第12回 成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2016年12月20日(火)16:00から17:30

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
樋口座長、池本座長代理、河上委員長、大森委員、増田委員
【オブザーバー】
後藤専門委員
【消費者庁】
福岡審議官、河内消費者政策課長
【法務省】
中辻参事官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 取りまとめに向けた検討(2)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、時間となりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

ただいまから「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ」第12回会合を開催いたします。

本日は所用によりまして、増田委員が遅れての御出席との連絡をいただいております。

議事に入ります前に配布資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料につきましては、議事次第下部に配布資料一覧を記載しております。

なお、参考資料1から4につきましては、12月6日以降に消費者委員会事務局に寄せられました民法成年年齢引下げに関する要望書・意見書等の原本の写しとなっております。もし不足の資料等ございましたら、事務局までお申しつけいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、樋口座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.取りまとめに向けた検討(2)≫

樋口座長 それでは、早速、本日の議題に入らせていただきます。

取りまとめに向けた検討として、成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書案について事務局から説明いただいた上で、御検討いただくことにします。

まずは、資料1について事務局からの御説明をお願いします。

○丸山参事官 お手元の右上に資料1と振られている資料があるかと思います。「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書(素案)」となっております。こちらにつきましては、1週間前に骨子という形で事務局から御提示させていただきましたが、そちらを基に、また、そちらの骨子での議論を踏まえて事務局で肉付けさせていただいたものでございます。ただ、見ていただければお分かりのとおり、まだこちらの報告書について全体がそろっているということではございません。まだまだ途中段階のものでございますので、委員の皆様におかれましては、本日、こちらの素案をもとに、更に御意見という形でお出しいただければと考えております。

また、最初にこちらで若干言い訳めいたことですけれども、御留意点について申し上げますと、報告書の中で斜体字かつ小さ目の字で記載されている箇所がところどころあろうかと思います。こちらについては、大変恐縮ですけれども、我々事務局でまだ検討の熟度が高まっていないということですので、こちらで御用意させていただき、御提示させていただいている本文の平文のところよりも更に少し事務局で迷っているところでございます。こういった点について、もし委員のほうで、ここはこういった方向で行くべきだというような御意見等があれば、こちらについても更に重点的に御意見をいただければと考えております。

それでは、こちらの中身について説明させていただきます。

構成につきましては、骨子で説明させていただきましたように、第1の「現状と課題」と第2の「望ましい対応策」、本日御用意させていただいております資料では5ページ以降となっておりますけれども、こちらの2部構成となっております。

まず第1の「現状と課題」ですけれども、「1.若者の実態と課題」という形で記してございます。こちらの概略を述べさせていただきますと、まず1パラ目では、成熟した成人期への以降の課題ということで、これはヒアリングのところでありましたけれども、移行のプロセスが長期化しており、かつ、個別化・多様化・流動化していることですとか、あるいは家庭環境によりまして、親が長期にわたって子供を保護し、仕送りなどの経済的な援助をする家庭がある一方、家庭からそのような援助を受けられない若者も増加しているといったこと。

それから、若者が置かれている環境とか、あるいは知識・経験・判断能力等によって必要な対策は様々であって、単純に年齢のみで画一的に処理することは若者の実態と合っていない面があるのではないか。また、18歳という年齢は多くの者にとって高校を卒業し、大学に進学したり、就職したりするなど生活環境が大きく変わる時期ということで、例えば大学に進学して親元を離れてひとり暮らしを始めると扱う金銭の額が大きくなるということで、消費者トラブルに遭う場合は被害も大きくなるということについて書いております。

また、クーリング・オフという文言についても、正確な知識がないために被害に遭ってしまうといったことなど、適切な判断ができないことなどについての指摘も書いております。

他方、この年代については、就職活動ですとか教育実習など社会と接点を持つ活動を体験すると、急速に成長するということについての指摘もあったことを記しております。

次のページに行きまして、こういった若者に対して、全て自己責任ということで責任を負わせるのではなくて、回復不能なダメージから保護をしつつ、段階的に経験を積んで成熟した成年に成長することができる社会環境を整備して、若者の成長を支える必要があるのではないかということで、こちらについては整理をしております。

「2.若年者の消費者被害の動向」ですが、国民生活センターの報告によりますと、若年者、18から22歳の相談の傾向といたしまして、以下のような特徴が見られるということで紹介しております。

まず、18、19歳と21、22歳の相談件数を比較すると1.4倍ということで、増加の傾向が見られる。成年直後に勧誘などを受けるということで、成年になることが消費者被害に遭う一つの転換点になっている事例があるといった点について紹介しております。

二つ目のポツですけれども、個別の商品・役務の内容を見てみると、20から22歳で相談件数が多いものとしては、男性はマルチですとかフリーローン、サラ金等、女性についてはエステ、医療サービスが特徴的となっていることについて述べております。

次のポツですけれども、契約購入金額の平均についても、18、19歳と比べて20から22歳以降については増加が見られる。これは、成年となることで親権者の同意なくクレジットやローン契約ができるようになることが原因の一つとなっていると考えられることを書いてございます。

「また」以降につきましては、東京都消費者生活総合センターからの報告について記しておりますけれども、こちらでは、例えば教養娯楽教材ですとかタレント・モデル養成教室等々の事例が報告されているということ。それから、このような若者消費者被害の特徴として、法的知識や社会経験が乏しいところにつけ込まれる、契約についての知識が不足している、適正な金銭感覚が身に付いておらず安易に借金により高額な契約代金を支払いする、SNSがトラブルのきっかけになっているといったことについて、指摘ということで記しております。

次に、3ページの「3.若年者保護のための具体的措置に関する制度の現状」ということで記してございます。

(1)は民法でございます。これは現行民法のところで、未成年者取消権により取消すことができるということについて記してございます。

(2)の特定商取引法ですけれども、第7条第2号で「老人その他の判断力の不足に乗じ」云々ということで、売買契約または役務提供契約を締結させることが指示対象行為とされている。しかしながら、未成年者、それから成年直後の者が対象となるかは規定の文言上、明らかになっていないといったことについて紹介をしてございます。

(3)は貸金業法ということで、現行、返済能力の調査ですとか過剰貸付け等の禁止等々について、こちらに整理して記載したいと考えております。

(4)の割賦販売法でございますけれども、1パラ目については、年収等の確認による支払可能見込額の調査が義務付けられているといったことですとか、他方、年収額は自己申告であるといったこととか、包括クレジットの場合には極度額が30万円以下の場合には原則として調査義務が免除されているといったことについて記してございます。

次に、4ページ目の「4.消費者教育における現状と課題」でございます。

まず1パラ目ですけれども、消費者教育については、児童・生徒に対して発達段階に応じまして、小中高等学校において、家庭科、社会科(公民科)などを中心に実施されているということについて記してございます。また、平成20年、21年の学習指導要領改訂においても内容の充実が図られているということで、具体的な指導要領の中身について、以下に記してございます。

2パラ目ですけれども、実際に家庭科、社会科といった科目においては、消費者教育に割かれている授業時間が少ないという指摘がなされていることですとか、あるいはそういった学習の効果がどの程度上がったのかについて明確でないといった指摘もあること。それから、消費者被害の防止にかかわるような学習については、制度ですとかそういったものについての変化が激しいということで、学校教員の方にとっても指導への負担が大きいといったこと。それから、教材に関する情報提供も十分ではないといった指摘もあることについて記してございます。

他方、大学については、例えば新入生ガイダンスでの啓発、在校生へのトラブルに関する被害喚起といったものについて取り組んでいることですとか、消費者生活センターによる授業、それから学生相談室等におけるトラブル対応についても行っているが、大学によって非常にばらつきが大きく、全体的に言えば、その取組は十分とは言いがたい状況にあるということについて記してございます。

また、教員養成課程については、いわゆる消費者教育の主力となっている家庭科の教員の方の教育養成課程については、消費者教育が必ず講義・演習で取り扱われているわけではないため、必ず消費者教育に触れているとは言えない状況にあるということですとか、あるいは教員免許更新講習ということでも消費者教育については取扱いがごく少ないのではないかといったこと。それから、初任者研修とか10年経験者研修においても、消費者教育について必須となっている割合が低いのではないかといった点について記してございます。

5ページ目の「5.本報告書が対象とする若者の範囲」でございますけれども、これは実は前回の骨子で委員の方々から、いわゆる若者というときに、成年年齢引下げのところで焦点となるのは18、19歳ということですけれども、必ずしもそこだけに議論を限定するのではなく、20代初めにかけてということで、例えば「若年成人」という形で、こういった者について層を想定した上で、こういった者について配慮が必要な年齢層ということで、社会全体で若年成人が成熟した成人になれるような支援をしていくことが必要ではないかといったことを踏まえて、こういったことの方向を盛り込んではどうかということで、こちらを記してございます。

「そこで」以下ですけれども、18から22歳を念頭に「若年成人」とし、こういった「若年成人」の消費者被害の防止・救済の観点から望ましい対応策について以下述べるという形で整理してはどうかと考えてございます。

次に、第2「望ましい対応策」でございます。

まず「1.若年成人の消費者被害の防止・救済のための制度整備」でございます。

(1)といたしまして、消費者契約法について挙げてございます。こちらの盛り込む方向性ということで、かなりまだ熟度が低いですけれども、以下述べるようなことについて盛り込んではどうかと事務局としては考えております。

例えばですけれども、契約の相手となる消費者の年齢や知識・経験・能力に応じて、適切な形で情報を提供するとともに、当該消費者の需要や資力に適した商品・役務の提供に配慮するよう努める事業者の義務を定めることですとか、あるいは、消費生活上特に配慮を要する消費者に対して、事業者がその配慮を要する事情につけ込んで締結した契約を取消すことができるような規定について考えてはどうかということについて、事務局としては考えているということでございます。

(2)といたしましては、特定商取引法について記させていただいております。特定商取引法については、いわゆる取引類型に応じた規制ということで規定している法律ですけれども、取引類型については、消費者被害が多く発生している商品等もあるということで、成年年齢が引き下げられるまでに少なくとも以下に述べるような点で整備することではどうかということで、こちらを整理しております。

その下のアの連鎖販売取引における対策ですけれども、具体的には、例えば若年成人に対する連鎖販売取引の勧誘の禁止、あるいは「未成年者その他の者」の判断力不足に乗じて連鎖販売取引を締結する行為の対象に若年成人を追加するようにということで考えてはどうかといったことについて、アイデアとして考えているということでございます。

イといたしましては、若年成人の知識・判断力等の不足に乗じて契約を締結させる行為を行政処分の対象として明確化という形で位置付けてはどうかと考えております。

続きまして「2.処分等の執行の強化」でございます。

こちらにつきましては、いわゆる若年成人のところで被害が多く発生している商品等もあることから、そうした被害の予防のために、特商法に違反した事業者に対する処分等の執行の強化をすることが重要ではないかということで、(1)といたしましては、いわゆる特商法に係る契約ですとか、その支払手段となる信用供与契約について虚偽記載を唆す行為の禁止及びその積極的な執行ということで位置付けてはどうかと考えております。

次の7ページ目、(2)といたしまして、特商法における若年成人の知識・判断力等の不足に乗じて契約をさせる事案に対する執行の強化という形で盛り込んではどうかということ。

8ページ目でございますけれども、特商法における若年成人に被害の多い商品等に関する処分等の執行の強化について盛り込んではどうかと考えているということでございます。

続きまして「3.消費者教育の充実」でございます。

(1)といたしまして、小中高等学校ということで記してございます。まず、アといたしまして機会の充実ということで、提案内容でございますけれども、例えば家庭科、社会科等、または教科横断的な視点から消費者教育を系統的、体系的に着実に取り組むといったことですとか、新しい科目である「公共」について提案されておりますので、そちらについて消費者教育に関する内容の充実を図ってはどうかといったこと。それから、生活科・総合的学習の時間を活用した消費者教育の推進ということですとか、あるいはどれだけ効果が上がったのかということでお声があることも受けて、学校における消費者教育の効果測定ということで調査を行ってはということでアイデアを記してございます。

それから、特別活動というところでも、消費者被害防止の取組ということで指導を充実してはどうかといったことですとか、あるいはヒアリングで御提案がありました学校家庭クラブ活動といったところで、消費者教育を積極的に推進してはと考えております。

それから、人材開発というところでは、先ほど申し上げました研修の話ですけれども、いわゆる初任者研修ですとか教員免許更新時の研修のところで、消費者教育を強化するような方向で図ってはといったこと。

それから、外部講師、消費者教育のコーディネーター、なかなか消費者の分野については変化が激しいということもありますので、こういった外部人材の方に学校現場に入っていただいて、活動の支援をしてはどうかといったことです。

それから、ウで手法の高度化、教材の開発ということでは、いわゆるアクティブ・ラーニングの推進ですとか、優良事例の情報提供について記してございます。

消費者教育推進地域協議会という枠組みができておりますので、ぜひこの場の活用を通じた学校現場と消費生活センターの連携を図ってはといったこと。

それから、地域や学校の実態に応じた消費者教育学習プログラム、これは実際にいわゆる就職重視校ですとか進学校といった形で、それぞれ学校とか地域といった形で特性がございますので、それに応じたプログラムの開発ですとか、高校生自身が啓発活動に参加するといった工夫を凝らした教育プログラムについて開発をしてはということで記してございます。

10ページ目でございますけれども、その他ということで、こちらに記してあるものについて盛り込んではどうかと考えてございます。

(2)大学・専門学校等でございますけれども、まず、アの教員養成課程ということで、消費者教育について取組を強化といった方向で記せないか。

イ自治体と大学等との連携の枠組みということで、自治体と大学にパイプがないといったお声もありましたので、そういったものについて被害を防止するための連携の仕組みを構築してはといったこと。

それから、学生相談室・大学生協等を通じた大学・専門学校等での消費者教育・啓発を強化してはといったことについて記してございます。

11ページのその他では、マルチの話につきまして、マインドコントロールといったものが非常に被害を助長させるところがあるといったことが指摘されましたので、こういった対応策について調査研究をしてはどうかといった点。

(3)では法教育・金融経済教育といったところで、消費者教育という観点から連携した上で取組強化ということで記してございます。

続きまして「4.若年成人に向けた消費者被害対応の充実」というところでございます。

こちらの相談体制の強化・拡充で、アのところでは、消費生活センターの周知というもの、これがまずは第1段階で、必要な取組ということで提案内容に記してございます。

12ページ、相談体制の強化ということで、こちらについて、例えば成人式ですとか、あるいは若年成人が足を運びやすい場所に、消費生活センターなどによる出張相談等で行ってはといったようなアイデアを盛り込んでございます。

ウ若者支援機関との連携ということで、今、地域若者サポートステーションというものが各地で幾つか設置をされて、支援ということをやっておりますけれども、こういったところと連携をした上で、消費者被害の防止という観点で、ワンストップで対応する仕組みを考えてはどうかということで盛り込んでございます。

(2)では大学・専門学校等の有する情報の充実及び活用ということで、まずはアといたしまして、大学・専門学校等と消費生活センターとの連携、情報交換が重要であるといった点。

具体的にイでは、特に消費者被害にかかわるような情報交換が重要であるということで記してございます。

13ページ「5.事業者の自主的取組の促進」ということで書いてございます。

(1)といたしまして、自主行動基準の堅持・強化ということ、特に若年消費者に配慮したということですけれども、こちらについては具体的な若年者に配慮した消費者保護の工夫を堅持・強化していただいてはということで、例えば収入の少ない若年成人との取引の抑制または禁止等、こういったものについて取り組んでいただけないかといったアイデアについて、盛り込んでございます。

(2)といたしましては、いわゆる「消費者志向経営」の促進ということで、ア優良経営認証制度等の推進ですとか、イ若年成人に配慮した顧客対応の推進、ウ従業員の方への研修の徹底ですとか、事業者自身による消費者教育の推進といったことについて記してございます。

14ページ、(3)といたしまして、健全な与信のための取組ということで記してございます。与信が一つ、消費者被害のところ、成人の方の引き金になっている面があるのではないかといった点も踏まえて、こちらを記載しております。アといたしまして、いわゆる貸付・信用供与に係る健全性の確保ですとか、あるいはイ消費者トラブルに遭った場合の生活再建支援等の取組、具体的にはカウンセリング等の支援等を通じて推進していただいてはと考えております。

「6.その他」ということで、具体的には二つ、こちらのほうでは、いわゆる消費者被害の防止のための啓発活動を実施している若者団体への各種の支援といったこと。それから、成年年齢引下げに伴う消費者被害防止の社会的周知のための国民的キャンペーンを実施してはということで記してございます。

最後に「7.改正民法施行に関する配慮」につきましては、具体的には委員のほうで問題意識という形でお伺いしたものを踏まえて、こういった提案内容について記してはどうかということで記してあるものでございます。主に二つの観点でありますけれども、一つは、まず消費者教育の取組について十分な準備や周知の期間が必要であるといったこと。それから、若年成人の消費者被害の予防・救済のためには、1.で指摘をさせていただきました制度整備が重要であるといった点。こういった点について、何らかの形で提案内容ということで盛り込めればと考えております。

具体的には、こちらを基に、更に本日、御議論をしていただければと考えております。

長時間になりましたが、私からの説明は以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。

参考資料はよろしいですか。

○丸山参事官 参考資料につきましては、記載のとおりの団体からワーキング・グループへの意見という形で寄せられているということで、御参考ということで御覧いただければと思います。

○樋口座長 ありがとうございました。

それでは、意見の交換を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

先に報告書の中身に入る前に、参考資料として事業者団体4団体から、前回の議論、骨子案に対して慎重な議論を求めるという意見が出されていますので、それについて、まず私の感想を申し上げたいと思います。

それぞれの意見の中で、法改正ありきというような方向付けになっていないかとか、安易な法規制は不適切であるとか、あるいは業界の自主的取組がまず先行すべきである、あるいは法執行でまずは取り組むべきであると、こういった意見で、前回議論した、あるいは今日の提案にあるような法制度の措置について反対という意見であります。

実は前回もちょっと申し上げたのですが、これはワーキング・グループで突然思いついたような意見ではございません。平成21年10月に法制審議会で答申が出されております。それは、民法成年年齢部会というところが平成20年2月から12月まで審議をして、中間報告を出し、それに対してパブリックコメントも実施して、平成21年7月まで合計15回の会議を開いて、そこには事業者代表の方も参加しておられたところですが、そこで議論した結果、成年年齢引下げを進めることについては、消費者被害の拡大など様々な問題が生じるおそれがあるため、その引下げの法整備を行うためには、消費者被害の拡大のおそれ等の問題の解決に資する施策が実現されることが必要であるということが明記されています。

しかも、その施策の具体例として、部会報告書の中で、例えば若年者の社会的経験の乏しさにつけ込んで取引等が行われないように事業者に重い説明義務を課すとか、あるいは若年者の社会的経験の乏しさによる判断力の不足に乗じて取引が行われた場合には契約を取消すことができるようにするとか、特定商取引法の、老人その他の者の判断力の不足に乗じて一定の取引をした場合に主務大臣が措置を指示できる規定に若年者を付け加えるべきであるとか、そういった幾つかの具体的な例を、もちろんこれは、これとこれを必須でということではない、一応考えられる方策として列挙してあるわけですが、そういった施策が、民法の成年年齢を引き下げても若年者の消費者被害が拡大しないように、消費者保護施策を実効的に行われることが望まれるという形で記述されているところです。

私たちワーキング・グループは、この9月から様々なヒアリングを行い、以前の法制審議会での提案も参考にし、それから、法律学者の御意見なども踏まえて提案した中身が、実はこの法制審議会での議論とほとんど共通の提案になっているわけです。その意味で、自主規制で足りるとか、法執行でよいとか、あるいは立法事実が十分検証されているのかというような意見は、前回の法制審議会の部会での議論、あるいは今回このワーキングでも10回に及ぶヒアリングを行った、そうした事実からすれば、ちょっと表面的な御意見ではないかと思います。

その意味で、提案の中身については、成年年齢引下げという明治民法以来のこの制度を大きく変えようとする中で必須の措置であるということで受けとめていただきたいと思います。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

増田委員、お願いします。

○増田委員 選挙の年齢が引き下げられたということから始まっていますが、この権利を欲しいといって運動した結果、得られたというものではなく、ある意味、急に与えられたという、選挙権についてはそういう印象が強いのではないかと思います。

そういう中で、与えられたものと異なり、今回の民法に関しましては、未成年者契約の取消権が失われるということであって、やはり同じ考え方ではならないと思います。そして、今までそのような手当てが全くない状況の中、国の施策ということで民法の成年年齢が引き下げられるのではないかという状況において、いろいろな議論があって、何か手当てが必要だということは当然のことで、成人として十分であるから、選挙権も与えられているのだから、そういうことは必要ないのではないかという考え方は違うのではないかと考えています。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。

大森委員、お願いします。

○大森委員 消費者教育がとても大事になるかと思うのですけれども、学校ではやはり時間が限られて、新しい制度を十分に伝えるにはいかないと思うのです。それで、キャンペーンの位置付けがとても大事になってくると思いますが、ただ単にチラシを何枚も刷って、消費生活センターに置く程度では、消費者被害が拡大する可能性があります。

フェイスブックとか、テレビとか、少々お金がかかってでも、一時的に重点的に成人年齢の引下げで、それに伴う法律的なルールがこう変わって、こういうことは許されなくなりましたとか、十分周知徹底する必要があると思うのです。そのときに、若者自身が相談しやすい方法とか、そういうことも一緒に広報する。そのキャンペーンのやり方がとても大事になるかと思います。

○樋口座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

増田委員、お願いします。

○増田委員 内容について、よろしいですか。

○樋口座長 はい。

○増田委員 まず、若者の現状と課題についてですが、内容について、私は賛成をいたしております。特に2ページの上から4行目「回復不能なダメージから保護しつつ」という部分なのですけれども、何の経験もなかった人が消費者金融の契約をするとか、消費者金融の契約をしたことで、その支払のためにアルバイトをして就職活動がままならないとか、いろいろな状況を見てきております。やはり人生の出発点において回復不能なダメージ、あるいはしなくてもいい経験をするということは、マイナスのスタートになるかと思いますので、こういうことを指摘した上で考えることは、非常に重要だと考えます。

それから、若年層の商品・サービスの契約内容ですけれども、全体的に生活にどうしても必要なものではなく、あったらいいなというようなものが多いのではないかと思います。ということは、自分の支払能力であるとか、生活設計であるとか、それから相手方の言っている説明の真偽を確認するすべであるとか、そのようなことが十分ではないことにより契約に至ってしまうということではないかと考えます。

以上です。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。

かなりボリュームが大きいですが、特に斜めの文字、イタリックで書いてあるところは事務局のほうでもう少し議論をしてほしいということもあるようですので、そういうところを中心にお話しいただければと思います。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 それでは、5ページの消費者契約法に関して申し上げたいと思います。

消費者契約法では、3条と4条、現在の消費者契約法4条は契約の取消しに関する規定で、3条は努力義務に関する規定で、それ自体は直ちに法的効果に直結するわけではありません。ここで、アとイと書いてありますが、アは消費者の年齢や知識・経験・能力に応じた情報提供、あるいはその消費者の需要や資力に適した商品・役務の提供に配慮するよう努める義務を提言しているものです。努める、つまり努力義務ですから、これが直ちに法的な制裁につながる、契約取消しだとか処分につながるというものではなくて、むしろ事業活動の在り方として、消費者の知識・経験等に配慮していただきたいし、適合性に配慮していただきたいということで、むしろそういう理念的な努力義務の規定を踏まえて、この報告書の後ろのほうでもありますが、それぞれの事業者団体の中でも自主規制としてそれをより具体化した形で盛り込んでいただく。そういう方向付けの規定として、まずこの努力義務の規定が必要であると考えます。

その上で、今度はそういった配慮しなければならない事情があるのに、それを配慮するどころか、逆にそれに不十分なところにつけ込んで契約を締結する場合には、契約取消しという効果を与えることによって、消費者を救済する、あるいはそういう行為に至らないように事業者の側も気をつけてもらわなければならないという意味で、取消権の規定、これはそれぞれのアとイでは要求する水準が大きく違うことになります。

このイのいわゆるつけ込み型契約の取消しについては、消費者契約法専門調査会で既に昨年来、何回にもわたって議論をして、現在も調査会で議論をしているところであります。そこでは、どちらかというとこれまで、例えば高齢者の判断力不足だとか、そのようなところを一つ立法事実として提起して、どういう形の規定を置くかということで要件の詰めをやっているところだと思います。今回、それこそ明治以来の成年年齢を引き下げるという、この新しい立法事実自体に対して、少なくとも民法の成年年齢引下げと一緒に消費者契約法のこういう措置を講ずるということが示されるようにしていただく必要があるのではないかということの期待も含めて、この二段構えでの規定はぜひ必要であるということで、記述していただきたいと思います。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。

この点に関連して、いかがでしょうか。

増田委員、お願いします。

○増田委員 賛成いたします。特に消費者志向経営ということを国としてうたったわけです。要は違反とか違法ということではなく、更によりよい、より高いレベルの消費者対応をすることを宣言してくださいということを事業者の方にお願いしている。そういうベースがあるからこそ、知識・経験・能力に応じてという部分は非常に重要なことだと考えます。むしろこの辺は自主規制の中で当然やっているはずではないかと思うことです。努力義務規定として入れたとしても、もう皆さん既にやっているのではないかと考えております。その上で、更にそういう状況の中でつけ込んだということであれば、それは取消しをしてほしいと考えます。

あと、若年成人に関してですけれども、ヒアリングの中で、単に18歳、19歳ということではなく、生活環境であるとか学校教育の中で教育を受けられなかったような方も、二十を過ぎても十分な知識・経験を身につけていないというケースもある。それから、大学という社会から隔離されたような特殊なところにいて、22歳、23歳になって社会に出て、そのとき初めて経験することもありますので、若年成人ということの考え方については賛成します。

○樋口座長 ありがとうございます。

後藤専門委員、お願いします。

○後藤専門委員 消費者契約法との関係で、アとイというふうにここに書いてあるわけですけれども、私は特にイの取消しというものが大事だと考えております。これは学識経験者の方のヒアリングでも、中央大学の宮下先生とか、京都大学の潮見先生などもおっしゃっておりましたが、つけ込みによる取消しということが若年者の保護ということから考えると大事な問題だと考えております。

ただ、このつけ込んで締結した契約を取消すということだけに取消しの根拠が限定されるかどうかということについては疑問を持っておりまして、消費者契約法専門調査会でも、つけ込みを理由とする取消し以外に、困惑による取消しということも議論されております。困惑は消費者契約法4条3項に規定されているものでありますけれども、事業者の一定の行為によって消費者が困惑するという場合の取消しでありますが、困惑をどれだけ広く認めるかということについて、考え方の争いがあるところなのですけれども、困惑概念を広く認めていくということであれば、そういう構成での取消しということも可能だと言えるのではないかと思います。そういう意味から、取消しについて認める場合の法的な構成について、つけ込み型だけではなく、つけ込み型以外の法的な構成もあり得るのだということも最終的な報告書の中では入れていただいたほうが妥当だろうと思います。

アの努力義務でありますけれども、一番重要なのは、やはり取消しということであって、努力義務も重要ではありますが、取消しが実現されるということが最優先される必要があるのではないかと個人的には考えております。

そこで、アとイを両方提案として出すということももちろんあり得ますけれども、並列的にというよりは、むしろイに重点を置いてというようなニュアンスが出たほうが、私としては妥当なのではないかと考えております。

○樋口座長 後藤専門委員から具体的な御提案がありました。

ほかの皆様から。

河上委員長、お願いいたします。

○河上委員長 若者の支援に関しては、二つの方向で考えないといけないことがあり、その一つが情報支援です。情報提供をして、きちんと若者が、今、自分にとって何が必要かということを判断できるような環境を整えてやることがまず必要であります。その上で、被害に陥ってしまったときに、そのような契約から解放されるためのルールを用意するということになりますので、その意味では、アとイは言ってみれば表裏一体のルールではないかと思います。したがって、私としては、両方あわせてやっていただければありがたいと思います。

ただ、ちょっと気になりますのは、消費者契約法専門調査会でも、ある程度議論が進んでいて、その際に、議論する際の優先順位が項目として合意された部分があります。その中で、現在はつけ込み型に関する規律についての議論を優先的にやっていこうというような形で作業が進んでおります。実はこのアに相当するような部分は、消費者契約法の議論の中では、昔の第1次の答申のときにかなり問題になって、後回しにされている状態にありまして、現在の委員会の方々にとってみると、我々のミッションの優先順位としては後のものではないかという印象を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。

そのような消費者契約法専門調査会との調整が必要になるわけでして、できましたら、年内で取りまとめた意見書の趣旨を専門調査会に対してもきちんと説明し、必要があれば、私のほうから専門調査会に対して、このつけ込み型勧誘とあわせて、3条の情報提供も勧誘の仕方の一部をなすものですから、これについても検討していただけないかということをお願いしようかと考えているところです。

もう一点、前提となる部分で確認をしておかないといけないのは、この意見書が18、19歳に対する対応ということに限定しないで、21、22歳あたりまでも含めた若年消費者あるいは若年成人というものを考えて、そして、その若年成人に対する支援を構想しているという点であります。これは、ワーキング・グループのミッションから逸脱しているのではないかという御意見がございます。ただ、選挙年齢を引き下げたということが、成年年齢の引下げとは直接かかわりはないことなのだということからまず考えないといけなくて、選挙年齢というのは能力の観点から見ると、財産管理能力とはかなり違う観点で考えられるものであります。ですから、できれば一致させたほうがスマートだけれども、現在の若者の財産管理能力から考えて、20歳を18歳に下げることが果たして適切なのかどうかということを考えねばなりません。あれだけ法制審で議論して、そして、やはり何らかの手当てが必要なのだということになっているという前提で考えますと、18、19歳について、未成年者取消権のバリアから外に出されることに対する手当てをしないといけないというのが、この委員会の最初の出だしであったわけです。ただ、いろいろなヒアリングをしていく中で、未成年者取消権の対象になっているような判断能力の不足というのは、実は20とか18という年齢だけで画一的に切られるものではないのだという意見が圧倒的に多かったわけでして、むしろ一定の幅を持った若年者を守らないと、全体としての効果は上がらないということが共通の認識とされた。

これを前提にして考えたときに、我々としては、もちろん18、19歳に対する対応策という最初のミッションが中核にあるわけですけれども、せめて社会に出てそんなに経験がない20、21、22歳の人たち、学生がほとんどですけれども、そういう人たちも含めたルールの中でこの問題を考えるほうが適切だという意思形成をした。ここは余り動かさないほうがいいだろうと思います。その上で具体的な玉を投げていくというふうにしていくのが大事なことではないかと個人的には思います。

○樋口座長 ただいま河上委員長から二つ、基本的な点でお話がありました。後藤先生からも御提案がありました。まず先に、そもそもこの委員会の位置付けの問題についてなのですが、これを今まで必ずしも十分議論してこなかったと思うのですが、この委員会は、消費者庁長官から消費者委員会の委員長である河上先生のほうに意見聴取、意見を求めますということで諮問があったわけでありまして、その意見として聞かれているのは、確かに民法の成年年齢が引き下げられた場合、新たに成年となる者の消費者被害の防止・救済のための対応策ということでありますけれども、今、委員長からもお話がありましたように、新たに成年となる者だけを取り出してその対応策を議論するということでは不十分ではないかと。例えば消費者教育の問題などは典型的でありますけれども、新たに成年となる方だけを対象として消費者教育を行っても、その効果は必ずしも十分に上がりませんし、それ以外の年代について、被害が多発しているということも考えていかなければいけないということであります。

ただ、これは事務局にもちょっと御検討いただきたいのですが、意見を述べるときに、求められた部分と、それから、更にこのワーキングで議論が深まった部分というのを、きちんと性格を位置付けた上で話さないと、言われたことと答えたことの間のミスマッチが起きてしまうということはあろうかと思うのです。そこで、手続的なことはきちんと整理しておく必要があるのではないかと思います。

ただ、ここはかなり基本的な点ですので、もしこの点について皆様からも御意見があれば、いただきたいと思います。いかがでしょうか。

お願いいたします。

○池本座長代理 池本でございます。

まず、座長が指摘された、諮問の中身と少し範囲が広がるという点は意識した上で、きちんと報告書をまとめる必要があるということは賛成であります。その上で、実はヒアリングの過程でも、成年年齢引下げに伴って、18歳、19歳について、民法では未成年者取消権はなくなるけれども、それに見合う消費者契約の範囲では取消権を置くべきではないかとか、あるいは少なくとも特定商取引類型の中では18歳、19歳に特化した取消権のようなものはどうかとか、そういう意見も議論の中にはあったと思います。ただ、そういう画一的な線引きで取消権を一部存続するというやり方では、社会に参画していくことを促すということとなかなかそぐわないのではないかという議論があって、参画は促すけれども、社会的経験の未熟さ、判断力の未熟さについてはきちんと支えていく。そういう実質判断で考えていくべきだという流れに議論が進んでいったと理解しております。

そうだとすれば、年齢だけではない社会経験なども含めてとなると、学生として学ぶことが主で、アルバイトしている人も若干はいますけれども、大半の人が学ぶことが主の世代の人という形で、世代で捉えたところでは、やはり18から22歳くらいまでが一つの群として我が国では存在する。こういう捉え方で、この若年成人というものを設定したわけです。そういう議論の経緯、いきさつも含めて、こういう考え方で臨むのだということを打ち出していく必要があるのだろうと思います。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。

大森委員、お願いします。

○大森委員 ヒアリングの中で、今の若者たちが非常に自立しにくい状況にあることが分かりました。30歳近くなっても子供の借金を肩がわりする親がいる一方、子供の収入を当てにして、子供のお金を使うので、子供と親とが子供の収入を奪い合うような形になって浪費に走るというふうに、なかなか自分の収入の範囲で計画的に将来を見据えて使うという経験が乏しくなっているというような意見を聞きました。

そういう状況の中では、18歳だから、二十だから、すぐさま社会に適応できる人物が育つわけではなくて、若年成人というような範囲を見て、個人差を認めながら成長を待つということがとても大事かなと思いました。

そういう考え方が、このアの部分、知識・経験・能力に応じてという契約の基本の部分だと思うのです。フラットな関係で事業者と消費者がお互いに誤解することなく、相手に分かるように説明した上で契約するということが基本で大切なことだと思うので、このアの部分も大切だし、18から22歳を若年成人という形で位置付けることも、とても大事だと思います。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。

河上委員長、お願いします。

○河上委員長 補足ですけれども、若年成人という言葉を使って、大体18から22歳あたりの消費者層を固まりとして捉えることを前提として意見書が出たとしても、それを前提にして、今度はいろいろな制度整備をするとかいうことになったときには、これは対象ごとに年齢について制度の中で考えていただければいいことです。その意味では、場合によっては22歳という前提で何か一定の施策、たとえば消費者教育を考えていただくことも構わないし、場合によっては18歳ではそれは要らないだろうと、若年成人といえどもここは大丈夫だろうというようなルールがあっても構わないという意味で、この意見書が一定の年齢についてどうこうというものではないということが前提であります。

消費者契約法の中に若年成人という言葉を入れてくれというような主張でも全くありません。むしろ年齢等に配慮すべき、そういうことを考えてくださいという、それにとどめているというあたりもあらかじめ理解しておいていただくのが大事だろうと思います。

○樋口座長 後藤専門委員、お願いいたします。

○後藤専門委員 先ほどのアとイについて、やや誤解があるかなという感じもするのですけれども、アのところで、知識・経験・能力に応じて、適切な形で情報を提供するということが書いてありまして、イのところで、つけ込んで締結した契約を取り消すと書いてあるわけですけれども、知識・経験・能力に応じて適切な形で情報提供するということが、イのところに内容として含まれないのかというと、そうではなくて、イの中で取消しをするということを考える事情として、若年層に対して知識・経験・能力に応じた適切な情報提供とか配慮をしていないということも、取消しの判断については含まれていると、私はそういう理解をしているのです。

ですから、先ほどイのほうが優先だと言ったのは、別にアの部分を無視してよいという意味ではなくて、最終的には、先ほどの宮下先生や潮見先生も、まずは取消しということを考える必要があるとおっしゃっていた、その内容は実質上、イの問題も考慮した上で取消権の構成をしていくということであります。その取消しの構成をどのようにしていくかは、今、専門調査会で議論されていて、またこれからも議論されるということだろうと思うのです。そういう意味から、私の先ほどの発言は若干誤解されているかもしれませんので、アの知識・経験・能力に応じてという部分も十分考慮し、尊重した上で、イのほうが大事だと言っている、そういう趣旨で理解していただけるとありがたいと思います。

○樋口座長 今の後藤先生の御指摘にも関連してくるのですが、専門調査会がこのワーキング・グループに並行して動いておりまして、専門調査会は成年年齢の引下げということでやっているわけではありませんけれども、共通する部分がいろいろ出てきていますので、その点については、事務局においてもスケジュール等をきちんと調整をしていただいて、最終的に整合性のある形で報告書をまとめる必要があるということかと思います。その中で、専門調査会でいろいろ議論を深められていることについては、こちらでもそれを踏まえて議論しなければいけない部分もあろうかと思いますので、この点についていろいろ論点がありそうな気がしますが、専門調査会のほうにも十分議論していただくようにできればと思います。

一般の方から考えて、18、19なのか、18から22なのかというのは、入口の議論として分かりにくい部分もあろうかと思います。特に今回は、成年年齢の引下げに伴って、18歳、19歳についての具体的ないろいろな措置もあるわけですから、そことの関係では、今、委員長からお話がありましたのは、それぞれの分野によって18歳、19歳について措置をする場合もあるし、それとは違う形で議論する場合もあるしということで、ここで若年成人と書いたから、例えば関連する消費者関係の法律で、全て若年成人と規定するということではないという補足の御意見もございました。この点はかなり基本的な取りまとめの構成に関連する部分だと思いますので、特に諮問との関係、それから全体の取りまとめの意義付けです。その点については、事務局のほうでもぜひ関係者の意見も聴取した上で整理をしていただければと思います。

どうぞ。

○消費者庁福岡審議官 意見をお伺いしている消費者庁の立場からでございますけれども、樋口座長の言われた入口論ということにつきましては、消費者庁としては、この話の発端が民法の成人年齢引下げへの対応ということですから、それを中心に考えておりましたが、それは関連事項として委員会のほうで意見を出されるということだったら、それはそれでも最大限対応するという方向になるかと思います。

ただ、そのプロセスにおいて、内容次第というところもございますね。ある意味、例えば消費者教育、これは消費者庁が受けるべきこと、文部科学省が受けるべきこと、いろいろあろうかと思いますけれども、そういうことでしたらかなり柔軟に対応できるところがあると思います。ただ、法律の改正とかそういうところまで踏み込む御意見であれば、座長も言われましたけれども、別途消費者契約法専門調査会も開かれているところでございますので、そことの意見調整を十分に行っていただければ、受けとめやすいかなと思っておりますので、ぜひその点、よろしくお願いしたいと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

極めて具体的に申し上げますと、例えば改正民法に関する経過措置等の議論の場合、これはあくまでも18、19をどう扱うかということしか経過措置上はあり得ないわけでありまして、そのような技術的な部分、技術的といっても本質的な部分ですが、そういう部分と消費者教育のような問題、あるいは消費者契約法の基本的なルールの問題、いろいろこの中に議論の論点がありますので、報告書をまとめる段階では分かりやすい形にいずれにしても整理をしておく必要があろうかと思います。

今、審議官からお話がありましたので、議論してはいけないということではないという意味では、一応安心しました。というのは、やはり本質的な議論がつながってくることですから、適切な議論の機会を設けながらやっていくことかと思います。

ほかにいかがでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 特定商取引法に関連して発言します。5ページから6ページのところですが、先に6ページのイのほうから申し上げます。これは、理由のところに特定商取引法の施行規則7条2号に、老人その他の者の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為が指示対象行為で、これを老人とあるところ、若年成人も加えるべきだという提案になっています。提案のところも、訪問販売においてと書いてあるのですが、実は特商法の訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、この3つについてはいずれも施行規則の中で同じ文言が使われています。「老人その他の者の」という形で使われています。だから、それぞれについて同じように見直しが必要になるだろうと思います。

それから、連鎖販売取引については、6ページの一番上に引用してありますが「未成年者その他の者」と、マルチ商法については未成年者あるいは若年者が誘われるケースが多いということもあって、ここは現行法でも未成年者と書いてあります。

それから、実は内職商法を指す、業務提供誘引販売取引についても、施行規則の46条2号に「未成年者その他の者の」というふうに、要するに利益誘引型のものは若い人が誘われやすいという特徴で、既に現行法でそうなっているわけです。ですから、そこを未成年者という言葉で、年齢が下がったから18歳未満でいいのだというふうになっては困るので、若年成人という形で合わせて、特商法の5類型については、いずれも同じように措置すべきだと考えます。それがまず第1点です。

それから、戻りまして5ページの末尾で、連鎖販売取引における対策ということが書いてあります。実はここは、5ページの下には、若年成人に対する勧誘の禁止というものと、またはということで、「未成年者その他の者」の判断力不足に乗じて勧誘することというのがあります。6ページの冒頭にある施行規則31条6号に、これを若年成人とするだけであれば、ある意味、訪問販売とか電話勧誘販売という特商法の5類型横並びの措置を講ずるだけの話になってしまいます。ヒアリングの中で、特に利益誘引型の中でもとりわけマルチ商法、連鎖販売取引について未成年から成年になるところでトラブルが急増している、ここを何とかできないかという問題意識と、それからヒアリングの中で、日本訪問販売協会は自主規制の中で、未成年者とか学生というビジネスの対象者として不適切な者は勧誘対象にしないということが既に規定してあるということが説明されました。だとすれば、業界団体に属して自主規制で遵守していただくところはそれでいって、アウトサイダーにそこの規律がないということではかえって不都合になりますので、その自主規制の水準であるところの学生等について、ですから、これは若年成人という言葉がぴったり来るのか、あるいは今のような学生等という言葉に置きかわるのか、そこは検討が必要ですが、少なくとも判断力不足に乗じた勧誘という実質要件として特商法5類型の中で定めているものとは別の措置が必要ではないかということで、ぜひこの点も盛り込む方向で検討いただきたいと思います。

以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。

いかがでしょうか。

増田委員、お願いします。

○増田委員 池本座長代理に賛成いたします。特商法の中で、特に連鎖販売取引における対策ということで書かれておりますけれども、これは実質的な内容としてはすごく目新しいということではなく、既に自主規制としてやっていただいているところもあるわけで、物を買うときに利益により誘引する、利益がありますよと言われて物を買うというのは、その商品・サービスの価値とか効能に利益が付け加わって判断することになるので、契約に至るところで誤解が生じやすいと思います。

そして、仕事をするということの経験がまだない。販売方法においても、通信販売があり、連鎖販売があり、訪問販売があり、普通の店舗販売があって、まだ働いた経験がないような人たちに対して、こういう仕事があるということで初めて経験してしまう、しかも金銭的な負担もあるということは、やはりリスクを背負うということだと思います。この「未成年者その他の者」というふうに入れるのか、「若年成人」というものを入れるのか、禁止をするのか、何がしかの対応は大変重要ではないかと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○消費者庁福岡審議官 この連鎖販売取引の件なのですけれども、私ども消費者庁が特定商取引法を運用している立場からすると、いわゆるマルチ商法と言われているものなどは、この連鎖販売取引に係るものではなくて、訪問販売という形で行われているものがかなり多いと認識しております。そういった意味で、若年成人もしくは現在の未成年者の方に対していかに対策をとっていくかという先生方の思いは非常によく分かるところなのですけれども、法律をどう改正するか等々を議論するときには、そういった実態も十分に踏まえて御議論をお願いできればと思っております。

そういった意味で、法律改正の御議論をされるときには、昨年の特定商取引法の議論でもそうだったのですけれども、幅広い関係者から構成される場で慎重に議論をお願いできればありがたいと思っております。

○樋口座長 池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 大事な指摘をありがとうございます。

若年成人に対する連鎖販売取引の勧誘の禁止というものを、どういう位置付けで置くかということの問題だろうと思います。特に特定商取引法については、法改正の審議を今やっているわけではないので、それをいきなり出して、すぐにやれといっても手続的に無理だよということも含めて理解できるところではあります。

ただ、特商法施行規則31条は、6号に先ほどの判断力不足に乗じた勧誘、7号に知識・経験・財産状況等に配慮する、いわゆる適合性の原則の規定があります。その意味では、ビジネスに関する取引を、ビジネスをする立場でない学生等に向けて勧誘するというのは、まさにそういう適合性の中の一つの典型的な不適合な取引を勧誘していることに当たると考えれば、施行規則の改正という位置付けの中で検討する余地はないのだろうかという気もします。施行規則であれば、特商法の改正を踏まえた省令改正がこれから予定されているので、ぎりぎり間に合うのかどうかというようなところがありますので、この規定が法律改正でなければならないのか、省令改正によっても対応できる余地がないかということも含めて検討していただければと思います。

○樋口座長 施行規則の改正は、本来、法律のように権利義務関係がここで変動してしまってはいけないわけです。あくまでも施行のためのルールですから、今回、民法による成年年齢の引下げという措置があった場合、それに伴って判断力不足であるとか適合性の原則という観点で、既に施行規則に盛り込まれている内容について、それをより分かりやすい形にするという意味では、実質的な改正ではないのではないかと思うのです。「未成年者その他の者」というのも、未成年者の定義が変わるわけですから、それに伴う適切な表現をして、判断力不足とか適合性原則ということについてしっかりやっていくという意味では、別途の検討ということではなくても十分議論可能ではないかと私も個人的に思います。

その点も含めて、実は今、消費者庁からもいろいろお話をいただきましたけれども、特に特商法の場合は運用がとても大切だと思いますので、法執行の観点からの御意見もいろいろあろうかと思います。また、他の部分についてもいろいろな、民法そのものについては法務省の考えもあろうかと思いますし、若干時間をいただいて、事務局は大変だと思いますけれども、この素案を更に分かりやすい形に内容調整していく必要があろうかと思います。

本日は、全体を議論するには若干時間が足りないかもしれませんので、委員の方々からも追加の御意見があれば事務局のほうにもお寄せいただいてということで、また、関係省庁、法執行の観点等から御意見があれば事務局のほうに寄せていただいて、そして次回、最終的に具体的な案を取りまとめるという方向にしていければと思います。

ほかに何か特段の御意見があれば、特にこの報告書案の構成ですとか内容の点について、何かございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

どうぞ。

○池本座長代理 池本でございます。

15ページ「改正民法施行に関する配慮」というところ、前回、施行時期のことと経過措置というふうに二つに言葉を分けていたところ、法務省の参事官から適切な御助言をいただきまして、考え方としては、十分な周知期間としては、理由のところにもありますが、消費者教育その他の措置を考えれば、少なくとも5年程度は必要ではないかということと、それから、今日議論している、あるいはまだ議論できなかった過剰与信のおそれの規定なども本当は検討していただく必要がある。あるいは自主規制で足りるのかどうかの見極めの問題もある。それで不十分であれば法的な措置も考えていただく必要があるのだろうと思うのですが、その意味で、必要不可欠な措置が間に合わない、あるいは検討したけれどもなかなか取りまとめに至らないということが万が一あったときには、これは平成21年の法制審議会の答申以来のことですが、きちんとした消費者被害防止・救済の措置を講ずることが前提で成年年齢引下げをスタートすべきであるという考え方からすれば、制度整備が不十分であれば、その施行時期そのものを再検討する必要がある。これを書きぶりとして附則にどう書くのかというのは、いろいろな工夫があるのかもしれませんが、期間そのものに対する意見と、実質的な配慮の意見と二つがあるということを、ここは明確にしておく必要があるのだろうと思います。

○樋口座長 いかがでしょうか。この点についても十分議論を尽くしていく必要があろうかと思います。

河上委員長、お願いいたします。

○河上委員長 前回、中辻参事官からお話があったことはある程度理解できました。今回は、その意味では一本化した形での提案内容になっておりますが、一本化しているのですが、実は書いている内容は同じでありまして、今、池本座長代理からお話がありましたとおり、二つの要請があるのだということを御理解いただいて、多分、施行までの期間はある程度具体的に5年とか6年というふうに提案したほうが法務省としてはいいのか御教示いただければと思います。それとは別に、一定の法制度整備がない限りは、やはり未成年者取消権を失わせるわけにはいかないというこのワーキング・グループでの意見です。そこで、その表現ぶりについて、むしろどういう在り方があるかという知恵をお貸しいただければありがたいと思います。

○樋口座長 いかがでしょうか。お願いします。

○池本座長代理 一言つけ加えますと、このヒアリングの中でも出てきましたし、あるいは平成25年の世論調査もそうですが、成年年齢を引き下げるということについては、非常に国民の中でも危惧がありますし、消費者被害の防止・救済の措置が十分整備されないままに成年年齢を引き下げることについては、基本はやはりそれでは反対だという意見が国民の中では多いのだということ踏まえて、ここの施行時期に関する記述は、期間のことと実質のこととしっかりと条件づけていただきたいと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

法務省、よろしくお願いします。

○法務省中辻参事官 ありがとうございます。

今回の資料の内容については、事務局のほうで私どもの立場にも配慮した記載をしていただいたものと受け止めております。そのことを踏まえ、斜字体になっている部分の書きぶりについては、次回までに、よりよいものになるよう引き続き協力してまいりたいと思います。

その上で、改正民法施行に関する配慮という項目について一言申し上げますと、恐らく、改正民法が施行される前に十分な周知活動や教育啓発を行うことにはほとんど異論がないのだろうと思います。ただし、制度的な対応ということになりますと、私は、消費者契約法専門調査会にも毎回出席させていただいておりますが、恐らく、悪質なつけ込み型の取引を許さないということでは、事業者側も消費者側も一致しているのですが、それをどのような形で条文として表現するかという部分では、更に考え込んでいかなければならない状況であるように感じています。

したがいまして、制度的な対応の部分につきましては、やはり慎重な表現が望ましいと考えますし、周知期間も5年、6年という具体的な数字が示された場合の影響には大きなものがありますので、また事務局と内部的に調整させていただければと存じます。

○樋口座長 ありがとうございます。

ほかに何か特段のことがあれば。よろしいでしょうか。

それでは、本日は報告書案、初めて素案が出てまいりましたが、本日の報告書案に関する検討はここまでとさせていただきたいと思います。いずれにしましても、このワーキング・グループでの報告書は、消費者、事業者、あるいは行政、関係者の皆さんのコンセンサスを得た上でまとめていくことが重要ではないかと思います。次回の会議では、本日の皆様の御意見を踏まえまして、報告書案について御議論いただきたいと思います。

本日の議事は以上となります。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も御熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回につきましては、来週12月27日火曜日、16時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○樋口座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)