第13回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年5月16日(水)9:30~12:15

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、浦郷委員、亀井委員、川出委員、後藤委員、中村委員、林委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 高委員長、池本委員長代理、樋口委員
【消費者庁】
井内政策立案総括審議官、廣瀬消費者制度課長、太田消費者制度課企画官、消費者制度課担当者
【内閣府】
幸田内閣府審議官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎、高委員長の高ははしごだか

議事次第

  1. 開会
  2. 事業者等における通報体制の整備
  3. 通報に関する秘密の保護
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 それでは、定刻になりましたので、開始をしたいと思います。本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから第13回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

本日は、石井委員、春田委員が御欠席との御連絡をいただいております。水町委員は間もなく御到着になるのではないかと思います。

最初に配付資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。不足がございましたら事務局までお願いいたします。


≪2.事業者等における通報体制の整備≫

○山本座長 それでは、本日の議題に入ります。

事務局から、本日御議論いただきたい論点の概要について、資料1の説明をお願いいたします。

○友行企画官 それでは、御説明いたします。お手元の資料1を御覧いただけますでしょうか。本日御議論いただきたい論点の概要でございます。

論点の「1.事業者等における通報体制の整備」というところで、「問題の所在」でございますが、現行法では、事業者や行政機関等において、内部の従業員からの通報を受け付けて、それをもとに調査・是正措置を行うといった体制整備の規定が法律上は設けられておりません。

3つ目の段落でございますけれども、行政機関において、外部の労働者等からの通報の受け付け、それをもとにした調査・是正措置を行う仕組みなどにつきましても、法律上の規定は明示的には置かれていないところでございます。

お手元の参考資料3を御覧いただけますでしょうか。既にこれまでの専門調査会で御覧になっていただいている図ではございますけれども、そちらの2ページを御覧ください。まず、左側のグラフでございますが、事業者におきまして、不正発見時の経緯として一番上に内部通報が挙げられているところでございます。

右側の図表、グラフでございますけれども、内部通報制度を導入した効果といたしまして、一番上ございますが、違法行為への抑止力として機能したということや、その下の自浄作用による違法行為の是正機会の拡充といったことが事業者側からは挙げられているというところが調査報告の結果として挙げられております。

飛びまして4ページを御覧いただけますでしょうか。こちらは行政機関における外部の労働者からの公益通報の受理件数が左側の折れ線グラフにございますけれども、足元のところでは年間4,900件ほどの受理をしておりまして、それを端緒に3,500件ほどの是正措置がとられているというデータがございます。

続きまして、5ページ、事業者におけます内部通報の導入割合でございますが、従業員の大きなところでは、ほぼ100%に近いところで導入が進んでおりますけれども、赤い囲みでありますようなところでは、導入が進んでいないところもあるといったことがございます。

おめくりいただきまして、6ページ目の円グラフでございますが、上半分が行政機関における内部職員等からの通報窓口の設置率でございますが、右端の市区町村の設置割合が低いという形になっております。

下半分の円グラフは、外部通報の受付体制に関する窓口の設置率でございますが、こちらにつきましても市区町村においての設置割合が低いということが数字として上がってきているところでございます。

資料1に戻りまして、こういった事実を踏まえまして、この通報体制の整備に係ります論点でございます。最初のアスタリスクでございますけれども、事業者に内部通報体制の整備義務を法律上課すことの是非ということと、事業者に整備義務を課すとして、どのような内容とするか。1つ目のポツでございますが、履行すべき義務の内容ということでございまして、例えば外部に窓口を設置するといったことですとか、そこまで細かくは決めず、具体的なものは事業者に委ねるべきであるといったことが論点となろうかと思います。

2つ目のポツでございますけれども、義務の履行を確保するための措置といたしまして、どういったものがあるか。例えば、3号通報の特定事由に入れるとか、そういったことが考えられるということでございます。

3つ目のポツでございますが、義務を課す対象とする事業者の範囲でございまして、こちらは中小企業にすべからく義務を課すのか、それとも一定程度配慮するのかといったところが論点になろうかと思われます。

3つ目のアスタリスクでございますが、行政機関における体制整備義務。こちらは内部通報体制と外部通報の受け付け体制の両方でございますが、そちらについて法律上規定を置くかどうかというところでございます。

次に、「2.通報に関する秘密の保護」でございます。「問題の所在」でございますが、現行法では、こちらにつきましても秘密の保護につきまして明示的な規定は設けられておりません。一方で、2号通報につきましては、国家公務員、地方公務員について、それぞれの国家公務員法、地方公務員法におきまして、守秘義務の規定は既に置かれているところでございます。

こちらにつきましても、先ほどの参考資料を御覧いただけますでしょうか。例えば、8ページ、通報に関する秘密の保護のところでございまして、左側の円グラフ、1つの調査報告でございますけれども、勤務先の不正を知った場合に匿名で通報すると回答した労働者の割合が7割程度ございまして、なぜ匿名で通報するかという理由につきまして、不利益な取扱いを受けるおそれがあるといったことですとか、何となく不安があるといったことを挙げている労働者がいるというようなデータもございます。

9ページに参りますと、勤務先の不正を知った場合に通報・相談しないといった労働者の割合が、左側の円グラフで見ますと半数程度いるということでございまして、こちらにつきましても、右側の棒ブラフを見ますと、通報したことが知られた場合、不利益取扱いを受けるおそれがあるということなどが、そういった理由に挙げられております。

10ページを御覧いただきますと、実際に通報の秘密の保護が守られなかった事案ということでございます。最初の四角でございますけれども、労働者が、勤務先が設置する通報窓口に通報したところ、その氏名を勤務先に伝えてしまって自宅待機命令を受けた事案ですとか、3つ目の四角囲いでございますが、こちらは行政機関でございますけれども、大学の教員が行政機関に通報したところ、それを通報者が所属する大学病院側に伝えてしまい、不利益取扱いを受けたというような事案が実際に挙がってきているところでございます。

こういった事実を受けまして、資料1にお戻りいただきますと、秘密の保護につきます具体的な論点でございますが、一番下、守秘義務を課すことの是非というところでございまして、これは1号通報先、2号通報先、3号通報先それぞれにございます。2号通報先につきましては、先ほども申しましたように、既に国家公務員法上等で規定がかかっているところでございます。3号通報先につきましては、主体が多種多様であるということが一つ論点になろうかと思います。

おめくりいただきまして、仮に守秘義務を課すとしてどのような内容とするかというところでございますが、さらに細かい論点といたしまして、1つ目のポツにつきましては、刑事罰を設けることについてということでございます。

2つ目のポツにつきましては、守秘義務の対象とする情報の範囲ということでございまして、例えば通報者が特定される情報をどうするかといったような論点があるかと思われます。

3つ目につきましては、守秘義務を負う者の範囲でございまして、これは例えば通報窓口担当者とするのか、それとも事業者なのかといったことです。

4つ目のところで、解除される例外というところでございます。これは通報がございますと、事業者などにおきましては調査を行うと。そういった場合にすべからく通報者の同意を得ることにするのか、それとも一定程度の例外規定を置くのかといった論点でございます。

最後のところは、保護が及ぶ通報者の範囲ということでございますが、これは不利益取扱いから保護される通報者の範囲に含まれない者からの通報であっても、守秘義務の対象とするかどうかといったところでございます。

事務局からは以上でございます。

○山本座長 ただいまの説明につきまして、御質問等はございますでしょうか。

よろしければ、次に進みたいと思います。

本日は、事業者等における通報体制の整備、通報に関する秘密の保護につきまして検討を行っていただきます。

最初に、事業者等における通報体制の整備の論点につきまして、消費者庁から資料2の説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁でございます。

それでは、資料2に基づきまして、事業者等における通報体制の整備の論点につきまして、御説明を申し上げます。資料の構成は前回までと同様でございまして、前半の第1として「問題の所在」とございますけれども、現行の制度がどうなっているのかということですとか、どういった課題があるのかといったことについてまとめてございます。

第2はこれまでの議論の整理ということで、資料2ですと5ページ以降となりますけれども、こちらにおきましては、これまで検討を通じていただいた主な御意見などにつきまして、論点ごとにお示ししているという構成にしてございます。

それでは、1ページ目にお戻りいただきまして、中身について御説明をさせていただきます。

「第1 問題の所在」の「1.関連する現行法の規定等」でございますけれども、先ほど委員会事務局から御説明がございましたように、現行の公益通報者保護法におきましては、内部通報体制の整備を義務づけるための規定でありますとか、行政機関が外部の労働者等からの通報を受け付ける体制、以後「外部通報受付体制」と呼んでいきますけれども、こういった体制の整備を義務づけるための規定は置いていないということでございます。このため、こういった体制を設けるかどうか、設けたとして、その内容をどのようなものにするかといったことにつきましては、各事業者や行政機関の任意の判断に委ねられているというのが現状でございます。

「2.立法時における考え方」でございますが、本法の制定の際に国会で附帯決議がなされておりまして、通報受付体制の整備を図ることにつきまして、政府において適切な措置を講じることが求められているところでございます。

2ページ目を御覧ください。こういった附帯決議を受けまして、政府といたしまして、民間事業者向け、行政機関向けのガイドラインを策定いたしまして、通報体制の整備の必要性を示した上で、具体的な通報体制のあり方について指針を定めてきたということでございます。

その下の参考のところに、通報体制整備の有用性ということで、先ほど委員会事務局から若干データの御紹介などもございましたけれども、内部通報体制の整備については、リスク情報を早期に把握し、不正の未然防止・早期是正などにつなげていく上で非常に有効な仕組みであると。

さらに、3番目の●でございますが、処分等の権限を有する行政機関にとっては、そういった通報を端緒情報として法執行を行うという意味で、非常に重要な意義があるのだということを書いてございます。

その下の「3.立法後に明らかになった課題」でございますが、(1)といたしまして、通報体制を整備していない事業者等がまだ多数存在するということでございます。民間事業者の内部通報体制の整備・運用につきましては、民間事業者向けのガイドラインにおきまして指針を示しているわけでございますけれども、あくまでも任意のものということでございまして、そういった体制の導入を行っていない事業者が、特に中小企業を中心に非常に多いということでございます。

さらに、行政機関向けにもガイドラインをお示ししているわけでございますけれども、国ですとか都道府県のレベルでは、それなりに体制整備が進んでいるわけでございますが、組織規模の小さな市区町村ということになりますと、窓口の整備率が内部、外部ともに低い水準にあるということでございます。

こういった中で、(2)でございますけれども、曲がりなりにも内部通報体制を整備していたとしても、それが適切に機能しなかった事例も起こってしまっているということでございます。近時の企業不祥事におきましても、内部通報体制が存在したけれども、従業員からの信頼性が低いでありますとか、適切な是正措置がなされなかったということで、外部に通報されてしまうといった事例が散見されるところでございます。

(3)といたしまして、体制の不整備や機能不全による弊害ということでございますけれども、内部通報体制が適切に機能しないことによりまして、事業者が行政処分を受けるといったことですとか、不祥事が広く報道されることになって企業価値が大きく毀損する、さらには倒産に至ってしまうといった事例も散見されるところでございます。

さらに、その下の●でございますけれども、消費者庁の調査結果などによりますと、こういった内部通報体制が整備されず、あるいは機能不全に陥っている場合に、従業員の方々といたしましては、行政機関ですとかマスコミなどの外部へ通報することを選択するといった調査結果も存在しているということでございます。

(4)といたしまして、消費者庁が運営しております相談ダイヤルの相談例を御紹介しております。不正行為を発見したけれども、事業者内に通報対応窓口がない、あるいはそういった窓口に対して不信感があるといったことで、外部への通報を検討しているのだというような御相談も頂戴しているところでございますし、さらに、4ページ目でございますが、内部での是正を試みたけれども、不適切な対応しかなされないということで、外部通報に至ったという御相談もいただいているところでございます。

(5)でございますけれども、消費者庁として通報経験者等へのヒアリングなどを行っておりますが、通報する側からは、相談ダイヤルと同様に、内部への通報には不安があるといった御相談などをいただいているところであります。他方、通報を受け付ける事業者側からも、内部通報体制を設けるメリットということで、内部監査などでは見つけられないところまで目が届く、不正に対する牽制の効果があるといった御指摘をいただいているところでございます。他方、小規模事業者からのヒアリング結果といたしましては、通報窓口を設置する必要性が余り感じられないといった御意見もいただいているところでございます。

こういったことを受けまして、「4.ガイドラインによる措置」とございますけれども、ガイドラインの改正など運用面で対応できるところにつきましては、これまでも措置を講じてきているということでございまして、民間事業者向けガイドライン及び国の行政機関向けガイドラインの改正、さらに地方公共団体向けガイドラインの策定などを行ってまいりまして、そういった通報体制整備の必要性を示した上で、その整備・運用を強化するための方策を拡充してきているところでございます。

他方、ガイドラインというのはあくまでも任意の指針、あるいは申し合わせということでございまして、その効果には一定の制約があるというところでございます。

5ページ目でございますが、第2といたしまして、これまでの主な議論について整理をしてございます。

まず、「1.内部通報体制の整備義務を法律上規定することについての是非」についての論点でございます。そういった規定を設けることに積極的なお立場からは、内部通報体制が機能せずに、事業者内部に通報しても犯罪行為等の是正ができない場合は、国民の生命、身体、財産といった重大な利益が侵害されるおそれがあるわけでございますので、そういった制度の重要な事項につきましては、法制度上の手当てが必要なのではないかというような意見をいただいているところでございます。

さらに、2つ目の●にございますように、こういった体制の整備は、企業価値の向上でありますとか事業者の持続的発展にも資するということで、事業者にとっても非常にメリットが大きいことであるといった御意見も頂戴しているところでございます。

他方、その下の慎重な立場からの御意見ということでございますけれども、民間事業者向けガイドラインを策定しておりますので、まずその普及促進を図ることを優先すべきではないかといった御意見でございます。

その下に参考とございますけれども、消費者庁が事業者に対して行った調査におきましては、内部通報体制を導入していない理由といたしまして、法律上の義務とされていないという回答が2番目に多くなっているということでございまして、法律上の義務となれば、取組みを促進する効果が期待できるということでございます。

さらに、その下の●でございますが、事業者に一定の体制整備等を義務づけている法律の例といたしまして、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、景品表示法などの例をお示ししてございます。

7ページ目でございますが、これは上場企業ということになってまいりますけれども、東京証券取引所が策定いたしました「コーポレートガバナンス・コード」、あるいはその下の●にございますように、日本取引所自主規制法人が策定いたしました「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」といったものの中でも、内部通報に関する体制整備を行うべきだといったような指針が示されているということでございまして、少なくとも上場企業につきましては、こういった要請にも応えていく必要があるのではないかと考えられるところです。

その下の2.でございますけれども、仮にそういった体制整備義務を導入したとして、その内容をどのようなものにするのかという論点でございます。これまでにいただいた主な御意見といたしまして、公益通報者保護法に盛り込まれております事業者自身が採るべき行動として、通報を理由とする不利益取扱いの禁止等、幾つか義務が課されておりますので、そういったものについて実効性を高めることができるような体制を整備することを法文上明確化すべきだといったものがございます。

他方、3つ目の●でございますけれども、事業者における内部通報体制のあり方というのは、事業者によってさまざまであるということでございまして、具体的な制度の内容・運用方法等につきましては、各事業者に委ねるべきだといった御意見もございます。

その下の参考でございますが、消費者庁における検討会の報告書におきましては、履行すべき義務の内容といたしまして、窓口の設置でありますとか規程類の整備、制度・関係法令の周知、担当者の配置なども挙げられているところでございます。

8ページ目でございますが、義務の内容として、一定事項の周知や責任者の配置を求めている制度の例を、参考としてお示ししております。

さらに、その下の●でございますが、履行すべき措置の内容について、法律とは別途、具体的な指針を定めている例といたしまして、男女雇用機会均等法でありますとか育児介護休業法、景品表示法などがあるということでございます。そのうち均等法と育介法につきましては、事業者の規模にかかわらず、各種ハラスメントに関する相談窓口を整備するなどの義務を課しているということになっております。

9ページでございますけれども、他方、景品表示法の指針におきましては、小規模企業者でありますとかその他の中小企業者につきましては、その規模や業態等に応じて、不当表示等を未然に防止するための措置を講じていれば、必ずしも大企業と同等の措置が求められるわけではない旨を明らかにしているところです。

3.でございますが、制度整備義務の履行を確保するための措置についてでございます。この点につきまして、今までいただいた御意見といたしましては、整備義務を果たしていない場合に、2号通報、3号通報のリスクがあるという形にすることも考えられると。体制整備が行われていない場合には、外部通報をしても保護の対象となるという形で、義務の履行を促していくことも考えられるのではないかということでございます。

他方、その下の参考にございますように、義務の履行を確保するための措置として、勧告・公表等の行政措置を規定している例もあるということでございまして、こういったものも参考に御議論いただければと思います。

「4.義務の対象となる事業者の範囲について」でございます。端的に申し上げれば、中小企業をどのように取り扱うかという論点でございますが、何らかの限定を置くべきだというお立場からは、制度整備を義務とするのは中小・零細企業にとっては負担が重いのではないかという御意見がございます。さらに、一律に制度整備を義務づけたとしても、それが形骸化してしまうといった御指摘もいただいているところでございます。

他方、企業規模による限定をする必要はないのではないかという御意見といたしましては、中小企業は事業者の大多数を占めているということでございまして、この制度の実効性を向上するという観点からは、中小企業にも何らかの体制整備の導入が必要ではないかといったこと。それから、均等法ですとか育介法では、ハラスメントに関する相談対応の義務化がなされている状況でございまして、中小企業も含めてそういった体制整備をしなくてはならないという内容になっておりますので、こういったものとあわせて処理をすることもできる。そういった意味で、それほど負担ではないのではないかといった御指摘もいただいているところでございます。

10ページの参考のところに、体制整備義務の対象を限定していない類例として、均等法や育介法の例でありますとか、景品表示法の例などについてお示ししております。

他方、3つ目の●でございますけれども、事業者の規模などを限定している類例といたしまして、大会社のみが義務とされている会社法の例ですとか、有価証券報告書の提出義務がある金商法の例などをお示しさせていただいております。

11ページでございます。「5.行政機関における通報体制整備義務」についても、あわせて御議論いただきたいということでございます。

まず(1)内部通報体制整備義務でございますけれども、こちらにつきまして、全ての市区町村で通報窓口を設置すべきではないかというような意見もこれまでいただいているところでございます。

参考のところに、最近改正されました地方自治法の例をお示ししておりますけれども、地方自治法第150条におきましては、都道府県及び指定都市ということで、人口50万人以上の市に、内部統制に関する方針の策定ですとか必要な体制整備を義務づけているところでございます。その他の市町村については努力義務ということでございまして、こういったものも参考にしつつ御議論いただくことが考えられるのではないかということでございます。

12ページにまいりまして、(2)外部通報受付体制義務を導入することについてでございます。先般、外部通報の要件のあり方について御議論いただきました際に、2号通報の要件を緩和したときに、通報の受け皿となる行政機関の体制整備をしっかりしないといろいろ問題があるのではないかというような御指摘をいただいております。特に行政機関における守秘義務を実効的に担保していくことが重要だという御指摘をいただいたところでございまして、こういった観点から義務を課していくことも考えられるということでございます。

13ページに参考といたしまして、市区町村が通報先となっている対象法律ということで幾つか例をお示しさせていただいておりますけれども、住民生活に身近な法律を中心にこういったものは多数存在しているということでございまして、こういった法令に違反する行為について、通報があった場合に適切に対応するための何らかの体制整備が必要なのではないかということでございます。

さらに、外部からの通報・相談等の受付体制の整備について規定を置いている例として、各種虐待防止関係の法令、それから消費者安全法におきましての消費生活センターや消費生活相談窓口の設置を義務づけている例などがあるということでございます。

消費者庁からの説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

本日、最初の論点は、事業者や行政機関における内部通報体制と、行政機関における外部通報受付体制の整備義務を法律上規定することについての是非と、規定する場合にどのような内容とするかという点です。

その中で、最初に、事業者に内部通報体制の整備義務を法律上課すことの必要性があるか、あるとした場合に、どのような内容とするかという点について、御議論をいただきます。どのような内容とするかという点につきましては、履行すべき義務の内容、義務の履行を確保するための措置、対象とする事業者の範囲などの論点がございますので、それぞれにつきまして御意見のある方は御発言をお願いしたいと思います。

これにつきましては、前回の専門調査会で、外部通報の保護要件の緩和というところで、内部通報制度が整備されていない場合を加える可能性について議論がございました。2号通報、3号通報について議論があったところでございますが、そこにもこれは関連する論点ということになります。先ほどの資料2の中にもその旨が、例えば9ページの主な意見のところ等々に出ております。

今から議論する論点は、資料1で申しますと、1.の最初の2つの項目ということになります。この事業者に関する部分です。

それから、資料2で申しますと、5ページの第2の1.からの部分となります。ここから10ページまでが事業者にかかわる部分ですので、ここまでということになります。

今日は春田委員が御欠席なのですけれども、この論点につきまして提出資料があるということですので、事務局のほうから説明をお願いいたします。

○友行企画官 御欠席の春田委員にかわりまして、御説明いたします。資料4を御覧いただけますでしょうか。春田委員から意見書という形で御提出いただいておりまして、まず1つ目のところを先に御説明いたします。

「1.事業者等における通報体制の整備について」というところでございます。

民間事業者につきましては、規模などに応じて、自主的な取組みを支援・促進していくことが必要であるということが1つ。

2つ目の○のところを見ますと、自主的な取組みを促進させるため、インセンティブの導入を検討していくことが有用であるということでございます。例えば、公共調達などにおける評価の加点要素に盛り込むことも有用であるということでございます。

その下の行政機関のところでございますが、公益通報者制度の実効性は、本来、企業の自律的な取組みにより確保していくことが望ましいが、それを補完するものとして、中立的な第三者である行政機関がとるべき措置の具体化、充実化を図ることは重要であるということでございます。

その下の○でございますが、全ての都道府県に設置することが必要である。市区町村の通報窓口の設置については、消費者庁及び都道府県による支援が必要であり、設置件数の目標などの設定については、市区町村の対応能力にばらつきがあることなどを踏まえ、慎重に検討すべきである。また、通報対応を行う市区町村等の行政職員が相談できる窓口を都道府県に設けることを含め、都道府県が中心となり、支援することが重要であるということでございます。

一番下の○でございますが、通報処理を公正に行える既存の行政機関や第三者機関の設置を検討していくべきである。その場合には、通報者の秘密保持などの利益を損なわないような仕組みを慎重に検討していくべきでるというところでございます。

春田委員から、通報体制の整備につきましては、以上のような意見書をいただいております。

○山本座長 それでは、御意見のある方は御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 まず、通報体制の整備につきましては、ガイドラインで示されていますが、それでは不十分だと思っております。内部通報体制を整備することは、コンプライアンス経営の推進には不可欠でありまして、それは企業価値の向上とともに社会全体の利益を図る上で重要な意義を有していると思っております。また、公益通報者保護制度に対する企業の意識改革のためにも、通報体制整備の義務を課す必要があると思っております。

ただ、義務化して通報体制が整備されたとしましても、この間、それが適切に機能していなかったり自社の内部通報体制への不信や不適切な対応により外部通報に至った事例もこのところ出てきております。形だけでなく、きちんと機能する中身になるような法文化をすべきだと思います。

中身がきちんと機能する内部通報体制にするためには、いろいろな方法はあるかと思うのですけれども、例えば、通報窓口で受けた内容を、どこの企業さんもきちんとそれは資料として内容を残していると思いますが、そのまとめ方を示しておいて、それを報告したり提出したりすることまではないと思いますけれども、それをきちんと備え置くということを義務化して、何かあったときにはきちんと書類が出せるように。最近、書類がないとかそういう問題がいろいろ出てきていますので、そこら辺をきちんとするようなことも一つの方法かと思いますし、内部通報体制を充実させるためには、土曜日の新聞で認証制度という報道が出てきましたけれども、それも一つだと思っております。

また、2号通報、3号通報を使いやすいものに整備する。それが、そちらのほうに通報が流れないようにという内部通報体制を整備することにつながると思いますので、これは前回のところで議論しましたけれども、それも肝心だと思います。

対象とする事業者の範囲にかかわるところなのですけれども、現状、大企業はほぼ制度を導入されておりますが、中小企業の導入はまだ半分以下というところで、導入していない理由として、法律上の義務でないからという理由が出てきております。それもあることで、私は、原則全事業者に課すべきと思っております。

しかし、やはり従業員50人以下の小規模の企業では、本当に全員が顔見知りであったりとか、たとえ制度が導入されても形だけで、ほぼ利用されないという可能性もあると思いますので、そこは実態に合わせて、大企業と中小企業とは区別して考えて、中小企業については努力義務とすることを考えてもよいのではないかということも思っております。

中小企業での体制整備にも工夫の仕方というのはいろいろあると思います。外部にそういう窓口を設ける。例えば弁護士事務所とかと連携して、また、そういう専門の外部企業と連携して中小企業向けの窓口を設置するという方法もあると思いますし、資金的に難しいというところもあると思いますので、やはりそこは国がきちんと支援していくべき。例えばですけれども、今、休眠預金の活用が出ていますが、それを活用するのも検討に値するのではないかと考えております。それから、内部通報制度が整わない事業者のために2号通報の窓口への通報のしやすさを確保することも大事だと思っております。

また、履行すべき義務の内容のところですけれども、検討会による報告書で窓口設置とか、取扱い禁止、秘密保持の内容等の規定整備とかいろいろ出ていますけれども、そこに1つ、担当者の教育というところもつけ加えていただきたいと思います。担当者については、十分に教育されていることが重要で、通報に関して秘密が漏れるようなことがあったときは、担当者個人の責任もあるかとは思いますけれども、それよりもやはりどんな教育がされていたのか、企業の責任が問われるところかと思いますので、ここは入れていただきたいと思います。

義務の履行を確保するための措置というところでは、やはり確保するためには勧告・公表などの行政措置は入れるべきであるかな。また、段階を踏んで行政処分もあり得るのではないかと思っております。

対象とする事業者の範囲のところは、先ほども申し上げましたけれども、原則は全事業者。しかし、中小企業への一定の配慮は必要というところで、その配慮の仕方は努力義務規定であったり、経過措置の期間を置いて何年後かに見直しというような、段階的に進めるということもあるかと思っております。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

多岐にわたって御指摘をいただきましたけれども、そのほかにございますでしょうか。

それでは、林委員、お願いします。

○林委員 今、浦郷委員がおっしゃった内容とほぼ一緒なのですけれども、既に99.2%の大企業が内部通報制度を導入しているという現状からして、導入をしても、大企業に関しては問題ないのではないかと思っております。

一方、中小企業に関しては、人数の少ないところほど、50人から100人でも40.2%と非常に少ない割合でしかないという現状があるのですけれども、導入しない理由というのは、先ほどおっしゃっていた、法律上の義務ではないというところが大きいと思うのです。やはり法律上の義務にすれば、内部通報制度を導入せざるを得ないというのがありますので、上からの制度の導入の仕方というのもどうかとは思いますけれども、この点に関しては、法制度として導入するという方向性を持っていったほうが、企業のコンプライアンスにとってもいいのではないかという観点からは、法的義務にすべきではないかと思います。

ただ、法的義務にするとしても、中小企業ですので、内部に窓口を設置するのはなかなか難しいと思いますので、業界団体とかで外部に相談できる部門をつくるということを提案したいと思うのです。同じ業界団体で一つの外部の通報窓口を設置する。例えば法律事務所であるとか、いろいろあると思うのですけれども、守秘義務を負っている人たちが相談に乗ってくれるような場所を設定して、通報しやすい制度にしていくというのが一つ考えられると思います。

前回の2号通報、3号通報のときにも話が出たと思うのですけれども、内部通報制度を取り入れていないということを特定事由として考えるというのも一つのやり方ではないかと考えております。

今のところ、以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。

それでは、中村委員、お願いします。

○中村委員 ありがとうございます。

今の論点についてなのですけれども、まず、皆さんの御指摘のとおり、大企業においてはほとんど導入されている一方で、中小企業についてはそれが進んでいないということです。それにつきまして、法令の義務がないからというふうに言われているということなのですけれども、それは最終的に法令の義務ではないからやっていないということであって、その前提として、必要性に関する考え方とか、実際問題として従業員が少ない企業において、例えば同じフロアで電話を受けても見えてしまうとか、あるいは声を聞いたら誰だかわかってしまうとか、現実的に機能しないような問題があろうかと思います。

そうなってきたときに、大企業においては進んでいるわけですので、やはりこの問題は中小企業に義務化をすべきかという観点を中心に考えるべきなのかと思いまして、そういう意味からすると、形式的な形で導入することに関しては慎重にすべきなのではないかと思うところであります。

御議論の中で、外部に窓口を設けたらいいのではないかという意見が先ほどの御発言の中にもございましたし、資料の中にもございましたけれども、外部を小さい企業で設けたら機能するか。あるいは、例えば特に業界団体というお話があったのですけれども、企業人の感覚からすると、業界団体というのは競争相手を含む団体でございまして、そういったところに対して通報するというのは、ほとんど外部というか、外に言うことと同じような感覚もあり、また、外部に通報したとしても、お話を聞く機関としてはあり得ると思うのですが、そこでは実際にその企業の中で日常的活動として何が行われているかというのは全くわからないわけなので、結果的にはその企業の中に戻して調査をしてもらわなければいけないということが発生するわけでございます。そのことによって、結果として少人数の事業者において通報しやすさが進むかどうかというところについても慎重に考えたほうがいいのではないかと思います。

さらに、大企業に例えば強制するというような話になったときに、ここでの議論の中では、その中身の部分についても、設置はしているけれども不十分だ、機能不全だというような御議論もあるわけなのですが、これはその中で今のガイドラインですとか、いろいろな評価制度であるとか、そういうことが検討されているわけでございますけれども、あるべき姿というのは、それこそ今の企業の従業員の数であるとか、事業所のあり方であるとか、いろいろあると事業者側では考えております。

例えばですけれども、私どもで申し上げると、通報を活性化させる、通報をしやすくするという観点で、どんなことでも疑問に思ったことは受け付けますよ、匿名も受け付けますというような形でやらせていただいておりますし、今は外部の窓口を設けてやっておりますが、それはグループでまとめてやるというような趣旨も含めてそういう形でなっていて、当初ということで言うと、20年近く前になりますけれども、社内のほうがいろいろな現場の事情がわかってお話をお聞きすることができるので、社内のほうがいいだろうという判断で社内で開始をいたしました。

そのように、そのときの状況であったり、外部環境であったり、従業員の数であったり、いろいろな状況によってあるべき通報窓口の形というのは、その会社さんなりにいろいろ考えて、真剣に考えてやっている会社さんはたくさんあるわけです。それに対して、こうでなければいけないという決めつけのような形で、そうでなければ適切ではないと言われるのは非常に心外な思いがございます。

そういったことで、こういう形でなければならないというようなことで、それをやっていないと義務違反だというような建付けというのは、慎重に議論していただきたいと思います。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、後藤委員、お願いします。

○後藤委員 前回も申し上げたかもしれませんけれども、日本の全体の企業数は382万社あります。そのうち大企業というのは1.1万社、99.7%が中小企業なのですね。しかも、今、従業員が50人以上の話をされていましたけれども、前も申し上げたとおり、小規模企業という概念があって、それは従業員が製造業その他は20人以下、商業・サービス業は5人以下で、その小規模企業は全体で見ると85%を占めているわけなのです。そういった企業群に対して、内部通報制度を整備するということは、理屈上ではよくわかっているのですが、実際の問題として、それを設けさせて機能するのかどうか。それから、その制度を維持するための負荷というのは結構かかってきます。

このあたりをどのように判断するのか。そこが一番重要な話かなと思っていまして、今、いきなり投網のように全企業に内部通報制度を強制的に措置するというのは、なかなか厳しい。趣旨としても十分理解できるところでありますけれども、中小企業、特に小規模企業については努力義務が限界ではないかと我々としては考えています。

先ほど中村委員からもお話がありましたけれども、業界団体とか、いろいろな指導団体というものは現実に中小に対して存在している。ですが、それぞれの組合とか指導団体というのは、利害関係というよりは、人的な面で非常に少ない。こういった少ない人員の中で通報制度に対応できるかというと、これは現実の問題としてはほとんど無理だと思います。特に、小さな業界団体の組合にいたっては、常時居る従業員、専従の職員が全く居ない場合も相当数ある訳でして、こういったところにいろいろな相談を持ち込むということ自体、なかなか難しいと思います。

結局、そういう組合はどうなっているかというと、事業者の中から選ばれた役員の方たちが組織の運営をやっているということになりますので、先ほど中村委員が言われたように、同じ事業を営んでいる方に通報の内容を言うということになりますので、これは現実としてはかなり難しいということになろうかと思います。

我々の団体でも、御承知のように私どもの商工会という組織と商工会議所という組織、この2つの法律に基づく団体で日本全体をフルカバーしているのですけれども、やはりこれも職員数が非常に少ない。財政が厳しいということもあって、内部通報の対応窓口を設けたとしても実質機能できるかどうかという不安もある。

そうすると、先ほど春田委員がペーパーで出していただいたような形で、2号通報ですね。行政サイドにある程度小規模の部分は役割を担っていただくほうが、かなり現実的な対応だと思います。その場合であっても、やはり行政サイドでかなり体制のばらつきがあります。そのばらつきを是正するというのは、都道府県自体でもできるのかどうか。通報制度ということになりますと、同一地域の中で相談窓口が設けられていない場合、従業員の方にしても、県庁所在地まで行っていろいろ相談するのかというと、なかなかそこまでやるのは厳しいのではないかと思います。そうすると、それぞれの市町村レベルでどのぐらいの体制整備が行われるかというのが、実効性を高める意味では非常に重要だということになろうかと思います。ですから、その支援措置を国のほうでしっかりやっていただくということが非常に重要ではないかと思っています。

○山本座長 ありがとうございます。

それでは、お願いします。

○柿崎座長代理 私の意見といたしましては、まずは内部通報体制の制度を義務化すべきかという点については、今、議論のあった中で、大企業に関しては導入が進んでいるということで、むしろ中小企業に対してどのようにこの制度を浸透させていくか、その方法論に焦点が移ってきているのかなと思います。今、いろいろなお話があった中で、私も、業者団体の方に通報窓口を設けるということが一つ考えられるのかなと思いましたが、競争相手がいることで、なかなか難しいという実態を教えていただいて、それはよくわかりました。

ただ、中村委員からも一言あったと思うのですけれども、結局、現状で内部通報制度がないと、どこで問題が起こってくるかというと、中小会社が親会社からの圧力を受けて、中小会社の従業員がどこにも何も言うことができなくて、結果、不正がそこの中で隠蔽されていくというような状況が放置されるということです。つまり、中小会社に関しては、日本の場合は企業集団、もしくは親子、孫会社の関係で全体を見ていかなければいけないのですが、日本の会社法は企業集団内部統制とか、親会社の子会社、孫会社管理に関しては、諸外国と比べましても極めて法制度的に不十分な状況にあります。

そういう意味でも、会社法上の規制では極めて不十分な対応しかとられていない親会社の子会社管理責任の部分を補完していくためには、色々な法律がそれぞれ連携しながら、法令遵守が確保された社会を実現するために日本の法体制全体の充実等を図っていくことがそろそろ必要な時期に来ているのではないかと思います。

具体的な方法としては、私は、すべての企業に内部通報体制整備義務を課していいと思うのです。その上で、小規模もしくは中小規模、複数の従業員がいるところに関して、それは親会社の通報窓口を指定先にするのです。もちろん、親会社は本来であれば中小というか、企業集団の管理体制を整備していかなければいけない義務がございますので、その部分の体制整備の促進という視点からも、子会社が通報窓口を親会社の窓口に指定すれば、子会社に自前でそれを整備させるコストはかからないはずですし、そうすることによって親会社のほうも全体の企業集団の管理体制整備がさらに一歩進んでいくだろうと思います

実際、この間、米国では、タカタ事件を受けて、自動車業界に限りますけれども、2015年に自動車安全公益通報者法なるものができまして、日本のタカタの元従業員が、日本を飛び越えてアメリカのほうに通報してしまいました。アメリカの公益通報者保護法というのは法外な報賞金が出ますので、日本を飛び越えて海外のほうに行ってしまう。そのような事態がもっと広く起こるかどうかはまた別ですけれども、むしろそういった社会全体の安全性に対する社会コストといいますか、そういったものを日本の法制度全体でバックアップしていく。そうしないと、かなり日本も危ない状況になるのではないかと思っております。

先ほど、中小会社の内部通報につきましては、2号通報の受け皿ののほうに持っていくという点も御指摘がありましたが、1号通報のほうでできない、つまり内部通報体制がきちんと整備することができないというのであれば、前回のお話で言うところの2号通報については、1号通報と同様に「思料する」という要件で通報ができるように、そこの部分の要件を緩和するという形で、その分を2号通報の受け皿の方に持っていくことについては、道理にかなっているのではないかと思います。そのようにすることによって1号通報の親会社の整備義務も進むでしょうし、そうやってトータルで考えていったらいかがでしょうか。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、中村委員、お願いします。

○中村委員 親子会社間で整備するということについては、少なくとも私個人的には全く異論はなくて、私どものグループはそのために外部に窓口を設けまして、小さい事務所でも通報ができるようにしております。ただ、多くの中小企業が全てというか、ほとんど親子関係、大企業の子会社かというと、ちょっとすみません。私はデータを持ち合わせておりませんが、それは多分違うのだろうなと思っていまして、そこは分けて議論すべきではないかと思います。

以上です。

○柿崎座長代理 孫会社も含むと相当な数、日本の企業はそういう形で成り立っていると思います。孫のさらに孫とか、わかりませんけれども、そこはデータを調べていただければ。

○山本座長 どうぞ。

○後藤委員 今のグループというのは、ある程度資本関係があれば、おっしゃっている効果はあると思いますが、全く資本関係がなくて、単なる1次下請以下の2次、3次下請ですと、そういう問題が起きるところは簡単に、大企業側は切ってしまうという形になるかと思うのです。

ですから、今おっしゃっている趣旨のことは、ある一定の要件のもとでは確かにそういう機能を発揮すると思いますが、それ以外の資本関係のないところでは、そういったことはなかなか難しいのではないかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

それでは、水町委員、お願いします。

○水町委員 企業規模によって義務づけを変えるか変えないかというところで、負担が大変だからとかいろいろな議論があり得ると思いますが、本来これは何のためにこういうことをしようとしているのかというところに立ち返って、中小企業でもやらなければいけない性質のものなのか、一定規模以上のところに義務づけて、中小企業については政策的に誘導していくというようにするのか。例えば、これまでの労働政策でも、今、均等法と育児介護休業法のハラスメント防止義務、これは企業規模にかかわらず義務づけられている。これはハラスメント防止だから企業規模にかかわらず義務づけられているという性質のもので、似たような政策として、次世代育成法とか女性活躍推進法、子育て支援とか女性活躍を推進するというのを企業の義務づけと。これは中小企業については努力義務として、義務と努力義務で分けられているのですが、これはハラスメントをなぜ防止しなければいけないのかという性質と、次世代育成とか女性活躍という、そんな単純ではないですけれども、すごく簡単に言うと、人権を守ろうとしているのか、政策的に誘導していこうとしているのかというものによって、同じ労働政策の中でも全部義務づけか、一定以下のところは努力義務かというふうにわけているので、今回、公益通報者保護をするとはどういう性質のもので、どういう人たちにどういうことをやっていってもらいたいかというのを根本に立ち返って、だったらこういうふうに位置づけということになるのが本来の筋だと思います。

もし、仮にこれが人権にかかわるようなもので、ハラスメント防止と同じようなものとなったとしても、例えばこれは、中小事業主については中小事業主の中で可能な範囲内で措置をとってくださいという措置義務の内容でグラデーションをつけるということは、これまでの均等法とか育児介護休業法の中でもやってきています。他方で、やはりこれは政策目的なので、一定以上のところは義務づけ、一定以下の規模のところは努力義務とするとすれば、でも、努力義務だからやらなくていいかというと、これまでの経験からいうと、努力義務だとほぼ実効性がないのです。努力義務だけだと実効性がないので、努力義務なのだけれども、やはりやるべきことなのだというふうになれば、先ほど来議論がありますけれども、2号通報に誘導していくとか、あとは認証制度を設けるとか、公共調達のときにプラスに加点するとか、努力義務に位置づけた中小事業主さんもそのような誘導インセンティブをプラスに与えていくことで、なるべくやってくださいねということを、実利と結びつけて誘導していく工夫をすることが必要かなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。ここはかなりいろいろ議論が出たところだと思いますが、今のそもそも根本に立ち返ってという観点からいうと、水町委員はどのようにお考えになりますか。

○水町委員 非常に大きな政策的な性質もありますが、私は、最終的にはやはり人権にかかわってくるとは思います。ただ、これは人によって意見が違うかもしれません。企業価値の向上とか、社会的な利益なのか、それとも通報する人の人権を保障するために守るべき措置なのかということの理解の違いだと思います。

○山本座長 そうですね。通報をする人の権利の保護ということもあり、また、究極的には社会において違法行為をなるべく早い段階で防止していくという意味で言えば、社会全体で法令が遵守される体制をつくっていく。法令は何のためにあるかというと、やはり社会的な利益を保護するためにあるわけですので、そういう観点からいうと、先ほどの水町委員の分類で言えば、純粋に政策的なというよりは、もう少し強い意味を持っているのかなと思うのですけれども、それは人によって若干、考えが分かれるかもしれません。よろしいですかね。

全体といたしましては、特に大企業を念頭に置いた場合に義務化するということに関して、それ自体についてはそれほど異論はなかったのではないかと思います。ただ、内容といたしまして、どのようなものを求めるか。余り画一的な義務を課すのはよくないのではないか。それぞれの企業が考えて工夫をしている部分があるので、そういった工夫を抑制するといいますか、型にはめるような形の義務づけはやめてほしいという御意見があったかと思います。それは全くそのとおりであると思います。

したがいまして、義務の内容については、さらにどのようなものを、どのような形で義務を課していくかということを検討していく必要があろうかと思います。具体的には、先ほど文書化ですか。記録を残すという意見がありましたけれども、記録を残す、文書化するという話は今のガイドラインでは何か書いてあるのですか。

○消費者庁消費者制度課担当者 記録の保存についてはガイドラインに記載があり、適切に記録管理するということが求められています。具体的には、行政機関で申しますと、各行政機関は、各通報事案への対応に係る記録及び関係資料について適切な保存期間を定めた上で、通報に関する秘密保持及び個人情報の保護に留意して、適切な方法で管理しなければならないとされています。

民間事業者につきましても、基本的には秘密保持の観点から、記録に関しては適切に、秘密が漏れないような形で管理しなければならないとされており、具体的には、通報に関する秘密の保持の項目のところでかなり詳細に記載しておりますが、記録資料を閲覧することが可能な者を必要最小限度に限定する、施錠管理をして保管する、関係者の固有名詞を仮称表記にする等、記録管理の具体的な方法が示されているところでございます。

○山本座長 広く言えば情報管理の問題になろうかと思いますので、それについてさらにどのような形で義務を定めていくかということを検討する必要があろうかと思います。

あと、義務の履行を確保するための措置ということに関しましては、前回これは既に議論があったところですけれども、2号通報、3号通報の要件と結びつけていくことについては、今日もほとんど議論の際に前提になっていたようなところがございますので、この点についてはそれほど異論はなかったのではないかと思います。

さらに、行政措置という部分について、今日は具体的な意見はそれほどありませんでしたけれども、実効性を確保するためにどのようなやり方があるか。資料2の9ページの参考というところに勧告・公表というものが挙がっていまして、さらにほかの意見として、もし制度化をするとすれば行政処分とか、恐らくこの場合ですと是正命令のような形になるのかと思いますが、そういった御意見とか、あるいは認証ですね。今はガイドラインでかなり高いレベルの体制を整えているときに認証するという体制ですけれども、もう一つ、義務を履行しているかどうか。そこのところで認証制度を入れていくということかと思いますが、行政措置に関してはいろいろなやり方が考えられようかと思います。

それから、4番目の中小企業、中小事業者の部分が一番議論が集中したところであり、なかなかこれは難しいところであると思います。

まず、およそ何も中小企業について考えないという意見はなかったと思います。ただ、どのレベルで義務を課していくか、あるいは誘導というところにとどめるのかというあたりについていろいろ御意見がありました。これは、たしかにやり方としてはさまざまなバリエーションが恐らく考えられるところで、例えば、義務を課した上で、しかし、義務の内容についてはかなり大企業の場合と違う、配慮するというやり方もあります。それから、いろいろな御意見がございまして、努力義務という形で定めて、しかし、いろいろな誘導策をとって、公共調達のときに考慮するとか、あるいは認証制度をそこに入れていくとか、いろいろな形で努力義務プラス誘導といった形をとる。

それから、経過措置というようなご意見もありましたけれども、一定期間の間はそのような形にして、中小企業についてどのような形でこういった内部体制を整えていくことが現実的に考えられるかということを、少し時間を置いて検討するということかと思いますが、一定の期間、経過措置を設けて、その間に若干の試行を行うといったような御意見もあったかと思います。

あと、内容に関しましても、例えば外部の窓口を設ける。ただ、外部といったときに業界団体であるといろいろな問題があるという御指摘がございましたので、どのような形でこれをやっていくかという点についてはさらに検討が必要かと思います。

それから、親子、孫会社関係があるような場合であれば、親会社がそこのところの責任を持つといったようなやり方もあるだろうという御意見がございました。ただ、先ほどそれに対しては御意見がございましたように、これが実効的に機能する場合と、余りうまくいかない場合があるだろうと。あるいは、そもそもそういった関係がない場合もあるだろうということですので、これについては場面が限定されるわけですけれども、そのような手法が限定された場面ではあり得るということかと思います。

あとは、財政的に援助をするとかいったような御意見もございました。

それから、2号通報との関係で申しますと、先ほど既に話が出ておりましたけれども、義務が履行されない場合には2号通報ができるという形に制度を持っていくとすれば、中小企業に関しても体制が整備されない間は2号通報のほうでカバーすることになるのではないかという御意見がございました。これらの御意見は、相互排他的なものというよりは、いろいろ組み合わせて考えられるものかと思いますので、どのような形での制度の選択肢があり得るかということを少し整理していただいて、ここはかなり難しいといいますか、現実的にはかなり大きな問題になるところだと思いますので、議論をしていければと思います。そんなところでしたか。

お願いします。

○中村委員 今のおまとめについて若干コメントなのですけれども、まず、大企業については、あるかなしかということで、あるということであれば、多分対応は可能だと思うのですけれども、繰り返しになりますが、その中身を強要するようなことですと、そこは否定的ということでございまして、それがなかった場合に2号、3号通報ということも、本当にあるなしということだけで判断されるのであれば、それほど問題ないと思うのですけれども、そこを不十分だということで特に3号通報に行けるという話になりますと、そこは通報者の方の判断になってしまうので、不満のある方というのはやはり不十分だと決めつけるわけなので、そこは慎重に検討すべきではないかと思っております。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

義務の内容について、どのぐらい具体的なというか、細かい義務を課すかということによると思いますので、その点については、さらに検討するといいますか、私も、こうしなくてはいけないという非常に細かい義務まで定めるイメージではないのですけれども、その点はいかがなのですか。この資料を作成したときには何か。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 今後、体制整備を課す方向で法改正を行うとした場合、具体的にどのような内容の義務を課すのかについてさらに具体的に検討するということかと思いますけれども、一般的には、法律の中では必要な体制整備を行わなければならないといった抽象的な規定を置いた上で、別途、指針のような形で大企業、中小企業のそれぞれについて、どのような体制整備が必要となるのかといったことを、余り事細かにならないような形で、原則的なところをお示ししていくということが多いのではないかと思っております。

その際、別途、既に民間事業者向けのガイドラインなどもございますので、それらとの関係をどうするのかといったところも含めて、今後、検討していくことになろうかと考えております。

○山本座長 ございますか。

○柿崎座長代理 全く抽象的な規定を置く方向でしか、こういう体制整備義務に関しては考えられないと思うのですけれども、その中でも、では窓口を置いていればいいのかという話になると、さらにその実効性を高めるためには、やはり守秘義務があるというのがセットになっての体制整備なのではないかと思います。その整備の細かな内容に関しては、それぞれの体力に合わせてやっていく必要があると思うのですけれども、ただ形だけ置いております、窓口がありますというのでは、余り意味がないかなという気がしております。

○山本座長 守秘義務については、この後、少し話があると思いますけれども、その守秘義務が守られるような体制になっていることを要件にすべきではないかということですね。

中村委員は、例えば7ページから8ページにかけて、参考という部分で、例えば担当者を設置するとか、関係法令を周知するとか、窓口の設置とか、規程を整備するとか、こういった一般的なレベルについては特に違和感はないですね。

○中村委員 私どもの会社でできるかできないかとか、それはできるという話なのですけれども、例えば窓口が専任でなければいけないとか、教育といっても何をやるのかとか、それはやはり足りなかったという結果を見て、その教育の仕方が足りなかったのではないかというような議論になることを企業側としてはおそれるということでございます。

規程に関しましても、以前の認証の議論の中でも規程ということで、我々の規模の会社であれば規程をつくらなければいけないのですかということで、ではつくりましょうかという話なのですけれども、どこまで規程をつくるかとか、そもそもいろいろなことについて全部規程で決めているわけではない会社が現実的には日本の場合ほとんどだと思いますので、そこはレベル感に差があるかなという感じがしております。

○山本座長 ありがとうございます。

そこは具体的にさらに義務の内容を考える際に、ここで考えるのか、あるいはもう少し制度全体の骨格が考えられた後で考えるべきことかという問題はあるかと思いますけれども、この点についても留意をしていく必要があろうかと思います。

あと、これはかなり私の個人的な感じなのですけれども、仮に2号通報、3号通報と結びつけて義務というものを考えていくとすると、通報者にとってこれがわからないと、結局、通報者にとって非常に迷うことになると思うのです。ですから、本当はその義務を守っているか、守っていないかというレベルについても、ある程度認証制度のようなものを入れていかないと、もし2号通報、3号通報をリンクさせるということになると、なかなかワークしないのではないかという感覚がありますので、その辺も、先ほどの行政措置というところでさらに検討していただければと思います。

そのほかによろしいでしょうか。

あと、行政機関における体制整備というほうが残っておりますので、こちらについて法律上規定することの必要性について、御意見のある方はお願いしたいと思います。特に窓口設置率が低いところは市区町村でございまして、これは地方自治法との関係もありますので、ここで全部議論し切れるかという問題はあるのですけれども、その点も注意をしていただいて、議論をしていきたいと思います。

先ほども2号通報のほうに特に中小企業者の通報を、2号通報のほうで受けるということであるとすると、その2号通報の窓口がしっかりしていなくては、あるいは現実に通報しようという人の近くになければ実際機能しないのではないかという御意見がございましたけれども、行政機関の通報体制の問題について、いかがでしょうか。

それでは、浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 行政機関の内部通報体制というのも、やはり私は全市区町村に内部通報の窓口は設置すべきだと思います。

それから、外部通報の受付体制のところは、規模の差がありますので、難しいことかとは思いますけれども、やはり地方の問題はそこの地方の人たちが適切に通報できる窓口はつくるべきではないかと思います。

それと、1つお聞きしたいのですけれども、消費者庁に一元的な受付窓口をつくるということも議論になっていたかと思うのです。最初にいただいたスケジュール表では、本来は、今日そこの一元的な窓口のことをやるような予定になっていたと思うのですけれども、これは次回やるとかそういうことなのでしょうか。そこら辺を教えてください。

○友行企画官 スケジュールのことでございますか。行政の一元的窓口につきましては、次回行う予定でございます。

○山本座長 よろしいでしょうか。

そのほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○柿崎座長代理 今のお話の1号通報の流れの関係からいけば、行政機関の体制整備義務、内部通報体制はもとより、受け皿として外部通報体制を行政機関のほうで整備していただかないと、先ほどのお話ですと、大企業との資本関係がない極めて小規模な企業の従業員からの通報の部分が宙に浮いてしまいます。それもちょっとわからないのですけれども、そういうまさに本当に小さな、それこそ地域社会が担っていかなければいけない部分に関して、その公共性の確保という意味でも外部通報体制はそれぞれの市区町村のレベルでも置いていただきたい。そういう設置義務を課していくべきだと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。

林委員、お願いします。

○林委員 お伺いしたいのですけれども、以前いただいた資料で、徳島では市区町村でも全部100%制度が整っているということになっていたと思うのですが、現状はどうなっているのでしょうか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 現状といたしましては、昨年の10月までに県内の全市町村に内部、外部のそれぞれについて窓口の整備が済んでおりまして、それらを運用している状況でございます。その運用実績について、十分な分析まではできていないのですけれども、地方公共団体向けガイドラインなどを踏まえて整備した窓口を適切に運用した上で、課題等についてしっかり検証を行い、それを制度の改善につなげていくということを進めていきたいということでございます。

さらに、徳島県において域内の市区町村からの通報を受け付けるための共通の通報窓口を創設する取組も進めておりまして、まずは外部の労働者等からの通報窓口から段階的に始めているというところでございます。

○林委員 そこで試験的にできるのであれば、ほかのところも全部進めていったらいいと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

この点につきましては、今、御意見がございましたように、2号通報の要件をある程度緩和していくということとの関係でも、行政側の通報受付体制はきちんとしていなくては困るということかと思います。

それから、以前に通報の対象をどうするかというところで、さらに中身を精査しなくてはいけないという話ではあったのですけれども、条例も含める方向で考えるということであるとすると、今、受け付けているものに加えて、さらにそれぞれの自治体が定めている条例の履行を確保するために体制を整備していかなくてはいけないということも加わりますので、そこは特に市区町村のレベルでも体制を整備していただく必要性は極めて大きいだろうと思いますし、今日も資料の中で、11ページの一番下の注のところにありますように、地方自治法の体系からいっても、最近、内部体制の整備ということが非常に強調されるようになっていますので、そういった流れからいっても市区町村のレベルでも体制を整備してもらいたいということではないかと思います。

ただ、これは先ほど中小企業についてどうするかという意見が出たのと若干似たようなところがありまして、市区町村の中には非常に小規模なところがあって、なかなか体制をどう整備したらいいかわからない、体制を整備するのは非常に難しいというところもあります。これについては、地方自治法の手法で言えば機関を共同設置するとか、事務の委託とか、事務の代替執行という制度が最近できましたけれども、いろいろな制度を使う余地もあるところですし、どういった形で市区町村について窓口を現実に設置していただくようにするかということについては、若干総務省の担当部局等とも相談をしながら考えていく必要があるだろうと思いますので、そのような方向でさらに検討していければと思います。

よろしいでしょうか。

≪3.通報に関する秘密の保護≫

○山本座長  それでは、通報に関する秘密の保護という2つ目の論点でございます。

最初に消費者庁から資料3の説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁でございます。

資料3に基づきまして、通報に関する秘密の保護に関する論点について御説明させていただきます。資料の構成は資料2と同様でございます。

まず「第1 問題の所在」、1.の現行法の規定のところでございますが、現行の公益通報者保護法には、通報に関する秘密の保護についての明示的な規定がない状況でございます。なお、行政機関につきましては、公務員法上の守秘義務があるということでございまして、通報に関する秘密の保護が法律上は担保されている状況でございます。

他方、民間事業者など、行政機関以外の通報先への通報につきましては、こういった法律上の守秘義務規定が必ずしも存在しないということでございますので、通報に関する秘密の保護は、通報先の自主的な措置に委ねられているというのが現状でございます。

2.といたしまして、立法時における考え方についてお示してございます。「(1)通報に関する秘密の保護と法第5条の不利益取扱いとの関係」でございますが、立法時における国会の審議におきましては、内部通報を受けた事業者が通報者の氏名等の個人情報を漏らすことは、法第5条に定める通報者に対する不利益取扱いに該当すると解釈されておりまして、これで防ぐことができるのだというような答弁がなされているところでございます。

他方、下の参考のところにございますように、このような考え方を前提といたしましても、禁止される情報漏えいの具体的な内容は必ずしも明らかでないということでございます。

2ページ目でございます。また、不注意による情報漏えいなど、公益通報に対する報復としてではない情報漏えいや、さらに事業者として行ったものではない情報漏えいについては、法5条による保護の対象とはならないということでございます。さらに、不利益取扱いから保護される通報者の範囲に含まれない方からの通報といったものも保護の対象にならないという問題がございます。

「(2)国会の附帯決議による措置」でございますけれども、先ほどの論点と同様に、附帯決議が付されておりまして、公益通報を受けた者が、通報者の個人情報の保護に万全を期するように、政府において適切な措置を講ずることが求められたところでございます。これを踏まえまして、各種のガイドラインにおきまして、通報に関する秘密保護の重要性を示した上で、秘密の保護のためにとるべき措置について指針を定めているところでございます。

その下の「3.立法後に明らかとなった課題」のところでございますが、(1)といたしまして、通報に関する秘密保護への要請が非常に高いということでございます。冒頭、委員会事務局から御紹介がございましたけれども、消費者庁が労働者に対して行った調査におきましては、通報をする際に「匿名」での通報をしたいという方が非常に多いということでございまして、通報に関する秘密の保護の影響の懸念でありますとか、情報漏えいがあった際の不利益取扱いへの懸念が非常に高いとの結果になってございます。

3ページ目でございます。また同じ調査でございますけれども、不正行為を知った場合に、通報、相談をしない理由として、通報したことが労務提供先に知られた場合に、不利益取扱いを受けるおそれがあるといった御回答も多くなっているということで、こういったことが公益通報を行うことを躊躇させている可能性もあるのだということでございます。

また、消費者庁が事業者サイドに行った調査におきましても、内部通報体制の信頼性を高めるためには、こういった通報に関する秘密の保護というのは非常に重要なのだという回答がなされているところでございます。

(2)ですが、通報を受けた者による不適切な対応により通報者が特定されて不利益取扱いが行われるといった例も実際に起こっているということでございます。さらに、消費者庁の相談ダイヤルにおきましても、この5年間に具体的な情報漏えいに関する御相談を69件いただいておりまして、労務提供先の事業者から漏えいされたといった事案がそのうちの47.8%、2号通報先となる行政機関からの漏えいが問題となった事案が44.9%という内訳になっております。

(3)に相談ダイヤルにおける具体的な相談の例をお示ししておりますけれども、通報窓口の担当者が通報者の氏名を上司などに伝えたといった御相談ですとか、自分が通報者であることが特定されたことによって退職せざるを得なかったというような御相談をいただいているところでございます。

(4)にヒアリングの結果もお示ししておりますけれども、通報する側からは、相談ダイヤルと同様の御指摘をいただく一方、通報に関する秘密は完全に保護されたといった御指摘もいただいております。事業者間で通報の秘密保持に関する取組状況にばらつきがあることを示唆するものではないかと考えられます。

4ページ目に参りまして、事業者側にもヒアリングを行っておりますが、通報に関する秘密を保護するための措置を既に行っているのだという御意見がある一方で、完全にそういった情報を秘密にしなくてはならないといったことであれば意味のある調査ができなくなってしまうのではないかといった御指摘もいただいているところでございます。

こういったことを踏まえまして、4.のガイドラインによりまして、運用上の措置というものを講じてきているわけでございます。民間事業者向けガイドライン、行政機関向けガイドラインのそれぞれにおきまして、通報に関する秘密保持の重要性というものをより明確にした上で、秘密保持のための具体策を拡充しているということでございます。

他方、ガイドラインについては任意のものということで、一定の制約があるというのは、先ほどと同様でございます。

5ページでございます。第2といたしまして、これまでの主な議論の整理を行ってございます。

まず、1.といたしまして、1号通報先に守秘義務を規定することの是非に係る論点でございます。守秘義務規定を置くことに積極的な御意見といたしまして、3つ目の●でございますけれども、守秘義務規定を設けることによって、通報制度自体への信用性が高まるのではないかという御意見もいただいております。

他方、慎重な立場からの御意見といたしまして、そういった義務を設けることによって、担当者の心理的な不安が増すといったことですとか、調査等に必要な情報共有とに支障が生じるのではないかといった御指摘もいただいているところでございます。

その下の参考のところに、事業者内の従業員に対して守秘義務を課している類例ということで、労働安全衛生法の例などをお示してございます。さらに、その下の●でございますけれども、守秘義務を規定することの意義についてでございます。通報に関する秘密が漏えいされた場合に、漏えい者が通報者に対して、民法上の不法行為等を理由とした損害賠償責任を負う場合もあるわけでございますが、こういったことについての予見可能性を高めるために、法の中に守秘義務規定を明示的に設ける必要があるという御指摘もあるところでございます。

6ページでございます。2.といたしまして、2号通報先、行政機関に対して守秘義務を規定することの是非でございます。行政機関につきましては、公務員法上の守秘義務というものが既に課されているわけでございますけれども、それでもなお情報漏えいの事例が後を絶たないということでございまして、確認的な意味も込めて、明示的に定める必要があるのではないというような御意見があるところでございます。その一方で、守秘義務違反に対して刑事罰をさらに上乗せするということにつきましては、慎重に検討すべきではないかという御意見もいただいているところでございます。

その下の参考のところに、公務員による守秘義務違反について上乗せの罰則を科している例といたしまして、住民基本台帳法、不動産登記法、マイナンバー法などの例があるということでございます。

他方、公務員法とは別に守秘義務を課しておりますけれども、法律自体に罰則規定を設けていない例といたしまして、各種の虐待防止関係の法令などがあるということでございます。

7ページでございます。3.の3号通報先に守秘義務を規定することの是非でございます。こちらにつきましては、積極的なお立場としましては、そういった情報漏えいによる被害というものは第三者が漏えいした場合でも同じであって、保護の必要性は変わらないのではないかという御意見でございます。

他方、慎重な立場からは多数の御意見をいただいておりまして、特に2つ目の●にございますように、3号通報先は非常に多種多様な主体が存在しているということで、守秘義務を遵守する体制ができていない中で、法的な義務が課されるのは、やや行き過ぎなのではないかといった御意見。さらに、報道機関に対して法律上の守秘義務を課すということになりますと、憲法で保障された報道の自由に抵触する可能性があるのではないかといった御意見がなされているところでございます。

4.以降は、仮にそういった守秘義務を課すとした場合に、どういった内容にしていくかという論点でございまして、ここにお示ししているのは、主に1号通報先に課す場合を想定した御意見となっております。

まず4.は、守秘義務違反の効果として、刑事罰を設けるべきかどうかという論点でございます。刑事罰を設けることに積極的なお立場といたしましては、2つ目の●にございますように、情報を意図的に漏らした場合とたまたま調査の過程で漏れた場合とで、民事上の損害額としては大きく変わらないといったこともございますので、民事ルールだけでは抑止効果がないのではないかといった御意見でございます。

他方、慎重なお立場からの御意見といたしましては、こういった通報を受け付ける立場の方というのは、特に一定の資格を持たない一般の従業員が多いということでございますので、そういった方々に刑事罰を科すといったことについて、可罰性の観点から十分に検討する必要があるのではないかといったことですとか、3つ目の●にございますように、担当者への心理的な負担などの弊害がさらに大きくなるのではないかというような御意見もいただいているところでございます。

その下の参考といたしまして、一般の従業員に対して、刑事罰つきの守秘義務を課している例といたしまして、労働安全衛生法などの例をお示ししております。

8ページでございます。仮に刑事罰を科していくといった場合の留意点として、その保護法益をどうするのか、どのように考えるのかといったことですとか、構成要件をどうするのかといったところにつきまして、明確性や可罰性があるのかどうかということを十分に検討していく必要があるのではないかということでございます。

次に、5.といたしまして、守秘義務の対象とする情報の範囲をどうするのかという論点でございますけれども、ここにつきましては、これまでの検討におきましても、通報者個人を特定し得る情報とすることは適当なのではないかという御意見が多数を占めている状況でございまして、同様の類例というものも、下にお示ししているような虐待防止関係の法令などで見受けられるところです。

9ページに参りまして、6.守秘義務を負う者の範囲でございます。こちらについて、これまでいただいた御意見といたしましては、情報を知った者が全て責任を負うとすることは、非常に対象が広くなってしまうということがございますので、一定の限定をすべきではないかといった御意見でありますとか、他方、3つ目の●にございますように、従業員に義務を課すのではなくて、事業者に義務を課して、そういった情報漏えいがあった場合の責任を事業者に負わせるべきではないかといった御指摘もいただいているところでございます。

その下の参考のところに、検討に当たって御留意いただきたい点をお示ししておりまして、通報を受け付けて調査等を行う措置の主体というものは、特に行政から特定の事業を行うことについて許可等を得ておらず、国家資格等もない民間事業者の従業員である場合があるということを踏まえた上で御検討いただく必要があるということでございます。その上で、そういった者に対して、刑事罰付きの守秘義務を課しているもの、罰則等が予定されていない守秘義務を課しているもの、事業者に対して行政措置等が予定されている義務を課しているものといった類型に分けて例をお示ししておりますので、こういったことも踏まえた上で御検討いただければと考えております。

10ページ目でございます。7.といたしまして、通報者の同意なく守秘義務が解除される例外を認めることの是非という論点でございまして、同意なき例外を認めるべきだというお立場からの御意見といたしましては、実効的な調査を行うためには情報を開示しなくてはならない場合もあるので、一定の例外を認める必要があるのではないかということでございます。

11ページにまいります。他方、そういった例外を認めることに慎重な立場からは、たとえ監査役などに対してでも、知らせないでほしいということで通報することもあるということでございますので、調査に必要な場合であっても、基本的には同意を必要とすべきではないかといった御意見でありますとか、開示によって通報者がこうむるリスクは甚大であるので、同意を原則とすべきではないかといった御意見をいただいております。

その下の参考といたしまして、幾つか類例をお示ししておりますけれども、「正当な理由がなく」漏らしてはならないといった抽象的な例外規定を設けている例が、労働者派遣法ですとか消費者契約法などで見られるということでございますが、より厳格に、原則として同意を必要とした上で、例外が認められる場合を個別に列挙しているものとしては、個人情報保護法の例などがあるということでございますので、こういったものも踏まえて御検討いただければと思います。

最後、12ページ目でございます。8.といたしまして、守秘義務による保護が及ぶ通報者の範囲に関する論点でございます。こちらにつきましては、不利益取扱いから保護される通報者の範囲に含まれない者からの通報であっても、秘密保持という観点において保護の対象とする必要があるのではないかという御意見でございます。

他方、これに対しましては、不利益取扱いを防止するために守秘義務を課すことが前提となるので、不利益取扱いから保護される対象とは別途、守秘義務の対象とするということにはやや違和感があるといった御指摘もいただいているところでございます。

その下の参考にございますように、不利益取扱いから保護される対象とならない者についても、秘密の保護の対象にするということになりますと、不利益取扱い防止以外に秘密保護をすべき利益というのは具体的にどういったものなのかといったことをあわせて御検討いただく必要があるのではないかということでございます。

駆け足でございますが、御説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、通報に関する秘密の保護、いわゆる守秘義務につきまして、1号通報先、2号通報先、3号通報先、それぞれに対して法律で規定することの是非について、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

資料1で申しますと、1ページ、2.に載っている部分です。守秘義務をそもそも課すことの是非という部分です。そこから先に、裏に守秘義務を課すとして、どのような内容とするかという義務の内容の話が出てまいりますけれども、ここまではまずは行かないで、1ページのそもそも守秘義務を課すことの是非の部分ですね。資料3で申しますと、5ページの第2の1.と2.それから、7ページの上の3.のところまでです。まずここにつきまして御意見のある方は御発言をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員、お願いします。

○中村委員 この点については、そもそも秘密の保護の必要性ということについて否定するものではございませんが、1号、2号、3号の通報全てにおいて、法律上の特別な守秘義務という形を課すというのは、余り適切ではないのではないかと考えております。

そもそもこの法令の目的というのは、秘密の保護ということではなくて、公益で通報する人に対して不利益が及ばないようにするということ、さらには、公益に係る問題があったときにそのことが明らかになることというのが本来の法の目的であると思います。この資料の中でも、秘密保持義務を課しても調査への支障はわずかであるような御意見も書かれているのですけれども、現実に通報を受けている私どもの企業からいたしますと、特に氏名とかそういうことでなくて、例えば何々部、あるいは何々店の何々売り場でこういう問題があるという通報であった場合、現実に誰々さんだということを言わなくても、その内容が明らかになってしまうということは多くあります。そうしたときに、特定し得る情報を誰にも言わないということでは、調査は全くできません。

ただ、そこを私どもの会社で言うと外部の窓口で受けていただいておりますので、この場で匿名でいただくこともできますし、そこで外部の方が企業に対してどこまで情報を開示していいですかということは確認していただいて、その上で企業にそういう情報が来る。また、そのやりとりの中で、こういう形で調査をするのだけれども、そうすると、結果的には例えばパワーハラスメントでこのときにこういうことをされましたといった話だと、当然そういうことは完全に個人の特定になっていくわけなので、そういうことだと個人が特定されてしまうかもしれませんと。そうだけれども、ちゃんと会社としては不利益にならないように守りますので、調査を進めさせていただいてよろしいですかという確認をしながら、調査を進めていくことになります。

そういうことで、当然実際に内部通報を真摯にやっている企業では、通報者が不利益にならないように配慮しつつ、また、通報者の意思を確認しながら調査をして、結果として問題が解消されるようにということを目指して活動していくわけなのですけれども、それが特に通報者の特定が可能な内容を秘匿すべきという形になりますと、名前を言わなくても結果的にはわかってしまうということも含めるとなると、本当に手足を縛られて身動きがとれないということになっていくと感じております。

そういった意味で、抽象的な意味での秘密の保護を大事にしましょうねというところに異論があるわけではないのですけれども、そこに余りにも大きな力点を置くということが、本来の公益通報者保護制度ということの意味をなくしてしまうということにならないように考えていただきたいと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

今の点は、この資料3で申しますと10ページから11ページにかけて、守秘義務が解除される例外を認めることの是非についてというところがありまして、この表現があるいはやや一般的な書き方過ぎるのかもしれませんね。これは主には調査の場面を想定しているのですね。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 そのとおりでございます。

○山本座長 ですから、まさに守秘義務を一般的にかけるとしても、実効的に調査をしようとすると、どうしてもある程度その人がわかるような形で伝えざるを得ない場合がある。そこのところのバランスをどう考えるかという問題だと思いますので、今の御意見は主にはここの御意見ではないかと伺ったのですけれども、そういうことですね。調査の段階で、どうしてもそれは実効的に調査をやろうとすると情報を伝えなくてはいけないことがあり、その場合に、これは適法な情報の伝達なのか否かということの線引きが実際はなかなか難しいことがあるのではないかということですね。

○中村委員 主な趣旨はそういうことなのですけれども、そうした場合を除いたときに、秘密保持の義務違反ということは、調査に関係なく意図的に漏らしたということだけを指して言うのでしょうかということになります。現実には漏えいしたのではないかと言われている事案が、調査の必要のために開示したという事例が多く含まれるのではないかというところも含めてでございます。

○山本座長 現実にどうなのでしょうか。極めて微妙な例が現実に起きている例として多いのか、それとも、単純に不注意とか、あるいは、さらに悪質なのは意図的な漏えいということになるかと思うのですが、現実の事案ではどのような割合になっているのですか。

○消費者庁消費者制度課担当者 割合について具体的に把握しておらず申し上げられないのですが、我々の設置している公益通報者保護制度相談ダイヤルに寄せられている相談事案や、報道されている事案等から申しますと、意図的にその情報が秘密であるということを認識して、あえて悪意を持って漏らしたというよりも、通報に関する情報が秘密に該当すること、秘密として保持すべきであるということを認識していないまま、うっかりと漏らしてしまったといった事例が多い印象がございます。

○山本座長 意図的とか、あるいは逆に非常に微妙な事案でやむを得ず調査の過程で伝えてしまったのだけれども、後から見るとそれはやり過ぎだったのではないかというよりは、守秘義務、つまりこれは守らなくてはいけない秘密だということを余り認識しないで不注意で漏らしてしまったというパターンが現実には多いのではないかという感じなのですかね。

○消費者庁消費者制度課担当者 そうですね。印象論で恐縮でございますが。

○山本座長 統計的にはなかなかそれを測るのは難しいと思いますけれども、ざっくりとした印象としては、そのような感じだということですかね。

そのほかにいかがでしょうか。

林委員、お願いします。

○林委員 通報する方にお話を伺うと、どうしても不利益を受けてしまうことを心配されているのです。通報すると、まず犯人捜しが始まってしまうというのが現状にありますので、あなたが言っていることは秘密として保護されるのですよということを言ってあげないと、通報できないという現状があると思いますので、1号通報に関しましては守秘義務を課すべきであると考えます。

○山本座長 もう一つは、資料3の5ページの参考のところに、1号通報に関して、漏えい者が通報者に対して損害賠償責任を負う場合があると。これの例として大阪高判の例が挙がっていますけれども、いわば一般法理といいますか、不法行為法上、もう責任が認められている場合があるということですね。

○消費者庁消費者制度課担当者 あくまで事例判断でございますので、常に不法行為に基づく損害賠償責任が認められるというわけではないと思いますが、実際に秘密の漏えいによって、損害賠償責任が認められている事例もあるということでございます。

○山本座長 現状、一般法理だけで秘密がおよそ守られていないというわけではなく、一定の場合には不法行為法上、それが保護されている場合があるということで、ただ、それでは明確でないので、もう少し一般的に守秘義務を定めたらどうか、そうしたほうが秘密も守ってもらえるようになるのではないかということですね。

2号通報に関して言えば、現に守秘義務の規定は公務員に関してはあるのですね。ただ、ここでは、さらにそれに加えてどういう措置をとるべきかというお話かと思います。

お願いします。

○川出委員 私も1号通報と2号通報については、守秘義務の規定を置くことに賛成です。ただ、その前提として、守秘義務を規定する目的は何であるのかということを明確にしておく必要があるのではないかと思います。資料3では、刑事罰を科すとした場合に保護法益をどうするかという点が検討課題として指摘されていますが、それ以前の問題として、そもそも守秘義務を規定する目的を明らかにしておく必要があるだろうということです。なぜかと申しますと、その目的をどのように考えるかによって、守秘義務の対象となる情報の範囲ですとか、守秘義務の保護が及ぶ通報者の範囲が決まってくるという面があるからです。

そこで、この点をどう考えるかですが、まず、公益通報者保護法の中に守秘義務を規定する以上、公益通報と何らかのつながりがあることが前提になるはずですから、単に個人の秘密を保護するとか、個人情報を保護するという目的ではないのだろうと思います。そうしますと、最も直截でわかりやすい目的は、先ほどご指摘がありましたように、通報者が特定されることによって不利益な取扱いがなされるおそれがあるので、その事前の防止策として守秘義務を課すというものです。ただ、こうした考え方に立つと、公益通報がなされた場合に、その通報者のみが守秘義務による保護の対象となるということになります。これでは保護の範囲が狭すぎるということであれば、法1条の目的規定にもありますように、公益通報者保護の目的は、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報をしやすくして法令の規定の遵守を図るということにもありますので、そこまで広げて守秘義務を定める目的を考えることもできるのではないかと思います。

そのように考えれば、後の検討項目の話になりますが、現行法では不利益取扱いの保護の対象となっていない者からの対象事実の通報であったとしても、それをきっかけとして法令遵守が図られるということであれば、その通報が事実上の不利益取扱いによって妨げられることのないように守秘義務の対象とするということも可能になります。そういう意味で、広く法令遵守を図るということを視野に入れて、守秘義務規定の目的を捉えるのが妥当ではないかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

これは後の議論とも若干関係しますけれども、守秘義務をかける、守秘義務について定めるといった場合に、その趣旨、目的がどこにあるのかということは明確にしておくべきだという御指摘で、今の御意見は少しそこを広く理解することができるのではないかと。つまり、まず不利益というときに、現在想定しているような労働者が労働関係において不利益を受けるということから、社会生活上の事実上の不利益のようなものまで少し広げて考えて、さらに、究極的な法の目的としては、法令の遵守を促進する、あるいは法令違反を予防するという目的があるので、そのために守秘義務を課すという御趣旨だったかと思いますが、そのような感じでよろしいですか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 私も1号通報に関しては、内部通報者が安全を確保して安心して通報できるような体制を整備することが、内部通報の促進になっていくと思います。そのためにも守秘義務を課すべきだと思います。守秘義務が課されることで安全が確保される。それがなければ、2号通報、3号通報を利用することになって、内部通報促進に逆行するのではないかということを思っております。1号通報で通報者の情報が漏えいした事例が多数ありますので、1号通報に関してはきちんと課すべきだと思いますし、2号通報に関しても、そもそも守秘義務はありますけれども、ここでも漏えいの例はあるので、さらに上乗せするということで、ここで行政に対する信頼を高めることにもなっていくのかなと思いますので、ここのところは守秘義務を課す必要はあるかと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○柿崎座長代理 私も1号、2号に関しては守秘義務を課すべきだと思います。今までの議論にあったように、まさに公益通報の本来的な意義といいますか、企業にとってはコンプライアンス経営というものを促進するというよりも、それが既にグローバルな観点からいっても企業にとって遂行していかなければいけない責務となっていて、取締役にとっては善管注意義務の中の一要素として今は考えられているわけですから、それを確実に実行するための体制としては、一度漏えいされたら回復できないような人権侵害を確実に防止する体制の整備がなければ実効性がないと思いますので、そのための守秘義務は法定しておく必要があると思います。そこに関しては、整備の体制さえつくればあとは運用でというレベルのことではないと思いますので、これは明定しておくべきだと思います。

では、その違反に対してどこまでのサンクションを課すのかということはまた切り分けて考えていく必要があろうかと思います。つまり、意図的なものと、意図的ではないのだけれども、結果として管理体制がずさんなために漏れてしまったといったときに、誰にどういう制裁を科すのか。先ほどの、行為者ではなくて、企業の場合は企業の監督責任という形での問い方というのもあると思います。そのときにも行政処分のレベルなのか、刑事罰なのかということについても、また可罰性の点、構成要件の点で検討が必要だと思います。ちなみにアメリカのSOX法に関しては、守秘義務違反も含め、あらゆる不利益取扱いをした場合、そこは割と広い、開かれた構成要件のもとで刑事罰を科しています。それだけ大事なものだと考えているということであります。

○山本座長 ありがとうございます。

お願いします。

○友行企画官 事務局からでございますが、実は春田委員から資料4として意見書が出てきておりまして、先ほど私は全てを御紹介したわけではございませんので、申しわけございません。資料4を御覧いただきまして、2.のところでございます。

春田委員から通報に関する秘密の保護につきまして御意見をいただいておりまして、通報者保護のために秘密保持義務についての定めは設けるべきと考える。そして、刑事罰、行政措置の対象とすべきと考える。ただし、公益通報に対処する企業の体制はそれぞれであることや、最初に通報を受付した1人の職員だけではなく、現実的には組織で対処していることを踏まえると、刑事罰の及ぶ範囲や制裁の程度は慎重に検討していくべきであるというところでございます。

2つ目、通報妨害や通報者の探索についても論点に加えるべきと考えるといったところで御意見をいただいております。

3つ目、2号通報に係る秘密保護や個人情報保護に違反した際に刑事罰を定めることは、行政職員にはそもそも他の法律による守秘義務が課されていることから、それを上回る罰則を定めることの当否なども含め、慎重に検討していくべきであるというところでございます。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○池本委員長代理 オブザーバーの池本です。

先ほど、守秘義務の目的ということで、通報者の不利益取扱いの未然防止がまず基本である、そして、さらに法令遵守を図るというように広がると。そこの基本の理解は私もそのまま賛成ですが、もう一つ違った観点で整理する必要もあるのではないか。これは適用除外も的確に定めるということとのセットなのですが、公益通報の受付窓口、これは1号、2号を含めてですが、ただ話を聞き置いて大事に黙っておくことでは済まないわけで、その後の的確な措置をしなければいけないわけです。だとすると、例えばどういう場合は本人の同意の上で出してよい、あるいは本人の同意なしで出せる場合があるのかどうか。そういった適用除外をきちんと切り分けて整理しておくことによって、受付窓口の方にとっての行動準則も提示するという意味があるのだろうと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

今のそもそも義務を課すかどうかという点に関しまして、1号通報に関しましては、特に後のほうの守秘義務違反の場合のサンクションの問題であるとか、あるいは特に調査との関係で義務の範囲をどう定めるのかという点について、いろいろ難しい問題があるということから、慎重な御意見もございましたが、おおむね賛成の意見が多かったのではないかと思います。

そのときに、そもそもの守秘義務の趣旨に立ち返って考える必要があるということで、労働者が不利益取扱いを受けることから保護するといったことからもう少し広げて考えて、特に公益通報を行ったという情報が社会に漏れる、出るということが、普通の個人情報が外に出た場合よりももう少し重い意味を現実に持っていることがあり、それに伴う不利益を防止することによって法令が社会において守られるようにする、法令違反の状態を未然に防止するといった法律全体の趣旨が図られるようになるので、それで守秘義務を課すということを確認しておく必要があるということであったと思います。

2号通報については、それほど多くの意見はございませんでしたが、現在も一般的な公務員法上の守秘義務の規定があり、刑罰もついているわけですけれども、しかし、どうもそれが余り徹底されていない。余り注意されていない。これも恐らく先ほどの事業者に関して、不注意で漏らしてしまうことが多いという話でしたけれども、それと似たような状況がどうも行政機関にもあるのではないかと思われます。そういうことであるとすると、まずはこれについても守秘義務は当然かかるということを明確に確認する定めを置いていただく。これは最低限必要ではないかと思います。

その上で、刑罰を上乗せするかという点について申しますと、現実には刑罰が軽い状態なので守秘義務が守られていないというわけでは恐らくないと思うのです。むしろ守秘義務の範囲に入っているのか入っていないのかということを余り意識しないで情報を出してしまうというパターンだと思いますので、まずはそこのところを確認的に定めていただく。それでもまだ公務員が外に漏らしてしまうということがあれば、それは上乗せを考える必要があろうかと思いますけれども、現実には上乗せを行うための立法事実に欠け、法令を見ても、それほど上乗せをしている例が多くないのです。これと同じだけの上乗せをする理由が今すぐに立つかというと、私はやや自信がないところがありますので、まずは定めを明確に置くということかと思います。

3号については、ほとんど意見がなく、3号についてはやはり難しいのではないかという御意見が若干あったところかと思います。これは既に7ページの慎重な立場からの意見というところに出ておりますけれども、3号の場合はとにかく通報先がいろいろでありまして、通報者と通報先との関係もいろいろですので、なかなかこれについて守秘義務を一律に課すことは難しいのではないか。特にその中には報道機関も含まれていまして、報道機関についてはまた特別な考慮を要するところですので、3号通報について、なかなか守秘義務の対象にしていくのは難しいのではないかと私も思います。これについては今も積極的に3号通報について守秘義務を定めるという御意見はなかったのではないかと思いますので、そのように考えていくということでよろしいでしょうか。

それでは、その次の論点でございます。1号通報、2号通報の場合に、法律上、守秘義務を課すといった場合にどのような内容とするかという点について、意見交換を行いたいと思います。これは論点が多岐にわたっておりますが、資料1の2.の裏側の守秘義務に違反した場合の刑事罰という部分ですが、これについて、まず御意見をいただきたいと思います。資料3で申しますと7ページの4.の部分ですけれども、いかがでしょうか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 現実に通報者の情報が漏えいして、通報者が不利益をこうむる事例がありますので、通報する側の立場から考えると守秘義務を何とか担保してほしいということは思います。意図的に漏らしてしまった場合とか、何度も漏えいするようなところには、刑事罰あるいは行政罰というものがあり得るのかなとは考えております。

○山本座長 それは意図的に漏らした場合ですか。

○浦郷委員 故意に。

○山本座長 なるほど。

そのほかにございますでしょうか。

お願いします。

○中村委員 意図的な場合は別かもしれませんけれども、一番企業側として心配するのは、過失の部分です。誤って出した場合、あるいは先ほどのように調査の過程でわかってしまうような場合について、そもそも先ほどの話で、うっかりというか、誤って漏らしてしまう場合が多いのではないかというお話もありましたように、刑事罰を受けることでそこの抑止力になるような形の構成ができるかどうかについて、少し疑問を感じるところであります。窓口になる人はごく普通の担当者、例えば皆さん一人一人が窓口になったときに刑事罰を科される。だから、故意に漏らした場合はともかくとして、そういうことについては慎重に検討すべきではないかと思います。

○山本座長 川出委員、お願いします。

○川出委員 先ほど申し上げたことと関係しますがで、守秘義務を設ける趣旨が、不利益取扱いの事前防止、さらに進んで法令遵守を図るという点にあるとしますと、仮に守秘義務違反に対する刑事罰を設けるとした場合の保護法益は、資料3の8頁の注22の言葉を借りますと、単に個人の秘密とか個人情報ではなく、公益通報システム,あるいは法令遵守ということになります。そうしますと、これは、後の回で検討することになる、不利益取扱いに対して刑事罰を科すかという問題と連動してきます。つまり、守秘義務を規定する趣旨として、不利益取扱いの事前防止を挙げ、それを担保するために守秘義務違反に対して刑事罰を科すということにするのであれば、不利益取扱い自体に対しては当然に刑事罰を科すということになります。その点も踏まえたうえで、守秘義務違反に刑事罰を科すのが相当かどうかを考える必要があると思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○亀井委員 先ほどのそもそも1号通報に守秘義務を課すかのところが、今、論じていただいている議題と関連しますので、発言を差し控えさせていただいていたのですけれども、不利益取扱いに関してペナルティーが科されるというのは非常に納得感があるのですが、中村委員もおっしゃっていましたが、私どもの顧客企業も含めまして、内部通報制度に携わっておられる方々はごく普通の企業人です。通報を受けた段階では、公益通報に該当するのかどうかが非常あやふやな段階でして、私どもの統計値ですと、75%は個人的な御不満、御自分の待遇への御不満、それとあわせて不正もしているという非常に切り分けのしにくい状態で通報がもたらされます。その段階で情報を守る、守秘に関しての義務が課され、なおかつペナルティーがあるかもしれないということになりますと、窓口の御担当者としては、調査担当者に開示するかどうかもためらってしまうかもしれない。もっと突き詰めて言ってしまいますと、その内部通報制度の担当者になりたくない、なり手がいなくなってしまうのではないかと思いますので、ペナルティーの当て方ですとか守秘義務の課し方に関しては、非常に慎重に検討していただきたいと考えます。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。

水町委員、お願いします。

○水町委員 労働安全衛生法のストレスチェックとか健康情報については罰則がついていますが、これはもう明らかにわかるわけです。健康情報で、医師とか医療関係者が出した情報について、これは外に漏らしてはいけませんよというので、それは担当者も非常に慎重に扱うことが法令でも予定されていますし、これは大切な情報なので罰則をつけるということになっていますが、今、あったように、法令遵守といってもいろいろな情報があります。担当者の方も一般の職員の人がたまたま配転で回ってくるということもあって、それをどう処理するか。実効的に処理しなければいけないというときに、どういう場合に罰則の適用のある行為なのか、情報なのか、さらには正当な理由で解除されることを担当者がきちんとわかる状況にならないと、罰則をつけるのはかなり難しいかなと。健康情報との関係で言うと、そこが非常に抽象的で漠然としていて曖昧なものなので、実効的に回すことは大切ですけれども、罰則をつけるかどうかというところについては、少し慎重に考えたほうがいいかと私は思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

これはやや技術的な問題が幾つかあって、水町委員が御指摘になったように、資料3の7ページの一番下に労働安全衛生法の例が挙がっていますけれども、確かに労働安全衛生法の場合とは、刑事罰を科される可能性のある人の範囲も情報の内容も大きく異なるということがありますので、なかなかここに法定されているのでこちらでも法定すべきだとは言えないだろうという御指摘だったかと思います。

もう一つ、川出委員から御指摘がございましたように、不利益取扱いについて刑事罰を科す前提であれば、ここについても刑事罰を科すという議論の可能性があるのだけれども、逆に不利益取扱いについて刑事罰を科さないのに、守秘義務違反について刑事罰を科すというのは、逆転をしてしまうので、これはできないはずではないかと。だから、ここでもし守秘義務違反について刑事罰を導入するということになると、不利益取扱いについてもそういうことになるのではないかということだったと思います。こういう問題があるので、なかなか感じとしては難しいのではないかと思います。御意見としては、刑事罰を導入することを考えるべきだという御意見はございましたけれども、ただ、それに対しては、今のような反対の意見がかなり強かった。確かに法制度全体の組み立て方として見た場合も、これは私の感じですけれども、非常に難しいのではないかという気がいたします。

それでは、その次に入りたいと思います。守秘義務の対象とする情報の範囲です。資料1の裏側で申しますと、第2番目の問題です。資料3で申しますと、8ページにあります「5.守秘義務の対象とする情報の範囲について」というところでございますが、これはいかがでしょうか。これは情報の範囲としては、通報者個人を特定し得る情報という以外に何か考えられるのですか。刑事罰を科すとした場合はどうするかということはありますけれども、科さないという意見のほうが多かったのではないかと思いますが、それ以外に何か議論することが特にあるのですか。

お願いします。

○川出委員 守秘義務の対象とする情報は、通報者個人を特定し得る情報であるというのは、そのとおりだと思いますが、それと関連して1点質問があります。通報した場合に、通報者個人を特定し得る情報に守秘義務がかかるとして、その際に対象となる通報というのは、公益通報者保護法でいう通報対象事実を内容とする通報に限られるという前提なのでしょうか、あるいは、対象となる通報はもっと広く捉えられているのでしょうか。

○山本座長 お願いします。

○消費者庁消費者制度課担当者 そこは様々考えられまして、公益通報に限るという考え方もあるとは思いますし、また、通報一般、例えばパワハラの相談など、そういったものを公益通報者保護法上の通報対象事実に含めない場合、そういった内容の相談も広く含めるといった考え方もあり得るかと思います。具体的には、4.の刑事罰に関連する記載ではございますが、8ページの上から2つ目の●に、少し記載をしているところでございます。

○川出委員 そうしますと、その点、つまり、どういう通報について守秘義務が生じるのかという点がもう一つ論点としてあるのだと思います。今、お話があったように、通報対象事実に該当する内容の通報に限るというのが一番徹底した形だと思うのですが、他方で、通報対象事実に該当するかどうかが微妙な事例もあるでしょうから、それを通報する側の責任で判断しなければならないということになりますと、結果的に通報対象事実に該当せず守秘義務がかからなくなることを懸念して通報を躊躇することにもなりかねません。その点を考慮しますと、例えば通報窓口を設けている場合は、そこになされた通報は、相談にあたるようなものも含めて、一律に守秘義務をかける形で範囲を決めるという方法も考えられるかと思います。その点も含めて検討する必要があるのではないかと思います。

○山本座長 そうですね。資料1の裏側で申しますと、その次に守秘義務を負う者の範囲という論点があって、本当はこちらも一緒に議論したほうがよかったので、資料3で言うと、9ページ「6.守秘義務を負う者の範囲について」という論点がありますので、こちらも含めて議論したいと思います。

むしろ守秘義務を負う者の範囲として、窓口で通報を受け付けている人が通報を受けた場合に、それを保護の対象にすると、こちらのほうで切るしかないのでしょうね。公益通報に当たるかどうかということを要件としてしまうと、その時点では判断が難しく、それが外れることになると、結局通報を躊躇するのではないかという問題が生じますので、むしろこちらのほうを考えるということですかね。

お願いします。

○中村委員 他の論点とも関連してしまう部分があるのですが、一部、先ほどの繰り返しになるのですけれども、特定し得る情報というと、職場とか事実などを含めると、名前を言っていなくても現実的には特定ができる場合がございます。そういったときに、同意をとれば除外だとしても、例えばEメールで通報があったけれども、同意していいですかということについては返答がないとか、あるいはお手紙で来る場合とか、要は、同意をとるプロセスが難しい場合があったときに、会社は放っておくほうがいいのでしょうかということです。調査をすると特定がされる可能性があるというときに、企業の通報窓口の立場としては調査をしたいということがありますので、そういうことも含めて御議論いただいたほうがよろしいかと思います。

以上です。

○山本座長 今の点は、資料3で申しますと10ページの7.のところですね。ここは確かに考えると非常に難しい問題なので、そこでさらに議論したいと思います。

守秘義務の対象となる情報の範囲と守秘義務を負う者の範囲については、さらに何かございますでしょうか。

林委員、お願いします。

○林委員 守秘義務を負う範囲というのは、通報があったこと自体を秘密にしておいてほしいと通報する人は思うと思いますので、通報があったこと自体を守ることになるのかなと思います。そうすると、それは通報を受け付けた担当者が秘密を守らなければいけないであろうし、その部署自体がそれを受け付けるわけですから、事業者と担当者が両罰規定的に守秘義務を負うことになっていくのではないかと考えるのです。

○山本座長 窓口担当者と、それから。

○林委員 窓口を設置しているわけですから、その事業者ということです。

○山本座長 なるほど。

そのほかにございますでしょうか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 守秘義務をきちんと課して、体制をきちんと整備するというところを私は重視するべきかと思います。先ほど、本当に故意に漏らしたり、何度も漏えいする企業には罰もあり得るのではないかという話はしましたけれども、そういう体制を重視することのほうが大切で、例えば過失で、ちょっとした不注意で漏らしてしまった場合なども、そういうことが何度も何度も起きるような企業は通報体制や教育が不十分だとも考えられるので、そういうところでは事業者に何らかの処分というものもあっていいのではないかと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○亀井委員 先ほど御示唆いただきました、資料3の8ページの5.の守秘義務の対象とする情報の範囲なのですけれども、通報者個人を特定し得る情報を対象とするということになりますと、一度実際の通報で通報者個人を特定し得る情報を全部塗り潰してみようということをやってみました。そうしましたところ、ほとんど他者が見ると何の通報なのかわからない状況になりました。通報者個人を特定し得る情報が守秘義務の対象なのであると仮に規定されたとして、先ほど御意見がありましたけれども、公益通報とは限らずさまざまな通報ということですと、先ほど統計値ということを申し上げましたが、私は上司の亀井にこのようなひどいことをされましたというような通報が圧倒的に大多数の現状で、通報者個人を特定する情報を誰にも開示せずに何とかして解決に向かわなければならないというのはほとんど不可能です。中村委員もおっしゃっておられましたけれども、開示させてくださいというお願いをしても御返信がないものが多数に上ります。そうなりますと、企業としては、対応しないほうがいいというよりも、どちらかというとできない。それで塩漬けになる件が今でも多く発生しておりますので、そういったことが起きにくいような何らかの措置ですとか考え方を導入していただきたいと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

ただいまの守秘義務の対象とする情報の範囲、守秘義務を負う者の範囲に関しましては、情報の範囲そのものについては、恐らく先ほどの通報者個人を特定し得る情報ということになるのかと思いますが、ただ、後のほうの、特に調査や対応するときにその人に関する情報を出さざるを得ないというときにどうするのか。そことのバランスの問題はありますので、それはさらに次の段階で議論したいと思いますが、一般的にはこういうことでよろしいかと思います。

守秘義務を負う者の範囲について、通報窓口の担当者、これについて異論はなかったと思います。事業者についても責任を課すという話がございましたけれども、これは義務違反のときにどのような効果を与えるかということともかかわると思います。つまり、ここは今、用意していただいたペーパーですと、主に刑事罰を科すとした場合にどうなるかということが挙げられていて、その場合は恐らく両罰規定という形で処理されることになるのではないかと思いますけれども、そうでないときに事業者に義務を課すといったときに、事業者にどういう場合に義務が課されて、義務に違反したらどうなるのかということをもう少し詰めていただいた上で、さらに議論ができればよいのではないかと思います。

いよいよ先ほどから非常に議論になっている部分でございますが、資料1の裏側で申しますと、最後の2つの部分で、まず守秘義務が解除される例外です。表現がややわかりにくいと先ほど指摘いたしましたけれども、主には特に調査、あるいは対応の過程である程度情報を出さざるを得ないときにどう考えるかということかと思います。それと保護が及ぶ通報者の範囲です。資料3で申しますと、10ページの7.と最後の12ページの8.の部分ですけれども、ここについて、先ほどから既にいろいろ意見は出ておりますが、いかがでしょうか。

先ほど御発言がございました中村委員、亀井委員、それぞれここについて具体的にどのように考える方向がいいか。何か御意見はございますでしょうか。

○中村委員 具体的な内部通報を受けている実例というところで申し上げると、同意を確認することが可能なシチュエーションの中で同意が得られた場合に、当然守秘義務が解除されるということだと思うのですけれども、そうではない、それこそ例えば返答が返ってこないであるとか、あるいは匿名のお手紙であるとかというときに、企業をよくしていきたいという立場からすると、基本的にはアクションを起こしたいと考えますので、そこの部分に関しては例外ということでお考えいただくのが、本来の公益通報の趣旨からすると適うのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 亀井委員、何かございますか。

○亀井委員 まず、10ページの7.の例外を認めることの是非なのですけれども、また議論がいろいろと戻ったりすることがあるかもしれませんが、不利益取扱いがあったかどうかが非常に重要なことだと思っております。顧客企業、私どもも含めまして、内部通報制度を運用している立場の者から申しますと、事実を突きとめたい、何があったかを知りたい、不正行為があったのであれば是正したいと考えるわけなのですけれども、返信を求めても返信をしてくださらないということがかなりの数に上ることから、たとえば、その場合には守秘義務が解除されたものとみなされるといった例外を認める。ただし、守秘義務が解除されたことによって通報者の方が不利益取扱いを受けたということになれば、それに関しては、その組織が相応の罰を負うという構造であれば、よりうまくいく可能性があるのではないかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

柿崎座長代理、お願いします。

○柿崎座長代理 私も同意というのはとらざるを得ないかなと思います。とれないような状況で、企業がその後どうやって調査を進めていくのかという現実問題があることはよくわかっておりまして、亀井委員のご指摘のように不利益取扱いがあった後で対応していくというほうが現実的かなという気もします。

他方で、気になっているのは、同意をとれないような状況だけれども、一般公衆の人権、生命、身体、安全という法益侵害の切迫性が極めて高い情報が含まれているような場合に同意を一々とっていたのでは事後に取り返しがつかない事態になるおそれがあるというところは、少し懸念があるのかなと。ただ、どのように要件を立てるのか、緊急性もしくは切迫性ということについても解釈になると思うので、そこは難しいかなとも思うのですけれども、一般企業の利益と守秘義務により守られる個人利益の関係というだけではなくて、まさに公益通報の目的である一般公衆の安全に対して極めて切迫した危険が迫っているようなときに、同意がなかったから何もできなかったというのではどうなのだろうという懸念はあります。

○山本座長 資料3の11ページの一番下のところに個人情報保護法の条文が挙がっていて、あらかじめ本人の同意を得ないで第三者に提供してはならないということで、同意を得ることが原則ではあるのですが、しかし、例外的に幾つかの場合が挙がっていて、例えば人の生命、身体、財産の保護のために必要がある場合などが挙がっていますので、例えばこういったものがあるいは参考になるのかもしれません。

ほかにございますでしょうか。

今、出てきた御意見といたしましては、当然同意を得るのが原則であると。ただ、例外を認めざるを得ない場合があるのではないかという方向で、例外といったときに大きく2つありまして、一つは、今、挙げました個人情報保護法が定めており、あるいは柿崎委員が言われましたように、非常に重大な法益侵害の切迫性があるといった場合に例外を認めるということ。もう一つは、中村委員、亀井委員が言われましたように、連絡がとれない、企業としては調査したいと思っても、同意を得ようと思っても同意がとれないような状況になっているときというのが挙がったかと思います。その場合であっても、先ほど御注意がありましたように、その場合に仮に同意がとれたものと擬制してどのようなことでもできるのかというと、そこは限界があるだろうということではあるのですけれども、連絡がとれない、しかし、企業としては調査をする必要があると考えたときに一定の例外を認めることを考えるべきということではないかと思います。

さらに何か御注意をいただくことはございますでしょうか。よろしいでしょうか。

最後の12ページの8.は、そもそもの守秘義務の趣旨を考え直すことによって広げることが考えられるのではないかという御意見だったかと思います。

全体を通じて、さらに何かございますか。

お願いします。

○柿崎座長代理 1号通報の場合ですけれども、守秘義務の違反に対して刑事罰を科す、その点についてはなかなか難しいのかなという意見だったのかなと思うのですけれども、では、その義務違反についてどういった対応をとるべきなのかということの議論が余りないのかなと思っております。例えば、どういう場面になるかわかりませんけれども、行政処分についても段階的に勧告、公表、それでもだめならば行政処分というような、ある程度の段階的なステップを踏んで、対応がずさんである企業に対しては行っていくというのはあってもいいかと思いますが、どうでしょう。

○山本座長 刑事罰導入の可否というところまでで今日の議論がとまってしまっていたところがあるのですけれども、確かに刑事罰を科さないとした場合に、それではどのように義務の履行を確保するのかという問題がございますので、これについてはさらにまた改めて検討するということでよろしいですか。

事業者に関しては、先ほどの通報に対する内部管理体制について義務を課す、それに違反した場合にどうするという話とある程度パラレルに考えられるところがあるのかなと思います。そのあたりも含めて、通報担当者に対して義務を課す場合に義務違反があったらどうするか、事業者に対して義務を課すといった場合に違反があったらどうするのか、それぞれについて少し具体的に考えていただければと思います。もちろん一般的な損害賠償責任の問題はあろうかと思いますけれども、そのほかにも行政措置等々も考えられますので、その点はよろしくお願いいたします。


≪4.閉会≫

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日は長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)