第47回 消費者契約法専門調査会
日時
平成29年8月4日(金)10:00から12:20
場所
消費者委員会会議室
出席者
- 【委員】
- 山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、石島委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、増田委員、丸山委員、柳川委員、山本和彦委員、山本健司委員
- 【オブザーバー】
- 消費者委員会 河上委員長、鹿野委員
- 法務省 中辻参事官
- 国民生活センター 松本理事長
- 【消費者庁】
- 小野審議官、廣瀬消費者制度課長、消費者制度課担当者
- 【事務局】
- 黒木事務局長、丸山参事官、消費者委員会事務局
議事次第
- 開会
- 取りまとめに向けた検討 等
- 閉会
配布資料(資料は全てPDF形式となります。)
- 議事次第(PDF形式:9KB)
- 【資料1-1】消費者契約法専門調査会報告書(案)(PDF形式:556KB)
- 【資料1-2】消費者契約法専門調査会報告書(案)(見え消し版)(PDF形式:110KB)
- 【資料2】永江委員提出資料(PDF形式:19KB)
議事録
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≪1.開会≫
○丸山参事官 定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。
本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会第47回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。
本日は、所用によりまして、後藤準委員が御欠席、柳川委員が遅れての御出席との連絡をいただいております。
まず、配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第の下部に配付資料一覧をお示ししております。
もし不足がございましたら、事務局までお声掛けをよろしくお願いいたします。
それでは、山本座長、議事進行をお願いします。
≪2.取りまとめに向けた検討≫
○山本(敬)座長 おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日も取りまとめに向けた検討として、「消費者契約法専門調査会報告書(案)」につき事務局から説明をいただいた上で御検討いただきたいと思います。
本日の進行としましては、この報告書案を御説明いただいた後、まず、「はじめに」と「第1 見直しの検討を行う際の視点」についてを1つの区分とし、次に、「第2 措置すべき内容を含む論点」についてひとまとめにして御検討いただいた後、最後に、「第3 上記以外の論点」と「おわりに」の部分を御検討いただきたいと思います。
つまり、事務局から御説明いただいた後、全体を3部構成で、委員の皆様の御議論をお願いしたいと思います。
それでは、事務局より御説明をお願いいたします。
○消費者委員会事務局 それでは、説明いたします。
資料としては、資料1-1と1-2が報告書案になっております。このうち、資料1-2が前回の資料、報告書案からの修正部分が分かる見え消しとなっておりますので、こちらを使いまして修正点を中心に説明したいと思っております。
それでは、資料1-2の1ページです。まず、「はじめに」というところですけれども、この点については、一番最後の行、約款の事前開示について「再開後の当初から指摘のあった」という点を追加すべきという御指摘がございましたので、この点を追加しております。
3ページ「第1 見直しの検討を行う際の視点」ですけれども、最初のパラグラフで、「事業者の予測可能性の担保」を「円滑な事業活動の確保」と修正するべきではないかという意見がございましたので、その点を修正しているところと、公正な市場ルールの確立によって消費者被害の救済及び円滑な事業活動の確保が図られるのではないかという指摘があったので、その点を修正しております。
4ページ、「第2 措置すべき内容を含む論点」の「1.不利益事実の不告知」の(3)の下から2行目、「今後の検討課題として」は「今後の課題として」となっています。この点は、以下の論点でも同じ修正をしております。
「2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」ですが、この点については6ページ、(4)の第2パラグラフの「しかし」以降のところですけれども、「しかし、要件の明確化等の課題が解消されていないとの意見もあり、現時点においては消費者契約法上に新たな類型を設けることについてコンセンサスを得るには至らなかった」と経緯について若干修正しているところと、それ以降、2文に分けたことの関係で、「そこで、判断力の不足等を不当に利用し、不必要な契約や過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われる場合等の救済については」と課題の内容を具体的に再掲しております。
「3.心理的負担を抱かせる言動等による困惑類型の追加」については、7ページで若干表現の修正をしているところです。
「4.『平均的な損害の額』の立証に関する規律の在り方」ですが、9ページの説明、(1)の最後のパラグラフで、修正前は「その判断基準を明確にすることが求められる」となっていましたが、判断基準を明確にするのではなく判断が明確に行われるようにすることではないかという指摘を受けて、その旨、修正しております。そのほか、(2)でも表現を一部修正しているところです。
10ページのところですが、(3)で、「より精緻な実態把握や分析」というところを「実態把握や分析をさらに積み重ねた上で」と表現を修正している点、また、「『解除に伴う』要件の在り方や『平均的な損害の額』の意義など法第9条第1号に関する他の論点と併せて」ということで、この論点に関係する課題の部分を「第3 上記以外の論点」から前に移す修正をしております。
「5.不当条項の類型の追加」ですが、11ページの(3)解釈権限付与条項・決定権限付与条項のところで、説明に当たる部分が分かりにくいのではないかという指摘を受けたことを踏まえて、説明部分を修正しております。「例えば」以降のところで修正をしております。
12ページですが、「なお」のパラグラフで、議論の経過についてより詳細に書いたところです。同じパラグラフの最後の部分「また、これらの条項が法第10条により無効となり得ることを逐条解説に記載するなどにより、事業者においてより適正な条項作成が行われるよう促すことが相当と考えられる」という点も、指摘を踏まえて追加しております。
(4)サルベージ条項ですが、これも最初のパラグラフで説明を書いておりましたが、その点が分かりにくいという指摘がありましたので、修正をしております。
(5)軽過失による人身損害の一部免責条項ですが、この点については13ページの1行目に「生命又は身体が重要な法益であることに照らすと」という点を追加しているところ、その2行下ですけれども、ユニバーサル・サービスについて限定するような文言を入れるべきではないかという指摘を踏まえて「消費者の生命又は身体に損害が生じる可能性があるサービス」を付け加えております。
「6.条項使用者不利の原則」の14ページの最後のパラグラフですが、「なお、条項使用者不利の原則を解釈準則として明文化することについては、今後の課題として、必要に応じ検討を行うべきである」というところを追加しております。
「第3 上記以外の論点」で、16ページですけれども、「1.『勧誘』要件の在り方」というところでは、今後の課題を検討する際の視点として、「消費者被害の実情や」を「事業活動に対する影響も踏まえた上で」の前に追加し、次の「2.約款の事前開示」については、「また、これに関し」の段落は、もともと第3パラグラフにあったものを第2パラグラフに持ってきたという修正をし、また、16ページ最後のパラグラフの「他方」では、議論の中で出た意見を列挙する形に修正しております。
「3.その他」のところで「損害賠償額の予定・違約金条項(「解除に伴う」要件の在り方)(法第9条第1号)」が削除されているのは、これは先ほど「4.『平均的な損害の額』の立証に関する規律の在り方」に課題を持ってきたことに伴う削除となっております。
最後に、18ページ、「おわりに」ですけれども、第1パラグラフの最後の部分ですが「解釈や問題事例等について逐条解説等において明確化を図ることも必要である」という表現に修正し、あとは「所要の調査・分析を踏まえた上で」の位置を変えているという内容になっております。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、まず、「はじめに」と「第1 見直しの検討を行う際の視点」につきまして、御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。
よろしいでしょうか。
続きまして、「第2 措置すべき内容を含む論点」の検討に移りたいと思います。特に前から順番ということではなく、全体をまとめて、御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。
長谷川委員。
○長谷川委員 ありがとうございます。
「はじめに」と第1も含め、全体的に前回の議論を踏まえてよくまとめていただいているかと思います。その中で、恐縮なのですけれども、修正の提案をさせていただければと思っております。机上配付の資料をお配りさせていただくことをお許しいただきまして、ありがとうございます。これに基づいて、この部分を修正していただければという提案をさせていただきます。資料1-2の見え消し版で言うと、報告書案の12ページを御覧いただければと思います。上から2つ目のパラグラフでございます。そのパラグラフは、私が配付させていただいた机上配付資料の左側にそのままそっくり載せております。
修正をお願いできればというのが3点ございまして、机上配付資料の右側のところに(1)(2)(3)と書いてございまして、大きくこの3点ということでございます。
(1)は日本語の問題と言ってもいいのだと思いますけれども、「であり」の後の「、」を取っていただいて、そのまま「無効とされる」と続けていただきたいということでございます。この趣旨は、その後の行にあります「という意見」の中身に「法第10条に該当する蓋然性が高いものであり」という部分も含まれるということを明確化するものです。検討をお願いできればということでございます。
(2)については、左側、今の原案のところで「これと異なる意見」と書いてあるところをより具体的に書いていただければという趣旨でございます。具体的には「反社会的勢力の排除やプラットフォームの健全な運営のため実務上必要等との意見もあり」と記述していただきたいということです。これまでの議論の中で反社会的勢力の排除を目的としたいわゆる暴排条項でありますとか、あるいはネット上の商店街を運営するに当たって不適切な行為を行う人がいた場合に対応するための権限が必要だという議論がありましたので、それを入れていただければということでございます。以上が(2)でございます。
(3)でございますが、これは(2)と状況認識が同じであり、(2)の修正についてコンセンサスが得られればということではあります。原文は「また、これらの条項が法第10条により無効となり得る」でございますけれども、「これらの条項の中には法第10条により無効となり得るものがある」という書きぶりにしていただきたいということです。先ほどの(2)で申し上げた反社会的勢力の排除とかプラットフォームの健全な運営のために必要なものもあるということで、もちろん不当条項になり得るものもあるわけでございますけれども、ならないものもあるということが明確となるよう、日本語の表現を変えていただきたいということでございます。
以上でございます。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
以上、3点にわたる修正の提案がありました。この提案に関して、御意見、御質問等があればお出しいただければ思いますが、いかがでしょうか。
大澤委員。
○大澤委員 ありがとうございます。
1については、趣旨はよく分かりますし、3については後ほど述べさせていただきますが、別にこれでもいいかと思いますが、2について意見を申し上げたいと思います。2というのは、この「反社会的勢力の排除やプラットフォームの健全な運営のため実務上必要」と具体化するということで、確かにこれと異なるという文言だけでは少し分かりにくいかと思いますので、この点を具体化するのはいいかと思うのですが、反社会的勢力、いわゆる暴排条項につきましては、今回の専門調査会ではこの解釈権限付与条項及び決定権限付与条項の中で具体例として挙げられていましたけれども、この条項以外、例えば、そもそも一方的に解除することを認める条項とか、いろいろな他の趣旨の不当条項としても問題になり得る条項かと思います。もっとも、ここでいわゆる暴排条項を具体例として挙げることまでは必要があるのかと思いますので、例えば、この2の説明のところには「反社会的勢力の排除やプラットフォームの運営、あるいは、保険約款の適切な運用」と保険についても書いてありますので、例えば、反社勢力に関しては、公益的な目的とか、あるいはいわゆる政府指針などが出ている、要するに、他の特別法とか指針との関係ということでしょうし、後者の保険約款やプラットフォームに関しては、これも広域的公益性もあるのかもしれませんが、いわゆる実務上必要であるとか、むしろ有用、消費者にとって有用であることがあるという趣旨でしょうから、この具体例までは、すなわち、プラットフォームの健全な運営といった記載までは入れず、例えば、他の法律との関係や実務上、必要、有用であるといった程度ということでは、この趣旨は生かされないのでしょうかということです。ここに反社勢力の排除というものを、解釈権限付与条項の具体例として特定して挙げるのは、これは理論的な観点からですけれども、若干のちゅうちょを感じます。
3番については、確かに全てこの種の条項が無効になるわけではないですので「の中には」を入れるというのは趣旨はよく分かりますが、ただ、「無効となる」と必ず言い切っているわけではないので、「なり得る」ということでその趣旨は尽きていないのでしょうかという疑問があります。仮にそれでは10条によって無効となるものがあり得るのだということが「なり得る」という文言だけでは足りないということであれば「の中には」を入れるのを検討してもよろしいのではないかと思います。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
他に御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。
沖野委員。
○沖野委員 重複いたしますけれども、2点目と3点目についてです。
2点目の「実務上必要等との意見」ということですが、この「実務上必要等」というところを「必要なものがある」という形にすることでは趣旨は達成されないのかということです。つまり、様々なものがあるけれども必要なものがあるという御指摘だったと思われますので。いずれにせよ意見の内容ですから、どういう書き方をしてもそういう意見だったということではあるのですけれども、そういうものがあるという趣旨ではなかったかと思う点が1点目です。
もう一点は3点目で、これは大澤委員がおっしゃったことと全く同じですけれども、「中には」「なり得るものがある」というのは二重の感じがいたしますので、もともと「なり得る」ということですから、なるものもあればならないものもあるというのは、元の表現でも表れているように思います。逆に「なり得るものがある」という形を考えるのであれば、むしろ「無効となるものがある」のほうが適切ではないかと思われるところですので、「なり得る」という表現は元のままでよろしいのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
長谷川委員。
○長谷川委員 簡単な(3)の方からですが、これはおそらく日本語としては二者択一で、「条項の中には」「無効となるものがあることを」なのか、「条項の中には」「無効となり得るものがあることを」ではないかと思います。「ものである」だけを取ってしまい、「条項の中には」に「無効となり得ることを」と続けるのは、日本語としておかしいのではないかと思います。
○山本(敬)座長 恐らく、「中には」「無効となるものがある」か、「条項は」「無効となり得る」のいずれかで足りるのではないか。「なり得るものがある」とすると、二重になっているのではないかという御指摘だったと思いますが、その点を踏まえていかがでしょうか。
大澤委員。
○大澤委員 あるいは、「これらの条項には法第10条により無効となり得るものがある」ということかと思うのです。つまり「なり得るものがある」というのは、今、沖野委員がおっしゃっていたように、なるものもあるしならないものもあるということだと思うので、それに重ねて「の中には」を入れるというのは二重ではないかという御指摘だったと理解しています。
○山本(敬)座長 3つ目の案かもしれません。
○長谷川委員 (3)については、それでよろしいかと思います。
○山本(敬)座長 そうしますと、確認ですが、「これらの条項には」。
○長谷川委員 「なり得るものがある」としていただければと思います。
○山本(敬)座長 沖野委員、よろしいでしょうか。
○沖野委員 最終的にはどのような表現になるのでしょうか。
○山本(敬)座長 もう一度確認いたしますけれども「これらの条項には法第10条により無効となり得るものがある」というものが長谷川委員からの再修正提案と考えられます。
沖野委員。
○沖野委員 申し訳ありません。今の修正案と元の長谷川委員の修正案の違いが必ずしもニュアンスとしてはよく分からないところがありまして、できるならというか、「なり得るものがある」という表現を「なるものがある」という形か「なり得る」という原案かというほうがよろしいように思うのですけれども、最終的に逐条解説に記載される内容は、どちらでも余り変わらないのだと思うのですが、いかがでしょうか。
○山本(敬)座長 やはり二者択一ではないかという御指摘だと思います。
○長谷川委員 二者というのは、何と何でしょうか。「これらの条項には」「無効となるものがある」というのが1つ目だと思いますが、2つ目が「これらの条項には」「無効となり得ることがある」ということだとすると、日本語として分からないのですけれども。
○山本(敬)座長 「これらの条項は法第10条により無効となり得る」ということかもしれません。
○長谷川委員 どちらでもいいと思いますが、逐条解説の基本的な書きぶりとして、「無効となる」という断定的な表現を使っていることがあるのかどうかにもよるかなという気がいたしました。
○山本(敬)座長 沖野委員。
○沖野委員 もちろんフォーマットの話はあると思うのですが、こういう場合には無効になるという形で、こういう場合にはという留保付きで書くということはあり得るのではないかと思います。
○長谷川委員 一案、二案、どちらでも結構です。
○沖野委員 多分逐条解説に書く内容を示す点では、いずれもあり得るというか、変わらないのではないかと思います。
○山本(敬)座長 二つの案のどちらでもよいということですか。
○長谷川委員 私としては、座長にお任せします。
○山本(敬)座長 沖野委員からいただいた逐条解説での書き方の御説明からすると、「条項には」「無効となるものがある」のほうが自然かもしれませんが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、(3)については、「これらの条項には法第10条により無効となるものがあることを」とすることでいかがでしょうか。
ありがとうございました。
(2)については、いかがでしょうか。
長谷川委員。
○長谷川委員 まず沖野委員の御意見に関連しまして、説明だけで特に意見ではないのですけれども、これは異なる意見の修正が長くなってしまうとまたバランスだとか、そういう御議論もあるかと思いましたので、修正案のような形にしております。一方、先ほど大澤委員がおっしゃった保険約款の話も議論で出ておりましたので、それも読めるようにということで、「等」としております。趣旨はそういうことでございましたけれども、強くこだわるものではございません。
先ほどの大澤委員の御意見で、「理論的な」とおっしゃったのはどういう意味なのでしょうか。私に全く知見がないものですから、申し訳ないのですけれども、教えていただければと思います。
○山本(敬)座長 大澤委員。
○大澤委員 私が申し上げたのは、この反社会的勢力を排除する条項は、これは個人的には解釈権限・決定権限付与条項の観点だけではなく、それ以外の、例えば、解除権をそもそも排除する条項とか、そういういわゆる一般的にこれは無効となり得るのではないかと言われているその他の不当条項リストとの観点で検討すべきものであると考えていますので、ここに解釈権限付与条項の一例として特定して反社会的勢力を排除する条項と書くのが大丈夫かというか、一定の見解を示すことにならないかということを懸念しただけですけれども、別にこれで時間を取るつもりはございませんので、どうしても残したいということであったら、反対はしません。
○山本(敬)座長 長谷川委員。
○長谷川委員 まず、方向性としては「これと異なる」をなるべく具体的に書いていただければということが1つでございまして、そこは大澤委員も御同意いただけているものと思っております。その上で何を書くかということについては、先ほど大澤先生がおっしゃった形でもいいのではないかという気もいたしますけれども、反社会的勢力の排除は正に実務上非常に重要だと我々としては思っております。コンセンサスがあったかどうかというよりも意見としてあったということであって、もしお許しいただけるのであれば、この表現を入れていただければ非常にありがたいと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
他に、この点に関して御意見があればと思います。
後藤座長代理。
○後藤(巻)座長代理 意見ということですので、さほどこだわらないのですけれども、「プラットフォームの健全な運営」と言う場合のプラットフォームとは何を指すかということは、この報告書を見ただけでは分からないのではないか、分かりにくさがあるという感じがするのですが、いかがでしょうか。そういう意味では「プラットフォーム」という言葉は取ったほうがいいのではないかと、私は思います。
○山本(敬)座長 今の点も含めて、御意見があれば。
松本理事長。
○国民生活センター松本理事長 私も、大分前の回にも発言したことなのですが、反社の問題と法の解釈権限付与条項・決定権限付与条項の問題は若干異質な感じがいたします。反社は社会の政策としての一種の公序に近い位置に現在では来ているのではないかと思います。
したがいまして、契約書の中で明文の規定で反社会的勢力であることが判明した場合には契約を打ち切りますという明確な条項があった場合に、それが無効なのか有効なのかという議論が出てきたとしても、政策の問題として無効にはならないのだろうと思うのです。
他方で、当社が不当と判断した場合は解除しますというような曖昧な条項のままにしておいて、反社の問題もそこに読み込みたい。反社は拒否するという趣旨を明確化してあつれきを生み出したくないから、解釈権限付与条項という漠然とした条項の中でカバーしておきたいというニーズがあるということで、これを残したいということなのか。そこがよく分からないのですが、仮にそうであるとすれば、プラットフォームの健全な運営のためという趣旨と似たようなところがあって、金融秩序の健全な運営のためとか、いずれにも事業の健全な運営のために反社を排除する必要があるのだという点では、共通してくるのですね。
反社の場合と、もちろん変な書き込みをする人の場合はレベルが違うと言えば違うのですが、広い意味でいけば、一定の秩序を維持するために必要である。それを明文の規定で書けばここの議論としては全く問題にならなくて、当該条項そのものの不当性の話になるのですけれども、そこを明確化しないで、なるべく運営している事業者の裁量を広くするような文言にしておくということがどこまで消費者契約法の見地から許されるのかという話になってくるのだと思います。ですから、もう一度繰り返しますけれども、なるべく具体的に事業者として不当と考えていることは明確化したほうがいい、しかし、確かに書ききれない新しい問題が起こってくるわけで、そうすると、そこはその他、これに類似したとか、なるべく同等の不当性が推測できるような感じの一般条項的な、あるいはその他を包含するような条項を付けておくことになるのではないかと思います。
○山本(敬)座長 結論として、この修正提案については、どう考えればよろしいでしょうか。
○国民生活センター松本理事長 これは御意見ですから、こういう御意見を出されて、それを記録に残したいとおっしゃるなら、それは別に反対はできないのだと思うのですが、論理的に考えると、この2つはある意味では異質なものだし、ある意味では一つになってしまうようなものだと考えております。これは私の意見です。
○山本(敬)座長 河上委員長。
○消費者委員会河上委員長 今の御議論を伺っていて、この反社勢力の排除やプラットフォームの健全な運営のためという部分については、考え方がかなり分かれる可能性があるということで、意見も分かれておりますから、その意味では、元の原案で維持してはどうかと思います。
○山本(敬)座長 他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
中村委員。
○中村委員 私としては、原案もそれなりにあり得ると思いつつも、長谷川委員のおっしゃるように、「異なる意見」についてもう少し具体化というか、内容を示すものを入れたいというところについては同意見ということでございまして、2つありまして、大澤委員から御指摘がありましたように、この具体的な内容ではなくて、例えばですけれども「他の法令遵守のためまたは消費者一般の利益の保護のため等により実務上必要との意見もあり」という形で抽象化した形で書くことも、内容的にはあり得るかなと思うのですが、現実の議論の中では、正にこの反社会的勢力の排除やプラットフォームの健全な運営のため実務上必要という意見があったという理解でございますので、そちらのどちらが今回の取りまとめとしてよいのかということに関して言うと、取りまとめの議論ということからは後者のほうがいいような気もするということでございます。
以上でございます。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
他に意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
石島委員。
○石島委員 私も、原案の「異なる意見もあり」ということですと、議論の経過が少し分かりかねるというところがありますので、最低限実務上必要であったというところは記載いただきたいと思っております。更に言うならば、中村委員がおっしゃったように、抽象化というより、ある程度議論の中で出てきた、具体的に困る、実務上必要だという意見が分かるような形で入れていただきたいと思います。「プラットフォームの健全な運営のため」は少し分かりにくいのではという御意見もいただいたのですけれども、議事録なども出ておりますし、現代社会で「プラットフォーム」という表現がどの程度御理解いただけないのかというのは分かりかねるのですが、結構一般的な認識になってきているのではないかとも思うのですけれども、いかがでしょうか。この文言は入れていただけるといいと思います。
以上です。
○山本(敬)座長 他に御意見があればと思います。
増田委員。
○増田委員 いろいろな意味で「プラットフォーム」という言葉を使いますので、ここでは使わないほうがよいと思います。それと、基本的にはこの条項については無効であると私は思いますし、そのことを明確にしておく必要があるかと思います。「実務上必要である」ということを書くことについては、私も必要と思いますけれども、こういう2つを取り出して書くことについては、むしろ現実にそういうことを書いている条項は余りないのではないかと思います。現実にはオブラートに包んだ形で書いているから、消費者からすると目的が分からないだろうと思います。
今後、例えば、プラットフォームの健全な運営のために必要なので、こういう条項にしますなどと、書いていただくのであればいいかと思うのですけれども、今の段階ではそこまで書かれていませんので、報告書にこのように記載しても、書いてある意味が消費者にとっては分かりにくいのではないかと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございます。
他に御意見があればと思いますが、おおむね出していただいたということでしょうか。
丸山委員。
○丸山委員 意見としましては、反社会的勢力とかプラットフォームといった具体的なことを書くのではなく、実務上の必要性がある条項もあるといった意見があったという程度に記載をとどめてはどうかと思いました。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
河野委員、どうぞ。
○河野委員 私も、今の丸山委員の御意見に賛成いたします。
その他の書きぶりを拝見しましても、このように具体的に書いているところはそれほど見当たらず、実務上必要であるという御意見があったところのみ生かしていただければと思うところです。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
意見が分かれている状況でして、このような場合は、前回の方針ですと、原案どおりということにはなるのですが、少なくとも「実務上必要である」ということを入れることについては、それでよいのではないかという御意見が多数を占めているのではないかと思います。それ以上に更に抽象的な文言、例えば「他の法令の順守のため」等の理由を一言入れることも考えられますけれども、その点についても不必要ではないかという御意見もあったように思います。
石島委員。
○石島委員 今の点なのですけれども、法令遵守のためであることは当然なのですけれども、プラットフォームの健全な運営のためというのが、事業者の利益のためだけではなくて、消費者利益の保護のためにも必要という観点がございますので、もし可能であればそういった点を入れていただけると、より御理解いただけるのではないかと思いました。
○山本(敬)座長 そうしますと、「他の法令遵守や消費者利益の保護等のため実務上必要であるという意見」ということでしょうか。今の修正案について御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
沖野委員。
○沖野委員 基本的にそういう形で結構かと思うのですけれども、「必要である」を「必要なものがある」という形とすることが考えられるというのは最初に申し上げた点ですけれども、いかがでしょうか。
○山本(敬)座長 今の点については、御意見はあるでしょうか。よろしいでしょうか。
磯辺委員。
○磯辺委員 今まとめられている方向で結構かと思いますけれども、併せて、これは修文を求めるという意味ではなくて議事録に残していただければということで、意見を述べます。報告書(案)では、「法第10条に該当する蓋然性が高いものであり無効とされる不当条項の類型として追加すべきであるという意見があった」となっていますけれども、消費者庁の提案をベースに検討したのは10条の前段要件、第1要件として入れてはどうかという話であって、実はその反社会的勢力の点とか業務上の必要性も、10条の前段に入れる限りにおいては当然10条の後段ではじかれるので、無効とは判断さないという議論の経緯がありました。そのことが捨象されてしまっているので、報告書としては非常に分かりにくくなっていると思います。ただもうここまで練り上がってきている報告書ですので、その修文は求めませんけれども、議事録として残していただければと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
長谷川委員。
○長谷川委員 先ほどの座長の御提案で結構かと思います。
ただ、修正をどうするかということではないのですけれども、先ほどからの御議論を伺っていますと、今後、決定権限付与条項や解釈権限付与条項を一般的に不当条項とすべきだという議論を仮にするのであれば、実務上必要と思われているものをどうクリアするかというのは議論が必要になってくると思います。それを特別なものですとか特殊なものですと言ったからといって問題は解決されないのではないかと思っております。先ほどの磯辺委員のお話のように、第1要件で不当性を読んで、第2要件で実務上の必要性を読んでいくというのは一つの知恵だとは思うのですけれども。いずれにしても、もし解釈権限付与条項・決定権限付与条項を不当条項として考えるのであれば、正に実務上必要とされているものをどう考えていくのかということをクリアしなければいけない。この報告書をどう書くかは別にして、一般的に、そういうことなのではないかと思います。
感想でございます。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
松本理事長。
○国民生活センター松本理事長 今、おっしゃったこととも関係しますし、先ほど私が申し上げたこととも関係するのですが、なるべく具体的な文言で書けばトラブルにはなりにくいわけです。しかし、なるべく幅広く判断の余地を事業者側にとっておきたい。それが事業の健全な運営のために必要なのだという考え方があるのかもしれないのですけれども、なるべく具体化していただきたいと思います。そして、説明できないような、つまり、我々が判断したのです、おしまいという対応をしないような形の文言にしていただきたいと思います。
この報告書にどう書くかという話ではなくて、現在のニーズとしては確かに明確に書けない部分がまだあるので、曖昧な包括的な形にしておいて裁量権を事業者側で持つことによって健全な運営をしていきたいのだというニーズがあるということは理解できるわけですけれども、なるべく具体化、明文化して紛争にならないようにしていただきたい。消費生活センターでの相談の中に、プラットフォームとの関係でアカウントを停止されたので何とかしてくれという類いのものが一定数ございます。この辺は事業者としてはきちんとしたルールに基づいてやっているという判断があるのかもしれないけれども、ユーザーの側としては納得していないということです。そのような措置の可否が客観的に判断できるような規約の明確化をする努力を積極的にしていただきたい。これは約款条項を明確にしましょうという議論とつながっていく話だろうと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
それでは、長谷川委員からの修正提案の2つ目につきましては、「他の法令の遵守や消費者利益の保護等のため実務上必要なものがあるという意見もあり」と修正するということでよろしいでしょうか。
ありがとうございました。
そして、長谷川委員からの修正提案の1点目、少し前の部分で「であり、無効とされる不当条項の類型」とある部分のうちの「、」を削除することについては、特に御異論がなかったと思いますので、修正提案のとおり修正するということでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
以上の問題については、このとおりとさせていただきます。
それでは、他の点について、御意見、御質問等があればと思いますが、いかがでしょうか。
沖野委員。
○沖野委員 内実ではなくて体裁だけなのですけれども、見え消し版でいきますと10ページから「5.不当条項の類型の追加」というタイトルがありまして、ここが(1)から(6)までの番号が付いております。このうちの(2)から(5)が個別条項の検討となっておりますので、全体をより分かりやすくするという観点から、2つの訂正を行ってはどうかと考えます。
1つ目が、10ページの(1)の最後のところ「そこで、以下の4つの条項について」というところを「以下の(2)から(5)の4つの条項について」として明確にしてはどうかというのが1つ目です。
もう一つが、13ページの(6)について、例えば、次のようなタイトルを付けてはどうか。「(6)その他―不当条項の規律の在り方全体」で、本文自体は「なお」から始まってこのままということです。単に構造を明らかにするということだけですので、いかがでしょうか。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
それでは、以上、2つの修正提案について御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、御提案のとおり、まず、10ページ目の(1)の一番最後の部分を、「そこで、以下の(2)から(5)の4つの条項について」と修正をすることとさせていただきます。
それから、13ページの(6)に新たに、「(6)その他―不当条項の規律の在り方全体」とタイトルを付け加えることとさせていただきます。
よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、他に御意見等がありましたら、お出しいただければと思います。
山本健司委員。
○山本(健)委員 「2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」の箇所で3点、「5.不当条項の類型の追加」のうち「マル2決定権限付与条項」の箇所で2点、「7.消費者に対する配慮に務める義務」の箇所で1点、申し上げたいことがあります。
最初に「2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」に関する意見3点を申し上げます。
1点目は、修文意見です。「資料1-2」の見え消し版の6ページの一番最後の「重要な課題として、今後も検討を進めていくことが適当である」という部分について、「重要な課題として、」の後に「民法の成年年齢の引下げの存否などを踏まえつつ、」という表記を加える修文を提案させていただきます。
内閣府消費者委員会及び消費者庁において今後もつけ込み型不当勧誘行為に対する消費者取消権の付与に関する検討を進めていただく際には、民法の成年年齢の引下げの存否は、その必要性の程度に大きく影響するファクターであると思います。そこで、特に代表的な考慮要因としてこれを例示した上で、その他の考慮要因もあることを踏まえて「など」を付加するという提案です。本日唯一の修文意見です。御検討をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。それが1点目です。
2点目は、つけ込み型不当勧誘行為の今後の検討に関する意見ないし希望です。今回の専門調査会では、非作出型のつけ込み型不当勧誘行為に対する消費者取消権の付与という立法課題についてコンセンサスが形成できず、継続検討が必要となりました。この制度は、高齢者の消費者被害の有効な救済策であることに加えて、民法の成年年齢が引き下げられた場合に懸念される若年成人の消費者被害に対する包括的な救済策となり得る法制度です。私のような世代の人間からすれば、親の世代のためにも、子供の世代のためにも、重要な法制度です。この制度が今回の専門調査会で取りまとめに至らなかったことにつき、私は以前、この会議で「残念である」と申し上げました。しかし、その後、日弁連消費者問題対策委員会の他の弁護士から「残念である」ではなく「極めて問題である」と言うべきところだろうという御意見をいただきました。そのとおりであると思います。極めて問題です。重要な宿題を残してしまいました。
この問題につき、内閣府消費者委員会及び消費者庁には今後の速やかな対応を期待いたします。また、国会での政治決断を期待いたします。加えて、もし今後法務省において民法の成年年齢の引下げを御検討される際には、若年成人の消費者被害に関する包括的な受け皿規定の制定という条件整備は整わなかったことを踏まえて、遅くとも民法の成年年齢の引下げと同時に、非作出型のつけ込み型不当勧誘行為に対する消費者取消権の付与という立法課題を実現することを、併せて御検討いただきたいと思います。以上が2点目の意見です。
3点目は、本日配付いただきました「資料2」に対する意見です。資料2の「2」部分では、第2段落において、「広告は『告げること』に含まれるものではない」という見解が示されるとともに、そのような見解について、専門調査会において特に異論がなかったと記載されております。また、第3段落において、そのような見解を逐条解説等で周知すべきという意見が述べられております。過去にそのような見解について議論があったのかどうかについて正確に記憶しておりませんが、念のため、本日の専門調査会において、「広告は『告げること』に含まれるものではない」という見解について異論を述べたいと思います。また、そのような見解を周知すべきという御意見には反対です。
確かに今回の提案では「不安を知りながら・・・強調して告げること」といった要件を満たす場合に取消権が発生することになっているため、個別事案において、事業者の広告行為が取消要件を満たさない、消費者取消権が発生しないということはあり得ると思います。
しかしながら、そのような結論は、あくまでも「不安を知りながら・・・強調して告げる」といった事案内容ではないからといった理由であり、資料2で記載されているような「広告は『告げること』には含まれるものではない」といった形式的な理由ではないと思います。そもそも消費者契約法の不当勧誘行為規制は、広告と非広告とで取扱いに区別などしておりません。この点は、クロレラ事件の最高裁判例でも確認されたところであると思います。
以上の理由から、資料2に記載されている「広告は『告げること』には含まれるものではない」という見解については異論を述べたいと思います。また、そのような見解を周知すべきという御意見には反対です。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
まず、修正提案に係ることをお諮りさせていただきます。
6ページの2の中の一番最後の部分、現在は「重要な課題として、今後も検討を進めていくことが適当である」とされている部分について、「重要な課題として、民法の成年年齢の引下げ等を踏まえつつ、今後も検討を進めていくことが適当である」とするという修正提案でした。この提案につきまして、御意見、御質問等があれば、お出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
長谷川委員。
○長谷川委員 まず、助詞は「等を」よりも「等も」とした方がよいのではないかと思います。これまでの経緯を踏まえますと、他に含めるべきことがあるような感じもいたしますので、「等も」のほうが適当だと思います。
その前の成年年齢の引下げに関しては、再三申し上げており、また河上委員長からもいろいろ御示唆もいただいているのですけれども、実態を見ると、消費生活相談件数は高齢者は増えている。2016年に国民生活センターでまとめられた報告書を見ても、1,000人当たりの相談件数が増えている。一方、若年層については、増えているということではなくて、減っている。前回、河上委員長からは、若年層はそもそも相談に来なくて、SNSで自分で解決を図ろうとして、それがかえって被害を拡大させているのだという御説明もあったのですけれども、いずれにしても成年年齢引下げの影響がどうなるのかということについて実証的なデータがなく、それを報告書に書くということについての根拠はないのではないかと思っております。
他方で、いろいろなことを踏まえるというのは重要かもしれないので、例えば「今後の社会情勢の変化も踏まえつつ」とか、そういったことであれば入れていただいてもいいかと思います。もしこういう実情があるのですということであれば、もちろんそれは入れていただければと思います。
○山本(敬)座長 磯辺委員。
○磯辺委員 山本委員の意見に賛成です。
実証の話なのですけれども、民法の成年年齢の引下げはこれから始まる話なので、現時点でその結果がどうなるかということを実証することは不可能なのですが、しかし、類推することは十分できると思っています。現在、20歳になった時点でやはり消費者トラブルが増える、しかも被害額が高額になるという事実は既に示されているわけです。それが成年年齢が18歳に引き下がったときに、その年代に拡散していく、もしくは18歳、19歳でで更に集中して発生することの恐れは十分に考えられるのではないかと思います。民法の成年年齢の引下げは、1つの非常にエポックメーキングな政策転換ですので、そこを意識して消費者契約法においても課題を明確にしておくことは必要かと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
大澤委員。
○大澤委員 私も山本委員の意見に賛成します。今回の専門調査会が正に1ページの「はじめに」のところに書かれていますように「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」を受けて、とりわけこの「2 合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」について、消費者契約法でどう対処するかというのを議論してきました。結論としては、今回、コンセンサスは得られませんでしたが、何回か前のコンセンサスは得られないので今回は見送りますという会議の場でも、成年年齢引下げがこれから起こるとしたら、20歳より18歳に下がることで、今の未成年者取消権がなくなる者から消費者被害が増える可能性はあり得るのではないかということですが、それについての強い反対は私はなかったと思っています。
今まで成年年齢引下げワーキング・グループの報告書を踏まえてこちらで検討してきたこと、これ自体は事実だと思いますし、その検討を今後も続けていくということは、長谷川委員が今おっしゃっていた、そんなに被害が増えていないのではないかという、そこの実情ももちろん含めて検討するのは、これは事実だと思いますので、成年年齢引下げといった趣旨を入れることは私はそんなに大きな問題にならないのではないかと思っています。
もし成年年齢引下げだけを書くことに抵抗があるとか、これでは問題だということであれば、同じくそもそも専門調査会で意識されていたのが高齢者被害でしたので、例えば、成年年齢引下げ後の、状況でしたか、引下げ後の実情を踏まえつつでしたか。
○山本(敬)座長 「民法の成年年齢の引下げの存否等も踏まえつつ」。
○大澤委員 「民法の成年年齢引下げの存否等及び高齢者被害の実情も踏まえつつ」と、それを入れるというのはいかがでしょうかということです。
どちらも今後に残された課題であることは私は事実だと思っています。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
他に意見があればと思います。
長谷川委員。
○長谷川委員 大澤委員がおっしゃるように、今後検討を続けていくということでもあるので、文言にはこだわりません。皆さん、変えたいということであれば、それはそれで結構でございます。
ただ、議事録に残していただければと思いますのは、統計上の問題はないのだという御説明でしたですが、20歳の相談件数は確かに増えているが、21歳では減っていいる。要するに、若い方が相談件数が多いということでもないわけです。20歳になると相談件数が増えているが、もしかすると成年年齢が18歳に引き下げられたら18歳の相談件数が増えて、その後、レベリングしていくだけかもしれない。いずれにしてもよくデータを踏まえて検討していただければということでございます。
以上でございます。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
井田委員。
○井田委員 私も、山本健司委員の御提案に賛成いたします。
先ほどからも意見がありました。改正後の仮に民法の成年年齢の引下げがあった場合であっても、その実例を見ればいいのではないかという意見もありましたけれども、逆に言えば、実例で看過できないほどの数の被害が生じたということであれば、そういう事態であれば、それでも改正に反対だという意見まではなかったと思いますので、山本健司委員の御提案の文言を入れても、それほど皆さんの意思に反しないのではないかと思います。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
河野委員。
○河野委員 私は是非山本健司委員が御提案した文言をここに入れていただきたいと思います。
消費者として本当に残念に思うのは、高齢者の消費者トラブルや民法における成年年齢引下げ等への対応の必要性から、判断力の低下や不足につけ込んだ勧誘の取消しを認める改正が今回なされなかったということです。このことは、返す返すも残念で、とても悔しいことだと思っています。
先ほどから事業者委員の方が実例がないのではないかと何度もおっしゃっておりますが、実際のところ消費者被害に遭った人が消費生活センターに相談に行くのは、少し数字が上がりましたが、現在、わずか7%です。そこを基準にしてこの論点に対応する必要性は乏しいのではないかという御意見を聞くのはとても残念です。
さらに、現在、消費者庁においては、消費者市民社会の確立のために、企業に対して消費者志向経営を求めて、消費者志向を目指す企業の自主宣言ということで社会に大きく呼びかけています。当然消費者側にも倫理的消費等を求められています。国際的には、国連において持続可能な開発目標が確認され、当然のことながらその12番目の目標において、持続可能な生産と消費に対する取組が日本国内でも求められています。そうしたときに、今後検討されるであろう成年年齢の引下げに対して、ここで何らかのメッセージを発信しておかなくていいのだろうかという強い懸念を持っております。今回何らかの成案が得られなかったことは、残念と言うよりも、先ほどの山本健司委員の言葉を借りれば、私自身も憤りを持って認めざるを得ないと思っておりますが、是非山本委員の提案は書き加えていただきたいと思っております。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
有山委員、お願いします。
○有山委員 私たちの相談室でも、件数は少ないのですが、18歳、19歳の被害数と20歳以上の被害数が格段に違っている。被害額についても、18歳、19歳に関しては、せいぜい不当請求、架空請求のものを抜いたとしても10万円以下なのですが、20歳になると突然100万単位で金額が上がるのです。私たちは国民生活センターのような事例が多い相談窓口ではないのですけれども、相談数として少ないのですが、現実にある。これは未成年者契約取消しが有効に効いているのだと判断しております。山本健司委員のおっしゃる内容を入れていただきたいと考えております。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
御意見をいただいている状況からしますと、山本健司委員の御提案のような文言をここに入れるということでよろしいのではないかと承りましたが、よろしいでしょうか。
それでは、「重要な課題として、」の後に、「民法の成年年齢の引下げの存否等も踏まえつつ、今後も検討を進めていくことが適当である」というように、修正をさせていただきます。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
その他の点は、山本健司委員からは御意見として承りました。他に御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。
更に御意見がおありでしたか。
○山本(健)委員 残る2論点に関する意見についても、述べていいでしょうか。
○山本(敬)座長 では、山本健司委員、お願いします。
○山本(健)委員 次は「5.不当条項の類型の追加」のうち「マル2決定権限付与条項」部分に関する意見です。本来であれば第45回会議で申し上げたかったのですけれども、その回の会議時間と進行の関係で言えなかったので、本日申し上げたいと思います。
本日の机上ファイルの中に第45回消費者契約法専門調査会で配付された「資料1」がつづられています。この第45回会議の「資料1」の「第2.1解釈権限付与条項・決定権限付与条項」部分に関する意見です。
この「資料1」の8ページの下から4行目からの「ウ」の部分に関する意見が1点目です。この「ウ」の部分では「次のように考えることもできるのではないか」という問いかけの下、「特約でどのような権利義務を定めるかについては、契約自由の原則により、強行規定及び公序良俗に反しない範囲で当事者が自由に定めることができる」という考え方が問題提起されております。
しかし、私は、現行法10条の規定内容との整合性という観点から、そのような考え方はできないと思います。
10条前段要件は、明文の任意規定との対比という要件でないことは平成23年の最高裁判例で判示されたとおりであり、むしろ当該契約条項がない場合とある場合との対比、原則的な権利義務状態との対比という要件であるというのが現在の法文解釈であると思います。
この点、確かに、原則的な権利義務関係では存在しない消費者の新たな権利を付与する特約については、原則的な権利義務関係よりも消費者の権利を制限する契約条項ではないので、10条前段要件を満たさないと思います。実質的に考えても、そのような特約で付与された新たな消費者の権利は、事業者が与える恩恵のようなものである点において、その制度設計について事業者の自由度が高くてしかるべきという考え方は理解できるところです。強行規定や公序良俗に反しない限り、契約自由に委ねられるべきという考え方もあり得るところではないかと思います。
しかしながら、原則的な権利義務関係では存在しない消費者の新たな義務を定める特約については、原則的な権利義務関係よりも消費者の義務を加重する契約条項なので、10条前段要件を満たしており、あとは後段要件を満たせば無効になると思います。実質的に考えても、新たな消費者の義務を定める特約は、消費者契約法10条の不当条項審査が及んでしかるべき契約条項であると思います。むしろ否定すれば10条の不当条項審査の適用範囲を不当に狭めてしまうことになると思います。この点において、原則的な権利義務関係では存在しない消費者の新たな義務を定める特約について、強行規定や公序良俗に反しない限り、契約自由に委ねられるべきといった考え方は極めて不合理であると思います。
以上のとおり、この「ウ」部分で問題提起されている考え方については、大きな問題があると思います。もし万一これを見た悪徳な事業者が「このような考え方もできるのではないか」「原則的な権利義務関係では存在しない消費者の新たな義務を定める特約について、強行規定や公序良俗に反しない限り契約自由に委ねられるべき」などと主張し始めたら有害です。そのようなことにならないよう、この「ウ」部分における「このような考え方もできるのではないか」との問いかけに対しては、「現行法10条の規定内容との整合性に欠ける考え方である」「とり得ない考え方である」「少なくとも是認できるような考え方ではない」という意見を申し述べておきたいと思います。
2番目は、具体例の紹介方法に関する意見です。同じく第45回会議の「資料1」では、10ページから11ページ部分において、「条項例4」などの具体的な条項例が紹介された上で、取りまとめ案となった規定案マル2の具体的な当てはめとして「規定案マル2には該当しない」といった説明がなされております。消費者庁や内閣府消費者委員会におかれては、本日取りまとめられる予定の報告書における新たな不当条項リストの説明について、説明会、説明資料、逐条解説等で同じように説明なさるのではないかと思います。
確かに「条項例4」は規定案マル2の条文上の要件を満たさないことから、規定案マル2の不当条項リストでは無効と評価されないのであろうと思います。
しかし、一般条項である消費者契約法10条の不当条項審査の対象にはなりますし、裁判所が最終的に「条項例4」を有効な契約条項と判断するかどうかは分かりません。
また、一口に反社条項といっても、客観的に顧客が反社会的勢力に妥当する場合を解除条項としているタイプの反社条項は有効性を認められる蓋然性が高いように思いますけれども、客観的には反社会的勢力でない顧客を事業者が勝手に反社会的勢力だと思ったといった場合でも事業者に顧客との契約の解除を求める契約条項が有効性を認められるか否かは、少なくとも評価が分かれるところであると思います。
消費者庁・内閣府消費者委員会におかれては、本日取りまとめられる予定の報告書における新たな不当条項リストの説明において、説明会、説明資料、逐条解説等で「条項例4」等の具体的な契約条項例を紹介・引用なさる場合には、消費者契約法10条に該当する余地がある契約条項については、およそ法的に有効な契約条項であるといった誤解を社会に与えないよう、注記を入れるなど、説明の仕方に注意していただきたいと思います。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。御意見として承らせていただきます。
他に御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
もう一つありましたか。大変申し訳ありません。
山本健司委員、お願いします。
○山本(健)委員 最後に、「7.消費者に対する配慮に務める義務」に関して、本日配付されております「資料2」の記載内容に対する意見を申し上げます。
資料2の「3」部分では、「消費者に対する配慮に努めるべき義務について、広告は射程外である」という見解と「専門調査会においても、広告は当該義務の対象ではない旨のコンセンサスが得られたものといえる」という認識が示されるとともに、そのような見解を逐条解説等で周知すべきという意見が述べられております。
しかし、私はそのような見解や認識について、異論を述べたいと思います。また、そのような見解を周知すべきという御意見には反対です。
先ほども申し上げましたとおり、消費者契約法の不当勧誘行為規制は、広告と非広告とで取扱いに区別などしておりません。その点は、クロレラ事件の最高裁判例でも確認されたところであると思います。
また、「広告には配慮義務は働かない」という見解は、法的根拠が不明ですし、少なくとも私は「広告に配慮義務は働かない」とは考えておりません。
実質的に考えても、「広告は高齢者や若年成人の権利・利益に配慮しなくてもよい」といった考え方は、社会的にも合理性を肯定され難い考え方ではないかと思います。
以上の理由から、資料2に記載されている「広告に配慮義務は働かない」という見解については異論を述べたいと思います。少なくとも本専門調査会のコンセンサスを得られている考え方ではないということを明確にしておきたいと思います。また、そのような見解を記すべきという御意見には反対です。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。これも御意見として承らせていただきます。
他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
増田委員、お願いします。
○増田委員 今の点について、私も1つ追加させていただきたいと思います。子供の広告に対する攻撃的な広告なども最近は大変問題になっている状況にあります。年齢に対する配慮というのは、当然、広告についても配慮していくべきと考えます。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、最後に「第3 上記以外の論点」と「おわりに」の部分を検討したいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。
長谷川委員、お願いします。
○長谷川委員 最後の16ページから17ページにかけての「2.約款の事前開示」のところでございますけれども、前回の議論を踏まえて、よくまとめていただいていると思います。個人的には幾つか修正していただきたいところもあって今の表現ぶりは残念なのですが、それは皆さんの総意ということなので、特に申し上げることはございません。
ただ、日本語の問題だけですので、安心して聞いていただきたいのですが、17ページの3つ目のパラグラフで、最初の冒頭のところで、「したがって、この点については、」と書いてあるのですけれども、その前のパラグラフの論理構成とか中身などで「したがって」で読めるものがなく、また、「この点」が何を受けているのか分からないと思います。具体的な修正の提案といたしましては「したがって、この点については、」というものを削除して「消費者に対する契約条項の開示については、実態を更に把握することなどを経た上で」としてはいかがでしょうか。事前に書面で示せていなくて申し訳ございません。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
修正提案は、最後のパラグラフの「したがって、この点については、」を削除し、「消費者に対する契約条項の開示については、実態を更に把握することなどを経た上で」と続けていくという御提案でした。この御提案について、御意見、御質問等があればお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
磯辺委員、お願いします。
○磯辺委員 約款の事前開示について集中して議論したところを受けて「したがって、この点については、」になっていると思いますので、契約条項の事前開示の問題であるということは明確にしておいたほうがいいと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
今の御意見は、「したがって、この点については、」を削除するのであれば、その後に「消費者に対する契約条項の事前開示については」と修正してはどうかという再提案でした。
長谷川委員、お願いします。
○長谷川委員 いいのですけれども、そういうことであれば「したがって、この点については、」を削除した上で「約款の事前開示については、」と加え、それで原文を生かして「消費者に対する契約条項の開示の実態を更に」と続けてはどうでしょう。ただ、それだと狭くなるのではないかという気もしますので、それでいいのかというのは、是非御議論をいただいたほうがいいような気がいたします。
○山本(敬)座長 磯辺委員、よろしいでしょうか。
○磯辺委員 確かに、この「したがって、」以降が、約款の開示のあり方全般ではなくて、事前開示の在り方に絞られるということで狭くなるのではないかというお話もあると思います。ただ、ここでは約款の事前開示についての論点で「したがって、この点については、」と受けているので、約款の事前開示ということでいいのではないかと思うのです。もしその点について、むしろここは論点を拡張してまとめをするべきだという御意見があれば出していただければという感じがします。
○山本(敬)座長 恐らく結論としては一致していて、「したがって、この点については、」を削除した上で、繰り返しになるかもしれないとしても、趣旨を明確にするために、「約款の事前開示については、」とし、「消費者に対する契約条項の開示の実態を更に把握することなどを経た上で」と続けるということでいかがかということです。
御意見、御質問等があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
河上委員長、お願いします。
○消費者委員会河上委員長 今のはどちらでも私は結構なのですけれども、今日の調査会が始まる前に、実は私の編集した研究雑誌を皆様のお手元に献本させていただきました。これは先週刷り上がったばかりのものでありますけれども、本専門調査会の学識経験者の皆さんの論考が入っておりますので、是非御参照いただければありがたいと思います。調査会でいろいろ御懸念として示されたところのかなりの部分が、これで解消されるのではないかと期待しているところでございます。
約款の事前開示というのは、一般契約法の考え方からもごく当たり前のルールでありますし、これまでも事業者の方によって実践されてきたところであります。指摘された民法上の問題の多くも、実務のこれからの積み重ねで解消されてしかるべき問題点ばかりだろうと思います。今回の消費者契約法にこのルールを入れてはどうかということが努力義務として提案されてきたということも考えますと、特に新たな御負担を求めるものでもないし、むしろ民法改正を機に悪質な事業者が約款や契約条件を後出しして、消費者を不利な地位におとしめるという口実を与えないようにするためのものだということを特に強調したいと思います。
その意味では、消費者志向経営ということを言われる事業者委員の皆様におかれましても、単なる努力義務だし、学識経験者もこんなに頑張っているのだから、今回入れてやってもいいのではないかというお気持ちになったのだとすれば、そのようなことで規定化に御賛成いただくということがあったら、本当にうれしいという気持ちがしているところでございます。これは感想に近いことでございます。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
それでは、先ほどの修正提案に関しましては、特に御異論がないということで修正をさせていただくということでよろしいでしょうか。
もう一度申し上げますと、「したがって、この点については、」に替えて、「約款の事前開示については、」とし、あとは「消費者に対する契約条項の開示の実態を更に把握することなどを経た上で」と続けていくということとさせていただきます。ありがとうございました。
他に御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。「おわりに」の部分を含めまして、これでよろしいでしょうか。
増田委員、お願いします。
○増田委員 全体に対する意見なのですけれども、これまでの調査会の中で、具体的なことが示されないということを基に意見が分かれて、コンセンサスが得られなかったことが数多くありました。今の約款開示の件もそうなのですけれども、消費者がどういうことを求めていて、通常、平均的な消費者であれば、この程度を示せば分かるのではないかというようなことを検討していただく。示す内容について調査分析してきちんと示していただくということが、事業者の役割ではないかと考えております。今後に向けてですけれども、消費者志向経営を目指す事業者であれば、それをやらない限り、消費者志向経営にならないと私は思います。具体的な案を示さなければ法律改正にならないという傾向にあることは非常に残念に思っております。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
他に御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。
中村委員、お願いします。
○中村委員 修文の意見ではなくて、今の辺りについて一言申し上げたいと思います。
私ども事業者として、決して消費者の在り方について無視をしているとか、努力をしていないとは、少なくとも私どもとしては思っていないのですけれども、我々としては、私どもで言うと毎日何千万という取引をして、いろいろなクレーム等も受けている中で、そういうことを考慮した上でこういう形が一般の消費者の方に対して一番いいのではないかということを、それなりにかなり努力をしてやっているつもりでございます。その中で、更に法令を変えることによって、結果的には他の消費者一般の方に対しての、我々の認識では、ある意味ではマイナスになる部分について、それをそういう形にチェンジをするということについての納得感が今一つ得られないという形で私としては捉えております。
ですから、今後議論していく中でも、事業者として考えていないということではなくして、事業者から見た一般の取引の認識に対しての、そうではないというところを更に深めるというか、そういうところを御配慮いただければと思うところでございます。
以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
柳川委員、お願いします。
○柳川委員 具体的な修文をお願いするものではないですけれども、今、御意見があったので、そこに関する私の意見というか、長期的な方向性に関する希望を申し上げたいと思います。
こういうような検討会でいろいろ議論されることはとても大事なことだと思うのですけれども、その際、どういう事例やどういうデータに基づいて議論がされるのかが絶えず議論になってきて、今回のところでも、こういうお話がどこまであるのか、こういうデータがどこまであるのかという議論になってきたのだと思うのです。こういうものはできるだけ委員会のときに意見が出されるのではなくて、ある意味、継続的にデータなり事例を集めていって、その集積した結果を基に、検討会がされて議論がされるという方向性が望ましいのではないかと思います。できれば、是非そういう体制を少し考えていただきたい。
そのときには、やはりどういう事例で消費者が困っているかということをきちんと事例として積み上げていくことと、一方では、事業者の方も今お話があったように、ある意味で、こういうことで不必要なコストがかかっているのだとか、あるいは逆にこういうルールであるがためにかえって消費者の利益にならないようなことをせざるを得ないのだという御意見も出ているわけなので、そういう事例もきちんと事前に積み重ねていって出していただいて、それを基に議論をするほうが、お互い水かけ論ならずに建設的な議論ができると思います。なかなか手間なことではあるのですけれども、真の意味での消費者の利益になるという意味でいくと、お互いそういう事例なりデータを積み重ねていくような工夫を是非考えていただきたいということが1点目です。
それに関連してなのですけれども、消費者志向の経営はとても大事なことだと思っているので、これから大きな鍵になるのだと思います。ただ、その中では、いかに賢い消費者に育てていくかというのは、事業者だけではなくて、ある意味で、この行政も含めて考えていかなければいけないポイントなのだろうと思います。できるだけ情報をきちんと把握する努力をする消費者、それから、きちんとした判断を、もちろん持てない事情がある方もあるわけですけれども、持てるようにする消費者にしていく工夫も必要だろうと思っています。
そのことは、ここにいらっしゃる皆さんが頑張っていらっしゃるような消費者教育的なことも重要なのですけれども、ある意味で、こういうルールを基にして、そのことでできるだけ自分がより賢くなってきちんと判断を持たなければいけないと思うようになる消費者を作り上げていくということも、重要な課題ではないかと思います。
そこのところは、どういうルールにしていったらいいのかというところには、具体的なところになっていくとなかなか手が届かない部分ではあるのですけれども、そういう視点がこれからはより重要になってくるのではないかと思っております。
長期的な話です。すみません。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
長谷川委員、お願いします。
○長谷川委員 余り柳川先生の後に御発言しないほうがいいかもしれませんが、消費者志向経営の話が出ましたので、経団連の取組を紹介させていただきます。消費者庁が展開されている消費者志向経営については、私どもでも岡村長官をお招きして説明会を行い、また、河野委員にも会合に来ていただいて、会員企業に呼びかけているところでございます。
先ほど出た事例の集積の話と関連するのですけれども、それは是非お願いしたいと思っております。消費者委員会あるいは国民生活センター、消費者庁に、是非事例、特に量的なデータの積み上げをお願いしたいと思います。
御案内のことかと思いますけれども、世の中では証拠に基づく政策立案、エビデンス・ベースト・ポリシーメイキングと言っておりますけれども、そういうもので政策を作っていこうという機運が高まっているところでございまして、それに基づいて統計の見直し等も行われているところでございます。是非、その流れに乗って、この分野でも実証的なデータに基づいて、より一層充実した議論が行われるようにお願いできればと思います。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
それでは、この部分については、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、幾つか修正が入りましたので、ここで一旦休憩を取らせていただいて、修正したものを文面にして、最後に御確認いただくほうが間違いがないと思います。ですので、恐縮ですけれども、15分ほど休憩を取らせていただければと思います。
(休 憩)
○山本(敬)座長 それでは、ただいまより議事を再開いたします。
先ほどまでにお伺いした御意見を踏まえまして、修正案をお示ししたいと思います。事務局から、修正案についての説明をお願いいたします。
○消費者委員会事務局 事務局から説明いたします。
委員の皆様には、修正したものを今、机上に配付させていただきましたが、分かりやすくするために、報告書とのページとも照らし合わせながら説明していきたいと思います。見え消し版の資料1-2のページと併せて説明させていただきます。
まず「第2 措置すべき内容を含む論点」の「2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」ですが、これは報告書6ページの部分で、末尾ですけれども、「重要な課題として、」の後に「民法の成年年齢の引下げの存否等も踏まえつつ、」を追加して、その後「今後も検討を進めていくことが適当である」としております。
次が、報告書1-2ですと10ページの部分、「5.不当条項の類型の追加」の説明の(1)の部分です。これについては、説明(1)の最後の文に、「そこで、以下の」の後に「(2)から(5)の」を追加して、「4つの条項についてさらに検討を行なった」と続けております。
もう一つ、沖野委員から指摘のあったところを先に説明しますと、13ページで、(6)にタイトルをつけるということで「(6)その他-不当条項の規律の在り方全体」というタイトルをつけております。
ページが戻るのですが、次が12ページの部分です。解釈権限付与条項・決定権限付与条項のところです。「なお」のパラグラフですけれども、1つが「法第10条に該当する蓋然性が高いものであり無効とされる不当条項の類型として」ということで、「高いものであり」の後ろの「、」を取る修正をしております。
その後ですけれども、「無効とされる不当条項の類型として追加すべきであるという意見もあったが、」の後に「他の法令の遵守や消費者利益の保護等のため実務上必要なものがあるという」を追加して、その後「意見もあり」とつなげるところです。
もう一つが、その段落の後ろで「また」から始まるところで、「また、これらの条項には法第10条により無効となるものがあることを逐条解説に記載する」ということで、「条項が」という部分を「条項には」と変え、「無効となり得る」というところを「無効となるものがある」という修正をしております。
最後は17ページ、「2.約款の事前開示」ですけれども、ここについては「したがって、この点」とパラグラフの最初の文章はなっていますが、この部分を「約款の事前開示については」という修正をしております。
修正内容としては、以上です。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
御意見を踏まえた修正案として、ただいま事務局より説明した内容で御賛同いただければと思いますが、この点につきまして、もし御意見があればお伺いしたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、これでお示ししたとおり御異論はなかったということですので、この内容で報告書を取りまとめたいと思います。なお、「てにをは」等の形式的な字句修正につきましては、座長である私に御一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、これにて取りまとめに至りました。どうもありがとうございました。
では、法務省から、お願いします。
○法務省中辻参事官 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私どものほうからは、特に意見を申し上げるわけではなく、お礼を申し上げたいという趣旨ですので、手短に済ませたいと思います。
平成27年の6月に、公職選挙法が改正され、わが国の選挙権年齢は20歳から18歳に引き下げられました。現実に,昨年7月の参議院選挙から、18歳、19歳の方が選挙権を行使するという状況になっております。それを踏まえ、法務省は民法の成年年齢の引下げ法案の提出を準備している段階にあり、昨年11月にはこの専門調査会で、若年者等に対する消費者被害への制度的対応についてお願いしていたところでございます。
その後、専門調査会で熱心に御議論いただき、デート商法など悪質な商法をターゲットに場面と要件を明確にした上での消費者からの取消規定の新設、消費者に対する配慮義務の明確化など,成年年齢引下げに対応する内容も盛り込んだ報告書を取りまとめていただきました。山本座長、委員の皆様、そして、内閣府、消費者庁の事務局の方々に対しては、本当に心から御礼を申し上げたいと思います。
私どもとしては、このような消費者契約法改正による制度的対応に加えて、消費者に対する周知啓発、若年者への支援、その他の環境整備に向けた準備が並行して行われることにより、皆様に安心していただけるような形で、できる限り速やかに成年年齢の18歳引下げを実現したいと考えているところでございます。引き続き,成年年齢についても御関心を持っていただければ幸いです。
○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。
委員長から一言ございますでしょうか。よろしくお願いいたします。
○消費者委員会河上委員長 最後に少し時間を頂戴して、お礼かたがた、一言申し上げます。
この専門調査会は、第1次のときから数えまして47回、第2次に限りましても23回の会議を行っていただきました。これまでの長期間にわたる熱心な御議論に対して、心からお礼を申し上げたいと思います。
特に、最後の取りまとめの段階には、ほぼ毎週という驚異的なペースで、日程的にも大変窮屈な形で審議をお願いする結果となったということで、大変心苦しく思います。中には、若干微妙な意見対立というものもございまして、山本敬三座長、あるいは後藤巻則座長代理には、いろいろと御苦労をおかけしたのではないかということを考えておりまして、心からお礼を申し上げたいと思います。
私もこの専門調査会を通じまして、消費者契約法というものの基本的な性格は何かというようなこととか、事業者の方々の言う消費者志向経営の推進というのは一体どういうことなのかということについて考えさせられる良い機会になりました。いずれにしてもお礼を申し上げたいと思います。
ただ、お礼を申し上げた後でお話しするのもはばかられるのですが、実は去る8月1日に委員間打合せというものがありまして、消費者委員会本会議の委員による打合せ会がありまして、8月1日の段階でしたので、7月27日に提示された取りまとめ案を中心に事務局から説明をいただいて、答申に向けた意見交換を行いました。調査会の最後になりますけれども、参考までに少しお話をしておいたほうがいいのではないかと思います。残念ながら、少なくともあの時点での報告については、手放しでこれでよしという意見はございませんでした。むしろ、かなり手厳しい意見が相次いだということを率直に御報告申し上げねばなりません。
5つほどございます。せっかくの機会ですから、全部申し上げます。
1つ目は、取りまとめ案の文章は、調整に大変御苦労されたものであることは分かるのだけれども、全体に専門調査会がコンセンサスに至らなかった理由、特に反対理由が分かりにくくて、なぜ反対されているのかが理解困難なものがあるのではないか。
2つ目に、常識的に考えて、顧客である消費者の年齢等、例えば高齢であるとか、若年者であるとかといったようなことに配慮しようと努めない事業者などはいないのではないか。これでは報告書がまるで事業者は顧客の年齢等には配慮する必要がないという誤ったメッセージを送っているようにも読めるのではないか。本日、かろうじて1カ所だけ「年齢」の話が入りましたけれども、全体としては、そういう年齢等に配慮する必要がないというメッセージを社会に発しているようであるが、それは必ずしも事業者の意向に沿わないのではないか、というものです。
また、知識・経験のみの部分で年齢を切ってある部分に関して、相手の判断力の低下、例えば認知気味の高齢者のように、知識・経験のみでなくて相手の判断力の低下にも配慮すべきであって、その意味では、年齢の要素はきちんと書き込んでおくほうがいいのではないかというような意見もありました。
さらに、3つ目ですけれども、18歳、19歳の若者が今回の成年年齢引下げによって危険にさらされることは明らかであるにもかかわらず、報告書にこの点についての配慮がほとんどないというのは、前提となるリスクについての認識あるいは問題意識が、専門調査会において共有できていないのではないか。むしろ、この点に対する配慮は、高齢者保護とともに喫緊に対処すべき課題と言うべきではないのか、ということでした。
4つ目でございますけれども、自分の定めた契約条件や契約内容を、契約前に相手に認識させるよう努力をすることは、むしろ通常の事業者として当たり前の行動であって、なぜそのような努力義務を否定する必要があるのか全く理解できないとの意見も強く主張されました。特に新たな負担が課せられるわけでもないことや、努力義務にすぎないことからすれば、消費者志向経営の推進を強調する今日の事業者として、これに同意できない理由がよく分からない。かえって契約の内容を相手に知らせようとしない不誠実な事業者の態度をよしとしているようにさえ見える、というものです。民法改正の成った今、契約条件等の事前開示を明確に示しておくことは、消費者契約法において喫緊の重要課題の一つではないのか、という意見でした。
5つ目、これで最後に致しますが、諮問の趣旨に鑑みて、重要と考えられる課題について措置を求めていない事項について、あえて「必要に応じ」と留保を全て付けていることは、必要とされる新たな事実が出てこない限り改善提案をする必要がない、できないという意見のようにも見えてしまうのではないかとの危惧もありました。専門調査会は、その使命に照らして、生じ得べき蓋然性の高い将来の危険に対しても、もっと積極的な提案をしていただくべきではないかというような意見が相次いだところでございます。
その意味では、親委員会としては、この報告書案について、本日少し修文がありましたけれども、そのまま了とすると言いづらいところがございます。消費者委員会の親委員会としては、下部組織であります専門調査会の御意見をできるだけ尊重して答申を発出したいと考えておりますので、それだけに余り差し出がましいことは申し上げたくはないのですけれども、ここに取りまとめられた報告書案をそのまま答申とすることには、相当の抵抗感があるというのが親委員会の素直な意見であることも否めないことを御承知おきください。その辺りの調整に関しては、申し訳ございませんけれども、委員長である私にお任せをいただくということでお願いしたいと思います。
次は私自身のことですけれども、私自身は消費者委員会の委員長という立場もございますので、余りここで差し出がましいことは申し上げないようにと心がけて、発言は控えるようにはしておったのですけれども、ときに、研究者的な本能がふつふつと湧いてきて、その結果、言わずもがなのことを言ってしまったのではないかということで、少し反省しております。それはそれとして、調査会での個人的な意見としてお許しいただければと思います。
報告書については、次回以降の消費者委員会本会議で御報告をいただいた上で、その内容を精査し、できるだけこれを尊重しつつ、消費者委員会としての「答申」としてまとめていく所存でございます。
最後に少々辛口のことを申し上げましたが、皆様の御尽力には、心より感謝いたしております。本当に長い間、ありがとうございました。
○山本(敬)座長 ありがとうございました。
それでは、閉会に当たりまして、私からも一言御挨拶を申し上げたいと思います。
この消費者契約法専門調査会は、今、河上委員長からも御紹介がありましたように、最初の2014年11月4日の第1回から数えますと、本日まで2年9か月の間に計47回。再開しましたのは2016年、昨年の9月7日でして、その第25回から数えましても、本日まで11か月の間に23回もの会議を重ねてきました。最後は7週連続と、恐らく空前にして絶後ではないかと思われるようなペースで御審議をいただくことになりましたが、皆様の御協力によりまして、何とか報告書を取りまとめることができました。
委員の皆様並びに事務局の皆様には、文字通り、大変な御負担をおかけすることになりました。特に私の議事進行の不手際で、御不満も多かったことと思います。お詫びとともに、心よりお礼申し上げたいと思います。
とりわけ再開後は、その直前の第24回までで積み残した非常に難しい問題ばかりを取り上げることになりましたので、正直に申し上げますと、当初は1つでも2つでも改正案の取りまとめにこぎつけることができればと思っていました。しかし、皆様の冷静かつ理性的な意見交換と、事務局による周到な調整のおかげをもちまして、本日多くの項目について改正案を取りまとめることができました。これは大変ありがたいことと感謝しています。
今後は答申を経て、更に広く意見を募りながら、改正法案を作成して、国会に提出していただくことになりますが、最終的に改正法が成立するに至るまでは、なお、曲折を経ることになるのではないかと思います。委員の皆様を初めとしまして、ここにいらっしゃる方々には、この場で何とかコンセンサスを得るに至ったことがよりよく実現されるように、今後も御支援、御協力のほどよろしくお願いしたいと思います。
座長としてのお礼とお願いは以上のとおりですが、本当に最後の機会ですので、これまで47回の審議を経験してきた者として、今後に向けた所感を、研究者の本能というわけではありませんが、述べることをお許しいただければと思います。
報告書の第2では、多くの項目について具体的な改正提案を行っていますが、報告書の第3にありますように、この場で議論はしたけれども、改正提案を取りまとめるに至らなかった問題もたくさんあります。しかし、それは問題がないということを意味するわけではありません。今後も改正する必要があるかどうか、あるとして、どのように改正するかということを慎重に検討していくことが求められています。
そのような今後の検討を進めるためには、何が必要か。もっと正確に言いますと、私たちはどのような準備をする必要があるか。それをこの47回の審議を経験した立場から、一種の覚書として確認しておきたいと思います。
まず、消費者紛争の相談現場で対応されている方々には、相談現場という最前線で一体何がどう問題になり、そして、どのような課題があるか。それを改正につながるような形でデータとして蓄積していただきたい。日々のお仕事で大変だと思うのですが、そのような蓄積が将来にとって大きな意味を持つことを強調しておきたいと思います。そのためには、研修をはじめとして、様々なサポートも必要になってくるだろうと思います。
次に、弁護士や適格消費者団体の方々には、消費者被害の救済に当たられる中で、裁判を通じた法形成を進めていただきたい。もちろん、そんなことは百も承知で活動をしておられると思いますけれども、現行法、さらには今回の取りまとめを踏まえた改正法が成立しますと、それらを駆使しながら、個別の救済はもちろんのことですが、とりわけ判例法の形成を目指した活動を、これまでにも増して推進していただければと思います。
さらに、事業者の方々には、先ほど柳川委員からも御指摘があったのですが、これは特にお願いしたいことなのですけれども、昨年の改正に続いて今回の改正も実現したときには、それによって事業活動にどのような影響が出たのか、どれだけのコストがどのように掛かることになったのか。しかし、そうしたコストを掛けることによって、トラブルの回避などのメリットがどれだけ得られたのか。そのような事業活動に対する影響について、可能な限りデータによる実証を行っていただきたい。もちろん、そんなことを個別の企業が自発的に行うことは現実的ではありませんので、ここは消費者庁と消費者委員会が予算措置を講ずるなどしていただいて、そのようなデータの収集ができるような体制を整えて、様々な事業者あるいは事業者団体の協力を取り付けていただきたい。それが今後の立法活動の基礎になると思いますので、是非お願いしたいところです。
最後に、研究者の方々にも、これは自戒を込めてなのですけれども、お願いをしておかなければなりません。我々研究者は、これまで現行法の解釈論を主たる仕事としてきたのですが、それでは、立法を考える際には、どうしても限界があります。もちろん、諸外国の立法等の動向を調べて、それを参考に日本法の課題を示すことは、これまでも行われてきましたし、これからも行い続けていかなければなりませんが、それだけではなかなか立法提案としては受け入れられないと言わざるを得ません。
かつて、立法学あるいは法政策学の重要性が説かれたことがありましたけれども、それをもう一度真摯に受け止めて、立法を視野に入れた基礎的な研究を進める必要があるように思います。その際には、ここにおられる方々のような実務に携わる方々との協働が不可欠になってくると思います。とりわけ若い世代の研究者、若いというのは私より若いという程度の意味ですので、たくさんの方が含まれていますが、そうした若い世代の研究者の方々には、是非そのような研究をお願いしたいと思います。
最後は遺言のような話になってしまいましたけれども、申し訳ございません。改めて、この場にいらっしゃる全ての方々にお礼の言葉を述べて、締めくくりとさせていただきたいと思います。
この2年9か月、再開後でも11か月の間、本当にありがとうございました。(拍手)
それでは、本日の審議は以上となりますが、最後に事務局から事務連絡をお願いします。
≪3.閉会≫
○丸山参事官 次回は、ないです。
本日の取りまとめの間まで、座長及び委員の皆様には多大な御尽力をいただきましたことを、事務局から心より感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。
○山本(敬)座長 それでは、これにて閉会とさせていただきます。
皆様、どうもありがとうございました。
以上