第14回 成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2017年1月10日(火)13:30から14:20

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
樋口座長、池本座長代理、河上委員長、大森委員、増田委員
【オブザーバー】
後藤専門委員
【消費者庁】
福岡審議官、河内消費者政策課長
【法務省】
中辻参事官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 取りまとめに向けた検討(4)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、時間になりましたので、会議を始めさせていただきます。

本日は、皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

ただいまから「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ」第14回会合を開催いたします。

議事に入ります前に、配布資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料につきましては、議事次第下部に配布資料一覧を記載しております。不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、樋口座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.取りまとめに向けた検討(4)≫

○樋口座長 それでは、早速、本日の議題に入らせていただきます。

取りまとめに向けて検討しておりました「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ」報告書案について事務局から説明をいただいた上で、御検討いただくことにしたいと思います。

まずは、資料1について、事務局から御説明をお願いいたします。

○丸山参事官 資料1としては2種類御用意させていただいております。「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書(案)」ですけれども、資料1-1につきましては見え消しのところが溶け込んでいるバージョンになっております。

資料1-2につきましては、前回12月27日に私どものほうで御提示させていただいておりました案からの修正状況について、見え消し版という形で記させていただいているものでございます。

本日は見え消し版を基に、27日の時点からどのような形で報告書が変わったのかということについて、事務局からお話をさせていただきます。

まず1ページ目を開けていただきますと、左側は目次になっております。構成につきましては、従前から事務局で御提示をしております目次につきまして、特に変わっておりません。そちらは御覧になっていただければと思います。

次に、資料の1ページ目を御覧ください。「はじめに」と書いてある部分で、若干3カ所ほど修正がある箇所がございますけれども、こちらについて文言上の修正ですので、中身については特に実質的なことについて変わるようなものではございません。

ページを飛んでいただきまして7ページ目を御覧になっていただければと思います。こちらの最後のパラグラフで修正箇所がございます。こちらについては、消費者庁からの意見の求めについて、具体的な引用の箇所が書かれていたわけですけれども、そういったものについては掲載の必要が特にないだろうということで、こちらを削除ということ。それ以外については、文言上の修正という形で対応させていただいていますので、実質的な修正についてはないかということで考えております。

8ページの「望ましい対応策」の「1.若年成人の消費者被害の防止・救済のための制度整備」のところです。まず(1)消費者契約法を御覧になっていただければと思います。

8ページ目の柱書きの部分でございます。若年成人に配慮すべき義務を明らかにするとともにと書いてありますけれども、こちらは、従前、下のア、イの順番について、若年成人に対する配慮に努める義務と、不当勧誘に対する取消権という形で整理をしておりましたので、そちらの記述の順番に合わせて記述ぶりを修正させていただいたものでございます。それ以外については、文言上の修正という形になっております。

「ア 若年成人に対する配慮に努める義務」でございますけれども、理由につきましては、ワーキング・グループの検討の対象について若年成人となっておりますので、従前、消費者と記述しておりました部分について、基本的には若年成人という形で修正しているということ。それから、8ページのところについては、若干文言上の修正もしております。

9ページ目を御覧になっていただきますと、下線部分でかなり修正している箇所がございます。これは、従前、暴利行為ルールからのアプローチということで、ワーキング・グループで潮見先生からヒアリングをさせていただいたときに、暴利行為からの立論ということで配慮義務についてのお話をさせていただいたのですが、単純にここでは暴利行為のルールからという形にさせていただいておりましたものを、きちんと中身を丁寧に説明したほうがいいということで、こちらについては修正をさせていただいているということでございます。

2つ目のパラグラフ、「さらに」の後で、「なお」という形で記させていただいている部分があるかと思います。こちらについては上述の事項について把握することが困難と書いてありますけれども、それは上の「さらに」のところのパラグラフの真ん中あたりから「そのため、消費者の年齢、消費生活に関する知識及び経験、消費生活における能力に応じて」云々と書かれておりますけれども、こういった事項について把握することが困難ということで、事業者の立場があるということも御指摘等あったことも踏まえまして、こういった点について留意する必要があることについて加え、盛り込ませていただいたものでございます。

その後「そこで」以降のパラグラフのラストのほうについては、事業者が努める規定の必要性等について、消費者契約法専門調査会等において、別途検討することが望まれるという形にしております。従前は、別途検討することが望まれるという形で記述しておりましたが、やはりどういった場で検討するのか明示したほうがいいだろうということで、消費者契約法専門調査会等で検討することが望まれるという形で明記させていただいたものでございます。

9ページ目の下段「イ 不当勧誘に対する取消権」ですけれども、下のところについては文言上の修正になっております。

10ページ目以降につきましては、先ほど配慮義務についてもお話しさせていただいたように、こちらのワーキング・グループの対象にしているものが若年成人という形で整理させていただいたこともありますので、こちらの文言について若年成人という形で整理をさせていただいたことは、10から11ページにかけて記させていただいております。

ページをかなり飛びますが、15ページの「3.消費者教育の充実」を御覧になっていただければと思います。こちらは「ア 消費者教育の機会の充実」で、生活科・総合的学習云々というところについて記述がなくなっておりますけれども、上のほうの家庭科、社会科等においての以降で「また、教科横断的な視点から教育課程を編成するなど消費者教育の系統的、体系的に着実に取り組むべきである」ということで、実質上同じようなものも書いてあるので、こちらについては削除とさせていただいております。

16ページでございますけれども、先ほど申し上げました教科横断的な視点からの教育課程を編成して消費者教育の推進を図るべきということについて、具体的な中身といたしまして、「消費者庁は、文部科学省と連携し、効果的な取組事例の紹介を行うべきである」ということで、具体的な施策について書いているということでございます。

その後に「学校においては」という形で、学習評価は行われているもののと書いてありますけれども、これは高校が終わった段階でトータルに見たときに、消費者教育についての効果についてはなかなか計りがたいということがあるのです。ただ、小学校、中学校の各単元のところの学習評価はきちんと行われているということですので、念のため、こちらについて記させていただいているものでございます。

17ページを御覧になっていただきますと、いわゆるクラスの中で成年に達する生徒が出てくるということで、「このため、消費者被害の防止の取組など、集団や社会の一員として果たすべき役割や責任に関する指導の充実を図るべきである」という形で記させていただいております。これは、前の提案内容と同じような表記の仕方にしているということでございます。

17ページ「イ 消費者教育推進のための人材開発」でございますけれども、こちらについては初任者・中堅教諭等の研修につきまして、自治体部局等が作成する消費者教育に係る資料の活用を促すということで、教育委員会等へ働きかけるべきであるという形で文言上の整理をしております。

理由についても、同様の形で、消費者庁は文部科学省と協力をしながら教育委員会等に働きかけるという形で記載しているというものでございます。

少し飛びまして20ページについては、記載事項の整理ということ。

21ページにつきましては、具体的には教員養成課程の話でございますけれども、提案内容については大学等に消費者教育の重要性を認識してもらうよう働きかけるべきであるという形で記載しているとともに、理由については、具体的に、消費者庁は文部科学省と協力して認識してもらうよう働きかけるべきという記載をしているものでございます。

少し飛びまして、23ページの「エ その他」で、いわゆる「マインドコントロール」についての調査研究ということを書いておりましたけれども、ここではもう少し幅広く、大学生等が被害に陥りやすい心理的な背景ということで、「マインドコントロール」等という形で記載をした上で、調査研究を行うべきであると記載をしております。理由についても、ほぼ同様の内容で記載をしているということでございます。

28ページの「5.事業者の自主的取組の促進」を御覧になっていただければと思います。こちらでは「若年消費者」と表記をしていたのですが、中身については未成年者と若年成人ということがあったのです。新しく概念を若年消費者と記すよりは、従前からの未成年者と若年成人という形で記載をそろえたほうがいいだろうということで、こちらの部分についてはそろえさせていただいたものでございます。

29ページについても、ほぼ同様の修正をしているということでございます。

30ページの上部で、事業者からの自主的な取組の例という形で紹介をさせていただいておりますけれども、3ポツ目のところについて、少し具体的な中身についてヒアリングに沿った形で修正させていただいているものでございます。それ以外については、若年成人等という表記のそろえになっているということでございます。

報告書の修正点については以上でございます。

それ以外に、付録ではございますけれども、参考資料1といたしまして、消費者庁から9月1日時点で長官名で消費者委員会委員長宛てに、対応策について意見の求めがあったという文書。

参考資料2で、本ワーキング・グループの設置・運営規程。

参考資料3といたしまして、本日までの審議経過を付録として記載させていただくとともに、最後に構成員名簿という形で記させていただいております。

報告書の中身については、以上でございます。

それ以外でございますけれども、配布資料といたしまして参考資料1から3という形で配布させていただいております。こちらにつきましては、前回12月27日以降に消費者委員会で受け付けました当ワーキング・グループの報告書(案)・検討内容に関する意見等の写しという資料となっておりますので、御紹介させていただきます。

説明につきましては、以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。

それでは、意見交換を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は、御発言をお願いいたします。

大森委員、お願いします。

○大森委員 若年成人という考え方に対して、ワーキング・グループの勇み足ではないかというような御意見もたくさんいただいたのですけれども、私はむしろ、これはワーキング・グループの成果だと思っています。

ヒアリングの中で、今の若者たちがなかなか成熟できないという現状が見えてきました。先生方のお話によると、成人した息子のカードの負債を平気で肩がわりする親がいる。いつまでたっても自分でお金をコントロールできない。一方、子供の収入を当てにして、子供も親がどんどん使うので、使われないうちにと逆に浪費に走ったりする。どちらも、なかなか親と子のもたれ合いがあって、お金をコントロールできない現状がある。

そういう中で、やはり一定の年齢になったらすぐ成人だということが難しいという考え方が生まれたと思います。甘やかして何でも許すのでもなく、また、再起不可能なほどダメージを受けるでもなく、社会全体が若者が成人するように育てていかないといけないという事実が見えてきて、あえてこの若年成人という言葉、考え方が生まれたことは、私はワーキング・グループの成果だと思っています。

ですので、若者が成熟した成人として社会に参画できるようになるために、社会全体が支援していくという考え方が大事だと思いました。

○樋口座長 ありがとうございました。

ほかに、いかがでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

今回の資料1-2の見え消し版の、先ほどの御説明の中でもありましたが、いろいろな箇所について修正を加えております。これは昨年来ヒアリングの過程でも様々な意見をいただき、その後、とりわけ事業者側からもいろいろな意見をいただいたものを踏まえて、あちこちに誤解を避けるように記述されたものだと理解しております。

その意味で、一点だけ、今日配布されたものに関連して少しコメントをさせていただきたいと思います。

参考資料3ということで、日本通信販売協会から提出されているものがあります。インターネットなどで顧客の若年成人への配慮を義務付けられたとしても、通販業界は遵守できない。もしそういう規定が入るのであったら適用除外とすべきであるといった意見が出されております。

この点については、前回あるいはそれ以前にも何度か、私もですがワーキング・グループの他の委員からも発言したかと思うのですが、やはり提言の趣旨を正しく理解していただいていないと言わざるを得ません。

この参考資料3に書いてあるように、インターネットで注文を受けるときに、年齢、性別、知識、経験、資産、収入などを注文画面に入力してもらわなければいけない、そんなことはできないとか、電話で申し込みを受けるときにオペレーターがこれらを聞き出さなければいけない、それはできないというような記載がありますが、年齢、知識、経験などの調査義務を定めるという意味ではないことは、以前から繰り返し議論してきたはずです。

例えば、子供向けのゲームを提供するサイトなどで、最初にアクセスする画面で年齢を確認することはもちろんあるでしょうけれども、利用について分かりやすい言葉で注意書きを出すとか、あるいは若年者向けの商品なり情報なりを提供するときに、一定の注意をするという配慮の義務、努力規定ですから、何か情報を得ていないことについてペナルティーが科されるという性質のものではありません。その意味で、何か配慮義務が入ることで業界が成り立たなくなるかのような議論は、少し誤った議論の立て方であろうと思います。

そうは言っても、例えば今日の報告書(案)、資料1-2の見え消し版でいうと9ページのところで、そういった誤解も避けなければいけないということで、ちょうど真ん中あたりに追加した文言として「なお、事業者は事業形態上、上述の事項について把握することが困難であることもあり、こうした点に留意する必要がある」。つまり、あくまでも情報収集が困難であることは踏まえた上での努力義務として規定し、運用していくということも加えて、こういった業界におけるあらぬ誤解を招かないようにしていくことは、もちろん必要だと考えます。これはその意味で追加したものだと理解しています。

しかも、今、消費者契約法専門調査会が開かれていて、幾つかの論点があるので、この配慮義務の問題はまだ正面から具体的な検討は十分できてはいないのかもしれませんが、せっかく検討の機会があるわけですから、そこで早急に検討していただきたいという意味で、専門調査会で検討することが望まれることも明記しているところです。

8、9ページもそうですし、10、11ページあたりで消費者という言葉を若年成人という言葉に置きかえてあります。今回のワーキング・グループでの報告書が、もともと成年年齢引下げに伴って新たに成年になる18、19歳についてどうかということを出発点として議論しましたが、年齢で画一的に線引きするのではなくて、若年者の知識、経験などをどう受けとめ、どう考えていくかということが大事なのだということが議論の出発点にありました。

そのことは、先ほどの9ページの追加した、事業者は把握が困難であるという言葉の下の、前からある文章ですが、若年成人が真に自由な自己決定をする前提として、社会全体で若年成人が成熟した成人になるよう支援するためにどうするか。消費者の年齢とか社会生活に関する知識・経験・能力に応じて適切な形で情報提供をすることが必要である。

そうすると、これは年齢の要素よりは若年成人という新しい概念を一つ設定して、そういう方に対しては社会全体としても支援しつつ、構成員として迎えるということが、今回のワーキング・グループの提言の一つのコンセプトになっています。その意味で10、11ページは、つけ込み型勧誘に対する取消権に関するところですが、そこも若年成人という言葉を入れてあります。

ただし、11ページの、その議論の最後のところですが、中ほどで特定商取引法の議論に入る直前のところですが、実は消費者契約法専門調査会では、こういう若年成人に絞って規定を置くかどうかではなくて、消費者一般に対して、判断力不足等につけ込む勧誘について取消権をどうするかということで議論されている。何も、私たちがその対象者を絞ることではなくて、いわば若年成人については法的な措置が必要な一つの立法事実がここにありますという意味でこのワーキング・グループとしての提言を出すのです。そのことも踏まえつつ、どういう範囲にするか、若年成人に限定しない規定の在り方も含めた検討をお願いする、ということはその意味で、何も無理やり絞ってくれという趣旨ではないと理解しております。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

ほかに、いかがでしょうか。

増田委員、お願いいたします。

○増田委員 今回の報告書では、若年成人に配慮すべき義務を明らかにするとともに、つけ込み型の取消権の考え方として、若年成人ということに絞って記載しておりますけれども、消費者契約法専門調査会においては、配慮義務も含めて、また年齢にしぼることなく、検討していただく方向でお願いしたいと思います。

この報告書の成果として私が思うところは2点あります。消費者契約法や特商法に関してのほかに、事業者の方々からヒアリングを受けて、その中で既に自主規制を実施しているところがあり、また、今後18、19歳が成人となる場合の配慮もすべきであるという御発言もいただきました。そういうことが、この報告書の中で明らかにされていることが一つの成果ではないかと思います。

そして、この数年、文科省と消費者庁が連携すべきであるということが言われ続けておりましたけれども、どのように連携するか具体的な例示が報告書の中が明記されたことも一つの成果ではないかと思います。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

後藤委員、お願いいたします。

○後藤専門委員 報告書の目次を見ると分かるのですけれども、まず第1に「現状と課題」が指摘されていて、次に「望ましい対応策」という項目で、1として「若年成人の消費者被害の防止・救済のための制度整備」、2として「処分等の執行の強化」、3として「消費者教育の充実」、4として「若年成人に向けた消費者被害対応の充実」、5として「事業者の自主的取組の促進」、6として「その他」となっております。

成年年齢の引下げに伴う課題や対応策について、総合的、網羅的に取り上げられていることは、今回のワーキング・グループの大きな成果だと思います。

従来も、高齢者被害と並んで、若者の被害についても注目されることはあったわけでありますけれども、成年年齢引下げをいわば契機としまして、先ほどから委員の方々が指摘なさっているような若年成人という形での幅のある救済・保護を考えていく。こういう方向が出てきたことは、このワーキング・グループで特にヒアリングを積み重ねて、各界からの意見を十分にお聞きし、検討内容に対する意見もたくさん寄せられましたが、それについても配慮、対応するという形で報告書ができ上がったことの成果といえると思います。そういう意味で、この報告書が今後の成年年齢引き下げ対応についての大きな指針となればと思っております。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

ほかに、いかがでしょうか。

河上委員長、お願いいたします。

○河上委員長 今回の意見書に関しては、事務局が休日返上で調整を頑張ってくださったということで、感謝しております。

恐らく、我々が認識しておかないといけないことが幾つかあって、一つはこのワーキング・グループの報告書は、昨年の9月1日に消費者庁の岡村長官から我々に意見聴取があったものであって、その際の報告書の一つの取りまとめの目安が年内にということだったということであります。これは、かなり時間的には短いもので、これをまとめるためには専門調査会を立ち上げて、通常の手続のようにしながら答申をまとめるということは不可能だと判断いたしました。

そのときに真っ先に考えましたことは、成年年齢の引下げが法務省における法改正の提案の時期がいつなのだろうということとの関係であります。もしも、今年の通常国会に出すということであれば、これはかなり急いでまとめないといけないと思いました。その意味では、専門調査会のような形ではない形で作ったものではありますけれども、しかし従来のうちのワーキング・グループでの報告書とはかなり性格は異なることは、認識しておかないといけないと思います。そうでないと、今後ワーキング・グループで何かをやろうとしたときに、いろいろな形で難しい問題が起きる可能性がありますので、これはかなり特殊な、答申並みの審議を要求されていたものだと。しかし、時間的にはかなりタイトな予定の中で入ったのだということが一つであります。

第二点ですけれども、そこで調整をするということが生じてしまったわけですけれども、その調整の過程でいろいろな問題があって、元の考え方に対して少し引いたのではないかという印象を持たれた方が多いかと思います。今日いただいた意見書の中の一つでも、国民的コンセンサスが得られていないの何のというようなことを書いてあるけれども、それはおかしいのではないかという逆の御意見もいただきました。他方で、事業者の方々からは、国民的コンセンサスを得ていないで、長官からの諮問の内容を逸脱しているのではないかという言い方もされていたわけであります。

私は、この国民的コンセンサスという言葉に違和感があって、本当はこのような言葉を使いたくないとずっと思っておりましたが、結果として1ページ目に2カ所、7ページ目に1カ所、くどいだけでなく、内容が極めて稚拙な形で文章が入ってしまっていることについては、実は余り満足していない部分がございます。

しかし、調整の結果このようにしてでき上がったということなので、これ以上は申しません。けれども、その手続や方向性に対するいろいろな懸念が示されて、その点について、これは先ほど委員からも指摘がありましたけれども、特に事業者の方々の報告書そのものの考え方に対する理解の問題であったり、我々が哲学として打ち出そうとしたものに対して、これが制度的な提案であるという前提で、疑心暗鬼で語られているものもたくさんあります。そうした事業者の方々の懸念を払拭するために、今後、丁寧に御説明をする必要があるのだという意味で、国民的コンセンサスという言葉があるということを御理解いただければと思います。

国民的コンセンサスがなければ何も言えないとなると法律になっていないと無理だということでありまして、国民的なコンセンサスを今から得よう、法律の中で制度化しようということが趣旨ですから、コンセンサスがない以上は何もできないということはあり得ないと個人的には思っております。

それから、若年成人の幅に関しては、私は前回もかなり強調いたしましたし、今もこの点についての説明がありまして、ワーキング・グループとしてこういう考え方を背景にして議論をすることを哲学として考えたということで、一応、制度論とは切り離して考えていることは前回もお話ししたところであります。

ただ、全般に意見書のスコープが今後、拡張していくのではないかという懸念があったということで、そういう懸念に対して対応するためには、若年成人という言葉の使い方について、かなりこの文章の中で調整を必要としたことも御理解いただければと思います。

文章を一つ一つ見ていけば、変だなと思うところは確かにあるのですけれども、しかしそういうところが、これまで出てきたいろいろな御意見に対する配慮であるということを御理解いただければと思います。私も、意見としていただいたものを一つ一つ隅々まで精査いたしました。その上で、これで対応していただくことができれば問題はないということで、こういう意見書にまとめたということであります。

もう一つ、この意見書に関して注意しないといけないことは、消契法の専門調査会とのバッティングであります。消契法の専門調査会でも似たような形で、例えばつけ込み型の勧誘行為についての審議をしております。これは重なっているのではないかということで、両者は混乱してしまう可能性があった。この点に関して、消契法は、例えば高齢者などの脆弱な消費者一般を前提とした包括的な民事ルールを考える方向で進んでいるわけでありますけれども、しかし専門調査会の方々が若年成人問題にも強い関心を示したこともあって、両者の調整が必要であることが考えられるようになったということであります。この点についての配慮も文章の中で明らかにしております。

特に問題になりそうなことは、情報提供に関する年齢等に対する配慮義務の点でありまして、この点については、従来の優先的な検討事項の中に入っていないこともあって、様々なところから御意見をいただきました。しかし、少なくとも若年成人に関しては必要だという考え方で意見をまとめております。もしこの意見を尊重していただくとすれば、契約法の専門調査会においてもこれを議論していただくことを改めてお願いしないといけないと考えているところであります。

全体として、若年成人に関してどういう対応が必要かということについての包括的な意見書としてまとまった。特に、若年というところを一定の幅を持って考えながら、それぞれの制度の中で具体化していく必要があるのだということを示せたということについては、この報告書の大きな意義の一つだろうということでございます。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

ほかに、御質問等ございますでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 この報告書の内容についてというよりは、この報告書を提出した後、それを受けとめた消費者庁あるいは法務省としての対応についての期待を込めて意見を申し上げたいと思います。

昨年の秋以降の特に事業者関係からの意見書が出てくる中で、制度的な措置について国民的コンセンサスを得られていないということが多用されたことが、先ほどから話題になっております。

私たちは、消費者庁からの諮問で成年年齢を引き下げた場合の若年者、18、19歳の方々への保護についてどうするか、まさにそれは法的措置が必要ではないかという前提で、しかもそれは平成21年の法制審議会の意見も、年齢引き下げは適当だけれどもそれに伴って消費者被害が増大するおそれがあるから一定の法的措置が必要である、検討が必要だという意見があり、それを私たちも受けとめました。そしてヒアリングをした結果、必要であるということで、消費者教育の面もですし、こういった法制度的な措置も必要だということで意見を出してきたところ、その法制度的なところについてコンセンサスが得られていないということが繰り返し言われているわけです。

ただ、例えば平成20年の世論調査、平成25年の世論調査で、世論調査の結果を見ると、成年年齢引下げそのものについての反対意見のほうが圧倒的に多いし、一定の制度的措置を講じても、それでも疑問だという意見のほうが多いのです。若干ですけれども、平成20年から25年に向けて減るどころか逆に不安が増えているような状況の中で、まさに成年年齢引き下げそのものについて国民的コンセンサスは大丈夫なのだろうかという不安があるわけです。そういうことも含めて、引下げをする以上、少なくともこういう措置を講じる必要があるのではないかということで、確信を持って意見を出したわけです。

その意味では、今回の報告書の基本は、先ほども少し触れましたが、9ページの中ほどの、成年年齢を引き下げて若年者を社会に迎えるということは、社会全体で若年成人が成熟した成人になるように支援する法制度をこれから構築するかどうか。成年年齢引下げと支援とをセットで、こういうことをするのかどうかだろうと思うのですが、そのことの国民的コンセンサスをとっていただきたい。世論調査も一つの方法でしょう。何も5年ごとである必要はない。ここだけ特出しでやってもおかしくはないでしょうし、それだけ重要な、明治以来100年の制度を変えるわけですから、ここについてはきちんとまさに国民のコンセンサスを確認する。国民的コンセンサスという言葉ではないのかもしれませんが、世論の動きもきちんと踏まえた上で、制度設計を考えていただきたいと思います。

以上です。

○樋口座長 よろしいでしょうか。

ありがとうございました。御意見等、いろいろいただきましたが、今回お示ししました報告書の内容で御異論はなかったものと思いますので、この内容で報告書を取りまとめたいと思います。

私も一言、感想を申し上げれば、国民的コンセンサスの張本人ですが、委員長からお叱りを受けましたけれども、私は今回のワーキング・グループの性格として、委員長からもお話がありましたが、18、19歳の方々をどう取り扱うかということはかなり基本的な問題でありまして、事業者の方も消費者の方も学校の教育関係者も一致して一つの方向を作らないと、それは逆に支援をしないということになってしまうおそれがあります。そういう意味で、余りいい言葉が思いつかなかったものですから委員会の中でそう申し上げましたが、いずれにしましても、このような形で一応報告書を取りまとめることができましたので、本委員会のほうに報告をしたいと思っております。

なお、「てにをは」等の形式的な字句の修正につきましては、座長である私に御一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

ありがとうございます。

本日の審議は以上となりますが、最後に事務局から事務連絡をお願いしたいと思います。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日の取りまとめまでの間に、座長及び構成員の方々、それからオブザーバーの皆様方におかれましては、多大な御尽力をいただきましたことを感謝申し上げます。

事務局から改めて感謝申し上げる次第でございます。

以上でございます。

○樋口座長 それでは、これにて閉会させていただきます。

皆様、どうもありがとうございました。

(以上)