第12回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年4月18日(水)9:30~11:41

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、石井委員、浦郷委員、亀井委員、川出委員、後藤委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 高委員長、池本委員長代理、樋口委員
【消費者庁】
井内政策立案総括審議官
太田消費者制度課企画官
消費者制度課担当者
【内閣府】
幸田内閣府審議官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎、高委員長の高ははしごだか

議事次第

  1. 開会
  2. 外部通報の保護要件
  3. 通報を裏付ける資料の収集行為に関する責任
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 皆様、本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから第12回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

本日は、委員は全員おそろいです。

最初に配付資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。不足がございましたら事務局までお願いいたします。


≪2.外部通報の保護要件≫

○山本座長 本日の検討項目に入ります前に、前回の専門調査会で議論いたしました内容につきまして、消費者庁から補足説明があるということですので、消費者庁からお願いをいたします。

○消費者庁消費者制度課担当者 それでは、消費者庁から説明させていただきます。

前回の専門調査会における、役員を通報者の範囲に含めることに関する論点において、石井委員から、役員が解任された事案における会社法第831条の決議取消しの訴えによる救済の可能性について、御意見、御質問がございました。

これに対し、通報を理由しているケースでの同条の適用は困難ではないかと申し上げたところではございますが、改めて検討したところ、同条により救済される可能性も考えられるところでございますので、この点について、少し補足して説明をさせていただきます。

まず、会社法第831条第1項第1号では、株主総会の招集の手続または決議の方法が法令に違反している場合が、決議取消事由とされています。そのため、通報を理由に役員が解任された事案において、通報を理由に解任決議が行われたという点に着目するのではなく、決議の方法等に着目して、決議が取り消され得るものとされることも考えられるところでございます。

例えば、会社法第345条では、監査役は株主総会において、監査役の選任もしくは解任、または辞任について意見を述べることができるとされていますが、解任決議をする際に、解任される監査役に意見を述べさせなかったような場合には、この解任決議や決議の方法が法令に違反するとして、取り消し得るものと考えられるところでございます。

また、会社法第831条第1項第3号では、特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことにより、著しく不当な決議がされた場合が決議取消事由とされています。例えば、株主である取締役が別の取締役から違法行為を指摘されたことを理由に、自ら議決権を行使し、その取締役を解任したといったような場合には、ここは余り議論がされていないところではございますが、具体的な事情によっては、この解任決議が、特別な利害関係を有している株主兼取締役が議決権を行使したことによってされた著しく不当なものであるとして、取り消し得るものと認められる余地もあると考えられるところでございます。

説明は以上でございます。

○山本座長 通報を理由にと正面から言うのではなく、ほかの理由によって無効とされる場合があり得る、それに公益通報があったケースも含まれる可能性がある、こういう説明だったと思います。細かいことはさらに後に議論をしていくことになろうかと思いますが、ただいまの御説明につきまして、何か御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、消費者庁からもう一点報告事項があるということですので、説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁でございます。

お手元の参考資料4という一番最後についている紙をご覧ください。タイトルといたしましては「コーポレートガバナンス・コードの改訂に係る意見」ということで、消費者庁のクレジットで作成しているペーパーでございます。

こちらにつきましては、本年2月23日に開催されました、第10回目の本専門調査会におきまして、複数の委員の皆様から、現在見直しが行われているコーポレートガバナンス・コードとの連携を図るべきではないかといった御意見をいただいてございます。いただいた御意見の具体的な内容につきましては、この参考資料4の4ページに参考として掲載をさせていただいております。

コーポレートガバナンス・コードの改訂案につきましては、3月30日から4月29日にかけまして、パブリックコメントに付されているところでございまして、専門調査会でのこういった御意見なども踏まえて検討させていただきまして、消費者庁として、改訂案に対して意見を提出するということにさせていただきました。具体的には、この参考資料4というものを昨日提出させていただいたところでございます。

意見の主なポイントでございますけれども、1ページ目の下から2番目のマル以下が、主なポイントとなるところでございます。現在、コードの改正に関連して、金融庁と東京証券取引所におきまして開催しておりますフォローアップ会合というものがございますけれども、そこで議論された点に加えまして、昨今における企業不祥事への政策的な対応の柱の一つとして、このコードの中に「改正内部通報ガイドライン」というものを位置づけていくことが不可欠ではないかということでございます。具体的にはということで、その下のマル以下でございますけれども、現在のコードでも原則2-5というところで内部通報に関する事項というものが盛り込まれているわけでございますが、ここに消費者庁の改正ガイドラインの内容を盛り込んでいただくということをお願いしているということでございます。

この理由でございますけれども、改正内部通報ガイドラインというものは、内部通報制度を実効的に整備、運用していくために必要なさまざまな要素でありますとか、一連のプロセスといったものを、政府全体として総合的に定めた唯一の指針であるということでございまして、政府全体として、このガイドラインを踏まえた制度の普及促進を図っていく必要があるのだということでございます。

その下のマルでございますが、このコーポレートガバナンス・コードにつきましては、余り細かいことを書かずに原則を定めているということで、プリンシプルベースと申しておりますけれども、そういったものの中に改正ガイドラインのようなルールベースのものを盛り込むことが必ずしもなじまないのではないかという御指摘もいただいているところでございます。そういった関係で、それを記載することが難しいといった場合には、改正ガイドラインの内容のうち現在のコードでは記述が不十分と考えられる部分につきまして、そのプリンシプル的な要素といったものを追記していただくことが必要ではないかということでございまして、具体的には、現在のコードに明示的に記載されていない内部通報制度の評価・改善に関する事項などを追記していただくということが必要ではないかということで、御意見を出させていただいたところでございます。

事後となりましたが、御報告させていただきます。以上でございます。

○山本座長 こちらは消費者庁からの報告事項ということですけれども、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日の議題に入りたいと思います。

本日、林委員から資料が提出されております。全体にかかわる部分もございますし、一部にかかわる部分もあろうかと思いますので、最初に御説明をお願いいたします。

○林委員 林です。

日弁連から、2015年9月11日付で、改正試案というものをお出ししております。この資料3の1ページから挙げているのですけれども、この中の文言なども見ていただきたいのですが、今日は特に2号通報、3号通報について参考になるということで、挙げさせていただきました。

14ページの下のほうから、ブロックで書かれていることなのですけれども、今の企業風土であるとか、行政機関の現状を考慮しますと、事業者及び行政機関への通報とともに、一定の要件のもと、それ以外への通報も保護される仕組みになっているということが、事業内部または行政機関への通報に対する、それぞれの対応する監視になって、各通報の本来の役割を促進することになるのではないかと考えています。特にマスコミへの通報というのは、国民の知る権利にとって極めて重要な役割を果たすものだと思っております。

他方で、通報窓口が設置されていても不利益対応されているという事案が後を絶たないという現実からいたしまして、3号通報の要件が厳格に過ぎるということが書かれているわけなのですけれども、その辺を参考にしていただければと思います。

以上です。

○山本座長 ただいまの御説明につきまして、御質問等はございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、また具体的にその点を議論するところで、いろいろ御意見を出していただければと思います。

続きまして、事務局から、本日御議論いただきたい論点の概要につきまして、資料1の説明をお願いいたします。

○友行企画官 それでは、資料1を御覧いただけますでしょうか。あわせまして、参考資料2「主な課題例のイメージ図」も御覧いただけますでしょうか。

「主な課題例のイメージ図」で見ますと、本日御議論いただきますところは下のところの四角で囲ってあります外部通報の保護要件の緩和というところを、本日御議論いただくというところでございます。前回はその右側の2つの四角囲みの、通報者の範囲の拡大と通報対象事実の範囲の拡大を御議論いただきましたところでございます。

それでは、資料1に戻りまして、御説明いたします。

資料1でございますが、本日のテーマでございますけれども、まず、論点の下のところの問題の所在でございます。現行法では、外部通報(2号通報、3号通報)を行う場合に、真実相当性があることが求められております。さらに、3号通報を行う場合には、特定事由に該当することも必要となっております。真実相当性を立証しなければ、通報者は事業者による不利益取扱いから保護されず、また、資料による裏づけがなければ、通報先において調査等が開始されないといった可能性もございます。

そのため、通報者は、資料の収集を行うわけでありますが、検討するわけでございますが、当該収集が保護されるかどうかについて、明確な基準はないというところでございます。通報者がどのような資料収集行為であれば法律上許されるかがわからず、適切な通報を行うことができていないという可能性も想定されるところでございます。

本日の1つ目の論点でございますけれども、外部通報の保護要件といたしまして、これを緩和する必要があるか。緩和する必要があるとした場合、どこに対する通報についてどのような緩和を行うかというところが1つ目の論点でございます。

マルのところでございますが、2号通報の保護要件の真実相当性のところにつきまして、要件を緩和することの是非と、要件を緩和するとした場合、どのように緩和するかというところがございます。

2つ目のマルといたしまして、3号通報の保護要件のところでございますが、こちらの真実相当性の部分につきまして、要件を緩和することの是非、それから、要件を緩和するとした場合に、どのように緩和するか。

3つ目のマルでございますが、3号通報の保護要件の特定事由のところでございます。要件を緩和することの是非と、要件を緩和するとした場合に、どのように緩和するか。例えば既存の特定事由を加えるといったことなどが論点として考えられるところでございます。

裏をおめくりいただきまして、通報を裏づける資料の収集行為に関する責任のところでございますが、こちらにつきまして、不利益取扱いから保護する必要があるか。必要があるとした場合、どのような要件で保護するかといったところでございます。例えば資料収集の目的との関係でございますとか、手段との関係、資料と通報内容の関連性といったところが論点となるかと思われます。

以上でございます。

○山本座長 全体の論点ですけれども、ただいまの説明につきまして、何か御質問等はございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、本日はただいま御説明がございましたように「外部通報の保護要件」「通報を裏付ける資料の収集行為に関する責任」につきまして、検討を行っていただきます。

本日も、論点ごとに委員の皆様の意見を集約して一定の方向性を示し、確認するところまで目指していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、消費者庁から資料2の説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁でございます。

消費者庁からは、主に資料2に基づき御説明をさせていただきたいと思っておりますが、その前提といたしまして、参考資料3という青色の紙、タイトルといたしましては「現行法における通報先と保護要件」という資料を御覧いただきたいと思います。

こちらにお示ししておりますとおり、現行の公益通報者保護法でございますけれども、通報先として、大きく3つを想定しているということでございます。まず1つ目といたしまして、労務提供先等ということで、これはいわゆる事業者への内部通報ということでございまして、1号通報と呼んでいるものでございます。2つ目といたしまして、処分等の権限を有する行政機関への通報、2号通報と呼んでいるものでございます。3つ目といたしまして、報道機関ですとか消費者団体など、その他の事業者外部への通報、一般に3号通報と呼んでいるものでございまして、以上3つを想定しているということでございます。

このうち、理想を申し上げれば、事業者内部への通報によりまして、自浄作用が働きまして、不正の未然防止でありますとか、早期の是正が図られることが一番望ましいということでございますけれども、それが十分機能しない場合でありますとか、そもそもそういったことが期待できない場合、さらに、個人の生命・身体の保護を図るために迅速に対応する必要があるといった場合もあることから、一定の条件のもとで、こういった行政機関でありますとか、その他事業者外部への通報についても保護するというような仕組みにしているということでございます。

その保護要件につきましては、内部から外部に行くほど要件が加算されているということでございまして、それぞれの保護要件を満たせば他の通報先への通報の前置がなくても保護され得るという仕組みになっているということでございます。

しかしながら、先ほど委員会事務局から御説明がございましたように、真実相当性でありますとか、特定事由といった要件の立証負担が重いのではないかということでありますとか、資料の収集に関する免責についての基準が余り明確でないといった問題がございまして、外部通報が十分に機能していないのではないかという御指摘もいただいているところでありまして、こういった3つの通報先が十分機能して、それぞれに求められている役割を果たしていくためには、通報先ごとにどのような要件立てにすることが必要なのかといったことにつきまして、本日御議論いただきたいと考えてございます。

それでは、資料2に戻っていただければと思います。タイトルといたしまして「外部通報の保護要件等について」とございます。資料の構成につきましては、前回と同様でございまして、まず第1といたしまして、問題の所在とございますけれども、現行法の規定でありますとか、現行法のような形になった立法当時における考え方、それから、立法後に明らかになった課題などをまとめてございます。

6ページ目以下でございますが、第2といたしまして、これまでの主な議論の整理ということでございまして、消費者庁における検討会での御意見でありますとか、報告書の提言、報告書に対するパブリックコメントに寄せられた御意見などを積極的なお立場と慎重な立場に分けまして、論点ごとにお示ししているというような体裁になってございます。

資料2の1ページ目でございますが、第1の問題の所在といたしまして、四角の枠の中に現行法の規定をお示ししてございます。その枠の下のほうに書いてございますけれども、まず権限を有する行政機関への通報、いわゆる2号通報につきましては、真実相当性の要件を満たした場合に保護され得ると定めているということでございます。

2ページ目を御覧いただきますと、最初のポツでございますけれども、権限を有する行政機関以外の外部への通報、いわゆる3号通報と呼んでいるものでございますが、こちらにつきましては、真実相当性の要件に加えまして、法第3条3号イからホに列挙されている事由、特定事由というもののいずれかに該当することが、保護されるための要件となっているということでございまして、脚注に書いてございますけれども、通報に対する不利益取扱いですとか、証拠隠滅等の発生する可能性が高いでありますとか、個人の生命・身体などに危険が発生する可能性が高い場合といったものをそういった特定事由として掲げているということでございます。

さらに、現行法におきましては、公益通報を理由とした解雇その他の不利益取扱いは明示的に禁止されているわけでございますけれども、それを裏づけるための資料の収集行為を理由とした不利益取扱いにつきましては、明示的には禁止されていないということでございまして、こちらにつきまして、一般法理で保護される可能性はあるわけではございますが、どのようなものであれば保護され得るかといったことについての基準が余り明確に示されていないということでございまして、予見可能性に欠けるのではないかという指摘もいただいているところでございます。

次に2.といたしまして、立法時における考え方についてまとめてございます。(1)の真実相当性のところでございますけれども、事業者外部への公益通報につきましては、真実でない通報等によって、事業者でありますとか、従業員の正当な利益が害される可能性があるということでございまして、通報を裏づけるための内部資料等がある場合でありますとか、関係者による信用性の高い供述などがある場合など、相当の根拠が必要となってくるということで、この真実相当性の要件が置かれたということでございます。

さらに、(2)の特定事由のところでございますが、その他事業者、外部ということになりますと、使用者に対して労働者が負う誠実義務との関係上、事業者の利益を不当に侵害しないように配慮して行動する必要があるといったことで、こういった事由が置かれているということでございます。他方、公益通報をすれば、不利益取扱いを受けるおそれがある場合でありますとか、公益通報をしても犯罪行為等の是正が期待できないといった場合には、誠実義務を履行しつつ、その犯罪行為等を是正することはなかなか困難でありますので、このような場合には事業者の利益を不当に侵害することはないということで、通報者の保護を優先することとしたということでございます。

さらに、個人の生命・身体に危害が発生するといった場合には、生命・身体の保護というのは、事業者の利益の保護を上回る法益があるということでございまして、こういった場合にも通報者を保護する必要があるということで、こういった特定事由を置いたということでございます。

なお、以上のようなもの以外にも免責する事由はあり得るのではないかということで、バスケットクローズを置いたらどうかという議論が立法時にもあったわけでございますけれども、こういったものを設けますと、予見可能性を害して、トラブルのもとになるということで、立法の際には設けられなかった経緯がございます。

さらに、3ページ目のポツのところでございますけれども、事業者外部への通報のうち、2号通報につきましては、法の適切な執行のために制度上当然に予定されているものであり、3号通報よりは要件を軽くすべきだということで、2号通報については、こうした特定事由は置かれなかったという経緯がございます。

(3)といたしまして、裏づけ資料の収集等の責任についてでございますが、立法時の議論といたしましては、こういった責任の減免といったものは、諸般の事情の総合考慮に基づくものであるべきであるということで、法律で一律に定めることは適当でないとされたところでございます。

(4)といたしまして、法制定後の見直しに関してでございますけれども、こちらにつきましても、衆・参の内閣委員会におきまして、附帯決議がついておりまして、この法律の見直しに際して、外部通報の要件の再検討も行うことが求められているというところでございます。

3.といたしまして、立法後に明らかとなった課題ということで、いわゆる立法事実について整理しております。こちらの事例の詳細につきましては、参考資料1というところに別途お示しをしておりますので、あわせて御参照いただければと思います。

まず(1)のように、行政機関ですとか報道機関の事業者外部への通報によって不正が明らかになるような事案が多数起こっているということがございます。さらに(2)にございますように、そういったものの中には、組織ぐるみで不正が行われているでありますとか、不正行為の隠蔽が行われている、それから、内部通報をしたところ、不利益取扱いを受けたといった事案も起こっているということでございまして、こうした内部通報が機能しなかったといった事案も散見されているところでございます。さらに(3)にございますように、通報のための資料の収集行為をしたということで、解雇などの責任追及が行われたような事案も存在しているということでございます。

4ページ目をごらんください。他方(4)(5)とございますように、外部通報に関する弊害的な事例も生じているということでございまして、真実性ですとか、真実相当性を欠く通報によって事業者に名誉毀損でありますとか信用毀損、取引先との取引停止等の損害が生じたような事案も起こってしまっているということでございます。

さらに(5)にございますように、内部資料の持ち出しをした等の主張が認められなかったような事案というものも存在しておりまして、内部資料の持ち出し等は不正行為の通報のためなのだから、正当化されるとの主張が通報者からなされたわけですけれども、その手段などが適切ではなかったということで、そういった主張が認められなかったという事案も見られるところでございます。

こうしたことにつきまして、(6)でございますけれども、私どもで運営しております相談ダイヤルにもいろいろ相談が寄せられておりまして、そこにお示ししてございますように、内部通報したところ、是正されなかったという御相談でありますとか、行政機関に通報したところ、確たる根拠がないと調査ができない、さらに資料の提出を求められるといったことで、こういう中で資料の収集行為が違法であるかどうか不安であるといったような御相談をいただいているところでございます。

さらに(7)にも消費者庁が行ったヒアリングの結果をお示ししてございますけれども、相談ダイヤルと同様でございまして、事業者内部への通報では不安である、行政機関が動いてくれない、立証負担が重い、責任追及のおそれがある等々の指摘がなされているところでございます。

他方、5ページ目の最初のポツのところで、事業者サイドのコメントも載せてございますけれども、事業者サイドからは安易に免責を認めてしまえば軽率な通報行為が増えるのではないかといった御懸念でありますとか、マスコミ等の外部への通報は相応に厳しいほうが適切だといった御意見も頂戴しているところでございます。

4.といたしまして、ガイドラインによる措置でございます。私どもは制度の運用改善で対応できることについては、ガイドラインの改正等でこれまで措置を講じてきたということでございまして、外部の労働者等からの通報に関する行政機関向けのガイドラインにおきまして、行政機関が通報を受けた場合の対応といたしまして、通報者の供述のみによっても真実相当性が認められ得るということを示すなど、柔軟かつ適切に通報に対応していただきたいということをお願いしているところでございますし、真実相当性の有無は直ちに明らかでないといった場合におきましても、個人の利益に重大な影響を及ぼし得る可能性がある場合には、同じく柔軟に対応してほしいということを要請しているところでございます。

ただし、このガイドラインというのは、あくまでも通報を受けた行政機関向けの指針ということでございまして、通報者の保護の問題とは別になってくるということでございますし、また、裏づけ資料の収集等に関しましては、特に規定をしていないという状況にございます。

6ページ目を御覧ください。第2といたしまして、これまでの主な議論につきまして、論点ごとに整理してございます。

まず、1.の2号通報の真実相当性の保護要件のところでございますが、こちらについて、緩和することの是非についての御意見でございます。積極的なお立場からは、内部通報が極めて困難であるとか、匿名性を維持したいといったことで、行政機関などの外部に通報しやすい場合もあるのだといった意見をいただいておりますし、行政機関への通報というのは、監督権限がある行政機関に対する情報提供であるということですし、情報を受ける職員も守秘義務を負っているということでございますので、犯罪行為である名誉毀損行為を免責するための真実相当性の要件と同じというのは、やや厳しすぎるのではないかという御意見もいただいております。

また、行政機関による法執行力を強化するといった観点からは、一つ一つは十分根拠のない通報であっても、多数の通報が集まることによって、そういった不正行為が発覚するようなケースもあるのではないかといったことですとか、こういった多くの情報によって、行政機関としても確度の高い情報に基づいて調査を行うということで、風評被害のおそれも少なくなるのではないかという御意見もいただいているところでございます。

その下のポツにございますように、通報制度の実効性を向上するといった観点から、制度間競争を働かせることが重要だという御意見もございます。外部通報の要件を緩和することによって、事業者サイドにおきまして、内部通報制度を充実させるためのインセンティブを働かせる、そのためにも要件の緩和が必要なのではないかという御意見も頂戴しているところでございます。

最後のポツのところでございますが、資料の収集行為に関する責任との関係で、真実相当性の立証のためには十分な証拠を収集しておく必要があるわけでございますけれども、事業者の内部規程等に抵触しかねないということで、通報をためらう大きな理由となってしまっているのではないかという御指摘もいただいているところでございます。

他方、イの慎重な立場からの御意見といたしまして、こういった要件が緩和された場合に、安易に行政機関に対して通報される。これに伴い、行政機関の負担も大きくなるほか、調査等に応じる事業者の負担も大きくなり、さらに風評被害も発生し得るのではないかといった御意見。それから、真実相当性の要件というのは、そもそもそれほど厳格なものではないのではないかといった御指摘もいただいているところでございます。

7ページ目でございますが、参考といたしまして、訴訟においてどういった判断がされているかということを示しております。脚注に主な判例をお示してございますけれども、訴訟によってまちまちでございまして、通報者が録画ですとか録音テープを証拠として確保していただいていても、真実相当性の立証に至らなかったような事案もある。さらに、専門家の意見書が提出されていても立証されなかったという厳格な運用がなされているようなものもある一方、比較的緩やかに行われたと考えられるような裁判例も存在しているということでございまして、個々の事案の内容でありますとか、性質に応じまして判断された結果であると考えられるわけでございますけれども、なかなか明確な基準を示すことが困難であるというところで、予見可能性が低いのではないかという御指摘もなされているところでございます。

さらに、3番目のポツのところにございますように、行政手続法第36条の3といたしまして、一般に処分等の求めと呼ばれているものに関する規定が定められておりますけれども、こちらにおきましては、行政機関の調査措置義務を発生させるための要件といたしまして、特にこの通報内容の真実性でありますとか、真実相当性というものは求められていないという状況にございます。

8ページ目でございます。外国法の例も若干お示ししておりますけれども、フランスのサパン第2法という最近できた法律でございますが、こちらにつきましては、外部通報の要件として、内部通報の前置主義という原則を置いておりまして、行政機関等への通報の保護要件として、内部通報の前置が求められているわけですけれども、真実相当性については、保護要件として特に求められていないという状況にございます。

他方、イギリスの公益開示法につきましては、2号通報に相当する通報の保護要件の一つといたしまして、真実相当性に類似の要件が置かれているという状況にございます。

以上が要件を緩和することの是非についての御意見を整理したものでございますけれども、仮に要件を緩和するとした場合、どういった要件にしていくべきかというところでございます。これまで出された御意見といたしまして、「思料する」という内部通報と同じ要件でいいのではないかという御意見もございますし、一定の歯どめが必要だろうということで、「通報対象事実をしていることを疑わせる事実がある場合」でありますとか、そういった「事実が差し迫っている場合」でありますとか、さらに、3号通報の特定事由のうち、いずれかに該当する場合には、真実相当性の要件を不要としてもいいのではないかといった御意見も頂戴しているところでございます。

参考のところに裁判例の状況をお示ししてございますけれども、通報の内容でありますとか、その方法の相当性を基準に判断した例でありますとか、客観的な証拠を確認したか否かを基準としている例でありますとか、制度の趣旨目的に照らして、相当性があるかどうかといったことを基準に判断している例ということで、真実相当性とは別の判断基準で判断しているといった裁判例も見られるところでございます。

さらに、9ページの次のポツにございますように、裁判例の中には、真実相当性に関する立証責任といったものを事業者側に転換させているというものも存在する状況でございます。

以上が2号通報でございますが、2.といたしまして、3号通報の保護要件(真実相当性)につきまして、御説明させていただきます。3号通報の真実相当性の要件を緩和することの是非につきまして、積極的なお立場からは、裁判所においてこの真実相当性の認定について相当厳しい判断がなされているといった御指摘でありますとか、そもそも公益通報を行うに当たって、いいかげんな気持ちで通報する人は余り多くないのではないかといった御意見をいただいております。

他方、慎重なお立場からも多数御意見をいただいておりまして、3号通報というのは2号通報と異なって、通報内容がすぐに公になってしまう。それによって事業者が倒産に至ることもあるということでございますし、近年におきましては、インターネットを介して瞬時にそういった情報が拡散してしまうということでございますので、真実でない通報が広まることによって、企業に深刻な風評被害をもたらすことがあるのだということで、慎重に検討すべきだという御意見でございます。

さらに、3号通報については、受け手はさまざまであって、受け手が公務員のように守秘義務を負っていないということでございますので、そのまま外に出てしまう可能性があるといったこと、さらに、裁判所においてもそういった真実でない情報を通報したことについては、厳しい判断がなされているといった御指摘をいただいているところでございます。参考といたしまして、フランス法とイギリス法の状況を示させていただいております。

10ページ目でございます。3.といたしまして、3号通報の保護要件の特定事由を緩和することの是非についてでございますが、こちらにつきまして、積極的なお立場からは、行政機関に通報しても適切に調査等、対応されない場合があるといった御意見、そういう中で現行の特定事由は立証のハードルが高いのではないかということでございます。

さらに、名誉毀損の裁判におきましては、真実相当性があれば保護されているということでありまして、特定事由というのは、やや過剰な要件なのではないかということ、制度間競争の観点から、特定事由を拡充することによって1号通報の活性化が期待できるのではないかといった御意見をいただいております。

他方、慎重なお立場からの御意見といたしましては、公益通報者というのは、基本的には労働者であるということで、誠実義務との関係上、事業者の利益を不当に侵害しないようにしなくてはならない、特定事由についてもそういった類型に限定する必要があるという御意見でございます。さらに、現在の特定事由の一つ一つの立証というのは、それほど無理な条件ではないのではないかといった御意見も頂戴いたしております。

(2)といたしまして、仮に要件を緩和するといった場合の新たな要件ということでございますけれども、主な意見のところに示されておりますように、社内で内部通報制度を整えていないことが考えられるのではないかといったことが挙げられておりますが、これについては、中小企業をどのように取り扱うかが論点となってくるかと思われます。

それから、既に犯罪が発生してしまった場合といったことが挙げられておりますし、内部通報による是正が期待できないというような包括条項的な事由も考えられるのではないかといった御意見。さらに、財産的な被害があってそれが重大な場合、それから、行政に通報しても行政が一定期間内に対応しない場合といったことが言われております。この最後の行政機関のところにつきましては、事業者サイドからは事業者がコントロールできないことを特定事由に加えることはどうかといった御意見もいただいているところでございます。

参考のところに裁判例をお示ししてございますけれども、裁判例におきましては、行政機関以外の事業者外部への通報に関する責任の判断に当たりまして、内部での是正の可能性がどうであったかといったところが判断のポイントになっているものも見られるということでございます。

11ページ目でございます。4.といたしまして、裏づけ資料の収集等を理由とした不利益取扱いからの保護に関する論点でございます。こちらにつきまして、不利益取扱いから保護することの是非についてでございますが、積極的なお立場からは、何ら裏づけなく通報しても、調査・是正措置に着手させることは難しいでありますとか、裏づけ資料がないと保護されないリスクがある、それから、司法機関ですとか、捜査機関、行政機関などについては、公益通報をしようとした場合、必ず証拠を持ってきてくださいと言われてしまうといった御意見がございます。

他方、慎重な立場からの御意見といたしましては、正当な目的であればどんな手段を用いて情報を取得・使用しても構わないというわけではない、一律の減免というのは認めるべきではないといった御意見でございます。それから、資料の持ち出しというのは、ある主の違法行為、企業秩序違反ということでございますので、例外的に免責されるべきだといったこと、さらに、企業秘密の漏えいなどの被害を助長する可能性があるといった御指摘もいただいているところでございます。

(2)に仮に不利益取扱いから保護する場合の要件ということで、これまでの主な御意見をまとめてございますけれども、切迫性がある場合でありますとか、真実相当性に関連する資料であること、その目的が公益通報の目的であることといった縛りが必要なのではないかといったことでございます。

12ページ目を御覧いただきまして、持ち出すときに必要と信じたことに相当な理由がある場合といったことですとか、収集の手段として、社会通念上相当といった要件が必要であるとした上で、具体的には裁判に委ねていくといった御意見、それから、目的外に使用した場合には保護されないということを明確化すべきだといった御意見でありますとか、第三者に被害を与えた場合も保護されないといった御意見も頂戴しているところでございます。

これに関連いたしまして、参考のところに個人情報保護法の例をお示ししてございますけれども、こちらにつきましては、個人情報保護の取得に関し、不正の手段による取得は禁止されているということでございますし、要配慮個人情報の取得については、原則禁止ということでございますが、例外の事由といたしましては、公益上の理由がある場合といったものが置かれているということでございます。

さらに、その次のポツに、裁判例についてお示ししておりますけれども、免責されるためのポイントといたしまして、資料収集の目的でありますとか、手段の相当性、資料と通報内容の関連性、事業者への損害の程度といったものを総合判断しているといった状況にあるということでございます。

以上につきましては、民事責任を免責するための要件ということで御紹介してまいりましたけれども、資料の持ち出しといった場合に、窃盗罪等の刑事責任を免責するかどうかという議論もあり得るということでございます。他方、こちらにつきましては消費者庁の有識者検討会においても議論いたしましたけれども、検察官の訴追裁量が及ぶといったようなことで、特にそういった必要はないのではないかという結論になってございます。

さらに、13ページ目でございますけれども、外国法として、フランスとイギリスの法律をお示ししておりますが、フランス法については、一定の場合において刑事上、免責するといった規定がある一方、イギリス法におきましては、そういった規定は特に存在しないという状況になっております。

消費者庁からの説明は、以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、本日の最初の論点は、外部通報の保護要件を緩和する必要があるか。緩和する必要があるとした場合に、どこに対する通報について、どのような緩和を行うのかという点です。さらに、その中で、最初に2号通報の保護要件、真実相当性について御意見のある方は、御発言をお願いいたします。

資料で申しますと、資料1の1.の最初のマルの部分、それから、資料2で申しますと、6ページの1.の(1)とある部分でございます。

それでは、御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

林委員、お願いします。

○林委員 2号通報の保護要件に関しましては、緩和すべきだと考えております。どの程度緩和するのかということに関してですけれども、1号通報と同様に、思料した場合とすべきではないかと考えています。

その理由ですけれども、名誉毀損行為を免責するための要件である真実相当性を設定するというのは、通報者にとっては非常に重たい負担になっているということがあるということと、行政機関には守秘義務がございますので、公表を前提としていないで、直ちに企業に風評被害が生じるという不利益は生じないということで、要件を加重する理由がないのではないかと考えられるということが、その理由です。むしろ公益通報は、行政機関にとっても法を執行する、適正に行うための端緒になるということからいたしましても、法令違反が疑われている場合には、行政機関が調査を行うというのは当然のことであるということからすると、そのように緩和するのが妥当であろうと考えております。

○山本座長 ありがとうございます。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 本来であれば、内部通報というのが望ましいとは思うのですけれども、通報者が内部通報でなくて、なぜ2号通報するのかということを考えると、内部では取り合ってもらえないとか、握り潰されてしまい、公益通報として機能しないということで、2号通報のほうにするのではないか。通報者は、社会のためには是正すべきであり、権限を持つ行政にきちんと調査してもらいたいと思うところだと思います。そのときに、通報者が通報時に提示できる証拠みたいなものはなくても、行政によりきちんと調査がされれば、社会的に不利益となる不正が行われているということが明らかになるということを通報者が思うのであれば、私は2号通報の真実相当性を緩和して公益通報の保護の対象にしてよいと思っております。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかに、いかがでしょうか。

中村委員、お願いします。

○中村委員 ありがとうございます。

まず、前提なのですけれども、今の御意見の中でも真実相当性の要件がハードルとなっているという御意見もありましたし、そういう記述があるのですが、少なくとも私どもは年に数百件の内部通報を受け付けておりますが、真実相当性ということを考えて、それに基づいて通報を控えるという発想は、余り考えにくいように感じております。

例えば4ページの(6)のところで、この要件があるために通報を思いとどまる人がいるとされていますけれども、いろいろ事例が挙げられている中でも、本当にそれが理由なのかというところは明らかではないように思いまして、さらに事例の分析が必要なのではないかと思います。

行政に通報したところ、確たる証拠がないと調査ができないとして、調査がなされなかったという指摘もあるわけなのですけれども、御説明にもありましたように、行政機関向けのガイドラインということで、調査をしないということはないようにということでやられているということなので、ここのところにつきましては、さらに周知を徹底していただくことによって、そういうことがなくなるということもあるのではないかと思います。

あと2点なのですけれども、私どものところで受けている通報を見ても、御本人としては、もちろんそれは正義感というか、思いを持って通報をされていることであっても、現実にはそれは違法な行為でも何でもないということも多々ございます。そういったときに、そのような通報が行政にもたくさん寄せられることも想定されることでありますので、それに対して、御本人は正義感を持っておられるのだけれども、回答を欲しいといって調査した結果、そうではなかったということでも納得しないという事案もたくさん発生してくるということで、行政のリソースの問題も起こってくるように思われます。

また、先ほど同じ要件でいいのではないかという御意見もあったのですけれども、そうなってくると、逆にそもそも企業の内部通報に、まずはインセンティブを与えて、企業の中で自浄作用を高めるということをまず促進しようという考えが、この公益通報者保護の法制度には含まれていると思うのですけれども、全く同じ要件で行政に通報していいということになると、そもそもそういうインセンティブもなくなってしまうのではないかと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

春田委員、お願いします。

○春田委員 基本的な考え方としまして、通報先により通報要件に差を設けるということは、一定の合理性を有しているのではないかと思っています。ただ、企業の内部通報の実行性を向上させて、企業の自律的な取り組みを促すことがまずは重要であり、自浄作用の話がありましたけれども、これが望ましいと思っております。

その上で、現行法の外部通報の要件、これは厳格であるということも事実でありまして、企業によっては、先ほど話があったとおり、社内に内部通報制度を整えていないというようなケースも見受けられることから、外部通報に対する保護要件を、一定緩和していくことも検討していく必要があるのではないかと思っています。

ただ、要件を一定緩和するにしても、1号通報より2号通報、後ほど3号通報の話もありますけれども、2号通報よりは3号通報と、このそれぞれの段階で厳格にしていくということと、引き続きそういう意味での要件差を設けるべきではないかと思っています。

とりわけ、行政機関への外部通報に係る真実相当性の要件、これをなくして労務提供先、第1号通報と同列にするということは、慎重に検討するべきではないかという考えであります。

以上です。

○山本座長 石井委員、お願いします。

○石井委員 私も今の春田委員と同様で、今の構造は非常によくできた構造であって、これは維持すべきではないかと思います。今、お話がなかった点で、もう少し理由を申し述べますと、もともと、これは水町先生の御専門ですけれども、労働者には誠実義務というものがあるわけでございまして、そのバランスというものは常に念頭に置くしかないのではないかと。そうなったときに、1号通報より2号通報のほうが要件が重いというのは、中と外という違いがございますから、これは合理的な今の建付けなのではないかと思います。

ただ、今の真実相当性というものが要件として果たして厳しいのかどうか。現実問題として厳しいと言われていて、なおかつ、私は1号通報で効かないケースは必ずあると思いますので、組織ぐるみとか、そういう場合ですね。その意味で、行政通報がもっと機能する方向で、この要件緩和は少し考えてみてもいいのではないかと思います。

ただ、その場合であっても、その辺はノーズルであってはいけなくて、今、説明の文書にございますように、単なる憶測とか伝聞とか、これでいけないのは明らかでありまして、そこの程度問題が考えどころなのだろうと思います。少し要件を緩和することによって、これはもう少し要件も下がったから活用してくださいというメッセージ性を出す意味でも、それは必要かと思います。

あわせて、その際に、今、消費者庁で出していただいていますガイドライン、まさにやみくもに難しい証拠を求めているのではないのだから、そこはちゃんと行政機関として受けとめなさいというところはもう少し明確に出るべきだと思いますし、行政機関のほうで受けてくれないとか、行政機関に対する不信感みたいな御意見もありまして、これは残念なところでございます。例えば4月には人事異動が多いと。そのときの引き継ぎはちゃんとしてくださいとか、研修とか、そういうものも含めて、行政機関にもっと姿勢を促すということをあわせてしていくということが適切ではないかと思います。

私もどのような文言がこの場合に適切かというところは難しいなと思ってはいるのですが、事務局に提出いただきました資料2の8ページに幾つか候補が挙げられておりますが、この中でいきますと、例えば私は3点目にございます、疑わせる事実があるとか、そのような言い方は確かにあるのではないかという感じを持っております。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

お願いします。

○柿崎座長代理 私の考えも、2号通報の保護要件につきましては、全体のバランスを考えて緩和する方向で持っていくべきだと思います。今、お話された石井委員、それから、林委員の意見に基本的には賛成なのですけれども、ただ、各号の保護要件のバランスをどうするかというところで、1号、2号、3号との関係においては、3号通報の防波堤という言い方は不適切かもしれませんけれども、2号通報が機能しなければ、3号通報の要件が十分に満たされていなくても、やむにやまれず3号通報に走っていってしまうということがまま起こってしまう。そうすると、公益通報者保護法でも保護されないし、結果的に通報内容が真実でなかったような場合には、事業者にも風評被害等が起こって、双方にとっても不幸な状況になると思います。ですから、2号通報をもう少し使いやすくするという方向での緩和を、現状よりはもう一歩進めるべきだというのが基本的に私の考えです。ただ、それをどういう要件で認めるのかというところがまさに考えどころということです。

私は刑法の名誉毀損罪とのバランスから考えて平仄をとるということであれば、「思料する」という要件でもいい気もするのですが、そこをそのままにしておいて、これも一つの提案なのですけれども、例えばアメリカのドット・フランク法に規定された内部告発者報奨金制度によれば、ホイッスルブロワー(内部告発者)のSECに対する通報に関しては、別に真実相当性を要件にしておりません。ただ、通報の様式が極めて詳細になっていて、事実を書いていくというか、いつ、どういうことを見ましたか、それについて、あなたは、これは取締役等がかかわる違法行為だと思いますかというように、法律を知らない人でも一つ一つ質問に答えていくと、大体この人が言っていることはどういうことなのかがわかるような形で通報様式、Tipsといいますけれども、通報様式が定まっております。ですから、そういう通報様式を工夫するところで、むしろ実務的に濫用の危険を排除していく知恵もあるではないかと思います。もちろん、SECに対するホイッスルブロワーの場合は報奨金の話も絡んでくるので、かなり日本とは建付けが違うのですけれども、ただ、全部そのまま採用するということではなく、要件の絞り方ということで、参考になる実務運用ではないのかなと思います。

○山本座長 川出委員、お願いします。

○川出委員 私も、1号通報と2号通報の関係について、まず内部通報である1号通報が行われるべきであり、外部通報である2号通報は、基本的にその後に来るという段階的な建付けにすること自体は合理性があると思います。現行法は、それを担保するために、2号通報の要件を1号通報よりも厳しくしているわけですが、問題は、真実相当性というのが、そのための要件として合理性があるのかということだと思います。

この点につきましては、消費者庁から説明がありましたように、真実相当性を要求する趣旨が、根拠のない通報が外部になされ、それが公表されることにより、風評被害等が生じるのを防止するというところにあるのだとすれば、林委員から御指摘があったように、2号通報の場合には、行政機関は守秘義務を負っていますので、全く根拠のない通報がなされたときにそれを公表するとか、その通報に基づいて立入調査に入った結果、事業者に法令違反の疑いがかかっていることが明らかになるといったことは考えにくいですから、そうした点からすると、真実相当性を2号通報について要求する理由は余りないのではないかと思います。

もう一つ、2号通報について真実相当性を要求する理由として挙げられていたのは、真実相当性を要求しないと、根拠の乏しい多数の通報がなされることになり、行政機関が困るのではないかということです。しかし、消費者庁から御紹介があった行政手続法の規定では、真実相当性は要求されておらず、それでも行政機関は対応できているわけですね。そうであるのに、なぜ公益通報の場合にだけ、行政機関の負担の増加ということが真実相当性を要求する根拠になるのかは、説明が難しいように思います。

そのように考えますと、いずれの点からも、2号通報について真実相当性を要求する合理性は認められないように思います。その上で、なるべく1号通報のほうに誘導するという趣旨で、2号通報について要件を加えるということであれば、例えば、1号通報をすると不利益をこうむるといったような、1号通報が機能しないことを示す要件を立てるほうが説明がしやすいように思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

水町委員、お願いします。

○水町委員 この法律では、不利益取扱いを禁止するということなので、全法体系の中で、この法律が何を要件にしているかということとの関係で考えますと、既に行政の調査措置義務については、先ほど来議論もありますけれども、行政手続法36条の3で、法令に違反する事実がある等について、思料するということが書かれているので、これは思料すれば、真実相当性の要件なく、行政は調査措置義務を負って、それを発動していくということになっている。その上で、この法律で禁止するかどうかというのは、思料したのだけれども、真実相当性がないと判断される場合に、企業が使用者、事業主が解雇なり、懲戒処分なりの不利益取扱いをするということをこの法律で禁止するかどうかなので、実質的には重なってきますけれども、行政が動くかということと、会社側は不利益取扱いができる、それを禁止するかどうかという点で違いがあります。

懸念されるべき点は、法律ができて、今までの議論の積み重ねの中で、真実相当性は必ずしも情報の非対称性の中で十分な情報を持たない情報者が立証できない場合であったり、証拠を十分に収集できない場合に、思料して、行政は動いているのだけれども、その立証なり証拠収集がうまくできない場合に、解雇なり懲戒処分を科されることがあり、裁判所で真実相当性を労働者側が立証できなかったから、場合によっては解雇有効とか、懲戒処分有効とされるかという問題。そう考えると、実質的には、立証責任を情報の非対称性との関係でどれぐらい緩和していくか、転換していくか。さらには、もう一つ、この後の議論でも出てくると思いますが、証拠収集における不利益取扱いの禁止というところまで踏み込むかどうかということの関わり合いだと思います。

行政手続法とか1号通報のとの関係で、思料するという要件のみにするのか、それとも、今、申し上げたような立証責任の緩和、転換とか、証拠収集のほかの不利益取扱い禁止との関係の中で、この法律上どのようにするか。一つの方法としては、とにかく法令違反で、思料したのだけれども、何もなかったという場合にも、解雇とか懲戒処分とか、不利益取扱いを禁止しますとすることも一つの選択肢ですが、先ほど石井委員もおっしゃったような、例えば(2)の3つ目のポツで、通報対象事実をしていることを疑わせる事実があるという要件に書いた場合に、この文言にした場合に、立証責任との関係とか証拠収集における不利益取扱いの禁止との関係でどのような制度につくり上げるかというので、今、言ったような懸念を払拭する文言になり得るとすれば、これも一つの選択肢だと思いますが、文言と実質的に何をやりたいかということを合わせていくことが必要かと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

若干意見の違いもあったようには思いますけれども、全体的には1号、2号、3号である程度の差を設けるという制度自体には合理性があるのではないかという意見が比較的多かったのではないかと思います。

ただ、それでは現在の2号通報の要件がこのままでいいかという点については、むしろそれは何らかの方向で緩和をするべきではないかという御意見が比較的多かったのではないかと思います。私もそれはそう思うところがありまして、ただ、現在の真実相当性の要件がどれぐらい厳格なものなのかというところも前提として確認しなくてはいけないということがあるのですが、仮に名誉毀損と同じように考えているとすれば、それは少し厳し過ぎるのではないかと。それは、行政機関の公務員については刑事罰もついた守秘義務を負っているということがあり、したがって、基本的には漏れないということが制度上は前提とされているはずです。それから、行手法の36条の3は直接の根拠となるかどうかはわかりませんけれども、かなり広く行政機関が情報を集める方向で法制度が動いてきているということも考えますと、緩和することには合理性があるのではないかと思います。

ただ、どのようにするのかというところについては、いろいろな御意見があり、おおむねいろいろ資料2で書かれていることに相当するのではないかと思いますけれども、一つは、実体要件として、思料というところまで緩和すると、1号と同じにするという御意見もございましたし、疑わせる事実というぐらいに緩和をしたらどうか。これは実体法上、緩和をするという話だと思います。それから、立証責任の転換という考え方もある。これは8ページから9ページの参考のところに少し書かれているかと思いますが、そういった裁判例もありますし、そういうことも考えられる。

もう一つは、この資料の中にも少し出てきていたかと思いますけれども、むしろ別の要件を課していく。例えば事業者が対応しないとか、あるいは、さらに言えば、事業者が内部通報体制を整えていないとか、そういったような要件で絞りをかけて真実相当性の要件は緩和ないしは撤廃するといった形で考える可能性もあるという御意見があったかと思います。この辺はどうするかということなのですが、それぞれの緩和の仕方によって対応できる場合、できない場合がいろいろあると思いますので、今の御意見を踏まえて、具体的な緩和の方法についてもう少し検討を進めていきたいと思います。

大体資料に示唆されていること、あるいはそれぞれの委員からこういったことが考えられるのではないかというアイデアが出ましたので、もう少しこれを具体的に、どれぐらい機能するのかというあたりをさらに検討する必要があろうかと思います。

ということで、よろしいでしょうか。

それでは、その次に3号通報の保護要件、真実相当性の部分に入ることにいたします。全体が関わっていることもあり、3号通報についても若干既に示唆があったところではありますけれども、資料1の1.の2つ目のマル、資料2で申しますと9ページの2.の(1)から10ページの(2)まで含めてということになりますが、この点については、いかがでしょうか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 この公益通報を使いやすいものにするという観点から言うと、私は緩和する必要があると思います。2号通報も緩和する必要はあると思いますけれども、2号と同じようにはいかないとは思います。通報が間違っていた場合などは、社会的な影響が非常に大きいと思いますので、そこは少し慎重にならざるを得ないかなというところだと思います。どのような緩和にするかというところは、具体的なことは申し上げられないのですけれども、一つは、後に出てくる特定事由を加えて緩和するというやり方もあるのかなと思いますので、これからの議論のところで深めていただきたいと思います。

○山本座長 先ほどの取りまとめのところで、柿崎委員から、例えば様式を工夫する等々のこともあり得るのではないかと。これは実務上の対応かと思いますけれども、そういう御意見もございました。まとめのところでそれを申し忘れまして、申しわけございません。

今の御意見は3号通報について、全く1号通報と同じように考えることは難しい、それはできないだろうと。ただ、特定事由を少し緩和していくことが考えられるということですが、何か具体的にこの特定事由が厳し過ぎるとか、あるいは、こういった事由をつけ加えたらどうだろうかという御意見はございますか。あるいは、浦郷委員でなくても、ほかの委員でも構いません。

林委員、お願いします。

○林委員 緩和すべきというのは同じなのですけれども、先ほど一番最初に申し上げましたが、それぞれの事業内部、行政機関への対応への監視という意味での3号通報と考えていただいて、信ずるに足りる相当の理由というのを個別に求めるのは非常に難しいことだと思いますので、そこについては、信ずるに足りる相当の理由ではなくて、合理的な理由があるのだということで、判断が客観的にできる理由というように緩和していくべきではないかと考えています。

個別の特定事由についても、今、申し上げたほうがいいですか。

○山本座長 そこもあわせてお願いします。

○林委員 それぞれイ、ロ、ハ、同じようなことが書いてあるのですけれども、ここのところは、相当の理由というところは、「合理的な理由がある場合」と緩和すべきと思っているのと、ハのところですけれども、あからさまに口どめをされるような事案はあまりないと思います。明示的または黙示的に要求されたというように緩和するであるとか、ニの期間ですけれども、これは20日となっているのですが、調査を開始するかどうかについてお知らせするだけであれば、14日でも十分ではないか、期間が長過ぎるのではないかと思っているところがあります。20日も放っておかれると、3週間放っておかれることになるので、手おくれになる可能性もありますし、事案によってはすごく困っておられて、自殺してしまうかもしれないような事案というのもあると思いますので、なるべくこれは判断すべきではないかと考えています。

ホのところなのですけれども、この事由の中に、財産に対する侵害というものも入れてみるというのも一つ考えていただきたいと思います。重要な財産についての侵害というのもあり得る話ではありますし、消費者庁の説明の中にもありましたけれども、その辺のところも加えていけばいいのではないかと思っています。

以上です。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。

中村委員、お願いします。

○中村委員 先ほども申し上げたとおり、1号、2号、3号については、ほかの方の御意見にもございましたけれども、程度の差というものを設けるべきだということでございまして、特に3号通報につきましては、昨今、インターネット等を通じて情報が瞬時に拡散するという状況がございまして、以前以上に真実でなかった場合の網羅的な訂正というのが困難な状況になっているところでございます。

その結果として、もちろん企業そのものもですけれども、例えば倒産というような事態になれば、業績悪化でもそうですけれども、結果としては、他の従業員の方々全体に悪影響を及ぼすということになりますので、3号通報ということに関しては、慎重な対応が前提になると思います。

特定事由につきましても、具体的な内容が出てきた中で変更の可能性が検討できないわけではないのですけれども、私どもが感じている状況からすると、この特定事由を網羅的に規定されているので、先ほど20日はどうかという話がございましたけれども、例えば切迫ということであれば、ホのほうでカバーがされるのではないかというところもございますし、現行の規定の中で十分カバーがされているのではないかと理解しているところでございます。

以上です。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

後藤委員から、お願いします。

○後藤委員 ただいまの中村委員とほぼ同じ意見なのですけれども、中小・小規模企業の話で言いますと、非常に企業体力が弱いということもありまして、一旦風評被害が出ますと、もうほとんど倒産に直結する状況になりかねない。その場合の責任は誰が負ってくれるのかという話になりますので、そのような懸念も踏まえて慎重に要件を検討すべきであると考えております。

○山本座長 石井委員、お願いします。

○石井委員 私も本件については慎重であるべきと思います。とりわけ真実でない情報が流れたときに、例えばマスコミに流したとします。マスコミが流した中身は比較的聞いた内容で正確に書いたとしても、それを受けて書かれたインターネットとかが見出しだけで書いて、かなり誤解が広がってしまう、拡散してしまうというのが昨今起こりうる状況ではないかと思います。一旦出てきてしまった風評被害を消し去るのは容易ではない。そのリスクの大きさを考えた場合、あるいは先ほど来何度か申し上げていますが、労働者のそもそもの誠実義務ということのバランスを考えたときに、ここは慎重であるべきだろうと思います。

ただ、その上で、特定事由として加えてもいいのではないかと思うものが1つございまして、これも事務局にお配りいただいた資料の10ページの中で、社内で内部通報制度を整えていないことというのがございます。確かにこれは中小企業にとって酷ではないかという御意見もあるかと思うのですが、私がかつて担当しておりました男女雇用機会均等法のセクシャルハラスメントとか、あるいは昨年の1月からマタニティーハラスメントに関して、育児・介護休業法も改正されて、その法律のもとで、ハラスメント対応としては相談対応の義務化というものがなされている状況にございます。これは中小企業も含めて義務化がなされているわけでございまして、そこと同時に処理するということもやりようによっては可能かとも思われますので、ここはさほど過重かなというとそうでもないのではないか、これは何とか乗り越えていただけるのではないかという感じがいたしております。

また、こういう規定があることによって、企業の中での内部通報制度の整備を促進するという効果も私は期待できると思っておりまして、特定事由としてこうしたものを加えていくことは検討に値するのではないと考えます。

以上でございます。

○山本座長 柿崎委員、お願いします。

○柿崎座長代理 石井委員の意見に私も賛同します。石井委員のおっしゃらなかったところで追加の理由ですけれども、特定事由の「ニ」のところでは、事業者へ公益通報をした日から20日経過をしても、適切な対応がとられないことが要件となっていますので、まず必ず通報することが、そして、それが機能しないという場合に特定事由が認められるということになります。そういたしますと、もし社内の内部通報制度が整っていないことをあらたに「へ」として特定事由に加えるのであれば、ニのように事前に事業者へ通報することが特定事由を認める要件として必要ないことになりますので、その部分を網羅することになると思います。自浄作用のない企業にはそもそも言っても無駄な場合もありますので、そうした意味でも必要ではないかなと思っています。

また、内部通報制度の整備と申しましても、一概にone-size-fits-allというわけにはいきませんので、企業の大小によって要求すべき整備の程度は違うのでしょうけれども、例えば既に公表されております民間向けの内部通報整備のガイドラインの中で、もちろん規模に応じてですけれども、これに沿った内部通報制度を整える形で誘導していくような要件づけをすると、日本の企業社会の中に適切な内部通報制度が浸透していく一つの契機になると思います。まさにこの公益通報者保護法を通じて企業の中の内部通報制度をまずは整えてもらうというのは、どの委員の方たちからも異論のないところだと思いますので、それをどのように、特に3号通報の中の要件を調整することで実現していけるかと考えますと、石井委員のご指摘の提案は、非常に重要だと思いますので私は賛成したいと思います。

○山本座長 そのほかにございますでしょうか。

林委員、お願いします。

○林委員 今の内部通報制度が整っていないことというのを特定事由に入れるということは賛成するのですけれども、制度があったとしても、それが機能していない場合も入れたほうがいいと思っていますので、その辺も考えていただきたいと思います。

○山本座長 お願いします。

○柿崎座長代理 補足で、私もそこの点はすごく気にしていて、ただ形だけ内部通報制度を入れているというところは結構日本の企業でもあると思います。ですから、単に「社内に内部通報制度を整えていない」という要件ではなく、「実効的な内部通報制度を整えていない」とします。では、何が実効的かといったときに、脚注でもつけて、民間向けガイドラインに準拠したとか、沿った形のものを指すとすれば、企業が整備する内部通報制度の内容はそちらに誘導されていくかなと思います。その点でも、もしかしたら民間向けのガイドラインの方をもう少し見直しをする必要があるかもしれません。大中小の会社の規模に応じて守られるべき内部通報制度の体制のレベルというものがありますので、そこはガイドラインのほうをもう少し工夫する必要があるでしょう。ただ、本文のほうには「実効的な内部通報制度」というように書いて、形だけのものは入れていただいても意味がないので、そこは抑止していくような手当ては必要だと思います。

○山本座長 中村委員、お願いします。

○中村委員 今の点についてなのですけれども、確かに会社の中で内部通報制度を促進すべきだと思いますし、それを一定の要件にすることは考えられないことではないと思うのですが、一つは、現行のガイドラインということをベースにするということになりますと、少なくとも全ての項目を必須というのは、かなり高度にやっている企業でも満たせない内容が入っているという意見がありますので、現行のガイドラインをベースにするというのは厳しいのではないか。

確かに実効性云々という部分はあるのですが、例えばそれこそ中小の企業さんの中で従業員の人数が少ないような会社さんの中では、ヘルプラインという形で設けるのではなくて、例えば目安箱ではないですけれども、通常のラインであったり、そういう御意見があったときに、積極的に受け付けますよというような、形が整っていなくても実効を持たせるようなものを置くという考え方もあると思うのです。ですから、そこをうまく、内部通報の精神を生かしていった制度を入れてもらうことが大事だと思うのですが、それを外部的にどうそういうものがあればいいというものになるかというのは、なかなか難しいような気がいたします。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。今、特定事由の中に内部通報の体制が整備されていない場合といったようなことを入れる方向については、余り御異論はなかったと思いますけれども、具体的に法律上要求されるといいますか、法律上の要件になる内部通報体制をどういうものにするかということに関しては、なお検討を要するということであったのではないかと思います。特に、現在のガイドラインはかなり高い水準のものを要求しているので、もし法律上の要件として考えるとなると、中小企業等への配慮も含めた検討が必要になるのではないかということですけれども、あるいは、この点についてはもう少し後にまた議論する場があるのですか。

○友行企画官 この後の専門調査会で、事業者の体制整備義務を検討する回がございます。

○山本座長 そこでさらに深めていくことになろうかと思います。

そのほかにいかがでしょうか。あるいは、先ほど、特定事由としては、ホの部分で、財産ですかね。重大な財産被害といった要件を加えたらいかがかと。これは資料2の10ページの(2)の主な意見の4番目のところにも書かれておりますけれども、こういった御意見がございましたが、さらにほかにございますでしょうか。あるいは、既に今まで出た論点の御意見でも結構です。

水町委員、お願いします。

○水町委員 特定事由については、余りわかりにくい複雑なものにすると、結局この公益通報者保護法がほぼ裁判で利用されてこなかったということの一つの理由にもなっていますので、こんな複雑なものにするのだったら、一般法理で、解雇権濫用法理とか、懲戒処分に対する保護法理などでいきましょうといって、原告の弁護士さんが、この法律でなくてほかの法理で、ほかの法理でいったら非常に緩い風呂敷で総合判断の中で判断されることになるので、その制度間競争という観点も一つ必要かという気はします。

ただ、こういう法律を国会で議論して、成立して、制度をつくるということの中には、政府としての制度設計として、例えば1号とか2号を誘導するためにこういう3号を、裁判規範でもあるけれども、政府の方向性として、1号、2号へと誘導するための制度設計をしたのだよというメッセージは十分考えられるので、そういう意味では、今、言った内部通報制度をどう定義するのかとの関係で、1号への誘導であったり、行政が必要な期間を経過しても十分な対応をしない場合には、3号も使えますよということで2号への誘導をしていくというための方法として、特定事由を少し仕組み直すという視点も重要かとは思います。

○山本座長 今、資料の10ページの参考と書かれているところの1つ上にある、行政が対応してくれない場合といった要件を書き加えたらどうかという御意見がございましたけれども、さらにいかがでしょうか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 私も今と同じです。何で3号通報までいくかというと、内部通報もできず、2号のところでもきちんと取り扱ってもらえないとなると、3号にいくと思いますので、行政が一定期間対応してくれないケースというのもこちらの要件に入れたほうがいいと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

後藤委員、お願いします。

○後藤委員 普通はないことだと思うのですが、例えば行政の怠慢で対応しない。こういった場合、一定期間が過ぎてしまうと、すぐに3号通報になってしまうということを避けられるような仕組みを行政のほうで持っていただくことが必要ではないかと、このように思います。

○山本座長 ありがとうございます。

確かにその辺は少し気をつけるべき点だと思います。

そのほかにいかがでしょうか。

亀井委員、お願いします。

○亀井委員 今までのいろいろな御意見をお聞きしておりまして、全体の方向性に私は賛成です。先ほど水町先生がおっしゃっておられた、イ、ロ、ハ、ニ、ホが複雑過ぎませんかというのは感じておりまして、私どもが受け付けている通報で、このイ、ロ、ハ、ニ、ホについて通報者から御質問があったことは、今まで一度もございません。といいますか、まさに生じようとしているのか、それとももう起こったのか、あるいは起こる可能性があるのかということも、通報者の方はそれほど気にしておられません。受け付ける企業側でも、それほど気にしておられません。基本的には、通報された事案が仮に外に出てしまったときに非常に大きなダメージを受けるであろうというのが、一番の要因ということかと思います。

法規制のさまざまな気をつけるべき点、懸念点というのが、申しわけありません。無責任なのですが、よくわからない点があるのですけれども、まず1号通報で、1号通報でだめです、全く取り合ってくれません。その次に2号通報、2号通報でもだめです、取り合ってくれません。その場合に3号通報ができるという、こういう仕組みにすることができないかなというのが、常々考えていたことと、今、皆様の御意見をお聞きしていたところで、符合したところです。確かに先ほど行政でちゃんとしっかりと対応してくれないというのは、そのまま企業にも当てはまっていると思いまして、企業でもしっかり対応してくれないというようなことがないようにする。内部通報が有効に稼働している、機能しているということを保証する、あるいは信頼性を高めるということ自体は、前提として絶対に必要だと思うのですけれども、基本的に通報者の方に私どもの立場として御説明しやすいのは、まず内部通報しましょう、だめですか、だったら行政に言いましょう、行政もだめですか、だったらマスメディア等の外部機関に言いましょうというような整理と説明の仕方が、通報者にとっては一番わかりやすいのではないかと感じます。

長くなりました。申しわけありません。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

春田委員、お願いします。

○春田委員 皆様の御意見を聞いていまして、我々としても思っているのは、第3号通報、これについて要件を緩和するということに対しては、慎重に検討していくべきではないか、そういうスタンスということと、今もお話があったとおり、まずは企業の自律的な取り組みを促して、第1号通報を充実させ、実行性を向上させていくことが重要ではないか。

その上で、先ほど来、話があったとおり第2号通報、これを一定緩和していくというようになっておりますけれども、少し気になるのは、そうしたときに第2号通報の受け皿である行政機関です。これは今後の議論になろうかと思いますけれども、ここの体制整備。ここをきちんとしていく。とりわけ行政機関における守秘義務をいかに実効的に担保していくのかというところ、それから、それぞれ地方自治体等々、規模によって体制にばらつきがあろうかと思いますので、そういったところを踏まえた調査義務のあり方とか、こういったことを少し今後検討していく必要がある。恐らくこういったことを踏まえると、今回一定緩和していくことによって、第2号通報によるところがふえてくるのではないかと予想されますので、そういったところの体制整備も含めて、どのような影響があるのかを考えていく必要があるのではないかと思っております。

以上です。

○山本座長 行政機関の側の体制整備の話も、次回、次々回ぐらいにやります。そこは非常にまた大事なところです。そこがしっかりしていないと制度全体がうまく機能しないのではないかという話になってしまいますので、そこはさらに検討したいと思います。

林委員、お願いします。

○林委員 1号、2号、3号というのを、絶対に最初に内部で、次は行政で、次が外部だと決めつけてしまうというのは問題ではないかと思っているのです。それはなぜかといいますと、今、不祥事などが起こっているのは、長期間にわたって組織ぐるみで不正がずっと行われているのを誰も何も言えなかったという問題が発生していますね。そうすると、まず内部ですと言われても、内部に通報したところで何も解決にならないということであれば、それがわかっている従業員の人は内部に通報しないというようになると思うのです。そういうことを言えば自分が不利益を受けるのは明らかですから、そうすると、行政に言おうか、それとも一番最初に外部に言ってしまおうかという判断をしてくると思うのです。そのときに、選択肢としていろいろな選択肢があったほうがいいと思いますので、順番でないとだめだよというように決めてしまうのではなく法制度としてこうなっています、言いやすいのは内部ですよというようにしていくのが大事なのであって、まず内部でないとだめですというくくりをしてしまうのは、通報しやすい制度にするという視点から、問題ではないかと思っています。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかに、いかがでしょうか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 私も今の林委員の意見に賛成で、亀井委員からそういう話が出てきて、順番でやっていかなければいけないのかと思いましたけれども、まず内部で取り合ってもらえないとか、内部で握り潰されてしまうというような懸念があって、内部になかなか通報できないという方もいると思いますので、要件さえ合えばどこにでも通報できる、それは通報者が選べるというやり方のほうがよろしいかと思います。

○山本座長 現在の法律の建付けでも、絶対にまず内部通報しなくてはいけないという仕組みにはなっていないですね。別に亀井委員もそこのところも変えて、とにかくまず1号、2号という趣旨でおっしゃったわけではないと理解しているのです。全体として、制度としてそのように誘導していく、まず内部でという形で誘導していくような制度をつくっていくことが有益ではないかという御意見だったと思います。ということで、よろしいですね。

後藤委員、お願いします。

○後藤委員 今、座長がおっしゃったこととほぼ同じなのですけれども、3号通報の場合は非常に影響が大きい、であるからこそ、より慎重に取り扱われるべきだというお話であったと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

お願いします。

○柿崎座長代理 1号、2号、3号は、それぞれの通報しやすさという点で要件に差をつけることで、1号の通報がしやすくなっているという建付けを維持しつつ、1号から2号、3号という順で通報しなければならないということではなく、この選択肢を通報者のほうで自由に選択できるという意見に私も賛成なのですが、そこは全然問題なくて、問題があるとすると役員の話ですね。前回取り上げられました役員に関して、善管注意義務と忠実義務の問題がありますので、それを社内で不正行為があった、もしくはそれが起ころうとしているということを是正することを尽くさないまま役員は、2号通報、3号通報できるか。善管注意義務や忠実義務と、労働者の誠実義務とのレベル感の違いから、ここは前回の議論だと、役員に関しては社内通報を前置させるべきではないかと。つまり、社内での通報、社内での是正の努力というものを一定要件にするべきではないかという方向でお話があったのではないかと記憶しております。そうすると、2号通報をもし役員がする場合には、役員に関しては前置主義にならざるを得ないのかなという気がしているのですが、そのあたりはどうでしょうか。

○山本座長 範囲を拡大したことに伴って、現在の2号通報、あるいは3号通報のあたりの要件を、一般の労働者の場合と区別する必要があるのかどうかという点について、具体的に検討する必要がありますか。あるいは結論としては、それほどここで要件を変える必要はないということになるかもしれませんけれども、それは具体的に検討する必要があろうかと思います。それは重要な御指摘だと思いますので、範囲を拡大すると、確かにここのところの要件も少し考える必要が出てくる可能性はあろうかと思います。

そのほかにいかがでしょうか。特定事由に関しましては、今、いろいろ御意見がございましたけれども、全体の方向としては、1号あるいは2号の場合と区別をして考えるという大きな方向については、余り異論はなかったかと思います。具体的なところでは、ハやニの要件を少し緩和したらどうかという御意見がございました。ただ、これについてはそれほど細かい議論まではしておりません。

もう少し大きなと申しますか、項目として変えていく必要があるという御意見があった点といたしましては、内部体制が整っていないといったことを要件にしたらどうか。これに関しては、具体的に内部体制として、どのようなものをどれだけ要求するかという点については、なお検討が必要であるということですけれども、そのような御意見がございました。ホの部分で、財産も加えていったらどうだろうかという御意見がございました。

行政への通報に関しても、行政へ通報したけれども、対応してもらえなかったといった場合も加えたらどうかという御意見がございました。ただ、これに関しましては、事業者が対応しなかったというのは、自分が対応しなかったという話なのですけれども、行政が対応しなかったという場合は、これは事情が違う。したがって、具体的にどのように要件設定をするのか、あるいは、行政の側でどのように体制を整えていただくかという点については、なお検討が必要であるということであったかと思います。

あと、真実相当性のほうの要件なのですが、最初に林委員から、この点は要件を撤廃するというわけではないけれども、合理的な理由といった形で要件を緩和することが考えられないかという御意見がございましたが、真実相当性に関してはいかがでしょうか。

中村委員、お願いします。

○中村委員 この点につきましては、先ほど来、申し上げておりますけれども、3号通報につきましては非常に影響が大きいということですので、現行どおりの真実相当性の要件が必要であると考えております。

若干戻って恐縮なのですが、先ほどの財産を追加するということについての御意見があったのですけれども、これにつきましても、3号通報については、それに対する財産のマイナスということの対比というか、通報された通報が間違ってはいたけれども、影響を与えるという場合の影響のほうがはるかに大きいということも考えられますので、慎重にやるべきではないかと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにございますでしょうか。今、特定事由についてもございましたけれども、さらに真実相当性の部分に関しましてもお願いをしたいと思いますが、何かございますでしょうか。

お願いします。

○柿崎座長代理 今の点ですけれども、財産を加えても、結局ここのところの真実相当性の要件をそのまま維持するのであれば、通報内容が間違っているということは余りないかなという気もしますので、そことのバランスもあるかなと。「切迫した危険」の対象ということになると、個人の生命と身体の危害だけでは、現在では私は少し狭いかなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

特定事由のうちの財産に関しましては、今、さらに御意見がございました。財産というときにどこまで含めるのかということも問題かと思いますので、さらに財産を含めるとしたときにどこまでのものを含めるのかということを検討する必要があろうかと思います。

それから、御意見のように、確かにほかの要件とのバランスの問題もあろうかと思いますので、この点は、具体的に財産といった場合にどういったものまで想定するかということをさらに具体化した上で、それではそこまで入れるのが適切かということをなお検討するという方向でいかがかと思います。

お願いします。

○池本委員長代理 オブザーバーの池本です。

今のところに関連して、2点だけ発言させてください。

以前に、この公益通報者保護法が当初問題になったころに起きた牛肉コロッケ事件というものがあったかと思います。牛肉コロッケだということで販売したけれども、実は雑多なほかの肉だった。あれは保健所に通報したけれども、種類が違うだけで安全性には関係がないから立件しないということでそのままになって、最終的にマスコミに通報したと思います。そうすると、生命・身体の危害だけでは、今のような案件は取り上げられないということになると思うのです。

山本座長がおっしゃったように、生命・身体の場合と財産の場合、財産も自分個人の財産的被害となるのか、財産について、例えば不特定多数という言葉を入れるか、そこは検討のしどころはあるかもしれませんが、特に消費者被害問題をいろいろ扱っている者からすると、不特定多数に対する財産被害ということは必須ではないかと思います。

今の真実相当性という言葉を残すかどうかというのは、ここだけでの結論なのか、次の資料収集との兼ね合いの問題があって、現実に問題が起きているものが立証できないために、真実相当性のハードルが高くて立証できないためにどうするかという次の議論と関連して検討していただくのが適切かと思います。

以上です。

≪3.通報を裏付ける資料の収集行為に関する責任≫

○山本座長 ありがとうございます。

今、次に誘導していただきましたので、今のお話はここまでとしたいと思います。真実相当性に関しましては、合理的なというように少し緩和をするという御意見もございましたけれども、それ以外には余り強い御意見はなかったと理解しております。

それでは、その次に、今、池本消費者委員会委員、オブザーバーが言われました通報を裏づける資料の収集行為に関する責任という点でございます。

通報者を資料の収集行為を理由とした不利益取扱いから保護する必要があるか、また、保護する必要があるとした場合に、どのような要件で保護するかという点でございまして、資料1の裏面の2.です。資料2で申しますと、11ページの4.の部分ということになります。この点はいかがでしょうか。

林委員が途中で退席をされるということですので、まず林委員からお願いします。

○林委員 ありがとうございます。

資料を出させていただいているのですけれども、資料4も御覧いただきたいのですが、証拠持ち出し行為と免責ということで出させていただいております。御相談に来られたときに、何も資料がないと我々も相談が受け付けられないという現状がありまして、それは証拠があるのですかと聞くことが多いのですけれども、何も証拠も資料もなしに公益通報を行うことは非常に困難だということが多いということで、資料持ち出しということが必須になってくると思うのです。

ただ、資料の持ち出し行為というのは違法ですということになってしまうと、公益通報がそれ自体行えない、許されない行為であるということになりかねないので、本法の趣旨に反するということになると思いますので、資料持ち出し行為について、何らかの免責をするという要件を立てる必要があるのではないかと考えています。ただ、余りこれを決めつけてしまうと、かえって縛られてしまって通報できないということにもなりかねないので、非常に取り扱いが難しい問題だとは思います。

今まで証拠持ち出し行為について考察したと思われる主な判例を挙げさせていただきました。これは今日の資料の中にも出ている裁判例です。武生信用金庫の事件では、公益通報を行う目的でなされたかどうかというところが考察されているところです。

それから、神戸司法書士事件、前回、この説明があったと思うのですけれども、これは持ち出す行為は公益通報に付随する行為であるということから、保護の対象になるのだと判断されている事件です。

3つ目のいずみ市民生協事件なのですけれども、この内部告発の目的が、高い公益の目的に出たものである、内部告発の方法も正当だということと、内容が全体として不相当とは言えない、手段も相当性を欠く点もあるのだけれども、全体としてそれほど著しいものではない、それから、いずみ生協にとっても極めて有益なものであったと判断し、総合的に見て考慮するのだという判断をしています。

4つ目の宮崎信用金庫の件ですけれども、不正疑惑を解明する目的で行動しているということで、目的を考慮している。それから、被控訴人、つまり信用金庫の利益に合致するところがあったのだというところを判断の材料にしています。

5つ目のメリルリンチの事件ですけれども、これは弁護士に相談するときに証拠を見せたという案件なのですが、弁護士に自己の救済を求める目的のために開示するというのが、不当な目的とは言えないということ、交付したことについては特段の事情があるのだという判断をして、秘密保持義務には違反しないという判断がなされています。

6つ目で、病院の事件なのですけれども、不当な目的が認められないということ、これも目的を考慮しているということですね。それから、広く流布することを予見ないし意図はしていないということが認められるということと、外部に公表されたことはなくて、保健所から不利益な取り扱いも受けていないということを判断の材料にしています。

これらの裁判例から私が思っているところですけれども、要件として考慮すべきものとしては、公益通報の他の要件を満たしているということ。それから、通報対象事実と関連性があること、これは決して厳格なものではなく関連性で足りる。3番目、目的外の使用ではないということ。4番目として、収集手段が社会的相当性を有していることを総合考慮するということで、この免責の要件にしていったらどうかと考えています。これは議論していただきたいところだと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

資料2にも、12ページの参考の下から2番目のポツのところに従来の裁判例がまとめられておりまして、そこでもこういった要素をいろいろ考慮して、従来免責を認めたり、あるいは認めなかったりといった裁判例があるということですので、現在の裁判例でもおよそ認めていないという状態にはなっていないですね。認められる場合がある状態になっているということが前提かと思います。その上で、林委員から資料4の3ページのところで、具体的にこういったことが裁判例上、考慮要素になっているので、こういうことを参考にして何か規定を置いたらどうだろうかという御提案だったかと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員、お願いします。

○中村委員 証拠の裏づけ資料の収集ということなのですけれども、まず、1号通報に関しては、このことが問題になることはあまりないのかなとも思うわけでありまして、問題になってくるのは2号通報であったり3号通報、特に3号通報の場合かと思います。

そうしたときに、確かに証拠という話はあるのですが、他方で、昨今、日本の営業機密等が海外等に流出しているという状況もあって、安易に機密情報を持ち出して外に出すということであったり、あるいは個人情報の持ち出しということになりますと、個々の企業ではなくて、それに対する消費者の方々であったり、そういったことの情報が危険にさらされることになります。そもそも解雇等の関係においては、営業機密に該当しないような情報を持ち出していることをもって解雇ということはそもそも難しい、労働法のほうで難しい話だと私は理解しています。そうなってくると、そういう重要な情報であったり、個人情報ということについて、特に3号通報について、それを許すというのは非常に大きい問題があるのではないかと感じているところでございます。

他方、1号については、特に問題が起こる可能性もあまりないということで考えますと、ここについての規定ということを新たに設けることについては、慎重であるべきではないかと考えるところです。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかに、いかがでしょうか。

浦郷委員、お願いします。

○浦郷委員 今、言われたとおり、1号のほうでは問題ないと思うのですけれども、2号、3号通報で公益通報を行った場合、いろいろな形で裏づけというものを求められると思うのです。裏づけがないと行政機関なども動かないということですので、確たる証拠があるのであれば、それを持ち出すということになったとしても、その証拠が公益通報にとって非常に重要であるということであれば、そのための資料収集の行為というものは免責にすることが必要なのではないかと思います。本当に社会的に許されないような不正があることを知りながら、証拠を集めることで自分自身が罪に問われてしまうということになってしまっては、公益通報も行われなくなり、それは本当に社会にとっての大きな損失だと思います。ある程度の情報収集、通報に必要な証拠などの内部情報の持ち出しなどが適法とされないと、この公益通報自体も機能しなくなるのではないかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。

川出委員、お願いします。

○川出委員 この資料の持ち出し行為の免責の問題については、それが、どの範囲をカバーし、何を免責しようとしているのか、まだよくわからないところがあります。これまでの裁判例を見ますと、問題とされた通報が公益通報と認められ、不利益取扱いから保護されるとされた場合には、そのための資料の持ち出し行為についても、いわば公益通報に付随する行為として許されるとされています。そのことを前提としますと、ここでの議論は、こうした裁判例に示された考え方を確認する規定を置く、つまり、通報が公益通報と認められた場合には、その前提となる資料の持ち出し行為についても不利益取扱いから保護されるということを明文で規定することを意図しているようにも思えます。他方で、それとは異なり、通報が結果的に公益通報と認められるかどうかとは関わりなく、資料持ち出しの目的が正当で、その方法が相当なものであれば、公益通報を促進するという観点から、資料の持ち出し行為につき、独立して不利益取扱いから保護するという制度も考えられます。そのどちらを意図したものなのかが、よくわからないということです。

このうち、前者の、結果的に通報が公益通報と認められた場合については、そのための資料の持ち出し行為も不利益取扱いから保護するという枠組みについては、現行法上、元々従業員には誠実義務があるけれども、公益通報の限りでは、誠実義務に反していたとしても不利益取扱いから保護されるということになっているわけですから、資料の持ち出し行為についても、それが誠実義務違反であるとしても不利益取扱いから保護するという結論は十分説明がつくと思います。他方で、後者の、公益通報に当たるかどうかとは関わりなく、一定の場合には、資料の持ち出し行為を独立に不利益取扱いから保護するという枠組みについては、別の説明が必要になってくるであろうと思います。

それから、もう一つは、免責ということの意味なのですが、刑事責任の免除ということになると、次元の異なる話になりますので、まずは不利益取扱いからの保護の対象になるかという点を議論したほうがいいのかなという感じがします。

○山本座長 これは事務局のほうに確認ですけれども、参考のところの刑事責任の免責という話も出ていますが、これは参考ということで、基本的には不利益取扱いとの関係を考えるという理解でよろしいのですか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 そのとおりでございます。消費者庁の検討会で、刑事免責については余り必要ないのではないかという結論であったことを、御参考までにお示ししたものでございます。

○山本座長 わかりました。では、その点に絞ってということと、公益通報の適法要件の話と資料持ち出し行為の免責要件の話との関係なのですけれども、これについては何か資料を用意した段階で検討したことはございますか。

○消費者庁消費者制度課担当者 消費者庁での検討会におきましても、今、川出委員から御指摘のありました責任に関しては、前者のほう、通報が認められた場合に、さらにそれに付随する収集行為についての免責というものが主に検討されておって、今、川出委員から御指摘のあった後者のほう、通報自体は認められなかったけれども、通報を促進するためであるとか、そこの理由づけはいろいろあるのではないかと思いますけれども、収集行為だけ取り出してそこに関しての不利益取扱いから保護するかどうかといったところまで、そこを念頭に置いた議論はされておりませんでした。そこのところはこの調査会において検討していただいて、そこのところも提言を出していただくということも検討としてあり得るところかと思います。

○山本座長 なるほど。わかりました。

お願いします。

○水町委員 実際上、どういう局面で問題になるのかというと、一体として証拠があれば証拠を集めて、場合によっては企業で禁止されているような方法で証拠を集めて、公益通報なりをした場合、それで会社側が懲戒処分をしたり解雇をしたりする、その懲戒理由なり解雇理由の中で、情報を外に出したことによって企業に大きな打撃が与えられる、企業秩序違反行為だというところは公益通報保護のほうに入るかもしれません。もう一つは、違法な方法で、会社の棚の鍵を壊して集めましたという違法な情報収集があった点について、これは一つの懲戒処分とか解雇のときに複数の理由を挙げるので、結局一緒の事件の中で、こういう理由とこういう理由で解雇しました、懲戒処分をしましたというときに、裁判所は全体として一体として見て、真実相当性があったし、公益目的で私的目的ではないし、情報収集の手段も社会的に著しく不当な方法でもなかったので、全体として解雇は無効ですよとか、懲戒処分は無効ですよと判断しています。なので、多くの事例では公益通報に付随する証拠収集として、判断されてきている。ただ、情報を出したことによる企業への損害の問題なのか、証拠収集自体の違法性で処分するのかというのは、理論的には区分できる問題です。

それをもとにちょっとだけ意見を言わせていただくと、公益目的で通報して、社内の不正をただすという目的は非常に大切なことなので、それに付随して、一部社会的に相当性を欠くような証拠収集があったとしても、全体の公益性なり不正をただすという観点から、それは違法ではないですよと言われることも一方ではあると思います。それはこれまでの裁判例の中でも繰り返し認められたきたことです。

他方で、今、おっしゃっているように、企業秘密とか個人情報保護、それをきちんと管理するという要請もまた、社会的に非常に大きなことなので、他の目的で集めたものが外部に出てしまって、それが思いもよらないところで情報が拡散してしまうという問題に対して、誰がどうやって責任をとるのかということも非常に重要な点なので、ここでは1号、2号の通報の問題と3号の問題を分けて考えたほうがいいかもしれません。

3号については、違法に集めた証拠がどこかにいってしまうと大変なことになってしまう可能性もあるので、3号でもしこの証拠収集に対する不利益取扱いを禁止するかどうかという話と、1号は基本的に内部の問題で、2号も行政が守秘義務をしっかりしていれば、直ちに外に情報が出るわけではない。1号、2号については、一定の要件を満たし、これは最終的には裁判規範なので、公益性とか、私的目的ではないとか、収集する手段、方法も著しく不当ではないという要件も場合によっては考えられると思いますが、そういうものであれば、1号、2号だったらいい。ただ、3号については、いろいろな要件をきちんと課しておかないと、公益目的で正そうとしていること以外の問題が起こるかもしれないということを考慮して、1号、2号と、3号とを分けて議論したほうがいいかなというのが私の意見です。

○山本座長 ありがとうございます。

1号、2号と3号の場合で分けて考えたらどうかという御意見と、理論的には持ち出し行為の適法性と、公益通報の適法性が区別されるけれども、実際上は大体一体として判断してしまっているという御指摘だったと思いますが、そのほかにいかがでしょうか。

石井委員、お願いします。

○石井委員 この問題は大変難しいと感じております。裁判例も個々のケースによって、全体的な公益の高さとかバランスの中で判断が下されているような感じがしまして、林委員が出されたこの4つの要件、これは確かに、もし規定を設けるとしたら、必要な要件だろうと思うのですが、では、どういう形で設けるべきかとか、あるいは設けないべきなのか、そこのところは、私も企業に身を置いていて、本当に今、情報管理は企業の内部統制の中でも非常に重要なテーマになっていることから見て、悩ましいところであります。

ただ、その上で、一つ論点として気になっておりますのが、先ほどの柿崎座長代理のご発言から触発されたのですが、今回、通報しようとする人の主体を広げようとした場合に、これは労働者の場合とそれ以外の場合を分けて考える必要があるのかないのかという論点があると思います。とりわけ、まだ結論は出ておりませんけれども、いわゆる事業者、取引業者ですね。もし、こういう方々まで対象として加えたときに、そういう方々の行う資料持ち出しというのはいいのかどうか。そこは少し考えておく必要があるのではないか。あるいはもう少し労働者に近いものとして、退職者ですね。退職者も退職前に持ち出した場合と、退職後に持ち出す場合、まだ、自分がいろいろ世話をした昔の部下などが社内に残っていて、その者に頼むとか、そういうことまでしていいとするのか。主体によって重みも違いがあるような感じがいたしておりまして、私自身の考えは、まだ整理がついていなくてお恥ずかしいのですが、論点としてはそういうものも含めて考えておいたほうがよろしいのではないかと考えております。

○山本座長 ありがとうございます。

確かに、もしも保護対象を広げる場合にどのように要件を設定するのか少し区別をして考えておく必要があるのかという点は非常に重要な点だと思いますが、そのほかにいかがでしょうか。

春田委員、お願いします。

○春田委員 我々は労働者の立場から言いますと、外部通報の保護要件であります、信じるに足りる相当の理由についての通報者の判断が、例えばいろいろな資料を収集したというときに、逆に収集した後に事後的にこれが誤りであった、そういった評価をされるケースもあり得ると考えています。

したがって、正当な目的がある場合については、通報者の責任を減免することが妥当ではないかということで、こういった公益通報に基づく責任についての免責制度、これを導入する方向で法律にも定めるべきだと考えているところであります。

ただ、今、議論のあるとおり、林委員のペーパーにもありましたけれども、この判断が、一つの事象だけではなくて総合的に判断していくということが判断基準の中で言われておりますけれども、具体的にどのようなときにどのような判断をしていくのかというのが、労働者としても、なかなか公益通報をする時点でわからないという実態があろうかと思います。公益通報を促進するという観点からしても、もう少し労働者も理解しやすい形で免責制度を導入していただければと思っているところでございます。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかに、いかがでしょうか。

この点につきましては、まず、先ほどから御指摘がございましたように、1号、2号、3号で少し差をつけて考える必要があるのか、必要があるとした場合に、どのように考えるのかという点。それから、保護対象者を広げる場合に、それぞれについて何か差を設ける必要があるのか、あるいは、その必要があるとした場合に、どのように差を設けるのかといったあたりをもう少し具体的に検討する必要が出てこようかと思います。

まず、それが大きな話としてあり、その上で、とりあえず従来の保護対象者、労働者だけを想定して言いますと、いろいろな御意見があったわけですけれども、現在も結局、裁判例上、総合判断のような形になっている。林委員が提出されたペーパーにおいても、例えば最後の社会的相当性を有していることという、このあたりは非常に一般的な要件で、それをどう判断するのかということになると、総合判断になると思います。あるいは、春田委員が指摘をされた正当な目的という要件を仮に設けるといたしましても、かなり総合的にいろいろな要素、いろいろな条件を勘案してということになろうかと思いますので、その辺をどのような形でまとめることができるのかといったあたりを少し検討していただく。したがって、これはかなり技術的な話になろうかと思いますけれども、もし規定を設けるとすると、どのような形で設けることができるのか。あるいは、そういった規定を設ける場合に、どのようなプラス、あるいはマイナスがあるのかということをさらに検討する必要があるということかと思います。

この辺はかなり技術的な話になってこようかと思いますけれども、その点をさらに検討する必要があるということかと思います。

そのほかにいかがでしょうか。全体として言い忘れたことなどはございますか。

石井委員、お願いします。

○石井委員 今、最後の論点の関係なのですが、少なくともこれまでかなりの裁判例の集積はなされておりますので、それを整理して、わかりやすく示していくということは、今、この時点でも公益通報をお考えになっている方がおられることを想定しますと、必要なことなのではないかと思います。どういう形であれ、そうしたものはいずれ必要になってくるかなという感じはいたしております。

○山本座長 最終的に、法律上、書くのか書かないのか、あるいはどのように書くのかという問題もあるのですけれども、それ以前に、現在の裁判例上どうなっているのかということをまとめていただいて、それを示すことが、労働者の方あるいはほかの公益通報をしようとされている方にとって有益な情報になるだろうと思いますので、そこは少なくともやっていただきたいと思います。

お願いします。

○柿崎座長代理 確認ですけれども、最後のまとめのところで言われた、池本委員からも発言がありました、3号通報についての真実相当性の要件と、この今の証拠収集についての免責の話はセットにして考える方向は、忘れてはいけない視点であろうと思いますので、その点だけはだめ押しといいますか、よろしくお願いします。

○山本座長 先ほども御意見がございましたように、現在、真実相当性ということを言おうとすると、何か持ち出さないといけない。そうしないと、真実相当性を主張、証明できないという状態がある。そういう状態を考えると、証拠の持ち出しはある程度許容していく必要があるのではないかという御意見がございましたけれども、逆に申し上げれば、むしろ真実相当性等々の要件を緩和することによって、余りそこのところで無理に証拠の持ち出しをしなくても済むような、そういう方向で考えていくということもあろうかと思います。先ほどの池本委員のお話も、結局真実相当性の要件と、ここの証拠の持ち出しの要件等を少しつなげてと申しますか、その間の関連をよく考えて検討する必要があるのではないかということだったと思います。さらに、1号の場合、2号の場合、3号の場合で違うのかといったことを考えると、さらに複雑な話にはなってくるのですけれども、そこのところの関連をよく考えて検討する必要があろうかと思います。


≪4.閉会≫

○山本座長 全体として、よろしいでしょうか。まとめにつきましては、個々の箇所で既に申し上げておりますので、今日はこれぐらいにしたいと思います。

それでは、以上をもちまして、本日は閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)