第148回本会議・第5回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議 議事録

日時

2014年3月18日(火)12:00~15:00

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【消費者委員会委員】
河上委員長、石戸谷委員長代理、岩田委員、齋藤委員、夏目委員、橋本委員、山本委員、唯根委員
【専門調査会委員】
小早川座長、白石座長代理、川出委員、長田委員、増田委員、宮城委員
【説明者】
消費者庁 川口審議官、菅久審議官、黒田課徴金制度検討室長、加納消費者制度課長
【オブザーバー】
国民生活センター 丹野理事
【事務局】
小田事務局長、金児企画官、稲生参事官補佐

議事次第

  1. 開会
  2. 要件・手続等に関する検討(1)
    対象事案(対象行為、主観的要素、規模基準)
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様お忙しいところを集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会第148回本会議・第5回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議」を開催します。

本日は、本会議委員の阿久澤委員、高橋委員、専門調査会委員の鹿野委員が所用により御欠席、本会議委員の岩田委員が遅れての出席と御連絡をいただいております。

配布資料でございますけれども、配布資料1から4までございます。不足がございましたら事務局へ御連絡ください。

それでは、ここから小早川座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.要件・手続等に関する検討(1)≫

(1)論点について

○小早川座長 それでは、皆様、今日もよろしくお願いいたします。

本日と次回の2回にわたりまして、景品表示法上の不当表示に対する経済的不利益の賦課に係る、特に要件・手続に関する検討を行いたいと思います。その上でのことですが、次回までの検討状況につきまして、次々回に中間整理を行う予定になっております。そこでは、そこまでで出された各委員の御意見等を整理したものを中間整理として取りまとめることにしたいと考えており、したがって、できるだけ議論を詰めていただきたいと思いますが、本日と次回の議論の中で、論点によっては、そしてそれをめぐる議論の様子によっては、まだその段階で必ずしも結論なり方向性なりが出ないものもありうる、それを必ず出さなければならないというわけではないと、少し余裕を持ってお考えいただければと思います。

それでは、本日と次回で検討する予定の論点について、事務局より説明をお願いいたします。説明時間は30分程度でお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○稲生参事官補佐 本日と次回では、要件・手続に関する検討を行っていただきたいと思っております。具体的な論点としては、資料1に記載しておりますので、ごらんください。

まず、1.対象事案でございますけれども、4つの論点がございます。

マル1対象行為ですけれども、現行法上、措置命令は4条1項に定められた優良誤認表示、有利誤認表示、指定告示に係る誤認表示を対象としております。また、いわゆる不実証広告、合理的根拠を示す資料が提出されない場合も優良誤認表示とみなして措置命令の対象となっております。これらの不当表示について、それぞれ経済的不利益を賦課する 対象とするかどうかがこの1番目の論点になります。

マル2主観的要素です。経済的不利益を賦課する要件として、違反行為を故意に行ったとか、違反行為について過失があるといった主観的要素を必要とするかどうか。また、仮に必要とするとした場合に、その内容についてどのように考えるかというところが主観的要素の論点になります。

マル3は、規模基準でございます。賦課金額が計算上、比較的少額となる場合に裾切りを設け、その事案を対象としないこととする必要があるかどうかということでございます。

マル4が除斥期間。不当表示行為の後に一定期間が経過しているような場合に、経済的不利益を賦課することができる期間に制限を設ける必要があるかどうかということでございます。

2番目といたしまして、賦課金額の算定で、3つの論点がございます。

まず、マル1基本的な考え方として、賦課金額の算定方法をどのように設定すべきか。

マル2加算・減算・減免措置。マル1の基本的な考え方に基づいて算定された金額について、加算・減算・減免措置を設ける必要があるかどうか。また、設けるとした場合には、どのような措置が考えられるか。

マル3対象期間でございますけれども、賦課金額算定の対象期間を限定すべきかどうかでございます。

3番目、裁量性でございますが、執行に際して行政に裁量権を与える裁量性の導入が必要かどうかということでございます。

最後に4番目、調査権限・手続保障・徴収手続というところで、違反行為に対して経済的不利益を賦課するにあたって、どのような手続を設けるべきかという点についても御議論いただきたいと思っております。

冒頭申し上げましたとおり、ここでは要件・手続に関する検討を行うということで、ほかにも議論が必要な論点もあるかと思いますし、例えば被害回復のあり方などについても御議論いただく必要があるかと思いますけれども、そういった点につきましては、別途、4月以降に検討の機会を設けたいと考えております。本日と次回では、以上の大きく4つの項目について御議論いただきたいと思っているのですけれども、各論点の検討状況について事務局から消費者庁のほうに資料作成を依頼しておりますので、詳細な説明は消費者庁にお願いしたいと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 それでは、消費者庁から説明させていただきます。

消費者庁としては、資料2、3、4とお配りしております。検討状況についての議論は資料2で、あと景表法の執行の基準がなかなかわかりづらいという御議論がございましたので、過去の違反事例をもとにどういうものに実際命令が下されてきたかという例示について、資料3をお配りしております。あと、海外における広告規制法の動向等についてまとめた資料を資料4としてお配りしておりますが、主に資料2で説明していきたいと思います。資料1で示された論点の順番に従って、現在の検討状況はどうかということについて簡単に御説明いたします。

資料2に入る前に、全体的な話で申しますと、課徴金という賦課を課すとして、実際どうするかといった場合には、どうしても執行可能性ということを執行当局としては考えていく必要があると考えております。そういうことで、対象の範囲とかの外縁を決めなければ実際に執行できないということで御議論いただくのだと認識しております。その際に、趣旨・目的も非常に関連する。つまり、やり得を剥奪するという部分と、抑止力を強化するという大きく言えば2つの兼ね合いと、実際の執行可能性をどう考えるか。つまり、際限なく広げてしまって、執行部分が対応できないとなると、あそこはよくて、なぜうちはだめなのだといった議論で執行の公平性ということに支障を来してくる問題等もございますので、そういった面で範囲をどうするかという議論になるのではないかと思います。

では、資料2をおめくりいただきまして、対象の行為ということで、要素としてはどこで切れ目が考えられるのかということでございます。4つ考えられると思います。不当表示の規制の対象によって4類型ぐらいに分けられるのではないか。3ページに表がございます。優良誤認、有利誤認、指定告示規制というものがありますが、優良誤認については不実証広告規制というものがございまして、それぞれ件数が書いてあります。件数については、優良誤認全体で92のうち、不実証広告規制が13、有利誤認が29、指定告示規制に係る措置命令は7件といったことでございます。

優良誤認、有利誤認についての説明が4ページにありますが、ここについては対象とすることについて余り議論がないのではないかと考えております。ここから先がいろいろ御議論いただきたい部分でございます。

まず、5ページ、指定告示に係る表示ということでございます。これは、告示の内容、つまり紛らわしい表示と誤認されるおそれがある表示ということで、直ちに誤認させる表示ということではなく、その内容を告示で指定するということです。不利益の賦課処分をする以上、対象行為を法律で定めるべきであろうということなので、このままの形では無理だという認識でおります。

では、今の類型を法定化するのかどうかということについて、どう考えるかということを御議論いただきたいと思います。その際、議論のポイントはほかと違っていて、ほかは誤認させる表示という形で条文に明記されているのですけれども、誤認されるおそれがある表示と誤認させる表示というのを同列に扱うかどうかということになるかと思います。

次に、6ページ、不実証広告規制についてでございます。趣旨については、東京高裁の判例が6ページに示されております。一般の消費者の被害が拡大するおそれがあるので、専門機関による調査を待っていては、そういった拡大のおそれがあるということで、迅速・適正な審査を行うために、この制度が設けられておりますし、そもそも事業者は当該表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料をあらかじめ有した上で表示を行うべきだという考え方に基づく規定でございます。

1ページ飛ばして8ページに行っていただければと思いますが、最初に示した表にもありますように、どういうふうに立証しようと思っても、結局優良誤認があることには変わりがないじゃないということで、抑止力という観点からは入れるべきだという考え方もあろうかと思われますし、2番目の○については、あくまでみなし規定ということなので、実際根拠がないだけであって、実体法的に不当表示と言えるのかどうかという御議論もあろうかと思います。そういった議論を踏まえて、実際にこれをカウントするのかどうかということでございます。

ちなみに、前回、閣議決定まで至った改正法案について言いますと、優良誤認、有利誤認については対象となっておりましたが、指定告示、不実証広告規制については対象の範囲となっておりませんでした。

次に、資料1のマル2に当たる部分、主観的要素でございます。主観的要素を必要とするかどうかということでございますが、現在の課徴金制度の多くは主観的要素を必要としていない。必要とする場合は、そもそも措置命令については、これがどういう主観的要素があったかを問わずに命令を発することになっておりますけれども、別途、そういう要素を考慮した場合には、執行の負担、制度の機動性に影響を及ぼすおそれがあると考えられます。さらに、どういう動機にせよ、不当表示でもうけたということであれば、いわゆるやり得が生じているのではないかということで、主観的要素を必要としないという議論もございます。

次のページでありますが、現行の課徴金制度というのは、賦課を課すかどうかについての主観的要素を考えないで、そもそも違反行為自体が主観的要素があるのではないかということで、あえて別にするべきではないのではないかという議論。

あと、課徴金となると抑止力の効果が大きいので、対象行為の範囲を絞らずに全て対象となると、今度は表示が抑制されるほうに行ってしまうのではないか。それは、最終的に消費者のためにもならないのではないか。

あと、最善を尽くそうが尽くさまいが、結果が同じということであれば、人間、尽くさないほうに流れてしまうのではないといった議論もあるということでございます。

さらに、広過ぎて執行が不十分となれば、結局、当局の執行力が問われてしまうということなので、主観的要素で絞ることも考えられるのではないかということでございます。

11ページは、販売業者がどんなことをしても不当表示を防ぎ得ない場合も世の中にあり得るのではないかということを紹介しております。

そういったことを全体でかんがみて、12ページになりますけれども、今のところ3つの案ぐらいに絞り込めるのではないかと考えております。A案が主観的要素を全く必要とせず、全ての事案を対象とする。C案については、主観的要素を要件として一定の絞り込みをすべしということでございますが、折衷案的に考えているのはB案でございます。つまり、A案はちょっと強過ぎる、C案は機動性を欠くといった議論があるので、それでは原則としては不利益を課すことになっていても、一定の注意義務を尽くしていたこと等を立証することができる場合には、例外的に賦課しよう。その場合、仕方がなかったという部分については、不当表示をした行為者自身に立証してもらうといった考え方もあるのではないかということを今、検討中でございます。

次に、マル3規模基準です。これについても、執行が不十分になれば抑止力がかえって不十分になることもあるのではないか。逆に、金額が少な過ぎる場合には、威嚇としての抑止効果が小さい。多過ぎると、また先ほどと同じ議論ですけれども、中小企業者という問題もあろうかと思いますし、表示を余り積極的にしていかないといった影響も考えられるということなので、こういったことを御議論いただきながら一定の要件設定というのもあるのではないかという議論でございます。

次に、除斥期間ということですが、この辺も大体同じような感じで、執行可能性ということであります。ずっと対象としていても、事実上、証拠を追い切れない部分もあるということでございます。

次に、15ページ、賦課金額の算定ということで、資料1で言えば2ポツに移ります。金額については、いろいろ考え方がある。抑止力を強化するという意味で言えば、想定されるやり得以上に経済的不利益を賦課することも考えられる。あとは、執行の負担という問題ということです。

ということで、次のページに考え方が書いてあります。今のところは、個別の事案ごとに個別の方法で算定するということではなくて、売上高に一定率を乗じる。この具体的な算定率については、過去の事案などを踏まえて設定するという考え方でどうかというのを今、検討しております。この辺は、前回の改正案に倣ったものでございます。

加算措置についてであります。反復違反者について加算する制度ということも一つの案としては考えられるだろうということでございますが、実際に景表法の場合は事例としてはそんなに多くないことと、一定の違反行為自体を企図して、わざわざそれを企画して、それをいろいろ相談しながらやらなければいけない違反行為ではなくて、常に表示は要るということで、反復可能性的な要素については、表示というのは1回違反しようがしまいが、とにかく常にやらなきゃいけないことを留意しなきゃいけないこともあるのではないかということでございます。また、ここで出てくるのが、常に申し上げますが、執行の負担といった要素がございます。この辺を考えながら御議論いただきたいと思っております。

減算については、19ページに書いてありますが、コンプライアンスを促すという観点から、また自主申告を促進するという観点から、減算措置を設けることは考え得ると考えております。また、事業者の方から、いわゆるやり得の剥奪ということを課徴金の目的とするなら、みずから返している場合もある。しかもしっかり把握できて返している場合に、さらに取られるのはいかがなものかという御議論がよくございます。こういった考え方を減算の仕組みと組み合わせることもあり得るのではないかということも考えられます。さらに、ここでも同じですが、余計な仕組みをつくると、オプションをつけると、その分、執行負担が増すので機動性が落ちるのは当然あるということでございます。

加算・減算措置については、いずれも20年の改正では特に仕組まれておりませんでした。

あと、対象期間についてでございます。21ページに書いておりますけれども、長期的過ぎると法的安定性、要は追い切れない、予測可能性もわからないといった部分があるということでありますし、短過ぎるとやり得を吐き出したことにならないのではないかということがございます。また、執行の負担もありますので、これは過去の措置命令事案と同じで、どこかでは決めなきゃいけないということはありますけれども、それをどのぐらいの期間にするかというのはもうしばらく議論が要る。ちなみに、前回は3年という期間になっておりました。

裁量性について、22ページ以降、書いております。これは、1で言うと3ポツになりますけれども、これについては、いろいろな御意見がございます。そもそも行政の裁量の域を超えているのではないかといった議論がございます。ただ、例えば主観的要素とか規模基準の設定をうまく仕組めば、法的に裁量にしなくても実質的に裁量を入れるのと同じような効果が期待できるやり方もできるのではないか。例えば、先ほど申し上げたB案みたいな形。原則賦課としつつ、証明については、違反事業者のほうが負担するということであれば、裁量するかとどうかというのは、課徴金にすると常に執行の負担というのがある。それで、逆に措置命令で済ませることもできるようにすべきではないかといった議論については、要素の設定を仕組めば同様の効果も期待できると考えられます。

いずれにせよ、全体に通じるのですけれども、課徴金を課すかどうかも含めて言われるのは、景表法は適用の考え方があいまいな部分がどうしてもあって、著しく優良という部分についてどう解釈するかというのがなかなかわかりづらい。その辺の基準をしっかり明確にする必要があるということだと思います。

23ページに、我々の現時点での考え方が書いてありますが、実効的な抑止には裁量性の導入が資することもあるのでしょうけれども、法制的な課題が非常に大きいのではないかということでございます。

次に、4以下、手続、調査権限でございますが、この辺は現行の措置命令についても一定の調査権限もあれば、手続的な弁明の機会の付与等もしておりますので、これは現行の措置命令と同一の調査権限や、措置命令と同一の事前手続の手続保障を基本にすればいいのではないかということで今、検討中でございます。

最後の26ページですが、徴収手続には現行の例で言うと大きく二通りありまして、課徴金を徴収する際、国税の滞納処分の例によるか、民事執行法、その他強制執行の手続に関する法令に従う。どちらか択一の場合は、やり得、つまり被害回復という観点からすると、国税滞納処分の例では、先にそちらから取ってしまうと被害回復の観点を害するおそれがあるので、どちらかといえば民事執行法、その他強制執行の手続に関する法令に従うほうがいいのではないかと考えております。

簡単ですが、消費者庁からの説明は以上です。

(2)「対象事案」のうち「対象行為」について

○小早川座長 どうもありがとうございました。

本日は、資料1の「1.対象事案」の中のマル1対象行為、マル2主観的要素、マル3規模基準、マル4除斥期間の4つについて、それぞれ分けて議論していきたいと思います。「2.賦課金額の算定」以降、2、3、4については、次回の議論に回したいと思っております。

ということで、まず「対象事案」の「マル1対象行為」ということで御説明のあった部分について議論したいと思います。今の御説明の最初のほうでありましたように、措置命令の対象とされている優良誤認、有利誤認、指定告示に係るもの、不実証広告に係る行為という範囲があるわけですが、これをどこまで経済的不利益賦課の対象とするか、その全部に及ぼすかということであります。これにつきまして、少し時間をとりまして、13時20分まで約50分ぐらいですが、議論をしていきたいと思っております。

それでは、御意見、御質問のある方はどうぞお願いします。宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 4つの領域のうち、最も基本的な優良誤認表示、有利誤認表示については、課徴金対象とするということで余り議論はないのかなと思っております。

それから、問題となり得るとすれば、3号指定告示と不実証広告規制ですが、いろいろ考えたのですが、3号指定告示事項については、今回いただいた執行状況の集計などを見ても、消費者庁が平成21年9月から運用を開始してから後、ずっと数えても7件で、非常に数が少ない。また、内容からしても、予防措置的なものが多いということでございまして、かつ恐らく、この中でも本当に問題のあるものについては優良誤認表示、有利誤認表示ということで、大体のケースは取り込めるであろうと考えられますので、基本的には3号告示指定事項については課徴金対象としなくてもいいのかなという感じがしております。

最も問題なのは、4条2項の不実証広告規制ではないかと思われます。これについては、これも不当表示には違いないのですから、まだ実質的に考えても、事業者が優良誤認表示を行っておきながら、自分の手持ちの客観的資料をがんとして拒否して出さないということで課徴金を免れるのはよろしくないのではないかという考えを持っていたのですが、いろいろ聞いてみると、早期に優良誤認表示をストップするということで、その後課徴金を納付するかどうかということで調査が続行するようなことも聞いております。

これは質問になるのですが、不実証広告でがんとして事業者が提出を拒んだ場合に、その後の手続はどういう流れになっていくのか。全件について調査が続行されればよいのですが、全件に対して調査を続行することが執行の現場としてできるのか。そのあたり、シミュレーション的にどんな流れになるのか。予測になるのかもしれませんが、現実的なところを教えていただければと思います。

○小早川座長 それでは、差し当たり、今の点にお答えいただけますか。不実証広告で措置命令だけかけておいて、その先はどうするのか。

○消費者庁菅久審議官 不実証広告規制の4条2項を適用しておりますのは、優良誤認表示一般ということではなくて、むしろ立法時から効果・性能に関する表示というのを対象にするということでつくられた規定であります。効果・性能というのは、商品を見たり仕入れ台帳でわかるものではなくて、実際にやせるとか空気が清浄になる効果があるかどうかを検証しなきゃいけない。つまり、事業者自身が資料を持っていないのに、行政機関のほうがそれを立証しなきゃいけないという負担を負うということで、それはなかなか大変だということで入った規定であります。

資料3をごらんいただきますと、4ページに例が並んでおりますが、一番最後に美容機器というのが出ています。これが4条2項を使った事案でありまして、具体的に対応している表示が10ページの株式会社に対する措置命令であります。したがいまして、4条2項を適用する案件は、こういう表示です。この場合ですと、細胞の活性化、脂肪分解効果、殺菌効果、肌の汚れ除去効果、肌への美容成分の浸透効果が得られるという表示をしていますので、その根拠を出してくださいということを求めて、出してこなければ、それは不当な表示ということで措置命令を出すことになります。ですから、先ほどお話がありましたように、提出を拒否したら全く得をしない規定がこの規定であります。

しかし、これを使わないで立証するのはすごく大変でありまして、それが難しいのでこの規定を入れたというのが4条2項であります。

○宮城委員 だから、そういう場合、立証が難しいから、いわば擬制して不当表示に取り込むわけですね。難しいので措置命令を出したけれども、その後どうなるかということを伺いたかったのです。

○消費者庁菅久審議官 立証は難しいといいますか、そもそも効果・性能に関する表示をするときには、合理的な根拠を持ってやらなきゃいけないという原則の規定が入っております。したがいまして、これで言うと、肌の汚れ除去効果がありますよという表示に対する根拠を出してください。でなければ、そこで表示を変えてくださいという排除措置命令を出しますので、そこでおしまいということになります。

○宮城委員 そうすると、その後課徴金納付命令について、さらに調査が進むことはないわけですか。

○消費者庁菅久審議官 課徴金制度が入ってからの話ということだと思いますが、そのときに4条2項の手続では課徴金命令まで行けないという法律になった場合には、本当に効果がないということをさらに調べて立証しないと、課徴金を出せないということになりますので、ある意味では措置命令から課徴金を出すまでの調査の負担がものすごくふえることになります。

○宮城委員 そうしますと、それがもうそこで終わりという制度にした場合は、悪質な事業者は措置命令だけで済ませると課徴金が取られませんので、そこで終わりにしようとして、がんとして資料は場合によっては廃棄までして一切出さないということも考えられるのではありませんか。

○消費者庁菅久審議官 事業者が持っている資料で立証できるものであれば、むしろ4条2項は使う必要はなくて、事業者が根拠を持っていようが、いなかろうが、やせる効果があるかどうかというのは、何でもいいのですけれども、何かが本当に効果があるかを専門機関に調査を委託したり、いろいろなことをして、効果がないという立証を行政機関側がしなきゃいけないことになりますから、それは余りに無駄だということで入ったのが4条2項の規定であります。

だから、仮にこの4条2項が課徴金の対象にならないということであれば、この手続で表示を改めなさいという措置命令を出した以降、事業者側は根拠は持っていないのだけれども、行政機関側がさらに本当に根拠がないという立証をしていかなきゃいけないことになるということかと思います。

○小早川座長 今のお答えでご質問に対してある程度までは答えられていますが、そうした場合に執行が大変ではあるわけですね。そこで消費者庁としてはどうなのか。もちろん、きょうの段階では、消費者庁としてどちらがいいということをはっきり言っておられるわけではないのですが、検討の材料を出していただくという意味では、不実証広告自体を課徴金の対象とするのではなく、実体を行政の側でさらに調べるというやり方と、不実証広告で課徴金は取れるということにして取ってしまうやり方と、それぞれについてどうですかということではないですか。

○宮城委員 私が知りたかったのは、そこで悪質な事業者に対して手続が終わってしまって、それで後はできないということになるとちょっと問題が残るのではないかと考えた質問であります。

○小早川座長 不実証広告だけで課徴金が取れると仕組んではどうかということですね。

○宮城委員 そうですね。今のお答えは、その後、必ずしも手続が続くとも限らないということでありますと、それは入れざるを得ないのではないでしょうか。むしろ、そういうことにならざるを得ませんが。

○小早川座長 では、消費者庁からはどうですか。特にその先のコメントがなければ、ここは、宮城委員の今のような御意見が出されたということでよろしいでしょうか。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 不実証広告によって問題になるケースというのは、多くは大手ではなく、中小の事業者が、お金がないために根拠のある資料をつくる前に先に販売してしまうことが多いのではないかと思うのですけれども、反対に大手の事業者さんがお金があるにもかかわらず、きちんと研究しないで、その根拠をつくらずに販売してしまうということになると、より問題が大きい、根深いものがあるのではないかと思います。ですから、不実証広告の適用対象にぜひしていただきたいと思います。

それから、万が一、それが本当に優良誤認ではないという反対の証拠が出てくることを御心配されるのであれば今、申し上げたような小さいところでの問題が多発していることからすればそういう懸念は余りないのではないかと思います。

○小早川座長 はい、川出委員。

○川出委員 不実証広告に関してですが、現行法における不実証広告規制の趣旨というのは、先ほどから出ていますように,優良誤認表示に当たることを行政庁側が立証することが困難で、その立証に時間がかかっている間に被害が拡大してしまうので、とりあえず措置命令との関係で優良誤認表示とみなして、被害を防止するというものであるわけですね。これに対して、課徴金というのは、事後的に課されるものですから、仮に不実証広告を課徴金の対象にするということになると、もともとの趣旨とは違う形で不実証広告規制を適用することになるのだと思います。

それに対しては、措置命令を出すのとは異なり、緊急性がないわけですから、それであれば、行政庁側に,1号の優良誤認表示に該当することの立証をさせるのが筋だという意見もあろうかと思います。他方で、その立証がなかなか難しい場合があるということですので、その観点から、不実証広告自体を対象として課徴金を課す必要があるといえるのかを考えることになると思います。

そのうえで、その必要性があるのかということですが、現在の枠組みのもとで不実証広告を課徴金の対象にするとすれば、おそらく、消費者庁が、事業者に対して一定の期間内に合理的な根拠を示す資料の提出を求めたうえで、事業者がその期間内にそれを提出しなかった場合に、その時点から、当該表示が優良誤認表示とみなされ、そこからの売り上げについて課徴金を課すことになるのだと思います。仮にそうだとしますとただ、その場合には、おそらく同時に措置命令も出ているでしょうから、その措置命令に違反して、同じ表示をなお続けた場合に課徴金が課されることになります。ただ、その場合には、措置命令違反自体に罰則があり、それによる抑止力が働きますので、はたして措置命令に違反して表示が続けられることがどれぐらいあるのかということも考える必要があるように思います。

もう一点、不実証広告を課徴金の対象とするということは、それを優良誤認表示とみなすというかたちをとるにしろ、不実証広告自体を抑止するために課徴金を課すことになるわけですから、それは、突き詰めていくと、合理的な根拠を示す資料を持たないで一定の表示をすること自体が、一つの不当表示だということになるように思います。そうなりますと、現在の不当表示の類型を変えることになりますので、それが妥当かどうかも考える必要があると思います。

○小早川座長 このあたりの制度設計の基本は、消費者庁のほうではどこまで考えておられますか。今のこととの関係で言うと、いかなる事由に対して課徴金を課すのか、要件の根幹部分は何かということですね。恐らく3つぐらいあるわけで、優良誤認という事実についてなのか、不実証ということだけを根拠にするのか。不実証で措置命令が出ているから、措置命令違反ということで課徴金になるのかということですね。

○川出委員 私の理解が誤っているのかもしれませんが、いま申し上げたのは、措置命令違反に対して課徴金を課すということではなくて、一定の期間内に合理的根拠を示す資料を提出することを求めて,それが提出されない場合に、当該表示が優良誤認表示とみなされる、そして、そのうえで、それでも表示を続けて売り上げを得た場合に、それについて課徴金を課すということになるのではないかということです。措置命令違反については、罰則がかかるので、それに加えて課徴金を課す必要はないだろうと思います。

○小早川座長 優良誤認とみなされた部分について課徴金を課す、それには措置命令が並行しているはずだ、ということで。

○川出委員 そうです。そうなると、措置命令が出て、それを無視して表示を続けている場合に課徴金が課されるということになります。もっとも、そうではなく、遡って優良誤認表示とみなして、それ以前の売り上げについて課徴金を課すという考え方もあるかもしれませんが、将来の被害発生を防止するために、措置命令との関係で、優良誤認表示とみなすという現行法の不実証広告規制の枠組みを引き継ぐのであれば、それは無理ではないかと思います。

○消費者庁菅久審議官 私の理解がもしかしたら違うかもしれないですけれども、優良誤認表示について、仮に課徴金があることになれば、例えば過去のある一定期間、優良誤認表示に当たる表示が行われていたという事実があって、その優良誤認表示をした表示の対象になっている商品、前の法案で言えば商品の売上高を計算して一定額を課すことになるのだと思います。その場合でも、優良誤認であることが確定するのは、優良誤認であるという措置命令を出したときですから、それは表示をしたのより随分後になると思います。

4条2項の場合でも私は同じだと思っていまして、みなすわけですけれども、措置命令を出したときに優良誤認表示が確定するのですが、それは過去の表示について確定しているわけですから、その過去の表示をやった期間の商品の売り上げということで、そこは余り変わりがないのではないかと思います。

○小早川座長 一応、よろしいでしょうか。はい、長田委員。

○長田委員 今の御説明で安心しました。そうでなければ、証拠を示さない人は優良誤認として確定されないことに。つまり、同じ優良誤認でも、4条2項で指定された優良誤認になった人は、あたかも優良誤認でないかのような扱いになってしまうことになるので、上手に言えませんけれども、今の御説明で納得いたしました。

そういたしますと、優良誤認として、結局何の証拠もなく効能・効果をうたったり、いろいろしているものについてのやり得をそのまま残しておくというのは問題ではないかと思いますので、ここは今の御説明を伺った上でも、4条2項については課徴金の対象にすべきではないかと思います。

○小早川座長 今の関連で何か。はい、橋本委員。

○橋本委員 今の長田委員の話だと、優良誤認が確定された後は課徴金の対象と考えるということですか。

○長田委員 4条2項によって、何らの証拠も結局出てこなかった場合に、措置命令が出た段階で、それは過去にさかのぼって優良誤認表示であったと確定するわけですから、そこは同じではないでしょうかということを申し上げています。

○橋本委員 優良誤認として課徴金の対象とするということ。

○長田委員 はい。

○橋本委員 不実証広告であるとなった段階で、課徴金の対象とするかどうかということはないということですか。

○長田委員 その違いがわかりません。

○橋本委員 先ほど川出委員がおっしゃったように、これは早期に被害が拡大しないようにということでできたということで、それに対して不実証広告は、優良だと証明できないということだけで課徴金は課せられないと考える。

○長田委員 だから、証拠を出しなさい、出ません、では、証拠がないなら優良誤認ですねとなるのですね。つまり、それは4条2項の不実証広告規制に係るということ。

○橋本委員 1段階あって、優良誤認で課徴金の対象にすべきと考える。

○長田委員 1段階というか、証拠を出しなさいという手続は当然あると思いますけれども、ある日突然、あなたは不実証広告とやるわけじゃないと思います。ですから、4条2項を対象にするということは、そのまま課徴金の対象にしてほしいということ。ほかのものと違って段階があるということではないと思います。

○橋本委員 不実証広告だけでは対象ではないと。ごめんなさい、説明の仕方がちょっとあれですが。

○長田委員 恐れ入りますが、御専門の方に整理して説明していただければと思います。

○川出委員 一点、消費者庁に質問があるのですが、現行法の不実証広告規制の場合も、事業者が、一定の期間内に合理的根拠を示す資料を提出しなかったら、その表示は、最初から優良誤認表示であったとみなされるという考え方が採られているわけですね。

○消費者庁菅久審議官 特定の具体的な表示物が出ていて、これを示して、この中のこの部分についての根拠を出しなさいということを求めて出せなければ、この表示が優良誤認の表示ですよということになります。例えば、何年何月何日から何日まで出した折り込みチラシというものがありまして、いろいろ書いているものがあります。これについて根拠を出してくださいと言って出せなければ、この折り込みチラシが不当な表示ですとなるということです。

○川出委員 わかりました。その点は、誤解していました。そのように考えるのだとしますと、先ほども申し上げましたように、不実証広告を課徴金の対象にすることは、まさに合理的な根拠を示す資料を持たないで表示したこと自体が不当表示だと考えないと説明ができないように思います。

○小早川座長 一歩戻って、橋本委員の御懸念についてはよろしいでしょうか。実証できなければ、それは優良誤認とみなされる。みなされることで措置命令も発動されますが、今回の立法論としては、そのことで同時に課徴金の要件も満たす。みなすことで、これは優良誤認なのだから課徴金を課すということに、そして、期間については今お話のあったようなことになる、そういうことですね。

○橋本委員 その段階で、優良誤認と認められたけれども、それが課徴金の対象となるものかどうかというのは、また別になる。

○小早川座長 そこは要件の書き方次第ですけれども、今の御議論の感じでは、措置命令と同じ要件。だから、不実証であれば優良誤認とみなされて課徴金の対象になる。

○橋本委員 全てのものがそういうふうになると考えるかどうかというのが、ちょっとわからない。

○小早川座長 その商品についてのある一定期間の広告に関してということだと思うのですが。はい、宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 さっきからシミュレーションと申し上げているのは、その後不服申し立てがあった場合、どうなるかということも含んでおります。つまり、この不実証広告で一定期間内に客観的資料が出ないのでみなしましたと。その後、どうなるかということなのですが、どういうケースがそもそもこういう場合、考えられるのかなと考えてみると、ほとんどの真面目な、まともな事業者さんであれば、自社製品ですから客観的資料は持っていると思います。優良誤認表示かどうかというのは、優良誤認表示でないという客観的資料をそろえた上で消費者に対して販売されていると思うのです。

それが普通のケースで、まず客観的資料が一定期間内に出てこないということは、実態としてはほとんど考えられないのではないかということを考慮に入れても、それが不実証広告で一定期間出てこないこと自体が、そもそも蓋然性の問題として、ほとんどそれは優良誤認表示であることを隠していたというケースだろうと思われます。

ただ、例外としてどういうケースがあり得るだろうかということをいろいろ考えてみるのですが、1つあり得るかなと思うのが、例えば海外の大手事業者から国内の輸入事業者が購入して、国内で売りました。だから、自分のところには客観的な科学的データがありません。それが、優良誤認表示が疑わしいことが国内で発見されました。しかし、データは国外の大手事業者しかありませんから、うちでは出せませんといったケースはあり得るかなと。

そういった場合、客観的資料がそのときに出せなくても、後で不服申し立てで取消訴訟などが提起されて、後から出てきましたということが、ごくたまには発生し得るのかなと。そういった場合、その後の手続のシミュレーションはどうなるのか。その場合、結果的に困る。それは、被審人事業者についてもそうですし、消費者庁としても手続的に困るということが後で覆った場合に出てくるだろうか。そのあたりのことを現場ではどうお考えなのか、教えていただきたいと思ったのです。

○小早川座長 それは私も伺いたかったところですが、お考えがあれば。

○消費者庁加納消費者制度課長 宮城先生の御質問もそうですが、何点か議論がございましたので、ペーパーで申し上げますと、不実証広告の規定の趣旨につきましては6ページ以下に書いてあるとおりでありまして、6ページは東京高裁の判決を引用しております。

7ページに書いてありますけれども、現行の不実証広告規制は、迅速に措置命令を発することができるという観点から、一定の疑いのあるものを6条の適用について不当表示とみなすというものであります。こういったものについて課徴金の対象にするかどうかというのが今の問題なわけでありますけれども、現行の規定は6条の措置命令、将来に向かっての停止という規定の適用についてみなすとしているにすぎないというところは、押さえていく必要があるだろうと思います。恐らく川出先生の問題意識もその辺にあるのではないかとお聞きしました。

8ページにその点も踏まえて書かせていただいているつもりでありますけれども、ここは最終的には政策判断でありますので、どちらがより合理的かということで御議論いただければということになるわけです。

一方で、1つ目の○に書いてありますように、この不実証広告規制が入れられております事案、先ほど申し上げました効能・効果に関して、よくわからないような表示をしているものにつき、事業者が何も言わないときには、それを不当表示とみなしても構わないだろうという発想のもとにこういう規定を設けておるわけですけれども、2つ目の○で書いておりますように、これは一定の期間までに資料を出してくださいと言って出さない場合に、それを措置命令の適用について不当表示とみなすというものでありますから、それが真に不当表示かどうかというところはさておいて、措置命令との適用関係において不当表示にみなすものにすぎないと思います。

そうしますと、1つは、そういったものについて過去のものにさかのぼってやる。それはそういうふうにすると政策判断すればできる話でありますから、すればよいというだけのことでありまして、そういうふうにして課徴金納付命令の対象にするということもあり得ると思いますけれども、ここに書いておりますように、措置命令と比べますと効果が非常に強いということを踏まえて、そこまですることについてはどうかという点が出てくるのではないかと思います。

それから、先ほどの不服申し立ての観点でありますけれども、例えばこの規定を使って、それがみなされてしまった場合に、将来、取消訴訟をする場合に、後でそれを覆すような資料が出てきたとしましても、この規定との適用関係においては、そういうふうにみなしてしまったということからしますと、それは後で覆すというのはできないのではないかと考えるのが、むしろ筋ではないかと思いますので、そういったことの重みというのも見る必要があるのではないかと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 さらにちょっと補足させていただきますと、ここだけで議論していると最終的には決まらなくて、要は主観的要素の部分とかも全部加味した上で対象を決めていただく必要があるのかなと考えております。

○消費者庁菅久審議官 さらに1点だけ申しますと、6ページに出ております東京高裁判決、平成22年11月26日ですが、これがまさに不実証広告規制4条2項を適用して措置命令を出した案件について、争いがあって高裁まで行ったという話でありまして、この判決によれば、その後、これは私の記憶が正しければ、たしか裁判でも根拠と称するものを出したりしているのですけれども、まずはここに書いているような、時間を過ぎて出したものはもう対象じゃないから、そもそも意味がないという判決を出した上で、念のためということで、その文書についても検討した上で、これは全て当たりませんということまで判決に書いておりますけれども、判決としてはここに書いてあるような判断が示されているということであります。

○小早川座長 措置命令に関しては、事業者としては何か改めればそれでいいのだということですね。改め方というのは、その広告をやめるか、それとも後から実証し広告を続けるか、どちらでもいい。事業者にとってはそれで済んだということになるのに対して、課徴金というのはそれでは済まないわけですね。その場合でも、先ほど加納さんは、政策的には後で覆らないような立て方はあると言われたけれども、後で覆らないというのは、川出さんが言われたように、優良誤認に課徴金を課すのではなくて、不実証広告したことについて課徴金を課すことに踏み切るという意味ですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 そういう理解もできると思います。要は、実体規制について、過去分について、新たな類型を加えるのと等しいような効果が生じるのではないかという気がいたします。

○小早川座長 では、論点は大分明らかになったかと思いますが、その上で、今の点について、なお御意見はありますか。はい、どうぞ。

○齋藤委員 先般、事業者団体などからヒアリングをしまして、そのときに出ましたけれども、納入業者が納入したものが本当に名称・特性が100%確実であるか、そのとおりであるかを判断するのは極めて難しいという認識を彼らは述べておりました。私もそう思います。

事故米の事件があったときに、400社ぐらい農林水産省で流通経路をたどりました。全員がうそをついたわけではないわけです。ほとんどの者がだまされたということだったと思います。最終の末端消費者に、これは本当にいい和菓子ですよということで市場に提供したものが、実は事故米だったという業者もたくさんあるわけです。そういうものにみんな課徴金をかけるのか、ということに最後は行き着くことになります。

もう一つ、名称であれば、例えばズワイガニがありますけれども、越前ガニも松葉ガニもズワイガニです。遺伝子分析しても多分区別がつかないと思います。納めるほうがうそをついて納めたときにどうやって見きわめるのかということになります。こういうことを踏まえて考えると、どこまで課徴金の対象にするのか、悪質性の強いものだけに限定するかということに絡んでくると思うのです。今の不実証広告と多分リンクすると思いますので、申し上げておきたいと思います。

○小早川座長 まさに今おっしゃられたように、これは次の主観的要件のところとも深くかかわりますので、その先の話はちょっと後に置いておきたいのですが、それ以外で不実証広告に関連して何か。はい、どうぞ。

○宮城委員 今、消費者庁のほうから御説明のあった、覆らないのだという点が私には、理解不十分なのかもしれないですけれども、理論的に腑に落ちなくて、結局優良誤認表示とみなすということですから、擬制でありまして、優良誤認表示と評価するわけですね。そうなると、優良誤認表示、有利誤認表示であれば取消訴訟で争えるわけですね。そうすると、後は条文のつくり方の問題であって、これを課徴金対象としておいて、後で争えるという形に条文をつくってしまえば、政策的にはそれで済む話ではないかと思われるのですが、だめなのでしょうか。

○小早川座長 一種、処分段階での立証責任の転換みたいな話で、ただし訴訟になったらそうはいかないよ、と。

消費者庁のほうで何か。

○消費者庁菅久審議官 4条2項を使って措置命令を出しても争えないわけではなくて、先ほどありましたとおり高裁まで争われているわけです。ただ、1つ考えられるケースは、その期間内に合理的根拠というものを事業者が提出した。事業者はあると思った。それを受け取った消費者庁のほうは、それを調べた上で合理的根拠はないと判断して、したがって、根拠がないということで命令を出した。こうなれば、裁判に行けば、その出したものに根拠があるかないかという争いが裁判で展開されるということになると思います。

そういう意味では、先ほどの決まるというのはいろいろなケースがあると思いますけれども、そういう争い方はもちろん今でもあり得ると思います。何も出していなければ、法的には根拠はないよということになってしまうと思います。

○小早川座長 税務訴訟ですと、行政処分段階では納税者の側が全然証拠を出していないで、訴訟になって初めて出してきたという場合、これはしようがないから、処分はそこで覆るわけですね。ここでもそういうことがあり得るのか、それとも、この世界ではそういうことは余り考えないで、事業者のほうも出すべきものは最初から出しているはずだという前提で考えるか、というところも1つありますね。

○消費者庁菅久審議官 多分納税と違いますのは、この場合は根拠なく盛んに広告をして商品を売って、売り上げを上げているという事実があるわけであります。したがって、そういうことをしているのに、根拠がなく著しい効能・効果があるような表示をしているというものに対して、どういうふうに措置をとるかということから出てきたということかと思います。

○小早川座長 では、白石さん、その次に、川出さん。

○白石座長代理 宮城委員の御提案は、不実証広告規制は措置命令については、法令で決まっている日数の期間内に出さなければ、不当表示とみなされる。だけれども、課徴金については、裁判で確定するまで合理的根拠を示す資料を出すことができると法律を書けばいいのではないかという御提案だと思います。それについて、そういう制度は難しいとか、それならできるという御意見を宮城委員はお聞きになりたいのではないかなと私は思いました。

○小早川座長 では、川出委員。

○川出委員 今の点ですが、現行法の4条2項が、一定の期間を定めて資料を提出することを求め、それを出さなければ、優良誤認表示とみなし,それが後になって覆ることはないすという制度になっているのは、被害の拡大を防止するために措置命令を出すという場面の問題であるからだろうと思います。これに対して、課徴金については、そのような緊急性はないわけですから、例えば、資料の提出期間などという規定は設けず、端的に、1号の優良誤認表示につき、立証責任を事業者側に転換するという制度の枠組みはあり得ると思います。ただ、そうなると、現在の不実証広告規制とは、趣旨の異なる制度になりますので、不実証広告を課徴金の対象とするかどうかという議論の立て方自体が変わってくるように思います。

○小早川座長 はい、橋本委員。

○橋本委員 さっき確認したかったのは、不実証広告規制の対象になった時点で、その措置のときに既に課徴金の対象にしたほうがいいのかなと私は思ったので、優良誤認と確定するということではなくて、それが不当な表示であるとなった時点で課徴金の対象にすることはできるのでしょうか。先ほどの議論の中では、その辺がよく理解できなかったので。

○小早川座長 そこは、今までの議論でクリアできているのではないかという気がします。不実証であれば措置命令もできるし、課徴金も課せられる。その後は、措置命令については、その理由で措置命令になったのだから、それに対応してくださいということになるわけですが、課徴金については、いや、本当は優良誤認じゃないのですよという抗弁を後でできるかどうかというのが、さっきの議論だったと思います。

はい、山本委員、どうぞ。

○山本委員 伺っていて、私もちょっと混乱してきたのですけれども、先ほどの消費者庁さんの御説明ですと、一定期間の間に説明ができないことをもって課徴金の要件として、それに対して課徴金を課すことになるわけですね。後から新たに証拠が出てきたとしても、それは考えないということであれば。そうすると、ほかの課徴金に比べて、かなり要件の性格が変わってくるのかな。要は、一種の手続違反といいますか、それに対して課徴金を課すということなので、ほかの場合とかなり性格が変わってくるような気がしております。

私はどちらかというと、やるとすれば一種の証明責任を一部転換するという趣旨で、ここでは不実証広告に対して課徴金を課すということをイメージしておったものですから、それでも現在の不実証広告規制とは少し性格はずれると思いますけれども、もし課徴金をほかの要件との並びで課すとすると、一種の証明責任の転換をして、したがって、後から証拠が出てきた場合には、それは課徴金を課せないことになるのではないかと思っておったのですけれども、どうなのでしょうか。

先ほど小早川座長が言われた課税のケースはよくある話ですね。推計課税などをして、しかし、訴訟の段階などになって、新たに実額反証が出てきたときには、それは処分もできないということになるので、そこはどちらかというのを整理して議論しないと、かなり違った制度になるのではないかという感じがいたします。

○小早川座長 消費者庁、どうぞ。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 いろいろなケースがあるので、なかなか一概には言えないのですけれども、単に物理的に隠しているということで出てこないというよりも、結局根本の部分は同じで、表示している段階で売っているものと書いていることが違うかどうかということに対して、違う場合にはアウトだと言っているだけで、その証明をどうするかというやり方が分かれているということなのです。

実際に後から出てきそうなケースというのは、物理的に隠しているというよりも、どちらかというと科学的に、その当時の科学技術では証明できなかったけれども、後から証明できるというのはあり得るかもしれないということですね。治療法とか効能というのは、今の技術で証明できないけれども、つくって売っている人は絶対効くと信じて売っている場合が意外にある。

それで、科学的根拠を出してください、標準的な意見を出してくださいというと出ないので、済みません、それはやめましょうということがあるのですけれども、その場合にはたまたま何かの啓示か何かでそう思っていた部分が、科学的にもしかして証明されてしまうことがあり得るかもしれなくて、そういうものをどう考えるかということではないかと思います。どちらかというと意図的に隠しているケースというのは、実務上は余り想定しがたいということで、要は合理的かどうかを証明できない。それが後から証明されるかどうかということだと。

ただ、ポイントは、売っている、広告している瞬間は、その表示と売っているものが合っているかどうかが科学的には証明できないということであって、それに対してどう考えるかということだと思います。

○小早川座長 はい、長田委員、どうぞ。

○長田委員 ずっとお話を伺えば伺うほど、例えば薬でも効能・効果がきちんと立証できていなければ、それはうたえないですね。それと同じで、その時点で立証できていないものの効果・性能を表示しておいて、後ほどそれが証明されたからといって、過去の証明される前の表示が正しかったということにはならないと思うので、そのときに持っている証拠の範囲の中で効果・性能というものをうたうべきもの、それが表示広告ではないかと思いますので、その将来出てくることなどを想定して行政の手続を心配する必要はないのではないかと思います。

○小早川座長 消費者庁、どうぞ。

○消費者庁菅久審議官 もう一つつけ加えさせていただくのは、これもあくまで表示を規制しておりますので、効果・効能があるかどうかというよりは、書いているだけの効果があるかどうか、表示しているだけの効果・効能があるか。書いているような効果があれば書いていいというだけの話でございますので、ある意味では根拠なく原産国を書いているのと似たように考えていただければ、何もわからないのに書いているのがよろしくない。だけれども、立証するのは、さっきの仕入れ先から探っていけばわかるような話であればいいのですけれども、そうじゃないので、こういう新たな4条2項みたいな規定を入れたというのが1つであります。

それから、一定期間内に出してくださいというのは、その期間に説明してくれというよりは、そもそも表示するときにそういう根拠を持ってやっているでしょうから、持っているものを出してくださいということで、通常2週間とか、そのぐらいの期間で、あるものをとにかく出してくださいというと、大体あるのは全く出さない、もうごめんなさいというケースが1つ。もう一つは、いろいろ出すのですが、それは表示には適合を全くしていないものを出してくる。この2つのケースが実務上は多いということであります。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 くどいのですけれども、科学的に正しいかどうかを景表法は別に問うているわけじゃなくて、売っているものと表示が違っているかどうかを問うているということを御理解いただければと思います。

○小早川座長 さて、かなり議論が出ました。ある1段階における証明責任の転換ということで説明可能な制度はあり得るという感じの御意見が多かったかと思います。ついでに言えば、それを覆すことを制度的に認めるかどうかということを議論していましたけれども、黒田さんがさっき言われたのは、啓示を受けて自分で信じて売っていたところ、それがたまたま後で科学的にも証明されたという場合ですが、それは、経験的にはほとんどあり得ない。逆のケースのほうが圧倒的に多いのだろうと思うので、そうだとしますと、実際には行政の判断が後に覆る可能性は余りないのかなと。事業者の側で意図的に根拠資料を隠しているということを考えないとすれば、そんな感じもします。

最初に申しましたように、ここで1つの結論を決め打ちということでもありませんので、この論点はその程度にしたいと思います。それでは、岩田委員。

○岩田委員 まだ出ていない論点なのですけれども、優良誤認、有利誤認については課徴金の対象にするということについては、しっかりした意見の一致があると聞いていて思いましたけれども、先日の産業界からのヒアリングで商工会連合会の方が言っておられましたし、日本フードサービス協会から紙で、メニューに関するガイドラインについての意見書が出てきておりますが、それらの中で繰り返し言われているのは、実は現在でも問題があるのですけれども、何が優良誤認で、何が有利誤認かということについての基準が事業者側にわかりにくい。特に、中小零細企業にとってはわかりにくいということが繰り返して言われていたと思うのですね。

それは、措置命令の対象になっている今日でも同じ問題があるのだと思いますけれども、それに課徴金を課すということになると、もっと強い効果を狙ってのことだと思いますので、いま一度、何が優良誤認で何が有利誤認なのか。そして、法律の条文では、それが著しく優良とか著しく有利とか、また著しくというのはどういう程度なのか、企業側は戸惑うと思います。

それで、きょうのもう一つの配付資料、ガイドライン等についてというのは、これは多分全部ではないと思うのですけれども、判断基準になるものがこれだけ膨大であるということ。そして、これが多分現実に事案が出てきた都度、判例を積み重ねるように、そこで新たに通達が出たりして今日に来ていると思いますので、必ずしも体系がよくわからないし、密度も違うと思うのですね。ですから、間違いを避けたい。だけれども、ぎりぎりの境界線はどこかということを知りたいときに、今のガイドラインは本当にわかりにくいと思います。事例情報は結構たくさんある。それから、判例の情報も結構たくさんあるのですけれども、基本的な考え方というのでしょうか、それについてもう少しわかりやすく示す必要が、課徴金を入れるのだったらあると非常に強く思います。

例えば配付された資料の11ページから19ページが、優良誤認とは何か、有利誤認とは何かということの解説の部分だと思うのですけれども、ここに当たる中身を見ると、ほとんどが事例情報だったり、有利誤認についての情報は結構あるのですけれども、実際問題になっている措置命令の対象になったものは、有利誤認よりもむしろ優良誤認のほうが多いということなのですが、優良誤認とは何かということについては半ページの記載しかないのですね。ですから、そこに産業界の戸惑いがあると思います。判断基準をこの際、ぜひ明確にしていただきたいというのが1つですね。

もう一つは、このガイドラインと業界がつくっている自主的な団体のガイドラインというものがあって、そこもふくそうしているような印象を今回強く持ちました。ですから、基本的な考え方、判断基準みたいなものは行政がしっかりわかりやすく定めて、今あるものを超えてというのは難しいと思いますので、今ある考え方を再整理してわかりやすく周知できるように準備する必要があると思いますし、後半にあります個別の事案というところについては、むしろ業界が中心になってといいましょうか、行政と業界が一緒になって領域別のガイドラインというのをこれからつくっていくべきかなと思いました。

ですから、この際、判断基準というのをぜひわかりやすくシンプルに、それをどんな媒体でつくるかということも含めてですけれども、御検討をお願いしたいと思います。

以上です。

○小早川座長 法律の書き方の問題と、法律ではなく行政の工夫で今までのやり方をさらにわかりやすくしていくということと、そこは両方あり得るかもしれませんが、いずれにしても、執行側としてはいかがですか。

○消費者庁菅久審議官 これまでここに書いておりますのが、もちろん全てではないのですけれども、景品表示法はあらゆる商品、サービスが対象ですので、基本的な考え方に基づいて、その応用として、それぞれの業界ごとにいろいろなものが、比較広告とか二重価格表示とか、いろいろなパターンに応じて、それをより個別の例に当てはめると、ということで、またつくっているということでございますので、そういう意味では数が多くなっているということはあるかもしれません。今、食品対象ですけれども、Q&Aという形で整備していますが、そこではまさにそういう基本的な考え方を含めて、わかりやすく書こうと思っておりますし、これからもそういう努力は続けたいと思います。

ただ、1つ見ていただきたいのは、この表のマル1、マル2、マル3に、現に措置命令が出ている案件というのがどういうものかというのですが、こういう言い方はよくないかもしれないですけれども、これを見ていただければ、この表示と実際がわかれば、迷うはずのないようなものが実は措置命令になっております。ですから、課徴金の対象ということで言えば、措置命令になっているものが対象になるわけでございますので、そういう意味では本当に法に違反するぎりぎりは何かという話になると、何事も難しいところがございますが、現に問題になっているものは何かというと、ここにあるような、ハイオクと言いながらレギュラーガソリンを売っているとか、合格者数についても267名と言いながら、200名という話じゃなくて97名とか、こういうものが違反になっております。

少なくとも、何が措置命令になるかということに関しては、ぎりぎりどうかという懸念は少ないのではないかと考えております。これは、あくまで実際上の問題でございます。

○小早川座長 はい、夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 ただいまの事業者サイドから見ました御意見というのは、これまでも法解釈を明確化するとか、運用の透明化を図るという意味では、行政なりが御努力されてきて、事業者側もそれぞれの取り組みをされてきたと思いますけれども、確かに措置命令につきましては、明確な基準でなさっていらっしゃると思います。ただ、それが措置命令にかかるまでの危ういラインが、今までのガイドラインですとなかなか見えにくいというところはあったかと思いますので、そういうふうに事業者団体はよくおっしゃいますので、それは今後も一層工夫していく必要があるのだろうと思います。

それとは別に、今、対象行為を議論しているわけですので、優良誤認、有利誤認というのは課徴金の対象にしましょうという合意がおおむねできておりますし、指定告示規制もこれまでの実態から見たときに、今回、課徴金に含めるのは外してもいいのではないかというところは、私もそういうふうに思います。そして、今、問題になっている不実証広告につきましては、私はなかなか判断ができないので、これからほかの議論の関連等も含めて考えさせていただきたいと考えております。

○小早川座長 時間の関係がございますので、適当なところで切り上げたいのですが、告示指定についても、もし御意見があれば。ありませんか。では、齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 過去の措置命令を見てみると、という説明がありましたけれども、これに納得できないところがあります。これから漏れているものがあるのではないかという意味で納得できない。出ているのは、確かにこのとおりでしょう。

これは、解釈がどうかということをお伺いしたいのですけれども、弁護士会、司法書士会、行政書士会、医師会が報酬のリストをつくっていて、我が事務所はこれを適用していますという説明を受け、利用者が値切ってもなかなか応じてくれない。事務所は正しいことをやっている、世間はこんなものですよ、という説明を受けたことがあります。ところが、その後、公正取引委員会から警告を受けて、それを変えた、あるいは撤去した団体がほとんどだと思います。

そのときはこのリストに従ってやっていればいいのだろうと思い、これは優良なところだろうと思って取引していると、根こそぎ、テーブルそのものが違法であったという場合、この景品表示法の対象になるのかどうかということです。これをお伺いしたいと思います。

○消費者庁菅久審議官 そのときそのときの事実に合っていれば、基本的には問題ないと考えます。

○小早川座長 ある時期にはこういう内部基準が、協会基準がありました、それに従ってやっています、ということですね。ないものをあると言ってはいけない。

○消費者庁菅久審議官 そういうことだと思います。

○齋藤委員 では、そのあるものが違法なものであったということでもいいわけですね。

○消費者庁菅久審議官 違法であれば、何らかの法律で措置をとられることになると思いますけれども、少なくとも景品表示法ではカルテルは取り締まっておりませんので、それは景品表示法の違反ではないと思います。

○宮城委員 今、テーブルとおっしゃったのは、例えばの話、事業者団体でつくられているような、昔、公正競争規約、今、ちょっと名前が変わりましたね。公正競争規約でいいですか。そのようなことをおっしゃっているのかな。それだったら、私は基本的に公正競争規約は、消費者庁も公取もかかわって消費者団体の意見なども聞いてつくられているので、それに合致している場合に景表法で違反になるということは、まず考えられないのではないかと理解しているのですが。

○齋藤委員 報酬体系です。相談料。

○宮城委員 それは表示の問題じゃないです。

○小早川座長 認可なしに仲間内で決めている基準というのはあるのかもしれません。今の話は、そういうことかなと思って伺っていました。それではほかに。岩田委員。

○岩田委員 措置命令と課徴金の関係をちょっと確認したいのですけれども、措置命令というのは前置ですか。措置命令があったものの中から一定の要件にかなったものが課徴金になるのか、あるいは措置命令をする必要もなく、それ自体はなくなっているのだけれども、やり得が残っているので、措置命令なしで課徴金ということもあり得るのか、単なる質問です。

○小早川座長 どうぞ、お願いします。

○消費者庁菅久審議官 独禁法専門家の白石先生を前にしゃべるのは、ちょっとつらいのですけれども、それは制度のつくり方によりけりだと思います。独占禁止法の仕組みで言えば、措置命令に当たるものと課徴金納付命令というのは別立てになっていますので、手続上はどっちだけということも可能なのですけれども、通常は一緒に出す。それは、違反を認定した上で、違反を認定した対象でお金を課しますので、いずれにしろ違反を認定して課さなければいけませんから、普通は一緒に出すことになりますが、手続としてはばらばらになっているので、どっちかだけで可能。それは仕組みのつくり方でしょうけれども、通常であれば違反を認定して、その違反の対象でお金を課しますので、課徴金が入るとすれば当然措置命令をして課徴金をするというのが普通の姿だと思います。

○小早川座長 それでは、黒田さんと、白石さん。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 今の検討状況だけ申しますと、まだそういうふうに決め打ちで決めているわけではなくて、そういう裁量とか、いろいろ議論はありますけれども、執行の機動性とかを確保する。それと、実際の抑止効果といったものを確保する上で、どういう仕組みのやり方があるのかということを検討している状況ですので、まだどういうふうに決めているというわけではありません。

○小早川座長 お名前が出ましたので、白石さん、一言いかがですか。

○白石座長代理 恐れ入ります。今、お答えになったとおりだと思いますので、つけ加えることは余りないのですけれども、違反行為が終わっている場合でも措置命令は今でも打てることになっているし、そういう事例は多くあると思います。

それから、せっかく発言の機会がありましたので余計なことをつけ加えますけれども、独禁法の課徴金の条文では、違反者が違反行為を終わってくれないと課徴金の計算ができないということに今のところなっています。実際問題としては、命令のときまでに終わってくれているので、困った事件はこれまでないことになっているのですけれども、景表法の場合は、多くの事例では終わってくれるかもしれませんけれども、終わってくれない事件も出てくるとしたら、そのときには課徴金の命令はちょっと後になることも、独禁法より高い確率であり得るということになるかなという感じはいたします。これは、余計なつけ加えで、御質問に対するお答えではないのですが。

○小早川座長 ありがとうございました。

あと、いかがでしょうか。第1項目の、措置命令の対象と課徴金の対象の関係については、以上のほか、指定告示に係る表示はどうするか。これに関しては最初に宮城委員が、お触れになりましたね。それは入れていいか。

○宮城委員 入れなくていい。

○小早川座長 入れなくていいという御意見ですけれども、ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○小早川座長 では、そういう御発言があったということで、「対象行為」の項目についてはこの程度にしましょう。次の「主観的要素」のところでもまた関連した話が出てくるかと思いますが、一応ここで区切りたいと思います。

それで、長丁場ですので、ここで休憩ということにしたいと思います。ちょっと延びてしまいましたので、予定では10分休憩とあるのですが、5分間休憩をすることとします。

(休憩)

(3)「対象事案」のうち「主観的要素」について

○小早川座長 それでは、再開いたします。これまでの議論に続きまして、次は、最初のリストの中の「マル2主観的要素」の議論に入ります。主観的要素なるものの意味をどう捉えるかということもありますが、経済的不利益賦課の要件として、違反行為についての主観的要素を必要とするかどうか、仮に必要とするとした場合に、その内容についてどう考えるかということで、時間は14時20分ごろまで、もうちょっと延びるかとも思いますけれども、その辺をめどに議論していただきたいと思います。

それでは、最初に御説明ありましたところを踏まえて、御意見、御質問等おありの方はどうぞお願いします。はい、どうぞ、宮城委員。

○宮城委員 消費者庁にB案の中身についての質問なのですが、B案の下の段の○の3番目、「例外的に対象から除外する要件については、法人が違反行為者となる場合が多いことなどを踏まえ、不当表示を防ぐための必要な適切な管理がされていなかったことなど」としているのは、今回の改正法案で7条が入ったようなコンプライアンスシステムをつくることが義務付けられるということで対応されると。そのようなことについて,この義務が然るべく果たされていることを例外要件として考える。だから、消費者庁がこれを考えているわけじゃないのでしょうけれども、そういったことをおっしゃっていますか。

○消費者庁加納消費者制度課長 そのとおりでありまして、B案にしても、それからC案の一番下の○で似たような記載をしておりますけれども、主観要素を要件とした場合に、その主観要素をどういうふうに認定していくかというのをよく検討していく必要があると思っております。1つの考え方としては、こういった形で管理がされていないということを手がかりとしていくことも考えられるのではないかという趣旨であります。ただ、今般の改正法の話については、まだ閣議決定した段階にすぎません。国会でまだ何も議論されていない状況でありますので、この時点でそれを前提とするのは、消費者庁からは差し控えたいと思います。

○宮城委員 その点に関して、これを例外要件とした場合の問題点ということだけ述べておきたいのですが、これは1つにはメリットがあって、この制度をつくっているか、つくっていないか、表示を正しくするような社内体制をつくっているかどうか、コンプライアンスシステムをつくっているかどうかということで客観的に決めるというのは、1つには主観的要件を一つ一つの自白みたいな供述などを得なくて、客観的な要素で決められるという点ではメリットはあると思います。

比較的客観で決められるということで、いいことはあると思うのですが、これは内容をかなりの程度具体的にガイドラインなどで定めないと、そういった内部統制システムというのは理論的には裁量範囲がかなり広いところなので、下手すると一応の体制をつくっていますよということで免罪符になってしまう。実は知っていてやっていたのに、談合事件などでもかなりの程度、形としてのコンプライアンスはつくっているのに、談合はさっぱりなくならなかったという過去の経過もありますので、これは気をつけて使わないといけない道具だなとちょっと感じました。

○小早川座長 本日の範囲ではないけれども、後の「減免」のところにもコンプライアンスシステムの話が出てきますね。今のご指摘はそれとも共通するか。

はい、長田委員、どうぞ。

○長田委員 御専門の皆さんに教えていただきたいのは、経団連さんが故意・重過失というのを要件とすべきだということをすごくおっしゃっていて、でも事例に挙げていらっしゃったのを私が聞く限り、あれが重過失なのか、よくわからない。さかのぼって調べればわかるような表示を間違ってしていた場合とかは、仕方がありませんけれどもみたいなことをおっしゃっていたと思います。その辺の整理がよくわからなかったのと。

それから、資料の10ページのマル1、マル2、マル3、マル4と書いてあるところの2番目の対象行為の範囲が広過ぎると、表示が過度に抑制的になるおそれと書いてある、この「表示」というのは、表示にもいろいろあると思います。しなければいけない表示がきちんとされていれば、基本、消費者は選択できるのではないかと思うのですけれども、それが景表法の対象になるような、それにプラスされていく表示に対して、それが過度に抑制的という言葉の意味がいま一つわからないのですが、それがどうして消費者の利益が害されることになるのか。これはどなたが整理なさったのかわからないのですが、そこを教えていただきたいです。

○小早川座長 第1点については、故意・重過失という言葉は、きょうのペーパーにはないのですね。その辺、消費者庁でどういう整理をしてこのペーパーをつくっておられるかという形でお聞きしてもいいかと思いますが、それと第2点と。

○消費者庁加納消費者制度課長 故意・重過失と言いますのは、平成20年の改正法がそういう規定分類になっていたということだと思いますけれども、本日のペーパーはそこまではまだ私どもとしては別に決めているわけでも何でもなくて、まずそもそもこういう主観的要素を要件とするのかしないのかというあたりから、委員の皆さんの御意見をいただきつつ検討を進めていきたいという趣旨でつくっております。その際の考え方としては、A案、C案という形で書いていますが、それをする、しないという形ではっきりしているものと、それから折衷案みたいな形で、こういう考え方もあるのではないかということでお示ししているということであります。

恐らく重過失かどうかという議論につきましては、例えば主観的要素が要るのだとなった場合に、故意なのか過失なのか重過失なのかといったところで、また検討していくことになろうかと思います。

それと、長田委員の御質問、資料の10ページのマル2だと思いますが、ここで書かせていただいておりますのは、課徴金自体が措置命令に比べますと効果が強いのではないかと考えるということで、そこを押さえる必要がありますねという観点で書いております。萎縮とか過度の抑制ということですけれども、別のところでも似たような記載をしておりますけれども、表示は独禁法のカルテルといったものとはちょっと違う。

表示というのは、事業活動に必然的に伴う要素であることを踏まえないと、先ほど来、岩田委員とかから萎縮効果みたいなお話があったと思いますけれども、そういう観点が事業者から必ず指摘がありますので、そこは制度設計においては押さえる必要があるのではないかと思っておりまして、そういう観点でこの表示が過度に抑制的になるというのは、不当表示に該当するかもしれない、しかも課徴金を課すかもしれないということであれば、表示への抑制効果というのはあり得ると思いますから、そこは事業者の観点から踏まえる必要があるのではないかという趣旨で書いております。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 1点補足しますと、このミネラルウオーターの例で言うと、「いろはす」の後ろにある四角の中の表示だけだと、消費者もかえって選びにくい面が出てくるのではないかという意味で、言いたかったことは、消費者にも余り利益にならない面もあるのではないかということです。

○長田委員 四角以外の。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 いや、四角だけだと。全ての製品がこれしか表示していなかったら、果たして消費者は商品を選べるのかと。

○小早川座長 「品名 ナチュラルミネラルウオーター」という四角ですね。

はい、加納課長、どうぞ。

○消費者庁加納消費者制度課長 何度も恐縮でございます。

それから、長田委員が第3回会合における事業者団体からのヒアリングの過程で、恐らく経団連さんだと思いますけれども、重過失に関する御意見があった。これは、経団連さんの御意見ということだと思いますけれども、第3回の資料2を拝見しておりますと、経団連さんは、対象事案については悪質性の高い事案にすべきではないかということをペーパーでおっしゃっている。

その理由としましては、表示といっても、単なるミスのものから意図的にやる悪質性が高いものまでいろいろあるということと、カルテルとかインサイダー取引というのは、非常に悪質性が高い事案だということだと思いますけれども、表示というのはどうかということだと思います。これは、私、先ほど10ページのマル2に関しまして申し上げましたけれども、それと似たような観点ではないかと思われます。

議論が先走って恐縮ですけれども、表示につきまして事業者の方からよく言われますのは、意図的にやったのではないのだけれども、ミスといいますか、そういうことで結果的に不当表示といったことをしてしまうこともあるということはよく言われておりまして、そういう観点からペーパーで申し上げますと、11ページあたりでいろいろ書いております。1つ目の○で「さらに」と書いておりますけれども、その下の明朝体の「例えば」と書いておりますが、輸入業者がこういう指示をしたということであります。小売ではなくて、製造業者とか輸入業者にミスがあって、小売が結果的に不当な表示をしてしまったということもあるわけです。

そういった場合に、輸入業者に対してやるというのは、もともと原因をつくっておるわけですからまだしも、小売に対してもやるのかということについてはどうかという御意見はよくいただきますので、そういったところも念頭に置きつつ議論いただければありがたいなと思います。

○小早川座長 宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 そういったお話は伺っていて、私としてはちょっと理解できないのは、というか、ごめんなさい、論点を広げるつもりもないのですけれども、委員間で雑談的に言っていたのは、主観的な故意・過失の問題とかかわるのですが、それは複数の事業者、上流と下流という流れがあった場合に、事業者の中で並べるというのもあるのですけれども、複数の事業者がある場合に、ごめんなさい、うまく言えなくて、上流の事業者と下流の事業者がいて、それは表示の主体、つまり不当表示として課徴金を課される対象の被審人事業者の範囲をどう画するのかという問題なのです。

つまり、今、小売店とか量販店のお話が出たと思うのですけれども、そういった場合はメーカーがあって、小売店や量販店があって、その表示主体はどこになるのかということはちょっと考えなきゃいけないのではないか。そうでないと、故意と過失と言ったって、誰が考えて、誰が責任を取るのだという話がもう一つある。つまり、小売店がどうという話が出ましたけれども、製造元の販売事業者が表示・広告をしていれば、それは基本的な考え方としては表示・広告をやっている主体ということになるわけですね。

それは、メーカーの責任ということで景表法の解釈としてはなるはずですが、それが必ずしも単純にいかない場合があって、例えば家電製品の量販店などでは、量販店が独自に表示広告をしていて、メーカーは知らないということも起こるでしょうし、もうちょっと特殊なケースでは、美容医療などでチェーン的にたくさんの医院が1つの何とかクリニックという形で表示広告を打っている。だけれども、その医院の個々は独立で、わけのわからない会社が1つにまとめて、インターネット広告や雑誌広告を打っているというケースもあって、表示広告の主体として課徴金を課されるのはどこになるのかということも、この主観的要件との関係では1つ考えておかなければいけないのではないか。

ごめんなさい、うまく説明できない。そういう問題意識なのです。

○小早川座長 では、白石代理。

○白石座長代理 ありがとうございます。

今の宮城委員のご指摘の点ですけれども、資料11ページの加納課長から御説明があった事例で、参考として東京高裁判決の判示がかぎ括弧で示されていますけれども、アンダーラインのところで、そういう複雑な場合の表示主体について判断していて、アンダーラインが4行ありますけれども、3行目で、「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」は表示主体となるということです。

これは具体的に何かというと、外国の業者がイタリアでない国でつくった衣料品なのに、イタリア製と偽って小売業者に説明した。その小売業者は、それを信じてイタリア製と、自分の小売店のロゴの入ったタグに表示をつけた。そういう場合を念頭に置いていただくといいと思うのです。自分への納入業者がイタリア製だと言って、それを聞いて、自分のロゴのついた札をつけた場合は、小売店も表示主体になる。そういうものも措置命令の対象になるというのが、これまでの景表法の考え方なのですね。ベイクルーズとかビームスとか、いろいろな名宛人に対する措置命令事件で、資料に掲げられているような東京高裁判決が出ているので、ある程度この分野では固まった考え方だと思います。

それを前提にした場合に、ビームスやベイクルーズの事件のいきさつが本当はどうだったかは別にして、一般論として、自分は何も悪いことはしていない、ただ説明を聞いて、そのとおり自分の名前のついたタグに誤った表示をつけただけだという事業者がいた場合に、そのようなものにまで課徴金を課すのかというのが、11ページの問題提起だということになると思います。

○小早川座長 岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 同じ問題なのですけれども、きょうの第1のテーマで齋藤さんもおっしゃったのですけれども、こういう事例を考えていただきたいと思います。私が関係した会社を、メーカーですけれども、イメージしてもらったらと思います。メーカーは原材料を購買するのですけれども、かつてのように顔の見える関係で原材料は購買できないのですね。調達先はグローバルになっていますから、海外から調達していることは普通ですし、ネット購買でどういう人が売っているのかわからないようなところのチャネルで購買することも日常的なのです。

そこには常にリスクがあるので、会社としてはリスクを最小限にするために、例えば新しい企業と購買取引を開始するときには、その企業の信用調査みたいなこともできるだけやる。それから、例えば買う原材料の品質基準みたいなものも決めていて、その品質基準に合致したものでないと買わないとか。社内で自分の会社を守るためのチェックといいますか、社内のプロセスを導入しています。導入しているのですけれども、それですり抜けることもあるわけですね。例えば、何かの原材料で純度100%のものを求めていた。その純度100%ということを売りに商品のコマーシャルとかをつくる。ところが、納入されたものは50%だと。それは、今、言ったようなプロセスでチェックしたけれども、チェックし切れなかったということが起きるわけですね。

ましてや、全ての原材料について、こういうプロセスに乗せるわけにはいかないので、大抵の会社は金額基準とか、ある基準を設けていて、大規模の購買については、こういう丁寧なプロセスを経ますけれども、小さいものは例外にする。ましてや、小規模・零細企業でしたら、こういう社内プロセスを構築するということすら難しいということもあると思います。

今のような例だと、明らかに表示主体はメーカーです。原材料の提供者ではなくてメーカーですね。純度100%だということをうたい文句にしたメーカーです。でも、そのメーカーが是正命令の対象になるというのはわかるのです。早く表示をやめさせるというのはわかるのですけれども、このメーカーもある意味では被害者で、やり得をためているわけではないわけですね。本来、純度100%のお金を払っているわけです。純度50%の値段で買ったものを100%に偽って、それで高い値段をつけて売っていたら、やり得なのですけれども、このメーカーは100%だと思って、100%の純度の高い商品の値段を払っているわけですから、このメーカーにはやり得はないわけですね。

仮に課徴金を課されたときに、求償すればいいじゃないかという議論もあるかもしれませんけれども、現実的には求償する手続を本当にメーカーに課すのですかとか、課徴金で課された金額の何倍もの損害を受けるわけです。ブランドを毀損されて売り上げを落としている。ということを思うと、ある意味ではこういうケースだとメーカーも被害者だと思うのですけれども、こういう場合に本当に課徴金の対象にするのですかということをよく考えていただきたいと思います。これは、本当に日常的なビジネスの現状だと思うのですね。ですから、こういうケースをどういうふうにして救済するかという書きぶりとか仕組みはいろいろあるかもしれませんけれども、例外なく全てというA案というのはないと思います。B案かC案か、どちらかではないかと私は思います。というのは意見です。

引き続き質問は、意見になるかもしれませんけれども、B案は事業者側が立証できれば、それを例外的に取り扱うということなのですけれども、これは何を立証させるかということについて、もう少し具体的にお示しいただかなければ、B案というのは立証責任をどういうふうにかけるかによって、限りなくA案になったり、逆に限りなくC案になるのです。ですから、B案を提示されるのだったら、具体的にどういう責任を事業者に課して、その場合には例外的に課徴金を免れるかという、ここをもっと具体的に、今回ではなくて次回以降だと思いますけれども、それをお示しいただかなければ、B案の議論の意味はないと思いますので、それもあわせてお願いしたいと思います。

○小早川座長 今の、何を立証するのか、ですね。C案だって、その問題はあるのかもしれません。たしかに、行政側と事業者側それぞれで何についての立証が問題なのかということは、何となくあるような気がするのですが。もうちょっとさらに敷衍していただけませんか。

○岩田委員 今以上のことはないのですけれども、先ほど一つの事例を出して申し上げましたけれども、例えば社内的にそういうチェックをする体制があるということをメルクマールにするということでしたら、そんなにハードルが高いとは思いませんけれども、逆に宮城先生がおっしゃったみたいに、それではちょっと実質的なことにならないとなって、何を立証しなければいけないかというところが膨大になってくると、本当にA案と実際は変わらなくなるという不都合が起こるから、何を考えていらっしゃるのかという、きょうの時点ではニュートラルな質問です。

○小早川座長 加納課長。

○消費者庁加納消費者制度課長 B案の「ただし」のところは何かという御質問ですが、よく検討させていただきたいと思いますけれども、主観的要素として何かを入れることを仮にしますと、故意とか過失あるいは重過失かもしれませんけれども、そういうものに帰着するのではないかと思います。20年の景表法改正の際も、これと似たような発想の書きぶりとなっておりますので、仮にB案をとるとした場合に、書きぶりとしては最終的にはこういうところに帰結するのではないかと思われます。これは、条文の書きぶりとしてということです。

ただ、注意義務を尽くす内容をどういうものとして想定しているかというのは、深める必要があると私どもとしても思っておりまして、例示としまして、先ほど御指摘がありました管理の体制を踏まえていることを一つのメルクマールにするとか、それ以外にも注意義務を尽くしたかどうかというのは、当該事業者においてどういった対応措置がとられていたかとか、それらいろいろと体制以外の面も含めまして、総合的に考慮して判断することになると思いますので、そういった判断要素などを検討していくということはあり得るのではないかと思います。繰り返しになりますけれども、最終的な条文の書きぶりとしては、これに近いようなものになっていくのではないかと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 ちょっと補足ですが、主観的要素自身を御議論いただきたいということで、まず例示を挙げておりまして、まさにそこも議論していただきたい部分でございますし、先ほど岩田委員がおっしゃった、こういう例を考えてほしいという例を仮にオーケーだといった場合に、まさにそれを証明してくださいということですね。つまり、顔を見ない購買関係でだまされたとか、知らないで買ったというのを誰がどういうふうに証明するのが一番いいのかということを、まさに今、検討している状況でございます。

○小早川座長 はい、川出委員、どうぞ。

○川出委員 まず、主観的要素を必要とするかどうかという点ですが、先ほど、岩田委員がおっしゃったように、課徴金を課すと酷な事例があるのではないかということに加えて、課徴金の目的は違反行為の抑止にあるわけですから、資料の10ページのマル3にありますように、事業者に過失がない形で不当表示がなされた場合に課徴金を課したとしても、それは抑止にならないと思います。抑止のために課徴金を課すということは、要するに、不当表示をしたら課徴金という不利益が課されることを告知することで、事業者に対して不当表示をしないように注意を尽くさせることを意味しているわけですから、注意を尽くした場合にまで課徴金が課されることになると、注意を尽くす意味がなくなってしまい、制度の目的に反する結果が生じます。その点から、少なくとも過失は必要だということになると思います。

その上で、過失が要件になるとして、その立証責任を消費者庁と事業者のどちらに負わせるのかが、B案とC案の違いということになろうかと思います。この点については、行政処分の場合に挙証責任の転換というのがどのような場合に認められると考えられているのか、後ほど教えていただきたいのですが、刑事事件の場合に一般にその許容要件として言われていますのは、第1に、検察官が、挙証責任が転換される事実を証明することが困難であること、第2に、検察官が立証する事実から、挙証責任が転換される事実への推認が合理的だということ、第3に、挙証責任が転換される事実につき、被告人による反証が容易である、ということです。
課徴金は刑事処分ではありませんが、おそらく、刑事処分のほうが行政処分よりも挙証責任の転換の要件は厳しいでしょうから、それを、ここで問題とされている過失の存在にあてはめて考えてみますと、まず、客観的な優良誤認表示があった場合には、通常は、その表示つき過失があるという事実上の推定が働くということであれば、推認の合理性は肯定できることになります。次に、証明の困難性ですが、これは、過失をいかなる内容のものと捉えるかということと関わります。これまでのご発言をお聞きしている限りでは、事業者の側で、その表示をするまでにどのような手を尽くしたかという内部的な手続が問題になってくるように思います。それを行政庁の側が立証するのは難しい面があり、逆に、事業者側は、まさに自分たちが何をしたかということを立証すればよいわけですから、過失がなかったという反証をすることは容易だと言えると思います。そう考えると、挙証責任を転換することの説明がつくだろうと思いますので、B案がいいのではないかと考えています。

○小早川座長 行政処分の場合の挙証責任の転換の話は、さっきもありましたが、そこで出ていたようなことではないかと思います。結局、転換といっても、本当に転換するのではない。最後は取消訴訟で、裁判所で決まるわけですが、その前の処分の段階で、行政庁としてはどこまでやるか、どこまで認定できていなければならないかという問題でしょう。具体的に言えば、これはいろいろ議論があるところではありますが、その処分をしたことについて行政庁として批難はされない、たとえば国家賠償法上の違法性は認められないという処分であって、当該状況のもとでのその処分は認められないとして裁判所で取り消されるのだけれども、しかしそれは、処分の前提となっている行政庁の認定と裁判所での審理の結果とが違うので、だから、裁判所で取り消されるのだという、そのようなことはあるわけですね。そういう話ではないか。

○川出委員 B案の理解に関わる話になると思いますが、課徴金を課すには過失が必要であるとすれば、その要件を充足しているということは、本来、行政庁が立証すべきものだろうと思います。しかし、仮に、B案が挙証責任を転換したものであるとすれば、課徴金納付命令の取消訴訟で、事業者が注意義務を尽くしていたかどうかが争いになったときに、それを事業者側が立証できないと取消しは認められず、課徴金を課されることになるわけですね。行政処分について、この意味での挙証責任の転換が許されるための要件についての議論はないのでしょうか。あるいは、そもそも、行政処分については挙証責任の転換ということ自体が問題にならないということでしょうか。

○小早川座長 挙証責任の問題もありますが、その前に、注意義務といっても、その中身が何なのかというところが問題ではないでしょうか。さっきの岩田委員の御発言ともつなげれば、事業者としてやるべきことはやっていました、それ以上どうしろというのですかと言いたくなる場合はあるだろう。それは結局、注意義務の内容、やるべきことはどこまでだったのか、疑いを持って上流のメーカー等に厳しく問い詰めるということをしなければいけなかったのかという話ですね。そこのレベルの問題が基本ではないかという気がしたのですけれども、どうですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 ちょっと詰める必要はあるのですけれども、基本的には座長が今まとめていただいたのと同じような考え方をとっております。

B案のただし立証することができたときというのは、立証責任の転換のように読めるというか、少なくとも運用としては、B案を採用した場合には、原則としては課しますという規定ぶりになることを前提としておりますので、その事業者のほうでどういう措置をとったかということについては、ある程度事業者のほうから行政に対して示していただくような運用につなげていくことを想定しておりますけれども、厳密には立証責任そのものは行政が引き続き負っていることになっているのではないか。

例示としていいかどうかよくわからないのですけれども、刑事でも違法性阻却事由みたいなものがあるときに、違法性の立証というのは検察官がずっと負い続けていると思いますけれども、違法性阻却事由があることについて、被告人の側から実質的には言わないといけないとなっているのと同じような感覚ではないかと思います。

○小早川座長 はい、石戸谷委員長代理。

○石戸谷委員長代理 そもそも要件として主観的要素を必要とするかというところで、今までの金商法とか独禁法で制度設計している議論の積み重ねがあって制度設計して、実際運用しているわけですので、私の考え方としては、そこをスタートラインとして考えて、その後の運用で何かこうやったほうがいいというのがあるのであれば、それを加味してやっていけばいいなという考え方でおります。ということは、独禁法にしても金商法にしても、刑事罰と違うので、主観的要素が要らないということで行政処分なのでスタートしているわけですので、私はベースはそこからスタートすべきということで、この資料の2の9ページ、主観的要素を必要とするかについては、マル1、マル2、マル3ということで、必要としないというところに根拠があると考えております。

10ページに主観的要素が必要だという論拠がありまして、マル1で、先ほど来、インサイダーとか、それ自体が悪質だというのと、景表法は違うのだという話が出ておりますけれども、実際のインサイダーというのがどこまでがインサイダーであるかというのはいろいろ考え方がありまして、そう一義的にこれはインサイダーだから悪質だというものではないので、運用をどうするかというのが実際議論になったりしているので、ここを強調するのはちょっと当たらないのではないかと思います。

マル2は対象範囲が広過ぎる場合云々ということなので、これは先ほど出たところなので、いいですかね。

マル3は問題ないのですけれども、マル4は執行が不十分となれば、抑止効果が不十分。これは、全体として枠組みをどう絞っていくかというところで考えればいいので、そのために主観的要素をとってくるというのは、やり方としてぐあいがよくないのではないかと思います。

ということで、原則としては、初めから故意・過失が必要で、それを立証責任の転換ということではなくて、行政処分なのだからもともと不要なのだけれども、運用していって、こういう面があるので、そういう場合は除外するかという考え方でいきますと、インサイダーの議論を見ていましても、うっかりインサイダーみたいなものをどうするかみたいなものが議論されていて、証券取引等監視委員会でもそういうものはやらないようにという運用の考え方が出ているようです。

そうだとすると、そういうものを踏まえれば、注意義務を尽くした場合に除外するという考え方で、12ページでいけばB案というところに帰着してくるのではないか。法律の組み立てと運用が違ってしまうのは非常にぐあいが悪いし、先ほど来いろいろ出てきているような問題というのは、B案で除外するところで十分対応できると考えております。

それと、内部統制の問題については、内部統制のシステムを構築していない場合に過失があるというのは、これは当然そうなると思いますけれども、システムを構築していたからといって過失がないかというと、それはまた別の話であって、それがよく機能しているかどうかということを踏まえて過失の有無を判断しないと、そこは例外が非常に幅広くなって、ほとんど骨抜きになってしまうことがあると思うので、そこは気をつけたいと思います。

○小早川座長 はい、委員長、どうぞ。

○河上委員長 委員長というよりも、民法を研究している人間として申し上げたいと思います。たとえば、不法行為の責任を問題にするときには、主観的要件と客観的要件というものが問題になるのですが、現在の民事責任を議論する場合には主観的要件は事実上問題になりません。つまり、過失というのは客観化されておりまして、その状況下において当事者がなすべき行為義務を尽くしていたかどうかというところに収れんされて、事実の評価の問題として考えられる。つまり、相手の認識とか心の中はわからないわけで、結果から見て、その状況下でなすべきことをきちんとしたかどうかということで過失を認定するほかありません。

という意味では、実は主観的要件をA案にするか、B案にするか、C案もですけれども、というのは余り大きな問題じゃないのではないかと個人的には思っております。恐らくここで問題になるのは、当該事業活動を遂行するに当たって、通常尽くすべき注意を尽くして、一定のことを認識できたのに、それを怠って漫然と表示したということが言えれば、そこで表示についての批難の中身はでき上がるのではないかと思います。

実は、先ほどの前段での議論にも戻っていくのですけれども、著しく優良であるかとか、著しく有利であるかのように誤認させる表示をしているということを言うためには、通常注意していればこんな表示はしないでしょうということでないと、そもそも摘発できないのではないかという気がするのです。ですから、これだけの事実を取り上げて、相手方に対して客観的な要件のもとで議論しているときには、相当の故意もしくは重過失に近いような要件が満たされていることがほとんどだという気がするわけです。

ですから、私も石戸谷委員とよく似ている議論になるのですけれども、主観的要件を要件としないというA案から出発して構わないのではないかという気がします。客観的要件の部分での縛りがあるわけですから、それで足りるのですが、それでも捉え切れないものが出てきた場合に、事業者の側から、自分はちゃんと注意していたのだ。これだけのことを尽くしたのだけれども、なお予見できなかったと注意義務の違反の事実はないということを反証できれば、その限りでここを外していくというB案が、比較的落ち着きがいいのではないかと個人的には思います。委員長としてではなく、一委員として申し上げました。

○小早川座長 はい、山本委員、どうぞ。

○山本委員 先ほど行政処分の場合に証明責任をどう考えるかという問題提起がございまして、確かに行政処分の場合には、通常の行政処分の場合は主観的な要件は要求しないということがあり、あるいはどちらか一方的に証明責任が初めにあるという考え方を大抵の場合はとらないので、完全にパラレルな議論はちょっとしにくいかと思うのです。

ただ、私は先ほど申しました税法の分野で若干議論がございまして、推計課税です。実額ではなくて、売上高とかほかの経済的な指標から収入額を推計するというものがございます。そこでは、私も税法の専門ではございませんので、正確かどうかわかりませんが、基本的には推定の合理性と推定の必要性ですね。つまり、ある事実があったということから、ある事実を推定・推認する。それが合理的な仮定であるかどうかということと。それから、必要性というのは、要するに納税者の側が必要な情報を出さない場合ですね。ですから、一種情報へのアクセスのしやすさのようなものを考えるということですので、そういう意味で言うと、先ほど川出委員が言われたものに近いなと思います。

ちなみに、税法の場合で申しますと、加算税を課すときに、正当な理由がある場合にはそれを課さないということになっていて、正当な理由というところにかなり争いが生じるわけですけれども、主には大抵ほかの人が関与していた場合です。例えば税理士さんが関与していた、あるいは行政庁の側がある種の通知を出していて、それを信用していたという場合かと思いますので、ここの議論とパラレルではないと思いますけれども、そういうふうにほかの関係者が入ってきたときに、それに対して当人、当の事業者がどれだけ注意を払って、それをチェックしなくてはいけないか。そこのところがこの場面でも問題になるのではないかと思います。

それから、先ほどのそもそも主観的要件は必要かという話ですけれども、主観的要件という表現自体に若干問題があるのかもしれません。ただ、言われていることは、12ページでも注意義務違反があったどうかということだと思いますので、その注意義務違反の有無という点から申しますと、私はこの場合は、その点も川出さんに賛成しますけれども、注意義務違反を一切問わないわけにはいかないのではないかと思います。行政処分の場合は、通常はそういう注意義務違反云々ということは言わないで、専ら違法性だけを要件にして行いますけれども、ここでは抑止のための特別の制度ということですので、通常の行政処分と同様に考えるわけにはいかないのではないか。

先ほどの表で申しますと、9ページのマル3にありますように、これがやり得をとるという制度であれば主観的要素を一切問わないという制度設計もあり得ると思いますけれども、そうではなくて、今回はこれは抑止のための特別な制度であると考えるとすると、一切それを不問に付すわけにはいかないのではないかと思います。ですから、私としては、B案ないしはC案でいくことになるのではないかと思っています。

ただ、前回の事業者さんからのヒアリングなどを伺っていても、例えば流通過程をよく調査する、そこによく注意するということは当然であるのだけれども、それでもわからないことが場合によってはあるという言い方をされていて、私もそのときは重過失の問題というよりは、むしろ単純な過失の問題なのではないかと伺っていたのです。そういう実態からしても、B案でいって構わないのではないか。C案にまでする必要は、実態から言ってもないのではないかなという感触を持っておりますけれども、この辺はもう少し実態等も伺わないと最終的には判断しかねるところかと思います。

○小早川座長 山本委員に1点確認させていただきたいのですが、単なるやり得の吐き出させではなく、行為の抑止であるということですが、ここで措置命令の要件に一定の注意義務違反というのがプラスされてくるのは、抑止のためで、批難をあらわすのではないのですね。刑罰なり何なりの制裁手段との仕分けの話ですが、そこが気になるので。

○山本委員 そこは、厳密に言えば議論はあり得るだろうと思っています。ただ、ここでは抑止ということなので、それを前提にしようということです。

○小早川座長 課徴金を課すことが抑止という目的に適合的かどうかというところで、注意義務というものを要件として入れるということですね。

○山本委員 基本的にはそういうことになるのだと思います。抑止であるという以上、およそ注意を幾ら払っていても、結果として見ると違反行為になる。それに対して課徴金を課すということになると、抑止という制度の趣旨から外れることになると思います。

○小早川座長 それでは、増田委員と、その後、齋藤委員。

○増田委員 忘れていただきたくないのは、被害者は消費者なのです。どういう注意義務を払ったかということは、もちろん議論の余地はあるかと思うのですけれども、どんなに注意義務を払っても表示にミスがあって、それを信じて、その期待すべき効果が得られないものを購入してしまったというのは、消費者なわけです。本来、きちんと表示していれば売れなかったわけですから、そのミスの表示によって売り上げが上がったという意味では、それはやり得という言葉が適切かどうかというのは別ですけれども、そういう利得はあったのは事実だと思います。

それで、本来であれば措置命令だけで抑止効果がきちんとあるべきところ、それが現状抑止されていないとか、今、世の中が複雑になっていて、安く仕入れることがリスクを負うことになる。であれば、高いお金で正しい根拠のあるところから買えばいいのではないかという考えがあります。でも、それだと価格に転嫁されてきてしまうので困るという話になるのだろうと思います。そこのリスクの問題はもちろんあるのですけれども、きちんと把握できなかったことによって利得が上がってしまったことが事実であることは、忘れていただきたくないというのが基本です。

だからこそ、今ここの検討委員会があるわけですから、まずは全てに対して対象としていただいて、主観的要素はなしにしていただく。それプラス、現状の注意義務云々というところの議論であっていただきたいと、一般消費者感情からすれば、そこを強くお伝えしたいと思います。

○小早川座長 それでは、齋藤委員。

○齋藤委員 私も企業にいたときにこういうものにタッチしてきたところなのですけれども、内部でそれはやり過ぎだろう、やめておけという立場にいたわけです。最近、テレビを見ていまして、よくそこまで言うねという、通販とか広告宣伝を見ることがあります。時代が変わったのか、私が陳腐化したのかわかりませんけれども、自分のころならばあれはやめておけと言ったようなものだなというのがあります。しかし、それが摘発されたことは、この何年か見た限りでは多分なかったと思います。そこにはいろいろな判断基準があるのでしょう。

先般来、判断基準が不明確ではないかというのは事業者のほうも随分言っていましたが、課徴金というものを課す以上は何かないといけないだろう。その判断基準は何だということですね。例えば、宅建業法で駅から何分というときには、1分間たしか80mだったと思います。私はそんなに速く歩けるのかと思うのですけれども、それがまかり通っているということなので、それに従っておけばいいということでしょう。

それから、食品は名称が多数あるのでガイドラインはよくわからないと、この間団体の方が言われましたが、私もそう思います。先ほど消費者庁のほうから、ガイドラインをつくるのだ、示すのだというニュアンスのことを伺いましたけれども、これを全部つくれるのか。それから、つくったものだけに課徴金を適用するのかというのも、ちょっと疑問です。新しい産業がどんどん出てきますから、本当に追いつくのかという疑問があります。

それから、民間のガイドラインというのを尊重するのかどうか、活用するのかどうか。これは結構あるので、これを無視するといけないだろうし、民間のものを活用するとなるとアウトサイダーはどうするのかという話が必ず出てくる。アウトサイダーのほうを厳し目に見ないと、結構自由奔放にやっていると私は認識しています。そうすると、消費者庁のほうも何か示せと言われて示したが、市場が時代とともに変わって、もっと過激になっている。このようなときに、このガイドラインからどれほど逸脱しているか、あるいはガイドラインがないのかという議論ばかりするよりは、A案、B案、C案の中にはないのですけれども、私が消費者庁の担当官だとしたら、柔道のように指導を与えてもう一回指導したら有効、技あり、1本となる方法がいい。同じ指導をしても言うことを聞かないときは、それなりに話し合って新ガイドラインができていくこともあるだろう。それでも不服なら裁判所に行けばいいわけです。消費者庁が基準になるガイドラインを示しても、むしろその基準線の方がおかしいということもあると思います。それが繰り返されたら消費者庁のほうが自分のガイドラインを適用できなくなるのではないかという気がしてしようがないのですけれども、いかがでしょうか。

○小早川座長 悪質な事業者がガイドラインを無視して行為を繰り返す、と。

○齋藤委員 そうです。それから、特に新規事業のときにはガイドラインなどないと思います。そこで悪質なことが行われる。新規事業、新商品の分野が問題になることは結構多いと思います。そこで、消費者庁のガイドラインをあらかじめ示していないじゃないかと言われても、それで本当にいいのかというのが私の疑問です。

○小早川座長 消費者庁、いかがでしょうか。

○消費者庁菅久審議官 お答えになっていないかもしれないですけれども、景品表示法の違法の基準というのは法律に書いているわけでして、それに基づいてあらゆる産業を対象にこれまで何十件と措置命令をしてきたわけです。それで、裁判まで争われる可能性もありますが、基本的には多分負けていることはないと思います。そういう意味で、問題のある法執行はしていないと。

ガイドラインというのはもちろん重要性がございまして、これは基本的な考え方をそれぞれの対象分野や商品、サービスに当てはめて、よりわかりやすく示すためのものでございますので、ガイドラインがない商品、サービスのほうが、横断的なガイドラインもありますので、そういう意味ではあらゆるものが対象になっているかもしれないのですが、個々の商品ごとにガイドラインがある訳ではありませんし、そもそもこれは不当な表示の規制でございますので、個々の表示ごとに基準をつくるというものでもそもそもないと思います。

そういう意味で、景品表示法で何が不当な表示になるかという基本的な考え方というのをよく伝えていくことが重要だと思っておりまして、そういうことをこれからもやっていきたいと思っておりますし、そもそも言えば、売っている商品についてどのような広告宣伝するかというのは、まさに自由でございまして、どういうふうにやっていただいてもいいというのが基本であります。ただ、売る商品の内容を御存じの事業者の方が、その内容とまさに自分のお客様に向けて出した広告・宣伝から受けるお客様の印象がずれないようにしていただくという、それをまず基本として、それが大きくずれている場合には問題になるということかと思っております。

ただ、もちろん今回の食品を含めて、個々のケース、お問い合わせのある普遍的なものもございますので、そういうものについては一つ一つ順番に、つまり基本的な考え方を適用した上でわかりやすく示していくという努力を続けていくということかと思っております。

○小早川座長 それでは、唯根委員、どうぞ。

○唯根委員 繰り返しにはなりますが、私たち、消費者が被害を受けたものについて、今回の課徴金制度をつくってほしいという基本に戻りますと、ニセ牛缶事件から50年以上たっても同じことが現状起きていた、表示に間違いがある、広告に間違いがある。それについてということですから、やり得についての不当利得の返還というところまで含めますと、主観的要素の要件は必要ないのではないかと私も思っております。

○小早川座長 では、川出委員。

○川出委員 やり得の剥奪ということからすれば、主観的要素を要件としないほうがよいとご意見は理解できますが、資料の12ページに書いてあるように、それを徹底していくと、恐らく、厳密にどれだけの不当利得を得たかということを認定したうえで、それに対応する額を課徴金として課すという制度にしないと、理屈が合わないと思います。しかし、現在の課徴金の制度は、そうではなく、もう少しざっくりとした計算をして課徴金をとるというものですし、おそらく、今回導入するとした場合もそうなるでしょうから、その点は、やり得の剥奪そのものではなく、それを通じた抑止ということで説明しないと難しいように思います。

それから、1点質問ですが、先ほど加納課長が、B案というのは立証責任の転換ではないとおっしゃったのですが、それは、B案というのは、不当表示があれば、原則として課徴金を課すけれども、当該違反行為者が注意義務を尽くしていた場合には、例外的に経済的不利益を賦課しないというという趣旨を示しただけということになるのでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 そこはもうちょっと詰めさせていただきたいと思いますが、このただし書きの書き方として、立証することができたときは賦課しないという書き方でいいのかどうかというのは、よく検討する必要があると思っておりまして、先ほど来いろいろ議論がありましたけれども、B案の発想は、原則としては基本的に対象になるのだけれども、一定の場合には賦課しないのだということが厳密ではないかと思います。例えば、平成20年法の改正の際の規定は、こういう場合には課徴金を納付しなきゃならないという規定の後に、ただし、これこれの場合と認められるときはできないという書き方になっていまして、認められるか認められないかというところに尽きている。

私が立証責任について申し上げましたのは、座長のまとめていただいたのに共感したところを受けての発言をしたつもりでありましたけれども、行政処分の過程における立証責任の所在については、私もよくわからないところがあります。立証責任について、最終的に問題になるのは取消訴訟の際であろうと思われるわけでありまして、その場合、裁判所がノンリケットに陥った場合には、それは処分行為者である行政のほうに不利な認定がされることになるのではないかと座長がおまとめいただいたようにお聞きいたしまして、そこは私も共感いたしましたので、そういう観点で申し上げたつもりでございます。

○川出委員 そうすると、ノンリケットになるような事態が生じた場合は、B案によれば課徴金は課せないということですね。

○消費者庁加納消費者制度課長 条文の書きぶりがどうなるかということと、あるいは立法政策としてどうするかということになりますが、ただし何とかと認められるときは何とかできないと書いたときには、そういう解釈になるのではないかと思われるということでございますけれども、その解釈と、この立証することができないと書いているところが平仄が合っているかというところは、もう一度詰めたいと思います。

○川出委員 もう一つだけ、C案の下の部分に、主観的要素を要件としてしまうと、行政庁側に負担が生じるということが書いてありますので、その対応としてB案というものが出てきたとすると,挙証責任の転換なのだろうと思ったのですが、その点についてはどのようにお考えなのでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 ちょっとその点も詰めて、もう一度整理させていただきたいと思いますけれども、このペーパーとしては、立証という点でC案における弊害といいますか、執行が機動性を欠く事態に陥らないようにということを意図しているというのはそのとおりでございます。立証責任の点につきましては、もう一度詰めて整理したいと思います。

○小早川座長 論点はかなり明確になったかと思います。全体としては、B案あるいはC案どちらか、という御意見が多いようですが、B案とC案は本当のところどこが違うのか、B案、C案の真意は何かというところをもう一度消費者庁のほうで整理していただければと思います。全体としては、主観的要素と言うかどうかはともかくとして、なすべきことをしたかどうかということ、措置命令の要件とは違うものが、入ってくるのではないか、きょうの御議論はそのように受けとめました。増田委員、唯根委員からは、消費者の被害があるということを重視せよとの御指摘があり、そこは、なすべきことの内容、注意義務の内容は何かという話になるのかと思います。もう一つは、何人かの方から、ガイドラインないし基準の明確化ということがありましたが、これも、事業者の側にとっての明確性ということと同時に、基準の立て方が事業者の注意義務のレベルにかかわることになるのだと思いますが、その際に事業者の都合だけではなくて、消費者の正当な利益の保護ということを加味して考えていくということなのではないかと思いました。そんなところでいかがでしょうか。

○長田委員 済みません。先ほど岩田委員が事例に出されたことですけれども、結局それを非常に優良である、有利であるということを広告していたという事実があって、措置命令なりが出ていることを理解した場合、そのときに純度100%というものを自社で全く立証できないものをそういうふうにうたっていたということで言えば、私は注意義務から言えば少し外れるのではないかと思いました。B案になった場合でも、注意義務をどういうふうに果たしていたかというところはかなり厳しい要件が必要なのではないかと思います。

○齋藤委員 判決についての質問です。

○小早川座長 きょうは、あともう一つありますので、ごく簡単に。

○齋藤委員 白石委員に質問したいのですけれども、先ほど東京高裁の判決を紹介されまして、これは多分そうだろうと思うのですけれども、ダイヤの業界ではなかったですか。

○白石座長代理 ダイヤではなくて、衣料品です。

○齋藤委員 例えば100円均一の商品とかでも、ここまで要求されるということになるのでしょうか。

○白石座長代理 ご質問に包括的に答えられるかどうかわかりませんけれども、ここまでに出た議論に何か付け加えるとすれば、要求される注意義務の具体的内容は商品の額によっても変わってくるだろうと思います。小売業者が非常に高価なものを扱っている場合には、川上までさかのぼって調査する注意義務が必要だということはあり得ると思いますけれども、低価格のものを多品種にわたって取り扱っている事業者に、低価格のものを全て川上までさかのぼれと求めるか。そういった問題を検討しなければならないということも、注意義務という言葉に含まれているのだと思いますので、これまで発言しなかったのですけれども、ご質問をきっかけに付け加えるならば、注意義務という概念の具体的内容を検討する際には、そういうことも考える必要があるということになるだろうと思います。

(4)「対象事案」のうち「規模基準」について

○小早川座長 それでは、次へ移りたいと思います。移るといっても、あと10分しかございません。予定では「規模基準」と「除斥期間」がありましたが、「規模基準」のほうだけは、きょう何とか済ませたいと思うのです。これは、賦課金額による裾切りを設ける必要があるかどうかという論点でございます。これについて、先ほどの説明を踏まえて御質問等ありましたらお願いします。はい、宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 これはお願いになって、本日以外にも消費者庁にお願いしているのですが、この裾切りの問題を考えるに際しては具体的な過去のデータが必要であって、お話をちょっと伺ったりしているのですけれども、要するに過去の措置命令の事案について、どの規模の事業者まで網をかぶせるのかということになりますので、過去の措置命令、できれば公取時代の排除措置の時代にもさかのぼって、処分を受けた事業者における不当表示の対象となった商品・役務の売上額がどの程度の規模であったかという客観的データが得られるのであれば、消費者庁と公取から可能な範囲で構わないので出していただけないかということが1つ。

もしそれがそこまで調査していないので難しいということであれば、例えば被審人となった事業者さん、また今回の食品問題で対象となったり、あるいは自己申告された事業者さんも含めてですけれども、問題となった商品・役務の売り上げはどの程度だったかというアンケート調査をこの調査会としてできないのかということも考えたりしております。ひとつ御検討いただければと思います。

○小早川座長 差し当たりいかがですか。そういうデータというか、過去の措置命令案件についてのシミュレーションみたいな話だと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 ちょっとおしかりを受けるかもしれませんが、その辺の金額が実際幾らするかどうかということについては、まずは切るべきものがどうかということが適当かどうかという御意見をいただいた後に、実際に制度を決める中で我々で議論すればいいのではないかと思っておりまして、率直に申し上げて、ここで金額まで決めていただこうとは我々、思っておりません。

○小早川座長 御質問は、おそらく、そこまでを問題にしているのではなくて、裾切りをしたらどういうものが排除されることになるのかという、その辺の感触を知りたいということではないか、だから、やるか、やらないかということにかかわる御質問ではないかと思いますが。

はい、長田委員、どうぞ。

○長田委員 今の黒田参事官のお答えを受けて申し上げれば、裾切りしないという選択肢をしないとて、すごく高くなってしまって、何も対象になりませんということもあり得ると聞こえてしまいますので、少なくとも前回の法案の段階で出ていた1億円よりはぐっと下げるべきだとか、そういう議論はさせていただかないと、この時間がとてももったいないと思います。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 ちょっとどれだけ可能かどうか、検討したいと思います。

○消費者庁菅久審議官 実際、措置命令では売上高を調べる必要がないものですから、網羅的に調べているわけではない可能性がございますので、そういう意味で可能な限りと。どこまでできるどうか検討します。

○小早川座長 この裾切り問題について、ほかには。宮城委員、どうぞ。

○宮城委員 私ばかりごめんなさい。

この問題を考えるについての基本的な考え方だけ、ちょっと私限りですけれども、こんなことなのじゃないかと思っていることを申し上げたいと思うのですが、1つには、確かに裾切りをある程度しないと、消費者庁の執行部隊の執行力との関係から考えて、全件にやっていくということはかなり難しいだろうと。そうすると、白石先生が以前おっしゃっていたように、かえって執行が滞ってしまって、不当表示をストップできるのかという問題にもなりかねないので、ある程度は必要かもしれないけれども、他方において、もし横並びで考えるとすると、金商法などは1万円という低さになっている。ただ、そこがなぜ1万円で、独禁の場合は100万円でしたか。その違いがどういうことで出ているのかということの分析と。

あと、抽象的な観点としては、余り裾切りの金額を高くしてしまうと、いわばザル法になってしまって骨抜きになってしまって、本来引っかけなければいけない悪質なものが漏れてしまうということも考えなくちゃいけない。だから、実際の消費者庁の体制強化も同時に考えなければいけないと私は思っていますが、体制を強化する上で、どこまでできるのかという現実の力の問題と、骨抜きをしないためにはどこまで網をかけなければいけないかということの兼ね合いではないかと思っております。そこは、基本的な判断かなと思います。

○小早川座長 消費者庁、どうぞ。

○消費者庁黒田課徴金制度検討室長 今の観点で逆にお伺いしたいのは、どのぐらいのカバー率であればザル法じゃないかどうかということでみなしていただけるのでしょうか。つまり、金額についてのデータがなくても、どこまでカバーしていればいいかという部分の御意見をいただければ、別に十分議論できるのではないかと思います。感覚的な感じで結構なのですけれども、例えば95%であればいいとか、90%でいいとか、それはデータが出れば出てくるのですけれども、仮に出せない場合もございますけれども、感覚的に半分抜けてしまうのではだめだとか、3割しかカバーできないのならだめだ。いろいろ考え方があると思うのですけれども、ザル法と言われないように制度を設計するためには、どのぐらいカバーできれば皆さんはオーケーとしていただけるのでしょうか。

○宮城委員 なかなか難しいですけれども、私限りの個人的な感覚からすると、7割8割は引っかけられないと話にならないのではないかという気がしております。

○小早川座長 7割8割というのは、問題となる疑しい件数のうちの7割8割ですか。

○宮城委員 違います。措置命令が発令される事案に対して、少なくとも7割8割ということです。

○小早川座長 この裾切り問題というのは、あとは、まさに金額の。

○宮城委員 それ以外の要件がありますから、あれですけれどもね。

○小早川座長 累積して、何億円取るべきところをこれだけになったという数え方もありますね。

はい、齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員 私は、同じ法律のもとならばみんな平等であるべきだと思っているわけですが、表示というのはみんなの目に触れるものです。この表示なら課徴金がない、これならある。なぜなら、後ろにいる人がこういう人だからということに本当になるのか。目に触れる件数が事業者数として多いのに、そちらは無罪放免、こちらは取り締まられる。これではコンプライアンスを維持できなくなるのではないかという気がしています。

○小早川座長 具体的な額なり率なりはともかくとして、考え方としていろいろ御意見が出ましたので、そこは参考にしていただければと思います。

それでは、「マル4除斥期間」については、今日は時間の関係で入ることができませんでしたが、本日の議事は以上といたします。次回は、除斥期間を含めて、残りの、2.賦課金額の算定方法、3.裁量性の導入の問題、4.調査・手続・徴収の問題を取り扱うことになります。


≪3.閉会≫

○小早川座長 それでは、事務局から何か連絡事項がありますか。

○金児企画官 次回は、3月20日、明後日の14時からを予定しております。なお、本会議の委員の皆様は、この後、委員間打ち合わせを行いますので、委員室へお集まりください。

○小早川座長 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。お忙しいところを熱心に御討議いただき、ありがとうございました。

(以上)