第21回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年11月6日(火)13:00~16:05

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、浦郷委員、後藤委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 池本委員長代理
【消費者庁】
高田政策立案総括審議官、廣瀬消費者制度課長、大森消費者制度課企画官、
消費者制度課担当者
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎

議事次第

  1. 開会
  2. 不利益取扱いから保護する通報者の範囲について
  3. 通報対象事実の範囲について
  4. 外部通報の保護要件等について
  5. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 それでは、定刻となりましたので、開始いたします。

本日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから第21回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

最初に、配付資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。不足がございましたら事務局までお願いいたします。


≪2.不利益取扱いから保護する通報者の範囲について≫

○山本座長 それでは、本日の議題に入ります。まず、不利益取扱いから保護する通報者の範囲につきまして、消費者庁から資料1の説明をお願いいたします。

○大森消費者制度課企画官 消費者庁でございます。御説明申し上げます。

お手元の資料、前回の専門調査会と同様に、最初に中間整理の概要、それから、関係団体や関係省庁からの御意見の御紹介という構成になっておりますけれども、今日はテーマが多くございますので、本日は時間の関係でそちらは省略させていただきまして、9ページからの検討及び結論の部分で主に御説明させていただきます。

9ページの「第4 検討及び結論」でございます。退職者を不利益取扱いから保護すること及び保護の内容ということでございます。

まず退職者につきましては、退職者を不利益取扱いから保護するということの是非につきましては、その立法時においても元使用者に退職金支給制度がある場合などについては、公益通報した場合の不利益取扱いとして退職金を減額することなどが考えられるとされておりまして、通報に伴いまして不利益な取扱いを受けるおそれがあることは認識されておりました。

立法時におきましては、退職前に通報して、退職後に不利益取扱いを受けた事案のみを想定して、退職時に通報した事案については法の対象から除外しておりました。他方で法の施行後、退職後に通報する事例や退職者が通報を理由として不利益取扱いを受けるという事例が生じることも踏まえまして、こちらの退職者について不利益取扱いから保護する必要があるとも考えられます。それが10ページにかけてでございます。

不利益取扱いについては退職金以外にも脅迫、損害賠償請求、再就職妨害といった事実上の不利益取扱いも想定されるところでございます。退職金の受領後においても、その返還が求められる場合も考えられるため、退職金を受領済みであるとか、制度がない会社の退職者においても、通報者に含める必要があると考えられるというところでございます。

次に、不利益取扱いから保護される退職者の範囲でございます。退職者の記憶、認識の信頼性の観点から、最長でも退職後1年以内の者に限定すべきという指摘もありました。もっとも退職金の返還請求その他、脅迫、損害賠償請求、再就職妨害といった不利益取扱いは、退職後1年経過した後でも行われることが想定されるということでございます。他方で事業者のサイドから退職者であることの確認が困難であるという指摘もありまして、一定の範囲を画するということも考えられます。その基準といたしましては、労働者名簿の保存期間を3年と定める労働基準法109条も参考になると考えられるところでございます。

10ページ、小括として、これを踏まえまして、退職者を不利益取扱いから保護するという考えについてどうか。不利益取扱いから保護される退職者の範囲についてはどのように考えるか。退職者の範囲を画する基準として、どのようなことが考えられるのか提案させていただいているところでございます。

続きまして11ページ、役員に移らせていただきます。役員等を不利益取扱いから保護することの是非についてでございます。

労働者に比べて事業者である法人に関して、重い善管注意義務を負い、自ら発見した通報対象事実を是正するという立場にあるという制約がありますことから、現行法では保護の対象外とされておりました。他方で法の制定後、役員等からの通報により法令違反の是正がなされている実態であるとか、役員等が通報を理由として不利益取扱いを受けた事例が明らかとなったため、役員等が安心して通報できる環境を醸成する必要性への認識が高まったということに鑑みまして、役員等を一定の要件下に置いて保護の対象とすることを明確にすることで、役員等が安心して通報することができるようにすることについては、立法時の考えにも反しないと言えると整理してございます。したがいまして、役員等について不利益取扱いから保護する必要があるとも考えられるとさせていただいております。

次に、保護の対象とする役員等の範囲でございますけれども、まず法人の設立根拠法において、法人の役員として挙げられている取締役、監査役、会計参与、理事長、理事、監事などは公益通報者に含めるということが考えられるわけでございます。また、持分会社等の業務執行役員や株式会社などの執行役、会計監査人につきましても、業務執行や監督を業務とすることから公益通報者に含めることが考えられるところでございます。

さらに、保護の内容についてでございますけれども、公益通報者に含められた者については、不利益取扱いが禁止されることが原則と考えられますが、役員等と法人との関係は信頼関係を基礎としておりまして、12ページにかけてでございますけれども、会社法上の役員等、特定の役員につきましては解任が自由とされ、解任の理由が不要とされているという例もあります。この理由につきましては、株主総会におきまして解任動議が可決された役員と会社との間には委任関係の前提となる信頼関係が欠如している。会社の所有者である株主が取締役を自由に解任できるのは、株式会社においては当然のことであるということが挙げられるということでございます。

そこで、公益通報を理由とする解任については、法においては違法と扱わず、その適法性の評価については一般法理に委ねるということが考えられるということでございます。

なお、解任につきましては、そもそも役員としての地位の喪失でございますけれども、これは株主総会の自由に委ねられておりまして、不利益取扱いとは位置付けられないわけでございますが、代表取締役からの役職の解職など地位の喪失を前提とせず、よって降職や降格に当たる行為については不利益取扱いとして位置付けるということで検討するということでございます。

他方で、会社法等の他の法令で正当な理由がない解任に対して損害賠償請求が予定されている場合においては、解任を違法としないまま公益通報理由の解任を正当な理由のない解任と位置付け、法定責任として損害賠償請求の対象とするということが考えられ、損害賠償請求できることとするということが考えられるということでございます。

以上を踏まえまして小括でございますけれども、役員を不利益取扱いから保護するとの考えについてはどうか。また、不利益取扱いから保護される役員の範囲、保護の内容等についてはどのように考えるかと提案させていただいております。

13ページの事業者についてでございます。事業者を不利益取扱いから保護することの是非につきましては、立法時に契約自由の原則からの慎重な意見もあり、意見の一致を見なかったことから保護の対象外とされておりました。他方で事業者が不利益を受けた場合でございますけれども、現状においては下請法などの個別法や一般法理において不利益取扱いから保護されているということがございます。法の制定後、事業者からの通報により法令違反の是正がなされている実態が明らかとなり、事業者が安心して通報できる環境を醸成するといった必要性の認識が高まったことに鑑みまして、事業者を一定の要件の下において保護の対象とすることを明確にすることで、事業者が安心して通報できるようにするということは立法時の考えにも反しないと考えられます。

一方で、事業者を不利益取扱いから保護することと契約自由との関係で検討しますと、取引の数量を減ずる行為あるいは取引を停止する行為について、不利益取扱いに該当するものとして禁止するということとしても、明示的な法的効果についてはあくまで当該行為が違法とされるということにとどまりまして、それを超えて従来の取引関係が継続されるか否かについては、個別事案における裁判所の判断に委ねられるということでございます。

また、事業者が不利益取扱いから保護されるのは、あくまで公益通報を理由とする場合に限定されておりまして、通報者が被る不利益が業種、事業間のカルチャー、経営環境等の合理的理由に基づく場合においては保護の対象とならない。通報制度を濫用・悪用する者も同様であるということですし、このような場合はそもそも不正の目的の通報となりまして、本法によって保護されないものと考えられるところでございます。

保護の対象となる事業者の範囲についてでございますけれども、こちら14ページ以降になってくるのですが、事業者について不利益取扱いから保護する必要があると考えられた場合であっても、被通報者が通報を行う事業者との関係で一定の優越する地位に立つと言えない場合においては、不利益取扱いのおそれが相対的に低くて、保護する必要性が相対的に低いと考え得るということでございまして、また、現実には事業規模が著しく異なる事案について不利益取扱いが行われているということでございますので、保護の対象については被通報者が通報を行う事業者との関係で、一定の優越する地位に立つという場合に限定する必要があるのではないかと考えております。

事業者間の優越性の基準につきましては、例えば下請法を掲げておりますけれども、対象となる取引の内容、これは製造委託などがあるのでございますが、これによって限定するとともに、中小企業基本法の資本金区分を参考にして、親会社と下請事業者を定義してございます。他方、公益通報者保護法につきましては法令違反の捕捉可能性という観点から、保護の対象とする労働者を雇用する事業者と被通報者の間の取引関係については限定していない。これは法2条1項第3号でございますけれども、このような趣旨を踏まえますと、法の対象となる取引の範囲は製造委託といった取引の内容によって限定することなく、資本金区分のみを参考にして取引先事業者の範囲を画することが妥当と考え得るのですけれども、そうなってまいりますと脚注にございますが、事業者の間に優劣関係が生じるといえるか否かについて、検討する必要があるとも考えられるという事情がございます。

以上を踏まえまして、事業者を不利益取扱いから保護することの是非あるいは保護される事業者の範囲については、どのように考えるかというようにさせていただいているところでございます。

なお、過去に役員・事業者であった者について15ページ以降の論点になりますけれども、どのように考えるかということもあわせて御議論いただければと考えております。

また、その他の通報者ということで学生など事例を3つ挙げてございますが、労働者、退職者、役員等、事業者以外の方については、保護必要性が高まっているとまでは現時点では把握できていないということがございまして、労働者、退職者、役員等、事業者以外の通報者を不利益取扱いから保護するかどうかにつきましては、さらなる事例の蓄積を待って検討する必要があるかどうかとしております。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、本日御欠席の亀井委員から資料が提出されておりますので、事務局から説明をお願いいたします。

○友行企画官 お手元の資料4を御覧いただけますでしょうか。亀井委員から3点ほどコメントをいただいておりまして、今回のテーマに係ります資料1、資料2、資料3それぞれについてコメントをいただいておりますけれども、事務局からはまとめて最初に御紹介させていただければと思います。

まず1点目でございますが、不利益取扱いから保護する通報者の範囲のところでございますけれども、取引先事業者を保護する通報者に含めることは反対ではありませんが、一定の注意が必要ではないかと考えますということでございます。

1ページ目の3段落目のところでございますけれども、内部通報制度を運用する組織をA社とし、その取引先事業者をB社とし、そしてA社の内部通報制度にA社の不正行為を通報するB社の従業員をCとした場合に、仮に何らかの不利益取扱いがCにもたらされ、その不利益取扱い行為の主体がBであり、Aが全く関与のない場合には、Cが不服を申し立てる相手としては通報先の内部通報制度を運用するA社を含むであろうことが自然でありますが、その一方でA社はB社が単独で行う不利益取扱い行為を制御することができない。こういったねじれによるトラブルを避けるためには、個人であるCがA社に通報するのではなく、CはまずB社の通常報告ラインもしくは内部通報制度に通報し、B社の役員がA社の内部通報制度に告発することを条件にするといったことも考えられるのではないかという御提案が1点目でございます。

次のところは、次の議題になりますけれども、通報対象事実の範囲のところでございまして、通報対象事実の範囲の限定を緩和する基本的な考え方に反対ではありませんが、一層の啓発が必要になるのではないかと考えますというところが御意見でございます。

2ページ目を御覧いただきますと、上から2行目のあたりからでございますが、日本企業のほとんどが不正の告発ではなく、個人的な不満を通報の窓口では受信しているという状況と推察いたします。単に通報対象事実の範囲が緩和されたという意義のみがメッセージとして拡散してしまうと、将来、運営されるほとんどの内部通報制度が大量の個人的な不満を受信してしまうのではないかということなどを懸念いたしますということでございます。

公益通報には個人的な不満の軽減や解消が含まれないことを明示的にメッセージとして社会に伝えるとともに、前回の専門調査会で林委員から御提案、御紹介のありましたイギリスなどの制度でございますProtectは、法律家が通報者に対してアドバイスをするセンターのようなものということで御紹介がございましたけれども、そういった窓口を設置して、自分が保護の対象となり得るのかという相談に対して、できる限り具体的な回答と対応をする機能を充実させることが必要ではないかというのが御意見の2つ目でございます。

3つ目でございますけれども、外部通報の保護要件のところで御議論いただく内容でございますが、通報を裏付ける資料の収集行為等の折り合いのつけ方について提案があるということでございまして、まず1つ大企業につきましては、2、3段落目の「例えば」のところからでございますけれども、内部通報制度の認証制度において、通報者保護が客観的かつ合理的に保証されているとみなされている事業者に対しては、1号通報を経ずして2号あるいは3号通報によって情報を外部に持ち出すことを制限するという考え方はいかがかというのが1つ。

それから、中小企業に対しましては、認証を得る企業が少ないということも予想されますけれども、18回の公益通報者保護専門調査会のときに提出いただきました資料の中で、中小企業におきましては法的義務を課すのではなく、行政機関への通報体制を充実させることが現実的かつ効率的であるといった御意見もあったことから、3ページ目にまいりますが、通報を裏付ける資料を収集した上で2号通報が行われることに対しては、それほど強い抵抗感をお感じになられてはいないのではないかと推測しましたという御意見でございます。

以上でございます。

○山本座長 続きまして、林委員からEU等における公益通報者保護制度の状況につきまして、御説明をお願いいたします。

○林委員 お手元の資料5を御覧ください。EU指令についてですけれども、労働者、退職者のみならず、自営業者、株主、役員、ボランティア、研修生、請負業者・下請業者などなど含めて保護の対象とされています。また、退職者の保護について期間制限を設けるのかということについて質問をしたところ、なぜ期間制限をする必要があるのか。仮に退職後何年と規定した場合に、期間経過後に不利益を与えることになりかねないではないか。期間制限を設ける意味はないという回答をいただきました。

次に、英国公益開示法ですけれども、日本の公益通報者保護法制定のモデルにされた法律なのですが、現職の被用者に限定することなくワーカーという概念を用いて、より広く通報者を定義しています。この中には被用者はもちろんのこと、役員、請負人、研修生などが含まれることが明記されています。また、それ以外の者であっても英国法制定後の労働関係や社会の変化に伴い、法に明記されていない契約形態や労働形態などであっても、労務提供の実態に即して通報者の保護が図られています。これらの背景には被用者であるかどうかが重要なのではなく、公益に資する通報は広く保護すべきであるという考えがあります。

英国法においても退職後の期間制限は設けられていません。

以上です。

○山本座長 それでは、全体の意見交換を行います。御意見のある方は御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 通報者の範囲ということで、まず退職者は、退職後に通報の事例がある、また、不利益を受けた事例があるということで保護すべきだと思います。

範囲に関しては、今もEUの事例がありましたけれども、期間を限定する必要性はないと思います。期間を限定する合理的な理由がないのではないか。事業者のほうが本当に自分たちの会社の退職者かどうかが分からないという場合もあると思いますが、そういう場合はケース・バイ・ケースで対応ということかなと思いますので、期間を限定する必要はないと思っております。

役員については、役員による通報事例、不利益を受けた事例があるので、役員も保護すべきだと思います。

事業者についてですけれども、これは前回のときに随分意見が割れたのではないかと認識しておりますが、やはりここも保護するべきだと思います。契約自由の原則から慎重にという意見もありましたけれども、契約自由だからこそ取引先に対して規模の小さい事業者とか下請の事業者などは、とにかくふだんから何らかの理由でもし契約解除になってしまうと、自分の会社は立ち行かなくなってしまうという恐れを持っていると思います。そうなるとたとえ不正を知っても保護の規定がなければ、なかなかそれを正す行動を起こすことはできないのではないかと思われます。事業者に関しても保護するべきと思います。

その他の通報者についてというのもありましたが、私はこの法律が内部通報ではなく公益通報という名称であることから考えますと、本来ならば何人でも通報者は不利益取扱いから保護されるべきと思いますので、ここについては引き続き事例を集めて、今後も検討していくべきかと思っております。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。中村委員、お願いします。

○中村委員 まず退職者につきましては、一般的に退職者を全て対象としないということではないのですが、そもそも以前から申し上げているとおり、退職者に対する不利益というものについてどのようなものがあるかということについて、私は一般的にはそんなにないと思っておりまして、少なくとも例えば退職金を受領済みの退職者については、保護に対象に含める必要はないのではないかと感じております。

再就職妨害という話も出てきておりますが、それは本当にちゃんとした事例としてあるのかどうかというところについても疑問を感じております。ということで、退職者を含めるとしても不利益取扱いの範囲といいますか、どういうものがあるのかというのは、もう一段の整理が必要なのではないかと考えているところであります。

なお、脅迫というのもありますという話もありますけれども、実際にどういう内容があったのかというところも不確かでありますし、刑法に当たるような脅迫ということであれば、刑事事案として取り扱うべきではないかと感じるところであります。

通報対象事実については、退職者を含めた場合に現役労働者であったときに生じた法令違反に限ることも留意をすべきではないかと思います。

次に、対象とする退職者の範囲でございますけれども、これも従前に申し上げたところでありますが、1年程度の退職者に限定すべきではないかと考えます。これも先ほど申し上げたとおりで不利益の取扱いということに関しては、退職金を受け取ってしまった後のことについてはそれほどないのではないかということと、実際問題として退職後、時間がたつと、特に通報窓口に通報をいただいた場合に、その方がどこに何年前にいましたといっても、だんだん分からなくなる。その調査を要することになりまして、それを調査するというといろいろな情報を聞きに行かなければいけないというようなことがあって、通報者の情報がかえって漏えいするというようなことも起こってくる話でありますので、そういった意味で年限というのは設けるべきだと思いますし、基本的には1年と考えますが、御提案いただいているように3年ということも一応考えられるかと思います。

次に役員なのですけれども、役員等を保護対象に含めることについては特に反対はいたしません。対象とする役員等の範囲でございますけれども、会社法上の役員に限定するというところで考えてはいかがかと思います。株式会社の執行役であったり、持ち株会社の業務執行役員等というのも指摘がありますけれども、役員に限定するということを1段の案としながら、もしここまでを入れるとしても少なくとも会計監査人につきましては金商法上、特別な不正を見つけた場合の対応についての義務が別途設けられておりますので、そこはそこに従って処理をすべきであると思いますので、会計監査人につきましては少なくとも除外をすべきと考えます。

役員の場合の保護の内容につきましては、公益通報を理由とする解任は違法としないが、損害賠償請求の対象とするという消費者庁の案に賛成いたします。

取引先の事業者についてでございますけれども、ここにつきましては反対とさせていただきたいと思います。不利益取扱いが公益通報を理由としているかどうかということは、労働者のケースであっても判断が難しい論点でございますが、さまざまな契約が存在する事業者間の契約では、さらに難しいと考えるのが自然ではないかと思います。

従属するというか、先ほど例えばEUの例で御紹介いただいたものとしては、従業員、労働者に近いような形の者が例として挙げられていたかと思いますけれども、企業で取引先というのはありとあらゆる取引の相手方ということが含まれてまいりますので、そうするとそういうものが全て含まれるのが妥当なのかというのは、疑念があるところであります。

例えば現状、従業員の通報があった場合でありましても、現実的には通報がまず公益通報ということではなく、個人の御不満ということであったとしても、企業としては不利益取扱いをしたととられないように、その後、しばらく取扱いに注意するということを現実的には行っていると思うのですが、同じことが取引先にも起こるということになってくるかと思いますので、そうするとある意味では取引先間での不公平が生じるということも考えられると思います。

事業者を保護の対象とすることにつきましては、そもそも反対ということでありますので、あとはその前提ではありますが、念のためということで、対象とする事業者の範囲につきまして下請法などを参考にして資本金の基準でということがありますけれども、下請法というのは先ほど御紹介もありましたように製造委託でありましたり、いろいろな類型による中身につきまして特定の取引の特定の行為を禁じるという内容の法令でございまして、必ずしも資本金の額に属しているからどんな契約体系であっても上下関係にあるということではないと考えます。

優越的地位の濫用の場合には、これは下請法のある意味では上位概念となるわけですけれども、その場合には公正取引委員会のガイドライン等を見ていただいても、必ずしも資本金の大きさだけではなく、取引依存度をさまざま勘案した上で判断することになっているかと思いますし、例えばITのシステムを構築する業者で資本金が小さい会社でも、お願いする会社のほうが取引の関係においては力がないというようなことも現実問題としてあろうかと思います。そういった意味で仮に万が一、事業者を入れるとしても、資本金を基準とすることには少し無理があるのでなはいかと考えるところであります。

また、その他ということで過去に役員、事業者であった者ということにつきましては、まずは現在の役員、事業者というところから着手をして、その運用を見て検討すべきではないかと考えるところであります。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

最初の退職者の件で、9ページから10ページにある脅迫とか再就職妨害等々に関しては、どういうものがあるのかという御質問がありまして、退職金を受領する前のものに限ってという御意見だったかと思いますけれども、この点について何か御説明はございますか。例えば脅迫等は現行法上もコンメンタール等に挙がっているのですね。

○消費者制度課担当者 現行法の労働者に対して禁止されている不利益取扱いについては、御指摘のような精神的苦痛を与える事実上の不利益取扱いを広く含んでいるところでございます。

○山本座長 それから、退職金を受領したらもう保護の対象から除外してよいのではないかという御指摘に対して、10ページでは、例えば東京地裁の判決の中で返還を求める就業規則が存在するという指摘があるのですけれども、この退職金の受領後の話、あるいは退職者に関する再就職妨害等々について、立法事実の点から疑問を呈されたのですが、その点についてはいかがですか。

○消費者制度課担当者 確かに退職金を受領済みであり、全く不支給・返還請求のおそれもないというケース、退職金は就業規則に基づくものでございますので、就業規則にそういった不支給・返還事由などが全く記載されていないというケースであれば、その退職金に関する不利益取扱いはないと考えられますが、他方で、本法は、あくまで不利益取扱いを禁止するものでございますので、そもそも不利益取扱いが存在しないケースについては、本法の適用の対象から外れると考えられます。

実際に退職金に関してどのような不利益取扱いが想定されるかと申しますと、退職金の存否については、就業規則の定め方によるところ、就業規則において、退職金の返還をする事由を定めているケースもございまして、退職後の通報がそういった事由に該当するとして、それを理由に退職金の返還を請求されるケースも想定されないわけではございませんので、そのような不利益取扱いも想定されると考えているところでございます。

○大森消費者制度課企画官 その辺につきましては5ページに28年の労働者調査がございまして、先ほど説明を省略してしまったのですけれども、そういった例があることは明らかで、この辺を根拠にしているところでございます。

○山本座長 こういったことがあるのですけれども、中村委員の御意見はどういう点に。

○中村委員 まず事例1のケースにおいては、法令がないので損害賠償が認められたということなのでしょうか。

○消費者制度課担当者 こちらの事例は、結論としては損害賠償請求が棄却されております。裁判所の判断の中で通報の正当性が検討されており、目的、手段等の観点から通報が正当なものであるとして、損害賠償請求を棄却したものでございます。

○中村委員 私は、そういう損害賠償について、私は普通の会社は裁判上の請求をしないと思いますし、退職金の返還請求であっても裁判上、請求をされたとすれば、それが公益通報を理由とするということであれば、それは認められないと思いますので、新たに公益通報の仕組みの中に入れることについては、必要がないのではないかと考えるところです。

以上です。

○山本座長 もちろんノーマルな、普通の会社であればやらないわけですよね。ただ、そういうことをやるところが出てこないわけではないからこそ、こういう規定を入れるわけで、そこのところは議論がいささかかみ合っていない感じもするのですが、そのほかはいかがでしょうか。あと中村委員が御指摘の点は、原案に賛成という点もあれば、反対という点もございましたけれども、さらにいかがでしょうか。ほかの御意見はございますか。

それでは、水町委員、林委員の順にお願いします。

○水町委員 退職者のことですけれども、例えば退職金を退職と同時に一時金で全部払っているというところであれば、金銭のやりとり関係はそれで終了するかもしれませんが、退職金自身を分割して支払っている場合とか、さらには企業年金という形態で払っている場合もあり、その場合は退職して3年以降もそういう利益の供与関係が続いていることは十分考えられます。

あと、退職金のやりとりとは別に、前職照会ということが日本の慣行では広く行われていまして、前の会社をやめたら何でやめたのということを前の会社に電話するときに、いろいろなことを言われるということがかなり不利益になるということがありますので、これはかなり広く行われていて、それに対して何らかの公益通報者保護という観点からケアをすることが必要でないか。その前職照会はいつ来るかというのは、次の応募のタイミングにもよるので、退職してすぐ来るか、一定期間あいてから来るかは分からないと思います。

記録をきちんと保管しておく義務を事業主に課すために、労基法上の名簿保存義務とあわせて3年間という考え方も1つあり得ますが、他方では先ほど言ったように退職金の分割とか企業年金を供与しているという場合には、その限りでは記録を残しているわけなので、そういう利益関係が続いている限りは3年でぶちっと切ってしまうと、3年たったらすぐ企業年金の支給をやめたということも想定され得るかもしれないので、そこら辺は実態に応じた対応が必要かなと思います。

○山本座長 では、林委員、お願いします。

○林委員 今ほとんどおっしゃっていただいたので、再就職の妨害というのは事実上に前、何でやめたのかということをお聞きになるというのがありまして、そこで不利益な処分を受けてしまうことがありますし、就職すらできないという状況になりますので、かなりの不利益だと思っています。

そもそも論になりますけれども、この制度自体が公益に資する通報を保護しようという制度であるとするのであれば、それによってコンプライアンスが保たれ、消費者の保護を図れるということを考えるに、通報者として保護すべき者というのは労働者に限定する必要はないのではないか。取引先であっても保護する必要があると思っております。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 退職者のところで退職者に対する不利益、一般的にはないということを中村委員はおっしゃられましたけれども、でもやはりこうやって調べていくと事例が幾つか出てくる。一部の人ではあるけれども、そういう人がいるというところで、そこを救わなければいけない、保護しなければいけないということはあると思いますので、ここは通報者も保護すべきだと思いますし、期間についてですけれども、事例が少ないのではないかとおっしゃるのだったら、範囲を特に決めなくても全然それは問題にはならないのではないかと思います。

○山本座長 それでは、お願いします。

○中村委員 今の部分でございますけれども、亀井委員も指摘をされておりますが、現実には企業の内部通報の窓口には公益通報には該当しない個人の不満であったり、さまざまな内容が寄せられているという現実がございます。それが仮に今、亀井委員から御指摘があるように10倍というようなことであるとすると、退職者にそれを開放した場合には、それがさらに10倍増えることになります。また、逆に現在の従業員であれば、現状の職務の中で解決していくことができるわけですけれども、過去のものについては、その当時の例えば職場の不満というようなことですと、今から解決のしようもないということで、非常にやりにくい事例が増えるというのが現実問題として現場の感触としては感じております。ですので、それが結果的にはコストにつながっていくということでありますので、そことのバランスをどう考えるかということではないかと思います。

以上です。

○山本座長 林委員、お願いします。

○林委員 事業者の中で内部通報窓口として扱っておられる案件は、そういう情勢なのかとは思いますけれども、私が弁護士会で相談を受けている案件では、相談のある電話のうち3割ぐらいは公益通報に係るものであり、7割は一般の法律相談です。

その2、3割ある公益通報の中で深刻なものも1割強はあると思っておりまして、今おっしゃったような些末な不平不満の相談というのは非常に少ないです。それだけ内部には言いにくい制度に今なっているのではないかと思います。ですので現状ある公益通報の本当の大きなところでどれだけ公益通報として通報すべきものがあるのかというのは、内部通報の窓口だけでは計り知れないものがあるのではないかと、私は日頃から思っております。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかに、それではお願いします。

○柿崎座長代理 退職者については私も含めるべきだと思います。やはり事業体の中では、現役でいる場合に受ける有形、無形のプレッシャーというものがあって、なかなか通報するというところまで勇気が持てないという状況があると思いますが、退職して初めて、ある意味フリーな立場でものが言えると思います。ただ、その間それでも年金とか今、お話があったような不利益を受ける可能性はあると思いますので、その点、公益性に貢献するということをこの法律の主眼と考えると、それには退職者であっても、最も不正に近かった役員であったり、現場でそれを見てきた人たちを入れていかないと片手落ちになると思いますし、アメリカの例を申しますと、実際に、退職された方が公益性に貢献する場合だけとは言いませんけれども、通報されることが多くございますので、EUでも別に退職者に制限をかけていないということからも、そこは全部、法の趣旨から考えて入れることが妥当なのでなはいかと思います。

○山本座長 先ほど中村委員から、この点は限定的に考えるべきではないかという御意見がございましたけれども、この点はいかがですか。役員に関して、専門家ですので。

○柿崎座長代理 限定というのは。

先ほどの御意見ですと、11ページの(2)の「まず」というところにずっと挙がっていますね。ここは中村委員もここまでは入れるというお考えで、ただ、その続きの部分「また、持分会社等の業務執行社員や」等々の部分について反対をされて、これが第1段階の反対で、第2段階として少なくとも会計監査人は除くべきだという御意見だったでしょうか。

○中村委員 そうです。

○柿崎座長代理 まず第1点の会社法上の役員以外についても入れるべきか否かの点に関しましては、昨今、株式会社という企業体の入れ物以外にも、ツールというか、ビークルというか、現代的な企業社会を動かしていく上では多くの考えられる組織形態があります。ですから、その点に関して会社法の役員等に準ずるものであれば、そこについてはカバーしていかないと株式会社法だけでは漏れがあるのでなはいかと思いますので、ここは準ずるものという点で入れるべきだと思います。ですから事務局案に賛成しております。

○山本座長 特に会計監査人は除くべきだと。

○柿崎座長代理 確かに金商法では、公認会計士が企業の不正を発見した場合、それは財務諸表の監査のプロセスでたまたまというか、不正を発見したときには、まず一旦、事業会社のほうに報告して、それでも事業会社のほうがきちんとした対応をとってくれない場合には、金融庁に通報するというような建付けがなされております。

ただ、そちらでやればいいというのは金商法マターに関してはそうかもしれませんが、ここで金融庁に通報が求められている内容は、特に財務報告に関してその適正性に影響がある不正となりますので、法目的が違ってまいります。財務報告の適正性には影響はないけれども、公益性の観点から通報が必要な場合がございますので、本制度に関しては公益通報の範囲の対象として公認会計士は含めるべきだと思います。

海外の例をみましても、公認会計士や内部監査人など、まさに専門性のある方が不正を見抜く、不正の兆候を発見する確率というか可能性は高うございますので、そういう方々は、一定の条件はございますが、内部通報者の範囲から除外するのではなく、むしろ積極的に通報対象者として考えていくという方向にあるのだろうと思っております。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、順番に今の御意見をまとめながら確認もしていきたいと思いますが、まず退職者の扱いです。これに関しましては、およそ含めるべきでないという御意見はなかったと伺いました。ただ、退職者の範囲に関して御議論があったのですけれども、一方ではいろいろな事案等から見ても事務局が挙げているような脅迫であるとか、とりわけ再就職妨害であるとか、退職金に関しても一時金の場合もあれば、そうでない場合もあるといったようなもろもろのことを考えますと、特にこの段階で制限をするべきではないのではないかという御意見が一方にはあり、他方では中村委員の御意見といたしまして、退職金受領後は除くべきだという御意見ですか。先ほどちょっと話がありました、例えば年金の形になっている場合はどのようになるのでしょうか。

○中村委員 それは退職金受領後ということなので、残っている間は可能性はあるのかなと思いますが、先ほどの企業年金等になったときに、それは主体は会社ではないのではないかという感じもいたしますが、そこも含めて何か払うものが残っているところは、会社からの不利益の可能性はあるのかなと思います。

○山本座長 それから、3年という限定に関して先ほど御指摘がありましたけれども、そういった継続的な関係があれば、3年を過ぎても当然、誰が退職者か分かっているはずではないか。そこの限定は少し考えたほうがいいのではないかということでしょうか。そことの関係はいかがですか。

○中村委員 会社としてどこかに情報があるという意味においては、時間がたっても多くの会社では記録が残っていることは多いと思うのですけれども、仮に期限が全くなかったとした場合に、どこの部署にいた人かということについて探索しなければ分からないというような状況になるのかなと。そうするとそういうことの調査依頼を出したりということで情報も広まっていくこともありまして、時間がたつと調査も難しくなるので、一定の年限ということは切るほうがふさわしいのではないかと思っております。

○山本座長 どうぞ。

○後藤委員 今、中村委員がおっしゃったことについての補足になります。確かに水町先生が言われたように、年金を分割して支払うということは一般的に行われているのですが、その場合は、我々の小規模な企業でも中堅どころでも、自分の会社で管理するということはほとんど行われていないのです。例えば、保険会社等に管理を任せていまして、第三者機関が年金を支給するという形になるので、そこに企業側から支給金額をどうこうするということは、ほとんどないと理解しておりまして、それが一般的だと思っております。

○山本座長 何かその点ございますか。

○水町委員 企業年金の支給の仕方は法制との関係でいろいろなタイプがありまして、自社年金というのもあって、自分の会社で年金を支給している形態もありますし、大企業も含めて考えるとその形態は様々です。

○後藤委員 今の自社年金の場合も、コスト的に見合わないのでほとんどの会社は第三者機関に運用を任せており、支払い事務もお任せするというのが一般的でして、年金制度を持っていても、それを自社で運用し支給することは、ほとんど一般的には行われていないと我々は理解しております。

○春田委員 今の退職者のところなのですけれども、労働者の立場からすると、労働者であった後、退職したことを踏まえると、退職金が支払われた、または年金で受け取っているということが、それが保護されるのかどうかの1つの基準になるというのが、なかなか私は理解するのが難しいと思っています。

○山本座長 ありがとうございます。

ということですので、9ページから10ページにかけての1(1)の部分に関しては、一方でいろいろな不利益取扱いの可能性がある。一つ一つこういう可能性があるかないかということを考えた上で通報することになると今、春田委員の言われたような形で通報が萎縮することから、ここについては特に限定をしないという意見が一方にありました。

他方で、退職金受領が長い期間分割してということであれば、その間ということかと思いますけれども、そういう形で退職金の受領前後で切るべきだという御意見がありました。

(2)に関しましては、中村委員は事務局が今、定義をしている3年でよろしいのでないかという御意見でしたけれども、他方では不利益取扱いの可能性という点からは3年に限らないので、その点はもう少し検討すべきではないかという御意見があったという認識でよろしいでしょうか。

ということでございまして、具体的な期間の切り方に関して、多々御意見がございました。事務局案の3年というのも労基法109条から持ってきたものですけれども、なお法制的に他法令との関係等々さらに精査する必要があろうかと思いますので、ここでは一応そのような意見がいろいろ出されたということで、さらに法制的にも検討を進めていただきたいと思います。

役員に関しては、これもおよそ除くべきだという御意見はなかったと承りました。ただ、細かいどこまで含めるかという点に関しましては、今、中村委員と柿崎座長代理との間で若干の議論がございました。

今、柿崎座長代理から指摘をされましたように、実は会社だけではなくいろいろな法人形態が考えられまして、そういたしますといろいろな役員等が考えられるということがありますので、この点はなお細かく精査をしていく必要があろうと思います。ですから引き続きこの点は、さらにさまざまな法人形態も頭に入れた上で検討を進めるということではないかと思います。この場で一つ一つのものについて全部逐一まとめるのはなかなかしんどいかと思いますけれども、なお事務局でその点は精査していただきたいと思います。ここでは、先ほどのような2つの御意見があったということです。

あと、効果に関しまして12ページにあります解任につきましては、いろいろな御意見があり得るところであると思います。前の消費者庁のもとにおける検討会においても、そこまで含めるべきだという意見も記述されていたと思いますが、他方でこれは会社法の解釈の問題に関わってきますし、役所で言えば法務省の所掌事項にも関わってくるところでございますので、この点についてはここではなお慎重に検討する必要があるという事務局案でよろしいですか。効果として主に考えるのは、したがって損害賠償請求ということになろうかと思います。

13ページ以下の事業者に関しては、御意見が分かれたところでございまして、一方では賛成という意見があり、一方には反対という御意見があったかと思います。特に含めるべきだという御意見をお持ちの方で、具体的にここまで含めるべきだという御提案、御意見はございますか。事務局の今の案では資本金区分を基準に考えることになっています。何か補足はございますか。よろしいですか。

水町委員、お願いします。

○水町委員 これはどこまで具体的に明確にする必要が法令上あるのかというところと関わっているのだと思います。最終的に制度的に担保するのに、裁判所の判決で不利益取扱いを禁止するという裁判所の判断と、あと今回、行政上の措置をつけようというのであれば、行政上の措置の対象になるかどうかという判断で、前者だけであれば一般的な定義をして、裁判所で実態に応じて個別に判断するということで可能だと思います。後者の行政上の措置であっても、必ず客観的に○か×かをつけないと行政上の措置が講じられていないというわけではないので、どこら辺まで明確にするか。数字で明確に線引きができるようにするのか、それとも法の趣旨に沿った一般的な定義をしておいて、それに基づいて個別事案に応じた判断を行政上の措置でもある程度やっていくという覚悟を決めるのかというところだと思います。

やり方としては、ここの例として例えば資本金区分でなるべく明確性を増す形で、特に今回は行政上の措置も考えているので、行政上の措置に乗るかどうかという判断の入り口で悩まなくていいようにするということも考えられるかと思いますが、例えば労働者がどうかというところでも、労働基準法上の労働者性と労働組合法上の労働者性があって、労働組合法上の労働者性というのは経済的従属性も考慮して判断するということが行われ、それに基づく行政上の取扱いもなされていますので、そういうのも参考になるかと思います。

ただ、労組法上の労働者性となるとやや抽象性が増して、実態に応じた判断をするということになっていきます。ヨーロッパでは、特にイギリスなんかはエンプロイーではなくてワーカーでやると決めて、ワーカーという定義のみで制度を動かしているので、そういう選択も制度としてはあり得ると思いますが、日本で行政上の措置を入れるときにどれくらい明確にしておくべきかということとの兼ね合いでどう定義するか。なるべく法の趣旨から外れないような形で定義をすることが望ましいと私は思います。

○山本座長 ありがとうございます。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 具体的にどこまでというのは私は分からないのですけれども、事業者が行った公益通報について、私たち国民が一番すぐに思い浮かべるのは西宮冷蔵の例だと思います。あれは大手の事業者が法令違反をしていたということで、多分その事業者の取引先、多くの取引先は知っていたと思うのです。でもやはりそうやって不正を告発できなくて、唯一この西宮冷蔵の人が通報したということで、結局すごく大変な目に遭ってしまった。本当に正直者が損をするというような状態だと思います。こういう事例をどう考えるか、皆さんにも考えていただきたいと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

ということでして、この点に関しましては賛成の御意見が一方にはあり、ただ、定義に関しましては今の水町委員の御指摘は、もう少し一般的に定めると。イギリスの例とかEUの指令案でもそこまで細かい規定は置いていないと思いますので、そういった可能性も含めて考えるべきではないかという御意見だったかと思います。ただ、これも我が国で特に行政措置を入れる際に、どの程度の明確な規定が必要かという点も考慮に入れた上で、さらに検討すべきではないかという御意見でございました。他方では中村委員は反対という御意見を言われたかと思います。ということで、ここは若干御意見が分かれた点かと思います。

15ページの4の過去という点に関しましては、ここは特段、強い御意見はなかったのではないかと思います。恐らくむしろ役員、事業者を含めるか含めないか、どこまで含めるかという、こちらのほうが主にはまず検討しなくてはいけない課題になろうかと思いますので、ここについては現段階ではそこまで強い御意見はなかったと伺いました。

最後の5のその他の通報者については、浦郷委員から将来的に検討を深める必要があるのではないかと。今後の推移を見て検討する必要があるのではないかということでしたけれども、現段階ではこの事務局案でよろしいのではないかという御意見であったと伺いました。

というところまでで資料1に関しては終わることにいたします。

≪3.通報対象事実の範囲について≫

○山本座長 続きまして、資料2「通報対象事実の範囲について」ですが、説明をお願いいたします。

○大森消費者制度課企画官 続けて説明させていただきます。

こちらもお時間の関係がございますので、構造的には同じで中間整理の概要、関係団体・各省庁からの意見、それから、事実関係の御紹介というところでございますけれども、御説明は8ページの検討及び結論というところでさせていただきたいと存じます。

まず刑事罰の担保による限定でございますけれども、最終的に刑事罰の対象とならない規制違反行為を追加することについてでございます。立法時においては、最終的に刑罰の対象とならない規制違反行為につきましては、手続上の義務違反などの軽微な違反行為であるということで、本制度の対象とはしないとされておりました。一方で最終的に刑罰の対象とならない規制違反行為につきましても、例えば4ページの事例1を見ていただけると思うのですけれども、影響などもありまして、通報を促す必要性が高まっているということが考えられます。また、規制違反行為につきましては一定の行為規範に反する行為であることから、民事法に反する行為や不当な行為とは違って、その範囲が明確であるというふうに考えられております。

他方で、行政指導のみ対象となっている規制違反行為につきましては、こちらは単に例えば「法律の施行に関し必要となると認めるときには、助言・指導することができる」というように行政指導の根拠文において規制違反行為が特定されていないものがございます。このような形で規定されている場合、どの行為が規制違反行為であるのか必ずしも明確と言えないということが考えられます。

この点につきましては、中間整理に対する御意見にも範囲が広過ぎるという懸念を示すものもあり、関係省庁からも行政期間における通報が増加するといった通報対応に係る負担が増加するということの懸念が出ております。この点は後ほど再度、御説明申し上げます。

なお、これは9ページにかけてなのですけれども、民事上の違反行為にとどまる行為の中にも刑罰の対象となる行為と比較して、より是正や抑止の必要が高いものが含まれるという御指摘もあるのですが、いかなる場合に民事法に違反するのかということについては、必ずしも明確ではなくて、法の趣旨に直ちに適合するものではないと考えられるということでございます。

これを踏まえまして小括でございますけれども、以上を踏まえまして最終的に刑事罰の対象とならない規制違反行為についても、新たな通報対象事実の範囲に加えることの是非についてどのように考えるかということにしております。例えばこれは国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に係る法律の規定に基づく行政罰の対象となる規制違反の事実、あるいは行政処分の対象となる規制の違反の事実、さらには行政指導の対象となる規制違反の行為の事実などについて追加することについて、どうかというふうにさせていただいております。

このうち行政指導を入れる場合におきましては、明確性を担保するために当該行為に対する行政指導の根拠条文において、規制違反行為が特定されているもの等、一定の明確性のある規制違反行為に限定することについてどうかというふうにさせていただいております。

同じ9ページで、法目的による限定を解除する必要性についてどうかということでございます。立法時においては法の対象となる法律につきまして、特定目的の法律に限定しておったのですけれども、これにつきましても法の施行後、法の対象となる法律が増加して、通報者がその確認をしなければならないということで、適切な通報が阻害される懸念が生じているというようなことがございます。また、特定目的の法律違反と、それ以外の法律の違反が同時に問題となる事例もあるということ。したがいまして、特定目的の法律以外の法律も対象としなければ、特定目的の法律も遵守が図られることが困難であるということも考えられまして、特定目的の法律の遵守を図るために、その他の法律も対象とする必要が高まっていると考えられるということでございます。

また、行政手続法36条の3というところがございまして、特定目的以外の法律の申し出についても行政機関の調査の対象となっているという背景事情がございます。このような事情からしますと、法の対象となる法律を特定目的の法律に限定しないということも考え得るわけでございます。

ただ、一方で解除することの懸念としまして、以下、申し上げるのであれば10ページにかけてなのですけれども、仮に法の対象となる法律を特定目的の法律に限定しないとしても、例えば国の安全保障に関わり情報が外部に開示されることで、多くの国民の生命、身体に危険を及ぼす分野につきましては、安易に情報が外部に流出することを防止する必要があると考え得るということでございまして、したがいまして、仮に特定目的の法律に限定しないとしても、一定分野の法律については対象としないことが必要と考えられるというのがまず1点目でございます。

2点目で、行政機関の負担に関する懸念でございます。刑事罰による担保による限定を解除した場合に、法目的による限定を外した場合につきましては、これは関係省庁からも意見があったのですけれども、通報が増加するなど、通報対応に関わる行政機関の負担が増加することも考え得るということがございまして、このような懸念に対してどのように考えるのかという配慮も検討する必要があるということがございます。

これを踏まえまして小括でございますけれども、法の対象となる法律を特定目的の法律に限定しないことの是非についてどのように考えるか。また、法の対象となる法律を特定の目的に限定しないということとしても、対象外の分野を設けるかどうか、対象外の分野を設けるのであればどのような分野を対象外とするのか、についてどのように考えるのかということで、提案させていただいてございます。

3番目の条例についてでございますけれども、これにつきましては通報を促す必要性がないとは考えられないということでございますが、一方で各地方公共団体につきましては、公益通報保護条例を制定することにより、条例違反の通報を理由とする不利益取扱いを禁止することが可能であるということであるのですけれども、これをあえて地方自治体に委ねずに、法において一律に条例に違反する行為を通報対象事実とする必要性があるのか、あるいは明確性を担保できるのか、条例を定める地方公共団体に与える影響についてどのようなものかについて、さらに検討することが必要であると考えられますので、現時点では通報対象事実の範囲に条例違反する行為を追加することについては、引き続きの検討課題とするということでどうかとさせていただいております。

また、規定の方式についてでございます。先ほど御説明しました、仮に法の対象となる法律を特定目的の法律に限定しない場合においては列挙方式を採用する必要はなく、これにつきましては除くべき一定分野の法律について法の対象外とするということであれば、その対象外の法律を列挙することになると考えるところでございます。

他方で、特定目的に限定するということを維持する場合には、現在の規定の方式を維持するかということが問題になりますけれども、その場合には事業者の予見可能性に反しないか、明確性を求める法の趣旨に合うかどうかを考える必要がございます。

説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、この論点に関しましても、林委員からEU等の状況について御説明をお願いいたします。

○林委員 資料を御覧ください。

EU指令案についてですけれども、特定分野におけるEU法及び政策の執行を強化する目的で、以下の違法行為または法の濫用を通報する者の保護について共通の最低基準を定めるものであるとして、具体的に次のとおりに定めています。公共調達、金融サービスなどマル10まであるもの。その他、ちょっと省略しておりますけれども、そういうものです。

このようにEU指令案では、刑事罰の担保により通報対象事実を限定していないばかりか、法令違反行為にすら限定されておらず、公益を守ることを優先価値とする考えが貫かれています。したがって、例えば日本の条例のようなローカルな法規であっても、上記保護すべき価値に関する法令の違反を通報する者は、保護されなければならないことになります。

他方、英国公益開示法ですけれども、そもそも日本の公益通報者保護法のモデルになった法律ですが、日本の法律のように法令や罰則の有無では限定していません。公益に資する通報であれば、過去、現在、未来の行為を広く保護の範囲としています。さらにその通報対象事実が国内で発生するか国外で発生するかについても、問わないとされています。

以上です。

○山本座長 それでは、意見交換に入ります。御意見のある方はお願いいたします。いかがでしょうか。それでは、中村委員、お願いいたします。

○中村委員 まず全体についてなのですけれども、今回御説明をいただきましたこの部分につきまして、仮に刑事罰の担保を外したり、法目的を拡大するということに伴いまして、現状でも対称となる法律が462本あるということなのですが、それがどのぐらい拡大するのかというのが見えないと感じておりまして、そのあたりのところをもう少しお示しいただけないかなと思っております。

通報への対応という意味で法律の範囲が広がり過ぎるという懸念がありますし、また、行政のキャパシティーという御指摘もありますので、そのあたりをもう少し見えるようにしていただけたらと思います。

刑事罰の担保による限定につきましては、これを外すということにつきましては基本的には反対であります。仮に行政罰等を入れていくとしても、行政措置でありますとか行政指導ということに関しましては、現実的に運用において地方であったり、担当官による判断を伴って、それが違反になるかどうかというところが不安定な内容であると感じておりますので、そういった意味でもしも行政罰ということを入れるとしても、行政措置あるいは行政指導の対象となる法令違反については除外としていただきたいと思います。

法目的による限定につきましては、今、御説明させていただきました上段の全体像の部分でありますとか、あるいは行政がどこまで入るかというところが決まってきたところで、改めてお話したいと思います。要は態度としては留保をさせていただきたいと思います。目的の拡大ということよりも、どのような法律を公益通報の対象とすべきかというところをさらに議論できないかと思います。

条例について含まないということについては、賛成をいたします。

規定の方式については、限定列挙方式にしていただきたいと考えております。

以上です。

○山本座長 今の第1点の刑事罰の担保による限定を外すべきではないという理由ですが、明確性に欠け、行政機関の判断の余地が広いという理由であると理解してよろしいですか。

○中村委員 はい、結構です。

○山本座長 その点に関して申し上げれば、9ページの小括に挙がっているマル3、行政指導の対象となるものに関しては、その下にあります一定程度の明確性のある規制違反行為に限定するとなっています。

さらに言えば、現在の行政手続法の36条の3は行政指導も含めているのですが、これは14ページの一番下にありますけれども、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためになされるべき処分または行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものに限るという規定になっていまして、要は法律上、何が違反行為か否かということが決まっているということが前提です。したがって、私はこれに関しては明確性がないとは言えないと思います。

それから、行政罰に関してはますますそのことが言えるわけで、これは要するに過料のことだと思いますが、過料を科す場合には法律に一定の明確な規定がなければならないと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○中村委員 そもそも法令違反の判断においても、その判断というのはあり得るわけですけれども、行政罰ということになりますと、行政手続上の救済措置というところもあろうかと思いますが、一般的な行政指導といいますか、日常的に監督官庁等でやられている部分については、かなり現実問題として担当によってのばらつきというものが多く見られるというのが現実であると思いますので、そういったところがこういう公益通報の対象になってくることについては、会社としてはそういうことが現実に行われて、非常に労力を費やして会社等の判断ということで判断の違いということで、結果としてはなかったということになることは余り好ましくないと思います。

○山本座長 事務局案も、そういった行政指導をおよそ全て含めるべきだというものではないと理解していますが、それはよろしいですか。

○廣瀬消費者制度課長 先ほど座長から御指摘のありました9ページの(3)小括の3つ目のパラグラフの「このうち」以下の記述の趣旨でございますが、明確性を確保するため当該行為に関する行政指導の根拠条文において、規制違反行為に係る条項が特定されているものなどということで、1つ例示をさせていただきますと、均等法の第29条におきましては、厚生労働大臣はこの法律の施行に関し、必要があると認めるときは事業主に対して報告を求め、または助言・指導するということで行政指導ができることになってございますが、この条文においては、この法律の施行に関し必要があると認めるときはということで非常に曖昧になっておりまして、こうしたものを除く趣旨でございます。

一方におきまして、その次の30条におきまして、厚生労働大臣は、この後、条文を抜いているわけですけれども、本法の第5条から第7条まで、第9条1号から3号までなどなどの規定に違反している事業主に対し、前条1項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表するという規定になってございまして、それぞれ第5条から何条、何条というふうにやってはいけない行為、違反してはいけない行為が列挙されている、具体的に示されている。こういった規定については、含めても明確性という意味で欠けることはないのではないかという趣旨でございます。

○山本座長 このような限定を付しても反対ということでしょうか。

○中村委員 そこの部分はもう少し具体例を。

○山本座長 いや、具体例は示されています。ここに今、挙げられたこういうものでも反対ということですか。

○中村委員 具体例は示されているとおっしゃいましたけれども、各企業によってそれが自分たちに適用される法律に当たってどうなのかというところがありますので、先ほど462本の法律は例えばどういう法律なのかというところが、正直、実際に挙げられてみたら思いもよらないものが入っていたというようなところを現状では懸念しているということなので、最終的にこれだったらということはあるかもしれないですが、現状においてはそういう懸念があるので反対だということです。

○山本座長 むしろ個別に、例えばこういった行政指導が含まれるのであれば、反対ということがあり得るという理解でよろしいですか。

○中村委員 そうだと思います。

○山本座長 分かりました。

それから、「2.法目的による限定について」という点に関しましては、現状では意見は保留をするということでございましたけれども、ボリュームとしてどれだけのものが挙がってきて、それに関して行政機関の側の負担がどれだけになるかということは、確かに重要なことであって、今日のいろいろな御説明の中にもその点、行政機関の側がいろいろ懸念を示しているといったことがございましたので、その点の考慮は確かに必要ですけれども、ただ、そのような量的な問題あるいは行政機関の側の負担の問題とは別に、公益通報者保護法がどういうものとしてあるべきかということは、この専門調査会として示していく必要があるし、それを議論するのがこの場であると私は認識をしております。

そういう点から申し上げますと、それでも、この点に関して全く御意見がないということなのでしょうか。

○中村委員 先ほどと同じような話になるかと思うのですけれども、全く外すということについては、今、意見を申し上げるのであれば反対ということでありまして、例えば林委員のレポートの中での公共調達云々とかそういうものがありましたが、そういった何らかの範囲というものは少なくとも考えられるのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 林委員が2ページのところに挙げられた、こういったものであればよいだろうという感じなのでしょうか。

○中村委員 私個人の意見と、いろいろな企業さんの意見とございますので、今、結論的なことは申し上げにくいのですが、全く無限定ということではないのではないかということで、内容によってここまでであればというのはあり得ると思います。

○山本座長 事務局の案も最後のところ、あるいは途中のところでもあったかと思いますけれども、10ページの最初ですかね。一定の分野の法律については対象としないことが必要である。その点についてはさらにそれぞれの法令の所管省庁とも詰めた上で、検討する必要があると言っておりますので、したがって、そういった形でこういったものは除かれるべきではないかという議論は、今後もされることになるのではないかと思います。行政手続法あるいは行政不服審査法等においても、一定の分野については適用除外をしているといったことがありますので、最終的にはそこのところを、もしこのような方針でいくとしても詰めていく必要があろうかと思います。

ということですので、中村委員の御意見としては、どういうものがという具体的なものごとに判断をしたいという御意見と承ってよろしいでしょうか。

○中村委員 はい、結構です。例えばですけれども、私人間の財産の調整に関わるような法律とか、そういうものに関わることは必ずしも公益ということではない。例えばの話ですけれども、要するに個別にこういうものは違うのではないかというものもあるのではないかと思います。

○山本座長 分かりました。

それでは、そのほかにいかがでしょうか。浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 私は刑事罰の対象とならない規制違反行為についても範囲を広げるべきだと思いますし、法目的による限定も解除すべきだと思います。

やはり通報者からしてみれば、現在、公益通報の対象でない法律の違反であっても、違反していたら不正は不正なので、なぜそうやって対象が限定されてしまうかのほうが不思議でよく分からないところだと思います。どちらも広げるほうが望ましいと思います。

特に脱税をしているとか、補助金を不正に受給しているとか、それこそ公益に反することなので、税法とか補助金適正化法などが範囲に入るべきだと思いますので、法目的の限定は解除すべきだと思います。

以上です。

○山本座長 水町委員、お願いします。

○水町委員 先ほどの9ページの行政罰、行政指導のところ、私もやや懸念するところがありまして、労働関係法令は行政指導、行政指導で、先ほど均等法29条と30条がありましたが、30条の例は公表の話ですよね。さすがに行政罰と企業名公表になれば、具体的に法令上の特定がついて、かつ、法令上の規定というのは義務規定、命令規定に違反する場合には行政処罰や企業名公表というのをやっていますが、行政指導とか勧告についても具体的にどの条文とリンクしているのか。条文とリンクしていても法律本体の条文が努力義務規定だという場合もあって、いろいろなものが渦巻いている中で、では行政指導も対象に入れて明確にマル3で特定できるかというと、恐らく企業も通報する本人も、役所に行ってもこれは○です、×ですとすぐ分からないようなこともあるかもしれないので、ここら辺については法令や監督官庁の性質で行政指導をどう位置付けているかによると思いますが、労働関係法令の場合はかなり注意したほうがよくて、そういう意味では行政罰と企業名公表というところで線を引くとすれば、ある程度明確になるかもしれませんが、その中でいろいろな勧告、行政指導の中で、ここはマル3に入るけれども、ここはマル3に入らないという選り分けが分かるようにできるかどうかは、ちょっと注意をして、それが見えるような形でやっておくことが必要かなと思います。

もう一点だけ、法令を外すかどうか、適用除外をどうするかですが、労働関係法令では既に不利益取扱いについて、行政上の措置をとっている例が均等法とか育児・介護休業法とかパート法、今度パート・有期法になりますが、労働者派遣法もそういう規定を入れようとしていまして、そういう法令では企業名公表も含めて、不利益取扱いに対する行政上の措置をとることが制度化されております。それと重なるところが出てくるので、そこは適用除外して、これまでの法令に委ねますよというふうにするか、二重行政にならないような配慮が必要かなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

先ほど行政手続法の36条の3の条文を挙げたのは、ある法律に基づく、要は法令違反行為に対する行政指導という限定があるので、もとになっている法令が努力義務規定限りであると、法令違反とは言えないですね。そういう形でそこのところは切っていると思いますので、行政手続法36条の3の解釈等をさらに参照していただいて、参考にしていただくとよろしいかと思います。そこに入っていて、これは除くべきだとか、逆に入っていないけれども、ここまでは含めていいのではないかということも出てくる可能性もありますが、1つ参考になる規定かと思います。

そのほかにいかがでしょうか。お願いします。

○消費者制度課担当者 今の水町委員の御意見に関する補足説明でございますが、9ページの(3)小括のマル3に関し、行政指導の根拠条文によって規制違反行為に係る条項が特定されているものとして、どういったものを想定しているかということでございますけれども、例えば、16ページの参考6として載せております下請代金支払遅延等防止法第7条です。こちらの条文には、公正取引委員会は、親事業者が第4条第1項第1号に掲げる行為をしていると認めるときは、勧告するものとする。そういった文言がございまして、この条文は勧告の根拠条文となっているわけでございますけれども、この条文の中において違反行為として第4条第1項第1号ですとか、第2号または第7号という規制違反行為に係る条項が特定されているわけでございます。

9ページの小括で書いている規制違反行為に係る条項が特定されているものとしては、例えば、このような条文を想定しているところでございます。

○山本座長 それでは、お願いします。

○水町委員 このような形で具体的に義務規定である規定があって、これに違反する場合には勧告をするというふうに書いてあるところは、これでいいと思いますが、労働法だと例えば労働者派遣法とか職安法というのは、業務処理取扱要領みたいな得体の知れないものがあって、それに基づいて指導・勧告を行っていて、最後に具体的な法令に結びついてやっているかというと、そこも余り明確にならない形でやっていることがいっぱいあるので、どこで線引きをするかというので、例えば下請関係だとこれで切れるけれども、労働関係法令だとなかなかそうはいかないかもしれないというところで、関係法令によっては、線引きの仕方が若干形式とはずれてくるところがあるかもしれないので、そこは注意したほうがいいのではないですかということです。

○山本座長 そこのところはさらに個別に精査をする必要が生じるかと思いますけれども、そのほかいかがでしょうか。

それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 先ほど条例についてのところを言い忘れたので。

条例についても、私は本来は範囲に含めるべきだと思います。ただ、現実的に難しい部分もいろいろ出てくるようなので、だから含めないと決めてしまうのではなく、引き続き検討をしていってほしいと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

条例に関しましては、私も理屈の上では含めることが考えられるのではないかと思っています。ただ、ここに挙がっていますように、11ページの初めのポツのところは、いわゆる独自条例との関係の問題かと思います。

その次のポツのあたりに書かれていることですが、行政処分の根拠等により切るとしても、例外を設けるといたしますと、そこのところの判断は結局、各自治体がやらざるを得ないと思いまして、そういうことになりますとかなり複雑な制度になる。それから、地方公共団体の側の負担になるということを考え、さらにこの制度は全体的に自治体にかなりいろいろなことを求める内容になるだろうと思いますので、全体的なことを考えますと、現時点でここまで求めるのは難しいと判断をしています。

行政手続法などにおきましても、例えば行政処分に関して法令に根拠のあるものは全て適用範囲に入るのですけれども、条例限りの根拠しかないものは、除かれております。そのかわり、最後のところに地方公共団体が同様の趣旨の制度を設けるように努めることと一言、書かれているという体裁になっていますので、こういったものも参考にして考えていくことになるのではないか。今すぐ条例まで含めることは私も現実的ではないと判断しています。

恐らく行政法研究者の同僚からは、こういうふうに言いますとかなり批判を受けるだろうと思いますけれども、それに対して説明するのも、この場に座っている委員としての責務であると思いますので、そのように現実的に考えたいと思います。

そのほかにいかがでしょうか。よろしいですか。特段なければ、まず8ページからあります刑事罰の担保による限定という点に関しましては、おおむね賛成が得られたと思います。ただ、先ほどもありましたように、とりわけ行政指導の点に関しまして、さらに精査をする必要があるということと、中村委員から、もう少し具体的にこういうものということが示されないと、にわかに賛否を示すことができないという御意見もございましたので、この行政指導の部分に関しましては、さらに精査を要するということかと思います。中村委員、それでよろしいですか。

○中村委員 まず行政措置も含めてということと、基本的には現状においては担保の限定を外すことについて、反対ということで整理をいただければと思います。

○山本座長 反対の理由は何でしょうか。

○中村委員 行政罰ということも含めて、まずは整理いただいたように中身を精査いただいて、こういうものが入ってくるということが明確になれば、その範囲であればいいということになるかもしれませんが、現状においては不明確なものが入ってくることが懸念されるので、現状においては反対ということです。

○山本座長 行政罰も不明確なのでしょうか。

○中村委員 そこもこういうものまでというところがそうだと考えます。

○山本座長 行政罰ということで想定をしているのは、現行法でも入っているいわゆる行政刑罰と、いわゆる秩序罰と言われる過料です。それを想定されていると理解してよろしいですね。

○廣瀬消費者制度課長 結構でございます。ここの行政罰は秩序罰を意味しているという趣旨でございます。過料でございます。

○山本座長 いわゆる過料ですね。それでも不明確であると。

○中村委員 そこはどこまでというところがあると思いますけれども、最も懸念をしているところは先ほども申し上げたように行政措置と行政指導ですが、行政罰と言っても実際には過料も一般的に科されているものと、ほとんど発動されないようなものもあろうかと思いますので、そういうところも含めてどういうことを想定されているのかということを、もう少しイメージを共有したほうがいいかなと思います。

○山本座長 行政刑罰であっても発動されるもの、発動されないものは幾らでもあって、むしろ発動されないもののほうが多いと思いますけれども、現行法上は全部入っていますね。そこは関係があるのか、ロジックがよく分からないのですが、どういうことなのでしょうか。

○中村委員 刑事罰についてももちろんそういう要素はありますけれども、当然のことながら刑事罰のほうが重大なもので基本的にはあろうかと思います。

○山本座長 それから、行政措置と言われましたけれども、それは何を具体的に想定されているのでしょうか。マル2行政処分の対象となるという、これですか。

○中村委員 そうです。

○山本座長 これは行政処分ですよね。

○廣瀬消費者制度課長 マル2というのは、マル1、マル2、マル3の中では一番件数的には少ないのではないかと思っておるものですが、マル2というのは行政処分で命令のようなものではあるわけですが、今でも命令に違反した場合に間接罰が用意されていれば対象になるわけでございますが、命令に違反しても刑事罰が予定されておらず、例示させてもらっております国民健康保険法の第108条の1項などでは、行政処分をした場合に過料が予定されているものというのがマル2の例でございまして、若干件数は少ないのではないかと思っております。

○山本座長 ということなので、明確性に欠けることもないのではないかと思います。つまり何でも行政機関がやることが入るという意味ではもちろんなく、行政処分の対象となっていて、大抵の場合は義務違反ですので、何らかの行政罰はついているというものを想定しているのではないかと思うのですが、それでも不安があるということでしょうか。

○中村委員 申し訳ないのですが、具体的に例をもう少し挙げていただけると、今日ということではなくて、それであれば大丈夫ではないかということになるかもしれないですけれども、現状においては罰であればあり得るかもしれないと思いつつも、それが広がってきたときにどこまでというところについて懸念があるということです。

以上です。

○山本座長 そういたしますと、ここに挙がっていること自体に何らかの理由があって反対というよりは、個別具体的にこういうものが出てきたときに反対することがあり得るということでしょうか。今のところこういうものが対象になるというものが幾つか例として出ていますけれども、全部網羅的に書いてあるわけでないので、個別具体的にこういうものが入るのであれば反対ということがあり得るという理解でよろしいですか。

○中村委員 全体としては結構だと思います。行政指導については反対ということだと思います。

以上です。

○山本座長 行政指導について反対という理由は何でしょう。すみません、もう最終的にまとめることを考えなくてはいけないので、そのときに何も理由もなしに、こういう案があると書くわけにはいかないので、申し訳ないのですけれども、そこのところを確認したいと思います。

○中村委員 先ほど水町委員が御指摘いただきましたように、指導の根拠が刑事罰につながるものであれば、それは逆に言うと刑事の対象となっているものの違反ということでも整理ができるような気もいたしますし、そういうことではなくして直接の法令に根拠が明確でないものについても、行政指導の中には入ってくるということがありますので、そういうある意味、曖昧なものについての違反だということの告発ということになると、非常に取扱いが難しいということで、そういうものについては除外をしていただきたいという趣旨でございます。

○山本座長 一般的に曖昧なものは除くと先ほどから言っているのです。ただ、曖昧かどうかという例が具体的に出てきたときに、これはおかしいのではないかということがあり得ると理解してよろしいですか。一般的には曖昧なものは除きますということは、この案にも示されているわけです。

○中村委員 考え方としては賛成します。

○山本座長 分かりました。個別に見たときに反対をすることがあり得るという理解でよろしいですか。分かりました。

それから、法目的による限定に関しましても、基本的には賛成の御意見が多かったと思いますけれども、今の話と同じで中村委員から、具体的なものの中でこれには反対であるということが生じる可能性があるというご意見がございました。そういうことでよろしいですか。分かりました。

条例に関しましては、やむを得ないであろうという御意見であったかと思います。

規定の方式に関しましては、議論は余りなかったかと思いますが、いかがでしょうか。

○林委員 従前から申し上げていますとおり、列挙方式を採用する必要はないと思っております。一々この法令に反しているのではないかと言って探すのは非常に大変ですので。

○山本座長 という御意見でしたけれども、ほかにございますか。中村委員、お願いします。

○中村委員 先ほど申し上げたのですが、限定列挙を維持していただきたいという意見でございます。

○山本座長 分かりました。限定列挙を維持することの理由はどのようなところにありますか。

○中村委員 基本的には先ほどと同じで、全体像が今の中で把握ができないということでありますので、限定列挙の方向でお考えをいただければということであります。

○林委員 先ほど来おっしゃっているように、こういう行政指導があるとか、行政処分があるという法律上、明らかな内容ですので明確性というのは保たれていると思いますので、一々列挙する必要はないと思いますし、明確性の担保という意味でも必要もないと思います。

○山本座長 その点はいかがでしょうか。今の御意見は、つまり全体像が見えないと、この場での検討をする際に最終的な意見が出せないという趣旨ですか。

○中村委員 前半の部分に関しては、そういう部分がまだあるというところと、限定列挙ということに関しては、そもそも明確性という観点で限定列挙という形でスタートしている中で、それを維持していただけないかという意見でございます。

○山本座長 ただ、前のほうで、行政処分の対象になるとか、行政罰の対象になるとか、行政指導に関しましては先ほど少し詰める必要があるという御議論がございましたけれども、対象になるかというところで一応は明確に区切られているようにも思うのですが、それでは不十分であるという御意見ですか。

○中村委員 いろいろな色合いの法律がありますので、今こういう形で御提案いただいた中で明確なものに限るというようなお話もいただいていますが、そうしたときに、そうするとそうでないものという判断があるのではないでしょうか。

○山本座長 主には行政指導について懸念があるということでしょうか。行政上の秩序罰等は非常に明確ではないかと思いますけれども、あるいは現行の行政刑罰の対象かどうかということは、明確ではないかと思いますが、主に行政指導の部分がというふうに理解してよろしいのでしょうか。

○中村委員 主な懸念点としては、そうだと思います。

○山本座長 分かりました。

それでは、最後の4の規定の方式に関しましては、今、中村委員も言われましたように、とりわけ行政指導に関して懸念があるという御意見があったということかと思います。

よろしいでしょうか。全体的にこれで全て議論はされていると思いますので、それでは、最後の資料3に入ることにいたします。

≪4.外部通報の保護要件等について≫

○山本座長 外部通報の保護要件等につきまして、消費者庁から資料3の説明をお願いいたします。

○大森消費者制度課企画官 外部通報の保護要件でございます。こちらもお時間の関係がございますので、構造は同じでございますので12ページにあります「第4 検討及び結論」で御説明したいと存じます。

最初、2号通報の真実相当性の要件緩和の是非でございます。本法の施行後、事業者において内部通報制度が活用されているという実態もあるのでございますけれども、他方で事業者の不祥事の多くにおいて内部通報制度の機能不全が指摘されているところでございます。事業者内部への通報では誰が通報したか分かってしまって不利益取扱いが行われるおそれがあるなどして、労働者が通報に対して消極的になっていると考えられるケースが見られるということでございまして、事業者内部への通報のみで不正の是正を図るには一定の限界がございます。

行政機関への公益通報については、公益通報によって事業者の正当な利益が不当に害されないよう、真実相当性が保護要件となってございますけれども、この要件のために行政機関への通報について消極的になった者がいると考えられるケースが見られるところです。そこで、行政機関への公益通報の活用を促進させるべく、真実相当性の議論を緩和する必要があると考えられるというのが12ページの下のほうでございます。

13ページは関係省庁からの意見でございますけれども、関係省庁の意見のように、真実相当性の要件を緩和した場合は、行政機関に対する通報が増加するというところで、調査など通報対応に係る行政機関の負担が増加することも考えられるということでございます。また、これに伴いまして行政機関における調査件数が増加した場合に、事業者もそれに合わせて調査に対応しなければいけないという負担の増も考え得るというところでございまして、こちらについて真実相当性の要件を緩和することの是非について、どのように考えるかというところでございます。

緩和するとした場合に例えばというところで、どのようなものが考え得るかというところでございまして、(ア)から(オ)まで挙げてございます。(ア)から(ウ)までにつきましては真実相当性を置き換えるものとしてございまして、まず、真実相当性の削除ということでございますと、この場合、実際には1号通報の保護要件と差がなくなるということがございます。

また、(イ)でございますけれども、疑うに足りる相当の理由へと置き換えることにつきましては、これについては警察官の職務質問の要件や被告人勾留の要件等で使われているのでございますけれども、これについて被告人の勾留の要件と同程度に厳格に判断すべきものと考えられるところでございますけれども、そうなってしまいますと現状の真実相当性の要件と余り変わらないということがございます。

(ウ)重過失なく信じた場合というところにつきまして、不正競争防止法や民法の錯誤無効の規定と同様に、重過失がないことを保護要件とするということも考え得るということでございますけれども、これについても論点があるところでございます。

(エ)法3条3号イからニにつきまして、解雇その他不利益な取扱い、証拠隠滅・偽造、公益通報しないことの要求、内部通報した後に20日間を経過した場合というような要件がある場合につきましては、内部での是正措置の前置を---すみません、読み間違いました。イからニまでがある場合には、利益が不当に害されるおそれが小さい行政機関へ通報を促進させるべきであり、公益通報を行った者についても保護するということも考えるということでございます。申し訳ございません。読み間違えました。

(オ)の通報対象事実を直接知覚・体験した場合、これも公益通報に関する相談事例の中には、通報者が通報対象事実を目撃するなど、直接知覚・体験したにもかかわらず、客観的な証拠が乏しい場合に消極的になるというケースが考え得るということでございます。

そこで、このようなケースにおいても真実相当性と並行するルートにおいてチャネルを作っていくことについて考え得るということでございます。

3号通報の真実相当性の保護要件でございます。3号通報につきましては2号通報と異なりまして、通報先に秘密保持義務がないということでございますので、風評被害の回復が著しく困難、15ページのところでございますけれども、そういうことがございますので、真実相当性の要件を維持すべきと考えるが、どうかというふうにさせております。

次に3号通報の特定事由の保護要件でございますけれども、内部通報整備義務を履行していない場合を加えることについてどのようにするかということでございます。前回の専門調査会において、体制整備義務を課すことが議論されたわけでございますけれども、仮にこの義務を課すとした場合に、この義務が履行されていないことを特定事由に加えるべきだという意見が出されました。

この具体的内容としては、内部通報を受け付ける運用であるとか、組織内周知する運用であるとか、情報の共有を必要最小限にとどめる運用であるとか、不利益取扱いを禁止することの徹底、あるいは必要に応じて調査・是正措置を行うという運用が検討されてございますけれども、これについて通報窓口の設置の有無や周知措置の有無など、比較的外形的に判断が可能というものもございますが、それ以降のマル3からマル5までの履行の有無につきましては、必要最小限度あるいは徹底、必要に応じてといった抽象的な部分が入ってくるために、実質的な判断が必要になってくるというところがございます。

16ページに入っていきますけれども、抽象的な要素が含まれて実質的な判断が必要となってきた場合に、この義務を履行したか否かの基準が曖昧になって、なかなか通報者が不安感で通報体制が整備されていないと独断で判断して通報に至って、事業者の正当な利益を不必要に害するおそれがあるということも考えられるということでございまして、以上を踏まえまして3号通報の特定事由に、事業者が内部通報体制整備義務を履行していない場合を加えることの是非について、どのように考えるかというところでございます。

次に、財産に対する重大な危害を加えることについてでございます。特定事由の緩和の具体的な方法として、財産に対する重大な危害というものを第3条3項ホに加えることが専門調査会の中でも意見として出されているということがございます。ただ、個人の生命または身体の危害が挙げられているのは、その回復の困難性が考慮されたためだというふうに考えたときに、財産への危害は重大であるとしても、その回復が一律に困難であるとは言えず、財産に関する危害をホに加えるとしても、その回復の困難性が一般的に認められているものに限定する必要があるとも考えられるというところでございまして、財産に対する重大な危害をホに加えることの是非について、どのように考えるのかというところでございます。

また、行政機関に対する通報後一定期間を経過したにもかかわらず、行政機関が通報に対応しない場合を加えることでございますけれども、これを特定事由に加えるということが意見として出されておるのですが、このような緩和を行った場合に通報された事業者に過失はないにもかかわらず、行政機関の過失によって事業者に不当な負担を負わせるという事態が生じるおそれがございますので、これは2号通報を行った後に行政機関が一定期間内に対応しない場合を特定事由に加えるべきではないと考えられるかどうかというところでございます。

退職者、役員等及び取引先等事業者が通報者の場合の加重要件というところでございます。退職者につきましては、守秘義務など一定の義務を元使用者に対して負う場合が考え得るのですけれども、この義務というのは在職中に負うものと比して厳格ではないということで整理できますので、これにつきまして退職者における外部通報につきましては、労働者のものよりも保護要件を加重する必要はないという考えについてどうかというところでございます。

一方、役員等につきましては、法律上、善管注意義務を負う役員等につきましては、社内の違法行為を発見した場合に、自ら積極的に法令等によって与えられた権限を行使して是正を行うのが原則であるというところです。他方では内部是正措置を講じても、法令違反を是正できない場合や当該是正措置を通じて法令違反の是正が期待できない場合につきましては、これは違法行為の是正を図るために外部通報する必要があると考えられるところでございまして、これらを踏まえますと役員等につきましては、まず原則として被通報者以外の外部に公益通報した場合に、保護されるための加重要件として取締役会への付議等、被通報者内部での是正措置を前置することが考えられるところでございます。

なお、社内での是正措置を通じた法令違反の是正が期待できない場合というのもございます。こちらにつきましては、被通報者への公益通報をしたとしても法令違反の是正が期待できない場合の類型である法3条3号ロに相当するような事由がある場合には、例外的に被通報者内部での是正措置の前置を不要とすることが考えられるということでございます。

また、個人の生命・身体という特に重大な利益の保護のために、速やかに当該違法行為の是正を図る必要がある場合の類型である3条3号ホの事由がある場合につきましても、被通報者内部での是正措置の前置は不要であるということが考えられる。以上の考えについてどうかというふうにさせていただいております。

取引先事業者につきましてです。これが公益通報者に含まれる場合ですけれども、この通報者と被通報者は取引関係にありますため、少なくとも民法の信義則が適用される関係にございますけれども、それに伴い生じる権利義務、18ページにかけてでございますが、雇用契約の人的・継続的な性格に由来する誠実義務より強いものではないと考えられますので、これにつきまして取引先事業者による事業者外部への公益通報に関して、労働者のものよりも保護要件を加重する必要はないとの考えについてはどうかというふうにしております。

最後に、通報を裏付ける資料の収集行為についてでございます。これにつきましては現状において、通報者が裏付け証拠を収集する必要性が一定程度あると考えられるのでございますけれども、内部通報の持ち出しは当該資料が社内にとどまっていても、情報管理や企業秩序に対して影響を及ぼすということでございますので、情報化が進展した現在において被害というものが重大で、かつ、回復不能なものになりかねないところがございます。

行政機関への保護要件で真実相当性の緩和も検討されていて、行政機関の職員については秘密保持義務を負っているため、証拠収集に関する負担軽減策としては、これは先ほど収集行為の免責を法定化するよりも、行政機関への通報の保護要件の緩和というところで考えるのが適切ではないかと考えるところでございますので、通報を裏付ける資料の収集行為につきまして、その免責に関してはこれまでに集積された裁判例の整理、分析、周知を進めるということとして、法定化については慎重に検討すべきというようなところでございます。

行ったり来たりで申し訳ございませんでした。

○山本座長 私も資料2の先ほどのところで若干、最後にまとめ忘れたところがあるのですけれども、たびたび事務局からも指摘をされ、また、中村委員からも御指摘を受けましたが、広い範囲の法令を対象にすることになりますと、行政機関の側の負担が増えるということがありますし、これは量的に増えるという問題もありますし、質的にこれは対象にするのはふさわしくないというものもあろうかと思いますので、その点につきましては事務局でさらに各所管省庁とよく話をした上で、まとめをしていただきたいと思います。

また、中村委員におかれましても事業者の目から見て、こういったものを含めてもらうと困るというものが何か具体的にあれば、事務局に言っていただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。

○中村委員 承知しました。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、先ほどの資料3に関してでございますが、こちらにつきまして林委員からやはりEUの話があるのですね。では、お願いします。

○林委員 まず2号通報に関わる行政への通報のルートに関してなのですけれども、EU指令案では外部への通報ルートだからといって、真実相当性について加重する要件はありません。他方、当初の指令案では外部への通報ルートへの通報者の保護については、その要件のほかに内部への通報が困難であるなどの一定の場合に限定することが規定されていたのですけれども、欧州議会からは、外部への通報ルートの保護要件を、内部への通報ルートよりも加重すべきでないという修正案が提出されているところであります。

英国の公益開示法についてですけれども、行政機関への通報につき「適格性ある開示の該当性」及び通報内容が「概ね事実であると信じていること」が求められているにとどまっておりまして、真実であると「信ずるに足りる相当の理由」という厳格な要件は要求されていないところです。

我が国の3号通報に当たるものにつきましては、EU指令案ではまず内部に通報し、法律に従って外部に通報したが、法定期間内に通報に適切な措置がとられなかった場合、公共の利益の差し迫った、または明白な危険がある事案の特殊状況または不可逆的な被害の危険があり、内部または外部への通報ルートを使用することが合理的に期待できなかった場合には、通報者を保護するというふうに規定しておりまして、これも同様に真実相当性の要件を加重するものではありません。

英国公益開示法に関しましては、外部者に対する通報の場合にいろいろ要件はあるのですけれども、通報の内容が実質的に真実であると合理的に信じていること、それから、個人的利益を得る目的で通報したものではないこと、通報を行うことの合理性に加えて、ここに書いてある要件のうち1つでも満たしていればよいとされていまして、日本の法律に言う「信ずるに足りる相当の理由」までは要件とされていません。

証拠収集に関して真実相当性に関連してということですけれども、EU指令案については通報者が保護されるために「報告時において真実であり、その情報が本指令の適用範囲内にあると信じたことに合理的な理由がある」ということを必要としているだけで、真実であると「信ずるに足りる相当の理由」という厳格な要件を要求していないことからすると、証拠の持ち出しが必ずしも必要でない場合が多いと思われます。なお、通報者を報復から守るための措置としまして、名誉棄損、著作権侵害等々の損害賠償の請求の手続で「訴えの棄却を求める権利を有する」という規定であったり、「訴訟手続において更なる法的および経済的支援をすることができる」というふうに規定がありまして、通報者を保護する規定が整っています。

また、英国の公益開示法につきましては、先ほど申し上げましたとおり行政への通報についても外部への通報についても、真実であると「信ずるに足りる相当の理由」という厳格な要件を設定していないことから、証拠の持ち出し行為が必ずしも必要ではない場合が多いと思われます。

以上です。

○山本座長 それでは、資料3に関しまして御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 まず1つ確認をしたいのですけれども、14ページのところ、外部通報の保護要件、2号通報の真実相当性の要件を緩和する具体的方法として(エ)です。法第3条第3号イからニまでによる代替というところで、例えばハは正当な理由がなく通報しないことを要求されたとか、ニは20日経過しても調査を行う通知がないとか、調査を行わないということは、1号通報、内部通報をすることが前置となってしまうという理解でよろしいのでしょうか。

○廣瀬消費者制度課長 (エ)につきましては今、現行法の3条3号のイ、ロ、ハ、ニがあった場合ということでございます。その場合には真実相当性を要求しないということでございます。

○大森消費者制度課企画官 それでイからですけれども、ニについてだけは通報は前置されるということでございます。

○廣瀬消費者制度課長 失礼いたしました。前置はありません。今の3号と一緒です。前置は予定されておりません。

○山本座長 ニだけは通報していることを想定した規定なのでニだけはそうです。あとは前置でありません。

○廣瀬消費者制度課長 通報すればということでございますので、前置はされておりません。

○浦郷委員 ありがとうございました。

やはり1号通報が前置となってしまうと、緩和というよりはハードルが高くなってしまうのかなということなので、私は2号通報を緩和すべきだと思いまして、具体的な方法としては(イ)の「疑うに足りる相当の理由」ということでいいのではないかと思います。

ほかのところもいいですか。

○山本座長 今のところは全部前置にするという意味ではないのです。3条3号ニの場合は規定として、1号通報したけれども、なかなか返事がないという場合ですね。

○廣瀬消費者制度課長 申し訳ございません。まずここのイメージとしては、真実相当性がある場合というのは引き続き残りつつ、思料した場合だけであってもイからニのいずれか1個を満たした場合には2号通報ができる、保護要件になるという趣旨でございますので、後退することは絶対にございませんし、後半部分については現状よりも緩くなる場合があり得るということで、広がっているものだと認識しております。

○山本座長 よろしいですか。では、続きをお願いします。

○浦郷委員 今のところは真実相当性を残しつつ、イからニのどれか1つ。

○廣瀬消費者制度課長 左様でございます。真実相当性がある場合は、それだけで引き続きできます。ここは検討が必要ですけれども、思料した場合であってもイからニのどれか1つを満たせばできるというようなイメージで書いた部分でございます。

○浦郷委員 ありがとうございます。ちょっと勘違いしていたので、(イ)がいいのか(エ)がいいのかというのは考えていきたいと思いますけれども、そのほかのところで3号通報のところは真実相当性の要件は維持すべきでいいと思います。

3号通報の特定事由の保護要件というところも、事務局がアからウまで御提案されていますけれども、それに賛成いたします。

加重要件のほうは、退職者のほうは必要ないかと思っております。役員のほうにつきましても是正措置前置が原則なのですけれども、例外的に前置不要というものがあるということで事務局の提案に賛成いたします。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。中村委員、お願いします。

○中村委員 まず2号通報の真実相当性の要件の緩和に関しましては、基本的には反対ということでございまして、ここで内部通報の機能不全ということが挙げられておりますが、最近の事例では内部通報は機能しているという事例もありますし、また、この新しい見直しの中で体制整備義務というようなことも検討されておりますので、まずそこの部分で事業者の自浄作用をさらに促すという方向性がいいのではないかと考えるところでございます。

緩和の方向性の中身についてなのですけれども、(ア)につきましては結局、1号通報と同じとなりますので、これはとり得ないのではないかと思います。

(イ)については、ある意味では真実相当性とそんなに違わないような気もいたします。事例として挙げられておりますのは、警察官とか裁判官、医師等の専門家が判断する場合の基準になっておりますので、一般的な方が判断する部分の内容としては余り合っていないのではないかという感じがしています。

それから、先ほど御指摘もあった(エ)につきましても、通報の内容に一定の信憑性は求めるべきではないかと考えるところでありますので、これにつきましても反対ということであります。

続きまして3号通報なのですけれども、ここは真実相当性の要件は維持するということですので、その御提案には賛成をいたします。

特定事由の追加として、事業者が内部通報体制の整備義務を履行していない場合を加えるという案がございますが、ここの部分につきましては反対をいたします。これは通報者がこんなものでは体制はできているとは言えないという形で通報してしまうという不安がぬぐい切れないということであります。

次に、財産に対する重大な危害を特定事由に加えるという点については反対でございます。仮に加える場合でありましても、回復不可能な場合に限定をすべきであろうと考えます。

2号通報を行った後、行政機関が一定の期間に反対をしない場合を特定事由に加えるべきでないという意見については、賛成でございます。

続いて加重要件ですけれども、退職者について加重する必要がないということについては反対しません。

役員につきまして、内部での是正措置を前置することについては賛成いたします。

特定事由に該当する場合の前置不要ということに関しまして、ホの個人の生命・身体に危害が発生する窮迫した危険がある場合については、賛成をいたしますけれども、ホのほうにつきましては、これは含めないという意見であります。

○山本座長 ロとホとどちらですか。

○中村委員 失礼しました。ホは賛成でロが反対です。ロは含めないという意見であります。

それから、取引先事業者については、そもそも保護対象に含めるべきでないという意見ですので、加重については言及いたしません。

通報を裏付ける資料の収集行為について、慎重に検討するという方向性については賛成でありまして、ここは従来から申し上げているところでありますが、そういう口実と言うとちょっとあれかもしれないですけれども、そういう形で資料が安易に持ち出されることになることを懸念しております。

以上です。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。柿崎座長代理、どうぞ。

○柿崎座長代理 おおむね事務局案に賛成させていだきます。

2号通報の要件の緩和につきましては、要するに1号通報の内部通報体制の整備義務というところで、前回までのお話では、従業員300名を切った中小企業に関しては努力義務にするということになりましたので、努力義務にすることとの対応上、中小会社の従業員からの通報の受け入れ先、通報先を確保しなけれならないということで、2号通報を今よりもよりやりやすくするような形で制度をもう一度見直さなければいけないということまでは、前回までの議論でおおむね了解が得られたのではないかと思っております。

では、どうやって要件を緩和するのかという中で、具体的に(ア)から(オ)までの事務局からの御提案があったのかと思います。論理的には私は(ア)がいいのだろうと思いますが、そうすると1号通報の保護要件との差がなくなるということで、(イ)か(ウ)か(エ)か。(オ)はちょっとまずいかなと思っているのですけれども、全体の建付けの連関性を持たせるのであれば(エ)も分かりやすいのではないかと思っております。

もちろん3号通報の真実相当性の要件は、維持すべきだと思います。

16ページのイの「財産に対する重大な危害」を加えることについては、私は中村委員と同様に「回復の困難性」などを条件に、加えていくべきなのではないかと思います。確かに回復の困難性というところがないと、その他のここに掲げられている事項との平仄が合わないということがありますが、今日的には生命・身体への侵害以外にも、たとえばネット上でのいろいろな回復できないような、将来的に損害賠償では回復できないような侵害行為というのが多々考えられると思いますので、そういう意味で財産に対する重大な危害というものも加えていく必要があろうと思います。

基本的には事務局案で賛成で、17ページにおいても全て賛成いたします。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、後藤委員、お願いします。

○後藤委員 今、柿崎座長代理から言っていただいた内容にほぼ同じような話なのですが、一番我々が問題にしているのは、緩和した場合に実際に相当の件数が想定される場合に、本当に行政側が適切に対応できるのかどうか、その1点に尽きます。

これが一定期間で対応できなかったからといって、3号通報に行くようなことがあってはならないと感じておりますし、3号通報に関しても16ページの先ほど委員の方々からありましたけれども、回復の困難性が一般的に認められるものに限定する。これには賛成いたしますし、ウの2号通報を行った後、行政機関が一定期間内に対応しない場合を特定事由に加えるべきではない、これにも賛成をしたいと思っております。特に法律で定めたからそのとおりに実効性が高まるのかどうかという、そこが一番の問題でして、我々は実効性が伴わないものを法律に幾ら規定しても、ほとんど意味はなさない。ですから行政側の体制をどういう形できちんと整えていくのか。そこと一緒にして法律の改正に臨んでいただきたいと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

今のお話は全体の対象法令の話とも関わりますし、次回、行政側の体制の話は触れますね。そういうところとも関わっていると思いますが、そこのところをしっかりとやっていかなければいけないという御指摘は、全くそのとおりであると思いますので、次回、さらに具体的に議論したいと思います。

そのほかにいかがでしょうか。それでは、春田委員、お願いします。

○春田委員 私も事務局案におおむね賛成の立場で、今、いろいろ意見が出たとおりだと思っております。18ページの通報を裏付ける資料の収集行為のところで、事務局としては法定化については慎重に検討すべきと考えられるとしておりますが、この2ポツの上にあるとおり、何らの裏付けなく通報しても、なかなか通報の受け手を調査・是正措置に着手させることは難しいという実態や、行政機関の通報や外部への通報の場合には真実相当性を満たしていないとして不利益取扱いから保護されないリスクも抱えるということもありまして、なかなか現状において通報者が裏付け証拠を収集する必要性は一定程度あるのではないかと考えております。これは通報する側の立場からの意見でございます。

そういう意味で、今後法定化については慎重に検討というところで、この一定程度の必要性というところも少し鑑みて検討をいただければと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにさらにございますか。まず林委員、お願いします。

○林委員 おおむね賛成なのですけれども、先ほどありました真実相当性に関連しての通報を裏付ける資料の収集という観点からしますと、今こういう事案があるんですというふうに行政機関に持っていったとしても、証拠はあるんですかと言われて、事業所に帰って何か資料を持ち出してしまう。持ち出したということで懲戒解雇されてしまったというので裁判になった事案がありました。

真実相当性を求められたばかりに解雇されてしまって、それが裁判になる。その人にとったらそれは非常に不幸なことで、事業所内で不正があるから告発しようと思って、正義感を持って言ったにもかかわらず、裁判に巻き込まれ、解雇されというような事案になるのは余りにも悲しいことではあると思いますので、真実相当性の要件については緩和をすべきであると考えています。そうすれば、資料の収集もそんなに必要性がないというのはあれですけれども、非常に容易になるのではないかと考えています。

○山本座長 浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 今の真実相当性の要件の緩和というのは必要だと思います。それで2号通報の要件を緩和するので、では資料収集行為の免責の法定化は先送りでいいのかというと、私はそうではないと思います。もし証拠を収集することができるのであれば、何もないよりは公益通報かどうかの判断ができると思いますし、その後の調査も迅速に進むと思います。

重要なのは、証拠を目的外のことで使わないとか、情報管理というところだと思いますので、もしそれができないようでしたら、そこにはペナルティーを科すというようなことでリスクは一定、抑えられるのではないかと思います。

それから、内部通報を促進するためにも収集行為の免責というのは必要なのではないかと思いますので、ぜひここの法定化のところは考えていただきたいなと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。お願いします。

○池本委員長代理 オブザーバーの池本です。

議論の方向性はできるだけ委員の皆さんの意見を尊重したいと思うのですが、2点だけ発言させてください。

2号通報の真実相当性を緩和することについてはどうかという論点で、これは先ほども議論がありましたが、中小企業団体の方はむしろ内部通報の体制を自ら整備するというのはなかなか困難である。むしろ行政の窓口で対応していただくことが望まれるということがヒアリングの中でも出ていたかと思います。

では、どの要件がいいかというところですが、(イ)の「疑うに足りる相当の理由」というのは、刑事訴訟法の中では実態としてはかなり厳格な運用をされています。同じ用語を使うと、どうしてもその解釈に引っ張られるというのが裁判所の傾向がありますから、これはちょっと適切ではないのかなと。だとするとむしろ(ウ)の重過失なく信じたとするか、(エ)の3号のイからニを真実相当性のほかに追加するという、この2つのほうが現実的な選択肢かなと感じています。それが1点。

もう一つ、財産被害を加える。ただ、全く同列だとバランスを欠くおそれがあるので、回復困難性を入れてはどうかという御意見がありました。ただ、回復困難性というのはある意味、ふたをあけてみないとなかなか見えない。生命・身体のように性質上、判別できるものではありません。むしろ多数性あるいは多数または重大な財産被害というような、ある程度、外形的にはかれるものとするのが妥当ではないか。参考として消費者安全法が消費者庁に権限を与えているものとして多数消費者財産被害事態という用語を使っています。要するに不特定多数の者に被害が及んでいく事態は行政としても放置できないところがありますので、多数または重大なという、何か外形的にはかれる要件のほうが妥当ではないか。この2点だけ参考にしていただければと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、順番に若干の補足の発言等も求めながら全体をまとめたいと思いますけれども、まず2号通報の真実相当性の要件に関しましては、緩和をすべきであるという意見が多かったと思います。中村委員は(ア)から(オ)に関して全て反対ということですか。

○中村委員 はい、全体として反対です。

○山本座長 分かりました。確認したいのですけれども、14ページの(エ)はかなり問題のある場合について真実相当性の要件を外す案ではないかと思います。3条3号のイからニに挙がっているものは、かなり事業者の側の行動に問題がある事例だと思うのですけれども、こういった場合も外すべきではないというお考えなのでしょうか。

○中村委員 基本的にはそういうことなのですけれども、先ほどの行政機関の体制整備というところにも関わってくるかなと思うのですが、行政機関と言ってもいろいろな規模であったり、判断力もいろいろあるかなというところもございますので、その職員が秘密保持の義務を負っているため風評被害が生じるおそれは小さいというところが、必ずしもそうなのかなという部分もございます。

○山本座長 (エ)の要件を加えると2号通報が非常に増えてしまって、行政機関が十分対応できなくなってしまう。いわばいいかげんな対応になってしまうことがあり得るということでしょうか。

○中村委員 はい、そのとおりです。

○山本座長 ただ、3条3号イからニに当たるような事態がそれほど多いでしょうか。あるいはこれはむしろ多くては困る事態だと思うのですけれども、それをもって行政機関の負担が増えるかということと、行政機関の側の事情の問題は確かにそのとおりだと仮にしても、イからニのような場合にも真実相当性を要求することが、公益通報する側の目から見て果たして正当化できるのだろうかという気もするのですけれども、その点はいかがでしょうか。その点が、例えば(ア)は要件を全部外してしまうということなので、これはかなり現状に比べると大きな変化になると思うのですけれども、(エ)に関してはどうだろうかと伺っていて思ったのですが、いかがでしょうか。

○中村委員 それはイからニが実際にあるということではなくて、そういうふうに通報する人が考えたということに実際的にはなると思われますので、それが実際にあるということだけではないのかなと。

○山本座長 公益通報一般、保護要件に入るか入らないかということ一般について言えることで、通報をする側はそこのところのリスクを考えた上で通報すると思いますので、それほど増えるであろうかという気もするのですが、そういうことを御懸念で反対ということですか。

○中村委員 はい、そのとおりです。

○山本座長 分かりました。

ということで、中村委員は今のような御意見で反対をされましたが、ほかの委員の方はおおむね方向性には賛成の意見を表明されたと理解をいたしました。ただ、具体的にそれではどうするのかという点に関して、(エ)は比較的明確であると思うのですが、例えば(イ)に関しては先ほど池本消費者委員会委員から御指摘がありましたように、刑事系の法律に定められている要件で、それ自体としてかなり厳しく運用されているのではないか。そうすると余りこれを入れても緩和する効果はないのではないかということがありました。

それから、池本委員の御意見ですと(ウ)のほうがむしろという御意見であったかと思います。この辺は、法律用語としてどういうものを使うと、どれぐらい緩和されるかという非常に技術的な話になってしまうところがありますので、さらにここのところは検討する必要があろうかと思います。

大体法改正をする際に、程度を緩和しようとするのだけれども、ぴったりする語彙が法令用語としてないということも結構ありますので、したがって、あるいは場合によっては用語は変えないで、しかし、公益通報者保護法の趣旨に沿って緩和をされた要件として、これを解釈すべしということを示すというやり方もあるのかもしれません。そこのところは法令の技術的な話になってしまいますので、一体どういう方策があるのかということをもう少し検討していただきたいと思います。

(エ)に関しては、中村委員から、これをもって非常に通報が増えて、行政機関が対応できなくなってしまう事態があるのではないかという理由からの反対がございましたが、私はその理由では余り納得ができないところがありますが、そのような意見もございました。

3号通報について、真実相当性の保護要件を維持するという点に関しましては、特に反対する御意見はなかったと思います。

その上で、特定事由に関しまして、まずアですが、これについて中村委員は反対という御意見だったわけですね。その点の理由は何でしたか。すみません、先ほど言われたのかもしれませんが、確認したいと思います。申し訳ありません。15ページの下の部分から16ページにかけてのところです。

○中村委員 この部分は先ほども申し上げたのですけれども、通報者にとって不満な反応であった場合に、内部通報体制は整っていないということで、結局、通報に出るという行動が容易に考えられるという理由であります。

○山本座長 抽象的な要件になっているので、通報者がそれに当たると考えて通報するといったおそれが大きいということですか。

○中村委員 はい、そのとおりです。

○山本座長 この点は事務局から説明はありますか。

○廣瀬消費者制度課長 前回の体制整備の話とも関係するわけでございますが、体制整備につきましては指針などで内容を示すといった御提案をさせてもらっておりますが、その内容については多様な取組が包含できるように、柔軟なものにしていくべきであるというような検討をいただいたところだと承知しております。

その観点からしますと、体制整備義務そのものがここで第3号の特定事由に入ってしまいますと、非常に柔軟なものがそのまま入ってしまうことになると、先ほど中村委員がおっしゃったような御懸念が生じ得ることもあり得るのではないか。そういう意味では、内部通報体制整備義務に違反していることをそのまま書き切ることができるのかといったところは、検討すべきだと考えております。

○山本座長 15ページの末尾のところにありますのは、例えばこの内部通報体制整備義務の中でも比較的外形的に判断ができるものと、そうでないものがあるのではないかということですね。感じとしては、特にそうでないものを入れてしまうと、今、中村委員が御指摘のような問題が生じる可能性がある。他方、比較的外形的に判断が容易なものについては考える可能性があるのではないかという意味合いなのでしょうか。

○廣瀬消費者制度課長 そのようなことでございます。柔軟な書きぶりになっているところがそのまま入ってくると、中村委員がおっしゃったような御懸念が生じるのではないかと理解しております。

○山本座長 もう少しここのところを具体的に、外形的に判断できるような要件に絞る場合、中村委員はそれでも反対をされますか。

○中村委員 それが完全に外形的というような形でお示しいただければ、それは検討の余地はあるのではないかと思います。

○山本座長 分かりました。それでは、この点に関しましては中村委員からはただいまのような問題点の指摘がございましたので、この点を克服できるような要件の定め方があり得るかということを検討していただくことになろうかと思います。

どうぞ。

○柿崎座長代理 今の点ですけれども、検討の1つの素材として亀井委員からご提出があった外部通報の保護要件等の3のところで、これから運用していく認証制度を活用していくという点が、折り合いのつけ方としてどうかいう御提案があったと思うのですが、中村委員のおっしゃっていることも理解できるところがありますので、例えば1つの案として第三者認証が得られている組織については、1号通報を経ずして2号、3号に持ち出すというのは制限するというようなアプローチも検討の余地はあるのではないかと思います。あくまで、折り合いのつけ方という意味で、御検討いただければと思います。

○山本座長 では、それはそのようにお願いできますか。

○中村委員 亀井委員の意見としては、そういう御意見はあったのですけれども、私としてはどちらかというと今の認証制度というのは先回、提案がありました制度を義務化するという内容よりも、さらに高度というか、ある意味、特殊な内容も入っている内容だと思っていますので、なかなか第三者認証が前置という形になることに関しては、それ以上に厳しいのかなと感じております。

○山本座長 亀井委員がこの場におられませんので、これ以上、意図を伺うことはできず何とも言えませんけれども、亀井委員の出された意見も参考にしながら検討していただくということではないかと思います。確かにどのような意図で、認証というものがどういうものとして想定されているかということも分からないところがございますので。

どうぞ、お願いします。

○廣瀬消費者制度課長 1つだけ、検討はいただいておりますのでよく読んで検討したいと思いますが、中村委員おっしゃったように今、民間事業者向けのガイドラインというものがございまして、その中には一般的な事業者に広く行われている取組以外のものも含まれているものになっておりまして、そういう意味でガイドラインについても全てを満たすことというのはなかなか、全ての企業が全てを満たすというつくりにはなっていない。目指すべきものになっているということでございます。

それをまず現行あるものとして、認証制度というのはその中から全てを満たすことは困難ですので、一部を必須項目、一部を任意項目といたしまして、一定の比率を超えた企業に一定のマークのようなものを付与する仕組みを考えておりますので、中村委員、御指摘のとおり非常にレベルの高いものとなっておりまして、なかなか全ての企業が全て満たせるというものではないと考えてございます。

一方で、これも新たに検討されているものですけれども、体制整備の指針というものにつきましては、ガイドラインよりは全ての企業に努力義務として課すべきものにふさわしい柔軟性を持ったものにする必要があるという御検討の結果をいただいておりますので、そういう意味ではガイドラインを中心に挟みまして認証制度の基準と今回、体制整備の対象になる基準というのは両側にあるという形になっていると考えております。

○山本座長 前回も、体制整備義務を法定化するときに、義務の最低限というか、必要最小限のラインと、現在のガイドライン等の基準との間の関係を整理する必要があるということが指摘されております。その点も踏まえた上で、ガイドライン等の中に今、一般的に要求されていることもあるという御指摘もございましたので、その中身を参考にしていただいて、何か具体的な要件を抽出できるかどうかを検討する作業になろうかと思いますが、何か林委員ございますか。

○林委員 認証制度というのは、この議論の中で持ち出すべきではないのではないかと思っているのですが、これはガイドラインで認証制度を作るというのはすごくいいことだと思いますけれども、認証制度を取り入れているところはいきなり2号も3号もいってはだめだよというのは、事と次第によっては内部に言えないような通報もあると思いますので、そういうものが期待できない場合もあると思います。そういう通報を封じ込めることになってしまうのではないかという懸念がありますので、そういう法制度というのはここでは検討すべきではないと思います。

○山本座長 認証制度そのものを入れるというよりは、今あるガイドライン等の中の具体的な要件の中で参考にできるようなものがあるかということを検討することになるのではないかと思います。御指摘をいろいろいただきまして、ありがとうございます。今の点は、さらに具体的な基準を抽出できるかということをお考えいただく。

それから、財産に関する重大な危害に関しては、基本的には皆さんに方向としては賛成をいただいたのではないかと思いますが、要件の設定の仕方に関して、中村委員と柿崎座長代理からは回復の困難性という基準が示され、池本委員からはむしろ重大性、多数性の要件をとるべきではないかという御意見がございました。ここも消費者安全法とか消費者関連のいろいろな法令の中で、こういう重大な財産被害といった要件が出てくるところもございますので、それとの関係も考えながらさらに詰めていただきたいと思います。基本的な方向は賛成いただいたと思いますが、それはよろしいですか。

回復の困難性といいますと、全然違う分野ですけれども、かつての行政事件訴訟法の25条の執行停止の要件がこの回復困難性という要件で、これに財産被害のようなものが入るか入らないかとか、いろいろな議論があったところでございますので、そういったこと等も考えて、法令の技術的な問題も入りますけれども、どういった要件の定め方があり得るかをさらに検討いただきたいと思います。

16ページのウに関しては特に反対はなかったと思います。後藤委員からは、これは非常に重要だということが指摘されました。

その次のところに入りまして、退職者に対しては特に反対はなかったと思います。役員に関しても方向としては反対はなかったと思いますが、中村委員は3条3号ロを例外にすることに反対という御意見ですね。証拠の隠滅、偽造、変造のおそれがあると信ずるに足りる相当の理由ですね。こういう場合もやはりまず内部通報を経るべきであるということなのでしょうか。

○中村委員 内部通報というよりも内部での是正措置ですね。取締役等の役員は会社に対してそういう改善措置をとる義務を負っているし、その能力もあるという前提の中で、そこの証拠回復という部分に関して例外に置く必要はないのではないか。他方で個人の生命・身体に危害が発生することに関しては、待ったなしということなので、そういうことでいいのではないかということでございます。

○山本座長 しかし、ロの場合はかなり危ないケースではないかと思うのです。証拠隠滅、偽造、変造のおそれがあるという場合ですけれども、この場合も例外を認めるべきではないということになるのでしょうか。

○中村委員 私のイメージですけれども、こういう重大なことがあるということで例えば具体的には取締役会を開催して、そこで問題を提起するようなことだと思うのですが、それで証拠の回復というか措置がとれないようなケースが一般的にあるのかなという疑念がございます。

○山本座長 その点はいかがですか。何か事務局のほうから。

○廣瀬消費者制度課長 ここはイとロというのが条文の構造上、公益通報すればという書きぶりになってございまして、イは公益通報すれば解雇その他不利益な取扱いを受ける場合、ロは公益通報すれば証拠が隠滅、偽造、変造される可能性がある場合となっておりまして、いずれも公益通報を内部にすることによって何らかの問題が生じる場合であると考えているわけですが、このうち自分が不利益な取扱いを受けるようなことを信ずるに足りる場合であっても、役員であれば、まずは内部是正の義務を果たすべきであろうということでイを落としているわけですが、ロにつきましては内部に通報をすれば証拠が隠滅、偽造、変造されるということで、そもそも是正措置自体ができなくなる可能性があるのではないかということで、ロは残しているということでございます。ホについては急迫した場合ということで入れさせてもらっているところでございます。

○柿崎座長代理 ロについては、取締役の善管注意義務というのはどこまでを要求しているのかということになりますが、ロのような状況においては、まさに企業自体に自浄能力がない場合であり、善管注意義務を果たす期待可能性がないところで義務の履行はできないと思いますので、ここはやはり入れるべきだと考えております。

○山本座長 ということですので、このロを入れることに関しては反対の意見があったのに対して、むしろ今のような賛成の意見が示されたということかと思います。

あと、取引先に関しましては、ここは特に御意見はなかったかと思います。そもそもこれを入れるかどうかというところについて先ほど議論があったところですけれども、これを入れたときにということに関しては、特に異論はなかったと思います。

最後の点、資料の収集行為に関しましては、多くの委員はこの原案に賛成である。ただ、賛成という場合の条件として、先ほどの真実相当性の要件が緩和されることを前提にして賛成をされたと思います。春田委員もそういうことでよろしいでしょうか。真実相当性の要件を緩和して、なるべく持ち出しが不要な状態にすることを前提にすれば、ここについては義務化や法定化をしなくてもよいのではないかと理解してよろしいですか。それでもなお法定化について検討すべきであるという御意見ですか。

○春田委員 この最後のところにあるとおり、通報者が裏付け証拠を収集する必要性が真実相当性の緩和というのとつながっているのは事実なのですけれども、それだけではない部分も少しあるのではという懸念があるというのが正直なところです。だけれども、そうは言っても下に書いてある懸念についてもよく理解するところもございますので、真実相当性の緩和というところとの連動ということで今回は理解したいと思います。今後もしこれを検討する際には、通報者が裏付け証拠を収集する必要性については引き続き議論していく必要もあると思っております。今回は理解いたします。

○山本座長 浦郷委員は、ここについてはむしろ検討すべきであるという御意見であったということですね。分かりました。

この問題に関しましては、したがいまして多数の方は真実相当性の要件を緩和するのであれば、この法定化は必要ないのではないかという御意見であったかと思いますが、しかし、今後検討すべきであるという御意見もあり、さらにやはりこれについては法定化をすべきであるという浦郷委員の意見もあったということでございます。よろしいでしょうか。


≪5.閉会≫

○山本座長 これで全て終わったと思いますが、若干時間を超過いたしまして申し訳ございませんでした。

それでは、以上をもちまして本日は閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)