして、山本委員が御欠席との連絡をいただいております。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第に配付資料一覧を記載しております。本日は資料1のみとなっております。

不足の資料がございましたら、事務局へお申し付けいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、鹿野座長に以後の議事進行をお願いいたします。


≪2.関係省庁ヒアリング≫

○鹿野座長 おはようございます。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、関係省庁ヒアリングとしまして、消費者庁からのヒアリングを行いたいと思います。

本年8月に取りまとめました中間整理における「今後の検討において重点的に検討すべき論点」のうち、第1に「民事ルールと行政規制の役割分担・連携」、第2に「適格消費者団体の役割の強化」、第3に「事業者団体の役割(自主規制の在り方)の強化」、第4に「コンプライアンス体制・消費者志向経営の普及に向けた方策」の4つの項目について、実際に制度を運用している立場の消費者庁から、御意見、あるいはどこが今問題であるのかということなども含めてお聞きしたいと思っております。

なお、御承知のとおり、このワーキング・グループは直接に特定の法改正について議論するというような場では必ずしもございませんで、将来、少なくとも5年先ということを見据えて、全体としての考え方を整理していこうということで進めているところでございます。もちろん、項目によっては具体的な法改正などに関連が深いところもあるかもしれませんけれども、それだけに限らず、広く今後のことを考えて建設的な議論あるいは意見交換ができればと考えているところでございます。

本日は、消費者政策課、消費者制度課、取引対策課及び表示対策課の各担当者にお越しいただいております。

まず、御紹介させていただきますと、消費者政策課から、内藤茂雄課長にお越しいただいております。

それから、消費者制度課から、廣瀬健司課長にお越しいただいております。

それから、取引政策課から、佐藤朋哉課長にお越しいただいております。

そして、表示対策課から、岡田博己上席景品・表示調査官にお越しいただいております。

先ほど申し上げたように大きく4つのヒアリング項目があるわけですけれども、そのそれぞれについて、特にお聞きしたいところを資料1として整理しているところでございます。これを基にして、消費者庁の各担当者から御意見等を伺った上で意見交換を進めてまいりたいと思います。

まずは、第1の「民事ルールと行政規制の役割分担・連携」について、消費者制度課、取引対策課及び表示対策課からそれぞれお話を伺いたいと思います。恐縮ですけれども、併せて10分ぐらいでまずはお話しいただいて、その後、質疑をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○廣瀬課長 消費者制度課の廣瀬と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

初めの論点「民事ルールと行政規制の役割分担・連携」ということで、簡単に思っているところをお話しさせていただきます。

まず、我々は消費者制度課ということで、民事ルールであるところの消費者契約法を所管しているところでございます。業規制であるところの行政規制との役割分担ということに関しましては、行政規制というものは特定の業種ですとか業態等に限って適用のあるものでありますので、そういう適用のある特定分野の課題に焦点を絞ったような規定の方法、対応ができるものであると考えております。一方、消費者契約法については、特定の分野に限定されるものではなく、広く適用のあるものでございますので、広範に不当な行為を捉えることができるという意味で、そういった意味では役割分担をされているのかと考えております。

一方で、法律の立案には直接にはかかわらないというお話ではございましたが、そういった消費者契約法の性質を踏まえますと、消費者契約法の規定を検討するに当たっては、行政規制の場合とは異なりまして、様々な業種、思わぬ業種に影響が及ばぬように、そういった慎重な注意深い議論を要するものと考えております。

それから、ここは1.の3つ全部言ってしまっていいのでしょうか。

○鹿野座長 はい。

○廣瀬課長 最後の適格消費者団体による差止請求と行政による行政処分の関係というような御下問もいただいておりますが、行政処分というのは公権力の行使でありますので、そういう意味では行政法の一般原則のようなものに従う必要があるわけでございますが、適格消費者団体の差止請求権というのはあくまで民事的な請求でありますので、当然公正性が求められるわけですけれども、公権力の行使ほどの厳格性は求められていないのではないかということからしますと、消費者視点に立って積極的な活用が期待できるものであるということも考えてございます。

以上でございます。

○鹿野座長 ありがとうございます。 それでは、取引対策課からお願いします。

○佐藤課長 取引対策課長の佐藤でございます。

先生方よく御案内のとおり、私どもは特定商取引法という法律を所管しておりまして、特定商取引法には行政規制と民事ルールと双方規定されております。実質的に両者とも消費者保護に資すると、そういう意味では類似性があると言えると思いますけれども、今ちょっと廣瀬課長からも話がありましたが、法的な手続とか効果という点では当然異なるというのは、改めて言うまでもないことでございます。

よりプラクティカルな面で言うと、例えば適格消費者団体の役割みたいなことを考えたときに、行政庁と適格消費者団体というのは当然のことですけれども、上下関係とか指揮命令系統という関係にはないわけで、特に個別事案の処理というようなことについて考えたときに、何かあらかじめ明確な役割分担を定めるというのは、なかなか難しいのではないかと思っております。

そもそも私どものように処分権限を持つ行政庁の役割は一体どういうものなのかと考えると、特に消費者被害が予想されるような事案については、例えば不実告知みたいに、それを理由として取消しを民事プロセスでもできるような、そういった重大な違反をできるだけ早くしっかりと認定した上で行政処分を行うと。それで、それを公表するということが、その後、例えば個々の取引関係にあった消費者の方、あるいは場合によっては適格消費者団体の方などがその事業者に対して民事的な手続で被害救済を図ると、このような効果も期待できるという意味で、私どもとしてはやはりそういう重大な違反をできるだけきちんと認定して、できるだけ早く行政処分するということが非常に重要なのではないかと考えておるところでございます。

○鹿野座長 ありがとうございます。

それでは、表示対策課からお願いします。

○岡田上席景品・表示調査官 過大な景品類及び消費者を誤認させるような不当な表示を規制しております景品表示法でございますけれども、景品表示法につきましては、先生方も御承知のとおり、違反行為がありましたら、措置命令という行政処分、金銭的不利益処分であります課徴金納付命令、あるいは行政指導といった形で法執行を消費者庁と都道府県が協力して行っておるところでございます。

この景品表示法の法執行、公権力の行使を伴う事業者に対する調査、その結果に基づきます行政処分などにつきましては、やはり行政庁として一体的に行っていくことが重要であろうと思っております。景品表示法の行政処分につきましては、命令の取消訴訟を事業者が提起するという可能性も一定程度ある法律でございますので、そういった意味においても調査と行政処分を行政庁のほうで一体的に行うということは、重要であろうと思っております。 ただ、一般の消費者や消費者団体をはじめとした民間の方々から、景品表示法違反の疑いのある情報、我々は端緒情報と呼んでおりますけれども、そういった情報を行政庁に広く提供いただくということはこれまでもやっておりますし、今後ともそういった連携強化については、表示対策課としても取り組んでまいりたいと考えております。

以上でございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえて、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。いかがでしょうか。

それでは、池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 それぞれ短い時間で申し訳ありません。御説明ありがとうございました。それぞれについて何点かお聞きしたいと思います。

まず、制度課の廣瀬課長にお伺いしたい点が1点あります。消費者契約法も横断的であるからこそ、予想外の影響が出ないように要件設定については慎重にする必要があるということがありました。専門調査会で法改正の議論をしているときにも、余り不明確な規定では困るという産業界からの意見も複数出たことは記憶に新しいところだと思います。ただ、行政処分のように行政庁が自ら認定し、処分の効果まで直ちに発生させるものと、民事のルールというのは、裁判所へ申し立てて主張し、反論し、裁判所、第三者機関が判断するということなので、ある程度包括的な規定も当然そこには含まれますし、そういう中で、裁判所の判断で差止めが必要かどうかということ、該当するかどうかを判断する。また、そういう裁判所の判断がある分野だからこそ、これまでも、例えば広告表示でも内容によっては特定の契約者に対する意思形成に働きかける勧誘に当たり得る、不実告知に当たり得るというような最高裁の判決が出たり、そういう行政処分とは違った役割分担があるのではないかと思うわけです。

だとすると、消費者契約法がどうも最近の法改正で非常に細かな要件立ての規定に絞られているようなところがあるのですが、具体的な規定を置くことで相談や、あるいは処理をする現場で適用しやすいというプラス面がある一方で、少し要件を外れると適用が難しくなるという問題があります。その辺りは、個別具体的規定も例示列挙しつつ、包括的な規定も置く必要があるのではないかという意見も出ているところです。その辺りについてはどのようにお考えかという点が1点です。

それから、取引対策課、佐藤課長にお伺いしたい点として、行政による処分と適格団体による差止請求、手続も違いますし、その意味ではそれぞれが独立してやることで、最初から明確な役割分担ではない。私もそうだと思います。ただ、事実上のすみ分けで先ほどもおっしゃったような重大事案で早く処分をするというところについては行政のほうでやっていただきたいし、例えば広告表示とか、契約条件とか、ある程度内容が見えているものについては適格団体でもやりやすい。そして、先ほどちょっと申し上げたように、民事のルールを根拠にして裁判所へ訴え出るという役割だからこそ、例えば先駆的な事例を取り上げることもできる。そういう違いがあるという理解でよろしいのかどうかというところ。具体的に、それをどこへ、制度としてどうつなげるかはともかく、その事実上のすみ分けは現在あるし、それは肯定的に受け止めてよいのではないかと思っております。その辺りをお伺いしたい。

それから、岡田上席景品・表示調査官に御質問が1点あります。行政処分ですから、調査も処分も一体的にきちんとやっていくというのは正しくそうだと思いますが、例えば、各地の公正取引委員会の地方事務所がありますね。そこで調査をして処分につなげるとか、あるいは最近だと都道府県で措置命令までやって、課徴金のところで消費者庁がやるというところがあります。これは単なる端緒情報ではなくて、ある程度調査した結果を報告し、それを引き継ぐというところがあるのだと思うのですが、差し支えない範囲でいいのですが、それは具体的にはどのような連携の仕方ということになるのでしょうか。

○鹿野座長 以上、3点ですね。

それでは、順に御回答いただければと思います。最初に私は、具体的な法改正についてここで議論するわけではないという趣旨のことを申し上げたのですけれども、第1の廣瀬課長に対する御質問は、今年成立した消費者契約法の改正ともかかわりの深い問題ですし、また、消費者契約法の改正においては、国会の附帯決議において、成立から2年以内にいわゆるつけ込み型不当勧誘の取消権について検討するようにということも付されていましたので、それとも関連があるところではないかと思います。ただ、その問題だけにとどまらず、今後どういう在り方が望ましいのかということも含めて、お考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○廣瀬課長 まず、消費者契約法の関係でございますが、消費者契約法については、行政法ではないのだからもっと緩やかな要件でよいという御意見があることは承知しておりますし、昨年8月の本委員会からいただきました消費者契約法に関する答申におきましても、そうした趣旨から付言という形で宿題をいただいていることもあります。検討をしているところでございます。

一方で、消費者契約法の規定につきましては、民事ルールでありますので、最終的には裁判所が判断いただくものではあるわけですが、事業者にとってみましては、そういった種類のものであっても、やはり予見可能性という観点からは要件の明確性を求める御意見も強いということがあります。民事ルールという観点からしますと、民法の債権法の中の公序良俗に関する議論においても要件の明確性ということが論点となったものと承知をしております。また、要件が余りにも抽象的であると、これは事業者のみならず、相談現場においてもかえって使いにくくなるということも考えられるところであります。

先ほどありましたが、消費者委員会の答申で付言としていただいていることもありますし、今年の消費者契約法改正の際の附帯決議にも言及があるところでございますので、現在、検討を進めておりますが、やはり要件の明確性というのは1つの大きな課題になるのではないかと考えてございます。

○鹿野座長 それでは、まだ議論があるかもしれませんが、佐藤課長、お願いします。

○佐藤課長 御質問いただきまして、ありがとうございます。

池本座長代理の御質問の趣旨は、法的に言えば行政処分と民事ルールというのはいろいろ違いもあるけれども、消費者保護という目的に資するという意味において共通性もあるし、両者相まってその目的が達成されているのではないのかと、そういう御趣旨なのかなと私は理解したのですけれども、そういうことであれば、正にそれはおっしゃるとおりと思います。いろいろ私も個別事案の処理を担当している中で、当然のことですけれども、行政処分だけでいろいろな消費者問題が解決できるわけではないというのは身をもって感じているところでございまして、そういった意味で、消費者団体なり、あるいは被害者の代理人たる弁護士の方々なりが、私どものいろいろな処分、あるいはその前提となったいろいろな違反事実の認定、こういったものを積極的に利用していただいて、民事プロセスで積極的に、極めて悪質な事業者については責任を厳しく追及していただくということは非常に意味があるのではないかと思っております。そういう意味で、先生のおっしゃったような、両者相まって消費者保護の目的が達成されるというのは極めて重要な御指摘なのではないかと思っております。

○岡田上席景品・表示調査官 まず、景品表示法の法執行における公正取引委員会地方事務所との連携の状況でございますけれども、委員御承知のとおり、景品表示法につきましては、平成21年の消費者庁設立前は公正取引委員会が所管し法運用を行っていたものですから、ある意味、親子のような関係にあり、景品表示法の調査のノウハウについては、公正取引委員会においても組織としてこれまでの蓄積、ノウハウもありますし、今も独禁法の法運用を行っておりますので、事業者に対する調査業務への親和性もあり、消費者庁と公正取引委員会の間での意思疎通は非常に図りやすい関係にあります。

実際の業務面で申し上げると、消費者庁担当者と公正取引委員会の地方事務所の担当者がほぼ共同作業という形で調査を二人三脚で行いますが、最終的な行政処分を行う措置命令の権限は消費者庁にありますので、調査結果を踏まえて最終的に処分を行うかどうかの判断は消費者庁として行うという流れになります。

都道府県につきましては、景品表示法の担い手を増やすという観点から、昭和47年の法改正で都道府県にも調査権限を加えまして、措置命令の1つ手前の行政指導である指示を行う権限が付与されまして、当時から都道府県の方でも景品表示法を運用していただいておりまして、平成26年の法改正で措置命令という行政処分も行えるようになったところでございます。

ですので、都道府県につきましても、公正取引委員会が所管していた時代の後、消費者庁になりましても、担当者間での協力関係、情報共有関係等がございますが、個別の事案につきましては、公正取引委員会との関係と異なるのは、平成26年からは都道府県が措置命令という行政処分を行う権限を持ちましたので、平成26年以降は、一応、調査業務、意思決定プロセス等については都道府県の方が独立してと言いますか、単独で行っていただくことになっておりますが、やはり立証上の悩みですとか法解釈の疑問点などはありますので、都道府県の担当者と消費者庁の表示対策課の担当官との間でコミュニケーション、相談等が緊密に取れるような関係を作ってきており、そこで適宜相談、助言等を行いながら、行政処分に至る調査等を行っております。

課徴金の調査については、委員御指摘のとおり、都道府県で行われた調査や措置命令を引き継いで、消費者庁の方で行いますので、主体が変わるとの点は御指摘のとおりでございます。

以上でございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

池本座長代理。

○池本座長代理 どうもそれぞれありがとうございます。

意見を若干だけ申し上げます。まず、消費者契約法について、予見可能性、明確性の確保が必要だという意見が強く出され、当然それも配慮しなければいけないということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、消費者契約法、特商法が3年前、同時進行で法改正の議論をしていたということが影響しているのかどうか分かりませんが、どちらも明確性とか予見可能性が同じトーン、同じレベルで議論されて、どちらの法改正も同じ水準で確保しなければいけないかのような印象が審議の経過にあったようなところが少し残念だったところで、やはり現場で使いやすい例示列挙を置くということと、もう一段包括的な規定を置いて、その分野における規範を方向付けることが必要だという点は、是非御検討いただきたいと思います。

それから、佐藤課長から両者相まって被害防止という非常に心強い発言をいただきましたし、私もそうすべきだと思います。あるいは行政処分の結果を踏まえて、それの更に外縁部分、消費者団体、適格団体の側でも取り組むということが我々も必要だと感じております。その意味では、実はつい先日、消費者法学会というところの議論で外国法制を聞きましたら、アメリカのFTCでは、調査、処分をした結果だけではなくて、その根拠資料なども民事の訴訟にかなり積極的に情報提供しているということを聞きました。是非その辺りは全体を含めて被害の防止、救済に官民が連携していくことで、今後の課題として御検討いただければと思います。

以上2点。

○鹿野座長 廣瀬課長が先ほど公序良俗の話にちょっとだけ言及されたので、一言だけ付け加えますと、民法改正のときに公序良俗の規定の改正についても議論しました。御存じのとおり、従来、いわゆる暴利行為が公序良俗違反の一類型として判例でも学説でも承認されてきたところです。ただ、規定を見ただけでは分かりにくいので、暴利行為がこれに含まれるということを明確化するほうが、国民に分かりやすい民法という改正の趣旨に照らして望ましいのではないかということで、その明文化を検討したわけなのです。けれども、そこでその明文化が実現されなかったのは、それをうまく表現することが難しかったからであると私は理解しています。要するに、暴利行為については、伝統的な昔ながらの暴利行為定式がありますが、今、裁判例で認められているところは少し違ってきていて、現代型暴利行為ともいわれるのですが、伝統的な定式より少し広い柔軟な形での適用がなされているのではないかとの分析があります。それを踏まえて明文規定を盛り込むべきかどうかということが問題となりました。これをいま定式化するときに、余り厳格な定式を採用すると、その定式に当てはまらなければ90条の適用がないかのような誤解を招くおそれもあり、広い定式を採用すると、現在の裁判例でもそこまで確立しているとはいえず広がり過ぎるのではないかという心配も持たれ、結局実現しなかったということであります。

つまり、明確性の追求は試みたのだけれども、一方で定式をくくり出すのは容易でなく、他方で明確性というよりもむしろ射程の広い90条が置かれていることの方がより柔軟に対応できるのではないかという指摘もあり、そういう経緯で改正民法に暴利行為を明文化することは実現せず、結局は90条はそれほど大きな改正にならなかったということでございます。もう既に御存じだとは思いますけれども、付け足して申し上げました。

他に御意見、御質問はないでしょうか。

高委員長、お願いします。

○高委員長 まず1点目なのですけれども、これは恐らく消費者政策課か消費者制度課か、どちらなのかよく分からないのですけれども、私自身の問題意識は、要するに、消費者行政というのはできるだけ資源を投入していくことができれば、いろいろなことができると思うのですけれども、もう皆さん方御存じのとおり、政府はこういった行政分野に対して、年々、予算を大きく割いていくことはできない。地方についても、今回交付金等が削られるような状況の中にあって、今後、自治体だって消えていく時代になっていくわけですね。そうすると、比較的スリムな行政組織でもって、いかに効率的に消費者行政を推進していくかということを考えなければいけないと。そういう意味で今回こういうルール形成の議論をさせていただいております。

最初にお聞きしたいのは、適格消費者団体の活動で一般消費者の利益に資する行動、特に差止めですね。この活動について、いろいろ知恵を今まで絞ってきたのでしょうけれども、今一度考えていただけないものかなと思っています。本来、特定の消費者ではなくて一般消費者の利益に資するような活動をやってもらえれば、そういう行為に対しては、例えば実際にそれに要した費用、人件費など、最低限のものを行政として支援するような仕組みはできないものかと。もちろん今、別の方法でいろいろ考えていただいているのですけれども、ストレートにその活動に対して何らかの支援の枠組みは考えられないものなのか、お知恵をいただきたいと思っております。

というのも、実態を見ておりますと、いずれの団体も、一生懸命そういった活動をやっておられるわけですが、やればやるほど財政が細るような仕組みになっています。理屈からすると、いろいろ全国に作ったところで持続可能性が余りないのです。ですから、そこのところの知恵をいただきたいというのが1点目です。

もう一点が、特商法の分野については、適格消費者団体との連携というのは個別事案ごととか非常にケース・バイ・ケースでいろいろ異なってくるからなかなか難しいと佐藤課長がおっしゃいましたけれども、知恵を出し合えば、少なくとも景表法についてはもうちょっと柔軟に対応できるのではないかなと思っています。先ほど、地方事務所との連携とか地方自治体との連携は実際にやっておられると。最終的な課徴金を科す判断というのは消費者庁のほうで判断するような、そこまでの連携があって、そこをやられるという話なのですけれども、適格消費者団体も、例えば有利誤認等があれば差止めを行う。ところが、そこで終わってしまって、多分それを受けて消費者庁が何らかの措置命令を出すとか、課徴金納付命令を出すというケースは今までないのではないかと思うのです。もちろんそのためには相当証拠をきちんと整理してやらなければいけないと思うのですけれども、それができるように連携を取っていって、それぞれの適格消費者団体が調査したものについてはこういう形で証拠等をそろえた上で提出してもらいたいと要請するなど。適格消費者団体側から言えば、それについては引き継ぎをお願いするとか、そういう連携も考えられないものなのでしょうか。これをお聞きしたいということが景表法に関しては1点目。

それから、あと2つあるのですけれども、もう一つは、課徴金の制度を導入していただいて、私は過去の議論はよく分からないのですが、残された文書を見ますと、恐らく有利誤認があった場合の事業者というのは、迷惑をかけた購入者に対して返金するだろうと。つまり、不当な利益は吐き出すだろうと。そうすると、それが課徴金の納付額よりも大きければ、結局、理屈からいうと課徴金を払う必要がないわけですね。

要するに、制度は作ったけれども、実質的にはきちんとした事業者は返金することで、この制度をそんなに使うこともないだろうというようなニュアンスで、この制度ができたと私は見ていたのですけれども、ふたをあけてみると、今、起こっているのは、返金を主体的にやる事業者は余りいなくて、課徴金を払って終わらせるというような流れになっているかと思います。したがいまして課徴金の話と返金したときにそれを免除する、減額するという議論は、一度整理しないといけないと思っております。表示対策課のほうでもいろいろ御苦労されているのではないかと思いますので、これに関し御意見をお聞かせいただきたいということです。

3番目ですけれども、先ほど言いましたように、大きな政府を作っていく、スタッフをたくさんそろえてやっていくということができないとするならば、1つの方法として、今、自主申告があった場合には課徴金の納付額を50%減額するという仕組みがありますね。それ1つだけでやるのは、私は実に不合理だなと思っていまして、もうちょっとめり張りをつけた課徴金減免の仕組みというのが考えられないものなのかと思っています。例えば、問題になった商品の売上げの3%で基準を決めていると。その幅を2%から4%、あるいは1%から5%と幅を広げた形にし、こういった場合には、例えば自主申告でも、自分のところの内部通報の窓口を使って問題を発見して通報した場合には何%減額と。ところが、外側から言われて、例えばマスコミから問い合わせがあって出さざるを得ないというときにはそれは適用されないとか、そういった仕組みをきちんと整理していけば、行政の裁量が入らない形で処分の手続きができると思うのですが、つまり、行政処分ガイドラインようなものを作ることができるのではないかと思っています。これを公表することで、事業者の予測可能性が明確になり、コンプライアンスにあまり積極的に取り組んでいなかった企業の行動も大きく変わってくると思うのです。

通常、コンプライアンス等に積極的に取り組んでいる会社であれば、正直言って、きちんとやっているところほど問題を見つける確率は高くなります。そうすると報告する。その報告する事業者側が、これを報告したことで一定のメリットがあったと感じられるような仕組みを作ると同時に、自主的に報告しない、あるいはデータの改ざんなど、隠蔽に走る事業者に対しては課徴金額を上げるというような、こういうめり張りを付けたガイドラインを作っていくというのはどのようにお考えなのかをお聞きしたい。

かつての議論で消費者委員会でもあったようなのですけれども、時間切れでこの話は途絶えてしまったので、お聞きしたいということです。

以上です。

○鹿野座長 それでは、それぞれ、第1点はもしかしたら2.の項目にも関連するかもしれませんけれども、まずは連携との関係で、お願いします。

○廣瀬課長 スリムな行政組織が求められる中で、限られたリソースの中で消費者行政をどのように進めていくかという観点で、適格消費者団体というところに御注目いただいているものと認識をしております。

先ほどからお話がございましたけれども、公権力の行使として機能しているところの行政措置と、あくまで民事上の請求として位置付けられている適格消費者団体の差止権というものにつきましては、これが代替するもの、替わり得るものというような位置付けというよりかは、むしろ言わば補完的な機能を果たすものと位置付けて考えております。そういう意味では、先ほど申し上げましたが、適格消費者団体の請求権というものは、消費者視点に立って積極的な活用も期待できるものだと考えています。

2つ目の適格団体の活動についての財政的な支援という問題でございます。御存じのところとは思いますが、今年度から新たに4000万円程度でございますが、消費者団体訴訟制度の機能強化のための経費ということで、団体の被害の実態調査のための活動に間接的に資するような経費を計上しているほか、連絡協議会という団体が半年に1回ずつ集合して御検討いただく、情報共有していただくような会合の経費についても一部支援をさせていただいているところでありまして、ごく一部でまだ不十分だという御指摘をいただいているところではありますが、まず第一歩ということにしていきたいと考えております。

それから、団体の支援という意味では、私ども、自立の促進ということが非常に重要なのではないかと考えてございまして、そういう意味では、パンフレットを作ったり、シンポジウムを開いたりして、あるいは事例集を作ったりしまして、制度の趣旨、それから活用されていることが分かるようなことを周知・啓発していきたいと考えているほか、活動がより円滑になるように、提出書類の負担軽減ですとか、あるいは認定の有効期間を延長するなど、側面的なところにはなりますが、団体の活動が円滑に進むようなこともさせてもらっておったり、あるいは寄附金が集められやすいようにということで、匿名寄附金が集められやすいような制度変更なども取り組んでいるところでございます。

○鹿野座長 それでは、景表法についてお願いします。

○岡田上席景品・表示調査官 景品表示法につきましての御質問ですけれども、適格消費者団体が行いました差止訴訟の結果等、そことうまく連携できないかということにつきましては、委員御指摘のように、差止訴訟が違反行為の調査のきっかけとなる情報の1つであることはそのとおりであります。これまではそういった差止訴訟から消費者庁が調査を引き継いだ事例はございませんけれども、今後そういった情報共有を行った先を行政処分に結び付けるという可能性は、現場としてもあるものと思っております。

ただ、措置命令につきましては、消費者庁として命じるものは違反行為の差止めや消費者への誤認排除、社内のコンプライアンス体制の構築、あとは将来の同様の行為が再び繰り返すことのないようにということですので、適格消費者団体による差止訴訟の結果、そういったところが既に担保されているような場合には、重ねて行政処分というところにはならないかなとも思います。そういった行政処分を命じる必要性がある事案であるかどうか、情報提供いただいた証拠等も見ながら事実関係を確認の上、行政処分の必要性を判断していくことが必要になるかなと考えております。

○高委員長 すみません。今のところに加えて、例えば、不当な利益がある場合には課徴金納付命令を出すかどうかも考える上で、将来的には連携だってあり得るという意味ですね。措置命令のところについては、そういった行為が実際にないのであれば、特に消費者庁としてそれをやる必要はないかもしれませんけれども。

○岡田上席景品・表示調査官 そうですね。課徴金納付命令に係る調査におきましても、当然、消費者庁として違反行為の事実認定は行いますので、差止訴訟の期日等でどういったやりとりがあったかや、裁判所がどういった事実認定を行ったかということも見させていただき、あるいは適格消費者団体のほうから提供いただける情報、証拠等も踏まえた上で、消費者庁として課徴金納付命令を行うことができるに足る立証水準が確保でき、また、課徴金納付命令の売上額等の要件等が満たされれば、今後そういうこともあり得るものと思っております。

今は、違反事業者が課徴金を支払って終わることになってしまっているのではないかという点につきましては、消費者庁に返金措置計画の申請、認定を申し込むかどうかというのは、事業者の意思で行うものであり、何か消費者庁のほうからこうしなさいというふうに事業者に命令することができるものではありませんので、ここは事業者の意思決定に委ねられているところでございます。ただ、委員御指摘のように、返金措置計画の利用の実績がまだ少ないというところも一方で事実でございますし、導入のときも5年後に課徴金の運用状況を見直して必要な検討を行うという附則も入っておりますので、今は約2年半の運用実績でございますけれども、事業者のほうで課徴金制度をどう見ているのか、具体的には、委員御指摘のように3%の率が適当かどうかという議論は課徴金制度の導入の際も大きな議論の1つでございましたけれども、課徴金の算定率、あるいは返金措置計画を事業者として実際にどう見ているのかなどについて今後意見を聞くことなども行いまして、5年後の制度の見直しの中で考えていかなければいけない点の1つではないかと考えております。

行政庁が調査に着手する前に行われた自主申告への50%減額につきましても、課徴金制度の導入時に全額免除ではなくて50%減額することが適当という立法過程で議論して得た結論に基づき作った制度でございまして、これまでもそういった自主申告の情報を受け付けてきておるところであります。この減額率に幅をもっと持たせるべきかどうかというところも含めまして、もう少し課徴金制度の運用の実績を積み重ねました上で、今後検討していくことになるのではないかと考えております。

○鹿野座長 樋口委員、お願いします。

○樋口委員 これは質問というよりも意見です。今いろいろとお話を伺っていて、民事ルールと行政規制の在り方について、5年先を見据えてということになった場合に、今の検討の仕方が適当なのかどうかということについては私も疑問がございます。池本委員からも御指摘がございましたが、消費者契約法は、立法時、本来、包括的な民事ルールとか民法の特別法というような位置付けで議論をしてきたと思いますので、民事ルールの範囲を狭めてしまうということは、いかがなものかと。

よく考えてみると、自主ルールもとても大事だと思います。企業が自主的に、積極的に取組み、最終的に消費者が市場に対して信頼性を高めることができるような市場を作っていくことが重要だと思うのです。例えば製品安全では、20年近く前から性能規定という考え方が導入されていまして、行政が事細かにルールを作るのではなく、基本的な性能を明確にして、その中で事業者がその性能を達成するように取り組むということになっていまして、この制度は国際的にも定着をしているのではないかと思っております。

そういったことから考えると、契約の分野においても基本的なルールを作り、さらには企業の自主的努力も含めて、市場において消費者が信頼できるような市場を作り出していくということが大切なのではないかと思います。

実は、他方において悪質業者というのがいることもまた事実なので、この悪質業者対策を民事ルールのレベルだけで議論してしまいますと非常に話が分かりにくくなるのではないかと思います。むしろ悪質業者については、個々の消費者には、なかなか対応し切れない分野もあるはずなので、こういったものについては行政規制の中で、積極的に対策を行っていくべきと思っています。特に今日において消費者をめぐる環境が大きく変化していまして、ネット社会とかグローバル化、超高齢化とか、こういった変化の中では、ルールが全て法律のみに規定をされていて、そのルールに違反しなければ、新しい事態に対して事業者が何をしてもいいということではないと思うのです。事業者が現行の法規に違反しなければ何をしてもよいという考え方が横行すると、中長期的には、消費者が市場に対してシュリンクしてしまって、市場での活発な取引が進まなくなる理由でもあると思うのです。ですから、製品安全が例だとは言いませんが、契約と安全という2つの分野を考えたときには、安全でも事業者のこれまでの自主的な取組を信頼しながら、性能規定を中心にした規定を全面的に改めていますので、契約のほうでも言わば基本的なルールをしっかり契約法で定めて、行政規制の中では、詐欺的な商法とか悪質なものについて取締りを強化するというようなことが中長期的には必要ではないかと私も強く感じております。

現段階で、この場で担当の方からそれについて御答弁いただくということは難しいと思いますけれども、このワーキングにおいては、そういう中長期的な市場の在り方、市場における消費者の信頼を高めるための企業と消費者の役割といったことも含めて考えていく必要があるのではないかと思います。これは感想ですけれども、以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

予定していた時間を大分超えてしまいましたので、次の項目に移りたいと思いますけれども、その前に今の第1の項目の「民事ルールと行政規制の役割分担・連携」というところについて、私からも一言申し上げたいと思います。まず、民事ルールと行政規制が相まっていわば車の両輪として機能することによって消費者の利益擁護が図られていくのだということについては、前提としての共通認識があるのだろうと思います。また、主体としても適格消費者団体に言わば公的な役割が担わされているのでありますから、その適格消費者団体の活動とも連携して、消費者の利益の擁護、保護を図っていくことが必要だということも、恐らく共通認識としてあるのではないかと思います。

それから、民事ルールと行政規制の関係性ということに関しては、恐らく民事ルールといっても色々なものがあることも念頭に置かなければならない。特商法などにおいてはもともとトラブルの多い特定の取引類型についての行政規制のルールが中心となって置かれていたところですし、クーリング・オフについては随分早くから民事規定としてあり、このほか現在までに民事規定が拡充されてきましたけれども、それは行政規制と関連するような形で置かれている民事規定ですから、そこにおける民事規定の在り方というのは、どうしてもかなり取引類型及び場を限定したような形にならざるを得ないところがあるかもしれません。

しかし、消費者契約法は、もともと2000年に制定されたときに、そういうトラブルが多いところだけにスポットを当てて、それで何らかの規制をするというような発想に基づくものではなくて、広く消費者と事業者との間の契約についての一般的な民事ルールを定めるのだということで、実質的な意味では民法に入るようなものを消費者契約法として制定したといえるのではないかと思います。

そして、昨年に成立しましたところの民法(債権法)の改正については、法制審議会での議論を5年以上していましたけれども、そこでもやはり消費者契約法に置かれたところのルールは、実質的には民法に属するようなルールなのだから、民法の中に入れるべきではないかというところも最初の段階では議論していたところです。結局はその導入は実現しなかったわけですけれども、その理由は一つに、消費者とか事業者という概念を民法典の中に入れることについて、民法典の性質および体系性の問題とも関わって合意が得られなかったからであり、もう一つは、消費者法においては、機動性というのでしょうか、時代に即して規定を変えていく必要があるところ、民法にその規定を入れるとそれが難しくなるかもしれないというような懸念も示されたことにあります。ただ、その議論でも、消費者契約法のルールは実質的な意味では民法の一部に属するような性質のルールだということは共通認識としてあったのではないかと思います。

先ほど池本委員もおっしゃったように、あるいは樋口委員が直前でおっしゃったところにも関連しますけれども、そのように消費者契約に関する一般民事法である消費者契約法の規定が、この間、民法とはかけ離れたような形で、むしろ特商法寄りの作りのルールになってきたように見受けられ、それでよいのかという問題意識があります。もちろん明確性があったほうが相談現場でも使いやすいし、事業者にとっても分かりやすいというところはありますので、明確性を追求することを否定するわけではありません。けれども、非常に細かい要件を重ねて、そのもとでのみ取消しができるというようなルールだけで、果たしてそのような民事ルールとしての機能が十分果たせるのかということについては、私たちとしては少々疑問に思っているところですし、引き続きこの点については検討していきたいと考えているところです。

それでは、第2の「適格消費者団体の役割の強化」のところに移りたいと思います。既に一部はこれに関連する議論も行われたところですが、改めまして、これについて消費者制度課、取引対策課、表示対策課から、それぞれ合わせて10分程度でお話をいただければと思います。

○廣瀬課長 消費者制度課でございます。

先ほども少し関連するお話を申し上げたところでございますので、手短にいかせていただきたいと思います。もう既に御議論あるところでございますが、差止請求と行政処分の役割分担という第1の議論の点も、それを前提にいたしまして、適格消費者団体や団体訴訟制度について様々な御提案をいただいているところでありますが、現在の制度は、そうした役割分担を前提に消費者側、事業者側の様々な要素を踏まえてでき上がっているものだと理解しております。制度に係る検討をするに際しましては、そうした事情も踏まえながら、バランスの取れたものにしていくことが必要なのではないかと、このように考えております。

○佐藤課長 私も手短に申し上げたいと思いますけれども、まず、先ほどちょっと樋口委員がおっしゃった、こういうルールの枠組みを考えるときに対象者がそもそもどういう人間なのかというのを考えて、分けて議論しないといけないのではないかという、それは非常に私、日々思っているところなので、正におっしゃるとおりだと思います。

それにちょっと関連するのですけれども、ここで提起された、例えば差止請求対象の拡張という点について申し上げると、これも具体的にどういう項目を、どういう人たちに対して求めるのかという個別の論点ごとに実態だとか、そういう必要性、立法事実というのでしょうか。そういうものを細かく具体的に議論していくことが必要なのかなと考えています。

例えば、通販の表示義務などが例示されていますけれども、これは釈迦に説法ですが、既に私どもの行政規制としては当然規定されているわけでございます。実態を申し上げますと、例えばインターネット通販事業者の方などがこういう表示義務に違反している例は正直たくさんあるのですけれども、ほとんどの場合は、直してくださいと言えばすぐ直してくれるという対応になるのがほとんどでございます。ですから、表示の違反だけを理由にして処分するというのは、過去に例がないわけではないですけれども、極めて例外的な場合であるということでございます。

それから、例えば表示の違反があったときに、それを直してもらうことが必要なので、つまり表示を差し止めるというよりは、むしろ表示を新たに付け加えてもらうことが必要なので、そもそも差止請求というツールになじむのかなというのは正直ちょっと疑問に感じているところでございます。

以上です。

○岡田上席景品・表示調査官 景表法の関係につきましては、御承知のとおり、平成20年に景品表示法に違反する疑いのある行為についての適格消費者団体による差止請求権が導入されておりますので、一定程度、消費者団体の役割についての必要な手当てはできているものと思っておりまして、あとは先ほど高委員長から御指摘がありましたように、実際に適格消費者団体とどのようにうまく連携を図っていけるか、実際にどういった工夫ができるかというところを、今後、消費者団体の方から御意見を伺いながら考えていければと思っております。

○鹿野座長 手短にお話しくださってありがとうございます。

それでは、ただいまの御説明を踏まえて、御意見、御質問のある方はお願いします。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 論点の2点目は、もちろんここで具体的な制度を導入する、しない、改正する、しないの結論を出す場ではないのですが、現場での具体的な問題意識に出発点のある論点なのです。と申しますのが、通信販売のトラブルが今、非常に増えている。とりわけインターネット通販ですが、全国の消費生活センター、約90万件のトラブルのうちの30万件が通販関係であると。しかも、出ては消え、出ては消えして、なかなか全体が是正されないという、この問題を何とかしてほしいという相談現場からのニーズがあります。もちろんそれについて、消費者庁や都道府県で行政処分、調査処分ということを非常に一生懸命やっておられるということも承知しているところではあります。

ただ、都道府県の場合、権限としては、地元に1件でも2件でもトラブルがあれば調査処分の着手、執行はできるはずなのですが、現実に限られた人員の中で言うと、自分のところへ多数の被害が発生しているから体制を組んでやろうというのであれば説明がつくけれども、全国全く平均的に発生している問題について、うちで体制を組んでやろうというふうになかなか選択肢が動かない。各都道府県がみんなそのように思ってしまうと、結局どこもやってくれない。消費者庁あるいは経産局、公取の地方事務所とか国のレベルだけが頼りだということになると、結局執行体制が非常に少ない。現実に調べてみても、都道府県が業務停止あるいは措置命令という公表されている案件で言うと、ネット通販関係は非常に少ないというのが実情だと思います。もちろん、その水面下には、非公表の指導レベルで解決しているものがたくさんあるとお聞きしているのですが、そこへむしろ適格消費者団体はそういうエリアの問題はないわけで、適格消費者団体がもう一歩権限なり使える道具が増えれば活用できるのではないか。それの1つとして、例えば広告表示義務違反とか、意に反する申込みの禁止という、これは錯誤無効の規定にも連動しているので民事的な効果にもつながっているものです。

それから、ネット上の出ては消え、出ては消えというものに対しては、中止した後でも不当表示として措置命令が出せるという景表法の規定。行政処分にはせっかくああいう規定があるのですけれども、適格団体にはそういうものがない。そういう辺りが何かできないか。

あるいは不当表示についても、お試しのつもりが定期購入というような契約条件の不当表示であれば適格団体も使えるのですが、効能・効果については、合理的根拠資料の提出要求みなし規定という武器がないために、現実には各地の適格団体も効能・効果についてはほとんどできていない。そういう現場での非常に切実な声があって、恐らくこの問題は差止請求という言葉だけではない、言わば違法状態の是正あるいは既存の被害者の誤認を解消するというふうに、制度目的も少し広げる必要があるのではないかと思うのですが、そこを少し見直すことによって、行政と適格団体の2つが相まって被害防止を効果的にやっていくというふうになっていくのではないかと思うのです。個別の論点でこれがイエス・ノーというよりは、制度目的そのものを含めた見直しの可能性はどうなのかという辺りで、もし御意見がいただければ幸いです。

○鹿野座長 どの課にお答えいただきますか。

○池本座長代理 取引対策課あるいは表示対策課、両方に係る問題だと思います。あるいはそもそもの制度設計で言うと制度課に関係するのか、ちょっとそこは必要に応じて御発言いただければと思います。

○佐藤課長 池本座長代理にはいつも御指導いただいておりまして、ありがとうございます。

確かに通販のPIO-NETの相談件数は非常に多いのですけれども、中身を見てみるとこれもいろいろございまして、要するに特商法なり景表法がスコープとするような内容の相談ばかりでは必ずしもないのではないかというのが1つでございます。

それから、特商法の執行ということについて申し上げると、先ほど申し上げましたとおり通販というのは、特にネット通販というのは参入障壁が低いので、表示の違反というのは正直極めて多いです。これらに対しては、私ども、主に、いきなり処分ということではなくて、迅速に指導するという形での対応をまずやっておりまして、先ほど申し上げましたとおり、ほとんどの場合はそれによって是正されているという状況です。

他方で、例えば債務の履行拒否のようなより重大な違反があるような事案もほったらかしにしているわけではなくて、そういうのがあれば、当然、我々はきちんと調査をした上で、ちゃんと証拠をそろえて処分をしております。

都道府県の処分が少ないということで、それは多分、少ないというのもそうだと思うのですけれども、例えば最近、東京都が処分した例もございますので、都道府県の処分が皆無というわけでもないし、詳細には私は存じませんけれども、各都道府県においても私どもがやっているような指導という形での是正がいろいろ図られているのではないかと思います。

それで、だから何もしなくていいのかと言われると、そこはいろいろな御議論があると思うのですけれども、実際に現状でも、例えば虚偽・誇大広告に対する差止めというのは適格消費者団体にも制度上認められておるわけで、実際にそういうツールを活用されている例もあるやに聞いております。さらにそれに加えて、ここに今、御提案いただいたような内容を追加することがなぜ必要で、それによって具体的にどういうニーズが満たされるのか、どういう効果が得られるのかというのは、もう少し具体的に議論していく必要があるかなと思います。

効果・効能についての資料を強制的に出させるというような御提案ですけれども、通販事業者に対してだけそういう特例的なことを認める理由というのはなかなか難しいのではないかと、率直なところではそのように思います。他の普通の店舗でやっている事業者でもいろいろ広告は出すわけで、中には効果・効能に関する不実が疑われるような広告もないわけではないでしょうから、そのような店舗事業者に対しては求められないのに、通販事業者にだけそういうことを求めることがバランス上できるのかという論点とかも含めて、慎重に考える必要があるのかなと思っております。

以上です。

○鹿野座長 景表法について、ありますか。

○岡田上席景品・表示調査官 不実証広告規制は、日本では景品表示法に最初に導入された規定ですので、そこの点について少し申し上げますと、効能・効果に係る表示については、行政庁側がその効能・効果がないことについて立証を尽くすには時間や費用も要し、その間に不当表示が行われた商品の消費者への販売が進んで、消費者被害が進んでしまうという問題がありました。そうした消費者の被害を防止する、行政として不当表示を効率的に規制していくという趣旨、目的から立法措置として認められた規定でございます。ですので、適格消費者団体に類似の権限があってはどうかというところにつきましても、どういった必要性、効果の点から考えるのか。立法措置として考えるのであれば、あとは事業者側からの意見等も聞いた上で、立法措置の必要性等を検討していくことが必要になるのではないかと思います。

以上です。

○鹿野座長 池本座長代理、よろしいですか。

○池本座長代理 むしろ消費者制度課から御発言をいただければ。

○鹿野座長 それでは、消費者制度課からお願いします。

○廣瀬課長 すみません。手短にいきます。御提案をお伺いいたしまして、いずれも重要な検討に値するといいますか、検討しないといけないと考えておりますが、若干お話を聞いていると、差止請求というものの範囲を超えているようなものもあるのかなと思いますし、いずれも団体の権限を強化するということで大きな議論になるものではないかと思いました。

そう思いますと、適格団体の権限を強化することによって是正するというのも1つの方策としてあり得るわけですけれども、例えば団体のコストという先ほどからの問題なども考えますと、既に自治体で取組があるやに承知しておりますが、委託調査のような形でネット通販のようなものをパトロールしてもらう活動をすることを行政が委託する形でやるとか、そういったほうがより実効性の高い方法であるのかなということも思いまして、問題点があるとして方法の問題なのかなと思っています。その中で適格消費者団体の権限強化というのはその1つではあるけれども、それを使うべきなのかというところも検討があるのだと考えております。

○鹿野座長 一応、1のところにも適格消費者団体が出てきて、2で改めて出てくるのですけれども、恐らく両方とも検討が必要なのではないかと考えております。1つは、財政支援、あるいは財政という金銭的な面だけではなくて、情報面とか、あるいは物理的などこで活動をするのかというところまで含め、あるいは先ほどおっしゃった側面支援的なものまで含めて適格消費者団体の公的な活動を支えるような仕組みが必要なのではないかというところであります。

もう一つは、それはそれで必要だとしても、この今の消費者トラブルを見て、もちろん消費者庁あるいは地方の消費者行政も頑張っていらっしゃるとは思うのですけれども、まだそこに不十分なところがあるかもしれず、それについて適格消費者団体が広く消費者の利益を擁護するような形での役割を担えるのではないか。そして、その役割を担うにあたり現在の権限でいいのかという点がもう一つあるのだろうと思います。

それから、それに関連して立証の話がありましたが、行政については不実証広告に関する規定が既にありますところ、適格消費者団体に同じ権限をということになるのかどうかは分かりませんけれども、一般的にやはり情報が非常に偏っていて、立証が困難だというような問題群があるわけですね。そのときにそれを通常の一般的な民事ルールに従って、例えば差止めとかをしようとするときに、これを行使する側が全部立証しなければいけないのかという問題があります。これは民事訴訟それ自体で一般的な形でも議論があるところだろうと思いますが、とりわけ優良誤認に当たるような表示については、先ほどおっしゃいましたように、行政でも立証が難しいわけですね。そのような問題群について、公的な役割が担わされているところの適格消費者団体において、民間の団体だからということで通常の民事ルールに従って全て立証しなければいけないということがよいのか。それとも立証の困難性と、それでは被害の拡大を食い止めることが難しいという公的な利益との両面に照らして、一定程度立証の困難を軽減するような仕組みが考えられないだろうかということを考えているところでございます。

それから、先ほど池本委員からの御質問に対して、ネット通販だけというわけにはいかないのではないかという話がありましたが、恐らく趣旨はネット通販だけということではないですよね。

○池本座長代理 ではないです。

○鹿野座長 それはむしろ池本座長代理にお話しいただいたほうがいいかもしれません。

○池本座長代理 今、鹿野座長からかなり整理していただいたのですが、二、三点補足的に申し上げます。

表示の分野というのは、多くの場合、事業者の理解不足できちんと遵守できていないことが多いのだと、確かにそういう面は特商法も景表法もあるだろうと思います。もっとも適格消費者団体が差止請求業務をやって、消費者白書の今年度版の数字で見ますと、過去10年間で裁判外の申し入れを含む総件数では約450件、その中で差止請求の訴訟提起に至ったのは53件だとまとめられています。つまり、9割近い案件は裁判外の申し入れで自主的に対応していただいて、多くは解決できている。そういう役割を担っているわけですから、表示分野でも何もいきなり訴訟を起こすわけではありませんので、役割としてそんなに違わないのではないかと、これが1点です。

それから、表示義務をきちんとしなさいとか、あるいは中止した後も確認的に行わないようにというのは、狭い意味の差止めということを超えますから、その部分の位置付けを変えることを含めた議論ということになると思います。

3番目の不実証広告の関係は、行政処分の場合は一定期間内に出さなければ不当表示とみなすという強い効果ですが、民事訴訟を提起する場面でみなすというわけにはいきませんで、むしろ裏付け証拠を提出しなさいということを裁判所に申し立てる。そして、立証責任の関係でそれがきちんと出なければこれは推定すると、このような訴訟分野におけるルールに入れ替わると思うのですが、そういうことを含めた検討になろうかと思います。ここで結論を下すというよりは、検討課題として受け止めていただければと思います。

以上です。

○鹿野座長 2.について、他にいかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、時間も大分押しておりますので、次に、3.の項目に移りたいと思います。「事業者団体の役割(自主規制の在り方)の強化」ということについて、これも消費者制度課、取引対策課及び表示対策課から、それぞれお話を伺いたいと思います。これも合わせて、まずは10分程度でお願いします。

○廣瀬課長 それでは、また手短にいかせていただきたいと思います。消費者契約法は民事ルールでございますので、そういう意味では業界団体が自主規制といいますか、ガイドラインのようなものを策定したとしても、裁判所は必ずしもこれに拘束されるものではないという、これはある意味、大前提なわけです。ただ、その上であっても、30年改正におきましては契約条項の作成ですとか、契約、勧誘に際しての消費者への情報提供につきまして、事業者の努力義務の規定の明確化などを図ったところでございます。消費者契約法の規定が行為規範として機能して、消費者保護のために事業者の自主的な取組を促すことを強く期待しているところでございます。

消費者制度課におきましては、こうしたことから、今回の改正の趣旨の説明については、消費者向けのみならず、事業者向けのものも積極的に取り組んでおりますし、事業を所管される省庁の方などが業界としてのルール、標準約款などの策定を検討される場合にあっては、我が消費者制度課も意見を求められるようなことがございますので、こうした場合には消費者契約法の趣旨が反映されるように御意見を述べさせてもらったりしているところでございます。

以上です。

○佐藤課長 では、私も手短に。言うまでもありませんけれども、特商法上のいろいろな行為規範の遵守というのは事業者の方々にとって最低限の義務でございますから、事業者団体としてより高いレベルの自主的な行動基準というのを定めて、それを実行していただくというのは非常に望ましいことであり、むしろ積極的に是非やっていただきたいところでございます。

他方、ここに書いてありますけれども、それが行政規範の明示化という役割を果たし得るかという点について言うと、そこはやはり行政処分を行うに当たっては行政庁が自ら法令の解釈を行う必要があるわけでございますので、その事業者団体の自主規制を遵守していれば、それで法令上の行為規範も当然満たしているということには必ずしもならないのかなと。言うまでもないことですけれども、処分を行うに当たっては、行政庁として自らきちんと法解釈をやって、法を当てはめていく必要があると考えております。

以上です。

○岡田上席景品・表示調査官 景品表示法につきましても、昭和37年の制定当時から事業者団体の自主的な活動、自主規制を重視するという考え方をとっておりまして、公正競争規約という、表示、あるいは景品類に係る自主基準を業界団体などが作成した場合には、消費者庁、公正取引委員会が認定するという制度を持っておりますので、景表法上としましては、業界団体によるそういった自主的な規制は従来から重要なものと考えてきているところでございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御意見、御質問がある方はお願いします。いかがでしょうか。

それでは、池本座長代理。

○池本座長代理 今、お三方からいずれも、一方で行政による規制だけではない事業者、あるいは事業者団体による自主規制によって法令が遵守されるのが望ましいことだということは、一致した御意見としてお伺いしました。私たちも正にそうあるべきだと考えております。

ただ、問題は、それがなかなかうまく広がっていないという問題もあります。これは実は次の4番目の論点にもつながるかもしれないのですが、前提の認識の問題として、例えば特商法分野で言うと訪問販売協会とか通信販売協会という一定の位置付けを与えて努力してもらっているけれども、なかなかそこへ会員が増えていかないという実情。それから、ネット通販の分野というのはどんどん新しい事業者が登場してきていて、団体になったり、あるいはそこの中で一定のルールを作るという動きがなかなか出てきていない。景表法分野も、公正取引協議会というのが今は80くらいあると聞いていますが、以前にはかなり積極的に公正取引委員会から各事業分野に働きかけて作られていたけれども、最近はそういう新たに作られる動きが少ないのではないか。その辺りの自主規制を個別事業者自身、あるいは団体として進めていくことに向けた施策というものが、まず根本に位置付けられる必要があるのではないかという問題意識があるわけです。その辺りの施策のこの間の受け止めとしてどのように感じられるかというところを、これは特商法、景表法について、いかがでしょうか。細々したことではない概括的な評価としてお伺いできればと思います。

○鹿野座長 それでは、まず、取引対策課からお願いします。

○佐藤課長 池本座長代理の御指摘は極めて重要な点だと考えております。

その上で、実態がどうかということを見ると、こういう事業者団体の自主的な取組を促進していくというのは非常に重要なことではあるのですけれども、前提として、各事業者がきちんとコンプライアンス意識を持って、ルールは守るのだというところについて一致した認識があるというのが当然そういう取組の前提になるわけです。実際問題として、例えば特商法違反で処分される事業者の中には、そういう根本的なコンプライアンス意識にも欠けるような事業者がないわけではないということでございまして、実態としても非常に小規模な事業者も多いというか、むしろ過半がそういう事業者であるということでございます。

例えば、訪販協とか通販協というのは確かにありますけれども、それは要するに訪問販売をやっている事業者、通信販売をやっている事業者の集まりということで、もっと言うと業種とか、扱っている商品・サービスの内容というのは全然ばらばらでございますので、そういう意味では何とか工業協会とか、何とか商業協会とか、そのような同業者の集まりに比べると、メンバーの同質性というか仲間意識、連帯意識、そういうのはちょっとどうなのかなという点が実態としてあると思います。

そういうときに、消費者保護のために一定の規範を守ってもらうという要請をどういう方法で実行していくのがいいのかという議論でございまして、例えば金融業者のように、歴史的にも社会的にも一定のまとまりがあって、当然その一定のコンプライアンス意識があるという極めて均質的な人たちの集まりの場合と、今申し上げたような訪販業者とか通販業者の人たちに対する場合とでは、ちょっと分けて考える必要があるのかなと。

実態を踏まえると、行政規制として、全ての事業者、訪問販売を行う事業者、通信販売を行う事業者に対して、扱う商品が何であれ、どういう業種であれ、最低限のルールは守ってくださいねということを法の執行力というか、強制力をもって求めていくということが特に重要なのかなと私は感じております。

○鹿野座長 それでは、表示対策課からお願いします。

○岡田上席景品・表示調査官 公正競争規約につきましては、平成30年3月末時点で、景品類で37、表示で67、合わせて104の規約がございます。ただ、委員御指摘のように新しい業界団体等による新しく作られた規約が多くあるかという点では、既存のものの改正等は行っておりますが、新しいものについてはさほど多くはございません。規約については、やはり事業者サイドで作りたいという方針で意思統一できることが前提になりますので、表示対策課としてはこれまで同様、行政による規制だけでは消費者利益を十分に確保することは難しい、やはり事業者団体による自主的な取組も車の両輪として必要であるという認識を持っております。表示対策課としては、是非事業者においては公正競争規約を活用していただきたいと、新たに規約を策定したいという機運があれば支援したいと考えておるところでございます。

以上でございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえて、御質問、御意見等があれば、お願いします。

高委員長。

○高委員長 3.と4.を一緒にしてもらえるといいですが。

○鹿野座長 そうですね。実はこれは4にも関連があるところがあるのですが、時間の関係もありますし、4.のところも一緒にやりましょうか。消費者庁のほうで、4.のところについて何か更に付け加えるところがあるということであれば先にお伺いをして、併せて質疑ということにしましょうか。いかがですか。よろしいですか。

それでは、佐藤課長、お願いいたします。

○佐藤課長 それでは、4.の点について追加的に申し上げたいと思います。

ここに、苦情が多い取引形態の事業者について法令遵守に向けた体制整備義務や苦情処理結果の保存義務などを設けることができないかという御提言をいただいています。この点につきましてですが、先ほど申し上げましたとおり、実態として、特商法の規制対象になる事業者というのは非常に小規模な事業者が多いという実態がございまして、そういう事業者に対して、行為規制に違反していない事業者に対してまで一律にこういう一定の様々なコンプライアンスに係る体制整備まで求めていくということが、結果として消費者被害の防止という目的のためにどれだけ実効性があるのかなというのは、正直よく分からないところでございます。

今も行為規制に違反している疑いで我々が調査する際には、その事業者のコンプライアンス体制とか、余り細かくは言えないのですけれども、もろもろ社内の体制的なこともきちんと調査をすることになるわけでございますし、実際に違反があると、今後ともそういう違反行為が継続するおそれがあるという認定に立って処分する場合には、ほぼ必ずその原因を究明しなさいとか、あるいは再発防止のための体制を整備しなさい、コンプライアンス体制をきっちりと構築しなさい、その結果を報告しなさいという指示も出すようにしておりまして、その結果を我々としてフォローするということにしているわけでございます。

ですから、実際に消費者被害に直結するおそれのある行為規制違反の疑いがある事業者に対して重点的に、こういう点も含めて調べていくということのほうが、一律に、非常に小さな事業者も含めていっぱいある全事業者に体制整備を求めて、それを全部チェックしていくということよりも、我々の執行リソースの有効活用という観点からも望ましいのかなと考えているところでございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

他に追加はよろしいでしょうか。

それでは、高委員長、お願いします。

○高委員長 私は冒頭、先走っていろいろなことを聞いてしまったのですけれども、3.と4.に関連して我々が整理しなければいけないなと思っているのは、佐藤課長が何度も触れておられるように、事業者と言ったときに一括して考えているのですね。でも、これを厳密に分けなければいけないなということを強く感じ始めていまして、今まで3つで考えていましたけれども、やはり5つぐらいに分けなければいけないのかなと思っています。1つは、良識的な事業者といって、例えば法律が強化されれば、それにきちんと応じていこうという、かなりコストをかけてやられる事業者ですね。それから、その対極を言うと無関心と。法律改正があったところで特に言われるまでは積極的に対応はしない、コストはほとんどかけないと。中間は、若干かけるけれども、良識的な事業者ほどはやらないという、その3段階が一般的に言われているのでしょうけれども、さらにその下のところが、恐らく、どういう言い方をしたらいいのか分かりませんけれども、例えば悪質な事業者というふうにしましょうか。いわゆる脱法的なスキームを考えてビジネスをやる人たちとなり、最後は、オレオレ詐欺のような明らかな詐欺集団。

我々は法改正等を考えるときに、もっと強化しなければいけないという議論をするときはどうしても、多分、悪質事業者という、いわゆる詐欺集団のちょっと手前のところの事業者の形をとった事業者を見て、こんなことが起こるようだったら関係する法律を強化しなければいけないという議論を今までしてきた。そうすると大体、事業者団体、代表的な例えば経団連などはそういった強化に対しては反対する。なぜかというと、それを強化すれば対応するのにコストがかかる。つまり、真面目にやるところはみんなコストがかかるわけで、やらないところにしてみればコストはかからないから、競争優位になるとまでは言えないかもしれせんが、何の打撃にもならない。このため、我々が望んでいるような法制度の仕組みというのは、なかなか出来上がらない状況にある。

先ほどの事業者団体もそうですけれども、こういう取組をやりましょうといって、手を挙げて、ではやりましょうかというのは良識的な事業者と中間ぐらいの事業者が入ってきてやるだけで、ほとんどの事業者はコストをかけたくないから中には入ってこない。こういう現状があると思うのです。

それで、最後の4番目のところに書いたのは、もっとめり張りを付けるような仕組みができないかなということです。先ほど景表法の話をしましたけれども、課徴金制度でも、例えば3%だったら実際の売上げから考えると不当な利益が残っているではないかといって、そのレベルを全体として、5%とか7%という議論をしてあげようとしても、必ず反対があると思うのです。自分たちから申告してくる企業というのは、結局その分だけ額が上がってしまうからですね。

そうではなくて、最後のところに書きましたけれども、連邦量刑ガイドライン的なものはどうかというと、例えば消費者志向経営を宣言している会社で3年間何も問題がなかった会社。それは苦情を受け付ける仕組みがあって、そのいただいた苦情も保存して、その中でそれを共有して対応していること、こういうことに取り組んでいる会社であるとすれば、例えばそれについては課徴金額を基準額に対して0.5%減らすとか、見えるような形で、あるいは調査に協力的、あるいは非を早い段階で認めた場合にはマイナスとしてあげる。逆に、最後まで争うという姿勢、先ほど言いましたけれども、証拠の隠滅とかこういうことをやる者については課徴金額算定率を上げるという形で対応すべきと考えております。これは行政の裁量が入ってはいけないので、明確な文書を作って開示していくことになります。これが開示されれば、行政自身がそんなに人を割かなくても、事業者側の協力を、特に良識的な事業者側の協力をもらえるようになるのではないかと思うのです。

また、そういう体制を作るためには、事業者団体に入ってきちんと取組のノウハウを学んだほうがいいと考える事業者が、より中間的な事業者が増えてきて、その事業者団体の活動そのものも活発化されるのではないかなと、こんなことを考えているのですが、特に表示対策課はこういう考え方をどう受け止められるのかをお聞きしたい。私は、上から3番目のところぐらいまでの事業者であれば、こうしたガイドラインの開示は意味を持ってくると思っているのですが。

○岡田上席景品・表示調査官 委員御指摘のような点につきましては、平成26年に景品表示法に課徴金制度を導入する際に、検討ワーキング・グループのほうでもいろいろと課徴金制度の全体像を作る中で、そういった加減算の仕組みもあってはどうかという御議論もいただいたところであります。この点につきましては、消費者庁において、消費者法の分野に初めて課徴金制度を導入するということで、簡易に機械的にある程度計算できる算定方法のほうが透明性、迅速な運用の面からも望ましいであろうという判断を行いまして、違反行為を行っていた間の売上額に3%を一律に乗じて課徴金額を算定するという制度となっております。事業者のインセンティブの確保の点につきましては、ちょっと硬直的だと委員から御意見いただいておりますが、行政庁の調査前に自主申告した場合には半額に減じる仕組みとしております。

あと、きちんとした社内体制をとっておって、相当な注意を怠った者ではないと認められる場合には、課徴金は命じないという要件を法律で設けておりますので、きちんとした社内体制をとっており、実際にそれが機能していたということが認められて、それは取引先、仕入れ先の不備やうそ等が見抜けなかったという場合まで課徴金を課すものではありません。このように、事業者のインセンティブ確保については少ない面ではございますが、取り入れて制度を構築しているところであります。

ですので、今、課徴金制度の導入から約2年半ですけれども、まず5年運用した上で、どういった問題があるかを考えていければと思っております。

他方、事業者におけるコンプライアンス体制をどう評価するかの点ですけれども、先生方も御承知のように、既存の金商法、独禁法等でもそういったコンプライアンス体制を作っていたと、プログラムを作っていたという表面的なところだけをもって減算するような課徴金制度は今のところ我が国内にはないと認識しておりますし、実際に景表法の実例としましても、大企業が社内の確認不備等で不当表示を行うという事例もありますので、そこはプログラムがあるだけで課徴金を減額してよいとするのかというところは、また別の議論としてもあるのではないかと担当としては考えているところでございます。

○鹿野座長 高委員長、お願いします。

○高委員長 ありがとうございます。

私自身、勉強不足でよく理解していなかったのですけれども、きちんとした仕組みがある、それでワークしている会社については納付命令を出さないという判断をされると今、おっしゃいましたね。もし、そういう手続があるのだったら、それは公表はされていませんよね。されているのですか。

○岡田上席景品・表示調査官 景表法の8条の中で規定されてございます。

○高委員長 抽象的な記述ではなくて、何を見てそういう判断をされているのかということは、事業者側には見えませんよね。

○岡田上席景品・表示調査官 消費者庁として課徴金ガイドラインを公表しております。その中で相当な注意義務を果たしておるケースについても具体例も含め解説しておりまして、課徴金制度の施行前に、全国で説明会等も行っております。

○高委員長 分かりました。そういう意味では、既に私どもが言っている連邦量刑ガイドライン的なものはもうスタートさせていると解釈してよろしいのですか。要するに、事業者にも見えるようにして、こういうふうに対応すれば減額ということもあり得ることが理解できるようにしているということですね。

○岡田上席景品・表示調査官 50%減額については、先生御指摘のとおりですし、課徴金制度の仕組みとして相当な注意義務を怠っていた事業者ではないと認められる場合には、課徴金の納付を命じないという、これも法律の規定になっておりまして、その具体例についてはガイドライン等で周知して、これまでも各種説明は行ってきているところでございます。

○鹿野座長 ありがとうございます。

それでは、池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 コンプライアンス体制をもっと整備してもらうために、どういう形での働きかけ、働きかけというのは法制度も含めた、どういうものが効果的なのだろうかということを思案している中の1つの議論です。

コンプライアンス体制の推進という意味では、今、ちょうど公益通報者保護法の見直しということが別の専門調査会で議論されていて、そこの中では内部通報窓口の設置を義務付けるべきではないか。ただ、中小企業の場合、窓口を作って人を配置してといってもなかなか現実的でない。でも、例えば外部のヘルプラインを作るとか何か方法もあるはずだ。そうすると、中小企業については、せめて努力義務の規定であってでも入れて、そこは行政側からもいろいろ誘導策を考えてはどうかと。そういう議論をしているさなかです。

今日議論している特商法あるいは景表法の分野で言うと、消費者から苦情が寄せられ、それをきちんと是正につなぐことができるかどうか、あるいはそういう問題が起きないために内部で一定の問題意識、研修をちゃんとするとか、あるいはそういった現状のルールをきちんと徹底するために、事業者の中でも一定の行動規範、自主ルールを作るとか、公益通報とは違った観点での法令遵守に向けた1つの方向性なり、やってほしいことというのがあるのではないかと思うわけです。

それを法律上の義務付けで、これこれの体制を作りなさいと言われると非常にハードルの重たいものになるけれども、何か最低限、こういうところを規範にすることによって、先ほど高委員長からお話があった、事業者の中の一応対応するが不十分、あるいは無関心層も少しでもこちらへ目を向けてもらう。個別事業者で対応できなければ、幾つかの業界団体の中で勉強してもらうとか、何かそういった層に向けてコンプライアンス体制を促進するための手だてということは幾つか考える必要があるのではないかと。そういう幅広い問題意識として受け止めていただく必要があるかと思うのですが、そういったコンプライアンス体制を促進するために、他にこういう方法を検討しているのだというようなものがあればもちろん教えていただきたいところですが、ここは本当にお互いの知恵出しの問題として御検討願いたいところです。

主として意見ですが、もし何か御見解があれば、お伺いするという程度で結構です。

○鹿野座長 何かございますか。

それでは、佐藤課長。

○佐藤課長 やや繰り返しになりますけれども、おっしゃるとおり、そもそもコンプライアンス意識があるという前提の事業者に対してですが、さらにそれをしっかりやってもらうということは意味があると思います。

事業者のコンプライアンス意識がどの程度かということは別にして、行為規制違反という形で違反を行っているということは、実際に消費者被害も生じている蓋然性が高いということですけれども、そういう事業者に対して処分をした場合には、先ほど申し上げましたとおりコンプライアンス体制も含めてしっかりやれと指示しており、それに反すれば制度上は刑事罰もあるわけですので、その再発防止策も含めてしっかりやりなさいということを行政処分という形で強制しているということでございます。

総合的に考えて、これは他の都道府県などもそうだと思いますけれども、行政処分に至らなくても、指導レベルで、これは公表はしませんけれども、事業者に対してこういうコンプライアンス面の取組も含めて改善を求めるという例も当然ございます。ですから、相手の事業者が実際に行った違反行為とか、その疑いとか、そういったものを総合的に勘案いたしまして、行政処分あるいは行政指導という形でコンプライアンス面での取組を求めているということは、既にやっていることでございますけれども、今後一層積極的にやっていきたいと考えています。

○鹿野座長 よろしいでしょうか。

他に、3.と4.について御質問、御意見はございませんか。

最後のコンプライアンス体制については、それが進められるように促していくべきだということについては御了解いただけているのだと思います。どのような形で制度的に進めるかというのはともかくとして、コンプライアンスが重要だということで、コンプライアンス体制あるいは消費者志向経営の普及に向けた何らかの方策を考える必要があるという認識についても共有していただているのではないかと思います。

既に指導とか行政処分のレベルでは、それについて対応をされているということも今日は伺うことができました。ただ、そういう個別の業者だけではなくて、事業者には規模的にも、あるいは業種的にもかなりいろいろな業者がいるわけなのですけれども、それを全体として底上げするために何らかの手立てが講じられないのかということを考えております。ここに例として挙げている体制整備義務とか、あるいは苦情処理結果の保存義務などについては、先ほど池本座長代理もおっしゃったように、法的義務として一定の効果が発生し、あるいは行政処分の対象になるとかいうような意味での義務を直ちに全体にかけるということまでは考えておらず、それは恐らく難しいのではないかと思っております。ただ、例えば努力義務などの形であっても、それを入れることによって何らかの底上げということにつながっていけるのではないかという思いもあります。

それだけではないのかもしれませんが、いずれにしてもコンプライアンス体制を促進させるための方策を更に考えていくことができればと思っている次第です。

それでは、今日、予定した項目については以上になりますが、せっかくお越しいただいたのに、内藤課長には御発言をいただきませんでしたので、何かございましたらお願いします。

○内藤課長 ありがとうございます。せっかくですのでちょっとコメントさせていただきます。

今回のヒアリングも含めまして、ワーキング・グループのほうで御議論いただいていることというのは、喫緊の課題ではなくて、中長期的に消費者法制のルールメーキングをどうしていくのかということについて御検討いただいていると思っております。

今日の議論を聞いておりまして、個人的には若干違和感がございますのは、個別法の課題についての議論というのが中長期的な制度整備に対する検討に資するのかどうかという辺りでございます。先ほど担当課のほうから逐次コメントさせていただきましたけれども、それぞれ共通して言っていることはそれなりにあるかと思います。1.から4.まで、私、属人的な感覚でコメントを申させていただきますと、例えば1につきましては、そもそも行政側と民間側で、連携は非常に大事だと思っておりますけれども、ただ、お互いの業務を代替することができないというところをしっかり押さえる必要があると思っております。いわゆる公権力の行使に係る業務を民間で行うということは無理であろうと。少なくとも役人の感覚で言うとあり得ないということでございまして、それを前提にどういう連携ができるのかということは議論していく必要があるだろうと思っております。

これは2番目の適格消費者団体のところにも関わってまいりますけれども、先ほど高委員長から、どのような支援ができるのかというお話をいただいておりましたが、役人の感覚で言いますと、民間の活動に対して国の資金を直接出すというようなことは、感覚的には非常にあり得ない話でございます。一見、民間団体に直接補助金が流れているように見えるものもございますけれども、それは基本的には制度の趣旨が非常に公益的であるとか、何がしかの公益性というところを重視して支援が行われているわけでございまして、例えば個別の訴訟制度というのはあくまで原告・被告の関係がございますので、それに公益性を見出すのはなかなか厳しいものがあるであろうと。逆に、公益性があるのであれば、それを支援すべきは法務省のほうになってくる。そういったような議論があろうかと思いますので、適格消費者団体が行うものに対して何がしかの支援をするということなのであれば、それは一定の公益性の部分を議論する必要があるであろう、公益性を見出す必要があるであろうということ。あるいは違う言い方をすると、一定の法執行の権限について補完をしていただけるということなのであれば、先ほど申し上げました公権力の行使との関係をしっかり御議論いただく必要があるのであろうと思っております。

それから、3.と4.の関係でございます。自主規制につきましては、私どもも先ほど各担当課のほうから申し上げましたように、一定の有益性というのでしょうか。効果があるということは御意見を一緒にさせていただいているのではないかと思っておりますけれども、ここでちょっと消費者法制について考えていただきたいのですが、そもそも消費者法制というのは原則、事後規制でございます。これまで自主規制等々で議論されているのは、縦割りのいわゆる事業法において議論されていることが多うございまして、かつ、既にある規制の緩和という観点からガイドライン等を作ってというようなことになってまいります。

課徴金の話もございましたけれども、一応、これこそ正に予見可能性が非常に大事でありまして、他の法律とかと比べて不平等であってはならないとか、恣意的に運用されてはいけないというような状況にある中で、その部分を例えば自主規制に任せるというときに、高委員長からは、どちらかというと素行がよくないほうの話としていただきましたけれども、その人たちにガイドラインを作らせるのは、何となく抜け道を作るような方向になるのではないかという辺りを少し検討する必要があると思っております。むしろ、今、素行のいい人たちにガイドラインを作らせることによって、これもお話がございましたが、現状のコスト負担の軽減を図るといったような観点のほうが、まだ経済団体とかそういう関係者との議論としてはなじむのではないかと考えております。

いずれにしましても、中長期的に議論するというときには、余り個別法の課題に過度にとらわれることなく、消費者法制の今のフレームを前提に少し総論的なところで議論をさせていただければと思っておりますし、今後、意見を恐らく御集約なさるかと思っておりますが、そういうときにも可能であれば、私ども、実際に行政を担当する側の意見というのも反映していただければと考えております。

以上でございます。

○鹿野座長 ありがとうございました。

何点か御指摘をいただいたのですが、公権力の行使との関係も踏まえる必要があるということ、それから、公益性ということをどのように捉えるのかということ、これは非常に重要な問題でして、私たちとしても更に検討を深めてまいりたいと思います。

それから、事前規制、事後規制というようなところにも言及していただきました。ちょっとずれるかもしれませんけれども、もともといわゆる規制緩和との関係もあって、事前規制を緩めて事後規制にシフトするという全体の流れがあったわけなのですが、そもそも事後規制へと踏み出したときに考えられていた前提要件が必ずしも整っていないのではないかという問題意識もここでは持っているところでございます。それについても更に考えていきたいと思います。

それから、個別法に余りとらわれずにということも御指摘としてありましたが、最初に申しましたように、ここは、この個別の法律をこう改正すべきだというようなことを決定する場ではございません。そして、5年後を見据えてということであります。けれども、そういう将来の問題を議論するときに関連してくる個別の法律もございますので、そういうものにも言及しながら議論をしているということです。

もちろん、例えばいろいろなところで課徴金の話も出てきましたが、課徴金が3%で十分なのか、これがインセンティブとして、ひいては抑止効果として十分に機能していると言えるのかというようなことについては、実態をきちんと調査して、それで何らかの判断を別の場でするということになろうかと思うのです。また、例えば消費者契約法の話も出てきましたけれども、消費者契約法としてさらに今回の改正で捉え切れないようなトラブル群はどういうものがあるのかというようなことについても、実態を踏まえなければいけない。そういうことは当然、私たちとしても認識しているつもりではございますが、ただ、抽象論ばかりというわけにもいきませんし、ルールの在り方に関連が深いところもありますので、幾つかの個別法も考えながら検討しているということで御理解いただければと思います。

先ほどおっしゃったように、まとめていく作業の中では、また御意見を伺うということもさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。

それでは、消費者庁からのヒアリングはここまでとさせていただきます。

消費者庁におかれましては、お忙しい中お越しいただきまして、誠にありがとうございました。


≪3.閉会≫

○鹿野座長 本日の議事は以上です。

最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○坂田参事官 本日も、長時間にわたりまして御議論いただきまして、誠にありがとうございました。

次回の開催は、11月20日火曜日14時からの開催を予定しております。

以上でございます。

○鹿野座長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)