第37回 消費者契約法専門調査会

日時

平成29年4月28日(金)12:00から14:50

場所

中央合同庁舎第4号館2階 共用220会議室(東京都千代田区霞が関3-1-1)

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、後藤準委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、増田委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会 河上委員長
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、加納消費者制度課長
【参考人】
日本証券業協会
   山内常務執行役自主規制本部長
   嶋自主規制本部審議役
   毛塚自主規制本部自主規制企画部次長
一般社団法人全国銀行協会
   業務委員長銀行 株式会社みずほフィナンシャルグループ
      藤原法務部副部長
      日比野法務部次長
一般社団法人日本損害保険協会
   東京海上日動火災保険株式会社
      笠原業務企画部部長兼調査企画グループリーダー
      小橋業務企画部次長兼調査企画グループ課長
      神通業務企画部調査企画グループ課長
一般社団法人生命保険協会
   上原消費者法制研究会座長(明治安田生命保険相互会社調査部課長)
   濱田消費者法制研究会委員(明治安田生命保険相互会社調査部課長)
全日本葬祭業協同組合連合会
   松本専務理事
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 事業活動への影響等に関するヒアリング
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻となりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は皆様、お忙しい中を御出席いただき、ありがとうございます。

ただいまから消費者委員会第37回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用によりまして石島委員、丸山委員が御欠席。中村委員、永江委員、柳川委員が遅れての御出席との連絡をいただいております。

まず、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の下部に配付資料一覧を示してございます。資料1から5となっております。もし不足がございましたら事務局までお声掛けをよろしくお願いいたします。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.事業活動への影響等に関するヒアリング≫

(1)日本証券業協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。今日もよろしくお願いいたします。

本日は、前回に引き続き、事業活動への影響等に関するヒアリングとして、日本証券業協会、一般社団法人全国銀行協会、一般社団法人日本損害保険協会、一般社団法人生命保険協会、経済産業大臣認可全日本葬祭業協同組合連合会の計5団体からのヒアリングを行います。

会議の進行としましては、団体ごとに交代でお席についていただき、それぞれ御説明を10分程度、委員の皆様から質疑応答を15から20分程度という形で進めさせていただければと考えています

本日も多数の団体からヒアリングをさせていただきますため、ヒアリングに当たりましては、まず各団体の御説明をよく聞いていただいた上で、質疑応答をされる際には本日の御説明内容を中心になるべく簡潔に御質問、御回答をいただきますようお願いいたします。

本日はたくさんの予定がありますので、できるだけ時間に気を付けて進めたいと思います。皆様におかれましても、御協力をどうかよろしくお願い申し上げます。

まず、日本証券業協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。本日は日本証券業協会から同協会の常務執行役自主規制本部長の山内公明様、自主規制本部審議役の嶋俊昭様、自主規制本部自主規制企画部次長の毛塚拓様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきまして大変ありがとうございます

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○日本証券業協会山内常務執行役 ただいま御紹介に預かりました日本証券業協会の山内と申します。

本日は、本調査会にお招きいただきまして、ありがとうございます。

本調査会での議論につきましては、私どもも注意深く拝見させていただいております。本日は時間の都合もございますので、お手元資料1-1を中心に業界への影響について、特に気になるポイントに絞ってお話しさせていただければと思います。また、お話しできない部分も含めまして、併せて資料1-2として意見書を御用意させていただいておりますので、是非こちらのほうも御高覧いただければと存じます。

なお、説明に際しまして金融商品取引業者のことは金商業者、また、金融商品取引法は金商法と略させて説明させていただきたいと思いますので、お含みおきいただければと存じます。

それでは、資料1-1の1ページを御覧になっていただければと思います。合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型に関しまして、既に御提示いただいておりました法律案の第4条第3項のマル1、マル2にあります「消費者に生じ得る損害または危険を殊更に告げること」とする条文についてであります。

金商業者は金融商品取引に際しまして、当該金融商品取引に関するリスク事項等を説明することを金商法等で義務付けられております。また、それだけでなく販売後の金融商品取引の状況に大きな変動等があった場合には、適時適切な情報提供に努めることが金融庁の監督指針で求められています。当該情報の提供は、必ずしも別の金融商品の勧誘と直接つながるものではありませんが、提供した情報を踏まえ、顧客の判断により売買取引を行うことは十分考えられるところでございます。この提供する情報がリスクや損失に関するものであった場合、法令・規則に基づく説明であり、投資者保護を目的とした、あるいはアフターフォローとしての情報提供でありながら外形上、この条文に抵触することが懸念されます。これら一連の行動と結果については当該条項の適用除外となることが明確となりますよう、御配慮をお願いしたいと考えております。

それでは、資料1-1の2ページ目を御覧になっていただければと思います。第2の不当条項類型の追加に関しまして、消費者の後見等の開始を解除理由とする条項についてでございます。金融商品取引は、最終的には投資者の自己責任が原則となります。このため、金融商品取引において金商業者に対しては投資者保護の観点から商品性やリスク、手数料等、重要な事項についての説明義務が課されているとともに、顧客の適合性に配慮した勧誘が求められています。また、信用取引など、特に取引の仕組みが複雑なものや、リスクが大きいと判断される取引については、併せて私どもの規則に基づき取引開始基準を設けることを義務付けています。成年後見制度の登録が行われた顧客の場合、金商業者が誠意を持って商品性やリスク等の説明を尽くしても、理解できないケースが存在した場合、結果、取引開始基準に抵触してしまうため、多くの証券会社ではこうしたケースの場合、以降の新規契約を停止するとともに、既存の契約を解除いただくといった選択をせざるを得ないと理解しております。もちろんいきなり通告なく解除するわけでもありませんし、ケース・バイ・ケースで対応させていただいていますが、納得がいただけない場合でも当該取引の継続はお受けできないということが多いかと理解しております。

また、最近の裁判事例におきまして、未成年者の後見人に対してリスクの高い商品を勧誘したことが適合性原則に違反するとして、証券会社の不法行為責任が認められたケースがあり、リスクの大きい金融商品取引については、後見人等が取引の継続を望んだとしても適合性の原則に基づき新規契約を行わず、既存の契約を解除する。例えば信用取引の場合は口座を閉鎖し、建玉を決済するといった場合がございます。こうした取組は信用取引やFX取引など、特にリスクの高い商品は顧客との間で意思疎通が限定的になることで、建玉を放置せざるを得ない場合が生じ、その間の損失拡大リスクは顧客が負うことになるため、契約を解除することは顧客の利益にもかなうと考えております。

以上のとおり、契約を存続させることにより投資者の損害が大きくなる恐れがあること。その結果として証券会社が責めを負う恐れがあることから、投資者の後見等が開始された場合、契約を解除できる条項を設けております。個々の対応については顧客の状況や取引の内容等に即して検討されるものではありますが、契約解除することが投資者保護に資する場合もあるため、当該条項を一律に無効とするといったことのないよう御検討をお願いしたいと存じます。

3ページ、同じく不当条項類型の追加に係る解釈権限付与条項ないしは決定権限付与条項についてでございます。金商業者は投資者保護に努めるとともに、市場の公正性や健全性の確保にも努めなくてはなりません。そのため、顧客が反社会的勢力であることが判明した場合や、顧客が不公正取引を行っていると考えられる場合などは、速やかに市場から退出してもらわなければならないと考えております。不公正取引であることの認定は、最終的には御当局に判断いただくことなりますが、それには相当長い時間がかかります。また、公正取引を行っている顧客が契約を破棄するといったことに関して、金商業者と合意することは考えられません。仮に合意したとしても、そこまで待っているとその間に公正取引が継続されてしまう恐れが高くなります。そこで、速やかな排除を実現するために、取引に先立ち締結する取引約款等において、反社会的勢力でないことや、法令等に違反しないこと及びこれに違反した場合は契約を解除する旨の契約を行い、規則等に定める手続にのっとり、一定の審査等を経て金商業者が認めた場合に当該契約解除条項を適用するといった手続を行っております。

判定の利用につきましては、例えばマネーロンダリングと疑われるような取引の場合、犯罪の捜査等の観点から顧客に伝達することが制限されるなど、顧客へ説明することが不可能な場合もございます。また、不公正取引については、証券会社から顧客に注意喚起等を行ってもなお疑わしい取引が継続されるといった場合の最終手段として契約を解除しているため、この段階に至っての顧客からの異議というものは原則として受け付けておりません。

このように市場の公正性や健全性を確保する目的において、規定する契約解除条項については無効とされないように、明確化をお願いしたいと存じます。

こちらのパワーポイントにはございませんが、縦長の資料1-2の5ページを御覧になっていただければと存じますが、御提示いただいた第3から第6の論点につきましては、金融商品取引においては該当するケースがない、あるいは金商法等の業法を遵守していれば問題ないと理解しておりますので、具体的な意見は控えさせていただきます。ただし、これらの条項の追加で条項の濫用がなされ、金商法などの業法に則して行われる正常な商行為、商取引といったものに混乱が生じないよう、御検討をお願いしたいと存じます。

それでは、また資料1-1に戻っていただければと存じますが、困惑類型の追加であります。4ページになります。金融商品取引では私募商品など金商業者はお客様の要望を伺いながら、お客様に適した金融商品の仕入れや組成を行うことがあります。この場合、お客様への提供が可能であることが確実になった時点で、お客様から購入意思を確認させていただいております。ただし、この時点では金商法上の取引契約の成立、すなわち約定といったところには至っておりません。しかし、この時点以降に購入意思の取消し等が行われますと、仕入れ等の準備を行った金商業者には大きな損失が生じる恐れがありますので、お客様にも購入意思を確認させていただいた時点からの取消しはできないといった旨の御説明をし、かつ、合意をいただいております。

今回の条項が今、申し上げたようなお客様との合意による購入の約束については、困惑類型に当たらず、本条項が適用されることがないようにお願いしたいと存じます。是非正常な商取引まで取消しが可能という誤解を消費者に与えないよう、慎重に御検討いただければと存じます。

最後に、縦長の6ページをまた御覧になっていただければと思います。最後のページになります。配慮義務についてでございますが、金商業者は金商法等により適合性の原則を守ることを義務付けられております。本条項が求める内容は既に履行されていると考えております。金商業者など適合性の原則を守ることを義務付けられている業界については、若年成年者含めて十分な配慮を行っており、今後も現行どおりの対応で問題なく画一的に新たな措置を採る必要はないと考えておりますが、認識にもし相違があるようであれば御指摘いただければと存じます。

御提示いただいた条項等に関しましてのコメントは以上となりますが、金融商品取引におきましては金商法や金融商品販売法等の業法が数多く設けられており、今回議論されている契約や勧誘に関する業者の行動につきましては、投資者保護の観点から金商業の金融商品取引業の特性を踏まえ、適合性の原則を初めとしたきめ細やかで厳格な規則が設けられております。したがいまして、これらの業法や規則と矛盾や解釈の違いが生じた場合、正常な商取引に多大な影響が及ぶ可能性や、かえって消費者の利益を失う可能性、また、一部の消費者による濫用の可能性などが懸念されることから、同じ趣旨の条項であっても既に業法でカバーがされている条項につきましては、適用除外であるとか業法に基づく措置が認められますように重ねて御検討のほどお願い申し上げる次第でございます。

私からは以上でございます。貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。

○大澤委員 貴重な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。

1点だけ、今、実務上どういう運用をされているか確認させていただければと思います。

本日の横長のペーパーで言いますと2ページと3ページに関わる件なのですが、どちらも例えば後見等の開始を理由とした解除が必要である場合ですとか、あるいは反社会的勢力などに該当する場合などに解除の必要性があることは十分理解いたしました。しているつもりでございます。

そこで伺いたいのは、恐らく今こういう条項で入っているのではないかと思います。これに該当するということで解除をしているというときに、例えば顧客に対して今、どういう運用をしているのでしょうかという確認です。例えば文書で通知をして、何日以内に解除しますということなのか、そういう通知も一切なくいきなり解除しているのか。お話を伺っていると、通知はしているということを特に後見等の開始に関してはおっしゃっていたと思うのですが、様々ありますとおっしゃっていたように聞こえましたので、できましたらお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋審議役 では、お答えいたします。

いずれのケースにおきましても、山内から説明させていただきましたとおり、いきなり通告なく取引を解除してしまうことはないと思っています。成年後見の開始の場合につきましては、当然まず後見が開始されたという御連絡をお客様からいただきまして、手続をしていただく必要がありますから、その際に今、元の被後見人様は結構リスクの高い取引をされておられたので、今回のことを機に解除させていただくのが適当だと考えますというような説明をさせていただいた上で、基本的には納得いただいて今後の取引をしない。加えて新規の取引だけではなく、既に行っておられる取引であっても、損失の拡大等の可能性が高いような取引についてはそこで手仕舞いをしていただくことをお願いして、ここも合意をいただき解除するのが適当と考えております。ただし、なかなか納得いただけないようなケースがありましても、繰り返しお願いをする形で最終的には断念いただくことをやっているという認識です。

もう一つ、3ページになりますけれども、不公正取引等になってしまいますと反社会的勢力の場合は余り御説明の必要はないかと思うのですが、いわゆる不公正、相場操縦と言われるような行為、これはなかなか判定が難しいという局面がございます。そういった折にはまず一度御注意を差し上げる。あなたが行われたこういう注文の形態は相場操縦的行為として見られますよ、もうやらないでくださいねという案内をさせていただいた上で、再度繰り返されるという場合に今度はいわゆるイエローカードのような形で、もう一回やったらもう駄目ですよという通告をさせていただいた上で、更に行われたときに今度は強制的に取引を停止してしまうというような手順になろうかと思います。

以上でございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

他に質問があれば。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 どうも御説明ありがとうございます。

第7の困惑類型の追加のところなのですけれども、文章のほうで御提出いただいている意見の6ページのところで、関連する行為の範囲が明確でないため、削除をという御要請の記載がございます。これは現在、専門調査会で議論をしているものは、こういう義務の全部または一部の履行に相当する行為や当該行為に関連する行為を実施したことの代償として契約の締結を迫ることというところまで含めて、この行為が一連となったときに初めて取消しの対象になるという議論をしているわけですけれども、そういう意味では「迫る」要件がありますので、ここまで「関連する行為」のところの削除にこだわられる必要はないのかなと。「迫る」行為というのは多分されていないと思うのですが、その辺りいかがでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋審議役 私どもも今までの御議論などを拝聴しておりまして、そうなのだろうなと思っているのですけれども、ただ、こうして字に落ちてしまいましたときに、「関連する行為」というのは何だろうとか、先ほど御説明差し上げましたように、金融商品の取引において例えば株式のように市場があって、そこに対して注文を出す委託取引というような形式であれば、こういうことは起こりにくいわけですけれども、多くの取引は店頭取引というお客様と証券会社の間で売り買いが行われるという形式になります。

そのときにお客様が希望されるような商品が自社にない。そういった場合は外から買ってこないといけない。あるいは探したけれども見つからない場合などは、自社で作るというようなことも考えられます。それをするためには当然のようにコストが掛かりますし、他から買ってくるならお客様に売り渡す前に先行して自社が他の業者から買ってくるというようなことをせざるを得ません。そこまで来ていながら最終的にお客さんが約束を違えてもう要らないと言われた場合に、それがそのまま証券会社の手元に残ってしまう。これが損失になる可能性が非常に高くなります。その行為がこの条文上の義務の全部または一部の履行に相当する行為または当該行為に関連する行為というふうに読まれないだろうか。そこの心配をしておるわけでございますので、丸ごと削除いただくことだけが方法ではないと思うのですけれども、今、申し上げたような正常な商慣習に基づく行為が含まれないことを明らかにしていただく工夫を是非御検討いただきたいということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○磯辺委員 多分そういった約束の下で先行する行為をされていて、コストが発生するよというふうにしたときには、その契約の取消しというよりも解除でどの程度の損害賠償の範囲でやるのかみたいなことをお話合いされるのかなと思いますので、この「迫る」という要件がついていて取消しというところで、是非困惑類型の追加というものを受け止めていただければと。これは意見になります。

○山本(敬)座長 他に質問があればと思いますが、いかがでしょうか。井田委員、どうぞ。

○井田委員 御説明ありがとうございました。

私のほうからも1つ、いわゆる不当条項の類型の追加で後見等の開始を解除事由とする条項につきまして、資料1-2で1つ質問をまずさせていただければと思っております。

3ページに成年後見制度で取引が行われた場合、取引開始基準に抵触する蓋然性が高いということになるのですけれども、成年後見が始まったこと自体が取引開始基準に抵触するという背景の思想を教えていただければと思います。と申しますのも、私も弁護士として実際に成年後見の後見人になったりすることがあるのですが、最近はいろいろな不祥事防止の観点から信託の活用を勧められるようなことはあるのです。証券業協会とは少し商品の内容が違うということかもしれないのですけれども、そういう例から考えると後見の開始をしたかどうかが問題なのではなくて、金融商品の中身が問題になるのではないかという気がいたしまして、その取引開始基準の依って立つ思想を教えていただければと思っております。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋審議役 もともと取引開始基準を設定しているというのは、お客様一人一人の適合性に配慮するべきであると。特にリスクの大きい商品あるいは投資金額そのものが大きくなるような商品、こういったものには一定の投資経験であるとか、保有されておられる資産の額といったことを測った上で行っていきましょうと。ただ、もっと根源的な部分としまして投資を理解できない人にその取引をしていただいては困りますというのが一番根っこにある部分だと思っています。

そういう点におきましては、例えば信用取引などで法的制限行為能力者は駄目ですよと。例えば未成年者などについても同じような扱いをしているところが多いと思っているのですけれども、ここは全ての基準を証券業協会が決めているわけではなく、各社が必要と思われる基準を設けております。その中で後見が開始された被後見人と取引ができないことは、まずその段階で当然になってくると思われます。

では後見人がしっかりしているから、後見人と取引していると言える分にはいいのではないかという発想が生じてくるかとは思うのですけれども、今回この縦紙のほうにも書かせていただいたとおり、今回直近の例だけ書かせていただいたのですが、過去にも我々が見ている中では後見人と行った取引について事後、裁判例等で否定されてしまうというようなケースもございまして、結局は大元である口座名義人、被後見人の属性が後見人を立てなければいけないような状態になっている状態であったら、リスクの高い取引はしてはいけないというふうに理解をせざるを得ないだろうということで、ここは我々の規則等ではなく、各社がリスクの範囲内と考えながら設定をしているルールだと理解をしております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、後藤座長代理、どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 どうも御説明ありがとうございました。

私の理解不足だと思いますので教えていただきたいのですけれども、スライド「第7の困惑類型の追加」のところに書いてある顧客の意思表示に基づく購入の合意については、困惑類型に該当せずということなのですが、具体的な例で言えば、どのような場合に気を付けてほしいということなのでしょうか。

資料1-2でお書きになっている第7 困惑類型の追加のところは、こちらの専門調査会で議論をしていた内容にぴったり合った問題点の御指摘ということですぐ理解できたのですけれども、スライドの第7でどういうことをお書きになっているのかというのは、すぐ理解できないものですから教えていただくとありがたいのですが、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋審議役 もしかすると私どもの業界固有のことなのかも分からないのですけれども、金融商品については、お客様との契約締結について、金融商品取引上に定められる約定という概念が1つありまして、ここが正規の契約成立という1つの目安になります。これが資料1-1でいきますと4ページの上の段、金融商品の販売フロー(一般的な場合)と書かせていただいているものが、お客様から注文をいただいて、その上で注文執行をして、そこで出来上がりますと約定という概念になります。その後、受け渡しというのが物と物を約定と同時に交換するわけではなくて、御注文いただいてから例えば現在のルールでしたら株式でしたら4日目に受け渡しをさせていただく。まず約定した後の取消しはできないですよねと。ここは割と分かりやすいのですけれども、その下に私募商品等と書かせていただいた部分が、先ほど私からも御説明したとおり、実際の法令上、約定と言われるタイミング、ここでは矢じりで5個目に約定が黄色い部分が出てきているのですけれども、既にその前にこういう商品が欲しいのだという要望から始まりまして、それを手当てできるかどうか証券会社側が検討いたします。ここで条件の検討で、お客様と逐一相談をしながら徐々に合意形成をしていきます。

こういうタイプ、例えば期間が3年間で、金利が3%で、ただ、こういう付帯条件があります、こういうものなら用意できそうですというお話をして、お客様が、ではそれをやってくれと。ここが赤になっております購入の意思表示です。ただ、この段階はまだ意思表示をいただいただけでありまして、金商法上の約定ではありません。ここからもう一度、証券会社が先ほど御説明したような仕入れに当たるような行為ですとか、組成といわれる自らが金融商品を作る、こういった行為の準備を始めます。準備が整って最終的にこの日をスタート地点と決めれば、実際にお支払いただく金額は何円になります、金利は何.何%、かなり小数点の細かいところまで求めていったりしますので、この条件になります。そこでお客様と合意をして、ここで初めて約定になる。

今回、我々が心配しておるのは赤からオレンジの間のゾーンです。事実上、お客様の合意をいただくというのは赤いゾーンで行われるのですけれども、業法上の契約成立はオレンジのところだと。この間のことを今回議論いただいている中で言われていませんよねという確認をさせていただきたいということでございます。

以上でございます。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 消費者契約法の規定に即して考えると、私は「勧誘」に当たらないような状況を念頭に置いているということもあるのかなと考えたのですけれども、それとは違うということなのでしょうか。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋審議役 「勧誘」という行為はもっと前の段階、お客様の要望を受けて、条件検討の段階からその具体的商品の「勧誘」には至っていないのですけれども、一連の行為としては、これは「勧誘」ではありませんでしたと言うのはなかなか難しいのかなと。したがいまして、今、業界独特のことかも分かりませんがと申し上げたのは、どうしても「勧誘」そのものは金商法でも定義がありません。最終的にお客様と1対1でお話をしながらやっている行為は全て「勧誘」だと言われれば、違いますとはなかなか言い難いところがあるので、今回の消費者契約法で言われている取消しとかの条項がどこまで遡ってかかっていくのでしょうかというところが、非常に我々としては心配であるということを申し上げているところでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。少し確認をさせていただきたいのですが、このページに購入の意思表示と書いてあるものについては、具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。例えば、書面を取っている、取っていない、あるいは何らかの確認ができるようなものを取っている、取っていないなど、いろいろ考えられるのですけれども、現実の実務ではどうされているのでしょうか。

○日本証券業協会嶋審議役 年々、書面をいただくケースが増えているとは思います。これはリスクをできるだけ証券会社としても回避をしたいので。ただ、繰り返し申し上げるように正規の約定ではない。しかも最終的な細かな条件というのはこの後ろで決まってくるのです。商品が整った後で御提示できる最終条件が決まってくるので、あくまで買いますという約束のための書面でしかないという状況だと思っています。それを例えば既存のお客様で繰り返しお取引いただいているような方でしたら、必ず書面をもらうとは限らない。口頭でのお約束をいただくこともあると思っておりますので、ここは原則書面をもらうことが多いけれども、必ずしも書面とは限らないというのがお答えになろうかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に御質問があればと思いますが。松本理事長、どうぞ。

○国民生活センター松本理事長 2点ほどありまして、今の御説明との関係なのですが、黄色の約定段階で拒否はできないとおっしゃいましたね。しかし、詳細な条件は決まっていないので、金利が幾らになるか分からない。それは約定時まで分からないにもかかわらず、拘束されるというのはどうしてなのですか。購入の意思表示という橙色のところで、いかなる条件であってもこれ以後私はそのとおり従いますというような特約をしているのですか。そこが理解できないのが第1点です。

もう一つが、購入の意思表示をしたという橙色の時点がはっきりしていれば恐らく何の問題もないと思うのです。先ほどの条件が変わった場合とかを除けば。しかし、その時点がはっきりしていないのだけれども、売り手側がもう仕入れましたとか、もう発注済みですから今さらキャンセルできませんとかいうような感じで既定の契約として押しつけてくるケースが、別に証券の話ではなくて、一般的な消費者トラブルでは多いということで、先ほどのような提案が出ているわけです。橙色の時点がはっきりしているのであれば、証券業界は何の心配もされる必要はないのではないかと思います。

以上2点です。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○日本証券業協会嶋審議役 先ほどの私の説明がもしそのように聞こえたのでしたら申し訳なかったと思いますが、約定の段階では全部決まっています。この約定の矢じりの左の線のところと思っていただければよろしいわけで、そこの商品の仕入れをして、組成をして、その前に購入の意思表示、例えば先ほど申し上げた例ですと3年で3%出るような商品を作ってくれというところで、分かりましたというのがここで合意をします。ただ、その商品が何日に約定するかによって、金融商品というのは毎日残存日数によってその単価などが変わってきます。99円87銭とか、その1銭刻みのものが変わってきますので、今日買っていただくのであれば、この値段になりますというようなことをお伝えする必要があります。それをお伝えすることによって約定が成立いたします。その意味で申し上げております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

そろそろ時間が近づいておりますが、もし更に御質問があれば。山本健司委員、どうぞ。

○山本(健)委員 御説明いただきましてありがとうございました。

資料1-1で御説明をいただきました諸論点に関して、感想と質問を述べさせていただきたいと思います。

まず、1ページの「第1」部分につきまして、適正・正常な取引活動は「殊更に」という要件を満たさないと思います。ただ、そのことを明確にしておいてほしいという御意見はごもっともだと思います。ワーディングや逐条解説での明確化を図る努力が必要とされていると再認識いたしました。4ページの「第7」部分についても同様の感想を持ちました。

次に、2ページの「第2.1」部分につきまして、顧客保護という方向性からの御意見内容である点は評価して読ませていただいたのですが、御懸念の事象は「顧客から当該顧客の適合性に反する取引を求められた場合」なので、後見の場合に限らない問題であり、およそ適合性原則に反する取引を求められた場合には当該取引に応じかねるといった旨の規定が必要な事象ではなかろうかと思いました。今般の提案は、形式的に「後見等の開始の審判の事実のみをもって解除することができる場合」なので、係る条項を無効としても必ずしも御懸念のような弊害は発生しないのではないかと思いました。以上が感想です。

3ページの「第2.2」部分の「解釈権限付与条項」に関する質問です。中央部分に規定例として取引約款の一例を示していただいているのですが、この約款例については「当該約款に規定する事項に反した場合には契約を解除する」という定め方でも御指摘の弊害は除去できるように思います。「当社が認めた場合」という字句が無くなれば、具体的にどのような弊害が発生することが想定されるのでしょうか。もし想定される具体的な弊害があればお教えください。

また、3ページ部分を読ませていただいていてよく理解できなかったのですけれども、「当社が認めた場合」という字句があれば問題顧客を速やかに市場から排除できるのだといったふうに読める部分がありますが、それは、例えば、事業者が反社会的勢力であると認めさえすれば、客観的には当該顧客が反社会的勢力でない場合であっても、当該顧客との契約を有効に解除できるのだ、事業者の判断に顧客は拘束されるのだ、という御主張内容なのでしょうか。その点について併せて御質問させていただきます。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋審議役 まず事実関係をはっきりさせることは、冒頭の当方からの御説明で申し上げましたとおり、例えば不公正取引であったということの判定というのは、御当局が下していただくものであって、我々証券会社が直接に下すことができません。外形的に明らかに相場操縦的な行為、例えば市場が終わる午後3時の直前にまとまった買い注文を出して株価をぽんと吊り上げるようなことがあったとしても、それがたまたまなことなのか、相場を操縦する目的で行ったことなのかということについて証券会社が断定的に、あなたは相場操縦行為をしましたから出ていってくださいと言うことができません。これは相場操縦的行為と思われるということでやめていただくしか方法がないという理解をしています。それをちゅうちょしたがために、繰り返しそういう行為が行われた場合に、ここは我々の業法、金商法の中で顧客が不公正取引を行おうということが明らかなものをそのまま受注する行為というのも、やはり我々にとっての規制行為になってしまっています。したがって、我々は努力をして排除を求めていくことをせざるを得ません。

もう一つの反社会的勢力の場合は、なお難しいと思っています。反社会的勢力かどうかということを認定し、相手に通告することというのはまずできないと思っています。これは身体、生命の危険を伴いますし、明確に例えば警察庁さんが下に掲げる者は全員反社会的勢力ですというものを世の中に公表していただけているわけではありません。ここは我々もいろいろな情報網やデータベースを使い、各社においていろいろな工夫をする中で判定をしていくわけですけれども、最終的に通告する場合も、あなたは反社会的勢力だから出ていってくださいということは申し上げません。一番よくある言い方としては、総合的に判断させていただいて、あなた様とお取引することは妥当でないと考えましたので、お引き取りいただきたいというような言い方になることが大抵だと思っています。したがいまして、ここを何々であった場合という断定的な条文にされますと、非常に我々にとっては使い難いものになりますので、業者が判断する場合というものは今後も引き続き使わせていただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

少しだけ確認させていただきたいのですが、証券会社がその認定を誤ることはめったにないだろうと思うのですけれども、後から見てその認定がおかしかったというときには、結局どうなるということでしょうか。

○日本証券業協会山内常務執行役 ただいまの御懸念のところはあるかと思いますが、私から説明で申し上げましたように、これは各社が勝手に判断しているというだけではなく、特に反社会的勢力に対しての対応に関しましては、まず手続等については私どものほうで自主規制規則を明確に定めております。その手続等にのっとって警察庁と協力し、反社情報照会システムというシステムを活用しながら総合的に判断しているということでございますので、確かにそれが100%正しいかということについては嶋が申し上げましたように、私どもはそれを確定する手段を持ち合わせておりませんから、そういった所定の審査の手続を取った上で対応させていただいているといったことでございます。

○山本(敬)座長 先ほどの山本健司委員の御質問の最後のほうの趣旨は、めったにないかもしれないけれども、認定を誤った場合に、その認定を誤ったけれども、したがって、解除する権限はないにもかかわらず、解除したということは、債務を履行しないということを意味します。そうすると、本来、債務不履行による損害賠償責任等が認められるはずだけれども、その免責を得るためにこのような条項が置かれているのですかという質問だったのに対して、認定を誤ることはありませんということなのでしょうか。

○日本証券業協会嶋審議役 そこを断定的に申し上げるのは難しいと思うのですが、長年この業界で勤めておりますけれども、証券会社が不法行為だと認定をしてやめてくれとまで申し上げたお客様から、その後、異議申立てがあるというケースは余り聞いたことがないです。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。私のせいで少し時間が延びてしまいまして、大変申し訳ありませんでした。

それでは、日本証券業協会へのヒアリングはこの辺りにさせていただきたいと思います。お忙しいところヒアリングに応じていただきまして、誠にありがとうございました。

(日本証券業協会退席、一般社団法人全国銀行協会着席)

(2)一般社団法人全国銀行協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 次に、一般社団法人全国銀行協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は一般社団法人全国銀行協会から、同協会の業務委員長銀行である株式会社みずほフィナンシャルグループ法務部副部長の藤原彰吾様、法務部次長の日比野俊介様に御出席いただいています。お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○全国銀行協会藤原副部長 よろしくお願いいたします。御紹介預かりましたみずほ銀行の藤原でございます。

手前どもの資料の1から5ページ目に関しましては、銀行を取り巻く規制の内容、または銀行業が消費者問題にどう取り組んでいるか、ADR等の御説明で、これは以前、御説明させていただきましたので割愛させていただきまして、今日は6ページ目から御説明をさせていただきます。

全銀協といたしましては、消費者契約法の見直しに当たって前提とすべき基本的な考え方といたしましては、先ほどの日本証券業協会と重なるところがございますけれども、手前ども銀行を初め金融業は、様々な業法、それから、金融商品販売法といった規制が既にかけられております。それに基づいて消費者保護に今まで取り組んでまいりましたので、ここら辺の規制とどうオーバーラップしていくのかというところで解釈に疑問が生じないようにしていただきたいということ。それから、個別の業法での規制も既にありますので、この消費者契約法という全ての国民に適用される一般法に関しては、そういった様々な業界または一般の消費者に関するミニマムなスタンダードを定めるものという位置付けであっていただきたいと思っておりまして、その観点から今回の変更の御提案につきましては、基本的には大変意義深いものと感じており、手前どももそれについては大きな方向性での異議はございません。ただ、先ほど申し上げたように、他の業法との齟齬が生じないようにであるとか、正常な経済活動に対して形式的に当てはめたら、それが該当してしまうことにより正常な経済活動を萎縮させてしまうようなこととなり、かえって消費者の選択を狭めてしまうといった副作用が生じないようにという観点から、幾つかの御提案について意見を述べさせていただきます。

では個別論につきましては7ページからでございますけれども、まず不利益事実の告知に関しましては、これは「故意」に加えて「重過失」というものを加えるかどうかというところの御提案でございますが、今までの議論を拝見しておりますと、この「重大な過失」とは「ほとんど故意に近い、著しい注意欠如の状態」ということで、「故意」だけでは消費者側の立証が難しいことがあろうかということで、このような概念追加の御提案と理解をしております。ただ、この「重大な過失」ということになりますと、特に我々プロにとっては、単純なミスであってもプロであったらこれは「重過失」ではないかとか、そういった議論があるところでございまして、なかなか通常の過失との線引きが難しいところもございますので、でき得ればこの「重大な過失」と解釈される事例を具体的に明文または解釈の指針、ガイドライン等でお示しいただければと考えております。

次に困惑類型の追加でございますけれども、これは「当該行為に関連する行為」、先ほど日証協のときにも出てまいりましたが、「関連する行為」の外延に関し、規制すべき行為と通常のセールス行為との間のどこに線が引かれるのかというのが、単なる「関連する行為」だけでは正直分かりづらいと考えておりまして、そこについて明確にしていただければと考えております。その規制すべき行為をだんだん突き詰めていくと、実は当該行為の定義であります義務の全部または一部の履行に相当する行為という、この相当の中に含まれるのではないかとも思いまして、この相当する行為で十分ではないかと考えられるところでございまして、この「関連する行為」の表現ぶりにつきましては十分な御配慮をいただきたいと考えております。

次に、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型というところでございます。この規制はいわゆるデート商法、霊感商法、アンケート商法と言われるようなものを対象としているというのは重々承知ではあるのですけれども、この「接近」であるとか「損害または危険」、「殊更」、「密接」といった一般的な用語が使われている中で、通常のセールスまたはセミナーを通じて最終的には「勧誘」に至ることとか、またはアフターフォローに関する情報の提供といった本来お客様のためである情報提供行為が、かえってこういった一般的な日本語に形式的に含まれてしまうことによって、規制対象と解釈され得るような状況にならないように御配慮いただきたいというところでございます。

8ページ目、平均的な損害の額の立証に関する規律というところでございまして、この案自体に大きな方向性に異論があるというわけではないのですけれども、こういった訴訟の証拠提出に関係するようなテクニカルな条文が、民事の一般法であります消費者契約法に上乗せして設けられるということについて、どれだけ積極的な意義があるのかというところが少し分かりかねるところもございまして、手前どもでは様々な訴訟経験がございますけれども、立証過程における裁判官の指揮または相手方の主張に応じて必要な資料は当然に提出するという前提でございまして、殊更この消費者契約法に更に上乗せしてこういった事項を設けることについては、慎重に御検討いただければと思っております。

それから、先ほど来、出ております消費者の後見等の開始を解除事由とする条項でございます。我々限られた時間で調査をいたしましたけれども、銀行界においては成年後見になったことをもって解約するという条項は、余り一般的ではございません。ごく一部のいわゆる投資性の商品に認められるということでございます。

ただ、その運用に関しましては先ほどの証券業協会と同じでございまして、後見人の方との対話等を通じて、その被後見人の方にとって何が一番いいかということを対話しながら運用させていただいておりますので、形式的にこれに当たればすぐ解約ということは行っておりません。ただし、そういった条項が全くないというわけではございませんので、この条項が先ほど来、出ているように被後見人等の方に何が一番いいかということを考えた結果の条項であることを御理解いただいて、一律の規制というのはやめていただいて、何か例外規定を設けるような措置をお願いしたいというところでございます。

9ページ、解釈権限付与条項、決定権限付与条項でございます。これについても基本的には異論がございません。ただ、その明確化の問題でございまして、銀行の業界においてはこのような条項は先ほど来、話に出ております反社の解約条項の他に、期限の利益を喪失させるトリガーになるような条項、それから、一部の運用商品、デリバティブを組み込んだような運用商品で消費者向けに販売している預金などもございまして、その場合、一定の相場に達した場合にはお客様または銀行に一定の権利が生じるというようなものに関して、相場が一定の状態にヒットしたかどうかという判定に関しては、銀行の判断に委ねていただいているという条項がございます。

特にマーケット物に関しては、逆にお客様に判定をせよというのは当然、酷な話でございまして、一義的にそれは銀行のほうがちゃんと相場をウォッチして判定いたしますという、これはある意味、合理的な理由がある条項だと思っておりまして、そこで3番目の○でございますけれども、ここで規制をされる対象というのはあくまで消費者が異議を述べることを排除するという部分であって、事業者による一次的な解釈、決定それ自体を規制をするものではない。そういうことですよねということを確認させていただきたいと思っております。銀行に任せていただいている判定も、異議があれば当然それは銀行としてその判断の理由、それに使った客観的な事実をお示しして、それでも御納得いただけない場合は裁判において最終的には銀行がそれを立証していくものであるということでございますので、異議があれば当然それは御説明させていただく前提ということでございます。

最後でございます。条項使用者不利の原則でございます。これに関しましても、この条項使用者不利の原則自体に関して全く異議はございません。手前どもの認識としては、いわゆる約款と呼ばれるような、こちらが契約条項を用意するタイプのものに関しましては、今までも作成者不利の原則というものは、事実上、裁判実務等に見られたと考えています。ただ、これについてあえて今回、明文を設けるかどうか、それとも従来の裁判実務に委ねるかどうかというところについては、十分に御検討をいただければと思っております。

手前どもの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 御説明ありがとうございました。

スライド7ページの合理的な判断をすることができない事情を利用してという部分ですけれども、現在、高齢者がお金を持っているということで銀行とのお付き合いも多いだろうと思いますし、そういう中で「接近」であるとか「密接な関係」というのは、親切に対応するということを基本にした場合、非常に気になる文言なのだろうと思います。ただ、その方の契約の目的であるとか、財産の状況とか、そういう契約の意思確認などを十分にするということは、そもそも法律の中で、あるいはガイドラインの中で決められていることですので、適切なことをしていれば問題にならないのではないかと思うのですが、それについてはいかがでしょうか。

○全国銀行協会藤原副部長 おっしゃるとおりだと我々も一義的には考えております。先ほどから説明させていただいたとおり、手前ども様々な規制がそもそもございますし、いわゆる営業上のポリシーからしても、ここで本当に規制をしたいような押しかけ営業的なものをやっている、押し込み営業的なものをやっているというようなことはないという認識でございます。ただ、法律ということで文言が定められてしまうと、一般論的にはそれが一人歩きする可能性がありますので、なるべく個別に規制をして、抽象的な文言に解釈できる文言は避けていただきたいといった点からの御意見と受け止めていただければと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、他に。山本健司委員、どうぞ。

○山本(健)委員 御説明いただきましてありがとうございました。

多くの論点について、「見直しの方向性自体に異論はない。ただし、要件や適用範囲は明確に規定してほしい」という内容の御意見を頂戴したと理解しております。後者の御意見については、今後の議論において留意させていただきたいと思います。

個別論点に関する御意見のうち、9ページの「解釈権限付与条項」部分において、事業者による一次的な解釈権ないし事業者による要件への当てはめの問題と、それに対する消費者の異議の排除ないし法的拘束という問題を区別すべきである、問題とすべきは後者の点ではないかという御意見を頂戴しております。ごもっともな御意見内容と読ませていただきました。

その点に関連して、全銀協に、解釈権限付与条項に関して、是非お教えいただきたい点がございます。

現在、一部の事業者さんから、契約解除の要件等に関する約款条項から「当社が認めた場合」という字句を削除することへの危惧が示されております。この点、全銀協では、昭和52年に銀行取引約定書のひな型を改訂なさった際、期限の利益喪失条項の請求喪失事由の具体的な要件について、「その他債権保全のため必要と認められるとき」というそれまでの表記を「前各号のほか債権保全を必要とする相当な事由が生じたとき」という表記に改訂なさったと聞いております。また、その改訂は、銀行の恣意的・主観的な判断で失期できるような規定ぶりから、失期には客観的な債権保全の必要性が必要であるという規定ぶりに変更し、もって銀行取引約定書の契約条項の適正性・公正性の向上を図られたという経緯であったと聞いております。

全銀協が40年も前に契約条項の公正性向上という観点から「当行が認めた場合」といった字句を自主的に削除しておられるのは高く評価されて良いことであると思いますし、そのような字句を削除した銀行取引約定書に基づき、我が国の金融機関が顧客との銀行取引を重ねてきているという事実は着目されていい事実関係であると思っております。

そこで質問ですが、銀行取引約定書のひな型の失期条項を「その他債権保全のため必要と認められるとき」という表記から「債権保全を必要とする相当な事由が生じたとき」という表記に改訂したことによって、銀行取引に何か具体的な弊害や不都合が生じたという事実を聞かれたことはありますでしょうか。もしあるならば具体的にお教えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○全国銀行協会藤原副部長 御指摘いただきました経緯はそのとおりでございまして、期限の利益の喪失条項というのは、お客様が持っている期限の利益をある一定の事象が生じたときに、当然喪失は銀行が請求するものではございませんけれども、当然喪失事由につきましては客観的に判断できるものを並べておりましてそれが起きれば当然に、請求喪失事由についてはある一定の事象が起きたときに銀行の請求をもって、期限の利益を喪失させしめることができるという条項でございますけれども、特に請求喪失に関しましては、銀行が請求の通知を送るか送らないかというオプションを当然ながら持っております。そういった事柄の性質上、本質的に銀行がアクションを起こさなければ事が始まらないものに関しては、銀行が判断すると書いておってもおらなくても、銀行の判断というのは物理的に介在をするものでございます。ということですので、結果的には一義的な判断は文言の有無にかかわらず、銀行に委ねられておって、その合理性については銀行が最終的に立証責任を負うべきものと理解をしております。

ということでございますので、今回の手前どもの意見も、そういった事柄の性質上、銀行に一次的な判断を物理的に委ねてしまっているという性質のものに関して、仮に文言のドラフティング上、銀行が判断したものと定めてあったとしても、それはなかった場合と実質、同様でありまして、そういったものが規制対象になるわけではないですよねということの確認が1つでございます。

もう一つ、銀行が判断をするという条項が入っている意義が具体的にあるとすれば、ここですぐにぱっと条項例が挙げられるわけではございませんけれども、ある一定の事象が生じたときにお客様の側に権利が生じるようなもの、先ほどのマーケットの類いのようなものがそうなのですけれども、そういったものについて、これは事業者取引であればお客様のほうでマーケットをウォッチして判定することも考えられるわけでございますが、一般消費者を相手にする条項では、そのような行動はお客様に強いるのはかえって酷でございますので、銀行のほうで責任を持って判断させていただくということで、そのような条項が入っておりますので、そういったある一定の事象が生じたときに、お客様の側に権利が生じるようなものについて銀行に一義的な判断をお任せいただくことについては、これまたお客様のそういった手間を省くということで合理的な理由があると思っております。

これについても先ほどの意見の繰り返しになりますけれども、それ自体が直ちに規制されるというわけではなく、お客様が異議を述べられないという部分が正に規制したいところでございますねという確認をしたいという趣旨でございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。ひな形の改訂によっても趣旨は変わらなかったのであり、したがって、その前後で何か弊害が生じたというわけでもないということをおっしゃったというように理解してよろしいでしようか。

○全国銀行協会藤原副部長 はい、ありがとうございます。

○山本(敬)座長 それでは、他に質問がありましたらお願いしたいと思います。大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 御意見ありがとうございました。

1点伺いたいのですけれども、本日のペーパーの8ページにあります消費者の後見等の開始を解除理由とする条項というところで、一律に無効とする必要はないと思われるというのは、これは検討の余地はあるかと思いますが、合理的な理由があって解除しなければいけない場合というのは、先ほどの投資取引の場合と同じなのかどうか分かりませんけれども、あり得るというのはそうかなと思うのですが、このときのそういう一律に無効とする代わりに、例えば除外規定を設けることなどを検討してはどうかというふうにお書きになっていますけれども、除外規定の設け方は非常に検討が難しいところがあると個人的には思っておりまして、例えば基本的にはこういう後見等の開始を解除事由とする条項は無効とする。ただし、これこれこういう場合にはという形で、具体的に例えばこういう場合にはというのを列挙するというのが1つ除外規定の作り方かと思います。

ただ、そういう形で列挙するというふうになりますと、いろいろ漏れなども生じてくるかと思いますので、例えば解除の合理的な理由がある場合を除き、無効とするといったような例外を少し抽象的な文言で解釈によって合理的な理由があるかどうかを判断できるようにするというのは、このような文言でもよろしいのでしょうかという趣旨です。

なぜそのようなことを聞いているかといいますと、もともと消費者契約における不当条項に関しては、リスト化をするときにこういう形で一律に無効とするという条項のリストのみならず、例えば一定の理由がある場合には例外的に有効とすることを認めるといった形の不当条項と推定されるようなもの、そういうリストもこれまで検討してきたのですが、不当と推定されるリストというのは伺っていると抽象的で困るという意見のほうが多いように思いましたので、この除外規定というのはどのようなものを想定されているか教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国銀行協会藤原副部長 条文の作り込みのテクニカルな部分について、具体的な提案があるというわけではないというのが正直なところなのですけれども、趣旨といたしましては、正に今、大澤委員がおっしゃられたとおりでございまして、正常・通常と判断されるような経済活動を制限しないようにというお願いが広くこの背景でございますので、不合理なものが排除されて、合理的なものについては認められるという形の条文の設計であれば、手前どもの意見に沿ったものと考えております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に質問等があればお出しいただければと思いますが、よろしいでしょうか。

沖野委員、どうぞ。

○沖野委員 9ページの最後の条項使用者不利の原則という点なのですけれども、既にこの考え方を踏まえた実践がされているので、あえて規定化の必要はないのではないかという点ですが、逆に言いますと既にされているということであれば、それを明文化しても支障はないと考えられるのですけれども、御懸念があるということはないと理解してよろしいのでしょうか。

○全国銀行協会藤原副部長 そういう意味では、具体的にこれがこういう懸念がございますというわけではなくて、既に一般的に運用されている規制であるから、それを明文化してもおかしくないではないかという考え方と、既に走っているものについてあえて明文化しなくても、裁判実務に当てはめればいいではないかという両方の考え方があろうかと思いますので、そこの部分については委員の先生方で十分に議論いただいた結果であれば、特に我々としてそれ以上の意見を申し上げるという趣旨ではございません。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。それでは、一般社団法人全国銀行協会へのヒアリングはこの辺りとさせていただきたいと思います。お忙しいところヒアリングに応じていただきまして、誠にありがとうございました。

(一般社団法人全国銀行協会退席、一般社団法人日本損害保険協会着席)

(3)一般社団法人日本損害保険協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続きまして、一般社団法人日本損害保険協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、一般社団法人日本損害保険協会から、同協会より東京海上日動火災保険株式会社業務企画部部長兼調査企画グループリーダーの笠原秀介様、業務企画部次長兼調査企画グループ課長の小橋稔睦様、業務企画部調査企画グループ課長の神通浩二様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○日本損害保険協会笠原部長 改めまして、日本損害保険協会で企画部会長を務めております東京海上日動火災保険の笠原でございます。

本日はヒアリングをいただく貴重なお時間を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。

専門調査会におかれましては、一昨年の12月の報告書を取りまとめて以降も精力的に論議が行われていることに改めまして敬意を表したいと存じます。難しい論点も多いものと認識しておりますが、これから申し上げます当協会の意見が今後の審議で少しでもお役に立つようになりましたら幸いでございます。

申し上げるまでもございませんが、私どもは法律の専門家ではございませんので、したがいまして、本日は実務家の思いといったことを率直にお伝えできればと思ってございます。

資料の表紙をおめくりください。まず目次のうち「I.損害保険について」及び「II.日本損害保険協会について」につきましては、いわゆる第1期の専門調査会で私どもにヒアリングをいただいた際にお示ししたものと同じ内容をお付けしてございます。本日は時間の関係上、これらの御説明は割愛させていただこうと思っております。

「III.具体的な論点-条項使用者不利の原則」以降につきまして、ポイントを絞って御説明をさせていただきます。

4ページ、条項使用者不利の原則につきましては、一昨年10月の前回ヒアリングにおきまして、当協会から明文で定める必要性がどれほど大きいか精査する必要があること。原則が適用される条件を含めた解釈のプロセスを明確にする必要があることなどを申し上げてございます。その後の報告書ですとか、今般の専門調査会における御提案は、私どもの意見をも踏まえていただいていると認識してございます。まずはこの点につきましてお礼を申し上げたいと思います。

さて、今回のヒアリングでは先生方より実務への影響を問われていると認識してございます。後ほど詳しく申し上げたいと思いますが、この論点につきましては具体的な事例が示されていないこともありまして、影響を今一つ測りかねているというのが正直なところでございます。ただ、これまでの審議を拝聴した限りでは、私どもが申し上げていた裁判所における判断枠組みは変わらないかなどの懸念は依然、払拭されていないと感じてございます。また、明文で定める必要性についても引き続き精査が必要ではないかと考えてございます。

本日は、今後も慎重に審議をいただきたく、この際の観点につきまして当該原則の要件、それから、立法の必要性の2点から、私どもの意見を申し上げたいと思います。

5ページ、まずは条項使用者不利の原則の要件について、前提となる適用場面に関する懸念を述べさせていただきたいと存じます。第33回専門調査会の資料ですとか、論議の状況を拝見いたしますと、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合という原則を適用させるべき場面のイメージにばらつきがあるように感じてございます。このままですと原則が広く適用されないかと懸念してございます。理由は今から申し上げる2点でございます。

1点目につきましては、原則を用いていないと思われる最高裁判例が資料に参考事例として掲載されていることでございます。この裁判例では対象となった条項が二義に取り得る内容だったことは理解しておりますが、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残ったために原則を用いたという判旨ではないと理解をしてございます。調査会の資料では引用されておりませんが、私どもが本日、参考資料にお付けした補足意見では、当事者の合理的意思解釈により判断できた旨が記載されてございます。この判例が原則を用いた基礎として明文化が行われることで、二義的でありさえすれば原則を適用するといった運用がされないか、大変危惧してございます。

2点目でございますが、これは委員の先生方のコメントに関する話でございます。専門家の先生のコメントに物申すことでお叱りを受けるかもしれませんけれども、あえて申し上げますと、表の右側の御意見を中心に解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合という前提よりも広く適用場面をイメージされておられる先生もいらっしゃるようにお見受けをしてございます。

専門家の先生におかれましても、適用場面のイメージが異なるわけでございまして、裁判所においても同様にならないかと懸念しているところでございます。5月以降の専門調査会において更に要件を明確にしていかれるともお伺いしておりますが、まずは解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残ったために原則が用いられた具体例をお示しいただきまして、適用場面を明確にしていただきますようお願い申し上げたいと存じます。

6ページ、原則の適用場面に関連しまして実務家として疑問に感じておりますことを申し上げたいと思います。損害保険実務におきましては、ここに記載しましたように発生した事故が契約条項に当てはまるかどうかが争点となるケースが少なからずございます。こうした事例は一見しますと条項の解釈の争いではないように思われます。しかしながら、ここにありますように運行に起因する事故とは、発生した事故をも含む意味であるといった紛争にされますと、解釈の争いとなりまして条項使用者不利の原則の対象に入るようにも思われます。仮にこうした当てはめの事例もが対象となり得るとしますと、事業者はあらゆるイレギュラー事例を想定しまして、あらかじめ条項に列挙する必要に迫られると思いますが、これは現実的には不可能でございまして、影響が大きいと考えております。解釈の意味を明確化していただくことは適用場面の外延を明確にするためにも必要であり、こうした当てはめ事例が対象にならないよう、その違いを明らかにするための御検討を是非お願いできたらと思います。

7ページ、適用場面をすり合わせていただいた上で、次は要件が明確に定められる必要があると考えておりますが、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合を明確に規定することは、適切な解釈プロセスを定めることと等しいものと考えてございます。解釈プロセスにつきましては、先生方御承知のとおり法制審議会において長期にわたる審議が行われてまいりましたが、最終的には改正案には盛り込まれませんでした。こうした審議経緯は現時点までの論議では触れられてはおらず、ともすると踏まえられていないのではないかと感じてございます。

法制審議会では、解釈に係る規定の創設につきまして慎重な意見が示され、結果として創設が見送られましたが、そういった経緯をも踏まえた御検討を是非ともよろしくお願いしたいと存じます。

申し上げるまでもございませんが、解釈プロセスは訴訟実務に深く関わる事項でもございます。訴訟において実際に解釈判断を行っている裁判所の意見をもお聞きいただければ幸いでございます。

8ページ、御提案いただいている要件につきまして、原則の適用に至る解釈プロセスを明確に表現できていないのではないかと不安を感じてございます。理由は次の2点でございます。

1点目です。考慮要素のみが記載されてございます。解釈手順をお示しいただいていないことによります。なお、先ほど申し上げました法制審議会では、解釈手順についても提案があったと伺ってございます。

2点目でございますが、お示しいただいた考慮要素についても過去の最高裁判例ですとか民法の関連書籍等を拝見いたしますと、今回の提案とは異なる考慮要素が記載されているものもございます。御提案の考慮要素に過不足がないかどうか懸念を抱いていることによります。私どもといたしましては、現行の裁判所の判断枠組みを変えてしまう可能性がある場合には、事業者への影響が大きく、原則を規定すべきではないのではないかと考えてございます。

したがいまして、念のため原則を導入されることで、これまでの裁判所の判断枠組みを変える企図はないことを是非明確にしていただきたく、お願い申し上げる次第でございます。その上で、原則の適用に至る解釈プロセスを明確にするという目的を踏まえ、考慮要素及び解釈手順を含めた適切な解釈プロセスの在り方について、より丁寧な御検討をお願い申し上げたいと存じます。

9ページ、ここからは2つ目の観点でございます立法の必要性について僭越ながら御意見を申し上げたいと思います。先ほど申し上げましたとおり、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残ったために、原則を用いざるを得なかった具体例はお示しいただけていないのではないかと感じております。

適用場面のイメージにつきましては、委員の皆様の間でも少なからず相違が生じていることも含めまして、具体例が示されないままに適切な要件立てができるのだろうかと不安を感じております。仮に具体例による分析が困難ということでございましたら、幸いにして他の論点と比較いたしまして問題事例が散見されるものでもないと思われますので、事例の蓄積を待ってからの御検討をいただくことをも含めまして、慎重な御対応をお願いできればと存じます。

10ページ、第33回専門調査会の資料に記載された2件の最高裁補足意見について申し上げたいと思います。これらは原則を設ける政策的な必要性を示す参考資料として掲載されておりますが、私どもといたしましては、いずれも原則を設ける根拠にはなっていないのではないかと感じてございます。

理由は2点です。まず平成7年の裁判例でございますが、これは私どもの業界に関するものでございますが、少なくとも当該裁判官は予見不可能な事象までを記載するよう要請したのではないと理解してございます。また、判決内容を見る限り、事業者が条項に記載しなかったことについて、法的効果を及ぼしたものでもありません。事業者の努力を促したものと理解しております。

次に平成13年の裁判例でございますが、単に疑義のある情報ではなく、紛争が生じていることを事業者が認識して、かつ、最高裁が明確な判断を下した後も事業者が状況を放置し、何らの改善もされない場合に裁判所の判断が変わり得るという考え方が示されたものと理解しております。すなわち、いずれの補足意見につきましても、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合に、一律に事業者不利の法的効果を及ぼす原則の考え方とは趣が異なるものと感じてございます。

御紹介された最高裁の補足意見が御提案の原則を法定化する目的に沿うものかどうかも踏まえ、御検討されている内容での立法が必要かどうか、慎重な御検討をお願いできればと存じます。

最後になりますが、11ページを御覧ください。冒頭、申し上げました、本日は実務家として率直な思いを述べさせていただきましたが、我々事業者には消費者の権利ですとか利益を保護するために平易、明確な契約条項を作成することが期待されていることにもちろん異論はございません。私どもといたしましては、先生方の御指導も賜りながら微力ではございますが、ガイドラインを策定するなど約款の分かりやすさ向上などに取り組むとともに、今後も努力を続けてまいる所存でございます。

一方で私ども損害保険のビジネスというのは、お客様の暮らしにおける偶然な事故による損害を補償するという性質を有しておりますが、お客様が遭遇されるあらゆる事故をあらかじめ条項に書き下ろすことは大変難しいものと認識しております。仮にこれまでの裁判所の判断枠組みを変える内容で原則が導入されるのでありしまたら、私どもはこの難しい課題に直面せざるを得ないのではないかと非常に危惧してございます。実現可能な範囲の努力を求めていかない限り、事業者が明確な情報を作成するインセンティブはうまく働かないようにも感じてございます。御提案の原則を法定化することによる効能と、結果として事業者に発生し得る課題とのバランスにも何とぞ御配慮を願えればと存じます。

いろいろ申し上げましたが、いずれにいたしましても今後も専門調査会における審議も参考にさせていただきながら、分かりやすい約款作成に努めてまいりたいと思います。

本日は、条項使用者不利の原則以外の論点につきましては、前回のヒアリング時に私どもの意見を申し上げていることもございまして、時間の関係から説明を割愛させていただきました。

最後になりますが、このような機会を設けていただきましたことに心より感謝申し上げ、説明を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。

それでは、磯辺委員。

○磯辺委員 どうも御説明ありがとうございます。

条項使用者不利の原則につきましては、先ほど全銀協からの御報告で、従来から裁判所においては個別の事案に応じて条項使用者不利の原則の考え方を踏まえた適切な判断が行われているという認識が示されたところですが、その点、損害保険協会は裁判等の事例を御覧になっていて、どのような感触をお持ちか教えていただけますでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会小橋次長 御質問ありがとうございます。

先ほど来、申し上げていますとおり、具体的な事例といいますか、この原則を用いてどのような条項について、どのような形で適用させていくかというイメージを我々はつかみ切れていないと感じております。そうした前提で、今回明文化しようというふうな、諸外国ではある原則だとお伺いしているところですが、我が国で明文化しようとした場合にそれが現在の裁判所の判断枠組みに影響を与えないかどうか。与えるとすればこれまでの我々の事業は、訴訟等の積み重ねに従う形でやってきていますので、影響は出ないのかと。そういったところで不安を感じているところでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

裁判所の判断に対して影響を与えないかというのは、例えば具体的にどのような影響が出る可能性があるという御趣旨でしょうか。

○日本損害保険協会小橋次長 今の裁判所がどういう実務で動いているかというのは、我々は専門家ではございませんので知るところではないのですけれども、今回、条項使用者不利の原則というものが入ることで、これまで裁判所が判断していた手順といったようなものが変わってしまうのではないか。そういった不安のようなものを漠然と感じているところでございまして、そういったところは今後の審議の中でそういうことはないのだというところを明らかにしていただけると非常に安心できるかなと。最も危惧していますのは、8ページに我々から記載していますとおり、これまでの裁判所の判断枠組みを変えようとされてこの原則を入れられようとしているのではないというところを確認させていただきながら、今後の審議の中でその辺りを明確にしていただけると非常にありがたいと思っている次第です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。他に質問があればと思います。河野委員、どうぞ。

○河野委員 御報告ありがとうございました。

最後の11ページ、最終的に審議を参考にさせていただきつつ、より分かりやすい約款の作成に努めてまいりたいと思いますと、物すごく長いページを費やしてこの1行の結論への御説明をいただいたのですけれども、御説明いただいた条項使用者不利の原則がなぜ御業界にとって問題になるのであるかということが申し訳ないのですが、全く分かりませんでした。何を心配されているのか、例えば結果として事業者に発生し得る課題というところも具体的に見えてきませんで、これを置くことによって確かに事業者の方はより分かりやすい約款に対して、消費者に対する説明の過程でより分かりやすい様々な約款を作っていただいて、最終的に紛争に至らない、さらにはお互いに円満なというか、満足のいく契約というところだと思っていますが、本当のところこういうページを費やして何を御心配になっているか、もう少し簡潔に教えていだきたいと思うのです。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会小橋次長 漠然としたような御説明になってしまっていたこと、申し訳ないと思っているのですけれども、私も冒頭に申し上げたとおり具体的な事例、この条文のこういうものが出てきたら、こういう原則でこのように判断するのだというところがあれば、我々の手元にある約款に照らしてどうかということが判断できるのですが、頭の中では議論されているどこまで解釈を尽くしても、一義に定まらないようなものがあり得るのだろうなと今は頭ではよく分かるのですけれども、そのような条文がどういう条文なのか。そのときに事業者が100%責任を負うべきなのだという、その辺りのイメージが湧かないというところもありまして、我々の事業のほうに具体的にどういう影響があるかというのを本日はお示しできておりません。

ただ、最後に申し上げているのは、我々、そういう条項があろうとなかろうと分かりやすい約款というものを今後も突き詰めていきますし、先生方から御助言をいただきながら、そこは絶えることなく継続してやっていきたいという、いわば宣言のようなところでございまして、そのように御理解をいただければ非常にありがたいかなと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に質問があれば。増田委員、どうぞ。

○増田委員 6ページの老人デイサービスの具体例に関してなのですけれども、ここに運行に起因するということについての解釈かどうかということなのですが、約款において、言葉の意味を説明していると思うのです。運行という言葉の意味はこうですということです。例えば何か問題が発生した後、言葉の意味を明確にする必要性があって、そういう蓄積をしてきて、それで約款が分かりやすく、消費者が普通に読んでも理解できる約款になってきているのだろうと思います。

そういう意味で言うと、適用対象になるかどうかというところが多く問題になるかと思いますので、問題となりそうな部分で適切な説明がもしあれば、こういう争いは少なくなっていくのだろうと思うのですけれども、そういうことでの解決というのはいかがでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○日本損害保険協会小橋次長 ありがとうございます。そういった形でお客様とのいろいろなやりとりの中で、よく御不明な箇所として指摘されるようなところは、御案内のとおり備考欄みたいなところを使いまして、これはこういう意味ですみたいな形で、これは我々の協会の各社もそういう取組をしているかなと考えておるところで、そういうことはこれからもしてまいりたい。

ここで申し上げているのは、そうは申し上げましても一例なのですけれども、運行に起因する事故というのは非常に幅広くて、いろいろな事故形態が今後も出てくるという中で、今、条項使用者不利の原則で議論されている解釈にそういった事実を当てはめるという作業が入るのか入らないかというところによっては、影響度合いが大分変わってくるものですからどうなのかなと。

我々は専門家ではないので、弁護士の先生にもいろいろ相談したりすることがあるのですけれども、理論上は解釈と当てはめというのは全く別物だと。我々もそのように考えておるところなのですが、実際の例えば裁判の実務では、それが行ったり来たりといいますか、渾然一体といいますか、その辺りはこちらにいらっしゃる先生方のほうがお詳しいと思うのですけれども、そういったようなことがあってなかなか明確に切り分けられるものではないのだという話もあって、具体的な事例で申し上げますと、今回の資料の中で掲載している事例で言うと10ページにございます自動車保険のこれはどういう例かというと、3列シートか何かのお車の一番後ろのシートを倒しまして、トランクと一体化させて、そのトランクのところに寝そべっていたか何かの事故。これがいわゆる我々で言うところの搭乗者傷害保険に当てはまるかどうかというような、このような事例というのは解釈なのか当てはめなのかとか、あるいは第1期のほうでは共済契約で地震による火災かどうかを争ったような裁判例が消費者庁から紹介されたと思いますが、例えばそういった事例は解釈なのか当てはめなのか、我々もよく分からなくなってきているようなところがございまして、こういったところにつきましても、もしよろしければ今後の審議の中で明らかにしていただけると、我々の不安が和らぐかなと思っています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に質問があればと思いますが。井田委員、どうぞ。

○井田委員 御説明ありがとうございます。私からは2つ質問がございます。

まず1つ目は8ページでして、御意見の1つとして解釈のプロセスが示されているとは言えないのではないかという観点からの御意見かと思います。例えばなのですけれども、仮に8ページに書いてある中間試案がお考えの解釈のプロセス、適切だと思われる解釈のプロセスだとした上で、このようなプロセスを踏まえて解釈したとしてもなお、二義的な解釈が可能な場合には条項使用者不利の原則を適用するという条文立てにした場合でも、なおやはり問題があるというお考えなのかどうかという点が1つ。

もう一つは10ページです。10ページのところでは各最高裁判例の補足意見に関する御意見をいただいておりますけれども、これが意味するところは仮にある条文の文言が二義的であるとしたとしても、それだけで条項使用者不利の原則を適用するという点がおかしい、つまり単に二義的だけではなくて、条項使用者側もそれを認識し得たし、それなりの期間があったのに直していないというサンクションのような要件も付け加えるべきだというお考えなのか、そこを明らかにしていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会小橋次長 まず8ページですけれども、これがいいかどうかというのは我々は専門家でないから分からないのですが、こういったような手順みたいなものをこしらえて、その中でどの段階でこの原則が使われるのかといったような御検討をお願いしたいという趣旨でここは書かせていただいております。この点は民法のほうでもこの論点について検討されて、中間試案の補足説明でもいろいろな課題が整理されたかなと思いますので、正にそういった課題も考慮しながら、消費者契約においてどのように考えていくのかというところを御検討いただけるとありがたいという趣旨でございます。

10ページのほうは、我々の見方にすぎないかもしれないのですが、ここで書かせていますとおり、いわゆる二義的ではあるのだけれども、これは解釈できた判例かなと思っていまして、仮にこういったところを問題とするならば、今回の条項使用者不利の原則というのはあくまで、どこまでいっても二義で解釈し尽くされないといったような原則を入れようという形ですので、ここで挙げられている問題意識と今回の御提案が合っていないかなという印象を持っておるところでございます。あくまで我々の印象ですので。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

松本理事長、どうぞ。

○国民生活センター松本理事長 今のやりとりとも関係してくるのですが、6ページの平成26年判決の見方につきまして、千葉裁判官の補足意見にこう書いてあるから、平成26年判決は、解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残る場合についての判例ではないのだと説明されているわけですけれども、補足意見と法廷意見の関係についてどのように理解されているのでしょうか。判決本体、つまり法廷意見にはこういう解釈をした結果、こうなのだということは書いていないわけですね。千葉裁判官は、結論は法廷意見でいいのだけれども、その結論に至るロジックは法廷意見とは違うのだということで、このように解釈して考えればいいのではないかということをおっしゃっているわけです。確かにそういう解釈も可能なのだということを最高裁の裁判官の1人が言っておられるということで、非常に重要なことだろうと思うのですが、判例としては千葉裁判官の補足意見が判例なのかというと、一般的にはそうは評価されていなくて、補足意見はあくまでも補足意見だということだと思うのですが、この千葉裁判官の補足意見をここで引用されて、最高裁はこういう条項使用者不利の原則を採用しているとは言えないのだとおっしゃることの趣旨をもう一度説明していただけませんでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○日本損害保険協会神通課長 ありがとうございます。大分疲れてきたみたいなので、私から一度交代しようと思います。いただいたところの御意見は、私ども実はよく分かっていないところがありまして、補足意見というものと裁判例の中に書いてあることは一体どういう関係なのかというところは、正直自信がないところです。ただ、4人の裁判官の中でこの千葉さんという裁判官が解釈によって判断できたということは、恐らくファクトなのだろうなと。その他の3人の裁判官がどうやってこれを結論に導いていったのか、これは分からないというところで、そうなってきたときに少なくとも解釈ができないからこうしたと書かれていないものを、ここで条項使用者不利の原則を使った事例として出されることにはやや疑問が残るということを申し上げたところでございます。

その上で我々も今のお話に関連して疑問に思うのは、仮に残りの裁判官3人が違う解釈の手順を採っていたとすると、これは裁判官によって解釈手順のやり方が異なるということになってくるので、条項使用者不利の原則をどこで使うのかというのが裁判官次第ということになってくると、ちょっとこれは実務的には塩梅が悪いかなと思うところでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。他に質問等は。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 損保協会はADRセンターをお持ちで、たくさんの事案をADRでやっていらっしゃると思いますけれども、ADRの事案の中で約款の解釈がどうしても定まらない、二義になってしまうという事例がおありでしたら是非教えていただきたいですし、今でなくても事後でも結構なのですが、そのときにどういう判断基準で対応なさっているのかなというのを勉強させていただければと思います。

○山本(敬)座長 現在、可能な範囲でお答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会神通課長 ADRのところは確たる数字や事案を本日は持っていないので、そこは改めてということでお願いしたいと思うのですが、例えばADRに至らなくても解釈についてお客様との間で仮に紛争が起きたと。そこで我々からお支払いができないのですというようなことを言う場合には、当然弁護士の先生の御意見を聞くですとか、そういった形でのひとりよがりでない説明をしていくというところが1つあるのと、個社ベースになるかもしれませんが、第三者の委員会のようなものを設けた上で異議申立てを受け付けるような仕組みを設けているという会社もあると思っています。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

御意見の確認を1つだけさせていただきたいのですけれども、現在の裁判実務で行われている解釈に対する影響を懸念しておられるということは、現在の裁判実務で行われている契約等の解釈については、そのままでよいという理解が前提にあるのでしょうか。

○日本損害保険協会小橋次長 現在の裁判所の実務に対して我々がどうこう意見を申し上げるという立場ではないと思っております。

○山本(敬)座長 もしそうであれば、現在の裁判実務で行われている、ないしは広く実務において行われている解釈の準則がどのようなものか、それを条文の形で民法に書くことは難しかったかもしれないけれども、それはルールがないのではなくて、明確に条文にはできないけれども、一般に認められているものがあるのであって、それに従って裁判実務が動いている。そのような不文の解釈準則に従って解釈をしてもなお二義的にしか解釈できない場合に、この原則は適用されるということであれば、それは別に構わないということでしょうか。それでも問題だということなのでしょうか。そこをお聞かせいただければと思います。

○日本損害保険協会神通課長 今の裁判実務は変わらないということが確かに明文で担保されるというのは、当然私どもとしてお願いをさせていただきたい大きな事項だと思っています。後は必要性という意味で本日何点か意見をさせていただいたところがありまして、我々もこの具体例が今までにないという中で、本当に今までの裁判実務で解釈を尽くしたそのプロセスというものがどこかにあるのかというところは疑問もありまして、それが仮に作られた場合に、それが本当に解釈を尽くしたプロセスなのかどうか確かめるすべを持っていないというところに悩みがありまして、考え方としては頭では何となく分かっているつもりなのですけれども、なかなか実証が難しいなという悩みを持っているということを共有させていただければと思っています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。それでは、一般社団法人日本損害保険協会へのヒアリングはこの辺りにさせていただきたいと思います。お忙しいところヒアリングに応じていただきまして、誠にありがとうございました。

(一般社団法人日本損害保険協会退席、一般社団法人生命保険協会着席)

(4)一般社団法人生命保険協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続きまして、一般社団法人生命保険協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は一般社団法人生命保険協会から、同協会の消費者法制研究会座長であり、明治安田生命保険相互会社調査部課長の上原純様、同協会の消費者法制研究会委員であり、明治安田生命相互会社調査部課長の濱田築様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。

それでは、御説明をお願いいたします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 私は生命保険協会消費者法制研究会の座長を務めさせていただいております、明治安田生命保険の上原と申します。本日は消費者契約法専門調査会でのヒアリングの機会をいただきまして、ありがとうございます。

生命保険協会には全ての生命保険会社41社が加盟しておりまして、生命保険協会設立以来、加盟会社がお客様の視点に立ち、健全な業務運営を行えるように各種情報の提供や自主ガイドラインの策定といった取組を行っております。また、消費者契約法は消費者との間で締結される保険契約にも適用されますことから、私どもといたしましてはこの見直しの議論には大いに関心を寄せているところでございます。

本日は消費者契約法の見直しに関しての私どもの意見につきまして、お手元の資料に沿って御説明をさせていただきたいと思います。

資料の1ページを御覧ください。ここでは検討事項に対しましての総論としての意見を述べさせていただいております。私どもが取り扱います生命保険は、健康なうちには加入の必要性を意識しにくいというニーズ潜在型の商品であるという特徴がございます。また、一般に契約期間が長期に及ぶ商品であり、さらに、一旦解約や失効をしてしまいますと、年齢や健康状態によってはもう一度新たに保険に加入することが困難になる、こういった意味で再加入困難性という特性を有しております。

また、保険は相互扶助の精神に基づきまして、多くの人々が集まって金銭を出し合い、生活を脅かすような事態が生じた場合には、集まった金銭の一部を支払うことで被害を軽減する仕組みでございますことから、契約者保護や生命保険の特性などの観点から、保険業法など各種規制が定められてございます。

こうした点を踏まえまして、生保各社は創意工夫を発揮しながら、より良い取組を目指して実務の構築を進めております。消費者契約法の見直しを検討する際には、このような生命保険の特性や業規制との関係についても御考慮をお願いできればと考えております。

2ページ目を御覧ください。まず勧誘の規律に対する意見の前提といたしまして、ここでは保険サービスの御提供の流れを御説明しております。ニーズ潜在性という生命保険の特性から一般的に生命保険の募集につきましては、お客様の御意向、年齢や家族情報などの情報を収集した上でお客様のニーズを喚起し、商品の御提案を行っております。また、御契約後も保険料の収納などの契約保全に加えまして、御契約内容の御確認や生活設計などの幅広い情報提供、こういったアフターサービスを御提供しております。こうしたアフターサービスの御提供により、お客様との信頼関係が維持、また、強化され、その結果として追加での御契約の御希望や新規のお客様の御紹介につながることも多くございます。

続きまして、資料の3ページを御覧ください。ここでは合理的な判断をすることができない事情を利用して、契約を締結させる類型に対する意見を述べさせていただきます。まず全般としての意見でございます。生命保険はニーズ潜在型の商品でありますので、勧誘に当たっては一般的に将来のリスクなどについてお客様への御説明を行っております。将来のリスクなどの御説明や具体的な生命保険の御提案のためには、お客様の年齢や家族構成などをお伺いする必要があり、それらをお伺いすることができるよう継続的な活動に取り組んでおります。

このような通常の健全な保険募集が契約の取消事由に該当することがないようにするため、客観的かつ明確な要件としていただくようお願いしたいと考えております。

続きまして、法4条3項3号案に対する意見でございます。現在、提示されている案に関しまして、例えばお客様に生じ得る将来のリスクなどを御説明し、その後、御契約に至るといったケースが「消費者に生じ得る損害または危険を殊更に告げること」に該当することがないか。また、アフターサービスなど、勧誘以外の場面でのお客様とのやりとりをきっかけに、新たな御契約の締結に至るといったケースが「当該消費者契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに当該消費者に接近した上で」という要件に該当することがないか。また、相続や年金、生活設計などについてセミナーを開催し、その結果、セミナーに参加されたお客様との間で御契約の締結に至るといったケースが、「当該消費者契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに当該事業者が指定した場所に来訪させた上で」という要件に該当することがないか。今、申し上げましたようなケースが該当しないような要件を是非御検討いただきたいと考えております。

続きまして4ページ目を御覧ください。法4条3項4号案に対する意見でございます。現在、提示されている案に関しまして、例えばお客様との信頼関係を構築し、その後、御契約の締結に至るといったケースが、「消費者に接触して当該消費者との間に密接な関係を築いた上で」という要件に該当することがないよう、御検討をいただきたいと考えております。特に、「殊更に当該消費者契約を締結することが当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動」、この要件につきましてはどのような行為であればこれに該当しないのかということが明確になるよう、要件を御検討いただきたいと考えております。

次に、困惑類型の追加に対する意見でございます。現在、提示されている案に関しまして、例えば既契約のアフターサービスなどお客様に対して情報提供などを行った結果、新たな御契約の締結に至るといったケースが「当該行為に関連する行為を実施したことの代償として契約の締結を迫る」という要件に該当することがないよう、不当な行為に限定した要件とするようお願いしたいと考えております。

最後に配慮義務に対する意見でございます。これは努力義務ということでございますが、どのような対応が事業者に求められるのかが明確となるよう御検討いただきたいと考えております。

続きまして5ページ目を御覧ください。ここからは契約条項の規律に対する意見となりますが、その前提といたしまして保険約款の認可制について御説明をさせていただきます。

生命保険の契約は、個々の場合には偶発的なものであっても、これを数多く集めてみると一定の結果に近づくという「大数の法則」、また、拠出される保険料の総和と保険会社の保険給付の総和が等しくなるように保険制度を運営するという「収支相等の原則」、また、個々の保険加入者から拠出される保険料は、保険契約者のリスクの程度に応じて決定されるという「給付反対給付均等の原則」、こういった数理的基礎に基づく商品設計がされております。

こうした生命保険の特性を踏まえまして制度や実務が構築されており、また、契約内容を定型化した約款を用いて契約条項を規定しております。この保険約款につきましては、保険契約者保護の観点から保険業務上、具体的に記載すべき事項が規定されております。また、保険業法上、保険商品の創設や改定には認可が必要とされておりまして、保険会社から認可申請が行われた場合、監督当局は保険業法などに基づき審査を行うこととされております。資料には約款の審査基準の概要を記載しております。

6ページを御覧ください。ここでは不当条項の類型の追加のうちの解釈権限付与条項、決定権限付与条項に対する意見を述べさせていただきます。例えば生命保険契約の死亡保険金は、死亡時にお支払をするわけでございますが、この死亡時というのは法律上の失踪宣告や認定死亡も当然含んでおります。こうした失踪宣告や認定死亡のような場合はお支払に問題はないわけですが、例えば大規模な自然災害があったような場合に死亡したかどうかの事実が確認できない、いわば行方不明という状態のままになってしまうというケースも生じてしまいます。こうした場合も想定しまして、保険会社が死亡したと認めたときは、死亡保険金をお支払することがありますということを約款に規定している例がございます。

今、述べましたのはあくまで一例にすぎませんけれども、こうした消費者に有利な取扱いを定めた条項もあり得るわけでございますので、不当条項類型の追加を検討する際には、引き続き適切、健全な生命保険の運営ができるよう御配慮をいただき、解釈権限付与条項、決定権限付与条項についてはそれを一律に無効とするのではなくて、消費者の利益を一方的に害するような不当な条項に限定して無効とするような要件を御検討いただきますよう、お願いしたいと考えております。

意見に関しては以上でございます。

資料の7ページから9ページまでは以前、一昨年、平成27年10月に実施されました専門調査会ヒアリングでの生命保険協会提出資料を参考として再掲したものでございます。再掲資料ですので、この場での御説明は割愛をいたしますが、消費者契約法の見直しに対しましての私どもの基本的な考え方は、以前の事業者ヒアリングの場で申し上げたところと変わるところはございません。

生命保険各社は、かねてより御契約者保護に向けた様々な取組を行ってきております。今後の消費者契約法の見直しに当たりましては、消費者保護の一層の進展と消費者保護に配意した事業者の健全な事業活動への配慮をバランスよく実現するための規律となることを御期待申し上げたいと思います。

以上で私からの御説明を終わります。ありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 3ページの法第4条3項3号案の下のほうなのですけれども、セミナーに参加した場合、その後で契約に至るというケースなのですが、これは実は消費生活相談の中で心配な例でございまして、生命保険だからということではなく、投資の勉強会とかいろいろなセミナーがあって、それから何がしかの契約に至るということが結構パターンとして多くあります。例えば投資用マンションにつながったとかがあるのです。そうしますと、これを一律に排除するということは非常に難しいのではないかと私としては思っているところなのですが、ここの部分で何か条件を付けるというようなことがあれば了解できるとか、そういうことのお考えがあれば教えていただきたいと思いますし、基本的には適合性原則とかガイドライン、自主規制を運用していれば問題ないと思っています。そこら辺について切り分けができるのか、ここからが勧誘するというところで何か決めるとか、そういうことができるのかなど、教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 まずセミナーのところですけれども、セミナーのその場で保険契約の御契約の締結に至るというケースはそれほど多くはなくて、そこで御関心を持ったお客様に改めてアポイントメントなりをいただいて、そこから御説明を開始するというのが普通でございますので、何かセミナーで、その場で御契約の締結をいただくということが中心的なビジネスとして行われているというわけではないので、そういう意味ではそこについて心配しているということではなくて、こういったセミナーを通じて御興味を持ったお客様に、それをきっかけに御説明、御提案をさせていただくという募集活動が当たらないような要件を御検討いただきたいというのが趣旨でございます。こういう要件を入れれば受け入れられるかどうかということについては、今日はその答えを持ち合わせてございません。もともと御提案いただいています専門調査会資料に対する私どもの事業活動への懸念を述べるということで、今日は出席をさせていただいておりまして、このような要件であればいいのではないかという代案は、大変恐縮ですが、今日は持ち合わせておりませんので、そこの回答は差し控えさせていただきたいと考えております。またガイドラインなどによる適切な勧誘活動は、これまでも当然協会としては取り組んできているところでございますが、ここはPDCAを回しながら不断の努力をするところだと考えております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 それでは、他に。後藤座長代理、どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 どうも御説明ありがとうございました。

3ページの法第4条第3項第3号案のところになりますが、お客様に生じ得る将来のリスク等を御説明しという部分なのですが、具体的に将来のリスク等というのはどのようなことがこれに当たるのでしょうか。その下の行に書いてあります1案、2案の消費者に生じ得る損害または危険ということと重なるような内容のことがあるのでしょうか。その辺について具体的に将来のリスク等についてどのようなものが当てはまるか、教えていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 保険契約の特性ということで先ほど申し上げましたとおり、ニーズ潜在型ということがございますので、保険の募集におきましては例えば死亡のリスク、お客様が亡くなられたときの今後の経済的な御負担の面でのリスク、死亡のリスクやけがや病気のリスク、こういったものをお示しして保険の加入の必要性ということを御認識いただく。これは先ほど申しましたニーズ潜在型であるためニーズ喚起が必要であるということであり、保険募集の基本的な活動でございます。

そういう意味ではここに書いてあります損害または危険を告げるということ、そのものを行っているということも言えるかと思っています。ただ、それを「殊更に」ということで今回、御提案されているところでございますが、その「殊更に」という要件は必ずしも明確ではないのではないか。したがって、今、申し上げました保険の勧誘の際にお客様に生じる将来のリスクを御説明する行為が該当してしまう懸念があるのではないかということで、ここで御意見を申し上げたということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○後藤(巻)座長代理 例えば今おっしゃった中で、死亡のリスクを告げるというのはどういうことなのでしょうか。分からなくて申し訳ないのですが。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 死亡のリスクといいますのは、例えば平均的な30代男性の方がお亡くなりになったときに、御家族がこれだけいらしたときに、今後これだけの経済的負担が発生する可能性がある。ここを保険でカバーする必要があるのではないかといったリスクを御説明しているということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では磯辺委員。

○磯辺委員 「殊更に」というもののイメージを把握しかねるという話だったのですけれども、専門調査会の提案の中では「殊更に」についてどういう趣旨かということで、合理的理由がある場合でないにもかかわらず、過度に強調して防げるという趣旨なのですということが提案文にあるわけですが、例えば「殊更に」を合理的理由がある場合でないにもかかわらず、過度に強調してという要件に置き換えれば、大体実務上は支障がないということでよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 今おっしゃっていただいたとおり、これまでの専門調査会では、合理的な理由がないにもかかわらず、過度に強調して告げるということが「殊更に」ということの趣旨であるという御説明であったと思っております。その趣旨が明確となるような要件をお願いしたいということで意見を申し上げたということでございます。ただ、こういう要件であれば受け入れられるかというようなところについては、今日はその回答を持ち合わせておりませんのでコメントは差し控えさせていただければと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

他に質問等があればお出しいただければと思います。山本健司委員、どうぞ。

○山本(健)委員 御説明いただきましてありがとうございました。具体的な御懸念をお聞かせいただき、ありがとうございました。ただ、そのことを明確にしておいてほしいという御意見はごもっともだと思います。

適正・正常な取引活動は、現在議論されておりますような不当勧誘行為の要件を満たさないと思います。ワーディングや逐条解説での明確化を図る努力が要請されていると改めて認識いたしました。

個別論点に関して、6ページの「解釈権限付与条項・決定権限付与条項」部分で例示いただいている契約条項についてお教えいただけますでしょうか。「死亡したものと認めた」という事業者の決定ないし要件への当てはめについて、誰かが法的に縛られることになる規定内容なのでしょうか。具体的には、死亡したと認めた方がその後に出ていらっしゃったといった場合、その後の具体的な取扱いはどのようになるのでしょうか。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 お答えいたします。今おっしゃっていただいたような会社が死亡と認めて保険金をお支払いした後に、実はそれが事実と相違していたというような事例があったということは、私の知る限りでは承知をしておりませんので、その場合、このような処理をしていることも実務例という意味での御回答は、お答えができないところでございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に質問等があればと思いますが、いかがでしょうか。井田委員。

○井田委員 私からは1点です。4ページなのですけれども、4条3項第4号案というところの2つ目のところでして、「殊更に消費者契約を定義することが当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動」という要件についてはということで、これは御承知のとおり、主にはデート商法というようなものを念頭に置いた話でして、そんなに広く適用範囲があるとは個人的には思っていないのですけれども、どのような行為であれば該当しないのかが明確になるよう要件を研究いただきたいというのは、生命保険の勧誘において、ここに当たるかもしれないという懸念となるような行為があるということでしょうか。それとも、そうではなくて一般的にということでしょうか。そこだけお伺いしたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 お答えいたします。

先ほど申し上げましたとおり、生命保険につきましてはニーズ潜在型の商品ということでございますので、通常、見ず知らずのお客様にいきなり保険に入っていただけませんかという御提案をするということは現実的には難しい。生命保険の募集活動は、まずお客様とお知り合いになって、お話をする機会を作らせていただくなどして一定の信頼関係を作って、それからようやく商品提案や御説明を行うことが必要になるということでございます。こうしたお客様との信頼関係を構築する通常の募集活動が該当しないようにお願いしたいという趣旨でございまして、今、デート商法というようなことをおっしゃっていただきましたが、そういったものを具体的に懸念しているということではございません。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。信頼関係を作ってからという意味は何となく分かるのですけれども、具体的にどのような関係を作るあるいはやりとりをするということが実務では行われているのでしょうか。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 正に人と人との関係ということでございますので、どのような関係を構築するかというのは、それぞれの営業担当者のやり方というものがございまして、例えばもともとお知り合いの方々を通じてということもあるでしょうし、あるいは継続的な職場への御訪問を通じて顔を覚えていただいてということもあるでしょうし、そこは様々なものがあり得ると考えております。

○山本(敬)座長 保険の締結に関わる様々な事柄というのは、もちろん幅が広いと思います。契約そのもの以外に、将来の人生設計を含めたライフプランに関わる様々な事柄があると思います。そういったライフプランに関わるような事柄についてのやりとりを、関係を作っていく中でしていくという趣旨なのでしょうか。それとも、例えば趣味がサッカーなので一緒にサッカーをするとか、そういう取引とは直接関係のないようなことを積み重ねていくことも含まれているということでしょうか。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 今、申し上げたとおり様々なものがあると思っておりまして、そこは今おっしゃったような趣味の関係がある方から御紹介いただくこともあるでしょうし、そこは様々なものがあると思っております。何かこれが保険の営業における人間関係の構築の仕方だ、という決まったものがあるというわけではないと思っています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 御意見ありがとうございました。4ページの困惑類型の追加という真ん中のところで伺いたいのですけれども、既に締約しているお客様との関係でのアフターサービスの中で、例えば別の保険商品の契約を結ぶということだと思うのですが、これは恐らく余り懸念されているような御心配はないのだと思うのですが、恐らく専門調査会で提案していた案というのは、全然まだ契約関係のない人に対して、今回のいわゆる既契約すらないような消費者に対して何か例えば一部先履行みたいなことをやって、断りにくくしてお金を払わせるというのが典型的な例だと思うのですけれども、これは既に例えばある生命保険契約を結んでいて、例えば何かの特約をプラスするということを以前、私は個人的にやったことがあるのですけれども、これは契約の個数としてもちろん別個といえば別個なのでしょうが、既に契約関係がある状況でこのように商品をプラスするというのは、別に保険以外の場面でも十分あり得るのではないかと思っているのですが、この御懸念されていることは個人的には余り心配要らないのではないかと思っているのですけれども、この点についてもう少し御説明をいただければと思います。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 ここで申し上げておりますのは、正に書いてあるとおり、既契約のお客様へのアフターサービスなどを通じて情報提供を行った結果、契約の締結や御紹介をいただくものということで、それが全く心配に当たらないということであれば、私どもとしては特にそれ以上何か申し上げることはないと思っております。ただ、先ほど申し上げたとおり、「当該行為に関連する行為を実施したことの代償として契約の締結を迫る」という要件で果たして今、先生がおっしゃっていただいたような限定がされているのかどうかというところに不安があるということで、このような意見を申し上げているということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 4ページの最後のところの配慮義務なのですけれども、努力義務としてどのような対応が事業者に求められるのかが明確となるよう検討していただきたいということなのですが、この明確となるようにする方法なのですけれども、消費者契約法は労働契約以外、全ての消費者契約に適用されますので、法律に明確となるよう書き込むとなると結構大変ではないかという気もするのですが、今後このような明確となるよう検討するという場合に、何かヒントとなるような、このようなことを考えたらいいのではないか、このようなやり方があるのではないかということがもしあれば御教示いただきたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 何か代案のようなもの、こういうものであればいいのではないかということは恐縮ながら、持ち合わせておりません。

ただ1点、気になっております表現としまして、今回、御提案にございます配慮すべき事項として消費者の年齢、知識、経験や資力、この辺りは私どもの業界でも適合性の原則というところでなじみのあるところなのでございますけれども、もう一つの消費生活における能力に配慮するということが挙げられているわけでございますが、これが何を指すのかというところが明らかでないのではないかというところで、そういう問題意識でこのような意見を述べさせていただいたということでございます。

○後藤(巻)座長代理 そこが明確になれば、この配慮義務を条文化するといいますか、規定することについては特に御異論はないと受け取ってよろしいでしょうか。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 どのような条文であれば問題がないのかというところは先ほども申し上げたとおり、今日お答えする回答を持ち合わせていないのですけれども、いずれにしても今、申し上げたような懸念がないような形での要件の御検討をお願いしたいということで意見を述べてございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他にございますか。河野委員。

○河野委員 御説明ありがとうございました。

先ほどから出ておりますけれども、3ページ、4ページの第4条第3項3号案、それから、4号案のところに使われている「殊更に」という言葉なのですが、発射台をどこに置くかということでこの言葉の解釈を明確にという御要望で、その御説明はよく理解できたところです。

例えば今、生命保険等でも様々な場面で消費者とのいわゆる保険に対するアクセシビリティーが拡大していますよね。いろいろなところで売っているというか、そういったときに御業界の中では「殊更に」にならないような例えばガイドライン等をお持ちで、それを契約の場面でこういったことに関しては配慮したほうがいいというような内部でのルールを持っていらっしゃるのかどうかというのを伺いたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 今の御質問の御回答になっているかどうかというところは自信がないのですが、例えば資料の9ページに再掲資料ということで先ほど御説明いたしませんでしたけれども、生保協会の自主ガイドラインという形で、これは一例でございますが、あくまで自主ガイドラインということですので何か拘束力があるものではないのですが、会員各社が実務の参考とするためのものとして、ここに記載のようなガイドラインを定めている。今おっしゃったような「殊更に」にならないようなガイドラインということでは、例えば生命保険商品に関する適正表示ガイドラインで、誤解を与えるような表現にならないようにするとか、また、生命保険商品の募集用の資料等の審査等の体制に関するガイドライン、こういったもろもろの販売資料に関するガイドラインを定めることで、協会としても適切な募集がなされるような実務を構築しているところが、例示でございますが、あります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 口頭で御説明になったのであれば私の聞き漏らしかもしれないので確認なのですが、条項使用者不利の原則についての御意見がありましたらお聞かせいただければと思うのですが。

○山本(敬)座長 お答えをお願いします。

○生命保険協会上原消費者法制研究会座長 条項使用者不利の原則につきましては、資料の中では言及しておりません。今回の資料では、専門調査会の貴重なお時間をいただいていることもありますので、前回、一昨年のヒアリングの際に提出した意見から変わっていないところは記載してございません。記載のないところで前回の専門調査会ヒアリングで意見を出させていただいたところと変わっていないところは2点ございます。

一点が今おっしゃった条項使用者不利の原則でございます。ここは以前の専門調査会ヒアリングの資料では、「規定を設けず、裁判所の柔軟な運用に委ねることとしていただきたい」という意見を出させていただいていまして、ここは前回から変更はないところでございます。

もう一点が、平均的な損害の額の立証に関する規律の在り方でございます。ここも前回、「現行規定の維持を含めて、立証責任の適切な在り方を検討いただきたい」という意見を述べておるところでございます。

以上でございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、一般社団法人生命保険協会へのヒアリングはこの辺りとさせていただきたいと思います。お忙しいところヒアリングに応じていただきまして、誠にありがとうございました。

(一般社団法人生命保険協会退席、全日本葬祭業協同組合連合会着席)

(5)全日本葬祭業協同組合連合会からのヒアリング

○山本(敬)座長 最後に、全日本葬祭業協同組合連合会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は全日本葬祭業協同組合連合会から、同連合会専務理事の松本勇輝様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 ただいま御紹介をいただきました経済産業大臣認可全日本葬祭業協同組合連合会の専務理事をしております松本でございます。

略称は全葬連というのですが、本日は一個一個の条文をと思ってもみたのですが、業界の現状の中から該当するところを御配慮いただいて、今回の改正につなげていただければということでございます。

本日は2点、資料を御用意しております。1つは葬儀業界の現状というものと、もう一つはカラーの当連合会の紹介のものでございます。当連合会の紹介、今年62年目を迎える団体でございまして、現在の加入者数は全国に都道府県で59の組合、また、1,360社が加盟してございます。ガイドライン等々、実施基準等はおめくりいただいて後ほど御一読をいただければと思います。

早速なのですが、業界の現状ということで全体の中から少し御説明をさせていただきます。1ページおめくりいただくと、御存じのとおり日本の人口動向というものがございまして、今、死亡者数が厚労省の調べですと129万人ということでございます。私どもの業界の中で数字を見ていますと、2040年までは先生方御存じのとおり170万人ぐらいの方が亡くなるという予測がされている業界でございます。

先ほどからお話を伺っていると、私ども何か物を買うというものとは大分違う業界なものですから、特殊な業界だということを改めて実感した次第でございます。何か物を販売して広くということよりも、必然的にお葬式はしなければならないというところがあるのかなと思います。

2番目のところ、葬儀会場の変化ということで、この葬儀自体がこの20年、かなり大きく変化をしてきております。皆様も御存じかと思いますが、昔は御自宅とか寺院とか、集会所とか公民館といったところで葬儀をしていたのですが、日本消費者協会の数字を見ますと、最近では私ども業界のフューネラルホール、セレモニー会館に大分移行してきているという現状がございます。

その中で早速3ページ目のほうを見ていただくと、昔は地域コミュニティー、自治会とか町内会とか親戚とか会社とか、地域コミュニティーの中で葬儀を非常に運営していたものですが、商売というよりは、むしろ地域の支えの中で公益性が高い事業だと御理解いただければと思います。

3番目のところ、葬儀社というのはどういうところがあるかといいますと、実は幾つかグループがございます。私どもは葬祭専門事業者といって長年地域密着で地域ごとにむしろ中小企業が加盟している団体でございます。もう一つは冠婚葬祭互助会ということで、こちらのグループは結婚式も含めた割賦販売法の中で運営をされている組織。もしくはJA。もう一つはその他で私どもの組合に入っていないような様々な最近は鉄道関係とか、墓石の関係とか、関連事業者ということで、何でこうなるかというと、そこの下のところに書いてありますとおり4,000から5,000社ぐらいあると言われているのですが、実は許認可、届出が全くございません。ですから前段で話された業界団体の方も業法がございますが、私どもの業界自身は全く今ないというのが現状でございます。

業界団体が2つありまして、私ども1,348社と、全互協という先ほどの冠婚葬祭互助会のほうが221社ということで、シェアでいくと4割ぐらい。専門事業者、私どもが3割ぐらい。農協その他が15%ぐらいというような現状でございます。ただ、9割以上が中小零細企業が多くて、ほとんど9割以上は中小の零細企業でございます。就業人口等々は御覧いただいて8万人ぐらいということで、先ほどの業界規模も2016年に129万人ですが、数字で表すのは余り良くないですけれども、1兆5,566億円ぐらいの業界の規模だと言われております。

4ページ目以降、葬儀社の役割というのは、実は関連する業界は非常に多くございます。消費者の方から見ますと葬儀社がいわゆるコンダクター的になって様々料理の手配、また、霊柩自動車に関しては国交省の管轄が法律上はございます。私どもはないのですが、生花業、ギフト屋、火葬場、お寺関係といったようなところと連絡体制を取りながらやっているのがうちの業界だと御理解いただければと思います。

お葬式の係る費用の目安というのは幾つかございまして、一般消費者の方から見ると墓石とか仏壇とかもろもろ入れてお葬式とお考えになる方が多いのですが、通夜からの飲食の関係とか、寺院のお布施とか、それ以外のホールの使用料とか祭壇、お花とか、そういうものが費用として分かれていますというのが5番目のところでございます。

6ページ目も、細目としてはこのような形で一式の費用の明細を出していく。これは見積書等ではもっとかなり細かく出します。

7番目のところが葬儀費用の紹介ということで、全国数字と先ほどの関東圏の数字のものをここに載せております。これは御確認ください。

8番目のところ、お葬式の形態が先ほど変化ということをお話したのですが、いわゆる一般葬という昔から行われている葬儀のメリット・デメリットみたいなものをそこに書いてございます。お聞きになった先生方も多いかと思いますが、家族葬と言われているものが最近すごくはやっておりまして、これもメリットとするとゆっくりしたお別れができるとか、思いを形にしやすいとか、費用の予測がしやすいとかあるのですが、逆にこれが消費者の方の不利益なる情報なのかもしれませんが、いわゆるお別れしたかったが、できなかったとか、縁を断ち切ってしまうとか、こういうことが後ほどの消費者相談のところでもございますが、結構お話がございます。ですからお葬儀自身が宣伝をしたりという業界ではなかったものですから、むしろ受け身といいますか、10年ぐらいよくトラブルがあったのは、むしろ葬儀社は言われたとおり御遺族のための要望のとおり全部やりますので、こういった規模が小さくなったときのデメリットを情報提供しなかったということで、業界団体にお叱りの電話をいただいたりというようなことがありました。これが後ほどの契約法上のどこの条文にというところがありますが、そういうこともあるのかなと思っています。

葬儀の役割というのは御覧いただいて9番目のところですが、社会に知らせるとか、心理的な作用がありますとか、教育的な意味とか、実際に24時間以降の火葬埋葬をしなければいけませんので、この部分が業として1つ法律であるということでございます。また、宗教的な役割ということでございます。

10番目のところで、私どもの連合会としてよくやっているのですが、お葬式はどうしても2、3日間ぐらいの短期間で行わなければならないということと、しょっちゅうないということです。やはり機会が非常に少ないということで、平均すると何十年に1回というか、例えばお一人の方お一人の方が結婚されれば4回のお葬式ということで親御さんに4回のお葬式。それが何か先ほどの物を買ったりするものとは違って非常に機会が少ないということがございます。また、時間が非常に短いということがありますので、こういうところでトラブルがもともと生じやすい。先ほどからいろいろ説明云々という法律のところがございますが、私どもからすると大切な方を亡くされた状態の中で冷静な判断をできることはかなり難しいのかなと。正直言いますと、事業者任せになってしまっているというのが現実的なところなのかなと思っております。

また、下の2番目のところにいろいろな方にお知らせをしてやるということが、これは大事ですよということとか、10番目のもう1ページおめくりをいただいてマル3のところですが、信頼できる葬儀社を選んでいただくということで、私どもからしますと先ほどお話をしましたとおり、許可届出、何もない業界ですので、インターネット等々のトラブルも正直ブローカーもいるような業界でございます。ですから先ほどお話したとおり、きっちり選択をしたとしても冷静な判断がなかなかしづらい業界だと御理解いただければと思います。

信頼できる葬儀社を選ぶにはということで、例えば店舗、会館があるとか、事前相談というものに非常に力を入れております。葬儀のことはなかなか考えたくないのですが、終活という言葉もありますとおり、少しでも早目に考えてしっかりと安心できるところを頼んでくださいということで、事前相談も幾つかパターンがありますが、お元気なうちの事前の相談と、また、入院をされている状態の相談と、亡くなりそうだという相談、何パターンかあるという中でしっかりと対応していくということで、そういうものが種類があるということでございます。

マル4ですが、同じことを書いてありますが、考えをはっきり言うということがなかなか難しいのではないかというところがございます。ですから5番目のところで見積書をしっかりもらってください。これがただ短期間で見積書を全部もらうということになると、なかなか難しいということがありますので、事前の相談の中で早目に目安をつけておく。この事業者だったら安全ですよということをしていただくよう啓蒙してございます。

予想外の出費というところはマル6に書いてありまして、11のところですが、葬儀業界の消費者トラブル。ここが今回の契約法のところで該当するところが幾つかあるのかなと思っております。国民生活センターのデータを使わせていただいておりますが、価格やサービスのところが十分ではなかったというところで、数字を見ていただきますと2015年までトラブルは764件。それ以外に今年も480件ぐらいの事例があります。では具体的にどのようなものがあるかというと、11番目の最近の事例を見ていただくと、先ほどの様々な条文のところに該当するところがあるのではないかと思っております。

例えばマル8、高齢者の母が自身の死の葬儀を依頼して、15万円ほど払った。その会社がもうない。どこかに行ってしまったということです。その後の相談をしたかったのだけれども、無くなってしまったとか、また、葬儀をしている最中に先ほど勧誘のところに該当するのかもしれませんが、更なる契約行為のパンフレットを配って勧誘をしたということで嫌な思いをしたというのが9番目とか、あとはマル15のところですが、見積りを3回取ったら追加金のところですね。しっかりと説明をしていればいいのですが、説明をしていないところがあってトラブルがあったとか、あとは17番目のところで、これは私ども事業者側も非常に困っているところではあるのですが、一度契約をしていただいてサインまでいただくのですけれども、親戚のおじさんとかが来て違う業者にしたいということがあって、トラブルになるケースもございます。

もう1ページおめくりいただいて、私どもの消費者相談室、フリーダイヤルを引いておりますので、その中で来ているトラブルも11番の全葬連消費者相談編というところで書いております。喪中云々ということがありますが、マル4のところです。インターネットの宣伝を見て葬儀を依頼したが、ホームページに掲載されている内容とは全然違う。3倍以上の料金請求をされた。葬儀の対応も非常に悪くて後悔しているが、納得いかないけれども、電話がつながらなくなってしまった。故人の父親に申し訳ないとか、下の5番目のところもそうですし、あとは個人情報の関係でトラブルが幾つかございますので、会わせたくない人に面会をさせてしまったというのが6番目のところ。そのようなことがあったとか、先ほどお話しました途中でキャンセルというケースが11番目のところとか12番目のところでございますので、こういうところが契約との関係のところではないかと思って、今回の改正のところだと思っております。

あとは明瞭な価格でなかったということで、18番のところですが、埼玉県内で葬儀を依頼したら曖昧な対応で明確性に欠けて対応された。葬儀業はどこが管轄しているのか。指導してほしいということで、先ほどお話しましたとおり私どもの連合会の1,360社は私どもで指導ができるのですが、それ以外のところは業法がないのでどこも管轄していないのでフリーだというのが現状でございます。

法律と余り関係ないところもございますが、今回のところで最後にというところがございますが、家族の絆云々というところがございますけれども、改正するに当たっては消費者の不利益というのは当然なくさなければいけないですし、当然、事業者側もそこに配慮をしたしっかりした形での改正をお願いできればということでございます。

業界全体の話で申し訳ないですが、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。増田委員、どうぞ。

○増田委員 御説明ありがとうございました。

亡くなったときに多くの方は動転してしまって、葬儀社からのアプローチというのがないとしても、費用の積み重ねのところで行き違いがあり、トラブルが発生することが多いと思うのです。そうしたときに動転している状況が判断できない状況みたいな受け止め方をされたら困るだろうと思うのですけれども、業界団体としてその辺のところを何か手当てするような書面であるとか説明の仕方だとかマニュアルとか、そういうものは用意されていらっしゃるのでしょうか。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 各個店もそうですけれども、業界団体としてもしっかりと企業によっては問診票的なチェックリストをしっかりと作って、確認をしながら最終的にはサインをいただくということもしていますし、できればどうしても私どもの役員でも、身内がなくなると正直言いますと全く判断ができないということをよく見るのです。年間何百件、何千件のお葬式をやっている方なのですけれども、なるべく御身内からできれば冷静に判断できる方に同席をいただいて、打合せをするということはお願いをさせていただいています。

○山本(敬)座長 業界団体として自主的なガイドライン等のようなものを作っているというわけでは必ずしもなく、各社が対応しているというお答えだったと理解してよろしいのでしょうか。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 ガイドラインは平成19年にこちらのパンフレットにも書いてありますが、資料5-2の1ページをおめくりいただくと、一応、自主基準という形で設けさせていただいております。これはやるに当たってもこんなことは当たり前だからという意見もあったのですけれども、先ほどの個人情報の関係、亡くなった方の情報も当然ございますし、残された方の情報もありますので、こういうところでしっかりと今、規定をして、一個一個に対してトラブルがあれば、私どもが一般の方の間に入らせていただいて対応しているというのが現状でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他に質問があれば。大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 いろいろと細かな説明をいただきまして、ありがとうございました。

業法がないとおっしゃっていて、他方で業界のガイドラインがあるとおっしゃっていたのですけれども、そのガイドラインの中にモデル約款といいますか、こういうキャンセル料の話とか、そういうものはありますでしょうかということで、なぜそれを伺うかといいますと、この消費者トラブルの内容というところにも、キャンセルをしようとしたら高額な料金を請求されているという話が何件か出てきていて、この葬儀の場合、特殊なところもあるのかなと思っているところがあって、1つは先ほど増田委員もおっしゃっていましたけれども、やはり契約をするときにすごく動転している人が多い。なので一旦ここに決めたと思っても、もしかしたらこちらがいいかもということで迷うような状況はあり得るかなというのが1つ。

もう一つが、葬儀は前々から契約しているものではないことが多いので、例えば契約しても次の日とかその次の日にやるので、それを突然キャンセルということになると、確かにある程度損害が生じるのは分かるような気もするのですが、モデル約款などございますでしょうか。その中で何かキャンセル料の取決めなどはされているのでしょうか。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 モデル的な契約のものというのは、たたき台的なものをという程度で細かい規定、例えば今ここまでだったら数字が幾らですよというものは残念ながらございません。ですから説明をしながら、これも非常に正直言いますと事業者側が負担をするケースもございます。御家族からすると親戚に言われてしまったので、勘弁してほしい。実は例えばお料理の手配とかお花の手配をしているのですけれども、今度は事業者同士の話合いの中で解決をしているというのが今の商取引上の現状といいますか、一般の方になるべく迷惑が掛からないよう、言い方は変ですけれども、規定があります、書いてあるではないですかということでやらないよう、やはり葬儀自身が無形性で同時性ですから施行するとその場で発生するということです。ただ、どちらがいいのかというのは正直、規定をして細かく決めることが保護になるのか、今の状態がいいのかというのは、私どもたたき台的なものがあったとしても細かいところは今、決めていないというのが現状です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。他に質問等があればと思いますが、いかがでしょうか。大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 立て続けに申し訳ありません。互助会というのはもちろん存在は存じ上げていますし、互助会に関しては解約金のトラブルになった事例というのも、現に消費者契約法が適用された裁判例が幾つかございますけれども、後ろの消費者トラブルの内容を見ていると、互助会でこのように要するに積立金を払っていたのに解約料がすごく高いとか、そういうトラブルがあるのですが、過去にあった消費者契約法をめぐる裁判でもそうだったと思うのですが、今日お話しいただいている中で互助会形式といいますか、互助会のそういう形でやっているものと、そうではなくてこれは3ページですか、4ページですか、3の葬儀社とはというところですが、葬祭専門事業者というところがあって、こちらが多分今日お話を伺っていると、いわゆる亡くなって結構すぐ2、3日で契約をするということだと思うのですが、トラブルの内容としてどちらが多いかといったらあれなのですけれども、互助会に関するトラブルは結構多いのかなと思ったのですが、その辺りも教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いします。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 多いかどうか数字的なものは分からない部分もありますけれども、私どもとしても会員制度をやっているというものもありますし、互助会は毎月の掛け金でやっています。トラブルに関しては把握していない部分があり、私どもに来ている事例であるということだけです。多いか少ないかの判断はできないかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

長谷川委員、どうぞ。

○長谷川委員 2点お伺いしたい。1点目は実務的なことです。消費者がいざ依頼するときは、1社だけにお願いすることが多いのか、それとも何社かでいろいろ相談されることが多いのかということです。もう1点目は、経済産業大臣認可という意味合いについてです。中小企業等協同組合法に基づくということが書いてあるのですけれども、どういった内容を見て認可されているのかということが分かれば教えてください。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 1点目から言いますと、以前はなかなかお葬式で相見積りをしてはいけない雰囲気があったのですけれども、最近はいわゆる本当に消費者側の方が非常に葬儀に意識が高く興味を持っていただいているので、何社か見積りをされるケースがありまして、私どもにも相談のお電話がよく来て、どこがいいのですかと言われるのですけれども、その際は私ども例えば東京で言えば、何社か近隣にあるケースというのは当然あります。特に都市部はありますので、何社か当たって相談をしてみてくださいということはお話をさせていただいて、相見積りを同じような形で取っているようお話しています。

ですので、そういうところで正直に言いますと人の対応の部分もありますので、相性もあると思うのです。ですから実際に足を運ばれて対応している。それが先ほど事前相談というお話をしていたのは、そういうものを短期間で決めるのが難しいので、お元気なうちに何社か回っていただくのが消費者トラブルを減らす方法なのかなということで進めている。そうすると相見積りもこういう規模だったらこれぐらいだったら、こちらの会社だったらどれぐらいでできるのですかと。ではこの会場を借りますというようなことも含めて細かく打合せができると思っています。

もう一つは、経済産業大臣認可というところは私どもの連合会が認可をされているということで、各都道府県に知事認可を受けた協同組合が今59個あるということで、各社が直接、葬儀社が認可をされているということではなくて、私ども連合会自身が認可をいただいているということでございます。

○長谷川委員 協同組合法というのは何となく組織法という感じがしているのですが、何を見て認可しているのか。届出とはどう違うのか。つまり、この認可により、何が公的に保証されるのかということなのですが。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 私どもの連合会もしくはその傘下、都道府県知事認可を得ている協同組合が集まって連合会を成している状況です。その連合会自身が業界の部分で認定をいただいているということでございます。各葬儀社さんは孫会員みたいな形に私どもから見るとなるのですが、そのような形で御理解いただければと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。他にあればと思いますが。河野委員、どうぞ。

○河野委員 御説明ありがとうございました。

やはり葬儀というのは経験する数が少ないというのと、突然ということでなかなか消費者側も不意打ちの状態というか、こちら側もそのような状況で、滞りなく葬儀をしていただければ、例えば契約の内容といいましょうか、葬儀の内容に対していろいろ例えば不満があったとしても、こちら側からすると言いにくいといいましょうか、なかなか心理的に申し上げにくいということがそもそもあると思います。それで先ほど御説明いただきました11ページのところに、全葬連の消費者相談集にこんな御相談が来ましたという事例がかなり載っているのですが、これに対する解決といいますか、どう対応されたのかを教えていただきたいのですが。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全日本葬祭業協同組合連合会松本専務理事 当然、間に入らせていただいて、お支払が終わってしまっているケースと終わっていないケースがございますので、私どもの関係でよくあるケースは、やはり説明が足りていないときというのは間に入らせていただいて、事業者側と消費者の方の間に入らせていただいて調整をして、まずお話合いの場は意外と持たないのです。葬儀のことで先ほど先生がおっしゃったとおり言いにくい。ですから言いに行かない一般の方がどうしても多くなってしまって、そこの間に入らせていただいて場面設定をさせていただきます。何月何日のここで事業者側もそこのところは重々分かっている。一度お会いをいただいてということで、そのケースでいきますと大体両方から後ほどお電話をいただいて、間に入ってもらってよかったという解決ができるのですが、1つ大きな問題は、組合の先ほどの孫会員というか、各葬儀社が会員でないところは最終的に電話を切られてしまうというケースがあります。うちは入っていないのだから関係ない。頑張って何度もうちの弁護士の先生も含めていろいろなお話をするのですけれども、最終的には法的な話になってしまいますので、そういうアドバイスまでをさせていただく。組合のところは目が届くのでいいのですが、そこが私どもからすると大きな1つ問題かなと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

他にはよろしいでしょうか。それでは、全日本葬祭業協同組合連合会へのヒアリングはこの辺りとさせていただきたいと思います。お忙しいところヒアリングに応じていただきまして、誠にありがとうございました。

(全日本葬祭業協同組合連合会退席)

○山本(敬)座長 それでは、最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も熱心な御議論どうもありがとうございました。

次回は5月12日金曜日15時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 本日は皆様の御協力によりまして、滞りなく時間どおり終わることができました。改めてお礼を申し上げたいと思います。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。

以上