第40回 消費者契約法専門調査会

日時

平成29年6月9日(金)15:00から18:10

場所

4号館8階 消費者委員会会議室

出席者
【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、石島委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、河野委員、後藤準委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会 河上委員長
法務省 中辻参事官
国民生活センター  松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、加納消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

場所

消費者委員会会議室

議事次第

  1. 開会
  2. 合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型
  3. 困惑類型の追加
  4. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻になりましたので会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会第40回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして柳川委員が御欠席、それから沖野委員、山本和彦委員、大澤委員が遅れての御出席との御連絡をいただいております。

まず、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第下部に配付資料一覧をお示ししております。もし不足がございましたら、事務局までお声掛けをよろしくお願いいたします。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いします。


≪2.合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型≫

○山本(敬)座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。

本日の議事に入りたいと思います。本日の進行としましては、消費者庁より資料1を御提出いただいていますので、まず「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」を御検討いただき、その後、休憩を挟みまして「困惑類型の追加」を御検討いただくことにしたいと思います。

それでは、「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」につきまして、消費者庁より御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、御説明差し上げたいと思います。

資料1の1ページからでございますが、「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」についてでございます。

1ページでは、第31回の専門調査会で提示させていただきました資料の内容、そしてまたそれに対する御指摘を記載してございます。第31回ではここに記載しておりますように、3号案、4号案という形で、殊更に不安を煽る告知という行為類型を念頭に置いて提案したもの、あるいは断りきれない人間関係を濫用するという行為類型を念頭に置いたものを御提案してございました。

これについて、委員の皆様からは「殊更に」という要件、あるいは「密接な関係」という要件など、要件が明確でないという御指摘を頂戴しておりまして、この点を更に検討するということであったかと思います。

また、2ページに、ヒアリングにおける主な意見ということで、事業者団体からのヒアリングでの主な内容を記載してございますが、こちらでもやはりそのような「殊更に」や「密接な関係」といった要件について、通常の営業活動との区別という観点から御意見を頂戴していたところでございます。

そして、4ページから今回の検討ということに入ってまいりますが、そういった御指摘を踏まえまして、そういう規定の文言等について要件がより明確なものとなるようにする必要性があるということで検討を加えてございます。

4ページから6ページにかけて、これまでの資料で掲載しておりました事例を再度掲載させていただいておりますけれども、6ページのアというところで「殊更に不安を煽る告知」の具体的要件を更に検討させていただいております。

これまで第31回で検討された際にも、こうした事例を念頭に置きながら、できる限り通常の営業活動と区別され、不当性の高い行為を具体的に類型化していくということで検討されてきたわけでございまして、不安を煽るという行為についても「消費者に生じ得る損害又は危険を告げること」ということで明確化しようとしておりまして、また、合理的な理由がある場合でないにもかかわらず、過度に強調して告げるという場面を捉えるという趣旨で「殊更に告げること」という要件を示していたところでございます。

「これらの要件につき」というところで、今回の新たな御提案ということになりますけれども、まず「当該消費者に生じ得る損害又は危険を告げること」ということを、事例に沿って趣旨を明確にするという観点から、例えば「当該消費者契約を締結しなければ当該消費者に生じ得る損害又は危険」というような形で特定するということが考えられるということを提案してございます。

また、その後の「一方」というところでございますけれども、「殊更に」という要件につきましてですが、これまでの御指摘を踏まえまして、7ページでございますが、「殊更に」ではなくて「合理的な理由もなく過度に強調して」という趣旨を明示的に規定するということを御提案してございます。

通常の営業活動であれば、消費者に生じ得る損害又は危険を告げる場合があるとしても、基本的にはそれを告げることに合理的な理由がある場合であると考えられますし、まして合理的な理由がないにもかかわらず、客観的に見て過剰な程度にそのような告知を行う場合というのは、通常の営業活動としてはまず考えられないのではないかと思います。

したがいまして、このように「合理的な理由もなく過度に強調して」という旨を明示した要件とすれば、通常の営業活動というものは明確にその適用範囲から除かれ、不当な場合のみが対象とされることとなると考えます。

例えば、これまで懸念を御指摘いただいておりました、生命保険契約の勧誘において将来のリスクを説明するというようなケースや、あるいは金融商品の勧誘において一般的な経済的リスク等を説明するというようなケースが対象に入らないということは明らかであろうと考えてございます。

次に、イの「付加的要件」というところでございますが、第31回で議論いただいたときには「勧誘目的を告げない接近あるいは来訪要請」というものを複合的な要件とすることを検討いただいておりました。

しかし、このような要件については、委員から同居の高齢者が自宅で不安を煽る行為を受けるような場合など、取消しの対象から漏れてしまう事案があるのではないかという懸念を御指摘いただいておりまして、こういう要件を組み合わせる必要があるのかという疑問も示されていたところでございます。

そもそも念頭に置かれている事案での本質というものは不安を煽る行為ということでございまして、前回、「勧誘目的を告げない接近あるいは来訪要請」というものを御議論いただきましたのは、補足的な要件として通常の取引との切り分けを明確にしようという観点での検討でございました。

したがいまして、先ほど申し上げましたように「殊更に」という要件を「合理的な理由もなくかつ過度に強調して」という要件として明確化するということであれば、これをもって通常の営業活動との切り分けは明確になるということでございますので、この「勧誘目的を告げない接近あるいは来訪要請」という場面に限らずとも切り分けとしては十分ではないかということで、このような要件を不要とするということが考えられようかと思います。

次に、8ページの「(2)断りきれない人間関係を濫用する行為」でございます。こちらは提案した要件のうち、特にこの「密接な関係」というものがどのような関係を含むのかということが明確でないという御指摘を頂戴してございました。

ここで、この「密接な関係」ということですが、念頭に置かれていましたデート商法等を考えますと、消費者と当該事業者との間の取引とは直接に関わりのない私的な関係というものが念頭に置かれていたものと考えます。

そこで、通常の営業活動を含むような広い意味の関係ということで捉えるのではなく、社会通念上、当該消費者と当該事業者との間の取引と関わりのない私的な関係を指すということを明らかにするということが考えられようかと思います。

具体的には、「当該消費者を勧誘に応じさせる目的で当該消費者に接触し、取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とはかかわりのない関係を築いた上で」というような形で規定していくことが考えられようかと思います。

このような要件があれば、例えば契約締結後のアフターサービス、あるいは会員制度といった関係については取引上の関係そのものでございますので、社会通念に照らしても当該消費者契約の締結と関わりのある関係ということで、取消しの対象からは除外されることが明らかとなるのではないかと考えております。

なお、このように当該関係というものを規定した場合には、その関係というものは当該消費者契約の締結とは関わりのないものということになるわけでございまして、そのような関わりのない関係が当該消費者契約を維持するために必要であると思わせるという言動自体が、それ自体合理的な理由を欠くということになると考えられますので、「殊更に」との要求は不要になると考えてございます。

9ページでございますが、以上を踏まえまして、まず「不安を煽る告知」については「合理的な理由もなく、当該消費者契約を締結しなければ当該消費者の生じ得る損害又は危険を過度に強調して告げること」、また「断りきれない人間関係を濫用する行為」といたしまして「当該消費者を勧誘に応じさせる目的で当該消費者に接触し、取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とはかかわりのない関係を築いた上で、当該消費者契約を締結することが当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動をすること」といった趣旨の規定を設けるという考え方を示してございます。

これにつき、御議論いただければと存じます。以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

石島委員。

○石島委員 前回も様々な意見が出た論点であり、また各業界からも意見が提出されている、注目されている論点だと思います。こうした状況を踏まえて、新たに文言の御提案をいただいたことについてはお礼を申し上げます。

しかしながら、いただいた文言については、結論としてはやはり賛同しかねるということを申し上げざるを得ないのではないかと考えております。

まず、合理的な理由を欠くことや、過度に強調という要件立てがされていますが、この要件は非常に不明確であって、事業者として消費者にどの程度までリスクを伝えてよいのか分からなくなるということが言えると思います。

例えば、資料で紹介されている事例2-1、2-2は、サロンでの頭皮診断の結果を踏まえた頭皮のケアに関する商品を勧めるというものですが、このレベルのものが取消しの対象になってしまうのかという点が非常に疑問です。

これ以外にも、百貨店などでは、肌質を診断した上で消費者の肌に応じて、ちょっとお客様は水分が足りないので水分補給をしないとエイジングが進んでしまいますねと言って化粧品の案内をするといったようなカウンセリング方式の販売方式というのはよく行われていると認識しております。このような営業トークまで合理的な理由がないとするのは、事業者の営業活動を狭めるものであると思います。

また、この要件に当たらないとした場合に、頭皮のケアのケースとの分界点がどこになるのかというのがいまだに不明確ではないかと思います。

合理的な理由があるかどうかという判断には非常に微妙なところがありまして、取引関係を不安定にするものではないかと思っております。

また、例を更に追加すると、ちょっとこれが当たるのかどうかも分からないのですけれども、最近のお子さんは皆さんこういうおもちゃをお買い求めになっていますよ。このレベルのおもちゃでないと、お子さんも話題についていけなくてお気の毒かもしれないし、こういうことがきっかけでいじめられることもありますしというようなことで、子供のことを考えて不安に駆られて買ってしまうというケースで取消しまで認めるのはどうなのかという疑問もあります。

こういう営業トークが決して趣味がいいものとは思いませんけれども、こういうレベルのものまで消費者契約法で保護しようとしているということなのか。やはり御提案していただいている文言と対象にすべき射程とが大きくずれているように思います。

また、消費者側からも、リスクを知った上で自分に合った商品が欲しいというニーズも一定程度あると思いますから、虚偽の事実を告げたのであればともかく、このように不実告知にすら当たらないものについてまで取消しできるようにすべきではないと思います。そういった点にも配慮していただくべきではないかと思います。

また、資料で紹介されている霊感商法に関しましては、記載どおりのような悪質な対応であったとすれば取消しを認めていいものではないかとも考えますが、仮に明文化するとしてもそのようなかなり特殊なものですので、適用対象をこういった特殊なものに限定するべきでありますし、更に言えばそのような規律を消費者契約一般に適用される消費者契約法に置くのは適切ではないのではないかと考えます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。それでは、他に御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 内容に関する意見に先立ち、進行に関する意見を申し上げます。

この「第1」の論点について、消費者庁の2つの原案に付加する形で、1つの立法提案をさせていただきたいと思っております。お手元の資料2が、その意見に関する資料となります。消費者庁の原案の3号・4号に関する審議が終了した後で結構ですので、意見の説明と審議のお時間を頂戴いたしたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 了解しました。では、他にいかがですか。

河上委員長。

○河上委員長 今回の提案ですけれども、この「合理的な理由もなく」という表現は要らないのではないかと思います。

最初から「過度に強調して告げること」と書いてあるので、そこの中には合理的でないという意味が当然含まれているので、この部分があるから逆に何が合理的なのですかと聞かれてしまうということが起きるのではないかと思いますから、これは外したほうがいいだろうと思います。

それから、「断りきれない人間関係を濫用する行為」というのは、通念に照らして関わりのない関係を築いた上でということになるのですけれども、これもかなり評価余地が多くて、例えば断りきれない状況とか、そういうものでまとめてしまったほうがいいのではないか。前にも人間関係の問題が出たときに、消費者契約法に期待される抽象度からすれば、余りにも細か過ぎるのではないかという気がしたので、本当はその部分はもう少し言葉を一般化したほうがいいのではないかという気がいたしました。なるべく具体化したいというお気持ちは分かるのですけれども、かえってそれが違和感につながっています。

それからもう一つ、今回出てきているのは、合理的な判断をすることができない事情を利用してとは言うものの、一定の状況を作出した上で、それにつけ込んだというタイプの状況作出型のつけ込みに対する取消権に限定されていますけれども、もともとここで問題になったのは、合理的な判断をすることができない事情として、例えば高齢であったり、あるいは場合によっては若年のために経験不足であったりという一定の状況が既にあって、既存の状況についてそこにつけ込んで、あるいはそれを濫用して望ましくない契約を締結させたということが大きなタイプとしてあるわけで、その部分は後からやるのか、それともどうせならばここでやったほうがいいのではないかという気がしています。

例えば、ここで入ってくるのは、「次に掲げる行為をしたことにより」のところに1号、2号、3号となっているからこういう書き方になりますけれども、それとは別個に、何々について認識した上で消費者を申込承諾の意思表示をさせたときも同様とするぐらいの1文をこの後ろに付ければ、状況の濫用型のつけ込みも一緒に対応できるのではないかという気がいたします。

いろいろ申し上げましたけれども、少し考えていただければと思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。他に御意見があればと思いますが。

増田委員。

○増田委員 不安を煽って契約締結に至らせるということは、消費生活相談の中ではよくある事例でございます。

私どもでは週末電話相談をしておりますけれども、その中でも事例がございます。1つ御紹介させていただきますと、85歳の高齢者の家にリフォーム業者が以前より出入りしていて、外壁工事をした後、その様子を伺う電話があった。雨漏りする可能性が高いからと屋根のリフォーム工事を勧められて契約をしたという事例です。

高齢者で判断不十分な状況でありますし、この場合、金額は大きいですけれども、過量ということではありませんので、消費者契約法がすぐさま適用されるということではないと思います。それから同じく不安がある状態で、夫婦の相性がよくないとか、子供がこのままではよく育たないなどと言われ、印鑑の契約をしたという事例もあります。

それは、通常、印鑑をお勧めする場合のセールストークとしてはあってはならないだろうと思います。こうした不安を煽るケースというのは事例としてよくございますので、今回の提案については賛成いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があれば。

後藤巻則代理。

○後藤(巻)座長代理 先ほどの石島委員の御意見ですけれども、最初に幾つかのお話をなさった営業トークの問題というのは、ここでの取消しの対象には入らない。余りそこに神経質になる必要はないのではないかという印象を私は持ちました。事例3-1、3-2、3-3、3-4は、そういうような意味での不安を煽るというのが、むしろ私が考えていた取消しの対象となる典型的なものでして、これは今までの議論の中で取り残されていた部分だと思います。

断定的判断の提供のところで、これと似たような状況について、この専門調査会の大分初期の段階ですけれども、議論されておりまして、名前を変えたらあなたの運勢は良くなると言われて改名に関する契約をするとか、良い印鑑を持つと運命が変わりますなどと言われて印鑑を購入するような行為、これが断定的判断の提供を理由とする取消しの問題なのかどうかということが議論されまして、こういうような問題についてはむしろ断定的判断の提供ではなく、他の不当勧誘で取消しの問題となるという事例として、断定的判断の提供では扱わないというような状況になったと記憶しております。

そういう意味から言うと、他の類型として扱うということについては宿題として残っていた部分だというふうに考えまして、今回は運勢が開けるとか、そういう言わばプラスの告知ということではなくて、むしろマイナスの、不安にするというようなことに焦点が当たった提案というのが3-1とか3-2とか3-3とか3-4ですけれども、これは本質的には同じことでありまして、運勢が良くなるというプラスの告知の場合、要するに運命が良くなりたい、場合によったら、わらにもすがりたいといった消費者の不安な心理状態があって、これを利用するということが問題となっているということでありまして、断定的判断の提供で宿題となっていた部分と、本日3-1とか3-2とか3-3とか3-4で議論するような問題というのは本質は同じであると思います。

ここの部分の先ほど増田委員からもお話があった、不安を煽るというところについての手当てというのは私は是非必要だと思っておりまして、断定的判断の提供のところの宿題が残っている部分に答えるという意味でも、そこについては手当てが必要だと思います。

3-1とか3-2とか3-3とか3-4が典型的な適用事例になるとすると、おのずとそういうようなものに適用されていくということになって、石島委員がおっしゃるように適用範囲が結構限定されるという意見が出てくると思いますけれども、私は適用範囲はある程度限定されるのだろうと思います。限定されたものとして、ここについては規定が必要だと考えております。

それで、この規定について従来提案されていた要件、勧誘目的を告げない接近とか、あるいは来訪要請という要件が外されたということでありまして、そこが外されたということから見ると、結果的に事業者に酷になり過ぎるのではないかというような印象を持たれるかもしれませんけれども、これに関しては事業者に酷ではないというふうに私は考えます。

民法の強迫は恐れさせる、畏怖させるということでありまして、不安を抱かせるというのは概念としてそれと違いますので、強迫の規定を直接に適用して取消しをすることもできないし、従来の意味での消費者契約法の困惑には当たらないということでありますけれども、やはり不安ということが消費者にとって契約締結についての一定の動機、不安だから契約するということになっているという部分についての手当てが必要だと考えますと、少し民法の理屈というふうになりますけれども、不安を抱くというのは、やはり不安を抱いているからそういう契約をするのであって、通常だったらそういう契約をしないという状況で契約しているということであります。

つまり、そういう意味で、意に反した契約というのを自覚して契約しているということでありまして、民法で言うと心裡留保に似ているような状況だと思います。心裡留保の場合、その相手方が認識しているか、認識的可能性があるという場合だと、契約は無効になるということでありますので、心裡留保の類推によって、先ほど申しましたように、意に反する契約を自覚して行っている契約を無効とする。民法もこのような場合の契約の効力を否定していいという判断をしていると考えられるということでありまして、そういう観点から見てもこの消費者庁の提案というのは十分に受け入れられるものだと私は考えます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 まず、前提といたしまして、今回の提案は先ほどの河上先生の御発言で言いますと、いわゆる状況作出型のうちの特に問題の多い、いわゆる宗教というか、不安を煽るようなものと、もう一つはデート商法のようなものを念頭に置いた、そういう意味で絞り込んだ案だというふうに理解しています。

それについての意見は後で述べたいと思いますけれども、ただ、その前提として、これとは異なるいわゆる状況濫用型につきましては、私自身はもうこの時期でもありますので、この案については主張しないほうがいいのではないかと諦めておりましたが、本日この後もし話が出るのであれば、それは前向きにというか、賛成したいと思います。

それを前提といたしまして、今回の案について意見を申し上げたいと思います。

まず、不安を煽る告知のほうですけれども、この「合理的な理由もなく」という文言につきまして、こういう趣旨のものを入れることについて私は賛成します。

ただ結局、この合理的な理由というところに、もしかすると幅があるように見えるのではないかと思いました。恐らくここで念頭に置いているのは、要は客観的な科学的な根拠のないような不安を煽るような場面かと思います。

例えば、あなたは将来不幸になりますとか、あなたは将来病気になりますとか、そういったものを念頭に置いているのかと思いますので、科学的根拠とか、そこまで限定するのは個人的には望ましくないとは思っていますが、趣旨としてはそういう客観的な、要は根拠のないものだというふうに理解をしています。そういう趣旨だということであれば、「合理的な理由もなく」という文言は賛成します。

ただ、先ほど石島委員からお話があったかと思います。私の理解が間違っていなければですけれども、科学的な根拠がない、全く理由のないものを強調して告げるという話になると、要はうそを告げるということになりますので、そうすると不実告知との線引きが問題になる可能性はあるのかなという気はいたします。

もう一つ、「不安を煽る告知」につきましては、この「危険」という言葉が若干気になります。損害は分かるのですが、「損害又は危険」ということで、これも以前の提案から「危険」という文言は入っていましたけれども、危険というとかなり消費者にとって危ないような事柄であるかのように感じます。

例えば、消費者にとって「不利益」という文言だと、これは広過ぎるということで「危険」という文言、かなり消費者が死とか、あるいは身体に対する恐怖を感じるような場面を念頭に置いているのか。そうではなく、「危険」という言葉にしているというだけなのか。そこを確認させていただければと思います。

次の「断りきれない人間関係を濫用する行為」というのも、これもデート商法のようなものを念頭に置いているという前提で意見を申し上げますが、これについては今回かなり文言を練っていただいたことには感謝をいたしますが、「取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とは関わりのない関係」というのが、かなり取り方によっては幅が広いというか、ちょっと分かりにくい概念ではないかという印象を持ちました。

これは、要するに消費者から見て自分がその取引に入ると思えないような人間関係かと思います。デート商法などですと恋愛関係を築き上げるようなものですし、あるいは他に具体的な事案を思いつくわけではありませんが、すごく仲の良い人間関係を作るような取引と全く関係なさそうな人間関係を作って、しかし、その行き着くゴールが取引であるというような人間関係かと思います。

それで、仮にデート商法のようなものを念頭に置いたこういう規定を作るのであれば、「取引上の社会通念に照らして」云々という文言で果たして趣旨として把握できているかというのは若干不安はあります。

ただ、余りにもここに絞り込んでしまうのも規定の適用範囲が狭まってしまうので、ここは非常に難しいかと思います。感想で恐縮ですが、以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

永江委員。

○永江委員 ここで改めて立法事実の有無について議論するつもりはございませんので、その前提で意見を述べさせていただきます。

資料には、「殊更に不安を煽る告知」として念頭に置かれているものとしまして、事例1-1から3-4というのを挙げられておりますが、この中で特に事例1-2や、2-1のような事例では、ここで記載されている事実、事業者の担当者の発言だと思うのですが、これだけを見た限りでは、例えば「今やらないと後悔する」とか「このままだと出遅れる」という発言だけでは契約を取り消し得るべきという価値判断には正直なりにくいのではないかと思っています。

さらに事例2-1や事例の2-2の事例で、仮にこのような事業者の説明が真実であった場合には、果たして取り消す必要があるかどうかは疑問なのではないかと思います。恐らく、これらの事例にはこの記載からは分からないような事業者の悪性をうかがわせるような事情があったのではないかと思われます。

ここで記載されている事情からはその辺りがよく分からないので、具体的な事情と照らして「過度な強調」の外枠が分からず非常に不安です。ですから、こういう事例を挙げるのであれば、その辺りの事業者の悪性等が分かるようにしていただければと思います。やはり告げている内容が真実か虚偽かというのは大きなポイントになるのではないかと思います。

また、事実と断定はできなくても、例えば、厄年だから災難が多いですよという話は、一般的に言われることですけれども、これをどう考えるか。これは多分、正当な宗教行為だと思うのですが、こういった話を事実と信じる正当な理由があった場合も、契約を取り消し得るべき場面とは別なのではないかと思います。ですから、条文化に当たってはこの辺が外れるような要件にしていただければと考えます。

「断りきれない人間関係を濫用する行為」につきましては、「当該消費者契約の締結とはかかわりない関係を築く」とありますが、例えば大口顧客を集めたゴルフコンペとか、誕生日にお花を贈ることとか、顧客である地域住民と仲良くなるために地域のボランティア活動やお祭りに参加するといったことなども形式的に含まれてしまうのではないかと懸念しております。

「取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とはかかわりのない関係」では、先ほどもありましたように広過ぎるように思われます。ですので、このような活動が含まれないというような文言を検討いただければと考えます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

井田委員。

○井田委員 ありがとうございます。私は、「不安を煽る告知」及び「断りきれない人間関係を濫用する行為」、今回の御提案にいずれも賛成いたします。

事業者側としてもちろん御懸念はありましょうが、この3号と4号というのはもともと念頭に置いている事案及びそのような事案については正常な営業活動から逸脱をしているという価値判断、これについては特にコンセンサスが得られている、これはひどいというような例で、例えば事例3-1ないし3-4というようなものが挙げられていると思います。特に3-4は典型的にデート商法というのを念頭に置いたと思うのですけれども、「勧誘に応じさせる目的で当該消費者に接触し、」という部分、これはつまり最初の段階でそういう目的を持って接触するというのが、私としてはデート商法の一つの特徴なのではないかというふうに思いますし、ここが入っていると既存の人間関係を利用してということは外れるというようなところでも、事業者側においてある程度理解は得られるのではないかと思っております。

確かに、先ほど河上委員長からのお話のように、過度に強調して告げるという、その要件立ての中に合理的な理由がないというのも評価の中に入れてしまえるのではないかと、いろいろ要件立ての検討するべき余地はあるかと思いますが、私はこの案で賛成いたします。以上です。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○松本理事長 私は、最初は石島委員がおっしゃったことと若干近い印象を持っていました。

すなわち、私も髪の毛が大分減っていますけれども、このままでいくとこうなりますよというのはある程度、事実だとすると、それを言われたからといって取消しというのはストレートにはならないのだろう。

それで、後藤座長代理のお話を聞いて非常に考えさせられたのは、これを断定的判断の問題というふうに置き換えればいいのではないかという指摘をされたわけなのですね。すなわち、不利益な方向へ、このままでいけば絶対こうなりますよということを言って不安を煽って、他方でこれを服用すれば確実にそれを防げますよという感じの話になれば、これは恐らくかなり問題があるだろうという感じがするのです。

特に、霊感商法っぽいものは明らかに断定的にそういうことを告げて、こうすれば大丈夫ですよということなので大変分かりやすいわけだけれども、髪の毛がどうのこうのとか、あるいはあなたの今の状況だと生活習慣病になって大変なことになるリスクがかなりありますよと告げても、多分これだけでは駄目だと思うのです。

確実にそうなります。それを避けるためには我が社のこのサプリですと、こういうふうにいえば、ひょっとしたらサプリのほうの不実告知でいけるのかもしれないけれども、不利益を断定したうえでその不安につけ込み、そしてこれを購入して、あるいはこのサービスを受ければほぼ確実にその不利益を回避できるのだと思わせて契約をさせるということで、2つセットになればかなり悪質性が高くなるのではないかという印象を受けました。「殊更に不安を煽る告知」について、後藤先生の指摘された断定的判断の問題ではないかという観点から、もう少し組み直してみるというのが一つのいいアイデアではないかと思いました。

もう一つの断りきれない人間関係の濫用のほうですけれども、これも人間関係のほうからそれを利用して買わせるということだけを捉えると、従来の例えばクラブだとか、そういう人間関係の中で販売活動をやるということは一切駄目かという話になるので、むしろ目的のほうにまず着目して、すなわち一番問題の多いデート商法だと、不動産を買わせる、あるいは絵画とか宝石を買わせるということが目的なのですから、特定の商品やサービスを購入させることを意図して、断りきれない人間関係を構築した上で契約を迫るというか、契約せざるを得ない状況に持っていく、断れない状況に持っていくというような要件にすれば、従来からある人間関係の中で販売活動をやることとか、あるいは従来からのお客様がいて、そのお客様との関係でいろいろなことをやるというのは外れていくのではないか。

特定の物を購入させるというような形で絞った上で人間関係の構築というふうにして、しかも通常は短期決戦です。何年もかけていい関係を作って売っていたのではこの種の商売にならないので、デート商法などでも1カ月とか、せいぜい3カ月くらいでしょうか。そういうような短期決戦型なのだということもうまく要件に入れられれば、そうでない長期的な人間関係がどうのこうのというのは外れていくのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。他に御意見があれば。

磯辺委員。

○磯辺委員 「殊更に不安を煽る告知」「断りきれない人間関係を濫用する行為」、いずれも消費者庁の今回の提案に賛成の意見を述べたいと思います。

「合理的な理由もなく」、損害又は危険を過度に強調して告げるというふうにかなり要件としては絞り込まれていまして、さらにそのことを通じて困惑して契約の締結に至るということで、要は困って惑って正常な判断ができないのだという状況になっての取消しということになりますので、そういう柱書きの要件とこの3号の要件を合わせて考えれば、決して幅広く解釈がされて通常の業務活動に支障が生じるということではないのではないかと考える次第です。

事例1-2、事例2-1は字面だけで見るとなかなかその深刻さが伝わってこないと思いますけれども、事例1-2も今のような就職環境であれば内定は取れると思うのですが、7から8年ぐらい前の状況ですと相当プレッシャーに感じて、人によってはやはり家庭環境などですぐに就職しないといけないとか、そういう中でのこういうパターンということでのトラブルというのもたくさん目にしたところですし、そういった状況があってのトラブルだと思いますので、なかなかこの文字面だけでは分からないところもあると思います。

あとは、髪の毛の問題にしてみれば合理的な理由があるかどうかという問題もありますし、当事者は非常に深刻だと思いますので、そんなことも考えて言うと、そういう状況も鑑みて合理的な理由もなく過度に強調して、しかも困惑をそのことによってするというのは相当絞り込まれた要件だと思うわけです。

それと、断りきれない人間関係なのですけれども、確かに前段の取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とは関わりのない関係を築くということは、これ自体はいろいろな形であり得るのだと思いますが、さらにその上で、その当該関係を維持するためにその契約を締結することが必要だと思わせるような言動を取るということですので、デート商法で言いますと、明らかに恋愛関係を維持するのにマンションを買ってもらわないと困るのだというふうなやりとりをとらまえているわけです。前段だけを見ると関係はいろいろ広がり得るのですけれども、後段の要件も考えると、例えば地域でボランティアをしている人が、この商品を買ってくれないと私はボランティアをやめますよと言うとは思えないわけでございます。そんなことで言うと、相当にこれも要件は厳格になっていますので、私はこの案で大丈夫だと思います。

○山本(敬)座長 有山委員、続いて河野委員。

○有山委員 私も、今回の案には賛成いたします。私どもに寄せられている中で、不安を煽る告知の中で例が多いものは瓦なのですね。高齢者に瓦のリフォームということで販売することが多いのです。瓦というと「ずれています」とか、「雨漏りがしますよ」という説明受けるときに、高齢者の方は屋根に上って見ることができないので、写真を見せられるとか、確かにずれていますよと言われたことについて高齢者はどんどん不安を煽られるような形になります。こういう合理的な理由もなくというような相談の間に入っていく中で写真等が提供されてくる場合もあるのですが、それが実際そこのうちの瓦ではないようなものも含まれています。このような場合、合理的な理由もなくというので入るのかなと思っております。

それから、開運商法等でブレスレットとかネックレスを買ったりするとその後にアフターフォローみたいな形で電話をしてきて、「御祈祷するともう少しあなたのお悩みの人間関係がうまくいく」と販売されることもありますので、「困惑し」という中には普通の取引とは別の要素が入ってくるのだと思います。

それで、御指摘いただいた事例1-2の「今やらないと後悔する」「このままだと出遅れる」というような説明があったということなのですが、その後の「3時間程度説得されて」というところが多分重要な要素なのだと思うのです。

今、「決められなかったら」「就職できるような人はすぐに判断できる」ような人間ではないと言われたというようなことも相談者から多々聞きます。そういう意味では不安を煽る中にいろいろな要素が入ってきますが、困惑するということを前提にこういうことが行われた場合に取り消せるというような形を設けていただくとありがたいと思います。

それから、私どもに入った「断りきれない人間関係を濫用する行為」というのは、多くの場合、マルチ商法の場合の紹介販売みたいな形であります。最近入った相談では77歳の男性が恋人ができたのでお嬢さんが説得に行ったということがあります。マルチ商法ではもう人間関係が恋人とお父様の間にあって本人は恋人の言う健康食品は非常にいいものだと信じていてなかなか解放されない。この恋人のマルチ商法に参加していくことが人間関係で重要だというような思いで契約していくというようなこともございます。

あとは、職場で先輩から勧められてマルチ商法を行っていくということなども、初めのうちは悩みを聞いてもらったとか、そういう形で人間関係ができてしまうということがあります。この2つの条文を入れることについては賛成いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河野委員。

○河野委員 私も「殊更に不安を煽る告知」、それから「断りきれない人間関係を濫用する行為」、どちらも今回の提案内容に賛成したいと思います。

そもそも論として、この2つの類型に関しましては何とか対策をしないと被害者はどんどん増える一方だ、というところから議論は始まったと思っております。最初の審議段階でほぼ1年半、そして再開されてから1年、やっとここまで要件が絞れて、それなりに想像力を働かせばこれがどういうものを差しているのかということが私のような消費者にも理解しやすい文言に収れんしてきたと思っています。

消費者契約法に何か法文を載せるということは、類型化しないと対応できないために今回こういうふうな議論をされているわけですが、完全に要件化するということはそもそも不可能だと思います。どこかでざっくりと、これでこの部分は絶対救えるよねというところで、やはり皆さん前向きに御意見を言っていただきたいと思います。

特に今回、不安を煽る告知で言えば、不安というのは非常に個人差があります。先ほど最初にお話にあった、これを買わなければ子供がいじめられるかもしれないという事例は、はっきり申し上げて、これは非常に不安を煽る行為に思います。こういうところで意に沿わない契約がなされること、そういったことをしっかりと防いでいかなければいけないと思っております。

今回、3号に該当しないということで非常に要件を絞ってくださいまして、例えば7ページに示された生命保険契約の勧誘、それから金融商品の勧誘に関してはここに書かれているとおり、これはこういった商品の勧誘で、ごくごく通常行われていることだというふうに除外も明示されています。

営業トークが非常に委縮してしまって、営業活動に影響があるという御発言もありましたけれども、そもそも営業トークは真っ当な契約を結ぶために行うことであって、それに過度な脚色だとか過度な強調というのはあってしかるべきではないと思っております。

是非、その辺りは今、何に対処しなければいけないかということをしっかりと皆さん考えていただいて、今回の非常に工夫されたこの2つの要件に関しては前向きに考えていただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 では、丸山委員。

○丸山委員 まず「不安を煽る告知」についてなんですけれども、提案されている案に賛成したいと思います。

まず、後藤委員なども指摘されておりましたように、現在の消費者契約法では対応し切れていない事例に対応しようとしているのだと理解しております。例えば、事例の3で出ているような運勢が悪くなるとか、事例の1で出ているような「今やらないと後悔する」というのはやはり不実とは言えないような事例でございますし、現行法のどの類型でも救いにくいというような類型でございますけれども、困惑して契約したと言えるような事例であれば対応する必要性は高い。

他方で、現在の消費者契約法で救えないということは民法の90条で対応するしかないということでございますので、その曖昧さに比較するならば、現在提案されている要件というのはかなり絞った要件になっていると思います。河野委員からも指摘されましたように、一点の疑義もないような、解釈上の余地がないような文言の選定というのは、これはかなり無理を要求しているのではないかと思います。

あと1点、不利になるような方向での断定的な判断をしているようなことが問題なのではないかという指摘がありました。確かにそういう側面もあるな、なるほどとは思ったのですが、ただ、そこで1点留意が必要なのは、断定的判断と言ってしまうと、断定しないような文言を使っての不安を煽るような商法が出てくるのではないかといった懸念がありますので、現在のところは提案の文言に賛成したいと思っております。

「断りきれない人間関係を濫用する行為」に関しましても、やはり手当てをする必要性は高いと思っております。現在提案されている文言で、私から見るとかなり絞られているような気がします。契約締結とは関わらない関係というものをも築いた上で、当該消費者契約を締結するということを必要だというふうに思わせるような言動をして、困惑して消費者契約を締結するということになりますので、むしろかなり絞られすぎている要件であるという印象もございますので、最低限の部分を救済するために、このような提案となったと理解した上で、賛成したいと考えております。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員、続いて長谷川委員。

○大澤委員 「断りきれない人間関係を濫用する行為」ですが、これは今後の話だと思うのですけれども、仮に四の上に、例えばタイトルのようなものをつける場合に、「断りきれない人間関係を濫用する行為」という文言だと、ちょっと今回の四号のものを捉え切れていないところもあるかなと思いました。

といいますのは、先ほど何名かの委員からいろいろな例が挙げられていたのですけれども、その中にはもともとある人間関係で断りきれなくてという、例えば家族関係ですとか、あるいは職場の上司と部下の関係とか、上司にいろいろ相談をしていたら勧誘されたという場面が出ていたように私には聞こえましたけれども、今回の四号というのは全く人間関係がないところから契約をさせるためだけに契約関係を作るという場面ですので、その意味で多分正しく言うと断りきれない人間関係を作出した上での契約とか、そういう作り出すというニュアンスを、もし今後タイトルを付けるのであれば入れたほうがいいのではないかと思います。もちろん、そこに限定するのはどうかとは思うのですが、四号はこの文言を見る限りではそういう関係を作り上げるという場面を念頭に置いているのではないかと思います。

それで、1点質問なのですけれども、この「取引上の社会通念に照らして」というのは、私もさっきちょっと間違ったことを申し上げたかもしれないのですが、要は客観的に見てこれは取引とはおよそ関係のなさそうな人間関係ですというようなものを念頭に置いているということでしょうか。すなわち、消費者から見ると、まさか今後そんな契約をすることになるとは思わなかったということではなく、客観的に見たらこれは取引とは関係ないということを念頭に置いているのでしょうか。仮にそうだとすれば、これはかなり絞り込まれているのではないかというふうに皆さんの意見を伺っていて思いました。以上です。

○山本(敬)座長 質問については、まず長谷川委員の御意見をお伺いしてからまとめてお願いしたいと思います。

では、長谷川委員お願いいたします。

○長谷川委員 ありがとうございます。まず、1点目の「不安を煽る告知」のほうでございますけれども、意見を述べさせていただきたいと思います。

この挙げられている事例2-1、2-2に関して、先ほど石島委員、あるいは松本理事長のほうからコメントがあったわけでございますけれども、私も事例1-1はちょっと違うかもしれませんが、事例1-2についても同じように思っています。

要するに、事例1-2などは今回御提案いただいた文言で仮に対応するにしても、合理的な理由があるかないかということであれば、合理的な理由がある場合も考えられるのではないか。3時間程度説得というのは問題があるとは思いますけれども、どういうものを念頭に考えていくのかということについてもう少し考えていただければと思っております。

「不安を煽る告知」に関してあと2つございまして、1つ目は純粋に質問なのですけれども、「合理的な理由もなく」の「も」という意味がよく分からないところがございます。別に前もって何かあるわけではないので、AもBもという「も」ではないような気もいたします。多分「が」が適切なのではないかと思います。

2つ目は「合理的な理由もなく」という文言を外してはどうかという河上委員長の御提案についてでございます。これについては、例えばセールなどがあって「これは本日限りです。明日からだとまた高くなります。」というようなことを連呼する場面というのは結構あります。翌日行ったら確かに値段が上がっていたという意味で合理的な理由があるわけです。それについて過度に強調している場面というのは通常の事業活動でもあると思います。それが事後的に取り消されるほどのことではないと思っておりまして、「合理的な理由もなく」という文言が外れることについてはとりわけ反対いたします。

2点目の「断りきれない人間関係を濫用する行為」につきまして、2つございます。1つ目は、先ほど来、出ておりますけれども、私どもの会員に伺いましても、通常、営業熱心な方であれば、趣味のサークルに入って人間関係を広げ、それを営業につなげていこうでありますとか、地域の活動に出て人間関係を広げていった結果として営業につながっていけばいいなというように思うことはあるわけでございます。そうした営業活動に与える影響というものを懸念する声が多数ございました。

2つ目は先ほど来、出ておりましたけれども、既にある人間関係との関係をどういうふうに理解すればいいかということでございます。例えば同窓会に出て、前から知り合いだったわけでございますけれども、旧友と再会し、その上で最終的に契約に至ったというようなケースをどのように考えるかということがあるかと思います。これについては取消しの対象外になるというふうに理解していいのかどうかということも含め、明確にしていく必要があると思っております。

また、もう一つの要件であります「当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動」ということにつきましては、「思わせるような言動」かどうかというのはかなり主観的な要素も入っているように思っておりまして、今のままでは明確性に欠けるのではないかと考えているところでございます。以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、後藤準委員、後藤巻則座長代理、この順番でお願いします。

○後藤(準)委員 今の「不安を煽る告知」の件なのですけれども、文言的には特段改正をするというようなことは思っていないのですが、資料1の10ページで貸金業法の16条の2項の3に「過度に強調する」とあります。ここを引用して過度に強調するという要件をここに持ってきているのだと思います。

これについては手元の資料でかなり古いものなのですが、平成20年4月21日発行分の夕刊とかスポーツ紙に貸金業者が掲載した広告ついて、金融庁、東京都、大阪府、愛知県、福岡県がどういう実態になっているかを調査した。その中で、具体的に、過度と言われるのは、一体どういうことなのかというようなことを調査した結果を発表している。その辺りが先ほど石島委員が心配されている話であり、我々事業者としてもいつも申し上げているのですが、一体この法律ができた場合にどこまで規制の網がかかることになるのか。

ここが不安なわけでして、先ほど消費者側の委員の皆さん方からは、これはけしからん、これは規制すべきだという事例の話だけを強調的に言われるのですが、では規制の限界のところは一体どうなっているのか。どの程度まで許されるのか。ここのところが、事業者として一番の関心のあるところでございまして、例えば景表法でちょっと古い話かもしれませんが、弁当でサケの切り身を入れているのが実際はマスだった。これは世の中で許されるのかどうか。では、景表法をきちんとやればこれは違反だ。だけど、実態上はみんなその程度のことは分かっていて是認するといいますか、そのような状況になっているわけですね。

ですから、今回のものも石島委員が懸念されているような事例が違反になるのかならないのか。ここがポイントだと、個人的には思っております。

例えば、先ほどの貸金業法の誇大広告の部分で、他社でお断りの方にも必ずお応えしますとか、リセット、何でも相談しますとか、そういったような具体的な文言が示され、これは違反になるということをきちんと明示的にやっていただいている。こういうことが分かれば、これは大丈夫なのだとか、これはいかんとか、より具体的な話が多分できるのだろうと思います。

我々としては、その現実的な対応において一体どうなるのかということが一番知りたいところでして、そのためにいろいろな意見を事業者側として申し上げると、こういうことになるのだろうと思っています。

○山本(敬)座長 では、後藤巻則座長代理。

○後藤(巻)座長代理 先ほどの長谷川委員からの「断りきれない人間関係を濫用する行為」についての御発言で、従来からある人間関係を利用する場合との関係も問題となるという御指摘があったと思います。私はそれに関して少しコメントしたいと思いますが、この案を見させていただいて非常によくできたものだというふうに思いまして、「断りきれない人間関係を濫用する行為」についての提案に賛成いたします。

従来の関係を利用するというのは、人間関係という言い方ができるかどうかは分かりませんけれども、契約上の優越的な地位を濫用するような場合に割と問題とされておりまして、そこにおいて公序良俗違反、その中でとりわけ暴利行為についての議論というのがあったところだろうと思います。

今回はそことは一線を画して、困惑の中、つまり困惑という事業者側が積極的な行為をするという場面、そして規定として「当該消費者契約の締結とはかかわりのない関係を築いた上で」という形で、従来の既に存在する関係ということが問題となっていた事例と一線を画する形で、困惑の問題としてこの提案をしてきた。

そして、より慎重に「取引上の社会通念に照らして」ということも文言として入れているということであって、私の感覚で言うと、もう文句が付けられなくてこれでいいのではないかというぐらいに感じるところであります。そういう意味で、「断りきれない人間関係を濫用する行為」ということについて賛成いたします。

それから、念のためでありますけれども、「不安を煽る告知」で、私の先ほどの発言で、困惑として考えていくという御提案に賛成であるというふうに申し上げまして、断定的判断の提供の問題というのは関連する事項としてお話ししましたけれども、この問題を断定的判断の提供の問題として考えるべきであるとは思っておりませんで、困惑の問題として考えていくべきだと考えておりますので、この点については念のためコメントさせていただきます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 御提案のような趣旨の2つの規定を設けることに賛成いたします。かかる規定は実務上も必要です。

まず、三号の提案について、虚偽事実の告知であれば現行法の不実告知で対応できますけれども、霊感商法などはこれだけではカバーできません。また、消費者庁に御尽力をいただき、前回よりも要件の明確化がかなり進んだと思います。適用範囲が狭いという側面もありますが、適用範囲の明確化という事業者からの要請も強いことを合わせ考慮すると、調和点としては致し方ないところなのであろうと理解をしております。是非ともこの規定を立法していただきたいと思います。

先ほどから通常の営業トークが取消事由にならないかという懸念があるとの御意見が出ております。事業者ヒアリングでも出ていた御意見です。

ただ、ここでは取引通念上一般的に許容されない不適正な契約勧誘行為が想定されており、取引通念上一般的に許容されてしかるべき営業トークなどは含まれないことが前提であると思います。念頭に置かれている霊感商法などは一般的な取引通念を逸脱した勧誘行為であり、このような契約勧誘行為が射程として想定されていると理解しております。

また、消費者契約法は民事ルールであり、具体的行為の制限列挙は立法技術上も困難ですし、不当な抜け穴ができても困ります。一定の評価要素が要件として入ることは不可避であるように思います。

さらに、今回の三号の提案は「合理的な理由もなく」「過度に強調して」という要件とされています。過度に強調している場合でも、さらに合理的な理由の存否を問うという構造となっております。「合理的な理由もなく」というのは、個別事案の種々の事情を総合考慮して不適正なものであるか否かを考察するということかと思います。先ほど御指摘があったような事業者の属性もここで考慮されることになるのであろうと思います。

加えて、条文上、これは困惑惹起行為の1類型ですので、そもそも一般的に消費者に困惑を惹起する行為態様であることを要しますし、かつ、現に消費者に困惑を惹起しないと取消要件を満たしません。それらの要件を全て満たすためには、取引通念上一般的に許容されているような通常の営業活動はおのずと除外されると思います。しかも、立証責任は消費者にあります。十分に限定的な要件になっていると考えます。

次に、四号の提案については、「勧誘させる目的で接触し」「契約の締結とは関わりのない関係を築いたうえで」「関係を維持するために契約することが要件と思わせるような言動をする」という条文構造になっております。そもそも最初から偽りの人間関係であったような場合が想定されていると思われ、恋人商法を前提としたような、かなり限定的な要件になっていると思います。

本来ならば既存の人間関係を濫用・悪用して契約を締結させる被害類型も存在するところであり、被害救済の範囲を狭くしてでも規定の適用範囲の明確化を図った内容と理解して読ませていただいておりました。しかも、これも立証責任は消費者にあります。これらの諸事由を考えると、この提案についても、要件は十分に明確になっていると思います。

最後に、これまでの議論を踏まえた確認として、特に「断りきれない人間関係を濫用する行為」に関する四号提案との関係で、「困惑」というのは広い概念なのだということを、消費者庁の逐条解説に明記しておいていただきたいと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。この2つの類型について御意見をお出しいただきましたけれども、途中でも、あるいは最後のほうでも出ておりましたように、このような規定によって現行消費者契約法ではカバーできない紛争をカバーする必要がある、そのような必要のあるケースが存在するということ自体については、恐らく御異論がないのではないかと思いました。

ただ、その上で、現在提案されている文言に従った規定を設けたときに、それで過不足なくその対象をカバーすることができているかという点について、なお意見の一致がまだ見られていないのではないかと思います。とりわけ「不安を煽る告知」について言いますと、「合理的な理由もなく」「損害又は危険を過度に強調して告げる」ということで、一体どこまでの範囲がカバーされているのか、あるいはされていないのか、それがどこまで明確にされているかということが焦点の一つだったようにと思います。

したがって、これは大澤委員も御質問されていたところではありますけれども、まず、少なくとも「不安を煽る告知」に関しては、この「合理的な理由もなく」「損害又は危険を過度に強調して告げる」というのがどのようにして実際に判断されることになるのか。これは、最初に消費者庁の御説明でも少し御示唆のあったところですけれども、改めて御説明をいただければと思います。

もう一点は、「断りきれない人間関係を濫用する行為」についても、要件がこれまでに比べますと非常に限定されてきているという御指摘がありました。「当該消費者を勧誘に応じさせる目的で当該消費者に接触し」ということが要件として設定されていること、そして「取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とは関わりのない関係を築いた」ことが要件として設定されていることも、限定がされているということです。

その上で、「当該消費者契約を締結することが当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動をすること」とつながり、そしてさらに困惑へとつながっている。

問題は、2つ目というのでしょうか、取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とは関わりのない関係を築くことがどこまでカバーしているのかということですが、これだけで取消しが決まるわけではなく、3つ目の「当該消費者契約を締結することが当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動をすること」、そしてそれによって実際の消費者が困惑することということが要件になっている。これをどのように実際に判断するのかということが質問として出ていたように思います。この点についても、補足的に御説明いただければと思います。

そして、これらの規定によって、例えば現在挙げられている事例、これは4ページから6ページにかけてですけれども、これらのケースが提案によって取り消されるべき適切な事例なのかという御指摘もありました。ただ、これは簡略化して書かれているもので、ここに示唆されているようなものにさらに隠れている事情があって、それらも含めて先ほどの規定が適用されるかどうかが判断がされていくのではないかという御指摘もあったところですので、その点も含めて、改めて御説明いただければと思います。

問題点が幾つかにわたっていますが、消費者庁のほうからお願いしてよろしいでしょうか。

○消費者制度課担当者 お答えさせていただきます。

まず、「不安を煽る告知」について、「合理的な理由もなく過度に強調して」ということになってまいりますけれども、1つには御指摘いただきましたが、告げる内容として危険の重大性でありますとか、あるいはその発生の蓋然性というところが過大になっているかというところで判断してくると思いますし、そういう告げた内容の客観的な根拠があるのかというところで、先ほど頭髪チェックとか、不安を煽るというところの根拠の有無というようなところが考慮されてくるのだと思います。

ただ、一方で後藤準委員がおっしゃったように、実際にどのようなものが当たるのかという、その線引きの点について、事業者としては中心的な関心があるということもごもっともかと思いますので、その辺りは文言、あるいはその後の周知も含めて更に工夫は検討させていただきたいと考えてございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。今の御説明は、判断する際のポイントは、告げられた内容がどのようなものか、特に、損害又は危険がどれだけ重大なものなのか、さらに、そういった損害又は危険が現実に発生する蓋然性、つまり本当に発生するのかしないのか、どの程度発生するのかということがまずは決め手になるという御指摘だったのでしょうか。

さらに、「過度に強調して告げる」というのは、告げ方の問題も恐らくあると思うのですけれども、それもやはり考慮されると理解してよろしいのでしょうか。

○消費者制度課担当者 おっしゃるとおりでございまして、まずは告げられた内容というのがポイントになってきた上で、当然、過度に強調してということになりますとその告げ方といいますか、例えば同じ内容を繰り返して強調したトーンで告げるということ、そういう態様も含めて考慮されるということにはなろうかと思います。しかし、やはり中心的にはその告げた内容がどうかというところで、まず評価されるのではないかと考えてございます。

○山本(敬)座長 重ねての確認ですけれども、そうすると不実の告知かどうかと厳密に言われるとよくは分からないかもしれないけれども、述べられている損害や危険が実際には発生しない、ないしは発生する可能性があるとしても非常に僅かであるのに、非常によく発生する、あるいは通常発生するだろう、あるいは確実に発生するだろうというようなことを述べることが一つの判断の基準になるということなのでしょうか。

○消費者制度課担当者 不実告知においては、それが事実かどうかということで、正しい情報を提供したかどうかということが問題にされるのかと思いますが、ここで問題にしておりますのは、消費者を困惑に陥らせるような態様であるかどうかという意味で、先ほどのような内容が問題になるということかと存じております。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

邪魔をして申し訳ありません。では、続きをお願いいたします。

○消費者制度課担当者 もう一点、人間関係の濫用をするということのほうでございますが、こちらは御指摘いただいた点で更に詰めるべき点も多いかとは考えてございますが、1点、大澤委員から御質問いただいておりました「取引上の社会通念に照らして」というところは、正しく社会としてどう捉えられているかということかと存じます。それが、社会としてはそのように受け取られているということであれば、結果的に消費者も事業者もそのように受け止めるということになるのではないだろうかと考えております。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。それでは、以上を踏まえて更に御質問があればと思います。

では、増田委員、続いて長谷川委員、続いて松本理事長。

○増田委員 1点確認なのですけれども、具体的な例を挙げていただく場合に、その人の置かれた状況ということも非常に重要な要件になるかと思います。例えば、就職活動をしているけれども、人間関係に自信を持っていない人とか、屋根を見ることのできない高齢者、それからいろいろな心配ごとがあって占いでもしたいなと思うような人、そういう人たちが普通の精神状態である人と同じ勧誘を受けたとき、やはりそのときに不安に思うレベルというのが違うだろうというふうに思います。

ですから、具体的なこういうことが当てはまりますということを挙げていただく際には、やはりそういうことも配慮したことを書いていただく必要があるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。先ほど事務局からの御説明について座長が何度も確認されたところなので誤解はないと思っているのですが、要するにこれは、英語でいうと、エンファシスと、誇張を意味するオーバーステイトの両方が入っているということをおっしゃっているのだと思います。しかしながら、日本語で「過度に強調して」というと、伝え方の問題(エンファシス)でしかないように読める感じがいたします。伝え方の問題(エンファシス)と誇張みたいな話(オーバーステイト)があるとすると、むしろ悪性というか、取り消されて仕方ないと思われるような状況は誇張のほうにあるのではないかという気がいたします。

「過度に」があるから絞り込まれているということかもしれませんけれども、事実を強調して伝えること自体が取り消されてしかるべきような状況なのかということは議論する必要があるかと思います。また、「過度に」というのが曖昧だということもあるので、本来対応すべき事例に対象が絞られるような文言としたほうがいいのではないかという気がいたします。

○山本(敬)座長 では、松本理事長。

○松本理事長 幾つかあるのですが、1つは屋根の修理のケースはちょっとここに挙げるのは不適切かと思います。すなわち、業者が屋根に上がって、大変な状況になっていますと言って、写真を見せる。それが嘘だった。これは不実の告知です。事実の判断ができるレベルの話をここで持ってこないほうがいいと思うのです。これを入れてしまうと、本当に屋根が大変な状況になっている場合でも、そういうことを告げたら取り消せるというとても変な話になります。ここで基本的に挙がっているのは、みんな事実としての確認をその時点ではできない、将来起こり得る何かですよね。将来、あなたはこうなりますということについての話なわけです。

私は、後藤座長代理は断定的判断で考え直せという趣旨で言われたのだと思って、これはいいアイデアだと思ったのですが、御本人がそうじゃないとおっしゃったので一人説になってしまいましたけれども、2-1とか2-2というタイプまでここで何とかしようと思うならば、やはり断定的判断という要素を入れないとちょっと無理ではないかなというのがもともとの発想なのです。

3のタイプに関しては、別にそういうことは要らないかもしれないのですけれども、先ほども言ったように健康状態等について現時点でこのままの食生活をしていればあなたは生活習慣病になる可能性がかなりありますよということ自体、これはなるかならないかは確かに分からないから将来のことだけれども、そういう科学的な一定の根拠があって言うこと自体はおかしくないと思うのです。

そこで問題があるとすれば、このままだと確実にこうなりますよ。それを避けるためには我が社のこれですよという形につなぐ。この危険を我が社のこれで100%に近い状況で回避できますという形で不安を煽るとともに、救済の光がここにあるということで買わせるという形が問題になるのではないかと思います。

そうすると、危険あるいはリスクについての断定的判断とその回避方法についての断定的判断、2つの面での不当性というのが相当言えるのではないかということなのです。2-1とか2-2をこの例から外してしまうということであれば、断定的な判断の提供をして決めつけているということについては、そんなに強調しなくてもいいのかもしれないです。

○山本(敬)座長 それでは、丸山委員。

○丸山委員 損害又はその危険というところに関し、災いが降りかかるとか不幸になるといった、およそ事実かどうか検証できないという事項と、松本委員なども言及されている、地震が来たら家が崩壊する危険があるといったことで不安を煽るという、事実かどうかは判断できる類型があります。

案としてはこの両方を捕捉しようとしていて、合理的な理由があるかないかというところで、事実だったら合理的理由があるよねというような絞り方を構想されていたのか。それとも、事実かどうかはよく分からないので、不実告知とかでは使えないような事例だけを狙った案なのかという辺りを、もう一度説明をお願いできればと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

それでは、消費者庁からお願いします。

○消費者制度課担当者 基本的に念頭に置いておりますのは、事実かどうかというのが分からないということを想定しておりまして、先ほどの屋根瓦のケースも実際にその写真が嘘であるというようなことで、事実かどうかをその場で確認できるというようなものは念頭に置いていた事例ではないですが、ここではむしろ事実かどうかは分からないケースであるけれども、その態様が問題があるということで想定したものでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 この問題は、やはり断定的判断のところと余りリンクさせないほうがいいと思います。

1つは、誤認を惹起させることによって勘違いをしたような契約は取り消させてやろうという話で出てきている問題と、それからその自由な判断をするときの自由を拘束してしまうというような場面での、その拘束がよくないという意味で取消しをさせようということですから、ここで問題にしているのは合理的な判断が期待できないような状況につけ込んでいるという点が一番大事なのだということだろうと思います。

合理的判断ができないほど畏怖したり、あるいは困惑したりするということの大きな原因は、やはり害悪を告知されているというところにあることは民法の強迫などと同じ部分があるので、私としてはむしろそれが事実かどうかはともかく、一定の害悪の告知というのがあって、それによって不安を覚えて契約をさせられたというところまでいけば、それで十分要件としては成り立つのではないかという気がいたします。

先ほど外したほうがいいと言ったのですが、いろいろ話を聞いているうちに、提案をしているような形で限定をして、状況作出についてはもうこれでさっとまとめてはどうかと思うようになりました。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。他に御質問、あるいは御意見があればと思いますが。

では、消費者庁のほうからお願いいたします。

○加納消費者制度課長 いろいろ御指摘をいただきましたので、ちょっと検討したいと思いますが、私どもとしてはやはり石島委員の御意見や永江委員の御意見をどう受け止めるかということで検討したいと思います。

この「過度に強調する」という言い方は、後藤準委員から御指摘があったように、一定の用例に則して検討しておりまして、後藤準委員からいろいろ適切に御紹介いただきましたけれども、相当絞り込まれた概念であるということでこれを引っ張ってきています。

具体的にどういう事例が挙がるかということについて、後藤準委員が貸金のケースではこうだと、それ以外はどうかというのは、それ以外のことも当然入り得るわけでありますけれども、相場感としてはそんなものです。さらに「合理的な理由もなく」、そういったことを告げるということで構想したものであります。

要するに、価値判断としてどうなのかというところをまずコンセンサスを得ていただかないと先に話が進みませんので、どういう事例を念頭に置くのですかということに関してでありますが、4ページから事例の1-1以下で幾つか御紹介をしておりますけれども、お話をお聞きする限り、違和感があるという御指摘があったのは事例の1-2と2-1、2-2の3つぐらいというふうに承りました。

それで、永江委員からは、このほかに背景となっている何かの事実があるのではないかという御示唆をいただきました。確かにその可能性はありますが、主としてPIO-NETの情報などから得ている限りで私どもも検討しているという限界はございますが、ただ、今回の御提案は一定の告知をすることによって誤認ではなく困惑をしたというケースであります。

単に何かを告げて直ちに誤認して取消しというのではなくて、やはり困惑というそこにワンクッションがございますので、例えば有山委員などから御指摘がありましたように、長時間の説得とか、そういったことなども踏まえて困惑といった見方もあり得るのではないかと思います。

また、2-1、2-2の事例で、ここは価値判断としてこういった事例を念頭に置くべきかどうかという点につきましてはもう一度検討したいと思いますが、これは書かれざる要件といいますか、書かれざる背景で大変恐縮でございますけれども、この手のトラブルは多い。

多いのですけれども、ヘアーサロンにおけるチェックがどういうふうにされていたかということでありまして、お医者さんとか、そういう資格もないのに、さも客観的な検査であるかのような説明がされて毛が生えなくなるとか、そういうふうなことで、それは大変だということで困ったというような相談が多いという認識がございます。

ですから、そういった背景があるということでちょっとお示しをしているものでございまして、逆に言いますとそういうものがない事案は必ずしも適用の対象にはならないのではないか。合理的な理由がないケースでありますので、そのチェックがそれなりに一定の資格とか、客観的な検査でありますとか、そういった形できちんとやっておられるのであれば、それはそれで合理的な理由に基づく告知というふうな評価もできるのではないかと思いますので、要するにどうしてそういうふうなことをおっしゃるのですかと事業者が言うときに、こういった危険を言うのであれば何らか理由があるはずであります。一般的にやはり危険を言われますと、消費者としては不安に陥ることがある。その、なぜそうなのかというところについて、合理的な理由があるのであれば、それは当然それも一つの見方でしょう。

ただ、それが事実なのかどうなのかというのはどこまでいっても分からないところがございます。将来、不幸になるかどうかというのは、それは分かりません。事実とも言えるし、事実でないとも言える。ですから、これはどこまでいっても不実告知などで対象と捉えようとしますと、当該告知内容が事実でないことであって初めて取消事由となりますから、事実か、事実でなければ分からないというのであれば取消事由とはならないというふうに考えざるを得ないところでありまして、そういったところをどうやって拾いますかというのが私どもの問題意識でございます。

あとは、あえて申し上げますと、石島委員の御発言の中で若干違和感がありましたのは、河野委員からも御指摘がありましたけれども、おもちゃを買わないと友達に仲間外れにされるという言い方、これが一般的に取引通念において取引上よくあるのか、あるいはそれを保護すべきなのかというところは私にはよく分かりませんでした。ですので、もし仮にそうであればそうであるとおっしゃっていただいた上で、それは保護すべきであるというのであれば外すというのを要件として考えるということになろうかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。今の点について、補足するような御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。

2-1、2-2の事例と対比されるべきなのは、例えば病院等の医療機関において検査を受けて、このまま手術をしなければ余命が半年、あるいは1年であるということを告げられて、手術をするか、しないかと問われた。これで当惑はするかもしれませんが、困惑するかどうかはまた別問題ですけれども、少なくともこのような場合には、合理的な理由がある。事実としてどうかというのは本当のところは分からないかもしれませんけれども、やはり合理的な理由をもって示されていることですので、そもそもこのレベルで要件を満たさないということになるのだろうと思います。

事例2-1、事例2-2が取り消されるべき場合に当たるというのは、正しくその点で合理的な理由が欠けていると評価されるからだろうと思われます。ですので、河上委員長が撤回してくださったので、ほっとしたのですけれども、やはりこの要件がないことには実際には判断が難しくなっていくだろう。少なくとも、過度に強調の部分にたくさんのことが含まれていくことになってしまうと危惧していました。そのような観点からも、「合理的な理由もなく」に相当するような要件をやはり設定する必要があるだろうと考えられます。

ただ、何人かの方が危惧しておられたのは、それでは、ある具体的なケースで合理的な理由があるとされるのか、ないとされるのかがよく分からないということでした。少なくとも事前に一義的に判断できないのは困るというですが、逆に、このような評価の余地のある要件を入れておかないと、どのような要件を設定しても過剰な規制になっていく可能性があるように思います。合理的な理由が適切な文言かどうかは次の問題ですけれども、やはりこういったものでカバーしないことには、実際にはうまくいかないのではないか。少し言い過ぎたかもしれませんが、民法学者としてはそう思うところだということを付け加えておきたいと思います。

以上、第1の「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」について、たくさんの御意見等をお出しいただいて議論をすることができました。これでこうしましょうというコンセンサスが得られたとは、現時点ではまだ言えないとしましても、規制の必要がある場合があるということは共通認識として得られているのではないかと思います。あとは、そうだとして、どのような形で要件を設定していくかという点を更に詰めていく必要がある。今日いただいた御意見をもとに、更にもう一度練り直して、次回、改めてここで御検討いただくということでよろしいでしょうか。

時間が限られてまいりましたので、次回ぐらいがタイムリミットにはなってきますけれども、非常に重要な論点ですので、慎重かつ十分な審議をして進めていきたいと思います。引き続き御協力のほどをお願い申し上げます。

それでは、山本健司委員、先ほど留保された点について御発言をお願いいたします。

○山本(健)委員 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。「第1」の論点につき、立法提案に関する意見を付加させていただきたいと思います。お手元の資料2が、意見の補足資料となります。

本日消費者庁から御提案をいただきました2つの規定は、いずれも、事業者が不公正な行為を用いて消費者の合理的な判断をすることができない事情を作出又は増幅した上で勧誘をするというタイプの不当勧誘行為を取り消せるようにするものです。

しかし、実際の被害実例には、高齢者や知的障害者が既に合理的な判断をすることができない事情にあるということを知りながら、消費者に不必要な契約を勧誘するというタイプの不当勧誘行為が少なくありません。

この点、第1次改正で過量契約については救済規定ができました。しかし、第29回会議の資料2で「判断力の不足の利用」に関する被害実例として紹介されていた事例4も、高齢者の認知症に乗じて客観的な価格の6割にも満たない金額で事業者が土地を買い取ったという事案内容であったように、過量契約規定だけではつけ込み型不当勧誘への法整備として不十分です。

今日の我が国では、高齢化社会の進展の下、高齢者の判断力の減退につけ込んで不必要な契約を締結させ、経済的損害を与えるという被害実例が多発しております。また、知的障害者に対する類似の被害実例も発生しております。そのような事案の被害救済が可能な消費者保護規定を規定する必要性は極めて高いと思います。

ちょうど一昨日の6月7日の読売新聞の朝刊でも、「認知症患者ら標的。悪質商法。知的障害者も被害」という表題の下、高齢者や知的障害者へのつけ込み型不当勧誘の消費者被害の多さが報道されておりました。そして、その新聞記事においても、改正消費者契約法の過量契約規定は限定的で課題が残っている、例えば、知的障害者が店頭で高額な商品を買わされたケースには対応できないという指摘がなされておりました。

この専門調査会が平成27年8月にまとめた「中間取りまとめ」では、「事業者が消費者の判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させるという事例について、一定の手当てをする必要性があるということについては特に異論はなかった」という基本的な問題意識のもと、適用範囲の明確化という点が残る課題とされておりました。

この点、日弁連試案のような立法提案は適用範囲が広過ぎる、適用範囲の明確性に問題があるということであれば、せめて喫緊の問題である高齢者や知的障害者に対するつけ込み型不当勧誘に適用対象を絞ってでも、そのような事案の被害の救済のため、本日配付した資料2の1ページ下部に記載のような規定を設けることを、是非とも併せて検討していただきたいと思います。

具体的には、「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者の年齢又は障害による判断力の不足に乗じて、当該消費者の生活に不必要な商品・役務を目的とする契約や当該消費者に過大な不利益をもたらす契約の勧誘を行い、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」という規定です。

「高齢者、その他の者の判断力の不足に乗じて契約の締結を勧誘する行為」というのは、資料2の添付資料にまとめましたとおり、既に全国の地方自治体の消費生活条例において、事業者の不適正な勧誘行為と位置付けられている行為類型ですので、事業活動にとって、新たな違法行為が付加されるといった位置付けではないはずです。また、消費生活条例の使用例に加えて、特商法施行規則でも使用されている字句ですので、適用範囲も明確であると考えます。

是非、このような趣旨の規定を設けることを併せ御検討いただきたいと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。今の補足的な御提案について、この時点で特に御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

磯辺委員。

○磯辺委員 既にある状況を利用して、やはり特に高齢者の判断不足等を利用して不必要なものを売りつけるという被害は多いですので、ここは何らか手当てが必要だなと常々感じているところです。是非御検討いただければと思います。

○山本(敬)座長 河上委員長。

○河上委員長 最初に申し上げたとおりでして、作出型以外に状況濫用型のものについての手当ては併せてやっていただきたいと思いますので、この点を是非お願いしたい。

消費者委員会としてもワーキンググループで既に成年年齢の引き下げに伴って、若年者というものについての一定の保護ということを要求しておりまして、若年者に限らず高齢者も障害者も併せてそうした判断力とか経験等の不足ということに乗じた契約、つけ込み型の契約については手当てをしてくださいということをお願いしていたところでございますので、今回の山本健司委員の提案については、是非前向きに考えていただければと思います。

○山本(敬)座長 増田委員。

○増田委員 判断不十分の高齢者であるとか、障害のあるようなケースで過去にどういう勧誘を受けたかということが聞き取りの中で十分に情報を入手できない。それで、結局相手方事業者と具体的な話合いにならないというケースが数多くありまして、あっせん解決が非常に困難な事例になっています。

したがいまして、その人の判断不十分の状況プラス不要な契約というようなことで取消しができるというような方向性については是非検討していただきたいと思います。

○山本(敬)座長 松本理事長、続いて河野委員。

○松本理事長 高齢者とか障害者の判断力不足、その他の特性につけ込むタイプの勧誘について、一定の救済が必要だということはそのとおりだと思いますが、この文言でいいのかどうかについてはもっと精査する必要があるのではないか。

例えば、不必要な商品・役務という言い方で、これで適切なのかどうかです。将来の生活が大変なのだからお金をたくさん貯めておかないと駄目ですよ。だから、こういう金融商品がありますよというのが不必要な契約なのかという点は、それだけでは大変判断の難しいところがあります。

さらに、過大な不利益をもたらすということも一体何を意味しているのか。金融商品であれば、うまくいけばかなり収益があるかもしれないけれども、そうでないと相当損をするというタイプのもの、うまくいかない場合には過大な不利益になるというリスク性の大変高いものは駄目であるという趣旨であれば、そういう点をはっきり書いたほうがいいと思いますので、要件の絞り方についてもう少し検討したほうがいいと思います。

○山本(敬)座長 河野委員。

○河野委員 今回、山本健司委員から御提案いただきました状況の濫用型に関しましては、是非消費者側からもこの機に御検討いただければと思います。松本理事長から今、御発言があったように、文言をどうするかにおいては更なる検討が必要かもしれませんけれども、高齢者の方、それから障害者の方への対応というのはやはり待ったなしだと思っております。消費者契約法の中でも、こういった形での対処を要望いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

中村委員。

○中村委員 まだ御提案いただいたばかりですので、業界としての考え方とか、いろんな事業者さんの考え方というのはこれから整理をしていく必要があるかと思いますが、高齢の方や障害のある方の判断力の不足に乗じるということについての何らかの対応について検討自体はあり得る話かとは思うのですけれども、やはり文言立てとか、例えば今、高齢の方ということで主には御提案いただいたという理解なのですが、先ほど河上委員長からもありましたような、若年者のほうもここで含もうとしているのかというところに関しては更に検討が必要なのではないかということが一つです。

あとは、年齢ということに関して、当然高齢でもしっかりしていらっしゃるというか、高齢というのはそもそも何なのか。今の高齢化社会という中でどこから入れていくのかというところは見ていかなければいけないですし、それから過大な不利益であればいいのかという感じがしなくもないのですけれども、不必要な商品か役務かどうかというのは消費者の側から後から見てみると不必要かもしれないが、事業者としてはそういうことは考えていなかったというようなケースもいろいろあるかと思いますので、文言については慎重な検討が必要ではないかと考えます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればどうぞ。

長谷川委員。

○長谷川委員 高齢者の方でありますとか障害のある方への対応というのは検討すべきことかと思いますが、その上で2点ございます。

1点目は、御提案のあった文言についてです。先ほど松本理事長からも御指摘があったように曖昧なところが多いのではないかと思っております。具体的には、先ほど松本理事長から御指摘のあった「不必要な」でありますとか、「過大な」という文言に加え、「判断力の不足に乗じて」についても判断力の不足を事前に事業者が知り得るのかどうかというところもあろうかと思っております。

2点目といたしましては、本日の前半で議論した「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」については、そもそもいわゆるつけ込み型というのを検討する中で、知りながらという要件等も検討したものの、それではなかなか難しいということで困惑類型での立法化を目指しているというのが今の議論の状況というふうに理解しているところでございます。今回の提案は、これまでの検討で上ってきたものと類似の提案ではないかと思っているところでございます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

山本健司委員、よろしいでしょうか。

○山本(健)委員 御意見をいただきまして、ありがとうございます。

条文案についてはただ今ご提案させていただいたところですので、要件・文言をこの専門調査会で今後御議論の上、詰めていただくというのはもちろんあり得る話でございます。原案の文言・要件に固執するつもりはございません。つけ込み型不当勧誘に関する法制度を定めるということが大事であると考えております。この条文案をたたき台にして、是非とも立法化を御検討いただきたいと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

たくさんの方からやはり対応を図るべき問題であるという御指摘を受けましたが、他方で、このような規定の仕方で良いのかどうか、更に慎重な検討を要するという御指摘もあったところです。御承知のように、この専門調査会の日程を考えますと、そうたくさんの余裕があるわけではない状況ですので、それも踏まえながら、取り上げるかどうか、取り上げるとすればどう取り上げるかということを含めて、次回までに慎重に検討した上で、必要に応じてまた改めてここで検討いただくということでよろしいでしょうか。

消費者庁のほうから、特にありますか。今のようなところでよろしいでしょうか。

それでは、どうもありがとうございました。私の不手際でかなり時間が進行しておりますので、55分まで休憩ということで御容赦ください。

(休憩)

≪3.困惑類型の追加≫

○山本(敬)座長 それでは、ただ今より議事を再開したいと思います。

では、消費者庁より「困惑類型の追加」について御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、御説明させていただきます。

資料の11ページ目以下でございますけれども、「困惑類型の追加」の論点については第35回において御検討されたところでございます。第35回における提案内容としましては、消費者が意思表示をする前にその消費者契約における義務の全部または一部の履行に相当する行為、または当該行為に関連する行為を事業者が実施したことの代償として契約の締結を迫る。そして、それによって困惑した場合には取消しを認めてはどうかというものでございます。

この提案に対しては、勝手に作業をされたのであれば消費者としては支払を拒絶すれば良いだけではないかという指摘がある一方で、義務の履行に相当する行為によって消費者側が困惑する余地が相当程度定型的にあるとする指摘もまたございました。

また、提案内容に関してはこの「関連する行為」及び「迫る」の意義が明確ではなく、適用範囲が曖昧だという指摘もあったところでございます。

そして、事業者団体の皆様に対するヒアリングにおいても12ページ目でございますけれども、「関連する行為」の外延が不明確であるといった意見が見られたところです。

改めて行為類型について考えますに、事業者が、消費者が消費者契約の意思表示をする前に契約締結を迫る行為として、例えばでございますけれども、物干しざおの移動販売などの形式では消費者が商品を選んでいないにもかかわらず勝手に物干しざおを切りそろえてから代金を請求するといった相談事例、またいわゆる送りつけ商法のように消費者が申し込んでいないにもかかわらず勝手に商品を送りつけてから代金を請求するといった事例もございます。

第35回の資料1にも記載しておりました事例も考慮いたしますと、契約の目的となるものに応じて多様な手法によって実施されていることが伺えるのではないかと思います。

他方で、多様な手法に対応する必要はあるものの、前回の提案ですと行為類型が混在しているという御指摘なども見られたところであり、通常の取引までに影響を及ぼさないような適切な範囲に対象となる行為を画する必要もあるため、本資料では事業者が実施する行為の内容から前回提案を第1類型、第2類型として2つの類型に分けて検討しております。

それでは、第1類型の「履行に相当する行為」についてでございます。この類型については、事業者が履行に相当する行為を実施した場合であっても、消費者としては契約を締結したことを理由に当該請求を拒めば足りるのではないかという指摘が考えられるところでございます。

しかしながら、その場で消費者が支払を拒絶するということは通常期待し難いと言えるのではないかと考えております。

その理由でございますけれども、一定の既成事実が作出されますと、事業者が消費者のために一定の行為をしてくれたという見方もまた可能になりますので、消費者が相手方たる事業者に申し訳ないという負い目を感じることも考えられるかと思います。

また、消費者が一方的な給付をされるということで、事業者に対して業務の中止を求めることですとか、場合によっては給付された利得を返還するなどの何らかの対応を迫られるということにもなるかと思います。

このように、負い目ですとか過大な負担がかけられることで、消費者は交渉を諦めて事業者に代金の支払をしてしまうということも考えられますので、消費者に支払拒絶を求めることは困難を強いるものになると言えるのではないでしょうか。

このような負担を消費者に生じさせる行為自体が許されるものではなく、一方的に困難を強いられる消費者に対して拒否などの対応をすべきといった指摘は当てはまらないのではないかと考えております。

また一方で、仮に消費者が支払を拒否した場合には、事業者としては代金を請求できないばかりか、既に実施した業務自体が無駄になる可能性もあると言えるかと思います。そのため、そのようなリスクがあるにもかかわらず、消費者が意思表示をする前に事業者が進んで履行に相当する行為を実施することは、通常の取引においては考え難いと言えるのではないかと思います。

事業者が履行に相当する行為を実施するのは、消費者を意思表示せざるを得ない状況に追い込むためと考えられますので、消費者の意思決定の自由を侵害する行為ではないかと考えております。

以上のとおり、事業者が履行に相当する行為を実施すること自体が、消費者に契約の締結を迫る要素を含んだものと言えるのではないかと思います。そのため、履行に相当する行為を実施した代償として代金の支払を請求することが、「迫る」という行為の具体的な表れだと考えられますので、前回提案の際には用いていた「迫る」という文言を直接用いる必要はないものと考えております。

以上のことから、14ページの条文案のところですが、御提案として「当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に当該消費者契約における義務の全部又は一部の履行に相当する行為を実施し、当該行為を実施したことの代償として当該行為の対価に相当する金銭の支払を請求すること。」といった案などが考えられるかと思います。以上が、第1類型の御説明です。

次に、第2類型の「関連する行為を実施する場合」でございます。「関連する行為」については、前回も「関連する行為」の外延が不明確という指摘がございました。この関連する行為を考えますに、事業者が契約の締結を迫る行為を実施するための前段階として、消費者に何らかの負い目を感じさせるものが対象として想定されるかと思います。

そこで、事例1から3を御参考のために紹介しております。

事例1については、第35回の資料1において事例3として御紹介したものを再掲しております。そして、この事例2と3が新しく御紹介するものです。

まず事例2でございますけれども、こちらは不用品回収業者のトラックを消費者の方が呼び止める。その後に部屋まで事業者に来てもらって、回収するので品物を出してほしいと事業者が言ってきたので幾つかの不要な家電製品の引取りをお願いしたところ、「全部で3,850円になる」と告げられたので、消費者としては無料だと思っていたのでお金がかかるならばやめると言うと、急に事業者が態度を変えて、「わざわざ上の階まで来ているのにこのままでは帰れない」と脅し口調になったので、消費者としては1つだけでも持って帰ってもらわないと帰ってくれないと思い、一部の家電製品について代金を支払って引き取ってもらったという事案です。

次に事例3でございます。こちらは、消費者がインターネットで調べた遠方の探偵業者に連絡して一度事務所で説明を受けたところ、後日、探偵業者のほうから再度説明するために自宅近辺まで行くのでと言われ、市内のカラオケボックスで説明を受けたというものです。その際、事業者から、「わざわざ遠方から説明に来ている」などと言われて契約をしないといけない雰囲気になり、消費者としては契約を締結してしまったという事例でございます。

これらの事例を検討しますに、事業者が迫る行為を実施するための前段階に該当し得る行為としては、例えば特定の場所まで出向くですとか、商品等の説明を長時間実施するといったものでございまして、通常の取引においても契約を締結することを目的として実施される行為だといえるのではないかと思います。

関連する行為を消費者に何らかの負い目を感じさせるための手段の一つにすぎないと考えた場合には、関連する行為を具体的に規定せずとも、事業者が消費者に対して迫る行為の内容次第で消費者を困惑させることがあり得るのではないかと考えております。そのため、迫る行為の態様によって適用対象を明確にすべきであって、関連する行為によって適用対象を画することは困難ではないかと考えております。

また、このような行為はその性質上、消費者が承諾等の意思表示をする前に行われるものでございますので、この第2類型の要件としては前回の提案にございました「当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に」とする要件は不要ではないかと考えております。

では、この場合の「迫る行為」が何かというところでございますけれども、先ほどの事例を見ますに、事業者が消費者に対して「(消費者の為に)わざわざ○○をしている」ということを告げて契約の締結を迫っている点が特徴的ではないかと思います。消費者が契約の締結を拒否することは、これまで当該消費者のために要した費用ですとか労力を無駄にするものであるとして、消費者が当該消費者契約の締結に応じないことによって、事業者に損失が生じることを告げる。そのことによって、契約の締結を迫っていることが伺えるのではないかと思います。

単に事業者に損失が生じることを告げるだけではなくて、当該消費者のために実施した行為によって費用や労力を特別に要したという点をも過度に強調することで、相手方たる事業者に迷惑をかけているという、いわば倫理的な観点からも消費者を非難していると考えられるかと思います。

本来であれば契約締結のために要する費用などをどの程度かけるかは事業者が自身の責任で判断して負担すべきものと言えるかと思います。そのため、契約締結のために費用などを要したとしても、そのことを理由として消費者を非難し、契約の締結を迫ること自体が不当であると言えるのではないかと思います。

また、いかなる態様であれ、関連する行為を実施することで当該事業者が消費者のために一定の行為をしてくれたという見方も可能になるかと思いますので、こういった関連する行為の実施もあいまって、消費者は消費者契約を締結しなければならない状況にあるものと困惑して契約の締結に及んでしまうと思います。

以上のことから17ページ目のところでございますけれども、条文案といたしまして「当該事業者が当該消費者と契約を締結することを目的とした行為を実施した場合において、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしないことによって、当該行為が当該消費者のためにされたものであるために当該事業者に損失が生じることを過度に強調して、当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を求めること。」といった案を提案させていただいております。以上が、第2類型の御説明です。

最後に、第35回において消費者の申込み又は承諾の意思表示の有無についての立証手法等を検討すべきではないかという御指摘もございましたので、まずその検討する前提として立証責任が消費者・事業者のいずれにあるかについて検討しております。

一般的に立証責任を考えた場合に、それぞれ自己に有利な法律効果の発生要件事実について立証責任を負うと考えられるかと思いますので、新たな困惑類型として今回追加した場合には、取消しを主張する消費者側に立証責任があると言えるかと思います。

そして、当該消費者が意思表示をする前という要件に関しては、消費者の意思表示と事業者が行為を実施したこととの先後関係について消費者が立証責任を負うことになるかと思います。

こういったことを踏まえまして18ページ目でございますけれども、先ほど御説明した第1類型案、第2類型案、それぞれの趣旨の規定についてどのように考えるかということを御検討いただければと思っております。

御説明は以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ただいまの御説明に関しまして、質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問、御意見のある方は御発言をお願いします。

中村委員。

○中村委員 こちらの御提案に関しては、基本的にはかなり不十分ではないかと感じております。

まず、第1類型のほうでございます。ちょっと卑近な例で恐縮ですけれども、全く何も取引関係等がない状態で、確かに事前に何かを一部履行するということは普通は考えにくいとは思うのですけれども、例えば私どもスーパーで毎週金曜日の夕方に近海魚のいいものを買って毎回お刺身を作ってくれというお客様がいて、「毎週お願いね、この時間に来るんだからやっておいてよ。」というような話をしていた。そういうことで、お店に今週も来るということで準備をしてお刺身を作っておいたところ、お客さんが来て、実は主人が遅くなるから今日は要らないのよ、まあいいじゃないですかみたいなことで一応買って帰った後で、やっぱり要らないわと言われてしまう。

例えばそういうシチュエーションを想像していただいたとき、別に強要しているわけではないのですけれども、それこそせっかく作っておいてもらったのだから悪いなと思って買って帰るということ自体、何ら双方に悪性があるかというと、それはないのではないかというのが私の考えでございます。

そういうことで、最初の13ページから14ページに記載がしてある、一部の履行や全部の履行を事前にする行為というのは、そもそも普通の事業者に考えられないという考え方自体について反対でございます。

では、どういうふうに考えていったらいいかというと、そもそもそういうことで支払を迫る事業者の悪性というのはどこにあるかというと、やはり強要するというところにあるのではないかと思いますので、迫るという表現がいいかどうかは別として、その契約の締結を強要するというような要素をまず焦点に置きながら、その前段の段階としてその理由がないのに履行を事前にして、その契約を迫るというような形での文言立てを考えていただけないかというのが第1類型に関する意見です。

第2類型についてなのですけれども、こちらにつきましても例えばですが、ここで出ている案件で、探偵業者が遠くから来たということで、この説明ですと自宅近辺まで行くのでというようなことで話をされたので、そこがある意味では虚偽であったということなのかもしれませんけれども、当然その契約締結に至るまで事業者の側で特定の消費者の方のために何らかの費用が発生するという状況はあるわけです。

私が消費者であれば、通常はその交通費について私は契約まで払わないということでいいですねというようなことを確認して、それで後で払えと言われても、それは納得しなかったのでやりませんよということだと思っております。

ですから、そこの準備行為について損害、そういう説明がなくて来てもらったことについて費用ぐらい払ってもらえませんかということ自体は別に悪いことではないのではないかということでございまして、そういうことではなくして損害を過度に強調するとか、あるいは消費者側にも事業者側が間違ってほぼ契約してくれると思ったからお金をかけたというようなことがなかったのかどうかというところの評価ということも考えなければいけないのかなということで、やはりそこにプラス何らかの強要行為みたいなものが入ってくるべきなのではないかというのが私の意見でございます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、石島委員。

○石島委員 3号案について申し上げます。

第1類型については、救済すべき事例が今回の資料の中では挙がっていないように思います。前回挙げていただいた事例については、いずれも救済すべき事例であるかどうかは疑問だという旨を申し述べさせていただきました。更なる検討に当たっては、具体的な事例を挙げていただけるとうれしいと思いますので、是非御検討いただければと思います。

あとは、私もこういう例がこれに当たるとどうなるのだろうかというもので一つ思い当たるのが、例えば居酒屋などで出されるお通しなどは注文しなくても提供されるのですけれども、こういうものも当たってくるのかどうかというのがよく分からなかったということを申し上げます。

4号案について申し上げます。お客様のために営業活動を行ったことについて頑張ったということをアピールしたいというのが営業担当の心情として不思議なものではないと思うのですけれども、そういったアピールと当該事業者に損失が生じることを過度に強調するという行為との線引きが難しいようにも思われます。

また、事業者が契約に先立って消費者にきめ細やかな情報提供として、例えば幾つも見積りを出したりなど、そういった手厚いサービスを行ったり、お客様からの値引きの要望に対して社内で調整を行ったりすることがあると思うのですけれども、そういった努力に対するアピールができないということになると、事業者が結局取消しのリスクを恐れてサービスの低下につながるということも考えられますし、結果として消費者の利益につながるのかというのは疑問に思います。

また、事業者に迷惑をかけているという心理的な圧力を利用して消費者を過度に非難しているということが問題の焦点なのであれば、そういったことを要件にすることも検討できるのではないかと思いました。

また、契約が成立しなければ、契約締結上の過失が認められるほどに消費者自身が契約の成立への期待を高め、また事業者が履行に向けた行為を行わせたという事情のもとで消費者が契約の締結をしないと言い出したので、事業者が苦言を呈した結果、契約の締結に至ったような場合であっても、この要件の下では一方的な取消しが認められかねないという点には違和感を覚えます。消費者のほうに過失や落ち度がないということについても、要件に追加することを検討してもいいのではないかと思います。

また、いただいている事例1から3のようなケースは不退去、退去妨害でも対応できるのではないかと思われ、これについても事例の精査というものが要るのではないかと思います。

最後なのですけれども、先ほど検討した論点にも関連しますが、一般的な営業トークによって消費者契約締結に至ったというものが、一般的なものであれば取消しの対象にならない形で御検討いただけるというふうに理解はしているのですけれども、過度な消費者契約法による事業活動の制約が、実質的な事業者への表現面や活動面での過剰な規制となる側面が出てくるのではないかという観点から、これまでの議論の方向性に懸念を持っているところでありますので、更なる御配慮をいただきながら御検討をいただければ幸いです。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思います。

永江委員。

○永江委員 趣旨は理解しているつもりなのですが、意見として若干述べさせていただきます。この要件に該当する事業者の行為の中には、中村委員からの御指摘もあるように、行為と金銭の対価関係、行為の消費者にとっての必要性を総合的に考慮した場合には、それほど悪性があるわけではないと言える場合もかなり含まれることになるのではないかと思われます。

また、先ほど言及がありましたように、いわゆる契約上の過失という理論があると思います。当該理論に基づいて、事業者が消費者に対して損害賠償請求等を行い得るような事案であっても、今回の御提案では第1類型、第2類型とも文言上は契約を取り消し得るようにも読めるように思いますが、このような結論というのは全く違う理論なので、別にそれでもいいのだということもあるかもしれないのですが、結果の妥当性という観点からは個人的には違和感を覚えます。

ですので、第1類型案、第2類型案、共に事業者側の悪性等を何らか要件として取り組むような条文上の作り込みをしていただく必要があるのではないかと考えます。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、井田委員。

○井田委員 では、私のほうから意見を申し上げます。

私は、結論としては第1類型案、第2類型案というような形での規定を作ることには賛成をしております。この第1類型、第2類型に当たりましては、先ほど来、意見がございますように、事業者側の正当な事業活動まで非常に規制するというか、萎縮してしまうのではないかというような御懸念がございました。私は、先ほど中村委員が挙げられたような例につきましては、困惑したことにはならないと思います。人間関係があった上での話ですから。

また、第2類型についても同じようにやはり困惑というファクターの中で、それで本当に困惑して契約したのかというようなところで、いろいろな人間関係だとか、その交渉経緯のやりとりを検討することは可能だと思っておりますので、私個人としては必ずしも過度に委縮させるようなことにならないとは思いますが、確かに先ほどの「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」に比べると、一見して事業者の活動が制限されるのではないかというような懸念を持たれるような要件かもしれないので、要件立ての検討は必要でしょう。ただ、私個人としては困惑というところで何とか適正な営業的活動と、そうでない活動の区分けはできるというふうに思っております。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればどうぞ。

河上委員長。

○河上委員長 私は、これは両方ともある種の押売だと思うのです。それで、それはよろしくないことなので、できるだけ制限できるようにということだろうと思うのですけれども、さっき中村委員がおっしゃっていたスーパーのケースですが、継続的な取引関係の中で期待される行為というものについてはちょっと別の議論が行われるはずです。そうすると、毎週金曜日にお刺身にしてくれたものを買うというような継続的な取引関係があるときに、最後の1回目のときに買ってくれなかったというのは、むしろ買わなかったほうがまずかったという話に契約関係の解釈としてはなる可能性があるという気がいたしました。

むしろ問題なのは単発的な契約の場合でして、このときに目の前でおいしそうねと言ったらすぐにさばき始めたということになると、私は買わないかもしれないのよということを言ってあげないと駄目なのかということなのです。そこは、もうここまでさばいてしまったのだから買ってくださいと言うと、これはやはり押売ということになるのだろうと思います。

もし、そこのところをあえて何か書き込まないと危ないというのであれば、やはり不要であるということが分かっている、あるいは不要であるという意思表示をお客さんが明示黙示にしているにもかかわらず、その履行行為をやっているというのに、それなのにやって、これだけやったのだからというふうに言い募るというのは、これはまずかろうという言い方ができるのではないかという気がいたしました。

それからもう一つ、第2類型のほうですけれども、第2類型も頑張ったことをアピールしてどこが悪いという石島委員のお話があって、それは構わないと思うのです。しっかり頑張ったのですけれどもというふうに言うのはいいのですけれども、問題は、それ以上に、あなたが頼んだでしょというような意味合いを持たされたら、消費者は私のせいかと思ってしまうというわけでして、あなたに頼まれて私はこれだけの準備をしたのですがという部分で負い目を感じさせられるということがここでのポイントになっているのではないか。

心理的な圧力ということを言うときに、こういう第2類型の場合は消費者の側でその成立に向けて相手に期待をさせたという事実があったときに負い目を感じるわけですから、そういう事実がないにもかかわらずということでセーフティーネットを張っておくということであればいいのではないかという気がいたしました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

丸山委員。

○丸山委員 ここで問題としている事例というものを捉えていくときに、重要視されている部分の確認です。前回この議論のときに不参加で、議事録は読んだのですが、教えていただきたいと思います。一方で、履行とか履行の準備というのがされてしまって押売的な要素があるということと、もう一方で先ほどから少し言及されている、消費者が合理的な理由がないのに非難されてしまって、それで心理的な負荷がかかって契約してしまうという、この2つの要素がありそうな気がするのですけれども、この提案ではどちらかということではなく、両方、すなわち押売的な先行行為をしてしまっているという点と、自分がそんなにしっかりと頼んだわけでもないのに非難などされてしまって、追い込まれるという両方を重要な要素というか、そういう要素2つがあるからということで、1つということではなくやはり2つが両方そろった場合を捉えていく提案なのかを、確認させてください。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁からお願いします。

○消費者制度課担当者 御指摘のとおり、両方含んだものだというふうに考えております。非難というところで負い目を感じさせるというところは、重要な要素ではないかと考えているところでございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、長谷川委員。

○長谷川委員 今の御説明の確認ですけれども、その非難の要素はどの文言で読めばいいのでしょうか。なお、場合によっては、意見は後に申し上げたいと思います。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお願いします。

○消費者制度課担当者 まず第1類型でございますけれども、これは類型的にそういった要素があり得るだろうと考えております。なので、こういった行為をすること自体がそのような要素を含んでいる。

そして、第2類型のほうは、過度に強調してというところで読み取れるのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 今の点に関連するのですが、私は基本的には第1類型案、第2類型案、共に賛成いたします。

ただ、先ほどから何名かの委員の意見を伺っていて、心配されている点というのが全ては当てはまらないのではないかと思いつつ、されていることもごもっともなのではないかという気もしております。

といいますのは、この場合、あくまでこういう行為をすることによって消費者が困惑した場合という要件が係っていますので、こういう行為をしたからといって困惑しなければこれは取消しの対象にならないわけなのですが、困惑したというところで、さっきの消費者が負い目を感じさせられて、要は断れないような状況に陥られているというところまで評価として含むのであれば問題ないわけですけれども、そこでさっきから出ているようないわゆる正常な取引行為の範囲内のものは当然排除されるわけですが、今回第1類型案のほうでは「迫る」という文言が削除されていまして、この「迫る」という文言を削除した理由は資料の中で、こういう行為をすること自体が迫ることになるのだという御趣旨のことが書かれています。

それはそうなのだろうと思いつつ、しかし、要は「迫る」という文言がなくなったことによって、こういうことをされて、消費者がそれによって断りきれない状況に追い込まれてしまったので、やむを得ずお金を払ってしまったという断りきれない状況に追い込まれたというところが、確かにこの2つの文言だけで、第2類型のほうは過度に強調してという文言が付いていますけれども、第1類型のほうに関してはこの3号の中には少なくとも読み込めるのかどうかというのは不安を持たれるのかなと思います。

ただ、個人的には「困惑」という文言がありますので、こちらのほうでそういうふうに断りきれない状況に、要するに自由な判断ができなくなったというふうな評価をするのであれば、そこでまた要件を絞れるのではないかと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。他にどうぞ。

松本理事長。

○松本理事長 第1類型のタイプについてなのですが、これは金銭の支払を請求することによって金銭を支払わせて、その金銭の支払ということが契約の締結の意思表示に該当するという一種の現物売買と言われているようなタイプの契約の締結であるとした上で、その契約の意思表示を事後的に取り消すという構成だと思うのですね。

けれども、事業者の側としては、いやいやその時点で契約したのではなくて、もっと前の段階で実は契約は成立しているのですよという主張を恐らくしてくると思うのです。その主張が認められない場合に初めてこの条文が適用されるか、されないかという議論が出てくるわけです。契約がより早い時期に成立していないということが確定した後で、契約もないのに勝手に履行して金銭の支払を請求するなんてけしからんことではないかというふうに一般的にはなると思われます。

例えば、消費者がさお竹屋さんと言って呼び止めて家に来てもらって、一言二言の時点でもう契約が成立していると事実評価していいのかどうか、黙示の契約の成立時点はどこなのかというところのほうが、このタイプに関しては主戦場になるのではないかという印象を持っています。

だからといって、このルールが不要だというわけではないのですけれども、ここが決め手になるようなケースは余りないのではないかというのが想定です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見、あるいは御質問があればどうぞ。

後藤巻則座長代理。

○後藤(巻)座長代理 第1類型にも第2類型にも関係すると思うのですが、取消しを認めた上で、あとは損害賠償で処理するということを認めるかどうかが問題になるのではないかと思いまして、私は状況によっては損害賠償を認めるということが可能だと思います。

この事例は中途破棄の事例ではありませんけれども、契約締結を中途で破棄したような場合にも問題となることですが、一定の場合に、例えば消費者側からこういうことをしてほしいと求めて、その求めに応じて事業者が行ったことが一定の履行行為になるとか、あるいは場合によっては消費者が求めないとしても事業者に一定の期待を持たせるような行為によって事業者が履行行為をして、それによって結局、その後取消しをされてしまうということになりますと、その出費分というのは事業者側の損害になるという可能性が出てきますので、その部分について損害賠償は別個認めるというふうにしていいのではないかと思いますが、そういう解決をするということであれば、ここで第1類型、第2類型両方とも取消しを認めても、事業者側が損失を被るだけで何の請求もできないということではないので、提案としてこのままでいいのではないかと思います。特に先ほど永江委員の御発言の中で、場合によって別個な手段というようなことをちょっとおっしゃったように思いましたので、そういうことで損害賠償請求を事業者側から消費者に対して認めるということであれば、この提案でよろしいということなのかどうか、その辺をお尋ねしたいと思うのですが。

○山本(敬)座長 永江委員、どうぞ。

○永江委員 理論的にはそうなのかもしれないのですが、現実的な適用面では相当違和感があると感じました。ここは学者の先生方にも伺いたいのですが、取消権と損害賠償請求を両立させるということ自体は法理論的には成り立ち、かつ、現実的にもあり得るというということなのでしょうか。そうすると、例えば、消費者にのみ過失があり、事業者には過失がないという場面でも、理論上は、消費者が契約を取り消すことができるということかと思いますが、これは、一般的な感覚からすると、相当違和感があると思いますし、現実の裁判実務においても、判決でそのような結論はなかなか出にくいように考えます。

○山本(敬)座長 後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 この消費者庁からの提案の内容というのは、取消しをした後、損害賠償で事後的な処理をするというようなことは前提としているのでしょうか。その辺についてお尋ねしたいのですが。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお願いします。

○消費者制度課担当者 御指摘のとおりで、損害賠償請求を特段何か妨げるというものではございません。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

中村委員。

○中村委員 理論的にはそれはあり得る話とは思いつつも、今回、今も問題になっている例えばさお竹屋さんについて、では損害賠償だといったときに、それは権利がないから認めないというところで整理をするということなのでしょうか。そもそも悪質な事業者に対して利益を得させないということでの御提案というふうに理解をしているのですけれども、そうではなくて逆に悪質じゃないものも取り込んだ上で、損害賠償ができるからいいじゃないか。それで、その損害賠償のほうで普通の事業者と悪質な事業者を区別してという整理はちょっと違和感を覚えるのですが、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。民法学者でもありますので、少し発言をさせていただければと思います。

契約締結上の過失責任は、このケースで言うと、あくまでも消費者側においてそこで言う過失の要件が満たされている場合にのみ認められるものであるということが大前提である。これは押さえておく必要があるのですが、非常に限られた場面でしか現実には認められていません。しかも、認められる場合の効果は損害賠償ですけれども、内容は信頼利益の賠償です。つまり、契約が実際に有効に行われて履行されたならば得られたであろう利益、逸失利益などは損害賠償請求の内容には入らない。費用を無駄に出してしまったなど、元の状態に戻すための原状回復的な損害賠償に当たるものを認めることになっています。

これはどうしてかというと、契約を締結するかどうかは当事者の自由なので、契約の締結を強制することはできないからです。ですので、履行利益・逸失利益の賠償請求は認められない。しかし、過失があるので元の状態に戻すという損害賠償を認めるという構造なのだろうと思います。

ここでの御提案も、消費者に過失があるかどうかに関わりなく、この第1類型、第2類型の要件を満たしているときには、契約が締結してしまったとしても取消しを認めよう。ただ、取消しを認めるのは良いのだけれども、もし消費者に過失があるのならば、事業者に損害が生じている以上、それを元に戻すようなタイプの無駄になった費用等の賠償は認めよう。これによると、事業者は、契約したのと同じ利益は手にできないけれども、損はしないという形で両者の調整を図ろうというのが現在の提案の内容ではないかと思います。そして、後藤巻則代理がおっしゃったのもそのような趣旨ではないかと理解しました。

これに対して、理論的にはそうかもしれないけれども、実務的には違和感があるという御意見もありましたが、契約の締結は本来強制できないので、このような第1類型又は、第2類型の要件を満たした場合には、消費者に取消権を認めて契約をしなかったのと同じ状態に戻すことを認めるべきだろう。ただ、消費者は、自分に過失がある限り、事業者に生じた損害は賠償しなければならない。そのような損害賠償責任は免れないという形で、利害の調整を図っている。これで、御理解いただけるかどうかというところですが、一応、研究者側の説明としてはそのようなところではないかと思った次第です。

では、磯辺委員。

○磯辺委員 第1類型案、第2類型案とも消費者庁の提案に賛成でございます。

それで、第1類型案がさお竹屋の例だけしか話題の中で出ていませんので、もう一つ例をと思いまして、最近東京都のほうで行政指導された事案ですけれども、消費者のところに汚水ますの無料点検をするということで訪問をしてきまして、汚水ますの無料点検を行った際に、消費者から依頼されていないにもかかわらず汚水ますや排水管清掃作業を勝手に開始して、終了後に断りにくい状況にある消費者に対して、それら清掃作業の契約書を提示して料金を請求するという事例がございました。

これが、被害者の平均年齢が77歳、平均契約金額が18万2,000円で、いきなり来られて18万、最高額150万円になっていますけれども、被害の件数も28年度で46件というふうな被害事例になっています。

こういったことについて、行政指導にとどまらず、被害救済が容易になるということで、こういった規定を置く必要性というのは十分あろうかと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 さっき松本理事長がおっしゃっていたことと関係してくるのですけれども、そういう場合は本当は契約は不成立になっているのではないかというところです。成立しているのか、成立していないのかというところで議論になってしまうのではないかとおっしゃっていたのは私も同感だったのですが、今回のこの提案は、結局そうは言っても押し切られて契約を締結したかのような外形を作ってしまったという前提でそれを取り消すという前提だと考えてよろしいですか。

○山本(敬)座長 先ほどの松本理事長の御意見は、代金等の支払請求があって、それで結局払ってしまった。払ったということは、売買契約の申込みと承諾のどちらかは別として、それで売買契約は成立したと評価されるのではないか。そうすると、放っておくと有効ですので、この要件を満たせば取消しを認めるというようなことをおっしゃったのではないでしょうか。

代金を払っても、その契約の成立を意味しないとおっしゃっているのかもしれませんが、それは松本理事長の御意見ではなかったということだと思います。

○河上委員長 代金を払う前の段階と、代金を払った後の段階で評価が違ってくるかもしれないので、そこはおっしゃるとおりだと思います。

ただ、問題は成立していないにもかかわらず要求されて、嫌々払ってしまったという行為が契約の成立とまで言えるのかどうかというのは、私は逆にそこも不成立の可能性があるのではないかと思ったので、同じ話だったのですが、そこはどちらでもいいです。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○松本理事長 そうだとすれば、取り消す必要もないわけだから、この類型は不要という話になるのだけれども、そうではなくて、やはりそこで嫌々ながら承諾したという判断された場合にそれを取り消せるということだと思います。

ただし、事業者としては、もっと前に契約を締結していたのだという反論を絶対にしてくるわけで、そこが最終的な決め手になるのではないか。そこで、もっと早い段階での契約締結はありませんでしたとなると、代金を払ったというところが、嫌々であっても払っているということで、契約締結の意思がないとまではなかなか言えない場合が多いわけなのです。そうすると、どの時点で契約が成立したのかという議論をさせるきっかけとして、後で代金を嫌々払わされた場合に締結したこととされる契約が取り消せるというルールがあるということには意味があると思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。消費者が代金を払った段階で、遅くとも契約が成立しているという評価がされる。ですので、事業者側としては、この提案によると、取消しを退けるためには、もっと前に契約は成立したということを基礎付けていく。それが成功すれば、もうこの取消しは問題にならないけれども、それより前に契約が成立したことが基礎付けられないときは、やはりこの取消しが生きてくるという御説明だったと理解しました。

河上委員長。

○河上委員長 これは理論的な話になって恐縮ですけれども、恐らく不成立無効になっている可能性があるところを、この法律によって取消しの形に再構成したのだというふうに理解してもいいのではないかと思ったのです。もともとその提案がどういう趣旨なのかということを確認したかったということで、一応成立をしているという前提で取り消せるということにしたのですねと今、私は確認したつもりであったのです。そうですと言ってくだされば満足です。

○山本(敬)座長 成立が前提となっているということだろうと思います。

では、大澤委員。

○大澤委員 今の点なのですけれども、私はこれに反対するわけではないのですが、多分前回同じことを質問したときに、やはり嫌々でも支払ったということには契約を締結したと考えられてしまうことがあるので取消権をというお話だったと思うのです。それで、河上先生がおっしゃっていたように、嫌々、本当にほぼお金を奪われるような状態で払うというのが契約締結になるのではないかと私は個人的に疑問はあります。

ただ、今回はこういう場面があることから消費者保護の趣旨に鑑みて、これだと契約が締結されたとみなされる可能性が高いので、この場合は一応成立したと考えて、ただ、取消権を付与することで消費者を契約から解放するという趣旨の規定ですということは、今後も恐らく逐条解説を書くときにははっきりしたほうがいいのではないかと思っています。

なぜかと言うと、この趣旨の規定が設けられることで、こういうふうに支払をしてしまった場合にはもう契約が成立したという一定の評価をするような感じもすると思うのです。それは余計な心配かもしれないのですが、現に無理やり払わされているというのが、これが本当に契約成立したと消費者にそこまでの意思があったと言えるのかというのは、事案によっては争いはあるのではないかと思うのですけれども、こういう法律を作ることによってもう成立したというふうにその場面でも考えられてしまうという印象を与えないかという心配がありまして前回聞いたのですけれども、今後逐条解説を書くときには、一応こういうことがあると契約締結したと考えられる可能性があり得る、あるいは高いのでということは書いてもいいのではないかと思います。以上です。

○山本(敬)座長 今の点は理論的な問題でもありますので、慎重に考えた上で説明をお願いできればと思います。

では、河野委員。

○河野委員 消費者が泣き寝入りをしてしまうのは、多くの場合、もうこれで契約をしてしまったのだなと思い込んで諦めてしまうからです。円満な満足のいく契約であればそれで構わないのですけれども、そうではなくて、ここで扱っている第1類型も第2類型も基本的に望まない支払であり、望まない契約なのです。やはり、それを大前提に考えていただきたいと思っています。

ここにこの2つの類型を追加してくださることで、消費者にとってみると、こういうものはちゃんと拒否していいのだというふうな社会に対する教育効果ということも一つは生み出すのではないかというイメージも持っております。今回の御提案は非常に整理されているといいましょうか、私の言葉で言うと工夫されてここに出されている案だと思います。この案を採用したからといって実際のところ事業者の方の真っ当な事業活動にそんなに大きな影響があるとは先ほどの御意見を伺っていても、私の立場からは、余り想像できません。

事業において今後どのような実害が起こり得るのかということよりは、もう実害が目に見えている実態、たとえさお竹屋さんの話であったとしても、そこを救うということが重要であると考えますので、是非この提案どおり法制化を考えていただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他にいかがですか。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。先ほど来、出ていますが、非難の要素について述べさせていただきます。第1類型はこの行為そのものがそうなのですというふうに言われてしまうとそうなのですが、この行為はフラットに事実関係を書いているだけなので非難の要素が含まれているかどうかというのは若干疑問がございます。

第2類型につきましても「過度に強調して」というのは、先ほども申し上げましたが、「過度に」は「強調」に係るので、そのこと自体、悪性があるという感じには余り読めない。別の要素も入れるべきではないかと思います。

先ほど何人かの委員がおっしゃられましたが、契約のために頑張りましたという話はあって、その上で例えば契約締結を懇願しますと、強要するのではなく契約を懇願しますというのは通常のビジネスでもあったりすると思っております。そういったものまで取消しの対象となる類型になっていると理解しておりまして、それはやや広過ぎるのではないかという気がいたします。

また、契約締結上の過失についてはそういうことかもしれないのですけれども、これは事後的に損害賠償請求をするとしたら不法行為なり、信義則違反なり、そういったことに基づくことになろうかと思いますが、例えば先ほどの消費者庁からの御説明のように、第2類型では「過度に強調して」ということそのものに悪性があるというか、非難されるべき要素があるということだとすると、なかなか事後の損害賠償というのは難しいのではないかという気が実際問題としていたしまして、何となく全体としての制度間のバランスを欠くような気もいたします。

それから、挙げられている事例については先ほど石島委員からも御指摘がありましたけれども、不退去・監禁等で対応ができるのではないかという気がいたしております。

最後に事務的な質問なのですけれども、事業者からのヒアリングの中で日本証券業協会が、顧客の購入意思を確認した上で金融商品を組成して、その後契約を締結するという事例を挙げられていて、そういった慣行を引き続き続けられるようにしてもらいたいという要請があったかと思います。その要請と今回の提案との関係について教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁のほうからお願いします。

○消費者制度課担当者 日本証券業協会提出の資料などを見ていきますと、この顧客の意向を受けてというところが、通常、消費者からの申込みというふうに考えられるかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、増田委員。

○増田委員 損害賠償の部分について懸念がありまして、やはり消費者のほうの過失というのがどういうものであるかというのは分かりやすく書いていただかないといけないのではないかと思います。

例えば、家にテレビの修理に来てくださいと頼んだときには、その出張費として3,000円必要というのはあらかじめ必ず伝えていただいていますので、3,000円払うというのは了解するのですけれども、基本的に例えば営業をしてもらっている最中のことというのは、ただだと思っているわけですから、契約することを前提として自分のほうから積極的に何かしてくださいと、やはり何らかのそういうようなことがない限りは損害賠償というのが認められないと理解しています。その辺のことを明らかにしていただかないと、消費者のほうも事業者のほうもその運用については、ただ単に損害賠償できるということがもし書かれてしまった場合は混乱するのではないかと思います。

○山本(敬)座長 今の点については、規定の提案の中に損害賠償の話は出てきませんので、恐らく念頭に置かれているのは逐条解説等での説明ではないかと思います。

ただ、これは、契約締結上の過失、現行法を前提にしますと、判例によれば、不法行為に関する709条による責任を考えるのだろうと思います。ですので、これは民法の解釈問題です。そして、事業者間契約のケースと消費者契約とのケースとで過失判断がどう違うかということについては、私の知る限りでは、まだ確立した考え方があるようには思えません。

そうだとしますと、なかなか逐条解説でこうだということを書ききるのは難しいのではないかと思います。これは、消費者庁の責任というよりは、判例・学説でまだ確立しきれていない状況の帰結であるということだと思います。

逆に、こうだと書かれますと、かえって異論を呼ぶ余地が出てくる心配もあります。その意味では、できる範囲ではもちろん御検討をお願いできればとは思うものの、なかなか難しいだろうということを代わりに申し上げておきたいと思います。

他にどうぞ。

有山委員。

○有山委員 事例がさお竹屋さんと汚水ますだったので、もう一つぴったりくるのではないかと思った相談に、深夜にトイレが詰まったということで、インターネットで検索して深夜やっている業者を呼んだ。そのときにインターネット上で3,000円からと書いてあって、3,000円ぐらいだったらいいかなと思い、出張料は作業をすれば無料ですということなので、大体3,000円から1万円ぐらいで頼めるかなと思って呼んだ。すぐ来てくれたのはよかったのだけれども、見積もりを取りたいと言ったら、それよりは困っているのだからさっさと作業をしてしまいましょうということで作業をし終わった段階で7万円請求されたとか、十何万円請求された。そんなお金は持ち合わせていないと言うと、では一部でも払ってくれれば明日取りに来ますというようなトラブルというのは、呼んでいるということと、それから一応価格についてもインターネット上で説明が出ているということと、実際に作業をしてみたら高額になってしまったということでトラブルになる事例が結構あります。このようなトイレの修理というのはこの件に該当するのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

山本健司委員。

○山本健司委員 御説明をいただきありがとうございます。御提案のような趣旨の規定を設けることに賛成いたします。

消費者庁の皆さんに御尽力をいただいて、前回よりも要件の明確化がかなり進んだと思います。元来「威迫」という文言での立法を求めているところですが、適用範囲の明確化という観点とのやむを得ない調和点であろうと理解し、賛成いたします。是非とも、これらの規定を立法していただきたいと思います。

先ほど来、事業者委員の皆様から、適正な取引行為への悪影響が心配であるという御意見が出されております。しかし、もともと適正な取引行為は取消しの対象から除外されることが前提だと思います。また、一般的に困惑惹起行為と評価できる不当勧誘行為である必要がありますし、実際に被害者に困惑をもたらさなければなりませんので、この規定で取消しが認められるのは不適正な取引行為に限定されると思います。

また、第1類型に関して、先ほど、常連の顧客向けに先にさばいた魚を売ったという事例の御紹介がありました。当該事例については、「代償としての請求」とは評価できないように思われますし、困惑惹起行為とも評価できないように思われますし、買われた顧客に困惑もないように思われます。したがって、当該事案で取消しはできないのではないかと思います。

ただ、先ほど、適正な取引行為が本条に該当しないということをより明確にするために、文言として事業者の悪性や非難可能性を示す要件が付加されたほうが納得感がある、例えば「迫る」といった字句を付加すればどうかとの御意見があったように思います。そのような文言の付加でコンセンサスが得られるのであれば、第1類型の「請求する」という文言を「迫る」という文言に変えることはあり得る選択肢ではないかと思います。

あと、事業者に契約締結を期待させて費用を先行支出させた問題ある消費者への対応という問題意識が出されておりました。この問題につきましては、先ほどからも御意見が出ておりますように、契約締結上の過失で対応できると思います。契約が取り消され、当該契約に基づく代金請求はできなくても、契約締結上の過失に基づき、実際の支出費用の損害賠償請求はできると思われます。また、それが当事者間の利益調整のバランスとしてもよい落とし所であるように思います。契約が維持され対価全額の請求ができるというのは、幾ら落ち度があって契約の締結に期待を持たせたという側面があったとしても、バランスを失した結論ではないかと思います。以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員。

○長谷川委員 先ほど言いそびれたので、3点述べさせていただきます。

1点目は、第1類型についてです。第1類型は「当該行為の対価に相当する金銭の支払を請求すること」となっており、これは逆に言うと契約締結しろというふうに言った場合は全部外れてしまうとも読めてしまいますが、それでいいのか。本来、救済しようと思っているものとの関係でそれでいいのかということでございます。

2点目は、第2類型についてです。損失が生じることをかなり強調してという話と、先ほどの契約締結上の過失部分の関係で、例えば「もうここまでやったのだから損害賠償するぞ」というような発言があったときに、強要するような伝え方であれば、それは救われるべきことのような感じがいたします。しかし、損害賠償するぞと言われて消費者が困惑したということで契約の取消しを認めつつ、一方では消費者に契約締結上の過失があったので事業者の損害賠償請求を認めますというのは、理論上は分かりませんけれども、全体としては今一つしっくりこない感じがするということでございます。

3点目は、いろいろな懸念に対して、消費者が困惑していなければ取消対象にはならないのですという御発言が何人かの委員の方からあったかと思うのですけれども、基本的には困惑というのは結構広く捉えられているというのと、現行の1号・2号というのは正に困惑に直結するものであろうと思う反面、今回提案されている3号・4号がそこまで困惑に直結するものかというのは若干議論の余地があるように思っております。その点も含め、次回に向けて御検討いただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他にいかがですか。

後藤巻則座長代理。

○後藤(巻)座長代理 契約を取り消した後、契約締結上の過失で損害賠償請求の問題にするということに関する違和感というのは、その手間というようなことで考えると、確かに私も若干違和感はあるのですけれども、ただ、その問題はこの場面だけでなくて民法の他の場面でも生ずる問題で、例えば錯誤取消しを主張して、錯誤取消しが認められたのだけれども、相手方から損害賠償請求、信頼利益の損害賠償請求をできるというのは、これは民法で認められている考え方だろうと思います。

そうだとすると、この場面だけの問題ではなくて、生じてやむを得ない問題というのでしょうか、そういう処理というのがなされるということは、致し方ないという話なのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

○山本(敬)座長 長谷川委員。

○長谷川委員 一般的な民法の問題としても生じるもので、そういう整理なのかもしれない。しかし、この4号案で準備行為的なものに着目しているので、より先鋭的に現れてくるということなのだろうと思います。それをどういうふうに評価するかということなのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 今の点ですけれども、「契約代金全額を支払ってよとまでは言わないけれど、かかった費用は支払ってよ。落ち度があるのだから」といったことは、実務上もある話ではないか、そんなに不自然な話でもないのではないかと思います。以上です。

○山本(敬)座長 分かりやすく説明してくださってどうもありがとうございました。

他に御意見があればと思いますが、よろしいでしょうか。

たくさんの御意見をお出しいただきまして、どうもありがとうございました。第1類型案、第2類型案、それぞれについて、特に第2類型案については、今回新たに事例を出していただいて、それらの事例ごとに議論しました。第1類型案については、前回まで挙がっていた事例に加えて、先ほど磯辺委員と有山委員からこういった例もあるというものをお出しいただきました。

恐らく、これに該当するケースは少なくないのだろうと思います。中村委員は、通常の取引で先に契約も締結していないのに履行行為をするのは余り考えられないのではないかということをおっしゃいましたけれども、正しく考えられないケースでこそ問題になっているわけでして、それがこの提案を支えている基礎なのだろうと思います。

しかし、その上で、今回のこの提案でカバーすべきケースを過不足なくカバーできているのかという点については、賛成する意見もありましたけれども、他方で問題があるのではないかという御意見もありました。

その際には、事業者側の悪性を捕まえる要件が落とされているので、その意味ではニュートラルな表現になっているために、問題とすべきでない場合まで含まれることになっているのではないかという御指摘がありました。

ただ、これまでは、「迫る」にしても、その他の要件にしても、「威迫」がもともとそうでしたけれども、評価的な要素を含みますので、対象が特定できないのではないか、基準がはっきりしないのではないかという指摘を受けて、改めて検討した結果、今回、可能な限り客観的な行為を捕まえる要件を設定するということで、ここまで提案されるに至っているのですが、今度は逆に行き過ぎであるという御指摘を受けたのかもしれません。

もちろん、「迫る」という文言を入れることについてコンセンサスが得られるのであれば、次回改めて御検討いただければと思いますけれども、これまで客観的な基準を追い求めた結果がこの提案ですので、これも踏まえて、次回改めてもう一度提案し直していただいて検討できればと思います。

ただ、お分かりのとおり時間的な制約がある状況ですので、次回でどうなるにせよ、可能な限り結論を見出すことができればと思います。引き続き、どうか御協力よろしくお願い申し上げます。

それでは、本日の審議はこの辺りとさせていただきます。最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪4.閉会≫

○丸山参事官 本日も、熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は6月23日金曜日15時からの開催を予定していますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上