第28回 消費者契約法専門調査会

日時

平成28年11月7日(月)15:00から16:20

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、石島委員、磯辺委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、後藤準委員、中村委員、長谷川委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、鹿野委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、加納消費者制度課長
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 「今後の検討課題」についての整理
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第28回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして、増田委員、丸山委員、柳川委員、永江委員が御欠席、山本和彦委員が遅れての御出席との御連絡をいただいております。

まず、お手元の配付資料を確認させていただきます。議事次第の下部に配付資料一覧を記載しております。

本日の資料につきましては、資料1「消費者契約法専門調査会における今後の審議の進め方(案)」となっております。

もし不足がございましたら、事務局までお声がけのほうよろしくお願いいたします。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.「今後の検討課題」についての整理≫

○山本(敬)座長 本日もよろしくお願いいたします。

それでは、本日の議事に入ります。

本日は、今後の検討課題についての整理ということで、事務局から資料1「消費者契約法専門調査会における今後の審議の進め方(案)」を提出いただいていますので、御説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局から説明させていただきます。

お手元の資料1「消費者契約法専門調査会における今後の審議の進め方(案)」ということで資料を提出させていただきました。これに沿って説明させていただきます。

平成27年12月に「消費者契約法専門調査会報告書」が出ておりまして、その中で今後の検討課題とされた論点について、今年9月に再開された消費者契約法において議論していただいているところです。

今後の専門調査会の審議におきまして、今後の検討課題とされている論点の中で、優先順位をつけて個別の論点の審議に入ってはどうかということで事務局からの案を示させていただきました。具体的には、優先的に検討すべき論点とそれ以外の論点に分けて、優先的に検討すべき論点から審議を進めていただいてはどうかと考えております。

具体的に優先的に検討すべき論点として、資料1では1.で7つ論点を挙げております。それぞれ優先的に検討すべき論点とした理由としましては、まず、今年5月に成立した消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議において、引き続き検討すべきと明示されている論点、具体的には「勧誘」要件の在り方、不利益事実の不告知、困惑類型の追加、「平均的な損害額」の立証責任、不当条項の類型の追加、条項使用者不利の原則、この6つの論点をまず優先的に検討すべき論点とすべきであろうと考えています。これらに、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型も優先的に検討すべき論点に加えております。

この合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結する論点につきましては、今回の消費者契約法の改正において、過量契約の取消権については既に導入されているところですが、それ以外の事業者が消費者の判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させる事例についても、これまでもこの専門調査会で議論されているところで、昨年12月の報告書でも、さらに事例の収集・分析を重ね、引き続き検討すべきということになっております。

また、再開後第1回目の第25回の専門調査会においては、成年年齢の引下げの問題に関連して複数の委員から、この点を検討すべきという指摘が出ております。合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型という論点は、直ちに成年年齢が引下げられた場合の18歳、19歳の若者を対象とした制度というわけではありませんが、成熟した大人に比べて知識や経験等が不足しがちな若年者が成年となり得ることからすれば、この議論で対象とする者が増えるために、検討の必要性が高いのではないかと考えております。

そういうことで、附帯決議に上がっております6つの論点に加えて、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型、これを加えた7つの論点を今後、優先的に検討すべき論点としてはどうかと考えております。

それ以外の論点、資料1では2.に挙がっているところですけれども、この5つの論点については、優先的に検討すべき論点となっているところに関連して検討することができればと考えております。ただ、優先順位としては1.に上がっている論点よりは優先度が低くなるのかなと考えております。

論点の分け方については以上ですが、今後の専門調査会の審議の進め方としては、先ほども申しましたように、優先的に検討すべき論点とされた論点について、まず個別論点の検討に入っていければいいのではないかと。その論点の検討に当たっては、これまでの専門調査会からさらに進んだ議論をしていただくために、裁判例や消費生活相談事例などの収集・分析をすることで、どのような事案を救わなければならないか、問題として扱うべきかということを整理する必要があるのではないかと考えております。また、事業活動に対する影響についても、抽象的な懸念というだけでなく、具体的な事業活動への影響についても議論することができればよいのではないかと考えております。

事務局からの説明は以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ただいまの事務局からの説明内容につきまして、御意見や御質問のある方は御発言をお願いいたします。

沖野委員。

○沖野委員 御説明ありがとうございました。

質問と意見と両面を兼ねている面があるのですけれども、ここに書かれた以外のことは検討対象とはしないということなのかどうなのかという点です。といいますのは、以前から約款の問題をどうするかということが出ており、たしか再開後の最初のときにも河上委員長から、特に約款の内容の表示という点について、民法改正への対応という観点から、少なくともその部分は検討すべきではないかという御指摘があったかと思います。

具体的には、請求というのが消費者には期待できないということ、それから、現在では基本的には約款の内容の表示というのは行われているところ、民法の条文によって、むしろこれが不要であるというような、いわば誤ったメッセージを出すことになっては適切ではないので、そういった点は消費者契約法においてきちんと手当てするということが民法改正の対応という点から重要になってくると考えられまして、その問題は、約款全体を取り上げるのは非常に広範ですし、難しいとも思うのですが、それに限って取り上げるということは十分考えられていいように思うものですから、それについてはどのように考えたらいいか。意見としては、取り上げる中に入れたらいいのではないかという意見です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

もし今の点に関連して御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 今、名前が出ましたので申し上げます。ただ今の点は2000年の消費者契約法制定のときも実は議論としては一部出たことがございまして、ただ、そのときの担当者の説明では、4条4項2号の中に「重要事項」という言葉があって、その重要事項の内容に「その他の取引条件」という表現を入れた。ですから、その他の取引条件には当然約款が含まれていて、契約の締結について勧誘する場合には、あらかじめ事前開示があることが前提なのだ。念のために3条でも、契約内容の必要な情報という形で約款条項を含めているので、約款の事前開示というルールの明文化は省略させてほしい。このような説明を受けたことを記憶しております。

ただ、そうはいっても今般の民法改正で、結果的には、定型約款を使うということさえ言っておけば、消費者から請求がないときには相手に見せなくても契約内容とみなされるという、かなり変わった規定が提案されておりまして、それはやはり事業者に対して誤ったメッセージを送ってしまう可能性がある。今、沖野先生もおっしゃいましたけれども、定型約款は要求されない限り見せなくても契約内容とみなしてもらえるのだというメッセージを事業者に発する可能性が高いということになります。約款を見ておきたいという消費者の存在への配慮とか、あるいは社会監視の上からも、約款の事前開示ルールの徹底ということは明らかにしておいたほうがいいのではないかと思いますし、現に普通の事業者の方は事前開示をやっているわけでして、恐らく追加的な負担というようなことにはならないのではないかと考えられます。その意味では、議論をしていただくということは、私は是非、お願いしたい点であります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

今の点に関して御意見があれば。

長谷川委員。

○長谷川委員 今の点に固有の問題ではないのですけれども、関連する問題として重要な前提について確認させていただきたい。「優先すべき」の意味合いとして、どれぐらい時間とリソースを割いて議論すべきと考えておられるのか。検討の前提となる情報をいただければと思います。

○山本(敬)座長 では、今の点について事務局からお願いいたします。

○事務局 優先的に検討すべき論点に上がっている項目をまず検討するということで、2.に挙がってる論点は、1.に挙がっている論点と関連する限りで検討するということなので、基本的には1.に挙がっている論点をまず順に検討していくというふうに考えております。

○山本(敬)座長 長谷川委員、今のでお答えになっているでしょうか。

○長谷川委員 事務局としては、とりあえずそこまでは決まっているということなのですね。

○山本(敬)座長 まずは優先的に検討すべき論点とされたものを、順序はともかくとして逐次検討を進めていく。2.に挙げた論点は、1.に掲げた優先的に検討すべき論点と関連するならば、関連する範囲で検討するというお答えでしたが、それが御質問に対する回答だったかどうかを確認させていただいただけです。

○長谷川委員 すみません。私の頭がたぶん整理されていないせいで、回答になっているかどうか必ずしも分からないのですけれども、とりあえず分かりました。ありがとうございました。

○山本(敬)座長 それでは、中村委員。

○中村委員 今の長谷川委員の御発言にも関係があるところなのですけれども、最終的に結論がどうなるかということは別として、いろいろなことを議論しようということには必ずしも反対するわけではないのですが、私どもとしてお願いしたいこととしては、一つ一つの論点について丁寧な議論をしていただきたいということでございまして、先ほど御紹介にもありましたけれども、報告書の段階ではさらに検討が必要だということで描かれているものでございますので、背景となる事情、今どういう裁判例があり、クレームにはどういうものがあって、その中で消費者契約法として対応すべきものはどれなのかというところを皆さんでよく話し合って、それに対して、例えば条文としてはこのようなイメージのものにしてはどうかと、そういうものが出てきたところで、事業者としてその条項が適用されるとこのような困ったことがあるので、それはそういう条項ではなくて、こういう条項にしてほしいとか、そういった丁寧な議論をしていただきたいなと思っておりますので、論点が増えることによって、もしも一個一個の議論について形式的に済ませてしまうというようなことがあるのだとすると、それは避けていただきたいなと思うところでございます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 優先的に検討すべき論点の中に、不当条項の類型の追加という論点が入ってございますが、これと当然あわせて検討すべきだと思われますのが、10条のとりわけ前段要件の箇所だと思います。今回の5月の改正で10条の前段要件を満たすものの例示として1種類入っている状況なわけですが、あのままでよいのかということです。つまり、不当条項の類型の追加というふうにこちらには書かれているのですが、その類型を追加するときに前段要件の例示をこれ以上増やしていくというのは個人的には余り望ましくないと思っていますけれども、あの形態のまま、しかし別に類型を追加していくということの是非については、当然この不当条項の類型の追加というところで、10条のとりわけ前段要件についてはあわせて検討していただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば。

鹿野委員。

○鹿野委員 ありがとうございます。

先ほど約款の開示についてお話がありました。私も約款の開示については優先的に検討すべき論点の一つとして挙げるべきではないかと思います。既に先ほど言及されたことではありますけれども、民法改正法案の中に3カ条、約款に関する規定が入れられましたが、約款の開示については残念ながら、相手方の請求にかからしめられることが法案では予定されております。

これは民法の性質上、民法の規定は消費者契約だけではなく事業者間契約にも適用されるので、そのような民法のルールとしてはこういう形にとどめることが考えられたのかもしれません。けれども、消費者契約においては、消費者に積極的に約款の開示を請求するということは事実上期待し難いところもございますし、消費者契約にかかわるルールとして、改めてこの開示についての検討を行うべきだと思います。

先ほど河上委員長から、かつての議論についても紹介がありましたけれども、これはもともと契約締結過程の規律の一つと考えられるわけでして、その点からも、ここに項目として挙げるべきではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

今の点に関して、もし御意見があれば、お出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

長谷川委員。

○長谷川委員 たびたび申し訳ありません。今の点というか、何を優先的に検討すべきかというところでございますけれども、基本的には消費者委員会は行政府の機関でございますので、立法府からの要請、要するに附帯決議に基づいたものについて優先的に検討するということでよろしいかと思います。

もう一点、今回、附帯決議以外に事務局のほうで挙げられている「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」というのは、成年年齢の引下げに関連してということで御説明をしていただいたところでございますけれども、これは再開後の第1回あるいは第2回でも御説明があったとおり、別途ワーキンググループができていると承知しています。基本的にはワーキンググループの結論を踏まえてから考えるということでも遅くないのかなと思う次第でございます。やや形式的なのですけれども、立法府から要請のあったものを優先的に検討するということなのではないかと思います。

また、先ほど中村委員からお話があったものと似ているのでございますけれども、いずれの項目を検討するにしても、前回、永江委員から問題となる事例の集積という言葉がございましたが、問題となる事例についての量的なデータがあるほうが、どれを優先すべきかということについて判断しやすいものと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば、お出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

後藤準委員。

○後藤(準)委員 再開前の議論の際も事務局側からいろいろな事例を出していただいたのですが、極めて特異な事例であったような気がするのです。ですから、事業者団体のほうで言っているのは、本当に立法事実として幅広く理解が得られ、規律を制定しなければそういった人たちを救済できないのかどうか。また、そうした事例がどのぐらいあるのか。量的な問題もあると思いますけれども、その辺でもう少し立法事実となり得るデータを出していただきたい。

消費者団体の方もいろいろな相談を受けておられるということでございますので、その事例がどのぐらいあって、それをどのように救済するのかという点が明確でないと、非常に狭い範囲の特異な事例のみをとりあげてこの場で協議しても、我々は毎回申し上げていますが、その結果を実体経済で運用しようとすると、それは現実的にはなかなか厳しい内容になるということで幅広い相談事例を示していただいた上で、検討することをお願いをしたいと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

磯辺委員。

○磯辺委員 優先的に検討すべき論点に約款の表示の問題を入れるということには賛成いたします。やはり消費者が契約を締結するに当たってどういった情報が開示されるかというのは非常に重要な問題ですので、その点はぜひ検討されるように、対象にしていただければと思います。

あと、契約締結過程の議論なのですけれども、今、事務局のほうで想定されている検討の順番みたいなものがもしおありでしたら、少し教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それは、優先的に検討すべき論点がある程度固まりませんと順番も語れないところがありますので、一通りまずは御意見を伺って、方向性が見えた段階でお話しいただくということでよろしいでしょうか。

では、ほかに御意見があれば伺いたいと思いますが、沖野委員。

○沖野委員 先ほど後藤委員から、トラブル事例をしっかりと見据えてという御指摘があったかと思います。関連してなのですけれども、約款の開示というか内容の表示の問題は、むしろ民法の改正の条文との関係ということになりますので、少し性格は、トラブル事例を見据えてということではなく、むしろ民法がその条文になったときにかえって誤ったメッセージを伝えないかとか、これまでの考え方が誤ってというか、曲げられてしまうことにならないかということへの対応ですので、少し性格が違うものがあり得るかと思われますので、その点は確認しておきたいということが1点です。

それから、附帯決議に示された問題は、まさに非常に重要であるというメッセージだと受けとめております。しかし、それは、それさえやればいいという決議ではなく、あくまで例示として挙げられているということだと思いますので、それらをまず優先的にという点は、それなりに説得力のあることだとは思いますけれども、それをやればいいのだということではないと思います。

長谷川委員の御指摘を少し私が曲げてしまったかもしれませんが、念のため確認したいということであります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河上委員長。

○河上委員長 検討の順番の話と検討の仕方ですけれども、恐らく一つずつを順番にやっていって取りまとめというような形で、1回やれば取りまとめまでいけるという問題は恐らくないだろうと思います。その意味では、ワンクールやった後、第2クールぐらいまで議論を深めていく必要があるので、恐らく優先的にやるべきものはこれでいいということであれば、その優先的にやるべきものについてワンクールやってみて、そして、最後にそれ以外の論点の中で重要かなというようなことについてもう一度検討してみて、それでワンクール終わる。そこの議論の状況を見て、第2クールのところで掘り下げた議論をやって、取りまとめに移る。第3クールまで行くのはしんどいかもしれませんが、そういう形で少なくとも2回ぐらい検討をしていくようにしたほうが、いろいろ参加している委員の方も、その期間に問題を深めて考えるというような機会もできるので、恐らく事務局のほうで何か作業されるとしても、そういうやり方のほうがいいのではないかと個人的に思いますけれども、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 進め方の大きな方向性として御提案をいただいたわけですけれども、冷静に考えますと、大体そのようになるのではないかという印象を私も持っていますが、いかがでしょうか。

石島委員。

○石島委員 今、委員長から御説明いただいたとおり、丁寧な議論をという御趣旨であろうかと理解をしております。せんだっての勧誘要件に広告を含めるかという点に関して議論が行われた際に、消費者相談の事例の中から問題とされているものが、それは広告の問題なのかどうかというのが皆さんちょっとクエスチョンだという状況が明らかになったように、あの件1つだけでも認識のすり合わせというものにかなり時間がかかるのではないかというふうに皆さん思われたというところは明らかだと思います。

ですので、基本的には一つ一つの論点については非常に丁寧な分析、事例収集が必要であると考えておりますので、余りにも論点が拡散してしまうということになりますと、どこを目指してこの専門調査会が行くのかというところにもなりかねないので、なるべく優先度というのはつけるべきではないかと考えておりまして、それについて事務局から挙げていただいた附帯決議に明示された論点を優先的に取り扱うということについて、私も賛成でございます。

基本的には附帯決議の中にということですので、この中で優先度が下がるのかなというのは、長谷川委員もおっしゃっていましたが、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型、これについては、この中においては少し優先度が下がるのではないかと考えております。

また、進め方ですけれども、事例の収集分析ができたものから議論するべきであるということについて、改めて申し上げたいと思います。

また、関係する事業者、影響を受ける事業者が非常に広いということから、広く事業者の意見も聞くべきであろうと思っておりまして、これは事務局ヒアリングというやり方もあるのかもしれないですけれども、必要に応じてその影響を非常に強く受ける業界からこの場でプレゼンテーションを行っていただくなど、そういった手法もぜひ検討していただきたいと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河野委員。

○河野委員 今回再開した専門調査会の場で優先的に検討すべき論点ですが、附帯決議を基に提案されているいうことで、1番に挙げられているものに関しては、ぜひともしっかりと検討していただきたいと考えています。

私自身が一番関心を持っておりますのは、成立以降消費者契約法の見直しが初めて行われて、一部が改正されました。その施行前に、また改めて今回の再検討に入っているこの事実です。なぜ一部にしろ改正がなったのに、私たちは再度この検討に入らなければいけなかったのか、入ることを国会の場で要請されているのか。それは、社会にそういった要請が厳然とあるということだと思っています。

今回、附帯決議の冒頭に書かれているように、情報通信技術の発達、高齢化の進展を初めとした社会経済状況の変化で、これはどちらもそんなに安穏として時が過ぎていくのを待っていられるような課題ではないということです。特に情報通信技術の発達というのは、ムーアの法則等で言われているスピードをとっくに超えているのではないかと思うほど、本当に日々どんどん変わっているような現状です。そのときに、今回のこの検討において、私たちがやらなければいけないこと、ここの論点に書いてくださったことももちろんなのですけれども、本当にしっかりと向き合って、改めて確実にコンセンサスが得られるような形で議論を進めていっていただきたいと思っております。

当然のことながら、先ほどから裁判例や消費生活相談事例等、まずは根拠になるものが非常に重要だという御指摘は、私も否定するものではございません。でも、こういった検討会で何度も確認されているように、消費者側が、相談ぐらいまではいったとしても、裁判に訴えて問題点を明らかにする、そのような状況には日本の社会はなかなかいっておりません。そのあたりもぜひ考えて、今回の検討に臨んでいただきたいと思います。

更にお願いしたいことなのですけれども、先ほど申し上げました情報通信技術の発達、それから高齢化の進展ということを土台に置きますと、今回附帯決議には書かれておりませんが、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型ということに関しての検討というのは、やはり待ったなしだと思っております。社会的課題が目の前に見えているのに、そのことに向き合わないというのは、私たちの姿勢が問われると思いますので、ぜひこのことについては早急な御議論をお願いしたいと思います。

最後に、事業活動に対する具体的な影響等というのが毎回ぼんやりした形でお話しされるのですけれども、例えば1つの検討がされて、具体的にどのような影響があるのか。もう少し数字とか、社会に対する影響ですとか、そういったことも含めて、逆に事業者の皆さんからも、こんなところにこんなに具体的な影響が出るのだということを消費者側が納得するような形でぜひ提示していただきたいと思います。それにより影響がはっきりと見えてくれば、そこでどこまでが重要であって、そこから先は法律には入れないという判断がうまくできるような形になると思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 先ほど石島委員と、今、河野委員から出ておりました合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型という点でございますが、これは確かに附帯決議に入っていないのですけれども、これを附帯決議に入っていないけれども検討すべきかどうかという点について、私個人的にはこれは検討すべきだと思っていますが、少し整理はする必要があるかなと考えております。

といいますのは、合理的な判断をすることができない事情というもので、どういうものが想定されているかということが、恐らくここの委員の先生方の中でも、もしかしたら一致していないのではないかという気がしております。前回までの専門調査会の中で基本的に念頭に置かれていたことは、附帯決議の中に入っている、まさに高齢化社会の進展というところが絡む場面であると思います。

私は前々回より前の専門調査会は欠席しておりましたので議論の様子が分からないのですが、成年年齢の引下げとの兼ね合いでという話になると、これは高齢者と全く違う点を考慮する必要が出てきます。個人的にはこれはもちろん検討しなければいけないと思うのですが、差し当たり、やはりある程度限られた時間という中で、この合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型について話すときに、高齢者の消費者問題というのは今の相談事例でも確実に増加している場面でもありますので、まずここを念頭に置きつつ、それをどこまで広げられるか。合理的な判断をすることができない事情にどのような事情があたりうるかというものを考えていくというやり方のほうが、個人的にはよろしいのではないかと思っています。

これと関連しますが、この論点についてもう一つ考えなくてはいけないのは、この論点は、この中では契約締結過程というところに整理されて入っておりますけれども、それだけではなくて、契約内容にも当然かかわる論点であるということです。現行法で言いますと、民法の公序良俗ですとか暴利行為の発展のような規制のやり方なども考えられるのではないかということが前の専門調査会では指摘もされていました。今回の論点は(1)の締結過程と(2)の契約条項とまとめていますが、この論点は要するに契約締結過程と契約内容の両方にまたがる論点でもありますので、この論点を審議するときには、まずその対象として、主に附帯決議にまさに書かれている高齢者の消費者問題に対処するということを念頭に置きつつ、もちろんそこに限定すべきだということでは私は全く考えていませんが、その上で、やはりこれは締結過程だけではなくて内容の部分にも関係する。そういう意味ですごく審議が大変な論点だと思いますが、その点を意識して、少しこの論点は整理をしたほうがいいのではないかと思います。

恐らくこの論点に関係する相談事例とかを探すとなると、一番多いのは高齢社会の高齢者が被害を受けているという場面が恐らく多いのではないかと推測されますので、まずはそこを少し整理してこの論点については検討をした方がよいのではないかと思います。そうでないと、すごく広がりがある論点かと考えておりますので、その点、よろしくお願いします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

日弁連では、消費者被害の救済の促進、消費者契約に関する民事ルールの充実という観点から、2014年にも消費者契約法改正試案を提言するなどして、多くの論点に関する法改正を求めております。法改正の検討対象が狭くなることは、被害救済の範囲が狭くなるということですので、必ずしも歓迎できることではございません。「1.」以外の論点、「2.」に掲載されていない論点についても、法改正の必要性がない論点ではない、法改正に向けた継続検討が望ましい論点が少なくないということを、まずもって確認させていただきたいと思います。

もっとも、この専門調査会での審議には時間的な限界もあるということですので、現時点で優先的な法改正が必要な論点に時間を割いて、優先的に検討するという進行については合理的なものと理解いたします。論点に優先劣後をつけて審議することに賛成をいたします。

また、優先論点の選び方についても、まずは本日頂戴したペーパーの「1.」の部分を優先論点とするということは賛成できる内容と思っております。先日も申しましたが、困惑類型の追加については、威迫に加えて執拗な勧誘という類型を電話勧誘に限定せずに御検討いただきたい旨、改めて申し上げます。

つけ込み型不当勧誘については、5月の法改正では、近時非常に問題となっております高齢者被害事案のうち、代表的な過量契約事案を救済する立法がなされたのみです。例えば、高齢者の判断力の減退に乗じて安いものを法外な金額で買わせたという事案は救済されません。依然として重要な論点であると考えます。優先論点として検討が必要な論点であり、つけ込み型不当勧誘の問題を「1.」から落とすということについては反対いたします。

あと、約款の開示の問題につきまして、ルールが明確化されることは望ましいことであるということは疑いないと思います。あとは全体的な審議時間との関係で入れ込めるかという問題ではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば。

有山委員。

○有山委員 合理的な判断をすることができない事情をという件に関しては、私がぱっと読んだ限りでは、すぐイメージが湧いたのは高齢者なのです。高齢者のほうで今、現場で起きているのは、高齢者がだまされるということもあります。また、それを介護する人たちが高齢者をどう守るかという問題が出てきております。40代、50代の介護に不慣れな男性からの相談事例も多く出ておりますので、何らかの救済措置を考えてほしいと考えております。

未成年者、成年年齢の引下げに関しても、今後考えていきたいとは思っておりますが、合理的な判断ということについては、私は強く入れてほしいと考えております。

全体からいうと、やはり優先的に検討すべき論点ということで、優先的に検討していただきたいという意見に賛成です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河上委員長。

○河上委員長 何度も発言して申し訳ありません。先ほど来お話がありますけれども、タイムスパンとの関係で言うと、やはりある程度優先的な課題に絞り込んで改正のための提案をするということはやむを得ないことだろうと思います。しかし、優先的に検討すべき論点として、国会でも具体的に挙げられたようなものについては、やはり何らかの対応はこの調査会としてはせざるを得ないということで、1.のところに入れていただくというか、問題としてこれをまず優先的に考えてもらうということはお願いしたいところでございますが、そのときに、例えば不当条項の類型の追加の問題は、実は損害賠償額の予定・違約金条項で「解除に伴う」要件の在り方というところと密接に関連しております。これは確かに9条の修正問題のようにも見えますので、そのようになるかもしれませんけれども、実質的に見れば違った形での解除についての違約金条項のタイプを追加するということなので、不当条項類型の追加のところにこの一番最後のものは入るのではないかという気がいたします。

どうもこの2.の中でおさまりぐあいが悪いのは法定追認であります。この法定追認の議論は、2000年段階でも積み残してしまった課題でありました。ただ、現在の民法改正の中でも法定追認の規定についてかなりの議論があったと伺っておりますけれども、少なくとも余り大きな変化はなくて、現行の125条の形では、追認をすることができるとき以降に取り消すことができる行為について、次のことをやったときには追認したものとみなすのだということで、全部または一部の履行、それから、履行の請求があった場合には追認したことにするというふうにしてあります。

消費者契約法の場合に代金の一部を払ったとか、全部を払ってしまったような場合とか、商品をくれと要求したときに法定追認に当たるのではないかという疑問は当時もあったのです。現行でも、詐欺から抜け出した、あるいは強迫状態から抜け出したという段階までは法定追認にならないという解釈論になるのですけれども、消費者契約法のときに誤認状態とか威迫・困惑状態から抜け出したというようなところが本当に言えるのか、言えないのかというのは非常に曖昧なので、その意味では、誤認したり、あるいは威迫・困惑を受けてしまったときの取消し権を行使するときは常時、追認とか法定追認にならないようにしておかないと、取消し権行使そのものの実効性が危うくなるという危険があるので、何か考えておいたほうがいいのではないかという、ちょっと特別な問題を形成しております。ですから、まとめてやれるかどうかという意味では、まとめてやれるものが2.には相当あるのですけれども、法定追認だけがうまくいかないので、この辺については、委員の先生方の御意見を伺えるとありがたいと思います。

民法の問題だから、詐欺・強迫と同じように、誤認状態とか威迫・困惑状態から抜け出していない間はこういうことをやっても法定追認に当たらないのだという解釈が民法のレベルでも行えるのであれば、これはもう民法に任せておくというようなことができるかと思います。民法改正法案でも若干の表現の変化があったようですので、もし法務省のほうで、この議論のときにこういう消費者取引における法定追認の問題があったのだとすれば、少し情報をいただけるとありがたいと思います。

○山本(敬)座長 では、松本理事長。

○松本理事長 河上委員長に対するストレートな答えになっているかどうか分からないですけれども、今回の民法改正案では、追認の要件が少し明確化されて、取り消すことができることを知った後でないと追認できないということになりました。したがって、法定追認に関しても、取り消すことができることを知っていない限りは、法定追認の効果が発生しないということに解釈上なると思います。

したがって、当専門調査会の第1段階で議論されたことのうち、かなりの部分は民法改正でカバーされることになるので、あと残るのは、取り消すことができることを知っているにもかかわらず、消費者が商品を受け取ったというやや特殊な場合です。このような場合には法定追認になる可能性が改正民法でも残るので、そこはならないという明文の規定を消費者契約法に置くかどうかというのは、最後の論点としては残ると思いますけれども、第1段階で議論していた場合に比べると、必要性は低くなっていると思います。

○山本(敬)座長 御説明をいただき、どうもありがとうございました。

ほかにはよろしいでしょうか。

長谷川委員。

○長谷川委員 先ほど沖野先生のほうから、附帯決議は例示でありますと御指摘がありましたが、まさにそのとおりでございます。しかし、例示であるけれども明示的に出されているということに意味があるのではないかと思っております。また、前回の報告書が取りまとまって以降、新たに起こった事象の一つが附帯決議なのではないかと思っております。附帯決議の重み、特にシングルアウトされて明示されている事項については、それなりの重みがあるのではないかと思っている次第でございます。

その上で、繰り返しになって恐縮なのですけれども、「2.1.以外の論点」に挙げられている事項についても、もちろん排除するものではないのですが、どの論点の検討が必要かということについては、量的なデータがないとなかなか判断ができないのではないかと考えているところでございます。

それに関係するのですが、これからの検討の仕方として、河上委員長がおっしゃったように、個々の論点に時間をかけてということについて賛成でございます。その中で、事務局から示されたペーパーの前文の最後の3行にも書いてございますけれども、十分な事例を収集して、分析していただきたいと思っているところでございます。

それと、同じセンテンスに書いてあります事業活動に関する具体的な影響につきましては、先ほど石島委員もおっしゃいましたけれども、なかなか影響が広範に及ぶので、時間をかけて幅広い業界にヒアリングなり、あるいはパブリックコメントを行うなど、ぜひ行っていただきたいと思っております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

一通り御意見いただいたところですが、ほかにあれば。

井田委員。

○井田委員 時間的な制限もあると思うので、私自身は優先的に検討するべき論点というものをまずもって議論していくことには賛成いたします。もちろん丁寧な議論は必要ではあるのですけれども、前の調査会での議論状況をそのままベースにできる論点もあろうかと思いますし、前回の中でいわゆる業界の方の御意見を伺ったというようなところもありますので、これだけの論点、一つ一つ重いものだと思いますが、それでも十分議論は可能だと思います。

私個人的には、2.の中では、先ほど出ました法定追認の特則というのが気になっているというか、契約締結過程で場合によっては取消し得べき勧誘行為がもし増えるということになれば、その反対の問題として、しかし、法定追認により取消しができないというようなことであっていいのかというのは、やはり気になるところです。松本理事長からは、ほぼ解決されたのだというお話はいただきましたが、まだ残る部分はあろうかと思うので、(1)の議論の中で法廷追認について議論ができればと思っております。

前の調査会では、あらかた議論は出尽くしたと、あとはある程度どう決めるかという問題だと思うので、法定追認の論点を入れたとしても、それほど時間のロスということにはならないと思っています。

もう一つだけ。この法定追認に関しましては、これが出てくる場面としては、基本的に事業者側から不当な勧誘行為があった、その上で法定追認というようなお話になると思います。そうすると、いわゆる相談段階でなかなか事業者自身が御自身の勧誘に問題があったことを認めたことを前提に、しかし、法定追認という主張が出るとは少し思えないので、数としては正直それほどたくさんあるとは思えません。ただし、事例がないから必要性がないということではなく、議論していただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

中村委員。

○中村委員 今の法定追認のところでございますけれども、最終的に正式に議論するということであれば、それはそれで構わないと思うのですが、1点御配慮いただきたい点としては、今のように実際にだましたであるとか、そういう誤認があって追認がされる云々という事例もありますけれども、誤認があったのかどうか分からないという状態の中で、これは既にここまで進んでいるので、法定追認があることで取引が安定するということも一面あるのかなと思います。ですので、誤認があった事例について特にできるだけ取り消すことができないようにしようということではないのですけれども、一定の行為ができていると、こういうことがあったので、きちんと相互に確認が終わっていますよねというようなことが日常の取引の中では、そういうことで取引が安定していくという部分があるかと思いますので、もしもこの議論をされるのであれば、そういうこともぜひ考慮した上で議論をしていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

一通り御意見いただきましたので、少しまとめさせていただきますと、資料1の案で「1.優先的に検討すべき論点」と「2.1.以外の論点」という区分けをしていますけれども、このように優先的に検討すべき論点を設定して、まず検討をするということについては御了解が得られているのではないかと思います。限られた時間の中で丁寧に議論をという要請からしますと、このような方法もやむを得ないだろうと思います。

その上で、では何を優先的に検討すべき論点とするかという点については、附帯決議に挙げられていた論点は、特にここから外すべきだというような意見はなかったように思います。その意味では、これらの論点については意見の一致を見ているように思いました。

1点少し御意見があったのは、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型でした。これは附帯決議の中に挙がっていなかったものですが、やはり特に取り上げるべき理由があるのではないかという指摘がありました。検討すべきであるという御意見がかなり強く出ていた一方で、外すべきであるという御意見があったわけでは必ずしもなかったかもしれませんけれども、ほかのものとは少し違うのではないかという御意見もあったところです。

それ以外では、「2.1.以外の論点」のうち、優先的に検討すべき論点として取り上げるべきではないかとして、幾つかの論点が挙がっていました。最初に約款の開示に関する論点、それからこの「1.以外の論点」の中で言いますと、法定追認の特則についてもそのような御意見が出ていましたし、損害賠償額の予定・違約金条項で特に「解除に伴う」要件の在り方については、1.の第9条に関連するものとして取り上げるということも十分可能ですので、特に2.の中に独立の項目として挙げないければならないということはなかったかもしれませんが、同じことであれば挙げてもよいのではないかという御意見があったところです。

ざっと整理しますと以上のとおりなのですが、次回以降に検討を進めようとしますと、何よりもまず、優先的に検討すべき論点として、最低限これは必ず検討するというものを今日確定する必要があります。

それ以外については、最初のほうに河上委員長から御指摘ありましたように、第1ラウンドとして、まずは優先的に検討すべき論点として異論のないところを順に検討し、その検討が一巡した段階で、更に取り上げるべき論点としてどのようなものがあるか、あるいはもう時間的な余裕がなく、それまで検討したものに絞ってさらに検討を進めるほうがよいかというようなことを改めて御議論いただく場を設けるということが適当ではないかと思います。

その意味では、差し当たり、現在1.の論点として挙げていただいているものに関して、特に合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型をこのまま残すかどうかという点をこの場でもう少し議論していただき、その上で、その他の今日御指摘のあった論点については、両論あり得るところですので、先ほど申し上げましたように、一巡した段階でもう一度この場で取り上げるべきかどうか、取り上げるとしてどのような形で取り上げるかということを御議論いただくということでいかがかと思いますが、よろしいでしょうか。

松本理事長。

○松本理事長 合理的な判断をすることができない事情の問題ですけれども、この問題と困惑類型の追加の問題は、私はかなりの部分がオーバーラップしていると思います。ただし、当専門調査会の12月の報告書では、困惑類型の追加としては、執拗な電話勧誘と威迫による勧誘しか明示的には挙げられていないです。しかし、前々回に有山委員が紹介された、高齢者のところに何年も前の契約で、あなたは定期的に浄水器を交換しなければならないことになっているといって、浄水器の勧誘にあらわれたというようなケースが紹介されておりました。あのケースは執拗な電話勧誘でも威迫による勧誘でもないのだけれども、まさに合理的な判断ができないところにつけ込んでいるという部分があって、高齢者としては大変困惑させられる類型だと思います。

国会の附帯決議の中で、困惑類型の追加として具体的にこれとこれという限定がされていませんので、困惑類型の追加の中で議論するということも十分できるのではないかと思っております。

○山本(敬)座長 もし御意見がいただけるならば、ほかに。

大澤委員。

○大澤委員 松本先生の今の御指摘と重なるところもあると思うのですが、私は先ほど、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型といいますのは、専門調査会でも前、かなり初期の段階で出ていたと思うのですが、例えば公序良俗規定の消費者契約法版のようなものを作るかどうかとか、ああいう内容の面とも兼ね合いがある話だと先ほど申し上げました。

ただ、その一方で、今、松本先生がおっしゃっていたように、やはり困惑類型の追加でカバーできる部分もかなりの程度あり得るのかなとは思っています。ですので、困惑類型の追加の中にこの話を全部含めてしまうと、その中でということになってしまうと、先ほど申し上げましたように、契約内容の不当性とかそういうものを問うかどうかという論点も、もちろん入れることはできるのですが、合理的な判断をすることができない事情を利用してというこの類型は、公序良俗、暴利行為のある意味では発展版という側面もあり得るかと思っていますので、個人的には、項目としてはこのまま残していただき、しかし、困惑類型の追加とあわせた検討が必要かと思っています。別個独立に検討をするのがいいかどうかというのはなかなか難しいところがあると思うのですが、ただ、完全に困惑類型の追加の中で、その一つとしてこの話をやるというのは、少しどうなのかなという印象は持っております。

あと、先ほど私が、合理的な判断をすることができない事情がどういうものか、もう少し整理する必要があると申し上げました点に関連して補足を申し上げます。高齢者被害の話だとすると、これは附帯決議の中で高齢社会の進展という話が出てきているわけですので、別個の項目として附帯決議の中に入っていないにしても、高齢社会の進展に対応することは求められているわけですから、そうだとすると、この類型については検討すべきだと思います。

ただ、私が先ほどいろいろ整理したほうがいいと申し上げましたのは、この合理的な判断をすることができない事情というのを広げようとすると、高齢者以外にも、先ほどの若年者の問題がもちろん入りますし、あるいはいわゆる霊感商法とかで、例えば病気であるとか、認知症になっているとか、そういうことはないにしても、例えばすごく断りにくい人が断れずにやってしまったとか、あるいはいわばちょっと洗脳状態にあるような、そういう状態にもつけ込まれたのだとか、そういうものも広く含まれてしまいます。もちろんそれを含めて検討するというか、そういう規定を作るのは一つの案だと思うのですが、余り広げて考え過ぎることで、結果としてこの要件が広過ぎて規定にするのは難しいという形で頓挫されてしまうというのは、それはそれで結局本末転倒な感じもいたしますので、まずは被害が集中している高齢者の判断力の低下につけ込んでいるという事案を念頭に置いて、適宜ほかに考えられるものを考えていくという形のほうがいいのではないかと、そういう趣旨で申し上げましたので、それ以外の場面を検討する必要がないということではありません。論点を今後やる上である程度絞っていかなければならず、そもそも論点自体が何かよく分からないまま頓挫するというのはできれば避けたいという趣旨で申し上げました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

松本理事長の御意見も、私が理解した限りでは、困惑類型の追加の中に全部含めるというのも一つの方法ですけれども、そうではなく、附帯決議の中で困惑類型の追加という課題が示されていた。合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型も、それと重なる性格を持ったものであって、同様に優先的に検討すべき論点として取り上げてもよいのではないかという御趣旨ではないかと承りました。よろしいでしょうか。

では、後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 ただいまの松本理事長と大澤委員の問題意識と私は共通の問題意識を持っておりまして、困惑類型の追加の問題と合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型というのは、松本理事長が御指摘になったように割と重なっている問題だと考えております。例えば外国ですと、EUの指令で攻撃的取引方法という、これは以前にも私は少しこの場で話を出させていただいたことがありますけれども、そういう類型の中で、日本法で見ると4条3項の困惑なしいその周辺の問題として評価し得るものと、今回新しく制定された合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型に入るものと両方にまたがっている。

それから、合理的な判断をすることができない事情を利用するというのは、本来は、例えば高齢者で判断能力が低下している、そのような場合を念頭に置いて議論していたわけでありますけれども、既に消費者がそういう状態に陥っているのを利用するということだけではなくて、そういう状態に陥らせる、追い込むという場合にも、合理的な判断ができない状態を利用すると言えるかどうか分かりませんが、そこで合理的な判断をすることが可能だったかどうかが問題になってくると思います。

そういうことで考えますと、合理的な判断ができない事情を利用するということとともに、合理的な判断ができない状態を作出する、こういうことが並んで議論される必要があるわけでありまして、現在の4条3項の不退去とか退去妨害という要件、これは狭い限定された要件になっておりますけれども、それを取り払って残ってくるものは何かというと、合理的な選択ないし判断ができない状態に追い込んで、そこで断れない状態にするということ、そういう問題だと思います。

そのように考えますと、困惑に振り分けるのか、あるいは合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型に振り分けるのかという問題はありますけれども、少なくとも附帯決議で議論すべきだとされている困惑類型の追加ということをきちんと議論するためには、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型についても、きちんと議論しないと答えが出てこないと思います。そういう意味で、現時点でどちらの問題だという形で振り分ける必要はなく、むしろ両者並行して議論して、結論として、こういう類型は困惑の類型として加えていいのではないか、こういう類型はむしろ合理的な判断をできない事情を利用する、あるいはそういうものを作出する類型に当たるのではないか、そのような形で議論することができるのではないかと思いますので、両者とも議論するというのが大事だと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河上委員長。

○河上委員長 今の松本理事長と後藤座長代理の意見は、私も同感するところが多いのですけれども、確かに近接する問題ではあるのですが、一方で、困惑類型というのは、今の後藤先生の表現で言えば作出のほうなのですね。つまり、意思表示の瑕疵を生み出している、そういう事業者の行為態様がけしからぬということで取消しの方向へ持っていきます。ところが、合理的な判断をすることができない事情を利用したというのは、それが事業者のせいであるかどうかは関係なしに、判断不足であったり知識不足の状態にあって、そもそも合理的な判断が余り期待できないような人がいて、そのような状態・状況を利用した、そこにつけ込んだというところに不当な意味があるという意味では、合理的判断をすることができない事情を利用した契約の部分というのは、ちょうど暴利行為の延長上にある、そういう問題なのだろうと思います。

それぞれ役割がある意味では理論的には違う部分を問題にしているので、近接する問題であることは私も全く同感なのですが、一応区別して議論をしてみたらどうかと思います。両方が重なり合っているときには、それは消費者がいずれの方向から取消し権を主張しても構わないというように後から考えればいいことで、とりあえずは分けて考えていったほうが素直なのではないかというか、分かりやすいのではないかという気がいたしました。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。両類型を独立のものとして分けるか、それとも一体のものとして規律すべきかということは、内容にかかわる議論としては問題となり得るところですけれども、今議論しようとしているのは、優先的に検討すべき論点として取り上げるべきかどうかですので、その点に絞って御意見をいただければと思います。

松本理事長の御発言が私の理解したとおりだったかどうかはともかくとしまして、優先的に検討すべき論点として位置づけられるものではないかという御意見として理解することができます。もちろん、ここから先に熱い議論があることは承知しておりますけれども、位置づけはともかく、この点を優先的に検討すべき論点として取り上げるべきであるという点については、恐らくどちらも御異論はなかったということで進めさせていただければと思います。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 今、問題となっている合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型については、優先的に検討すべき論点であるという意見の追加でございます。

具体的には、困惑類型とは言い切れない事案が実際にもございます。例えば高齢の認知症の女性に対して、財産管理能力が低下していることを知りながら、個人的に親しい友人関係であるように思い込ませ、これを利用して種々の契約を締結し、老後に充てられるべき資産をほとんど使わせてしまった事案といったものが裁判例でもございます。このような裁判事例では、困惑ということは、その高齢者にはございません。したがって、困惑類型とは別に、つけ込み型不当勧誘ということでしか救えないような事案も現にありますので、困惑類型とは別立てで優先的に検討すべき類型であると考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

理由づけはそれぞれ少しずつ違っているように感じましたけれども、方向性としては、やはりこの論点も優先的に検討すべき論点に含めてはどうかという御意見が今、出ています。

それでは、長谷川委員。

○長谷川委員 少し前に座長がおっしゃった、まず1.に書いてある論点を優先的に検討して、2.に書いてある論点を検討するかどうかについては後から議論するという枠組みに賛成であります。また、1.の中で今議論していただいている「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型」を優先的に検討するかどうかも議論しましょうということについても賛成です。その上で、この項目を優先的に検討することについて反対しないのですが、この論点については事務局が御説明されるときは成年年齢の引下げを念頭におっしゃって、ほかの方はどうも高齢者のことが念頭にあるようです。焦点が絞られないような議論をするということについては反対ですので、議論していただく際には、焦点を絞って議論できるような体制でぜひお願いしたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、事務局から。

○事務局 合理的な判断をすることができない事情という点について誤解があるといけないので補足して説明しますけれども、先ほど1つの理由として成年年齢というものを挙げましたが、あくまで消費者契約法での御議論になりますので、若年者に絞ったわけではなくて、高齢者であるとか障害をお持ちの方、そういった方も含めての議論ということでの御提案ということで、御理解いただきたいと思います。

○山本(敬)座長 これまでに既にそのようなものとしてずっと議論していたところで、それを踏まえた上で、新たにつけ加えられた事柄の幾つかの一つとして成年年齢を挙げておられると理解すべきではないかと思います。

特に御異論がなければ、この論点を優先的に検討すべき論点として含めてまずは議論を進めていくということでよろしいでしょうか。

それでは、まずは現在1.に掲げられている優先的に検討すべき論点について、順序はともかくとして、順次この場で丁寧に検討を進めていくこととさせていただき、1.に掲げられている以外の論点は、今日挙げていただいたものを含めて、一巡した後の段階でもう一度、取り上げるべきかどうか、取り上げるとしてどう取り上げるかという点について改めて御議論いただくことにさせていただきます。

ただ、進め方については、何人かの方から御意見が出されていましたように、検討すべき素材をできる限り豊富に挙げていただいて、それに即して議論が進められるようにしてほしいということでした。この点は事務局のほうでもそのように準備を進めていただいているところと思いますけれども、改めてよろしくお願いしたいと思います。

以上の点、そしてまた今後の進め方等につきまして、さらに御意見等があれば今お出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、ただ今4時15分で、本来の予定よりもかなり早くなりましたが、本日の検討はこのあたりとさせていただきます。次回以降の審議についてですが、第25回の会議でお示しした今後の審議スケジュールに従い、今後は具体的な検討資料を事務局から出していただいた上で、個別論点の検討を進めていくということとさせていただきます。委員の皆様方におかれましては、引き続きどうかよろしくお願いしたいと思います。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も御熱心な御議論をありがとうございました。

次回は11月24日木曜日15時からの開催を予定していますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上