第45回 消費者契約法専門調査会

日時

平成29年7月21日(金)15:00から18:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、後藤準委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、丸山委員、柳川委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会 河上委員長、鹿野委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、廣瀬消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 約款の事前開示
  3. 不当条項の類型の追加 等
  4. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会第45回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用によりまして、石島委員、増田委員、山本和彦委員が御欠席、それから柳川委員が遅れての御出席との連絡をいただいております。

まず、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第下部に配付資料一覧を記載しております。もし不足がございましたら事務局までお申し付けいただきますようよろしくお願いいたします。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.約款の事前開示≫

○山本(敬)座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。

本日の議事に入りたいと思います。本日の進行としましては、消費者庁より資料1を御提出いただいていますので、まず、「約款の事前開示」を御検討いただき、その後、休憩を挟みまして「不当条項の類型の追加」を御検討いただくことにしたいと思います。

それでは、「約款の事前開示」につきまして、消費者庁より御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、御説明させていただきます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

まず、この資料の趣旨ですけれども、第43回で御議論いただきました結果、残された問題点を整理した資料になります。

第43回では、冒頭にあります提案が消費者庁からありました。そして、消費者庁の提案の趣旨や方向性に賛成しつつも、その趣旨をより良く明文化するためには別の考え方もあるのではないかという観点から、大澤委員外3名からも御提案があったところでして、具体的には1の真ん中辺りになりますけれども、法第3条第3項を新設して、「消費者契約において、事業者は、合理的な方法で、消費者が、契約締結前に、契約条項(「定型約款」を含む)をあらかじめ認識できるよう努めなければならない(努めるものとする)」という規定を設けるという御提案があったところです。

そして、第43回では、消費者庁の提案よりも、大澤委員外3名の御提案のほうがよいのではないかという御意見もあったと認識しております。もっとも、消費者庁の提案、それから大澤委員外3名の御提案を条文化することにつきましては、慎重な意見もあったところで、以下の2点が残された問題点となっていると認識しております。

第1は、新民法では、定型約款の開示(表示)が請求に係らしめられているところです。そういう中で、消費者契約の条項については、消費者が事業者に対する開示請求をすることなく知ることができるようにするという規定を設けるという提案になりますので、その是非がまず1つの問題になるかと思っております。

第2ですけれども、提案を立法化した場合には事業者が努力義務を負うことになるので、事業者に対して何が要請されるのかということを、指針としてより具体的に明らかにする必要があるのではないかという問題点も残されたところと認識しております。

今、申し上げました第1の点の是非、第2の点につきまして、どこまでのことが事業者に要請されるのかによって第1の点は影響を受けると考えられることから、特に第2の点を更に検討する必要があるとされたところでして、この第2の点を中心に、提案の具体的な意味や具体例を整理したものがこの資料となります。

具体的な内容は「2.検討」のところでして、まず、(1)で提案の具体的な意義をまとめております。

消費者庁の提案では、「容易に知ることができる状態に置く」という言い方をしているところですけれども、これは、事業者に対して開示を請求することなく知ることができるようにするという意味だと考えております。それで、どういう場合にこの努力義務を充足するのかについては、取引の内容や態様を考慮して判断されることになるわけですけれども、大きな方針としては次のように考えられると思っております。

下に表の形式でまとめておりますけれども、まず、事業者が消費者に対して条項全体を表示することが考えられます。例えば、全ての条項が記載された契約書を交付することや、オンライン取引で申し上げますと、パソコンの画面に全ての情報を表示することが想定されます。そこまでしなかった場合であっても、事業者は、消費者に対して、消費者が条項全体を見ようと思ったときには、これを見ることができるための何らかのひも付けを表示することが必要であると考えております。このひも付けの意味につきましては、後の具体例で御説明させていただきます。

このようにひも付けの表示が必要だと考えているところでして、事業者としましては、消費者から請求を受けたときに対応できるように準備しておくことだけでは足りないと考えております。

先ほど、努力義務を充足するかどうかにつきましては、取引の内容や態様等を考慮すると御説明しましたけれども、「なお」のところに参りまして、新民法におきましては、個々の特別法によって定型約款を契約内容とする旨を公表していれば、個別の条項についても合意をしたものとみなすこととされている取引類型があります。このような取引類型については、契約の内容とするための表示が緩和されていることを踏まえまして、消費者契約法において事業者に努力義務として求められる「消費者が消費者契約の締結に先立ち知ることができる状態」というものも、他の取引類型に比べて緩和されると考えております。

それで、具体例のほうに参りまして、(2)に幾つかの類型を挙げております。

まず、アがオンライン取引です。これは、前回の資料でも御説明したところですけれども、消費者が事業者のウェブサイトを通してオンラインで締結する契約において定型約款に該当する利用規約が用いられる場合を考えますと、利用規約が契約の内容となるためには、新民法によりますと、あらかじめ利用規約を契約内容とする旨を消費者に表示することが必要となります。その上で、消費者契約法との関係を申しますと、ウェブサイトに利用規約が掲載されておりまして、契約の締結までに利用規約を案内する画面が表示されていれば、そこにアクセスできることを捉えて、消費者庁の提案で申しますと、「容易に知ることができる状態に置く」と言えると考えているところです。

それから、イに参りまして、店舗取引、例えば消費者が店舗で締結する消費者契約において定型約款が用いられる場合を考えますと、定型約款が契約の内容となるためには、新民法では、事業者は、取引を実際に行おうとする際に、定型約款を契約内容とする旨を消費者に対して個別に面前で示すことが必要になっております。これが新民法の規律でして、消費者契約法における提案との関係で申しますと、例えばマル1、マル2、マル3と幾つか挙げているところでして、今、申し上げました、事業者が定型約款を契約内容とする旨を消費者に表示する際に、定型約款が置かれている場所や、約款が掲載されているウェブサイトも併せて案内することが考えられます。

それから、マル2としまして、店舗内の消費者が自由に閲覧できる場所に約款を置いた上で、店舗内の消費者が目にする場所に、約款はここにありますよと掲示するとか、ウェブサイトにアップした上で、消費者が目にする場所に「詳しい契約条件を知りたい方は、『●●商店 規約』を検索してください」という掲示をすることが考えられます。

それから、ウのテレビショッピングで、これは第43回で御質問があったところで、今回、御紹介する次第です。例えば、事業者がテレビで商品の広告を行いまして、その広告で指定された電話番号に消費者が電話することで締結する契約におきまして定型約款が用いられる場合には、定型約款が契約の内容となるためには、新民法によると、繰り返しで恐縮ですけれども、その定型約款を契約の内容とする旨を表示することが必要となります。

その上で、消費者契約法との関係で申しますと、約款をウェブサイトに掲載した上で、事業者が定型約款を契約の内容とする旨を表示する際に、約款が掲載されているウェブサイトも併せて案内する方法や、テレビの広告画面に「詳しい契約条件を知りたい方は、●●を検索してください」という趣旨の表示をすることも考えられるのではないかと思っております。

最後に、エの旅客運送・通信サービス等というところでして、これは先ほど若干申し上げましたように、特別法によって、定型約款を契約内容とする旨を公表されるとされているものにつきましては、定型約款を契約内容とする旨を公表する際に、定型約款をウェブサイトに掲載した上で、そのウェブサイトを案内するという方法で足りるのではないかと思っているところです。

私からは以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして、御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

中村委員。

○中村委員 ありがとうございます。

本件に関しましては、まず1点目といたしまして、約款の問題というのは、以前の会議でも申し上げましたけれども、民法の議論の中でも非常に議論のあったところでございまして、最終的に定まった規定というのは、その議論の到達点として至ったところであると認識しております。それで、新民法につきましてはほぼ3年後の施行ということでございまして、まだそれが施行されて課題等も明らかになっていない中で、消費者契約法の中に新たな規定を置くということについて反対でございます。

2つ目といたしまして、定型約款なのか契約条項なのかというところがあろうかと思いますが、今回の御提案については、定型約款に限らず条項ということになっておりまして、いわゆる約款として形式の整った形で全体に書き下ろされたものだけではなくて、およそ消費者と事業者の間に成立する契約の条項ということに、全てに適用されることになろうかと思います。

そのように考えました場合に、一律にこのようにすべきということを現時点で示すことについては、先ほどの民法の経緯も含めまして、少し行き過ぎではないかと考えているところであります。それは、約款というきちんとした形で定められたものだけではなくて、例えば、ここで申し上げますと、テレビショッピングの返品条件とか、いろいろな条件というものがあり、それはお客様に必要の都度、必要な部分については、重要なことについては事前にお示しすべきということについては、特に異論があるわけではございませんけれども、何かそれを全て事前に書き下ろしてお渡ししなければいけないかというと、それはそういうものではないだろうと思っております。

いろいろな業態とか契約の中身によりまして、いろいろな形があり得るだろうということでありますので、そういった意味において、こういう形で、こうでなければならないという考え方は実情に即していないではないかと思います。

3つ目といたしまして、「容易に」という部分と「あらかじめ」という部分があるわけですけれども、例えば旅館の約款。皆さん、旅館とかホテルにお泊まりになると、余り御覧になられないかもしれませんけれども、引き出しをあけると、冊子の中に約款が全て入っていると思いますが、それは泊まって部屋に入らないと見ることができないものではないかと思います。

このように、約款と言いましても、少なくとも現状において、あらかじめ示されていないものというのは、ここに挙げられている以外にもいろいろあろうかと思いまして、そこについて、もしも変えていくべきであるならば、そこは一つ一つ丁寧に検討していくべき内容であろうかと思いますので、この時点において、こうでなければならないということはちょっと検討が足りないのではないかと考える次第です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 消費者庁の提案に賛成いたします。

こちらでは、消費者契約の条項と書いてありまして、今、中村委員がおっしゃっていたように、これは別に定型約款に限っているわけではなくて、しかも約款という、要するに一体のものではなく、契約条項と書いていますので、例えばキャンセル料を定めた条項があるのであれば、それを事前に消費者契約に先立って分かるような状態にしなさいということを言っています。先ほどからお話を伺っていますと、あるいは本日、意見という形で出されていました書面を何点か拝見しましたけれども、条件をまとまった形であらかじめ提示しなければいけないのか、そういう負担を課すのかという趣旨の御意見だと伺いましたが、そういうことを言っているわけではないのではないかと思います。

例えば、今ですと、旅館などにつきまして、オンラインで予約できるようになっていますが、私が把握している限りでは、そのホテルのサイトでも、約款と言うとまた誤解を招くと思いますけれども、ある程度条件があるのであれば、例えばキャンセル料は何日前であれば発生するとか、こういう場合には解除があり得るということは、ホームページで既に示している業者もいると認識しています。ですので、そんなに特別なことを要求しているわけではなくて、契約条項ですので、例えばオンライン上で通信販売をするときに、返品は不可ですという条件を消費者に見えるようなところにあらかじめ置いておくということにすぎないと思います。

消費者庁が2ページで事業者に要求される行為として示していることは、恐らくそういうことではないかと理解しています。何か条件を幾つか、ちゃんとまとまった形で、例えば書面のようなものにしてあらかじめ配りなさいとか、そういうことを言っているというよりは、もちろんそれは望ましいと思うのですけれども、その条項があるのであれば、その条項があらかじめ分かるようなリンクを張るとか、そういうふうにしておきなさいということかと思いますので、私自身は、今回の提案でそれほど大きな負担が事業者に掛かるのだろうかという疑問をいまだに持っています。

ですので、今回、消費者庁からは、事業者の行為としてはこういうものが求められるということも具体的に出されておりますので、ここに書かれていることであれば、私自身は賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員。

○長谷川委員 資料も出させていただいておりますので、その説明も含め、発言させていただきたいと思います。資料3を御覧いただければと思います。

今、議論になっているところで、一体どういった消費者像を念頭に考えるのかというところを私なりに整理させていただいたものでございます。一番上の真ん中に人形が2つ描いてありまして、2人で取引をするということを示しております。取引をするに当たっては、当然、契約内容をめぐる当事者間のやり取りがございます。事業者が説明したり、消費者において自分が買いたいものとか求めているものについて説明したり、契約の目的となるものについて中身を確認したりということがある。それについては、当然、消費者契約法第3条第1項の情報提供義務に基づく説明も行われるということだろうと思います。

その上で、アと左側に書いてございますけれども、特に相手が悪徳事業者である場合には、契約そのものに入らないというケースが一番多いと理解しております。

次に、アでなくて、契約に入っていく場合に、今回、民法改正の中で問題になっておりますけれども、黙示の合意があるかどうか。特に、定型約款取引の場合でございますけれども、黙示の合意がない場合には、当該定型約款については契約の組入れはないということで、イになるということだと理解しております。

さらに、黙示の合意がある場合にどうなるかということでございますけれども、類型としてウ、エ、オというものを考えております。

ウという消費者は、一番上の当事者間のやり取りで十分である、納得しましたということで、約款開示請求をいちいち行わない。あるいは約款開示請求を行うことによって煩雑さがかえって増えてしまうので、そんなことはしない。その場合は、そのまま契約が成立するということだと思います。

次に、エという消費者、どのぐらいいるのかというのは分かりませんけれども、約款開示請求を行う消費者というのもいると思います。

その上で、今、議論されている手当てが意味を持ってくるのがオのケースだと理解しております。消費者は遠慮があるのだということをおっしゃる方がおられて、それによって約款開示請求をしない消費者が一定程度いるということが前提だと理解しております。その上で、そうした消費者が、例えば店頭等で約款が置いてあるところにひも付け等がされていれば、あるいは事業者のウェブサイト上に約款が載っていれば、それにアクセスするということかと思います。そうした消費者がカで、約款開示請求はしないけれども、店頭に置いている約款は読む、あるいは家に帰ってインターネットで約款にアクセスする。そうした人にとって、今回の新たな手当てが意義を持ってくるという理解でいるところでございます。

ここからが意見でございますけれども、オは一定程度いるのかもしれませんが、カについて、それほどたくさんおられるのかどうか、若干イメージが湧かないところです。こういった手当てが本当に必要なのかどうか、分からないところでございます。

その上で、2ページでございますけれども、努力義務の範囲を、現行と、今回の新たな提案で分けてみました。先ほどの大澤委員の御発言でも、あるいは前回の御議論でも、そんなに特別なことではないのだ、あるいは当然のことではないかという御指摘がございました。しかし、現行と比べると、文言上、少なくとも明らかに拡大しているということなのではないかと思っております。

左側が現行でございまして、まず上の「第3条」と書いてあるところが消費者契約法の条文です。御案内のことかと思いますけれども、下から4行目、「消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない」というのがございまして、その下にマル1、マル2と書いてあるのが逐条解説でございます。

マル2に下線を引っ張っておりますけれども、どういう内容の情報提供が求められているかということでございますが、「消費者契約の内容についての情報を全て提供することまで本法は事業者に対して求めているわけではない」ということで、契約条項全てではないということが明らかにされているわけでございます。その上で「消費者が当該契約を締結するのに必要なものを提供すれば足りる。」ということを書いてございます。その下、下線を引っ張ってございませんけれども、「『判断に通常影響を及ぼすべき』重要なものよりは広い概念」だということが記載されております。

右側に新たな努力義務、今回の御提案を書いてございますけれども、これについては、「消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置くように努めなければならない」とされております。要するに条項全部を容易に知ることができる状態に置くように努めなければならないということでございますので、少なくとも現行よりも義務の範囲が拡大しているということでございます。

さらに、右下に枠書きで書いてございますが、「消費者契約の条項を定めるに当たっては」という意味合いでございますけれども、消費者契約の内容の全てを書面化することが今回の提案で求められているということであれば、事業者の負担は更に大きくなると考えているところでございます。

最後に3ページでございます。前回、附帯決議というものが議論になりました際、口頭で申し上げたところでございますけれども、それを改めて書面で紹介させていただいております。

資料の左側、衆議院の法務委員会では、第5でございますけれども、「定型約款に関する規定のうち、いわゆる不当条項及び不意打ち条項の規制の在り方について、本法施行後の取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、必要に応じて対応を検討すること」とされております。定型約款について特出ししている条項といたしましては、この条項でございまして、本法施行後の取引の実情を勘案しと書いてあります。これは参議院も同じでございますが、今のところ、これが基本的には定型約款にかかる立法府の意思なのではないかと思っておりまして、これを踏まえて議論する必要があるのではないかと思っているところでございます。

その上で、今回の事務局からの御提案については、残念ながら反対せざるを得ないと思っております。第1の理由は、対象となる消費者がそれほど多いとは思えないという、先ほど申し上げた点になります。

第2の理由は、新たな努力義務を加えることが、既に現行法において契約を締結するのに必要な情報を提供すべきとされている中で、どれほど消費者の利益になるのかというのが分からないということでございます。。

第3の理由といたしまして、今回の資料で事務局が提案されている、具体的な努力義務を満たすための例というものを見ましても、事業者に一定の負担というものが生じ、民法改正のメリットを大幅に削ぐことになるのではないかということです。具体的にはウェブサイトがない事業者がいれば、それを新たに作らなければいけない。さらに、サイバー攻撃に対応するためのセキュリティ対策もしなければいけないということでございます。また、ウェブサイトを利用しない場合であっても、店舗への備付け等、新たにひも付けする必要が出てくるということになります。こういったことをいたしますと、今回、民法改正が企図した取引上の煩雑さの回避というメリットを大幅に削ぐことになるのではないかと危惧する次第でございます。

さらに、努力義務の内容については、今回、具体的に御提案いただきましたけれども、引き続き不明確なのではないかと思っております。例えば、容易に知り得るという場合に、CD-ROMで提供する場合はどうなのか。また、売買契約において、当該商品の性能というのはどこまでの範囲が契約条項となるのか。容易に知り得るというのは平均的消費者を念頭に置いているのかどうか。それに関連して、やり取りの過程で、当該消費者がデジタルデバイドであったことが分かった場合は一体どうなるのかとか。先ほど中村委員からあった旅行会社の代理店がチケットを販売する場合もあると思いますけれども、そういったケースはどうなるのかとか。いろいろ疑義がございますので、現段階で立法化というのは慎重に考えていただきたいと思っております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、沖野委員。

○沖野委員 ありがとうございます。

幾つか前提の理解が違っているのではないかと思われるところもありますので、その点を確認させていただきたいと思います。長谷川委員から今回、非常に分かりやすい図を出していただきまして、御主張の趣旨が明確になったように思うのですけれども、幾つか疑問に思うところがあるものですから、お話をさせていただきたいと思います。

1つは、消費者として、これによって一種のベネフィットなりを得るのは少数ではないかという御指摘ですけれども、どのくらい少数なのかということはあるかと思います。また、消費者の心理とか行動という問題はあると思いますけれども、少数であればやらなくていいのかというと、恐らくそうではなく、事業者にとってのコストがどのくらいかということとの兼ね合いになるかと思っております。

それから、アからオまでの消費者にとって、意味があるのはオだけであるとおっしゃったのですが、私には、少なくともアやエも意味があるのではないかと思っております。まず、アの人ですと、今でもネットに上がっていたら、事前に見て、その上で選択するということもできますので、そういう利用可能性が上がるのは、アの最終的にはやらないという判断をする人にとっても、あらかじめ消費者契約の条項に容易にアクセスできることでより充実した意思決定ができるのではないかと思っておりますし、エの消費者にとっても、お願いしなくても見られる、お願いしなくても済むというのは、心理的なハードルがあっても請求するという人にとってもメリットになるのではないかと思いますので、これをオだけだというのは、そういうことではないのではないかなと思っております。

○長谷川委員 すみません。オの下のカです。

○沖野委員 失礼しました。店頭やインターネットで約款にアクセスして読む人ですね。

○長谷川委員 沖野委員の御趣旨との関係では、どちらでもそれほど変わらないかと思いますが。

○沖野委員 オではなくカの人だとしましても、アの人も入ってくるだろうと思っているのです。つまり、契約する人だけではなくて、その結果、しないという判断をする人にとっても出てくるのではないかと思っております。まず、それが1点目です。

もう一つは、情報提供についてですが、これは中村委員が言われた点かと思うのですけれども、努力義務とはいえ、現在の情報提供義務というのは、個々の消費者を相手としその当該消費者にとって、その理解可能性を十分確保できるような形で逐一説明するということがここでの情報提供ですので、今、問題となっている条項をあらかじめ知ることができるようにするというのは、例えばネットを見てくださればありますよという場合ですが、それとは全然違う内容です。ですから、約款を含めて、事前の消費者契約の条項を開示すべきである、それを努力義務として要求すべきではないかというのは、必要な個々の条項を逐一分かりやすい形で、その消費者が理解できるように説明してくださいという話ではないので、それを消費者契約の条項一般について要求するものではないということです。重要な契約条項について、具体的な理解可能な形で説明する、情報を提供することを要求しているということと、それ以外の条項を含めて見られるようにするというのは違う問題だと考えます。

それから、前回もよく分からなかったのですけれども、これで書かれていることは、例えば契約条項がこれになるということのうち、特に重要なものについては、これについて、ちゃんと理解した上で契約してくださいねという説明をされるわけですね。そのときに、例えば中途解約の場合には、この間は中途確約できて、そうでないときにはこれだけの手数料が掛かりますとか、違約金が掛かりますという重要なものはピックアップして説明するけれども、全体は見られないという状態にしておくということがどのくらい普通にあるのか。むしろ、契約条項としてまとまったものがあるのであれば、これが契約条項ですということは見られるようにして、こことここは押さえてくださいというのが普通ではないか。

それをわざわざ見られないような状態にしてピックアップだけして、別途書面を作って、ここだけは説明しますというほうが、よほど手間ではなかろうかという気もするわけです。実際、それは普通やっておられるのではないだろうか。今度は逆に、中村委員がおっしゃったような、今やっていないことを約款の形で、契約条項の形でまとめて、そして示してくださいということを、これは要求しているわけではないのです。

私も、テレビショッピングの場合がよく分からないのですが、契約条項として、これで行きますというものがあるときに、それは一体、いつ、どういう形で内容になるようになっているのか。そういうものがないのであれば、この開示が要請されてもそもそもでもないのであり、そういうものがあるのであれば、あらかじめこれが契約条項になるというものを用意されているのではないでしょうか。ですので、今無いものをまとめてアクセスできるようにするということを要求するものではないということです。

それから、現在の実務の中には、恐らく改正された民法の下では維持できないと思われるものもあると思われます。旅館の例が出ましたけれども、インターネット等の予約のサイトなどで条項が全て示されているということであれば、そして、その旨を表示なりの要件を満たすのであれば内容になると思いますけれども、現在、旅館に宿泊するときに、宿泊の約款はこれですよということは、部屋に入るまで全然示されていないですね。入ったら引き出しに入っているとか、扉に張ってあるとかいう状況が経験するところです。改正民法の下では、こういうことは認められないと思います。ですから、そういう旅館のプラクティクスは、むしろ民法の新たな規律の下で変えていかなければいけないものですので、その点も勘案する必要があるのではないかと思っております。

ですので、そういった幾つかの前提について、私の考えているところと理解が少し違うのではないかと感じております。そういうことを前提にすると、果たしてどれだけプラスアルファとして多くのコストをかけてお願いすることがここにあるのだろうか。そして、契約条項というのは、両当事者にとって、これが私たちの契約の権利義務になるものですというものですから、それを全く見せなくていいということでいいのかというと、基本はそうではないですね。知ることができるようにするというのが当然なので、そこがスタートではないのですか。

そうすると、できないことを無理してやってくださいとは言っていない。その点を明らかにするための努力義務だということがありますので、スタート地点を共有するならば、今回、消費者庁が出してくださった御検討の中で、こういったことをやることになるのではないですかというのは、おおむねそうではなかろうかと思われますし、それが現在、あるいは民法の下で要求されることに加えて、非常に大きなコスト増になるという感じはしないのです。

最後に、再び挙げてくださった衆議院・参議院の附帯決議です。御趣旨を正確に示してくださって、ありがとうございました。私自身は、以前申し上げましたように、御指摘の部分は特に不当条項や不意打ち条項の規制の在り方について、しかも事業者間の取引を含めてということですので、約款であることによる内容規制について、取り上げて特出しをしているというもので、それ以外を含めた消費者の保護や消費者契約の在り方全般については、これによって、その部分を排除していないし、消費者についての一般的な言及で、そちらは含んでいるのではないかと理解しております。自分の理解を明確にさせていただいたという趣旨です。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、後藤代理。

○後藤(巻)座長代理 今の沖野委員の御発言とも重なる部分があるのですけれども、特に長谷川委員の、3条1項の規定があるのに、加えて新たな努力義務を規定してもさほど意味がないのではないかという御意見について、どういうふうに考えるかということをお話ししたいと思います。

私は、約款の事前開示というのは、消費者に適正な選択の機会を与えるという意味で非常に重要だと思っています。例えば、保険の領域、特に火災保険などでは、約款の内容は事業者によって保障の範囲等に大きな違いがあるようです。銀行約款などについても、競争という観点から、かなり約款の内容が違ってきているということでありまして、そういうことを踏まえますと、企業側がむしろ約款の特色ということをアピールして、消費者に自分たちの工夫した商品を選択してもらうということが非常に重要な時代になっているのではないかと思います。

そういうときに、約款の開示をしないというのは、むしろ企業側にとっても首を絞めるというのでしょうか、自分たちの経済活動を活発にやっていくということに関して、否定的な態度を取るということになってしまうのではないかと思います。自分たちがいろいろ工夫して設計した商品を約款を通じて消費者に分かってもらって、よりたくさんの消費者にそれを受け入れてもらうというのは、企業活動として基本的な態度なのではないかと私は思います。そういうふうに考えてくると、契約の締結に先立って約款の条項を容易に知ることができる状態に置くというのは、事業者にとってメリットになるところが非常に大きいと思いますし、消費者にとっても、これは選択の機会が保障されるということで、非常にいいことだと思います。

こういうコンセプトに立つのが、この消費者庁の提案であったり、あるいは前回、意見書として大澤委員等から出していただいた意見なのではないかと思っておりまして、そういう観点から、基本的に本日の消費者庁の提案にも賛成するというのが私の考えであります。

加えて、石島委員の意見書の中で、契約条項を確認したいのに事業者に請求することが困難というのは、どのような理由に基づくもので、そのようなケースは実社会においてどれほどあるのか明らかになっていないという指摘が出ているわけでありますけれども、確かに銀行とか保険会社のような、比較的規模が大きくて信用度の高い企業の場合には、石島委員が御指摘のように、消費者が事前に約款の内容の開示を請求するということが困難でない場合も多いと思います。

しかし、問題性が強いのは、より小規模な企業・事業者、それから継続的に顧客とお付き合いをしていくということではない、短期的な利益を追求する、そういう意味での営利性の強い事業者の場合については、約款の開示を事前請求しにくいということはかなりあるのではないかと思います。

これは、契約法を検討する研究者の中では問題意識が共有されていると思うのですけれども、契約締結の段階と契約内容の問題というのは連動しているところがありまして、契約内容が誇れるものでない場合には、締結の段階の情報提供というのも隠しがちになる。積極的に情報提供しないという側面があって、そのことを情報提供義務の問題とか契約内容の規制の問題という観点から、契約法の非常に重要な問題として検討されてきたのではないかと思います。

そこでの検討結果というのが、ここでの提案にも反映されていると私は理解しておりまして、特に約款の開示に消極的になる事業者に対して消費者契約法からメッセージを与えることによって、消費者が別に請求しなくても開示してくださいと消費者契約法が求める。これが今回、審議の対象になっていることなのではないかと思います。言い換えますと、悪質な事業者というものは、開示をしない方向に消費者との交渉とかを向かわせるということになりがちでありますので、開示を3条1項で努力義務として義務付けると、消費者にとっては非常にメリットがありまして、開示しない事業者は疑ってかかったほうがいいということが言えるという方向に行く可能性があるのではないかと思います。

そういうことも考えますと、是非ここで約款の事前開示ということを、企業の姿勢としても、それによってメリットがあるということを御理解いただいて、そういう方向で合意ができたらというのが私の意見であり、感じているところであります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

中村委員、続いて長谷川委員、お願いします。

○中村委員 ありがとうございます。

今の御意見の中にちょっと気になったところがございまして、申し上げたいと思います。

先ほど銀行の例などを挙げられまして、そのサービス等、条件の差異について示すことがメリットになるのではないかというお話があったかと思いますが、例えばクレジットカードなどの場合、保険もそうだと思いますけれども、基本的には現場の説明をする者は、パンフレット等に主なメリットとかデメリットを会社としてまとめて、それで御説明するという例が多いと思います。その条項を説明するということは、基本的には余りないと思います。それを持ち帰っていただいて、検討した結果として、例えばカードをお申し込みいただく。その後に約款が送られてくるというのが、実務として比較的多く行われているというのが私の認識でございます。

では、その約款をどこかで見ることはできないかというと、ネット等でも見ることができますし、カードのカウンターで約款を確認したいのですけれどもと言えば、そこに置いてあるという実務というのは比較的多いのではないかと思っておりまして、そういうことについて、事前に約款がここにありますということを必ず言わないと、それが組み入れられないということですと、実務としてはそれなりに面倒なことになるのではないかということを、私としては一つ考えているということでございます。

以上です。

○山本(敬)座長 長谷川委員に行く前に一言だけですけれども、よろしいですか。

先ほど沖野委員もおっしゃったことですけれども、前回のこの議論をするときの冒頭に私も申し上げたことなのですが、この場では、民法に定型約款の規定が置かれたことは前提にして議論すべきである。ですから、定型約款が契約の内容になるかどうかについては、民法の規定を遵守する必要がある。したがって、定型約款について契約の内容に入る旨について合意を取るか、あるいは事前にあらかじめ表示しなければならない。それは、中村委員が今おっしゃったような、クレジットカードその他の場合においても、必ずそれをしないと契約内容に入らないということです。それに加えて努力義務を課すことがどれだけの負担になるかということが、ここで議論していることだと思います。

先ほどの御意見は、民法そのものを問題にしておられるようなところもあったように感じましたので、そのようなことは、ここでは問題になっていないということをもう一度確認させていただければと思います。

では、長谷川委員。

○長谷川委員 先ほどの沖野委員と後藤座長代理の御発言に関連してとなりますけれども、正確に理解できているかどうかというのがございまして、違っていれば是非御訂正いただければと思います。

沖野委員が最後から2番目ぐらいにおっしゃられたことについて、沖野委員の言葉とはちょっと違うのですが、私も、両当事者が内容をよく理解した上で合意するというのは極めて重要だと思っております。そこからが考え方が違うところですけれども、先ほど沖野委員がおっしゃられたことを私なりに理解したところによれば、法第3条第1項というのは、契約に入る過程で、その個別の消費者に対して情報提供するというのを定めている。それに対して、今回の御提案は、一般的な消費者に対して、約款というか、契約内容の開示を求めるものであり、その点で違うということだと思います。

そして、そういうことであるので、私が出させていただいた資料のアのような消費者にも非常に役に立つのですというお話だったかと思います。しかし、私が理解しております今回の消費者庁の提案は、約款というか、契約条項を消費者に面前で提示しても努力義務が満たされるのだという提案でございますので、前提としている消費者は、基本的には契約に入る消費者だということなのだと思っております。

その上で、もっと一般的に、広く約款なり契約条項なりを開示することを目的として、この規制というか、新たな努力義務を入れようということであれば、そもそも事務局の御提案と違うと思っています。また、この議論の経緯としても、約款の事前開示ということで、おそらく契約に入る消費者を念頭に使われている言葉でございますので、ここで検討されてきた議論の経緯とも異なるのではないかと思います。

また、現行と比べてどれぐらい変わるかというのは、資料の2ページで示したとおりですけれども、ここには現行も含めて3つぐらい情報の範囲があると考えております。1つは、法第4条第4項の第1号及び第2号による、「消費者の当該契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」としての重要情報であって、これが多分一番小さい範囲となる。その上で、法第3条第1項が求めているところの、「消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報」という概念がその上に更に広いものとしてある。今回の提案は、集合で言うと、その上の更に広いものでございまして、消費者契約の条項全てを容易に知ることができるような状態に置くものということでございますので、これは明らかに拡大している。

その拡大されたものによって、本当に当該消費者にとっての利便性が向上するのか。すでに必要な情報は提供しなければならないということになっているので、よく分からないということでございます。

それから、附帯決議については、沖野委員が慎重な言いぶりをされたかと思いますけれども、当然、消費者契約法を改正することを排除するものではないということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、定型約款を特に念頭に置いているのは、私が紹介させていただいた部分ではないかと思っております。

また、後藤座長代理の御発言において、前段おっしゃられたことと後段おっしゃられたことで若干分からなかったところがあるのですけれども、自分たちの商品・役務とか契約内容がいいものだということをどんどんアピールしていくことが望ましいというか、あるべき姿であり、むしろそれを隠すことは首を絞めることなのではないかという御発言がございました。これは一言で言いますと、情報を提供していくことについて事業者側にインセンティブがあるということなのではないかと思います。

柳川委員の前で私が言うのもはばかられますが、情報開示の理屈は、良い情報はどんどん出すけれども、悪い情報は隠してしまうので、法律の介入が必要だというのが通常の理解だと思います。そういうことでございまして、事業者が良い情報をどんどん出すということが通常想定され、事業者にそのインセンティブがあるということであれば、法律による介入というのは要らないのではないかと思っております。それが後藤座長代理がおっしゃられた1点目についてのコメントでございます。

2点目につきましては、情報を出さないというのが、正にシグナルになるというのはそういうことだと思っています。再び私が作らせていただいた図を見ていただければと思いますけれども、消費者は、この事業者は情報も出してくれないし、怪しいと思ったら、契約にそもそも入らずにアに行くのではないでしょうか。契約に入らないというのが、自己を守る最も確実な方法なので、契約に入らないということによって、マクロに見れば、悪質かどうか分かりませんけれども、あまり情報を提供しないような事業者が市場から退出していくというのが望ましいマーケットメカニズムの姿であって、そういったことなのではないかと思っております。そのことが、今回の努力義務を入れるか入れないかという議論と、そんなにすごく結び付くのか。御提案いただいている努力義務がなくても、普通、アに行くのではないかと思うところです。

○山本(敬)座長 では、後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 一言だけ。

それで契約に入らないというのでしたら、不当条項の規制は要らないという話になりかねない。その辺の認識は私と違うということを一言申し上げます。

○山本(敬)座長 沖野委員。

○沖野委員 私の舌足らずな点を御指摘いただきまして、ありがとうございました。

もちろん、契約締結過程において、個々の消費者との契約の際の開示のことを問題としております。ただ、情報提供として、個別に必要な条項をソートアウトして提供するという話とは次元が違うのではないか、内容が違うのではないかということを申し上げました。

○山本(敬)座長 長谷川委員からお示しいただいた資料の2ページ目ですが、これを見ても分かるのですけれども、3条については、前半部分と後半部分があり、後半部分が今、話題になっている必要な情報提供に当たります。今回の消費者庁の提案も、この部分を修正するのではなく、前半部分に入れているということですので、少し区別して議論したほうがよいのではないかと思います。つまり、明確かつ平易なものになるように配慮するという部分につなげて、知ることができる状態にするということであり、性格の違いが踏まえられた提案になっているということを押さえていただければと思いました。

それでは、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 恐らく、説明義務とか情報提供義務という話と、契約条項が契約の内容として組み込まれるための前提要件というのは何かという話は、ちょっと区別しないといけない。それは、先ほど座長がおっしゃったことと同じことを言い換えただけになりますけれども、そういうことだろうと思います。

特に、長谷川委員から、意見書の中でもそうですけれども、悪質業者には今回のような手当てをしても効果がないのではないかということとか。あるいは、開示の努力義務を求めても、そんなものは読まないのだから無駄ではないかと言わぬばかりの御指摘があったわけであります。しかし、相談業務あるいは適格消費者団体の業務の中で、約款を隠そうとする事業者に対して約款を開示しなさいという行為規範が示されるということは、大変有用なことだという発言はこの前も聞かれたところであります。

さらに、事業者が今回の民法改正によって、約款というのは事前に開示しておかなくてもいいのだ、相手が要求されるまでは出さなくてもいいのだと考えるような誤った解釈をしないように手当てをしておくということは、それだけでも大きな意味があるのではないかと考えているところであります。実は、民法の中で、約款に組み入れる、そして拘束力を認めるために、今回、特別な手当てがなされたということは御承知のとおりでありまして、その前提の中で約款をあらかじめ相手に知らせるという努力をしないでいた場合には、そもそもその約款は契約内容には組み入れられないリスクがあるということになります。

これは、民法の議論としてもそうであって、今回、消費者契約法で新たに要求されたところが、民法における開示のレベルを更に超えたものを要求しているものではないということであります。むしろ、事業者の方々が危惧されているのは、説明義務とか情報提供義務と言われたときに、どこまでのことをどれくらいやればいいのだろうという不安であったかと思います。開示は、客観的に合理的な手段で認識できる状態にしておけば、それでよいというだけの話でありますから、特にこれまで以上の負担を強いるようなものではないということであります。

その意味では、今回の消費者庁からの提案、あるいは大澤委員を初めとした提案というのは、改正時の議論を十分踏まえた内容となっているということになろうかと思いますので、その点はよく御理解いただいて同意いただければありがたいと思います。

それから、書面化ということについても若干重い意味合いを持たされて発言されているわけですけれども、開示においては書面化は必ずしも要件ではありません。ですから、繰り返し画面で情報提供するとか、場合によってはウェブサイトで見ることができる状態に置くとか、CD-ROMであろうが、何であろうが構わない。消費者が自力でその内容を知ることができる状態に置いているということが大事だということになります。

最後にもう一点。附帯決議の件を何度もおっしゃって、前回もそれをおっしゃいましたけれども、その中で、確かに施行後の取引の実情を踏まえて、必要があれば検討という文言を御指摘になって、繰り返されたのでありますけれども、これはいずれも不意打ち条項や不当条項が組入れのときのみなしから排除されるためのメカニズムがうまく動くかどうかということが心配なので、後々ちゃんとフォローしてくださいという御指摘であったわけでして、契約的所産としての定型約款を当事者が把握するための要件として、事前の開示が必要なのかどうかという話は、実は余り議論されなかったのです。

むしろ、法制審では、それでいいのですか、契約法の所産として考えたときに、このようなゆるゆるの理屈で通るのですかということを正面から議論してくださったのは経団連の方なのです。それを考えても、この問題というのは実は見落とされがちだったということでありまして、国会で審議されたのは参議院の法務委員会の最終段階でありました。また必要があれば資料を出しますけれども、その最終段階の議論を受けて、急遽、附帯決議の12というものが入ったということであります。附帯決議の12を、前回、大澤委員らが出していた資料の最後で示していたのは、そういう経緯を踏まえた上でのものでありまして、その前の内容に関するところとは別の問題として、この附帯決議というのは意味を持っているので、あえて出した次第であります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員及び中村委員も同じことをおっしゃったので、確認をさせていただきたいのですけれども、長谷川委員が御提出いただいているペーパーで言うと、先ほどの2ページで、今、河上委員長から御指摘のあった書面化に関わる部分ですけれども、具体的にどのようなものが想定されて問題提起されているのかということをお聞かせいただければと思います。

つまり、書面化が現にされていないけれども、契約条件に当たるものが恐らくあって、それを書面化して、定型約款であれば定型約款のルールに乗せないといけないし、そうでなければ、何らかの形で契約内容に入れていかなければならないだろうと思うのですけれども、そもそもどういったものを想定しておられるのかということが少し判然としませんので、例を挙げながら御説明いただけるとありがたいと思います。

○長谷川委員 その点については幾つかございます。まず1つは、前回の会合で消費者庁に、そもそも書面になっていないものはどういう扱いになるのでしょうかということで問題提起させていただきました。消費者庁からは、それは契約内容にならないのですという御説明があり、その後、私にとっては分かりやすかったのですけれども、松本理事長から、任意法規に当たるものは書面にしなくてよいが、特約部分については書面にしなければいけないということではないかという御解説がありました。しかし、提案されている事務局と説明が違ったものですから、どうなるのかと思っていたところでございます。

要するに、普通の売買契約で、民法に定める典型契約の規定が適用されるものについて、書面化が必要なのかどうかというのが1点目でございます。

2点目は、先ほど少し申し上げたところですけれども、売買契約であったとして、例えばこの時計を買いますと言った場合に、この時計のスペックみたいなものは、ここで言う消費者契約の条項に含まれるのでしょうか。要するに、説明書に書いてあったり、性能説明書に書いてあったりすると思うのです。例えば、海外へ行ったら、自動でその地域の時間に合いますということが書いてあったりすると思うのですけれども、そういったものは当該売買契約の消費者契約の条項に当たるのかどうか。当たるとして、それを容易に知ることができる状態に置かなければいけないのかということでございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

最初のほうの消費者庁と松本理事長の前回の説明との間には、恐らく違いはなくて、何もなければ任意規定が適用される。その適用を排除したければ、特約と言うか、合意と言うか、何と言うかは別として、両当事者の間で特別な合意が必要である。それが実際に行われていなければ任意規定が適用されることになる。書面化されているかどうかということは別に関係なく、民法の一般法理からすると、合意があればそれによるけれども、合意がない限りは任意規定によるということではないでしょうか。

○長谷川委員 容易に知ることができるような状態に置く対象は、任意規定であればどうなのでしょうか。

○山本(敬)座長 任意規定は、何もなくても適用されます。もちろん、司法研修所の要件事実の理解で難しい議論はあるのですけれども、それはここでお話する必要はないだろうと思います。ただ、いずれにしましても、任意規定に関しては、そのとおりの合意であれば合意どおりになるかもしれませんけれども、仮に合意が証明できない場合でも、任意規定は適用される。これは変わらないだろうと思います。

○長谷川委員 任意規定が適用されて契約内容になるかどうかではなくて、今回容易に知ることができる状態に置くべきとされる努力義務の対象になるかどうかということです。

○山本(敬)座長 それは、任意規定どおりに合意するつもりであり、それを合意内容にするために、その内容を示す努力義務が課せられるかということでしょうか。余りここで学理的議論をする時間と余裕はないのですが、それでは、沖野委員、お願いいたします。

○沖野委員 申しわけありません。焦点をずらしてしまうかもしれないのですけれども、よく理解できないところが前からあったものですから。

例えば、民法の規律の下で約款条項になるものは出してくださいと請求されますね。そのときはどういう行動をとられるのでしょうか。

○山本(敬)座長 では、長谷川委員、お願いいたします。それが定型約款であればということですね。

○長谷川委員 確認させていただいているのは、定型約款の場合ではなく、通常の売買契約についてです。

○沖野委員 約款になる前の条項について問題にされているのですか。

○山本(敬)座長 では、丸山委員、お願いいたします。

○丸山委員 理解できたところは、事業者としましては、約款の概念よりも、契約条項の概念がかなり広いのではないかという不安がありまして、任意規定というのも契約条件になる、商品の性能も契約条件になるというのであれば、それを事業者のほうが積極的に書面化したり、何らかの形で容易に知る状況にしないといけなくなるのではないかといった不安を抱えている。不安の原点としては、約款や定型約款の概念よりも消費者契約の条項という概念がかなり広く、全てのあらゆる条件、契約の内容となるものについての事前開示を書面みたいな形で要求されるのではないかという懸念であると理解しました。

ただ、その点に関しては、私自身は任意規定であるとか、その商品の内容全てを書面化して知ることができる状態にすることを求められているわけではなくて、消費者も法律に書かれていること、任意規範的なものは前提とすることになり、商品の内容も明らかなものについては、それを前提にその値段で買うということになるので、それを事業者の側で全て書面化して、容易に知り得るようにしなければいけないという趣旨ではないのではない、と思っているのですが、恐らく懸念としてはそこだと思います。

○山本(敬)座長 整理していただきまして、ありがとうございました。

もしそうだとしますと、ここで求められているのは、あくまでも広い意味での合意によって消費者契約の内容とするものがあるのであれば、それはあらかじめ知ることができるように努めるということではないでしょうか。

磯辺委員。

○磯辺委員 長谷川委員の資料の2ページの右側の下のほうですけれども、消費者契約の内容でお互いに権利・義務の関係を明確にしたいときには、契約条項化されるわけですね。そうやって契約条項化したものは契約の内容になってくるので、あらかじめちゃんと見られるようにしておいてくださいということを努力義務としてうたいましょうということだと、普通に当たり前のことで理解をしております。

それと、悪質事業者に対するマーケットメカニズムの関係ですが、先ほどお話があったように、民法の改正の議論を受けて、請求がなければ約款を提示しなくていいのだという誤ったメッセージといいますか、誤解が広がる可能性があるということが懸念されて、この議論もされているわけでして、そうではなくて、あらかじめ契約内容としたいのであれば、お互いが合意できるように示しておく、見られるようにしておくというのは普通のことであるということは、まず共通の理解になるのではないかと思います。そのことがメッセージとして、消費者契約についてはより伝わるように努力義務にしましょうということです。

その努力義務に従って、いわゆる通常の事業活動を行っている方々が、約款を作っているから、これはあらかじめ見られる状態にしようと、いろいろ工夫してやっていただく。そうすると悪質な事業者は開示しないという状況が出てきて、結局、そこでマーケットメカニズムが働いて、ここは開示していないのだから、ちょっと変だなという判断が働く。これが、全体として請求がなければ開示しなくていいのだという水準に落ちていくと、みんながなかなか開示しなくなってしまうという環境になり、選択ができなくなるということだと思います。ですから、努力義務規定でうたうことに意味があるのだろうと思った次第です。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

河野委員。

○河野委員 ありがとうございます。

様々な解釈の問題とかがありますが、まずは消費者庁からの提案に賛成を申し上げたいと思います。それから、重ねて、事業者の方から今回、反対の意見書付きで、これに対して賛同を得られないという御意見があったことは、とても残念であり、また併せて非常に違和感を禁じ得ないところでございます。

例えば、長谷川委員が提出された資料の1ページ目ですけれども、構造図はよく描いてくださっていると思いますが、この構造というのは、民法改正前の現状を分類したものであって、効果を非常に小さく見せるためのイメージ操作ではないかと思ってしまいます。一番下に米印で「悪質事業者が努力義務を遵守するとは考えにくいため」ということも書かれていますが、これは様々、法律の検討をする際に同じようなことが言われているわけで、現状、こうなので、法改正してもほとんど効果はないという言い訳だと思います。

さらに、事業者にとって、負担が非常に大きくなる可能性があるという形で、2ページ目と3ページ目の資料を付けていただいておりますが、消費者からみると、本当に残念としか言いようがございません。

また、石島委員提出の資料、1ページ目ですけれども、前回も問題になりましたが、消費者側が定型条項の中身を逐一見ようとしない場合が多くあるからというのが実態であれば、消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置いたとしても、条項が確認されないことに変わりはないという御意見ですが、変えなくてはいけないと、なぜ思わないのかと感じるところです。今回、民法の債権に関する議論というのは、長らく法制審において行われ、新たな規定が置かれたところですけれども、この民法の改正内容について、残念ながら当事者の一員である消費者の多くは、ほとんど中身を知りません。法律が変わったことを国民に知らせるのは、一体誰の役割なのでしょうか。

先ほど磯辺委員が指摘されたように、もし民法の改正の中身から間違ったメッセージが社会に発せられるとしたら、私たち消費者は何を頼りに新しい改正民法を理解し、それを使いこなしていくのかというところに思い至ったときに、消費者契約法の中に、このことを消費者が誤解しないように、社会が間違ったメッセージを受け取らないように、事業者の方が公正な行動を起こすようにしっかりと書き込んでいただきたいというのがお願いでございます。

様々な御懸念があると思いますが、私は今回のこの提案は、契約を行う上で非常に当たり前のことだと思います。多くは学ぶ機会のない、知る機会の乏しい消費者にとって、このことを消費者契約法に書くということは、大きな法教育であり、消費者教育の一環になると思っています。どれだけの不利益が事業者の皆さんに生じるのか、もう少し私たち消費者に分かるように教えていただきたいと、そのくらい強い気持ちで、今回のこの提案は消費者庁さんの御提案どおり、努力義務として是非入れていただきたいと思っています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

問題点を少し整理しますと、実に多岐にわたっておりまして、なかなか整理できないのですけれども、少なくとも前回からの続きとしましては、現在の消費者庁から提案されている、この内容によると、事業者側にとってどれだけの追加的な負担が生じるのかという点について、消費者庁から提出していただいた資料ですと3ページ以下に具体的な指摘があります。この指摘によると、ここに書かれている限りにおいて、追加的な負担が大きいと見るかどうか。この点について、今のところ、テレビショッピングの例を除いて御意見が出ていなかったかもしれません。

さらに、ここに書かれていない事柄についても追加的な負担が大きくなるのではないかという問題提起があったのに対して、それは、前提となる民法の規定の理解等からして誤解があるのではないかという反論もあったところです。この点について、もう少し整理した議論が必要かもしれません。

もう一つの問題としては、現在の提案が書き方として広くなり過ぎていないかどうかということも指摘があったところと思います。先ほど私も少し混乱いたしましたけれども、「消費者契約の条項」と書かれている。これで対象の特定として十分かどうかということも問題としてありました。もう一つは、「容易に知ることができる状態に置く」ということが、意図していることを適切に書き表しているか、それとも過剰になっているか。この点についても、今日は立ち入った議論はまだ行われていないように思いますけれども、問題としてはあるところだと思います。この辺りについてコンセンサスが得られませんと、こうだという確定的な成案を出すことは難しいのではないかと思います。

以上を踏まえまして、もう少し議論を続ければと思います。

松本理事長、お願いします。

○国民生活センター松本理事長 幾つかの点で混乱があるように思います。

1つは、テレビショッピングですが、これは通信販売です。したがって、特定商取引法の適用がありますから、契約条件についての表示規制は法律的にかかっているので、ここであえて更に問題にするような必要は普通はない世界です。

それから、品質の問題についても提起されましたが、品質は約款ですかというと、約款ではないです。定型約款の定義には、全然入らない。ただ、品質保証という話になってくると約款の話に一部は入ってくる可能性はあります。とりわけ民法の規定を限定するような形で、この部分についてしか責任を負わないとか、取替えに限定するというような場合には入ってくると思います。普通の事業者は、商品を売るために商品の品質を強調する作業をします。パンフレットを作って、それで買ってもらうわけです。我々もそれを見て、それを信用して買うわけです。

では、約款じゃないからうそを書いてもいいのかというと、そうではありません。今度の改正民法で、パンフレットに表示された品質が契約内容として取り込まれれば、品質が違っているときは債務不履行の問題になるということが明確化されたわけですから、契約条項とは言いませんが、契約内容には取り込まれるわけです。

積極的に消費者に買わせるために品質として提示したものに関しては、当然責任を持ってもらわなければならないというのは明らかですが、あらかじめ事前にこういう品質ですよと言わなければ駄目なのですかというと、それはないわけです。家庭用品品質表示法等の特別法において、重要なことについては商品に表示して、見れば分かるようにしておけということが書いてあるわけですから、そういう強行法規については当然守らなければならないわけですけれども。

ここに時計がございますけれども、この時計の品質について、どこまで家表法で義務付けているか、すぐには分からないですけれども、こんなに素晴らしいものですよということまで表示しろとは義務付けていないはずです。したがって、こんな素晴らしいものですよと書いていれば、それは当然、責任を持ってもらわなければならない、契約内容になるということで、これは約款とは全く別の話。

それから、3つ目ですが、長谷川委員の資料のポンチ絵の2段目で、黙示の合意がある、ないで分けられている。ここがちょっと私、理解できていないのです。黙示の合意の合意の内容は、定型約款で取引する、定型約款を契約内容にするという合意ということなのか、定型約款の個別条項について合意をするということなのかが、必ずしもよく分からないのですが、定型約款で合意するということの黙示の合意がある場合と、そのような黙示の合意がない場合に分けられているのだろうと推測します。

ところが、改正民法の条文ではどうなっているかというと、定型約款の個別の条項で合意したものとみなされる場合というのは2つあって、1つは、定型約款を契約の内容とする旨の合意をした場合。もう一つは、定型約款を準備した事業者が、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合。この2つです。

民法では、合意という言葉で、明示の合意と黙示の合意を区別しません。したがって、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときというのは、黙示の合意をしたときも当然含む概念です。そうしますと、もう一つの定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときというのは、合意まで至らなくても、つまり、定型約款を契約内容とすることに合意していなくても、あらかじめ事業者がそれを契約の内容とする旨を表示していたときは、その商品を購入するというレベルの合意があれば、当該定型約款は内容として取り込まれる。個別の条項についても合意したものとみなされるという趣旨だと思われます。

そうしますと、ここの2段目のところで、黙示の合意がない場合をわざわざ2つに分けられているわけですけれども、これは合意がある場合と合意がない場合とに分けるべきではないかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。恐らく長谷川委員もお分かりの上で書いておられるだろうと思いますが、国会審議で、表示型の場合について、実質的には黙示の表示があるとしてもよいような場合を特に念頭に置いているのであるという説明がされたことを受けて、このような書き方をされているわけであって、合意がある場合はもちろんのこと、民法の規定で言う表示型の場合を想定して書いておられると読み替えればよいことなのだろうと思います。今の議論の直接の争点ではありませんので、その点については、もう時間がかなり押している状況ですので、少し置いておいていただければと思いますが。

○国民生活センター松本理事長 国会審議でどのような説明が法務省からされたのかは存じていませんが、重要なのはその下の部分です。その商品を買いたいという意思はあるけれども、契約条件等については、黙示の合意があるのか、ないのか分からない。明示の合意はないという場合のウの部分が一番大きなスペースで示されていて、大部分の消費者は契約条件の中身は知らなくても契約条件についてあらかじめ満足しているのだという前提で書かれているわけですけれども、実はそうではなくて、そういうことは何も意識していないということが実際は大変多いわけです。

開示請求の意識などほとんどの方にはないわけであって、開示請求権があるのだから権利行使すればいいではないかという議論がよくあるのですけれども、それならそもそも消費者は気の進まない契約を断ればいいわけです。嫌だと言えばいいのだけれども、嫌だと言えない。特に日本にはノーと言えない消費者が圧倒的に多いというのが、相談現場でははっきりと分かります。事業者の勧誘の中で断り切れないで契約する人がいかに多いかというのが分かります。

そういう大前提を踏まえた上で、先ほど言いました定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合に、その中身についてまで合意をしたことになるという効果との間を埋めるものとして、調べようとすれば調べられるという状態にあったという媒介項がないと、余りにも日本の現状からかけ離れた内容になるのではないかという危惧を感じております。

本当に合理的な消費者ばかりであれば、長谷川委員がおっしゃっているとおりだし、事業者間の契約であれば、事業者は基本的に経済的に合理的だということになっていますから、この内容でもいいわけです。民法は事業者間取引と消費者取引とを分けない、どちらかというと合理的な事業者間取引をメインに置いた規定が多いのでありまして、今回の定型約款は正にそういう内容になっているわけです。そういう中で経済的に見て合理的な行動を必ずしもしない消費者の利益を、消費者契約法でどの程度守っていくかという観点からは、一方的な表示、プラス見ようと思えば見られる、調べようと思えば調べられる状況がセットである必要性が大変高いのではないかと思う次第です。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 混乱させるつもりではないのですけれども、事業者の方に伺いたいのですが、先ほど座長から文言の話が出ておりましたけれども、消費者契約の条項という文言が、普通に考えますと、少なくとも私が個人的に想定しているのは、例えばキャンセル料条項があるとか、返品不可条項があるといった、要は消費者の権利義務を定めるような民法の規定などを修正するようなものと私は理解していますけれども、先ほど伺っていますと、丸山委員も整理されていましたけれども、例えば取扱説明書とか品質のかなり細かい部分とか、そういうものまで含むかということがもし御懸念ということであれば、消費者契約の条項という文言をもう少し具体化する、例えば、私は余り好みではないですけれども、「消費者の権利義務を定めるような条項がある場合には」とか、そういうふうに具体化すれば、それでも受け入れられないのでしょうかというのを伺いたいのですが。

○山本(敬)座長 長谷川委員。

○長谷川委員 それは現行の法第3条、山本座長が御指摘の前段・後段の問題があるのですけれども、現行の法第3条後段とはどう違うのでしょうか。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 後段のことは余り言わないようにと言われていましたので、基本的には、消費者の権利義務、その他の消費者契約法の内容はという、説明の努力義務を求めていますけれども、それと重なる部分もあるのではないかと思っています。少なくともそれより広いわけではないと思います。

○山本(敬)座長 丸山委員。

○丸山委員 契約条項という概念が広いのではないかということで、今、大澤委員からも御発言があったところですけれども、例えば、当該消費者契約の当事者となる事業者があらかじめ準備した消費者契約の契約条項というものを前提として、容易に知り得るというのは「当該取引圏における平均的な消費者」と考えても御懸念は続くのかという辺りはいかがでしょうか。

○山本(敬)座長 長谷川委員、お願いいたします。

○長谷川委員 それで、店頭で約款がここに置いてありますといって表示するわけですか。

○丸山委員 表示の仕方というのは、ウェブであろうが何であろうが、容易に知り得る形ではいいと思います。まずどういう層を想定するのかというところでは、取引の種類によって平均的な消費者が異なってくるような気がしますので、当該取引圏の平均的な消費者を想定すればよいであろうし、契約条項にメーカーが作った性能表示とかが含まれるのかとか、取り込まれるはずの任意規範まで説明しなければいけないのかという懸念については、当該契約の当事者となる事業者があらかじめ準備している契約条件というのを開示するという趣旨なのではないかと思った次第です。

○山本(敬)座長 せっかくの御提案をお出しいただいている中で申し上げるのはどうかと思うのですけれども、現在の消費者契約法3条1項の前半部分は、「事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては」という書き出しで始まっていますので、今、御提案いただいている趣旨は文脈からは明らかで、消費者契約の条項だけを取り上げると、確かに気にはなってくるのですけれども、定めるに当たっての努力義務ですので、この文脈からしますと、事業者が消費者契約の条項を定める場合について、その条項を容易に知ることができる状態に置くということが、読めば明らかでないかという気がいたします。

その点に関しては、確かに先ほどのような問題提起があったところですけれども、規定をどう書くかという点は、法制的な考慮もしていかないといけないところですので、更にそのような観点からの整理が必要になりますが、ここでは、対象について共通了解が得られているということがあれば、それを前提に考えていくということでいけないでしょうか。

中村委員。

○中村委員 今の御説明で、ということは、契約の条項集のような形で、契約書的なものを作っている場合以外は、この中には入らないと考えてよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 定型約款のような定義を置いて規定しているわけではありませんので、もちろん解釈問題になっていくのですけれども、消費者契約法3条1項はこれまでもあった規定ですので、それを前提にするということになるだろうと思います。その際に「消費者契約の条項を定めるに当たっては」というのは、おっしゃっているような何か条項集のようなものがあって、それを対象にしているというよりは、後ろにもありますように、消費者契約の内容にするために条項を置いている場合一般を指していると解釈してきたのではないでしょうか。

それを限定すべきだという御提案があるのであれば、お出しいただければと思いますけれども、現在の消費者契約法3条1項は、そのような限定を前提にした規定ではなかったのではないかと思います。

中村委員。

○中村委員 その辺りが事業者としてはちょっと気になるところでありまして、いわゆる定型約款的なものを既に作っていますという場合に、それを分かるような形に置くというのは比較的民法の範囲内に入ってくるところかと思うのですけれども、それ以外にも消費者と事業者の間で成り立つ契約というのは、契約という範囲、たくさんのことがあるわけでありまして、例えばですけれども、私どもの業態で言うと、景品を出します。今週お買い物をいただくと、5,000円のレシートで1回抽選が引けます。例えば、そういう契約につきまして、全てについて何か条項を事前に用意してお示ししなければいけないということであると非常に煩雑になる。

例えば、そういうことで、通常の場合は、詳細について御不明な点があれば店員にお問い合わせくださいという形で書くことが多いかと思いますけれども、今回の場合、請求に係らしめてはいけないということなので、そういうことでは駄目だということになるのか。例えば、そういう無限に広がる可能性を秘めているのではないかというところが1つ懸念点でございます。

以上です。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 多分、2点、問題を含んでいるのではないかと思っていまして、1点は、座長も今、おっしゃっていましたけれども、約款のような形になっていないようなものを、改めて約款にまとめるような形で開示してくださいということを言っているわけでは、恐らくこの条文はないと思います。例えば、キャンセル料に関する定めだけが1箇条あるということであれば、それは事前に開示すべきですということだと思います。それを、今おっしゃっていた、例えばバーゲンの条件などについて、わざわざ約款集みたいなものを作ってということでは多分ないと思います。これは、方法に関するものだと思います。

2点目は、今おっしゃっていた景品、例えば週末にバーゲンをやりますとか、こういうものを消費者契約法の条項というものに含んでいるというか、これは私の個人的な理解ですけれども、そこまで念頭に置いているというよりは、基本的には消費者の権利を制限したり、キャンセル等を一切認めないとか、消費者の義務を不当に過重にするようなもの、そういう契約条項というものを個人的には念頭に置いております。

もちろん、対価そのものを定めるとか、そういうものも場合によっては入り得ると思うのですが、もしその点の、例えば今、言ったバーゲンの条件のようなものも全部含むように捉えられると、これは消費者契約の権利義務その他の内容よりも広いものと読めるということであれば、この条項を少し具体化する必要はあるのではないかというのが、今、伺っていた印象です。例えば、消費者の権利・義務を制限するような条項とか。私も個人的にはそこまでする必要は全くないと思っていますけれども、これでは判然としないということであれば、条項を少し具体化する必要があるかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 長谷川委員。

○長谷川委員 まず、どういった消費者像を念頭に置くかは、冒頭申し上げた私の理解と何人かの委員の方々の理解が違っていて、そこが論点になっている。それについては施行後の状況を踏まえたらどうかと思っているわけです。具体的には私が作成させていただいたポンチ絵にもありますとおり、消費者として約款開示請求をすれば問題はない。それを店頭でのひも付けに従って見たり、帰ってからウェブサイトにアクセスするということの方が、かえって手間なのではないかと思うのです。そういった観点から、今回の提案がどれくらい意味があるのかということを再三申し上げているところでございます。

それから、山本座長の御説明で今一つ分からないところがあるのですが、法第3条の前段と後段についてです。前段は多分情報提供ということではなくて、条項を定めるに当たってはということを言っている。また、事前説明の際、消費者庁からも、そういうふうに御説明いただいています。では、なぜ情報提供に掛かる後段に、今回御提案の努力義務を置かなかったのでしょうか。今回御提案の努力義務を前段に置くのと、後段に置くのとでは意図することが全然違うような気がするのですが、その趣旨についてお教えいただきたい。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお答えをお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、御説明させていただきます。

消費者庁の提案は、3条1項の前半部分に付ける形で、今回、契約条項の開示の規定を設けるものになっております。その理由は、今回の資料は前回の資料を前提にしておりますので、特に書いていないところでございますけれども、3条1項の前半部分では、条項を明確かつ平易に定めることを定めております。そこで、事業者は条項を明確かつ平易に定めることが求められるわけですけれども、それが消費者に見えない状況に置かれていては意味がないのではないかというところで、3条1項の前半に接続しております。

それで、後半部分になぜ付けなかったのかというところですが、先ほど来、委員の皆様に御議論いただいているところですけれども、消費者庁の考え方としましては、3条1項後半の情報提供の話と、今回の約款の事前開示というテーマは、一応別の議論であると認識しているところです。3条1項後半の情報提供のほうは、典型的には条文を見ていただくと一番分かりやすいと思いますが、情報提供のところに「消費者の理解を深めるために」という目的が定められているところです。すなわち、必要な情報については分かりやすく示すことで、消費者の理解の可能性をちゃんと確保しましょうというのが3条1項の後半だと考えているところです。

これに対して、今回の提案というものは、必要な情報に限らず、全ての条項について知ることができるようにする、つまり消費者の認識可能性を担保するという意味だと考えております。つまり、3条1項の後半は消費者が必要な情報について理解する可能性を担保する話ですけれども、今回の提案は消費者が全ての条項を認識する可能性を担保するという意味で異なるものと考えており、3条1項後半に接続しなかったという経緯です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 私は基本的に消費者庁の原案に賛成です。

今回の消費者庁の提案は、消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置くよう努めなければならないという事業者として当たり前の原理原則を努力義務として規定するだけのことで、契約の取消しや無効といった法律効果に直結する規定内容ではないわけですから、そんなに強く反対される必要はないのではないかと考えます。

また、事業者委員の皆さんも、消費者が契約条項を知ることができない状態にしておいてもよいのだ、それが原則とすべきあるべき状態なのだといった御主張をなさるわけではないであろうと思います。

さらに、先ほどからの議論によって、契約条項を全て書面に書き下ろすとか、その書面を交付するといった対応は、今回の提案では想定されていないことが明らかだと思います。想定されていない事柄を弊害とする御主張は、合理的な議論ではないように思います。

加えて、真面目な事業者は約款を開示するが、悪徳業者は悪質な約款を開示しないのではないかという御指摘がございました。そうかもしれません。しかし、そうなれば、この事業者は約款を開示する真面目な事業者だという判断が消費者から見て容易になり、真面目な事業者は自らをアピールできるのではないか、市場競争力が増すのではないかと思います。そのように積極的に考えていただくべきではないかと私も思います。

そもそも原理原則を努力義務として規定するだけのことに、適用の範囲や方法までぎりぎりと詰める必要があるのかは疑問です。追加的な負担に関する事業者委員の御心配は、過剰な御心配ではないかと思います。以上のような観点から、私は消費者庁の原案のままでも良いと思っております。

ただ、このまま行くと議論が並行線になりそうですので、1つの御提案として、例えば「消費者契約の条項」という記載部分の前に、そこで想定されている対象を明らかにするという意味で、「定型約款など」といった例示を入れてみるというのはいかがでしょうか。また、「容易に知ることができる状態に置くよう努めなければならない」という記載部分の前に、例えば「消費者契約の目的や性質に応じた方法で」といった字句を加えて、個々の消費者契約において通常求められる開示方法で足りるということを明らかにするといった方策もあり得るように思われます。そのような修正を加えても、なお合意形成は難しいのでしょうか。御検討いただけませんでしょうか。せっかくここまで議論したのですから、私はできればここで成案を得たいと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。いただいた御提案につきまして御意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。あるいは、ここで一旦休憩を取ったほうがよろしいでしょうか。少し考える時間があったほうがよいかもしれませんので、大変恐縮ですけれども、ここで一旦休憩を取らせていただいてよろしいでしょうか。大変短くて恐縮ですけれども、50分まで休憩を取らせていただいて、再開後に少し御意見を伺った上で取りまとめの方向をお諮りしたいと思います。

(休  憩)

○山本(敬)座長 それでは、再開させていただきます。少し延びてしまいまして、大変申し訳ありませんでした。

休憩前までの議論において、たくさんの御意見をいただいたわけです。途中でもまとめましたけれども、重要なポイントとしては、この新しい提案によって、どれだけの追加的な負担が生じているかということ、及び提案されている内容で想定しているものを過不足なく捉えることができているかという2つの点だったと思います。

まず、前者の点につきましては、たくさんの御意見をいただいたわけではないのですけれども、少なくとも消費者庁の提出資料の3ページ以下に書かれている内容については、特に異論がなかったのではないかと思います。

それ以外について、追加的な負担が生じているのではないかという指摘に対しては、前提としている民法の定型約款のルールの理解に問題があり、さらに民法の一般原則の理解に照らすと、懸念されているような負担が追加的に生じるわけではない。つまり、書面化をする必要等も含めて、ないのではないかということが少なくとも確認されていれば、それを前提として次の問題を考えることができるのではないかと思います。

そうすると、問題は、それとも連動するわけですけれども、提案されている内容で想定しているものを過不足なく捉えることができているか、もし過剰になっているとするならば、追加的な負担とも結び付いていくところでして、ここがポイントではないかと考えられます。

最後に、山本健司委員からも御提案いただいたところですけれども、今の提案のままではなかなかコンセンサスが得られないと考えられますが、例えば、とりわけ消費者庁提出資料の1ページ目の最初の囲みの部分を御覧いただきますと、アンダーラインが引いてありますが、この部分について、「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」というのを、もう少し限定するような形で趣旨がよりよく分かるように書くということが、もしできればどうかということが問題になるようにと思います。

例えば、先ほど山本健司委員は「消費者契約の目的や性質に応じた方法で」と入れてはどうかということでしたが、それでもし十分であるというのであればよいわけですけれども、更に限定する必要があるとするならば、文言は更に法制的に詰めないといけませんけれども、「消費者契約の目的や性質に応じた方法で合理的に」等の言葉で、知ることができる状態に置くというのを限定することが考えられるように思います。

このような方向で、もし御了承が得られるのであれば、それに向けて更に詰めて取りまとめ案を考えるということですけれども、それでも問題が残るということであれば、最終的には両論併記ではないかもしれませんが、ここまではコンセンサスが得られたけれども、この点についてはなお問題が残るという形で取りまとめ案を作っていくしかないと考えられます。現状を前提にしますと、こんなところではないかと思いますけれども、御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

ただ、残りわずか1時間で、重たい論点も残っておりますので、長くても5時5分くらいまでには切り上げたいと思いますので、ポイントを突いた御意見をいただければ大変ありがたく思います。いかがでしょうか。

河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 どうもありがとうございました。

座長が今、まとめられた方向が妥当なところだと思います。

それで、3条前段に掛かるのか、それとも後段に掛かるのかという余計な議論が出てくることを考えれば、独立した1項として立てていただくという大澤委員のやり方が1つ考えられるということと。あとは、合理的な手段で容易に知るという部分について、目的・性質に照らしてというか、そういう言葉を入れればいいのではないかということでしたので、それはそれで考えられることかと思いました。

それから、条項という概念が広いという話でしたけれども、実は消費者契約法には、既に不当条項とか、いろいろな形で条項という言葉は使っておりまして、これまでそれで混乱が起きたということはないと思います。しかも、重要事項のところでは、目的物の性質とか、そういうものについての部分と、2号目に契約の対価及び契約の条件という形で、条項に関わりそうな部分というのは2号のほうに寄せております。

ですから、その意味では条項と書いて、ほとんど違和感がないというか、問題はないだろうと思いますが、それでももうちょっとはっきり書きたいのであれば、せっかくですから民法第何条による定型約款を含めと例示することによって、そのイメージを更に具体化しておくということが適切ではないかということであります。

○山本(敬)座長 先ほど申し忘れたことですけれども、私が途中でも申し上げたことですが、現在の規定では「消費者契約の条項を定めるに当たっては」という形で規定されていて、先ほど、文脈からしますと任意規定のようなものは想定されていないということを申し上げました。これは、恐らくこのような理解でよいのだろうと思います。したがって、規定をどう分けるべきか、どう分けるかという問題はありますけれども、今、申し上げた点が不明確になるような形であってはいけませんので、「消費者契約の条項を定めるに当たっては」に掛かるような形で規定を置くことが前提であったということを追加的に申し上げておきたいと思います。

他に御意見があればと思います。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。

繰り返しになってしまい、また、せっかく建設的な御提案をしていただいている中で恐縮ですけれども、3点述べさせていただきます。沖野委員がおっしゃるとおり、遠慮等により、開示請求しない消費者が少ないからといって、手当てしなくてもいいというものでもないということかもしれません。しかし、消費者としては請求するだけです。今回の御提案が、それよりも約款へのアクセスの面で容易になるとは思えませんということが1点目です。

2点目ですが、法第3条第1項の規定を踏まえた上でございますけれども、現行法で何が足りないのかというのも、よく分からないということでございます。具体的な文言云々よりも、前提とする認識というか、見通しというものについて意見が分かれているのではないかと思っております。

3点目となります。座長から、どれくらい新しい追加的な負担が生ずるのかというご質問がございました。先ほど申し上げたつもりでいたのですが、ウェブサイトに掲載すればいいということではございますが、それがない事業者もいるということでございます。また、新たなひも付けをするということになりますと、約款はどこそこにありますと掲示することが必要になるわけです。そういった負担も生ずるということでございます。それよりも、権利・義務に関わるところについては必要な情報を提供するという現行の規定があるのを前提に、更に約款を見たいということであれば、開示請求していただければよいのではないかと思う次第です。

以上です。

○山本(敬)座長 磯辺委員。

○磯辺委員 どういった消費者が対象になるかということですけれども、私は、この間、ウェブサイトの環境が整備されて、約款というものが開示される方向に流れとしては大きくあると思います。そういう中で、民法の改正で約款の効力について請求されても出さない場合は無効になるという規定が入ったことによって、逆に約款が開示されてきた動きが逆転するのではないかという懸念を持つわけです。そういう意味では、今の時点で行われていることを引き続き努力しましょうという範囲の努力義務規定だと思いますので、是非そこをそういう観点からもう一度御検討お願いできればと思います。

それと、確かに請求すれば済むのですが、契約のプロセスというのはいろいろなものがあります。例えば、一定の時期までに判断しないといけない。忙しい日常生活の中でなかなか店頭に出向けない。その中でも、この契約は決めないといけないといったときに、ちょっと調べればウェブで見られるというのはすごく親切で、ユーザーフレンドリーなのです。そういった努力を事業者の方がしてくださいね。そうしたら、契約の内容も確認できて円滑に契約が結べますということなので、何でもかんでも消費者が請求すればいいではないかというのは、ちょっと乱暴ではないかという印象を受けながらお話を伺っておりました。是非御検討お願いできればと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

既にお約束の時間が来ていますので、現時点でこの場で取りまとめるのは難しいということだけは分かったと思います。ただ、方向性としては、先ほど申し上げたような2つの方向。つまり、先ほどのような文言の修正をして取りまとめるというのが1つの方向。もう1つは、ここでコンセンサスが得られた限りにおいて確認し、そして残された問題を確認するという形で取りまとめを行うという方向の2つあります。

今日いただいた御意見を踏まえながら取りまとめ案を、今のいずれか、ないしはひょっとすると両方の可能性を示した上で、また御意見を伺うことがあるかもしれませんけれども、いずれにしましても、今日の議論を踏まえて取りまとめ案を作成し、次回お諮りさせていただくということでよろしいでしょうか。

松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 1点、取りまとめ案を作成するときに考慮していただきたいことです。民法の定型約款という規定ができたから、今回のこういう議論が誘発されたわけですが、民法の定型約款は約款全部ではないです。ましてや、契約条項全部でもない。定型約款という概念でどこまでのタイプの約款がカバーされるのか、本当のところよく分からない。消費者庁の資料の表に挙がっておりますような、特別法で手当てをされているものが全て定型約款に当たるだろうということはほぼ確実ですが、それ以外にどの辺までが入ってくるだろうかというのは、かなり曖昧です。

そうなると、定型約款には入らないけれども、従来の民法で約款だと言われていたものは、今後どうなるのだろうという議論が当然出てくるわけです。定型約款は従来の約款に関する法理よりも事業者にとっての容易性と言いましょうか、事業者の便を図っている部分が大変多いわけです。

定型約款の定義から外れるものについては、従来の民法の一般的な考え方が適用されるということになると、そのような約款がそもそも契約内容に取り入れられないという可能性も大いに出てくるわけです。定型約款ではない約款や、ただの契約条項を事業者が一方的に作っていても、それが開示されていないと契約内容にならないわけです。定型約款に限定して議論すればかなり分かりやすいわけですが、そうでない約款は一体どうなるのだろうかというところも考えて、最終案をお考えいただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

時間のマネジメントを誤りまして、もはや1時間を切っているところですが、御議論いただきまして大変ありがとうございました。

≪3.不当条項の類型の追加≫

○山本(敬)座長 続きまして、「不当条項の類型の追加」に移りたいと思います。進行としましては、「解釈権限付与条項・決定権限付与条項」と「消費者の後見開始による解除権付与条項」をまとめて消費者庁から御説明いただいて、質疑応答につきましては、それぞれの論点ごとに分けて行いたいと思います。

それでは、消費者庁より「不当条項の類型の追加」について御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、御説明させていただきます。かなり時間が押している関係もありますので、ポイントに絞った御説明にさせていただければと思います。

まず、解釈権限付与条項でして、提案としてはマル1とマル2の2つを提案しております。

マル1が第41回における提案の延長線上にあるものでして、第41回における提案は、解釈権限付与条項・決定権限付与条項全てを第10条第1項の第一要件に例示する案だったわけですけれども、これに若干絞り込みをかけまして、消費者の権利・義務を定める任意規定の要件に該当するか否かを決定する権限の付与条項に限定するのがマル1の提案です。

それから、マル2の提案は、検討する中で更に詰めた結果、出てきたものでして、次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。例外なく無効とするものとして提案するものです。

(1)から(3)までございまして、(1)は事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任、つまり、債務不履行の損害賠償責任の要件に該当するか否かを決定する権限を事業者に付与する条項。

(2)は、不法行為における事業者の損害賠償責任の要件に該当するか否かを決定する権限を事業者に付与する条項。

(3)が解除権でして、事業者に債務不履行がある場合に消費者に契約を解除する権利の要件に該当するか否かを決定する権限を事業者に付与する条項を、例外なく無効とする提案です。

第41回における検討ですけれども、先ほど申し上げたとおり、解釈権限・決定権限そのものを第10条第一要件に例示するという案をお示ししたところ、結論としましては、決定権限に絞った上で、法第10条第一要件に該当する条項として例示することなどを検討する。その際には、前回の提案で申し上げますと、条項例2-2のフィットネスクラブの施設利用に関する条項例を念頭に一定限定を加えることなどが課題でございました。

検討のほうに参りまして、まず(1)ではマル1の提案について御説明しております。時間の関係で大幅に割愛させていただきますが、決定権限付与条項の中でさらに絞り込むということで、任意規定の要件に関する決定権限を対象としております。

そうしますと、8ページのウになりますけれども、特約で定められた要件に関する決定権限付与条項については、例示の条項からは外れることになりますので、この点をどう考えるかという問題があると思っております。

それから、マル2の提案でして、これは不当条項規制の潜脱を可能とする条項について例外なく無効とするというものです。前回の第41回におきましては、先ほど申し上げましたフィットネスクラブの条項例、今回の資料で申しますと条項例1として挙げられておりますけれども、この条項が不当であることにつきましては大方の賛成があったことを踏まえまして、これを念頭に一定の限定を加えることを検討することになったところです。

このような条項はどういうところが不当かと考えてみますと、規範のレベルにおきましては損害賠償責任を免除するものではないわけですので、法8条によっては無効にならないわけですけれども、実質的には事業者の損害賠償責任を全部免除することを可能とするものですので、法第8条第1項第1号とか第3号を潜脱するもので、類型的に不当性が高いと評価することができると考えているところです。

この点を踏まえますと、現行法の8条と8条の2で損害賠償責任と解除権に関する不当条項を無効とする規定を設けていることに照らしまして、このような不当条項規制を潜脱することを可能とする条項について無効とする規定を設けるのが今回のマル2の提案になっております。

若干補足しますと、規定案のマル2の(i)につきましては、債務不履行責任の要件の決定権限を付与する条項になっておりますので、この要件には様々なものが入っているのではないかと思っております。条項例1で挙げたものは、フィットネスクラブの過失の要件に関する条項例ですけれども、例えば債務不履行があったかどうか、さらには債務の内容が何かについて決定権限を付与する条項もここに入ってくる可能性があると考えております。

それから、最後の(3)でございまして、10ページでは、第41回で示した条項例について御説明しております。詳細は割愛しますけれども、条項例3のポイント・サービスのもの、条項例4の暴力団排除条項、条項例5の生命保険契約の約款の条項などは、今回の提案によってはマル1及びマル2のいずれであっても該当しないと考えているところです。

簡単でございますが、解釈権限・決定権限付与条項については以上でございまして、引き続きまして、12ページの消費者の後見等開始による解除権付与条項について御説明させていただきます。

提案が並んでいるところですが、前回提案と今回提案がどこが違うのかというところだけ申し上げますと、前回提案が下のほうでして、「後見等の審判を受けたときに、事業者に解除権を付与する条項」となっております。これに対して、今回の提案では、「後見等の審判を受けたことのみを理由として事業者に解除権を付与する条項」としているところです。

1が前回の検討でして、いろいろ御意見いただいたところですけれども、高リスク商品の取引について、いろいろ議論がございまして、結論としましては、証券業界における実務を確認して、更に検討することとなったと認識しております。

2の検討へ参りまして、前回から今回までの間に証券実務を確認した結果、証券業界から御指摘がありました裁判例につきまして、損害賠償責任を負うリスクはないという指摘が前回資料であったところですけれども、証券業界からは、証券会社が損害賠償責任を負うリスクを必ずしも払拭できないのではないかという御指摘がありまして、個別取引の基本契約である口座契約の解除を認めるべき必要性と合理性があるではないかという御指摘がありました。

前回から今回に至る間のこのような指摘も踏まえて検討しますと、顧客について後見等が開始されたことは、精神上の障害により顧客の判断能力が不十分であることを意味するものでありますから、後見等の開始を認識した証券会社としましては、適合性原則に反することのないようにするために、後見開始の審判等が行われたことを踏まえて、高リスク取引に係る適合性の有無等の確認を行い、その結果、取引の継続が困難であるなどの一定の事由がある場合には、証券会社が口座契約を解除することもあり得ると考えております。

そこで、今回の規定ですけれども、そもそも、後見等の開始による解除権付与条項は、後見等の開始のみを理由として直ちに解除権を基礎付けているところに不当性があるわけでございまして、後見等の開始をきっかけにして、個別に顧客への適合性の有無の確認等を行い、その結果、客観的に合理的な事情があるときに、最終的に解除に至ることまでも一律に無効とすることを想定しているものではないわけです。この点の趣旨を明確にするために、前回の提案では、端的に後見開始の「審判を受けたときに」となっていたところですが、今回は「後見等の開始の審判を受けたことのみを理由として」と修正しております。

私からは以上になります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、まず解釈権限付与条項・決定権限付与条項につきまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御意見、御質問ある方は御発言をお願いします。

山本健司委員。

○山本(健)委員 御説明いただきまして、ありがとうございました。

解釈権限付与条項・決定権限付与条項につきましては、第41回会議において、消費者庁から本日の配付資料の6ページの点線で囲まれた内容の御提案をいただき、それについて議論をさせていただきました。

私の認識としては、その際にかなりの意見交換をして、決定権限付与条項に対象を絞る、具体的には、冒頭の「条項の解釈や」という記載部分を削除して決定権限に適用範囲を限定するという形で、会議の終盤にほぼ議論が収れんしたと思っておりました。したがって、今回は、第41回会議での提案内容の冒頭の6文字だけが消えたような形で新たな提案が出てくるのかと思っておりました。けれども、今回提案されているマル1マル2は、そうではなく、全く新たな御提案です。消費者庁においていろいろと考えていただいた結果なのだろうとは思うのですけれども、それはそれで、また議論しないといけないところが生じているような気がします。むしろ第41回会議の提案の冒頭の6文字を消した形でコンセンサスが得られないのだろうか、という思いを持っております。本日議論をしていただく中で、例えばそれを提案マル3として、それでは駄目なのかということについて、併せて皆さんの意見をお諮りいただけたらありがたく思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

井田委員。

○井田委員 ありがとうございます。

解釈権限付与条項・決定権限付与条項に関しましては、私はマル2の提案がいいかなと思っております。理由は、正に御指摘いただいたとおりで、現行の8条1項1号、3号であるとか、あるいは8条の2の潜脱になるということで、これを呼び方をブラックリストと呼ぶかどうかは別として、これを正当化、例外的に有効とするような要素というのは存在しないのではないかと思っております。

この点は、石島委員がマル2に反対ということの中で理由を述べられておりますが、それは理由付けの場面が違うのではないかと思っております。新民法548条の4という定型約款変更の規定というものを御主張されているのですが、それは場面が違います。

ただ、マル2が今回、初めて出たということもありまして、賛否両論あろうかと思いますが、その場合には、先ほど山本健司委員が御指摘のように、41回提案の中で「条項の解釈や」というものを削ったものをマル3として検討したほうが、私もそれでほぼコンセンサスが得られていたのではなかろうかと思いますので、私も山本健司委員の提案には賛成です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

大澤委員、続いて長谷川委員。

○大澤委員 今回の御提案ということであれば、私もマル2のほうがまだよろしいのではないかと思っています。

マル1は、気になりますのは、任意規定の要件と限定されているところです。この文言ですと、特約で定められた要件の決定権限付与条項は、文言上対象にならないということで、8ページから9ページに書かれていますけれども、果たしてこれで大丈夫なのでしょうかという心配が、すなわち、理由付けとしてこれで十分説明できているだろうかという不安がありまして、そういった疑義が出ることを考えると、任意規定と限定しているマル1案はちょっと賛成しかねると思っております。

マル2のようなものは、現行法の消費者契約法8条と実質的な趣旨は恐らく同じだと思いますので、8条の一種派生バージョンのような条項かと理解していますけれども、これに絞るというのは、私はそこまでする必要があるのか、よく分からないところがありますが、マル2のような案が出てきた、あるいはマル1の案が出てきたのは、これは消費者庁に聞きたいことでもあるのですけれども、10ページから11ページにかけての条項例を排除するためなのかと理解しました。

例えば、条項例4のいわゆる反社勢力に該当するということを当社が判断しますという、これは確かに決定権限を付与する条項ではあります。しかし、こういうものは正に政府指針などで求められている実務なのですということを前回の議論で十分伺いましたので、こういうものを排除するという趣旨で、恐らくマル1やマル2のようなものが出てきたのではないかと理解しています。

仮にそうであるとして、私は個人的には、先ほど山本健司委員がおっしゃったマル3の案でよろしいのではないかと思っています。解釈権限を削除した部分だけで、前回、これでほぼコンセンサスが得られていたと理解していますので、個人的にはマル3、ここに書いていませんが、山本委員がおっしゃっていた提案に賛成しますが、それでは、この反社勢力のような条項が該当してしまうことを懸念するということであれば、これ以上、もう時間がないことを考えますと、まだマル2のほうがいいかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。

結論的には、マル2を軸に検討されてはどうかと思っておりまして、マル1についてはなかなか賛成しかねるということでございます。

マル1に賛成しかねる理由から、まず申し上げます。

1つ目は、実質的な理由ではないと言われればそのとおりなのですけれども、なかなか分かりにくいというのがございます。私ども経団連の会員企業の方、法務担当の専門家の方からも、何が任意規定であるのか、今回の御提案を遵守するためにはどうすればいいのかというのが分かりにくいという意見がございました。裁判規範ともなるものについて、それはいかがなものかということが1つ目でございます。

2つ目は実質的な理由ですけれども、通常のビジネスで使われる条項が第一要件違反とされてしまう懸念があるのではないかということでございます。具体的には、例えば前回、反社条項というものが議論になりましたけれども、企業では、これと併せて確約表明条項というものを使っております。要するに、取引の相手方に自分は反社会勢力に属していないということを表明させるということでございますけれども、それに反した場合は契約解除もやむを得ないということです。その場合、そういった確約表明をしたにもかかわらず、結果として反社会的勢力に関係があるということで債務不履行に当たるとして解除することになりますが、債務不履行の任意規定に引っ掛かってくるのではないかということを懸念しております。また、金融機関等で債権保全を必要とする相当な理由がある場合に使われる、期限の利益喪失条項につきましても、第一要件に引っ掛かってくるのではないかということもございます。

もちろんこれらについては、第一要件に該当するということでございますので、第二要件で救われるのではないかという議論があるのは承知しているのですけれども、提案のマル1につきましては、なかなか賛成しかねるということでございます。

他方、これは何度も申し上げておりますけれども、条項例1とか2とか、問題があるということでコンセンサスが得られるものについては、逐条解説で示していくということが考えられるのではないかと思っております。

マル2につきましては、基本的にこういったことで悪くないように思っているということではございますけれども、新たに提示された内容でございますので、これで問題がないということまでは申し上げられない。そこまでの評価については留保させていただきたいと思っております。実際、事業活動にどういう影響があるのかというのを十分精査する必要があるかと思っているところでございます。

それから、この案につきましては、基本的に損害賠償義務の全部免除条項の潜脱を防止する趣旨ということでございますけれども、今の書きぶりですと、現行法、不当条項とされていない一部免除についても、範囲に入ってきてしまうのではないかという懸念もあります。この点は修正が必要なのではないかと思っている次第でございます。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員。

○中村委員 私も長谷川委員と趣旨は同じでございまして、マル1のほうは前段に例示として入れるという中身ですけれども、書きぶりが実際の該当性を判断するのが分かりにくい規定になっているので、マル1につきましては反対でございます。

マル2につきましては、今ありましたように、他の条項によって無効とされていないものについてはもう少し考える必要があるかもしれませんが、この方向性で議論するということについて賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 長谷川委員と中村委員にもう少しお尋ねしたいのですけれども、基本的にマル2を軸にということで、結論は若干留保するようなおっしゃり方もされたのですけれども、マル2だとブラックリストになりますけれども、その点については特に留保なさらないで、これでよろしいとお考えなのでしょうか。考えるためにもう少しヒントをいただきたいのですが、留保なさるということの、ここが問題だということをおっしゃっていただければ、そこを議論すれば、もしかしたらここで成案になる可能性もあるのではないかと思いますので。

○長谷川委員 無駄に議論を引き延ばすつもりは全くないのですけれども、要するに今の実務でこれ当たるようなもので、かつ合理性がある形で使われているものがないかどうかについて、検討の時間が足りず、十分な精査ができていないということでございます。その意味での留保でございますので、仮にこれを中心に議論をされるということであれば、例えば次回、報告書案が出されるかもしれませんけれども、そういう段階で、あるいはその前の段階で何か申し上げたいと思います。

○山本(敬)座長 沖野委員、続いて磯辺委員。

○沖野委員 ありがとうございます。

私、個人的には、まず、マル1とマル2は排他的な提案なのかということが分かりません。むしろ並列し得る提案だと理解しております。そして、マル1に代わるのがマル3の提案ということではなかろうかと思っておりまして、その理解のもとで、マル3プラスマル2で行けたら本当にいいと思っておるのですが、しかし、マル1の代替する案としてのマル3は、この時点で十分なコンセンサスが得られる見通しが難しいのだとすると次善の策となります。ただ、マル3についてどういうお考えかというのは、必ずしも長谷川委員、中村委員はおっしゃっていなかったように思いますので、御意見をお伺いできればと思います。そのうえでですけれども、次善の策としては、マル2で何とか少なくとも成案を得られればと思うところです。

そして、マル2の問題点としては、今、どちらかというと長谷川委員のお話ですと、やや漠然とした不安があるということなのかと思いましたけれども、その中で1つ、許されている一部免除にかかってくると問題ではないかという御指摘がありました。一部免責といいますか、軽過失免責の場合ですね。例えば次のような条項があった場合、すなわち、「故意又は重過失があった場合には責任を負います。軽過失の場合には何々の範囲を超えては責任を負いません」という条項を考えてみますと、これは、8条の下で一定の有効性が認められるものと思います。このような条項があると、そのままだと有効とされ得る可能性がある中で、そこに「故意過失について、重過失があったかは、当社の判断によります」というのだと、結局、実質は全部免責と同じになってしまうので、そういう意味では形式的には一部免責の形を採りながら、実質全部免責にしてしまうような、潜脱というのはそうだと思いますので、一部免責が大丈夫かとおっしゃるところは、結局、一部免責が許されているならば、それは潜脱しないものならばセーフだし、潜脱して全部免責などに持っていくものならばアウトだという趣旨ではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

磯辺委員。

○磯辺委員 ありがとうございます。

私もマル2と山本委員がおっしゃったマル3で並列できると良いと思って、お話を伺っておりました。

それで、長谷川委員に質問させていただきたいのですけれども、後段要件の適用によって事例の焦点になっていた3、4、5辺りは無効になることはないということは十分御認識の上での御発言だと思いますが、それでもなお、3のような前段要件、第一要件を置くことについて、どういった御心配、御懸念があっての御意見なのかというところをお聞かせいただけると、議論できるかなと思いますが、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 質問ですので、長谷川委員、よろしくお願いいたします。

○長谷川委員 結論から申し上げますと、反社条項につきましては、実務上、必要なのだと思っているわけです。条項例4については必要だと思っていて、それが無効でないということを第二要件の一般条項でしか読めないということが法的な評価となるのはいかがなものかと思っているということでございます。

条項例5は、生命保険の例でございますが、必要どころか、正に消費者のためになるものということでございます。それについて、一旦、第一要件に当たるとした上で、第二要件で救うというのは、なおいかがなものかと思っております。

また、そういった条項が無効でないということを第二要件の一般条項で読むということだと、法的安定性に不安があるということでございます。それは先ほどの山本健司委員からの提案マル3についてのコメントでもあると考えております。

○山本(敬)座長 今の点ですね。では、大澤委員。

○大澤委員 今の点ですけれども、恐らく山本健司委員がおっしゃっていたマル3を置くにしても、置かないにしても、この条項例4のようなものは、10条の後段要件で判断されることになると思いますので、状況は変わらないのではないかと思います。今の10条ですと、これは正に一般条項ですので、一般条項によって判断されると、むしろ不明確になるのではないか。それだけです。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、中村委員。

○中村委員 先ほど御質問のありましたマル3についてですけれども、すみません、議論終盤になっておりますので、マル3については事前に協会に確認が取れていないので、あくまで個人的な見解ということで恐縮ですが。条項の解釈を取るということに、プラス、私のほうで先回申し上げたつもりではあったのですが、権利・義務の発生要件というのは、契約の目的物の権利の義務の発生要件ということで、それと損害賠償ということであればよろしいのではないかと思っているのですが、例えばポイント・カードのようなサービス的なものについては、全て不当ということでもないのではないかと考えておりますので、権利義務の部分を少し絞り込むような検討する必要があるのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

あくまでも現時点においてではですが、消費者庁から提案されたマル1、マル2、加えて山本健司委員御指摘の、前回の最後に出ていたマル3の案。それぞれについて御意見を伺いました。結論としては、マル2であれば、少なくとも現時点で反対はないということですが、一定の留保が付いているところです。そうしますと、次回に取りまとめ案をお諮りすることになりますが、差し当たりですけれども、マル2を基礎として取りまとめ案を作成させていただき、ここでお諮りする前までに御意見等も頂戴した上で、そのまま出すか、あるいは更にこの場で修正していただくかということを御検討いただくという形で進めさせていただくということでよろしいでしょうか。

非常にタイトな日程で皆様にも御検討をお願いしているところですので、やむを得ないこととして進めさせていただければと思います。それでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

続きまして、消費者の後見等開始による解除権付与条項について質疑応答を行わせていただきます。御意見、御質問のある方は御発言をお願いします。

山本健司委員。

○山本(健)委員 原案に賛成です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があれば。

長谷川委員。

○長谷川委員 意見というよりも質問でございます。

結局、今回の提案には証券業協会との議論は反映されているという理解でよいのでしょうか。意見書も提出いただいているのですが、その意見書の内容と今回の提案と合っているのかどうか。十分に理解できなかったので、お教えいただきたい。

○山本(敬)座長 少なくとも意見書との対応関係については御説明をお願いできますでしょうか。対応しているのか、していないのかということの確認だけはお願いできればと思いますが。お願いいたします。

○廣瀬消費者制度課長 どうもありがとうございます。

先回の会議で証券業協会のお話を聞くようにということを御指摘いただきまして、お話を聞いて参りました。その上で御意見書が出てきておりまして、解除を認める規定ということについては、必要であるという御意見が出てきているところでございます。他方、当方といたしましては、前回の会合で出した御意見を御説明いたしまして、その後お話を聞いた上で、今回の提案の「受けたことのみを理由として」という提案を見ていただいているところでございます。

その上で、先方のお話としては、本会合でお話をしてくださいということを言われておりまして、その結果、出てきたものを受け止めますということを言われております。その意味では、長谷川委員から、本日の会合に関与される方として御意見が出るのではないかと、むしろ思っていたところでございまして、我々としては、証券業協会からはそういったことを言われております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

以上の点を踏まえて、本来、そうあるべきでありますが、ここで御検討いただければと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員。

○中村委員 証券業協会の意見が今一つはっきりしないのが残念ですけれども、この「のみ」をという言葉を入れることによって、客観的・合理的事情がある場合は除かれるという趣旨であれば、よろしいのではないかと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。もう少し議論していただいたほうが、よいと思います。これで終わるわけにはいかないだろうと思いますので、もう少し御意見いただいた上で、取りまとめに向けてお諮りさせていただければと思います。

丸山委員。

○丸山委員 私も提案に賛成しております。

「のみ」という言葉を入れることによって、必要性・合理性がある場合については有効な条項という運用がなされ、逆に、対応する必要性が高い賃貸借の事例などは適切に対応できるのではないかと思いますので、原案でいいのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 私も御提案に賛成いたします。

この「のみ」という言葉を入れたことで、14ページに載っているような、要は後見等の開始のみを理由として、直ちに解除権を基礎付けている点に必要性があるという点が示せていると思いますので、これで十分かと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 私もむしろ、前回、ここを議論したときに「のみを理由として」という部分について、強調して発言したつもりでおりますので、個人的には受け入れていただいたと思っております。そういう意味で賛成です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

仮にこのような規定が消費者契約法に置かれるとなりますと、条項の定め方については少し検討していただく必要があると思います。これは、証券業協会にかかわらず、全てのところについて当てはまることだと思います。

前回、私自身、申し上げましたように、この間には、障害者差別解消法ができ、障害者権利条約の批准もあり、成年後見に関しては新たな立法の動きもありということで、国の政策が少なくとも10年以上前とは大きく変わることになってきています。それを受けての提案でして、石島委員からは、この件についても疑問の余地があるということが出てはいますけれども、そういった状況の変化を踏まえて、現状を点検し、考え直していく必要があるところだと思います。それを踏まえて、今、賛成の御意見をいただいたところです。

長谷川委員。

○長谷川委員 私が宿題を持っていたとは思っておらず、言いっ放しになっておりまして、大変申し訳ありませんでした。

その上で、中村委員がおっしゃられたこととそんなに変わらないのですが、合理的な実務が仮にあるとして、それを阻害しないものということであれば、基本的に賛成いたします。

ただ、今回の御提案に対してではないので、すごく余計なことかもしれませんが、1点だけ申し上げます。以前にも申し上げたのですけれども、基本的に、事業者には契約を続けるインセンティブがあります。一般論として、契約を解除するというのは事業者にとってよほどのことだということを前提に、制度設計をしていただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

沖野委員。

○沖野委員 誠に申し訳ありません。今の長谷川委員の御指摘がちょっとよく分からなかったものですから。

事業者というのは、普通は契約利益を継続することに意義があるのだとすると、このような条項を入れるのは不当ではないか。例えば、賃貸借などの場合に入っているというのは、ビジネス慣行からしても余り正当ではないのではないかという方向にも行きそうなところがあります。多分、長谷川委員は、ビジネス上の利益があるのが通常だからそのような条項が置かれるのはよほどのときだとおっしゃりたいのかもしれないですけれども、両方に働くように思われたものですから、御趣旨を明確にしていただければ理解が進むと思います。

○長谷川委員 皆さんとは前提となる考え方が多分違っているということではないかと思うのですが、立法者が規定できる取引の形態というのは非常に限られていると思います。私などはもちろんそうですし、皆様のような大変立派で研究されている方々にとっても知見というのは限られているということかと思います。そのような中で、基本的には、私的な取引に法律が介入するというのは最小限であるべきだというのが、まず考えの前提としてございます。その上で、事業者に契約を続けるインセンティブがあるのであれば、法が介入せずに、そのインセンティブをそのまま生かしていくのがよいのではないかという価値判断があるのではないかということでございます。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 御趣旨がいまだに私には分かりかねるのですが、むしろ、これは法の介入する余地をかなり限定したのではないかと思っているのです。つまり、後見開始等の審判を受けたことのみを理由としてということなので、これだけをもって解除するというのは、むしろ限定していいのではないかと思いますが。

○長谷川委員 今回の御提案に対してではなく、一般論としてでございます。

○大澤委員 あと、この種の条項は、既に高等裁判所の判決でも、消費者契約法10条に違反して無効だといった判決があったと記憶していますので、実務上、既にこういうものは問題になっていると理解しています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

おおむね御意見はいただいたと理解してよろしいでしょうか。

消費者庁からお願いいたします。

○消費者制度課担当者 先ほど御議論いただきました解釈権限・決定権限付与条項との関係を補足させていただきたいと思っております。

先ほど提案マル2の方向で検討することになりましたので、更に検討を進めたいと思っているところですけれども、決定権限付与条項について、何らかの無効とする規律を置くことで報告書が取りまとめられるだろうと考えております。

それと、この後見等開始の解除権付与条項との関係ですけれども、この資料で申し上げますと14ページの「そもそも」というところになりますけれども、最初の御説明でもしたところでありますけれども、後見等の開始による解除権付与条項につきましては、開始のみを理由として直ちに解除権を基礎付けている点に不当性があると書いているところでございまして、その後に、許される運用を書いております。その中で、後見等の開始を契機に、個別に当該顧客への適合性の有無の確認を行い、その結果、客観的に合理的な事情があるときに、最終的に解除に至ることまでも一律に無効とすることを想定したものではないと書いております。

この点ですけれども、最終的に解除に至る場合には、当然解除権を行使するわけですから、何らかの解除権行使の根拠となるような条項が必要になってくるかと思いますが、その場合において、決定権限付与条項についてもし消費者契約法に新たな規律が設けられた場合には、その点が関係する可能性があるということだけは、念のため補足としてお伝えさせていただきます。

○山本(敬)座長 今の点について確認ですが、何についての決定権限の付与が問題になるということだったのでしょうか。

○消費者制度課担当者 何らかの理由で後見等の開始をきっかけに調査した結果、解除権を行使するわけですけれども、その根拠となる解除権の条項について、決定権限付与条項の規律の在り方が影響する可能性があるという話です。

○山本(敬)座長 分かりました。

今の点は、よろしいでしょうか。

それでは、本日いただいた御意見を踏まえますと、消費者の後見開始による解除権付与条項に関しましては、消費者庁からの提案どおり、後見開始等の審判を受けたことのみを理由として、事業者に解除権を付与する条項を無効とするという方向で取りまとめを行うこととさせていただければと思います。よろしいでしょうか。

では、以上を踏まえまして、河上委員長、お願いします。

○消費者委員会河上委員長 それはそれとしてということなのですけれども、なんとか終わりそうなので、申し上げるのがはばかられるのですが、一言だけ申し上げさせてください。

この専門調査会という会合ですけれども、これはあくまで親委員会の下に開かれた下部組織として、親委員会の判断に資するために専門的な意見をまとめていただいて、そして判断を支えていただくための報告を期待されているものであります。事務局を手伝っていただいております消費者庁の担当者の方々についても、この専門調査会での意見の取りまとめに向けたいろいろな提案をしていただきたいということになります。もちろん、最後は立法に向けた作業をしないといけないので、それだけ十分な根回しのようなものが必要になるのかもしれませんけれども、それはそれとして、この専門調査会の中での意見がどういうものであったかということをきちんと反映した形で原案や取りまとめをしていただきたいと思います。

ここで多数の方々が取りまとめに向けた議論あるいは方向性について一致している場合は大変よろしいのですけれども、逆に言うと、かなり多くの方が大変残念であるということを繰り返しおっしゃったのを聞いて、私は委員長として、これで本当にいいのだろうかという気持ちを非常に強くしております。

特に、この間の年齢等のつけ込み型の勧誘に関して、結果的には、必要があれば継続して検討するという方向でまとめが行われそうになっているわけですけれども、そのときに、大変残念であると発言した人が少なくとも6人いた。しかも、最後には山本座長が民法のときに起きたことと同じことが消費者契約法で起きて、大変残念であるとおっしゃった。それを聞きながら、本当にこれでよかったのだろうかということを考えてしまいました。

若年成人の問題に関しては、既に親委員会が年齢等による知識・経験・判断力不足につけ込んで不当な利益を追求するような悪質な事業者を排除するためにも、消費者には取消権を付与すべきだということを提案しておりました。それに対してはほとんどの方が賛成してくださったと記憶しておりますけれども、一部に「不明確である」とか「状況を見てから」という話があったり、さらに、「若年成人のトラブルが減少しているという現実にもきちんと目を向けて」という御指摘もございました。

これは、若年成人のトラブルが減少しているということは確かなのですけれども、実は若年成人は消費者センターに相談に行っていないのです。消費者の意識調査を去年、消費者庁がやりましたけれども、若年者はSNSで問題を自分で解決しようとする傾向にあって、かえって自分の傷口を広げているということさえ危惧されます。さらに、社会に出たばかりの若い子たちがその餌食になったときに、どれだけのダメージを受けるかということを考えれば、数だけではない問題があります。

その意味では、大変重要な問題ですし、喫緊の課題として、18歳、19歳の若者に取消権がなくなったという状態になったときに、高校の現場などにマルチなどの取引がまん延するということだって具体的に危惧されます。例えば、マルチが高校の現場に広がってからでは遅いのです。つまり、若年成人を守るための手当てというのは、恐らく成年年齢の引下げとセットにして出さないといけない。法務省は、次の臨時国会にでもこの法案を出したいとお考えになっているわけでありまして、そうだとすれば、法務省の出そうとする若年成人というか成年年齢引下げの法案を成功させるためにも、それとセットにした若年者の保護のためのルールというものを消費者委員会が発信しないといけないのではないかと強く感じます。

消費者委員会のワーキング・グループは、いろいろな事件や数値を分析した上で検討委員会としての意見を述べたものでありまして、これをこのまま、専門調査会の中ではもう少し様子を見てという話にされたとしても、親委員会としては大変残念だという以上の感じを持ちます。やるのだったら今だという気が強くいたしますので、消費者契約法で救済されるようなルールを提案していただくということを是非ともお願いしたい。私、この調査会でお願いしたいと何度も言いましたけれども、その都度原案として出てこなかったので、大変残念に思っておりますが、今回の措置提案で消費者委員会が一定の意見を出せない場合には、成年年齢の引下げも難しいという気がします。

一般的な議論として、この年齢等に対するつけ込みというものを入れないで、それに代わるものとして二つ三つ、具体的なつけ込みのタイプの案が出ました。あれは見るからに公序良俗違反です。あんな真っ黒なものを、これは取り消せますと書くのは、そこまでやらなければ有効ですと言っているのと同じではありませんか。つまり、これは消費者委員会の提案として、公平なルールを索定して、そして取消権を認めていくというのは、今の時代、大変必要なことなのではないかという気がします。

ですから、受け皿規定として、これは丸山委員からも言われたかと思いますが、そうした規定をきちんと考えてみるということを、しつこいようですけれども、再度、この年齢等による知識・経験・判断力の不足というものにつけ込んで、不当な利益を得ようとしている事業者の勧誘行為の契約は、取り消すことができるという案を、もう一度本当に駄目なのかをきちんと原案を作る段階までに事務局に考えていただければありがたいと思います。もし駄目であれば、まとまりませんでしたということにして、親委員会にそのメリット、デメリットをきちんと示していただき、親委員会として判断させていただきたいとすら思っているくらいであります。

ちょっと余計なことかもしれませんけれども、あとはまとめの段階ですので、よろしくお願いしたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

もう言わずもがなですけれども、この専門調査会は親委員会から委託を受けて検討しているところですので、余り意見に当たるものを申し上げるべき立場にはないということは重々承知の上ですけれども、最終的には法律の改正ですので、国会の審議で御判断いただくことになりますが、45回も、しかも最後は7週連続という前代未聞の空前絶後であろう審議をしてきた身から申し上げますと、願わくば、可能な限り、ここで審議したことを反映した改正が実現していってほしいと思うところです。取りまとめも、そのような改正を実現することができるような方向できちんとまとめていくことにしたい思っているところです。余計なことを申し上げましたが、以上のとおりです。

期せずしてですが、予定された時間どおりになりました。これも皆様の御協力の賜物と感謝しております。

それでは、最後に事務局より事務連絡をお願いいたします。


≪4.閉会≫

○丸山参事官 本日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、来週7月27日木曜日、午前10時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上