第7回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年3月17日(火)13:00~16:05

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長、山田取引対策課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 総則部分(第2条、第3条関連)の論点
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第7回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により、河野委員、柳川委員が御欠席との御連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

資料1が、今後の審議スケジュールの(案)。

資料2は、消費者庁からの提出資料で、本日御議論いただく総則部分の論点に関する検討資料です。関連する消費者庁提出資料として、資料2の後ろに参考資料1と参考資料2をつけてございます。

それから、資料3が、山本健司委員からの提出資料。

資料4が、本日御欠席の河野委員からの提出資料。

資料5が、増田委員からの提出資料です。

委員の皆様からの資料の提出につきましては、第1回の会議の際に山本健司委員から御質問があり、御案内させていただいておりますけれども、念のため、再度確認させていただきます。本専門調査会における御意見は、会議体として実質的な御議論をいただくため、この会議の場において口頭で出していただくのが原則となっております。もっとも、会議時間の有意義な活用等の観点から、口頭での御意見を補足する書面については、あらかじめお申し出があり、座長の御承諾が得られた場合には、今回の山本健司委員の資料のように配付させていただきます。また、今回の河野委員のように、やむを得ず会議を御欠席される際にも、同様にあらかじめお申し出があれば、座長の御了承のもとに配付資料とさせていただきます。

最後に、参考資料3ですけれども、日本新聞協会から当委員会宛てにいただいた、消費者契約法見直しに関する意見書です。こちらは、これまでの御議論でも指摘されておりました、消費者契約法の見直しの各論点に関する業界からの意見聴取について、その一つの方法として、これまでのプレゼンテーション等の状況を踏まえて内容を検討されていると委員会に御連絡があった同協会から、事務局において御意見を伺い、さらに御検討いただいた内容を意見書として御提出いただいたものです。今後も検討が進む中で、このような形で実務への影響についての御意見がいただけるようであれば、適宜、本専門調査会の中で資料としてお示しさせていただきたいと思います。

配付資料は以上でございます。もし不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

それでは、ここからは山本座長に進行をお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。

まず初めに、資料1の今後の審議スケジュール(案)につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 では、資料1をごらんください。

これまで各委員からのプレゼンテーションを中心に、各論点や規律のあり方に対する考え方等を、多岐にわたり意見交換を行っていただきました。その内容を踏まえ、本日より個別論点の検討に入っていただくこととしております。

その具体的な内容ですが、ここに記載しておりますとおり、5月末日までをめどとして、各回の論点ごとの資料を消費者庁から提出いただき、それをもとにして各論点についての議論を一通り行っていただきたいと思っております。そして、さらに議論を要する論点については、6月以降、引き続き御議論を重ねていただくこととし、7月の中下旬から8月上旬ころまでには、議論内容を一定の形に取りまとめることを目指して進めていただきたいと思っております。

なお、今後の審議状況につきましては、ここに記載された日程以外に追加の審議を行うことも考えられますので、その点につきましてもお含み置きいただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、事務局から説明のありました今後の審議スケジュール(案)につきまして、委員の皆様から御意見などがありましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 これは質問ですけれども、消費者契約法の1条について扱うのかどうかということです。消費者契約法の見直しにどのような内容が盛り込まれるかということによるわけですけれども、2条以下の諸規定は、1条の目的規定を受けた規定であるため、現在の消費者・事業者間の情報・交渉力の格差という観点だけで見直しを正当化できるかどうかという問題も生ずる可能性があるように思います。そのようなことから、1条の見直しというものを行うのか、行うとして、どこで行うのかということについて、もし予定がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁のほうからお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 消費者庁のほうからお答え申し上げますと、今回、総則部分ということで、2条、3条という形でペーパーを準備させていただきましたが、目的規定につきましては、その改正の項目がどういうふうになるのかということを踏まえまして、それに応じて検討していくのが適当ではないかと考えられますので、論点の検討を進めていく中で、目的規定のほうに反映していくものが望ましいということであれば、その際には検討するということで準備させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

ほかに御意見等がありましたら。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、今後はこの資料1のとおり進めさせていただければと思います。なかなか大変ですけれども、どうかよろしくお願いいたします。


≪2.総則部分(第2条、第3条関連)の論点≫

(1)「消費者」・「事業者」概念の在り方

○山本(敬)座長 それでは、本日の議事に入ります。

本日は、消費者契約法の総則部分のうち、第2条及び第3条関連の論点について御議論いただきたいと思います。これまでの議論を踏まえまして、消費者庁から、各論点の検討のための資料として、資料2及び参考資料1、2を作成・提出いただいております。

資料2の表紙の目次にありますとおり、4つの論点が示されています。それぞれの論点ごとに区切って、消費者庁からの御説明と委員の皆様による御議論をお願いしたいと思います。

それでは、まず1つ目の論点、つまり「『消費者』・『事業者』概念の在り方」について議論を行います。資料2の1ページから12ページまでの部分につきまして、消費者庁のほうから説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、消費者庁のほうから御説明申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

まず、1ページ、1ポツの「消費者」・「事業者」の概念のところでございます。ペーパーの構成としまして、1ページで点線の四角で事例1から11というのを概略、御紹介しておりまして、詳細につきましては参考資料というのを別途おつけしておりまして、そちらを適宜、御参照いただければと思います。今回の「消費者」・「事業者」概念につきましては、後ほどまた御説明いたしますけれども、5つの分類があり得るのではないかと私どものほうで考えまして、それぞれの分類に沿った事例を御紹介しつつ、それぞれの論点について問題提起しているという構成をとっております。

2ページに(1)問題の所在というのが書いてありまして、これは現行の解釈について御紹介しております。

御案内のとおりでありますけれども、2段落目あたりに書いていますとおり、消費者契約法2条の条文であります。「事業者」につきましては、法人その他の団体、これは当然に事業者としているということであります。それから、「個人」についても、「事業者として又は事業のために契約の当事者となる場合」は、事業者とするとしております。

この「事業」につきましては、3段落目に書いてありますように、一定の目的を持ってされる同種行為の反復継続ということでありまして、その判断は客観的・外形的に行うということを御紹介しております。

(2)の事例の紹介というところでありますけれども、先ほど申し上げましたように、主に5つの区分、これは一つの考え方にすぎませんけれども、こういったある程度の分類に応じて検討していくのがいいのではないかということで、こういう御紹介をしております。

(3)で順次、御紹介していきたいと思います。

まず、「ア 現行法の考え方」につきましては、先ほど申し上げました、一定の場合に事業者になるということについて御紹介しております。

4ページの「イ 事例」についてからが中身になりますので、(ア)から(オ)まで順次、御紹介していきたいと思います。

まず、4ページの(ア)当該契約以外に事業者性を基礎付ける事情がない場合としております。わかりやすく言いますと、aで書いておりますが、当該契約で初めて事業者性が基礎付けられるような場合が見受けられるということでございます。事例1、1ページに戻っていただきますと、相手方事業者に勧められて個人が初めて投資用マンションを購入したというケースでございます。裁判例もおつけしておりますが、これにつきましては特に議論がなく、消費者該当性というのを認めているという事案でございます。

これについて、5ページですけれども、こういった考え方を明確化するということもあり得るということでございますが、現行の解釈である程度対応できるということも御紹介しております。

5ページのbで、いわゆる開業準備行為につきましても御紹介しております。開業準備行為につきましては、既に商法等で一定の概念があるところでございますけれども、「これに対し」という段落がありますが、新たに商人資格を取得するような開業準備行為について、それを消費者として取り込むべきではないかという考え方がありますので、それを御紹介しているところでございます。

6ページの(イ)、事業の実体がない場合でございます。これは、現行でもある程度解釈で対応しているところでございまして、2段落目、「次に」というところでございますけれども、いわゆる内職商法などが典型的に想定されますが、よくある悪質商法の事例であります。こういった事案につきましては、事業の実体がないということから事業者性を基礎付けられないということで、現行においても消費者に該当するのではないかという解釈を逐条解説においてお示ししているところでございます。

価値判断としては、そういうことでほぼ問題ないのではないかと思われるところでございますけれども、あとはそれを条文上、明確化するということも選択肢としてはあり得る。ただ、解釈である程度確立しているところでございますので、解釈に委ねるということでもよいのではないかということで問題提起をしております。

次、7ページでございますけれども、(ウ)の事業に直接関連しない取引という概念でございます。この問題提起するのに触発を受けましたのは、日弁連さんのほうでこういった試案を設けておられることを念頭に置きつつ、事業への直接関連性というメルクマールによって、消費者、事業者を画するという考え方について御紹介しているところでございます。

ただ、これは1つは、メルクマールとしての明確性がどうかというところがあろうかと思います。

また、最後の「また」という段落で例えばということで書いておりますが、この考え方を進めますと、法人・企業でありましても、必ずしもその企業がメインで行っている事業でない場合、マル1、マル2という具体的な例を書かせていただいておりますけれども、こういった場合でも消費者として取り込んでいくという方向性になる可能性が出てくると思うところでございまして、それはやや行き過ぎの気もするというところで、この(ウ)の考え方として、そういうところは問題として指摘できるのではないかということで書かせていただいております。

それから、7ページの(エ)、団体でございますけれども、これにつきましては大学のサークルの実体に照らして、団体であるにもかかわらず、消費者に該当するという裁判例などもございますので、そういったところに触発を受けまして、ペーパーとしてつくってみたものでございます。

ただ、7ページから8ページにかけて、その「法人その他の団体」をなぜ「事業者」とするのか。それは、「事業として又は事業のために」組織された存在であることを前提としてということでございますけれども、そうでないケースもあるのではないかということで、ちょっと戻って恐縮でございますけれども、4ページの脚注の5番で落合誠一先生の考え方を御紹介しております。いわゆる同窓会のようなものを事業者と捉えるのは適切でないという考え方もあるところでございまして、便宜的につくられたような団体については、消費者契約法の団体に当たらないと考える余地もあるのではないかということで、8ページの1段落目あたりに書かせていただいております。

こういった解釈を明確化していくということもあり得るのではないかということでございまして、さらにそこを超えて明文化、規律を設けることについて、どう考えるかということで書いております。

それから、(オ)は、形式的には事業者に該当するけれども、契約の相手方事業者との間では何らかの格差があると思われるケースでございまして、1ページに戻っていただきますと、事例8番以降が該当するものでございます。

事例1は、初めて事業者性を持つということでございますけれども、事例8以下は、必ずしも初めてではないケースにおいて、個人ないし中小・零細企業のような方が一定の契約を締結する。その際にトラブルに遭うというケースを念頭に置いておりますが、こういった場合について、消費者契約法の考え方を及ぼすべきじゃないかという指摘もあるところでございますので、そういう考え方についての問題提起をさせていただいております。

ただ、これにつきましては、消費者契約法で対応するのがいいのかどうかといった政策判断の問題もあろうかと思っておりまして、相手方事業者との実質的格差をどの程度考慮するかということについての是非ということについて、書かせていただいております。

御紹介については、以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。山本健司委員。

○山本(健)委員 意見内容を短時間で正確にわかりやすくお伝えさせていただく自信がなかったものですから、資料3のペーパーを配付させていただいております。この資料3に基づいて意見を述べさせていただきたいと思います。消費者庁さんで分類いただいている(1)から(5)にそれぞれ対応する形で意見を書かせていただいております。

まず、「(1)当該契約以外に事業者性を基礎付ける事情がない場合」につきましては、「事業者の不当勧誘行為がなされた時点において相手方が消費者であれば、当該不当勧誘行為後の契約締結によって当該消費者が事業者性を具備したとしても、消費者契約法の適用がある」ということを、消費者庁の逐条解説で明記すべきであると考えます。

一般消費者が収益不動産の購入を事業者から不当な方法で働きかけられた事案などでは、現行法下でも、消費者契約法の適用があると考えてしかるべきであると思われます。法解釈の明確化、相談現場等における消費者被害の救済の促進という観点から、上記の点を消費者庁の逐条解説で明記しておくことが有用であると考えます。

2番目の「(2)事業の実体がない場合」につきましては、「事業の実体がなければ消費者として消費者契約法の適用がある」ということを消費者庁の逐条解説で明記すべきであると考えます。

事業の実体がなければ、仮に契約書等で事業者と記載されていたとしても、消費者として消費者契約法の適用があるということは、現行法下でも当然の帰結ではないかと思います。このような法解釈について明確化しておくことが有用であると考えます。

3番目の「(3)事業を行う個人について、自己の事業に直接関連しない取引を行うために契約の当事者となる場合」につきましては、自己の事業に直接関連しない取引を行うために契約の当事者となる場合も消費者契約法の適用対象と法改正すべきであると考えております。この点につきまして、皆様の御意見をお伺いさせていただきたいと思っております。

日弁連の改正試案では、事業を行う個人が自己の事業に直接関連しない取引を行うために契約の当事者となる場合については、当該個人は当該取引に関しては一般消費者と何ら差異がない構造的に情報・交渉力に劣る地位にあること、特定商取引法ではたとえ事業者であっても事業目的と直接に関連しない取引についてクーリングオフを肯定している裁判例も存在すること等を理由としております。

4番目の「(4)団体が実質的には消費者の集まりである場合」につきましては、「形式的には事業者と団体との契約であっても、実質的には事業者と多数の消費者との消費者契約(の集まり)であると評価できる場合には、消費者契約法の適用がある」ということを、消費者庁の逐条解説で明記すべきであると考えます。

大学のスポーツクラブチームなど実質的には消費者の集まりにすぎない団体の場合、宿泊業者などの事業者との契約を個人名の列挙という形式で締結したか、団体名で締結したかによって結論を異にするのは不合理であると思います。上記のような事案については、東京地判平成23年11月17日も、消費者契約法の適用を肯定しているところでございます。このような事例については、法解釈の明確化の観点から、逐条解説において消費者契約法の適用がある旨を明記しておくべきであると考えます。

最後に、「(5)形式的には事業者に該当するが、相手方事業者との間に消費者契約に準ずるほどの格差がある場合」についてでございます。 消費者契約法の実体法部分は民事ルールを規定する法規範であり、民法の諸規定と同じく、当事者間の利益状況が近似する場面では類推適用の余地のある法規範であると思います。実際上も、ホームページリースのような案件など、事案によっては不当勧誘行為による小規模事業者の被害を民事法で救済する必要性のある事案がございます。

そこで、日弁連の改正試案では、形式的には事業者に該当する場合であっても、個別具体的な事情によっては、消費者的事業者として消費者契約法の消費者保護規定が準用され得る旨を明定しておくことを提案しております。もっとも、この点につきましては、種々の御意見があるところと認識しておりますので、皆様の御意見をお伺いいたしたいと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございます。

阿部委員。

○阿部委員 基本的に、今の3条の消費者・事業者の定義規定というのは、消費者契約法が何に適用されるかというのを画する規定でありますので、みだりに変えるべきではないというところから出発して、何点か申し上げます。

事例について具体的な解説がございますが、当該契約以外に事業者性を基礎付ける事情がない場合については、その契約に事業者性を基礎付ける事由があれば、それがまさに事業者性そのものではないかと思います。5ページの2段落目にありますとおり、客観的に見て事業目的があるかないかをここで捉えることによって、事業者であるということで十分かなと思っております。

それから、開業準備につきまして、こういう規定をいたしますと、およそ商売の最初が成り立たなくなるということかと思います。フランチャイズ契約などは、全て無に帰するところがあるということで反対します。

事業の実体がない場合、ここも現行法の解釈で特段不自由は生じていないのかなと思っております。解釈を明確化するということについては賛成でありますけれども、それ以上のことはないのかなと思っております。

(ウ)の事業を行う個人について、自己の事業に直接関連しない取引を行うために契約の当事者になる場合。これは、自己の事業に直接関連するかしないかというものを一体どうやって見きわめるか、非常に困難がある場合が多いと思いますので、ここは慎重に考えていきたいと思います。

団体でありますが、ここは解釈によればよいとも考えるのですが、今の法律の書きぶりが非常に硬直的に見えるところがございます。百歩譲って、団体の書きぶりについては何か議論があってもいいのかなと思っております。

(オ)の形式的には事業者に該当するがという場合でありますが、これはおよそ中小企業であっても、個人事業者であっても、事業者である限りは事業者として扱うべきであると思います。

以上であります。

○山本(敬)座長 ほかにいかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 山本健司委員に質問ですが、消費者概念、消費者の定義の問題ですけれども、日弁連改正試案の2条では、消費者の定義自体を現行の消費者契約法の2条の定義と変えております。

それはどんな規定かといいますと、「事業に直接関連する取引をするために契約の当事者となる」かどうかを基準として消費者かどうかを判断するというものですが、この定義は、とりわけ資料3の(1)、(2)、(3)と分けていただいたうちの3番目に対応するものだろうと思うのですが、資料の1ページ目の (1)とか(2)の問題、つまり投資用マンションの購入とか開業準備行為とか事業の実体がないという場合については、現在の消費者契約法の定義である「事業として又は事業のために」という定義で対応するほうが、むしろ対応しやすいのではないかと思います。

さらに考えますと、(3)の問題につきましても、例えば酒屋さんがパソコンを購入するという契約についても、そのパソコンの購入が事業のための購入なのかどうかという解釈問題というのでしょうか、事業のための取引かどうかで解決できるのではないかと思います。そういうふうに考えていきますと、むしろ現行の消費者契約法の定義のほうが使いやすい感じがしますけれども、その点はいかがでしょうか。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 御意見をいただきまして、ありがとうございます。

定義自体を変えると問題として考えている事例以外にも波及的な影響があるのではないか、むしろ現在の「事業として又は事業のために」という字句の解釈から日弁連試案の意図しているところは導けるのではないかという御意見と拝聴させていただきました。傾聴すべき御意見であると思います。一つの考え方として検討させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 消費者庁さんがつくっていただいた資料の(ア)から(オ)に準じて意見を述べさせていただきたいと思います。

基本的に消費者の定義というのは、ある程度明確な基準で提示すべきだという意見を個人的には持っておりますので、とりわけ(ウ)の直接の関連性があるという基準には個人的には反対しております。と言いますのも、そういう場合の保護の必要性があるということは十分わかるのですが、直接の関連性という言葉、あるいは直接関係するという文言を使うことによって、「直接」というのはどの程度を指すのかとか、そういう疑念をかえって招くことになるということがまず1つの理由です。

もう一つは、これは海外の話になりますが、フランスの、日本で言うと最高裁になりますけれども、破毀院で消費法典が適用されるか否かの基準として、その直接事業と関連するかどうかという基準を20年ほど前に出したことがあったのですが、この基準は直接の関連性というのが非常にわかりにくいということで、法的な安定性を害するという批判が非常に強かったということも、1点添えておきたいと思います。ですので、この(ウ)の直接といった基準をつくることには、個人的には反対です。

あと、(ア)と(イ)につきましても、資料を読ませていただいて、そういう場合に必要性があるということは十分わかりますが、恐らくこれも資料に書いてありますとおり、現行法の解釈でも十分対応できるのではないかと思いますし、むしろこれを基準にすることで、かえって混乱するというか、明確性を欠くことにならないかのほうを若干心配しております。もちろん、現行法でも解釈で対応できるとはいえ、そのことを例えば逐条解説ではっきりと明記することは大事なのではないかと思っております。

そして、順番が異なりますが、(オ)の中小事業者の人についても、場合によっては消費者契約法を類推適用するというのも、個人的には余り賛成できる考え方ではありません。もちろん、そういう場合の必要性があるということは、それはそれで一つの意見としては非常によくわかりますが、消費者契約法というのは基本的には事業者と消費者の間で適用される契約である。事業者の中でも、例えば中小事業者と大企業の間のトラブルというのは、本来であれば民法で対応すべき問題だと個人的には考えておりますので、特に類推適用という非常にわかりにくい条文をつくるようなことには反対しております。

恐らく一番悩ましいのは、(エ)の団体ではないかと思っています。確かに、今の2条の基準ですと、法人その他の団体というのが一律に消費者から排除されるということがあって、この点は何か手当てをしていかなければならないのではないかと思っています。

私も、その点に関して何か案があるわけではないのですが、これも海外の話で恐縮ですけれども、1つだけ参考までにお話ししたいと思います。フランスでは、これまで消費者概念を定義した条文はありませんでしたが、2014年、ちょうど1年ぐらい前の消費法典の改正によりまして、消費者の定義が初めて明文で設けられました。これは、もちろんヨーロッパ指令の国内法化という意味がありますので、その点は留保するにいたしましても、そこでの定義としては、消費者という定義は日本の現行法の2条とほぼ同じような定義になっておりまして、法人は消費者には含まれておりません。ですので、海外でも、これはもともとヨーロッパ指令の国内法化ですので、ヨーロッパでも基本的には定義上は、法人は入れていないということです。

ただ、フランスの場合について申しますと、フランスでは消費者の定義とともに、条文によっては、例えば不当条項規制のところでは非事業者、ノンプロフェッショネルというという言葉も併記しております。この非事業者という概念の中に、例えば団体を含ませることも解釈上はありますし、実際にそれを認めた判決もございます。あと、想定されているのは、恐らくは投資家ですので、今回の資料で言うと、(ア)に相当するのではないかと思います。海外で一応、このような法律があることを紹介させていただき、個人的に一番対応すべきなのは、少なくとも明文上、何か考えなきゃいけないのは、(エ)の団体のところではないかと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見は。松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 2点申し上げます。

1つは、消費者庁資料の4ページあるいは6ページですが、当該契約以外に事業者性を基礎付ける事情がない場合ということをまとめて、相手方事業者の不当勧誘行為により個人が誤認に陥らなければ云々と。不当な勧誘によって個人が事業者性を基礎づける状況に引き込まれた場合は、消費者だという定義をされているのですが、これはトートロジーだからやめたほうがいい。つまり、不当な勧誘なのだから救済すべきだ、だから消費者だと考えるのは、結論を決めてから要件該当性を定めていることになると思います。

同じことは、日弁連提案の理由にも書かれていることです。不当なという結論から引っ張るのではなくて、むしろ消費者被害の多くは不招請勧誘等による引きずられ型、引き込まれ型なわけです。消費者が積極的に能動的にこの取引をぜひやりたいという形で入っていく場合と、そうではなくて、突然訪問してきた業者に、こういう事業をやればもうかりますよと言われて、その気にさせられる場合とは、明確に類型として区別できると思います。

したがって、この定義の「不当な勧誘を受けて新たに事業を行おうと考え」という6ページの5行目の「不当な」というのは削除して、これまで事業を行っていなかった者が相手方事業者に勧誘を受けて、新たに事業を行おうと考えという表現にして、引き込まれ型であるという点を明確にするほうがよいのではないか。それが第1点。

第2点は、(エ)の団体のところで、大澤委員がおっしゃったことが大変示唆的なのですが、私も日本の現行法の定義は大変いびつだと思っています。というのは、世の中には消費者と事業者しかいないのだという二分論で法律を描こうとしているところに、大変無理がある。フランスは、団体は消費者ではないけれども、事業者でもないという非事業者というジャンルをつくっている。これは大変示唆的だと思います。日本で、個人は消費者だけれども、消費者団体をつくれば突然事業者になるという、こんなわけのわからない理屈はないと思います。

もちろん、消費者団体が消費者団体としての事業を一定行うという局面もありますから、そのような局面においては事業者性を認めてよい場合もあると思うわけですが、消費者団体の行っている事柄が全て事業者としての行動であって、営利法人と全く同じルールが契約において課されるというのは、おかしなことだと思います。団体の場合には、事業者として行っている部分と、そうでない部分があるということをきちんと認識したほうがよいと思います。

ただ、営利法人の場合は、基本的に全ての事業が商行為性を帯びておりますから、原則は区別しなくてよいと思いますが、非営利法人、ましてや法人でもない団体の場合には、事業者としての行動の部分とそうでない部分がある。そうでない部分について、あえて消費者と呼ぶか呼ばないかは別の問題であって、フランスのようにB to Bの契約ではないのだ。営利法人、営利企業と団体が行う場合に、B to Bにならないものがたくさんあるのだという認識を持てば、それでよいと思います。いずれにせよ、個人の中で事業としてまたは事業のために契約するのでない個人と、あと全ての団体、法人は全て事業者だという定義だけはやめていただきたい。

○山本(敬)座長 少しよろしいですか。もう一歩御意見をいただきたいのですけれども、仮にそうだとしますと、今おっしゃっているようなものはどのように特定して規定すればよいという御意見でしょうか。

○国民生活センター松本理事長 1つのアイデアとしては、現行消費者契約法は、事業のためにまたは事業としてという形で、個人の活動について識別しようとしているわけなので、そうすると、営利法人でないところの法人あるいは団体についても、その事業のためにまたは事業としてという要件で識別を考えるというのは1つあり得る考え方だと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、古閑委員。

○古閑委員 これまでの議論を丁寧にまとめていただいていると思いますが、幾つか補足等、させていただきたいと思います。

まず、5ページの一番下からですけれども、「その者が新たに事業を始める者であることが最低限必要となると思われるところ、それらは相手方事業者にとって必ずしも知り得ない」というのは、本当にそのとおりだと思っております。例えば私ども、ショッピングモールをやっていますけれども、そこにさまざまなストアさんが参加されてきますが、このストアさんは、例えばそれまでも自分でECをやられている方もいらっしゃいますし、あるいはほかのショッピングモールで既に出店されていながらまた新たに出店するということもありまして、新たに入ってくる人たちが初めてなのかどうかというところはわかり得ないところがありますので、ここを基準に区別しようというのはなかなか難しいのではないかと思います。今のが(ア)です。

(イ)ですけれども、これはもうちょっと丁寧に分けることができないのかなと思っていまして、事例4とか5で挙げられているのが(イ)だと思いますけれども、これを読むと、例えば事例4は「相手方事業者の勧めで」というのが入っていますし、事例5にしても「執拗な勧誘に根負けして」というのが入っています。こういう事情がある場合には、確かにこの考え方というのはあり得ると思うのですけれども、そうではなくて、消費者契約法の適用の観点から言うと、お互い当事者としては誰と契約を結ぶのかというのがはっきりわかっているほうがいいわけですけれども、それをあえて、余り何も考えずに、個人として取引をやりたいと思っていたにもかかわらず、事業者名で結び、後から消費者性を主張するということで混乱を起こしてしまうというのは、社会的にもよくないことだと思いますので、事例のような事情がある場合にはこういう考え方もあるのかと思いますけれども、そういう場合とそうでない場合をもう少し丁寧に区分したほうがいいのではないかと思います。

それから、(ウ)ですけれども、これもまさに最後のパラグラフに「具体的なケースとして」と書いていただいていますが、大企業であっても情報格差がある取引をすることは往々にしてございまして、例えば不動産を賃借しようとか買おうという場合もありますけれども、これは当然、不動産会社には大量の情報と経験がありまして、逆に借りるとか買う側からすると、幾ら大企業であっても慣れていないものなので、当然に格差はあります。こういったものも含めてどうするのかということになると、どこで基準を引くのかというところが出てきますので、この基準をいかにつくれるのかというところがポイントになると思っておりますので、まさにここに書いていただいているとおりだと思います。

それから、(エ)については、消費者とみなす団体とそうでない団体をどう区別するのかという基準を明確につくれるかどうかだと思っています。これがないと、契約を締結するときにどっちなのだろうということがなかなかわからないので、後になってまたもめるということになると、もめごとを引き起こすこと自体が消費者にとっても事業者にとっても負担だと思いますので、そういった基準が明確につくれるかどうかが大切なのかと思います。

(オ)についても同様ですけれども、最後のなお書きで、「取引実務では、取引の相手方が個人か法人かに応じて契約書や約款を使い分ける運用がされることがある」と書いていただいていますが、これは本当に非常によくあることでして、法人のほうの契約・約款で入ってこられた人が、実は消費者でということを後からお申し出になる場合には、やはり混乱が生じるところがありますので、この辺も慎重な検討が必要だと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかに御意見があれば。まず、丸山委員。

○丸山委員 丁寧な今回の資料、ありがとうございました。

まず、現行法の解釈にもかかわることになりますので、質問したい点というのが何点かあります。その上で自分の意見を述べたいと思います。

第1点の質問としましては、事例についての(ア)の類型にかかわるのですけれども、ここでの紹介の趣旨としましては、投資取引、イコール事業とする趣旨ではないと考えてよろしいのかという点が、まず確認したい点の第1点です。

第2点としましては、この(ア)の中のaとbの類型ですけれども、bの類型の開業準備行為のほうが広くなるという理解でいいのかというのが質問の第2点です。

質問の第3点としましては、事業の実体がない場合に関してですけれども、1段落目に書かれている、契約書で名称だけとにかく法人名で、実際は個人利用目的だったという場合は消費者として扱うというのは非常に理解しやすかったのですけれども、2段落目に書かれている、例えば内職商法とかで、仕事を紹介するからパソコンを買ってくださいということでパソコンを買った。しかしながら、その後、業務の依頼はなかったという事例があります。

これも机上の空論になるかもしれないのですけれども、技能を取得して、自分で何か仕事の依頼を見つけて受けたみたいな経過になった場合でも、最初の勧誘のところで業務の実体がなければ、これは最初の契約については消費者性はない、消費者契約としていろいろ対応できることになるのかという点が、自分で考えてみても、解釈論として不明瞭な点があり、現行法の解釈論として消費者庁において考えているところがあれば、確認したいと思いました。

次に、自分自身の今回の消費者契約の定義に関する意見の部分ですけれども、基本的に手当ての必要があるなと考えているのは、先ほどの大澤先生や松本先生の意見とも重なるのですが、(エ)の部分ではないかと考えております。事例にも挙がっていましたように、大学のサークルなどでサークル名で何か注文したら、これで消費者性が否定されてしまうというのは、これはいかにも納得しがたいと思っております。

その際に改正を考える際には、1つの視点としては、松本先生の意見とも共通する部分が出てくるかもしれないのですが、消費者・事業者というのは必ずしも裏表にする必要がなく、ここに出てきているような団体というものをどう位置づけるのか。特に、活動資金を得るような活動を行っていないような団体につきましては、消費者のほうに寄せて手当てをしていくことは考えられると思いますので、この点については、解説レベルではなくて、法改正というのを視野に入れて、一定の手当てというのが必要だと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 もう少しだけ御意見をいただきたいのですが、先ほど松本理事長に質問したのと同じことなのですけれども、御意見のような考え方を実際に規定するためには、どのように定めればよいという御意見でしょうか。

○丸山委員 そこはまだ規定に落とすほどに固まっていないのですけれども、法人というものを事業者の分類に残すことはあり得るとしても、団体というものは、このままにしておかないほうがよいと考えておりまして、その団体というものをどういうふうに適用を条文化するのかという点は、まだ固まっていないのですが、団体という文言を外す、あるいはこういう団体については消費者契約法の適用を認めるみたいな形で、法文というのを二、三練ってみるということはあり得るのではないかと考えていました。

○山本(敬)座長 消費者庁のほうからお答えをお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 丸山先生の御質問、幾つかあったと思いますけれども、まず、事例(ア)の投資用マンションのところでは、投資だから直ちに事業に該当すると判断するというものではなくて、今回の事例でケースを挙げておりますけれども、当該契約でしか事業者性を基礎づけるような事情がないようなときに、どういうふうに見ていくかということで取り上げさせていただいたということであります。

その次の開業準備行為と、資料で申し上げますと4ページ、5ページにa、bと書いていますが、aとbと比較してbのほうが広いのかどうかという趣旨の御質問だったと思います。そこは、にわかにどちらかとお答えするだけの検討はございません。まず、(ア)で整理しましたのは、当該契約で初めて事業者性が基礎づけられるというカテゴリーとして、まずaの事例を持ってきて、開業準備行為につきましては、従前から消費者該当性については議論があったと承知しておりまして、今回の(ア)から(オ)までの区分の中では、(ア)の中に位置づけるのが一番近いだろうと考えまして、このようにしました。

ただ、開業準備行為につきましてはいろいろ雑多なものがあるだろうと思いまして、先ほど阿部委員からも似たような御指摘があったかと思いますが、それこそ部屋を借りるとか人を雇うためにお金を借りるとか、いろいろな要素が開業準備行為としてあるだろう。そのうちどこから事業者性を認めて、消費者でないとするのかという線引きの話は出てくるだろうと思います。ただ、開業準備行為は、もちろん私が言うまでもない話でありますけれども、商法において概念がそれなりに構築されてきていると思いますので、その考え方を開業準備行為においても基本的には踏襲するのだろうと。

ただ、この資料で御紹介していますのでは、新たに商人資格を取得する場合でどうかという議論が、いろいろと文献等を見ていますとございましたので、そこはaと似たような問題状況で、似たような問題意識があるのではないかということで、並べて書いてみたということでございます。

それから、現行法の解釈で内職商法について御質問があったかと思いますが、パソコンなどを購入した個人がいて、それが消費者なのか事業者なのかという形で争われる問題だと思っておりまして、ここは消費者契約法の立法当時からの逐条解説でも既に書いておるところですけれども、そういう場合には、当該パソコンなりを購入することについて、その内職が客観的に見て実体があるのかどうかというところで、実体がないということであれば、それは事業のためにする契約とはならずに、当該個人は消費者として契約当事者になるのだという解釈が示されております。

先ほど応用問題みたいな形で、消費者がパソコンを買いました。内職はありませんが、別に何か仕事を見つけてきたという場合、どうかという話になってくると、話はちょっと変わってくるのではないか、これは、私が個人的に思うだけでありますが、という気はいたします。と言いますのは、結局パソコンを購入して、それでその人が何をしようとしているのかということで事業のためということを判断することになると思いますので、別に利用するのだという話になってきますと、それを用いて何らかの仕事をする可能性があるということになってまいりますから、そこは事業者性を帯びてくるのではないかという気がいたします。

ただ、あとは事業者として事業のためにというのは、客観的に判断しますよというのが現行の解釈であると逐条解説の中でも書かれておりますので、それが相手方から認識できる程度に示されているのかどうかといった事情がしんしゃくされるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、先ほど河上委員長から手が挙がっていましたが、よろしいですか。

○消費者委員会河上委員長 現行法の定義をつくった際の議論として、御参考までに申し上げますと、恐らく適用範囲というのは客観的に相当明確であることが望ましいという判断であっただろうと思います。その意味では、余り複雑でないということが大事だということで、中間概念はできるだけ避けたいという判断が1つございました。

もう一つ、法人と団体という言葉が出てきますけれども、これは実は団体のほうに軸足がありまして、法人その他の団体ですから、法人が代表例になっている。団体を形成する場合には、通常は一定の事業目的を持って組織化して、法人なり団体をつくって活動するはずで、その団体の中には事業に対する一定のイメージが大体含まれているという前提であったかと思うのです。その意味では、最近の判例で出てきた、消費者が同好会的に集まったような団体というのもあるじゃないかという議論は、当時は余り考えられていなかったわけです。その意味では、法人はともかく、そうした事業者性からは遠い団体というのを選り分ける。それを消費者としてもう一度明らかにしておくということは、あり得ることではないかと思いました。

あと、営利の問題、収益性の問題が出てきましたけれども、これも当時議論されましたが、営利性、非営利性、公益性も含めて、そういう団体も、事業をやっていく上では一定の知識・経験を持っていて、その限りで情報・交渉力において優位に立っているということで、営利性はここでは問題にするまいという判断をした。それがよかったかどうかは、今、また議論していただければと思います。

以上は情報ですけれども、もう一つ、気になりますのは、こういう特別法の中で当事者を切り分けて一定のルールをつくるというところで、問題があるグレーゾーンの扱いです。消費者的事業者あるいは事業者的消費者の問題というのは、本来であれば民法の中に情報・交渉力の格差を考慮した上で、一定の修正原理を導入するという考え方を入れていただければ一番よかったと個人的には思っております。

今日、法務省の方もお見えなので、あの一般規定が落ちたというのは、一体なぜだったのかということをぜひお聞きしたい。消費者契約法でぜひやってほしいということで、民法ではやらないことにしたのか、それとも民法で本来できるのだけれども、それは書いていないだけだという趣旨なのか、そのあたりもちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。

○山本(敬)座長 その点は、私が言うのもどうかと思いますけれども、さまざまな御意見があって、理由は1つではないのですが、コンセンサスが得られず、民法の中には規定が置かれないことになったのだと理解しています。ぜひ消費者契約法のほうで規定してほしいということかどうかは別として、消費者契約法のほうで一定の考えに基づいて何か規定を置くことは、一切妨げていないと理解してよろしいのではないかと思います。法務省のほうでも、そのあたりでよろしいでしょうか。

○法務省中辻参事官 今、山本先生から御説明のあったとおりかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいですか。

それでは、沖野委員。

○沖野委員 気になった点をお話ししたいと思います。

1点目は、丸山委員から御質問のあった投資マンションの話ですけれども、この事例が投資用商品購入の事例なのかということです。対象は、投資用マンション1棟ですね。一般的には、むしろ賃貸経営ビジネスを開始するための契約だというのが実質ではないかと思いますので、余り投資用というのを強調するのは、この事例を見誤る可能性があり、加納課長がおっしゃったのもそういう意味だと思うのですけれども、むしろ賃貸経営用物件の購入という形での整理のほうが適切ではないかと思いました。

2点目は、直接に関連しない取引という点についてですけれども、この要件が非常に曖昧である。やりたいことはわからないではないけれども、これがうまく機能するのかというのは全くそのとおりで、問題意識を共有するところです。では、どうしたらいのかという解決策が出せなくて申しわけないのですけれども、これに関連しまして、1点あります。7ページの一番最後の段落で、説明の中でも、方向性・可能性としては、こういうことにもなりかねないが、やや行き過ぎではないかという評価をされた法人の場合についてです。

これは、今、河上委員長からも御説明があったところと関連するかと思いますけれども、少なくとも法人について、これを自然人、個人と区別するというのはそれなりに意味があると思います。法人と個人との間の線引きについては、個人であれば生身の人間だということがあり、生活と事業の双方を、同一主体が活動の中で振り分けていかなければならないということですとか、知識・認識・判断の限界や制約、あるいは損害等に対する脆弱さということがあります。

ですので、当該項目について、まさに直接関連するかどうかという点では同レベルで語れるとしても、法人であるか、個人あるいは自然人であるかということでは状況が異なるという事情はあって、それは現行の消費者契約法の消費者・事業者概念のときにはそういうことも勘案されていたのではないかと思いますので、最後の「また」以下の段落は、当然こういうことになるということではなく、むしろ個人の場合については直接関連性を基準とするという考え方をとることも十分あり得るのではないかと思います。

もう一つ、消費者と事業者の概念について、団体関連のところですけれども、現行法は消費者か事業者かを二分しているという点ですけれども、ある人が消費者になるか事業者になるかというのが一律に決まるかというと、法人や団体についてはそうなっているわけですけれども、むしろ取引ごとであるという部分がありますので、たてつけ自体としては、ある主体がある場合には事業者となり、ある場合には消費者となるということはあり得るものとして想定されていると思います。その線引きが法人・団体という形でいいのかどうかということかと思います。

それで、これに関連してです。質問があって最初に手を挙げたのですけれども、それは松本理事長と大澤委員に教えていただければと思ったところです。ただ、松本理事長については座長からの御質問で既に明確になりました。それは法人の扱いということでして、消費者団体の例を挙げられたときに、消費者団体の場合はと言われましたが、消費者団体が法人化しているというのは十分あることですので、法人の場合についてはどうかということをお伺いしたかったのです。松本理事長の御説明からすると、それは法人であっても同じで、非営利の法人その他の団体については、むしろ事業のためにまたは事業として画するというお考えと伺いました。違っていたら御訂正いただければと思います。

大澤委員にお聞きしたかったのは、フランスの状況を御説明くださったときに、消費者概念で法人は当然排除している。一方、非事業者概念をところどころ立てているというときに、非事業者概念と法人との関係はどうなっているのかということについて、補足的に説明していただければと思います。

○山本(敬)座長 では、大澤委員、お願いします。

○大澤委員 今、つぶさに判決が思い出せるわけではないのですが、私の記憶の中にある限りでは、その非事業者というところに団体、要するに法人ではない団体に限定しているわけではなくて、法人を入れた判決だったと思います。ただ、そこでの法人は、恐らく非営利目的ですけれども、法人格をもっている団体だったと思います。スポーツ関係だったかなと覚えていますが、要するにさっきから問題になっている営利目的ではなかった。ただし、法人格はとっているという団体でなかったかと記憶しています。

そこをもうちょっと補足すべきだったと思うのですが、そういう意味では、法人か団体かという括りよりは、むしろ営利目的かどうかという括りで一定の団体になっているもので、例えば非営利目的、営利目的でないものであれば、かわりに法人格をとっているものでも一定の手当てを考えていかなきゃいけないと先ほど申し上げるべきだったと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 非営利法人を一括りにできるかというのが私の悩みでありまして、例えば学校法人、医療法人、社会福祉法人といった、事業体として相当大規模で、金銭的に大きな額を動かしているところも一方であり、他方で、今、一般社団法人はごく簡単につくれますし、NPO法人も簡単につくれますから、実体があると言えないような法人もたくさんあるわけです。そうなると、非営利を一括りにして全く同じルールでやっていいのかどうかは踏ん切りがつかないところがあります。学校法人等も、非営利だから、本来の事業か、そうでないかで分けてしまうということで一括りにしてしまっていいのかというところは、まだ判断がつかないところです。

○山本(敬)座長 そろそろ次へ移らないといけないのですが、次回以降、先ほどのスケジュールにもありましたように、取りまとめに向けての議論をしなければなりません。そのためには、確認しておいたほうがよい事柄が一、二あります。

まず、(ウ)については、「自己の事業に直接関連しない取引」というのでは特定性を欠いているのではないかという御意見が幾つか挙がっていました。

また、(オ)については、基準の問題もありますけれども、消費者契約法という法律の中で手当てすべきものなのかどうかという点についても御意見がありました。

以上2点について、山本健司委員のほうから、そうではなく、こういう考え方であるという御指摘等がもしありましたら、お願いできればと思いますが、いかがでしょうか。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

まず、(ウ)につきまして、いただいた御意見は、いずれも拝聴させていただくべき御意見内容であろうと思います。会議体である以上は、皆様の御意見の集約という形で議論の取りまとめが進められていくべき問題であろうと理解しております。

(オ)の問題につきましては、消費者的事業者に対する消費者契約法の考え方の、言ってみればにじみ出しのようなことについて、研究者の先生方に御意見を頂戴したいと思います。そういう例外的なケースを法文に規定することが合理的かということは別途議論があるところとして、原理的にはあり得るところと思っております。その点について、御意見を頂戴したいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 研究者に限らないと思いますが、もし御意見があればと思います。

後藤委員。

○後藤(巻)座長代理  消費者契約法は、事業者と消費者の間の情報・交渉力の構造的格差ということを問題としているので、事業者間の契約で消費者契約法に準じたことを考えるとしても、そのような構造的格差があるところまでというのがせいぜいだと思います。

例えば大企業と系列の会社とか、そういう一定の関係があるような場合については、構造的格差ということを考えることができるかもしれないけれども、事業者間の情報・交渉力格差ということを個別・具体的に考えることになると、これは民法の領域であって、あるいは事業者間取引を規律する個別法の領域であって、消費者契約法にそこまでの解決を求めるためには、消費者契約法がより広く格差を考慮する法律としての性格を持つという方向の議論がどこまでできるかを詰める必要があって、今後の課題ではあるのですけれども、個人的には現在、直ちに支持することはできないという印象を持ちました。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 はっきりとした考え方が定まっているわけでは、まだ私の中ではないのですが、1つ気になっておりますのは、事業者と消費者の間にある情報・交渉力の格差というものと、事業者間で格差があるというときの格差の内容とかレベルが、果たして同じものなのかという疑問を以前から感じております。そうだとすると、事業者と消費者の情報・交渉力の格差というのも、もちろん構造的な格差で念頭に置いている消費者契約法の、いわゆる格差の内実というか、意味を、そのまま中小事業者と例えば大企業との間の格差というものをパラレルに考えていいのかというところに前から疑問を持っております。

例えば経済的、企業の規模とか、そういうものも事業者と消費者の間にはないような、ほかの面のファクターで格差が基礎付けられているのではないかという疑問を持っていますので、そこを直ちに同じ格差と捉えること自体に、理論的にそれは果たして大丈夫なのだろうかという疑問があります。もちろん必要性として、(オ)に書かれているような問題があるということは重々理解しているつもりなのですが、果たしてそこで言っている格差というものが、いわゆるB to Bの場合とB to Cの場合で同じなのかどうかというのを、これはこの会議だけで十分できるような話では多分なくて、慎重に数年かけてやるような話だと思うのですが、考えていかないと、直ちに消費者契約法の中で手当てするのは難しいのではないかという意見を持っています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

どうぞ。

○後藤(準)委員 事業者間、B to Bのことだけですけれども、その規模の関係というよりは、事業者としての取引実態というのは、消費者と事業者という考え方は若干違っているような認識を我々は持っています。実際に今の議論ですと、B to Bは大企業と小規模という関係で捉えがちですけれども、実態上は小規模事業者間での取引も当然あることですので、そのときに果たして小規模であるがゆえに、その実態上は情報の格差があるのかどうか。お互いに小規模間での取引という場合は、そういう一律の関係ではない。これは御理解いただきたい。その1点だけです。

○山本(敬)座長 それでは、議論が尽きないところですが、第1点目につきましては、差し当たり以上のとおりとさせていただきます。

(2)情報提供義務

○山本(敬)座長 続きまして、2つ目の論点、つまり「情報提供義務」に移りたいと思います。資料2の13ページから24ページの部分につきまして、消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、13ページ、2.情報提供義務のところでありますが、また事例12番から22番を御紹介しております。これは、後ほどまた該当箇所に関連する形で引用させていただきたいと思います。

(1)問題の所在のところで書いてございますけれども、現行法第3条第1項でございますが、情報提供義務、事業者の努力義務というふうに規定を設けているところでございます。これにつきましては、従来から問題点の指摘があったところでございまして、いわゆる法的義務について効力を認めるべきではないかという指摘がされているところでございます。それを踏まえて、今回、ちょっと資料をつくったということであります。

(2)事例の紹介で先ほどの事例について書かせていただいておりますが、13ページ、14ページに戻っていただきますと、事例12番から18番までは、主として、過去の最高裁の判決もございますけれども、裁判例につきまして、消費者トラブルにおいて一定の情報提供義務を認めたものを集めております。19番から22番につきましては相談事例でございまして、相談事例なども消費者契約法のあり方を考える上では考える必要があるだろうということで、挙げてございます。これについても後ほど説明したいと思います。

16ページに戻りまして、(3)の考え方でございまして、アから書いてございます。情報提供義務につきまして行政規制との関係ということで書いておりまして、参考資料3で個別の法の規定ぶりについて引用しております。こういった行政規制の対応というのもあるということでございますけれども、民事的な規律ということは直ちにそこから導くことは困難だと思いますので、そこは課題として残るだろうということを書いております。

16ページ、イでございますけれども、信義則の考え方。これは後ほどまた御紹介いたしますが、民法では信義則に基づく情報提供、説明義務に基づく損害賠償という形で、一定の考え方が既に蓄積されているところだと思いますので、そういったところを踏まえまして、今回、この消費者契約法3条の情報提供義務についても検討してはどうかということで書いております。

17ページ、「この点については」ということで書いておりますが、民法に委ねるということももちろん考えられるところでございますけれども、これを消費者契約における発現として明確化し、類型的に要件などを規律するということについて検討してはどうかということでございます。これは、そうすることによる予測可能性の確保ということが、消費者さらには事業者、双方にとってメリットを生ずるのではないかということで、そういう考え方に基づいて、こういうことをお示ししているところでございます。

また、2段落目、「消費生活相談においても」と書いているところですが、先ほど消費生活相談事例というのも御紹介しております。特に消費生活相談において、こういった19番から22番のような契約内容について、よくわからなかったとか、後で思わぬ料金の請求が来て戸惑ったといったたぐいの相談例は、古典的な相談事例とでも申しましょうか、非常に数が多いと認識しているところであります。

これらが裁判所において処理されるときには、一定の要件のもとで損害賠償等が認められるということは当然あり得ることだと思いますが、消費生活相談において、どの程度処理されているかといいますと、不透明な部分が残っているのではないかと推測しているところでございまして、そういったところの透明性を確保するという意味からも、この信義則上の義務というのを明確化するということは意味があるのではないかということで書いております。

そうしますと、具体的にどのように要件立て等をしていくのかということでございまして、エ、オのあたりに書いております。順序が逆になりますけれども、「オ なお、この点に関し」というところで、民法の法制審における情報提供の議論を御紹介しております。この情報提供義務につきましては、法制審議会におきまして、かなり時間をかけて議論が積み重ねられたところと認識しておりまして、中間試案においては、2段落目、マル1からマル4までの要件を立てて、民法に情報提供義務違反に基づく損害賠償の規律を設けることというのが提案されておりました。ただ、これらにつきましてはコンセンサスが最終的に得られなかったということで、今般の民法改正の中では導入されないことになったところでございます。

エに戻っていただきまして、事例の14から18番といいますのは、先ほど、裁判例ないし最高裁の判決もあるということで御紹介いたしましたが、これらの裁判例、判旨を検討いたしますと、17ページから18ページに書いてあります(i)から(iv)のような事業者にとっての情報入手可能性、その当該情報の重要性、消費者にとっての情報の入手困難性、さらにその責任を負わせることについて、相当でないことといったメルクマールにおおむね収れんするのではないかと思われるところでございまして、民法改正も同じような議論をされたというところであります。この要件立てとしましては、(i)から(iv)のようなところを踏まえて検討することが考えられるのではないかと書いております。

最後、19ページのカの効果論についてもさまざまな考え方があるところでございまして、従来、消費者契約法において情報提供義務というのが議論された場合には、どちらかといいますと契約の解消という効果に結びつけるということで議論されているところではないかと思われるところであります。

19ページの下から4行目、「しかし」あたりから書いているところでございますけれども、契約の巻戻しだけでは必ずしも賄えない損害でありますとか、20ページに書いていますように、消費者にとっても契約を維持した上での解決が望ましいことがあると考えられることでありますとか、さらには損害賠償によって過失相殺、因果関係の認定その他による実質的な当事者間の公平を図ったような解決も導けるということで、損害賠償を基準としつつ、契約の解消につきましては、別途検討するという整理もあるのではないかということで書かせていただいているところでございます。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問ある方、御発言をお願いします。山本健司委員。

○山本(健)委員 資料3の3ページ以下を引用させていただきながら、意見を述べたいと思います。

1の情報提供義務を法的義務とすることにつきましては、賛成でございます。

問題は、2の情報提供義務の要件・範囲・効果ではないかと思います。

まず、「情報提供義務の要件」に関する意見を述べます。

消費者庁さんの資料2の17ページから18ページにおいて、(i)から(iv)の4つの要件を試案として御提案いただいております。この(i)から(iv)の全てを情報提供義務の発生要件とすることには、反対です。消費者契約において(i)(iii)(iv)の点は構造的に肯定できるものであり、民法改正論議とは区別して、(ii)を要件とすれば足りると考えます。具体的には、資料3・3ページに引用させて頂いております日弁連試案のような条文案が望ましいと考えます。

その理由について、述べさせていただきます。資料3の4ページの【理由】(1)部分でございます。

対等当事者間の法律関係を規律する民法における法規範としては、例外的な法的義務である信義則上の情報提供義務の発生を基礎づける事情として、資料3の4ページ(1)(ア)部分に列挙させて頂いたマル1からマル4のような諸要素、消費者庁さんの資料2で挙げられているような諸要素を考察することは有用であると考えます。もっとも、個々の事情の詳細な内容、下記の諸事情だけでよいのか、下記の諸事情が全て満たされなければ信義則上の保護が与えられないのかといった点は、なお検討が必要であると思います。

しかしながら、消費者契約につきましては、その基本的性格において契約当事者間の情報・交渉力の構造的な格差の存在を前提としており、民法の情報提供義務の議論において問題とされ得るマル1、マル3、マル4のような事情は、もともと構造的にその存在を肯定できると思われます。

したがって、消費者契約を規律する法規範としては、民法改正論議とは区別して、情報提供義務の発生要件は(ii)のみで足りると考えます。具体的には、資料3・4ページでも御紹介させていただいております日弁連試案のような条文案、具体的には「第3条 事業者は、消費者契約の締結に先立ち、又は締結の際に、消費者に対し、当該契約に関する事項であって、次の各号に掲げるものについて、その情報を提供し、説明しなければならない。一、当該消費者契約を締結するか否かに関して消費者の判断に通常影響を及ぼすべきもの(以下省略)」といったような法規範が望ましいと思います。

実際問題としても、「事業者は、消費者に対し、当該契約を締結するか否かに関して消費者の判断に通常影響を及ぼすべき情報を提供し、説明しなければならない」というシンプルな民事ルールのほうが、事業者にとっても、消費者にとってもわかりやすく、納得感のある民事ルールであると考えます。

さらに、資料3のペーパーに記載のない意見を補足させいただきますが、消費者庁の資料2の(i)(iii)(iv)のような事情は、最終的な情報提供義務違反に基づく損害賠償責任を考える上で、(i)については事業者側の過失の存否、(iii)については消費者側の過失相殺の要否、(iv)についてはそのいずれかを各々基礎づける事情として考察することができるのではないか、また、そこにおいて考察すべき事情ではないかと思います。その意味でも、情報提供義務の発生要件として位置づけることが必要なのか、また相当なのかという点については疑問です。

以上が、「情報提供義務の要件」の問題に関する主位的な意見でございます。

資料3の4ページの上のところで、予備的意見を付記させていただいております。

もし仮に(i)(iii)(iv)の全部又は一部を要件として規定すると仮定しても、消費者契約においては原則としてそれらの要件は存在する旨の推定規定と、これらの要件を満たさないことを事業者において主張立証することを求める規定を併せ規定することが必要不可欠であると考えます。

特に、(iii)要件については、情報提供義務の成立範囲を不当に狭いものにしてしまう危険性があるように思われます。そこで、例えば「消費者が当該情報の存在と内容を把握することが容易であったときに、情報提供義務違反に基づく損害賠償責任を例外的に減免する」と改めるなど、要件の位置づけと内容を再検討する必要があると考えます。

次に、「提供すべき情報の範囲」について意見を述べます。資料3の5ページ(二)部分に記載させていただいております。

この点については、原則として一般通常人を基準とした重要な情報、例外的に個別事案の当事者を基準とした重要な情報とすべきと考えます。具体的には、5ページ(1)の(ア)(イ)のとおり整理すべきと考えます。すなわち、(ア)原則として、当該消費者契約を締結するか否かに関して消費者の判断に通常影響を及ぼすべきものとし、(イ)例外として、当該消費者契約を締結するか否かに関して当該消費者の判断に特に影響を及ぼすもの(当該消費者の当該判断に特に影響を及ぼすものであることを当該事業者が当該消費者契約締結時に知り、又は知ることができる場合に限る。)」といった内容とすべきと考えます。

また、情報提供義務については、実務上、「提供すべき情報の範囲」という問題以外にも、「情報提供の方法・程度」が問題とされることも多いことから、その点にも言及した規定内容とすることが望ましいと考えます。

資料3の6ページの下から4行目(2)の理由部分をご覧ください。例えば、分厚い約款集を何の説明もなく交付されただけでは、一般消費者は、実際問題としてどこに何が書いてあり、どの箇所が重要なのか自体がわからないという事態に陥ると思います。このような場合に「情報提供義務・説明義務が尽くされた」と評価することは合理的ではないと思われます。したがって、情報提供義務の法規範については、情報提供の範囲のみならず、情報提供の方法・程度においても言及した規定内容とすることが望ましいと思います。

具体的な情報提供の方法・程度については、消費者の要保護性と事業活動への悪影響の回避の両立という観点から、原則として、一般通常人が理解できるような方法・程度であること、具体的には、「事業者は、消費者が通常理解することができる方法及び程度で、情報を提供し、説明をしなければならない」といった法規範を設けるべきであると思います。

また、個々の消費者に理解が困難な個別事情があり(例えば、目が不自由で説明書面が読めないなど)、かつ事業者がそれを知っている場合などには、当該消費者の個別事情に即した方法・程度の情報提供を求めても、利益衡量上、何の問題もないと考えられます。したがって、例外的にこのようなケースには、個別の消費者に着目した情報提供及び説明の方法・程度を内容とした法規範を考えるべきであると思います。

最後に、「情報提供義務違反の効果」については、損害賠償義務とすることに賛成でございます。なお、それに加えて一定の場合に取消権を付加するという御意見に反対するものではございません。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。増田委員。

○増田委員 事業者の消費者に対する情報提供義務を規律することに賛成します。契約締結前の情報提供義務について、信義則から導くしかほかにないとなれば、消費生活相談の現場では、情報提供義務違反について相手方事業者に理解を求めることはおよそ困難な状況です。消費生活相談の多くは裁判になじまないことは、もう御存じのとおりだと思いますけれども、消費生活相談において相手方事業者に速やかに理解してもらい、問題を解決するためには、法的な義務であることを明記していただくことは大変有用だと考えております。

その要件として(i)、(iii)、(iv)については反対しております。これらを取り入れるとすれば、情報提供義務を法的義務として位置づけたとしても、実際には機能しないのではないかと考えております。

特に、「iii 消費者にとって当該情報を入手することが困難であること」については、強く反対いたします。現状においても、広告・書面等において、形式的に記載されている情報、目立たないところに記載されている情報があるだけで、「記載している。情報提供している」という主張がなされ、消費者の落ち度が指摘されます。広告表示や書面記載方法の程度がどうかという争いになりますと、話し合いは並行線になって、結局は今後の改善を求めて終了することにならざるを得ません。

消費者契約においては、もともと(i)、(iii)、(iv)に関しては満たしているのではないかと思いますし、「多くの消費者が容易に情報を入手できる」程度の提供方法であることを事業者が立証した場合に限って責任を負うようにするという山本先生の御意見に賛成でございます。民法における情報提供義務の議論を踏まえるということは、大変に重要だと思うのですけれども、民法と消費者契約法の性質を考えたときには、それを同じ判断基準とするというのは全くあってはならないのではないかと考えているところです。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、阿部委員。

○阿部委員 情報提供義務の法的義務化に反対という以前に、ここで具体的に事例として挙げられているものは、情報提供義務というよりは、むしろ不利益事実の不告知の話ではないかと思います。現実に裁判例になっているものについては何らかの救済が与えられていますし、具体的な議論として抽象的にこの情報提供義務を法的義務化するというよりは、不利益事実の不告知の要件をもう少し明確にしていくような改善のほうが意味があるかなと思っています。これが1点目。

2点目、仮に法的義務としての情報提供義務が規律された場合の効果ですが、これは直截に損害賠償請求に結びつくかどうかは疑問がある。もちろん、実際に損害が生じていれば、その範囲において損害賠償義務が生じると思うわけでありますが、情報提供義務の違反、即損害賠償という発想は、少しなじみがたいのかなと思います。

さらに、ここで言われているようなことを満たすとすれば、非常に複雑で膨大な説明をせざるを得ない。その次に出てきます平易化と矛盾するのではないかと思いますので、情報提供義務の議論をすることには反対いたしませんが、むしろ不利益事実の不告知の要件をきちんと整理することの中で、大半が解決できるのではないかと思います。意見です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

井田委員。

○井田委員 情報提供義務を法的義務化することについては、賛成であります。実際、実務でも説明義務違反とか損害賠償が広く認められているということであれば、消費者契約においてもルール化することのほうが、かえって事業者のほうも予測可能ではないかと思います。

今日いただいたペーパーの中身につきましても、ともすれば事業者側のほうからおっしゃられるように、極端にいえば全ての情報、ありとあらゆる情報を提供しなければならないということは、この今回いただいた消費者庁のペーパーはそこまでは書いていないと思います。それは、おのずと一般消費者を基準に考えるということについても、消費者側も特段の積極的な異論はないと思われますので、御懸念は必ずしも生じないのではないかと思っております。要件につきましては、それが説明義務の発生の要件なのか、それとも山本委員がおっしゃったように、不法行為として考えるべき話なのかというのは、考えないといけないと思います。

消費者契約において、ことに(ii)の部分が一番大事だということにつきましても、皆さん、特段異論はないと思われます。(i)、(iii)、(iv)を肯定することを前提として、どう考えるかということを議論していったほうがいいのかなと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 ここで挙がっている事例を見ますと、一つで括れないのではないかという印象を大変強く持ちます。少なくとも3つぐらいのタイプが混ざっていると思います。

1つは、阿部委員が強調されました、本来であれば不利益事実の故意の不告知というタイプに当たるものが確かにあります。現在の消費者契約法4条3項の要件が私は狭過ぎると思います。海外のルールからいけば、事実を告げないことが虚偽の事実を告げたのと同じように評価されるようなシチュエーションの場合には、不実告知として処理するというのが一般的なので、日本も少なくともそういう形で拡張すれば、このタイプの幾つかはそこで救済されるのではないか。

もう一つあるのが14とか15でしょうけれども、一種の瑕疵担保責任の問題と評価できるようなタイプがありまして、これは民法の改正案の中で、損害賠償ではなくて代金減額請求の対象として処理されているので、もはや損害賠償の問題として議論する必要は余りないのではないかと思います。

それから、3つ目が医療関係でありまして、明確な医療過誤の場合は別ですけれども、そうではなく、リスクがきちんと告知されていなかったので、医療契約を締結したところ、そのリスクがたまたま発現したというようなタイプの場合について、いわゆる自己決定権侵害的な意味での損害賠償を認める一連の判例があるわけで、それはそれで独自のものとして議論しなければならないでしょう。ほかにも分類していけば分けられると思いますが、それらを一律に情報提供義務違反の損害賠償として、同じルールで考えるというのはちょっと無理があるのではないかと思います。

順番としては、まず不利益事実の不告知の部分をどういうふうに拡張していくのかという議論をした上で、そこではカバーし切れないようなタイプの消費者取引特有の問題について、契約の解消は認められないけれども、せめて損害賠償で少し調整すべき場合がどれぐらいあるのかを考えるほうが、生産的ではないかと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 今の松本理事長のお話が非常に示唆的だったと思うのですけれども、私も事例12から事例22までを見て、これらをどういう形で情報提供義務を考える場合のヒントにするかということを考えますと、事例にばらつきが結構あるという印象を持ちます。

事例13、14、15は、意思決定に対して影響を与える情報と思われますが、これに対して事例12というのは、むしろ意思決定に対して影響を与える、少なくともこの条件では契約しなかったという場合ではなくて、むしろ給付の実現に対して影響を与えるという言い方をすべき、使い方の方法に対する説明の怠りということが問題となるのであって、例えば12と、13、14、15を比べただけでも、そこには性格の違いがあるのではないかと思います。

それから、事例20については、これを情報提供義務の問題と考えることもできますけれども、むしろ水の購入とか解約の条項について、契約条項を明確に開示していなかったという不意打ち条項的な問題と考えることができるのではないかと思いまして、こういうものをどういう形で情報提供義務に結びつけるかというのが課題になってくるのではないかと思います。

そういうふうに考えたときに、消費者庁でまとめていただいた事例というのは、こういう事例があって、情報提供義務を負うか、という問いのもとで、こういうものがありますと示しているということですので、これらを包括的に全部、ここで提案されている定式で情報提供義務があると示すつもりではないということだと思いますけれども、17ページ以下で情報提義務がこういう場合にあると示していただいている内容は、ストレートには事例13とか14とか15などに当てはまる問題であって、そういう意味から言うと、種々の事例の中でどこの部分を狙って情報提供義務を規定するのかということが一つの課題になるのではないかと思います。

そういうことから、多くの事例を集めていただいて、情報提供義務の要件・効果を考えるという場合に、この事例の中でどういう場合だったら情報提供義務を考えるのにふさわしいかということを検討する資料として、非常に有益なものを示していただいたと思います。個別的に17ページ以下で示されている要件がどのような事例に対応できるかということについて考えていくことが必要になるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 情報提供義務は、実はいろいろな効果と結びつき得るものでして、単に、損害賠償責任のみならず、例えば約款の開示などに関して言うと、拘束力を部分的に否定するという方向に作用することもあるかと思いますし、法律行為の効力を取消しに結びつけて否定するとか、あるいは債務内容の確定の場面で債務を部分的に修正するといった効果が結びつけられうる。情報提供と一口に言っても、いろいろな効果があり得るというのが、まず第1点であります。

その上で、先ほど来出てきています不利益事実の告知との関係ですけれども、取消しまでは行かないような情報提供のあり方について、中間的解決として損害賠償というのがある可能性はないかという点と。それから、取消しによる原状回復では回復できない、例えば精神的損害とか慰謝料のようなものについての損害賠償のための要件として考えるべきことはないかというあたりで、議論を収れんさせていくのがいいのではないかと個人的には思いました。

今回、これは損害賠償だけの問題だと、まず限定して考えたときには、取消しまでいかない場面で、なおかつ損害賠償がふさわしいもの。それから、原状回復ではカバーできないような損害についての賠償に結びつくような情報提供という2点で可能性を探るということではどうかと考えております。それ以外の効果については、別途議論が必要です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員。

○古閑委員 資料の17ページに、従来の解釈を明文化する趣旨でということが書かれておりますが、これが本当に従来の解釈の明文化で済むのかどうか、明文化するための基準がつくれるのかどうかというところかと思います。

要件として、例えば下から2行目の(ii)当該情報が消費者の契約締結の意思決定に重要な影響を及ぼすものであること。これが事業者にとって、本当に明確な要件と言えるのかどうかというところが結構大きいと思っていまして、意思決定にとって何が重要なのかというのは、個々の消費者の方によっても大分違ってくるものもあると思いますし、それは通常の人を基準にといっても、何が通常なのかという価値観が結構違っていますし、リテラシーも違っているという場合もありますので、ここを明確にすることがなかなか難しいのではないかということを感じております。

それから、資料の20ページには、「契約を取り消して遡及的になかったものとするという強い効果を認めて契約の巻戻しによる解決を図るよりも、損害との因果関係の適切な認定や過失相殺により、事案に応じた柔軟な対応が見込まれる」ということで、損害賠償ということが出てきておりますけれども、これは取引によっては、むしろ取消しのほうが軽いこともあり得ると思っております。

例えば非常に安価な商品とかサービスである場合には、取消しにして、それで終わりというほうが処理としては楽で、むしろ損害賠償ということになりますと、今もちょっとお話に出てきた慰謝料の問題が出てきたり、あるいはどこまでが損害と因果関係のある賠償範囲なのかということを、個々の事業者が適切に認定して、ここだと決めることは実態としては非常に難しいことだと思っております。なので、別に損害賠償だからといって否定するというところまで言うつもりはないのですけれども、取消しが強くて、損害賠償はそこまでのものではないという位置づけでは、必ずしもないのではないかというところを意見として述べさせていただきました。

○山本(敬)座長 ほかにいかがでしょうか。

丸山委員。

○丸山委員 情報提供義務の明文化に関しましては、実現できる方向で議論できればよいと思っております。今回、たたき台として提案されている4つの要件、17ページから18ページに整理されているものにつきましては、全部必要かとか、これでいいのかという点については、やはり検討する必要があると考えております。私自身は、とりわけこの4つの要件の中では、(iv)の要件は消費者契約の場合に必要かどうかというのは、検討しなければいけないと思っておりました。

また、情報提供義務という今回のテーマで、どこまで扱うのかという問題にもかかわるのですが、不実告知とか不利益事実不告知のところの規定を改正して、取消権についても拡大するという議論を行っているところで、取消規定でカバーできないような事例で、しかしながら損害賠償でカバーしてきた事例というのは、私の感覚では、この17から18ページで整理されている要件だけでは拾えていないような事例というのも結構あるのではないかと考えております。

例えば、投資取引などを考えてみますと、不実告知、不利益事実不告知の取消し要件までは満たさないのだけれども、全体的に不適切な助言という結果になっていて、損害賠償と過失相殺で痛み分けをするといった事例というものも結構あるのではないかと思いますので、逆に、反作用で損害賠償が認められてきた領域が狭くなってしまうという事態は避けたいと考えております。したがって、今回提案されている情報提供義務の条文によって、これまで損害賠償によって対応してきた事例が、果たして全てカバーされているかどうか、ほかに要件の立て方としてより良い案がないかということは、さらに議論する必要があるのではないかといった感想を持ちました。

以上です。

○山本(敬)座長 御意見をさらに伺いたいのですが、4つ目の要件が消費者契約法にとって必要かどうかは検討を要するというのは、どのような御趣旨でしょうか。

○丸山委員 この4つ目の要件で、「事業者において、消費者が情報を知らなかったことによって生じた損害を賠償させることが不相当でないこと」、さらに中間試案のマル4で、情報提供、自分で情報収集するのが原則なのだけれども、それを相手方に転嫁するということが適切かどうかというところが(iv)の要件でとなっているのかと考えたので、消費者契約の場合については、基本的に情報格差が構造的にあるというところが出発点となっているので、(iv)の要件の調整ということをあえてしなくても、ほかの要件のところで適切な手当てができるのではないかと考えたという趣旨です。

○山本(敬)座長 この4つ目の要件の意味をどう理解するかということですが、消費者契約と言いましても、これは一般的な概念ですので、広く消費者契約一般に妥当する法である。ただ、個々の契約の性質や取引の性質等によっては、その情報に関するリスクをどちらの当事者が負担すべきかということを類型的に語ることができるものがある。そのようなものを考慮に入れて、事業者にそのリスクを課すのが不相当なものかどうかを判断するというのが4つ目のもので、情報・交渉力の格差があるから、一律に事業者がリスクを負担すべきだというだけではすまないものがある。そのようなこともこの4つ目で拾おうということではないかと思いますが、おっしゃっている御趣旨は、消費者契約においては情報・交渉力の格差が構造的にあるので推定し、事業者の側で、いや、そうでなく不相当であるということの立証を要求していくという御意見につながっていくようにも思ったのですが、いかがでしょうか。

○丸山委員 そういう理解でよろしいと思います。

○山本(敬)座長 沖野委員。

○沖野委員 今の17ページのエの要件に関連してです。これまでの御意見でも、あるいは提案の事項も、一番鍵となるのは(ii)の要件だということが指摘されておりまして、私もそうだと思います。どういった情報について提供が必要と考えられるのかということが最初の出発点というか、ここが一番鍵になるだろう。そういう情報について、普通はどちらが持っているものなのかとか、あるいは構造的にどうなのかという話になってくるのではないかと思います。

そうして見たときに、(ii)の要件のなかみに関連してですけれども、ここでの情報提供というのは、効果はちょっと置いておきますと、構造的な格差があるということと、それから、これは消費者契約の締結に当たっての情報であるということからすると、こういう契約を結ぶときには、こういうことは知っていないといけないですねというタイプの情報が、まずは鍵になる、核になると思います。そういう点からしますと、当該契約を出発点あるいは軸足として、消費者としてはその締結の判断に当たり、本来というか、一般的に知っておくべき事項ですけれども、通常人というのも、およそ一律に当該消費者にとってというよりは、当該取引について一般的に想定される顧客としてということが、一つは鍵になるのではないかと思います。

それから、さらに例えばやりとりの中でどうかというのは、もう少し個別事情になってきますので、それを消費者契約法で取り入れるのか、それともこれはもう少し外枠の話として別類型を立てるのか、あるいは民法の信義則等によるのかということも分かれ目だと思いますが、一番の中核のところについて考えれば、それは当然事業者のほうで持っているか、あるいはその部分のリスク分担なりは事業者が負うべき情報をむしろ(ii)で括り出しているということなので、(i)は当然であって要らないというか、ごく例外的な事情から例外となる余地があるかもしれないのであれば、例外として認めるということですし、同じような観点から、(iii)もその意味では当然(ii)に含まれるというか、(ii)から想定されるものだと考えられます。

アクセスが容易であって、とってくるべきものだというものは、本来出す必要もないということなのですけれども、それは恐らく(ii)のほうでかなり落ちてくるので、(iii)の要件というのは独立には書かないか、あえて言えば例外になるということではないかと思います。

それから、(iii)の要件について、これも山本委員からも御指摘のあったところですけれども、アクセスの容易さという問題と、それが重要であって知っておくべき事項なのだということについての認識というのも、あわせて考える必要があるので、例えばこういう情報が入っていて、それは違約金がこのぐらいになるということは知っておくべきだということがあるとしても、それは調べていけば入手できるかもしれませんが、そういう情報に着目しなくてはいけないということにも意識が必要ですので、そういった観点もこの要件には入ってくると思います。ただ、繰り返しですが、基本的には、むしろ強いて言えば例外というタイプになるのではないかと思います。

それから、(iv)の相当性あるいは不相当という点ですけれども、これは恐らく民法の改正の中において不利益を負担させることが相当でないことという要件が、別途マル4として付されていたのと対応している面があると思います。民法の改正の中間試案の補足説明では、どういったものがこれに当たるのかという点については、1つは、労働契約の場合の思想信条などのプライバシー情報のように、相手方にとっても重要なのだけれども、開示・提供が不相当と考えられるという場合が1つとして挙げられています。

もう一つは、情報を利用して利益を得ること、しかも情報優位にある者が情報を利用して利益を得ることとか、あるいはその情報提供に対して対価を得るということが認められる場合です。わざわざ人を使って、あるいはお金をかけて、その情報を入手して、それによって情報優位になっているときには、それを活用することはもちろん許されて、その情報は相手方にとっても重要かもしれないけれども、そういったものまで相手方に出さなければいけないわけではないという場面です。

そういう場面は、民法一般の対象となる取引においてはあるということを前提として、そういったものを除くための概念として相当性、不相当性ということがここには書かれていたと思います。ですので、消費者契約もさまざまなものがあるので、そういったものが類型としてあり得るということであれば、この要件も考える必要があるかと思いますが、それにしても通常考えられる消費者契約とは違っておりますし、労働契約はそもそも消費者契約法の適用範囲から除外されておりますので、そうだとすると、この要件は設けるとしても、かなり例外要件として設けることになるのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 今までさまざまな先生方とか、いろいろな方から意見が出ておりまして、基本的にはそこで出ている問題と、最初考えたことが重なっているのですが、そこで余り出ていないのではないかと思われることを2点申し上げたいと思います。

まず、1つ目が、先ほど来出ております、その情報提供義務の具体的な要件の(i)から(iv)という、17ページから18ページにかけてのところですが、これも先ほど来、不利益事実の不告知との関係などを整理する必要があるということで、特に(ii)当該情報が消費者の契約締結の意思決定に重要な影響を及ぼすものであるということ。これは、いわゆる重要事項要件と重なるところもあると思いますので、もちろん適用される場面などの違いとか、そういうものもいろいろあり得ると思うのですが、重要事項要件をどうするかという話も、今後恐らくこの調査会でも出てくると思いますので、そのときに整理して考える必要があるのではないかということです。

2点目ですが、それは先ほど山本健司委員から出ておりました。山本健司委員のペーパーで申しますと7ページの上から9行目のイ。いわゆる情報提供の方法・程度という話のところで、これは非常に示唆的だなと個人的には感じました。今、情報提供すべき内容の要件の話が中心になっているように聞いておりますが、消費者が理解することができる方法及び程度でという法規範は規定すべきと考えられますという提案をされています。

もちろん文言をどうするかという点は考える必要がありますが、これは個人的には非常に示唆的な話だと思っています。とりわけ消費者にとって、例えば情報をたくさん書いた紙、あるいはさっき話が出ていました、すごく分厚い情報の提供をされても、かえってその情報が多過ぎて理解できないということはあると思いますので、それを考えたときに消費者にとって明確かつわかりやすい形でといったことを一言添えておくというのは、あり得る方向性じゃないかと思います。先ほどと同じ話で恐縮ですが、フランスの情報提供義務の規定の中にも、そのような文言が入っています。以下のような情報を明確かつわかりやすい形で提供しなければならないという文言が一言入っておりますので、その点も検討してもよいのではないかと個人的には考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 今までの丸山委員、沖野委員、それから大澤委員のお話を伺って感じたことですけれども、丸山委員からは、18ページの(iv)の要件は不要ではないかということ。また、17ページから18ページにかけて書かれている要件では、漏れるものが出てくるのではないかというお話がありました。その後、沖野委員から、基本的に重要なのは17ページの(ii)の要件であって、ほかの要件は (ii)との関連で位置づけを考える可能性があるというお話がありました。

このお二人の話の中で、(ii)の要件の重要性ということがあると思うのですけれども、(ii)の要件によると、情報提供義務の場合の提供すべき情報というのは、結構重要なものに限定されることになるのではないかと思います。

一方、丸山委員がおっしゃった中で重要だと思うのは、従来の判例の中で説明義務違反が問題となったものには、必ずしも意思決定を左右しない情報もあるということだと思います。例えば、目的物の使用方法とか、そういうものについての説明義務違反というものも、民法の判例上、問われているわけですので、そういうものも含めて情報提供義務違反ということを要件化するのかということ。そうではなくて、むしろここでは本当に重要なものに焦点を絞って情報提供義務ということを考えるのかということで、考え方とか拾うべき情報というのが違ってくるのではないかと思います。

また、大澤委員が日弁連の山本委員の提案の中で重要なことだとおっしゃいました、情報の提供の仕方ということに関しても、これも見落とすことができない重要な問題だと思います。情報提供義務違反がある場合には、両者がどこまで区別できるかという問題はありますけれども、まず第1には、情報提供義務があるのかどうかという問題があって、第2は、その義務違反があるのかどうかという問題があるわけでありまして、この義務違反があるのかどうかという問題の中に、適切な情報の履行がされたのかどうかということも含まれるのではないかと思います。

そのように考えますと、情報提供義務違反による損害賠償という形で規定をするのであれば、こういう履行の仕方だと責任が問われますということを考える必要があるのではないかと思います。そこにおける適切な履行というのが、どのような当事者を念頭に置いた履行なのか。相手方によっては丁寧に説明しなければいけない、あるいは相手方によってはそれほど丁寧な説明でなくてもいい。そういうことがあるかもしれませんけれども、いずれにしても履行の仕方ということも含めて、情報提供義務違反に基づく損害賠償責任を考える必要があると思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 今の後藤委員の御発言との関係ですが、民法改正での情報提供義務の議論の中でも、ちょっと錯綜したことがありました。すなわち今、後藤委員がおっしゃった、販売した商品の使用説明書が不十分であった場合も、情報提供義務の射程で議論するという発想が一部入っていたのです。私は、契約締結段階におけるものに限定して議論すべきで、契約上の主たる給付義務あるいは付随的な義務に当たるような取扱説明書の不備を、契約締結段階における情報提供義務の問題に持ち込むと議論が混乱するという主張をしました。

もちろん、製品をどういうふうに取り扱うのかということが契約締結段階で非常に重要である場合、こういう使用方法の製品だから私は買うのだという局面であれば、当然きちんとした説明がされないと困るというのはもちろんのことだけれども、後で製品のふたをあけて取扱説明書を見ると、よくわからないので使い方を間違えたという場合は、ここでの情報提供義務の問題とはきちんと分けて、本来の債務不履行の問題として議論すべきだと思います。

○山本(敬)座長 いかがでしょうか。石戸谷委員長代理。

○消費者委員会石戸谷委員長代理 先ほど丸山先生のほうから投資取引の点について懸念が示されまして、そこに関連しての話ですけれども、投資取引については多数の説明義務違反の裁判例が集積されておりまして、判例法理を形成しているのですが、類型的に言うと、そこで説明義務違反と言われている中身というのは大きく2つに分けられると思います。

1つは、重要な情報の提供そのものがなかったという類型で、もう一つは、情報の提供そのものは書面などであるのだけれども、その意味がよく理解できないとか説明されていないという類型で、裁判例的には後者のほうが圧倒的に多いわけです。

そういう現状から見て、17ページの(iii)の、消費者にとって当該情報を入手することが困難であることという要件があって初めて、損害賠償なり取消しなりの効果が生ずるというものを、消費者契約の一般的規律として導入して予測可能性を高めるという位置づけで入れるということは、その分野から見ると非常に懸念される事態でして、むしろ民法上の信義則に基づく損害賠償の説明義務のほうが、当該顧客にとって理解できる程度にちゃんとわかるように図解したり、数字を入れたりして説明しないといけないのではないかという豊かな内容になっているわけで、民法で拾えないものを消費者契約法でとなっていないことに注意しなければいけないと思います。

今の話は、参考資料2に法律をいろいろつけていただいていると思うのですけれども、3ページから金融商品販売法になります。3条の4ページの2項に説明義務の履行の方法について、「当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならない」というのは、これは改正で当初なかったものが後で入ったのですけれども、これは判例法理を立法上も明確にすべきだということで入ったもので、創設的なものではない。

判例法理が既にこういうものになっているわけなので、そういう現状のもとにおいていろいろ難しい要件を限定的に立てるということであると、かえってどこがよくなるのだろうかというところが疑問になってくるので、要件立ては(ii)を中心にというところで行っていただきたいし、何らかそうではないような限定をつけるのであれば、民法上の損害賠償のほうとの交通整理をしなければいけないので、いや、それは効果が取消効だから限定が若干こうなっているのですと整理するかですね。金融商品販売法のときは同じ損害賠償だったので、それとの切り分けで、前にお話ししたとおり推定規定と無過失責任と法人自体の直接責任という3点セットで切り分けられていますという説明になったということです。

だけれども、要件を限定的にということだと、不利益事実の不告知のほうとの整理が今度問題になってくる。両方とも取消しということになってくるので、先ほど来出ていますように、そちらとあわせて検討しないと、この問題はよく整理できないのではないかと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 不利益事実の不告知に関する法規範と情報提供義務違反に関する法規範との関係について意見を述べさせていただきたいと思います。

これらの法規範は両立しないものではありませんし、また両立させて考えないといけないと思います。契約の効力を否定するという方法での被害救済方式と、契約の効力をそのままに損害賠償請求するという方法での被害救済方式が両方あるというのは、実務上、非常に重要でございます。特に原状回復でカバーできない損害がある事案においては、損害賠償請求する方法での被害救済方式が非常に大事になってまいります。民法の民事ルールでも、詐欺取消しが適用できる事案だから、709条による損害賠償請求は考えなくてもいいとか、適用がないとか、そういう考え方はしないと思います。両者の法規範を並行して今後検討していただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 山本健司委員のおっしゃるとおりなのですけれども、法律のルールを立てる場合に、損害賠償を先行させるのはいかがなものかという疑問がちょっとございます。先ほどから強調している点なのですが、もともと情報提供義務の議論の流れから見ると、きちんとこういうことを説明しておいてもらえれば、私はこの契約をしなかった。あるいは、少なくともこの価格ではこの契約をしなかったというタイプに還元されるものが大部分だと思います。

もちろん、契約を解消した後で骨折り損の損害が残るということは別の議論として置いておいて、とりあえずはこの値段では契約しなかったのだということですから、第一次的救済は契約がなかったことにする、あるいは一部なかったことにするという一部解除あるいは一部取消し的なものになるのではないか。瑕疵担保を理由に契約解除か代金減額請求かというのも、全部なかったことにするか、一部なかったことにするかの問題だと置きかえれば、基本的に似たような処理になるのではないかと思います。それだけでカバーし切れない損害があれば、当然、従来でも救済されたわけです。すなわち不法行為における過失とは注意義務違反である。ここでの注意義務とは、情報提供義務であると置きかえていけば、不法行為の損害賠償は請求できるわけです。

それと別に、いわゆる投資商品的なトラブルの場合に、解除するのではなく、そもそも契約をさせられたこと自体が損害だということで、不法行為一本でやるという救済の必要性はもちろんあるわけで、それはそれで認められてきていると思うのです。けれども、ここでの情報提供義務違反の中にそういうタイプまで読み込んで過大な制度設計をしてしまおうとすると、本来、もうちょっと緻密にやるべき取消しとか解除の議論がかすんでしまいかねないという危惧が若干ございます。だから、先に原状回復的な救済のほうの要件をきちんと議論した上で、それでは不十分だという場合に調整的に損害賠償を請求できるという手当てをするのが論理的じゃないかと思っています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

加納課長。

○消費者庁加納消費者制度課長 いろいろと御意見、頂戴いたしまして、また私どもでさらに検討していきたいと思いますが、松本先生や後藤先生がおっしゃったように、事例との関係をどう見るかというのは確かに重要でございまして、13ページから14ページに幾つか事例を載せておりますが、松本先生がおっしゃったように、相談事例で上がってくるのは、事例19も20もそうですけれども、契約内容そのものがわかっていなくて、こういう契約で、こういう料金の支払いを求められるのは意外だったという相談が非常に多いというのは、印象としても、ございます。こういったものにつきまして、どういうふうに手当てを講じるかということが政策的な課題と思っておるわけですけれども、取消事由、その他で検討すべきであるという御指摘もよく理解できるところでありますので、そこは念頭に置きたいと思います。

また、他方で、今回、ペーパーでお示しいたしましたのは、ある意味信義則等でそういった一定の情報提供ないし説明義務があるということは、ほぼ争いがないところであろうと思われますので、だからこそ民法でも、そういった規律を設けようという取り組みがされていたと理解しておりまして、それが典型的なのが消費者契約の分野であろうと思いますので、民法でそういった規律が設けられれば、それはそれでよかったわけでありますけれども、それがないということであれば、消費者契約法のほうで引き取るといいますか、受けとめる必要性はあるのではないかと考えて、こういうふうにお示ししたところでありまして、やろうとしているところは、そういった信義則上の義務ないし責任根拠というところを明確化していこうというところでございます。

問題は、要件立て等をどうするかということでございまして、先ほどの石戸谷先生の御意見など、いろいろ御指摘のあるところでありますので、これがいいのかどうかというのはさらに検討する必要があるかなと思いました。

ただ、ここで言われておりますのは、また事例との関係で整理を試みたいと思いますけれども、おおむね、今日、事例の12番から18番という形で裁判例を引用いたしましたけれども、裁判例ではこういった要素が大体検討されているのではないか。4番目の不相当でないことというところも含めまして、こういったところで利益調整をしているのではないかと思われるところがありましたので、こういう形で書いてみたところでございます。この辺につきましては、要件の明確化がどこまでできるのかが重要であるという古閑委員からの御指摘などもございましたので、さらに検討していきたいと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

要件の明確化が必要であるという御指摘が一方であり、しかし他方で、一定の要件を立てようとすると、現在、裁判例で認められている救済が、そのまま認められるものもあれば、限定される可能性が出てくるかもしれない。そこまで意図しているわけではないとするならば、どのように要件を立てるべきか。なかなか両立しがたい要請が双方にあり、その中でどのような形で規定を設けるかが課題になっている。言うは易く行うは難しかもしれませんが、問題点は明確になってきたと思いますので、何とかうまく解決がもたらされるような要件設定をさらに検討してみるということでよろしいでしょうか。

(3)契約条項の平易明確化義務

○山本座長 まだまだ議論を続けなければいけないところではありますけれども、差し当たり、この程度にさせていただきまして、続いて3つ目の論点、つまり、「契約条項の平易明確化義務」に移りたいと思います。資料2の25ページから37ページの部分につきまして、消費者庁のほうから説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 引き続きまして、25ページからの3.契約条項の平易明確化の問題でございます。

まず、25ページの四角の枠内をごらんいただきますと、1、2と2つ、論点出しという形で書いておりまして、1つは、先ほどの情報提供と並びまして、契約条項について明確平易なものにするよう配慮することとするという努力義務でありますけれども、そういった規定が現在、消費者契約法3条にございます。これにつきましても努力義務ということでとどまっているところについては、法的義務に高めるべきじゃないかという指摘は従前からあるところでございます。

これにつきましての考え方は、飛びますけれども、28ページの(3)考え方というところをごらんいただきますと、アといたしまして、これを法的義務にした場合の義務違反の効果をどうするかという形で問題提起しているところであります。法的義務にした場合の効果がどうかというところについては、議論が必ずしも明確でないところがあるのではないかと思っておりまして、ここでは一つの考え方として、例えば損害賠償などという形で書いております。これが唯一絶対的な考え方と考えているわけでは全くありませんが、効果をどう捉えるかというのは、御議論いただければと思っております。

それから、今日の資料としましては、25ページの四角の枠内に戻っていただきますと、2ポツの解釈に関する一定のルールを導入することについて検討してはどうかというところ。どちらかというと、ペーパーのほうもこちらのほうが分量を割いているところでございます。

問題意識としましては、事例23は相談事例。これは、ある苦情相談として上がってきているものでございます。24番、25番は、下級審のものではございますけれども、裁判例で約款のある文言の解釈について当事者間で争われ、裁判所が条項の使用者にとって不利な解釈をすべきであるという判断をしたというものでございます。

事案23について若干補足して御説明申し上げますと、ダイエット食品「スリムX」なる商品があって、それの無料サンプルを申し込んだ。すると、いつの間にか、その利用を登録解除しない限り定期購入プログラムに移行するということがシステムとして予定されているのですが、非常にわかりにくいということでございまして、下のほうに鍵括弧以下で現物を書かせていただいておりますけれども、いろいろと注意深く読むと、何となくそういう意味が受け取れなくもないのですが、自動的に移行することをうかがわせるものといたしましては、26ページの最後の下から3行目あたりでありますけれども、初回送料・手数料とあります。

これは、25ページの冒頭でサンプルのことを指しているわけでございますけれども、それをされると、お客様は本プログラムに登録され云々となっているようであるということでありますが、それが一見してなかなかわかりにくいといったものでございまして、実際にもこの事例に基づく苦情相談が一時的に多数寄せられた。皆さん、いつの間にかそういう料金を払わなくちゃいけないということになっているのですけれども、どうしてだろうという趣旨の御相談が多数寄せられている案件でございます。

24番、25番につきましては、いずれも下級審の裁判例でございますが、24番につきましては、火災というものの解釈について、事業者側、これは保険業者になりますけれども、ここに書いているような意味であると主張したわけでございますけれども、裁判判決におきましては、条項の作成者に不利なような解釈がされたという事案でございます。

25番も保険約款でございますけれども、上から2行目、「なだれ等の雪災」というものがどの程度を含むのかということについて、事業者側の解釈としては、ここに書いてあるような異常性のない場合には対象にならないという意味ですということですが、裁判所の判決においては、必ずしもそうではない。日常的な被害も含むという解釈をされたというものでございます。

この辺、詳細は、いずれも参考資料2のほうに判決文の該当箇所を引用しております。

以上、事例の紹介をいたしまして、27ページの(2)は大体そういうことでございます。

28ページの考え方のアにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、平易明確化義務を法的義務とした場合の違反の効果について問題提起をしておりますので、御議論いただければと思っております。

イで、解釈の仕方につきましては、諸外国の規定などを引用しつつ、この解釈ルール、作成者不利と言われるものがどのような局面で機能することになるのかということについて、29ページの「例えば」以下のところで解説させていただいております。かいつまんで申し上げますと、マル1でありますように、当事者間で共通の理解がある場合には、それにより、マル2でありますが、共通の理解がない場合には、相手方の理解を知り得るかどうかで解釈をしていくということでございます。マル3で、共通の理解がなく、相手方の理解も知り得ないという場合において初めて、こういったルールを機能させるということで考えてはどうかというものでございます。

こういった解釈原則を設けることにつきましては、さまざまな御意見もあるところでございまして、実際、民法の法制審議会における議論においても似たような論点について御議論がありまして、29ページの上から3段落目、「これに対しては」というところでございますけれども、こういったリスク分配をすることが、当事者間の公平として果たして適当かどうかといった御指摘とか、個別事案ごとの柔軟な解釈をかえって阻害するのではないかといった趣旨の御指摘もあったところでございますので、こういった御指摘も踏まえて御議論を頂戴できればと思ってございます。

御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 資料3の8ページを引用させて頂きながら、意見を述べます。

1つ目の平易明確化の法的義務化に賛成でございます。

2つ目の条項使用者不利の原則の明文化も賛成でございます。消費者契約の内容となっている契約条項について、契約条項の不明確さゆえに、合理的な意思解釈を尽くしても、なお複数の解釈可能性が残り、明確な結論が得られない場合があります。このような場合における解釈準則として、消費者契約における契約当事者間の情報交渉力格差及び公平の観点から、条項使用者不利の原則を明文化することが必要かつ合理的であると考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

阿部委員。

○阿部委員 必ず山本委員の後の発言で済みません。

法的義務化と言われても、一体何をどこまでやればいいか明確でないので、余り意味がないのかなと思います。

条項使用者不利の原則ですが、これは当然議論すべきだと思いますが、一般論の話なのか疑問があります。むしろ、約款にかかわるところの議論の中で、その効果として議論して、すっきりとしたほうがいいのかわかりませんが、今の段階では、一般論としてやれと言われても反対としか言いようがないので、もう少し約款の中身に即した議論になってくれば、違う言い方があるのかもしれないと思っています。

○山本(敬)座長 少し確認させていただきたいのですが、民法では既に約款についての改正案が出されたわけでして、それは民法をまた変えろという御趣旨なのでしょうか。

○阿部委員 ここの将来の議論の中で、仮に消費者契約約款について、さらに重ねて置くとすればの話です。

○山本(敬)座長 ということは、消費者契約法の中で仮に規定を考えるとすれば、消費者契約一般ではなく、約款について規定するということでしょうか。

○阿部委員 この専門調査会で消費者契約約款なるものを別途議論するということになれば、その中身として、十分、条項使用者不利原則というのはあると思います。

○山本(敬)座長 わかりました。どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 まず、1番、法的義務として明文化するというところと、2の解釈、作成者不利原則を分けて、今回、消費者庁さんのほうから出されておりますが、私の意見といたしましては、1番を設けた場合の法的効果が問題となっているという話でしたが、個人的には明確かつ平易なもので書かなければいけない。そうじゃない場合には、作成者不利の原則を採用するという2番に普通に結びつければよいのではないかと考えています。明確かつ平易なものにすべき義務に違反した場合は、例えば損害賠償の対象になるとする必要はないのではないか。解釈原則、つまり2番に結びつければ足りることではないかと個人的には思っております。

もう2つほど補足させていただきたいのですが、今、それで足りると申し上げましたのは、個人的には2番の作成者不利の原則を明文化することには賛成です。これは、海外でも既に設けられている規定ですし、現に今日、消費者庁さんから出していただいている裁判例複数でも出されている考え方ですので、それを明文化することには賛成です。

ただ、その上で考えなくてはいけないことが2点ほどあると思います。

1点目は、河野委員が本日出されている資料4ですが、これはもちろん今後の実務的な対応ということになるので、ここで議論すべきことかどうかはわかりませんが、ペーパーの一番最後のページの(2)に、業界毎に標準的な契約書のあり方について検討いただき、その情報を広く共有する取り組みとか、あるいは平易明確化についての考え方や事例を紹介する取り組みが進められるよう、必要な支援を行政も行うべきと考えます。これはやる必要があるというか、非常に示唆的な意見だと考えました。

平易明確化と出すと、どういうレベルであれば平易明確と言えるのかということについて、特に事業者さんサイドのほうで混乱があるという反論が予想されますので、このような支援を誰が、行政がやるかどうかということももちろん考える必要はありますが、やっていく必要があるのではないかと思います。ただ、これは法律が仮にできた場合の後の話だと思っております。

もう一点ですが、先ほど阿部委員のほうから約款の場合の規定ではないかという話が出ておりました。私は、まだ趣旨を理解できているかどうか、よくわかりませんが、消費者契約法の中に、すなわち事業者と消費者の間に構造的な格差があるという契約の場合に、作成者不利の原則を設けるということについての意味をもう少し考えていく必要があるかと思っております。

と申しますのも、諸外国で既に作成者不利の原則があるということですし、私もそう申し上げましたが、これは別に、もちろんフランスのように消費法典の中に規定を設けている国もありますが、今日、消費者庁に出していただいている資料にあるように、主には民法改正の議論の中で出されているようなものですとか、あるいはヨーロッパ法原則の中で出されているもので、これは言うまでもなく、B to Cだけじゃなく、B to Bにも適用される法律の中で、こういう原則を設けることが提案、ないしは既にされているということです。

これに対して、今、この場では、消費者契約法において作成者不利の原則を設けるかどうかという議論をしているわけですので、個人的には事業者、B to Cであれば、なおのこと作成者不利の原則というのは妥当すると思っていますが、それが約款かどうかということには余りかかわりはないのではないかと個人的には思っています。

例えば海外の法律、条文案などを見てみますと、個別の交渉がされていない条項については作成者の不利に解釈するという、個別の交渉がされているかどうかというのを適用対象を画する基準としていますが、今回の消費者契約法の中は、基本的には形式的な約款かどうかは問わずに、交渉されていないことがほとんどというか、普通だと構造的に理解できると思いますので、そのような考え方からすると、とりわけ約款という形式にのっとっているかどうかには、こと消費者契約法の中で設けるのであれば、余りかかわりはないのではないかと考えています。むしろ、諸外国の個別交渉の有無というところをメルクマールにして、しかも消費者契約以外にも当てはまるような形で条文化しているというところを重く捉えるべきではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 もう一度確認ですが、民法改正について、前回、法務省の方に来ていただいて御説明を受けました。その中に定型約款に関する規定を新たに設けるよう提案されているところです。阿部委員が先ほどおっしゃったのは、その定型約款という意味ですか、もう少し広く約款でしょうか。

○阿部委員 当然、民法で新たに規定する定型約款も入ると思いますし、さらにその中身をこの消費者契約法で補足するのであれば、ここでの議論かと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 現行消費者契約法の話になりますけれども、現行法の規定ができる一歩手前の段階で国生審が出した原案がございまして、その中には約款の開示原則、作成者不利の原則が入っておりました。それは、もともと法的な義務として、約款条項を念頭に置いて作成されたものであったということですが、結局そこの部分は法的義務化が難しいということで意見の一致を見なかったために、実は契約の透明化あるいは簡易化、平易化の部分と併せて努力義務規定の中に全部押し込んでしまったという経緯がございました。

その意味では、現在の3条というのは、約款の開示ルールも全部含んだものとしてでき上がってしまっていたのですが、問題としては、約款の拘束力の前提となる開示義務であったり、債務内容確定に関するルールが、きちんと用意されるべきだったところ、全て落ちたということから来ている問題点だろうと思います。

もう一つは、消費者契約に関しては、約款なのか、それとも通常の個別合意なのかという区別がわずらわしい問題になりかねないことが考慮されました。消費者相手の契約の条項群のほとんどが約款であることは間違いないのですが、区別で問題になることは避けたいということがあって、契約条項については約款条項かどうかを区別しないということで、無効となる不当条項の規定が構想されたという問題がございます。もし現在のように約款ではない、普通の個別条項も含んだ条項ということを前提にして考えたときには、場合によっては選択肢が2つあって、約款だけに限らないで、消費者契約条項に関しては、この不明確準則を生かす形でルールをつくる方向と、もう一つは、約款条項という限定を付した上で、一方的に作成される約款条項についての不明確さのリスク分配という観点から、約款条項については不明確準則を定めておくという選択肢があるわけでして、阿部委員が先ほどおっしゃったのは、後者のほうが筋が通っているのではないかという趣旨だと理解しております。考え方としては、どちらもあり得ると私は思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

沖野委員。

○沖野委員 ありがとうございます。

1と2についてですけれども、とりわけ2が重要だと考えておりまして、これはぜひ入れるべきではないかと思っております。入れ方については、約款に限定するのか、消費者条項一般について考えるのかという両方の可能性はあるという御指摘がありましたけれども、そのことは両方あり得るということではありますけれども、今、言われたような不明確さのリスク分配ということからすると、消費者契約の条項については、それは事業者とすることも十分理由があるのではないかと思われます。諸外国の法制では約款に着目したものもありますので、可能性としてはありますけれども、消費者契約法の考え方には後者のほうが一層なじむのではないかと思っております。

その場合に、約款でないようなタイプのものですとか、あるいは個別に交渉されたような条項はどうかということが問題になりますけれども、個別に交渉されている条項については、通常は当事者がどういうふうに考えていたかということが確定できるはずですので、ここまでたどり着かないものだと思います。諸外国の例ですと、文言上その旨は必ずしも書かれていないのですが、しかし、今回、山本委員から出していただいたものがそうですし、あるいは民法改正の議論の中でも明確化が図られたことですけれども、いわば一般の解釈原則に従った解釈として、なお複数の可能性が残るという場合の準則として、という場面であることが明らかにされています。懸念にも対応しつつ、より明確化しようということです。消費者契約一般について置くということも、十分にこういう形で考えられるのではないかと思っております。

それから、約款についてですけれども、座長と阿部委員とのやりとりの中で明確になったのかどうかがよくわからなかったもので、お尋ねします。民法の定型約款は定型約款の概念がかなり限定されていると思います。すなわち、不特定多数の定型取引の場合に、その契約内容とすることが予定されて準備されたという形になっております。前回でしたか、河上委員長からは、特定多数のような場合にはどうなるのかという御指摘もありましたし、従来、約款として約款論という形で言われていたものよりも絞り込みがされていることはたしかです。

そうすると、その間のものはどうなっているのかというと、これは座長から確認がありましたけれども、それは従来の約款論が妥当していく。定型約款についての規定が設けられたことによって影響があるかということは、検証の必要があるかと思いますけれども。したがって、定型約款だけではないところに、作成者不利の解釈準則も含めて論じられてきたということがありますので、ここで約款に着目してと言われるときに、民法の議論の中で要綱に含まれているような定型約款だけを取り上げるのか、それとももう少し含みのあるようなものを考えるのかというと、議論の題材としては、より含みのあるようなものも含めて余地が残っているのではないかと理解しております。

もう一点あるので、先に申し上げていいですか。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○沖野委員 はい。それから、1の意義ですけれども、一番中核は解釈準則だと思います。ただ、努力義務であれ、現行法もそうだと思うのですけれども、こういう明確かつ平易なものにすべきであるということが事業者には要請されるということが解釈準則だけに登場するのかというと、恐らくそうではないのだと思います。事例23などは微妙なところがあって、先ほどの不意打ち条項の話と似ているようなところもあって、これが解釈準則で対応するような話なのかという問題もあるかと思います。

加納課長の御説明の中でも、情報提供義務ということを措定したときには、一部重なる部分があるということをおっしゃっていたと思いますけれども、そちらで対応するようなものもあると思いますし、それから、以前の大澤委員の御報告の中で、不当条項の規制のときに中核というか、給付にかかわるような条項については、この明確性あるいは透明性の要件をあわせて、明瞭かつわかりやすいような形で書かれていないようなものについては、中核的な給付に係るものも取り込んでいくという形であらわれてくる部分もありますし、あるいは外国ですけれども、立法例によっては、むしろ不当条項の中にそのような概念を入れてくる。不当な不利益の中には条項が明確ではなく、または平易でないということから、相当な不利益が生じるという話もあるようです。

ですので、幾つかの場面で出てくる可能性があり、その一番中核になる考え方として、事業者に明確かつ平易で内容を明らかにするようにという要請や義務が根底にあるのだという意義は1にあって、その点は2には必ずしもないだろうと思います。ただ、規定として設けるという点では、2はぜひといいますか、こちらのほうを特に重視したいところです。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

阿部委員。

○阿部委員 民法で規定される定型約款と、これから議論すべき約款が違うかと言われると、私は同じものだと思っております。実際に問題であるとしたら、民法上の定型約款は不特定多数性を前提にしていますが、そうじゃない約款が消費者契約の分野であり得るのか。消費者契約一般に使われる条項なのだけれども、不特定多数性を前提にしないようなものはちょっと考えにくいので、具体的にこういうものはどうだということがあれば教えていただきたい。個別具体的な契約交渉によるものは約款でないことは明らかなので、あらかじめ事業者が準備した定型条項に従って契約を進めると。そのときに不特定多数性が外れて、なおかつ約款として規定しなければいけないものは何かあるかというと、すぐに思いつかないので、そこは教えてください。

後半の議論は、沖野委員がおっしゃるようなことをやってみなければしようがないかなと思っています。

○山本(敬)座長 よろしいですか。具体例があればということですが、河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 ドイツで多数性が問題になったときによく出てくる例は、例えば賃貸借とか区分所有建物のようなものの分配といったものが出てきます。20軒を売るのだけれども、その20人との間で同じ契約書を20回使うという場面はどうか。結局、コンメンタールを見ると、例えば5回以上というような。

○山本(敬)座長 3回かもしれません。

○消費者委員会河上委員長 3回でしたか、具体的な数字までわざわざ出している例もございます。ですから、不特定だと言ってしまうと、外れてしまいそうなものが出てくるという懸念は以前からございました。

○山本(敬)座長 ということです。よろしいでしょうか。

では、井田委員。

○井田委員 私も、1の平易明確化義務の明定と、不利な解釈を採用することには賛成ですが、消費者庁から示していただいた24、25と23は少し事例が違うかもしれないと思っています。書かれた一般原則に従った解釈を通じても、なお複数の解釈云々というのが24、25には当てはまると思うのですが、23というのは小さい文字で書いているとか、読みにくく書いているとは言うものの、読むと意味が、これは複数の解釈ではない。課金されますよということだろうと思います。23の場合に、平易明確化義務に違反していないということは、それはそれで少し問題なのかなという気もいたしますので、2の要件の部分、条項が明確かつ平易でないために云々、ここはもう少し解釈の余地が、明確かつ平易でないというのはどういうパターンかというのが明定できるようにしたほうがいいかなという気はいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 沖野委員がおっしゃった御意見の最後に関してです。つまり25ページの上の枠囲みの1と2と提案があって、1の法的義務とするということに関して、効果として解釈準則だとおっしゃったと私は聞いたのですが、もし間違っていればごめんなさい。契約内容を明確かつ平易なものにすべきことを法的義務とし、それが解釈準則だということになると、明確かつ平易でないものは全て存在しないと裁判官は評価して判断しろという意味の解釈準則だということなのか、それ以外の意味を込めておられるのかというのが、ちょっとよくわからなかったのです。2は、明らかに解釈準則ですけれども、1も解釈準則だとお考えのような御発言があったので、私の誤解でしたら誤解だと言ってください。

○沖野委員 そういうつもりではありませんでした。平易かつ明確にするという義務というのがどういう意味を持つのか。大澤委員から、そこで出てくる効果としては、解釈準則に一番反映するという御指摘があったのを受けたつもりだったのですけれども。それに対して、ほかのところでも幾つか、この考え方が出てくる部分はあるだろうというつもりです。かつ、そこで解釈準則だと申し上げたのは、解釈準則として2を想定しています。1が解釈準則だというつもりは全くないです。

○国民生活センター松本理事長 では、大澤委員がおっしゃったのだったら、大澤委員のおっしゃる1が法的効果として解釈準則ですということはどういうことですか。

○沖野委員 済みません、私がそういうふうに言ってしまったので誤解が生じたと思いますが、大澤委員も1が解釈準則だとは全くおっしゃっていません。

○国民生活センター松本理事長 そうすると、1というのは、法的義務にするということで一体何を言いたいのかがそもそもはっきりしていないものであるということでしょうか。

○山本(敬)座長 理解の仕方は幾つかあるかもしれませんけれども、このような義務を法的な義務とし、義務に違反した場合には、条項の意味を通常の解釈準則によると確定することができないときに、不利益に解釈される負担というのでしょうか、それを課せられるというのが効果であるという説明もあり得る。一種の間接義務、オプリーゲンハイトのようなものとして位置づける理解もあり得るとおっしゃったのではないかと、私は受け取りました。

○国民生活センター松本理事長 1の独自性を考えないで、2の中で議論すればいいということも。

○山本(敬)座長 2がなぜ認められるかという理由づけが1であるというほうが正確なのかもしれません。よろしいでしょうか。

大澤委員。

○大澤委員 済みません、もしかしたら私が最初に発言したことが誤解を招いているのではないかという心配がありましたので、ちょっと補足させていただきますと、1の法的義務とすることについてどう考えるかということで、私はこれはよくわからないので、重要なのは2ではないかと申し上げたのは、消費者庁から出ているペーパーの中で、この義務に違反した場合の効果として、例えば損害賠償などがあり得るのではないかという話が出ていて、ここに損害賠償の効果をつけるというのがあまり筋がいいように思えなかったので、それよりは従来はむしろ2のほうで議論されていたのではないかということで、2を重視したほうがいいということで申し上げたつもりです。

ただ、その考えは変わっていないのですが、先ほど沖野委員の意見を伺っていて、例えば前に私がここでプレゼンしたときの中心条項に規制を及ぼすかどうかというときの一つの基準として、条項が不明確な場合であれば中心条項であっても規制の対象になりますということを、たしかここで申し上げたと思います。その考え方は、私は今でも変わっていませんが、沖野委員がおっしゃっていたのを私が理解しているかどうか、不安はありますが、恐らくそのような中心条項規制を及ぼすときの一つの基準にもなり得るということを考えると、1のようなものを明文化しておくことに意味があるのではないかと理解いたしました。

それはそうではないかと思いますが、1つ気になりますのは、1を明文化することによって、先ほどから出ている、そのときに違反したら、その法的効果として一体どうなるのかということが疑惑として出てこないかということを心配しています。そうであるとすれば、例えば個人的に思いますのは、その条項が不明確な場合には、中心条項であっても規制の対象にするという形で、それは別途、不当条項規制のところに改めてその条文を置けば足りるのではないか、そういうやり方もあるのではないかと今、考えております。

ただ、沖野委員がおっしゃっているように、1を書くことに全く意味がないと私も考えているわけではないわけですが、その効果というのは、この法的義務に書いてあって、単に行為規範を書いてあるだけだということで理解していいのか、それとも何らかの法的なサンクションを課されるのかということは、どうしても議論になるのではないかということで、先ほどそのように申し上げました。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 不明瞭な場合は中心条項規制の対象になるということは、不当条項として法規制の対象になるということですね。ところが、不明瞭なのだから、何を一体不当と考えるのかという条項自体がはっきりしないという話が大前提になるわけですね。そうすると、その不明瞭な条項を最も消費者に不利な内容と強引に解釈した上で、これは不当だから無効であって存在しないと持っていく。すなわち不明瞭な条項は存在しないという方向に解釈するような意味での解釈準則になるという理解になるのでしょうか。

○山本(敬)座長 大澤委員。

○大澤委員 そこまで全く考えていなかったのですが、これは恐らく不当条項規制のところで議論すべきだと思いますので、これ以上言うのは控えたほうがいいかと思いますが、1点だけ申し上げますと、そのような提案もあり得るのではないかと、先日、プレゼンで申し上げた趣旨というのは、主に更新料条項とか、そういうものを想定したというのはありますけれどもね。

一般には、対価などであれば当事者同士で十分に交渉されているはずなので、そこに規制を及ぼすべきではないということが一般論として言われますが、果たしてそれが全てそうなのかということで、例えば条項の書き方が不明確だったり、何に対する対価なのかが消費者にとってわかりづらいときもあるのではないかという例を挙げて、そういう規制もあり得るということを申し上げただけで、その時点で解釈との可能性についてまで詰めて申し上げていなかったように思いますので、これはまた私のほうも検討させていただきます。

○山本(敬)座長 今の点については、不当条項についての議論をするときに改めて検討すべき事柄だろうと思います。

古閑委員。

○古閑委員 今の学者の皆さんの意見がほとんど理解できなかったので、重なるところについての質問になってしまうのかもしれないですけれども、そもそも3条1項の問題ということで、もちろん私も当然、一消費者ですので、書いてある内容が平易明確であることは、そうあるべきだと思うのですけれども、約款とか個別同意とか個別交渉という言葉も今、出てきましたけれども、いずれにしろ、契約を結ぶ前に契約の内容を見ることすらできないということではないと思いますので、消費者の方も何かよくわからないことが書いてあるな、だったらやめようとか、そういう選択肢はお持ちだと思います。そんな選択肢がある中で契約に入ってきたという状況だと思うのですけれども、そこで仮に平易明確でない内容があったときに、ここに損害賠償の話なども一つの案として出ていますけれども、何で損害賠償という話にまでなるのかという合理性がちょっとよくわからなかったので、それがどういう発想なのかというのを教えていただきたいというのが1つです。

もう一つ、29ページ以降にマル1からマル3に場合分けして類型化していただいていますけれども、これは消費者の通常の理解をベースに類型分けがされていると思います。先ほどの意見ともちょっと重複するのですけれども、私は取引によっては、例えば今、保険の話が出ていますけれども、保険とかであれば通常の理解はある程度一定のものが想定されるのかなと思うのですけれども、ネットとかであればリテラシーの違いは消費者の方によってまちまちで、通常の理解が本当に一つのメルクマールとして機能するのだろうかというところは、まだどうしても気になっております。2点目は意見でございます。

○山本(敬)座長 はい。それでは、加納課長。

○消費者庁加納消費者制度課長 古閑委員の、まず損害賠償というのはなぜなのかという御質問で、28ページに書いていることに尽きておりまして、私からこれ以上、つけ加えることはないのですけれども、今、主として学者の先生方中心に御議論があったところも踏まえて、かつ現行の3条1項は一体何なのかということを踏まえて申し上げますと、河上先生から御説明いただいたように、本来、消費者契約法のもともとの当初の立法時には、むしろ不意打ち条項とか解釈準則なども含めてですけれども、そういったルールが比較法的に見ても多いということで、我が国においても導入してはどうかということが検討されてきた。かつての国民生活審議会において検討されてきた。

ところが、いろいろな理由があって、最終的にそういうものではなく、3条1項という形で情報提供義務と合体させるような形で、この契約条項についても平易明確なものであるよう努めなければならないという形で規律が努力義務として設けられたということだと思います。比較法的に見ますと、こういう形で努力義務の規定を設けるというのは、どちらかというと珍しいのではないかという気がいたします。ドイツやフランス、あるいは各種の契約準則などを見ますと、むしろ明確に書いてあるほうが多いのではないかという気はいたしますが、我が国ではいろいろな経緯があって、3条1項のような形に現行法はなっています。

この現行法の平易明確になるようにしなければならないということについては、努力義務ではなく、法的義務に高めるべきという指摘が従前からございます。学者の先生方を中心とし、弁護士会、その他においてもございます。その法的義務とした場合の効果は何かというところについては、私どもがいろいろと見る限りでは、必ずしも議論が収れんしていないように思われるところでございまして、いろいろな考え方のある意味発展の余地があるとも言えるかもしれませんけれども、可能性がある。

今回、取り上げさせていただきましたのは、解釈準則が民法の中で、法制審の中で議論された。さっきの情報提供義務と同じでありますけれども、途中までは中間試案という形でありましたが、最終的には盛り込まれなかったということを踏まえまして、その解釈準則というのが消費者契約の場面で典型的にあらわれるだろうと思われますので、これを消費者契約法の課題の一つとして受けとめて取り上げたという形になっております。

この効果として損害賠償かどうかというのは、大澤先生がおっしゃるように、やや飛躍があると言われれば、そのとおりでありまして、ペーパーでは契約条項の意味がわかりにくくて契約を締結し、それに要した費用などを損害と。可能性としては、解釈としてはあると思いますので、因果関係があることを前提としてということでありますけれども、それで損害賠償というのも考えられなくはない。ただし、それは情報提供義務の問題じゃないのですかと言われれば、そうかもしれないということで、私どももはっきりした考え方を整理し切れておりません。なので、こういう考え方もあり得るのではないかということでお示しして、皆さんに御議論いただきたかったという趣旨でございます。

あとは、むしろ重要なのは、こういった解釈準則につきましては、この消費者契約法が制定されたのが平成12年で、施行が13年でございます。それ以来、10年ぐらいたちまして、その後の裁判例において、こういった保険の事案などもあらわれてきているということをどう受けとめるか、ここが課題となるのではないかということで、そういう裁判例を踏まえまして、こういう規律を設けることについてどうかと。

むしろ御議論いただきたかったのは、作成者不利といいますと、作成者・使用者にとって直ちに不利に解釈するのだというルールであるかのように受けとめる向きがございます。これは、各所で議論するときにもそういう御指摘があるところでありますが、私どもが意図しているのはそうではないということでありまして、まず合理的な解釈をし、それでもその合理的解釈がうまく機能しない場合に、最後にリスク分配の話として、こういったルールを設けるということは民事の世界であり得るのではないかということで、そういうふうに考えて29ページから30ページに書いてあるところでございますけれども、こういったものであるということを前提にどうかという形で御議論を深めていただければと思っているところでございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

沖野委員。

○沖野委員 1点、古閑委員にお伺いできればと思うところです。通常の意味とはどういうものかという点についての御指摘ですけれども、逆に現在はどのように考えられているのでしょうか。例えばネット取引でさまざまな属性を持った消費者が契約するというときに、恐らく約款だと思うのですけれども、その約款である条項があったときに、その意味は、事業者が思っている意味だとお考えなのでしょうか。そういうものとして、今、運用されているのでしょうか。

○山本(敬)座長 古閑委員。

○古閑委員 たまたま弊社では、この単語はどういうことですかとか、そういう御質問を受けることが余りないのですけれども、もちろん合意的な解釈をお互いに話すということは日常でも行われているところでありまして、それを法的義務にまで格上げして何が起きるのかという、その影響との兼ね合いなのかなと思っています。

ここに今、事例が3つ挙がっていますけれども、そのうちの2つが保険の事例になっています。保険の業界とかは、多分難しい言葉とかも多いと思うので、日々いろいろな御質問を受けたりということは重々あるところだと思うのですけれども、それが全て、こういった裁判例にまでなるのかというと、ほとんど多くのものが現場でのやりとり、お客様に御説明したり、お互いにこういうことなのではないでしょうかという合理的解釈をすることによって解決されているという事例が、全体数からするとかなり多くを占めているかと思いますので、それで済んでいる中でこういったことを義務化して、効果がどうなるかわからないですけれども、何らかの効果が発生するところまでの必要性があるのかどうかというところの議論が必要なのかなと思っています。

○山本(敬)座長 沖野委員が御指摘されたかったのは、今の合意的解釈というのが通常の理解に従って何とか意味を確定しようとしているものではないでしょうかということだったのではないかと思います。

それでは、今の点については差し当たりこの程度にさせていただいてよろしいでしょうか。内容についての理解はかなり深まったと思いますが、他方で、消費者契約法の中に約款ないしは定型約款に関する規律を入れるとなりますと、これは相当に考えないといけない事柄になってきます。特に不当条項規制との整合性がとれるのかなど、御指摘のあった問題も考えなければならないことになります。しかし、そのあたりも含めて、引き続き検討していきたいと思います。

(4)消費者の努力義務

○山本座長 最後に、4つ目の論点、「消費者の努力義務」に移りたいと思います。資料2の38ページからにつきまして、消費者庁から説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、38ページ以下、4ポツの努力義務のところでございます。

現行の3条2項は、いわゆる消費者の努力義務としまして、「消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする」という規定が設けられてございます。これにつきまして、こういった消費者保護を目的とする立法には沿わないということでで、これを削除してはどうかという御指摘があるところでございます。

39ページの(2)の考え方でございますけれども、一つの考え方ということで整理を試みたものでございますが、3条2項の努力義務はいわゆる自己責任に基づくものであるということで、消費者も契約の当事者として責任を自覚しなければならないということが求められているということで、現行法では整理させていただいているところでございます。

3段落目あたり、「他方」と書いてございますけれども、先ほど古閑委員から似たような御指摘、リテラシーの話がございましたが、最近、インターネット、その他の普及によって、消費者がみずから情報を収集するという局面もかなりふえてきていると思われるところでございます。また、消費者基本法におきましては、消費者がみずから進んで必要な情報を収集する旨の規定が設けられているところでございまして、こういったことを踏まえて、3条2項の努力義務については削除ということが現在の状況には必ずしも整合的ではないとも考えられるとしているところでございます。この点について御議論いただければと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問ある方、御発言をお願いいたします。阿部委員。

○阿部委員 結論から言いますと、3条1項と2項は裏表の規定でありまして、2項だけを一方的に削除することは納得できません。仮に2項が落ちたからといって過失相殺が行われなくなるかというと、そんなことはないわけでありまして、あくまでも消費者もここまでは頑張ってくださいという努力規定でありますので、削除する必要はないと思います。

○山本(敬)座長 それでは、ほかに。山本健司委員。

○山本(健)委員 資料3の9ページを引用させて頂きながら、意見を述べます。 消費者の努力義務規定は削除すべきと考えます。消費者保護法である消費者契約法に消費者の努力義務が規定してあることには違和感がありますし、実際にこの条項の存在を理由に消費者側に過失相殺を認めた裁判例が報告されております。そのような点をあわせ考えますと、この条項については削除するのが相当であると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかにいかがでしょうか。増田委員。

○増田委員 山本委員に賛成いたします。消費者基本法とか消費者教育推進法のことが記載されておりますけれども、その法律の性質と消費者契約法とは明らかに違いがありますので、それらを一つの要素として記載したほうがいいという方向にあるのは、ちょっとおかしいのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 私も、意見として、結論としては削除したほうがいいのではないかと考えていますが、気になるところが幾つかございまして、山本委員のペーパーの中に、そもそも消費者保護法である消費者契約法にということが書いてあって、その消費者保護法と捉えるところには若干の違和感があります。結果としては、もちろん消費者を保護する法律であるのは間違いないと思いますし、情報・交渉力の格差というところに基づいて種々の規定を設けているというのも、これももちろん趣旨として間違っていないと思いますが、消費者契約法というのは、そういう情報・交渉力の格差ゆえに、例えば契約締結過程でゆがみが生じたり、あるいはそれゆえに一方の当事者にとって不利な内容の条項が定められたという場合の民事的な効果を定めているルールというところがあります。

ですので、そういう民事的効果を定めるような効果にこういう努力義務のような規定を設けることの意味というのを、もうちょっと考える必要があったときに、必ずしもここで3条2項のような規律を、民事的効果を定めるルールの中で維持することのつながりというか、必然性が余り感じられないというのが削除すべきという理由ですので、削除すべきという結論には山本委員とかほかの方に賛成ですけれども、その理由が若干異なっているというところです。民事的効果を定めるルールと、そのほかの例えば消費者基本法とかを同じに考えていいのかということです。

もう一つ言いますと、今、3条2項で書いているようなことが、別にここで規定がなくなったからといって、その考え方が排除されるわけではもちろんなくて、現に消費者基本法とか、ほかの消費者政策に関する法律の中で既にうたわれていることですし、そういったことがこの3条2項がなくなることによって、直ちに考えとして排除されるわけではないわけですし、消費者が一方的に何をやっても守られますよということを言っているわけでもないわけですから、この規律を削除することによって、消費者契約法、さらには消費者政策の理念が変わることにはならないのではないかと思っていますので、結論としては規律を削除してよいのではないかと思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

いかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 私も3条2項の削除に賛成です。情報についての消費者の努力というのが社会的にはますます必要になってくるというのはたしかだと思うのですけれども、社会規範とか社会でのルールということと、消費者契約という契約の場面、特に大澤委員のおっしゃったような民事ルールとしての契約でどう規律するのかということは、別の問題だと考えます。そういうふうに考えると、消費者契約法では3条2項を削除するという形にして、そして社会的なルールということに関しては消費者基本法に書いてあるわけですから、消費者契約法では特に言及しなくてもよろしいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 阿部委員が3条1項と2項は裏表だとおっしゃったこととの関係ですが、情報提供義務の損害賠償のところで随分時間をかけて議論しました。私の主張は、本来、契約が解消されるべきである。全部解消あるいは一部解消されるべきなので、そちらの手当てをすべきだという主張ですが、損害賠償で最終的に少し調整するということもあってよいかと思うのです。それは言いかえれば、この3条2項で言うところの努力義務をてこにして過失相殺していることに近いような効果を、事実上は持つわけです。取消しまでは認めないけれども、調整のために幾らか損害賠償を認めましょうという処理をするということですね。

したがって、3条1項の情報提供義務の効果を、契約を解消して、まだ回復されない損害について、別途不法行為で賠償請求できるという意味であれば問題ないし、それから、契約したことそのものが不法行為だから全額損害賠償だというのも、これは論理的にあり得ると思うのです。そうでないところの調整的な機能のための損害賠償ということを主張することは、結局、3条2項の効果としての過失相殺的な調整機能を肯定するということに、事実上一緒になってしまうのではないかという気がします。

○山本(敬)座長 いかがでしょうか。それでは、本日の議論はこのあたりにさせていただければと思います。

次回以降は、本日最初に御確認いただきましたスケジュールに沿って議論を進めていきたいと思います。次回は、不当勧誘に関する規律について、「勧誘」要件、断定的判断の提供、不利益事実の不告知、「重要事項」の論点について議論を行うことを予定しておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。


≪3.閉会≫

○山本座長 最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

○金児企画官 本日も、熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、4月10日金曜日の午後4時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 阿部委員。

○阿部委員 事務的な確認ですけれども、各論点について意見をペーパーで出す場合の締め切りといいますか、何日ぐらい前に出せばいいですか。

○山本(敬)座長 事務局のほうからどうぞ。

○事務局 できるだけ早くお願いしたいところではございますが、柔軟な対応をしたいと思っています。これは別途、委員の皆様には御案内させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 大変かと思いますけれども、皆さん、努力していただければと思います。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上