第43回 公共料金等専門調査会 議事録

日時

2018年3月14日(水)13:59~15:44

場所

消費者委員会会議室

出席者

【専門委員】
古城座長、井手座長代理、小浦委員、古賀委員、陶山委員、松村委員
【説明者】
澤部まどか 一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員
【消費者庁】
澤井消費者調査課長
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 電力・ガス小売自由化に係る課題に関する有識者ヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻より若干早いですけれども、委員がおそろいですので会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。ただ今から「消費者委員会第43回公共料金等専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして白山委員、山内委員、消費者委員会担当委員の蟹瀬委員、長田委員が御欠席との連絡をいただいております。

まず、議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第下部に配付資料一覧を記載してございます。もし不足等がございましたら、事務局までお知らせくださいますよう、よろしくお願いいたします。

なお、本日の会議につきましては公開で行います。議事録についても後日公開することといたします。

それでは、古城座長、議事進行のほうをよろしくお願いいたします。


≪2.電力・ガス小売自由化に係る課題に関する有識者ヒアリング≫

○古城座長 それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。

本日の議題は「電力・ガス小売自由化に係る課題に関する有識者ヒアリング」です。

本日は、一般財団法人電力中央研究所の澤部まどか主任研究員より、電力自由化で先行する欧州における、経過措置の解除を判断するための競争評価の状況と、料金比較サイトの信頼性の確保について御説明をいただきます。

電力の小売自由化から2年弱が経過し、経済産業省においても、自由化後の電力市場における競争状況の評価や今後の経過措置の解除に関する検討が始まっています。先行事例としての欧州電力市場の競争状況評価や比較サイトのあり方について、どのような点に注意していくべきか等についてお話しいただきたいと思います。

それでは、御説明をお願いします。45分程度でお願いいたします。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 電力中央研究所の澤部です。

今、御紹介にあずかりましたテーマで御報告させていただきます。なお、御省における規制料金の解除の状況につきましては、昨年、弊所の後藤がこちらで同様の報告を行っておりますので、今日ここで御報告するのは、そこから変化した状況について特に注視して御報告いたします。また、料金比較サイトに関しましても、2017年12月、昨年末に欧州委員会とイギリスでそれぞれ新しく比較サイトに関するガイドラインが出ておりますので、その最近の新しく出たものの追加点や修正点に関しまして、中心的に御報告させていただきたいと思います。

まず、規制料金の解除に関しまして、4ページを御覧ください。左側の表で欧州各国の規制料金の解除の状況をお示ししております。特に2015年以降、昨年御報告してから変化のあった国として、フランスとルーマニアとイギリスを色分けしてお示ししております。具体的な変化の概要ですけれども、フランスに関しましては、まず、2015年12月にNOME法という法律によって産業用需要家の料金規制を解除いたしました。もともとNOME法は2010年12月に成立している法律でして、そこに定められた年月の予定どおりに料金規制の解除を実施したという運びになっております。

解除した結果、こちらの資料にはお示ししておりませんけれども、規制料金を選択していた産業用需要家のお客さんのうち、解除された結果、30%のお客さんが新規の小売事業者に供給先を変更しています。残り7割の産業用需要家のお客さんがEDFというフランスの既存事業者にとどまって、EDFの自由料金に変更したという報告がなされています。これは需要家件数ベース、それから需要量ベースであるキロワット・アワーべースのどちらで見ても、同じような3割、7割といった数字になっております。

次に、ルーマニアは2015年1月にガス事業の産業用部門の規制料金が解除されております。

また、イギリスは解除ではなくて、再規制という動きがあります。イギリスにつきましては、欧州全体の動きを説明した後に、個別の国の事例ということで詳細を御説明させていただきます。ここでは概要だけ触れておきます。

どういったお客さんに規制が再びかけられているかというと、前払い式というイギリス特有の検針メーターを利用しているお客さんになります。日本ではないタイプの検針メーターなのですけれども、イギリスで銀行口座をつくれないような低所得者層のお客さんです。自動口座引き落としですとか請求書払いをすることができないお客さんが、こういった前払い式のメーターを使っているお客さんの料金です。

それから、前払い式メーターというのは貧困層に限らず、賃貸住宅ですとかアパートメント、大学生が利用するようなところなどでは、大家さんが先に前払い式メーターを設置しておりまして、こういったメーターが設置されている世帯というのは、実際、市場に自動口座引き落としで割引料金があったとしても選択することができない需要家になります。そういった需要家が利用するような料金に関しまして、プライスキャップ規制が課せられているという状況になっております。

対象の規模ですけれども、家庭用需要家のうち100万世帯が相当すると言われております。約18%に当たります。2017年4月から導入されておりまして、2020年までの時限措置として導入されております。この期間の背景につきまして、後ほど御紹介いたします。

それから、まだ導入はされていないのですけれども、前払い式のお客さんではなく、自動口座とか請求書払いをするようなお客さん向けの変動料金に対してもプライスキャップ規制をするということで、今、イギリスでは準備に動いております。家庭用需要家のうち1,800万世帯、約67%に相当するお客さんが対象になると予想されております。これは2019年春から導入予定で、これも同じように時限措置として考えておりまして、2020年もしくは2023年を目途に進められております。

次に、5ページに行きまして、料金規制が残っている各国でどういったタイプの規制が残っているかということなのですけれども、総括原価方式、日本と同じような料金規制のタイプで、クロアチア、キプロス、ラトビアはガス事業のみですが、マルタ、ポルトガルの5カ国が総括原価方式。プライスキャップ規制は、今御紹介いたしましたイギリスのほかに、デンマーク、リトアニア、スロバキアという国が選択しております。それから、政策料金と表記させていただきましたが、総括原価方式やプライスキャップ規制は料金規制をかけるときに事業者の原価をもとに算定するのですけれども、こちらの政策料金は、その国の所得格差を鑑みて、低所得者層に配慮したような料金設定をしておりまして、事業者にとっては原価割れである場合が多いです。事業者の原価を参照しているというよりは、低所得者層の所得状況や社会保障などの全般的な制度との兼ね合いで料金を設定しているタイプになります。こちらのタイプを選択している国は、ブルガリア、フランス、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スペインとなっております。

このように上記の国々はいろいろ料金規制を課しているのですけれども、欧州委員会といたしましては、上記の国々の中で規制料金が市場料金よりもかなり低く設定されている場合があり、全面自由化した市場において新規参入を阻む要因になっていると指摘しております。欧州委員会は、全面自由化をしてから2007年以降ずっとこうした見解を述べておりまして、各国に対しまして料金規制解除に向けたロードマップ、予定表の策定、もしくは競争評価の基準の策定を呼びかけております。

競争評価の基準に関しまして、6ページ目に、既に料金規制を撤廃した国々が競争評価をどのように採用してきたかという状況をまとめております。表中の一番下の列を先に御覧いただければと思いますが、小売全面自由化と同時に料金規制を撤廃したタイプの国があります。オランダ、オーストリア、エストニアです。これらの国々は、小売全面自由化の実施と同時に料金規制を即時撤廃しておりますので、競争状況の確認などは特に行っておりません。

それと対称的なのが、上の行に示している国々です。こちらの国々は、エネルギー規制当局ないし競争政策当局が競争評価をしつつ料金規制の解除を検討しております。イギリス、アイルランドは、後ほど料金規制撤廃の競争評価の基準をお示しいたしますけれども、そちらを十分に確認した上で撤廃をしております。

また、イギリス、アイルランド、下のオランダ、オーストラリア、エストニアとの中間的な存在である国としてドイツやデンマークが挙げられます。これらの国々は、規制当局は一応、市場監視ということで、市場監視のレポートを毎年出していて、供給者変更の割合ですとか市場シェアの動向等を見てはいるのですけれども、それらの指標が必ずしも十分に、供給者変更率がイギリス並みに高いとか、アイルランド並みに新規参入者の市場シェアが多いという状況ではないにもかかわらず、規制料金を撤廃している国という扱いになります。ということで、欧州の全体的な傾向、料金規制を撤廃した国の動向といたしましては、競争の進展を待たずに解除している国のほうが数としては多い傾向になっております。

次に、7ページに行きまして、欧州委員会は料金規制の解除を求めていますが、その欧州委員会が毎年競争評価をやっている中で、どういった指標を使っているかというものをまとめております。この指標の数は毎年増えてきております。どういった点で増えてきているかといいますと、スマートメーターの導入が進展していることから、スマートメーターを利用した需要家の供給者選択の動向ですとか、それを利用したサービスがどのぐらい増えているのかということを注視しようとしています。市場シェアの動向ですとか、そういったものは10年以上前からずっと使われてきている指標になっております。

8ページ目に行きまして、こちらは規制料金が残る国々における料金水準等規制料金を選択する需要家の割合を示しております。グラフの見方なのですけれども、カラー資料をお持ちの方は小売料金は緑色で示されている部分で、卸価格が黄色の線です。白黒資料をお持ちの方であれば、小売料金のほうが濃い色に印刷されているかと思います。

棒グラフは、小売料金から卸価格を差し引いた値になっております。需要家が支払う小売料金は、もちろん卸売価格に送配電料金を加算した値が最終的に小売料金となっておりますので、小売料金と卸料金の差で示している棒グラフがプラスになっているからといって、事業者に黒字が生じているかというと、必ずしもそうではありません。むしろこの小売料金から卸料金を差し引いて、マイナスの棒グラフの値になっているところが事業者にとっては赤字を負担しているという状況をあらわしています。

これを見ますと、総括原価方式とプライスキャップ方式、次のページに行きまして政策料金を選択している国について、それぞれまとめているのですけれども、欧州各国の中には規制料金が卸売価格をそもそも下回る水準で設定されている国が見受けられます。ラトビア、リトアニア、それからデンマークも昔はそういう水準でした。フランスも、ここは2012年からデータが出ていますけれども、2012年より前は小売料金は卸料金を下回る水準でした。

それから、ルーマニアやハンガリー、スペインといった国々で規制料金が卸料金を下回る水準になっておりまして、欧州委員会としては、こうした明らかに規制料金が市場料金を下回るような水準に設定されている場合に自由料金への移行が遅れるということで警告を出しております。

次に、欧州の中でも個別の国の状況について御紹介させていただきます。

イギリスのプライスキャップの再規制の背景ですが、2つのプライスキャップが検討されておりまして、1つ目が、先ほど申し上げましたように前払い式の需要家に対するプライスキャップ規制になります。これは政府ガードタリフキャップという名称もつけられております。この導入に至った背景ですけれども、2016年に英国競争政策当局、コンペティション・アンド・マーケット・オーソリティー、CMAという略称で呼ばれることがあります。CMAが競争環境に関する報告書を発表いたしまして、その中で、前払い式のメーターを利用する需要家の供給者選択が進んでいない。その結果、高い料金を支払っていることが問題視されました。

この報告書を受けて、エネルギー規制当局であるOfgemは、この報告書の中で何らかの対応をするようにということが明記されていたので、それに対応する形で対処策をいろいろ検討いたしました。その結果、今後、スマートメーターの設置普及を進めるということを明言し、これらの需要家が将来、前払い式メーターではなく、スマートメーターを利用することによって、市場にあるより安い料金メニューを選択することができるようにインフラ整備をする方針を示しました。

ただし、スマートメーターの設置には時間がかかることから、その配備のめどを2020年までとし、それまでの間に前払い式のメーターを利用する需要家に料金の上限値を設定することとしました。このプライスキャップを設定することによって、平均的な前払い式需要家の電気料金は年間で約75ポンド。これは日本円の記載を私が間違えてゼロが1個足りないのですけれども、約1万1,000円の削減になる見通しとなっております。訂正させてください。実際のプライスキャップの水準については、後ほど、次以降のページで御紹介いたします。

もう一個、イギリスではプライスキャップの対象が考えられておりまして、それが先ほど申し上げました一般向けの変動料金のプライスキャップ規制です。こちらはデフォルトタリフキャップという名称が今のところつけられております。これを導入した背景ですけれども、これは直接的には先ほどのような政策当局のレポートに明記されていたものではないのですけれども、2017年6月にイギリスで下院の選挙があったときの与党保守党の選挙公約に書かれております。この中で一般のお客さんが選択している変動料金にプライスキャップを課しますということを明記されておりまして、それが法制化されるものになります。こちらにつきましても、2020年までを一応目途としておりまして、それまでの間に、このプライスキャップを課すことによって需要家が便益を受けたのか、もしくは競争に何らかの悪影響を与えていないかといったことのレビューをすることとしておりまして、2020年に解除もしくは最長で2023年まで適用するということが示されております。

キャップの具体的な設定方法、こちらの一般向けの変動料金のプライスキャップ規制の詳細につきましては、今年の5月から6月をめどに公示される予定となっております。

次のページは、前払い式需要家に対するプライスキャップの水準がどのように策定されているかという御紹介になります。こちらは、左側の箱から御覧いただければと思いますが、一番下から御覧いただくと多分分かりやすいのですけれども、まず、送配電料金があります。これは既に規制料金ですので、そのままプライスキャップの中に転嫁される費用として扱われます。送配電料金の上に行きまして、卸電力市場の需要量、卸電力市場価格が参照されます。それから、その他費用、消費者物価指数、税金です。この中には、イギリスでやっている固定価格買取制であるとか、その他の税金、公租公課が考慮されます。

これらの費用を集めまして、プライスキャップモデルという四角い枠で囲った部分、オレンジ色の枠の中ですけれども、卸電力部門に関しましては、まず、卸電力市場の関連データの収集を行います。ここは気象予測とか需要予測を考慮します。卸電力市場価格というのは、夏季とか冬季は例年よりも寒かったか暑かったかで大分価格の変動があるので、その気象予測をしたり需要予測をいたします。

それから、卸電力価格の指標値を計測というところでは、天然ガス価格の動向であるとか、各国の卸電力市場の動向、そちらの市場の影響も受けますので、そういったところのデータの収集を行います。

投入部門という上の枠組みのところでは、その他費用といった経営に関する費用です。その費用の中で必要最低限なものに取捨選択されます。

最終的にはこれらの費用が合算されまして、送配電費用に関してはそのまま転嫁されます。卸電力価格に関しましては、何らかの指標値が計測されまして、それが加算されます。それから、その他の投入費用が加算され、上限値が設定されます。

上限値は最新の水準に計測とありますが、イギリスでは前払い式のお客さんに関しましては、10月から翌年の3月までを秋冬期、4月から9月までを春夏期と1年を2回に分けて、それぞれ違うプライスキャップをかけることとなっております。

12ページが実際のプライスキャップの水準になっております。こちらを御覧いただきますと、プライスキャップ規制の水準は点線で示している部分になります。2017年4月から導入されまして、まず春夏期、4月から9月までの第1期に高い水準がかけられていて、その後、冬期はプライスキャップの水準が下がっています。2017年10月から2018年3月まで適用されるものが同じ水準で課せられています。

この点線が課せられる前は、2015年12月からデータが入っているので、そちらの水準を御覧いただければと思いますけれども、前払い式の料金水準というのは市場の中で一番高い水準でした。今は点線の水準まで下がっておりまして、これが大体マイナス70からマイナス75ポンドとなっております。

その後、プライスキャップが課せられた結果、ほかのプライスキャップが課せられていない料金水準のほうが上がったりとか、いろいろ市場の影響は出ているということがこの図からもわかるかと思います。今後、プライスキャップの新たな導入が検討されているのは、今、市場の中で一番高い水準になっていますけれども、標準変動料金、自動口座引き落としというグループになります。今、市場の中で一番高い水準になっているところにプライスキャップの導入が検討されております。

次に、13ページに行きまして、イギリスで料金規制を解除するときにどういった指標を参照し、その後、どういった指標で市場を評価してきたかということを示しております。

四角い枠で囲った部分が、イギリスで2002年に経過措置を解除したときに採用している競争評価の指標になります。こちらの指標はかなりほかの産業でも使われているようなオーソドックスな指標になっておりまして、料金水準ですとか市場シェア、参入退出の動向、参入障壁、供給者変更、需要家の認識といったものが考えられておりました。

また、その他というところではイギリス固有の状況です。後ほど御紹介いたしますけれども、スコットランド地方の競争の状況、それから社会的弱者への競争の影響といったことも考慮されておりました。

経過措置を解除してから2000年代後半に入っていくのですけれども、そのころに燃料費の高騰という状況が見受けられ、参入した会社が出ていくといった動向になってきて、そこからなかなか新規参入者が増えないといった状況になってきてしまいました。

また、気候変動への対応とかエネルギーセキュリティーの確保、これは対ロシア政策なのですけれども、そういった状況もありまして、電気料金の上昇が免れない状況になってきました。その中で競争評価の視点というのは、定量的な指標だけでは十分ではないということで、定性的な内容がかなり入ってきている状況になっています。特に需要家行動ですとか新規参入者とか既存事業者のビジネスモデルの新規性とか独創性があるかどうか。市場の参入が見られない状況で新しいサービスを提案しているか、市場の中で事業者が動いているかどうかというのを確認するための指標です。それから、需要家に対して透明性のあるコミュニケーションを確保されているかどうかとか、サービスの質を評価するといった視点が入ってきている状況になっております。

14ページは、2016年以降のイギリスの競争評価の指標ということで、先ほど御紹介いたしましたように、イギリスでは競争政策当局もイギリスの電力・ガス市場の競争評価を行いました。そのときに使われた指標となります。こちらの指標も上の指標とほぼ似ているのですけれども、特にこの中で重視されているのが需要家の行動評価です。それから、スマートメーターの普及状況に関する項目がこの中では重視されておりました。

次に、15ページに行きまして、イギリスにとっては20年近く前の話にはなるのですけれども、経過措置解除時にイギリスでどういったことが懸念事項として挙げられていたかということを御紹介いたします。イギリスでは、やはり日本と同様に経過措置解除に当たって一部の需要家で余り競争が進展しないのではないかといった懸念がありました。スコットランド地方で特にそういった懸念がありました。この地方は、先ほどの前払い式メーターではないのですけれども、イングランド・ウェールズ地方、南西部の地域とは異なる検針メーターが採用されていたなどの背景もありまして、新規参入しづらいのではないかといった懸念がありました。

また、社会的というか、宗教的にもイングランド・ウェールズとは違う独特な文化を持っている地域でもありますので、果たして一斉に料金規制を解除して競争が本当に進展するのかといったところが懸念された地域であります。それから、前払い式のメーターの利用者に関しましても、この20年近く前においても競争進展の便益を受けられないのではないかといった懸念がありました。

料金規制を解除した際には、イギリスは全国全ての需要家を対象に料金規制の解除に踏み切ったのですけれども、そのときにこれらの地域や需要家に対してどういった見解を示したかといいますと、スコットランド地方に関しましては、料金規制を残す地域があると、これらの地域の需要家を対象にした新規参入のインセンティブをそいでしまって、英国全体での競争を促すという点ではデメリットになるのではないかという点が指摘され、料金規制解除の運びになりました。

また、スコットランド地方特有のメーターの問題に関しましては、Ofgemが料金規制を解除する際に事業者に対して、イングランド・ウェールズ地方で使われているメーターと同じものを設置するようにといった条件を付しまして、料金規制の解除に踏み切ったという経緯があります。

その後、スコットランド地方において競争の状況がどのように変わっていったかということなのですけれども、16ページを御覧ください。スコットランド地方の既存事業者は、SSEという事業者になります。四角でくくった部分なのですけれども、この地域は既存事業者、SSEのシェアがほかの地域よりも高い80%、新規参入者が20%程度といった状況になっています。

Ofgemは、これをスコットランド地方で競争が進展していないというふうに評価してきたかというと、決してそうではなく、SSEに対する需要家からの支持が厚いのです。サービスの評判がかなりいいということもありまして、そういった点を十分に考慮してきております。

その際、サービスのよさを評価する際にいろいろな指標が使われているのですけれども、右側の折れ線グラフでお示ししているのがその一つの指標でして、苦情件数をあらわしております。印刷がぼやけてしまって見苦しいかと思うのですけれども、SSEに対する苦情件数は既存の大手電力会社の中で最も低い水準になっております。折れ線グラフで一番下の線がSSEになっておりまして、苦情件数が非常に低い。それから、処理スピードも速いとか、問い合わせをしてみるとすごく顧客対応が良いということで、顧客満足度が非常に高い会社でもあります。

ということで、Ofgemは市場シェアという側面だけではなく、消費者の満足度、供給者変更をしない理由などを考慮して、こちらの地域では十分に競争が進展していると判断してきました。また、SSEが新しいビジネスモデルを常に出している会社であるということから、現在も競争上の問題があるというような議論は上がってきておりません。

一方で、前払い式メーターを利用している需要家に関しましては、先ほど申し上げましたように、競争の便益を十分に得られていないという状況になってしまいました。こちらは、経過措置期間中は実は前払い式メーター利用者の料金は低下しておりました。なので、解除した時点でOfgemが参照したデータを見るのであれば、解除といった判断は恐らく自然な判断だったと思われるのですけれども、その後、卸電力価格が上がってきたり、いろいろエネルギーセキュリティーの問題ですとか公租公課が上がってきた関係で料金が上昇した結果、前払い式メーターを利用している需要家が十分な競争の便益を受けられていないという状況になり、2017年に再規制になりました。

17ページに行きまして、イギリスの規制料金に関する小活ということですけれども、今まで申し上げたとおり、イギリスでは規制料金を解除する際に2つの事項が主に懸念されていました。そのうちの1つ、前払い式メーターを利用しているお客さんに関してその後20年近くたって顕在化したという問題があります。また、スコットランド地方に関しては、その後、問題は特に顕在化しておりません。

20年以上経ちまして全面自由化した結果、競争評価を進めていく中でイギリスで今何が問題になっているかというと、やはり競争評価の中で需要家の行動に関する項目がどうしても低い評価になってしまっているということが挙げられます。3分の1の需要家が供給者変更を検討したことがないですとか、3分の1の需要家が5年以上標準メニューを選択し続けているとか、料金メニューを変更することで削減できるはずの電気料金の割合が大きいといった状況が現在問題として指摘されている状況になっております。

次に、アイルランドの状況を御紹介いたします。アイルランドもイギリスと同様に、競争評価をしつつ経過措置を解除した国になっております。

アイルランドはどのような規制料金の撤廃基準を設けたかといいますと、これは既存事業者も新規事業者も含め、アクティブな小売事業者が3社、市場にあるということ。

それから、独立系というのは既存事業者の資本参加ではないという意味です。独立系の新規参入者が2社市場に存在していて、それぞれ少なくとも10%の市場シェアを持っていること。

それから、既存事業者の市場シェアが法人市場で50%以下、家庭用市場で60%以下になっているということ。それから、家庭用需要家市場に関しましては、別途2つの指標が設けられておりまして、小売事業者の変更率が10%を超えていること、既存事業者の小売部門のブランドが、それまでの既存ブランドとは違う名称でサービスを提供すること。これらの条件を達成した後、規制料金を撤廃しましょうということで、競争評価をしてきました。

アイルランドは2005年に全面自由化を実施しておりまして、この競争評価の指標を使った結果、全面自由化から6年たった2011年4月に規制料金を解除しております。

以上が欧州、それからイギリスとアイルランド、個別の国における規制料金の解除の状況の御紹介になります。

次の19ページからは、参考資料としてなのですけれども、欧州の最近の料金水準の動向を御紹介しております。本日は全ては御紹介しなくてもいいかなと思っているのですけれども、20ページと21ページだけ概要ということで御紹介させていただきます。

欧州全体での電気料金の動向ですけれども、卸電力市場の価格は下落しておりまして、2012年からの状況ということで時系列的に比較してみますと、エネルギー費用の占める割合が減ってきております。その一方で、再生可能エネルギー関係の公租公課が増加した結果、仕上がりの料金水準を見てみますと、2012年の時点では19.57ユーロセント・パー・キロワットアワーであったのが、2015年には19.94と上昇している状況になっております。

21ページが、こうした電気料金上昇の各国の要因について、ざっくりと要因分解している図になっております。青い棒グラフでお示ししているものが事業者の経営の影響を受けるエネルギー費用等の変化率になります。黄色い棒グラフで示しているのが事業者の経営の影響を受けない、経営努力したとしても削減できない公租公課の変化率を示しております。これを見ますと、小売料金の上昇した国として、ドットで示している緑色の点がプラスに振れている国の上昇要因を見てみますと、フランス、ベルギー、ポルトガル、オーストリア、ルクセンブルクにおいて公租公課が主な上昇要因になっていることがわかります。一方で、右側のほうの東欧諸国、ルーマニア、エストニア、ラトビアにおいては、エネルギー費用が小売料金の主な上昇要因となっていることがわかります。

全体的な電気料金の動向については以上とさせていただきます。

御関心があれば22ページ以降についても紹介いたしますが、先に、本日のもう一つのテーマであります料金比較サイトのガイドラインについて、最近の動向ということで御紹介いたします。

料金比較サイトについてですけれども、欧州委員会はCEERというところが比較サイトに関するガイドラインを策定しております。これは2012年に出していたのですけれども、昨年、2017年に1年かけていろいろなパブリックのコンサルテーションペーパーを出したりとか、中間報告などをしつつ修正を重ねてきて、昨年12月に新しいガイドラインを策定、公表しております。このガイドラインの中で各国の役割として書かれているのは、全面自由化を実施したときのように各国に強制するものではありません。できるだけ各国がこれを反映することが求められるといったような扱いになっております。

それから、料金比較サイトの監視については、各国の規制当局もしくは公的機関が担うことが求められております。2017年に改定されたときに何が新しい項目として特に追記されたかといいますと、2つありまして、まず1つ目が、料金比較サイト上での検索結果においては、価格が安い順に表示することを明示しております。といいますのも、これも先ほどイギリスの市場の動向を述べたときに触れたことと同じなのですけれども、自由化以降、需要家が選択した料金を調査してみますと、市場には実際にはより安い料金メニューが存在しているにもかかわらず、それを選択していない傾向が見られました。欧州委員会が調査した欧州全体でのレポートでもそういった問題点がありましたので、比較サイトのガイドラインにおいて、まず検索結果の表示については、価格が安い順に表示するようにということを明記しております。

それから、欧州全体でスマートメーターの導入を加速しているということもありまして、スマートメーターを初めとするエネルギー仕様における技術進歩への対応と活用ということが新たに追記されております。料金の比較サイトについては、日本にもあるので御利用された方はお分かりかと思いますが、まず、サイト利用者が自分の需要量がどのくらいかということを入力することになりますが、その入力データが正しいということが、正しい比較をするための必要条件になります。需要家は、このデータを正しく入力するのが実は難しかったり、正確な数字を必ずしも入れているとは限らないのですけれども、今後、スマートメーターが普及すれば、スマートメーターから自動的にサイトにそのデータを入れることによって、正確な需要データを比較サイト側が入手して、正確な比較ができるということを今後期待しているということで、ガイドラインにもそのことを含めて新しい技術への対応が書かれております。

31ページと32ページが実際に2017年にアップデートされたガイドラインの内容になっております。今日全てを読み上げませんけれども、今、申し上げた大きく2つの点が特に新たに追加された内容になっております。太字で示している部分が今までなかった項目で、今回のアップデートで入ってきた内容です。

それから、今回入ってきたアップデートの中には、先ほど申し上げた価格が安い順に表記するということと、新技術への対応ということのほかに独立性という項目になるのですけれども、上から3つ目の点です。比較サイト市場及び電力・ガスの小売市場の成熟度や競争状況を配慮することが求められています。ガイドラインの策定というのは各国がこれから反映してやっていくことになるだろうということなのですけれども、このときに電力・ガスの小売市場の動向だけではなくて、比較サイト市場自体の市場の成熟度とか競争状態ということも鑑みて、公的機関ないし国は役割を担っていくということが明記されています。

32ページに行きまして、項目として新たに追記されたのが将来的な発展という部分になります。これは先ほど申し上げました新技術への対応というところに関連する内容にもなっています。この新たに設けられた将来的な発展という項目ですけれども、この中では比較サイト事業者が技術、スマートメーターだけではなく、電気自動車、新しい価格モデルとかデマンドレスポンス、あとはプロシューマーです。プロシューマーとはプロデューサーとコンシューマをあわせた造語なのですけれども、お客さん自体が太陽光なりを持っていて、これから電気を売る側にもなってくる。そういった需要家の動向やアグリゲーターの存在です。そういった新しいビジネスモデルに対応していくことが今後求められるということが明記されました。

32ページまでが欧州委員会の料金比較サイトの最近の動向の話になりまして、33ページからはイギリスにおける料金比較サイトの認証に関する基準を御紹介いたします。イギリスは認証を希望する料金比較サイト運営者のみに、希望するのであればOfgemが認証手続を行い、そういった認証を受けた比較サイトは、このサイトはOfgemの認証済みですということで、34ページに示していますOfgemのロゴマークをサイト上に表記することが認められています。

イギリスも2017年12月に認証基準を改めました。この背景ですけれども、これも2016年の英国の競争政策当局のレポートが発端になっております。このレポートの中で、やはり需要家の供給者選択行動が問題になりまして、その中で需要家が市場にあるのに安い料金が選択していないということを指摘していたので、それに対応する措置として料金比較サイトの基準の中で何かできることはということで、基準の中に需要家ができるだけ安い料金を選択できるようにといったことを配慮する項目が設けられています。

34ページ、35ページ、36ページが、実際にOfgemが料金比較サイトを認証する際に使っている指標になります。青色の太い字でお示ししているところが2017年12月に新しく設けられた基準になっております。こちらを見ますと、要件1にあるように、欧州委員会と同様に料金を安い順に表示することというのが書かれております。

それから、新しく導入されたメッセージではないのですけれども、この要件1の最後に示したように、比較サイト運営者が小売事業者とのビジネスモデルについて表示することも明記されております。

要件4で支払い方法の明記ですとか、要件5では結果と検索の条件設定ということで、これは読み上げるとちょっと大変なのですけれども、要は、比較サイトの中で需要家が供給者変更手続を行えるのかどうか、そのできるできないを明らかに示しなさいということを書いております。これがどういうことかというのは、後ほど37ページで実際のサイトの事例を見つつ御説明いたします。

要件6でサービスの質であるとか、要件7で正確性と更新です。認証を受けた比較サイト運営事業者は、新しい料金メニューが出たら2営業日以内にそれを反映するようにといったことが求められています。

それから、これは希望する比較サイト側が認証を受けるものなので、当然、監査とモニタリングといったものがあったりします。

要件9の苦情処理、これは恐らくイギリス特有だと思うのですけれども、イギリスはエネルギー事業にかかわらず公共事業に関しまして、需要家が苦情を言うという文化がありまして、そういう国民性だとは思うのですけれども、何か問題があったらすぐに事業者に問題を言って解決してもらうといったことが頻繁に行われている国でもあります。なので、比較サイトにおきましても、この苦情処理があったときには迅速に対応するようにということが求められています。

37ページはU Switchという料金比較サイトで、これはイギリスではかなり昔から使われている比較サイトになりまして、実際にOfgemの承認も長い間受けてきている会社になります。

前のページでお示ししたような各要件がどのようにサイトに反映されているかということなのですけれども、まず、要件1にありましたように、料金が安い順に表示されているということ。それから、37ページの右上にお示ししているのですけれども、サイト上にU Switchのビジネスモデルについて簡潔に表示がされています。ここを読むと、U Switchのビジネスモデルは、消費者が供給者変更手続をこのサイト上でしたときに小売事業者から手数料をもらっているということが書かれております。

それから、要件4にあったような支払い方法の表示がなされています。ここもちょっと印刷がぼやけてしまっていますが「Monthly direct debit」と書かれていて、月額の口座引き落としということが書かれております。

それから、要件5にあったものなのですけれども、このサイト上で選択可能な料金メニューの全体数を明示するようにということが書いてあって、ここでは63ありますということが表示されています。料金比較サイトは、可能であれば市場にある全ての料金メニューをアップしていることが求められるのですけれども、実際にはそうすることが難しいだろうということで、ならば、このサイトだったらば幾つ表示しているのかということを明記するようにといったことが書かれていましたので、それを反映しているものになります。

それから、このすぐ下の枠組みにリンククリックするところがあるのですけれども、そこをクリックすると、37ページの右下のほうに行きまして、別の画面が出てくるのです。この画面では、このサイト上では契約変更手続が不可能な料金メニュー一覧が表示されることになっております。Ofgemの新しく追加したコンフィデンスコードでは、まさにこのことが書かれておりまして、このサイト上で契約変更手続が可能なものを一覧で見せ、かつ、契約変更手続が不可能なものも一覧でワンクリックで見せられるようにということを求めておりまして、それを反映しているものになっております。

サイトの一番下に、要件7にありましたような更新日を記載しておりますというのが、イギリスのコンフィデンスコードと呼ばれる料金比較サイトに求められる基準と、それを反映している状況の御紹介です。

38ページに比較サイトに関する小活ですけれども、欧州、イギリスどちらにおきましても、2017年12月に何を特に新しくしたかというと、需要家がより安い料金メニューの存在に気がつくことができるように配慮することが求められています。

それから、料金比較サイト市場への新規参入を過度に阻まないように配慮する必要があるということ。

それから、料金比較サイト上で利用する想定需要に関するデータについて、今後、スマートメーターの本格的な活用が期待されているということ。

それから、需要家側が電気を消費するだけではなくて、発電したり蓄電するといった機能もこれから多分、担っていくことになると思うので、そういった新しい動向、新しいエネルギー市場のビジネスモデルとの調和を図っていくことも期待されているということが最近の動向になっております。

私からの御紹介はひとまず以上になります。

○古城座長 ありがとうございました。

それでは、御質問や御意見のある方は御発言をお願いいたします。

陶山さん。

○陶山委員 詳しい御報告をありがとうございました。

早速ですが、スライド13にございます競争評価の指標の変遷というところで、この青字で示したものは定量的な指標を表すと書いてありますので、できましたら具体的に御紹介いただけないかということ。

それから、スライド17、イギリスの規制料金に関する小活のところに、3分の1の需要家が供給者変更を検討したことがないということが再規制の一つのきっかけということでお話しいただいたのですが、逆に言いますと、3分の2は変更を検討した、あるいは変更した経験がある市場なのかどうなのかを教えていただきたい。

それから、スライド18にアイルランドの状況について御紹介いただきましたが、この指標の中で既存の事業者の小売部門のブランド変更ということは、日本で言えば一般電力の中のメニュー変更みたいに考えてよいのかと思いますが、それがこの上の行にある10%の中に含まれていないと理解してよろしいでしょうかという質問。

それから、イギリスと同じように、全廃した基準の中で、その市場がまた独占状態になった、あるいは競争状況が確保できていないということが認められたら、再規制というような仕組みもアイルランドの中では持たれているのかどうか、教えていただけたらと思います。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 分かりました。御質問をどうもありがとうございます。

13ページにお示ししたイギリスの定量的な部分での最近の数字ということなのですが、いろいろあるのですけれども、市場シェアの動向でいきますと、日本で言うと10の電力の供給地域があるのですけれども、イギリスはスコットランドも含めて14の地域があります。それぞれ既存事業者の市場シェアというのは大体、当初100%の水準であったものが、自由化が開始して20年の間に2016年の時点で平均値が40%に落ちています。2013年からイギリスでは中小の新規参入者の市場参入がすごく増えておりまして、それは最近、2016年、2017年もかなりの勢いで急増しております。14の地域ごとではなくて、イギリス全体で中小の新規参入者の市場シェアの規模を見てみますと、今、15%まで及んでいまして、この15%という数字がどういう数字かといいますと、イギリスはビッグシックスといって大手の小売事業者が6個ありますが、そのうちの3つの事業者の市場シェアを上回る水準になっています。イギリスではビッグシックスの中で一番市場シェアが低いのが、エヌパワー、スコティッシュパワー、EDFという事業者になるのですけれども、この事業者は今、市場シェアが10%を切っていたり、辛うじて10%ある程度の会社なのですけれども、新規参入者の全英での勢いはすごく大きくて15%ぐらいあるので、この3社を上回る水準になっているというのが今のイギリスの状況です。

あと、供給者変更の動向なのですけれども、これは具体的な数字を出すのは難しいのですが、20年たってイギリスの供給者変更しているお客さんの水準を見てみますと、供給者変更するお客さんというのはどうやら決まっていて、それは価格が高いときも低いときもそうでして、自由化が始まって最初の供給者変更は、イギリスの場合は他の地域の既存事業者。例えば、関東エリアだったら東電を利用していた人が中部電力や東北電力に変えるとか、既存事業者の変更が一番多かったのですけれども、そういった変更をしていたお客さんが最近は、供給者変更をまたやっているのですけれども、そういったお客さんを中心に今度は新しく入ってきた中小の事業者にスイッチングをしているということが言われています。

数字でお見せするのはなかなか難しいのですけれども、供給者変更しているお客さんが何を選択しているかというのをグラフで見てみると、そういった動向が見られています。

○陶山委員 そうすると、この指標というのは、例えば、市場シェアで新規参入が何%を切ったら、あるいは超えたら規制料金を全廃するというような指標ではなくて、モニタリングしているというような感じで見たほうがよろしいのですね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。アイルランドと違いまして、イギリスは基準値を設けているというよりは、全体の推移とか背景を見ているというタイプになります。

○古城座長 13ページで競争評価の視点は定量的な指標から定性的内容に変化しつつあると言っているのですけれども、これは当初は新規参入のシェアがどれだけ伸びたかというのをやっていたのですけれども、大分新規参入者のシェアも伸びたので、もう少し別なことに関心が行ったから、そういうことになっているのでしょうか。それともシェアではだめだということになったのか、同じ関心でシェアを入れ替えたのではなくて、関心が違ったから他のことを。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 どちらかというと、先生がおっしゃったようにシェアに変化が余り見られなくなってきたので、それだけでは競争評価を十分にできないだろうということで、定量的な視点だけではなくて定性的な視点が入ってきたという背景があります。 料金規制を解除したとき、1998年に自由化をして、2002年に解除をしたのですけれども、その4年間は市場シェアも既存事業者がどんどん減っていって、新規参入も増えて、供給者変更率も増えて、かつ電気料金も下がっていった。なので、これらの定量的な指標を見るだけで十分に競争は機能しているのではないかという判断ができたのです。ただ、その後、卸電力価格が上昇したというのが一番の引き金だと思うのですけれども、あと天然ガス価格の上昇ですね。そういったことが引き金になって、市場価格が上昇するようになった。それから、新規参入者も入った人達が撤退し始めて、当初入った、経過措置を解除したときの数ではなくて、ほぼゼロに近い新規参入者の市場シェアといった状況になったときに、ビッグシックス、大手電力会社が寡占状態になって市場支配力を行使しているのかといった議論にもなったのですけれども、実際に小売事業者のマージンを見てみると、必ずしも市場支配力を行使している、独占利潤を獲得している水準にはなっていないということになりまして、ならば、市場シェアや価格の水準だけではない何らかの指標が必要ではないかといった議論になりました。

そこで、必ずしも電気料金の上昇が免れない状況の中でも、需要家の満足度であったりとか、需要家の便益、消費者の効用に何か寄与するようなサービスがなされているのではないかとか、なされているのであればそれを評価しましょうといった議論になりまして、そういったことで新しいビジネスモデルを評価するですとか、需要家とのコミュニケーションを丁寧にしている事業者であれば、需要家の声を聞いたり、効用を上げるために何らかの努力をしているということで評価できるのではないかということで、そういった項目が入ってくるようになっています。

陶山委員の御質問の答えが途切れてしまったのですけれども、17ページの3分の1の需要家が検討したことがないということで、3分の2の需要家は検討したことがあるのかということなのですが、これはそのように読んでいただいていいと思います。何を検討したかというのは、多分、これを答えた需要家によって認識も違うと思うのですけれども、これはアンケート調査の結果なので何とも言いがたいのですが、比較サイトを利用したことがあるですとか、あるいは何らかの契約変更を考えたことはあるよという程度の人かもしれないです。いろいろ温度差はあるかと思うのですけれども、3分の2の需要家は、一応、供給者変更は検討したことがあると。

それから、イギリスは大手電力会社に対するメディアのバッシングが非常に盛んでして、主要な駅のプラットホームなどにはかなり新規参入者が目を引く広告を出して、大手の電力会社を批判するような広告を堂々と出していたりするのです。なかなか日本の国柄とも違うとは思うのですけれども、そういうネガティブな宣伝もしているので、需要家であるイギリス市民が電力が自由化されていることを知らないかといったら、そういうことは多分ないのです。なので、いろいろな温度差はあると思うのですけれども、何らかの形で契約変更を検討したことがあるのが3分の2はいらっしゃるのだと思います。

それから、18ページのアイルランドの件なのですけれども、既存事業者が小売部門のブランドの変更をしていまして、その中に上の独立系2社の10%が入っていないかという点では、これは入っていません。全くの別資本の新規電力会社が2社入っているかどうかというのを見ています。

それから、アイルランドはこれだけの指標をつくった国なので、再規制の検討も一方ではあるのではないかと確かに予想はされるのですけれども、現時点ではそういった議論はされていません。ただし、隣国のイギリスが再規制の動向を見せていますし、そういった世論も入ってくるとは思うので、今後、アイルランドの中で、例えば消費者団体などがイギリスの動向も見て、うちでももう一度再規制を検討したほうがいいのではないかというような議論があれば、そういった流れも起こり得ることはあるかと思いますけれども、現在、私が収集している状況では、そういった議論はありません。

以上でよろしいですか。

○陶山委員 ありがとうございました。

○古城座長 あとはいかがでしょうか。

井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 比較サイトのところで質問ですけれども、Ofgemが認証しているのは11あるということですが、その11のサイトは基本的にどうやって差別化しているのか。どのサイトも料金を安い順番に並べたら11も要らないわけで、例えば顧客評価とか、このサイトのレーティングとかでかなり選択される供給者が変わってくるとか、どこで差別化をして11もあるのかという、その辺がわかれば教えていただきたい。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 どうもありがとうございます。

これは私も、これだけルールが厳しくなっているので、何で差別化するのかというのをいろいろ見てみたのですけれども、結果とかも余り差はないですね。表示されるメニューの数にも大きな差はないのですけれども、今、先生がおっしゃったように、多分、イギリス人なら分かるかもしれないのですが、このサイトのレーティングは信憑性があるですとか、口コミなども各サイトごとに行われているのです。消費者が直接、この供給者を選んで、感想を書いていて、そこのサイトの特色なども多分、本来ならあるのだと思うのです。私が見ていてもぴんとこないのですけれども、多分、このサイトにはこういう口コミがあるとか、何らかの特色が多分あると思います。

それから、電力とかガス料金だけを比較サイトの商品として並べていなくて、U Switchもそうなのですけれども、自動車ですとか保険、旅行とかもあるのですが、そういった商品もこの比較サイトは扱っているのです。なので、もしかしたらそれぞれ得意分野があるのだと思います。U Switchはエネルギーで有名な比較サイトなので、多分、エネルギーに強いサイトだと思うのですけれども、楽天だったらこの商品が強いねとか、そういった認識がイギリスに住んでいる人たちにはあって、お得意な分野でサイトを使い分けているのだと思います。もしかしたら、そのサイト内にもポイントとかがあるかもしれないですね。旅行する人はよくこのサイトを使って、その中で電力も供給者変更しようとかがあるかもしれないです。

ただ、2017年12月にイギリスの認証ガイドラインが厳しくなりまして、それまではもっとあったのです。20は優に超えていたと思うのですけれども、11でもかなり絞られたほうではあると思います。

○古城座長 認証されていない比較サイトは、当てにならないからということで、生き残れないのですか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 私が消費者だったら使わないですけれども。

○古城座長 使わないというふうになっているのですか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 どうなのでしょう。あとはビジネスモデルが違うかもしれないです。Ofgemに認証されなくても、例えば旅行とか商品を並べているので、そちらの分野で稼げるのであれば、電力・ガス分野はおまけの程度につけているかもしれないです。

○古城座長 古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 どうもありがとうございました。

その比較サイトなのですが、当初は消費者団体がしていたのが、途中でEUのいろいろな指令等を受けての改正なのかもしれないのですが、Ofgemに認証権限が移ったというのは何か最初の消費者団体の認証のところで問題があったのでしょうか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 消費者団体のところで問題があったというよりは、2010年に入ってからイギリスの電気料金のメニューの数がすごく増えまして、比較サイト側も網羅するのが非常に困難な状況になり、消費者団体側としても網羅しているかどうかの確認をすることが難しくなりまして、報告義務とかの差だと思うのですけれども、消費者団体が持っている権限とOfgemが持っている権限が違うのだと思うのです。なので、より多くの情報を管轄できるエネルギー規制当局としてOfgemに権限が移譲されたという経緯があります。

○古城座長 どうぞ。

○陶山委員 ということは、最初の消費者団体が認証されていたときから時間としては、やはり自由化の2002年ですか。2010年に入ってから非常に複雑化してきたということで、Ofgemが認証権限で、ここが認証していくということになったのは、そのぐらいの時間がたってからということですか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。2002年から10年とは言わないけれども、10年弱、管轄していました。

○陶山委員 消費者団体からOfgemに移った時期はどれぐらいか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 2010年から2012年ごろだったと思うのですけれども、自由化して10年はたったころだったと思います。

○陶山委員 はい。

○古城座長 この認証は任意なのですね。認証を受けなくてもできるのですね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうです。任意です。なので、Ofgemのガイドラインのほうが欧州委員会よりは若干厳しいと思います。

○古城座長 ちょっと細か過ぎて全体のところがよくわからない。イギリスは経過措置要件というものを廃止するときに、いろいろなことを見たというのですけれども、何を確認して廃止したのでしょうか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 13ページの四角の枠で囲った部分になるのですが、料金水準とか市場シェアとか幾つか見たのですけれども、この中で特に重視された視点は料金水準です。それから、供給者変更の状況、あとイギリス特有の状況ということで、スコットランド地方の状況ですとか社会的弱者への影響というのが特に検討されました。

料金水準を見たときに、スコットランド地方や社会的弱者が選択している料金が低下した、それから、これらの需要家の供給者変更の割合を見ても動きがあったということで、経過措置の解除になりました。

そのほか参入と退出ですとか、参入障壁の有無ですとか、需要家の認識というのは当時見られていたのですけれども、これらの指標はそれほどは重視されていません。特に需要家の認識も当時は項目としてはあったのですけれども、現在ほどつまびらかに調査しているというものではないし、特にボリュームとしてもかなりこのときはまだ小さいボリュームで扱われていました。

○古城座長 普通、競争状態だというときは、既存事業者が料金を上げたら大幅に新規参入者にシフトできる条件があるという場合は値上げ能力がないから競争状態だということになると思うのです。それをどう見たかということなのですが、シェアが幾つまでというのも一つポイントだと思うのですが、あとはスイッチング率とか、新規参入者にシフトされるから既存事業者は値上げ能力がないというのは、何を見てそれを把握したのでしょうか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 具体的な数字の基準がイギリスにはこの時点ではなかったので、この項目のこの数字ですとは言いにくいのですけれども。

○古城座長 数字を聞いているのではなくて、大ざっぱに言うとどういうことか。シェアが幾つまでとか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 恐らく、このときに見ていたのはかなり時系列的なデータを注視していまして、料金も低下する傾向にあった、98年に自由化してから2002年の段階までの間に市場シェアも増えて、料金が低下しているので競争圧力が十分に働いているのだろうと判断したというものだと思います。

○古城座長 燃料費が上がったから、電気料金、ガス料金が上がるのは普通ですね。料金が上がったからといって競争状態がだめになったということにはならないと思うのですけれども。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 私もそのように思うのですけれども、料金が上がったときに、恐らく、一般の方々の認識との差というのもあると思うのですが、投入する費用が上がれば結果として最終的な料金も上がるのですけれども、余りそういった事情が考慮されてこなかったというのもあると思います。

○古城座長 いや、燃料費が上がる以上に料金が上がっているとか、そういうことなら別ですけれども、燃料費を反映して料金が上がってしまったということだったら、別に競争が理由ではないですね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。競争は理由ではないのですけれども、そのときに燃料費の動向が価格に転嫁されるタイミングというのは、実は必ずしも一致していないのです。天然ガス価格や卸電力価格が上がったときに即価格に転嫁されて上がっているかというとそうではなく、それは逆のことも言えて、天然ガス価格や卸電力価格が下がってきているのに、小売価格が下がっていないといった状況もありました。それが2000年以降の状況なのですけれども、そのときにメディアとか一般の消費者保護団体の方々からクレームが出まして、燃料価格が下がっているのに、なぜ価格に即反映されていないのだとか、そういうバッシングがありました。

もちろん、燃料価格をどう価格に転嫁するかは、自由化されている市場では事業者の経営判断で自由裁量で決めていいところなのですけれども、かつ、市場が自由化されていれば、独占利潤をとっているような価格設定をしていれば新規参入者が当然すぐ入ってきて、それは解消されるという機能が働くはずなのですけれども、必ずしもそれが機能していないから市場価格が高いままなのではないかといった議論もありまして、それでなかなか自由化して事業者が自由に価格設定をしていい状況であるにもかかわらず、何らか参入障壁が本当はあるのではないかとか、そういった議論がされるようになった経緯があります。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 12ページのところですが、通常はプリペイドの需要家とクレジット払いとか口座引き落としのときに、プリペイドのお客さんのほうが高い料金を払っているというのが電気もガスもイギリスの場合はそうだったと思うのですが、この標準変動料金の場合、前払い料金のほうが口座引き落としより安いというのはどうしてか。

それから、もう一つ、プライスキャップというのが前払いの需要家に対して適用されているのですけれども、プライスキャップというのは毎月見直されるのでしょうか。というのは、2017年の10月か11月で下がっていますけれども、毎月見直されて、それは日本で言う燃料費調整条項とか原料費調整条項というのがイギリスにはなくて、燃料が下がったときにはプライスキャップで引き下げるとか、そういう仕組みになっているのかどうか。その点が分かれば教えていただきたい。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 分かりました。

最初の御質問は、前払い式よりも標準変動料金のほうが高いのはどうしてか。これは、2017年2月ごろに逆転しておりまして、そこを御覧になっていますね。もともとは前払い式のメーターというのは検針メーターとしてかなり費用のかかるものでして、そういう費用をそのまま積むと市場の中で一番高い料金になるのです。ただし、プライスキャップが課せられるということが明らかになった反動を受けて、実はこの前払い式のプライスキャップの中にはメーター特有の費用が加算されていないのです。なので、今、かけられている前払い式のプライスキャップの水準は、事業者にとってはどうやら赤字が出ているらしいです。これは事業者がそのように報告しているレポートを参照してのことなのですけれども、なので、その赤字が出ている部分が変動料金のほうに転嫁されて、代わり上昇しているという状況になっています。このよう代わりに前払い式メーターのコストが転嫁されてしまった変動料金なのですけれども、ここに今度、プライスキャップをかけようという議論が今、なされているという動向です。

それから、見直しのタイミングなのですけれども、これは年に2回することになっています。イギリスは日本のように燃料費調整条項などはないのですけれども、というのも、規制の決め方がプライスキャップなので、上限を超えない範囲であればどのように価格を設定してもいいのです。なので、事業者としては月々料金を変えることも実は可能です。このキャップは今、一律にかけられていますけれども、実際にお客さんに請求するときには、このキャップの上限を超えない料金水準であればどのような料金メニューを提示することもできるようになっています。ただし、キャップ自体の見直しは、燃料費というよりは需要が大きく影響して変わります。春夏用と秋冬用の水準を設定するといった年に2回の見直しが行われています。

○古城座長 ちょっと初歩的なのですけれども、前払い式のところで競争が進まないのは、前払い式というのはもともと焦げつく恐れがあるからプリペイドカードで払ってくれという形で払ってもらって、それを見るためのメーターがあって、このメーターはスマートメーターと違うから、前払い式にスマートメーターのように工夫した料金を提供するのはできないから放っておかれる。こういうことなのですね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 はい。

○古城座長 いや、前払い式のところで競争が進まないという理由は。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 前払い式のところで競争が進まない理由は、実際には前払い式のメニューを提供できる。

○古城座長 メーターがないからでしょう。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 メーターもないですし、それに対応しますという新規参入者も、なくはないのですけれども、限定される。技術対応が必要なので、それを新規参入する側としては、より多くのお客さんを対象にしたいというモチベーションがあれば、前払い式という特有の分野に特化せずに、より広いお客さんを対象にしたい参入者のほうが多くて、なかなかメニューの数も増えていなかったということです。

○古城座長 数も少ないし、儲けがない市場なので、競争は余り進まない特殊な市場だから、ここは規制料金で部分的な消費者を守ろうという動きになっているということなのですか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 はい。

○古城座長 それは分かったのですけれども、他方、一般の変動料金の消費者にキャップをつけるというのはどういう理由なのですか。ここは競争が進んでいるのですよね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 はい。どういう意味かといいますと、悩ましいのですけれども、これは経済学的な理由が背景にあるというよりは恐らく政治的な背景でして、10ページにお示ししましたけれども、保守党がマニフェストを6月か5月に公示したときに、電力市場に限らず、もちろんマニフェストは世の中全体についてどう変えていくかということを書いてあったのですけれども、その中にイギリスはやはり階級社会なので、項目の一つとしてフェアネスというのがあるのです。公平性というものなのですけれども、社会全体で人々が平等にいろいろな便益を享受して生きていけるようにという項目がありまして、その中の一つにエネルギーの支払い料金という項目が設けられていて、その中で変動料金のプライスキャップをかけますという明言がされたのです。なので、決めたときの背景に何も経済学的な議論があるわけでもないですし、競争評価をしての結果でもないので、そこはなぜかというところはなかなか政治的な判断ですというところだと思います。

○古城座長 ただ、プライスキャップを入れるというのは、政治家は、料金はもっと下がるのに、電力会社は新規電力会社も既存電力会社もあわせて料金を十分下げていないと、こう言っているのですか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。あと、特に変動料金は前払い式のプライスキャップを入れたときに反動で上がった市場でもあるので、このマニフェストが出たときの一般のイギリス国民の感覚としては、最近、電気料金が上がっているから、それにキャップをかけてくれる政策だったらうれしいと思わせる公約でもあったと思います。

○古城座長 小浦委員、どうぞ。

○小浦委員 私は、電力中央研究所さんの説明を聞くのは初めてなのですけれども、ちょっと私の理解が違っていたかなと思うのは、シートの17ページで、イギリスにおいて前払い式メーターの利用者における問題が顕在化したということで、スマートメーターの配備が完了するまでプライスキャップをかけるということで、私は、低所得者の方を保護するというか、社会保障的な意味合いかと思ったのですけれども、今、お話を聞いていると、自由化の競争状態を促進するためということなのかなと受けとめたのですがそういうことですか。

もう一つは、時限措置がかけられていますね。2017年からということで、まだ1年しかたっていないのですけれども、目標は2020年までということで、これは3年間で100万世帯が完了するというような見通しでの3年間という設定なのでしょうか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 どうもありがとうございます。

最初の御質問なのですけれども、前払い式の需要家に対するプライスキャップの目的は、直接的には社会保障、保護という目的があります。というのも、ちょっと丁寧に御説明できなかったのですけれども、前払い式のメーターを設置しているのは低所得者層が利用しているからなのです。そういう意味もありまして、所得水準を鑑みてのプライスキャップということもあり、保護という目的があります。

ただし、イギリス全体の考え方としては、保護を受ける人たちであっても、競争市場の中で供給者選択をすることができる。合理的に判断をしてという言い方を私たちはしてしまうのですけれども、最も安い料金を市場の中で選ぶことができているのであれば、競争市場の中でも十分に便益を得ることができる。イギリスはそういうスタンスで自由化もしてきているのです。なので、本来であれば社会的弱者という人たちも市場に参加することによって便益を受けることができる。そのためのかけ橋をしましょうというのが今の段階になっています。

時限措置の期間なのですけれども、それは御推察されていたとおりでして、2020年までにスマートメーターの設置が完備する。どのような所得層の世帯であってもそれを利用することができる状況になるので、それを利用することによって電力需要、電気の使い方に関するデータもかなり精緻なものがでてくるようになるので、それを参照して、最も安い料金メニューも選びやすくなってくるということで、そこから保護としてプライスキャップを受けていた需要家も、たとえプライスキャップを廃止したとしても、市場の便益を十分に受けることができるだろうという考え方で時限措置というふうになっております。

○古城座長 あとはいかがでしょうか。

松村委員、どうぞ。

○松村委員 質問というよりも確認です。イギリスの状況なのですけれども、発電と小売の関係の間の状況を教えていただきたいのです。これは日本のように、いわばそれぞれの地域の事業者がそれぞれの地域の発電所を押さえて、市場を介さないで内部で抱え込んでいる市場構造だったでしょうか。あるいは卸市場が発達している。小売事業者は、卸市場から仕入れるようになっている市場構造だったのか。どちらに近いのですか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 どうもありがとうございます。

昨今、イギリスの卸電力市場の活性化策というのが進んでおりまして、日本と比べると、また欧州全体の中でもイギリスは市場が流動的であると評価されています。それから、小売事業者の新規参入を促進する目的がありまして、今まで卸電力市場の商品は大きいギガワットアワー、専門用語で申し訳ないのですけれども、大きい需要量単位で商品を作っていたのですけれども、新規参入してくる事業者はそんなにたくさんの需要家をいきなり対象にしない。少ないギガワットの規模で商品の取引をしたいだろうということで、そういう新規参入者向けの小規模な商品も最近は入れています。なので、発電と小売の関係というところでは、小売市場に新規参入する側も、卸電力市場をかなり利用しやすい状況にはなってきています。

先ほど陶山委員の御質問にお答えする過程で、2013年から新規参入者の数がかなり増えたということをお話ししたのですけれども、その増えた背景には、イギリスの卸電力市場でそういった小粒の商品、小規模の商品が出されるようになってきたという背景があります。

○松村委員 商品性が改善されたのは、もちろんとても重要な情報でありがたいのですけれども、そもそも論として、日本だと取引所取引所のシェアがすごく低いですね。だから、ほとんど小売事業者は小売事業として大手なだけではなく、そのエリアで発電事業者としても大手で、ほとんどは内部取引なわけですね。イギリスの場合、2002年当時、つまり経過措置のことが議論されていた当時は同じような感じだったのでしょうか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 イギリスでは、当初は市場で取引を行うようにといった措置がとられていました。

○松村委員 そうですね。強制プールなので、基本的には全部市場経由で、それがさらに使いやすくなるような改革もされているということを御説明いただいたということですね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。

○松村委員 イギリスでこういう議論がされたのは確かにそうなのですけれども、日本と全く状況が違う。もし日本で仮に強制プールだったとして、全量市場経由で出てきていれば、発電と小売りがこれ以上にないほど明確に分かれるわけですね。みんな同じ卸市場の価格で仕入れて売る。こういう状況があったところで、こういう見解が出てきたのと、日本のようなこのような競争基盤がないところでイギリス並みの判断をしてもよいかということは別の問題になると思います。

同じことを聞きたいのですが、アイルランドは相当明確な基準でやっているわけですが、アイルランドの卸市場は日本に近いのでしょうか。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 アイルランドの卸市場については把握しておりません。申し訳ございません。

○松村委員 いえ。ありがとうございました。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 ただ、イギリスも強制プールは今は廃止しておりまして、その後、結局、強制プールの中でもいろいろ問題が生じまして、2000年代後半の状況は全量を出すというような措置はとられていないと思います。

○松村委員 でも、日本に比べてはるかにシェアは高いわけですね。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。どういった商品が実際にあるかということの方が重要になってきています。

○古城座長 松村委員が指摘されたように、イギリスだと理屈の上では新規参入者は供給能力に制約がないわけですね。卸市場で調達できるから。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 はい。

○古城座長 日本では調達できないから新規参入事業者、仮に大手が値上げしても供給できる量は限られてしまうわけですよ。商品供給能力が。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。あと、日本では小売市場改革とは別にベースロード電源市場の改革も進んでいるので、そういった動向と併せて見ていく必要がこれからあるのだと思います。

○古城座長 だから、私が先ほど質問したのは、イギリスで新規参入業者は供給量について制約がないにもかかわらず、経過措置を外すときに何を見てたのかということなのですね。慎重に何を見て、何ができたら経過措置を外すと言っていたのだろうかということなのです。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そういう点では、イギリスでは小売事業者の供給能力とかビジネスモデルがあるのかというのを確認するようになったのは2010年後半になってからでして、経過措置を解除したときにはそういった点は特に注視していない状況でした。

○古城座長 多分、値段が上がったら新規参入者は電気を調達してどんどん供給できるぞというのは、規制当局は当然の前提として認識していたと思うのです。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 そうですね。

○古城座長 あとはいかがでしょうか。

はい。

○陶山委員 10枚目のスライドなのですけれども、イギリスにおいての再規制のきっかけとなったと御紹介いただきました2016年の英国競争政策当局、これについてお伺いしたいのですが、競争政策当局という存在のいろいろな行政機関の中での権限みたいなものだとか、日本に置きかえてみたとき、どこがそのような部署に当たって、その違いがどうであるかというようなことも含めて、少し教えていただければなと思います。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 済みません。イギリスの行政機関の権限の範囲については、実は余り私は専門ではないのですけれども、恐らく、組織としては、日本でいえば公正取引委員会に当たるような、競争状況について分野を問わず扱う部署になっています。なので、エネルギーに限らず、他の産業をすごく見ている部署でして、ここの報告書でもよく使われていた表現は、電気事業とガス事業は他の市場と比べてかなり特殊であって、競争評価も一般的な市場シェアとか料金水準を見ているだけでは問題であって、この市場特有の何らかの指標を用いることが必要だという言い回しが何カ所が出てくるのです。なので、いろいろな産業を競争の促進という観点から扱っている部署です。

日本の公正取引委員会と権限の範囲がどのぐらいかというのは、ちょっと分からないです。済みません。ただ、日本だと適正取引ガイドラインを公取と経産省が合同で出したりするのですけれども、イギリスではそういうことはしていなくて、少なくとも2016年のCMAのレポートが出たときのCMAとエネルギー規制当局であるOfgemの関係は、上下関係と言ってしまっていいのかあれなのですけれども、CMAのレポートの中にOfgemはこういう項目を対応するようにと書いてあって、Ofgemはそれに対応しなければならなかったのです。なので、そういった役割分担というか権限の違いがあって、そこは日本とは少し違うかもしれないですね。合同で何かをするというものではないと思います。

○古城座長 そろそろ時間が参りましたので、ほかにございませんでしょうか。

古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 ありがとうございます。

21ページに欧州各国の電気料金の変化率と要因というところで、事業者の経営の影響を受けない公租公課の変化率というのを黄色でお示しいただいているのですけれども、公租公課の上昇というのは具体的にはどういった影響を与えているのでしょうか。内容と影響を教えてください。

○一般財団法人電力中央研究所澤部主任研究員 これは再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入による上昇が主な要因として述べられています。

○古城座長 ほかはよろしいでしょうか。

それでは、本日の質疑応答は以上とさせていただきます。

澤部主任研究員におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。


≪3.閉会≫

最後に、事務局から連絡事項はございますか。

○丸山参事官 本日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回の会合につきましては、確定次第、御連絡をさせていただきます。

○古城座長 それでは、本日はこれにて閉会させていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)