第20回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年10月30日(金)13:00から15:50

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、井田委員、大澤委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、柳川委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【参考人】
主婦連合会 河村事務局長
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会 小林常務理事
一般社団法人新経済連盟 関事務局長、片岡事務局
公益社団法人全日本広告連盟 内田筆頭執行理事
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 藤川専務理事
一般社団法人日本インタラクティブ広告協会 勝野専務理事
一般社団法人日本広告業協会 永江法務委員会委員長、長谷川個人情報ワーキンググループメンバー
【消費者庁】
井内審議官、加納消費者制度課長
【事務局】
黒木事務局長、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 関係団体からのヒアリング
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、時間となりましたので、そろそろ始めたいと思います。

本日は皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから消費者委員会第20回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用により、阿部委員、沖野委員が御欠席、それから後藤準委員が遅れての御到着ということで御連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第の下部に配付資料一覧をお示ししておりますが、資料1から4が本日のヒアリングについて各団体から御提出いただいた資料となっております。

また、参考資料1といたしまして、古閑委員から御提出いただいております資料のほうをお配りさせていただいております。

もしお手元で資料の不足がございましたら、事務局のほうへお声がけしていただければと思います。

それでは、山本座長、議事進行のほうをよろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。

まず、議事に先立ちまして、古閑委員から御提出いただいています参考資料の内容について、簡潔に御紹介いただきたいと思います。古閑委員、よろしくお願いいたします。

○古閑委員 お時間いただきまして、ありがとうございます。

消費者契約法見直しについて、まだまだ御存じのない方も多そうに思われましたので、参考資料1にありますとおり、事業者に向けた説明会が実施されました。そちらの御報告を提出させていただいております。

当日は、IT、金融・決済、電気、通信、運輸、不動産、広告、サービス、日用品、小売等々、さまざまな業種から勉強会に参加いただきまして、総勢127名の方がお集まりになりました。このほか、一般紙や業界紙などプレス関係者17名も御参加いただき、幾つか報道もされました。

その中で、当日に質疑応答がなされましたので、その内容であるとか、その後にアンケートをいたしまして、質問、意見等をいただいておりますので、簡単に御報告させていただいております。

詳しくは3ページ目以降をごらんいただければと思いますけれども、主だったところとしましては、

1)実務の実態が議論に反映されていない(専門調査会に事業者委員を増やすべき)。

2)実例をもとに具体的な議論をすべき。

3)中間取りまとめを見る限り、業法など他の法令との関係が不透明で、各事項の要件や例外等の詳細も不明であり、議論できる段階に至っていない。

4)一部の悪質事業者が引き起こす問題が、大多数の善良な事業者の足を引っ張ることになってはならない。

5)消費者の法益のみを重視し過ぎると、却って普通の消費者の悪質化に繋がる。

6)消費者被害を発生させない仕組みを作る必要性は理解するが、今回の見直しが目的に合致した手法であるか疑問。

といった声が寄せられました。

この説明会自体に消費者委員会事務局の増田参事官補佐にお越しいただきまして、当日の質疑において、今後の専門調査会の検討次第、具体例として参考にするという御回答もいただいたところが多数ございました。ぜひ今後の御検討に御活用いただきたく、お願い申し上げます。

以上です。


≪2.関係団体からのヒアリング≫

(1)主婦連合会からのヒアリング

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、本日の議事に入ります。本日も、前回に引き続き、「関係団体からのヒアリング」を実施したいと思います。本日は、主婦連合会、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、一般社団法人新経済連盟、公益社団法人全日本広告連盟、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会、一般社団法人日本広告業協会からのヒアリングを行います。各団体からは、8月に取りまとめました本専門調査会の「中間取りまとめ」に対する意見書を事前に御提出いただいておりまして、その内容は委員の皆様にも御確認いただいているところですが、本日はその内容をベースとしながら、さらに御説明を頂戴したいと思います。

ヒアリングに当たっては、まず各団体の御説明をよく聞いていただいた上で、質疑応答される際には、本日の説明内容を中心に、なるべく簡潔に御質問、御回答をしていただくようお願いいたします。会議の進行としましては、前回と同様に団体ごとに交代でお席に着いていただき、それぞれ御説明を10分から15分程度、委員の皆様からの質疑応答を10分から15分程度という形で進めさせていただければと思います。

なお、全日本広告連盟、日本アドバタイザーズ協会、日本インタラクティブ広告協会、日本広告業協会につきましては、ほかに一般社団法人日本雑誌協会、一般社団法人日本雑誌広告協会、一般社団法人日本新聞協会、一般社団法人日本民間放送連盟をあわせた計8団体で御一緒に検討された結果としての御意見を代表して御説明いただくということですので、4団体あわせて席に着いていただき、御説明と質疑応答を行っていただければと思います。

(主婦連合会着席)

○山本(敬)座長 それでは、まず主婦連合会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、主婦連合会から同会事務局長の河村真紀子様に御出席いただいております。お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○主婦連合会河村事務局長 本日は、意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。

それでは、主婦連合会の意見を述べさせていただきます。消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見です。

まず、意見の前提でございますけれども、消費者契約法は、商品の購入やサービスの契約に係るトラブルから消費者をまもる包括的民事ルールとして、消費者団体が長く待ち望んでいたものでした。制定にあたって検討を行なった第16次国民生活審議会消費者生活部会、および17次の下に設けられました消費者契約法検討委員会には、主婦連合会からも当時の事務局長が委員として議論に参加しており、消費者団体は連携をして、委員会の場以外でも学習会の開催ですとか法早期制定の運動を展開いたしました。

同委員会は1999年11月に最終報告をまとめますけれども、委員会終了後、消費者側委員5名は「私たちが求める消費者契約法実現のため引き続き努力する」という声明を発表しています。最終報告には消費者委員が最低限ゆずれないと主張してきた内容が十分盛り込まれなかったとし、「私たちの求める消費者契約法に近づける努力を精一杯おこなってまいります」と声明は結ばれています。

今回、消費者委員会消費者契約法専門調査会で行なわれている消費者契約法の見直しにあたっては、少なくとも、法成立時に積み残された消費者の権利擁護のためのルールが、法成立から15年を経て、今度こそ盛り込まれることを強く要望いたします。それらの規定の必要性、重要性は、今なお変わらないばかりか、一層増すばかりだからです。

消費者契約法が施行されて後にも、消費者被害の相談は増加をし、その後高止まりの状態が続いています。中でも高齢者の相談比率は増加を続けており、その内容も被害額も極めて深刻です。社会の超高齢化によって独居高齢者、認知症高齢者など脆弱な消費者は増加していきます。また高度情報通信社会の進展、クラウド、ビッグデータの時代を迎えて、事業者のもつ情報量は文字通り幾何級数的に増加を続けており、消費者と事業者の情報格差は開く一方です。事業者は集められた膨大な情報を解析、利用し、かつてない巧妙な広告宣伝を消費者に向けて発信していきます。事業者の持つ情報量が今後減ることはなく、増え続けていくのです。

このような社会情勢の中で、「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ」、「消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する」という消費者契約法の目的を達成するために、必要な見直し、法改正がなされることを強く望むものです。

個別の意見は次ページ以降の通りです。

2ページに参ります。

第2 総則の2.情報提供義務についてです。

事業者は消費者に対して必要な情報を提供する義務があることが明示されるべきと考えます。

理由ですが、消費者と事業者との間に存在する格差を是正し、そのことによって対等性を確保するというのが消費者契約法の考え方であるとすれば、情報提供は格差是正のための有力な手段であって、義務として明文化しなければならないものです。まさに法文にありますように、「必要な情報」であるのですから、その提供が努力規定である現行法は、法の目的に適わず、極めてバランスを欠くものと言わざるをえません。

第3 契約締結過程の1.「勧誘」要件の在り方についてです。

不特定多数に向けた広告等であっても、事業者が消費者に対して特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合であって、これにより消費者が誤認をしたときは意思表示の取消しができるようにするべきだと考えます。

理由は、「事業者の一定の行為により消費者が誤認」した場合は、「契約の申込み又はその承諾の意思表示を取消すことができる」とする本法の目的に照らせば、広告が勧誘にあたるかどうかということが問題なのではなく、広告が、取引にあたって消費者を誤認させることがあるかどうかこそが問題だと考えます。物やサービスを売ることを主目的とする広告が、消費者を誤認させて取引に向かわせることは、ごく一般的に起こっていることです。そのことによるトラブル、被害も多数寄せられているところです。本法の目的を達成するために、広告等による誤認があった場合の取消し規定の導入を求めます。

第3 契約締結過程、3.不利益事実の不告知。そのうちの不実告知型についてです。

「不実告知型」については、「故意」の要件を削除するべきです。

理由ですが、不利益事実の不告知の中でも、告げられた利益と、告げられなかった不利益の関連が強く、実質的に不実告知と変わらない「不実告知型」については、不実告知の場合と同様に「故意」の要件を不要とすべきです。利益だけを情報提供し、不利益について情報提供しないという行為は、不利益事実はないと告げているのと同等であるからです。

次に、不告知型についてです。

意見は、故意または重過失がある場合には、「不告知型」も取消しができるようにするべきというものです。

理由ですが、重要な事項に関する故意による不告知があっても、先行する、利益となる旨の告知が存在しないことによって取消しが認められない現行法は、事業者にとって不当に有利な規定となっています。重要事項を故意に告げない行為は、当然に取消し対象とするべきです。その際は、故意に加えて、重過失も故意と同等ととらえ、取消し対象とするべきです。

第3 契約締結過程、4.「重要事項」。

意見ですが、「重要事項」の列挙に、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を加えるべきです。

理由ですが、第4条4項の「重要事項」の列挙は、物品、権利、役務等の質や内容、対価、取引条件といった、契約対象そのものについての属性に限定されておりますが、消費者が契約するか否かを判断する際に影響を及ぼすものはこれに留まらず、その契約をする必要性などの「動機」となる情報を告げられた場合も、契約締結に大いに影響を及ぼします。したがってこのような「動機」に関する事項も不実告知の対象に含まれることを明確に規定するべきです。

第3 契約締結過程、5.不当勧誘行為に関するその他の類型についてです。

困惑類型の追加。

意見としては、困惑取消の対象となる事業者の行為として、不退去・退去妨害に加えて「執拗な勧誘」および「威迫」を規定するべきです。

理由ですが、中間取りまとめの以下の記述にある通りですと書きましたので、ここのところは時間の関係もありまして、マル1、マル2を読んでいただければと思います。中間取りまとめに的確な表現がありましたので、それにかえさせていただきました。

次が、合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型についてです。

意見としては、事業者が消費者の判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させるという事例について、契約を取消すことのできる規定を設けるべきです。

理由は、「高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点から、契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律等の在り方」の検討を行うとの諮問内容に照らして、高齢者、特に認知症高齢者や障がい者など十分な判断ができない状況にある消費者を狙って、判断力の衰え、知識・経験の不足、心理的な圧迫状態につけこんで不必要な契約を締結させる被害(つけ込み型不当勧誘)の発生の防止ができる規定が必要だからです。政府は高齢者や障がい者が、施設ではなくて自宅で自立して生活するということを推奨する政策を推進しているという点から見ても、脆弱な消費者の利益を擁護する規定が必要だと考えます。

第3 契約締結過程の7.取消権の行使期間。

意見は、消費者取消権の行使期間を延長してくださいというものです。

理由は、「消費生活相談事例では消費者が相談に来た時点で既に取消権の行使期間を経過しているケースが多数存在することに鑑み、取消権の実効性を確保する観点からは行使期間を適切に伸張する」。これは、中間取りまとめからの引用ですが、それを求めます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして、質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。大澤委員。

○大澤委員 御意見、どうもありがとうございました。

2点伺いたいのですが、1点目ですけれども、2ページの「勧誘」要件の在り方というところで、「不特定多数に向けた広告であっても、事業者が消費者に対して特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合」ということが書いてあります。この御意見は、私も基本的には考え方としては賛成できるところですが、この不特定多数に向けた広告の中で、その中でも特に特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合と限定されているのかなと拝読させていただいたのですが、まさに広告によって勧誘がされた場合に取消しを認めるかどうかというときに、どういう広告であれば取消しの対象になるかというのも検討していく必要があると考えております。

ここで言っている広告というのが、不特定多数に向けたものであってもということで、その後ろで取引の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合と限定されていると思ったのですが、この広告というのはどのぐらいの範囲で考えていらっしゃるのかというのが1点です。

もう一点は、3ページの困惑類型の追加のところの御意見です。「執拗な勧誘」および「威迫」を規定すべきですというところで、執拗な電話勧誘について、こういう実態があることは十分承知しているつもりですが、中間取りまとめの中にもありましたように、特商法の見直しとの関係でこの点を整理していく必要があるということだと思いますが、この「執拗な勧誘」について、特商法だけではなくて、消費者契約法でも規定を設ける必要があるということであれば、それは実際の現場でどのような実情に基づくものであるか。特商法だけでは不十分だということが、もし何か実情など、具体例などございましたら、教えていただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○主婦連合会河村事務局長 先ほどの広告のところでございますが、このような記述にいたしましたのは、広告も対象にすべきという消費者団体等の意見に対して、事業者さんから、非常に影響力が大きくて反対であるという意見がたくさん出されていることを私は見聞きしております。ですから、それは何でもかんでもそうなるという過剰な想定のもとに反対を唱えていらっしゃる意見が多いと思いましたので、特定の取引と書きましたけれども、要するにイメージ広告ではなくて、これを買ってくださいとか、サービスを使ってくださいという広告であれば、それに当たるわけで、そんなに厳密なことを書いているわけではないですが、何でもかんでもではないという意味を込めまして、このように書きました。

それから、もう一点ですけれども、特商法との関係です。これは、消費者団体としては、法律のつくり方や法文がどうであるかということを求めるというよりは、こういう行為が防止できる、被害救済ができればいいわけでございまして、特商法にそういう規定が入るということが、この時点で別に確定しているわけではございませんので、結果的にそういう被害を防げる社会につながる、そういうルール設定ができるのであれば、どちらもであってもいいですし、どちらかであってもいいという意味で、特商法のほうでも決まっておりませんので、書いたということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに質問がありましたら。丸山委員。

○丸山委員 本日はありがとうございます。

1点、おわかりになる範囲で教えていただければと思うのですけれども、4ページの合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型についてという部分でございます。

この点に関しては、問題とされている事例、民法90条とか709条では、要件としては余りにも一般条項的過ぎて、具体化したほうがいいだろという形で議論されているところなのですけれども、他方で訪問販売については特商法で、投資取引については金取法とか金融商品販売法といった法律で、勧誘規制とか民事ルールは一定程度は手当てされています。そういった特商法、訪問販売規制とか現在の投資勧誘規制では、実感として不足があると感じているような現状というのがありましたら、情報として教えていただければありがたいと思ったのですが、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○主婦連合会河村事務局長 これも先ほどのお答えと似たようなものになるのですけれども、商品先物取引では不招請勧誘規制が緩和されるというような現状があり、また特商法としては今のところ不招請勧誘規制がない中、1回会って断らなければいけないとか、そういうことになってしまいますと、結局のところ高齢者等の被害は伸びていくことになります。ここにも書きましたけれども、これから超高齢化社会となる一方で、判断力が劣る脆弱性のある消費者が家庭で暮らすということを政府が推奨している中、そのような勧誘が行われたときに、消費者契約法で取消せるという規定が必要だと考えているということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに質問等がありましたら。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 ありがとうございました。契約条項に関して、特に御意見がここには出ていないのですが、どういう趣旨なのでしょうか。いろいろ御意見はあるのだけれども、ここで意見を述べる時間が足りないから取り上げなかったとか、そういう御事情があれば教えていただきたいのですが。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○主婦連合会河村事務局長 まだ意見として挙げたいところはございますけれども、前提のところに書いたのですけれども、この法律が成立するときに、このルールは必要だと消費者団体が思ったことで入らなかったこと、そこに力を込めまして、今日述べさせていただいたという趣旨でございます。もし必要でしたら、追加意見をお届けいたします。今日述べた意見は、できたときからの積み残しで、ぜひとも入れるべきところを強調したものでございます。

○山本(敬)座長 今日挙げていただいたのは、そのような御趣旨だと承りました。

ほかに質問等がありましたらお出しいただければと思います。よろしいでしょうか。

それでは、主婦連合会へのヒアリングは、このあたりにさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

(主婦連合会退席、全国宅地建物取引業協会連合会着席)

(2)公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続いて、全国宅地建物取引業協会連合会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、全国宅地建物取引業協会連合会から、同会の常務理事・政策推進委員長小林勇様に御出席いただいております。お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○全国宅地建物取引業協会連合会小林常務理事・政策推進委員長 御紹介いただきました小林と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、当協会からお出しいたしました意見書につきまして、読み上げさせていただきたいと思います。

まず、1点目です。「見直しの視点」につきまして。

消費者契約法が適用される不動産取引につきましては、宅建業者が媒介する場合には宅地建物取引業法の規定に基づきまして、契約締結過程における不当な対応は排除されてございます。

国におきましても、標準媒介契約約款、賃貸住宅標準契約書、原状回復ガイドライン等の公表、賃貸住宅管理業者登録制度の運用などを通しまして消費者保護のための対応をとっているという現状がございます。私ども団体におきましても、各団体というのは私どもの関連団体で、不動産関係の団体が幾つかございます。その団体における契約書のひな形を作成しまして、あるいは団体内で自主ルールを作成して、消費者保護のための取組を積極的に行っているところでございます。

中間取りまとめの3ページにございますように、「消費者と事業者との間の適正な取引の確保に関する法律や事業者団体における自主規制ルールの運用状況等も踏まえて適切な対応を図ることが重要」でありますことから、消費者契約法の見直しの内容や適用範囲につきまして、上記のような不動産取引における現状や取組を十分に踏まえて検討していただきたいというお願いでございます。

2番目につきましては、第2-1「消費者」の概念につきまして。

消費者概念につきましては、消費者契約法の適用される対象が「契約当事者間に実質的な格差がある」という契約当事者間の実質に着目して消費者概念を拡張すべきかを検討するとされております。

次のページに行きます。

しかしながら、契約当事者間の実質的な関係を考慮して消費者概念の見直しを検討するのであれば、事業者概念についても見直しの議論があってしかるべきではないでしょうか。民間賃貸住宅では家主さんの多くは小規模零細でございます。情報力・交渉力の点ではいわゆる消費者と変わらないにもかかわらず、現行法では一律「事業者」とされ、消費者契約法の対象とされている点についても目を向けていただく必要があると考えます。

3番目、第2-2「情報提供義務」でございます。

消費者契約法が適用される不動産取引では、提供すべき情報は、物件ごとあるいは当事者ごとに多様でございます。事業者としての情報提供が義務化された場合にはその範囲が不明瞭であることから、無用の混乱が生じかねないと考えます。

また、宅建業者が媒介する場合におきましては、宅建業法の規定にしたがって必要な情報提供が確保されてございますし、サブリース事業者がエンドユーザーに貸す場合につきましては賃貸住宅管理業者登録制度に基づきまして情報提供がなされることになってございます。

以上に加えまして、現行法4条以下に具体的個別的な情報提供義務が規定されていることも踏まえれば、少なくとも不動産取引に関しましては、3条1項の事業者の情報提供を義務化すべきではないのではないでしょうか。

4点目、第2-4 消費者の努力義務でございます。

最近のネットをはじめとする情報化の進展に伴いまして、消費者契約法が適用される不動産取引におきましては、消費者側も容易にかつ多様な情報を収集することができます。また、不動産取引における情報提供の機会の多様性を踏まえれば、消費者側も一定の情報収集に努め、契約当事者としての意識のもとで契約に臨んでいただくことが「消費者啓発」という視点からも大切だろうと考えます。したがって、消費者側の当該努力義務の削除を検討する必要については、ないものと考えます。

5番目、第3-1「勧誘」要件の在り方につきまして。

消費者契約法が適用される不動産取引におきましては、不特定の者に向けてなした広告等があっても、宅建業者が媒介する場合におきましては、宅建業法の規定にしたがって重要事項説明等がなされ、それで契約するか否か、契約内容をどうすべきかが判断されます。括弧書きでございますが、さらに、宅建業者の行う広告等につきましては、宅建業法や公正競争規約により規制されてございます。また、サブリース事業者がエンドユーザーに貸す場合につきましては、賃貸住宅管理業者登録制度に基づき同様の対応がなされるということでございます。広告等だけで判断して契約に至るケースはないと考えます。

上記のような重要事項説明等の手続きがあるにもかかわらず、広告等に何らかの問題があったことのみに基づきまして契約の取消しの対象とすることは、上記契約締結過程における手続きや現行の規律を無意味なものとし、消費者契約法が適用される不動産取引に無用の混乱を生じさせることになるのではないでしょうか。

次のページ。

したがいまして、少なくても不動産取引につきましては、不特定な者に向けてなした広告等を「勧誘」要件に含めるべきではないと考えます。

6番目、3-3「不利益事実の不告知」につきまして。

宅建業者が媒介する場合におきましては、宅建業法により断定的判断の提供等が禁じられております。サブリース事業者がエンドユーザーに貸す場合には賃貸住宅管理業者登録制度に基づき同様の扱いとされております。

そうすると、消費者契約法が適用される不動産取引におきまして本規定が適用されうるのはサブリース事業以外で家主様が自分で借主を見つけて契約するというケースになるのではないでしょうか。この場合の家主は小規模零細で情報力も交渉力もないことが多いことから、故意要件や先行行為要件を削除することにつきましては、事業者である貸主に過大な負担となる可能性が高いと思います。

7番目でございます。第4-2「損害賠償の予定・違約金条項」につきまして。

消費者契約法が適用される不動産取引の代表的なものとして個人が借主である住宅賃貸借契約がございます。本条項の適用範囲が契約終了一般に拡張されますと、明け渡し遅延損害金あるいは借主の故意過失等により物件等に毀損等を負わせたことなどに伴う損害賠償などを「敷引き」などの一時金で処理する場合などが適用対象とされうるものと想定されます。

しかし、これらにつきましてはすでに現行法10条に基づく裁判例の集積により実務上の処理がなされているところでありまして、あえて9条の適用範囲とする必要はないし、そもそも賃貸借契約が終了した場合に生じうる損害は、物件ごと、契約ごとに多種多様でございますので、借主の態様や手続の有り方などによっても異なります。「平均的な損害額」の想定ということは恐らく不可能で、今後も個別のケースに応じて同法10条により対処すればよいものと考えます。

8番目でございます。4-4「不当条項の類型の追加」につきまして。

消費者契約法が適用される不動産取引につきましては、国が公表している賃貸住宅標準契約書などでは報告書記載の「不当条項」は使用されてございません。業界団体等においても標準契約書を受けた契約書のひな形を作成するなどして、すでに十分な対応がなされているところでございます。

また、報告書記載以外の不当条項を検討する場合につきましては、契約内容が契約類型ごとに(さらに不動産取引であれば物件ごと、契約ごとに)多様なものがあることを踏まえ、いたずらに規制範囲が不透明となり予測可能性を害することのないよう御留意していただきたい。さらに、すでに現行法10条に基づく判例によって決着が図られているものにつきましては、紛争の蒸し返しによる無用な混乱を生じさせないような御留意をいただきたいと考えます。

最後のページでございます。

9番目、5-1「条項使用者不利の原則」につきまして。

消費者契約法が適用される不動産取引におきましては、宅建業者が媒介する場合には、たたき台は宅建業者で用意いたしますけれども、実際の契約条件は、契約締結に至るまでの間、宅建業者が間に入って当事者間で協議調整等がなされ、その結果が書面化されるところでございます。「事業者が自ら契約条項を準備して使用している」という要件には該当しないことを確認していただきたいと思います。

以上、意見書の提出をさせていただきました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。増田委員。

○増田委員 ありがとうございます。

消費生活センターには賃貸住宅に関する御相談が毎年、かなり上位を占めている状況でございます。国民の多くの方が経験している契約だと思いますので、非常に重要なものだとふだんから考えております。そういう中で、標準約款、標準契約書などを取りそろえていただきまして、それについてはありがたいと思っているのですけれども、そうではないケースもございます。

2点ほど御質問させていただきたいと思うのですが、まず消費者概念についてですが、零細な事業者さんが家主になるケースというのはかなり多くあるということで、事業者についての議論が必要だということは十分に私も理解しておりまして、ご説明のとおりだと思います。家主が事業者であると同時に、例えば光回線とか通信サービスなどの契約に至ったということで、B to Bの形式であるものの、非常に消費者に近い立場であって、消費生活センターのほうに御相談いただくというケースもよくあります。

そうしますと、家主は、あるときは事業者であり、あるときは消費者であるということになりますので、消費生活センターではその時々に応じた形で情報提供したり、お手伝いをする。お手伝いできる範囲というのは、たくさんアパートを持っている方についてはお手伝いできないなど何らか条件をつけています。お手伝いするケースというのはそれぞれに検討するわけですけれども、そういう場面が違ったときに立場が違ってくるということに関しては、この消費者契約法を適用するに当たってはどういうふうにお考えかということを1点お伺いしたいと思います。

もう一点についてですけれども、不利益事実の不告知のところで、業法とか制度の中で禁止が設けられているということがございますけれども、これは禁止ということでありまして、民事的な効果がついているものではないと思います。サブリースなどによって被害が発生しているということもありますし、それから特に不動産取引に関しましては特商法の適用がございませんので、こういう民事的効果を得るためには消費者契約法が非常に有効に機能するものだと思います。違反をした場合、民事的効果がないことについてはどういうふうにお考えでいらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国宅地建物取引業協会連合会小林常務理事・政策推進委員長 零細貸主さんの件ですね。個人貸主さんは、私どもがとった統計で、貸主さんの中の約85%を実は占めているのです。

それで、賃貸における賃借人さんとのトラブルがよく起こるのですけれども、先ほど、出た後の原状回復とか、多分、御相談はそういうものが多いのでしょうけれども、トラブルの中でも貸主さんが極めて弱い立場になる場合も往々にしてございます。要するに、事件的なものになるのは、仲間に聞いてみても契約の中の一、二%。個人貸主さん、零細貸主さんにとっては、特に低賃料の木造のアパートを経営されている方がまだ多いという現状もございますし、低賃料ということで、こういう言い方がいいかどうかわからないのですが、所得の少ない人が入ってくる可能性が当然あるわけです。

家賃の滞納が発生したときに、あるいは滞納だけではなく、トラブルが発生した場合、他の住民に迷惑をかけるような行為とかの場合に、かなり弱い立場になる。滞納の場合に自力救済できないということがございますから、裁判に頼るということになるのですけれども、その裁判費用については大変高くつきます。強制執行までかければ、家賃の滞納も含めるとすぐ100万円ぐらいになってしまうということがございます。

こういうときに、この方たちが滞納者に対しての立場がかなり弱いものになる。私どもはそのお手伝いをするのですけれども、弁護士さんの費用がないということになると、トラブルの解決がどうしても長引いてしまうという現状があるので、ここで考え方をある程度変えるということであれば、貸主さんのこういう立場というものを御理解いただきたいということで書いてございますが、先ほど増田先生からお話があったように、ケース・バイ・ケースでお考えいただいている現状があるということでございますので、それについては大変ありがたいと思っていますが、もしこの考え方のベースとなるものを変えるということであれば、零細貸主さんの救済措置というものをお考えいただけたらありがたいという意味で申し上げました。

それから、2つ目の不利益事実の不告知でございますけれども、私どもは業法でもかなり縛りを受けていまして、業法47条で禁止事項というものがございます。あと、消費者契約法10条で今まで判例として残ってきているものがほとんどではないかと思います。それに、不利益事実の不告知につきましては、仲介に入ったときが一番問題になるわけですけれども、今、私どもが考えている標準契約書の中に、いわゆる貸主さん、もしくは売主さんが書く告知書というものを今後重視していかなければいけないと考えております。

これにつきましては、仲介に入ったときに私どもが知り得ない事実があった場合に、これは貸主さんの責任を担保するという意味で、告知書は細かくつくってございます。まだ今後活用するということでございますけれども、それについて、貸主さんの署名・捺印をいただきまして、中身についての御発言をいただくということで、消費者さんには迷惑がかからないような措置を考えております。

お答えになったかどうかわかりませんが、以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、ほかに質問等がありましたら。では、後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 貴重な御意見をどうもありがとうございました。

今日示していただいた意見書は、不動産取引の中でも賃貸借についてお書きになっている部分が多いという印象を受けました。1番、2番、3番、5番、7番、8番あたり、賃貸借契約を想定しているということだと思うのですが、不動産取引の中で賃貸借でない、例えば売買ということを考えた場合に、ここでお書きになっていることは、売買についても共通に当てはまる御意見と考えてよろしいでしょうか。それとも、売買と賃貸借で何か違った部分があって、特にここで売買について御意見を述べたいということがおありでしょうか。もしおありでしたら、その点も含めてお願いいたしたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国宅地建物取引業協会連合会小林常務理事・政策推進委員長 消費者さんとのかかわりは、賃貸借契約かなという、おっしゃったとおりの考え方がまずございました。

売買につきましては、今後、民法の改正を見据えて、今度は契約内容重視ということになるので、今、国交省さんと標準契約書の作成に入っているところですけれども、今後、恐らく契約書の中身がかなり詳細にわたる。要するに、契約不適合責任を回避するための特約事項といいますか、条項をかなり書きつらねていくのだろうと思います。そういう意味では、買主さんである一般消費者さんにも、細かく書くことで御理解を頂戴できる。要するに、今、言われている瑕疵担保責任につきまして、もう少しわかりやすい説明が逆にできるのかなと考えております。

それが多分全てだろう。売買契約におきましては、賃貸借契約よりももう少し微細に御説明するようなたてつけになっておりますから、ここに書かなかったのはそういう理由が1つあるということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 貴重な御意見、ありがとうございました。不動産取引に関して、特有の問題がいろいろあるということが、伺っていて大変よくわかりました。

2点、質問させていただきたいと思います。

1点目は、先ほどの増田委員の質問とも関係してくる点ですが、レジュメ2ページの一番上のところで、事業者概念についても見直しの議論があってしかるべきではないかという御意見を頂戴しておりまして、ここで書かれていることは非常にもっともなことかなと私は個人的には感じました。家主さんの多くは小規模・零細であり、伺っていますと、先ほど8割以上ということでしたので、かなりの家主さんが小規模・零細であるという点で、いわゆる消費者と変わらないというのは、それはそのとおりなのではないかと思いました。

そのときに、今後、これに仮に対処するという場合に恐らく二通り方法があって、1つは、こういう小規模零細な家主に関しては、事業者からは外してほしいということなのか、それとももう一つの方法としては、こういう小規模・零細な事業者も実質消費者と同じなので、むしろ消費者のほうに定義上、入る可能性を与えてほしいということなのか、このどちらかがあり得るかなということがありましたので、先ほどの質問と重なるかもしれませんが、こちらを確認させてください。それが1点です。

もう一点は、4ページ目の「条項使用者不利の原則」というところですが、実態を確認させていただきたいのですが、実際の契約条件は、もちろんたたき台を踏まえて、契約締結に至るまでの間、宅建業者が間に入って、当事者間で協議・調整がなされると書かれていらっしゃいますけれども、具体的にどれぐらい協議・調整がされているのかということが、私、実際上、余り不動産取引をしたわけではないのでわからないのですけれども、例えば借主側の意見が入る余地というのが、交渉の中でどれぐらいあり得るのかという点が気になります。

例えば家賃についても交渉が実際にはされていて、その結果が書面化されているとか、あるいは数年前の最高裁で問題になっていた、いわゆる敷引き特約とか更新料条項についても、これはあらかじめ契約書に書いているわけではなくて、これも当事者間で協議がされているということなのでしょうか。それらの実態を教えていただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国宅地建物取引業協会連合会小林常務理事・政策推進委員長 零細の貸主さんのお話ですけれども、ここで私どもが書かせていただいたのは、私どもが間に入って、もちろん借主さんについては審査させていただいて御入居いただきますが、トラブルの形態というのは多種多様にわたります。一例を申し上げますと、借りた方以外の方が入居してしまうとか、結果的にその方が事故を起こしたということもあるのですが、ここに書かせていただいた理由というのは、零細な貸主さんもいるということをまず御理解いただいて、今度の契約法の改正につきましては、この辺も御議論の中でお考えいただければありがたいなという意味でございます。

2点目の御質問でございますけれども、これは約款でないと書かせていただきましたが、定型約款ではないということは法務省のほうでお墨つきをいただいているのですけれども、協議内容は、おっしゃられたように多種多様にわたってお受けすることになります。広告といいますか、店頭の看板には全ての条件が書いてございますけれども、決めたとおりに借主さんが入ってくれるとは限らないのですね。あと3,000円下がると借りられるとか、あるいは礼金は今どきおかしいでしょうというお話は常にございまして、あれば家主さんと交渉して、こういうお客様で、いいお客様ですからいかがでしょうかと。

交渉内容は、おっしゃられたように多岐にわたります。全て応じられるわけではありませんけれども、お聞きした上で貸主さんに確認させていただいて、合意いただけるところは合意させていただくという形でやらせていただいております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、山本健司委員。

○山本(健)委員 貴重な御意見いただきまして、ありがとうございました。

資料2の2ページの第5項の「『勧誘』要件の在り方について」という部分について御質問させていただきたいと思います。

下から4行目以下で、「広告等に何らかの問題があったことのみに基づき、契約を取消しの対象とすることは、上記契約締結過程における手続きや現行の規律を無意味なものとし、消費者契約法が適用される不動産取引に無用の混乱を生じさせることになる」という御懸念が示されております。

一方、その前の6行では、不動産取引においては、重要事項の説明がなされる、広告等だけで判断して契約に至るケースはないというご説明を頂戴しております。

広告の後、契約締結までの間に、事業者から消費者に対して、不利益事実を含めた重要な情報が正確に提供されているのであれば、今回の中間取りまとめで議論されておりますような「勧誘」要件の見直しがなされても、契約が誤認取消しされることにはならないと思われますので、この部分の御懸念は無用ないし過剰ではないかと思うのですけれども、この部分の御意見は中間取りまとめに関する、広告後にちゃんと情報提供しても取消されることになるという御理解を前提とした御意見と理解すればよろしいでしょうか。

よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国宅地建物取引業協会連合会小林常務理事・政策推進委員長 今、国交省で重要事項説明のインターネット利用ということが検討されておりまして、今後、宅建業法37条のいわゆる契約書面につきましても電磁的処理で済ませるという方向性が打ち出されたところでございます。ですから、単純に張り紙だけでなくて、今度はインターネット上の問題も出てくると思うのですが、ここで私どもが懸念しているのは、例えば面積を多少誤って記載してしまったとか、用途地域を間違えてしまうとか、広告上に記載した事項でこれはおかしいだろうということを言われてしまう、常にそういうことになると、その後で先ほど先生おっしゃられたように、当然現場の御案内もし、見ていただいて設備についても御説明します。

売買であれば用途地域とか、何が建てられるのか、あるいはこれがだめなのかという説明をさせていただいて、その上で、1軒だけではないですから、大体数軒、御案内することになります。賃貸も売買も同じですけれども、そのときに気に入ったものについて、またお問い合わせがあったり、あるいはこちらの事務所に出向いていただいたりするときに、ここでもまだ重要事項説明には行かないわけですね。ですから、その間の打ち合わせ等がかなり行われるのは事実で、おっしゃるとおりで、広告、イコールその中身ということには、恐らく私どもはならないと思っておりますけれども、これが発展してしまって、広告でだめなものは全て取り締まるということになってしまうことを危惧しているという意味です。

こんなことでよろしいでしょうか。

○山本(健)委員 ありがとうございました。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに質問等がありましたら、お出しいただければと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、全国宅地建物取引業協会連合会へのヒアリングはこのあたりとさせていただければと思います。お忙しいところヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(全国宅地建物取引業協会連合会退席、新経済連盟着席)

(3)新経済連盟からのヒアリング

○山本(敬)座長 続いて、新経済連盟からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、新経済連盟から、同連盟の事務局長関聡司様、事務局片岡康子様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○新経済連盟関事務局長 ありがとうございます。本日は、説明の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

資料は、資料3になります。それに沿って御説明したいと思います。ただ、時間の関係で、全ての論点について口頭で説明することはちょっと不適当かなと思いまして、ところどころ飛ばして口頭では説明しますが、新経連からの意見としては、この資料3全体でございますので、その点、御承知おきください。なお、説明は私、関のほうからいたしますが、Q&Aにつきましては私に加えて片岡のほうからもお答えさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

まず、1ページ目のはじめにというところから第1のあたりまでですけれども、消費者契約法は、消費者契約に関する一般法ということで、あらゆる消費者契約に対して適用されるということですので、その改正となると、日常一般に行われている膨大な数の取引に大きな影響を及ぼすと考えられます。したがいまして、立法事実の有無、実務実態を踏まえて、これまで問題なく行われてきた取引に支障を来すことがないように配慮すべきだということをまず申し上げたいと思います。しかしながら、専門調査会では、学術的な議論が先行して、実務実態に関しては必ずしも十分な議論が行われてきていないのではないかと認識しております。特に、今後、委員のバランスも考慮していただければと思います。

それから、見直しの検討を行う際の視点、1ページの下のほうですけれども、「インターネットの普及」とか「高齢化の進展」というのがキーワードになって、いろいろ議論がなされておりますが、具体的にどのような問題が増えていて、どうして消費者契約法の改正が必要であるのかという肝心の立法事実が提示されていないのではないかと感じております。民事ルールの基本は民法でありますけれども、発生している具体的な問題が民法上の債務不履行、瑕疵担保責任といった基本ルールでなぜ解決できないのかについても、検証されていないと思います。「社会経済状況の変化への対応としてふさわしい規定の在り方」を考えるのであれば、実務実態に目を向けて、実務者を交えたうえで具体的な検証・議論を行うべきであるということを申し上げたいと思います。

おめくりいただきまして、2ページ目になります。

まず、第2の総則からですけれども、1.「消費者」概念の在り方でございます。

こちらの意見は、現行法を維持すべきであり、新たな規定を設けることには反対ですということでございまして、現行法を形式的に適用すると事業者間契約となりますけれども、実質的には消費者契約とみるべき場合について、法改正で消費者契約とする方向が示されておりますけれども、結局、取引に係る背景事情とか、もろもろの個別事情を勘案して総合的に判断されるということだと思いますので、新たな規定で概念を変更するということは不適当だろうと考えております。

2.情報提供義務でございます。

先行行為要件を維持した上での不利益事実の不告知、債務不履行責任、民法上の不法行為等、現行法で対応可能だと考えておりまして、消費者契約一般に適用される消費者契約法において新たに情報提供義務の効果として取消や損害賠償を規定すべきではないと考えております。

商品・役務について、当然期待される品質が備わっていないにもかかわらず、当該事実が告げられないまま給付された場合は、債務の本旨に沿った給付がされていないとして債務不履行責任が発生する、そもそもこういった考え方になると思います。また、消費者側に予め知っておきたいことがあるのであれば、質問することもできるわけでございますので、新たに情報提供義務を規定する必要はないと考えております。

また、情報提供義務違反に取消や損害賠償等の効果を持たせるとすれば、提供すべき情報が何であるかを明確にする必要があると思います。すなわち、情報提供義務違反の要件を定めるべきだと考えますけれども、商品・役務の種類・性質により提供すべき情報は非常に異なると思いますので、この消費者契約全般に適用されるような消費者契約法にはなじまないと考えております。

それから、3.契約条項の平易明確化義務でございますけれども、意見としては、契約条項の平易明確化を義務化することには反対でございます。

契約条項の平易明確性というのは相対的なものだと考えられますので、絶対的な基準を定められるものではないと考えております。そういう状況を鑑みると、明確化を法的義務化して、その義務違反に法的効果を及ぼすというのは不適当だろうと思います。

それから、4.消費者の努力義務でございますが、これについても、ここに書いておりますように規定削除すべきではないと考えます。

それから、第3 契約締結過程についてでございます。

1.「勧誘」要件の在り方でございますけれども、中間取りまとめにある「勧誘(不特定の者に対するものを含む)」ということで、不特定の者に向けた広告を勧誘に含める案、あるいは「勧誘」という文言を削除したうえで「当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為」と改めることで勧誘と広告を区別せずに規定する案は、ともに広告の実務実態を踏まえておらず、対象となる範囲が不明確かつ広がりすぎるということで、反対でございます。

「勧誘」と「広告」は異なる概念を持つものだと考えておりますし、実務上も違うものとして扱われている。それだけではなくて、広告には非常に様々な態様のものが存在しますので、仮に広告の内容を原因とした取消権を検討するということであれば、どのような場合に消費者契約法による取消を認めるべきか、多くの態様等々、あるいは他法令との整合性等々、踏まえた上で、「勧誘」とは別の広告に対する規制として、新たな類型として具体的にかつ慎重に検討すべきだと考えております。

なお、検討に当たりましては、次の4ページの上のほうになりますけれども、取消という効果が非常に重いものだということをしっかり認識していただいて、詐欺・脅迫に準ずるような広告に対象が絞られるような適切な要件設定が必要だろうと思います。

なお、諸外国におきましては、「広告」と「勧誘」を同じように扱っているということはないという認識をしております。

それから、5ページ、2.断定的判断の提供ということで、意見といたしましては、「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額」という例示を削除し、断定的判断の提供の対象を「将来における変動が不確実な事項」又は「不確実な事項」とする案には反対でございます。

現行法の断定的判断の提供に関する規律は、将来の財産上の損得という限定的な事項について特に手当をするために定められた規定だと考えております。民法上の債務不履行、詐欺、現行法上の不実告知で対処すべきだと考えておりますので、現行法を変更して対象を広げるべきではないと考えております。

それから、3.不利益事実の不告知についてですけれども、不利益事実の不告知を不実告知型と不告知型に分けた上で、不実告知型について故意要件を削除し、不告知型について先行行為要件を削除するという意見につきましては、反対であります。

この2つの類型を考える考え方自体について、特に異論はなかったと中間取りまとめに記述がありますけれども、当方の認識といたしましては、実際に具体例をこのような2つのパターンに振り分ける試みというのは、なされていないと認識しております。また、不利益事実との関連性の強弱という不明確な基準は、実務上、基準として機能し得ないと考えます。そもそもこのような不明確な基準で類型を分けること自体に無理があるということで、強く反対しております。

なお、先ほどと同様ですけれども、取消という効果は事業者にとって非常に重いものですので、その法的効果の在り方をどこまで認めるかについては、慎重な議論が必要と思います。

4.「重要事項」の部分です。

「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を追加して列挙する案、その他の事項を追加して列挙する案、列挙事由を例示として位置付ける案、いずれにも反対でございます。

4条4項における「重要事項」の内容は、不当勧誘規制の内容の根幹を左右するものだと考えております。したがいまして、その拡大につきましては、極めて慎重かつ丁寧な議論や検討が必要だと思います。広告規制の導入とか不利益事実の不告知の要件緩和を議論するにあたっては、重要事項が明確であり、かつ予見可能性が確保されている必要がございます。

例えば、その下になりますけれども、念頭に置いている事例が、いわゆる点検商法において「床下が腐っている」と嘘をついて、何かの契約をするといったケースなど、その消費者契約を締結しなければ日常生活に大きな支障が出るほどの事情について事業者が嘘をついているような事例だと思います。しかしながら、先ほどの「当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」という規定であれば、その範囲というのは、事業者が予め認識することが難しいものも含まれると思います。例えば消費者の「動機」についてまで広がる可能性がありますので、予見可能性を欠いてしまうということで、不適当だと思います。

5.不当勧誘行為に関するその他の類型で、(2)でございます。

不招請勧誘につきましては、その規定を消費者契約法に設けることについては反対でございます。

消費者が自ら積極的に求めない限り一切の勧誘ができないという考え方は、世の中一般の商売を全否定する考え方であり、非現実的だと考えております。

それから、6.第三者による不当勧誘ということで、委託関係にない第三者による不当勧誘の場合についても取消権を認めるという案には反対でございます。

劇場型勧誘等の悪質事例を念頭に、委託関係の立証困難性を理由として当該提案がなされていると思いますけれども、劇場型勧誘におきまして、委託関係を立証できないような場合に、第三者による不当勧誘およびその不当勧誘により当該消費者が誤認又は困惑し意思表示をしているということを事業者が知っていたことを立証できるとする根拠が不明であります。

一方で、事業者と委託関係になく、事業者がコントロールできない第三者の行為によって消費者が一方的な思い込みをしている場合もありますので、事業者がそれに気づいて思い込みを解かなければ契約を取消されてしまうとするのは、取引の安定性を害するおそれがあります。委託関係にない第三者による広告によって取消権が認められるのは、非常に不合理だと考えます。

それから、9ページへ行きまして、7.取消権の行使期間でございまして、消費者契約法における取消権の行使期間を伸張する案には反対でございます。

消費者契約法におきましては、民法よりも広く取消権を認めているということで、取引の安定性を確保する必要があることから、取消権の行使期間が短縮されているといった背景事情は変わっていないと認識しております。これらの期間を過ぎてしまっている相談事例が一部存在するということをもって、行使期間を一律に延長するような立法事実があると認識するのは適当だと思えません。

それから、8.法定追認の特則でございまして、消費者契約法に基づく取消に民法の法定追認の規定の適用を制限する特則を設けることについては反対でございます。

取消の原因となる状況が消滅した後に法定追認に該当する行為があっても取消権を行使され得るということにつきましては、取引の安定性を損なう可能性があります。下のほうに例示がありますけれども、たとえば広告の一部に誤って不実の内容が記載されていた場合に、他の情報から事実に気づいた上で対象商品を受領し使い続けていた消費者に対し、法定追認を認めずに取消権を認めることは行き過ぎではないかと考えます。

長くなってすみません。10ページ目、9.不当勧誘行為に基づく意思表示の取消の効果についてでございます。

不当勧誘行為に基づく意思表示の取消がなされた場合の消費者の返還義務の範囲に関する民法の特則を設けるという意見には反対でございます。

消費者が利益を得ている場合まで一律に民法の原則を修正するというのは、民法や改正民法における詐欺の場合と比較してもバランスを失すると思われます。

それから、第4 契約条項、1.事業者の損害賠償責任を免除する条項につきましてですが、(1)人身損害の軽過失一部免除条項につきましては、事業者の軽過失による人身損害について責任の一部を免除する条項を一律無効とする、あるいは原則無効とする規定を設けることについては反対でございます。

これは、実務におきまして、事業者の責任を一部免除する条項というのは相当あるものと思われます。専門調査会でも例に挙げられたファウルボールによる人身損害といったものもございますし、それが認められたケースもございます。一律に無効とすべきだとする立法事実はないと考えております。検討に当たっては、実務実態を十分調査するべきであります。

それから、2.損害賠償額の予定・違約金条項。

まず、(1)「解除に伴う」要件の在り方でございますが、「解除に伴う」要件は維持すべきであります。消費貸借の特則を消費者契約法に設けることについては反対でございます。

事業者に生ずる損害額が全て「平均的損害」で規律できるわけではないと思います。9条1号は、あくまで解除に伴う損害賠償額の予定について規定したものでありますので、消費貸借契約における期限前弁済に関する条文を消費者契約法において定めることは適切ではないと思います。

それから、(2)「平均的な損害の額」の立証責任。

「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」の立証責任を事業者に転換するという案、それから「同種事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分」を当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分と推定するという案、いずれにも反対でございます。

消費者が契約解除に際して、事業者が契約条項において予定した額が大きすぎると主張するのであれば、大きすぎると考える消費者側がそれを立証すべきだと考えます。また、事業者側ですけれども、様々な内部情報とか機密情報をもとにコストを計算した上で、商品・役務の価格あるいは違約金等を定めているという実態がございますので、裁判等、特殊なケースでなければ、それを提示するのは通常困難だと思います。一般的に消費者の主張が合理的であって、それに対する事業者の反証が不十分だということであれば、消費者の主張が認められると思われますので、現行法の規定を変更してまで立証責任の転換を図るべきではないと考えます。

それから、3.消費者の利益を一方的に害する条項でございます。

10条後段において「平易明確でないこと」を要素として加えることには反対でございます。

平易明確かどうかというのは客観的に判断できるものではないということで、予見可能性が担保できないと考えます。

それから、12ページでございます。不当条項の類型の追加でございます。

不当条項として5つの類型の追加が提案されておりましたが、これらはいずれも実務において合理的に使用されている実態があります。類型的に信義則に反して消費者の利益を一方的に害するというものとはいえないと思います。これらが不当条項として当然に無効あるいは無効が推定されるといった場合になると、実務への影響は計り知れないものとなると思われますので、これらの類型の追加には反対でございます。

5つ、それぞれ簡単に説明しますと、(1)消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させまたは制限する条項につきましては、(ア)法律上の解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項。

中間取りまとめの37ページには、「法律上の解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項は、類型的に信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものと考えられる。これを例外なく無効とするという考え方が示されております。これについて特段の異論は見られなかったとあるのですけれども、「法律上の解除権・解約権」については、強行法規によるもの、それから任意法規によるものとがあると思います。任意法規による解除権・解約権を合意によって放棄させることは、契約自由の原則からも一概に不当とはいえないと考えます。「類型的に信義則に反する」ということはいえないと思います。したがいまして、「法律上の解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項」を不当条項の類型に追加して一律無効とすべきではないと思います。

また、「お申し込み後のキャンセルはお受けしておりません」「セール品につき購入後の返品はお断りします」といった注意書き、返品特約は実務上広く一般に存在しているという実態がありますけれども、そういったものが文言上のみで不当条項と捉えられることのないように十分な留意が必要と思います。

それから、(イ)、13ページ、一番上です。消費者の解除権・解約権を制限する条項につきまして、実務上使用されている条項については、消費者による解約権を放棄させてはいないものの、一定の期日を過ぎた解約には代金の100%を解約手数料として請求するものとか、解約に所定の手続を求めるもの、あるいは一定の期間を過ぎた場合には解約を認めないもの、括弧書きの中に例示がありますけれども、こういったものなど、数多く存在します。こういったものは、経済活動の中で現状、消費者に受け入れられておりますし、信義則に反するものとは考えられません。

それから、(2)事業者に法律に基づかない解除権・解約権を付与し又は事業者の法律に基づく解除権・解約権の要件を緩和する条項につきましてですけれども、企業実務におきまして、このような条項は広く一般的に使用されております。たとえば、マーケットプレイスの安全性・健全性を維持するために、他の利用者に不利益をもたらすと考えられる利用者との契約を事業者が解除できるとする条項。あるいは、代金未払いで一定の条件を満たした場合に無催告で契約解除ができるとする条項などあると思います。いわゆる反社条項などもあると思います。こういったものは実務上必要でありますし、現に存在していることもあり、類型的に不当条項とされるべきものではないと考えます。

それから、ページをおめくりいただきまして14ページ、一番上の(3)消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項。

これにつきましても、企業実務において、このような条項は広く一般的に使用されております。たとえば、クレジットカードの利用規約改定の周知に際して、改定日後にカード利用があった場合には規約に同意したものとみなすといったケース。それから、航空券の予約後、一定期間内に購入手続きを行わなかった場合には申し込みの取消しとみなすもの。ほかにもたくさん書いてありますけれども、こういった規定というのは事業者側あるいは消費者側の手間を省いて効率的に大量の取引を行うことを可能にしているとも考えられますし、また消費者にとってもメリットがある場合が多い。したがって、実務上必要であって、類型的に不当条項とされるべきではないと考えられます。

14ページの下、最後になります。(4)契約文言の解釈権限を事業者のみに付与する条項、及び、法律若しくは契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性若しくはその権利・義務の内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項。

これにつきましても、実務において、決定権限を事業者に付与する条項は広く一般的に使用されております。たとえば、反社条項、あるいはマーケットプレイスにおいて「利用者が他の利用者に対する迷惑行為を行ったと事業者が判断した場合に、事業者が当該利用者との契約を解除できる」という規定におきまして、その「迷惑行為」をどう定義するかというときに、例えば「A、B、C、その他、他の利用者へ迷惑をかけるおそれがあると事業者が判断した場合」といった規定をすることは極めて一般的だと思います。

このような規定の仕方をするのは、他の利用者にとって様々な行為が迷惑となる可能性がある。予め全て明確に記載しておくことは困難であると思いますし、仮に具体的にしようとすると、かえって約款が長くなって非常に理解しにくくなるということもある。あるいは、事業者側の判断で速やか対処しなければ他の利用者に被害が出るおそれがある。こういった様々な理由、様々な事情があって、こういった規定が置かれております。これにつきましても、実務上、非常に必要でありますので、類型的に不当条項とされるべきではないと考えます。

以下、説明は省略いたします。どうも長々とありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。河野委員。

○河野委員 御説明ありがとうございました。

まず、今回の中間取りまとめに対して、今の御意見を伺っておりますと、全ての提案に対して反対するという御意見と伺いましたが、非常に残念に思いました。資料の1ページ目に書かれていましたが、これまで取引はほとんど問題なく行われていて、実務の実態を無視した改正が行われることが問題であるという趣旨のもとに、私たちが非常に重要な社会的な環境変化だと思っております「インターネットの普及」とか「高齢化の進展」に関しましても、肝心の立法事実が提示されていないということを理由に、今回の検討が当たっていないという御発言だったと伺いました。

肝心の立法事実が提示されていないという御発言ですけれども、それこそが事業者と消費者との間で行われている膨大な数の契約とか取引の持つ問題点であるとお考えにならないのでしょうか。消費者被害というのを的確に表現する単語がありまして、それは泣き寝入りという言葉です。私たち消費者は、問題の所在がわかっていても、それを訴えていく手段がないということなのですけれども、全体を通して御発言されました、利便性が優先するということや取引の安定性を欠くという理由で、今回の中間とりまとめに賛成していらっしゃらないのですけれども、新経済連盟さんとしては、消費者契約において消費者保護というのをどういうふうに置いていらっしゃるのかというのを伺いたいと思います。それが1点目の質問になります。

2点目は、4ページで御発言いただきました「勧誘」要件の在り方のところで、「勧誘」に「広告」を含めようとすることは妥当ではないということですが、この件では、適切な要件設定が必要だと私自身も感じているところです。例えばインターネット取引でも見受けられますが、最近、私が問題だと思っているのは、ステルスマーケティングというものがありまして、一見情報提供を装った形で、最終的にはある商品とかあるサービスの宣伝をするという形の広告形態があると思います。

特にインターネット経由でステルスマーケティングがありますと、ワンクリックですぐに契約に至ってしまいます。先ほどのような賃貸契約のように実物を見てというのではなくて、そのまま契約に至ってしまう場合がありますが、この「勧誘」に「広告」を含めるという検討の中で、ステルスマーケティングのようなものをどう考えていらっしゃるのかということを2点目の質問としたいと思います。

それから、3点目、8ページで、ここはお触れにならなかったと思いますが、合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型ということで、これは最初に申し上げましたように、人口の4分の3が65歳以上になってしまうという、今後の高齢化社会を見据えての私たちの大きな問題意識ということで、今回、この検討の俎上に上っていると自覚しております。こうした類型をあらかじめ追加しておくことというのは、実際は事業者にとっても取引上の予見性を高め、不要な契約を結ばないというメリットがあり、合理的な判断が困難な高齢者の方とか障害のある方を守り、またそのことが取引の安定性と経済活動の効率化に結びつくのではないかと私自身は思っていて、このことをぜひ入れていただきたいと考えているところです。

取引の現場においては、こういった配慮をすることはマイナスにしか働かないとお考えかどうかというのを伺いたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟関事務局長 御質問ありがとうございます。

まず、消費者保護について新経済連盟がどう考えるかということが最初の御質問だったと思いますが、消費者保護につきましては非常に重要な問題と、事業者としても真剣に取り組んでいくべき話だと思います。

本日、私が御説明した趣旨は、消費者保護というのはもちろん重要なのですけれども、一方で取引というのは広範囲に行われていて、ほとんどは通常どおり取引が行われている。非常にたくさんある取引の中で、消費者被害が生じるようなケースがもちろんあるわけですけれども、それをどう規律していくかというのは真剣に議論しなければいけなくて、かつ、そのときに、規律の仕方によっては、通常行われている消費者取引というものに非常に大きな悪影響が出るケースがあると考えております。したがいまして、それは消費者契約法を改正して規定すべきなのか、あるいは裁判で手当てできる話なのか、何か別の方法があるのかといったことも含めて検討すべきだと思います。

特に、立法事実と申し上げましたのは、法律を改正しないと問題の解決ができない。ほかに方法がないというケースで、かつ、そのような実態があるという状態が立法事実になるかということだと思います。今までの専門調査会の議論を伺っておりますと、立法のための根拠になるような立法事実が必ずしも十分議論されてきていないのではないかということで申し上げております。

それから、2番目の御質問についてですが、ステルスマーケティングをどう考えるかということにつきまして、ステルスマーケティングといいますか、先ほど4ページあたりで申し上げたのは、「勧誘」と「広告」、「広告」についても「勧誘」と同じように扱っていこうということで、そこはちょっとやり過ぎだろうと考えております。「広告」について、もし何らかの規制を新たに設けるということであれば、それは「広告」に対してどういう規制がいいのか、規律がいいのかということを「勧誘」とは別に議論すべきだと考えております。もちろん、先ほどの立法事実も含めて慎重に議論すべきだと思うのですが、そこは私の資料の中で主張させていただいていると理解いただければと思います。

それから、8ページの(3)につきましては、ここに書いておりますけれども、現行法においても公序良俗違反あるいは不法行為等の主張が可能だと思いますので、裁判において、事案によって、いろいろ異なる事情を考慮して判断されていると思います。

申し上げたかったのは、事業者側でどう捉えるかというと、そのリスクを回避するということが考えに出てくるということで、こういった合理的な判断ができない可能性がある消費者を類型化して、そのような類型に該当すると事業者が判断した場合は、リスク回避のために当該消費者との契約は拒否する、あるいはサービス提供をしないといった状況が出るのではないかと考えています。金融取引のような特定の分野については、それに近い考え方があるのかもしれないですが、消費者契約法は消費者契約全般に幅広く適用されるものですので、そこは慎重に考えるべきだと考えております。

○新経済連盟片岡事務局 すみません、私のほうからも補足をさせていただきます。

まず、1点目ですけれども、利便性が全てに優先するということは全く考えておりません。そのようなことも申し上げておりません。我々が気にしているのは、問題の所在がどこにあるのかが明確に浮き彫りになっているのか。そして、それに対する解決法として消費者契約法の改正が最適なものなのか。それに、検討するに当たって、皆さんが考えていらっしゃるのは、消費者相談などで接している悪質な事例が多いと思うのですけれども、例えば普通にお店で物を買うという一般的な行為に対して、どれぐらい影響があるのか。その辺が十分に議論されていないのではないかということを一番懸念に思っていまして、全般的に要件設定がまだまだ緩いなという気がしています。

ですので、適切な問題の所在の把握をして、そこに対処するというところまで、まだ至っていないのではないかという考えがあります。消費者保護は大切ですが、一方でお客様が普通に買い物されているところへ、どうしたら不具合が出ないかというところをもう少し慎重に考える必要があると思っています。

それから、「勧誘」要件のあり方のところでステルスマーケティングの話がありましたけれども、最近問題になっている広告形態の一つなのであれば、広告にはいろいろな形態がありますので、どういう形態について、どういう問題が出ていて、それはどういう解決をするべきなのかということを、広告についてしっかり考える必要があります。また、欺瞞的な広告なのか、そうではないのかということによって、契約の取消まで効果を与えていいのかをしっかり考える必要があると思っています。

「合理的判断ができないことを利用して」の点は、この意見書に書いてあるとおりの懸念がございまして、事業者としてはやり過ぎてしまう場合も出てくるのではないか。逆に「合理的な判断ができない」と外形的に判断されてしまう人が困ってしまうのではないかというところが懸念です。どのようにすれば適切に対処できるのかというところをもう少し慎重に考えるべきではないかと考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに。山本健司委員。

○山本(健)委員 詳細な御意見をいただきまして、ありがとうございました。私からは4点、質問させていただきたいと思います。

まず1つは、資料3の3ページから5ページの「『勧誘』要件の在り方」の部分の御意見内容に関する質問です。具体的な事例を踏まえた議論をすべきであるという御意見を頂戴しておりますので、具体的な事例で御質問をさせていただきたいと思います。3つの事例を例に挙げます。

事例1は、家電量販店の店頭に来た消費者が、携帯音楽プレーヤーを、実際には1,000曲しか入らないのに1万曲入りますと店員から聞いて、1万曲入る商品だと誤認して当該商品を買ったという事例です。

事例2は、家電量販店の店頭に来た消費者が、携帯音楽プレーヤーを、実際には1,000曲しか入らないのに1万曲入りますと商品の陳列台に掲示された商品の説明書きに書いてあったので、1万曲入る商品だと誤認して当該商品を買ったという事例です。

事例3は、家電量販店の商品販売のウエブサイトを見た消費者が、携帯音楽プレーヤーを、実際には1,000曲しか入らないのに1万曲入りますとウエブサイトにおける商品の説明書きに書いてあったので、1万曲入る商品だと誤認して当該商品を買ったという事例です。

事例1について誤認取消しできることは、現行の消費者契約法でも当然かと思いますが、本日の新経連さんの御意見は、事例2と事例3については誤認取消しできなくてもよいのだという御意見内容なのでしょうか。もしそうであれば、3つの事例は事業者の帰責性も消費者の要保護性もほとんど同じであるように思うのですが、どのような実質的な理由から結論を分けるべきであるとお考えなのでしょうか。御意見内容の詳細についてお教えいただけませんでしょうか。それが1点目でございます。

2点目は、7ページの5の(1)「困惑類型の追加」の部分です。「威迫」は概念が曖昧という御懸念を頂戴しております。しかし、「威迫」という言葉は特商法でも使用されている字句で、特に適用範囲がわからないといった実務上の問題も生じていないと聞いておりますので、この御懸念は無用ないし過剰ではないかと思うのですが、「威迫」という字句の使用について、特商法ではよくて、消費者契約法ではだめだという具体的な理由があるのでしたら、お教えいただけませんでしょうか。それが2点目でございます。

3点目は、8ページの5の(3)のいわゆるつけ込み型不当勧誘の部分です。御意見の要旨は、合理的な判断を行うことができるかどうかは個別事案によって結論が異なる、適用範囲の外縁が不明確である、事業者に萎縮効果や過剰反応を招くおそれがあるといった御懸念のもと、現行法どおり公序良俗や不法行為に委ねるべきであるという御意見内容と理解させていただきました。

しかし、適用範囲の外縁が不明確であるということにおいては、公序良俗規定や不法行為の規定のほうがより要件が抽象的でわかりにくいのではないか、つけ込み型不当勧誘規定の方が公序良俗等よりも要件が明確ではないかと思うのですが、どうしてより抽象度の高い不法行為、公序良俗に委ねておいたほうが良いという論理になるのでしょうか。その点についてお教えいただけませんでしょうか。これが3点目です。

4点目は、10ページ、第4の1.(1)の「人身障害の軽過失一部免除条項」の部分です。最後の部分で「生命に生じる損害であっても一部免責とすることに合理的理由が存在するケースが存在すると思われることから妥当ではない。実務実態を十分に調査すべきである。」という御意見を頂戴しております。「実務実態を十分に調査すべきである」という御意見については、もっともなことであると思います。今回の事業者ヒアリングは、そのために行われているものと理解しております。そこで、新経連さんに加盟されている企業で、生命に生じる損害であっても一部免責とすることに合理的ケースが存在すると思われる具体的事例は存在するのでしょうか。あるとすれば、どのような具体的な事例なのでしょうか。

以上、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟片岡事務局 まず、1点目ですけれども、家電量販店の店頭において、店員がこれは1万曲入りますというのをあえて説明したというところと、2番目の説明書きに入っていた場合、それからウエブサイトに書いてあった場合の態様が必ずしも同じなのかというところに疑問を持っております。

例えば、まず帰責性のところですね。確かに現行法でも帰責性は要らないという話がありますけれども、「勧誘」において、そこを説明員があえて言う。そして、これが後で問題になるということは消費者の記憶に残っているということですので、相当印象に残っていたのだと思うのですね。それを理由に買った場合と、説明書きというのは、あえてそこを取り出して大々的に書いてあるものなのか、それとも説明書きの一部に書いてあって、誤植でゼロが一つふえてしまっていたのか。それは説明書きでもウエブサイトでもそうなのですけれども、いろいろな態様が広告の場合、あると思います。ですので、その態様によって取消しまで認めるべきなのかというところは、慎重に考えるべきであると思っています。

不実告知だったらいいのではないかということをよくおっしゃるのですけれども、専門調査会で今まであまり具体例が出てきていないので、皆さんが想定している広告が統一的なのかわかりませんけれども、想定されているのはごく一部の態様なのではないかという気がしていて、一般のいろいろな広告を念頭とし、議論されているのかというところに疑問を持っております。

なお、先ほども少しありましたけれども、では、どういう要件のあり方がいいのだろうということで、私のほうでも海外の事例などを探してみたのですけれども、海外は欺瞞的な広告について損害賠償を認めるものはあっても、取消を認めているものは、私が探す限りではなかったので、ここは具体的にどうしたら要件が設定できるのかは非常に難しいなと思いました。今の中間取りまとめのままでは広過ぎるという印象を持っております。

「威迫」についてですけれども、特商法にも確かに規定があります。ただし、特商法の場合は場面が限定されているのではないかと思っています。これがほかの、特に勧誘概念の拡張などがされたときにどうなるのかというところについても、検討しなければいけないのではないかと思っています。場面が明確になって、予見可能性があるところまで要件が設定されているのかを慎重に考えていただきたいと思っております。

それから、生命・身体の実務実態ですが、ここにも一部挙げられていますけれども、例えばファウルボールの当たりどころが悪かった場合に生命に損害が及ぶ場合もあると思うのですけれども、すみません、今、この場で具体的な条項をお示しすることができないのですが、必要であれば改めて会員企業に確認して出したいと思います。ここに書いているようなファウルボールの話や被災地等での移送サービス等があるのではないかと思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 3つ目の質問として、つけ込み型の場合について、公序良俗、不法行為のほうが外縁が不明確であるけれども、それでよいということなのかという御質問がありました。

○新経済連盟片岡事務局 まず、公序良俗を使ってということは、総合的にいろいろな事情を勘案して判断されることが裁判上、多いと考えておりまして、抽象的ということであればそうかもしれないのですけれども、いろいろな事情をもとに判断されるという、ある意味司法への信頼といったところがあります。それをいろいろなものも含み得る状態で要件設定してしまうことによって、想定していないものが入り込んでしまうことが実務上、起こってしまうという懸念を持っています。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに。丸山委員、続いて後藤委員。

○丸山委員 2点ほど教えていただければと思います。

まずは、6ページになりますけれども、不利益事実の不告知に関しまして、真ん中当たりに「不告知型」なる類型を設けることは、告知すべき情報について明確性が確保されていないのではないかという御懸念が示されているところです。

けれども、中間取りまとめを見ていただければわかりますように、現在、不告知型で問題とするのは重要事項に関する情報の提供でございまして、みずから事業者が提供している商品の内容とか取引条件、消費者の判断に通常影響を及ぼすようなものについての不告知を問題としていて、かつ事業者の主観的な要件を故意あるいは重過失といったものを問題としていくべきではないかといった議論がされていたところなのですが、それでも明確性というものが確保できていないという評価になるのかというのが1点目の質問でございます。

2点目の質問ですけれども、12ページの法律上の解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項というところの最後に、キャンセルとか返品は一切お断りしますみたいな条項でも、合理的に解釈すれば、事業者の債務不履行や瑕疵担保責任は対応する趣旨ということが多いだろうといったコメントがあるのですけれども、必ずしも一般的には共有されておりませんし、誤解してしまう消費者も多いと思います。事業者に債務不履行とか契約違反がある場合の法定解除権を放棄させるものは、一律無効とするという形で明確化するということはあり得るとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。この点、教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟片岡事務局 まず、1点目の不利益事実の不告知のところですけれども、これは意見書で言いますと、2ページ目の情報提供義務のところと密接にかかわるところでして、先行行為要件をなくしてしまうという考え方があると、結局は提供しなければいけない情報があって、それを提供しなければ取消ということになってしまうと思います。そこについて、必ずしも消費者契約一般、全てにおいて提供しなければいけない情報が明確かというと、明確でないと考えております。もし、こういった情報を提供すべきということを考えるのであれば、それぞれの業界、商品の特性等に応じて考えていかなければ、結局、実務で混乱が起こるだけだと思っています。

また、広告について勧誘と同様の規制を設けるとした場合には、さまざまな事業者が懸念を主張しているとおり、どのような広告にどこまで書かなければいけないのかが問題になってきますので、今の段階で明確性が担保されているとは考えておりません。

それから、2番目の法律上の解除権・解約権のところですが、明確化すればいいのかという点ですが、明確化して、それで適切に範囲が狭まるのであればあり得ると思いますけれども、現在、消費者契約法でも既に債務不履行の場合の責任全部免除はだめという規定がりますので、それとの違いが何かを明確にする必要があると思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 立法事実の提示ということについてお尋ねしたいのですけれども、資料3の御意見の中では、肝心の立法事実が提示されていない、ということをお書きになっていまして、読み方によると思うのですが、文字どおり受け取るとゼロ評価みたいな印象があります。一方、先ほどの関様の御意見の中で、十分な議論がされていないという御発言があり、それから片岡様の御意見の中で、問題の所在がどこにあるか示されていないという御発言があって、一定の評価はいただいているようにもお聞きしました。

私どもとしまして、この専門調査会の前の段階で、中間取りまとめの2ページの注1にあるのですけれども、消費者委員会で「『消費者契約法に関する調査作業チーム』論点整理の報告」というものと、消費者庁の「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」というものが既に出ておりまして、特にこの専門調査会の中では、消費者庁の運用状況に関する検討会報告書で整理されている事案を踏まえて、種々議論してきたという経緯があります。

そういう経緯を踏まえて、これは私の個人的な意見ですけれども、立法事実の検討というのは、それなりに及第点をいただけるのではないかという認識を持っていたのですけれども、ここの資料3で示していただいているような、肝心の立法事実が提示されていないという御評価というのは、今この時点で少し言葉を補って説明していただくとすると、文字どおりこういうことなのでしょうか、あるいは十分には提示されていないというぐらいに受け取ってよろしいのでしょうか。その辺、何かお感じのところがありましたら御教示いただきたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟片岡事務局 立法事実というものをどう捉えるかというのがまずありまして、裁判例をいろいろ示した前回の検討会でもそうだったのですけれども、裁判例の存在、イコール、立法事実かというと、必ずしもそうではないと思っています。裁判例があって、それを消費者契約一般に広げなければいけない理由があるのかどうか、そこをしっかりと検討した上で、消費者契約法で手当てすべきであると示されるかどうかだと思いますが、我々が考える限り、これまでの検討ではそこがまだしっかりと示されていない、消費者契約法の改正が必要だというところまで示す立法事実がないと考えているということです。

裁判例や相談事例が挙がってきていることについては認識しておりますけれども、それらについて、どういう解決方法が今あって、それがどのように足りていなくて、そこに対してどうすべきなのかというところをもう少し丁寧に議論すべきではないかと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに。井田委員。

○井田委員 御説明ありがとうございます。

私のほうからは、15ページのサルベージ条項に関して御質問を2つほどさせていただきたいと思います。

御意見の趣旨は、恐らく契約自由の原則に照らせば、サルベージ条項というのは確認規定である。だから、問題はないのだということを書かれている一方で、この本文中には、万一に備えてサルベージ条項を設けるとおっしゃるのですけれども、この万一ということの具体的な懸念事項、どういうことを懸念されてサルベージ条項をあえて書くのか。確認規定というのは、本来、書いても書かなくても法的効果は同じだという意味で理解できますので、具体的な懸念条項があれば、まず教えていただきたいというのが1点です。

2点目、少し長くなって申しわけないですが、団体訴訟性との関係で少しお伺いしたいのですけれども、通常、ある契約条項が違法か無効かどうかということを考えるに当たって、サルベージ条項の存在というのは基本的には全く考慮せずに、当該条項の違法性というものを判断するということになると思いますので、差止めの判決の結論としては、ある条項を使用するなと。一部使用するなというのではなくて、通常はその条項を全部使用するなという判決になると思うのですが、例えば裁判例の中では、違約金条項が平均的損害を超えるか超えないかというのが問題になった事例について、特定の損害項目については、それは平均的損害の中に含まれるということを示した例もあります。

ただし、全体的には平均的損害を超えるので、その条項は無効だと判断されるわけですけれども、今の私が述べたような事例において、サルベージ条項を利用する事業者さんは、裁判例ではこの損害項目は認められたから、今ある違約金条項というのを限定的に解釈してまで使うということなのか、無効だと判断されたので、それは例えば修正するということをお考えなのか、具体的にサルベージ条項をどう使うのがわかりにくくて、具体的にどういうふうに利用されるのかを、もし御検討されているのであれば御回答いただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟片岡事務局 まず1点目の、万一の懸念事項はというところですけれども、実はこれもいろいろ実務状況を調べてみているのですけれども、これがサルベージ条項だというものがぱっと見つかるような状況にはありません。ただ、あり得るとした場合、海外に向けて事業を行っている場合に、その条項に万一の法改正を考えたサルベージ条項が設けられることはあり得るのではないかと考えています。例えば海外の法改正によって、一部の条項が無効と判断されてしまうことがあり得るかもしれないときに、もし法律が変わっていれば、それに従って判断するという確認のために置いておくということは考えられるのではないかと思っています。

2番目ですけれども、これも同じような感じです。実際、どういうふうに使っているかというと、なかなか見つかりません。ただし、あり得るとすれば、先ほど言ったような、幅広くサービスを世界的に行っている場合に、そういったものが入る可能性があるのではないかと思いました。あとは、この意見書にも書いてありますけれども、解約条項について、書き方として、強行法規によって認められる解除・解約以外の解約は認めませんという書き方をもしした場合、内容が不当と言えるかどうか、微妙なものであっても、サルベージ条項として無効になってしまう可能性があるのではないかという気はしています。

お答えになっていないかもしれないですが、サルベージ条項自体の実例を見つけるのが難しかったということもありまして、あまり具体的な意見が申し上げられない状況ではあります。逆に言うと、サルベージ条項によってどういった問題が起こっているのかなというところも気になるところであります。

○山本(敬)座長 それでは、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 6ページから7ページにかけての重要事項の拡張についての御意見について、まず御質問したいのですが、7ページの上のほうです。当該消費者が契約締結を必要とする事情に関する事項を重要事項だとするのには反対だということで、これは消費者が勝手に内心で思っていること、その消費者にとっては重要だけれども、事業者にとってはおよそわかり得ない動機の部分を理由にして、取り消されたら大変だと。

これは、全くおっしゃるとおりだと思うのですが、そういう動機づけをしたのが当該事業者である場合。当該事業者が誤ったことを言って、場合によったらうそをついて、動機の面で消費者に誤解を与えた。その結果、消費者がこの契約の締結の必要性あるいは有利性を考えて契約したという場合に、なお、取り消されるべきではない。動機の点でだまされるような消費者は、そもそも保護すべきではないというお立場なのかどうかというところです。故意にそれをやれば、恐らく詐欺ということで取り消せるのでしょうけれども、故意ではない場合や、故意の立証ができないような場合で、しかし、事業者が明らかに誤った動機を与える言動をしたという場合について、どうお考えなのかということが1つ。

その上で、その次の8ページの第三者による不当勧誘の問題がこれにつながってまいります。すなわち当該事業者が誤った動機づけを行った場合ではない場合、消費者が勝手に思い間違いをしていた場合、あるいはブログに書いてあることを信じて動機づけを行った場合です。これも当該事業者との交渉において、契約締結段階において、自分の動機をはっきりと言わなければ、事業者にとっては全くわからないですから、最初の問題に戻って、そういう内心の動機がどう形成されたかの部分について事業者に責任を負わせるというのは、恐らく不当だろうと思われます。

ただし、こういうことだから、私はこの契約をするのですということを、契約交渉の段階で、店頭で、事務所で、あるいは勧誘に来られた場で、自分の動機をきちんと説明しているような場合に、それはもちろん当該事業者がそういう方向に持っていったのではないということが大前提ですが、あなたの認識は間違いですよということを言わないで、その消費者の誤解のままに契約を締結した場合について、現行法では保護されませんけれども、消費者を保護する必要があるかどうかという点です。

必要があるかという言い方はちょっと不適切かもしれないですけれども、事業者サイドから見て、そういう場合に保護されるべきだと判断されるか、それとも、そこは消費者が勝手に誤解しているのであって、その誤解していることを幾ら事業者がわかっていても、そこまで指摘してあげる必要はないのだという御判断をされているのか。あるいは、商道徳上はそういう誤解を解いてあげるのが適切だけれども、法律上、取消権を与えるというところまでの保護はすべきではないという御判断なのかという、この2点について御意見をお聞かせください。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟片岡事務局 まず、重要事項について、当該事業者が誤ったことを言ったことによって動機が形成された場合ということですが、対象となる動機という部分がどの程度限定されているかということにもつながってくると思いまして、それが今の「当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」だけで、適切な範囲におさまるのかというところに懸念があります。

「当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」が極めて限定されたもの、悪質と評価できるものに絞られるのであれば、そのような場合に取消しを認めるというのは、考えとしてはありだと思います。

それから、2番目の第三者による不当勧誘のところですが、取消権というものが非常に大きいというのは大きな懸念の1つです。事業者の帰責性や重要事項の実際の中身、具体的にどういうものが入ってくるのかというものを考えた上で、取消しを認めるべきものに限定する必要があると思っています。

前にほかの事業者の方もヒアリングでお話をされていましたけれども、目の前でお友達同士で話していたときに、どこまで訂正すべきかというお話がありました。それは、恐らく重要事項がどこまで入るのかというところにもかかわってくると思うのですが、お話を遮って訂正しなければ取消しをされてしまうというものは、どこまでなのかというのを具体的に検討する必要があるのではないかと思っています。今までの話で、すんなり納得できるような要件になっていないなというのが印象です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにはよろしいですか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 大変恐縮ですけれども、最初のころに、専門調査会の委員構成がアンバランスであるということを言われたものですから、委員長として一言言っておかなければいけないかなと思ったもので申し上げます。

委員構成としては、消費者の問題についての専門家にお願いして、事業者の利害に関しても十分な知見を持っている方をお願いしているつもりでございます。足りない部分は、こうやってヒアリングで補っていこうということで、一時的にやっても十分な実務実態が反映されないとおっしゃるかもしれませんけれども、できるだけそういう情報について真摯に耳を傾けたいという趣旨でございますので、委員構成を見直すべきであるという御意見については、御勘弁いただければと思います。

もう一つ、広告の件についてですけれども、諸外国では広告と勧誘とを一緒にしているような立法例はないのではないかという御指摘をされておりました。これは、ございます。例えばブラジル消費者法は、広告を申し込みとみなすという規定を入れています。つまり、広告に書いたものは、一方の申し込みの意思表示であると確定しているみなし規定があります。EUでは、広告に対する規制というのは、ここ数年で大変強くなっているということもございます。むしろ今の時代では、通常の申し込みとか勧誘と言われるものと広告との間が非常に曖昧な関係に立っているというのが実情です。

先ほどステルスマーケティングの話もございましたけれども、広告のように見えるけれども、実は特定取引に対する大変緊密な関係を持った勧誘行為に近いことになっているという事実があり、その部分についても、消費者契約法として対応すべきではないかという問題意識がございます。

実は、内閣府の大臣官房政府広報室が、このたび消費者行政の推進に関する世論調査というのをやっているものがございます。近々公表予定と聞いておりますので、もしよかったら参考にしていただければいいと思います。広告・宣伝のみで商品購入やサービスの利用をした経験があるという人は相当程度ございます。さらに、広告の際の表示内容と、実際に買った商品・サービス内容との違いを意識したことがあるというのが半数です。さらに、そういう問題が起きたときにどう対応しましたかというのについて、何もしなかったという人が相当以上にのぼります。

こういう実態があるということを前提にして考えていくと、広告に対する不当な表示があった場合に、民事効果を全く考えないということでいいのだろうかという、点について、もう少し御意見があればお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○新経済連盟片岡事務局 まず1点目、委員構成についてですけれども、中間取りまとめの前に、実務の意見を聞く機会を設けていただきたかったというのが、正直思うところであります。

2点目、広告は申し込みであるとするブラジルの例をご紹介いただきましたけれども、広告を契約の上でどのようにみなすかということと、勧誘と全く同じであるとして規定するというのは、また別の問題であると考えています。もし可能であれば、今後、要件設定などを検討するに当たって、海外の事例などを細かく紹介していただければ、より理解が進むのではないかなと思っています。私が調べる限りでは、広告に関しては、広告について特別な規定を設けている場合が多いのではないかなと思っています。

それから、世論調査のお話がありましたけれども、「広告を見て購入しました」。これはあると思います。皆さん、この1カ月で販売員と会話したことがありますかと聞いたら、恐らくほとんどの人がないですと答えると思います。ですので、我々が申し上げているのは、勧誘と広告とは別に考えるべきであるし、広告にはいろいろな形態があるので、どのような形態について取消まで認めるべきなのかというところを、ちゃんと議論すべきだと申し上げております。勧誘行為に近くなっているというお話もありましたけれども、違うものです。よりいろいろなものが入ってきますので、具体的にどのようなものに対する取消を認めるべきなのかというところを検討すべきではないかと思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。私の不手際もありまして、長時間に及んでしまいました。

それでは、新経済連盟へのヒアリングは、このあたりにさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(新経済連盟退席、全日本広告連盟・日本アドバタイザーズ協会・日本インタラクティブ広告協会・日本広告業協会着席)

(4)広告・報道関係団体からのヒアリング

○山本(敬)座長 続いて、広告関係団体からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、全日本広告連盟筆頭執行理事の内田公至様、日本アドバタイザーズ協会専務理事の藤川達夫様、日本インタラクティブ広告協会専務理事の勝野正博様、日本広告業協会法務委員会委員長の永江禎様、同協会個人情報ワーキンググループメンバーの長谷川雅典様に御出席いただいております。お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございます。そしてまた、長時間お待ちいただきまして、大変申しわけありません。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○日本アドバタイザーズ協会藤川専務理事 日本アドバタイザーズ協会の藤川でございます。このような機会を頂戴いたしまして、まずもって御礼申し上げたいと思います。

お手元にお配りさせていただいております資料4-1からずらっと4-9までございます。今日は、4-1から4-8まで意見書という形で出させていただきましたものを取りまとめた形で、4-9という書類で御説明さしあげたいと思っております。ちなみに、私も広告を見ただけで買うタイプです。数百円の単価であれば、広告を視ただけで購入する方は多いと思います。

まず、お手元の横長の資料でございます。2ページ目、3ページ目は、おのおの意見書を出させていただきました団体がどのような団体であるかというところを記載してございます。これは、後ほど御確認いただければと考えております。

資料をめくっていただきまして、右肩に4とございます。4ページ目をごらんいただきたいと思います。

まず、総論といたしまして、私ども広告関連・報道関連8団体でございますけれども、今回の中間取りまとめという流れの中で行われている消費者契約法の見直し自体に反対でございます。理由は、以下記載してございます3つの疑問点、及び多大なる悪影響の可能性ということによっております。

以下、順番に1から4までを御説明さしあげたいと思いますが、だんだん専門家的な事項がふえてまいりますので、1、2を私がやらせていただいて、3、4は永江さんに選手交代という形にさせていただきたいと思っております。

1枚めくって5ページ目でございます。

まず、ここでは見直しの背景となる社会経済状況の評価への疑問点でございます。中間取りまとめには、本見直しの背景となっております社会経済状況の変化として、情報通信技術の発達と高齢化という2点を挙げられていらっしゃいます。

まず、「情報通信技術の発達」の観点でございますけれども、本見直しにおかれましては、情報通信技術の発達によって取引が多様化・複雑化、情報の量も増加、あるいは事業者に多大な情報が集まってという記載もあったかと思いますが、そのような状況の中で、消費者の皆様がトラブルに巻き込まれる場合があるという問題意識に立っていらっしゃると感じております。ここには、大きな情報を持っておる事業者が消費者の皆様をトラブルに巻き込むという、二律背反といいますか、対立的なモデルが構想されているように感じられます。

しかしながら、まず私ども事業者の点を申しますと、これはもう皆様、既によく御存じのとおりでございますけれども、関連法規、公正競争規約、業界団体の自主規約などに照らし合わせまして、検討した上で、それらをクリアしたもののみを世の中に広告という形で出して、あるいは情報という形で出しているということでございます。ここで申し上げたいのは、決してトラブルに巻き込むつもりで事業をやっているということではないということでございます。

一方、情報通信技術の発展というものを消費者の皆様の側からの視点で考えてみたらどうかといこともございます。ソーシャルネットワーク等々ございます。私ども広告業界では、消費者の皆様が情報発信の手段を得たと評価しておりますけれども、情報発信手段の発展という側面から捉え直せば、消費者の皆様は事業者を含む多くの情報源から必要な情報を選んで情報収集し、御自分なりに評価し、それを発信する、共有するという形で、ある意味悪質な事業者の情報等も共有されるでしょう。自衛対抗手段も備えられてきているということが申し上げられるのではないでしょうか。これらのことからすれば、情報通信技術の発達というものを一律的な事業者対消費者という対立モデルで捉えるのは、妥当ではないと考えております。

次に、「高齢化の進展」でございます。確かに高齢者の皆様が一部の悪徳な事業者の被害に遭うということは、予防されなければならない。これに疑いの余地はございません。しかしながら、高齢者の皆様を当事者とする消費者契約は、あくまでも消費者契約が対象とする契約全体の一部分でございます。この予防の手段を、全ての事業者と全ての消費者の間の取引を一律的に規律する消費者契約法ということに規定することが、果たして今、起こっていることの予防という目的との関係で適切な手段と言えるのかというところが疑問点でございます。

次のページ、お願いいたします。6ページ目でございます。

これは、先ほど川上委員長から、ご説明もございましたが、私どもといたしましては、実は検討のプロセスというものに疑問を抱いております。消費者と事業者の双方に大きな影響を与える消費者契約法の見直しに当たっては、消費者と事業者の両当事者の立場から、慎重かつ丁寧な審議が確保されなければ、バランスのとれた、双方が納得できる結論にはなりません。しかし、現在の消費者契約法専門調査会の構成を拝見いたしますと、事業者の側と言える委員の方は、私の知るところでは14名中3名様ぐらいかなと思っております。人数が少ないということではないですね。いろいろな多角的な御意見を、同じような数で闘わせるべきであろうということを感じました。そういった状況の中で消費者契約法というものの取りまとめを行っていることに、疑問を持たざるを得ません。

また、専門家の御指摘によりますと、消費者契約法は民法の特別法であるということでございます。本来は、一般法である民法の国会での審議過程を受けて、消費者契約法の見直しの中身を議論すべきではないかとも考えております。

以上が最初の2つでございます。以下につきましては、永江委員長からお願いします。

○日本広告業協会永江法務委員会委員長 日本広告業協会の法務委員会の委員長であります永江でございます。

反対理由の3つ目でございますが、先ほどもありました立法事実の存在についての疑問でございます。我々は、本見直しにおいて挙げられている事例が、果たして立法事実足り得るかについて、3点から疑問がございます。

1点目ですが、各事例がそもそも適切な事例なのかどうか、ということでございます。

2点目でございますが、各事例が一般的な事実なのか、ということでございます。特殊な事案に対応するために、全てのB to C契約に影響する消費者契約法を改正することは、目的との関係で相当であるとは必ずしも言えないと考えます。

3点目でございますが、現行法では適切な処理を行うことができないのか、ということでございます。つまり、立法を必要とする事実があるのかということでございます。

例えば、「『勧誘』要件の在り方」において挙げられた各事例も、立法事実足り得ないと考えています。中間取りまとめによりますと、勧誘要件の見直しは、インターネット取引の普及によって消費者が広告等を見て契約を締結することも多くなり、これによりトラブルに至った事例も見られることを背景としているようです。加えて、広告等が意思形成に直接的に影響を与えることがあるという実情を踏まえたものであるとされています。そこで、我々としては、第8回専門調査会資料の「個別論点の検討(2)」に挙げられた各事例が、広告等が消費者の意思形成に直接的に影響を与えたものなのか、ということについて検討いたしました。

9つの事例のうち5つは相談事例で、一方当事者からの主張しか述べられていません。また、これらの相談事例については、現行法において解決が可能だったかどうかが明らかではありません。したがって、裁判官が判断されました事例1-5、事例1-6、事例1-7、事例1-9について検討させていただきました。しかし、中間取りまとめで広告等の記載や説明をもって取消しを認めた裁判例とされた事例1-9を含め、いずれも事業者の従業員等が消費者に対して対面での説明行為を行っており、法律や現行法の解釈を変えなくても、勧誘と認められるような事例でございます。広告等のみが消費者の意思形成に直接的に影響を与えた事例ではございませんので、適切な事例が選択されたとは言いがたいと考えます。また、いずれも消費者勝訴の判決が出ており、立法の必要性も認められないと考えます。

次のページでございますが、反対理由の最後の4つ目、事業者への多大な悪影響でございます。仮に中間取りまとめに沿って改正された場合には、消費者が事業者に対して法的手段を講じることができる範囲が掛け算的に拡大します。個別の見直しの妥当性という各論議論だけでは、事業者側の将来におけるリスクの把握には足りません。例えば、不利益事実の不告知における不告知型で故意要件が削除されれば取消しうる場合が拡大し、重要事項が拡大されても取消し得る場合が拡大します。広告に不当勧誘規制が及ぶようになれば、取消しの対象となる行為が拡大しますし、取消しができなかったとしても、情報提供義務違反に基づき損害賠償請求がされることもあり得ると考えます。

○日本広告業協会長谷川個人情報ワーキンググループメンバー 日本広告業協会個人情報ワーキンググループの長谷川と申します。各論について、少しかいつまんで、意見を申し上げさせていただきます。

まず、各論の1、「勧誘」要件の見直しでございます。我々は、「広告等」を不当勧誘規制の対象とし得るような「勧誘」要件の見直しには反対いたします。

まず、「広告」と「勧誘」は、そもそも全く異なることだからでございます。「広告」とは何か、「勧誘」とはどのように違うのか、といったことにつきましては、資料2にまとめてございますので、御参照いただければと思います。

また、「広告」には次のような特徴もございます。次のページに不実告知の規制との関係で記載してございますけれども、比喩的な表現手法とかシズル感醸成のための表現をもって、実際に裁判において取消しの判断がなされるかどうかということの手前の問題として、消費者から取消しの主張をされるということを危惧しております。

また、例えば校正ミス等で間違えた情報を記載した広告を掲載したような場合において、事後にそれを訂正したとしても、「もとの広告しか見ていない」という主張に基づいて取消しを求められるということも恐れております。故意なくやってしまって、事後に自主的にリカバリーしたような場合にも訴訟リスクを負うというのは、事業者にとって非常に酷ではないかと考えております。最終的に裁判所が取消しを認めなかったとしても、訴えられること自体がレピュテーションを含めたリスクであることも申し添えたいと思います。

続きまして、理由の2つ目でございます。見直しの方向性が不適切だと言えると思います。不当勧誘規制の規律の適用範囲を「事業者が、当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合」というところから導かれる範囲にするべく検討されていると理解しております。適用範囲を「広告等」一般に拡大するつもりはないという記載もあったかと思うのですが、広告が顧客を誘致する手段である以上、「取引を誘引する目的をもってする行為」ということでは、広告等一般が適用範囲に含まれてしまうと消費者に主張される可能性が高いのではないかと考えております。

続きまして、理由の3つ目です。取消しという重大な効果をもたらす以上、その範囲に関しては明確かつ客観的であるべきであるわけですが、「特定の取引を誘引する目的をもってする行為」への該当性につきましては、行為態様とか消費者への働きかけの程度、広告の記載事項等を総合考慮する実質的判断によらざるを得ないのではないかと考えます。したがいまして、明確かつ客観的な判断基準を設けることはできないと考えております。そうである以上、先ほど申し上げました理由2とあわせて、広告一般につき、不当勧誘規制に基づく取消し主張がなされるという危惧がぬぐい去れません。

理由4につきましては、立法事実の存在に関して疑問である旨は、既に申し上げております。

2枚めくっていただきまして、各論2、断定的判断の提供でございます。断定的判断の提供の対象の拡大についての見直しには、反対いたします。

これに関しても、立法事実の存在については疑念を抱いております。また、財産上の利益に影響しない事項に拡大された場合、故意の要件がないこともあるので、広告における言い切り表現についてまで、消費者から取消しの主張がなされるおそれがあると考えております。

続きまして、各論の3、不利益事実の不告知でございます。不利益事実の不告知を、不告知型と不実告知型に分けて、不告知型については先行要件を不要とすること、不実告知型については故意要件を削除すること、このいずれにも反対いたします。いずれも立法事実の存在について強い疑念を抱いております。

また、後ほど御説明させていただきますけれども、不告知型につきましては、特に広告実務への多大な影響が想定されると考えます。

14ページ目でございます。不告知型における広告実務への悪影響について御説明したいと思います。

広告スペースは非常に限定されております。スペースに関しましては、資料4にまとめさせていただいております。このような有限の広告スペースにおいて、デメリットも含めた情報の伝達を完遂しなければいけないというのは、事実上不可能でございます。にもかかわらず、伝達を完遂できなかったことをもって契約が取消される、もしくは取消しの主張がなされる、訴訟が提起される、といったことを危惧しております。これにつきまして、広告以外の媒体で情報提供ができるのであるから、広告に全てを書かなければいけないとの懸念は当てはまらないという御意見もあるかと思っております。

しかし、消費者契約は非常に多岐にわたります。例えば自動販売機による販売やスーパーでの買い物などを御想像いただければおわかりいただけると思いますが、日常の大半の取引は事業者側から、個々の消費者に対して追加説明をするような場面はなく行われております。仮に自社のウエブサイトに詳細な情報提供をしたところで、消費者から、「ちゃんと読んでいない」「サイトなど見ていない」と言われた際に、事業者側として反論に窮するところでございます。

我々は、訴訟リスクを回避するために、事業者として非常に限定された広告スペースに、ディスクレーマーに近いような情報を詰め込んだような広告を実施しなければならなくなることを非常に懸念してございます。具体例としては、資料のほうにまとめてございます。この懸念というのは、重要事項が拡大されたような場合においては、さらに大きくなると言わざるを得ないと思っております。

各論4、情報提供義務違反でございます。情報提供義務を法的義務とすることに反対いたします。

当該情報が消費者の契約締結の意思決定に重要な影響を及ぼすか否かという要件では曖昧にすぎると考えております。したがって、事業者側が該当するか否かを判断することが極めて難しいと考えております。にもかかわらず、情報提供義務違反について事業者が損害賠償責任を負うということですと、不利益事実の不告知の不告知型と同様に、限定された広告スペースにおいて情報を発信している現在の広告実務においては、極めて厳しい制約が課されることになると考えております。

各論の5の重要事項でございます。重要事項の拡大にも反対いたします。

「重要事項」とは、我々としては、民法の詐欺取消しに、さらに新たに消費者に取消権を付与するといったこととのバランスで、取消しができる行為の対象を限定するために設けられた要件だと理解しております。そうであるとすると、限定するために設けられた要件を拡大するためには、立法事実の存在を含めて、極めて慎重に検討がなされなければならないと考えております。しかし、見直しにおいて挙げられている事例に関しては、いずれも現行法の重要事実に該当すると裁判所が判断したものですとか、民法や特商法で解決できると考えられるものであると考えております。これをもって消費者契約法全体を改正しなければならないという必要性を感じることができませんでした。

最後、各論6、第三者による不当勧誘でございます。

媒介要件の緩和についても反対です。

なお、中間取りまとめの記載ではちょっと不明確な部分があると思いましたので、前提を確認させていただきたいと思います。ここでは、直販ルートを持たず、消費者と直接契約を締結しないメーカーによる広告が「第三者による不当勧誘」の問題に整理されると理解しております。その場合、契約当事者たる流通企業が、メーカーが不当勧誘したことと、それに起因して消費者が誤認して意思表示したこと、この2つの故意がある場合に、第三者による不当勧誘規制によって消費者契約が取消しの対象となる。そして、この2つの行為については、消費者が立証責任を負う、と理解しております。これは理解の確認でございます。

2として、事業者の過失の場合についても、消費者に第三者による不当勧誘の取消権を認めるということも御検討されているようですが、これに関しては強く反対いたします。なぜならば、広告は広く告知するものである以上、例えば流通企業にとっては、メーカーが実施する広告を知ることができたことになりやすいと言えると思います。とすると、知ることができただけをもって、例えばメーカーの広告において間違いがあった場合に、流通企業が実際の販売の場面において、情報を追加したり、訂正させなければならないといったものは、事実上不可能を要求することにほかならないと考えております。

以上、広告・報道関連8団体として、消費者契約法の見直しに関し、意見を述べさせていただきました。我々からは以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行っていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 最初のほうで出された御意見で、誤った内容の広告をしたことに気がついたので、訂正をきちんとした。そういう場合でも取り消されるとすれば、それは不当だということをおっしゃったと思うのですけれども、その訂正された後の広告を見て契約した人が、たまたま以前、間違った広告があったからということで、それを持ち出してきて取消しを主張するのは不当だということは明らかですけれども、訂正される前の広告で契約してしまった人がいて、しかし、その後、事業者として広告を訂正しているから責任はありませんという話になっていいのかという疑問があるのですけれども、広告とはそんなものだという御理解なのでしょうか。

それとも広告は勧誘ではないから、そもそも訂正しようが、しまいが、間違っていようが、間違ってなかろうが、契約の効力とは関係がないという御趣旨であれば、訂正の話をする必要すら全くないのですけれども、訂正したのだからいいのではないかとおっしゃることの理由は、どういう点にあるのでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本広告業協会長谷川個人情報ワーキンググループメンバー まず、前提として、我々は、広告を勧誘要件に含めて検討することについて反対であるという立場に立っております。その上で、仮に広告を勧誘要件に含めるという検討がなされた場合において、訂正される前の広告を見て取引に入った消費者に対しては、取消しを認めるべきではないか、ということが御質問の趣旨かと思います。それに関しては、事業者側と消費者側の不利益についてバランスをきちんと検討する必要があるのではないかと思っております。実際、取消広告を実施するに当たっては、多大な費用もかかるということも含めまして、取消しまでの効果を与えるべき話なのかどうかというところは、慎重に検討するべきかと思っております。

もう一点、我々が懸念していることとしましては、実際に裁判において取消しの効果まで与えられるかどうかの手前に、消費者からの取消しの主張が頻発するのではないかという事実上の側面も危惧しております。その観点からも含めて、「事業者としてきちんと訂正したのにもかかわらず、取消しの主張がなされるのは公正ではない」という趣旨でございます。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに質問等がありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。増田委員。

○増田委員 御説明ありがとうございました。

一番初めの、一律に事業者対消費者という対立モデルとは言い切れないという御意見についてですけれども、いろいろな関連法規、自主規制に従いまして、それらを全部クリアしたものを提供しているということで、これは本当にすばらしいことですし、全てがそうであればいいなと思うのですけれども、そうではないところがあるので、こういう会が開かれているのだと私は認識しております。こういう御努力をされている方たちについては、改正されたとしても、基本的には問題がないのではないかと私は思いますが、その点について、さらに懸念するとおっしゃられているのだろうかということが一つ目の質問です。

もう一点ですけれども、対抗手段を持っている。情報収集する手段もあるではないかという御意見がございました。確かにそのとおりだと思うのですけれども、現状の相談の状況を見ますと、デジタルコンテンツに関する相談件数というのは、相変わらず高水準であるという状況です。それというのは、ここ5年も6年もずっと同じ状況があって、警察、行政からいろいろな情報提供をしている。あるいは、ネット上で探せば答えが出てくるということであったとしても、それでもなおかつ相談が非常に高い件数が寄せられているというのは、リテラシーがない方たちがまだいらっしゃったり、情報が行き渡っていないということだと思います。情報収集能力があるというのとは、ちょっと違うのではないかと思います。この2点についてお伺いしたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本アドバタイザーズ協会藤川専務理事 1点目は私からで、2点目は勝野さんがお答えしたいと思いますけれども、おっしゃるとおりでして、真っ当な事業者はちゃんとやっているというのを訴えさせていただいたわけですけれども、しかしながら、その真っ当な事業者の行動が大いに規制されるということが問題なのです。私ども広告というのは、当然ながら自分の会社のためですけれども、世の中に対して情報を発信する。しかも、その情報を消費者の皆さんがお受け取りになって、新たな利便性、生活を手に入れたり、プラスアルファの部分が多くなる。要は、広告は消費者の皆さんにとっての貴重な情報源である。経済の活力源であるということを、我々、信条として持っております。

その中で、悪意に満ちた事業者を規制するという点にばかりスポットライトを当てて、その結果として、その影響が善意のほうの事業者に及ぶ。その点に大いなる疑問というか、疑念がございまして、そこについては、先ほど来申しておりますけれども、より慎重な、より具体的な事例に基づいた検討を、中間取りまとめ以前にやっていただくべきではなかったかなというお願いをしているといいますか、そういうおそれを抱いていると御理解いただければありがたいなと思っております。

○日本インタラクティブ広告協会勝野専務理事 インターネット環境で消費者保護の問題が随分出ている中で、先ほどステルスマーケティングというお話が出ました。広告を出すときに、広告主名を隠して消費者をだますような行為がインターネット広告の中で、悪意に満ちたものや誤認も含めて話題になっております。リテラシーの低い方に非常に問題となり、いろいろなお問い合わせがあるのだと思います。

新しいメディア環境になったときの様々な摩擦をどう解いていくのか。ステルスマーケティングに関しましては、私どもはネイティブアドのガイドラインにおいて、広告主を明記して広告を打ちましょう。とお願いしています。ただ、例えばある商品を褒める記事の横に広告が出ていて、それを買ったが自分は満足できなかった、だまされた。その褒める記事は、実はその事業者が名前を隠して出したのだとすると、先ほどのステルスマーケティングですね。広告だとは思っていないのにだまされたというニュアンスになると思いますが、現在は消費者個人の方もインターネットで感想をお書きになります。逆に、真っ当な事業者からしますと、インターネット上の不実告知の事例をもとに規律という話になりますと、今の業法を守り、様々な自主規制も守っている広告主に、さらに負担がかかるという部分で、先ほど藤川さんもおっしゃいましたけれども、広告業界に過度な負担がかかるという気がしております。 あと、今、モーターショーをやっておりますが、消費者の方が新しい商品情報をインターネットでいろいろな読むときに、個人の感想もあれば、記者発表のリリースも読む。そのときに、広告やPRとか、そういった記載がない場合に誤認やトラブルが起こると思いますが、広告業界では自主規制、ガイドラインをちゃんと出しているということ。それから、それを守られていない場合は、景表法を含めて、既にある規制の中で話されるべきではないかと思います。リテラシーの少ない方を守っていく、消費者保護に関しては、いろいろ考えるべきだと思いますが、今回の勧誘要件を広告に広げるということには反対しているのです。真っ当な事業者には物すごい負担が想像されるのに、実際に今回に挙げられているような事例、SNSで出会った人に高額な商品を買わされたという話も、考えによってはステルスマーケティングだと思うのですが、本当にそのような事例が一般的な広告に規制がかかることで、消費者が守られ相談が減るのかというところに非常に疑問を持っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

ほかに。では、山本健司委員。

○山本(健)委員 貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

まず、「『勧誘』に際し」に関する御懸念の点ですけれども、本日も既に議論に出ておりますように、広告の後、契約締結までの間に、事業会社から消費者に対して、商品パンフレットや社員の説明やその他の方法で不利益事実を含めた重要な情報が正確に提供されていれば、今回議論されておりますような「勧誘」要件の見直し等がなされたとしても、契約が取消されるといったことにはならないはずですので、御懸念はいささか過剰ではないかなと聞かせていただきました。

また、資料4-1から8の御意見書の「第三者による不当勧誘」部分において、「一般人がブログや口コミサイトにおいて当該商品等についての記載を行った場合において、その記載内容に誤りがあった場合についても取消対象とするのは余りに酷である」という御懸念を拝見いたしましたけれども、例示されております事案では、当該一般人はそもそも契約を勧誘しているわけではなく、「第三者による不当勧誘」には該当しないように思われますので、この部分に関する御懸念もいささか過剰ではないかなと読ませていただきました。

本日、お聞かせいただきました御意見は、具体的に弊害が発生するというよりも、抽象的な危惧や御心配を有しておられるという御意見であるように聞こえたのですけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本広告業協会長谷川個人情報ワーキンググループメンバー 御質問の趣旨としましては、具体的な心配が想定されない、ということでございましょうか。先ほど御説明もさせていただきましたように、特に不利益事実の不告知のうち不告知型とされているものに関して、先行行為要件がない中で、「不利益事実を告知していなければ、取消しの対象となり得る」ということになった場合には、先ほども真っ当な事業者というお話がありましたが、真っ当な事業者であればあるほど、それを「事前に回避するための行動をとらなければならない」と考えると思います。そうすると、真っ当な事業者ほど、消費者クレームのさらに手前の段階において、広告にできるだけきちんと情報を完遂しなければならないというように動くのだろうと考えます。

そうなったときに、本来、広告というのは、商品の特徴、よい部分をイメージを含めたいろいろな手法で告知して引きつけるものであるはずなのですが、そういった広告の表現手法が非常に限られてしまう。真っ当な事業者であればあるほど、先ほども申し上げさせていただいたような「ディスクレーマーが羅列されたような表現をせざるを得ない」と自主的に判断する方向になるのではないか。その点について、懸念しているということでございます。そのような、「こういった情報まで入れるべきではないかと事業者が検討することになりうるのではないか」と考える具体例に関しましては、事例という形で資料に入れさせていただいております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○山本(健)委員 御回答いただきまして、ありがとうございます。

私の説明が不十分だったかもしれません。私が申し上げたかったのは、広告の後に事業会社さんのほうで相手方である消費者に商品の詳しい内容や不利益情報が提供される手続を予定されていると思われるので、御懸念されているような、広告に全て不利益なことを盛り込まないといけないといったふうには必ずしもならないのではないか、ということでございます。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○日本広告業協会長谷川個人情報ワーキンググループメンバー 失礼いたしました。先ほども御説明させていただいきましたが、商品やサービスの内容によっては、必ずしも事業会社による説明が入らない形での商取引がなされるものも、消費者契約の中には数多く含んでいると考えております。それらの取引を含めて、全てを消費者契約法の改正によって規律するというのは、ちょっと行き過ぎなのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 広告業界さんにとっては、景品表示法という広告に関する法律は大変身近で、きちんと遵守されていると思いますが、景品表示法に違反するような内容の広告が、当該契約の相手方である事業者からなされて、その広告を信じて契約した消費者がいたとして、当該広告について消費者庁から措置命令が出されたという場合、あるいは消費者庁はまだ措置命令を出していないけれども、消費者の側が訴訟を行うことによって景品表示法違反を立証可能であるという状況が仮にあるとしたような場合について、なおその広告は契約とは別の世界の事柄なのだから、そういう優良誤認広告あるいは有利誤認広告によって誤想された消費者は、契約の取消しという形で救済される必要はないというのが、広告業界としては一般的な御意見なのか。

それとも、そんなことは考えてもいないという話なのか、そのあたりについて、もし御意見がございましたらお出しください。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本広告業協会長谷川個人情報ワーキンググループメンバー 広告業界一般の意見として申し上げられるかどうかはわかりませんが、おっしゃるように、景品表示法における措置命令の対象となるような不当表示の事案と、消費者契約の取消しの対象となるべきだという価値判断がとられうる事案というのが重なる場合は存在するのではないか、と個人的には思っております。ただ、それをもって、「事業者は景品表示法の遵守をしていれば、消費者契約法において不利益をこうむることはないのではないか」ということまで言ってしまいますと、それはちょっと乱暴なお話になってくるのかなと思っている次第でございます。

一番大きなところとしましては、事業者は、景品表示法について消費者庁という行政機関が長年積み重ねてきた運用というものを把握しております。事実と少し違うことを表示したらそれら全てに措置命令が下されるわけではないと思います。つまり、著しく有利であったり、著しく優良であったりの「著しく」の部分の読み方といいますか、そのアローアンスの部分が消費者庁による景品表示法の運用にはあると考えますが、事業者としては、そのアローアンスの部分についても把握した上で実務の運用をしています。

一方、消費者契約法になりますと、当事者が消費者になります。懸念し過ぎではないかと言われると困るのですが、「事業者として、多少、事実と違うものの景品表示法における不当表示には該当しないだろうと判断しているような表現」をしたことをもって、消費者から消費者契約法に基づき取消しの主張がなされるといったことを非常に懸念している次第でございます。

ただし、冒頭申し上げましたように、景品表示法における不当表示となる場面と、消費者が何らかの方法で契約をゼロに戻すことで救済されるべき場面というのが、実態上で重なることはあるかなと思っております。

○国民生活センター松本理事長 確認させていただきますと、景表法違反として措置命令が出るようなタイプの場合であれば、民事救済がなされてもそれほど違和感はないという御感触でしょうか。

○日本広告業協会長谷川個人情報ワーキンググループメンバー 民事救済がなされることが妥当だと思われる場合もあるかもしれませんが、それを消費者契約法の改正という形で救済するべきかどうかについては、さらなる議論が必要かなと考えます。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに御質問等があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、広告関係団体へのヒアリングはこのあたりにさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(全日本広告連盟・日本アドバタイザーズ協会・日本インタラクティブ広告協会・日本広告業協会退席)

○山本(敬)座長 それでは、本日の審議は以上とさせていただきます。

次回以降の審議についてですが、中間取りまとめに対する集中的な意見受付の結果や、これまで実施しましたヒアリングの結果等も踏まえて、個別論点についての検討を行っていきたいと思います。議題の詳細等につきましては、追って事務局より御案内させていただきます。委員の皆様におかれましては、引き続き、どうかよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局から事務連絡をお願いします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も長時間の御審議、どうもありがとうございました。

次回は、11月中の開催を予定しておりますけれども、具体的な日時につきましては追ってお知らせいたします。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上