第7回 オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会 議事録

日時

2018年10月16日(火)14:00~17:13

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【専門委員】
中田座長、早川座長代理、生貝委員、石原委員、大谷委員、片岡委員、城委員、西村委員、畠委員、原田委員、前田委員、森委員、山本委員
【消費者委員会担当委員】
池本委員長代理、大森委員、鹿野委員、樋口委員、増田委員
【説明者】
ブッシュ教授(オスナブリュック大学)
カライスコス京都大学准教授
経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者
経済産業省商務・サービスグループ参事官室山本参事官
経済産業省商務・サービスグループ参事官室担当者
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 現行の規程等の整理(1)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○中田座長 お忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、第7回「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会」を開催したいと思います。

本日は、残念ながら、所用により、大橋委員、沖野委員が御欠席となっております。

遅れて来られる方もおられますが、始めさせていただきたいと思います。

最初に、配布資料の確認ということで、皆さん、見ていただければと思うのですが、いかがでしょうか。議事次第のところですが、よろしいですか。

もし不足がありましたら、事務局にお伝えいただければと思います。


≪2.現行の規程等の整理(1)≫

○中田座長 それでは、本日の議題について進めたいのですが、今日の議題は「現行の規程等の整理(1)」になっております。我が国における民法、特商法、消契法等の消費者保護ルール、また、提供するサービスに関する業法、各種ガイドライン、準則等の関連する法令・規程を見ることになります。さらに、海外の動向についても見ていきたいと考えております。

これらを整理し議論していただくことになるわけですが、今日は、とりわけ海外の動向に関して、特別ゲストとしてドイツ・オスナブリュック大学のクリストフ・ブッシュ教授から、「ヨーロッパにおけるオンライン仲介プラットフォームのための規律枠組みに向けて」についてお話を伺いたいと思います。このタイトルですが、「規制枠組み」という訳も可能かとは思います。

クリストフ・ブッシュ教授は、現在、ドイツのオスナブリュック大学でヨーロッパ私法及びビジネス法を担当されています。さらに、同大学でのデジタル社会における学際的研究の責任者も務められています。教授の研究領域は、ヨーロッパ消費者法、契約法、デジタルサービス、評価アルゴリズムの適正な運用、さらにはサービス、役務の標準化というところにも向けられています。教授は、法律学をミュンスター大学で学ばれ、さらにはパリ・ナンテール大学に1年ほど留学されていたと聞いております。さらにビーレフェルト大学でも学ばれているということを聞いています。後でお話しがあるかと思いますが、ヨーロッパ全体の消費者法の雑誌の編集者もされています。

私にも関係していたプロジェクトなのですが、ヨーロッパ民法典というヨーロッパの共通法をつくるといったモデル法の基礎にもかかわられておられたと聞いております。最近は、オンラインプラットフォームのいわゆる「評価サービス」という訳語が当てられているテーマに取り組んでおられ、また、国際標準化機構の委員や、サービス契約に関する欧州標準化委員、CENの委員、ブロックチェーンは「分散台帳」と訳すのですかね、訳し方は難しいですが、そういったものに関する委員としても、先ほど昼食時にこのことについて話していたのですが、こういった規格について学者として参加されておられます。特に、役務、サービスを標準化していくという試みについて、ドイツの規格協会の代表者として参加しているとおっしゃっておられました。こうした活動は非常に興味深いです。また、ヨーロッパ全体の動きなのですけれども、EUにおける立法提案をよりよくしていくといった使命を果たすために設立されているヨーロッパ法協会というところのオンライン仲介プラットフォーム運営者に関する研究のプロジェクトの一員でもあります。私もそれに少し関与していますが、そういった意味で、ヨーロッパのプラットフォームに関する法的規律についての第一人者であるクリストフ・ブッシュ先生から今日お話を伺える機会を得られることは、非常に良いことではないかと思います。

ブッシュ教授はもちろんドイツ人ですが、御講演は英語でということにしていただいております。カライスコス准教授に通訳をお願いしております。

それでは、ブッシュ先生、カライスコス先生、よろしくお願いいたします。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 御紹介いただき、ありがとうございます。

また、本日は、このような権威ある場で報告ができることを大変光栄に思っております。

本日は、私からEUにおける現在の議論について、プラットフォームに焦点を当ててお話したいと思っております。Airbnb、Uber、Amazonマーケットプレイスなどのオンラインプラットフォームの台頭により、既存の消費者法や市場法がこのようなデジタルプラットフォームに適切に対応しているのかということが問題となっています。

したがって、今日は、私から概観を御提供したいと思っておりますが、その中で取り扱うものがEUにおける学術的な議論、及び政治的な議論における幾つかの事項です。主な事項として、次の3つに焦点を当てたいと思っております。1つ目は契約上の役割の透明性、2つ目はプラットフォーム運用者の責任、3つ目は評判メカニズムです。

本日お話をする際には、既存のEU、ヨーロッパの消費者契約法が、そのようなオンラインプラットフォームの重要性が増していることを十分に反映できていないことを前提としております。既存のEUの消費者契約法は2当事者間の伝統的なモデルに依拠したものとなっていて、このようなオンラインプラットフォームなどにますます見られるようになっている3者間の関係に十分に対応できていません。つまり、既存のEU消費者契約法におけるモデルは事業者対消費者のモデルとなっているのです。これに対し、オンラインプラットフォームでは、私人としての個人、いわゆる「プロシューマー」や零細事業者が消費者に対して物品や役務を提供しており、このようなピア・ツー・ピアの取引においては、消費者法が適用されるのかが不明確となることがあります。

2016年に、欧州委員会は2つの政策文書を公表しています。これらのうち、1つ目は、オンラインプラットフォーム、プラットフォーム・エコノミーに関するものです。しかし、これを見ていますと、欧州委員会が規制をすることに対してやや躊躇している様子が見られます。つまり、欧州委員会は、台頭しつつあるプラットフォーム・エコノミーに新たなルールを課すことでイノベーションを抑制することを恐れていると言うことができます。

つまり、欧州委員会によって一般的に目指されていたところは、プラットフォーム・エコノミーにおけるイノベーションを促進すること、また、状況によっては、ヨーロッパのプラットフォームの権利を強化することで、アメリカのプラットフォームとの競争においてより優位な地位を占めさせることなどだったのです。

したがって、この第1の段階においては、規制をすることについて躊躇するという姿勢が見られましたが、2018年4月に、欧州委員会は「成り行きを見守る」という姿勢をやめて、2つの新たな立法提案を行いました。これらのうち1つ目の立法提案は、オンライン・マーケットプレイスのための新たな透明性のルールをつくり出すものです。2つ目は、オンライン仲介サービスのビジネスユーザーのための透明性や公正性を促進するものです。つまり、そのようなプラットフォームにおいては、中小企業などとの取引も行われるという観点がそこにはあります。

最新の展開としては、2018年9月に欧州委員会が専門家グループを任命したことが挙げられます。この専門家グループは、オンラインプラットフォーム・エコノミーにおける発展を監視することを役割としていて、そこにおいて新たな規制活動を必要とする展開などを特定することを目的としています。そのような監視は、実証的な事実に基づいて、また、それぞれの課題に応じて行われるものとなっています。

同時に、ほかの展開としては、学術的なイニシアティブが存在していて、そのような学術的なイニシアティブにおいては、どのようにしたら将来的な規制枠組みを設計することができるのかが検討されています。その中で特に言及するに値するものとしては、中田先生からも御紹介のありましたヨーロッパ法協会、ELIによる活動が挙げられます。

このヨーロッパ法協会は、昨年ワーキング・グループを立ち上げていて、そこではモデル準則の検討がされています。今お示ししているスライドには、そのモデル準則をインターネット上のどこで閲覧できるのかを示しておりますが、来年9月には最終版を公表する予定です。この最終版は、ヨーロッパにおける立法者の発想の源になるであろうと考えていますし、場合によっては、ヨーロッパを超えてそのような発想の源になるのではないかと思っております。中田先生は、このワーキング・グループの諮問委員会の構成員でもあられます。

今申し上げたヨーロッパ法協会による討議草案については、特に3つの事項を取り上げてお話したいと思います。これらの3つの事項は、現在、EUで行われている立法提案にも関連するものです。1つ目が、契約上の役割の透明性ですが、この問題はプラットフォームなどでも代表的なものとなっています。なぜなのかといいますと、そのようなプラットフォームでは、消費者にとって、契約の相手方となる者がプラットフォーム自身なのか、それとも第三者であってプラットフォームはその仲介者として行為をしているにすぎないのかが不明確であることが多いからです。

このことは、特に二重の役割を果たしているプラットフォームにおいて、一層著しくなっています。つまり、プラットフォームが仲介者としての役割を果たしつつ小売も行っているような場合です。例えば、Amazonを具体例として挙げることができます。また、ほかにこのことが特に問題となるのが、例えば、携帯電話のアプリストアなどです。

このような透明性の欠如に対応するために、ELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案では、11条(1)において、プラットフォーム運用者は、契約の締結前に、顧客に対して契約の相手方となるのはプラットフォーム自身なのか、それとも第三者なのかについて、情報を提供しなければならないこととされています。ただし、それだけでは決して十分ではなく、消費者(顧客)は、さらに、相手方が事業者なのか、それとも事業者ではないのかも知らされなければならないのです。それによって消費者法が適用されるかどうかが決まるからです。

この問題に対応するために、討議草案11条(2)では、プラットフォーム運用者は、供給者が、顧客に対して、供給者が事業者として物品、役務やデジタルコンテンツを提供しているのか、それとも事業者としてではないのかに関する情報を提供しなければならないこととされています。

ここで問題となるのが、そのプラットフォームが、どのようにして、その供給者が事業者なのか、あるいはそうではないのかを知ることができるのかということです。これに関する一つの方法としては、供給者が自らを位置づける、つまり自己分類を行うというものがあります。供給者にそのような義務を課すためには、その前提として、プラットフォームに設計上の義務を課す必要があります。つまり、プラットフォームが、供給者に対して、登録を行う際にそのような自己分類を行うことを可能とする必要があります。

ただし、ここで問題となるのが、供給したプラットフォームがどのようにして供給者による自己分類が正しいのか否かを確認することができるのかということです。その解決策の一つとしては、後の段階で、ある程度取引が進んだ時に、取引データに基づいて確認をするという方法があります。プラットフォームはその取引データを全て利用することができますので、どれぐらいの数の取引があったのか、その総売上高がどれぐらいであったのか、つまり、供給者が事業者ではないという領域の境界線を超えたのか否かを確認することが可能となります。このような自動的な確認方法をとることができますが、これを「データ駆動型のプラットフォームの規律」と呼ぶことができると思います。

2つ目の問題は、最も複雑なものの一つで、プラットフォーム運用者の責任に関するものです。欧州委員会が4月に行った2つの提案ではこの問題に言及していませんが、ELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案ではこれを取り扱う試みをしています。

ここで原則となるのが、プラットフォームは、単なる仲介者として行為する場合には、供給者による契約の不履行については責任を負わないということです。ただし、その例外的な場合が存在していて、プラットフォームが供給者に対して支配的な影響力を及ぼしていることについて顧客が信頼することが合理的である場合には、プラットフォームに責任を負わせることができます。

この背景にある考え方は、プラットフォームが、時として、単なるマーケットプレイスとして行為しているのではなく、供給者に対して支配をしているのだということです。例えば、その取引における支配であったり、支払、精算における支配であったり、ガバナンス構造を通じて支配をしているということです。そのような支配は、技術的な手段やデータを通じて可能となるものです。

そのような具体例として挙げることができるのがUberです。Uberというプラットフォームは、運送の領域において、運転手に対してそのような支配を行使していると言うことができます。本日のニューヨーク・タイムズの一面を御覧になられたか分かりませんが、「あなたの上司がアルゴリズムだったらどうしますか」という非常に興味深い記事が掲載されていました。Uberの場合にもそのような状況があると言うことができるでしょう。

これに対し、より支配を行使していないプラットフォームの例としては、Airbnbを挙げることができます。ただし、興味深いことに、このAirbnbにおいても新たなビジネスモデルが最近始まっています。Airbnb Plusというものですが、ここではAirbnbというプラットフォームが賃貸物件の品質や安全性などについて80ぐらいの項目について細かく確認をするということが行われていますので、このような場合には支配が行使されていると言えます。

このようにプラットフォームが支配的な影響力を行使していると言えるような場合には、供給者と連帯して責任を負うことが提案されています。それはなぜなのかというと、そのような場合には、プラットフォームは「事業体」と「マーケット(市場)」のハイブリッドとして存在しているということが理由です。

現在、ELI(ヨーロッパ法協会)のワーキング・グループで直面している困難な問題としては、プラットフォームモデルの多様性があります。つまり、典型的なプラットフォームであるUberやAmazonマーケットプレイスだけではなくて、毎月のように新たなプラットフォームモデルが登場しているということです。

例えば、現在では、Instagramにおいてハンドバッグが紹介されている写真をクリックすると、特定のショップのリンクにつながって、そこでそれを購入することが可能となっています。そのときに、果たしてこのInstagramがプラットフォームなのかが問題となります。ほかの例としては、例えば、FacebookやGoogleショッピングを挙げることができます。

さらにそのような新しいモデルとしては、対話型のプラットフォーム、つまり、特定のスピーカーがあって、そのスピーカーという機器が消費者と小売店との間を仲介する場合です。こちらのスライドで御紹介していますが、エストニアの研究者が、この問題について興味深い論文を書かれています。

3つ目の最後の問題ですが、評判メカニズムに言及したいと思います。

オンラインレビューはプラットフォームにおいて中心的な要素となるわけで、このような評判やレビューが信頼性を高めることにも寄与しています。そのような機能を実際に果たすことで、それを通じてお互いを知らない取引相手同士の取引が可能となっていますが、そうするためには、特定の水準を満たすものであることが必要となります。

その信頼性や透明性を高めるために、ELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案では8条のモデル準則を設けています。ここには品質に関する幾つか基準を設けています。まずはその透明性に関するルールとして、8条(1)に、レビューや評価の収集、処理、及び公表といった3つの段階における透明性を確保するための情報提供義務を定めています。ただし、これでは決して十分ではないため、さらに8条(2)に、もう一つの基準として、職業上の注意義務に合致するものでなければならないという品質基準も置いています。

この基準はやや一般的なものなので、それを更に具体化する必要がありますが、ELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案の中で詳細な基準を定めるという方法ではなく、それを自主規制に委ねるという形をとっています。つまり、欧州標準化委員会が定める標準に合致していれば、職業上の注意義務に合致していると推定されることになるわけです。こうしてこの討議草案の中のルールと自主規制である標準化の間の連結を行っています。

このような規制の技法は非常に柔軟なもので、急速に変化するビジネスモデルに対応することを可能としています。つまり、そのルールの中に詳細な基準を設けた場合には、それらを頻繁に変更することが難しくなりますが、標準の中で定められていれば、頻繁に変更することがより容易となります。

ここで更に大事なのが、自主規制に完全に委ねているわけではなく、あくまでも2つを組み合わせているということです。このような方法は決してサイエンス・フィクション的なものではありません。実際に、既に国際標準化機構による標準であるISO20488:2018が公表されており、例えば、この中には基準に関する記述が20ページにわたって紹介されています。このような細かい基準を設けている標準との関連づけをして、それに適合していれば、職業上の注意義務に合致しているとの推定を行うことが可能になります。

最後に少し言及したいのが評判データのポータビリティです。オンラインレビューなどのことですが、具体例としては、例えば、Airbnbで長い間にわたって部屋の賃貸をしていて、良い評価を得ている賃貸人がいる場合に、例えば、5.0満点中で4.8から5.0ぐらいの評価を得ている賃貸人がいる場合に、賃貸人がAirbnbから脱退し、競合する他のプラットフォームを通じて賃貸を行うときに、そのような評価・評判に関するデータをそこに移転することができるのかということが問題となります。このようなデータは、評判という一つの資本として考えることができるからです。もしこのような移転をすることができないということになった場合には、ほかのプラットフォームに移動することが困難となりますし、また、移動する際のコストも高まります。

したがって、それによってロックイン効果が生じて、そのような効果が競争を害する結果となります。そのため、消費者法の観点のみではなく、競争法の観点からもこのようなポータビリティを可能とするルールが必要となり、討議草案にもそのようなルールを置いています。

以上、3つの点について概観を提供したにすぎず、これらの3つの具体例は、より広範な議論、より包括的な討議草案の幾つかの側面を示すものにすぎませんが、最初に申し上げましたように、このような場でこの情報を共有できたことをとてもうれしく思います。ありがとうございました。

○中田座長 御講演をどうもありがとうございました。

非常にEUのレベルでのこの問題についての議論の状況をクリアにしていただいたのではないかと思います。これまで、EU委員会ではさほどこの問題について取り組んでいないかのように見えていたところもあるのですが、今回、専門家の調査グループを立ち上げて、この問題について真剣に取り組んでいくという方向が見えたのではないかと思っています。

もちろん、各国法が、例えば、ドイツ法であったり、イギリス法であったり、この問題について取り組む場合の姿勢と、EUが取り組む場合の姿勢は違うということがあります。それは、簡単に説明しますと、EUでは域内市場において取引が各国同じようなレベルで行われなければいけない。そういう意味では、平準化という観点があります。各国法が異なった規制をすると、それが広範な取引についての障害になり得るという点が意識されているということがあるわけです。

他方で、こういった問題は各国の消費者問題にもつながりますので、そういう意味で、EUとしては、消費者保護という観点から、そういったEU市民の関心を得るという意味でも、意味がある規制になるのではないかと思われるところもあります。

全体的な流れについては、貴重な機会ですので、ブッシュ先生に直接御質問いただき、どのような法規制が考えられているのか、あるいはどのような形が望ましいのかという点について、いろいろな角度から御議論いただければと思います。

それでは、御講演の内容について、いかがでしょうか。

森委員、お願いいたします。

○森委員 御説明ありがとうございました。

私からは、プラットフォーマーがどんな場合に責任を負うかということについて、お尋ねしたいと思います。

先生の御説明では、プラットフォーマーがサプライヤーに対して支配を及ぼしているとユーザーが信じている場合に、プラットフォーマーがユーザーに対して責任を負うということだったかと思いますが、責任を負う場面はそれに限られるのでしょうかということが私の質問です。

例えば、日本では、サプライヤーが商標権を侵害する商品を販売していたときに、モールのプラットフォームが責任を負うのではないかということが争われた裁判がありましたし、裁判ではないのですけれども、スマホのアプリのマーケットプレイス、Google PlayやApp Storeですけれども、あそこに個人情報を漏洩したりする危険なアプリが置かれていた場合に、アプリのプラットフォーマー、GoogleやAppleが責任を負うのではないかということが議論されたこともありました。そのように、プラットフォーマーのサプライヤーに対する支配以外の責任原因になることがもし検討されているのでしたら、教えていただきたいと思います。

よろしくお願いします。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 御指摘のとおり、ほかにもそのような場合があり、私から申し上げたのは、あくまでもそのうちの代表的で最も問題視されているものです。ほかのものについてもELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案では触れていまして、例えば、プラットフォームに参加している供給者が掲載している情報が虚偽のものであることについて情報を得た場合には、プラットフォームが責任を負い、その責任の内容が、そのような情報を削除し、あるいは修正させるという義務になります。いわゆる「ノーティス・アンド・テークダウン」、その通知を受けたら削除あるいは修正をするという考え方ですが、これは既にEU法では御指摘いただいた商標権の侵害などで適用されていて、この考え方をほかの場合にも拡張するということです。

ですので、例えば、商品の描写、商品の紹介や内容の説明が虚偽のものであって、プラットフォームがそれについて知るに至った場合において、それは供給者とユーザー(顧客)の問題で、プラットフォームは関与しないということではなくて、そのように積極的に行為する義務を負わせるということです。

○森委員 ありがとうございました。

○中田座長 ほかにいかがでしょうか。

片岡委員。

○片岡委員 楽天の片岡です。

今日は、貴重なお話をありがとうございました。

何点かお伺いしたいのですが、1点目は、日本だと、オンラインで物を売る場合に、もし事業者である場合は、事業者名とか、住所とか、責任者名といったものをオンライン上に表記する義務が法律上定められているのですが、今回お話しいただいた内容だと、プラットフォームに事業者かどうか自己申告するという制度が考えられているということです。そもそもオンラインで販売するときに、事業者の場合、何かを書かなければいけないという義務があるのかどうか。そういったことを義務化している国があるのかどうか。まず、これについて1点お伺いしたいと思います。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) はい。そのような義務は存在しています。供給者が事業者である場合には身分や住所を開示しなければならないという義務が課されています。

ただし、プラットフォームで問題になるのが、事業者と非事業者が同時に取引を行っているということ、つまり、消費者の観点からすると、契約の相手方である供給者が事業者であるのか否か、これらの開示義務を負うのか否か、そのような開示義務を負わないピアであるのかが明確ではない場合が多いということです。

ELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案の背景にある考え方は、プラットフォームは取引データへのアクセスが可能なので、それを利用することができるのではないのか、そのようなデータを用いて確認をして、供給者が事業者なのかあるいは非事業者なのかを確認できないのかというものです。つまり、単なる市場の仲介者としてではなく、規制上の仲介者としても機能してもらうということです。

○片岡委員 次の質問が、プラットフォームによるコントロールがより大きければ、より責任を負いやすい、プラットフォームによるコントロールが少なければ、より責任を負いにくいというような話に聞こえたのですけれども、日本の場合は、どちらかと言うと、プラットフォームはよりコントロールをすべきであるというような、特に消費者からはそういった声がプラットフォームに寄せられることが多く、コントロールをしないことに対して、より責任を追及するような傾向があると思うのですが、ヨーロッパでの消費者の考え方はどういうものなのでしょうか。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 御指摘の点については、私も大変よく分かります。確かにそこには矛盾が見られるところです。つまり、一方では、消費者としては、プラットフォームがより支配をすることで無名性を特徴とする取引において安全性を確保することを求めます。しかし、御指摘のとおり、そのように支配を強化することによって責任が強化されることになれば、プラットフォームとしては、支配を強化しないことによって責任を回避するという流れが見られるかもしれません。

ただし、他方では、事業体と市場との連携という観点から見ますと、支配を及ぼせば及ぼすほど責任がそれに伴うという考え方になります。つまり、消費者としては、プラットフォームを信頼することになり、そのプラットフォームが、精算のシステムや評判のシステム、あるいは供給者の身分を確認していることなどに信頼を寄せて取引をすることになった場合、つまり、そのプラットフォームが信頼性の中心点として機能しているような場合には、それに伴って責任も強化すべきだということになりましょう。

○中田座長 よろしいでしょうか。

ありがとうございます。非常に重要なポイントだったと思います。

前田委員、お願いします。

○前田委員 AICJ、アジアインターネット日本連盟の前田と申します。

貴重なプレゼンテーションをありがとうございました。

3点、質問があります。

まず最初に、EUのオンラインプラットフォームの規制に対する姿勢の変化についてです。当初は、イノベーションをEUで促すという意味から、レギュレーションについては非常に消極的であったという話があったものの、それが2018年になってから変わったというところについて、そこの変化、イノベーションについて尊重するという話もあった中、それが変わったというところのきっかけないし理由、背景を御教示いただければと思います。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 政策の変更としてこれを位置づけることができるかについては、私も自信がありません。恐らく長期間の討議の期間を経た結果なのではないかと思います。

つまり、2016年に公表された2つの政策文書での主なメッセージが、急ぎたくないというものでした。まだ未開発の分野において、ダイナミズムを持っているこの新しい分野において、あまり急いで過度の規制を行いたくないという姿勢がとられていました。その後、長い時間の討議を経て2018年に公表された2つの提案のうち、1つ目の提案ではあまり積極的ではない姿勢が見られます。透明性に関する1つの条文しか置かれていないので、やや消極的かと言えます。

これに対し、もう一つの提案は、より詳細なもので、プラットフォームと供給者との関係に関するものであり、EUとしてはプラットフォームにおける三角関係のうちこの側面に力を注いでいるということが言えます。つまり、EUとしては、ほとんどのプラットフォームが消費者に対しては友好的であることを念頭に置いています。例えば、Amazonで顧客に何らかの問題が生じたら、ほとんどの場合、Amazonは積極的に問題を解決するわけですが、それは供給者の不利益において行われていると言うことができます。そのために、現在の規制活動がプラットフォームと供給者との関係に焦点を当てています。

○前田委員 ありがとうございます。

2個目の質問なのですけれども、5個目のスライド、プラットフォームの責任に関わるところです。Predominant influenceがあるとき、その支配性が強いときには、その分、責任が上がる、強まるということなのですけれども、このDraft ELIのモデル準則でこれが書かれている理由を教えていただければと思います。

先ほどAmazonの例も挙げられていたかと思うのですけれども、まさに支配の度合いが強ければ強いほど、それが契約などに既にカバーされている場合が逆に多くなるのではないかと思うところがありまして、契約で書かれている事業者が実際に多いのか、それがないからここで書かれているのか、そこら辺のこの条文が入ったところの理由を教えていただければと思います。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 実際のプラットフォームの規約を見ていただくとかなり明確な文言を用いていて、プラットフォームは仲介者として行為しているにすぎないため、つまり契約当事者ではないため、責任を負わないという文言が使われています。

しかし、この文言が実際のビジネスモデルから乖離していると言うことができます。つまり、多くのプラットフォームは、単なる仲介者としてではなく、仲介者としての役割を超えて行為しています。例えば、Uberの例を見ると、Uberは、運転手が請求する価格も決定しているし、さらにGPS機能を用いてかなりのコントロールを行っていて、運転手がどこにいるのか、あるいはUberのためにどれぐらいの時間運転しているのかなどということを管理しています。Uber社の例については、同時に労働法の観点からも、運転手の地位はどのようなものなのかということが議論されています。

したがって、2つの対極であると言える事業体と市場との間には幾つものモデルがあり、そのようなモデルが2つの対極のうち事業体に近ければ近いほど、つまり、プラットフォームが、マーケット、市場よりも事業体に近い存在であればあるほど、責任を肯定することが必要だと思われます。

○前田委員 最後、今日は、EUのお話を御紹介いただきました。ブッシュ先生から、EU以外の取組、アジア・太平洋地域でしたり、あるいはアメリカ、南米とかでもそうなのですけれども、もしほかの国々での動向や傾向などがございましたら御教示いただければと思います。

ありがとうございました。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 御指摘のとおり、今すぐにお答えするのはやや難しい御質問ではあります。私はアメリカ法の専門家ではありませんが、幾つかの国において議論がされていて、その議論が、消費者法を改正することによって新たなプラットフォームモデルに対応することの必要性に関するものです。

私が知っている限りでは、韓国では新たに改正が行われましたし、現在、中国ではプラットフォームに関する事項を含めて議論がされているところです。アメリカ合衆国に関しては、新たな立法の動きについて聞いていません。もしかしたら、アメリカ合衆国は、より自由主義的というか、自由に取引をしてもらうというスタンスであって、EUには、それとは反対に、市場に規制を及ぼすという、長くてより強い伝統があるのかもしれません。

若干補足をしたいのは、EUレベルの動きについてお話をしましたが、このような動きはやや遅いということです。つまり、幾つかのEU加盟国では既にそのような規制が行われていて、その中でも先進国として挙げることができるのがフランスです。フランスは2016年にデジタル共和国法を施行していて、その中にはプラットフォームに関する幾つかの規定も置かれています。これらの規定のうちの幾つかは、ELI(ヨーロッパ法協会)討議草案の作成の際にもモデルとされました。ドイツは、残念ながらこの分野では特に動きが見られないところです。

○中田座長 ありがとうございます。

時間が大分迫ってきましたので、もし質問されたい方がおられたら手を挙げていただければ。ほかにおられますか。3人ですね。3人の質問を受けていただいて、全部まとめて答えていただく形にしたいと思います。

それでは、時間が迫っていますので、御配慮いただいた上で、池本先生、よろしくお願いします。

○池本委員長代理 委員長代理の池本です。

大変示唆に富む御報告をありがとうございました。

お伺いしたい点は、ポイントは1つなのですが、3つの場面について質問させてください。

今日御紹介いただいた3つの規律、それぞれが、その規律に違反した場合に、誰がそれについて法を執行あるいは規律違反の責任を問うのかということです。

まず、第1の当事者を表示させるプラットフォーム運用者が、供給者が事業者か否かの区別を明示させる義務があるという御説明がありましたが、これをきちんとしていない場合に、行政機関、行政当局がプラットフォームの運営者に対して何らかの責任を問う処分をすることになるのか、それとも消費者が損害賠償責任という形で裁判所に訴え出るということか、あるいはその両方の可能性があるのか。

同じように、2番目のプラットフォーム運営者の責任のところ、御説明の中では、支配的影響力を及ぼしている場合に責任が生じるという御説明ですが、その中身が個々の事案に応じて勧誘の程度などを見て裁判所が判断するという、これは民事の責任として構成し、位置づけているということなのか、あるいはどういう役割かということを明示するかどうかということが、行政的な規制の対象として想定され得るのかどうか。

3番目、評判、レビューの情報提供義務は、個々の消費者の損害賠償としてなかなか観念しにくいところもあるのですが、そういう民事責任なのか、あるいは行政機関による執行の問題なのかということについて、お伺いしたいと思います。

以上です。

○中田座長 生貝委員、どうぞ。

○生貝委員 東洋大学の生貝でございます。

大変貴重なお話をありがとうございました。

1つだけ御質問でございます。お話しいただきましたとおり、今年の4月のコンシューマー・ニュー・ディールにせよ、プラットフォームの公正性規則案にせよ、ライトタッチなものであって、今日お話しいただいたうちのプラットフォームの責任と評価メカニズムの問題については、それらの提案の中で取り扱っていないと思います。現在、欧州委員会としてこれらの問題に対処するための新しい立法提案等に向けた動き等はあるのかどうか、もし御存じであれば教えていただければと思います。

○中田座長 石原委員、お願いします。

○石原委員 シェアリングエコノミー協会の石原と申します。

本日は、ありがとうございました。

1点だけ、スライドの4ページ目、「契約上の役割の透明性(2)」で、事業者として提供しているのか否か情報提供を確保しなければいけないというところなのですけれども、こちらは、第三者の申告に基づいてやるところと、利用可能な取引データに基づいて自動的な検証を行うところが記載されているのですが、私もシェアリングエコノミー協会の中にいる関係でいろいろなプラットフォームの事業者さんのサービスを見させていただくのですけれども、この事業者という線引きが、境界線が溶けてきているというか、崩れてきていると感じています。

例えば、Airbnbであれば、個人の方がおうちを貸していればそれは当然事業者ではないということになるのでしょうし、旅館の方があいている部屋をAirbnbに載せればそれは事業者ということになると思うのですけれども、そこが本業ではないというか、普通の企業とかが持っている社宅とかをAirbnbで載せるという形になったときに、それは確かに法人であることは間違いがないと思うのですけれども、本業でそこをやっているわけではなく、遊休資産をうまく活用しようと思ってそこに載せている場合には、それが事業者になるのかどうかというところは非常に悩ましい問題だと感じておりまして、そこら辺は何か議論されたことがあれば御教示いただければと思っています。

よろしくお願いします。

○中田座長 それでは、時間なくてすみませんが、全部で3分ぐらいで御説明ください。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) 3分ということですが、本来は30分ぐらいお話したいところではあります。

まず、1つ目のエンフォースメントの問題については、EU加盟国における伝統に違いが見られるところであって、例えば、加盟国のうち、イタリア、フランス、オランダなどでは、行政による公的なエンフォースメントの伝統があるし、これに対し、ドイツやオーストリアでは私的なエンフォースメントが中心となっています。つまり、ドイツやオーストリアでは、消費者団体であったり、あるいは競合者が、申請、申立てをして、裁判所に対して消費者法に反するような取引行為などの停止を求めるということです。このようにEU加盟国間に違いが見られるため、エンフォースメントの問題についてはEUの立法者は特に取り扱わず、加盟国に委ねることとしています。したがって、EUの提案でもそうですし、今回のELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案でもそうですが、この問題は対象とはしていません。御質問のあったそれぞれの側面について具体的にどのようになるのかということですが、1つ目の設計義務については、第1段階としては、プラットフォームを設計する段階でこの義務を遵守することになります。つまり、プラットフォームとしては、そのような自己分類を供給者が行わない限り、登録ができないという設計をするということです。2つ目の側面につきましては、不履行に関する責任ということになりますので、損害賠償の話になるわけですが、ドイツであれば民事裁判所での手続になり、これも国によって違うところです。3つ目の評判に関するものですが、EU法上は不公正な取引方法になりますが、イタリアであれば、消費者保護当局が介入して、罰金、制裁金を科すことになりますし、ドイツであれば消費者団体が民事裁判の提訴をすることになります。

2つ目の、評判や責任の問題について今後EUレベルで正式に扱われる予定なのかということについては、具体的には特に聞いてはいません。しかし、お話したように、9月に欧州委員会が専門家グループの任命を行っていて、光栄にも私もその構成員として任命されました。私たち専門家グループでは2年後に最終報告を公表することになっていて、その準備として、1年後には中間報告を行う予定です。その報告では、今後、検討を要する追加的な事項についても助言を行うことになっていて、もちろんこれら2つの問題にも注目しています。ほかに注目をしている問題としては、プラットフォームが収集しているデータをプラットフォームがどのように使っているのかというものがあります。例えば、そのプラットフォームがそのようなデータを用いて市場におけるトレンドなどを把握し、それを通じて他の供給者よりも優位な地位に立っているのではないのかということです。

3つ目の最後の御質問ですが、事業者と非事業者の境界線がおそらく最も難しい問題ではないかと思います。現時点では、これに関するガイドラインなども存在していません。なぜかというと、ビジネスモデルが多様で、互いにかなり異なるビジネスモデルがあるので、例えば、総売上高という基準をとるにしても、それぞれの加盟国における総売上高の水準あるいは価格のレベルが異なるという現状があります。例えば、ブルガリアとルクセンブルクを比較した場合、そのような水準が異なるので、それだけで簡単に決めることが難しいということです。したがって、現時点では、ケース・バイ・ケースに、事例ごとで判断するしかないと思われます。最近のドイツの裁判所の判決で、eBayというプラットフォームで2年間で200の物品を販売した者が事業者となるのかどうかということが審議されましたが、ドイツの裁判所は事業者に当たるという判断をしました。おそらくこのケースであればみんなそう考えるのだとは思いますが、ならば、2年間で30あるいは40の製品である場合はどうなのかということはやや不明確かと思います。このような多様性があるため、おそらく技術的な手段を用いて分類を行うのがよい方法なのではないかと思います。例えば、eBayというプラットフォームを見てみますと、パワーセラーというバッジをもらっている供給者がいるのですが、ドイツの裁判所であれば、パワーセラーというバッジを持っている供給者であれば事業者であることが推測されるという取扱いとなります。ほかのプラットフォームで見ると、例えば、Airbnbの場合に、スーパーホストというステータスがあるわけですが、それについても同じように考えることができるのかもしれません。

○中田座長 ありがとうございます。

隣の座長代理がぜひこれだけは聞きたいということを申しておりますので、例外を認めていただけるとありがたいと思います。

○早川座長代理 ODRレギュレーションというものが2013年に成立していますが、それとプラットフォームの関係性について教えていただけますか。

○ブッシュ教授(オスナブリュック大学) ELI(ヨーロッパ法協会)の討議草案ではODRの問題は取り扱っていませんが、御存じのとおり、数年前に欧州委員会のほうでADRに関する指令とODRに関する規則を採択しています。

ただし、これらはプラットフォームに対してODRというものを強制するものではなく、一定の情報提供義務、例えば、そのプラットフォームにおいてヨーロッパのODRプラットフォームへのリンクを置くなどという義務を課すものにすぎません。

私はODRの専門家ではありませんが、知る限りでは、このようなEUによる立法によってプラットフォーム・エコノミーにおけるODRが増加したということはないようです。

○中田座長 ありがとうございました。

最後に、すばらしい報告、そして、我々の質疑に対応していただきましたブッシュ先生にお礼を申し上げたいと思います。同時に、すばらしい通訳をしていただきましたカライスコス先生にもお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

それでは、今から5分ほど休憩をとらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。再開は55分から始めたいと思います。

(休憩)

○中田座長 それでは、時間になりましたので、再開させていただきます。

本日のもう一つの重要なパートとして、経済産業省へのヒアリングを行います。

本日は、お手元に資料があると思いますが、「電子商取引及び情報取引等に関する準則」の概要、及び、現在開催されている産業構造審議会商務流通情報分科会Connected Industriesにおける共通商取引ルール検討小委員会での議論の状況について御紹介いただき、意見交換を行いたいと考えております。

本日は、経済産業省商務・サービスグループ参事官室の山本参事官に来ていただいております。

それでは、担当の方から御説明をお願いし、質疑応答にも御対応いただけると聞いておりますので、お願いいたします。

経済産業省におかれましては、お忙しいところ、この場に来ていただきまして、最初にお礼を申し上げたいと思います。

それでは、資料2-1について、情報経済課から、大体20分程度くらいで、少し短目にということになるかもしれませんが、御説明いただければと思います。

よろしくお願いいたします。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 ありがとうございます。

私から、まず、資料2-1に基づきまして「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の御説明を差し上げたいと思います。

この準則の中にオンラインプラットフォームに関する論点が幾つか取り上げられているということで、本日、お招きいただいたと承知しておりますので、まず、準則の概要について御説明申し上げた上で、オンラインプラットフォームに関連する論点でどういうことが書かれているのかというところを、簡単ですけれども、御紹介を差し上げたいと思います。

2ページを御覧ください。経済産業省では、平成14年以来、既存法の解釈を示した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の策定・改訂を行い、取引当事者の予見可能性の向上とそれを通じた民間ルールの形成に努めているところでございます。策定当時以来の課題認識として3点ほど挙げてございますけれども、民法を初めとする現行法の多くは、新しい技術を前提としておらず、それに伴って新たなサービス展開が急速に進む中で、現行法がどうやって適用されるのか予見可能性が乏しく、それによって事業の委縮や消費者の不安が起きているのではないかという課題認識がございます。当然、本来であれば個別の事案に対する司法による解決が図られ、その集積でルールが形成されるわけですけれども、こうした新たな形態の取引に関して、現行法の適用・解釈を、判例の迅速な積み重ねのみに期待していくこともなかなか難しいところがありまして、平成14年にこの電子商取引等の準則を策定したわけでございます。これは何なのかといいますと、電子商取引等に関する新しい法的問題点について、民法等の現行法がどのように適用されるのか、その解釈を示して、取引当事者の予見可能性を高めて取引の円滑化に資することを目的とするものです。これにより、一つの使われ方としては、消費者相談対応やADRでの判断基準としても活用されることを期待しております。また、この準則自体、当然ながら何らかの法規範性を持つものではなく、それゆえ個別具体的な事例への現行法の適用の最終判断権は裁判所にあるわけですけれども、一つの法解釈のたたき台を示して、場合によっては既存法による問題への対応の限界を明らかにすることで、今後の立法その他のルールの形成の参考とすることにも期待しているものでございます。

3ページに、ごく簡単にですが、これまでの経緯を書いております。もともと、平成14年3月に「電子商取引等に関する準則」を策定いたしまして、それ以降、毎年のようにその内容を改訂して、不要になった論点は削除、あるいは新たに必要になった論点を追加ということでやってきてございます。その結果、平成14年当初は約90ページぐらいであったものが、現在は370ページぐらいのものとなってございます。

4ページ、全体構成ですけれども、現在は全部で67の論点を扱っております。大きく分けますと、1つ目が、後ほど御説明申し上げますような、ネットショッピングモール運営者の責任とか、そういった電子商取引に関する論点を扱ってございます。2つ目が、インターネット上の情報の提示・利用に関する論点で、これは他人のホームページにリンクを張る場合の問題点とか、ネットと著作権といった問題を取り扱ってございます。3つ目が、情報財取引に関する論点で、ここで言う情報財とはソフトウエアやデジタルコンテンツといったものですけれども、そういった取引に関する論点を取り扱っております。4点目で、電子商取引は容易にクロスボーダーになるということで、国境を越えた取引に関連する論点も幾つか取り扱っております。

5ページには、参考として、どういった形でこの準則の改訂作業を進めているのかにつき、平成29年度の改訂作業の検討体制を例に示しております。御出席の森委員にも大変お世話になっておりますけれども、弁護士の方からなる研究会をいくつか立ち上げ、そこで検討を進めています。この研究会では、随時、事業者ヒアリングを実施したり、消費者庁や法務省など関係省庁の方の御意見も聞きながら、準則の改訂案を作成しております。そうしてできた改訂案を、最終的には経済産業省の情報経済小委員会の下に設置しております「IT利活用ビジネスに関するルール整備ワーキング・グループ」にかけて、そこで取りまとめをした上で、パブリックコメント手続を経て公表という流れになります。

6ページには、「IT利活用ビジネスに関するルール整備ワーキング・グループ」の委員の皆様を掲示しております。早川委員にもお世話になっておりますけれども、松本先生を座長としまして、民法、知財法、国際私法といった法学の専門家の方に参加いただいて、御議論をいただいてございます。

以上が、準則の概要になります。

7ページ以下では、この準則に書かれている内容のうち、特に事務局から御説明いただきたいということで御要望いただきました論点について、準則にどういったことが書かれているのかというところを、甚だ簡単ではございますけれども、御紹介させていただければと思います。

まず8ページですが、論点Ⅰ‐6、「インターネットショッピングモール運営者の責任」です。ここでは、論点として、店舗との取引で損害を受けたインターネットショッピングモールの利用者に対して、モール運営者が責任を負う場合があるか、例えば、モールに出店していた店舗から商品を購入したところ、その商品に欠陥があったが、店舗が行方不明となり連絡がとれない、モール運営者に対して損害賠償を請求することはできないか、といったような論点を示して、これに対する解説を3から4ページぐらいで示しております。ここでは、モール運営者は、個別の店舗との取引によって生じた損害について、原則として責任を負わないという解釈を示しております。これは、通常、個別の店舗との取引において、「売主としての責任」を負うのは店舗であるということによります。ただし、幾つかモール運営者であっても責任を負う場合があるだろうということで3つほど挙げております。1つ目が、名板貸責任の類推適用です。こちらは、平成7年のスーパーマーケットとテナントの関係に関する最高裁判決を参考にした記述と理解しておりますけれども、やや抽象的ではありますが、一つはモール運営者自身による営業であるかのような外観の存在があること、外観に対するモール運営者の帰責事由があること、モール利用者の善意無重過失といった要件が認められる場合には、名板貸責任の類推適用によってモール運営者が責任を負う場合もあるのではないかということを示しております。そして、そうした要件の解釈に当たっては、モールの外観、運営形態、店舗の営業への関与の程度等を総合的に勘案して判断されるのだというところを示してございます。あとは特段の事情がある場合とか、単なる情報提供や紹介を超えて特定の商品等の品質等を運営者が保証した場合には、保証に基づく責任を負う場合があるのではないかということをお示ししてございます。

9ページですが、この準則では、具体的にどういう場合であれば責任を負う可能性があるのか、どういう場合であれば責任を負わないと思われるのかというところを、例として冒頭で示すようにしております。このⅠ‐6の論点につきましては、責任を負う可能性がある例として3点ほど挙げております。まず、商品購入画面等モール運営者のウェブサイトの画面で、売主がモール運営者であるとの誤解が生じる場合。また、モール運営者が特集ページを設けてインタビュー等を掲載するなどして、特定の店舗の特定商品を優良であるとして積極的に品質等を保証し、これを信じたがために購入したところ、損害が発生した場合。さらに、重大な製品事故の発生が多数確認されている商品の販売がなされていることを運営者が知りつつ、合理的期間を超えて放置した場合を例として挙げております。逆に、責任を負わないと思われる例として、購入画面において、モール運営者が売主でないことを分かりやすく記載されている場合とか、品質等に関してモール運営者の判断が入らない形で商品や店舗の広告を掲載しているにすぎない場合、「売れ筋」「ランキング」「上半期ベスト3」といった表示をしたにとどまるような場合などを幾つか例として挙げてございます。

10ページはⅠ‐7‐1「ユーザー間取引に関するサービス運営事業者の責任」という論点です。インターネット・オークション、フリマサービス等、ユーザー同士による取引が行われるサービスにおいて損害を受けたユーザーに対し、当該サービスの運営事業者が責任を負うことがあるか、また、サービス運営事業者は損害を受けた利用者に対しいかなる責任を負うのかということでございます。こちらはどういった解釈を示しているかということですけれども、2つに場合分けしてございます。すなわち、サービス運営事業者が取引に実質的に関与していない場合とサービス運営者が取引に実質的に関与する場合の2つです。取引に実質的に関与していない場合については、先ほどの論点と似たような話ではあるのですけれども、原則として運営事業者はユーザーに対して責任を負わない、なぜならば、サービス運営事業者は、単に取引の場やシステムの提供者にすぎず、個別の取引の成立に実質的に関与するわけではないからである、という解釈を示してございます。ただし、例外的に取引の「場」やシステムを提供していることに伴って一定の注意義務を認める余地もあるだろうということで、著名なヤフオク事件の判決も示してございます。ヤフオク事件の判決では、サービス提供者は、信義則上、ユーザーに対して「欠陥のないシステムを構築してサービスを提供すべき義務」を負っているとされ、その義務の具体的内容については、社会情勢、関連法規、システムの技術水準等々を総合考慮して判断すべきであるとされました。結論としては、サービス運営事業者の責任は否定されております。サービス運営事業者が取引に実質的に関与する場合につきましては、役割に応じて責任を負う可能性もあるだろうということで、3つぐらいに類型を分けてございます。1つ目は、サービス運営事業者がユーザーの出品行為を積極的に手伝って、これに伴う出品手数料や落札報酬を出品者から受領する場合。2つ目が、特定の売主を何らかの形で推奨する場合。3つ目が、サービス運営事業者自体が売主等の取引当事者となる場合です。こういった場合には、役割に応じた責任を負う可能性があるのではないかということが書いてございます。その上で、責任を負う可能性がある例として、1つは、インターネット・オークションにおける出品物について、警察本部長等から競りの中止の命令を受けたにもかかわらず、オークション事業者がそれを中止しなかったため、落札者が盗品等を購入したという場合。2つ目として、サービス運営事業者のほうでユーザーから申し込みを受けて、ブランド品を一旦サービス運営事業者に送付をしてもらって、サービス運営事業者がユーザー名で出品行為を代行して、それに伴って手数料や落札に伴う報酬を受領する場合、すなわち積極的に取引に関与している場合ということだと思いますけれども、そういった場合には、その役割に応じた責任があり得るのではないかということを例として示してございます。

12ページのⅠ‐7‐5「売主に対する業規制」では、ユーザー間取引プラットフォームを介して商品を販売する売主の側に、どういった規制が適用されるのかという論点を取り上げております。ここでは、具体的には特定商取引法の規制、景品表示法の規制、古物営業法の規制が問題になるわけですけれども、それぞれ業の解釈といいますか、事業・営業とは何なのかということが問題となることから、それぞれの法律でどうやって解釈をされるのかというところを示してございます。

13ページのⅠ‐7‐6「ユーザー間取引におけるサービス運営事業者に対する業規制」では、インターネット・オークションやフリマサービス等の場合に、運営事業者にどういった業規制が適用されるのかという論点を記載してございます。先ほども登場した古物営業法の関係でいきますと、基本的にはサービス運営事業者は「古物商」とか「古物市場主」の許可は不要でありますけれども、例えば、自ら又は委託を受けて古物を売買・交換する営業を営む場合とか、古物商間の売買・交換のための市場を経営する場合には、許可が必要である旨を示してございます。

14ページの論点Ⅱ‐1では、情報財取引に関するテーマとして、「ソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任」にも少し触れてございます。ブログや口コミサイト、動画共有サイトなどのソーシャルメディアにおいて、名誉棄損や著作権侵害など、他人の権利を侵害する疑いがある情報がアップロードされ、これにより権利侵害を受けたとする者からソーシャルメディアサービスの提供事業者に対してその削除要請があった場合、これを放置あるいは削除した提供事業者にどのような責任があるのか、という論点です。いずれも一定の場合には不法行為責任が成立し得るわけですけれども、プロバイダ責任制限法による免責の規定がある旨を解説の中で示しております。

15ページ、その上でどういう場合に損害賠償責任を負う可能性があるのかというと、例えば、掲示板に明らかに他人の著作物のデッドコピーと分かるものが大量に書き込まれて、著作権者であることを証明する者から適正な削除要請があったにもかかわらず、合理的期間を超えて放置した場合とか、あるいは、名誉棄損が明らかになっているにもかかわらず、削除要請があったにもかかわらず、これを放置した場合とか、一定の例を示しているということであります。削除の例につきましては、必要な限度を超えて広範な削除をした場合には責任が生じ得るのではないかということで、例として示してございます。

以上がこの電子商取引等の準則の中でオンラインプラットフォームに関連して取り上げている論点でございまして、こういった形で、様々な論点を取り上げて、それに対する一定の法解釈を示していくことによって、取引のルール形成を図っているものでございます。

17ページ、最後に。今後の課題と書いておりますが、これはかなり雑感めいた話であり、今のところ決定事項があるわけではありませんので、時間の関係もあり、説明としては端折らせていただこうと思います。ただ、一言申し上げると、昨今のオンラインプラットフォームの話を踏まえながら、この準則は今後どういう在り方が望ましいのかという問題意識も持っております。いろいろな技術が発展して法を追い越していくような事象が出てくる中で、準則自体、今後どういう在り方をしていけばいいのかというところは、準則をつくってから15年以上の歴史になっておりますけれども、改めて考えていく必要があるのかなと思い始めている段階でございます。

かなり駆け足になってしまいましたけれども、説明としては以上でございます。

○中田座長 ありがとうございました。

それでは、この準則の説明につきまして、何か質問、御意見等がございましたら、御発言いただければ幸いです。いかがでしょうか。

私としては、準則の法的性格を少し明確にしていただけるとありがたいと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 冒頭、2ページのところで少し申し上げましたけれども、この準則は何か法的な拘束力を持つとか法規範であるといったものではなくて、あくまでも法解釈の一つを示すという立ち位置で考えてございます。現行法がどう適用されるか分からないという課題に対して一つの法解釈の在り方を示すことによって、取引のルールの形成に寄与することを狙ったものと理解していただければ幸いです。

○中田座長 早川座長代理。

○早川座長代理 6ページに私の名前が載っておりまして、あちらにいらっしゃる森先生とも一緒に、非常に長い間、こちらの準則の改訂作業をやらせていただいて、かつては、5ページ目の検討委員の中にいたこともあったりとか、両方に名を連ねたこともあるのですが、今は森先生等に力仕事をお願いして、それをレビューするような立場でやらせていただいております。

まさに座長がおっしゃられた準則とは一体何なのかということは、つくっている自分たちでも、常に新しい問題に直面するたびにまた一から議論しているということが実情でございます。ただ、重要なポイントはどこにあるかといいますと、必ずしも日本では訴訟件数が諸外国に比べて多くないこともありまして、ルールとして法律や規制はあっても、その間のところで一体どのように解釈すべきなのかよく分からないところが多々ある。それを放置していると、結局、裁判を自分たちで訴えるとか裁判を誰かが起こすことを待たない限りルールが明確にならないので、そうすると、非常に不明確な中で取引を行わなくてはいけないことがそもそも問題であろうというところから来ていると認識しております。

そのために、いわゆるガバニングビューと言うのですかね。まず、多くの人々はこういうふうに考えているとか、あるいは判例がいろいろあるけれども整理していくとこういうふうに整理できるというところをできるだけやって、客観的に今あるところのルールはどこにあるのかというところをディスクライブすることが一つの役割だと考えてつくっております。

しかし、例えば、今、問題になっているプラットフォーマーの責任という問題になってまいりますと、先ほどの検討委員の中でもかなり意見が分かれるところがございまして、そこは最終的には準則とはどういうものであるべきかのスタンスの違いにあらわれてくると考えております。すなわち、新しい問題が出てきたときには、その問題に対して、業界なり全体をリードするような形で何かしら方向性を指し示す。そうすることによって、ルールの形成をされていくものにドライブをかけてより透明性の高い世界にしていこうという立場の方と、そこを我々がやるのはちょっと野心的に過ぎるし、どのような権限があるのかということにもなるので、グレーのところはグレーのままで残そうというところでいつも議論が白熱して、最終的には準則とは何かという話をもう一回やり直すということが繰り返されているような気がしております。

そのような観点から見ると、プラットフォーマーの責任も、非常にタッチーな問題といいますか、意見が分かれるところでございまして、現在の記載ぶりは私の目から見ると比較的保守的に書いていると思いますけれども、他方で、準則を外から眺めた方からすると、そんなことまで書かれる筋合いはないとお考えの方もいらっしゃると思いますので、まさにこのプラットフォームに関する準則の記述などは、悩みながらつくっているというところが実情だと思っております。

○中田座長 ありがとうございます。

いかがでしょうか。一番最初に出てきている、先ほどもブッシュ先生の講演の中でも出てきましたけれども、モール運営者の責任、例外はあるのですけれども、原則として責任を負わないという、原則の立て方はこういうような形でいいのかとか、消費者サイドで先ほどの類型によって原則と例外が変わるという可能性もあるのかなという形で、私も見ていたのですが、いろいろなサイドから、そのあたりの御意見がもしございましたら、いただけないでしょうか。

この1番目の原則は、何か判例があってということなのでしょうか。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 もともとこうしたプラットフォーマーの責任というテーマ自体は、平成14年の準則の制定当初から扱われている論点です。当初、新たな取引の発展に伴う問題というテーマの中で唯一取り上げられたのが、このサイバーモールとの取引におけるサイバーモール運営者の責任という論点でございまして、そのときから、通常、サイバーモール運営者と借主の間には直接の契約関係がないので、個別の取引についてサイバーモール運営者は責任を負わないという考え方を示し続けてきております。その後、ヤフオク事件の裁判例なども出て、そういったところも一つの理論的基礎にはなっているかとは思います。そういう意味では、歴史的には、当初から、基本的にはプラットフォーマーは責任を負わないのだということをこの準則は原則として打ち出してきているわけではあります。

ただ、今、いろいろ議論ありますとおり、ヤフオク事件でも、社会情勢等に照らして変わるのだという言及もありますけれども、現在のプラットフォーマーの位置づけに照らしてどうなのかというところは、当然いろいろな議論があり得るとは思ってございます。

○中田座長 要は、これは契約責任ですね。売主・買主の契約責任は売主が負うという、民法的なルールなのでしょうか。それを前提にしているということなのですかね。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 そうですね。

○中田座長 それを説明しているということなのですか。

森委員。

○森委員 ありがとうございます。

私は、これを一番最初に書きましたので、補足をさせていただきます。

これはもちろんモールの場合ということで、モールに限った話ではあるのですけれども、その当時は、電子商店街という表題をつけていたのです。それは表題がだめだということで、今のようなインターネットショッピングモールに改まりましたけれども、さっき早川先生から大方の見方として一致するところを示しているという話がありましたけれども、これはそのとおりでして、原則として責任を負わないというのは、その当時からもモールについては大方の見方であると思っていましたし、多分今日でも解釈上はそうだと思います。

むしろ一般の人はモールで買い物をしたときにその売主になるのは店舗だという理解は進みつつあるのではないかと思っていまして、原則としてはこうだ、責任を負う場合もあるということで幾つか書きまして、これはもちろん限定列挙ということではなくて例示なのですけれども、当時は大変なハレーションが起こりまして、私も随分怒られましたけれども、今となっては保守的な記述と言えるのではないかと思っております。

視線が厳しいので、このぐらいで。

○中田座長 どうぞ。

○早川座長代理 準則がどういうふうにつくられているかという点とまさに今の議論に関係しているところで2点申し上げますけれども、必ず検討委員の方々だけの意見でドラフトをつくるのではひとりよがりになりかねないので、もちろん消費者団体の方々の御意見もそうなのですけれども、いわゆる業界の方々の御意見も聞いてドラフトを作成されていくという過程をとります。その業界の方々の御意見の聞き方は、個別にインタビューに行って、こういうものについてはいかがでしょうかと聞いて、それがフィードバックをされてくるというパターンもございますし、一時期は、業界の方々をみんな集めてそこでやったところが確か2年くらいございまして、そのときは、大勢集まると皆さん調子が出てくるものですから、業界の声がむしろ強くなり過ぎているような感もありまして、その辺のルールメーキングの過程における業界の声、もちろん消費者団体の声も他方であるわけですけれども、声の吸い上げ方に非常に注意を払いながらつくられていることが一つでございます。その意味において、業界の方々がどういうふうに考えているのかということは十分に考慮された上で、現在の記述が行われていると理解しております。

2点目は、どういうふうに基本的に考えているのかというと、先ほど、ガバニングビューはどうなのかと。逆に言うと、少数の人がちょっととがった見方をしていたとしても、それは準則の記述にはならないような作成過程になっておりまして、そのときに重要なことは、まずはどういう形式的な法の立て方になっているかというところを見ていくと考えています。そうすると、どうしてもプラットフォーマー側が全体の法的なスキームをつくっておいて、それに乗っかって消費者が買っていくことになりますので、言い方は悪いですけれども、当然ですけれども、自分たちの責任ができるだけ生じないような法的スキームを使ってつくっていくというところがあるので、そこは形式としてある以上は、まずはそれを注目する。そうすると、先ほど森先生がおっしゃられたような、あくまでそれは媒介をしているだけで、XさんとYさんという借主・売主というところが直接の契約なので、そうすると責任は原則ありませんというところでスタートをしてくるのです。それに対して、先ほど保守的な記述になっていると申し上げましたけれども、今の民法でもそういった方でも責任を負わなくてはいけない場合があるので、それについて注意的に羅列しているということが、現在の記述だと思っております。ただ、年を追うごとに、昔、「電子商店街」という言葉から「サイバーモール」という言葉、今は「プラットフォーマー」という言葉に変化していったように、人々の中におけるこういったもの生活の中での占める割合が非常に多くなってまいりました。別の言い方をすると、社会的な影響力が非常に高くなって、その中で人々の生活が事実として様々な形でコントロールや影響をされているような状況がある中で、果たしてそのような記述でいいのだろうかということが、内部にいるとプレッシャーとしてだんだん感じてくる。その中で先ほど言ったような議論が行われているということが、現在の状況だとは思っております。

○中田座長 ありがとうございます。

原田委員、お願いします。

○原田委員 御説明ありがとうございました。

準則は、非常に消費者相談においても一定の考え方を示していただいていて、非常に利活用させていただいております。改めてありがとうございます。

プラットフォーマーの部分に関しましては、当初からある割にはずっと保守的というイメージではございます。課題でもあるのかもしれませんけれども、ずっとここで議論をされているように、プラットフォームは2002年から比べてかなり多様化もしておりますし、営業形態といいますか、サービスの提供の方法もいろいろ変わっている。特に単なる場の提供者ということもあれば、エスクローみたいに、お金の部分は運営者が握って、逆に相対をルールで認めない。そうすると、エスクローしか利用しないということで、支払先自体はそのプラットフォームになる。多分一歩突っ込んだプラットフォームの形になっていると思うのですよね。そういういろいろな形式をやっていたりとか、もしくは、そこでも議論していると思うのですが、個人と事業者の境目がなかなかなくなってきたという状態で、例えば、昔のままで存在している特商法のオークションのガイドラインか何かがあったかと思うのですけれども、あれも時代とともにあまりなじまなくなってきたのかなと思います。

そういうところを含めて、要は、今後、準則で、このプラットフォームとか、ショッピングモールとか、そういったところについて今後も議論を深めていくのか、それとも原則は負わないという保守的な感じで、例外としてこういう場合は負うよねという形式で今後進んでいくのか、その考え方や方針を教えていただければと思います。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 ありがとうございます。

正直に申し上げまして、今のところ、どうしていくのかというところが具体的に決まっているわけではございません。ただ、全体の位置付けにもなるかもしれませんけれども、このデジタル市場の中で、この準則がどういう役割を担っていけばいいのか。特に、法律だけではなくて、プラットフォーム事業者が設けるコード・アーキテクチャみたいなものの重要性が増していく中で、準則がルールメイクにどう貢献していけるのかというところは、一度立ちどまって考える必要があるのではないかといった話も、少し出てはおります。そして、そういったデジタル市場のルールメイクを考えていく中で、オンラインプラットフォームの問題を準則がどう捉えて取り上げていくのかということは、検討の一つのモデルというかドライブになる面もあるのかなとは思っております。ただ、繰り返しになりますが、具体的に何かこうしていくというところが決まっているわけではございません。

○原田委員 今後の議論というところまでと。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 そうですね。必要に応じて議論をして参るということです。

○原田委員 ありがとうございます。

○中田座長 個人的な印象なのですけれども、個々の業法の規定はそれぞれの法律の目的があってルールがつくられるわけであって、それを集めるだけでは全体の体系的な規制に及ばないケースもあるのではないかと思うのですけれども、その辺のお考えとか、そういうものはございますか。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 当然、個々の業法には個々の業法なりの意味があるわけですが、それとは別にもしかすると何かメタな価値観みたいなものをオンラインプラットフォームについて共通で考えていく余地もあるのかもしれませんけれども、今そこまで具体的な頭があるわけではありません。

○早川座長代理 準則をつくってきた立場から原田委員の御質問に対してお答えすると、森先生は少し違うのかもしれませんけれども、準則に過大な期待をしないでくださいということが私の答えで、準則は、これはどういう性格のものなのかと言われると、実は何もないということです。ただ、いわゆる業界の専門家の方々が集まって、いろいろな資料を集めると客観的にはここまで言えますよねということを提示しているというところはまず間違いないスタンスだと思っていまして、そこから一歩踏み出してくると当然自分の私見なり見方が入ってきて、そうなってくると、そこに今まで依拠できていたものも依拠できなくなってくるように思っていまして、慎重あるいは保守的であるくらいが、準則自身がいろいろなところで使われることの力の源泉なのだと思っていますので、むしろ、例えばですけれども、プラットフォーマーについて将来どうあるべきかということに関しては、こういう消費者委員会のところでお考えいただいて、それがいろいろな形で波及していく中で、その波及していった変化をこの準則のメンバーが読み取って、それをまたディスクライブしていくという印象で私はおりますので、あまり準則に全体の業界をリードするような姿勢を求められると、むしろ準則自体の信頼性を損なっていくのではないかとは考えていますので、すみません、あまり過大に期待しないでほしい。

○中田座長 まず最初に、鹿野先生。そして、池本先生。

○鹿野委員 ありがとうございます。

過大な期待をしないようということではあったのですが、準則は法的な効力を持っているわけではないことも承知しているのですが、そうはいっても、消費者相談の場面でもかなり参考にされているということでもありますし、一方で、おそらく事業者さんについてもこの準則は非常に大きな意味があるのだろうと思います。

そこでお聞きしたいのですが、準則のスタイルとして、原則は責任を負いません、例外はこういう場合ですという形にせざるをえないのでしょうか。それとも、このような問題に関しては、特に、この準則がつくられたときから時がたって、プラットフォームの社会における役割も変化してきましたし、多様性も増しているというときに、決めつけが難しいようなところがあると思うのです。そういうときに、ある程度柔軟性を持たせたような書きぶりは果たしてできないものなのかということを、お伺いしたいと思います。

○中田座長 御担当者からお願いします。

○経済産業省商務情報政策局情報経済課担当者 そこは今の記載内容で必ずしも固定されるものではないとは当然思っておりますので、ある程度の共通理解が得られる範囲内で、要素を列挙するとか、柔軟性を持たせる形もあるのかもしれませんけれども、他方で、先ほど早川先生がおっしゃられたように、ある意味一歩踏み込むことによってかえって失われる面がないのかどうなのかというところも考慮しなければいけないのだろうと、今の議論を聞いて思った次第です。

○中田座長 でも、こういうふうに書いてあるので、ある意味では一歩踏み込んでいるという可能性もあるとは思います。

池本先生。

○池本委員長代理 池本でございます。

今の議論に関連して言うと、私はこの準則は様々な法令から導かれる現時点の規範の水準を客観的に書いていく、信頼のできるコンメンタールとして非常に価値があるのだろうと思います。これを前提にどこをどう一歩進めるかというのはこれからの議論だと思うので、それに関連して一つ質問をさせていただきます。

13ページで、ユーザー同士の売買が行われるサービスの運営事業者で、そのユーザー間の取引を消費者であるユーザーに対して提供しているプラットフォーム運営事業者は、特商法上の通信販売に該当し、表示義務等に従う必要があるという記述があります。これは、特商法の通信販売の概念が自ら売主となって通信販売の方法で売る場合に限らず、取次、仲介などをする場合も通信販売という概念に包摂されるのだという解釈を前提にされているという理解でよろしいのかどうかが1点です。

仮にそうであるとした場合、通信販売業者としては、広告表示義務、誇大広告の禁止、あるいは債務不履行、不当な遅延を繰り返す行為は禁止行為とされているのですが、それはこういう仲介業者の場合に、仲介している事業者に対して、それをやらないように指示する、間接的な義務という形で反映するのかどうかというところをお伺いしたい。これが2点目です。

3点目として、この関連付けがよく分からないのでお聞きしたいのですが、14ページには、ソーシャルメディア事業者の違法状況の媒介責任ということで、違法な記述があった場合に、削除しないと不法行為責任が成立する可能性がありますよと。ただし、プロバイダ責任制限法との関係で、削除が技術的に可能かどうか、あるいはそれを知っているかどうか、明らかかどうかということで、むしろ責任を負わない場合がかなり広いという問題がありますが、これは書き込みなどの情報に関することに限って、その前のページの通信販売の仲介を事業とする者ということには関連しないという理解でいいのか、それともプロバイダ責任制限法が13ページの議論の中にも及んでくるということになってしまうのかどうか。

以上、3点、お伺いしたいと思います。

○森委員 ありがとうございました。

これは細かい話ですので、私からお答えいたします。

池本先生からいただきました御質問の最初の点については、これは媒介等を原因にする責任ではなくて、当該マーケットプレイスのサービス自体が有償で提供されているということで、これはいわゆる本当の原則形態としての有償の通信販売事業者となる場合があるということを書いております。そんな場合はあるのかと不思議に思われるかもしれませんけれども、このプラットフォームの調査をしたときに、スマホのアプリなのですけれども、そういう形態のものが一例だけありまして、これは有料サービスでマーケットプレイスの会員になるというスタイルのものだったものですから、そこで念のためといいますか、そういう場合があり得るということで、有償で提供している場合には特商法上の通信販売になって表示義務を負うことを書きました。ですので、先ほどの2点目の問題についても、これは真正の通信販売事業者ですので、全ての義務を負うことになります。

3点目の御質問ですけれども、こちらのソーシャルメディア事業者の違法情報媒介責任は、前のところのマーケットプレイスの話を引き継いでいるわけではなくて、これは全く独立の問題としてお話ししております。プロ責法の適用等がかかってくる場面は、情報の流通自体が権利を侵害する場合ということになっています。これは、御案内のとおりですので、したがって、通信販売の場面とは場面を異にするということです。

○池本委員長代理 御説明ありがとうございます。

今の通信販売事業者に該当するということに関連して1点だけ補足の質問をさせてください。

消費者であるユーザーに対して有償で提供している場合、そういうケースもあったのでこういう記述をしたという御説明なのですが、例えば、出品をして取引成立に対して一定の手数料をとるというのは、その場の利用について有償で提供したことになるという解釈もあり得るのではないか。そのあたりはどの範囲のものをここでいうプラットフォームを有償で提供していると解釈するのか。細かい話ですみません。

○森委員 とんでもありません。全く鋭い御質問だと思います。

これを検討したときの有償は会員全員に対して定額で課金するタイプのものでしたので、成約の場合に幾ら手数料をとるというタイプの場合にどうなるかということについては、準則としては検討しておりません。

○中田座長 早川座長代理。

○早川座長代理 今の御質問の関係は、多分これは本来であれば、1項目、4から5ページ、長いものだと、もっとというところをぎゅっと圧縮しているので、ここが分かりにくいところがあるかと思いますので、内容的には、今、森先生が御説明されたとおりだと思います。

鹿野先生から御質問いただいた、そうはいっても消費者に対してこれが相談等で使ってもらえるというところで踏み込むということがあるのではないかということは、全くおっしゃるとおりの部分もあるのですけれども、我々がどう考えているか、少なくとも私はどう考えるかというと、消費者にこういう準則があってこうなっていますと説明すると、それは同時に事業者もそれは準則に書いてあるのであれば応じましょうという感じで働いてくれることを期待して、この線であればとつくっていると思っています。そこをより消費者寄りに一歩踏み出す、二歩踏み出してくると、事業者が、準則というのはバランスをとっているわけではなくて、しょせん消費者寄りの何かを示しているのだから、あんなものは従わなくていいのだと。逆に言いますと、先ほど先生がおっしゃられた、客観的なコンメンタールとして存在しているからこそ機能しているので、少なくとも準則に書かれているレベルにおいてはちゃんと事業者は対応しなければいけないという雰囲気に、今、なってくれているのかなとは期待していますので、その辺がすごく悩ましいところでございます。

○中田座長 次の報告の時間も考えなければいけないので、片岡委員、鹿野委員、連続でお願いします。

○片岡委員 事業者として、プラットフォーマーとしての準則の捉え方について、一言だけ申し上げておきます。

パブコメなどに出ますと常に準則とは何ですかということを聞くぐらい、これの性質にはかなり注意を払っておりまして、いろいろお話しいただいたとおり、これは立法ではないと。立法行為ではないはずであると。そうであれば、これは何なのかというところは必ず立ち返っていただいて、逆に言うと、新しいからといってあまりにも踏み込んでしまうと、だったらそれは法律雑誌に書くとか、みんなでオープンに議論するとか、議論をすることはもちろん構わないけれども、準則として載せるものについてはかなり慎重に考えていただきたいと、事業者としては思っています。

逆に言うと、これに書いてあるからといってうちは一切何もやりませんとか、そういうことをするわけでもないので、準則に何か規範的な意味を持たせたいのであれば慎重に考えてほしいということを、事業者としては思っています。

以上です。

○中田座長 鹿野委員、お願いします。

○鹿野委員 先ほどの私の発言なのですけれども、この準則をずっと消費者寄りの内容にするべきだという趣旨では必ずしもありません。一つは、当時つくったときと今とで同じでいいのかということで、その点を見直す余地はありますかという趣旨もありますし、もう一つは、このような世界においては、どんどん状況が変わっていくというときに、変わってもある程度対応できるような柔軟性をもたせること、もちろん明確性と柔軟性を両立させることは容易でない課題であるとは思うのですが、それでもある程度の柔軟性を持たせるということは準則の在り方として考えられないのでしょうかという質問をさせていただいたものです。

○中田座長 早川座長代理どうぞ。手短にお願いします。

○早川座長代理 私の言い方はあれなのですが、御説明があったとおり、毎年改訂しております。ただ、そのときに新しい問題があった場合に、新しく規定にできないかということは非常にやっております。

もう一つ申し上げさせていただくと、「てにをは」まで毎回大議論になりまして、修正を重ねて今の形になっているということです。そこに込められているインプリケーションみたいなものをめぐって大議論になるということはよくございます。

ですので、おっしゃるように、我々としてはフレキシブルと明確性との中間のものを目指してはいるのですけれども、他方で、準則自体がグレーなところを解釈するものなのに、それ自体がまた解釈の余地ありということだと困るので、その辺が悩みの種ですが、御指摘は心に銘じてまた業務に当たろうと思っております。

○中田座長 山本委員。

○山本委員 これは御担当者に御質問するべきなのか森先生に御質問するべきなのか分からないのですけれども、9ページの責任を負う可能性がある例の2番目、2つ目のポツの下線部で「特定の店舗の特定商品を優良であるとして積極的に品質等を保証し」というところなのですけれども、「お勧め」という表示を出したケースがこれに当たるのかどうか。プラットフォームがその商品の質を保証しているというニュアンスで消費者が捉える可能性もあるので、「お勧め」という表示をどういうふうに考えられているのでしょうか。

もう一つが、その下の責任を負わないと思われる例の3番目の「売れ筋」というところなのですけれども、これがどれぐらいアルゴリズムがかかったものなのかが分かりませんでした。要するに、単純に売り上げを集計的にとって「売れ筋」と言っているケースと、プラットフォームの価値判断やポリシーがそのアルゴリズムに組み込まれて「売れ筋」と表示されるケースの両方があり得るかと思います。要するに、「売れ筋」が単純にランキングを集計しただけのものなのか、アルゴリズムがかかったものなのか、どの程度のものをここで想定されているのかということが、2点目の質問です。

3点目が、下のユーザー間取引ですけれども、バッジのような、さきほども出てきた、要は優良なユーザーの場合にはバッジの種類や色で表示されるという場合に、ある程度プラットフォームの側が評価しているわけですけれども、そのバッジの色を信じてユーザーの側が購入するケースもあろうかと思うのです。その場合の責任はどういうふうに評価されるのか。

○森委員 これも若干経緯に関わることなので私から申し上げますと、山本先生のおっしゃいました2つ目のポツの「特定の店舗の特定商品を優良であるとして積極的に品質等を保証し」というのは、趣旨としては、単にお勧めと書いただけではなくもう少し具体的にどういうところがお勧めなのかということを書いた場合に、積極的な品質保証が発生するのではないかという趣旨です。単なるお勧めではなくて、もう少し踏み込んでこういう品質ですと言いました、ところがその品質を満たしていなかったということなりますと、こういう品質ですと言っているのは、この場合、プラットフォーマーなので、売っているのは売主かもしれませんけれども、そういう場合には責任が発生するのではないかという趣旨で書いております。

責任を負わないと思われる例の3つ目のポツですけれども、これは、当時はあまりアルゴリズムとかそういうものがなくて、我々があまり認識していなかったのだと思いますけれども、よく売れている商品に「売れ筋」と表示というのは、これはただ同一カテゴリーで売れている商品に「売れ筋」と表示した場合という趣旨で書いていると思います。

3点目、バッジも、ここではあまりそういうことを検討しておりませんでしたので、プラットフォーマーが優良ユーザーに何か優良ユーザーの印みたいなことをつけたらどうなるかということですと、それはもしかしたら責任を負う可能性のほうで、多分さっきの用語だと「サプライヤー」、特定のサプライヤーを保証した場合に、責任を負う可能性がある例の2つ目のポツと同じようなことが起こるのではないかということですが、特段書いていなかったのではないかと思いますが、理屈としてはこの2つ目のポツと同じことが起こり得ると思います。

○中田座長 ありがとうございます。

この準則については、いろいろな期待があるのだなということがこの議論の中で分かったのではないかと思います。

それでは、どうもありがとうございました。

次に、資料2-2です。現在検討されている小委員会の議論について、山本参事官から御報告をいただきたいと思います。

ただ、時間が迫っていまして、15分までには終わらなければいけませんので、短目に御報告をいただき、迅速に議論をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○経済産業省商務・サービスグループ参事官室山本参事官 よろしくお願い申し上げます。

経済産業省商務・サービスグループの参事官をしております、山本でございます。

資料2-2につきまして、御説明の機会をいただきまして、ありがとうございました。

掲題にあります小委員会の名前でございますが、舌をかみそうな長い名前でございますので、私どもは「スマートコマース小委員会」と銘打って議論をしておりまして、ここにおられます生貝先生、森先生の御協力も賜り、また、各事業者様からの現状の取組も含めたインプットも頂戴しながら、また、国民生活センターからは大変貴重な資料を御提供いただきながら、これまで3回議論をさせていただいております。

本日は、この小委員会におきまして、私ども事務局で御提供させていただいた資料の中で、特に先ほどの準則の議論でもございましたけれども、C to Cの取引のような場面でどのようなことが起きているのかということ、それに対する事業者の対応も含めて、検討した際の資料を今日は抜粋してお持ちしましたので、これについての御説明を申し上げていきたいと思います。

まず、このプラットフォーマーについての捉え方、また、プラットフォーマーは捉え方が様々という点についても、この委員会では委員の皆様から大変有意義な観点で御示唆をいただいておりますけれども、そのプラットフォーマーがいろいろな商取引を行う上での制度も含めた市場環境、また、そこにおいて取引における実態はどのように行われているのか。このあたりを意識しながら、どのような政策的な観点を持ってこれを議論していくべきか検討を行っておりますけれども、なかなか捉え方が難しく、また、どのように捉えて進めることに意義があるのかということについて委員会でも白熱した議論が行われておりまして、まだ引き続き3回行ったところで、議論をもう一回やろうという形になっている状況でございます。

資料につきましては、北村補佐から御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

○経済産業省商務・サービスグループ参事官室担当者 ありがとうございます。

小委員会のこれまでの議論の検討状況について御報告させていただければと思います。

1ページ、現状、我々の問題意識としましては、プラットフォーマー型ビジネスが登場することで個人間取引が可能となって、C to C市場が成立しました。そのような商取引環境が大きく変容したところがまずは大きな動きとしてございます。また、このプラットフォーマーを初めとする事業者は、データを集積・利活用することで、その他ビジネスに展開したりとか、あるいは現状やっている既存ビジネスの業務を更に効率化することで、業種横断的なビジネス展開が可能になっています。一部事業者様においては、様々な業法をまたぐといいますか、多様なサービスを展開する、非常に利便性の高いワンストップサービスなどを提供することが可能となっております。

2ページ、我々の検討会の方向性としましては、基本原則を掲げているところでございます。データが集まるということで、消費者にとって利便性の高いサービスを提供することが可能となっておりますので、そういったプラットフォーマーを初めとする意欲ある事業者様のイノベーションを促進するような制度であるとともに、他方で、社会的責任や公正の実現はしっかり守ってくださいねというところが、大きな基本原則として掲げているところでございます。

3ページ、現状、第3回においては、特に社会的責任、公平性の実現というところに焦点を当てて議論をさせていただきました。こちらは、国民生活センター様にも情報をいただきまして、オークションやフリマサービスに関連する直近の相談件数についてのデータでございます。こちらは、本年度はオークションが1,608件、フリマサービスが1,070件とのことでございまして、これを年間に引き直しますと、大体昨年度と同程度か若干減少する見込みの定量的な評価ができるのかなと思っているところではありますが、ここで留意しないといけないのは、様々な多様なサービスが出ておりますので、一義的にオークションとかフリマで検索することで全てのC to C取引に係る相談がここで全てすくえているわけではないことは、引き続き留意が必要というところはございます。

4ページ、こちらは定性的な評価でございます。いろいろと、C to Cサービス、ネットオークションやフリマサービス、チケット転売サイト、あるいは民泊仲介サイトとか、いろいろなサービスがございますけれども、個人が供給者となる点に特殊性が認められるものではございますが、C to C市場においてB to C市場でも共通して生じ得るような内容が多いと、小委員会での議論の中では感じたところでございます。他方で、1点、気をつけないといけないのは、消費者契約法が適用されないケースもあるがゆえに、法的な保護が薄くなるような可能性が存在していることには留意が必要だと認識しているところでございます。

5ページ、我々の問題意識としましては、財・サービスの供給者が個人となることといった特殊性に鑑みまして、まず、サービスの消費者側のリスクとしましては、各種規制によって手当てをされていたリスクが消費者に転嫁されてしまうのではないかということが一つの論点。もう一つの論点が、これはどちらかというとサービスの供給者、Cが供給者になった場合ではありますけれども、中間事業者による業務運営者から生ずるリスクを誰が負担すべきか。これはプラットフォーマーなのか、供給者によって果たすべき責任なのか、問題意識として掲げているところでございます。

6ページ、こうした問題意識に対して、現状、こういったC to Cだけではないかもしれませんけれども、各プラットフォーマーの皆様の自主的な取組について、第3回においてヒアリングを実施させていただきました。まず、1つ目の丸は、いわゆるシェアリングエコノミー分野での共同規制についてヒアリングをさせていただきました。こちらの検討会でも御報告があったように伺ってはいるのですけれども、基本的には内閣官房のIT総合戦略室がモデルガイドラインを策定いたしまして、そちらをビジネスの実態に調和させる形で、シェアリングエコノミー協会様でそのガイドラインを策定して、それを遵守する事業者に対して認定を出す制度でございます。2017年6月より運用を開始しているところでございます。こうしたC to Cサービスの市場に取り組んでおられる事業者様はこうした官民連携した共同規制に基づき自主的な取組を進めているわけではありますが、ある程度クリティカルマスまで達しているような事業者様におかれましては、こちらの2つ目の丸でございます。こうした事業者様は、自主的に追加対策、こちらの上記のモデルガイドラインのみならず、追加的な対策を実施していることが確認できました。こちらにありますように、出品時の本人確認、AIによるパトロール、先ほど議論でも出てきましたエスクローや匿名配送、あるいは補償制度みたいなものも、適宜、各個別のビジネスの実態を踏まえて取り組んでいらっしゃる状況が確認することができました。ただ、そのときには、個社ごとの取組のみならず、こちらのCIPPという知的財産に関する防止協議会との連携、あるいは警察庁との連携を通じて盗品対策を実施するなど、各社ともその他分野の方との連携などもしっかり取り組んでいることは確認することができました。3つ目の丸なのですけれども、こちらの委員会では、そういった自主的な取組と合わせて、利用者の損害補てんのための保険の活用なども活用できるのではないかという御示唆も受けました。

7ページ、我々の小委員会でいただいた御意見について、こちらは簡単ながらではございますけれども、整理させていただいております。1つ目の丸でございますが、財・サービスの供給者が個人となる場合、各種消費者保護規制の適用が制限される場合があり得るため、C to C取引に関しては一定の配慮が必要となる可能性がございます。このため、プラットフォーマーの存在も念頭に置きつつ、消費者保護の在り方について検討する必要があるのではないか。2つ目の丸でございますが、そのC to C市場での供給者たるCは、事業継続性を前提にしないがゆえにレピュテーションリスクによる矯正が機能しない可能性があり得ます。このため、供給者による自主的な取組や安全性確保は十分に機能しない構造的な問題があることには留意が必要だと認識しています。3つ目の丸は、テクノロジーの活用についてでございます。プラットフォーマーによる柔軟な事業展開を可能とし、技術活用の余地を広めることは顧客利便の実現のみならず、技術を利活用した法益保護機能も期待できると感じておるところです。今後、ルール整備を考えるに際しては、ソフト・ハードのみならず、こういった技術活用を含むイノベーションを阻害しないような形で検討することが重要ではないかと、小委員会では議論しているところでございます。4つ目の丸は、他方、プラットフォーマーによる安全性確保のためのインセンティブ構造は、現状、一定程度機能しているものと評価できるのではないかと感じております。今後とも、自主的に市場の安全性を確保するための取組はしっかりやっていただく必要があると感じております。5つ目の丸は、先ほど申し上げました我々の問題意識として個人が供給者になる場合のときの論点については、収納代行サービスや配送サービスなどの中間事業者を活用する際のリスクは、いわゆるプラットフォーマーに起因するものではなくて、中間事業者と供給者との間に起きる問題ではないかという御指摘を受けておりますが、ビジネスの実態を踏まえ検討していきたいと思います。現状、この消費者保護の論点について中心に議論をしているところではございますけれども、プラットフォーマーについては、データの利活用についても御意見を頂戴しているところでございます。プラットフォーマーは情報が集積することに特徴があり、その情報の使われ方に関するルールを検証することが重要ではないか。あるいは、プラットフォーマー型ビジネスはネットワーク効果を有するため、多数のデータを確保することで寡占化傾向が強まることから、支配的地位に着目した検討も引き続き行うべきではないか。こうした御意見も踏まえて、今後とも、我々の小委員会では、データの利活用あるいは公平な競争環境といった論点についても、引き続き、議論をしていきたいと考えているところでございます。

後ろには「Appendix」としまして、C to Cのみならず様々な消費者相談の具体的な事例などについても整理しておりますので、補足資料として掲載させていただいております。

駆け足で大変申し訳ないのですけれども、現在の検討状況について、御説明させていただきました。以上でございます。

○中田座長 ありがとうございます。

非常に議論の内容が整理されていてよく分かったと思います。ただ、まだ始まったばかりとお聞きしておりますので、また機会を持って、ぜひ内容についてお教えいただけるとありがたいと思います。

時間が限られていますので、本当にわずかな質問の時間しかとることができないかもしれませんが、今の内容について御意見等がございましたら、御自由に御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。

片岡委員。

○片岡委員 私もこの会に参加して発表させていただいたのですけれども、1点気になっているのは、競争法的観点と消費者保護法的観点は相入れるようで入れないようなところもあったりして、そこのバランスがすごく重要だと思うのですが、この経産省さんでやられているものについては、どこら辺に主眼を置いてバランスをとっていかれようとしているのか、その点についてお伺いできればと思います。

○経済産業省商務・サービスグループ参事官室山本参事官 お答えが一言では難しい御質問を頂戴いたしました。御質問をありがとうございました。

おそらくこの小委員会の場でも同様の議論だったと思いますが、それぞれのプラットフォーム型のビジネス、この定義についても様々に捉え方も含めて議論があるわけでありますけれども、それぞれの事業者様が展開しておられる、また、それを発展させておられるビジネスモデルに応じて、どこを補強していかなければいけないかというのは、多分その時々によって変わってきているところなのではないかと思います。その意味では、一言でお答えすれば、両方のバランスをとっていくということだと思いますし、両方において事業者様が後ろ指を指されないということもそうですし、それがレピュテーションをお守りいただく上でコストも払って自主的な取組をしていただいている所以だと理解しておりますし、また、それこそが消費者の皆様が安心して更に進歩した便利なサービスを享受できることの基盤だと思いますので、両者に重点を置いて、両者はよくバランスをとってという、お答えにならないお答えで大変恐縮なのですけれども、そのような回答とさせていただきたいと思います。

○中田座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

早川座長代理。

○早川座長代理 私の子供がよく使っていまして、びっくりするのですけれども、自分の履いた古いサッカースパイクシューズを売るのですね。びっくりするのですけれども、売れるのです。そうすると、C to Cはおもしろいところがあるのは、従来であれば捨てられていたようなものが、ある種、みんなに共有されていって、お小遣い程度かもしれないけれども、少しのお金がやりとりされて、みんながハッピーになるようなところがあるのですが、多分そこに保護的なものを持つと、当然それは誰かがコストを払わなくてはいけないので、せっかく生まれた新しい市場が消えてしまうというところも一つの視点かと思ったのですけれども、それが御意見のところに出ていなかったものですから、その点はいかがでしょうか。

○経済産業省商務・サービスグループ参事官室山本参事官 御質問ありがとうございました。

当然、委員会においてその議論は出ておりまして、今まさに早川先生からおっしゃっていただいたみたいに、新しいマーケット、非常に世の中にとっていい商取引が起き得る、まさにプラットフォームだということがある一方で、それが一部の悪意のある方によって、全体マーケットそのもののダメージを受けるようなことがあってはいけないということで、悪意のある方をどのように見きわめるかというところについて、事業者様のある種の目つけのところの御苦労も含めて、お話はたくさんございました。

ただ、そういったところを乗り越えて、先ほどのパトロールということも一つありましたけれども、自主的な取組も非常に一生懸命やっておられるということ、また、盗品については、様々なアライアンスを組んで対応しているということの御紹介が小委員会ではなされているところでございます。

○中田座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

山本委員。

○山本委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。

簡単な質問なのですけれども、いわゆる差別の問題というのですかね。アメリカで、AirbnbやUberなどですと、利用者間でこの人種は嫌だとか、特にAirbnbなどでは特定の人種に対する宿泊拒否というかたちで随分問題になったと思うのですけれども、そういう利用者間で差別的な行為や取引について議論されているのでしょうか。日本だとなかなか人種の問題は出てこないと思うのですけれども、今後、オリンピック・パラリンピックや移民政策として外国の方を多く受け入れるようになると、外国人に対する差別とか、性的少数派に対する差別とか、特に宿泊系だとそういった問題も出てくるのかなと思うのです。その点、最初に「公正」ということが言葉として挙げられていたので、議論されているかどうかだけ教えていただければと。

○経済産業省商務・サービスグループ参事官室山本参事官 ありがとうございました。

今、具体的に事例を挙げていただいたような具体性を持った形では小委員会では突っ込んだ議論はなされておりませんけれども、ある種の倫理性、公正性の観点から含まれうる問題だと思いますので、今の論点もカバーされるものとして提示されているとは思います。

○中田座長 ありがとうございます。

今日の御報告で取り上げられたテーマは、我々の専門調査会でも関心を持って取り上げている問題もありましたし、これから取り上げようと思っている問題もありますし、構造的な分析も共通する部分がかなりあったのではないかと、感想ですけれども、私自身は思いましたので、今後ともできれば共通した議論をさせていただければありがたいと思います。


≪3.閉会≫

○中田座長 それでは、時間が来ましたので、今日はどうもありがとうございました。

(以上)