第5回 原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会 議事録

最新情報

日時

2011年6月8日(水)16:30~18:20

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
 田島座長、阿南委員、迫委員、立石委員、日和佐委員、山浦委員、山本委員
【説明者】
 消費者庁食品表示課 平中課長補佐、中村課長補佐
【消費者委員会事務局】
 原事務局長

議事次第

1.開会
2.原料原産地表示拡大の進め方に関する論点整理2
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第 (PDF形式:54KB)
【資料1】 原料原産地表示拡大の進め方に関する中間整理(案)(PDF形式:1671KB)
【参考資料1】 第4回の調査会で出された意見等(PDF形式:152KB)
【参考資料2】 第3回までの調査会で出された意見等(PDF形式:190KB)
【参考資料3】 原料原産地表示の義務化に向けて(第4回調査会使用資料)(PDF形式:435KB)
【参考資料4】 原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会 今後のスケジュール(案)(PDF形式:68KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間がまいりましたので始めさせていただきたいと思います。
 ただいまから消費者委員会食品表示部会「原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会」の第5回の会合を開催いたします。部会に引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、阿久澤委員から所用により御欠席との御連絡をいただいております。
 議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。配付資料につきましては議事次第の裏の面に一覧をお付けしてあります。
 座席表の次に、資料1といたしまして、今日、御審議いただきたい中間整理の案を前回より肉付けした形のものでお示ししております。
 参考資料1、2としては、これまでの調査会で出された意見を、第4回の調査会で出された意見と第3回までの調査会で出された意見とに分けてお示しをしております。第4回から委員会での審議が実質的に始まりましたので、分けた形で整理をさせていただいております。
 参考資料3につきましては、第4回の調査会で一度お示ししておりますけれども、今日の議論の参考ということで改めて付けさせていただいております。
 最後に、参考資料4ということで今後のスケジュールをお示しさせていただいておりますけれども、今日は6月8日ということで論点整理の第2回目ですが、次回7月6日に報告書のとりまとめということで最終の回を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 不足がございましたら、また審議の途中でお申し出いただけたらと思います。
 それでは、田島座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○田島座長 かしこまりました。
 本日は、消費者委員会事務局から原事務局長のほか、消費者庁からも御出席いただいております。
 なお、本日の会議につきましては公開で行います。議事録についても、後日公開することといたします。
 それでは、本日の議題に入ります。
 調査会では、第1回で調査会の進め方についての確認を行い、また第2回、第3回では原料原産地表示に関するヒアリング、その他現地調査を行ってきたところでございます。今後はこれまでの議論を踏まえて、本調査会の報告書をとりまとめることとしていますが、本日は原料原産地表示の拡大の進め方に関する論点整理の第2回目ということで、前回の第1回目の論点整理の際に各委員から出された意見を基に、原料原産地表示の義務対象品目を選定する際の基本的な考え方や対象品目の候補の選定方法などについて、私の方で事務局に御協力いただきまして整理しました中間整理案がございますので、これを基に議論いただきたいと思います。
 中間整理案は、これまでの専門調査会で出されましたさまざまな御意見を、原料原産地表示の基本的な考え方、加工食品の原料原産地表示義務対象品目の要件I、IIの考え方、新たな表示方法の実効性、更に原料原産地表示義務対象品目の選定方法の4つの論点に整理したものでございます。本日はこの中間整理案について委員の皆様の御意見をいただきたいと思います。
 なお、この調査会は、今回の調査会を含め、とりまとめまで2回となっております。7月の調査会ではとりまとめを予定しておりますので、それぞれの委員の方々には方向性を示すための最終的なとりまとめに向けて意見の裏付けとなる内容も含めて御議論いただければと思います。

≪2.原料原産地表示拡大の進め方に関する論点整理2≫

○田島座長 まず、私の方から「原料原産地表示拡大の進め方に関する中間整理(案)」の御説明をいたしたいと思います。なお、前回はほとんど議論することができませんでした原料原産地表示義務対象品目の選定方法について、本日は主として御議論していただければと思っております。
 それでは、資料1に従って御説明したいと思います。資料1につきましては事前にお送り申し上げておりましたので、目を通していただいたということでごくごくかいつまんで御説明をしたいと思います。
 1ページ目は、これまでの原料原産地表示についてのいきさつ、あるいはJAS法についてのいきさつ等をまとめたものでございます。
 2ページ目は、「1.基本的考え方について」ということで、第4回の調査会で私の方から提案いたしましたたたき台についての御意見を前回お伺いしたので、それについてとりまとめたものでございます。たたき台の論点マル1、論点マル2、論点マル3、論点マル4について順次記載しております。
 3ページ目にまいりますと、「2.加工食品の原料原産地表示義務対象品目の要件I、IIの考え方について」。食品の表示に関する共同会議で示されております要件I、IIについての御議論を前回いたしました。その過程について3ページ目~4ページ目に記載させていただきました。
 4ページ目に行きまして、食品表示の共同会議の最終報告書で提案されていました「新たな表示方法の実効性」について、すなわちマル1 切り替え産地を列挙する可能性表示、マル2 「国産」・「外国産」または輸入といった大くくり表示、マル3 輸入中間加工品の原産地表示の方法の導入について議論を行った結果をとりまとめております。
 そういうことで、5ページ目に行きまして、本日御議論いただきたいことは「4.原料原産地表示義務対象品目の選定方法について」でございます。
 選定方法の1つの要素として、消費者への要望と事業者の実行可能性があります。消費者の要望については、消費者への直接的なアンケートの実施、事業者のお客様相談室などに問い合わせがある内容を反映させる等のさまざまな施策が検討されるべきである。
 事業者の実行可能性については、論点マル4「頻繁な原材料の変更に伴う煩雑な作業の発生等、事業者によるコスト負担を考える必要がある。また、単純ミスにより生じる食品回収の問題の発生等を考慮して、実行可能性があることが求められるであろう」については、コストの問題、原材料の管理に膨大な費用がかかる、複雑な作業によるミスの発生といった事業者の負担を心配する意見がありました。
 一方、競争ルールの変更によるものなので、事業者の努力に期待したいという意見、ミスによる回収は事業者のコンプライアンスの問題としてとらえるべきなどの意見もありました。
 5ページ目の下の方ですが、これから「さらに議論を深めるべきポイント」として、1つ目、「要件Iに該当するかどうか定かでない食品であっても、消費者からの要望の高いものや、産地偽装表示の問題が起きているようなものについても、義務対象品目として追加できるよう、新たな要件を設定すべきかどうかを含めて引き続き検討する必要があるのではないだろうか」。2つ目、「また、対象品目の選定については、消費者のニーズに沿ったものから順次実施され、また、選定は透明性の高い手続が必要であるのではないか」。3個目、「具体的対象品目の選定方法については、パブコメや意見交換会、現地での情報収集が行われているが、さらにさまざまな施策を組み合わせ、品目を選定していくことと合わせて、消費者の要望がより反映される仕組みについても引き続き検討すべきではないか」。
 これまでの手順については、基本的に食品の表示に関する共同会議の報告書でまとめられている内容に沿って進められているが、それでも生産者の要望が強く反映していないか、消費者の意見はどう取り入れられているか不透明といった点も指摘されており、これらについてもどう考えるかといったところを本日議論していただければと思っております。
 私からの発言は以上でございますので、各委員からどうぞ御意見をお寄せいただきたいと思います。
 一番最初に目が留まったのは山本委員ですね。

○山本委員 今日のこの進め方について確認をさせていただきたいのですけれども、この中間整理案とされているものの「てにをは」も含めて議論するということでよろしいでしょうか。

○田島座長 最終的な報告書の原案は事務局の方で整理いたしますが、お気付きの点、気になる点がありましたら、御指摘いただいても結構だと思います。

○山本委員 その場合パラグラフごとに、この表現はどうこうとか、この内容はどういう意味だという議論になるのでしょうか。もし何も意見がなければこのまま報告書になってしまうということではないのですね。

○田島座長 そんなことはありません。あくまでもこれは中間整理案でございますので、本日の御議論を踏まえて修正等をして、報告書の原案として次回に。

○山本委員 この中間整理の「中間」というのは、今日の時点で中間という意味なのですか。

○田島座長 前回までの中間です。

○山本委員 最終案というものが別途あるという位置づけなのでしょうか。

○田島座長 最終案は次回提案させていただきたいということで、中間整理というのは前回まで、第4回までの御議論の整理という話です。

○山本委員 大きな意味の「てにをは」も含めて、それでは順番にということでいいですね。細かいところはどういう進め方をしたらいいのでしょうか。

○原事務局長 事務局から少し御説明したいと思います。
 前回は本当に項目の羅列だけだったものですから、今回はちょっと肉付けをした形でこれまでの議論をお示ししております。最初のところは原料原産地表示についてのJAS法の中での整理を置きまして、1で基本的考え、2で要件I、II、3でこれまでも共同会議で話された新たな表示方法の実効性についてということで、これまで出された意見を整理してはめ込んでいるということです。4の選定方法についてはこれまで十分な議論がされていなかったと思ったものですから、幾つかこれまでの手順とか議論を深めるべきポイントというものを置いた形で議論していただきたいと思いまして、今日は4を中心にお話をしていただいて、それから、1、2、3について、なお御自分としてはこういった意見もあるということで補足すべき意見があったら、そこもお申し出いただければと思います。最終的に「てにをは」についてはまた次回もございますので、その部分はまた改めて事務局までお申し出いただければと思います。今日は全体の考え方の中で御指摘として是非盛り込むべきものを中心にお話をいただけるとありがたいと思っています。

○田島座長 それを踏まえて山本委員、御意見を。

○山本委員 2ページ目の「基本的考え方について」の前の、報告書の頭の部分といいますか、ここもこの調査会の中でまとめるという位置づけであれば、ここも意見を言わせてもらってよろしいということですね。

○原事務局長 いいです。

○山本委員 わかりました。
 基本的に原料原産地の話をするわけですから、現法のJAS法にのっとったものであるから、そこからはみ出せないものだと思うのです。JAS法とは全く違うことを言い出したら、それこそ新法というか、全く別の新しい法律をつくって原料原産地の議論をするみたいな話になってしまうので、あくまでJAS法にのっとった品質表示という意味での原料原産地表示という位置づけは外せないという大原則があると思うんです。
 その上でちょっと考えてみたのですけれども、まず、1ページの最初のパラの話をします。
 こういうまとめは、消費者委員会とか食品表示部会という、ある意味では公的なところの報告書になりますので、事業者に偏った、あるいは消費者サイドの意見に偏ったとかいうものではなくて、バランスよく表現された方がいいと思って読んでいるわけです。
 例えば最初の1行目、「原料原産地については、消費者の選択権を確保するためにも」というのはどこが出典なのか。一般的によく言われる表現かもしれませんが、こういう報告書をまとめるにはどこかの出典といいますか、公的なといいますか、何かそういうものがないといけないと思います。JAS法そのものには「消費者の選択権」云々という言葉は一切入っておりません。ここは、例えば「原料原産地の拡大については消費者基本計画にも提示されている」とかの表現で良いものではないかなと思うわけです。
 「消費者庁の発足に伴い、食品表示に関する企画立案権限は消費者庁に一本化された」というのは、そのまま読むとそのとおりなのでしょうけれども、JAS法における食品表示に関する企画立案権限といいますが、企画立案するときには当然農林水産省との協議が入っているわけでして、消費者庁だけで全部決めてしまうということではありませんので、これを書くならそういうことも含めて書かないと、1ついいところだけをとったみたいなイメージになってしまって、バランスよくするという意味ではそういうところも注意しないといけないと思います。ですから、最初のパラでは「権限」とか「一本化」を抜くか、あるいは全部細かく書くかというようなことになるのではないかと私は思います。
 ちょっと長くなるので1回切ります。

○田島座長 ありがとうございました。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 今、始めの部分についてのコメントをいただきましたので、それに対する反論をしたいと思います。
 まず、JAS法の枠内でという御意見でしたけれども、これはJAS法の枠にとどまる必要はないと私は考えます。というのは、もう来年度にも表示の一本化に向けての動きが始まるわけですし、それに向けた消費者基本計画のさまざまな動きがもう動き出しているわけです。この委員会に求められているのは、これまでの共同会議での議論を超えて、これから消費者の選択権を確保するためにどうしたらいいかということが諮問されているわけですから、そこにこだわる必要はないと思います。
 そして、今、一本化の話等もございましたけれども、これは基本計画の話の中でいろいろな工程表もこれから具体化していくと思いますので、しっかりと書き込むという方向性がいいと私は思います。

○田島座長 立石委員。

○立石委員 私は今の山浦委員の意見に同感でございます。JAS法の枠にこだわる必要はないと思います。
 この歴史的経過を見て思うのは、JAS法というのは、品質に関する適正な表示というところの法律であります。ここは前回、田島座長と平中課長補佐の間であった法律の解釈の違いがあり、私はそこではっと気付いたんですけれども、原産地が品質なのかという議論は、実は平成12年に生鮮食品品質表示基準をつくったときにも原産地が品質なのかということについて、激しい議論のやりとりがあったそうです。原産地が品質に当たるのか、ここのところでさまざまな矛盾を生んでいるわけです。原産地が品質に当たるかというところはおかしいわけでありまして、例えば水産物についても、太平洋を泳いでいる魚が焼津に揚がるか気仙沼に揚がるか、これはわかりません。魚に聞いてみなければわからないのですけれども、揚がったところが産地として表示されるということです。
 それから、私が実際に経験した例ですけれども、埼玉の生産者がネギとニンジンをつくっているのですが、荒川の橋を1本渡ったところの群馬で借地で同じ農法でつくっているということでも、今の法律は、群馬でつくったものは埼玉の生産者がつくっても埼玉と表示できないのです。こういった矛盾だとか、特に野菜、青果物は都道府県名、市町村名で記載しなさいというのが法律です。これに違反するとペナルティーが科されるのです。
 こういったことで、産地の違いによる品質の差は本当にあるのかというところは現実にはごくごくまれなのです。このときの経過についてはもう少し掘り下げる必要があると思うのです。なぜ生鮮品すべてを対象に一遍にこのときに義務化したのか。それも都道府県名、市町村名での表示の義務化を行ったのか、そこがなぜかというところがこの議論の中で抜けているのです。
 このところの背景でいくと、海外農産物が非常に増えてきたという中で、何らかの制限措置をとるという方法、これはセーフガードという方法がありました。これはネギだとか、シイタケだとか、畳表といったものがそういう対象として検討されたところでございます。それから、併せて食品偽装が増えてきたという中で、縛る法律は当事は不正競争防止法しかなかったのです。だからすばやくこういった偽装を規制、取り締まることができる法律にJAS法があったのです。JAS法でやると決めたということは、これは品質と違う世界をJAS法に持ち込んだのです。そこのところをもう一回原点に立ち返って、JAS法とは何ぞや、品質とどう関係するのかという整理がないうちに、ずっと原産地表示をJAS法で規制しているから、今、さまざまな矛盾が起きているのです。そこをもう一度ここの中にきちんと織り込んでいただきたいと思います。
 以上です。

○田島座長 ありがとうございました。確かにおっしゃるとおりだと思います。
 こちらの方から、迫委員、どうぞ。

○迫委員 ちょっと議論の方を戻させていただいて、基本的に今回の検討が何のためにというよりも、どの法に基づいて行っていくべきものなのかというスタンスの確認が最初に必要だろうと思っております。
 そう申しますのは、法の一元化という議論がこれから始められる、その一元化された後の話を、法が一元化される前に、その議論もされないうちにしてしまっていいのかどうかという問題がございます。つまり現行法の中の議論はあくまでも現行法にとどめておいて、なおかつ一元化された後に、本来基本的に一元化された新たな法律、またはJAS法を完全に改正するという流れかもしれませんが、そこの根本となる法が変わったときに、それぞれの表示についてはすべて変えなければいけないことになってくるはずです。そうすると、それに対しての議論は別のものであると基本的に考えております。
 そういう意味で、今回の中間整理の中で書かれている文言についてなんですけれども、私はこの中間整理を見たときに、一元化が先にあるというか、もう既に一元化が決まった後の書きぶりになっているのではないかというような感想を持ちました。
 特に後半の方の本日「さらに議論を深めるべきポイント」の一番最後のところ、6ページになりますけれども、従来の共同会議の報告書について生産者の要望が強く反映していないか、消費者の意見はどう取り入れられているか不透明であるという指摘があるところですが、ここの議論は本当にあったのかどうか。そう申しますのは、私の個人的な感想ですけれども、この中間報告は大変文章もよくできて、基本的に品目横断的な要件が決められていて、そこでの細かい見方とか解釈とかは、法とは違いますので、解釈に関しては若干報告書の方はいろいろあってもいいかとは思うんですけれども、そういうものを今後どうしていくのかということを考えたときに、不透明であるという指摘が明確にされているのかどうか。現行制度の根拠になっているものでございますので、これを否定するのであるからには、それを否定する事実をきちんと押さえておかないと否定するべきではない。つまり現行制度そのものをすべて否定することにつながっていくのではないかとおそれるものであります。
 以上です。

○田島座長 ありがとうございました。
 表示の一元化がスケジュールに上っていますが、今回の検討はあくまでも現行法の枠内で考えるべきではないかという御意見でございました。
 どうぞ、委員長代理。

○日和佐委員 議論を少しまとめるという意味合いで発言させていただきます。
 表示の一元化は既に決まっていることでして、平成24年度に法案提出するというスケジュールで進んでいるわけです。ですから、法案としては24年度には固まるということですね。ですけれども、正直に言いまして、具体的なことについては余り進展していないという事実はあるので、一元化された表示の方向性についてはまだ言えない状況にあるけれども、表示の一元化は24年度をめどに法制化される、法律が上程されるというスケジュールで進んでいます。
 そういうバックグラウンドがある中で、原料原産地拡大は消費者基本計画で決まっているわけですけれども、そのことを議論するに当たって、具体的にはJAS法に依拠していかざるを得ないわけですが、ここで矛盾があるのは、先ほどもお話が出ておりましたけれども、JAS法は品質に依拠した表示の法律です。したがって、なぜJAS法ができたかということの経過が1ページに書かれているわけです。できたときの状況と今の状況を比較すると、JASマークをめどにみんな買いましょうと当初は言っていたわけです。ですが、そういう状況ではなくなってきてしまっている。全般的に品質のレベルは上がってきているという状況の中にあって、では品質をどう考えたらいいのかということになると、なかなか品質というものの定義が難しいということもあります。
 ですから、食品表示を統一するに当たってJAS法がそのまま持ち込まれるということは、現在の時代の状況を反映すれば恐らくこれは無理なのではないか。そういうことが予想されるということがありますので、2ページの頭の5行の辺りで、ともかく統一に当たって「改めて議論される必要がある」という書き方になっております。
 ただし、皆様の御意見を是非いただいて、食品が統一されるに当たって品質という概念を維持していった方がいいのか、あるいはそうではなくて、品質ではなくて消費者の知る権利を前面に持っていった方がいいのかというような、ここで皆様の意見がまとまれば、調査会としてはこのような方向を望んでおりますといいますか、勿論統一の検討会で正式には議論されますけれども、それに向けての調査会としての意見として提出していくことはできると思っていますので、意見をまとめることは可能かどうかです。

○田島座長 座長代理から論点をかなり整理していただきました。
 そういうことで、しばらくただいまの論点について御意見の表明をお願いいたします。
 では、迫委員。

○迫委員 今の説明は大変わかりやすいと思っております。この調査会がこの後の現行法下での食品表示の議論と一連のものでない、連動しないという話であれば、今の御説明は非常にわかりやすくて、本来どこかでそういう議論をしておくべきであろうということはわかるんです。
 ただ、今回の調査会は、今後の少なくとも一元化される前の制度の中にそれを反映していかなければならない。そういうことから考えていきますと、今後の趣旨であるとか、要望であるとか、考え方を整理するのはこの調査会の席ではないのではないかと思うわけであります。
 以上です。

○田島座長 ありがとうございました。
 それでは、山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 先ほどの日和佐委員のまとめ方は私もそのとおりだと思っておりまして、その点からいいますと、この調査会に課せられた考え方は新しい基準をつくるといったことが非常に重要な課題かなと思います。
 まず、品質の問題を出されたことについて、先ほどのお話では悪い品質のものがあって、消費者にとって食生活上問題であるから、品質を上げていくためにどういうふうな基準をつくったらいいかという趣旨で、その当時としては品質という問題が注目されていたというわけですけれども、今回の場合、時代背景としては偽装の問題とか、あるいは国産のものだけでなくて海外のものが非常に増えてきている。その中で消費者が非常に気にしている海外のものもある、あるいは製造方法、飼養方法とかさまざま問題についての消費者の関心が広がっているという時代にあって、個別には黒糖をどうするかとか、昆布巻きをどうするかという議論も始まって、その結論がもう出ている段階ですから、ずるずるとそういったものを拡大していくわけではなくて、やはり何らかの新しい基準をこの場で考えて、品質という枠にこだわらずに、もっと現在に即した新しい基準を考えなければいけない。そういう意味で品質というところにこだわるべきではない、またJAS法という枠も、今となってはもうちょっと違うのではないかという認識を示すべきではないかと私は思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 山本委員。

○山本委員 日和佐委員の説明はわかりやすいのですけれども、ということは、‘一元化の法律が提出されるのを前提に’と言い出すと、例えばこれまで3回のヒアリングとか視察調査はそういう前提で、言ってみればどうなるかわからない法律をにらみながら行ってきたのだろうか、と思うわけであります。今までのこの調査会における原料原産地表示の議論は、「品質の解釈」がどうのこうのという問題があって、基本的にJAS法の中において品質をどう解釈するかといった話を前回もされましたね。しかしながら、JAS法から飛び出したような話はなかったわけでありまして、何か知らないけれども、急に一元化があるからということを前面に置いてしまって話を始めるということになると、今までの議論とはちょっと異質なものになるのではないかという気がしますし、どうなるかわからないことを予測しながらああだこうだと言うのは全く無駄であり、核心を捉えていないような報告書にまとめられるということになるのではないかと不安になります。ですので、一元化は予定されているけれども、現在の原料原産地についてはJAS法の中で決められているので、その中で原料原産地について議論を深められるかということになると思います。
 そうしたら当然品質の話が出てきますが、品質は原料原産地のところだけに出てくる言葉ではなくて、ほかの法律も含めてあらゆるところに品質という言葉は出てきます。原料原産地だけ‘品質’が飛び抜けて違う解釈になってしまうと、ほかの法律との整合性といいますか、解釈と整合性をどうとるんだという問題が出てきます。ここだけ例えば情報開示だとか、消費者の要望だとかというのを全部品質だと言ってしまったら、ほかの法律はどうなるのということにもなるので、そういうことを考えますと、やはり現行法においてどのように対応していくのが、今、まさにこの時点ではベストではないかと思うわけです。そういうまとめ方をしないと、何か架空の話になってしまうと思っています。

○田島座長 ありがとうございました。
 立石委員、どうぞ。

○立石委員 この間の議論の中で、食品衛生法による表示の部分とJAS法による表示の部分に矛盾が生じていることは指摘されています。例えば加工の定義にしても、食品衛生法上では形態を変化させること、カットでも加工に値するわけです。ところが、JAS法では属性の変化、いわゆる火を通したり、調味するというのが加工の定義なんです。こういったところからして全く異なっているものを、メーカー側は食品衛生法とJAS法をにらみながら一括表示をつくっているわけです。だからこれを一本化するのは当然正しい道なのです。
 ところが、原産地はこの法律の中で縛れるのかというところはちょっと違っていると思うのです。今週の日曜日に、日本農業新聞が一面で韓国の表示のことを紹介していた記事を見られた方も多いかと思うのですけれども、韓国の法律はJAS法も食品衛生法もあるのですが、それを超えたところに農水産物の原産地表示法に関する法律を一本化をしているのです。別の法律体系をつくってやられております。
 当然韓国の方でも10年以上も前に同じような議論があったようです。勿論食品事業者さんは皆さん反対をされている。ただし、ここで韓国はどういう観点からこの法律を押し切ったかというと、やはり消費者の知る権利と、流通の公正な競争に重きを置いたのです。いわゆる不正な流通を含めて、こういった流通に対して秩序を守るという部分を命題として、この法律を掲げたのです。
 だから、今、韓国の場合は、この表を見ていただければわかりますが、日本は22品目群が対象ですが、韓国は258品を対象としているのです。更に202品目の原材料に対しては、ナンバーワン、ナンバーツーの重量の物に対して原産地表示を義務づけている。
 こういった仕組みで何を守るかというと、消費者の知る権利、特に今、ここに書いてある「根強い身土不二」、自分に近いものを食べたい、それから、温暖化防止、フードマイレージの観点からできるだけ近いものを食べたいという消費者の知る権利、知る要望はプラスの情報もマイナスの情報もです。原産地は品質ではなく、プラスの情報とマイナスの情報と両方含んでいるわけです。プラスの情報というのは、今、言ったような近いものを食べたい、マイナスの情報はリスクです。リスクをどう感じるかというのは、消費者個々に違うわけです。アレルギーの方はアレルギーのことが非常に重いですし、添加物についてもそうですし、それぞれの感性の中でリスクの感じ方が違うわけです。この中で表示は適切にされるべきだと思います。そういった点で、今のこのやり方で本当にいいのかというのは、これだけ矛盾がある中で、今のJAS法と食品衛生法の一本化は当然ですけれども、原産地の在り方は何なんだろうというところを是非もう一度考えた上で、新たな法律体系もこの調査会で提言すべきと私は思っております。
 以上です。

○田島座長 新たな法体系の提言というと、かなり時間を要する話だと思います。
 阿南委員、どうぞ。

○阿南委員 法律がどうなるかわからないと山本さんはおっしゃいましたけれども、私も今の矛盾点を明らかにするのはいいことだと思います。この消費者委員会にもそういう責任があると思うのです。ですので、私は50%ルールは見直すべきだという意見ですけれども、それも含めてどこに矛盾があって、今後どうあるべきかということを基本的に考え直していくのは必要だと思います。先ほど日和佐さんがおっしゃいましたけれども、消費者の選択権なのかというところも考えていくのは必要だと思います。
 私は現在、日本惣菜協会が呼びかけた、お持ち帰り弁当と総菜の表示についてのガイドラインづくりのための検討会に参画しています。お店のお総菜の売り場に来た消費者から、これはどこでできているのか知りたいという問い合わせが結構ありまた、お弁当については今は義務はなくて「おかず」と書けばいいだけなのですけれども、メインである原材料はどこのものなのかという問い合わせが多いので、それに答えるために検討をしています。例えば唐揚げ弁当だとしますと、メインの原材料である唐揚げについて原産地をきちんと書きましょうという方向性で、進めています。お総菜売場では、プライスカードにできるだけそういう情報を出しましょうということで、原産地をきちんと書く。そしてアレルギー表示についてもきちんと記入しましょうということです。総菜協会の会員さんたちはそれこそ小・零細事業者がとても多いので、全員がすぐにできるというわけではないのですが、でも、ガイドラインを決めて、自主的にそれを目指していくことによって消費者にこたえていきましょうということで、そうやって底上げを図っていこうという考え方です。
 ですから私は、今後は、事業者団体がやるそうした自主的な取り組みを応援したり、サポートしたり、評価したりするということを考えていくことが必要なのではないかと思います。震災後は、この材料は福島や宮城、栃木、茨城でできたものなのと聞かれることが多いそうです。また3.11以降の原材料を使っているのかどうかという問い合わせも非常に多くて、以降だとわかると拒否される場合もあるそうです。非常に気の毒な話ですけれども、でも、そういうことをしっかりと正確に情報提供していきましょう、答えていきましょうという取り組みが進んでいますので、そこをサポートしていくことが必要だと思います。
 以上です。

○田島座長 ありがとうございました。
 迫委員、どうぞ。

○迫委員 2点ほどお話をさせていただきます。
 まず1点目でございますけれども、この表示に関しての一元化という今後の方向性でございます。それについては大変ありがたいことだと思っております。現行法の表示制度がいろいろな法を根拠にばらけている状態の中で一元化していく、そして、その一元化の中で、やはり消費者の商品選択という視点は欠かせないものであろうと思うところでございます。
 その商品選択をするときに何が優先されるかといったときには、まずは安全性の問題であろうと思うわけでございます。さまざまな表示制度があって、それを記載するスペースが非常に限られている。そういう状態の中で義務的に表示をしなければならないものは、人の命に関わるもの、または人の健康に関わるもの、資する表示がどうしても優先されなければならないだろうと思います。そうすると、いわゆる消費期限、賞味期限等の問題もございますけれども、期限表示であったり、今、お話に出ているアレルギー表示の問題、それから、ちょっと私どもの手前みそになりますけれども、健康に資するという意味では栄養成分表示等々は非常に重要な情報であろうと思っているものでございます。特に生活習慣病がこれだけ多数の方に影響している中では、栄養成分の表示は欠かせないものであろうと思っております。そういう表示制度が一元化されていったときにどういうふうな優先順位を付けていくのかという議論があってしかるべきであろう。
 そういう中で、それでは、原料原産地表示が目指しているものは安心という部分なのかなと思っているわけでございます。原料原産地を知るということは確かに重要なこと、消費者の選択の視点は重要なことでありますし、今、阿南委員がおっしゃいましたように、中国製冷凍ギョウザ事件のときであったり、この3.11以降であったり、その重みが時々によって若干変わってくるものではあろうかと思います。
 その中で任意表示を、平成18年でしたか、報告書が出て、その後、事業者の任意表示が非常に増えているということも聞いておりますし、任意表示を推奨していき、それを評価しながらその制度をうまく運用していって、一元化のときに改めて議論をするという流れが全体の流れとして非常に有効なのではないか。無理がない形で進めていくことができるのではないかと思うところでございます。
 以上です。

○田島座長 ありがとうございました。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 今までのいろいろな議論を聞いていまして、一元化の問題はこれからの制度ではあるが、この調査会でしっかりと考えなければいけない課題だなと思いを新たにしております。
 一元化の中身なんですけれども、後ほどの基準の選定の問題にも関わると思いますが、例えば現行の制度それ自身が有効に機能していない場合もあるといったことも含めて、機能がきちんと担保されるようなものも併せてこの場で考えていかなければいけないのではないかと思います。
 今日、この調査会の委員の方々だけに市民団体「遺伝子組み替え食品いらない!キャンペーン」からの意見書を配付させていただいておりますけれども、そこで3点ほど現在の制度の問題点を訴えているんです。私もそのメンバーなので出させていただいたんですけれども、1つは消費者が、すべての加工食品のトレーサビリティと原料原産地表示の義務化を原則として全部やるべきだ、例外としてこれはできないからということで認めていくことはやぶさかではないんですけれども、そういう発想が必要ではないかと言っています。
 2番目には、ヒアリングでもありましたけれども、食用の植物油についての今の例えば遺伝子組み換えの問題との関係で、制度はあるんだけれどもなかなか有効に機能していないという問題について、これはトレーサビリティが利くんだから、私たちもヒアリングで粗油という言葉を使った業者さんの中身が実はそうではなかったということが明らかになりましたけれども、こういったトレーサビリティが利くものについてはしっかりと表示すべきではないか。
 それから、遺伝子組み換え食品の表示の義務化が今、制度はあるんだけれども、実効性がない。これを食品、飼料の表示を含めて義務化を求めているという意見書も出されておりますので、そういう期待に副うような報告書をつくっていかなければいけないと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 山本委員、どうぞ。

○山本委員 原料原産地の話をするに当たって、現行の原料原産地表示の現状の問題点をこういう報告書で指摘するのはいいことだと思います。21年度にまとめられた報告書もそうなっているはずで、それはいいことだと思います。
 ただ、問題点は何かといったときに、消費者にとってどうかが1つでしょうし、メーカーにとって何が問題点かというのも当然必要になるわけでありまして、その両方を、さらには生産者といっても実際に農水産物をつくっている生産者か、それを加工して商品にしている事業者か、あるいはそれを消費する消費者なのか、流通の人なのか、これはいろいろ立場があって、それぞれの問題点を問題点として挙げなければいけないことでありまして、どこか1つに偏った形での問題指摘という報告書にはしたくないと思っています。
 それと、問題を指摘するのであれば、本当にそれは問題だということが明らかになるというか、検証といいますか、バックボーンになるデータがあるとか、そうでないと何となくそういうふうに言われているとか、そんな雰囲気があるというようでは書けないわけでありまして、そこはきちんと表現するしかないかなと。そういう意味では1ページ目の下から3行目「品質の差異との関連性が薄いものも含まれているとの指摘もある」となっていますけれども、具体的にだれがどこの部分のことを言っているのか、あるいは多くの消費者、メーカー、あるいはその他の業界の方が本当にそう思っているのかということをきちんとデータとして持っておかないと、こういうことは言えないのかなと考えます。
 次のページについても「発足当時とは大きく変化しており」とありますけれども、これは本当に変化しているのと。変化させてしまわないと次へ行かないというのもあるかもしれない、そんなことはないとしても、変化しているというのであれば、どのように変化しているのかと言うことは必要だと思いますし、もしそれがはっきりしないなら、まずそれを十分に検討しなさいという位置づけで書くことが必要かなと思います。ここの頭の部分、「基本的考え方について」までの間に書くのであれば、そういう表現がいいのかなと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 迫委員、どうぞ。

○迫委員 私もこの文章の全体の中で感じていたところは、根拠がないというか、エビデンスが示されていないものについて表現されているものが相当あるなと感じました。明確な根拠を持たずに、こういうことが言われているとかいうふうな指摘をしてしまいますと、それについて立証していかなければいけないということがこの調査会として求められることになるでしょうし、それについて検討またはデータを持っているわけではないので、非常にものが言いづらいなという全体としての印象は持っております。
 そういう意味で、先ほど来、今後の方向性ということでお話しさせていただいたところで再度付け加えさせていただこうと思っているんですけれども、一元化が成立した段階での議論と現段階での議論は明確に区別するべきであるというのが私の基本的なスタンスであるということを、まずお示ししたいと思っております。
 それから、安全性と安心との問題で、先ほど遺伝子組み換え食品の問題が出されましたけれども、トレーサビリティの問題もありますが、原産地表示がすべて遺伝子組み換えの商品の問題にかえることができる、それで解決することができるものではないという意味で、原産地表示は安全性の問題とは一線を画すべきものと考えております。
 以上です。

○田島座長 ありがとうございました。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 先ほどの山本委員の御質問に答えたいと思うんですけれども、「品質の差異との関連性が薄いものも」という1ページ目の表現ですが、これは実際に最近の世論調査によれば、遺伝子組み換え食品について支持するかどうかというデータがありますね。ですからかつての品質の問題だけではなくて、新たな新規食品についての消費者の要望が非常に高まっている、あるいは日本の場合は国産志向もありますね。こういったような世論調査のデータは時代を反映していて、確固たるエビデンスの1つにはなり得るのではないか。具体的にいろいろな運動等もありまして、例えば遺伝子組み換えであれば、今の制度の改革を望む署名活動で32万筆の署名が寄せられたとかいう動きは実際あるわけでして、そういったところはしっかりここに反映していってもいいのではないかと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 立石委員、どうぞ。

○立石委員 この議論は公開の場で行われているということで、マスコミの方も多く出席されています。前回の調査会の後、5月23日付で読売新聞さんの方で「すべての加工食品に原料原産地表示を望む声」という記事が出ているのです。明確に消費者の声として圧倒的に原料の原産地を表示していただきたいと、このアンケート結果から出ているわけです。ですからやはり消費者の方の声がまず一番で、この声にもとづいて原産地表示を是非進めていただきたい。
 何が障害なのかというのは幾つかあると思います。実は私の方の立場で申し上げますと、これは事業者の立場でもあるのです。私どもの食品を扱う関連会社は82社ありまして、食品に関するさまざまな事業を営んでおり、多くは小さい企業体です。その中で食品の表示の問題については極めて難しくなっています。例えば副産物の中で、いろいろな副産物を使った場合に添加物の重量順だとか、アレルギーはどうなっているか、遺伝子組み換えはどうなっているか、こういったものを細かくチェックし重量を足し込んで表示を行っているわけでありまして、そういったものから比べると、原産地を表示するというのは、実際のところの現場では極めてやさしいわけです。そのことを難しい難しいとおっしゃることについては、韓国のように難しい理由をきちんと方法論で変えればいいのです。例えば使うものについては、具体的に国名が出せないものは推定されるものを事前に海外産、外国産という表示で出すとか、ナンバーワン、ナンバーツーだけだということになると、表示のスペースについても達成が可能です。
 そういったところで重きを置くのはやはり消費者の視点だと思います。事業者の立場からいくと、正直言ってやりたくありません。なぜかというと表示リスクが増えるからです。表示リスクについてはできるだけ避けたいというのが事業者の立場です。けれども、やはりここで議論しなければいけないのは、消費者の視点です。だから消費者庁ができたわけです。そこのところを無視して、過去の議論からの延長の話だと何も進まないわけです。そこを是非もう一度考え直していただきたいと思います。

○田島座長 どうぞ、迫委員。

○迫委員 おっしゃるとおり消費者の視点というのは非常に重要だと思っております。そういう意味で任意表示を今後もっと推奨していく方法を具体的に提案していくことが非常に有効なのではないかと思います。

○田島座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 韓国の例を出されておりますけれども、ちょっと調べてみますと、確かに非常に多くの品目が義務表示になっていますが、実際に表示に関する摘発件数が年々増えており、昨年、年間5,000件を超えて6,000件に迫ろうかと。そのうちの半分が原料原産地のミスも含めた間違いと、偽装というか、そういう内容です。つまりそれだけ多く原産地表示について問題を起こしているということは、やはり実行可能性を担保できないのに無理やり法律をつくったとか、あるいは制度そのものに無理があるというような状況で制度だけが施行されてしまっているのではないかと理解しておりまして、韓国にできるから日本もできるという理論にはならないし、背景も全然違うのではないかなと思います。制度そのものの在り方も含めて、事実として受け止めるのはいいかもしれませんけれども、参考にできるかどうかというのはよく検討するべきだなと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 立石委員、御発言いただけますか。

○立石委員 韓国の場合、監視の仕組みが非常に優れているのだと思います。摘発件数が多いのはそういうことです。日本の場合、埋もれていると私は解釈しているんですけれども、そういう面では韓国の場合、1回目、2回目、3回目と、犯すたびに罰金が増えるのです。ですからそういう中でこういった偽装に対する抑止力が働いている。法制化しなければ、事業者としては必ず誘惑が働くわけです。特に安い海外産原材料を混ぜたいという気持ちはだれでもあるわけです。厳しい事業環境の中で、そういったところをきちんと法律で止めることが大事なのです。そこを韓国はきっちりとなされているということです。

○田島座長 韓国の議論はこのくらいにさせていただきまして、これまでの議論のとりまとめをしたいと思います。
 原料原産地表示の拡大につきましては消費者基本計画にも載っておりますし、さまざまな議論から拡大する方向、そのためにこの調査会も設けられたということで、現行から拡大する方向というのはゆるがせにできないと思っております。
 問題は進め方ですけれども、食品表示の一元化の法制化は平成24年度に法案提出ということが計画されていると聞いておりますが、その中身は今のところ全く見えません。それまで待っていたのでは、黒糖と昆布巻きでの議論にありましたとおり、新たな原料原産地表示を進める際に行き詰っているわけです。そういうことで、新たな原料原産地表示を進めるために、やはり何らかの報告書案を出さざるを得ないと思っております。そうなりますと、とりあえずは現行の法律の範囲内、JAS法の範囲内でもって拡大を進めていく方向しかないのではないかというふうにとりまとめをしたいのですが、よろしいでしょうか。
 山浦委員。

○山浦委員 先ほどの議論を聞いておりますと、JAS法の枠ではないところへの調査会の方向性を出すことが今の要請だと思いますので、今のとりまとめの方法は私は賛成しかねます。現行法であればこうなるけれども、それ以上にこういうことが望ましいという書きぶりが最終的には必要かなと思います。

○田島座長 議論を2段階にして、現行の法律の範囲内、JAS法の範囲内でできるのはここまでで、それを上回ることをするにはJAS法あるいは食品衛生法の改正をした議論の中でもって取り上げてほしいというふうな報告書を作成するのは十分可能でございます。
 どうぞ、阿南委員。

○阿南委員 事務方の方にもお聞きしたいのですけれども、実は健康食品と言われるもの、サプリメントですとか、そういうものの原料について明確に書かれていない、正確でないと私は思っています。栄養表示についての検討ををされていますね。そこでこうしたことについても一緒に議論してくださっているならそれはそれでいいのですけれども、健康食品については、消費者相談もすごく多くなっていますので、原材料、原産地の表示をしっかりとしていかなければならないと思います。その辺についてもしそちらでやっていなければ、こちらの方でテーマとしてとりあげていただけたらと思います。

○田島座長 加工食品の原料原産地表示ですので、当然検討の範囲内には健康食品も含まれると理解しております。

○原事務局長 事務局からも補足でお話ししたいと思いますけれども、消費者庁で検討会が去年の8月に終わって、報告書をとりまとめられたものを受けて、消費者委員会でも特保の表示許可制度の見直しの話と、いわゆる健康食品一般の表示・広告についての検討を課題として持っておりまして、今、後段お話ししましたいわゆる健康食品の表示・広告については、消費者委員会で去年の12月末からいろいろとヒアリングを重ねてきておりまして、いずれ意見を表明したいと考えております。その中で今、おっしゃられたような原料原産地の表示の話も、ここでの御発言ではありますけれども、消費者委員会での議論にも参考にはさせていただきたいと思っております。
 それから、勿論ここでも全体的な食品の原料原産地表示のお話ですので、この中の範疇にも入るだろうと思います。
 特に消費者庁から何か補足はございますか。

○日和佐委員 ちょっと付け加えさせていただくと、現行でいけば健康食品も原料によって品質に差が生じているということがないとできないんですね。

○平中課長補佐 現行法令上、健康食品と一般の食品の違いを特に設けておりませんので、健康食品も食品の一類型であるということからJAS法の対象にはなり得ますけれども、健康食品に限って何か別の基準があるというわけではございません。

○田島座長 では、立石委員、どうぞ。

○立石委員 現行のJAS法の中での議論ということでお話があったのですけれども、実は要件I、IIがある以上は前に全く進まないのです。この要件I、IIが、今、これだけの問題があって、こういうふうに見直すべきだというところはもう一度確認すべきです。だから道筋をきちんとつけるなら、まず要件I、IIを撤廃すべきだと。そういうことをこの調査会の中で話し合わなければ、幾らやっても議論は前に進みません。要件I、IIがある限りは、これ以上加工食品の原産地表示は進まないということです。加工食品は原材料の原産地の品質の差異が影響を与えるわけではないわけですから。そこのところをもう一度原点に立ち返って、本質論として表示とは何なのというところからこの議論をやらないといけないと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○迫委員 手短にさせていただきます。
 先ほどの阿南委員の健康食品の表示に関してなんですけれども、健康食品の表示の中で一番問題になるのは、健康保持増進効果に対する表示、つまり何々の病気に対して有効であるとかいう表示の中で問題となるものは幾つかあるかと思うんです。特に健康増進法の32条の2で虚偽・誇大表示の禁止規定もありますし、薬事法等も絡んで、その辺の法的な措置というか、不適正表示については指導がされている。ただ、健康増進法そのものは健康保持増進効果の不適正表示について指導するんですけれども、権限は非常に弱いと感じているところでございます。
 そして、成分の問題というか、原料原産地の問題というよりも、その中でもともとの成分の薬事効果であるとか、もう一つは不純物がどれだけ混じっているかという製造工程上の問題等々がかなり絡んできていて、それは原料原産地が表示されたからといって、そこの部分の質を担保するものではないだろうと思っております。
 逆に危害情報等を集めながら、小さな危害情報のときにどれだけ消費者の方々にその情報提供ができるか、そこの精度を高めていくことの方がより重要なのではないかと思っております。

○田島座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 現行制度の中でということについては、今の時点ではそうせざるを得ないところがあると思います。先ほど言いましたように、そこの問題点はどういうところにあるということをきちんと明記しておくということなので、ここで例えば要件I、IIは撤廃すべきであるというような書き方は非常にしにくい。そうでなくて、現行IとIIの中でどういう問題点が今、明らかになりつつあるかということを書くことは問題ないと思うんですし書かなければいけないでしょう。そういうことでは、3ページの下の方に現行の要件I、要件IIの実際に出た意見として幾つか、いろいろな立場の問題点とか、容認、推進、反対とありますけれども、こういう意見を載せることは、表現の仕方は多少問題かなと思うところはありますが、このようにして問題点としてこういう指摘がされているということを載せるのは別に構わないと思いますけれども、ここで要件I、IIは撤廃と断言してしまうことはできないのかなと思います。
 2ページの基本的な考え方の中でも、真ん中辺りの論点マル1からずっと続く部分については、実際に出た意見ですので、表現の仕方は多少修正が必要かと思いますけれども、これはそういう立場における問題指摘という意味ではいいかと思います。しかし、例えば「基本的考え方について」の最初の1行「原料原産地表示の位置づけとして、消費者の知る権利への対応」といきなりありますけれども、原料原産地表示で消費者の知る権利を前面に押し出した表現になっています。どこかの公的な文書に載っているフレーズではありません。消費者基本計画の中には「消費者の権利の尊重」だとか、「自立の支援」という言葉がありますけれども、「消費者の知る権利」という言葉は出てこないです。鳩山さんの当時のブログか何かにはそういう言葉があったかもしれませんけれども。なので、違う言葉で表現するのはいいかもしれませんけれども、余りこれを前面で使うことはいかがなものかなと、「基本的考え方について」の文章としては思いました。
 今度は2ページの一番下ですけれども、「日本がCodexをリードすべき」、山浦委員などがよくおっしゃる話ですが、今のCodex表示部会では原料原産地が世界ルールとして必要だという状況にないので、これは書かなくてもいいと思います。

○田島座長 当然山浦委員から反論があると思いますので、山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 1点だけ。
 知る権利の問題ですけれども、御存じのように1960年代のケネディ大統領の教書の中でもう既に言われていて、これは日本においても消費者の権利ということで、選択する権利として知る権利は非常に重要なものであると。これはもう世界的にも定評のある考え方で、権利という言葉が日本では消費者基本法の中にもこれまでなかったんですけれども、これが明確に権利という形で入っておりますし、さまざまな大学での教育課程の中で消費者の権利ということで明確に記載されて教えられているという実態がありますから、これはもうむしろ常識化している、これを使っても構わないと私は考えます。

○日和佐委員 そういうわけで、消費者の権利の中にきちんと位置づけられているということと、一般的に言われているのは、食品の表示を見て、そしてさまざまに判断して消費者はどれを買うかということを選んでいく、だから消費者への情報の提供と選択する権利を担保するという意味合いで、食品の表示は消費者の権利の中でも非常に重要な項目ということで今までも位置づけられてきたという経過はあります。

○山本委員 そこら辺の経緯もよくわかっています。ケネディが言った4つだか5つだかの権利の話も十分知っているわけですけれども、知る権利があるから、それを守るためとか確保するために原料原産地表示の義務化に向けて早く動き出せというつなげ方はいかがなものかなと言っているわけで、その言葉自体を否定するわけではありません。

○田島座長 立石委員、どうぞ。

○立石委員 今の話、消費者の知る権利ということは、特に食品安全行政は国単位で行われているわけです。ですからCodex基準とはいっても国によって大きく異なっているということで、これはプラスの場合もマイナスの場合もあるのです。日本よりも更に厳しい基準なり規格を求めている国もございます。そういったところのものを買いたいという消費者、これはリスクについての考え方としてプラスとしてですね、そういう方もいらっしゃいます。マイナスの方もいらっしゃいます。そういう中での選択権をきちんと表示の中で確保するということが原料原産地表示の在り方なのかなと思います。
 以上です。

○田島座長 それでは、時間も制限がありますので、具体的な品目の選定方法について今まで余り御議論いただいていないので、5ページ目でございますけれども、原料原産地表示義務対象品目の選定方法について少し御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 5ページの書きぶりなんですけれども、選定方法についての1行目「消費者の要望と事業者の実行可能性」と並列に並んでおりますが、私としては消費者の要望あるいは選択権の確保のための基準づくりがむしろ重要視されるべきであって、いろいろヒアリングあるいは現地調査で事業者の都合等も聞きましたけれども、これは例えばトレーサビリティがもうできているとか、ほぼ輸入している国は決まっているんだとか、あるいはいろいろな複雑な製品であっても自分のところにはきちんと書類があるとか、実際に大手のところではそういうふうな実態が見えてきたわけです。それから、製油業界にとってはやりたくないということでいろいろと述べられておりましたけれども、実際のところ原料はわかっているというようなこともございまして、あとはコストの問題等ありましたが、これは消費者のためのルールをつくって、その後、事業者の方の都合も考慮すべきという、比重のかけ方を消費者重視という点で是非やっていただきたいと思います。そういう考え方を持った上で選定方法を考えていくという姿勢が重要かなと私は思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 山本委員、どうぞ。

○山本委員 今の山浦委員の、消費者の要望を第一に置いて、それが固まった上で次に事業者の意見を聞くという考え方ですが、そのまとめは私はちょっとおかしいと思います。表示をするということは、メーカーにも消費者にもどちらにもメリットがあるという形でないと、一方的にどちらかだけのメリット、どちらかだけのデメリットという形に分けてしまうことはないと思うわけでありまして、そういう意味では両方の意見を十分に聞くことが必要ですし、消費者の要望もあれば、消費者の知る権利もあれば、事業者にとっての実行可能性もよくバランスをとって理解した上で検討を進めるべきだと思います。
 5ページですけれども、「さらに議論を深めるべきポイント」で「要件Iに該当するかどうか定かでない食品があっても」とありますが、要件IIについては以後出てきませんので、要件IとII両方だと思います。

○田島座長 それは要件IとIIと両方とも含めたあれですね。

○山本委員 そうですね。要件に該当するかどうかの話ということと、それから、「消費者からの要望の高いもの」とありますけれども、その数行上の、これまでの21年の報告書の中の真ん中辺りに「消費者等からの提案があった」と「等」と付けてあります。ですからここは「消費者から」だけではなくて、事業者の実行可能性も含めて、そういった意見もあると思いますので、あえて書くのであれば「消費者等からの」と合わせておいた方がいいのかなと思います。実はこのフレーズは要らないという気もするんですが。
 「産地偽装表示の問題が起きているようなものについても」とありますけれども、産地偽装が起きるのは先ほど言いましたように、担保ができないとか、勿論利益をとるとかというのもあるのかもしれませんが、何かそういう行政監視上の問題もあって、いろいろな原因があって偽装が発生するということなので、偽装の問題が起きたからすぐに原料原産地表示義務化の対象にすべきだと直接つながりを持たせてしまわない方がいいのかなと思います。もし偽装の問題が起きたら、なぜ起きたのかということをまず検証すべきであって、その上で原因を解明するというものなので、ここにそのまま入れてしまうのはおかしいと私は考えました。
 あと、もし書くのであれば「対象品目として追加できるよう」と書くのではなくて、「できるかどうか検討していく」とかいうような内容だと思いました。

○田島座長 わかりました。
 阿南委員、どうぞ。

○阿南委員 私は勿論事業者の実行可能性は十分に考慮しなければいけないと思いますけれども、やはり大原則もはっきりさせた方がいいと思うのです。消費者の権利をどうやって保障していくのか。そのためには表示が重要であるということを明確にした上で、立石さんのおっしゃったように、では実行可能性の点から具体的な個々の表示についてどう考えていくのかということではないでしょうか。それはいろいろな対策ができると思いますしやり方はいろいろ考えられると思いますので、そういう進め方が必要なのではないかと思います。

○田島座長 品目選定の進め方についての貴重な御意見でした。
 迫委員、どうぞ。

○迫委員 1点意見と、もう一点質問をさせていただきたいと思っております。
 1点目の意見というところでは、実際には消費者の要望がベースにあるだろう。そして、それに対して事業者からの情報提供がある。情報提供と義務化とでは体制的に大きな差があるであろうと思っております。特に義務化となったときに、それが逆に産地偽装表示を助長するような形になるのではないかというところ、またはそれが本当に偽装であるかないかというところをきちんと追及する手法を持つのかどうかという問題、この辺が併せて体制として整備されてこないと、義務化は非常に難しいのではないかと思っております。
 そういう意味で質問をさせていただきたいのは、監視指導体制の部分を消費者庁として今後どういうふうにされていくつもりなのか。また、消費者委員会さんの方もそうなんですけれども、これをもし推進していくのであれば、体制を整備しない限りやりっ放しという形になります。責任を持って出していけるだけのものにする、それだけの動きを今後されるのかどうか、これはもしかしたら食品表示の一元化の後にそういう全体としての体制整備がされるのではないかと思うところでもございますけれども、その辺を質問させていただきたいと思っております。

○田島座長 ただいまの消費者庁への質問は、消費者庁の食品表示の言わば取り締まり体制の強化についてどう考えるかといったことでございますが、消費者庁として御発言できますか。

○平中課長補佐 JAS法に基づく執行体制につきましては、消費者庁と農林水産省が執行の責任を持つこととなっております。実際には、消費者庁は人員体制もそれほど多くございませんので、農林水産省の地方農政局や地方農政事務所の職員が中心となって執行していくというような形になっております。それから、都道府県のレベルにおける執行については、都道府県の方で御担当いただくという形となっております。
 執行体制の方向性というご質問でしたが、まずは、品質表示基準がどのような形で仕組まれるかということに応じて執行をやっていくのが原則でございまして、前回も申し上げさせていただきましたとおり、品質表示基準を定めるに当たっては執行可能性があるもの、事業者にとっても行政にとっても実行できるもの、守ることが可能な制度としていただく必要があると考えております。
 それから、一元化法の議論に当たっては執行体制をどのように考えていくかということは大きな論点だと考えておりますけれども、現時点においてこのような形で変えていくべきというような方向性を持っているものではございません。

○田島座長 ほかに。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 執行方法なんですけれども、先ほどの迫委員のお話にもありましたが、義務化はなかなか難しいのではないか、それに対する対応ができていないのではないかというお話をよく聞くわけですが、この調査会としてはJAS法の運用がこれまで余り厳しくなかったということを踏まえて、今後どうしたらいいか、コンプライアンスをどうやって確保するかという視点が非常に重要だと思うんです。これは単なる人員確保だけではなくて、例えば独禁法上のリーニエンシーの問題とか、食品の問題は内部告発でいろいろわかることが多いわけですけれども、そういった新しい仕組みを提案するということも含めて、予算、人員の問題をカバーするような新しい知恵をここで提案することも必要ではないかと思うんです。一旦ルールが決まれば事業者はそれに基づいてさまざま工夫をされるということは、これまで自動車の問題とか、さまざまなことで私どもは見てきましたので、ちょっと厳し過ぎるのではないかという配慮はむしろしない方が、これから社会のルールを決めていくに当たってはいいのではないか。そういう点では韓国のさまざまルールなども参考になるでしょうし、ヨーロッパのルールなども参考になるでしょうし、その辺はいろいろと新しいものを提案するという形がよいのではないかと思います。

○田島座長 ほかにございませんでしょうか。
 どうぞ、山本委員。

○山本委員 私がいつも言うことなんですけれども、6ページの最初の行で「消費者のニーズに沿ったものから順次実施され」と言ってしまうのもおかしいと思います。少なくとも消費者のニーズは原料原産地表示があることによって、これは絶対いいものだとか、すばらしいものだという理解がわいてくるというニーズでないといけないわけで、どこのものを避けたいとか何とかは嫌だとかいうことにならないような、前向きなニーズに沿ったものであれば、選定の検討の素材に上ってもいいかなと思っているわけです。
 同じようなことは、2ページにも原材料の氏素性の話が真ん中よりやや下に出てまいりますが、これもなぜ知りたいと思うかというのに、やはり知ることによっていいものだと思えるということをにおわせるような文言が要るのかなと感じています。

○田島座長 ありがとうございました。
 立石委員、どうぞ。

○立石委員 今の山本委員の意見に賛成です。
 プラスの情報としてきちんととらえてもらう、これはリスクも含めて裏表です。表示という中で情報開示、リスクをどうとらえるかは消費者の皆さんそれぞれの今まで持っている価値観で決まっていくわけですけれども、やはり原産地の中にどういったことがあるかは消費者それぞれ個々が考えられることです。だからプラスの情報も含めて、マイナスの情報だけではないということは私も同感です。

○田島座長 ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 どうぞ。

○日和佐委員 議論をまとめる意味で発言させていただきたいんですけれども、選定の手順について、今までこのようにやってまいりましたというので共同会議の手順をお示ししてあります。その手順を踏襲していった方がいいのか、変えた方がいいのか、あるいはこの手順に何かプラスをした方がいいのかということで御意見を是非まとめていただきたい。
 なぜかといいますと、昆布巻きと黒糖を審議したときに、消費者側の委員の皆様から、この2品目について消費者は特に望んだものではない、消費者の意見を反映したものではない、何でこういう2品目が選定されたのかということがかなり議論になって、そして決定がちょっと長引いたという経過があるのです。
 今日、消費者庁の資料で参考資料3の5ページを見ていただきますと、一般的にアンケートをとったり、要望をとったり、ヒアリングをしたりして選定品目を集めているわけですけれども、どちらかというと消費者団体や消費者の皆様から出されてくる要望は一定の品目に集中しないんです。数は結構あるんですけれども、ばらけてしまう。結果的に数が多いのは、事業者側から出された要望品目の方にどうしても要望の件数が集中するという結果になって、両方ともフェアにやっているんだけれども結果的にそうなってしまっているのが現実なのです。したがって、今の手順を踏襲しているとこういう現象は恐らく起きてくるであろう、でも、今までの手順でよいのか、それに何かプラスをした方がいいのか、あるいはまた違った手順を考えた方がいいのかということについて御意見をまとめていただけると大変ありがたいです。

○田島座長 今、委員長代理から議論の進め方についての御提案がありました。
 これについて意見を。山浦委員。

○山浦委員 選定方法で昆布巻きとか一般的にはマイナーなところから話が進むという嫌いがこれまであったと思うんですけれども、それが事業者間での不公平感を非常に呼び起こしている、大きいメーカーあるいは業界であれば免れていくような風潮もあるようにも感じているんです。これについては神山委員がヒアリングで述べられていたと思うんですけれども、基本的には原則、原料原産地表示をする、ただし、業界によってはこういう点でできないという例外項目も認める形でもって選定を考えるという逆の発想も、新しい考え方としてはいいのではないか。そうすれば不公平感もなくなるし、現実に合ったルールがつくれるのではないかと思いますので、そういった意見も実際我々は聞いているわけですから、その点も併せてそれを1つ盛り込むことも手ではないかなと思います。

○田島座長 立石委員。

○立石委員 今の山浦委員の意見に同感です。
 原則すべて原産地を表示すべきだという考え方でもって、できないものを何でというところを議論していかないと、恐らく進まないだろうと思います。ですから基本的には全部を開示するということでまずスタートする、そのスタートのところでどういう順番、どういうふうにするかというのは慎重に議論していかなければいかんですけれども、まずは全品目を対象とするというふうにするべきだと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 御意見を伺っていると食品添加物のネガティブリストとポジティブリストといったような話にも聞こえますが、山本委員、これに対してどうお考えでしょうか。

○山本委員 法律に当てはめて罰則も伴うような義務化の対象とするというものに対して、まずすべてを当てはめてしまうというのはいかがなものかという気が私はしています。それだけ義務化というのは非常に重たいものなのでありまして、それに、すべてが本当に当てはまるのか、特にこの法律の内容として適切なものかどうか。そうなると、原料原産地表示ができないものの議論の中に、また消費者に負担や混乱を強いるというような話に終始してしまう。要はいつまでたってもお互いに理解し合えないみたいな話になって、同じことの繰り返しみたいなことになりますので、やはり義務を伴うものについては、できるものをポジティブにリストアップしていくのがいい方法ではないかなと私は思っています。

○田島座長 ありがとうございました。
 ほかに。
 どうぞ、山浦委員。

○山浦委員 技術的な問題については大くくり表示の話も出ていましたけれども、緩やかな形でそういった表示もやるということも含めて、まずルール化をやる。その中で実際にはもっと細かいものが必要ですけれども、そういった工夫をやっていけばそれほど事業者にとっても負担にならないのではないか。消費者にとっては安心をしますから、むしろ購買意欲がわくと私は思うんです。何かわからないままつくられている、原料が何なのかという疑心暗鬼をなくすという意味でも、発想の転換を今こそすべきではないかと思います。

○田島座長 山本委員。

○山本委員 それであれば、先ほど迫委員もおっしゃいましたけれども、この議論を進めるには、まず企業の努力によって原料原産地について任意表示を進めて、その状況がどうかということを十分に解析してからでいいのではないかなと。何とかという品目だけを義務化するとかいう議論ではなくて、やはり任意で企業の努力でできるものからしていく。結構いろいろな食品も、任意ですからいろいろな方法を使って表示されていますから、まだ不十分と言われるところも一部あるかもしれませんが、それはそれで更に推奨といいますか、そういうことの取り組みを展開していくことでできるのではないかと理解しています。

○田島座長 立石委員。

○立石委員 任意表示をやるのであれば、なぜ米トレーサビリティ法で米の原産地表示をこういう法律で縛ったのかということです。だれも海外原料の米を原産地表示したくないですよ。当たり前です。国産か外国産かと書いただけで需要に大きく影響するからです。表示が需要に大きく影響を与える項目の1つがこの原産地です。事業者は末端で競争しているわけです。自分のところに不利になるような材料を決して書くことはありません。そこのところはよくよく考えて全部法律で縛っていかないと、任意表示などというやり方では絶対にやらない人が出てくるということで、きちんと法律の中で縛るべきだと思います。

○田島座長 迫委員、どうぞ。

○迫委員 実行性という観点からすれば、まずは任意表示をどれだけ進めることができるか、それを推進していくためのアクションをこの調査会または部会として具体的にどう進めることができるか、そこの部分が非常に大事だろうと思っております。
 任意表示という中でも、表示の部分と情報提供の部分で、先ほど阿南委員もおっしゃっていましたけれども、POPであったり、いろいろな方法論でかなり情報提供がされていく。そういう現状が今、どんどん増えてきている。ということは、そういうことの無理のない食品というものも相当これで洗い出しができるのではないか。つまり任意表示を1つの基準という形にしていくことも可能性としてはあるのではないかということ。
 それから、もう一つ、少なくとも強調表示をしているものについては原産地を明確に表示してもいいのではないかと私は思っております。そういう意味で一気に全品目を義務表示ということではなく、需要に対して大きな影響を与えるという意味からすれば、強調表示は当然それを目指しているものでございますので、そこについては広げていくべきではないかと思っております。

○田島座長 阿南委員、どうぞ。

○阿南委員 任意表示に任せたのではだめだという不信感もよくわかりますけれども、任意表示をした事業者団体自身がお互いその中で、違反したり悪質だったりする人たちを牽制していくというんですか、余りにもひどい場合は排除していくという、そういう仕組みを早くつくるべきだと思います。そうでないと取り締まるための行政のコストがどんどんかさんでくると思いますし、そのような規制では、食品業界という膨大な市場を網羅することはできないと思うのです。ですから、事業者団体の自主的な取り組みを報告してもらい、行政が進捗状況をきちんと把握でき、また消費者にも見える仕組みをつくっていくことが必要なのではないかと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 今の任意か義務かということについては、私は義務化を前面に出して、その中で例外を考えるという発想が必要ではないかと思います。消費者庁さんの方の5月16日の資料のタイトルも「原料原産地表示の義務化に向けて」ということで、いろいろとこれまでの経過等も話していただきましたので、実際に個別の食品で今、義務化が拡大しているという流れを受けて、義務化のためにはどういう工夫が必要かという考え方がまず必要だと私は考えます。

○田島座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございますか。
 義務化という議論がお2人の委員から強く出されました。あとお2人の委員からはとりあえずは任意の原産地表示で事業者の努力義務に期待したいというような御意見もございました。それから、山本委員は拡大するのに義務化はなじまないといった御発言だと思います。
 どうですか、山本委員。

○山本委員 今の対象品目の選定について、従来からアンケートやパブコメだとかいろいろされておりますね。ただ、どうしてもアンケートの仕方をもうちょっと工夫しないと、例えば「原料原産地表示は必要ですか」と単純に聞くと、当然みんな丸とつけてしまうので、「ほら、みんな必要と言っているでしょう」という形になってしまうのは非常に怖い。アンケートは当然必要だと思いますけれども、質問内容を十分検討する必要があるということだと思います。
 もう一つはパブコメですけれども、パブコメもあえて意見を言う人は何か言いたいものがあるから言っているのであって、問題ないと思う人は多分パブコメに意見を寄せない。そういうことも含めてパブコメに上がってきた内容を解釈しないと、ごく一部の偏った声だけ、意見が集まってくることになって、また何となく不透明さが増すみたいな形になってしまうので、そこら辺は質問するとき、あるいは解析をするときに十分そのことをわかった上でやる必要があると思います。文章としてはこういう表現しかできませんけれども、理解としてはそういうふうに理解をしています。

○田島座長 立石委員、どうぞ。

○立石委員 先ほど私も申し上げましたけれども、今の表示の中で食品衛生法によるアレルゲンの問題だとか、食品添加物の重量順の記載だとか、こういったところに膨大なエネルギーがかかっているわけです。そのリスクが高い、もしそれに違反すれば、勿論違反ですから罰則規定があるわけです。そういった部分から考えたときに、では原産地の問題はどうなのかというところは十分に実行可能性のある状況にあるわけです。くるくる変わるとかいうものについては工夫すれば達成するわけでありまして、今の表示制度はどんどん高度化していって極めて難しくなってきているということから考えると、原産地というのはそれほど大きな負担にはならないのです。私どもも自分のところで日夜必死でもって一番防がなければいかんのは、一括表示のさまざまな表示の問題をクリアーするために相当気を使っているわけです。ですから原産地の問題などは、私から見ればごくごくこの延長線上にある話なのです。だからその辺をもう一度、やれる、実行性があるんだということを確認するべきだと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 さまざまな御意見が出ましたので、次回の報告書につきましてはさまざまな御意見が出たということを併記したいと思っております。
 ただ、最終的なとりまとめは次回、というのは阿久澤委員が今日は御欠席ですので、もう一回議論をして最終報告書としてとりまとめたいと思います。といいますのは、この調査会の報告書はやはりある一定の方向性を持たせたものにしたいと私は強く思っておりまして、そういうことで本日はさまざまな御意見が出たということで進めさせていただきまして、次回に議論は継続したいと思っておりまが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 山本委員。

○山本委員 議論がまだ十分ではないということは私も思いますので、それはいいことだと思います。
 ただ、今日の時点で全くテーマにならなかった、例えば3ページ、4ページ辺りについて一言だけ思うところがあります。

○田島座長 これは私も3ページ、4ページ辺りの御意見を少しいただきたいんです。

○山本委員 例えば3ページの最初に「食品の表示に関する共同会議の報告書(平成15年8月)」の記述があります。確かに要件I、IIが示されたのは平成15年8月の報告書でありますけれども、その後、平成18年4月の共同会議のとりまとめでも要件IとIIは変更の必要なしという確認がされていますし、平成21年8月、消費者庁にお渡しする直前の共同会議の報告書でも要件IとIIについては現状のままでいいというか、そのままでいいというような書き方もしてあります。勿論いろいろな条件は付いていますけれども。ですので、それを押さえておかないと、最初の最初だけ引っ張り出して、だから今、大分状況は変わっています的な話になってしまうのはおかしい。つい2年前は問題ないという確認はされているのです。ただ、農水省の推奨もあるので状況を調査してとかの付属は付いていましたけれども。そういった直近の確認内容も必要だというのがまず1点。
 もう一つは、4ページの「3.新たな表示方法の実効性について」の前のパラですけれども、真ん中に「さらに原料原産地表示を拡大することが考えられる商品の実態や」とありますが、これは4で表現する内容ですね。ここにこれが入ってしまうと、何かまた順番が違うのかなという気がしますので、この文章は要らないという気がしました。
 もう一つ、4ページの一番最後「マル2の大くくり表示を中心に」とあえて書く必要はあるのでしょうか。要はマル1にもこんな意見があった、マル3にもこんな意見があった、マル2にもこんな意見があった、つまりマル1、マル2、マル3ともいろいろな意見が出ましたということで、ここでは結論がないので、更に検討を進める必要があるということだと思います。マル2だけ書いてしまいますと、逆にいろいろなことを思う人がいらっしゃるかもしれませんから、外国産ということについて当然質問が来るというか、国産信仰とか、崇拝とか、偏重とか、それをかえって呼び起こすことも考えられます。逆に言ったら、外国産と書いてあるものについての排他的な負のイメージを付けさせるというようなことにもなりかねないので、これこそ慎重に検討しなければいけないのかなと思います。これを書いてしまうことによって、何かそれは了とするみたいなイメージになってしまうので、これは抜いた方がいいと私は思っています。

○田島座長 これは私もちょっと気が付いたところなんですけれども、事務局のまとめがこういうふうになったのでそのようにしたいと思います。
 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 3ページの基準の問題なんですけれども、私は品質の定義について、ここにも書いてありますが、柔軟な解釈をした上で、消費者が望んでいることといった要素をなるべく盛り込むという新しい基準にしていく必要があると考えております。
 それから、50%ルールは現状では有効ではないといったものもございますので、これにこだわる必要はない。上位1位、2位といった韓国のような制度も非常に参考になると思います。
 先ほどの国産の問題ですけれども、これは政府として食料自給率の向上を国是として今、提案されているわけです。ですから別にこれを敵視する必要はないし、その政策にのっとって国産のものをみんなが選択できるような環境を整えるということは、この調査会でも十分に期待されていることだと思いますので、これは別に撤回する必要はないと私は思います。

○田島座長 ほかに、迫委員、どうぞ。

○迫委員 細かい文言の話になりますけれども、3ページ目の下の方ですが、「このようなJAS法の趣旨にかんがみると」というところの2行目に「『品質』の定義については柔軟な解釈も可能ではないかと考えられる」。この「柔軟な解釈」という言葉をわざわざ入れてしまいますと、法の趣旨を逸脱することを報告書で認めてしまうことになりかねないので、文言としてこれを入れることは余り望ましいことではないかと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 立石委員。

○立石委員 共同会議のときの議論の進め方については、厚生労働省所管の食品衛生法という公衆衛生の安全性の観点の法律の枠組みと、農林水産省所管の適正な表示に関する観点からのJAS法の二つの法律の中で、この延長線上の中で、では原産地は品質なのかという議論がそのまま来ているところの矛盾がさまざま出ているわけです。まさに原産地は品質なのかというところはここでもう一回、最初の、冒頭でこのときの時代背景、時代状況の中でやむを得ない選択がこの法律しかなかったわけですから、その法律の枠の中で議論すれば当然こういう帰結になるわけです。この在り方は今、時代背景も大きく変わってきているわけです、消費者という起点をまず第一に考える今の時代状況から見ると見直すべきで、見直す方向だということをもう少しこの調査会で方向づけをするべきだと思います。

○田島座長 ありがとうございました。
 そろそろ予定した時間でございますので、本日出されました貴重な御意見を事務局の方でもってとりまとめさせていただきます。勿論私が責任を持ってとりまとめをいたします。次回にそのとりまとめたものをもう一度案として御審議いただきたいと考えております。「てにをは」につきましてはメールでも構いませんので、事務局の方に御意見を。議論するような内容につきましてはメールでは困りますので、次回の席上で御発言いただきたいんですけれども、「てにをは」についてお気付きの点がありましたら、メールで構いませんので事務局の山田あてにお送りいただければと思います。
 そういうことで、特に御発言はよろしいですか。
 それでは、次回の日程につきまして事務局の方から御説明をお願いいたします。

○原事務局長 熱心な御議論をどうもありがとうございました。
 お手元に参考資料4としてスケジュールをお示ししておりますけれども、次回第6回、最終の回を予定しておりますが、7月6日、水曜日の14時から最終的な報告書のとりまとめということでの審議をお願いしたいと思っております。
 委員の皆様にはお忙しいところ、お疲れのところをどうもありがとうございました。どうぞ最後まで御協力よろしくお願いいたします。
 以上です。

○田島座長 それでは、本日はこれにて閉会させていただきます。
 お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。

≪3.閉 会≫

(以上)