第13回 公共料金等専門調査会 議事録

日時

2015年8月11日(火)13:58~15:53

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
古城座長、井手座長代理、古賀委員、陶山委員、松村委員、矢野委員、山内委員
【消費者委員会担当委員】
橋本委員
【説明者】
一般財団法人 電力中央研究所 佐藤 主任研究員
【事務局】
消費者委員会 黒木事務局長、小野審議官、丸山参事官
消費者庁 福岡審議官、岡田消費者調査課長、石井企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 電力小売自由化における諸外国の現状と課題について有識者ヒアリング
    一般財団法人 電力中央研究所 主任研究員 佐藤佳邦氏
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻よりもちょっと早いですけれども、本日お集まりいただきます予定の委員の方、おそろいですので、始めさせていただきたいと思います。

本日は皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会第13回公共料金等専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用により蟹瀬委員、白山委員、消費者委員会担当委員の岩田委員、山本委員が御欠席という御連絡をいただいております。

それでは、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。

今、お配りさせていただいております資料は、配付資料一覧のとおりになっております。不足の資料がございましたら、お申し出いただければと思います。

なお、本日の会議につきましては、公開で行います。議事録につきましては、後日公開することといたします。

それでは、古城座長、議事進行のほうをよろしくお願いいたします。

≪2.電力小売自由化における諸外国の現状と課題について有識者ヒアリング≫

○古城座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日の議題は「電力小売自由化における諸外国の現状と課題について有識者ヒアリング」です。電力中央研究所の佐藤主任研究員にお越しいただいております。佐藤主任研究員は、諸外国の電力自由化後の現状と課題などについて研究されており、本日は「電力自由化における諸外国の現状と課題について」、お話いただきたいと思います。その後、諸外国での電力小売全面自由化の経験から示唆される、消費者参画の機会の確保、及び消費者保護のあり方について意見交換を行いたいと思います。

それでは、佐藤主任研究員、御説明をお願いいたします。40分程度でお願いします。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 初めまして、電力中央研究所の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。本日は、このような御報告の機会とお時間を頂戴できたこと、まことに感謝申し上げます。ありがとうございます。それでは、以下、座ってお話させていただきます。

本日、「EUの電力小売自由化後の規制料金とイギリスの家庭用需要家保護策」というタイトルで御報告申し上げます。私は、現在の所属先におきまして、電力自由化等に関連いたします法制度面の調査等をやっておるわけですけれども、その中で、我が国でも2016年4月1日から、御案内のとおり電力の小売全面自由化がなされるわけですけれども、自由化の後に需要家を保護するためにどういった制度が要るのかということを、かねてより興味を持って調査してまいった次第であります。本日は、その中から関連するものとして、以下、御説明をさせていただきたいと思います。

前半と後半にざっくり分かれておりまして、前半が「EUの電力小売自由化後の規制料金の現状と課題」とさせていただいております。これは2ページ以降です。

めくっていただいて3ページをご覧ください。

EUでは、電力の小売自由化が既に実施されておりまして、EU加盟国では、電力、そしてガスの小売全面自由化を既に実施しております。ここで言う小売の全面自由化というのはどういうことかといいますと、既存の供給者、ヨーロッパでは国営の会社がやっていた例が多いわけですけれども、これによる地域独占を撤廃いたしました。需要家に対して供給者選択、つまり既存の事業者でもいいし、新たに入ってきた新規参入者でもいいし、いずれかを自由に選択する権利を与えましょうというのが、ヨーロッパ大での方向性になっていました。

ヨーロッパでは、下にも出てきますけれども、こういう指令、英語ではディレクティブと申しておりますけれども、ディレクティブの形でEUの各加盟国に義務づけまして、加盟国は全面自由化を絶対にしなければいけないという制度になっております。その全面自由化、日本では2016年4月1日からになっておりますけれども、ヨーロッパではそれよりかなり先を行っておりまして、例えばドイツではEUに命じられる前の1998年に全面自由化を実施しておりますし、イギリスでも1999年に家庭を含めた全面自由化を実施しております。

EU大ではどうかと申しますと、2007年7月1日までにEU加盟国は全面自由化を絶対に実施しなければならない。もちろん、EUは大小いろいろな国がありますので、一部の非常に小さな国に関しては例外規定があったのですが、原則として、ここまでには全面自由化をしなさいとなっております。ちなみに、EUでは電力とガス、同じ日、2007年7月が全面自由化期限でございました。

例えばフランスは、最後まで全面自由化していなかったわけで、2007年7月に合わせて家庭用も含めた全面自由化を実施いたしております。したがって、後で出てきますけれども、EUではこの全面自由化の実施から少なくとも8年はたっていることになります。

3ページの一番下ですけれども、EUの加盟国では、自由化した後も、つまり供給者選択の自由が与えられた後も規制料金が存置されている例が多うございます。それが4ページに示してございまして、EU加盟国における電力小売規制料金の現況と書いております。

EU加盟国とノルウェー、ノルウェーというのはEUと一緒に語られることが多いので、ここに載せておりますけれども、合計の29カ国のうち15カ国、半数以上がいまだに電力自由化後も家庭用の規制料金を存続させています。全面自由化と言うから、自由化後は規制料金もすぐに撤廃されるのかというと、そうではなくて、実際にはここに載せている国がまだ規制料金を残している。これは、EU指令にある公共サービス義務とかユニバーサルサービス義務といった規定が根拠になっております。

こういった規制料金を存続させている国では、多くの需要家がこの規制料金に残ったままになっています。この下の表に載せておりますけれども、ベルギーはちょっと特殊で8%になっていますけれども、ブルガリア、クロアチア、キプロス、デンマーク、フランスと書いていますけれども、こういった規制料金を残している国では、まだまだ多くの需要家が規制料金に残っていて、新規参入者等の自由な料金、我々、自由化料金、自由料金などと言っていますけれども、これに移っている需要家はまだまだ少ないということであります。

規制料金を撤廃した国は、実は最近ふえています。例えば最近ですと、この中に書いてあるエストニアとかギリシャといった国が規制料金を2013年に撤廃しました。2014年に撤廃した国がどこかあったか、まだわかっていないですけれども、徐々には動いているけれども、まだこれだけ残っているといった状況でございます。

一番下のポツを見ていただいて、規制料金というのは需要家保護を基本的に目的としています。ところが、規制料金が残っているために、需要家による供給者選択とか小売競争の進展ぐあいに影響するので、EUではかなり問題となっていると認識しております。

資料を反転させていただいて5ページをご覧ください。規制料金をめぐってEUが直面する課題と書いてございますが、先ほども申したように、多くの加盟国、現在では15カ国ですが、EU大での小売全面自由化実施期限であった2007年7月から8年が経過した今も、規制料金撤廃を決断できていないというのが現状であります。

決断できていないと、ややネガティブな書き方をしてしまいましたが、どうしてかというと、背景にはどうやら政治的な判断が各国ごとにあるようでございまして、自由化を実施した2007年の後に1次燃料価格、石油の価格等が上がったこともありまして、卸の電気料金が上がったので、勢い小売も上げざるを得ないとなったわけですが、そうすると各国で需要家からの反発があるということもあって、各国、政治的にそれをなかなか決断できない状況があるやに聞いております。

規制料金による競争への影響の悪循環と書いてございますけれども、競争がある程度発展・進展したら規制料金を撤廃しようということになっているのですけれども、マル1に書いていますが、自由化直後はまだ新規参入のシェアが低くて、既存の電力会社・ガス会社のシェアが高いということで、そうなると、マル2で、競争はまだ十分じゃないと判断されるということで、マル3で、規制料金はまだ維持しましょうということになる。時に、それは原価を割り込んだような価格でさえ、規制料金がセットされるとなると、結局、マル1に戻って、自由化後もまだ新規参入が発展していないということで、このサイクルからなかなか抜け出せていないのかなと思います。

これは、卵が先なのか、鳥が先なのかという話ですが、ヨーロッパの何カ国かを見ていると、こういう状況にあるなという気がいたします。

また、規制料金を撤廃した後にも需要家保護の措置が求められているというのもありまして、これについても少し触れたいと思っています。

6ページですけれども、欧州委員会等による規制料金撤廃圧力と書いていますけれども、欧州委員会というのはヨーロッパ、EUにおける行政機関とお考えください。

EU大では、小売規制料金の撤廃を求める動きが強うございます。例えば欧州委員会自身は、加盟国にその規制料金の早期の撤廃を求めていまして、EU法違反だと判断できたら、各加盟国を欧州の司法裁判所がございますけれども、こちらに提訴するぞということも言っていますし、エッティンガーEU委員、これは当時ですけれども、エネルギー担当のEU委員の方が、多くの加盟国が電気料金を政治的に利用している。規制料金の存続は誤りだというスピーチをしまして、早く規制料金を撤廃せよと言っています。ただ、加盟国としては、まだ競争が十分に発展しているとは言えないような状況で、一気に規制料金を撤廃することもなかなか決断できないので、この辺は痛しかゆしなのかなと思っています。

マル2に、ACER/CEERと書いていますが、これは欧州大の規制機関だったりするわけですけれども、こういったところは規制料金によって小売競争の進展が妨げられているとして、その撤廃を要求しています。

あと、EUの司法裁判所も、これはイタリアのガスの小売規制料金について法的な問題があったのですけれども、この中で、規制料金の存続は、EU法上、需要家保護に必要最低限度に限りなさいといった法律の観点からの判断も示しております。

ということで、以上、規制料金を存続することに対して批判が強くて、撤廃を求める動きが強いと申したのですが、一方で欧州の需要家団体などからは、規制料金をまだ存続してくださいと求める意見も強うございます。BEUCというのは欧州大の需要家団体ですけれども、規制料金の撤廃という方針自体は賛成だけれども、小売市場の競争がまだ十分でないので、十分に進展するまでは規制料金は需要家保護のために必要じゃないですかということを述べていて、ここはEUでもその議論が続いているというのが現在の状況でございます。

めくっていただきまして7ページです。規制料金存廃に関する仏・独・英の比較と書いてございます。これは、代表的と言うと、別にこれ以外の国が代表的でないと言う気はございませんが、フランス、ドイツ、イギリスが規制料金の存廃に対して、どういう態度をとっているのか、その課題はどういったものがあるのかと、ここに並べております。

まず、フランスは2007年7月1日に全面自由化を実施しましたけれども、現在、自由化後も既存の事業者、具体的にはEDFという会社ですけれども、こちらが規制料金プランをまだ持っていまして、新規参入者と規制料金プランが競争している状況にあります。

ドイツは△と書いていますが、基本的に規制料金それ自体は撤廃いたしましたけれども、デフォルト料金と呼ばれるものを採用しております。これは何かと申しますと、かなり狭い地域ごとですけれども、これはドイツ語の訳なので堅苦しい言葉になっておりますが、基本供給事業者というものを各配電地域ごとに指名いたしまして、需要家から求められた場合はデフォルト料金という料金プランでの供給を義務づけるとしています。ただ、デフォルト料金の高低、水準自体は非規制となっていまして、純粋な意味での規制料金ではございません。そういう意味で、先ほどの4ページの表では、ドイツは規制料金を撤廃した国に分類されていると思うのですが、デフォルト料金制というのは残ってございます。

イギリスは1998から99年あたりにかけて全面自由化を実施したわけですけれども、小売の規制料金は2002年に撤廃いたしました。そのかわり、全ての事業者に対しまして家庭用需要家からの申込応諾義務を課していまして、需要家が誰からも電気の供給を受けられないような状況にはならないようにしようという制度になっています。

フランス、ドイツ、イギリスは、ざっくりとこういうたてつけになっておるわけですけれども、規制料金を存続とか撤廃したときの課題は何かということで、以下、御紹介させていただきたいと思います。

8ページはフランスについて書いてございますが、ページをまたいで申し訳ないですけれども、8ページと9ページがセットになっております。

今、フランスの家庭用需要家は選択肢がざっくり言うと3つございます。まず、マル1ですけれども、既存事業者、EDF社の規制料金プランで、これを90%の需要家が現在選択しております。2つ目、既存事業者(EDF)は自由料金、規制のかかっていない料金プランも出しているのですけれども、これを選択している需要家はほとんどおりません。9ページのグラフで言うと見えないレベルでございます。最後がいわゆる新規参入者の自由料金、規制のかかっていない料金でありまして、これを選んでいる需要家が10%ぐらいと言われています。

ちなみにここには書いていないのですけれども、新規参入者の自由料金と書いていますが、ここで言う新規参入者というのは、主にガスの既存事業者が電気とガスを一括で売りますよと入ってきたガス会社だと言われております。

9ページのグラフをご覧いただければ、この新規参入者のシェアが徐々にふえてきてはいるものの、まだ10%程度にとどまっているというのが見てとれるかと思います。8年間で10%ということで、8ページの2ポツですが、現在も、多くの需要家がマル1の規制料金にとどまっているというのがフランスの特徴と言えます。その原因ですけれども、規制料金の水準が非常に低いということが指摘されておりまして、フランスのエネルギー規制委員会というのがあるのですけれども、EDFの家庭用電気料金の改定案は、原価割れになっているのではないか。つまり、EDF自身が赤字で供給しているのではないかということです。

そうなると、新規の事業者からすると、既存の事業者が赤字のような形で売っている以上、参入はなかなか難しいということになって、規制料金の存在が新規参入者の参入障壁となっているのではないかという評価があります。これが現在のフランスから見てとれることになります。

続いて10ページ、ドイツをご覧ください。

ドイツは、先ほど申しましたように規制料金自体は撤廃したのですが、デフォルト料金という誰でも供給を受けられる料金は存置しているのですけれども、現在、基本供給事業者がデフォルト料金に残っているのは34%になっています。これも次のページで申し訳ないですけれども、11ページに書いてございます。青で示しているのは、基本供給事業者とされるもののデフォルト料金で、2013年断面で見ると34%まで下がっているということになりました。

次、ページが前後して申し訳ないのですが、マル2の基本供給事業者の自由化料金(契約変更)と書いていますけれども、これはグラフで言うと赤のところ。これは何かといいますと、もともとの地域にあった事業者から供給を受けているのだけれども、デフォルト料金ではない自由な料金、非規制の料金に契約を切り替えた人の割合が45%ということになっています。

最後がその他事業者、ざっくり言うと新規参入者ですけれども、これの自由化料金で供給を受ける人が21%。グラフで見ていただくと、最初は少なかったのですけれども、最近徐々にふえてきているというのが見てとれるかなと思っています。

10ページの2ポツですけれども、需要家による、自由化料金への切り替えが、比較的進んでいると書いていますが、その理由はいろいろ考えられるわけです。ドイツの規制当局の出しているレポートからのグラフを張りつけていますけれども、マル1のデフォルト料金というのが、ほかの料金よりもやや高目に設定されていまして、この差をどう見るかという面はあると思いますけれども、少なくとも一番高い水準になっているので、ここからマル2とかマル3への切り替えが比較的進んでいると言えるのかなと考えてございます。

以上がドイツがどうなっているかという点で、次にイギリスは規制料金を撤廃しておりまして、全ての小売事業者が自由化料金で供給しております。最終保障サービスに相当するような規制料金も実は存在していません。

ただ、課題として、過去数年、家庭用の電気及びガス料金の相次ぐ値上げが家計への負担となっているような状況がございまして、特に低所得者層への影響が深刻だと言われております。この点については、後ほど後半で述べさせていただきます。

イギリスは規制料金は撤廃したわけですけれども、何もしていないかということはなくて、需要家を保護するために幾つかの公的な規制が入っていて、これも後で出てきますけれども、値上げに際しての事前の通知義務とか、低所得者層に対する特別の手当てといったものがイギリスでは準備されている状況にあります。

では、13ページ。イギリスは規制料金を撤廃したと申しましたけれども、どうしたかというと、2002年、規制料金撤廃に際して、規制当局は、以下を初めとする指標を見まして、こういった指標を総合的に判断して、規制料金を撤廃してもいいでしょうという決断を下しました。需要家側の指標とか、供給者変更に関する指標とか、市場シェアとか価格・非価格面でどういったオファーが出ているか。参入障壁はあるのか。かなり経済学的な分析だと思うのですが、こういった指標を総合的に勘案しまして、競争が働いていると言えるので、規制料金は撤廃していいのではないかという決断を2002年に下しております。

14ページですけれども、イギリスは規制料金を撤廃したら、何もしていないわけではなくて、値上げに対しての事前通知義務ということで、過去には料金値上げを実施しますという公表、プレスリリースの直後、具体的には1週間後とかにいきなり値上げしたという事例があったようですが、2011年3月から新たな規制が入りまして、値上げを実施する場合には、少なくとも30日前までには通知しなさいといったことを義務づけたりしています。実際、これ以降、イギリスの各事業者、大きな会社が6つありますけれども、おおむね40日はあけているようでございます。

あと、低所得者に対する特別な手当がありまして、2008年以降、料金高騰の影響を緩和するための対策が、政治的・社会的に要請されて実施された例がございます。ただ、これは実際やってみると、理論的な問題とか実務上の課題が出てきたということで、後ほど御紹介します。

英・仏・独からちょっと抜けていただきまして、15ページは、ヨーロッパで供給者変更率がどうかを紹介します。ここで言う供給者変更率というのは、過去1年間に家庭のどれだけが供給者、電力会社を変更したかを見ています。この数値をどう見るかはあるのですが、ポルトガルの2013年が特異に高いというのがありますけれども、高いところで10%程度で、低いところはほとんどないといった状況があります。一般的にこの数字を高いと見るか、低いと見るかですが、決して十分ではないといった評価がありまして、それを解消するためにヨーロッパではいろいろ議論されているということです。

16ページは、供給者選択行動に影響を与える要因と書いていますけれども、例えば規制料金の在り方が問題になりまして、先ほど申しましたけれども、3ポツ目ですけれども、フランスは規制料金というもの自体が非常に低廉でございますので、家庭用需要家からすると、わざわざ自由料金である新規参入者に切り替えるインセンティブが全くないということで、なかなか切り替えが進まないといった状況がございます。他方でドイツは、デフォルト料金が自由化料金よりも高くなっているので、まだ切り替えるインセンティブがあるということです。

あと、規制料金へ復帰できるかどうかというのもありまして、フランスは現在は認められていません。つまり、一度、既存事業者の規制料金から自由料金に出てしまうと復帰できないということで、なかなかリスクが高くて、それができないといったことも供給者選択行動に影響を与えているのではないかと思われます。

17ページ、ちょっと細かく書いていますけれども、あと、実質的な選択肢があるかどうかというのが家庭用需要家の行動に影響しています。客観的な供給者の数が多い、つまりいろいろな新規参入者がいっぱいいるということよりも、実質的に変更に足る選択肢があると需要家が認識しているかどうかが重要と書いています。向こうでの数字を見ると、大手4社のシェアが高い。つまり、ある程度信頼できそうだと需要家が思う会社。小さい会社だから信用がないと私は申しませんが、小さな会社がいっぱいあるよりは、ある程度大きな会社がたくさんいるほど変更率が高い傾向があるようでございまして、その点は需要家の認識に対して影響を与えるのかなと思います。

次、料金の節約可能性と書いてございますけれども、一定の節約余地。ここで節約余地というのは、供給者を切り替えた場合に、どれくらい電気料金が安くなるかですけれども、これがないとなかなか供給者変更していただけないということで、一般的には家庭用だと5から10%ぐらい、年間で削減できないと、なかなか変わっていただけないのではないかとヨーロッパ等では言われております。実際、料金メニュー間の料金差とスイッチングの率を並べてみると、これが有意に関係があるといったことがヨーロッパでは知られてございます。

ある程度節約余地があっても、なかなか供給者変更していただけないというのは何かと言いますと、逆に言うと手続面等でスイッチング・コストが存在することが強く示唆されておりまして、例えばイギリスなどでは、今はちょっと違いますけれども、昔は供給者、電力会社を切り替えようと思うと、1カ月は少なくともかかったと言われていまして、それではなかなか需要家は反応してくれないということで、その辺のスイッチング・コストを低減させることが大事だと強く認識されています。

最後ですけれども、需要家の自由化・競争への意識がまだ高くないということがあります。需要家自身が自由化や競争のメリットを認識していない場合、変更の意向もなかなか高くないということが言われています。節約する、切り替えれば安くなるという余地があっても、需要家がそれを知らないと、なかなかその競争は進展しないということが知られております。

日本の話になってしまいますけれども、日本でも昨年、経済産業省さんのほうで需要家のアンケート調査をされたようで、電気の小売自由化に関しての認知度がはかられておりまして、7割程度が何となくは電力の小売自由化について知っていると御回答されているようです。ただ、内容を詳しく知っているとか、内容を知っている方の割合はまだまだ低いようでございまして、日本でもこういった層の認知度を高めていくことが重要なのかなと思っています。

18ページですけれども、欧州における課題解決に向けた動きと書いております。

ヨーロッパで供給者変更がなかなか進まないことに対して、どういったことがされているかというと、1つですけれども、先ほど述べた規制料金を撤廃するということが挙げられています。ただ、これはEUレベルでは圧力とか唱道活動があるわけですけれども、各国の政府はなかなかこれを決断できていない状況にあります。

次に、スイッチング・コストの低減と書いていますけれども、これは供給者を変えたくても容易に変えられない状況があるときに、もうちょっと容易に変えられるようにしてあげようということで、例えば供給者や料金プランに関する情報提供の改善。例えば価格を比較するサイトに対して、認証する。日本でもいろいろな製品の価格の比較サイトがあると思いますけれども、それが本当に信用できるのか、いろいろ言われている点ですが、規制当局がそれに対してオーソライズするといった例もあったりします。

次に、イギリスの例で料金プランの数の制限と単純化を書いていますけれども、イギリスでは家庭用電気料金プランが、例えばネットの価格比較サイトで400ぐらいあった時期があったと言われていまして、400個も料金プランがあると、普通の家庭用需要家はとてもじゃないけれども、比較できない状況がありました。実際、私もイギリスの電気料金・ガス料金価格比較サイトで適当に郵便番号を打って入れてみたのですけれども、いっぱい出てきて、結局何がいいのかわからないということがありました。

なので、イギリスでは、各事業者が提供できるプランの数を、メーターの種別ごとですけれども、4つまでに絞りなさいというかなり大胆な規制を入れまして、事業者自体はこれにかなり強く反対していたようですが、とにかく数が多いと家庭用需要家は比べられないではないかということで、料金プランは4つまでにしなさいという単純化を図っています。

あと、全プランを基本料金と従量料金の二部料金制とすると書いていますけれども、昔、イギリスでは、途中で料金の単価が変化するような、例えば月に何kWhまでだったら何円で、そこを過ぎると何円になります。日本と違って逓減料金が多かったみたいですが、そういった制度をとっていたのですけれども、そうすると需要家ごと、またはプランごとの比較が難しいということで、そういったものはやめて基本料金と従量料金のわかりやすいメニューにしなさいという公的な規制が入っております。

ただ、こういったものが実際の競争促進につながるかというのは不明でございまして、この規制が入ったのはつい最近ですけれども、イギリスでこれがうまくいくのかというのは、成り行きは注目していきたいなと思ってございます。

以上がEUでの主に規制料金面から見た、家庭用小売全面自由化の現状という内容でしたが、19ページ以降では、ちょっと絞ってイギリスの家庭用需要家保護策の現状と課題というものを御紹介したいと思います。

イギリスと言いながら、いきなりEUの話になるのですけれども、EUのエネルギー貧困問題の拡大とありますけれども、自由化後、電力・ガス料金の支払いに困難を生じる需要家の存在が問題になりました。これをEUではエネルギー貧困(energy poverty)とかエネルギー貧困層(energy poor)の問題としてクローズアップされていまして、EUでは「エネルギー貧困は、共同体内で大きな問題となりつつある」といったことが言われております。

その下に掲げたような国が、「エネルギー貧困」にわざわざ公的な定義を掲げていろいろな対策を打っています。一番下、赤字で書いたイギリスも、平均的な冷暖房費の支払後の所得が、貧困線未満の世帯といった定義を置いて、こういったところに対策をしなければならないとしています。

21ページですけれども、エネルギー貧困層に対する援助等を目的として、EU加盟国のうち24カ国が電気料金に対する社会福祉料金と言っていますけれども、割引料金を置いています。

以下、イギリスを御紹介するわけですけれども、何で取り上げたかというと、イギリスではエネルギー貧困問題に取り組んできた長い歴史があって、特に自由化後、料金水準が高騰したということで、これは1次燃料価格が上がったのが一番大きな理由ですが、料金水準が上がったということで、政治的・社会的にも重要なイシューになったということがございます。

イギリスの燃料貧困問題と22ページに書いていますけれども、イギリスでは電力・ガス等の料金の支払いが困難な「燃料貧困」(fuel poverty)世帯の存在が深刻な問題になっております。この「燃料貧困」の定義は途中で変わったりしているのですけれども、現在の定義は、平均的な冷暖房費を支払った後の所得が貧困線未満の世帯とされております。

その数ですけれども、下の左のほうにグラフをつけていますが、イングランドだけで二百数十万件が、この定義だと燃料貧困に入るということで、それなりの数がこの問題に苦しんでおるということが言えるかと思います。

めくっていただいて23ページですけれども、ではなぜそういうことが起きるのかというと、3つ理由が言われていて、これは当たり前といえば当たり前ですけれども、まず単純にマル1世帯の所得水準の低さがあります。マル2ですけれども、省エネ性能の低い住宅とか家電を使っているということがあります。3番目、電力・ガス料金水準が上がったということがあって、こういった状態を解消するために、全面自由化後の社会福祉料金の導入を求める声が、イギリスでは2006~2007年ぐらいからあって、実際入ったということがあります。

以降3枚は、これの簡単な説明になっていますけれども、24ページ、絶対的な所得水準の低さが、燃料貧困の主要因とされておりますし、25ページに行っていただきまして、住宅の省エネ性能が低いと、燃料貧困の原因の一つになる。このほか、旧式の家電とかボイラーを使っていることも、これの原因になると言われていまして、イギリスの住宅は日本の住宅に比べて断熱もかなり悪いということで、暖房代が結構かかってしまう状況があるので、これもかなりきいているとされてございます。

3つ目ですけれども、電気・ガス料金の高騰というのがありまして、2004年ごろ以降、家庭用の最終需要家が支払う料金が上がっておりまして、2011年断面で電気・ガス合わせて大体1,260ポンドということで、結構これが家庭の負担になっているということが指摘されています。こういったものが合わさりまして、燃料貧困がイギリスでは社会的な問題になっているということであります。

めくっていただいて27ページですけれども、その燃料貧困の対策として、かなりいろいろなことをやって、例えば住宅向けの断熱の補助をしましょうとか、ライトバルブ(電球)の取りかえの補助を入れましょうといったものもやっていたのですけれども、その一環で料金の軽減制度が入りました。2008年から2011年ですけれども、社会福祉料金(Social Tariffs)というのが導入されました。このときは規制当局Ofgemがガイドラインをつくって、6大電力・ガス会社(Big 6 )に低所得者とか高齢者向けの特別な社会福祉料金の提供を要求した。これは、各社の料金メニューの中で最も低廉なものをちゃんと出しなさいと要求した。ただ、これは2011年までの3年間の時限的な措置ということで、2011年に終わっています。

これは下に書いていますが、規制当局が要求はしたのですけれども、あくまで事業者の自主的取り組みという位置づけでございました。事実上は義務づけに近かったのですけれども、政治的になかなかあらがえなかったということがあって、事業者のほうでこれを実施しました。

2011年から、それにかわって、このWarm Home Discountというのが実施されていまして、これは法律でやったのですけれども、電気料金の定額割引を6大電力・ガス会社に義務づけまして、対象は年金生活者の一部となっていますけれども、これに対して年間120から140ポンドを電気料金から割り引くという制度であります。

社会福祉料金のときに問題となっていたのが、実際にどういった家庭の需要家が補助を必要としているかわからないということがあったのですけれども、このWarm Home Discountという制度では、イギリスの年金を担当している労働年金省の年金データと事業者のデータを照合する作業をして、もしそれで確認がとれたら自動的に付与されるということで、需要家が一々申請しなくてもいい制度になっているということであります。

その他、事業者が自主的に判断する割引もあると聞いております。

この2008年からのSocial Tariffs 、社会福祉料金とか、2011年から今もやっているWarm Home Discountという制度があったわけですけれども、こういった料金軽減制度について、現地の文献とか実務担当者にインタビューすると、なかなか一筋縄にはいかないということがわかっております。

例えば、保護の対象の特定が困難。細かくは時間もあって読みませんが、事業者にとって、誰が燃料貧困層かを特定するのは、単純に需要の量だけではわからないし、かといって所得のデータを事業者は持っていないということがあって、その照合はなかなか難しいというのがあります。その点、Warm Home Discountというのは、年金のデータを自動的にとることになったわけですけれども、それはデータ保護上の問題もあって、なかなか難しいことがある。

あと、燃料貧困対策として非効率と書いていますけれども、例えば住宅の省エネ対策に補助すると、その効果は永続するわけですけれども、こういった料金を割り引く制度はあくまで一時的な効果しかなくて、その意味では非効率ではないかということが言われています。

3つ目、需要家の認知度の低さと書いていますけれども、これはSocial Tariffs、社会福祉料金と言われていたのですが、需要家が社会福祉料金の存在をそもそも知らないので、そんな補助があったのですかということになっていて、意味がなかったということもありました。

あと、これは大事ですけれども、費用負担。電力会社・ガス会社に割引を求めると、費用が需要家負担になって、結局燃料貧困を悪化させる可能性さえあるということが言われています。あと、費用を電気・ガス料金を通じて回収すると、政府の財源、税金で手当てする場合に比べて逆進性の問題が起こるのではないか。税金だと、低所得者層はそもそも払っていない可能性があるので、それよりは逆進性の問題が起きるのではないかという指摘もあります。ただ、イギリスもなかなか財政が厳しいようで、財政逼迫時には政府財源からの拠出はほとんど無理といったことが言われております。

あと、競争・自由化との関係と書いていますけれども、社会福祉料金の義務づけは自由化と相いれない制度だと向こうでも言っていて、私はそこは若干異論があるのですけれども、こういったことが言われています。次のポツですけれども、全面自由化自体の評価の問題にもなると思っていて、競争の利益が、本当に需要家に等しく行き渡ったのか疑問という問題が出てくるということは、自由化自体がうまくいっていないということで、一部の人だけが受益してはだめで、これは個人的な思いですけれども、特に貧しい人たちにこそ、自由化とか、そういう利益が行き渡ってほしいと思うのですが、それが行き渡っていないということなので、そこを改善する必要があるのではないかと、個人的には思いました。

時間もそろそろ限られておりますので、まとめのほうに入りたいと思います。29ページですけれども、これはあくまで規制料金の断面から見たものですけれども、EUの経験からは、規制料金の存在により、新規参入が阻害されて、競争が歪曲されるおそれが示唆される。これは、EU大での議論を見ていると、かなり一般的な理解になっているのではないかなと思います。

ただし、需要家保護への配慮は必要であって、慎重なバランスが求められるかなと思っています。規制料金があるからなかなか競争が進まないのだといっても、現状、ポテンシャルな新規参入者の数が十分ではない状況で、いきなり規制料金を撤廃するとなると、規制なき独占という言葉がありますけれども、そういったものに需要家がさらされるおそれがあって、そういった人たちへの配慮というのは必要ではないかなと思っております。

あと、すみません、これは日本の言葉が出てしまいました。経過措置と日本で言われている規制料金の終了後も、弱者保護というものがイシューになる可能性があるというのが日本についても言えるのではないかと思っています。例えば、現在の日本の電気料金の規制料金というのは、3段階料金制となっておりまして、一般的に言いますと月120kWhまでは比較的安い逓減料金、120から300ぐらいが第2段階の料金、それ以上がやや高い第3段階料金となっているのですけれども、第1段階の120kWh/月というのはナショナルミニマムと言われておりまして、生活に必要最低限なものということで、若干低目の料金になっているということであります。

ただ、電気料金の規制料金を撤廃したときに、今、ナショナルミニマムである第1段階の料金で暮らしている人たちの保護というのを一切考えなくていいのかというと、私は何かイシューになってもいいのかなと、これは個人的な思いですけれども、そのように考えております。ただ、最後に書いておりますけれども、経済学者の先生の論考などを読んでおりますと、公共料金を通じた福祉実現には課題も多いと言われておりまして、注意が必要。実際、イギリスでの社会福祉料金の議論の実例を見ていると、なかなかうまくいかなくて一筋縄ではいかないのかなと思っていまして、その辺のバランスも求められるのかなと考えているところであります。

以下は参考としておりますので、ここでは取り上げないでおきたいと思います。

ちょうど時間だと思いますので、以上にさせていただきます。

○古城座長 ありがとうございました。

御説明いただいた内容について、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。どうぞ。

○古賀委員 御丁寧な説明、ありがとうございました。

自由化によるメリットというものが、規制料金がずっと存置することとどう関係するかという点が、まだ少し理解できないのですけれども、日本における自由化後の経過措置を外すタイミングとの関係で、消費者庁や消費者委員会がどのような役割を担うべきかという点についてお聞きしたいと思います。その前提として、まず第1に、諸外国の例を拝見いたしますと、規制料金撤廃により電力政策がうまくいっているのかというと、どうもそうではなさそうだと感じましたので教えてください。

例えばフランスの例で御説明いただいたスライドの8と9では、フランスが原価割れをしながら規制料金にとどまって既存事業者の供給を受けているのは、既存の事業者が税制上や補助金等の優遇措置を受けているからなのでしょうか。それから、フランスの場合は原発による電気をEU各国に売っていたりしますけれども、輸出による収益で補填しているのでそういうことができていて、それがEU全体の中で非常に不公正だと考えられているのでしょうかというのが第1点の質問です。

それから、2つ目として、自由化によって競争がうまく機能しないうちに撤廃できないというのは、小売の自由化の問題が議論され始める前から、私たちも消費者団体として、自由化の競争の市場が十分にできるまで経過措置を残して、その移行時期については、例えば「消費者参加が可能な形で経産省とも協議するような場を持ってほしい」という要請等を出していたのですけれども、他国ではそのような判断を行っている機関は実際にあるのでしょうか。

それから、3つ目として、競争の促進のためにEU指令のようなものがなく、かつ、いただいた資料の中にあった、米国のペンシルバニアなどのように価格凍結制度などをとらないとすると、日本で競争を促進するためにはどのような政策が実際に必要だとお考えでしょうか。例えばスライド18について、もう少し御説明いただけるとありがたく思います。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ありがとうございます。

1点目のフランスの規制料金プランについてですけれども、フランスの規制料金は既存事業者のEDFですので、原子力をベースに組んでいることは事実であります。ただ、そこで言っている原価割れというのは、恐らく補助金とか税制上の優遇措置をとっても原価割れになっているのではないかというのが、今のフランスの一部政府機関の見解でございまして、十分に回収できない水準にあるということが言われています。ただ、それとは全く別の話として、別の枠組みで補助金とか税制上の優遇措置があるから安いのではないかという議論があるのは認識しております。ただ、ここではそれとはちょっと別の文脈の話かなと思います。

2つ目の御質問、全て記録できなかったのですけれども、EU加盟国では、規制料金を撤廃するときにどういったプロセスでやったのかということだと思うのですが、イギリスの例を見てみますと、例えば需要家団体が公的にそこに意見表明するといったことが制度的に担保されていたかというと、そこまでではなかったのかなと思っています。もちろんプロセスの中でいろいろなステークホルダーが意見を出すということはありまして、例えば経済学者もそうですし、逆に事業者もそうです。その中で、イギリスでは2002年当時は別の名前だったと思いますけれども、今で言うコンシューマー・フォーカスみたいな団体が恐らく意見書を出していたのではないかと認識しております。

他国に関しては、私はそこまで詳しくないので、もうちょっと勉強させていただきたいと思っています。

3つ目ですけれども、18ページ。すみません、もう一度御質問の要点をお願いできますでしょうか。

○古賀委員 EUの場合は、競争促進のためのEU指令がかなり大きな力を持っていても、各国においては、なおかつ規制料金にとどまっているというご説明があったと思うのですが、日本の場合に基本的に競争を促進するためには、どういった政策が必要であるとお考えになられますか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 日本で競争を促進する施策、いろいろなやり方があると思うのですけれども、卸電力市場の活性化とか、いろいろ大きな話はあると思いますけれども、需要家周りで言いますと、例えばスイッチング。私が今の電力会社に満足していないので、こっちに行きたいというときに、そこに必要以上にというのは主観が入ってしまいますけれども、必要以上に時間がかかってしまう制度とか、実際のプラクティス、慣行があると、これは全然できませんので、そういったものを変えたいと思えば、バリアなく変更できるようなことを実質的に担保することが第1に必要かと思います。

第2に、ちょっとイギリスの話に関連しますけれども、需要家が事業者間の料金プランとかをちゃんと比較できるようなプラットフォームがないとなかなか難しい。かつ、そのプラットフォームが実際、信頼に足るようなものがないと供給者変更というのはなかなかできないのかなと思います。もちろん、そういったプラットフォームをつくること自体、運営にもお金がかかりますので、その辺のバランスは必要だと思いますけれども、逆にそういうものがないと競争というのはなかなか進んでいかないのかなと思っています。もちろん、それだけではないのですが、今、ぱっと私の口から述べられるのはその程度になります。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 フランスの規制料金の8ページ、9ページですけれども、これを見ますと原価割れであるということですが、原価割れであるのに、この規制料金を見直さないで放置していること自体、フランスの国自体が新規参入というか、競争を促進しようという意図が余りないのかなという印象です。それに対して、10ページのドイツというのは、デフォルト料金は、供給者の切り替えとかに全く関心のないお客さんとか、ラスト・リゾート的なものがデフォルト料金なので、なるべく自由料金のほうに移ってもらうという政策の下に料金を高めに設定している。そういう意味では、競争促進の意図がわかると思うのですけれども、その点をどういうふうに見ればよろしいのでしょうか。

もう一点は、フランスで規制料金で、これは原価割れということでした。しかし、新規参入者が10%のシェアをとっているのは、料金は高いけれども、グリーン料金とか、何か特別な料金を選択している人がいるのだろうと思います。また、需要家が自由料金を選択してしまうと、今のフランスでは後で規制料金に戻れない。相当の覚悟を持って自由料金を選択していると思うのですけれども、その自由料金を選択する大きな動機というのは何なのでしょうか。

その2点です。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 まず、2つ目のほうからですけれども、この10%の人たちがどういった人たちで、どういったモーティブで動いていくのか、なかなかデータがなくて、私どもも把握できていないのが現状です。ただ、先生が今おっしゃいましたように、フランスにもグリーンのようなメニューを出している事業者がありまして、そういうところにある程度移っているのかなとは考えております。ただ、そういった事業者が何%ぐらいのシェアをとっているかというのは、まだわかっていない状況でございます。大変申し訳ないです。

ただ、この10%のうち、これも正確には教えてくれないのですけれども、恐らく半数よりは多いぐらい。フランスにはEDFのほかにGDFというガスの大きな会社がありますが、そのGDFが電力に参入してきて、ガスと電気、セットで売りますよという形で営業をかけて、GDFに半分ぐらい移っているのではないかと言われていまして、これもちょっと正確な数字がわからないのですが、そういう人たちが一番大きなスイッチャーなのかなと考えています。

逆に言うと、ここに載せていませんが、ガス市場も自由化していまして、ガスの新規参入の割合も10%よりはかなり大きい割合でふえているのですが、それのかなり大きな分は、EDF社が電気とガスをセットで買いませんかという感じで入っていると言われていまして、その意味では、ここでの参入はピュアな新規参入というよりは、電気・ガスの相互参入みたいな形になっているのかなと認識しております。ただ、それ以上の詳しいデータが手に入っていませんで、今後調べていきたいと考えています。それが第2点目に対するお答えになります。

第1点目ですけれども、基本的にフランスとドイツの競争に対する考え方を御説明いただいたと思いますが、私もそのとおりだと思っていまして、フランスというのは、これは個人的な考えですけれども、決してやりたくて自由化をやったわけじゃないというのが、多分彼らの頭の中にあって、EUに言われて仕方なくやっているという側面をどうしても引きずっているところがある。なので、そういうやや低目の料金でまだ続けているのかなと。これは、あくまで推測ですけれども、そういうところが見えているところであります。すみません、ここからどういったことが言えるのかという御質問だったと思いますが、私、そこまではまだ答えがない状況です。

○井手座長代理 今の質問に関してですけれども、原価割れであると規制委員会が判断していて、その規制料金を見直せという命令とかはないのでしょうか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 それは、電気料金自体はなっていなかったと思いますが、ガスで似たようなことになって、たしか裁判になっていた。事業者の側が、これだと原価割れなのでやっていけませんということで、ガス会社が訴訟しているという例はあります。

ただ、フランスのエネルギー規制委員会と書いていますけれども、規制料金は最終の認可権限はなくて、あくまでオピニオンを出すしかできなくて、最終決定は当時はエネルギー担当大臣がやっていて、政府の決定だった。その政府の決定に対して、このエネルギー規制委員会が政府案だと原価割れですねという意見を出していたので、彼らは決定権限はなかった。ちょっと誤解を与えるような書き方でしたが、それがフランスの制度のたてつけになっています。

○古城座長 松村委員、どうぞ。

○松村委員 まず、古賀委員が質問されたのは、自由化されて、まだ数カ月というならともかくとして、これだけ時間がたっているのに、もし本当に規制料金が原価割れだったとすれば事業者はやっていけないのではないか。もしそれが真実だとすれば、どうやって継続的に事業を維持しているのか、ということを聞きたかったのだと思います。補助金まで含めても赤字だと言うことでしたから。もし、それについて御存じのことがあれば、教えて下さい。

2点目。御意見に対して若干奇異に思っているのですが、日本の3段階料金の第1段階の料金が、弱者保護のために必要ではないかという個人的な見解を述べられたと思うのですが、その説明はスライド23の説明と、私の頭の中ではうまく一致しない。3段階料金は日本の話で、こっちは海外の話ですけれども、日本でも、例えば貧しい人にとっては、省エネ改修は難しい。貧しい人は、省エネ対応の家電に買い換えるのが相対的に難しいということは、あっても不思議ではないですよね。そういう人たちは、相対的に電気の使用量が増えてしまいますね。

3段階料金の1段階目でおさまっている人たちはどういう人かというと、典型的には家族の人数が少ない、例えば単身赴任している人というたぐい。もちろん、貧しい方でひとり暮らしで年金生活という人も一定の割合は入っているとは思いますが、弱者をうまく捉えているとは私には到底思えない。もし第1段階の料金を低くすることが、こういう弱者保護という観点で重要だということであれば、弱者の割合が他の料金に比べて著しく高いというデータをもしお持ちであれば、教えていただければ多くの人の参考になると思います。

3点目は、諸外国では日本の燃料費調整制度のようなものはないでしょうかという質問です。先ほどの御説明だと、卸料金が高騰したということがあり、相対的に規制料金が安くなった。卸料金が高くなるというストーリーは、競争が働かなくて吊り上げたということがあるかもしれないけれども、言及されたのは化石燃料などの値段が上がって、卸料金が高騰しているということだった。この説明が正しいとすると、日本の場合には燃料費調整制度がありますから、石油価格とか天然ガス価格が上がった、あるいは円安になったという影響は、規制料金であったとしても、あるいはこれから残る経過措置料金についても一定期間を経ると上がる。

そうすると、ヨーロッパではそういう問題があるかもしれないけれども、日本でそういう問題は相対的に起きにくいと考えてもよいのか。それではちょっと短絡的なのか。フランスだと原子力の比率があれだけ高いですから、余り関係ないかもしれないですが、フランスだけじゃなくて、他の国にも規制料金が残っているわけですね。他の国についてはどんな感じなのでしょうか。

最後に、これは質問ではなくコメントです。井手先生も御指摘になったとおり、フランスの制度は異様な制度で、規制料金から一旦抜け出したら、もう一回規制料金には戻れないのですね。これは人為的にスイッチング・コストを高くしているのです。しかもスイッチング・コストを筋が悪いやり方で高くしている。既存事業者から出るスイッチング・コストは高くしているけれども、その後のスイッチング・コストには影響していないという意味で、およそ最悪の制度をつくっている。そんな制度をまともな人がつくるはずがないので、これは意図的に、競争は迷惑であるということを表明したということだろうと思うのです。

日本はさすがに、誰が、どう設計をしたって、そんな愚かな制度をつくるはずがないので、その点は、フランスで問題が起こっているから日本で起こるというたぐいのことはないかと思います。

以上です。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ありがとうございます。全部、私の範囲で答えられるかということですけれどもね。

燃料費調整条項ですけれども、これも興味を持って調べたいと思っているのですが、英語文献、ドイツ語文献ぐらいしか私、読めないというところがあって、特に東欧諸国は全然わからないのですけれども、一部の国、例えばイタリアでは、規制料金に燃調が入っているのがはっきりわかっておりますし、フランスでも、ある程度の調整はできていると聞いています。ただ、フランスは電源構成がちょっと特殊かもしれませんが、それで各国、全て回収できているかというと、そうでもないようなことがあって、この辺は私どもの調査能力の限界もあって、この程度しかお答えできません。申し訳ないです。

あと、最初のフランスですけれども、こんな赤字のものがずっと続くはずがないというのは、私もそう思っていて、こんな制度は本来的に、純粋に民有民営の会社であれば成り立たない。恐らく政府がちゃんと株式を持って、恐らくフランス人も実質国営だと認識していると思いますし、そういった会社でないと続かない制度なのかなとは思っております。

すみません、全部にお答えできていませんが、最後のフランスが自由料金から1回抜けたら戻れないということは、ヨーロッパの各国の制度を見ていても国によって結構違っていて、松村先生、おっしゃるように、これがないと非常に安心して切り替えができないというのがあります。フランスでも、最初は戻れる制度だったのが戻れない制度になって、結構ぶれているのですけれども、制度が頻繁に変更されるということは、需要家の選択行動にここがかなりきいているのかなと考えています。もちろん、日本ではそういう制度にならないと思うのですけれども、ヨーロッパではこういうところが問題だと意識されているのは事実であります。

あとの質問、私もメモを全部できなかったのですけれども、まだ必要があれば、もう一度お伺いいたします。

○古城座長 古賀委員。

○古賀委員 ありがとうございます。

消費者が自由化に期待することというのは、スイッチングの自由も含めて、いろいろ選択できるプランができることだと思うのですけれども、残された課題として弱者保護という観点から、今、松村先生がおっしゃったのと逆に、まとめの中で、3段階料金的なものを残すことについて、私たち消費者団体としては、第1段階料金というのが非常にナショナルミニマム的な側面を持っていて、少量使用の消費者にとってメリットがあると考えていますので、この3段階料金を残すべきではないかと考えています。少なくとも料金の中にそういう制度を残していく必要性を感じていて、これはこの後も議論があると思うのですけれども、その点についてお答えがなかったようですのでお願いします。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 すみません、その点でした。

3段階料金は、これは個人的な考えですけれども、私は松村先生、おっしゃったように、純粋に弱者保護対策として見るのだったら、かなり効率が悪いと思っています。需要家が省エネを頑張ったがゆえに120kWh/月未満になっている人はかなりいるはずで、そういった人に対して、頑張ったのだから助けてあげるということはあるかもしれませんが、弱者保護として見ると、本来的に弱者でない人たちも助けてしまうと大変問題がある。

イギリスの社会福祉料金の割引制度に関する議論を見ていると、結局、本当に助けを必要としている需要家と、社会福祉料金の対象になっている需要家が一致しているかというと、結構ばらばら。それは両方の意味があって、まず、過小包摂、つまり本当に必要としている人に行き渡っていない。対象がそれより少なくなるリスク、これは補助から漏れてしまう人が出てくるので、問題なのですけれども、この過小包摂のリスクと、もう一つ、過大包摂と言って、本当は補助が必要ない人たちに対しても、その補助が行き渡ってしまう。これはこれで意味のない補助になってしまう、社会的に無駄なものだということがあって、これを一致させることが非常に難しい。

こういうことを言う人たちは、だから料金軽減で社会福祉をやることはだめだと言うのですけれども、その結論をとるかは置いておいて、私は日本の3段階料金の第1段階に社会福祉料金的な意味を持たせるというのは、昭和49年だったか、議論が始まったと思うのですけれども、その当時はそう言われていたかもしれないけれども、費用対効果を見るとちょっと悪いのかな。そうすると、3段階以外で何かうまい方策があれば、それを考えるほうがいいかなと思っています。すみません、先ほど回答を忘れましたので、古賀委員に対する答えとあわせて述べさせていただきました。

○古城座長 陶山さん。

○陶山委員 一般的に消費者としては、自由化されれば料金は安くなるだろうと期待しています。だけれども、ヨーロッパの実例を見た場合に、なかなかそうなっていませんよと。その中の一つの理由として、非常に複雑な料金プランがありますということの御説明をいただいたのですが、既に日本においてもセット料金という形で聞こえてきていまして、本当に自由化の競争原理がそこに働いていくのだろうかということが非常に見えにくいと思います。

そこで、今日の御説明の中では、料金を比較するサイトを公的な機関がオーソライズしていくような措置が必要ではないかという御意見をお聞きしたわけですけれども、もう少し具体的にプランをお持ちでしたら、教えていただきたいということと。

それから、もう一つ、今日は御説明の中に特に集中して情報提供の中には入っていませんでしたが、日本の消費者が期待しているところでは、3.11以降、自由化されると電源構成を選択できる、電源を選びたいという消費者の意向が非常にあるわけですけれども、それについて、ヨーロッパにおける再生可能エネルギーの伸張と、自由化の中で、制度としてどう関連づけられていったかということを少し御紹介いただけたらと思います。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 どうもありがとうございます。

最初のセット割というものは、あくまで報道ベースですけれども、日本でも入ってくると思いますし、いろいろな新規参入者さんが当初は入ってこられると思っています。そういったときに、料金の比較サイトというのは私はいっぱい出てくると思うのですが、国のかかわり方というのは何段階かあると思っていて、ダイレクトなものは、例えば規制機関自体が料金比較サイトを運営するやり方もあるとは思います。一部のアメリカの州では、それに近いものをやっているところがあると思いますが、さすがに日本でそこまでやるのかというと、電気・エネルギーを離れて政府と市場のかかわり方が国によって大分違うと思うので、必ずしもそんな直接的なことをしなくてもいいだろう。

日本の市場が健全だからと言うつもりはありませんが、特にヨーロッパだと最近まで社会主義だった国もありますから、そういった国での国のかかわり方と、日本のような国での国と市場としてのかかわり方は全く違っている。そういう意味では、ダイレクトに国が運営することはちょっとないのかなと思っているのですが、例えば業界団体の側で統一のプラットフォームをつくるときに、国がそれを何らかの形で、公的じゃなくてインフォーマルな形でアドバイスするといった形もあると思います。それは、私は確定的な応えは持ち合わせていないのですけれども、海外でこうなっているから、それをそのままぽんととってくるというのは、ちょっと違うのかなと思っています。

だからといって、野放図にしていいとは思っていませんで、例えば本当に客観的なアンケートを装っているけれども、実は一部の事業者がお金を出してつくっているようなサイト。日本でも一部の公益事業でも過去あったように思うのですけれども、そういったものに対して、政府ないしは消費者官庁が何もしなくていいかというと、それもちょっと違うのかなと思っていまして、その点はできれば消費者庁さんとか公取委のほうで議論していただければと思っています。

次、電源構成に対する国民のかかわり方ということで、ちょっと私の能力を超える話ですけれども、ヨーロッパにおいては、自由化が行われたのが2000年代半ばとか後半ですけれども、それに大体同じくして地球温暖化対策ということで再生エネルギーが導入された時期であります。地球温暖化対策のコストもかかっていて、御案内のとおり、例えばドイツなどではそれが結構大きいのではないかと、日本での報道等もあります。それは、もちろんドイツ国民自身が選んだことですので、我々がとやかく言うことではないと思いますが。

ただ、再エネのコストが例えば弱者に与える影響を議論している人たちもいて、例えばイギリスでは、なかなかおもしろいなと思ったのは、この弱者対策を叫ぶ人というのは、どちらかといえば再生可能エネルギーの補助に批判的な人が多くて、なぜですかというと、そのコストを弱者にも寄せるのはいかがなものか。逆に言えば、そういったコストは税金でつけてくださいということを言っていて、電気料金でつけられるとたまらないということをおっしゃったりしている。

日本では、再生可能エネルギーの賦課金というのはkWhで乗せて回収することになっていますけれども、再生可能エネルギーの賦課金の分配上の影響というのも、どこかの段階で実は議論しないといけなくなるのかなとは思っているところであります。ただ、具体的なこうすればいいとか、方向性というのは、まだ私も答えはありません。申し訳ないです。

○古城座長 山内委員、どうぞ。

○山内委員 さっきの電気料金の比較サイトというのは、エネチェンジというのが既にできていて、皆さん、スマホで調べると簡単に比較できるようになっています。電気通信のときにも同じことが言われて、経産省はそういう場合、情報がないので、情報を提供する役割の人が出てくる。少なくとも電気通信のときは、そんなに成功しなかった。複雑過ぎるということもあるのかもわからない。電気と電気通信を比べると、電気のほうが消費量の把握がしやすいかもしれない。ただ、時間的な問題があるので、それをどう入れるかという難しさもあるので何とも言えないけれども、少なくとも電気通信の場合には余り成功しなかったというか、普及しなかったので、これから電気でどうなるのかなというのが個人的な意見です。

質問というか、御意見を伺いたいのですけれども、日本の今の制度だと経過措置を入れるのだけれども、経過措置を入れるインカンバントの事業者も、経過措置以外の料金も設定できることになっていますね。それで、フランスの場合はたしかできないはずです。できましたか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 すみません、私の説明がまずうございました。フランスは、8ページ、制度上はできて、出しているのですけれども、選んでいる人がほとんどいない。

○山内委員 フランスは置いておいて、例えば日本で経過措置をやって、3段階も残したとして、ただ3段階目の料金の人たちは、ある意味事業者にとっては物すごくおいしいお客なので、クリームスキミングがそこに来るという形がありますね。

そうすると、それがかなり進んでいくと、原価費用的に言うと、今の3段階みたいな形とは必ずしも限らないので、1段階を本当に維持できるのかという議論が出てきますね。そうすると、今の経過措置だと、3段階目を逆に取られるのだったら、通常の3段階料金とは違う料金メニューを既存事業者が設定することが出てくるかなと思っていて。そうすると、さっき御指摘のように、何人かの方が言われたように、1段階目はどうなのだという話になると思います。諸外国の自由化の例を見るときに、料金体系がどうなっているかというのがすごく重要だと思っていて、その辺の情報がもう少しあると我々も参考になるのかなと思います。

それから、もう一つ、今、ちょっと出たのですけれども、組み合わせの料金メニューがいろいろ出てきていて、電気通信と、特にモバイル系と電気料金を組み合わせるとか、あるいはポイントを含むというやつ。この間、どこかの雑誌に東京電力の組み合わせがたくさん。それで、私の記憶では、たしかドイツはデュアルフュエルでやるときも、電気料金とガス料金を必ず明示しなきゃいけないというルールになっていると思うのです。これはヒアリングなので、制度は確認していないのだけれども、たしかそうなっているはずで。なぜかというと、何人かの方がおっしゃったかもしれないけれども、電気料金とガス料金が幾らだったか明示できなくなってしまうというのが一つの理由です。

私もいろいろなところで話すときによく言うのですけれども、専門家の方がいらっしゃるのでちょっと確認したいのですけれども、自動車の中古車の値段を表示するのは、たしか総額表示は禁止されている。総額表示というのは、本体と整備と税金が幾らというものを全部合わせて幾らというのを出してもいいのだけれども、その内訳をちゃんと出さなきゃいけない。景表法だったか、記憶しているのです。電気料金で通信料金と電気料金を組み合わせで幾らですというときも、恐らくそういうことがあるのかなと思うのです。

今、auのスマートバリューというのは、確実にモバイルの料金を割り引いている。それは明記されているわけです。ドコモ光とかSB光という新しいカップリングの料金を出しましたけれども、あれも光は卸を受けて売っているので、割り引いているのはモバイルのほうですね。そうすると、この電気とモバイルというのは外国では余りない例だけれども、イギリスに1つぐらいあるという情報はあるけれども、外国では余りやっていないけれども、そういうことはどういうふうに考えられるかなと御意見を伺いたい。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 どうもありがとうございます。なかなか大きな話だと思うのですけれども、断片的な情報の御紹介になってしまって申し訳ございません。

山内先生からありましたように、海外を見ていると、通信と電気のセット販売というのはそんなにメジャーではないと認識しています。

○山内委員 1つだけしかない。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 あるにはあると思いますが、決して多くはないと思います。ただ、諸外国を見ているとデュアルフュエルは多くて、例えばイギリスなどの料金メニューを見ていると、基本的にデュアルフュエルが、ばんと全面に出てきていて、手元にデータがないのですけれども、消費者のかなりの割合がデュアルフュエルに変わっていると聞いています。一部には、電気はこっちから、ガスはこっちからという需要家がいるようですけれども、かなり少ない。

例えばイギリスの6大電力会社が料金を値上げしますとか、最近は値下げ局面があって値下げしますと発表するときも、電気で幾ら、ガスで幾らではなくて、デュアルフュエルで何%上がりますというセット料金で販売しているので、実質的に需要家の認識はそうなのかな。ただ、もちろん電気とガスの検針は別にやりますので、電気代幾ら、ガス代幾らという表示はされるわけですけれども、実質的には一緒になっていると思っています。

ただ、さらにややこしいのは、イギリスはおもしろい制度になっていて、デュアルフュエルが幾ら割引とあるのですけれども、そのデュアルフュエル割引というのは、事業者内では同じ額にしなさいとなっていて、このメニューだとデュアルフュエル割引幾ら、このプランだとできないようになっていて、割引のやり方も事業者から需要家にわかりやすい形で提供しなさい。つまり、日本の通信の一部では、割引の制度がこれにはつくけれども、これにはつかない。結局、どうなのかがわかりにくい。私は少なくともわからない人なのですけれどもね。

そういうことがないように、このメニューはこの割引がつくけれども、このメニューにはつかないということがないように、割引も選択、できるかできないかというのを丸、ペケをつければ、すぐに計算できるようにしなさいという指導をしている。そこまでの介入を日本がしないといけないのか、若干疑問がありますけれども、とりあえずわかりやすくしたほうがいいというのは、どこの国も一緒なのかなと思っています。

あと、すみません、ほかの国が総額表示かというあたりは、全く存じていません。

○古城座長 矢野委員、どうぞ。

○矢野委員 御説明、どうもありがとうございました。

お話を伺っていて、そもそも自由化の目的が何だったのかというのは、EU自体と日本の場合とある程度共通性はあると思うのですけれども、改めて基本に戻るというところで、EUの場合は自由化の目的が何であったのか。そして、その目的をかなえるためにどういう手だてを講じればよかったのかというところを少しかいつまんでお話いただければお願いしたいと思います。

スライド16から18にかけて、供給者の選択行動が余りうまくいっていないということで、その一つの要因としては、情報が十分行き渡っていないところがありますし、それから需要家がメリットを認識していないということも書かれています。とすれば、我が国において、今後の課題とするには、そういった情報の問題、それから、よりメリットを感じるための手だてで、もし何かサゼスチョンいただくことがあればお願いしたいと思います。

3点目になりますけれども、30ページ目の需要家保護のところで参考の資料が出ておりますが、需要家保護をどういう視点から考えるかという場合に、1つには、この消費者委員会に置かれている公共料金等専門調査会においては、消費者の権利という視点から需要家保護の幾つかの面を見ていかなければいけないのではないかと思いますが、ここで述べられているのは、違う側面から需要家保護の幾つかの保護策が出ているので、ここはちょっと補足で御説明いただきたいなと思っております。

以上です。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ありがとうございます。またかなり大きな質問を頂戴して、困惑しているのですが。

1点目ですけれども、EUと日本の自由化の違いということですけれども、かなり共通する部分は多いと思います。1点、EUの電力が目指す自由化の、日本にない特徴を挙げるとすると、EUはクロアチアが入って28カ国に分かれている。ただ、EUのそもそもの1950年代からの目的は、ヨーロッパ大での市場を統合するというのが一つの目的だったので、電力・ガス市場が国ごと、ともすれば地域ごとに分かれていたものを徐々に、まずは国、それから地域、そしてEU大に統合していくのだ。域内市場の統一という言い方を彼らはしますけれども、これとリンクしているところがある。

例えば小売の話とはちょっと違いますけれども、送電線をつないでEU大で電力の取引ができるようにしましょうといった動きもかなり力を置いていて、もちろん日本にもそういう側面はあるわけですけれども、どちらかというとEUは域内市場を1つにしましょうという側面が結構きいているのかなと思っています。そういうことがいろいろな個別の政策に影響が出てくると思うのですけれども、その点が1つの違いかなと思っています。

2つ目ですけれども、需要家の認識が大事と私は思っていて、イギリスはそんなことはないですけれども、ほかの国にもそもそも自由化したことを知らない人がまだまだいる。メリットを感じるも何も、そもそも自由化の事実自体を知らない人が結構いるようでして、まずはそういうところからクリアしないといけないと思います。実際、その制度があったときに、具体的にどういう手続をとればいいかがわからない人たちもいるので、そういった点が問題になっている。

日本では、恐らく新規参入者さんが最初、来年4月に向けて、かなり広告を打たれると私、個人的には思っていますし、あとはテレビCMで認知度が高まると思っていますし、恐らく経産省さん、エネ庁さんのほうでもかなり広報されると思いますし、既存事業者さんのほうからも広報されると思います。そういう意味で、自由化したのだという認識自体も結構高くなるのかなと思っているのですが、先ほどに戻りますけれども、昨年の小売自由化に関する国民意識調査の結果概要が経産省の審議会に出ているわけですが、聞いたことがあるが、内容は知らないとか、聞いたことがあり、内容は何となく知っている人というがほとんどでして、内容を知っているとか、内容を詳しく知っていると答える人は全体で言うと10%未満にすぎない。

もちろん、全く知らないという人もまだいるわけで、それを減らすことも重要ですけれども、この何となく知っているというところから、よく知っているところをいかにふやすのかということが一番肝になる。そういう意味では、具体的にどうすればいいかというのはなかなか難しいわけですけれども、丁寧に説明していくしかないのかなということと。まずは、1回誰かにやってもらって、その人たちのクチコミとかに期待するのもあり。クチコミは結構ばかにできないと思っているのですけれども、そういうものに期待するのがまず1つかなと思っています。国とか事業者がそれ以上、どうかかわるのかというのは、私からは今のところ具体的なアイデアはないです。

最後のスライドの30ページですけれども、これは公共サービス義務とユニバーサルサービス義務がEU法上、定められていて、例えば公共サービス義務は、加盟国は、供給セキュリティ確保等に関する各種の措置を、事業者に課すことができる。ユニバーサルサービスは、妥当な価格で電気の供給を受ける家庭用需要家の権利を保障しなくてはならないという抽象的なことが書いてあるのですが、これ自体が何を意味するかというのは、2003年の段階から、これだけじゃ何もわからないと言われていて、逆にこの2つの違いは何なのか、はっきりしないと言われていて、これ自体に固定的な意味があるわけではないです。

ただ、各加盟国は、こういうことがあるから、自由化したからといって何もしてはいけないわけではなくて、例えば最低限の弱者保護をしましょうとか、供給者が破綻したときに、退出したときに、破綻していたところから今まで供給を受けていた需要家をどう保護するのかという各国の指示ができるという、法律上の根拠のようなもので、ここに特に大きな意味はないと考えています。

消費者委員会様のほうでは、選択の権利の観点を重視されているということでしたけれども、私はその点はとても大事だと思っていまして、仮に電気料金が自由化の結果、下がるか上がるか、全くわからないわけですけれども、仮に上がったとしても、例えば需要家が主体的に供給者を選ぶということ自体は、これは権利として十分立派なものだと私は思いますので、逆にそれが阻害されるような事業慣行があれば、これは改善を求めていく必要があると思っています。具体的に何があるか、これもちょっと申し上げにくいですが、その点は全く同意いたします。

○古城座長 陶山委員。

○陶山委員 すみません、もう一度料金プランとかセット料金の問題に関連して御質問させていただきますけれども、検針をしているので、利用と料金の関係は見えそうだというお話がありましたので、お伺いしたいのです。そもそも自由化した中で、経済的に効率化されて、電気料金自体としては、第1エネルギーの高騰とかはちょっと置いておいて、その影響を外したところで、ここは効率化されて安くなるほうに動いていったのかどうかということ。

それから、もう一つは、需要家自身が自由化や競争のメリットを認識していないと書かれているのですが、これはそもそも需要家にとっての利益がどの程度、自由化でできていったのだろうか。あるいは、消費者として日本の消費者基本法の立場から言えば、この利益の増進をしていける見通しといいますか、どの辺を押さえていけばいいのだろうか、単純には御説明いただけないのかもしれませんが、佐藤さんのところでお考えのことがあれば教えていただきたいと思います。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ありがとうございます。大変難しい質問をいただいたと思っています。

主にヨーロッパを見ているもので、アメリカと北米は余り詳しくないのですが、ヨーロッパで自由化した英・独・仏を見ていると、1次エネルギーの高騰は除いてというお話でしたけれども、一般論として、例えば競争によって効率化された場合に、その効率化の便益をどこにつけるかというと、複数あって、第1は需要家に還元するということがあります。ただ、必ずしもそのパスに行くとは限らなくて、内部留保して将来の投資に回すというのもありますし、株主に還元するというものもあります。それは、ひとえに各企業の戦略によりますし、また競争の状況にもよります。競争というのは、小売市場の競争状況によりますし、株主に対して配当するときにもある種の競争があるわけですけれども、この状況に依存するので一概に言えません。

英・独・仏を見ても、個社を分析した例があるのですけれども、本当に会社による、また国によるとしか申し上げられない状況であります。ただ、1つ言えるのは、消費者に必ず行き渡るとは限りませんで、その点、いかに各事業者間の競争をちゃんと担保するかというのが、より重要になってくるのかなと思っております。それ以上は答えにくいところもあるのですが、日本ではそのあたりは恐らく経産省さんのほうでいろいろ議論されるのかなと思っているところです。

とりあえず。よろしいでしょうか。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 まとめのところにありますけれども、規制料金があることで新規参入が阻害される。これは言い過ぎで、規制料金が適正に設定されることが本来望ましいわけで、規制料金が高く設定されれば、当然新規参入者が入ってくるでしょうし、ひょっとしたら、その適正な水準に設定されれば、非効率な新規参入者が出てこない可能性があるというので、規制料金のあり方をきちんと考えるということが必要だろう。

だから、新規参入者を促進するために、昔、NTTの場合でもそうですけれども、NTTの電話料金を2割、新規参入者より高く設定するという行政的な介入があったので、競争が歪められたということが言えるかもしれませんけれども、そういう規制料金の料金設定の水準をきちんと定めるということが必要だということで、規制料金があること自体が新規参入を阻害するというのは、ちょっと言い過ぎではないか。

それから、もう一つは、弱者保護は私は基本的に余り必要ないというか、本来、今までもやってきていませんし、イギリスの場合は国営でやってきたということで、ずっとそういう弱者保護的なことが行われたかもしれませんけれども、日本は最終保障というぐらいの程度にとどめるべきで、弱者保護というのは地方自治体がやっている水道とかNHKでみられ、また、例外的にJRは結構ありますけれども、基本的には事業者がやるべきことではなくて、国とか地方自治体が弱者保護をやるべきこと。諸外国でやっているからやるべきだという議論は、私は基本的に余り賛成ではないということ。その点、感想です。

○古城座長 今の点について、ちょっとお聞きしたいのですが、フランスの料金規制がまずいものであったと。それでEU当局から撤退を求められているというときは、これはよくわかったのですけれども、井手さんが指摘されているように、料金水準が適正だったら問題はないわけですね。そうすると、撤廃じゃなくて、もうちょっと上げろとか、もうちょっとうまい料金規制をしろという議論が出てくると思うのですが、それはヨーロッパではどうなっているのでしょうか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ありがとうございます。

フランスの制度がまずいのは、もう議論の必要がないと思っています。ほかも、EU委員会からすると、うまい料金をつくれということは言えればいいと思うのですけれども、以下は想像も入っていますけれども、加盟国で「わかりました、規制料金を見直します」と言ったところで、結局仕上がりの規制料金というのは、各国内のしがらみとかがあって、結局、競争制限的な料金規制になってしまうというのが現実としてあると思います。

そうすると、EU委員会としては、規制料金の存在自体が、井手先生がもし例えば東欧に行って規制料金を組まれれば、何の問題もないと思うのですけれども、現地の人たちがそのとおりつくるわけではなくて、仕上がりの料金としてなかなかそうならないので、EU委員会としては規制料金を早く撤廃しましょうということを言わざるを得ないのかなと、私はそういうふうに見ています。若干想像も入っていますけれども、そういうふうに考えています。

○古城座長 松村委員。

○松村委員 そういう意見もあり得ると思います。EU委員会もそう思っていてもしようがないと思います。現実にそうじゃないというのはよくわかったのですが、仮に補助金とか、そういうたぐいのものは一切投入しないで、独立採算が貫かれていて、それで各国が料金を規制するなら、その料金が低過ぎて競争阻害になるというのは原理的におかしいですね。だから、本来は無理やり補助金を投入して、無理やり低くして歪めていることがないかどうかだけを見ればよいのであって、規制そのものに目くじらを立てるのは変ではないか。だから、競争を歪めているのは補助金と考える方が、はるかに筋がいいと思います。

EU当局が各国の補助金まで見ることは、とても難しいから、そうなってしまうということはわかります。原理的に考えて、もし補助金がなかったとするならば、それでも競争を歪めていると言うのだとすれば、言っているほうがおかしい。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 多分、規制料金と補助金はセットなので、例えば東欧などで規制料金が低過ぎるというのは、明らかにそれとセットですので、片方だけ見るのはおかしいというのは先生がおっしゃるとおりなのかなと思います。また、補助金の出どころというのは、税金を突っ込んでいるのか、ほかの部門から移しているのかという細かな点があって、そこは十把一からげには言えないかなと思っています。ありがとうございます。

○古城座長 どうぞ。

○古賀委員 すみません、細かいことで恐縮ですが、スライド6で、今の話とちょっと関連するのですが、EUの司法裁判所がイタリアのガス小売規制料金をめぐる事件判決というのがあるのですけれども、実はイタリア在住の方にお聞きしたら、電気料金がここ二、三年でものすごく上がってしまって、普通の家庭でも月2万円ぐらい、夏場などは3万円ぐらいかかってしまう。イタリア全体の物価からしても、ものすごく高くなっているという話を最近聞いたのです。イタリアの方は原発をやめることに同意した国民の合意として納得されているということでしたが、ガスの規制もかかわっていると思います。このとき、イタリアのガス小売規制料金の判決というのはどういった内容だったのか。EUはどういう立場でやっているのか、ちょっと教えてください。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 すみません、この判決に関しては一応読んだのですけれども、かなり知識が落ちていますので、この場での回答を控えさせてください。申し訳ないです。

イタリアは、今、規制料金を撤廃した国に分類しているのですけれども、していないと分類する人もいて、イタリアの規制料金はどういうものかというと、私、イタリア語を解せないので、それを解説したものしか見ていないのですけれども、卸電気市場の料金に小売料金をかなり連動させるような制度をとっているようで、卸が上がったら一気に上昇するという制度になっているのかなと、今、伺っていて思いました。ここもわかれば詳しく調べてみたいと思います。

○古城座長 質問じゃないのですが、ちょっと伺いたいのですけれども、ドイツではデフォルト料金がある。それから、フランスでは規制料金があるというのですけれども、これは現在の規制料金と同じように、基本料金とかいろいろあって、それぞれについて料金が定められているのでしょうか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ドイツのデフォルト料金について。

○古城座長 ドイツのデフォルト料金とフランスの規制料金の定め方なのですけれどもね。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 たしかフランスの規制料金は、ちょっと不正確かもしれません。間違っていれば、後日、メール等で事務局を通して御回答しますが、月額の基本料金と従量料金になっていたように思います。すみません、ドイツは今は把握しておりません。申し訳ないです。ただ、補足しますと、ドイツのデフォルト料金はあくまで非規制ですので、どういったものを出すかというのは事業者に委ねられているという点は御留意ください。

○古城座長 いかがでしょうか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 すみません、ちょっと補足、よろしいでしょうか。フランスの規制料金に90%もたまっているという点なのですけれども、日本の今度できるみなし小売電気事業者さんが出される規制料金は、本当にベーシックなものだと理解しています。ただ、フランスの規制料金の中には、細かな時間帯別料金というのも規制の中に入っていまして、そうすると、そういったものも規制に含まれてしまうので、本来、それは自由料金で日本でやることになると思うのですが、それも規制料金に含まれているので、フランスではなかなか動かないという側面もあると思っています。

○古城座長 いかがでしょうか。井手委員。

○井手座長代理 18ページにスイッチング・コストの低減という問題があります。本来、供給者や料金プランに関する情報提供の改善、これはアメリカでもそうですけれども、ホームページを通じてスイッチングを容易にできるようにすることが、一番望ましいと思うのですけれども、イギリスで問題になったのは、電気とガスについて訪問販売をする。多分、日本でもウェブ上で変更するというよりも、訪問販売というものが主力になると思うのですけれども、そういったイギリスの事例がみられます。

それから、イギリスの場合、今日のテーマではないのですけれども、自由料金でいわゆる1年固定とか固定料金と、変動料金という燃料の高騰に合わせて変動するという料金体系があります。それから、固定料金について途中で離脱するとペナルティーを課すといった料金体系が結構あります。この料金体系については複雑すぎて消費者が非常に混乱するというので規制当局が料金メニューを4つに絞れということが行われました。それから、訪問販売についても、ウェブ上でなるべく変更できるように改善すべきというのが、イギリスでは見られているのですけれども、その点、何か情報があれば追加的に教えていただきたい。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ありがとうございます。

英国は、当初、電気・ガスの訪問販売が結構多かったように聞いています。ただ、その過程で、訪問販売の代理人といいますか、担当の人たちが詐欺まがいではないですけれども、サインの偽造は論外だと思いますが、結構しつこく勧誘するというのが結構問題になりまして、当初、イギリスでは電力・ガス会社の訪問販売員の資格を民間団体でつくって、訪問に行くときにはドアステップ・セリング (doorstep selling) と言いますけれども、協会発行の身分証を必ず見せなさいとか、例えば1回不正をした人は、二度とほかの会社の代理人としても働けませんという制度を、6大電力会社等で結構お金をかけてつくったと聞いています。

ただ、現在、イギリスの6大電力会社は、ドアステップ・セリング、訪問販売をやっておりませんで、恐らく営業コストが高かったということだと思いますけれども、基本的には電気とインターネットに注力されているようです。ただ、そこで問題になってくるのは、インターネットだと割引がきくのですけれども、例えば高齢の方でインターネットに余りなれていない人たちは、その恩恵にあずかれないという負の側面も出ていまして、そういう側面もちょっと留意しないといけないと思います。

あと、メニューですけれども、基本的には先生おっしゃったように、1年固定、何年固定とか変動とか、いろいろなものがあって、ふえ過ぎてわからないということになって、事業者ごとに4つのプランに絞りなさいということになって、現実、何が残っているかというと、主に変動、いつでも電気料金の単価は動きますよというものと。例えば、何年固定という言い方はせずに、イギリスだと例えば2017年何月まで固定という、今から何カ月じゃなくて、いつまでという形で出している例が多いのですが、そういう変動料金と。あと、インターネットの割引メニューみたいな、この辺が主力で、あともう一個つけていたり。4つと言いながら3つにしている会社もあるのですけれども、こういうものに収斂してきているというのが現実です。

ただ、規制がそういうふうに動いているわけですけれども、それに対して、そうすると事業者の創意工夫というものに対してはネガティブじゃないかと批判する人もいるようで、そのあたりの評価はまだ定まっていないというのが現状であります。

○古城座長 陶山委員、どうぞ。

○陶山委員 今、井手先生のお話でちょっと思い出したのですが、自由化の最初の段階で、プリペイドとかデポジットをすることによって安くしますよという会社、新規参入者があって、そこが途中で倒産するという事例もあったというのを読んだことがあるのですが、要はそれによって需要家が被害を受ける。先払いをする、あるいは預託をすることによって安く買えますという制度があった。そこは教訓化すればいいと思うのですが、もし詳しく関連して情報をお持ちでしたら、教えていただければと思います。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 プリペイドというのは、どこの。

○陶山委員 私もよく記憶していないのですが、イギリスかどこか。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 英国には、御存じの方も多いと思うのですけれども、プリペイド式のメーターがあります。ただ、これが安くなっていたというのは初耳ですけれども、一般的にいわゆる信用のないお客さんに対して、不払いリスクがあるからあらかじめ早く払っておいてくれという趣旨でつけられたものと理解しています。当初、イギリスで問題になったのは、そういう人たちの単価が高かった。要するに、不払いリスクがあるから、デポジットは積んでもらっているのだけれども、単価が高かったということが問題になって、イギリスの規制当局は、自由化すると、そういった人たちこそ最初に自由化の恩恵を受けてくれるのではないかという期待があったようです。

けれども、蓋をあけてみると、そういう人たちの単価は高くて、またインターネットがまだ黎明期だったと思いますけれども、スイッチングもなかなかしてくれないということで、そういう人たちに自由化のベネフィットがなかなか行かなかったということが問題になっていました。

規制の話ばかりで申し訳ないですけれども、イギリスで一般のメーターの価格、料金単価と、プリペイドメントメーター、いわゆる割高の料金プランの単価、これは差額をつけること自体はオーケーです。ただし、コストの差を反映したものとして、その差はちゃんと説明できないとだめです。差額はいいけれども、ある意味暴利をむさぼるような差額をつけてはだめですよ。コストの差だけの値段しか認めませんよという規制が入っていて、そういった意味での規制料金ではないですけれども、料金に対する規制はイギリスでもまだ若干残っているという現状がございます。プリペイドメントメーターについては、そういうことを申し上げておきます。

○古城座長 はい。

○陶山委員 それは、供給側のリスクを低減させるためにプリペイドということですね。私が読んだ資料、ちょっと不確かなのですが、プリペイドすることによって安く販売する会社があらわれて、販売し終わらないうちに、需要家のほうが全部利用しないうちに倒産してしまったケースがあったということを読みました。

○古城座長 古賀委員。

○古賀委員 井手委員がおっしゃったスイッチング・コストの低減のところですけれども、ウェブでやるのは、若い人とか、今の世代にはパソコンはやりやすいし、コストもかからないと思いますけれども、実際に高齢者とか、いわゆる紙のサービスになれた、毎月の請求書が欲しい人たちのために、スイッチング・コストの価格を紙でした場合とウェブでした場合に差をつけないような工夫というのは、海外でされているのでしょうか。日本では、高齢者などへの情報提供という意味で特にそういうことを導入していく必要があると思います。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 日本ですべきかどうか、わかりませんけれども、基本的に海外で見ていると、ネットのほうを安くする。それは、紙代がかからないので、事業者としてもコストが安いので、そっちに動いてほしいからネットを引くという動きにある。なので、ネットを使った料金と紙の請求書の料金を同じにすべきじゃないかというのは、私は海外で余り聞いたことがないように認識しております。もしかすると調査不足かもしれません。ただ、普通に考えて、紙の分が安くなるのだから、安くしてほしいねというのが普通の感覚かなと私は思っているのですけれどもね。

○古城座長 どうぞ。

○山内委員 だんだん話が細かくなる。細かい話を聞きますけれども、ホワイトラベルのケースで料金はどういうふうに考えるのかと思って。事業者の名前を全く出さずに、別の事業者の名前で電気を供給するわけだけれども、イギリスのケースで規制機関の料金規制でどうなっているのかというのが1つの細かい質問で。

もう一つは、さっき訪問販売のケースがありましたけれども、イギリスで6大になったときにBGのセントリカが物すごく強かったじゃないですか。それは、訪問販売とかに関係しているのかどうかを御存じかどうかというのが2つ目です。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 ホワイトラベルというのは、電力会社が例えばスーパーマーケットとか、ほかのディーラーの名前で売ることを指しておっしゃっていると思いますし、イギリスでもそういう言い方をしますけれども、この点はイギリスでも議論になって、ホワイトラベルもプランに含めるということなので、例えばある会社が、本体では料金プランが4つ、ホワイトラベルで他社ブランドの名前で4つというのはだめよということに結局なりました。そこも議論があったのですけれども、最終的にはプランの数を制限することが競争に資するというのが、イギリスの規制機関の考え方だったようです。

訪問販売とBGの関係はわからないのですけれども、訪問販売はBG、プリティッシュガス会社がかける場合もありましたし、逆に既存の電力会社が売った例もあると思うので、必ずしも片面的な話ではない。ただ、イギリスの家庭用需要家が電力会社を切り替えた場合の切り替え先は、団体ブリティッシュガスでございまして、そういう意味では、ブリティッシュガスが訪問販売を相当かけたのだろうなというのは想像がつくわけですけれども、必ずしもそこだけではないと思います。

○山内委員 ガスの場合は保安があるので、必ず顧客と接点を持っている。ケーブルテレビもそうだけれども、顧客接点を持っているのですね。その点で、電気はすごく売り込みやすいということがある。多分、日本でもそういうところがこれから売り込むのではないか。傍聴者に関係者の人がいますけれども、と思っているのですけれども、それについてどう思うかという質問です。

○電力中央研究所佐藤主任研究員 私にはわからないとしか。

○古城座長 いかがでしょうか。

そろそろ時間が来ましたので、これで終了しても構いませんね。ありがとうございました。

消費者庁のほうから何かございますか。

○消費者庁福岡審議官 特にございません。

≪3.閉会≫

○古城座長 それでは、本日の議論は以上といたします。

佐藤研究員におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。

事務局から連絡事項などはございますか。

○丸山参事官 本日は御熱心な議論をどうもありがとうございました。

今後の専門調査会等の日程につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。

○古城座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)