第15回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年7月17日(金)13:00~16:50

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
加納消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 法定追認の特則
  3. 消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)
  4. 条項使用者不利の原則
  5. 不当条項の類型の追加
  6. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第15回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により、柳川委員が御欠席との連絡をいただいております。

本日の配付資料ですが、議事次第の下のほうに一覧がございます。不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

それでは、山本座長に議事進行をお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。

まず、議事に先立ちまして、本日、古閑委員から、インターネット関連事業者等からの意見書、それから阿部委員からは経営法友会からの意見書をそれぞれ参考資料として御提出いただいていますので、その内容について簡潔に御紹介いただきたいと思います。

まず、古閑委員、お願いいたします。

○古閑委員 お時間いただきまして、ありがとうございます。

第12回と同様に、事業者が幾つか集まって勉強会を開いておりまして、そちらのほうから第13回、第14回の専門調査会の議論を踏まえて、追加的に意見書を提出させていただきました。こちらは、専門調査会の中間取りまとめの前に、多様な事業者の意見を広く聞く機会を設けていただきたいということも、あわせて要望させていただくものになります。

現在、消費者契約法の改正を急がなければならない特段の事情があるとは考えられません。とりわけ今回の検討では、見直しの対象が広範で、改正が実現した場合の実務への影響ははかり知れないほど大きなものとなっています。不当勧誘の対象の拡大による事業者への影響、不当条項にしようとしているものが実務で使用されている理由等々、個別分野に実務実態の検討が不十分または皆無である事項がまだ多く残されていることは、重大な問題であると考えます。

各論点に関係の深い業界の代表が参加する機会を設け、立法事実を確認し、改正の目的に合致し、かつ実務への負の影響が少ない合理的な改正案に関係者全てが合意できるよう、時間をかけて議論を行うようお願いしたいと思います。

個別論点につきましては、今回は主に不当勧誘の規律について意見を述べました。とりわけ「勧誘」要件のあり方については、今なお問題が多いと思っております。

4ページに図がございますけれども、多くの業規制法において「広告」と「勧誘」は別々に規制されています。商品パッケージ、ウエブ上の商品説明、テレビコマーシャル等々、この図の左側に並べたものは全て景品表示法の表示規制の対象になります。事業者は、消費者にアピールできる表現を工夫しつつ、それらが「不当に顧客を誘引する表示」とならないよう細心の注意を払っています。しかし、この中に不利益事実を全て書けと言われても対応不可能になります。社会通念上、「勧誘」とされているものは、典型的には販売員が口頭で説明を行うといった行為です。この図では、右下に示しています。これらの行為について、不当勧誘があれば契約が取り消されることに違和感はありません。

しかし、不特定多数に向けた広告は、特定の者に向けた口頭による積極的な働きかけに比べて、消費者の契約締結の意思形成に影響を与える度合いは一般的に弱いと言えます。たとえ第一印象で誤認があっても、消費者は契約締結までにさまざまな形で情報を得て、誤認を修正する機会があります。「勧誘」概念が現行解釈のとおり限定されていれば、消費者の意思形成に影響を及ぼしたかどうか、争う余地はないと言いますが、広告等にまで拡大された場合は、事業者は当該広告と消費者の意思形成との因果関係を争わざるを得ません。

まずは、不特定多数に向けた広告等のうち、不当勧誘の規律を及ぼすべき行為態様はどのようなものかを議論する必要があります。そして、次に、広告に対する新たな規律として設けるべきか、それとも「勧誘」とみなして差し支えないものかを議論すべきです。第13回で提示したAからC案は、いずれも前提となる議論を欠いていると考えます。

このほか、第三者による不当勧誘は、詐欺よりも相当程度限定されるべきこと、不実告知型と不告知型を区別して検討することへの疑問、重要事項拡大と特商法との関係、不当勧誘に関するその他の類型、取消しの効果等について意見を述べていますので、お読みいただければと思います。

事業活動に大きな影響をもたらす法改正に際しては、対象範囲の拡大と要件緩和を同時に行うべきではないと考えます。対象拡大による影響は、現行法の要件を前提としなければ正確に予測できません。もしも要件緩和を先行させるのであれば、対象拡大はその影響を見きわめた上で、次の段階で検討すべきです。優先順位をつけず、対象拡大と要件緩和の両方を同時に行うという方針に反対します。

なお、不当条項に関して、実務実態の検証が不十分であると考えます。問題となっている事案、その他の実例について幅広い業種・業態の事業者からヒアリングを行っていただければと思います。

よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

続いて、阿部委員からお願いいたします。

○阿部委員 参考資料4でございますが、1枚目の一番下に経営法友会とございます。各企業の法務担当者、実務家が集まっている組織でございまして、現在1,130社ほどの会員がございます。その中に何年にもわたって消費者法制について議論を続けてきている消費者法制研究会という組織がありますが、そこで今、消費者契約法の議論を進めさせていただいております。

ご覧いただきますと、それぞれの項目について、企業の生の声を整理して示しております。寄せられた主な意見、懸念点ということでございまして、経営法友会として意見を集約しているということではなくて、各企業が一体どういう疑念を持っているかということを整理したものでございます。さらに今、経営法友会では法友会としての意見取りまとめが進められているようでございますけれども、その前に生の声を参考までにということで、ぜひともご覧いただきたいということで提出させていただいたものでございます。9月以降、関係の事業者等からのヒアリングも予定されているようでございますけれども、ぜひそのような場でもこのような声を寄せている企業・団体をお呼びいただければと思います。

よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。


≪2.法定追認の特則≫

○山本(敬)座長 それでは、本日の議事に入ります。本日は、消費者庁から各論点の検討のための資料として、資料1及び参考資料1及び2を提出いただいています。

本日の進行としましては、まず、「1.法定追認の特則」を御検討いただく。次に、2の現行法10条の「消費者の利益を一方的に害する条項」と「3.条項使用者不利の原則」をあわせて御検討いただく。そこで、今日は休憩を挟んだ上で、最後に「不当条項の類型の追加」について御検討いただくことにしたいと思います。つまり、全体を3つに区切って、消費者庁からの説明と委員の皆様による御議論をお願いしたいと思います。

まず、「1.法定追認の特則」について検討したいと思います。消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

まず、1の「法定追認」でございますが、資料の1ページから書いております。

枠囲みの「具体的な対応」は前回と同じでございまして、前回、いろいろ御意見をいただきまして、その御意見を踏まえて、もう一度御議論をお願いしたいという趣旨で作成したものでございます。

事例等も、前回と同じでございます。

前回の「意見の概要」、2ページでありますが、甲案、乙案、丙案という形でお示ししたものに関して、まず甲案に対して、端的に取消権の実効性を確保するという観点から賛成するという御意見もあったところでありますが、取引関係への影響ということから賛成できないといった御意見も頂戴しているところであります。また、取消原因の拡大とともに、どういう影響があるかということを見きわめたいという御意見もございました。

それで、こういった形で規定を設けることに対しては支持できるという趣旨の御意見も頂戴したところでございますが、他方で、乙案のような考え方をとって、それで取消権の実効性という観点から問題がないのかという点についても御意見を頂戴いたしました。とりわけ、(イ)の一番下の段落の「そのほか、乙案に対して」というところでありますけれども、いわゆる商品の送りつけ等によって、それが法定追認になるとも読める昔の大審院の判例がございますので、そうしますと取消権が機能しなくなるのではないか。ここは、きちんと検討すべきであるという御意見を頂戴いたしましたので、私どもも受けとめる必要があるだろうと思いまして、ペーパーをつくってみたわけであります。

「(2)問題の所在」でも似たようなことを書いておりますが、上から3行目、第11回の御指摘で、消費者が債務者として履行をした場合だけではなく、債権者として、事業者から送付された商品を受領する場合であっても法定追認になるということであれば、取消権の規定を設けたところで、ほとんど機能しなくなるのではないか。

それで、前回の御指摘を踏まえて検討するということでございまして、3ページのアで、取消権者が相手方の債務、この場合、相手方というのは事業者が想定されるわけですけれども、「全部又は一部の履行」を受けた場合でございまして、(イ)にかつての大審院の判例、これがリーディングケースになると思われますので、それを紹介しております。事案は、未成年者の土地を法定代理人が売ってしまったということでございまして、その場合に、売り主が成年に達した後に代金の内金を受領したという事案でございます。

判決文を紹介しておりますけれども、債務の履行を請求することと債務の履行を受けることとは、債務の発生原因である行為の効果を自認する点では異ならないということでございまして、法定追認になったということでございます。この行為の効果を自認すると言えるかどうかというのが、この判例のポイントではないかと思います。

こういった判例を前提といたしますと、消費者契約においてどう考えるかということで、設例という形でマル1、マル2、マル3を書いてみました。こういったことがどうなるかということについて御議論を頂戴できれば、大変ありがたいところであります。「例えば」ということで、事業者が、消費者に対して商品を手交、手渡した場合。それから、マル2として、第三者である宅配業者に委託して商品を送付した場合。マル3で、消費者の預金口座に振込送金した場合であります。この場合どうなるかというのは、私ども、逐条解説とか文献をいろいろ当たってみましたけれども、はっきりした議論がされているわけではなさそうでありまして、まさにこの判例を見て、どうかということを考えてみようということではないかと思います。

先ほどの行為の効果を自認するということからしますと、お金を受け取ったということで自認したと見ております。そうだとしますと、この設例のマル1のように商品を手渡したとしますと、債務を履行したということもわかりますので、それで何もしないということになれば、判例と同じように自認したと見られる余地というのは結構大きいのではないかという気がいたします。他方、マル3のように振込送金した場合だけになりますと、消費者も常に自分の銀行口座をチェックしているわけではないと思いますので、すぐ自認したというわけでは必ずしもないのではないかという気もいたしますが、そこは程度問題がありまして、チェックして気づけば、それでぼうっとしていたら自認したことになるということかなという気もいたします。

あと、マル2の場合は、宅配業者に委託して商品を送られたということで、商品を送ってきたということはわかるわけでありますが、契約当事者の相手方事業者に何か言おうとした場合に、その場では言えないというところが違いとしてはあるかなと。マル1の場合には、その場でこれは何ですかということを言おうと思ったら言えたにもかかわらず、そのまま受け取ったということになるわけですが、そこはグラデーションがある気がいたします。

ただ、いずれにいたしましても、マル1、マル2、マル3について、この判例の考え方を前提としますと、法定追認が認められる可能性は否定できないのではないかと思われるところであります。それがアであります。

イは、取消権者が所定の行為をした場合について、どうかということであります。ここについては事例を御紹介しておりますけれども、4ページで書かせていただいておりますのは、消費者が行為の意味を理解せずにやってしまう可能性もある。要するに、自分の行為が法定追認になりますということがわからない人が結構多いと思いますので、そこは踏まえる必要があるのではないかということであります。

「(3)考え方」、まず「甲案について」の2段落目であります。先ほど御紹介いたしました判例を前提といたしますと、典型的には設例のマル1という形で御紹介いたしましたが、そういった場合でも法定追認になる可能性が結構高いのではないかという気がいたします。ここは、まず御議論いただければと思いますけれども、私どもで見た限りではそういうふうになるのではないかという気がするということであります。こういった場合に取消権の実効性を確保しようとしますと、端的に甲案のような検討をさらに考えなくてはいけないのではないかと思われるところであります。

甲案については、「もっとも」ということで、取引の安定への配慮が必要であるという御指摘がありました。これは、御指摘は理解できるところであります。ただ、法定追認の規定を適用しないことにいたしましても、追認一般の規定は民法の規定124条というのがございまして、それはもちろん適用されるということが前提であります。そうしますと、黙示の追認が認められるケースは結構あるだろうと思いますので、そこで取引の安定を図っていくというのはあり得るのではないかと思います。

それから、「また」と書いておりますのは、法定追認といいましても、消費者契約法の場合には取消事由として事業者の不当な何らかの行為があったというのを前提といたしますので、そういたしますと、事業者としても不利益を一定甘受しなくてはいけないという要素はあるのではないか。これは、とりわけ先ほどの判例と比較しますと、脚注2でも書いておりますが、未成年者取消しでありまして、事業者は何も悪いことをしていないわけであります。そういった場合に取引の安定を確保する要請は確かにある気がいたしますが、消費者契約法の取消しの場合には、何らかの不当な行為があったということが前提になっておりますので、そこの利益バランスというのはちょっと考える必要があるかなという気がいたします。

それから、「なお」のところで書いておりますが、仮に甲案のように民法の規定の適用を外していくということを考えるとした場合でも、全部外さなければいけないかというと、必ずしもそこはそうではないのかなという気がいたします。4ページの末尾から5ページに書いているところでありますけれども、とりわけ問題となると思われますのは民法125条1号の「全部又は一部の履行」というところだと思いますので、ある程度絞った上で、適用しないこととするというところは検討の余地があるのではないかということであります。1ページの冒頭の枠囲みの中の甲案の注記というのは、前回の提案にはなかったものでありますけれども、今回はそういうものも書き加えてみたところであります。

それから、5ページの「イ 乙案について」のところでありますけれども、乙案について事業者サイド、消費者サイド、双方からいろいろと御指摘もいただいておりましたので、それに対する考え方ということで(ア)、(イ)、(ウ)と3つ整理しました。

まず、(ア)でございますけれども、先ほどの商品の手交というものに対して、取消権の実効性の確保というものがございましたが、125条ただし書きに「異議をとどめない限り」というものがございますので、この異議をとどめるとして、この規定を活用することによって、法定追認に当たらないとしていくというのもあるのではないかということを書いております。ただ、実務的にこの異議をとどめないというのがどういうふうに使われているのかというのは、私も存じ上げるところではございません。逐条解説、その他においても、これは一体何なのかということについては、余り詳しい解説がされていないように見られるところでございますので、ここについても御意見をいただければ大変ありがたいと思っております。

それから、(イ)でありますけれども、乙案のような形で規定を設けたときの懸念として、消費者が取消権を有することを知っていたときに、一定の行為をした場合に法定追認になりますよということでありますけれども、知っていたとしても、その取消権の行使を期待できない状況というのがあるのではないかという御指摘もございました。具体的には、その影響が残存しているという場合に配慮の必要があるのではないかという御指摘であったかと思います。

それで、5ページから6ページにかけて、追認をすることができるときというのはどういうときかということを書いているわけでありますが、6ページの2段落目の「不退去状況又は監禁状況を原因として」というところでございますけれども、一定の動揺が継続している場合に取消権の行使は期待できないのではないかということであります。確かに、それは一理あるという気はいたします。逆にそうだとすると、そういった困惑状況が継続していると見て、民法125条所定の行為があったとしても、法定追認にならないと考える余地はあるのではないかという気がいたします。そうやって消費者を救済していくわけです。

他方で、形式的に追認することができるときというものの、通常に考えますと、そういった不退去・監禁状況から脱したということであれば、その後の行為というのは、追認し得る、法定追認が認められますよと解釈する。どちらかというと、それが素直かなという気がするところでありますけれども、ということも可能性としてはあると。

「また」というところで書いておりますのは、ややわかりにくい記述かもしれませんが、行使を期待できない状況といいますのは、不退去・監禁の状況以外にも別の原因。例えば大きな声を出されたとか、これは取消事由とは何ら関係がございませんので、追認することができるときという判断には影響を与えないと思いますけれども、消費者本人に対する悪影響というのは残存し得るということかと思いますので、そうした場合には法定追認が認められやすくなるのではないかという気がするということであります。

最後、(ウ)でありますけれども、乙案のように消費者が取消権を有することを知っていたことを必要とするという規律にした場合、そのことを誰が立証するのかという問題点についても御指摘をいただきました。ただ、これにつきましては前回も私、似たようなことを申し上げましたけれども、条文の規定の構造等を素直に見る限り、取消事由があって、それを妨げる法定追認事由というものがあり得るわけですが、その法定追認事由が成立するということを主張・立証する必要がありますので、事業者において主張・立証する必要があると考えるのが素直ではないかと思われますので、そういったところを書いてございます。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。資料2を引用させていただきながら意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、結論としては、甲案に賛成いたします。

以下、理由でございます。

債権者として事業者から送付された商品を受領する場合であっても法定追認となるのであれば取消権が機能しなくなるという御指摘は、そのとおりであると思います。消費者契約法の規定に基づく意思表示の取消しについては、法定追認の規定を適用しないという考え方(甲案)を採用する必要があると思います。

また、そのように考えても、消費者取消権は善意の第三者に対抗できないのでありますから、第三者の取引の安全は害さないと思います。

さらに、不当勧誘行為を行った事業者と被害者である消費者との関係においては、被害者の要保護性を優先してしかるべきであると考えます。加えて、黙示の追認の適用を排除しないのであれば、不合理な結論になるような事態は現実的に考えがたいように思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

阿部委員。

○阿部委員 まず、甲案は、取引関係を著しく不安定にするということからも反対であります。

乙案につきましては、まさに消費者が取消権を有することを知っていたということを事業者が立証することになるような書きぶりでございますが、本当にこれが容易に立証できるものかどうか疑問です。私どもは、消費者が「ないこと」を証明するのと同じぐらい、事業者において消費者が取消権を有することを知っていたということを証明するのは難しいと思います。そういう意味で難ありと思っております。結論から言うと、丙案の民法の解釈・適用に委ねるのが正しいと思うわけであります。

ここで質問ですが、事例の1-1、1-2を挙げられておりますが、1-1は公序良俗違反ということですが、1-2は、現行法あるいは改正後の民法に当てはめるとどういう結論になると思われますか。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお願いします。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、1-2は入り口を塞がれた。SF商法とかでどこかに行って、その場所から出て行こうと思ったけれども、出させてくれなかった、逃げられなかったというものがございますので、これが消費者契約法上の監禁に当たることを前提として、そうすると取消権が発生するわけですが、その5カ月後に支払いをしたということで、一部弁済ということで法定追認事由があった。これについて、法定追認になるかどうか。なると考えられるということでありますと、これについて、さらに取消権の実効性をどう確保するかということで問題点を指摘させていただいたところでございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○阿部委員 はい。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに御質問、御意見があれば。増田委員、お願いします。

○増田委員 取消権を有することを知ったとしても、主張の方法を知らないということも十分あります。知りつつ行使できないということもあります。例えばクーリング・オフでも同じですけれども、クーリング・オフの制度がありますよということがわかっていても、制度を利用しないままもんもんとしているという消費者の状況というのはあります。それと同じことも当然考えられます。

それから、受領しなくても勝手に送ってくる場合、相手方に受け取り拒否をしても宅配事業者さんのところにずっと保管されているという状況がよくありまして、これはどうしたらいいのですかという相談もあります。消費者のほうとしては、事業者から受け取れと言われ、宅配事業者から受け取ってくださいと言われたたらに受け取ってしまうと考えます。

それから、事例1-2のSF商法云々の場合、布団を持って車で家まで送ってくれるケースがとても多いです。同時に商品を受け取ってしまっているということになりますし、銀行に行ってお金を一緒に引きおろして払ってしまうということもあります。そうした場合は法定追認とみなされる可能性が高いのではないかと思いますので、甲案に賛成いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

後藤委員。

○後藤(準)委員 不当勧誘の定義というのが十分に議論され尽くしているのかというところに我々、疑念を持っていまして、不当勧誘の範囲がきちんと定まっていない中で、この法定追認を適用除外するということになると、取消権が認められる事実が拡大することによって取引の安定性を非常に欠く可能性がある。したがって、甲案について、我々は反対したいと思っております。

乙案についても、阿部委員のほうからもちょっと出ましたけれども、知っていたことを立証するということは、事業者にそれを課するというと、我々のような小規模な事業者はそんなことは現実的になかなかできない。難しいということでもありますが、仮に民法でそういった今回のような改正が行われるということになれば、ある程度はやむを得ないかなと考えております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御質問、御意見があれば。丸山委員。

○丸山委員 提案の中では、今まで指摘されているような問題事例について本当に懸念が大きいということであれば、甲案の方向で考えたほうがよいのではないかと思っております。例えば、不実告知の事例などを念頭に置いたときに、不実告知だとわかった。取消権というものもあるのだとわかっていても、今まで出てきているように商品が送りつけられてきて、それをうっかり受領してしまうとか、あとはクレジットが問題となっているときに自動引き落としとなっているときに法定追認となるのかということが議論になる。さらに、不実告知を理由とする取消しが認められる場面だけれども、事業者が怖くて、とりあえず商品は受け取ってしまった、このような事態があり得るのだとすれば、それは取消しできる行為なのですけれども、取消しできる行為を認めるという意識がなくやっている行為であったり、あるいは事業者を恐れている場合は、事実上の強制といった形にもなりますので、そのような懸念が大きいということであれば、甲案の方向で考えていのではないかと考えます。

ただ、今、指摘しているような事例は、確かに1号の場合についてのみ問題となりそうですので、認めるという意識がないのに法定追認該当行為をしてしまうとか、事実上の強制のような形で法定追認行為に該当する行為をしてしまうというのが、ほぼ1号類型のみについて問題となるというのであれば、1号のみ法定追認を外すというのも考えられるのではないのでしょうか。逆に、今挙げてきたような懸念事例がそう多くはないのであれば、乙案もあり得るところであるという意見を持っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河野委員。

○河野委員 ありがとうございます。

私自身も、今回提案の甲案に賛成したいと思っています。今、いろいろ御意見を伺っているのですけれども、大多数の消費者というのは、事業者さんから請求があれば商品・サービスの対価を支払ったり、それから事業者さんからのサービス提供を受けてしまうなどして、気づくことなく法定追認が完成しているというのが現状でして、本当ならば一般消費者ももう少ししっかりと消費者教育等で知識をふやして、そもそも契約に至らないということが重要だと思いますけれども、困惑の場合、および誤認の場合も、事業者さん側の不当勧誘によって消費者が陥ってしまうといいましょうか、意図せずに結果としてこういう状況に陥ってしまうということは、ぜひ今回のこの検討で避けられるようにしていただきたいと思っています。

それで、不当勧誘の範囲の検討というのがまだ十分ではないという御意見もありましたけれども、現在の不当勧誘の範囲であったとしても、救われていない消費者がたくさんいるわけですから、ぜひ今回は甲案のような考え方で進めていっていただければと考えています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに御質問、御意見等がありましたら。いかがでしょうか。古閑委員。

○古閑委員 丙案に賛成いたします。理由は、阿部委員や後藤委員がおっしゃった理由と同じです。いずれにしろ甲案と乙案には反対なのですけれども、質問がございます。ここの表現ぶりは「消費者契約法の規定に基づく意思表示の取消しについては」と書かれていますけれども、その後の説明を見ていると、困惑類型を前提とした説明になっている気がしまして、これは誤認が入ることを想定しているのかどうか。どちらにしろ反対なのですけれども、確認させてください。

あと、困惑はまだ議論の途中でして、ここに書かれているものだけを読むと、救済の範囲をもう少し広げるべきかという感じになってしまうのですけれども、困惑がもっと広がっていくという議論だとすると、まだその議論の途中で、甲案や乙案に賛成ということにはならないというところでございます。

質問については、済みません、誤認が入るかどうかという点です。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 そこはまた御議論いただければと思うのですけれども、現行法の規定だけだと、特に弊害が顕著にあらわれるのは困惑類型についてではないかという気はいたします。あとは、消費者が知っていたとしても、行為の意味がわかっていないと、これまでの何人かの委員の御指摘だと、消費者が行為の意味がよくわかっていないのをどう見るかというところがあったと思います。その辺は誤認類型についても同様の問題点はあるだろうという気がいたしますので、そこも御議論いただければ、それをもとに検討したいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 特商法などでクーリング・オフというものがありますけれども、クーリング・オフ権の行使期間内に実際に追認してしまうということもあります。けれども、クーリング・オフ妨害ということがあると、一からクーリング・オフの手続を一からやり直さなければいけないということになっています。

なぜこれを言うかというと、実は取消権、つまり不当な勧誘行為によって取消し得べき行為というものがあったときに、その取消権を行使することを妨害するような要素があった場合には、取消権の開始時期はおくれるわけです。特にデート商法などの場合はそうですけれども、心理的に相手を支配している状態が続いている場合に、6カ月が仮に経過してしまっても、そこはまだ取消権を行使することができるだけの冷静な状態にはないという評価をする可能性は、現行法でもあると思うのです。その意味では、事例1-1、1-2ともに、なお取消権が行使できると解釈する余地はあるのだろうと思います。けれども、いかんせん、余りにも不明確なグレーな状態になりますので、それを考えると、ある程度明確にしてお必要があるということになろうかと思います。

追認というのは、あくまで例外的な行為であって、本来は取り消せるというのが原則であります。そうだけれども、意思表示に瑕疵がない状態であって、例えばそれ以外にも、支援機関によって判断力が補充されているという状態において、もう一度契約したのと同じような行為をしたときに限って、契約を有効な形で認めてあげましょうというのが、これが追認の規定であります。ですから、その趣旨を考えれば、どちらかといえば消費者取引の場合は甲案的な発想で処理していいのではないかと思われます。もっとも、実際問題としては、払ってしまったとか、受け取ってしまったという行為だけが問題になるとすれば、全てを対象としなくても構わないのではないかという丸山委員の考え方でもいいのかなという気がいたします。

○山本(敬)座長 それでは、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 私は、甲案と乙案とほとんど一緒だと思っていまして、特に甲案でも黙示の追認というのは当然認められるわけです。どういう場合に黙示の追認になるかというと、当該行為を行う前のさまざまなやりとりがあるわけなので、その事実がどうかということの中から、これは追認の趣旨でやったのか、そうではなくていや応なしにやらされたのかという事実が出てくる。乙案においても「取消権を有することを知った後に」というのは黙示の追認のことを言っているわけだと思うのです。

その前提として、当然、取消権があるということを知った上で、追認に該当する行為を行っているという前提ですから、甲案と乙案の差は事実上、ほとんどなくて、むしろ丙案という消費者がどういう意思であったかを一切問わないで、外形的な一定の行為が行われていれば一切救済を与えないというルールでいくのか、そうじゃなくて、黙示の追認があったと評価できる場合のみ救済しないと考えるのか、この2つの対立で考えればいいと思います。一番極端な例が、その場でお金を払って商品を受け取ったという場合で、これも外形的には法定追認に該当する行為が行われているわけだけれども、それを救済しないというのはもともとの法律の趣旨に完全に反するわけだから、そんなことを言う人は誰もいない。

そうなりますと、どれだけ間隔があってから履行行為とか履行を受ける行為が行われれば追認になるのかという話になっていくわけで、そこで先ほどの、まだ影響が残っていて自由な行為ができない状況のままになっていて、履行を受けるとか履行するということであれば、それは端的にまだ不当な影響が残っているのであって、追認可能な状態になっていないのだと評価すればいいわけです。余り難しい議論、すなわち誤認可能な状況とか困惑状況というのとは別の、しかし完全に自由な判断ができる状態にはなっていない、その中間的なものを無理して考えるとすごく難しい法律論になってくるので、それはしないほうがいいのではないかと思います。

それから、河上委員長がおっしゃったことの延長線上にあるのですが、特商法上のクーリング・オフの場合には、クーリング・オフの権利はありませんよ、このケースではできませんよという虚偽のことを事業者が言うとクーリング・オフ妨害ですから、クーリング・オフの権利はずっと続くことになります。しかし,消契法上の取消しについては、取消権妨害についての特則がない。実際の事案の一定の部分は、恐らく消費者として何か言っても事業者が応じてくれない。あなたにそんなことはできませんよ、もう契約しているのですからということで、ある意味での取消権行使妨害に近いようなことが行われている可能性があるわけです。事業者として事実をきちんと認めて、わかりました。では、取り消していただいて結構ですといった上で、なお消費者が受け取るとか代金を払うということであれば、全く別の話になる。

これとは違った流れの中で一定の行為が行われた場合には、クーリング・オフ妨害に類似した取消権行使妨害が行われているのだと評価できるケースがあるのであれば、それは履行が行われて、あるいは履行を受けたとしても救済は妨げられるべきではないという価値判断が十分働くだろうと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 沖野委員。

○沖野委員 甲案または丙案ですけれども、少なくとも丙案は、私は反対です。繰り返しですけれども、民法の法定追認の規定は、今回の改正によってやや不明確になる面があり、乙案自体は民法の解釈としてもそうだととり得る見解ではありますけれども、それが明らかではないということがある中で、少なくとも消費者契約の場合にはこれを明らかにするという趣旨があると思います。丙案によりますと、これが結局全て曖昧なままに置いておかれるということですので、何もないよりも一層曖昧であるという状態が望ましいとは思われません。したがいまして、甲案なり乙案なりの方向で何らかの規定を置くというのが、消費者・事業者、両方にとって望ましいあり方だと思います。

それで、乙案のほうですけれども、この場合、繰り返しですけれども、問題点としては、取消権を有することを知ったというのがどういう場合かということの問題があり、とりわけ取消権の行使を期待できないような事情があるというときは、それは知ったとは言えないのだという解釈が考えられますけれども、この文言でそれを十分に盛り込めるかということがあります。そうだとすると、その点を明らかにするということが考えられてよいのではないか。余り重ねていくと、要件が積み重なっていくという問題はあるのですけれども、それでも少しでも明確にできるならば、その可能性も考えられるのではないか。

例えば事業者の言動とか事業者との関係や、具体的な消費者に与える影響などから取消権の行使を期待できない事情があるという場合は、もちろんこれに該当しないということを明確にするとか、最低限、解説では明らかにするというやり方が1つは考えられるのではないかと思います。

もう一つは甲案のほうでして、甲案については「注」の方法で考えることが一つのあり方ではないかと考えております。2号以下の行為は、さすがに取消権があって、こういった行為をするというのは自認行為だと考えられてもしようがないものだという点がありますし、実際に問題となっているのも1号類型であるということになりますと、規律としては1号の場合だけ除くという考え方は十分にあるところではないかと思います。1号以外の列挙類型は、自認と言えるかがそれほど問題にはならないけれども、1号類型については、実際自認とは言えないようなタイプのものが入ってくるので、ここに特に消費者契約の場合には手当てをするという説明ができるのではないかと考えております。

ですので、甲案の方向でいくのが、明確性という観点からはいいのではないかと思っているのですけれども、さらに申し上げますと、それでも事業者の御懸念などが多いということであれば、この履行を受けるような号にだけ特化するとか、あるいは1号を一旦除くのだけれども、そこから一定期間内に異議を述べなかったとか、何か付加的にもう少し調整の規律をつけ加えるということで、望ましいというか、互いに合意できるようなことを探っていけないかと思っております。

私自身は、丙案だけは賛成できないのですが、甲案・乙案のいずれかは、いずれもある程度調整の余地もあり、アプローチは可能ではないかと思っておりますが、どれか1つということであれば、甲案の「注」の方向でどうかというのが一番よいのではないかと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

非常に多様な意見が出されていまして、考えられる全ての案について、支持ないしは消極的支持が出されているところです。甲案を積極的に支持される意見、及び「注」の案は少なくとも支持できるのではないかという意見がある一方で、甲案に対しては取引の安定性を害するとして強い反対もあります。乙案を積極的に支持される意見はないかもしれませんが、甲案と実質的には変わらないのではないかという御指摘のほか、今の沖野委員のように、さらに一定の限定を付せば、少なくとも丙案よりは明確性と実質的な結論を導く可能性を担保できるのではないかという案もありました。しかし、他方で、積極的に丙案でいくべきであるというよりは、少なくとも甲案ないし乙案を採用すべきではないという御意見も強くあったところです。

丙案か丙案でないかというのが大きな分かれ目ではあるのですが、その際に出されていたのが、甲案・乙案では取引の安定性を害するという御指摘だったように思います。ただ、ここでの取引の安定性を害するということについては、少し気をつけないといけない点があります。それは、2つ意味合いがあるからだと思います。

1つは、消費者の側が請求や履行に当たるような行為をしたということは、実は取消原因がなかったのである。不実告知や困惑に当たるようなことをさせたかもしれないけれども、そのようなことはなかったのである。その意味では、取消しがされることはそもそもないのであるという信頼があったのに、後で取り消されると取引の安全性を害するというタイプのものです。もう一つは、確かに取消原因に当たる行為があったかもしれないけれども、消費者はもう取り消さないということを決めたので、それを前提にして自分たちの事業を営めばよい。ところが、その後で取り消されると話が違うではないかという意味で取引の安定性を害する。以上の二通りの意味合いがあると思います。

おそらく、両者が余り区別されずに議論されていたように思いますが、これは区別する必要があるだろうと思います。と言いますのは、消費者が受領したり請求したりするのは、きっと取消原因がなかったからだという信頼は保護されないのだろうと思います。というのは、取消原因があったときには取消権を付与するという規定があるわけですので、消費者の行動から、そのような取消原因がなかったのだろうと信頼するというのは保護に値しないと考えられるからです。したがって、あり得る取引の安定性というのは、そのような取消原因があったとしても、消費者はその取消権をもう行使しないという信頼を事業者がしたのに、それが後で取り消されることによって取引の安定性を害するというものだろうと思います。

これは、消費者庁からの最初の資料の説明にもありましたように、事業者側に取消原因に当たる行為があったというのが前提ですので、そのような場合に消費者が取り消さないだろうという信頼を、本当に保護に値する信頼として認めてよいかどうかということが、ここでの争点だったのだろうと思います。この点についてどう考えるかということが分かれ目になるだろうと思います。

そして、その際に、これも最初のほうに後藤委員と古閑委員から御指摘があり、あるいは阿部委員も同様のことをおっしゃったかもしれませんが、取消原因が現行法のままではなく、広がる可能性がある。どこまで広がるか、まだ帰趨が見えていないけれども、広がるとするならば、より一層取引の安定性を害するということを御指摘いただいたように思います。これも、そのような側面はもちろんあるわけですけれども、ここでも2段階に分けて議論する必要があると思います。

まず、現行法の取消原因があるという前提の下で、消費者が法定追認行為をした場合に、取消しを認めてしまうと、先ほどの意味での取引の安定性を害すると言えるのか。そこでも取引の安定性を害すると考えるとするならば、一切改正をすることなく丙案ということになるのですが、そこでもし何か問題が残るということになるのであれば、何らかの改正を考えざるを得なくなる。そこを確認した上で、次に、取消原因が広がった場合にどうするかということを考えないといけないということではないかと思いました。

整理して、かえって議論しにくくなった可能性が高いのですけれども、少なくとも取引の安定性を害するという御意見についての賛成あるいは反対の補強意見をさらにお出しいただけますとありがたく思うのですが、いかがでしょうか。阿部委員。

○阿部委員 論点がずれるのですけれども、乙案を素直に読んでいると、これもありかなと思っていたのですが、6ページの解説の(ウ)に書かれているように立証責任が一方的に事業者に課されてしまうと、受け取れないという状況です。

○山本(敬)座長 立証責任の問題も残っていまして、御指摘をいただい、ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。増田委員。

○増田委員 立証責任の問題は、消費者のほうがもっと難しいという当たり前のことをお伝えしたいです。

山本先生がおっしゃられたように、もともと不当な勧誘行為があったということは、大変大きな、なくならない事実ですから、それがあるにもかかわらず取引の安定性を求めるということ自体は、やった者勝ちということを認めるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 最初の後藤委員と古閑委員の御指摘にあったと思うのですけれども、先ほど申し上げましたように、仮に現行法の取消原因があるという場合において、消費者が法定追認行為を行ったときにも、甲案・乙案のような考え方では取引の安定性を害するので反対であるという御趣旨だったと理解してよろしいでしょうか。取消原因が広がった場合にはどうなるかわからないので、取引の安定性を害するとおっしゃいましたけれども、取消原因が現行法のもとでも認められる場合に、甲案・乙案の考え方ではなお取引の安定性を害するという御主張がそこに含まれていたのでしょうかという確認の質問です。

○後藤(準)委員 現行法の中でも、事例が具体的にどういう部分なのかが想定できないので何とも答えようがないのですが、現行法で特に問題がないということであれば、あえて我々は反対しない。要するに、甲案に反対しているのは、範囲が広がることが前提になっている。ですから、現行法の中で問題が今のところ起きていないということであれば、あえてそこに触れる必要がないと思います。

○山本(敬)座長 現行法の場合に、先ほどの資料の中で指摘されていたのは、事業者の側から商品等が送られてきて、それを消費者の側が受領してしまう。それは、客観的には法定追認行為に当たるとされて取消しができなくなるという問題が、現行法のもとでも発生している。それは救済する必要があるのではないかという御指摘が先ほどから多数あったわけですけれども、それも。

○後藤(準)委員 そこは、引き続き検討したい。

○山本(敬)座長 そこは余り考えていないということですか。わかりました。

古閑委員。

○古閑委員 先ほども質問させていただいたところですけれども、現行法の取消しは困惑と誤認とあるわけでして、現行法で言う困惑だけだったらいいのかなという気がしています。誤認まで入るのだとすると、現行法だとしても広過ぎると思っておりますし、先ほど私が発言したときは、その旨しか申し上げていないのですけれども、確かに座長に整理していただいたとおり、もうこれは追認しないだろうなと思って進んでいる中で、それを覆されるというのは取引の安定性を害することになると思いますので、その場合であれば、そこも含めて取引の安定性が害されないとは言えないのではないかと理解しております。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 取引の安定性を害するというご意見がございますけれども、まず、ここで議論しているのは、不当勧誘行為がなされており、かつ、それについて消費者が主張・立証に成功しているケースであるということが大前提だと思います。

また、第三者は第三者保護規定で保護されるわけですから、ここで考えなければならないのは、不当勧誘行為を行った当該事業者と被害者との利益バランス、利益衡量をどう考えるかという問題だと思います。

しかも、我が国の多くの善良な事業者の方は、そもそも前提として不当勧誘行為をやっておられないと思うのです。ここでは事業者が不当勧誘行為を行ったケースという非常に限定されたケースについて議論をしているのであって、一般的な取引の安定を害するというご意見であれば、ちょっと違うように思います。

不当勧誘行為を行った事業者を手厚く保護するのは不相当ではないか、利益バランスが消費者保護に傾いてしかるべき場面ではないかと思います。また、極めて限定された場面に関する議論ですので、そんなに取引の安定が害されるような局面は無いのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 先ほど言ったことの一部繰り返しになるのですが、瑕疵のある契約が締結されて、それからしばらくして消費者から一定の行為がなされたという場合に、その行為に対する事業者の信頼がどうかという議論ですが、通常はそこに至るまでの間のやりとりがあり、そのやりとりの中における事業者の信頼というのは考慮すべきだろうけれども、一切やりとりがない状況下で一方的に商品を送りつけて、その場で拒絶されなかったから信頼だというのは、多分ちょっとやり過ぎなのだろうと思います。

それから、立証責任のこともさっき出ておりましたけれども、たしかに乙案が知っているということを要件としているので、知っているという事実の立証責任をどちらかに負わせるとなると、なかなか大変だという議論は当然出てくると思うのですが、私は知っている、知っていないだけで決めるのではなくて、黙示の追認があったと評価し得るべき状況かどうかという、もうちょっと漠とした一種の規範的な、評価的な概念で考えれば、どちらかが一方的に立証責任を負担するという話にはならない。

いろいろなやりとりの中から、こういうことだから黙示の追認と評価をしてもいいのではないか、あるいはそれはできないのではないかという議論ができるので、それぞれ自分の主張に有利な間接事実をさまざまに主張していく。裁判官がそこを判断して決めるということなので、どちらかが一方的に損をする、得をするということにはならないだろうと思います。

○山本(敬)座長 今のは、現在の法定追認に関する規定は、いわば一律の定型的な相手方の信頼保護を問題にしているけれども、それは取消原因がある以上、行き過ぎではないか。個別に信頼して、それを保護するというのはあり得るかもしれない。それは、現行法のもとではおそらく黙示の追認として処理している事柄であって、それに委ねるべき問題ではないかという御指摘だと思います。

では、阿部委員。

○阿部委員 松本先生と考え方が近いのですけれども、仮に消費者契約法に何かの規定を置くのだとしたら、私は乙案でいいと思うのです。取消すべき行為があって、その後、消費者側の何らかの行為によって、それが法定追認だったとみなされるわけなので、もともと取り消せるかどうかについて認識がなかったときには、その議論は成り立たないと思うわけです。ですから、この乙案でいいのですが、立証責任が一方的に事業者にあるかのように言われてしまうと非常に不安になる。ここは、ケース・バイ・ケースだということ。何も消費者側に立証責任があるとは言いませんから、立証責任については更地にしてください。

○山本(敬)座長 御意見として承りました。

時間が既に押してきているのですが、問題点は特定しているのですけれども、意見がどうも収れんしている状況ではないのですが。では、消費者庁からお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 阿部委員からの強い御意見も頂戴いたしたところで、乙案の立証責任の問題についてはちょっと考えさせてください。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。既に中間的な取りまとめを目前にしている状況ではありますが、少なくとも議論の分布状況はよくわかりましたので、それを踏まえて、次回、もう一度御検討いただける場を設けたいと思いますので、今日のところは以上のようにさせていただきたいと思います。

≪3.消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)、条項使用者不利の原則≫

○山本(敬)座長 次の「2.消費者の利益を一方的に害する条項」及び「3.条項使用者不利の原則」の検討に移りたいと思います。消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、資料の8ページ、「2.消費者の利益を一方的に害する条項」、第10条でございます。

これは論点が2つありまして、1つがいわゆる前段要件のところであります。ここは既に前回、ある程度御議論いただいたところでございまして、最高裁の判決が出ておりますので、それを踏まえまして前段要件について必要な見直しを行うこととしてはどうかということで御議論をいただきました。判例等につきましては、8ページに紹介しているところでございます。

意見としまして、判例の趣旨を明確化することで、規定を見直すことについては賛成するという御意見がございましたけれども、他方で、今回お示ししている考え方も一緒なのですが、当該契約条項がない場合と比較して、消費者の権利を制限し、または義務を加重するという書き方を仮にした場合に、本来意図しないといいますか、端的には中心条項と言われるものが適用されることにならないかという御意見を注意喚起といいますか、いただいたところでございますので、ここは考え方をちょっと整理させていただいたところでございます。

それが「(2)考え方」というところでありまして、3段落目、「マル1について」と書いてあるところからですが、当該条項に関する任意規定又は一般的な法理、最高裁は一般的な法理と言ったわけですが、そういったものがある場合には、それらを適用した場合に認められる権利義務がマル1に該当するということでございます。そういったものがない場合には、およそ「当該条項がない場合に認められたはずの権利義務」を想定することができませんので、比較対象がないということになるのではないか。そうしますと、前段要件には該当しないことになり、この点は特に最高裁判決で言っているところを変えるものではないと考えられるのではないかということでございます。

10ページに「この点に関連して」という段落がございますけれども、いわゆる中心条項についても問題点の御指摘があったところでありますが、最終的に現行法の10条がいわゆる中心条項に適用されるかどうか、これも解釈に委ねている問題でございまして、何が中心条項かということを言い始めますと明確な議論ができませんので、それも解釈に委ねていますとしか言いようがございません。ございませんが、目的や価格というものについては、基本的に当事者間の交渉で決められるものと思いますので、デフォルトルールで決めるものではありません。そうしますと、「当該条項がない場合に認められたはずの権利義務」というのはないことになるのではないかと思いますので、前段要件には該当しないと整理して差し支えないと思います。

では、それを前提に書き方をどうするかというのは、法制的な検討が必要になってまいりますので、そこはさらに詰めたいと思いますけれども、まず、この専門調査会の場においては、この考え方についてどうかについて整理していただければありがたいと思っているところでございます。

続きまして、11ページの「2-2.後段要件」でございます。これにつきましては、前回はいわゆる平易明確性について規律を設けることについて検討してはどうかということでお示しいたしました。とりわけ契約条項が非常にわかりにくい、抽象的であるゆえに、消費者からすると契約条項の意味がわからないまま契約を締結して、こういう意味だったと後でわかることがあるということでございます。

また、具体的な内容が明らかでないことによって、本来、消費者契約法、その他の関連法によって無効になるべきものがそのまま紛れ込んでいるということで、規定の潜脱につながるおそれがあるというのも問題意識でございました。

これについて賛同した御意見も頂戴したわけでありますが、他方で「意見の概要」の(ア)の段落の真ん中より下に書いてあるところです。事業者側からの御指摘でございますけれども、例えば専門用語を用いている場合に、あえて用いざるを得ないということもあるようでございまして、そういった場合に消費者がわからないと言ったからといって、直ちに平易明確でないとなるのは、ちょっと賛成できないという御指摘もあったところでございます。また、後でも触れさせていただきますが、条項使用者不利の原則は別途検討する必要があるのではないかといった御指摘もいただきました。

12ページの2段落目の「これらの意見を踏まえ検討した結果」、この辺が前回の議論が集約されたところではないかと思います。平易明確でないと言いましてもいろいろ問題状況がありまして、3つほど。マル1の意味を確定できない。マル2の裁量の余地が広いため事業者が濫用しがちである。マル3の規定が散在していてわかりにくく隠ぺい効果があるといった問題状況をある程度整理した上で、さらに検討するということであったかと思います。

それから、(イ)でそれ以外の御意見を幾つか御紹介しております。平易明確以外の要素を考慮事情として定めることが考えられるのではないかという御意見とか、現行法の10条で書いてある民法1条2項に規定する基本原則に手を加えるべきだという御意見もあったところでございます。

それで、「考え方」でございますけれども、私ども、前回の御議論を踏まえて、マル1、マル2、マル3については、さらにこれを踏まえた検討をしていくということで、逆にそれぞれの検討をすることによって、10条において平易明確性を位置づけるというのは必ずしも必要でないといいますか、現行法の文言を維持した上で、別途検討していくという方向性が考えられるのではないかということで書いております。それが12ページの「考え方」の「具体的には」というところでございます。意味を確定することができない条項といいますのは、その意味がよくわからないということで、解釈の問題と思われますので、条項使用者不利の原則は後ほど御紹介したいと思いますけれども、そちらのほうで議論を引き続きやってはどうかということでございます。

また、裁量の余地が広いので濫用される条項といいますのは、これも後ほど不当条項リストの中で議論しておりますが、その中で整理を試みております。

それから、3つ目の隠ぺい効果の問題につきましては、情報提供義務の問題のほうで議論するということではないかということで整理してございます。

それで、16ページから「3.条項使用者不利の原則」を書いております。前回もこういった考え方をちょっと御議論いただいたところでございまして、その前回の御議論を踏まえて、さらに検討してみたものでございます。

下のほうから「意見の概要」を御紹介しております。賛成の御意見としましては、お示ししました裁判例とか、諸外国ではこういった規定を設けることがむしろ多いというお話でありました。

他方で、約款について、ある程度対象を絞って、こういった原則を考えるということはあり得るという御意見もございました。今回のペーパーをごらんいただきましたらおわかりのとおり、約款の中でも民法で今回、新たに導入された定型約款について、入れるということで検討を試みております。

また、御懸念もございまして、(イ)であります。消費者の理解というのは多様であるということでございまして、消費者の通常の理解というのがなかなか機能しないのではないかという御指摘もいただいたところでございます。この辺も考え方を整理したものを後ほど御紹介したいと思います。

最後に、(ウ)で、これは古閑委員から提出いただいた補充の資料でありますけれども、一般解釈に従った場合でも、なお複数の解釈が残る場合というのがなかなかわかりにくいのではないかという御意見がございました。考え方としてはこういうところになろうかと思うわけでありますけれども、そこはさらに詰める必要があるのではないかという御指摘ではないかと思います。

それで、18ページの「(2)考え方」でございますけれども、条項使用者不利というもので何を想定しているのかということでございます。1段落目に書いておりますけれども、通常の方法で解釈したとしても、なお契約条項の意味を特定できない場合に、条項使用者に不利な解釈を採用しなければならないというものであります。実質的な根拠としては、公平の観点と、条項が多義的であるというリスクは誰が最終的に負担すべきかといいますと、それは使用した者に負担させるというのが公平ではないかということでございまして、考え方自体はそれなりに合理的なものではないかと思われます。

かつ、これは消費者契約におきましては、さらに考え方としては十分あり得るのではないかと思われるわけでありまして、「一般に」と書いておりますけれども、消費者契約では情報・交渉力の格差というものを踏まえなければなりませんので、事業者側が作成しようとする契約条項を使用するというのがかなり多数であろう。その中身は、消費者からするとよくわからないということが多いと思いますから、そういった場合に解釈が複数ある。最終的に意味内容が確定できないということになりかねない場合のリスク負担をどうするかということは、事業者のほうでリスクを負担すべしというのは、考え方としてはそれなりに合理性があるのではないかと思います。

下から3行目の「また」に書いておりますけれども、そういった原則を定めることによって、できるだけ明確な条項を作成しましょうというインセンティブが働くことになると思いますので、それは双方にとってメリットがあるのではないかということでございます。

19ページに行きまして、ただ、その適用範囲をどこまで射程を持って検討するかということでございますが、これは契約条項について一般に適用するという考え方もあると思います。契約条項を作成するのは事業者であることが多いということを踏まえますと、それでいいじゃないかと考えるのも一理あると思いますが、他方で問題がとりわけ顕著に出てくるのは約款、特に定型約款ではないかと思いますので、ここでこういった原則を導入することの可否をまず検討していくということではないかと思います。

上から3行目あたりから書いておりますけれども、不特定多数の者を相手方として行う定型取引において用いられるもの。内容が画一的なものが想定されておりますので、そういった場合に特に消費者が事業者の提示した条項に従わざるを得ない状況が特にあるだろうと思われるからであります。

では、個別の契約条項についてはどうかということでありますが、その段落の下のほうの「しかし」というところに書いておりますけれども、個別交渉を経て採用した条項については交渉があることになりますから、そこについてまでリスクを事業者に負わせるということは果たして妥当かということがあろうかと思います。ただ、個別交渉を経たと言えるかどうかについて、事業者と消費者の間で見解の相違が生じたということからしますと、適用範囲を明確にするということもありますので、定型約款に限定するという考え方もあり得るのではないかと書いております。

では、実際にどのような場面で適用されるのかということで、ウでございますけれども、先ほど申し上げたように、この原則は何かということで、通常の方法にしたがって解釈してもなお複数の解釈が可能な場合でございまして、解釈がどうされるかということで「すなわち」と書いておりますけれども、通常は当事者がどういう目的でその契約を締結したか。目的とか慣習、取引慣行、その他、そういった事情を斟酌しながら合理的に意味を探求するのだということだと思います。実際上、実務的には、これでほとんどの場合には解釈が特定されることになるのではないかと思います。

では、どうなるのかということで、(イ)、具体例で検討するということで、前回も御紹介した事例3-1というもので一定の分析をしております。これは火災保険の保険金の支払いを請求した事案で、約款に定める「事故」というものに該当するのかどうか。その前提として、「事故」というのは一体どういう意味なのですかということが当事者間で争われた事案でございまして、保険会社、事業者側は、その出来事の偶然性も含んでいるので、請求する側が偶然性、すなわち故意によるものではないことなども立証すべきだと主張したわけであります。

これに対して消費者は、「事故」というのは出来事それ自体という意味で、偶然性というものは消費者が主張・立証するのではなくて、例えば故意によるものであるということを免責事由として、むしろ事業者が主張・立証すべきと主張したということでございます。その「事故」という言葉の意味内容において、その偶然性の立証責任がどっちに行くのかというのが実質的な違いとして争われたという事案でございます。

この事案において、「事故」という言葉の意味についてどう見るか。最終的な考え方でございますけれども、社会一般における用法とか業界における通常の理解とか、あるいは消費者における通常の理解というものがあるのであれば、それも一定斟酌されることかと思いますけれども、そういった要因を斟酌しながら意味を明らかにするということが一般的には試みられるということだと思います。さまざまな要因を斟酌して解釈するということで、通常はここである程度決着が図られると思いますけれども、それでもなおわからない、どちらかに特定することはできないということになりますと、理屈の上では意味内容が確定できない、条項自体が無効になるという帰結があり得るということだと思います。これは非常に困った事態でありまして、非常に酷な結果になることもあり得るわけであります。

ただ、そういった場合にこの条項使用者不利の原則が適用されるとしますと、事業者に不利な解釈をするということで意味内容が確定できるということでありまして、それによって、この件においては主張・立証責任については消費者側は負いませんということになるということであります。

こういった考え方ということで整理を試みてみたものでございますので、さらにこれについてどうなのかということについては、また御議論いただければと思います。

最後、21ページに書いておりますのは、文言についてはこういったことが考えられるのではないかということで、一つの案としてお示ししているところでございます。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。資料2の2ページ以下を引用しながら意見を述べたいと思います。

まず、2-1の前段要件については、提案内容に賛成いたします。

現在の10条の前段要件は、比較の対象となる任意規定が明文で存在しない限り、本条の適用がないかのように読める文言です。また、消費者庁の逐条解説では、現にそのような解釈論が掲載されております。

しかし、最判平成23年7月15日は、「ここにいう任意既定には、明文の規定のみならず、一般的な法理等も含まれると解するのが相当である」と判示しております。現在の前段要件の文言と逐条解説は、この最判の判示を踏まえて、改められる必要があると思います。

具体的なあり方としては、前段要件が本来的に原則的な権利義務関係との対比という観点に立った規定であることを踏まえ、今回の御提案のように、「当該消費者契約の条項がない場合と比べて、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するものかどうかを判断するという考え方に基づいて適切な修正を行うこと」が合理的であると思います。当該条項がある場合とない場合との対比という考え方は、客観的かつ平易な判断基準である点において、高く評価できると思います。

次に、2-2の後段要件についての意見です。

条項の平易明確性については、条項使用者不利の原則等で別個に検討することに賛成いたします。

しかし、後段要件について、現行法の「民法第1条第2項の基本原則に反し」という文言を維持することには反対です。上記の文言と当該部分の消費者庁の逐条解説については、最判平成23年7月15日の判示内容を踏まえた改訂が必要であると考えます。

以下、理由です。

条項の平易明確性は、消費者契約において重要な要素でありますが、条項使用者不利の原則など、10条が規定する不当条項規制とは区別して考えることが合理的であると思います。

次に、「民法第1条第2項の基本原則に反し」という法文と逐条解説の問題点ですが、現在の10条の後段要件の「民法第1条第2項の基本原則に反し」という法文は、民法第1条第2項と同義であるかのようにも読める法文です。また、消費者庁の逐条解説(第2版補訂版)227ページでは、「現在、民法第1条第2項に反しないものは本条によっても無効にならない」という解釈論が掲載されております。

しかし、消費者契約法と民法は、立法趣旨も想定する契約当事者も異なるはずであり、消費者契約法で無効となり得る契約条項は、民法の伝統的な公序良俗論や信義則によって無効となる契約条項に限定されないはずです。

この点については、前述の最判平成23年7月15日も、「当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは、消費者契約法の趣旨、目的に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである」と判示し、10条の後段要件が消費者契約法の趣旨や目的等に照らした判断が必要な要件であることを明確にしております。

したがって、10条の後段要件については、この最判の判示内容に適合した文言への改正と、それにあわせた逐条解説の改訂が必要であると思います。具体的な条文例としては、資料2の3ページに列挙させていただきましたような条文例が考えられると思います。少なくとも逐条解説の改訂は不可欠であると思います。

次に、「3.条項使用者不利の原則」についての意見です。

まず、結論としては、規定を設けることに賛成いたします。ただし、適用範囲を定型約款に限定することが合理的か否かは、さらに検討が必要ではないかと思います。

以下、理由です。

消費者契約の条項について、契約条項の不明確さゆえに、合理的な意思解釈を尽くしても、なお複数の解釈可能性が残り、契約条項の内容を確定できないという場合がございます。このような場合の解釈準則として、条項作成者不利の原則の規定を設けることは、当事者間の公平という観点から有用であることから、賛成いたします。

しかし、消費者契約においては、定型約款に限らず、事業者が一方的に契約内容を作成する場合がほとんどでございます。適用範囲を定型約款に限定することが合理的か否かは、さらに検討が必要と考えます。

なお、条項作成者不利の原則の考え方を使って事案を解決した裁判例には、昨年10月に取りまとめられました消費者庁の「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」で紹介されている裁判例(123、124、129、158)以外に、資料2の別紙記載のような地震免責条項に関する裁判例も存在いたしますので、参考として御紹介させていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。では、阿部委員。

○阿部委員 まず、8ページの10条前段要件でありますが、まさに「適切な修正」というのはどういう文言かが示されないと、いいとも悪いとも言えません。判断保留としたいのでありますが、前回、文言として提示されたもので、現状の10条の書きぶりと何がどう違ってくるのかというところは、まだ判然としません。現行の文言で最高裁判例を踏まえて解釈しているとすれば、この文言、言葉を変えることによって、何か変わるかどうかというのがよくわかりません。そういう意味で判断保留とさせてください。

11ページの後段要件は、現状のままでということで賛成いたします。

16ページの条項使用者不利の原則ですが、これはあくまでも約款規制の問題だということなので、仮に導入するとしても定型約款に関するということで限定していただきたい。中身については、まさにどういう場面で適用されるのかという適用場面の範囲をもう少しはっきりとしていただきたいということがございます。

あと、質問ですが、改正民法の法案548条の2の2項によって、何か救えないような事例とか行為があり得るのでしょうか。民法をつくるときに大議論したわけでありますが、22ページの参考条文548条の2の第2項で書かれているような書きぶりで何か足りないことがあるとしたらどういう場合なのか、消費者庁のお考えがあれば教えてください。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 阿部委員御指摘の改正民法548条2の2項でございますけれども、この条文はごらんいただいたらおわかりのように、現行法の10条と非常に似たような規定でございまして、「1条2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」ということでございます。

私もちょっと自信がないところがありますが、これは恐らく内容規制について不当条項とするものではないかと思います。いわゆる約款というか、契約条項の問題につきましては、その内容規制の問題とは異なるレベルのものとして解釈の問題というのがあり、不当条項になる、ならないの判断の前に、まず解釈によって意味内容が確定されなければいけないというところの解釈をどうするかというのは、別の次元の問題として、この548条の2の2項にかかわらず残っているのではないか。そこをどう手当てするかというので、こういった使用者不利のような考え方というものがあり得るのではないかと理解しているところでございます。

○山本(敬)座長 548条の2の2項は、1項に定められた要件を満たすときには、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなすとした上で、2項に当たるようなものについては合意しなかったものとみなすとして、結論としては契約の内容にならない、つまり拘束力を持たないとする規定ですが、今の御指摘にもありましたように、2項はあくまでもその条項の内容が確定できるときに、それが契約の内容になるか、ならないかという問題でして、確定できるということが前提である。

それに対して、今、問題にしている条項使用者不利の原則は、そもそも確定できるかという段階での問題を扱っているものであって、次元を異にする。548条の2の2項があるからといって、内容が確定できないときにどうするかという問題がなくなるわけではないという御説明だったのではないかと思います。よろしいでしょうか。

では、ほかに。井田委員。

○井田委員 まず、2-1と2-2に関しては、私も山本健司委員の御意見と全く同じというか、賛成いたします。いわゆる差止業務におきましても、例えば前段であれば、明文の任意規定がなければ比較するものがないので、そもそも10条の適用がないのかと。しかし、それはそれで10条の趣旨にはそもそもそぐわないのではないかという疑問を従前、持っておりまして、平成23年の最高裁の判例も出ましたので、そこを明確化する意味で、前段については文言まで変えてしまう。具体的には、消費者庁に御提案いただいたような文言で、改定はより明確化できるのではないかと思っております。

また、後段要件につきましても、情報の平易明確性につきましては、平易明確でないから差止めるというものとは少し違うかなという意見も持っておりましたので、それは当該条項の意味という意味で、条項使用者不利の原則で検討するのが望ましい規律のあり方かなと思っております。また、10条の後段要件につきましては、山本健司委員御指摘の最高裁判所の判例をどう読むかというところはあるのですけれども、少なくともいわゆる民法1条2項における信義則と同じだとは書いていないということであれば、10条の文言からそれが読み取れるかどうかはともかくとして、少なくとも現時点での消費者庁の逐条解説に書かれてあることは、少し御修正いただいたほうが我々も実際の業務を運営しやすいという点はございます。

3につきましては、基本的な方向としては賛成いたします。定型約款に限っていいのかどうかというのは、そこは少し留保したいと思っております。世にいろいろある契約書の中で、具体的にこの契約書が定型約款に当たるかどうかというのは、まだ不明確な段階でありますので、この時点で実際に問題になるのが定型約款であるということは否定いたしませんけれども、なお現時点でここまで絞ることは再考いただければと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 まず、前段要件につきましては、消費者庁の御提案どおりで賛成いたします。理由は、これは最高裁判例でも示されているところですし、かつ最高裁判例の考え方というのは、それまでの学説のほぼ全部の説に一致したものであると思います。判決が出たからということで、そのままにするのではなくて、その趣旨を明文化するというのは立法としては当然やるべきだと思っていますので、これは賛成します。

後段要件につきましても基本的には賛成します。条項が不明確であるということについて、考慮要素に入れるのを見合わせるということですが、私は前回にも申し上げましたように、考慮要素を列挙する、明文化するというのであれば、恐らく条項の平易明確性以外にも列挙すべきことはたくさんあると思っていますので、この平易明確性だけを列挙することには非常に違和感があります。今回の御提案を拝見すると、考慮要素を具体化するということはこの中にありませんので、そうである以上は平易明確性についても書くことは適当ではないと思っています。

ただし、これも山本健司委員と全く同じですが、今の後段要件の文言が果たしてそのままでいいのかというのは疑問に思っています。具体的には、民法1条2項に掲げる「基本原則に反して」という言葉の意味でございます。これはいろいろな観点から批判がありまして、例えば民法1条2項と書いていますから、これは民法の信義則と同じ意味であるかのように誤解されてもおかしくないような文言が使われていると思いますし、現に消費者庁の逐条解説を見ても、民法の信義則で無効にならないものは、消費者契約法でも無効にならないといった誤解を招くように書いてありますので、そうだとすると、民法1条2項という文言をそのまま残すことには、本当は反対したいと思っています。

もう一つ、「信義則」という文言を残すことについて、私はこれまで、「信義則に反して」というのがやや抽象的にすぎるのではないかという観点から反対していました。消費者の利益を一方的に害するという要件が具体的にありますので、私の前の提案では、「信義則に反して」というところは削除して、「消費者の利益を一方的に害するもの」に統一すべきだと申し上げましたが、これだけでもさすがに曖昧であるということであれば、例えば事業者に一方的に利益を与えているといった、別のもっと具体化した要件を付加することで後段要件を具体化することが望ましいのではないかと思っています。

ただ、これも余り無理を申し上げる趣旨ではございませんので、もし10条の後段要件をこれ以上変えられないということであれば、最低でも信義則に関する逐条解説の記述は書き直していただきたいと思っています。つまり、消費者契約における情報交渉力の格差を踏まえた信義則の解釈がされるべきだという趣旨を、今も書いていないわけではないと思いますが、そういうふうに徹底して書いていただきたいと思っています。

「3.条項使用者不利の原則」につきましては、この規定を設けることには賛成しますが、定型約款に限定するのは強く反対します。

まず、なぜ賛成するかという理由から申し上げますと、今回の16ページの提案でなされている、通常の方法により解釈しても、なお複数の解釈が可能である場合というのは、かなり具体化された要件だと思います。このことから、通常の方法で、すなわち民法の例えば合理的解釈とか、そういうものを幾ら尽くしてもわからない場合に限定されていると思いますので、この規定があらゆる条項の解釈に適用されるということを言っているわけではないですから、この適用範囲については心配は要らないと思っていますので、通常の方法によって解釈しても、まだ解釈し切れない場合と明文化しているということは非常に評価できるのではないかと思います。

これは海外でも、例えば条項に疑わしいものがある場合には、作成者に不利に解釈されるという原則があります。それは今回の資料の後ろのほうでも、海外での草案ないし規定があったと思います。それらの「疑義がある場合には」という文言よりも、さらに今回、具体化されていて、単に疑わしいだけではなくて、疑わしい上に、かついろいろな方法をとっても解釈がまだできないという場合に限定されていますので、その意味では、この方向性で個人的には進めていただければと思っています。

ちなみに、お時間がかかって申しわけないですが、海外のうち、こういう通常の方法に従っても、なお解釈し切れない場合ということで、実際にどういう事例があるか、時間が限られていましたが、幾つか調べてきましたので報告させていただきますと、例えばフランスでは、疑わしき場合には、作成者に不利に解釈するというのが民法の改正案でも出ていますが、実は消費法典という消費者に関する特別法の中で既に同様の規定が設けられています。

この規定がどのような事案で適用されているかというのは、数はそんなにまだ多くないのですが、定型的に通常の方法に従っても解釈できない場合として挙げられるのが、複数の要件をハイフンとかダブルピリオドで結んでいるだけで、「かつ」なのか「または」なのかがわからないような場面です。

つまり、以下の要件に従ってと要件がただ列挙されているだけで、その要件を全部満たさないといけないのか、それともどれか1つだけでいいのかというのが、「または」とか「かつ」がないためにわからないという場面が主に争われています。これは、作成者の側でハイフンとかダブルピリオドで結んでいるだけということによって、その曖昧さが生じているという場面で、その場合に消費者に有利な解釈がとられています。具体的には、2つの要件が2つとも満たされないいけないということではなくて、どちらかだけでいいと、この場合には解釈すべきであるとされています。

あと、ほかにあった事例としては、例えば「それ」とか「これ」といった、いわゆる指示代名詞の使い方によって、それが複数の言葉を指しているのか、単数なのかがわからないという場面がありました。それについて適用されています。

あとは、専門用語を駆使していて、その専門用語を幾ら理解しようと思っても、読み方が二通りあるという場面でした。

以上のように、基本的には条項の形式的な書き方ゆえに、その要件が2つ必要なのか、それとも1つだけでいいのかがよくわからないという事案に適用されていますので、それほど全ての条項について解釈の範囲が広がるということではないのではないかと思います。ただ、実務的には、「それ」とかハイフンだけで結ばれているような場合はあるのではないかという危惧を個人的には持っていますので、今回のような提案には賛成します。

ただし、定型約款に限定しているというところは、強く反対したいと思います。と言いますのは、私自身の検討はまだ十分に及んでいませんが、民法の定型約款の範囲というのは非常に限られていると思っています。そうしますと、定型約款の規定だけに限定してしまうと、この規定が当てはまらない場面というものが出てくるのではないかと思っています。ここでの問題というのは、条項が一方的に作成されている。それゆえにそういう不明確な部分が残っているということでしょうから、例えば事業者が一方的に作成した条項が通常の方法に従っても解釈できない。そういった文言でその趣旨は明確にすべきであって、少なくとも民法の改正案の定型約款という言葉を使うのは個人的には反対します。

消費者庁の資料の中には、交渉を経ていない場合という要件にしてしまうと、個別交渉があったかどうかで争いが生じると書いてあったのですが、そういう言い方ではなくて、端的に事業者がこれを一方的につくったということを争えばいいのではないか。交渉を経ているかどうかということよりは、事業者が一方的につくったかどうかということのほうが、まだそんなに争いの余地はないのではないかと考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。丸山委員。

○丸山委員 まずは、8ページの前段要件につきましては、提案されている方向に賛成しておりますので、特に述べるところはございません。

次に、11ページの後段要件に関してですけれども、詳細化したほうがいいのではないかという提案の方向というのが1つ出ていると思います。仮に考慮ファクターを最高裁を参考に列挙するという方向に行くのであれば、1つ考慮してほしいのが、最高裁の場合は、今回の14ページの日弁連案の2014年度とか、あとは債権法改正の基本方針、15ページの2項で出てきているような任意法規の内容とか、そこからの逸脱の合理性があるかみたいなことは、恐らく今まで最高裁では後段の考慮要素とはしていない状況があると思います。したがって、考慮ファクター自体、最高裁のままでいいのかどうかというのも検討していただきたいと思っております。

次に1、6ページの条項使用者不利の原則についてですけれども、定型約款に限定するかどうかという点については、恐らく問題が生じる事例というのは定型約款ということでおおよそカバーできるのかなという気もします。しかし、狭いという懸念があるのであれば、さきほどから指摘していただいているように、一方的に作成されたとか、あるいは個別の交渉を経ていない条項といった形で、定義を少し考えてもよいのではないかと思います。

1つ懸念があるのは、「通常の方法により解釈して」という言葉を用いることがよいのかどうかです。なぜかといいますと、日本の現在の裁判例の中では、合理的な解釈の枠内で作成者不利の原則のような条項を作成した人の帰責性なども考慮して、合理的な解釈の枠内で作成者に不利に解釈することを行っている判決もあると思います。通常の解釈とか合理的な解釈とは何なのかという段階で議論となってしまうことがないのかどうか。気になっているところでございます。

むしろ「通常の方法により解釈して」という部分であらわそうとしている、条項の文言、当該条項の目的、契約の性質などに照らしても、なお不明瞭さが残る場合みたといいった具体化・明確化した表現を用いるような条文の作り方もあり得るのではないかといった感想を持っておりました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

山本和彦委員。

○山本(和)委員 全く素人なのですが、私は丸山委員とやや同じような疑問を持っていて、「通常の方法により解釈」ということですけれども、ここであらわそうとしているのが通常の方法でない解釈をした場合、それは違法な解釈になるという前提なのか、それとも適法な解釈の中に、通常の方法によるものと通常でない方法のものがあるという前提なのかというのが私には十分理解できませんでした。

証明責任の判例のみが例として挙がっているのですけれども、これは最後、最高裁は消費者側に証明責任がないという一定の解釈を施して、それで判断した例だと思うのですが、この例を挙げているということは、ここでされている解釈というのは適法な解釈なのだけれども、通常ではないものの解釈がされたので、こういう規定を置けば、そういう解釈をするまでもなく、消費者側に有利な解釈がされるという帰結になるという趣旨で挙げられているのか。

それとも、そうじゃないと思いますが、最高裁が示した解釈はおかしい解釈だったと。恐らくそういう趣旨ではないと思うので、そういうことだとすれば、この規定の意味というのは、適法な解釈の中に通常でない解釈もあり得て、通常の方法による解釈が尽きたところでは、なお通常でない適法な解釈の余地は残るけれども、消費者の有利に解釈すべきだという規範であるのかという理解をしたのですが、その私の理解が合っているのかどうかというのをちょっと。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 御指摘、どうもありがとうございました。問題意識に私ども、ついていけないところがありますので、また検討しなければならないと思いました。

さっきの丸山先生の御指摘もあわせて、今の御指摘も踏まえてですけれども、ここで通常の解釈と言っておりますのは、裁判所においてさまざまな手法で解釈されているであろうと。その通常の解釈によって、大多数は契約条項の意味内容というものが確定しているはずですけれども、それでも意味が確定しないということがあるのであれば、こういった準則を設ける必要があるのではないかという趣旨でありました。ですので、実際の裁判実務等でそれなりにうまくやっているケースについて、さらにこういう規定を設けることによって処理しようということまで念頭に置いているものではございません。

ただ、こういった準則というものが適用される局面というのはかなり限定されると思いますけれども、ないと意味内容が確定できない条項として無効になるという可能性は否定できないと思いますので、そういった場合のケアとして、こういうものを設けておくことには意味があるのではないかということで、ペーパーをまとめさせていただいたということでございます。

それで、山本和彦先生御指摘の最高裁の判例との関係でございますけれども、最高裁の結論は証明責任の所在については事業者側が負うのですよとしておりますが、21ページの脚注23で書いておりますように、その理由は若干異なっておりまして、かつての商法の規定とか当該約款の規定とかに照らして、保険金支払いを請求する者、この場合は消費者になるのですけれども、消費者は火災発生の偶然性についての主張・立証責任は負わないという判断をしたというものでございます。立証責任は消費者ではなく事業者が負うということについての結論は一緒でありますけれども、そのアプローチが違っている。

これは別の事案になりますけれども、最高裁の判決はこういった商法の規定の趣旨などからすると、こうふうになると考えたということでございます。そういう意味では、こういった最高裁の判決はもちろんあり得るということだと思います。あとは、事案としてどういったものがあり得るかということの検討は、またさらに必要になってくると思っております。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○山本(和)委員 私の伺いたかったというか、疑問は、この通常の方法ということで何が表現されているかということですが、今の御説明からすると、要するに解釈を尽くしても、その条項の意味が確定できない場合のみを指しているという理解でいいですか。通常の方法というのはどういう方法があるのか知りませんが、それではまだ複数の解釈が可能なのだけれども、別の通常でないような、しかし適法な解釈をすれば意味内容が確定できるという場合というのは、この規定の適用範囲には含まれていない。そのままだと意味内容が確定できないので、契約が無効になるような場合だけが、この適用範囲に含まれるという理解でよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 消費者庁のお考えは。

○消費者庁加納消費者制度課長 大体、そういう理解で結構だと思います。

○山本(和)委員 そうであるとすれば、この文言は丸山委員の言われたように、やや誤解を呼ぶのではないでしょうか。通常の方法というのは、通常でない方法というのがあるのが前提になる。

○山本(敬)座長 幾つかの読み方が出てきてしまっているという指摘をされているのかもしれませんが、表現しようとしているのは、通常の解釈の方法というのは、ここで言う条項使用者不利の原則が、仮に解釈の方法の一つであるとするならば、それ以外のものということを指しているのではないかと思います。よろしいでしょうか。

○山本(和)委員 それ以外の許される。

○山本(敬)座長 という意味だと思います。許される解釈と許されない解釈があって、そのうちの許される解釈のみを指そうという意図ではないと理解しました。

松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 私はちょっと違った理解をしているのです。すなわち、結論は消費者有利の解釈に落とそうということですね。作成者に不利な解釈、消費者側に有利な解釈という結論を持ってくるために、消費者側がおよそ無茶な無理筋の解釈をして、あたかも解釈が複数あって、一つの解釈ができないかのような状況を意図的につくり出して、自分の有利な結論に持っていく。それはだめでしょうと私は理解しています。すなわち、普通のいろいろな解釈の仕方があって、こういう解釈もできる、こういう解釈もできるという中で一本化できないような場合を想定しているわけで、およそ突飛な方法で主張してというのはだめだという程度の意味だと思うのです。余り難しく考える必要はない。

○山本(敬)座長 山本和彦委員が言われたのも、恐らく同じようなことでして、許される解釈というのが、今おっしゃっている突飛な解釈でない許される解釈という意味だろうと思いますので、御趣旨は同じと承りました。

大澤委員。

○大澤委員 質問ですが、私がさっき通常の解釈でと申し上げて、甘かったのですが、特にそこに疑問を感じなかった。これは、要するに17ページの(ウ)に書かれていますけれども、「契約解釈の一般原則に従った解釈を尽くしても」と理解しました。あるいは、18ページの下から6行目に書いてある「合理的な意思解釈を尽くしても」と理解したのですが、なぜこれを今回、「通常の」と改めたのかをちょっと伺いたいです。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 あとは、どういうふうに表現するかというところは、ちょっと検討の余地があることだと思いますけれども、私ども、ペーパーで書いている趣旨は、別にそこに特に意味の差を設けるというものではございませんで、「合理的な意思解釈を尽くしてもなお」ということについて、どう書くか。「通常の」と書いてみたわけですけれども、よくわからないということであったかと思います。

○山本(敬)座長 多くの国の立法例では、契約の解釈についてどのように行うかという方法に関する規定が明文で置かれています。ですので、疑義が生じたときというのは、それらの規定に従って解釈しても、なお疑義が残るという意味で、明確なのだろうと思います。

日本の民法典には、現在、そして改正案でも、このような契約解釈の方法についての明文の規定は置かれていません。ですので、この点はどうなのかという疑問が残るかのように思うのですが、民法典に規定がないということは、どのような解釈の方法で解釈を行うかということについて、共通した理解が全くないということを全然意味していません。むしろ、解釈の仕方については、明文はないけれども、確立したものがある。それに従って行われる解釈が、先ほどの許された解釈なのだろうと思います。

それを尽くしても、なお意味が明らかでない場合が残るとするならば、それはそのままでは契約内容を決められないわけですから、その部分は無効になるはずである。しかし、少なくとも現在の案では、定型約款でそれが使われている場合については、条項作成者の不利に解釈することによって、無効にはせず、一定の意味内容を付与しよう。それがこの原則の意味であるということだと思います。この点については、おおむね今のやりとりで明確になったように思います。

もちろん、その上で、ではどのような場合がそれに当たるかという御指摘が、最初、阿部委員などからもありましたけれども、その一つの例として、先ほど大澤委員が挙げられたのは、いくつかの場合が並んでいるのだけれども、それが「アンド」の意味なのか、「オア」の意味なのかわからないという場合です。これは、日本語でも「、」でつなぎますと起こる可能性があります。その意味では、普遍的な現象なのかもしれません。もちろん、文脈から明らかになる場合は、許される解釈、通常の解釈を尽くせば明らかになるかもしれませんが、そこがどうしても詰められないという場合は出てくるだろうと思います。そのような場合に意味を持ち得るルールであるということだと思います。

では、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 さっきの「通常の方法」は、私もミスリーディングなものがあるので、もう少し検討したほうがいいのではないかと思います。どっちの側にとって通常かという問題が起きてしまって、営業している人間にとっては、これが通常だと考える。お客さんにとっては、こっちが通常だと、通常を争うことになってしまう可能性もあって、それは客観的な合理性というところで押さえていく。分離的な解釈をし、そして客観的・合理的解釈を施してみても、なお複数の解釈が可能だというところで、このルールが動くとしたほうがいいのではないかと思います。

いろいろな例があるのですけれども、特に保険業界の方にとってみると非常に深刻な問題になる可能性がある。例えば、人身事故などが交通事故で起きたときに、運送中の外部からの打撃によって何か事故が起きたときに、エンジンを吹かしたまま外からピストルで撃たれた人はどうですかという話がありました。これは保険事故に入るのではないかと言われたケースですけれども、これは運転中の事故だろうか。保険の問題になると、一つ一つ、そこは難しい。言葉であらわしているときに、どちらなのだろうというのがわかりにくくなって、両方あり得るという場合に、差し当たっては契約者側のほうに有利にして、これから後は明らかにして、少しずつその条項が疑義を生まない形に改善されていく契機にもなるという意味では、この作成者不利原則というのはかなり大事なものだと個人的には思います。

もう一つ、定型約款という言葉。これは民法の定型約款との関係ですけれども、私の見ます限り、民法でいう「定型約款」というものは日本にはほとんど存在し得ないのではないかとさえと思います。これほど強力なみなしをかけてよいような定型約款は、日本には電力供給約款ぐらいしかない。ですから、適切であろうと思います。ですから、「定型約款」に限定しない方が適切であろうと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員。

○古閑委員 まず、2-1につきましては、最高裁判例を反映させるという方向性については異論がございません。あとは、どういった表現ぶりになるのかというところ次第かと思っています。

それから、2-2については、これも方向性としては賛成ですけれども、平易明確性については別途議論が必要であろうと思っています。基本的には努力義務になるような形だと思っています。

今、さんざん議論になっていた「3.条項使用者不利の原則」ですけれども、今の文言ですと、「通常の方法により解釈して」となっていて、この「解釈」という言葉ですけれども、4-4でも議論したほうがいいのかなと思っていたところではありますけれども、解釈が何かということ次第です。例えば、4-4の前回の議論で出した事例ではありますけれども、何かサービスを御利用いただくときの約款みたいなものがあるとして、サービスの御利用者で悪いことをしようと考える人もいるわけなので、比較的あえて曖昧に広く捉えられるような概念の単語を使って、こういう場合には御利用をやめていただくみたいなことを定めたりすることがあります。

それがこの条項使用者不利の原則というのが入ってくることによって、そこが解釈し切れないので御利用をやめていただきますみたいなことになってしまわないのかどうかというところは、ちょっと心配だなと思っております。私が考えつくのはそういうことですけれども、そういった懸念が生じるものがほかにないのかどうかというのも気になるところでございます。

それから、今、「通常の方法」というのは、多分言葉を変えましょうという流れだと思うのですけれども、いずれにしろ、変える言葉であっても何でも、現行の運用はどうなっているのかというのがちょっと知りたくて、結局、今の裁判実務の運用とかで、基本的には消費者との契約であるという場合には、消費者側の事情を相当斟酌して判断がなされているということがもしあるのであれば、そこで一旦斟酌されたはずですと。そこでこぼれたものをどうするのかというのが今の議論だと思うのですけれども、そこでもう一度、消費者側に有利、事業者側に不利にするということが妥当なのかどうかというのが、今、概念だけで話していて、具体例で話が余りできていないので、イメージがつかず。

もし二段構えで事業者が不利になるという形になるのだとすると、余り妥当な気がしていなくて、済みません、そこが私、わかっていないのですけれども、それでいいのかどうかというところの判断がつかないところでございます。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 古閑委員の最後の御指摘でございますけれども、運用は私どもでさらに詰めたいと思いますが、恐らく最初の解釈で消費者側の事情を斟酌して結論を出しているのであれば、それはそこで解釈の結論が出たということになりますので、今、議論している消費者不利という話には多分ならない。前のところで一定の結論を出していますから、それでおしまいということではないかと思います。

○山本(敬)座長 古閑委員。

○古閑委員 消費者側の事情も斟酌した上でも、まだなお判断がつかなかったものについて、どうするという話なのかなと思ったのですけれども、その理解で違いますでしょうか。

○山本(敬)座長 消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、解釈する上ではいろいろな事情を斟酌して解釈するということだと思いますけれども、それで消費者側の事情も酌んで、かつ事業者側の事情も当然酌んで解釈すると思いますが、それでもなお判断がつかないときには、これが適用されますよということだと思います。

○古閑委員 二段構えになることは想定されていないという感じですね。

○消費者庁加納消費者制度課長 その二段構えの趣旨として、最初の解釈で消費者にまず有利に解釈して、さらに解釈準則というか、こういった一定の原則を設けることによって、さらに消費者に有利な解釈をするということを御懸念されているのかなと、何となく私はお聞きして思ったのですけれども、そうではなくて、最初の解釈のところでいろいろな事情を斟酌する。

その中で消費者の事情も斟酌するということも当然あるわけでありまして、そこで一定の条項の意味内容が確定されたとすると、もうこの消費者不利の原則というのは適用する場面ではない。意味内容がわからない、どうしても確定できないときに、契約条項が無効になるのですかというと、それはそうではなくて、消費者不利に解釈することによって確定させようということではないかと思います。

○山本(敬)座長 では、沖野委員。

○沖野委員 今の古閑委員御指摘の2段階目と言われるときの、1段階目の消費者の事情とか通常の理解の斟酌というのが、その限りでは確かに消費者、相手方の通常の理解とか事情とか斟酌がされると思いますが、その段階では他方で事業者の一般の理解とか慣行、合理的な慣行と言えばいいでしょうか、そういったものが考慮されることがあってということになりますので、1段階目で既に事情を入れて有利になっているのに、2段階目でまた有利にするのかという御懸念は当てはまらないのではないかと思います。

そして、消費者側の事情を入れるといってもそれは総合判断であって、事業者の事情以外にもまた契約条項、他の条項とかもあわせて総体として判断するとか、それこそ一般の契約解釈の手法に照らして、そこで決着がつくこともかなりのところがあると思いますけれども、そこで決着がつかなくて、なお、二通り以上の可能性があるときにはどれかに決めなければいけないか、もう決まらないから、この条項は書かれていないのと同じであるとして無視しますということになるのか。なかなか無視できないので、そこを決めようというのがこの解釈準則だと思います。

そうすると、現行法で書かれていないとか無効であるとした裁判例があるのかというと、こういう準則が必ずしも明確になっていないために、何とか第1段階で頑張って持っていこうと若干無理しているところもあったのではないか。そういう意味では、解釈の手法なりを明確化するという意味もあるのではないかと考えています。

続けてよろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○沖野委員 ほかの点についてなのですけれども、順番に参りますと、10条の後段に関してですけれども、若干気になるところといたしまして、民法1条2項に規定する基本原則と信義誠実の原則あるいは消費者契約法10条との関係ですけれども、民法1条2項に規定する基本原則をここに適用したときに、その場合には当然消費者契約とか交渉力とか情報格差というのはもちろん入ってくるはずで、その意味では民法1条2項によると全然違うことになるはずだという理解自体が、これは適切ではないのではないかと思います。

しかしながら、例えば解説がそう読まれるとか、今の規定ぶりのために、あえて民法と書いてあるのは、消費者契約だから云々ということではないのですよという、それ自体が誤った理解だと思うのですけれども、それを招くようなものであれば、それは是正したほうが紛争の解決にとってもよろしいわけですので、是正の仕方は種々の考え方が出されておりますからどれかというわけではありませんが、最も簡単にはせめて信義誠実の原則と書くということではないかと思いますし、そういった例は恐らくほかでもあると思いますので、それも一案だと考えますけれども、少なくとも訂正することは妥当なところなのではないかと考えております。

最後に、条項使用者不利の原則です。適用場面の理解は進んだのではないか、あとは文言の書き方かなと思っております。また、適用範囲につきましても、定型約款というのは一方で不特定多数となっている点で限定があります。それから、内容が画一的であることが双方にとって合理的というのは、かなり限定されてくることになります。そうしますと、定型約款と言わず、この準則が約款規制なり約款法理だとしても、せめて約款とすべきではないかと考えられるわけですが、そうしますと、約款の定義を置かざるを得ないことになってまいりまして、それをどうするかという問題を抱え込むというのはよくわかるところです。

私は事前には考えつかなかったのですけれども、大澤委員がおっしゃった、事業者が一方的に作成した、恐らく準備したというのも入ると思いますけれども、作成・準備した条項と、約款という言葉を用いずにそれを書くとか、丸山委員がおっしゃった、この中にも出ている、交渉されなかった条項とか、そういう形で定型約款の概念とは少し切り離して、消費者契約の場合を捉えていくということが適切なのではないかと考えております。また、仮に定型約款について規律を置くとすると、これは、最も問題が顕著にあらわれる場面において、まずはここだけでも明らかにすると加納課長が説明されたと思います。そういう姿勢でこういうものを置いているにすぎないのであるという説明ぶりをせざるを得ないのではないかと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

2-1の前段要件に関しては、内容についてはこのような方向で一致していたように思います。もちろん規定を改めることによって何か変わるかという御指摘はありましたけれども、恐らく現在の判例を前提にする限りは変わらないということになるだろうと思います。ただ、御承知のように、消費者契約法の立法時においては、明文の規定がある場合を念頭に置いて、この「規定」という文言を定めたのに対して、その後判例が出て、その前提が変わったとするならば、もとの規定の使い方をこの際改めて、判例が示すことが明確にわかるような形に改正すべきだということで、このような提案が出ているということだろうと思います。どのような文言になるかという点は、さらに詰める必要があるかもしれませんけれども、方向性としては一致していたのではないかと思いました。

後段要件について書かれていること自体については、若干の御異論もありますけれども、方向性としては、少なくとも平易明確性に関しては、条項使用者不利の原則等において検討すべきだということについては、一致があったのではないかと思います。さらに、信義則という表現を使うかどうか、あるいは考慮事由を挙げるかどうかについては御意見があったところで、さらに検討を要するのかもしれません。

「3.条項使用者不利の原則」に関しては、少なくとも定型約款が使われる場合について、このような原則を定めることについては、特に異論はなかったのではないかと見ました。もちろん定型約款に限定するのではなく、さらに広げる。その場合にもどこまで広げるかという点については、なお御意見が出ていたところではありますけれども、その点についてはさらに検討を要する部分ではないかと思います。

はい、古閑委員。

○古閑委員 先ほど明確に言えていなかったかもしれないですけれども、私が言いたかったのは、条項使用者不利の原則について、私が先ほど申し上げたような事例で不安が残るので、現段階では賛成できないという趣旨であります。

○山本(敬)座長 さらに続きを聞いていただければというところなのですが、定型約款に限定するか、あるいはプラスアルファにするかはともかくとして、この条項使用者不利の原則に当たるものを書こうとしたときに課題になるのが、先ほどから議論が出ていましたように、「通常の方法により解釈してもなお複数の解釈が可能であるときは」という限定の仕方で適当なのかどうかということです。これについては、必ずしも適当とは言えないのではないか、さらに適当な書き方が考えられないかという御指摘があったところで、その点についての検討が必要であるということはよろしいのではないでしょうか。それが適切に規定されるのであれば、定型約款について定めても別に問題はないだろうという御趣旨だと私は理解したのですけれども。

○古閑委員 不正利用等の場合において、あえて曖昧に書くことがあるという事例で。

○山本(敬)座長 それも、要件としての「通常の方法により解釈しても、なお複数の解釈が可能であるときは」ということによって、どこまで明確にそのような場合が処理できるかということによるのではないでしょうか。どうしても問題が残ってしまうという御趣旨だったのでしょうか。

○古閑委員 済みません、具体的な事例をもとに話をしていないので、余りイメージがわいていないのと、私が指摘した以外にもいろいろな業界さんでそういう懸念がないのかというのを聞いていただいたほうがいいと思います。

○山本(敬)座長 これも、どのような文言をどう定めるかということ、ないしはそれによって、実際、どのようにカバーされるのかということを見きわめる必要があるという御指摘なのではないかと受けとめました。

では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 古閑委員の御指摘は、前々からそういう趣旨の御指摘をいただいていると思います。そこは当然検討すべきだと思います。

ただ、座長と古閑委員のやりとりをお聞きしていまして、古閑委員の懸念としては、要するに事業者がサービスとして何かやっているというときは、ただでやってあげているのだから、解釈の文言というのをあえてぼかした表現にしていて、それに当てはまるときにはサービスを中断することがあるのですよというところまで一律に原則が適用されると、ものすごく困るということを主張されたいのかなという気がしたわけですけれども、それに対して座長としては、それはそういう場面での条項だということを前提に解釈されてしまうのではないか。だとすると、それはある程度抽象的に文言を定めたとしても、だからといって、直ちに消費者有利の解釈を適用する場面にはならないのではないかという御指摘であったのではないかと思いました。

○山本(敬)座長 言葉足らずのところを補足していただいて、どうもありがとうございました。

では、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 今の部分は、古閑委員が最初におっしゃったように、4-4のところで議論したほうがクリアになると思います。というのは、意図的に曖昧にして、事業者側に裁量の余地を与えるような条項をあえて置きたいという趣旨であれば、その趣旨は明確です。そうなると、そういう内容の契約文言の解釈権限を事業者のみに与える条項というのがいいのですかという、次の問題になると思います。

○山本(敬)座長 そのような問題になるケースもあるだろうと思いますけれども、必ずしも解釈権限を与えている条項ではない場合もあり得るのではないかと思います。もちろん、重なる側面があるという御指摘は、そのとおりではないかと思います。

河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 今、古閑委員が「不正利用」という例を出されたのでわかったのですけれども、つまり、事業者の側では、それが不正利用に当たるかどうかについてフリーハンドを持ちたいという場面があるのではないかと思うのです。どんな形でそれが問題が起きてくるかわからないから。しかし、逆に言うと、その不正利用の幅というのが非常に広くなると、明確に書いていない以上はアウトになるという場合に困るのではないか。これは、松本理事長がおっしゃったように、恐らく判定権に関しての幅をどういうふうに考えるかというところで処理しないといけない問題で、必ず起きると思います。

○山本(敬)座長 わかりました。条項そのものが明確かどうかという問題と、それとともに、その条項の解釈権限が事業者に与えられるということの当否が2つ重なって問題になるようなケースがあるという御指摘だったように思います。そうしますと、今の点を留保してということなのかもしれませんが、「3.条項使用者不利の原則」に関しては、定型約款に関して認めてもよいのではないかという意見は多数あったけれども、なお懸念が残るという御指摘もあったと改めたほうがよいのかもしれません。しかし、その上で、「通常の方法により解釈してもなお複数の解釈が可能であるときは」という指定の仕方で本当に大丈夫かという御指摘があったところで、これはなお検討を要するのではないかと思います。

ただ、私が余り言うべきことではないのかもしれませんけれども、先ほど少し示唆しましたように、民法に解釈に関する規定があれば、それによるということが比較的明らかですけれども、改正案においても、それがありませんので、何らかのことを書かざるを得ないとなったときに、まず考えられるものとして「通常の方法により」という書き方が出てきたと思います。これがもし本当に適当でないということであれば、他にどのような書き方をするかですが、「合理的に解釈を尽くしても」とか「当事者の企図する目的」云々ということを仮に書くとしますと、民法に書いていないけれども、通常の解釈の方法を消費者契約法で特定するという問題が出てきます。もちろん、それがいけないというわけではありませんけれども、より一層慎重な検討が求められることになる。そのはざまで、しかし適切な方向性を見出していく必要があるというように問題状況を御理解いただければと思います。

既に3時15分を回りまして、どうしようかと思うところはありますけれども、大変恐縮ですが、きっかり5分間の休憩をとらせていただいて、続けたいと思います。

(休憩)

≪4.不当条項の類型の追加≫

○山本(敬)座長 それでは、再開したいと思います。

今後の議事の進め方について御提案をさせていただきたいと思います。本日は、まだ議事がたくさん残っているわけですけれども、残りますと来週金曜日の予備日を使うことにならざるを得ません。その次の週に取りまとめに向けた審議をする以上、これはやむを得ないことだと思います。しかし、可能な限り、それを避けることができればという思いを多くの方が共有されているだろうと思います。

御提案ですけれども、本来4時に終わるところですが、幾ら長くても4時45分を超えない。早く終われるように努力したいと思いますが、幾ら長くても限度がありますので、4時45分は超えない。それまでに審議が終われば、もちろんそれでよいということになりますけれども、そこでどうしても積み残すようであれば予備日を考えざるを得ません。そのときには、4時45分にもう一度御相談をさせていただくということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、議事を続けたいと思います。「4.不当条項の類型の追加」についての検討を行います。消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁消費者制度課担当者 「4.不当条項の類型の追加」につきまして、私のほうから御説明申し上げます。4-1から4-5までまとめて御説明いたします。ここでは、第11回で取り上げた4つの類型と、第12回で取り上げたうちのいわゆるサルベージ条項の合計5つの類型を取り上げています。

まず、1つ目は、「4-1.消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項」になります。これは、さらにマル1とマル2の2つに分かれておりまして、1つ目の消費者の解除権を放棄させる条項は、「一切解除できません」というような条項でして、解除権を奪ってしまうようなものを想定しています。2つ目は、消費者の解除権を制限する条項でして、例えば解除が認められる場合を限定するとか、期間や方法について制限するといったものを想定しています。

31ページから32ページにかけて前回の議論の概要を紹介しております。32ページの「意見の概要」の(ア)です。マル1の解除権放棄の条項に関しましては、第11回では、例外なく無効とする規定を設けるという提案をしていたところです。こちらにつきましては、事業者に義務違反があった場合の解除と任意解除というものを区別して考えるべきではないかという御意見もあったところですけれども、規定を設けるという意味ではあまり異論は見られなかったところかなと理解しています。

次に、(イ)のマル2の解除権制限条項につきましては、その制限の方法等に関しましてはさまざまなものがあり、そのような制限を設ける理由も多種多様であるというところも踏まえますと、これを一律に無効と考えることは難しいと思われますので、幾つかの要素を挙げた上で、どのような場合に無効とすべきかを検討しましょうという提案を前回しておりました。第11回の議論の中でも、一律に無効とすべきということではないという点については意見が一致していたと思います。その上で、どのような場合に無効とするかを規定するという方向で話が進んでいたかと思うのですけれども、例えば、原則無効としつつ、「解除権を制限することに合理的な理由があり、かつ、その規定が相当な内容である場合」には、例外的に有効とするという案が示されていたところかと思います。

(ウ)は、マル1、マル2全体にかかわる意見だと思うのですけれども、法律の明文で認められた解除権だけではなくて、例えば事情変更に伴う解除権などのように、明文の規定があるわけではないけれども、解釈上認められているような解除権についても対象に含めてはどうかという御意見があったかと思います。

33ページの「(2)考え方」のところから、第11回の議論を踏まえてどう考えるかです。

まず、解除権放棄条項に関しましては、11回目の議論を踏まえますと、債務不履行があった場合の解除権と任意解除権というのを区別して検討する必要があるのではないかという御意見があったかと思います。

債務不履行に基づく解除権に関しましては、これは事業者に債務不履行があった場合の消費者の救済手段だと思いますので、こういったものを奪うということになると、ある程度不当性は明らかだと考えることができるのではないかと思います。

他方、任意解除権につきましては、債務不履行解除と区別して、こちらについては損害賠償の予定の問題として解決すればよいのではないかという御意見もあったところかと思います。他方、任意解除権も法律が認めている解除権である以上、これを一方的に奪って消費者を当該契約に拘束し続けることに関しては、合理性を見出せるかどうかというと、難しいのではないかという考え方もあり得ると思います。

また、例えば委任に関しては、民法651条1項は、当事者がいつでも解除できると定めているわけですけれども、2項を見ると、やむを得ない事由があった場合を除いて、相手にとって不利な時期に解除した場合には損害賠償しなければいけないと定められている。そうすると、当該条項がなかった場合のデフォルトルールとしては、委任契約については、相手に生じた損害を賠償するのであればいつでも解除できるということになると思うのですけれども、この任意解除権を認めないとなりますと、ずっとその契約に拘束し続けることになる。サービス契約などでは、サービスをずっと受けられるけれども、対価もずっと支払わなければいけない。当事者にとって、そのサービスが不要となっているのであれば、対価ばかりがずっと発生していくということですので、そうするとデフォルトルールと比べたときに消費者にとって不当に不利益と言えるのではないかという考え方もあり得ると思います。

そうすると、債務不履行解除と任意解除権を区別せずに、解除権を一律に奪ってしまうという条項につきましては、類型的に消費者の利益を一方的に害すると考えることもできると思いますので、例外なく無効とする規定を設けることを案として提示しています。

(イ)は、マル1及びマル2の両方にかかわる問題であると思うのですけれども、法律の明文上認められている解除権と、解釈上認められている解除権というものについて区別するかどうかという話です。法律の明文で認められたものであっても、解釈上のものであっても、解除権を放棄させる条項の不当性が変わらないのだと考えるのであれば、両方を対象に含めるということも考えられると思います。

また、事情変更のように例外的なものでなくても、例えば学納金の返還請求の事案で、最高裁は大学の在学契約というのは無名契約だと言った上で、学生に任意解除権が認められると判示しているところがありますので、そういったものも不文の解釈上の解除権というところに含まれてくるのかなと思います。そういったものを含めることがいいのか悪いのかというところを御議論いただければと思います。

他方で、ここでは先ほど申し上げたとおり、例外なく無効とするという規定を設けてはどうかという提案をしているところですので、その対象というものは明確に定めたほうがいいのではないかという考え方もあり得るのだと思います。そう考えるとすると、解釈上の解除権というのは明文で定められているわけではありませんので、こういったものが含まれてくるとなると、対象が不明確だと考える余地もあると思います。そう考えると、少なくとも常に無効とする規定を設けるという意味では、明文の解除権に限った上で、こぼれたものに関しては10条で処理することもあり得るだろうと思っています。

以上を踏まえて、A案、B案を提示しております。

次に、「イ 解除権の制限条項」に関しても、当該条項がなければ、本来、何の制限もなく法律の明文上あるいは解釈上、認められるような解除権について、その要件とか行使の方法に制限を加えるものですので、明文の任意規定とか一般法理に委ねた場合と比較しますと、消費者の権利を制限するものだと考えることができると思います。ただ、大量の消費者との大量の契約に対応するための事務処理上の便宜とか、そのほかにもいろいろな理由があると思いますので、そういった理由に基づいて期間や方式に一定の制限を加えたり、解除の事由について一定の制限を加えたりという必要性が認められる場合もあると思います。

そうすると、では、どういった場合に無効とすることができるかという議論になっていくと思いますけれども、考えられる方法としては2つほどあるのかなと思っています。これに限られるものではありませんので、もし御意見があればお出しいただければと思います。

まず、1つ目は(イ)です。解除権を制限する必要性とか、その内容は契約によってさまざまだと思います。こういったものの中から、常に無効であるものを切り出して類型化するというのはあまり現実的ではないと思いますし、そのようなことをしてもあまり実用性のない規定になってしまうのではないかと思います。そうだとすると、さまざまな要素を総合的に考慮した上で、無効となるべき場合を画するような規定を設けられるほうが柔軟な対応ができるのではないかと思います。そして、現行の10条というのはまさにそういう規定なのではないかと思っているところです。

先ほど申し上げましたとおり、解除権の制限条項というものが10条の前段要件に該当するというのは、恐らく間違いないだろうと思います。そうだとすると、あとは後段の要件を満たした場合には、今の10条でも無効になるということですので、その趣旨を明らかにするという意味で、解除権の制限条項のうち、「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」について無効とするということが考えられるのではないかと思います。

こういった規定を設けた場合、解除権の制限条項が無効になる可能性がある条項なのだということを明示することで、ある程度予見可能性を担保するという効果が期待でき、また、実際に無効と判断されるかどうかというところは、今の10条と同じ基準で判断されることになりますので、この意味では今よりも判断枠組みが不明確になるということはないのではないか。そういう意味では、事業者にとっても予測可能性はある程度担保できるのではないかと考えています。

これに対して、(ウ)に記載のとおり、消費者に本来、特段の制限なく認められるはずの解除権というものを一定程度制限する条項は、原則として無効と考えるべきであるという考え方もあり得ると思います。そうだとすると、原則無効とした上で、どういった場合に例外的に有効とするかという話になるわけですけれども、その際には、合理的な必要性とか、その必要性に照らした場合に当該条項が相当な内容かどうかというところが一つの基準となってくるのではないかと思っています。こういったものをそれぞれA案、B案としてお示ししています。

以上が4-1です。

次が42ページ以降の「4-2.事業者に当該条項がなければ認められない解除権・解約権を付与し又は当該条項がない場合に比し事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項」というものですけれども、これは4-1の場合とは反対に事業者に解除権を与える、あるいは事業者の解除権を行使するための要件を緩和するというものになります。

第11回では、解除権の付与とか緩和に関する条項について、これを不当条項として規定すべきだとおっしゃった立場の方からも、常に無効とすべきではなくて、合理的な例外を許容するべきだという御意見があったと思います。それが43ページの「意見の概要」の(ア)に書いてあるところです。

44ページの「(2)考え方」の「ア 方向性」ですけれども、実際、いわゆる暴力団の排除条項のように、法律上定められた解除権ではないものの、社会的な要請にむしろ合致するものもあると思います。また、11回目の議論を踏まえますと、契約の種類や性質によっては、一定の解除権を認める必要がある場合も想定されるのではないかと思います。

そうすると、これを一律に無効にすべきではなくて、一定の場合に限定して無効とするということが考えられるわけですけれども、その方法としましては、先ほどの4-1のマル2の解除権制限条項のところでお話ししたのと同様、一つの考え方としては、10条の枠組みに乗せるものがあり得て、もう一つの枠組みとしては、原則的に無効とした上で、一定の合理的な例外を認めるという方法があり得るのかなと思っています。それをそれぞれA案、B案として45ページに示してあります。

48ページからの4-3は、消費者の一定の作為又は不作為がった場合に消費者の意思表示が擬制されるという条項になります。典型的なものは、事例の4-3-1に挙げているとおり、ウォーターサーバーのレンタルのような事案で、無料お試しキャンペーンというものがあった場合に、一定の行為をしなかった場合にいつの間にか有料のサービスに移行してしまっている、課金されているという事案が考えられると思います。

48ページから49ページにかけて第11回目の議論の概要をお示ししています。第11回で御議論いただいたところを踏まえますと、意思表示の擬制の条項につきましては、これを一律に無効と考えることはできないという点では皆様の御意見は一致していたと思います。また、作為による擬制と不作為による擬制を分けて考えたほうがいいのではないかという御指摘があったかと思います。

そこで、50ページ以降の「(2)考え方」では、作為による意思表示の擬制と不作為による意思表示の擬制を分けて検討しています。作為による意思表示の擬制については、当該作為によって当該意思表示を擬制するということが合理的かどうかという話かと思うのですけれども、その合理性というのは、恐らく当該作為と擬制される意思表示との間の関連性が強いか弱いかといったところとか、その意思表示が擬制されることによって消費者に与える影響の度合いといったものを考慮するのではないかと考えられますので、それがイに書いてあります。

他方、不作為による擬制に関しては、要は当該行為をしないということが、一般的に考えて擬制される意思表示に基づく法律効果の発生を認めていると捉えられるかどうかによって、無効かどうかが判断されることになるのではないかと思います。ただ、不作為による擬制というのは、要するに消費者は何もしていないということですので、それによって一定の法律効果が発生するとみなされるということについては、基本的には慎重に検討すべきという考え方もあり得ると思っています。

ただ、実際にはサービスの提供契約などで、初めの一定期間に限っては消費者が試しに無料で当該サービスを利用できるとされている事例は多いのではないかと思います。また、これが消費者にとって便利な場合もあるのではないかと思います。その場合、例えば有料のサービスに移行しないという選択をする機会が実質的にきっちりと保障されている場合とか、あとはどのような場合に有料サービスに移行するかというところが消費者にちゃんと説明されているという場合であれば、一定の行為をしなかったことによって有料サービスへの移行を承諾する意思表示を擬制したとしても、そこまで不当とは言えないのではないかと考えられると思います。

以上を踏まえると、結局は作為による意思表示の擬制に関しても、不作為による意思表示の擬制に関しても、いろいろな事情を総合的に考慮しなければならないのではないかと考えられるところでして、その方法としましては、これまでの2つの類型と同様、10条の枠組みに乗せるという一つの考え方と、原則無効としつつ、合理的な必要性があって、かつ相当な内容である場合には例外的に有効とするという2つの方法があり得るのではないかと思っています。

4-4、53ページ以下です。ここは「契約文言の解釈権限を事業者のみに与える条項、又は、法律若しくは契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性若しくはその権利・義務の内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項」でして、これも2つに分かれております。

1つ目は解釈権限を付与するというもので、これは契約書にある文言について、その解釈をする権限を事業者だけに与えるというものでして、例えば、この契約書の文言について疑義が生じた場合には、当社の解釈に従っていただきますというようなものが考えられるかと思います。

2つ目は、権利義務の発生要件該当性や内容を決定あるいは認定する、判定するといった権限を事業者のみに与えるものでして、例えば、こういう場合に当たると当社が認めたときにはこういうお支払いをしますとか、過失があると当社が認めたときにはこういうお支払いをしますといったものを想定しているものです。

11回目の議論の概要について、53ページから54ページにかけて御紹介しておりますけれども、この解釈権を付与するというものにつきましては、契約というのは双方の合意した内容で成立するものであるにもかかわらず、一旦成立した契約の内容を事業者が自由に解釈できるということになりますと、契約したときの当事者の意思にかかわらず、事後的に事業者が一方的に契約の内容を決められるということにもなりかねませんので、それなりに不当性は高いのではないかということで、前回はこれを常に無効とすべきではないかとお示ししていたところです。こちらにつきましては、それほど異論は見られなかったのかなと考えておりまして、今回も引き続き常に無効とするという考え方をお示ししています。

他方で、マル2の決定権限を付与する条項に関しましては、これは常に無効とすべきではなくて、ケース・バイ・ケースではないかという意見も見られたかと思います。実際、55ページの「イ マル2決定権限付与条項」ですけれども、事業者が、自分が義務を負うかどうかといったこと、あるいはその内容を決められるということになりますと、マル1と同様に不当だと考えられるかもしれない。

ただ、例えば、ここに挙げているように、インターネット上のサービスの提供に関して、セキュリティ上の問題があるおそれがあるという場合に、迅速な対応が必要というときに、事業者が一定の事情があると認めたときには、一時的なアカウントの利用を停止するとか退会してもらうという条項を設けておく必要があるという御指摘もありまして、そういった要請がある場合もあるのだろうと考えられるところです。実際には、マル2のような条項に関しては、適切な運用がされている限り、問題はあまり生じないのではないかと思います。実際、問題が生じるのは、その規定を事業者が恣意的に用いたような場合などではないかと思います。

そうすると、そのような恣意的な利用をするおそれがあるということをもって条項を無効にするというのも考えられるところですし、実際にそういったことで10条とかを適用した場合に無効になることもあり得ると思うのですけれども、必要性があって用いられているものも多くあるということからすると、当該条項自体を無効にするということではなくて、56ページの(イ)に書いてあるとおり、運用上の問題として、実際に事業者がそのような条項を恣意的に用いた場合に、信義則とか権利濫用といった形で、そのような使い方を認めないという形にするとか、あるいは、消費者がそういった使い方をされたことによって損害をこうむった場合に、不法行為ということで損害賠償を請求して救済するというように、運用を捉えた救済をするほうが実態に即しているのではないかとも考えられるところだと思います。

ただ、先ほど申し上げたとおり、条項が無効になることがないというわけではなくて、法第10条の解釈・適用によって無効になる場合はあると思っていますので、それも含めた上で、法10条の解釈・適用によるほか、個別の事案で実際に当該条項が不当に利用された場合に、信義則、権利濫用、不法行為等の適用による救済に委ねるのが適切とも考えられますけれども、このあたりについては委員の皆さんの御意見を伺いたいと思っているところです。

最後が59ページ以下のサルベージ条項になります。このサルベージ条項については、前回申し上げたとおり、本来であればその条項が全部無効になってしまうにもかかわらず、その内容に「法律で許容される範囲において」という文言を加えるだけで、消費者に対して、もしこれが無効だというのであれば、どこまでが法律上許容されないのかということを示すように迫るような効果を持つとか、仮にそれを示すことができない消費者との関係では、結果的に本来全部無効であるはずの条項が押しつけられてしまう。あと、最終的にどこまで無効なのかということは裁判所が判断しないとわからないということになりますので、それまで本来全部無効であるはずの条項がまかり通ることになって、脱法的な効果を有することになってしまう。また、「法律で許容される範囲において」という文言を加えるだけでリスクを回避できるということになれば、適切な内容の条項を作成するという事業者のインセンティブが働かないのではないかといった問題点が指摘されたところだと思います。

ただ、60ページの「意見の概要」に書いておりますとおり、事業者のほうから、これは実務的な必要性もあって設けているものだという御指摘もあったかと思います。また、実際にこのサルベージ条項があるために困っている事例が示されていないのではないかという御指摘もあったかと思います。

そこで、61ページですけれども、考え方としては先ほどのような問題点があるというところと、事業者が指摘されるような実務上の必要性との間でどうバランスをとっていくかというところだと思います。そういったものも含めて、実際に問題になった実例等をさらに調査した上で検討するということを考えておりまして、この点についても御意見をいただければと思っているところです。

仮に規定を設けるとした場合の文言については、62ページの脚注に書いているところで、こういったものについても御意見をいただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。相互に関連はしているのですが、進め方については、まず4-1を議論していただいて、それを踏まえて4-2、4-3、4-4、4-5と検討を進めていきたいと思います。

それでは、4-1につきまして御意見、御質問のある方は御発言をお願いします。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。資料2の4ページ以下を引用しながら意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、意見としては、マル1につきましては、A案に賛成いたします。マル2につきましては、B案に賛成いたします。

以下、理由でございます。

消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させる条項については、有効とすべき合理的な場面を想定しがたいと思います。任意解除権の場合も、損害賠償請求による利益調整は当然に排除されない以上、解除権を一切認めないということに合理的理由は見出しがたいと思います。したがって、かかる契約条項はおよそ無効と規定することが相当と考えます。

また、解釈上一般的に肯定されている解除権を明文化されている解除権と区別する合理的理由も見出しがたいと思いますので、A案に賛成いたします。

次に、消費者の解除権・解約権を制限する条項でございますけれども、かかる条項につきましては、不当条項リストに付加すべき契約類型と考えますが、多様なものがあることを踏まえ、個々に契約条項の有効性を判断する考え方に賛成いたします。

具体的なあり方として、A案は、不当条項の具体化・明確化という点で一歩前進であるとは思います。しかしながら、不当条項審査のあり方としては、現在の10条の場合と大差ないように思います。当該条項の類型的な不当条項性を前提とする以上、原則として無効とした上で、事業者がみずからの事業内容との関係での必要性・相当性を明らかにした場合には有効とするという考え方、B案に賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 続いて、阿部委員。

○阿部委員 まず、マル1のほうであります。A案・B案で全ての条項を無効とされますと、保険契約の終身年金保険みたいに、必要性があって、その解除権を認めていないものが成り立たなくなる。これは、法制審議会保険法部会でも確認されておりますが、こういうものを一切だめにしてしまうのかということで疑問がある。 マル2ですが、まず、B案は反対いたします。「合理的な理由」とか「内容が相当である」という非常にグレーな定義でございまして、判断に迷う、曖昧になるということから反対です。A案であればと思いますが、逆にA案のような書きぶりであれば、今の10条と何かほかに改めて規定を置く必要があるのかなという気もいたします。A案は別に反対しませんけれども、何か意味があるのかなという気もします。

以上です。

○山本(敬)座長 では、山本和彦委員。

○山本(和)委員 中座しなければいけないものですから。

マル2のA案について、今の阿部委員と全く同じ印象を受けます。これは、現在の消費者契約法10条からしてみれば自明のことで、恐らく法制上、書けないのではないかというのが私の疑問です。4-2とか4-3のA案は、例えば事業者に解除権を付与する条項というのが消費者の権利を制限する、あるいは義務を加重する条項かどうかということについて疑問があり得るとすれば、その確認というのはあり得るだろうと思いますが、この解除権を制限する条項が消費者の権利を制限する条項であることは、全く自明としか考えられない。

このA案の法制的な意味は、結局、解除権は消費者契約法10条に言う権利であるということを書くということだと思うのですけれども、私がふだん住んでいる世界では、そういうことは条文には多分書けないと思いますので、結局、このA案というのは規定を設けないということに最終的にはならざるを得ないのではないかと思っておりまして、こういう規定の趣旨を設けるという考え方は、私にはちょっと理解できないということです。

○山本(敬)座長 わかりました。

それでは、ほかに。丸山委員。

○丸山委員 確認させていただきたいのですけれども、放棄と制限の区別に関してです。例えば、1カ月単位の月謝制の教室で翌月末にだけ解約を認めているとか、特典・割引と引きかえに3カ月とか1年の拘束があるといったサービス契約を念頭に置いていた場合に、任意解除権というものが法定されているので、解除権が問題となるというのはよいのですが、1カ月、3カ月、1年は解除権が放棄されていると捉えるのか、それともこれは制限されていると捉えるのか、こういった事例というのは放棄、制限のどちらで考えればよろしいのでしょうか。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから。

○消費者庁消費者制度課担当者 今、丸山先生のほうから御指摘のあったような事例につきましては、期間について制限しているものと考えておりますので、マル2に当たるのではないかと考えています。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに。大澤委員。

○大澤委員 4-1ですけれども、マル1に関しては、A案に賛成します。マル2に関しては、B案に賛成します。

理由ですけれども、マル1のB案がなぜ賛成できないかということですけれども、これは先ほど消費者庁の方からの説明の中でも出ていましたが、恐らくこういう解除権を放棄させる条項で問題になる場面というのは、今の丸山委員の御発言の中にもありましたけれども、多くの場合は継続的なサービス契約ではないかと思っています。そういう継続的なサービス契約の場合について、もちろん民法の準委任に当たると言えればいいのですが、実際には消費者庁の説明にもあったように無名契約と言われているとか、あるいは判決などを見ていると準委任類似の契約であるという言い方をされていることもあって、準委任類似の契約なので任意解除が認められるといった言い方をしている判決が比較的多いのではないかと思っています。

にもかかわらずB案のような規定を設けてしまうと、今のように無名契約と判断される場合とか、準委任類似の場合という言い方をしているときに、これは民法その他の法律も規定がないということになってしまうことになると思いますので、その点でもB案は支持できませんので、A案を支持します。

マル2に関しては、私はB案を支持します。理由としては、先ほど山本和彦委員の発言を聞いて、ますますB案を支持しようと考えたのですが、消費者の解除権を制限しているというのは、しかも当該条項がなければ認められるはずのものを制限しているというのは、基本的に消費者の権利を何らかの形で不利益にしているものだと言っていると思うのですが、不利益にしていることに結果的にはなっているのだけれども、どうしても解除権を制限する必要性があるということは、これは事業者の側で示していただかないと、消費者の側でそれを判断することはできないということですので、この規定の書きぶりからいって、B案のほうを支持します。

A案のほうですと、単純に今の10条のものを具体化したというだけになってしまって、規定がないよりはいいのかもしれないですが、私が長々と前から主張していた不当条項リストの充実化という趣旨なども踏まえてB案を支持します。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、沖野委員。

○沖野委員 ありがとうございます。

阿部委員の御指摘と丸山委員の御指摘にかかわるところですけれども、少し気になっておりますのが、1つは任意解除権の話です。保険法27条、54条、83条に保険契約者の任意解除権が規定されており、一方で、これらが片面的強行規定からいずれも外されています。保険法の制定の際には、商品として法律で認められている任意解除権を制限するような商品というのもあり得るということで、片面的強行規定から外されたという経緯があります。一問一答を見ますと、記載の仕方は任意解除権を制限するのが合理的な商品もあるとされ、かつ、任意解除権の制限というのは、保険法の任意規定と異なるということになりますので、消費者契約法10条のスクリーニングはかかるという説明になっております。

このような商品の設計がどういうものなのかということでして、その解説をそのまま読みますと、あくまで制限している類型のものなので、その制限が合理的な商品というのはあるというものであって、放棄類型ではないという解釈のようにも思われるのですけれども、そういうふうに考えられるということで問題がないかということです。

もう一つは、これも消費者契約でそれほどあるのかということは気にはなりますけれども、担保目的の取立委任のような場合でして、恩給担保について不解除特約の部分が効力を否定されるとされていますが、恩給担保でないものについて、そういったものを考えたときに、不解除特約というものがあくまで担保目的に必要な範囲で、任意解除権を制限しているものなのだということであれば、合理的な範囲では認められることになるのですけれども、放棄しているものだということになりますと、無効でありいつでも解除ができるとなって担保としての実効性がない取り決めということにもなりかねません。そうなるのかどうか、それでよいとも言えそうですが。

ともあれ、放棄か制限かいずれに当たるのかというのは結構クリティカルになってくるのかと思われまして、合理的なものは基本的には制限類型ではないかと考えられることで問題ないか。であれば、任意解除権も含めてでいいと思うのですけれども、念のため確認しておく必要はあるのかと思っております。

ほかの点については、マル1のA案かB案かというのは、民法その他の法律の規定に基づくものとそうでないものとで、違う扱いにする理由はないということになりますので、万が一、B案になったとしても、そうでないものは当然10条違反だろうということになると思います。

マル2のA案、B案につきましては、山本和彦委員や大澤委員あるいは阿部委員がおっしゃったように、A案というのは余り意味がないというか、この部分は10条の解釈として何の支障もなく導かれる帰結であろうと思われますので、規定を置く意義としては、このような条項は合理的な理由がない限りは問題であるという評価を示すという点に意義があることからすると、B案のほうが筋は通っているのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 今の4-1のマル1のA案かB案かということにつきましては、もうほとんどおっしゃっていただいて、繰り返しになりますけれども、A案を支持します。この問題で、34ページの解除権放棄条項の対象に解釈上の解除権まで認めると、明確性が損なわれるという記述もあるわけでありますけれども、具体的に解除権が解釈上認められる場合というのは、そんなにたくさんなくて、先ほど挙げていらした事情変更の原則が問題となるような事例とか、継続的契約で消費者側が解除するという場合など、大体それぐらいではないかと思います。

特に、大澤委員も指摘されておりましたけれども、継続的契約で無名契約と評価される場合というのは、その無名契約の中の準委任的な性格を捉えて、民法651条を適用するということも可能性としてはあるのですけれども、無名契約の性質から言うと、そこの解除を651条で説明するというのは、1つ論理の飛躍があると思います。そういうことを考えると、数は多くないけれども、法律上明記されていなくても、解除権が消費者に認められる場合がある。そういう観点から言いますと、それを奪う条項というのは不当条項と考えるべきだと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員。

○古閑委員 4-1については、いずれも反対します。今回、参考資料4で出てきたものなどを拝見していても、非常に懸念が多いところかなと思っていまして、そもそもさっきも丸山委員から質問がありましたけれども、放棄と制限というのが現場でどっちがどうと、なかなか判断がつかないのではないかというのもありますし、判断がつかない中、参考資料4を見ていますと、生鮮食品を注文しておきながら解除されてしまうと困るとか、人数限定とかで冬期講習とかをやっている場合に、ほかの生徒さんをお断りしている可能性とかもあると思うのですけれども、申し込んでいた方が途中でキャンセルするとか。

今、いろいろな事情があってキャンセルを認めないということを、結構普通に入れている事例が多いと思いますので、そういったことを考えると、これを不当条項の類型として追加するというのは、事業者としてはなかなか厳しいのではないかと考えるところです。

以上です。

○山本(敬)座長 今の御趣旨は、マル1だけでなくて、マル2のAもBもどちらも問題があるという御趣旨だったのでしょうか。

○古閑委員 Aは、10条もありますし、要らないと思いますし、Bのほうは、これはグレーリストと一般的に呼んでいるものと同じ意味だと思いますので、予見可能性とかもなかなか難しくなってくるので、B案についても反対です。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 確認ですが、今日の参考資料4の24ページのマル1の進学塾、冬期講習受講契約という話を今、出されていたのか、これそのものかどうかわかりませんが、こういう事例もある。そのときに解除を制限する必要があるというのは、それはそのとおりだと思います。

ただ、確認しておきたいのは、これは言うまでもないことだと思うのですけれども、今回、4-1で提案されていることというのは、ここで規定を設けないとしても、消費者契約法10条で無効になる要素は十分ありますし、この進学塾に関してはかなり早い段階で、平成15年だったと思いますけれども、消費者契約法10条に基づいて、これは解除権を制限する条項なので10条違反だとはっきり言った判決があります。

ですので、急に実務的にこの条項を明文化することで、今まで有効だったものが全部こうなるということではなくて、恐らく今までも消費者契約法10条は一般条項を使って無効にされていた、ないしはされる可能性があったものを具体化しているという趣旨だと考えておりますので、そこは理解していただきたいなと思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

井田委員。

○井田委員 意見と質問1つです。

マル1に関しては、A案が妥当であると思っております。それは、今までほかの委員の皆さんがおっしゃったことがそのまま理由になると思いますので、つけ加えることはございません。

マル2につきましても、考え方ですけれども、消費者の解除権・解約権というのは一般的に認められるものでございまして、これは制限するということになるならば、その制限するほうが合理性を説明するというのが正しいやり方なのではないかと思いますので、私はB案に賛成いたします。

ごめんなさい、質問ですけれども、先ほどから沖野委員からの御指摘もあったのですが、保険契約の話がございました。保険商品の中には、解約権を制限するのが合理的な商品もあるのだということで、片面的無効規定からも外れているというお話です。消費者契約法11条2項には、申込みとか承諾の意思表示とか消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別の定めがあるときは、その規定によるという規定があります。今の話だと、片面的強行規定から外れたということをもって、およそそういう条項がある場合に消費者契約法の適用外になるのか、それとも消費者契約法のスクリーニングがかかるのか、ちょっとその辺がわからなかったので、お答えいただければありがたいのですが。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから。

○消費者庁消費者制度課担当者 保険法のほうで、解除を制限する条項の効力に関して何か規定が設けられているということであれば、消費者契約法11条2項によって保険法の規定が適用されると思うのですけれども、保険法上の任意解除権が片面的強行放棄になっていないということをもって、消費者契約法の適用が排除されるということではないと考えています。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

沖野委員。

○沖野委員 今の点、そのとおりだと私も理解しておりますし、立案担当者解説にもそのような形で書かれていたと思います。

それから、古閑委員から御指摘いただいた、阿部委員御提出の参考資料4の24ページですけれども、この中でそれぞれどうなるのかというのを改めて確認する必要があるのだろうと思うのですけれども、先ほどの生鮮食品の売買などの場合に、解除が制限されないと返品できないのは困ると書かれています。24ページの6つ目の丸を古閑委員は御指摘になったのでしょうか。売買の場合には、任意解除権というのが普通認められていないので、可能性としては債務不履行解除じゃないかと思います。

そうすると、商品がおかしかったとか債務不履行があるという場合ですので、そういう場合に逆にそれをそのまま持っておかなきゃいけないというのは非常に問題だと思われます。場面が合っているのかということも気になります。これはとりあえず生の声だということですので、そういうものだと理解しておりますが、今のような懸念も持ちましたものですから、今後、また取りまとめの際に考慮いただければと思います。

○山本(敬)座長 御指摘ありがとうございました。よろしいでしょうか。

4-1については、さまざまな御意見をいただいているところですが、少なくともマル1に関しましても、A案を支持される意見がたくさんあったところですけれども、A案もB案もともに問題があるという御指摘もあったところです。B案であれば、まだ理解できるという御意見もありましたけれども、全体として反対という御意見もありました。ただ、そこで恐らく問題になっているのは、放棄と制限をうまく仕分けることができるのかということだったように思います。そして、反対される理由の多くは、むしろ制限の問題であって、そして制限についてマル2ないしは消費者契約法10条によってカバーされるのであれば、懸念されているような問題は現実には発生しないのではないかという御指摘もあったところです。

その意味では、放棄という場合がどのような場合かであり、それが問題となる場合をで、それをさらにどのように特定できるかということによって、マル1の当否についてさらに検討が進むのではないかと思いました。仮にそのような対象が特定できるのであれば、少なくともB案のように法律の規定に基づくものを放棄させる条項が無効とされるべきであるという点については、かなり多く賛成の御意見があったところですが、なぜ法律の規定にあるものに限定しないといけないのか。その他のものについても同様ではないかという御指摘も多数あったところで、そこをさらにどう考えるかというところではないかと思います。

マル2については、少なくとも消費者契約法10条で無効になり得る場合があるということは、当然の前提になっているのだろうと思います。それは前提とした上で、A案であれば規定する意味がないではないかという御意見があり、積極的にこれを支持される方はなかったように思います。ただ、ここで述べられている内容を否定するような意見もなかったと言うべきだろうと思います。その上で規定するとすればB案のような形ですけれども、これについては慎重に考えるべきだという御意見も多数出ていたところだと思います。

マル2のA案かB案か、ないしはそもそも規定しないかという問題は、これから後も共通して出てきますので、そこでもう一度改めて御意見等があればお出しいただければと思います。

古閑委員。

○古閑委員 済みません、私が今、売買のことまで挙げてしまって、そこは大変失礼いたしました。

準委任に該当するような取引とか、法令に基づく解除権を明確に否定しているわけではなく、キャンセル等ができないと定めているものについて、本当に実害が出ないのかどうかというのは、もう少しヒアリングをお願いできればと思います。

○山本(敬)座長 今のは、マル2、マル1の両方。

○古閑委員 両方です。

○山本(敬)座長 両方についてということですか。

○古閑委員 済みません、マル2ですね。

○山本(敬)座長 マル2についてですね。わかりました。

それでは、重なる問題はありますので、これから後についても御指摘を必要に応じてしていただければと思います。

続きまして、4-2について御意見、御質問等をお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。では、山本健司委員。

○山本(健)委員 4-2につきましては、B案に賛成いたします。

事業者に民法その他の法律の規定に基づかない解除権・解約権を付与する契約条項や解除権・解約権の要件を緩和する契約条項は、不当条項リストに付加すべき契約類型と考えます。しかしながら、多様なものがあり得ることから、個々に契約条項の有効性を判断する考え方に賛成いたします。

具体的なあり方としては、先ほどの4-1のマル2と同じ理由でB案に賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。阿部委員。

○阿部委員 B案につきましては、先ほどの4-1と同じような理由で反対いたします。

A案は、さっきに比べると書く意味があるのかなという気はいたしますし、特段反対はいたしません。

○山本(敬)座長 先ほどと違うというのは、どのあたりにあるのでしょうか。

○阿部委員 書き方であります。「認められない解除権・解約権を付与し又は当該条項がない場合に比し事業者の解除権・解約権の要件を緩和する」という部分がはっきりと読み取れるということであれば、意味はあるのかなと思います。10条と完全に重複して、意味がないとはここは申しません。

○山本(敬)座長 わかりました。

それでは、ほかに御意見等があれば、あるいは先ほどの補足という形になっても結構ですが、いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 B案を支持します。理由はさっき言ったとおりです。同じ理由になりますので、余り繰り返しませんが、原則無効なのだけれども、合理的な理由がある場合には無効というのは覆るという形で規定されているところがほとんどですし、常に無効にすることは難しいと考えていますので、B案の書きぶりでいいと思いますが、ここから先は個人的な希望ですけれども、私はB案にしないと、はっきり言うと意味がないと思っていますが、では、B案にどうしても賛成できないということで、これ自体がリストから落ちることは避けていただきたいと思っています。

ただでさえ、本日、この資料の一番最後のページに、私が第5回報告のときに出したリストを再掲させていただいていますが、申し上げませんが、ここに載っているのに今回、審議の対象になっていないものはあります。そういうものがいつの間にか落とされている。理由も追求しませんが、落とされている中で、さらにこのB案がどうしても使えないということで、この類型自体が落ちてしまうことは避けたいと思っています。その意味では非常に消極的ですが、最悪A案でもやむを得ないかなと思っています。類型を示すだけでもましだと思っていますので、個人的にはB案を強く支持しますが、類型から落ちてしまうぐらいなら、まだA案のほうがましだと考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

余り私が申し上げるべきではないのかもしれませんが、山本和彦委員から先ほどA案については法制的には考えられないのではないかという指摘がありました。もちろんプロの感覚では、そのような指摘が出てくるのは理解できるところですが、仮にA案のような考え方が採用された場合に、規定の上にどのような形で書かれるかということを想像してみますと、おそらく、現在の10条の中に「以下に挙げるような規定のほか」、ないしは以下のように規定を挙げた上で、その他、同様に10条所定の要件を満たす場合には、そのような条項は無効とするという書き方がされるのではないかと思います。つまり、前段要件に当たるものの例示として、その下にこれらの条項が書かれるという形になるのではないかと思います。つまり、現行法をもとにしますと、「その他公の秩序に関しない規定に比べて」という要件の書き方がされるのではないかと思います。その意味では、法制的におよそあり得ないかと言われると、異論の余地もあるのではないかと思います。

ただ、そうは言いましても、現在の10条を適用するのと変わるかと言われますと、変わらないという点では御指摘のとおりと思います。余計なことを言ったかもしれませんけれども、以上、補足だけさせていただきます。

では、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 いや、全然余計なことではなくて、大事なことだと思います。一般条項として書いている10条というものが、本来は具体的な個別の禁止条項のいわば一般的・包括的な要件になっているはずで、今でも実は8条、9条あたりに対して10条がかぶっていると私も思っております。その意味では、決して余分なことではなくて、具体化して明確化できるのであれば、できるだけそのようなリストを明確化していくべきだという要請はあるということであります。

もう一つ、今回の4-2と4-1ですけれども、同じようなものを逆の方向で書いているもので、一方の権利と他方の権利、それぞれのバランスがとれるような形で条項というものは公正さを保つ。武器の対等の原則というものがありますけれども、その意味では4-1についての規定ぶりと、4-2についての規定ぶりというのはちょうど対照型になって、ワンセットでここに入ってくるのがいいのではないかということであります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。その意味でも、先ほど4-1について御指摘いただいたことが、反対側から4-2についても当てはまるということだと思います。

それでは、4-3に移らせていただいてよろしいでしょうか。4-3につきまして御意見、御質問等がありましたらお出しいただければと思います。山本健司委員。

○山本(健)委員 B案に賛成いたします。理由は4-1のマル2と同じでございます。

以上です。

○山本(敬)座長 では、ほかに御意見は。阿部委員。

○阿部委員 B案に反対。理由は先ほどと同じです。A案であれば反対はしません。

○山本(敬)座長 では、河野委員。

○河野委員 4-3に関しましては、私の身近で差止事例になったものがございまして、中学受験のための家庭教師の派遣契約ですけれども、そもそも契約申込書には契約期間の記載があって、契約期間の定めがあったのですね。ところが、契約期間が定められている場合でも、会員から退会の連絡がない場合は契約を自動更新することができます。しかもそれは書面で、最終指導月の前月末日までにその旨を通知するという条項がございまして、これは差止事案になっています。こういうことも考えますと、4-3に関しましても、私自身はぜひ不当条項の類型にしっかり入れていただいて、どういう形にするかというと、先ほどから議論になっておりますけれども、私はB案を支持したいと思います。

A案であれば、これまでの10条と同様に、消費者側が立証責任を負わなければいけないのですけれども、B案のような形にしていただければ、原則無効であって、事業者の方が合理性を証明していただくことによって成り立つとなりますので、この4-3に関しましてはB案に賛成しますし、先ほどから議論になっております4-1、4-2に関しても、B案という検討をぜひしていただきたいと思います。

先ほど大澤委員もおっしゃっていましたけれども、今回、不当条項の類型の追加に関して、以前より大澤委員からかなりたくさんこんな場合があるのではないかと挙げていただいたものは、消費者側からしますと、全てについてこの場で検討していただいて、ぜひ入れていただきたいというのが要望ですけれども、少なくとも今回、検討の俎上に上っているものに関して言うと、消費者契約法改正に当たっては、私たち消費者にもよりわかりやすい形での改正をお願いします。10条でぼわっとしていて、そのときの解釈によるということよりも、踏み込んで、既に問題が健在化しているものに関しては、ぜひここでしっかりと前向きに検討していただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員。

○古閑委員 まず、B案に関しましては、さきほど4-2でも言い損ねましたけれども、グレーリストと同じ意味を持っているものだと思いますので、反対いたします。

4-3については、こういうやり方によって大量の手続をいかに効率的に処理するかという形で使われているものだと思いますので、実態をよくヒアリングしていただいて、仮にこれがだめになるとどういうことが起きるのかということを踏まえたうえで検討することが必要だと思っています。そこが効率的にいかなくなると、どうしても消費者向けの価格に反映されたりということになって、消費者にも影響が出てくるところだと思います。

4-2、4-3あたりについても、事業者の意見がこの参考資料4で大分出てきているところでもございます。どこまで精緻な意見があるのかというのはありますけれども、このあたりも実態をよく調査していただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。一律に無効にするという提案ではないということは、確認しておいていただければと思います。

丸山委員。

○丸山委員 質問になりますが、意思表示の擬制に関するような規定については、53ページに諸外国の規定というのもありますように、ただし書きのつくり方はいろいろあり得ると思います。仮に、意思表示を擬制するような条項が置かれているのだけれども、明確な告知があったり、消費者側のほうで擬制が起きないような手段を十分にとれるような措置というのが、この条項ではなくて、別の条項とか別の手段で確保されているという場合に、B案の「当該条項を設ける合理的な理由」とか「当該条項の内容」というところで、そういった条項外の事情なども考慮され得るということでよいのでしょうか。

○山本(敬)座長 消費者庁のほうからお願いします。

○消費者庁消費者制度課担当者 B案の文言の中に「当該条項」と入っていることで、その条項の内容しか見ないのではないかということは、御懸念としては理解できるのですけれども、私どもとしては、この案での合理性とか相当性というものは契約全体を見て判断するものだと考えておりましたので、文言は練る必要があると思いますけれども、考え方としては、ほかの条項を考慮することを排除するものではないと考えています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 今、古閑委員がB案はグレーリストだからだめだとおっしゃったのですけれども、A案も実質的にはグレーリストです。基本的には、評価余地の含まれた概念が入って条項が無効になってしまうという場面は、一般的にはブラックではなくてグレーだと私は理解しております。その意味で、AもBもグレーはグレーです。

その前提で伺いたいのですが、A案とB案の違いが私は余りよくわからない。先ほど来、阿部委員がAのほうはずっとあり得るという線で来られていたので、もしよかったら伺いたいのですが、これについて、その違いをどこに見出しておられるのか。立証責任のところに見出しておられるのでしょうか。

○阿部委員 そのとおりです。

○消費者委員会河上委員長 そうだとすると、立証責任の所在いかんをどうするかということを前提にして、この下に、合理的な理由があり、かつ、それに照らして内容が相当である場合、これをどちらが立証するかということについての書きぶりいかんでは、Bの表現でも別に構わない。信義則という言葉を使わなくてもよいということでよろしいですか。

○阿部委員 はっきりと立証責任を一方的に事業者に課すようなことがなければ、あり得ると思います。

○消費者委員会河上委員長 どうもありがとうございました。

○山本(敬)座長 続きまして、4-4の検討に移りたいと思います。4-4について、御意見、御質問等ありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 マル1につきましては、これはこのまま賛成いたします。

マル2につきましては、資料を拝見していろいろ考えてみたのですが、以下の2点について、私はいまだによくわからないところがあります。

まず、1つですけれども、端的に言うと、解釈権限については無効とするとマル1で示されていて、解釈権限を付与する条項と決定権限を付与する条項と、実質的には同じだと思っているのですが、決定権限については区別して、今回、規定を設けるのではなくて、10条とか個別の事案の、例えば信義則とか権利濫用ということは条項の援用に問題があるというところを取り出して言っているのではないかと思いますが、区別していることがなぜ区別できるのか、私はいまだによくわからないところがございます。

今の点にも関連するのが2点目ですが、運用上、問題となることは多いという御説明を、今日、消費者庁の方がおっしゃっていたと思います。つまり、情報の濫用自体は問題ないことが多くて、運用上、問題になることが多いと思いますとおっしゃっていたのですが、それを言い出すと、そういう条項は多分ほかにもあるわけです。つまり、条項自体の不当性はあるかわからないけれども、使いようによっては問題になる場面はほかにもあるわけで、この決定権限付与の条項に関してだけ、そういうふうに強く考えられたのはなぜかということと。

恐らく55ページの「もっとも」以下のところの、こういう条項の場合にはということで例を挙げられて考えていらっしゃるのかと思ったのですが、私自身はこの「もっとも」以下で挙げられている条項というのは、例として適切なのかがよくわからないところがあります。これは私自身の反省でもありますが、義務の内容の決定権限を事業者に付与する条項というのはどういうものを指しているのか、もうちょっと詰めて考える必要があると思いますので、考えてみようと思っています。

ここで挙げられているインターネット上のサービス提供に際してというときに、サービス提供が実際に行われているときに、セキュリティ上の問題があるときに突然やめることがあり得ますよという話だと思うのですが、これと決定権限を付与しているというのが直ちに結びつかないところがあるので、この条項がどういう趣旨なのか、ちょっと教えていただければ。あと、なぜこれが例として挙げられているのかもちょっと気になるところです。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁のほうからお願いします。

○消費者庁消費者制度課担当者 まず、最後におっしゃった、なぜこれを挙げているのかという点に関しては、脚注で古閑委員の提出資料を引かせていただいているのですけれども、どういう場合を想定しているかというと、セキュリティ上問題がある行為に及ぶおそれがあると事業者が認めた場合には、一時的にアカウントの利用を停止しますといったものが考えられるのではないかと思っているということでして、その事業者が認めたときという条項が、この決定権限の付与の条項に当たるのではないかという趣旨です。ちょっとわかりにくかったかもしれません。申しわけありません。

次の、暴力団である蓋然性が高い顧客というのも、暴力団に当たるということの証明はかなり難しいと思うのですけれども、暴力団に当たると事業者が考えた場合とか、事業者が認めた場合に、例えば契約を解除しますといった条項があり得るのではないかということを想定しています。

内容に関して問題はないのだけれども、運用上、問題があるという規定はほかにもあるのではないかという御指摘があったかと思うのですけれども、マル2で想定しているのは、事業者の裁量がすごく大きい条項でして、こういった場合に当たると事業者が認めたときはというようなものを典型的には想定しています。そうすると、そこに本当に当たる場合であれば問題はないのだけれども、その事業者の認定自体が恣意的に行われた場合には問題が生じると。そういった類の条項なのかなと考えております。そうだとすると、恣意的に使われた場合の問題を捉えて対応するほうが現実的なのではないかと考えた次第ですけれども、例えば内容に問題はないのだけれども、使い方次第では問題が生じてくるというものは、どういうものが考えられるのかを教えていただいてもよろしいですか。

○大澤委員 済みません、最後のほうの質問の趣旨はちょっと理解していないのですが、私が援用の場面で頭に浮かんだのは、最高裁の判決で言うと保険契約の無催告執行条項が浮かびました。あれは、無催告執行条項自体はあったのですが、実際のところは無催告で解除しているのではなくて、その前にはがきで保険契約者に督促のようなものをやっている。その実務運用を考慮すべきかどうかが争われた事案だったと思います。あれは、私は条項の内容自体ではなくて、実務運用としてそういうはがきが実際、送られていた。まさしく援用の問題だったのではないかと思っています。

つまり、無催告執行条項自体が有効か無効かという判断、私も今、判決を思い出せるわけじゃないのですが、本来やるべきだったところ、条項と全く外にある事情で、実際にはそう不利益にならないようにやっていましたよというところを、条項内容が有効かどうかを判断するときに考慮していいのかどうか。私が頭に浮かんだのはそういうものです。つまり、あくまで不当条項規制というのは、その条項だけを見て消費者にとって不利益かどうかを判断すべきであって、例えばキャンセル条項ですごく高いキャンセル料を定めています。しかし、実際にはそんなキャンセル料を取っていませんと言ってしまうと、条項が有効になってしまう。これはおかしな話だと思っていますので、そういうものを私は念頭に置いていましたというのが1つ答えです。

済みません、もう一点よろしいでしょうか。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○大澤委員 今のお話を伺っていて、55ページの例ですが、インターネットの件は私もよくわからないのですが、少なくとも暴力団である場合に打ち切ることがありますというのは、まさしく42ページに出ている4-2の条項なのではないかと思いました。事例4-2-5というのは、まさしくそういう条項だと思いますので、余りこれ以上御負担をおかけするのもあれですが、本当は決定権限付与条項の典型例というのを別のところに見出した上で、果たしてこれが援用の問題、運用の問題ということで片づけてしまっていいかどうかを議論すべきじゃないか。そういうことで、私はこの例で果たして適切なのかということを申し上げたかった次第です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

まず、結論として、マル1については、賛成です。

マル2については、反対です。4-1から4-3のB案のような規定を設けることが相当と考えます。

以下、理由です。

まず、マル1につきましては、事業者に契約条項の一方的な解釈権を認める契約条項は、契約の一方当事者が他方当事者に対する法的責任の存否や契約内容をみずからの意思で自由に解釈して決定できる契約条項である点において、有効とすべき合理的な場面を想定しがたいと思います。したがって、このような契約条項はおよそ無効と規定することが相当と考えます。

次に、マル2につきましては、このような契約条項も、契約の一方当事者が契約内容を決定できる側面がある点において不当条項リストに付加すべき契約類型と考えます。ただ、多様なものがあり得ることから、個々に契約条項の有効性を判断する条項という考え方を採用すべきであると考えます。具体的なあり方としては、4-1から4-3のB案のような規定を設けることが相当と考えます。

なお、「●●という事情が発生するおそれが高いと事業者が認めた場合には」という契約条項が使えなくなるから都合が悪いというご意見については疑問があります。それは本来の契約条項の書きぶりとして「●●という事情が発生した場合、または、●●という事情が発生するおそれが高い状況となった場合には」等と書かれるべき事案であると思います。弊害事由の存否は客観的に存在したのか、しなかったのかで決められるべきものであって、事業者の認識がどうであったかという点は、客観的な弊害事由の存否とは別の問題であると思います。「事業者が認めた場合」という文言を契約条項に入れる必要性・相当性については、そもそも疑問があると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに。井田委員。

○井田委員 私は、マル1に関しては、無効とするという趣旨の規定を設けることに賛成いたします。理由は、山本健司委員が述べたのと同じ理由です。

マル2に関しまして、「10条の解釈・適用によるほか」ということで書かれておりますが、決定権限を事業者のみに付与されている条項がまずあるとして、実際に事業者が決定権限を行使した。その正当性は事業者のほうで主張するべきであって、不当であるということをいわゆる法10条の解釈適用によるとしたとしても、不当性をおよそ消費者あるいは適格消費者団体が具体的に主張できるのか。決定権限がなくて、決めた判断要素とか判断資料などは基本的に事業者の手元にあるという状況のもとで、本当にその法10条の解釈・適用によれば、裁量の余地が大きい決定権限に一定の場面に対して、それが10条違反というのが言える場合があるのかなというのが、ちょっと疑義がありまして、マル2に関しては、4-2、4-3のようにB案と同じような事案の書きぶりの規定を設けるべきであると思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに。古閑委員。

○古閑委員 繰り返しになって申しわけないのですけれども、解釈というところと、その下のマル2の決定というところの違いが現場で本当に切り分けられるのかというのを不安に思っております。なので、何度も説明していただいているのかもしれないですけれども、もう一度わかりやすく説明していただけますでしょうか。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうからお願いします。

○消費者庁消費者制度課担当者 マル1の解釈権限の付与条項というのは、契約の文言としては、例えば○○というものに当たる場合には責任を負いますと書いてある。ただ、○○という言葉の意味については、事業者が勝手に決めることができますというものが解釈権限の付与と考えていて、マル2の決定権限の付与というのは、そういった権限はないのだけれども、○○に当たると事業者が認めた場合にはということで、その要件に当たるかどうかを事業者のほうで判断することができるとしている条項を想定しています。

○山本(敬)座長 条項の意味自体の決定の問題と、起こっている事実の意味の判断の問題とが一応区別できるのではないかという前提だと思います。この条項が一体何を定めた条項ですかということを問題にするのがマル1の条項であるのに対して、目の前で起こっている事件がどのような意味のものですかということの確定権限を与えるというのがマル2の問題である。一応、抽象的に言えば、そのような仕分けであるということを答えられたのだろうと思います。

○古閑委員 意見としましては、今の御説明を聞きましても、多分現場は混乱するのではないかと思っております。

○山本(敬)座長 河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 抽象的な議論ではなかなかわりにくいのかもしれませんが、例えば瑕疵担保責任というものが売主にはある場面を想定いたします。そのときに、「当社において瑕疵と認めました上は」責任を果たしますという書き方になっているとすると、「当社において見たけれども、これは瑕疵ではございません」と言ってしまった場合には、責任はないということになります。同じように、何かしらの要件について、その認定権を一方だけが持ってしまいますと、その権利が発生するか発生しないかということについての、自由な裁量権を持ってしまうということで、それは相手方にとっては不利でしょうという話であります。

今、安保法制の議論で「存立危機事態」とか言う表現が問題になっていますけれども、そういう事態かどうかというものについての判定権を一部の者だけが持ってしまうのと同じです。相手もちゃんとそれを争うことができるという客観的な要件として考えないといけないのだということです。かつて、銀行約款に、「信用不安と認めました上は」といって、一定の権利行使ができるような条項がございました。言ってみれば、本来の権利義務関係についてのルールの発効のところでコントロールしてしまうということの不当性を問題にしているものだということです。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

もちろんマル1が問題にしているのは、資料の53ページの4-4-1のような場合がその典型例です。よくある条項なのですが、「解釈等に疑義が生じた場合、当社は、信義誠実の原則に基づいて決するよう努め、会員はその決定に従うものとします」ということで、規約の解釈について争いが生じた場合には、このようにして処理しますというものです。これが不当条項でないかというのがマル1の言わんとするところで、これ自体としては理解できるところではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

もちろん今、御指摘いただいているのは、マル1とマル2で言う解釈と決定権限というのがうまく仕分けられるのかという問題があり、それが仕分けられないのであれば、マル2についてこう考える以上は、マル1も同様に考えるべきではないかというのが古閑委員が言われたいことだろうと思います。しかし、例えば4-4-1のような場合がマル2の取り扱いのようになる。本当にそれでよいのかというのは、この調査会で最初から指摘されているところで、それをすくい取ろうというのがマル1である。とするならば、4-4-1のようなケースについて、これが不当条項だという判断をするのであれば、それをどう書きあらわすかということが、ここでの問題になっているということでしょうか。

では、消費者庁からお願いします。

○消費者庁加納消費者制度課長 資料を提出した立場としては、事業者サイド、消費者サイド、双方からも厳しい状況だったと思っておりますので、もう一度ここは整理させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 わかりました。そこまで悲観的になる必要はないのではないかと思いますが、いただいた御意見を受けまして、さらに詰めて、取りまとめに向けた審議にお諮りをさせていただきたいと思います。

お約束の4時45分がついに来てしまいました。力及ばず、「4-5.サルベージ条項」が残っている状況です。私の前言どおり貫きますと、次回、1週間後にお集まりいただいて、このサルベージ条項についての審議を行うことになります。それが合理的な決定なのかどうかということを、今、ここで改めてお諮りしたいと思いますが。

○阿部委員 延長してください。

○山本(敬)座長 延長させていただくということでよろしいでしょうか。

では、4-5につきまして、大変恐縮ですけれども、続けさせていただきます。御意見、御質問等ありましたら、お出しいただければと思います。いかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 不当条項リストに付加すべきと考えます。ただ、問題となった実例等を調査した上でさらに検討するという進行に賛成いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

阿部委員。

○阿部委員 これから、さらに具体的な問題となりそうなことをきちんと整理していただいた上での検討ということで、今の段階では結論を保留します。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたら。いかがでしょうか。河野委員。

○河野委員 前回の意見の概要に、サルベージ条項というのは国際的に事業を展開している事業者において使用される傾向があるということで、外資系の大手の通販会社さんの利用規約の免責事項を日本語訳ですけれども、拝見しました。そうすると、そこに「適用される法律によって認められる限り、商品性および特定の目的に対する適合性の黙示的な保証を含みこれに限定されない保証を、明示的であるか黙示的であるかにかかわらず、一切いたしません」という文言がありました。読んだ瞬間に何のことやら全くわからないといいましょうか、丁寧に文言を追っても何を言っているのかがわかりません。

私がわかったことは、その当該事業者さんが意図していることは、保証を一切いたしませんと、最後のところだけが私の頭の中に残りました。そうすると、前回の議論のところに、そもそもこのサルベージ条項というのは、実際に使用されている例で大きな問題になっているか。なかなか実例がないじゃないかという御意見もありましたけれども、ここを見た瞬間に、消費者はそれが自分にとってどういう意味を持つのかがそもそもわからない。これはおかしいではないかと、どこかに言ってもいいのかどうかという判断もできないと思います。ですから、こういうものが書いてあることによって、消費者に心理的抑制効果、法律の中身もよくわからないし、私のこの訴えとか疑問というものは、恐らくどこも取り上げてもらえないのではないとなってしまう気がしております。

これは、あくまでも日本でもよく知られている通販会社さんの設例ですけれども、こういったことをよく検討していただいて、サルベージ条項を今後、リストにしっかり入れていくのかどうかということを考えていただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

古閑委員。

○古閑委員 事務局に書いていただいている「実例等をさらに調査した上で」という方向性に賛成いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見、御質問等ありましたら。よろしいでしょうか。

それでは、大変長時間にわたりまして御審議いただきまして、ありがとうございました。力及ばず、4時45分のお約束を守ることができず、大変申しわけありませんでした。本日の議論はこのあたりにさせていただきます。

今後についてですが、本日までの御議論を踏まえまして、次回及び次々回の2回の会議で中間取りまとめの案を御議論いただくことにしたいと思います。引き続きよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪5.閉会≫

○金児企画官 長時間、どうもありがとうございました。

次回は、7月28日火曜日13時からの開催を予定しております。また、次々回は8月上旬の開催を予定しておりますが、こちらは決まり次第、御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上