第20回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年10月25日(木)9:30~12:05

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、石井委員、浦郷委員、亀井委員、後藤委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 池本委員長代理、鹿野委員、樋口委員
【消費者庁】
高田政策立案総括審議官、廣瀬消費者制度課長、大森消費者制度課企画官、
消費者制度課担当者
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎

議事次第

  1. 開会
  2. 事業者等における通報体制の整備について
  3. 守秘義務について
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 それでは、定刻となりましたので、開始をいたします。

本日はお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから第20回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

最初に、配付資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。不足がございましたら、事務局までお願いいたします。


≪2.事業者等における通報体制の整備について≫

○山本座長 さて、本専門調査会では、7月に中間整理を行いました後、関係団体等からヒアリングを行ってまいりました。本日からは、取りまとめに向けた個別論点の検討を行いたいと思います。

これからの検討の予定ですが、本日は、事業者等における通報体制の整備と守秘義務につきまして、御議論をいただきます。

また、現時点の予定ではございますが、次回の専門調査会におきましては、通報者の範囲、通報対象事実、外部通報の保護要件、資料の収集行為等につきまして、御議論をいただくことを予定しております。

さらに、その次の専門調査会におきましては、行政措置、刑事罰、立証責任の転換、その他の論点等につきまして、御議論をいただくことを予定しております。

それでは、本日の議題に入ります。

まず、事業者等における通報体制の整備という本日の第1のテーマにつきまして、消費者庁から資料1の説明をお願いいたします。

○大森消費者制度課企画官 消費者制度課の大森と申します。

それでは、提出資料について御説明申し上げます。「事業者等における通報体制の整備について」という資料を御覧くださればと思います。

まず、中間整理の概要ということで第1に書いております。内部通報体制及び外部通報体制の整備に係る事項の中間整理について、概要から引用させていただいております。この項目に基づきまして、(1)内部通報体制の整備義務を課することの是非、(2)対象とする事業者の範囲、(3)履行すべき義務の内容、(4)義務の履行を確保するための措置に分けて記載しており、次のページに参りますが、行政機関についても通報体制整備義務を課す方向で検討すべき。通報体制の整備義務を課すことについて、地方自治法との関係も踏まえて、関係機関との調整を踏まえつつ検討という引用でございます。

次に、中間整理に対する関係団体等・関係省庁の意見でございます。これにつきましては、9月に開催されました18回、19回の専門調査会におけるヒアリングの概要でございまして、2ページ、3ページ目に内部通報体制及び外部通報体制の整備について賜った意見を要約してお示ししております。

ここまでは、これまでの専門調査会の動きということでございますけれども、それ以降の動きとして、3ページ目に参りまして、下のほうに関係省庁の意見とございます。中間整理に対しましては、事後に関係省庁に意見照会を行っております。この論点につきましては、行政機関における通報体制の整備義務を課すこととした場合、組織の規模を踏まえた除外規定を盛り込むなどすべきではないか。あるいは事業者内部での自浄作用を高めることを促すことが公益通報者保護制度の趣旨であるとすれば、むやみに2号通報、3号通報を促進させるのではなく、むしろ1号通報として事業者になされる通報の要件の緩和や、事業者に対するサンクションの加重、内部通報体制の整備に対するインセンティブの付与等の観点から通報者の保護を図ることをまず検討することが適切ではないかというような意見が出されているところでございます。

それを踏まえまして、4ページ、事実関係の整理をさせていただいております。

まず、立法時の考え方といたしまして、現行の公益通報者保護法につきましては、内部通報体制の整備については特段の定めを置いておらず、外部通報体制の整備についても特段の定めを置いておりません。当時の衆参両院の法案質疑における附帯決議におきましては、政府に対して、国、地方を通じて行政機関における通報・相談受付窓口の整備・充実、あるいは公益通報体制の整備などを求めているところでございます。

それを踏まえまして、(4)でございますけれども、法制定後において政府として各種ガイドラインを制定し、民間事業者及び行政機関が通報に対応するための仕組みの整備の必要性ということを示しております。内容につきましては参考6に書いておりますけれども、詳細はここでは省略させていただきます。

次に5ページ目、立法後に明らかとなった問題です。まず、内部通報受付窓口の設置状況ですが、消費者庁の実態調査において整備率を調査した結果、特に従業員数300人以下の中小規模民間事業者から整備率が低下するという傾向が顕著にあらわれておりました。内部通報を受け付ける仕組みを整備していないと回答した民間事業者にその理由を尋ねたところ、法律上の義務ではない、あるいは人手が足りないといったことを挙げられ、そのほかには、制度を知らないとか理解の不足に関わるものも多く挙げられたところでございます。

6ページでございますけれども、下のほうです。行政機関の内部通報窓口においても、府省庁や都道府県では設置が完了して、政令指定都市、中核市、特別区のように比較的規模が大きな市区では設置がおおよそ完了していた一方で、規模が小さくなるにつれて設置率が低くなる傾向にあるというのを6ページ、7ページにかけて図示しておるところでございます。理由についてもやはり同様に、人手が足りないとか理解の不足に関わるものが挙げられているところでございます。

次の外部通報受付窓口につきましても同様に、市町村の規模が小さくなるにつれて設置率が低くなる傾向にあります。8ページにかけてなのですけれども、その理由としては、人手が足りないことのほかに、各所管法令を担当している部署で既に通報対応しているので特に必要性を感じないというようなことが挙げられております。こういった事例につきましては、通報受付窓口が機能しているとも評価できるのですけれども、一方で、それが通報先として外部に認識されていないという可能性があるところでございます。

そのページのマル3で窓口が設置されていないことの問題でございます。この調査なのですけれども、窓口が存在するということと、不正行為を知った場合に内部通報を行うという行為の間に相関関係が示唆される調査もあります。9ページに参りまして、よって内部通報受付窓口が設置されていないか、労働者に知られていないことにより、組織内部で自浄作用を働かせる数多くの機会を逸してしまいかねず、かかる事態は公益の実現の支障となり、立法時の考え方に沿うものではないと考えられる。また、こうした通報受付窓口の有無に関する労働者の認識が通報するかどうかの行動に大きな影響を及ぼし得るということは、外部通報受付窓口にも当たり得ると理解することが自然であると考えられるところでございます。

次に、同じページで、通報において適切に対応されないことによる問題です。内部通報においての調査において、通報することを考えたが実際はしなかった理由について、通報したことが労務提供先や上司・同僚等に知られると人事上の不利益や嫌がらせを受けるおそれがある。9ページから10ページにかけてでございますけれども、通報しても改善される見込みがないことが挙げられております。また、通報する場合、まず労務提供先に通報しないとする理由についても、通報に十分対応してくれない、あるいは労務提供先から解雇や不利益な取扱いを受けるおそれ、労務提供先や上司・同僚等から人事上の不利益や嫌がらせ等を受けるおそれがあることが挙げられます。

下のほうで、現実の問題として、消費者庁に設置されたダイヤルにおいても、直近5カ年で確認できるだけで、少なくとも、内部通報先からの漏えいに関する相談33件、通報理由の不利益取扱いに関する相談323件が挙げられておりまして内部通報体制に不信感を抱いている旨の相談が寄せられていて、事例として2つ、それから通報者が特定されてしまった事例として8つ挙げているところでございます。

12ページに参りまして、これらを整理いたしますと、労働者というのは、通報者を特定可能な情報が漏えいしたり、通報を理由に解雇その他不利益な取扱いを受けること、また、通報しても適切に対応してくれなかったり、改善されないことを懸念しておるのですけれども、実際、このような懸念が現実のものとなっている事実が見られている。内部通報をしようと考えた労働者が、このような事実を目の当たりにすれば、内部通報をちゅうちょしかねないと考えられるというところでございます。

外部通報においても同様でございまして、調査において、通報する場合にはまず労務提供先へ通報しないと回答した方の24.9%が、権限を有する行政機関に通報したほうがしっかり対応してもらえるとしつつも、自らが通報したということが労務提供先や上司・同僚に知られてしまうのではないか、通報しても対応してくれないのではないかというような不安を挙げているということがございます。

13ページですけれども、外部通報を受けた行政機関における不適切な対応によって外部通報者が特定されてしまった事案例を6つ紹介させていただいています。たとえ、外部通報受付窓口が設置されていたとしても、不安を掲げた労働者が、このような行政機関からの情報漏えいや、通報しても適切に対応してくれないといった懸念を現実のものとして目の当たりにすれば、外部通報についてもちゅうちょしかねないと考えられるという整理をさせていただいております。

14ページ以降が、これを受けて当方で行った検討及び結論という形になります。

御提案という形で示させていただいておりますけれども、まず、内部通報体制の整備義務を課すことの是非ということでございます。内部通報受付窓口が設置されていない、あるいは設置されていることが労働者に知られていないこと、また、たとえ、これが設置されていたとしても、内部通報が適切に対応されていないことで、労働者が内部通報することをちゅうちょしかねないということから、以下、考え方の提案なのですが、民間事業者及び行政機関に対して内部通報窓口等の内部通報体制の整備を義務付けるべきという考えについて、どうかとさせていただいております。

次に、対象とする事業者の範囲でございますけれども、基本的な考え方として、内部通報に適切に対応されない事案というのは企業規模にかかわらず生じているところでございまして、内部通報への適切な対応というのは、本来、全ての事業者において行われるべきと考えられますが、事業者からは人手不足を懸念する回答も多数あることを踏まえまして、中小規模の民間事業者の事務負担等を勘案して、これらについては努力義務にとどめる必要があるとの考え方もできますが、どうかとさせていただいております。

その上で、内部通報対応体制整備の義務・努力義務の区分の考え方でございますけれども、内部通報者の主たる者として想定されている労働者の保護という観点で、労働関連法令の本則を見ますと、義務・努力義務の区分を設けている法律例としては、参考7の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律、次世代育成支援対策推進法が挙げられているということでございます。

これにつきましては、常時雇用する労働者数が300人以下の一般事業者について、立法時は努力義務としておりまして、国及び地方公共団体におきましては、特定事業主としての義務とされております。行政機関は、一般事業主に対し率先垂範する観点から、着実に進めることは大きな意義があると考えられているところでございますので、本法におきましても、常時雇用する労働者数が300人を超える民間事業者に内部通報体制整備を義務付ける一方で、本来、内部通報への対応というのは、企業規模を問わず全ての事業者において行われるべきものであることから、常時雇用する労働者数が300人以下の民間事業者についても努力義務とすることについて、どうかとさせていただいております。

また、行政機関におきましては、民間事業者に対して率先垂範することに大きな意義があると考えられることから、これらについてはすべからく義務付けるべきという考え方について、どうかとさせていただいております。

次に(3)として履行すべき義務の内容でございますけれども、これまで示した懸念によりまして、労働者が内部通報することをちゅうちょしかねないと。このことは、法目的の達成に支障を来すことを踏まえて、アからオまでございますけれども、内部通報受付窓口の設置など内部通報を受け付ける運用、受付窓口を組織内周知する運用、通報者を特定可能な情報の共有を必要最小限の範囲にとどめる運用、公益通報したことを理由に解雇その他不利益な取扱いを禁止することの徹底、あるいは必要に応じて、調査・是正措置の実施及びこれらの進捗に係る内部通報者への通知を行う運用、これらが機能するような体制を整備すべきものとして求めるべきという考えについて、どうかというところでございます。

体制については、組織ごとの事情や規模によって様々であるということが想定されます。したがいまして、アからオに掲げた事項が適切に機能するのであれば、例えば既存の内部社員・職員からの問い合わせや情報提供、相談を受ける窓口、あるいは本社や本省・本庁等の上部組織の窓口、これは支社・本社とかの場合は本社に置くというような関係とか、通常の人事的な措置を取り扱う人事担当部署の体制を活用するといったことも可能と考えられます。

そこで、これも御提案ですが、新たに法に基づき指針を策定することとし、指針の中で、これらが機能することができる体制として考えられる具体例とともにその組織ごとの事情に応じて柔軟な体制を取り得ることを示すべきとの考えについて、どうかということも提案させていただいているところであります。

なお、15ページの(4)履行を確保するための措置でございますけれども、これは現在、不利益取扱いに対する抑止策として行政措置等の導入が審議されておるところでございます。したがいまして、後の回になってしまいますけれども、内部通報体制の履行を確保するための措置についても、不利益取扱いに対する抑止策とあわせて検討してはどうかと。これについては行政措置を議論する際にあわせて議論いただきたいと考えております。

次に、外部通報対応体制整備義務についてです。その是非についてですけれども、16ページ以降になるのですが、権限を有する行政機関における外部通報受付窓口の設置状況につきましては、内部通報受付窓口の設置状況とほぼ同じ傾向にありまして、これらが設置されていないことによる問題、また、これがたとえ設置されていたとしても、外部通報に適切に対応されていないことによる問題は、いずれも内部通報において示したものと本質的には同じであるということを踏まえまして、権限を有する行政機関に対して外部通報対応体制の整備を義務付けるべきという考えについて、どうかとさせていただいております。

対象とする行政機関の範囲でございますけれども、権限を有する外部通報体制整備に努力義務を設けるべきかということについては、市町村が処分、勧告等の権限を行使することとされている場合、その規模にかかわらず一律に権限が付与されていることも一般的に見られるということでございますので、行政機関の規模によって法令違反行為の通報対応に差が生じることは適当ではないと考えられることを踏まえまして、外部通報体制の整備については、中小規模であっても努力義務にとどめず、権限を有する行政機関についてはすべからく義務付けるという考えもできるが、どうかとさせていただいております。

履行すべき義務の内容についても、これは先ほどお示ししたとおり、権限を有する行政機関に外部通報受付窓口が設置されていないということによる問題もありまして、また、たとえこれが整備されていたとしても、外部通報に適切に対応されていないことによる問題は、いずれも内部通報について示したものと同じであると考えられることを踏まえまして、アからエにございますけれども、外部通報を受け付ける運用、窓口を対外的に周知する運用、通報者を特定可能な情報の共有を必要最小限の範囲にとどめる運用、必要に応じて、調査・是正措置及びこれらの進捗に係る外部通報者への通知を行う運用が機能するような体制を整備すべきものとして求めるという考えについて、どうかということでございます。

内部通報同様に、組織ごとの事情や規模に応じて体制はさまざまであるということが想定されまして、先ほどと同様でございますけれども、これらの事項が適切に機能するのであれば、既存の外部からの問い合わせあるいは情報提供を受ける窓口、広域連合による共同窓口、通常の法執行を行う体制を活用するということも考えられますけれども、これも同様に、法に基づき指針を策定することとし、指針の中で、これらが機能することができる体制として考えられる具体例とともにその組織ごとの事情に応じて柔軟な体制をとり得ることを示すべきとの考えができるのですけれども、どうかと提案させていただいております。

制度の周知・啓発についてですけれども、体制整備それ自体が目的化されるのではなくて、その体制がいかに活用されるかが重要でございますので、消費者庁においても体制整備の進捗と並行して、周知・啓発の活動を一層充実させてまいりたいと考えてございます。

最後になりますが、地方公共団体に対する義務付けと地方分権との関係でございます。17ページでございますけれども、地方公共団体に対して、体制整備義務を課すこととした場合、地方分権との関係で整理すべきことが生じてまいります。

まず、必置規制の見直しにあたるかどうかという点がございまして、必置規制というのは、国が地方公共団体に対して、法令や法令に基づかない補助要綱などによって特定の資格及び職名がある職員、あるいは地方公共団体の行政機関または施設、審議会等の附属機関を必ず置かなければいけないということを義務付けているものを指します。

この必置規制は見直さなければいけないということがございまして、地方公共団体に内部通報体制及び外部通報体制の整備を求めることについて、それに該当するかということについて申し上げれば、いずれも通報者の保護に最大限留意することなどが求められるものの、特定の資格または職名がある職員や特定の機関を設置することまでを想定していないということがあるので、必置規制の見直しということに抵触するものではないと考えております。

また、義務付け・枠付けの見直しに当たるかどうかです。義務付け・枠付けと申しますのは、地方の自治事務のうち、国の法令によって義務付け、判断基準の枠付けを行うことでございまして、条例で自主的に定める余地を認めていないものについては、所定のメルクマールに該当しない条項については廃止、または条例委任あるいは条例補正の許容というようなことを見直ししなければいけないということがございます。この資料の28ページでございますけれども、義務付けに非該当で残さざるを得ないと判断するもののメルクマールでございますが、アの「行政処分など公権力行使に当たっての私人保護」に該当すると思われますので、結論としては、地方公共団体に内部通報体制及び外部通報体制の整備を求めることについても、義務付け・枠付けの見直しに抵触するものではないと考えられるということでございます。

説明は以上です。

○山本座長 それでは、議論に入ります。

まず最初に、林委員におかれましては、日弁連において、EU及びイギリスにおける公益通報者保護制度について調査が行われたということであり、本日の論点に関連する部分につきまして、調査結果の御説明をいただけるとのことですので、それをお願いいたします。

○林委員 報告をさせていただきます。

9月24、25、26日と、イギリスと、EUの本部のあるブリュッセルに行って調査をしてまいりました。英国の公益開示法というのは、日本がモデルにした法律なのですけれども、これは数回にわたって改正されていると。それから、EUに関しましては、御存じのとおりフォルクスワーゲンの偽装事件、パナマ文書の事件があったということで、公益通報者を保護しなくてはならないという情勢がありまして、今、EU指令案が出ているところであります。

通報体制の整備につきまして、まずEU指令案のほうを説明します。EU指令案では、民間部門及び公共部門の法人に、適切であれば、労働組合などとの協議を経て、内部への通報のルートを設置し、そのフォローアップをしなくてはいけないというふうに通報体制整備を整えることを前提に制度設計をしています。

内部通報制度が求められる範囲についてですけれども、民間に関しましては、従業員50名以上、年間の事業売上高が1,000万ユーロ以上の民間法人について、通報体制整備をしなくてはならないとしています。

それから、公共部門の法人、つまり日本で言えば行政機関の通報なのですけれども、これは国の行政機関、地方の行政機関及び部門、住民が1万人以上の地方自治体についてということで、かなり広い範囲で通報体制整備をしなくてはならないとされています。

次のページ、通報及びフォローアップについてですけれども、通報者の個人を特定する秘密を厳守するということと、通報から3カ月以内に通報のフォローアップの結果を通報者にフィードバックする必要があるということが書かれています。

この指令案ですけれども、大体1年以内には制定される見込みでして、ほぼこの内容で制定されるのではないかという見通しです。

英国の公益開示法についてですけれども、これは労働法の中の一部として制定されているもので、通報整備体制について特に定めはありません。ただ、英国の開示法では、公益通報の妨害や不利益取扱いから通報者を保護するという構成になっていまして、EU指令案とちょっと違うのですけれども、そういう形での法制度があります。

通報を受け付ける窓口としては、現在、Protect(PCaWから改称)というものがあります。年間2,500件の電話相談を受けていまして、公益的な情報をくみ上げることに注力していて、所管庁への公益通報を支援するなど、通報者のために活動しているところです。Protectは、スタッフが20名ほどで、代表者、副代表者は弁護士の資格を有している。トレイニーソリシターというのがいるということです。公益通報を取り扱う法律事務所と協力し合っているということで、Protectは、法律家が通報者に対してアドバイスをするローセンターという位置付けを有しています。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。EUに関する御報告でした。

今のお話によると、1年以内にはもう指令が制定される見込みだということですね。

○林委員 あくまでこれは見込みでして、選挙もあるということですので、年内にはこの指令案を詰めてしまって、ほぼほぼ制定の方向に行くのではないかという見込みです。

○山本座長 分かりました。ありがとうございます。

それでは、議論に入りたいと思います。先ほどの消費者庁からの資料1の説明ですけれども、これに関しまして意見交換をしたいと思います。御意見のある方はお願いいたします。

それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 今回、中間整理の方向性を踏まえてということで、内部通報に関しては民間事業者、行政機関ともに体制の整備義務付け、ただし中小企業は努力義務、それから外部通報に関しては権限を有する行政機関は規模が中小であっても義務付けをするという御提案に賛成します。

ただ、中小企業のところの線引きというのですか。先ほどEUのほうは50人という数字も出てきましたけれども、私はこの程度がよく分からないのですが、個人的には、100人従業員がいれば体制整備は可能ではないかとも思ったりします。今回、世間をにぎわせている免震オイルダンパー製造の不正をした会社は従業員200人ほどということで、もし体制が整っていたら、もっと早く不正を防げたこともあるかなと思います。努力義務ということですが、努力義務だけで整うのかどうなのか。

ただ、今回、ヒアリングのところで中小企業団体中央会のほうから来ていただきまして、300人というお話がありました。ほかの法律でもそこの人数で線引きをしているということなので、今回はこの300人以下の中小事業者は努力義務というところでいいのではないかと思います。でも、今後のところで、ここについては見直しもしていく必要があるのかなと思います。

それから、義務の内容についてなのですけれども、受付の運用とか周知の運用、不利益取扱い禁止の徹底など、これらのことが機能するような体制整備を求めるということで、これは経団連さんがヒアリングのときに、通報体制を整備しているところもあるし、各事業者さまざまでなかなか画一的なものは難しいという意見もありましたので、それを踏まえてかと思いますけれども、このような機能するような体制の整備でいいのではないかと思います。そのためにも指針をきちんと策定するということですので、ここはきちんとやっていただきたいと思います。

ただ、その整備されたものが適切に機能しているのかどうか、そこのチェックは大事だと思います。いつ、どういう相談が何件くらいあったかという運用状況をきちんと記録として残すというような運用や、また、受付窓口とか体制に対しての対応の仕方とか使い勝手、そこら辺のところもきちんとチェックをしていけるような仕組みを作っていっていただきたいなと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

基本的にはこの内容で賛成をいただいたものと受けとめました。その上で、300人の線で努力義務というところを、長期的にはもう少し、さらに義務付けの範囲を広げていくとか、そういったことを考えていくべきではないかと。しかし、現状ではこれでよろしいのではないかという御意見であり、また、義務の内容につきましては、これがしっかりと実際に機能するように執行の面で留意をいただきたいということだったかと思いますが、さらにほかにいかがでしょうか。

それでは、中村委員、お願いします。

○中村委員 ありがとうございます。

まず、300人を超える事業者について整備義務を課すかどうかということについては、履行すべき義務の内容によってではありますけれども、特に反対はいたしません。

他方で、今回の分析を拝見したときに、これはあくまでも理論的な話ではありますけれども、そもそも5ページのところで、整備率が低くなる傾向につきまして、特に従業員数300人以下の中小規模の民間事業者からその傾向が顕著であるという分析があり、その下のところで、300人ないし3,000人以下の事業者が、その理由として、法律の義務とはされていないからということで、という御意見を述べていることを根拠として、今回300人以下の事業者の義務付けを除外することに関しては、若干矛盾があるように感じております。

内部通報について、内部で通報しにくいということをおっしゃっている部分に関しまして、そもそも体制が整備されていないということなのかどうかというところについては、またちょっと守秘義務のところでも意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、整備義務を300人を超える事業者だけに課すことについては、繰り返しになりますが、そのこと自体に反対というわけではありませんけれども、立法事実との関連では若干矛盾があるのではないかと感じております。

続きまして、履行すべき義務の内容でございますけれども、この部分につきましては、まず整備を、現実に窓口を設けているということであったり、周知といったような、外形的に明確な基準で判断ができる内容であれば結構だと思うのですけれども、正直申し上げまして、外部にちゃんと対応してもらえなかったというような意見を言う方の中には、自分の思うようにならなかったがために通報するという方も現実にいらっしゃると感じておりますので、そういった意味で、外形的に明確な基準ということを前提にしていただきたいと思います。

ということですので、エの不利扱いの禁止についても、そういうことをちゃんと規定しているのであれば結構だと思いますけれども、特にオの必要に応じてというあたりが、例えば実際に調査をしたけれども、調査の事実はなかったであるとか、あるいはこれは公益通報の対象ではないので対応いたしませんというような回答をした場合に、きちんとした是正措置というか調査をしてくれないというような不満はありがちなことでございますので、そういった解釈が可能な基準については反対をさせていただきたいと思います。

あわせまして、指針を策定するという案が出ておりますけれども、既に通報に関するガイドラインというのがございまして、それについて企業からは現実等に即していないという意見も多々あるところでして、そうした中でまた新たな指針を出すと、今の解釈というところも含めまして非常に不安定な状況になることが懸念されますので、これは指針で定めるということではなく、誰でも判断ができる形式的な内容について法文で規定するというふうにしていただきたいと考えるところでございます。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

前半の点、義務と努力義務で、現在、数字で見る限りでは余り体制が整備されていない中小企業に対しては努力義務で済ませているところが矛盾ではないかという御趣旨ですね。恐らくこの点は、先ほどの資料の中で申しますと、14ページの(2)のマル1にありますように、本来であれば全ての事業者に義務を課すということが考えられるところではあると。そうすべきではあるけれども、ただ、今まさに御指摘がありましたように、現実の数字が非常に低いところからスタートしているものですから、そういたしますと、先ほどの浦郷委員の御意見にもありましたように、さらに将来的にこれをだんだん整備していって、それで法制度のほうもだんだん全ての事業者に義務付けをするという方向に近づけていく。その過程では、いろいろ政府等々のほうでも実際に体制が整備されるように支援をしていくことが必要ではないかと。少し長期的に見て、現時点ではここからスタートするけれども、しかし、努力義務ということは、インプリケーションとしては将来的にはさらに強い段階の義務を課すことも視野に入れているというメッセージでもあると思いますので、そのように理解をしていただければよろしいかと思いました。

後半のほうですけれども、解釈が必要なものについては反対と言われたのですが、具体的には15ページのオの部分でしょうか。

○中村委員 そうですね。オということなのですけれども、あわせまして、指針において、さらにこうでないと体制を整備しているとは言えないというような形でお示しいただくことはかえって不安定になるので、それはやるべきではないのではないかという趣旨でございます。

○山本座長 先ほど法文にすべきであるというふうに言われたと思いますけれども、そういう御趣旨なのでしょうか。法文でもう少し細かく具体的に決めるべきであるという御趣旨ですか。

○中村委員 いいえ。今のアからエに書いてあるぐらいの内容で法文に書いて、それ以上の中身については、今回の義務付けという範囲内においては求めないということでございます。

○山本座長 そういたしますと、全体のつくりとしては、法文にこのアからエについて書くと。指針はむしろ作らないということなのですか。

○中村委員 はい。おっしゃるとおりです。

○山本座長 私はむしろ、例示の形であれば、指針にいろいろ作ったほうが明確になって、事業者の方にも助けになるのではないかと思ったのですが、一般条項だけのほうがよろしいという御意見ですね。オにつきましては、どのようなお考えでしょうか。

○中村委員 まず、形式的な要件だけにしていただきたいというのが基本でございまして、オに関しては、必要に応じてというようなことが書かれてございますので、この必要に応じてというのがどの程度の重みを持っているかというところもございますけれども、そこに解釈の余地がございますので、そういったところで削除すべきではないかということです。

エについても、先ほど申し上げたように、禁止することを会社の制度としてきちんと定めているということであれば、それはやるのであればやっていると思うのですけれども、例えば現場でたまたま調査の結果として懲戒を受けて、その懲戒を受けた人物が会社の規律に反して不利益というか嫌がらせをするみたいなことは、会社としては禁じているけれども、たまたまそういうことが現実に一時的に起こってしまったというようなことについて、「徹底していない」と評価されるということが考えられる。そのような、個人の資質に関わるような内容については該当しないようにしていただきたいという趣旨になります。

○山本座長 ただ、エに関しては、そういう場合は該当しないのですよね。

○消費者制度課担当者 今の必要に応じてというところでございますが、ここの趣旨としては、現行法の第9条で是正措置等の通知の努力義務というものが規定されてございます。ここはなぜ努力なのかというものを逐条解説等で読み解きますと、必ずしも、都度、通報者に通知を行うということが、調査が円滑に進まないという場合もあり得るので、したがって努力義務とされていると書かれてございます。若干書き方の問題というところもあるかもしれませんけれども、そういった現行法で義務ではなく努力義務となっているというところを意識している部分がございます。

○山本座長 では、お願いします。

○消費者制度課担当者 先ほど中村委員が御指摘されたケースについて、公益通報者保護法で保護されるかどうかという点でございますが、あくまで公益通報者保護法は事業者による不利益な取扱いを禁止しております。事業者の意思と無関係に従業員が行った行為については、もちろん職務として行ったという評価がなされる可能性もないではありませんが、事業者として不利益な取扱いをしてはならないという方針を明確にしているにもかかわらず、本人がそれと無関係にやってしまったということであれば、事業者として行った不利益な取扱いと評価されない可能性も十分あると考えられます。ただ、ここはあくまで個別事案の判断ということで、最終的には裁判所の判断に委ねられるということかと存じます。

○山本座長 ありがとうございます。

そういたしますと、今の中村委員の御懸念については、エはこれ以上書けないような気がするのですけれども、オに関してはもう少し明確に書いていただきたいということなのでしょうか。必要に応じてというのがやや漠然としているので、もう少しここのところを何か具体的に書く方向で検討していただけないかということなのでしょうか。

○中村委員 今、御指摘もありましたように、そもそも現状では義務付けはされていない努力義務の部分でございますし、あくまで場合によると。従前から申し上げておりますが、匿名の事案等も多数ございますし、先ほど申し上げましたが、事案によって、例えば個人、AさんからBさんに関する通報があったけれども、あくまでもBさんのプライベートの中身の話なので、そこの詳細についてAさんにお伝えするのは適当ではないということもございます。いろいろなケースがございますので、必要かどうかというのは最終的には解釈の余地が大きいということで、そういった意味で、要は1号通報がきちんとやられていないということで何らかの、例えばその後のサンクションにつながっていくようなことは避けていただきたいという趣旨で、基本的には削除の方向で、あるいは何らかそういう解釈とか場合によるということがないようなことで御提案いただければ、さらに検討ということかと思います。

○山本座長 そのようなことがあり、一方で、余り具体的に定めてしまうと柔軟性がなくなって事業者の側が個別に工夫をする余地もなくなってしまうということがあり、他方で予測可能性を高める必要があるので、それで基準を法文にした上で具体的な、例えばこういう場合は必要に応じてに当たります、あるいはこういう場合は当たりませんというようなことをいろいろ例示する部分でガイドライン等を作成する。こういう案だったのではないかと思うのです。今、中村委員が言われたようなことは、例の中にいろいろ書いていく。ガイドラインの形で書いていく。しかし、法文上は、一般的に必要に応じてとしておくというような形でも支障はあろうと、そういう御意見でしょうか。

○中村委員 少なくとも現時点では、ガイドラインの中身がこうだというところを見ない中で、なかなか判断は難しいのかなと思います。

○山本座長 そうすると、ガイドラインによってという感じなのですか。分かりました。

すみません。そのほかにいかがでしょうか。

それでは、石井委員、お願いします。

○石井委員 ありがとうございます。

私も、今回、事務局のほうから御提案いただきました案に対しては基本的に賛成の立場でございます。ただ、2点、意見というか御要請がございます。1点目は、やはり本来的にはこの事柄の性質上、全ての民間事業者が体制を整えるというのが目指すべき姿だということは間違いないだろうと思います。その中で、一定規模で切って、規模に満たないところは努力義務という法形式は労働法の世界では幾たびとございましたし、あるいは適用猶予という形で期間的なものを置くというケースもございました。ただ、一様に、そうした本来望ましいものがある場合には、やはり高みに押し上げていく支援というのは極めて重要なことだろうと思いますので、その点についての必要性についてを、この場で認識を共有できればいいなと思っております。

支援の内容にもいろいろなパターンがありまして、まず1つ申し上げたいのは、市町村も人手が不足という事情があるなか、今回義務付けを行うとなったときに、やはり市町村においてきちんと義務を果たしてもらうことが可能なサポート、ということをまず考えるべきだろうと思います。

その際にポイントがありまして、まずは必要性について十分認識してもらうような情報提供がなされることです。実際にそういう体制を整えて、これだけいいことがあった、例えばコンプライアンス意識が高まったとか、そういう好事例を拾い上げて周知するということが一つと、あともう一つは、越えるべきハードルが高過ぎないこと、かつそのことが見える化できているということだろうと思います。

ちなみに、次世代法がここで引用されておりまして、次世代法は、確かに法律ができた当初は300人以下が努力義務だったのですが、平成23年度からは100人以下となり、義務の対象が拡大、努力義務の範囲が縮小いたしております。そのときに行政側が何をしたかといいますと、やはりひな型を示すとか、あるいは好事例を示すとか、そういうこととあわせまして、もう一つ効果があったかなと思いますのは、次世代法の中では認証制度というのを設けておりまして、「くるみん」というかわいい名称でかなり知られつつありますが、そこに対して税制の優遇をつけるという形で恩典もつけたということです。それは中小企業も当然対象となるような認定基準であって、中小企業も実際にとっている。そういうことによって恩典、メリットもあったということ。

いきなり税制の恩典がつけられるかどうかは別としまして、別途認証制度もお考えだということでございますので、ここを作るときの制度設計において、中小企業も十分参加、取得できるような形で制度設計をしていただきたいと思います。そのことによる恩典、少なくとも会社としては非常にいい企業イメージを持てることになると思いますので、それ自体もインセンティブになるだろうと思います。そういう形で、せっかくですから、制度を作っていくときに、やる気があるところがきちんと乗っていけるような、ソフト面のサポートをぜひしていただきたいと思います。それが1点目でございます。

2点目でございますが、先ほど中村委員から、措置の体制整備の内容について、法律で示すのがいいのではないかという御意見があったのですが、私は、セクシュアルハラスメントとかマタニティーハラスメントの制度を念頭に置きますと、やはり指針が良いのではと思います。これは全規模の企業に実施いただいている、措置義務を課しているものでございまして、そこでやっていただくことはポイントを示しながら、あとはいろいろなやり方がありますよという形で事例を示す。それを指針で示しているものでして、既にそういう意味では体験済み、越えられ得るハードルを示しているのではないかなと思います。もちろん、指針にどのようなことを書くかというのは、これから具体的にさらに掘り下げていくべきことなのだろうと思いますが、そういうやり方が現実的なのではないかと思います。

一方、今、現にありますガイドライン、これが非常に意欲的なものでありまして、恐らく経団連さんの企業の中には、これがそのまま指針になるのではないかということで誤解を持っていらっしゃる方もいるかもしれません。今回の事務局提案は法律に基づく指針で、そういうものではない。現実的に実際に義務付けするものですから、明確にこういうことをやっていただきたい、やり方はこれだけ幅がありますということで例示するものであるということを、その違いを、きちんとご理解いただくこととあわせまして、認証制度の中に今あるガイドラインの中身を少し取り入れていく形で、今あるガイドラインの見直しをかけていくことで両者の整理もつけていくことによって、混乱というのでしょうか、その解決も図ることが可能なのではないかと思います。

そして若干これは矛盾と言われるかもしませんが、今、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントの指針では、やっていただくことをきちんと明示しながら、その上で事項を絞って望ましい事項というのを、2点入れております。例えばマタニティーハラスメントに関して言えば、妊娠をして企業の中で働き続ける上で、適切に業務を遂行していくという意識を持っていくことを労働者に啓発することが望ましいとか、あるいは窓口としてハラスメントの窓口を一元的にするのが望ましいとか、この2点に絞って、望ましいことも入れ込んでおります。こういうこともあり得るかなと思います。

私がもし可能だったら御検討いただきたいなと思っておりますのは、企業グループなどで窓口を一本化して、傘下の企業の中小も面倒を見る一元的な窓口を整備している例は多いと思いますけれども、そういうやり方もありますので、お勧めですよというような形でその中に入れるというのもあるのかなと思ったりいたしております。

以上、2点でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

先ほどの論点に関してさらに深い議論をしていただきました。

それでは、後藤委員、柿崎座長代理、春田委員の順にお願いします。

○後藤委員 今回の事務局案については大筋で賛成をしたいと思っております。特に我々中小企業団体から見ますと、前回の関係団体のヒアリングの中で、全国中小企業団体中央会の発言が、ほぼ我々の言いたい趣旨のことを言っていただいております。ただ、問題は、従来から申し上げているとおり、我々は2号通報についてはかなり期待を持っているということもあるのですが、市町村のうち特に町村レベルでは人手不足とか予算の面でなかなか対応ができない。

これを法律で仮に規制し、窓口設置の義務付けをしたとしても、実行ベースで一体どうなのか。そこの手当ては十分にしていただく必要があるのではないかと思っております。国や県は設置率100%という体制がとれると思われる。この点は規制の効果として十分評価ができるのですけれども、それ以外の行政について、特に小さな市町村の場合は、幾ら法律でそれを規定しても対応ができなければ機能しない。ですから、どのような形で外部通報に対応する体制を整えていくのかを十分に御検討いただきたい。

また、予算と表裏の問題になっていると思いますので、予算がつかなければその点について解決できない。ですから、県との連携とか国との連携を市町村でどうやってとっていくのかも十分お考えいただきたいと思います。

それから、事業者への窓口設置の基準としている従業員規模について、だんだん従業員規模を下げていったらいいという御意見もありましたけれども、これは数字から見ると、先ほど来、中村委員からもありましたが、大企業は9割以上が窓口を設置している。ですから、これを法律で定めるのか、定めないのかは別にして、実行ベースでいくとかなりいい感じになっているので、そこまでいっているのだったら法律で定めても何ら支障はないのではないかという考えもあるでしょうし、既にそこまでいっているのだったら、別に改めて規制しなくても十分機能としては果たしているのではないか。いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、中小企業にとっては、特に小規模の部分は将来的に時間がたったから人手不足が解消するという話でもないので、段階的に従業員規模で下げていくということについては、その時々の実情をよく踏まえて慎重に検討していただきたいと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、柿崎座長代理、お願いします。

○柿崎座長代理 私も今回の事務局案に賛成させていただきます。

石井委員の発言とかぶってしまうのですけれども、今、後藤委員からも御発言がありましたように、基本的には全ての企業に対して内部通報体制の整備は本来義務付けるべきであるのだけれども、中小企業の負担感というものがあるので、300人以下というところで一応努力義務の線引きをするということです。ただ、段階を追ってということですけれども、林委員からも御紹介がありましたように、グローバルレベルで見たら300人という基準がどうなのかということは、今後議論していく必要があろうかと思います。そのためにも、中小会社に対してそれをやっていっていただけるようなインセンティブ、支援、サポート体制というものを、特にインセンティブですね。どうやってそれを与えていくのかということをきちんと議論することが大事だろうと思います。

その中で、私も最初に思い出したのは、「くるみん」です。「くるみん」の制度はかなりうまくいっているのではないかと思います。子育て支援、次世代育成のための制度として、とても分かりやすいのです。さらに「くるみん」の場合には、「プラチナくるみん」などで、より高い目標を掲げて、それを達成した企業にはプラチナが付くという方法をとって、その内容を充実させ、押し上げているもので、制度の整備を向上させていくためのサポート体制が充実していると思います。「ムチ」ではなく、「アメ」のほうでやっているなと思いますので、こういった手法に倣う体制の整備というものを、Wマークのほうでも考えていくのはどうかということです。内部通報体制の整備の基準を300人で切ったというところを踏まえて、もう一度指針の見直しが必要なのではないかと思います。

あわせまして、もう一つ、15ページの中で履行すべき義務の内容として、アからオまでの項目を備えていれば、これが履行すべき内部通報窓口になるということなのですが、その目的、機能が果たされれば、そのやり方はかなり柔軟にできるというやり方で私もよろしいかと思うのですが、これをどうやってチェックするのか。これは浦郷委員から最初にお話がありましたけれども、これを消費者庁の方で全部チェックするなどということは恐らく事実上、難しいのではないかと思っております。そのあたり、「くるみん」制度ではどうしているのかなと思うのですけれども、1つは、やはり開示というやり方があるのではないかと思います。開示媒体をどこにするのかというのはこれから考えていく必要がありますが、例えば、企業の有価証券報告書に記載される「コーポレートガバナンスの状況」の中に入れ込んでしまうのか、上場会社に求められる内部管理体制の整備項目中に入れていくのか、何かそういった既存の開示制度とリンクさせていくことも重要であると思います。これらの開示媒体は、ほぼ上場企業向けということになりますので、少し狭いかなと思うのですけれども、それぞれの開示項目において自分たちの企業がこういう工夫をして内部通報体制の整備をしているのだということを、その判断は自主的に判断していただければそれでいいわけなのですから、そうすると、いろいろなバリエーションが出てくると思います。

たとえば、アの「内部通報を受け付ける運用」にしてみても、アメリカなどでは24時間体制、それからグローバルな企業の場合には、自国の言葉で受け付ける体制が整備されているのかというようなところまで内部通報窓口の実効性についてはチェックされます。そこまでを要求することは日本ではなかなかできないわけですけれども、ただ、それに向かって一生懸命やっているところについては、できるだけ開示させて、それがプラスに評価されるような、優良企業は上をどんどん目指していただくというような、何かそういった仕組みも必要なのではないかという点、以上、2点お話しさせていただきました。

○山本座長 それでは、春田委員、お願いします。

○春田委員 私も今回の事務局の提案には基本的には賛成の立場で、1点だけ懸念を述べさせていただきたいと思います。

それは、16ページの外部通報体制整備義務のところで、後藤委員からも発言があってかぶるのですけれども、(2)で、この体制整備は中小規模であっても権限を有する行政機関はすべからく義務付けるものと考えるということでございます。実際に、8ページの資料でもございましたけれども、町で16.8%、村で8.6%が今整備されているという状況で、ほとんど整備されていない状況の中で義務付けるということで、これが本当にうまくいくのかどうかというのは少し懸念があるなと思っているところでございます。ただ、すべからく義務付けるべきという考え方、これは進めていくべきだということで賛成したいと思っております。

その上で(3)の履行すべき義務の内容でも、柔軟な体制を指針の中でとり得ることという記載もございます。広域連合等による共同窓口であるとか、いろいろな提案がされているわけでございますけれども、やはり少し気になるのは、そういった中で、例えばあるエリアで働いている方がどこに通報すればいいのかというのがきちんと分かるように、このエリアの通報窓口はここなのだという形で、やはり第2号通報が重要視される中で、取りこぼしがないように明確にしていくことが非常に重要なのかなと思っています。例えば、その村に設置されなかったとしたときには、中核市のところにまとめて広域で設置するとか、そういったことをしていくのであれば、そこの範囲を明確にしていくことで、エリアで設置されないような、通報先がないようなところがないように、これから運用していく中で検証することも重要ではないかと思いますし、指針でも、そういったところも含め、明確に示していただきたいなということでございます。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

恐らく、窓口等を複数の市町村、あるいは都道府県も入ることがあるかと思いますけれども、共同設置をするとか、あるいは事務の委託をするとか、いろいろなやり方があろうかと思いますけれども、その際には、もとになった市町村が、この窓口はここにありますということをきちんと示し、もしも問い合わせ等があったときに対応していただくことが重要なのではないかと思います。恐らく運用ベースの話だと思いますけれども、その点は御留意いただければと思います。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、亀井委員、お願いします。

○亀井委員 私も、基本的にはこの事務局が提出された案に賛成です。

ただ、ちょっとお願いがございまして、先ほど石井委員もおっしゃったのですけれども、大企業は既にガイドラインを参照しながら体制整備を進めております。そこに指針と、それから認証制度も後から出てくるということで、恐らく石井委員がおっしゃったように混乱が生じると思われますので、それらの関係を明示していただきたいというのと、柔軟な取組で柔軟性を許さない点というのは必ずあると思っています。例えば、今日の2個目の議題でもある秘密保持ですとかは柔軟性が許されない部分だと思いますので、今のガイドラインですと、いまひとつはっきりしていない必須の項目と推奨される項目というのを何らか明らかにして、それを選択していけるような、ある程度具体的なガイドになるような指針、ガイドライン、認証制度の関係を示すことができれば、体制整備も非常にやりやすくなるのではないかと思います。

非常に細かい点なのですけれども、指針ですとか今後の出てくるガイドの中で、内部通報の受信件数をバロメータにするというのだけは避けていただきたい。基本的には、理想的には、内部通報に至る前の段階で不正行為を発見する。そのほうがはるかに社会的にも、企業的にも、組織的にも痛手が少ないわけです。ですので、通報受信件数が少ないのでフレンドリーな窓口ではない、そこでやる気がないというような、そういった短絡的な指標を設定するのはぜひ避けていただきたい。すみません。これはちょっと法と関係ない実務的な話で申し訳ありません。

以上でございます。

○山本座長 亀井委員から御意見をいただきました。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、水町委員、お願いします。

○水町委員 議論はおおむね、これまでお話しになっている点につけ加える点はありませんが、1つだけ、努力義務の従業員数で切るときのよくある問題として、労働者の人数で切った場合、例えば分社化したり子会社化すると何百人未満になって責任を免れるというのが、今、たくさん出てきています。なので、ある程度の人数でこれ以上は努力義務化するということは、やり方としてあり得ると思いますが、実態としては、体力があるところを分社化して、努力義務で、法律上の義務はないのだよというようなことが単純に割り切られることのないように、人数が少ないところであっても、例えば本体のほうで通報窓口の射程に入れていくことを努力義務として、行政としてもちゃんと支援をしたり後押しをするということをやっていただくことが、実態に応じた対応としては必要かなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、お願いします。

○池本委員長代理 オブザーバーの池本です。

ここまでの議論は皆さんの方向性で賛成ですが、1点だけ補足的な発言をさせてください。

ここまで幾つか出たところで、民間の内部通報窓口についても、中小企業での対応力の問題がある。あるいは行政の内部通報や外部窓口についても、中小規模の自治体でちゃんと体制ができるのかどうか非常に心配である。まさにそこは非常に難しいところで、形式的に幾つも兼務している人に、あなたですよと決めたところで、きちんとしたその後の対応ができないと困るという非常に悩ましい問題があろうと思います。

先般のヒアリングの中で岡山県総社市では、外部の専門家をうまく活用しているという例がありました。他方で、弁護士会のヒアリングの中で、通報者に対する支援というのは各地の弁護士会で結構委員会などの体制を作っているようなのですが、通報窓口を作ろうとする民間事業者や自治体に向けて支援ができるというのは、どうも私がイメージしていた以上に弁護士会での頑張りがないようなのです。これは我々内部の問題なのかもしれませんが、例えばこの報告書などをまとめるときに、そういうことが重要であるということを指摘していただいて、それによって弁護士会でもちょっと頑張ってもらうとか、そうすると中小事業者も、何も中で人を決めて研修をやってというのを全部やらなくてもいいのだよと、少しハードルが下がるのではないかと思うので、検討いただければと思います。

以上です。

○山本座長 それでは、林委員、お願いします。

○林委員 今の弁護士会の取組ですけれども、大阪弁護士会では、そういう窓口となりますよということを宣伝して、今、取り組んでいます。ですので、そういうのを入れていただくのはいいと思いますけれども、取り組んでいるところもあるということでございます。

それから、人数につきまして、300人というのは私は非常に残念だと思っているのですが、人数で割り切ることはできないのではないかと思っています。なので、ほかのメルクマールも入れていただいたほうがいいのではないかと。EUの売り上げというような考え方もありますので、やはり大きな企業が不正をしてしまうとそれだけ国民が受ける不利益も大きいと思いますので、そういうメルクマールも入れていただいたほうがいいのではないかと思っています。

それと、徐々に広げていくべきだというお考えは非常にいいことだと思いますので、徐々に段階的に人数を減らしていくのだということをもし明記できるのであれば、法文上にそういうことを書いていただく、あるいは立法過程でそういうことがあったと、改正の過程でそういうことがあったということを付言していただけたらいいかなと思っています。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。大体御意見をいただきましたかね。ありがとうございます。

それでは、ただいまの議論でございますが、おおむね意見の一致を見たのではないかと思います。ただ、細かい点で申しますと、先ほど中村委員から、履行すべき義務の内容の中の、とりわけ15ページの(3)のオの部分について、明確でない、濫用される可能性があるので、これについてはできれば削除していただきたいという御意見がございました。

それから、私のほうで、必要に応じてという部分について、ガイドライン等の形でもう少し細かく例示するということはどうだろうかという御提案を申しましたけれども、この点については、それはあり得るけれども、ガイドラインの中身がどうなるかによるという御意見であったかと思います。

エについても同様の御意見が出ました。具体的にどういうことか、オの場合はおおむね了解いたしましたが、エについては若干よく分からないところもございましたけれども、エについても同様の御意見がございました。

ということで、大まかな方向としてはそのようなことであったのではないかと思います。

ここから先は、将来の課題や運用の問題、あるいは法制化に付随する問題ということになろうかと思いますけれども、特に御意見をいただいたのは、14ページの対象とする事業者の範囲における義務と努力義務の線引きの部分のお話でございまして、林委員からは、ただいま、本当はもう少し義務の範囲を広げたらどうだろうかと。例えばEUの現在の指令案なども参考にして、他のメルクマールを入れることも考えられるのではないかという御提案をいただきました。ただ、現状ではぎりぎり仕方ないけれども、その点を、例えば立法過程等々において明確にしていただいて、将来それを取り入れて義務の範囲を拡大していくというようなことを考えるべきではないかと。そういうことでよろしいですか。

○林委員 はい。

○山本座長 ということでございました。

さらに、御注意といたしましては、例えば分社化する等々のことがあるので、実態としても人数だけで切ることは必ずしも適切でない場合があるのではないかと。その点については、ガイドライン等々で、そういった場合に適切な対応がとられるように注意をしていただきたいということであったかと思います。

それから、将来的には少し義務の範囲を広げていくことが考えられるのではないかということでしたけれども、その点について幾つか実態の点の御注意をいただいておりまして、そのためには十分な支援を行う。認証制度等を活用してインセンティブを与えていく。

後藤委員からは、ただ、そうはいってもやはり中小事業者の実態をよく見た上で、もしも段階的に制度を拡充していくのであれば、そこのところはよく実態を見ていただきたいという御注意がございました。

あとは、特に御意見があったのは、先ほどの15ページの義務の内容に関してでございますけれども、まず中村委員からは、主にアからウということなのかと思いますが、むしろガイドラインはないほうがよいという方向の御意見であったかと思います。多くの委員はガイドライン、指針の存在を前提にして御議論いただいたわけですけれども、その際、いろいろなご指摘をいただいております。1つは、既存のガイドラインあるいは認証制度との整理の問題でして、15ページで想定しているのはあくまで法的な義務、いわば最低ラインの内容が想定されているわけですけれども、既存のものはもっとかなり高いレベルの、まさに望ましいというレベルのものが定められているので、そこのところの関係を明確にして整備をしていただきたいと。

先ほど石井委員から具体的な例もございましたけれども、最低限の義務のレベルと望ましいというレベルとを整理していただきたいということかと思います。そして、できるだけ高いレベルのほうに押し上げていくような方策を、これは現在でもやっていることかと思いますが、引き続きとっていただきたいということかと思います。

柿崎座長代理からは、特に開示の問題が出ました。これはもう少し広く申しますと、義務化したとしても実効性がないと意味がないので、これをいかに実効性のあるものにしていくかということについて、運用状況をよく見る必要がある。その中には、開示の制度等とのリンクをするといったことが考えられるのではないかということでございましたので、ただ単に義務化をするだけでなく、それが実効的にワークするように十分運用状況のチェックであるとか、あるいは開示制度の活用等々のことを考えていただきたいということかと思います。

亀井委員からは、その際に余り数値目標といいますか、受信件数だけで評価するようなことはやめていただきたいという具体的な御注意がございました。

それから、行政側の外部通報体制の問題につきまして、16ページ以下ですが、ここについては余り異論がなかったのですけれども、御指摘がございましたように、とりわけ現在の町村における窓口の整備状況は、数字で見ますと非常に低い状況にあるということでございまして、これを単に義務化するだけで実際に実効的な窓口がワークするようになるのかという点について、いろいろ懸念の声がございました。この点は全くそのとおりであると思いますので、これは恐らく制度化をする際に、既に16ページの下のところにいろいろな選択肢が考えられると。例えば、共同設置等々の手法が考えられるというようなことが書かれていますけれども、いろいろな選択肢を認め、国側でもそれを後押ししていくようなことをしていただきたい。

その際には、弁護士ないしは弁護士会との協力ということが恐らく必要になってくるであろうということで、この点は弁護士ないしは弁護士会に協力を求められるような形でこれから報告書なり、あるいは立法過程に進んでいっていただきたいということかと思います。

例えば市町村等で、現在は情報公開請求があった場合の審査会とか、あるいは不服申し立てがあった場合の審査会のようなものが、これはおおむねどこの市町村にも設置されていて、そこにおいては当然弁護士さんも関与していると思うのです。そのようなこともあるので、全く何もないところから弁護士ないし弁護士会との協力体制を作っていくというのではなく、既にベースになるものはある気がいたしますので、その上で、この分野についても弁護士さんにさらに協力をしていただけるような方策をとっていくことができるし、また、それが有益ではないかと思います。

この点については、したがいまして、関係省庁ないしは関係の地方団体とも議論して、実際にどのような形でこれを具体化できるのか。我々としては、ぜひ全地方公共団体にこれをやっていただきたいということなのですが、それをどういう形であればできるのかということについて、さらに事務局のほうで関係団体ないしは関係省庁とよく議論を詰めていただきたいと思います。

ということで、以上でよろしいでしょうか。ありがとうございます。

≪3.守秘義務について≫

○山本座長 それでは、少々長くなりましたが、次の議題に入りたいと思います。

守秘義務についてでございますが、資料2の説明をお願いいたします。

○大森消費者制度課企画官 次に、守秘義務について御説明申し上げます。

まず、中間整理の概要という順番は変わっておりません。中間整理の引用としましては、守秘義務に関する事項で(1)守秘義務を課することの是非、(2)守秘義務の内容、(3)解除される例外、(4)違反した場合の刑事罰、(5)保護が及ぶ通報者の範囲として1号通報先について示し、次に2号、3号通報先に分けて引用させていただいているというのが1ページから2ページ目にかけてでございます。

次に、中間整理に対する関係団体・関係省庁の意見も同様でございまして、ヒアリングの概要を要約してお示ししております。

これがこれまでの専門調査会の動きでございます。

3ページに参りまして、中間整理に対する関係省庁の意見ということでございます。これにつきましては、公務員の守秘義務については既に法令において罰則が設けられており、新たに罰則つきの守秘義務を設ける必要性は乏しいのではないかというような意見をいただいております。

これを受けまして、事実関係の整理でございますけれども、立法時の考え方として、現行の公益通報者保護につきましては、内部通報に関する秘密や内部通報者の個人情報の保護について、特段の定めを置いていないところでございます。

これにつきましては、法の制定時におきましては、内部通報を受けた労務提供先が通報者の氏名等の個人情報を漏えいすることは、通報者の就業環境を著しく害するために、第5条に規定されている通報者に対する不利益取扱いに該当すると解され、行政機関においては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、あるいは公務員の秘密保持義務を定めた国家公務員法などによって、内部通報に関する秘密や個人情報が保護されると解されているというところです。

次に、外部通報で権限ある行政機関への通報に関する秘密、および当該通報者の個人情報の保護に関する考え方としては、法律においては、外部通報に関する秘密や外部通報者の個人情報の保護について、特段の定めを置いておりませんが、内部通報と同様に、国家公務員法などにより、外部通報に関する秘密や個人情報が保護されると解されております。

当時の附帯決議においても、公益通報を受けた者が公益通報者の個人情報保護に万全を期するように、政府において適切に措置することが求められておりまして、法制定後に策定された各種ガイドラインにおいても、具体的な指針が定められているところでございます。

4ページに参りまして、立法後に明らかとなった課題でございます。内部通報に適切に対応されないことによる問題というのがございまして、消費者庁の調査におきましても、まず労務提供先への通報を考えたが実際はしなかったと回答したことの理由として、通報したことが労務提供先や上司・同僚に知られると人事上の不利益や嫌がらせを受けるおそれがあるということが挙げられております。また、まず労務提供先へ通報しないと回答した理由につきましても、同様の理由が挙げられているということでございます。

5ページ以降ですが、現実の問題として、法制定後においても、内部通報者が特定されてしまった事例が見られまして、5ページに掲げられている事例を御紹介させていただいているということでございます。

6ページに参りまして、これらを整理いたしますと、労働者は、通報者を特定可能な情報が漏えいしたり、通報を理由に解雇その他不利益な取扱いを受けることを懸念しているのですけれども、実際にそのような懸念が現実となってしまっているという事実がございまして、内部通報をしようと考えた労働者がこういう事実を目の当たりにすれば、内部通報をちゅうちょしかねないという整理でございます。

同様に、外部通報においても同じような整理をさせていただいております。外部通報においても、自分が通報したことが上司・同僚に知られてしまうのではないかという回答がありまして、現実の問題としても、7ページの上のほうに、行政機関に通報した外部通報者が特定されてしまった例があるという御紹介をしております。不安を抱えた労働者が、このような行政機関からの情報漏えい等の懸念を現実のものとして目の当たりにすれば、やはりこれは外部通報についてもちゅうちょしかねないと考えられるところでございます。

以上が事実関係の整理でございまして、以降が、それを受けて当方で行った検討及び結論ということでございます。

まず、1号通報先について守秘義務を課することの是非でございますけれども、現行法のもとでは、通報者の氏名等の個人情報については、法第5条に規定する不利益取扱いの禁止規定によって保護し得ると解釈されておりますけれども、担当者個人による情報漏えいについては、不利益取扱いに該当せず、これによって保護することができないということがございます。

事例がありましたとおり、保護の範囲外となる情報漏えいにより、通報者本人が被害を被った事例が生じており、また、こうした情報漏えいの懸念が通報を妨げる原因となっていることが明らかになっているということでございます。

このため、現行法の解釈による保護の範囲では足りないということを踏まえまして、先ほど紹介した事例における通報者も保護し、より通報をしやすい環境となるように、1号の通報先について守秘義務を課すべきという考えについて、どうかとしております。

次に、守秘義務の内容でございますけれども、守秘義務の対象となる情報の範囲については、通報者を特定可能な情報が漏えいしてしまうことで、当該通報者が不利益を被ることが懸念されますので、守秘義務の対象となる情報の範囲については、通報者個人を特定し得る情報を含む秘密とすべきという考えについて、どうかというふうにさせていただいております。

守秘義務を負わせる者の範囲でございますけれども、これにつきましては、窓口の担当者から情報漏えいした可能性を示す事実が見られるということでございますので、範囲としましては、通報窓口の担当者その他の通報対応に関する業務に携わる方とすべきという考え方がありますが、どうかとしております。

事業者としての行政機関職員については、既に公務員の守秘義務を定めた公務員法などにより、内部通報に関する秘密や個人情報が保護される旨の解釈は明らかになっているわけでございますので、法に新たに守秘義務を規定しなければ救済することができないわけではないということでございますので、まずはこうした情報漏えいが既に講じられている公務員法の守秘義務に抵触し得ることを周知することが先決であるという考え方ができますが、どうかということでございます。

また、守秘義務が解除される例外でございます。消費者庁の実態調査において、内部通報受付窓口に内部通報が寄せられても調査を行わない場合を尋ねたところ、通報者が特定されない形で調査を行うことが困難であるということが挙げられました。新たに守秘義務を規定することによって、通報者が安心して通報することができるようになったとしても、労務提供先において、通報者が特定されない形で調査を行うことが難しいということになって、必要な調査・措置も講じることができないということになれば、守秘義務を規定する意味をなさないということでございます。

そのため、ここでは全て御紹介しますと、必要な調査に際して、通報者を特定可能な情報を調査先に開示し得ること、開示し得る情報の内容について、通報者から同意が得られている場合。

通報者を特定可能な情報は調査先に開示しないのですけれども、規模・組織の状況等から、通報対象事実に関する調査を実施すること自体が通報者の特定につながってしまうときであって、そうであっても調査を実施することについて、通報者から同意を得られているという場合。

通報対象事実が発生し、または既に発生していて重大な事態に至る蓋然性が高いのですけれども、通報者からの同意を得ることができない場合。

通報対象事実を権限がある行政機関職員に申告したり、通報対象事実の調査等を行うために行政機関の職員、弁護士などの法律に基づく秘密保持義務が課せられている者に開示する場合。

裁判所による文書提出命令や捜査機関による捜査関係事項照会に応じて開示するなど、法令に基づく情報の開示を行う場合。

通報者を特定可能な情報の共有を必要最小限の範囲にとどめる運用が徹底された部署内・部署間において情報を共有する場合。

行政機関が法令に定める事務を遂行することに対して協力する必要があるときであって、本人の同意を得ることによって当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合など、正当な理由がある場合は守秘義務の例外とすべきという考えについて、どうかということがあります。

現在、御紹介した例としては、事務局のほうで正当な理由として考えられる代表例を列挙したのでございますけれども、これだけに尽きるものではないと考えられまして、これらのほかにも考えられるものがあるか、この点についてはぜひ御見解を賜れればと存じております。

また、これらの正当な理由は、労務提供先や通報者それぞれの事情によってさまざまな理由があり得ると考えられ、これらの全てを網羅的に法定することは難しいので、逐条解説などによってこれらの代表例を明記し周知することによって、できる限りの予見可能性の確保を図るべきという考えもございますが、どうでしょうかという御提案でございます。

また、守秘義務に違反した場合の行政措置や刑事罰でございますけれども、内部通報担当者というのは、基本的には特別な資格や能力を有した方ではなくて、通常の人事異動で配置されることが想定されるということでございます。このような方に行政措置や罰則のある守秘義務を課すとした場合、刑事責任を負うことを恐れて、この業務に人事配置されることを拒否しかねないということがあります。また、配置されたとしても、業務に携われば携わるほど刑事責任のリスクが高まることを恐れて活動が萎縮してしまって、本来果たすべき内部通報制度の機能が発揮されないおそれもあるということがございますので、内部通報担当者に課する守秘義務に関しては、行政措置や罰則を規定すべきではないという考えもできますが、どうかとしております。

また、守秘義務の保護が及ぶ通報者の範囲でございますけれども、これについては、現行法では、担当者個人の故意による情報漏えいなど、労務提供先として行ったものではない情報漏えいにつきましては、法第5条の不利益取扱いに該当せずに、保護することができないとなっておりますが、実際、この範囲外となる情報漏えいによって通報者本人が被害を被った事例が生じております。そういった情報漏えいへの懸念が通報を妨げる要因になっていることが明らかになっているということでございます。そこで、現行法の解釈による法第5条の保護の範囲では足りず、このような事例における通報者も保護するため、守秘義務を課すことが必要と考えられるということでありますけれども、このように考えられる以上、守秘義務の保護が及ぶ範囲というのは不利益取扱いから保護される通報者の範囲と一致させることが自然であるが、どうかということがございます。

10ページの注5で「仮に」とございますけれども、仮に公益通報者以外の通報者からの通報についても守秘義務が及ぶとした場合は、通報者保護の目的と整合的ではなくなってしまうということがありまして、法の目的・位置付けを大きく変えることになってしまうということで、難しいのではないかということもあわせて提案させていただいております。

2号通報先については、お示ししたとおり、既に公務員の守秘義務を定めた公務員法などにより、内部通報に関する秘密や個人情報が保護される旨の解釈が明らかになっているということでございますので、まずは、こうした情報漏えいが、既に講じられている法律上の措置に抵触していることを周知することが先決であるという考え方について、どうかというような御提案でございます。

3号通報先については、報道機関など通報先がさまざまであって、これらに義務を負わせることは適当ではないと考えられるというところでございます。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

この論点につきましても、林委員からEU等の状況につきまして、調査結果について御説明をお願いいたします。

○林委員 御紹介させていただきます。

EU指令についてですけれども、EU指令では、内部通報のルートと外部通報のルート、2通りを設定しています。内部通報のルートというのは、先ほど御説明しましたが、民間部門と公共部門の法人への通報であるのに対し、外部通報のルートというのは、通報を受け、処理する権限を有する所管当局を指定するとなっています。行政機関ということになろうと思います。

内部通報のルートでは、通報者の個人を特定する秘密を厳守すると規定しています。他方で、外部通報のルートにつきましても、確実に秘匿性が確保された、独立かつ自主的な外部通報ルートを確立することと規定されていて、秘密を保持することを厳守するという規定が置かれております。

この秘密に関しての例外ですけれども、その例外は非常に限定的に規定されていると解釈できると思っています。この規定の中で、秘匿データが開示され得る状況の詳細な説明を含めて、通報に適用される機密保持制度の説明をすることという規定があって、詳細な説明に関しては、個人データの機密性が保証されない例外的な場合を含めなくてはならないとしていて、法律に基づいた適切な保護措置である場合、捜査等の司法手続の文脈、または利害関係者の防衛権を含む他の者の自由を守るため、データの開示がなされることがあるという規定の仕方でして、非常に限定的な捉え方になっています。

また、不利益措置の定めに関しては、通報者の個人情報の守秘義務違反については、加盟国は、自然人または法人に対し、効果的で比例的、抑止効果のある不利益措置、ペナルティーを科さなくてはならないと規定していまして、守秘義務違反に対して不利益措置を講じる、罰則を講じるということを規定しています。

他方で、英国の公益開示法についてなのですけれども、明文の規定はないのですが、事業者側において通報者が誰であるかについて探索しないように保護するという規定の仕方をしていて、通報窓口が守秘義務を負っていることは当然の前提であると措定しています。むしろ、通報しようとする行為に対する保護の一環として、通報を妨害する趣旨の合意を無効と規定しています。

また、先ほど説明しましたProtectでは、通報相談に関して守秘義務を負っているということで、法律家がアドバイスをするローセンターという位置付けから、秘匿特権を有しているということになります。

すみません。EUのところでつけ加えなのですけれども、EUで通報者の中にはボランティアの人とか研究者、無償で報酬を得ない人も入っていて、労働者だけではないのです。その人に対しても、その通報については秘密を保持するという考え方になっていますので、そこも参考にしていただければと思います。

○山本座長 ありがとうございました。

水町委員は途中で退席をされるのですね。何かございますか。

○水町委員 守秘義務について少しだけお話しさせていただきますと、これはどちらにしても個人情報が秘匿される、情報が守られるということと、実効的な調査を行うことができるということのトレードオフだと思うのですが、個人の情報が守られることが何よりも優先されるべきだということをきちんと認識した上で、通報者からの同意が得られているということが例外として解除する場合の条件になっていますが、事業者と労働者の間で情報能力に大きな格差があるということをきちんと認識して、同意をすること、もしくは同意をしないことが具体的にどういう意味を持つかを具体的に説明した上で、情報提供者の真意に基づく同意が得られるということを手続で基本的に担保することが重要だと思います。

逆に、そこで同意が得られない場合に、同意が得られなかったから特定されない形で調査を行うことが困難であるという回答がかなりありますが、同意がないから調査しないというふうに短絡的にならないように、情報を秘匿しながら可能な調査を行うことができるとすれば、それを可能な限り行うということもあわせてガイドライン等で促すことが必要かと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

先ほどのまとめの中で私は言い漏らしてしまったのですけれども、先ほど亀井委員からはここにも係るところで、義務というときに、いわば柔軟に解される義務と、硬い義務というものが考えられると。今、これからやる守秘義務というのは、その意味では硬い義務として考えるべきではないかという御意見がございました。

ということで、それでは、御意見をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

それでは、浦郷委員からお願いします。

○浦郷委員 私も今回、事務局が提案した守秘義務について、1号通報先、2号通報先、3号通報先、全てに賛成の立場です。

通報者個人を特定する情報が窓口担当者から社内に伝わってしまったために不利益な取扱いにつながったり、そういうことがあるために公益通報自体をためらうという調査結果も出ています。これについてはガイドラインのところで秘密保持の徹底として細かく書かれてはいますけれども、これは十分に生かされていないような気がします。やはり通報者に関する情報の守秘義務というものを法律で決めることが不利益取扱いをなくすことや、公益通報制度をもっと使いやすいものにして、国民の生活の安定や健全な経済社会への発展へとつながるのではないかと思っております。

1号通報先のところで内容とか範囲、諸々のところは全ていいのですが、守秘義務が除外される例外というところで幾つか例示が出ています。9ページのところです。ここの上の黒丸2つで本人の同意が得られているというところでは、先ほど水町委員もおっしゃっていましたけれども、どういう形で同意が得られたのか。手続きを明確にする必要があると思います。例えば医療におけるインフォームドコンセントのように、きちんと説明して書面で同意してもらうというやり方もあるのかと思います。個人情報が公になった場合にどのような影響があるのかというのを本人にきちんと説明して、その上で同意したということが大事で書面で残しているほうが、後で同意したしないとか、こんなことになるとは思わなかったなどでまた争いになることを避けることができると思います。

3つ目は、不正な事実が発生して重大な事態に至る蓋然性が高いというところで、同意を得るいとまもないということだと思いますし、6番目とか7番目の場合も、とても漠然としていて、割と何でもここに当てはめられそうな気もしてしまいます。程度が広がり過ぎて、必要以上に守秘義務が解除されて、通報者の利益を損なうことにならないように、ここはもうちょっと検討してほしいというか、具体的にどんな場合かよく見えないなという気がしています。

通報者が特定されても不利益取扱いの禁止が徹底されていれば懸念は少ないが、これがまだ不十分だと思います。意に反して情報が漏れて不利益を被るのは通報者。通報者が不利益から保護されないという状況の事例があるので、やはりこの守秘義務というところは厳しくする必要があるかと思います。

先ほど水町先生もちょっとおっしゃったのですけれども、情報がないと調査ができないというような意見も出ていましたが、公益通報を誰が通報したかというより、通報の対象事実、事が重要であって、通報された事実が法令に違反しているかもしないという事案であるならば、通報者が誰ということは関係なく、やはり会社はきちんと調査して、本当に違反で正さなければいけないということでしたら是正すべきかと思いますので、誰が通報したかの守秘義務を解除しなくても調査というのは私は可能だと思います。

そういうことで、守秘義務を課しても調査には支障がないということで、今回の事務局の提案には賛成いたします。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

今のは具体的に9ページのポツが幾つかついているところの3番目、6番目、7番目が少し不明確で、どういう場合かをもう少し明確にしていただきたいということですか。

○浦郷委員 はい。

○山本座長 基本的なことについては賛成という御意見だったかと思いますけれども、この点についてもう少し具体的にしていただければということですが、何か事務局からございますか。

○廣瀬消費者制度課長 冒頭に水町先生がおっしゃったとおりだと思いますが、調査の必要性と個人の秘密の保持という、この2つの利益がバッティングしているところだと思います。そうした中、どこまで調査を、例えば今の浦郷先生の話であれば、中小企業のところでおよそ調査ができなくなるような可能性もあるわけでありまして、その辺のところで、法律に書くというよりかは逐条解説など何らかの形で明らかにしていくところだと思いますけれども、どの辺の水準まで認められるべきかというところはしっかり御議論をしていただければと思っております。

正当な調査を正当な方法でやっている場合でも情報が特定されてしまうような場合をどのように考えるかというあたりを御検討いただければ幸いでございます。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、今の点でも、あるいはその他の点でも。

中村委員、お願いします。

○中村委員 ありがとうございます。

この守秘義務の御提案につきましては、恐縮ながら、基本的には反対ということとさせていただきたいと思います。

理由なのですけれども、これも先ほどと同様、御説明の部分と立法事実の部分と対策がずれているのではないかと思います。まず、先ほどの体制のほうの9ページでも、例えば、通報したことが労務提供先や上司・同僚等に知られると人事上の不利益や嫌がらせ等を受けるおそれ、または通報しても改善される見込みがないというようなことで通報しないという意見があるということなのですけれども、これは少なくとも私は、通報窓口が漏えいすることのおそれというふうには読めないと思います。それは会社の体制として、通報窓口が活動した結果としてこういうことが起こるのではないかとおそれているということであって、これを理由に通報窓口に対しての義務を課すのはどうなのか。先ほどの御説明でも、そもそも体制については対応の法制があるという御説明があったかと思うのですけれども、そういった意味で、そちらのほうの問題であって、私の知っている限りで、通報窓口でそのような漏えいをする人は基本的にはいないと思っておりますので、ここは事実認識の間違いがあるのではないかと思います。

守秘義務のほうの説明でも、4ページに表がございまして、通報したことが労務提供先に知られた場合に不利益取扱いを受けるおそれがあるということであったり、上司や同僚等に知られた場合に嫌がらせ等を受けるおそれがあるとありまして、これは通報窓口が漏えいすることをおそれているということではないと思います。

5ページにも、内部通報者が組織内で特定されてしまった事例が見られるということでありまして、これは後のほうのどのように法制化するかという話でもありますけれども、結果として知られてしまう、先ほどの制度のほうでもお話ししましたけれども、例えば懲戒なり会社としての処分を受けた個人は当然通報されたということが分かるわけでありまして、そこで正しいかどうかは別として、これは誰かが通報したに違いないみたいなことで、そういう行為に走ることもあるわけでございます。それで結果として特定されたことについて、それが窓口の担当者の責任であるということではないと私は思っております。

そういうことを前提といたしまして、7ページの真ん中のところです。第5条に規定する不利益取扱いの禁止規定により、組織のほうでは保護し得ると解釈されているが、担当者個人による情報漏えいについては該当しないので、こういう法制をするということなのですけれども、ここはそういうことが問題なのではなくて、そもそも会社の体制であったり、あり方ということについての問題なので、ここで担当者個人に対する守秘義務を課すことが正しい方向性ではないと考えます。

先ほど水町委員から、個人の情報の保護と問題の解決とどちらを重視するのかという問題で、個人の保護のほうを重視するという御意見だったのですけれども、正直に申し上げて、企業としてはそうすると、昨今の事例の中で不祥事について通報があったのに十分対応しなかったことで今回の議論につながっている部分が多々あるかと思いますが、そういうことにはならず、そもそもの法改正の趣旨から違ってくるのではないかと私は思いますし、行政罰なり刑事罰を科すかというようなところの議論もございますが、そこまで至らなくても、通報窓口の担当者が特別に法律に基づいて情報漏えいについての義務を課されたり、先ほど浦郷委員からございましたけれども、その調査に関しても同意が書面で得られていなくてはいけないとか、そういう話になりますと、せっかく通報していただいても、それを問題解決につなげることが非常に厳しくなると私は思います。

それがなくてもできるのではないかという御意見もありましたが、基本的にはどこかの部署で違法なことが行われているということでありますので、少なくとも部署なりの特定がされるわけでありまして、内部で見れば通報をしそうな人を周りの人が推測したり、いろいろうわさをするというのは間々ありがちなことであります。ですので、そこの危険がある場合には一切調査をしてはならないということになると、そもそもの今回の法制度の趣旨であるとか、内部通報をもっと有効に活用して会社でそういう問題が起きないようにしようという趣旨が有効に機能しないと思っております。

実を申しますと、先ほどの制度のところでウというのがございまして、このあたりの守秘義務の体制に関することとか不利益取扱いについての規定があったのですけれども、そこの部分についてもそもそも解釈の余地があるので反対だという意見が結構あるのですが、ここはすみません、私の個人的な考えで、むしろそこのところの不利益がないような体制を整えるというところをきちんと定めることが必要であって、ここの守秘義務というところに関しては、窓口の人について特別なことをやって萎縮効果をすることは反対ということで、述べさせていただきたいと思います。

ちなみに、仮に守秘義務が解除される除外ということで定めていく場合であったとすると、調査の是正に当たり必要な場合ということを書いていただいて、ここについては同意の有無によらないというようなことで規定をしていただきたいと思うところでございます。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

御意見は、先ほどの立法事実の部分に関して、秘密が漏れてしまうことに対する懸念が、窓口の担当者が漏えいをしてしまうことに対する懸念なのか、あるいは調査過程でそれが知られてしまうことに対する懸念なのかという2つのことが含まれていて、窓口担当者に対する懸念というのはそれほど含まれていないのではないか、むしろ調査過程で漏れてしまうことに対する懸念のほうが大きいのではないかという御意見ですか。

○中村委員 はい。そのとおりです。

○山本座長 御意見としては、したがって、先ほどの体制整備のところでむしろ事業者に対して義務を課すという方向で考えるべきであって、窓口担当者に対する義務の法定化には反対であるという御趣旨ですね。分かりました。

それから、具体的に、もし義務を法定化するとした場合には、先ほどからの御意見ですと、個人情報の保護をどちらかというと優先するのに対して、むしろ調査の必要性のほうをもっと重視していただきたいということだったかと思います。

そのほかございますか。

では、お願いします。

○廣瀬消費者制度課長 すみません。念のためでございますが、調査の過程で漏れるという話ですけれども、ここでは要件といたしまして、秘密を漏らすというようなことが書かれることになります。そういう意味では、担当者において何らかの伝える行為が必要でありますので、何もしていないのに漏れたというのは要件に該当しないような形になるのではないかと思っております。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、お願いします。

○消費者制度課担当者 資料の建付けについて少し補足させていただきます。先ほど、中村委員から、4ページに挙げられている調査結果について、通報窓口が情報を漏らすことの立法事実とはならないのではないかという御指摘がございました。この点につきまして、4ページに挙げられている調査結果は通報者の情報が漏れることへの懸念を示している事実でございまして、情報が通報窓口から漏れていること自体を示す立法事実ではございません。要するに、秘密保持の重要性について示している立法事実でございます。

通報に関する秘密が知られてしまうファクターとしては、通報窓口から情報が漏れることや、中村委員が御指摘されたとおり、誰にも漏らしていないけれども推知されてしまうようなこともございますが、通報窓口から情報が漏れることに関する立法事実については、7ページで示させていただいているところでございます。

○山本座長 7ページですか。どちらの資料でしたか。

○消費者制度課担当者 失礼いたしました。7ページに事例を挙げているほか、5ページにも事例を挙げております。

○山本座長 そうですね。ここに挙がっている事例は、窓口から漏えいをしてしまったケースであると。窓口担当者がということですので、そういう事例があるということかと思います。

今の中村委員の御意見に対して、事務局からただいまのような補足説明がございましたけれども、さらにいかがでしょうか。

それでは、お願いします。

○柿崎座長代理 私は基本的に事務局案に賛成させていただきます。

企業だけではなく窓口に対しても守秘義務を課すべきかどうかという点については、意図的に漏らすということは余り想定されないと思うのですけれども、うっかり漏らしてしまったとか、ことの重大性を余り認識していないで結果的に漏えいしてしまうような事態をどうやって防ぐのかということだと思います。御案内のように、結局、守秘義務を課すことと不利益取扱いということをいかに抑止していくのかということは連動しているものだと思います。しかし、他方で、守秘義務を課すことになると、この場合には担当者の萎縮効果が懸念されますので、その萎縮効果をできるだけ和らげるために、今回の改正提案としては刑事罰までは科さないと、そういった重いペナルティーは科さないという方向で調整しているものだと思います。

ですから、守秘義務を課すということは、それだけこの内部通報制度は重要で、これに関わる者に対して、きちんとやっていただきたいというメッセージを送ることになりますし、それは不利益取扱いを抑止する防波堤になると思います。そのためにもやはり法人だけではなく窓口の方にも守秘義務を課すことは必要なのではないかと思います。EUは、守秘義務違反に対してはペナルティーを課すということになっておりますので、現在は、そういう段階に来ているのではないかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、春田委員、お願いします。

○春田委員 私も基本的には事務局の提案に賛成の立場だということで、とりわけ働く者、公益通報する側の立場からしますと、第1号通報先の守秘義務を課すべきという考え方には、一歩前進かなと思っているところでございます。

6ページにも、自分が通報したということを労務提供先や上司・同僚に知られてしまうのではないかと、通報する側からはこういう不安な点もある中で、やはりきちんと守秘義務を課すことを明確にするということで、今まで公益通報することをちゅうちょしてきた方が安心して通報できるような環境整備につながってくるのではないかと思っているところでございます。

先ほど窓口の話がございましたけれども、マル2の守秘義務を負わせる者の範囲ということで、窓口の担当者、その他通報対応に関する業務に携わる者ということで、範囲としては、窓口も含んで通報対応に関する業務に関わる方に守秘義務をかけるというのが妥当ではないかと思っているところでございます。

先ほど萎縮の話もございましたけれども、今回、行政措置、刑事罰については、そこは規定すべきではないということでございましたので、ここにつきましては正直言いますと、この規定がないので、守秘義務を課すだけで実効性という意味で、今後どうなのかなというのは一つ思っているところでございます。これからの検討の中で、実際に守秘義務を課すといったことの影響を少し検証しながら、守秘義務を課すことで実際に公益通報する方が本当に公益通報しやすくなったのか、不安を払拭することができたのかどうかというところも検証しながら、もし刑事罰等々の検討を進めていくということであれば、その検証を踏まえて段階を追って進めていくことも重要なのかなと思っているところでございます。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、亀井委員、お願いします。

○亀井委員 私も基本的には事務局案に賛成なのですけれども、中村委員のおっしゃっていることはすごくよく理解できまして、特に9ページ目の箇条書きの2個目、特定可能な情報は調査先に開示しないけれども、推定されてしまう可能性が高いという場合に、ここで通報者からの同意を得なければならないとなった場合に、多くの通報者は、私どもの経験上ではまずもって同意をしてくれません。それで手詰まりになる可能性が非常に高いと思っております。

ですので、そもそもこの守秘義務がどこから出てきたかというと、通報者に対する不利益取扱いを防止するというのが本題であって、守秘義務自体が目的ではないと思われるので、例えば通報者からの同意が得られている場合、もしくは通報者に対する不利益取扱いを合理的に防止できる場合ですとか、何らか組織側が調査に向けて動きやすくなるような条件を付していただかないと、なかなか進めていくことが難しくなってしまうと思います。

それに関連して1つお願いがあるのですけれども、今の日本の内部通報制度は、ほとんど公益通報を受信しておりません。ほぼほぼ個人の御不満ですとか不平。それは、この会議室の中にいらっしゃる皆様の内部通報ですとか公益通報に対する理解と、通報しようとされる労働者ですとか通報予備者の方々の理解にすごくギャップがあるというか、乖離があるために生じている現象ではないかと思われるので、ぜひ、公益通報とは何なのかと、それから御自分の不平不満を主張されるということは何なのかというような、通報者に向けての啓発も進めていただきたいなと思っております。

すみません。ちょっと本題と離れてしまいましたが、以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

先ほどの立法事実の点についてなのですけれども、確かに通報しようとする人の懸念の中にはいろいろなものが含まれていて、まず、どこから漏えいをするのかということについてもいろいろでしょうし、それから、中にはここで言う正当な理由に当たるような場合も含めて懸念をされていることもあるのかもしれません。その意味で、この数字がまるごと全部、ここでの立法の提案に対応するというものではないのかとは思いますが、他方で、具体的な事例として、担当者個人等々が漏えいをして、訴訟においてそういった責任が認定をされたというようなものまで出てきていますので、これで立法事実として足りないと言えるのかという点について、私はもう少し説明を伺いたいのですけれども、これでは足りないとお考えなのでしょうか。

○中村委員 そういう事例があるということまで具体的に詳しく知っているわけではございませんので、否定するものではございませんけれども、結果として、ちょっと繰り返しになりますけれども、そもそもとして企業で違法なことが行われていることを、本来は上長等に報告等をして発見するということが企業としてあるべき形だと思っていて、それプラス、それでうまくいかない、自分がそれこそ不利益を受けるというふうに懸念している場合に、内部通報という窓口を使って会社にそのことを知らしめて、問題の解決に当たり、それをもって消費者の被害等を防止するというのがこの制度の目的だと私は思っております。

また、そうであるからこそ、企業としても頑張って公益通報の制度をやってみようかという話になるのかなと思っていますので、そこの部分のそもそも通報者の名前や職場なり何なりを言うということだけではなく、特定される情報というと、先ほどから申し上げているように、現実問題として、実際の言われている事務所なり何なりが分かれば、多くの場合、特定につながることもあるという中で、そういったことで分かってしまうことについても心配しなければいけないということになると、非常に公益通報者保護制度というものの趣旨が、少なくとも企業としての価値が減殺されてしまうと思っております。そういった意味で、そのバランスということを考えると、そもそも守秘義務を少なくとも担当側に課すことの妥当性は余り企業としては認められないという趣旨でございます。

以上です。

○山本座長 そうすると、立法事実がないという御主張というよりは、先ほどからお話が出ているように、調査を行う必要性と個人情報保護との間のトレードオフがあると。そこにおいて調査等が円滑に進まなくなる可能性がある、あるいは担当者が、そこが不明確であるために萎縮してしまうおそれがあるという、そちらのほうをむしろ懸念されていると理解してよろしいでしょうか。

○中村委員 そこは立法事実がどこまであれば立法事実があるという判断になるのかという価値観もあると思いますので、そういう案件があるということだけで立法事実があるということになるのかという部分もあるかと思います。

○山本座長 分かりました。要は2つの問題があって、トレードオフという先ほどからの問題と、立法事実が本当に存在するかという問題があるという御指摘であったかと思います。

もう一つお伺いしたいことがございまして、萎縮という点なのですけれども、現状でもこれは実際に5ページの裁判例があって、窓口の担当者がそれを漏えいしたということで、これは損害賠償責任を認めているのですね。

○消費者制度課担当者 事業者に損害賠償責任が認められております。

○山本座長 これは誰が損害賠償責任を負ったのですか。結局、担当者個人ですか、事業者ですか。誰が訴えられたケースですか。

○消費者制度課担当者 事業者が訴えられ、事業者が損害賠償責任を負った事例でございます。

○山本座長 民法715条に基づいて、使用者責任であるということですか。

○消費者制度課担当者 さようでございます。

○山本座長 ということで、現在でも民法上の責任を問われるということはあって、それで実際にその責任が認められるということもあるわけです。そういたしますと、現在の法律の状態であるとか、これは具体的に条文が挙がっていますね。16ページの最後に民法709条が挙がっていますけれども、この条文と、それからやはり一般的な条文である715条という使用者責任に関する条文があり、そして実際に裁判例において責任が認められている事案もあるという現実といいますか、現状の法律や裁判例の状態と比べて、これを法定したときにどのような不利益あるいは懸念が新たに生じるかということをお伺いしたいと思います。

全くプレーンに議論をしてしまいますと、一般論としてはこうですということになるのですけれども、しかし、現実の法律や裁判例において責任が認められている例があるわけで、それと比べた場合に、この法律でこういうふうに定めることによってどのような新たな問題が生じるかという点をお聞かせいただければと思います。

○中村委員 申し訳ありませんが、今の論点は逆に、そもそも、では何で新たな条文を制定する意味があるのかというのと同じ理由付けになってしまうのではないでしょうか。担当者の立場からいたしますと、当然、この内容に限らず、会社の業務においてはその都度守秘義務を負うケースというのはありまして、例えば法令違反ということに関して申し上げると、インサイダーの問題であるとかそういったことで守秘義務が特別に課されて、それを違反すれば法令違反になっていく場合というのがあるのはあるのですけれども、それは業務の中で一つ一つ確認をしながら進めていくということです。

私の意見ですけれども、先ほど来申し上げているように、現実に漏えいが起こる場所というのは、通報者よりも会社側で実際の事例においては起こっていく状況が多い中で、担当する窓口の部署なり担当者に特別に義務を課すことになると、端的に言うとそこの担当者になりたくないなという心持ちになり、また、なったとしても、ある意味ではできるだけ仕事をしないようにしようということにはならないでしょうかということでございます。

以上です。

○山本座長 法律の必要性という点から申しますと、むしろ正当な理由の有無という形で論点が明確になる。あるいはそれが注釈書等でどのようなものかということが明らかにされるようになる。その意味では、別に事業者にとって一方的に不利益になるような法制化ではなく、あるいは何の意味もない法制化ではなく、要するに事業者と通報者にとって、現在よりももう少し法状態を明確にしましょうという趣旨ではないかと私は理解しています。

今の御意見は、むしろ実質的には個人のほうに責任追及が行ってしまうと。むしろ事業者のほうが責任を負うべきなのだけれども、個人のほうに責任追及されてしまうことが懸念されるということでしょうかね。分かりました。

そのほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○亀井委員 今の論点で、確かに既に会社が負けているという裁判例があるのですけれども、法で新たに守秘義務を規定して、条文として明確化することで、担当者のなり手がいなくなる可能性が実務上はあろうかと思います。はっきりそう書かれると、ちょっと二の足を踏むというのは感じます。私もそこは中村委員と同様です。

○山本座長 分かりました。そのような御趣旨であると承りました。

先ほど事務局から、特に9ページの具体的に挙がっている例について、さらにこういう例があるのではないかというものを出していただきたいという要望がございまして、今までにも若干は出てございます。通報者の同意というときに、どのような同意を要求するのかということ。これが形式的なものになってしまっては同意を求める趣旨が損なわれるので、そこに留意をしていただきたいという御意見、あるいは個人情報を秘匿する形でも可能な調査というものはあるのではないかという御意見が一方にあり、他方では、しかし、そういうふうに言ってしまうと調査ができなくなってしまう、なかなか調査が困難になってしまうので、調査に必要な場合、正当な調査に必要な場合というような要件を、もし立法化するのであれば加えたらいかがかという御意見がございましたが、この点について、さらに御意見をいただきたいのですが、いかがでしょうか。

お願いします。

○柿崎座長代理 今の「正当な調査が必要な場合」については具体例を示す必要があると思います。「正当な調査」というのも法解釈上は、極めて範囲の広い規範的構成要件要素のようなものなのではないかと思うので、これはまたこれで、こういうことを条文上、定めると、何でも正当な調査だということで、やはり通報する方は、二の足を踏むのではないかと思うのです。これこそ不明確な条文の規定になるのかなと思いますので、もちろんこれを指針等できちんと例示するのであれば、また事態は違うと思います。

○山本座長 確かにもう少し具体的なレベルで議論をしないと、永遠に抽象的な概念だけの話で終わってしまうところがあるのですけれども、何か具体的に、こういうものはどうだろうか、あるいはこういう場合が懸念されるとか、そういった例がもしあれば、この場で出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

それでは、石井委員、お願いします。

○石井委員 事務局のほうで大分汗をかいていろいろこの事例、事由を書いていただいたと思うのですが、この中で1つ、多く見られるだろうと思いつつ、答えがなくて私自身どうしたらいいかと思うのが匿名通報の場合でございまして、匿名通報がなされた場合、どのようにしたら正当化されるのか。ここがないと通報者が推測されうる匿名通報もあるのでワークしないのではないかなという感じがいたしております。

例えば、匿名通報がなされた場合にどうするかということを労使で協議をした上でどのように調査をするか手続を定めて、それがあらかじめ周知されている場合というのはもしかしたら正当化してもよいのかなと思うのですが、それが果たして適切なのかどうか、私自身、自信もございません。申し上げたいのは、匿名通報の場合の処理について正当化されるものがこの項目の中で欲しいなという点でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

何か事務局から今の点について、今考えていることがもしあればいただきたいと思いますが。

それでは、お願いします。

○廣瀬消費者制度課長 匿名通報は確かに難しい問題でございます。ここで守るべき秘密の話としては、通報者の特定が可能な情報が漏えいということでございますので、そこについては匿名通報についても同じ扱いになるのだと思います。つまり、匿名の人がどなたかということが明らかになってしまう、通報者としての匿名通報者が明らかになってしまうような場合については、同じような扱いで保護されるべきであると考えております。

念のためで申しますと、公益通報者保護法は、匿名の通報であっても通報者は守られる、保護されるということになっておりまして、扱いは変わりません。

○石井委員 申し上げたかったのは、匿名通報の場合、同意を得ようがないでしょうというところでして、現実に多いのにここがスルーしてしまうものですから、ワークするのかという点で申し上げました。

○廣瀬消費者制度課長 冒頭にも座長から問われましたが、ここの具体例ですね。正当な理由に当たる場合というのは、先ほどの正当な調査とか正当な手段、あるいは匿名の場合も含め、ここももう少し明確にした上で、こういった場合は正当な理由に当たり、秘密の漏えいの義務から解除されるという場合を明確にする必要があると思います。

もう一つ、念のため確認ですけれども、秘密を伝えるという行為がない場合には、本要件には当たらないということも明確にしたいと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

その他、今の点でも、あるいはほかの点でも結構ですけれども、ございますか。あるいは何か補足してございますか。

○消費者制度課担当者 例えば他の法律で、これは刑法の秘密漏示罪の話になってしまいますけれども、秘密を漏らすことの違法性阻却が認められる正当な理由とは何かというところで、当然本人の承諾が得られている場合というのはあるのですけれども、緊急避難的な場合であるということと、それから社会的相当行為というものも、違法性が阻却され得るケースとして挙げられております。

ただし、その場合に法益の比較考量というものがやはりキーになってくるであろうという考え方も示されておりまして、それは先ほど水町先生がおっしゃっていたところでございます。そこら辺のところについて、一般的な学説であったり解釈で示されているというのを補足的に少しつけ加えさせていただきます。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかいかがでしょうか。

それでは、石井委員、お願いします。

○石井委員 通報窓口の担当者ですが、少なくともその方も労働者であるのは間違いないわけでして、この方が知識・情報とかトレーニング不足でそういううっかりミスをしてしまうことがないように、やはりマニュアルを用意するとか研修をすべき、ということは申し上げておきたいと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、守秘義務に関してですが、まず、多数の方は守秘義務の規定を置くことに賛成であるという意見を表明されたかと思います。ただ、中村委員から、特に事業者でなく個人の責任が追及されやすくなるのではないかという観点から、反対であるという御意見が示され、それから亀井委員から、反対であるというところまでは言われなかったと思いますけれども、その点は確かに一つの懸念材料ではないかという御意見をいただきました。

その点に関しましては、今、石井委員からも少しお話がございましたが、もしもこういう規定を導入する場合には、やはり労働者の方がトレーニング不足等で責任を追及されないように留意をした運用をしなくてはいけないのではないかという御注意があったところです。

それから、一番難しいのは、9ページの正当な理由という部分で、仮に法定することとした場合という立場も含めて、非常に一般的なレベルでは、どこに問題があるかということについてはおおむね賛同いただいたのではないかと思います。つまり、個人情報の保護と調査との間のトレードオフの問題をどう解決するかというところがポイントであると。ただ、それをどうするかというところがなかなか、まだ詰め切れていないところもございます。いろいろあった御注意としては、同意が単なる形式に終わらないように、その実質を担保するために説明する等々のことを、これはガイドラインレベルかと思いますけれども、要求するべきではないかとか、あるいは書面化ということについても御意見をいただいているかと思います。

それから、守秘ができる範囲で調査が可能であるということもあるのではないか。それはしっかりとやるということを明確にすべきではないかという御意見がありました。

ただ、他方で、余りここのところを厳しく要求してしまうと、結局調査ができなくなってしまう可能性があるのではないかと。これは恐らく企業規模等によっても、あるいは企業の実態によっても事情は異なるかと思いますけれども、そのようなことに対する懸念の表明もございました。

個々に見ていきますと、例えば匿名通報の場合の取扱い等々についても、なお問題があるのではないかと。この点については、恐らく正当な理由という規定を置いた上で、それを具体的にガイドラインあるいは注釈書のレベルでどのように示していくかという話もあろうかと思いますし、あるいは法律のレベルでもう少し何か加えるということもあるのかもしれません。

正当な調査に必要な場合という御意見がありましたが、それについては、では正当な調査とは何かとか、必要な場合とは何かとか、確かにこれはさらに具体化を要する概念であるので、これだけで問題が解決するわけでもないであろうという御意見があったかと思います。

あとは濫用的な通報がないように、通報者の側にも啓発をする必要があるのではないか。これは極めて一般的な、別に守秘義務に限った問題ではないかと思いますけれども、そのような御意見がございました。

その他の点については、特に御意見はなかったかと思います。2号通報先、3号通報先の取扱い、10ページの守秘義務の保護が及ぶ通報者の範囲、あるいはその次の2号通報先、3号通報先の扱い、この辺については事務局の提示した資料に対して特段の御意見はなかったというふうに承りましたけれども、それでよろしいでしょうか。

それでは、お願いします。

○池本委員長代理 池本でございます。

2号、3号の問題というよりは、今、座長が取りまとめをされたところに関しての意見として申し上げますが、先ほど来出た中で、担当者に義務付けると、担当者の萎縮、あるいはなり手がなくなるという非常に悩ましい問題が出てくるという話がありました。国家賠償責任を問う場面では、公務員についての個人責任は故意または重過失の場合に限るというような形にして、公務の円滑な遂行と、それから被害者の保護を図っているというのがあります。

公益通報者保護法の中に、窓口担当者について故意または重過失に限るという言葉を条文で入れるかどうかというのは、そういう性質のものかどうかは分かりませんが、運用としては、やはり必要性の問題については配慮が必要である。特にそこは通報者側からの損害賠償の問題よりも、逆に内部での個人責任追及というような問題もあり得ることになるので、そのあたりは少し明確化しておいたほうがいいのかなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

先ほどの個人に対する責任が追及される点に関しての御意見だったと思います。確かに国家賠償法の場合には原則として公務員個人は責任を負わないことになっていて、国家賠償法の1条2項で、国、地方公共団体が公務員に故意または重過失がある場合に求償ができるということになっていますので、かなりその意味では、公務員については個人の賠償責任という点では制限をされているということがございます。

そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

何か事務局からさらにございますか。どうぞ。

○廣瀬消費者制度課長 先ほど林先生からもお話がございましたが、池本先生の弁護士会のお話ですが、東京の三弁護士会も中央省庁の窓口をしていたりと、そういった動きは23区のほうでも広がっているということもありますので、御参考までですが、お知らせいたします。

○山本座長 大阪は先進的にやっていますというお話もございましたけれども。

○林委員 宣伝しているということです。

○山本座長 そうですか。ありがとうございます。


≪4.閉会≫

○山本座長 それでは、今日は以上をもちまして閉会させていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)