第55回 食品表示部会 議事録

日時

2019年6月20日(木)9:58~12:31

場所

中央合同庁舎4号館2階 共用220会議室

出席者

【委員】
受田部会長、樋口部会長代理、安達委員、池戸委員、小松委員、澤木委員、下浦委員、菅委員、宗林委員、夏目委員、松永委員、渡邊委員
【消費者庁】
橋本審議官、赤崎食品表示企画課長、森田保健表示室長、食品表示企画課
【説明者】
千葉大学大学院園芸学研究科 児玉教授
東京大学大学院農学生命科学研究科 山川特任教授・名誉教授
厚生労働省 吉田食品基準審査課長
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. ゲノム編集技術応用食品について(意見交換)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

 

○坂田参事官 多少時間が早いのですが、皆様、おそろいですので、始めたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、誠にありがとうございます。

ただいまから、第55回「消費者委員会食品表示部会」を開催いたします。

本日は、今村委員、戸部委員、松嵜委員、宮崎委員が所用により御欠席でございますけれども、過半数に達しており、定足数を満たしていることを御報告いたします。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。本日お配りしております資料は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1及び参考資料が1から3までとなっております。不足の資料がございましたら、事務局へお申し付けいただければと思います。

本日も多くの傍聴の方にお越しいただいておりますので、御発言の際には、マイクを持って、お話をいただきますよう、お願いいたします。

なお、本会場は、マイクの混線が起きやすい状況になっておりますので、御発言が終わりましたら、マイクのスイッチをお切りいただきますよう、お願いをいたします。

それでは、受田部会長、以後の議事進行をお願いいたします。

○受田部会長 皆さん、おはようございます。

本日も、お忙しい中、委員の皆様におかれましてはお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

また、本日も多くの傍聴の方にお集まりをいただいております。心から感謝申し上げたいと思います。

それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

≪2.ゲノム編集技術応用食品について(意見交換)≫

 

○受田部会長 早速でございますが、本日の議題として、ゲノム編集技術応用食品に入りたいと思います。皆様御承知のとおり、消費者庁より、ゲノム編集技術応用食品の表示のあり方について検討しており、その検討に当たっては、様々な方の御意見を伺い、それを参考にして制度のあり方を整理したいといった趣旨の御依頼がございまして、前回の会議では、ゲノム編集技術応用食品について、ヒアリングという形で専門家の皆様から、事実関係の御説明を頂戴したところでございます。

本日は、消費者の懸念や不安を初めとした、ゲノム編集技術応用食品の表示のあり方などに関する意見交換を行ってまいりたいと考えております。

本日も、千葉大学大学院園芸学研究科の児玉教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の山川教授のお二人に、専門家としてお越しいただくとともに、厚生労働省医薬・生活衛生局から吉田食品基準審査課長にも御出席いただいております。皆様におかれましては、大変お忙しいところを御出席賜りまして、誠にありがとうございます。本日の議論の過程におきまして、技術的な話が出てまいりました場合には、御回答をお願いできればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

さて、意見交換に入る前に、前回、部会において、時間の関係で発言できなかった質問について、御出席の委員に対し、終了後に事務局への提出をお願いし、複数の委員から御提出がございました。事務局を通じてお三方には、事前に御連絡をさせていただいていると伺っておりますので、まずはこちらについて、山川教授、児玉教授、厚生労働省の順で、御回答をお願いできればと思いますけれども、よろしいでしょうか。

それでは、よろしくお願いいたします。

○山川特任教授 山川です。

幾つかありました御質問の1つ目は、ゲノム編集は改変した遺伝子情報を1世代だけでなく、数世代にわたって受け継がせることが可能であると言われていますので、これまでの育種法を凌駕してしまうのではないでしょうかという質問がありました。

これについては、ゲノム編集にかかわらず、これまでの交配による育種でも、改変した遺伝子情報は、1世代だけではなく、その後の何世代にもわたって受け継がせることが可能です。これは品種改良した作物の種子を固定品種として種屋さんが売っていることに当たります。

固定品種というのは、その後の世代に何世代も続けて遺伝子情報が固定して受け継がれているということですので、したがって、ゲノム編集で遺伝子情報が改変された品種がつくられた後、その情報を後の世代に受け継がせることができるからということで、これまでの育種法を凌駕してしまうというわけではありません。

次の質問ですが、ゲノム編集でも遺伝子組換えでも、遺伝子を変えることで植物や動物の性質を少しだけ変える、すなわち、好ましい性質の増強、好ましくない性質の削減といったイメージがあります。前回の説明の中で、育種によって、従来食品にはなり得なかったサルナシからキウイフルーツが生まれた話がありましたが、どのくらいまでの変更がゲノム編集などで可能になるのか、あるいは、従来食品ではなかったようなものが食品としてつくられた場合、その安全性はどのように評価していくのかについて御教示くださいというものがありました。

まず、どのくらいまでの変更がゲノム編集で可能になるかということですが、これまでにあった食品、すなわち、食品のもととなる作物や家畜を育種していく場合、ゲノム編集で育種の効率が非常によくなるということなのです。育種の対象や目標としては同じことで、例えば病虫害、異常気象にも耐える作物や家畜、あるいは成長が早い、管理が容易などの生産性を上げるなどの他に、機能性を持った食品などの開発が考えられます。すなわち、外来遺伝子を組み込まず、遺伝子の変異や脱落などを狙ったゲノム編集が、今、ここで議論しているところだと思います。これまでの育種と比較して、目指す品種改良は同じでも、膨大な選抜作業が軽減されるので、労働力や時間の割に新品種がつくりやすいということで、実質的に得られる範囲は広がります。しかし、どんなものが可能かという可能性としての範囲自体は、大きく変わらないと思います。

一方で、外来遺伝子を組み込む遺伝子組換えを組み合わせれば、その範囲は遺伝子組換えで得られる可能性の範囲と同じまで広がります。大きな可能性を持つのですが、この場合は、実用化に対しては、遺伝子組換えの規制がかかりますので、現実的にはまた違った議論になると思います。

そして、後の質問のほうで、従来食品になかったようなものが食品としてつくられた場合、その安全性はどのように評価していくのですかということでしたけれども、これは難しい質問なのです。現在、遺伝子組換え作物由来の食品の安全性は、現在ある食品と比較して、その安全性を評価しています。すなわち、新たに導入された遺伝子、拡散の安全性や、毒性の有無や、アレルギーを引き起こさないか、それらに由来する成分などの変化が従来の食品のものと大きく異なるかなどを検討して、既にあった食品と同等ならば安全と評価しています。

しかし、従来食品になかったようなものが食品としてつくられた場合、つまり、比較対象とする食品が見当たらないようなものには、そのまま適用できないと思います。ですから、何々の食品に対して、こういうものを遺伝子組換えで入れたのならばその部分を評価すればいいのですが、従来食品になかったようなものをつくった場合は、そのままこの考え方は適用できないと思います。

したがって、その安全性評価については、実際はどのようなものがつくり出されてきたかによりますので、そのつくった人がこれを食品としたいと厚労省に持ち込んできて、届け出された段階でどのようにすればいいかという判断が下されることになると思いますので、これはかなり個別具体的なことになりますので、具体的な安全評価のあり方については、現時点では確定的なことは言えないというのが現状でございます。

私からは2つほどお答えいたしました。

○受田部会長 それでは、児玉先生、お願いいたします。

○児玉教授 私のほうに寄せられた質問としましては、まず、オフターゲット変異や遺伝子ドライブについて、リスク分析はどの程度進んでいるのでしょうか、CRISPR/Cas9はオフターゲット変異の頻度が高いと言われており、食品安全に及ぼす影響がないとは言い切れないのではないでしょうかという質問を寄せられております。

遺伝子ドライブといいますのは、CRISPR/Cas9を使った技術の応用例の一つでありまして、通常は遺伝子組換え、導入した遺伝子を持っているものが自然界で広がるスピードに限りがあるのですけれども、そのジーンドライブという技術を使うと、広まるスピードが非常に速くなるという技術なのですが、この遺伝子ドライブ、もしくはジーンドライブと呼ばれるものですが、これはCRISPR/Cas9を持っている必要がありますので、基本的には遺伝子組換え生物という扱いになります。ですので、遺伝子組換え生物としての規制対象になりますので、今回、議論の的になっておりますようなゲノム編集で導入した遺伝子を持っていないような作物もしくは食品といったものに対しての議論とは相入れないものと思っております。遺伝子組換えとしての規制の範囲で、きちんとした審査を受ける必要があると考えております。

オフターゲットについてですけれども、オフターゲットは確かに生じ得ますけれども、細胞が分裂するなり、している間にもゲノムは割と高頻度に切れるということが分かっておりますので、しかも、その切れる場所はランダムではないかと言われております。ということを考えますと、細胞が分裂したぐらいでランダムに切れてしまうような頻度と、ゲノム編集でのオフターゲットの頻度、もしくはその場所といったものを比較した場合に、オフターゲットだけに特異的な危険性があるということは、今のところ考えにくいのではないかと思っております。ですから、従来の育種でもオフターゲットとは呼びませんけれども、それに近い現象といいますか、似たような現象は十分起きていると考えられます。

2つ目の質問ですけれども、ゲノム編集作物のオフターゲットの対策として、意図しない変異部分を戻し交配によって減らすことは原則として実施されるとして理解してよいかという質問をいただいておりますが、ゲノム編集は、まず最初の段階として、CRISPR/Cas9という導入遺伝子を入れるというステップがあります。その段階では遺伝子組換え作物に相当することになるのですけれども、その段階で、実は植物に遺伝子を導入して、カルスをつくって芽をつくらせて、再分化をさせるというステップを踏むわけですけれども、この作業をやったことがある研究者はわかるのですが、体験としてわかっておりますけれども、その段階でいろいろな変異が起きます。ですので、本当に優良な組換え体というのは、今、開発メーカーですと、500株以上つくって、その中から1個ぐらい選ぶということをやっている。ですので、組織培養をするとある程度の変異が生じてしまうという現状です。限られた数の形質転換体がつくられた場合に、では、その変異をどうやって減らしますかということになると、戻し交配というのが非常に有効な手段ということになります。

ですので、戻し交配を全くしないで、一発で優良な親と変わらない形質を持つ個体をとってこようと思うと、本当に数千個体ぐらいの形質転換体から1つを探し出してとってくるということになりますので、個人的な経験から言いますと、戻し交配はほぼ確実に行うのではないかと考えております。

戻し交配というのは、通常の場合、確実にやられると思いますということでしたけれども、その確認は可能かという御質問をいただいておりますが、確認はかなり難しいというか、実質上、無理だと思います。もとの親の性質に戻っていくということになりますので、やればやるほど親とは見分けがつかなくなるということになります。ですので、やったかどうかという確認は非常に難しいと考えております。

以上でよろしいですか。

○受田部会長 ありがとうございます。

まず、児玉先生、山川先生のお二人に、技術的な御質問をいただいておりました。今、御質問いただいたお答えでお二人の先生からコメントをいただきましたが、引き続いて、厚生労働省の吉田課長からいただいている質問に対してお答えを簡潔にいただいて、そのお答えに対して、委員の皆様からさらに追加の御質問等があれば、少しいただくということで進めてまいりたいと思います。

それでは、吉田課長、お願いいたします。

○吉田食品基準審査課長 厚生労働省の吉田でございます。

それでは、私どものほうに12個質問をいただいておりますので、簡潔に御説明、回答をさせていただきます。

まず最初の質問ですが、ゲノム編集技術応用食品という言葉の定義を教えてくださいということです。これはすなわち、ゲノム編集技術で得られた食品全てを指すということにすれば、いわゆる遺伝子組換え食品とも重なる部分があるということになりますので、今後、通知等ではどのようにこの言葉を使うのでしょうかという御質問でございます。

お答えとしましては、報告書の中で、皆様、御案内のとおり、ゲノム編集技術については、一般的にDNAの特定部位を切断する酵素を用いて、外部から遺伝子を組み込むだけではなく、標的とする遺伝子を切断して、それに伴う欠失、あるいは置換といった遺伝子改変を伴うことが可能な技術ということになっておりますので、これを利用した食品が、広くゲノム編集技術応用食品ということになると考えております。

その中には、御指摘のとおり、最終的な遺伝子変化の状況を見ると、従来のいわゆる遺伝子組換え食品と同等のものもあれば、従来の品種改良でも得られる範囲のものもあるということになりますので、私どもの通知の中では、用語としましては、ゲノム編集技術を使い、それを応用された食品は広くすべからくゲノム編集技術応用食品という形で、通知の中で使いたいと思っています。したがいまして、その中には、従来の遺伝子組換え食品に該当するものも当然含まれるという形で整理したいと思っております。これが1つ目であります。

2つ目の御質問であります。ゲノム編集食品の諸外国における現状の知見とか取扱いについて教えてほしいということです。

まず、諸外国の規制といいましょうか、取扱いに関してですが、主なところだけ申し上げます。まずはアメリカの状況ですが、こちらについては、遺伝子組換え食品と同様に、ゲノム編集技術応用食品についても相談に応じて個別に対応という扱いになっています。

2つ目、EUでございますが、こちらにつきましては、現行規制では、安全性審査の対象という形になりますけれども、果たして本当にゲノム編集技術応用食品の取扱いをどうするのかについては、現在検討中であると認識しております。

3つ目、オーストラリアあるいはニュージーランドでございますが、こちらはそもそもゲノム編集については、現行の取扱いでどうなるのかということは明確化されておりませんで、現在もその扱いについては検討中、そういった状況でございます。

一方で、流通などの状況でございますが、我々の知っている範囲では、アメリカにおきましては、最近、ゲノム編集技術を利用して得られた大豆から油を製造して、アメリカの国内で販売を開始したという企業があることは承知しております。ただ、日本国内にこれが流通してはいないと認識しております。いずれにしましても、今後も厚労省としては、諸外国の規制あるいは情報収集、これは引き続き行ってまいりたいと思っています。

3つ目の質問でございます。ゲノム編集でつくった農畜産物の取扱いについて、世界共通のルールがないとすれば、輸入品も含めて、いつの間にかゲノム編集食品が食卓にあるということになりかねないということで、これについての見解をということの御質問です。

お答えとしましては、まさに御指摘のような懸念もあることから、ゲノム編集技術応用食品につきましては、最終的な遺伝子の状況に応じて、事前に届出を求めるか、あるいは安全性審査を行うということとしておりまして、その結果は、いずれにしましても、厚生労働省のホームページなどで公表するという形にしたいと思っています。私ども厚労省としては、この枠組みの実効性を高めるように、関係事業者などへの周知徹底、あるいは事前相談の実施、あるいは届出をしない事業者名などの公表などといった様々な取組を検討していきたいと考えているところでございます。

次の御質問は、2つの質問があります。1つは、従来育種の中には、いわゆる自然交配ではなくて、放射線などを用いて突然変異を起こす技術で商品として流通させている食品があるけれども、そういったものが実際に我が国にどれぐらい出回っているのか、その割合ですね。かなり広まっているのか、一部なのかという質問。それと関連して、2つ目は、そのような技術を応用した食品が、なぜ事前の届出とか安全審査が不要とされているのか、その根拠は何なのかという御質問でございます。

これについてのお答えでございますが、まず前段に関しましては、従来の育種技術ですね。これの実施状況の詳細、これについては、私ども厚労省としては所掌ではございませんので、詳細をお答えするのは非常に困難でございます。ただ、これまでの薬食審の部会などでの審議におきましては、放射線あるいは化学物質などによる人為的突然変異誘発を利用した育種、こういったものは相当程度行われている。そういう認識のもと、議論が行われております。詳細は分かりませんけれども、私どもの認識している論文の中には、人為的突然変異誘発を利用した育種によりまして、少なくとも70の作物、あるいは約300の品種がつくられているといった報告もあると承知しております。

後段のほうの質問でございますけれども、では、そういったような人為的突然変異の誘発を利用した従来育種による食品ですね。これについては、現在、食品衛生法上、特段の規制は設けておりません。この考え方としましては、人為的突然変異であっても、これは先ほど山川先生からもございましたけれども、自然界で生じる突然変異を、短期間に効率的に誘発するものだということであります。実際に生じている変異の範囲、これも自然の突然変異と同等であると考えられます。

また、このような食品については、掛け合わせて選抜するといういわゆる育種過程を経て、そういったものが食品として流通しているというものでありますし、さらには、これまで長い食経験もある中で、これまで食品衛生法上の問題は生じていない。こういったことを踏まえますと、私どもとしては、現時点でこういう人為的突然変異を誘発したような従来育種ですね。こういったものについても、特段の新たな規制を検討する必要はないと考えているところでございます。

次の質問でございます。ゲノム編集技術応用食品につきまして、仮に安全性審査を不要、届出とかにした場合に、安全性確保との関係で、違反が、事後的に問題となるものはどの法律のどの条文なのか、あるいは監視はどうするのかという御質問でございます。

お答えとしましては、ゲノム編集技術応用食品につきましては、私どもは届出であったとしましても、既知の毒性物質の増強がないということなどを確認したという情報は届けてもらうことを考えております。その範囲で、従来の食品と同程度の安全性であることを確認することとする予定でございます。

その上でも、結果として流通している食品に起因する有害物質による健康被害が仮に発生した場合には、例えば、食品衛生法第6条の規定に基づきまして、食品等事業者に対して、販売の禁止などの処分を行うことになるのだろうと考えております。

あとは、起こったときの監視といいましょうか、トレーサビリティーの話でございますが、ゲノム編集技術応用食品にかかわらず、食品衛生法第3条第2項におきましては、食品等事業者は、いわゆる危害の発生の防止に必要な限度におきまして、販売食品など、またはその原材料の販売を行った者の名称、その他必要な情報に関する記録を作成、保存するように努めなければならないとされておりますので、何らかの食品衛生上の危害が発生した際に、遡って調査、いわゆるトレーサビリティーを確保するということの前提はあるのではないかと考えているところでございます。

次の質問でございます。ゲノム編集のものについて、例えば成分の分析とか、あるいは実験動物に食べさせて、安全性を確認してから市場に出すことが、消費者の支持を得るのではないでしょうかといった御質問でございます。

これについてのお答えといたしましては、いわゆる外来遺伝子が挿入されるような遺伝子組換え食品の安全性審査、これは現状で行われておりますが、この安全性審査におきましても、基本的には遺伝子に関する情報に基づきまして、組換え前の既存の食品と比較した安全性を総合的に評価する。これは国際的にも共通の考え方に従って行われております。動物実験などは、通常は行われていないと認識しているところでございます。遺伝子組換え食品でもそういうことでございますので、ゲノム編集であればなおさらということだと思いますし、ゲノム編集については、遺伝子の変化の状況がそもそも従来の品種改良で得られている範囲だということで届出をしていただくわけですが、その届け出された情報、これについては、薬事・食品衛生審議会にも報告されますし、その時点での科学水準における必要な確認はなされると考えているところでございます。

その次の質問でございます。ゲノム編集技術でつくられた食品が、仮に審査の対象にならなかった場合に、その場合、基本は全て開発者の責任で安全性評価が行われることになるだろうと。そうしますと、その評価の開発者による安全性確認のやり方にばらつきが出るでありますとか、あるいは厚労省に相談をしないというケースもあると思われるので、安全性評価のガイドラインなどを作成すべきではないかという御質問でございます。

お答えとしましては、厚生労働省といたしましては、届出に際して、安全性確認に関する情報、これを提供してもらうことを考えておりますが、どういった安全性確認をしてもらうのかという情報の内容の詳細は、通知などでできるだけ具体的にお示ししたいと考えています。ですから、ガイドラインとまでは申しませんが、その安全性確認をするべき事項、情報、これは詳細を通知等でお示しすることで対応したいと考えております。

さらには、その届出の実効性を確実なものとするために、そういったような通知の内容は、英語版を含めまして、厚労省のホームページ、あるいは関係省庁、関係事業者団体、さらには在京大使館を通じて、国内外の事業者等に周知徹底をしていきたいと思っておりますし、事前に厚労省に相談をしていただいて、また必要に応じて専門家にも相談する仕組み、こういったものも設けることを検討している状況でございます。

その次の質問ということで、関連の質問が続きます。一つは、届出の関係です。御質問としましては、パブリックコメントなどから見ますと、やはりゲノム編集食品の安全性についてはかなり不安があるという中で、なぜ届出を義務化しないのかという御質問。あるいは、届出が義務でないときに、開発内容の記録が十分に確認できるのか、そういう仕組みはどういうふうに検討するのか、そういった御質問でございます。

お答えといたしましては、薬事・食品衛生審議会の部会等におきましても、当然届出を義務化すべきという意見はありました。その一方で、ゲノム編集技術により生じます遺伝子の変化ですね。これは繰り返しになりますが、現在の食品衛生法の中では特段の規制が設けられていない、従来の育種技術ですね。これでも起こり得るものであり、また、現時点では、そういったものがゲノム編集技術により生じた変化であるのか、従来の育種技術により生じた変化であるのか、これを検知することも困難である。そういった意見もありました。

こういったことを踏まえますと、現時点で食品衛生法上の規制を、義務という形で実施するのには、科学的な知見が乏しいと言わざるを得ませんので、届出を義務とすることまでは適当ではないのではないかといった形で報告書はまとめていただいております。

ただ、この届出につきましては、現時点では法的義務とはいたしませんけれども、私どもとしては、開発者などからの単なる発意にのみ頼るのではなくて、事前に厚労省に相談をしていただいて、必要に応じて専門家にも相談するといった仕組みを設けることも検討しております。

さらに、厚労省としては、繰り返しになりますが、事業者への周知徹底、それから、届出勧奨とともに、場合によっては、届出を行わない事業者名の公表などを通じて、いずれにしても、届出の実効性は高めていきたいと考えております。

その次の御質問として、これも関連の質問になるのですけれども、そういったような任意の届出制とした場合に、どのくらいの割合で実際の届出がなされると想定されているのかという御質問でございます。お答えとしましては、私ども厚労省としましては、任意の届出ではありますけれども、該当する場合には、必ず届出がなされるよう、まずはその実効性を高めていきたいと考えているところでございます。

そのための実効性を高めるための取組としまして、繰り返しになりますけれども、事前に厚労省に相談していただいて、必要に応じて専門家にも相談する。そういった仕組みも設けたいと思っていますし、事業者への周知徹底、届出勧奨、さらには、届出を行わない事業者、あるいは事後届出のあった事業者名が公表される形になる。さらには、将来的にゲノム編集技術を用いているか否かを検知する方法が開発された暁には、その食品の買い取り調査なども実施する。こういったことも検討しているところでございまして、いずれにしても、実効性を高めるという形の取組を行っていきたいと思っております。

最後の御質問でございます。ゲノム編集応用食品につきまして、表示を行う場合には、その監視としての検証が必要ということで、その際には、遺伝子組換え食品あるいは原料原産地表示のように、IPハンドリングのようなトレーサビリティーとか帳簿検査等、社会的検証で検証を実施してきた例があるということで、ゲノム編集食品も、このような検証方法を取り入れれば監視できるのではないかと思うが、いかがかという御質問でございます。

お答えといたしましては、表示につきましては、これはまさに消費者庁の所掌でございますので、それをこれから御検討いただくということと理解しております。ただ、食品衛生法の中でのトレーサビリティーという観点で申し上げれば、先ほどの質問でもお答えいたしましたが、ゲノム編集技術応用食品にかかわらず、食品衛生法第3条第2項に基づけば、食品衛生上の危害が発生した際の遡りの調査を行うための前提はあるということでございますし、さらに申し上げれば、届出あるいは審査の公表と、ここの食品衛生法第3条に基づくトレーサビリティーが結び付けば、それは一定の環境は整っているのではないかと思うところでございます。

長くなりましたが、御質問に対するお答えは以上でございます。

○受田部会長 ありがとうございました。

まず、前段の部分は、ゲノム編集技術に関して、専門家のお二人の先生方から回答していただきました。そして、後半は、厚生労働省の食品衛生上の取扱いに関する、主に届出に関しての実効性担保等に質問が及んでおりまして、その点について御回答いただいたということになります。

食品衛生法上の取扱いに基づく届出に関しても、先ほど山川先生、児玉先生から御説明のあったゲノム編集の特性であったり、その技術的な内容と関わるということで御理解をいただけたものと思います。今、御回答いただいた内容をもって、委員の皆様からは前回の部会並びに追加の御質問ということでお寄せいただいた内容に御回答をいただいたのではないかと考えておりますけれども、いかがでしょうか。今の御回答に関して、もし追加で、この段階で御質問がございましたら、1つ、2つ、お受けしたいと思います。

現時点ではよろしゅうございますか。

そうしましたら、この後でございます。ここからは表示についての議論に入ってまいりたいと思います。食品表示についての表示に関する意見交換ということになります。

この点に関して、まず、消費者庁から資料が提出されておりますので、こちらについて御説明をお願いしたいと思います。恐れ入ります。15分程度でよろしくお願いいたします。

○消費者庁赤崎食品表示企画課長 消費者庁でございます。

お手元に資料1「ゲノム編集技術応用食品の表示の在り方について」という資料がございます。この資料に基づきまして、表示制度を考える際のポイントや留意点、それぞれの現在の検討状況、消費者庁としての認識を御説明します。

1ページ、ゲノム編集技術応用食品の表示の考え方とあります。これは検討方針の全体像に当たるものです。○が4つあります。まず、スケジュール感については、本年夏頃を目途に厚生労働省で、ゲノム編集技術応用食品の食品衛生上の取扱いを具体化し、運用を開始する予定と承知しております。

この運用が開始されますと、もうまさに店の棚に食品が置けるようになると理解していますので、消費者庁としては、表示のあり方につきましても、同じようなタイミング、スケジュール感のもとで検討する必要があると思っております。表示ルールが定まっていないが故に、事実上流通できなくなるということは、消費者庁としてもできる限り避けたいと思っています。

以上、スケジュール感ですが、では、表示のあり方の中身について、どういう方向で検討するのかについては、3つ目の○を御覧いただければと思います。一般的に、表示制度を考えるに当たっては、そこにある①から④までの点を十分に考慮することが必要とあります。

まず「①消費者の意向」でございます。そもそも表示制度は何のためにあるのかとなると、まさに消費者の利益のためです。その意味では、まず一丁目一番地で、消費者はこの表示制度に何を望んでいるのかということが、大事な点だと思っております。

一方で、それでは誰が表示を付けるのかとなると、表示を付けるのは事業者になります。したがって、事業者の側から見て、実行可能性がないといけない。それが文字どおり「②表示制度の実行可能性」ということになります。

今、消費者の視点、事業者の視点について御説明しましたが、加えて、行政の立場という視点も実はございます。それが「③表示違反の食品の検証可能性」というものです。何らかルールをつくった後、そのルールが本当に守られているかというのが問題になります。仮にルール違反が特定できないと、ルールとしてはきちんとワークしていないと評価されます。その意味では、表示ルールに違反した食品を本当に検証できますか、特定できますかということも、非常に重要な点だと思っています。

その次の「④国際整合性」については、日本だけガラパゴスルールをつくっても、他の国が全く違うルールだと、貿易等々の障壁にもなりかねない。そういう視点も必要というものです。この4点を検討のポイントとして考えているということです。

一番下の○ですが、ゲノム編集技術応用食品について、現在、流通実態はありません。したがって、表示ルールをつくりましても、現実とのすり合わせは、論理的にはできません。今はそういう状況です。したがって、表示のあり方について一定の整理を付けるとしても、実際の流通状況を見た上で、適宜それとの整合や運用状況を検証し、必要に応じて見直しを行う、柔軟に対応するという視点が必要ということを書いております。これが全体的な考え方になります。

次の2ページから、各論になります。まず、消費者の意向、これはどうなのということです。○が2つございます。1つ目の○は、食品表示法の目的規定などからの抽出で、表示は消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保に重要な役割を果たしているという原理原則、理念に当たります。その意味では、食品の表示は非常に重要なものであって、取るに足らないつまらないものではないということになります。

その理念はさておき、実際の消費者の声はどうなのかというのが、2つ目の○になります。この点については、前回の部会に厚生労働省から、薬食審の部会報告のパブコメを1月、2月に行った際の表示関係のいろいろな御意見を資料として提出いただいておりますし、消費者庁に直接お寄せいただいた意見、要望の概要も付けています。そこから考えると、その後の文章にありますように、消費者の中には、ゲノム編集技術応用食品への懸念や不安から、選択できる表示を求める声があるということが、最大公約数的なところではないかと思っております。

この点について、具体の意見をその下に4つ書いております。1つ目に、通常の性質評価を経て安全と見なされれば、特段表示の義務は必要ない等々の意見が出ております。これは厚生労働省が今回行ったパブコメ意見の中に出ていたもので、参考資料1の中には入っていないのですが、改めて精査をして入れたものです。この点につきましては、前回の部会でも、委員の中から、ゲノム編集のほうがむしろこれまでの突然変異種よりも安全性が高いのではないかという御意見もありましたけれども、先ほどの厚生労働省の説明にもありましたように、通常育種と変わらない、そのように安全性がみなされるものであれば、特段表示の義務は必要ないし、そもそも痕跡が残らないと書いております。痕跡が残らないという点については、前回児玉先生から、ゲノム編集と従来育種はプロダクト、最終製品から見ると判別できないというお話もありました。そうであれば、表示の意味はない。いわば要らないという御意見でございますが、一方で、一番下にあるとおり、ゲノム編集技術でつくられた全ての作物等とその加工食品の全てに表示の義務づけを要望という意見も一方で出ております。

それ以外の中間的な意見としては、下から2つ目にありますように、表示を付けるのは事業者ですので、そのメリットも事業者が受ける。まずは事業者が責任を持っていろいろな管理を徹底し、表示をし、事業者が消費者と向き合って消費者が正しく選択できる制度の構築を求めるという御意見もございました。上から2つ目、下から3つ目にありますように、消費者が自主的に選択できるような表示制度を望むと。上から2番目、3番目のご意見には、義務がどうこうとは書かれていませんが、いろいろな意見をいただいている中でカテゴライズすると、大体こういうことではないかと思っています。一部には表示は要らないという問題意識もあったと承知しておりますが、総じて、いろいろな懸念や不安から、消費者が選択できる表示を求める声が強いと理解しております。

3ページは事業者の実行可能性になります。○が2つございます。1つ目は、全ての表示に共通する話と理解していますが、表示の企画立案や運用に当たっては、実際に表示を行う事業者が対応できないといけないということで、考慮点を下に①、②の2つ付けています。①はゲノム編集技術に特有の事情と理解していますが、使用する原材料について、ゲノム食品かどうかの情報を把握できるかということです。最終製品をつくるに際し、一次加工した原料、二次加工した原料、それをフードチェーンの川下の最終メーカーが製品化して販売します。そうしますと、フードチェーンの中で送られてきた原料がゲノム編集技術によるものかどうか区別がつかないと、ゲノムでないと思ってつくった商品が、実は原料はゲノム編集技術によるものでしたとなると、最後につくった業者が回収の憂き目に遭うリスクを負います。でも、そもそもフードチェーンの川上から送られてきた情報に実は誤りがあった。こういう問題意識だと思っています。

この点、前回の部会でも委員から、ゲノムでつくりましたというのが分からないのではないか、分からないものを表示するということはリスクがあるという御意見もあったと承知しております。このようなゲノム編集技術特有の話が①です。

②は全般的な話になりますが、何らか表示制度ができると、それに対応した原料管理が必要となり、そのためのハード、ソフトの設備、整備が必要ですし、それを運用するヒューマンリソース、人材の面でもいろいろな掛かり増しを要するというものです。

このページの下に参考1を付けております。昨年4月に食品産業センターから消費者庁長官に出された要望書ですが、この要望書自体は食品産業センターのホームページに載っております。昨年4月は、ちょうど消費者庁で遺伝子組換え食品表示に関する有識者検討会報告をまとめた直後のタイミングになりますけれども、そこにございますように、表示制度の見直しは、事業者からしますと、容器包装の包材の切り替え、改版が必要になる。また、根拠資料をきちんと整えてとなると、見合いのデータベースやシステムの整備も必要になる。もろもろ多大な時間とコストを要するということを御意見としていただいております。ゲノム編集技術について何らか表示制度をつくる場合、ワン・オブ・ゼムの表示事項になりますので、こういう点も考慮することが必要と承知しております。

下に参考2がございます。食品表示法の基本理念である第3条の中でも、小規模事業者を含む事業者への配慮が掲げられています。

4ページ、表示違反の食品の検証可能性の話になります。ここに○が2つございます。1つ目は「遺伝子組換え食品に該当しないゲノム編集技術応用食品」という出だしになっています。いわゆる外来遺伝子がないパターンで、遺伝子が切断されたが、修復する際に塩基配列が変わってしまった、ただ、自然界では起こることですねという場合ですが、このケースでは、今のところ、その食品がゲノム編集技術によりできたのか、はたまた従来育種の結果できたのか、判別し検知するための実効的な検査法はない、確立が困難になっております。

この点に関しては、これまで遺伝子組換え表示について、この部会でも御議論いただいております。遺伝子組換えもゲノム編集技術と同じく塩基配列、遺伝情報を改変するもので、こちらには義務をかけているのではないかという御意見は当然出てくると思いますけれども、遺伝子組換えの場合、導入された外来遺伝子が実は残っていますので、それをサイエンスできちんと特定することができます。

遺伝子組換えの場合、少し昔の話になりますが、豆腐や納豆は、製品からストレートに検知できる。でも、油とかしょうゆになれば、最終製品から検知できないではないかと。そういう御議論もありましたが、実はしょうゆや油でも、原料の丸大豆に遡ると、外来遺伝子が入っているかどうか検知できるので、遺伝子組換え大豆かどうかは特定できます。フードチェーンの川上の丸大豆の時点で遺伝子組換えかどうかを特定した後、流通過程で他と混じらないということをIPハンドリング、社会的検証の一種ですが、それで担保すると、表示制度として実効が確保されます。ただ、ゲノム編集技術の場合は丸大豆、農産物までさかのぼっても、この塩基配列は自然由来か、はたまた人為的なゲノム編集技術由来か区別がつかないということですので、通常の遺伝子組換えと、ここで御議論いただいているゲノム編集技術とは違うと思っております。

2つ目の○になります。これは特に義務表示制度をつくる場合ということになりますが、「義務表示制度を創設する場合は」とあります。義務の制度は通常、必ずやっていただく、そうでなければ罰則で担保する、これが基本的な姿ですので、当然、正直者がばかを見てはいけないと。ざるの制度にしてしまうと、長続きもしない、信頼性が確保されないとなりますので、制度の実効確保の観点からは、義務違反の食品を特定できて、所要のペナルティーを講じられないと、その仕組みが整えられない、義務の制度というのは創設が難しいということを書いております。

5ページ、国際整合性になります。他の国はどうなのかということですが、上の○にございますように、今のところ、ゲノム編集技術応用食品の表示について、具体的なルールを定めて運用している国・地域はないと承知しています。EU、アメリカはどうかとなりますと、先ほど吉田課長からもいろいろお話がありましたが、EUの場合は、司法判断は出ていますが、では、それを踏まえて行政が現実のルールとしてどうするかということは、いろいろ検討しているところと承知しております。

アメリカでは、昨年12月にバイオ工学食品情報開示基準が出ています。昨年12月に出たときは、ついにアメリカも遺伝子組換え食品の情報開示のルールをつくったのだなと、そういう文脈で受けとめられたものですが、外来遺伝物質が残存していれば情報開示の対象ですが、そうでなければ対象外という仕切りになっていますので、基本的にゲノム編集技術はもうトレースできない。何が入っているか、従来のものと比べても分からないということですので、それに照らしますと、我々としては、具体的なところについては、今のところ、アメリカもゲノム編集技術で作られた食品について直接表示対象としているものではないのではないかと理解しています。

以上、4点になりますが、具体的な表示制度のあり方については、今、御説明したことを踏まえ、本日委員の皆様からいただいた御意見も踏まえて、今後検討していきたいと思っております。

最後、6ページは、リスコミになります。この御議論をこの部会でいただいているきっかけは、やはり消費者の不安、懸念というものになりますので、そういう観点から、正しく理解をしていただいて、ゲノムという言葉を聞いて、一体これは何なのだろうか、ギリシャ神話の想像上の化け物をつくるみたいな恐ろしい技術で、世の中が大きく変わるみたいな、そういうものかどうかも含めて、従来育種との比較の中で正しく御理解をいただき、その上で、表示制度についても併せて考えていただく。そういうことが大事ということで、参考の一番下の○のとおり、厚生労働省、農林水産省、消費者庁の3省庁が連携して、7月の上旬に全国5カ所でリスクコミュニケーションを行います。この場でいろいろいただいた御意見についても十分踏まえて、消費者庁で引き続き表示を検討していきたいと思っています。

以上になります。

○受田部会長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの消費者庁からの御説明も踏まえまして、委員の皆様から、御意見を頂戴したいと思います。

一つ提案なのですけれども、ただいま消費者庁より御説明のございました、①から④の観点を踏まえての御意見をまずは頂戴し、一旦、区切りのいいところで切らせていただいて、その後、リスクコミュニケーションのあり方、進め方といったところを中心に御意見をいただきたいと思います。

もちろん、双方関連する場合もございますので、厳密に仕分けをしていただく必要はございませんけれども、限られた時間ではございますので、できるだけ円滑に御意見を頂戴したいと考えている次第でございます。御理解いただけますと幸いでございます。

本日の進め方、この後、こういう形で御意見をいただくということで、委員の皆様、よろしいでしょうか。まず①から④、リスクコミュニケーションについては少し分けて考えさせていただきたい。よろしいでしょうか。

ありがとうございます。

それでは、先ほどの資料1の①から④、どの観点でも結構でございます。まず、皆様の食品表示に対しての御意見をいただきたいと思います。

小松委員から、口火を切っていただきます。

○小松委員 小松です。よろしくお願いします。

消費者の意向というところで、消費者の方が合理的・自主的な選択ができるように表示の制度はあると思うのですけれども、なかなか義務には罰則も伴うので難しいのではないかみたいな話かなという理解でおります。

ただ、そうはいっても、知りたいという消費者の方に対して、事業者は情報を提供するべきだと思いますし、情報を提供するための仕組みは事業者だけではなかなか難しいです。先ほど、吉田課長のお話もありましたけれども、届出は任意だけれども、なるべく皆さんに出してもらうような努力はしていただくということなのですけれども、我々の立場としたら、開発した方の届出は100%していただくような仕組みづくりを考えていただきたいなと思います。

○受田部会長 ありがとうございました。

まずは、厚生労働省としての食品衛生法上の取扱いに関しての届出の「実効性」というお言葉を説明の中では使っていただきましたが、それをより高めていき、100%へという要望であるということですね。

それを踏まえて、食品表示としては、今の小松委員の見解としては、消費者の皆様の知りたい思いに応えていくという形で表示を載せていこうという、そんな御意見になりますか。

○小松委員 以前議論がありましたけれども、表示はパッケージにするのか、ウエブにしていくのかというのは、意見はあるかと思うのですけれども、少なくともお客様が知りたいと思ったときに情報が入手できるような形にはすべきだと思います。

○受田部会長 ありがとうございました。

具体的な表示に関して、今、小松委員からは、特にこの部会で食品表示の全体像の議論もしておりますので、それを踏まえつつ、消費者の皆様にお届けする情報量がさらに増えていったときに、容器に表示をする方向でいくのか、あるいは代替的な補完的手段としてのウエブでの表示等も含めて消費者の皆様にお伝えをしていくのか。それはどちらの方法ということではなく、お伝えをしていく方向でという御意見ですね。ありがとうございました。

宗林委員、お願いします。

○宗林委員 宗林です。

ゲノム編集をしたという表示をする、あるいはしていないという表示をする、両方あるかと思いますけれども、まず、ゲノム編集をしたという表示をすることについては、今、小松委員がおっしゃったのと同じ考えでして、厚生労働省で届出の実効性を高める、徹底する。そのときには、あわせて安全性のデータも出していただくということをお話しされていましたので、どこで実効性が保てないのかというのも後で聞ければと思っていたのですが、これがある程度徹底されるような方向で厚生労働省が動かれるのであれば、当然それは重要な情報ですので、表示に反映すべきと思います。ですから、届け出されたものについては、ゲノム編集の表示をするということです。

きょうの会議は、検討の結果を出すものではなくて、検討のポイントを消費者庁が参考にされるということなのでお話をしますが、ゲノム編集をしていないという表示を検討される場合には、表示違反の表示の検証可能性、実行可能性という観点からいいますと、これまでも原産地表示とか、いろいろなものについて、例えば米の品種であったり、そういうものは、社会的検証という言葉の中で、実際には違反の可能性、検証可能性も、科学的検証だけではなく社会的検証が行われてきました。

それから、IPハンドリングのお話がありましたが、それとは別にトレーサビリティーということもありますので、していないことのトレーサビリティーも含めて考えれば、していない表示、例えばどのぐらいのパーセントでとか、そういう話はまた詳細は後にしますが、御検討いただければと思いますが、していない表示に関しても、トレーサビリティー、社会的検証を組み合わせていけば可能性は十分あるのではないかと思います。

加えて言いますと、今、ゲノムの塩基配列、一定のところを切るというものが、自然に起こったものと人為的に切ったものが同じ、それは結果としてそうなるのはわかりますけれども、もう少し総合的に見た場合に、技術的な進歩があり、決まった塩基配列のところだけ切れているのか、あるいはその他のところも少し見ることによって、識別できる技術発展がないとも限らないと思いますので、この辺は今、医薬品の世界でもすごく速く進んでいますので、その可能性もあるのではないかと思っています。ですから、適宜、見直すという言葉を消費者庁の原案の中でもつけていらっしゃいますが、それは大変重要ではないかと思います。

国際整合性のところでは、今、御紹介がありましたけれども、全然検討していないわけではなく、検討していたりということも紹介されましたので、日本もこれから検討するということでは、特別、検討することが国際整合性に反するということではないと思いますので、検討していかれればよろしいかと思います。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

①、②、③、④に従って御意見をいただいたと思います。厚労省の届出、実効性を徹底していくということで、その情報を表示に反映していくべしと。もう一方で、きょうのお話の中ではまだ出ておりませんけれども、今後、ゲノム編集でないという表示、遺伝子組換え食品の際に遺伝子組換えではないという任意表示をどのように見るかというのが一つポイントになっておりましたので、こういったところに関連して、ゲノム編集でないという表示、ここも議論すべきであろうと。その点には、社会的検証の仕組みを組み合わせていく必要が出てくるであろう。  あと、検証に関しては技術的進歩というところで、現時点では自然交配、ナチュラルオカレンスでのゲノムの変化、こういったところと人為的な編集というものの識別が科学的に検証できないというところからスタートしておりますけれども、仮に技術的進歩がさらに目覚ましいものがあり、これらを識別できるようになれば当然今の議論の根底が覆っていくであろうと。そうなれば今の議論自体は逐次見直していく必要があるので、その周期といいますか、見直しの頻度というところもしっかり考慮すべきである。国際的な議論も必要であるというところで意見をいただいたかと思います。ありがとうございました。

渡邊委員、夏目委員の順番で行きましょう。

○渡邊委員 渡邊でございます。

まず、このゲノム編集にしても、遺伝子組換えにしてもそうなのですけれども、遺伝子組換え食品の場合は、たまたま出回っているのが、いわゆる食品としての性質は、特に例えば甘くなるとか栄養リッチとかいう話ではなくて、例えば生産性が向上されるとか、そういう話ですので、どちらかというと遺伝子組換えでないという表示のほうが先行したような気がするのですけれども、例えば本当に食品の性質で栄養価が高くなるとか、甘くなるとか、そのような食品ができた場合は、多分その食品だけが独立して選別して流通するような形になると思うので、そういう場合だったら多分表示できると思うのです。ただ、そういう食品ばかりではなくて、今後の表示制度を考えるときに、従来の食品と全く性質が変わらないようなものの場合、当然混ざって流通するようになるので、全く意識しないで使われるということも当然起こり得るのです。表示制度を考えるときには、ここに実行可能性がありますけれども、そのように特別に扱われているものを使う場合は表示したらいいと思うのですが、そうではなくても混ざってくるような場合も考えた場合、使う側として、そこに含まれているかどうかが全く分からないで、普通の食品、原料として使っているのに、実は含まれているのだよと言われるようなケースが生じるのですね。

そういうことも表示の場合、考慮しなければいけないので、本当に初期の段階、どういうゲノム編集食品が出回っているかがはっきりしないのでよく分からないのですけれども、本当にそれだけが独立して扱っているようなものを取り扱うのだったら表示したらいい。逆に事業者も表示したくなるのではないかと思うのですけれども、全ての表示制度としてゲノム編集食品が含まれていたら表示しなさいということになると、これは無理ではないかと思っています。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

では、夏目委員、お願いします。

○夏目委員 まず、消費者の意向というところですけれども、消費者庁の資料からも、それから、これまでの厚労省のパブコメからも、消費者の中で意見を寄せられている方というのは、やはりゲノム編集技術応用食品に対して懸念、それから不安を持っている、これは事実だろうと思います。そういう人たちの不安や懸念を払拭していくために表示が求められている。これも事実なのだと思います。

これから先、技術が進歩して検証できるとか、そういう話は別にして、現時点で議論をするときに、厚労省が、やはり私も届出を義務にしなかったというところはとても残念に思っていて、難しいという御説明をいただきましたけれども、届出が義務でないものに表示を義務づけること、これはとても難しいし、あり得ないのではないかと私は考えております。仮にここで消費者庁が表示を何らかの形でしていこうとするのだったら、任意であり、例えばガイドラインであり、ガイドラインはちょっときついものがありますけれども、通知であったりと、そういう方向に行かざるを得ない。消費者の意向に沿って表示をするときには、義務ではなくて任意をとらざるを得ないのではないかというふうに、今、考えざるを得ません。

これまでの御説明があったように、義務ですと検証可能でなければならないというところで、検証が今はできないわけですから、それは明らかということになって、残念ながらそういう形にならざるを得ないのかなと思っております。

それで、1つ消費者庁にお伺いしたいのは、今、ゲノム技術応用食品というのは実際の市場には出ていないわけです。これから出てくるだろうと想定されているわけですけれども、今までに例えば現実に食品として市場に出ていないものに表示をするのかしないのかという議論をして、そして、流通実態に応じて変化させていったという事例があったのかどうか、あるのかどうかというのをお伺いしたいと思っております。

消費者がなぜこのゲノム技術応用食品について不安や懸念を抱いているかと、私が考えるにはですけれども、やはり消費者、私どもは、食べるものは長い食歴の中で、こういうものは安全で新しいものを取り入れることができると、その食歴の中から新しい食品を選んできたと思いますけれども、このゲノムの場合は長い食歴がないわけでございますので、幾ら安全なのです、従来の育種方法と同じなのですよと、成果物は一緒なのだと言われても、そこに食歴がないことに対する不安、安全性は大丈夫なのと疑問に思うのは当然のことかと思いますし、もし出していくならば、事業者はそれに対して真摯に応えるべき義務があるのではないかと思っております。まず消費者の意向のところではそんなことを感じております。

○受田部会長 ありがとうございました。

まず意見をいただいて、質問のところを御回答いただこうと思うのですけれども、先ほどの夏目委員の御質問は、後半の食歴、要は食習慣がない。つまり、流通実態のない食品に対して表示を義務づけたり、任意表示をしたりという過去の実例があるのかというお話ですね。

お願いします。

○消費者庁赤崎食品表示企画課長 御質問どうもありがとうございました。

文字どおり流通実態がない、新しくマーケットに出てくるような食品について、どの時点で表示のあり方について検討し、必要であれば義務をかけてきたかということですけれども、流通実態がないものが新しく出てきた過去の例としては、やはり遺伝子組換えがあると思っています。それ以外の、例えば産地表示とか期限表示については、食品そのものは既に流通していることを前提として、付加的な情報としてどのようなものを消費者が求めるのか、そういうたてつけの議論だと理解しています。

遺伝子組換えのときで考えますと、そのときは現実に遺伝子組換えというオペレーションがなされた食品が実際に流通して、その現実を少し後追いする形でいろいろ検討がなされ、最終的に義務の制度がつくられるに至ったと承知しております。

その意味では、今回は遺伝子組換えのときと比べると少し早いというのは確かにあるのかもしれませんが、一方で昨年7月にEUの司法裁判所で先ほど御説明したような判決も出ております。並行して安全性審査、食品衛生の観点の御議論も今なされておりますので、我々としては、できるだけ早く何らかこの表示のあり方についても世の中にお示しして、事業者の側から見て予見性を持った対応、少しでもその一助になるようにということで検討しております。

ただ、これまで多くの委員の方からお話しいただいたように、実際に流通がなされてくると、また現実を見て適切な対応をとらないといけない。そういうこともよくよく心がけて、今後の検討に取り組んでまいりたいと思っております。

○受田部会長 夏目委員、今の質問に関しての御回答はよろしいでしょうか。

○夏目委員 遺伝子組換えの場合は先に商品が市場に出ていたということで、全く今度のゲノムの場合とは様子が異なると私は捉えておりまして、恐らく初めての事例だろうと。ですから、ここでの議論なり、とても大きな先例になるのではないかなと思って、責任が大きいなと感じた次第です。

○受田部会長 おっしゃるとおりですね。ありがとうございます。

菅委員、お願いします。

○菅委員 菅です。きょうもよろしくお願いします。

全体的に科学的検証が難しいということを強調し過ぎて、表示義務を課さなかったり、任意の届出制でいいということにすること自体で、選択をして食べたくないと思う人にとっても、あるいは選択をして良いものだとして食べたい人にとっても、その素性が非常に分からなくて不幸なことになると思いますし、選択をして食べてもらおうと思う事業者にとっても、差別化の根拠がトレースできないということになりかねなくて、非常に混乱を生じるのではないかと懸念しています。

本日の資料中にも、消費者からの小さくない声として、消費者の知る権利や、自主的かつ合理的選択に資するための全面的な義務的表示を求めることができないのかというような意見がありますし、それに必要なトレーサビリティーの仕組みが整備される必要があるのではないかという意見も出されていますし、きょう委員の皆さんからも表示をする方向での意見が出ていると思うのですけれども、私としても基本的にそのような表示やそのためのトレースを求める方向性にできるだけ英知を絞っていただきたいと思っています。

そもそも、表示のルールも満足に決まらないうちに、そんなに拙速に、表示もないまま流通に置かせ始めてしまってよいものかどうかについて、根本的に大きな疑問があります。今の遺伝子組換え食品表示のルールとの関係で、安全性審査や義務表示が適用されることになるものにルールに従った表示がなされることは当然だと思いますけれども、それ以外のものについても、まずはとにかく表示がなされる形で運用されるルールが始まることを目指していただきたい。その後、表示を不要とすることができるものがあるかを議論する余地はあっても良いかもしれませんが、まずは全てにできるだけの表示がなされる方向へ持っていっていただきたいと思います。

科学的に安全と評価すべきなのかどうかについて、ここで正面切って議論する気は全然ありませんけれども、ゲノムの世界ではどこにどのような意味があるかについて、日々新たな発見があるというふうにお聞きするわけなので、それは裏を返せば分かっていないことが安全性に関することについてもまだまだたくさんあるに違いないということでもありますから、やはり、今まで知れたる知見に基づけば、特段の安全性審査などを経なくても、安全で「あろう」と思われるというものであっても、選択する消費者が個々にそれを安全だろうと信じるか信じないかについて、選択の際に考慮したいというのは決しておかしくないと思います。

御説明の中で、遺伝子組換え食品と違う部分とか、従来育種と若干類似する点があるという御説明はありますけれども、例えばタイプ1については従来育種との比較では問題ないのではないかというような説明があったりしますが、そもそもこの御説明を消費者として初めて聞いたときには、従来育種とされるものの中に単なる自然交配ではなくて放射線照射などでゲノムを壊す技術が既に相当程度導入されていて、それに届出が要らなくなっているということ自体、何故それでいいのだろうかと思うほうからスタートするのではないかと思うのです。ピンポイントだからむしろ安全だとか簡単だというような御説明も、先ほど夏目委員もおっしゃったと思うのですが、従来育種が長年の時間をかけて安全であるものを生み出そうとして、また、食歴の中で安全なものが淘汰されてきたという結果の産物であることと比べて、単純に多くの消費者にすぐに安心感を抱かせるには全く足りないのではないかと思いますし、オフターゲットという難しい問題もあるという話もお聞きするところですから、なかなか何もなしで流通するということについては懸念があります。

どうして任意の届出制でよくて、どうして任意の安全性確認でよいとするのか、そうしてしまうことを前提とすると表示に義務的に反映させられるのかという疑問も先ほど他の委員から出されたのですけれども、その前提自体も是非見直せないものなのかなと思います。そうした考え方を前提に、一部のゲノム編集食品について、公的な安全性審査もせずに任意の届出制度で足りるということにし、さらに表示義務まで課さないとすると、遺伝子組換え食品以上の混乱や不安を与えるのではないかと懸念します。

例えば、遺伝子組換え食品については、曲がりなりにも公的な安全性審査をクリアした限定した食品だけが流通を許されていて、それを選択するかどうかはともかくとして、国としては一応安全だと認めたものが流通していることになります。先ほど大豆と豆腐云々といったお話もありましたが、遺伝子組換え食品についてより充実した表示を求める私の立場からは不十分ではありますけれども、一応表示もなされて売られることになるわけですね。ですけれども、ゲノム編集技術応用食品については、安全性審査は必ずしも必要ではなくて、みずから安全性確認を行ったことを届出する義務すらなくて、それで流通させることができるルールということになりますので、消費者側からすると、安全性のお墨つきも確認も保証されていないものが出てきてしまうことになる。そのことを表示する義務がないため表示なしで流通されて、消費者は食べたくないと思っても知らずに食べるしかなくて、後から万が一にも安全性が問題となった場合には、もう検証するのが難しいということになるのだとしますと、大きな不安を生じます。届出が義務であるだけでも、一定の安全性チェックが公的に図られる可能性があるというレベルでの信頼は選択の際に与えられうると思いますが、その保証すらもないというのは、選択にとって非常に危険なのではないかと思います。

今までは、遺伝子組換え食品において、8作物や33食品群を選ぶ際に表示を見てどうするかということで考えればいいのでしょうけれども、これからいろいろな作物や食品群に幅広く、ゲノム編集されているけれども表示がないものが広がると、そういうものが国産でも流通されるということになると、変な話ですけれども、例えば、国産はやめておいて、ゲノム編集をしていない国のものを買うというような混乱や、必要以上の不安な状態が生じてしまうことも考えられないかなと思います。

ですので、先ほど表示制度を考えるにあたっての4つの考慮要素と挙げられていますけれども、そのうち消費者の目線がどこにあるのかというのが、今までいろいろ伺っている御説明の中ではすごく心配になるような御説明ではないかと思います。

とりあえず以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

今、渡邊委員、夏目委員、菅委員の御意見をいただきましたけれども、もともとの厚労省サイドでの届出の部分が任意なのか、義務なのかというところから表示は当然関連していくということで、任意で任意、これはあるかもしれないけれども、任意で義務というのはあり得ないのではないかというお話もありました。

また、消費者の不安の声、あるいは消費者の自主的・合理的選択の機会の確保という点から不安の払拭を明確にすべきというお話もあったわけでございます。

それと、渡邊委員がおっしゃった中で非常に印象深いのは、先ほど宗林委員からゲノム編集ではないという表現で、「でない表示」とか遺伝子組換えのときに言っていましたけれども、「でない表示」が価値を持ってしまうといいますか、そういう印象を与えることをどのように考えていくかという議論がGMの際にはあったのです。一方で、渡邊委員が御指摘のとおり、例えば今、開発が進んでいると言われているGABA、γ-アミノ酪酸を高濃度に含むトマトとかいうことになると、これは栄養成分的に、あるいは機能性表示成分の一つかもしれませんけれども、そういった意味で保健機能食品的な価値まで訴求できるかもしれない。となると、ゲノム編集という技術自体が一つ価値であり、ブランドになっていくので、その辺もGMとはちょっと違うだろうという御指摘もございました。いろいろな視点からいただいております。

先ほどもありましたとおり、きょう、この食品表示部会としてどういう表示にすべきかというような結論を導くつもりございませんので、まずはいろいろ意見をいただき、そして、例えば考えるポイントとして欠けている部分などは、ぜひ御指摘をいただきたいと思います。

続いて、いかがでしょうか。

安達委員、お願いします。その後、松永委員、下浦委員といきましょう。

○安達委員 先ほどからお話を伺っていて私が思いますのは、やはり社会的検証が確実にできるかどうかが現時点ではっきりしていないというところが大きなポイントになってくるのではないかと思っています。

表示に対する消費者の意向というのは、やはり非常に大切であると思います。なので、事業者さんのほうでゲノム編集食品であることが明確であるもの、あるいはゲノム編集食品を原材料として使っていることが明確であるという情報を確実に取得されているものについては、ぜひ表示をしていただきたいと考えております。

ただ、表示の全面的な義務化というのは、現時点ではやはり難しいのではないかと思います。まず、科学的検証ができないという現実が今のところではございますし、先ほどからお話に出ていますように、厚労省への届出が義務ではないという現状がありますので、現時点で社会的検証を確実にできるという保証がないわけです。なので、事業者さんのほうで表示を全面的に義務として行うというのは実際上困難であろうと考えております。

この社会的検証を確実にできないであろうという状況を、多分、今後変えていくことが大切になってくるのではないかと思います。先ほど吉田課長から実効性を高めていきたいというお話がありましたので、ぜひそういう方向で今後考えていただきたいと思います。

また、これから実際に流通してくるであろうゲノム編集食品の流通状況を見ながら、届出の状況も見ながら、あるいはゲノム編集の検出技術の進歩状況を見ながら、表示制度については今後、見直しを継続していくことが重要であろうと考えております。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございます。

続いて、松永委員、お願いします。

○松永委員 松永です。

考え方を整理してきましたので、義務表示と任意表示ということで考えを述べたいと思います。ちょっと長くなると思うのですが、お許しください。

まず、義務表示化ですけれども、消費者庁の御説明がありましたが、私も義務表示制度を課すことはできないと考えています。それは科学的検証ができないということ。それから、社会的検証という話もありますが、社会的検証にしても、どこかでそれが真正かどうかという基点が必要なのですが、ゲノム編集食品の場合には、例えば農場の段階の大豆を分析しても、それは分からないわけですね。真正性を事業者自身が確認できない、それがゲノム編集なのか編集でないのか、事業者自身が確信を持って把握できないようなものに対して義務表示、義務を課すというのは無理だと考えています。

それと、消費者庁のポイントというところに入っていないのですが、私はやはり公平性を担保するというのが制度においてはとても重要だと思っていますので、先ほどからお話に出ました、放射線とか化学物質による突然変異育種と比較した場合には、突然変異を何らかの形でかけて、その後はゲノム編集と全く同じで、選抜したり、戻し交配したりして品種にするというところは全く同じなわけですね。それをゲノム編集という技術を使うか、突然変異という技術を使うか、化学物質を使ったりいろいろなものを使うというような、その違いだけなのです。それに現状、義務を課していない以上は、公平性の担保からいっても、ゲノム編集のみ特化して何かいろいろなことをするというのはできない。著しく公平性を欠くことになってしまうので、それはできない。それは消費者が幾ら要望したとしても、そういう感情的な判断をしてはいけないと私は思っています。

ただ、消費者が表示を、これがどちらなのか知りたいという消費者の要望というのは当然ありますし、消費者は気にしない人もいますけれども、気にする人もいて、そういう製品を届けたいという事業者も当然いるわけです。ですので、やはり任意表示制度をしっかりつくることが大事であろうと。任意表示は、当然ゲノム編集であるという任意表示もありますし、ゲノム編集でないという表示もある。これをきちんと制度をつくるということが今回のポイントではないかと思います。この制度を、任意表示をきちんと制度化できれば消費者の要望にも応えられるし、事業者の努力もきちんと活かされる。

そのときに、その任意表示も科学的な検証というのは無理なわけですけれども、現状の他の様々な任意表示もその根拠、科学的根拠が必要だというふうには厳密には定めていないのです。事業者の責任で、事業者の努力によって行われる。割と自由に表示ができるというのが任意表示なので、事業者が自分で責任を持ちますという限りにおいては、事業者が社会的検証でいろいろな確認をして、その上で私は自分の責任でゲノム編集であるというふうに表示しますとか、ゲノム編集でないというふうに表示しますと。自らの責任でするということを妨げる根拠は何もないわけで、ここの制度をしっかりとつくらなくてはいけないと思います。

しっかりと、というところが非常に重要で、実は任意表示というのは消費者に非常に混乱を招きやすい。なおかつ風評被害につながりやすいということが数々の事例から示されされていると思います。端的に言うと、遺伝子組換えがそうで、遺伝子組換えでないという任意表示によって、遺伝子組換えは安全性に問題があるというような誤認を広げてきたということもあります。それから、いろいろな添加物も無添加であるということで、安全で健康によさそうみたいな消費者の誤認を生むというのが、平成29年度だったと思いますけれども、消費者庁の消費者意向調査で明らかになっています。

この「ない」というような任意表示は非常に誤認を招きやすいものになってしまうので、そういう意味では、ここの制度をどのように消費者庁が示すかというのが、消費者の選択に資する。なおかつ事業者の努力が報われるというところではポイントになるだろうと思います。

なので、ここから先は消費者庁が考えていただければいいと思うのですけれども、やはりQ&A等で目安というか、ルールみたいなものをできたら示していただきたい。その際には、そのものを科学的に調べるのは無理にしても、例えば種苗会社が、これはゲノム編集技術を用いた品種でありますということを保証して、その種子を提供して、それを栽培して出てきた原材料であれば、それはある程度の信頼性が置けるわけです。ですので、そういう種苗会社を巻き込んだ社会的検証みたいなこと。さらに、それが本当にそうなのか、系統が明らかであるということをきちんと担保してほしい。それを使っているということを加工事業者とかがきちんと書類を保存しておいて、確認できるというようなこと。それから、ゲノム編集でないということを表示する場合には、混入防止策、ゲノム編集であるものが混入されないような防止策がいろいろな段階で講じられているみたいなことを、事業者の責任で担保しなさいよというようなルール、そういうものがQ&A等で示されれば、事業者もある程度スムーズに、消費者の選択に資する任意表示というところに進めるのではないかと思います。

どうして任意表示についてこんなに説明に時間をとるかというと、やはり風評被害にまでつながってしまうということが大きいです。もう一つ、遺伝子組換え技術が取り入れられた初期には、とんでもないものが非組換え表示されたという事実があります。組換えがないようなワカメとかタラコを、非組換えワカメとか非組換えタラコというような形で某生協さんがカタログに載せて売っていたというようなとんでもないことも起きてしまっていて、こういう任意表示は混乱を招きやすいので、そこら辺を十分配慮した上で、なおかつ悪徳事業者が、ゲノム編集技術を確認していないのに、ゲノム編集でないということを表示するようなことがないように、双方から任意表示の制度をきちんと消費者庁につくっていただけたらいいなと思います。

もう一点なのですけれども、任意表示なので、消費者はいろいろな消費者がいるので、その方たちの選択に資する表示制度をつくるというような意味での任意表示というのはとても大事だと思うのですけれども、うっかりすると遺伝子組換えと同じように、ゲノム編集でないというほうが安全であるというような誤認を招きかねないですね、この任意表示というのは。これはとてもよくないことで、ゲノム編集でないほうが安全であるという根拠は今のところ全くないです。なので、こういう誤認を招かないように、任意表示制度を動かすことと並行して、リスクコミュニケーションなどに力を入れていただきたい。

それで消費者意向調査の項目に盛り込むなどして、消費者の意識を継続して把握する。誤認を招いている、遺伝子組換えみたいなことになっているよということがわかってきたら、その次、迅速に対応して、そういう誤認を広げないようにするというようなことまで考えた上での任意表示制度を構築していただければいいかなと思います。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

それでは、下浦委員、お願いします。

○下浦委員 私のほうは、消費者の意向というところの部分を自主的に選択できるようにするべきだというのは変わりないかと思います。

先ほど松永委員がおっしゃったように、任意表示が有効と考えます。当然、ゲノム編集食品であるという部分と、それと従来の育種技術によって行われた部分、その辺の表示の仕方といいますか、示し方については、またこれから議論していただければいいと思います。

表示制度の実効性、また、検証可能性というところで、まだまだそういうことができないという部分について、児玉先生と山川先生がいらっしゃっておられますのでお聞きしますが、実際にゲノム編集をする技術というのはそんなにどこの業者でもできるわけではないかと思っていますが、現在、流通実態がないという部分で、こういった業者はこれからどんどん増えていくのか逆にそんなに容易に誰彼もできるような技術なのかということを確認したいと思います。その辺はいかがでしょうか。例えば特別な機器が必要であるとか、特別な技術がすごく必要なものなのか、素人なのでよく分からないので、御教授よろしくお願いします。

○受田部会長 では、今、質問いただきましたので、児玉先生、山川先生から技術的なお話をしていただきましょうか。

○児玉教授 ゲノム編集技術は特別な事業者でないとできないのかということなのですけれども、まさにこの表示とか規制と表裏一体でして、いわゆるそういう技術を持って、そういうことをすることにメリットがあると感じられれば、いろいろな業者さんがやるようになると思います。作業自体はそんなに難しいものではありません。私、この場で言うのがいいのかどうか分かりませんけれども、もしゲノム編集が世の中に割と広く受け入れられた場合、極端な話、農業高校で学生実験でゲノム編集する。そこで非常にいい品種ができてしまったということは起き得ると思います。となると、そういういいものができたなら種屋さんが買うということも起き得ると思います。そのレベルの技術であると思っております。

ただし、社会的な受容がなければメリットがないという判断になりますので、それは遺伝子組換えの場合と同じですけれども、小さい業者さんはほとんど行わないという形になるかと思います。

○受田部会長 今の児玉先生のお話を受けて私のほうから質問なのですけれども、仮にそういった、昔、遺伝子組換えも一つの組換え体をつくれば学位論文になっていた時代が、まさに学生実験レベルでやれるようになっていくという技術革新がございました。同じように、ゲノム編集技術というのも、今はかなり最先端の研究、あるいは技術がなければできないと思っているものが、高校生レベルといいますか、かなり気軽にできるようになるとすると、例えばそれを扱う場、環境省的に言うとカルタヘナ法というのがあって、拡散の防止に配慮しないといけないというのがございますね。きょう、厚労省の取扱いに関しては各省庁の使用についての届出あるいは義務、任意の話でしたけれども、それ以前に、カルタヘナ法に基づいてこれを拡散防止しないといけないというところが一つあり、それを商品化していくときには、拡散の防止が一旦制約は外れるのですけれども、そのあたりの環境的な部分はどのように考えたらよろしいのですか。

○児玉教授 環境的な部分といいますか、カルタヘナ法との関係になりますけれども、一旦遺伝子組換え体になりますので、当然、カルタヘナ法に最初のうちは準拠した実験を行わないといけないということになります。ですから、高校生ができるとはいっても、いわゆる農業高校のちゃんとした実験施設で行う必要は当然出てきまして、一般の普通の高校生が夏休みの課題でやるみたいなことは、日本ではまず起き得ないのではないかと思います。

ただ、農業高校といえども組織培養は普通にやっておりますし、そこに先生方の間で遺伝子組換えの評価委員会をつくれば実験できることになりますので、将来的に、社会的に受容がされれば、この遺伝子を破壊すればこういういいことが起きてくるよということが分かってきた場合に、自分の作物でそういうことをやってみたいというようなことが起きて、農業高校でそういうことも行われるということは十分あり得るのではないかと。

○受田部会長 ありがとうございました。

山川先生、お願いします。

○山川特任教授 今の続きになります。農業高校あたりでいい品種ができたというときに、まず品種と言っていいのかわかりません。というのは、それがちゃんと後代に伝わって作物として使えるか。あるいは成分が変化していないかというのは調べて届け出なければなりませんから、そう考えると、個人のレベルではきつい。やはり今までの種苗会社だとか、そういうレベルのものを持っていないと、戻し交配をしなくてはならないとかいうことになってきますので、アイデアの種はできるかもしれないけれども、それを商品として流通させるまでにはやはりそう簡単ではないと考えます。

○受田部会長 ありがとうございます。

○下浦委員 ありがとうございました。まさに私はそこが聞きたくて、要するに厚労省への届出がなされないと、なかなかそういった意味では広く流通しないという若干の縛りがあるというところで安心しました。ありがとうございます。

○受田部会長 ありがとうございました。

吉田課長。

○吉田食品基準審査課長 どうもありがとうございます。

今、山川先生に御回答いただいたとおりでございますけれども、カルタヘナ法の観点からいきましても、今後、農林水産省におきまして一定の取扱いが示されると思っています。その際には、環境中への影響が本当にないのかどうかというような確認した内容を届けなければいけないとか、そういった話はありますし、それを今度、食品として出すという話になりましたら、今度は厚労省の私どものほうに一定の遺伝子が本当に残っていないのかであるとか、安全性上本当に変な毒性物質が出ていないかどうかとか、そういったものは当然、遺伝子の状況の検査であるとかデータベースを使って、そういったものの検証をするとか、そのような諸々の確認事項は当然発生いたしますので、恐らくゲノム編集技術そのものはそんなに難しい技術ではないのだとは思いますが、それを社会的に流通させるためには、カルタヘナ、それから食品衛生法上の観点での確認事項というのは一定の技術なり、施設なり、手続なりが必要になりますので、そういった社会的な負担というのはかなりあると認識しております。

○受田部会長 ありがとうございます。

では、池戸委員、お願いします。

○池戸委員 先ほどから各委員からいろいろな御意見が出ていて、私自身もこの前までこの委員会で遺伝子組換えの表示の議論がありまして、それとたまたま関連が非常に深いと。遺伝子組換えのきょうの議論は安全性ということではなくて表示の議論です。ただし、消費者の方から見ると、どうしても安全かどうかというところでの不安で自主的・合理的な選択の分野とはいっても、そこを知りたいというのは正直なところだと思います。

結論からいうと、やはりこれは義務を今までの形でつけるのは残念ながら難しいということなのですけれども、ただ、それなりの情報提供をするような仕組みが必要かと思います。先ほどから厚労省の課長も、先生方も言われたように、実際の商取引上でこういう新しい品種がそんなに簡単にあちこちから出るということは私も考えていません。そうすると、事前にいろいろな説明をやるというのは、裏を返せば、助言とか指導を含めてきちんとした、ある程度扱っている企業さんというのも限定され、素性も分かっているので、そこに対しての意思疎通の中で続けていくということで、実質的同等性など今までの遺伝子組換えと同じような形でやられると思います。

きょうはその議論ではなくて、表示の監視もそれ以上になかなか…、では何かいい方法はあるかというと、やはり難しいと思われます。たとえばそういうことはないと思いますが、スタートのところで、悪意を持って偽ったところをきちんと確認できるかどうかというと、そこはなかなか難しいですね。ただ、先ほどから検知技術の開発が出てくればという話なのですけれども、そういう科学的検証の部分が本当にできれば一番理想的なのですが、これも本当に可能性があれば、民間ベースではなくて公的なところが積極的に努力してやっていくべきだというのが一つです。

あと、消費者の方がいろいろなパブコメで御意見をいただくのですけれども、ゲノム編集というその言葉とか中身自体をよく分かっていないといいますか、関心のある人は勉強されているのですけれども、やはり一般の消費者に突然そういう話をしても、それは事業者も同じだと思うのですが、本当に安全でしっかりしたものが出てきたとしても、本当はいいのだけれども、効率性からいくと数段いいものが出てきて、値段も安いというものが出てきたとしても、消費者の反応で事業者も動きますので、そこのところをゲノムやゲノム編集というものがどういうものかというのを、消費者だけではなくて事業者、これはコミュニケーションではなくて普及啓発の分野になると思うのですが、そこはじっくり時間をかけて同時にやっていかないと、意向調査は今の時点、すなわち知識と理解か不十分の中での調査と、そういうものが本当に皆さん理解を深めて正確に把握した上での反応とでは違ってくると思うのです。そこは本当に重要な部分だと思いますので、それはこの後のリスコミの話になるのかもしれないですけれども、私は今お聞きしていて、感想ですが、そういうふうに思いました。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございます。

リスコミの話は先ほど松永委員からもいただき、今、池戸委員からもいただいたので、その御意見は参考にしながら進めていきたいと思います。

まだ御発言のない澤木委員、樋口部会長代理、そしてまた菅委員から御発言ということで、お願いいたします。

○澤木委員 ゲノム編集、新しい技術ですが、あと遺伝子組換えと、そういう言葉を聞くだけで消費者の方は、やはり懸念や不安を感じる方がほとんどだと思いますので、できれば表示はしていただきたいところではありますが、義務までとなると、先ほどから皆様がおっしゃっていますように、科学的な検証ができないというところで、義務はやはり難しいのかなと思います。任意表示ということで枠外にでもゲノム編集食品、また、マークなどで分かるようなものがあれば、そういう表示をしていただければ、消費者としては選択が可能なのではないかと思います。

それから、先ほど遺伝子組換えは8品種で、それ以外のものについては「遺伝子組換えでない」と書けないようになっておりますが、ゲノム編集の場合、まだ何種類のものが出てくるか分からない中で、これはゲノム編集食品ではないというような文言だけが出てしまいますと、やはりゲノム編集というのは怖いものだという消費者の方、「遺伝子組換えでない」と同じなのですけれども、そのようにとられる方が多く、不安が募ってくるのかなというところはありますので、ゲノム編集でないという表示、任意表示にするにしても、その辺は気をつけていただきたいと思います。

あと、届出の件なのですけれども、届出の実効性の確保を、本当は義務にしていただきたいところですけれども、そこが難しいとなれば、100%で周知徹底をぜひお願いしたいというところです。

前回の配布資料にゲノム編集のステップ1、2、3という表がありましたが、この2と3の間の境目ですね。ピンクのところは安全性の審査をするけれども、それ以外のところは届出だけだというところで、万が一外来遺伝子を導入しているにもかかわらず、うっかりミスとか、故意でなくても届出がされない可能性はないのかなという懸念がありますので、その辺、ぜひ徹底していただきたいと思います。

それから、実際のところ、どのくらいのものが出てくるのかよくわからないのですけれども、適宜、表示制度の見直しはお願いしたいと思います。

あと、事業者さんにとっては、多分、最初のうちはそれこそ甘くて長もちするトマトとか、栄養的に優れたものとか機能性を持つもの等が考えられると思いますので、そういうものは大いにPRしていただくほうがいいのではないかと私は思いますので、ぜひ表示を任意で構わないのでお願いしたいと思います。

○受田部会長 ありがとうございました。

樋口部会長代理、お願いします。

○樋口部会長代理 素朴な質問で恐縮なのですが、先ほど消費者庁の御説明の中で国際整合性というお話があったのですが、表示については国際整合性が非常に重要なものになっていくということはまさに御指摘のとおりだと思うのですが、EUとアメリカの状況というのが資料の中に参考として書かれていますけれども、例えば、私は全くこの知識がないのですが、国際機関等は今、どういう状況にあるのか。あるいはその中で日本のポジションはどういう状況になっているのかということについて、何か情報があれば教えていただければと思います。

○受田部会長 では、これは消費者庁のほうからお答えをお願いします。

○消費者庁赤崎食品表示企画課長 御質問どうもありがとうございます。

国際整合ということで、国際機関の動向ということですが、今のところ、ゲノム編集技術応用食品の表示について、国際的な議論がなされているということは承知しておりません。

あと、1つ御参考までに御説明させていただきますと、遺伝子組換え食品の表示というものがございますけれども、これも今のところ国際的な規格はないとなっています。一度、コーデックスという場で議論をした経緯はありますが、具体的な表示ルールについては関係各国との調整がつかず、まとまらず、それで今に至っていると承知しております。先行している遺伝子組換え表示で国際食品規格がないという実態がまずありますが、その上で、ゲノム編集技術について、仮に国際的な場で今後検討が進むことになれば、消費者庁としてはその議論に当然参画をして、それまで日本国内で蓄積された知見を踏まえて、適宜対応することになると思っております。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

これで各委員から一通り御意見をまずいただいたかと思います。そして、①、②、③、④の一つずつ、あるいは相互に関連し合いながら、それぞれのお立場で御意見を賜ったと思います。あえてここでまとめるつもりはありませんけれども、多くの皆様が同じような印象を持たれている部分があると思います。

この後はリスクコミュニケーションに話を移していきたいと思っているのですけれども、この議論の中で。

菅委員、お願いいたします。

○菅委員 すみません。先ほどの発言で意見を述べ尽くしたわけではなかったので少しだけ補足させてください。

今までの議論の中でも少し出ていると思うのですけれども、せっかくコストをかけて開発されたのですから、一定の特殊な食品であることを、種を売る上でも、できた食品を売る上でも、強調することが多いのではないかと思われます。そうした特別な食品であるということをうたうことを一方で認めながら、食品の素性については、まさにどうやって開発された食品なのかを任意の表示とすることで、オープンにしないこともできるというのは、そうする必要性は理解しがたいものがあると思っています。

当然、安全でもあるとして売るわけなので、やはり堂々と「ゲノム編集技術を活用してつくりました」と書いてもらえばいいのではないかと思っていまして、そうやって種などのレベルから食卓まで情報をトレースできる仕組みをつくるということが必要で、それを用いて広めたい事業者にとっても、そういう仕組みをつくることが必要だと考えていただけるのではないかと思いますので、およそそういうことができないということではないのではないかと思っています。

やはり届出が任意であることで、安全性の確認が必ずなされているということが保証されない。そうでないものが流通していると危惧するような状況は避けるべきで、確率は低いかもしれませんけれども、そういうものが流通し得るという状況はできるだけないような全体の仕組みにしていただきたいと思います。

先ほど「である」と「でない」の表示のお話があって、「でない表示」という表示の可能性についても皆さん御意見があったと思うのですけれども、届出が任意で、何の食品・食品群に今導入されているのかが把握されず分からないため、それ故にあらゆる食品に手当たり次第に「でない」という表示をしなければいけないようなことになるのは大変問題があるように思います。遺伝子組換え食品表示ルールとの整合性も難しいところなので検討していただきたいのですが、届出が任意であるならば、「でない表示」以上に「である表示」の方、ゲノム編集技術でつくられたことを表示する方法を中心に考えていくことにならざるを得ないのではないかと思います。ゲノム編集されたものの流通があり得る食品・食品群だからこそ「でない」と書く意味があるという状態が保証されなくなると、それこそ表示面積の問題では済まないことになりかねないのではないかと思います。

また、きょうはそこには議論が行っていないですけれども、従前の説明でカルタヘナ法とは線引きが少し違うことになるかのような厚生労働省におけるタイプごとのコントロールのされ方についても、なかなか納得しづらいところがあります。それが表示にどう反映されるのかというときに、それか科学的に検証できるかどうかというところにつながるのだと思うのですけれども、取扱いが違うということは、理解が間違っているかもしれませんけれども、国内で環境影響評価をせずに自由に栽培することはできないけれども、海外から製品として来るものについては少し緩やかなルールになっているという意味合いがあるようにもとれるのですけれども、果たしてそれでいいのかどうかという点にも違和感があります。今後リスクコミュニケーション等をされるときには、その違いが持つ意味等についてもよく説明していただく必要があるのではないかと思います。

あと、不断の見直しについて皆さんもおっしゃっていますが、私も、各国の英知が今後発表されれば、それをタイムリーにフォローして不断の見直しをすべきで、先ほどガラパゴスという話がありましたが、先行したとても緩やかなルールが日本だけでまかり通っているということのないように、しっかりしたルールにしていただきたいと思います。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございます。

○宗林委員 済みません、1点だけ。

○受田部会長 では、宗林委員、先に。その後に吉田課長にお話を。

○宗林委員 最初のほうにお話ししたので、改めての確認ですが、厚生労働省に届出がされたものについて表示が連動しないということはあり得ないと思いますので、最低限そこは政府内で連動して届出がされたものについては表示、何らかのルールをつくるということでお願いしたいと思います。

○受田部会長 ありがとうございます。

今、宗林委員からも触れていただいたように、厚労省への食品衛生上の取扱いに基づく届出、ここが極めて重要な議論の出発点になっております。2点伺いたいのは、1点は、届出の実効性ということを何度も議論しておりますが、厚労省側から見た届出の実効性を高めるとはどういうことなのかというのを1つ確認。

それから、菅委員からございましたカルタヘナ法、ここの部分が少しまだ理解できていない。要は、使用していく前に栽培をしていくというのが拡散防止とかいうところとどのようにつながっていくかというスキームが見えていない。このあたりの見解をいただきたいと思います。

○吉田食品基準審査課長 御質問ありがとうございます。2点いただいています。

まずは、私どもに出していただく届出制度の実効性をどのように高めるのかという御質問でございます。私どもとしましては、届出の実効性を高めるための取組を、繰り返しになりますけれども、まずは事前に厚生労働省に広く相談をしていただき、さらには必要に応じて専門家への相談の道筋もつくる。そのような仕組みを設けたいと思っています。ですから、まずは届出あるいは審査、その前にまず厚労省にゲノム編集するのであれば相談してもらう。そういうことをやっていきたいと思っております。

そういったことも含めて、あとは事業者への周知を徹底したい。これは国内外も含めてやっていかなければいけないと思っていますので、在外公館なども通じ、あるいは関係省庁、関係事業者団体なども通じて、その届出の徹底を進めていきたいと思っております。

今度は、仮にそのような届出をしなかった場合の対応ですが、任意でございますので、法的な罰則があるかと言われれば、答えはノーでございます。ただ、私どもとして、そういった届出をしなかった業者が後で分かった場合には、まずは、後で分かるということは事後の届出になるわけですから、事後の届出になったということもはっきり分かるような形、あるいはそもそも届出をしなかったことがはっきり分かるような形で、その開発事業者は当然公表させていただく。そういったような意味での社会的な一定の制裁というのはあるのではないかと思っております。

さらに申し上げれば、これも繰り返しになりますが、検知法などの開発につきましては、これも報告書で言われておりますが、当然、私どものほうの厚生労働科学研究等々でもいろいろと、そういったものを含めた研究を続けていくべきだろうと考えています。そういったもので検知する方法が将来開発された暁には、食品などの買い取り調査などを実施するという形をできればとれないかなということも考えておりますので、そういったような諸々の方法を通じまして、任意ではございますけれども、繰り返しになりますが、届出をしなければいけない、あるいは審査を受けなければいけないゲノム編集食品につきましては、当然その対応をとっていただくように、私どもとしてありとあらゆる手を使って、実効性を高めるような取組をしていきたいと思います。それが最初のお答えになります。

それから、もう一点のカルタヘナとの関係でございますけれども、カルタヘナにつきましては、詳細はまたこれから各省庁、農作物であれば農林水産省さんなどが対応を考える形になると思います。1つ御懸念されている部分は、先ほど来ありますタイプ1、2、3で切った場合、タイプ1はカルタヘナであっても我々であっても情報提供あるいは届出という形でそこは同じだろうと考えます。私どものほうは、タイプ2の場合であっても、これは私どもの考え方でございますが、ゲノム編集でつくったものであっても、遺伝子の変化の状況というのが、従来育種の改変と同じ、タイプ1でただ切っただけで置換あるいは挿入を行われたものと、タイプ2をやった場合1~数塩基ぐらいが入った形で遺伝子の状況が変わる場合があります。その場合には、タイプ1とどこが違うのか。それは従来の育種技術の変化等を見た場合に、ほとんど区別がつかないのではないかという専門家の御意見も踏まえて、そこはプロダクトベースでタイプ2の一部、1~数塩基のものまでについては、審査ではなく、届出でいいのではないかと。それを超えるものは、タイプ2については当然審査になるということなので、そのあたりについてはカルタヘナと同じだと思っております。

ただ、そうなると食品のほうが緩いのではないかという御懸念もあるかと思いますが、そもそもカルタヘナと食品のほうで考え方が違っておりますのは、食品のほうはゲノム編集応用食品ということで、ゲノム編集を起こしたそのものから育種過程というか、掛け合わせ、選抜をして、最後のものがどうなのかというのを我々は見ているわけです。カルタヘナのほうは、最初のゲノム編集を行ったその農作物、細胞とか生細胞、それが環境中へどうなのかという形になりますから、見るステージが若干違ってきているところがありますので、そういった意味でタイプ別の扱いに違いがあるのだと思います。

一方で、さらに申し上げれば、食品衛生法のほうが一方的に緩いのではないかという御懸念については、必ずしもそうではなくて、いわゆるセルフクローニング、ナチュラルオカレンスというものの取扱いにつきましては、私どものほうとしては、セルフクローニング、ナチュラルオカレンスであったとしても、それは当然、届出とか安全性審査に該当するものについては対応を求める形になりますので、どちらが緩いとか厳しいというのは、必ずしも言えないと思っていますし、そもそも見る視点と見るステージが若干違うというところがありますので、いずれにしましてもその辺のところは一般の方々によく御理解いただけるように、先ほど来ありますが、今後、農林水産省とも一緒になってリスクコミュニケーションをやってまいりますので、その辺の違いも含めてよく御理解いただけるように取り組んでいきたいと思っております。

以上でございます。

○受田部会長 ありがとうございました。

自然にリスクコミュニケーションの話に入っていこうという感じになっているのですけれども、今、お話がありましたように、関係省庁が横串を刺して、そして消費者の皆様により分かりやすくゲノム編集食品の持っている価値、また、不安といったものにどう対応していくかということが非常に重要で、まさに複数の省庁がきょうは名前としても上げられておりましたので、そこをどのように考えていくか、ぜひしっかりとした御議論をお願いできればと思います。

きょうは植物が中心で話がいっていて、話を聞いたところでは、マッスル・マダイとか水産もありますし、多分いろいろなもの、ちょっと畜産の話も出ておりましたけれども、農、林、水、畜産も含めたいろいろな生物への応用が期待もされますし、予想されているというところから、そこを所掌する部分もさらに広がりが大きいのだろうと思っております。

また、国際の話、④にありましたように、海外から入ってくるゲノム編集食品、それが明らかに食品なのか、加工品なのか、また、食品衛生上の取扱いの中にある食添なのか、その食品のカテゴリーによってもさらに考えていかないといけない部分が多々あると思います。先ほどのお話から関連して、そういった部分までさらに丁寧な説明としっかりした啓発を含めてお願い申し上げたいというところを最後に私のほうから添えさせていただいて、それでここがリスクコミュニケーションにもつながるので、もう少しだけお時間をいただいて、リスクコミュニケーションのあり方に関して皆様の御意見をいただきたいと思います。

ここまでの段階で、松永委員から任意表示が持っている一つの懸念として優良誤認が起こり得るという御指摘があり、この誤認を防ぐためにもリスクコミュニケーションの重要性が強調されるべきである。これはアウトプットのみならず、直近ではよく理解度、KPIを設けて、そして実際に検証する仕組みとしては毎年5月末に消費者庁から発表されている消費者意向調査、N=1万という極めて膨大な、悉皆的な分析結果がございますので、ああいった中にうまく反映をしていくことによって、消費者の理解度の変化をしっかりとつかんでいくということも可能ではないかというお話がありました。

また、池戸委員からも、ゲノム編集の持っている言葉の持つ、今の段階では多くの皆様が印象でお話をされている部分もあるのではないかと拝察いたしますけれども、こういうゲノム編集の技術的な可能性も含めて、消費者の皆様に正確にお伝えし、これを普及啓発していくことの重要性についても触れていただきました。ここも意向調査の結果というものが一つの根拠といいますか、規準になっていくのではないかというお話もいただいたところでございます。

このあたりから、先ほどの吉田課長の御発言も含め、もう少し委員の皆様からリスクコミュニケーションのあり方について考えておかないといけない部分、御意見を賜りたいと思います。

参考資料3で具体的なアクションも、消費者庁のみならず、農水省、厚労省など複数の省庁での情報提供があるということで御紹介もあったかと思います。この点も踏まえて御意見いただけますでしょうか。

渡邊委員、お願いします。

○渡邊委員 先ほどもちょっと言ったのですけれども、遺伝子組換え技術にしても、ゲノム編集技術にしても、技術なので、何をつくるかというところが一番大事なのですね。だから、リスクコミュニケーションをやるときも、遺伝子組換えのときはどうも最初に説明に出てきたのが農薬耐性とか、虫は死ぬけれどもとか、そういう非常にもともと恐ろしい感じのリスクコミュニケーションだったような気がするので、やはりゲノム編集については、それによって例えば栄養価を高めたものもできるのだとか、できた商品が消費者にとってもメリットがあるようなものもちゃんとつくれるのだということを、技術を使って、その結果得られたのが、収量が高まるとか、農薬に強いとか、そういうことだけではなくて説明していただければなと思っています。

○受田部会長 ありがとうございました。

そういう意味で、リスクコミュニケーションという言葉がいかがなものかという話もあるのかもしれないですけれども、他にいかがでしょうか。

松永委員。

○松永委員 先ほどの宗林委員の御発言と吉田課長の御説明に関連してのリスコミなのですけれども、私は、宗林委員がおっしゃった届出制度と、届け出した事業者が表示をするというのは反対なのです。そこはリンクさせてはいけないと思っています。

というのも、届出のときに検討されるのは科学的なところになるわけですけれども、表示というのは、消費者がどう受けとめるかというところで、事業者がどういう表示をしたいかというところも変わってくるようなものなのです。表示は必ずしも科学だけで動いているわけではなくて、人の心というところも配慮してするところなので、一番怖いのは、表示したくないから届出もしないというような事業者の行動が起きてしまうのが一番怖い。届出をしっかりしていただくというのが安全性を守る、それから、消費者庁所管の表示制度においても、厚労省で届出をきちんとしていただき安全性を担保するというのは根幹にありますので、そこはきちんとしていただくためにも、表示と切り離したところで届出をしっかりしていただく。それから、表示は義務表示を外した上で、ゲノム編集食品であるなら、それぞれ事業者の責任において積極的に表示していただくことを促すというようなたてつけにしたほうがいいのではないかと思っています。

その際に、私はリスクコミュニケーションにおいて、どうしてもリスクコミュニケーションというと意見交換会というか、消費者に情報を提供するという視点で語られることが多いのですけれども、それと同時にきちんとやっておかなくてはいけないのは、仕組みを透明化しておくということなのだと思うのです。特に厚労省さんの届出と安全性審査との振り分けの仕組みというのを透明化した中できちんと行っていくというのが、実は消費者の理解を進めるという意味では一つのポイントではないかと思っています。

タイプ2、SDN‐2ですね。あそこのところは非常に曖昧に書かれていて、プロダクトベース、ケース・バイ・ケースで判断するしかないというその事情はよくわかります。ただ、そこで止まってしまうと、何となく隠されているという印象を消費者は受けてしまいますので、そこで事前相談を受けていろいろな専門家を御紹介してという中で、透明性を持って判断し、その結果も分かりやすく、きちんと消費者に分かるように情報提供していく。実はそういうことがリスクコミュニケーションの一番大事なところで、その上にきちんと意見交換するというところがあると思いますので、そういう意味で厚労省さんには特に頑張っていただきたいと思っています。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

他はいかがでしょうか。

小松委員。

○小松委員 7月から全国を回られて御説明ということで、大変お骨折りだなと思っています。やはり消費者の皆さんは、ゲノムという言葉もそうですし、漠然とした不安もありますので、正しい技術の知識であるとか、安全性の視点はもちろんなのですけれども、世の中にこういうことも、この技術は貢献しますよというような情報をお伝えして、理解を進めていくというのは非常に重要なことかなと思います。

今、昔と違っていろいろなタッチポイントといいますか、ありまして、一くくりに消費者といってもいろいろな消費者の方がいらっしゃるわけですね。ですので、一くくりに同じやり方でコミュニケーションするというのは、同じ人にしか情報が届かないということも考えられますし、今は皆、スマホとかも持って、SNSであるとかいろいろなツールもありますので、そういうところもぜひ御活用いただいて、広く理解をいただけるような取組をお願いしたいと思っています。

リスコミとは違うのですけれども、意見として申し上げたいことがあるのですが、このゲノムの議論はそもそも総合イノベーション戦略の中のバイオテクノロジーの分野で議論されているかと思うのですけれども、目指すべき将来像というところが研究者のみならず、国民がバイオテクノロジーや生命倫理を理解し、適切に判断、選択できる社会の実現というのが大項目でありまして、今まで各省庁で議論されて、いろいろな方針が出されて、今この会議が終わって消費者庁のほうでも表示をどうするかという方針が出されるかと思うのですけれども、それらがこの目指すべき将来像に照らし合わせて合致しているのかどうなのかということの検証も、ぜひしていただければなと思います。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございました。

他はいかがでしょうか。

菅委員、お願いします。

○菅委員 リスクコミュニケーションとの関係では、先ほどお話のあった、一定の安全性確認を経た届出が、先ほど言われた理想の100%に近い形で確保されているということがきちんと安心材料として知らされる、説明される必要があると思いますし、それだけではなくて、届出をされた後にどういうスクリーニングやチェックがかかるのか、中には安全性審査に回るものもあるのですよとか、届出をただ受け付けましたというだけではない扱いを受けることが確保されているということについて、先ほど事前相談のお話もありましたけれども、届け出されたものの扱われ方といったことについてもきちんと説明していただいたほうがよいのではないかと思います。

また、先ほどお話のあった、公表や情報提供、届け出られたものがいつどのように皆が確認できる形でオープンになるのかということも、皆さんを集めてのリスクコミュニケーションとは違う意味で大事なことだと思います。

また、トレースできる仕組みをつくるということに関して、先ほど食品衛生法第3条第2項の話があったかと思うのですが、御紹介の中にもあったように、規定上は努力義務になっているだけだと思います。単なる努力義務を急により強い義務に変える法改正は難しいかもしれませんが、この種の分野に開発等で取り組まれる方は、必要な証拠を残しておいていただかなければいけない必要性が強いということを、開発等される方にもより強調していただくのがよいと思います。

以上です。

○受田部会長 ありがとうございます。

では、夏目委員、お願いします。

○夏目委員 リスコミに当たって、非常に基本的なことなのですけれども、やはりゲノム編集技術という新しい技術がどういうものかわからない消費者の方は本当にたくさんいらっしゃると思います。その方たちに技術の内容とか安全性を理解してもらうために丁寧なリスコミの内容が求められるだろうと思います。

きょうも専門家の先生方に来ていただいて、私たちは補足説明について御説明を受けているわけなのですけれども、その説明の中の言葉一つ一つをとっても、これがリスコミで使われたときに御理解いただける傍聴者の方、参加者の方がどれだけいらっしゃるかなというのは、はっきり申し上げて非常に疑問です。ですから、そういうレベルの多くの消費者、また一般の方たちがいるということを前提にリスコミをやっていただかないと、ただやっただけ、情報提供しただけでは遺伝子組換えの二の舞にならないとも限らないということをとても懸念いたします。ですから、専門家の方々、科学者の方々が今のお話をただ述べるということだけであってはならないのではないかと思います。

もう一点は、これまでも何回か出てきましたカルタヘナ法との関連です。今回、環境省がここには加わっていませんけれども、環境省が1年前、18年8月に遺伝子の一部を切断してゲノム編集でつくった品種についてはカルタヘナ法の対象外とする方針を出しているわけですね。報告は求めるけれども、屋外で育てるための厳しい審査は不要だというふうに言っているわけなので、そういうところの説明も含めて、消費者、一般の方々の不安をなくしていくようなところも入れていただくとありがたいなと思います。

○受田部会長 貴重な御意見をありがとうございます。

では、宗林委員、お願いします。

○宗林委員 きょう、参考資料3に書かれているものを見させていただきますと、専門家の先生方の丁寧な御説明のゲノム編集技術とはどういうものなのかということ。それから、最終製品でどのように違いがあるないとか、技術的なことの説明は易しく説明していただくことが非常に重要だと思うのですが、ここで言いますと、食品衛生法上の取扱い、安全性の確認手順、そして表示の考え方とかいうものもプログラムには入っているのですが、どういう内容になるのかなと思いまして、お聞きできればなと思いました。

○受田部会長 今の質問で、恐らく参考資料3の③の食品に表示に関して、消費者庁食品表示企画課としてどういう内容をお考えですかという質問です。

○消費者庁赤崎食品表示企画課長 ただいまの御質問でございます。リスコミの場でどのような説明を当方が行うかですけれども、基本的には本日ここで御説明させていただいたように、表示制度を考える上ではこういう点が大事ですよねと。この点がこうでないと、なかなかこのような形の制度にはつながりませんよねと。そういう形の御説明をさせていただいた上で、やはりこの場と同様に、いろいろな御意見が出てくると思っております。その意味では、リスコミの場で出てきた御意見も十分踏まえながら、最終的に消費者庁のほうで表示のあり方については一定の整理をしたいと。そういうスケジュール感、そういう段取りで今のところ考えています。

○受田部会長 ありがとうございました。

ここは意見交換会と書いてあって、リスクコミュニケーションとは書いていないのですけれども、先ほどから委員の御発言にありましたとおり、やはりこのゲノム編集という技術の持っている可能性も含めて、原理の深いところも含めてしっかり御理解をいただかないと、できることの個別の事例だけが消費者の皆様に届いていくということになると、少し考え方、あるいは認識、印象が変わってくる懸念もございますので、より丁寧な分かりやすい説明が求められるということ。それは参考資料3の今回の企画だけではないということだと思いますけれども、ぜひお願い申し上げたいと思います。

大分時間が押してきたので、リスクコミュニケーションに関しても、一つ区切りをつけたいと思っているのですけれども、もしここまででリスクコミュニケーションの観点で触れられていないような点がありましたら、まだ御意見いただきたいと思います。

澤木委員、お願いします。

○澤木委員 興味のある方は恐らくリスクコミュニケーションに参加されると思いますけれども、興味がない人にも届けられるような方法をぜひ、若者でしたらSNS、高齢者でしたら政府広報のようなもので、とにかく消費者に分かりやすいような情報提供をしていただきたいと思います。

○受田部会長 ありがとうございます。

消費者は多様であるという小松委員の先ほどの御意見もございました。しっかりしたセグメンテーションをやって、それぞれの属性に対してどういうアプローチの仕方があるのか、アウトリーチの方法論も含めて、アウトプット、アウトカムとしての理解度の具体的な消費者意向調査等に基づくKPIの設定等もぜひお願いしたいところではあると思います。

いろいろまだ御意見あると思いますけれども、限られた時間でございますので、リスクコミュニケーションのあり方、進め方に関する御意見については、このあたりで切らせていただきたいと思います。御了承のほどお願いいたします。

以上でゲノム編集技術応用食品に関して、食品表示部会として各委員のお考えをお聞きしてまいりました。今後、この意見がどのように食品表示として反映されていくのかという点については、消費者庁のお考えを最後にお聞きしたいと思います。具体的には、きょうの御意見を受けて、そしてどういう対応をされるか。また、今後のスケジュール感ですね。ここの部分について、もう一度御説明を最後にいただきたいと思います。

○消費者庁赤崎食品表示企画課長 消費者庁でございます。

まず、本日は委員の皆様から貴重な御意見をいただきまして、感謝申し上げます。消費者庁としては、ゲノム編集技術応用食品の表示の検討に当たり、さまざまな方の御意見を伺い、それを参考にして、制度のあり方を整理したいと思っております。そういうこともあって、本日、こういう形でさまざまなバックグラウンドをお持ちの委員の皆様の御意見をお聞きしたいと考えて、この場を設けていただいたわけでございますが、表示制度のあり方については、消費者の意向、表示制度の実行可能性、表示違反の検証可能性などに対して、本日さまざまな御意見をいただきました。今後、いただきました御意見を参考にして、最新の科学的知見を踏まえつつ、あと、消費者の選択と表示制度の実行確保の両立を目指して引き続き検討を進めていきたいと思っております。

また、今後のゲノム編集食品に関するリスクコミュニケーションについても、先ほど御説明させていただいたとおり、関係省庁と連携して対応してまいります。

本日、リスコミの進め方、段取りについていろいろな御意見をいただいておりますし、あと、SNSなどの活用、リスコミという意見交換の場以外での対応についても御意見いただいておりますので、それも踏まえて、早速、できるものは反映し、取り組んでいきたいと思っております。

消費者庁としては、リスクコミュニケーションの場で出た御意見についても、貴重な御意見として今後の検討の参考にさせていただくとともに、今後とも消費者の理解促進にしっかり取り組んで、消費者が持っておられるさまざまな疑問や懸念、不安に丁寧にお答えしていきたいと思っております。

最後、スケジュールになりますけれども、厚生労働省のほうで食品衛生上の取扱いの運用開始というのが夏頃を目途に検討が進められていると承知しておりますので、繰り返しになりますが、消費者庁としてもこのスケジュールを念頭に置いて、検討を進めてまいりたいと思っております。

以上でございます。

○受田部会長 ありがとうございました。

ぜひ、多くの皆様の御意見を真摯に受け止めていただいて、食品表示のあり方の制度化をお願い申し上げたいと思います。

本来でしたら、さらに時間をかけ、熟議をしていく必要があるということは重々、私どもも認識をしておりますけれども、ただいま消費者庁の赤崎課長から御説明がございましたとおり、厚労省の食品衛生上の取扱いの運用というところが時間的にスケジュールが先行しており、それに対応する形で今回、それから前回ということで議論をさせていただきました。当部会といたしましては、今後の動きをしっかりと注視していき、必要であれば、また当部会においてゲノム編集の表示に関する取扱いについて、多くの意見をいただくような場も設けていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

児玉先生、山川先生、そして吉田課長におかれましては、本日大変お忙しいところ、また長時間にわたりまして、本部会に御出席賜り、本当にありがとうございました。心から御礼を申し上げます。

委員の皆様にでございますが、今回と前回の一部、ゲノム編集のお話をさせていただきました。次回からは改めて食品表示の全体像の議論に入ってまいりたいと思います。ただ、我々の任期も先ほど夏という話がありましたが、8月ということで、終わりを見据えながら、取りまとめの段階へと移行してまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願いを申し上げたいと思います。

≪3.閉会≫

 

○受田部会長 以上をもちまして、本日の議事に関しては終了させていただきたいと思います。

連絡事項等があれば、お願いいたします。

○坂田参事官 本日も長時間にわたり熱心な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。

次回は、7月5日金曜日14時からを予定しております。詳細は追って御連絡させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

以上でございます。

○受田部会長 それでは、本日は、これにて閉会とさせていただきます。

お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)