第18回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年9月5日(水)13:00~16:15

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、石井委員、浦郷委員、亀井委員、川出委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 高委員長、池本委員長代理、樋口委員
【関係団体等】
一般社団法人日本経済団体連合会 経済法規委員会 企画部会長 佐久間総一郎氏
新日鐵住金株式会社 法務部 法務企画室長 長谷川顕史氏
一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 本部長 小畑良晴氏
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS) 大塚喜久雄氏
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS) 熊谷由美子氏
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS) 棚橋節子氏
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS) 土田あつ子氏
全国中小企業団体中央会 専務理事 高橋晴樹氏
全国中小企業団体中央会 政策推進部副部長 井上尚洋氏
全国中小企業団体中央会 政策推進部主事 小鮒瞬氏
通報経験者 串岡弘昭氏
【消費者庁】
高田政策立案総括審議官、廣瀬消費者制度課長、大森消費者制度課企画官
消費者制度課担当者
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎、高委員長、高橋晴樹氏の高ははしごだか

議事次第

  1. 開会
  2. 関係団体等からのヒアリング(1)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第18回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

柿崎座長代理は、少し遅れて到着をされるとの連絡を受けております。

本日は、関係団体等からのヒアリングを行います。各団体等からは本専門調査会において取りまとめました中間整理に対する意見、あるいは公益通報者保護制度全般に対する意見をいただいておりまして、それらは配付資料一覧のとおり資料1から4となっております。不足がございましたら事務局までお願いいたします。


≪2.関係団体等からのヒアリング(1)≫

○山本座長 本日の会議の進行といたしましては、ヒアリングとその後の質疑応答を1団体あるいは1個人ごとに行いたいと思います。交代でお席についていただき、御説明を15から20分程度、それから、委員の方々との質疑応答を20から30分程度行い、1団体等につきおよそ45分程度という形で進めさせていただければと思います。

それから、1団体等のヒアリングが終了後、交代もございますので若干の休憩を入れたいと思います。

本日は、まずは様々な御意見を伺うということでございます。そして、いただきました御意見等につきましては、今後の審議においてそれをも参考にしながら、また、それも踏まえながら行っていきたいということでございます。

したがいまして、委員の皆様におかれましては、特に今後の審議につなげるように、質疑応答のところでは、伺った御意見のうち、その趣旨を確認しておくべきもの、あるいは事実関係であるとか前提を確認しておきたいというものなどがございましたら、それを中心に御質問、御意見等をお願いできればと思います。時間に限りがございますので、その点、御協力のほどよろしくお願いしたいと思います。

まず、一般社団法人日本経済団体連合会からお願いしたいと思います。

本日は、日本経済団体連合会 経済法規委員会 企画部会長の佐久間総一郎様。

新日鐵住金株式会社 法務部 法務企画室長の長谷川顕史様。

日本経済団体連合会 経済基盤本部 本部長の小畑良晴様に御出席をいただいております。

お忙しいところ、また、大変お暑いところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。

それでは、御説明をお願いいたします。

○佐久間部会長 御紹介に預かりました佐久間です。

本日は、このような貴重な意見陳述の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。公益通報者保護法の改正をめぐる議論につきましては、経済界にとって非常に関心の高いテーマということで、この専門調査会が開催されるたびに内部通報の実務に携わります幅広い企業の担当者が会合に集い、対応を検討してまいりました。今後の調査会では、中間整理を踏まえ、年末に向けて取りまとめの検討を進めていくと伺ってございます。その際、経団連の意見もぜひ勘案していただきたいと存じます。我々としても引き続き建設的に議論に関与してまいります。

お手元の資料1を御覧ください。この意見書は、私が部会長を務めております経団連の経済法規委員会企画部会で取りまとめたものであります。私からは総論の部分を中心に申し上げます。

経団連は、かねてより会員企業が守るべき行動指針であります「企業行動憲章」に内部通報体制の整備を盛り込むなど、公益通報者保護法を踏まえた対応を積極的に推進してまいりました。この結果、大企業では内部通報制度がおおむね整備されております。各社は不正、不適切行為の是正などのため、内部通報制度を積極的に活用すべく、日々、工夫を凝らしながらその運営に取り組んでおります。

通報内容が顧客や消費者などの企業を取り巻く関係者の安全・安心などに関わるものである場合、あるいは法律違反行為である場合、このような場合には社内調査の上、行政に報告し、公表することもしばしばございます。また、内部通報窓口に秘密保護規定を導入するなど、通報者への不利益取扱いの防止にも努めてございます。不祥事そのものはあってはならないことではありますが、起き得るという前提のもと、企業の自浄機能の改善に取り組んでおります。

本調査会の議論の目的は、通報者の保護を通じて事業者のコンプライアンス経営や自浄機能の強化を促進することであると理解しております。これは経団連の取組と軌を一にするものでございまして、我々は調査会における議論の趣旨に賛同いたしております。

しかし、調査会の今までの議論を拝聴いたしますと、こうした事業者のこれまでの前向きな取組を後押しするというよりは、不祥事や不利益取扱いが生じてしまったことに対し、事後に間接的に事業者の対応を迫ったり、行政措置を検討したりと、事業者に対する懲罰性が強い印象を受けます。多くの事業者が公益通報者に不利益取扱いをするような意識の低い企業ではない中、法令上で事業者に対して画一的な義務や罰則を科したり、通報の受付担当者に守秘義務を導入することは、円滑な内部通報への対応を阻害し、公益通報の本来の目的であります不祥事や被害拡大の未然防止に支障が生じるおそれ、また、人事政策をゆがめるおそれ等がございます。一方で、残念ながら公益通報を行ったことにより事業者が不当な人事を受けたり、周囲の理解が得られず孤立するなど、苦しんでいらっしゃる方がいたとも聞いてございます。しかし、必ずしも通報内容が正しい、通報される側が不正とも限らない中、いたずらに通報要件を緩和することで、公益通報者保護制度を自己の利益のために利用できるとの誤解を一部の労働者に与え、濫用的通報が増加することも懸念されます。

加えて、濫用的通報により虚偽の外部通報がなされ、もしくは情報漏えいが生じれば事業者に深刻な風評被害や損害が生じ、企業価値が損なわれ、それによりまして消費者・顧客、従業員、株主等のステークホルダーの利益が害されるおそれもございます。

以上を踏まえまして、公益通報者保護法の改正に当たりましては、一律に事業者に義務を課したり、制裁規定を置くことで不祥事や不利益取扱いを防止するという発想ではなく、多くの企業において通報者と事業者が対立関係にはない、むしろ協力関係にあるという実態を踏まえまして、自浄機能を高める努力をしている事業者の自主的な取組を後押しし、また、自浄機能が十分でない事業者の体制構築を応援するような制度とすべきと考えてございます。

その観点から2点申し上げます。

第1、事業者の規模、業種・業態、カルチャー等に応じた、様々な形での通報受付体制等のあり方を認め、円滑な通報窓口運営、人事運営等が可能な体制整備を後押ししていただきたいと思います。特に守秘義務の導入、立証責任の転換については、法令を万が一、改正した際におきます事業者の経営・通報対応・人事運営等に与えるマイナス影響について考察し、極めて慎重に御議論をいただきたいと思います。我々はこれらの規律を新たに設けることに反対でございます。

また、通報体制の整備については、各事業者で柔軟な運営が可能となるような制度設計とすべきと考えております。守秘義務について若干ふえんしますと、多くのケースでは通報者は事前に上司や同僚に報告、相談した上で、意見が受けられない場合に窓口に至るといったことがあります。このような場合、その後の調査の過程で通報者はおのずと特定されてしまうこともございます。係る中、法律上、守秘義務が課されれば窓口担当者への萎縮効果は極めて高く、守秘義務違反を恐れる余り、法律違反等に関する調査や未然の防止活動を徹底的に行わなくなるおそれがあります。これは公益通報者保護法の趣旨に完全に反するものであります。立証責任の転換については、通報が関係しない労働問題における労働者の保護とのバランスを欠く。また、悪意のある労働者が解雇、配置転換等がなされそうになった場合に、とりあえず通報しておくという形で悪用するおそれもあり、極めて問題が大きいと思います。

第2に、濫用的な通報の発生を抑制し、事業者や事業者を取り巻くステークホルダーに不測の損害をもたらすことがないように制度設計をいただきたいと思います。外部通報の保護要件について、特に3号通報については情報が虚偽だった場合に事業者がこうむる不測の著しい損害について御考察の上、極めて慎重に御議論いただきたいと思います。我々は要件緩和に反対であります。

また、通報を裏付ける資料の収集行為については、機密情報等の漏えいがもたらす事業者への回復しがたい悪影響のみならず、事業者以外のステークホルダーの生命、身体、財産その他の利益に損害を与える可能性についても考慮の上、免責規定の導入等は極めて慎重に御議論いただきたい。こちらについても我々は制度化に反対であります。

経団連会員企業始め、多くの企業は通報制度は不正、不祥事の未然防止、被害拡大防止のために極めて効果的な手段であると認識し、制度の周知徹底と運用改善に取り組んでいるところでありまして、本日の機会にこのように多くの懸念をお伝えいたしますが、それだけ我々の問題意識、危機意識が強いということを御理解いただきたいと思います。

個別の論点については事務局から御説明いたします。

○小畑本部長 経団連事務局の小畑でございます。よろしくお願いいたします。

今、部会長の佐久間から申し上げたとおり、経済界として特に懸念を持っている点につきましては、冒頭に申し上げたとおりでございますけれども、その他、個別の論点についてもお時間の許す限り、簡単に御紹介させていただければと思います。

本日お配りしております資料を御覧いただければと思いますけれども、その3ページ目でございます。個別論点に対する意見というところから御覧いただければと思います。

まず第1に、今回議論になっております通報者の範囲でございますけれども、(1)退職者につきましては、そもそも不利益取扱いをする余地がないものである、と私どもとしては考えておりまして、そういう観点から保護の対象に含める必要はないと考えております。

2番目に4ページでございますけれども、役員等でございます。役員等につきましては、事前に内部で解決を図る努力をしたことを要件とするとともに、解任された者は解任によって生じた損害を請求することができるという規定にとどめるべき。解任の無効までは認めるべきではない。そもそも役員の選解任については株主の権利の範疇でございまして、株主の権利に制限を加えるということは、いささか無理があるのではないかと考えておるところでございます。

3番目の取引業者でございます。そもそも契約自由の原則ということが重要でございますので、これを損なうようなことがあってはならないという意味で反対でございます。

その次に5ページ目でございます。2番目の行政による調査措置義務の対象となる通報者の範囲というところでございますけれども、公益通報者を保護するという法律の趣旨に鑑みれば、あくまでも通報者が保護される公益通報に限定した議論をすべきであると考えておりまして、保護対象ではない通報まで範囲を広げて行政の調査義務を検討することは、無理があるのではないかと考えております。

その次に3番目の通報対象事実の範囲でございます。通報対象事実の範囲は、法的安定性の観点から、予測可能性の観点から明確でなければならないと考えております。したがって、現行通り限定列挙という形を維持すべきであると考えております。

また、条例に関する御議論もあるところでございますけれども、自治体ごとに規律の基準が異なることから、対象に含めるべきではないと考えております。行政措置も範囲が広過ぎるので、対象に含めるべきではないと考えております。さらに憶測や不確かな通報、濫用的な通報を防ぐ意味で切迫性の要件、こちらは引き続き維持すべきであると考えてございます。

6ページ目、4番の外部通報の保護要件、まず2号通報に関するところでございますけれども、現行の国の行政機関向けガイドラインにおいては、真実相当性の要件が通報内容を裏付ける内部資料、関係者による供述等の存在のみならず、通報者本人による供述内容の具体性、迫真性等によっても認められる。このように記載されているわけでございまして、必ずしも何かを持ち出したりする必要もないというところでございます。したがいまして、この範囲で十分に説明できるということでありますので、真実相当性の要件を緩和する必要はないと考えております。

7ページ目の3号通報でございますけれども、こちらは中間整理の方向性のとおり、現行どおり真実相当性の要件は維持するという方向は妥当であると考えております。

7ページの下のほうでございますが、通報を裏付ける資料の収集行為につきましては、内部資料持ち出しに係る責任、民事・刑事ともこれを減免することは法定すべきではないと考えております。8ページ目にまいりますけれども、その理由のところでございますが、特に企業におきまして恐れていることとしましては、情報漏えいを起こした行為者が後付けで公益通報であったと主張することができることになりかねない。そういうことで機密情報や顧客情報を含む内部資料を持ち出すことを助長しないかということを非常に懸念しているところでございます。仮に機密情報、個人情報等が流出するとするならば、企業の競争力、信用力は大幅に低下するということで、事業者としてはもはや回復不能な損害ということが言えるかと存じます。

その次に通報体制の整備、6番のところでございますけれども、こちらにつきましては9ページ目の理由のところを御覧いただければと思いますが、事業者ごとに規模、業種・業態等が大きく異なることからすれば、内部通報体制の整備・運用についても内部統制システムの一環として、会社法に基づく各社の取締役会の判断、設計に委ねることが合理的ではないかと考えております。

10ページ目の守秘義務については、先ほど佐久間から申し上げたとおり非常に懸念をしているということで、こちらについて守秘義務を法律に設けることは全くもって反対であるという立場でございます。

11ページ、8番の一元的窓口の設置ということで、窓口の設置自体には反対するところではございません。ただ、行政の肥大化、重複化を防ぐ観点からは、どこに受け付けてもらえるか分からないという通報者の立場を鑑みて、受け付けることは受け付けますということはよろしいのですけれども、受け付けた通報は関係する行政機関に迅速に振り分けていただく。そういう機能にとどめるべきではないか。あとは関係する行政機関が自ら調査をすれば足りると考えてございます。

次に、不利益取扱いに対する行政措置・刑事罰の導入でございますけれども、そもそも調査、事実認定について慎重かつ十分に実施する体制ができるのか疑問であると考えておりまして、そうした中で安易に行政措置、刑事罰を導入することは到底認めがたいと考えております。

12ページの刑事罰のところも、行政罰と同じでございます。

13ページの立証責任の緩和につきましては、冒頭に申し上げたとおりでございまして、こちらも極めてゆゆしき問題があると考えておりまして、反対でございます。

14ページ、11番、通報行為に伴う損害賠償でございますけれども、通報者が通報行為それ自体によって損害賠償を負わないという点については、強く反対するわけではございませんが、通報付随行為、資料の持ち出し等について、先ほども申し上げましたように、極めて重大な問題が生じるおそれがあるというところでございまして、こちらについて損害賠償責任を免責するということは到底認められないという立場でございます。

12番の通報行為に伴う刑事責任につきましても反対でございまして、刑事上の責任を減免する一般的な刑法上の規定は既にあるわけでございまして、それとは別に新たに減免する必要は恐らくないと考えております。

15ページの通報者の探索、通報妨害の点でございますけれども、こちらも規定を設けることには反対ではございますが、まずはガイドライン、せっかくできたところでございますので、こちらの周知を徹底するということではないかと考えております。既にガイドラインにはこの点について直接の記載があるわけで、ガイドラインを踏まえれば当然、現行法の趣旨からも禁止されていると読めるわけで、ガイドラインの周知を徹底すれば足りるのではないかと考えております。

最後に、通報者のフィードバックでございますけれども、理由のところを御覧いただければと思いますが、通報案件によってはフィードバックを求められないもの、あるいは連絡がとれなくなってしまうもの、匿名のアドレスからの通報、こういったいろいろなものもあるわけで、一律にフィードバック規定を設けることは無理があるのではないかと考えているところでございます。

以上でございます。ありがとうございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明につきまして御質問等はございますでしょうか。

浦郷委員、お願いいたします。

○浦郷委員 御説明ありがとうございます。

公益通報者保護法については、そもそも企業が不正を行ったり、不正を隠したりしなければいいわけでありまして、ただ、やはりそういうことが起こり得るということを前提に自浄機能を強めていくということでお話がありましたけれども、しかし、実際にこの間、大企業による、それも長期間にわたる悪質な不正が起きているという事実があります。そういう事実はしっかりと受けとめて考えていただきたいと思います。

この公益通報者保護法によって、大企業さんは内部通報の制度がほとんど整っているようではありますけれども、これが実は機能していないと私は思っております。形を作っただけというところで、今までのところでもアンケートとかにもありましたが、不利益取扱いを恐れて公益通報しないという人も多かったと思います。恐れて不正を正さないということで、例えば組織ぐるみのそういう不正、この間もスルガ銀行とかありましたけれども、そういうものもありますし、たとえ内部通報があったとしても不正が正されていなかったというのはこの間、ヤマトホールディングスの話もありますので、そういうことがあるということで、形だけでなく、きちんと機能するようにするための法改正であると私は思っております。

今回この方向性で改正をしていかないと、自浄機能というのは高まらないと思っております。それだけ大企業の信用度というのが落ちているように感じております。まずそれを申し上げまして、その後、何点か申し上げたいと思います。

まず7ページの5番、通報を裏付ける資料の収集行為というところで、通報を裏付ける資料が必要とはされていないということですが、通報したときの正当な理由とか相当な理由の根拠を問われたときに、裏付けがないと認定されないのではないかと思います。通報者側というのは通報するための資料を入手するために自分の罪が問われるということだと、なかなか不正をただすような通報もできなくなると思いますので、資料の収集行為のところは減免ということで免責をしていったほうがいいのではないかと考えております。

情報漏えいをとても気にしておられまして、情報漏えいを起こした者が後付けで公益通報の目的があったという主張をすることが可能になりというふうに書いてありますけれども、それがどういうことなのか私はいま一つよく分からないのですが、不正がなければそんな主張もできないのではないかと思います。また、そういうことを主張するようなことがあるならば、そういう労働者がいるということ自体、この企業自体が病んでいるのではないかと思われる節もあると思います。

個人情報を持ち出されることを大変懸念されていると思います。ここについては私どもも心配しているところではありますが、個人情報だけを持ち出すことはないと思うのですけれども、そこら辺どういうことをイメージしておられるのかということが気になります。

続きまして、11ページの行政措置のところです。公益通報を理由とした不利益取扱いに係る行政措置を勧告までにとどめるべきではないかということですけれども、私どもは公表、命令まですべきと思っております。ただ、何でもかんでも公表というわけではありませんで、それをするにはやはり事業者に対して十分な指導を行ったり、そういう段階を踏まえて、それでも是正されない場合は公表、命令ということで、公表とか命令とかいうのを法律に入れることによって、その前にきちんと是正されることになり、それが自浄機能を高めることになるのではないかと思います。勧告までにとどめるべきではないかということなのですけれども、もしこれが是正されないときは、どのようにお考えになるのかなというところをお聞きしたいと思います。

13ページの立証責任の緩和のところですけれども、ここも通報者のほうが立証するのは大変難しいところだと思います。こちらの理由のところに、解雇されそうになったらとりあえず内部通報しておくということが書かれていますが、とりあえずというか、内部通報ってそんなに簡単にするものなのでしょうか。解雇以外のところの異動、降格、配置換えなどについては、立証、証明が難しいとなっておりますけれども、私は難しいからこそ、そこの手を使って企業が不利益取扱いをするのではないかということも思います。

通報者の人事対応は、不利益取扱いでないということを明確にして、人事対応すべきかなということを考えております。

まとまっていませんけれども、以上のところを意見申し上げます。

○山本座長 完全にばらばらに質疑応答いたしますとかなり時間をとりますので、今の浦郷委員が指摘された9番(1)の行政措置、5番の資料の収集行為、10番、この点についてさらに何か御質問はございますか。それを受けた上でお答えいただこうかと思います。それでは、石井委員、お願いします。

○石井委員 本日はお忙しい中ありがとうございます。

1点だけ、先ほどの立証責任の転換の関係で確認をさせていただければと思います。

ここで解雇されそうになったらとりあえず内部通報というところ、先ほど浦郷委員からも御指摘があったわけですが、公益通報制度というのは不当な目的による通報は保護されないという建付けがあるわけなのですが、その建付けのもとでもこのような懸念がある、そういうことなのか確認をさせていただければと存じます。

以上でございます。

○山本座長 ほかにございますか。

行政措置について私からも若干お伺いしたいと思うのですけれども、今、浦郷委員が言われましたように、ここで私たちが議論をしたのは、勧告に従わない場合に公表をすることができるといった制度ですから、公表の前にはまず勧告があるということでございますし、勧告が法定されますと、行政機関は通常の勧告の場合と違いましてかなり慎重に行うのが普通だろうと思います。そういたしますと、法定された勧告の前にさらに指導する、勧告をするという段階があろうかと思います。

さらに、私たちが中間報告の中で申し上げたことに、個別の紛争処理の手続を拡充させるということがございます。不利益措置を受けたと主張される労働者の方と話し合いの場を持つことが大事だということを言っているわけでして、そういたしますと公表にまで至るというのはいわば第4段階目なのです。それをどのような理由から、あるいはどのような事態があり得るとお考えになって懸念をされているのかという点を伺いたいと思います。

ほかにございますか。どうぞ。

○池本委員長代理 オブザーバーの池本です。

守秘義務の導入について反対であるという御意見について質問をさせていただきたいと思います。理由として内部通報の窓口がそれを課題として取り上げて、必要な調査をするという行動が逆に阻害されるおそれがあるのではないか。それは制度の趣旨として逆行するのではないかという指摘があったかと思います。この調査会の中でも、まさにその点が重要な論点であるということで、中間整理の中でも調査のために必要な場合に例えば通報者本人に打診して、それでも応じない場合に、例外を認めてよいかといった例外規定を適切に設けることによって、労働者側の信頼を確保しつつ、さらに事業者の側として必要な調査はきちんとできるようにするという線引きをどうしようかという例外規定の設け方という形で議論をしてきて、中間整理の中でもそういうところを論点として出してあります。

今後議論をする上について、そのあたりどのようにお考えなのかお伺いしたいと思います。

○山本座長 今さらに7番の守秘義務についても御意見がございましたので、その点についてもさらに何かあれば。

川出委員、お願いします。

○川出委員 今ご指摘があったように、守秘義務があることにより、調査の実効性が害される場合があるのではないかという点は、この調査会においても問題とされています。そうした可能性があるというのは、そのとおりだと思うのですが、その上でお聞きしたいのは、意見書に記載されていますように、現在でも、社内規定の中に守秘義務に関する規定を置いている事業者があるわけですね。そうした事業者において御懸念のような事態が実際に生じているのでしょうか。もし生じていないとすれば、それはなぜなのか。例えば、社内規定の運用において、調査を実効的に行うために必要な場合には守秘義務を解除するような形になっているのかどうか、そのあたりの現状を教えていただければと思います。

○山本座長 今、4点出ておりますけれども、さらにその点についてございますか。よろしいですか。ではまず高委員長。すみません、ちょっと多くなりますが、まとめてお答えをいただきたいと思いますので、お願いします。

○高委員長 御意見をいただきましてありがとうございました。

この点だけで全て尽きるというわけではないのですけれども、経団連さんが出されている御懸念というのは、私は濫用的な通報という問題ではないかと思うのです。私もそういう問題は実際にあると思うのですが、そのときに「濫用的な通報行為」というものを、例えば会員の皆さんからいろいろな意見を募って、こういうものだというふうに要件を明確にすることは可能ではありませんでしょうか。そもそも濫用的な通報であれば、それは不正な意図に基づく通報であって保護の対象にはならないと思うのです。その可能性についてお聞きしたく思います。

○山本座長 要件についてはさらに切った上で御質問があればお受けして、それでお答えをいただければと思いますけれども、先ほどの4点についてさらにございますか。石井委員、お願いします。

○石井委員 たびたびすみません。内部通報体制の関係につきまして1点お尋ねをしたいと思います。

まず全般的な確認なのでございますが、いただきました意見書の中で「反対である」と明確に書いているところもあれば、あるいは「何々すべきである」という書き分けも行われているようでして、そこは恐らく意思といいましょうか、その度合いは違うということだと思いますが、そういうことを前提にした上での質問になります。もし違っていましたら後ほど必ずしもそうではないとおっしゃっていただければと思うのですが、内部通報体制につきましては、この調査会でも大変議論になったところでございまして、確かに会社法の対象となる企業につきましては会社法の枠組みがあるわけですが、その対象とならない企業、会社さんもあります。

御主張点は画一的、一律的な整備についての要請が法的になされると困るということだろうと思うのですが、御案内のとおり昨今、大変話題になっておりますハラスメント関係では、これは全ての企業に義務付けがなされております。それもある意味では大変零細なところも含めて実施を求めているわけでございますが、かなり方法につきましてアローワンスが認められている。指針の中でこんな例もありますよということを示している。あと、体制整備につきましてももちろん窓口を設けるのもありますが、担当者を指名するということもありますよといったような形で、ある意味では実情に合わせた体制整備が可能な制度設計になっているわけなのですが、そのようなものであれば、言い方が少しここは緩いように思ったものですから、受け入れていただく余地はあるのかなというところを確認させていただきたいと思います。

通報者が主観で3号通報に走ることがあるというご指摘もありましたけれども、もしその中で要件というものを明確に示していけば、通報として取り上げることについての弊害もなくなるような気もいたすものですから、その点を含めて確認をさせていただければと思います。

以上でございます。

○山本座長 少し項目が多くなっておりますので、今の石井委員の御意見についてはこの後ということにいたしまして、4点について、すなわち7番の守秘義務の点、9番(1)の行政措置の点、10番の立証責任の点、5番の通報を裏付ける資料の収集行為の点、これらについてお答えがございましたらお願いしたいと思います。

○佐久間部会長 まず大変皆様に有意義な御意見をいただき、また、御説明いただきましてありがとうございます。

まず最初に、多分我々の意見書を見て非常にコアな部分で反対が多いなと感じておられると思います。なぜそうなっているかということを若干考えますと、重々御承知のとおりでありますが、通報制度というのは極めて重要な仕組みでありますが、ただ、コンプライアンス徹底、不祥事、不正を減らすためには、通報制度の他にも非常に重要な制度上の仕組みがございます。これは皆さん、重々承知の一連のコンプライアンス対応の整備、つまり法令を理解し、それを踏まえて社内規定をつくり、マニュアル整備をし、その結果を社内に周知して教育研修をし、過去あった事例の共有化、その上で現場実態の把握、情報収集。この(情報収集)中に監査役監査は当然で、内部監査、内部通報制度があり、ある一定の事業所であればストレスチェックがあり、ハラスメント対策の制度、あと従業員の意識アンケートといったものがある。その上で(不正があれば)是正に取り組まなければいけない。この是正は当然、現場任せではなくて会社ぐるみで支援し、リードしていく。その結果については就業規則に基づいて厳正な処罰もしくは責任追及、役員等に対しては賠償請求等々をやっていく。これらについて確実にPDCAを回すという極めて強い意志がなければいけない。こういう全体像だと思います。

先ほど冒頭言われた不正、不祥事というのは後を絶たない。これは事実、皆さん御覧のとおりであります。ただ、その防止のためには今言ったこと全体を実行していかなければいけない。内部通報制度だけでその問題を解決するというのは、やや無理がある。逆に我々から見たときに、今回の改正の方向というのは、かなりそこに力が入っているということで、経団連の会員企業、これは非常に珍しいのですけれども、この反対というのは全会一致の反対でございます。ということは、やはりそこに無理があるのだろう。

もう一つ、これは水町先生がおられるので私がこんなことを言ってもしようがないのですけれども、労働者の保護というのは、内部通報、外部通報全てについて公益通報者保護法は当然保護の根拠になりますが、そのベースとしては当然、労働契約法があり、判例法理がありということで、公益通報者保護法の適用が無くても、全くの無防備になるわけではありません。これは要件を満たそうが満たされまいが、それはまさに中身で判断され、当然救われるものは救われる。我々は常にそれは意識しています。ですからこれは公益通報者保護法対象の通報だから不利益取扱いをしてはいけない、そうでないからしていいなんてことを考えたことは、多くの企業では全くありません。どの通報に対しても同じ考えで臨んでいる。こういうことです。

逆に不利益取扱いをしていたとすれば、そういう企業においてはどのような通報であっても、つまり公益通報者保護法にドンピシャに当たるものであっても不利益扱いをするし、そうでなくてもしている。こういうことではないかと思います。

その上で個別の御質問をいただいたことについて非常に簡単に申し上げますと、行政措置の問題というのは先ほど言いましたように、既に一般法理、労働契約等々でいろいろな制度が整っていますので、それでいいのではないかということです。

資料の収集は、確かに資料があったほうがいいというのは理解できます。ただ、それは全て個別のケース次第で、まさにそこは手段の相当性だったり、いろいろな判断要素の中で判断すべきであって、最初からどのような資料を持ち出しても公益通報ではいいんですよ、というのはないだろう。逆に我々は公益通報者保護法の対象ではないものであっても、そういう資料が出ていったときに一方的に解雇ということは当然ありません。これはだから通報が関係するかしないかに関係がない話だと我々は思っています。

例えば通報に絡んでいない、例えで分かりやすく言えば、食品会社で有害なものが入っている製品の出荷が目前に迫っていた。それを知った製造部以外の従業員がその在庫品を工場の裏の原っぱに捨てた。通報はしていません。この従業員はまず廃掃法違反です。原っぱに捨てましたから。あと窃盗です。就業規則違反です。そうすると、この従業員は一切、無防備で、解雇される。こういうことになりますかというと、そうはなりません。これは水町先生が一番御案内だと思いますけれども、やはりこのケースは手段の相当性というか、そういうところの問題がないわけではないかもしれませんが、それは正当な理由があるのかどうかというところが当然議論されて、とても解雇はできない。こういう判断になるということであります。ですからこれは個別で議論していくべき問題だということです。

立証責任も同じです。通報して、公益通報だったら不利益取扱いはできない。そのとおりです。グレーの場合だと、全ての判断が整ったときに、これは公益通報ですとなれば、不利益取扱はできないのだから、(立証責任の転換も)いいではないか。ただ、それは最初は必ずしも分からない。グレーの場合、最終的に公益通報とならない場合でも、とりあえず通報しておく(立証責任を転換する)というのも、一旦通報してしまえば、これは公益通報ではありませんよなんて話には最初はなりませんから。ここも立証責任ということで言えば、なぜ通報が絡むと立証責任が転換されるのか。先ほど言ったような(通報の無い)ケースは立証責任は転換されていないわけです。これは一般の法理による。事実上、訴訟上どちらに責任があるかというのは大体相場というのはありますけれども、これは別に法律で決まっているわけではないということです。

守秘義務については、実態を申しますと、匿名でない場合、当然、これについても問題の解決に取組みますか、是正しますかと通報者に問いかけるケースが大方です。そうすると通報者が、いや、もうしないでくれと言ったら当然動けない。次は是正してくれと言われた場合。当然、我々は調査を行ったり是正措置をとる場合、通報者の名前は言いません。ただ、先ほど申し上げましたように、職場から通報が一直線に我々のところに来る場合ももちろんありますが、やはり職場内で同僚とか上司に問題ではないかとか、単純な質問をしている場合がある。そうすると通報を受けて我々は当然調査に入ります。是正してくれと言われているわけですし、是正すべきだと思っていますから本当かどうかを調べ、是正し、本当にそれに不正があったらその人間は就業規則に基づいて懲戒処分にするということになりますと、誰が通報したのかというと、小さい職場だったら大体分かってくるということです。ではそれが守秘義務違反か。そうではありません。ただ、ここはいやいやそうだろうという話が持ち上がってくる。あと、もう少しグレーの場合は通報を受ける者が巻き込まれる。つまり内部通報窓口の人間は、この法律ができれば告発なのか告訴なのか分かりませんが、そういうことの対象に巻き込まれる。そうすると結局、何が起こるかというと、担当者というのは放置が一番楽です。何もしない。これでは全く意味がない。是正に我々は絶対に取り組むというのが趣旨ですから、それは調査する、最終的に処罰までいくということなので、これはやはり守秘義務を課すというのは趣旨に真っ向反する。

逆に、もう一つの例は職場で相談しなくて、もうだめだろうな、幾ら言ったって聞かない、もしくは長年やっているからだめだろうな、というので通報が来る場合もあります。この場合は、ただなぜ彼が職場で言えないかということなのです。それは多くの場合、ハラスメント的な職場です。つまりほかの件で上司に何か提案したら、受け付けないどころかみんなの前で罵倒される。そういうハラスメントの職場はいわゆる風通しが悪いということで内部通報に頼る場合があります。ただ、そのときも実際に問題だね、是正しますと言って調査に入り、いろいろ調べ、そのハラスメントをやっていた人間がもし不正を行っていたとすれば、彼にまさに懲戒処分が下る。そうすると、その職場もそんなに大きくなければ、あいつはハラスメントを受けていたなと。こういう話になり、やはり通報者が分かる場合もあります。

ということなので、結果的に守秘を守る(通報者が特定されない)ということは極めて難しい場合がある。窓口はどんなに守ってもおのずと分かってしまう。それを逆に奇貨としていろいろ言い出す場合があるということです。この場合そのハラスメントをした人間は、何だということでこういうことを問題にする可能性があるということです。なのでやはり守秘義務というのは当然守りますけれども、結果的に知れる場合もある。こういうことなので、我々は強く反対しているということであります。

以上です。

○山本座長 それでは、先ほど石井委員から6番の通報体制の整備について御意見がございました。それから、高委員長から要件全般について御意見がございましたけれども、それらの点についてさらに御質問ございますでしょうか。

それでは、お願いします。

○亀井委員 先ほど高委員長がおっしゃった濫用についてなのですが、私は企業から委託を受けまして通報を受け付けている、いわゆる外部窓口の事業者です。いろいろと私どもの実感値、それから、アンケート調査などを実施していますと、今、日本企業で1年間で不正の告発を受け付けている企業が2割くらい。残りの8割はほとんどが労務系の不満もしくは人間関係の軋轢、そういったものを内部通報制度に申告もしくは告発されています。

そういった状況を考えると、濫用というよりは今回のこの法の要件の緩和が間違って解釈されることによって、さらに通報数が爆発するのではないかという懸念は私も実は同様に抱いていまして、その中には数の統計的なお話で悪質な濫用というものも発生する可能性があるだろうというのは思っております。

高委員長は、そういった濫用の事例を企業側から、経団連様の側から出していただくというのはどうでしょうかという御提案だったのですけれども、仮に行政側から公益通報であるものは保護対象になります。しかし、公益通報でないものは保護対象にはなりませんということを明示していただいて、それを利用して企業側が従業員もしくは通報者となり得る方々に説明をし、それに従って対応をするということになると、数自体が少なくなるので、いろいろ丁寧に対応できるようになって、いわゆる緩和がある程度起こったとしても、企業側がそれほど大変になることはないのではないかということはあり得ないでしょうか。長くなりましたが、これが私の質問です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。お願いします。

○春田委員 いろいろ御説明いただきましてありがとうございます。

私ども連合、働く者の立場から少し申し上げたいと思います。

今、企業不祥事が後を絶たない中で、連合の研究機関である連合総研でも、今どうして企業不祥事が起こるのかということを調査するような形で、コーポレートガバナンス含め研究会を立ち上げて調査しているところでございますけれども、そのヒアリング調査の中でも先ほど会社の風通しの話がございましたが、そういった言いたいことが職場の中で上司に言えない。コンプライアンス違反が仮にあったとしても、それがなかなか上に言えないというような風土があることも要因ではないかという話もございました。その中で公益通報、とりわけ内部通報保護の役割というのは非常に大きいのかなと思っているところでございます。

企業の中でこういった事態が起こっている、何か不祥事が起こっているということをなかなか言い出せない。その中で公益通報者保護法で今、論点で上がっています、特に7番の守秘義務のところ。これは公益通報をしようと思う側の立場に立って話をしますと、非常にこの守秘義務が明確に守られていないと認識しているケースが多いことから、守秘義務についての定め、法律の定めを設けることは重要ではないのかと思っております。その点、確かに濫用的な通報の懸念だとか、いろいろと先ほど来、議論がございますけれども、守秘義務のところは公益通報者を保護していく1つの大きなポイントだと思っておりますので、御意見としてひとつ御理解賜ればと思っているところでございます。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。それでは、お願いします。

○林委員 手短に。ガイドラインで決まっているので、これで足りるのではないかという意見があちこちにあったのですけれども、現状、内部通報制度というのは9割方、大企業では導入されているはずにもかかわらず、不祥事がなくならないというのが実態でございます。このガイドラインというものがあったとしても、十分機能していないというのが実態ではないかなと思いますけれども、その辺のあたりどう考えておられるのか。

それと、この法律の制度趣旨についてですけれども、企業の自浄機能を高めるということだけではなくて、この制度によって国民の生命、身体、それから、環境、安全というものを守るというのが目的であるということについても、思いをはせていただきたいと思います。

以上です。

○山本座長 先ほど石井委員から6番の通報体制の整備についてお話がございまして、これはここでの議論の趣旨を明確にさせたいという、私もそういう思いでございますが、ここでは決して画一的な制度を全ての企業に導入していただこうということを申し上げているわけではございません。なるべくそれぞれの企業の創意工夫でできるようにということは、これはこの場での恐らく総意だろうと思います。

ここの6番の御意見の中で、例えばガイドライン、現在のガイドラインであるとか、現在の認証制度を前提にして、それと法律の義務付けとを結びつけることには反対をされるということなのですけれども、この場では、法律上の義務については、現在のガイドラインとはまた違うレベルで恐らく考えなくてはいけないだろう、という議論をしました。そういたしますと法律上の義務を満たすような事例は、例えばこういうものがあるということをガイドラインで示すことによって、ある程度、柔軟性と予測可能性を両立させていく。あるいはそれでもさらに懸念があるということであれば、その法律上の義務を満たしているということについての例えば認証の制度を設けるといったことも場合によっては考えられるのではないかといった議論をしておりましたので、その点は明確にしておきたいと思います。

お願いします。

○柿崎座長代理 別の点で、2号通報の真実相当性についての要件緩和について若干お聞きさせていただきたいのですけれども、この調査会の中でも議論の方向性としては、中小企業による内部通報体制の整備負担の重さの問題や、それ以外にも実態として事業体の自浄作用が不十分な場合もありますので、全体として2号通報を充実させる方向性で何とかできないかという検討しているわけで、2号通報の窓口の一元化というのも恐らくその一環だろうと思います。

そうすると、通報の行いやすさということを見直さなければ、結果としては御懸念の3号通報に流れていく可能性が高いと思います。3号通報と違って2号通報に関しましては、行政機関の守秘義務という前提がございますので、名誉棄損罪の違法性阻却と同じ程度に真実相当性の要件を要求するというのは、平仄が合わないのではないかと思います。また、御指摘にありましたように、通報者本人の供述であっても具体性や迫真性によって真実相当性は認められる場合があるから、緩和しなくてもこれで足りるという御意見でございましたけれども、これはあくまでも例外的な場面であろうかと思います。裁判で争うことになれば、原則として証拠が必要になってきますので、それがなくても明らかに真実であろうと判断できるような特段の事情があった場合に、本人供述も認めるといった趣旨であろうかと推測します。

そうであれば、例外で認められるからといって原則を変えなくてもよいという理屈にはならないのではないかと思います。むしろ、2号通報を使いやすくしていくという観点からも、従来の真実相当性の要件ではなく、少なくとも「疑いがある程度」までの要件に緩和をしていって、2号通報をより活用していくような改正はできないかという方向で検討しているわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

○山本座長 その点について私も一言だけ申し上げますと、ここでは2号通報と3号通報は少し違うだろうという議論をいたしました。真実相当性の要件は現在、2号通報でも3号通報でも法律上、同じレベルになっております。そこのところはむしろ少し区別をしたほうが合理的なのではないかという議論をしたと思いますが、今日の御意見はむしろ、2号通報、3号通報とも真実相当性の要件は同じレベルのほうが合理的であるという御意見なのかということを確認したいと思います。

さらにございましたら、よろしいでしょうか。それでしたらすみません、大変長くなって恐縮ですけれども、特に4番の今の(1)の2号通報と、6番の通報体制の整備、全般的な御意見がございましたので、それぞれについてお願いできればと思います。

○佐久間部会長 まず今の4番ですけれども、2号通報の一番の問題として、窓口側の充実というのが一番重要だと思います。これは制度というより実際のキャパシティーの問題。これは非常に重要だと思います。ただ、これは我々がどうこう言う話ではありませんので、これはお願いになります。

その上で、要件については1号と2号の決定的違いは、1号はちょっとでも通報があれば、我々はすぐ調査に入ります。身内ですから、これはすぐ立入り調査というわけではありませんが、すぐ調査に入る。それで全くそれはでっち上げだったら、ごめんなさいと言って帰る。こういうことになるわけですが、2号でよその企業に調査に入るということは、行政としてそれなりの要件は必要。逆にそれがないものが来てもなかなか効率的に動けない。こういう面があるだろうと思います。ですからやはりそこはしっかり動いていただくという点では、真実相当性の要件は維持したほうがいい。こういう判断です。

6番の体制整備なのですが、型をはめないというのはいいのですが、整備と言うからには何らかの体制を持たなければいけない。その範囲というのはどの範囲なのかというのがよく分からない。御案内のとおり、日本の会社というのは小規模85%、これは後に、我々ではない団体のヒアリングがあるかと思いますけれども、本当に小規模の会社が多い。これは上場企業でも10人いない会社というのもたくさんあります。そういうところの内部通報制度というのはどういうものになるかというと、これは普通の内部通報制度にはなりません。これはこの辺にいる人たちの規模で、誰に通報すると言ったって通報しようがない。外部に通報したってその解決に当たるということになれば、ほとんど身内でやっているようなものですから。ですからそこでの内部通報制度というのは全く違うので、そういうものまで全部通報制度として整備されたというのであれば、義務化する必要は多分ないということだと思います。まさに会社法の内部統制システムの構築義務というのは、目的ははっきりしていますけれども、やり方というのはそれぞれ任されている。こういうことでございますから、そのコンテキストで考えるべき。

あと、3番目の不祥事がなくならない。それは事実、皆さん御承知のとおりであります。ただ、それについては先ほど私も申し上げたコンプライアンスのためには、一連のPDCAを回す、経営の意思というものが必要です。私は新聞報道を見た限りでは、通報制度が不備だったので長年不祥事が行われていたというよりは、分かっていたけれども、是正できていない。その分かっていたレベルというのはいろいろあると思います。ということなので、これは通報制度の問題以外のところが大きい。こういうケースも多々あるだろうと思います。もちろん通報制度が不備で感知できなかった。ただ、この感知という点で言えばまさに内部監査というのは責任があります。監査役監査に責任があります。内部通報というのはある意味ではボランティアですから、そういうところだけを責めるというのはおかしくて、それは本来、これも会社法にある監査役監査、内部監査等々が不備だったというところが、まず一義的に責められるべきところだと思います。

以上です。

○山本座長 それでは、大変長くなってしまいまして申し訳ございませんでした。日本経済団体連合会のヒアリングにつきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。お忙しいところ審議に御協力をいただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、ここで5分ほど休憩をとりたいと思います。再開は2時10分といたします。

(休憩)

○山本座長 それでは、再開したいと思います。

続きまして、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会にお願いをしたいと思います。

本日は、大塚喜久雄様、熊谷由美子様、棚橋節子様、土田あつ子様に御出席をいただいております。お忙しいところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。

それでは、御説明をお願いします。

○土田氏 今日はこのような席に意見を述べる機会をいただき、大変ありがたいと思っております。私どもは日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会と非常に長い名前の団体であります。通称NACSと申します。NACSは消費者の立場からいろいろ、様々な活動を行っております。そういう団体でございます。今日は大塚、熊谷、棚橋、そして私、土田の4名が意見を述べさせていただきます。

初めに、お手元の資料2にありますように、公益通報者保護法の名に恥じないような通報者保護を明確に打ち出した法律になってほしいと思っております。そのために余り細かい取り決めをしてしまうと公益通報そのものが使いにくく、使われない法律となってしまうことが懸念されております。私たちが今回どのような立場で申し上げるかというと、あくまでも法律家ではありませんので、消費者の立場に立って御意見を申し上げたいと思います。

それでは、意見1をお願いします。

○熊谷氏 NACSの熊谷と申します。

NACSの中では消費者提言委員会というところで活動をしております。今日はこのような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。

意見1としまして、資料にありますとおり述べさせていただきます。

不利益取扱いから保護する通報者の範囲の拡大を求めます。今回の中間整理で、通報者の範囲について退職者、役員が含められる方向が示されたことは、大変評価いたしまして、歓迎されることでございます。退職者は退職金、年金などで不利益を受けることが懸念されますので、短くはない相当の期間を定めて通報者に含めていただきたいと思います。

役員は内部での是正措置をとることを原則にするとされていますが、事業者の規模や業種によって事情が異なると思います。中小企業の役員の場合は、労働者と同様の仕事をしていたり、また、名ばかりの役員という場合もありますので、内部での是正措置を必須とすることは適切でないと考えます。

それから、取引先事業者についてですが、引き続き検討することとなっていますが、取引先事業者の経営者役員の方も通報者として含めるべきと考えます。通報によって取引先の事業者が事業契約の破棄や中断をされた場合には、その取引の事業者全体が不利益を受けることになりますし、間接的にはそこの取引事業者の労働者も不利益を受けることにつながると思います。そのようなリスクがある中で、経営者が通報に対して萎縮することがないように保護する必要性は高いと考えます。

取引先事業者の範囲についてですが、取引先事業者というのは利害関係がはっきりしているわけで、その範囲はこれまでの事業の提携などについても決まってくると思います。事業契約の取り消しなどの不利益が通報によるものかどうかというのは、事業者への調査や聞き込みなどで判断されると思いますし、ほかの外的な要因がなければ不利益を受けたことが通報によるものと言わざるを得ないのではないでしょうか。取引先の労働者は既に保護の対象になっていますが、経営者、役員の方も通報者として含めていただくのが妥当と考えています。

そのほかの通報者として意見書には盛り込みませんでしたが、労働者の家族を通報者に含めていただきたいと思います。労働者の身近な家族が勤務先での危険が及ぶようなことや法令違反などの不当な状況などについて労働者から聞く、家庭内でそういうことを聞かされることなどはあると思います。その労働者が自分で通報できない場合、体調を崩していたり、それから、ハラスメントを受けているような場合には、家族が通報するということが想定されると思います。家族からも相談を受けて通報ができる、また、行政機関の体制というものがまた望まれると思います。家族が嫌がらせを受ける可能性もありますし、保護されるべき通報者として家族を含めることを強く望みます。

さらに、そのほかの通報者として不利益を受ける可能性がある対象者として今後、御検討をお願いしたものがあります。まず1つは、ボランティアとして就労している場合です。個人的に何か頼まれたり、あるいはごく小規模のボランティア活動は別としても、ある程度以上の規模で組織的に行われているボランティア活動の中で通報対象となる事実が明らかであれば、保護されるべきと考えます。

2番目に、介護施設、障害者施設などの入所者とその家族です。

3番目は、病院での入院患者、治療を受けている患者とその家族も通報者として今後、御検討をお願いしたいと思います。施設や病院では、高齢者などは何かしらその中の不当なことに気づいても通報できないことがありますし、そのサービスを受けている人の家族が生命、身体に危険が及ぶような不適切で法に触れるような場面に出会うこともあると思いますので、今、申し上げた入所者とその家族、入院患者等も今後、御検討をお願いしたいと思っております。最近はそのような問題が起きた報道もされておりますので、以上のような点から通報者の範囲を広げることを御検討お願いいたします。

○大塚氏 2番目の外部通報要件の緩和につきましては、私、大塚より説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

最近、自動車メーカーの燃費不正や無資格従業員による出荷検査の問題、さらに私たちが日常利用する自動車、航空機に使われている部品のメーカーによる品質データの偽装など、消費者の信頼を損ない、消費者を裏切るような不祥事が引き続いて発生しています。このような状況を見ますと、残念ながら事業者の自浄作用のみに期待することは難しいというのが私たちの偽らざる気持ちです。そこで外部通報の存在は非常に重要であると考えます。外部通報の要件を緩和して通報を行いやすくすることが企業への有効な牽制になり、企業は企業で内部通報体制の確立により真剣に努力していただける。その結果、内部通報の体制もより確実なものになっていくと考えられます。

具体的には、2号通報については真実相当性の要件を緩和して、1号通報の思料するというレベルにできるだけ近づけていただきたいと考えます。3号通報については、中間報告で方向性が示されましたように、3号通報の特定事由に内部通報体制の設置及び機能の有無を加えていただきたいと考えます。まず内部通報体制があって、この存在が重要でして、体制が存在すれば現行法の特定事由のうち、イからニまでの4項目、不利益な取扱いのおそれであるとか、調査に着手しないまでの4項目に該当するか否か。言っていることと実際に行っていることの両面でチェックできると思います。以上のようにして外部通報のハードルを低くしていただきたいと考えます。

次に、通報を裏付ける資料の収集行為についてですが、特に3号通報においては通報するためには根拠となる資料を通報先に提示することが不可欠であり、裏付ける資料がなければ事実上、通報が難しいのが現状です。資料収集行為については公益通報という目的を逸脱していなければ免責とされるべきと考えます。現実の裁判でも様々な要素を考慮して総合的に判断されているようですので、これを参考に法律の条文の中に免責を置くことをぜひ検討していただきたいと思います。

2番目については以上です。ありがとうございました。

○土田氏 続きまして意見3、対象となる法律の拡大を求めます。現在の対象の法律が467本と広い範囲にわたっております。中間報告では、対象法律の規定が論議されましたが、一般の国民や消費者にとって不正事実や問題を通報するのであって、その通報がどの法律に該当するかまでは、法律家でない限りは判断することは非常に難しいと思います。そのために対象法律を列挙して限定すべきではなく、むしろどの法律であっても公益通報に当たるというような広く捉えていただきたいと思います。また、各自治体が出す条例も通報対象事実の範囲に含めることが私は望ましいと思います。

続きまして、守秘義務についてであります。1号通報先の守秘義務は必要だと思います。しかし、それが刑事罰までに課すことは必要ないと思っております。通報窓口の担当者の萎縮を招きかねないと思っています。一般に公益通報はまず相談から入ることが多いと思います。相談対応者が公益通報に詳しくないことも考えられます。通報内容を課内で検討、そして打ち合わせすることもあると思います。このようなことになると、もし守秘義務違反が刑罰になるとすれば、窓口の担い手の減少を招きかねないと思います。

続きまして、意見5です。ここでは相談窓口の設置についてとありますけれども、中間報告ではこの相談窓口という言葉を使っておりませんで、一元的窓口というような書きぶりになっておりますので、相談窓口のところを一元的窓口に書き換えていただければと思います。

現在、消費者庁に一元的窓口の設置案が出ておりますが、一元的窓口であっても内容の事実確認の必要があり、しっかりした調査能力が求められます。その上に調査権限、いろいろな不正の行為や違反行為があったような場合、恐らく大企業やその他の官庁に対しても、その調査能力が発揮できることが必要となってくると思います。現在も消費者庁に窓口がありますけれども、さらなる一元的窓口というようなものはどのような役割を担うのか。それが明確ではありません。既に官庁ではそれぞれの通報体制は一応、整っております。できた一元的窓口は官庁を含め、事業者へ単なる紹介や連絡というようなことになるのであれば、通報者は二度手間になることにもなります。一元的窓口というようなイメージであると、恐らく通報者は相談、対応、そして解決ということを期待すると思います。設置した窓口がスムーズに対応できないとなれば、通報者の不信や不満の増大になりかねません。

このようなことを考えると、どこに設置していいのかということを私は考えてしまいます。今はできれば消費者庁に置くというのも1つですが、非常に独立性の高いADR機関を持った第三者機関に窓口を設置することも考えられるのではないかと思っております。

意見5は以上です。

○棚橋氏 意見6についてお話します。不利益取扱いをした事業者に対する行政措置、刑事罰の導入について述べたいと思います。

先ほどから御意見として出ておりますが、近年、我が国では製造業者の不正経理、検査不正など相次いで発覚しております。これらの事件に関しては内部通報制度がきちんと機能していない結果と思われます。さらに、社長や役員による不正の黙認、隠蔽が続いた実例もありました。内部通報の段階で適切に対応していれば、組織を揺るがす不祥事に進まなかったケースも少なくないのではと国民も実感しているのではないかと思います。現状では、企業、組織側が内部告発者に対して徹底して嫌がらせできることです。現行法は、当事者任せの民事ルール的で、内部告発は当事者の正義感に頼っている状況で、抑止力としてが不十分であると実感しております。

これに対しまして今回の中間整理で行政措置導入の方向性が示されていることは大いに評価いたしております。ただ、勧告にとどまらず、命令も可能にすること、さらに悪質な場合は刑事罰を導入することまで踏み込んでいただいて、国が積極的に保護することをこの法律で明確にすべきと考えます。先ほど委員の方からも御意見として述べられましたように、国民の生命、安全・安心を守る法律であっていただきたいと思っております。

以上が6番の意見です。

○土田氏 意見7として、官庁の業務を入札するときに企画提案書というものを出しますが、そのときの評価項目にぜひ公益通報制度の有無を入れていただきたいと思います。

現在、官庁業務を請け負うときに提出する企画提案書の評価項目に、現在、くるみん制度とか、プラチナくるみん制度というものが評価項目としてあります。これが一応、業務を請け負うときの評価点になっております。ぜひ公益通報制度もこの評価項目の中に入れていただくように、消費者庁始めぜひ努力をしていただきたいと思います。それぞれの官庁がもしこの評価項目に入れていただくとなれば、企業のほうも必ず官庁の業務を請け負うときにそれを見るのであって、そうすると必ず公益通報制度の認知が広まることが考えられると思います。

そのほかに、最後になりますけれども、平成16年に衆議院と参議院で見直し、再検討の附帯決議が出されました。そして、本法律が平成18年に施行されました。それから12年たちました。ぜひ消費者委員会としても、早急に公益通報保護制度の改正を進めるべく建議を出していただきたいというお願いです。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明につきまして御質問等ございますでしょうか。石井委員、お願いします。

○石井委員 御説明ありがとうございました。

1点だけ確認ということでお尋ねしたいのですが、最後の意見7のところでございますけれども、ここで言っている官庁、例としてくるみんの話が出ておりましたが、そうしますと国を念頭に置いているということで、自治体は考えていないのかというのが1つ。

もう一つ、公益通報者保護制度の議論の中では、内部通報について体制整備というのも1つ議論になっておりまして、もちろん現時点ではまだ決まっていないのですが、仮に柔軟な形で制度を設けなさいということになったとしたときでも、こういったものはあったほうが必要というお考えでしょうか。

以上、2点お願いします。

○土田氏 初めに官庁の業務の入札の件なのですが、現在、くるみん制度というものが評価点になっておりますが、これは中央官庁であればほとんど同じだと思います。私はほかの官庁のことも関与しているので、こういう加点がされるということがありますので、この評価にぜひ入れていただくと非常に効果がある。一般の企業がこれを見て、公益通報窓口があるということが加点の対象になるとすれば、公益通報制度の充実ということから考えると、私は役に立つと思っております。

ただ、地方の自治体の行政窓口というのはどういった形で入札しているのか。私はその辺を存じ上げないので、それはお答えできません。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。あるいは今の点でも結構です。それでは、お願いします。

○中村委員 御説明ありがとうございました。

法律論とかそういうものを語るということではなく、御意見ということで承っておりますので余りその辺の議論をするつもりはないのですけれども、企業に所属している者の立場から若干御意見といいますか、考え方はどうなのかというところを少しお話させていただきたいと思います。

1番のところなのですけれども、退職者に拡大するという点につきまして申し上げますと、そもそも退職した後で通報をされることが多いというのは、普通は退職すると不利益がないと思ってされるのではないかと思うのです。そういうこともございますし、最近では退職金は厚生年金以外には特にないという会社も結構あるのではないかと思いまして、退職後、時間がたっても不利益を受ける可能性があるというところは、企業の立場からすると分かりにくいなという形で考えているところでございますので、もしそのあたりについて補足の御説明があればいただければと思います。

役員につきましても、名ばかり役員ということが書かれているのですが、一応、会社法の建付け上は、役員が会社を規律しなければいけないことになっておりまして、そこの部分でその人が仕事をしないで、そもそもその人はそういう不正が起こらないようにしなければいけない立場にあるのにやっていなかったということで、外に直ちに行ってしまうというところは若干、会社に属する者としては違和感があるということを感じているということで、これは意見でございます。

あと一点、労働者の家族ということなのですが、私は前職でも通報等をたくさん聞いておりまして、現実問題として労働者の家族の方から受けるということはそれなりにございました。ただ、通報を窓口として受けるという話と、不利益の取扱いの話は若干別だと思っていまして、家族の方は直接の不利益は普通はないのかなと思うので、結果的には労働者に対する不利益の禁止ということでおさまるのではないかという気もするのですが、そのあたりについてもし補足があればお願いいたします。

以上です。

○山本座長 それでは、お願いします。

○熊谷氏 退職者のことですが、退職者が不利益をどのように受ける可能性があるかということですが、退職して退職金が支払われるのは退職後、直ちに支払われるわけではなくて、ある程度の期間を置いて短いですけれども、そういうこともありますし、退職後に関連の会社に勤め続けているというような場合もあると思いますので、そういった場合はその会社を通じて何らかの不利益を受けるという可能性も考えられると思います。また、もっと広く一般的にイメージがはっきりしませんけれども、何らかの嫌がらせを受けるという可能性もなくはないと思います。

家族が不利益を受けるかどうかということですが、私は家族というのは労働者と一緒に生計を同じにしていることが多くあると思いますので、労働者が不利益を受けるということは、その家族が生活にも困ったりするということもあると思います。それから、労働者の家族として何らかの嫌がらせを受けたりする可能性もなくはないと思いますので、家族というものを含めていただきたいと思います。

先ほども触れましたが、労働者が通報できない状態に家族が通報することもあり得ると思いますので、そういったことをこの法律に含めていただけると、その抑止力として働くことも考えられると思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。それでは、お願いします。

○亀井委員 具体的な点を質問させていただきたいと思います。

意見2の裏付けとなる根拠資料の収集行為の免責のところなのですが、具体場面を設定しますと、その情報を収集しようとして組織の中でいろいろとアクセスしている。最近、大きな会社ですとそういったアクセスの記録をとっていて、本来そんなにたくさんの情報に、あるいはそれだけの幅広い情報に触れる必要はあなたありませんよねという方には、何らか注意が飛んだり、上司に向かって例えばAさんはこういうアクセスをしていますよという注意喚起がなされたりというようなことがよくあります。今、ここで免責されるべきとおっしゃっておられるのは、そういった情報収集の段階の非常に初期の段階から、そのずっと後の通報が公益通報であるということが立証されるまでの最終段階にいたる全体にわたって免責されるべきというふうに御主張されているのでしょうかというのが1点目です。

2点目が、意見5の相談窓口なのですけれども、この相談窓口の機能というのはあくまでも2号通報に関する御相談をすることを前提にして考えておられるのでしょうか。それとも1号通報、つまり御自分が所属する組織についても通報しようかな、どうしようかなというような、そういった1号通報に関しても悩んでおられる方の相談窓口というふうに機能してほしいとお考えになられているのでしょうか。どちらでしょうか。その2点でございます。

○大塚氏 最初の意見2についての御質問についてです。これについては正直なところ、いろいろな場面が想像されるということで、たしかここの調査会でもいろいろな例の御紹介があったと思います。私ども最初に申し上げたように、余りに細かい、この場合はどうだ、こうだという議論をしてしまうと、逆に使いづらいということもあります。ですから観念的にというか、ある程度裁判の中で判断ができるような文言を法律家の方が考えて入れていただくということでよいと、私自身は考えております。

具体的にこの時間、どれくらいの期間の収集が免責に相当するのかということについては、御専門の方にお任せしたいと考えています。

以上です。

○土田氏 相談窓口の件ですけれども、私は相談窓口として、これが公益通報に当たるかどうかということも含めて、一般の通報から2号通報に限ったことではないと思います。私は消費者庁でこれができるということになりますと、今もう既に窓口があることから考えますともっと違う方向で考えていかなくてはならないかと思っているのです。そうしますと、本当にそれが消費者庁でできるのか。それに対してどのような権限と資力、お金と人がかけられるかということを非常に懸念しております。できれば予算もとって、お金もかけてというようなことを期待したいのですけれども、現状を見るとかなりそれも厳しいかなと思っておりますので、そこのところはあとは消費者庁さんの頑張りにぜひ期待したいと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。それでは、お願いします。

○柿崎座長代理 御意見の中には特にないのですけれども、せっかくですので、NACSの方々が相談を受けた中で、企業に対して内部通報をしたのに十分に取り扱ってくれなかった相談とか、逆に相談を受けても、実はこの人はその趣旨をとり違えているのではないかという濫用的なものも含めて、そのような実感といいますか、相談の実態のほうで何かお感じになっていることがありましたら、せっかくの機会ですのでお聞かせいただきたいと思います。

○棚橋氏 相談の中で内部通報かどうかという相談ではなくて、いわゆる商店街の個人経営のところでパートに勤めておられた女性が、結果的には退職せざるを得ないことになったのですが、商品の賞味期限だか消費期限だか、今、定かではないのですが、シールの張り替えの仕事を店舗の裏側で頼まれた。これはやはり大きい問題であるというような御相談は受けたことがあります。その方はやめて相談窓口に来られて、私どもは消費者相談なので他機関を御紹介するような形にはなりました。今回この中間整理を見て退職者ということで、まさにあの女性は通報者として適用できる人だと思ったものです。私どもは今回の通報者の範囲を広げるというのは大歓迎ということは実際の経験が根底にあります。

○林委員 今の質問に関連してお聞きしたいのですけれども、意見1のところで、ここには書いていないのだけれども、ボランティアであるとか介護施設の職員あるいは家族、入院患者なども入れていってはどうかというお話があったのですが、そういう御相談なんかもあるのでしょうか。

○棚橋氏 医療関係や福祉関係、介護関係などの場合は東京都や外郭団体などの相談窓口がありますので、そういったところを御紹介しています。実際には立ち入っていろいろお聞きして、あっせんとかいうような形は行っておりません。

○林委員 ありがとうございます。恐らくそういう方のほうが不正に接する立場におありなので、情報があるということで理解してよろしいですかね。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会のヒアリングにつきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。お忙しいところ審議に御協力いただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、若干の休憩を入れたいと思います。53分までということにいたします。

(休憩)

○山本座長 それでは、再開したいと思います。

続きまして、全国中小企業団体中央会にお願いしたいと思います。

本日は、専務理事の高橋晴樹様、政策推進部副部長の井上尚洋様、政策推進部主事の小鮒瞬様に御出席をいただいております。お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。

それでは、御説明をお願いいたします。

○高橋専務理事 御紹介いただきました、全国中小企業団体中央会の専務理事の高橋でございます。

今日はこのような席にお招きいただいて、ありがとうございます。座って説明をさせていただきます。

まず、全国中小企業団体中央会をご存じでない方がいらっしゃるかと思いますので、簡単に私どもの団体の性格を述べたいと存じます。

公益通報者保護専門調査会の委員に全国商工会連合会に所属されている方が入って活動していると存じますけれども、いわゆる全国連というところと商工会議所、これはそれぞれの地域の経済団体という位置付けでございます。商工会議所が市の域、町村の域が商工会という形で地域経済代表という形でございます。

私どもの全国中央会というのは、歴史的には戦前からある団体で、現在では中小企業者が組合を活用して共同経済事業を行う際に、事業協同組合をつくりますが、その事業協同組合の支援・指導している団体になります。いわゆる同業者の集まりが多くございますから、鋳物だとかクリーニング、お豆腐屋さん、建設、運送業、信用組合、産地組合、商店街振興組合、こういう方々が集まっていて、経団連が大企業の業種別の集まりで、私どもは、中小企業が組合員として構成された業種別団体の集まりということで御認識をまずいただきたいと存じます。

私どもとしては全部の組合が約3万6000あるうち、約2万8000が私どもの会員でございます。中小企業者の大体7割になると御認識をいただければと思います。

それでは、レジュメのようなもので大変恐縮でございますけれども、それによりまして説明をいたしたいと思います。資料3になっているかと存じます。

まず総論でございますが、これは皆様方が一生懸命やっていただいているということで、公益通報者の保護制度が通報者の保護を図るということと、あわせて国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を守るということで、この趣旨については賛同いたしますし、また、この制度の向上を図るという取組については必要だと思っております。

一方で、今回の専門調査会の中間整理において議論されている項目のうち、中小・小規模事業者が対応することは困難、もしくは実効性を欠く懸念があるというものについてのみ意見を申し上げたいと存じます。

我々としてはよく法令の関係で招かれるわけでございますけれども、特に法定義務を課すというときには、1つは法案自体に合理性があるかどうかということと、それを成すに当たっての法律的事実が本当にあるのかどうかということに注目しております。また、それが中小企業を含めて多くの方が守ることができるのかどうかという観点から意見を常に申し述べているところでございます。今回の内部通報制度の検討に当たりまして、消費者庁の調査を見た感想でございますが、24年度と28年度の調査を比べますと、消費者庁の調査では内部通報制度の導入割合が46.3%と全く同じ。どうして全く同じなのか分かりませんが、全く同じ割合だということは、この4年間に単純に言えば進歩がないというか、動きがない。つまり、それだけ世の中の人にこれは大事だよということがなかなか伝わっていないのではないかというような気がいたします。

そして、その調査によりますと、未導入の理由として、どのような制度か分からないという回答が41%から10ポイント程度減少いたしましたけれども、28年度でもまだ30.5%と引き続き最も多いことになっているわけであります。一方で、法律上の義務とはされていないからというのが18ポイント増えまして25.7%となっているわけでございます。また、制度がなくても適切に対処する社風があるというものは減少しているという結果だと見てございます。ということは、導入割合はふえないけれども、導入するに当たっての制度の内容については、法的義務ではないから内部通報制度の導入割合が増加していない。つまり逆に言うと法的義務をかけることによって導入割合が増加するのだというふうになるような結果に見えるわけでございます。しかしながら、私ども中小企業支援を担当している者からすれば、事業者側に内部通報体制整備の法定義務を課すことが、そこに書いてございますような観点から適当ではないと思っております。

まず第1に、中小企業におきましては人的・資源的要因から対応が困難でございます。仮に実施するとした場合、先ほど申し上げましたように形骸化、要するに守らない人がたくさん出てくることがない制度にしていくことが必要だと思います。形骸化するような制度というのはとらないほうが、かえって遵法精神を生かせることになるのではないかと思っておりますし、法的義務を課すことによって制度改正の趣旨から乖離した結果になることが懸念されます。

2番目に、不正を知った場合に通報しない主な理由として、通報に関する秘密保持に対する懸念が挙げられておりますけれども、中小企業におきましては、この懸念を払拭する体制を作ることは極めて困難でございます。先ほどもお話しましたように、極めて小さいサークル内で秘密保持を行うことは難しいと思っています。

また、通報を受けた者の初動が内部通報制度の重要な要素となりますけれども、全ての中小企業の役員、個人事業者に対して、法令等の十分な理解と適切な行動を求めることは現実的ではないと思います。私どもは消費者庁からいただいているこのパンフレットをいろいろなところに配ってございますけれども、法律を専門にずっと仕事をしてきた者が見てもなかなか難しい。この内容が簡単に分かるということはなかなかないと思います。皆様方と同水準の人ばかりではないということがございますので、そういうことも踏まえていただきたいと思います。

また、中小企業において内部通報制度の導入が少ないということが指摘されておりますけれども、それによりまして生じた潜在的なものを含む社会的影響が推定されておりません。立法事実の存在がどうかということが明確になっていないのではないかと私どもは思っております。前回、配られたと思いますが、参考資料の9で不利益な取扱いを受ける事案が散見されると記載されております。散見されるというのは、ここにあったというぐらいのことだと思います。その事例が5つぐらい載っておりますが、中小企業によるものなのか大企業のものか何も書いていないので、その辺、私どもは分からない。分からないところに対してこれをやりましょうとはなかなか言えないということであります。

私どもとしては、中小企業の事業者が能動的に公益通報制度を活用する体制を整備するためには、法的義務、罰則をかけて強制的にやらせるとか努力義務の導入ではなくて、体制整備を推進するインセンティブを付与することが有効ではないかと思います。先ほどの団体から意見が出ました官公需受注の際の加算ポイントの付与とか、そういうところでやっていただければいいのではないかと思っているところであります。

今、中小企業は御承知のように、ついこの間まで、3から4年前は人材不足と言っていたのですが、今は人手不足で人が採用できない。何をやるにしても人がいないということが多くの中小企業の現状でございます。その中で間もなく強制的な罰則がかかる労働法規がかかります。これはなかなか無理だと私どもは官邸での働き方改革実現会議で申し上げてきたわけですが、過労死に関することなど、中小企業にも関連することでしたので、それは承認いたしました。しかしながら、大企業からの急な受注対応がある一方で、人手不足の状況の中、労働法規を守らなければいけないことについて、来年4月までにはいろいろ検討しなければいけないということがあります。

一方で、消費税の関係で複数税率になるわけでございますが、複数税率への検討もあります。それらと比較衡量してみると、大変失礼でございますけれども、中小企業のために行わなければならない優先すべき順位がある感じを持っております。

先般、私どもとデロイトさんである200人くらいの中小企業の社長さんに、話を伺ってまいりましたが、そんなことは考えていない。劣後しますと仰っていました。また、商店街の方々だと3人、4人程度の小規模規模の方が大半ですので、なかなか難しいと思われます。

業界団体や組合に通報窓口を設置したらどうかということが中間整理に書かれておりますけれども、ここに書かれているように機能的、人的限界があるため適当でないというふうに考えているところであります。

2番目の通報体制の整備、行政機関でございますけれども、通報体制の整備につきましては、行政機関への通報体制を充実させることが現実的かつ効率的であると考えてございます。体制整備に当たっては行政機関の秘密保持強化に取り組んでいただきまして、これが担保されていることを事業者に対して重点的に訴求することが有効だろうと思います。

前回配られた参考資料の8ページでございますが、市区町村の通報・相談窓口の設置率が低い水準にとどまっているということも調査・分析する必要があると思います。今、市町村も人員が足りないということでございますけれども、ぜひそちらのほうにもお声がけをしていただきたいと思います。

2.3の外部通報の保護要件でございますけれども、3号通報の保護要件緩和については中小企業の経営に与える影響が大きく、風評被害などについては取り返しのつかない事態であります。風評被害がありましたら仕事に大きく影響がでますので、慎重な議論が必要だろうと思います。具体的に申し上げますと、真実相当性の要件を維持すべきだろうと思っているところでございます。

最後でございますが、通報体制整備を始めとした各種法令・施策等の見直しにおいては、中小企業者などに過度な負担を強いることのないように、生産性向上等の活力を阻害しないような制度にしていただくように、慎重な審議をお願いしたいと思います。私どもとしては、平成29年2月にパブリックコメントに出して、ほぼ同様の意見を申し述べたところであります。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明につきまして御質問等ございますでしょうか。それでは、石井委員、お願いします。

○石井委員 本日は詳しい御説明、どうもありがとうございました。

2点ほど確認をさせていただきたいと思います。前後いたしますけれども、これは多分そういう理解でいいのだろうと思うのですが、「2/2」、裏側のページの「2.3」外部通報の保護要件のところで、真実相当性の要件を維持すべきというのは、あくまで3号通報だけを指しているように見えるわけでございますが、また、その前のページ、行政機関への2号通報については充実させると書いていらっしゃいます。そうしますと2号通報についての真実相当性の緩和については反対ではないと受けとめてよろしいのかということをまず確認させていただきたいと思います。

もう一つ、戻って恐縮でございますが、通報体制の整備のところで、ここに相当、力がこもっているような印象を受けたわけでございますけれども、体制整備を促進することについてはオーケーだ、賛成だ。だけれども、それに対する義務付けについては反対ということでございます。ところで、様々な義務付け、体制についても画一的なものではなくて、実情に応じたあり方はあるだろうというのがこの調査会での考えでもあったのですが、その多様なあり方、多様な体制整備ということであったとしても、またそれが努力義務であったとしても、今の時点では反対ということなのか、そこも念のため御確認をさせていただければと思います。

以上でございます。

○山本座長 それでは、お願いします。

○高橋専務理事 1番目の御質問でございますけれども、書き方が不十分でございましたが、外に出すときには役所に出すのであっても、マスコミに出すのであってもきちんとしたものでないといけないという意味でございまして、書き方が悪く大変失礼いたしました。

2番目でございますけれども、私どもとしては法的義務というのがかかれば精神的負担がかかるわけです。自分でやってみようという方、これは先ほど御説明にあったようにくるみんマークとかあのようなもので、もし同じような制度ができて、それではやってみようかなと思うのだと思うのですけれども、今の中小企業の人たちからすれば、法律の義務だろうがやってくれればいいよねという意味の義務であろうが、義務と言われると心的に相当圧迫を感じてつらいのです。また、割く人員がいないのでどうしたらいいのだということにもなるかと思います。

こういうことを言うと大変失礼で、皆さんに怒られると思いますけれども、同じ社会的な要請であっても、例えば障害者雇用は2.3%になっています。雇うようにということで義務がかかっていますが、100人以下の中小企業の場合には納付金の徴収はありませんが、それでもやらなければいけないと常々思っているわけです。これは社会的に本当に今後みんなが一緒になって生きていくには必要だということで、それを超えてたくさん雇っている企業が私ども組合にございますけれども、それは義務をやっているのではなくて、これは一緒に働かなければいけないんだ、これはみんな我々と共存するんだ、ということで雇用されている。義務だからやるというものとは違うのではないでしょうか。

今回の公益通報も、中小企業にとってはそういう段階のものと普通の方は思っているのではないかと思っています。商店街とかいろいろ聞くと、そういうものはやめてと。そんなことはできないよと言われておりますので、私どもとしてはそういう人たちの声を反映しなければいけませんので申し上げたところでございます。、いろいろ実態上、ペアレントモンスターだとかコンシューマーモンスターなどと呼ばれる人が出てくる可能性があって、とても小さな中小企業ではそういう方が出たら大変なことになります。私どももいつも聞いておりますが、東京都労働委員会での話とか、そういうものを聞いておりますので、そういう人が余り出てこないようないい制度を作ってほしい。こういう考え方でおるところであります。

○山本座長 よろしいでしょうか。今の点でも、あるいはそのほかの点でも結構でございますけれども、ございますでしょうか。浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 御説明ありがとうございます。

ほかの法律のところで例えば男女雇用機会均等法とか、育児介護休業法で相談窓口を整備というものがあると思うのですが、そういうものは現実どうされているのかなというのと、もう一つは中小企業って本当に規模が様々だと思います。私なんかも10人以下のそのような企業さんでは、こういう窓口整備というのは本当に難しいなと思います。そのためにも一元化の窓口の充実というのが必要だと思っているのですけれども、例えばもしこの公益通報者保護法の制度を導入するとしたら、規模の線引きといいますか、何人程度の従業員の企業だったらできそうかという、線引きがもしできるならどこら辺か、それとも中小企業はとても無理というか、そこら辺の状況をお聞きしたいなと思います。

○高橋専務理事 男女共同参画会議に出ていましたけれども、通報窓口があったかどうか覚えていないので、多分ないのではないかと思うのですが、すみません、ここは記憶が定かでないので、恐れ入りますが、消費者庁に調べていただくしかないと思います。

片方の定義の問題は常々問題になりまして、結局、最終的には働いている人の人数が何人かで決まっています。ところが、税法は1億円以下、1億円超で決まっております。それぞれの法の目的によってその対象をどうするか決めているのだろうと思います。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。柿崎座長代理、お願いします。

○柿崎座長代理 意見2.1の2つ目のポツのマル4の「立法事実の存在に疑問がある」という御指摘のところについてお伺いします。内部通報による不利益取扱がされたようなものが散見されるというお話で、散見というのはそれほど数も多くないので、内部通報体制の整備義務を課す立法事実があるのか疑問だ、というようなお話だったと思うのですが、それこそ小さな事業体になってくると、なかなか守秘義務が遵守されないだろうし、自分の個人情報が守られないという懸念があって、そこの従業員は、通報したくてもできないという現状があるのではないでしょうか。だからそういうところが数字にあらわれてきていないのではないかと思うところがございます。

先ほどお話がありましたように、中小企業の事業者の方々にいろいろお話を伺っても、そんなものは今とてもではないけれども、手が回らないというのはよく分かるところではあるのですが、ただ、中小企業の事業者の保護はもちろんですけれども、まさに今、保護しなければいけないのは中小企業の中の従業員、声を上げられない人たちのほうの保護をどうやって内部通報制度の改革の中で実現していけばいいのかを考えていきたいと、そのような方向性で審議をしているところです。

大企業に関しましては、かなりお金もありますので、整備義務を果たすことはできると思いますけれども、中小企業に関しては体力、人材が不十分であることも分かっておりますが、そういったまさに日本の企業社会のなかの一番現場に近いところの声を拾って、それを公益につなげるというルートが日本にはまだきちんと整備されていないと思います。最初のところで、公益通報者の保護と、あわせて国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を守るという趣旨にはご賛同いただけるというお話がありましたように、そういった大きな視点から、この制度にフォーカスしていかないと、通報従業員の保護だけではなく社会の安全や安心、消費者の保護も含めた社会全体の保護というところにつながっていかない。私たちは、声をあげられない中小企業の従業員、雇われている人たちに対して、どういうアプローチをしていくのかということを考えていかなければいけないと思っているのですが、そのあたりはどのようにお考えでございましょうか。

○高橋専務理事 今、柿崎先生がおっしゃったのは労働問題です。前の資料に、通報に関する守秘義務のところで散見されるという事案を見ると、労働問題は1つか2つしかなくて、架空の販売や研究プロジェクトの例が出ております。労働の問題は、労働局と労働基準監督局が相当強く巡回されて、そこにおいてある程度解決されているのではないだろうかと思います。有名な電通の事件とかほとんど大企業なのです。

法的事実と言っていたのは、今回の働き方改革で残業時間が長いのは大企業、中小企業どちらかというと大企業なのです。中小企業で法定労働時間、残業の労働時間を超えて働いているというのは本当に少ししかありません。ただ、業種としてIT産業と運送業、建築の一部、中小企業だとその程度しかないのです。これはちゃんと厚生労働省が調べた資料ですから御覧いただければ分かると思います。

もともと私どものほうに話があったときには、労働問題は大企業の問題だと認識しました。無理やり働かされているという話なのです。ところが、それを今度、大企業の人が余り働かないようにしてというふうになると、中小企業にしわ寄せが来るのです。それが心配で、中小企業の現状と法的事実をちゃんと見て法律を作ってほしい、と申し上げたのですが、やはり健康を害する人が出てくるということがあって、中小企業もこの規制に伏せと言われましたので、それはやはり人の健康ということですから仕方がないということで、ただ、今の体制づくり、タイムカードがないようなところもあるわけですから、そういうところにちゃんとつくらせて時間管理をさせるということを我々はこれから2年ぐらいかけてやらなければいけない。それはどうしてもやらなければいけないけれども、本来はそんなことをしなくても大体の企業では問題なかったのですが、やらなければいけないとなったらやらせるわけです。

私が拝見いたしましたら、散見されるという案件と、先生がおっしゃったように中小企業であるのだろうと思いますけれども、このような事実があるではないか、この事実をもって考えなければいけませんよね、と言わないと、我々も中小企業の方々にこの人手不足の中で何を言っているんだというふうになりますので、そこはきちんと事実が異なっているんだということをもっとはっきり書いてほしい。散見されるというのは、書いてあるのが中小企業かどうか分からないです。

だからこの間、消費者庁の方に申し上げたのですが、法律で縛るときには法的事実をちゃんとやってほしい。これは前に消費者委員会で偽装問題をやったときにも、こんなにたくさん相談が来ている。大変だ、大変だと言うから、それは相談だけであって本当にクレームなのか何か分からないではないですかと。ちゃんと分けた統計を作ってほしいというお願いもしたのですが、それはできなかったということがあって、我々としては人を納得させるためにはきちんとした事実を提示していただきたい。我々は調べることができませんから、ぜひお役所の人とかそういう方々に調べていただきたい。ぽつんぽつんとした散見ではなく、きちんとした数字で示していただきたい。こういうことを申し上げているところであります。

○山本座長 立法事実の話が先ほどから出ておりますが、事務局のほうで何か今の段階で確認しておきたいとか、あるいはこういうものを提示できるというものがあれば、いただきたいと思いますし、さらに立法事実の点について調査することは必要かと思いますけれども、何かございますでしょうか。

○廣瀬消費者制度課長 立法事実については、ここの項目以外につきましてもしっかりと取りそろえないと、最後、立法まで持っていけないという認識をしております。中小企業につきましても、我々はこれまで説明した資料につきましては、主に大企業のものが報道されているということもあるので、そういったものを挙げているところですが、中小企業についても立法するのであれば取りそろえて準備したいと思っております。

○山本座長 林委員、お願いします。

○林委員 私も中央会は協同組合に入っておりますので一員でございます。

質問なのですけれども、協同組合で1つ窓口を作って、そこに相談をするというようなことは人的、機能的に問題があるというところで賛同されているのですが、全くの第三者がその窓口になってするということもだめなのでしょうか。そこを伺いたいのですが。

○高橋専務理事 第三者が誰を指すかによります。今申し上げたように、組合の中というのは、例えば全国鍍金工業組合連合会という非常に大きな団体は、加入者も多いですが、事務局は3人しかいないのです。3人であらゆる業務をやっているので、業務を追加することはなかなか難しい。ほかの組合を見ても大体そうなので、難しいと考えられます。

あと、第三者というのは、その人以外は第三者になってしまいますので、常設で作るというのは相当費用負担もかかるのではないだろうかと思います。

私どもとして部内でセクハラの通報窓口を作っておりますけれども、そこにやるのが嫌だったら第三者の弁護士で○○さんにというのを皆に配ってやっておりますが、お金がかかるわけです。そういうことを考えて第三者というのはどういう人を指すのか、費用負担をどうするのかということを考えると、それよりも市町村、県庁等にそういう相談窓口を消費者庁から指導して作っていただく方が実現性が高いと考えます。

○林委員 今の窓口ですけれども、外部の窓口を設置するという考え方で弁護士事務所に相談をするということで、市町村とかも導入されているところもありますが、相談があった分だけしかお金を払わないという方式ですので、ほとんど経費はかかっていないというのが現状だと思いますので、一度お考えいただいたらと思います。

○高橋専務理事 何しろ貧乏な団体なものですから、すぐお金がかかっていると思っていますし、弁護士の先生は税理士の先生より高い謝金を払っておるということもございまして、今お話を伺ったことを内部で検討してみたいと思います。

○山本座長 先ほども義務の話がございましたけれども、これはかなり細かく検討すべきことがあろうかと思います。恐らく3つぐらい問題があって、その1つは義務を導入した場合に、それをどのように伝えるかというところで、先ほど義務と言われると途端に身構えてしまうという話がございました。あるいは今のハンドブックが非常に分かりにくいという話がございましたけれども、そこのところをもっと分かりやすく伝えていく。どういう意味があってこういう制度がある。例えばこういうことをやってくださいというようなことをもっと分かりやすく伝えるという、1つは伝え方の問題だろうと思いますし、義務と言ってもいろいろな程度があるというのが2つ目で、先ほど努力義務という話がございましたけれども、これになりますと義務とそもそも厳密に言えるのかどうかも分からない。そのような弱いものから、2号通報の話が出てきましたが、もしそれがやられていない場合には、2号通報の要件を緩和して対応するところまでという制度もあると思いますし、一番厳しいところまでいきますと、違反を公表するという制度もあるかと思いますけれども、いろいろな段階があると思うのです。

3つ目には、これは先ほどから出ていますが、義務の中身です。中小企業にとって実行可能な義務の中身を考えていくということがあろうかと思います。恐らく企業の規模とか、業種とか状態によって、同じ義務を課していくというのはなかなか現実的でないだろうというのは全くそのとおりでございますので、中身を考えていくということがあろうかと思います。ですから恐らくこの3つぐらいの問題があって、それをこれから詰めていくことになるのではないかと思います。今日のお話もいろいろ参考にしながら我々も考えていきたいと思いますけれども、何かさらにございますでしょうか。

○高橋専務理事 私どもは非常にざっぱくな意見でございますけれども、今、中小企業が置かれている状況を充分にご認識頂きたいと存じます。私どもの調査で見ても機械工業の一部はまあまあ景気がいいところから景気が悪いところを引くとプラスでいいのですが、その他はほとんどマイナスで、全然上がらないのです。よくなっていない。こういう状況をまず解決しようというのが私どもが一番苦労しているところです。一方でいろいろな社会的要請をしなければいけないということも事実でありますけれども、その中で私たちなりに優劣がございますので、その辺を皆様方に御認識いただいて御判断をいただければと思っております。今日はどうもありがとうございました。

○山本座長 どうもありがとうございました。

それでは、全国中小企業団体中央会のヒアリングにつきましてはここまでとさせていただきます。お忙しいところ審議に御協力いただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、ここで5分ほど休憩をしたいと思います。3時38分に再開としたいと思います。

(休憩)

○山本座長 それでは、再開いたします。

続きまして、通報の御経験のある串岡弘昭様にお願いをしたいと思います。お忙しいところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明の方をお願いいたします。

○串岡氏 初めまして。富山から参りました串岡弘昭と申します。どうかよろしくお願いいたします。

いろいろ多岐にわたってお話を申し上げたいのですけれども、メーンといたしまして、今日は内部通報へのリスクと危険ということをお話したいと思います。その前に、当委員会の委員の構成の仕方、あるいは私自身の内部告発の方法というものを申し上げる中で、内部通報というものについて話を進めていきたいと思います。内部通報を語ることは、同時に外部通報を語ることになると思いますので、その点、お分かりいただければと思います。

まずこの公益通報者保護制度の実効性の向上に関する調査みたいなものが消費者庁で行われましたのは、平成25、26年、民間の企業に委託しまして調査を行いました。京都の比較法研究センター、あるいはもう一社あたりが調査をいたしました。そのとき初めて私もその調査を比較法研究センターから受けただけでなしに、その方からどのような人に内部告発者の話を聞いたらいいかということも聞かれたものですから、これこれこういうような人を調査したらいいのではないかということを申し上げました。

次に、消費者庁において直接いろいろな人から意見を聞こうではないかということで、意見を聞かれました。ここでおいでの高先生も聞かれております。聞かれましたね。それから、日本ハムの方も実に丁寧で、非常に進んだ内部通報制度の実情の話をされておりますし、内部告発者も5名が聞かれました。

続きまして、消費者庁に公益通報者保護の実効性の向上に関する検討会というものが設けられまして、そこには同じ意見を聞かれた宇賀克也先生も入りましたし、かつての消費者委員会の委員長もされた松本恒雄さんあたりも聞かれております。その検討会に内部告発者としてこの私が初めて委員として入りました。そういういきさつをたどってまいりまして、合計その検討委員会はワーキンググループも含めまして25回、そのうち私たちの検討会が14回で、ワーキンググループが11回行われました。ワーキンググループにおきましては、内部告発者も入らなくなりましたし、私が最も重要視するメディアの方も入らなくなりました。今日、ここの検討会におきましても企業の方、大学の先生、弁護士の方、消費者団体の方は入っておられますが、内部告発者と新聞記者あるいは新聞記者と言わずメディアの関係者の人は入っておられないということですから、この中間整理においてはその方たちの意見は入っておりません。こういうことは私は極めて問題であろうと思うわけです。

ちなみに、メディアについては、よく先ほども風評被害になるということが言われておりますが、風評被害というのは現在どこで起こっているのかということをよく御覧になられたら分かると思うのですが、やはり最大のものは東京電力のあの大きな事故があるために、水産業者の人たちとか農業に携わる人、私も農家の出身でありますので、そういうところでは切実な思いを感じたりします。そういう風評被害が現実に起こっております。内部告発者が虚偽を話して、それがもとで風評被害が起こって、それで倒産をしたという事例はまず余り、ほとんど聞いたことがない。

例えばこの中で私と同じようにヒアリングを受けまして、いつも来て取材をしている奥山俊宏という人のことをちょっとお話してみたいと思うのです。このヒアリングの中で84という中で出ているのですが、こういうことを言っておられます。ちゃんとした記者やちゃんとした報道機関への内部告発の結果として、根拠のない風評がばらまかれて不当な被害を生じることはまれ。ちゃんとした調査報道機関への通報ならば、行政機関への通報に比べて風評被害のリスクがとりわけ大きいということはない。むしろ総合的に見てリスクは小さいと思う。こう言っておられます。

私と同じ委員でおりました読売新聞の編集委員の井手裕彦氏は、このように言っております。報道機関はもともと調査報道というもの、内部告発については新聞社の中で記事を出すときのハードルは非常に高い。要するに新聞社の調べで分かったということで、あと何の支えもないので社内でも相当のチェックの場面をクリアしなければ記事にすることは無理だと。このように2人のメディアの委員になった人あるいはヒアリングを受けた人は言っております。

ところで、私の内部告発の方法でありますけれども、私の内部告発の方法は、まずは公にするために新聞社、メディアに訴えたということであります。その次に行政機関である公正取引委員会に訴えた。つまり、この不正や違法を解決する手段としては、メディアと行政機関への通報は欠かせない。その一方が欠けても違法や不正は解消しないということを私は申し上げたいわけです。

その行政機関にしても、私の場合はたった1カ所ではありませんでした。当時、私は昭和43、44年から内部告発をしたわけですけれども、2つ行政機関としては通報する訴え場所がありました。当時、運輸業界のトラック運賃というのは、今、御存じのようなヤマト運輸とか日通とか西濃運輸とか皆さん御存じのような名前の運輸会社の運賃というものは、公共性が非常に強いということで運輸省の認可事項でありました。今は届出制になっております。認可運賃でありますから、認可に違反したような違法な運賃をとれば、これは運輸省が通報先の1つになります。独禁法違反、運輸業者50社、これは全国的にそういう違法な協定を結んでいたわけでありますけれども、その協定は私の場合、告発したのは東海道路線連盟という50社が主に東海道を走っておりました路線連盟でした。したがいまして、これも中に違法な闇カルテルであったということで、私はそのことを確信いたしました。

私は三流大学の卒業ではありますけれども、独禁法というものをどのように考えていたかということであります。私は独占禁止法は経済憲法だと教わりました。経済の憲法でありますから、この自由主義経済を守るために生長してきた法律であると私は考えたわけでありますから、行政機関としては公正取引委員会、運輸業界全体で違法な運賃をとって違法な闇カルテルを結んで、いろいろな業者内でそれに違反したら罰則を科して、罰則金もとっていくということでありますから、私は自由競争を復活すべきだと思いまして告発に及んだわけです。そのためにまずは読売新聞に絶対的な自信を持っておりましたから、読売新聞の名古屋市局に訴えました。その次に、公正取引委員会に行きました。その次に会社に申し上げました。

そこに流れている私の考えというのは、内部で内々に、あるいは業者間で内々に解決させてはいけないということであります。この視点がこの法律には全く入っておりません。公正取引委員会に訴える前にメディアに訴える。メディアにおいてお客さんあるいは顧客、同じ事業者にも大きな迷惑をかけておりますので、そこへまず訴える。その次に公正取引委員会。この中で申し上げておきますと、行政機関がどのようなときに私は対応するかということも、そのいろいろな中で分かってまいりました。

これは私の例でありますけれども、どのように行政機関は対応するかということですが、私はまず独占禁止法違反で今、申し上げたように会社にももちろん申し上げましたが、そのほかにどういう対応をしたかといいますと、国会でも追及してもらいました。その国会で追及することが分かったときに、その前に公正取引委員会は立入検査に入っておりましたけれども、当時の独禁法というのは非常に弱いわけでありまして、やり得のような法律でありました。したがって、闇カルテルをやめましたという破棄公告を出せば済んだわけであります。お客さんに違法な運賃をとったものを返さなければならないのでそんなことなかったわけです。

したがいまして、国会で誰が出てきたかというと、福田赳夫という当時の副総理が出てまいりました。独禁法の改正もその当時初めて議題に三木内閣で入っていました。それから、運輸省から自動車局長の高橋という人が出てきましたし、公正取引委員会からは熊田という人が出てきました。こういう人がいろいろなこれから独禁法を強くいたします。福田副総理も、どこの会社ですかと。それはトナミ運輸ですと言ってしまって分かったわけですけれども、そういう状況でありました。

運輸業界が破棄公告を出すもとになったのは国会でそういうことを質問するということで、急遽その1週間ほど前にどうも国会でこういうことがあるということが分かるのか、業界は破棄公告を出したわけです。

ここでとどまることを知らないわけでありまして、破棄公告を出したことを隠れ蓑のような状態で認可以上の運賃をとっておりましたので、実験的に荷物を送りまして私も会社を休んで、私の同意のもと作って実験をしましたり、あるいは業者さんにも協力いただいて、それで実験的に荷物を送って違法な認可運賃以上の運賃をとっているものについて調べました結果を、これもメディアを通じて公表したわけであります。そうして道路運送法違反容疑で東京地検特捜部に刑事告発をいたしました。これは日本消費者連盟を通じて告発したわけであります。

当時、アメリカでもラルフ・ネーダーなんて人は、あるいは竹内直一さんも、矢文といって企業にあなたのところの製品はこうだということで突きつけますので、企業も怖がった。そういう消費者運動があったわけであります。私はそのようなやり方をして、行政はどういうときに動くのかということを学んだんです。最初、私は運輸省にも行きました。公正取引委員会はそれらに対処して立入検査にも入りましたけれども。物の一分と応対してくれない。しかし、この道路運送法違反容疑では東京地検に告発しましたら、これは日本消費者連盟から運輸省に申し入れましたら、そのとき業者、十何社に立入検査に入りました。そして、どういう内容の運賃の規定、認可以上の運賃違反があったかということを運輸省が初めて明らかにいたしたわけです。

このときちょっと私はおもしろいことを聞いたのですけれども、これは高橋寿夫という自動車局長が国会に来た人です。彼はあれ以上出世しないよと言った新聞記者がおりました。それほど業界に入るということも当時はちゅうちょ、運輸省にも遠慮があったのだろうと思います。そういう経験を私はしてきたわけであります。そのために私は55歳まで一切、仕事をすることができませんでした。あるときは暴力団も来て命を狙われたこともありますから、私がもし死んだら、交通事故を装ってということで脅かされましたので、もしこういうことがあったら調べておいてくれということを申しました。

そういうことから、私は7人兄弟の一番末でありまして、当時70歳を過ぎた母親にまで会社から圧力がかかりました。兄貴も市役所に勤めていたのですが、代議士を通じて圧力がかかりました。ちょうど私が提訴したとき2002年には衆議院議長をやっておりましたけれども、彼は1回も、私の告発に至った気持ちを聞いてほしい、とでも1回も会いませんけれども、そのような状況でありました。

そういうことを経験した中から、私は内部通報へのリスクというものを申し上げていきたいと思うわけです。お手元の資料4、私に関する4ページを御覧いただければ分かると思うのですが、違法行為を行っている事業者へ公益通報する場合に確証が必要な要件というのは、内部告発者が不利益取扱いを受けないためには、このイからトの要件が要るということを私は申し上げたいわけであります。それを申し上げてまいります。

イは公益通報ハンドブックの中のイからニはもじったものでありますけれども、こういう内部通報というものは危険があるということを申し上げました。その前段としまして、今いろいろ御相談に、内部通報で相談されている内容というのは、国民や消費者に大きな被害を与えるような状況がない。内部の労働問題とか人間関係とかいうのも多いと言われておりますので、そういうところまでは信用を得られてはいるのだろうと思います。それは申し上げておきますと、イ、公益通報すれば解雇その他不利益な取扱いを受けないと確信できる制度がある場合であります。

それから、ロといたしまして公益通報をすれば当該対象事実に関わる証拠を隠滅しない、偽造しない、または変造しないと信ずる理由がある場合であります。ハは労務提供先から行政機関、事業者外部へ通報しないようにとの要求がないと確信、確認できる場合であります。ニといたしまして、これは通報者の生命または身体の安全が確保され、危害が発生する危険がないと確信できる場合。

ホからトが非常に重要であります。事業者が違法行為を認めた場合、担当行政機関に実質的に全容を正確に報告すると確信できる場合。報告しなければ、認めなければ論外でありますけれども、そういうことがあります。

それから、ヘといたしまして事業者が違法行為を認めた場合、新聞等のメディアを通じて国民、消費者に知らせると確信ができる場合。トといたしまして企業が違法行為を認めた場合。国民、消費者の批判や非難に謙虚に応じ、その世論に対応した改善ができると確信できる場合。これらの要件が確保されていない限りは、公益を害するようなものを内部に通報することは極めて危険であります。

そもそもここに書いてありますように、違法行為が生ずるというのは、これは余り想定しにくいわけで、通報対象の事実が生じということになりますと、本人、通報者がその判断ができている。もちろん、当然私はこの要件、厳しいことを告発するわけですから、心してしっかりとその確信、確証を得ていなければならないとは当然思います。しかし、その自信、確信がある限りは内部告発すべきであると思うわけであります。

○山本座長 すみません、そろそろ20分ですのでまとめに入っていただけないでしょうか。

○串岡氏 もう一つ申し上げますと、通報の起点ということをお考えに余りなっておられないと思うのです。通報の事実の対象が生じてしまった限りにおいては、これはもう行政機関なり警察とか検察とか、そういうものの対象になります。違法行為が行われていなければ、その時点で内部に訴えても構わない。

もう一つ、国民や消費者から見れば違法行為に着手してしまったということをもって、国民は知る権利が発生していると見なければなりません。したがって、ここにあるような外部通報の条件を入れるべきではないと私は思います。ですから、国民の知る権利として違法なものは知らなければならないです。企業が違法行為を行った時点で国民に知らせる必要がある。その媒介はメディアしかないと私は思いますし、違法行為に着手した時点をもって内部に通報することは極めて危険である。

もう一つ申し上げますと、役員とか従業員であれ、善管義務とか法令遵守義務というのは、その時点で果たし切れなかったということでありますから、その後に善管義務を果たせということは不可能であると思います。

以上です。

○山本座長 途中で申し訳ございませんでした。

それでは、ただいまの御説明につきまして御質問等ございますでしょうか。

○串岡氏 勝手であれですけれども、高先生ありませんか。

○山本座長 御指名でございますが、何か高委員長ございますか。

○高委員長 多岐にわたるお話をいただいてありがとうございます。串岡さん御自身が経験されたことというのは昭和44から45年というお話でしたか。そうすると、現在の状況とかなり違う部分もあると感じるのですが、例えば、先ほど、運輸省に行っても動いてもらえなかった、公取は動いたのでしょうか、最終的に検察を通して告発したら、運輸省が動いたという話ですが、そういう状況は、今の時代、余り考えられないかなとの印象を持ちました。

本日のお話の中で、1号、2号、3号という順番を法律の中に設けているわけですが、御経験からすると、そういった順番というのは実際には、通報する者にとって、ほとんど意味をなさないと説明でしたが、そういう解釈でよろしいのでしょうか。

○串岡氏 お答え申し上げます。現在も私の事案に該当するような点でないものもありますけれども、私も随分そういう実際の内部告発者と交流があるというか、相談を受けているわけです。ですから基本的にはそんなに変わりがないと思う。ただ、日本ハムさんは締めのところで言いましたが、ヒアリングの中で「匿名から実名への相談に変ってきたかなという感じがしています。」と答えている。それだけ内部通報制度が信頼されてきているということをこの執行役員の人は言っていました。

そして、どういう内部通報制度が必要かという点では、上に甘く下に厳しいようでは、その内部通報制度は全く機能しない。そして役員についてはより厳しく善管義務をするようにしてある。それで1人解任した。そのようなことを申し上げている。それは高先生が、私はここに高先生が映っているNHKのドキュメントテレビドラマも知っておりますし、大きな日本ハムの売り上げがじり貧になる中で、高先生最初に第三者委員会に入られたのも知っておりますから、高先生どう思われるかなと思ってお聞きしたわけです。

○高委員長 ありがとうございました。

○山本座長 今、高委員長から、行政機関のあり方もその当時とは少し変わってきているのではないかという御指摘がございましたけれども、その点は何かお感じになることはございますでしょうか。

○串岡氏 本質的にどういうときに動くか動かないかというのは、1つの例を申し上げて言おうとすると、やはり役所の場合は慎重になるのです。非常に慎重に、通報者のことを本当なのかなと思ってやるという点はあると思う。いろいろこれだけ言われても。ただ、それは農林水産省とか部署によって違いますけれども、いろいろな食品不正を受け付けるところはそれなりに真剣であります。

例えばミートホープは御存じですよね。牛肉偽装のミンチか何かをコロッケにして作っているものに、豚肉とか鶏肉とかいろいろなもの、パンくずとか入れて販売していたような例なのですけれども、常務が保健所とかに何回言っても全然相手にしてくれないのです。コロッケを買って持っていっても、あなたはそこの「ミートホープ社の肉だという裏付けがありませんね」と。ついに朝日新聞に持ち込みました。朝日新聞も、どうして調べたらいいのか分からない。ミンチの中に牛肉が入っているのか調べることについてです。ここからが違うのですよ。新聞の場合は、じゃあやろうかと思って一生懸命、頭、知恵を絞ってスーパーを回ってたりしていました。どうして決定的な成果を出すことになったか。警察庁なんかも利用して、DNA鑑定をするのが恵比寿かに科学捜査のところがあります。ここでやってもらったらいいのではないか。そこで検査したら牛肉か豚肉かが分かるのではないかということを彼らが発想するわけです。ですからそれでここには牛肉と言っているけれども、豚肉だということをDNA鑑定から朝日新聞が判断できたので、それを公表した。ですからなかなかそんな簡単に新聞も公表できない。両方、どこに訴えてもだめだったかもしれないわけです。だから行政は調査に慎重でありすぎる、そういうところがあるなと思わざるを得ないと私は思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

○串岡氏 水町先生、1つ何かありませんか。失業労働者も私は労働者だと思うのですが、退職者は労働者でないと。退職者というのは一般的な言い方で、失業者は退職した中の失業者というのがありますね。私の相談を受けた中にもある医者が麻酔の件で退職した後、通報したら、あなたは労働者ではないでしょうと言われた例があるわけですから、この点どう思われますか。

○山本座長 水町委員は今日まだ御発言されていないですので、全体的なことでも結構ですけれども。

○水町委員 今の御質問に一研究者として申し上げますと、これは法律の趣旨の問題で、労働者保護のための労働者に対する不利益取扱いを禁止するための法律なのか、それとも公益通報をしようとしている市民で公益通報の結果、公益が守られる国民を保護するための法律なのかの性質の問題で、もし後者だとすれば労働者以外の人を排除するという理由はなくなりますし、前者という法律のほうを重視しようとすれば労働者だよねということになって、今回の法律をどういうふうに位置付けるかというところの問題に関わってくるので、それはこの委員会の中でも議論して、どこまで射程を広げようかということになっています。

一般法理の中では保護される人と、この特別の法律の中でどこまで保護するかというレベルの問題で、トナミ運輸事件を始めこれまでの内部通報、公益通報の事案も私自身研究者としていろいろ研究したり、少なからず論文とか本にも書かせていただいて勉強させていただいていますので、今回の改正にもそういう知見を少なからず生かせたらなと思っています。

○串岡氏 今の水町先生のお話にお答えしますと、やはり私は最終的にはいろいろな人間がいろいろな組織に所属しておりますから、全ての公益通報の場合に何らかの不利益があって、それを保護されるまで当然議論は将来とも続いていくと思います。

それから、役員の点についても申し上げたいのですけれども、役員も保護されて当然でありまして、これも今年2月に私が意見を出して、読んでいただけたらどうかと思いますが、大体役員になると言っても最初は労働者です。新入社員として入って長い間、20年か30年は労働者という形で、それから役員になる。役員になる人はどんな人かというと、上の引き立てがあって、単なる実力だけではなくして上から引き上げてもらうという人もなっていきますと、その人が善管義務を果たして、あるいは違法行為が全体企業ぐるみでやってしまった後に、そういうことができるかというとできない。

それと今、公益の概念ということを申し上げられましたけれども、公益ということであればこれは一役員とか企業のことだけでありません。ここでよく聞くのは、企業の立場からは、企業の立場からということをよくお聞きするのですが、公益という立場を考えた発言は見えない。誰もが国民ではないですか。同時に消費者であります。企業の人たちも全部消費者でありますから、その消費者という視点が私は欠けているのではないかと思わざるを得ない。だから役員も保護されるのは当然でありまして、東京電力の例を見れば、あの人たちは2年間、隠し通そうとしていた。原子炉のひび割れ偽装が明らかになった途端にトップ5人がやめてしまった。その後、経団連の奥田会長が内部通報制度をつくれということでつくられるようになった。なかなか優れた経営者であるなというのが私は意見書(5)に書いたとおりです。でもあの人以外の方だったらこういう、内部通報制度は大企業にも広がらなかったのではないかと思っております。

○山本座長 今後、法律の目的との関係で具体的なそれぞれのテーマを考えていかなくてはいけないと思います。

ほかにございますでしょうか。今日はいろいろ貴重なお話をいただき、また、資料も提出いただいておりますので、今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。

今日はお忙しいところ審議に御協力いただきまして、どうもありがとうございました。

○串岡氏 こちらこそ、どうもありがとうございました。また本当によろしくお願いいたします。


≪3.閉会≫

○山本座長 それでは、本日は以上をもちまして閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりをいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)