第11回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2011年6月16日(木)9:30~12:42

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、窪田委員、
 黒沼委員、後藤委員、中村委員、三木(澄)委員、山本委員
【担当委員】
 池田委員、下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  小林参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.論点整理2(一段階目の手続関係)
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:53KB)
【資料1】 本日検討する論点について(消費者庁提出資料)(PDF形式:314KB)
(参考資料1) 専門調査会で出された意見等の整理(消費者庁提出資料)(PDF形式:23KB)
(参考資料2) 集団的消費者被害救済制度専門調査会 今後のスケジュールについて(PDF形式:65KB)
(参考資料3) 新たな集合訴訟制度の訴訟追行主体についての意見(大高委員提出資料)(PDF形式:39KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。それでは、時間が参りましたので、始めさせていただきたいと思います。本日、朝早くからお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。ただいまから「第11回集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。
 なお、本日は沖野委員が御欠席となっております。
 議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきたいと思いますが、議事次第の後ろに「座席表」。
 その次に、資料1といたしまして、「本日検討する論点について」ということで、ちょっと分厚い資料。
 それから、関連して別紙1と別紙2がついております。
 それから、参考資料といたしまして、参考資料1で「専門調査会で出された意見等の整理」。
 参考資料2といたしまして、専門調査会のスケジュール。
 参考資料3といたしまして、大高委員から御提出いただいている日本弁護士連合会からの御意見をつけさせていただいております。
 不足の資料がございましたら、また審議の途中でもお申し出いただければと思います。
 では、伊藤座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 おはようございます。議事に入ります前に、第13回調査会のスケジュールの変更について、加納さんから説明をお願いします。

○加納企画官 お手元の参考資料2をごらんいただければと思います。
 その裏の方ですけれども、第13回としまして7月22日に予定させていただいているところでありますが、積み残しの論点が幾つかありますので、例えば対象事案をどうするかということにつきまして、前回、必ずしもとりまとめられたという状況でないと思いますので、そういったことなどをこの論点整理4で取り上げさせていただきたいと思っております。
 その関係で、もともと10時~12時という形でとらせていただいておりましたけれども、9時半から12時半という形で時間を1時間ほど延ばさせていただければと思っておりますので、御都合がよろしければこのようにさせていただければと思っております。
 以上です。

○伊藤座長 ただいまのスケジュールの変更に関する加納さんの説明に関して、何か御質問等ございますか。よろしければ、そのような形で進めさせていただきたいと思います。

≪2.論点整理2 (一段階目の手続関係)≫

○伊藤座長 そこで、本日の議題に入りたいと思いますが、前回の本調査会におきまして、手続追行主体に関して議論をお願いいたしました。これに関して、日弁連で御意見をおまとめになったということで、大高委員から資料を提出していただいております。そこで、参考資料3につきまして、大高委員より御説明をお願いいたします。

○大高委員 ありがとうございます。本日の貴重な審議の時間をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。
 前回の専門調査会において、日弁連の方からの本制度の検討に当たっての意見ということを御紹介いたしまして、その中で訴訟追行主体については、適格消費者団体を基本としつつ、それ以外のいわば被害者、もしくは被害者団体にも、適格に訴訟が追行できるものであれば、認めていってよいのではないかという意見を申し上げていたところであります。
 それを受ける形で、引き続き日弁連の方で、具体的な適格消費者団体以外のものについて、手続追行主体と認めるための要件について議論を進めておりましたところ、6月3日付で一定の意見のとりまとめができましたので、本日、御紹介させていただきたいと思います。時間の関係もありますので、エッセンスだけをごく簡単に御紹介したいと思います。参考資料3をごらんいただければと思います。
 まず、本制度における訴訟手続追行主体については、多数の消費者の権利利益に影響を及ぼすという側面から、一定の適切な訴訟追行が期待できるものに限るべきであるという基本的な考え方につきましては、本専門調査会における議論と軌を一にするものであります。その中で、当該被害事案に関するアドホック的ないわば適格消費者団体ということで、適格消費者団体に準じるような程度の適格な訴訟追行が期待できる一定の存在があれば、それについては認めたらどうかという方向性での要件設定でございます。
 具体的には、一定数の消費者からなる被害者の集団であって、法人格を有するか、もしくはそれに準じる程度の組織性を有する集団であるということを前提として、一定の要件を満たす弁護士によって代表されていることを条件として認めてはどうかというのが基本的な考え方であります。
 具体的な要件につきましては、第1の(2)のマル1からマル7まで記載してございます。
 人数につきましては、一定数と申し上げましたが、現行の適格消費者団体が、条文上の基準ではありませんけれども、一定の目安として100人以上が求められていることにかんがみまして、その半数ということで提案しております。ただ、これについては、当然いろいろ議論の余地があろうかと思っております。
 組織性については、法人格ないしはそれに準じる程度の組織性があることを要件としてはどうかと考えております。団体の中に、当然反社会的勢力である者とか不適切な者が含まれていないということが、当然の要件であると考えております。
 先ほど申し上げましたように、今回の提案の一つの特徴は、訴訟代理人として、一定数以上の一定の条件を満たした弁護士がついていることを要件としております。この点については、まずそもそも弁護士強制との関係も一定議論があるところであります。この点につきましては、4ページの3のなお以下で書いてございますが、日弁連としては、現段階でさまざまな意見があるところでありますけれども、事件の種類、訴訟内容等を考慮し、類型的に複雑・困難性を有する一定の訴訟類型に限定して、弁護士強制を導入することは合理性があるものと考えるということで、意見をとりまとめているところであります。
 それを前提といたしまして、どういった弁護士に適格性があるかにつきましては、第1の(2)のマル5で書いてございます。一定形式的な懲戒処分がないこととか、一定年数以上の実務経験のほかに、弁護士会が定める研修を受けているということを要件としてはどうかということでございます。
 勿論、研修というものは一定形式的なものにとどまる部分がございますので、実質的な代理人の訴訟活動の適切さを担保するという趣旨から、マル6で訴訟代理人弁護士は、受任条件の要旨を公表しなければならないとしてはどうかと考えております。現行の弁護士法並びに弁護士倫理等の規定によれば、弁護士の報酬基準については据え置いた上で、依頼者等には開示することになっておりますが、こういった個々の受任条件について公開を求めることとして、一定の適切さの担保としてはどうかということであります。
 大まかには以上のような要件でございますが、一定の適切さを担保することとあわせて、明確に判断ができるという、ある意味で相反する要請がございまして、それのバランスをとった一つの提案として御提案させていただくものです。
 質問等、御意見があればちょうだいしたいと思っております。簡単ですが、以上であります。

○伊藤座長 ただいまの大高委員からの御報告に対しまして、御質問、御意見ございましたらお願いいたします。中村委員、お願いします。

○中村委員 今回、大高委員の方から、こういう形で別段の主体も追加したらということで出していただいたわけでございますけれども、A案をベースにした仕組みというものの中には、被告といいますか、事業者側からすると、まだ懸念材料という要素もいろいろあるわけでございます。
 そういったものを適格消費者団体ということをもって、消費者庁とか他の適格消費者団体からのある意味牽制ということで担保されていることで、何とかこの制度が正当に機能するのではないかと考えているところでございますので、今回の仕組みの中で適格消費者団体以外のものを加えることについては、大きな懸念があるということを申し上げたいと思います。
 一番大きな点としましては、最終的にお金をとりまとめて消費者にお渡しするということになっていくと思いますので、そうしたときに適正に消費者に配分がされるのかどうか、あるいは申立費用の問題につきましても、適格消費者団体ということでお任せできることになろうかと思いますので、そういったことで適格消費者団体ということで、是非お進めいただければと思っているところでございます。

○伊藤座長 中村委員の御意見に関連してでも、また、その他の点についてでも結構ですけれども、御発言御座いますか。山口委員、お願いします。

○山口委員 ありがとうございました。中村委員の懸念も含めて、いろいろわかる点があるんですが、最大の問題は適格消費者団体以外の一定の要件のグループが訴訟主体になることを認めた場合の弊害の問題だと思います。この弊害の防止といいますか、それがこの日弁連の提案で十分なのかということになるかと思います。
 その意味で、これは日弁連の正式決定ではありますが、私としてはもう少し厳しい要件を1つ加えてもよいのではないかと思っております。それは何かと言いますと、端的に言うと、消費者のためにこの制度が使われることを制度的に担保する枠組みの設定です。具体的には、例えば5年以上の経験のある3人以上の弁護士が、集団的な消費者被害の救済のために、期間として言えば、2年間以上継続して活動に従事した実践のある者であること。あるいは、法テラスやひまわり事務所などの公的な活動に2年間以上従事した実績があること。
 これが果たして客観的な弊害防止除去の要件として十分かと言われますと、中村委員のおっしゃるように、なお懸念材料があると言われますと、なかなか難しい部分もあるんですが、そのような要件を加えれば、相当程度解消できます。一方、適格消費者団体にも懸念がないかと言えば、それは勿論全くないわけではありません。その点から言うと、私はそのような要件を付加して考えることによって、この制度の幅広感が確保できるのではないかと思っております。
 もう理由はさんざん言っておりますが、2点だけ申し述べさせていただきたいと思います。
 端的に言うと、専門性のある事件、それから私自身、何件も経験しているわけですが、この問題に取組んだ場合にリスクが弁護士などにかかってくる事件があるんです。私も原告らの代理人として訴訟提起する中で、自ら訴えられたり、さまざまな嫌がらせを受けたことがあるわけです。
 そういうものを辞さずに、目の前の被害者のために救済に立ち上がって事態を解決しようとするという、一定の使命感と情熱を持った弁護士のグループが、この制度を使って被害の抑止等に活動するという枠組みの余地を少しでも残していただきたいという点から、この制度を適格消費者団体に限定せずに、一定の要件をなお厳しくした上でも構いませんので、枠組みとして残す余地を是非御検討いただきたいと思います。

○伊藤座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。どうぞお願いします。

○下谷内委員 済みません、大高委員に御質問ですが、マル5に弁護士会が定める研修を受ける。それから、3名以上、弁護士実務経験5年以上というのがあるんですけれども、どのような研修内容なのかというのと。実務経験5年以上となっていますが、例えばコマーシャルをしているようなところとか、コマーシャルはないけれども、それらしき人たちがやっているような。そういう人たちも研修を受ければできるわけですね。
 そういうものをどのように、受訴裁判所は、(イ)(ロ)(ハ)について日弁連の確認を求めることができるとなっていますが、それはどのようなことをお考えなんでしょうか。

○伊藤座長 大高委員、お願いします。

○大高委員 ありがとうございます。まさしくその点が恐らく疑問に思われる点の一つかなと思っております。
 基本的な考え方で申し上げると、勿論、さまざまな活動をしている弁護士、いろいろな分野で活躍している弁護士がいるわけですが、日弁連の立場としては、どういった弁護士であっても、必要最低限のミニマムのレベルが達せられているのであれば、そういった弁護士の参入を排除すべきじゃないだろうという考え方は基本的にございます。ただ、問題はそのミニマムをどこに設定するかというのが非常に重要でありまして、そのミニマムとして、こういった要件でどうかということを提案しているわけであります。
 おっしゃるとおり、その研修の内容というのはかなり実質的に重要であろうと思っております。勿論、この点については、まだ具体的に日弁連内部でどういった研修を課するかということは、議論がなされているわけではございませんけれども、仮にこういった方向で議論が進むのであれば、具体的な中身を詰めていかなければいけません。
 これは個人的な意見にはなりますが、単に2~3日程度の講義を聞いて終わりといった程度の研修ではなくて、相当程度、一定期間の中身の充実した研修で、場合によっては修了試験的なものを課すことも含めて、実質的な意味での研修というものを確保できるようにしていかねばならぬだろうと思っております。
 以上です。

○伊藤座長 いかがでしょうか。この点、なお御意見等あるかと存じますが、大高委員の冒頭の御発言でも、適切な訴訟追行を期待できる主体である必要があるという意味で、適格消費者団体を中心にして考えることについては、この場でも御異論がないかと思いますので、それにつけ加えて、どういった主体に追行の資格を認めるかという点が問題になるわけで、その点に関して問題を詳細に検討した御提言をいただきました。
 ただ、伺っておりますと、下谷内委員の御発言とか、あるいは山口委員の御発言のように、適格消費者団体以外の主体あるいは団体に関して、手続追行資格をどのような要件のもとで認めるかについては、もう少し時間をかけて議論した方がいいように思いますので、この点、御異論がある方がおいでになるかもしれませんが、本調査会のとりまとめとしては、適格消費者団体に手続追行資格を認める、それ以外の団体あるいは主体を認めるかどうかについては、引き続き検討をしていくということでいかがでしょうか。
 どうぞ、磯辺委員。

○磯辺委員 この手続追行主体の問題について、適格消費者団体の中でも少し意見交換をしているところですけれども、適格消費者団体の中でも意見に相違がございます。京都の消費者契約ネットワークは、適格消費者団体に手続追行主体を限るべきということを強く主張しておりまして、これは制度が信頼を持って運営される必要があるということで、そういう考え方を述べているところです。
 京都の適格消費者団体は、地元の弁護士さんたちのネットワークが適格消費者団体との関係ができておりまして、そういう意味では、地元の弁護士の方々が取組む共同訴訟的なものについて、適格消費者団体も適宜情報を受けながら、必要なものについては対応するということができるのではないかという感触を得ていらっしゃって、そういう発言になっていると認識しているところです。
 一方、例えば東京のような場合ですと、消費者問題をめぐって活動されている弁護士さんも非常に多く、そういう意味では適格消費者団体のネットワークだけでは十分アクセスできない実態もございます。私ども消費者機構日本の中での議論としては、この間、御説明していますように、この制度の効果を十分に発揮するためには、適格消費者団体だけに限定するということでは十分ではないのではないかという意見を申し述べさせていただきました。
 長くなって恐縮ですが、短期間で日弁連の方でここまで考え方をまとめられたことには感謝したいと思いますけれども、引き続きもっと厳格な要件が必要ではないかという山口委員の御意見もございました。私としても、少し詰めないといけない点としては、適格消費者団体の相互牽制なり消費者庁との関係での訴訟の実施状況の報告なり、そういう訴訟追行主体同士、もしくはこの制度を監督する消費者庁との関係性、そういったところも加えて整理がされないと、なかなか現実的な議論になってこないかなと感じております。
 引き続き、そういった議論を日弁連さんを含めて進めていただきながら、余り先送りしない形で、この問題について議論を深めていく必要があろうかと思います。勿論、この専門調査会のスケジュールもありますので、両にらみで非常に悩ましいところではあるんですが、そのような観点で、先ほど座長のとりまとめられた方向性で結構かと思います。

○伊藤座長 三木澄子委員、お願いします。

○三木澄子委員 私も、相談員としては、先ほどの磯辺委員と同じでして、消費者問題は幅が広いわけです。専門性のある事件はこれから増えるでしょうから、その中でそういう問題に精通してやっていってもらうためには、適格消費者団体も勿論そういうことを対応されると思うんですけれども、幅広い消費者問題に対応していくとなれば、その訴訟追行主体として適格消費者団体以外の主体を考えるとき今回の御提示の(2)のマル5の弁護団の要件を厳しくすることは当然必要かと思います。
 私は個人的には、勿論、この5年とかの実務経験以上に、消費者問題に関わっている、かなり精通している弁護士さんなどを必ず入れていただくというような厳しい要件を入れていただくなりして、今期は致し方ないとしましても、附則等で今後に向けて検討していただくということを強く要望します。

○伊藤座長 大河内委員、お願いします。

○大河内委員 いつも同じことだけ繰り返していまして、申しわけないんですけれども、私も今、大高委員から出た日弁連のまとめに加えて、いろいろ検討が行われることは必要だと思います。だた実際に、初めての制度がどのように実効性を持つかと考えますと、権利意識が低いと言われている我々一般の人を喚起する意味合いも考えて余り幅の狭い、適格消費者団体だけというような制度では身近なものではなくなってしまうように思います。
 適格消費者団体も、たくさんあるわけじゃありませんし、消費者の皆さんがこの制度に対して、早く使いたいという意識もそれほどないというところで制度をスタートさせることも考えると、皆さんがおっしゃっているように、早いうちに検討をしていただきたいなと思っています。

○伊藤座長 朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 座長の先ほどのとりまとめには、全く異論ございません。いろいろな方がおっしゃったことについても、問題意識についてはそのとおりだと思います。基本的に適格消費者団体以外のところにどういう役割を果たさせることができるかについて探求していくことは、個人的には十分あり得ることだと思いますし、大事なことだと思います。
 ただ、その際の視点として、先ほど、三木澄子委員の消費者問題に精通している弁護士とか、磯辺委員の消費者庁との関係というお話があるわけですが、日弁連の案ですと、基本的にその辺が全然担保されていない形になっていて、それを裁判所がすべて判断することになっております。
 制度の流れをイメージしてみますと、例えば一段階目の和解、もしくは二段階目に入ってきてお金の管理・分配、もしくは一段階目の判断が終わった後に、関係する方々の個人情報という非常にプライバシーに関わる問題などについて手続追行主体が取り扱っていくわけです。しかも、自分が信頼した弁護士さんに委任するというのではなくて、ある意味勝手に訴訟追行された後に消費者は手続に加入していく形になりますので、信頼関係が前提とされている関係ではない中で、そのようなことが適切に取り扱われることが担保される制度でなければいけないと思います。
 そうしますと、その辺について実態を備えているかという最初の問題、その後にきちんと実施されているかという監督の問題についても、結果としてうまくいったらよかったね、だめだったら消費者の人ごめんなさいねというものではなく、制度としてきちんとしていなければ問題が生じると思うわけです。
 では、そのような監督を裁判所ができるのかという問題になりますけれども、裁判所が判断をする場合には、ほかの団体はどういうふうにそこをきちんとやっているとか、そこで問題が起きた事例があって、そこについてはこういうことをすることでお金の管理の問題やプライバシーの流出の問題というのは対処するようになっているなど、幅広い情報、その団体自身の情報だけでなくほかの団体の実態についての情報も必要になるように思います。
 裁判所にそのような情報を入手できる経路があるかといいますと、現在の民事訴訟の制度では当事者から出していただくしかないわけです。そうしますと、当然手続を追行しようとする人は、自分たちは「できますよ」と言うだけでして、相手方事業者の側からそういうところについてきちんと指摘できるような状況にあるのかというところも、よくわかりません。そこはそういう情報を持っていてノウハウがある消費者庁なり、その点についての責任を持ったところでやらざるを得ないのではないかと思うわけです。だからこそ、適格消費者団体の認定は、内閣総理大臣、消費者庁が行うことになっていると思うのです。
 そういう目から見ますと、今、皆さん抽象的にお話になられて、アドホックな団体に手続追行資格を与えたいというのはわかるのですが、それを今みたいな形で裁判所に冒頭で判断させることになりますと、裁判所の方ではよくわからないから、当事者に対して情報をくださいと言って停滞してしまって時間がかかる。事業者の方も、問題提起はできるけれども、だれも的確な情報を出せないといった事態が生じかねないと思いますし、判断する側も初めての判断ということになってきて、ぶれることも十分あり得るように思います。
 それがこの社会にとっていいことなのかどうかというところは、政策判断だと思いますが、そういう意味でも、適格消費者団体プラスアルファのアドホックな団体の認定というのが必要かどうかという問題と、その審査を裁判所で行うことが適切かどうかという問題については、次元を分けて考える必要があるのではと思っているところでございます。このような点も含めていろいろな問題がありますので、今後十分に検討していく必要があると思ったところです。

○伊藤座長 適格消費者団体以外のしかるべき訴訟追行能力を備えていると認められる団体にまで訴訟追行資格を広げるべきかどうかについては、積極の御意見が多かったように思いますが、慎重に考えるべきであるという御意見もあり、また当該団体の訴訟追行の適切性を担保するための要件に関しては、なお検討を要するという御意見が多かったように思います。
 そこで、先ほど私から発言いたしましたように、この部分については引き続き検討するということで御了解いただければありがたいと存じます。
 そういたしましたら、本日の議題の部分でございますが、論点整理の2回目といたしまして、「一段階目の手続関係」について検討したいと思います。資料1の「第1 一段階目の手続の概要について」、加納さんから説明をお願いします。

○加納企画官 資料1の1ページでございます。
 第1といたしまして、一段階目の手続の概要について書いてみたものです。本日、第2以降で確認を求める事項など、一段階目の手続に関する幾つかの論点について取り上げておりますが、その議論の前提として、一段階目の手続について、どういうものが考えられているのかというイメージを持っていただく意味で、こういう形でまとめたものでございまして、これが絶対的に確定したものという趣旨ではございません。
 1ページから8ページまでありますので、ポイントだけかいつまんで御説明させていただきたいと思います。
 1.訴えの提起の(1)手続追行主体につきましては、今、御議論いただいたところでありますけれども、基本的には適格消費者団体とすることで考えていってはどうか。
 その適格消費者団体につきましては、マル2ですけれども、今回の新たな業務との関係で、一定の範囲内で認定要件の見直しが必要になるのではないかと書いております。
 また、マル3の責務規定・行為規範につきましても、特に金銭的な関係を中心として、一定の見直しが必要ではないかと考えております。
 (2)原告適格につきましては、適格消費者団体は常に原告適格があるものとして取り扱ってはどうかということで書いております。
 (3)被告ですが、マル1で事業者が法人であるときの理事、取締役等についてどうするかにつきましては、前回いろいろと御議論がありましたので、また次回以降にきちんと論点整理をさせていただいて、御議論いただければと思っております。
 マル2の事業者の定義につきましては、消費者との関係で一定の事業者の定義が必要だろうということで書いてございます。ここの商業、工業などを行う者ということにつきましては、現行の消費者安全法という法律がございまして、その法律を参考にして書いてみたものでございます。
 それから、2ページ、(4)対象消費者は、本日の第2のところで御議論いただければと思います。
 マル1の2行目ですけれども、二段階目の手続に加入することができる対象消費者に該当するかどうかが判断できる程度に特定することが、訴え提起の段階で必要ではないかということで書いております。
 勿論、この対象消費者の該当性というのは、具体的に個々のAさん、Bさんといった対象消費者がどうかというところまで特定するのではなく、契約関係にあるなどといった形で、一定の類型を持って特定するということではないかと思っております。ただ、どういう対象消費者がその事案で、今後二段階目に入ってくるのかといったことが、ある程度見通せるような特定は必要ではないかということで書いております。
 (5)は対象事案についてでございまして、これは前回御議論いただいたところですけれども、更に検討させていただこうと考えております。
 (6)一段階目で確認を求める事項につきましては、(7)訴状の記載事項と同様ですが、また後ほど御議論いただければと思っております。
 (8)管轄ですけれども、マル1のi)、ii)、iii)は、現行の差止訴訟関係での管轄に倣う形で認めてはどうかということで書いております。付け加えますと、マル2で、例えば消費者数が一定数以上であることが見込まれる場合などにおきましては、一定の裁判所に付加的に管轄を認めるというのも、制度の円滑な運営を図る観点からは必要ではないかということで書いております。
 (9)手数料、(10)時効等につきましては、ここに書いてあるとおりであります。
 4ページに行きまして、2.共通争点に関する審理でありまして、原則としては、民事訴訟法の規律に従うことでどうかと考えております。
 (2)要件審理につきましては、マル2ですけれども、特別な認可手続は置かず、要件が該当するかどうかについては、訴えを却下するかどうかという形で判断することとしてはどうかということで書いてございます。
 (5)他の適格団体による共通争点確認請求に係る訴えとの関係でありますが、いわゆる同時複数提訴の問題でありまして、複数の適格団体が同一事件について訴えを提起することは、制度上あり得るということになるのではないかと思っておりますけれども、矛盾判決の防止等の必要性があるのではないかと思うところでありまして、1つの裁判所に移送・併合するような規律を設ける。
 これは、現行の差止請求訴訟に関しまして、同様の規律がありますけれども、そういったところを参考に規律を設けることや、あるいは別訴を制限するという、二重起訴の範囲を広げるような考え方も検討の余地があるのではないかと思っております。いずれにしましても、所要の規定の整備が必要ではないかということで書いてございます。
 (6)個別訴訟との関係につきましては、対象消費者が個別に訴えを提起することは妨げられないと整理するのが適当ではないかと考えておりますけれども、個別訴訟と共通争点確認訴訟については、一定の整備が必要ではないかということで書いてございます。この辺は、かなり技術的な話になると思っておりますので、およその方向性について、もし御意見等あれば、ちょうだいできればと思ってございます。
 (7)参加ですが、これは適格消費者団体相互の関係ということで、まず御理解いただければと思いますけれども、同一の事件につきましては、必要的共同訴訟として扱い、他の適格団体が共同訴訟参加という形で訴訟参加することができることなどを検討してはどうかということで書いてございます。
 それから、5ページの3.判決以外の訴訟の終了について、(1)和解、(2)取下げ、(3)請求の放棄、(4)請求の認諾という形で書いてございます。
 基本的には、民事訴訟の規律にゆだねつつ、所要の規定を設けるということで書いてございますけれども、(1)和解についてだけ補足させていただきます。マル2 和解の効力のウですが、一段階目の手続における和解というものがあり得る。その場合に、対象消費者を巻き込んだような形での和解をする必要があるのではないかということで御意見をいただいているところでございますので、本日、最後のところで御議論いただければと思っております。
 それから、7ページ、4.判決の(1)判決の効力。
 マル1の原告・被告に及ぶというのは当然のことでありますが、マル2 二段階目の手続に加入した対象消費者にも及ぶこととするということで、ここは現行の民事訴訟制度と非常に違うというか、特徴のあるところだと思います。これについては、どうしてそういうことが認められるのかということについて、慎重に検討する必要があると思いますので、本日、また後ほど御議論いただければと思います。
 この判決効の拡張の関係で、(2)他の適格団体による訴えの制限のような規律が必要ではないか。同一事件について確定判決等がある場合には、原則として再訴ができないこととする規律。現行の差止請求訴訟についても同様の規律がございますけれども、今回の制度においては、より一層、必要ではないかと考えられるところでありますので、その旨、また後ほど御議論いただければと思っております。
 最後、8ページの5.上訴の(3)上訴中の二段階目の手続であります。この点につきましては、一段階目の手続で共通争点について審理し、一定の判決が出たとしましても、それが確定するまで、最高裁まで行って争うということがあり得るわけであります。そうしますと、一定の年月がかかるということであり、その間、二段階手続をどうするのかというのは重要な論点だと思ってございます。
 未確定の段階で二段階目を進行させ、その共通争点に関する判断が覆ることになりますと、二段階目の手続自体もむだに終わる可能性があるのではないかと思いまして、二段階目の手続は、上訴中は開示しない。上訴で一段階目の判断が確定した後に、二段階目が進行するというようにせざるを得ないのではないかということで書いてございます。こういったところについても、もし御意見があればちょうだいしたいと思います。
 一段階目の手続の枠組みについては、おおよそ以上でございます。

○伊藤座長 ただいまお聞きいただきましたように、対象事項がかなり多岐にわたっております。それから、確認を求める事項とか和解とか、本日、別に時間をとって審議いただく事項もございます。そういったものは後に回していただきまして、事項が多岐にわたり、しかも訴訟手続上の技術的問題などが含まれておりますが、本調査会では、細部に立ち入るよりは、大きな方向としてどのような制度を構想すべきかという視点から御審議をお願いできればと思います。
 それでは、ただいま加納さんから説明があった点のいずれでも結構でございますので、御意見等をお願いいたします。黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員 和解の効力、請求の放棄の効力のところで、原則は他の適格消費者団体は再訴できないこととし、消費者の利益に著しく反する場合等において例外を検討することとするとあります。今、お考えになっているこの例外というのは、要件だけ定めておいて、再訴を提起してきた者があるときに裁判所が判断するという形になるのでしょうか。それとも、最初の裁判所が何らかの形で判断しておくことを考えておられるんでしょうか。

○伊藤座長 どうぞ、加納さん。

○加納企画官 御指摘のところ、例えば5ページの3ポツの(1)のマル2のイの記述のことだと思いますけれども、基本的には和解がされたということで、同一事件については再訴できないこととするのが適当だと思っておりますけれども、例えば消費者の利益に著しく反する場合ということで、事業者と馴れ合ったような和解としますと、それは消費者のための訴訟ということは言えないと思いますので、そういった場合には、何らかの形で再訴の道を開く必要があるのではないかという問題意識で書いております。
 この具体的な規律はいろいろあり得ると思っておりまして、1つは、例えば現行の差止訴訟におきましては、そういった馴れ合った和解のような訴訟追行が不適切だと想定された場合には、消費者庁が認定の取り消しをする。その認定の取消しをした場合には、同一事件について、他の適格団体が差止訴訟ができるという制度にしておりますので、そういった形でやるのも一つの方向性ではないかと思っております。
 もっとも、これは再訴制限をどのように仕組むかということにも関わっておりまして、ちょっと技術的な話になって恐縮ですけれども、今の適格団体の差止請求の場合の再訴制限は、既判力の拡張とは異なった請求権自体の制限効であるという説明をしておりまして、その制限効の解除事由として、先ほどの適格消費者団体の認定取消しというものを位置付けるとしております。
 これは、また別の考え方もあるのではないかと思いまして、そういった政策的な再訴制限効ではなく、既判力が他の団体にも拡張するのだと位置付けて、確定した判決と同様の既判力があったとしても、その既判力について一定の理由で確定効をなくさせる。例えば詐害再審のような規定を設けるという規律のあり方も考えられるのではないかということでありまして、そこはまだ両論あり得ると思ってございます。
 ただ、いずれにしましても、そういった方向性についてはどうかということで、もし御意見をちょうだいできましたら、あとどのように仕組むかということにつきましては、更に制度的な検討をする際に検討させていただければと思ってございます。

○伊藤座長 よろしいでしょうか。いろいろな方法あるいは方策があると思います。著しく社会正義や消費者の利益に反するような和解が成立しないように、裁判所がしかるべく監視するということもありましょうし、また他の適格消費者団体が訴訟に参加して、そういう結果が生じないように活動するということもありましょう。
 とはいえ、避けるべき事態が生じてしまった場合にどういう救済の方法を設けるかということに関して、幾つかの可能性や方策が考えられますので、その辺りは更にしかるべきところで検討していただければと思いますが。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、後藤委員。

○後藤委員 今の関連なんですけれども、5ページの3ポツの(1)のマル1、対象消費者の利益を害する内容の和解の防止についてとあります。できれば、利益を害する内容の和解というものに一定の基準を設けていただいた方がいいのではないかと思っています。
 というのは、例えば適格消費者団体が1つ裁判をやって和解に移行する。その他の消費者団体から、その内容が利益に反する内容の和解をしているんじゃないかと一方的に言われた場合、和解が成立しない、もしくは和解の内容が調整によっては長期化することになるし、もし和解が成立しないことになると、また裁判で決着をつけるということになるだろうと思います。
 そういうことになってしまいますと、消費者の早期救済という視点から見ても、これは結果が著しく不合理なものになりかねない。原告・被告双方にとっても、経済的なものも含めていろいろな負担を強いることになるので、利益を害する和解とはこういうものを言うんだという一定の基準を、難しいかもしれませんけれども、提示した方が、原告・被告双方にとって利益が大きいと思います。

○伊藤座長 わかりました。和解は本質的に両当事者が譲歩し合ってするものですから、何らかの意味での譲歩を伴うのは、避けられないことですが、それが合理的かどうかということで、これについては、また本日の資料の最後の方で、一段階目の和解、二段階目の和解ということに関しての審議をいただきますので、今、御発言のあった部分についても、そこで改めて議論していただければと思いますが。
 どうぞ、大高委員。

○大高委員 今回、資料の1の第1で手続の概要をまとめていただいて、一段階目についてのイメージが大分できてきたかなと思っております。適格消費者団体を手続主体に限るという前提で考えた場合に、一定ある程度、トータルとしてリーズナブルな案なのかなと思っておりますが、これまでの専門調査会で申し上げたことの繰り返しになる部分もありますけれども、何点か意見を申し上げたいと思います。
 まず、1ポツの(1)手続追行主体の適格消費者団体の新たな要件につきましては、これまでも述べたところでありますけれども、あくまで新たな業務が付け加わることに伴う必要最小限度にとどめるべきであろうと思っております。これは、後ほど次の場で更に具体的な議論をされるときに問題になることですが、申し上げておきたいと思います。
 続きまして、2ページの(5)対象事案で、今日も後ほど議論が出るかと思いますけれども、支配性の要件については、これまで申し上げたとおり、余り厳格に考えるべきでないと思っております。
 (8)管轄については、おおむね賛成したいと思います。マル2のいわゆる大規模事件における東京地裁等の大規模庁の管轄というのも、付加的管轄ということであれば反対するものではありません。ただ、基本的には、この集合訴訟というのは被害者がいることが前提でありますので、被害者が多くいる地で訴訟が追行されることが望ましいと思っております。裁判所の体制等の問題もあろうかと思いますが、被害者の立場から考えればそういうことになるのではないかと思っております。
 訴額や時効についても、このような手当ては必要だろうと思っておりますので、賛成したいと思います。
 最後に、7ページの4ポツの(5)訴訟追行に要した費用の負担でありますけれども、訴訟以外、いわゆる民事訴訟法上の訴訟費用に当たらないけれども、訴訟追行に要した費用ということで、代理人に支払った費用といったものが想定されるかと思います。そういった弁護士費用等については、日弁連としては片面的な敗訴者負担等も含めて検討すべきではないかという意見は持っておりますので、この点だけは御紹介したいと思います。
 以上です。

○伊藤座長 それぞれ引き続き検討する、あるいは本日、後ほど検討するような事項についての御意見も含まれておりますが、ほかの委員の方。どうぞ、三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 いずれも若干技術的なところにわたる、そんなに細かいことは言うつもりはありませんが、発言になります。
 まず、1ページの1の(1)のマル4ですが、結論的に、当然のことながら適格消費者団体が受け取った金員等が団体の債権者からの強制執行に服したり、あるいはその団体が破産になったときに破産財団を構成したりということが望ましくないというか、あるべきではないということはそのとおりですが、規律を設ける際に、手続的に強制執行を禁止するとか破産法的に破産財団にならないという規律をとるのではなくて、そもそも預かり金の性質が何なのかという実体法の本質のところから規律していただければと思います。
 例えば信託財産になるのかとか、そういったところの本質を押さえた形で検討していただければと思います。
 それから、2点目ですが、4ページの2の(5)で、複数の適格団体による訴訟が競合する場合に、何らかの形でそれを整理するというか、むだを避けることは必要であろうと思います。このやり方ですが、ここに書かれたような各種の方法が理論的には考えられるところですが、恐らく複数事件、それぞれの適格団体が基本的には同じ被害事件について訴えを起こすにしても、対象消費者の範囲とか事件の特定の形などで、その両事件が完全に一致する事件ばかりではなくて、一部は重複するけれども、一部は重複しないとか、かなり微妙な判断を要求されることが多くなる可能性があると思います。
 そうすると、別訴制限とか参加のみを認めるという硬直的なやり方は、恐らく難しいと思いますので、移送・併合の規律が望ましいのではないかと思います。
 それから、同じページの(7)、これは後でお答えいただきたい、質問に当たります。一番下の行ですが、対象消費者による当事者の参加及び補助参加は認めないこととするということで、審理を錯雑化させないためにこういう規律を設けてはどうかという意図は理解できないではないですが、当事者としての参加を認めないのはともかくとして、補助参加まで認めないということが理論的に正当化できるのかどうか、ややよくわからないところがあります。
 当然、対象消費者は利害関係人であって、補助参加人は当然当事者、いわゆる本来の当事者ではない形で、しかし利害関係を手続上主張したいという場合に認められている制度ですから、補助参加すら認めないということがどういう形で正当化できるのか、後でお考えを伺いたいと思います。
 それから、5ページの3の(1)和解のところで、これは先ほど伊藤座長も少しおっしゃったところではありますが、マル2のイに主として当たる箇所だろうと思います。事後的な是正の可能性を検討すること自体は結構だと思いますが、やはり基本的にはここに書いている和解が消費者の利益に著しく反する。そういう和解ができないようにというか、ある程度そういう和解が生まれないようするという規律が主であって、こういう和解がいわば野放しでできることにしておいて、事後的に救済を求める方が主になるというのは本末転倒ではないかと思います。
 以上、とりあえず申し上げておきます。

○伊藤座長 わかりました。今の御発言のうち、例えば預かり金の取り扱い、また、手続を一本化するための方策として複数のものを検討すべきであるとか、あるいは最後におっしゃった和解の点、いずれも事務局でただいまの御意見を踏まえて、しかるべく検討をしていただければと思います。
 それから、御質問の部分に関しまして、補助参加、これも難しいところで、確かに今までの常識からすると、それを対象消費者に参加の前提となる法律上の利益がないということは難しいところなんですが、加納さん、今の段階で何か説明がございましたら、お願いします。

○加納企画官 三木先生の御質問の補助参加ができるかどうかという点なんですが、参加の利益、確かに共通争点部分について利益があるのかもしれないと思っておるところでございますけれども、他方で当事者個人の参加をしたことによる審理の複雑化といったところについても、ある程度考慮する必要があるのではないかと思っておるところであります。
 ここで補助参加を認めないこととすると書きましたのは、一つの案として書かせていただいたところでございますので、理論的にそれが整合的なものかどうかということにつきましては、引き続き検討させていただいた上でまた御相談させていただければと思っております。

○伊藤座長 ただいまの点は、理論的にみて法律上の利益が認められるとしても、適格消費者団体が責任を持って手続を遂行していることを前提としたときに、なお、ここの消費者の手続参加を認めるべき必要があるのか、また個々の消費者が補助参加という形で第一段階目の訴訟に入ってくる可能性を認めた場合の、さまざまな訴訟運営上の問題点という実際的な視点から事務局で更に検討してもらえればと思います。
 どうぞ、中村委員、お願いします。

○中村委員 細かいこれから議論するところは後に回したいと思いますけれども、事業者の立場からいたしまして、例えば4ページの2ポツの(5)(6)辺りの、たくさんの訴訟がいろいろなところで起きて、いろいろな結論が出る。こういうものを避けるような仕組みを入れていただいたということは、大変いいことだと見ているところでございます。
 もう一点、先ほど大高委員の方から御指摘のあったことの中で、7ページの4ポツ、(5)訴訟費用の負担ということで、弁護士費用について被告に負担させてはどうかという御意見があったわけですけれども、今仕組みに関しましては、悪徳事業者ということではなくて、普通の事業者が誤ってやってしまったことの方が大きなターゲットになってくるということでございますので、そういった場合に弁護士費用を被告側に負担させるというのは、通常の訴訟とは違ってくるということでございますので、これに関しては反対ということを表明しておきたいと思います。

○伊藤座長 訴訟追行に要した費用の負担、つまり7ページの(5)の部分ですが、ここでは狭い意味でと言いますか、法律的な意味での訴訟費用と、訴訟代理人である弁護士の費用・報酬、更に原告となっている適格消費者団体が訴訟の追行について事務費等で支出した費用とか、幾つか類型のものがあると思いますが、加納さん、ここで言われていることの趣旨について、ちょっと御説明いただいた方がよろしいかと思いますが。

○加納企画官 この費用というところですが、まずいわゆる訴訟費用というような、裁判所に納めた手数料とか郵便切手代は当然入るという前提でありまして、その次の訴訟代理人である弁護士に対する報酬というのも、将来的に二段階目で入ってきた消費者と適格団体の関係、委任ないし委任に準ずるような法律関係になるのではないかと思っておりますので、その委任の費用償還請求権で言うところの費用に入る限りは含まれるのではないかと思っております。
 ただ、最後、座長がおっしゃった当該団体自身の事務費用等につきましては、これは費用というよりは、むしろ報酬に近いのではないかと思っておりますので、そこまで含まれるかどうかということについては、また別途御議論いただくような場を設けさせていただければと思っております。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。幾つか重要な御指摘をいただきまして、更に詳細な検討をしなければならないところがございます。それは、事務局でしかるべく受けとめていただくことにして、もしよろしければ次の「第2 確認を求める事項」についての審議に入りたいと思いますが、加納さん、お願いいたします。

○加納企画官 資料1の9ページでございます。第2 確認を求める事項ということで、幾つかの論点を整理させていただいたものでございます。
 1.基本的な考え方ですが、1段落目に書いておりますのは本制度の趣旨でありまして、2行目辺りから、消費者と事業者との構造的格差等と書いております。そういったものを背景として、今回の制度は多数の消費者に共通する事項を判断することにより、被害救済を図ることを目的とすると整理できるのではないかと思っております。
 このような制度目的からしますと、何を確認するのか、一段階目で何をするのかということにつきましては、事業者との間において、多数消費者に共通する事項を確認するということで、この共通事項というものを確認事項としてとらえるべきではないかと書いております。
 では、それは具体的にどういうものかというのが2段落目でありまして、まずは法律関係、2行目辺りですけれども、その法律関係が多数の消費者の権利関係を判断する上で前提となるものである限り、その法律関係について確認(判断)することができれば、多数の消費者の権利関係を明らかにすることにつながり、紛争解決に資するのではないかということで、例えば注記1では、学納金返還請求事案の例に即して書いてございます。
 3段落目の「また」のところですが、法律関係以外にも、事実関係であっても、例えば個人情報流出事件等におきましては、当該流出行為が故意または過失に基づく権利侵害行為であるかどうかの確認。これもあり得るのではないかと思っておりまして、それが確認されれば、多数の消費者の権利関係を明らかにすることにつながり、紛争の解決に資すると位置付けることができるのではないかということで書いております。
 その次の4段落目ですけれども、以上の検討を踏まえまして、その確認事項は何かというと、かぎ括弧ですが、こういうまとめ方でいいかどうかは、また御意見いただければと思いますけれども、「多数の消費者に共通する事業者の行為の評価(法律関係又は事実関係)」ととらえてはどうか。
 具体的にはということで、ア、イ、ウと書いておりますけれども、1つは、法律行為の有効性などの法律関係、2つ目には、取消権、解除権などを発生させる事実関係、最後、3つ目のウとしましては、事実行為の違法性評価や主観的認識の評価、故意・過失といった法的な評価を踏まえた事実関係ということでとらえてはどうかと書いております。
 最後の段落、「あるいは」というところですが、更に一歩進めまして、実効性を図るという観点では、例えば「不法行為責任を有すること」といった責任そのものを確認事項とすることもあり得るのではないか。これは事案によってということかもしれませんが、書かせていただきました。
 以上について御意見をちょうだいできればと思っております。
 10ページの2ポツでありますけれども、その請求の趣旨、判決主文についても、ある程度具体的なイメージを共有させていただければと思うところであります。
 別紙の資料1に「具体例による検討」を書かせていただきましたので、こちらも適宜御参照いただきながら御説明させていただければと思います。
 資料1の10ページの方の2段落目ですけれども、ポイントとしましては、対象消費者の範囲が訴え提起の段階で特定される必要があるのではないか。これは、先ほども少し申し上げましたけれども、法的評価の対象となる事業者の行為の相手方として、二段階目の手続に加入することができる対象消費者に該当するかどうかが判断できる程度に特定される必要があるのではないか。
 別紙1ですけれども、例えばマル1 広告・表示事案におきまして、対象消費者、例1と書いていますが、こういった表示・広告をされて、被告とこういう契約を締結し、金員を支払った者という形で具体的に訴え提起段階で特定していくことが考えられるのではないかと書いてございます。
 それから、あちこち行って恐縮ですけれども、資料1の10ページに戻りまして、2ポツの(1)の3段落目、「さらに」というところですけれども、訴状の記載事項としまして、どんなものがあるか。別紙にも書いてございますが、確認を求める事項、対象消費者の範囲のほか、最終的にどういう請求をするのかということがわかることが必要ではないかと思いますので、二段階目で請求する予定の請求権の表示が訴え提起段階で必要ではないか。
 別紙1をごらんいただきますと、先ほどのマル1 広告・表示事案におきましては、例えば不当利得返還請求権(民法703条)などであるとか、不法行為に基づく損害賠償請求権という形で、その請求権をきちっと特定していくことが必要ではないかと書いてございます。
 その確認を求める事項ないしは判決主文につきまして、幾つか御紹介させていただきます。これは事務局の方で書かせていただいた、あくまでもたたき台という趣旨でありますが、例えばマル1の例で一番上の詐欺取消しであれば、当該行為が民法96条1項の欺もう行為に該当することという形で、行為の法的な評価をしている。これが判決主文ないし請求の趣旨にも出てくる。
 例1に加えて、例2も書いてございます。これは不当利得返還請求権ということに関して、構成要件事実という観点から考えますと、むしろ法律上の原因なく利得していることを確認しているととらえることもできるのではないかと思われるところでありまして、そういった書き方をしているところであります。
 例1と例2の違いですけれども、端的に申し上げますと、マル2の不当な勧誘事案のところでその違いが出てくるのではないかと思ってございます。マル2をごらんいただきますと、例えば詐欺取消しについて例1、上の方に書いてございますように、民法96条1項の欺もう行為に該当すること。あるいは、2つ目の四角ですけれども、消費者契約法の断定的判断の提供に該当することという形で、個別具体的に特定している。
 これは、民法96条の詐欺取消しと断定的判断の提供の取消権は、取消権の性質が完全に同じものではありませんので、こういう形で判決主文で書いていくことも必要ではないかという観点から書いてみました。
 一番下の不当利得の法律上の原因なく利得していること。こういう書き方をした場合には、対象消費者のところに書いてありますけれども、民法96条1項があり、また消費者契約法4条という形で、両者を含む形で確認したと整理されるのではないかと思っておりますので、こういったところで少し差が出てくるのかなと思っております。
 あと、別紙の2ページ以下におきましては、契約条項の無効の問題、3ページにおきましては、個人情報の問題という形で一つの整理を試みてみたところでございますので、また御意見等をちょうだいできればと思います。
 以上でございます。

○伊藤座長 今、説明があった中で、確認を求める事項、それに関して、請求の趣旨とか判決主文とか、やや技術的な問題が出てまいりますが、結局、これは同一事業者の同一行為に関する紛争についてどういう形で裁判所の判断を求めるかという問題でございます。従来の通念からすれば、法律上の構成は幾つか考えられるけれども、再訴を禁止するとか、手続を一本化する形で、できる限り一回的に解決した方がというのが一方の考え方でありますし、他方、いや、そうは言っても、法律上の権利や根拠に照らして考えると、あまりに一回的解決を強調しすぎることは問題ではないかという考え方もございまして、その辺りの調和点をどう求めるのかというのが、いわば基本的な問題と思います。
 それを踏まえて、加納さんから説明がございました具体的な事例に即して考えたときに、確認を求める事項ですとか、それを基礎にした請求の趣旨、判決の主文のあり方などに関して御審議をお願いできればと存じます。
 では、窪田委員からお願いします。

○窪田委員 対象の絞り方に関しては、1点、支配性の要件に関しての意見がございますけれども、これは以前申し上げたとおりでございますので、省略させていただきます。
 その上で、今回お示しいただいたものに即して少し考えてみたいのですが、ここでお示しいただいたように、対象消費者を限定して、確認を求める事項はこういうものであり、二段階目における請求権としてはこういうものが考えられるというのは、例としては大変によくわかります。
 最終的には二段階目の紛争をにらんでいるので、相手方にとっても一体どういう請求を前提とするものなのかという点で、二段階目の請求内容を示すというのは一定の必要性はあるんだと思います。ただ、そこで示されたものがどの程度の拘束力を持つのかという点が、まだ具体的に見えてきておらず、少し気になります。
 つまり、そこで示されたものしか二段階目で使うことができないのか、そうではなくて、複数考えられるけれども、一個だけとりあえず挙げておけばいいのかといった点です。考えられるケースとしては、とりあえずありそうなものを全部挙げておくことということになるかとは思うのですが、そうすればそうするほど、多分争点は多岐にわたり、抽象的になってくるだろうという気がします。
 例えば不当な勧誘事案に関して、民法96条第1項の欺もう行為に該当することが例の一つとして挙がっておりますが、欺もう行為に該当すれば、民法96条で取り消しが可能ですが、それに該当しなかったとしても、説明義務違反という形で、民法415条とか民法709条を使って損害賠償請求権を構成していく可能性も考えられるだろうと思います。詐欺による取消しを想定される解決として示した場合、そうしたものが排除されるのかという点について、まだよくわからないところがあります。
 もう一点は、今お話ししたことと表裏の関係になると思うんですが、第一段階で判断を下すときには、一体どういう判断の下し方をするのかという点です。つまり、当事者が被告の行為が民法96条第1項の欺もう行為に該当するということについての判断を求めたとすれば、裁判所としてはそれに該当しないという判断を下して、おしまいということになるのか。欺罔行為は認定できないが、明らかに説明義務違反は認められるという場合に、どのような判断がなされるのかです。幾つかの法律構成といっても、医療過誤みたいな事件類型では、不法行為で構成しても、債務不履行で構成しても、実質的には変わらないのかもしれませんが、債務不履行と不法行為では、具体的な内容も変わってくる、要件も変わってくるという場面も考えられるのだろうと思います。そうしたものについて、どういうイメージで捕まえたらいいのかということについて、少し御説明いただけたらと思います。

○伊藤座長 加納さん、どうぞお願いします。

○加納企画官 まず、二段階目の請求権を一段階、例えば訴え提起の訴状に書く制度にしたとして、不当利得返還請求しか書いてなくて、後でどうかということなんですが、完全に事務局の方で詰め切っているわけではありませんけれども、二段階目の請求権を訴状に書く趣旨によるのではないかと思われるところでありまして、これが請求の趣旨そのものであるとしますと、それはもうできないとならざるを得ないのではないかと思いますが、その請求の趣旨の特定原因であると、いわゆる請求の原因のような記載事項であるとすると、そこはまた別の検討の余地が出てくるのではないかと思います。
 それから、2つ目の御質問だと思いますが、請求の趣旨で、例えば被告の行為が民法96条1項の欺もう行為に該当することという判決主文であったとした場合に、それ以外の不法行為とかが二段階目でできるのかどうかにつきましては、これは確認事項として、そういう請求の趣旨が立てられ、判決の主文が出たとしますと、二段階目はその判決主文の効力で進めるということになりますので、その民法96条以外のことは二段階目では使えないという話になるのではないかと思います。
 ただ、その場合に、同一事件の再訴制限であるとか既判力であるか、どう読むかということは、判決主文や確認を求める事項で出たこととは別に、同一の事件の範囲をどうとらえるかという問題ではないかと思われまして、そこはまた同一の事件の範囲内をどう見るかというところで議論の余地があるのではないかと思っております。

○伊藤座長 朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 今の加納企画官の御説明について、若干違和感がございます。もともとこの訴訟というのは、固有権と言うか、授権と言うかは別にして、実質は個々の消費者の損害賠償請求権なり何なりの実体的な権利を糾合した訴訟でございますから、一段階目は共通の責任原因を定め、それによって業者に支払義務があるということになれば、個別の消費者は自分がその該当者であることを言って、自分が損害を幾ら被った、もしくは代金を幾ら払ったかということを簡易に申し出れば、それで二段階目で救済される制度でございますから、一段階目と二段階目で議論している実体法上の権利がずれることはあり得ないと私は思います。その意味で、例1と例2の違いが例1は実体法上の請求権を変えられるけれども、例2は変えられないということであるとすれば、大きな問題があるだろうと思いました。訴訟物は何かということは、必ず考えていかなければなりませんので、訴訟物の同一性ということは当然の前提となっているのだろうと思います。
 いずれにしても、一段階目というのは通常訴訟と同じで、何を実体的な請求権と考え、その中でどんな要件があり、先ほど窪田委員がおっしゃったように、請求権が変わったら要件が変わります。一段階目で不当利得を前提に民法96条1項で考えていたのに、二段階目で民法415条の説明義務の話になったとすると、別訴を二段階目で起こしたんですね、ということになるので全く集合訴訟の意味がないと思います。
 訴訟物の選択というのは、基本的に処分権主義で、原告が設定するものでございますから、そこは適格消費者団体、つまり原告となる方がしっかり考えて立てていかなければいけない。消費者にとって一番有利なものは何かということを考えて訴訟追行するわけで、だからこそ訴訟追行能力というのが大事なのだという話を従前してきたのだと思いますので、そこは従前どおりの考え方でいいのではないかと思います。

○伊藤座長 窪田委員お願いします。

○窪田委員 今の点に関連して、是非教えていただけたらと思いますが、実際の訴訟の場面ですと、主位的請求、予備的請求といった形で、何段階かで請求を立てるという場合も多いだろうと思います。たとえば、民法96条による取消しを主位的請求として、民法709条による損害賠償を予備的請求として主張するということが多いのではないかと思いますが、この第一段階でもそうした仕組みというのは考えられるのでしょうか。
 ここで示されるのは一つの共通争点ということなんですが、ある事件が複数の共通争点を含み、それが二段階目の扱いに関わってくるという場合が考えられますので、そのあたりについて具体的なイメージをちょっと教えていただけたらありがたいと思います。

○伊藤座長 加納さん、とりあえず説明されますか。どうぞ。

○加納企画官 請求としては、民法96条と民法709条に関しては、別に主位的、予備的という順序は特になく、両者が併存しているのではないかと思います。その主位的、予備的請求のような事例があるかどうかについては、そこまでまだ深く検討ができているわけではありませんので、事例に即してそういうものがあり得るのかどうかというのは、また別途検討してみたいと思います。

○伊藤座長 三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 今、直近で話題になったところから私の意見を申し上げますと、窪田委員がおっしゃった通常の事件というのは、そこで言う通常というのは給付訴訟であるわけですね。給付請求権ということでは、最終的な給付の形態は法的構成が違っても同じですから、主位・予備という構成になじむわけで。勿論、主位・予備でなくて選択的併合という余地もあるわけですが。
 更に、現在問題になっている一段階目の訴訟は、現行の民事訴訟では認められていない対象についての確認を認めるものですから、確認ということでは、朝倉さんが適切におっしゃったように処分権主義がありますから、原告がそうしたいと思えば主位・予備で立てることも、選択的で立てることもできると思いますが、更に法的には単純併合というか、いずれの確認も求める。
 つまり、民法96条違反であることの確認を求めるし、あるいは消費者契約法何条違反の確認を求めることを、選択とか主位・予備ではなくてともに求めることは、私は許されていいのだろうと思います。これが1点目です。
 それから、2点目ですが、9ページの基本的な考え方についてです。ここにお書きになっていることの基本的な趣旨は、特に異論があるわけではありません。多数の消費者に共通する事業者の行為の評価が対象だという表現でまとめるのがいいかどうかは別として、趣旨としては理解できるところですが。
 更に、これだけに限るかということであります。私は、勿論事件にもよると思いますが、可能な事件においては、損害の算定方法とか算定基準が共通争点として確定できるのであれば、当然対象に含めることができるし、また含めるべきだろうと思います。なかんずく、前回のこの調査会でも議論が出ましたが、二段階目が主たる手続が簡易な訴訟手続となるとすると、そこは比較的機械的にやっていける必要がありますので、一段階目で損害の算定方法とか算定基準で定めておくべきだと。つまり、本格的な訴訟において定めておくべきだという気がいたします。これが2点目であります。
 3点目でありますが、一段階目の訴訟物と二段階目の訴訟物との関係、私は朝倉課長がおっしゃったことに全く賛成です。また後に議論になることもあろうかと思いますし、あるいは議論にならずに、本調査会が終わった後の立法段階における法制局とのすり合わせとか、そういうレベルの話かもしれませんが。朝倉課長、一段階目の対象が固有権か授権かはともかくとおっしゃって、そこはまだ議論が詰まっていないところですが。
 朝倉課長がおっしゃるとおり、どういう言い方をしようと、あくまで集合訴訟をつくっているわけで、一段階目も二段階目も集合訴訟の一環ですから、本質的には一段階目といえども、個別被害者の権利を束ねたものが、少なくとも実質的な意味では訴訟物であるわけですね。なので、そこの訴訟物が二段階目とずれるということは、私には考えられないですし、それが一段階目、二段階目と言っても、訴訟と非訟とつながっていくとしても一連の手続ですから、そこはずれるというイメージで制度設計すべきでないというのが3点目であります。
 ちょっと長くなって恐縮ですが、最後、4点目、主文をどうするかという話が出てきました。これも私、伊藤座長がおっしゃったことに賛成ですが、適切におまとめいただいたように、一方で主文という技術的な話に収れんするのか、あるいは訴訟物なり、より本質的な話が絡んでくるのかは別として、一段階目の判決の主文としては、具体性のあるものでないと意味がないし、二段階目の手続をやっていけないわけです。
 例で言うと、資料1の別紙1のマル2の不当な勧誘事案の例を使いますと、これは点線の上に例1と書いてあるように、例えば民法96条の欺もう行為とか消費者契約法4条1項2号という形で具体性を持ってというか、権利の性質まで確定した形で確認は出すべきだ。主文としては、こうなる。
 その下の例2のような、主文では、二段階目に対する紛争解決基準を示さない。勿論、判決理由を見ればわかるではないかという御異論があるかもしれませんけれども、判決理由から一義的にすべての意図が明確に特定できるとは限らないわけですので、主文で示すべきだと思います。
 ただ、伊藤座長がおっしゃったのは、一方で権利の特定性みたいなものがある程度必要ではないかという要請がある。他方で実質的同一事件を何度も蒸し返せるということが起きては困る。紛争解決の一回性の要請も他方である。そこは切り分けるべきで、主文の形はこの例1のような形にするとしても、別途、制度的な手当てによって違う法的構成をとってきたら、幾らでも再訴なり蒸し返しができるということは避けるべきだろうと思います。
 やり方はいろいろあり得ると思いますが、例えばということで申しますと、人事訴訟法の25条でしたか、のように、訴え変更によって主張できたような構成は、別訴が禁止されるとか。この方法が唯一であると申し上げるわけではございませんけれども、何らかのそういう手当てもとることは可能でありますので、結論から言うと、主文は特定的に、しかし紛争の実質的な意味での蒸し返しはなるべく避けるという記述が望ましいと考えております。

○伊藤座長 処分権主義と申しますのは、裁判所に判断を求める事項は、当事者である原告が決めるという考え方のことを意味しているわけでございますけれども、その考え方を基にして、どの請求権あるいはどの事項について判断を求めるかは、原告の方でしかるべき形で特定してということになるわけですが、他方、余りそれを厳格に考えてしまいますと、本質的には同一紛争であるものが、分断されて訴訟が提起されるようなおそれが出てまいります。
 三木さんがおっしゃったように、一応審判を求める事項としては分けられるとしても、本質的に同一紛争に関するものである限りは、重ねて訴えを提起することは許さないという特別の規律を置くという解決もあり得るので、その辺りがなかなか難しいところかと思います。皆さんの御意見を伺っていまして、そんな印象を持ちました。
 どうぞ、山本和彦委員、お願いします。

○山本委員 今、座長の指摘された、三木座長代理が最後に言われた点で、私も基本的には同じような感触を持っていますが、問題は原告がどの範囲で確認の対象を選べるか、どのぐらいの広さにするかということを選べるかということと。他方で、被告が余りに狭い対象で請求されたところ、せっかくその点には勝ったのに、もう一度同じような事項で、しかし別の確認対象で提起された紛争の蒸し返しみたいなことが起きるのをどう防止するかというところの兼ね合いかと思います。
 具体論から言えば、私はこの事務局の提案の、先ほど三木座長代理が言われた、マル2の不当な勧誘事案の不当利得の例2のような請求の特定の仕方があり得ないではないようには思っています。これが第一段階の紛争の解決機能にそぐわないかというと、この例2の対象消費者の範囲からすれば、そういう取り消しの意思表示をした者が第二段階に入ってきて、法律上の原因なく利得しているということを前提として、不当利得の返還請求をするとすれば、それなりに第一段階でこの点を確認しておくことは第二段階でも意味があるような気がいたします。
 更に、不当利得返還請求と、次のページにある不法行為に基づく損害賠償請求権も、この合体するような確認対象みたいなものがあり得るかというと、これもよくわからないですが、何らかのこういう事象が生じたことによって、それに基づいて金員の返還請求権を有することを確認することにあわせるとなっていくだろうと思いますが、そこまでいくと、果たして確認対象として特定性が認められるのかということには疑義が生じるような気がいたします。
 いずれにしろ、何段階かあるということは間違いなくて、考え方としては、この例2みたいな特定の仕方が認められるんだとすれば、もう例1のような形で特定することは認めない。つまり、訴訟物の範囲の、紛争解決の範囲の広さは、例2がミニマムになって、更にそれを例1のような形で原告が分けることはできないとするのは、一つの考え方であるように思います。
 ただ、恐らくそれは、先ほど来出ている処分権主義というか、原告が紛争解決のサイズを選べるという観点、普通の考え方からすれば、それはそういうことにはならないような気がします。
 そこで、三木座長代理が最後に言われた点は、私は今のような解決方法は気がつきませんでしたけれども、一つの魅力的な方法であるように思いましたし、原告側にそういう形で訴えの変更ができるような範囲においては、もう再訴できないという形であらかじめ警告しておいて、ちゃんと紛争解決をまとめてきてくださいとするというのも一つの考え方ですし、民事訴訟法の普通の考え方からすれば、むしろ被告の側で原告の側の請求の特定が狭い場合には、被告の側から反訴を提起して紛争解決範囲を広げるという選択肢を認めるのが民事訴訟法の普通のやり方だと思います。
 ただ、この場合に、確認請求自体は非常に特殊なものなので、被告側からそういう反訴というものを認めるというのが技術的に可能かどうかという問題があるように思いますので、三木座長代理が言われたような解決策も、十分あり得る一つの解決策。いずれにしても、そこを何らかの対応をとる必要があるのではなかろうかと思っております。

○伊藤座長 ありがとうございます。中村委員、お願いします。

○中村委員 今の皆様の意見、技術的なところでどこまでできるかに関しては、私は何とも申し上げられないですが、方向性としては同じ意見でございますが、ここの確認を求める内容というのを、もう少し更に進んで、被告に例えば表示をして購入した消費者に対して、その代金を返還する義務があることを認めるといった意味での、そこまである意味組み込んだ形で、すぐに消費者の返還に結び付くような形での確認というのはできないのかというところについて、ちょっとお聞きしたいと思います。

○伊藤座長 先に三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 休憩の時間ですが、山本和彦委員がおっしゃったことに関連してですので、休憩前に発言したいと思います。
 最後に山本委員がおっしゃった反訴云々というところですが、事務局のペーパーには、私が見落としていなければ、その問題は書かれていないように思います。私もほかの何かの雑誌にそういうことを書いた記憶がありますが、この新しい制度をどう表現するか、どう組み立てるかにもよりますけれども、多くの人の理解では、実質的には事業者に対して、場合によっては不利な形での片面的な判決効が及ぶような制度だということだとして、それに対して、事業者側にも最低限度というか、この制度の趣旨を壊さない限度で、自ら防御というか、反撃の機会を手続的には保障しなければいけないだろうと思います。
 具体的には、原告が立ててきた訴訟物、例えば民法96条で立ててきたときに、先ほど言ったような形をとるにせよ、とらないにせよ、再訴制限、別訴制限のような規定を置くにせよ、この訴訟を起こされた以上は、もともとは受け身の立場ですけれども、受けて立つ以上は、この法的構成とかこのような問題については、むしろ責任がないとか消費者には権利がないんだということを被告の側から積極的に確認しておきたい。
 何が権利があるかということを原告側が確認するのであれば、被告の側からはこれはないということも確認しておきたいという機会を与えることは、フェアだろうと思います。それを放置しておいて、現在の反訴という民事訴訟法上の一般規定でカバーできるのであれば、手当ては勿論要らないですが、この訴訟をどこまで特殊な訴訟とらえるかによりますが、特殊な訴訟なので、手当てをしなければ反訴はできないというのであれば、今後の検討課題ではあるでしょうけれども、反訴的な被告側からの申し立ての余地を検討すべきだと思います。

○伊藤座長 どうぞ、大高委員、お願いします。

○大高委員 手短に申し上げたいと思います。3点ほど申し上げます。
 まず1点目、これまで議論をまさしくされていることに関してですが、既に理論的な問題等については、学者の委員の先生方、朝倉課長から指摘されているところですので、繰り返しませんが、実務家の点から1つ感じたことを申し上げたいと思います。
 この請求の特定について、再訴制限との関係で非常に気になるところがありまして、実際に訴訟に携わっている立場からしますと、その訴訟の場で一生懸命争っていること以外に、例えば複数の法的構成が考えられるときに、訴訟の場で争わなかった法的構成についても、すべて仮に再訴制限で遮断されることになると、非常にやりにくい部分がございます。そういった効果が生ずれば、訴えを起こす側からすれば、念のため想定される法的構成を主張しておくかということにもなりかねない。そうすると、不必要に争点が広がるといこともあります。
 勿論、細かく分断していくということになれば、実質的に同一紛争の蒸し返しになるんじゃないかという懸念は、これはもっともだと思います。いろいろ既に三木座長代理や山本委員からも御指摘があったことですが、私としては、仮に適格消費者団体に主体を絞るのであれば、むしろ行政の監督とか、そういったところで実質的にコントロールしていく方法もあるのではないかと思っているところです。
 2点目ですが、三木座長代理が言ったかと思いますけれども、共通争点の設定、確認の対象事項の中に、いわゆる損害論的な部分も入れられないかという点については、私も興味を持っております。具体例で挙がっていました、例えばマル4の契約自体が無効になるような事案で、モニター商法等で、ここでは寝具が例に挙がっております。しかし、これを食品等のようなもので事件になったときには、かなりのものが消費されているような場合があります。
 こういった場合、売値は1本1万円とか2万円とか、非常に法外な値段がついていても、実際は客観的な価値としてあるのかないのか、わからないような事案がございます。そういった場合、勿論これは実体法上も押しつけられた利得論との関係で非常に興味深い論点があるところですが、こういったものについて共通して、1本当たり実質的な価値としては、または客観的な価値としては幾らだと。もしくはゼロであるとか100円であるということが確定できれば、二段階目の審理等が非常にスムーズにいくのではないか。こういったところも含めて確認ができれば、非常に使いやすい制度になるのかなと思っています。
 最後に、支配性の点については窪田委員と同様で、これまでるる述べてきたところですが、私としては本文にありますように、基本的には紛争の解決に資するという基準で考えればどうかと思っています。紛争の共通争点が確認を求めた事項が紛争の解決に資するとは言えないような場合についても、排除していけば十分ではないかと考えているところです。
 以上です。

○伊藤座長 そういたしましたら、何か朝倉さん。

○朝倉課長 ここで問題になっていることの頭の整理の問題なのですが、先ほどからいろいろな観点からのお話があって、それはそれで私もそのとおりだと思います。
 もう一つ、例1と例2で私の方で違いがあるかなと思いましたのは、理由に書くか主文に書くかは別にして、あと主文をどこまで詳しく書くかという、さっき三木座長代理からおっしゃられたことも、例2に例1のようなことを付け加えて、取消しがされた場合には、法律が原因であると書くことはできますので、それは多分例2の方は対象消費者のところに書いてありますから繰り返さなかっただけだろうと思います。そういう意味で、どこまで主文を詳しく書くかというのは技術的な問題と説明できるかもしれません。
 私が気になりましたのは、若干法律用語を使わせていただきますが、例1だけですと、請求原因の一部ですとか、請求原因はあるけれども抗弁があるかどうかについての判断をしておりません。例2の方ですと、責任原因まで判断しているものですから、責任があることは明らかです。この点は、中村委員の問題意識に若干近いかもしれません。
 そうしますと、余りないのかもしれませんけれども、権利侵害行為だと判断しても、もしかしたら違法性阻却事由とか責任阻却事由があって、実際返金しなくてよい、二段階目に行ったら消費者の請求が全部認められないというような話になったら、ちょっと困るなと思うものですから、責任原因のところまでは、それが訴訟物を特定しての責任原因なのか、もしくは訴訟物を特定しない、包括的な意味での責任原因なのかは別にして、包括的なというのは技術的に難しいのではないかと個人的には思わないではありませんが、いずれにしても責任原因までは確認しておいた方がいいのではないかと思うところでございます。
 あと、話がちょっと違いますが、先ほど窪田委員がおっしゃられた不当利得と不法行為の場合の関係で、技術的に主位的か予備的かというのはありますが、実質的にはおそらく過失相殺の問題を認めるかどうかというところで問題が出てまいります。過失相殺があると減額されることになりますので、過失相殺のところは多分当事者の方にとって非常に関心のあるところで、共通争点になる場合もあるかもしれませんが、一般には個別事情が入ってまいりますので、二段階目で議論しなければいけないところであります。
 ただ金を支払えというだけでなく、それが不法行為なのか不当利得なのかというのをきちんと一段階目で明示しておきませんと、二段階目で過失相殺を争点にしていいのか、いけないのかというところがわからないことになると思います。そういうところから考えても、訴訟物というか、何が問題になっている権利かというところまで、できれば特定した上で、かつ責任原因まで第一段階の主文で確認しておいた方がいいのではないかと思うところであります。

○伊藤座長 本質的な問題としては、紛争をできる限り1回で解決したい。しかも、判決の効力は、有利な場合には消費者のために及ぶけれども、不利な場合には及ばない。いわゆる片面的なものであるという制度の基本的な仕組みを考えたときに、どの程度まで裁判所に判断を求める事項を特定しなければいけないのか。法律的な請求権の性質などを重視して、細かくすればするほど、ある請求権を主張して判決が出ても、別の請求権を主張して、また訴訟を提起する可能性などが後に残ることになりますし、また最後に朝倉さんがおっしゃったように、請求権の性質を基準にして余り細かく分けてしまうと、二段階目の手続にうまくつながらないという問題もあるように思います。
 しかし、その問題は、紛争としての同一性を基準として、異なった請求権であっても、同一性が認められる限りは、再び訴えを起こすことを禁止するという解決もありうるところで、実際上では、被告側にとって著しく不利益な状況にはならないのではないかという御意見もございました。したがって、訴訟手続上の技術的問題という側面がございますので、合理的範囲で同一の紛争について一回的解決を図るという共通認識を確認し、本日の審議を基礎にして、事務局で、この制度の趣旨がどうすれば一番合理的な形で生かされ、消費者・事業者双方にとって不当な不利益を生ずることがないのかという辺りの検討をしていただければと思います。
 それでは、予定の時間を少し過ぎておりますけれども、ここで10分ほど休憩をとりまして、その後、次の事項に移りたいと思います。

(休憩)

○伊藤座長 それでは、再開いたします。
 最初にお断りしておいた方がいいかと思いますが、進行の状況を見ますと、12時半の終了予定ですけれども、10分ぐらいは延長をお願いする可能性がございますので、そこはあらかじめ御理解いただきたいと思います。また、これから第3と第4の両方の事項がございますので、その辺りのこともお含みの上で審議によろしく御協力ください。
 そこで、資料1の「第3 一段階目の判決の効力について」の説明をお願いします。

○加納企画官 資料1の16ページですけれども、1のところで書いておりますけれども、今回の制度は、二段階目の手続で一段階目の判決結果を有利に活用する制度として考えております。
 二段落目ですが、こういう観点からしますと、判決の効力について、二段階目の手続に加入した対象消費者に及ぶ。具体的にはということで括弧で書いておりますが、被告は一段階目の判決結果と矛盾する主張をすることができなくなる。裁判所も一段階目の判決結果を前提とした判断を行うというのが適当ではないかと考えるところです。そうしますと、これは判決効の拡張ということになるのではないかと思われるところでありまして、現行の民事訴訟の原則から例外として位置づけられるのではないかと思いますので、その正当化根拠について御意見をちょうだいできればと思っております。
 「2.考え方」の(1)の2行目のところですけれども、特に判決の効力を活用される被告(事業者)において不当な不利益を負担させないことを制度的に仕組むことがポイントではないかと思われるところでありまして、マル1、マル2、マル3と3つの視点を掲げてみたものであります。
 1つ目は「手続追行主体」でありまして、適格消費者団体とすることを前提に議論しますと、消費者の利益の擁護のために適切な訴訟追行をすることが制度的に担保されている存在ではないか。
 この「適切な訴訟追行」というものについては、いろいろ御意見はあるかと思いますけれども、1つの切り口としましては、消費者被害に関する十分な情報収集、それから、事業者から独立した立場からの分析・検討をして、消費者利益を擁護する観点から、合理的な根拠に基づき争うべきについては争う、そういった訴訟追行を想定し、適切な訴訟追行をした結果については、二段階目でも効力を拡張していくということではないかということで書いてございます。
 17ページのマル2は「被告の手続保障」で、判決の効力を活用される被告の観点でありまして、2行目辺りからですが、紛争全体を見越した上で、攻撃防御を尽くすことができるように配慮することが必要ではないかと思われるところでありまして、1つは、一段階目の手続で対象消費者の範囲を特定しなければならないこととする。対象事案につきましても、係争利益がおおむね把握できるような事案を選定することが適当と考えられるのではないかと書いております。
 3つ目が「再訴制限」でありまして、同一事件について紛争を蒸し返されることによる被告の応訴負担、あるいは共通争点に関するまちまちな判決が存在するというのはできる限り防止する必要があるのではないかということで、同一事件についての再訴制限が規律として必要ではないかと考えております。
 (2)ですけれども、以上を前提に、一段階目の手続において、被告は、消費者の利益擁護のために適切に訴訟追行する適格消費者団体との間で、紛争全体を見越した上で、十分な攻撃防御を尽くすことができるということで、信義則に根拠を求めまして、そういった矛盾主張などができなくなるということが許容されるんではないかということで書いてございます。
 3は再訴制限でありますが、これにつきましては、いろんな考え方があると思いますので、その方向性について御議論いただければと思っております。同一事件について、確定判決や、これと同一の効力を有するものがある場合には、原則としてできないこととする。
 (1)で「同一事件」の範囲につきましては、請求の内容、被告(事業者)が同一である場合と考えればどうかと思っております。
 (2)の例外につきましては、先ほど黒沼先生から御質問あったところですが、馴れ合った訴訟追行などの不適切な訴訟追行があった場合には、再訴が制限されないこととする。その場合に、消費者庁の監督を通じてやるのか、あるいはまた別途の方法があるのかということは、更に検討を重ねてまいりたいと思います。
 以上でございます。

○伊藤座長 判決の効力を対象消費者のために有利な場合にだけ拡張するということに関しては、A案を前提にして考える限りは、基本的なところでは御異論がないかと思います。ただ、いわゆる片面的な判決の拡張は、一般原則からみますと、かなり例外的な制度ということになりまして、国民の御理解を得られないと、とても立法に進めないという性質の問題でございますので、加納さんから説明がありました正当化根拠に関して、一応の考え方の整理は事務局からしておりますけれども、是非、御意見をいただければと思います。
 また、再訴制限に関しても、そういう規律を設けること自体に関しては御異論がない、あるいは少ないと思いますけれども、それをどういう範囲でとらえるのかという辺りに関しては、いろいろな考え方があるかと思いますので、この点に関しても御意見をちょうだいできればと存じます。どうぞよろしく。
 窪田委員お願いします。

○窪田委員 2点ございます。1点は先ほどのお話とも関係するのかと思いますが、判決の効力を拡張して、また再訴制限もしていくという点では、第一段階でどういうふうに、何を争うかということが重要になると思います。先ほど理論的な話は随分出ておりましたけれども、実質的な観点からは、第一段階最初の段階で、裁判所も関与する形で争点整理を行って、範囲が狭くなり過ぎないようにしておくというのは重要なのかなと思います。それを踏まえた場合に、あり得る説明なのかなと思います。
 その上で、第2点ですが、先ほど黒沼委員からも指摘があった部分、再訴制限の例外の部分なのですが、これはやはり例外としては設けておく必要はあるのだろうと思います。差止との対比では、個々の消費者の権利を束ねているという点で、監督官庁がこういう場合にまず認定を取り消して、そして再訴を可能とするという仕組みでいくというだけではなくて、消費者との関係で一体どうなるのかなという点が気になります。要するに、個々の消費者がこれについて、こんなのは馴れ合いだということを言い出した場合にどうするんだろうかという点に関する懸念です。
 一方で、そうしたものを認める必要もあるのかなと思いつつ、先ほど和解について座長からも御説明がありましたが、和解というのは基本的には互譲の側面を持っておりますので、全部の主張が通るわけではないというのは十分に考えられることです。その意味では、100%求める人から見ると、必ず不満があるわけですから、その種のいわば申立てというのを全面的にどんどん取り上げることになってしまうと、収拾がつかなくなるという側面があるんだろうと思うのです。恐らく和解というのは、実質的な流れで言うと、この手続においてはかなり重要な意味を持ってくるんだろうと思いますので、その意味で、和解がうまく機能するような手当てが必要なのかなという気がします。質問とも意見ともつかないところですが、そのような印象を受けました。

○伊藤座長 ただいまの窪田委員の御発言に関連して何か御意見等ございましたら、お願いします。どうぞ、池田委員。

○池田委員 今日は専門的な意見が多く、なかなか発言の機会がないものですから、今の和解ということについて、少し意見を申し上げさせていただきます。私は長年、BtoCの業界にいて、それに携わってきた者です。たまたま私の場合は、大きな消費者紛争というのはなかったものですから、適切な表現ではないかと思うのですけれども、全うな事業者であれば、このような大きな紛争になる前に自主的に解決しようとするのが普通の発想だと思います。従って、このような段階になってくるというのは、非常に難しいテーマのものが訴訟に乗ってくると考えるのが、妥当ではないかと思うのです。ですから、悪質な業者の場合には、幾らでもこのような訴訟になるということは考えられるけれども、正当な事業者の場合には、それは非常に難しいような感じがします。
 そういう状況を解決していくのは、私はやはり和解という手段がベターな解決方法だと思います。ですから、和解について随分議論してきた点については、私は大変に重要だと考えます。もう一つは、一般的に正当な事業者と全うな消費者との自主的な和解が常に可能な仕組み、あるいはそういうことができるような社会というか、そういうことを踏まえた集団的消費者被害の訴訟制度というものを考えることが大前提であるということを常にベースに置いていただきたいという点です。いいか悪いかは別にして、すべてが訴訟で解決するような世の中になっていくというのは、決して私は一般消費者にとっても幸せでないと思います。全うな事業者、全うな消費者が生き残っていけるような仕組みが大前提である必要があるのではないかと考えます。よろしくお願いしたいと思います。

○伊藤座長 池田委員が今、おっしゃいましたように、一方で適切な和解の促進という要請があり、他方、例外的ではあっても、不適切な和解をどうやって抑止し、また、そういう結果が生じてしまった場合に、救済をどういう要件の下で図っていくのかということで、先ほどの窪田委員からの御発言にも関連するかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、山口委員お願いします。

○山口委員 私は、この問題は大した問題ではないと、はっきり言って思っております。といいますのは、訴訟枠組みを使わないで、適格消費者団体がやった和解なり、その他の手続が不当だと、あるいは不満だと思った被害者、個別の消費者は、個別の訴訟をやることは妨げられないわけですから、その意味では、それが確認さえできれば、再訴制限の問題について、それほど細かい議論をする必要はないんではないかとは思っております。

○伊藤座長 わかりました。権利の主体である消費者自身が訴えを提起して救済を求める余地が残されている以上、他の適格消費者団体が和解の内容を不当だと言って再訴を提起することを認める余地をそれほど詰めて考える必要はないのではないかというご趣旨と理解いたしましたが、今の山口委員の御発言に関しても、他の委員の方で御発言ございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
 野々山さん、お願いします。

○野々山理事長 和解のための制度をどのように組み立てるかという問題もありますし、どのような形で和解をすることができるかということも議論になるかと思いますけれども、基本的には、山口委員がおっしゃったように、和解に不満であればその当事者は、別訴をしていくということで解決できるのではないかと思っています。ただ、団体訴訟で差止請求をしてきた経験からしますと、和解できたのは、ほぼ認諾的和解です。適格消費者団体が譲歩して和解をするということはこれまであまりありません。請求を認めたうえで和解をやっていく。しかも、差止の場合でも、もし和解条項について違反行為をしたら、消費者に対して損害賠償などを払うということを適格消費者団体の間で約束をする和解であったりします。互譲で行う和解がどれだけ増えるかということはありますけれども、現実にはそういう和解だったということであります。
 それから、もう一つ、再訴制限の問題が先ほどから議論になっているわけですけれども、私どもが訴訟してきた差止請求の場合でも再訴の問題は議論になったわけであります。そこでは基本的に基準としては訴訟物で決着が一応ついた、それをどう説明するかは別にしまして、基本的には訴訟物だということで決着がついたと思っておりますので、今回の場合も基準としては、そういう形で決着をつけるのが妥当ではないかと思っています。そうなると、不当利得と不法行為というのは別々の訴訟物だから再訴できるではないかと、こういう議論になりますけれども、実際、訴訟を行っていた側からしますと、暇ではないというのでしょうか、不当利得で負けたから、では、不法行為でやろうかということにはならないというのが実態であります。これまで差止請求でも再訴制限の問題もいろいろ議論がありましたけれども、そういう事態は全く起こっていない。そういう意味では、再訴制限の基準を幅広にしますと、最初にあらゆることを言っておかなくてはいけないということになり、その意味で、むしろ争点が増えてくることになっていくのではないかという思いがあります。

○伊藤座長 わかりました。
 どうぞ、大高委員お願いします。

○大高委員 重ねてになりますけれども、基本的には私も野々山理事長のおっしゃるところに賛同しております。再訴制限については、先ほども申し上げたとおり、同一事件の範囲を余り実質的にとらえ過ぎると、訴訟追行の手法を縛ることになって、かえって負担が重くなるんではないかということを懸念します。
 馴れ合い訴訟等ですけれども、今、野々山理事長からもあったように、基本的には狭い範囲にせよ、再訴制限がかかるということと、本制度であれば、個別訴訟が理論上封じられないということがありますので、一般の被害者からの目は、訴訟を追行する側、また被告の事業者から見ても、非常に重いものではないかと思っています。だから、そう簡単に適当な和解とか、もしくは請求の放棄であるとか、そういったことはできないだろうとは思っています。勿論、抽象的な規定でこういった馴れ合い防止規定などを入れるのは意義があることで、それは特段異論があるわけではありませんけれども、余りここにこだわって制度が微に入り細に入りということは避けるべきではないかと思っております。
 発言機会をいただいたので、ほかの点についても若干申し上げさせてください。基本的には、判決効の拡張の理論的な説明としてはこういったところになるんではないかと思いますが、個々の点について若干申し上げさせてください。
 手続追行主体の議論につきましては、ここは一応、適格消費者団体を前提としてという議論になっておりまして、こういう表現になっておりますけれども、ここで言う議論というのは、適格消費者団体に限らず、適切な訴訟追行ができる存在であれば同様に当てはまる議論だろうということは確認をさせていただきたいと思います。
 被告の手続保障における係争利益の把握の問題については従前から申し上げていることで、余り厳格に考えるべきではないのかなと思っているところです。
 時間の関係もありますので、以上で終わります。

○伊藤座長 わかりました。正当化根拠についても意見をちょうだいしまして、ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。中村委員お願いします。

○中村委員 皆さんの御意見に特に異論はないんですが、今、御意見もございましたように、適格消費者団体ではないという検討もやるという前提で考えると、この再訴制限ということは非常に重要でございまして、適格消費者団体の方であれば、きちっとやっていただけるし、追行能力も十分おありだということについては異論はないかと思いますが、そうではない一般の方でも起こせるというような話になってまいりますと、ここのところは重要ではないかと考えます。

○伊藤座長 ありがとうございました。
 三木委員お願いします。

○三木浩一座長代理 正当化根拠のところですが、私は重要な点が2点抜けているんではないかと思います。1つは、対象が共通争点であるということ。もう一つは、裁判所がそれを適切に判断するということです。
 共通争点が適切に判断されれば、すべての当事者について、共通争点であるがゆえに、その結論は共通に及ぶわけですので、被告の企業として、相手が違うからといって、もはや別な争いができるというのはおかしいわけですので、それが俗に言われるところのほかの消費者にも拡張されるということの根拠になっているわけです。共通争点であるということから、ある程度論理的に導かれるんだというところは入れていかないと、二段階型の一段階目を共通争点に組んだことの意味が全くわからないということになります。
 それから、共通争点であっても、それが適切に判断されることが必要で、このペーパーでは、当事者が適切に訴訟追行するという、当事者のサイドにだけ焦点が当たっていますが、弁論主義を前提にしているんだろうと思います。弁論主義によって当事者が適切に訴訟追行しないと裁判所が適切に判断できないという要素があるのは当然ですが、この一段階目で判断されるのは、法律上の争点であることも勿論あるわけで、それは裁判所が当事者の訴訟追行とはある意味では関係なく適切に判断できるわけです。最終的には当事者の適切な訴訟追行も裁判所の適切な判断の手段といいますか、その前提として必要なだけであって、最後にこの制度を正当化するのは、まさに裁判所が適切に判断するからだと。その適切な判断が共通争点ということで、すべての訴訟に参加していない消費者についても共通問題であって、それが適切に判断されているから、当然、共通的に及ぶんだということを踏まえる必要があると思います。
 現在、今、議論されている二段階型の制度に最も近い、そして最も成功しているのは、私の知る限りではブラジルの二段階訴訟です。ブラジルは、日本では余り知られていないですけれども、かなり法理論は発達している国で、法学者もかなり優秀です。彼らの議論は、私が知っている限りにおいては、手続追行主体をここまで強調している議論は聞いたことがなくて、まさにさっき言った共通争点について適切な判断がされている以上はというのがベースになっている。
 現にブラジルの制度は、日本で今、議論されているような適格消費者団体に限る制度ではなくて、消費者団体であれば、適格性がなくても勿論構いませんし、それ以外のさまざまな主体が広く認められていて、日本のように消費者庁の監督が及んでいるから云々とか、そんな議論は聞いたことがないわけです。
 更に、現在では、まだ立法改正の議論の段階だとは思いますけれども、アメリカのクラスアクションのように、一般の消費者、個人にまで適格を広げようという議論もかなり有力になされているようですし、その際に、日本で行われているような議論、適格の認定がされているからとか、消費者庁の監督が及んでいるから、この制度が正当化されるんだというような議論は聞いたことがないわけです。
 したがって、こうしたことを書いても、私は違和感がありますけれども、いかんとまでは言いませんが、先ほど申し上げたようなことはむしろ主になるべきではないかと個人的には思っております。

○伊藤座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、野々山さん。

○野々山理事長 正当化根拠の中のマル2のところですけれども、「係争利益がおおむね把握できるような事案を選定することが適当」ということの、係争利益がおおむね把握できるというのは、どの程度のことを指しているのでしょうか。今、例に挙がっているものは販売の事例ですから、これは上限が決まっています。慰謝料というのがもし入ってくれば別になりますけれども、それでも取引ですから、それほど大きなものにならないということになると、ある程度上限が決まっている。こういう理解なのでしょうか。これをどう見るかによりまして、対象事案をどう考えていくかにも非常に関わってくるわけでありまして、不法行為で人身被害というものが入ってくると上限がわからなくなるという議論がこれまでもありましたが、係争利益をおおむね把握できるという概念に人身事故は含まないということになると、それでよいのか、という思いが私自身はするわけです。

○伊藤座長 ここは、対象事件をどの範囲でとらえるかという問題と密接不可分に関わっていますので、今の段階で確定的な説明はなかなか難しいと思いますが、加納さん、係争利益がおおむね把握できるような事案ということについての考え方を御説明いただけますか。

○加納企画官 おおむねと書きましたのは、文字どおり、おおむねと、そういうことでありまして、具体的に何円というまできちっと正確に把握できなければならないという趣旨ではなく、対象消費者として大体何人ぐらいいて、1人当たりの金額がおよそこれぐらいなので、トータルで大体これぐらいの利益を最大限、事業者としては争われているということが見えるということで書いてみたつもりです。
 事案の話はまた別途機会を設けて御議論いただければと思っておりますけれども、私どもで文献等、いろいろ調べてみたところを参考として掲げたりしておりますけれども、こういう判決効の拡張をもしやるのであれば、被告の利益の配慮をどういうふうにしているかというのが問われるのではないかと思うわけでありまして、それでいろいろ考えてみたつもりであります。
 人身事故のようなものがこれに入るかどうかというところについては、まだこの場でどうだということまで申し上げるつもりはありませんけれども、今まで基本的に御議論いただいた事案としては、契約関係にあるような場合であるとか、あるいは個人情報の流出事件であるとかいう形で、大体何人ぐらいの被害者がどこにいて、それぞれどれぐらいの利益が争われるのかというのがわかる、そういう事案であれば、特別な効力を認めても正当化されるんではないかというふうにしたつもりでありまして、例えば、人身事故のような場合に、被害者がどこにいるかが事業者にとっても必ずしもわからない、損害の額についても、個別性が非常に多々あるためにわからないということでも、手続保障の観点で正当化されるのであるというのであれば、むしろそういった御意見をいただければ、更に事務局でも検討していきたいと思っております。

○伊藤座長 大高委員、お願いします。

○大高委員 時間の関係もあるので、この点は余り触れないでおこうと思っていたんですけれども、係争利益の把握の問題については、これが最終的に具体的な別立ての要件として上がってくるのかどうかというところがよくわからないなと思っております。本制度の対象となる事案を選ぶときの政策的な判断の基礎として考慮されて、そこで一定の仕切りがされた後は、一応、その要件はそこに吸収されて消えて、最終的に要件として立たないということであれば、それをどういうふうに事案を選定するかというところは別にして、あり得るのかと思うんですが、仮にこれが最終的な要件としても残るとなると、実際どういう争い方がされるのかが全くわからないので、むしろ不必要な争点を増やすだけで、裁判所も判断できないし、むしろマイナスの要件といいますか、制度的に円滑な運用を阻害する要件にすらなるんではないかと感じてはいるところです。

○伊藤座長 私の理解では、ここはあくまで正当化根拠として挙げているだけで、さっき出ました共通性とか支配性との対比でいえば、これが独立に要件になるとかいうことはない。ただ、野々山さんの御意見は、対象事案をどう考えるかという問題についての影響を指摘されたんだと思います。それは影響があると言えばあるかもしれませんが、これ自体が要件化されて判断の対象になるというのは想定していないように思いますが、加納さんいかがでしょうか。

○加納企画官 今の時点で、どちらともというわけではないんですけれども、基本的には、今、座長がおっしゃっていただいたような感じで、こういう正当化根拠として考えるというふうに思っております。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。そういたしますと、正当化根拠に関しては何人かの委員の方から御指摘いただきまして、これは立法をする際に広く納得していただく上では大変重要なことでございますので、事務局で御意見を受け止めていただきたいと思います。
 それから、再訴制限に関しては、余りにこれを広くすると、かえって迅速、あるいは柔軟な訴訟手続の進行を妨げる結果になるのではないかという御指摘がございまして、それ自身はもっともと思います。ただ、再訴の可能性が開かれていること自体が、制度の設計をする段階で考えると、いろんな批判や意見を呼ぶ可能性がありますし、中村委員から御発言がございましたが、手続追行主体のところで、適格消費者団体以外の団体に追行資格を認めるかどうか、引き続き検討するというとりまとめにさせていただきましたが、それとの関係も場合によっては出てくるかなということもございます。結局は、請求の内容の同一性や確認の対象となる事項をどうとらえるかということ、そして、同一の紛争に関わるとみなされる場合に、それを超えてどの範囲まで再訴制限の規律を設けるかということに帰着するのかとは思いますが、御意見を踏まえて、とりまとめの方向でまた再度、審議をいただく機会を持てればと思います。
 そういたしましたら、「第4 第一段階目の手続における和解の実効性確保に関する方策」に移りたいと思いますので、加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料1の23ページです。「1.問題の所在」の1段落目で書いておりますが、一段階目で適格消費者団体と事業者の間での何らかの共通認識が形成されるという場合に、紛争の早期解決という観点から、実効的な和解につなげるという方策が必要ではないかという問題意識です。
 2段落目ですが、繰り返しになりますけれども、適格消費者団体と事業者の和解だけでは対象消費者に対して当然に和解の効力が及ぶことにならないと思いますので、本当の意味での紛争解決とは言えないのではないか。
 3段落目ですけれども、そこで、事業者にとってもメリットになるような紛争の一回的な解決を図り、一段階目の手続における和解を実効的なものとするという枠組みを設けることについて検討する必要があるのではないかということで書いております。
 では、どういうことが考えられるのかというと、2のところでありまして、(1)と(2)と、大きく分けて2つ書いております。(1)は一段階目で何か手当てをする。(2)は二段階目の手続をうまく活用する。大枠申し上げますと、そういう観点です。
 (1)はマル1~マル5まで書いておりまして、運用に係るところと制度に係るところ、両方含んでおりますけれども、例えば、こういうのがあるんではないかと。マル1で裁判所が和解の監視をする。マル2で適格消費者団体と事業者とが協議して、どういうふうにするかを話し合って和解案を作成する。マル3で適格消費者団体は、そういった和解案、それから、対象消費者は適格団体に申出をしてくださいということを広く知らせて、知れている対象者に対して個別に通知をする。そこで意思確認を行うということだと思います。そしてマル4ですけれども、その和解でいいと考える対象消費者から授権を受けて、24ページに移りますけれども、和解が整ったということで裁判所に届ける。マル5ですが、裁判上の和解をする。こういった手続的な流れになるのではないかと思います。
 (2)ですが、一段階目で何らかの話し合いがつきつつあるということになったときに、必ずしも判決まで行かなくても、すぐに二段階目を活用する、そういった取り扱いも可能とすることも考えられるのではないかということで書いております。
 3、4で、それぞれについて、メリット、デメリットといいますか、どういうものがあるのかということで考えてみたところを書いております。
 まず、3の一段階目で何かするということにつきまして、(1)で、メリットですけれども、一段階目の手続で和解の対象消費者を参加させることができれば、一段階目の手続で審判対象になっている確認を求める事項についての判断を待たずにできる。白黒決着つけずにという言い方が適当かどうかわかりませんが、そこはあえて判断せず解決する。これは紛争の早期解決という観点からはメリットと言えるのではないかと思います。
 (2)で、他方で、一段階目でやるということについて、限界やデメリットといいますか、問題点はないのかということですが、2つ書いておりまして、マル1の1つ目のところですけれども、どこまで対象消費者を広げられるかということでありまして、通知・公告が十分できなかったとかいう場合ですけれども、対象消費者が十分でない、極端に言えば、本当に一部の対象消費者としか和解できなかったということも可能性としてはあるのではないかということで書いております。
 ただ、「この点については、」という2段落目の5行目辺りですけれども、適格消費者団体が殊更ごく一部の消費者との和解を成立させるような場合、それは不適切な訴訟追行と見て、相互牽制や、行政の監督により対処することも可能ではないか。ほんの一部だけ、あえて和解させるということについては、場合によっては行政の監督等によって阻止するということもあるのではないか。
 それから、そもそも論になってしまうかもしれませんが、「また、」というところに書いておりますけれども、和解をしなかった対象消費者は、個別訴訟は何ら封じられておりませんので、そういう意味では救済の道は残されている。
 それから、25ページですけれども、マル2で書いておりますのは時効の関係であります。共通争点の訴訟が起こされてから和解に至るまで、短期でそういうふうに和解の機運が形成されればいいんですけれども、非常に時間がかかったという場合に、時効期間が満了してしまうことも可能性としてはないではない。そういう場合に、事業者から、この人たちは時効ですよという話ではねられることもあり得ると思います。そうしますと、二段階目を使えば、仮に時効に関して、中断停止に関する特則を設けようとしますと、不均衡ではないかという問題意識です。
 ただ、この点につきましては、二段階目の手続にそういった時効に関しての特則を設けたとしますと、適格消費者団体も和解交渉において、和解が決裂すれば二段階に行きますよ、そうしますと時効の中断ないし停止というような効果が来ますよということでやると思いますので、そういったことが一種の交渉材料になるのではないかと思われます。そうすると、事業者があえて時効を援用することは考えにくいのではないかとも思われます。
 「なお、」というところで書いておりますのは、やはり時効中断を特別に認めていくということについては難しい論点もあろうかと思いますので、その観点を書いておりまして、3行目辺りからですけれども、個別請求権行使そのものとは言い難いことであるとか、対象消費者自身が手続を追行しているわけではないことから、和解において特則を設けるのがどこまでできるかは慎重な検討が必要ではないかということで書いてございます。
 以上が一段階目の和解に関する方策として書いてみたところです。
 次に、4のところで、二段階目をうまく活用しましょうという観点ですが、(1)はそのメリットということです。どういう制度にするかというのはまた今後御議論いただければと思いますけれども、例えば、事業者の協力義務という形で何らかの規定を設けて、二段階目の手続への加入を促すための通知・公告を制度化する、実効的なものとするとしますと、先ほど3で申し上げたような、一部しか和解が成立しないということは少なくなってくるのではないか。制度的にある程度配慮されているというメリットがあるんではないかということで書いております。
 他方ということで(2)ですけれども、やはり問題点はあるのではないかということで書いておりまして、2行目辺りですけれども、一段階目の審理の対象である確認を求める事項についての判断がされていない和解もあり得る。その共通争点について、特には判断せず、例えば、こういう形で一定の金銭を支払いますよというような和解をすることもあり得ると思います。そういった場合に、どこまで最終的な二段階目手続での判断ができるのか、判断し得るだけの基礎があるかどうかという問題点があるのではないかと思っております。
 25ページの一番下の行から26ページにかけてのところですが、二段階目の手続の裁判所というのは、基本的な一段階目の裁判所が引き続きやるのを想定しております。そうしますと、二段階目の手続でどうなるかということもある程度見越した上で、一段階目の手続で和解をすることもあり得るのではないかと思うわけでありまして、そういった運用に委ねるというのも1つの考え方ではないか。
 マル2はまた別の観点になってしまいますけれども、最終的に対象消費者に対して金幾ら幾ら払えというような判断を示すことになった場合、請求権は何なのかということでありまして、一段階目で、例えば、不当利得返還請求であるとか、不法行為だという形で明示して、共通争点について争うという形をずっとやっているわけですけれども、和解でやる場合には、当事者間で最終的には対象消費者を巻き込んで合意をして金幾らとなるとしますと、請求権がそこで変更されている可能性もあるのではないかという問題でありまして、別にそれは和解だからいいんだと考えればいいのかもしれません。ただ、そういう問題があるということで、指摘をしております。
 以上でありまして、一段階目の和解、二段階目を活用した和解、双方、利点ないし問題点があろうかと思っておりますので、こういったところについて御意見をちょうだいできればと思っております。
 以上です。

○伊藤座長 両当事者の間で和解の機運が高まったときに、一段階目に個々の消費者に入ってきてもらって、そこで和解を成立させるか、それとも手続としては、二段階目に移行して、そこで和解を成立させるか、それぞれの考え方の長短や問題点、そして考えるべき方向についての説明がございましたが、どの点からでも結構でございますので、御意見をちょうだいできればと思います。
 大高委員お願いします。

○大高委員 まず、一段階目の和解というものの重要性については、これまでも指摘されてきたところですが、個人的には、一段階目において適切かつ実効的な和解ができる仕組みができるかということが、本当にこの制度が真に機能するかどうかの分水嶺になるんではないかというぐらいに思っています。といいますのも、仮にこの制度ができた後に、ほとんどの事件が判決を得て、本来の二段階目に行かなければいけないというような運用になってしまったとすれば、一段階目が最高裁に行くまで確定しない、二段階に行かないというシステムに仮になるとすればなおさらですけれども、非常に時間がかかって、手続が重くなって、訴えを起こす方も使いにくいし、また、池田委員が先ほどおっしゃったように、事業者から見ても負担の重い制度になってしまうということで、できるだけ一段階目で和解ができることを確保すべきであろうと思っています。
 この方策として、私は個人的には、以前、この点が議論になったときに申し上げたとおり、オランダ式のオプトアウト和解との接合というのが非常に妙案ではないかと思っております。勿論、このオプトアウト方式の導入は理論的な課題も多々あって、今回はなかなか時間的に難しいということであれば、致し方ありませんけれども、個人的には非常に検討に値する案かと思っておりますので、最終的なとりまとめの段階にこういう考え方もあったということについては紹介いただければありがたいと思っています。
 今回のペーパーで掲げられた方策2つについて、続いて何点か申し上げたいところですが、まず、1点目として、和解というのはまさしく事案に応じて当事者がよいと思った内容で和解ができると、基本的にはそういうことができるということがメリットですので、さまざまな和解の仕方があるだろうと思います。例えば、いわゆる責任原因だけを認めるという和解もあれば、損害額、その算定方法まで含めて和解をすることまで、事案に応じて、また当事者案の事案の見立てに応じていろいろあるんだろうと思います。
 例えば、先ほど申し上げた中で、損害額まで確定をするというような和解であれば、ここの方策の中の(1)のやり方では比較的なじむだろうし、逆に責任原因だけを確定するという和解であれば、むしろ(2)で書かれたような、いわゆる二段階目を利用するような方策の方がなじむということもあるわけで、そういったさまざまな和解のバリエーションがあることを考えると、2の(1)(2)で紹介されている方策について、どちらかに絞るというんではなくて、ダブルトラック的に考えてもいいんではないかというのが1点です。
 2点目としては、一段階目の和解については、どういった和解をするものとしても、基本的には集合的な和解であるべきで、特定の者だけを対象にするような和解はできるだけ避けるべきだろうと思っています。特定の者だけと和解をするというのは、逆に言えば弊害が大きいだろうと思っておりますので、その点は視点として指摘をしておきたいと思います。
 3点目なんですが、方策の(1)(2)について、3と4で問題点が指摘されておって、例えば、時効の問題であるとか、和解でどこまで確認をするのかということもいろいろ問題ございます。確かにこれはそれぞれ非常に難しい問題で、あらかじめ解決ができていればいいんだろうと思いますけれども、いろんな和解の在り方がある以上は、あらゆる問題点を網羅的に事前に予測をして決めておくというのは難しいのかなと思っておりまして、個人的には、制度ができた後の運用の問題というか、プラクティスの確立に委ねざるを得ない部分も多いんではないかと思っています。例として申し上げれば、時効の問題で言えば、ペーパーの25ページにあるような問題があることは確かですけれども、こういった問題があることはわかっているわけですから、むしろ原告の団体などがこういったことを踏まえて、きっちりと和解条項の中で決める和解をするしかないんではないかと思っているところです。
 ちょっと長くなりましたが、以上です。

○伊藤座長 大高委員から3点御指摘いただきましたが、一番基本的なところでは、(1)(2)のそれぞれの考え方が紹介されていますが、どちらかでなければいけないということはないのではないか。適切な場合に、いずれの形の和解を選択するということもあり得るのではないかという、基本的な考え方に関する御意見がございました。
 そういった辺りも踏まえて、他の委員の方、いかがでしょうか。山口委員お願いします。

○山口委員 第一段階の和解の場合に、これは大分前にも申し上げたところなんですが、例えば、事例で言うと、寝具を不当に販売するような、あるいは実際上は商品価値のない寝具をいろいろ偽って1,000人に売りつけたということで問題になるような事案の場合に、適格消費者団体との和解の中で、適格消費者団体にまとめて、例えば、5,000万円とか、1億円を払って、あとは個別の消費者への配分は適格消費者団体に一任するというような和解の仕方もあり得るかもしれません。それはそれでもいいと思います。
 ただ、その場合に問題になるのは、適格消費者団体が熱心に名乗り出る人を集めるか、適当に集めるかで個別の消費者への配分の金額が違ってくるところもあるので、ここは適格消費者団体の運用の適切性に委ねるしかないのかなと思います。
 それから、先ほど大高委員が言ったような形で、寝具について、仮に1口100万円だとした場合に、90万円を返す義務を認めましょうというふうに和解をする。あとの個別の消費者の集め方については事業者に委ねるという和解もあり得ます。また、事業者が顧客名簿を持っていれば、事業者が各購入者に通知して「こういう和解ができました、希望者はどこそこの消費者団体に通知してください」という通知をするという形の和解をする場合もあり得るでしょう。あとは適格消費者団体が何らかの形で広報をするということに委ねる場合もあるでしょう。非常に多様な消費者団体と事業者の和解のパターンが考えられると思います。そこら辺については一定の枠はめをしない形での和解のありようの提示ということでは、この事務局の案でよろしいのではないかと思います。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 私は、先ほど大高委員の言われた1点、2点とも基本的に賛成です。第1点で言われた、必ずしも第一段階、第二段階、どちらかに絞る必要はないんではないかというのは私も同感で、いろんなパターンがあって、結局、第一段階でやるというのは、その段階ですべての対象消費者に出て来させて、それを見極めた上で事業者としては和解をするという選択肢を持ちたいということだと思うんですけれども、それはそれで認めていいんではないかと思いますし、第一段階目で和解をして、ある程度の基準を決めておいて、それを第二段階につなげていって、そこで出てくる消費者と和解をするということでもいいんではないかと思います。
 更に言えば、この事務局のつくられたペーパーで必ずしも趣旨が理解できていないところなんですが、23ページの最初の「1.問題の所在」のところで、何もないと「和解の中で対象消費者の有する権利の取扱いを定めたとしても、各対象消費者との関係においては、その和解条項は法的な効力は生じない。」と書かれています。これは恐らく直ちに法的な効力は生じないという意味なのかと思うんですけれども、民法上は、第三者のためにする契約にはなるんではないかと思いますので、援用する消費者がいれば、その消費者との関係では金幾ら幾らを支払うというのは、少なくとも契約上の効力は持つんではないかと思っています。
 だから、出てきた人たち全員にそういう条件で支払いますよということを被告側が同意するんであれば、第二段階を使わないでも、そういう形で和解をすることもあり得るんだろうと思いますし、山口委員が言われた、総体として幾ら支払うという和解も、これは勿論、直ちには各対象消費者には何らの効力もない和解で、対象消費者は自分の権利を行使しようと思えば、別途幾らでも行使できるという前提ではありますけれども、それに同意してくる消費者がいて、民法上の第三者のためにする契約の要件をどの程度満たすのかということによるんだと思いますけれども、それが和解として効力を持ち得る場合というのもあり得るだろう。ただ、そういう条件で本当に被告側がそれでいいよと言うかどうかという問題だろうと思いますけれども、あり得ない話ではないと思っています。そういう意味で、和解の範囲というのは非常に広範なものがあって、それをできるだけ許容するような形の制度をつくった方が実効的な制度になり得るんではないかと思っております。
 それから、長くなって恐縮ですが、大高委員が言われた第2点も私はそのとおりと思っていまして、結局、和解内容で対象消費者間の利害に反するようなことになることは十分あり得て、アメリカとかでは、恐らくそういう場合にはサブクラスをつくって対応していくことになるんだろうと思います。日本でもそういう形でうまくできればいいのかなと思うんですけれども、それが難しい。あるいはそういう形で適格団体に行為させるというのは、事務局のペーパーでは、基本的には行政の監督とか、相互牽制ということにはなっているんですけれども、一般的な訴訟上の高位規範みたいなものを立てた方がいいんではないか。これは前にも申し上げましたけれども、こういう多数の利害関係人を実質的に代表する立場にあって、しかし、その利害関係が相反するような関係になるような場合においては、その利害関係を代表する者に忠実義務とか、あるいは公平誠実義務とか、いろんな言われ方をしますけれども、基本的には利害が対立する者の一方の利益だけを尊重するような形で行為しないというような義務が実定法上立てられる場合が多いんではないかと思っておりまして、そういう意味では、この場合の適格団体、原告にも、そのような、公平、誠実に行為する義務を手続上の義務として課することが望ましいのではないかと思っております。

○伊藤座長 三木委員お願いします。

○三木浩一座長代理 私は今、山本委員がおっしゃったことに、細かい点は別にして、基本的には違和感ないというか、受け止められるわけですが、果たして事務局が同じ理解でこのペーパーをつくっているのかどうか、あるいは、ここにいる委員の皆様全員が同じような理解でこの問題をとらえているのかどうかがよくわからないところがあります。
 山本委員がおっしゃったように、私も、後から述べる点を留保しておけば、一段階目、二段階目、どちらで和解ができてもいいと思いますし、また、一段階目で和解をするときは、ほとんどの消費者というか、潜在的な原告足り得る者を参加させてやるか、あるいは、これはちょっと留保がありますけれども、第三者のためにする契約的な形で先に結んでおいて、後からそれを承認させるかという2種類しかないと思います。そこで山本委員がおっしゃっていることの前提は、いずれにしても、第二段階での和解は、勿論、和解の対象は、個別消費者が持っている個別の損害賠償請求権が和解の対象の権利になりますし、一段階目であっても、個別の権利者が持っている権利が和解の対象になるんだということは前提の議論だと思います。
 ただ、この調査会では、一段階目の訴訟の対象が固有権というような議論があって、それはまだ消えてはいないんだろうと思います。私は固有権というのはいまだによくわからないし、そういう構成が取れるのかどうか自体には疑問があり、仮に取れるとしても、その妥当性には疑問がありますが、仮に固有権だとした場合に、一段階目の和解の対象を、固有権を和解するんだ、つまり、原告が互譲で譲り合うのは固有権であるというふうに考えておられるんだとしたら、私はそこはよくわからないわけです。そもそもそんな権利が認められるかどうかという問題もありますし、よしんば認められたとしても、和解は対象権利について処分可能性が必要なわけです。処分固有権というのが何だかよくわかりませんけれども、それが社会的な利益を委ねられたものだとすると、消費者団体の個人の権利ではないですから、処分可能性がそもそもあるのかどうかもよくわからない。そういうもので和解ができるというのは考えにくいわけです。
 そうすると、山本委員のおっしゃったことを私が適切に理解していれば、一段階目の和解といえども、その場ですべての権利者を出させた上で、その個別権利を束ねて和解をするか、もしくは事後的に、後から追完する形で、それを第三者のためにする契約とおっしゃったんだと思いますけれども、個別権利の和解をするか、いずれにしても個別権利の和解になるとしか私には考えられない。
 そうだとした場合に、仮に固有権構成というのが取れるとした場合であっても、その考え方だと、訴訟物は固有権だけれども、和解の対象は訴訟物ではない権利になるわけです。固有権と個別の権利が違うとすればですね。それは訴訟上の和解の論理としては余り見たことがないわけです。勿論、外から持ってきた権利をつけ加えて和解をするという、併合和解だとか、準併合和解だとかいうのはありますけれども、訴訟物を全く別にして外の権利だけで和解をするというのがちょっと考えにくいということになると、この問題とは別な話にも関わってきますが、やはり一段階目の手続というのは授権構成にならざるを得ないんではないかという気はいたします。
 仮に授権構成だとした場合には、このペーパーに書いているような議論、それから、先ほど山本委員がおっしゃったような議論は成り立つんだろうと思います。すなわち、一段階目で、授権の人数要件がどうかにもよりますけれども、例えば、10人なら10人とした場合には、とりあえずその10人の権利が一段階目の和解の対象になる。あるいは第三者のためにする契約の論理を使えれば、10人にプラスして、その背後にいる何百人かの権利も対象になる。勿論、その後で第三者のためにする契約を承認しなければ、そのものに効力は及ばないことになる。
 第三者のためにする契約の論理が使えるかどうかという問題と、使えても、それが妥当かどうかという問題については、私は若干よくわからない点があります。第三者のためにする契約をどこまでこの問題に援用できる、その考え方を使えるかということなんだと思いますけれども、法的にどうかは後で窪田委員なりに説明していただいた方がいいと思いますけれども、私がかつて習った典型的な第三者のためにする契約は、新たに第三者のための権利関係をつくって、それを第三者が後で援用する。そのときに、利益を与えることが多いでしょうけれども、利益と、対価として一定の義務を負わせるということはあると思いますが、今回の場合は、新たにつくるんではなくて、既存の権利を処分するわけです。それも第三者のためにする契約であるいはできるのかもしれませんけれども、仮にできるとしても、それが望ましいのかどうか。
 繰り返しますけれども、既存の権利の処分というのを授権なくやるという形での、後で授権を追完すればいいではないかという論理が適切なのかどうかという気はいたします。したがって、私自身は、3の対象消費者を参加させる方策のところでも議論されていますけれども、基本的には一段階目でやるときでも、和解をやるんだということで、授権をまだしていない他の消費者も呼びかけて広く参加させて、参加というか、授権をさせて和解をさせるというのが本道というか、制度的にはそういう制度にすべきだというふうに当面考えております。

○伊藤座長 今の三木委員の御発言との関係で、事務局が想定している一段階目における和解も、互譲、つまり、互いに譲り合うという意味では、個々の権利者の権利に関して一定額払うとか、あるいはそれ以上は債務が存在しないとかいう内容だと思います。ただ、それとあわせて第一段階目の審判の対象であります行為の違法性等々について、確認条項的な和解条項をつくるということは、それもまたあり得ると思いますが、譲り合って、これだけの支払いはしますよという部分は、個々の消費者の権利義務に関することで、そのために入ってきてもらうという考え方だと思いますが、その点は、加納さん、どうですか。

○加納企画官 基本的には、今、座長におっしゃっていただいたとおりでありまして、適格団体がどういう地位で和解をしているのかというのは非常に難しいところだと思いますけれども、一応、こういう共通争点に関する訴権というか、特別の地位を付与して、それで事業者と訴訟追行している中で、それを和解と言うかどうか、何らかの合意をするということはあると思っていますので、その和解をいかに活用するかと。三木先生がおっしゃるとおり、対象消費者との関係では何もない和解と、その段階では言わざるを得ないと思いますので、あとは対象消費者の授権というふうにするか、あるいは参加とするかという形で、何らかの対象消費者の権利の処分につながるような方策をする必要があるんではないかという問題意識であります。

○伊藤座長 黒沼委員お願いします。

○黒沼委員 この制度は、単独では訴訟提起できないような零細な被害者を救済する制度だと思います。そうすると、対象消費者ができるだけ和解に参加しやすい方策を選ぶべきではないかと考えます。その点から言うと、第二段階目の手続を利用する場合には、通知・公告の制度的な保障があり、より広く呼びかけることができるので、その点から、第二段階の手続を利用する方策が適当であると思います。
 多様な和解ができるというメリットが第一段階の手続における和解を認めるやり方にあるという話を伺いました。例えば、山口委員が言われたような、総額で和解をすることを認めるとなると、これは第二段階を使うやり方ではできないと私は思うんです。第一段階で参加してきた消費者との間で総額で和解してしまうと、今言ったような、和解に事実上参加できなかった消費者にとっては大きなデメリットになると思いますので、それはむしろ認めるべきではないと思います。そして、そういうことを認めないという観点からも、二段階目の手続を必ず利用させるのがいいと考えます。
 それから、第一段階目に対象消費者を参加させて和解をすることになりますと、これはもはや判決効の拡張ではなくて、結局、通常の訴訟法と同じではないかと思うのです。ただ訴えの提起のときに原告適格が限定されているというだけの違いになります。判決効を拡張しないのであれば、再訴も禁止されないはずなので、逆に再訴を禁止するならば、第一段階目で終わってしまうような和解は理論的にも認められないのではないかと思います。

○伊藤座長 いかがでしょうか。中村委員お願いします。

○中村委員 一言だけ。事業者の側としても、第一段階で和解をして、第二段階を使うという選択肢はやはりあった方がいいと考えております。ですから、第一段階、第二段階という通常の仕組みの中で、和解の場合に第二段階の申立てというか、どういうような形で利用するかを裁判官のところで審査していただいて、それが利用できるような仕組みという形でしていただければと思います。

○伊藤座長 当該事案に関わる消費者にできる限り広い範囲で参加してもらって、消費者の側にとっても、事業者の側にとっても、原告である適格消費者団体にとっても、紛争の抜本的かつ一回的解決を和解によって実現する必要があり、そのための制度の仕組みを考えるという点では認識が一致しているものと思います。そのことを前提にして、この場での多くの意見は、ここで言う一段階目の手続に消費者が参加する、また二段階目の手続に移行して、そこで消費者が和解に参加するという2つの選択肢に関して、それは必ずしもどちらかでなければいけないのではないか、事案の性質に応じて、いずれでも選べるという意味での選択肢でよろしいんではないかという意見が比較的多数の方の御意見であったように思います。しかし、黒沼委員の御発言にもありましたように、消費者のできる限り多くの参加を制度的に確保するという意味では、二段階目の手続を経て、そこで和解をする方がいいのではないかという有力な御意見もございましたので、ここは今日の御意見を踏まえて、次回以降のとりまとめを行いたいと思います。
 予定の時間を過ぎて、12時40分になろうかと思いますが、他に御意見ございますでしょうか。小林さん、お願いします。

○小林参事官 第一段階目で和解ができるような枠組みを作り、和解の成立をできるだけ促進していこうという方向性については私も全く同じ考えでございます。ただ、和解が調うための事実上の条件というものはあるはずであり、この点を確認させていただきたいと思います。
 まず、被告となる事業者がこれからも事業を継続する意欲を持っていて、かつ訴訟が長期間継続することによって信用が毀損することを避けたいと考えるような全うな会社であることが条件になろうかと思います。また、係争利益や対象消費者の数がある程度予測可能な事件であること、これも大事であろうかと思います。さらに、第一段目の訴訟というのは、共通争点を確認することを目的とした、やや特別な訴訟ということで制度設計されており、おそらく裁判所の審判の対象も共通争点に絞られますので、通常の和解のように裁判所が金額の調整に手間をかけるということは余り考えられていないのではないかと思います。そうしますと、係争利益や対象消費者の数が予測可能ということも関わってくるのではないか。最後に、通知や公告が適切になされ得ることも挙げられます。
 以上でございます。

○伊藤座長 おっしゃるとおりかと思います。
 窪田委員お願いします。

○窪田委員 申し訳ございません。第三者のためにする契約の話が出ておりましたので、1点だけ確認させていただけたらと思います。民法学者として正しいご説明ができるか、あまり自信はありませんが、第三者のためにする契約という法律構成は、山本委員から伺ったとき、なるほど、そういうアプローチもあるかと思ったのですが、実質的に考えると、この場合は、自らのものを処分しながら、その中で通常想定されている反対給付を別の人に与えるといった、一般的に第三者のためにする契約で想定されているイメージではなくて、むしろ、まさしく第三者のものについて交渉しているという状況だろうと思います。その点では、代理人が代理権限持っていない、つまり、第一段階では抽象的な共通争点についてのみの、いわば潜在的授権があるに過ぎないのに、それ以上のことをやっているというタイプだろうと思います。その点では、消費者の意思表示も、第三者のためにする契約における受益の意思表示というよりは、むしろ無権代理における追認としての性格を有するものなのではないかという気がいたします。もちろん、法的には無権代理としての性格が認められるから、そのようなものはだめなのだという趣旨ではなく、むしろ、そうした性質をふまえたうえで、第一段階で和解ができるとしても、当然にできるわけではなくて、やはり一定の手当てをしておく必要があるのではないのかなというのが、ちょっと抽象的ですけれども、私の受けた印象でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の専門調査会はこの辺りで終了させていただきたいと思います。

≪3.閉会≫

○伊藤座長 事務局より次回の日程についての御連絡をお願いします。

○原事務局長 長時間にわたり、どうもありがとうございました。
 次回、第12回は、7月7日木曜日の9時30分からを予定しております。議題は論点整理3ということで、二段階目の手続関係を予定しております。会場はこちらです。
 今日は長時間、どうもありがとうございました。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 それでは、これをもって閉会にさせていただきます。また次回、どうぞよろしくお願いいたします。

(以上)