第10回 公益通報者保護専門調査会 議事録

日時

2018年2月23日(金)10:00~11:50

場所

消費者委員会会議室
東京都千代田区霞が関3-1-1 (中央合同庁舎第4号館8階)

出席者

【委員】
山本座長、柿崎座長代理、浦郷委員、亀井委員、川出委員、後藤委員、中村委員、林委員、春田委員、水町委員
【オブザーバー】
消費者委員会 高委員長、池本委員長代理、鹿野委員、樋口委員
【消費者庁】
小野審議官
廣瀬消費者制度課長
太田消費者制度課企画官
消費者制度課担当者
【内閣府】
幸田内閣府審議官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官、友行企画官

  ※なお、柿崎座長代理の崎は、正しくは立つ崎、高委員長の高ははしごだか

議事次第

  1. 開会
  2. 公益通報者保護制度の実効性向上に向けたこれまでの取組と課題
  3. 個別論点についての検討の進め方
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 皆様、本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから第10回「公益通報者保護専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により石井委員が御欠席との御連絡をいただいております。

今回から、後藤委員が出席をされておりますので、簡単に自己紹介をお願いいたします。

○後藤委員 全国商工会の後藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

私どもの団体は、中小・小規模企業の団体でございますので、小さな企業の立場からいろいろ意見を述べさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○山本座長 ありがとうございました。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料は、配付資料一覧のとおりとなっております。若干多いですけれども、不足がございましたら事務局までお知らせください。よろしいでしょうか。


≪2.公益通報者保護制度の実効性向上に向けたこれまでの取組と課題≫

○山本座長 それでは、議事に入ります。最初の議題は、公益通報者保護制度の実効性向上に向けたこれまでの取組と課題です。消費者庁から資料1を御提出いただいておりますので、御説明をお願いいたします。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁消費者制度課でございます。御説明させていただきます。

資料1を御覧いただければと思います。前回、1月26日の専門調査会では、制度の概要とこれまでの検討の経緯につきまして御説明させていただきました。今回は、その後の取組状況でありますとか、制度の実効性向上に向けた課題といったことについて御説明させていただきたいと思います。なお、前回の専門調査会におきまして、具体的な事例を踏まえて検討すべきではないか、国内の関連制度でありますとか、海外の類似制度も参照すべきではないかといった御指摘をいただいておりますので、本日の議題と関連するものを可能な範囲で御紹介させていただきたいと思います。さらに必要なものにつきましては、今後、個別の論点を議論する際に適宜御紹介させていただきたいと思います。

まず、最初にこれまでの取組状況でございます。4ページ目を御覧ください。こちらは昨年6月に改訂された消費者基本計画の工程表における公益通報者保護制度の関連部分のポイントをまとめたものでございます。大きく三つの取組を推進していくということでございまして、第1に最初の○にございますように、制度の運用改善による取組を進めていくということでございます。改正などを行いましたガイドラインの周知・広報でありますとか、事業者の積極的な取組を促すための認証制度の創設などを速やかに実施するということでございます。

第2として2番目の○にございますように、法改正が必要な事項につきましては、関係団体や国民等からの意見を集約した上で、法改正の内容を具体化するための検討を進めてきているということでございます。

第3として三つ目の○でございますけれども、消費者庁は徳島に「消費者行政新未来創造オフィス」を設置しておりまして、徳島県庁などの協力を得つつ、公益通報者保護制度の整備・促進に関するモデル事業を実施しております。その成果を今後、全国に展開していくことを予定しております。

以上、三つの大きな柱に沿って取組を進めてきているわけでございますが、それぞれの取組の内容につきまして、以下、簡単に御紹介させていただきたいと思います。

まず、第1の制度の運用改善による取組でございます。前回の専門調査会で制度の運用改善の余地も大きいのではないかとの御指摘をいただいておりますが、私どもとしてもこのための取組として、ガイドラインの改正など、さまざまな取組を行ってきているところでございます。5ページ目は民間事業者向けガイドラインの概要を示したものでございます。こちらのガイドラインは、本法の成立後、国会の附帯決議等を踏まえまして、民間事業者向けの指針として策定されたものでございます。「3.主な改正の内容」のところにございますように、消費者庁の有識者検討会の提言を踏まえまして、内部通報制度の実効性を向上させるために、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を具体化・明確化したものでございます。マル1からマル4として改定に当たっての視点を示しておりますけれども、こういった視点に基づき、その内容を大幅に拡充したところでございます。本ガイドラインにつきましては一昨年末に公表しておりまして、現在、事業者や関係団体などに向けて周知・広報を行いまして、積極的な取組をお願いしているところでございます。

6ページ目は参考としてお付けしているものでございますが、民間事業者向けガイドラインの改正に当たりましては、経済界など関係団体ともいろいろ意見交換を行い、御理解と御協力を得てきているところでございます。こちらにお示ししておりますますのは、昨年11月に改訂されました経団連の企業行動憲章の実行の手引きの一部でございますけれども、本ガイドラインも参考にしつつ、積極的な取組を進めることを推奨していただいているところでございます。

7ページ目を御覧ください。こちらは国の行政機関向けのガイドラインの概要でございますが、こちらにつきましても、改正を行ったということでございます。国の行政機関が通報を適切に取り扱うために必要な事項を具体化・明確化したということでございまして、「3.主な改正の内容」のところにお示ししております六つの視点から内容を大幅に拡充したところでございます。昨年3月に関係省庁間で申し合わせを行っておりまして、今年度中に各省庁の内部規程の改正等を行うこととしております。

8ページ目ですが、こちらは地方公共団体向けのガイドラインの概要でございます。これまで地方公共団体向けのガイドラインは存在せず、国の行政機関向けのガイドラインを参考としてご対応いただいていたわけでございますけれども、有識者検討会の提言を受けまして、地方公共団体向けのガイドラインを新たに策定し、昨年7月に公表を行ったところでございます。「3.主な内容」のところでございますが、マル1にございますように、基本的には国のガイドラインに準拠して適切な取組を進めていただくということでございますけれども、地方公共団体につきましては規模などの格差が非常に大きいということもございますので、規模等の実情に応じた適切な取組を行うことも可能であり、優先度の高いものから柔軟に取り組んでいただきたいという視点を明確にしてございます。

さらに、マル2にございますように、新たに体制整備を行うということになると、非常に御負担が大きいということもございますので、窓口などについては既存のリソースを活用したり、他の地方公共団体と連携・協力して取組を進めたりすることも可能であるといった点を明確にして、制度整備に伴う負担の軽減にも配慮しているところでございます。こちらにつきましても、各地方公共団体向けの説明会などを開催いたしまして、各地方公共団体における積極的な取組をお願いしているところでございます。

9ページ目は内部通報制度に関する認証制度の創設を検討しているということでございまして、民間事業者向けガイドラインなどに則って、実効性の高い内部通報制度を整備する事業者を認証いたしまして、事業者の積極的な取組を促していくということでございます。この際、制度の継続的な改善を促すという観点から、認証基準にはPDCAサイクルの要素を導入して制度の形骸化を防止したいと考えております。今後、企業のガバナンス強化に対する取組に関する指標の一つとして、認証を取得した事業者が経済社会において高く評価されていくという仕組みを目指して取り組んでいきたいということでございまして、来年度以降、準備が整い次第、段階的にスタートしていきたいと考えてございます。

10ページ目は徳島県における公益通報者保護制度の整備促進に関するモデル事業についてお示ししたものでございます。前回の専門調査会で御説明しましたとおり、制度の整備状況で申しますと、民間事業者におきましては中小企業の整備状況がまだ十分ではない、行政機関におきましては市区町村における整備の底上げが必要だという状況でございます。こうしたことを踏まえまして、消費者庁が徳島県に設置いたしました新未来創造オフィスにおきまして、中小企業と市町村における制度整備の底上げを図るために、先進的なモデル事業を行ってきているということでございます。

昨年の夏から本格的な取組を開始したところですが、これまでに一定の成果が上がってきております。11ページは都道府県別に市区町村の通報窓口の整備状況をお示ししたものでございますが、徳島県につきまして、取組の開始以前は下位のグループにあったわけでございますが、昨年来の取組によりまして、全ての市町村において窓口の整備を完了したというところに来ております。今後、モデル事業の効果の検証でありますとか、課題を分析した上で、全国的に展開していきたいということで取組を進めてございます。

以上が運用改善によるものでございまして、12ページ目は法改正に関わる事項でございます。こちらは前回の専門調査会におきましてもお示ししたものでございますけれども、関係団体や国民等からの意見を集約するためにパブリックコメントを実施して、昨年4月に公表したところでございます。こういった積極的な御意見、慎重な御意見の双方を踏まえた上で、専門調査会において方向性を出していただきたいということでございます。

以上が制度の実効性向上に向けたこれまでの取組状況でございまして、引き続きその課題につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

15ページ目を御覧ください。課題として大きく二つの柱をお示ししておりまして、第1に、引き続き制度の運用改善につきましてしっかり取り組んでいくことが重要なのではないかということでございます。そのため、先ほど御説明した各種ガイドラインの周知・広報などを徹底いたしましてその普及・促進を図り、事業者や行政機関における積極的な取組を後押ししていくということが必要であると考えております。さらに、先ほど御紹介しました認証制度につきましても、できますれば来年度にも創設いたしまして、これを実効性のあるものにしていきたいと考えてございます。制度の運用改善につきましては、まずはこれらの取組をしっかりと、徹底的にやっていくことが重要だと考えてございますけれども、さらに有効な方策などがございましたら、今後、専門調査会において御意見を頂戴できれば幸いでございます。

2番目は制度の見直しを通じた実効性の向上ということで、運用改善だけでは十分でない点につきましては、法改正などを含めた制度の見直しが必要になってくるということでございます。本専門調査会での御議論を通じて、関係者の幅広い御意見を反映し、所要の方策や法改正の必要性等についての共通認識を醸成していただいた上で、法律による規律の在り方や行政の役割といった課題につきまして、御検討いただければと考えております。

16ページ目は制度の見直しに関連いたしまして、これまでにどのような課題が指摘されてきているのかをまとめたものでございます。この後、事務局から今後の進め方の案について具体的な御説明があると思いますが、今後の進め方を御検討いただく際の参考としていただければということでございます。大きく三つの柱がございまして、まず、第1の柱は、公益通報者として保護されるための要件でございます。本法を民事ルールとして使いやすいものとするためには、どのような要件設定とすることが適切なのかという観点でございます。具体的な論点といたしましては、通報者や通報対象事実の範囲、外部通報の保護要件といった論点が考えられようかと思います。

2番目の柱は通報を受ける側の体制整備という観点でございまして、これに関わる個別の論点といたしましては、行政通報の一元的な窓口の設置、通報の受け手側に守秘義務を課すべきかどうかといった論点、事業者に内部通報制度等の整備義務を課していくかどうかといった論点が考えられようかと思います。

三つ目の柱が不利益取扱いを抑止する、通報者を迅速に救済していくという視点でございまして、このために行政措置でありますとか刑事罰などを導入することについて、どのように考えるかという論点でございます。

なお、欄外の備考に記載しておりますとおり、本法の制定時に国会の附帯決議が付されておりまして、本法の見直しの際には、通報者の範囲、通報対象事実の範囲、外部通報の要件、外部通報先の範囲の再検討を含めて行うことが求められているということに御留意いただければと思います。

17ページ目は主な課題の例を全体の構図の中に位置付けたものでございますので、後ほど御参照いただければと思います。

18ページ目以下は、個別の論点について、その概要を簡単に御紹介したものでございます。最初が通報者の範囲でございます。現行法上の規定は労働者が保護の対象であるということで、その他の通報主体についてはそういった規定は特にございません。しかし、これまでの法の施行状況を踏まえますと、労働者以外の通報主体、例えば一覧に示してありますような退職者でありますとか役員、フリーランスなどを含む取引先事業者といった主体につきましても、通報を理由として不利益取扱いを受けることがあるということで、保護が必要ではないかという御指摘もあるところでございます。もっとも、右の欄にございますように、労働者以外の通報主体を保護することにつきましては、他の法令との関係でありますとか、実務上の観点などから様々な御指摘があるところでございまして、こういったことも踏まえた上で御検討いただくということが考えられようかと思います。

19ページ目は通報対象事実の範囲でございます。現行法の規定は、国民の生命、身体、財産その他の利益に関わる法律に規定する刑罰規定違反の行為となってございます。その下の図表は、縦軸に刑事罰があるか、ないかという観点、横軸に所定の法目的に該当しているかどうかという観点で分けたものでございまして、それぞれの象限に分類される主な法律を例示的にお示ししたものでございます。現行法の通報対象事実となるのは、図で申しますと赤枠でくくった部分になるわけでございます。他方、通報窓口の実務上は、その他の法律違反ですとか法律違反以外の行為に関する事実の通報も寄せられるということでございまして、このような中で、法による保護の対象となる通報対象事実の範囲をどのように画していくことが適当なのかということについて御検討いただくことが考えられるということでございます。

20ページ目を御覧ください。こちらは外部通報の保護要件でございます。現行法の規定ですと、事業者外部への通報が保護されるためには、通報内容に真実相当性、信じるに足る相当の理由があることが求められているということでございます。さらにその他の事業者の外部ということで、報道機関ですとか消費者団体などへの通報でございますが、こちらにつきましては、真実相当性に加えて、内部通報等では不利益取扱いがなされる可能性が高いでありますとか、証拠隠滅がなされるおそれが高いといった特定の事由に該当することが求められているところでございます。真実相当性の要件を満たすためには、一般的には通報の裏付けとなる資料の提出などを求められることが多いところですが、この際、資料の収集、持ち出し行為などにつきまして責任が問われる可能性があるといったことで、通報者にとってやや負担が重いのではないかというような指摘があるところでございます。他方、この点については、内部情報の開示は労働契約上の誠実義務違反であり、それを免責するためには相応の条件が必要である、通報内容が真実でなかった場合に風評被害等のおそれがあるなどの指摘もなされているところです。こういったことを踏まえまして、要件をどのように設定していくことが適当なのかを御検討いただくことが考えられようかと思います。

21ページ目は体制整備に関わる論点の1つといたしまして、行政通報への一元的窓口を設置することの是非についての論点でございます。一般の通報者にとって、通報内容についてどの行政機関に通報すればよいのかがなかなかわかりにくいとのご指摘をよく頂戴いたします。こうしたことや、さらに、通報がたらい回しにされるといったことを防ぐといった観点から、各行政機関における個別の窓口に加えまして、例えば消費者庁などに行政機関への通報を一元的に受け付けるための窓口を設置して、そこで受け付けた通報を権限を有する行政機関におつなぎし、適切な対応を求めていくという仕組みを設けることについてどのように考えるかについて御検討いただくことが考えられようかと思います。

22ページ目は通報に関する秘密保持に関する論点でございます。現行法の規定では通報の秘密保持に関する規定は存在しないということでありますが、法施行後の状況を見ましても、通報の受け手となる事業者でありますとか行政機関の担当者などが通報に関する秘密を漏えいし、不利益取扱いのきっかけとなるような事例が発生しているということでございます。通報に関する秘密保持の徹底を促すために、何らかの守秘義務規定を導入することの是非について御検討いただくことが考えられようかと思います。

23ページ目、24ページ目は、通報の秘密保持の論点に関連するアンケート調査結果をお示ししたものでございます。23ページ目は職場の不正を知った場合に通報・相談しないと回答する労働者の割合が約半数であるということでございまして、その理由としては、不利益取扱いを受けるおそれがあるといったことが挙げられているということで、秘密保持に対する懸念が強いということをうかがわせる内容となってございます。

24ページ目は前回の専門調査会でも御紹介したデータでございますが、仮に通報するとしても、7割近くの方が匿名で通報したいとお答えになっているということでございます。

25ページ目は内部通報制度の整備義務に関わる論点でございますが、現行法におきましては、こうした内部通報制度などを設けることについて、法律上の義務とはされていないということでございます。しかし、前回の専門調査会でもお示ししたように、事業者の中でも中小企業では制度の導入が必ずしも十分に進んでいないという状況にございます。(2)として未導入の理由を質問した結果をお示ししておりますが、法律上の義務とはされていないことから導入していないというお答えも一定数存在するということで、こういったことを踏まえて、制度の整備義務を課すことについてどのように考えていくことが適当なのかということでございます。

26ページ目は、行政機関においても同様の問題が存在するということをお示ししたものでございまして、市区町村レベルにおきましては必ずしも制度の整備状況が十分ではないという中で、市区町村を含む行政機関に対して制度の整備義務を課していくことの是非についても論点となり得るということでございます。

27ページ目を御覧ください。こちらは3番目の柱である不利益取扱いの抑止、通報者の救済という論点に関わるものでございます。現行法上は、不利益取扱い全般につきまして、行政措置ですとか刑事罰の規定といったものは存在しないということでございます。下の表は、現行の制度上、仮に不利益取扱いなどがあった場合に、どのような救済手段等を活用できるのかを整理したものでございます。通報者と事業者の間の紛争解決手続といたしましては、行政機関によるものといたしましては、労働局における相談、助言・指導、あっせんなどが存在するということでございますけれども、こちらにつきましては、実際の実務においては、公益通報に関連する事案などにつきましても御対応いただいていると考えられますが、それについての明文の規定はないという状況でございまして、このため、公益通報者保護制度に関する情報提供でありますとか、それに基づく助言・指導などが十分行われているかと言うと、必ずしもそうなっていない可能性もあるということでございます。

さらに、勧告・公表などの行政措置でありますとか刑事罰につきましては、一部個別の法律で定められているものもあるわけでございますが、通報を理由とする不利益取扱い全般に関する規定は存在しないところでございまして、このような状況を踏まえまして、不利益取扱いの抑止でありますとか、通報者の迅速な救済という観点から、行政機関の役割や刑事罰の導入などについてどのように考えているのかということも論点となり得るということでございます。

以上が主な論点について整理したものでございまして、28ページ目以下は御参考としてお付けしているものでございます。別紙1は消費者庁が運営しております公益通報者保護制度相談ダイヤルに寄せられた相談内容について分析したものでございます。私ども消費者制度課に相談ダイヤルを設置いたしまして、制度の運用、解釈でありますとか、通報先についての御相談に対応しているところでございます。この相談ダイヤルにおいては、平成25年1月から昨年末までの5年間に3,200件程度の通報制度に関わる御相談を受けておりまして、そのうち個別の事案についての内容が含まれる御相談を、表の右側にございますように2,142件頂戴しております。この2,142件について、その内容を分析した結果でございます。

29ページ目がその概要でございますけれども、まず(1)は、御相談者の属性を分析したものでございます。現行法上でも保護の対象となる労働者からの御相談が一番多いわけでございますが、それ以外にも退職者でありますとか他の事業者、役員といった現行法による保護の対象とならない主体からの御相談も3割強頂戴しているというような状況となってございます。(2)は通報内容について分析したものでございますが、ハラスメント関係、公務員法違反関係、補助金関係、税金関係など、本法の対象外の御相談についても2割強いただいているという状況でございます。

30ページ目を御覧ください。(3)は通報に関する情報が漏えいされたという具体的な御相談を69件いただいたということでございまして、その内訳を見ますと、労務提供先に通報してそこから漏えいされましたというような御相談が48%程度、2号通報先となる行政機関から漏えいされたという御相談も45%程度いただいているという状況でございます。(4)は通報を理由として不利益取扱いを実際に受けましたという御相談を323件頂戴しておりまして、その内容を分析したものでございます。多い順に解雇などの契約上の地位の喪失、嫌がらせなどの精神的な不利益取扱い、降格、配転などの人事上の不利益取扱いといった順番で多くなっているという状況でございます。

31ページを御覧ください。別紙2としてお付けしておりますのは現行法と各ガイドラインを比較したものでございます。これまでの取組におきましては、制度の運用改善で対応可能なものについては先行して実施するという方針で対応しておりまして、法改正の論点となっているような事項につきましても、ガイドラインで一定の手当てを行ってきているというところでございます。

これによりまして、それなりに対応できる部分もあるわけでございますが、32ページ目の欄外にただし書で書いてございますとおり、ガイドラインはあくまでも任意の指針であるということでございまして、法的な拘束力を持たないという中で、事業者や行政機関に対して取組を求める際にも、どうしても一定の制約が出てくるということでございます。さらに、ガイドラインにおきまして、通報窓口で受付を行う通報者や通報対象事実の範囲を広げてきているわけでございますけれども、現行法が定める要件を満たさないものについては本法による保護の対象にならないということで、予見可能性の観点から課題が指摘されているという状況にございます。これを踏まえて、どの程度まで法的な手当てを講じることが適当なのかを御検討いただくことが考えられようかと思われます。

33ページ目に別紙3とございますが、こちらは前回の専門調査会で山本座長から国内の関連制度についても整理するようにと御指示をいただきまして作成したものでございます。行政手続法、労働基準法などの個別の法律において、申告や申出など名称は様々ですが、行政機関に対して情報提供等を行うことについての規定があるものの例を整理してございます。後ほど個別の論点を御審議いただく際に、関連制度についても御参照いただければと考えております。

35ページ目を御覧ください。別紙4、諸外国における通報者保護制度の例ということで、こちらも前回の専門調査会における山本座長からの御指示を踏まえて作成したものでございます。国ごとに法律制定の背景ですとか考え方が異なりますので、すぐさまこれらを導入することは適当ではないわけではございますが、法的な要件や効果、体制整備等につきまして、日本の法律よりも踏み込んだ措置を講じているものもあるということでございます。こちらにつきましても、個別の論点を御審議いただく際に御参照いただければと思います。

消費者庁からの御説明は以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、個別の論点に関しましては、次回以降に議論していくことになりますので、それについて今日は深く議論するということはいたしませんけれども、今の説明をもとに意見交換を若干行いたいと思います。説明に関する御質問でも結構ですし、あるいは御意見でも結構ですけれども、御質問、御意見のある方はお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

それでは、お願いします。

○中村委員 中村でございます。まず、全般のところなのですけれども、内部通報と申しますのは、一般にイメージをされますヘルプラインというか、そういうもの以外に、そもそも上司であったり、あるいは直接の上司に問題があるというときにもう一つ上の上司に通報する等、そういう形と、全体としては両方ある。企業のあるべき形としては、後に申し上げた通報というのか、風通しのいい環境を作って、何か問題があるときに報告をされていく。そういうことが本来あるべき姿でありまして、それを補完するもの、それでも言いにくい環境があるとか、情報が上がってこないというようなことを防止するために、それを補完するルートを作るということを改めて確認させていただいて、ここで内部通報ということを議論するときに、両方を含めて考えていくべきではないかということをまずは申し上げたくて、特に中小の方のところで導入していくことになると、例えば10人の従業員の企業で、そういう別途のルートを作ることが現実的なのか。そうしたときに、当然通報したことが発覚しやすいということもございますし、そういうことも含めて両方あるということを踏まえた上で議論を進めていただきたいというのが1点目です。

2点目が事実認識の問題なのですけれども、今、御説明いただきました資料1で、前回も御紹介があったかと思うのですが、消費者庁で行われたアンケート調査が、今回で言うと23ページ以下に引用してあります。これは消費者庁に確認をしてホームページ記載の原資料を見させていただいたのですが、この資料における書きぶりが若干偏って見られる部分があるかなという気がしております。と申しますのは、この資料で社内通報をしない従業員が多いとか、そういうことがクローズアップされているわけなのですが、実はいわゆるヘルプライン的なものを作っているところ、あるいは大企業とか、そもそも法律を知っているのか、いないのかというような御質問もされていて、そのデータが高いところは、そんなに内部通報しないと言っているわけではないということが確認できまして、そうなってくると、必ずしも今の通報先が信用できないから通報がされていないということなのかは、それほど大きく見るべきなのかなというのがちょっと疑問に感じたところです。そうした中で、法令の周知であるとか、そういったヘルプラインに限らず通報をしやすい企業の環境づくりというようなことも踏まえて制度を考えていくべきではないかというのが2点目です。

3点目が秘密の保持なのですけれども、こちらも事案によって違うと思うのです。秘密の保持の体制づくりは大事だと思うのですけれども、例えば職場の朝礼で自分だけが叱責されましたといった案件のときに、最終的には事実確認で、現場にいた方に、本当にそういうことがあったのですかといったお話をしていけば、どうしてもその事実は知られてしまうというようなことがあって、そうすると、どちらかというと不利益取扱いの禁止に重点を置きながら、あとは調査の途中で秘密の漏えいをしたりしないというようなことも、私どもは例えば誓約書を改めてとるということを考えていますが、そういう体制で、留意することは必要なのですが、結果的にわかってしまうということを完全に防止できるのかということはよく確認しなければいけないということでありまして、これは通報されてきた方の意思を確認しながら、どういう解決方法がいいのかを、私どものほうでは外部の委託先の方を通じてやっています。そういうことも考えられるのではないかということです。

最後に、不利益な取扱いをしてはいけないということは、確かにそういうことなのですけれども、それは通報の中身であるとか程度であったり、あるいは別の事由で転勤が発生するとかいうときに、そういうところは一応気を付けはするのですが、意図としてはそういうことではないのですけれども不利益ととられてしまうというようなケースもありますので、それに対しての罰則については、かなり判断が必要な話になると思うので、そういうことも留意の上で制度を設計していただきたいということです。以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

何かございますか。よろしいですか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 消費者庁のアンケート調査結果について御指摘いただきましたけれども、これは調査会社に登録している労働者のモニターの方にお伺いしたものでございまして、その全体の数値をお示ししています。それを細かく分類して、例えば通報窓口を設置している企業としていない企業で分けて集計すると、かなり数字が違うというのは御指摘のとおりでございます。ただ、一定の手法に基づきサンプリングをしたモニターでございますので、世の中の全体的な傾向はある程度反映しているのではないかと思っておりまして、そういった平均的な事業者の状況を踏まえて検討していただく必要があるのではないかということでお示ししているものでございます。

以上でございます。

○山本座長 ただいまの御指摘は、これから、個別の論点をいろいろ議論していく際に、具体的にいろいろなケースがありますので、そういったものを考えながら議論していく必要があるという御指摘かと思います。ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。お願いします。

○後藤委員 今、中村委員から中小企業のお話をしていただきましたので、この件に関して、私どもから少し意見を述べさせていただきたいと思います。

総務省が平成26年11月30日に発表した日本全体の企業数は382万社あり、そのうち大企業と言われるものは、大ざっぱに言うと1万1,000社ですので、それ以外は一口に言うと中小企業ということになってしまうわけです。割合でいきましても、99.7%が中小企業ということです。この点に関して、我々が常日頃から申し上げているのは、中小企業の中でも大企業に近い規模の企業と、制度上定義されている小規模企業と言われる従業員20人以下、小売サービス業だと5人以下の企業では、経営形態が大きく異なっています。

いろいろな制度を導入していく際に、それらを同一に中小企業と定義して検討していくということになると、かなり大きな問題が生じるのではないかと懸念します。今、申し上げた小規模企業は全体でどのぐらいあるのかという話では、これが325万社ですから、全体の85%が小規模企業ということなのです。そうすると、大企業や大企業に近い規模の中小企業では、こういった通報制度は体制的に十分に整えることができる。また、中小企業のうちの中堅クラスでも、そういった対応は可能であると、ある程度想定できるのですが、今、申し上げた85%と太宗を占める小規模企業と言われる従業員20人以下の企業の中では、そういった体制がとれるのかどうかを考えないといけない。

ですから、一口に中小企業という議論をする際は、大宗を占める極めて小さな企業の中ではどういった体制がとれるのかという観点が必要になります。例えば認証制度のようなものをお考えのようですけれども、小規模企業は経営者の資質によるところが非常に大きいということですので、そういった通報されるような事案が生じないようにするためには、経営者自身にそのことを十分理解してもらう必要があるわけでして、そうしますと、従業員の通報制度をいろいろ考えることよりも、むしろ経営者に対する教育というか研修とか、そういうものを通じて何らかのインセンティブを与える。例えば、認証を得るための手順を高度にするのではなく、研修制度で、通報制度やその他の要素において十分理解が得られている経営者だということが確認できた場合には、その確認を示すようなものを導入するとか、そういったことのほうが極めて現実的な対応ではないか。通報制度を整えるだけでなく、抑止の観点をもう少し重視するということも重要ではないか。そのように考えております。

○山本座長 ありがとうございます。

中小事業者と言っても、その中でも特に小規模事業者の考慮が必要ではないかという御指摘かと思いますが、そのほかにいかがでしょうか。何かございますか。よろしいですか。

それでは、また次の論点に入ったところで今の御説明に関する御質問等に戻っていく可能性もあるかと思いますけれども、これで一旦、このテーマについては締めたいと思います。

≪3.個別論点についての検討の進め方≫

○山本座長 次に、個別論点についての検討の進め方についてです。まず、資料2につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○友行企画官 それでは、説明いたします。資料2を御覧いただけますでしょうか。こちらにつきましては、前回の専門調査会で検討すべき論点を委員の皆様に出していただきまして、また、専門調査会が終わった後に亀井委員から論点に関わる事項として資料を提出していただきまして、それは本日の資料の中に資料3としてお付けしておりますが、そういった亀井委員からの資料なども踏まえて整理したものとなっております。基本的には前回の専門調査会の御議論を踏まえまして、個別論点についての検討の進め方としまして整理しております。

資料2は表裏になっておりますけれども、最初は「1 検討事項」としております。こちらを三つに分けておりまして「(1)公益通報者保護法を使いやすいものにする」、「(2)通報を受ける側における体制整備」、裏に参りまして「(3)公益通報者の保護救済の充実及び不利益取扱いの抑止」としております。「(4)その他ご指摘のあった論点」というところも一応置いております。

まず、表に戻りまして最初でございますが「(1)公益通報者保護法を使いやすいものにする」でございます。●は前回の専門調査会での意見をなるべく拾い上げた形に整理しておりまして、●の最初は、公益通報者保護法の目的は、公益通報者の保護を図るだけではなく、それによって国民の生命、身体、財産、その他の利益の保護に係る規定の遵守を図ることにあり、ひいては消費者保護にもつながってくるというような御意見もございました。それから、公益通報に該当することはどういうことなのかを通報者にわかりやすくすることが重要であるといったこととか、現行法の要件は、不利益取扱いを禁止という民事効を発動するための要件としては狭過ぎるといった御意見もございました。また、本来通報されるべき情報が適正に通報されるために、現在の要件で足りているかを検討すべきといった御意見もあったところでございます。

こうしたことを踏まえまして、検討項目としては、○でございますけれども、通報者の範囲、通報対象事実の範囲、外部通報の保護要件、通報を裏付ける資料の収集行為に関する責任というところが関係してくるという形で整理しております。

「(2)通報を受ける側における体制整備」でございますが、最初の●で、3号通報では受け手に守秘義務を課すことは困難であり、1号通報にのみ頼るのも不適切。行政機関が実効性のある仕組みを構築することが必要という御意見がございました。また、内部通報制度をもっと信頼できる形にしていくこととか、通報に関する秘密が守られないことに対する不安を解消する必要があるといった御意見がございました。公益通報に該当しない通報の受付窓口を設けて機能分化を図るといったことや、濫用的な通報への対応策を講じるなど、通報者が使いやすい制度の仕組みの工夫が必要であるといった御意見もあったところでございます。それから、早い段階での通報を促したり、それに迅速に対応することですとか、適時性の観点からの規制の在り方も検討すべきといったような御意見もあったところでございます。最後の●でございますが、制度の周知の関係でも課題が大きいといった御意見もあったところでございます。

これらを踏まえまして、検討項目といたしましては、一つ目が行政への通報に関する項目といたしまして、行政通報の一元的窓口の構築でございます。細かな論点に落とし込みますと、仕組みの実効性ですとか通報受付後の省庁間の連携・対応の在り方、適切な情報管理、通報対応の迅速性、制度の周知といったところでございます。もう一つは、事業者への通報に関する項目といたしまして、最初の○でございますが、事業者における内部通報体制の整備義務を検討項目としてはどうかと。*でございますが、その際に、中小事業者への配慮とか、事業者の取組をどうサポートするかといった観点、さらにブレークダウンしますと、コーポレートガバナンス・コードや内部統制というものが現時点であるといった話とか、インセンティブ、認証制度をどう組み合わせていくかといったこととか、公表されておりますガイドラインの検証や充実の話や、事業者間におけるノウハウの共有をどうしていくかということが挙げられるということでございます。また、労働者への周知の観点も重要だということでございます。もう一つは、守秘義務でございまして、先ほど少しお話もございましたが、情報共有の範囲という話と、守秘義務を置きつつ調査の実効性との関係の整備といったところでございます。

「(3)公益通報者の保護救済の充実及び不利益取扱いの抑止」でございますが、保護救済を充実・強化することによって安心して通報することが可能になるといった論点でございましたり、事業者による不利益取扱いの抑止について実効性を担保するためには、民事効だけではなく行政による対応、刑事罰等による補完が必要ではないかといった意見もあったところでございます。

それを検討項目に落とし込みまして、公益通報者の保護救済(相談、助言・指導、あっせん、調停)といったことですとか、不利益取扱いに対する行政措置、刑事罰の可能性や在り方といったところでございます。不利益取扱いをした場合の制裁の在り方、刑事制裁の実効性の話とか、行政措置、刑事罰を導入するとした場合の対象範囲や要件設定をどうしていくかということも重要な論点かと考えられます。不利益取扱いが通報を理由とすることの立証責任の緩和についてどう考えるのかといったことも検討項目としてここに入れ込んでおります。

前回、通報の義務化という議論もあり得るのではないかという御意見がございまして「(4)その他ご指摘のあった論点」として整理しております。このところは、論点にするかどうかも含めましてということかもしれませんが、こういう形で現時点は整理しております。2番目は、検討を進める際の留意点といたしまして、全体に関わる事項として海外の制度の参照とか、参考となる他の法律の参照、具体的な事例の紹介につきましても、それぞれの検討項目を議論していく際に留意する点として挙がっていたということでございまして、こういう形で整理しております。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

ただいま事務局から説明がありましたように、亀井委員から論点に係る関連資料を御提出いただき、事務局はこれも踏まえて論点を整理しているということですけれども、亀井委員からさらに御提出資料につきまして、補足説明等があればお願いいたします。

○亀井委員 僣越ですが、私から論点について資料を提出させていただきました。資料は表形式になっておりますけれども、この資料の内容は、私どもの顧客企業、御契約いただいた企業、現在営業中の企業、失注してしまった企業、それらの企業から御相談いただいた内容が含まれておりまして、そこに私どもから上手なお答えができなかったという内容のものでございます。この内容を調査会の法改正の議論において具体的に一点一点というようには私も考えておりませんで、今後、次回以降、個別論点の議論に入っていったときに、そこで関連する事項として、私からその都度御質問や意見などを出させていただきたいという趣旨で提出させていただきました。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それから、本日御欠席の石井委員から資料が提出されております。資料2の検討に入る前に、石井委員提出の資料4につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

○友行企画官 本日、石井委員は御欠席でございますので、かわりに事務局から御紹介させていただきます。資料4を御覧いただけますでしょうか。石井委員から、前回、企業におけるコーポレートガバナンス・コードの重要性といった御発言がございまして、その関係でコメントをしたためましたので、下記にてお示しさせていただきますという形で資料をいただいております。

コーポレートガバナンス・コードの見直しの動きについてということでございまして、金融庁では、コーポレートガバナンス・コードの見直しを検討しているとの報道がなされておりますということで、2月中旬ぐらいにそういった報道がございました。上場企業にとっては、このコードは非常に重く受け止められており、大きな影響力がございます。このコードにおいて、現在も原則2-5に内部通報が盛り込まれておりますが、今回の検討の中でこの内容がより充実することになれば、上場企業における対応が強化されることが見込まれます。

公益通報者保護制度の見直しとこのコードの見直しの時期が重なっていることは、うまく連動させられないかと思うものでございます。

金融庁における検討は相当進んでいることや今回の見直しの中心的テーマではないことは理解しておりますが、企業不祥事を未然に防止し、または防止できなかった場合でもその芽が小さいうちに速やかな是正・再発防止策をとり得るものとして、公益通報者保護制度・運用の強化は今回のコード見直しの趣旨とされている日本企業の中長期的企業価値向上に資するものと考えます。

こうした点につきまして、本コード検討の際、十分御配慮いただけるよう、所要の働きかけがなされることを期待いたしますといった内容の資料をいただいております。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございます。

柿崎座長代理からも関連する資料が提出されております。資料5ですね。お願いします。

○柿崎座長代理 私からは、資料5で、石井委員からのコーポレートガバナンス・コードの改正に少し関わることかなと思って、私からもこの資料を提出させていただきました。一昨日、2月21日に日本取引所自主規制法人から「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)」が公表されました。これは既に2016年の段階で公表されました不祥事発生後の事後対応に重きを置いた不祥事対応のプリンシプルに追加する形のもので、事前対応としての不祥事の予防の取組のために策定された指針でございます。まだ案の段階ですが、見ていただくとおわかりのように「I.趣旨」のところで、今後はこの二つの指針を上場企業が車の両輪のように位置付けて、実効性の高い取組を推進していくということが期待されております。

簡単にその内容を申し上げますと、六つの基本原則から成っておりまして、とりわけ最初の原則1のところを見ていただきますと、3ページで、原則1の1-3の中で、先ほど中村委員もおっしゃったところですけれども、通常の業務上のレポーティング・ラインに加えて、これが機能しない場合に備えて情報伝達のための仕組みの一つとして内部通報の重要性が指摘されてございます。

また、原則4を見ますと、「不正の芽の察知と機敏な対応」と題しまして、コンプライアンス違反を早期に把握し、迅速に対処することで、それが重大な不祥事に発展することを未然に防止する。こういうところが示されておりますが、これはまさに内部通報がその役割の一端を担っていると理解されると思います。

石井委員からの御意見にもありましたように、現在、東証の上場規則でありますコーポレートガバナンス・コードの見直しの作業が開始されております。この日本取引所自主規制法人は東証、大証の上場審査・管理に関する規制権限を持つ法人ですので、ガバナンス・コードの見直しにおいても、このプリンシプルの趣旨が何らかの形で反映されてくるのではないかと考えております。

確かに現在のガバナンス・コードの中にも石井委員の御指摘もありますように、原則2-5で内部通報についても盛り込まれておりますけれども、今回公表されました不祥事予防のプリンシプルの趣旨を生かして、事前に不正の芽を摘む体制の整備が上場企業にとっていかに重要であるかということについて、見直されるガバナンス・コードで具体的な内容にもう少し踏み込んでいただいて、例えば既に28年に公表されました「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用の民間事業者向けのガイドライン」に沿った形で上場会社に内部通報体制を構築してもらえるようにガバナンス・コードに変えていただくようなことを、金融庁との連携なども視野に入れて働きかけができないかということも考えております。

他方、この専門委員会におきましても、原則5に示されております「グループ全体を貫く経営管理」の重要性や、原則6では「サプライチェーンを展望した責任感」という原則としては少し抽象的ではありますが、解説のところで示されておりますように、「サプライチェーン全体において当事者としての自覚的な役割を果たすことで、不祥事の深刻化など、企業価値の毀損を低減できる」というようなことにつきましては、中小会社に対して公益通報者保護法がどのような取組を今後していくかという中でも、一つ参考になるのではないか、つまり、内部通報の範囲の検討においても、こういった原則の趣旨を酌み取って議論していくということも大切な視点ではないかと思っております。もちろん上場会社に要求される内部通報体制の整備は公益通報者保護法の射程と必ずしも一致するわけではございませんけれども、上場ルールにおいて上場会社の内部通報制度の整備や報復行為などの禁止などを要求するということは単に企業の自浄能力を高めるだけではなくて、証券市場のプレーヤーとしての必要不可欠な要請であるということを改めてここで確認しておきたいと思います。

私の専門は金商法と会社法ですので、この点は言っておきたいと思います。証券市場の機能の公正性というものは、企業の正しい情報、リアルタイムの情報が投資家に届けられて、その情報に基づいて投資家が投資行動をとる、その投資行動の集積によって証券市場の公正な価格形成機能は初めて実現するということが理論的な枠組みでありますから、そうすると、企業内部に不正やその隠蔽があるという場合には、企業のリアルタイムの正しい姿を反映した開示情報になっていないわけです。だとすると、上場企業にとっての内部通報制度の整備は、証券市場規制の中では生命線である情報開示制度を実質的に支えるものとも考えることができると思います。これは上場企業の話でこれとは少し離れますが、平成26年の会社法改正におきましても、内部統制システムの一環として、監査役、監査(等)委員等への報告において会社法施行規則の100条3項5号等に基づいて監査役等に報告をしたことによってその者が不利益な扱いを受けないようにしてくださいと、こういったことの体制整備が要請されております。これは上場企業に限ったことではございませんので、一般の株式会社において通報による不利益取扱いを禁止した法律がないと実務では理解されている節がありますが、既に施行規則レベルですが株式会社法にはこのような規定があることは申し上げておきたいと思います。

ここでの監査役への報告内容は公益通報に限られないわけですから、広く社内の内部通報者に対する不利益処分の禁止を規定したものと見ることができますけれども、そうであればなおさら公益通報については、それだけ価値のある公益通報については手厚く不利益な扱いを禁止するということを、もちろん会社の規模の大小の考慮もございますが、そういった方向で検討することも必要なのではないかと思います。ですから、こうした株式会社法制や上場規則に盛り込まれた、企業が整備しなければならない内部通報制度の在り方を踏まえながら、公益通報者保護法の改正を進めていく必要があるのではないかと考えております。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

石井委員のコメント、柿崎座長代理のコメント、いずれも非常に重要な視点であると思います。健全な資本市場の形成あるいは会社法の観点といったこともここで踏まえて議論していきたいと思います。

あとは林委員からも意見書が提出されておりますので、御説明をお願いします。

○林委員 資料6を御覧いただきたいと思います。意見書を出させていただいております。2017年1月27日に日弁連から、公益通報者保護制度の実効性向上に関する検討会最終報告書に対する意見、パブコメをさせていただいております。私の意見が全く同じというわけではないのですけれども、これに沿っている考えでございますので、よろしくお願いいたします。

検討会の最終報告書なのですけれども、この報告書を見ていきますと「肯定的見解が多い」であるとか「双方の意見がある」「消極的あるいは否定的な意見が多い」という区分けがされていて、その中で、さらに「適当」「~の方向で検討」あるいは「十分に検討」する必要がある、「今後更に検討」、最後に「慎重に検討」というように記載方法を変えて方策が示されているものでございます。このように一旦検討されていることから、めり張りを付けて今回の専門調査会でもお話ししていただければいいと思っているところです。個別の論点のところでまた具体的に主張はさせていただきたいと思っております。

もう一つなのですけれども、通報窓口を設置している会社、大企業の会社の8割で、違法行為があるという通報が年間にゼロ件から5件ぐらいしかないというのが実態となっておりまして、通報をしやすい体制にあるのか、あるいは公益通報というものが周知されているのかというところに非常に問題があると思いますので、その辺についても検討をしていただきたいと思っております。

最後に、今回の検討の進め方の中でも出ておりますが、濫用的な通報に対する対応と書かれているのですけれども、濫用的な通報はどういうものを指しているのか。漠然としたものでは対策もできないと思うのです。いわゆるクレーマー的な、何度も同じことを言うような通報を指しているのか、それとも、企業内での闘争としてそれが使われてしまっている。それが狭義の濫用だと思うのですけれども、そういうものを指しているのか。そこをちゃんとこの専門調査会でも定義付けをした上で議論をしていったらいいと思っております。

私の意見は以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

非常に重要な御指摘かと思います。消費者庁の検討会のほうでかなり時間をかけて、様々な論点について検討していただいておりますので、資料がこれだけ、最終報告書もございますので、こういったことを参考にしながら、私たちも議論ができればと思います。ただ、もちろん消費者庁の検討会で言われていることにここでの議論が拘束されるというわけではございませんので、これを踏まえた上でさらにどのように考えるかということについて、意見を出していただければと思います。

それから、濫用の話がございましたけれども、これから、個別の論点を議論していく際に、具体的にどういうことが想定されているのかということを一つ一つ押さえていかないと、一般的なイメージでいい、悪いといった判断をいたしますと議論が収束しないと思いますので、その点は十分踏まえて具体的に濫用と言われる場合にどういうものが想定されるのかということを十分踏まえた上で議論を進めていきたいと思います。

それでは、以上を踏まえまして、資料2につきまして意見交換を行いたいと思います。各委員から提出されている資料がございますので、もしそれについても何か、どういう趣旨かといった御質問があれば出していただければと思います。御意見のある方、お願いしたいと思います。あるいはその過程で先ほどの資料1についても御質問があるということであれば、出していただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

お願いします。

○浦郷委員 今回、個別論点の検討の進め方は、検討項目として出された論点、進め方もおおむねこれでいいのではないかと私は思っております。この制度の施行から10年ということで、この間も検討会とかワーキンググループで論議されてきて、ガイドラインの整備とか認証制度の導入が進められてきています。でも、制度の形が整っても、これが使われなければ意味がないと思うのです。本来ならばこれが使われなくてもいいように企業の風通しがいい、そういう社風であればいいのですけれども、残念ながらそうではないというところで、それを補完するルートであってほしいのですが、やはりこれが使われていなければ意味がないと思います。昨今のところでも企業の法令違反、不祥事などが後を絶ちません。自動車メーカーの最終製品の検査違反、鉄鋼メーカーの製品規格基準の違反など、本当に大企業で長期間にわたって違反行為が行われていました。多分、こういう大企業はきちんと内部通報の制度は整っていたと思われるのですが、やはりそれが使われていなかったということで、なぜ使われなかったのか、ここをよく考えるべきだと思います。

もし私がそういう職場で働いていて不正を目にしたら、先ほど消費者庁のアンケートがありましたけれども、これと全く同じだと思うのです。その不正が意図的な、組織的な不正であったなら、内部通報をしても握り潰されるだろうと。その後、不利益な処遇を受けるだろう。解雇とか配置転換にはならなくても、昇給、昇格とか自分への評価には絶対何か影響があるだろうということを考えると思うのです。そう思うと、内部へは通報しない。通報するとしたら、匿名で外部へ、それもやはりある程度きちんと証拠を持った上で、よほどの覚悟を持ってでないとできないと思うのです。個人的な小さな不正であっても、内部通報をすることによって、その後、どんな影響が自分の身に降り掛かってくるかということを考えると、やはり不安で、見て見ぬ振りをしてやり過ごしてしまうと思うのです。それは先ほどのアンケートと全く同じだというのを感じています。

現行法では、不利益取扱いを行ったことに対する行政措置とか刑事罰の規定がありません。ですから、通報者自身が民事ルールで解決をしなければならない。通報者自身が裁判に訴えて勝たなければならないという、ここはとても大きな問題だと思います。検討事項の(1)に、この制度を使いやすいものにすると書いてありますけれども、本当に使いやすいものにするために、公益通報者としての要件、範囲とか外部通報者の保護要件とか、そこの要件を広げることも必要だと思うのですが、それ以上に不利益の取扱いに対する行政措置、刑事罰も含めた規定は必要だと思っております。この専門調査会でぜひ十分な論議をして法改正をすべきだと思っております。

一つお願いがあるのですけれども、私は制度の形が整っても使われなければ意味がないと申しましたが、でも、使われていないことはないと思うのです。なので、この10年間の間に、内部通報制度を整備して、コンプライアンス経営の推進を積極的に行ってきた企業はいっぱいあると思うのです。そういうところで、この間で内部通報が一体どれぐらいあったのか。そのうち公益通報と思われるものがどれぐらいあったのか。さらに、その通報により改善されたものがどのぐらいあったのか。具体的な事例を出していただければいいのですけれども、そこはなかなか企業は出せないと思うので、どれぐらいあったかでもいいのですが、本当にこの制度が機能しているのかどうなのか、それが見えるもの、わかるものを出していただきたいと思っております。よろしくお願いします。

○山本座長 ありがとうございます。

その点は、前回も確かそのような御指摘が後者についてはあったかと思いますので、これから、個別の論点を議論していく際に出していただきたいと思います。前者の不利益取扱いに対する行政措置、刑事罰は一つの大きな論点ですので、そこで具体的に議論していきたいと思います。ここでも、まず、行政措置と刑事罰ではかなり性格が違いますし、あるいは行政措置といっても、どこの組織がどういった手続でどういった措置をとるかということに関して、いろいろな選択肢があるところですので、そのあたりの具体的な話を個別の論点で議論していきたいと思います。そのほかにいかがでしょうか。

それでは、春田委員、お願いします。

○春田委員 個別論点についての検討の進め方につきまして、それぞれの検討項目について、次回以降の専門調査会の中でいろいろ細かいところは意見が出されると思っておりますけれども、働く者の立場から、若干、今、出されている論点に働く者の観点から御意見させていただきたいと思っております。

まず「(1)公益通報者保護法を使いやすいものにする」でございますけれども、3点ほど働く者の立場から話をさせていただきますと、1点目は、通報対象事実のところで、現行法で通報対象事実がまさに生じようとしているという要件になっているのですけれども、“まさに”というところの切迫性の要件です。これは昨今の状況を踏まえ、先ほど話があったとおり、不祥事を早期に摘んでいくという観点からしても、保護される通報の範囲に、例えば通報対象事実が生じるおそれがある場合だとか、そういったことも含めていくといった検討も必要ではないかと思っております。

2点目が、公益通報で、不正の目的の存在があるといったところの証明責任です。これについて、通報者に対して不利益な取扱いがなされたとすると、これを企業側が負担することを条文上に入れるような検討も必要ではないかと思っております。

3点目が公益通報の範囲の話でございますけれども、先ほど話があったとおり、通報先、グループ会社に関する通報というところで、通報の範囲に一定の要件を満たすグループ会社に関する通報といったことも検討の内容の中に入れていただければと思っております。

「(2)通報を受ける側における体制整備」についての中で、行政通報の一元的窓口の構築の話がございますけれども、これについて、極めて範囲が広くなるというところも留意しながら、通報者の秘密保持などの利益を損なわないような仕組みという視点も取り入れていただければと思っています。

「(3)公益通報者の保護救済の充実及び不利益取扱いの抑止」でございます。そこにつきましては、禁止対象として不利益取扱い及び不利益取扱いに対する違反行為の効力という部分で、現行法の中で降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならないとなっているのですけれども、これについても、公益通報を理由とする懲戒処分、配転命令といった報復的不利益取扱いや嫌がらせなどの様々なハラスメント等、こういった部分も法律上の禁止対象、不利益取扱いの範囲などに含めていくことも検討していただければと思っております。それから、現行法で定められている労働者の解雇の無効だとか、労働者派遣契約の解除の無効と同様に、公益通報を理由とした不相当な懲戒処分、濫用的な降格とか配転命令などについても無効であると定めていくことも検討が必要ではないかと思っております。

通報妨害だとか通報者の探索の禁止といったことの観点も、違反の効果を踏まえて検討すべきではないか。それから、公益通報行為自体に関する各種責任の減免についてというところでも、外部通報の保護の今の要件は、信じるに足りる相当の理由という形になっておりますけれども、通報者の判断が事後的に誤りであったという場合も考えられますので、正当な目的がある場合には、通報者の責任を減免することであるとか、あるいは守秘義務の免除、公益通報をしたことに関する損害賠償請求の制限等、こういったことも検討が必要ではないかと思っています。

あとは通報の義務化の話が論点の中にありましたけれども、これにつきましては、我々としては、通報者へ通知結果を通知する。通報者本人の希望も確認しながらフィードバックしていくことを義務化していくことも検討すべきではないかと思っております。

最後になりますけれども、先ほど来コーポレートガバナンス・コードの話がございました。本日も意見書の中にありましたけれども、これを活用していくということは重要な視点だと思っております。我々連合としても、コーポレートガバナンス・コードについては意見等をこれまでも発信してきましたが、コーポレートガバナンス・コードの中でステークホルダーとの協働が書かれておりますけれども、その中で、今回の内容でございます公益通報者保護制度の体制整備については、その視点が盛り込まれておりますが、実効性を担保しているということが重要だと思っております。コーポレートガバナンス・コードの中にこのことが盛り込まれておりますけれども、開示項目の中に入っていないということもありまして、この体制整備・運用状況に関して、開示を義務化していくことが重要ではないかということ。開示項目の中に入れてコンプライ・オア・エクスプレインということで、もし開示ができないのであればそれを説明していくことで実効性を担保していくことが非常に重要ではないかということ。

それから、制度の実効性を高めるということで、ガバナンス・コードの見直しの中で、例えば今回のガイドラインの遵守などを盛り込むなど、内容の補強を検討していくことも重要ではないか。そんな視点を持ちながら議論できればと思っていますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

○山本座長 ありがとうございます。

論点として御指摘をいただいた点は大体盛り込まれてはいると思いますが、最初に検討事項1の(1)の民事効の話がありますけれども、これについて、従来の判例等々を踏まえてどのように考えていくかということもあるかと思いますので、論点というよりも、むしろ検討を進める際の留意点として、特に民事に関する従来の判例、裁判例をまとめていただいて、それを踏まえてどのように考えるかといったことが必要なのかなと思いました。あとはガバナンス・コード等との関係につきましては、先ほど御指摘をいただいているところであり、検討項目の中にも入っておりますので、よろしいかと思いますけれども、何かほかにございますか。

お願いします。

○高委員長 「(4)その他ご指摘のあった論点」で、多分、これは私が発言したから事務局が配慮して、通報の義務化という議論もあるのではないかということで残していただいたと思うのです。言わんとするのは、努力義務でいいとは思っているのですけれども、こういう発言をしたのは、例えばグローバルにビジネスを展開されているところであれば、報奨金があるところで通報するほうが合理的となります。本来であれば会社の中で起こったことは、例えば海外で通報するよりも日本でしてもらいたいという意味で、努力義務というような考え方があってもいいのではないかということです。ただ、これはもう外していただいてよろしいです。理由をもう少し述べさせてもらいます。

不利益処分がないという体制を作れば必ず通報があるかと言うと、そこは因果連関が直結していない場合も多いのではないかと私は思うのです。不利益処分がなくても、そういう体制ができ上がっていても通報しない例。たまたま幾つかの会社を見ていて、セクハラとかパワハラとか、こういうことについて頻繁に通報窓口が利用されるのですけれども、常態化してずっと続いている問題事項については特に誰も発言しない。例えば、最近の品質検査の話とか、数十年続いていた話などです。そういう意味で、社内でこれは通報するようにということで、努力義務というか、教育をするというのでしょうか、そういうアプローチも必要なのではないかと考え、申し上げました。ただ、法律の中にそれを書き込むかどうかは、必要ないかと思います。

先ほど濫用的利用者の話がございましたけれども、私の言わんとしているところは林委員と同じでして、一体何が濫用的な行為なのかということを明確にしておく必要があるということです。それを放置していると、いろいろな会社の中で不満ばかりが、特に窓口の仕事をされている方々が不満を感じるし、またそうした行為を見ている一般の社員も、同類と見なされたくないと感じ、そもそも通報窓口を窓口そのものを使わなくなったりして、せっかく仕組みがあるにも関わらず、それがうまく機能しなくなってしまいます。ですから、何をもって濫用的な行為とするのかは、法律に書く必要はないのですけれども、明確にガイドラインみたいなもので掲げる。ただし、濫用に当たるかどうかの立証責任は事業者側が負うべきかと思っております。

もう一点意見をさせていただきます。外部通報における要件ですが、例えば不利益処分を受ける可能性があるとか、証拠隠滅の可能性があるという話ですが、それがないということの立証責任は事業者側が負うべきではないかと思います。この話と認証制度がどのようにつながっていくのかわかりませんが、立証責任を果たすのが難しい場合、外部の認証機関による認証をもって立証責任にかえるという話もあり得るのかなと感じました。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

一つは通報の義務化というところでございます。これは私、前回に意見を伺って、趣旨は今、言われたようなことではないかと理解いたしました。一つは通報ができる、通報しやすい環境を作るということと、通報が社会にとって、あるいは企業にとって意義を持っているのだということを十分踏まえて議論をする必要がある。そういう御趣旨かと思いますので、独立の論点として取り上げるというよりは、検討の観点として通報がいろいろなアクターにとって持っている意義、意味といったものを十分踏まえて議論する。もちろん全体的には通報ができる環境を整えていくということが観点として必要ではないかということだと承りました。

認証制度に関しまして、最後のところで御意見を伺いましたけれども、認証制度も独立のものとして、法制度と全く別のものとして置いておくということももちろん可能ですが、それと一定程度リンクさせるということも考えられるところだと思いますので、そこはこれから論点を検討する際に、認証制度とどのように関係付けることができるか、関係付けるべきか、あるいはべきでないかといったことも議論ができればと思います。そのほかにございますでしょうか。

お願いします。

○川出委員 ありがとうございます。検討項目についてはこれで結構だと思います。

最後の検討を進める際の留意点について一点希望を申し上げます。そこの2番目が、関連、参考となる他の法律の参照となっています。その点について、本日の配付していただいた資料1を見ますと、33ページの行政への通報等に関する制度の例として労働基準法の規定が挙がっており、27ページの不利益取扱いに対する行政措置・罰則のところにも労働関係の法律やそれに基づく制度が挙げられています。恐らく、既存の制度の中で最も運用実績があって参考になりそうなのは労働基準法をはじめとする労働法関係であろうと思いますので、他の法律の参照という中で、それらの運用状況がどうなっているかということも可能な限り示していただければと思います。例えば、労働基準法には不利益取扱いに対する罰則があるようですので、実際の適用状況がどうなっているか、あるいは行政機関における相談、助言・指導、あっせんについても、どのような事案でどのような措置がなされているのかといったことを、事務局で調べていただく、場合によっては、担当部署のヒアリングなどを行うといったことも御検討いただければと思います。

○山本座長 事務局、よろしいでしょうか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 今後の個別論点の検討の際に御準備させていただきます。

○山本座長 資料として提出できるところは提出していただいて、あるいは直接伺ったほうがいいということが出てくれば、直接担当の局に伺うという形になろうかと思います。そのほかにいかがでしょうか。

それでは、水町委員、お願いします。

○水町委員 これまで出てきた意見と若干重なるところもありますが、気付いたことを3点だけ申し上げさせていただきたいと思います。

一つは公益通報者保護法が余り使われていないということの関係で、労働法で一般的に言いますと、働いている人が会社を相手にして争うかと言うと、働いている人が会社を相手にして争うということは非常に難しい。日本で労働裁判の数はすごく少ないのですが、欧米先進諸国に比べて2桁ぐらい数が違うぐらい少ないのですが、その2桁多い欧米先進諸国でも、労働者が会社に対して争うときには、労働関係を継続しながら裁判を遂行するというのは極めて難しい。どういう場合に争いをするかというと、退職を覚悟してからなのです。退職を覚悟して、実際に退職をしてから争うということが圧倒的に多くて、それは日本でも共通していると思います。では、公益通報者保護法が何を対象としているかというと、労働者を対象とするとしていますので、そもそも労働者にそこまでアクションを起こすということが期待できるかというところがもしかしたら関わっているかもしれません。

それとの関係で2点目を言いますと、実際、公益通報者保護法が施行されて以降も裁判でこういう問題が出たときに、公益通報者保護法を適用して公益通報者を守るという判断がなされているかと言うと、公益通報者保護法の裁判上の適用例は極めて少なくて、施行された以降も従来の、要は、内部通報者保護法理という一般法理で判断されていることが非常に多い。それはなぜかというと、向こうは一般法理として射程を広く見ながら判断していますし、公益通報者保護法は射程を極めて厳格に絞っているので、裁判になったら使えないわけです。そういう意味で、先ほど山本座長からもありましたが、従来の判例を調べるときに、施行前だけではなくて施行後も含めてどういう取扱いになっていて、どういう行為がどういう理屈で対象になっているのか。一般法理がかなり広くて公益通報者保護法がかなり厳格になっているのだったら、何でそんなに厳格にしなければいけないのかをきちんと考えなければいけないというのが二つ目。

三つ目が実効性を確保するための制度の担保の問題ですが、罰則の適用については先ほど川出委員から話もありましたが、重ねて言うことはありません。行政措置についてですが、行政措置もいろいろありまして、例えば行政ADR。行政ADRであれば余り厳格に、これだけしか行政ADRに持っていってはいけませんよという話にはならないので、適用対象もどれぐらい絞り込むかという話はそんなにダイレクトにつながってこないと思いますが、例えば指導、勧告、企業名公表をやるという場合については、ちゃんと証拠調べをして、本当に法令違反があったかどうかを確認した上で書面による勧告をし、勧告に従わない場合には企業名を公表するということが必要になってきます。

そのときの受皿としての行政機関は、念頭に置かれているものがいろいろある上に、行政としてやらなければいけないことの性質が全然変わってくるので、具体的に例えば労働局で受皿となり得るのか、ほかに労働委員会もありまして、労働委員会がどういう役割を果たし得るのか、少し具体的に受皿となり得るものを念頭に置き、かつ、行政上の措置としてどういうことをやろうと思っているのか、やることができると考えているのかをリンクさせて考えなければいけないですし、これは例えば第5回目のテーマで、5回だけで審議できるかというと、ちゃんときちんと準備をしながら組み合わせて考えていかなければいけないので、その点も少し事務局として準備をして整理した上で、そのときの論点の検討のときに出していただければと思います。

以上です。

○山本座長 ありがとうございました。

事務局、よろしいでしょうか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 所要の準備、調整をしてまいりたいと思います。

○山本座長 裁判例については、御指摘がありましたように、施行前、施行後を通じて、それから、公益通報者保護法との関係の有無を問わず、広くそれを集めていただきたい、分析をしていただきたいと思います。

今、御指摘がございました行政措置というときも、いろいろある。特に不利益取扱いということになりますと、ADR型の手続をとるのか、あるいはむしろ一方的な制裁の賦課に近いような形の手続をとるのかといったところがかなり違ってまいりますし、手続も違いますし、それにふさわしい機関も変わってくるだろうと思いますので、集中的にそれについて議論するのは第何回ですか。この論点で言いますと比較的最後のほうですか。2ページの後半のほうで(3)にあろうかと思いますけれども、要件設定等を考える際にも、少しそういったことも頭に入れながら議論する必要があるのかなと思いますので、その点は事務局のほうで調整してください。よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。

それでは、お願いします。

○池本委員長代理 オブザーバーの池本です。検討の進め方の論点は基本的にほぼ網羅していただいていると思います。最後に具体的な事例の紹介という言葉が書いてあって、恐らくこれはこれまで皆さんが御発言された中の、例えば、一方では濫用のおそれありといった危惧があると、具体的にどういうものを指しているのか。それは法制度の要件を考える中で絞ることなのか、それとも、解釈論でやっていくのかというときに、具体的な事例などを素材にしながら、制度の中でどう落とし込んでいくか、解釈論で落とし込んでいくか、ということになると思います。

それとは別に、もう一方の具体的な事例という意味で、私はこの2年間、2年間というのは、消費者庁の検討会の最初の第1次報告書が平成28年3月ですから、ちょうど丸2年になります。その後、ワーキングは制度設計のほうの議論ですから、むしろ価値判断に関わる必要性論や相当性論、実態論は2年前のデータしかまとまったものはないように思います。

今、ここでたくさん論点がある中で、この要件を見直す必要があるか、なぜそうなのかということの具体的な事実という意味では、先ほどもお話があった施行後の裁判例の検証もですし、具体的にどうやって収集するのかはわかりませんが、できるだけ具体的なこの間の不祥事なり問題提起されていることについての事例を収集して、この要件を法制度として変える必要がある、あるいは運用として変える必要があるという具体的な事例との兼ね合いで、どこでそれを解決していくのかというような議論をしていくことによって、最終的にこの調査会で取りまとめをしていだく。報告書を取りまとめていただくときに、これが政策決定につながり、あるいは国会でも審議をしていただくときの資料として説得力を持つ。最終的に世論の中での説得力を持つための作業として、大変手間かと思うのですが、そちらの必要性論の中でも具体的な事例を収集、紹介していただければと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

事務局、それでよろしいでしょうか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 事例収集の必要性についての御指摘と承りましたが、法改正を行う際に立法事実をお示しするのは基本でございますので、できる限りの対応をしたいと思います。ただ、通報に関する事案の性質上、秘密保持の必要性が高いということで、公になっている事案が必ずしも多くなく、事例がなかなか集めにくいという制約がございます。それでも、裁判例ですとか報道事例など、利用可能な事例をできる限り収集してお示しするよう努力したいと思います。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

それでは、お願いします。

○樋口委員

1点だけ事務局にお願いなのですけれども、海外の制度を参照というところがありますが、グローバルなシステムづくりを考えていく上では、海外でどういう実態があるのかはできるだけ詳しい情報をいただければと。特に、例えば企業の規模の問題とか制度の適用範囲の問題を検討する際にも国際比較が重要と思いますので、他の国々、これは数が多いですから、どこかに絞ってで結構ですけれども、どういう考え方で運用されているのか、どういうことが発端になって制度ができたのかということを少し背景を含めて丁寧に紹介していただけるといいのではないかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

その点はよろしいでしょうか。

○太田消費者庁消費者制度課企画官 平成21年度に詳細な調査を行ったものがあるのですが、その後の状況につきましては必ずしも十分把握できていないところもあるのですけれども、可能な限り対応できるよう検討してまいります。

○山本座長 今日いただいた資料の中では、資料1の35ページ、36ページに諸外国の制度の概要が載っていますが、あれですね。比較的最近の動きも、フランスで法律が2016年に制定されたとか、こういった最近の動きもありますので、背景がどういったものなのかといったこともわかると参考になろうかと思いますけれども、フランスのことは水町委員が詳しいのではないかと思いますが、もし必要であれば、事務局と水町委員とで話をしていただきたいと思います。

そのほかにいかがでしょうか。特に何かございませんか。これから個別の論点の検討に入っていきますので、特にこういった論点をさらに加える必要があるのではないかとか、あるいはこういった観点に十分留意する必要があるのではないかといったことがあれば御発言をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、お願いします。

○高委員長 まだ時間があるようですので、論点を追加してほしいということではないのですけれども、効果的な通報の仕組みを会社の中に作る上で、最近、実際の幾つかの企業で進んでいるのは、会社法の話にもなってくるのかもしれませんが、従来の通報の窓口の話に加え、役員レベルとかトップレベルのところの問題について、別途通報の仕組みを作る動きがあります。現場レベルで起こる問題は従来の通報の仕組みで大体声が上がってくるのですけれども、例えば会計不正とか、そういうものになってくると、普通の通報の仕組みの中では上がってこないのです。

そこで、社外役員とか監査役とか、監査委員に対して独立のホットラインを設けて通報するとか、リスクに応じて別のものを用意するという取組もありますので、そういう仕組みを作れということではなくて、「リスクに応じた合理的な仕組みを作るべき」というような議論もあっていいのではないかと思います。柿崎座長代理のほうがお詳しいかと思いますけれども、そういった話も時間があればやってもいいのかなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

柿崎座長代理、何かありますか。よろしいですか。

○柿崎座長代理 大丈夫です。

○山本座長 先ほど御指摘のあった点だと思いますので、直接には、例えば通報者の範囲であるとか何かを議論するときに、細かい議論が出てくるかと思いますけれども、個別の論点の追加というよりは、現在の検討項目で挙がっているところでそういったことも踏まえて議論するということかと思います。

○高委員長 コーポレートガバナンス・コードなどにそういった記載がありますので、それとの関連で考えるなら、少し検討事項としてあってもいいのではないかということです。

○山本座長 ありがとうございます。

コーポレートガバナンス・コードとの関係は非常に重要だと思いますので、検討項目の中で一つ挙がっていますけれども、この部分に限らず全体を検討する際に、その点は十分頭に入れてということかと思います。そのほかにございますでしょうか。

○消費者庁消費者制度課担当者 先ほどの中村委員や浦郷委員、高委員長からの御発言に少し関連いたしますが、公益通報者保護法上の「通報」として想定されているものとしては、必ずしも通報窓口への通報だけが想定されているというわけではなく、例えば、従業員が通常のラインで上司に不正の事実を報告することも公益通報者保護法で想定している「通報」に該当しますし、また、現在、役員は通報者の範囲に含まれてはおりませんが、役員が通報窓口ではなく、取締役会に不正の事実があると報告することも、もし仮に役員を通報者の範囲に含めた場合、公益通報者保護法上の「通報」に該当すると考えられます。個別論点についての検討の際には、このような法律上の立て付けを踏まえて御議論いただければありがたいと考えております。

○山本座長 ありがとうございます。

制度上の問題としては、今、御指摘がありましたように、役員が現在は入っていないというところについて、また議論の対象になると思いますし、実態として法制度を動かす現場の実態がどうなっているかも踏まえて議論をする必要があるということかと思います。確かに両者は少し、論理的には整理して議論しないと混乱するということはあろうかと思いますけれども、実態と法制度の両方を踏まえて議論を進めていく必要があるということかと思います。

そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、個別論点につきましては、おおむね御了解をいただけたのではないかと思います。最後の検討を進める際の留意点といいますか、観点のところを少し加えたほうがよろしいかと思いますけれども、その点につきましては、特に最後の留意点の付け加えをどのように行っていくかということにつきましては、おおむね意見の一致はあったのではないかと思いますので、私に御一任いただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

その上で、次回以降、検討項目について個別の論点の検討に入っていきたいと思います。その際、先ほどから少し意見が出ているところですけれども、今後、審議を進めていくに当たりまして、公益通報者保護法は労働者の保護の観点から労働行政と関わりの深い法律でございますし、今後の検討項目といたしまして、公益通報者の保護救済、不利益取扱いに対する行政措置等の可能性とか在り方を検討していかなくてはいけないということがございますので、労働行政の所管官庁である厚生労働省の担当部局に必要に応じて御出席をしていただければ大変ありがたいと思います。この点につきましては、事務局において具体的にどのように進めていくかということについて調整をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○友行企画官 かしこまりました。

○山本座長 それから、労働者の保護という観点から、労働局だけではなく、先ほど労働委員会という話も出ました。労働委員会におきましても、労働者からの相談受付あるいは労働者と使用者との間の紛争のあっせん等々を行っておりますので、そこと関わっていく可能性もあろうかと思います。この点につきましても、担当部局と事務局の間で調整をして必要に応じて意見を聞いていただく、あるいは御出席をいただくといったことをしていただきたいと思いますので、それもよろしいでしょうか。

○友行企画官 承知いたしました。

○山本座長 こちらについては、まだどのように、どれぐらい関わりが出てくるかということがわからないところもありますので、議論の進行も見ながら事務局のほうで調整をしていただければと思います。


≪4.閉会≫

○山本座長 それでは、よろしいでしょうか。ほかに何か御意見はございますでしょうか。よろしいですか。

以上をもちまして本日は閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)