第13回 消費者契約法に関する調査作業チーム会合 議事要旨
日時
2013年1月28日(月)9:30~12:00
場所
消費者委員会大会議室1
出席者
河上正二消費者委員会委員長、山口広消費者委員会委員長代理、大澤彩准教授、沖野眞已教授、鹿野菜穂子教授、北村純子弁護士、千葉恵美子教授、
中田邦博教授、平尾嘉晃弁護士、丸山絵美子教授、山本健司弁護士
消費者庁消費者制度課 加納克利企画官
【事務局】 原早苗事務局長、浅田英克参事官、山田茂樹委嘱調査員(司法書士)、戸上真語政策調査員
議題
一般条項(不当条項/不当勧誘のミニ一般条項)における論点整理議事要旨
(1)ミニ一般条項規定について
<報告の骨子>- 公序良俗違反(ただし、ここでいう「公序良俗違反」とは、旧来型限定的な公序良俗理解とは異なる。)の消費者契約法版を創設する。
- 締結規制と内容規制という二元構成では十分に把握できない局面があり、締結過程と契約内容を融合した新たな規制のカテゴリーを創設。
- 民法で議論されている現代的暴利行為論(特に客観的要素といわれる部分)は参考にはなるが、消費者契約法の趣旨(情報の質及び量の格差・交渉力の格差の是正するために、契約の効力を修正)に則った要件だてをする。
- 状況の濫用の法理は参考にはなるが、これ自体は、困惑類型(威迫的類型)を拡張するものであるから、不当性の一要素としては捉えるが、これに限定した要件だてにはしない。
- 勧誘時の不当性の要素としては以下のものがあるが、整理が必要。
- 困惑類型(威迫的類型)の拡張。状況の濫用、既存の消費者の状況(不安心理や特殊な経済的状況など)の悪用、つけ込みなど。
- 適合性原則違反や不招請勧誘など。
- 目的隠匿型、誤認類型など。
- 不当条項の対象外となった場合の価格関連条項であっても、たとえば、おとり価格や二重価格のような誤認的な勧誘手段(景表法の有利誤認表示など)が用いられた場合には、ミニ一般条項の対象とする。
- 過量販売や次々販売といった類型も対象とする。
<主なディスカッション>
- ミニ一般条項の効果について、学説では全部無効という考え方が多いように思われるが、不当要素の集積の度合いによって全部無効にしてよい場合と、一部無効にとどめた方がよい場合とがあるのではないか。
- 不当条項規制との役割分担が問題となる。基本的に不当条項規制はある程度客観的に行われる必要があるが、内容的な不均衡という客観的要素のみならず、手続的要素・個別事情(例えば条項が不明確であるといった点)が考慮に入れられてもよいという考え方もある。
- 暴利行為でカバーできない領域をカバーすることになると思われるが、単に不当勧誘行為があったというだけで直ちに効力が否定されるというのは飛躍があるように思われる。また、対価規制との関係が問題となり、例えば、暴利行為ではカバーされにくい長期間拘束、過量販売のケースについても、単に不利益が大きいというだけではなく、行為の何らかの不当性が要件として必要になると思われる。しかし、対価条項には介入しないという立場をとるとした場合に、なぜ事業者の行為態様を加味することで無効という効果がもたらされるのかという正当化根拠が必要となる。これらをカバーするものとしてミニ一般条項を設けるのであれば、勧誘行為の態様の不当性と消費者の不利益の程度を総合考慮するということになるのではないか。
- 契約締結過程規制を充実させるというのが前提。しかし、そうであるとして、効果の違いが問題となる。
- 規定の位置も問題となる。
(2)不当条項規制の一般条項に関する論点
<報告の骨子>- 消費者契約法第10 条前段要件は、「当該条項がない場合と比較して」といった文言に修正すべきである。
- 消費者契約法第10 条後段要件については、「消費者の利益を一方的に害する」を維持するが、「信義則に反して」という要件を維持すべきかについては要検討。
- 「消費者の利益を一方的に害する」か否かの判断要素を列挙すべきか、仮に列挙する場合にいかなる要素を考慮すべきかについては要検討。
- 中心条項の規制の可否については、中心条項の定義、及び、中心条項と付随条項の区別が問題となる。中心条項の定義については、中心条項を「契約の主要な目的および対価」に限定するのが望ましいのではないか。
- 個別に交渉を経た条項の規制の可否については、以下の考え方がありうる。
- 個別の交渉を経ているか否かは消費者契約では問わない。
- 個別の交渉を経ている場合には、規制の対象外となる。
- 不当条項規制の効果については、原則として全部無効とし、例外的に一部無効となりうるものを定める。
<主なディスカッション>
- 約款規制においては、約款に書かれた条項を見て不当性を判断するということになろうが、約款規制に限定していない消費者契約法において個別事情を考慮の対象としないという考え方は適切なのか。差止訴訟においてであれば、定型的に判断するという考え方は理解できるが、個別訴訟においても同じことが言えるのか。
- 複数の条項から選んだだけで個別交渉があったということには問題があるのではないか。
- 契約締結過程の様々な要素を考慮して有効性を判断するのがミニ一般条項であり、その際には契約条項も対象となる、というのが1 つの考え方である。
(以上)