第13回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年6月30日(火)13:00~16:30

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、柳川委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 丹野理事
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長、山田取引対策課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 「勧誘」要件の在り方/第三者による不当勧誘
  3. 不利益事実の不告知/重要事項/情報提供義務
  4. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第13回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により、沖野委員と丸山委員が御欠席との連絡をいただいております。

配付資料の確認をさせていただきます。資料1の下に関連する参考資料1から参考資料3までございます。それから、資料2がございます。なお、委員、オブザーバーのお手元には、本日の資料とは別に、これまでの資料をつづったファイルと、本日御検討いただく論点に関する過去の議事録の抜粋もお配りしておりますので、適宜御参照ください。資料の不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

それでは、ここからは山本座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.「勧誘」要件の在り方/第三者による不当勧誘≫

○山本(敬)座長 よろしくお願いいたします。

それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日は、消費者庁から各論点の検討のための資料として、資料1及び参考資料1から3を御提出いただいております。

本日の進行としましては、論点相互の関係を考えて、まず第1に、1-1の「『勧誘』要件の在り方」と1-2の「第三者による不当勧誘」、第2に、2-1の「不利益事実の不告知(不実告知型)」と2-2の「重要事項」、第3に、2-3の「情報提供義務及び不利益事実の不告知(不告知型)」を、それぞれのまとまりとして、3つに区切って消費者庁からの説明と委員の皆様による御議論をお願いしたいと思います。

まず、1-1及び1-2の論点について検討したいと思います。消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、今日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

まず、1の「勧誘」要件の在り方、第三者勧誘のところでございます。

1-1の四角に、A案、B案、C案をお示ししております。また、事例も幾つか御紹介しております。

2ページですが、ここは第8回におきまして御議論いただきました、勧誘の意義について上から3行目、4行目あたりに書いてありますけれども、特定人向けのものは含むけれども、不特定多数向けのものは含まないということを前提に、昨今のインターネット取引などをどう見ていくかということでございます。第8回資料におきましては、当時の甲案、乙案、丙案という形で幾つかの案をお示ししたところでございます。

3ページをごらんいただきますと、そのときの御意見ということで、これは私どものほうでまとめたにすぎないものでありますけれども、大体こういう形であったということで御紹介しております。積極的に乙案、「勧誘をするに際し」という言葉を省くという案に対して賛同する意見も多くあったわけでありますけれども、他方で、それについては、広告などで広く広がることに対する懸念も示されたところだと認識しております。

そこで、前回の議論の大きな枠組みといいますか、趨勢としましては、甲案としてお示ししました、一定の切り分けをした上で、さらに勧誘概念について検討するということについて検討してはどうかということが大枠の趨勢だったのではないかと思いますので、3ページから4ページにかけて、そういったことを書いております。

他方で、(イ)ですが、広告の主体と契約当事者の主体が異なる場合については、当該事業者が責任を負うということに対しては消極的な御意見があり、どちらかというとそういう方向性で議論が収れんしているのではないかと考えております。

それを踏まえまして、どういうふうに考えるかということで、4ページの「(2)考え方」で書いております。

具体的には、5ページの「ア 甲案の課題」というところでございますが、1段落目の「甲案は」というところで、マル1意思形成に対する働きかけ、それからマル2因果性というものの判断ができるかどうかというところで切り分けを試みました。

2段落目、「しかしながら」と書いておりますけれども、大きく分けると、2点ほど注意しなければいけないのではないか。広告の記載・説明以外でもさまざまな情報が介在し得るということで、マル2のように因果性を客観的に判断できるということについて、否定的な御意見があったと認識しております。とりわけ、前回、第12回で古閑委員から補足意見という形で御意見をいただいておりますが、インターネットが今回の検討について念頭に置かれているわけでありますけれども、インターネット取引とリアル店舗取引において、どれほどの差があるのかという問題点の御指摘もいただいたところでありまして、そこはそれも踏まえた検討の必要があるのではないかと、私どもも前回の古閑委員の御提出意見などを拝見いたしますと思うところであります。

他方で、5ページ、「ア 甲案の課題」の「しかしながら」の段落の後半のほうで「また」と書いていますが、特定の広告等を類型化した場合に、それ以外が適用対象としては含まれなくなるという解釈がされるのではないかという点について、これはどちらかというと消費者の立場からということになりますけれども、かえって狭くなるのではないかという懸念があり得るのではないかということでありまして、そういった点を踏まえて検討する必要があるのではないか。

最後、「これらの点に照らせば」と書いてありますけれども、何らかの形で適用範囲を画することは必要かと思うわけでありますけれども、事業者の行為の態様に着目する方向で検討するのが適切ではないかということであります。

具体的には、イでA案、ウでB案・C案という形で書いておりますが、まずA案の考え方であります。先ほど申し上げましたように、問題となるのは当該広告等によって消費者が意思形成する際に、それによって誤認した、それによって意思表示したといった因果関係があることを前提に考えるわけでありますけれども、そうでありますと、そこのツールが何かというところではなくて、その意思形成に向けられたものであるかどうかという点が、むしろ重要ではないかと思われるところであります。

2行目から書いてありますけれども、ツールが何かというよりは、その「取消しの規律が適用されるためには、当該広告等が、個別の契約を締結する意思の形成に向けられたもので」あるかどうかということではないかと思います。

そうだといたしますと、6ページに「そこで」と書いてありますが、「事業者が、当該事業者との特定の取引を誘引する目的」ということで、そういった誘引目的をもってするということであれば、それは特定人向けであろうが、不特定人向けであろうが、それによって購入の意思形成をさせているわけでありますから、そこに不実等があった場合に、それによって意思形成した、瑕疵があるということであれば、取消事由にしていくことが考えられるのではないかということでありまして、A案のように特定の取引を誘引する目的という形での切り分けが考えられないかと書いております。

この考え方をとりますと具体的にどうなるのかということで、6ページの3段落目、「例えば」に書いております。家電量販店のように契約当事者になる人がやっているという場合であれば、それはみずからとの取引をしてくださいと誘引している、そういう目的があると見ることができると思われますので、そうした場合に、そこに不実告知等があって誤認したというのであれば取消しができるとすることが帰結になると思います。

他方、メーカーが製品に関するテレビコマーシャルを流したり、カタログをつくっているというのは、そのメーカーとの取引を誘引しているわけではありませんので、いわゆる広告宣伝でありますけれども、その商品開発等をしたメーカーがその商品に関する情報を提供する。その事業者との取引の誘引というわけではないと思われますので、取消しの規律の適用対象とはならないと考えられるところであります。

以上がA案の考え方であります。

その次に、ウのB案・C案であります。順序が行ったり来たりで恐縮ですけれども、1ページの事例1-1-1をごらんいただきたいのですが、これは簡易裁判所における判決でありまして、それをどう見るかというのは議論の余地があろうかと思いますが、問題は、こういった事例において、ホームページやプライスボードにおける記載に不実があったということで、それを見て購入した消費者が契約を取り消したいという事例であります。これについて、そもそも救済を図るべきか、図るべきでないかというところは、よく御議論いただく必要があるのではないかと思います。

これについて、ホームページないしプライスボードが情報源であり、かつ、それを当然誘引目的でやっているということでありますけれども、それで購入したということであれば、ここは勧誘と同視するといいますか、勧誘概念に含めていくということでも十分合理的ではないかと思われるわけであります。そうしますと、こういったものは特定人に対する働きかけではありませんので、現行の勧誘及びその解釈を前提とすると、ちょっと範囲からずれてきていると思われるわけであります。

こういったものについて、消費者契約法上の取消しの規律の対象にしていくというのであれば、ちょっと飛んで恐縮ですけれども、7ページの(イ)になりますが、そういったところを勧誘の解釈として明確化していく。具体的には、7ページの下から書いてありますけれども、こういった裁判例の考え方を紹介しつつ、不特定人に対する広告等であっても、一律に取消しの規律の適用が排除されるわけではないといったことを逐条解説にも明記するということもあり得るかと思います。

こういった解釈をとるということを前提にいたしますと、それを一歩進めまして法律上も書き込んでいくというのがB案の考え方でありまして、前回の第8回の議論におきましても、括弧して「不特定人向けの勧誘も含む」ということを考えたらどうでしょうかという御意見もございました。それをヒントに私どももいろいろと類例等を調べてみまして検討いたしました。7ページの脚注7で金融商品取引法の例を挙げておりますが、似たような類例はございますので、こういった類例を参考にして、勧誘の解釈として不特定人向けのものも含まれ得るということを前提に明文化するということで、「勧誘(不特定の者に対するものを含む)」という形で書いていくこともあり得ると思いますので、それをB案という形でお示ししているところでございます。

以上が1-1であります。

続きまして、13ページ、1-2の第三者勧誘についての論点であります。これにつきましては、2つございます。

まず、マル1が委託関係のない第三者、裸の第三者とでも言いましょうか、そういった第三者勧誘の規律。これは、民法では詐欺取消しについてありますけれども、民法の規定と類似の規律を設けていく。背景としては、委託関係の立証というのが消費者にとって非常に困難な場合があります。とりわけ悪質な勧誘事例などを御紹介いたしましたけれども、そういったところで消費者の取消しの幅を認めるということで、こういう規律を設けるという考え方であります。

マル2は、それに対しまして、現行の第三者勧誘でありますけれども、委託関係があることを前提に、その委託先が不実告知等をした場合には、本人がやったのと同視して取消事由にしていくということでありますけれども、この「契約の締結について媒介をすることの委託」ということの解釈がちょっと限定的ではないかという御指摘が第9回においてございましたので、それを踏まえて、例えば「勧誘をすることの委託」という形で広げることも考えられると思いますので、書いているところであります。

それで、マル1の委託関係のない裸の第三者の勧誘でございますけれども、14ページの「意見の概要」の(ア)で書いておりますが、これは先ほどの勧誘要件をどういうふうに広げるのかということとの見合いであるといった御意見が、阿部委員だったと思いますけれども、ございました。勧誘の概念との関係ということでございます。なので、今回、勧誘の概念と第三者勧誘をあわせて御検討いただければということでございます。

1つは、先ほど1-1でA案、B案、C案という形で幾つかお示しいたしましたが、あれは事業者自身が勧誘するときはああいうふうに考えるのだけれども、第三者勧誘の場合には、別途切り分けて考えるという考え方もあろうかと思いますので、それを13ページのマル1の注で書いております。

ただ、例えばA案のような考え方は、誘引の目的ということで、その事業者がどういう目的のもとで当該広告等をしているかということをはっきりと要件とする考え方でありますので、第三者がインターネット等で商品、これがおいしかったとか、よかったということを書いていて、それによって触発された消費者が契約締結の意思決定をした場合に、その第三者の書き込み等がそもそも誘引に当たるのかといった形での切り分けというのもあり得ると思いますので、ここは御議論いただいたことを踏まえて、さらに検討する必要があるのではないかと思われるところであります。

それから、14ページに戻りまして、(イ)は今、申し上げた点でございますので飛ばしますが、(ウ)、「さらに、別の観点から」ということでありまして、第三者が勧誘する場合、裸の第三者というよりは委託関係があるケースが多いだろう。その委託関係がある場合の規律として、「媒介」という概念を拡張すべきではないかという御指摘があったということについて御紹介しております。

14ページの「(2)考え方」のところで、15ページに飛んでいただきまして、マル1の96条2項と同じような規律を設けることについて検討してはどうかということであります。

ここで1点、裸の第三者の勧誘という規律を仮に入れるとした場合の取消しの要件として、事業者の「悪意又は有過失」と書いておりますが、ここの解釈についてどうかという点について、前回、第9回においても御議論があったのですが、私どもで調べたところ、15ページから16ページに書いております。ちょっと補足いたしますと、現行の民法96条2項の規定は悪意ということであります。今回の民法改正で有過失に広がるということであります。現行法は悪意ということで、その悪意の内容は15ページの下から3行目、「『その事実を知っていた』とされているのは、欺罔行為の存在だけでなく、表意者がこれによって錯誤に陥り、それに基づいて意思表示したことの認識」まで必要だと考えられているようであります。物の本を見ると、そのような記述があります。

消費者契約法も意思形成の瑕疵ということでありますので、基本的にそれと同様に考えられるということではないかと思います。そうだといたしますと、16ページの上から2行目に書いてありますが、「不当勧誘行為の存在だけでなく、消費者がそれによって誤認又は困惑し、それによって意思表示をしたことについての認識」までが必要になるのではないかと思われますので、事業者が悪意と言った場合の内容というのは、かなり深掘りした内容になるのではないかと思います。それに至らない場合には悪意とは言えないということでありますので、取消事由にはならないということだと思います。そこも念頭に置きつつ、御議論いただければと思います。

それから、もう一つのマル2の契約締結の媒介というところがやや狭いのではないかという御指摘に対して、どう考えるかということでありまして、まず消費者庁の逐条解説に書かれているところ。17ページの上から二、三行目ぐらい、「媒介」というのは両者の間に立って尽力することであり、具体的には通常は契約締結の直前までの必要な段取りを行うことを言うと、確かに書いているところでございます。

他方で、実際の第5条の適用場面、17ページの(イ)に書いてありますが、裁判例を概観いたしますと、結構使われておりますのは信販会社との間の立替払契約・クレジット契約の事例でありまして、裁判例が幾つかあって否定したものもあるのですけれども、印象論になるかもしれませんが、それなりに5条の適用を認めているように思われます。裁判例として、実際どうなっているかというのは下の脚注に紹介させていただいているところであります。

18ページでありますけれども、そういった裁判例の傾向からいたしますと、「そうすると」という2段落目ですが、いろいろな解釈論もありますので、そういった解釈に委ねつつ、あと、逐条解説においては、契約締結の直前までの必要な段取りを第三者が行っていなくても「媒介」に当たる可能性があるということが言えようかと思いますので、そういった記載をするということで、後は解釈に委ねるということもあり得るのではないかと思われるところでありますので、そういうふうに書いております。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。山本健司委員。

○山本(健)委員 御説明、ありがとうございました。資料2を引用しながら意見を述べたいと思います。

まず、1-1の「『勧誘』要件の在り方」に関する意見としては、A案に賛成いたします。

以下、理由です。

事例1-1-1のように、不特定の者に向けられた事実に反する広告等に基づいて消費者が誤認による意思表示をしてしまう事案、取消しを認めることが相当な事案が現に存在いたします。不当勧誘行為の相手方を特定人に限定することは狭きにすぎると考えます。

また、現在の「勧誘をするに際し」という法文のままでは、不特定の者に向けられた広告等の事案に消費者取消権を行使できるのか否か、解釈が分かれる状況が続く可能性があると思います。この点は、法文で明確に規定すべきであると考えます。

具体的な対応のあり方としては、B案でもよいと考えますけれども、適用場面の明確化という観点からは、A案のほうが望ましいと思います。ただし、A案の「目的をもってする」という部分については、当該事業者の主観で決まる要件であるかのような誤解を招かないように、さらに表現を推敲するか、資料1の6ページの脚注5で注記されているような、一般的な消費者を基準として客観的状況を踏まえて実質的に判断される要件である旨を消費者庁の逐条解説で明らかにしておくといった手当てが必要と考えます。

次に、1-2の「第三者による不当勧誘」に関する意見です。

マル1の点については、このような規定を設ける考え方に賛成いたします。

マル2の点につきましては、消費者庁の逐条解説において、「必ずしも契約締結の直前までの必要な段取り等を第三者が行っていなくても『媒介』に当たる可能性がある」旨が明示的に記載されるという前提であれば、現行法の解釈に委ねるという考え方に賛成いたします。

以下、理由です。

まず、マル1の点についてでございます。消費者契約の相手方である事業者が「当該消費者が第三者の不当勧誘行為に起因する誤認等に陥った状態で意思表示をしている」という事実経緯を認識している場合や、認識してしかるべきと評価できる場合には、詐欺の場合に民法第96条第2項で想定されているケースと利益状況が近似しており、表意者(被害者)の利益と相手方の利益との衡量ないし調整という観点から、表意者の取消権が肯定されてしかるべきであると考えます。

契約当事者である事業者と全く無関係な第三者がネット上で書き込んだ評判やテレビ番組での出演者のコメントなどの事例については、通常は相手方事業者の悪意・有過失の存在といった消費者取消権の要件を満たさないように思われますので、特に問題はないであろうと考えております。

次に、マル2の点についてでございます。消費者庁の逐条解説の「媒介」に関する「契約の直前までの必要な段取り等を第三者が行わなければならない」という解釈は、第5条第1項の立法趣旨から考えても、「媒介」という字句の一般的な意義から考えても狭過ぎると思います。事業者が第三者に委託する尽力の対象が消費者契約の締結に至る一連の過程の一部分であっても、「媒介」に該当し得るとの解釈が合理的と考えます。

上記の点を踏まえて、消費者庁の逐条解説で「必ずしも契約締結の直前までの必要な段取り等を第三者が行っていなくても『媒介』に当たる可能性がある」旨が明示的に記載されるのであれば、この点については解釈に委ねることに賛成いたします。「媒介」という字句の改正には固執いたしません。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。阿部委員。

○阿部委員 1-1でありますが、まずC案は、解釈だけで中身が変わるという書きぶりであるかと思いますので、採り得ないと思います。B案も非常に範囲が広くなり過ぎて混乱を引き起こす。そういう意味では私の考えはA案に近いのですが、まだ判断できないのは、「特定の取引を誘引する目的をもってする行為」ということで、例えば6ページの事例は本当にちゃんと読み分けられるのかということです。ここをもう少し詰めていただければと思います。場合によっては、「当該事業者との特定の取引を勧誘するに際し」でもいいのかなと思います。今の文言では、はっきりと読み取れないところがあるかと思います。A案ダッシュぐらいのつもりで検討させていただければと思います。

1-2につきましては、「知ることができた」というところは無理があるかなと思っております。詐欺よりは非常に広い場面に該当しますので、これは「知っていたとき」にとどめていただければと思っております。マル2は現行法の解釈で構わないと思いますが、マル1につきましては「事業者が知っていたとき」でどうかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに御意見は。河野委員。

○河野委員 まず最初の論点ですけれども、現在はSNSとかインターネットの行動ターゲティング広告、それから情報記事を装ったステレスマーケティングなど、情報発信や収集の方法、それから契約締結の方法は非常に多様化していまして、そこにトラブルが多く発生していると思っています。今回、不特定多数向けのものに対する広告、チラシであっても、消費者がそれを見て誤認し、それによって契約に至った場合は勧誘に該当するとして取消しの規律を考えてくださったのですけれども、ぜひここは適用していただきたいと思います。ただ、限定されている勧誘の範囲を広くとるという視点から言えば、消費者として私はB案が一番ストレートでわかりやすいかなと感じたところです。

次の論点ですけれども、マル1は民法改正において同様の議論が尽くされた結果として96条第2項の改定案が示されたと思います。消費者契約においては、事業者の方と消費者との間では情報量の格差が非常に大きいですので、同様の規定を設けていただきたいと思っています。以前の調査会で、先ほど山本委員もおっしゃっていましたけれども、ネットの書き込み等が問題にされるのではという御懸念が示されましたけれども、事業者と全く無関係な第三者が行っている行為というのは、これに当たらないと私自身も考えています。

それから、マル2の「媒介」の解釈の問題ですけれども、これは消費者庁さんの逐条解説の解釈は余りにも限定的で、現在の多様な契約の状況を反映していないと思います。先ほどの山本委員の御意見にもあるように、必ずしも契約締結の直前までの必要な段取り等を第三者が行っていなくても、「媒介」に当たる可能性があるという解釈に変更していただければ、それで対応可能だと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。増田委員。

○増田委員 私は、1-1の場合、A案もしくはB案に賛成いたします。通信販売の広告だけではなく、事例1-1-1のようなプライスボード、それから量販店などの広告で、対面であっても説明されないで購入に至るというケースもあるかと思います。

また、第三者による不当勧誘におきましては、事業者と委託関係があるかどうかということがおよそ証明できないことが相談の現場で行われています。勧誘した者とは全く関係ないと主張されて、あっせん不調になっているケースというのはたくさんあります。けれども、そのものが何回も出てくるとか、およそ何かマージンなどがなければやらないのではないかという推測がされますが、交渉の土俵にも乗らないというケースもあります。

それから、「勧誘をすることの委託」ということに賛成いたします。例えばモデルの広告を見て、説明を聞きに行ったときに、別のエステ事業者を紹介されて、あっちへ行って契約してくださいというケース、あるいはここまで連れてくる人、次を紹介する人、そこで契約させる人ということで、複数回で分断させて、最終的な契約に至らせるようなケースが最近見られます。そういう場合、「媒介」という今の解釈で契約のところまで全部含めなければいけないということになると、話し合いが非常に難しいという状況があると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。井田委員。

○井田委員 まず、1-1については、私もA案に賛成いたします。前回の意見の中で、広告などの中に消費者の意思形成に直接影響を与えるものが全くないかというと、そこまで断言できないということであったと思いますし、現行のC案では、何が勧誘に含まれるかということで、混乱を招くということであれば、これはその文言ごと変えてしまうということのほうが、かえって事業者にとっても明確性はあるのかなと。もちろん、これでさらに修正の余地はあると思いますが、私はA案に賛成いたします。

1-2に関しても、規定を設けるという考え方に賛成いたします。確かに範囲が不明確であるという御懸念もあるかと思いますけれども、それは全く無関係な第三者の書き込みとか、商品に関するその方の意見ということでありまして、特定の消費者契約の締結に向けられたものではないということで捉える場合が多いと思いますので、山本健司委員も書かれているように、単にネットに書き込んだだけとか、特定のタレントがブログ上で意見を表明したという程度では、そもそも「勧誘」に当たらないと思いますので、その御懸念の点は当たらない部分が多いのかなと思っております。

1-2のマル2に関しましては、これは何が「媒介」に該当するかどうかは、まさにケース・バイ・ケース、個々の事例によって全くとり方が違うことになると思いますし、それを統一的に規律する文言というのを見出すことはなかなか困難だと思います。私は、現行法の解釈に委ねつつ、現在の裁判例の状況とかを踏まえた解説がなされるのであれば、現状のままでもよいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ほかに。大澤委員。

○大澤委員 私自身は、C案で解釈に委ねるというのはとり得ないと思っておりますので、A案かB案と考えているのですが、いま一つ、A案とB案の違いがまだよくわからないところがあるのです。B案ですと、「不特定の者に対するものを含む」ということで、いわゆる広告が広く入ってしまうという懸念があるというのはわかるのですが、だからといって、A案で「特定の取引」と書いてある。この「特定の」というのがちょっとわかりにくいですし、あと「誘引する目的をもってする」の「目的」をどういうふうに判断するのかというのも考えていかないといけないと思いますので、A案のこのままの文言でいいのか、すごく悩むのですが、もう少しA案とB案の違いを説明していただかないと、どっちというのはなかなか決められないと思っています。

なぜそういうことを申し上げるかといいますと、資料の6ページに、この「特定の」というのが一体どういうことなのかという説明が書かれていると思います。上から2段落目、「例えば、家電量販店が」というところですが、家電量販店が自分で売る商品を広告した場合は、家電量販店が特定の商品の契約を誘引するということで、この説明はよくわかります。

ただ、その下に「他方、家電メーカーが」と書いているところですが、家電メーカーが例えば冷蔵庫などのCMを流したとしても、実際に冷蔵庫を売るのが、その家電メーカーそのものではなくて、実際には家電量販店が売ることのほうが今の社会だと多いのではないかと思っていますので、この「他方」以下のものを排除するために、もし「特定の」ということをやっているのだとすれば、次の第三者による不当勧誘の話とも恐らく大きく関係すると思うのです。つまり、何を申し上げたいかといいますと、A案の「例えば」以下の例を見ていくと、このA案をとってしまうと、自分で売る人が自分の商品を自分で広告したときにしか適用されないことになってしまうのかなと。

しかし、それで本当に大丈夫なのか。それは、第三者による不当勧誘のところで補足するということであれば、そこの関係は十分考えていかなきゃいけないと思いますし、大部分はこの6ページの今の段落の「他方」以下のところが多いと思います。そのときに、これは家電メーカーさんが勝手につくった広告なので私は知りませんということが、もちろんお店としては自分で広告をつくっているわけじゃないので、それはそういうふうに言うのはわからなくはないのですが、逆に不実告知に当たるような広告をつくった家電メーカーは直接契約関係に立っていないということで、何もやらなくていいのか、果たしてこういう限定の仕方で大丈夫なのかというところが気になります。

あるいは、もうちょっと幾つかの場合を考えてみないと、このA案のような要件で果たして大丈夫なのか、かえって混乱を招かないかという心配をしておりますので、現時点ではA、B、どちらがいいというのは判断できませんが、A案このままの要件だということであれば、それはB案のほうがまだいいかなという意見です。

それとの関係で、第三者による不当勧誘というところもあわせて考えていかなければいけないので、まだ整理はできていませんが、マル1には賛成します。

マル2で、「媒介をすることの委託」という文言を「勧誘をすることの委託」に変えるという考え方もあるが、現行法の解釈に委ねると書いていますが、これは私の理解がまだできていないのですけれども、そうすると「媒介」を残すということであれば、それは賛成できないかなと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 A案とB案の違いはという御質問があったように思いますが、よろしいでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 今の大澤先生の御指摘は、資料の6ページあたりでありまして、まず、「当該事業者との特定の取引を誘引する目的」というところは一体どういうつもりなのかというと、できるだけ想定している事例を念頭に書いたつもりであります。まず、勧誘といいますか、誘引の主体は当該事業者である、逆に言えばそれに限るということを念頭に置いて、こうしておりますので、他方の家電メーカーについては、大澤先生は疑問の余地があるという御意見だったと思いますけれども、それは除くということを前提に切り分けてはどうかということでございます。

それはなぜかということでありますけれども、これは消費者契約の消長、取消しを認めるかどうかということでありますので、契約当事者が何をしたかというところにまず着目しましょうということであります。

それから、例えば家電メーカーのケースで、その家電メーカーのテレビコマーシャルあるいはカタログ等に不実があった場合に、確かにそれを見て量販店で商品購入する消費者というのも結構いると思いますが、それが仮に取消事由になるといたしますと、量販店としましては、家電メーカーのカタログやテレビコマーシャルが事実かどうかをチェックするということまでしなくちゃいけないという議論があると思います。それでも取消事由にするのだ、それが適切だというのであれば、それで合意がとれるのだったら、それを広げているということで検討すればいいのではないかと思いますが、そこは委員の御議論をまちたいと思います。

○山本(敬)座長 B案との違いが御質問のもう一点だったように思いますが、その点はいかがでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 失礼いたしました。

B案につきましては、その勧誘について、まずC案のような解釈で不特定多数向けであるからといって、勧誘に入らないわけではないという解釈をとるということを前提にいたしますと、それを入念的に書いておくということで、B案のように括弧書きで書いておくという考え方はあるということで、前回、そういった御意見がありましたので、それを書いてみたというものであります。

具体的に違いはどうなのかということでありますけれども、A案は適用範囲、ある程度これですというのを念頭に、それをどう書くかということをしておりますので、それに当たらないものは入らないとなると思っておりますが、B案、C案の場合には、そこは解釈に委ねますというので、明確に当たるか当たらないかというのは解釈に委ねるというところだろうかと思いますので、A案よりも広いところもあれば、狭いところもあるということではないかと思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、古閑委員。

○古閑委員 まず、1-1ですけれども、C案については解釈が逐条解説にどう記載されるかということによってきてしまいますので、今、それがわからない中で賛成ということにはならないという意見です。

それから、B案に関しては、解釈によってしまうところが相当多くなるのかなと、今のお話を伺って思ったので、それもC案と同様に賛同できないのと。

あと、これは単に書き方の問題なのかもしれないですけれども、今回の資料を拝見していますと、6ページの真ん中辺に、A案の説明として、「企業のイメージ広告のようなものも、特定の商品についての取引を誘引するものではないから」という記述が入っていますけれども、こういったものがB案に入っていないので、そうすると、イメージ広告のようなものまで入ってくるのだろうかという懸念もまだ残りますので、B案も支持しません。

A案はどうかというところですけれども、まず注1に、誤認のみを対象とし、困惑は外すという趣旨が書かれておりますが、これについては賛成したいというのが前提としてあります。さらに、通信販売だけを対象にするのではなくて、ツールにこだわらず、民法の原則に立ち返って、リアルのところも含めてという御説明、今、事務局からありましたけれども、そういったコンセプトについても賛成したいと思います。

ただ、今、まさに6ページを少し読み上げましたけれども、イメージ広告は入らないということだとすると、イメージ広告とは言えない広告は入ってくるだろうというのが裏返しにあるところでございまして、そうすると、どういった広告まで入ってくるのだろうかというのが引き続きよくわからないなという感じがしています。

「特定の取引を誘引する」というところですけれども、これは我妻先生の「コンメンタール民法」などには、特定の取引を誘引する目的をもってする行為の中に、店頭の商品の陳列も申し込みの誘引であると説明されているところで、そうすると、広告とか商品の隣に置いてある、ちょっとした説明みたいなものもかなり広範に入ってくるところなので、今までの「勧誘」の概念を変更するという整理の仕方からは、相当広いところまで含めることになるので、本当にそんなことが混乱なくできるのだろうかというところについては、まだ不安があります。

なので、本当に必要な範囲がどこなのか。広告とか陳列説明みたいなものまで入ってくるとすると、それに適したあり方というのは何なのかというのを改めて別枠で考えたほうがいいのかなと思っておりまして、今、勧誘の概念の中に入れてしまうと、この後議論されていくことになると思いますけれども、不利益事実の不告知とか事業者の帰責性とか重要事項とか、全部セットで影響が出てくるところでして、セットで全部、「勧誘」の概念を最初に決めてしまって同じ影響を与えるということで大丈夫なのかどうかというところが気になっています。

なので、「勧誘」というのは、消費者の契約締結の意思の形成に影響を与える程度の進め方という枠組みが維持されるべきであって、それをもうちょっと丁寧に整理し、かつ影響を与える部分が後ろのところでどこまでなのかというのを、全部一律に当てるということでは広過ぎる気がしていますので、整理が必要かと思っています。

それから、1-2ですけれども、こちらは取消しという重大な効果が発生することになります。悪い人たちが仕事を細分化してという話もさっきありましたけれども、そういったパターンももちろんあるとは思うのですけれども、とはいえ、事業者が責任を負う範囲というのはコントロールが及ぶ範囲であるべきで、悪いことを考え出したら切りがなくて、それに全部網をかけるということではなくて、事業者がコントロールできる範囲というところに合理的にとどめていただくべきところかと思っています。

それから、これは質問にもなるのですけれども、「事業者が知ることができたとき」の意味することが何なのかというところです。事業者は、当然従業員がたくさんいて運営されていると思うのですけれども、そのうちの誰か1人でも知っていればどうなのか。かなり大企業になってくると、誰かが知っているということは多分往々にしてあると思うのですけれども、それは部門が違う人であればいいのか、悪いのか。事業者が知り得るというところが何を意味しているのかというのがわからなかったので、そこはお聞きしたいところです。ただいずれにしろ、知り得ることができるところまで含めるというのは広いだろうなと思っています。

あと、これは取消しを主張しようとする場合、「第三者の不当勧誘行為によって誤認し、それに基づいて意思表示をした」というところを消費者のほうは主張していくことになると思うのですけれども、そこの判定が相当難しいのかなと思いますので、合理的な範囲内にとどめておかないと、かなり紛争が多発することになるのではないかという気はしています。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

では、消費者庁のほうから。

○消費者庁加納消費者制度課長 非常に示唆的な御意見、どうもありがとうございます。古閑委員の御指摘、私どもでもさらに検討を深めたいと思います。

まず、1-1でA案のような考え方をとるとした場合に、どこまでが対象になるのかというのは、私どももよく詰めたいと思いますけれども、基本的な発想は、先ほど大澤先生とかから御質問があったときにも申し上げたとおりでありまして、当該事業者が「特定の取引を誘引する目的」ということに絞り込むということであります。そういった場合であれば、責任を問われてもしようがないだろうということであります。

非常に悩ましいのが店舗における商品の陳列ということでございまして、ここは価値判断としてはいろいろあり得るのではないかという気がしております。と言いますのは、店舗において商品が陳列されていた。そこで、商品の表示がありまして、通常はそれはメーカーさんが書いている表示だと思いますが、例えばここに水があります。「南アルプス」とか書いてありますが、これがそうじゃないにもかかわらず、非常に風光明媚なところを書いた。これはメーカーが書いているわけでありまして、普通は消費者はこれを見て、ああ、おいしそうだなということで買うということだと思いますので、そうした場合に消費者の意識に誤解があることは間違いありません。

ただ、誰がこれを描いたかというと、メーカーであります。商品を陳列している商店ではありませんので、私どもとしては、そういった場合については、これも適用対象にするということについては慎重に考えたほうがいいのではないかと思っておりますけれども、そこはそうではないという御意見もあると思いますので、できれば委員の御議論をまちたいと思います。

それから、1-2の関係で、事業者のコントロールという点は、事業者サイドの御意見としてはよく理解できるところでありまして、阿部委員からもいろいろと御指摘がありましたけれども、それを踏まえて、さらに検討しなければならないと思いますが、悪意というのをどういうふうに見るかということであります。これは、いわゆる会社法人のような場合にどう見るかというのは、結構難しい問題であります。これは、現行の消費者契約法でも故意要件というところで、どういうふうに故意を認めるかというのは既にある問題でございますが、一番典型的なのは会社代表者であります。代表者が悪意であれば、間違いなく悪意である。

ただ、会社組織において代表者が全ての取引を認識しているわけではなく、実際には末端組織といいますか、例えば大きな店舗が幾つかあって、その店舗の従業員といった人たちが取引でいろいろな勧誘当事者として契約締結行為をやっている。そういった場合にどこまで見るかというのは非常に難しいのでけれども、かたく申し上げますと、取引に関して一定の権限を有している者、代理権とか、そういった権限を有している者が悪意であれば悪意となるのではないかと考えます。そうでない場合にどうかというところにつきましては、その人が知っていたというのを、その組織においてどれほど共有していたかといった個別の事情によって判断されるのではないかと思われます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

まず、後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 1-1でありますけれども、A案の「誘引」という言葉の意味が先ほどの課長の説明で大体わかってきたのですけれども、「誘引」という言葉が出ていると若干誤解される可能性があるかなと感じたところがあります。「勧誘」と「誘引」がどう違うのかということで、「誘引」に関して、特に定義があるわけではないと思いますけれども。

例えば特商法6条で「勧誘をするに際し」という、まさに勧誘段階の規定があって、その前の3条とか3条の2というのは、むしろ勧誘に先立つ段階の問題でありますけれども、この3条とか3条の2の段階のことが誘引の段階だと法文に書いてあるとか、別にそういうことではないのですけれども、「誘引」という言葉が出てくると、私の印象としては、むしろ勧誘を始める前の接触の段階があって、それから当事者間で勧誘に至るという時間の経過がある。

そうすると、「誘引」というのは、勧誘前の接触の段階という印象があって、そういうことがもしあるとするならば、「誘引」という言葉がここで何を意味するかというのは、もしかしたら「勧誘」とは別個のものととられる可能性もあるかもしれない。これは危惧にすぎないのかもしれませんけれども、その辺、私はこれを読んだときに最初にちょっと気になったものですから、もし何かここについてお話いただけることがあればお話いただきたいと思います。

A案とB案で、A案がわかりにくいという話が先ほどから、特に「誘引」という言葉が関連するのではないかと思うのですけれども、出ております。そういうことから言うと、B案のほうがわかりやすくて、私はA案、B案、どちらかと思いつつ、B案のほうがわかりやすい。先ほど河野委員からも出た意見ですけれども、それと同じ感想を持っています。

それから、1-2のマル1で、私は何回か前のときにも、ネット上のクチコミなどで取消しになるのだったら疑問だという発言をしたのですけれども、その後、丁寧に調べていただいて、そういうことは余り心配しないでよいということであれば、1-2のマル1で提案されていることに特に異議を申し述べるつもりはありません。

それから、1-2のマル2で、「媒介をすることの委託」と「勧誘をすることの委託」でありますが、「媒介」の概念が、消費者庁の見解と、落合先生のような「媒介」を広く捉える見解とあります。「媒介」を広く捉える見解によりますと、「勧誘」と文言を変えても内容的に余り変わらないのではないかと思います。資料の17ページに、尽力するとはどういうことなのかということについて、「契約締結の直前までの必要な段取り等を第三者が行って」いるということが消費者庁の逐条解説には書いてあるのですが、落合先生の考え方だと、尽力の対象が消費者契約締結に至る一連の過程の一部に限定されていてもよいということをお書きになっている。

これだと、端的に言うと、第三者の行為というのが事業者からの委託を受けて行われたものであって、その行為が契約の締結に寄与しているという状態であれば、5条1項の適用があるということになると思いますので、それを表現すると、むしろ勧誘の委託という表現のほうが正確だと思いますけれども、内容的に勧誘の委託と言わなくても、媒介の委託でそういうことを表現できるということだと思いますので、そういうことであれば、媒介の委託について逐条解説でそこの部分を補っていただけるのであれば、それでもよろしいかなという感想を持っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

少し確認しておきますが、「誘引」という言葉と「勧誘」という言葉の関係ですけれども、まず「誘引」があって、それで「勧誘」と続く言葉ではなくて、少し観点を変えた基準によって設定されているのが「誘引」であり、従来「勧誘」と呼ばれてきたものは、少なくともこの「誘引」の中に含められる関係にあると、そう理解してよろしいのでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 恐らくそういうことではないかと思います。まず、「勧誘」という言葉も「誘引」という言葉も、法律上、定義があるわけではありません。消費者契約法も「勧誘」という言葉は法律上、出てきますけれども、それについて定義規定を置いているわけではなく、「勧誘」というのは特定人に対する働きかけを言うと。ある意味所与の前提のように物の本には書いてあります。

「広告」と「勧誘」も違うのであるという理解が一般的であろうかと思います。これも「広告」と「勧誘」について、厳密な定義規定があるわけではありません。ただ、「勧誘」と「広告」の切り分けといいますのは、消費者契約法は「勧誘」という形で概念を入れておりますけれども、先行する特商法とか金商法、かつての証券取引法といったところから概念を持ってきたというのがどうも経緯でありまして、そこでは行政規制として勧誘規制と広告規制、両者が設けられていて、勧誘規制と広告規制というのは切り分けてられているという理解を前提に、「勧誘」はこうである、「広告」はこうであるという考え方で捉えているのが通常であろうかと思います。

他方で、金商法の中でも「勧誘」の概念については、いわゆる業規制と言われるところと開示規制と言われるところで勧誘の意味内容が異なるというのが一般的な解釈のようであります。業規制においては、勧誘規制と広告規制の両方、設けられていて、そこで「勧誘」と「広告」という概念を切り分けている。開示規制というのは、有価証券を新たに発行する場合にどういった情報提供をするかというルールでありますけれども、そこは性質上、不特定多数の者に対して情報提供をすることが予定されておりますので、そこで言う「勧誘」は、そういった不特定多数人の者を含むということが解釈として前提とされている。

でありますから、今日の資料の7ページで御紹介しました金商法170条というのは、それを考える前提に不特定多数向けの勧誘を含むというのが規定されているという理解が正しいのではないかと思われます。

他方で、「誘引」という言葉が典型的に見られますのは景表法です。これは表示規制でありますけれども、その表示規制の中身といいますのは、商品購入、商品役務の購入や役務提供契約の締結に向けて誘引するというものでありますので、それを表示主体がまさに働きかける。その働きかけというのは、特定人に対する働きかけに限らず、不特定人向け、多数の働きかけを含むもの。そういった場合には「誘引」という言葉を使っているというのが例ではないかと思いますので、その前提に考えているということでございます。

ですので、何をもって「誘引」と言うか、何をもって「勧誘」と言うかというのは、明確な定義規定があるわけではありませんが、特商法や金商法とか景表法といった他の法令において、どういう局面でそれらの言葉が使われているかというのを参考に検討していく。消費者契約法の場合には、今までは勧誘規制と呼んでおりましたけれども、契約締結過程における誤認惹起行為というものに対して、どういう規律を及ぼすのかというのが立法時の本来のアプローチであった。当時の国民生活審議会の議論を踏まえると、そういったことであったと思いますので、その原点に立ち返って、「勧誘」という文言にこだわらず、ほかの文言を考えてはどうかというのが今回の提案の趣旨でございます。

○山本(敬)座長 そうしますと、もう一度確認しますけれども、今、提案されている「誘引」というものが特に定義されているわけではないけれども、念頭に置かれているのは、特定の契約をするように働きかけをしている行為を指そうとしているものであると理解すればよろしいのでしょうか。そうしますと、後ろに出てくる問題ですけれども、例えばネット上で第三者に当たる者が一定の商品について「これはいいよ」と述べているのは、特定の契約をするような働きかけをしているわけではないという意味で、外れると理解してよろしいのでしょうか、それとも別の説明をするのでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 今、座長が御指摘のような考え方も十分あり得ると思います。「誘引」というのは、特定の契約締結に向けた働きかけでございますので、今、議論になっております第三者がいわゆるブログなどでいいよと単に言っているというのは、単なる評価を述べているだけであり、別に契約の誘引ではないという考え方もできると思いますので、むしろ「誘引」のもともとの字句からすると、その考え方というのが素直な理解ではないかという気がいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 済みません、まだよくわからないところがあるのですが、しつこいようですけれども、6ページのさっきの例のところで、A案にすることで何を排除しようとしているのかなというところをもうちょっと整理させていただきたいのです。「他方、家電メーカーが」と書いているのは、直接消費者と契約関係に立つ売り主と、実際に広告を出しているメーカーか別人であるという場面だと思うのですが、こういうふうに直接消費者と契約関係に立つ売り主ではない人が広告を出した場合に、その広告に不実告知などがあった場合、そのときに常に取消しを認めるというのは問題があるのではないかというのは、それはさっき伺ったとおり、ごもっともだと思います。

私も一応申し上げておきますと、そのときに常に取消しを認めるべきだと考えていませんし、そうすると、確かに売り主側に広告の調査義務が常に課されることになるというのは、そのとおりだと思います。もともとそういう趣旨で申し上げたわけではなくて、私が申し上げたかったのは、今の「他方」以下の例に挙がっているようなものは、単純に広告主と売り主が違っているという場合だと思うのですね。

ただ、そもそもの問題として、このもとになっている消費者契約法の4条というのは、基本的には勧誘をしている人と売り主が同じであるということを念頭に置いている規定じゃないかと私は理解していたのです。そうだとすると、仮にB案をとったままでも、その売り主が契約締結について勧誘するときに、その勧誘に不特定に対するものも含む広告も入れますということであれば、いずれにしても広告主と売り主がずれるということは、今の4条は基本的にないのではないかと思っております。

そこの部分を排除しているのではなくて、さらによくわからなかったのは、6ページの「他方」の次の文章にいわゆるイメージ広告の話が出てくると思うのですが、これは売り主がつくるイメージ広告なのか、それとも別の人がつくる広告なのかというのも、この文章だけでは判別できないのです。仮に売り主がつくっているイメージ広告で、どこ産の商品ですというときに、そのどこ産という産地のきれいな写真が張ってあるだけのものとか。

あるいは、もうちょっと漠然としたものを多分想定しているのでしょうが、この場合に売り主と広告主が同じで、イメージを出しているようなものであっても、それによって消費者が誤認したこととの因果関係が認められれば、それは単にイメージ広告だからということで取消しが認められないという広告の種類による違いというのは、余り誤解を招かないほうがいいかなと思っています。

先ほど古閑委員が、広告がどういう広告かによって、ベクトルが違うかもしれませんが、私が伺った限りではですけれども、どういう広告まで念頭に置いているのかというのをもう少し整理しないとということをおっしゃっていたと思います。それと全く同じような感触を持っていまして、イメージ広告だからといって、常に排除されるということはもちろんないでしょうから、仮に売り主と広告主が別の場合を排除したいということであれば、それは懸念としてはごもっともだと思います。ただ、だからといって、別のときに常に取消しを認めないというのは問題があるのではないかということになれば、それは1-2の「第三者による不当勧誘」のところで別途手当てすることになるという理解でいいのかなと思うのです。

この6ページで、どういう広告あるいはどういう場合を排除しようとしているのかというのが、まだわからなくて、仮に売り主と広告主が別の場合にまで取消しを広げるのは問題だということであれば、それは今の4条でもそんなに常に取消しを認められることになっていないのではないかと思うのですが、その理解がもしかしたら間違っているのかもしれません。

よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 少し難しい問題ですが、何をしているかという問題と、それを誰がしているかという問題があって、それが少し交錯しているのではないかと思います。

1-1のA案は、先ほど確認したところによりますと、特定の契約をするように働きかけるという行為がされていないといけない。そして、6ページのこの説明は、誰がという部分も少しかかわっていますが、そういった特定の契約をするように働きかけるという行為がされているときは、その中で不実告知等があれば取消しが認められるけれども、そういった行為がまだされていないときには、そもそも取消しを認める場合に当たらないということを書きあらわそうとしていると理解していたのですけれども、それでよろしいのでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 座長にまとめていただいたとおりでございまして、私どもはそういうふうに考えたところでございます。

大澤先生の御質問といいますか、御意見にあえて申し上げますと、不当勧誘規制といいますか、不実告知などを書いている現行法4条のたてつけからしますと、私も大澤先生の御指摘と理解は大体同じつもりでありまして、これは当該事業者がこういう不当勧誘をした場合に、こうしますということを言っているものであり、第三者がやる場合は、5条の規定が適用されれば取消対象になりますよということだと思いますから、B案のような考え方を仮にとった場合のB案というのも、基本的には自分が当該当事者である事業者が不特定多数向けの勧誘も含めて不実告知をやった場合に取消対象になる。4条だけの手当てであれば、そうなると思います。

あとは、5条の手当てとしてどうするかというのは別途検討しないといけません。ですから、今の座長の言葉で言うと、主体の問題と行為の問題と2つあり、主体をどう広げるかというのは5条の問題。行為を広げるかというのは、4条にも5条にも共通するのですけれども、「勧誘をするに際し」と4条で書いてある。ここに手当てを講じるか、講じないかという問題であって、4条だけ例えばB案をとったとしても、第三者の勧誘行為といいますか、広告に不実があった場合の取消対象にはならないという帰結になるのではないかと思います。

それから、イメージ広告の問題でございます。古閑委員からの御指摘もありまして、私ども、もうちょっと整理しないといけないかなと思いましたが、ここでイメージ広告と書いて、私ども、よくなかったかなと御議論を聞いて反省したのですけれども、念頭に置いておりますのは、車はいいものだというものがありまして、そこでいろいろな広告をしているわけであります。タレントさんが出て、車が高速道路に乗ったりするCMが流れるわけでありますけれども、あれはその中で特定の商品に対する働きかけはなさそうだと思いますので、それはこの対象にならないでしょうということであります。

何をもってイメージ広告と言うか。問題は、広告といいますか、コマーシャルも含めてですけれども、その中で特定の商品に対する働きかけのようなものがあって、そこで内容不実が含まれていた場合にどうするかということでありまして、それは別にそれをイメージ広告と言うかどうかの問題ではなくて、そういった情報提供の問題があったということであって、イメージ広告だから適用対象にならないというわけではなく、中身がここで言うところの誘引目的になるのであれば取消対象になるでしょうし、なければなりませんということだと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、柳川委員。

○柳川委員 今の御議論とかなり関係するのですけれども、インターネットが普及・発展してきたことで、消費者に働きかける行為に新たな問題行為が発生しているという1ページの事例はそのとおりで、こういうものをうまくつかまえなきゃいけないということは事実だと思うのです。ただ、そうしたときに、現状の「勧誘」と「広告」という切り分けの部分を、新しいインターネットが普及したり、SNSが出てきたときに、その切り分けの範囲をどういうふうにうまくそこに広げていくかということだと思います。

そうすると、我々が法律の中で「勧誘」と言って枠を括って走ってきたものを、インターネットの取引の中ではどういう言葉でそれをうまく括ればいいかという問題だと思うのです。C案は少し違いますけれども、A案、B案もその括り方の問題のパターンを変えていらっしゃるということで、今まで幾つかの御議論がありましたけれども、A案の「特定の取引を誘引」ということだったり、「不特定多数」と広げていくことで、本当にインターネットで起きている問題のポイントをうまくつかまえられているのかというのが、少し大きな懸念として残っているように思うのです。それが、今のイメージ広告はどうなのですかというお話とか、不特定ということであれば、その中の不特定とは言えない、ある程度特定みたいなことはどうなのですかとか。

私も伺っていても、もともと読んだときに思いましたけれども、「特定の取引を誘引」と括ったことによって、例えば2ページにあります「勧誘」の解釈の「契約締結の意思の形成に影響を」強く与えるような勧め方ということが本当にうまく取り入れられるのか。例えば、先ほどのイメージ広告のようなことで言えば、特定ではないけれども、ある種誤認を強く惹起させるようなことができれば、それは特定という言葉ではなかなか読めなくなってしまう。それを、こういう立法ができた後で、無理に解釈でやっていこうとすると、どんどんそもそもの立法の趣旨とはずれた形になっていくようなことにならないかという懸念があります。

こういうことを考えていくと、私も含めて、今のインターネット時代の広い意味での広告・勧誘の実態とか、あるいは5年後を踏まえたときに、どんな形のものが出てくるかという実態を、まだ余りよく把握できていないように僕は思います。その中では、問題がある行為もあるでしょうし、あり得る行為もあるでしょうし、あるいは問題がないのだけれども、この条文で引っかかってしまう可能性があるようなものが出てくる可能性があります。

それは、もしかすると消費者にとっては非常にメリットがあるのだけれども、条文で引っかかってしまったために出てこなくなってしまう。あるいは、条文をわざと迂回してしまうために変なことが出てくるようなことが起こるかもしれないという気もしていて、問題のある事例を出していただくのはとても大事なことなのですけれども、この種の新しいテクノロジーで新しいことが起きているときには、その新しい実態がどんなパターンがあり得て、どんなことが起きているのかということの事例も出していただけると、この種の議論のワーディングの括り方のアイデアが私自身は出てくるかなと思うので、時間も労力もかかるので大変なことかもしれませんけれども、できればそのあたりの実態をもう少し知りたいなという気がいたします。

それは、その後の話にもかかわることで、「媒介」か「勧誘」かというところも、今の「勧誘」をどういうふうにワーディングするかということで変わってきますし、それからマル1のほうも、「事業者が知っていたとき又は知ることができた」というところは何人かの委員の方が御懸念されましたけれども、「知ることができた」というのは、ここだけ読むとかなり幅が広くて、相当なお金をかけて、時間をかけて知ることができたということも入ってしまうのではないかという懸念がある。恐らく、趣旨としてはそういうことでは決してないということなのでしょうけれども、それを合理的という言葉で括って、それで適切になってくるのかというのは、私自身、ちょっとわからない。

事業者というのは、大きな事業者、小さな事業者、いろいろなパターンがあるのですけれども、こういうことをどのぐらい把握できるものなのかということの実情がもう少し情報としてあると、もう少し実態を適切につかまえるワーディングができるのではないかという気もいたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

この専門調査会の中でもそうですが、専門調査会が始まるまでの間も、裁判例だけではなく、相談例、その他各業界の方々からのヒアリングも含めて、そういった事例を集めるように努力していただいたところでして、資料には挙がっていませんけれども、そういったものを踏まえたものだろうとは思います。ただ、なおワーディングについて詰めるためには、もう一度そういった資料に立ち返る必要があるのではないかという御指摘を受けたということかもしれません。

消費者庁のほうからはいかがでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 どうもありがとうございます。柳川先生の御指摘、いつも私ども緊張感を持って聞かせていただいております。

実態ということでございますので、確かにそれを言われますと返す言葉がなくて、検討しなければならないと思います。5年後の実態というと、私どもも想像つきかねるところもありますけれども。

例えばイメージ広告の問題とかございましたけれども、言葉がひとり歩きするのは怖いですので、その辺はちょっと整理したいと。

インターネット取引については、インターネット取引の進展というのが念頭にはあります。消費者契約法の施行後の大きな事情の変化として、インターネット取引の進展というものがございますので、今回の議論はもともとそれを発端に置いていたということは、否定できないところでございます。他方で、インターネット狙い撃ちみたいな議論というのはどうかという御指摘もございました。

そこは、私どももその御指摘を踏まえて、なるほどと思うところもございましたので、そこで原点に立ち返ったというか、ツールを問わずに、働きかけているところに着目してはどうかということで、今回、A案でお示しさせていただいたところでございますので、むしろインターネットだけではないのですということではございますけれども、ちょっと検討させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 4点、申し上げたいと思います。

まず、1点目です。1-1の「勧誘」要件の在り方に関する意見です。先ほど申し上げましたとおり、不特定の者に向けられた事実に反する広告等に基づいて、消費者が誤認により意思表示をしてしまったという被害事案は現に多く存在致します。現時点でこの問題に対処する必要性がある、放置することはできないということを、あらためて申し上げておきたいと思います。ワーディングについては、A案のバージョンアップなど、より広く賛同いただける御提案をいただけたらと思います。いずれにせよ、この問題を先送りすることはできないと思います。それが1点目でございます。

2点目です。資料1の6ページ目の家電メーカーが作成したカタログに関する記載部分について、前提となる考え方を確認させていただきたいと思います。家電量販店さんがみずからが売る商品の性能とか内容の説明のために、家電メーカーさんが作成されたカタログを使用して「こういう商品です」と御説明されて、それに事実に反する点があったときには、不実告知に該当するということは間違いないかと思います。すなわち、家電メーカーさんが作成されたカタログに不実のことが記載されている場合、家電量販店さんと消費者との契約において、およそ不実告知規定の適用がないといったことはないと思います。念のため、その点を確認させていただきたいと思います。それが2点目でございます。

3点目です。1-2のマル1に関する意見です。現代社会において、契約の当事者と情報提供の主体が異なるケースというのは、先ほどからの議論でも出てきておりますとおりございますので、「第三者による不当勧誘」という類型について、やはり手当てが必要であると思います。この点をあらためて申し上げたいと思います。これが3点目でございます。

最後、4点目です。その1-2のマル1の規定内容に関する意見と質問です。これまでの議論で、消費者契約の相手方である事業者が、当該消費者が第三者の不当勧誘行為に起因する誤認等に陥った状態で意思表示をしているということを認識しているという事案については、取消権を認めてしかるべきであるという結論について、おそらく争いはないのではないかと思います。悪意と同視できる重過失の場合もそうではないかと思っております。

問題は軽過失の事案ですけれども、今回の民法改正で、第三者の欺罔行為によって錯誤に陥って意思表示をした被害者について、契約の相手方が悪意・有過失のときには取消権を行使できることが明定されることが議論の前提になっているかと思います。

この点、第三者の不当勧誘行為によって誤認・困惑に陥って意思表示をした消費者のケースについて、相手方が有過失のケースを区別する合理的な理由があるのでしょうか。むしろ有過失の場合は含めないのだというご見解の場合には、詐欺の場合の取扱いと区別することにどういう合理的な理由があるのかという点について、お伺いしたいと思います。利益状況としては同じではないかと思います。区別するというご見解については、それがどういう理由に基づくのかということについて、お教えいただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 2点目の確認と、今の4点目の御質問について、消費者庁のほうからお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、2点目の山本健司先生の設例によると、量販店さんがパンフレットを作成して、そこに不実があった場合は入るのかということでよろしいですか。

○山本(健)委員 家電メーカーさんが作成されたカタログを使用して、家電量販店さんが販売する商品を説明した場合でございます。

○消費者庁加納消費者制度課長 その説明したことの態様によるのですけれども、それはむしろ現行法でも、パンフレットを使用して説明したというときに、その個別の説明があって、そこで働きかけがあったということであれば、むしろ現行法でも勧誘に入るのではないかと思います。

それから、4点目は、有過失を含むか含めないかということで、まず私どもとしては、今回の民法改正を踏まえると、それに合わせるというのが1つ素直な考え方かなと思いますが、今日の御議論では、事業者側の阿部委員とかから悪意に限るべきという御指摘があったということでありますので、そこはむしろ委員で御議論いただいたほうがよろしいのではないかという気がいたしますが。

○山本(敬)座長 今の4点目、つまり1-2の点については、先ほど少し話も出ていましたけれども、前提として、1-1の勧誘ないしは特定の取引を誘引するという行為を第三者がしたことが前提になると思います。これで、まず第1の範囲限定がされると思います。

その上で、第三者がその中で不実告知等を行った結果、消費者が誤認して契約を締結したという場合において、現在の1-2のマル1では、販売をした事業者が、消費者がそのような誤認をして意思表示をしていることを知っていた、ないしは知ることができたという要件設定になっています。資料の説明にもありますように、単にそのような不実告知等があったというだけではなく、それによって消費者が誤認して意思表示したということの認識ないしは認識可能性が要求されているというのが、もう一つの絞り込みがされている点だろうと思います。

民法改正との関係では少し難しい問題があるのですが、民法で規定されているのは、第三者が詐欺を行った場合です。わざわざ第三者が詐欺を行う場合は、何の前提もなく起こり得ることではなくて、その契約を行うことについて第三者が何らか利害関係を有しているからこそ、欺罔行為をわざわざ行うのだろうと思います。ですので、事実類型として、おのずと限定がかかっているように思います。

それに対して、ここで問題にしている誤認類型に関しては、第三者が不実告知等をするだけであれば、第三者にそのようなことをするインセンティブは、広くあるかもしれません。先ほど言いましたように、特定の契約を締結するように働きかけるという利害がどれだけ第三者にあると言えるか。それが同じように広くあり得るということであれば、何らかの限定が必要になってくるかもしれませんが、そこで実は一定の場合が想定されていて、そのような場合であれば、消費者がそのような誤認をして意思表示していることを知っていただけではなく、知ることができた場合に、民法と同じように取消しを認めても、問題はないことになるのではないかと思います。

どれだけ問題となる場面が合理的な範囲に限定されているのかということが問題となるわけですが、1-2で「第三者」と書くだけでも、そういった限定がおのずとされているというのであれば問題はありません。しかし、それだけでは少し広いということであれば、さらに絞り込む必要があります。その場合には、絞り込み方はいろいろあるかもしれません。「第三者」の範囲をさらに限定するという方法もあれば、少なくとも「知ることができた」というのは広過ぎるので外してほしいという意見もあるところだろうと思います。この点について、ご意見を出していただきませんと、さらに案を詰めることができないのではないかと思います。

先ほどからの議論では、1-1についても、とりわけC案に対する御批判が強かったのですが、B案を支持するという方もおられますけれども、A案を支持する、ないしはA案をさらに修正していく必要があるという御意見も出ていたように思います。ただ、A案及びB案について収れんしませんと、結局改正できないことになり、結論としてはC案になってしまいます。どなたも支持しておられないかもしれないC案が、結論としては残ることになります。

そうならないようにするためには、何らかの方向で改正案を成案として合意する必要が出てきます。そのような方向に向けての御提案ないしは御意見をさらにいただければ、大変ありがたく思いますが、いかがでしょうか。

石戸谷代理。

○消費者委員会石戸谷委員長代理 「勧誘」概念については、第8回で、今回のもので言えばB案でほぼコンセンサスが得られたのかなと思ったのですけれども、さらにきっちり検討してということで、A案、B案というのが出ているのだと思います。A案もB案も、目指しているところはそんなに違わないのではないか。書きぶりの問題が大きいのかなと思っておりまして、A案の場合に、さらにプラスしてというのが出てくるというのは、新たな用語を使って目指すところをあらわそうとしているので、なじみがないために、イメージがはっきりわかないということがあるのではないか。

B案については、ベースが現在の解釈で、「勧誘とは消費者の契約締結の意思の形成に与える程度の勧め方をいう」というのをベースにして、その上で、「一般的に広告、チラシとか、そういうものは当たらない」というこれまでの解釈に対して、判決や何かで、相談事例でもありますけれども、そういうものであっても、特定の消費者の契約の意思締結の形成に与える程度に影響がある場合があるのだというのを当該勧誘を全体として見て、判断をくだしているというところをはっきりさせるために、括弧書きで「不特定の者に対するものも含む」と言っているわけなので、「勧誘」概念の今までやってきたものが、そのままなじみがある形で使えて、今回、何が変わったのかというのが括弧書きではっきり入るということがあります。

ですので、目指しているところがそんなに違わないのであれば、私はB案で行くというのがよいのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 阿部委員。

○阿部委員 先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、A案ではなくて、「当該事業者との特定の取引を勧誘するに際し」という言葉のほうがすっきりとして、今、懸念されているようなことが解消できるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 それは、現行法の「勧誘」とどこが変わるということでしょうか。

○阿部委員 まさに、特定の取引を当該事業者との間で結ぶということについての、今の個別の働きかけ以上に、例えばネット広告とか特定事業者の特定商品のチラシみたいなものは入ってきます。

○山本(敬)座長 これは誤解かもしれないのですけれども、現行法では「勧誘」とのみあり、それに修飾句がつけば、通常はさらに限定したと理解されるのではないかと思いますが、むしろ広げるために修飾句をつけるという御趣旨ですか。

○阿部委員 例えばC案のように「勧誘」という解釈を変えることを前提にした上で、その限定をするということです。

○山本(敬)座長 わかりました。もしさらに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 今の阿部委員の御発言は、B案でもいいじゃないかという御発言と受けとめていいのですか。

○阿部委員 いえ、A案の修正です。「当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為」というのは、非常になじみがないというか、わかりにくいので、むしろそこは「勧誘」という言葉を残しておく。ただ、「勧誘」については、C案のように解釈に委ねられるという前提です。

○消費者委員会河上委員長 そうすると、不特定の者に対するものも含んだ意味での勧誘であるということであれば、B案のこの表現を使ってもいいわけですね。

○山本(敬)座長 河上委員長がおっしゃっているのは、仮に「当該事業者との特定の取引を勧誘するに際し」と書くにしても、ここで言う「勧誘」の後ろに「(不特定の者に対するものを含む)」と括弧書きを入れるのであれば、意図しておられることを少なくとも変えるものではないのではないかという御指摘でしょうか。

阿部委員。

○阿部委員 もう少し話を限定したい。ある特定の事業者と特定の消費者との間の取引があって、そのとき、まさに今の「勧誘」というものについての解釈が広げられていく。イメージできるのは、まさに量販店のチラシみたいなものまでは入るということです。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 わかりました。特定の取引という部分での限定が1つ入るということであればいいということで、B案の中の「消費者契約の」という前に「特定の取引の」という限定があればいいということだろうと理解しました。何か着地点が見えそうな感じがしました。

○山本(敬)座長 もう一言だけ申し上げますと、「当該事業者との特定の取引を勧誘するに際し」という限定をする必要があるという御趣旨はわかりました。ただ、そこで残る「勧誘」という言葉の意味は、結局はC案と実は同じで、そして先ほど少し申し上げましたように、成案が得られない場合には解釈に委ねられ、少なくとも不特定の者に対するものは排除しないという解釈が行われていくことになる。これは、阿部委員が今、言われた案でも、そこで言う「勧誘」の解釈として今後残される。そして、逐条解説で、恐らく不特定多数の者に対するものは排除しないということが書かれることに結局なるのではないかと思いますが、そのような理解でよろしいでしょうか。

ほかに御意見あるいは御質問等があればと思いますが、いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 私は、B案でなぜだめなのかがまだ理解できていないのですが、B案で「勧誘」の後ろに「不特定の者に対するものを含む」というのだけで漠然としているという御懸念を伺っていて、そういう懸念があるのはわかるのですが、これでなぜだめなのかというのがさっきから気になるのと、A案との違いがそんなにあるのかというのが最初からの疑問なのです。仮にB案だけでは、さすがに漠然として困るということがある場合にも、A案で「特定の取引を誘引する目的」と書いているのが、なぜ目的を判断基準にするのかが気になっています。

つまり、もともと第8回のときの甲案で念頭に置かれていたのは、恐らくこれは現行法の解釈そのものと同じですし、これまでに別のワーキング・グループなどでもあった提案と全く同じだと思うのですが、2ページの下のほうの注の直前に書いているところですけれども、「消費者の意思形成に直接的に働きかけるものであり」ということだったと思うのです。意思形成に直接働きかけるというのは、主観的に判断するのか、客観的に判断するのかという問題はありますが、仮にこれを結果として消費者の意思形成に働きかけるようなものであれば、それは広告でも入るのだということだと理解すれば、A案の「誘引する目的」というものよりは、正確に言うと誘引する効果を持つような行為と本当は言うべきなのではないかと思っています。

個人的には、今までの解釈などを踏まえて、かつA案との違いがいまだにそんなにあるのか、よくわからないということがあって、B案のままでいいのではないかと思いますが、仮にA案のように何か限定したいというときに、少なくとも目的の有無で判断するのは問題があるのではないか。そういう意思形成に働きかける効果のある行為とか、そういう客観的に判断できるようなメルクマールであれば、まだ理解できるのですが、今の「目的」というのをどういうふうに判断するのかがわかりづらく、場合によったら事業者の主観的な目的というのを調べなきゃいけないということになるので、これは反対します。個人的には、B案で何か問題があるのかと考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

さらに御意見等があればと思いますが。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 1-2のほうは、大体落ち着いたということでよろしいでしょうか。まだ落ち着いていないのでしたか。

○山本(敬)座長 落ち着いているというようにはまだまとめ切れないのではないかと思いましたが。

○消費者委員会河上委員長 私は大体方向性が決まったかなと思いました。

それで、1-2のマル1ですけれども、基本的には「事業者が知っていたとき」で限定するか、それとも「知ることができたとき」を加えるかというあたりだと思いますけれども、普通に考えれば、事業者の主観的態様はわからない。外形的に見て、この人が知っていてしかるべきだと評価できるような客観的な事情があるということにならないと、この要件は満たせないはずです。その意味では、知り若しくは知り得るべきときという一つのまとまりで理解するというほかないのではないかと理解しておりました。

あと、集団訴訟でいろいろな形での差止めとか、そういうことをやるようになったら、個別の状況下における主観的対応というのはだんだん後ろに退かざるを得ない。今回の原案、全てそうですけれども、事業者の行為態様に着目して、そこを客観化するような形で要件を立てようという原案として出されている方向が正しいのではないかと理解いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

1-2に関しては、先ほど私ばかり申し上げてしまいましたが、第三者が不当勧誘行為をしたことが要件になっているということ。そして、そこで言う不当勧誘行為とは、先ほどA案、B案等で議論された勧誘行為であるということ。そして、そのような行為がされたという場合がどれだけ特定して理解できるかということ。そこで特定して理解できるのであれば、第三者が知っていた場合ではなく、知ることができた場合も取消しを認めてもよいということが出てくる。そういう順序になっているのではないかと思いました。

1-1についてかなり御議論いただきまして、何らかの方向性が少し見えつつあるところのように思います。それを踏まえて、なお「知ることができた」というのでは広過ぎると考えるかどうかというのが1-2のポイントかと思います。この点について、もう一息、さらに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 ありがとうございます。

何度も申しわけないのですが、この「知ることができた」あるいは「知っていた」の対象というのは、単純に第三者が不当勧誘をやったということだけではなくて、それによって消費者が誤認または困惑して意思表示した、そこまで含めているということだと思うのですが、この16ページを見る限り、そうだと思うのですが、仮にそうであるとすれば、有過失の場合を含めるという13ページマル1の案でそんなに広がるのかなと思っていますので、私自身は1-2のマル1、13ページの案でそのままよろしいのではないかと思っています。

○山本(敬)座長 ほかにいかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 1-1の論点ですけれども、現行法に比べて、勧誘に不特定の者に対するものを含むということを明確にするという意味で、少なくともB案とし、そのうえで、できれば、より場面を分りやすく書きくだしたような形でのA案修正のような条文化の努力を継続して頂きたいと思います。できればA案修正での取りまとめを努力していただいて、もしそれが難しいということであれば、B案での取りまとめをお願いしたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 先ほど案として出ていました「当該事業者との特定の取引を勧誘するに際し」という要件としてA案を修正し、しかし、そこで言う「勧誘」とは不特定の者に対するものを含むという解釈をするという、これがA案なのか、B案の修正なのか、どちらとも言いかねるような案についても許容範囲内にあるという御理解なのでしょうか。

○山本(健)委員 A案とB案を融合させたような御意見なのかなと思うのですけれども、検討の対象にはなりえると思います。ただ、その場合に「勧誘をするに際し」という言葉が残る場合には、解釈上の疑義が生じないように、「不特定の者に対するものを含む」といった文言を入れた上で、「勧誘」に関して何か合理的な字句を付けるという形での対応をお願いしたいと思います。

○山本(敬)座長 わかりました。どうもありがとうございました。

柳川委員。

○柳川委員 先ほど実態をというお話しして、多大な労力をお願いする気はないのですけれども、ここでまとまめないとということもわかるのですけれども、広げることに関して、そのことによって、本来あるべき活動がどの程度阻害されるのか。そのことによって、問題のない行為に一体どのくらいの実態のコストが追加でかかるのかということの、ある程度慎重な検討はしておくべきではないかと思います。特に、こういう新しく動いているテクノロジーにおいて、そこにある種の阻害要因にならないのかということは、後でも構わないのですけれども、どこかでちゃんとチェックしておかないと、結果的に問題を起こすという懸念があります。

なので、そのことは事業者に近い方も委員でかなり出ていらっしゃるので、ここにいらっしゃる方がそれでいいと言えばいいのかもしれませんけれども、私はそこは少し慎重に。今、それがないから反対する気は全くないのですけれども、そこでは事後的でも構わないので、それで問題がないかどうかという検討だけはしていただかないと、ちょっと怖いなという気がいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。増田委員。

○増田委員 知っていたという部分ですけれども、知っていたか、知り得るべき状況にあったかというところの判断は、外からはできなくて、事業者自身の主張しかないと思うのです。そうしたときには、過去にこういうこともあって、そのときにあなた様に伝えていましたねということとかいろいろな条件の積み重ねなどによって話し合いをするというのが現実なので、知っていたということだけでは足りないと思います。知り得るべき状況にあったということで進めていっていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

先ほど「知り得なかった」ということを入れることについては慎重にという御意見が古閑委員から出ていたように思いますが、いかがでしょうか。

○古閑委員 先ほど事務局のほうから、知っているとか知り得る主体が誰なのかという御説明をいただきましたが、先ほどの御説明だと、例えば店頭における店員さん個人は、入らないのかなという印象を受けました。それがそのとおりなのであれば、個人の店員さんがそこまで考えるべきだった、知るべきだったということをもって責任を負うことにはなっていかないので、いいのかもしれないですけれども、第三者による不当勧誘行為があったことと、誤認・困惑が生じているということの2つとも、知っていたとか知り得たことの主体は代表者となるのでしょうか、それともある程度意思決定権のある方も含まれるのでしょうか。

共有もかなり広く共有されている場合ではないということであれば、そこを知り得るというところを含めるというのはあるのかもしれないですけれども、今、クチコミの話だけが議論に上がってしまいましたけれども、前回、私が申し上げたのは、クチコミに限らず、例えば芸能人の方とかが、これ、本当にやせるよ、みんな買っておいたほうがいいよとテレビで発言することがあると思うのですけれども、それは特定の取引を誘引しているのかなという気がしますので、それを見てしまったということであれば、それも対応しなければならないとか、そんなふうに広がるのだとすると、確かに知っている、知り得るというケースに当たってきますけれども、コントロールできないのに責任を負うというのは、引き続き違和感があります。

あと、1-1についても、済みません、せっかくの機会なので。先ほど柳川先生からもお話ございましたけれども、いろいろなパターンがあると思います。先ほどイメージ広告ということだけだと、誤解があるといけないので、整理してくださるというお話がありましたけれども、整理をちゃんとやっていただいて、支障が出るのか出ないのかという、整理した後の状態を見ないと、今のところ、「これでまとまる方向ではないでしょうか」と言える状況ではないと認識しております。

○山本(敬)座長 わかりました。

1-2に関しては、先ほどの議論によりますと、少なくとも特定の取引を誘引する目的をもってする行為というものには、今の挙げられた芸能人の評価をするような行為は入らないということで説明されていたと思います。ですので、そこから先の取消しの問題にはいかないということではないかと思います。もちろん別の切り口としては、1-2で「第三者」と言っているけれども、それは販売する事業者と一定の関係にある者に解釈上限られる。したがって、芸能人のような場合は、特定の関係があるときを除いて、入らないという解釈がされていくことも十分可能性はあったと思いますけれども、少なくとも今、挙げられている例で取消しが認められるという前提での議論はされていなかったと理解しています。

後藤代理。

○後藤(巻)座長代理 今、「知ることができた」ということに関して、それが要件になるのかどうかというところで議論になっていて、先ほど柳川委員からも、知るというのはお金も時間もかかるというお話もあったと思うのですけれども、お金も時間もかかるという点について考えると、民法のほかの場面でも、「知ることができた」という過失で非難することがいろいろな場面であると思うのです。

そのときに、知ることができたかどうかということは規範的な判断というのでしょうか、どこまでもとにかく要求して、すごく高いお金やすごく時間をかけて知る義務があると、そういうことではなくて、常識的な範囲で調べる必要があって、その調べる義務というのは、個々の事案に即して、そんなに無理なものを強いるものではないのではないか。もしそういうことだとすると、ここで知ることができたという場合に取消しができるということにしても、割と常識的なところにおさまる結論が出てくるのではないかという印象を持ちます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員。

○古閑委員 たびたび申しわけありません。

今回、1-2は事例も消えまして、もともと第三者の行為にも一定程度の規制はあったわけですけれども、広げるための立法事実が何なのだろうかというのが、私はちょっとよくわからないでおります。確かに芸能人も気にしなくていいのだ、クチコミも気にしなくていいのだということでしたが、私が今ここで、気にしなければいけないものを挙げることができないからといって、立法事実がないのに広げる必要もないと思います。逆に、この間の劇場型みたいなものは、別にここで広く広げなくても処理はできると思いますし、事例も消えた今回、どういったことを気にして広げなければいけないのかというところは、ちょっと確認させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 今の点はよろしいでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 あえて消したということではなくて、前回、第9回のときに御紹介した、いわゆる劇場型勧誘などの事例を念頭に、こういうマル1のような規律を設けてはどうかということで、私どもとしてはお示ししたつもりです。その考え方は、冒頭でもちょっと触れたつもりではありますけれども、消費者契約法の規律を適用すると、委託関係の存在というのを証明しなければいけないということでありますけれども、そういった劇場型勧誘のような事案では、委託関係の証明というのは消費者にとって非常にハードルが高いでしょうと思われますので、そういったことを検討してはどうか。

逆に、民法の詐欺でいけるのではないかということもあるかもしれませんが、他方で詐欺取消しといった形での取消し、救済を求めようとしますと、欺罔の故意というものの立証が消費者にまた別途必要になってまいりますので、それは非常にハードルが高いでしょうということで、消費者契約法でそこの要件を撤廃した不実告知というのを入れられているということだと思いますので、不実告知を活用した消費者契約法の適用による救済を図っていくというのが問題意識でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 今、念頭に置かれている事例が、いわゆる劇場型勧誘のようなものであるというのは、確かに前回、この場面を議論したときにはそうだったと思うのですが、今日の議論を伺っていて、それだけじゃない場面が多分あるのではないかと思っております。今日、広告主と売り主が別の場合という話が出てきたと思うのです。そのときに、その広告主の広告の内容に不当なものがある。そのときに、売り主が、いや、そんなものは知りませんよと言えるかどうかというときに、基本的に、もちろん売り主にそこまでの重い広告の調査義務を課すということは慎重でないといけないと思います。

今までの過去の不法行為の判例などを見ていても、例えば新聞社がマンションの広告を掲載したところ、そのマンション会社がたしか倒産したという話だったと思うのですが、倒産するような、今にも潰れそうなマンション会社のマンションの販売広告を新聞社が掲載したときに、その新聞社が法的責任を負うかというのが問題になった判決が平成の頭のほうにあったと思います。そのときに、新聞社がその広告内容の真偽について調査すべきだったかどうかというのが不法行為で問題になったと思います。

結論としては、一般的にはおよそ調査義務というのは認められないという形で判決が出ていますので、今のように第三者が出した広告に誤りがあった、あるいは不実告知があった。そのときに売り主がすごく高いコストをかけて、それこそ調査をするということは、恐らく今の解釈でもそれは要求されないと思いますが、今日、私が最初のほうに申し上げましたように、広告主と売り主が全く同じ人であるという場合ばかりではないと思っていまして、特に、インターネット取引なども、今の状況を見ていましても、そうでない場合は結構あると思うのです。

そのときに、第三者による不当勧誘の規定というので、場合によっては補っていかなきゃいけない場面があるのではないかということを考えたときに、広告内容が不実だということを知っていたときに限定するということが果たしていいのかというのが気になるところです。

仮に、この知ることができたときという、いわゆる有過失要件を入れたとしても、先ほど後藤先生がおっしゃっていましたように、今の調査義務の判決などを見てもわかるように、そんなに広告内容の調査義務などを売り主に対して高いものを課すことにはならないのではないかと思うので、心配されるほど、場面は恐らく広がらないのではないかと思っています。しかし、劇場型勧誘の場面だけではなくて、今、言った広告主と売り主が違っているという場面を、今日の議論を伺っていて、多少は念頭に置かなきゃいけないのではないかと思いましたので、結論としては、さっき申し上げましたように、有過失の場合を要件に入れていいのではないかと思っていますし、それによって、物すごく高い調査義務が課されるということにはならないのではないかと考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、今日いただきました御意見を踏まえまして、さらにと言いましても、次回は中間的な取りまとめに向けての審議になりますが、そこで一定の考え方をお示しして、さらに検討させていただければと思います。ありがとうございました。

≪3.不利益事実の不告知(不実告知型)/重要事項≫

○山本(敬)座長 続きまして、2-1の「不利益事実の不告知(不実告知型)」と2-2の「重要事項」についての検討に移りたいと思います。

まずは、消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、御説明いたします。

まず、24ページでございますけれども、不利益事実の不告知というもの。現行の消費者契約法4条2項にありますけれども、これの検討をどういうふうにしていくかという方向性につきまして、前回、第8回での御議論を踏まえますと、不実告知型と私ども、仮に呼んでおりますが、いわゆる先行行為がはっきりしているケースと、不告知型、先行行為がはっきりしないケースに分けて、裁判例を整理しますと、こういう2つのパターンに分かれるのではないかという理解が前提にあるわけですけれども、その方向性自体には異論はなかったと承知しておりまして、今般、そういう観点からペーパーを作成しております。それが24ページの御説明でございます。

25ページに行きまして、2-1、不実告知型でございますが、事例は先般御紹介した裁判例などを御紹介しております。

26ページの(1)、前回、第8回での議論の概要というところで、「イ 意見の概要」と書かせていただきましたが、概括しますと、不実告知型と言われるものについては、先行行為についてはっきりしているということでありますが、不実告知と同視できるということで、現行法の不実告知とのバランス上、故意の要件をなくしていくという御意見もございました。他方で、不実告知との関係について、どのように規定するかは詰めなければいけませんねという御指摘もあったところでございます。

26ページの「(2)考え方」というところから27ページについてでございますけれども、「ア 制度趣旨からの検討」ということで書いております。

不利益事実の不告知でございますけれども、故意要件の趣旨と書いておりますが、不利益事実の不告知でございますので、事業者に積極的な行為を要求すると、規範としては機能いたします。そこで、取引の安定性に配慮しつつ、行為の悪性が高いものを契約取消しの対象とするということが考え方の背景にあったのではないかと思います。

「しかし」と書いてあるところでありますけれども、この不実告知型は、消費者にとって有利となる先行行為だけを告げて、その裏返しとして、表裏一体の不利益な部分を告げないということでございます。有利なところだけを告げるということからしますと、それをもって、消費者としては当該契約について意思形成に誤解が生じるというところでございます。そうしますと、これについて不実告知と同様に故意要件はなくして、先行行為という積極的な行為が既にありますので、それによって誤認したと見ることができるのではないかということでございまして、そういう考え方があり得るのではないか。

故意要件があることによる問題として、「まず」という段落、それから「また」という段落で2つ書いてございます。

「まず」という段落でございますけれども、不利益事実について、故意がない、善意であるということによって、契約の取消しができなくなるわけでありますけれども、裁判例などを見ておりますと、善意である場合には取消しが認められないことになるわけでありますけれども、説明義務違反(債務不履行)を理由として契約の解除を認めるという処理をしているケースがございます。こういったケースを見ますと、実質的な処理としましては契約の巻き戻しを認めていると見ることができようかと思いますので、価値判断としては契約の取消しを認めるべきと裁判所としては見たと見られるのではないかと考えます。

また、27ページの一番下の段落でございますけれども、故意の立証は消費者にとっては非常に困難であるということで、特に消費生活相談の場においては、この要件がネックになっているというところは、私どもとしては踏まえなければならないと思うところでございます。

28ページの「なお」というところに幾つか書いてございますけれども、裁判例を概括しますと、先行行為がはっきりしている場合の故意の認定というのは、比較的アバウトといいますか、ラフといいますか、ちょっと語弊があるかもしれませんけれども、そこはあっさり認定している裁判例が多いのではないかと思われますので、裁判例においても先行行為というところ、それから、それにもかかわらず、不利益事実を告知しないというところが重視されているのではないか。

逆に言うと、故意要件というのは、裁判所においても余り厳密に審理・判断されていないのではないかと見られるところでございまして、そういったことから、この不実告知型と言われるものにつきましては、不実告知と同視しまして、主観要件については削除していくということが考えられないかということでございます。

では、具体的に規定の仕方をどうするかということにつきましては、「故意に」という要件を削除して文言を維持するということもあろうかと思いますし、さらには、28ページのイの「しかし」というところに書いているところでありますけれども、利益となる旨を告げるという先行行為と告げないという行為は不可分一体の行為だと捉えますと、利益となる旨を告げる行為そのものを不実告知と同視して、4条1項において規定することも考えられるところでございます。

ただ、そうした場合に1点注意する点があるのではないかと思って、ウで4条2項ただし書というのを書いてございます。4条2項ただし書は、事業者が消費者に対し不利益事実を告げようとしたにもかかわらず、消費者が拒んだ場合には取消しに当たりませんという趣旨の規定でございまして、この規律、ただし書をどのように処理するかというところでございます。

29ページの「しかし」に書いておりますのは、1つの考え方でありますが、不実告知と同視していくということだとすると、このただし書きに関する規定は不実告知並みにしていくということで、要らないという考え方もあり得るのではないかということで書いております。ここは御議論いただければ、それをもとに検討したいと思います。

続きまして、2-2の「重要事項」、30ページ以下のところであります。

「重要事項」につきましては、現行法の4条4項1号、2号という形で列挙されているところでございますけれども、事例を幾つか御紹介しております。こういった事例を念頭に、裁判例でもじわじわと適用範囲を広げていると見られるところでございまして、そういったことを踏まえつつ、一定の措置を講ずる、「重要事項」の概念を拡張するということを検討していく必要があるのではないかと思うところでございます。

それで、具体的にどうするかということでございますけれども、31ページの「(1)第8回での議論の概要」を書いておりまして、当時は甲案、乙案という形で、例示だと位置づける考え方、あるいは限定列挙としつつ、各号を追記していくという考え方、両方あるということで御提案をお示しいたしました。

それに対する「意見の概要」としましては、そういった例示にしていくということに賛同する御意見もございましたが、その際にどの程度適用範囲を明確化していくかというのが検討課題であるということが意見として出されたと思います。

他方で、限定列挙として明確化していくということもあり得るということでございまして、予測可能性の観点からは、そういった規律の書き方が望ましいのではないかといった御意見もございました。32ページに、「乙案については」ということで書いているところでございます。

あと、特商法との関係でございますけれども、特商法の不実告知取消しの重要事項の考え方というのも御紹介いたしまして、特商法並びに消費者契約法に規定を設けているということについてもお示しいたしました。それについて、特商法並びに変えていくということについても賛成できるという御意見がございましたが、あとはいわゆる受け皿規定といいますか、バスケットクローズのような規定をどこまで設けるかということについては、まだ意見が分かれるところではないかと思います。

それで、33ページから考え方をどうするかということで、今回、ア、イ、A案、B案ということで2つお示ししております。

まず、アのA案でありますけれども、これは各号を追記して限定列挙をさらにふやしていこうという発想でございまして、予測可能性といった観点からは、こちらのほうがすぐれているのではないかと思われるところであります。

それは、結局どういう事例を念頭に置きつつ、規定を設けるかという話になるわけでございまして、戻っていただきますと、30ページから事例を幾つか掲げておりますけれども、2-2-1から2-2-5までは「契約の締結を必要とする事情」と見られる、そこを念頭に置かれている事例ではないかと思いますので、2-2-1から2-2-5あたりを拾うということであれば、「契約の締結を必要とする事情」という文言でカバーされるのではないかと思われます。その点を34ページあたりに書いております。

ただ、「もっとも」と書いておりますが、2-2-6、2-2-7の事例でございます。2-2-6はファッションリングの購入の事案でございますけれども、市場価格が本当は安いにもかかわらず、高いと誤認した。だから、購入契約をお得だと考えたという事例でございますけれども、ファッションリングの必要性に関する事情とはちょっと言いにくいのではないかと思われるところでございまして、こういったものを対象にしていこうとするならば、別途の書き方を考えなくちゃいけないということでございます。

要するに、契約が自分にとってお得かどうかということでございますので、34ページの「もっとも」の段落の下から5行目に書いてあるところですけれども、2-2-6を念頭に置くならば、取引条件が有利かどうかという事情という書き方が考えられるところでございます。

ただ、2-2-7は連帯保証契約をした場合の主債務者の支払い能力について誤認があったということでございます。そうしますと、連帯保証契約を締結することが自分にとって合理的かどうかということについて、誤認があったと見られるのではないかということでございまして、34ページの「もっとも」の段落の下から3行目ぐらいですけれども、2-2-7を念頭に置くと、契約の締結が合理的と認められる事情に関する事項という形で拾っていくということが考えられます。こういった考え方について、また御議論いただければありがたいなと思います。

もう一つは、例示列挙としていくという考えでございまして、前回の御議論では、例示列挙としていくということでもよいのではないかという御意見もございましたので、それを念頭に書いてみたところでございます。ただ、例示列挙する場合に、裸でいきなり消費者契約の締結に重要な事項という形で書くというよりは、何らかの列挙をしながら、そういった例示であることを明確化するといった規律を設けるほうが、予測可能性という観点からはすぐれているのではないかと思われるところでございますので、そういったことをお示ししております。

以上が「重要事項」でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。資料2の3ページ以下を引用しながら意見を述べさせていただきます。

まず、2-1の点につきましては、資料1の御提案に賛成いたします。

以下、理由です。

不利益事実の不告知のうち不実告知型は、利益となる旨だけを告げる行為、それ自体が不実告知とも言い得る類型でございますので、不実告知と同様に故意要件を不要とすべきであると考えます。実際上も、故意要件があるがゆえに、不利益事実の不告知の規定は、実務的に非常に使いづらいものになっております。

具体的な対応としては、現行法の不実告知とあわせて、4条1項に規定することが適当であると考えます。

なお、不実告知型は、利益となる旨だけを告げる行為それ自体が不実告知とも言い得る類型でございますので、不告知という不作為を規律する4条2項ただし書きに相当する規定は不要であると考えます。

次に、2-2の「重要事項」に関しては、B案に賛成いたします。また、「契約締結の必要性」以外の列挙事由を定めることにも賛成いたします。

以下、理由です。

契約動機など契約締結の前提となる事項に関する不実告知等の紛争は極めて多く、特定商取引法に倣って、かかる紛争に消費者契約法の取消権が問題なく認められるようにすることは極めて重要であると考えます。

問題は具体的な対応の在り方ですけれども、適用範囲の明確化という観点に配慮して、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」など、できるだけ具体的な事由を列挙事由に付加することは有用と考えます。

もっとも、立法技術との関係で全てのケースを列挙しきれるかは不透明でありますし、将来の新しいタイプの不実告知にも対応できるようにしておくことは、被害の後追いにならないという観点から有用であると思います。そのためには、具体的な列挙事由を増やした上で、それらが例示列挙であるとしておく対応が最も望ましいと思います。

また、例示列挙としても、列挙事由に比肩するような「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」という要件を満たす必要がある以上、無限定な拡大のおそれはないと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、阿部委員。

○阿部委員 2-1のように、不実告知型について不告知の故意要件を削除するのであれば、「重要事項」については現状維持か、あるいは前回の乙案のままという提案をしたいと思います。なぜならば、「重要事項」につきまして、A案の2つ目、3つ目については、非常に外延が画しにくく、範囲が不明確になる。それに比べて、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」、これは割と明確に画せると思いますので、ここまでを「重要事項」として限定列挙の対象として考えていただいていいと思います。それを前提とするのであれば、2-1についてはこのような形になっても構わないと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。河野委員。

○河野委員 ありがとうございます。

まず、現在の不実告知型においては、問題がある契約であっても、後段要件であるゆえに故意ではなかったと言えば適用を免れ、悪質事業者の抜け道をつくっているような規定であって、先行行為は明白でありながら、多くの消費者被害を救えない状況になっております。後段の故意要件の削除に賛成します。それで、具体的な対応に関しましては、原則、原案に示されている方向で私は理解できると思っています。

さらに、「重要事項」についてですけれども、現状は動機にかかわる部分は規定から抜けていて、多くの消費者被害において契約締結の前提となる事項が争点となることが多いことへの対処として、現在の「重要事項」を消費者契約の実態に合わせて、ぜひ広げていただきたいと思います。具体的な方法としては、B案に賛成したいと思います。「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」というのを加えた上で、消費者・事業者双方の予見性を高め、それから法律の明確化を図るために、幾つかの具体的なケースを示していただいて、その明文化から漏れた部分への対応として、さらに「例示である旨」というのを書いていただきたいと考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに。大澤委員。

○大澤委員 今、多くの委員の方から意見が出ていますし、私も基本的に賛成ですけれども、まず25ページの「不利益事実の不告知(不実告知型)」につきましては、不告知の故意要件を削除するという考え方に賛成します。その趣旨としては、これは前の議論でも出たとおりですので、繰り返しませんが、あえて行為を要求する必要は、この場合には特にないのではないかと考えています。

2-2の「重要事項」につきましては、私は結論から言うとB案に賛成します。それはなぜかというと、A案で確かに事業者・消費者双方に対して明確性を高めるという観点で、事務局のほうでいろいろ列挙してくださっているのは非常によくわかります。方向としてはよくわかるのですが、30ページのA案で出ている要件が、例えば事例2-2-6を念頭にと考えている、「契約の目的となるものの対価その他の取引条件が有利であると認められる事情に関する事情」という事項が、若干解釈の幅を残すというか、わかりにくさがあるかなということが気になります。

さらに、「当該消費者契約の締結が合理的であると認められる事情に関する事項」というのは、B案で言っている「必要とする事情に関する事項」と同じなのかどうかが、まだ判別できないですが、このA案で挙げられているものですと、このままだと、かえって混乱を招くのではないかと考えています。今までの解釈論を踏まえても、B案をとった上で、例示であることを明示するということであれば、B案に賛成します。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。増田委員。

○増田委員 不告知により誤認して契約したといった場合の中身というのは、通常の人が気にする事項について、その事項が存在しないと判断したことがほとんどであって、すなわち不実告知と一緒だとふだんから思っております。その通常の人が気にする事項については、プロの販売員が知らないということは許されませんし、情報提供義務という意味からも当然に告げる必要があります。故意要件は削除していただきたいと考えております。

それから、「重要事項」について、私もB案に賛成いたします。いろいろな列挙をしていただいた上で、例えば必要性だけではなく、人間がその契約をするときの動機というのは、みんながやっていると言われるとか、そこの場所の管理組合が勧めているとか、その人にとって本当に必要かどうかということではないことで判断するケースも十分にあり得るわけなので、具体的に列挙をして明確に示していただきたいと思います。

○山本(敬)座長 古閑委員。

○古閑委員 まず、24ページに書かれている2つに分けるところですけれども、確かに2つに分けることについて明確な異論は申し上げていなかったかもしれないですけれども、今回の資料を拝見すると、例えば不告知型のところは過失まで入ってくる可能性が示されていたり、どっちに当たるのかということで相当変わってくるので、2つに分ける分け方の基準をもっとはっきりしないと混乱すると思います。分け方がはっきりできないのであれば、分けるべきではないのではないかと思っています。

この資料ですと、関連性が強いか弱いかだけで判断されるということのようですが、すごく強い、すごく弱いはわかりやすいと思うのですけれども、真ん中をどうするのかというところがもうちょっと明確な基準じゃないと混乱すると思っています。

それから、その前提で、2-1ですけれども、不利益事実の話で、事例を拝見していると、例えば事例2-1-1というのは、眺望に違いがあるとか、ないとかというのは、仮にデジタルで見ると3階と5階では必ず違いがあったと思うのです。しかしここで言っているのはぱっと人間の目で見て違いかあるかどうかという話だと思っていまして、そのことを「事実」と言うのか。どこまで事実として、それが不利益事実ということで処理される事案に入ってくるのかどうかというのが、この事例2-1-1みたいなものを挙げられてしまうとよくわからないところがあると思います。

それから、もともとこれは事業者の積極的・作為的な行為を要求される規範ですので、立法当時に配慮されていた取引の安定性というものを劣後させていいのかどうかというところは、なぜ劣後させる必要が今あるのかというのも、もうちょっと議論が必要かと思っています。

それから、故意の要件を削除するという点ですけれども、例えば宅建業法とかであれば、不利益事実の不告知についてはまだ故意要件があると認識しておりますけれども、このように業法とかで各事情を考慮して規定があるものについて、ここで一律に塗りかえてしまって混乱が起きないのかどうかというのは、各業法での配慮を検討した上で本当に混乱が起きないのかという検証作業をしなくて大丈夫なのかというのが気になっています。

それから、4条2項ただし書きについてですけれども、これは実際問題としては、例えば以前も購入したことがあるので説明がなくて大丈夫ですとお客様がおっしゃったときに、それでも説明させてくださいと、つかまえて説明できるのかというと、実際上、かなり難しいのではないかと思えるのと、あと、消費者の立場から見ても、前に買ったことがあって、本当によくわかっているのに、それでも説明させてくれと求められることが本当に望んでいることなのだろうかというのは、アンケートでもとって聞いたほうがいいことなのではないかという気がしております。

それから、2-2の「重要事項」ですけれども、B案につきましてはどの範囲のものが該当するのかというのが不明確になっていきますので、反対です。

それから、A案につきましては、外延がわかりづらくなるというところがありますし、事例2-2-7というのは、ここで対応しなくても適切な処理がし得るものだと思いますので、こういったものを挙げて、さらに追加と言う必要がないような気がするのと。

それから、2-2-6に関して言うと、いろいろなケースがあるのかなという気がしています。例えば、ここで挙がっているファッションリングは、幾ら41万円のものが29万円になっているという表示がされていたからといって、普通、気に入らなければ買わないと思います。かつ、安くなっているというのが、人によっては買おうという後押しになることはあると思うのですけれども、それは程度の差が相当あると思っています。幾ら12万円安くなっていても、29万円もするものを、そんなに気に入っていないのだったら私は買わないと思いますので、これが買う理由だと言い切れるのかというと、それは相当ケース・バイ・ケースなのではないかと思います。

そのケース・バイ・ケースのものを追加しようというときに、有利誤認が一因になっていることは否定しないとして、どの程度影響するのかという影響の度合いは違うと思うので、その影響の度合いが違うものを含めてしまっていいのかというと、いろいろな事例を検討しないとわからないですけれども、直ちにいいような気がしないと思っております。

あとは、今まで、例えば英会話の講師の国籍がどうだったとか、いろいろなものが出てきていて、ここも解釈の幅が相当出てきますので、「重要事項」のところは人による価値観の差が相当出てきて混乱するところなのではないかという気がしていますので、A案、B案、いずれも今の状態だと賛成しかねるところです。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに御意見があれば。井田委員。

○井田委員 「重要事項」に関して申し上げますけれども、どのような限定列挙方式をとったところで、当該具体的事案において、それが「重要事項」に当たるのかどうかということは問題になるとは思います。ここで申し上げたいのは、現状の規定であっても、裁判例を見る限り、必ずしも現状の文言にストレートにはまるのかというものであっても、比較的問題なく「重要事項」に当たるように見えるのです。つまり、それは価値判断で、影響を及ぼし得るような一定の事項に関して、何か業者の説明とかに問題があるならば、それは取消しを認めるべきという価値判断はあると思いますし、それ自体も完全に否定できないと思います。

ただ、裸の例示列挙ということになると、事業者側の懸念というか、予見可能性という問題があるとは思いますので、私はB案に賛成ですが、例示であることに御懸念があるという意見があるとして、少なくとも「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」というのは加えるべきであろう。現状維持ということでは、現下の不正にかえって問題があるだろうと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに御意見は。後藤委員。

○後藤(準)委員 故意要件を外すということについてですけれども、確かに故意要件があるがゆえにいろいろ問題があるという指摘はあるかと思いますけれども、一方で、故意要件があることで、実際に事業者としては救済というわけではないですけれども、契約上、小規模な事業者が救済されている場面もある。それはどういう意味かというと、いろいろな事実を知り得るためには、それなりの情報量も必要になる。事業主がどこまでやれば、そういった重要な、消費者に対して説明できる情報を入手できるのか。これは真面目に考えた場合です。そう考えたときに、悪意で故意要件、本来の趣旨とは違うことで使うのと、実際に善意の第三者である事業者を本当に救済する道がなくなるようではちょっと困るという印象です。

もう一つ、「重要事項」については、従来から我々はこういうお話をさせていただいていますけれども、具体的に「重要事項」というのは、一体どこまで、どの範囲なのかというのは明示的に示していただかないと、これまたいろいろ対応が混乱する。本当にどこまでやればいいのだという話になると、膨大な資料を出せばいいのか。

これは、消費者にとっても不利益になると思いますし、事業者側から見ても、「重要事項」を一体どこまで書けば、免責とは言わないですけれども、このぐらいだったら社会通念上、許されるという範囲を示していただかないと、事業者は大企業ばかりではない。再三申し上げていますけれども、大多数の事業者は小規模なのです。こういった事情を十分に加味していただかないと、実際にそういう規定を設けても世の中が回らない。この辺にも十分配慮していただきたいと思います。

○山本(敬)座長 ほかにいかがでしょうか。

2-1の「不利益事実の不告知(不実告知型)」については、かなりたくさんの賛成の御意見をいただいたところですが、他方で慎重に考えるべきであるという御意見も出ているところです。
ただ、最後に後藤委員が言われた点に関しては、ここで言う不利益事実の不告知で、しかも不実告知型と呼ばれているものは、現行法でも、不利益事実の不告知と言われているけれども、質的には不実告知に匹敵するようなものを切り分けるということだと思います。その意味では、後で出てくる不告知の類型とは異なるものであって、いろいろなことを全て調べて告げないといけないという問題とは、少し違う問題になっているだろうと思います。

そして、現行法の不実告知に関しても、事業者が告げた事実が実は真実と異なっていたときには、事業者の行為は過失の有無を問うことなく取消しが認められています。事業者は、これが事実だろうと思っていたけれども、調べれば事実ではないことがわかったかもしれない。そこに過失があるかどうかということを問うことなく、事実でなければ取消しを認める。それに匹敵するような類型を切り分けて、不利益事実の不告知のうちの不実告知型をどこにどう規定するかは次の問題かもしれませんが、不実告知とあわせて規定するということですので、故意の不告知ないしは不告知型の問題とは少し違うということを前提にする必要があると思います。いかがでしょうか。

「重要事項」に関しては、大きく分けると2つの問題があります。まず、A案かB案かで、例示列挙という形に改めるかどうかついては、例示列挙の形にすべきであるという御意見も多数出ていましたけれども、それではどこまでの事項が取消しの対象になる事柄かが、必ずしも明確にわからなくなるおそれがあるというので、例示列挙ではなく限定列挙にするべきであるという御意見も多数出ていたところです。

次に、限定列挙にするにしても、現行法のままでよいのか、一定のものを広げる必要があるのかという点については、さらに御意見が分かれていたところです。

広げるものとしては、先ほどから出ているとおりですが、「契約の締結を必要とする事情に関する事項」については、広げるということでよいのではないかという御意見が出たところです。もちろん、これは、B案の例示列挙でも、例示の対象として含めるべきものだという御意見もあったところです。

そうしますと、2-2-6や2-2-7がどうなるかということですが、限定列挙にし、かつ「契約の締結を必要とする事情に関する事項」のみを挙げるということですと、今後も2-2-6あるいは2-2-7については取消しが認められないとしてよいという判断をすることになるだろうと思います。本当にそれでよいのかどうかが問われているところだと思います。仮に、それではまずいとしても、ここに書かれているような、「有利であると認められる事情」、「合理的であると認められる事情」という書き方では、ここに書かれているものが含まれることは明らかかもしれないけれども、それ以外のものがどこまで含まれるかは必ずしも明確ではない。それをどう見るかというのが論点だろうと思います。

ただ、2-2-7を念頭に置くのであれば、これは保証のケースですので、「当該消費者契約の締結が合理的である」という表現をとらないといけないかというと、必ずしもそうではないのではないかと思います。私の感覚から言いますと、「当該取引に伴う危険についての事柄」ではないかと思います。そのような意味での限定であれば、もう少し検討の余地が広がるのではないかと思いますが、この点を含めまして、さらにもう少し御意見いただけますとありがたく思いますけれども、いかがでしょうか。

山本健司委員。

○山本(健)委員 「重要事項」に関して、まず、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」については、拡大する必要があるということについて、余り否定的な意見はなかったと思います。

これに対し、ただ今、座長が御指摘された、それ以外の事由について「重要事項」を広げる必要がないのかという点に関しては、資料1で事例2-2-6、2-2-7を挙げていただいています。

それ以外にも、先ほど増田委員から御指摘がありましたような、例えば「管理組合から依頼されてきた」とか、「他の入居者もみんな契約しておられます」と言われて契約を締結したという事例などが、昨年10月に取りまとめられた消費者庁の運用状況検討会報告書に挙げられております。このような問題類型は、特定商取引法でも取消権が認められている類型ですので、こういうものについても取消しの対象として考えていく必要があると思います。その意味で、例示列挙のほうがすぐれていると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。柳川委員。

○柳川委員 「重要事項」ですけれども、いろいろなことが起こり得ることを考えると、例示であることを明示して幅広くというのは、対応としては安心感のある話だろうと思います。ただ、事業者の側から見たときに例示列挙で、そのほかのものは何が当たるのかということの指針がないと、相当いろいろなことを心配してしまう事業者が出て、不必要な心配が出てしまうというのは余り望ましくないだろうと思います。

それから、例示列挙であることを明示するだけだと、そのほかに何があるのかという基準がうまく伝わらない懸念があって、そこがこの手のものの柱みたいなものが何か出てくればあれですけれども、例示であるということだけだと、どこまでの網がかかるのかというのがわかりにくいかなと思います。その観点からすると、A案のように、やや迂遠的な話になるのですけれども、問題のある事項を順番にふやしていくというほうが、透明性、予見可能性は高いことになろうかと思います。

ふやすのはいいのですけれども、先ほど座長がお話になった2-2-7を念頭に「当該消費者契約の締結が合理的であると認められる事情に関する事項」を、これだけ読むと、これが何を意味しているのか、何がここに入るのかがほとんど予測できなくて、全部入るようでもあり、全部入らないようでもある。2-2-7を見ると、こういう事象のことをここでつかまえたいのだなというのは判断できるのですけれども、そこは文言を具体的に持っているわけじゃないですけれども、余り伝わらない例ではちょっと問題があると思いますので、少し考えていただく必要があるかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたら。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 恐らく今のままの限定ではまずかろうということですけれども、そのときの加える言葉の要素として、1つ必要性というものがある。契約をすることの必要性の有無。それから、契約することが有利かどうかとうい有利性の問題。最後は、もう少し広くなって合理性という要素が出てきたのですけれども、契約するかどうかということの判断にとって影響を及ぼす重要な事柄というのは、非常に広い可能性があるので、その意味では例示にせざるを得ないのではないかという感じがしておりました。

もう一つは、特商法の契約を締結するに関する事項で、そのものの判断に影響を及ぼすことのある重要なものという、既に1つのフレームがあって、それでそれなりに特商法は動いているわけですね。先ほど後藤委員から中小の事業者の方という話もありましたけれども、特商法の対象となっている相当多くの事業者も中小の方。今、それで、それほど大きな混乱なく動いているということを考えますと、場合によっては特商法とそろえてしまって、これまでのものが例示であるのだろうということをはっきりさせておくということで事足りるのではないかという気はいたします。

○山本(敬)座長 前回の会議でも、特商法の規律と可能な限り合わせるような方向性が考えられるのではないかという御意見が出ていたところで、そのような方向での御意見をさらに伺ったということになるのではないかと思います。

大澤委員。

○大澤委員 今の河上委員長のお話と関連してくるのですが、43ページに特商法の規定が出ていまして、それが今、河上委員長がおっしゃっていた7号の文言ではないかと思います。「当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であって、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」ということですが、この言葉自体は、今、消費者契約法4条の重要事項のところで既にあるというか。つまり、何が申し上げたいかといいますと、仮にB案をとって、例示だということを明示し、かつ、いわゆる「契約の締結を必要とする事情」というのを加えたとしても、結局、さらにそれだけで別に重要事項をクリアするのではなくて、通常消費者の判断に影響を及ぼすかどうかという括りがもう1段階出てくるわけです。

その意味では、現行法をB案に改めたとして、しかし判断に影響を及ぼすかどうかという、さらにもう1段階括りがあるということであれば、もちろんそれが維持されるということで議論されているのだと思いますが、そうだとすれば恐らくそれがすごく広がるということはないでしょうし、そんなに問題はないのではないかと思います。特商法というのは、判断に影響を及ぼすことになるというのを、ほかのものを掲げて列挙しているという形式に条文上、なっていると思うのです。

6条6号は下線が引いてあって、これは今回議論になっているものですが、1号から5号は今の対価とか、そういうものですので、それと並べる形で7号というものが入っていますけれども、消費者契約法の場合はそうではなくて、「重要事項」というのを例示列挙、かつ特商法で言うところの6号の「必要とする事情」を加えた上で、さらにそれらの中でも「判断に影響を及ぼす」ものという括りということで、規定のつくりはちょっと違うのかなと思うのですが、そのどっちをとるかというのもあわせて検討する必要があるかなと今、印象を持ちました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 私も先ほど座長がおっしゃったように、例示にしないでおくと、あるものを挙げておくと他のものを否定するような可能性があるので、例示するというのが基本的にはいいと思います。そういう意味ではB案に賛成なのですけれども、今、お話を伺っていて考えたことなのですが、A案もそれなりの合理性はあると思いまして、先ほどA案で必要性、有利性、合理性という形で河上委員長がまとめてくださいましたけれども、この合理性というのは、先ほど座長がおっしゃった言い方で言うと、当該取引に伴う危険ということ。

そうだとしますと、必要性、有利性、それから有利の反対の不利益性と言うのでしょうか、その契約にとって必要なのかということと、有利なのか不利なのかというのが契約を締結するについての大きなポイントだと思いますので、そういう意味ではA案には重要なものが並んでいるという感じは確かにします。かといって、A案を支持というよりは、私は例示のほうが望ましいと思いますけれども、どうしても例示に不安があるということであれば、A案というのは割ときちんと押さえるべきところを押さえているという印象はあります。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

残っている問題点について、もちろん御意見をいただきましたけれども、2-1に関しては、28ページの一番下のウに、現行法の4条2項ただし書きに相当する規定が必要かどうかという問題提起があります。あったほうがよいのではないかという御意見とともに、不実告知型という位置づけをして規定するのであれば、必ずしもこれは要らないのではないかという御意見もあったところです。この点について、さらに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。これは、この類型をどのようなものとして理解するかということと密接にかかわっているように思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、今日のところは御意見をお出しいただいたということで、今日の御議論を踏まえて、さらに2-1及び2-2について検討を進めて、次回、中間的な取りまとめに向けての案をお出しいただき、改めて検討するということでよろしいでしょうか。宿題がだんだん大きくなってきましたけれども、そうさせていただきます。少し時間が押しておりますけれども、次へ進ませていただきたいと思います。

≪4.情報提供義務/不利益事実の不告知(不告知型)≫

○山本(敬)座長 続きまして、「2-3 情報提供義務/不利益事実の不告知(不告知型)」についての検討に移ります。消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、手短にポイントだけ御紹介、御説明したいと思います。36ページ以下でございます。

「情報提供義務」につきましては第7回で、不告知型につきましては第8回でそれぞれ御議論いただいたところでございまして、37ページから38ページにかけまして、それぞれの意見の概要等について御紹介しているところでございます。

「情報提供義務」についてポイントとして申し上げますと、イで幾つかの要件について御議論いただいたということも御紹介しておりますが、(エ)でその効果についてどう見るかということであります。損害賠償請求を念頭に御議論いただいたわけでございますけれども、取引によっては損害賠償よりも取消しのほうが企業にとってもやりやすいのだという御指摘もございましたし、事例を見ますと、説明が十分でなかったことによって、解約したいとか、支払ったお金を返してほしいという原状回復的な救済を求めるケースが多いということでございます。

そういうことからしますと、取消しというか、契約の巻き戻し、原状回復というものを情報提供義務違反の効果として、まずは検討して、それで足らざる点については損害賠償の手当てを必要に応じて検討するということではなかったかと思います。

それから、38ページに「不利益事実の不告知」のいわゆる不告知型。先行行為がはっきりせず、裁判例においても先行行為の認定がよくわからなくて、故意による告知ということで取消しを認めたと見られる事例がございますので、そういったところを踏まえますと、この不告知型というものの取消要件について検討するということではないか。具体的には、先行行為の削除というのが考えられる。

これは特商法の例もありますということで御紹介いたしまして、そういったことについては39ページあたりからでございますけれども、情報提供義務との関係を踏まえつつ検討する。あるいは、いわゆる沈黙の詐欺との関係を踏まえて検討する。取消しということでございますので、詐欺取消しとの関係を踏まえて検討するという御指摘があったかと思います。それとの関連で、民法上の詐欺との差別化を図るという意味では、主観的要件について、故意ということでよいのかどうかという問題提起もいただいたところでございます。

39ページから、今回は考え方をざっくりとお示しするにとどまっておりますけれども、イの不告知型というところでございます。先行行為要件について余り機能していないケースについては、思い切って先行行為要件を削除して、特商法のような規律を消費者契約法に設けるということも選択肢として考えられるところでございます。ただ、この先行行為要件といいますのは、現行法の4条2項の規定をごらんいただくとおわかりいただけると思いますけれども、何をもって告知をしなければいけないのか。先行行為に関連する事項と規定しておりまして、告知の内容を画するという機能がございます。

そうしますと、単純に先行行為要件を削除いたしますと、これは事業者にとって何かを告知、言わなければならない規律として機能するという側面がございますので、何を言わなければいけないのか。対象、重要事項の概念ということに帰着するわけでございますけれども、それについて検討する必要があるということでございます。

40ページに現行の消費者契約法の「重要事項」の概念と特商法の「重要事項」の概念を掲げております。消費者契約法の「重要事項」の概念は、6条1項1号から5号というものがございまして、先ほどもちょっと議論がありましたが、6号、7号というのがこれとは別途ございます。6号、7号というのは、契約の締結を必要とする事項などが入っているところでございますけれども、特商法においては、そういったものは故意の不告知の取消しの「重要事項」の範囲から除かれているということで、ある程度一定の絞り込みがされているところでございます。

こういった特商法の規律あるいは事例との関係を参照しながら、ここについては引き続き具体的な要件立てについて検討する必要があるのではないかということで、今回、検討不十分でありまして、具体的な案についてお示しすることには至りませんでしたけれども、引き続き検討する必要があるのではないか。検討する必要があるという場合には、どういった検討をしていくかということについて御示唆を頂戴できれば大変ありがたいと思うところでございます。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。資料2の4ページ以下を引用しながら意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、意見の内容です。1の点につきましては、御提案内容に賛成いたします。

2の点につきましては、現行法の「重要事項」とする考え方に賛成いたします。なお、主観的要件として、過失ないし重過失を付加する考え方について引き続き御検討いただきたいと思います。

3の点につきましては、資料2の5ページに記載させていただきました日弁連試案第3条のような規定を御検討いただきたいと思います。

以下、理由です。

まず、1の点につきましては、不利益事実の不告知のいわゆる不告知型の効果は取消し、情報提供義務違反の効果は損害賠償請求と分けて規律したほうが理解しやすいと思います。

2の点につきましては、4条4項の「重要事項」は、本法制定以来、判例・学説の積み重ねがありますことから、これによって対象を画するのが理解しやすいのではないかと考えます。ただし、主観的要件として過失(重過失)を付加する考え方について、引き続き御検討いただきたいと思います。

3の情報提供義務の発生要件につきましては、まず、民法改正における議論とは異なり、消費者契約においては契約当事者間に構造的な情報・交渉力格差があること、それを是正すべきことが前提となっていると思います。したがって、少なくとも、一般通常人を基準として、当該消費者契約を締結するか否かに関して消費者の判断に通常影響を及ぼすべき事由については、事業者は消費者に対し、法的な情報提供義務を負担することを明確にすべきであると思います。

また、情報提供義務については、実務上、提供すべき情報の範囲という問題以外にも、情報提供の方法・程度が問題とされることも多いことから、この点についても検討しておくことが望ましいと思います。

具体的な在り方としては、資料2の5ページに引用させていただいております日弁連試案第3条のような規定内容の立法を検討していただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、阿部委員。

○阿部委員 36ページの2でありますけれども、先行行為要件を削除することについては反対いたします。この先行行為要件があるから、後に続くものの範囲が確定できるわけでありますので、削除した場合、対象となる事項をどのように検討するかという限定ができなくなると思います。ここについては、削除に反対いたします。

それから、情報提供義務の法的義務化でありますけれども、ほかの業法等との関係をもう一度整理していただきたいと思っております。一概に反対とはいたしませんけれども、金融商品とか、その他業法の規定とどのぐらいのレベル差があるのか、それを確認させてください。今日は保留ということです。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかに御意見は。大澤委員。

○大澤委員 この36ページの2と3ですけれども、すみ分けをどう考えていくかというのが、今回は非常に議論が整理されていまして、一読させていただいて、わかったような、わからないようなところがあるのですが。

先ほどのいわゆる不実告知型の不利益事実の不告知のときに、故意要件を削除するかどうかについては、これは従来から議論もあったところですし、あのような場面で先行行為で不実告知が現にある時点で、さらに故意を要求するというのは、これは要件としてちょっと厳し過ぎるということで、それには賛成いたしましたが、2番、不告知型、先行行為がないような、あるいはほとんど乏しいような場合と、3番の情報提供義務の法的義務化というときに、3番の情報提供義務の効果をどうするかにも恐らくかかわってくると思うのですが、情報提供義務による損害賠償ないし取消しなどを認める場合と、いわゆる不利益事実の不告知のうちの、特に不告知型の場合とのすみ分けというものをもう少し整理したほうがいいのではないか。

今までさんざんやったじゃないかと言われるかもしれませんが、いま一つ理解が及んでいないところがありますので、もうちょっと検討させていただきたいと思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 確認ですけれども、「すみ分け」というのはどのような意味でしょうか。

○大澤委員 つまり、2番と3番を別個に規定を設けるというときに、具体的な事例として2に当たるようなものはどういうもので、もちろん3に関しては、情報提供義務違反による損害賠償というのは、これまでも判例等で多々認められているところで、それを法定化するというのは素直に理解できるのですけれども、それと別に、不実告知型とも違う不告知型の取消しを認める2番のような規定を設けるということの場面というのがどういう場面になるのかが、まだちょっと想像できないということです。

○山本(敬)座長 2のほうは、取消しを認めるというルールとして、ここでは問題提起がされている。3については、損害賠償のルールとして、実際にそのための要件としてどのようなものを設定するかという形で問題提起がされている。ですから、「すみ分け」の意味によりますけれども、それぞれが対象としている問題が違うということは明らかではないでしょうか。ですから、両者で広い意味での情報提供義務のようなものが出てきて、一方は損害賠償、他方は取消しとなるとすると、その両者の区別はどのように説明できるかということを問題として指摘しておられるということでしょうか。

○大澤委員 そうです。

○山本(敬)座長 わかりました。どうもありがとうございます。

阿部委員に少しお伺いしたいのですが、先ほどの御意見によりますと、不告知型に関しては、先行行為要件を削除することには必ずしも賛成できないという御意見だったようにと思います。先ほどの前のほうで検討した不実告知型に関しては、重要事項の要件の設定の仕方次第であるけれども、それによっては、不実告知型として規定する、つまり故意要件を削除することについては賛成するという御意見だったように思います。仮に不実告知型として規定が置かれますと、そこには、先行行為要件と言われているものが、文言としては残ることになります。

そうしますと、不告知型のほうで同じように先行行為要件を定めますと、両者のルールの関係がよくわからないことになりはしないでしょうか。ほぼ同じ要件で、一方は、故意要件を定めず取消しを認める。他方は、同じく先行行為要件を定め、そして不利益事実に関して黙っているということに加えて、故意がある場合に取消しが認められると書いてある。両者で、一見すると抵触・矛盾するようなことが書かれていると受けとめられないでしょうか。

阿部委員。

○阿部委員 ですから、不実告知型の場合については、今の「重要事項」については限定列挙で画したということです。

○山本(敬)座長 そうすると、構成要件は同じだけれども、対象としている範囲が変わってくるということでしょうか。

○阿部委員 あり得ると思います。

○山本(敬)座長 しかし、対象としている範囲も完全に別々ではなく、重なるのではないでしょうか。重なっているものについて、2つの異なるルールが定められるということになりはしないでしょうか。それは、立法としてはまずいのではないでしょうか。

○阿部委員 ちょっと考えさせてください。

○山本(敬)座長 はい。

ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 今の座長の御発言というのは、36ページの2の不告知型の対象を先ほどの不実告知型の場合と同じ「重要事項」とするというお話でしょうか。

○山本(敬)座長 いえ、阿部委員の先ほどの御意見では、不実告知型のほうは、重要事項をどう定めるかということはありますけれども、少なくとも例示列挙とすることにしないのであれば、賛成とおっしゃっていました。私が理解したところによりますと、不告知型に関しては、さらに限定されるという立場が前提ではないかと思います。そうしますと、一部、重ならない部分が出てくると理解しました。しかし、それは私の誤解だったかもしれませんが、いかがでしょうか。私が混乱するようなことを言っているのかもしれません。

○阿部委員 重なる部分とはみ出す部分があらわれてくると思います。そこで、先ほどの御指摘のところはちょっと考えます。

○山本(敬)座長 わかりました。どうもありがとうございます。

それでは、ほかに。古閑委員。

○古閑委員 済みません、私もちょっとよく理解できていないところかもしれません。

40ページに特商法との比較が掲げられています。特商法では、不実告知と不利益事実の不告知を分けていると思うのですけれども、その分けと今回の消費者契約法で分けようとしている分けは一致するのかどうかというのが、40ページを見ていてよくわからなくなったので教えてください。仮にそれが一致しないのだとすると、先ほど特商法の考え方を採用するのがいいのではないかという話があったと思うのですけれども、特商法との関係性はどうなのだろうかというのを教えていただきたいと思います。

それから、2-3に話を戻しまして、先ほどもちょっと触れた過失とかまで入ってくるというのが、どうして急にそういうふうになったのかというのが気になっていまして、それはちょっとやり過ぎじゃないかと思います。

あと、そもそも論ですけれども、いろいろな方がおっしゃっている繰り返しになりますけれども、説明すべきはどこまでの範囲なのかということが不明確になることによる混乱があると思いますので、特商法との整理も必要だと思いますけれども、先行行為要件がなくなることの影響を丁寧に拾ったほうがいいと思っています。どういう弊害があるかというのは、直ちには言えないのですけれども、この重要事項のところの議論で本当に片づくのかどうか。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、御質問の点について消費者庁からお願いします。

○消費者庁加納消費者制度課長 古閑委員の御指摘の第1は、恐らく重要事項の概念を拡張するという議論が一方でございますので、それとこの不告知型の取消事由として、どこまでが取消事由の対象になってくるのか、その関係がよく見えないということでしょうか。古閑委員の疑問点というのは、そういう理解でよろしいですか。それで御説明をさせていただきますと、重要事項に関して不利益事実の不告知のうちの不実告知型というものを検討するのと同時に、重要事項の概念の拡張について検討してはどうかということで、ペーパーで今、お示しをしているわけでありますけれどもね。

念頭に置かれておりますのは、いずれにしましても不実告知ないし不実告知型である。すなわち、事業者の積極的な告知があって、そこに事実でないものが含まれている場合の、その事実でない対象というのは重要事項のどこまでを広げますかということでありまして、その重要事項の概念の拡張というのは、主として不実告知ないし不実告知型というのを念頭に置いた議論と御理解いただければと思います。それは、裁判例などを念頭に置きつつ、裁判例で実際、重要事項の概念をじわじわと広げていると見られる傾向にありますので、そういうことを検討してはどうかということでございます。

他方で、不告知型につきましては、重要事項の概念を広げるかどうかということは、また別に検討する必要があると思います。なぜかといいますと、1つは、特商法との関係でございまして、特商法は重要事項の概念については、消費者契約法よりも広がった部分がありますけれども、契約締結を必要とする事項とか、そういったところは不告知取消しの対象にはしておりませんので、特商法はそこは抑制的に規定を設けております。にもかかわらず、消費者契約法においてさらに広げるということはどうなのかというのは、よく検討しないといけないのではないかという問題意識は、私どももございます。

他方で、この情報提供義務の問題といいますのは、判例で信義則を根拠に損害賠償が多々認められているところでございますけれども、消費者契約の局面に絞って言いますと、結局、事業者のほうに情報がたくさんあって、消費者というのは一般的には情報を余り持っておりませんので、そういう中で何が情報提供義務違反としてポイントになってくるかといいますと、前回の第7回の御議論においては、37ページの(イ)あたりに御紹介しました。結局は重要事項の範囲をどういうふうに見るかが重要ではないか。ダジャレではありませんけれども、重要事項の範囲が重要である、まさに重要事項であるという御議論が割と強かったのかなと思います。

そうしますと、情報提供義務違反の効果として、取消しなのか、損害賠償なのかという御議論がございます。仮に取消しアプローチをとるとした場合にも、結局、重要事項といいますか、情報提供義務の前提となる事項をどのように捉えるかという議論に帰着する。それは、まさに不告知における重要事項の範囲をどういうふうに画するかということではないかということで、先ほど御説明したつもりでございます。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○古閑委員 今の点はわかりました。

済みません、私の1点目の質問がわかりづらい表現になってしまったかもしれないのですけれども、ちょっと戻る部分があります。2-2の議論の中で特商法の話が出てきて、40ページにまさに特商法との比較を載せていただいているので、2-2に戻った議論になってしまうのですけれども、特商法6条の中で不実のことを告げる行為と、故意に事実を告げない行為という2つの行為が出てくると思うのですけれども、そこで分けようとしている概念と、今回、2つの類型に分けますと言っている、その分けというのは、同じ概念なのか、違う概念なのかという意味での質問のつもりでした。

○山本(敬)座長 はい。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、どこまで正確に御説明できるか自信がないところもございますが、条文をごらんいただきながら御説明するのがよろしいですかね。42ページをごらんいただきますと、特商法と消費者契約法で、特商法6条と消費者契約法4条を並列させているところがございます。現行法の消費者契約法は4条4項で1号、2号で重要事項をこう書いております。品質その他の内容が1号で、対価その他の取引条件が2号であります。これにもうちょっと書き加えていきましょうかという議論をお願いしている。あるいは例示的にという考え方もあるところであります。

特商法は、6条で禁止行為ということで1項1号から7号までがあり、43ページの9条の3で取消事由を設けております。9条の3の第1項第1号は、不実のことを告げる、不実告知の取消しというのは、6条1項の規定に違反したとなっていますので、1号から7号、全部入ります。ところが、9条の3の1項第2号を見ますと、「6条2項の規定に違反して故意に事実を告げない行為」となっておりまして、上のほうへ戻っていただくと、1号から5号までに掲げる事項という形で限定している。そうすると、6号、7号は違うということになります。

問題は、その6号、7号でどうなるかということでございまして、6号をごらんいただくと、「契約の締結を必要とする事情に関する事情」。これは、まさに本日の重要事項の概念を説く上で一つの列挙事項としてあり得るのではないかということでお示ししたもの。それから、大澤先生からさっき御発言がございました7号に関しては、前各号に掲げるもののほか、これこれの事項であって、こういった判断に影響を及ぼすことになる重要なものと書いてございます。

その判断に影響を及ぼすことになる重要なものというところにチェックしていただきつつ、消費者契約法4条4項の柱書きのほうを見ていただきますと、消費者契約に係る次の事項であって、消費者の当該消費者契約締結の判断に通常影響を及ぼすものという書き方があって、若干字句は違いますけれども、大体似たような言葉が使われている。なので、先ほど大澤先生がおっしゃったのは、消費者契約法4条4項の柱書きというのが、特商法の6条1項7号の最後のほうの文言とほぼ重なりかあるのではないかという御説明であったかと思います。

7号は、前号に掲げるもののほかと書いていますので、いわゆるバスケットクローズ規定で、1号から6号までに入らないけれども、7号で拾うのを認めますよという形で、広く拾うような規定として機能していると思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。恐らく現行の消費者契約法で不利益事実の不告知と言われているもののうち、この資料で不実告知型と言われているものは、特商法で言う6条1項の不実のことを告げる行為におおむね当たるものとして規定しよう。それに対して、不利益事実の不告知のうちの不告知型と呼んでいるものは、特商法で言えば6条2項で定めているものに相当するものとして位置づけようという方向だというのが、恐らく御質問に対する答えになるのではないでしょうか。よろしいでしょうか。

後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 先ほどの不実告知型と不告知型で「重要事項」の範囲をどう考えるかということですけれども、資料の39ページから40ページで、不告知型につきましては39ページの一番下の行でありますけれども、「例えば、現行法における『重要事項』とするという考え方もあり得ると考えられる」とお書きになっていまして、これは合理性がある考え方だと思います。

つまり、現行法の条文が42ページにありますけれども、4条4項1号、2号というのは、事業者側の支配領域にある事項でありまして、そういう意味からいうと、いろいろな事項のうち、事業者側の支配領域にあるものについて不告知であるということに関して、取消しを認めるということは説得性は高いと思います。そういう意味から言うと、先ほどの不実告知型で重要事項は今回、広げるということになっても、不告知型については現行どおりというのは、考えられる選択肢だと思います。

それを基本としつつ、若干気になるのは、現行の「重要事項」については、「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」という枠がついておりますが、従来、民法の沈黙の詐欺というところで議論されていたのは、沈黙の詐欺と言っても、それは結局、情報提供義務があるのに、それを提供しないということと同じ話だろうと思うのです。

その場合については、今ここで考えているような重要事項という限定はなくて、むしろどういう場合に沈黙が詐欺になるかという形で問題は開かれていたということになるわけでありますけれども、具体的に「重要事項」という枠が入ったときに、特に当該消費者の特別な必要性とか、その製品に対する要望といったものが、当該消費者にとって重要なものであっても、この4条4項の中で読み込めるのか。もし読み込めないとするなら、それは別の解決という形で対応するのか。民法の沈黙の詐欺ということも考えられますし、場合によったら、これはよく考えないといけませんけれども、債務不履行とかで対応するということもあるかもしれません。

いずれにしても、その人固有のその製品に対する必要性とか、その製品に対する望んでいる部分というのは、もう一切入らないことになるのかどうか、そこだけちょっと気になるところなので確認させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 まだ提案されているというよりは、問題提起がされているところですので、お答えというわけではないでしょうけれども、消費者庁のほうからお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 後藤先生の御質問は、その人というのは消費者ですね。

○後藤(巻)座長代理 当該消費者。

○消費者庁加納消費者制度課長 当該消費者の固有の必要性について。

○後藤(巻)座長代理 固有の必要性、固有の事情、そういう問題です。

○消費者庁加納消費者制度課長 そこは、むしろ古閑委員から御懸念があるのは、恐らくそういうところまで取消事由に入ると、事業が保たれませんので困りますということだと思います。それは、いろいろと価値判断はあると思いますけれども、先ほど消費者契約法4条の条文柱書きがありますと御紹介いたしましたけれども、「判断に通常影響を及ぼすもの」でなければならないというのがございますので、この通常影響を及ぼすというのは社会通念にのっとって判断するのだということだろうと思いますから、当該消費者固有の事情というのは入らないことになるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 入らないことになった場合には、消費者契約法としてはそういう対応になるだろうということで、その後は別の法理で考えるということになるということでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 恐らくそういうことではないかと思いますが、もし異論があれば、むしろここは解釈論になりますので、学者の先生方から補足していただくとありがたいのですけれども、私の感覚では、今の後藤先生の事案というのは消費者契約法で拾うべきものではないのではないかという気がいたします。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 私が不告知型と情報提供義務のすみ分けがわかりづらいということを申し上げたのは、今のお話とも関係するのではないかと思うのですが、まず前提として、不告知型の場合と不実告知型の場合で対象とする重要事項の範囲は、もちろん同じにする必要は必ずしもないわけで、特定商取引法のいわゆる故意の不告知型と不実告知型で対象となっているものは異なっていますので、そういう決定をするというのは1つ、あり得ると思います。

仮にそうだとしたときに、不告知によって不告知のみで取消しが認められる場合というのは、いわゆる不実告知型よりも限られてくるはずです。そうすると、その限られてきた部分について、しかも故意の場合にしか不告知型では取消しの対象にしないということになるのであれば、3番の情報提供義務の規定が生きる場面があるかなと思っています。その情報提供義務というのは、従来の判例の考え方を踏まえていますので、情報提供の対象となる事項も、今の消費者契約法の重要事項よりは恐らく広いでしょうし、少なくともここで不告知型について重要事項を限定するということであれば、ますますそれより範囲が広くなるはずです。

あと、効果をどうするかにもよりますが、例えば3番の情報提供義務の効果を、こちらの提案ということではないのでしょうが、損害賠償というのが1つ、考え方として書かれていますけれども、損害賠償とするということであれば、そのような情報提供義務違反のときに取消しという、契約から直ちに離脱することまでは認めないとしても、賠償による調整とか、そういうものを可能にするということであれば、この規定が生きるでしょうし。

あと、不告知型については、これは故意の不告知に限定するということであれば、故意ではないけれども、例えば過失による情報提供義務違反があるという場合に、取消しという効果までは認めないけれども、賠償は認めるということであれば、この情報提供義務の規定を不告知型とまた別途設けるということには、これは不告知型をカバーするような形で情報提供義務を考えることになりますけれども、それであればすみ分けというか、どういう効果とか要件になるかという違いは何となく理解できますが、情報提供義務の効果を例えば取消しにするということを、もし今後考えるとなると、ますますこれは告知型の場合との違いを詰めていく必要があるのではないか。

一方で、ある故意の不告知については取消しを認めていて、そうではない情報提供義務違反についても取消しを認めるというのは、そこをどう分けるのかという問題なのではないかと考えますので、今後、不告知型と情報提供義務の要件・効果について、もう少し区別というのですか、どういう関係になるのかというのをちょっと検討させていただきたいなと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

おおむね整理していただいたとおりのように思いますが、取消しという効果に関しては、不告知型の問題として考えていこうということであって、将来、それをさらにどう発展させるかということは別問題かもしれませんが、当面はそうである。

損害賠償の問題については今後どうするかは、消費者契約法の問題としては残っていますけれども、仮に消費者契約法で規定しないとしても、現在そうであるように、民法の不法行為に基づく損害責任が否定されるわけではなく、今後も存続するだろうと思いますので、それはおっしゃっていただいたとおりのように思います。

そのほか、消費者に定型的に考えられる必要性ないしは事情にかかる問題と、当該消費者固有の必要性等の事情にかかる事柄で、それをどう考慮するかという点については、先ほどのお答えもありましたけれども、例えば日弁連では、そういった個別の事情に関しては、事業者が知り、または知ることができた場合に限り考慮するという形でカウントする。これも消費者契約の問題としては十分あり得る考え方かと思います。それも含めて、今後の検討課題かもしれません。

では、後藤委員。手短にお願いできれば。

○後藤(巻)座長代理 時間が過ぎているときに申しわけありません。

不告知型と情報提供義務の関係で、情報提供義務違反による取消しというのは、今回、不告知による取消しで整理するという方向でいいのではないかと思います。そういう意味では、情報提供義務違反については損害賠償の方向で考えるということでよろしいと思います。

ただ、1つだけ気になりますのは、情報提供義務違反による取消しというのは、例えば48ページで私の案を資料として出していただいていますけれども、情報提供義務違反ということ自体に、事業者が当該情報を提供すべきであるのに提供しなかったという形で、事業者に過失があるかどうかという評価も含んで情報提供義務の違反を問題としているということでありますので、不告知の対象を重要事項と捉えるということですと、情報提供義務違反で事業者の過失を問題としてきた部分が、今回の不告知による取消しというところに反映されないのではないかという問題が残る感じがあります。

そこのところは、不告知による取消しに故意が必要なのかどうか、過失あるいは重過失という要件で足りるのかということについて、もう少し議論したほうがいいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 不告知だけを単体で取消事由にするためには、告知すべき事柄がはっきりしていないとなかなか難しいだろうという気がします。それから、現在の消費者契約法は、事実と異なることを言う、あるいは不確かなことを確かだと言って相手の判断を迷わせる。もう一つは、出された情報は正しいとしても、出し方がアンバランスで、悪いことを言っていないために悪いことはないのだという判断をしてしまったという意味では、情報の出し方のアンバランスを問題にしているということになります。

通常の情報提供義務と言われているものは、情報の格差を埋めるために何がこの段階で相手に告げられるべきかという一般的な話なので、その問題と今回の意思表示の瑕疵の問題とは分けて考えないと混乱してしまいます。先行行為という言葉はやめたほうがいいという意見が今、出ているのですが、実はアンバランスな情報の出し方ということを問題にしているときは、一方で正しいものが幾分か出ているということがあって、それとの対比で不確かなもの、あるいは不利益なものが出ていないということが、全体としてゆがんだ判断をもたらしているわけなので、先行行為についての要件が全く無意味なものではないということは理解しておかないといけないだろうという気がいたしました。

全体の枠組みの問題でございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

既に相当時間が経過してしまいました。また不手際な時間配分で大変申しわけありません。

なお議論すべき点が残っているところだろうと思います。特に、最後の問題点については、今後も検討を進めたいという意思表示がここに含まれているような提案になっていまして、今日に限らないことだと思います。引き続き議論をさせていただくということで、今日のところは終えさせていただければと思います。

次回についても、これまで御検討いただいた不当勧誘に関する規律あるいは不当条項に関する規律に関する論点について、さらに検討を要すると考えられる論点を取り上げて御議論いただくことを予定しています。引き続きよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪5.閉会≫

○金児企画官 本日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、7月10日金曜日13時から16時までの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上