第1回 消費者契約法専門調査会

日時

平成26年11月4日(火)14:00~15:45

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、丸山委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 丹野理事
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長
【事務局】
黒木事務局長、井内審議官、金児企画官、増田参事官補佐

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者契約法(実体法部分)に関するこれまでの検討状況
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会第1回消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

私は、消費者委員会事務局の金児と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、所用により増田委員、柳川委員、山本和彦委員が御欠席、河野委員が遅れての御出席ということで御連絡をいただいております。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

配付資料の資料1が「諮問書」。

資料2-1が、「消費者契約法(実体法部分)に関するこれまでの主な検討の経緯」。

資料2-2が、これまでの審議会等報告書の概要。

資料2-3が、これまでの審議会等における議論状況の整理。

資料3-1が消費者庁からの提出資料でございますけれども、「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書概要」。

資料3-2が、その検討会の報告書。

参考資料1が、委員名簿。

参考資料2が、設置・運営規定。

参考資料3が、「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」。

参考資料4が、「消費者契約法条文(抜粋)」でございます。

不足がございましたら、事務局までお申しつけください。

本専門調査会の座長につきましては、去る10月29日に河上委員長から指名を受けました山本敬三委員に務めていただくことになりましたので御報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

なお、オブザーバーとして法務省、国民生活センターに出席いただいております。

また、消費者委員会からは河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員にオブザーバーとして御出席いただいております。

また、本専門調査会の設置運営規定第8条に、専門調査会は調査審議に当たって消費者庁の協力を得ると定められておりまして、消費者庁からは毎回御出席いただき、その御協力を得ることといたしてございますのでよろしくお願いいたします。

それでは、ここからは山本座長に議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.消費者契約法(実体部分)に関するこれまでの検討状況≫

○山本(敬)座長 京都大学で民法を専攻しております山本敬三と申します。

このたびは、消費者委員会の河上委員長から御指名を受けまして、大変僭越ですが、この専門調査会の座長を務めることになりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

今回の諮問は、契約締結過程及び契約条項の内容にかかわる規律という消費者契約法の中心的な部分についての検討が求められるものでして、各方面から強い関心が寄せられているところです。この場では、そうしたさまざまな御意見を可能な限りお出しいただいて議論を尽くすことが何よりも必要だと考えています。限られた時間の中ではありますが、それだけに一層密度の濃い議論を進めることが不可欠となります。そのような議事進行に努めたいと思いますので、どうぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。

それでは、続きまして、座長代理についてですが、本専門調査会の設置・運営規定第2条第4項によりますと、座長があらかじめ座長代理を指名することとしています。私としましては、早稲田大学大学院法務研究科教授の後藤巻則委員にお願いをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

次に、お手元の参考資料2をごらんいただきたいと思います。本専門調査会の設置・運営規定です。また、参考資料3として、本年7月8日の消費者委員会本会議で決定されました「下部組織の会議運用のあり方に関する申し合わせ」をおつけしています。本専門調査会については、これらの規定及び申し合わせに沿って運営をしていきたいと思います。これらの内容について、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、まず、本専門調査会の開催に際しまして、消費者委員会の河上委員長より御挨拶を頂戴したいと思います。河上委員長、よろしくお願いいたします。

○消費者委員会河上委員長 消費者委員会の委員長を務めております河上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。座らせていただきます。

消費者契約法という法律は御承知のように2000年に成立して動き出した法律でありまして、その後、適格消費者団体による差しとめ請求権に関する法改正というのが行われて、2013年には消費者裁判手続特例法の制定によって同法をめぐる損害賠償に関する集団訴訟が可能となるというようなことからもわかりますように、そのエンフォースメントの部分というのはかなり充実してまいりました。

ただ、その前提にあります実体法的な法律の部分が実はそのままになっておりまして、その改正が重要な立法課題となっておりました。第1次の消費者委員会の最後の段階でも、その旨についての意見が出されていたところであります。

消費者契約法については消費者基本計画の施策番号の42でも、消費者契約法に関し消費者契約に関する情報提供、不招請勧誘の規制、適合性原則を含め、インターネット取引の普及を踏まえつつ消費者契約の不当勧誘、不当条項規制のあり方について民法債権関係改正の議論と連携して検討しますとされていたところでございます。

内閣府の消費者委員会では、2013年7月に同法の本格的な改正論議を準備するための作業結果を「論点整理」として取りまとめ、これを報告書として出しておりますし、また消費者庁においてはさらにその立法事実の整理をするための検討会が開催されまして、本年10月にはその検討結果が取りまとめられた報告書が公表されております。また後で資料の中でごらんいただけると思いますけれども、その検討会ではここにおられる委員の方もいろいろとお世話になりました。

さらに、本年8月5日に内閣総理大臣から消費者委員会に対して、「消費者契約法についてその施行後の消費者契約に係る苦情相談の処理例及び裁判例等の蓄積を踏まえ、情報通信技術の発達や高齢化の進展を初めとした社会経済状況の変化への対応等の観点から、契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律のあり方を検討すること」という諮問をいただいております。かなり幅広な諮問でございますけれども、かなり明確に幾つかの観点が示されているところでございます。

この諮問を受けまして、10月21日の消費者委員会本会議におきまして本専門調査会の設置を決定し、これから法改正に向けた本格審議を始めていただくということになるわけでございます。

それで、1つ前提となる、枠がありまして、実は専門調査会の寿命といいますか、期間が親委員会の任期と連動しております。その意味では、来年の8月末に第3次の消費者委員会が任期を終えるということになりますので、この専門調査会の任期も基本的にはそこまでということになります。

そんなわけで、これから審議をしていただくとしても、残された時間がそんなにたくさんあるわけではございません。その割に非常に難しい法律でもありますので、山本先生を初め皆様には大変集中的な形で議論をいただくということをお願いせざるを得ません。できましたら、その8月までに一定の取りまとめをお願いするということで、将来の立法に向けた一定の取りまとめ案をそこでまとめられるように集中的に御議論いただければありがたいと思います。

委員の皆様のお力添えを賜りまして、充実した調査審議をしていただければありがたく存じます。よろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、ここで専門調査会委員の皆様に簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。まず、最初に後藤座長代理からお願いをして、その後は阿部委員から席の順番にお願いしたいと思います。

それでは、お願いいたします。

○後藤(巻)座長代理 後藤でございます。早稲田大学で民法及び消費者法の授業を担当しております。

研究者になって以来、契約、特に消費者契約に関心を持って勉強してきましたので、このたび消費者契約法専門調査会に参加させていただくということで、大変良い機会をいただいたと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○阿部委員 経団連の阿部でございます。

消費者契約法は、実は制定以来のおつき合いということでございますが、今回の見直しはやはり民法債権法改正を前提として実体法的な部分に及ぶものと考えております。山本座長を初め、そうそうたる先生方の前でどこまで物が申せるか、今から不安でありますが、経済界の主張をなるべくわかりやすくしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○井田委員 大分県消費者問題ネットワークの井田と申します。

私は、適格消費者団体であるネットワークの理事長として差しとめ業務にもかかわっております。本業は弁護士でございまして、実体法及び差しとめに関して非常に強い関心を持っております。

差しとめに当たっては、なかなかその実体法が要件該当性が難しいなというところもございまして、今回このような検討委員会に参加させていただきまして、いい機会だと思っていろいろ発言していきたいと思います。よろしくお願いします。

○大澤委員 法政大学法学部で民法と消費者法を担当しております大澤と申します。よろしくお願いいたします。

学生のときに不当条項規制について研究を始めまして、今では不当条項規制に限らず、契約法、消費者法全体にわたる研究をしていきたいと考えております。

私のような若輩にこのような委員が務まるのか非常に不安に思っておりますが、何とぞよろしくお願いいたします。

○沖野委員 東京大学で民法消費者法を専攻担当しております沖野と申します。どうかよろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 河野委員は遅れて見えますので、後でしかるべきときにまた御挨拶をいただきます。

○古閑委員 ヤフー株式会社に所属しております古閑と申します。よろしくお願いいたします。

事業者のほうを代表してということで、弊社に限らずいろいろな事業者さんの御意見を聞きつつ意見していけるといいと思っておりますのと、それから私ももちろん消費者の一人でございますので、消費者にとってどういった制度がいいのかというバランスのよい議論ができればと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

○後藤(準)委員 全国商工会連合会の常務理事の後藤でございます。

私どもの組織は小規模企業、特に規模の小さな企業の会員が多数を占めまして、皆さん御承知かもしれませんけれども、全国で385万社の企業がありますが、小規模企業というのはその86%を占めている。中でも、平成21年から平成24年のこの3年間で35万社、それだけの数が減少したということでございまして、その大半は小規模企業です。

私どもは、そういう観点から、できるだけ小規模企業の活動が萎縮しないような形でこういう法改正が行われるように、私どもとしての意見を述べさせていただきたいと思っておりますので、よろしくどうぞお願いいたします。

○丸山委員 名古屋大学で民法および消費者法を担当しております丸山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○山本(健)委員 日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会において消費者契約法の担当副委員長をしております弁護士の山本健司と申します。

日常的な法律相談や訴訟手続において、消費者契約法を日々使用している立場にあります。そのような立場からの経験を踏まえ、消費者契約法と消費者契約に関するこれからの民事ルールがよりわかりやすく充実したものとなりますよう、この専門調査会で皆様と協議させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、オブザーバーとして御参加いただいている皆様にも同様に自己紹介をお願いしたいと思います。

河上委員長には先ほど御挨拶を頂戴しましたので、石戸谷委員長代理からお席の順にお願いしたいと思います。

○消費者委員会石戸谷委員長代理 消費者委員会のほうからオブザーバーとして参加させていただいております石戸谷です。よろしくお願いいたします。

消費者庁のほうの消費者契約法の運用状況に関する検討会のほうでも、オブザーバーとして消費者委員会から出させていただきました。引き続き、よろしくお願いいたします。

○消費者委員会橋本委員 消費者委員会からオブザーバー参加いたします橋本でございます。

私は、北海道立消費者生活センターの指定管理を受けております北海道消費者協会の会長をしておりまして、同時に所長も兼任しております。どうぞよろしくお願いいたします。

○国民生活センター丹野理事 オブザーバー参加をさせていただいております国民生活センターの丹野と申します。本来であれば理事長の松本が参るところですが、本日、日本におりませんので、そのために私が参りました。

国民生活センターもこの消費者契約法の見直しに大変な関心を持っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

○法務省中辻参事官 法務省民事局の中辻です。

民事局参事官室では民法を所管しておりまして、参事官室は財産法、家族法、複数のグループがあるわけですけれども、財産法担当のグループが2つございまして、債権法改正を担当している以外の業務を担当するグループの参事官として参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

この専門調査会では、8月5日に内閣総理大臣から消費者委員会に対して行われました諮問の内容について調査、審議していくことになります。

そこでまず、本日御参加いただいております消費者庁に、諮問内容の趣旨について御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 消費者庁の加納と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

諮問書のほうでありますけれども、先ほど河上委員長から簡単に御紹介いただいたところと若干重複いたしますが、諮問の趣旨についてでございます。

諮問文でありますけれども、「施行後の消費者契約に係る苦情相談の処理例及び裁判例の情報の蓄積を踏まえ、情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点から、契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律等の在り方を検討する」というふうに諮問をしております。

言うまでもないことでございますけれども、昨今のインターネット取引の進展などに見られるいわゆる情報化、それから社会の高齢化もありまして、高齢化に伴う消費者被害の発生というものがございますので、そういったところに消費者契約法としてどこまで対応できるかという観点から、この実体法部分の契約締結過程及び契約条項規制について御審議をいただければということでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、議事に入らせていただきます。消費者契約法の実体法部分に関するこれまでの検討状況について、まず、事務局から、消費者契約法の実体法部分に関するこれまでの主な検討の経緯等について御説明をいただいて、それに続いて、消費者庁から10月15日に公表されました消費者契約法の運用状況に関する検討会の報告書について御説明をいただきたいと思います。説明内容についての質疑応答は、この2つの説明の後にまとめて行いたいと思います。

その後で、今後重点を置いて検討すべき課題等について御自由に御発言をいただく時間を設けたいと思います。

それでは、最初に事務局から説明をお願いいたします。説明時間は3分程度ということで、よろしくお願いします。

○増田参事官補佐 消費者委員会事務局の増田と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、私の方から資料2-1から2-2、2-3と枝番を3つ振っておりますが、こちらの資料に基づきまして消費者契約法の実体法部分に関するこれまでの主な検討の経緯を御紹介したいと思います。

まず、資料2-1をごらんください。こちらは、消費者契約法の実体法部分に関するこれまでの主な検討の経緯を時系列に沿ってお示ししたものです。ごらんのとおり、消費者契約法の成立及び施行を中心として、その左側に立法前の検討経緯を、右側に立法後の検討経緯を記載いたしております。

まず立法前につきましては、第16次の国民生活審議会及び第17次の国民生活審議会における検討について記載しております。

検討の中身については、資料2-2をごらんください。表の上3つが今、申し上げました16次、17次の国民生活審議会の報告の内容でございます。

まず、平成10年1月に出されました16次国民生活審議会の中間報告でございますが、こちらでは消費者契約の適正化のための民事ルールの具体的内容について検討をされた状況の中間報告となっております。そして、翌年の平成11年1月に、その中間報告の検討の視点のみならず、意見聴取において表明された指摘や関係各界におけるさまざまな観点に基づく活発な議論を踏まえまして、消費者契約法と規制緩和との考え方、さらには今後の消費者政策のあり方などを視野に入れつつ、具体的内容及びその実効性を確保するための方策について検討された成果が取りまとめられております。

そして、同年の11月には第17次の国民生活審議会において、第16次の報告を踏まえて具体的な検討を実施し、消費者契約法を制定するに当たっての基本的な考え方について得た結論が報告されております。

資料2-1のほうに戻りまして、続いて施行後の検討状況を見てまいりたいと思います。施行後につきましては、ごらんのとおり第20次国民生活審議会における検討から、平成19年度の消費者契約における不当条項研究会の報告書、それから平成23年には当消費者委員会の方で改正に向けた検討についての提言を行い、その後、消費者庁、あるいは消費者委員会において検討が重ねられております。

これらの中身についても、資料2-2のほうでその概要を御確認させていただきたいと思います。再度、資料2-2をごらんください。表の中央部分にございますのが、平成19年8月の第20次国民生活審議会の検討についての取りまとめの内容です。平成18年11月に国民生活審議会の消費者政策部会に消費者契約法評価検討委員会が設置されまして、こちらで関係団体から意見を聴取するとともに、消費者契約法の評価及び論点の検討が行われ、その議論の方向性について取りまとめられております。

そして、平成19年の消費者契約における不当条項研究会報告書の方ですが、こちらは不当条項研究会ということで消費者契約法に抵触して是正される契約条項、あるいは正面から抵触するものではないが消費者の利益を不当に害するおそれのある条項、こういったものについて業種横断的に検討された結果が報告されております。

また、平成24年6月の消費者庁における消費者契約法実体法部分の運用状況に関する調査結果報告書については、消費者契約法に関する見直しに当たって検討を要する論点の抽出・把握を行うことが不可欠ということで、裁判例及び裁判外紛争解決機関における事例等の収集・分析等が行われ、その結果が示されております。

そして、平成25年8月ですけれども、こちらは当消費者委員会の方で行われた「消費者契約法に関する調査作業チーム」の論点整理の報告でございます。消費者委員会では平成23年8月に提言を行って、早急に消費者契約法の改正の検討作業に着手することを求め、本格的な調査審議が行える体制が整うまでの間の事前準備として、「消費者契約法に関する調査作業チーム」を平成23年12月に設置し、1年半にわたる議論の結果を取りまとめております。

平成26年10月の消費者庁における消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書については、この後、消費者庁の方から御報告いただきたいと思っております。

また、資料2-3でございますが、こちらの資料は今、申し上げました過去の審議会等における議論状況を確認の便宜のため、論点ごとに整理したものでございます。論点項目については資料2-3の目次部分にございますが、基本的には消費者庁における昨今の「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」、こちらに記載された項目を基本とした上で、過去の審議会において触れられたテーマを網羅的に記載したものです。

抽出対象につきましては、先ほどの不当条項研究会という不当条項に特化した報告書については含めておりません。また、裁判例や相談事例といった運用状況に関する調査結果報告についても含めておりませんで、資料の対象としておりますのは頭書きに記載しております5つの審議会等でございます。こちらについては、また今後の議論の資料として用いていただければと考えております。

事務局からの御報告は以上です。

○山本(敬)座長 資料の作成を含めまして、どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、消費者庁から御説明をお願いしたいと思います。説明時間は20分程度ということでお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 それでは、消費者庁において運用状況に関する検討会というとことで検討いたしまして、先月ですけれども、その取りまとめをしましたので、その内容について御報告したいと思います。

資料3-1が概要でありまして、資料3-2が分厚いもので恐縮ですが、本体ということになります。資料の3-1に基づいて御説明しますが、適宜3-2も参照していただければと思っております。

3-1のほうですけれども、取りまとめの概要ということで既に公表しているものでありますが、検討会の目的としましては社会情勢の変化を踏まえた消費者契約法見直しの検討のための準備作業として、いわゆる立法事実の候補の把握や論点の整理などを行うということでございます。

立法事実の候補の把握ということで、ちょっと奥歯に物の挟まったような言い方をしておりますけれども、何をもって立法事実というかということについては、この検討会の中で委員の方々からいろいろな御議論がございまして、今回の検討会では幅広に関係すると思われる事実関係、裁判例や苦情相談事例などを集めるということで整理をしておりますので、こういう形にしているということでございますが、今後の専門調査会における議論の参考になり得る事案として私どもとしては整備をしたつもりでございます。

「関連事例の収集・抽出」というところでございますが、主として裁判例、相談事例につきましてここに書かせていただいたとおりのものを抽出して整理したというものでございます。

3-2の報告書本体のほうでいいますと、まずページ数で申し上げますと91ページから非常に分厚く中身が多くなっておりますが、主に裁判例ということで消費者契約に関連するものを集めて、その判旨等について引用したというものでございます。

それから、ページ数で申し上げますと327ページからが相談事例ということで、主として国民生活センターのADR事例というもの、それからPIO‐NET情報などから抽出したものということで挙げております。また、その検討会の中では委員からも苦情相談事例ということでいろいろ提供していただいたりしたものもありますので、そういったものを含めたりもしております。

この裁判例、苦情相談例の状況について結論としてどうなのかということにつきましては、戻っていただきまして83ページ以下でありますけれども、こちらのほうで考えられる論点と事例との対応表ということで消費者庁のほうで整理をしたというものでございまして、テーマのほうをごらんいただきますと、「総論」として消費者概念のところから始まりまして、84ページのほうでは不当勧誘について現在の消費者契約法の条文の構造に従いつつ、各条項における解釈上の論点を中心として、それぞれに関して関連し得る裁判例や相談事例としてこういうものがあるのではないかという形でまとめております。

番号が幾つか付されておりますけれども、この番号は後ろの先ほどの91ページ以下で御紹介をいたしました裁判例や相談事例の番号と関係するとなっておりまして、詳しくはそちらをごらんくださいと言うしかないわけでありますけれども、裁判例であればこういったもの、苦情相談事例であればこういったものがこの解釈上の論点に関する事例としてあるのではないか。こういった事例を踏まえて実体法を見直すのか、見直さないでもよいのかといったことについて御審議をいただければと考えてございます。

この論点としましては、基本的には消費者契約法の現在の条項ということでございますけれども、例えば86ページの「その他」というところをごらんいただきますと、消費者契約法に今ない規律として、例えば87ページのほうでいいますと不当勧誘行為に関する一般条項規定のようなものが必要ではないか。いわゆる勧誘の受け皿規定のようなものが要るんじゃないかというのは各種の立法提言等でいただいているところでありますので、そういったところも念頭に置きながら、仮にそういったものを設けるとすればどういった事案を念頭に置くのかということで、ここで判断能力の不足に関する事案とかということで書いているものでございます。

この論点の整理の仕方はこの検討会で一つの整理としてお示しをしたものでございまして、また別途の御意見等はあり得るのではないかと思いますので、その点も含めてこちらでまた御審議をいただければいいのではないかと思います。

不当条項関係ですが、第8条に関しましてはごらんいただきましたとおり裁判例が余り集積していない状況でございまして、私どものほうで把握している限りでは余りないということで、むしろ9条、10条に関してたくさんの裁判例や相談事例が集積しているという状況ではないかと思います。とりわけ9条につきましては、最高裁判所の判決も含めましてたくさんの裁判例や判例があるところでございまして、そこで問題とされた平均的な損害額の意義でありますとか、立証責任の所在でありますとか、第10条につきましては第10条の前段要件、いわゆる任意規定についての要件でありますとか、そういったところについてはかなりたくさんの裁判例、判例が集積しているという状況かと思います。

「その他」のところでごらんいただきますと幾つか論点がございますが、とりわけいわゆる不当条項リストに関してということでございます。これは裁判例では余りないのでありますけれども、むしろ苦情相談事例のほうでは関連し得る相談事例があるのではないかということで見つけたものといいますか、参考になるものを幾つか整理しているところでございます。

90ページのほうでありますけれども、「その他」に「約款規制」ということで書いてございます。約款規制につきましては、現在民法債権法改正の議論の中で検討が引き続き行われているものと認識をしておりますけれども、その民法の約款規制のあり方はどうなるかということも踏まえる必要はございますが、約款規制は消費者契約の分野において典型的な論点というふうに認識をしておりますので、民法の規制のあり方を踏まえつつ、消費者契約法においても約款規制のあり方というものが論点としては上がり得るのではないかということで組み入れ要件、不意打ち条項、変更というあたりを論点として掲げて、それに関する裁判例や相談事例などを挙げているところでございます。

あとは、いわゆる「抗弁の接続」でありますとか「複数契約の無効・取消・解除」「継続的契約の中途解約権」といったところも書いてありまして、このへんも1つは民法改正の議論の中でこういう論点がかつては取り上げたということも踏まえております。また、これが消費者問題として典型的にあらわれるということもよく言われておりますので、そういった観点を踏まえて論点としては挙げているところでございます。

概要のほうに戻っていただきまして、「主な論点項目と検討会における委員の意見」ということでございます。ここに書かせていただいた論点は全ての論点ではなくて、先ほど本体の83ページにあるのがむしろ全体像を示すペーパーということになりますが、そのうち検討会において議論が比較的多かったと思われるものについて幾つかピックアップをして、それぞれの論点について主な意見ということで書いているものでございます。

ごらんいただきましたらおわかりのように、この検討会は特に改正項目、それぞれ論点はありますけれども、方向性を特に出すというところまでは念頭に置いておりませんで、あくまでもその検討する題材としてのいわゆる立法事実、あるいは立法事実の候補というふうに言うのがこの検討会では正確かもしれませんけれども、そういったものについて裁判例や苦情相談事例を整理するということに主眼を置いておりまして、それを踏まえた評価、ではどうするのかということについては御意見を両論併記のような形で掲げているにすぎません。

例えば「消費者概念の在り方」につきましては、中小零細事業者などを念頭に実質的な格差の是正という観点から今の消費者概念を一定範囲で拡張して保護を及ぼすべきではないかという御指摘がございまして、そういった立法提言もいただいているところであります。

ただ、他方でそれを実質的に見るということにつきましてはその適用範囲が明確性に欠けるのではないかということに伴う「事業者」側の対応の負担が大きいのではないかといったような御意見もございまして、そういった観点から慎重に検討すべきであるという御意見も出されたところでございますので、そういった御意見も書いているところでございます。

以下、情報提供義務、勧誘要件、重要事項、不当勧誘に関する一般規定、不当条項リスト、約款に関する規律といったところも大体似たようなものでございまして、これらについて消費者契約において対処すべきであるといった積極的な立場からの御意見と、それに対しては事業者に与える影響なども勘案して慎重に検討すべきであるといった反対の立場からの観点の御意見についても検討会の中では御意見がありましたので、それぞれ併記をするという形でまとめております。

最後としましては「今後の検討」ということで書いているところでございますが、この検討会の議論を踏まえまして消費者委員会においてさらに議論を進めていただきまして、具体的にどこをどういうふうに変えるのか。あるいは、新たな規定としてどういったものを設けるのか、設けないのかといったことなどについて積極的に御審議いただければと考えてございます。

消費者庁からは、以上でございます。

○山本(敬)座長 簡潔な御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、まず今の事務局、それから消費者庁からの御説明内容に対して、御質問のある方は御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

今後の議論の中身にかかわりますので、ここで質問せずともということかもしれませんが、よろしいでしょうか。

それでは、意見交換に入る前に、河野委員が見えられましたので、自己紹介をお願いしてよろしいでしょうか。

○河野委員 わかりました。皆様、おくれて大変申しわけございません。全国消費者団体連絡会の事務局長をしております河野康子と申します。

消費者契約法は私たちにとって非常に重要な法律だと思っております。しっかりと議論に加わらせていただければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、意見交換に入らせていただきます。本日は、先ほどの御説明をもとにして、今後の検討において重点を置くべき点などについて御意見をいただき、そしていただいた御意見を踏まえて、次回以降に検討課題を整理して、本専門調査会の今後の運営に生かしていきたいと考えています。

それでは、御自由に意見をお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○阿部委員 2点申し上げたいと思います。先ほども申し上げましたけれども、やはり今回の見直しは民法債権法改正を経て、その上に中2階となるべき消費者契約法をどう構築するかということかと思います。まずはこの1階となります債権法改正はどうなったのか、まだ最終決断は出ていないと存じておりますけれども、この民法債権法改正によりまして消費者契約法がどういう影響を受けるのかということをどこかで整理したものをお示し願いたいというお願いでございます。これが、1点目でございます。

それから当然、実体法部分の改正となる上で立法事実、先ほども消費者庁から御披瀝がありましたけれども、いわゆる立法事実としてここに出されているもの全てが当てはまるかどうか。先ほど候補という言い方をされたかと思いますが、非常に特殊な事例もあれば、やはり一般化して議論しなければいけない事例もあると思います。何らかの意味での線引きというのでしょうか、立法事実としてこれからの法改正の検討の材料となるべきものと、やや特殊な事例であり余り重きを置くべきでないもの、あるいはむしろほかの個別法の領域にかかるようなものもあると思いますので、そのあたりの線引きも一度どこかでお示し願えればと思います。お願いばかりで、恐縮です。

○消費者等加納消費者制度課長 民法改正につきましては法務省と御相談させていただくということになるのではないかと思いますので、私からの発言は差し控えますけれども、立法事実につきましては阿部委員のおっしゃるとおりでございまして、私どもとしてもきちんとした精査ないし整理が必要だと思っております。

それで、現在お示しをしているものがその候補になるものだということでございますけれども、その中からさらに精査をして何らかの形でこういうところが立法事実になるのではないかという形で、しかるべき時期には整理したものをお示ししていきたいと思っております。

阿部委員の御発言の中にもございましたように、消費者契約法は中2階という言葉がいいかどうかは別にしまして、民法の特別法であるとともにさらに特別法がございますので、とりわけ特商法でございますけれども、特商法も現在改正の動きがございますので、それとの連動というのはしっかりと整理した上で何らかの形でこの場でお示しをしていきたいと思っております。

○法務省中辻参事官 債権法改正のお話がございましたので、私のほうから1つ御報告させていただきます。

ただいま債権法改正に関しましては、法制審議会のほうで要綱仮案というのを取りまとめておりまして、約款の部分を除いて一応の御了承が得られたという状況にあります。来年1月、2月をめどとしてその約款部分をどうするかを含めて要綱仮案が正式に決まる。その後の国会への法律案の上程というのを予定しているところです。

債権法改正の状況につきましては、必要に応じてこの場にも御提供させていただければと思っております。

○山本(敬)座長 そのほか、いかがでしょうか。

○山本(健)委員 第1回目の会議でございますので、この専門調査会で目指すべき取りまとめの内容ないし程度、議論の中身、議論の具体的な進め方の3点について要望を述べさせていただきたいと思います。

1点目は、この専門調査会の最終目標となる取りまとめの内容ないし程度に関する要望でございます。内閣府消費者委員会では、平成23年8月の「消費者契約法の改正に向けた検討についての提言」において、「民法(債権関係)改正に遅れることなく消費者契約法改正を実現することが望ましいと考えられる」と提言しておられます。

その後、法制審議会の民法改正論議は、第2読会、第3読会を経て、平成26年8月に要綱仮案が公表される段階まで進行しております。また、民法改正論議では、消費者契約に関する特則の要否、内容が消費者契約法改正の論議に委ねられた経緯があります。

このような民法改正論議との時間面、内容面での関係を考えますと、この専門調査会が任期とされる来年8月末までに取りまとめるべき報告の内容は、中間報告といった内容では不十分であり、具体的な法改正の方向性や内容を詰めた最終報告のような内容を目指す必要があるものと考えます。そのような目標を目指しての審議の進行をお願いいたします。

2点目は、この専門調査会の今後の議論の中身に関する要望です。消費者契約法の実体法改正問題については、先ほども御紹介がありましたとおり、この専門調査会に先立ち、平成25年8月に公表された内閣府消費者委員会の調査作業チームの「論点整理の報告」において、法改正の検討が必要と思われる論点の整理がなされております。

また、平成26年10月に公表された消費者庁の「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」において、裁判例や被害実例といった立法事実となり得る事実が実際に存在する論点に議論の対象が絞られております。

この専門調査会においては、限られた時間の中で審議を効率的で充実したものとするためにも、前述のようなこれまでの議論の成果を前提に、本日配付されております資料3-2の消費者庁の報告書に列挙されておりますような諸論点について、法改正に伴って心配される具体的な弊害の存否、内容、それを踏まえた要件論の検討を議論の中心に設定していただきたくよろしくお願いいたします。

3点目は、この専門調査会の今後の具体的な議論の進め方に関する要望でございます。

まず、毎回の審議が効率的で充実したものになるように、各会議での検討資料の御送付については、できるだけ早くよろしくお願いいたします。

また、時間的な制約があるとはいえ、重要な論点が時間の関係で検討されないとか、検討が不十分なまま立法の対象から落とされるといったことにならないよう、効率的な時間配分と進行、並びに、審議時間の確保への柔軟な対応をよろしくお願いいたします。

最後に、各回の審議が効率的で充実したものになるよう、適宜柔軟に、委員からの資料や口頭説明を補充する意見書面の提出をお許しいただきたくお願いいたします。この点、日弁連では本年7月に具体的な条文形式の立法提案である「消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)」を策定し、公表しております。実体法改正の具体的な在り方、特に要件論に関する議論の一助として資料提出をお許しいただきたくよろしくお願い申し上げます。以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。進め方等についての御要望もありましたので、事務局のほうから何かお答えいただくことはあるでしょうか。

○増田参事官補佐 事務局の増田です。基本的にはこの専門調査会は会議体でございますので、御意見についてはこの場で口頭でいただきたいとは思っておりますが、今おっしゃっていただいたように意見の資料として会の間に出していただくものは随時受け付けたいと思っておりますし、先ほど山本健司先生のおっしゃった日弁連の試案についても御提出いただけるのであれば資料として取り扱いたいと思っています。

また、合わせまして今お手元の左前にファイルをお配りしておりますけれども、先ほどちょっと御説明を失念していたのですが、過去の検討会の報告書等をお手持ちの資料としてお配りしておりまして、これはここに設置して皆さんに適宜御参照していただくという形で考えておりますので、そういった取りまとめた資料を今後また提出されるようでございましたらこちらにつづらせていただくような形で取り扱いたいと思います。

○山本(敬)座長 ファイルに若干余裕があるようですので、よろしくお願いいたします。

それでは、ほかに御意見をお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。今日は御自由に出しいただければと思います。どうぞ。

○河野委員 遅く参加して申しわけございません。私は先ほど申し上げたように非常にこの議論は重要だと思っておりますので、本調査会の議論に参加するに当たっての問題意識ということを少しお伝えしたいと思っております。

まず、行政に寄せられる消費者相談の状況ですけれども、PIO‐NETを見ますと2013年度は消費生活相談の総件数が9年ぶりに増加しております。まだ詳細な分析は発表されていないんですけれども、例年の傾向どおりであればその85%程度がやはり取引に関する相談であり、消費者契約法が関係してくる相談だと思っております。

商品・サービスが今のように高度化し、新しいものが登場する中で、勧誘や契約に当たっての相談がふえているという側面がございます。勧誘のときや契約締結する前の説明というものは、消費者が契約するかどうか。契約するのか、しないのかを判断するのに、従来にも増して重要になっていると考えます。

ただ、現在の消費者契約法では事業者による情報提供が努力義務規定にとどまっているということもあり、ぜひ義務規定として取り消しなどの法的効果を与えるというようなことが今後検討されてもよいかなと感じているところでございます。

続けて、現在の消費者契約法は行政の消費者相談におけるあっせんですとかADR、さらには裁判で活用されるということもあり、一定の役割は果たしているのではないかと思います。一方で、不当条項のリストが免責条項に関する規定である8条、それから契約解除時の違約金に関する規定である9条と、少ないのが問題であるといわれております。

そのほかの消費者に一方的に不利益な条項というのは、私もよく耳にする第10条の適用が検討されるわけですけれども、規定が抽象的ですのでなかなか判断が難しいというのが実情だと思っております。被害の実態に照らして、ぜひ不当条項リストをふやしていくということも検討していただければと思っております。

それから、勧誘行為についても現在の規定だけでは救済できないというか、救済されない事例がたくさんあると感じております。不実告知の重要事項の範囲とか、それから威迫・困惑類型について、その不退去・退去妨害からさらに広げること、このあたりはこれまでも検討はされてきたと思っておりますけれども、被害事例に照らしての具体的な検討が今回は必要ではないかと感じているところです。

消費者契約法というのは、私は普通の主婦ですのでほとんど詳細な法的知識はございません。ただ、消費者自身が理解し、活用できる法律であってほしいと思っているところです。消費者がトラブルに遭遇した際に専門家の助言をいただければ、消費者自身の判断と、それからどんなに小さくてもその交渉に活用できる程度のわかりやすい、かつ明確な規定にしていただきたいと思っております。ぜひ今、申し上げたような観点から今後の議論を進めていっていただきたいと思いますし、そこに参加してまいりたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○山本(敬)座長 それでは、ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 ただいま河野委員から御指摘いただいたところと大分重なる問題意識を持っておりまして、河野委員からは3つ御指摘をいただきました。情報提供義務が努力義務であるということの問題、不当条項リストの充実化、それから勧誘で困惑類型の範囲が狭い。そういうようなお話があったと理解していますけれども、私もそれらの点について全く同感です。

特に、勧誘のところで誤認類型の問題につきましては、例えば4条4項の重要事項の範囲をもっと広くすべきだとか、そういうような議論の蓄積もあり、判例の蓄積もあると思うのですけれども、3条の努力義務を法的義務にした場合、4条1項、2項、それから4項、それらがどのような関係になるのか。そういうところが問題になるように思いまして、そこでは誤認類型の再構成、情報提供義務を法的義務にするということとの関連での再構成が問題になるのではないかと思います。

それから、困惑類型につきまして範囲が狭いということが指摘されております。この問題につきましては、やはり困惑ということの周辺領域も含めて議論する必要があると考えます。困惑というものをどこまで広く認めることができるか。不招請勧誘とも関連する問題でありますので、そういうものも含めて迷惑勧誘というのでしょうか、そういうものについてどう規制するか、どう考えていくかという問題につきましては、誤認のところほど議論の蓄積がないのではないかと思います。そういう意味で困惑類型を、その周辺も含めてどのように考えるのかというのはひとつ大きな問題としてあるのではないかと思います。

その際には、困惑類型の拡張というものがどこまでできるかということも関係しますが、場合によっては不当勧誘の一般条項というもの、不当条項の一般条項は10条でそれなりに利用されているということもありますので、そういうことも参考にしつつ、不当勧誘規制の一般条項というようなことも発想の中に入っていいのではないかと思います。

とりあえずいろいろ問題があるとは感じておりますけれども、今、一番問題かと私が感じている点を述べさせていただきました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○丸山委員 議論の進め方につきましては、先ほど山本(健)委員からもお話があったところですけれども、これまで紹介がありましたように、消費者契約法の評価、どういった点に問題があるのかという点については、既に議論が積み重ねられております。それで、今回資料の2-3や資料の3-2を見ますと、議論すべき重要な論点というものがすでに列挙されていると私自身は捉えています。

そこで、これ以降の毎回の審議について、各回で集中的かつ効率的に議論ができるように、今回の会というのはどういったことを審議するのかという論点を早目に提示していただいて、従来の検討会などで行われてきた資料のどの部分が今回の議論に関連しているのか。資料の中には比較法的な材料というのも既に提示されている資料や報告書もございますので、事務局の負担になるかもしれませんけれども、そういった事項を議論に参加する前に早目に提示していただければと思います。

また、審議の場でこれらの資料を参照できるとともに、できれば準備のために手元に置いて、これらの資料を一括して参照できる状況にしていただければ非常にありがたいと思っております。

論点につきましては2-3の資料のところで非常に的確な指摘がされていると思いますので、これらの点について集中的に順番に議論ができればよいのではないかという意見を持っております。以上です。

○山本(敬)座長 資料の整理等については、今回も既に、これまでのさまざまな段階で示されてきた考え方を論点ごとに整理していただいているなど、相当頑張って御準備いただいていると思いますが、さらに継続してこれを続けていただきたいという御要望が出たということで、よろしいでしょうか。

○増田参事官補佐 今いただいた御意見も踏まえまして、消費者庁の協力も得ながら今後進めてまいりたいと思います。

○山本(敬)座長 そのような御要望を含めまして、ほかに御意見を頂戴できればと思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ、大澤委員。

○大澤委員 今の丸山先生の御指摘とかなり重なるところもあるかと思いますが、幾つか述べさせていただきたいと思います。

特に本日の資料の2-3を拝見しておりますと非常に論点が明快だと思いましたが、分けますと、今ある規定の例えば要件を改正するという作業がまず1つ必要だと思います。勧誘要件とか、あのあたりだと思います。

その一方で、恐らくこちらのほうは法改正に当たって議論が錯綜するというか、大変なんじゃないかと思っているのが、先ほど出ておりまして後藤先生から御指摘がありました、例えば困惑類型の拡張のような新しい勧誘類型をつくるかとか、勧誘の一般規定を設けるかといった受け皿規定で、もう一つが恐らくは不当条項リストではないかと考えています。

既存規定のほうに関しては、例えば先ほどの重要事項の中身ですとか、勧誘要件につきましては今、丸山先生からも御指摘がございましたように、既にこれまでたくさん消費者庁ないしは消費者委員会でもこれだけ議論がされている中で、一定程度方向性は示されているのではないかと個人的には考えていますし、学説の状況を見ておりましても既存規定の要件のこの部分をこうしたほうがいいというのはある程度コンセンサスがとれているのではないかと考えていますので、そこに関しては今までの議論を踏まえて、今後そこをどんどん効率的に議論していくことが必要だと思います。

それで、恐らく問題となりますのは受け皿規定のほうと、あとはリストのほうではないかと個人的には思っています。ただ、やはりこちらは両方とも、特に不当条項リストに関しては率直に申し上げまして今の日本の消費者契約法の不当条項リストというのは海外の不当条項リストと比べても非常に貧弱だと思っています。

海外のリストに関してもこれまでの、例えば消費者委員会のワーキンググループなどでも比較法を資料として提示されておりますので、改めてまた調査するということには多分ならないと思います。ある程度資料はそろっているはずですので、そういう海外のリストなども踏まえて本格的にリストの充実化に向けて議論をしていただきたいと思っていますし、私もそのために頑張りたいと思っております。

それで、受け皿規定のほうにつきまして、やはり海外でも最近の民法改正の素案などを見ていますと、もちろん実現するかどうかはまだわからないところはありますが、例えば経済的強迫に関する規定が提案されている。これは消費者法ではなくて民法改正のほうで提案されているといった状況もあることを考えると、やはりちょっとおくれているところもあるのではないかと思います。

あとは、その受け皿規定とリストに関しましては、先ほど消費者庁のこの10月に発表されました報告書を拝見していますと、裁判例は確かに数的には余り多くないかもしれませんが、相談事例の数は非常に多いところだと思っています。ここで裁判例は消費者取引ですので裁判まで至っていない事例もたくさんあるということを考えますと、やはり相談の実態のほうをむしろ重視して立法事実として捉えていきたい、捉えていくべきではないかと考えています。

以上のような観点で恐らく議論を進めることになると思いますが、消費者概念に関しては個人的には最後に議論したほうがいいのかなとは思っています。まず、契約締結過程と不当条項に関する議論をした後、その消費者概念についてやったほうがいいんじゃないかという印象を個人的には持っていますし、消費者委員会のワーキンググループにも参加させていただいておりましたが、たしかこちらでも最後のほうに議論をしていたと思いますので、最後は個人的な印象ですが、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。それでは、ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○阿部委員 かなり具体的な進め方についての御提案がございましたが、私からも2つお願いしたいと思います。

1つは、平成25年8月の論点整理についてです。割とわかりやすいことも書いてあったと思いますので、これから議論するに当たりまして、要は皆さんの間にコンセンサスがありそうなものといいますか、ある意味でわかりやすいものと、はっきり言って対立案件になりそうなものとを早目に仕分けていただいて効率的な議論をしていただきたいということです。

もう一つは、先ほども申しましたけれども、立法事実として何を取り上げるかということについて、これは事務方には大変御迷惑をかけるかと思うのですが、やはりこれは全部が立法事実としてふさわしいかどうかはわからないところもありますので、本当に改正につながるような議論として何を論ずればいいかということは早目にお示し願いたいと思います。以上です。

○山本(敬)座長 それでは、ほかにいかがでしょうか。全て関連してくると思いますので、御随意に意見をお出しいただいたほうがよろしいかと思います。いかがでしょうか。

では、委員長どうぞ。

○消費者委員会河上委員長 諮問を受けた者としての立場で申し上げますと、1つはやはり情報通信の発展ということがあって、インターネットによる取引を前提とした取引環境の整備ということはある程度避けて通れないという気がしております。特にインターネットに示された、例えばホームページなどに示された広告でありますとか、さまざまな情報の提供と消費者契約における勧誘との接近ということは意識していくというのが1つ大事なことではないか。

さらに高齢化の話が出ておりまして、高齢消費者の被害に対する配慮というのは今までの消費者契約法で果たしてこれで十分だったろうかという点もせっかく諮問の中で言及してくれていますので考える必要がありそうです。たとえば、適合性原則という投資取引などではよく使われている考えがありますけれども、ああいう考え方が例えば消費者契約法の各要件の中でどういう形で関連してくるかというようなあたりにも気を配りながら検討を進めていただけるとありがたいということであります。

それから、ついでに申しますと、集合訴訟における裁判手続等がこの間に成立して、ある意味ではエンフォースメントの中身というか、手続が強化されてきた。これは消費者庁の御努力のおかげでありますけれども、そうなりますとこれまで個々の取引の中で消費者が自分の個人的な権利を守るために訴えを起こして、そしてそこでの権利義務関係を調整するというか、紛争を解決するための規範として提示されている消費者契約法の各条文でございますけれども、その意味合いが個別の紛争解決のための準則というよりも集団訴訟における対象となった途端に、むしろ市場における企業の行動規範としての意味合いが強くなってくるという点であります。

個別の取引の中で言った、言わない、あるいは能力がどうのということとは別個に、こういう状況下で事業者はこう行動すべきだという部分での行為規範としての意味合いが重要な意味を持ってくるのではないかというあたりが気になります。そのあたりにはある程度配慮いただければありがたいと思います。

○山本(敬)座長 わかりました。どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

具体的な素材がないとなかなか意見を出しにくいということはよく理解しているつもりですけれども、次回以降の進め方を考える上で、この場でお出しいただけますと大変ありがたく思いますので、御意見を頂戴できればと思いますが、いかがでしょうか。

○後藤(巻)座長代理 個々の論点の背後にある問題ですけれども、消費者契約法の法的性格というものが十分には議論されていないのではないかと思います。

例えば民法との関係で、民法改正で契約当事者の格差を考慮するということが基本的に民法典に入らないという方向であります。そうすると、その格差を考慮するということの受け皿というのでしょうか、どの法律で考慮するかという場合に、消費者契約法というのは一つの候補になるのではないかと思いますが、その場合に消費者の定義ということがあるわけですので、消費者以外の者にどれだけ格差考慮ということを及ぼすことができるかという問題も出てくるということになりまして、そういう問題に至りますと、やはり消費者契約法というのはどういう法律なのかというような基本的な理念みたいなものも考えることが必要になってくるのではないかと思います。

そういう場合に、どんな切り込み方ができるか。あるいは、余りそういうことについては消費者契約法見直しの中では議論しにくいというような扱いになるのか。その辺についても私は個人的に気にはなっているのですけれども、全体として問題意識を共有できるような問題なのかどうかということについてちょっと自信がないという感じもしますので、そういったことをどう考えるかということにつき何か御意見等をいただければありがたいと思います。

○山本(敬)座長 問題提起をしていただき、ありがとうございます。

重たい問題提起でして、なかなかお答えしにくいかもしれませんが、今の点に関してもしこの段階で御意見をいただけるようでしたらお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○阿部委員 従前から議論のあるところですけれども、例えば属性としては個人や零細の事業者であっても消費者としての意識で行動している場合は消費者であって構わないという議論もあれば、逆にそうでないという議論もございます。ここは理屈の議論にかなりかかわるところもありますし、まさにそうそうたる民法学者の方がおられますので、具体的な提案をどなたか先生にお願いしていただいて、それをたたき台として論じさせていただければ効率的かと思います。

○山本(敬)座長 もちろん、学者だけの問題ではないとは思いますけれども、ありがとうございます。どうぞ。

○沖野委員 今の後藤委員の問題提起が、非常に重要な点だと理解しております。消費者契約法というものがそもそもどういう性格なのかというのは、阿部委員もおっしゃったように今までも議論があって、ただ、消費者契約法自体は目的規定において事業者と消費者の間に情報交渉力の格差があるということは正面から認めており、それをまさに共有した法律だというのは一般的な理解だと思います。

その意味では、格差に配慮するという点からすれば代表例として消費者契約があることは異論がないと思われます。ただ、その配慮の仕方、あるいは配慮した先にどのようなところまで消費者契約法が求めていくのか。いってみれば、契約に拘束されるその土台の整備であるのか、さらに一歩立ち入った保護であるのかというのは従来から議論のあるところで、それ自体、どこまで詰めていけるかという問題があるかと思います。

それで、具体的な問題についてですが、1つは、ご指摘のあった、消費者概念ですとか、あるいは適用範囲というものをどういうところに捉えていくかという項目があります。

それからもう一つ、格差について考慮する、あるいは配慮するという点が民法改正の中で議論としてあり、その一つの例として消費者契約が出されていたわけですけれども、そのような議論を受けますと、具体的な問題の一つとして消費者契約法がうたっている事業者と消費者の間の格差、あるいはそこで捉えている構造的な情報量、あるいは交渉力の格差というものが目的規定だけでいいのかという問題はあるように思われます。

消費者契約法が現在規律している実体法の対象はかなり限られております。勧誘、あるいは意思表示の取り消しの問題と不当条項規制になっておりますけれども、それだけでは十分ではないというのは制定の当初から言われていたことであり、今回、裁判例、それから特に相談例が分析されて、これら以外の問題があるということも改めて明らかになりましたが、他方で極めて網羅的な消費者契約法というのはなかなか直ちに実現しにくいということもあると考えられます。とすると消費者契約、あるいは消費者契約法が問題となり得るような事項について、個別には具体的な規律がないにしても、そこにおける一般指針とか、考え方だとか、そういうものを提示する必要はないのかということも一つの論点ではないかと思います。

これはまだ余り議論はされてきておりませんでしたけれども、民法の改正における議論、それを受けた検討としてはそのようなことも問題となり得るかと考えております。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。今の点に関して、さらに御意見がおありでしたらお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。今、御指摘いただいたような個別項目については、当然関連してくるところですので、検討を進めていくことになろうかと思います。

よろしいでしょうか。全てかかわってきますので御随意に意見を出していただければということはありますが、ほかにまだ御意見を頂戴していない方もおられますので、その方々も含めまして御意見を頂戴できればと思います。どうぞ。

○消費者委員会石戸谷委員長代理 これまでの検討結果の成果を踏まえてというのは、全くそのとおりだと思います。

それで、実務家としてこの取引型の紛争の解決を見た場合、消費者契約法が活用されているとはいいながら、実務的な面から見るとまだまだ取引的不法行為で構成しなければいけない案件が多い。それはなぜかというと、やはり今の消費者契約法というのは個々の契約の意思表示の瑕疵プラス約款という切り分けになっていて、そこにうまく収まらない紛争が多いということだと思います。

運用状況の検討会においても、資料3-2の論点事例対応表でいきますと86ページ、87ページのところの不当性勧誘に関する一般規定というところにかなり相談事例が多くなっている。多くなっているんですけれども、そこは適合性原則違反、状況の濫用、暴利行為等ということで概括的になっているという、ここのところをどういう具合にうまく整理するかというのが大事だなと私としては考えております。

本文のほうに該当する部分というのが46ページ、47ページ以降にあるわけですが、相談事例を見てみますと、ここの部分というのは高齢であるとか、あるいは肉体的ないし精神的な疾患であるとか、非常に切実なといいますか、深刻な事案で対応が必要な類型が多く見られる。ここに集中しているというところが大事ではないかと思います。

それとの関係で、この一般条項のところの検討会の議論状況というのをずっと見ていきますと、51ページのところに不招請勧誘の問題が出てくるんですけれども、順番に検討していくといった場合にそういう検討の方法もあるのですが、全体としてどういうルールかというところで、相互の論点の関係性というのが出てまいりまして、不招請勧誘の制限というのを導入する場合と導入しない場合で、適合性でありますとか状況の濫用ないし消費者取引公序のようなものにかかる比重というものが大分違ってくる。

金融分野では不招請勧誘は電話、訪問ですけれども、不招請勧誘の制限をしている法律が幾つかあります。その施行状況を見てみますと、導入すると苦情被害事例というのはぐっと減ってくる。

その分、適合性ないし、その他の一般条項にかかる比重、負荷が少なくなる。逆にその勧誘を認めるということになってきますと、このタイプの方々がどういう具合に被害に遭わないように、合理的な判断ができるように、ないし規律ができるようにするには、適合性原則でありますとか、状況の濫用でありますとか、消費者取引公序といったようなものに対するウエートがかなり高くなる。こういう関係にあると思いますので、その検討の順番を考えるときにはその辺も念頭に置いていただければうれしいと思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

○後藤(準)委員 私どもは冒頭にも申し上げましたように、小規模な事業者が会員の多数を占める団体ですが、いろいろな意味で昨今、消費者保護の観点から規制が強化されている。

悪質な事業者が市場から退場するということは我々全く異論はないんですけれども、そのために過度な規制によって事業活動が阻害されて実質事業ができなくなるといった事態を避けていただきたい。その意味では、具体的なそれぞれの事例をこの場で御議論いただいて、一体どこに問題があるのか。具体的に規制を強化しても、それが守られないような規制をつくってもしようがないので、実質的にその効果のある規制策というのは一体何なのか。その辺のところに論点を絞って、ぜひとも御議論いただきたいと思っております。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。どうぞ。

○井田委員 日ごろ、適格消費者団体として差しとめ要望をしているものの立場として発言いたしますと、やはり一番不当条項リストというものに非常に関心を持っています。日常、全国の適格消費者団体が大小さまざまな事業者に対して申し入れをするわけなんですけれども、特に中小の事業者から決まって言われることは、何でうちだけなのか、よそも同じような条項を使っているのにどうしてうちだけこういう申し入れをしてくるのかというようなことは言われます。

その御主張の法的な是非はともかくとして、残念ながら現在の8条ないし特に10条ですね。目安がないというところが、特に中小の事業者においては何をどう決めていいのかわからないという側面はやはりあるのだろうと思っております。

実際、その10条違反に関しましてはかなり事業者と消費者側で評価が違いますので、なかなか事前の申し入れで解決するというのも容易ではない。どうしても裁判になってしまうというようなところがありまして、これを明確化する意味での不当条項リストというのはやはりあっても損はないというか、むしろ弊害はないのではないかと思っております。

例えば、今回いただいています運用状況に関する検討委員会報告書の69ページには、「不当条項リストの拡充に懸念を示す意見」の1つとして、評価の余地のある条項が明確でないリストが策定された場合の弊害という御指摘はございます。

もちろんそれはそのとおりだとは思うのですが、現状に比べると10条だけがぽんとあって何もリストがないという状況に比べると、はるかにリストがあったほうがよいのではないかと思っておりますし、ここで議論を進める際にも既に具体的にはリストというのはいろいろなところから示されておりますので、比較的不当条項リストに関する具体的な議論を出していくことは容易ではないかというふうに考えております。以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございます。

○古閑委員 古閑でございます。今、御議論を伺っている感じですと、これまで運用状況に関する検討会などで出された相談事例であるとか裁判例をベースに検討していくことになるのかなというふうにお聞きしたのですけれども、それを踏まえてどういうふうな対処をしていくのかがまず多分議論になると思うのですが、その対処の結果、事業者の側がさらにどういうふうに対処していくことになるのかということも考える必要があるかと思っております。

何でもそうですけれども、リソースであるとか、コストであるとか、限られているという大前提がございますので、もしここをこういうふうにしようと法律で決めた場合に、それを踏まえて、事業者ではこちらはこういうふうにしようとかというふうに、影響がでてくるということは考えられます。

ここはまさに消費者を守るための場ですので、理想論ばかりを掲げて現実的にできないことを議論してもしようがないので、現実的に、例えばこういうふうに改正をしたとした場合にはどのようなことが引き起こされるんだろうということを想定した上で、結果としてほかの消費者さんに影響が出てしまうということがないよう、やはりしっかり議論をしていく必要があると思います。そのために、今出てきている相談事例とか裁判例だけを考えるのではなくて、いろいろな消費者の方々に影響が出ないようにということもしっかりその先まで考えていく必要があるかと思いますので、議論にはかなり時間を要すると思いますけれども、そこはしっかりやっていかないといけないのかなと考えております。ありがとうございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございます。とりわけ今の点は、私もかつて別の機会に述べたことがあるのですけれども、非常に重要なポイントの一つでして、ある規制を設けたときにどのような影響が出るかということも、非常に重要な立法事実にかかわる事柄だと思います。そのような点は、外からなかなかわらないということもありますで、むしろ積極的に、このような影響が出るということを可能な範囲でデータの裏づけを含めてお示しいただけると、非常に議論がしやすくなると感じているところです。その点もよろしくお願いしたいと思います。

その他の点は、いかがでしょうか。大体、一通り御意見をお出しいただいたということになろうかと思いますが、次回以降に論点の取り上げ方及び進め方について御議論いただきたいと考えています。その基礎として特に重視すべき点をお出しいただきますと、そのときのたたき台になりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

○阿部委員 諮問の趣旨について、事務当局に御質問がございます。諮問では、規律等の在り方を検討することとなっています。例えば先ほどの不当条項の議論などは、法律に書くのか、あるいはもうちょっと違うレベルで書くのかということも含めて議論があるかと思うのですが、必ずしも消費者契約法という法律の見直しにかかわらない、もっと下位法規というか、場合によってはガイドラインや通達みたいなレベルに至るものまでも対象とした議論になるという理解でよろしいのでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 諮問としては、消費者契約法のいわゆる実体法部分をどういうふうに見直すかということについて答申をいただきたいということではありますけれども、今、古閑委員を初め何人かの委員から御指摘がございましたように、それを消費者契約法でやるのが本当にいいのかという観点も当然踏まえる必要があるのだろうと思います。

先立つ検討会におきましては、端的に申し上げると、今の消費者契約法の規定ですらまだ十分に遵守していないというか、そういった事業者もたくさんいるわけです。とりわけ国際取引のような事例を念頭にそういうような御指摘がございましたけれども、そういった場合にはやはりまずは現在の消費者契約法の規定をできるだけしっかり事業者に遵守していただくというか、そういった観点での施策といいますか、具体的には消費者契約法の現在の考え方などをしっかりと周知をしていくということになるのかと思いますけれども、それをさらに工夫していくということがまずは重要じゃないかという御指摘もございましたので、それは非常に重要な御指摘だと思いました。

ですので、消費者契約法の規律として見直すべきところは当然見直すということが必要だと思いますけれども、より実効的な方策として、例えばそういった周知でありますとか、ガイドラインとか告示というものは民事ルールとしてはちょっと想定しがたいところがございますけれども、考え方をしっかりと周知していくということも消費者契約法の実効性を確保していく方策の一つとしては十分あり得る選択肢ではないかと思いますので、それはそれとして御指摘いただきつつ、また対応できるところはやっていきたいと思っております。

○消費者委員会河上委員長 今、加納さんから言っていただいたとおりなんですけれども、前に消費者契約法ができるときにもう既にこの手の議論というのは随分やらせていただきました。3つぐらい問題があって、1つは一般法、それから特別法、消費者契約法が間にあるとすると、どこでそれを受けるのが一番いいんだろうか。特定の問題が出てきますと、個別の業法のある条文でぴしっとたたいたほうが効果的にいくんじゃないかというので、わざわざ消費者契約法まで持ってくる必要はない。一般化することについてはどうかという、その法のレベルの問題がありました。

それからもう一つは、手法の効果の面で民事効を伴う形での介入がいいのか。それとも行政規制でもって行政的な調整をすれば足りることではないか。場合によっては刑事責任を科したほうがいいんじゃないかという形で、その効果の組み合わせをどういうふうにするのがいいのかというレベルでの議論がございました。

それからさらにもう一つが先ほどの問題で、法律上のルールにしていくのがいいのか、あるいは自主規制のほうにお任せしていくとか、あるいは行政指導といいますか、これもルールの問題より若干ソフトローの世界で対応するのがいいのかというような幾つかの手法があり得る。

その中で、民事効をもって対応することが望ましいものをやはりきちんと考えていく必要があるということなのですが、当時いろいろな省庁の方々が見えたときにベストミックスを探すんですという言い方をよくされておりました。

つまり、行政でこれをやって、これとこれを組み合わせるのがベストミックスになるんだというような説明をされていたのを思い出します。けれども、今回もその意味では短い時間ですから、ある意味では最も効果的なところを探していくという形で、時間的余裕を見てベストミックスの在り方を議論していただくということになるんだろうと思います。ゼロからというか、それはなくていいという話ではなくて、むしろ、それぞれの相乗効果がどうなるかという観点から議論をしていただければありがたいと思います。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございます。

1点目に言われた法のレベルに関していいますと、民法の改正について、ひとまず方向と内容が見えてきたところですので、それを踏まえて、消費者契約法、さらにその特別法との関係をどう考えるかという先ほど指摘されたことがまさに問題になってきているのではないかと思いますが、それに加えて、今の2点目、3点目も考えていかなければいけないと思います。

今の点を含めていかがでしょうか。どうぞ、丸山委員。

○丸山委員 効果論というお話が出たのでやはり考えていただきたいのが、現在は、取り消しに結びつく行為(4条該当行為)あるいは無効に結びつく不当条項を含んだ契約の締結行為(8条~10条該当条項)というものが差止めの規範にもリンクしている状態だとは思います。今後、取り消しできる範囲を広げる、あるいはその損害賠償による対応も考えるという議論をするときに、差止めとの関係をどのように整理していったらよいのかという点は、考えながら議論をする必要があるのではないでしょうか。

逆に、差止めにはふさわしいけれども取消しまでは認められない行為といった整理の仕方もあり得るのではないかということは、今までの検討会の議論ではあったところなので、差止めとの関係を気にしながらも、今回の調査会の検討のターゲットは、取消し・無効、損害賠償という効果に結びつくものに限定して考えればよいのか、差止めるべき行為も視野に入れるのかという議論の射程は考えたほうがよいのかなといった感想を持ちました。以上です。

○山本(敬)座長 差止めというのは、消費者団体訴訟にかかわることですね。諸外国の例でも、抽象的な団体訴訟における規制の在り方と、個別契約における規制の在り方が違う可能性もあるということが指摘されているところで、それにかかわる問題提起だと受けとめました。

今の点、あるいはその他の点を含めましていかがでしょうか。どうぞ。

○沖野委員 重複しておりますが、確認の意味を込めて申し上げたいことがあります。

河上委員長がおっしゃったベストミックス、あるいは相乗効果という点に関してですけれども、消費者契約法自体は私法上のルールとしてどのようなものが適切であるのかということを考えていくものではあるのですけれども、他の規律や、あるいはソフトローと言われるものとの関係で決して排他的ではないということです。例えば消費者契約法に置かれることがガイドラインを策定するに当たっても一つの指針となっていくとか、あるいは行政的な規律と相まりつつ、個別の契約における適切な法律関係というのが消費者契約法によってもたらされていくということがあります。したがいまして、むしろ例えば自主的な規制が望ましいのではないかというときにも、消費者契約法にそのための、それを展開するための手がかりを置かなくてもいいのかといった視点は問題になるかと思います。一般論として、ここで改めて申し上げたいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

○後藤(巻)座長代理 河上委員長から先ほど市場における企業の行動規範としての役割ということも消費者契約法にはあるという御発言で、その後、何人かの委員の方々から消費者契約法に取消しとか無効という効果を置くことの意味、あるいは、差しとめとの関係を意識する。そういう御指摘があったのですけれども、消費者契約法に何の効果も伴わない形で行為規範を定めた規定を置くということは、取消しとか無効という効果が生じないということですので、一見、無力、無意味という面もあるようにも思いますが、今、沖野委員が御指摘になったようなほかの法律とか、あるいはガイドライン、より根本的には市場参加者に消費者契約法からメッセージを与えるという効果があるのではないかと思います。

そういうことで、メッセージ効果を目指すということも含めて、消費者契約法に規定を入れるということも、余り議論されていないことではないかと思いますけれども、あり得ると思いますので、そういうことも含めて議論できるのでしたら議論をしていただけたらと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。規定を設けるにしても、どのような形で規定を設けるか、それにどのような意味、効果を付与するかという問題提起をずっといただいているというように理解しています。

よろしいでしょうか。ほかにこの段階で御指摘いただけることがあればと思いますが、いかがでしょうか。

これは次回以降にまたお諮りし、御検討いただくことになりますけれども、先ほどいただいた御意見の中にもありましたが、消費者契約法に何らかの規定をさらに追加したりしますと、いろいろなところに影響が及んでくることになると思います。どのような影響が及ぶのかということを見極めることが、立法の前提として不可欠になってくると思います。そのためには、やはりそうした影響を受け得る各界からやご意見をうかがい、情報収集をする機会があってしかるべきではないかと思います。要するに、ヒアリングに当たるようなものということです。

しかし、それも、とにかくおいでいただいて御意見をいただくというだけではなかなかピンポイントでの情報収集も難しいだろうと思います。その意味では、例えばどのような点について、どのようなところから、具体的にどこというよりは、どのような方面に影響が及びそうなので、どのような点について御意見ないしは情報をお出しいただく機会を設けるべきか。これもなかなか悩ましいところでして、もしこの点についても御意見等がありましたら、この段階でお聞かせいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

もちろん、このようなヒアリングは、これまでもたびたび、さまざまな場で行われてきているところではありますけれども、今回の諮問との関係でいいますと、どのようにすればよいかということも一つの重要な問題だろうと思います。いかがでしょうか。

なかなか答えにくい問題であることも承知はしていますけれども、どうぞ。

○消費者委員会河上委員長 オブザーバーが余りしゃべるのはよくないんですけれど。次回論点を少し整理した形で絞り出していくような案が出てくると思いますが、そのときに、例えば約款ならば約款によるルールを考えてはどうかという話になったら、やはりその約款を最もよく使っていらっしゃる保険業界であるとか、銀行業界であるとか、運送業界といったようなところに、例えばこんなルールではどういう影響が考えられますかというような形で幅広に、そんなに長い時間ではなくていいですからピンポイントで引いていくというような形で、論点ごとにある意味では関連の深い業界に来ていただいて話を聞くというのがいいんじゃないかなとは思います。

委員の方々から少しお知恵を出していただいて論点が見えた段階で、こういうところに聞いてみたらどうかというようなことの情報をいただいて、必要に応じてこの会の中で聞いていただく。事務局のほうで、随時それは御意見も受け付けるような体制にしていただければありがたいと思います。いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 このような御意見が出ていますけれども、いかがしましょうか。どうぞ。

○黒木事務局長 今、委員長からも御指摘がありましたけれども、今後ヒアリング等をしていただくということであれば、今、御指摘あったような各委員の先生方からもお知恵をいただきながら、こういういう論点についてはぜひこの分野の方に御意見を聞くべきというようなことを随時御指導いただきたいと思います。

○山本(敬)座長 もちろん、全体として、来年の夏ぐらいをめどにということですので、たくさんのところから長時間をかけてヒアリングというのはなかなか難しいところがあろうかと思います。それだけに、ポイントを可能な限り絞りながら、しかし、必要なところからは御意見を聞く機会をできるだけ早目に設けるほうが、後できっと時間的にタイトいなってくると思われますので、それを考えましても、そのほうがよいのだろうと感じているところです。このあたりを含めて、次回にもう少し具体的に御議論いただくときに検討できればと考えています。よろしいでしょうか。どうぞ。

○沖野委員 債権法の改正の際には、今も進行中ですけれども、ヒアリングとともに必要な事項についてはアンケート調査なども行われたことがあります。具体的にこの消費者契約法の改正検討項目について、必要であるとか実効的であるということがあるかどうかはわかりません。

ただ、恐らくこの会議の回数も限られておりますし、ヒアリングということになりますと、実際に来ていただいてということもあって、それらの限界なりもあるかと思います。ですので、これは事務当局の御負担が大変ふえることにもなるのですが、あるいは可能性としてはそういったような調査の仕方もあり得るかと思われまして、特にどういうところに意見を聞きたいということが明確になっているのであれば、少しそちらの状況についての調査をここで報告していただくというようなこともあり得るかと思います。全くアイデアとしてというものとして申し上げました。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。両者を組み合わせるという方法もありそうですし、そのあたりは柔軟に考えて、しかし効率的に進められればと思います。どうも御意見ありがとうございました。よろしいでしょうか。

それでは、予定では4時までとなっていましたけれども、もちろん御意見があれば今お出しいただければと思いますが、恐らく、次回以降なかなか大変な議論になってくるのではないかと思いますので、最初ぐらいは少し早目に終わるということもあってよいかもしれません。

本日は、貴重な意見を賜りまして、どうもありがとうございました。皆様からいただきました御意見を踏まえて、次回以降、とりわけ次回に、いただいた意見をまとめながら、今後の進め方をお諮りさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


≪3.閉会≫

○山本(敬)座長 それでは、最後に、事務局から事務連絡をお願いしたいと思います。

○金児企画官 本日は、貴重な御意見をどうもありがとうございました。

次回の日程につきましては今、調整中でございますが、決まり次第、また御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。以上です。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきましてどうもありがとうございました。次回以降もよろしくお願いいたします。

以上