第2回 電力託送料金に関する調査会 議事録

日時

2016年6月3日(金)14:59から17:59

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
古城座長、井手座長代理、古賀委員、陶山委員、安田委員、矢野委員
【説明者】
東京大学社会科学研究所松村教授
一橋大学大学院商学研究科山内教授
【事務局】
消費者委員会 黒木事務局長、小野審議官、丸山参事官
消費者庁 福岡審議官、澤井課長、笠原課徴金審査官

議事次第

  1. 開会
  2. 電力託送料金制度等に関するヒアリング
    説明者:松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授
  3. 電力託送料金制度等に関するヒアリング
    説明者:山内弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻より若干早いですけれども、皆様お揃いですので、始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会公共料金等専門調査会第2回電力託送料金に関する調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして、太田委員、白山委員、担当委員である蟹瀬委員、長田委員が御欠席ということで、御連絡をいただいております。また、安田委員が遅れて到着される予定です。

それでは、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。ただ今お配りしております資料につきましては、お手元の議事次第の配付資料の一覧のとおりとなっております。不足の資料がありましたら、事務局のほうまでお申し出をよろしくお願いいたします。

なお、本日の会議につきましては、公開で行います。議事録についても後日公開することといたします。

それでは、古城座長、議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.電力宅送金制度等に関するヒアリング 説明者:松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授≫

○古城座長 本日の議題は「電力託送料金制度等に関するヒアリング」です。

本日は、公共料金等専門調査会の専門委員も務められている松村敏弘東京大学社会科学研究所教授と、山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授にお越しいただき、電力託送料金制度の課題とその改善策等について御説明をいただきたいと思います。

松村教授と山内教授は、電力・ガス取引監視等委員会電気料金審査会合において、昨年実施された各電力会社からの託送料金の審査に携わられております。その際の経験からの御所感等も含めて御報告をいただければありがたいと思います。

それでは、松村委員より御説明をお願いいたします。大体45分程度でお願いいたします。

○東京大学社会科学研究所松村教授 45分で話して75分質疑と伺っているのですが、話している途中でもし質問があれば、質問していただいても結構です。全て座長にお任せします。

それでは、資料に沿ってお話しさせていただきます。

基本的に言いたいことは、最初のポイントというところで全て書いておりますので、最後、話し終わったときにここがもっともだと思っていただければ、話は成功だったということ。もっともではないと思われれば、うまくいかなかったということだと思います。

基本的に、託送料金は電力システム改革においても、あるいは電力料金の構成項目ということから考えても、ポイントになるところで、ここを消費者庁、消費委員会も関心を持っていただけるのはとても歓迎します。

ただ、そのときには、託送料金が高い低いということだけ議論してもほとんど無意味だろうと思います。効率性が低い結果として高くなっているのに対して問題意識を持つことはとても重要なことだと思います。しかしどの費用が託送料金となり、どの費用が特定負担という格好で小売りあるいは発電事業者負担になるのかによっても、託送料金の水準は当然変わってくる。発電・小売事業者負担の金額が増えれば、見かけ上託送料金は減るとしても、それは効率性と基本的に関係ないことなので、その点は御注意ください。

スライド3、4ですが、託送料金には、まだまだこの後述べるように多くの課題が残っていますので、次回の料金改定のときには、ぜひともさらに効率的なものにしていかなければいけないと思っています。そのために、多くの人が監視の目を光らせることはとてもよいことだと思います。

電気事業者からヒアリングなどを既に受けている、あるいはこれからもさらに受けることになると思いますが、電力事業者の人たちは私などと違ってとても説明が上手なので、達人のように、こんなにコストが高くても当然、こんなにクオリティーが高い送電網なのだから、託送料金は高くなって当然ということをうまく説明されると思います。しかし、日本の系統を見るときには、とてもクオリティーが高いという側面と、クオリティーが低いという側面の両方があることはきちんと認識して、うまい話ばかり聞かないで、ちゃんと問題点もヒアリングで聞き取っていただければと思います。

スライド5ですが、この4月から、御案内のとおり、電力市場は家庭用も含めて全面自由化ということになりました。しかしまだ規制料金は残っている。1つは経過措置料金という小売料金に掛かっている規制。もう一つ、託送料金も残っている。託送料金については、暫定措置ではなくて、この後もずっと規制料金が続くということが前提となっていますので、より重要になってくると思います。

ただ、先ほども少し申し上げましたが、事業者の特定負担となるようなところに関しても、このコストが高過ぎると、ある意味で参入障壁になる。他にもいろいろ問題となりうる料金はありますので、総合的に考えることが重要だと思います。

さて、「託送料金査定」ですが、実際に直近で託送料金の査定は行われたわけですけれども、震災後に小売料金の値上申請を出していなかったところに関しては、もちろん送配電部門だけですが、修繕計画とか、需要想定とか、人件費とか、そういうものも含めて全面的に査定して、料金の適正性を見た。値上申請しなかったのは北陸・中国・沖縄の3電力。

それ以外の電力会社7社に関しては、震災後に小売料金の値上申請を出し、そのときに料金認可の審査を受けている。そのときに需要想定とか、修繕費とか、発電部門なども含めた修繕費とか、送配電部門も発電部門も投資計画のようなものもみんな全て査定を受けた。これらに関しては、これらの需要想定とか、単価とか、折込量というのは基本的に査定されたものを使うのであれば、そのまま認めることにして、あとは部門間の配賦などの問題に集中してみた。それは託送料金に乗せるべきなのか、小売・発電部門に配賦すべきものなのかという類の議論は3社プラス7社の全社で行った。小売料金の値上申請という形で審査した点があるので、託送料金の適正性あるいは託送料金の審査が本当に適正だったかどうかということを判断するためには、託送料金の審査だけを見ても不十分。小売料金の値上げ審査の過程での査定が適切だったかどうかということも含めて見ないと分からない。

従って、今日は小売料金の値上申請に対する審査も含めてお話しさせていただきます。

おめくりください。「震災前の料金制度」というのは、元々は値上げも値下げも認可制だったものを、値下届出制という形に変えました。値下届出制というのは、値上げのときには認可するという格好でちゃんと審査するが、値下げの場合には届出だけでよいという形でルールを変えました。コストが低下したときに、タイムリーに下げることを可能にしてくれという要請もあったと思いますが、もう一方で、コスト削減の誘因を与えるという意図もあったと言う人もいる。

これに関しては、値下げしている限りにおいては厳格な審査がないので、例えば効率化の一部の利益を内部のステークホルダーに事実上回すなどということが仮にあったとしても、よほどひどくない限りは文句を言わないというシステムによって、一応一生懸命効率化するインセンティブを与える。しかも、これは名目値でやっていますから、インフレが起こっているような局面では、少なくともインフレ率に対応するぐらいの効率化をしておかないと、値上申請が不可避になる。インフレ率程度の効率化は少なくとも促すという効果も考えられていたと思うのですが、結果的には、デフレの時代が長く続いた。この環境では極めて事業者に甘い制度になってしまった。しかしこれは結果論だと思います。

値上げでない限り事実上審査しない。ルールとしては、届出制でもコストベースで料金を出すということになっており、コストベースというもののルールに従って出すことにはなっていますが、その単価が本当に妥当かどうかは事実上審査されていなかった。さらに言うと、届出制という制度を作ったのにもかかわらず、ものすごく厳格に査定して、それで簡単に変更命令を出すということにしたとすると、規制改革全般の文脈でも弊害がすごく大きい。規制改革の文脈では、認可制を届出制に変えるのは、規制を緩和するという文脈でしばしば言われているのにもかかわらず、認可制のときと同じように厳しい審査をして、厳しい変更命令をかけるというようなことをしたら、何のために届出制にしたのか分からないことになってしまう。これはある意味で致し方なかったということもあったと思います。

次に行ってください。震災後に、東京電力の経営危機が表面化して、東京電力に関する経営財務調査委員会というのが立ち上がった。料金査定という目的で行われた調査ではないけれども、結果的に見ると、料金制度に関わるようなコスト構造を調べることになった。その結果、料金改定についてもとても奇妙な現象があるのではないかというか、疑わしい現象があるという指摘もされた。

具体的にいうと、修繕費などがなだらかにだんだん下がってくるというのではなくて、料金改定が行われるとすぐに急激にコストが下がる。原価算定期間は1年だけなのだけれども、原価算定期間が終わっても、しばらくはその料金でいくことが多く、コストが下がった部分はそのまま利益になるわけですが、効率化というのは確かにあるかもしれないけれども、料金申請を出した瞬間にすぐに下がってしまうというのは、本当に経営効率化の努力によって下がったのか、単に織り込んでいたコストが甘かった、水ぶくれした費用を下げただけではないのかとの疑い。もちろんこの事実は操作の証拠にはならないわけですけれども、そういう疑いが生まれてきた。経営努力によって下げた部分をいわば内部者に還元することによって、経営インセンティブを高めるというのだったら、それは1年という原価算定期間で余りにも説得力がなさ過ぎるではないか。例えば3年なら3年というような、もう少し長い期間固定して、この間に当然にやるべき効率化を見込んだ上で原価を算定した上で、それを超えた努力について内部に留保することを認めるとか、そういうやり方にしないと甘過ぎるのではないかということで、3年以上の原価算定期間とすべしという議論が出てきた。

さらに、東京電力に関しては、原発が停まったことによってコストが大きく上がった後、値上申請を出してくるのは不可避だという状況になった。他の電力会社も原発が次々と停まるという状況に応じて値上申請が出てくる可能性というのが相当認識されるようになった。そのときに、今まで事実上一度もまともな審査をしたことがなかったという状態で、値上申請が出てきて、ちゃんと対応できるだろうかということを考えて、あらかじめ料金値上げの申請に臨むスタンスというと変なのですが、ルールを有識者会議で整理した。もう少し正確にいうと、法律を変えるというわけではないので、ルール自体を作るわけではないけれども、明確に定められたルールの範囲内でどういう運用をするのかを決めて、値上申請に備えた。

今までは一般電気事業者の言い値で、電力の低廉で安定的な供給に不可欠だと言えば、事実上ノーチェックで通っていたものに関しても、これについてもこういうコストでないと低廉で安定的な電力供給のために不可欠だと言えないという形でいろいろ整理して、こういうものの算入は認めないということをあらかじめかなり明確にした。

典型的な例は、電事連の費用のようなものは、原価に加えないというルールはここで明確にした。その他にもいろんな形でちゃんと審査をするという言い方をしたわけです。

実際に、この後の値上申請は全てそれに対応した形で出してきたと言っていて、従来の申請に比べればはるかに低い形で最初から申請が出されたと認識しています。

おめくりください。「震災後の料金審査」は、先ほども言いましたが、7社は結果的に値上申請を出してきて、さらに、2社が変分改定で再値上げ申請も出してきた。最後の局面で託送料金の審査があり、この全ての局面で役員報酬を含む人件費とか、事業報酬率とか、燃料費とか、普及開発費とか、取引所利用による効率化という、今までの料金の世界ではほとんど考えられていなかったようこともきちんと考えた上で、相当厳格な査定をしたと。この調査会での関心は、恐らく修繕費・投資関連費用だけだと思いますが、いずれにせよ、それも含んで相当インテンシブな審査がされた。

もう十分有識者会議の意見を反映して出したはずなのだから、これで十分だろうというつもりできっと電力会社は出してきたいと思いますが、それにもかかわらず、それなりの額を査定して下げさせたわけです。

実際に、いろいろな基準を使ったわけですが、低廉で安定的な供給、能率的な経営のもとで必要不可欠に掛かるコストをどうやって測るのかに対しては、一つは、過去実績を見た。これは原価算定期間に突然過去実績と比べても、急に修繕費が増えるだとか、投資コストが増えるだとか、こういうことがあったときにはなぜ過去実績に比べてこんなに増えるのかということをきちんと審査した。過去実績をそのまま横滑りで原価にしたなどということはありません。基本的に料金というのはフォワードルッキングで、原価算定期間で幾ら掛かるのかという見積もりだということなので、過去実績はあくまで参考。

さらに、ヤードスティックというような考え方で、他社の平均的な水準に比べて大きくコストが上がっていることについてはどうしてだということをきちんと確認し、説明のつかないものについては他社平均並みにカットしてしまうというようなことをする。事実上のヤードスティックというわけです。

あるいは、トップランナー方式。ヤードスティックよりも厳しいわけですが、自社以外の会社で最も効率的に調達しているところを基準にして、それよりも高いところはそこまで追いつけるように頑張りなさいという格好で査定する。

あるいは、業界内だけで見ていれば、業界全体のコストが高いというものについては全く査定できない。そういう意味で、ヤードスティック規制というのは使い方を間違えると全く役立たずになってしまうわけですが、こういうものについては他業界とも比較するというようなことをした。人件費のようなものは比較的やりやすいので、そういうやり方でやった。

あるいは、しらみ潰しに全件調査するなどということもしました。例えば研究開発費などは研究開発のプロジェクトを一件一件見て、何でこれが向こう3年間の安定的な電力供給のために必要なのですかというようなことを一つ一つ問いただして、関係ないと思われるものはそもそも原価算入を認めないという格好で大幅に査定した。あるいは、書籍費のようなものに関してもどの部署がどの書籍を買っているのかというのを一々見る。何でこんなことをするのかというと、書籍費などというのはたいした金額ではないけれども、単にそう疑っているだけで、事実はそうかどうか分からないのですが、例えば怪しげな会社を立ち上げて、そこで出版物を出させて、大量に購入して、定価がついているわけですから、一応お金が払えるわけですね。そうすると、そこでできた差益を、例えば、そんなことはないかと思いますが、電力会社も恥ずかしくて言えないようなことを代わりに言ってくれる有識者などに対してお金を流す原資にするという、そういうけしからぬことをしていないかという疑いがあって、書籍のような小さなものに関しても、なぜこの部署でこんな書籍が必要なのだということを厳格に査定して、その上で、この規模ならこのぐらいの書籍費というのが適切というのを横展開するとか、そういうことまでやって、相当いろいろなことを頑張ってやったということもあります。

さらに言うと、後から少し説明しますが、調達方法のようなものについても注文をつける。入札をどうして導入しないのだとかということにも注文をつけて、入札の仕方、仕様についても注文をつけるということまでした。ということで、あらゆるというと傲慢ですが、私たちで考えつくいろいろなことをとにかく考えて一生懸命査定したつもりです。

さて、次の13、「審査基準の適用」ですけれども、自分も経済学者なのにそんなことを言うのは気がとがめるのですが、事情をよく知らない経済学者がヤードスティックといういい制度があるので、これをもっと導入すればいいではないかなどと安直なことを言うわけですけれども、ヤードスティックというのは、もし電力会社全体がものすごく非効率的だったとすれば、全体がすごく非効率的なのにもかかわらず、各社の費用にお墨付きを与えてしまうことになるのですね。平均に比べて余り劣っていないということを言って認めてしまうわけですから。だから、これはやり方一つ間違えるととんでもないことになる。もちろん、事業者がカルテルを結んで高くするなどということがあれば、もちろんとてもカルテルに弱い審査方式なわけですが、仮にそんなことがなかったとしたって、全者が非効率的だというのについては対応できない制度。これはヤードスティックがふさわしいものについてヤードスティックを使い、それがふさわしくないものには当てはめないというのが正しいと私は今でも思っています。

従って、こういうところで、もっと拡大しなさいと御提案いただいたとしても、具体的に何に適用すればいいのということを言わないで抽象的に言っても、ほとんど無意味。むしろ有害なのだろうと思っています。私自身は、やるべきところにこの基準を適用するのが正しいと思っています。

さて、次の14ですが、実際に小売料金審査で問題となって、恐らく託送料金、この調査会の関心に直結する部分は、修繕費とか、投資計画とか、そういう調達系のところなのだろうと思うのですけれども、例えば原価算定期間の前に行うべきだったのに、その投資を先送りにして、原価算定期間まで遅らせて、これからの原価算定期間のところにボコッとコストが増えるなどということについては、重点的に審査した。かなりの部分というのは言い過ぎですが、説得力のない、つまり、もっと前にやるべきだったと思われるような投資というのは、基本的に算入を認めないということを徹底的にやりました。高経年化対策のために必要だ、安定性のために必要だと言えば、今まではノーチェックで通っていたのかもしれませんが、我々はこれについてもきちんと調査したつもりです。

次の15をご覧ください。調達単価に関して言うと、本来、もし、公共調達であれば、政府部門の調達であれば、入札が原則になっているわけで、入札しなくてもいい、随意契約でもいいというのは例外的に、こういうときにはしなくてもいいというのが列挙されていて、それに当てはまる場合は随意契約でもいいという格好になっている。民間事業者の場合には、もちろん入札が原則ということは決してない。トヨタ自動車が部品を買うのに入札にしなければいけないなどということは決してないわけで、民間事業者であった電力事業者については、当然に入札しなければいけないということまでは言えなかった。

しかし、一方で、規制料金の中に入る単価を構成するわけで、そうすると、そこは効率的な調達をしたとしても、これぐらいのコストが掛かるというものでないと、本来、算入を認めるべきではない。そうすると、入札もしていないのに、なぜこれが最安価ということが分かるのかということは追及していかなければいけないと思います。従って、その意味では、入札をしなかった事業者はこれが最もコストが低いということをちゃんと証明すべきだし、証明していなければ、効率化を要求すべきだ。従って、過去単価というのは安直に認めるべきではないということを、この審査全般を通じてずっと言い続けた。

これまで入札をしなかったということに関して、もちろん非難することはあり得ると思いますが、しかし、他の公共料金のもの、例えば鉄道とかに関しても、入札が原則で、ほとんど全ての調達が入札されているという状況かどうかというのを考えてみれば、著しく不適切だったということをこの段階で言うのはとても難しかった。しかし、入札をしていない以上、効率化を織り込みますという格好でやれるのが精いっぱいだったというわけですが、これだけ入札していないのにもかかわらず、適切な原価だということをどうやって証明するのだということを言い続けたわけですから、次回の料金改定のときに出てくるものに関しては、入札が原則だということを強く打ち出すことは可能になると思います。

従って、次回の改定に向けて、継続的にどう効率化を促し、どう関心を持ち、いい加減な調達をしていれば本当に査定されるという緊張感をどうやって維持していくのかということはとても重要なことだと思います。その意味で、消費者庁、消費者委員会もこの問題に関心を持ってくださるというというのはとてもウエルカム。

次、17、「スマートメータ」について述べていますが、スマートメータというのは、他の調達と違って、事実上、今までなかったものをこれからやるという側面がとても強かった。鉄塔にしても、送電線にしても、発電機にしても、今までずっと継続的に調達してきたものに対して、スマートメータというのは実証実験として小規模に導入している事業者は少しあったけれども、本格的に導入しているところはなかった。これから導入していく、原価算定期間あるいはそれ以降にこれから入れていくというものであるので、これについてはゼロベースで相当いろいろなことを言うことができたという状況だったので、政府のほうでも相当強力に介入したと思っています。

料金審査委員会のほうで言えたことは相当限定的だったのかもしれませんが、スマートメータ検討会、あるいは、電力システム改革の委員会も含めて、あらゆるところで強い要望を出して、相当効率的にやってもらったと思っています。

具体的には、きちんと入札してもらった。入札のプロセスあるいは仕様の決定の仕方についても、透明な仕方でやってくれ、リクエスト・フォー・プロポーザルのようなものもきちんとやってくれと要求した。さらに、選定に関しては中立的な第三者を参画させてくれということを強く要請した。中立的な第三者の参画がありました、ちゃんとやりましたといった説明に関しても、本当に合理的で、効率的で、中立的な調達をしたのかについては、事後的にも相当強く求めて、どうしてこういう技術評点になったのか、外部者とは一体誰を入れたのかというようなことから、相当に細かく注文をつけ、文句をつけ、今後やるときにはこのようなやり方では困るということまで相当一生懸命やった。こういう調達に関してもできるものに関しては、相当な努力をしたと思っています。

次、18。託送料金の審査というところに移ります。ここでそれまでの料金審査が当然の前提となった上で、さらに託送料金で焦点になったところというのは、まず事業報酬率。事業報酬率に関しては、小売料金の段階でも一定の注文はつけたわけですが、さらに、託送料金の文脈では、発電事業に比べて明らかにリスクが小さいではないか。そうすると、自己資本に対する収益率、具体的にはβ値と呼ばれるようなものに関しては、発電部門も含めた形でのβ値と同じにする必要はない。恐らく、こんな主張を私が言い出した時には全く寝耳に水だったと思うのですけれども、合理的な提案ですから受け入れられ、結果的に1%近く事業報酬率を下げたということになった。固定費が相当大きな産業ですから、託送料金の上げを防いだと思っています。

予備力とか、調整力に関しても、小規模な系統の場合にはこんなに必要だということに関して、そのままうのみにして認めないで、それだけ大きな調整力が必要なのは巨大な電源があるからということであるとならば、巨大な電源を持っている人が原因者負担として一定負担すべきだという議論までして基本的な考え方を整理し、事業者の言い値をそのまま安直に認めなかった。

次の19。このようなことをして、全般的には相当一生懸命査定をして、私たちはでき得る限りの低廉化については相当に頑張ったと思っています。料金審査に関しては、オブザーバーとして、消費者代表の方にも加わっていただいたり、あるいは、消費者庁の方にも加わっていただいたりして、私たちのやっていることがとても手ぬるいということであれば、ちゃんとお叱りくださいという格好でちゃんと見ていただいたと思っています。

そこで、公開の席でやったもので、私は概ねよくやったというのは自分たちをよく言い過ぎなわけですけれども、少なくとも手抜きをしたわけではなくて、相当に頑張ったということは言っていただけたのではないかと自負しています。

しかし、そうは言っても、まだまだ積み残しの問題は残っています。積み残しの問題に関しては、例えば需要地近接性割引のような議論、あるいは託送費用の配賦、特別高圧と高圧と低圧をどう費用を配賦していくのかという問題も、これから本格的に議論していかなければいけないと思います。

あるいは、送電線の利用をより効率化するためのルールの改革も必要だし、後で述べるように、系統費用はこれからどんどん増加するということが予想されているので、電力システム改革の成果を使いながら、この増加をいかに抑えていくのかということを、託送料金の体系を合理化することによって何とか達成したいと考えており、システム改革の文脈でインテンシブに議論されています。

今後の託送料金ですが、放っておくとむしろ上昇する可能性が極めて高いと思っています。まず高経年化対策が必要になってくる。高度経済成長期とか、あるいは、戦後の電力が不足していた時期に、大規模な送電投資を相当行った。もちろん発電の投資も行ったわけですが、発電機に比べると送電施設の耐久年数は比較的長いので、高経年化対策というか、一旦建ててしまった設備のリプレースがこれからものすごい勢いで増えてくることになるので、放っておくと、修繕費あるいは更新投資の費用がものすごい額になってしまう。

次に再生可能エネルギーを増やしていこうという目標が政府内であり、実際に増やしていくということになると思います。そうすると、全ての再生可能電源がそうだというわけではないですが、風力あるいは太陽光のような再生可能電源は、ある意味で不安定な電源なので、それをバックアップするための電源も一定程度持たなければいけない。そのバックアップの運転も必要になってくる。ということは、要するに、周波数の振れなどの対策費用がこれからどんどん増えてくることも予想されるわけです。

それから、電源に関しては、過渡的には電源の大規模な再配置が起きる。つまり、今までは大規模電源を遠隔地に建てて、これを大送電線で運んでくるビジネスモデルが主力で、こういう社会だったものが、これから分散型電源がそれなりに入ってきて、長期的にはそういう固定費はかなり節約できる。そこまで見込むとコストは下がるわけですが、足元では電源の再配置が起こるために、そのための調整の投資というか、送電線投資が一定程度必要になってくる。足元ではコストが上がることも起こり得る。

さらに、これから節電が進んでいくことになると期待している。送配電部門は基本的に固定費の塊、固定費の割合が極めて高い。そうすると、消費量が減ると、消費量1単位当たりの固定費はどうしても大きくなってしまう。節電は望ましいことですから、当然、いろいろな施策を使って促していくべきだと思うのですけれども、足元、託送料金ということから見ると、逆風になる可能性が相当ある。

ということは、逆にいうと、次回の料金改定時には、放っておくと上がりかねない。この上がり幅を少しでも抑える、逆に下げるためには、調達コストなどに関してより一層強い監視と効率化の努力を促していかないと、次回の改定のときにすごく上がることになってしまう。その意味でも、みんなが継続して関心を持ち、監視していくことはとても重要なことだと思っています。

次、21。さて、これに関して、一応、現在制度的な手当として、事後監視がルール化されている。超過利潤が余りにも大きくなったとすると、これに関しては検証して、変更命令を出すというルールはちゃんと整備されています。これはこれで、もしこれがないと、事業者にものすごい利益がたまっても、値下届出制で、届出が出ないということになったとすると、消費者の不満がすごく高まって、制度としてもたないから、このような制度を設けることはとても重要。しかし、この事後監視があるから大丈夫と、過大に期待してはいけない。超過利潤が発生しなければいいのですから、コストを増やせばいい。効率化したコストを何かいろいろな名目でコストを増やせば、これに引っ掛からない。そんなインセンティブを与える制度やはりよくないということだと思いますので、これだけに頼るわけにはいかない。

それから、一定の効率化を見込むわけですけれども、想定以上に企業がものすごく頑張った結果として、頑張った利益を次の改定のときに料金の値下げにも使うわけですが、一部は例えば賃金の上昇などに回したとしても、それを強く非難し過ぎると、経営効率化のインセンティブを損ねてしまう。一定程度はインサイダーに利益を配分したとしても、それは認めるべきだろうと思います。

事後監視で実績値が想定値に比べて著しく小さかったのを見て、それをあまりに強く非難すると、いろんな問題が起きることになるので、この点についてはきちんと考えていただきたい。

ただ、次回の料金改定のときの参考という点ではとても重要な情報になるので、この手の監視はとても重要だと思います。

今後、査定をいつまで継続していくのかに関しては、査定には限界がある。限界があるからこそ小売料金に関しては自由化して、市場の競争圧力によって適正にしようということで始めたというわけですから、そもそも査定には限界があるのは当然。それは託送料金だって、私たちはものすごく一生懸命頑張って査定するとしても、限界があるのは間違いありません。そうすると、制度的に効率化のインセンティブを与えるような何か工夫が必要。一番簡単に考えられるものはプライスキャップ制と呼ばれるものです。

プライスキャップ制というのは、いろいろな調整条項を設ける。効率化係数とか、あるいは投資調整条項とか、物価調整条項を設けるのでしょうけれども、想定された以上にコストが下がったとしても、それは利益として留保することをフォーマルに認めるという制度でもある。これがちゃんと機能するためには、初期の時点ではちゃんと査定されている必要がある。初期の時点ではちゃんと効率的なものになっていて、そこからの努力は企業努力なのだから、企業が利益を得ることも当然だというような、初期の価格が十分効率的な水準になっていないと、元々ものすごく水ぶくれした料金で一旦認めてしまって、あとプライスキャップとし、膨大な利益が出てくるというのをそのまま放置するわけにはいかない。とても政治的にも消費者感情からも持たない。最初の時点で適正な料金が設定されることはとても重要なこと。その意味では、既に一回きちんと査定したわけだから、初期の料金はとても適正な料金なのだから、このままプライスキャップに移行してもいいのではないかというのは、一つの考え方。私自身は個人的には本当に十分だったのかどうかについては、まだ疑問に思っています。

先ほども言いましたが、入札というのが当たり前ではないという状況で言えることは精いっぱい言った。あそこまで言ったわけで、この後は入札が原則になっているはず。入札が原則になったという状況でそこをきちんと見た上で、あるいはこれから行われる制度改革などでいろいろなコストの入れ替えがあるというのを見た上で、もう一度厳格な査定をした上で、プライスキャップに移行するということでないと、弊害が大きいのではないかと私は思っています。ただ、これは単に私個人の意見ですので、必ずしも多くの人が支持してくれるかは分かりません。

次の23、託送料金が高過ぎるとか、低すぎるという議論をするときには、定義をそろえることも必要になります。託送料金は最初に言ったとおり、低ければ低いほどいいとは限らないということは認識すべきだと思います。

例えばこれからシステム改革の文脈で、容量メカニズムの議論がされることになると思います。この容量メカニズムというのは、電力事業においては一定の予備力を社会全体で確保して、電力の不足に備えるというような仕組みを考えなければいけないという文脈で、いろいろなやり方があり得るのですが、小売事業者あるいは発電事業者のほうに、自分の販売規模が100だとすると、100ではなくて105の能力を持ちなさいという格好で予備力を義務づけるという制度設計もあり得ます。逆に小売事業者には100の需要であれば、100の能力はちゃんと持つことは義務とするとしても、それを超える予備力については送配電部門が一括して調達して、これを託送料金で回収するというやり方もあり得る。

それはもちろん小売にどれぐらい負担させて、系統部門にどれぐらい負担させるのかというのはいろいろな議論があり得ると思うのですが、系統部門に寄せると託送料金が確かに上がります。しかしその分小売の負担は減るわけですから、これで託送料金が上がったから参入障壁が高くなったとは必ずしも言えないことになります。

もちろん、送電部門に調達させた結果として、随意契約でものすごく高いコストで調達するということになったら、これはとても困ったことになってしまうわけですから、もし、そうしたとすれば、調達コストが適正かどうかということの監視はより重要になる。一方で、ある種の規模の経済性を生かして、全体として送配電部門が予備力を持つというのは一つの正しい考え方だと思います。こういうところについては託送料金が高過ぎる、低過ぎるというだけではなくて、本当に参入障壁となるような非効率的な調達になっているのかどうかということがとても重要な点。問題は料金の絶対水準ではないような気がします。

同じようなことが、例えば電源線のコストを誰がどれぐらい負担すべきかという議論でも起こる。発電事業者に寄せれば託送料金は下がるのだろうけれども、本当にそれでいいのだろうかというようなことは、効率性の観点ということから、いろいろ考えていく必要があると思います。

次、24、今後の値下届出制の運用に関して、私は若干懸念している点があります。それは、先ほども申し上げましたが、いろいろな要因によって上がる要素は目白押しです。だから、放っておくと、料金の値上げという格好になり、値上げになるから当然厳格な審査がちゃんとされるということだったらいいのですが、こういう類のコストは電力会社の責任ではない、送配電部門の責任ではないのだから、これはある意味では外出しにて、サーチャージ化するとか、あるいは変分改定という形にするとか、そういう格好にして、値上がりしそうな部分は変分改定とかサーチャージというので送配電事業者を保護して、他に効率化によって下がりそうな部分については全部値下届出制という格好にして、事実上ノーチェックで申請を通してしまうということになったとすると、真の効率化の努力を求める機会を失いかねない。

変分改定だとかサーチャージ化するというのは、それはそれで一定の合理性はあります。例えば制度改革によって増えてしまった費用のようなものを一定程度変分改定にするようなことは、ある意味では合理的なのですが、この範囲を広くし過ぎないようにすることがとても重要なこと。

さらに言うと、抜本的な制度の改革があり、そもそも託送料金として加えられるような費目のようなものが大きく変化したとすれば、その大きく変化した時点できちんともう一度料金を査定して認可する。そこを出発点にするという考え方もあり得るのと思います。値下届出制が安直に運用されて、事実上ほとんどコストが下がらないということになり、サーチャージ部分だけがどんどん上がるということにならないかを若干心配していますが、これは具体的に何をサーチャージ化するのか、何を変分改定にするのかということが議論になった段階できちんと見ていく必要があると思います。

次の25ページ、託送料金については2部料金制が採られていて、固定費用と従量料金というのがあります。要するに、基本料金と従量料金というわけですが、託送部門の費用の大半は固定費用なのですが、料金収入のかなりの部分は従量料金で回収されている。つまり、従量料金で固定費用が相当に回収されている。これは大きなゆがみをもたらしかねない。従って、この配分をどうするのかということは、今後大きな課題になってくると思います。

ただ、一方で、従量料金の部分が高くなっているというのは、事実上、電気消費税のようなものが掛かっていて、従って、従量料金が上がっていて、しかし、レベニュー・ニュートラルになる形で電力消費者に返す、つまり、固定料金をその分だけ割り引く、基本料金を割り引くという格好で返している。このように解釈することもできます。そうすると、節電とか、あるいは省CO2を促していかなければいけないときに、託送料金で基本料金を大幅に上げて、従量料金を大幅に下げて、事実上電力消費税を減税するものに近いような効果をもたらしてしまうような改革が本当にいいかどうか。ピースミールで見るといいと思いますが、他の問題まで考えるとかなり微妙な問題が起こってきます。これについては長期的な課題として残っているけれども、どのタイミングで選べるかというのをこれから考えていかなければならないと思います。

別の問題もあります。「託送料金の配賦」ですが、先ほど特別高圧、高圧、低圧というのがあるということを言いましたが、基本的に今の託送料金の仕方というのは、特別高圧の人が負担する固定設備の費用というのは、高圧の人も低圧の人も負担する。それから、高圧の固定費というのは高圧の人も低圧の人も負担する。つまり、より下位の系統の人が上位の人の系統の固定費は全て負担した上で、下位だけに使うものはさらにアディショナルに負担する。だから、特別高圧、高圧、低圧ではこんなに託送料金に差があるということになっているわけです。これはある意味で合理的。基幹送電線とか、あるいはアンシラリーのコストは、全ての人が享受していることだから、特別高圧の人が負担するコストは低圧も当然負担するということはあり得るけれども、低圧の配電線のコストは特別高圧の需要家には関係ないから負担しない。こういうレベルで見ると合理的なルールのように見えるのですが、一方で、高圧あるいは低圧のレベルで、分散型電源で発電するということを考えると、特別高圧の人は使っているけれども、低圧のほうには直接関係ないような固定費用も実はより電圧階級の低い人が負担させられているのではないかと私は疑っています。

現在の託送料金の発想は、大規模電源を遠隔地に建てて、それを大送電線で運んできて、だんだん降圧して需要家に届けるというビジネスモデルが大宗を占める状況では、ひょっとしたらある程度の合理性はあったのかもしれない。しかしこれから分散型電源が大量に入ってくる状況で、そのような発想をいつまでも続けていいのだろうかということは問題になってくると思います。

高圧で接続するから、特別高圧以上の固定費は一切負担しなくてもいいというのは明らかに間違っていると思いますが、一方で、全てを負担しなければいけないというのも私は明らかに間違っている。ここのところをどれぐらい負担すべきかというのは、これから大きな課題になってくると思います。

これについては、反対する人はとても多くいるので、実際には改革するのはとても難しいと思いますが、私はこの分散型電源に非常に不利になっている今の状況は何としてでも変えていかなければいけない。地産地消のビジネスモデルを託送料金で優遇してくれと言うつもりはない。優遇すべきだとすれば、他のやり方で優遇すべきだと思う。一方で、託送料金のために地産地消のビジネスモデルが不利になることは望ましくない。公平に競争できるような環境を託送料金面でも整えていくべきだと思います。

今後、分散型電源が増えていくのに遅れないように、次の料金改定のときには何としてでも間に合うように改革の整理をしていくべきだと私は個人的には思っております。

最後「需要地近接性割引」ですが、これに関しても託送料金というのは本来系統に与える負荷に依存すべき。系統にかける負荷はどこで発電して、どこで消費するのかということに強く依存するはず。大規模な電源が遠隔地にあって、重潮流があるところがあったとして、そこで需要地に近いところで発電するとすると、そのような大送電線が必要なくなってくることだって当然あり得る。そのような発電は本来、優遇されてしかるべき。その優遇は、一番自然なやり方は、ある意味で送電の効率性を改善するわけですから、託送料を低くするというもの。従来は需要地近接性割引というやり方で、送電ロスが若干減るということを割り引くという、みみっちい割引が入れられていただけだった。これからは発想を改めて、潮流を改善するような発電事業者は、託送料金の部分で有利になるように、あるいは、需要家のほうにとってみても、遠隔地から運んでこなければいけないようなところの消費というのは不利になって、逆に北海道のような発電のポテンシャルがとてもあるようなところでの消費は有利になるような、そういう託送料金の体系をこれから築いていかなければいけないと思います。

これに関しては、相当に大規模な改革が必要。考え方を根本的に改めるということになると思いますので、相当な時間が掛かると思います。しかしいつまでも放置しておいてはいけないと思います。可能であれば、次回の改定にまでに何としてでもこういう考え方が、それが無理でも、長期的にはこういう方向に変えていけるように考えていかなければいけないと思っています。

将来に向けての課題は多くあります。次回あるいはそれ以降の託送料金改定に関して多くの課題が残っており、そのためにいろんな人が監視し、意見を言っていくことはとても重要なことだと思っています。

済みません、長くなりました。以上です。

○古城座長 ありがとうございました。

ただいま御説明いただいた内容について、御質問、御意見のある方はいつものように名札を立てて御発言ください。

井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 電気の託送料について、詳細に御説明いただき、ありがとうございました。

全体で議論するというのも必要だし、透明性などを確保するというのが重要だということになると、例えば電気通信でやっているような長期増分費用モデル、エルリックという、長期増分費用がいいかどうかは別として、モデルを作って競争者も電気事業者も、いろいろな人がモデルをもとにして数値を入れれば託送料が幾らになるかというやり方というのは電気通信でやられているので御承知だと思うのですけれども、そういうやり方がどうして電力で全く議論されないのかというのが一つあります。

もう一つは、23ページで「送料金は低いほどよいとは限らない」という、もちろん容量メカニズムの議論など、今後出てくると思いますけれども、今のこの制度の中で託送料金というのが新電力にとって3割とか4割という大きな割合を占めているということだけを捉えると、託送料を安くするというのは、新電力にとっては参入しやすくなる。あるいは、新電力にとって利益が確保できる。そういう意味で、容量メカニズムとかいう議論を、これは将来的な課題として、あるいは将来的な制度設計というのがあると思いますけれども、現時点での制度の中で託送料を安くするというのは、それほど無意味ではないと思うのですけれども、その2点について。

○東京大学社会科学研究所松村教授 第一に、井手委員も御案内のとおり、エルリックというのはどれぐらいできのいい制度なのかは、全く別の問題としてあります。エルリックというのがとてもよい制度という認識で今のが出てきたとすれば、それを導入しないのはどういうわけかということなのかもしれないけれども、私自身はエルリックがとても合理的で望ましい制度だとまでは言えないと考えています。一つの選択肢としては意味があるとしても。まず、その点にはついてはひょっとしたら意見が違うのかもしれません。

2番目に、事実として、エルリックが導入されているのは、私の理解ではメタルの電話回線のところだけであって、光ファイバーとか、そういう類のもの、あるいは接続料でも例えば移動体通信などについては、エルリックは入れられていないと認識しています。ある意味で、大昔に作って、どうでもいいなどということを言ったらきっと怒られるのでしょうけれども、どう考えてもこれから将来に向けて重要性が落ちてくるところにだけしか入れられていないということはきちんと認識すべきなのではないか。もし、エルリックが本当にすばらしい制度だったとすれば、どうして光ファイバーとか、あるいは移動体のところで入れられないのかということを考えれば、それはいろいろな意味で大きな問題があるからということです。その点についてはまず考える必要があると思います。

2番目に、モデルということですが、これは歴史的原価に基づいて料金が決められているわけではなく、今後の原価算定期間において何が起こるのかを想定して料金が決められるわけですから、その意味では既に作ってしまった送電網などを前提とするという意味では、エルリックとはるかに遠いものですが、ある種のモデルを立てて、計算するとこうなるという意味では、今の制度でもそうなっていると私は認識しています。つまり、一定のモデルが立てられて、需要がこれぐらいだろうということは予想されて、コストがこうなっているからこうなるのだと。将来に向けてどうなるのかということについてはもちろん全く分からなくて、3年を超えた後というのは、またの議論になってしまうので、その意味では予見可能性は大きく劣りますが、事業者にとって分かりにくいということには決してなっていないと思います。

恐らく、事業者にとっても最もそういう意味でモデル化して分かるようになってほしいと思っているのは、むしろ託送料でないほう、つまり、事業者が負担する電源線のコストがどのぐらいになりそうなのかということが全く分からないことのほうが、むしろ透明性などについては不満が大きいのではないかと私は認識しています。

最後に、エルリックを入れるということはもちろん検討の余地がないとは言わないのですけれども、電話線なら東京大阪間の長距離通信のための線をどこのルートを通っていったからといって、混雑がすごく起こるとは余り考えられないのですけれども、電力の場合には、線の引き方によって潮流はすぐに変わりますし、容量なども大きく変わりますので、単純なモデルを我々第三者が作るのはとても難しいと思っています。電気通信よりはるかに難しい。

さらに、これから更新投資などをどんどん行っていって、ずっと維持していかなければいけないという整理についてやるのはとても難しいと思っています。しかし、一方で、井手先生がおっしゃった点はとても重要な点だと思っていて、つまり、電力会社は今までこう線を引いてきたのだけれども、本当にそれが効率的なものなのか。エルリックという格好にしたとすれば、結果的に非効率的な引き方をしていたって接続料金でカバーしてくれない。そうすると、第三者の目から見て、本当にそれは効率的なのか、効率的でなかったらそれは認めないという類、本当に効率的なものしか認めないということが最も重要なポイントだと思っています。

この点については、恐らく電気通信よりもはるかにハードルは高いと思いますが、これから努力していかなければいけないし、そのための努力としては、少なくとも基幹送電線までのところに関しては、広域機関がその役割を果たすのではないかと思っています。広域機関が最も効率的な投資を計画し、そこから反するようなものを認めないだとか、あるいは、効率的な投資を勧告するという格好で、ナショナルワイドに見て最も効率的な投資をするということに関しては、一定の制度的な手当てはされていると思います。

託送料金というのが、特に低圧では相当に高い割合になっていて、場合によっては4割にもなりかねないような状況になっている。つまり、ものすごく頑張ってそれ以外のところのコストを下げても大して料金差ができないという状況になっていて、それは新規参入者にとってはとても不利だということはよく分かります。

それから、託送料金を下げれば、その部分は当然、かなりの程度解消されるので、コスト削減の努力はしていかなければいけないというのは全くそのとおりだと思います。従って、次回の改定に向けて、まだ効率化の査定などが甘いというようなことが具体的にあれば、それについてはきちんとやっていくべきだし、先ほども申し上げましたが、入札というのは原則だという世界でないところから出発したのに対して、これだけ強く言ったわけですから、これからは原則入札になっていくと思います。

入札になっていって、これから初めてようやくまともな査定になるというと変なのですが、御案内のとおり、入札されていればそれだけで効率化されるとは限らないわけです。入札は一応形だけはするけれども、1者応札になるとかで、事実上、随意契約と大して変わらないということもこれから出てくる可能性が十分あって、そういうときにはちゃんと競争性を担保するような仕様になっているのかどうかを、公共調達でも詳しくチェックしていくようなことをこれから本格的にできるようになってくると思います。

その意味で、井手先生がおっしゃったような視点を持って、新規参入者にとって大きなハードルになっているので、次回の改定のときには少しでもそこが下げられるように努力すべきだということであれば、全くそのとおりだと思います。

一方で、これはそのようなこともでき得る限り考えて認可された料金なので、今、この段階で料金変更命令を出してでももっと厳しい査定をして下げるべきだというのは別の問題だと思いますので、私は次回の改定のためにもっと頑張るべきだと、そのことをもっと今から準備して、洗い出して、頑張ってやるべきだということであれば、全くおっしゃるとおりだと思いますし、それは新規参入者の助けにもなると思います。

以上です。

○井手座長代理 1点だけいいですか。

ありがとうございました。

私もエルリックがいいというのではなくて、モデルを作って、それをいろいろな人が見られるような形で託送料を作るというのが一つの方法ではないかということ。

もう一つは、電気通信はメタルというのが過去のもので、光ファイバーだという、それは電気通信というのは技術革新が激しいものなので、光ファイバーというのが出てきたと。送電線というのは、多少は技術革新があるかもしれませんけれども、私の考え方としては、メタルと同じというか、メタルを考えたときに、需要量はだんだん減っていくわけですね。そうすると、託送料というのは当然上がっていきます。電気の需要量がどんどん落ちてくれば、託送料というのは上がってくる。そういう意味で、メタルというのは過去のものというのではなくて、考え方としてあり得るのではないかということ。

そういう意味で、託送料金というのが技術革新の激しいもので、光ファイバーでどうしてやらないのかというと、今、総務省などで検討しているのはメタルと光ファイバーを一緒にして接続料金を検討すべきではないかという議論も当然出てきているので、一概には、メタルは過去のものだというので光ファイバーには適用されないということではない。それだけです。

○東京大学社会科学研究所松村教授 一応、念のため、私は光ファイバーでエルリックを適用すべきだと思っているわけでは全然ありません。

確かに送電線、かなりの分過去のものということはそうだと思いますが、メタルの場合と本質的に違うと思っているのは、メタルというのは、私は将来ほぼなくなるものだと。ウエートもどんどん下がってくると理解している。これに対して、送配電部門にとっての鉄塔はこの後、多分60年後もなくなっていないだろうと思っている。そうすると、そこでもしエルリックのような強烈なことをやって立ち行かなくなっても、他のところで稼げるからということではとてもやっていけない。電力とはやはりかなり違うのではないかと思っています。

いずれにせよ、ここは通信のことを議論するところではないので、もうやめます。

以上です。

○古城座長 松村さん、次回の改定のときにちゃんとやるということだから、次回の改定で原価を洗い替えするというのが、今の制度でもう担保されていますか。

○東京大学社会科学研究所松村教授 御質問だから私が答えていいですね。

それがまさに私がスライド24で言った点です。つまり、上がりそうな要因というのは全部変分改定とサーチャージに持っていって、本来は効率化して下がる部分というのは、現行の値下届出制をそのままにしておくと、そもそも原価算定期間を過ぎても改定しないこともあり得るし、あるいは、改定するときにも、変分改定とサーチャージの部分を除いて、例えばコストは10%下がっているのに0.1%だけ下げる料金を届け出て、値下げです、届出制です、審査は基本的に不要という形で出てこないかは、私も相当に心配している。それに対して原価算定期間が終わって、相当に状況が変わっているのにもかかわらず、値下申請をいつまでも出さないのはおかしい、それもコストベースから著しく乖離したものはおかしいということを、いろいろなところから声を上げるべき。一方原価算定期間内にまだそういう特段の事情がないのにもかかわらず、査定が甘過ぎたのだからというので、一旦認可したものを下げろというのは違うというつもりで、まず言っている。

その後の本当に下がるのだろうかという懸念については、制度の作り方にもかなり依存する。つまり、これからの変分改定をどこまで認めるのか、あるいはサーチャージ化することをどこまで拡大してしまうのかということにも依存してくると思う。この点では全く御指摘のとおり、私も懸念しています。これについてはもし本当にそういう方向に行ったとすれば、私は反対するつもり。無体に別枠の変分改定の対象を広げるのには反対するつもりです。その上で、原価算定期間が終わった後も大きく状況が変わり、本来ならば下げられて当然なのに、いつまでもずっと同じ料金が続いているというようなときには、声を上げなければいけないとも思っています。

そのような点について懸念しているということの声を上げることは無意味なことではないというか、とても重要なことだと思います。

いいでしょうか。

○古城座長 確認ですけれども、今の松村さんは、次回の改定というのは、次回の値上申請のときはということですね。それはうまいタイミングのときもあるし、非常に当てにできないタイミング、ずっと先になってしまう場合もあり得るということですね。

○東京大学社会科学研究所松村教授 これは恐らく意見が大きく分かれる点だと思います。その意味で、まだ決まっていないということだと思います。

原価算定期間が3年なのだから、その3年間を想定して付けた料金、そうすると、それを過ぎた後でずっと適応していくというのはおかしいではないか。だって、その期間のコストと全く関係なくつけたわけだから、原価算定期間が終わったら、私は改定するのが筋だと思っています。

従って、今までのように原価算定期間が終わっても、ずっとそのままの料金を維持するということについては、本当はきちんと文句を言っていかなければいけないのではないかとまず思っています。

それから、これから制度は大きく変わっていきます。先ほどの容量メカニズムのようなものももちろんそうですし、託送料金の利用ルールも大きく変わるでしょうし、あるいは、そもそも託送料金の考え方が大きく変わる。配賦方法も大きく変わるということが、これからどんどん出てくると思います。そういうものが出てくるたびに小さく変えるのではなくて、恐らく3年間なら3年間まとめて、これだけ大きく制度が変わったのだから、原価算定後にもう一回きちんと出し直してもらいましょうというのは、私はとても自然なことだと思っていますし、システム改革の文脈で主張しなければいけないと私は思っています。

○古城座長 分かりました。私も全く同じ意見ですけれども、そのようにならなければいけないのですが、もしかしたら今の制度の運用によってはならない可能性が大きいと思っているのです。制度をきちんと変えて、運用をきちんとしていただかないと。

○東京大学社会科学研究所松村教授 大きいかどうかについては若干の意見の違いがあり、私は自分では頑張るつもりなので、従って、何としてでもそうしたいと思っているので、決して大きいと思っていない。そうならなければお叱りをいただくというのはとても重要なことだと思います。

○古城座長 分かりました。どうもありがとうございます。

陶山委員、どうぞ。

○陶山委員 1時間ぐらいの講義を受けたような感覚でいるのですけれども、今、松村先生がずっと託送料金だけ見ていてもだめだというお話をされていまして、私もそのように思いますし、これがまた別の角度から自由化がそのまま効率化にはつながらないというのも、完全にイコールではないのではないかと私は思っています。

その点で、効率化されたかどうかという視点でいろいろな制度なりを、今、松村先生の御説明の中では効率化されているかというところが非常に重要な視点として、いろいろな部分を点検していくとお話しされたと私は理解しましたけれども、もう一つ、料金に対しての納得性というのが非常に重要なのではないかと思います。

今日、高圧と低圧の託送料金の配賦について新しい考え方というか、この辺をお聞きして、私もそうだなと思ったのです。小売料金の改定のときに、高圧のほうの料金ではなく、ほとんどの収入が低圧の料金から回収されていることに対しての消費者の不満というのがすごく出ていたわけですけれども、いろいろなコストについての効率性という視点と同時に、払う側の納得性から配賦を見ていく必要があるのではないかと思っています。

例えばこれは不勉強かもしれませんが、前回第1回に経産省から御説明をいただいたときに、スマートメータは一括して100%託送料金のところでコストを持っていくのだというお話があったのですが、ここもデマンドレスポンスの大きな流れを考えた時に、当然発電部門に対してもこのデータなりシステムというか、総合的な数値なりという、中長期で非常に効果的に使っていけるものだと思うし、そのことによって設備投資等のコスト削減とか、いろいろな効率化も考えられるのではないかと、素人考えですが、思っていたのです。だけれども、全体に関わりがあるものだから、託送料金で100%持っていきますというお考えでした。コストの配賦については、効率から見たらこちらのほうがいいのだけれども、納得性から見たらここは分けたほうがいいのではないかといったコストも、細かく見ていけばあるかもしれないのではないかと思っています。そこら辺を教えていただきたいし、スマートメータについては、私の思っていることが違っていれば、そこを教えていただきたいと思います。

もう一つ、間接費の配賦については、例えば前回、御説明があったのは、社宅であれば戸数によって配賦をするとか、配賦の基準がそれぞれの経費によって随分違っているという御説明だったのです。そこは分かりにくさがあるので、もう少し分かりやすい配賦の考え方とか、基準というものが可能なのかどうなのか、そこが一番適切であれば、もう少し理解を進めなければいけないのかもしれませんけれども、少し納得性というところからお聞きしたいところです。

以上です。

○東京大学社会科学研究所松村教授 まず、2つの点は区別する必要があると思います。

1つは、同じ託送料金の中で特別高圧、高圧、低圧という、この配賦がどうあるべきかという話の場合には、低圧のほうにたくさんコストを盛れば絶対低圧の託送料金が上がりますし、特別高圧にたくさんコストを盛れば特別高圧の託送料金が上がる。でも、裏返して他のところが下がるということがあります。だから、それぞれの消費者の負担感に直結します。そうすると、納得感というのがとても重要で、自分が電気を受けるために必要なコストなら納得できるかもしれないけれども、自分だけではなく他の人も利益を得ているのに、自分だけが負担しなければいけないというのはおかしいだろうという点での納得感はとても重要だというのがあります。

これと、例えば小売と発電でどちらがコストを負担すべきかという話は全く違う話です。どうしてかというと、小売がコストを負担しても、あるいは消費者のほうが直接コストを負担しても、発電がコストを負担したとしても、基本的には消費者の負担は変わりません。変わらないというのは、事業者のほうは市場メカニズムで発電なら発電をしているわけですから、例えば発電のほうにいっぱい税金が掛かるということがあったとすると、そのコストを回収できるような値段で売れないと当然参入してこないということになるので、供給行動が変わります。供給行動が変わると、最終的に消費者の価格に影響を与える。従って、生産者に料金が掛かっていても、最終的には消費者に転嫁されることになります。

逆に、消費者のほうに直接料金が掛かるということをして、生産者のコストを下げてやると、その分売値が下がってくるので、結局同じになるので、この配賦が全額託送料金に乗っている、実は発電のほうにだって影響しているではないかというような議論は、経済学的にいうと消費者の負担には直接は関係ないということになるのだと思います。

さらに、スマートメータを使って発電投資が効率的にできるというのは、私もそう思います。そのようにすべきだし、先ほど言ったような系統コストを下げていって託送料の上げを防ぐためには、需要側の対応が大きなキーになってきて、そのためにはスマートメータというのがとても重要な役割を果たしてくると思います。

最終的に、スマートメータをうまく使うことによって、系統費用、電力の調整費用のようなものが下がって、その結果として託送料金が下がり、スマートメータという格好で託送料金に乗っているけれども、それ以上の利益が、最終的に託送料金が下がるように誘導していかなければいけないし、そのためのシステムは作っていかなければいけないと思います。だけれども、それで発電コストが節約できるのだから、発電側にコストを負わせるべきだという議論とは直結しないと思います。

さらに言うと、発電量が減るということになれば、発電のコストも減りますが、それは売り上げも減りますから、発電事業者にそもそもコストを転嫁するという話ではなく、全体としての電気料金を下げる方向に誘導できるようにいろいろな制度設計をしていかなければいけないということになると思います。

スマートメータに関しては、文字どおり、消費者が1世帯あれば1個どうしても必要なものというわけですから、これは託送料金という格好でかけるのが私も自然だと思います。

配賦について分かりにくいというのは、確かにそのとおりでして、なおかつ、各社ごとに違っていたりしたものも一部ありまして、これについては一番分かりやすいもの、一番合理的なものに統一していくということが必要だと思いますし、一部今回の査定でもされております。ただ、どのようなコストドライバーを使うのが一番効率的かというのは、文字どおりそれぞれの費目ごとに依存するものですから、何でこの費目とこの費目でコストドライバーが違うのかということは分かりにくく、御不満だとは思いますが、それぞれ一つ一つについて確かにこのコストドライバーというのを恣意的にやった結果として、どこかに変な負担を押し付けていないねということは審査の過程できちんと見ておりますので、今後も見ていくことになりますし、説明ももっとしろということについては、確かにそのとおりだと思いますので、さらに努力しますが、今のところ、それぞれの費目ごとに合理的なものが張り付けられているということになっていると認識しております。

以上です。

○古城座長 次、古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 どうも、丁寧なご説明ありがとうございました。

電力システム改革全般に渡って一番深い知見を持った発言で政策をリードされている松村先生のお話を一度お聞きしたいと思っていたので、大変すっきりと分かったところと、余計分からなくなったところがありますので、質問をさせてください。

一つは、託送料金なのですけれども、確かに容量メカニズムの議論との関連では、どこに予備力を持たせるとか、そういうことも必要だということはよく理解できるのですけれども、基本的には新規参入の小売の事業者というのは、電源の確保に非常に苦労しているところも多く、事業としてやっていくためにはやはり予備力を系統のほうに持たせることになると託送料が上がるということになろうかと思います。そこのところが少し分かりにくいので、もう少しご説明していただきたいということ。

先生のお話を伺っていますと、要するに、託送料金低減化のためには、調達コストを厳格にしていくこと、そこの審査とか、監視をしていくことしかないのかなという、ちょっと絶望的な気持ちになっているのですけれども、そもそもの料金査定とか託送料の査定のやり方については、有識者会議の議論を皮切りにずっと進んできているわけですけれども、これは法律でもないし、省令、ガイドラインでもないという理解でよろしいのでしょうか。その辺がよく理解できないのですが、未来永劫、松村先生が的確な御意見を委員としてずっと発言して、それをもとに制度が設計されていけばいいのですけれども、そういうことも今後の課題としては担保できないとなると、例えばこうした調達についてのガイドラインを作るとか、そういうことが可能かどうか、法改正とはいかないまでも、こうした託送料に関する調達については、どこか特別の部署ないし機関でチェックをするためのガイドラインのようなもの作成する。自由化の中で難しいかもしれないのですが、まだここの部分は規制料金なので、そういった対応が可能かどうかということについての御意見を伺いたいと思います。

○東京大学社会科学研究所松村教授 ガイドライン化が何に関してどれぐらい必要なのかということは、ちょっとまだ具体的にイメージが湧きません。例えば公共調達などでは、いろいろな形でガイドラインというと変ですけれども、こういうやり方によってさらに競争性を高めることが可能なのか検討すべしということがいろいろなレベルでガイドラインなりが出ているわけですね。そうすると、今の原則は、ルールからして、公共調達のように入札を必ずせよとまでは言えないのだけれども、入札をしなければ、適正なコストはあなたに証明義務が負わされるんだよというのが、およそ考え得る限り一番厳しいことのような気がして、これ以上ガイドライン化するというのはどうしたらいいのか。正直、もし、ガイドライン化せよと言われても、ちょっと途方に暮れてしまいます。

それが後退することがないかということの御懸念ということもきっとあるかと思いますが、仮に私が明日死ぬということがあったとしても、さすがにここまで公開の席で言われたわけですから、後退することはないのではないかと私自身は楽観的に考えています。

ただ、具体的にこういう点でもっとガイドライン化が必要だということであれば、御提言いただければきっと経産省のほうでも検討すると思います。

それから、査定するしかないのかというのは、規制料金である限り、プライスキャップだとかいろいろなことはもちろん工夫していくべきだと思います。地道に制度設計と査定を頑張っていくしかないのだろうと思います。

容量メカニズムについては、私は何がいいということを言ったつもりではなく、高い低いだけで判断しないでくれということだけを言ったつもりです。容量メカニズムについては、小売に寄せるほうがいいのか、あるいは送配電事業者に寄せるほうがいいのか、両方がやるとしてもどれぐらいの割合で持つべきかというのは、これからの議論ですから、送配電事業者に寄せるのがいいということが決まったわけではもちろんありませんし、御意見のようなことは当然あり得ると思います。託送料金が上がるというのは、確かに新規参入者にとってウエルカムでないのですが、新規参入者は今、ただでさえ電源が足りないわけですね。そうすると、100売るときに100の能力を調達してくれと言われるのと、105の能力を備えろと言われるのでは、やはり105備える方がしんどいということも当然あり得るわけなので、何が一番新規参入者にとってやりやすくて、何が一番実効的な競争を担保できて、何が一番効率化に資するのかということも考えなければいけない。

さらに、これについては、御関心が深いことだと思うので、もう認識しておられると思うのですが、例えば太陽光発電のようなところで、今までは基本的に特定負担だったようなものも、ルールが変わって一部一般負担に変わったのですね。それはフェアになったということなのですけれども、一般負担になったので、ルールが変わる前よりも変わった後のほうが、託送料が上がる要因です。上がる要因ですが、それは悪い改革かというと、イコールフッティングにしただけですから、決して悪い改革だと思っていないのです。こういうことも含めて、託送料金が上がるからといっていけないのではなくて、非効率的な結果として上がる、不公正な結果として上がるというのがよくない。単にそれを言っただけということを御理解ください。

以上です。

○古城座長 次、矢野委員、どうぞ。

○矢野委員 丁寧な御説明どうもありがとうございました。

先生のほうからも御指摘のあった、特に26、27のあたり、料金審査の段階の問題でなくて電力システム改革の問題として、低圧、高圧に関する配賦の問題と、最後のページにあります需要地近接性割引は、私も非常に課題があるかなと思っています。現行の料金審査の枠組みだけではどうしても解決できないというか、さらに今後進めるに当たっては制度改革が非常に重要であると思いますし、その上で、現在、制度設計の専門会合でも改めて制度の見直しが検討されていると思いますが、今日のところで少しその辺の課題を共有化できたというところでは、消費者委員会側の今後の意見を出すに当たっても非常に重要になるかなという点ではありがたかったと思います。さらに、先生のほうで制度の見直しに向けてもう一歩どの辺に力を入れていければいいのかアドバイスがあればお聞きしたいのが1点です。

もう一つは、託送料金の中に、料金審査でも行われたのですが、含まれるものと、本来だったら託送料金に含まれるものではないのではないかというところの疑問が消費者レベルではあります。例えば原発関連の費用ですとか、今回の審査でもそこは厳しく査定されてはいますが、そもそもそれは託送料金ではなくて、原発関連であれば原発にかかわっている電力事業者が負担すべきものか、それとも国民全体が負担すべきなのかというのは、政策論議にも及んでいくとは思うのですけれども、その辺の託送料金に含まれる項目というか、内容について、今後、制度設計の専門会合でも何らかの意見交換が行われるのか、その辺について少し御意見を伺いたいと思います。

○東京大学社会科学研究所松村教授 まず、最初に言われた点ですが、大変申しわけないですが、アドバイスはありません。ごめんなさい。

私は言いたいことは今日全部言ったつもりでして、ここに書いてある以上のことは私にはありません。やるべきだと思うことは出席したあらゆる会合で全て言って、言っていないことは何一つないものですから、それ以上に思いつくことは現時点でありません。今日、お話ししたので私の精いっぱいです。役に立たなくてごめんなさい。

それから、含まれるべきでないコストが入っているのではないか。例えば過去のサイクル分のコストのような類のものは、その時点で、つまり震災よりはるか前のルールの段階で決まったものをそのまま引き継いでいるというわけなので、これはさすがそのルールを変えないとノーというわけにはいかないし、その時点でそういうルールを決めたというのはそれなりに理由があったということだと思いますので、私たちには如何ともし難い。ただ、仮に、これは過去分なのですけれども、今後の部分でいろいろなコストがかさんでくるときに、それは発電事業者が本来負担すべきコストなのに何で託送料金なのだということがあったとすれば、その議論が出てくるたびに議論するしかないと思います。それは恐らく電力システム改革という文脈で出てくるのではなくて、他の様々な委員会で出てくるのだと思いますので、その委員会で出てくるたびに意見を言っていくしか仕方がなくて、この段階で私たちでは如何ともし難い。

ただ、一般論として、私も発電に起因するコストは発電事業者が負担すべきだというのは大原則だと思っているので、そのような原則を踏み外して、電力消費者全体に負担させられる規制料金は託送料金しかないからという理由で安直にやるということがあったときには、それに伴う責任もちゃんと果たしてくれということを言っていくべきだと思いますし、その委員会にもし私が出ていれば、きっと言うことになると思います。

以上です。

○古城座長 ありがとうございます。

井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 2点あるのですけれども、1つは、入札制度にメスを入れるというのは大事なのですが、他の分野ですが、長期的、継続的にやっていると、そのほうがコストは安くなるというケースもあるし、入札といっても1者でしか入札していないケースが結構ある。ダミーで何となく競争入札したような形をとっているというのもあるので、その辺はもう少し入札について、松村先生が言われるように、踏み込んだ検討をするのは必要だと私も思います。それが1点です。

2点目ですけれども、託送のところと直接関係ないですけれども、7ページ目で、松村先生の「震災前の料金制度」というのが書かれておりますけれども、これまでの電気とかガスの値下げというのは、もちろん効率化による値下げというのもありますが、燃料費調整条項とか原料費調整条項という制度の中で、基準価格を上げるために若干値下げをする、それを届出でやるというケースが多々あったわけで、そういう意味で、値下届出制というのを、言い方は悪いけれども、悪用しているようなケースもあるので、その辺は料金制度のあり方としても検討をすべきではないかと思います。

それと関連して、6ページ目、託送料金で料金値上げをしなかった北陸とか中国とか沖縄電力で、人件費とか修繕費とか、いろんなコストを見直して、託送料金を査定したわけですけれども、そういう3社について規制料金を下げるという声もほとんど聞かないのですが、料金を値下げするという、託送料金で厳格な査定をすると、事業者としては値下げを考えないといけないと思うのですけれども、そういうのが全く出てこないということは、値下げの届出制も限界があるという理解でいいのでしょうかということ。

○東京大学社会科学研究所松村教授 まず、私自身はそう説明したつもりだったのですが、値下届出制がうまく機能していて理想的なものだと少しも思っていない。いい面というか、それなりに理由のある面もあるかもしれないけれども、うまく機能していなかったとむしろ思っておりますので、その点については井手委員のお考えとほぼ同じなのではないか。問題がとてもあったし、これからだって問題になり得ると思っています。理想的な制度だとは思っていないということです。

電気料金、ガス料金に関して言えば、電気料金は震災前、どこから起点を取るかということにも依存しますが、ほぼデフレ率ぐらいは小売料金が下がっていたと評価されている。つまり、便宜上下げたというだけではなくて、そこそこ下がっていたというような面はあるので、これは震災前については一定程度評価しなければいけないかもしれないと思っています。

ガスについては、デフレ率には明らかに負けていた。十分だったかどうかというのはまた議論の余地はあるのかもしれません。

次に、入札すればいいというものではないというのは全くそのとおりだと思います。そのことを書いたのがスライド16のところだったのですけれども、入札されればいいというわけではなくて、結果的に1者応札とかになって、1者応札が必ずしも常にだめということではないけれども、結局ほぼ随意契約と変わらないというか、なれ合いになっている可能性もあるし、あるいは仕様とかは非常に合理的でない結果として、その会社しか応募できないようになっている可能性だって十分あるわけですから、もちろん入札に移行すればいいというわけではない。そこはあくまで出発点であって、ようやくそこでまともに仕様はちゃんとしているのかとか、競争性は本当に働いているのか、あるいは、随意契約のほうがうんとコストが安くできるのですというようなことが本当に例外的に出てくるという状況になるところにようやく次回以降の改定でできるようになる。だから、御指摘のようなことはこれから頑張らなければいけないことだと、確かに思います。

○古城座長 陶山委員、第2ラウンドね。

○陶山委員 松村先生のスライドの25の託送料金の固定費と従量料金ですけれども、様々な弊害と共に、効果と利益というような書き方をされていらっしゃるのですが、固定費用と従量料金の案配は、松村先生のお考えとしてどれぐらいのバランスで料金に乗せていくのが現在適当で、改革を進めていく中でどういう道筋が松村先生としてはベストだと今、イメージを持たれているのか、教えていただきたいというのが一つ。

前回、経産省からの御説明のところで、委員、オブザーバーからのコメントも御紹介いただいたのですが、その中でF-Power、これは新電力の方かと思いますが、非常に合理的で大変すばらしい審査会だったといって、非常に納得をされているコメントが載っていますが、多くの新電力、新規参入者の方が託送料金についてどのような感想を持たれているか、松村先生のところで捉えていらっしゃる事実なり数字とか、いろいろな意見、届いてくるものがあったら少し教えていただきたいと思います。

○東京大学社会科学研究所松村教授 まず、スライド25に関して、望ましい固定費をどれぐらい基本料金で回収し、従量料金で回収するのが望ましいかというのに関しては、私自身の意見は多分他のほとんどの人と違うと思います。

私の意見は、基本的には、本来は、固定費は全て基本料金で回収し、可変費の部分を従量料金で回収すべきだと思っています。従って、白地に絵を描けるのであればそうすべきだと思っています。ただ、これはものすごく長期的な姿というか、節電を促すということであれば、それは例えば税金だとかで調整すべきだと思っているから、そういう主張をするのであって、他の目的があるのであれば、他の手段で補正すればとよいと思っているので、そう言っている。しかし、現実には、足元でそのような補正手段が取れる可能性はほぼない。すごく短期の段階でそれが望ましいと言っているわけではないのですが、私は本来的には固定費は全て基本料金で回収するのが正しいと思っています。それで最も効率的な絵が描けると思っています。

F-Powerの沖さんのコメントに関しては、私の理解では、この託送料金はすばらしくて、私は全く不満がありませんという意味ではなかったと思います。託送料金の審査というのは当然ルールが決まっていて、その範囲内でできることをやったということで、でき得る範囲のところでかなりの程度合理的に、最も頑張ってやったと言ってくださったのではないかと私は解釈しています。

一方で、先ほど言ったような、そもそもルールとして決まっているレベルで、この託送料金の水準に本当に納得しているかどうか。あるいは、需要地近接性割引のような今の体系に納得しているかどうかというレベルで言えば、沖さんも含めて必ずしも納得はしていないのではないか。長期的にこのままでいいと思っているわけではないと思っています。

従って、現在、例えば新規参入者の声とかを聞くと、託送料金の審査についての文句など今さら言ってもしようがないわけですね。だから、声が聞こえてくるのはこれからどうすべきかということについて声を聞くわけで、まだまだ改善の余地があるという声は、電力システム改革の文脈でのヒアリングなども含めて、いろいろな形でいろいろな方から意見を聞いています。それぞれの方が違う方向の意見を述べられているようなこともあります。その意味で、一様に現在のものがまだ理想的だとは言えない、だから、長期的には変えていってほしいということはあるのだと思います。

しかし、実際に託送料金の審査をずっとオブザーバーとして見ていた人の目から見ると、この制約の中では精いっぱいやったと言ってくださったのではないかということを理解していますので、2つは区別して、まだまだこれからも改善していかなければいけないと思います。

○古城座長 古賀委員。

○古賀委員 済みません、先ほど2つ質問しそびれてしまったので。

1つは、本日のスライドの4ですけれども、真ん中に「欧州に比して恥ずかしい程僅かな再生可能電源の導入時ですら問題を起こす、脆弱で低品質な系統である」というところですが、これは今年4月に広域系統で混乱があったということの意味なのですか。それとも、系統という使い方の意味がよく分からないのですけれども、系統というのは、要するに発電をして、それをネットワークして、送配電まで持っていく、全体の有機的な結合体を系統と捉えていくものと思うのですけれども、先生の捉え方でこの文意をどう理解すればよいのか教えていただきたいということが1つ。

それから、スライド26の託送料金の配賦のところですけれども、大電源を遠隔地に建設して、大送電線で運ぶビジネスモデルを前提とした体系ということで、将来も合理的であり続けるとは限らないということで、先生は「分散型電源を主力とする地産地消のビジネスモデルが公正に競争できず、結果的に再エネが不利」になるということで、本当にこういうビジネスモデルだと再エネが普及しないというのは需要家、つまり消費者にとっても非常に困ることだと思います。先生が他のやり方で優遇すべきとおっしゃったのですけれども、例えば再エネでも、洋上とか風力とか太陽光発電などが、これからもし民間も含めて大規模に発電システムなどができてきたような場合には、先生のお考えとしてはどのようなやり方で優遇すべきだとお考えでしょうか。

○東京大学社会科学研究所松村教授 まず、先に26ページのほうですが、若干誤解を招くような説明をしたような気がします。私は、地産地消のビジネスモデルを優遇すべきと言ったつもりではない。地産地消はとても重要なビジネスモデルだとは思っていますが、疑いもなくすべきことは公平に競争できるようにすべきということであって、もし優遇すべきだとすれば、託送料金をまけるとかという格好ではなく、別のやり方をすべきと言ったつもりでした。優遇すべき、すべきでないというのは全く別のところで議論すべきことだと思います。私はそれをすべきだということを強く主張したいがためにここを書いたのではありません。誤解を招いて済みませんでした。少なくとも公平に競争できるようにしてほしいということです。

そういう意味では、再生可能電源は全て分散型電源というわけではないし、再生可能電源というのは全て地産地消モデルと相性がいいとは限りません。遠隔地の大規模発電を大送電線で運んでくるというビジネスモデルと親和的な再生可能電源も当然あります。それは再生可能電源なのだけれども、冷遇すべきだと言ったつもりも全くありません。とりあえず、まず公正に競争できるような料金体系を託送料金で考えるべきだということだけ言ったつもりでした。

それから、次に、スライド4。ちょっと筆が滑って書いてしまったのですが、これは広域機関の直近のシステムトラブルとか、あるいは系統部門の直近のトラブルのことを言っているのではありません。私は大昔からずっと同じことを言っています。恥ずかしいぐらい少ないのにというのは、例えば風力などに関して、震災前に系統への接続をずっと制限していた。その量はスペインだとかに比べればまだまだはるかに少ない量にもかかわらず、抽選制だとか、そういう類のものを入れざるを得ないほどに脆弱な系統だったではないかということなのです。

しかも、これはそこだけ読むととてもミスリーディングなのですけれども、私はその前に、停電率がこれだけ低い、世界に冠たる立派な系統網であるということをちゃんと言ったつもり。逆にそこだけ捉えてクオリティーが高いということをとても強調する人がいっぱいいるのだけれども、停電率が低いというのはそのとおりですが、再生可能電源があんなにわずかに入っただけでもスタックしてこれ以上つなげないなどということを安直に言ってしまうほど脆弱な系統だったではないか。だから、クオリティーというのは昔からとても高いという側面と、低いという側面の両方があるから、両方言わないとアンフェアだと。そういう意味では、例えば送電投資というのがプアだった結果として、風力発電とかがなかなか入らないという側面もあるのではないですかということを言ったということ。ただ、これは、私は震災前に言ったときにはえらく怒られて、いろいろな委員会を首になったので、余り言うとまたいろいろなところからお叱りを受けるのだろうと思うのですけれども、私は間違ったことを言ったと思っていない。これからヒアリングを受けるときに、こんなに停電率の低い立派な系統なのだから、託送料金が高くて当然ですよと旧一般電気事業者あるいはその太鼓持ちに仮に言われたら、そういう側面もあるけれども、違う側面もあることは必ず頭に入れて聞いてほしい、というつもりで、つい余計なことを書いてしまいました。それ以上の他意は全くありません。

○古賀委員 接続のルールとか、対応が悪いと受け取っていいのでしょうか。系統自体の物理的なものは非常に高品質であるけれども、風力などの再エネが入ってきたときに入れられない原因というか、どこに問題があったかというと、ルールの設定にあったのか、それとも、物理的な系統の作り方にあったのか。

○東京大学社会科学研究所松村教授 私は系統の作り方にも問題があったと思っています。分散型電源などについてきちんと考えられていたかどうかについては、相当に疑問を持っています。

ただ、いずれにせよ、不公正なやり方で接続を拒否するとか、あるいは電源線の費用を不公正な形でふっかけるということをすれば、それはちゃんと異議を申し立てられるような機関は広域機関でちゃんとできていますし、当然、いろいろなところで監視することになっていますから、そういう類の不公正は基本的になくなってくるはずだと思っています。

それから、基幹送電線のレベルの投資に関しては、合理的な投資を広域機関がきちんと見ることになっていますから、これからについては問題はどんどんなくなってくるのではないかと思います。

基幹送電線より少し下位系統になってくると、これはまだ問題はあり得るとは思いますが、これについても現在、FIT法が施行された後で、今まで電力事業にかかわっていなかったいろいろな小規模の事業者がどんどん入ってきて、当然接続を要求し、そうするといろいろなことを言われる。それに対して、不当だと思えば当然文句の声を上げるわけですね。それがとてもありがたかったと私自身は思っています。今まで電力事業者の常識というのが、実は競争社会に生きている人にとってみると非常識だったということはひょっとしたらあったのではないか。新規参入者がこれだけ入ってきて、いろいろな人が声を上げてくれたことによって、かなり効率化し、透明化してきたのではないかと思っています。今後もこのような流れが続いて、御懸念のような形での非効率性、低品質性が起きないようになっていると思いますし、それが定着するように私たちも見ていかなければいけないと思います。

以上です。

○古城座長 あと、固定費というのは伝統的に2:1:1法で配分することになっていますね。送電設備というのはピーク時に電力を流せるように作っているのだと。この考え方からいうと、ピーク時の電力費なのですけれども、それだけではだめだというので、効用も考えてという説明で2:1:1法とやっているのですが、これは家庭用にかなりのコストが配分されて、不利な配分方法だと思うのですけれども、これは今後の電力改革で検討することになっているのですか。先ほど言った託送料金で。

○東京大学社会科学研究所松村教授 2:1:1あるいは2:1とか、それぞれの費目ごとにいろいろな考え方が、2:1:1が一番典型的なものですね。これに関してはなぜ2:1:1なのかと理論的に根拠があるわけではなくて、ある意味でエイヤと決めでやっているわけですから、何で1:1:1ではないのだ、何で1:2:1ではないのだというのは確かにそのとおりだと思います。従って、これについては長期的に考えるべしと言われれば、当然に検討すべきだと思います。

その要素なのですけれども、例えば家庭用で考えると、家庭用の夕方6時ぐらいに最もたくさん使うということがあったとすると、6時ぐらいに最もたくさん使うことに合わせた設備も一定程度必要なのですね。特に下位系統のところで、例えば柱上変圧器だとか、そういうレベルだとかに来ると、全体のピークというよりは、まさにローカルなところのピークに合わせて設備を打たなければいけないという固定費もあるものですから、それぞれの種別ごとの、あるいは極端なことを言えば個別の需要家ごとのピークがどのぐらい使っているのかというのに依存するという側面は確かにあるわけです。

例えば基幹送電線だとか、あるいは発電設備だとかについては、ピーク時にどれぐらい負荷をかけているのかというのがとても重要。だからそこも考えなければいけないということになる。そうすると、配電部門にとても近いところの設備なのか、あるいは、基幹送電線のレベルなのかによっても、本来なら変わってきてしかるべきだし、実際に高圧と低圧だけが負担するコストの部分と、全部が負担するところの部分では考え方を変えているというのはそういうことによります。従って、今のが絶対に正しいとは決して言わないけれども、必ずしも自明におかしいとも言えない。

2番目に、家庭用は夕方の6時ぐらいに主に使っていて、全体のピークは夏の1時とか3時ぐらいの時間帯なので、家庭用は実は負担が余分になっているのではないか。低圧の負担が結果的に大き過ぎるのではないかというのは、結構、微妙。例えば特別高圧の需要家は、そのピーク時に余り使っていないとかも十分あり得る。典型的なものは、例えば電炉みたいなものを思い浮かべていただければいいと思うのですけれども、そんな時間帯はほとんど使っていないですね。そうすると、低圧が今のやり方だと重過ぎて、需要全体のピークのところの配賦の割合を増やすと、本当に低圧のコストが下がるかどうかはかなりの程度微妙で、ひょっとしたら上がってしまう可能性もないではない。

さらに、長期的に言うと、これからピークは太陽光がこれだけ入ってくると、時間帯が1時、3時というのではなくて、多分、4時、5時、6時に移行してくると思います。そうすると、これまた家庭用のピークともろにぶつかってしまうこともあり得て、長期的にはむしろ低圧の託送料を、古城先生ご提案のように変えると上がってしまうということもあり得ると思います。

ただ、全体の効率性を考えるわけですから、低圧の料金が上がってしまうことがあったとしても、それがもし本当に効率的だったらやるべしということは、当然、私たちは言わなければいけないのだと思うのですが、消費者委員会あるいは消費者庁で言うのが、どれぐらい意味があるかなというのは慎重に検討されたほうがいいと思います。

○古城座長 慎重に検討しますけれども、今のところの松村さんのピーク時の需要量で配賦するよりも、各需要家のピーク時の対比のほうが低圧需要家に不利だというのは、それは検討した上で慎重に発言しようと思っていますけれども、私の認識は違いますね。

○東京大学社会科学研究所松村教授 可能性があると言っただけです。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

大変盛り上がったと思いますけれども、そろそろ時間が来ましたので、議論は以上とさせていただきたいと思います。

松村教授におかれましては、お忙しい中御出席いただき、ありがとうございました。

(説明者交代)

≪3.電力宅送金制度等に関するヒアリング 説明者:山内宏隆 一橋大学大学院商学研究科教授≫

○古城座長 続きまして、電力託送料金制度の課題とその改善策について、山内教授より御説明をお願いいたします。

お忙しい中、引き受けてくださったこと、大変ありがとうございました。30分程度でお願いしたいと思います。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 今日はお招きいただきまして、また、こういう発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

私は、今、松村さんの資料があるようですけれども、自分の資料はなくて、一応参考資料1をお配りいただきました。これはご覧になって分かるように、平成24年ですから震災以降の東京電力の料金問題を中心に、特に当時は東京電力の財務問題ということで、財務の洗い出しをやった一方で、料金はそれとどのように関連しているのかということをまとめた報告書です。

今日、これをお配りしていただいた理由は、託送料金の問題は今、消費者委員会のほうでいろいろ問題提起されていることがあるわけですけれども、ある意味ではその問題の本質みたいなところがこれに表れているからでありまして、当時、東京電力の事業効率性といった問題を一方で見直し、また、料金のあり方を見直したわけで、それがここに統合されているので、その意味では今回、いろいろ問題を提起されていることの内容がここに入っていると思いましたので、これを用意していただいた次第です。

もちろんこれを全部私が説明する必要もないというか、当時、今でも私は十分に理解しているわけではないところもあるので、私のほうからこれを説明するということは必要ないかと思うのですけれども、託送料金の問題というのは、実は料金の総括原価の査定といいますか、どのように捉えるかそのものの問題なので、そのエッセンスみたいなものを少しお話しさせていただいて、役割を終えようかと思っています。

今、松村さんが熱弁を振るったので、私は説明する必要はないかと思うのですが、実は、私自身は料金問題というのは自分の研究の立場としても非常に中心的にずっとやってきたのです。経済の人間ですので、経済学の立場から料金問題をやってきたので、その辺の基本的な考え方をまずお話ししようかと思っています。

お手元の資料でいうと、4ページに「現行制度」と書いてありますけれども、基本的には料金の総括原価収入というのは今でも変わらないということです。具体的には、私も今、学校の授業で最初に話すのですけれども、基本的には公益事業的なものの根本というのは、自然独占性と財の必需性と捉えていまして、自然独占性というのはまとめて作ったほうが安いですよという話ですね。必需性というのは別の言葉でいうと、ライフライン的な重要性を持っているので、そういった財の性格があるのだということですね。

そこにあるように、自然独占性のほうからいうと、二重投資とかを防いで、その意味での、非常に荒い意味でいうとコストの節約をするという効率性を求めるというのが一方ですね。その一方で、独占をそれで許すと、利用者といいますか、消費者といいますか、需要家といいますか、立場が非常に不利になるということで、公的な介入が必要だということになる。そのために、料金の規制をするという論理になっているわけです。

それをどうするかというと、この具体的にはということで「原価主義の原則」「公正報酬の原則」「需要家に対する公平の原則」ということですね。

原価主義というのは、発生した費用を償うということですね。最後の需要家に対する公平の原則というのは、いわゆる不当差別の禁止ですね。公正報酬というのは事業自体を適正に運営することを表しているということだと思います。

そこで、公正報酬率規制というのを、電力のような大規模な場合は採られているということになろうと思います。

学校の授業だと、ここで総括原価というのは2つあって、積み上げ方式と公正報酬率規制というのがあって、積み上げ方式というのは大体、そんなに資産を持たないような、例えば私の専門の範囲で言うと、バスとかタクシーとか、そういった分野では余り大きな資産はないですから、実際に掛かったコストを積み上げて総括原価にするというやり方をとっている。その一方、大規模な施設を有するような、電力ももちろんそうですが、ガスとか、あるいは鉄道もそうですけれども、そういったものについては資産を前提とした公正報酬率規制を採るということになっています。

公正報酬率規制を採ることの一つの一番大きなポイントは、実際に掛かった原価、要するにバランスシートでいうと自己資本、他人資本の中の支払い利子と株主に対する報酬ですので、それを足すのではなくて、そこから具現化された資産に対して報酬を出すという形を採ることによって、効率性を図るのだと言われています。

ただ、御承知のとおり、そうであれば、固定資産を膨らませてやれば公正報酬額が膨らむのだという議論が一方である。昔の経済学の教科書に載っていました。アバーチ・ジョンソンとか、そういう効果ですけれども、そういったことがあるとか、あるいは公正報酬というのは理屈としては分かるけれども、資産に対する公正報酬はどれだけの報酬率になるべきなのかという具体的な指標みたいなものはなかなか見つからないという問題になる。その辺がずっと議論されてきたわけです。もう一つは、資産自体をどのように評価するのだという問題もあります。そういうところがずっと議論されてきたということだと思います。

日本の場合には、そうはいうものの、長い間それが行われてきて、先ほど古城座長がおっしゃっていたような固定費の配賦問題とか、今の原価の報酬率の規制の問題とか、どれだけの報酬率を与えるべきかとか、そういった議論は繰り返されてきたけれども、ある程度安定的な制度としてやってきたと思います。

ただ、それでも審査に対する効率性みたいなものは、要するに、資金調達上の効率性みたいなものはインセンティブとしてあるわけだけれども、実際には例えば先ほど申し上げたように、資産を膨らませることによって公正報酬を膨らませるとか、そういったインセンティブがある。

それから、その他、経常的な経費については、何らかの形でのインセンティブがない限りはそれを膨らませて公正報酬に乗せるというインセンティブがあるので、そういった経常的な経費についての効率性をどう担保するかという話になってきています。

御承知のように、そのためにヤードスティック型規制ということで、横査定とよく言いますけれども、それを入れて比較をするということになってきたのです。

それを前提にやってきた電気料金ということになるわけですけれども、幾つかの論点は、今、申し上げたような経常的な経費の効率性みたいなものをどう担保するかということだったと思います。

今回、この資料を配付していただいたのは、まさに財務的な分析を通じて、例えば修繕費の問題等、全然予定と違ったところにあるではないかとか、あるいは人件費の問題もしかりですけれども、そういったものに対してどのように切り込んでいくかということを提起しているのだと思います。

以前、この調査会の目的を伺ったときに、具体的な、あるいは査定といいますか、そういった問題について議論することをおっしゃっていたわけですので、ある意味では原点に返って、これをもう一度確認してみるというのが、この調査会の目的に合致しているのではないかと思っています。

今までもそれでヤードスティック規制というのが行われてきて、いわゆる横査定といいますか、事業者間ごとのものが行われてきたわけですけれども、具体的に言うと、何かの指標を作ってやるのはいいのか、悪いのかという問題はあると思います。

というのは、例えばこれは、今回は電力料金ですけれども、鉄道の場合にも同じようなことがあったのです。今、鉄道の原価査定についてはヤードスティック査定をするのですけれども、それについては客観的な式を作って、例えばある費目の費用についてはそれを説明するような回帰式を作って、大手20社であればそれで標準的なコストを出して、それを適用するというやり方をしています。

鉄道の場合、なぜそうなったかというと、そもそも、元々は鉄道の場合にはヤードスティック的な横査定みたいな明確なものはなかったのです。人件費と物件費と、3つぐらいの費目に分けて、ある意味では非常に規制側が入り込んだといいますか、あえて言葉を選ばなければ恣意的な査定をしていたという時代があって、それはそれで厳しい査定という見方をすればそうなのかもしれないのですけれども、逆に、事業者の立場からすると、非常に予測可能性といったものがない。特に非常に昔の話ですので、公的な権力対民間という形になると、かなり強圧的といいますか、コアシブという感じですけれども、そういう査定があったという事実があって、87年に鉄道事業法を改正したときに今のヤードスティック規制を入れたのです。

申し上げたいのは、紙一重なのです。ですから、非常に裁量的になってしまわないといいますか、それの問題がかなりあるのだと思っています。その意味では、電気料金についてもヤードスティックを入れて、そういった事業者間の比較をするようになったというのが一つの進歩といっては変ですけれども、規制の変容としては望ましいものだと思います。

そこで、この点について言うと、今回、託送料金の始まる前に、電気料金そのものの査定をずっとやってきたのですけれども、今、申し上げたことで言うと、ヤードスティックのやり方をさらに範囲を広げるといった形で、細かい費目について、よくトップランナー方式という言葉も使っていましたけれども、例えばトップランナー方式で一番効率的なものを基準にして、このように測りましょうとか、そういうやり方を採ったということです。これはこれで一つの指標を採るということなので、行政的な関与の仕方としては客観性を持っているということもできますけれども、それをどこまでやるのか、指標の取り方をどうするのかというのは、ある意味ではそれぞれの考え方による。それをどう捉えるかという問題であると思います。

その中のうちの一つに、例えば入札比率をどこまで上げるかというのがありますね。それも一つの指標だと思いますけれども、単に横だけの査定よりもマーケットをどこまで使うかというのは一つ進んだやり方ではないかと思っています。

ただし、私自身は研究者ですので、現場のことは分かりません。現場でどこまで入札比率を上げるのかということを、私自身の感覚からすると、軽々に自分で決められないという意識は持っています。これは全てについて同じなのですけれども、我々が何らかの形で関与するときの情報の限界が必ずあって、それを超えて何か言うというのは、自分としては少し自分の良心に反するところがあるので、なかなか思い切ってこうだという言い方は、私自身は控えるべきではないかと思っています。

もしも、それで情報が不完全である中で、効率的なことをやるというのなら、やり方としてはインセンティブシステムみたいなことしかないと思うのです。要するに、情報を取りながら何らかの細かい規制をしていくということをある程度はできると思うのですけれども、限界がかなりあって、それ以上のことになると、他のインセンティブでやるしかないというのが私の理解です。

先ほど、松村さんのレジュメにもありましたけれども、例えばプライスキャップシステムというのは80年代のイギリスで考案されて、非常に単純な規制で、今、申し上げたことでいうと、情報の不完全があるので、インセンティブだけの規制にしたというものの極端なケースだったわけですね。これはこれで一つの力になったと思いますけれども、御承知のとおり、イギリスでプライスキャップをやって、やはり説明責任が十分でないということはよく言われた。日本の場合には、プライスキャップを入れているのが、電気通信の基礎的電気通信役務ともう一つだけプライスキャップを入れていますけれども、あの場合も電気通信事業法の改正に当たって内閣法制局がやったことは、要するにコスト的な裏づけがない価格規制というのは不適切ではないかという指摘があったのですね。だから、インセンティブでやるということ、逆に言うとそれの限界というのは、今、申し上げたような説明責任の、あるいは納得力といいますか、そういったものにあるのかなと思っています。

結論から言うと、電気料金の査定のやり方というのは、ある意味ではインセンティブと説明責任を組み合わせてやっているのかと思っています。先ほどの話のように、例えば何らかの費目について市場化の比率を出すというのはそういうことなのかなと思っています。

話が戻りますけれども、しかし、そこのどこまでという限界はなかなかつかみづらいというのが実態で、それは先ほどの、話が堂々めぐりになってしまいますが、情報の不完全性にあるのかなと思っています。

経常的経費についてどのように考えるかというのはそういうことだと思いますけれども、一方で、先ほどの議論にちょっとありましたけれども、固定費とか共通費の配分問題というのが必ず出てくるわけですね。

先ほど座長がおっしゃっていたように、2対1対1とか、いろいろな基準があります。私の知る限りでは、電気の固定費の配分のやり方というのは、割合いろいろな意味で論理的に作られていると思っています。特に、近年、細かいところについてABC会計を使ってという説明もございますように、何らかの説明がつくというところで、固定費の配分の論理を組み立てていると思っています。

ただ、ちょっと蛇足ですけれども、ABC会計という言葉を使うのですけれども、管理会計上のABC会計と料金規制上のABC会計というのは全く似て非なるものだと思っています。管理会計上のABC会計というのはある特定の目的、究極的には利益を上げるという目的のためにどのように固定費を配分するかという話でして、こちらの料金規制上のABC会計というのは、何らかの説明責任だったり、納得性だったり、そういったものでの配分ということになっているわけです。ですから、本当は別の言葉を使ったほうがいいのではないかと思っています。

ちょっと余談ですけれども、ある大きな家電メーカーの会計担当者と議論したときに、ABC会計の話になったのですけれども、固定費をどのように配分するのですかという話をしたのです。そうしたら、彼が言うには、その配分の仕方というのは今、申し上げたように、最も利益が出るように配分するのです。ですから、例えば赤字の分野があって、黒字の分野があって、その間で公平にというのではない。逆に言うと、固定費を配分するときに赤字の分野にどんどん固定費を回してやる。そうすると、そこは赤字になる。潰れるのです。なくなったほうがいい。そういうものなので、その意味ではちょっと異質なものだと思いますね。それはそれで、この料金の固定費の配分のやり方としては正しいといいますか、望ましいものだという言い方はできると思います。

ただ、井手先生とか、先ほど松村さんもいたけれども、言わなかったのですが、経済学者はちょっと違うことを考えていて、負担力主義といいますか、負担しているところに固定費を配分したほうがいいのではないかという考え方を持っていますね。基本的にはラムゼイプライシングですけれども、そのほうが、社会的余剰が起きにくくなりますよというのが理屈です。ただ、もちろん、そうすると、先ほどの話ですと、事業用部門と電灯料金みたいなところだと、電灯料金のほうがもしも弾力性が小さければ、そちらに余剰が出てくるということですので、社会的公正性とか所得分配上の問題が出るという議論をいつもしているわけであります。

ただ、私はこれの議論というのはだから全然だめだということではなくて、変な言い方ですけれども、いろいろなところで使い分けることができるわけですね。例えば今、マクロ経済で産業競争力の問題、国際競争力の問題とか言っていますけれども、要するに、税金をかけると外へ逃げていきますよという議論のときに、そのための減税をしましょうという議論になるわけですね。だから、それとある意味では同じで、逃げる客には安く、逃げない客には高くというのは、ある程度いろいろなところで使える。それが所得分配上の非常な逆進性というと問題だけれども、許容できる範囲であればそれもあり得るのかなと思っています。これも一つの蛇足です。

それから、公正報酬率規制の話をしたいと思うのですけれども、先ほど冒頭に言いましたように、公正報酬率規制というのはそれなりにインセンティブだけれども、いろいろなバイアスを持っているというのが特徴です。

繰り返しますけれども、それについては、資金調達上といいますか資金構成上の効率性をというのが基本的な考え方です。ただし、バランスシートでいうと左側の資産のところに結びつきますから、資産を大きくしておくと額が大きくなるという特徴を持っているので、その問題点がいつも指摘されてきたということだと思います。

これは考え方で、元々は公正報酬率規制とはアメリカのやり方で、アメリカで導入されたわけですけれども、最大の理由は説明責任にあったと思うのです。企業の経営上、どうしたって資本コスト的なものは必要なわけで、それに対してどれだけ与えるかということだと思うのです。そのときに、実際に借りてきた、あるいは出資者に対するリターンではなくて、あるいは利子ではなくて、資産に対するというところで、ある意味での効率性があるのだと。それに対する説明責任だと思います。

ただ、どれをどう決めるかというようなことでいうと、かなり難しい。一つは、いわゆるレートベースというものをどのように計算するのかといったら、昔から帳簿の価格でやるのか、時価でやるのかという問題になっていますね。

もう一つでいうと、実際、公正報酬率をどう決めるのかという問題がありますね。公正報酬率をどう決めるかというのも、日本の場合ですと三七の自己資本と他人資本で想定をして、それに対してそれぞれの適正な率を加重平均するという形になっていますけれども、それはどのように計算するのが正しいのかというのは答えはないということですね。ただ、相対的にいって、電気料金で使われてきた公正報酬率の考え方は、比較的考えられているというイメージは持っています。金融上のいろいろな手法を使ったことも一つありますし、例えば他人資本に対する指標であれば、比較的適正なものが選ばれてと思います。

結局、事業リスクの問題なのですけれども、事業リスクをどのように測るかというのは、ここでも先ほどの松村さんの資料で書いてあるβ値みたいなものをどう使うかということなのですが、実際にそれを使ったのは電気とかガスが初めてだし、使いやすかったという関係もあるかと思います。というのは、今、電気通信などで同じようなことをやろうとすると、かなり事業分野が広くなっていますので、それに対して実際のリスク、特定の規制すべき分野のリスクをどう測るかは非常に難しいというのが実態ですね。ですから、今まで電気などはかなり強かったと思います。

今回、システム改革の中で、いわゆるネットワーク部門が託送料金という形で残って、それに対する託送料金を測るということですけれども、しかし、発電と小売の部分というのはいろいろな形で競争し始めるわけですね。そうすると、総括原価ということですと、共通費がありますから、基本的に全部を測った上で配分しなければいけないということになるので、今、申し上げたようなリスクをどう測るのだという問題が必ず出てくると思います。

これはどのように測るかというのをこれから議論しなければいけないかも分からないけれども、今のところ、私は電気通信のケースなどを見るとなかなか難しいですね。いろいろな考え方が出ているということになります。

公正報酬率のもう一つの問題は、三七の問題ですね。三七の問題はいつも言われて、何で3対7でなければいけないのだと。実態の自己資本比率というのが、場合によっては10%を切っているとか、そういうところがあるにもかかわらず、自己資本を3割と見るのはなぜかという話ですけれども、これも我々は昔から教科書的に教わり、また、お話ししているのは、要するに、いい悪いは別にして、独占の安定性を図るということを前提にして、自己資本比率のあるべき姿みたいなものを三七にしているからということです。特に、施設規模が大きいところは、我々の認識ではそういったところで自己資本比率が過剰になっていくと、事業上のリスクの問題をちゃんと見てあげましょうという発想だと思っています。ただ、もちろん、逆に言うと、独占なので、リスクが小さいので、そんなに自己資本は要らないだろうという考え方もあるかもしれませんね。その辺の見方、考え方の問題かと思っています。

さて、以上で経常的経費の問題と報酬率の問題と思っていますけれども、あとは配分の問題、レートメーキングの問題だと思いますね。

これは、電力の場合には小売の料金は自由化されましたので、経過措置料金は残りますけれども、経過措置料課金についていえば、三段階の今までの逓増型が残るという意味で、一つのレートメークのやり方が継承されることになるわけですね。

ただ、一方では、自由化されていて、特に日本の場合は小売で経過措置料金とは別に料金メニューを出してもいいということになっていますので、早晩、経過措置的な規制料金と別のものがたくさん出てくると思います。

これは良い悪いの問題でいうと、我々は良いことだと思っていて、基本的にマーケット対応型の料金の構成で、それが教科書的にいえばコストの反映になっていくということだと思います。もし、そうだとすると、今までの三段階の逓増型と比べると、消費者間での損得は出る。これはしようがないという言い方は失礼かもしれないけれども、そもそも自由化というのはそういうものだと我々は思っています。特に今回、消費者委員会のケースでいうと、需要量の小さい御家庭の所得の再分配的な要素がなくなるのではないかという御指摘が強いかと思いますけれども、元々自由化するというのは、マーケット自体は我々経済学者も割り切ってしまいますが、所得再分配の機能は成功しないというのが基本ですので、そういう形になると思います。

もしも、それが嫌だったらば、それに対する規制をかけるしかないということですけれども、恐らく規制のコストは掛かるし、それによる社会的なロスが出るということだと思います。

先ほどのプライスキャップのケースなどは典型的でして、要するに、プライスキャップの議論というのは、水準は規制するけれども、料金構成は規制しないという考え方ですので、そもそもイギリスでプライスキャップを入れたのは、そういった料金構成上のコストと比べたゆがみをなくすためにプライスキャップを入れたという発想があります。

日本でいうと、電気料金で遠近格差がものすごかったのが、今はほとんどなくなってしまったということだと思うのですけれども、電気通信の場合には技術革新が激しくて、コストが小さくなる。また、需要量も特に携帯などの場合には増えていくという局面にありますので、Win-Winの関係がそれで築かれたということですけれども、電気の場合にはそういう形になるかどうかはちょっと非常に疑問といいますか、必ずしもそうはならないだろうと思っています。

ただ、繰り返しますけれども、マーケットを自由化するというのはそういう効果を持つというのは当然であって、それに対してどのように措置を取るかというのは次の政策の問題ではないかと思っています。

それが小売の料金の話で、託送料金の構成については、これもいろいろあると思います。

詳細な話は、先ほど松村さんのレジュメの中に、需要地近接性の話とか、そういったことがいろいろ書いてありますけれども、託送料金の料金構成をどうするかというのは一つポイントかなと思います。これは本当にB to Bの世界なので、我々がどこまで理解できるかかなり複雑なものになっている。それをまず、どういう料金構成になっていて、それが需要家の最終の小売料金にどう反映されているのかということを見る必要があるというのは一つです。

もう一つは、それによってネットワーク自体の維持、拡大、特に今、連係線とかFCというのが全部そこに懸かってきますので、それに対してどういうインセンティブを持つのかというところを見る必要があると思うのですけれども、かなり細かい話だと思います。

特に、系統全部そうですけれども、固定費の塊みたいなものですが、固定費の費用配分をどうするのかという議論になろうかと思います。

たまたま、先日、FCの費用負担問題というのを広域機関で議論しましたけれども、要するに、今ある、沖縄は関係ないので9社の、今でいうと大手電力会社がどのように負担するかという問題になるわけですけれども、ある意味では非常に分かりやすいのは、需要量で割ってやるというのはそうなのですが、逆に言うと、経済学でいうと全部交渉させれば、それが一番いいのではないかということになるので、ぼこぼこと事業者がたたき合えるやり方があるのも一つの手ではないかということも思いますけれども、一方で、ゲーム的な費用負担のやり方はあると思うのです。これはいろいろなところに応用できて、今のFCの費用負担の問題もそうですし、FIT電源に対しての系統増強の費用負担なども同じようなことが言えるかと思います。

それに対して、今、広域機関で議論していたのは、変動型の電源がどこまでどう系統にコストを及ぼして、逆にそれを増強することによる便益はどういうものかというときに、今までやってこられた電力会社の垂直一体型の中で、それをどう負担していたかということを参考にするというのは一つ手だと思います。実際、そうやっています。

というのは、今までは垂直統合でやっていたので、ある意味でコストの優位性だとか、あるいはシャドー便益みたいなものを作ったとき、どれだけネットワーク全体にコストを及ぼすかみたいなものですね。そういったものをどこまで明確に数字で入れていくかどうか分からないけれども、それを前提にして費用負担をやっていたと思うのです。その意味では、彼らは一番情報を持っているわけだから、その情報で帰着したものは一つの目安になるのではないかと思っています。ここまでいくと、かなり細かいB to Bの話なのですけれども、いずれにしても、そういうものが全て小売の料金に反映されてくるということなので、チェックする必要はあるのかなと思います。

大体30分ぐらいになったので、あと不足ということであれば、御質問を受ける中で。雑駁な話で申しわけない。

○古城座長 ありがとうございました。

御説明いただいた内容について、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

今回の電気料金の査定というのは今までの公共料金査定の中で一番厳しいのをやったのではないかと私は思っているのですけれども、具体的にチームを作って、原価を査定したと言われていますが、中身なのですが、一つ、ベンチマーク見つけてきて、それに照らしてこれは下げられるのではないかというものと、いきなり原価自体を見て、これはちょっと高いねという格好で見つけて、市場の中で、ベンチマークと照らしてではなくて、個々の本当の原価まで見てやるというケースもあったとは聞いているのですけれども、割合的にどんな感じでやっていたのですか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 割合というのはなかなか難しいと思いますが。

○古城座長 それもやったという感じですか。それをすごくやったというわけでもない。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 私の印象としてはそうです。というのは、私、個人的に先ほど申し上げたように、絶対的に情報の非対称性があるので、例えばこの水が500円で売っていたら高いと分かるのだけれども、同じような部品が幾らだというのは高いかどうか分からないですね。そういう意味では、ベンチマークを作ってというほうが、先ほども申し上げた通り、ある意味では透明性も出るということだと思うのです。

一度うちの大学で、まだ学内でたばこを吸ってもいい時代に灰皿の缶を導入しますというのがどういうわけか教授会にかかって、それが1個3万円もするというときに、ばかではないかと、それは分かるのだけれども、電気の部分では分からないと思います。

○古城座長 古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 どうも御説明ありがとうございました。

配付していただいた有識者会議の資料の42ページから44ページのところに、レートメークの仕方が図式化してあるのですけれども、この44ページのところで論点1、2、3という指摘がしてあるのですけれども、託送料金の直近の例の査定に関してですが、松村先生が非常に厳密にされたとおっしゃっていましたが、こういう論点については査定の対象になったのでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 レートメークのやり方自体を変えたということではないですね。ルールはルールのままで、個別原価がどうだという査定はかなり厳しくやったのですけれども、例えば共通費の配賦の問題などは、一般管理費等、それを何か議論して変えたというわけではないですね。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

どうぞ。

○古賀委員 済みません、もう一つ。

東京電力のホームページを見ますと、高圧の例なのですけれども、平成24年から26年の平均値のレートメークの仕方の図が載っているのですが、その中で、前回、エネ庁さんにも御質問したのですけれども、要するに、総原価の中で火力とか水力に割り付けた後で整理を保留した原価というのが7,802億円ありまして、その内訳というのが説明の中では電源開発促進税、事業税等となっているのですけれども、この額が大体855億円ぐらい「等」に含まれるのですが、こういった額について査定のときには余り問題にされなかったのでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 済みません、具体的に数字はあれなので。私自身答えを持っていないのですけれども、原理原則でいうと、諸税については外出しになるので、原価対象査定とまた違いますね。

今、おっしゃったのだと、それぞれの電源構成とは別に按分されないという意味ですかね。済みません、それはちょっと見てみないと分からないです。

○古城座長 料金審査というのは審査する側に完全な情報を持っていないし、経験とかもないので、それでやり過ぎると本当はできもしないことをやって、過剰に事業者をいじめることになるし、遠慮すると甘くなってしまうという結果があるのですけれども、前回の料金査定についての評価は非常に厳しくやった面もあるのですが、時間がない中でやったので、もうちょっと時間があったらもっとやれるという説もあるのですが、実際やってみるとどんな感じなのですか。もっと厳しくなるのですか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 私は時間がないといっても、かなり細かくやっているので、相当なところまで、特に我々ではなくて事務当局の方がやられているので、それについては結構限界まで細かいと思います。それこそ帳票から見ていらっしゃって、我々も見ますけれども、全部はとても見られないので、そういう面ではかなり細かくやっているので、時間の問題は確かにあったかもしれないけれども、あれぐらいが限界だと私は思います。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

あと、2点目、配賦基準は一応もう決まって配賦しているので、処理したというのはよく分かっているのですけれども、実際の配賦基準、ABCと言いながら余りアクティビティーではなくて、もっと想定配賦基準がかなり用いられているという評価もあるのですが、それはどんな感じですか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 逆に、先ほど申し上げたように、ABCとかなり想定しているので、その意味でABC的だと言えるのではないかと思います。ただし、目的関数が違うから、そこのところはあれですね。

○古城座長 皆さん、あと、いかがですか。

陶山さん、どうぞ。

○陶山委員 規制からインセンティブを持って事業者にとっても利益が入ってくるような形で効率化を進めるという考え方なのですけれども、それと説明責任セットで情報がどのように出してこられるかということが非常に重要だというお話なのですが、利益が社内留保というか、関係者、そこは株主も入ってくるのかもしれませんが、そこら辺だけで、需要家のほうに効率化したメリットが返ってくるということがなかなか難しいのではないかと思っています。情報開示だけで説明責任を求めるということだけで、果たして消費者なり需要家が効率化のメリットを享受できるのかというところに非常に疑問を持つのですけれども、公平な形で需要家にとっても利益があるような形にどうやって進めればいいのかを考えますが、山内先生としてはどのようにお考えになるのでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 まず、幾つかあって、内部留保の話は昔、電力会社がいろいろ内部留保を持っていた時代があって、特別積み立て、結構普通の会社だとできないぐらいのことをやっていたのですけれども、例えば中越の地震があったときなどは、そのおかげで電力料金を上げなくて済んだとか、そういうことはあります。なので、なかなかそれについて一方的に言うのは難しいかなと思います。

少なくともマーケットに任せますという今回のシステム改革をやったので、小売料金についてはマーケットで競争しながら、効率性みたいなものを測ってくださいと言うしかないと思うのです。その意味では、先ほど申し上げたように、今までの料金体系が変わってくるので、それに対するウイナーとルーザーが出ると思います。

ただ、今、おっしゃったことでいうと、公平性でいうと、独占部門ですので、まさに託送料金の料金構成をどのようにするかというのが、先ほど申し上げたことを繰り返しますけれども、どこまで小売料金に影響してきて、将来的にコスト水準も、例えばネットワークの投資のときに変わってくるわけですから、そういうものにどこまで影響するのかということをウオッチされるというのが、ある意味では独占の料金体制に対する公平性という意味での一番重要なところだと思います。

ただ、これは先ほど申し上げたようにいろいろな要素があって、例えば需要地近接性などというのは、ネットワークの負荷を小さくするためのインセンティブ型の料金だと思うのです。一方で、御主張が一部出ている、例えば託送料金自体を現状の逓増型の三段階でやったらどうかという議論は、それとは逆の話ですね。それから、先ほどのFCの費用負担などというのはまた別の視点ですね。いろいろなものが交ざってしまっているので、とても議論としては複雑になるかと思うのですけれども、原理原則でいうと、独占のところの料金の負担といいますか、あえていえば全体のコストのシェアをどうするかというのが、おっしゃった意味での公平性の問題に直結するのだろうと思います。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 先ほど松村先生が、託送料金が将来的には上がる可能性が大で、いかに効率化を進めるかというのが将来的な問題だという御指摘があったのですけれども、送電線についてそれほど大きな、日本ではかなり高度な技術が入れられていて、将来的にはそんなにびっくりするような技術革新みたいなことはないとすれば、今回の託送料金のところでかなり原価についても踏み込んでやられたと。従って、効率化するといっても限界があるとすれば、託送料金を下げるとすれば、どういうところで下げられる余地があると先生はお考えか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 難しいですけれどもね。

先ほど言いました、例えば料金構成はどうなっているのか、非常に細かい議論があると思うのですけれども、一般的に託送料金はどうなっているかという話でいうと、これはネットワークをこれからどのように考えるかと思いますね。

自由化した国はネットワークを蹴り出して、ネットワーク自体を、曖昧な言い方だと公共財的に使っているわけですけれども、それがどこまで公共財のニーズがあるのかとか、まさにネットワークの構成という物理的な構成がどこまで必要なのかとか、それにかなり依存していると思います。

もちろん、今、言われているのは、9社体制で縦型のネットワークになっていて、横軸にないので、そこで連係線をしなければいけないというニーズがあって、それを広域機関が何らかの形で促進するとすれば、おっしゃったように、技術革新はそんなにあるわけではないので、全体的に託送料金自体が上がる可能性がある。だけれども、発電にしろ、小売にしろ、そこで競争があればそれで補うという形になるかもしれない。そういうのが図式だと思うのです。

ただ、それは将来の日本の電気のネットワークがどこまでどういう形になっていくべきかということにかなり依存しているので、そのところが一番難しい。

今、広域機関が将来的な需要予測をしながらネットワークのあり方みたいなものを考えて、これはなかなか難しいのだけれども、ネットワーク投資もこうあるべきだという議論をして、そうなっていくとは思うのですが、そこに全部依存してしまっているのかなと思います。

それが私の答えです。

○古城座長 どうぞ。

○安田委員 関西大学の安田でございます。遅れてきて大変申しわけありません。

山内先生に御質問する前に、ちょっと1点だけ、井手委員からの御発言に対してコメントを差し上げたいと思います。

私も欧州の送電線などの研究をしておりますけれども、実際にデータを見てみますと、電力需要量が下がりつつも送電線の利用率は上がっています。ですので、日本もまだまだ技術革新の余地はたくさんありますし、アメリカやヨーロッパの研究を見ていると、送電線絡みの様々なアイデアが市場も含めて出てきますので、非常にイノベーティブな分野だと私は考えております。

ですから、日本もまだまだいろいろなことができる余地はたくさんありますし、技術的にもおもしろいことが起こってくる。その中で、託送料金がどうダイナミックに変化していくかというのは、もっともっとポジティブに議論してよいと思っております。

○古城座長 今の利用率が上がるというのは託送料金を下げられる余地があるということですか。

○安田委員 経済的な原理ですと、量が増えればコストが下がると思うわけです。

実際、日本のいろいろな送電線、連係線はほとんど使われていない状態、使っているところもありますけれども、利用率が低いところもありますので、そういう点では、欧州は市場ベースで様々な取引がされていて、電力の流通がかなり密になっている。そういうところも含めて、将来の見通しや議論ができれば、もっとポジティブな議論ができるかなと思っております。頭打ちで何もする手がないというネガティブなイメージではないと、私、エンジニア側からは考えたいと思っております。それが1点です。

山内先生に御質問ですけれども、今、我々の国はシステム改革のちょうど転換点にありますので、ある意味、古いやり方から新しいやり方に変わっているところだと思います。例えば垂直統合された中で無理やりどの部分が送電に関すること、どの部分が発電に関することと切り分けるのは大変御苦労なことだと思うのですけれども、それで例えば42ページのこのようなレートメークの考え方で、一旦このように御査定されたと。一方で、2020年には発送電分離になって、とりあえずは法的分離になる。将来はもしかしたら所有権分離になるかもしれない。

そうした場合に、将来に送電会社と発電会社が完全に分かれて、そのときの計算方法と、現在、とりあえず垂直統合という従来のやり方で何とか査定したやり方というのは、本質的に一致するものなのでしょうか。それとも、やはりどこかで違ってくるものなのでしょうか。違ってくるとしたらどういう要因になるのでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 想定で言えば、そうなるかどうか分かりませんけれども、資本分離すら今とは違うと思いますよ。それぞれの会社が、それぞれのエンティティーが合理的に動くわけで、一体で動くのとは違いますね。しかも、一体で動いていて、ある意味で今、無理やり会計基準を作って分けているわけだから、それは当然、それぞれの会社が合理的に動いて、最適値を求めるのとは違うということだと思います。

○安田委員 ということは、先ほどの将来のお話になりますけれども、託送料金というのもダイナミックにいろいろ変わっていくと考えてよろしいでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 先ほどおっしゃったような技術革新もそうですし、制度的な問題もそうだと思います。そういう意味ではダイナミックに変わると思います。

ただ、託送料金をどうするかというときに、ダイナミックという意味でいうと、政策の目標関数がどうなるのかにもよると思いますね。そういう意味でのダイナミックに変わる。

○安田委員 分かりました。ありがとうございます。

○古城座長 今の託送コストがダイナミックに変わるのは分かるのですけれども、料金が変わるかどうかというのは制度が間に入ってきますね。だから、今の仕組みだと、託送にコストが下がったからといって、下がる仕組みが組み込まれているのですか。電力会社は託送のコストが下がった場合、託送料金を下げなければいけないというのはどこから来ましたか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 それは総括原価と同じですから、それはそうですよ。部門も増えて、コストが下がってといっても、下げるインセンティブはない。だから、それこそフォローアップだとか、後からの査定、経過がどうなっているかという検証の中でやるしかないですね。

○古城座長 その検証は十分かどうかというのは問題だということですね。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 それは今までも随分言われてきて、検証をやりましょうということになって、値下げした場合も検証しようと言っているぐらいですから、そうだと思う。

○古城座長 でも、私の意見だと、東電のフォローアップは東電が出してきたデータを、値下げ命令を出すか出さないかという範囲内で見るというのが今回の監視委員会の見直しだったから、非常に限られた範囲でしか検証はしていない。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 ただ、先ほど申し上げたように、昔、電力会社に積み立てていたお金というのは、為替か何かの出たのをばこんと積んでいた時代があったのだけれども、それをどのように見るかですね。確かに分母が大きくなって、平均コストが下がりました。それだったら、その分下げましょうという議論は簡単だけれども、いろいろな要素でもっと非常に大きく動いているではないですか。だから、例えば毎年毎年電力会社の託送料金をウオッチして、こうだから下げなさいということもできないことはないけれども、それは企業のある意味で主体性みたいなものをそいでしまうので、本当にいいのかどうか分からないですね。

○古城座長 毎年などというのは。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 毎年毎年とは言い過ぎですけれども、期間がどういう長さであれ、強さということだと思います。

○古城座長 でも、今のは一切見直すというのが入っていないとすると、インセンティブを与える点ではいいけれども、ちょっと甘過ぎるということです。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 そういう御判断であれば。

○古城座長 私の意見です。

あと、いかがでしょうか。

陶山委員。

○陶山委員 先ほどのネットワークは大きな意味での公共財というお話をいただきましたが、今、FITで新電力の接続のコストはそれぞれが持っているのですけれども、将来的にそれはみんなで負担しましょうみたいなところまで発展していくことは予測できるのでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 例えばFITの太陽光があって、系統までのここのコストはこれが負担しましょうとなって、そのコストの意味ですかね。

それはどうなのだろう。基本的は事業者ですから、自分のところまで運ぶというのはあるとは思うのですけれども、例えば設備増強する話は今回、少し違って、これはつないだので、こちらの系統線の設備を増強しなければならないときに、これに全部負担させるのはおかしいだろうという話になって、その負担をどうしましょうかというのはあるかもしれませんね。

○陶山委員 例えば共通のコストみたいな形で双方に利用するような、コスト配分、分担しましょうみたいなところも可能性としてはないですか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 例えばどこかの会社が工場を作って、ここに幹線道路があるのですけれども、そこまで道路がありませんというときに、道路がないところに工場を作るかどうか分からないが、作ったとして、この道路の費用をみんなで負担しましょうと余りならないと思う。

○古城座長 古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 14ページのところに営業費の料金算定規則で査定している部分と、他の法令で算定される項目と分けてあるのですけれども、この中に託送料というのが200億ぐらいあるのですが、以前、託送料というのはそもそも電気料金の原価の中ではどういう位置づけをして考えられていたのか、教えていただけますでしょうか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 済みません、この図自体がどうなっているのかというのがよく分かっていないので。今の御質問は。

○古賀委員 ここに51項目について営業費を査定の検討対象とする費用として、実際にこういう項目が料金のときに査定されていると思うのですけれども、他の法令によって算定される項目というのがいろいろあるのですが、こういったものは電気料金の中ではどういう位置づけになっていたのかということと、託送料はどのように査定されていたのか。査定というか、そういうことはそもそも余り考えていなかったのか。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 託送料というのはどこのことをおっしゃっているのかな。

○古賀委員 その他経費というのがあるのです。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 その他経費の中に。これは他の会社に託送を委託したとか、そういうところではないですか。物件費みたいな話ですね。

右側の項目については、何らかの形で決まって支出する額ということになっているので、特に査定の対象ではないということですね。例えば水利利用料だとか、税金だとか、そういうことですね。そのように思います。

○古城座長 公租公課とかは完全に外生的ですけれども、託送料というのは他の費目は査定するわけですね。材料は。それが出てくるのは外生的といえば外生的ですが。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 そうだと思うのですけれども、別に他の法令で決まっているわけではないですね。電気事業法で決まっているからということ。

○古城座長 あと、皆さん、いかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、大体皆さんの御質問、御意見も出尽くしたようなので、これで山内先生の御報告についての議論は終わりたいと思います。

山内教授におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございました。

○一橋大学大学院商学研究科山内教授 ありがとうございました。


≪4.閉会≫

○古城座長 それでは、議論は以上といたします。

事務局から連絡事項はございますか。

○丸山参事官 本日も御熱心な御議論どうもありがとうございました。

今後の調査会の日程等につきましては、確定次第御連絡させていただきます。

○古城座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)