第11回 オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会 議事録

日時

2019年1月11日(金)14:00~17:15

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【専門委員】
中田座長、早川座長代理、大橋委員、沖野委員、片岡委員、上村委員、西村委員、畠委員、原田委員、前田委員、森委員、山本委員
【消費者委員会担当委員】
池本委員長代理、樋口委員、増田委員
【説明者】
大阪大学大学院高等司法研究科 千葉惠美子教授
森・濱田松本法律事務所 増島雅和弁護士
【オブザーバー】
カライスコス京都大学准教授
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. オンラインプラットフォームが介在する取引におけるルール・仕組みの在り方(1)
  3. その他
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○中田座長 定刻になりました。本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから、第11回「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により生貝委員、石原委員、大谷委員が御欠席となっております。

また、遅れて来られる先生、委員の方もおられると思いますが、先に始めさせていただきたいと思います。

最初に、配布資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料については、議事次第の配布資料一覧のとおりとなっておりますので、簡単に御確認いただきまして、もし不足等がございましたら事務局まで御連絡ください。


≪2.オンラインプラットフォームが介在する取引におけるルール・仕組みの在り方(1)≫

○中田座長 本日の議題は、「オンラインプラットフォームが介在する取引におけるルール・仕組みの在り方(1)」ということで、前回からもこのテーマで取り組んできております。先日、御紹介させていただきましたように、消費者委員会の専門調査会だけでなく、同時並行的に他省庁においてもこのプラットフォームの取引をめぐる問題については注目がなされて取り上げられてきておりまして、幾つかの研究会がパラレルに行われているという状況にあります。その中でも幾つかの検討会では報告書を既に公表されるといった動きも見られます。消費者庁も報告書でプラットフォームに言及しています。

そういうこともありますので、他省庁の検討会において重要なメンバーとして参画されておられて、また消費者関連法の大家でもある千葉惠美子大阪大学大学院高等司法研究科教授に、こちらでも御報告をしていただくことになりました。その後、森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士から、本件議題に係る説明をいただく機会も設けることができました。

また、この機会を生かして御報告についての質疑、意見交換を各説明の後にそれぞれ行いたいと考えております。

委員の先生方におかれましては、自らの問題意識との関係で、あるいは取り組まれている課題との関係で必要な意見を述べていただき、また、御指摘をいただき、意見交換を積極的にやっていきたいと思っております。

千葉先生は、デジタル・プラットフォーマーをめぐる取引環境整備に関する検討会、事務局は経産省ということになっておりますが、そこで委員として御活躍されているということであります。千葉先生は消費者法の観点から、もう既にプラットフォームにおける責任の問題について御論文も発表されておりますが、先ほど立ち話でお話を伺ったところ、それから更に発展をしているということをおっしゃられていましたので、今日はそれもぜひお聞きしたいと思います。

普通の学会報告ですと40分ぐらいはお時間をとるのですが、全体の時間との関係がございますので、この専門調査会では非常に短い時間、20分ということで、まとめていただくのに本当に御苦労をおかけしたのではないかと思うのですが、よろしくお願いしたいと思います。

○千葉教授 ただいま御紹介に預かりました千葉でございます。

資料1を御覧いただければありがたいと思います。

「デジタル・プラットフォームビジネスにおける利用者保護の在り方」というテーマで今日お話させていただきたいと思います。2ページ目のところに、本日、何を話すかという項目を挙げておきました。一応、事務局から御指示いただいたのが2、3、4というところかと思うのですが、この問題を考えるときに、今、どういうことが社会現象として起こっているのかという状況認識が共通でないと話が始まらないといいますか、正しく認識しないところで規制の問題は考えられませんので、この専門調査会で扱っていらっしゃるところの一番近いところでどういう現象が起こっているのかということをまずお話させていただきたいと思います。引き続いて、お題として頂戴した2、3、4についてお話をさせていただくという構成になっております。

まず状況認識の問題なのですが、情報通信技術、一般的にICTというふうに呼ばれておりますが、この情報通信技術の高度化によって今、産業構造全体がデジタル化しているというのが現在の状況です。

ちなみに最初からクレームをつけるような話になるかもしれませんが、消費者委員会のこの調査会の名前はオンラインプラットフォームになっているのですが、増島先生も私もどちらもデジタル・プラットフォームという言葉を使っておりまして、これは状況認識が共有されていないのではないかという危惧があったものですから、まず冒頭に申し上げたいと思います。それはどんなことなのかということをこれからお話します。

まず今日のテーマに関係するところで一番注目しなければならない時点が2つありまして、1つは2007年、もう一つは2017年以降となります。2007年というのは、皆さん御存じのようにGoogleとかAppleがモバイルOSをオープン化して提供した時期になります。オープン化というのは、要するに無償で我々が使っているモバイルのOSをどうぞ使ってソフトウェア・ハードウェアなどの開発を行ってくださいということです。2007年はモバイル用の基本OSに基づいて、いろいろなものを開発してくださいとか、接続してくださいと言い始めた年ということになります。これによってOS上でもアプリの開発が非常に自由に行われることになりまして、産業のモバイル化とかソフトウェア化というのが一段と進展したということになります。

消費生活の面からみますと、この結果、スマートフォンが非常に普及いたしまして、要するに誰でもどこでもいつでもインターネットにつながるという状態が生活環境の中でできたということになります。それまでインターネット上でつながるとすれば、パソコンでということになりますので、要するにパソコンがあるところでなければならないということになったのですが、これによって利用デバイスが変化いたしまして、スマートフォンが主流になりました。フォンという名前がついていますが、スマートフォンは電話というよりは小型コンピューターと思っていただいたほうがいいと思うのですが、これとSNSの認証機能の共有化によって、簡単にいろいろなものにつながるという状態になりました。

この結果、どういうことになったのかといいますと、いわゆるGoogleとかAppleが提供している基盤をプラットフォームとして様々な産業がここにつながってくるという状態になったということになります。しかも、その提供の仕方が後で問題になってきますが、ネットワーク効果の中の間接ネットワーク効果を狙ってビジネス戦略が立てられた結果、巨大なICT企業のプラットフォームの基盤、例えば、Facebookが最近問題になっていますが、利用者が22億人という規模になったといわれています、というものができあがり、いわば産業や生活の基盤になっており、これなしには生活できないという状況になっています。ソフトバンクが上場する前、ソフトバンクによる接続障害が発生しましたが、ソフトバンクのスマホを持っていた人が生活に支障をきたしたという、あの状態を想定していただければいいと思います。このような状態が今の状態だということになります。

もう一つ、注目しなければならないのが2017年以降です。最近、コマーシャルでもやっていますが、AIスピーカーというのが、アマゾン・エコーの場合には、「アレクサ」と言ったらコンピューターが起動し勝手につながっていろいろなサービスをしてくれるというものですけれども、このAIスピーカーは、音声認識技術が非常に進化したことによって、入力という作業がなくてもネットにつながることができるようになりました。これによって、今までは自分でデータを打ち込んでデジタル化したものがネット上で利用されるという状態だったのですが、音声認識技術を通じてリアルの生活情報がそのままネット上につなげることができるということになったので、情報の種類が飛躍的に増大するという状態になっています。

これに、AIとかIoTと言われているものが更に技術として加わることになりますと、産業と消費生活のあらゆるところがネットワーク上につながるという状態になっていることになります。

この2つの時点の変化をまとめたものが、4ページ目になります。消費生活を中心として見ますと、まず取引のモバイル化ということが非常に進んだのと、取引のスマート化というのが進みつつあるという状況かと思います。

取引のモバイル化によって、ネット上で取引するのが実店舗で取引するのか、それともオンライン上で取引するのか、あまり区別がなくなったので、この調査会の名前について疑問があると申し上げた理由になります。それから、そこで扱われる財がいわゆる情報財、例えば、デジタル化した音楽配信、電子書籍等を取引するというだけではなくて、あらゆるモノ、サービスがネット上で取引できるという環境が整備されるようになったということになります。

それから、取引情報のデジタル化が進むことによって、取引の成立から決済完了まで全部ネット上でやることも可能になっているという問題があります。これがいつでも、誰でも、どこでも、どの時間でもできるというのが今の状況だということになります。

一方、取引のスマート化の問題ですが、先ほど申しましたようにあらゆる情報がインターネットにつながる。生活に関連するところのあらゆるものがネット上につながってくるということになって、そこにAIが入ってくるということになると、AIが自動的に判断して、いわばルールをつくり出して、これに基づいて取引が行われるといった状況が生まれてきている。それが生活のあらゆるところで、その状態が今後、生じてくるだろうということになります。現状では電気と自動車というものが消費生活の中では先行してこの現象が起こっている、あるいは、起こりつつあるということが言えるかと思います。ただ、消費生活全般に拡大していくのは、時間の問題だろうと思います。

今こういう現象が起こっているのですが、これに対して効果的な法規制が行われているのかという点について、5ページ目以下でお話したいと思います。産業のデジタル化によって実は事業分野の階層化が進んでいて、法規制が及ばない産業が増加する傾向にあるということをまず初めに指摘したいと思います。

6ページ目の図1になります。デジタル化による事業分野の階層化というのはどのように起こっているのかということですが、先ほどのスマートフォンの普及やIoT時代への突入との関係で見ますと、現在、私たちがいるのは真ん中の図の状態になります。これは真ん中の図のところにグレーと黒がありますが、ここが基盤になっているプラットフォーム、つまり、モバイルOSということになります。この下に通信ネットワークとか端末がありまして、その前の時代は、これは例えば携帯電話会社があって、NTTドコモとかKDDIとかソフトバンクとかあるわけですが、その上にサービスのアプリがいろいろあってという状態だったのですが、これがそうではなくて、どのスマホを使ってもGoogleかAppleの基盤OSに基づいて各種のサービスが提供されるということになりますので、システム全体を動かす中心が、日本で言えばNTTドコモとかKDDIとかソフトバンクというような通信業者から、この基盤を提供しているところ、GoogleとかAppleといったようなところがプラットフォームの中心として機能しているというのが現在の特徴となります。基盤OSは、オープン化されていますので様々なアプリが搭載され、GoogleやAppleのOS基盤上で、いろいろなサービスを提供しているというのが今の時代となります。

さらにIoTの時代になりますと、先ほど申しましたようにその上に音声認識と書いてあるところがあると思うのですが、AIスピーカーを通してリアルな生活空間の情報をこの真ん中のところのプラットフォームに吸い上げる構造というのが出てくることになります。それから、もう一つ注目していただきたいのは、真ん中のグレーと黒の上のほうにデータ取引市場というものが出てきまして、ここにプラットフォームになっている基盤上に集約された情報を実は取引するという市場が更にできているということになります。これが非常に問題でもあるということになります。

この状態が事業分野の階層化とどのように関連してくるかですが、携帯電話の時代、スマホが登場するまでには携帯電話を購入すると、その商品に搭載されたサービスがくっついてくるという状態だったのですが、スマートフォンの今の時代というのは、プラットフォームのところにいろいろなアプリがくっついていて、どの商品を購入してもモバイルOSはGoogleかAppleのモバイルOSのどちらかでしかなくて、その上で動いているにしかすぎないということになってくるということになります。そうすると、これまでは、携帯電話事業を規制していれば全体を規制できたのですが、スマホの普及によって、いろいろな事業者がモバイルOS上でいろいろなサービスを提供することになりますので、そうすると何とか業というふうに業法規制をしても、その業法規制の種類はいっぱい増えるだけで、全体を規制するというのは非常に難しいという状態になります。

ですから、5ページ目に戻ってきていただきますと、産業のデジタル化というのは、デジタル化によって複数の事業分野が積み重なって、1つの製品やサービスを提供するという産業構造に変化してきているということを意味しておりまして、それはどういうことかというと、プラットフォームの事業者、プラットフォームを提供したり運営、管理しているところがほかのプレイヤー、例えば企業とか消費者などが提供する製品とかサービス及び情報と一体になって、自己の経営資源のみではカバーできない範囲までサービスを拡大しているというようなビジネスとなります。

これは事業者のほうからするとどういうことになっているのか、携帯電話の時代は、自前主義という考え方が特に日本の企業にはまだ強かったわけです。しかし、何でもかんでも自分のところでつくるという経営方法ではなかなか収益構造が広がらないということになって、自前で行う事業について「選択」と「集中」を行い、他の業務をアウトソーシングするようになるのですが、そこにプラットフォームが登場してきて、そのような事業を更に構造化するといいますか、結び付けるというビジネスが登場するわけです。市場を組織化する役割がプラットフォームの非常に特徴的な点だということになります。

今のような状態を法規制との関係で考えますと、7ページ目のところになります。日本の産業は、どちらかというとバリューチェーン型のビジネスというのが中心でありまして、トヨタ自動車を考えていただければいいと思うのですが、在庫をあまり持たないで、情報をサプライチェーンに全部流して、必要なものを必要なだけ生産するというビジネスモデルになります。

8ページ目の上のほう、ステージ1とかステージ2とか書いてありますが、要するにこれはサプライチェーンだと思っていただいたらいいと思うのですが、いろいろな部品をつくる会社がいっぱいあって、それをトヨタが全部集約して製品化して、完成品を販売会社に流して売るという構造になります。そうすると自動車産業について業法規制をすれば、全体を効率よく規制することが可能です。事業者と契約をする際に、消費者の選択の自由が侵されないように制度設計すればいいということになりまして、これに対応しているのが消費者契約法や特商法となります。基本的に消費者契約法は消費者と事業者の間の契約について規律しており、これによって、取引の公平性や透明性が担保されるという状態になります。あとは業法規制で全体の自動車産業というものを押さえれば、全体としてハッピーな状態になるという考え方がとられてきたわけです。仮に消費者が購入した商品に欠陥があれば、あとは不法行為の問題として製造物責任の問題として考えていけばいいということで、これまでの規制というのはこういう方法で、十分対応できたということになります。しかし、プラットフォームビジネスが展開されるようになるとどうなるかといいますと、事業領域が階層化するということになり、業法規制でやると全体が押さえられなくて、業法の適用がある部分だけ規律することになって、全体が規律できないという問題が出てくるわけです。現在の消費者法制では、消費者と事業者間の契約を前提として規制を体系化していますから、全体システムの一部しか規制できないということになると、全体のシステムとの関係では利用者保護が十分ではないという問題が出てくるということになります。

プラットフォームビジネスというものがそういうものであるとすると、どういう特徴があって、どういう類型化が必要なのかという話になるのですが、プラットフォームは、今、申しましたように基盤になっているところのプラットフォームに情報が集約化され、蓄積されるという特徴があります。それとプラットフォームの利用者間の相互作用によって、より高い価値を創造する仕組みだということになります。

プラットフォームを運営したり所有したりしているところの経営資源だけではなくて、自分のプラットフォームにいろいろな業者が開発したアプリとか何かがくっつくと、全体としてサービスが向上していっぱい人がやってくることによって、全体として収益が上がるという構造になっているということになります。

経済学では、プラットフォームビジネスがなぜ盛んになるのかという分析がいろいろありまして、その中で「ネットワーク効果」というのがよく話題に上るところです。ネットワーク効果というのは、財やサービスの利用者が増大すると、その利便性や効用が増大するという考え方なのですが、プラットフォームビジネスの中で一番それが達成できるのは、正の間接ネットワーク効果と言われるものが達成されたときであり、その場合に、需要者が爆発的に増えるということが分かってきました。

具体的にどういうことかといいますと、皆さんカードを持っていらっしゃると思うのですが、カードを使うときに利用できる加盟店が多ければ多いほど、そのクレジットカードを使うということになると思いますし、加盟店のほうもこのカードの加盟店になると、たくさんの利用者がそこにいるということになると、多少、加盟店の手数料を払っても自分でネットワークを作るよりは、ずっとコスト的にみてもいいという考え方になるということです。そこでは利害を異にする当事者の間で取引が行われるということを前提にして、プラットフォーム事業者と利用者間に規約があり、それぞれに市場があるのだけれども、その市場の外にいる人の効用、つまり、利用者の契約を取り込むために、プラットフォームが利用されているという関係になるのだということになります。

プラットフォームビジネスの強みというのは、先ほど申しましたようにトヨタのビジネスのように、組織の市場化、要するに全部の経済活動を自前主義でやらないで、自分のやっている業務について選択と集中をし、それ以外の業務については得意な会社に任せるというようなやり方だけではなくて、市場を組織化することによって、個々人の欲求をマッチングして需要に転換するビジネスであると言い換えてよいだろうと思います。

そこで、組織の市場化だけではなく市場を組織化するという問題との関係で法規制をどのように行っていたらいいのかという点が次の課題になります。

なお、プラットフォームビジネスというのはいろいろな形で行われていまして、経営学の本を読みますと、まず1つの製品をプラットフォームビジネスで提供するというものと、サービスを提供するという2つに分けることができます。一応、今の段階では2つのものを分けて議論したほうがよくて、多分この2つは今後、融合していくだろうと思いますが、現状の分析のためには、全体として1つのサービスが提供されているのか、1つの製品を提供するのかということに分けて考えたほうがいいと思います。法規制自体が、多くの場合、今まで分けて考えてきていますので、特に法規制を変えるというときには分けておいたほうがいいかなと思っています。

皆さんの御関心との関係では、主に電子商取引とか電子決済ということになると思います。電子商取引は、取引を締結する、ないし取引を誘因するというサービス、電子決済は決済サービスを提供するということになりますから、後者の場合、サービス提供型プラットフォームビジネスということになるだろうと思います。

ただ、いずれにしても、次の10ページになりますが、プラットフォームに対して違う利害を持った利用者、売主と買主、サービスの提供者とサービスの利用者がそこで取引をするということになるわけですが、その取引をする際に、利用者はそれぞれプラットフォーマーにデータを提供し、プラットフォーム事業者は、プラットフォームの利用者からの情報をマッチングさせることによって取引を成立させたり、取引の締結を誘因する機能があるということになります。そして、このプラットフォームをどのように利用するかについては、まさにプラットフォーム事業者、つまり、プラットフォーマーが基本的に決めているという関係になります。

次の報告者の増島先生の図では、事業者と供給者という言葉がプラットフォームの利用者間取引のところで使われているのですが、一応、経済学では、プラットフォームの提供者、つまり、プラットフォーム事業者の側をプラットフォームの供給者、プラットフォームの利用者の側を需要者と表現しておりますので、両者の資料の間に違いがあります。見方が違うということは、プラットフォームビジネスをどのように考えるのかという点で違いが生じることになりますので、この点には注意をしていただきたいと思います。利用者間の契約のところでも供給者と需要者という関係がもちろんあるのですが、それは、利用者間の取引を単体でみた場合にそのように言えるということであって、プラットフォームビジネスを全体として見たときには、プラットフォーマーがプラットフォームの供給者で、利害を異にする2つの利用者グループにプラットフォーマーがサービスを提供しているとまずは理解してほしいということになります。この点が理解できないと、これからの議論が分からないということになりますので、そこをまずは押さえてほしいと思います。

そこで、次の問題ですが、11ページ、皆さんの御関心にだんだん近づいてくるかと思うのですが、時間が迫っていてどうしようかと思っているのですが、先ほど申しましたようにプラットフォームは製品型とサービス型のビジネスに一応分けて検討することになると、サービス提供型のプラットフォームの場合には、プラットフォーム上の吸い上げられる情報のマッチングによって取引の成立ないしは取引を誘因するサービスを提供するビジネスであるというふうに一応、まとめることができると思います。

ただ、このサービス提供型のプラットフォームについて、更に類型化が必要ではないかということがありまして、これは森先生なんかがおっしゃっていることと関係するところだと思うのですけれども、一応、プラットフォームの利用者から提供される情報をマッチングさせて、例えば加盟店とカード会員とか、加盟店と顧客とか、そういったプラットフォームの利用者相互間に取引を成立させるタイプのものがあります。アメリカでアメックス事件という非常に有名な事件について、最近、連邦最高裁で判決があったところなのですが、そこでは取引型プラットフォームという言葉を使っておりますので、これをここでも使わせていただくということがいいかなと思います。

これに対して検索サイトとかSNSのサイト、こういったものの利用者と、利用者に対して効果的に広告をしたい事業者をプラットフォームの利用者として、ターゲティング広告などによって取引の機会を増大させるというようなタイプのものがあるということになります。これが取引誘因型のプラットフォームということにとなります。

この2つのものを表にしたのが13ページのところになります。取引型プラットフォームと取引誘因型のプラットフォームに分けて、プラットフォームの利用者、今、現象的に行われている電子商取引はどれに当たるか整理したのが13ページの図になります。

私が間接的に伺ったところでは、一応ここの専門調査会では取引型プラットフォームに焦点を絞ったというふうに聞いておりますが、そうだとすると、表の13ページの左側の部分にあたります。ただ、ここの調査会がなぜそうされたのか私はよく分からないところがありまして、これは多分、山本先生や森先生と共通する関心ではないかと思うのですが、先ほど申しましたようにサービス提供型のプラットフォームは、プラットフォームに吸い上げられる情報というものをプラットフォームがマッチングして、取引を成立させるとか、取引の締結を誘因するタイプになりますから、そこには当然、共通項がありまして、この共通項をなぜ捨象して法規制の在り方を議論されるのか、この点については疑問があります。この点は強く申し上げたいと思います。

なお、この両者を類型化する必要があるというのは、プラットフォームの収益構造が違うからです。違うけれども、先ほど申しました共通点があることを忘れないでほしいということになります。収益構造としては、取引型のプラットフォームの場合には予約が確定したとか、取引が成立したという場合について、BtoCの場合にはBのほうから手数料をとるという形になります。それからCtoCと言われていますが、私はCtoCというのは非常に表現としてはまずくて、本当はPtoPだと思うのですけれども、ここでは両方のサイドから手数料をとることができる仕組みになっていまして、手数料の構造が若干違うということになります。

一方、取引誘因型の場合には広告というものが媒介になっていまして、利用者サイドからの広告収入とか、利用者サイドへの広告の提供による収入といったようなものを収入源としているという点では、類型化を図る必要があるということになります。これによってシステムが吸い上げる情報の対象といったものが変わってきますので、一応、類型化するときには、取引型と取引誘因型を区分しておいたほうがいいだろうと思います。

もう一つプラットフォームビジネスを類型する際に、大事なことは、プラットフォームの提供の在り方に着目した類型化でありまして、これまで我々はどちらかというとGAFAを念頭において、プラットフォーム事業者が単体でプラットフォームを提供し、運営しているという場合を想定してきました。そこではプラットフォーム事業者がプラットフォームビジネスの全部を制度設計しているという場合を想定しているのですけれども、電子決済というものに着目しますと、実はプラットフォーム事業者が競争的事業者によって組織されて、これら競争的事業者が実質的には共同でプラットフォームを提供したり運営したりする場合があるということになります。典型がVISAとかMastercardになります。私は全銀ネットもこれに該当すると考えております。これは歴史的経緯はそうでないのですが、現状から見ればプラットフォーマーに該当するということになると思います。

このように類型化した上で、プラットフォーム事業者とプラットフォームの利用者との関係を考えてみたいと思います。それが14ページ目以下となります。先ほど申しましたようにプラットフォームビジネスの場合は、市場の組織化をする重要な機能がプラットフォームにはありまして、システム全体として見たときに、プラットフォーム上で全体として何かのサービスを提供しているという関係になります。このため、競争法では、個々の単一市場だけに着目して、公正かつ自由な競争が行われているという判断をするだけでは足りないという問題が出てきているということになります。

例えば、オンライン・ショッピングモールを念頭に置きますと、要するに、デジタルモールの市場に加盟店がいっぱいあるわけです。同じ業種の加盟店がいるわけですが、その中でも競争があるということなのですが、それから、顧客のほうにも市場があるということになりますけれども、プラットフォーム事業者とその利用者間の2つの市場をこのプラットフォームがつなげることによって、初めて利用者間の取引が成立するという関係になりますので、そうすると全体としてプラットフォームの利用者相互間で取引が行われるということを考えたときに、12ページの図のような関係になります。

これまでの考え方からすると2つ市場があれば、取引法の世界では、個別の契約ごとにばらばらに分解して考えてしまうということになりますが、プラットフォームビジネスを解析する際に、それが果たしていいのかということが今、問題になっていることになります。競争法でも、1つの市場にほかの市場の影響を考慮して全体システムを念頭において、公正かつ自由な競争があったかどうかということを考えるべきではないかといった議論がなされることになります。

取引法の観点からみますと、ネットワーク上でプラットフォーム事業者がプラットフォーム利用者との間で利用契約に基づいて吸い上げられる情報をマッチングして、利用者相互間で取引が成立する、あるいは取引が誘因されるという場合に、全体システムが複数の契約から構成されていることによって、個別の契約の内容をどのように確定するのかとか、契約の相互間の関係はどうなるのかということを分析してみる必要がないのかという問題が出てくることになります。情報検索サイトのように、個々の市場に着目すれば無償のサービスが提供されている場合もあるということになりますが、それはあまり大きな問題ではなくて、プラットフォームに吸い上げる情報と引きかえにどういうサービスが全体として提供されているのかということを見ないと、全体のシステム自体を理解できないということになります。

ちなみに、先ほどの12ページの図でいきますと、消費者契約法は、もしプラットフォームの参加提供者のほうが事業者だとすると、黒の左から右の間のこの関係で消費者契約法が適用されますが、それはそこで行われている、例えば売買があれば、売買の範囲でしか適用にならないということになります。それから、プラットフォームの参加利用者のほう、右側のプラットフォーム利用者のほう、これが消費者だとするとプラットフォーマーはもちろん事業者ですので、このプラットフォーマーとプラットフォーム参加利用者の間の契約だけで消費者契約法が適用されますから、もっぱらプラットフォームの利用契約の範囲に限定されることになり、それ以外の点については消費者契約法の適用はないということになります。このように個別の契約に分解して、個別の契約の範囲だけに適用すると、個別の契約内容しかコントロールできないということになってしまって、それがいいかどうかが問題になっているということになります。

このような議論をする際に、プラットフォームは取引する「場」を提供したにすぎないのではないかというお話はよく出てくるのですが、現状ではそうではないという意見が大勢になってきていると思います。商法の媒介契約とか仲介契約といったものは非常に定義が狭く、その適用がないということはそうなのですが、だからといって、プラットフォームビジネスが「場」を提供したにすぎないという結論にはならないのであって、プラットフォームの事業者というのは非常に第三者的な立場に立つのかというと、必ずしもそうではないだろうと思います。

というのは、2つの利用者グループに属する各利用者の間で契約をするという契機をつくったのは、実はプラットフォーマーが同時に両者の情報をマッチングさせて契約を成立させているからであって、15ページにも書きましたように、利用者間の取引の成立を目的として、異なるプラットフォーム利用者間に同時にプラットフォーマーが必要な情報を提供するという点が重要だということになります。同時にサービスを提供するからこそ、利用者間契約が成り立つという関係になっているということが、ここで規制を考える場合に重要であるということになります。

それから、次の問題ですが、この関係は利用者から情報を吸い上げてマッチングをすることになるのですが、そのときにどうやっているのかといいますと、15ページの真ん中あたりに書きましたように、マッチングには、アルゴリズムによるパーソナルデータの分析とプラットフォーム利用規約が重要な道具になっており、利用規約は法制審の民法改正の検討会では定型約款の代表選手だと言われていたようです、この2つのものをプラットフォーマーが設計して、システム全体を構築しているという関係になります。

約款が当事者の意思を反映したものかどうかということについては、いろいろ議論があるところですが、一方でアルゴリズムによるパーソナルデータの分析というのは、要するにプログラミングされたコードに従って行われるということになってきますので、いわゆる法による強制とは異なる形で人の行動を規制しているという状態が出てきているわけです。増島先生のレポートの中でも出てきますが、コード/アーキテクチャと言われている問題になります。抽象的にそう言われてもぴんと来ないと思いますので、もう一度申しますと、法による規制とは異なる形で人の行動が規制されるという状態が今の約款とコードによってつくり出されているというのが、プラットフォームビジネスの特徴だということになります。

そうすると、取引の公正性というものを考えたときに、先ほど、申し上げたように、全体のシステムとしては、プラットフォームにデータを提供してサービスの提供を受けていると考えると、実際上、消費者は一旦プラットフォームを利用してサービスの提供を受け始めますと、私などもそうですけれども、検索サイトは全部Googleを使うという状態になって、事実上はかなり硬直性が高い。ほかのサイトになかなか移らない。カードを使ってもポイントとかいろいろありますが、複数持っていても1つを主に使うということになります。普通はロックインされた事業者に対して競争法上は優越的地位の濫用ということが問題になるのですが、プラットフォームの利用者という観点で考えますと、利用者が事業者であろうが消費者であろうが、プラットフォーム事業者の優越的地位の濫用ということを考えざるを得ないのではないかというのが一つの問題となります。

2つ目は、先ほどの定型約款でありまして、改正民法では定型約款についてかなり広範囲に自由な変更権を認めております。特に消費者が出てきたときに一旦、利用契約で同意をすると、後でプラットフォーマーがどのように変更したって自由なのかという問題が出てきて、この辺が消費者法としては非常に、要するに民法とは違う規制を考える必要性が出てくるもう一つの局面ではないかと思います。

以上のように考えますとプラットフォーマーとプラットフォーム利用者の相互の関係の間の問題について、どういうふうに考えていくのかというと、要するにプラットフォームへの情報の吸い上げによってサービスを提供するという関係になりますので、プラットフォーム事業者にはプラットフォームの利用者に対して、利用者が事業者であろうと消費者であろうと情報提供義務があるということになります。これがプラットフォーム利用契約によるプラットフォーム事業者の本質的義務でありまして、森先生がかかわっていらっしゃると思いますが、経産が準則のところで従たる義務として情報提供義務を挙げているのですが、あれは本質的義務の誤りだろうと思います。この観点から、取引の透明性について必要な法整備をすることが必要だということになります。消費者は特に取引に際して意思決定を行うためにバイアスがかかるということになりますので、行動経済学の知見を活用して情報開示が行われる必要がおそらくあるということで、この辺も重要な観点ではないかと思います。

それから、オフラインかオンラインかというのはあまり問題ではないのではないか思います。現実の店舗に行って商品を見てネットで買うという人がいるわけです。したがって、プラットフォーム上で利用者間取引が行われている場合とそうでない場合は非常に流動的でありまして、取引の成立のために必要な情報がプラットフォームに吸い上げられているかどうかという観点から、むしろ規制を考える必要が出てくることになります。

次に17ページですが、皆さんの御関心が高いところだと思うのですが、プラットフォーム事業者はプラットフォーム利用者との間にプラットフォームの利用契約があって、その利用契約について今のような義務というもの、あるいは責任といったものを考えざるを得ないということですが、では利用者間の契約との関係では第三者なのかという問題が出てくることになります。そこにも書きましたように、プラットフォームに利用者の情報を吸い上げて取引を成立させる関係なのですから、プラットフォーム利用者の選択の自由がプラットフォーム事業者によってコントロールされているような関係があるということになると、プラットフォーム事業者はプラットフォーム上のサービスを悪意で利用する者を排除するとか、プラットフォームへ不適切な情報を提供する者を排除するとか、そういったゲートキーパーとしての責任がプラットフォーム事業者にはあるのだろうと思います。

取引型のプラットフォームと取引誘因型のプラットフォームは、ゲートキーパーとしての責任の範囲が若干異なるのではないかと現状では考えています。これに伴ってエスクローサービスといったようなものがここで問題になってくるということになります。

これをもう少し具体的なプラットフォームビジネスを念頭に考えたのが18ページ、19ページの図ということになります。時間がかなり押していますので後からもし質問があれば、説明させていただきます。シェアリングエコノミーとカード決済とか口座振替について、具体的にどんな権利義務が発生するかを記述したものになります。

あと、規制の在り方ですが、20ページ目ということになりますが、まず先ほど申しましたようにプラットフォームビジネスによって産業構造が変化しておりますので、いわゆる事業分野が階層化しているという問題がありますので、業法的な規制から機能横断的な規制への転換が必要で、特に消費者のところで問題になってくるのは電子商取引法というものをつくるべきだ。それから、リテール決済法、これは金融庁でそちらの方向で少しずつ動いているというところかと思うのですが、これらを具体例として挙げられるということになります。

それから、法規制の在り方ですが、法と法以外のものを統合して規範をつくることが必要になってくるということになりまして、これをどうやってつくるかということを考えた場合に、今までのようなやり方でできるのかどうかという問題が出てきます。コードを書いているのはプラットフォーム事業者なので、事業者に協力してもらわないと効果的な規制ができないという問題があります。けれども、ソフトローだといって事業者に全部任せてしまうと民主的な法規制ができないということになりますので、民主的コントロールを確保した上で規制の在り方を考える。共同規制なんていう言葉が最近使われていますが、仕組みについては相当考えなければいけないという問題が出てきます。

最後になりますが、22ページのところで事後救済の問題になります。事後救済の問題については、個人法益の侵害に着眼してこれまで法規制の問題とか法執行の問題を考えてきたわけです。消費者の権利が害される。個々の消費者を念頭に置いて考えていたのですが、個人的な利益ではあるが、多数の被害者が広く存在することや、一旦、法益侵害がネット上で発生すると被害の救済がかなり困難だという問題が出てきますので、この種の取引では、集団的法益を念頭に置いた法益実現システムを考える必要があって、これまでの我々の経験からすると、課徴金制度や団体訴権制度といったものをどういう形で活用するかを考える必要があるということになります。

あと、データの問題なのですが、これは御専門の山本先生がいらっしゃいますので、私のほうからあれこれ言う必要がないとは思いますが、一応まとめて書いてきました。25ページ目になりますが、プラットフォーム上のデータというのは非常に多様なものがありまして、これまで憲法学者の方が主に研究されてきたせいもあると思うのですが、プライバシーが前面に出てくるのですが、それ以外に個人の持っているデータは経済的価値があるものが結構ありまして、例えば利用履歴の情報といったものは、別にプライバシーでも何でもないと思うのですが、こういう経済的な価値のあるデータも含めて非常にデータが多様であるということで、全体として帰属とか保護とか管理とか利活用の方法について、消費者目線でもう一度点検する必要があるのではないかと思います。

一方で、AIを使って分析した結果というものを前提にして、それもデータとして活用しているという問題がありまして、このデータ活用に用いられたアルゴリズムを保護する必要があるのかないのかということも、一方で問題になってくるということになります。それから、つくられてしまったデータについて、これをほかに移転するとかいうことができないのかということが問題になります。特にプラットフォーマーが適切にデータを処理しないときに、そのデータ自体をどこか他に移すことによって競争原理を働かせるということ、あるいは消費者の被害を救済に結び付けるということも出てきますので、データポータビリティー権といったものがヨーロッパで問題になっています。パーソナルデータをほかのプラットフォームに移転するという問題あるいは利用させないという問題を考える必要があるということになります。

なお、これとの関係で日本ではもう少し違う行き方も考えられているところです。今、情報銀行構想というものがありまして、これとの関係でデータポータビリティー権を認めるという構成で展開をしていくのか、あるいは情報銀行に一定の規制をかけて、データの移転や帰属等、管理の在り方を考えていくのかというのが、選択あるいは分野によって違うということになるのかもしれませんが、このあたりが議論の際に想定されるべきではないかと思います。

すみません、大幅に時間を超過しました。

○中田座長 ありがとうございます。これまでの様々な検討の成果を御報告いただきまして、プラットフォーム責任の大きな枠組みを提示していただいたと思います。

幾つかの御要望もお聞きしましたが、それはまた後で、誤解の点もあったように思いますので御説明させていただくことにします。とりあえず時間が限られておりますので、委員の皆様から御質問あるいはコメント、御意見等がございましたらぜひお聞かせいただければと思います。いかがでしょうか。それでは、森委員、お願いします。

○森委員 ありがとうございました。これまでもいろいろなところで御説明をいただく機会があったのですけれども、やはりアップデートされていて、また本日も大変勉強になりました。

取引誘因型については、まさしく御指摘のとおりでして、山本先生も私もそのように申し上げていたところではあるわけですけれども、そこにおける消費者被害に目を向けるべきではないかと今でも思っているということです。なので、全く御趣旨はそのとおりなのですけれども、お尋ねしたいのは16ページのプラットフォーマーと利用者の関係というところなのですが、手のマークの2番目のところに、プラットフォーム事業者にはプラットフォーム利用者に対して情報提供義務があり、これがプラットフォーム利用契約におけるプラットフォーム事業者の本質的な義務とありますけれども、これは利用契約上の義務ということだと思いますので、例えばプラットフォーム事業者がそんな義務はないと書いていても認められるようなものということでしょうか。つまり、何か解釈上認められる付随義務のようなことなのか、それともそこまでは言わないけれども、プラットフォーム事業者としてはそういうものをきちんと契約上、書いて、利用者に対する義務を果たすべきなのだという御趣旨なのかというところをお聞きしたいです。

○千葉教授 私が説明させていただいたことを皆さんに御理解いただけたかどうかよく分からないところもあるので、18ページの具体的な状況を見ていただいたほうが分かりやすいのではないかと思います。これはシェアリングエコノミーでAirbnbを念頭に置いたものです。要するに民泊の場合に、これは典型的に、先ほど3つぐらいお話した義務が出てくるケースだと思います。プラットフォームとホストとゲストがいるわけですが、プラットフォームの利用者双方に情報提供請求権と記載があると思います。ゲストのほうはプラットフォーマーに対して自分の情報をまず提供するということが必要で、この提供によってホスト情報の提供というサービスを受ける関係になります。予約が確定したというときに、それに対してゲストはプラットフォーム事業者に報酬を払うという関係になっているわけです。そうだとすると、プラットフォーマーはゲストに対してどういう義務があるのかというと、ホストの情報について正確な情報を提示する義務があると考えるべきだということになります。情報提供義務が本質的義務だと考えられるわけです。つまり、あなたたちのやっている契約を合理的に説明するとすれば、免責等が問題となる余地がなくて、プラットフォーマーがやっている行為を翻訳すると情報提供義務がゲスト・ホスト双方にあるということになる。ゲスト・ホスト双方に対してプラットフォーマーが手数料を請求できるのは、ゲストのほうは、自分の情報提供の引換にホストの関連情報を適切に開示してもらって、予約が確定したから、だから手数料を払う義務があるということになるのであって、ホストの情報開示なしに契約は成立しないということになります。したがって、付随的な義務ではなくてこの契約において本質的な義務であって、これを免責することになったらこのサービスは成り立たないだろうと思うのです。それを免責条項で何でも免責だと書けばいいのかといったら、それはそうではないだろうというのが私の考えということになります。

同じことはホストのほうにもいえるわけです。ホストのほうは自分のハウスとか、ホスト自身の個人情報、要求されているのは結構いろいろな情報がありまして、刑事的な事件に巻き込まれたとかそういう情報も提供するようにとか、利用規約には書いてあるのです。どこまで実際に情報を吸い上げているのかは分からないのですが、要するにホストについても今、言ったような自分の情報を開示してゲストサイドの情報を提供してもらうという契約の内容になっていて、その結果、予約が確定するとホストの側も手数料を払うということになります。これは、いわゆるシェアリングエコノミーですから、両方から手数料をとるシステムになります。お答えになっていますでしょうか。

もう一つ、決済の問題が実は出てきまして、これは後の増島先生の御報告の中にも、シェアリングエコノミーが例に出てきていますので、お話をしておいたらいいと思うのですけれども、要するにゲストがホストの施設にいくらで泊まるという契約はホストサービス契約、つまり利用者間契約で取り決めるのですが、お金の支払は必ずプラットフォーマーを介さなければならないというシステムになっています。では、なぜプラットフォーマーはゲストが払うお金を受け取れるのかというと、ホストのほうから弁済受領権を得ているという約定になっていまして、この支払先がAirbnb paymentsというAirbnbの子会社になっているという関係になります。要するに収納代行のような形になっていまして、弁済受領権がここにあるので、ここに払う。先ほど申しましたように、予約が確定したときに手数料をそれぞれ利用者のほうはゲストもホストも払わなければいけないので、そこを控除した金額だけプラットフォーマーからホストに関して代金を渡すシステムになっています。

つまり、決済サービス自体のところまで、プラットフォーム上で行われているということは、要するに、プラットフォーム事業者がホストとゲストの間の利用契約上の債務の弁済まで深く関与しているわけです。こういう場合には、一例ですが、プラットフォーマーのゲートキーパーとしての責任というものが出てくるだろうと思います。利用者間取引の決済に関与しているという形になるからということになります。

○森委員 今、Airbnbの図だと情報のやり取りが参加提供者と参加利用者にそれぞれ出ているわけですが、例えば全く釈迦に説法ですが、モールであったり、CtoCオークションであったり、モールの考え方としては、基本的には店舗が情報提供をし、それを消費者が見て購入するという考え方だと思うのです。それによって取引は店舗の載せた写真もありますし、成立する。それを超えて店舗の情報の正確性をプラットフォーマーが担保しなければいけないのかとか、例えばCtoCオークションの例の名古屋の訴訟のときに、原告としては出品者の個人情報を提供すべきなんだということを主張したわけですが、あの文脈では裁判所によって認められなかったということもあったかと思うのですが、それとの関係ではいかがですか。情報提供義務というと、何となくどちらかというと原則としては、プラットフォーム事業者に委ねられているのかなというふうに思っていたのですが、それとの関係ではいかがですか。

○千葉教授 システムのつくり方によると思います。要するに情報をマッチングして契約を成立させるのだけれども、どういう情報を集約するかというところに係ってくるのではないかと思います。システムのつくり方自体は、要するにプラットフォーマーがどういうふうに考えるかの問題ですから。情報を集約するときに一般的に言われているのは、情報の質が高ければ高いほど、多ければ多いほど取引は成約率が高くなるわけです。そうすると収益率が高くなるわけです。したがって、そこはプラットフォーマーのビジネスの在り方だと思うのですが、収益率を上げたいと思えば思うほど情報提供義務が増えていくという関係におそらくはなるのだろうと思います。この場合はどうか、あの場合はどうかというのを考えないといけないと思うので、名古屋のネットオークションの場合、ヤフーのオークションの場合にどうだったのかというのは利用規約をもう一回、見直してみる必要があると思うのですけれども、それは書いてある字面の問題ではなくて、どうやって契約を成立させているのかということを見ないといけないということになって、それをどうやって知り得るのかというのは非常に難しい問題だと思いますけれども、当事者はそう言っているけれども、本当にそうなのかということはあるだろうと思います。一般的に言えばプラットフォームで情報を集約すれば集約するほど成約率が高くなる。成約率が高くなればなるほど情報提供義務の範囲が広がっていくという話になると思います。

○森委員 ありがとうございました。

○中田座長 片岡委員、お願いいたします。

○片岡委員 本日は貴重なお話をありがとうございました。

幾つかコメントと質問があります。まずコメントです。一番最初のほうに、今、GAFAが話題になっていて、特にスマートフォンなどの端末を使った場合には、AppleやGoogleのアカウントを持っているのが当然ということになるとは思うのですが、アプリ又はウェブを利用してプラットフォームを利用する場合、AppleやGoogleのアカウントと、プラットフォームのアカウントとがひもづいているとは必ずしも限らないということがありますので、そこは皆様に御認識いただけますと幸いです。もちろん、AppleとGoogleで多少性格が違いまして、アプリを使う場合にどこまでApple、Googleがコントロールしているかというのはあると思いますけれども、まだApple、Googleのアカウントを使わなくても利用できる領域はたくさんあるし、そこを日本の事業者としては頑張って盛り上げていかなければいけないと思っています。

質問について、1点目です。話をお伺いしていて、弊社でやっているプラットフォームよりもだいぶ進化したプラットフォームの話がされていると思っております。御説明の中で「マッチング」という言葉がよく出てきました。例えば、楽天市場で言うと、利用する方が会員登録をしてもしなくても、お買い物ができるようになっていて、入口もGoogle等の検索結果から入っていく場合も、楽天市場の中の検索結果から入っていく場合も、あるいは事業者自身がどこか外に出した広告から入ってくる場合も、事業者自身が楽天市場の中に出した広告から入ってくる場合もあって、いろいろな入口から買い物をするのですが、基本的にお買い物をするときは、事業者の情報は、事業者が特商法上の表記をしたり、商品説明等を事業者自身で載せることで提供しています。利用者は利用者で、注文に必要な情報、名前や住所等の情報を自ら提供して、その情報がプラットフォームのシステム上で注文情報として事業者に流れていきます。いわゆる受注処理というものを事業者側が楽天の提供しているシステム上でする場合もあれば、楽天が提供するシステムと自身のサーバーやシステムをAPIで接続し、事業者自身のサーバーやシステムで受注処理をするという場合もあるのですが、いずれにせよ基本的には利用者自身が申込みをして、それを事業者、つまり売り手が承認するまでの間に、注文者の情報を分析してマッチングするということは、楽天市場ではしておりません。ここで言っている「マッチング」というのは、具体的にどういったことを考え、また想定しているのかということを、まずお伺いしたいです。

2点目は情報提供義務という話がありましたけれども、例えば検討範囲をECのオンラインプラットフォームと想定した場合に、今、特商法で求められている情報以上に何が必要な情報であると考えていらっしゃるのか、というのをお伺いしたいと思っています。

3点目が、特商法上の表記以上に何か必要な情報を渡さなければいけない義務が仮に事業者にあるとすると、先ほどお話の中でも「オフラインとオンラインで何が違うのか」という話が出てきたと思うのですが、例えばある事業者の実際の店舗で商品を買う場合と、同じ事業者がオンラインプラットフォーム上に出店している店舗から買う場合とで、消費者がもらえる情報が違ってきてしまうのではないかという気もするのですけれども、情報提供という観点でのオフラインとオンラインの違いをどう考えたらいいのか。この3つをお伺いできればと思っています。

○千葉教授 正確に御質問の趣旨が理解できたかどうか怪しいのですけれども、まずマッチングという言葉なのですが、なぜマッチングという言葉を使ったのかというと、増島先生の資料にも媒介という言葉が出てくるのですが、媒介という言葉でなくてマッチングという言葉を使ったのは、媒介というのは先ほど言いましたように、商法で媒介契約とか仲介契約といったときに、委任者が仲介人とか媒介になった人に法律行為を成立させるためにと定義をしますから、非常に狭いことになりますので、媒介という言葉や仲介という言葉を使うと、それに当たらないということだけでプラットフォーマーの責任がないという議論に結びつきやすいので、まず避けたということになります。

それでは、先ほどの説明でマッチングという言葉をどういうふうに使ったのかというと、経済学のところで言っているマッチングという認識で表現しました。そうすると、取引型で取引が成立する場合でもプラットフォーム上に集約された情報が一致するというか、まさに需要と供給をマッチングすることによって取引が誘因されたり、取引が成立したりするということになるから、それをオーバーラップする、積み込む概念として、そのまま経済学で使われているマッチングの概念を使ったらどうかというのが私の考え方です。それが楽天市場でやられている作業とどう関係するのかというのは、楽天がどうやっているのかというのを私が認識できないと、何ともお話ができないという状態だと思うのですが。

○中田座長 その点で、例えば楽天の場合は当事者間の申込み承諾という契約関係は、事業者と顧客との間で締結されていることになります。このプロセスはその2当事者に置かれているわけですが、それを狭い意味でマッチングと言うのであれば、プラットフォーマーはマッチングに関与していないということになります。けれども、千葉先生が言われているのは、むしろどこに誰がいるかということをプラットフォーマーが見つけてきて、特定するという点、広告、宣伝によってプラットフォーマーは消費者を引きつけるという点に関心があり、販売事業者と消費者の2つの層をどこかで出会わせるような場を提供しているという、その可能性がある限りで既にマッチングは行われていると考えていいわけですね。

○千葉教授 はい、そういうことだと思います。売主と買主が法律学で言うところの申込みと承諾があって、それが一致しましたというのをマッチングというふうには捉えていないということです。私がAmazonなり楽天の市場で何か買いたいというときに、売主が誰かということについての情報はあまり知らないですね。この商品を買うのにどこの企業か分からないけれども、安くて、質がよくて、私の家のサイズに合っているものを注文する。そのものを提供してくる事業者がどこにあるのかということについては、私が探してきたのではなくて、そのプラットフォーマーが情報を提供してくれて、初めてその人と出会うということになります。契約をするときにいろいろ情報を買主の側が収集してというところを、プラットフォーマーがやるという状態になるということで、マッチングという言葉を使っています。ですので、利用者間の契約において契約内容が合致したというのをマッチングとは捉えていないということをまず申し上げるべきかと思います。

それから、特商法で提供されているような情報以上のものを要求するのかという問題ですが、まず考えてほしいのですが、先ほどなぜプラットフォームビジネスについてバリュー型のチェーンのビジネスの場合と違うということを申し上げた点が重要だと思います。12ページの図を見ていただいたらいいかなと思います。

○中田座長 特商法という法律で情報提供義務というのは決まっているということですね。

○千葉教授 決まっていますが、その範囲はまず業態ごとになっていまして、要するに訪問販売業という業態について、訪問販売業者と消費者の間の契約について規律しているわけですね。業法規制になりますと、要するに業種に該当しなければいけないという適用範囲の問題がまずあるということで、確かに、インターネット通販という業態の中であれば、特商法上の規制というものが及んでいくというのはそのとおりなのですが、では、それが全部のプラットフォームビジネスに及ぶのかというと、先ほど言いましたように基本的には事業者と消費者の間の契約に対してというのが前提になっていますので、シェアリングエコノミーが典型ですけれども、利用者間契約のところが個人同士の契約だということになると、プラットフォーマーは責任がないという話になってくる。これはどうしてかというと、プラットフォーマーが先ほど申しましたように第三者なんだというふうに考えるということになるわけです。しかし、実際は利用者間契約を成立するために抜き差しならぬ関係にあるということになりますので、これを今の特商法のスタイルでどこまで規律できるのか、部分的にしか適用にならないだろうというのが私の意見となります。

○中田座長 おそらく先生の考え方は、いわゆる利用契約というものの中でプラットフォーマーが主に提供するのは情報であるということを捉えて、その情報にかかわって、その範囲をどういうふうに考えるかというのは、利用契約の内容によって規定されることになるので、その意味では特商法の具体的な義務を超える場合も十分にあり得るということと、もう一つはプラットフォーマーが関与するそういう取引については、CtoCの場合もあり、確かに特商法の適用があるかどうかについては議論の余地はあると思うのですが、仮にその二当事者の関係では同法の適用がないとしても、プラットフォーマーがそこに入ってくる以上、それによって契約としての義務の範囲が変わり得るというふうに理解してよろしいでしょうか。

○千葉教授 プラットフォーム利用契約と利用者間契約の関係が混乱しそうなのですが、斜めに入っている線のほうですが、12ページの2つのプラットフォーム利用契約のところに情報提供義務が出てくるわけです。プラットフォームの利用者が消費者だったら今も消費者契約法の適用はあるのですが、それはプラットフォームの利用というところだけに限定されることになり、利用者間契約の成立にプラットフォームが非常に深く関与しているときに、利用者間契約のところで必要となる情報が十分に、プラットフォーム利用契約のところで提供されているのかというと必ずしもそうではない。そこが問題だろうと言っているわけです。

○中田座長 3つ目はオンとオフとの関係です。

○千葉教授 オンとオフの問題は、何が問題なのですか。

○片岡委員 普通の物を買うということに絞ってお伺いしたかったのですが、例えば、デパートや専門店街で消費者が何か物を買う場合と、オンラインショッピングモールで物を買う場合と、実はほとんど同じだと私は考えています。それを行うのがインターネット上かどうかというだけで、ほとんど似たようなものだと思っているのですが、オンラインプラットフォームを介することで、追加の情報提供義務がプラットフォーム側に必要だということになると、オンラインで買う場合とオフラインで買う場合とで、消費者側に与えられる情報が随分変わってくるのではないかと思っています。

○千葉教授 おっしゃることは分かりました。利用者間契約だけ捉えると、そこは変わらないというのはそのとおりだと思うのですけれども、ではその契約をするために情報がどういうふうに収集されるのかというと、デパートに買いに行くときは自分が契約をするために情報を収集するというのが原則なのだけれども、消費者法の場合はそれだけでは十分ではないとして消費者法制によって規律していることになります。消費者にバイアスがかかるとか、情報量に格差があって十分に判断できないことから、消費者の選択の自由をなるべく実質化するためにいろいろ消費者法制があるわけです。

プラットフォームビジネスの場合は、どうなるのかというと、自ら相手を選んでいないというか、相手を選ぶとは限らないという状況になります。収集できる情報というのはプラットフォーム上からでしか収集できないとは言いませんけれども、多くの契約の成立に係る情報というのは、プラットフォーム上を介してしか出てこない可能性があって、そこが大きく違うわけです。だから普通並みに、現実売買を行うとき取引をするかどうか判断できる程度、しかも消費者が消費者法制によって保護されている程度のところまで、プラットフォームビジネスにおいても情報開示することが必要であると言っているわけです。プラットフォームビジネスを利用すると、現金で買う人に比べて、プラットフォーマーのほうがプラットフォームの利用者に多くの情報を提供することになるというのは本末転倒だというのが私の意見です。発想が違うと思います。大事なのはプラットフォームに情報が吸い上げられて、個人の欲求を需要にかえて契約を成立させるという点がプラットフォームビジネスに特長的な構造ということになります。そこを逃しては規制の問題は考えられないと思います。

○片岡委員 1つだけコメントをしておくと、情報というのは、確かにプラットフォーム上を流れてお互いの取引相手に行くのですが、「マッチング」は、プラットフォーム上に存在する買い手と売り手の情報が各々あって、間にいる者がどれにしようかなと探してきて、相互のニーズを合致させるというようなイメージがあります。しかし、実際、今そこまでやっているプラットフォームは多くなく、特に普通のECモールですと、モール内に事業者が並んでいて、それぞれ情報を提供して、その中でこのシステムを通じて消費者が申込みをして、プラットフォームのシステムに情報が流れて、その情報をそのまま受け取った事業者が売買契約を成立させるか否か判断するというようなものが、普通のプラットフォームで行われています。

○千葉教授 おっしゃることは分かります。それが先ほど言いましたアーキテクチャの問題でありまして、この点が理解されないとこの規制というのはなかなか難しい問題だと思います。まずショッピングモールを想定して加盟店がいろいろ情報を提示しますというのですが、どのような情報を提示させるかどうかというのは、これはプラットフォームの設計に関わる問題で、プラットフォーマーのほうがどういう条件とかどういうことをどういう範囲で書けという話になっていまして、もう一つはオンライン上で一致する、あるいは情報提供されるというのは、まさにプラットフォームがそう設計しているからで、システムの問題なのです。そのシステムを設計しているのはまさにプラットフォームでありまして、プラットフォームがどういうふうに設定したのかによって、それが自動的にというか、意思が媒介されないような形で契約が成立するという状態になる。そこを捉えないでどうするんだということが私は非常に申し上げたいもう一つの点ということになります。

先ほど申しましたように、これまでは伝統的には意思が合致したということを前提にして契約の成立を考えているのですけれども、先ほど言いましたようにプラットフォームビジネスは全体として利用規約が定型約款の形になっていて、意思の合致の要素がかなり低いというところに、更にシステムを構築するためにプラットフォームを設計しておりまして、コードに従って取引が行われるということになるので、一種、自動化されているという問題をどう考えるか。自動化されているのだからプラットフォームに責任がないということにはならない。全体構造を設計したのは、まさにプラットフォーマーではないかというのが私の意見となります。

○中田座長 それでは、時間がかなり迫ってきていますので、幾つか連続して質問を受けていきますので、短めによろしくお願いします。

○畠委員 今のどこで、何を、幾らで買うのが適切なのかといった情報は、むしろ一般的にはインターネット上にあり、自由な意思で契約をするという観点においても、オンラインとオフラインでは違いがないのではないかと思っています。

1点質問なのですが、7ページのところでビジネスモデルの比較なのですけれども、これによってどのような影響が実際に生じているのかということについてお伺いしたいのですが、バリューチェーンビジネスに比べて、プラットフォームビジネスにおいては消費者保護の水準が下がるという帰結になるのかどうかという点です。

多くの事業者はプラットフォームの外と中、両方で取引をしているわけで、プラットフォームの中で取引をするといっても業法等の法律が適用されなくなることはなく、引き続き業法等の法律が適用されるわけですが、プラットフォーム上で取引をされる場合には二当事者間だけでなく、先ほどおっしゃったような一種のゲートキーパーとしての役割を実態上、プラットフォーム側が果たしていて、きちんと法律を適切に遵守しているかというのを一定程度、パトロールしているということもあって、むしろプラットフォームの外で取引がされるよりも、中でされているほうが法令の遵守というのは水準が上がることもあるのではないかと思うのですが、7ページの帰結から一体どういう影響があるのかということについて、御意見を伺えればと思います。

○千葉教授 私が非常に言いたいことを理解されていないということがよく分かりました。大事なのは、先ほど申しましたように利用者間の契約だけ考えればそのとおりなのですけれども、それは利用者間の契約だけに適用になります。また、プラットフォームの利用規約も、プラットフォーマーとプラットフォームを利用するためという限定された範囲で、消費者との間の契約が消費者契約法と消費者法制で規律されているだけなのです。全体システムについては実は規制の網の外という場合が出てきて、その典型的な状態になるのが、シェアリングエコノミーですけれども、消費者契約法の適用があるのは、基本的にはプラットフォーマーと利用者の間のプラットフォームの利用という限定された範囲で限定的に適用になるだけになります。

パトロールしているかどうかというのは、要するに利用者間のところをパトロールしているだけであって、全体システムをパトロールしているかどうか、誰もそんなことを確認した人はいない。いないからGAFAのところでいろいろ問題が出てきて、現在、経産と公取と3省合同でやったところでいろいろヒアリングをしたところですけれども、自由にした結果どうなったのかというのは、Facebookに関する一連の問題を見ていただければ分かると思います。

○中田座長 多分、場の提供という考え方を前提にすると、利用者間での契約という、いわゆるCtoC型については全く消費者法制は及ばないという帰結が簡単に導かれてしまう。それはおかしいのではないか。千葉先生は両方の当事者、プラットフォームをその場に入れて、その契約を成立させているので、そういうことをやっているプラットフォーマーが全くその後、責任を負わないというのはおかしいのではないかという問題意識をお持ちということですね。

○千葉教授 事業分野がレイヤー構造化してくるというプラットフォームビジネスの特徴を押さえないと、ここで規制をどうかけるかという話はできないということを最初に、かなり時間をかけて申し上げたのはそういうことなのです。

○中田座長 それでは、ほかに御質問、御意見があればと思います。前田委員、お願いします。

○前田委員 貴重な御説明ありがとうございました。

23ページに関して、御質問をさせていただければと思います。

1ポツ目と2ポツ目でデータの管理がずさんという話だったりだとか、そういうところについて具体的に、どういうことについてここがずさんという帰結になっているのかというのを御教示いただければというのと、2点目が2ポツ目の話なのですけれども、データの提供について一旦同意をするとパーソナルデータであるにもかかわらず、提供主体がデータを取り戻す方法がないという記載になっているのですけれども、現在、個人情報保護法等でも削除請求をした上で削除ないしその内容を修正するという請求権というのも法律上、記載されていますし、今まさに千葉先生もおっしゃっていたようにデータポータビリティーという話も挙がっていて、事業者によっては全てということはもちろん申し上げるつもりはないのですが、データポータビリティーという方法によって、そのデータを自由に自分のところに戻す、あるいはほかの事業者にそのまま丸ごと移すということも出てきている中で、取り戻す方法がないというのは具体的にこれはどういうことなのか、先ほど申し上げた個人情報保護法だったり、実際に自主的な取組も含め今、出てきているデータポータビリティーとの関係で、これがどういうことを想定していらっしゃるのか、少し具体的に御教示いただけると幸いです。

○千葉教授 厳密な書き方をしなかったので申し訳ないと思うのですが、ここで申し上げたいことはどういうことかというと、個人が提供する生のデータだけの問題ではありません。実は契約が成立するとか、契約を勧誘するということをなぜできるのかというと、そのデータを更に加工しているという状態になります。その加工されたデータに基づいて、例えば位置情報や、履歴情報等いろいろな情報を総合して、山本先生が御専門なので聞いていただいたほうがいいと思うのですが、例えば、あなたはこういう人という情報がつくられる。そういう二次的、三次的な情報というものは、個人のデータではないというふうに考えると、個人は自分が提供したものしか一定の範囲でデータポータビリティー権とか、今の個人情報保護法のところの枠組みを使って一定程度は修正したり回復したりすることはできるのかもしれないのですが、一次、二次、三次というふうに加工されていく中のものというのはそのまま残る状態なのです。

加工された情報まで、データポータビリティーの権利で移転しろということは、全然想定されていないということになりますので、そのことを申し上げたいと思っているわけです。生のデータがあって、それをただ利用しているだけではなくて、いろいろ加工して様々な状況のところで帰属とか管理とか、そういうことを考えていかないと実際上は困るでしょうということを申し上げたいわけです。今、日本の法制は、営業秘密に当たるか、プライバシーかという二極しか規制がないので、そうすると真ん中のところのかなりプラットフォームビジネスで利用したいところの情報についてはどう考えるのかは、これからの状態ではないか。多様な情報をもう少し類型化し、法制度を整備していかないと、個人からすれば「あっ」と思ったときに自分ってこんな人になっているのという話になるということだと思います。

○前田委員 ありがとうございます。そうすると、いわゆるプロファイリングのところについての懸念点を、ここで示されているという理解でよろしいですか。

○千葉教授 はい、一番大きいのはプロファイリングだと思います。

○前田委員 ありがとうございます。

○中田座長 それでは、同じ民法の、また消費者法の専門家でもあります沖野先生、お願いします。

○沖野委員 千葉先生のお考えを正確に理解したかどうかというところを確認するために、むしろ教えていただきたいのですけれども、先ほど来、情報の吸い上げとマッチング、それから、システムの組み方ということがある部分、かなり問題になっているように思われます。そういう中で民泊系のシェアリングなどは非常に分かりやすい面があるのですが、他方でモール型といいますか、そういうものについてデパートとの対比なども出され、少し分かりにくいような感じがしたものですから、このような理解でいいのかを確認させてください。例えば単純に物を買うという場合を考えますと、利用者間の売買契約となっているわけなのですが、そこで行われていることは、例えば買主側は、私はこういう買主で、こういうものを買いたいという意向を持っているというデータがここにあって、他方で売主側には、私はこういう売主でこういうものを売りたいと思っているというデータがあって、そういうものが多量にある。

そういう中でこれとこれを合わせて契約が成立しているという構造が実はそこにあって、一見したところ、デパートに買いに行っているのと同じであるかに見えるのだけれども、それは仕組みとしてどういう形で情報を出すか、伝達するかの方法をそのように組んでいるのであって、一見、自分のほうで選んでいるように見えるのだけれども、それは実は一旦それぞれの吸い上げをしていて、それをあわせて売買契約に至っている。それをかなり自動的に行えるようにしている。逐一買主側と売主側を手作業的に選別して何とか合わせようということをしなくても、そういうソフトウェアかどうか分かりませんけれども、そういうものを組むことによって見かけはそのように、いろいろ店舗があって、どれにしようかなと選びに行っただけの話ですと見えるけれども、そうではないというふうに捉える。したがって、シェアリングのタイプのみではなく、モール型のものを含めたいろいろな類型を見られる見方である。

それから、今まではそれは仕組みの問題というか、あるいは場の問題と言われましたが、場といっても仕組みの話で、そういう仕組みをつくって利用させる。どういう仕組みであればいいのか、そういう話で考えてきたところがあるのですけれども、むしろそれは結局、情報の、先生の言葉を使うと吸い上げと、それをどう合わせていくかという話と、それをどういう形で組むかという問題だというふうに考えられるし、そう考えるべきなんだということかなと思ったのですけれども、そういう理解でよろしいのかどうか。誤解をしていましたら訂正をお願いします。

○千葉教授 基本的にそういう理解をしております。

○沖野委員 分かりました。ありがとうございます。それで大分話がかみ合うようになるのかなと思います。

○千葉教授 先ほど言いましたようにプラットフォームビジネスを分類していく中で、今、かなりはっきり申し上げられるのは、製品のときにはもう少し考えなければいけないことがほかにあるかもしれないので確定的なことは言えないですが、サービス提供型で取引の成立あるいは取引の勧誘という形でサービスをする場合には、今、沖野先生がおっしゃったような方向で考えていることになります。

○中田座長 ありがとうございます。

もしよろしければ西村委員、消費者サイドから。

○西村委員 いろいろと御説明ありがとうございました。

20ページのところに機能横断的規制の遅れが顕著と書いてあり、今いろいろ頭を悩ませていることが現行の法制度では適用が難しいということだと思うのですが、法改正の今後のスケジュールで具体的なものがあれば教えていただきたい。

○千葉教授 私は行政の担当者ではないのでよく分からないですが、電子商取引法の準則については、全体的に見直すという方向だとお話は経産のほうから伺っておりますので、現在の準則をそのまま維持されないことになるのではないかと思います。3省合同の取引基盤についての検討会の議論を前提にすると、プラットフォーマーは場の提供者にすぎないというふうに準則には書いてありますので、それは経産としては修正せざるを得ないということになります。準則は見直しの方向でしょうか。今後、どういう立法ができてくるとか、あるいは今と同じようなガイドラインとし維持していくのかは、これから議論されていくのではないかと思います。

それから、リテール決済法は私が勝手に書いた法律の名前ですが、金融の横断的な規制との関係で、決済のところは一番最初に多分横断的な規制が議論されることになるのではないかと思います。金融庁は5年ぐらいかけて全体的な見直しをすると、去年は言っていたのではなかったかと思います。口座振込、カード決済、電子マネー決済、スマホ決済といったようなところをそのように横断的に規律していくのかは、今後考えていかなければならないということではないかと思います。

○中田座長 ありがとうございます。

それでは、山本委員お願いします。

○山本委員 時間が押している中、大変申し訳ありません。

先ほどから例えば、デパートでの買い物と、オンラインのプラットフォームを通した買い物は同じなのか違うのかという点が少し議論になっていたかと思うのですが、先ほど「同じだ」という御議論と、「違う」という御議論があったかと思います。EUの消費者ニューディールの考え方ですとか、私はまだはっきりとEUのやり方がいいんだというふうに考えているわけでは必ずしもないですが、「同じ」という御議論は、EUの消費者ニューディールの考え方とは違うのだろうと思います。そういう意味では日本でどういう形でEUの背景的な考えを受けとめなければいけないのかは、慎重に考えるべきだろうと思います。

2点目は、結局はニュートラリティーの問題なのかなと。つまりデパートでの買い物も決して中立的ではなくて、そもそもデパートが出店するお店を選んでいるわけですし、そこで、ある程度お金を払うお店がいい場所を選んだりとか、そういう意味で単に客が買いたいものを買えているわけではなくて、中立的でない作為的空間がそこに成立しているということになるわけですけれども、しかし、その非中立性を消費者が分かる。つまり、すごくいいところにお店があると、そのお店がいっぱいお金を払っているんだということが分かるわけですね。そういうある意味で非中立性なのだけれど、それが可視的になっている、透明の空間なのだろうと。

それに対してオンラインのショッピングモールというのは、もちろん非中立的なわけですが、それが不可視的なのですね。私がYahoo!ショッピングの「おすすめ」を大変よいと思っているのは、どういう仕組み・ロジックで順位が表示されるのかが明確なかたちで書かれているからです。いまページを見ますと、「『おすすめ順』は、Yahoo!ショッピング独自のアルゴリズムで算出された表示順位です。算出にあたっては、お客様がどのような商品を探されているか、お客様がどのような商品を購入されたか、ストアが支払う販売促進費の設定率などの各種データを使用しています」と書いてある。これは、非中立性を可視化し、透明化している。これは非常にそういう意味ではデパートに近いたて付けになっているように思うのですけれども、先ほど楽天のお話分からですと、そういうものがかかっていないのでしょうか。楽天のサイトの「標準」というところがどういうアルゴリズムなのか分からないのですが、要するに中立的でない部分もないではない。そこの部分を消費者の側が気づくか気づかないかというところで、リアルとオンラインで「違い」があるのではないのかなというふうに私自身、今の段階で思っています。そういう意味では千葉先生のお考えに今、賛同をさせていただいているということであります。

○中田座長 ありがとうございます。

では、お願いします。

○早川座長代理 本日、少し遅れてしまいましたので先生の御報告の前半をお聞きしていないものですから、的外れなことを申し上げてしまうかもしれませんが、お許しください。

2つコメントと1つ御質問なのですけれども、1つ目は先ほど準則のお話がございましたので、準則の作成に若干かかわっているものですので、先生が御指摘になられたところが準則にどう反映されるかについてのオブザベーションということなのですが、準則に関しては以前からどういう形で準則の記載をするのかという方針については様々な議論がございまして、現在とっている立場というのはどうなのかというと、既存の判例等を整理して、今あるルールというものがどういうものなのかを明示するというところまでで、立法機関では当然ありませんので、それ以上あるべきものがどういうものかという方針をより踏み込んで示していくことに関しては、大変ちゅうちょがあるというところが実情でございます。ですので、先生が先ほど御指摘になられたような形で今回の準則について、場の提供ということからプラスアルファでどこまで踏み込めるかというところは、ちょっとまだよく分からないというのが実情だと思っております。

もう一つは、この専門調査会の中ではずっと議論をしていく中で、もしプラットフォーマーに対して場の提供以上の責任を問えるとしたら、どのようなことを理由にして責任を問えるのかというところをどうやって言語化できるかといいますか、具体化できるかというところを探ってきたわけでして、その意味において先生の今日の御報告、資料を先ほどずっとさかのぼって見させていただきましたけれども、非常にヒントになるところが多いのかなと思ってお聞きした次第でございます。

そのときに我々が頭を悩ませていることの一つというのは、仮に先生が御指摘になったような特徴を持っているというところをプラットフォーマーに対しての場の提供以上の責任を問えるという形で根拠として使って、仮に何かのルールなり法制でそこに対して一定の責任を追及するようなものをつくるときには、そうすると定義が必要になります。そのときにプラットフォーマーの定義というのは、もちろん先ほど幾つかの類型に分類できるというお話がございましたけれども、例えば1つでも結構ですので、どのように定義を書き込めばいいのか。例えば法律にするにしても、ガイドラインにするにしても、まずこの対象となるものの定義というのが必要になりますけれども、そこはどういうふうにお考えなのか教えていただければと思います。

○千葉教授 まず準則の話ですが、準則はおっしゃる形でできたのは、先ほどの私の発言で、もしかしたら誤解があったかもしれませんので、今のコメントいただいたとおりだと思います。ただ、先ほど申しましたように経産が中心になって、実はダボス会議でも1月に中間論点整理の方向性については、政府の意見として公表されることになっているはずですので、そうだとすれば、経産としてももう一回、電子商取引全体についてどういうスタンスで考えていくのかというのは、今後の立法政策としては考え直さざるを得ないところだろうというのが私の先ほどの発言の趣旨でございます。

○早川座長代理 それと準則はまた別の話かもしれません。

○千葉教授 準則自体は1回見直すことまでは大体の規定の路線だと思いますけれども、表現が場の提供というふうにはっきり書いてしまっておりますので、そこはかなりまずいと考えているのではないかと思います。

もう一つの問題ですが、プラットフォームの定義については、これまでもEUのところでもそうなのですが、そもそもプラットフォームの定義をするという話になると、それで混乱することになります。EUのところでいろいろなプラットフォームについての報告書や考え方等示されているところですが、日本の準則自体も確かOECDのところで書かれているものをそのまま持ってきて、その範囲で入るものは全部というやり方をしております。 これまでの規定のつくり方からしますと適用範囲を決めて、行政の場合は国家権力を発動するということになりますから、どういう適用範囲でどういう内容かということを明確にすることが必要だということになると思います。しかし、ビジネス自体が非常に流動的で変化しているわけです。先ほど森先生からもお話が出たところで回答したところだと思うのですが、どういう情報を吸い上げようとしているのかや、それによってどういうシステムを組もうとしているのかということを考えないといけないということになると、要するにプラットフォーム上にどんどん新しいサービスやビジネスが登場するということを想定した上で規制をしないといけないという問題になりますので、最初から定義規定を書くということは諦めたほうがいいと思います。

現在あるもので包括できるようなものを抽象的に想定しておいて、問題のあるところを、このあたりが問題だという形で機能横断的に規制をかけていくことになります。ですので、今日の報告でも規制の在り方自体が問題だと申し上げたわけです。先ほど言いましたように、システム自体を書きかえることができるのはプラットフォーム事業者のほうでありまして、彼らに納得をしてもらわなければいけないという問題もありますので、その中でどうやって民主的なコントロールをかけ、利用者の保護を図るのかということを規制の在り方自体も含めて考える必要があるというのが私の意見だということになります。無用な定義から始めるのはやめたほうがいい。業法規制の考え方だろうと私は思っています。

○早川座長代理 おっしゃるように、議論をするときに定義から始めるのは全くナンセンスだと思いますし、準則に関して言えば基本的に場の提供というところで結論が終わってしまっていますので、プラットフォーマーの定義をすることによって何らかの規制とか責任がかかるものがどの範囲なのかというところについてぎちぎちやる必要がないわけですから、ラフなままでもいいところがあるわけですけれども、例えば実際に、先生の御指摘になっているこういうふうな要素があるから、このような責任が発生すべきだというところについて異論を求めるわけではなくて、それを実際に何らかの形でルール化したときに、そのルールが適用されるものはどの主体なんですかということは、最終的には確定しなくてはいけませんで、そのときにどういう定義が置けるかというところに困難性があるのではないかというのが1つの問題意識としてあるわけです。そのときに定義を考えることは必要ないと言われてしまうと困ってしまうのですが。

○千葉教授 ルールをつくるときに適用範囲を先に想定して、そこから議論を組み立てていくという方法をやめたほうがいいと言っただけです。先ほど申しましたように横断的に規制するということになると、例えば今は情報提供義務が必要だという話をしたわけです。プラットフォーマーには情報提供義務が必要である。では、情報提供義務が必要なプラットフォームビジネスというのはどういう場合なのかと定義すれば、そこは最初から定義をしなくてもいいわけです。情報提供義務に対してこういう法律効果を今は想定している。それを適用していいというのは、こういう根拠があるから、この範囲だったら適用するというふうに考えればいい。今までの業法も消費者法もそうですけれども、先に定義規定があって規制を考えるので、そこでもめてしまって先の議論が出てこないということになる。横断的規制というのはそういう意味だということになります。

○早川座長代理 おっしゃっているように、この中でも先に業法的に何か決めてしまってという発想をしていないので、そこは御理解いただいたほうがいいと思うのですけれども、他方で特定の効果を与えるにどういう主体が望ましいかというところを考えるときには、そこで先生が今おっしゃったように何らかの適用範囲を決めなければいけなくて、そこを書くのがなかなか技術的に難しいのかなというところで1つ悩んでいる。多分そこで御示唆があるのかなということでお聞きした次第です。どうもありがとうございました。

○中田座長 法律の議論だけにとどまらないところがありますので、大橋委員から何かございましたら御発言いただければと思いますが、どうでしょうか。

○大橋委員 遅れてしまったのであれなのですけれども、ただ、途中から伺って千葉先生はまさに御自分の言葉で議論をここまで築き上げたのはすごいなというのがまず1つ思ったのと、やはりオンラインとオフラインで情報の格差という問題があるんだなということも改めて認識をさせていただいて、情報の格差というのはまさに山本先生おっしゃったニュートラリティーと関わる部分なのだと思いますけれども、なかなかこうしたことは定義がきちんとされていないし、定量化もはっきりされていない部分があって、そこは議論が定性的にとどまっているところがなかなか歯がゆいところなのですが、ただ、議論を今後深めていく必要というのはあるのだなと。今回のこのミッションにどう反映するのか、私は法律家でないので分からないのですけれども、ただ、非常に貴重な御意見をいただいたなと思います。勉強になりました。コメントです。

○千葉教授 説明のときに省いてしまったのですが、取引の透明性というところで情報提供義務の問題、情報格差の問題をどう修正するかという問題ですし、特に約款等システムをつくるときにプラットフォーマー側がつくりますので、基本的に取引の公平性との関係でいくと、先ほども申しましたように優越的地位の濫用の問題というのが出てきて、民事的なところで言うと交渉力の格差の問題をどう考えるのかという問題が出てくる。そういう切り口でもって規制をかけるかどうか考えて、それに該当する範囲のプラットフォーマーを規制していくというような方向かと思います。

○中田座長 ありがとうございます。

大分時間が来たのですが、ほかにあれば。それでは、池本委員長代理、お願いします。

○池本委員長代理 16ページの先ほど来、繰り返し議論になっているプラットフォーム事業者が利用者に対して情報提供義務がありという、これが本質的な義務だという、まさに正鵠を得た御指摘だと思うのですが、このことに関して結論を急ぎ過ぎるかもしれないのですが、例えばこのような場面のこういう義務付けにつながるのだろうかということで、ちょっと私なりの思いを受けとめていただいて、正しいか、そこまではいかないということなのかコメントをいただければと思います。

先日、中国のこの分野に関する法制度の議論をヒアリングで聞いたときに、まさにBtoCかCtoCかはともかく、そこでの取引について例えば主体の所在がはっきりしない、所在がつかめないようなときに、そういうクレームが表面化した場合は、プラットフォーム運営者としてはきちんとCtoCの取引であっても最低限どこの誰かということは確認しておくべきである。それを確認し、情報提供すべきであるという義務付けということがあるのではないかという議論がありました。それはまさに運営する事業者対利用者との間の情報提供義務であって、その先の取引がBtoCかどうかの問題ではない捉え方という意味では、今日御指摘があったところと同じではないかと思います。

更に言えば、そのBtoCであれCtoCであれ、そこで行われる取引で、例えば、偽物を本物だと称して出品しているぞというようなクレームが表面化したときに、これは正確な情報提供義務の中で、そういうものを含むかどうか分かりませんけれども、そういうクレームが例えば複数あがってくれば、確認して正確な情報がその場にあらわれてくるようにチェックをする、あるいはそれで不適切なことを繰り返していれば排除するとか、そういったプラットフォームの事業者が利用者に対して正確な情報を提供するということまで将来的には含む議論になっていくのかどうかということについて、お伺いできればと思います。

○千葉教授 含むと思います。

○中田座長 ありがとうございます。

この議論はなかなか理論的な側面を持っていまして、具体的な問題として、ルールとして、この議論をどういうふうに、どこまで生かせるのかというのはまだまだ詰めなければいけないところがあるのではないかと思います。最初のところで取引型プラットフォームと取引誘因型プラットフォーム。取引誘因型プラットフォームには焦点を当てていないのではないかという御議論があったかと思うのですが、私どもとしては取引誘因型プラットフォームを排除したつもりは全くなくて、関係する限りですが、十分に考慮しなければいけないというふうには考えておりますので、その点だけ、おそらく誤解ということではないと思うのですが、そのように申し上げておきたいと思います。

それでは、ただいまから休憩に入りたいと思います。千葉先生、どうもありがとうございました。

(休憩)

○中田座長 それでは、時間になりましたので、再開します。

次に、千葉先生のお話が総論的なものと位置付けるならば、今からの増島弁護士からの御説明はむしろ具体的な内容に入っていくものではないかと思います。そういう点もありまして、千葉先生におかれましても、時間の許す限り議論に参加していただきたいということで、この場にとどまっていただいております。

それでは、増島弁護士のほうから、大変恐縮ですけれども、20分ほどでお願いします。その後は議論に委ねていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○増島弁護士 御紹介いただきました、森・濱田松本法律事務所の増島と申します。

私の立ち位置を一応御説明しますと、大きな事務所にいるのですけれども、基本的に起業家側のサービスをつくる側でございまして、今までプラットフォームビジネスをかなりの数つくってきております。その意味では制度をディスラプトする側に回ることもあるわけですけれども、どういう意図で、どのようにやっているのかについて、少し共有をさせていただくという視点から、少しお話をさしあげたいと思います。

まず1ページ目、日本のプラットフォームのモデルというのは、先ほどAirbnbの例が出ましたけれども、Airbnbは両方からフィーをもらっているモデルというふうに紹介がありました。しかし、これはかなり特殊な例でございまして、そのほかの日本のドメスチックなモデルは、ほぼ100%、CtoCであれば売るほう、要するにそこでトランザクションが起こるとお金が入ってくるほうですね。ここからお金をもらうというモデルになっております。なので、お金を払う側から更に追銭を取るというモデルは普通はつくらない、このようになっているところでございます。

なので、先ほどの議論の中で、お金を取っているのだから責任を負うという趣旨の議論をもし展開するとしたら、こういう形で需要者側、購入者側からお金を取っていないモデルというのは結構いっぱいありますので、その議論で多分詰まってしまうのではないかと思います。

もう一つありますのは、ピア・ツー・ピアで契約が成立しているのですよという話に関してです。ECであれば、「売ります」、「買います」ですから、要件事実としても何を幾らで買うかが決まっていれば別に問題ないわけですけれども、今、プラットフォームモデル全盛という話で、そこには複雑ないろいろな契約が乗るようになってきています。宿泊というのもその一つでしょうし、クラウドファンディングの例を挙げていますけれども、こういうものですとか、モビリティーも今は乗っかってきていますし、いろいろなものが乗っかってきているという中で、CtoCでどんな契約が成立するのですかという部分は、サービス内に必ずしも明記されていなくて、当事者間で効果意思の合致があったということになっているわけですけれども、そこがどういう契約になるのかというのは結局、サイト内の行動によって当事者は誘導されるという形になっている。こういうモデルであります。

特に検索モデルというか、検索で自分が欲しいものがすぐ出てくる。リスティングと言っていますけれども、取引したい案件がきれいにできていると、トランザクションが発生するので、このトランザクションの発生を高めていきます。事業者はここにKPIを基本的に置いていますから、そのためにAIを回したり等、いろいろなことをやって取引可能性を高めています。それをやっているのはAIですけれども、当然、コードをいろいろいじって、パラメーターをいじっているのは中の人ということでございます。なので、中の人の能力をAIによって拡張しているというのが実際のところという形になっています。少なくともこれはサービスをつくっている側が言うので、信じていただいていいと思うのですけれども、こういう発想でサービスをつくっているということです。

今、我々の問題意識の一つは、CtoCで成立している契約の中身は果たして何なのかというのが結構このプラットフォームモデルは曖昧よねという、ここに一つ、問題意識があります。結局取引が成り立ってみんながハッピーなら別に構わないので、それが法律的にどうかといって喜んでいるのは法律家とか、そういう人たちだけなので、正直どちらでもいいと思うのですけれども、今までの「売ります」、「買います」という世界よりも複雑なものが今、どんどん出てきていますよという、ここがポイントです。要するに、P2Pの取引条件が複雑になってきているのですね。

その条件が複雑なものを成立させて、そのとおりに履行させるために何をしているかというと、それがまさにプラットフォームでつくっているコーディングだということになっているということです。

典型的にここに今、プロジェクト実施型の購入型クラウドファンディングと書いてありますけれども、購入型クラウドファンディングといっても、「売ります」、「買います」では結構なかったりするのです。金を出してもらうリターンが、「私はツアーをしますので、それに参加することができますよ」ですとか、「講演会にお呼びしますよ」みたいな、こういうものがいろいろあって、こういうのは売買ですかというと、おそらく民法上は売買ではないだろうという話です。ではその契約はどんな条件のもとで提供されるのですかというのは、結局、ページの中に何が書いてあるかという話と、そのページの中身を見て「支援する」というボタンを押したという、これによって、要するにページが民法に言う申込みで、「支援する」のボタンを押すと承諾をしたということなのではないですかという、こんな感じでやっています。

購入という呼び方をしていますけれども、それが本当に購入、売買なのかというと、売買っぽくないものも結構いっぱいありますねという話であります。また、この「オール・オア・ナッシング型」というものは、一定の金額が集まればそのプロジェクトをやるけれども、そうでなかったらやらないから何も義務を負いませんよという話になっています。その他、いろいろな複雑な条件が書いてあるということですね。その辺は一応、規約に書きましょうよということで規約に書くようにしているわけですけれども、そういう条件で成立をするというのは、あくまでもユーザーのサイト上の行動によって実現させていますという、こんな形になっているのが実態でございます。

3ページを少し見ていただくといいと思うのですけれども、そういう複雑な取引を実現、成立させるために、プラットフォーマーは何をやっているのですかということです。これも起業家が典型で言う言葉ですが、とにかくフリクション、摩擦を減らす、若しくはなめらかにするという言い方をしていますが、なめらかな取引を実現するということです。これは結局、マッチングの確率を上げるということで、そこにKPIを置いているということを本質的には言っているわけですけれども、ユーザーが欲しいと言ったものがすぐ買えるという状態をつくるのがイノベーションにとっては絶対的な善でありますから、その状態をテクノロジーを使ってどうやってつくっていくか。ここに本質があるのだということでビジネスをつくっていますし、そうすると利用者が便利だねといってすごく喜ぶということですし、喜んでいるのはなぜかというと、取引が成立しているからということでありまして、そこからお金も出てくるし、トランザクションデータも出てくるよという構図になっています。

プラットフォーマーの役割や責任という話がよく出てきますので、資料に一覧でまとめてみましたけれども、プラットフォーマーが実際、先ほどのリスティング、検索とか、クラウドファンディングだとプロジェクトをつくるとか、プロジェクトを広報する等、いろいろやることがあるわけですが、結構多くのところでプラットフォーマーがそれをお手伝いしているという実態があります。

ただ、それをお手伝いしますよとか、しませんよというのは、何か規約に書いてあるのですかというと、別にそんなものは書く必要がないと思っているので、そんなものは規約に書かないよという形でやっている部分もあります。規約に書かれない部分はコーディングで実装するので、あえて規約に書いて、プラットフォーマーの義務を増やすなどということをする理由はないねということでやっているということです。

なので、規約自身がデザインのたまものということでありまして、コーディングでここは実現ができる。ここは書けば、それはプラットフォーマー側の債務になっていくので、そんなものをあえて書く必要はない。こういうところで規約に何を書いて、何をサイレントにしておくかをデザインしているということでやっているということでございます。

マーケットのデザイナーというのはプラットフォーマーでありますから、そのようなことで実際はやっていますけれども、実際に何を動かしているか、実際に何をしているかという話と、規約にどう書いてあるかというところには、そういう意味ではずれがあって、そのずれは意図的につくっているということでございます。

4ページのところは、実際に朝日新聞さんの「A-Port」という購入型クラウドファンディングサイトの規約です。こういう感じになっているわけですけれども、スタートアップに限らず、朝日新聞さんみたいな大きな会社でもこのような形で実際につくっておりまして、取引のフォーマットみたいなものを規約には書きます。その規約に基づいて、多分、Cの人たち、当事者の人が自分の実行はオール・オア・ナッシングですと言って、それでオーケーですというと、ここに書いてある規約の中身が当事者間の契約にインコーポレートされるというロジックをとっているのだと思っています。インコーポレートされることを念頭に規定しておくべきものを規定しつつ、それは当事者間の契約なので、プラットフォームには直接契約当事者になりませんよというのを書いて、それを了解してもらった上で取引をしていただいているというデザインをとっております。

どれもプラットフォームの規約というのはこのような発想でつくっておりまして、その中で我々も全体に適正になるためにどうしたらいいのかというのはもちろん考えるわけですけれども、まずもってやらなければいけないのは、適用法令を遵守するということは当然やります。その適用法令との関係で、我々、サービスをつくっているときに、このプラットフォームというモデルを適用法令に当てはめると、すごくわけの分からないことがいっぱい起こっているなと思いながらつくっているというのが実際のところですので、そこの部分を少し共有させていただこうと思います。

5ページを御覧いただきますと、まずは私法の問題です。これはもう皆さん、さんざん議論されているとおり、プラットフォーマーが利用者に対してどのような私法上の責任を負うのかという話でありまして、ここは先ほども御議論をしていただいたとおり、取引の場にすぎないという議論をしているわけですけれども、精密なターゲティング広告とか、プラットフォームによってもともと設計をされた行動以外の行動はとれませんという話になっています。また、検索によって、おまえはこれが好きなのだろうというのをマッチングさせられるということになっていますし、更に決済の機能も提供する。このような話になっているときに、場の提供にすぎないの、この「すぎない」というのは一体何のことを言っているのかというのは、だんだん分かりにくくなっている、こういう実態はおそらくあるのだろうと思います。

ただ、そのときに、まさに百貨店の話が出ましたけれども、百貨店とオンラインの話を区別して議論するのか、同じものとして話すのか。区別をするとしたら、EUが親のかたきのようにオンラインをだめだと言っている話は結局、即時性とか場所を拘束しない、ネットワーク効果とかを理由に、オンラインはより規制するのだという話をするのであれば、そういう議論になるのだと思いますし、そうでないのであれば、百貨店と何が違うのですかという議論に正面から向き合っていただく必要があると思います。

更に申し上げると、皆様も御存じかどうか分かりませんけれども、これから展開されるモデルは基本的にオンライン・ツー・オフライン、オフライン・ツー・オンライン、若しくはそれがマージされるという世界観ですので、この取引はオフラインです、この取引はオンラインですみたいな、こういう話はないわけですね。スマホを持ってお店に行って、物を見て、今ここにサイズがないやと思ったらば、スマホに行って、スマホで買う。若しくはお店で見て、これが欲しいなと思ったら、スマホで買って、それが家に帰ったら郵送で届いているという世界観ですから、オンラインだからどうだとか、オフラインだからどうだみたいな議論は、今やっていただくのは結構ですけれども、早晩そんなものは有効でなくなるだろうというのは見えているということでありますし、中国はそういう世界に入っているということでございます。

あと、我々、なかなか難しいなと思っているのは、私たちはどうしても法律が気になるのですけれども、媒介の話というところに尽力行為みたいなのが要件にあるわけです。機械が幾らぐるぐるマッチングしても、人は尽力していないみたいな議論をすることがあるわけですけれども、あくまでも機械は人のパワーを拡張するものでありますので、それをあわせて、全体としてそれが尽力行為になるのかというのを、おそらく本当は見なければいけないような気はするのですけれども、現状はここは媒介にならないという判決例が出てみたりとか、いろいろするわけですね。

他方において、例えば金融の世界のマッチングビジネス、仮想通貨の取引所でも何でもいいですけれども、あれは仮想通貨の売買の媒介という形で規制をされておりまして、やっていることは別に楽天のECモールと同じことをやっていて、ただ、売っているものが仮想通貨だというだけなのですけれども、あれは媒介と呼んでいます。また、Airbnbのモデルも住宅宿泊事業法は彼らは媒介だと書いてあるので、媒介なのでしょうという話。それと、個別に検討して、それが媒介に当たらないのであるみたいな議論がたまに出てくることの法制的な整合性は一体どうなっているのだろうなといつも思って、ビジネスを見ているということが起こっています。

あとは、そのアーキテクチャみたいなものによって市場をデザインするという、この行為を法的にどのように評価するのか。ここの議論は今まであまりちゃんとした形ではなされていないような気がするので、そういうものに対して私法というのがどう向かうのか。私法の人たちは効果意思の合致みたいな話を非常に大事にしますので、効果意思と関係のないアーキテクチャですね。ここのところになかなかアプローチすることができるフレームワークを持っていないわけですけれども、この辺がおそらく間隙を生んで、この間隙をスタートアップなりが攻め込みますよという話でございます。

次に金融法の話でございまして、金融法は、サービスは最終的にマネタイズしなければいけないので、必ず資金決済の部分は関与するというモデルになっています。ここの資金決済に関与するのは、先ほど申しましたとおり、日本のモデルでは、そこでサービスを提供する人に対してシステムを提供しているという構成をとっていまして、その「システム利用料」としてお金を取るというモデルにしています。ここで債権を立てまして、この債権を担保するために代理受領権をもらって、収納代行という形でやっているのですという、こんなモデルになっています。これは金融庁が事務局になった決済のワーキンググループ、10年前ですけれども、ここで出ているものを根拠にやっているわけですが、これも基本的には当時はコンビニとかああいうところでやっていたオフラインで行っていたモデルをベースにしています。それをオンラインで展開して何か問題があるのですかということで、いろいろなプラットフォーマーが収納代行モデルでやっているという感じになっています。

ただ、ここの部分もやはり当時と今とは随分状況が変わっていて、当時は大きな事業者が消費者による支払のための収納代行で、そこにはコンビニみたいな人、安心できそうな人がどんといて、消費者が店頭でお金を払うモデルになっていたものですから、ここでアドレスすべきリスクは、支払う側の消費者の二重払いリスクです。要するに、1回払ったけれども、そこでコンビニが潰れたらどうするのだみたいな、ここに焦点が当たっていたので、コンビニに払ったらそこで弁済が終わって決済が完了するという要件があるのだったら、それは収納代行と認めていいよという議論になっている。逆に言うと、受け取る側というのはそのサービスを自分で選んで使っているのだから、それを保護する必要はないという目線があります。あとは当時の想定はオフラインなので、サイバーセキュリティーのリスクは特に検討されていませんでした。

ここが新しい局面になってきて、今、収納代行モデルは、先ほど大きなBに対してCがお金を払うというモデルで言っていましたけれども、逆にクラウドソーシングみたいなものは、Cに対してお金を払うときにBがプラットフォームに払ってCにお金を渡すという、先ほどの逆バージョンも出ています。またCtoCは両方ともCになっているという話になりますので、払う側の二重払いリスクにアドレスしなければいけないのだということもさることながら、受け取る側のリスク、要するに、受け取る側が受け取る前にプラットフォームが潰れるみたいな話になったときに、それをどう保護するのだみたいな話もアドレスしなければいけない状況に実際はなっているはずだということです。

また、実際に提供しているプラットフォーム自身がスタートアップのような財務的な脆弱性もあるような人たちになっているということと、それに付随してサイバーセキュリティーの問題みたいなものも当然出てくるねみたいな話があって、この辺にどのようにアドレスしなければいけないですかというイシューが出てくる。おそらくこういうことになっているのであろうと思います。

この点に関連して我々がよく分からないのは、先ほどの私法と決済の関係でありまして、取引に関与しないときにはどうのこうのといった場合に、プラットフォーマーは基本的には決済には大体関与しているので、ここの部分は取引に実質的に関与しないという話との関係でどう評価をするのか。お金を受け取るというのはクリティカルに大事な要素のような気がするので、ここを見ずに議論するというのはあまりないだろうなと思っているということでございます。これが金融法の話でございます。

特商法の話を7ページに書いておりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、特商法との関係で我々が通常よく整理をするのは、プラットフォーマーはサービスをこの上で提供する供給者側に対してシステムを提供して、そのシステム利用料をもらうのだという話だと理解した上で規約をつくっていますので、そうすると、サービス供給者に対する通販だって、こんな整理をしておりまして、なので、そこについてのみ特商法の記載をしているという形になっています。

逆に言うと、そこで物を買う人ですとか、そういうものは、CtoCであればそれは売る人が事業者かどうかによって変わるとか、そういう話もしますけれども、買う側の人はプラットフォームとの関係で取引、通信販売業者のような整理にはなっていないのだという考え方をとっていることが多いと思います。これは、一つは先ほど申しましたとおり、物を買うほう、需要者側に対してはお金を一切取っていないからでありまして、お金を取っていないときに何を開示したらいいのでしたっけみたいな話になったときに、そこを見ながら何か特商法表記をするというような発想はあまりとっていないなという感じがしています。

ちなみに、特商法の表記というのは、御案内のとおり行為規制なので、別に経産省に認可をもらうとかそういう話ではないのですけれども、実際のところはクレジットカード屋さんに決済の仕組みを決済代行で申し込むのですが、そうするとクレジットカード屋さん、若しくはペイメント・サービス・プロバイダー(PSP)さんが必ず加盟店審査の名のもとで規約と特商法表記を出してくださいと言いまして、これを出すのですね。そこの中で、それでいいですよと言われると、この決済を走らせることができるみたいな、こんなプラクティスになっているので、こういう部分で実は規律がきいているという世界になっているのが実態でございます。

我々、ここの部分との関係で、特商法をどう見るのかというのはいろいろあるかもしれないのですけれども、特商法に書いてある連鎖販売とか訪問販売とかいろいろあって、一定の特殊な取引が書いてあるわけですけれども、ある意味、もしかしたらプラットフォームモデルというのはインターネット特有なモデルかもしれなくて、通信販売というモデルとは別にするのかどうするのかは、また議論があるかもしれないですけれども、これを一つの類型として、あるべき規律を課すということをもしされたいのであれば、そういうことを考えないのはなぜなのだろうかみたいな部分が実はあります。

実際に、先ほど申しましたとおり、プラットフォームのビジネスをやるとき、特商法は先ほどのシステム利用みたいなところに着目をしてやって、利用者、物を買う側にいろいろと情報を出すということはしていないのです。でも、プラットフォームはデータをとっているねみたいな話になってきたときに、データがお金だというような非常にざっくりした議論が最近ははやっていますけれども、そういう話であるとすると、ここに特商法を、プラットフォームが消費者側に開示すべき情報を開示するという話があるのか、ないのかみたいな部分はあるのかなと思っているということでございます。

最後に、電気通信事業者としての位置付けというのを書いておりますけれども、基本、ネットワーク効果を狙うという話になっていきますので、直接ネットワーク効果を狙う場合にも、若しくは間接ネットワーク効果を狙う場合にも、結局、コミュニケーションが発生しないとそこにはネットワーク効果は生まれないということになりますので、必ずと言っていいほどプラットフォームにはコミュニケーション機能がついています。なので、まさに届出電気通信事業者の規制がかかってくる場合が結構あるのです。

ここの部分について、実務的には届け出るのですけれども、あまり執行が厳しくないところも実はあって、届け出は結構後のほうになるという傾向があるように思います。ここは総務省が一体どんな行政をやっているのか外からは分かりませんし、これによって事業者が何か痛い目に遭うみたいな話はあまり起こっていないのですけれども、上場の前には、ここは出す、出さないわけにはいかないねみたいな感じで出しに行くという感じです。

なので、何とか法をつくるべきみたいな大上段の議論をしていただくのも構いませんけれども、既存の法制でポイントとなるネットワーク効果の追求としてのコミュニケーション・プラットフォームという特徴ですとか、特商法の話ですとか、先ほどの金融の話ですとか私法の話、こういう部分についての規律をもう一度きちんと見直していただけると、多分、大上段に構えた議論ではない形で、ある程度望ましい姿というのは、もしかするとできるかもしれませんよという話になってきます。

一応、我々の世界はシリコンバレーを見ながらやっているのですけれども、シリコンバレーの世界では、「誰も気づいていない真実を見つけろ」という話になっています。プラットフォームビジネスで誰も気づいていない事実というのは2つありまして、一つはパーソナルデータというものについて、皆さん、パーソナルデータというのはプライバシーの話だと思っていましたので、表現の自由だよねという話で、ここで精神的自由側に寄っていたわけですね。でも、これ自身が実は金を生むという、これは一つ隠れた真実としてシリコンバレーでは認識をしていた。それを最大限活用したのがFacebookという話になっているわけです。

もう一つはネットワーク効果の働き方、データには価値があるということです。それがネットワーク効果によって指数関数的に伸びていくという事実。この事実は今の法制がそういうものであるということをキャプチャーしていないということです。そこに着目をした規制の在り方とか何とかというのは入っていないわけでありまして、ここも実は隠れた真実ですので、イノベーターの人は、このあたりを使ってディスラプトするということをやっていくということです。

これは世界中で発生していまして、別に日本だけがいけないわけではありませんが、制度のゆがみをついてビジネスを大きくする。制度ハックという言い方をしていますけれども、それが起業家の社会的な責任でございます。それで世の中を動かしていって、よりよい世の中にしていく、制度をよりよいものにしていくというのが起業家の社会的な使命でありますので、その使命に忠実に動くというのはそういうことになると理解をしているということであります。

我々は法律の世界の人なので、法律のほうで申し上げますと、結局、デジタル・プラットフォームモデルの概要が大体世間に明らかになったという状態になっております。その結果、何がリスクなのかというのは、そろそろ世間も理解をされたということだと思いますので、そのリスクの目線から個別の業法でどんな問題があり得るのかというのをまず検証するというのを多分やるのだろうなと思っています。

それはオンラインプラットフォームモデルをやっつけてやろうという方向性、そこに発生するリスクという面もありますけれども、他方において既存の法制はデジタル・プラットフォームモデルを想定していないというものも結構あります。そういうものについては、逆にモデルの中立性という観点からすると、そういうモデルを法制が阻んでいるということもありますので、そこの阻むという部分は、それはそれで直していただく。プラットフォームモデルで展開するのか垂直モデルで展開するのかというのはモデルの選択の問題ですので、プラットフォームモデルで展開することを既存の法制が阻んでいるのであれば、それはそういうことができるように逆に直していただいた上で、そのプラットフォームモデルのリスクがあるとお感じになるのであれば、そこの部分をアドレスするようなルールをつくるということなのではないかと思っております。

分野横断的な規制みたいな話になっているわけですけれども、分野横断とか業態横断と言っている大多数の人たちは、具体的なイメージがどうも湧いていなさそうで話しているなというのが正直な話であります。ここは結局、法律で何かアドレスしようというのは結構むちゃだという話がそこにはあるわけですね。アーキテクチャの問題なので、アーキテクチャにはアーキテクチャで向かわなければいけないということであるとすると、レイヤーで言えば、例えばデジタルアイデンティティーの問題ですとか、サイバーセキュリティーの問題ですとか、先ほどのオンライン決済の問題ですとか、プラットフォームモデルをとることによってこれらのイシューが出てきますから、そのイシューに対する仕様というのを決めていって、その仕様を実現していってくださいというモデルにする。その結果、実現するサービスがECのモデルだったり金融のモデルだったりする。それぞれの上に載っかっているのがコンテンツですから、そのコンテンツ特有の規制というのは、今までの業法っぽいものがそこにあるという、多分こういう絵姿に全体をしていく必要があるはずです。それは法律の世界とアーキテクチャの規律、標準というものを組み合わせる形でつくっていくべきなのだと考えています。

ちょっと長くなってしまいましたが、以上でございます。ありがとうございます。

○中田座長 ありがとうございました。

実務の対応という形で、そのあたりに関心があるのだなということにも気づかされて、非常に参考になりました。

それでは、ただいまの増島弁護士からの御説明について、御質問あるいはコメント、御意見がございましたら、お願いいたします。

それでは、早川座長代理、お願いします。

○早川座長代理 詳細な御説明をありがとうございました。

2つ御質問させていただきたいのですけれども、1つは、プラットフォーマーに対して責任をどう考えるかというような問題の立て方に関してなのですが、5ページ目で準則による規律と実務における論点という形で整理していただくときに、例えば準則の中で場の提供というものがプラットフォーマーという前提のもとで議論がなされているという話がございました。ただ、私もちょっと準則の作成にかかわっている立場なものですから、これはかなり古い時代から議論しておりまして、例えばここにある名古屋地裁は平成20年、今から10年前の判決などを前提につくっておりますので、そのころのビジネスモデルと今のビジネスモデルはかなり変わっているのだろうと推察します。

考え方としても、必ずしも御指摘にあったような大上段に構えた議論というのを皆さん、ここの場でしているわけではございませんで、今、様々なプラットフォーマーと総くくりされるであろうビジネスの中にいろいろなビジネス機能がついてきて、その機能ごとにいろいろなことがなされていて、それぞれごとにあり得るべき責任みたいなものがあるのかというのを分解して考えていくというふうに私なんかは思っております。

そうしますと、クラウドファンディングの話が最初のほうにございましたけれども、それは見方を変えるとクラウドファンディングについてのアレンジャーをやっていて、場の提供プラスアレンジャーをやっているので、場の提供についてはどうか、アレンジャーとしての責任はどうかというような形で分解して考えていけるのではないかと。収納代行についても同じようなことが言えますし、データを取得していること自体もそうでございますし、コミュニケーション機能を付けたことによって、またどういう責任が生じるのかということを分解して考えていくということでいいのではないかと思っておりまして、その点についてどう考えるかというのが一つでございます。

もう一つは、こちらのほうでオンラインとオフラインは今もうミックスされてきているので、オンラインだけに特筆したような議論はやめたほうがいいという話がございましたけれども、確かにそのような話はもうちょっとイニシャルな段階で、そもそも場の提供をしているのはオフラインだってやっているのに、何でオンラインのほうだけこのような責任という話になるのかという素朴な話のところからも、既にオンラインとオフラインの関係はあるのです。

しかし、他方で、例えばプライベートな人々の行動パターンみたいなものを分析するのはオンライン上の情報でないと実際にはできないようなところがあるので、オンラインであるからこそ出てくる特質みたいなものがあるのか、ないのかということについてです。そこはある程度オンラインであるからこそ、ある特質というものがあって、その特質を前提に、更にビジネスがオフラインのほうにも波及しているというような形で捉えることもできたように思うのですけれども、先ほどのオンライン、オフラインというものの区別をすること自体がどうなのかというところで、オンラインの特殊性みたいなところを考えていく必要はないのではないかというところまでおっしゃっているのかどうなのかについてもお聞きしたいというのが2点目でございます。よろしくお願いいたします。

○増島弁護士 ありがとうございます。

分解をして考えるべきだというのはおっしゃるとおりでありまして、みんなプラットフォームというのがいろいろ巨大化し過ぎているという話をしているわけですけれども、それは結局、パーソナルデータを蓄積するという話、若しくはなりすましみたいなものをちゃんと防いでいかなければいけないセキュリティーの問題ですね。あとはそこで行われているコミュニケーションの問題、決済の問題、先ほどのトランザクションの問題という話で、それぞれについてプラットフォームが何をやっているのか、どのようにやっているのか。結局それが組み合わさって先ほどのネットワーク効果というのが出てくるわけですから、そうするとアドレスすべきリスクは、今ここに書いてあるような、こういうところがきっとポイントになっているはずなので、それぞれのポイントがそのプラットフォームの中でどのように作用しているのかというか、機能しているのかというところを見ていただく。若しくは機能ごとに、こういうところにリスクがあるよねということで、それに気を付けなさいというルールをつくっていただくという感じなのではないかというのが一つです。

オンラインとオフラインの話は、多分、私たちからすると、オフラインでも結局、カメラはあちこちに出回るわけですね。こういうところにいろいろつくわけですね。あらゆるものが結局とられてくる中で、オンラインとはそもそも何ですかねみたいな話がどこまでいってもあるわけです。そもそもデータという観点からすれば、異質なデータを組み合わせることでバリューが出てくるという世界観でやっていますので、オンラインだけに着目をして、オンラインだオンラインだとやっていただくと、オフラインでとってくるほうの世界でまた制度の間隙をつかれるでしょうねというイメージを持っていますし、起業家であればそういうマインドで攻めてくるだろうということでございます。

○早川座長代理 追加の質問ですが、そうすると、オンライン、オフラインというよりも、オフラインでとられるデジタルデータというのですかね。それはやはり特殊性を持っているという理解ですか。デジタルという言い方がミスリーディングなのかもしれませんけれども。

○増島弁護士 でも、デジタルというところが本質だと思うのです。アナログデータというのはあまり意味がないので、やはりデジタルだというところが本質だということで、それがオンラインプラットフォームと言われている、今のここでとられているのかどうなのかというのは結構どうでもいいことでありますし、この画面がもう10年後にはなくなるというふうにBaiduの人たちも言っているわけでありまして、どこまでフォワードルッキングに動きますかというのはあるわけですけれども、ここなのか、どうなのかという、そこにはあまり本質がないのではないかと感じます。

○早川座長代理 ありがとうございました。

○中田座長 第1点目のところの責任主体を確定していくという問題なのですが、先ほどの議論の中では、コードであったり、アーキテクチャであったり、その内容が隠されているという話になっていたと思うのです。そうすると、表面的に出てくるプラットフォーマーをゲートキーパーとして捉えて、その人が誰にどういう責任があるのかというのを分配して、リスク分配するという形にならないと、なかなか法的責任というのを追及するときには難しいのではないかと思うのですが、そのあたりはどのように考えられているのでしょうか。

○増島弁護士 基本的には多分おっしゃるとおりでありまして、法律のようなアナログなもので一体どこまでこれからのデジタル時代を解決するおつもりでしょうかみたいな話がやはりそこにはあるわけですね。そこは非常に悩ましくて、結局、法律の世界に入れば最後はアナログの究極であるところの裁判所みたいな話になるわけでありまして、もう何か絶望的ですね。そういう話になっていくとうまくいかないみたいな話があるので、だからこそ、オンライン・ディスピュート・レゾリューションとかいろいろデジタルのほうを使いながら、紛争をAIを使っていいところに落としていきましょうみたいな解決と一緒にやっていかなければいけないということだと思うのです。

そうすると、何でもかんでも法律でできるという幻想を早くやめる。それは別に共同規制にしましょうとかそういう話とはまた多分違って、デジタルである程度いい感じの状態にまで持っていくことはできるではないですか。今までのすごくしっかりとしたものはできないですね。インターネットですから、どこまでいっても漏れてしまう部分はあるのですけれども、それなりに全体がもつような状態をつくっていきましょうかと。そこにはデジタルを上手に活用していきましょうねという発想でやっていくしか基本はないのではないですかと思いますし、そういう状態になるということは多分、消費者の人も理解をしていただかないとデジタルの世界では生きていけないと思われますというイメージを持っていました。

○中田座長 ありがとうございます。

それでは、森委員、原田委員という順番でお願いします。

○森委員 ありがとうございました。大変勉強になりましたし、この委員会にとっても大変有用な御示唆だったと思います。

私も先ほど早川先生の話があったところで、5ページの準則との関係ということなのですが、準則は先ほどといいますか、1回前に千葉先生のお話のときに早川先生が言われていたように、判決とかそういう客観的なものがなければ責任がありますというふうには書かないというルールになっています。しかし、それは準則のローカルルールなので、ここでは関係ないと思うのですけれども、そういうことは書かないのですが、他方でほのめかしといいますか、そういうものは当然内部の議論の中であるわけで、準則は、「場の提供者にすぎない」とは書いていないのです。これは先生方にお話ししておきたいと思いますが、「場の提供者にすぎない場合がある。プラットフォームによってはそういうものもある」という書き方をしています。

個々のプラットフォームの類型の分け方をしていて、モールに関しては割とはっきりと書いていて、原則として店舗の取引行為に関する責任は負わないと書いていますし、では、負う場合としてどんな場合があるのかということで、外観法理の場合、直販のように見える場合ですね。それから、お勧めをする、保証をする、そういった場合に責任を負うというふうに書いています。これは古い裁判例などをもとに書いているわけですけれども、もちろんモールが場の提供者にすぎないとは書いていないわけなのです。

ここのお書きいただいた実務における論点の最初のポツで、取引の場の提供にすぎないという議論は、精密なターゲティング広告を打たれ、利用者はあらかじめ設計された以外の行動をとることができないアーキテクチャ上で、取引成立のためにデータとテクノロジーを駆使した検索によるマッチングがなされ、決済機能も提供する近時のプラットフォーマーにも当てはまるのかというお話がありまして、これは全く重要な御指摘です。

これについて準則はどのように書いているのかというと、保証に基づく責任を負わないと思われる例と。責任を負わないほうの例として、よく売れている商品に売れ筋と表示した場合や、売上高やモール利用者による人気投票結果等のデータに基づいた商品や店舗のランキング、上半期ベストスリーを単に表示したにとどまる場合。それから、ターゲティング広告ですけれども、モール利用者の購買履歴等に基づき、個々のモール利用者に対して当該モール利用者の嗜好や購入商品等に関連する商品等を、当該商品の品質等に関する判断を含まない形で単に表示した場合というふうに言っています。こういう場合には責任を負わないのではないか。

裏を返せば、それ以上のものであれば責任を負う可能性もあるかもしれませんねという趣旨ではあるわけなのですけれども、ただ、私としても、ターゲティング広告であったり、あるいはモールですので決済に対する関与というのもあるわけなのですが、それで原則と例外が逆転することにはならないのではないかと思っているのです。そういう意味では、こちらのターゲティング広告とか決済についてどう考えるかというのは、割と重要な論点だと思うのですけれども、これですぐ店舗の行為について責任があるということにはならないかもしれませんが、何かと具体的に組み合わさるとあるかもしれないみたいなことがもしあれば、それはジャストアイデアで結構ですので、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○増島弁護士 ありがとうございます。

EUなり何なりの全体的な議論、若しくは中国の議論もそうだと思うのですけれども、プラットフォーマーにあまり私法上の義務を課すという話を直接していくと、それを一件一件見ることはどうせできないという世界になっているので、今、プラットフォームは逆風ですけれども、それでもやはりプラットフォームモデルは不可欠ですよねという話になっているわけですね。全てのトランザクションについて適正に行われることを確保せよという義務を課すというのは、結局、国策的にはよくないのは明らかだみたいな話で、そこまではEUですらも踏み込んでいないと理解をしていますので、その意味では、本当にここで言っているのはプラットフォーマーにいろいろ責任を課すべきだという議論をしているというよりは、どこまでのことを結局やっていいのでしょうねと。

一つは、森先生も出ていらっしゃるシェアリングエコノミーのものでは、値付け、価格ぐらいは当事者が決めるのが本来の姿ではないですかみたいな話があるわけですけれども、実はこの価格ですら、実際にリスティングしていただければ分かりますけれども、これは大体このぐらいでやるのがいいですよみたいなものが案内されるのです。その金額以外の金額を選べることは選べるのですけれども、AIを回してこの人がそう言っているので、普通はそれがデフォルトになっていく。ナッジはそうされるのですという感じにはなっているわけですね。なので、どこまで実際にその上で取引、サービスを提供している人の自主性があるのかみたいな議論はすごく難しい議論になっているし、それはますます難しくなっていくのかもしれないですけれども、だからといって、今すぐそれを法規制するというのは国益に反するのは間違いないみたいな感覚がある。ごめんなさい。このぐらいしか言えなくてすみません。

○中田座長 それでは、原田委員、お願いします。

○原田委員 貴重な御発表をありがとうございました。大変勉強になりました。

私のほうからは、決済機能とプラットフォームの関係といいますか、エスクロー機能だったりとか収納代行サービスであったり、プラットフォームによっていろいろな仕組みがあって、ルールも基本的にはプラットフォームが、エスクローだったらエスクローみたいな仕組みも大体プラットフォームによって若干差があったりして、何日以内には払い出しますとか、保留しますとか、短いと30分しか保留しませんとか、ルールがみんな違うと思うのです。

ルールによってプラットフォームの責任というのが実務的に変わってくるのかどうか。ルールは基本的にプラットフォームが決められてしまうので、支払の方法とかですね。そうすると内容によってある程度、プラットフォームに責任が及ぶようなケースが出てくるのかどうか。特に支払手段が多様化したり、いろいろなクレジットカードとかコンビニ払いとか、そういうたくさんの支払方法があればあるほど、悪意のある人にとっても便利といえば便利ということで、プラットフォームのほうで本人確認が本当に資金移動みたいな感じでがっちりしているなら別ですけれども、おそらくそこまでのことはしていないので、それで支払方法が多数利用できてしまうというようなところで、本人確認の部分も含めてプラットフォームの責任が変わるのかどうかと言うところがまず一つ。

もう一つは、3ページに表としていただきましたデジタル・プラットフォームの規律ということで、これは多分クラウドファンディングのケースを例にとられているかと思いますけれども、ここの下から3つ目の取引上のトラブルというのがございます。規約上は当事者間ということで、これはそのとおりだと思うのですけれども、プラットフォーマーが用意したコミュニケーションツールの使用とか、とりなしというようなことが書かれておりまして、このとりなしは人間が実施と書いてあるのですが、これの例として挙げられているので、具体的にどういうことを想定していらっしゃるのか。

クラウドファンディングのケースで実例を申し上げますと、自動歯磨き器みたいなものをクラウドファンディングでやっていた方がいらっしゃって、かなりのお金が集まって、実際につくられて、出資者、支援者の方に送られてきたのですけれども、ほとんど歯が磨けないというような状態のものだったと。それで実施者、ここで書かれている起案者の方は海外の方で、やりとりしても日本語がまともじゃないという言い方はまずいですが、日本語での疎通ができない。プラットフォームは全然何もしてくれないというような状況になっていたのですけれども、そういったプラットフォームが海外の起案者も入れている。多分審査して入れているわけですから、そういった場合はやはり海外の方を入れるということは、それなりにコミュニケーションツールがないと実務的には当事者で解決が無理になってしまうので、そういったところもプラットフォームとしてはある程度考えていないといけないと思っていらっしゃるのかどうか。長くなりましたが、この2点でお願いします。

○増島弁護士 ありがとうございます。

決済の問題は結局、現状の話で申し上げると、為替と言われるかどうかというところで勝負をしていますみたいな話になっているわけですね。為替になれば移動業が要るという話になっていくので、フルセットで規律が来ますし、それが収納代行のモデルで耐えられるということであれば規律はないので、適宜やりますという感じなのですけれども、他方において、例えば収納代行でやっていますよみたいな話でサービスがどんどん伸びていきますね。そのようになっていったときにこの会社はどうするかというと、最終的には上場するかM&Aをするかということになるわけですけれども、実はここで審査が入ります。

ここの審査のところで、果たして君のやっていることは適法なのかねという話になりまして、例えば収納代行であれば資金滞留ですね。これが90日も100日もあるみたいな話になるとまずいのではないかみたいな話があって、30日ぐらいでちゃんとお金が払えるようにしたまえみたいな話になって、ここで適正化されていくというようなことであります。若しくは、ファイナンスを受ける、M&Aをされるみたいなときのデューデリジェンスの中で、これはさすがに疑義がありますねみたいな話になると、そこの部分で是正が入る。このようなことになっているわけですね。なので、全体的なダイナミズムで実際に適正なところに落ちつくというのがある。彼らも社会の中で生きていますのでそのようになるのですというのが一つです。

同じような話が先ほどの紛争の話というかトラブルの話もあるわけですけれども、プラットフォームにとって本質的に大事なのはレピュテーションであります。鶏と卵で、ユーザーがいっぱいいないと誰も出品しませんし、出品者がだめだとユーザーがつかないというモデルになっていますので、とにかくユーザーを痛い目に遭わせるようなことをすると、それは自分たちがしっぺ返しを食うという関係に立っていますので、例えば問題が起こりましたみたいなものについては、プラットフォームにももちろんよりますけれども、基本的には間に彼らが入って返金をしてみたりとか、変なものを提供した人に文句を言ってみたりとか、このようなことを実際にしています。

その辺は何かルールがないのですかみたいな話になるわけですけれども、一応ここのルールは、シェアリングエコノミーみたいな世界であれば、一つはソフトローのような形でそこは規律を持っていて、ちゃんと守っている人たちは認証がもらえるみたいな仕組みでそこをよろしくやっていますというようなところでカバーをする。なので、どうしてもホリスティックにというか、全体で見て適正な状態になるということを目指して日本社会としてはやっているということなのではないですかということだと理解していました。

○中田座長 ありがとうございます。

千葉先生、短目にお願いします。

○千葉教授 幾つかの議論が出てきたのですが、共通項と共通してないところをはっきりさせておいたほうがいいのかなとも思いまして、発言させていただきました。

まず、オフラインかオンラインかという問題については、先生と私の間は共通していまして、デジタル情報という観点から規律を考えるべきで、オフラインかオンラインかという、規律を考えるときにそこはあまり重要ではないのではないかという点では共通しているということをまず申し上げたいと思います。

それから、手数料の問題ですが、先ほどシェアリングエコノミーのところで、私のほうは収益構造としては両サイドから取れるというお話をしたのですが、これは理論モデルでありまして、現実に両方から取っているかどうかというのは先生がおっしゃるとおりですが、シェアリングエコノミーの場合には、要するにネットワーク効果を最大にするためには、集まってほしい利用者グループのほうの手数料を低くすればいいという発想なわけですね。だから、低くするということは手数料はひょっとしたらゼロになるかもしれない。もう一方の利用者を多くしたいほうの手数用を安くして、そうではないほうから手数料を取るというだけの問題で、理論モデルとしては両方から取れるということになりますので、ここは実態か理論かという違いになります。

あと、横断的な規制というところで、分解して考えるべきだということなのですが、これはもう早川先生がいらっしゃらないのですが、個別の契約ごとに分解しろと言っているわけではなくて、機能的に分解しろということをおっしゃっているということを強調したいと思います。例えば、データについてはどうかとか、決済についてはどうかというふうに横割りに分解して、全体的なシステムを考える必要があるとおっしゃっているということを強調したい。我々法律家は契約をメインに置きますので、個別の契約ごとに分解して考えてしまうと、このビジネスモデルは理解できないということを申し上げたいということになります。

3点目は森先生とのやりとりの中で出てきたところですが、準則が原則、例外を定めているのはそのとおりなのですが、我々が多分申し上げたいことは、原則と例外が逆なのではないかということです。むしろ今、例外的に扱っていることがだんだん本質的になってきているから、そこに着目して少しルールづくりを考えたらいいのではないかと言っているということを申し上げたいと思います。

あともう一点、決済については、今日は収納代行の話が出てきたのですが、日本で一番多いのは電子商取引ではカード決済でありまして、カード決済の場合は、楽天さんの場合はカード業者でもあるので、内部にあるとも言えるし、外にあるとも言えるのですが、そうではない場合はプラットフォームが2つあるというふうに考えていただいたほうがいいと思います。電子決済のところはカード決済のプラットフォームがあって、それから電子商取引のほうについてもプラットフォームがあって、これがネットワーク上でデータ送信をして、結びついているという形になります。ですから、プラットフォームの結合という問題も決済のところではよく出てくる問題ですので、それはちょっと付け加えておくべきかと思います。

以上です。

○中田座長 ありがとうございます。

カード決済との関係をどう見るかというのはなかなか難しい問題だと認識しています。

それでは、大橋委員。

○大橋委員 大変勉強になりました。ありがとうございます。

最後、8ページ目のまとめについて2つ教えていただきたいのですけれども、まず3点目、立法事実の有無を検討するために実態把握が必要であるということなのですが、これはいかにして可能なのかというのがまず1点。

2点目は最後のポイントで、性能基準を設けたほうがいいと、まさに合理的だと思うのですけれども、この基準を設けたものが、基準を満たされているかどうかということを実効的に確認するすべがあるのかという2点、どんなお考えかということを教えていただければと思います。

○増島弁護士 一応、実態把握が難しいのは、彼らも秘密保持とかいろいろなことをおっしゃるという話になっている、このようなことだというのはもちろん承知しています。なかなかコードを出してくださいと言っても出してもらえない中でどうするのか。中国みたいに出してくださいというふうに本当に言うのかみたいな話は残るでしょうと。

EUの人たちは結局、コードを出してくださいとは言わないけれども、どのようなものがどんなルールで走るのかというような部分を開示しろみたいな話でやっているので、その開示の内容が間違っていたら、それに対して責任をとらせるという、基本こういうスタンスだと思っていますし、カリフォルニアも似たようなことを考えているみたいな世界だと思うのです。

実際、いろいろプランニングをするためには実態把握しないとしようがないねというのはおっしゃるとおりで、ただ、把握の仕方が難しいねというのはそのとおりではありますけれども、結論としてはそういうルールに、透明性確保というのを狙っていかざるを得ないのではないかと思いました。

性能基準について、ごめんなさい。忘れてしまいました。

○大橋委員 性能基準をつくることは可能だと思うのですけれども、その基準が本当に実態を満たされているかどうなのかということを実効的に確認することは。

○増島弁護士 これは結局、ISOとか何とかと同じだと思うので、米国だとNISTとかがやっていますけれども、番号を振って、それを認定されるという活動があるわけですね。それを認定されていれば、プラットフォームとしての、例えばデジタルアイデンティティーの規範は守られているですとか、本人確認の規範は守られている。本人確認は一緒ですね。サイバーセキュリティーの規範は守られているという認定プロセスを経れば多分いいのではないか。結局、デジタルのアーキテクチャだけではどうにもならなくて、プラス、ガバナンスというのが一緒に走るものですから、この両方を見て認定していくという作業がぐるぐる行われていれば、それで性能基準を満たしたという状態をつくって、それをミルフィーユみたいに積み重ねていく仕組みができるのではないかという発想でした。

○中田座長 ありがとうございます。

すみません。ちょっと遅れて指名することになりましたが、前田委員、お願いします。

○前田委員 貴重な御発表をありがとうございました。

5ページの実務における論点の1つ目のところなのですけれども、精密なターゲティング広告を打たれて、あらかじめ設計された以外の行動をとることができないアーキテクチャが近時のプラットフォーマーに多いという話だったのですけれども、先ほど森先生とのやりとりの中で、例えば表示されている価格の話とかが御説明の中に出てきていたかと思うのですが、そうすると精密なターゲティング広告という、広告だけよりは、プラットフォーム内で表示されている価格だったり、そのほかの取引内容だったり、様々な条件の中で表示される内容によって利用者の行動が決められているのではないかということなのかというところを御教示いただければと思います。

といいますのも、やはりターゲティング広告だけという話になると、それで何を表示されるのかというところによって、無意識のように意識が変わる、考えが変わるというのはもちろんあり得るかもしれないですけれども、とはいえ広告を見た結果、選ぶか選ばないかというのは、やはり最終的には消費者の判断としてまだ残っているかと思います。幾ら精密だったとはいえ、これを見たけれども選ばないという判断はあるかと思うので、そこの広告であったとしても、すごく制限されてしまう、ほかの選択肢をとらないということを指していらっしゃるのか、あるいは広告だけではなくて、そのほかの様々な表示される情報も含めた上で、それがここで問題提起されているということなのか、どちらかを御教示いただけると幸いです。

○増島弁護士 ありがとうございます。

私はプラットフォームのモデルをつくっている側なので、全然批判的ではないのです。まずそこは確認をしていただきたくて、むしろこういうモデルが世界的にはいっぱいありますし、日本から大きなプラットフォームを出していかなければいけないというスタンスではあるのですけれども、他方で制度が追いついていないねというのは、法律家としては当然思いますので、そこにどうアドレスするかということを考えていただきたいのかなということです。

事業者のスタンスで申しますと、何をやっているかというと、スマホゲームなんかは多分典型だと思いますけれども、あの人たちはどの段階で、どんなイベントを打つと、どの段階で幾らもうかるかというのを全部知っているのです。全部知っていて、ここでこれだけ売り上げをつくらなきゃ、じゃ、これをこの段階で打とうといって打って、それが本当にそうなるという世界観でやっています。これは別にスマホゲームだけではなくて、今はクラウドファンディングでも何でも基本的にはもう分かっているのです。分かってやっているという話になっておりまして、そういう世界観。

要するに、彼らからすると大数で見て、コンバージョンレートを見ていますから、それが分かっているわけです。なので、彼らからすると我々は操作可能な対象という位置付けなのですね。個別の人々から見ると、一応、自由意思があって、自分で好きなものを選んで何か買っているということだと思いたがるというか、思うわけですけれども、逆から見ると、結局それは彼らがやっている施策の手の上で実際にそうなっているということなのです。個別の人たちが自由意思で選べたり、選べなかったりするのではないかというのは、そのとおりといえばそのとおりだと思いますし、若しくはそれも初めからわかった上でそうやっているといえば、それは自由意思なのかという話なのかもしれません。こういうことなのではないかと思っていました。

○前田委員 それでいくと、コンバージョンレートも必ずしも100%、キャンペーンを打ったら見た人みんなが絶対やるというわけではないという点で、結局バランスの問題だと思うのですけれども、必ずしも今までのような自由意思ではないという変革期に移っているということはもちろんあり得るかもしれないのですが、コンバージョンについても別に100%というわけではないかと思う。100%見たら絶対それに行くというわけではないかと思うので、そこである程度、狭めてはいるものの、自由意思があるということなのかなと理解しました。

○増島弁護士 ありがとうございます。

まさに消費者は自由意思で選んでいると私も思っておりますので。

○中田座長 広告を打てば売り上げが上がることになるのですが、それをどう見るかという問題にすぎないと私は思っています。

それでは、時間がもう来てしまったのですが、最後にこれだけはという方がおられましたら。よろしいでしょうか。

今日は我々の専門調査会にとってプラットフォーム運営事業者の責任についての方向性を考えるときに、いろいろな考え方があると思うのですが、それをどのように理論的に基礎付けることができるかという観点からの重要な御報告を2ついただいたのではないかと思います。


≪3.閉会≫

○中田座長 次回も同じく、この役割分担の考え方の整理という形で更に討議を続けていきたいと思っております。次回の予告ですが、韓国の先生に韓国法の報告をしていただく予定にしております。海外の法制を見ながら、我々のところで具体化できるものとそうでないものとを考えていきたいと思っております。

以上をもちまして、今日は閉会とさせていただきたいと思います。お忙しいところをどうもありがとうございました。

(以上)