第43回 消費者契約法専門調査会

日時

平成29年7月7日(金)16:00から18:20

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、石島委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、後藤準委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、増田委員、丸山委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会 河上委員長、鹿野委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、加納消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 約款の事前開示
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は皆様、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会第43回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用によりまして山本和彦委員が御欠席、それから柳川委員が遅れての御出席との連絡をいただいております。

まず、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第下部に配付資料一覧をお示ししております。もし不足がございましたら事務局までお声掛けをよろしくお願いいたします。

また、当初、本日の消費者契約法専門調査会におきましては、不当条項の類型の追加について御検討いただく予定で御案内しておりましたけれども、約款の事前開示について議論していただくのに要する時間などを考慮した結果、恐縮でございますけれども、不当条項の類型の追加につきましては、次回以降の専門調査会にて検討することとさせていただきます。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.約款の事前開示≫

○山本(敬)座長 本日もよろしくお願いいたします。

本日の議事に入りたいと思います。本日の進行としましては、「約款の事前開示」について検討したいと思います。消費者庁より資料1、それから資料2として、大澤委員、沖野委員、丸山委員、河上委員長の連名で資料を御提出いただいていますので、まず消費者庁に資料1を御説明いただき、続いて大澤委員に資料2を御説明いただいた後に、まとめて質疑応答としたいと思います。

それでは、まず消費者庁より資料1の御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、御提案する内容を冒頭の四角囲みに書いております。近時、約款を利用した取引が消費者契約においても極めて多く見られること。そのような状況の中で、先日成立した新民法におきまして定型約款の規定が設けられたこと。これらを踏まえ、消費者契約法3条1項の前半部分を改正するというものです。

具体的には、今の3条1項の前半部分では、「消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易になるよう配慮する」ということが事業者の努力義務として定められているわけですけれども、その後に続きまして、下線部の「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」という文言を加えるのが提案になっているところです。あくまでも3条1項前半部分の改正として下線部を追加するという提案でございまして、3条1項後半部分の定める情報提供の努力義務について修正を意図するものではございません。

具体的な中身としまして、新民法の条文を御紹介しておりますが、そちらは適宜御参照いただくことにいたしまして、次のページにまいりまして、(2)定型約款の内容の表示についての考え方というところを御説明させていただきたいと思います。

まず、冒頭では、新民法の立案過程における説明を御紹介しているところでございます。どうして定型約款の内容の表示の規定ができたのかというところに関係しますけれども、定型約款を用いて契約を締結する場面では、相手方も定型約款の中身を逐一見ようとしない場合が多くあると考えられるために、常に相手方に事前に内容を開示しなければ契約内容とならないとしますと、かえって煩雑になるのではないかという指摘があります。

他方で、相手方が、自分が締結しようとし、又は締結した契約の内容を確認することができるようにすることは必要である。そういう双方の要請を踏まえて、相手方の請求があった場合には、定型約款の条項準備者は、定型約款の内容を示さなければならないとする規定を設けるということが、立案過程において法務省から説明があったところでございます。

それから、新民法が国会で審議される中で、法務省からあった説明を一部引用しておりまして、信義則上の情報提供義務というものが様々な法律で定められているわけですけれども、改正法案548条の3の規定により、契約内容が相手方に表示されたとしても、それにより、当然にこういった情報提供義務が履行されたということにはならないものである。各義務の根拠規定に照らしつつ判断されるものであるという答弁がされているところです。

以上が定型約款の規定の内容でして、3ページに参りまして、これまでの専門調査会における議論を御紹介させていただきます。第38回では、それまでの議論を踏まえまして、「優先的に検討すべき論点」以外の論点について何を検討するか、議論が行われたところでございますが、この中で「約款の事前開示」を取り上げるべきという御指摘があったと認識しております。

(1)で、委員の皆様から示されました、消費者契約法で約款の事前開示に対応すべき理由というものを、アからウの3点で整理しております。

まず、アとしまして、消費者契約法の情報提供に関する考え方としてまとめさせていただきました。新民法の規定ですけれども、定型約款準備者があらかじめ定型約款の内容を相手方に開示(表示)することを、定型約款の個別の条項について合意したものとみなすための要件とはしていないところです。そして、定型約款準備者が相手方に対して定型約款を記載した書面を交付していたなどの場合を除きまして、定型約款準備者は、相手方から請求があった場合には、定型約款の内容を示さなければならないという規定が新民法の第548条の3に規定されているところです。

以上が新民法の規定でございますけれども、消費者契約法は、事業者の努力義務としまして、事業者が消費者契約の内容についての必要な情報を消費者に提供する旨を3条1項で定めているところでして、この規定の趣旨に照らすと、消費者契約については約款を事前に開示する旨の規定を消費者契約法に設けることが望ましいのではないかという御指摘があったところでした。

それから、イでは、消費者による開示請求の困難性への手当てという形で整理させていただきました。新民法の規定は、既に御紹介しましたように、定型約款の開示(表示)を相手方の請求に係らしめているところです。しかしながら、消費者契約において定型約款が用いられた場合を考えますと、開示請求には一定の時間と労力がかかることや、事業者の反感を買うことを恐れたり、遠慮があって開示請求を控える消費者も想定されるという御指摘がありまして、確かに理論的には消費者には開示請求権があるわけですけれども、消費者が定型約款の開示請求権を行使することは、現実的には期待し難いのではないかという御指摘があったところでした。

これに対しては様々な意見がありまして、新民法における実務としては、事業者は請求があれば定型約款を消費者に渡せるように準備しておくものと考えられることや、最近はインターネット上で約款を開示している事業者も多いことからしますと、開示に請求を係らしめていることにつきまして、消費者の負担は必ずしも大きくないのではないかという御指摘もあったところでした。また、新民法施行後の実態を踏まえて検討すべきであるという御指摘もあったと認識しております。

最後に、ウといたしまして、消費者が約款に拘束される法的根拠をまとめさせていただきました。まず、消費者に対する手続保障として、消費者が知ろうと思えば知ることができる状態に置かれている契約条件でなければ契約の内容とはなり得ないのではないかという御指摘がありました。

また、この点に関連しますけれども、新民法の規定が、事業者は定型約款の内容を事前に開示する必要はないという誤ったメッセージ効果をもたらす恐れがありますので、このメッセージ効果を予防するために消費者契約法で対応する必要があるのではないかという御指摘もあったところです。

後者の指摘につきましては、新民法が誤ったメッセージ効果をもたらす恐れがあるのならば、それは新民法の周知・啓発で対処すべきであるという御指摘もありました。

その他にも様々な御指摘がある中で、38回における結論としましては、新しい論点であることも踏まえて、3条の問題として検討することとなったと認識しているところでございます。

それを踏まえまして、3.検討に参りたいと思います。

まず、前半部分で書かれていますのは、消費者契約の条項の開示を規定する根拠に関する指摘になります。2つございまして、まず、消費者契約法3条1項の前半部分は、事業者が消費者契約の条項を消費者にとって明確かつ平易に作成するよう配慮する旨を定めております。しかし、条項が明確かつ平易に作成されたとしましても、消費者が契約に先立って条項を知ることができる状態にないのであれば、条項を明確かつ平易に作成する意味は乏しいと考えられます。

そこで、事業者の努力義務として、3条1項の前半部分に続きまして、「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」ことを定めることが考えられるところでして、このことは、法3条1項後半部分の、情報提供の観点からも基礎付けられると考えているところです。と申しますのも、事業者と消費者の間には情報・交渉力の格差があることを踏まえまして、3条1項後半が情報提供の努力義務を定めているところからしますと、消費者契約の条項は、通常、事業者が作成準備することを考えますと、格差是正という観点から、あらかじめ知ることができる状態にしておくことが望ましいと考えられるからです。

以上が法的な根拠の話でございまして、真ん中の辺りの事業者の段落からは、具体的な要件とか適用場面についての御説明になっております。格差の是正と重複するところがございますけれども、事業者は多数の取引を反復継続して行うために、その取引に関する情報は事業者に集約されることになります。他方で、消費者は通常、自分の行う取引について十分な情報を持っていない。こういう点で、事業者と消費者との間には情報の格差があると考えております。

また、消費者が一つの契約にかけることができる時間と労力には限りがあることからしますと、交渉力にも格差が生ずると考えているところでして、このような情報・交渉力の格差を是正し、消費者契約の適正化を図るという観点から、事業者としては、消費者が契約条項の内容を知ろうとしたときには、事業者に対する開示請求をすることなく容易に知ることができるようにすることが求められると考えているところでして、立法提案における「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」とは、以上のような意味で、今回、提案させていただく次第です。

繰り返しになりますけれども、ここで言う「容易に」という言葉には、事業者に対する開示請求することなくという意味が含まれておりまして、そういう意味で「容易に」という文言を使っているところでございます。したがいまして、事業者としましては、消費者から請求を受けたときに対応できるように準備しておくということでは足りず、より積極的に、消費者が契約条項を確認したいと思ったときに、事業者に請求しなくても容易に条項を確認することができるようにしておく、努力義務としてではありますけれども、そういう状態にすることまで想定しているものになっております。

資料のほうでは、具体例として1つ、オンライン契約を取り上げました。「例えば」というところですけれども、消費者が事業者のウェブサイトを通じてオンラインで契約を締結する場合には、ウェブサイトに利用規約が掲載されており、契約の締結までに利用規約を案内する画面が表示されていること、ここまでやれば容易に知ることができる状態に置くと言えるのではないかと考えております。

最後に、効果でございますけれども、この立法提案を条文化した場合であっても、「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」ということは、法的な義務であるものの努力義務であるため、義務違反を理由として契約の取消しや損害賠償責任といった私法的効力が直ちに発生するものではないと考えております。

私からは以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

続きまして、大澤委員より資料2の御説明をお願いいたします。

○大澤委員 お時間をいただきまして、ありがとうございます。本日、沖野先生、丸山先生、河上先生、そして大澤の4名から共同で提案を出させていただいております。

最初に申し上げますと、この提案は、本日の資料1で出された提案と並び立てるというか、対立するというものでは全くなく、むしろ資料1のように立法に向けて前向きに検討してほしいということを、ある意味では補強するつもりの資料でございます。その上で、例えばこのような文言もあり得るのではないかという提案も含めておりますので、その点だけ御留意いただければと思います。

簡単に趣旨を説明させていただきますと、この点は今までも何度もこの場でも指摘されていましたように、先頃、成立した民法改正法では、いわゆる定型約款の組入れに関しましては、548条の2の第1項2号におきまして、「定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき」には、「定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす」という規定があり、さらに548条の3には、定型約款の内容については、定型約款準備者は、相手方から請求があったときに示さなければならないという規定が定められております。

この規定の趣旨につきましては、もちろん今後の解釈の余地はあり得ると思います。国会の議論を拝見していますと、本日のこの資料2の2ページの上から10行目辺りの新しい段落のところに書かせていただいておりますように、基本的には民法の意思主義の原則を曲げる、修正するものではなく、それとの整合性を配慮しつつ、必要かつ合理的な範囲での特則を定めるという姿勢だと理解できます。

すなわち、そこにも書かせていただきましたが、相手方が自らが拘束される定型約款の内容を確認できるようにすることが必要であるというのを基本としつつ、しかし、経験則上、定型約款を契約内容とする旨の黙示の合意があったものとみなすことができるような場面において、常に定型約款の開示を要求すると、かえって取引が煩雑になることがあり得ることから、事前の開示は組入れの要件とはせず、相手方から請求があった場合には約款の内容を示さなければならないという趣旨であると理解できます。

しかし、この条文は、この場でも何度も指摘されておりましたように、この場で議論している話で申し上げますと、相手方である消費者からの請求がないと約款の内容が開示されないというふうな誤解をされる可能性があります。言い換えますと、消費者からの請求がない限り、約款を開示する必要はないという誤った理解がされる恐れがあるのではないかと危惧しております。

しかし、消費者契約におきまして、これも資料に書かせていただいておりますが、個々の消費者が約款の開示を請求するということがどれほど期待できるのかという疑問があります。そうしますと、事前に契約内容を示すことなく、後でトラブルになったときに、このような条項があったはずですということで、事業者側から主張がされて争いになるということがあり得ます。

そこで、資料の3ページの一番最後にありますが、国会、参議院法務委員会の民法改正法の附帯決議の中の一つの「消費者契約法その他の消費者保護に関する法律について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること」ということを踏まえまして、この点につきまして消費者契約の特則として何らかの手当てを設けるべきではないかと考えております。

どのようなものを考えているかといいますと、これは資料の1ページの四角の中にございます。基本的には、本日、消費者庁から出していただきました資料1の案と、方向性はおおむね同じではないかと考えています。すなわち、消費者契約法の3条の努力義務のところに「事業者は、合理的な方法で、消費者が、契約締結前に、契約条項を予め認識できるよう努めなければならない」。このような文言を追加するという提案でございます。

消費者庁からの提案と、おおむね趣旨は同じであると考えますが、これは私の個人的な意見も後で申し上げますが、「予め認識できるよう」という文言にしています。この文言と、資料1の締結に先立ち、容易に知ることができる状態に置くというのは、趣旨は同じかと思いますが、この点については、後で個人の意見を述べさせていただこうと思います。

以上のような提案をさせていただきたいと思います。繰り返しになりますが、これは資料1と資料2を並べて、これら2つのうちどちらかということではなく、資料1のような方向性を是非前向きに検討していただきたいということをより具体化するものとして、資料2を提出させていただいておりますので、御検討のほどよろしくお願いします。

以上です。ありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。御趣旨は、今、強調していただいているとおりで、事務局から先ほど説明していただいた提案の趣旨については賛同するけれども、その趣旨をよりよく明文化するためには、このような定め方もあるのではないかという御提案だったと受け止めさせていただきます。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行いたいと思いますが、議論を行う前に、今日の議論の位置付けを明らかにしておいたほうがよいと思いますので、最初に私自身の理解を申し上げさせていただきます。

資料1の1ページ目から2ページ目にかけて、民法の定型約款に関する規定が挙げられています。この定型約款に関する規定は、まず548条の2の1項に定める要件を満たしたときに、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなす。つまり、この内容が契約の内容になるということです。

その中でも、1号と2号がありまして、2号では、定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときに、契約の内容になると定めています。ここでは、定型約款を契約の内容とする旨を表示していただけでして、その定型約款の内容を見ようと思えば見られる状態にすることは要件とされていません。これは法制審議会でも非常に議論があったところで、私も含めまして異論もいろいろあったところですけれども、結論としてはこのようになっています。

そして、次の548条の3では、その定型約款の内容の表示について規定が置かれていまして、定型約款の内容を示すかどうかという問題と、先ほどの定型約款が契約の内容になるかどうかという問題を原則として切り離した形で規定されています。その上で、定型約款の内容を示すかどうかという問題については、定型約款準備者の相手方、つまり顧客に当たる者から請求があった場合には、その定型約款の内容を示さなければならないとされています。

今日の議論は、この民法の規定との関係では、548条の2の規定は民法の規定として前提とする。したがって、この規定の内容について、こうしたい、ああしたいということはいろいろあるかもしれませんけれども、それは今日の問題ではなく、むしろ548条の3で相手方の請求があれば示さなければならないとされている点について、消費者契約法の趣旨に応じた新しい努力義務を定めるかどうかが問題になっているということを、前提としていただければと思います。

民法の548条の2の要件を満たしませんと、定型約款は契約の内容になりません。これは、事業者も前提にしていただかないといけないことですが、この要件をここで変えようということも議論の対象になっていないということを前提としていただければと思います。余計な確認だったかもしれませんけれども、以下、それで御議論いただければと思います。

それでは、御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。資料1に関して、3点質問をさせていただければと思います。

まず、1点目は、「容易に知ることができる状態に置く」の意味なのですけれども、5ページの下から7行目の辺り、「例えば」のところで「消費者が事業者のウェブサイトを通じてオンライン契約を締結する場合には、ウェブサイトに利用規約が掲載されており、契約の締結までに利用規約を案内する画面が表示されることがこれにあたると考えられる」と書いてあります。これは、オンラインで契約するようなタイプの契約に限ってだけ、ウェブサイト掲載でいいという話をしていらっしゃるのか、一般的に店頭で契約する等の場合にも約款等がウェブサイトに載っていればいいということをおっしゃっているのかというのが質問の1点目でございます。

2点目は、契約条項がある場合だけでなく、ない場合もあると思っていまして、その場合はどういうふうに考えたらいいのかということでございます。

3点目といたしまして、同じく1ページの脚注に鉄道営業法について言及がありますけれども、こういった形の業法と、今回の消費者契約法との関係は、もし今の提案が入ってくるようになれば、どのようになるのか。

以上3点が資料1に関しての質問でございます。

それから、大澤先生から御説明いただきました資料2についてでございますけれども、先ほど御説明がありましたとおり、資料2の3ページ目、一番最後のページに参議院の附帯決議について言及されております。この趣旨も踏まえて議論すべきだということだと思いますけれども、私の理解では、民法改正に伴う附帯決議におきましては、定型約款について個別に言及されている箇所がございます。衆議院では5項、参議院では7項で、「定型約款に関する規定のうち、いわゆる不当条項及び不意打ち条項の規制の在り方について、本法施行後の取引の実績を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること」となっているかと思います。この箇所ではなくて、一般的な消費者保護にかかる箇所を引用された理由を教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、まず、消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 御質問、どうもありがとうございました。長谷川委員から3点御質問いただきましたので、順にお答えさせていただければと思います。

まず、1点目で、資料ではオンライン取引を例示として挙げたところですけれども、店舗の場合、インターネットで約款を上げていればいいのかという御指摘だったかと認識しております。今回、資料のほうでは、オンライン取引でリンクを張って、その約款にアクセスできるよう、契約条項にアクセスできるようにするものを例示として1つ挙げたところでございます。

その趣旨というものは、消費者が条項を容易に知ることができる状態がどういうことかというところで、もちろん一番シンプルなのは、条項そのもの全体を表示する約款を渡すというのがあるわけですけれども、条項そのもの全体を表示しない場合には、消費者がその条項そのものの全体を見ようと思ったときには、見ることができるための何らかのひも付けが必要だと思っているところでして、その一例として、リンクでアクセスできることを御紹介しました。したがいまして、店舗において約款とかの契約条項を使う場合には、単にインターネット上に規約とかが上がっているだけでは足りなくて、何らかのひも付けが必要であると考えているところでございます。

例えば、店舗の消費者が目にする場所に、詳しい契約条項が知りたい方は、これを検索してくださいとか、そういう掲示をすることによってひも付けをすることを1つ考えているところでございます。

以上が1点目でして、2点目が、契約条項がない場合はどうかという御指摘だったかと思いますけれども、その場合には契約内容にはならないと考えておりますので、今回の規律の対象にはならないのかなと思っているところでございます。

3点目で、今回の提案と業法の関係で御指摘があったところですが、基本的には業法と民事ルールである消費者契約法は切り離して考えられるものだと考えているところでございます。ただ、長谷川委員から鉄道の事例を引用して御指摘があったと思いますけれども、鉄道の場合は、この資料で申し上げますと548条の2の契約内容になるための要件のところで特則が設けられているところです。注1になりますけれども、表示は不要で、公表で足りるとされているところです。

そうしますと、鉄道などの公表で足りるとされている事業者におかれましては、定型約款を契約の内容とする旨の公表をするわけですから、その公表にひも付ける形で、例えば公表するときのウェブサイトに一緒に約款を上げるとか、そこにひも付けるという方法で対応することができるのではないかと考えているところでございます。

私からは以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、大澤委員から御説明をお願いします。

○大澤委員 御質問ありがとうございます。

不当条項、不意打ち条項について、本法施行後に検討すべきであるということが附帯決議に入っていることは存じ上げておりますが、ここで申し上げているのは、不当条項規制、不意打ち条項の話以前の問題として、そもそも契約条項の内容が消費者に開示されるような手当てをすべきであるという開示の段階の話をしておりますので、それは別の話ではないかと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、他に。

井田委員。

○井田委員 ありがとうございます。

1点、質問がございます。御提案では、「消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」という記載がございます。他方、548条の3では、「請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない」ということで、少し言葉が違うわけですけれども、今回の御提案でこのような言葉を使われたというのは、もしかしたら民法で考えている示し方とは違うのかか、同じなのか、その辺がちょっと疑問に思いましたので、質問させていただきました。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁から御説明をお願いします。

○消費者制度課担当者 御質問ありがとうございました。

新民法の548条の3は、定型約款準備者の相手方から請求があった場合に、遅滞なく、相当な方法で開示するというルールだと認識しております。それに対して、今回の提案は、事業者に請求することなく契約条項を見ることができるようにするというものですので、その遅滞なくとか、相当な方法でというところが、今回の提案には出てこないのではないかと思っているところです。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、他に御意見、御質問があればと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員。

○中村委員 ありがとうございます。

今回の御提案ですけれども、言葉だけをお聞きして、消費者が消費者契約の締結に先立って条項を容易に知ることができる状態に置くように努めるという、抽象的な努力義務ということについては、考え方としては理解できるところだと思っておりますが、今回の御提案が、議論の中で、新民法の規定を超えて、積極的に事業者から条項の存在等についてアピールしなければいけないという御趣旨で語られているところには、非常に違和感を感じるところでございます。

今回の資料にも記載がございますように、定型約款につきましては、相手方も定型約款の中身を逐一見ようとしない場合が多くあって、事前に内容を開示しなければ契約内容とならないとすると、かえって煩雑になるというところがずっと議論されているところでございます。そういう観点から、今回、消費者だから特別という御議論がございますけれども、そもそも定型約款というのは、多く消費者対企業というところで想定されているところだと私は理解しておりますので、そういった意味の中で、民法の議論の中でも非常に多くの議論があった論点について、ここの議論で簡単に追加の義務を課すということには非常に抵抗がございます。

例えば、オンライン取引の場合についてでございますけれども、ちょうど今回、先ほど消費者庁からの御説明で、約款について事前に分かるような形で提示されるのがいいのではないかという御指摘がありまして、そこについては、特段異論があるわけではございません。

その点につきましては、皆さん、当然御存じのこととは思いますが、経済産業省の電子商取引及び情報財取引等に関する準則というのが、最新では平成29年6月に改訂されたものがございまして、こちらの具体的には25ページですけれども、「サイト利用規約が利用者との契約に組み入れられるためには、サイト利用規約があらかじめ利用者に対して適切に開示されていること、及び当該ウェブサイトの表記や構成及び取引申込みの仕組みに照らして利用者がサイト利用規約の条件にしたがって取引を行う意思をもってサイト運営者に対して取引を申し入れたと認定できることが必要である」、ここは、多分皆さん、御異論ないところだと思いますが、その後に、「ところで、インターネットを利用した電子商取引は今日では広く普及しており、ウェブサイトにサイト利用規約を掲載し、これに基づき取引の申込みを行わせる取引の仕組みは、少なくともインターネット利用者の間では相当程度認識が広まっていると考えられる。したがって、取引の申込みに当たりサイト利用規約への同意クリックが要求されている場合はもちろん、例えば取引の申込み画面(例えば、購入ボタンが表示される画面)に分かりやすくサイト利用規約へのリンクを設置するなど、当該取引がサイト利用規約に従い行われることを明瞭に告知しかつサイト利用規約を容易にアクセスできるように開示している場合には、必ずしもサイト利用規約への同意クリックを要求する仕組みまでなくても、購入ボタンのクリック等により取引の申込みが行われることをもって、サイト利用規約の条件に従って取引を行う意思を認めることができる。」このような形で、明確にサイト利用規約の組入れの条件ということのルールが明確になっておるところでございまして、そこについて、加えて何かの考え方が必要なのかというのが1つの疑問点でございます。

2つ目といたしまして、ウェブサイトの場合は、このような形でお客様の取引をお申込みをされる過程で、オンライン上で約款を示すことができるということになるわけですけれども、例えばテレビショッピングのような場合に、先ほど長谷川委員の御質問の中で、契約条項がない場合はどうなのかということに対して、契約にはならないというお話があったのですが、長谷川委員がおっしゃりたかったのは、情報としての中身がない、契約内容がないということではなくて、情報として書かれてある契約書のようなものがない。ただ、そこの中に適用されるいろいろな条件がある場合のことをおっしゃったのだと思います。

その場合、テレビショッピングを例にとりますと、これも皆様御承知のとおり、通信販売に関する特定商取引法の規定が適用されまして、その際に、広告の中に特定の条項については全て書かなければいけない、あるいは書かなくてよい条件であるとか、そういうことが明示されているわけでございまして、それを見た中で、お客様が例えばテレビで見て電話をされる。そのときに、広告のこういう条項を御覧になりましたかとか、こういう条件ですが、よろしいですかと逐一確認するということは、基本的に通常の消費者の方も望まれていないことだと思いまして、実務的にもそういうお客様からすると、もしかすると余計な説明をしたことで、私どもの会社の中でトラブルになった事例が現実にございます。

そこは、お客様の利便性であったり、先ほど取引が煩雑という御指摘がありましたけれども、そういうことも踏まえた上で、それが本当にお客様が望まれていることなのかということは、議論の余地があることだと思います。

私どもの会社であれば、規約に関してはインターネット上に掲示しておくというのは、それほど難しいことではないですけれども、中小のあらゆる企業の方を含めて、何でもネット上に条件を書いておけばいいじゃないかということにもなりませんし、例えば高齢の方とかインターネットに必ずしもアクセスをしないような方に対しても、それで足りるのかということもございます。

結論、繰り返しになりますが、抽象的に消費者に対して適用される条件に関しては、あらかじめお客様が分かるようにしておくという考え方そのものに反対する考えはございませんけれども、特に売買のような簡単な取引をする際に、これには条件がありましてみたいなことをその都度言わなくはいけないということであるとすると、それは日常的な取引の妨げになると思います。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

まず、消費者庁にお答えいただければと思います。

○加納消費者制度課長 中村委員の御指摘を伺いながら、幾つか消費者庁の考え方について御説明させていただければと思います。

今回、1ページの枠囲みにありますような、消費者が容易に知り得る状態に置くということの意味でございますけれども、中村委員は事業者が積極的にアピールしなければとおっしゃったようにお聞きしましたが、必ずしも積極的にアピールというわけではなくて、どちらかというと消費者が知ろうと考えたときには、知ることができる状態に置く。一種の環境整備といいますか、そういう趣旨でありまして、インターネットなども正にそうでありますけれども、消費者があちこち探すわけでありますが、そういった形でアクセスしてくる消費者に対して、ちゃんと分かるように一定の整備をしておくという趣旨に基づくものであります。

それで、経済産業省の準則のお話もありまして、そこは準則をまた確認してみたいと思いましたが、今のお話をお聞きする限り、結局、必ずしも同意のクリックがなくても契約内容になるということの前提として、契約内容に関する、きちんとしたリンクが張られているということも併せておっしゃっていたと思いますので、それは、正に今回の提案もそうである。長谷川委員から指摘があった、5ページの「例えば」と書いているところも、大体そういうことを含意して書いたつもりでありますので、経済産業省準則が今、中村委員がおっしゃったものであるとすると、それと余りかけ離れるものではないのではないかという印象を持ちました。

それから、長谷川委員の御質問にもありました、条件がそもそもない場合というのは一体どういう場合なのかということにもよるのですが、その条件がありまして、その条件は一体何なのですかということになろうかと思います。そこは、私は率直に言って、まだよく理解できていないところがあります。条項と言っても、何でもいいのですけれども、それが契約の内容になるのかどうかということでありまして、契約の内容になるというものであれば、民法のルールによって一定の手続を取らなくてはいけません。民法は定型約款に関してということでありますが、そういうものであります。

私は、そもそもそういうものがないのだったら、定型約款のルールにのっとる必要もなければ、今回の努力義務の対象にもなるものではないのではないかとお聞きしましたけれども、それは条項というか、条件というか、言葉は本質ではないのですけれども、それが契約の内容に取り込まれようとしているものなのかどうかというところではないかという気がいたします。

○山本(敬)座長 中村委員から、後半の点についてはよろしいですか。

○中村委員 まず、準則の部分は同じ趣旨が書かれているということは理解していまして、逆にウェブというものについてはそういうルールが明確になっているので、新たなものの導入は必要ないのではないかという趣旨でございます。

○山本(敬)座長 よろしいですか。

では、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 経産省の準則のワーキングの座長をやっているという関係もございますし、この中にも何人か委員がいらっしゃいます。準則というのはルールと言いますけれども、解釈の考え方を示したものにすぎないわけで、あれ自身が何か法律とか規則というものではございません。一番新しいものでも、民法の今回の改正を踏まえたものではなくて、改正前の民法を解釈すれば、ウェブの契約の場合にはこういうふうになるはずだ、ということを学者と実務家とで考えてパブコメにも付した上で経済産業省の責任で出しているものですから、拘束力があるような、ないようなものだと御理解いただければいいと思います。

今回の消費者契約法の改正案は、消費者契約法にこういう内容のルールを盛り込もうということで、法律の中身に関わってくるものであります。準則で示されている解釈の仕方を法律の中で努力義務的なものとして示しているということになると思いますから、準則があるから、今回のような提案が要らないということにはならなくて、むしろ今回の改正案が盛り込まれれば、逆に準則は要らないということになるのかもしれないと、ちょっとそれは言い過ぎですけれども、そういう位置付けになるだろうと思います。

もう一点、条項がない場合というのは、言い換えれば特約がない場合ということになると思いますから、特約がなければ民法どおりになります。民法を知らない人も消費者の中にはたくさんいらっしゃるでしょうけれども、そこは「法の不知は許さない」というのが一般的な考え方であり、かつ民法は公平なルールになっているというところから民法が適用されるということになりますから、特に不都合はありません。事前にどんなルールが適用されるかを知りたいと思っている消費者にとって、特約がない契約の場合であれば民法を見ればいいということで、契約内容はあらかじめ知ろうと思えば知ることができるということになると思います。

民法に書いていない特約を事業者があらかじめ定めている場合には、消費者あるいは契約の相手方として、少なくとも知ろうと思えば知ることができる機会が与えられている必要があるのではないかというのが約款の従来からの一般的な考え方だろうと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

最初に今日の議論の位置付けをした点とも少し関わるのですけれども、何らかの契約条件があるのであれば、資料の1ページの民法の548条の2の1項2号の「その条件を契約内容とする旨を相手方に表示する」ことは、契約の内容にするために必要ですので、それは必ずしなければならないということではないかと思います。

では、鹿野委員。

○消費者委員会鹿野委員 結論から申しますと、資料1に提示してくださった考え方、あるいはまた、それに修正を若干加えつつ補強してくださった、大澤委員から御説明いただいた考え方を支持するものであります。賛成です。この間、欠席続きだったので、もしかしたら重複するところが多いかもしれませんけれども、支持する理由を私なりに一言申し上げたいと思います。

まず、前提として、座長が民法の規定を確認されて、ここはそれを変えるという場ではないとおっしゃったのは、そのとおりだと思うのですけれども、民法のこの規定が設けられた趣旨の理解は確認が必要かと思います。民法の規定を設けるときには、約款の契約への組入要件としては、基本的に2つが必要だと考えられたのだと思います。

第1は、約款による旨の合意があることです。ただ、合意ということには、黙示的な合意も含まれるところ、その黙示の合意の認定をめぐっては不明確なところが残り得るので、第1号の合意の他に、先ほども言及された第2号の「表示」が付け加えられました。ですが、これは大澤委員のペーパーにも恐らく出てきたと思いますけれども、ここに「表示」というのは少なくとも客観的に黙示の合意があったと見られるような状況のある場合であることが必要だと考えられていました。そういうことで、この548条の2、第1項の1号、2号という規定が定められたのだと思います。

それから、もう一点は、約款による旨の合意等の前提として、約款の内容についての認識可能性が確保されなければならないということであり、そのことは、契約である以上当然として議論されてきたのではないかと思います。ただ、具体的にこの認識可能性の確保という要件をどのような形で規定するのかということについては、散々議論があって、一方では、開示が組入要件として必要だという書き方をする、あるいは少なくともそれが原則だとする考え方も随分検討されたのですけれども、残念ながらそのような書き方にはならなかった。

ただし、それは開示が要らないということではない。民法が、消費者契約だけではなく、事業者間契約まで含めて、広く一般的に適用されるルールを定める法律であるということ、また業態も様々であるということなどを考慮して、いかなる取引でもこれがなければ約款の組入れはそもそも認められないという意味での最低限の一般的なルールとして、請求があった場合において拒絶すれば組入れが否定されるということを規定したものに過ぎないのだと思います。

そして、この548条の3の請求による開示という規定は、逆に事前の請求があった場合にのみ開示すればよいということをメッセージとして言うものではないと、私自身は理解しておりまして、請求の有無に関わらず、それぞれの取引の性質に応じ可能な限り、相手方にとって約款の内容について認識可能な状態を確保すべきことは、当然要請されるということだったのだと思います。そして、そのことは548条の2の第2項においても、いわば裏から担保されることになっているのではないかと思います。

このように、民法でも、開示の請求がなければ開示しなくていいという話ではなかったのだと私は理解しており、一律には最低限のルールしか設けなかったのは、様々な取引が民法の適用対象になるからということによるのであり、取引の事情等に応じてより積極的な対応が要請され得ると考えるわけですが、こと消費者契約においては、既にここでも指摘されておりますように、消費者と事業者との間の構造的な格差というものもありますし、開示を請求するということには、消費者にとって事実上の大きな困難というものがあるわけです。そこで、約款内容についての消費者の認識可能性をより具体的に確保すべき努力規定というものを、消費者契約法の中により明確な形で置くということが望ましいのではないかと私も考えているところです。

これは、恐らく民法を修正するというより、民法のいわば延長線上の考え方をここに明確にしようということなのではないかと私自身は認識しておりまして、その提案に賛成でございます。更に言うと、消費者契約にも、様々な業態のものがありますので、一律にこれをしなければいけないという書き方をすることには困難があると思います。そこで、少し抽象的な書きぶりになるのかもしれませんけれども、先ほど消費者庁から御説明あったところであれば、契約締結に先立って、その「条項を容易に知ることができる状態に置く」とされておりますし、あるいは大澤委員からは、恐らく後で御説明があるのではないかと思いますけれども、少し文言を変えて「あらかじめ認識できるよう」とされているところです。

文言は、後で更に検討されるとしても、基本的な考え方としては、このような形で検討を進めるべきだと思います。そしてその際、多少の抽象度を持って、様々な取引の態様などに即してその中身が確定できるような形での定め方をするのが妥当なのではないでしょうか。

また、どちらの提案も、一種の努力規定を置くということでして、先ほどの御説明にもありましたように、何かをしなかったから、直ちに約款の組入れが否定されるということまでは、ここでは提案されていません。それぞれの事案における契約の性質とか態様とか、そういうものに照らして法的な効果が生ずるとされる場合もあるかもしれませんし、そうではない場合もあるかもしれませんけれども、その柔軟性も含めて、少し抽象度の高い規定ではありますけれども、このような形で規定を置くことが適切だと考えているところです。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に。

丸山委員。

○丸山委員 私も鹿野委員と似たような見解を持っておりましたので、少々お話しさせていただきたいと思います。

私も今回の提案というのは、新民法に比べて、特に事業者に追加的な義務を課すものではないという認識を持っております。例えば、容易に開示ができるのに隠す態度というのは、恐らく新民法の548条の2の第2項の実質的な不当条項規定と言われているところで、考慮され得るものだと考えております。ただ、新民法の548条の3という条文があることによりまして、できるのに、あるいは普通の事業者だったら当然してきたような開示すらされないという方向に行ってしまうのではないかという懸念がありました。そういった懸念を踏まえますと、新民法の548条の2の第2項の解釈にも反映されるであろう努力義務を明示することが必要ではないかと。

そして、できる開示すらしない、約款を隠してしまうという対応は、定型約款を超えて消費者契約の契約条項全般に波及効果として及んでしまう懸念があります。そのように考えると、消費者契約法で一定の手当てをする必要性が高いという認識を持っておりました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御意見があれば。

後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 基本的に今、お二人の、鹿野委員と丸山委員がおっしゃったことに同感でありまして、この消費者庁から出していただいた資料1、ないしは先ほど大澤委員に紹介していただきました資料2は資料1を補うものということですが、方向性としては共通でありますので、その方向に賛成ということで意見を述べたいと思います。

私は、鹿野委員や丸山委員がおっしゃったことに付け加える形で、この約款の事前開示の問題を消費者契約法3条に位置付けることの意味について、少しお話しをしたいと思うわけです。

消費者契約法というのは取消しとか無効という権利を消費者に与えました。そのことは画期的なことでありまして、非常に良かったのですけれども、反面、問題だなと私は感じているところがありまして、取消しとか無効という効果に結び付けるという観点から事業者の行為について判断していくということから、取消しとか無効に結び付かない行為については、その問題性が少し背後に隠れるということが4条等の議論の中ではありがちだという感じがいたします。消費者契約法は、取消しとか無効という民事効が生じるという重要な面以外に、事業者にとっての、消費者もそうですけれども、行為規範をそこで定めているということがより強調される必要があるのではないかと思います。

消費者契約法は、裁判規範として問題になるという場合はもちろんたくさんありますけれども、より一般的に、消費者相談の場面などで裁判外で適用されることが非常に多いわけでありまして、裁判規範ということよりも、むしろ行為規範としての消費者契約法の側面ということをより重視することが必要なのではないかと思います。

そのことを考えたときに、3条の規定は努力義務なので、重要ではないという評価も出がちなところでありますけれども、むしろ努力義務として、そこに事業者、それから消費者に対しても行為規範を定立するという形で、消費者契約法から市場に対して一定のメッセージを与えるということが重要になってきていると思います。この専門調査会の議論の中でも、3条の重要性ということが重視されてきておりまして、私も当初は、3条はそんなに活用できるのかという印象を持っていたのですけれども、いろいろ議論が積み重なってくるに従って、3条の重要性ということが今回の専門調査会での議論の積み重ねの中の一つの成果なのではないかと思うに至りました。

そういうことで、例えば、前回も3条についての議論があったわけでありますけれども、前回扱ったうちの、消費者の特性に応じて、年齢とか知識とか経験について配慮するという問題よりも、この約款の開示の問題は、具体的な消費者の属性を問題とするわけではなくて、消費者一般に関する問題でありますから、より3条の問題として扱いやすいと思います。そういうふうに考えますと、3条に約款の開示の問題を位置付けるというのは、現在の消費者契約法に対して取るべき態度として、説得性もあるし、正当化も十分できるものだと思います。そういう意味で、今回の資料1ないし資料2の御提案に賛成いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、沖野委員。

○沖野委員 ありがとうございます。重なるところも多いと思いますけれども、申し上げたいと思います。

まず、民法との関係ですけれども、冒頭、座長が説明してくださいましたように、今回の資料1も、また資料2で資料1を補足するような意味で出していただいているものも、定型約款の規定が設けられたことを契機としているわけですけれども、それが契約内容となるかどうかの要件をここで改めて決めようということではないわけです。

請求に応じて示さなければならないという548条の3ですが、民法が548条の3で請求があったときには示さなければならないとしているのは、それで足りるということを含意しているかというと、契約内容となるためには、座長は切り離されているとおっしゃいましたが、ある意味緩やかにそれとリンクしているところがあって、548条の3の2項では、事前に請求があって拒んだときは548条の2が発動しないので、契約内容とならないということですから、契約内容となるかどうかというところとリンクする形でも出てきている面があります。

その意味で民法に置かれているわけですけれども、それを超えて、およそ一般的な行為規範として、請求がない限りは何もしなくていいのだということまでは、民法は決めていないと理解しておりますし、また、これらの規律の背景にありましたものは、資料1にも書かれているように、自分が締結しようとする契約について内容が確認できるというのは当然の前提であるとか、あるいは民法の部会で使われた言葉ですと、知りようがないものには拘束されないのだという考え方が基本にあります。そのことは、正に中村委員が考え方としては分かると言ってくださったところで、そういう基本的な考え方はこの場で共通しているのだと思います。

その上でですけれども、内容となるかどうかということではなくて、契約締結過程において消費者契約の内容となるような条項について、誰がどういうイニシアチブを起こして消費者が知るようにするのかというときに、548条の3だと請求してということになっていますけれども、それが消費者から請求をして更に事業者からのアクションを経てでないと知ることはできないという状態であるべきだということを民法が言っているのかというと、そうではないと思われます。

民法のこの規律は相手方が事業者の場合も含めての話であり、しかも契約内容となるかどうかという要件に関連した形で、どういう考え方を取るかという話です。確かに548条の3とか548条の2が検討されるに当たっては、消費者契約がかなりの領域となるという面はあったと思います。しかし、事業者間でも、運送とかソフトウエアのパッケージの購入ですとか、定型約款を使うものはたくさんあるわけで、そういう場合も含めて請求にかけるということです。

ですので、消費者契約の場合にはどうかといえば、これは資料1で書いてくださっておりますように、情報の点とか交渉力の点での格差の存在、あるいは個別具体的な問題で言えば、請求ということを消費者に本当に期待できるのかという面があると思いますし、さらには請求がなければ、それは出す必要は全然ないのだという姿が、消費者契約においてそれぞれの行為規範の話としてあるべき姿なのだろうかと考えると、それはそうではないのではないかと思われます。

御懸念は、その考え方は理解した上で、しかし、こういう規定が置かれたときにどういう行動を事業者に求めることになるのかというところで、過重な話が出てこないかという御懸念だと思います。

中村委員が具体的に説明してくださった中で若干気になりましたのは、こういうことがあると、逐次こういう条項があるということを説明しなければいけなくなって、場合によっては屋上屋を架すことになる。広告でもテレビ画面で明確に分かるように打ち出しているのに、改めてまた一個一個説明するという御指摘と伺いました。ただ、ここで言っているのは、個々の条項を説明するという問題ではなくて、総体としての条項があって、それを事業者の更なる行動を要せず消費者が見ようと思えば見られる状態にするということを念頭に置いています。ですから、個々の条項について、こういう条項なのですよと説明していくことがこれにより求められるというよりは、定型約款であれば、それを構成する総体の条項はこういうものだということを示すという話ですので、事業者に求められることになる態様として想定が少し違うのではなかろうかと思っております。

それから、インターネットの話は松本理事長が既に御指摘くださったところですけれども、関連して、例えば中小企業ですと、インターネットに掲げておくようなこともなかなか期待できない面もあるのではないかという御指摘があったのですけれども、これも座長が冒頭説明してくださったところであり、資料にも書かれているところかと思うのですけれども、契約の内容とするためには約款があって、しかもこの約款であるということを特定して、それを契約内容としますという表示をしなければ契約内容とはならないので、そういう表示はどこかでしなければならないわけですね。

また、消費者からそれは見られますかと言われれば、それは見せなければいけないわけですので、その作業のための用意はもちろんするでしょうし、何も知ることができない状態で、問題があったときに、実は約款はこうなっていますと後から出してくることも多かったと、かつては言われていましたけれども、現在は通常のビジネスをやっている事業者がそういう姿勢を取っているということが本当にどのぐらいあるのだろうかということもありまして、場面がよく分からないと思ったということがあります。

長くなって恐縮ですけれども、幾つか御指摘があったところで何点か申し上げたいのですけれども、1つは参議院の附帯決議について、長谷川委員から御指摘があった点です。

○長谷川委員 衆議院も参議院もです。

○沖野委員 失礼しました。衆参についてですね。定型約款については、不当条項の問題が特に取り上げられているのに、そこを取り上げずに、なぜこれを持ってきたのかという点ですが、これは大澤委員が御説明してくださった点なのですが、正に不当条項は問題で、それについては、また別途、この調査会の場でも追加の必要がないかとか、検討がされているわけですね。ここでこの附帯決議部分を持ち出したのは、もちろん不当条項の問題ではないからで、理解としましては、定型約款については不当条項以外に問題はないというのを附帯決議が意味しているのだろうかというと、そういう理解はしていないということであり、それ以外の問題も消費者契約法の観点から手当てできるものは、しかるべき手当てをするようにというのが附帯決議の内容だという理解に基づいているということであります。

では、条項がなかったらどうなのですかという話ですが、その含意として本当に条項がないのならば、例えば「消費者契約の内容とすべき条項があるときは」と入れるとか、工夫の余地は幾らでもあるのではないかと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

他に御意見があれば。

では、河野委員。

○河野委員 今まで大分議論を整理していただきました。私は消費者から見て、この件についてどう思うかということを申し上げたいと思っています。

この間、消費者にとって不当となり得る条項の検討というのが進められてきたわけですが、残念ながら、私たちから見て目覚ましい進展というのは望めない状況にあると思っています。分厚い約款の中に隠された不当な条項や不意打ち的な条項を取り出しての対応が困難だとすると、少なくとも契約の後に見せられるのではなく、契約前に公開する規定を置いてほしいと思います。約款に記されていることが、契約の内容として拘束力を持つかもしれないのであれば、努力義務だとしても消費者契約法にしっかりと明示していただきたいと思います。

民法の議論では、当然、事業者対事業者の契約も含めて対応してくださっているため、消費者保護への特段の配慮というのは恐らくできなかったのではないかとも思っておりますが、現在の事業者対消費者の取引の大多数が約款を使用して行われていることを考えますと、消費者契約法においてこそ、その契約の内容になるための要件や開示義務等への配慮が手厚くなされるべきだと考えております。本来、消費者は事業者からの説明に加え、約款等を読んで契約の内容を理解した上で契約するという手順を踏むべきだと思います。ただ、現実には、そうした手順を踏んだような気にさせられて契約を結んでしまうことが多く、結果として、約款を認識していなくても、理解していなくても合意したとみなされてしまいます。

資料にも書いてございますが、百歩譲って約款の中身を逐一見ようとはしない場合があるとしても、今回の御提案にあるように、契約の締結前に消費者契約の条項を容易に知ることができる状態にすることは、B to Cの契約において必要不可欠の環境整備だと思っています。努力義務とされることはやや不本意ですけれども、それでも消費者契約法に明示していただきたいと思います。

規定の置き方ですけれども、私自身は、大澤先生を初め、4名の皆様の意見書、資料2のように、第3条の3項として独立して置くことがもしできるのであれば、そういう形で置いていただければと思っております。多くの文言に埋没しないように項目を立てることで、消費者自身が契約前に当たり前のように約款を見ることができる環境作りに寄与することになるのではと思っております。先ほど後藤座長代理がおっしゃった第3条の意義、行為規範としてここに書くことが非常に重要であるという御意見に、私もひどく共感しました。そもそも個別の対応をする以前に、消費者として、そして事業者として、どういうことが取り得べき行動なのかというところを、ここにしっかりと書いていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

永江委員。

○永江委員 消費者契約の事前開示の努力義務ということで、事前開示が必要なものとして、この場合、定型約款が意味されていると理解されていますが、改正された民法の定型約款の条項と、先ほども言及がありましたように、守備範囲がかなり重なっているところがあるのではないかと認識しております。日本広告業協会の会員社は広告会社であり、B to Bビジネスが基本となっておりますので、当社と消費者との間の消費者契約を締結することはほとんどなく、約款の実務というのは正直言って余り詳しくないのですが、改正民法の定型約款に関する条項の内容が、今後の約款実務に対して何らかの大きな影響を及ぼすのではないかと考えております。

そうだとすると、改正民法の定型約款の条項の実務への影響について見えていない現段階で、守備範囲が相当重なると思われる消費者契約法の条項を検討するよりも、改正民法施行後の状況を完全に把握してから、「改正民法によって生じた約款実務の影響」と、「改正民法では消費者保護の観点から不十分であると判断される場合における不十分な点」の2方向から、総合的に消費者契約法における改正を抜本的に検討されるほうが望ましいのではないかと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 中村委員。

○中村委員 ありがとうございます。

先ほど、後藤巻則座長代理を初めとして、複数の委員の方から、今回の御提案は新民法の規定を変えるものではない、付け加えるものではないという御意見がありまして、そういうものであるならば特段反対するものではないのですけれども、最初の消費者庁からの御説明の中で、「容易に知ることができる状態に置く」というのは、開示すればいいということではない。その後で積極的に何か言わなければいけないということではないという御説明もあったのですけれども、その辺りが現実に行動しなければならない事業者としては、非常に分かりにくいところであります。

例えば、鉄道の話で申し上げると、JR東日本のウェブのホームページを見れば誰でも約款が分かるように書いてあるという状況であれば、切符を買うときに約款はここにありますと、どこかに張っていなければいけないのかどうか。そういうことを考えなければいけないのだとすると、事業者としては、全ての駅にそういう準備をするということだと大変だとか、そういう実務にはねてくる部分を心配しているということでございますので、一般的な消費者が、例えばウェブで確認したいと思えば見ることができる状態に置くというのは、容易に知ることができる状態になって、それによって組み入れてということも可能になるという考え方をここで言っているのかどうかということを、もう一回消費者庁さんに御説明いただいてもよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁からお願いします。

○加納消費者制度課長 最後のところは、そんなに違いはないかと思いますけれども、まず、中村委員が冒頭で、中村委員以外の何人かの委員が、今回の消費者庁の提案は、改正民法で規律されているものと変わらないかどうかという点は、それはむしろ変わります。何が変わるかというと、改正民法は請求があって開示するという手続ですけれども、今回は、請求がなくても、このような形で容易に知り得る状態に置くということを、努力義務としてですけれども、事業者に求めることになりますから、その点では変わるものであります。

ただ、その御意見とは別に、別の委員の方がいろいろおっしゃっていた御意見などをお聞きしながら思いましたのは、民法の規定でも、548条の2に書いてある、事業者が定型約款の使用者であれば、手続は取らなければいけないということは、まず前提だと。それは、冒頭に座長がおっしゃったとおりでありまして、すなわち、この表示というのはしないといけないということであると思います。

ですから、例えばテレビショッピングとかはどうですかというお話が中村委員からありましたけれども、テレビを見て、何か器具を売っている。消費者が買おうとする場合に、申し込んで買う。契約が成立して商品が届くのですけれども、その場合の解約条件はこうなっていますとか、故障して不具合がある場合に返品するとか、しないとか、何日以内という条件があった。それは、解約の条件を定めるということであれば、特約事項になると思います。ですので、松本先生がおっしゃった民法の原則を超える部分となっていますから、それは何らかの特約を設けておかないと、それに沿った解除、あるいは事業者としての対応はここまでですよという制限を設けたのであれば、それを設けておかないとできないとなってしまう。

それは、契約条項であり、あるいは約款ということもあると思いますけれども、定めなければいけないのですが、それはテレビショッピングをした消費者と事業者との間で何らかの特約がどこかにあって、それが契約に入っていないと、それに基づく取扱いは多分できないことになるわけであります。そうすると、548条の2が適用された後は、表示がないと、残念ながら事業者として、それは言えない。ということは、民法の中でもそうなってしまうということだと思います。

そこで、例えば鹿野先生とかは、民法の規定があって、そういうことはしないといけないのですが、その延長線上でこういうものを位置付けたらどうですかと。そういう捉え方もあるのかと、お聞きしながら思いましたけれども、例えばそういうふうに表示すると。

ただ、民法の表示というのは、548条にありますように、定型約款を契約の内容とする旨の表示で足りるわけであります。今回の消費者契約法の手当てというのは、消費者契約の条項でこういうものがありますよと、中身を明らかにしてくださいということになりますから、そこは民法を超えるところが出てまいります。出てまいりますけれども、テレビショッピングをするのなら定型約款を使うということは表示をしないと駄目ですから、その機会があるわけですので、その機会があるのだったらもうちょっと広げたらどうですかと位置付けると、民法の延長線と位置付けるという見方もあるのかと思いました。

また、鉄道のほうですけれども、確かに長谷川委員がおっしゃったように、民法自体が鉄道事業という事業の特性に鑑みて、こういう特則を既に設けたということでありまして、これは消費者契約法の手当てにおいても、そこは考慮されるのだと思います。すなわち、民法のほうで表示じゃなくて公表でもいいのだと広げているわけでありますから、それを前提に、事業者として、この契約条項の中身について、では何をするか。

公表するという形で、民法で求められているものに、さらに延長線上として何らかが加わるということがあると思いますけれども、そうではなく、例えば自動販売機にぺたぺたと契約条項を張りつけないといけないのかというと、それはもともと民法がそんなことはしなくていいですとしているわけですので、そこまでやるという話ではないということではないかと思います。

○山本(敬)座長 それでは、長谷川委員。

○長谷川委員 十分に説明できるかどうか不安ですけれども、結論から申し上げますと、こういう規定を今の段階で設けることは相当な違和感がありまして、反対でございます。

理由の1つ目は、まず民法で開示請求権があるわけです。先ほど河野委員が、言えばいただけるような環境ということをおっしゃられていましたけれども、正にそういう環境が民法で整っている。

そういう中で、消費者が約款の開示を請求することはなかなか困難だという御意見も、何人かの先生方がおっしゃられてました。しかし、例えば、先生方で出されている資料2の2ページの真ん中ぐらいで、「しかし」以降、「商人間取引の場合に比べて、消費者契約上の約款において、個々の消費者が約款の開示を請求することはほとんど期待できない」とございます。期待できない理由として、前回の議論のときに何人かの委員がおっしゃったことが資料1に書いてあるわけですが、消費者が約款の開示を請求しないのは遠慮があったりということでは多分なくて、黙示の合意があるからという方が大多数なのではないかという気がいたしております。請求はできないけれども、ホームページのどこかに載っているものに家に帰ってアクセスする人たちがどれぐらいいるのか。私の考えでは、そのような人がたくさんいて、その人のためになるのですというようには思えません。

また、情報提供の努力義務を課すことで、今回の新民法の規定によって、約款の内容がそのまま契約の内容になるということではないことを明らかにする点に、今回の規定が意義があるとおっしゃっている委員がおられたのですけれども、基本的には、今でも消費者契約法第3条第1項後段があるわけなので、その機能で十分ではないかと思うわけであります。さらに誤解が生じるようであれば、広報すればいいということではないかと思います。

それから、誤ったメッセージという話があるのですけれども、消費者庁の資料1の2ページの(2)の真ん中辺りからありますように、新民法は、事業者と消費者、双方にとってだと思いますけれども、事前に約款を開示しなければならないとすることで煩雑になることの回避と、他方で鹿野先生の言葉でいうところの認識可能性とでどういうふうにバランスを取るかということを考えて、このような規定にしているということだと理解しております。この双方をどういうふうに考えるかということに尽きるのだと思っていまして、これぐらいのバランスでよろしいのではないかと私は思っております。

内容については以上でございまして、次に、手続に関してでございますけれども、これは国会との関係と、この専門調査会の議論との関係で2つございます。

専門調査会の議論から申し上げますと、他の論点につきましては、一定の提案がなされた後、事業者ヒアリングというものがなされております。今回、時間との関係で言えば、恐らく事業者ヒアリングはできないでしょうから、そういう中で新たな規定を設けるというのはいかがなものかと思います。とりわけ、これも何人かの方から指摘がありましたけれども、様々な取引への影響が想定される中で、新たな規定を設けるのはいかがなものかと思います。

また、国会との関係について、大澤委員、沖野委員から御指摘があったわけでございますけれども、国会の附帯決議で施行後の状況を考えるとされているのは、もちろん不当条項、不意打ち条項といった側面もあるのですけれども、煩雑さを回避するために定型約款の開示を省略したというのも今回の民法の立法の価値でございまして、それがどういうふうに影響していくのかというのも踏まえて考えるということなのではないかと思っております。

また、大澤委員から御説明があった資料2の2ページで、悪質な事業者が云々ということで書いてあるところは、結局、附帯決議が名指ししている不当条項とか不意打ち条項というのを念頭に置いたことではないかと思っております。それとは別にということで、契約締結過程の問題といえばそうかもしれないですけれども、最終的には不当条項とか不意打ち条項といったところに帰結していくのではないかと思っております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

増田委員。

○増田委員 対面取引など単純な取引であれば、民法の規定に従うということは当然のことですが、複雑な取引が増えていることや、特約が付いているような取引については、事前に分かりやすく表示しておくというのは、当たり前のことだと思います。今、長谷川委員のほうでおっしゃられていましたけれども、なぜこれに違和感を感じるのかというのが全く理解できません。長谷川委員は1人の消費者として考え方ときにも違和感を感じるのかどうかというのが、私は疑問に思っております。すみません、家庭人としても考えていただいたらどうかと思っております。

普通のオンライン取引においては、特定商取引法上の規定がありますので、それを守っていれば、こういう問題というものは既にクリアされていることですし、さらにそれに追加してほしいということではありません。そして、様々な取引がある中で、消費生活相談の中においては、後出しのようにこういう規定がありますということを言われたときに、トラブル解決に非常に時間がかかります。善良な事業者の方たちであれば既にやっていらっしゃることです。

また、これを機会に、そういうことをしておけばトラブルを未然に防止することができるのであるということを周知する機会でもあります。そして、消費者のほうには、約款を見ましょうというメッセージにもなると考えますので、これは当然に入れていただくべきことだろうと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、鹿野委員。

○消費者委員会鹿野委員 ありがとうございます。

さきほど加納課長が、私の発言について言及されたのですけれども、一部誤解があったのではないかと思いますので、その点だけ訂正させていただきたいと思います。私の発言の中では、548条の2の第1項についても触れたのですけれども、その後のほうで、民法は、開示請求がなかった場合には、およそ約款を開示あるいは認識可能な状態に置くことをしなくていいというメッセージを発しているものではないのだということを言いまして、そのことは548条の2の第2項も裏から支えているのではないかと申し上げました。

そのことについては、その後に丸山委員がより具体的に明確にしてくださったところです。先ほどの例をとると、解約のときの清算とか、そういうことについて、任意規定より消費者に不利な特約を約款に置いている場合についてです。約款の中には、任意規定を確認するような意味合いのものもあるかもしれませんけれども、そうではなくて、消費者等に不利な内容のものもあります。この場合に、請求がなかったら、約款をどこかに隠しておいて、後出しをしてここに書いてありますと主張することが通るのかというと、そうではない。548条の2の第2項は、その考慮要素の一つとして、その定型取引の「態様」ということも考慮されるとしており、みなし合意が排除される可能性を、この2項は規定しているわけです。

ですから、この規定は、請求がなかったら何も開示しなくてもいいのだという話ではなくて、むしろできるだけ開示しましょうと。そうしないと、特に消費者に不利益を課すような条項については、契約の内容にならないということがあり得るのですよということを規定しているのではないか。その意味で、民法自体が、先ほど言いましたように、開示の請求がなければ一切見せなくてもいい、認識可能性を確保しなくてもいいということを言っているわけではないのだということを申し上げたのです。そしてその点で、今回の提案も民法のいわば延長線上にあるということを申し上げた次第です。一部誤解があったように感じましたので、一言申し上げました。

○山本(敬)座長 時間も迫っている状況ですので、少し問題点を整理させていただいてよろしいでしょうか。恐らく意見の一致を見ていないポイントが2点あります。

1点は、民法の548条の3、つまり定型約款の内容の表示に関する規定の1項で、相手方から請求があった場合には、定型約款準備者は定型約款の内容を示さなければならないとされています。消費者契約に関しては、これでは不十分であると見るか、それとも、これで問題がないとまでは言わないかもしれないけれども、直ちにこの点を修正する必要はなく、今後の推移を見守って、必要ならば対応を図るべきであると考えるかどうかという点について、意見の一致を見ていないように思います。この点について、更に御議論いただきたいと思います。

もう1点は、今回の提案はあくまでも努力義務として提案されていますので、これは間違えないようにしないといけない点なのですが、これまでのように要件・効果がはっきりした形でルールとして提案する場合については、一体何が効果なのか。それを導く要件は何なのかということを、かなり厳密に議論してきました。努力義務は、そのようなタイプのものではなくて、あくまで一応の指針として法律の中で示すものですので、これまでとは議論の仕方が少し変わるだろうと思います。しかし、それにしても、指針として一体何が要請されているかということが、メッセージとして正確に受け止められるようなものでありませんと、指針としての機能も果たせません。

そこで、このような努力義務を定めることによって、どのようなことをすることが具体的に要請されているか、あるいはどのようなことは要請されていないかということを、指針として明らかにしておきませんと、規定する意味がないでしょう。この点について、果たして今の提案でそのようなメッセージが具体的に読み取れるようになっているかどうか。その一例として、このような場合はどうか、このような場合はどうかという質問が出ている状況でして、この点についてももう少し議論しないと成案は得られないように思います。

大変恐縮ですけれども、以上の2点について、双方の側から御意見をいただければと思います。

○長谷川委員 今の整理について。

○山本(敬)座長 では、長谷川委員。

○長谷川委員 大きな異論があるわけではございません。座長が整理された1点目・2点目の両方に関係するのですけれども、法第3条第1項後段の存在を加味してもなお必要かということかと思います。

もう一点、同じと言えば同じですが、私が申し上げた煩雑さを回避するのだということについて、どういうふうに評価するかという点も考えていただければと思います。

○山本(敬)座長 では、沖野委員。

○沖野委員 長谷川委員が今、強調された、先ほどの御発言でもあった点で、3条1項後半の存在も勘案すべきだということは、後半があるから十分だという御趣旨なのでしょうか。そのときに、後半では何が要求されている、あるいはどういうことをすることになるという前提でおっしゃっているのかを聴かせていただければ。

○山本(敬)座長 では、長谷川委員、お願いします。

○長谷川委員 基本的には、先ほどの座長の第1点目にお答えすることになるのですが、今の民法の規定で十分だと考えております。その上で、消費者契約については、仮に新民法で十分と思うかどうかは別にして、誤ったメッセージがあり得るということだとすれば、法第3条第1項後段でこういう努力義務がかかっているということを強調することによって、そういった誤ったメッセージが回避できるのではないかという趣旨でございます。

○山本(敬)座長 恐らく御質問は、1項の後段が、この開示に関わる問題にどう結びついて、何が十分だとお考えなのかということを御説明いただきたいということだったと思います。

○長谷川委員 分かっていないのかもしれませんが、結局、法第3条第1項後段は、一般的に契約の内容を説明すべきということになっている。それに加えて、正に消費者庁が今、提案しておられるような、消費者が請求しなくても容易に手の届くところに置いておくべしというところまで必要なのかというところに疑問があるということです。座長の御質問にお答えし切れていないかもしれませんが。

○山本(敬)座長 質問ではありませんが、沖野委員。

○沖野委員 余り時間をとってはいけないと思いますけれども、今のような御理解で、内容は説明しなければいけないのだからということだと、見ることもできないのに、内容は説明するというのがよく分からなくて、もし1項の後半で尽きているということであれば、既に1項の後半で内容となっているものをもう少し明確にしましょうという趣旨になるように思われたものですから。

○長谷川委員 まず、定型約款に限っていいのかどうかわかりませんけれども、見ることができないかどうかということを念頭に申し上げると、新民法では、請求すれば見られるということになっているので、それはそれで基本的にはいいだろうと思うわけです。さらに、法第3条第1項後段では、契約の中で重要なものといいますか、コアとなるところについて、契約の全部を説明する趣旨ではないと逐条解説に書いてあるわけですけれども、説明することが求められていると理解しております。

○沖野委員 御趣旨が分かりました。

○山本(敬)座長 それを前提に議論を。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 実務家の観点から意見を述べさせていただきたいと思います。

結論としては、「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置くよう努めなければならない」という趣旨の法文を設けることに賛成です。

冒頭に御説明をいただきましたとおり、改正民法の定型約款の規定では、約款内容の認識可能性が組入要件とされておりません。このことが、実務上、定型約款準備者において、定型約款を使うことさえ表示しておけばよく、約款内容の認識可能性を与えることは全く不要であるといった誤った実務運用を招かないかと、非常に危惧しております。

定型約款の約款内容の開示ないし認識可能性については、マル1548条の3で明文化されている「開示請求を拒んだ場合には約款内容にならない」という民事ルール以外にも、マル2信義則上の説明義務の対象となり得るという民事ルールや、マル3客観的に予測し難い約款条項を事前開示しなかった場合には不意打ち条項として548条の2第2項のみなし合意除外規定で契約内容にならないことがあるという民事ルールが働くことが、本日委員の皆様には議事録を机上配付させていただいております衆議院法務委員会における平成28年11月25日の国会質疑において政府参考人により確認されております。

しかし、改正民法の条文からは、上記マル2マル3のような民事ルールの存在は分かりにくく、誤った認識や実務運用を招かないかと危惧しております。法務省には、一問一答等で上記マル2マル3のような定型約款の条文からは読み取りにくい民事ルールの存在や、約款内容の認識可能性を与えることが全く不要なわけではないという点に関して、明記・周知をお願いしたいところです。

また、消費者契約の分野では、契約当事者の情報・交渉力格差により、もともと事業者に情報提供努力義務が規定されておりますので、約款内容の認識可能性に関する配慮や対応が必要であるという要請がより強く働くと思います。この点、事業者・消費者間の契約関係について、「消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置くよう努めなければならない」という原理原則に関する法文を明確に設けることは、必要かつ有用と考えます。

具体的な規定ぶりについては、資料1の御提案のように、3条1項の前半部分にそのような記載を入れるというのは賛成できる内容ですし、また余り条文が長くならないように、資料2の御提案のように、3条1項の前半部分の法文を分かりやすく分割するというのも一つの選択肢であると思います。

大切なのは、法文の形式よりも、事業者は約款の認識可能性を確保するよう努めなければならないという原理原則を明文化するということであり、3条1項前半部分に置くといった方法、もしくは形式的に条文を分けるという方法で、是非とも明文化をしていただきたいと思います。

この点、資料2の御提案において、契約条項の部分に「定型約款を含む」という注記を加えていただいている点は、改正論議の経緯からして望ましい条文の在り方であると思います。

また、消費者庁の逐条解説においては、この論点に関する議論の背景事情として、信義則上の説明義務の存在、不意打ち条項になり得ることなど、定型約款の条文からは読み取りにくい民事ルールの存在に関する言及と周知もお願いしたいと思います。

あくまで努力義務としての規定であり、個別的・積極的な説明・確認作業の法的義務化は想定されていない、見ようと思えば見られる状態にしておけば足りるということは、先ほどから確認されているところであると思います。事業者においても、重い負担が生じることにならないと思います。

また、改正後の運用を見てからでもよいのではないかという御意見がございました。しかし、今、議論されている改正論議は、改正民法の施行に伴って想定される誤った実務運用や弊害を発生させないようにするためのものと理解しております。現時点での改正が必要であると思います。

さらに、手続上、事業者の意見を聞いていないという御意見もございました。しかし、現に今、ここで、事業者の代表者の皆さんの御意見を聞いていると理解しておりますし、消費者庁は立法までの間にも広く事業者等の御意見を聞かれるであろうと思います。提案内容の問題点の少なさ、事業者の負担の小ささを併せ考えると、報告書に取りまとめる阻害要因になるほどの問題点ではないと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、井田委員。

○井田委員 ありがとうございます。

私は、結論としましては、資料1あるいは資料2で御提案いただいた方向に賛成いたします。もともとの御提案の趣旨というか、理由というのが5ページの第3段落の最後のほうにありますが、要は消費者契約における格差を是正するために、消費者が契約に先立って契約の条項を知ることができるようにすることが望ましいと、この価値観自体を反対する委員というのはいらっしゃらないだろうと思うのです。それを前提に、望ましいという観点から、3条1項、形式はともかくとして、先立って容易に見たいと思えば見られる状態にするべきであろうということだと思います。

ただ、消費者契約の中には定型取引も入ってくることですから、このような規定を設けることによって、民法の548条の3というものに、何か運用に具体的な弊害が生じるのかということも考えてみたのですけれども、548条の2で、定型約款の準備者というのが、あらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手に表示するときというのは、通常考えれば、当然、その定型約款を準備しているという状態でなければおかしい。それを事前に見えるように、消費者が容易に知るようにすることができる状態に置くということに、さほどの困難というのはないのではなかろうかと、私個人は考えております。

民法改正の実際の運用を見てからという御意見もいただきましたけれども、その点は山本健司委員の御意見と同じでして、改正による誤ったメッセージの波及を防止するという側面も御提案の中にはあると思いますので、この段階で資料1あるいは資料2のような提案をなされることには賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員、続いて、有山委員。

○大澤委員 私自身の個人的な意見も申し上げたいと思います。

私自身は、ここまで紛糾するとは、正直言って思っておりませんでした。と言いますのは、今回の資料1ないし資料2で出されている提案の趣旨というのは、既に消費者契約法3条1項の後半部分からも当然要請されていることであると理解していました。ただ、今回の議論を伺って、今回のような規定は特別設けなければいけないというのを、むしろ強く思った次第です。と言いますのは、消費者契約法3条1項後半部分では、消費者契約の内容についての必要な情報を提供することを定めています。ここでは消費者契約の内容と書いていまして、普通に考えますと、それは契約の価格・目的物だけではなく、いわゆる特約部分、契約条項の部分を当然含むと考えています。恐らくその理解は間違っていないと思っています。

ただ、本日の議論で、例えば定型約款の範囲ですとか、契約条件がない場合はどうなのかという意見を伺っていまして、そこで言っている契約条件とか契約条項というのが、このフロアの中でどれぐらい一致しているのかなという、疑問というか、不安を感じました。

また、もう一つ、これは個人的な意見ですが、その改正民法の定型約款の範囲というのも、本日の資料2のペーパーにも一部書かせていただいておりますが、かなり定型的なものを想定していると読める一方で、実際どこまでが範囲になるのかは、今後の解釈・運用を見ないと分からないところがあります。また、もう既に何名かの委員からも出ておりますように、548条の3の誤ったメッセージ効果というものを非常に不安に思っています。

そういったことを考えますと、既に3条1項後半部分で、契約条項も当然含めた契約内容をちゃんと説明して情報提供するようということが書かれていますが、今回の548条の3とか、あるいはここでの契約条項とか約款の定義というか、意義自体が必ずしも一致していないのではないかということを考えましたときに、今回のような特別ルールを設けることは必要であると思っております。ただ、特別ルールを設けると言いましても、これは別に何か新しい負担を課すものではないと私自身は考えています。その理由は、3条1項後半とつながっているというところにあります。

次に、文言の点でございますが、これは最初に申し上げて、今まで全然発言しておりませんでしたけれども、今回、資料2では、「予め認識できるよう努めなければならない」という文言になっていますが、私個人としては、こちらの文言でよろしいのではないかと思っています。と言いますのは、先ほどから議論を伺っていますと、資料1の「容易に知ることができる状態に置く」という文言が、やや何か特別な手当てをしなければいけないのではないかという危惧を抱かせているのではないかと思います。

普通に考えますと、これは例えばホームページ上であれば、リンクが張ってあって、そこをクリックすれば消費者が中身を見られるようになっている。それで足りると思いますし、その点で多くの委員がおっしゃっていたことはそのとおりだと私は考えています。ただ、この「容易に知ることができるような状態に置く」ということで、かえって何かすごく特別な措置をしなければいけないのではないかというニュアンスに聞こえているのではないかという不安を持ちましたので、それよりは端的に「契約条項を予め認識できるように」で私はよろしいのではないかと思いますし、その文言だとしても、本日の多数の委員の先生方から出ていた御意見と、そんなに変わるものではないと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

最後におっしゃった点は、「容易に知ることができる状態に置く」というのは、私が理解したところによりますと、民法548条の3の1項と違うことを表そうとしている。つまり、消費者から請求があって初めてというのではなく、請求がなくても知ることができる状態にするということを述べたかった。その点さえ確保できれば、別に「容易に」という言葉である必要はない。その意味で、「知ることができる」ないしは「認識することができる」で、その趣旨が伝わるのであれば問題ないのかもしれませんが、果たしてそれで本当に伝わるかどうかは次の問題だろうと思います。

大澤委員。

○大澤委員 この文言の件ですが、今、私からは、かえって何か特別な負担を課すように聞こえるのではないかということを申し上げましたが、もう一つ、この文言を、資料1を最初に拝見しましたときに見た印象ですけれども、趣旨としては、今、座長がおっしゃっていたような、資料の5ページに書いているように、要は開示請求することなく知ることができるようにということだということは、資料を見て理解していたのですが、この「容易に知ることができる状態に置く」というのは、例えば請求さえしてくれれば、いつでも見せてあげますよということで、もうこれで足りるというふうに、かえって理解されないかと思いました。

本当は請求がされることなくと、ここまでやるとちょっと書き過ぎかなという気もしまして、私自身もこの文言でいいかどうかというのは、最初に見たときはかなり悩んだところですが、先ほどの意見を伺っていますと、特別なことを何か要求されるのですかという質問もありましたので、端的に「あらかじめ認識できる」とか、他の文言の余地はもちろんあり得ると思いますので、資料2の文言に強くこだわっているわけではないですが、今、座長がおっしゃっていたような趣旨と、あとは別に特別なことを要求しているわけではないという、その2点を是非文言に生かしていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、有山委員。

○有山委員 私も資料2の文言のほうに賛成いたします。

相談を受けておりまして、定款とか約款に書かれていますと言って内容を説明しないということは多々あります。そして、相談者の方から、私の要求は真っ当な要求でしょうかというお問合わせと言ったらいいのでしょうか、相談内容が、どうなのでしょうかという御相談もあります。苦情の内容の中にもたくさんあります。ですから、事前に契約条項を知らないということは、本来、あるべき姿ではないです。先ほどから通信販売等でありますが返品条件は書いてあるけれども、段ボールから出さなくても、電気を通電しなくても、段ボールを開けた途端に返品できないという特殊な状況を想定しているようなものもございますし。

契約成立は申し込んだ途端に、もう解約・取消しができない。商品も送られてこない状態で、返品条項はあるのですが、それと同時に取消しができないという書きぶりがあったり、そういう特殊なものについては事前に消費者に周知すべきものだと思います。そういうことに使われないためにも認識できるような状態にしてほしいと思っています。

以前は、家電製品の取扱説明書というのは、購入しなければ渡されない。どういう家電製品で、どういう使い方ができるかということが、事前にお店で取扱説明書が出ていて、それを見て商品購入できるという状況にはないのですが、現在、家電製品の多くのメーカーでは、取扱説明書、カタログ等はインターネットで検索できるようになっております。そういうものは今回の定款とか約款とは違いますけれども、事前に商品について、購入するものについて、内容を知っておくことが重要なのだというメッセージも必要だと思いますので、この案は努力義務でありますので、是非賛成いただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 議論の整理として、改正前の民法、改正された民法、それからここで提案されている新たな消費者契約法のルールが、同じなのか、違うのかということについて、裁判規範としてはどうなのか。それから、後藤座長代理がおっしゃった行為規範としてはどうなのかという、その3掛ける2で考える必要があるのではないかという印象を持っております。

加納課長は、消費者契約法の改正案によって変わるのですとおっしゃったけれども、どこが変わるのかというと、行為規範のところが変わるか、変わらないかのレベルだと思います。裁判になれば、最終的に裁判官がどういう判断をすべきかという点が裁判規範で、経産省の準則というのは、改正前の民法の解釈として裁判規範はこうですよということであって、改正された民法によって、あの準則は書き換えなければならないのかどうか、これが裁判規範の話です。

私はそうだと思わないのです。というのは、改正民法で要求があれば見せなさい。要求があっても見せない場合は、前条が適用されないわけだから、結局、当該定型約款は契約内容に入らないということを言っているわけだけれども、それは改正前の民法と違うことを言っているのかというと、契約内容に組み入れられない明確な場合を1つ、はっきりと書いたにすぎないわけです。それ以外の様々なファクターを考慮して、ネット取引の場合であれば、こういうふうにしておかないと駄目だと準則に書いてある部分は、恐らく改正前の民法の解釈から裁判規範としては生き残っているだろう。それに加えて、要求があっても見せない場合というのは、明らかに駄目ですよということを裁判規範として明言したわけです。

消費者契約法のルールは、裁判規範としては直接何も言っていないわけで、将来、信義則等を経由して裁判規範的に運用していくという判例が作られるかもしれないけれども、とりあえずはそうではないわけです。では、改正前民法には何か行為規範がありましたかというと、何の行為規範もなかったのですね。改正後の民法においての行為規範が548条の3の第1項だろうと思います。

これは、見せろと言われた場合は必ず見せなさいという行為規範が入ったわけで、それに2項の裁判規範がセットになって、契約内容として取り込まれないということにつながっていくわけですが、その548条の3の第1項が、見せろと言われない限り、見せなくてもいい、見せる必要はないとまで行為規範として言っているのか、そこまでの反対解釈をすべきなのかについては、そうではないと私は読みます。見せなければならない場合を1つ明確に定めた行為規範という点ははっきり出ていますが、それ以外の事柄についてまで、明確な行為規範として何か言っているわけではない。

もしそういうことだとすると、消費者契約法が行為規範として、なるべく見ようと思えば見られる状況にしておきましょうと言うことと、改正民法の行為規範とは別に矛盾するものではないということになるだろうと思います。したがって、今回の消費者契約法の改正案として提案されている内容が、改正民法を書き換えるものだとは、およそ読めないと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

私の不手際で、既に終了時間にほぼなろうかという時刻ですが、一言述べさせていただいて、それからお願いできればと思います。

先ほど、残されている問題点は2点あるのではないかということを指摘させていただきました。

1点目は、民法の548条の3の1項の規定があるけれども、消費者契約についてはそのままではいけないと考える理由があるかどうかということでした。その理由として問題になるのは、最初の消費者庁の説明にも既にあったことですけれども、民法の548条の3の1項、つまり相手方のほうから請求が必要であることは、消費者契約法3条が特に示している考え方と整合性を欠いているのではないか。消費者の側から請求しなければならないという考え方は、消費者契約法3条の1項に書かれていることと整合していないのではないかということです。

その理由は、消費者と事業者の間の情報及び交渉力の構造的な格差に求められます。情報の格差は、特にこれ以上言う必要はないかもしれませんけれども、請求を消費者の側がしなければならないということが、特に交渉力の格差があることと相容れない。つまり、時間と費用、労力をその取引に十分にかけることができない消費者に、そのような特別なアクションを要求することは難しいのではないか。これが、資料にも上がっていた理由ではないかと思います。このような理由で十分なのかどうか、あるいは、民法の考え方でも問題ないのではないか、さらに、問題があるかどうかは、改正された民法が施行された後の状況を見て考えればよいのではないかという指摘があって、これがなお並行線をたどっているという状況ではないかと思います。

2点目に挙げたのは、努力義務として事業者に対して一定の指針を与えるとしても、この指針で十分にその内容が伝わるのかどうかということでした。この点に関しては、今日の前半で、具体的な問題について、一応のやりとりがあり、とりわけ鉄道のケースについては明らかになったと思いますし、ネット取引に関しても明らかになったのではないかと思います。それ以外の、とりわけ店舗等での取引に関しては、消費者庁からの説明では、一応の「ひも付け」がされていれば足りるということでした。その態様は取引に応じて変わってくるかもしれませんけれども、少なくとも何も示さないでよいというわけではない。その「ひも付け」が行われていれば、ここでいう「容易に知ることができる状態に置く」という要請は満たしているのではないかという説明がありましたが、それで本当に具体的に分かるかどうかが、なお残っている問題かもしれません。

以上のような形で、現在、この提案に賛成する意見も多数あるところですけれども、慎重に考えるべきだという御意見も多数あるところかと思います。その意味では、なお検討を要する状況にあるというところですが、その上で、河上委員長、お願いいたします。

○消費者委員会河上委員長 今日は黙っていようと思ったのですけれども、一言だけ申します。民法の中で548条の2で書かれている表示という概念と、約款の開示というのは違う事柄だということが、ちょっと混乱して議論されていたように思います。表示というのは、うちの準備した約款によるということを相手に告げること。これが、表示になっています。

ただ、その前提として、自分が準備している約款を開示しておく必要があるかということについては書いていないのです。書いていないので、私はこれは立法上の欠陥かなと思って随分論文などで批判しました。しましたけれども、参議院での政府の担当者の見解によれば、これはそうではなくて、これまでと同じように、あらかじめちゃんと知らせて、黙示の合意が取り付けられるような状況が前提でのことですということを何度も繰り返しておっしゃった。ですから、その意味では、これは開示しておかないといけないのだと私も読み取りました。

それから、最後のほうで、情報提供義務との関係で、約款内容はちゃんと伝えなければいけないのですということまで政府の方がおっしゃったので、それはこの2号の表示というのは、そういう事前開示や情報提供を前提とした上で表示しなさいということを書いているのだということが分かったので、ちょっと安心したのです。

ただ、私のように背腹が読めない人間からすると、それをそういうふうに解さない人がどうしても出てくる可能性があるかということが心配で、先ほど山本健司委員がおっしゃっていましたけれども、間違って解釈してしまう人が出てくる可能性が非常に高いわけです。せっかく成立したのですから、民法の立法者たちが送っているメッセージを正しく消費者契約法の中で、これを示すということは、これは必要なことだ。正に出来上がったときに、それが施行されるまでの間にきちんと示すというのは、これは消費者契約法としては大事なメッセージではないかと思いました。

しかも、立法の過程、私、この数週間で全部読みました。それで分かったのは、約款をどういうふうに表示したらいいのかが分からない。だから、いろいろな形態があるので、そういう約款の開示の仕方について、具体的に分からない限り、なかなか事前開示と組入れの接合を規定化することはできないということで暗礁に乗り上げたらしいということも分かりました。しかし、消費者契約法の場合は、そのような事業者の御心配が分かっていて「努力義務」にしたということでして、そういうことをしないと、何か法的にサンクションが起きるということにはなっていないわけです。ですから、そういうことを考えれば、事前に消費者が要求しなくても、その条項がきちんと認識できるようにしておくというところまでしておけば、それでよいという努力義務にとどめられています。

この間、問題になったのが、「お試し期間」ということで契約の広告を打っておきながら、そのずっと下のほうに、小さい字で、これを申し込んだときは「定期購入」にしますという条件を入れていた。それだって、一応は開示されてはいるのです。下までちゃんと読んでみれば、それに拘束されるという意味では、開示はなされているということになります。あとは、それが分かりやすい形で開示されたかということで、現在の消費者契約法の3条の前段で、分かりやすく平易にその条件を示しなさいというところで、このような問題は捉えられることになるのです。

ただ、その前提として、開示そのものもしないでいいですという話になったときには、もう話にもならない。ですから、せめてそこは消費者契約法でしっかりとしたメッセージを送りたいということだったと思います。

私、去年の11月に問題提起してから、もう8箇月経ちました。民法で約款開示ということが議論されて3年です。この間、ずっと約款の事前開示についての議論を日本の国はずっとしてきたのです。ですから、それを考えると、議論が足りないということは私はないと思います。ですから、是非改正提案に入れていただきたい。

第1案、第2案ということで、大澤委員たちに書いてもらったところに私も名前を入れさせてもらったのですが、これは決して委員長として出しているわけではなくて、一学者として出しているだけですので誤解のないようお願いします。

結論から言うと、大澤案のやり方と、事務局原案ですけれども、「埋め込み型」にするのか、それとも「独立型」にするのかという違いがあります。これは、この法律がどういうメッセージを出すために作られるかということと関連しているのだろうと思います。民法の正しい意味をきちんと世に知らしめて、事業者の人にも、消費者には、事前に約款があれば知れるようにしてくださいということを伝えるのであれば、定型約款に関する改正民法の規定も引用しつつ、そういう場合に独立して開示を事前にしましょうということを書いたほうが、はるかにメッセージとしては分かりやすい。

しかも前回でしたか、不明確準則の文言で疑義を生ずることのないようにという言葉を消契法3条前段の上に入れましょうという話が出ました。さらに、その前には、年齢等に配慮してという言葉も入れましょうという話が出ました。そうすると、3条の前段の言葉が頭でっかちになって、非常に分かりにくい。そこに更に埋め込むように、「事前に」という言葉を追加するよりは、外に出して、3項ぐらいになるでしょうか、立てるほうが優れているだろう。これは、大澤委員がおっしゃったとおりであります。

それから、もう一つは、「容易に」知ることができるようにというのが第1案ですけれども、容易かどうかというのは評価の問題になります。したがって、その評価で分かれるようなことがあれば、これは容易ですかということを、また1つずつ議論しないといけない。できれば「あらかじめ認識できる」という可能性が与えられているかどうかというところで客観的に一旦切って、開示の対象を明らかにするということにしたほうがいいのではないかという気がします。

全体として見ると、約款の事前開示はほぼ実施されています。私も数年前、約款の開示の状況を調べたことがありますけれども、駐車場だったら、入り口のところに掲示板で掲示してありますし、鉄道だったら、あれは時刻表の中に書いてあります。時刻表にありますということは、鉄道のホームページにあります。さらに、航空運送約款の場合はカウンターのところに冊子がぶら下がっています。ですから、本当に読む人がいるかどうかはともかく、読もうと思えば読める状態に皆さん、しているのです。その工夫は、これからだってどんどんできることです。

あとは、民法の規定によって、定型約款だと言われた人は「うちの約款によります」という表示をすればいいわけです。民法で定めたことを消費者契約法でも明確にするというのが今回の意味であって、中村委員や長谷川委員が御心配のように、何か新しいプラスの負担を事業者にお願いするということでは全くないということを前提に、是非御賛同いただければありがたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

もう6時10分になっています。先ほどまとめたような状況でして、今日、少なくとも成案を得ることはできないだろうということは明らかです。今後、議論をどう続けるか、続けないかということも考えなければならないところでして、大変恐縮ですけれども、5分ほど休憩をとらせていただいて、少し相談させていただいた上で、今後どうするかをお諮りさせていただければと思います。大変恐縮ですけれども、5分強になるかもしれませんが、休憩を取らせていただいてよろしいでしょうか。

(休憩)

○山本(敬)座長 大変お待たせしました。再開させていただきます。

議論のおおむねのまとめは、休憩前に申し上げたとおりです。2つ問題点を申し上げましたけれども、第1の点は、確かに原理的な問題で、重要なポイントですけれども、実際に成案を得るためには、特に第2の点について、どこまでのことが要請され、どのようなことは要請されないかということが、具体的にもう少し明らかになることが必要で、そこが明らかになっていけば、第1の点についても、そこまでの負担ではないかもしれないということで、議論しやすくなってくるという面もあるだろうと思います。

したがいまして、今日は、これ以上議論することはできませんけれども、次回までに、次回といっても、もう取りまとめをしないといけない時期なのですが、その辺りまでにもう少し具体的な問題について、確かに本日議論していただきましたけれども、お出しいただいた御意見等も含めまして、更に精査し、提案の実際の中身をもう少し明らかにして、それで果たして御賛同が得られるかどうかを改めて議論するということとしてはどうかと思いますが、よろしいでしょうか。

以上のような形で、今日は大変熱い議論をしていただきまして、問題点と議論の分布が分かったことが成果ということです。大変恐縮ですけれども、今日のところはここまでとさせていただき、次回に改めて御提案して、御検討いただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。

20分近くオーバーしましたけれども、大変申し訳ありませんでした。

それでは、最後に事務局より事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 今日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は7月14日金曜日、16時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 毎週恐縮でございます。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上