第18回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年10月16日(金)13:00から16:00

場所

中央合同庁舎第4号館 2階 220会議室(東京都千代田区霞が関3-1-1)

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、大澤委員、河野委員、古閑委員、 増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、鹿野委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 加藤理事
【参考人】
一般社団法人全国銀行協会
業務委員長銀行 株式会社三井住友銀行
浅田法務部長
本多法務部業務開発グループグループ長
木村法務部法務・訴訟グループ部長代理
日本証券業協会
山内執行役(自主規制本部長)
嶋自主規制本部審議役
宮脇自主規制本部自主規制企画部課長
一般社団法人生命保険協会
遠山消費者法制研究会座長(日本生命保険相互会社調査部専門部長)
尾崎消費者法制研究会委員(日本生命保険相互会社調査部課長)
一般社団法人日本損害保険協会
中島企画部会長(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社経営企画部経営調査室長)
森満企画部会法制PTリーダー(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社経営企画部経営調査室次長)
日本司法書士会連合会
中里消費者問題対策委員会委員
【消費者庁】
井内審議官、加納消費者制度課長、桜町取引対策課長
【事務局】
小野審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 関係団体からのヒアリング
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 本日は皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから消費者委員会第18回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用により、井田委員、沖野委員、後藤準委員、柳川委員が御欠席との御連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第の下部に配付資料一覧をお示ししております。

資料1が本専門調査会の当面の予定(案)となっております。

また、資料2から6につきましては、本日のヒアリングについて各団体から御提出いただきました資料となっております。

さらに、参考資料といたしまして、本専門調査会の委員名簿、設置・運営規程、それから下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせと、8月に公表いたしました「中間取りまとめ」をお配りしております。

もしお手元の資料で不足がございましたら、事務局のほうにお声がけをお願いいたします。

本日は、第4次消費者委員会において開催される初めての消費者契約法専門調査会でありますので、まずは委員構成等について御案内させていただきます。

まず、参考資料1をごらんください。本専門調査会の委員名簿となっております。

去る10月1日に消費者委員会の河上委員長より構成員として指名があったものですが、ごらんのとおり、本年8月までの構成と変更がない形となってございます。引き続き、よろしくお願い申し上げます。

また、座長につきましても、同日付けで河上委員長のほうから御指名があり、本年8月までの審議に引き続きまして山本敬三委員に務めていただくこととなってございます。どうぞよろしくお願いいたします。

なお、オブザーバーといたしまして、法務省、国民生活センターに御出席いただいており、消費者委員会からは、同じくオブザーバーといたしまして、担当委員の河上委員長、それから鹿野委員が本専門調査会に出席しております。

また、本専門調査会の設置・運営規程第8条に、専門調査会は、調査審議に当たって、消費者庁の協力を得るということで定められておりますので、消費者庁からは毎回御出席をしていただき、その御協力を得ることとしておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、ここから山本座長のほうに議事進行をお願いいたします。

○山本(敬)座長 消費者委員会の河上委員長から御指名を受けまして、8月までの審議に引き続き、本専門調査会の座長を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、本専門調査会の座長代理についてですが、設置・運営規程第2条第4号では、座長があらかじめ座長代理を指名することになっています。私としましては、8月までの審議と同様に後藤巻則委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

続いて、本日は第4次消費者委員会において開催される初めての消費者契約法専門調査会ということですので、消費者委員会の河上委員長より御挨拶を頂戴したいと思います。河上委員長、よろしくお願いいたします。

○消費者委員会河上委員長 第4次の消費者委員会委員長になりました河上でございます。余り目新しくなくて申しわけございませんが、3次からの続投ということになりました。

この専門調査会では、消費者契約法の実体法部分の見直しということをやっていただいておりますけれども、3次の終わりということで、一旦は委員がそこで任期が切れるということになりますので、新しく任命をいただいて、そしてここに配置するという手続のために、かなり時間をとってしまいました。申しわけございません。

以前、国民生活審議会のころに、新しいこういう専門調査会が開かれるたびに、それまでやった議論が一遍リセットしてしまうと議論が行ったり来たりするということがありました。今回もそれを大変危惧しておりまして、できるだけこれまでの成果をつないで継続的に議論していただきたいという思いでおりましたら、幸い、ほぼ同じ形で継続して、この専門調査会を開けるということで、安心しております。

余り期限のことを言うのはどうかと思いますけれども、来年の通常国会あたりまでに一定の準備をして、できれば法案を提出できるようにということが第3期の消費者基本計画の中にも一応書かれているところでございまして、それを考えていきますと、時間は余り残されていないということであります。ただ、たくさん論点がございますし、事業者の方、関係者の方からのヒアリングなどもやっていかないといけないということで、委員の皆様には集中的に担当の御負担をおかけすることになるかもしれませんけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

山本敬三座長には、引き続き御苦労をおかけしますけれども、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、議事に入らせていただきます。

まず、本専門調査会の当面の予定の案につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 では、お手元の資料の資料1をごらんください。こちらに「消費者契約法専門調査会の当面の予定(案)」ということで、当面の開催日程等を記載させていただいてございます。

当面の開催日程といたしましては、本日、10月16日を含めまして、10月23日、それから10月30日の計3回、会議を開催し、関係団体からのヒアリング等を行わせていただきたいと考えております。

その後、11月以降の審議につきましては、これまでの意見受付の結果や、ヒアリング等の結果を踏まえまして、個別論点についての検討を行っていただきたいと考えてございます。

具体的な審議日程については、今後の審議の状況等を踏まえて、順次確定していきたいと考えております。

説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、今、事務局より説明のありました本専門調査会の当面の予定について、もし委員の皆様から御意見などがありましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、今後の本専門調査会での検討につきましては、今、事務局から説明いただいた予定に従って進めさせていただくことにしたいと思います。


≪2.関係団体からのヒアリング≫

(1)一般社団法人全国銀行協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 それでは、続きまして、本日は「関係団体からのヒアリング」としまして、一般社団法人全国銀行協会、日本証券業協会、一般社団法人生命保険協会、一般社団法人日本損害保険協会、日本司法書士会連合会の計5団体からのヒアリングを行います。各団体からは、8月に取りまとめました本専門調査会の「中間取りまとめ」に対する意見書を事前に御提出いただいていまして、その内容は委員の皆様にも御確認いただいているところですが、本日はその内容をベースとしながら、さらに御説明を頂戴したいと思います。

会議の進行としては、団体ごとに交代でお席に着いていただき、それぞれ御説明を10分から15分程度、委員の皆様からの質疑応答を10分から15分程度という形で進めさせていただければと考えています。ヒアリングに当たりましては、まず各団体の御説明を聞いていただいた上で、質疑応答される際には、本日の御説明内容を中心に、なるべく簡潔な御質問、御回答をしていただくようにお願いしたいと思います。

(全国銀行協会着席)

○山本(敬)座長 それでは、まず全国銀行協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、全国銀行協会から、同協会の業務委員長銀行である株式会社三井住友銀行の法務部長浅田隆様、法務部業務開発グループグループ長本多知則様、法務・訴訟グループ部長代理木村健太郎様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行浅田法務部長 三井住友銀行の浅田でございます。説明の都合上、着席してお話を差し上げたいと思います。

本日は、銀行界の意見を申し述べる機会を頂戴いたしましたこと、厚く御礼を申し上げます。

弊行は、本年度、全国銀行協会の業務委員長銀行を務めておりますが、今般の消費者契約法に係る検討のほか、民法改正に係る検討など、銀行取引に係る法的な問題については業務委員会が所管していることから、本日は弊行が会員銀行を代表しまして説明させていただく次第です。

消費者契約法専門調査会におかれましては、これまで計17回にわたる精力的な審議が行われ、その大部にわたる審議結果を詳細にわたって取りまとめ、公表されたこと、その意義は大変大きく、委員の皆様には改めて深い敬意を表したいと思います。そうした精力的な審議を経て取りまとめられた「中間取りまとめ」に対しましては、当協会からも、去る9月30日に意見書を提出させていただいているところです。

当協会の意見書につきましては、事前に御高覧いただいたかと存じますので、本日はお手元に配付しておりますパワーポイントで作成した説明資料2-2をもとに、銀行が遵守する規律等の関係、また銀行における消費者保護の取り組み、そして提出した意見書の中で重要な部分を中心に、「中間取りまとめ」のとおりに各規律が見直された場合に実務に与える影響などにつきまして、簡単に説明させていただきたいと存じます。また、個別銀行の、弊行のものでありますけれども、御参考として、弊行が各種の銀行取引において用いる契約条項を抜粋した資料も別途配付させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。資料2-3になります。

それでは、資料2-2の1ページ目をご覧ください。まず、銀行取引に関する規律等について御説明させていただきます。

銀行取引に関する規律としては、まず銀行法があります。銀行法のほか、投資性商品等の販売であれば金融商品取引法、保険商品の販売であれば保険業法等も遵守する立場にあります。また、一定の金融商品の販売に関しては金融商品の販売等に関する法律も遵守する立場にあります。

次に、説明資料の2ページをご覧ください。銀行法等に基づく銀行の監督事務に関しては、監督を担当する行政職員向けに監督指針や検査マニュアルが作成されており、銀行は当該監督指針や検査マニュアルに基づく厳格な監督検査を受ける立場です。ここで紹介しておりますのは、与信取引やリスク性商品の契約締結過程において、顧客への説明が尽くされるよう銀行が構築するべきだとされている管理態勢の指針とされているものです。このように、銀行は、消費者に対する金融商品・サービスの提供、とりわけ契約締結の過程の場面を含め、さまざまな規律を遵守しております。

それでは、説明資料の3ページから5ページ目をご覧ください。次に、銀行界における消費者保護に関する取組みとして、紛争解決に係る制度について簡単に御説明させていただきます。

お客様の苦情に関しては、各銀行自身が解決を図るほか、当協会が設置する全国銀行協会相談室と、当協会でもこれを受け付ける仕組みとしております。また、紛争に至った場合には、当協会にあっせんの申立てをしていただくことができ、弁護士、消費者問題の専門家、金融実務等に係る有識者で構成されるあっせん委員会において紛争の解決が図られます。詳細につきましては、後ほど資料をご覧いただければと存じます。

また、資料には記載ございませんが、全銀協では、こうしたADRの取り組みのほかに、情報量等に格差がある消費者との間に、より適切かつ健全な取引を構築する観点から、「消費者との契約のあり方に関する留意事項」を取りまとめ、消費者との契約全般に関し、契約の内容や契約締結に関する行為について、銀行が留意すべき事項を参考として示しております。加えて、銀行の役割・機能等の理解促進、金融取引に関する意識・知識等の向上を図るため、金融経済教育活動も積極的に推進しています。

説明資料の6ページをご覧ください。次に、「中間取りまとめ」に対する当協会の意見のうち、主要な点につき、簡単に説明させていただきます。

まず、基本的な考え方として、消費者契約法の規律等の在り方を検討する方向性について異論はないところであり、これまでのような審議・検討を行うこと自体に異論を申し上げるつもりはありません。一方で、現状、問題があるとまでは検証されていない消費者契約一般にまで及ぶような規律の見直しを行う理由はなく、そうした契約一般まで適用範囲を広げることで、かえって消費者の自主的かつ合理的な選択の機会を含めた消費者利便性を損ない、国民経済の健全な発展を阻害する懸念があることを申し上げておきたいと思います。

業法でなく、民事法の規律に関して申し上げますと、一定の金融商品の販売に関しては、民法の特則として、さきに述べました金融商品の販売等に関する法律、いわゆる金販法があり、同法が定める重要事項に関する説明義務、断定的判断の提供等の禁止等の規律を遵守しなければ、金融商品販売業者は損害賠償責任を負い、元本欠損額を、重要事項について説明しなかったことによって当該顧客に生じた損害の額と推定することで、消費者の立証責任を軽減しています。このように、金融商品の販売の主要な局面においては、消費者の保護のための私法的規制は既に存在しておりますから、金融商品の販売に関して、消費者契約法の守備範囲の拡張の必要性については慎重な検討をお願いしたく存じます。

それでは、資料の7ページ目をご覧ください。各論点につきまして、幾つかポイントを簡単に御説明させていただきます。

まず、契約締結過程に係る論点については、いずれの論点につきましても客観的要件は明確に定められるべきであり、事業者の実務等に与える影響を十分に勘案すべきだと考えます。例えば、不利益事実の不告知については、新たに不実告知型、不告知型に類型化すること自体には反対しないものの、類型化は容易かつ実務に支障がない形でできることが望ましく、また客観的かつ明確な要件によって行われる必要があると考えます。そして、仮に類型化自体が困難である場合や、類型化が事業者の実務等に大きな影響等を与える場合には、類型化を含め、見直し自体を行うべきではないと考えます。

続きまして、説明資料の8ページをご覧ください。次に、契約条項に関する論点として、まず損害賠償額の予定・違約金条項についての意見を説明します。

まず、この損害賠償額の予定・違約金条項の論点だけに限った話ではありませんが、不当条項に関する検討全体については、消費者の不利益、事業者の実務等の影響を十分に勘案し、慎重に検討いただきたいと考えております。

さて、損害賠償の予定・違約金条項につきましては、基本的には契約解除に伴う場合も、契約の解除は伴わないが、実質的に契約が終了する場合も、事業者には損害や損失が生じることを踏まえ、規定の見直しに当たっては当該損害や損失の請求が妨げられることにより、事業者による消費者への商品・サービスの提供が萎縮しないよう十分に配慮していただきたいと考えています。

説明資料の8ページには、影響を及ぼす金融商品・サービスを例示として示させていただいております。あくまで例示ですので、記載している商品等に限られることではありませんが、本条項の見直しに当たって影響を受けると考えられる代表的なものとして、弊行の商品の一つでもある固定金利型消費者ローンを挙げております。

ローンの金利に関しましては、御承知のとおり、基本的には変動金利と固定金利の2つに分けられます。銀行は、金融市場から資金を一定の金利を負担して調達し、その調達した資金に金利を上乗せして貸付を行い、利益を生み出しています。調達する際に負担する金利、いわゆる調達コストは日々変動するものであり、それゆえに銀行は変動金利のローンを提供するといったことになりますが、金利が上昇するリスク等を低減し、消費者が安心して返済計画を立てることができるといったニーズなども踏まえ、消費者が借入をする際には、その金利を固定してローンを提供することがあり、これが固定金利型のローンとなります。

固定金利型ローンを実現し、そのメリットを消費者の皆様にも御享受いただくために、銀行は市場との取引において固定金利、すなわちここで挙げた契約条項例でベースレートと読んでいる利率相当額で資金を調達しています。

借入金が本来、期間前に返済された場合、爾後、借入人からは、銀行と市場との間の調達取引に係る固定金利の支払いのための資金を得られないことになります。そこで、銀行は借入人から期限前に返済された資金を市場において再運用するとして、その再運用利率が調達コストを下回ると、下回る部分が銀行の損失となるため、借主に清算金として支払いを求めるものです。

今、御説明したとおり、固定金利型消費者向けローンにおいて借主に支払いを求める清算金は、必ずしも残存期間、借入を継続したことによって得られたであろう利息相当を意味するものではありません。もちろん、各銀行における全ての固定金利型の商品の清算金について、全く同じ説明が当てはまるとまでは言い切れませんが、同様な説明が可能な商品は相当数あるものと認識しております。固定金利型ローンという商品を選択いただくこと自体は、消費者の皆様に強制するものではなく、選択肢の一つにすぎませんが、そうした商品を銀行が提供することによる便益は、極めて多くの消費者が得ているものだと理解しております。

委員の皆様におかれましては、こうした便益を失いかねない、消費者の選択肢を狭めるような結果とならないように慎重な検討をお願いしたいと存じます。

なお、先ほどの固定金利型消費者向けローンにおける清算金条項は、借主がみずから期限前弁済をするという判断をした結果、銀行において生じる損失を補填する性質の金銭の額を定めるものであり、その法的性質をめぐっては、そもそも損害賠償額の予定や違約金を定める条項ではないという議論もある旨を申し添えます。

説明資料の9ページをご覧ください。次に、不当条項の類型の追加に関する意見を御説明いたします。

本条項に関しても、まずは消費者の不利益、事業者の実務等の影響を十分に勘案し、慎重に検討していただきたいということを重ねて申し上げます。こちらの点につきましても、金融商品を例示しています。本条項の規律に関しては、さらに子細な検討が専門調査会で行われるものと承知していますが、もし単純に一律に無効とされた場合に、銀行取引において影響が懸念される商品が幾つかあります。

まず、消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ、または制限する条項が無効とされた場合に影響を受ける商品としては、金利を固定化させた貸付、固定金利を変動金利に変更する特約の解約制限、個人向け国債の販売、定期預金などが挙げられます。先ほどの説明と重複する部分もございますが、固定金利型ローンに関しましては、金利の固定化を実現するため、期限前弁済及び条件変更を制限する条項を盛り込んだ契約を締結することになります。また、個人向け国債等、商品性として一定期間、消費者の解除権・解約権を制限しているものもございます。

また、解釈権限付与条項・決定権限付与条項に関すると思われる実際の契約条項として、弊行が提供しております典型的なローン規定における期限の利益喪失条項、いわゆる失期条項を資料9ページの一番下に掲げております。仮に当該失期条項が消費者契約法上の不当条項に当たり、無効とされると、私が考えるに、現在、失期条項として挙げられる借入人の破産、民事再生申立てや担保への差押え等に加え、例えば借入人の失業や自宅売却等、信用状況悪化を示す客観的事実を一つ一つ失期事由として規定化していく必要が生じると考えられます。

その場合、失期事由に当たるか否かの判断は硬直的なものになり得るので、現在用いている、債務者に元利金の返済ができなくなる相当の事由があるかどうかを総合的に判断して、期限の利益を維持するかどうかを決するという合理的な運用が困難になるため、かえって消費者にとって不利益になるのではないかと懸念するところです。

私どもとしましては、そもそも元利金の返済ができなくなる相当な事由、すなわち債権保全の必要性は客観性・合理性を踏まえて判断・運用しているものであり、決して銀行のみに義務の発生要件該当性や、その内容についての決定権限を付与する条項には当たらないと考えておりますが、万が一にも斯様な条項が不当条項とされませぬよう、専門調査会の議論においては留意していただきたいところです。

そのほか、「中間取りまとめ」に対しまして、意見書においてさまざまな意見を申し述べさせていただいたところでございますが、本日は時間も限られているところですので、私からの御説明は以上とさせていただきます。御清聴いただき、誠にありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして、質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。丸山委員。

○丸山委員 丸山でございます。1点教えていただきたい点がございます。

損害賠償額の予定・違約金条項に関連してなのですけれども、「中間取りまとめ」の9条1号の現在の検討においては、1つの案としまして、当該事業者ではなくて、同種の事業を行う通常の事業者に生ずべき平均的な損害の額。これを超える部分というのを原則として無効とした上で反論を認めるといった提案がなされていると思うのですけれども、先ほどのお話だと、損害賠償額の予定条項のつくり方も、各事業者によって違いが見られるところであるという発言もあったのですが、こういった改正の提案については、何か御意見をお持ちなのか、同種の事業者の平均的な損害の学を問題としていくという点には、何か御意見などありましたら教えていただければと思いました。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行浅田法務部長 御質問ありがとうございます。

この点に関して、全銀協の意見書の10ページの上から2番目の箱に書いてございますけれども、直接的な御回答に至るまでの十分な議論が業界の中で形成されているというわけではありません。私個人的には、いろいろな検討がなされているという中で、挙証責任というものが、事業者側も、もちろん消費者様側も難しいという中で、いろいろな工夫がされているということは理解しておりますけれども、それが実際の場面において、どう影響があるのかということについては、十分な検証はしておりません。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、阿部委員。

○阿部委員 7ページの後段の「合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型」ですけれども、金融機関に対する適合性原則と、今、消費者契約法で議論されているものとの違いがいま一つ、まだ頭の中で整理できていないのですが、恐らく、金融機関に対して求められている適合性の原則のほうが幅が広いというか、かなり厳しいものであると思います。それとは別に仮に消費者契約法に何らかの規律を設けるとすれば、こちらの御指摘ではミニマム・スタンダードを意識した規律が適当ということを言っておられますが、このミニマム・スタンダードはどの程度のものをお考えでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行浅田法務部長 御質問ありがとうございます。

まず、金融商品の販売に関際しましては、いわゆる適合性原則というものがありまして、これはお客様の知識、経験、財産の状況、契約の目的ということを踏まえて適合性を判断するということでございまして、基本的には目の前に現れたお客様の状況に応じて判断するという枠組みだと理解しております。それに対して、消費者契約法に基づき一般的な消費者をスタンダードとした不当勧誘行為規制がかかるということであれば、我々からすると二重のルールがかかるのではないかとも感じられるところであります。

金融商品の販売の局面において、個別的な状況に応じてケース・バイ・ケースで判断したほうがいい、金融商品ならではの基準ということであるわけですので、消費者契約法の基準というものが本当にどういう関係に適用があるのかどうか、それから、必要なのかどうかということも、にわかにはよくわからないところであります。

その中で、金販法等に現れない必要な条件があるということであれば、それは一般的な消費者に必要な最低限の条件というものを設定すべきではないか。その上で、金融商品ならではの金販法の適合性の原則が適用されるべきではないかという話であります。

では、御質問のあったミニマム・スタンダードというのは、どういう消費者を想定するのかということは、これはいろいろな議論があり得ると思われ、これもまだ十分な議論がされているわけではないように思われます。ただ、先ほど申し上げたとおり、金融商品の販売に際して適合性の原則でカバーされていることを勘案すれば、消費者契約法においては、通常の一般的な消費者の保護のためにミニマム・スタンダードだけ押さえればいいのではないかということを申し上げたわけです。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行本多法務部業務開発グループグループ長 若干補足といいますか、一部そもそも論めいたお話も交えてさせていただきますと、ここで掲げられております「合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型」という不当勧誘行為類型に関する規律と、それから金販法や金商法における規律である適合性の原則とは、必ずしも一致するものではないと思われる一方、重なり合う部分もあるものと存じます。銀行業界における実務上、一般に、適合性の原則を遵守すべく、個別のお客様の適合性を判定させていただく傍ら、このお客様がこの商品を購入することについて合理的な判断ができるという適格性を有していらっしゃるということも判定させていただいているところでございます。そういう意味で、実務上、この両規律が重なり合うかたちで適用されている部分はあり得るところではございまして、消費者契約法において、この不当勧誘行為類型が、場合によっては拡張的に解釈される結果、通常、適合性の原則に則って銀行で行っております販売勧誘に過度に重複的な規律として、萎縮的な効果を及ぼすということがあり得るのであれば、懸念しなければいけないと考えている次第でございます。

なお、消費者契約法自身は一般的な消費者を念頭に置きましたミニマム・スタンダードということでございまして、適合性の原則に則った販売をさせていただいている銀行業界のほうが、ある種高いスタンダードを持って商品を提供させていただいているところがあるかもしれません。そうした銀行業界の通常の販売態勢に不相当な影響を及ぼす規制にならないことを、念のためにお願いさせていただいているものでございます。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに質問がある方は。山本健司委員。

○山本(健)委員 詳細な御報告と資料の提出をいただきまして、ありがとうございました。今後の議論との関係で、資料の位置づけや内容について、御確認させていただきたいと思います。具体的には、資料2-3で御紹介いただいております契約条項の意味合いや位置づけについて確認をさせていただきたいと思います。

まず、1の「損害賠償額の予定・違約金条項関連」で御紹介いただいている「固定金利特約付ローンの約定例」における清算金というものは、先ほどの御説明をお伺いしておりますと、銀行が喪失する利益ないし収益の補填を求めるものではなく、銀行がこうむる損失ないし支出の補填を求めるものと理解したのですけれども、そのような理解で間違いないでしょうか。これが1点目の質問でございます。まとめて質問させていただきます。

2点目は、この約定例に関連する質問です。一般的な住宅ローンの場合には、期限前弁済の際にこのような清算金負担の定めはない、手数料とか担保抹消費用程度の負担のみでよいと理解しているのですけれども、そのような理解で間違いないでしょうか。これが2点目の質問でございます。

3点目は、2の「消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項関連」で御紹介していただいている「定期預金規定」等の契約条項に関する質問です。ここでは当該条項だけが引用されております関係で、前後の契約条項について確認させていただきたいのですが、これらの条項については、まず前提として、期限の定めのある契約として満期日までの中途解約はできませんという規定があって、その上でこれらの規定がある、もし銀行が満期前の中途解約に応じる場合には銀行に対して所定の清算金を支払っていただきます等といった規定がある、という位置づけの規定だという理解で間違いないでしょうか。これが3点目でございます。

最後が、5の「解釈権限付与条項・決定権限付与条項関連」として、2ページの一番下に御紹介いただいております普通預金規定のなかの「またはそのおそれがあると認められるとき」というアンダーラインが引かれている部分の意味合いについての質問です。この規定部分は、恐らく、「そのおそれがあると客観的に認められるとき」、または、端的に「そのおそれがあるとき」といった意味合いで定められている規定なのであろう、言い換えれば「そのおそれがあると認めると銀行が宣言しさえすれば、客観的にはそのようなおそれがなくても、本条に該当する」といった意味合いの規定ではないであろうと理解しているのですけれども、そのような理解でよろしいでしょうかという質問でございます。

よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行浅田法務部長 御質問ありがとうございます。各御質問につきましては、基本的にはそのとおりだと思います。本多より補足説明さしあげます。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行本多法務部業務開発グループグループ長 今ほど浅田から申し上げましたとおり、いずれも御理解のとおりと考えております。

念のために補足させていただきますと、まず1点目の固定金利型のローンに関するものですけれども、まさしく御理解のとおり、途中で期限前に返済されたということをもって、残存ローン期間の利息相当額全額をいただくというものではございませんで、銀行側で固定金利でお貸し出しをさせていただくために、ベースレートと先ほど御説明させていただいたのですが、同じく所定の期間、固定金利で調達させていただいている銀行側の調達に関して発生した損失の補填を、お客様にお願いするものでございます。

それから、2点目の住宅ローンに関しましては、御指摘のとおり、現状の住宅ローンの実務上、一般的に、期限前返済に際して解約清算金というものを頂戴しておりません。これはいろいろな考え方があるのかもしれないのですが、住宅ローンの場合には、非常に幅広なお客様に対して、相当多数の貸付として提供させていただいておりますので、大数的な分析を踏まえまして、期限前返済が起こり得る確率を統計的に分析できると思っております。その統計的な分析を踏まえ、個別に解約清算金をいただかなくとも、損失の分担が分散的に図られているからだという理解でおります。

また、定期預金に関するご質問につきましては、預金規定上は満期日に解約するという規定がございまして、満期日をまって解約するものであるということで、銀行側の期限の利益を明示させていただいているという理解でおります。

最後に、普通預金規定に関しまして、「そのおそれがあると認められる」というものが、読まれ方によっては、「金融機関サイドで専ら認めるとき」と読まれ得るというところを懸念しております。この点、実務上は、まさしく先生の御理解のとおり、客観的な合理的な状況を踏まえまして、そういうおそれがあると認められる場合のみ、この規定が適用になるという運用になってございます。

以上です。

○山本(健)委員 ありがとうございました。

○山本(敬)座長 それでは、大澤委員。

○大澤委員 本日は、御報告、どうもありがとうございました。銀行に関する実務面は、私は全く門外漢でございますので、確認させていただきたいことがございます。

本日のパワーポイント資料の9ページの解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項のところで出ています、具体的な条項例について確認させていただきたいのですが、これは固定金利特約期間中は金利は一定で、ほかの例えば変動金利などへの変更はできないという特約だと理解していますが、これは解約制限にあたるのかどうかということが、実務運用がよくわからないところがあるので教えていただきたいのです。その上のところに、固定金利を変動金利に変更するものは解約制限にあたると書いているのですけれども、これは変更するということ、見方によっては金利タイプという契約の中身を変えるというふうに読めると思うのです。

すなわち、契約を1回解除して、またというのではなくて、完全に契約の内容の一部を変更するというふうにも読めるのではないかと思うのですが、これは解約権をあらかじめ制限する条項に当たり得るという御理解だといたしますと、実際の実務運用上というか、取引上、固定金利特約でやっている間で、もし金利を別のものに変えたいというときには、1回契約を解除するということになるのでしょうかというのが質問です。

済みません、もう一点ございます。先ほどの山本委員の質問とも重なると思うのですが、先ほどの資料2-3の2.消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項になりますけれども、これの今、山本委員が質問していた、当行がやむを得ないものと認めてというところ、3カ所、線が引いてありますけれども、これは本来は解除できないのだけれども、やむを得ない場合等に当たった場合には、例外的に解除を認めてあげますよということで、解除権を一部制限しているという理解でよろしいでしょうかというのが2点目です。

お願いします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行浅田法務部長 まず、1点目でございますけれども、変動金利を変更する特約の解約制限に関しては、通常の契約の場合を想定しますと、変動金利を前提とした契約書がありまして、その上に固定金利を望まれるお客様においては、固定金利にするという特約を上にかぶせるという形になっております。金銭消費貸借契約プラスそういう金利に関する特約という、いわば2本の契約になっているとお考えいただければと思います。

そういう2つの契約を結んで固定金利にしたのだけれども、お客様におかれ、市況を勘案して変動のほうがいいと思ったときに、変動金利に変えるというのは、固定金利にするという特約を解約することによるものであって、金銭消費貸借契約自体を変更するというわけではありません。契約の個数として、それが1つなのか、2つなのか、いろいろな解釈の議論の余地はあろうかと思いますけれども、実務的には、金銭消費貸借契約とは別個の、固定金利化するための特約を解約するものと理解されており、解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項との関係においては、かかる特約の解約の制限ということが問題となるものと考えております。

2つ目の御質問ですけれども、約定上、原則として満期日までは解約できないということが前提とされており、その上でやむを得ないと判断されるような場合には、例外的に解約に応じる場合があるということであり、その場合にこの条項が適用されることになっております。ただし、運用面において、定期預金の場合には、柔軟に解約に応じている場合も多いと思います。なお、商品性によってかかる運用は違い得るとは思いますけれども、契約の建付けの話は、今、申し上げたとおりであります。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、古閑委員で最後とさせていただきます。古閑委員、よろしくお願いいたします。

○古閑委員 私のほうも資料2-3について質問させてください。

今回の「中間取りまとめ」につきましては、御案内のとおり、解釈権限と決定権限で扱いが違うということになっておりますけれども、資料2-3の3ページに幾つか事例を載せていただいております。例えば、一番上に普通預金規定の例を載せていただいておりまして、これは解釈権限に当たるだろうということで載せられているのか、あるいは決定権限に当たるだろうということで載せられているのか。そのように判断されたのはなぜか。解釈権限と決定権限の違いは、なかなかわかりづらいのではないかという議論も出ていたものですから、どのように考えて、これはどちらだろうと判断されて、ここに載せたのかというところを教えていただけますでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○全国銀行協会業務委員長銀行三井住友銀行浅田法務部長 御質問ありがとうございました。

御質問のとおり、二者の境界線というのはなかなか難しいと我々も思っております。その上で、我々としては、例として挙げさせていただきました条項については、どちらかというと決定権限付与条項に該当し得るという議論がされるのではないかと考えております。一方、解釈権限付与条項に該当するような条項は、私どもの認識では、私どもの通常使っている約定には見られないのではないかという理解であります。

なお、例示いたしました条項の解釈に際しましては、実務上、客観的、合理的に該当性を判定しているものと理解しておりますけれども、見方によっては、これが銀行側でこういう場合に当たるかどうかということを決定できる権限ということに当たり得るとされる可能性があることを懸念するものであります。

繰り返しになりますけれども、今ほど申し上げたとおり、かかる条項に規定する事由への該当性については合理的、客観的に判断されるものだと考えておりますので、解釈権限付与条項はもとより、決定権限付与条項にも当たらないと考えるというのが我々の立場でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、全国銀行協会のヒアリングはこのあたりにさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(全国銀行協会退席、日本証券業協会着席)

(2)日本証券業協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続きまして、日本証券業協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、日本証券業協会から、同協会の執行役(自主規制本部長)の山内公明様、自主規制本部審議役の嶋俊昭様、自主規制本部自主規制企画部課長の宮脇隆宗様に御出席いただいております。お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、説明をよろしくお願いいたします。

○日本証券業協会山内執行役 ただいま御紹介にあずかりました日本証券業協会の山内と申します。説明は座って行わせていただきたいと思います。それでは、始めさせていただきたいと思います。

去る8月に公表されました本「中間取りまとめ」の作成に際しまして、本消費者契約法専門調査会の座長ないしは委員各位、また、これらに関係するさまざまな方々の御尽力に対しまして、まずは深く敬意を表したいと存じます。また、消費者契約法が施行されて以来、蓄積されてきました多くの裁判例でございますとか、情報技術の発達、高齢化の進展など、社会経済状況の変化に対応した同法のあり方を検討する必要については、私どもといたしましても賛同するものでございます。

公表されました「中間取りまとめ」におきましては、金融商品取引業に関しても、消費者契約法の見直しの中で議論されておりますが、この論点として掲げております情報提供義務や勧誘規制等については、既に金融商品取引法等におきまして、当該業務の特性に鑑み、幅広く、かつ詳細に規定されているところでありまして、また、これらに対応する誤認勧誘等への損害賠償に相当する、行政ないしは私ども本協会による損失補填の仕組みでありますとか、ADRでの紛争解決手段というものも整備され、適切に運営されているところでございます。私どもといたしましては、こうした実情というものを勘案していただきまして、個別の業法との関係性を整理いただきたいと考えております。

本日は、金融商品取引を行う上で、特に影響が想定されるであろうと思われる点に絞って意見を述べさせていただきたいと思います。今後の御検討の中で、ぜひ御考慮いただきたいと存じます。

それでは、具体的な意見につきましては、本日御用意させていただきました資料3-2を用いまして御紹介させていただきたいと思います。

3ページをごらんになっていただければと思います。

1つ目は、情報提供義務についてでございます。こちらにおきましては、最初のポツにありますように、消費者契約全般に一律的に情報提供義務を課すとなりますと、事業者負担の増加だけではなく、その負担が手数料とか商品の価格に反映されるなど、消費者側の取引コスト増加等といった消費者にとって不利益な事態も想定されます。現行の情報提供に関する努力義務を維持した上で、個別の業法等におきまして、必要に応じた措置が行われている場合等も勘案し、慎重に御検討いただければと考えているところでございます。

2点目、同じページの下の段でございますが、「勧誘」要件の在り方についてでございます。

1つ目の黒ポチにありますように、「勧誘」の概念の拡張を受けまして、金融商品取引に関連する規制のあり方に影響があるのではないかと危惧しているところでございます。特に「広告等」における不実告知等による消費者保護を目的とするのであれば、金商法等に規定いたします「広告等」の規制との整合性を確認の上、必要に応じてその見直しを検討することも視野に入れていただくなど、金商業者及び投資者が混乱なく理解できる制度となるように御配慮いただきたいと考えているところでございます。

また、2点目といたしまして、規制の適用について、対象商品の特性や「広告等」の種別を考慮せずに、全ての「広告等」に一律に重要事実を盛り込むことは困難ではないかと考えておりまして、事業者の混乱を招くとともに、必ずしも投資者保護に資するものとは言えないことも十分考慮に入れて、特に慎重に御検討いただきたいと考えております。

本件は、「中間取りまとめ」の中でもありますように、「勧誘」に「(不特定の者に対するものを含む)」という文言とする案がありますが、これに対するものとして、「範囲が広くなりすぎて混乱を招くとして、反対する意見もあった」とありますが、論調としてはこれを支持する意見だと考えております。

4ページをごらんになっていただければと思います。3つ目は、不当勧誘行為に関するその他の類型についてでございます。

1つ目でございますが、困惑類型の中に「執拗な電話勧誘」を追加することが検討されておりますが、この電話勧誘販売は特定商取引法の規制対象であることから、特定商取引法改正の議論として検討していただきたいと考えているところでございます。本件も「中間取りまとめ」の中で、「特定商取法の見直しに関し、電話勧誘販売における勧誘に関する規制の在り方について検討されていることから、その状況等を注視しつつ、必要に応じ、検討すべきである」といった見解を示されておりますが、これを支持するものと考えております。

また、2つ目でございますけれども、消費者契約全般に一律に不招請勧誘規制を課すとなりますと、事業者の通常の営業活動に甚大な影響を与えると考えておりまして、真に保護すべき事例の集積等を踏まえて、適用の対象範囲を慎重に検討していただく必要がある。個別の業法等において慎重に検討いただきたいと考えているところでございます。本件につきましても、この「中間取りまとめ」の中では、「消費者契約法において、不招請勧誘に関する規律を設けることについては、慎重であるべきとする意見やその必要性に疑問を呈する意見も見られた」とありますが、論調としてはこれを支持する意見となってございます。

最後、3点目でございますけれども、合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型を新たに不当勧誘行為に規定することについてでございますが、こちらも「中間取りまとめ」の中で、「事業者が消費者の判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させるという事例について、一定の手当てを講ずる必要性がある」という見解。また、「適用範囲の明確化を図りつつ消費者を保護する観点から規定を設けることについて、引き続き実例も踏まえて検討すべき」といった見解。そういったものが私どもとしても支持するものでございますが、金融商品取引の特性に鑑みますと、当該規制の要件とか適用範囲によっては、消費者側の権利濫用によって取引の安定性が損なわれる可能性がある。

また、本件を事業者側が厳格に運用した場合に、消費者に対しまして、例えば「認知症等ではないか」といった、消費者側に不快と思われるような確認まで行うことも想定されるということなど踏まえまして、本件の要件等については、特に慎重に御検討いただければと考えるところでございます。

なお、本協会におきましては、特に75歳以上の高齢顧客に投資勧誘を行う場合には、適合性の原則に基づいて慎重な対応を行う。また、さらに80歳以上の高齢顧客に対して、より慎重な対応を行うということで、高齢顧客への勧誘による販売に関するガイドラインというものを制定し、昨年3月から全ての協会員に適用しているところでございます。これによりまして、高齢顧客に勧誘した商品につきましては、原則として約定まで1日あけ、改めて当該顧客から発注があった場合に約定するといった契約締結までの熟慮期間といったものを設ける対応などを徹底することで、不必要な契約を締結させるといった事態が生じないよう、現在、取り組んでいるところでございます。

この取り組みは、私どもの協会員及び高齢顧客、ともに評判が非常によくて、また金融庁当局からも高く評価されているということで、引き続き、こちらについては取り組んでまいりたいと考えております。

以上が私どもの意見でありますが、本日、せっかくこういった機会をいただきましたので、引き続き資料の5ページ以降にあります「金融商品取引業における投資者保護制度」について、簡単に御紹介させていただければと思います。

それでは、6ページをごらんになっていただければと存じます。

1つ目が、金融商品取引業者の登録制・監督の概要となっております。この金融商品取引業者に関しましては、一定の要件をもって金融庁の登録を受けた者でなければ、そもそも営めないといった構成になっておりますし、また当然のことながら、こういった業者は、法令はもとより、私どもが定める自主規制等に基づいて、内部管理態勢の構築、その適切性について行政及び私どもと自主規制団体の検査・監督を受けるといった立場にございます。

金融庁としては、この金融商品取引法を初め、ガイドラインの適用によって、参入規制、業規制等を敷いておりますし、あわせて金融商品販売法の適用というものも整備されております。

また、私どももこれを受けまして、自主規制の適用でありますとか、営業員の資質を向上させるという観点から、外務員の試験・登録、もしくは何か違法行為をやった場合には処分するといった仕組み。もちろん、監査でありますとか協会員そのものの処分という制度も敷いてございます。

こういったことを受けまして、金融商品取引業者におきましては、まずは法に基づく登録の基本的事項というものは遵守することになります。特に、顧客資産の保全という観点からは、分別管理義務という非常に重い制度が敷かれております。さらには、先ほどの資質の向上、もしくは外務行為をきちんとやっていただくという意味で、外務員登録制度もあります。もちろんのことながら、さまざまな行為規制というものも敷かれており、それを担保するための社内規則の整備、また苦情処理態勢構築もしております。

7ページ目、ごらんになっていただきますと、2つ目は金融商品取引の枠組みです。

上の箱、やじりが2つありますが、まず2つ目のやじりにありますように、私どもの業容の特徴の1つとして、投資者におかれましては、提供された情報に基づいて、自己責任原則により投資判断を行うということを前提に成立してございます。このため、上のやじりにありますように、有価証券等の発行会社による情報開示、それから金商業者による適合性原則に基づきました勧誘でありますとか説明義務の履行といったものが前提にありまして、投資者に対し情報提供というものが適切に行われるべきという構成になってございます。

こういったことをベースに、金融商品取引業者におきましては、重ね重ねですが、適合性の原則、ないしは適切な投資勧誘・広告の表示、説明義務・書面の交付というものを義務づけておりますし、発行会社側もディスクロージャーというものが適切に行われなければならないとなっております。

投資者におかれましては、こういったものをベースに、自己責任原則のもとで取引をしていただき、投資判断に足りる適切な情報提供が行われる措置が講じられているということでございます。

最後、3点目でございますが、8ページ目の金融商品取引業者による情報の提供についてです。

こちらは、重ね重ねになりますが、投資者の自己責任原則に基づく投資判断の前提として、金融商品取引業者や発行会社は適切な情報開示というものが求められているところでございます。また、この情報提供に当たりましては、広告等における必要事項のわかりやすい表示というものもあわせて求められておりますし、また顧客属性や投資経験等に応じた適合性に基づく説明も求められております。そういったものを受けまして、金融商品取引業者は改めて、投資勧誘、広告表示、また説明義務・書面交付といった3点から、厳格なルールのもとにさらされており、これを一つ一つクリアすることによって、投資者に適切な情報の提供がなされるといった構成になっているわけでございます。

最後、9ページでございますが、とはいえ、トラブルは生ずるものでございます。そういったトラブルが生じた場合の受け皿として、まずは2つ目のやじりにありますように、ADR機関というものを私どもの業界として持っております。ここで苦情相談はもとより、協会との間で紛争がありましたら、これを解決するための仕組みとしてのあっせん機関としての役割も担っておりますし、また別途、金融商品取引業者において苦情等を受けまして、例えば誤認勧誘等があり、顧客に問題がないのに損をさせられたということであれば、損失補填をなすという意味での仕組みというものも、あわせて行政当局及び私どものほうで用意しているということで、このいわゆる損害賠償に相当するような仕組みというのも、既に適切に機能しているものと考えているところでございます。

非常に簡単ではございますが、以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。後藤巻則委員。

○後藤(巻)座長代理 4ページの不当勧誘行為に関するその他の類型についてというところで、教えていただきたいことがあります。3つの類型についてのご意見は、執拗な電話勧誘の場合には、特商法改正で議論していただきたいということ。それから、不招請勧誘の場合には、個別の業法等において、慎重に検討していただきたいということで、この2つの場合には、消費者契約法で扱うということについて否定的ということだと思います。

3番目の合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型に関しては、本件の要件等については、特に慎重に検討していただきたいということが書いてありまして、要件等を慎重に検討すれば、この類型に関しては消費者契約法で規定するということについて、考えられるということでしょうか。私は、高齢者被害等の救済ということから考えると、この合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型というのは、消費者契約法に規定する必要があると思っています。要件は、おっしゃるとおり、もっと詰める必要があると思うのですが、こういう方向で今後も考えていくということについて、どういうふうにお考えかということを教えていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会山内執行役 御指摘であります、消費者契約法の中でこういった高齢顧客を初め、判断がなかなか難しいと思われるような方々に対する措置というものを講じていただくこと、そのものに私どもとして、その方向性に反対するものではありませんし、賛同するものであります。

ただ、先ほども御案内申し上げましたように、有価証券取引には投資者の自己責任原則というものが根底にございます。私どもとしては、この自己責任原則というものを果たして果たせるものかどうかという観点からの、いわゆる適合性といったものを判断していく必要があると思いまして、これをいかに具体化するかということに関しては、慎重に検討する必要があるのではないかと、まずは考えているところでございます。

業界といたしましては、こういった取り組みに先んじてと申し上げていいかわかりませんけれども、高齢者に対する勧誘の対応ということで、勧誘留意商品、具体的には投資信託等になりますが、こういった商品に関しては、もちろんお勧めさせていただくのですけれども、その場で約定するのではなくて、1日待っていただく。または、こういったケースの場合には御家族の方の御懸念が非常に高い。これは、FINMACへの相談・苦情等を勘案しますと、そういった実例も多く見られたこともありまして、例えば家族の方に同席いただく。そういった条件と申しますか、状況をつくった上で取引し、かつ自己責任のもとで取引していただくような環境整備をさせていただくといった取り組みを進めておりますので、ぜひそういった取り組みを踏まえて御検討いただきたいといった趣旨でございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに。河野委員。

○河野委員 御説明ありがとうございました。

非常に初歩的な質問ですけれども、先ほど後段のほうで、金融商品取引業における投資者保護制度というのを説明いただきました。ここに書かれているような環境に置かれているというのが大前提だと理解しましたが、日本証券業協会さんに金融庁の登録を受けた取引業者さんは100%加入しているのか。加入率みたいなものがわかれば、ここに加入されている方はルールにのっとってやられていると思うのですけれども、そうじゃない事業者がいるのかというのが1点目の質問です。

それから、2点目の質問は、今回の消費者契約法の検討というのは、環境の変化に対応するということで、例えば営業方法の多様化というのも1つあると思います。金融商品は、かつては対面だったと思いますけれども、今はインターネット等を通じて販売される場合もふえていると思います。

そうした場合に、対面での特性ももちろんありますし、それからネットでの特性というのもありますけれども、そういった媒体の特性を考えた対応をしていらっしゃるか。先ほど高齢者に対して御対応されていると伺いましたけれども、そういったことをやられているのかどうかというのを教えてください。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会山内執行役 それでは、1つ目のほうの御質問でございます。私どもにどの程度加入しているか、こういう御質問かと思いますけれども、簡単な言い方をさせていただきますと、いわゆる証券会社と言われている社は、正確には有価証券関連業を営む第一種金融商品取引業者と申しますが、全社、私どもの会員として加入してございます。もう一つ、先ほども御紹介ありましたけれども、登録金融機関がございます。こちらには、銀行さんとか損害保険会社さん、生命保険会社さん等々、その他の金融機関の方で、かつ金融商品取引を行っている業者さんもございます。こういった業者さんにおきましては、残念ながら全社というわけではございませんが、主要な会社の方々はほとんど加入いただいていると受けとめています。

では、加入していない方はどうなのかと申しますと、これはこれでまた、金融商品取引法の中で、私どもに加入していない業者について、私どもが定める自主規制と同等の社内規定を定めなければならないということになっておりますので、そういった意味での規制方というのは、私どもに加入、不加入にかかわらず、行政法上の措置で対応できているものと理解しております。

○日本証券業協会嶋自主規制本部審議役 2つ目の御質問でございますけれども、御指摘のとおり、最近では業容が非常に拡大してまいっております。私ども、自主規制の規則をつくる際に、できる限り幅広く、規則をつくる段階ではワーキング・グループ等の会議体を持ちまして、そこで検討していくわけですけれども、必ずいろいろな業態の方の代表も入っていただく。その中で、みずからの業態に照らして、遵守すべき規則というものを検討いただきながら、まず規則をつくってまいります。

昨今ですと、委員から御指摘のありましたとおり、インターネットが非常に大きな話題になっているという認識がございまして、特にその面でなりすまし、いわゆるマネーロンダリング、こういった点が最も心配される部分でございますので、ここについては、今回、ちょうど犯罪収益移転防止法の改正等もございましたので、特に非対面取引等の取り扱いに関しては、インターネットの場合はこういうふうに確認しましょうというガイドラインの改正なども既に準備ができておりまして、それぞれの事情に関して、個別業態で必要な措置というのは常に視野に入れつつ、対応しておるという状況でございます。

○山本(敬)座長 それでは、河野委員。

○河野委員 今の御説明ですけれども、特に個別業態でということで、情報提供とか消費者保護の適合性をしっかりと見きわめるということも含めて、インターネットを通じてもそういった対策はやられていると理解してよろしいでしょうか。

○日本証券業協会嶋自主規制本部審議役 例えば私ども、御説明させていただきましたとおり、いろいろな説明義務が課されております。そういった中で、対面証券会社ですと、当然何らかの資料をお配りして、それを読み上げるなり、お客様の反応に応じて追加説明をさせていただくということを行うわけですけれども、インターネットではそれができません。そのために、例えば書面を画面上に表示させていただいて、その内容について御理解いただけたかどうか。そういったワンステップを踏んでいただく。そういうチェックボックスを入れていくという対応を行うよう、行政からも御指導がございますし、自主規制としましても、そういうものをお客様にわかりやすく、理解されたことを確認しつつ、前へ進んでいくというふうに指導しております。

○山本(敬)座長 では、ほかに。山本健司委員。

○山本(健)委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。

資料3-2の3ページの下のほうの「『勧誘』要件の在り方について」という部分に関して、質問させていただきます。

一般的な契約締結手続では、広告による誘引行為があった後に、契約締結の段階でちゃんとした契約内容の説明がなされて、最終的に契約締結に至るという順序を経るのではないかと思います。言い換えれば、勧誘要件が改正されても、契約締結の段階でちゃんとした契約内容の説明がなし得る以上、広告の段階で重要な情報を全て盛り込まないといけないといった必要などは生じないのではないかと思うのですけれども、この資料の下から3行目から2行目にかけての「全ての『広告等』に一律に重要事実を盛り込むことは困難であり、事業者の混乱を招く」という御意見ないし問題意識は、具体的にどのような事例を想定しておられる御意見なのでしょうか。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋自主規制本部審議役 金融商品取引法が成立しました平成19年でございますけれども、この際に広告の規制というのがかなり細かく、いろいろな規定が入りました。その中で典型例といたしましては、例えばテレビCMであったり、電光掲示板によるもの、あるいはノベルティーグッズという形で、よく皆様もお手にされることがあると思うのですけれども、会社名だけぽんと書いたようなティッシュであったり、そういったものが配られることがあると思います。

こういったものについて、遠くから仰ぎ見ている看板だけを見て、実際に投資をいただく方はあるだろうかということを考えたときに、恐らく次のステップがなければ実際の行為には至らないだろうということがございますので、そういった立て看板や電光掲示、あるいは放送時間が限られているテレビCM等においては、最低限表示すべきものが種別分けをされております。その中で、必ず伝えることに、有価証券の価格が変動することや、契約に当たっては目論見書をお読みくださいといったことだけは、最低限書きましょうという形で決まっておりまして、逆に小さいところにこういうことは書いちゃだめだよという要素も、金商法その他政省令の中で規定がございます。

したがいまして、どういうふうに使われる広告か、こういった要素が勘案されて、それぞれに応じた必要事項が決定されていく。このように理解しておりますので、今後の御検討に当たっては、そういう点をぜひ御配慮いただきたいというところが私どものお願いでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、増田委員。

○増田委員 パワーポイントの資料の4ページ目の3つ目の黒ポツでございますけれども、合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型を新たに不当勧誘行為に規定することについて、いろいろな御懸念があるということで、その中で、「認知症等ではないか」といった消費者側に不快と思われる確認も行わなければいけない可能性もあるという御指摘で、まさしくそうだろうと思います。

今、既に適合性の原則、例えば余裕資金がどのぐらいかとか、経験はどうかとか、いろいろ聞いた上での勧誘活動をされていると思いますが、そのほかに説明の理解の程度をはかるポイントというのもおありかと思います。説明をその方がどの程度ちゃんと理解しているかということ、認知症じゃなくても理解ができない方もたくさんいらっしゃいますので、そういう確認というのは現状、どのようにされていらっしゃるのでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本証券業協会嶋自主規制本部審議役 認知症の話でございますので、先ほど山内のほうが例に挙げさせていただきました高齢者のケースを例にとってお話ししたいと思います。

私どもが制定いたしました高齢者取引に関するガイドラインの中では、まずはお客様に商品をお勧めするに当たって、営業員が自分の判断だけで勧誘してはいけないという部分からスタートいたします。必ず自分の上席者・役責者の者に、この方にこの商品をお勧めしてよいでしょうかという相談をしなさい。そこで承認を得たものでなければ勧誘をしてはならないとしています。

では、上席者はどうやって判断するのかというのは、その都度、もしくは定期的に当該お客様に面談を行います。その面談を行う中で、そのお客様の健康状態であるとか理解力、これをいろいろな日常会話をさせていただく中で、このお客様はこういう商品についてちゃんと理解できる方かどうか、こういうことをあらかじめ把握しておきます。その上で、担当営業員から、この商品をお勧めしたいという申請があった際に、自分の見てきたことを判断材料として承認する、あるいはこのお客様にこの商品をお勧めするのはやめておきなさいという承認拒否をするという過程を組ませていただいております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、日本証券業協会へのヒアリングは、このあたりとさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(日本証券業協会退席、生命保険協会着席)

(3)一般社団法人生命保険協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続きまして、生命保険協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、生命保険協会から、同協会の消費者法制研究会座長であり、日本生命保険相互会社調査部専門部長である遠山優治様、同協会の消費者法制研究会委員であり、日本生命保険相互会社調査部課長である尾崎義夫様に御出席いただいております。お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○生命保険協会遠山消費者法制研究会座長 生命保険協会の消費者法制研究会の座長をさせていただいております日本生命調査部の遠山と申します。よろしくお願いいたします。本日は、貴重な機会を頂戴しまして、ありがとうございます。私からは、消費者契約法の見直しに対します生命保険協会の考えということを御説明させていただきたいと思います。以下、座って、よろしくお願いいたします。

それでは、資料、お手元に4-1、4-2、4-3というものが配付されているかと思いますが、私どもの本日の御説明は、資料4-2、それから4-3は参考資料になりますが、それを使って御説明させていただきたいと思います。

早速ではございますが、資料4-2の2ページをごらんください。まず、簡単に生命保険協会の概要を御紹介いたします。

生命保険協会には、全ての生命保険会社41社が加盟しております。生命保険協会は、設立以来、これらの加盟会社がお客様の視点に立ち、適切で健全な業務運営を行えるよう、各種情報提供や自主ガイドラインの策定といった取り組みを行っております。また、指定紛争解決機関、いわゆる金融ADR機関として、生命保険に関する相談や紛争解決に関する業務を行っております。

続いて、3ページをごらんください。生命保険の特性というものについて御説明させていただきます。

生命保険は、相互扶助の精神に基づき、皆でお金を出し合いまして、保険事故が起きた場合にそのお金の一部を御遺族などの受取人に対して支払う仕組みとなっておりまして、そのために、そこに本質的に内在するさまざまな特性があると考えてございます。

まず、左側でございますが、保険商品一般の特性としまして、保険事故発生のリスクが等しい、一定の被保険者の方々の集団を前提といたしまして、確率と大数の法則というものを応用した数理的基礎に基づき、お支払いする保険金とお客様からいただく保険料が等しくなるように商品設計されているという点が挙げられます。この点を反映しまして、約款において保障の範囲を詳細に規定したり、危険選択というもののためにお客様から医的情報を提供いただいたりするということが必要とされております。

次に、右側でございますが、生命保険独自の特性といたしまして、健康なうちは加入の必要性を意識しにくいニーズ潜在型の商品であるため、勧誘時にはニーズ喚起が必要であるということが挙げられます。また、高額・長期で複雑な商品でもありますので、お客様とのやりとりの中での適切な情報提供も必要となってまいります。一方で生命保険は、悪用すれば、わずかな保険料で大きな保険金を手に入れることも可能です。したがって、逆選択やモラルリスクを排除するための仕組みも必要となってまいります。また、一旦解約や失効いたしますと、健康状態などによってはもう一度新たに保険に加入するということが困難となるというのも、生命保険の特性の一つだと考えてございます。

生命保険に関します法制度や実務は、このような特性を踏まえまして、その歴史の中で構築されてきたものでございます。

4ページから5ページでは、そういった法制度や実務の経緯をまとめてございます。本日は細かい御説明はできませんが、生命保険業界では、各界の御提言等をいただきながら継続的に約款やお客様への説明の適正化というものを図ってまいりました。

最近では、5ページの一番下にありますように、募集文書の簡素化や高齢者向けのサービスの充実を図っております。また、現在、来年5月に施行される改正保険業法への対応として、募集手続に関する実務見直しをまさに今、進めている最中ということでございます。

6ページからは、保険募集規制の概要を御紹介いたします。

まず、6ページ、左上の枠内でございますが、保険業法では、募集人登録、態勢整備義務、行為規制などに関する規律が定められております。そして、こうした規制を踏まえ、その下の枠内でございますが、生命保険協会では自主ガイドラインを策定するほか、業界共通の試験に合格した者だけが募集人登録できる仕組みというものをつくってございます。

また、その右の中央の枠内にございますとおり、各生命保険会社でも募集人の資質確保に取り組むとともに、募集ルール、金融商品販売法に基づく勧誘方針の徹底をはじめ、マナー、サービスの向上に努めております。

続いて、7ページをごらんください。ここでは、保険募集の大まかな流れを記載しております。

保険募集については、保険業法の禁止行為に加えて、態勢整備義務に基づき、金融庁の監督指針においてお客様が保険商品の内容を理解するために必要な条項をまとめた契約概要や、お客様の不利益になる事項などをまとめた注意喚起情報といった書面を利用して情報提供が求められており、提供すべき情報の項目についても詳細に定められております。

約款や約款の内容をわかりやすく説明したご契約のしおりにつきましても、申し込み前に交付しております。保険商品の概要や注意喚起情報、約款、ご契約のしおりは、現在では多くの会社のホームページで公表されており、いつでも御確認いただけるようになっています。

また、申し込み時には、お客様の御意向に合致しているかを意向確認書というものによって確認しております。

資料、飛びますが、資料4-3のほうでは、参考資料1といたしまして、法令ですとか、本体の8ページに挙げさせていただいております自主ガイドラインを受けまして、日本生命で作成し、実際に使用している募集文書のイメージを掲載しておりますので、御参考としていただければと思います。

また、その後ろの参考資料2では、来年5月に施行予定の改正保険業法の情報提供義務に関する条文などを掲載しております。改正法では、法律で情報提供義務が規定され、施行規則や監督指針において具体的に提供すべき情報が列挙されております。具体的には、商品の仕組み、支払事由をはじめ、契約内容に関する情報を提供すべきとされております。

それでは、本体資料のほうに戻りまして、9ページから11ページをごらんください。各生命保険会社では、契約者保護の観点からさまざまな取り組みを行っておりますが、残念ながら、おしかりや苦情をいただくこともございます。基本的には各社で対応することとしておりますけれども、中にはお客様と会社との間で直ちに問題を解決することが難しい場合もございます。

そこで、生命保険協会では、10ページのように、生命保険相談所という相談窓口ですとか、裁定審査会というADR機関を設置いたしまして紛争解決に取り組んでございます。

また、11ページのように、各生命保険会社でも個別の苦情への適切な対応はもちろんのこと、お客様からのお申し出を経営の視点で分析し、よりよいサービスを提供できるよう、日々改善取り組みを行っております。

このような中で、生命保険はたくさんの方に御利用いただいてございます。12ページをごらんください。

例えば保有契約件数は約1億7,000万件、世帯加入率は民間生保で約8割と、皆様にとっても身近な商品なのだろうと思います。また、保険金のお支払いにつきましては、昨年は民間生保合計で約2,700万件、約11兆円という件数・金額となってございます。11兆円と申しますとわかりづらいことになるかもしれませんが、国の平成27年度の一般会計予算が約100兆円ということですので、その大きさをイメージいただけるのではないかなと思っております。

これらを前提といたしまして、今般の消費者契約法の見直しに対する生命保険協会の考えを御説明したいと思います。13ページに、先ほどの生命保険の特性をもう一度掲げさせていただいております。

先ほど申し上げましたとおり、保険は数理的基礎に基づいている、ニーズ潜在型である、健康状態などにより再加入が困難となるといった特性がございます。ここまで御説明してまいりました規制ですとか業界の取り組みも、このような特性を踏まえ、検討されてきたものでございます。また、これから御説明します生命保険協会の意見につきましても、そういった生命保険の特性や業の規制との関係といった観点も踏まえて、議論をお願いしたいというのが基本的なところでございます。

すなわち、14ページになりますが、消費者契約法の見直しにより、保険制度の根幹にかかわる部分に抵触するような規律が設けられたり、業規制を遵守しているにもかかわらず、新たに消費者契約法上の責任を負うケースが出てきてしまう、そういったことになりますと、保険取引の安定性を害し、また手続が複雑になってしまうなど、かえって契約者の御迷惑にもなりかねないということを懸念してございます。

15ページ以下では、資料4-1の、先般提出させていただきました意見書から主なものを抜粋してございます。

まず、15ページ、不当勧誘の関係でございますが、保険募集におきましては、契約者保護、取引の安全等の観点から、法令等の規律に違反しないようにという形で、予防的・保守的に対応するという形をとらざるを得ません。そのため、どのように対応すれば契約が取消事由に該当しないのか、また、そういう対応が実務上可能なのかといった観点から、適切な要件の設定及び要件を明確化するということをお願いしたいと考えております。

続いて、16ページをごらんください。不当条項の関係でございますが、生命保険の約款には、生命保険の特性に沿って規定されている、適切かつ合理的だと考えております条項がございます。これらが無効とならないように配慮いただきたいと考えております。特に、一律に無効とすることにつきましては回避いただきたいと考えております。

具体的には、総論の欄に書いてございますが、不当条項の類型を追加するとしても、10条の前段要件の明確化にとどめ、10条後段の要件は維持していただきたいと考えております。10条の後段要件への該当性につきましては、保険の実務を含む総合的な判断を行う最高裁の判例がございますが、新たな判断基準が設けられた場合、判例において有効と認められた、その条項が、改めて不当条項ということで争われる、もしくは不当条項とされる懸念があると考えてございます。

また、「中間取りまとめ」では、一律に無効とする条項として、消費者の解約権を放棄させる条項、この資料ですと左の真ん中、マル1としているものでございますが、それが示されてございます。解約権を放棄・制限させる条項に関しましては、例えば終身年金保険というものがございます。この保険は、被保険者が生きておられる限り、年金をお支払いし続けるというものである一方で、亡くなった場合の給付はないというものになってございます。約款では通常、年金の開始後というのは解約ができないと定めてございます。

これは、保険数理的な観点から、死期が近づいたお客様が契約を解約して返戻金を手にするということを防ぎ、健全な保険群団として健全な制度を維持するための規定でございます。解約権を放棄させる条項が一律に無効とされた場合、このような年金保険が成り立たなくなるおそれがあります。

また、高齢社会への対応として即時年金という、保険料を一括払いいたしまして、加入と同時に年金給付をスタートするという商品もございます。このような商品が提供できなくなってしまうと考えてございます。

終身年金は、生命保険数理に基づいておりまして、民間では生命保険会社しか提供できない商品だと考えております。このようなお客様が将来に備えるための選択肢が失われることのないようにお願いしたいと考えております。

最後に、消費者保護の観点から対応が必要な事案について、法改正により対応するという趣旨は理解いたしますが、一方で、それによって商品開発が阻害されたり、事業活動に支障が生じたり、また、かえって消費者に有益な取り扱いまでができなくなるといったことも懸念されます。本日御説明させていただいた点も踏まえまして、適切な要件・効果が明確かつ客観的に設定されるよう御検討いただければ幸いです。

駆け足となりましたが、生命保険協会からの御説明は以上となります。御清聴ありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。

丸山委員。

○丸山委員 よろしくお願いいたします。

パワーポイントの15ページ、そしていただいている資料4-1の2ページに関連しまして質問させていただければと思います。

まず、契約締結過程に関する規律について御意見をいただいているところなのですが、今回、パワーポイントの説明のところでは少々省略されたのですけれども、「勧誘」要件の在り方について、広告は、紙面とかスペース等が限られているという懸念が述べられているのですが、今回の「中間取りまとめ」の議論では、広告とかに重要な情報を全部載せるといったことは全く要求していないと思うのですけれども、どうしてこういった懸念につながったのかという点を知りたいというのが第1点。

第2点に関しましては、パワーポイントの15ページの重要事項、資料4-1で言うところの不利益事実不告知の改正の不実告知型のところについて示されている懸念ですが、ここでは消費者側の内心の事情について、事業者が全て知ることは困難であるということが指摘されているのですけれども、この不実告知型というのは、利益となる旨の具体的な告知がまず事業者からされて、それによって消費者が不利益な事実はないのだと思ってしまう類型だと思いますので、消費者の内心を事業者がしっかり知らなければいけないというところには、必ずしもつながらないように思います。こういった御懸念につながった理由というか、ポイントがありましたら、これも教えていただければありがたいと思いました。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○生命保険協会遠山消費者法制研究会座長 1点目の広告の点ですけれども、生命保険会社の広告はイメージ広告が多く、タレントの方々が出てこられて、最後に商品の特徴であったり、訴えたいところを示して、「ご検討に当たっては・・・」という注意文言が出てくるという形に、基本的にはなっています。もう少し細かい商品の説明をされる会社もあると思うのですが、どうしても宣伝ということになりますので、商品の特徴、いい面と言っていいのかどうかわかりませんが、そちらをアピールするということが広告の目的でもあろうと思っております。

そうしたときに、保険商品の場合には、必ず、支払える場合に対して支払われない場合がありますので、そういう意味では、不実告知型と言われているものになるのでしょうか、不利益事実をきっちり説明しなければならないとなると、メリットだけ出していくということが恐らくできなくなってしまう。そうすると、いろいろな不利益事実を広告の中に入れていくことにならざるを得ないのではないかということが懸念されるということでございます。

保険募集の法制では、先ほど御説明しましたが、契約概要、注意喚起情報、ご契約のしおりと、順番を追って、商品のポイントや不利益事項を説明するという建付けになっており、それも時期感も少しずれるような形での提供に、実際のところなってございますので、そういった業規制との関係でも、最初の広告のところに不利益事項も含めて全部書き切れるかということを、場合によっては気にしなければならないような規律になってしまうのではないかということを懸念しているということでございます。

それから、不実告知型のほうでございますが、まず不実告知型と不告知型のこの2つが、そもそも実態的にどう分かれるのかよくわかっていないところがございます。その上で、不利益事実の不告知ということについて、重要事項の範囲も広がったときに、どこまで、どういうことをやらなければならないかが、まずよくわからないというのが正直なところでございます。そういう意味で、「契約の締結を必要とする事情に関する事項」というのが、おそらく動機の部分ということになるのでしょうが、民法と異なり、表示を必要とすることが、今、検討されていない中にあっては、内心の事情も含む規定になるのではないかということを、心配しています。

それとの関係で、実際に営業をするときのことを考えますと、お客様に信頼されてご契約を長く続けていただくためには、単に説明しなければいけないことを説明しておけばいいということではなく、お客様が気にされることにはできるだけ答えていく必要があると思っております。そういう意味では、説明したことが動機になり、誤認していないか確認しなければならないということになり、それができない状態で、提供した情報が間違っていたときに、取消しになってしまうということであれば、情報提供せずに保守的に間違いのない部分だけでお客様説明を進めてしまうことにもなりかねないと思っております。

お客様サービスでいろいろな情報を提供しようとしていることが、間違ったら取消しですということの結果として、反対に振れてしまうことにならないかということを懸念しているということでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに。大澤委員。

○大澤委員 御報告ありがとうございました。

パワーポイントの資料4-2の16ページについて、2点質問させていただきたいと思っております。

まず、1点目ですけれども、総論の不当条項の類型を追加するとしても、現行法10条前段の明確化にとどめ、10条後段要件は維持いただきたいという点ですけれども、こちらについて確認させていただきたいのですが、これはマル1からマル4に具体的に列挙されているようなもの、いいかどうかはともかくとして、具体例を挙げることは構わないのだけれども、その判断基準を現行法10条後段要件と同じものにしてほしいという趣旨だと理解したのですが、それでよろしいのでしょうかというのが1点目です。

もう一点の質問といいますのは、その下の部分にあるマル2、マル3で出てくる話ですが、マル2で出てきている最高裁判決は非常に有名な判決で、ここにお書きになっているとおり、実務上の運用が確実になされているのであれば、条項は無効にならないと判断されたという判決で、この判決の理解に関しては、理解の仕方は私はいろいろあり得ると思っているところですが、ここで言われている、例えば実務上の運用、督促をする前にはがきで通知するとかいう話だったと思いますが、そういう運用をしていると伺っております。あるいは、マル3でも、実際には実務上、事前に通知・訪問等の対応をやっていますということを書かれていらっしゃるのですけれども、この条項の内容が無効かどうかを判断するときは、基本的にはその条項に書かれている内容が本当かどうかを判断することになりまして、そのときに実務上、どうしているかというのを判断していいかどうか、これが1つ論点としてあり得ると思うのですが、私が伺いたいのは、実務上、こういうことを運用としては行っています、そういう配慮をしていますという点は、どういう根拠で、例えば自主規制等でどの生命保険会社さんでもやることになっているのかとか、大部分の生命保険会社さんでやっているのかとか、そういうことを教えていただきたいということです。

以上です。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○生命保険協会遠山消費者法制研究会座長 1点目につきましては、現行の消費者契約法10条に、そのことのよしあしはともかく、解約を制限するものは前段要件に違反しているものですというようなことを明示するという点においては、それは異論ないところと考えております。ただ、後段についての判断というのは、先ほど申し上げたとおりです。

2点目の平成24年の最高裁判決に関する具体的な実務取り扱いにつきましては、資料4ページの昭和56年の国生審消費者政策部会の「消費者取引に用いられる約款の適正化について」の御提言をいただいて、協会内で書面をきっちりと送りましょうということを内部通達の形で徹底して、行っているものになります。基本的には、全てのお客様に対して、協会加盟会社全社ということになると思いますが、やっていると考えてございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、山本健司委員。

○山本(健)委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。

私からは3点、質問をさせていただきたいと思います。資料4-2の15ページ、16ページの部分でございます。

1つ目は「マル1重要事項」の部分です。先ほどの丸山委員の2番目の御質問と絡むのですが、重要事項の議論における「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」というのは、例えば「電話回線がアナログ回線からデジタルに変わります。今までの電話は使えなくなります」と言って、そのように誤信させて通信機器のリース契約を締結させたという事案での、従前の電話使用の継続の可否などが典型例だと思います。これは個々の消費者の内心の事情ではなく、消費者による開示といった問題も生じないように思います。

この点、15ページのマル1の御意見の中の「消費者側の内心の事情等について、事業者が全てを知ることは困難であるため、『消費者から事業者に内心の事情等の表示があった場合に限る』等、客観的に判断可能な要件を設定していただきたい」という御意見については、具体的に「消費者側の内心の事情等」として、どのような事由を想定された上での御意見なのかをお聞かせいただきたいというのが1点目でございます。

2点目は、その右のマル2の「不招請勧誘」のところに記載いただいております不招請勧誘に関する御意見の射程に関する御確認です。今回の御意見は「契約は必要ありません。要りません」と明確に契約締結を拒否している消費者に対して、なおも勧誘行為を継続することまでも、生命保険契約においては許容されるべきである、という御意見内容なのでしょうか。これが御確認の2点目でございます。

3点目が、資料4-2の16ページのマル1の「消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項」の括弧の中に記載頂いております「終身保険契約等では、給付開始後には契約の解除を認めていない」という部分について、具体的な商品内容や契約条項について存じ上げないので、教えて頂けませんでしょうかという質問でございます。例えば、保険料を契約締結時に一括納入した後に、契約者がお金に困って解約してほしいと申し出た場合にも、一切解除は認めないといった契約条項なのでしょうか。

よろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○生命保険協会遠山消費者法制研究会座長 1点目の重要事項の表示のところですけれども、生命保険に関しては、恐らく税の問題が可能性としてはあるものと思っております。一般的な税の説明はするのですが、いろいろと問題があり、お客様の財産の状況であったり、ほかのご契約にどれだけ入っておられるかということも含めて、最終的に当該契約で税の効果を得られるかどうかは、保険会社にはよくわからないところがございます。それを一般的な税の説明をしているところで、その税の効果を自分が得られるのだと誤認されてしまったときに、それを訂正することができるかどうか、物理的にも、ほかの法律との関係でも難しいところがあり、そういう点を気にしております。

その意味で、意見書では、内心の表示というところをお願いしております。この調査会の中でも議論されている、例えば点検商法の話も、動機を業者側が悪いようにつくり出したことが問題で、要は動機をつくっているわけですから、当然、動機はわかるものと思います。そういったことも含めて、きちんとした説明ができる、もしくは説明できない場合には説明できませんというお話ができるような環境をつくっていただきたいということでございます。

それから、2点目の不招請勧誘の部分ですけれども、ここにつきましては、一度断られたお客様のところにしつこく行くというお話まで、当たり前だと、そこを排除すべきではないということを申し上げているつもりはありません。また、お客様の立場にたって電話や訪問を行う、時間・場所などの配慮というのは今もさせていただいています。ただ、先ほど申し上げたニーズ喚起が必要だということと、逆選択という問題がありまして、生命保険で自発的な申し込みの方々というのは、一般的にはどこか体に不安をお持ちの方々が多いということがあって、そういう方々ばかりが加入されてしまうと、保険数理の前提が崩れてしまうことになります。

そういう意味では、逆選択が生じないようなお客様にも入っていただかなければならないということになり、一度お断りされたからもう二度と行きませんということですと、そういう活動に支障が生じると思っております。そういう意味で、お断りを受けましたけれども、また改めてどうですかということが言いに行けるのかどうか、再勧誘は一切だめ、勧誘したのが5年前、10年前でもだめですよということではなくて、一旦考え直していただけるような状態をつくった上での再訪問は可能とするなど、バランスをとっていただきたいと思っております。

また、生命保険の場合には、いきなり保険に入っていただけませんかというのは、なかなか難しく、ご提案すらできないのが通常です。初めてご訪問するお客様は、お名前も誕生日もわからないので、保険料が決められず、お客様をご訪問しても保険を募集することができません。生命保険の募集活動は、まずはお客様とお知り合いになってお話しする機会をつくらせていただいて、一定の信頼関係をつくり、それからやっと保険の説明をして、先ほど申し上げたような保険の規制にかかわるような勧誘の類型に入っていくというのが一般的なものだと思っております。

したがって、商品内容をご説明する以前の段階で、最初から、一度だめだと言われたらもう二度と勧誘できない、あとは自発申し込みだけだということになると、保険の数理的な面も含めて、どのような影響があるのか正直見通せないと考えてございます。

それから、3点目の終身年金でございますけれども、こちらにつきましては、年金開始後については基本的に一切解約できないという形の約款になっているものが多くなってございます。商品によっては、保証期間がある終身年金というものがあり、保証されている金額を一時金で払い戻すことは可能ですが、一生涯の年金を保障するというのが終身年金の商品のポイントのであり、亡くなるまでお支払いし続けますということが前提になっています。逆に言うと、亡くなりそうになったときに解約金を引き出して解約するということは、保険の性質上といいますか、保険商品の設計上、問題があるということになりますので、年金の開始後については解約できないと規定しているのが一般的となっています。

ただし、保険料の払い込み期間中は解約できるのですが、先ほども申し上げましたとおり、保険料を一時払いで払い込み、直ちに終身年金の受取りを始めるという商品もありますので、そういったものが放棄に当たり得るのではないかということで、商品開発に影響しないかと懸念しているところでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、生命保険協会へのヒアリングはこのあたりにさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(生命保険協会退席、日本損害保険協会着席)

(4)一般社団法人日本損害保険協会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続きまして、日本損害保険協会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。

本日は、日本損害保険協会から、同協会の企画部会長であり、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社経営企画部経営調査室長である中島伸一郎様、同協会の企画部会法制PTリーダーであり、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社経営企画部経営調査室次長である森満昭宏様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○日本損害保険協会中島企画部会長 皆様、こんにちは。日本損害保険協会で企画部会長を務めております中島と申します。本日は、このような意見を述べさせていただく大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。以降、座って御説明させていただきます。

社会経済状況の変化への対応は、我が国が抱える大きな課題の一つであり、この専門調査会においても大変重要な御議論が行われているものと認識しております。これから申し上げることにつきまして、今後の御検討の参考としていただけましたら幸いでございます。本日は、まず損害保険の概要、お客様の保護や利便性の向上に向けた業界の取り組み等を御説明いたします。次に、「中間取りまとめ」の論点に沿って、御留意いただきたい事項を御説明いたします。なお、時間も限られておりますので、ポイントを絞った御説明となりますことを御容赦ください。

最初に、損害保険につきまして御説明させていただきます。2ページをごらんください。

中ほどに3つ、絵がございますが、損害保険は、自動車を運転する、マイホームを買った、夏休みに海外に行くといったように、日常生活における万が一に備えるものとして、加入ニーズが明確になりやすいという特徴があります。また、例えば自動車保険の契約台数ですが、年間約5,800万台ございまして、多くの方が損害保険契約に申し込みをされている、生活に密着したものであると言えると思います。

続きまして、3ページをごらんください。日本損害保険協会について御説明いたします。

日本損害保険協会は、約70年にわたって損害保険の普及や信頼性向上に取り組んでまいりました。業界全体の業務品質向上にも積極的に取り組んでおりまして、資料右側、中段に記載しておりますように、例えば適切な募集体制を構築するためのガイドラインなど、損害保険会社が自社での取り組みを進めるための参考となるよう、19のガイドライン等を作成しております。そのほかにも、「お客様の声・有識者諮問会議」や、「そんぽADRセンター」など、お客様の声を業務運営に反映させる仕組みや、お客様からの相談を受ける体制も整えております。

続いて、4ページをごらんください。当協会の消費者保護に向けた具体的な取り組みについて御説明いたします。まずは、わかりやすい情報提供についてです。

損害保険では、御加入に当たり、重要事項説明書等を用いた情報提供が行われております。約3年前、この重要事項説明書をお客様の目線に立って、よりわかりやすいものとするため、資料中段に記載しておりますように、有識者の方々によるタスクフォースを設置いたしました。その検討に当たっては、帳票デザイン専門家等からも御意見をいただくなど、さまざまな視点から分析を行いました。一般的に、保険の書類は記載されている情報が多いため、読みにくいと言われておりましたが、この取り組みの結果、この資料の最後の11ページの参考資料1に記載しておりますとおり、書類のページ数は半減、文字数は4分の1となるなど、より見やすいものとなりました。

また、4ページの資料右下に記載しておりますが、金融庁の金融審議会でも、お客様へ提供する情報量のあり方についての指摘がなされておりましたが、当協会のこれらの取り組みについて御評価をいただきました。

続いて、5ページでございますが、保険募集の品質確保について御説明いたします。

先ほど御説明いたしました重要事項説明書を用いて勧誘を行う保険募集人に対しまして、業界統一の試験制度を設けております。また、適正な勧誘を行うためのガイドラインの見直しを行うなど、募集品質の向上にも積極的に取り組んでおります。

続いて、6ページでございますが、保険約款のわかりやすさ向上について説明いたします。

先ほど4ページで重要事項説明書の見直しについて御説明いたしましたが、約款についてもお客様にわかりやすいものとなるよう取り組んでいます。資料中段記載の「保険約款のあり方に関する研究会」では、消費者モニタリングも踏まえ、難解な文章や用語の見直しについての報告書を取りまとめていただきました。その報告書では、約款にはわかりやすさと法的安定性が重要であるという御指摘をいただき、当協会では、この2つの視点を踏まえてガイドラインを策定いたしました。そして、各保険会社も、この2つの視点に注意しながら、わかりやすい約款の作成に努めております。

続いて、7ページでは、保険金支払いや相談窓口について御説明いたします。

損害保険業界では、保険の勧誘に関することだけでなく、保険金支払に関するガイドラインの策定や、さまざまな相談窓口の整備などにも取り組んでおります。例えば相談窓口の整備としては、資料右側の「そんぽADRセンター」を設け、中立・公正な立場から、お客様と保険会社とのトラブルについて早期解決を図っております。

また、寄せられた苦情について、円満な解決につながるよう、保険会社へのアドバイスを行っております。

続きまして、8ページから10ページで「中間取りまとめ」に関する意見を述べさせていただきます。

まずは、情報提供義務と不告知型についてです。

お客様が商品やサービスの内容等を正しく理解できるよう、事業者が適切な情報を提供するように努めることは当然のことであります。一方で、金融審議会でも何度か指摘されているように、お客様に提供される情報量が多くなると、かえって理解の妨げになるということもあるという点も考えなければなりません。「中間取りまとめ」では、一般的な情報提供義務に先立ち、まずは不告知型における先行行為要件の削除が検討されている点につき、意見を述べさせていただきます。

先行行為要件を削除することによって、事業者が提供を求められる情報量は大きく増加します。その理由は、現行法では事業者が提供すべき情報の範囲は、重要事項のうち、先行行為要件に関する不利益事実に限定されておりますが、先行行為要件が削除されることによって、提供すべき情報の範囲が重要事項一般に係る不利益事実全体に広がるからであります。また、もともと現行法の重要事項が「消費者が当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」という抽象的な規定であるため、どこまでが提供すべき不利益事実となるのか、外縁が判然としないということもあります。

このように、求められる義務の範囲が広がり、かつ、その外縁が曖昧となれば、取消しという法律効果は重大であるため、事業者は不足があってはならないという姿勢で情報提供に取り組まざるを得ません。例えば、お客様自身や第三者から見れば過度と思われるほどの情報であっても、事業者は不必要だと割り切ることができず、お客様に提供せざるを得ないケースもこれまで以上に出てくるのではないでしょうか。その結果、お客様の理解が阻害されてしまうなど、かえってお客様のためにならないこともあり得るのではないかと考えております。以上の理由により、不告知型の先行行為要件削除については慎重に御検討いただきたいと考えております。

続いて、9ページをごらんください。不当条項の類型の追加について意見を述べさせていただきます。

検討されている不当条項の中に、保険制度の健全な運営に必要な契約条項まで含まれてしまうのではないかということを懸念しております。具体的な事例として、自動車保険につけ加えることができるレンタカー費用特約という保険を御紹介いたします。これは、事故に遭った自動車を修理工場に預けている間、レンタカーを使用する際の費用を補償する保険であります。この保険には、保険制度が健全に運営されるよう、「当社がその利用について承認した」との条件を設けております。このような条項を、いわゆる決定権限付与条項として無効としてはどうかと御検討されているものと認識しております。

国土交通省によれば、レンタカー事業者は全国に9,000以上あるとのことです。どの事業者も健全に事業を行っていると思います。しかし、万が一、保険会社へ費用を請求するときだけ高額な料金を請求するレンタカー事業者がいたとすると、お客様が御負担される大切な保険料が、こうした事業者の利得に使われることになりかねません。このようなことを防ぐためには、あらかじめ保険会社に申し出ていただく必要があり、承認を得なければならないといった約款を設けております。もちろん、このような趣旨であるため、当該条項を用いて、通常の御請求に対してお支払いをお断りするようなことは行っておりません。

このようなものを不当条項として無効とすることは、この規律を導入しようとする意図には含まれていないものと考えております。また、裁判などの事後的な判断においては、こうした事情を適切に酌んでいただけるはずと期待もしております。ただ、「原則無効とし、合理性がある場合を除く」という法律文言は、事業者にとって予見可能性が高いとは言えず、ある程度確信を持って、これが判断できない限り、事業者としてはためらいを感じざるを得ません。この予見可能性に資する抽象的でない規定を設けることができるかといった観点にも立って、慎重に御検討いただきたいと考えております。

最後に、10ページをごらんください。条項使用者不利の原則についての意見を述べさせていただきます。

第15回専門調査会資料において、「契約の解釈にあたっては、その契約によって当事者が企図した目的、慣習及び取引慣行等を斟酌しながら合理的にその意味を明らかにすることが求められ、これにより、ほとんどの場合には、解釈が特定される」と記載されています。この原則がなくとも、解釈をめぐる問題は解決できるという点は、この指摘のとおりではないかと思っております。

また、実際に第7回専門調査会で取り上げられた事例24の判決文においても、「本件約款は多義的というよりも素直に解釈すれば前記のとおりと解されるものであることから」と述べられております。この事例も合理的解釈により解決が図られたものと評価することが妥当と考えられ、明文で定める必要性は薄いものと思われます。

それでも、なお、仮にこの原則を導入するとした場合には、原則が適用される場面を明確に表現する必要があると考えております。しかし、現在御検討されている「通常の方法による解釈」という曖昧な文言では、適用場面が明確に規定されていないのではないでしょうか。これまでの御議論をお聞きしてきた限り、この原則の導入に当たって、過去の裁判における判断枠組みを変えるという意図はないと理解しております。

しかし、「通常の方法による解釈」では、条項解釈の運用が不安定とならないかを懸念しております。例えば解釈が十分に尽くされないままに、この原則が採用されることがあれば、同様の事例において、過去の裁判とは異なる結論が出されることもあるのではないでしょうか。どこまで、どのように解釈を突き詰めたら、この原則を用いるのかという解釈プロセスが明確に定められていない状況では、御検討の趣旨とは異なる結果を生じかねないと考えております。したがって、「通常の方法による解釈」とした上での原則の導入には、賛成いたしかねる次第であります。明文で定める必要性が限られており、また、契約解釈という重要な論点も存在しますので、慎重な御検討を何とぞよろしくお願いいたします。

本日は、限られた時間でもあるため、説明は以上といたしますが、その他の論点につきましても意見書に記載しているとおりでありますので、ぜひとも今後の検討の参考にしていただきたいと思っております。

最後になりますが、このような機会を設けていただきましたことに改めて感謝を申し上げ、説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いいたします。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 不当条項の類型の追加についての問題ですけれども、先ほどのお話ですと、一律無効とすることには反対で、原則無効とし、合理性がある場合は有効とするということが考えられるけれども、これも事業者にとって予見可能性ということから問題があると。

そういうお話で、では、どうしたらいいかということになるのですけれども、資料の5-1の4ページの「第4-4 不当条項の類型の追加」のところで、意見として、こういうことをお書きになっています。「現行法第10条後段の要件に該当する場合に無効とする、または現行法第10条に委ねるなど、規定の在り方については、適切に判断いただきたいと考えます」ということで、現行法の10条後段に言及なさっているのですけれども、ここでは「現行法10条後段の要件に該当する場合に無効とする」ということと、「現行法10条に委ねる」ということの2つのことが書いてありますので、この2つは違うことをお書きになっているのではないかと思うのですが、この2つの違いというのをまず教えていただきたいと思います。

それから、「現行法第10条後段の要件に該当する場合に無効とする」という判断基準のほうが、先ほどの「原則無効とし、合理性がある場合は有効とする」という、「合理性」という判断基準よりも使いやすいというか、そちらのほうがよいとお考えでしたら、その理由も含めて教えていただけたらと思います。

よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会森満企画部会法制PTリーダー 私のほうからお答えさせていただきます。

まず、意見書に書かせていただきました点につきましては、手前どもといたしましては、先ほど御紹介した事例が、万が一不当だと認定される可能性が残されているということになりますと、業務運営上、いわゆるモラルハザードと言われるような道徳的な危険を入り口で何とか防御したいという趣旨の方法が無効となり、不正請求がより起こりやすいような環境ができてしまうということを危惧しているという点がございます。

法律論的なつくり口という点については、いろいろな可能性があるかと思うのです。意見書に書かせていただいたところでいきますと、「または」という形にしていますが、今、申し上げたように、こういった条項が場合によっては不当だという場面が出てきてしまうようなことがないよう御検討いただければということを、趣旨として申し上げたいところでございます。

ですので、2点目につきましても、一旦無効になり得るといったような決め方ではない形で御検討いただけないかということを意見として申し上げたところでございます。

以上でございます。

○山本(敬)座長 先ほどの御質問は、資料5-1の4ページの上の段、意見の下から2行目で、「現行法第10条後段要件に該当する場合に無効とする、または現行法第10条に委ねるなど」と例示されていたので、その意味を確認したいということでした。この点はいかがでしょうか。

○日本損害保険協会森満企画部会法制PTリーダー 意味合いと申しますか、今、申し上げたような規定が無効にならず、今でも行っている実務が引き続きとれるような方策を御検討いただきたいというところでございます。現行法の10条後段ですと、民法の基本原則にのっとってというところでもございますし、現行法の10条であれば、今の実務は恐らく維持されるのではないかということを期待して、このような意見を申し上げたところでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 本日は、御報告どうもありがとうございました。

本日のパワーポイントのほうの資料5-2の10ページの条項使用者不利の原則について、御意見を確認させていただきたいと思います。真ん中のほうで、現状のところで、ほとんどの場合には解釈が特定されているので、明文で定める必要性は薄いというお考えを書かれています。それでも、もし仮に条項使用者不利の原則を導入した場合ということで、そのときに「通常の方法による解釈」という要件では賛成できないという趣旨だと伺ったのですが、恐らく本専門調査会での議論の中で、この「通常の方法による解釈」というのはこれにも書かれていますけれどもね、今まで一般的に民法で行われてきたような解釈のルールを変えるという趣旨で、多分言っているわけではなくて、そういった今までの民法の解釈のやり方を尽くしても、それでも残念ながら意味が不明な場合があるということを踏まえて、こういう条項使用者不利の原則を導入したいと考えているわけですが、この御意見というのは、「通常の方法による解釈」という要件ではなくて、その「通常の方法による解釈」の中身を、例えば今までの民法の解釈のやり方を明文化するとか、そういう具体的な要件をもって規定してほしいと、それであれば、まだ導入としては考える余地があると、そのような理解でよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会森満企画部会法制PTリーダー 回答させていただきます。

まず、条項使用者不利の原則に関しまして、御提案されているものの手前どもの理解は、合理的な解釈を尽くしても、それでも法的にも問題ない合理的な主張が両者とも成り立つといった、ある意味究極的な状態なのかなと思っております。そういった点において、保険の実務等や、他の保険以外の判例等も踏まえますと、そこまでの原則が必要な場面は本当にあるのかなと素朴に思っているところが、冒頭申し上げたい点でございます。

さらに、それでも原則を導入する場合という、ちょっと失礼な言い方ですけれども、その場合、この御論議の中でも、「通常の方法による解釈」という御提案がなされて、それに対してはいろいろな御論議があったと思います。事業者といたしましては、「通常の方法による解釈」では、どこまで論議を尽くせばとか、どこまでやれば、この原則を適用する場面になるのかといったプロセスのところについて、お客様と事業者の間で同じ文言をめぐって解釈が分かれてしまう場面が想定されますので、最初に御提案されている条項使用者不利の原則に行かざるを得ないといった場面が、お互い明確に判断できるようなルールにしていただきたいと思います。

そうでないと、事業者としては、場面ごとで異なる判断が行われてしまうようなことになり、実務上、予測可能性等の点において非常に差しさわりが出るのではないかといった問題意識でございます。冒頭申し上げたように、両者の見解が合理的で法的にも正しいという場面が、どこまであるのかなというところが素朴な疑問になっているということを申し添えたいと思います。

以上でございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。

2点、質問をさせていただきたいと思います。

まず、資料5-2の8ページの「不告知型の先行行為要件を削除した場合」という部分の「事業者の対応」の1つ目の丸のところで、「先行行為要件の削除により重要事項に関するあらゆる不利益事実を告げることとなれば、情報量が大きく増加します」と記載されておりますけれども、「中間取りまとめ」の内容では、故意要件の存続が前提とされておりますし、先行行為要件を削除しても、必ずしも重要事項に関するあらゆる不利益事実を告げることにはならないように思うのですが、具体的にどのような事案を想定された上での御意見なのでしょうか。これが1点目の質問でございます。

2点目は、資料5-2の9ページの「決定権限付与条項」のところで本日御紹介いただいたレンタカー料金の約款例に関する質問でございます。この約款を拝見しますと、保険会社が負担するレンタカー料金の基準金額ないし上限金額を定めておくという方法でも、不正請求といった弊害には対処できるように思うのですが、「当社がその利用について承認したもの」という条項内容でないと契約目的が達成できないといった御事情が何かおありなのでしょうか。その点を教えていただけませんでしょうかというのが2点目の質問でございます。

よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会森満企画部会法制PTリーダー それでは、回答させていただきます。

まず、1点目の不告知型の「先行行為要件の削除により、重要事項に関するあらゆる不利益事実を告げることとなれば」という点について、「なれば」ということで書かせていただいておりますけれども、今までの御説明によると、先行行為要件があって、その裏返しで、それに関する不利益事実を告げなかった場合に取消しの効果になるというのが、現在の構成と理解しております。そうしますと、先行行為要件があって、初めて、何に関しての不利益事実を伝えればいいのかというのが、おのずと決まってくるのではないかと考えております。

仮に先行行為要件を削除した場合、逆に全てに関しての不利益事実を告げるといった規律になってしまい、実務上、非常に大変なことになるのではないかということを心配しているところでございます。

こちらにも書かせていただいているとおり、例えば保険ですと、保険業法等で情報提供義務の中身については、どのようなことを伝えなければいけないかというのが、限定列挙的に明確に定められております。それとはまた別に、事業者は何を伝えたらいいのかわからなくなってしまうと、予防安全的にいろいろなことを不利益事実として捉えて伝えてしまうようなことになり、こちらの資料で説明したとおり、保険はもともと情報量が多過ぎるのではないかという御指摘もよく受けていたことを踏まえますと、そういった面においても、お客様にとっていろいろな御不便をかけるような事態を大変心配しているといったことが、こちらに書かせていただいた趣旨でございます。

続きまして、2点目のレンタカー費用特約についてでございます。実際のところ、この特約自体は抜粋でございますので、特約の運用というか損害保険会社が販売している特約には、上限が設定されているのが一般的かと思っております。しょっちゅうそういう事業者がいるわけではないという前提ですけれども、その場合でも不正な請求というのは、現実としてはないわけではありません。ただ、どういうやり口かというのを、この場で申し上げるのははばかられるところもございますが、上限だけを設けていることによって、今は防げていないというところが実態としてございます。

逆に上限をかなり低くしてしまいますと、お客様にとってみれば、この補償を買う意義が薄れてしまうということもございますので、そういった面においては、上限だけでこのようなことを防止するのは、実務上、難しい側面があるというところを御理解いただければと思っております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 それでは、古閑委員。

○古閑委員 今のところについて、もう少し教えていただきたいのですけれども、資料の9ページです。

こちらのお客様への影響のところに「公平かつ健全な保険制度の運営に影響が」と書かれており、実際、不当に高額な費用請求に応じてしまうというのは公平ではないと思うのですけれども、「健全な保険制度の運営に影響が」というのは、お客様に対して具体的にはどのような影響が起きるということなのでしょうか。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本損害保険協会森満企画部会法制PTリーダー お答えさせていただきます。

まず、お客様への大きな影響ということでいきますと、こちらに書かせていただいたとおり、保険というのは、いわゆる善意の気持ちで成り立つ相互扶助の制度だというところは、改めて申し上げるまでもないと思います。一部の不正な請求、つまり、ここに書いてある事業者さんのように保険が使われる時のみ高額な費用を請求された場合、この事業者さんへの利得に変わるわけです。結局、保険の場合は保険金が増えると、当然、保険を提供するには保険金はコストになりますから、最終的にはお客様にお支払いいただく保険料に反映せざるを得なくなることがあるという側面がございます。

ですので、お客様にとってみれば、いわゆる善意の方がほとんどであったとしても、一部の不正な請求をする事業者さん等がいた場合、その分の増えた保険金を負担することで保険料が上がってしまうとか、お客様に有益な補償が保険料が高くなり過ぎて買えなくなってしまうといった影響が想定されるということがあると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、日本損害保険協会へのヒアリングはこのあたりとさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(日本損害保険協会退席、日本司法書士会連合会着席)

(5)日本司法書士会連合会からのヒアリング

○山本(敬)座長 続きまして、日本司法書士会連合会からのヒアリングを始めさせていただきたいと思います。本日は、日本司法書士会連合会から、同連合会消費者問題対策委員会委員の中里功様に御出席いただいております。お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○日本司法書士会連合会中里消費者問題対策委員会委員 まず、出席予定でした小澤が都合により欠席となりましたことをお詫び申し上げます。申しわけございません。きょうは、ずっと事業者団体の御説明が続きまして、オールアウエーのような状態ですけれども、孤軍奮闘いたしますので、よろしくお願いいたします。

私たち日本司法書士会連合会消費者問題対策委員会では、ことしの3月14日に消費者契約法改正試案というものを取りまとめまして、既に消費者委員会のほうにも御提出させていただいております。先日の「中間取りまとめ」に対する意見につきましても、この試案をベースに意見を述べておりますので、きょうはその試案に基づいて、その中から特に申し上げたいことをピックアップして御説明させていただきます。

先に資料の御説明をしますが、資料6-1が先ごろ提出させていただきました「中間取りまとめ」に対する意見になります。それから、6-2がその意見の概要になりまして、きょうはこの6-2に基づいて説明させていただくことになります。それから、少しめくっていただきますと、青い網かけがついています横の表が出ておりますが、これが「中間取りまとめ」に対する意見の概要、要点を取りまとめたものになります。それから、さらにめくっていただきますと、青字で「消費者契約法改正試案の概要」とあります。きょうは、試案そのものは部数が多くなりますので、提出しておりませんけれども、3月に取りまとめをしました試案の概要というものを資料として御提出させていただいております。参考までにごらんください。

それでは、レジュメに従って進めていきますけれども、まず見直しの検討を行う際の基本的な視点について御意見を申し上げたいと思います。

そもそも、この消費者契約法という法律は、消費者と事業者の格差を前提としまして、その格差から発生する消費者被害を未然に防止する、あるいは被害救済を促進する、こういう目的で成立した法律であるということですので、これを改正しようという議論の中では、消費者の負担になるような改正、あるいは消費者の不利になるような改正であってはならないということが、まず確認されなければいけないだろう。それから、消費者にとって利用しやすい法律になるという観点での改正を基本的な視点に置いて議論をぜひ進めていただきたいと思っております。

そこで、四角の中に書きましたけれども、これは訴訟の場面で消費者契約法をどう使うかという観点だけではなくて、消費生活相談の現場で、相談員の皆さんが利用しやすい法律をぜひ目指していただきたいなと考えております。

その理由ですけれども、消費者トラブルの多くというのは、被害の少額化ですとか証拠の偏在ということがしばしば説明されるわけですけれども、このような理由から、訴訟による解決が図られるケースというのはわずかでございます。その多くは、全国各地の消費生活センターに持ち込まれまして、同センターのあっせん等による解決が見られるということになるわけです。そうすると、多くの相談が持ち込まれる相談員さんのあっせんの場面で、例えば立証の点で疑義がある、あるいは要件の当てはめの点で非常に使いづらい。このような声がしばしば聞かれる条文については、それを使いやすい方向、あるいは立証の負担を軽減する方向で改正がなされるべきと考えます。

例えば、3条の事業者の努力義務の問題を例に挙げてありますけれども、金融ADRのあっせん委員を務められている方から、これは実際に耳にした話ですけれども、現状、情報提供努力義務という規定の仕方であるがゆえに、事業者から十分な説明がなかったのだという理由で、消費者側からあっせんに持ち込まれた案件というのは、訴訟になっても努力義務なのだから、事業者の責任追求は難しいだろうという理由で、事業者に有利なあっせん案を提示しているのが現状。これが民事義務になると、恐らくあっせん案が逆転するだろうという話を聞きました。

それは一例でございますけれども、立証の軽減とか要件の当てはめのわかりやすさといった観点をベースに、さきの試案あるいは「中間取りまとめ」に対する意見をまとめてありますので、ぜひ全体を御検討いただきたいと思っております。

次に進みます。消費者概念の在り方につきまして、「中間取りまとめ」のほうでは、法の適切な解釈・運用に委ねることを基本としつつ、消費者概念の拡張を検討するという書きぶりであります。しかし、解釈や運用に委ねるとしますと、先ほどの例えばあっせんの場面では、そもそも消費者契約法の適用があるのかないのかという部分から、お互いの議論をしていかなければいけないということで、交渉は非常に難航することが予測されます。

また、そもそも明確に消費者であるという位置づけができない場合、消費生活相談の対象ともならない、消費生活センターというのは消費者の相談を受けるということですので、事業性を伴う相談については受け付けないというセンターもあると聞いております。そもそも、あっせんあるいは相談、助言、こういうものの対象になってこないケースも考えられるのではないか。

それから、もちろん訴訟という場面になりましても、これは現行法でしばしば指摘されるように、消費者が、あるいは訴えを起こす原告が、みずから消費者であることをいかに立証するのかという、非常に重たいハードルが最初の部分から突きつけられるということになります。

そこで、私たちの試案では、このようなことを提案しています。

1つは、どこが問題になるのかというと、結局、2条1項に書いてあります「事業のために契約の当事者となる個人」、これが消費者として保護されるべき存在であることが多いわけで、この類型に該当するものをどこまで消費者契約法で保護するのか、消費者の定義に入れ込むのかという問題があるのだろうと思います。これをどの程度事業性が乏しければ消費者なのか、どの程度事業性があれば事業者なのかということを条文上表現するということは非常に難しいし、どういうふうに表現したとしても、先ほど申し上げた立証の問題が残るだろうと思います。

ここで、消費者と事業者を明確に区別できる存在であるという前提に立った場合には、どこかで線引きしなきゃいけないものですから、その表現をどうするかという問題が出てくるわけですけれども、DCFRのああいう議論を参考に、私たちとしては、事業のために契約となる個人は、消費者に取り込むという考えを提案します。そうすると、事業のために契約の当事者となる個人を、具体的には2条1項の条文から削除することになるわけですけれども、そうすると、このような個人は消費者にも該当するし、あるいは2項で事業者に該当する余地もある。いわゆる交錯が生まれるわけです。その生じた交錯を調整する規定を置くことによって、解決を図るという提案をしています。

この方法によりますと、事業のために契約の当事者となる個人が、果たして消費者なのか、事業者なのかという議論を待たずに、まず消費者契約法の適用があるものとして法の主張をすることができますし、これは訴訟の場ももちろんですが、先ほど申し上げたあっせん、交渉といった場面では、消費者にとって極めて負担の軽減につながると考えております。

それから、もう一つは事業者間契約につきまして、仮に事業者間の契約であったとしても、例のラグビー部の判例にもありますように、消費者と同等に保護する必要があるようなケースというのはしばしば指摘されておりますので、事業者間契約に消費者契約法を準用するような規定を別途設けることを御提案させてもらいます。

それから、もう一つ、立証の軽減という観点からは、2条1項括弧書きの部分をただし書きにしまして、事業者に立証責任を転換するという提案もあわせて行っております。

次は、「勧誘」要件のあり方について御説明させていただきます。「勧誘」につきましては、「中間取りまとめ」のほうで、消費者の意思形成に直接的に影響を与える事業者の行為を勧誘と位置づけて、これを条文上、どのように表現するかという方向で議論が進んでいるように拝見しました。具体的には、「勧誘(不特定の者に対するものを含む)」という書きぶりだったり、あるいは「当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為」という書きぶりであったり、2つの案が「中間取りまとめ」の中では示されておりました。

では、それについてですけれども、例えば1つ目の「勧誘(不特定の者に対するものを含む)」という書きぶりにつきましては、結局、これは現行法同様、消費者の意思形成に働きかけがあるのかどうなのかという点が議論として残ってしまいますので、余り現行法とは変わらないのかなと。

2つ目の「当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為」という書きぶりでは、その当該事業者が特定の取引を誘引する目的を持っていたのかどうなのかということを、消費者が立証しなければいけない。事業者の内心を消費者が立証するという、これは冒頭申し上げましたように、消費者にかえって負担をふやすような改正になるのではないかという懸念を持っております。消費者の負担を軽くする、利益になるような改正を基本的な視点として置くべきだということと、相反する結果になるのではないかなと感じています。

そこで、当会では、「中間取りまとめ」の第8回会議で示された案、このような案を支持したいなと思っております。冒頭の四角の中に書いてありますように、「勧誘をするに際し」を「事業者が消費者契約の締結に至るまでの間に」と改めるべきであると、こう考えております。具体的な理由につきましては、(3)をごらんになっていただければ、しばしばいろいろなところで指摘されている意見ですので、御説明は省略します。

このような改正がなされた場合に、事業者団体の皆さんからは、広がり過ぎるのではないかという反論が当然予測されるし、現にきょうもそういう意見もあったわけですけれども、事業者の皆さんに対する広告規制というのは、例えば景表法とか特商法とか、このようなさまざまな法律において、一定の規制が課せられる。その規制に沿った広告をするというのは、コンプライアンスという観点から、当然事業者に課せられている責務になるわけです。

そうすると、そのような法に認められた表示義務に反するような広告を仮にしていたのであれば、これは消費者契約法における取引取消事由の一つでもある不実告知と同等の行為があったと評価できるわけですので、恐らく、きょう御説明いただいた各事業者団体さんでは、そのようなことはないだろう。きちんとコンプライアンスを遵守した経営をしておられるだろうと想定されます。

また、実際に取消しというところまでたどり着くためには、因果関係の要件も当然必要なわけですので、結局、「勧誘をするに際し」という文言を「事業者が消費者契約の締結に至るまでの間に」と改めたとしましても、事業者に対して予期しない拡大ということにはならない。そのように理解しております。

それから、もう一点、合理的な判断を行うことが事情を利用して契約を締結させる類型という点で、いわゆる消費者公序についての言及があったかと思います。私たちは、消費者公序の規定の創設には賛成し、ぜひこれを導入していただきたいと思うわけですけれども、その案については試案に示しているところです。ただ、この試案に示した案は、私たち自身もまだまだ改良・検討の余地があるなと思いつつ、時間的な要請の中で議論を打ち切ったという経緯がございます。

ですので、引き続き、このような視点で消費者公序という規定をぜひ盛り込んでいただきたいという意見を申し上げますと、消費者契約法は民法と違って、格差を前提としている法律だということに鑑みまして、消費者契約法で新たな無効規定を置くことによって、民法90条違反の無効のレベルにまではいまだ至っていない。だけれども、格差を前提とする契約という点に鑑みれば、消費者契約法において無効とすべきことが妥当であるという、民法90条よりも少し前段階の無効規定というものを、この消費者公序の規定で設けていただきたいと考えております。

また、これはきょう再三申し上げておりますけれども、立証の観点から、主観的要素、主権的要件については、可能な限り削除すべきだろうと。主観的要件を可能な限り削除するということは、逆に言えば、客観的要件をできるだけ明確にしていかなければいけないという部分も検討されなければいけないということになります。そういう2つの要請をどういうふうに調整するかということを考えながら、試案では2つの類型の消費者公序を示しておりますので、ぜひ御検討いただければと思っております。

それから、もう一つ、高齢者被害への対応です。先ほど後藤巻則委員がおっしゃっておりましたが、この高齢者被害への対応というものは、消費者被害の現場においては本当に急務だと思っております。意見のイに書かせていただきましたように、いわゆる過量販売のような取引の態様に注目するような類型ではなく、高齢者とか障害者といった取引の主体に注目する取消し類型の創設を御提案しています。

高齢者被害というのは、金融商品とか先物とか特定商取引といった個別業法が既に整備されている分野に限って発生しているものではありません。広く消費者契約全般で被害が発生しておりますので、このような状況下、消費者被害救済を目的とする民事一般法である消費者契約法が、この問題に対して規制を設けないというのは、言ってみればその立法事実を無視するという批判を受けることにもつながるのではないかと思っております。

高齢者被害の保護ということでは、成年後見制度の利用ということもあわせて考えられるわけですけれども、成年後見制度の利用者というのは、本来、制度を利用すべき必要がある方々のうちのおよそ10%、多分10%に届いていないぐらいの利用しかないという統計があります。また、いわゆる未成年取消しというのは、取引被害の保護を目的とした取消し規定ですけれども、成年後見制度というのは、必ずしも取引被害の保護を目的とする制度ではなくて、高齢者の自己決定権の尊重、ノーマライゼーションというものが主たる目的でありますので、取引被害の未然防止ということを目的に、高齢者に後見制度の利用をいわば強制するようなことは、本来の成年後見制度の趣旨からも相反するものだということになります。

そこで、当会では、高齢者等取消権という新たな類型の取消権を消費者契約法に設けることを御提案しております。

取り急ぎ、私のほうからの説明は以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明に関しまして質疑応答を行わせていただきたいと思います。御質問のある方は御発言をお願いします。大澤委員。

○大澤委員 御意見ありがとうございました。

この7ページの「合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型」というところで、確認させていただきたいことがございます。端的に確認したいのは、アのいわゆる「消費者公序」規定の創設に賛成するというところでございますが、「中間取りまとめ」の中で、「合理的な判断を行うことができない事由を利用して契約を締結させる類型」、これをどういうものとして位置づけているかというのは、いろいろ理解はあり得るのでしょうが、私が理解している限りでは、そういう状況で契約をさせた場合、それによって不必要な契約をさせたような場合には、その意思表示を取消すという効果を導くものが、1つ候補として考えられているのかなと理解しています。

これに対して、きょう、報告の中で「消費者公序」の規定ということで提案されているのですが、もちろん「消費者公序」ということで、従来の公序良俗の要件よりは、より緩やかなものを恐らく想定されていると思うのですけど、今回の「中間取りまとめ」で出されている「合理的な判断を行うことができない理由を利用して契約を締結させる類型」というものと、「消費者公序」の関係というのは今後議論していく必要が十分にある論点だと思っているのですが、ここであえて「消費者公序」と書かれたことの意図を教えていただければと思います。

○山本(敬)座長 それでは、お答えをお願いいたします。

○日本司法書士会連合会中里消費者問題対策委員会委員 「消費者公序」の規定は、私たちのつくった試案の一つの類型としましては、いわゆる適合性原則違反のような態様に乗じて契約を締結したという場面を想定しておりますので、それだけではないのですが、1つはそういう場面を想定しております。そうすると、この合理的判断を行うことができない事情を利用してという場面と類似の場面であろうと考えましたので、ここであわせて御意見させていただいたという次第です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、丸山委員。

○丸山委員 大澤先生と似たようなところでしたので、続けて質問させていただければと思います。

同じく7ページのところでの御意見なのですけれども、対価的な均衡というものを著しく欠くと言えない場合であっても、何らかの取消し、あるいは無効という主張を消費者に認めてあげたいということが書いてあるのですが、御意見の中で、過大な利益を獲得するとか過大な義務を負担させるというお言葉が出てくるのですけれども、この過大性というのを何を基準に判断するという趣旨なのかというのが、第1点の確認したいことでございます。

第2点としましては、「中間取りまとめ」の案というのは、議論でも言及されておりましたが、適合性原則と重なる部分があるとしても、全く同じものではないという理解でおりました。今後、適合性原則との関係というのはしっかり詰めていかなければいけないのではないかと思うのですけれども、御意見の趣旨としましては、契約の客観要件といいますか、内容面での指標というものをもう少し明らかにするような要件にしたほうがいいのではないかといった御意見を含んでいると理解してよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 お答えをお願いいたします。

○日本司法書士会連合会中里消費者問題対策委員会委員 2つ目のほうを先に回答しますけれども、いわゆる適合性原則違反の中の、さらに高齢者被害というところに少し注目して、私たちのほうで議論したという経緯がありましたので、その具体的な類型の一つとして高齢者被害というものを取り出して、ここで意見をさせていただいたということです。

それから、先の過大の部分ですけれども、例えば試案が民法90条で救済できないような消費者被害を、新たに創設していただきたいと考える消費者公序という無効類型で救済しようという報告ですので、例えば今の民法90条というのは過量販売、次々販売という違法性が著しい場合に民法90条違反という認定がされて、契約無効という結論に達する裁判例が多いわけですけれども、例えば単発の被害事案とか、あるいは当該消費者の経済状況からすれば、さほど高額な被害額とは評価されないような事案であったとしても、新たにつくられる消費者公序により無効となるケースが当然に想定されています。

ですので、ここで過大という表現を使うことについては、内部的にもいろいろと議論があり、どこまで認めるのか、一定の制約が欲しいのではないかというところで、こういう表現に落ち着いたわけですけれども、単なる被害、それから民法90条違反に相当するような著しい被害、その中間といいますか、その手前をイメージしながら、こんな言葉が妥当なのかなということでつくってみたという経緯です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

ほかに御質問があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、日本司法書士会連合会へのヒアリングはこのあたりとさせていただきたいと思います。お忙しいところ、ヒアリングに御協力いただきまして、まことにありがとうございました。

(日本司法書士会連合会退席)

○山本(敬)座長 それでは、本日の審議は以上とさせていただきます。

次回につきましては、本日お配りしたスケジュールに従って、団体からのヒアリングを行っていきたいと思います。引き続きよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○事務局 本日も長時間の御審議、どうもありがとうございました。

次回は、10月23日金曜日の13時からの開催を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

なお、次回の場所につきましては、こちらではなく、山王パークタワーの消費者委員会大会議室を予定してございます。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上