第14回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2011年8月4日(木)10:00~12:20

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、沖野委員、
 窪田委員、黒沼委員、後藤委員、中村委員、三木(澄)委員、山本委員
【担当委員】
 下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  川口審議官、加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  小林参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.取りまとめ1
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:50KB)
【資料1】 集団的消費者被害救済制度専門調査会報告書(案)
(参考資料1) 専門調査会で出された意見等の整理(PDF形式:296KB)
(参考資料2) 集団的消費者被害救済制度専門調査会 今後のスケジュールについて(PDF形式:66KB)
(参考資料3) 集団的消費者被害救済制度専門調査会報告書(案)に対する意見(池田委員提出資料)(PDF形式:148KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。
 本日は、朝早くから委員の皆様方におかれましてはお集まりをいただき、ありがとうございます。ただいまから第14回「集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。
 なお、本日は所要により、消費者委員会の担当委員であります池田委員が御欠席ということで御連絡をいただいております。
 議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第と書かれた紙の後ろに配付資料の一覧を付けております。
 座席表の次に、資料1といたしまして、本日御議論いただく「集団的消費者被害救済制度専門調査会報告書(案)」をまとめたものがございます。
 参考資料1といたしまして、専門調査会でこれまで出された意見等の整理をしたものをお付けしております。
 参考資料2といたしまして「今後のスケジュールについて」。
 参考資料3といたしまして、池田委員から提出がありました報告書(案)に対する意見というものをお付けしております。
 審議の途中で不足がございましたら、事務局までお申し出いただければと思っております。
 それでは、伊藤座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。。

≪2.取りまとめ 1≫

○伊藤座長 おはようございます。
 早速、本日の議題を取り上げたいと存じます。
 本日は、取りまとめの第1回目といたしましての検討をお願いしたいと存じます。
 そこで、この調査会の取りまとめの経緯につきまして、原事務局長からの説明をお願いいたします。

○原事務局長 それでは、事務局から、冒頭御説明をしたいと思います。
 資料1に「集団的消費者被害救済制度専門調査会報告書(案)」をお示ししております。
 1ページを開けていただくと「目次」となっております。
 「はじめに」
 「第1 消費者被害の実態と新たな訴訟制度の必要性」
 「第2 手続の枠組み」
 「第3 一段階目の手続」
 「第4 二段階目の手続」
 「第5 制度の実効性を高めるための方策」
 「終わりに」ということで構成しておりまして、後ろに専門調査会の審議経過と委員名簿、参考資料をお付けしたもので構成してはどうかと考えております。
 1ページに「はじめに」を書いております。
 なぜこの審議を進めてきたかということを振り返った形でお話を申し上げておきたいと思います。
 消費者紛争は大変多様なものがございますけれども、3行目に書かれておりますように「少額同種の被害が多発するという特性がある消費者被害では、紛争解決に要する費用及び労力との関係や、消費者と事業者との間における情報や交渉力の非対称性等の構造的格差から、消費者が事業者に対する請求権を有していたとしても、個々の消費者が自ら訴えを提起して被害の回復を図ることを断念しがちである」という、現状認識を書いております。
 このような観点から、消費者被害の防止と円滑な被害回復の方策の必要性が長年指摘されてきたところですけれども、まず消費者団体訴訟制度というものが適格消費者団体によって先行しておりまして、事業者の不当な行為について差止請求することができる制度の創設は図られたところですが、それによって消費者被害の未然防止という辺りについては一定の成果が得られたものの、消費者被害の特性を踏まえたより実効的な集団的消費者被害救済制度の在り方を検討する必要性が消費者団体訴訟制度を検討するときから並行して、同様にその必要性というものが指摘をされてきておりました。
 消費者庁と消費者委員会の設置が決まる段階で、その設置法附則第6項で「消費者庁関連三法の法施行後3年を目途として、加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるもの」とされました。同法案に対する附帯決議においては幅広い検討を行うこととされておりました。
 「また」から始まる段落のところですけれども、集団的消費者被害救済制度については、平成21年9月に内閣府国民生活局の研究会報告書として一旦取りまとめられておりますが、それを受けて昨年、平成22年9月に消費者庁において「集団的消費者被害救済制度研究会」の報告書ということで、更に重ねてまとめられて、この制度に係る論点の整理と選択肢の提示が行われたところです。
 更に、消費者基本計画は平成22年3月30日閣議決定、平成23年7月8日に一部改定をしておりますけれども、ここにおいてもこの制度について、平成23年夏に制度の詳細を含めた結論を得るとともに、平成24年常会への法案提出を目指すこととされております。
 これらの経緯を踏まえ、集団的な消費者被害の救済に関する制度の在り方を調査・審議するため、消費者委員会は平成22年8月に専門調査会を設置することを決め、平成22年10月28日のこの専門調査会の第1回会合を開催して、これまで審議を重ねてきたところです。
 「以降」として、8月19日までのことを書いておりますけれども、最終的には(案)を取った形の報告書にしたいと思っておりますので、先の日付まで書いておりますが、8月19日までに専門調査会を計15回開催し、訴訟制度に関して調査・審議を行った。
 2ページ目に入りますが「これまでの調査・審議を踏まえ、本専門調査会は、集団的な消費者被害の救済に関する制度の在り方について、以下のとおり報告書の取りまとめを行ったので、消費者委員会に報告する」という結びにしてはいかがかと考えております。
 非常に消費者団体の長年の懸案でこの問題をやってまいりましたので、是非成案を得たいと考えております。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 ただいまの原事務局長からの御説明の内容でよろしゅうございましょうか。
 特段の御意見がなければ、引き続きまして「第1 消費者被害の実態と新たな訴訟制度の必要性」~「第3 一段階目の手続」につきまして、加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料1の3ページ以下の点につきまして、私の方から概略を御説明します。
 まず「第1 消費者被害の実態と新たな訴訟制度の必要性」です。
 「1.消費者被害の実態」のところで、PIO-NETに基づく苦情相談件数のデータをお示ししております。90万件という件数と、その内訳として取引関係が多いということで書いております。
 (2)は、その金額について見たものです。
 上から5行目辺りのところに書いておりますけれども、50万円未満、いわゆる少額と言われるものが多数を占めているということを書いております。
 その一方で、その段落の下から4行目ぐらいのところですが「次々販売」であるとか「利殖商法」「過量販売」といったジャンルにおきましては、ここに書いてあるような数百万円単位の金額に及ぶということもありまして、一概に少額の被害にとどまっていない実情が伺えるのではないかと書いております。
 「さらに」のところですが、そういう高額の被害の事案において年齢層について見ますと、50代あるいは60代といった形で、比較的高い年齢層において高額被害が発生しているのではないかという傾向が伺われるということで書いております。
 4ページです。
 (3)は、その被害に遭った消費者がどのように行動を起こすのかということについて、幾つかのデータをお示ししております。
 5ページ以下に図をお付けしておりますので、簡単に御紹介します。
 例えば「図2 国民生活選考度調査(平成19年度)より」におきましては、被害に遭った消費者がどうしたかということにつきまして、「どこにも相談することも伝えることもしなかった」というのが32%で一番多いというデータ。
 6ページ、図3は消費者庁で行いました調査のデータですけれども、被害に遭ったときと被害に遭ったと想定した場合の対応についてどういう違いがあるかということで、グラフにしてお示ししたものであります。例えば上から3つ目の弁護士などの専門家に交渉を依頼したかどうかということにつきましては、6.2%と54%というグラフが並んでおりまして、上の6.2%は実際に遭ったときには6.2%の人はそういった依頼をした。それに対して、仮に被害に遭ったときにどうしますかという質問に対しては、54%の人が交渉を依頼すると答えているということでありまして、想定した場合には過半数の人がそういった行動をとると答えていますけれども、実際に被害に遭った場合には、かなり数が少なくなってくるという傾向が伺われるのではないかということでお示ししております。
 7ページ「2.新たな訴訟制度の必要性」であります。
 1段落目は、先ほど原事務局長がおっしゃったようなことと同様のことを書いております。
 2段落目は、新たな制度を設けることの必要性に関するところですが「しかしながら」というところですが、若干敷衍して申し上げますと、訴訟制度の利用にはやはりそれなりの費用・労力を要するところ、消費者被害事案においては、1つは事業者による事業活動が反復継続的に行われることに伴って多数の同種被害が発生する一方、消費者と事業者との間のいわゆる構造格差、情報の質、量、交渉力の格差があるということで、事案の全容解明が困難であるとか、あるいは個々の被害が少額であるとか、更には消費者が被害に遭っていることを自覚しないことがあることなどによって、個々の消費者が個別に訴えを提起することによって被害救済を図ることは困難であるという書き方をしております。
 「これに関し」というところで、既存の制度で対応が難しいことについて書いております。例えば民事訴訟制度の選定当事者や少額訴訟等の制度があるということですが、消費者相互の関係が希薄であることであるとか、先行する訴訟の帰すうを見定めてこれらの制度を活用する手立てがあるわけではないこととか、事実上または法律上の複雑な争点を含む場合があることなどについて指摘しておりまして、これらの制度だけでは被害の救済を図る上で十分とは言えないのではないかと書いております。
 また、消費者団体訴訟制度につきましては、先ほど原事務局長から御説明のあったところでありますけれども、8ページにかけてのところですが、現行は差止請求ということで、被害の未然防止、拡大防止というところはある程度図られるようになっていると思いますが、被害の救済そのものは図ることができないということで書いております。
 また、国民生活センターの紛争解決手続、いわゆるADRにつきましてもそれなりに活用されていると思うところですけれども、相手方事業者が手続に応じない場合もあるということで、任意の解決手続であることの限界もあるのではないかと書いております。
 次の段落ですけれども、こうした状況を踏まえ、消費者の請求権の実効性を確保する観点から、できる限り多数の消費者の請求権を束ねて訴訟を追行する。この「束ねる」ということがかなり重要なコンセプトと思うわけですけれども、そういう制度が有効であるということで、新たな訴訟制度を創設することが適当ではないか。
 「そして」ということで、こういった手続を設けることによって紛争の一回解決を図るということで、その他にもメリットがあるのではないかということで書いてありまして、1つは、司法資源の効率的な活用を図るということ。事業者サイドにとりましても、個々の消費者との紛争を別々の手続において解決するよりは、応訴負担の軽減、あるいは裁判所における公正な手続の下での紛争の解決を図るというメリットはあるのではないかと考えられるところでありまして、そういった観点からここに書いております。
 また、こういう訴訟制度を設けることによって被害の救済だけでなく、同種事業を行う他の事業者や消費者一般に対しても、違法行為を具体的に示すということで被害の防止につながる、あるいは公正で健全な紛争解決の促進にもつながるのではないかということで書いております。
 「なお」のところですけれども、こういう訴訟制度を設けたからといって、当事者間の交渉やADRを活用することについては妨げられるものではないと書いておりまして、その段落の真ん中辺りですが、「その観点からは」と書いてあるところですが、適切な訴訟制度が存在することは、当事者間の交渉や裁判外紛争解決手続の障害になるものではなく、むしろその制度を背景として、当事者間の交渉やADR手続を促進するという側面もあるのではないかと書いております。
 9ページ「第2 手続の枠組み」です。
 「1.諸外国の制度について」で、いわゆるオプト・アウト型、オプト・イン型という諸外国の制度について書いておりまして、参考8のところで比較表という形で整理しております。
 「2.手続モデルについて」ですが、先ほど原事務局長から御紹介もありましたとおり、今回の専門調査会における調査審議は、消費者庁における研究会のA案からD案におけるモデル案の程度というのを前提として、そこから議論を出発させておりますので、それについて紹介しております。
 10ページの(2)のところですが、A案からD案の中で、結論としてA案を採用して制度設計を検討することとしてはどうかということを書いておりまして、その理由なんですけれども、まず、冒頭D案でありますが、既存の制度との整合性はとりやすいという利点はあるものの、救済の観点から実効性がよりあると思われるA案ないしC案というところを中心に検討することとしたと書いております。
 B案、C案ですが、この手続はいわゆるオプト・アウト型と言われるものでありまして、判決効が有利にも不利にも拡張するという場合に、対象消費者の手続保障をどう図るか。手続から除外の機会を申し出る機会を与えるための通知・公告が確実に行われる必要があるということで、それをどの程度やればいいのかということについて、理論的な問題あるいは実務上の問題も多数残されているという状況ではなかったかと思われますので、その旨書いております。
 「更に」というところで、C案につきましては、その手続保障の問題に加え、いわゆる総額判決の問題、分配手続の問題という課題もあるということで、かなり検討課題が残されている状況であるということを書いておりまして、そうしたことからB案、C案については採用するのは直ちには難しいのではないか。
 これに対して、A案につきましては、多数消費者と事業者との共通争点を判断し、その結果を2段階目の手続で消費者を有利に活用することができるとすることによって、手続保障の問題を回避するとともに、被害を受けた消費者が訴訟手続に関わりやすくなるという点において、それなりに実効性があると考えられると書いております。
 (3)の「そこで」というところですが、紛争の一回的解決を図るといったB案、C案のメリットもできるだけ加味しつつ、かつ判決効の拡張によって不利益を受ける被告の利益にも配慮して、後で御説明しますけれども、再訴制限を設けるとか、そういった形で被告の利益にも配慮して、A案について具体的な制度設計をすることとした。その際、我が国の既存の民事訴訟制度の整合性を図るということとしながら、適切な手続追行主体の選定等により、制度の濫用その他の弊害が生じないように制度設計を検討することとしたと書いております。
 「3.手続の概要」につきましては、詳しいところを13ページ以下で御説明したいと思います。
 13ページ「第3 一段階目の手続」です。
 「1.訴えの提起」の「(1)手続追行主体」につきましては、結論として適格消費者団体を手続追行主体とすることが適当であると書いております。
 その理由ですが「マル1 考え方」の2段落目のところで1つ目ですけれども、今回の確認を求める事項との関係でありまして「多数の消費者に共通する事業者の行為の評価(法律関係又は事実関係)」ととらえられるということでありまして、これは対象消費者の帰属する請求権そのものではなく、責任原因を基礎付けるものであると考えられていることと書いてありまして、必ずしも対象消費者などでなければならないわけでなく、むしろ多数の消費者、利益を代表し、真摯かつ適切に共通争点に係る訴訟追行をすることが期待できる者に対して確認の利益を付与するということに合理性があるのではないかと書いております。
 「また」の段落のところでは、この手続追行主体が遂行すべき一連の業務について書いておりまして、そういった業務を適切に遂行できる者でなければならないということでありまして、「このような」という段落のところですが、手続追行主体としては、適格消費者団体とすることが適当であると書いております。
 13ページの最後の「ただし」の段落ですが、現行の適格団体はあくまでも差止請求に関して認定を受けているということでありますので、新たな業務との関係で認定要件を見直した上で、新たに認定を受け直して主体となるという制度が適当でないかと書いております。
 14ページですが、ただし、その認定要件の範囲につきましては、いわゆる弁護団との連携等によってもそれなりに業務の遂行というのはできると考えられることから、必要最小限のものとするとともに、運用においても留意するということを書いております。
 この専門調査会で特に議論がありました主体について、適格団体以外にも認めるかどうかということにつきましては、いわゆるアドホックな被害者集団を想定して、一定の要件の下で主体とすべきという御意見もいただいているところではありますが、その具体的な要件、特に代表者としての適切性をどのように担保するかということにつきましては、更に検討する必要があるのではないかということで、本制度の施行後の状況を踏まえながら引き続き検討すべきとまとめさせていただいております。
 マル2のところは以下のところですが、認定要件の見直し、責務規定・行為規範の見直し等に書いております。
 (2)原告適格につきましては、新たに認定を受けた適格団体については常に原告適格があるものとすることとしてはどうかと書いております。
 15ページ、(3)被告適格のところですが、特にマル2の役員等に関しましては、前回御議論をいただいたところでありまして、一定のいわゆる悪質商法などを前提にそういった役員についても対象とすべき必要性があるのではないかという御意見をちょうだいしたところではありますが、その切り分けがうまくいくのであるかとか、やはり訴訟リスクの負担が取締役個人にとっては重いのではないかという御指摘もいただいたところでありまして、今回の制度設計においては、慎重に検討すべきであるという書き方にとどめております。
 (5)共通争点の確認の訴えの要件のところでありますが、マル2の多数性につきましては、最後の行辺りですが、既存の制度の中で集団訴訟として運営するのでは、訴訟運営の困難さや手続の遅延などの恐れが生じ、紛争の適正かつ迅速な解決が期待し難いような相当程度の多数という趣旨で考えるべきという形で、ある程度の人数が必要であるという趣旨で書いております。
 マル3 共通性のところですけれども、責任原因を基礎付ける共通した事業者の行為が特定されている必要があるという書き方で書いております。
 マル4 いわゆる支配性の要件でありまして、ここもいろいろと御議論をいただいたところでありますが、今回の制度自体が既存の制度とは異なる特別の制度として設けることであるということにかんがみまして、それなりに事項を確定させる実益があるものでなければならないということから、「そこで」という下から5行目辺りのところですが、これは「支配性」と言うか「重要性」と言うか言葉の問題はあるかと思いますが、一定の要件が必要であるのではないか。「具体的には」というところで、二段階目の手続に加入した多数の消費者について、個々の消費者ごとに相当程度の審理が必要となることがない程度になっている状態をいうこととするという書き方でお示しをしております。
 (6)対象事案についてのところで、マル1で請求権の列挙をするということ。
 マル2のところで幾つか書いておりまして、1段落目のところですが、今回の検討はもともと少額多数を念頭にというところではありますけれども、先ほどデータでお示ししましたように、必ずしも少額被害にとどまるものではないという実情があるということにかんがみまして、いわゆる少額に限らず、消費者紛争ということで制度設計をするということにしてはどうかということで書いております。
 「また」のところですが、対象事案の選定におきまして、その考慮要素として、1つはいわゆる係争利益の把握というのが必要ではないかということで書いておりまして、基本的には消費者と事業者が契約関係にある場合を中心としながら、それ以外の場合にも一定広げるということとしてはどうかという書き方をしております。
 先ほど申し上げました「さらに」の段落ですけれども、支配性の要件というか、支配性の要件を欠く事案が多いと考えられる類型については対象としないこととしてはどうかと書いております。
 以上を踏まえまして、17ページのマル3にア、イ、ウ、エと書いてあるような一定の類型のものを選定することにしてはどうかということで書いております。
 「なお」のところですが、個人情報流出事案及び有価証券報告書等の虚偽記載等については、基本的には対象になるものと考えられますが、ここにつきましては特に事業者サイドから慎重に検討すべきとの御指摘もあったところでありますので、その旨付記しております。
 次に、製品事故や食中毒につきましては、拡大損害、人身被害が生じるという事案でありまして、その損害の個別性や因果関係の問題などがあるということを踏まえまして、慎重に検討すべきであるという書き方にしております。
 その関係から「なお」のところですが、品質不良の事案において、拡大損害が生じていない事案につきましては、先ほどの人身被害が生じているような事案と切り分けることが可能であれば対象とする方向で検討してはどうかということで書いております。
 (7)以下のところにつきましては、(7)確認を求める事項、(8)訴状記載事項、(9)管轄ということで書いております。
 (11)時効についても、所要の規定の整備を設けることとしてはどうかということで書いております。
 18ページ「2.共通争点に関する審理」のところも、かなり技術的な問題を多数含むところでありますけれども、(5)他の適格消費者団体とのいわゆる同時複数提訴の問題の調整の必要性であるとか、(6)参加の問題などについて、所要の規定の整備を行うこととする。
 こういった問題は専門調査会で必ずしも十分詳しく検討されているわけではありませんが、法制化の作業の中できちっとした検討を行うこととしてはどうかということで、所要の規定の整備を行うこととするという書き方をしております。
 「3.判決以外の訴訟の終了」の(1)和解のところのマル2のウですが、一段階目の手続における和解をいかに促進するかという観点で、二段階目手続を活用するか、あるいは一段階目手続において対象消費者が参加をする方法を設けるなどの所要の規定を行うこととするということで書いております。
 20ページの(2)以下のところにつきましても、同様に(2)訴えの取下げ、(3)請求の放棄、(4)請求の認諾について所要の規定を設けるという形で書いております。
 21ページ「4.判決」の(1)判決の効力のところでありますけれども、これも二段階目の手続に加入した対象消費者に及ぶこととするということで書いておりまして、そういった必要性、それから「また」のところで、対象事案の限定や再訴制限などの手当ということを制度的に仕組むということを書いておりまして、そうしたことを前提に「そうすると」という段落でありますが、被告事業者が紛争全体を見越した上で攻撃防御を尽くすということで、多数消費者との共通争点について、信義則を根拠として二段階目の手続において、一段階目の手続における判決結果と矛盾した主張をすることができないことが許容されるのではないかという形で書いております。
 (2)ですが、その反面で同一事件に関する再訴制限というものが制度的には必要ではないかということで、原則として同一事件について、他の適格団体が訴えを提起することはできないこととするということで書いております。
 22ページ「5.上訴」の(3)上訴中の二段階目の手続ですけれども、これにつきましては上訴中に二段階目手続を始めることも検討すべきという御意見もいただいたところですが、これは判決が後でひっくり返るということになりますと、手続がかえって混乱するということが懸念されますので、二段階目の手続は開始しないということで書いております。
 一段階目の手続までについては、以上でございます。

○伊藤座長 それでは、大きく分けて第1、第2、第3ということになりましょうか。
 まず、3ページの「第1 消費者被害の実態と新たな訴訟制度の必要性」、言わば導入といいますか、報告の前提になる部分に関しては、何か御質問、御意見ございますか。
 もしよろしければ、9ページ「第2 手続の枠組み」に参ります。ここでは外国のことと、いくつかの手続モデル案に関する検討を経て、A案の考え方を基礎にした制度設計をすることにしたといったことが書かれておりますが、このあたりに関してはいかがでしょうか。
 野々山さん、どうぞ。

○野々山理事長 ベースとしてはこれで結構なんですけれども、私の方でこの専門調査会でもA案にC案をプラスするという考え方を提案させていただいて、一定の賛意もあったと理解しています。勿論C案が独自に持っているさまざまな課題があるので、これを乗り越えなくてはいけないということは承知しておるところでありますが、以前議論したときの整理では、このC案をA案に加味していくとの検討については、今後の課題として残すという理解をしていました。しかし、この報告書ではそのことが記載されておりませんので、そのことを書き加えていただきたいというのが意見であります。

○伊藤座長 ただいまの御発言を受けますと、例えば11ページの(3)の「そこで」という文章がございますが、その末尾に「C案については今後の課題として検討すべきである」といった趣旨の記述を盛り込むことになりますでしょうか。

○野々山理事長 そういうことで結構かと思います。
 ただ、C案そのものというよりも、A案の上にC案をとか、表現は工夫する必要があるかもしれませんけれども、そのような趣旨で記載をしていただければと思います。それはその1つの在り方だと思いますので、C案だけでも結構ですがね。

○伊藤座長 2行目にあります「C案の長所ないし利点と考えられるところをできる限り加味しつつ」というのが原案の考え方になっていると思うんですが、それに加えて更にC案の長所といいますか、よさを新しくできる制度に取り込むことができるかどうかということの検討を引き続き行うべきだと。そんなことになりますでしょうか。

○野々山理事長 そうです。

○伊藤座長 野々山さんからの御提言に関しては、いかがでしょうか。
 大高委員、どうぞ。

○大高委員 私も野々山理事長と同じような立場から、そういったC案についても今後引き続き一定の検討をすべきというか、課題として残っているということを確認しておいていいだろうと思います。
 C案については、いろいろ理論的な課題とかが指摘されたところでありますけれども、一回的解決であるとか、総額判決とか、一定のメリットも指摘されてきたところですので、その点も踏まえて先々の課題として確認するということについては、少なくとも意味があるのではないかと思うところです。

○伊藤座長 いかがでしょうか。
 中村委員、どうぞ。

○中村委員 今の御意見については、一部理解できるところではあるんですけれども、やはりC案といいますのは、A案というのは基本的に個々の消費者が第一段階では参加をしないという状況の中で結論を出して、二段階目のところで消費者が参加してくるといった仕組みでございまして、そういった仕組みを前提とした中で、そこの中にC案の総額判決という形を組み込んでいくというのは、消費者の手続保障ということと、事業者の手続保障という観点から、かなり難しいのではないかと考えております。
 そういった意味から、将来的に実際今回の案で進めてみた状況を見ながら、C案といいますか、総額判決での制度の在り方というのを将来考えていくということについては、必ずしも反対するものではございませんけれども、今のA案を前提とした議論の中にC案を組み込んでいくというのは、相当慎重にやっていただきたいということでございまして、もし記載ぶりということについても、そういった立場をもし書き加えるということであれば、更にそういうことも付記をしていただきたいと思います。

○伊藤座長 わかりました。
 余り複雑になってしまうのは好ましくないと思いますが、野々山さんの御発言は、C案そのものというよりは、C案の長所、利点を取り込むような形での引き続き検討をということかと思います。C案そのものということになると、原案の意味は一体どこにあるんだということにもなりかねませんので、2行目に書いてあることの言わば延長として、C案の長所や利点を取り込むことができるかどうかについて、更に検討すべき問題がある、そのような専門調査会で一致した認識があると言えるかということになると難しいところですが、取りまとめとしては、そのような趣旨でいかがでしょうか。もう一回取りまとめの機会がございますから、今の御意見を踏まえて、どういう表現であれば、皆さんの共通の認識に基づくものができるかどうか事務局に検討してもらうということでよろしいでしょうか。
 ほかには、第2の辺りではいかがでしょうか。
 よろしければ、13ページになりますが「第3 一段階目の手続」で、ここも幾つかの重要な問題があり、また、冒頭に御紹介がありました池田委員からの御意見でも幾つかの点についての御指摘があるようでございます。第3の中身については、適宜、それぞれの事項についての御意見を承りたいと思います。
 それでは、窪田委員からお願いします。

○窪田委員 単に言葉、技術的な問題なのかもしれませんが、ひょっとすると実質的にも関連するのかもしれません。16ページの「(6)対象事案について」のマル1に挙がっていることは、第二段階の方で述べられていることとも関係してくるのですが、消費者が請求することのできる請求権を列挙するという形の書き方になっています。この点について、本当に請求権と限ってしまっていいのかなというのが御質問の趣旨です。
 多くの場合には、取消しであるとか、無効であるとしたうえで、給付したものを返してもらうという形になると思いますので、請求権ということで対応が可能であろうとは思います。しかし、例えばローンが残っている段階で、取消しをした場合、債務がないということを確認するというタイプのものもあり得るのではないかと思います。
 また、第一段階では17ページで挙げられている事例がまさしくそうなのだろうと思うのですが、消費者契約法の4条に相当するような場合を想定すると、取消権があるということを第一段階で確認した上で、取消しをするかどうかはあくまでも消費者が決めるということになるのだろうと思います。請求権と限ってしまった場合、その種のものがこれでうまくカバーできるのかというのが少し気になりました。勿論、取消権があるということが第一段階で決まれば、第二段階に加わらなくても、また、訴訟外でも、第一段階での判決を前提として、当然それが援用できるだろうというのは一般論としては考えられるのですが、ただ、第一段階の判決の効力が及ぶ範囲は、厳密には、第二段階で加入した消費者に限られていますので、多分援用できるとしても、事実上の効力という説明にならざるを得ないだろうと思います。
 こうした問題との関係で、ここで請求権と限定してしまっていいのかという疑問を持ちました。なお、これは第二段階の方で書かれていることにも少し関係してくると思いますが、給付請求に限定するという形になっていますが、その点についても、少し慎重に検討しておく必要があるのかなという気がいたしました。

○伊藤座長 今の点について、加納さん何か説明がありますか。

○加納企画官 この請求権といいますのは、基本的には金額を二段階目で確定することが多いだろうと考えておりますので、そのような請求権という感じでここには書いております。
 それ以外のところをどうするかということについては、二段階目の手続をどういうふうに具体的に制度設計していくかというところの中で併せて検討させていただければと思っておりまして、26ページの4.の「(3)請求内容」で書いておりますが、基本的には給付請求を基本とするんだと書いておりますが、それ以外に今、先生が御指摘のところをどこまで含めるかというのは、併せて検討していきたいと思っております。

○伊藤座長 ありがとうございました。
 ここは実質を考えると、窪田委員御指摘のようなことが当然あり得るんですが、他方、具体的な訴訟手続の内容まで検討してみないと確定しにくいところがございますので、基本的な考え方を報告書では示しているということで御理解いただければと思います。
 大高委員、どうぞ。

○大高委員 第三について何点か意見を述べたいと思います。
 まず、手続追行主体に関しまして、13~14ページにかけて適格消費者団体の要件の見直しについて、必要最小限と明記されたことは高く評価できると思います。今後の具体的な要件化に当たっても、不要な要件を課して、制度の実効性が害されることのないように留意していただきたいと思っております。
 一方、適格消費者団体以外の主体につきましては、結論として検討事項だということについて異論があるわけではないのですが、本来この制度の理念からすれば、一定の被害者団体についても主体として認められるべきものであると認識をしております。
 そういったことからすると、理念的にはあり得るのだということについては明記されてもよいのではないかと思っておりますし、また、施行後検討とされている部分についても、やや遅きに失するのではないかと思っております。私としては、専門調査会の後も引き続き検討すべき、取組むべき課題だと考えているところです。
 2点目として、15ページの(3)被告適格のマル2についてです。これについては否定的な取りまとめとされております。ただ、前回の専門調査会の議論では、ペーパーにあるような形ではなくて、確かに無制約に認めるべきであるという意見まではなかったように思いますが、一定認めるべき必要性もある。ただ、その仕分けは難しいんだというものではなかったと理解をしております。
 そうすると、現在の書きぶりはやや消極的過ぎるものではないかと思います。要件の立て方が実際難しいというのはそのとおりでありますけれども、例えば引き続き検討を行うべきとか、そういったもう少し前向きな書きぶり等をしてもよいのではないかと思うところです。
 15~16ページにかけての多数性の要件に関してですが、勿論具体的な人数というのは、具体的なケースを見て判断すべきであるということは当然のことでありますが、この制度は全国的な被害ばかりを対象にするのではなくて、地域の適格消費者団体が当該地域に起きた事案に取り組むということも当然想定されている制度ですので、具体的には50~100程度でも十分多数と評価され得る場合があるのではないかということも考えております。この点について、事務局で何か具体的なイメージがおありのようでしたらお聞きをしておきたいと思います。
 次に、同じく16ページの(5)のマル4につきまして、支配性の要件について記載がされております。従前から述べておるところでありますけれども、類型化に当たっての考慮は勿論、独立要件としてここに記載されているような個々の消費者ごとに相当程度の審理が必要となることがない程度という厳格なものが二段階型である今回のスキームで必要なのかについては疑問に感じるところであります。特に人身被害事案について、係争利益把握の観点からならともかく、支配性の要件から否定的に整理されているということについては、強く疑問に感じるところです。
 なお、仮に独立の要件として支配性と呼ぶか、先ほど重要性という言葉もございましたけれども、こういったものを一定規定するものとしても、通常は類型化をした以上、一定支配性があるということを前提にしてまとめられておるものですので、少なくとも消極要件として機能するように立法化するべきでありますし、また、一旦条文として規定されますと、その条文の解釈が独り歩きをして、予想外に重い要件になるということも考えられますので、条文化に当たっては特に慎重に検討されるよう望むものであります。
 次に(6)です。
 まず、マル2につきまして、少額事件に限定しないという取りまとめとしている点については高く評価したいと思います。事務局からも御指摘がありましたように、消費者被害は少額な事件に限られるものではありませんので、このような限定化をされないことを強く望むものです。
 同じくマル2に関して、係争利益の把握可能性については、これを対象事案の類型化に当たって、一定の考慮が必要であるということは認めるとしまして、これを理由としてペーパーでまとめられているように、人身被害事案を一律に除外することについてはやはり疑問が残ります。これまでの薬害や食中毒事件で事業者側が最大の被害額を全く想定し得ないという事件がどれほどあったのか、かなり疑問に思っております。むしろ確実ではないにしろ、ある程度の被害規模を想定していた事案の方が多いのではないかと思います。著名な薬害エイズ事件でも、一部の製薬会社はあらかじめ被害規模をシミュレートしていたということも聞いております。こういった事案で二段階型の集合訴訟を活用すれば、事業者側においても可能な限りの一回的解決を図れる機会が得られるのでありまして、むしろメリットもあると思います。アメリカのクラスアクションの印象が強いのかもしれせんが、その点が余り事業者サイドに理解をされていないのは残念であります。
 今回の取りまとめで提案されている制度は、アメリカのクラスアクションとは全く異なるものでありまして、また、前提となる訴訟制度も全く違いますから、アメリカと同じような運用になるということは絶対ないということは確信を持って言えるところです。
 この点に関して長くなりますが、仮にペーパーにまとめられているように、製品事故とか食中毒における人身被害の損害の拡大が生じているような事案については、制度の対象から外すとしても、(6)のマル3の最後の方に書かれておりますが、拡大損害でない定型的な損害を請求するような事案については、少なくとも対象にすべきであります。また、このような事案については、被害者と契約関係にあるような事業者に限らず、製造者、つまりメーカー等も含めて被告とできるようにすべきではないかと思っております。仮に現在の整理で立法化された場合、メーカーの製品に瑕疵があった場合、メーカーを訴えるのではなくて、あえて小売店を訴えなければならないということも考えられます。こういった事態になることは、当のメーカー自身も必ずしも望まないと思っております。この点は再考できるのであれば再考していただきたいと思っております。
 個人情報流出事件や有価証券報告書の虚偽記載の事案については、ややネガティブな意見もあったという書きぶりになっておりますが、人身損害との類型と異なって、これらを論理的に排除しなければならない理由は乏しいと思っておりますので、もう少し前向きな書きぶりでもいいのではないかと思っているところです。
 長くなりまして、恐縮です。

○伊藤座長 大高委員からは、大体7点ぐらいでしょうか、御指摘がありました。原案に基本的に賛成するという点は別として、例えば他の団体の適格の問題だとか、被告適格の話だとか、支配性の要件などについては、原案の考え方を修正すべきであるという趣旨の御発言がございましたけれども、個別的というよりは、どの点でも結構ですら、異なった考え方あるいは同様の考え方、いずれでも御意見があればお願いしたいと思います。
 では、磯辺委員からお願いします。

○磯辺委員 1つは、被告適格の問題です。前回の議論で事業者を代表する委員の皆様を始めとして、いわゆる通常の事業体において役員までを対象にするのは酷だという御意見があったと思います。また、有利な和解をねらって役員個人を被告にする場合がないかとの御懸念も示されていたと思います。
 一方、消費者団体からは、悪質な事業者の場合、法人から役員等に財産が移転されてしまって、被害回復が困難な事例に対応できないという意見を出していたところです。
 それぞれ想定している事態が異なりますので、一定の要件を満たした場合に役員を被告とすることができるという切り分けができるのではないかと期待をしていたところですけれども、本日の御提案は、それは困難だという結果によるものだと思います。
 そうであれば、例えば役員を被告とできる場合の要件を定めるというアプローチではなくて、適格消費者団体の行為規範として、不正な利益を図ることや加害または有利な和解を目的とした役員等を被告とするような行為について、それをしないように定めるということで事業者委員の皆様の御懸念を解消するという手立てもあるかとも思いますので、その点是非御検討をお願いできればと思います。
 もう一点よろしいですか。

○伊藤座長 よろしければ、今の点について少しほかの委員の方の御意見も伺った上でと思います。確かに前回の議論におきましても、この点に関する意見が相当程度分かれたわけです。事業者の資力などを要件として、役員等を被告に加えることができるかどうかを判断してはという御意見もございましたが、他方そもそもの考え方として、役員等という個人をこの制度に乗せることの問題の指摘もあったところで、結局、ここはなかなか一致した認識や方向性が得られない、恐らく本日議論をいただいても難しいところでないかということから、事務局としては、慎重に検討すべきである表現をもって、少なくとも今回の制度設計に当たっては、役員等を被告に加えるという方向性を明らかにするに至らないところに止めざるをえないものとしたのかと思います。
 いかがでしょうか。議論は尽きないと思うんですけれども、少し今までの議論を伺っていますと、ある方向性での取りまとめは難しいように思います。
 山口委員、どうぞ。

○山口委員 私、前回、原則被告とすることができることにして、支払い能力に問題がない場合には例外的に除くという提案をしたわけですが、それでも被告になる恐れがあるという御指摘がありました。
 そこでこの問題については100歩譲って、原則は事業者に限定する。ただし、例えば民法の保証の規定などにもありますが、事業者が破産手続開始の決定を得たとき、またはその行方が知れないときはこの限りではないという条文が民法の452条にありますけれども、事業者が破産あるいは支払い不能の状態になったような場合は、経営者を被告とすることができるという形で、訴訟主体になる側に立証責任を負わせる形で例外的に被告にすることを認めると。せめてそのぐらいの規定をつくっておきませんと、これは本当に事業者が悪質事業者についてのことと健全にやっている場合との切り分けがどうあるんだということが、繰り返し池田委員から指摘があるわけですが、そういう場合に役に立たない制度ではしようがないわけです。いわゆる悪質事業者の場合に使えないような制度ではしようがないわけでして、そういう例外的な場合には、事業者も経営者についても被告とすることができるというぐらいのつくり方にしていただきたいと強く思います。

○伊藤座長 今の点でほかの委員の方から御発言があれば、どうぞ。
 では、三木澄子委員からお願いしましょうか。

○三木澄子委員 今の被告適格のところでは、私の方は表現の(3)のマル2の最後の方に「慎重に検討すべきである」という書き方をされたら、「慎重に」という表現がつく以上、多分検討されてもこれは難しいんだなというふうにも解釈してしまうので、やはりここの書き方のところは、先ほど大高委員がおっしったような「引き続き検討」というような表現で検討していただきたいということを思っております。確かに悪質事業者に対する状況も勿論ありますので、その書き方に関しては表現を変えていただければと思っております。

○伊藤座長 沖野委員、どうぞ。

○沖野委員 結論としては、ここで書かれていますように、やはり難しいと思っておりますが、記述がこのままでいいのかという点については、三木委員や大高委員がおっしゃったのと共通する問題意識を持っております。
 被告適格についての問題意識は、法人の役員等に対して、事業者の資力不十分のときに一種の保証責任を負わせるようなことを一般的に考えているというよりは、やはり悪質な事案において利益自身が法人にまったく残っていなくて、役員等に流れ込んでいるというときの実効的な被害救済という点だと思います。そうだとしますと、そういった必要性のある場合、すなわち、制度の実効的な実現という点から問題意識が生じているというその場面に絞り込むべきであり、ただ、その場合も既に御説明がありましたように、そういう切り分けをどう行っていくのかが難問であるということ。それから、前回にも言及がありましたことには、他の制度との関係をどう考えていくかという点もあります。
 こういったことをもう少し書いた方がよろしいのではないでしょうか。その上でおよそ無理であるという結論になるのか、それとも引き続き検討するということで今後の課題としてとらえていくのかというのは、もう少し余地があるように思います。
 関連で、この問題そのものではないのですけれども、やや一般的な話といたしまして、今後の課題についてです。今回のペーパーで引き続き検討すべきであるとされているのは、見落としていなければ、原告の箇所のみに見受けられます。しかし、既に出ておりますように、C案との接合の問題ですとか、あるいはこの被告適格の問題ですとか、更には対象事案の問題ですとか、幾つか今後更に検討すべきではないだろうかと考えられる事項があります。それをどこで書くかという点です。個々のところで書いてあるというのは、それはそれで適切なことだと思うのですけれども、他方で、全体として今後更に検討していくべき問題がある、課題でこういうものがあるということをまとめるような記述があってもよいのではないかと思います。
 更に、その場合ですけれども、今後の検討課題にも、先ほどの大高委員のお話にありましたように、施行後の状況などを待たずに検討を始めるというべきものもあれば、やはり施行後の様子を見て、これでは不十分ではないかということで検討を続けていくものですとか、なかなか難しい問題なんだが、中長期的に考えていくべき問題だとか、いろいろなレベル感もあると思いますので、そういったようなものをまとめる記述が最後の辺りに付けられてもいいのではないかと思います。

○伊藤座長 わかりました。
 それでは、下谷内委員、お願いします。

○下谷内委員 被告適格のところで皆さんがおっしゃられているように、私もこの事業者の役員や理事等につきましては、積極的なここのところの働きかけをしなくては、悪質事業者等につきましての被害の回復は非常に難しいと思います。
 この制度そのものを考えるときに際した最初のページの方にも書かれておりますように、少額の悪質被害。多少次々販売のような高額のようなものも入っておりますが、そういう事業者は、いわゆる普通の事業者というのとある程度住み分けはできているような感じがいたしますので、是非被害の救済を今回の制度をつくる目的に合わせまして、この事業者については、やはり今後さらなる検討が必要だろうと思っております。できれば入れていただきたいなとは思いますが、なかなか難しいところであるのであれば、さらなる検討を続けるということを入れていただきたいなと思っております。
 もう一ついいでしょうか。ここだけでしょうか。

○伊藤座長 とりあえず被告適格に限定して御審議をお願いしたいと思います。よろしいですか。

○下谷内委員 はい。

○伊藤座長 中村委員、どうぞ。

○中村委員 今まで議論されてきた内容というのは、ほぼ悪質な事業者についてそういった実質的な主体というようなものについて追及ができるようにすべきだというところに集約をされているように思っております。
 ただ、ここで一般論として、事業者の役員や構成員について請求ができるようにするということになりますと、通常一般的な業務をやっているにすぎない役員でありますとか、あるいは構成員という話になりますと、例えば株式会社の株主に対しまして追求をするのかと、一般的にはそういう話になるわけでございまして、それを一般的な形で規定をするというのは本来の趣旨にもかなっておりませんし、また、皆様が今、懸念されていることにもつながっていかないと思うんです。
 ですので、ここについて一般論としてそういうものを追求ができるようにするというのは、趣旨にはかなっていないのではないかと思います。もしここに何らか付記をして、こういうものを検討なり何なりということでやるのであれば、この意識されております悪質な事業者について、そういった実質的な主体に対して追求ができるような方策について、更に検討するという記載を残しておくということであれば、一致した見解として残せるのではないかと考えます。

○伊藤座長 わかりました。
 山本委員、どうぞ。

○山本委員 先ほどの中村委員の御発言、沖野委員の御発言に賛成です。
 前回、私もそういう問題意識の下に、その切り分けの方法として、事案の類型のようなことで悪質事業者的なものに典型的に用いられるような事案で特定ができないかということを申し上げました。恐らく事務局においても御検討いただいたのではないかと思いますが、結論としては難しいということであったのだろうと思います。私自身もそれは十分理解できます。
 ですから、恐らく問題は、マル2にあるような役員とか構成員ということよりは、役員のような立場に立っていなくても、実績にはその企業、事業者となっているものを裏で動かしているものとか、そこから利益を吸い上げいるとか、いろんな形態があり得るように思います。そういう意味では、この「事業を行う者」というもので、実績な意味で見てその事業を行う者であれば、それは対象となり得ることが個別の事案においてはあり得べしということなのかなと。ただ、そこは実質的ということは法制上難しいでしょうし、現段階ではなかなかそれ以上の知恵がないというところなのかと思います。
 私もこの書きぶりについては、役員、構成員という形で一般的に書くということではなくて、そういうところに絞って書いて、ただ、その部分はなかなか現段階ではいい知恵が出なくて難しいということで、今回はそこはやむを得ないところではあるけれども、施行後の状況等にかんがみて、そこはどうしてもやはり必要だということであれば、更に検討して考えていくというような形でまとめていただければと思います。

○伊藤座長 この点は従来からの経緯がございまして、なかなか意見の集約が難しいと思います。
 大河内委員、お願いします。

○大河内委員 私も記述を変えるということをお願いしたいと思います。適格消費者団体に対する要件には、池田委員のご意見のように、いろいろなハードルを用意しているわけです。そしてこの訴訟の原告というか、主役になるのは適格消費者団体ですから、適格消費者団体としての要件が厳しく、そのハードルを越えて認められた団体の判断がこういうところに関わってくるわけですから、それほど懸念をされるということが私どもにはよくわからないんです。そういう意味でも、検討する方向の記述というのはしていただきたいなと思います。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 前回、私も申しましたし、今、山本和彦委員からも出ましたけれども、事柄の本質は、役員とかあるいは会社の一定の地位にある者というところが問題なのではなくて、そういう資格があろうがなかろうが、事実上事業をコントロールしている者。特に悪質事業者には、そういう形で表に出ない、あるいは制度が役員ということで、役員責任追及という制度ができれば、意図的にその役員の地位を外すということが悪質事業者においては起こりやすいわけで、そういった形での対処というのは、いずれにしても難しいことではないかと思います。
 将来課題として検討するということに全く異論はないのですけれども、結局そういう事柄の実質を抑えた制度をつくろうと思うと、これが消費者庁、消費者委員会が所管する今回のような消費者の代表である適格消費者団体対事業者、消費者対事業者という枠の入った制度の延長線上でつくれるかは、はなはだ疑問であります。
 当然、この専門調査会が云々できる権限はないんですけれども、考え方としては、この問題だけではなくて、この後出てくるほかの問題も含めて、この制度の限界を超えた部分というのは、将来課題としても、それは民事訴訟法なりの一般制度で置けるべきものだろうと思います。この制度の延長線上ですと、どんなに制度の改革を考えていっても、被告は広い意味での事業者、消費者対事業者という仕組みは崩せない。そうすると、先ほど言ったように、事業者の役員とか、そういう形を取らざるを得ないわけですが、それは余り意味がない場合も生じてくるということになります。
 訴訟法上の一般的な制度として将来考えられるとしますと、それは当然被告は限定されない。勿論、原告も限定されないという中での制度構築なり、もともと諸外国でも現在では、消費者保護もそうした一般制度の枠組みでないと保護できない部分もあるということで、一般制度化されている傾向にあるように思います。
 したがいまして、私が申し上げたかったのは、将来課題とするということを盛り込むということに異論があるわけではありませんけれども、その将来課題というのがこの消費者庁の制度の延長線上で、消費者庁なり消費者委員会が考えていくべき制度としての将来課題ということで書くのかどうか。それは書いてもいいんですが、場合によっては、実現しないことについ誤った期待を抱かせるような書きぶりになるおそれもあるということですので、やはりこの制度の延長線上で受けるべき課題と一般制度の下で受けるべき課題とは仕分けていかなければいけないと思います。

○伊藤座長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 私はこの制度の問題について、三木先生の見識は本当に尊敬すべきものと思っているんですが、少なくとも今の先生の御指摘だけはどうしても納得できないです。この制度は、消費者被害の救済のために、消費者庁あるいは消費者委員会でこうやって検討して、制度化しようというところの中に、なぜ民訴法一般の問題が滑り込んできて、その問題は民訴法の問題なんだからとなってしまうのか。ここはどうしても納得できません。
 少なくともこの被告適格とか、対象事案の範囲の問題は、要するに消費者被害の救済をどう実効あらしめるのか。そしてまた、それを実効あらしめることによって、消費者の被害発生をどう抑止するのかという政策的な課題のところから、なお勿論理論的なところまで含めて検討するときに、これはもう民訴法の問題なんだからとやってしまえば、議論はそこで止まってしまいます。それは余りにも筋違いではないかと思っておりますので、一応申し上げさせていただきます。

○伊藤座長 三木委員の御発言の真意は少し違ったものと理解していますが、いずれにしても、まだ本日の議題の入り口に入ったところで、もう半分以上の時間が過ぎております。ただいまの御意見を伺っていますと、口頭ですので不正確な表現になりますが、委員各位の間で共通している認識を私なりに表現しますと、いわゆる悪質事業者、悪徳事業者に関していうと、実質的な事業の運営主体について、それを被告として加えることに関しては、引き続き検討すべきであるという内容に集約できるのではないかと思いますが、もし御了解いただければ、今、口頭で不正確なことを申し上げておりますので、事務局の助力を得て、今、申しましたようなことを文章にまとめて、次回にもう一回お諮りしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(「はい」と声あり)

○伊藤座長 ありがとうございます。
 他の点はどうでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員 対象事案のうち、有価証券報告書等の虚偽記載に係る事案について、少し意見を申し上げます。
 前回私は、そういった対象事案についての被告となる者の範囲について、いろいろと難しい問題があるということを指摘しましたけれども、金商法では、発行者とその他の関係者、これは役員とか、監査法人とか、証券会社ですが、それらの責任というのはセットで体系的に規定されているわけであります。この報告書(案)では、その辺り、被告の範囲をどうするかということを明示的には書いていないのですけれども、事業者の行為と同視できるかという切り口で、例えば発行者の責任のみをこの制度の対象に乗せるとしますと、それは必ずしも現在の金商法の体系と合致しないものになるおそれがあると思います。
 本日の事業者や役員の被告適格についての議論を伺っていますと、役員の責任というのはなかなかとらえにくいんだという方向ですけれども、金融商品取引法では、むしろ役員や関係者の責任の規定の方が以前からあって、流通市場における虚偽記載についての発行者の責任規定は、平成16年の改正で初めて入ったものです。そういった観点からも、単に事業者に当たるかどうか、あるいは消費者対事業者という枠組みでとらえていくのだとすると、金融商品取引法との整合性をいかに図るかという問題が、かなり残ってしまうのではないかと思っています。
 他方、発行者について見ても、発行市場で資金調達を行う場合には事業者と同視できると思いますけれども、流通市場で取引が行われているときには、虚偽記載があっても、それによって発行者が直接的に利益を得ているわけではありませんので、事業者のアナロジーでとらえることは難しいといった問題があります。この調査会では、そういった流通市場の責任と発行市場の責任とを分けて議論することをこれまでしてこなかったわけでして、その責任は私も感じているのですが、そういった問題が残っていると感じています。
 また、報告書(案)では、係争利益の把握の観点を踏まえると対象になると考えられると記述してありますけれども、ここも厳密に考えていきますと非常に難しい問題があります。それは虚偽記載に基づく損害賠償請求をするときの原告の範囲なのですが、これは虚偽記載のある開示書類が公表された後に有価証券を取得した者に原告適格があるのではないかと思いますが、記載が虚偽であることが発覚する前に有価証券を売却してしまった者は、恐らく損害賠償を請求できないのではないかと思います。
 ところが、買った人の数とか、買った総額はわかるのですけれども、売った人や売った総額のうち、その期間に買った人が売ったのかそうでないのかというのは、取引所の記録を見るだけではわからないわけです。そういった意味で、係争利益の把握というのは実は難しいですね。
 私自身は、係争利益の把握はそれほど重要なものではないと思っていたので、これまで発言しませんでしたけれども、係争利益の把握可能性という軸で事案を切り分けるとすれば、有価証券報告書の虚偽記載の事案についてはいろいろと検討すべき問題が更に残っていると感じます。
 長くなりましたけれども、以上のように、法定開示書類に虚偽記載があった場合の責任については、はっきり言ってこの調査会では厳密な検討がなされていない部分が多いと感じておりまして、この点については、文字通り引き続き、できれば制度ができるよりも前に引き続き検討していくべきではないかと感じています。
 具体的に報告書(案)のどこをどう変えるべきかということまでは申し上げられないのですが、慎重に検討すべきとの指摘もあったけれどもやりますというよりは、むしろ今のような問題があるので、引き続き検討すべきであるという記述にしていただければと思っております。

○伊藤座長 わかりました。
 確かに有価証券報告書の虚偽記載に関して、特に金商法との関係につきましては、私自身も素人で、よく理解できていないんですが、高度に専門的な部分もございまして、この調査会で十分な議論をする機会があったとも言い切れないところがございます。
 また、ここでは係争利益の把握の問題として取り上げておりますけれども、ただいま黒沼委員から発言がありましたように、そもそも誰を事業者としてとらえるかという問題もあり、そういう意味では、もうちょっと早くそういった点も議論しておけばよかったという感じはいたします。いずれにしても、従来の審議の流れからすると、原案にあるような取りまとめになっているわけですが、黒沼委員の今の御指摘も踏まえて、果たしてこれでいいのか、それとも事柄の性質を考えて慎重に審議をすべきだという形に改めるのがいいのか、その辺りは他の委員の方々はいかがでしょうか。
 中村委員、どうぞ。

○中村委員 私は黒沼委員のように深い造詣があるわけではございませんので、余り理論的な話ができるわけではないんですけれども、私も従来から有価証券報告書等の虚偽記載ということに関しては、金融商品取引法における被害救済の考え方というのは、あくまでも投資家と事業者という関係に基づいて、あるいは証券市場の保護ということの考え方に基づいて規定がされているものでございますので、それを一概に被害救済のための制度、特に消費者被害に限って持ち込んでまいりますと、いろいろ支障といいますか、食い違いというのがあるのではないかと考えているところでございまして、そういった意味も含めて、この制度についてこの中に取り入れるということについては疑念を持っているということでございます。
 ですから、例えばよく消費者被害の事例でございますように、上場する予定がないのに上場の予定があるかのように装って株を売るような事案でありますとか、そういうのはこちらの話に入ってくることではなく、どちらかというと虚偽または誇大な広告表示に関するものという中で解決をすべきものではないかと思いますので、通常の一般的な意味での有価証券報告書の記載の間違いについて、この中に入れるということに関しましては、そういった意味で反対ということでございまして、今、書いていただいておりますように、慎重に検討すべきとの指摘があったという記載は、最低でも残していただきたいと思っているところでございます。
 併せまして、個人情報の問題につきましても、先ほどいけない理由がわからないという御意見もございましたけれども、ここにつきましても、個人情報の問題について管理をきちんとしなければいけないということについては、当然のことでございますが、ここの部分については、非常に軽微なミスといいますか、一従業員の不注意ということで、若干の個人情報が紛失してしまうという事例が今たくさん出ているわけでありまして、こういった事例1つ1つについてお金に換算していくということが、本来的な今回の消費者被害の救済ということとして社会的に正しい事柄であるのかということについては、まだ私としてはちょっと違うものなのではないかと思っていることでございますので、そういった意味合いで慎重に検討すべきという意見があったという記述については、是非とも残していただきたいと思っているところでございます。

○伊藤座長 大高委員、どうぞ。

○大高委員 有価証券虚偽報告の問題に関して黒沼委員から提起された問題点につきましては、私もこの分野に関しては専門ではありませんので、今この場でその疑問にお答えする材料を持ち合わせているわけではありませんが、ただ、こういった有価証券の問題につきましては、証券被害については以前申し上げたとおり、消費者被害の重要な1つの問題としてとらえられてきておりますし、集団的な救済が必要である分野であるということは間違いないと思っています。
 黒沼委員もおっしゃっていたように、これは法制化までに当たって所要の解決をした上で導入すべきと私としては思っておりますので、少なくとも黒沼委員が問題提起された問題点があることを理由として、全体としてこの分野に関してネガティブになる必要はないと思っておりますし、必要性については認めた上で、引き続き導入する方向で問題点を解決していく方が望ましいのではないかと考えているところです。

○伊藤座長 後藤委員、お願いします。

○後藤委員 有価証券報告書の虚偽記載については、この専門調査会における審議では、あまり、この分野の専門家がいない中での議論となる。
 一方、この分野についてはかなり専門的な知識を有する者が検討しなければならない案件が非常に多いと我々は理解しておりますので、あえてこの専門調査の中で、問題点も把握できてなく、議論も十分尽くされていない中でこの対象事案にするということについては、少し疑問が残るというのが1つあるかと思います。
 したがって、この分野については、もう少し専門的な知識を持った方たちで、金融商品販売法等とこの制度の整合を図る観点から、別途、検討の場を設けてもう少し審議することが適切ではないかと考えます。今、この場ですぐに結論を出して、対象事案に加えるというのは、少し行き過ぎではないかという気は個人的には少ししています。
 あと、個人情報流出の件については、我々、中小企業でも多数の情報を仕事柄扱っており、情報流出事案も発生することもありますが、実質的に流出により、個人情報が悪用された被害が発生すれば、大きな損害を請求されたりすることも考えられますが、実際の多くの事案では情報の流出にとどまり、悪用された被害というのはあまり出ていない状況があります。そのような状況の中で、ことさら裁判で請求をしていくということについては、若干の違和感を持っております。
 前回も申し上げましたが、実際の事例についても1案件について500円とか1,000円ぐらいの商品券を入れたりしてという現実的な対応が社会的にも認知されている。そのような状況の中で、裁判で額を確定させる、しかも、その内容は精神的なものというのは、いろいろ難しい部分もあるのではないかと感じていますので、その点でも極めて慎重であるべきではないかと感じています。

○伊藤座長 窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 今、後藤委員から2点ございました。第1点目は、より専門的なところで御検討いただくということでよろしいだろうと思いますし、その意味で引き続き検討していただくということでよろしいと思います。
 第2点目は、前回の調査会でもご発言があったところですので、やはり一言触れておきたいと思います。まず、前提として、流出したけれども損害は発生していないというのは、プライバシー侵害に関する損害賠償法の考え方からすれば、流出したのであれば損害は発生していると理解されるだろうと思います。
 それから、現実的な額として500円の図書券を入れてということでしたが、そもそも、それが現実的な額なのか、また、妥当な額なのかというのは検証を受けていないという点は看過できないと思います。裁判官が判断するのは難しいかもしれないが、しかし、だからといって、当事者たる企業が判断するのが適切だということでもないのだろうと思います。このような仕組みをつくると、一定の問題が生じたときに、全部訴訟でやらなければいけないのかというと、必ずしも、そうなるわけではありません。むしろ、そうした訴訟があり得ることを前提として、企業が対応するということになるのだろうと思います。したがって、その仕組みをつくるべきではないという、あるいは、慎重になるべきだということには必ずしもつながらないと思います。この中にも書かれていることですが、公的な紛争手続の仕組みをつくるというのは、場合によってはADR等を促進するという機能もありますので、むしろ積極的に評価していいのではないかと思います。私自身は、情報流出事案について、それが一律の額で決まるのか、そうではないのかという点については、理論的にはさまざまだろうなと思っておりますし、その点での検討課題も残っていると思いますが、今の点は確認しておきたいと思います。

○伊藤座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 有価証券書の件ですけれども、黒沼委員の御発言を伺って、御懸念というのは誠にごもっともなところがあるように思いました。この点については、私も率直に言って、この委員会での検討は個人情報流出と製品事故等についてはかなり立ち入った検討がなされたかと思いますが、その中間で有価証券の問題はどちらに近いかみたいな形での議論はあったかと思いますが、専門的な金商法の体系にまで立ち入った検討が必ずしも十分ではなかったというのは、そのとおりのように思われます。それから、金商法の体系というのはかなり精緻なもので、完結的なものとしてつくられているということもそのとおりなんだろうと思います。そういう意味では、引き続き検討が必要であるということはたしかだと思います。
 他方で、大高委員の御発言にも非常にシンパシーを持っておりまして、アメリカのクラスアクションなどでも、この有価証券報告書の虚偽記載等の分野は1つの大きな分野として存在していて、消費者、投資家の多数の被害の救済というものの必要性が大きい分野であるということも、またたしかな、あるいはドイツなどでも独自のそういう制度がつくられていると伺いますし、必要な分野だろうと思います。
 そういう意味では、その検討というのは、先ほどの沖野委員の分類で言えば第1分類といいますか、直ちにできるだけ早急に検討をいただいて、もし今回つくられるものがそこまで検討が進んでうまく組み入れられるということであれば、それに組み入れていただきたいと思いますし、また、それが仮に難しいとしても、できるだけ早急に検討の結果を専門的な知見を持っておられる方で出していただきたいと思います。
 ただ、やはり現段階では検討が十分でないということはそのとおりだなという印象を持ちます。

○伊藤座長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 ありがとうございます。
 この有価証券につきましては、前回も申し上げましたように、やはり被害に遭っている人たちの実態から考えますと、是非入れていただきたいと思います。個人投資家とか機関投資家という言葉で枠の中に入れられるような人たちが被害を受けているわけではありませんので、今、山本委員もおっしゃられましたように、早急な検討を踏まえていただきたい。
 それに合わせて専門家ということでございますが、余り学問的なところでの議論をされるのではなくて、実際にこれを適格消費者団体が運用していくに当たって、いつも行うものもその中に入れていただいて、検討を早急にするということであるならば、私は賛成いたしたいと思います。

○伊藤座長 他の点も同様ですが、専門調査会の意見のまとめ方で、委員の皆さんの御意見が一致しない事項に関して、どちらが多数かということで、多数の意見を調査会の意見として記載するというのは、調査会の責務からするとそぐわないと思いますので、できれば、それぞれ御自身の御意見とは必ずしも完全に一致しなくても、やむを得ないといいますか、全体の意見を踏まえるとそういう表現でも了解をいただけるという辺りを探ることができればと考えております。
 そういう視点から伺っておりますと、個人情報流出事案に関しては、慎重に検討すべきだという御意見もございますし、またその理由も十分わかりますが、従来の経緯あるいは本日の調査会の意見の分布を見てみますと、基本的には積極といいますか、対象として取り込む方向でということで御了解いただけないかと思います。
 それに対して、有価証券報告書等の虚偽記載事案ないしそれに関連する事案ということになりますと、先ほど中村委員から御指摘がありましたような事案、つまり上場予定がないものをあるという、やや詐欺的手法なものについては比較的取り込みやすいと思いますが、有価証券報告書の虚偽記載一般をということになりますと、勿論必要性があることは理解しておりますけれども、専門的取引としての性質について十分配慮しつつ、引き続きか早急にかは別といたしまして、検討すべであるとか、そういったことでまとめることについて御了解いただけないでしょうか。いかがでしょう。
 それでは、その辺りで御了解いただければと思います。もう少し正確な表現については、事務局の協力を得て、次回にまたお諮りをしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○伊藤座長 ありがとうございます。
 そうしましたら、かなり時間が経過しておりますので、先ほど大高委員から他の点についても御意見あるいは修正の御提案等もございましたが、逐一ここで他の委員から御意見を承る余裕が御座いません。そこで、大高委員の御意見を受けて、これまでの審議の状況を前提にして修正すべきかを事務局と協議しつつ、私に判断させていただいて、次回の取りまとめでもう一度その点に関して御審議をお願いすることにさせていただければと思います。
 野々山さん、どうぞ。

○野々山理事長 大高委員の指摘したものの中で、集合訴訟をやっていく立場の視点から考えますと、この支配性の要件というものについて意見があります。現在提案されている集団訴訟は、まず主体が適格消費者団体に限定される。その中から要件を更に厳しいものにしぼっていくということ。それから、類型化されて事件が限定される。その上に、更にこの支配性の要件というのは入ってくるという形になってきております。しかも、その支配性という要件は、前回も指摘された言葉の持つ強さの問題がありました。それから、今回出てきた16ページのマル4の最後から2行目のところ「個々の消費者ごとに相当程度の審理が必要となることがない程度になっている状態」という支配性の定義がされています。これを見ると、実際に訴訟を行ったときに、この支配性のところでかなりの議論をされる可能性がある。これが一体具体的な事案ごとにどこで切り分けられるのかは詰められていないわけでありまして、そういう意味では、ここで訴訟が非常に停滞する。こういう危険を私は感じます。
 ですので、「支配性」というこの文言を、前回出ていたように「優越性」、あるいは今回は「重要性」、いずれでもいいと思いますけれども、文言を変えていただきたい。そのことを十分考えていかないと、この制度が活用できなくなる危険性があるということを指摘させていただきたいと思います。

○伊藤座長 ただいまの野々山さんからの御指摘に関しては、何か御発言ございますか。
 三木座長代理、どうぞ。

○三木浩一座長代理 長く付け加えることはありませんが、前回も申しましたし、恐らく私の認識では、前回大きな異論はなかったと思いますが、この要件を入れることは賛成ですが、やはり消極要件として入れるということをこのペーパーで明記するのかどうかよくわかりませんが、共通認識としては、もし御異論がなければ、そういう形で整理していただければと思います。

○伊藤座長 山口委員、お願いします。

○山口委員 記述の意味がわからないんですが、16~17ページにかけて「さらに」から「列挙しないことにする」ということの意味がよくわからないんです。どうも法律の条文として支配性ということを書かないという趣旨になるのかどうか。そこら辺も後で時間があれば説明いただければと思います。

○伊藤座長 その点について、加納さんお願いします。

○加納企画官 16~17ページに書いてありますのは、対象事案を選定する際にこういう要素を加味して選定すべきだということで書いておりまして、その前の先ほど野々山先生と三木先生の御指摘があったマル4のところは、またそれとは別途、独立の要件としてこれを設ける必要があるのではないかということで書いております。

○伊藤座長 よろしいですか。もし御疑問があれば、また後で確認していただければと存じます。
 三木澄子委員、どうぞ。

○三木澄子委員 18ページの確認なんですけれども、管轄のマル2です。これは前も出たと思うんですが、二段階の手続に入った場合に、ここには「東京地裁等に付加的管轄を認める」とあります。「等」という中には、各地の高等裁判所があるところの地裁という表現も含めておられるのかどうか。その辺だけ確認をしたいと思います。

○伊藤座長 加納さん、お願いします。

○加納企画官 そこはまたいろいろと検討しなければならないところでありまして、ここで書いていますのは、どちらかといいますと破産法の中で似たような規定がありまして、一定の付加的管轄が認められている。それは東京地裁と大阪地裁となっているようでありまして、それぐらいでしたら大丈夫ではないかと思っておりますが、それを超えてここを第一審で認めるかどうかということについては、更にいろいろ検討していく必要があると思っております。

○伊藤座長 三木澄子委員、よろしいですか。

○三木澄子委員 はい。

○伊藤座長 先ほどの支配性に関して、三木座長代理から御発言もございましたが、訴訟運営について責任を持たれる裁判所の御意見も伺いたいと思いますが、恐らく原告である適格消費者団体としては、特に第二段階の手続との関係もありますので、この紛争がどういう広がりを持ったものであるとか、第一段階における判断事項が第二段階の手続に対してどういう影響を与えるものであるとか、そういったことは訴え提起の段階で示すことになり、それを支配性の要件と呼ぶかどうかは別としても、原告側で紛争の概要と一段階目の手続が果たすべき役割を明らかにすることになろうかと思います。それにもかかわらず支配性がないというのであれば、それを消極的要件として言うのかどうかはともかくとして、事業者側で、原告の主張に対する反論の形で、当該事案としての特質から支配性が欠けていることを展開するのではないかと思います。これは私の印象ですが、朝倉さん、この手続ができたときの訴訟運営のあり得る姿ということで、現段階で御意見があれば承りたいと思います。

○朝倉課長 今、伊藤座長がおっしゃったことと全く共通の認識を持っています。訴訟提起の段階で、原告は当該事案がどういう事案かということを裁判官にわからせなければいけないでしょうから、対象消費者がどのぐらいいて、どういう範囲に広がっていて、どういう損害が生じているのかということを明らかにしなければ弁護活動になりませんので、そのような事案の概要を原告が示すのだろうと思います。
 先ほどの支配性の要件のところとの関係でいえば、基本的には支配性の要件があるという前提で訴えを起こしてこられて、そういうのはないという特殊な事案であるということを被告側で言っていただいて、その特殊な事案はそれだけを落としていくという審理の在り方を念頭に置いております。それを立証責任の転換というのか、事実上の推定というのか、その辺の技術的なことについては前回申し上げましたが、もうちょっと検討する必要はあろうかと思います。

○伊藤座長 どうもありがとうございます。
 窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 支配性に関してですが、単に希望ということになりますが、今日の御説明の中でも、加納企画官の口頭のご説明の中では、支配性あるいは重要性とか、ほかの言葉への置き換えもございました。しかし、ペーパーの中ではずっと「支配性」という言葉のみで書かれております。この議論を通じて、議論を参加している者にとっては、支配性について一定のイメージというのはあるのだろうと思いますが、一般論として見たときには、支配性という言葉は大変強いのではないかという印象があります。場合によっては、ペーパーの中でも、重要性あるいは優越性といった幾つかの言葉が出てきたものを仮に括弧でもいいので明記していただく方が、その後、それを具体化していくときに、一体どういうふうに具体化するのかというレベルでも、随分イメージが違うのではないかという気がします。
 さきほど朝倉課長のおっしゃった、反対にそれがないということを証明するという場合にも、一体何がないということを証明するのかというレベルでも、支配性という極めて高度なものだとすると、それがないということは比較的証明しやすいような気がしますし、重要性もないんだということを証明するのはもう少し難しいように思います。その点で、実質運用が関わるではないかと思いましたので、言葉を入れるだけでも結構ですので御検討いただけたらと思います。

○伊藤座長 わかりました。それでは、それは検討してもらうことにしましょう。
 そこで、残り時間が20分なんですけれども、若干の延長はお認めいただくことにして、よろしければ次の第二段階目の手続に移りたいと思います。
 では、加納さんよろしくお願いします。

○加納企画官 資料1の23ページになります。
 「第4 二段階目の手続」の「1.基本的な考え方」ということで書いております。個々の消費者ができるだけ簡易・迅速に権利救済を受けられることができるような制度設計とすべきだということで書いております。
 「2.簡易な手続の開始」の(1)申立てにつきましては、簡易な手続の開始決定というものをかませまして、対象消費者の請求権の届出期間を明らかにするということにしてはどうかと書いております。
 24ページの「3.二段階目の手続への加入を促すための通知・公告」の(1)ですが、まず主体は適格消費者団体。これは適格消費者団体が行うこととするということとしながら、相手方事業者にも一定の協力をすることとするということで書いております。
 (2)方法のところですが、マル1、マル2で個別通知を原則とする。知り得た対象消費者に対しては個別通知を原則とする。
 マル2で、更にインターネットを利用するなどの相当な方法による公告をするということで、通知と公告というものをすると書いております。
 マル3、マル4ですけれども、更に事業者の協力ということでありまして、公告を求めることができるということ。
 (5)になりますが、情報提供というのも考えております。
 (3)通知の内容は、ここに書いてあるとおりであります。
 25ページの(4)の費用負担は、原則として申立団体が負担するとしつつ、一定の場合には相手方事業者に負担させる手続とすると書いております。
 (5)のマル2情報提供でありますが、一段階目で責任原因が認められている、判決が出されているというのを前提とした手続であるということを踏まえまして、個別通知に必要な対象消費者の特定に関する情報の提供を裁判所の命令にかからしめるということにしております。
 ただし書きのところですが、一定の場合にはその命令が酷な場合もあると思いますので、そういう場合には命令をしないこととするということで除外事例を明記する。
 なお書きのところですが、第三者に対する命令につきましては、この情報提供命令は一段階目で責任原因が認められるということを前提としておりますので、第三者に対する命令はしないということにしてはどうかと書いております。
 マル3は、その情報提供の命令に応じない場合の費用負担ということでありまして、正当な理由がなく、情報提供等に応じないという場合には、個別通知に変わる公告を申立団体がし、それをした場合には、その費用を請求することができることとするということで、制度の実効性を確保するということとしてはどうかと書いております。
 26ページ「4.二段階目の手続への対象消費者の加入等」です。
 (2)で書いておりますのは、手続の円滑化等の観点から、申立団体に主体を一本化する。一種の授権強制という形になろうかと思いますけれども、申立団体は正当な理由がない限り受験を拒否することができないということで書いております。
 27ページの「5.簡易な手続の審理」につきましては(1)のマル2に書いてありますとおりのイメージで考えておりまして、破産の査定手続を念頭に置きながら、こういう手続にしてはどうかということで書いております。
 28ページの「6.決定」の決定の実効性確保という観点で、(1)のマル2のところですけれども、仮執行につきましていろいろと御議論をいただいたところでありますが、これにつきましても一段階目の手続で判決が出されているということを踏まえまして、この簡易な手続の決定に仮執行をすることができることについて更に検討していくということで書いております。
 29ページ、それとの関係で「7.異議申立て」の(2)手数料の差額負担の問題につきましては、この仮執行の問題とトレードオフの関係になるかもしれませんけれども、併せて検討していくということで書いております。
 30ページ「10.その他」の(3)適格団体の報酬の問題につきましても御議論をいただきましたけれども、これにつきまして弁護士法との関係を整理した上で、合理的な範囲内で報酬及び費用をとることができることとするということとしてはどうかということで書いております。
 32ページ「第5 制度の実効性を高めるための方策」ということで幾つか書いております。「1.基本的な考え方」のところで書いておりますのは、この制度自体が対象消費者に管理を促すということでありまして、制度の周知をかなり進める必要があると思いますので、そういう旨を書いております。
 「2.適格消費者団体への支援について」でありますけれども、適格団体の公益的な役割ということに踏まえまして、必要な支援を生ずべきと書いておりまして、PIO-NET端末の配備などの情報提供の支援、税制の活用といった資金確保の活用、税制の活用に関する環境整備という形で書いております。
 「3.対象消費者への通知・公告に係る環境整備について」でありますけれども、33ページの最後のところですが、国民生活センターや法テラスや弁護士会などの関係機関との連携ということを書いております。
 34ページ「終わりに」のところで、以上をまとめまして、早急な立法措置を講ずべきという形でまとめております。
 駆け足で恐縮ですが、以上です。

○伊藤座長 それでは、二段階目の手続に関して多様な事項が含まれているわけでございますが、特に順序は決めませんので、お気づきの点に関して御意見をお願いしたいと存じます。
 磯辺委員からお願いします。

○磯辺委員 ありがとうございます。
 1つは、二段階目の通知・公告費用の負担の件です。前回でも述べましたように、一段階目の判決で事業者の責任が認められて二段階目に進むということを考えると、個別通知で被害回復を図るのは、本来事業者が行うべきところ、事業者にインセンティブが働かないので適格消費者団体が通知を行い救済を図るということになるかと思います。
 そういう意味では、一段階目の判決においては共通争点で責任が認められて、被害者の数もほぼ特定されているような事案については、通知・公告費用について被告が負担するよう判決で明示していただけるような制度にできないだろうかということが1点ございます。
 また、事業者の特定が一部困難な場合に、二段階目の手続において被害者の数が特定にした後にでも、その方々への個別通知費を事業者側に請求できるような仕組みを入れていただければということが1点。
 それと、適格消費者団体への支援の件ですが、今回情報面やさまざまな環境整備について支援いただくということが明記されていることは大変心強いのですが、加えて財政面の支援についても是非御検討いただきたいと思っております。消費者庁の集団的消費者被害救済制度研究会報告書でも、資金の確保等についての環境整備を図るという文言で、財政支援についても一定検討がされると読める表現ぶりがされていますが、今回具体的な記述の中で財政支援に関する記述が完全になくなっていることが残念だということです。
 一定の報酬は認められることになりそうですけれども、これは集合訴訟制度において二段階までに及んだ事案に係る実費・人件費に相当する部分と考えられます。そういう意味では、差止請求関係業務や訴訟にまで至らない場合の消費者被害救済の活動費用等、これらの活動も大いに公益性が認められるところで、直接・間接の財政支援の検討余地を是非引き続き残していただきたいと考えているところです。
 消費者庁としてもさまざまな努力をされていて、単純な財政支援が困難であることは承知していますけれども、適格消費者団体への委託事業、無利子融資、消費者支援基金の活性化など、まだまだ幅広い可能性があると思いますので、直接・間接の財政支援の検討の余地を引き続き残していただきたいという意見です。

○伊藤座長 後者の適格消費者団体に対する支援の在り方、対応に関しては、どういうことがここで記載できるのか。事務局で少し検討してもらいたいと思います。
 前者の方、つまり25ページの(4)通知・公告費用の負担に関しましては、原則として申立団体がその費用を負担し、例外を認めるという記載内容になっていますが、磯辺委員からは、そういう記載内容ではなくて、むしろ原則として、相手方事業者に負担を求める方がいいのではないか。そのような趣旨の御発言がございましたが、こちらの方に関しては、どなたかいかがでしょうか。
 大高委員、どうぞ。

○大高委員 私も磯辺委員と同様に、もう少し事業者側のスキームについて踏み込んだ記載があってもいいのではないかと思っております。ここでは(5)のマル1で公告義務というものを書いておりますけれども、進んで一定の事案においては通知義務まで認めてもよいのではないか。むしろ事業者からやった方が安く、早くできる場合も多いのではないかと思います。
 それに関連して、第三者に対する情報提供命令については、従前から私としては、一定の場合には認めてもいいのではないかと思っているところですので、その点をできれば修文していただきたいですが、仮にここが法制的に難しいとしても、それであれば、少なくとも第三者による自主的な情報提供を阻害しないような仕組みということは考えられていいのではないかと思っております。例えば個人情報保護法との関係で、自主的に情報提供をすることは問題ないこととするとか、そういった措置の検討については付記していただいてもいいのかなと思っています。
 また、25ページの(5)のマル3も情報提供に応じない場合の費用負担についても、ここの記載では費用を後から請求できるとなっておりますけれども、前払いも検討していただいていいのではないかと思います。といいますのは、ここで想定されている公告方法というのは、個別通知に変わり得るものということで、相当重たいものが想定されているんだと思います。そうすると、立替えができないと結局公告できないということになりますので、サンクション的な機能も果たせないというおそれもありますので、ここはそういった余地についても何らかの議論は余りされておりませんので、検討ということになるかもしれませんけれども、その点は御検討いただければと思います。
 あと、その他の点については、また後ほどの方がよろしいですかね。

○伊藤座長 今の大高委員の御発言のうち、第三者が任意に協力する余地を排除しないことは、当然と言えば当然のことで、何か表現上の工夫ができれば、検討してもらうことにしましょう。
 その他、ただいまの大高委員の発言、あるいは磯辺委員の発言に関連して、何か御意見ございますか。
 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 25ページの公告費用の負担のところにつきましては、やはり私どものようにお金のない適格消費者団体からすると非常に重うございます。財政支援も何もないというところでやるといっても、なかなか税制改正で給付金の控除だとか、いろいろなことが書かれておりますが、私どもはNPOではございませんので、非常に難しいところであるかと思っております。
 したがいまして、やはり先ほど磯辺委員や大高委員もおっしゃられましたように、ここの場合の判決においてきちんと事業者に負担をさせるという書き方をしていただけると、非常にスムーズに活動ができるのではないかとは思っております。
 それから、第三者への情報提供につきましては、今、座長がおっしゃられたような形で何らか書き加えていただければと考えております。
 適格消費者団体の支援につきましては、このPIO-NET端末の配備に向けた検討ということでございますが、この配備につきましては、今現在、適格消費者団体はかなり厳しい要件でもって設置はされておりますが、それを管理、運営していくというのは非常に難しいかと思います。したがいまして、ここにPIO-NET端末を配備にするということは、それを入力している相談員が要るわけでので、そういういろんな行政との絡みもありますので、ここにつきましてはもう少し検討をしていただきたいなと思っております。
 財政支援につきましては、積極的な財政支援を働きかける。もう抜けておりまして、法律改正によるというところに表現が変わっておりまして、非常に残念だと思っております。積極的な財政支援というのをこれだけの制度でもって運営をしていくとなると、国もそれに関わって何らか支援をしているということが、消費者にとってもわかりやすい制度の在り方であるのではないかと思いますし、それなりに責任を持った活動もできるのではないかと思いますので、是非この財政的な支援につきましても検討されるような記述の仕方をお願いしたいと考えております。

○伊藤座長 三木澄子委員、お願いします。

○三木澄子委員 私も25ページの(5)のマル3のところなんですけれども、やはりこういうケースの場合は、適格消費者団体に対する最終的な支援ということで、勿論そういうことを本来は事業者に課していきたいと思うんですが、それが不都合があるような場合は、やはり国の支援というものをどこかに入れていただきたい。そういうものが全体的な支援にも関わってくるのではないかと、それは通知・公告の面においても思っております。
 それから、マル2情報提供命令のところでも、先ほどのようにやはり第三者に対しては、命令ではないけれども、協力要請という表現をして書き加えていただきたいということ。
 32ページは、先ほど下谷内委員がおっしゃったように、やはり適格消費者団体の支援に関してのPIO-NETの端末の検討というのは、私ども相談員にとってここのところは懸念しておりますので、再検討をしていただきたいと思っております。

○伊藤座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 25ページの(4)通知・公告費用の負担の点ですが、これは下谷内委員も申し上げたところで、私にはこれでやむを得ないかなと思っているのですが、原則としてということの意味だと思うんですが、やはり理念的には原告の方で、原告となるべき者の頭をそろえるというのは、原則は原告側の責任であるということはあるのかなと思うわけです。
 ただ、この訴訟においては、一段階目で一定の確認をなされるということを念頭に置いて、個々の事件においては理念的には例外ということになりますが、相手方事業者に負担させるということ。制度的にはそうならざるを得ないような気がします。ただ、原則と例外というのは、現実の世界においてほとんどの場合が原則に当たって、ほんの少しだけ例外が認められるということではないんだろうと思っておりまして、結論的なあれとしては、こういうことかなと思っているということです。
 大高委員が言われた2点目、事業者に義務違反があった場合の費用の前払い請求というのは、前に代替執行の例を引いて、そういうことはあり得るのではないかということを申し上げまして、これは法制的には難しいのかもしれませんけれども、その点については大高委員の御意見に賛成です。

○伊藤座長 三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 これも前回申し上げたことではありますが、30ページでしたか。ページがちょっとはっきりしませんけれども、適格消費者団体が費やした費用とか、場合によっては報酬が一定程度取れるという仕組みの問題で、私も適格消費者団体がその費用や報酬をある程度回収というか、取れるという制度自体は積極的に賛成ですが、だれから取るかという問題ですね。
 これは可能であれば、今後検討していく過程で、事務局に諸外国の制度をお調べいただきたいんですけれども、私が知っているごく少ない外国の例で考えますと、事件によっては消費者一人ひとりが受け取れる金額は少ない、小さい額であることもあるわけですが、そこから更に費用や報酬を取るというのはいかがなものかと思いますし、そういう制度が果たして諸外国にあるのかどうか。やはり事業者側からそれは取れるという制度を、難しい面もないわけではないと思いますが、是非積極的に検討していただきたいと思います。
 アメリカのクラスアクションなどは、事件によっては弁護士が非常に大きな報酬を得るということもあるようですけれども、実質的には基本となる法制度が違いますが、被告側から取っているのであって、私の認識している限りでは、個々のクラスメンバーの取り分の上前をはねるということは決して行われていないと理解しています。
 いずれにしましても、我が国のこの制度は、全国で地域ごとに、要は地域限定型である9個の適格消費者団体が独占的にこの訴権を与えられるという制度で、表現ぶりには語弊がありますけれども、消費者側から、こちらの方が費用が安いとか何とかという選択ができるわけではありません。繰り返しになりますが、消費者保護のための特殊な制度としてつくっているのに、消費者が取れるべき部分から取れるというのではなくて、やはり被告側から取れるというものを原則形にしていただきたいと思います。
 その流れでいいますと、もう一点関連すると思いますが、先ほど来議論に出ております通知・公告の費用ですが、前払いの点も含めて、なるべく企業側からとれるという仕組みにしないと、それは消費者団体側には厳しいことになるのではないかと思います。これも外国の例を挙げて恐縮ですが、ポルトガルの制度は実質的に二段階型の制度で、最大の事件は、ポルトガルテレコムというのが被告になった被害者が10万人とかそういう規模に及ぶ事件ですが、通知・公告はポルトガルテレコムが費用とか手間を一切負担してやったと聞いております。この場合は任意にやったみたいなので、裁判所が命ずるまでもなかったようですけれども、やはり一段階目で有責だと認められれば、二段階目の手続の開始に当たってのそういう負担は被告企業が負うというのは自然な発想として受け止められている面もあるように理解しております。

○伊藤座長 予定の時間が過ぎておりますが、若干延長をお認めいただければと存じます。
 朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 今の費用負担の話ですが、まず、費用負担の前の段階で通知・公告をだれがやることになるのかというところを考えないといけないのかなと思いました。今、三木座長代理がおっしゃったように、もし通知・公告を被告が行うという前提で、費用も被告が負担するということであれば、事は比較的単純なのかと思うのですが、原告が通知・公告を行って、それを被告に負担させるということになりますと、これは訴訟費用のようにそれまでかかっているものと違って、これからやることについてその手段や見込み費用がわからない段階で被告が負担を命ぜられるということになるものですから、これでいいのかなというのが1点でございます。
 原告側も消費者の方々を集めることにインセンティブがあって、それでいて自分の方で通知・広告をするのであれば費用をできるだけ安く、実効性をできるだけ大きくというインセンティブが働いているので、経済合理性からは、原告が負担する金額が一番少なくなると思わないでもないのですが、他方で、その場合は原告側がまだ費用をとれない段階で支出しなければいけないという大きなハードルがあるということも事実で、その両方の問題をうまく解決させなければならず、そう単純に被告に負担させればよいということではないのではないかと思います。適格消費者団体がどこかから一時的に資金を借りてくるか、補助を受けるといった方法で負担しておいて、後で回収するということもあり得るのかもしれませんし、そういう意味では、環境整備との中で総合的にどうするのがいいのかというのを考えるべきなのではないかと思うところであります。
 あと、これは政策的にどちらに負担させるのがいいのかということではありますけれども、私の理解では、この制度は実体法的な権利には影響を与えずに、したがって、消費者が支払いを受けるべき金額、もしくは事業者が支払うべき金額、こういった債権債務に影響を与えないものであるが、その権利を実行する手段が個人では提訴できないから、そこのところを何とかしようという制度だと理解していました。
 ところが、今のお話を聞いていて、実質的な費用負担とか、場合によっては弁護士費用とかも被告が負担するということになってきますと、結構実体法的なところまで影響が及んでいるのではないかと思ってきて、最初に原事務局長がおっしゃったり、加納企画官が説明されたりしたところとの整合性をどういうふうにとるのかという問題も出てきます。もっとも、そこは政策的判断ですので、私が何か言うことではないと思いますが、よく整理した上で検討するべきではないかなと思いました。
 最後、これは裁判所的な観点ですが、原則と例外を決めるのであれば、要件は明確にしておいていただきたいと思います。もう一つは、ここで不服申立て等の手続をつくって引き延ばされることになると、二段階目は始まらなくなってしまいます。以上の2つの点を留意して簡易・迅速に判断できるように要件等を整備していただきたいと思います。

○伊藤座長 25ページの(4)通知・公告費用の負担に関しては、原案の考え方を前提にして、朝倉さんから発言があったように、例外の定め方をどうするかという問題の指摘があり、他方、原則は事業者の負担にという御意見もあって、調査会としての意見を取りまとめることになると大変難しいことになります。しかし、原案の考え方に関しては、先ほど山本和彦委員からの御発言もございましたし、御理解はいただいていると思いますが、本日の審議を踏まえて、この考え方を維持しつつ、原則例外に関する合理的な基準に基づいた運用で解決できるようなことなのかどうかという辺りを、次回の最終取りまとめに際して、もう一回御審議いただくということにいたしましょう。
 それから、先ほどの三木委員の御発言は、30~31ページの報酬及び費用の関係にも触れられていらっしゃいますが、どなたか御意見ございますか。
 大高委員、どうぞ。

○大高委員 その点に関して一言申し上げさせていただければと思います。
 私も前回申し上げたとおり、こういった適格消費者団体に生じた費用の償還の必要性については認めるところですが、三木委員のおっしゃったことと方向がずれますけれども、今回のペーパーの書き方について、やや報酬というものを強調した書きぶりになっている点が若干気になっております。この報酬の表現というのは、まさしく弁護士法との関係もありますので、その使い方については不必要な誤解を生まぬよう慎重にされた方がいいのではないかと思っております。
 前回まで議論されていたところからしますと、適格消費者団体に対して支払われるべきというのが相当だと考えられる費目のうち、恐らく多くは、もしくは過半については、当該訴訟の訴訟追行に要した実費等の償還に当たるものと理解できるのではないかと思っておりまして、むしろそういったものは実質的な費用に該当するものだと思っております。そういったこととすれば、今回のペーパーであれば、むしろ報酬がメインで費用が付随的な形になっておりますけれども、その辺り、例えば費用や報酬という書き方とか、ちょっと工夫をしていただければいいかなと思っておりますので、御留意いただければと思います。

○伊藤座長 窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 多分、今の大高委員の御発言とも少し関連すると思うのですが、気になる部分がありますので確認をさせていただければと思います。
 31ページ(3)の最後の段落のところで、弁護士法第72条との関係について触れた上で「同条の趣旨を損なわないように配慮するため、弁護士を理事として必置とするなど」とあります。これは随分踏み込んだ表現だという気がします。
 つまり、弁護士法第72条との関係で問題にはなるけれども、これだと組織の在り方についてまで踏み込んでしまうことになります。特に今の報酬というのが、本来の意味の報酬なのか、費用に近いものなのかという点を踏まえて考えると、必ずしも明示的な議論があったわけではありませんし、ここまで組織について具体的な発言をするというのは適切なのだろうかという気がします。
 また、その後に言及されている費用あるいは報酬について適正化を図るということは、恐らく弁護士法第72条との関係はなくても必要なことだろうと思いますので、そこを切り分けて、最後の段落を整理していただく方がよいのではないかと思いました。

○伊藤座長 大高委員や窪田委員の御発言については、表現等に関しては意図せざる誤解等が生じないように工夫をしてもらえればと思います。
 三木委員の御指摘に戻りますけれども、訴訟遂行に要した費用や報酬を相手方から取れることにすることに関しての御指摘ですが、これもなかなか大きな問題でありまして、議論がございます、訴訟代理人である弁護士の費用報酬を相手方に対して請求するような制度に変えることがいいのかどうかという一般的な問題との関連もあります。勿論、三木委員がおっしゃっている御趣旨は、こういう特別な制度であるからということを重視されているとは思いますが、ここで新しい考え方を直ちにというのは難しいかなという印象はございますが、何かその点に関しては御発言ございますか。
 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 発言の趣旨の確認になりますけれども、これは前回は切り分けで、今日は時間がないのでざっくり言いましたが、やはりペーパーで書いている意味での報酬と費用というのは若干切り分けた方がいいと思います。
 私の発言の趣旨は、費用であれ、報酬であれ、それを消費者保護のための制度でありながら、その消費者から取るというのがいいのかという問題が主であります。費用については、これも単純ではないにせよ、相手方から取るということは、報酬に比べれば簡単だと思うんです。報酬の方は確かに難しい面がありますので、私の趣旨は、仮にそれが相手方から取れない場合に、しかし、だから被害者個人から取るというのがいいか。むしろ、それは消費者団体には申し訳ないけれども、それは取れないという制度の方の選択は当然考えていただきたいということが1点。
 それから、これはやや言わずもがなかもしれませんが、私もこの問題、特に報酬を含めますと、弁護士報酬の敗訴者負担の問題につながることは、前回留保はしましたけれども、日本と並んで数少ない敗訴者負担の制度を原則取っていないアメリカでも、アメリカは日本と違って、かなりの例外を設けて事件類型を区切って、敗訴者負担の制度を設けている類型がかなりあります。今回つくる日本と同じような制度は勿論ないので、直接は参考になりませんけれども、この種の一種の政策目的的な訴訟については、敗訴者負担を事件類型を限って広く認めておりますので、その敗訴者負担一般の問題がどうだからという問題と常に同じにはならないということは申し上げておきたいと思います。

○伊藤座長 中村委員、どうぞ。

○中村委員 大高委員や窪田委員が言われたことに関しては、私も特に異論はございませんし、消費者にどの程度負担を求めることが適当かということについては、慎重に検討した方がいいということについても特に異論はないんですけれども、だから事業者に負担させればいいということには必ずしもならないのではないかと思います。
 そういった意味で、先ほど来議論になっております適格消費者団体の支援というところにつきまして、行政による支援でありますとか、あるいは何らかの基金等をつくって、消費者団体への一般的な費用の財源が得られるようにするという形でやられるようにするというような公的な意味での支援をするということが行われるべきことであって、個別の事案について消費者団体も難しい、あるいは消費者には余り負担をさせたくないと。だから相手方の事業者に負担をさせることでいいのではないかというのは、ちょっと安易といいますか、短絡的な解決ではないかなと考える次第でございます。

○伊藤座長 大分時間を過ぎておりまして、この点、問題提起の趣旨はよくわかりますが、ここで新しい考え方で取りまとめる、あるいはそれについての検討をすべきであるという形での表現を盛り込むことは、現在の段階では少し難しいように思いますが、御指摘を受けまして、この点も私と事務局で少し検討させていただきたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。
 山口委員、どうぞ。

○山口委員 先ほど沖野先生がおっしゃったことも含めてなんですが、これは8月末には正式に消費者委員会に報告されることになるかと思います。消費者委員会としても、それを踏まえて外に出すに当たって、何らかの形で建議か提言か何かをすることになるんだと思います。その際に、今日も議論があったようなテーマについて、なお検討課題がこれだけ残っていると。それについて更にどこまでどういうふうにできるのかわかりませんが、一定の意見を付して、国会なり、しかるべきところに出すというところでは、1つの工夫ができるのかなとは思っています。

○伊藤座長 本調査会は、委員会に報告をすることが責務でございますので、その後、委員会としては、委員会としての御判断があろうかと思います。

≪3.閉会≫

○伊藤座長 もしよろしければ、本日の調査会はこの辺りにさせていただきたいと思いますが、最後に事務局から、次回の日程についての連絡をお願いいたします。

○齋藤審議官 原事務局長はただいま国会の方に出ておりますので、代わりに申し上げます。
 委員の皆様方におかれましては、本日も多少時間を延長いたしましたが、大変御熱心な御議論を賜りまして、誠にありがとうございました。
 次回の第15回は、8月19日金曜日午後2時から、議題は「取りまとめ2」を予定しております。会場は今回と同様、山王パークタワー6階の消費者委員会大会議室1、この場所において開催予定です。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。
 長時間ありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

(以上)