第8回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2011年3月3日(木)14:00~16:46

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、沖野委員、
 窪田委員、黒沼委員、桑原委員、中村委員、三木(澄)委員、山本委員
【担当委員】
 下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  坂本参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.訴訟手続に係る論点について5 (和解の規律その他の訴訟手続に関する論点等)
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:53KB)
【資料1】 本日検討する論点について(消費者庁提出資料)(PDF形式:384KB)
【資料2】 和解の規律に関する諸外国の制度(消費者庁提出資料) (参考資料1) 前回(第7回)までの専門調査会で出された意見等の整理(消費者庁提出資料)(PDF形式:232KB)
(参考資料2) 集団的消費者被害救済制度専門調査会 今後のスケジュールについて(PDF形式:65KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間がまいりましたので始めさせていただきたいと思います。
 本日は委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。ただいまから第8回「集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。
 なお、本日は所用により消費者委員会担当委員の池田委員が御欠席です。また、野々山理事長は少し遅れての御出席と聞いております。山本委員は少し遅れておられるかと思います。
 それでは、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第と書かれているものの裏のページに、配付資料一覧を掲載しておりますけれども、消費者庁提出の資料といたしまして、資料1が「本日検討する論点について」です。
 資料2-1は和解の規律に関する諸外国の制度についての紹介をした資料です。
 参考資料1「前回(第7回)までの専門調査会で出された意見の整理」。
 参考資料2「集団的消費者被害救済制度専門調査会 今後のスケジュールについて」。
 議事の途中で不足のものがございましたら、事務局まで申し出ていただけたらと思います。
 では、伊藤座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

≪2.訴訟手続に係る論点について5 (和解の規律その他の訴訟手続に関する論点等)≫

○伊藤座長 早速ですが、議事に入りたいと思います。本日は前回第7回の議論に引き続きまして、訴訟手続に係る論点マル5といたしまして、和解の規律その他の訴訟手続に関する論点の検討を行いたいと存じます。まず、資料1「本日検討する論点について」の「1.和解の規律」を取り上げたいと存じます。
 和解につきましては、これまでの議論におきましても、いろいろな角度からの御意見が出されていたかと思いますが、今回はそれを踏まえて、和解に関わる問題全体を検討することにしたいと思います。最初に加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 それでは、資料1の1ページでございます。「(1)一段階目の手続における和解について」としておりまして、まずここから御説明したいと思います。
 マル1基本的な考え方に書かせていただいておりますのは、A案であれB案であれ、一段階目の手続で事業者の責任原因や違法性などに関しある程度の審理が行われ、裁判所や当事者間で一定の心証が形成される、あるいは共通認識が形成されるということはあり得ると思われますけれども、こうした場合に紛争の早期柔軟な解決を図るという観点からは、手続追行主体と事業者とが一段階目の手続で和解することが、紛争の早期解決につながることはあり得ると思いますので、こうした和解を制度的に否定する必要はないのではないかと考えられるところであります。
 では、どういう和解が想定されるのか。それらの和解がどういう形で実効性を要するのかという点を検討する必要があると思われるところでありまして、それがマル2です。
 (i)でどういう和解が想定されるかということにつきまして、学納金返還請求の事例を基に検討しますと、次のとおり考えられるのではないかと思います。
 まず、被告は、当該不返還特約が消費者契約法9条1号により無効であることを確認する。この9条1条により無効ということの意味としましては、厳密に言いますと当該違約金ないし損害賠償の予定条項の損害額が、平均的損害額を超えることを指すのだと思いますが、ここは無効であることを確認するという形で書かせていただいております。責任原因について、このような形で判断をする。
 2つ目のポツですけれども、更に当該不返還特約が無効であることを確認するとともに、一定の者、最高裁の判例の枠組みに従いますと3月31日までに入学を辞退した者となろうかと思いますが、そういう者については一定の金銭の返還をいたします。その一定の金銭といいますのも、最高裁の判例の枠組みでいきますと、入学金を除く授業料などの相当額となろうかと思いますけれども、それを返還する。その返還の額が全額返還するというのが2つ目のポツで書いてあるところでありまして、3つ目のポツは2分の1の額を返還する。こういうこともあり得るのではないかと思います。
 更にその次のところですが、当該不返還特約が有効か無効かということは置いておいて、お金を返しますという和解をする。これも和解ですのであり得るのではないかと思うわけですが、その場合に授業料等について全額を返還するというものです。
 下から2つ目のポツは、授業料等のうちの2分の1の返還という形で、これは金額もいろいろバリエーションが出てくるのではないかと思います。
 一番下のポツですけれども、場合によっては、対象消費者が誰かというのが特定されているということであれば、その対象消費者に対して具体的に幾らを返還しますということも、ないわけではないと思いますので、書いてみました。
 2ページ、これらの和解につきましてどういう観点で考えたかということを補足的に申し上げますと、一段階目の審理の対象である共通争点について何らかの合意をするかどうか。先ほどの例で言いますと不返還特約が無効かどうかについて、共通争点についての合意として含んでいる。そういうこともあれば、むしろ個別的な権利についてお金を幾ら返すという形で合意する。あるいはそれをしない場合もあるという形で、さまざまなバリエーションがあり得ると思います。
 ここで参考1としまして5ページですけれども、現行の消費者団体訴訟制度における和解としてどのようなものがあるかということについて、幾つかお付けしております。
 5ページの消費者支援機構関西の例でありますが、英会話学校を営む事業者との間で当該勧誘は消費者契約法上の不当な勧誘であるということの差止めを求めたという事案において、裁判所の和解が成立しましたというものでありまして、例えば和解条項の第2項をごらんいただきますと、マル1から幾つかの不当な勧誘行為が列挙されておりまして、そういう勧誘をしない、マル1であれば消費者契約法上の退去妨害ないし監禁ということについて、そういう勧誘行為をしないというような和解がされている。
 6ページをごらんいただきますと3項に下線が引っ張ってありますが、そういった消費者契約法の不当な勧誘行為をした場合に、過去の事例になろうと思いますけれども、当該消費者からの取消しの要求に応じるとともに、受け取った金員がある場合にはそれを返金しますという和解をする。これは対象消費者の個別の権利について踏み込んだ内容になっていると思います。
 関連しまして第8項では、その和解についてホームページなどに掲載することなどで、消費者が知り得る機会を確保するということまで入っているというものもございます。
 2つ目の消費者機構日本の和解につきましては、専門学校の案件ですけれども、解約権を制限する契約条項について差止めがされたという事案でありまして、裁判外の和解でありますけれども、7ページの3項にいきますと、一定の修正した改定受講契約を遡及して準用するでありますとか、4項の四角で囲んである(1)ですが、一定の金員を返還するというものでありますとか、8ページ(4)に一定の掲示をするという内容が和解に含まれております。
 ひょうご消費者ネットの和解、これも専門学校、予備校を相手方とするもので不返還特約に関するものでありますが、これにつきまして例えば8~9ページにかけまして第5項ですけれども、さかのぼって適用されることを確認するものであるとか、第6項のところですが、その和解内容につきまして消費者のEメールアドレスがわかっているんだったら、その消費者に対してEメールで通知するという内容のものが含まれております。これは御参考ということですけれども、こういうものが今の消費者団体訴訟制度においては和解とされているということの御紹介であります。
 本文の2ページにお戻りいただきまして、A案における一段階目の和解ということでありますが、(ii)ですけれども、ここに一般論として書かせていただいたのは、和解につきましては調書に記載されますと確定判決と同一の効力を有するとともに、訴訟が当然に終了する、いわゆる訴訟終了効というものが生じることになると思われますが、特にA案ですけれども、まだ一段階目では対象消費者から授権等を受けていないとなっておりますので、当該和解自体、直ちに対象消費者に効力が及ぶわけではないと思われます。そうしますと、A案の和解といいますのは別途対象消費者が事業者との間で個別に合意するということで、実効性を持ってくるのではないかと考えられるところでありまして、こうした個別の合意を多数消費者と迅速効率的に実現することが、重要になってくるのではないかと思われます。
 以上の点を踏まえというところで書いておりますが、ではどうするのかということでありまして、ここの段落では大きく2つ内容を含んでおりますけれども、1つは一段階目の手続で和解が成立したとしますと、これが実効的な和解内容となっている限り、この制度の枠組みとは別に、当該和解で定められた枠組みの中で対象消費者に対する支払いをするなど、自主的な紛争解決に委ねてしまう。この制度とは別に、制度の外で和解の合意の枠組みの中でやっていただくというのも、1つ考え方としてはあるのではないかと思います。
 もう一つの考え方ですけれども、できる限り合意による紛争解決を促していくんだということで考えるならば、一段階目の手続における判決が確定した場合と同様に、例えば対象消費者に通知・公告するなどして、更に二段階目の手続を利用することもできるようにすることも考えられるところであります。ただ、この考え方をとりました場合には、やはり二段階目の手続を利用するためにどういう和解内容であるべきか。和解も非常に抽象的な内容の和解などいろいろバリエーションがあり得ますので、二段階目の手続にスムーズに移行できるのかという点につきましては、慎重に検討する必要があると思われるところでありまして、そのほかにも訴訟終了効が生じると先ほど申し上げましたけれども、そうした場合に二段階目の手続の通常訴訟に最終的には異議が出た場合、移行することになると考えておりますので、理論構成についても論点となってくると思います。
 こうした点についてどのように考えるかということについて、事務局としてこれが一番いいというものを、この段階で持ち合わせているわけではございませんが、御意見をちょうだいできればと思っております。
 マル3和解の規律でありますけれども、A案とB案と2つに分けて記載しておりますが、まずA案につきましては、先ほど申し上げたとおり、直ちに和解の効力が対象消費者に及ぶわけではないということではありますけれども、例えば再訴制限のような規定を設けるとしますと、ワンチャンスを利用したことになりますので、そのワンチャンスは大事に使ってくださいということになろうかと思いますから、一定の規律を設けることも考えられると思います。
 これに関し、現行の消費者団体訴訟制度におきましては、適格消費者団体による差止請求権の行使の結果は、それ自体消費者に効力が及ぶわけではないが、不適正な和解を防止するという観点から、和解をしようとする場合の事前の通知・報告あるいは不適切な和解をしたことによる認定取消しなど、一定の規律が設けられております。こういった規律を参考にして、今回の制度においても規律を設けることが考えられるのではないかと思います。
 (ii)のB案につきましては、対象消費者によるオプト・アウトがない限り、原則として効力が及ぶというふうになろうかと思われますので、そうしますと不適切な和解の行使という記述が、非常に重要になってくるのではないかと思います。
 諸外国の制度としまして資料2としてお付けいたしました。詳細は説明を割愛させていただきたいと思いますけれども、資料2-1をざっとごらんいただきますと、アメリカのクラスアクションからカナダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、ブラジルなど、諸外国の和解の規律をまとめてみたものです。
 アメリカのクラスアクションにおきましては、裁判所による承認が必要であるとか、承認が必要としますと、一体どういう基準で承認するんですかという話になるわけでありまして、その要否の基準ということで、抽象的には当該和解内容が公平で合理的で適切だということでありまして、考慮要素としてマル1から幾つか列挙しておりますけれども、こういうものがあるということのようであります。
 また、当然、オプト・アウトの機会を与えなければいけませんので、その和解内容の告知といったこともあるということでございます。
 御参考までに、例えばノルウェーはオプト・アウトとオプト・インの併用型と言われておりますけれども、オプト・アウトについては裁判所の認可を必要とするが、オプト・インの場合は不要であるとされているようであります。
 デンマークはオプト・アウトとオプト・インの併用型と言われておりますけれども、一番下にその他と書きましたが、オプト・イン、オプト・アウト両方を通じて認可が必要という制度のようです。
 スウェーデンの制度ですが、これはオプト・イン型と言われておりますけれども、これは裁判所の判決によって確証と書いておりますが、そういう手続が必要になります。
 ブラジルの制度ですが、二段階型と言われておりまして、この二段階目の和解はどうなっているんですかという話ですけれども、その他の欄の上の○ですが、同種個別的権利または利益に基づく訴訟が今回のA案の一段階目と似てくると思いますけれども、個別の消費者被害者を当該和解に拘束しないものとする限りにおいて、賠償額を合意することができ、個別の消費者は合意された賠償額に不満があれば、個別訴訟により請求を行うことが可能とされる。効力は及ばずに、別途やってくださいとなっているということであろうかと思います。
 資料2-2に参考の制度の和訳をお付けしておりますので、御参照いただければと思います。
 本文に戻りまして3ページ(ii)のB案につきましては、こういった諸外国の規律を参考にいたしますと、当該和解内容に関する事前の通知・公告であるとか、裁判所による許可などを必要とするということが考えられるのではないかと思われますので、書かせていただきました。
 (1)について事務局からは以上でございます。

○伊藤座長 A案を前提にするのかB案を前提として考えるのかによっても違ってくるところかとは思いますが、そもそも第一段階の手続において和解による解決を検討すべき合理的理由があるのかという問題が、まず出発点としてありますし、仮にそういう必要が認められるという判断に立った場合でも、二段階目の手続の関係をどう考えるのか。それとの関係で和解の態様はいかにあるべきかとか、更に具体的態様を考えたときに、その適切さを確保するために裁判所の認可等々の判断作業をどういう形で介在させるのか、いろんな問題があろうかと思います。
 ただいま種々の角度から説明がありました問題いずれに関してでも御意見等をお願いできればと存じます。

○三木浩一座長代理 これまで和解についてさまざまな御発言や議論がありましたけれども、それらは主として二段階目の和解を想定してのお話であったかと思います。一段階目の和解については、それを明確に意識した議論というのはされてこなかったように思います。その意味では初めて扱うという側面が強いかと思います。
 私が冒頭に発言をお願いした理由ですが、特に法律家の方と非法律家の方がここにはいらっしゃるわけですけれども、法律の世界で考えますと和解という概念というか、和解というものは多義的な概念でありまして、あるいは多義的な要素がありまして、どういう意味で和解ということを議論するのか、発言するのかによって中身が違ってくるところがありますので、少し確認的に申し上げたいということであります。
 裁判の中で和解が行われることは通常の訴訟でもよくあるんですけれども、そこでも法律家の弁護士さんなどでも多義的に和解という言葉を使っています。例えば訴訟外でというか、民法的な意味で和解がまとまって訴えを取り下げることがあります。そういうときも和解が成立したとか、和解をするという言い方をしますが、そこで言う和解というのは訴訟上の和解ではなくて、実体法上の和解であります。訴訟法上は和解で訴訟が終わるのではなくて、訴えの取り下げで終わる。あるいは請求の放棄や認諾で終わるという場合も和解と言われますし、今日の議論でも和解ということで出てくるかもしれませんが、それは訴訟上の和解とはまた別のものであります。
 訴訟上の和解というのは、そうした実体法上の和解が成立することを前提に、更に訴訟法上の効果が生じるという意味で、特殊な訴訟法上に位置づけられた和解であることになります。民事訴訟法上は確定判決と同じような効果が調書記載によって生じることになっております。
 一段階目の和解ですが、A2案とB案ではさほど難しい問題はないわけですけれども、A1案についてはややよくわからないところがあります。A1案の場合は被害者のような実体法上の権利を持っている者が原告になるわけではないわけです。例えば適格消費者団体が原告になるという場合、適格消費者団体は損害賠償請求権なるものを持っていないわけです。ちなみに、適格消費者団体が違法性とか責任の確認をするとしましても、これ自体よく詰めて考えると法律的にはわからないところがあるんですけれども、これを1つの確認訴訟と考えた場合でも、そこには実体法上の権利というものはない。先ほど資料に挙がっていた既存の適格消費者団体による差止訴訟の場合は、法律によって創設的に差止請求権という実体法上の権利が付与されております。その権利の処分をめぐって実体法上の和解が行われ、更に訴訟上の和解も行われ得ることになります。
 それに対して今、議論しております二段階訴訟のA1案の一段階目の原告は、そこで言う処分すべき権利というものを持っていないように思われます。仮にそうだとすると、それは訴訟上の和解として成立するのかという問題は勿論ありますし、それ以前に実体法上の和解として成立するのかという問題も考えなければいけない。つまり、何かしら話し合ってこうしましょうと、企業の方でもそうしましょうという話をすることはできるんですけれども、それが法律的に訴訟法上、実体法上、何の意味を持っているのか。勿論、それをやることが無意味であるということではなくて、それによって企業の側が一定の賠償などを任意にしましょうということをすれば、それ自体は望ましいことかもしれませんけれども、それが法律上、約束を破って企業がしなかった場合に強制できるような性格のものなのかどうかという点は、考えなければいけないわけであります。
 そう申しますのは、和解というのは細かく議論をすれば別ですけれども、ざっくり申し上げれば権利者と義務者の間でお互いに譲り合って、権利者は権利を少し譲り、義務者は義務を少し譲って行うのが和解となります。勿論、互譲というお互いに譲るという要件をどう要求するのかという細かい議論はありますが、典型的にはそういうことであります。
 この適格消費者団体が一段階目の原告になっている場合に、適格消費者団体には譲るべき権利や義務はないわけですので、それは実体法上の和解なのかどうかというのは、繰り返しになりますけれども、考えなければいけない。そもそもいわゆる法律的な意味で和解ができるのかという問題が前提にあることを、まず確認しておきたいと思います。その上で当然のことながら、そこにすら問題があるわけですから、しかも消費者から授権を受けていないので、明らかなことは2ページに書いてありますように、その和解というものが法律的にどのようなものであれ、あるいは法律的に全く意味のないものであれば勿論ですが、それが一般消費者に法的な意味で拘束力を及ぼさないことは、これは恐らく争いがないところだと思います。
 そうした意味での和解についての規律をどうするかというのは、訴訟法上の規律ということはまず考えられないので、規律を仮に設けるとすれば、それは適格消費者団体が訴権を与えられたことに伴う行為規範、行為義務のようなものとして何か規律を設けるか。つまり例え法的に効力がなくても、こういった訴訟を消費者から授権を受けないという意味で自ら勝手に起こして、かつ、消費者にとって事実上不利な内容の和解などをされれば、それが法的に効力を消費者に及ぼさないとしても、実質的な意味で迷惑を与えることはあり得るわけです。そのことを不適当な形で行うのは許さないという意味での行為規範を設けるかという観点で、議論が成り立つのかなと思っております。
 長くなりましたけれども、以上です。

○伊藤座長 御指摘のように第一段階手続としてのA1案を前提にしたときに、そこでの和解としては一体何を想定し得るのかという辺りに関しては、いろいろな疑問といいますか、検討しなければならない問題があることは皆さんの共通の認識かと思いますが、どうぞご自由に御意見をお願いします。

○大高委員 いろいろ理論的な問題はあるのですけれども、まず総論的な話として、一段階目の審理において当事者間で何らかの和解の機運が高まった場合において、適切な和解がなし得るようにするという方向性自体については、私は賛同したいと思っております。勿論、不適切な和解がなされるおそれというのは一般的にあるわけですけれども、そういったものはこのペーパーにもありますように、和解の規律の形で制度的に担保していくことで対応すべきでありまして、和解をなすこと自体を否定すべきではないんだろうとは思っています。
 どんな内容の和解が可能か、または望ましいかという点については、勿論理論的な問題もありますが、それとは別に具体的にどういう和解内容がいいのかについては、まさしく事案ごと、具体的には事案の内容や、関与している当事者が望む解決内容によって変わってくるものですので、明らかに不適切なものについては排除し得るような手当は必要であろうと思いますが、A案をとるにせよB案をとるにせよ、具体的な被害回復の方法も含めまして、基本的には当事者の協議に委ねて、運用の中で適切かつ実効的な実務を確立していくしかないのかなと思うところではあります。
 ただ、今、三木座長代理からもありましたように、特にA1案を前提とする場合はペーパーにもありますように、基本的には第一段階目の訴訟当事者になっていない対象消費者の関係で、和解が何ら拘束力も生じないことについては、理論的には自然な考え方だろうと私も思います。その関係で特にA案をとる場合においては、その和解の実効性をどう確保していくのかが重要な課題であろうと思います。
 ペーパーにありますように、一段階目の判決を経ずに二段階目を使うという考え方もありますけれども、括弧内に既に書かれていますように理論構成の問題であるとか、そもそもA案を前提にする場合、和解に拘束力があるのかどうかということから問題がありますので、実効性のある仕組みの構築には更に工夫が必要だと思います。この点については私もまだいい知恵があるわけではありませんので、しばらく考えてみたいとは思います。
 こういった問題点を踏まえると、特に一段階目の和解で顕著に出てきますけれども、和解に法的な拘束力を認めることが理論上比較的しやすい、B案のようなオプト・アウト方式というのも、そういう意味では1つの、和解という場面においては、利点があると言えるのかなと思っています。勿論こういうオプト・アウト的な仕組みにする場合、当然拘束力とか失権効が絡みますので、手続保障の問題であるとか、不当な和解がなされた場合には対象消費者の権利益に直接影響するという問題もあるわけですが、一方で例えば被告の事業者からすれば、オプト・アウト的に和解ができれば、その和解によってリスクの上限を確定していくことが可能になりますので、事案によっては被告側の事業者にも一定のメリットがあると思いまして、和解を促進するという観点からはオプト・アウト的な考え方に非常に魅力を感じるところです。
 この場合、B案のように最初からオプト・アウトという形で訴訟を仕組むという考え方も勿論あると思いますが、A案を前提としても例えば今回御紹介がありましたオランダの集合的和解制度のように、オプト・アウト的な和解を選択的に可能とするような制度をA案に接合していって、事案によってはオプト・アウト的な和解は可能とすることも選択肢としてはあるかなと思っています。当然オプト・アウトですから通知・公告等の権利保護手続が必要になってきて、その費用負担などが運用上問題になるわけですけれども、和解が成立するような場面ですから、当然被告側の事業者も和解を望むという状況ですので、恐らくそういった場合というのは被告側の事業者の方が通知・公告の費用負担をしても、和解をしたいという場面になってくると思いますので、勿論すべてのケースがこういった集合的和解に乗ってくるとは思いませんが、一定ワークするシステムはあり得るのかなというのを、まだ完全にかたまった考えではありませんけれども、印象としては持っております。
 長くなりますが、不適切な和解を可及的に防止するための規律については、基本的にはペーパーにあるような考え方でいいのではないかとは思っております。ただ、B案であるとかA案を前提として、かつ、今、申し上げたようなオプト・アウト的な和解を仕組む場合は、当然その対象消費者の権利保障の観点がまた出てきますので、裁判所による許可等の公権的関与というのも、勿論検討されてよいだろうと思っています。ただ、ここで言う裁判所の公権的関与というのは、裁判所が和解内容の妥当性を積極的に確保していくというよりは、むしろ不適切な和解を防止するという、今の破産管財実務における裁判所の管財人の行為に対する裁判所の許可のような、ネガティブチェック的なものになるのではないかというイメージは持っております。
 長くなりましたが、以上です。

○伊藤座長 一段階目手続での和解を考えるについても、それが紛争解決にとっての実効性を持ったものでないと、原告側にせよ被告側にせよ、和解を積極的に成立させようという意欲をそぐことになるかと思いますので、その点は誠にごもっともでして、大高委員からは、オプト・アウトという形をとるかどうかは別にしても、何らかの形で個別的な請求権を内容に取り込むような形での和解を考えるべきではないかという御発言として理解いたしました。
 では、中村委員お願いします。

○中村委員 今の大高委員の御発言とも共通する部分があるかと思いますけれども、やはり事業者、被告側にとって和解をするメリットという観点からは、確認的判決という状態の中で和解をしたいという判断には、なかなか至らないのではないかと感じております。
 和解をするということは、すべての案件を早急に解決したい、ある程度の事件の見通しができてきた中で、自分たちの対応可能な範囲で何らかの解決をすべての内容についてやりたいという要請が、第一段階の手続をしている間に出てくることはあり得ると考えております。
 ということからいたしますと、どういうふうに仕組むかにつきましてはまだよくはわからないんですけれども、今、大高委員がおっしゃったように、何らかの形で具体的な消費者の方を取り込んだ形で和解をするというプロセスも含めた内容での和解を、考えることができるといいのではないのかなと考えます。

○伊藤座長 山口委員、お願いします。

○山口委員 具体事例の中で少し考えてみたんですが、例えばある学習塾で標榜したスタッフもそろっていないし、授業内容も非常にいい加減だということで、100人ぐらいの生徒さんのうち3人ぐらいが適格消費者団体に駆け込んで、適格消費者団体が原告になって学習塾に対してお金を返せというような、クラス性のある訴訟を起こしたとします。その中で3種類の和解が考えられると思うんです。これは2ページの真ん中辺りに書かれたように、不満のある生徒さんについては名乗り出ていただければ半分返しますとか、あるいは授業回数に応じて一定の計算基準をつくって返しますということで、真ん中辺りの「当該和解で定められた枠組みの中で対象消費者に対する支払をするなど自主的な解決に委ねる」という和解が1つ考えられると思います。
 2番目には次のパラグラフにありますように、一定の約束はするけれども、損害額で幾ら返すかについては生徒さんによって個別性があるだろうということで、次の手続に委ねましょうということで和解する場合もあると思うんです。
 3番目の解決方法で、私は一番現実性があるのではないかと思うのは、適格消費者団体に1,000万円払う。あとは適格消費者団体の方でクレームのある生徒さんに分けてくれという和解があり得るのではないか。私はそのような和解があっていいのではないかと思うんですが、先ほどの三木先生のお話ではそこら辺の意味がよくわからなかったんですけれども、要するに実体法上の意味を持つものかどうか。
 つまり例えば第一段階で1,000万円払いますという和解をした場合に、その和解を履行しない場合、適格消費者団体は事業者に対して強制執行ができるのか。恐らく通常で考えればできるだろうと思いますけれども、先ほど3つの類型が考えられるという1番目、2番目については、その後、具体性のある和解ができなければ強制執行の余地はないと思うんですが、3番目の具体的に金額を確定して、あとは適格消費者の配分に委ねますという和解をした場合、そもそもそういう和解が認められるかどうかという議論があり得ると思うんですけれども、私はあってもいいのではないか。その場合に裁判所は1,000万円という金額が妥当なのかどうかというのは、恐らく判断しようがなくなると思います。
 これはケース・バイ・ケースなんですが、適格消費者団体が負けそうだ、あるいはそれほどクレームが広がっていない。ではもういいや、1,000万円、極端な場合500万円もらっても和解をしようということもあり得るかもしれないし、学習塾の方もいつまでも訴訟がつながっていれば評判上まずいから、さっさとお金を払って解決するなら解決してしまおうということもあるかもしれません。そこら辺の想定で、私は第一段階でも実体法上意味のある和解もあり得ると思うんですが、三木先生の先ほどのお話は、そういう和解はあり得ないとお考えになったのか、それもあるという前提で御議論になっているのか、そこら辺がよくわからなかったのですが、私は多義的な和解が十分あり得ると思うので幅広く考えていいのではないか。勿論アメリカ型の裁判所で不適切な和解ということでチェックする一定の基準はこれは当然あってもいいし、あるべきだと思いますが、そういうふうに具体的な事例を引きつけて考えてはおります。

○伊藤座長 今、山口委員に整理をしていただきましたが、個別的な消費者の権利に関して一般的な解決の基準を示すような和解とか、そこまではいかなくて、ある程度の責任は認めるにしても、個別的権利については自主的解決に委ねるような和解とか、また原告が、個別権利者のために一定の金銭を被告から受領するという内容の和解など、様々なものがあるように思います。山口委員は、3番目のものが紛争の解決という意味では望ましいという御意見でしたが、先ほど三木委員から御指摘があったように、特にA1案を前提とした場合に原告である者がどういう資格で個別的権利の金額を決めたり、残額を免除したりできるのか。こういう問題は当然出てくるかと思います。

○黒沼委員 A案における和解についての考え方なのですけれども、私は第二段階に進めない和解というのは意味がないとまず思います。ですから、第二段階に進まないような和解というのは考える必要はない。第二段階に進むことを前提とした和解であるならば、それにふさわしい和解内容を考えるべきで、具体的にどういう和解は認めてどういう和解は認めないかというのはきちんと細かくは考えていないのですけれども、そういう筋で考えるべきではないかと思います。
 第二段階に進まずに、自主的な紛争解決に委ねることも考えられるということが提示されているのですけれども、果たしてこういうもののために第一段階の和解を使っていいのかという点は、理論的に疑問を感じます。また、こうした場合には第一段階における和解の内容を規律することが難しくなるのではないか。一部の消費者との間での紛争解決にA案の訴訟が使われるようになるという危惧も感じています。ですから、第一段階で和解をして自主的な紛争解決に委ねるというのは好ましくないと思います。
 最後に、これはそもそも論なのですが、請求原因の有無、違法性を確定するのが第一段階の役割でありますので、それを判断しない和解を認めるということについては、三木先生が指摘された点も含めて理論的な疑問を感じるので、それを払拭するくらいの実務上のメリットがなければ難しいのではないかと感じています。

○伊藤座長 黒沼委員の御発言は、第一段階目の手続における和解は、具体的な対応はともかくとしてあり得るけれども、判決がなされたのと同様に、その和解を基礎にして第二段階目の手続を想定しないことは不合理であるということですね。

○黒沼委員 はい。

○伊藤座長 わかりました。山本委員、どうぞ。

○山本委員 私自身は第一段階目での和解というのは非常に重要なものであって、基本的にはこれは消費者にとっても事業者にとっても適切な和解で、第一段階で解決できるのであれば、それが望ましいのだろうと思います。
 1つは早期の解決というものが図れる。これは消費者の被害の救済にもなりますし、事業者の側から見ても第一段階で敗訴判決を受けてから和解するというよりは、その前の段階で和解をすることが十分合理的な選択としてあり得るだろうと思います。
 この和解の中で柔軟な解決を図ることができるというのも、大きなメリットなんだろうと思います。この二段階型の訴訟というのはこれまでの議論でいろいろな形で精緻につくるとしても、やはり裁判手続でつくる以上は一定の限界があることは否定できないところで、すべての事件の類型に適合したような形で手続を構築していくというのは、なかなか難しいと思います。和解によって個々の事件で最も適切と思われるような権利救済の方式が可能になるのであれば、それに越したことはないのではないかと思われます。
 黒沼委員が御指摘のことも理解できないではないのですが、つまり和解によってこの法律で定めた二段階的な手続にいかずに、当事者の合意に委ねてしまうことによって、権利救済が十分に図られない、あるいは一部の消費者だけが救済されて、他の消費者が救済されないような結果になるのではないかという御懸念かと思います。それはその和解の内容によってくるわけでありますけれども、一方では原告となる資格を持った者の手続追行主体の行為規制、先ほど三木座長代理が言われたところですが、そういう問題が一方であり、他方ではこの和解の内容に関する裁判所の関与が、どのようなものになるのかということとも関わってくるところでありますけれども、私自身は当事者間の合意によって訴訟上の和解で解決するという形にしても、それほど不当な結果にはならないのではなかろうか。むしろそれよりはそのような解決の方策も許して、個々の事案に適合した柔軟な権利救済を図っていくというメリットの方が大きいように思います。そういう意味でこの和解の結果、選択肢としては、できるだけ広い、柔軟な解決策を可能にするような仕組みが望ましいのではないかと思っている次第です。
 実際問題としては今までの御議論に出てきますように、特にA案において和解が成立するためには、被告である事業者の側から見てメリットがなければいけないわけで、それは結局、手続追行主体との関係で大多数の消費者、被害者がその主体に対して現実に授権をしていたり、あるいは授権がされる見込みがあって、大多数の消費者との関係でその紛争が解決されるという見込みがなければ、恐らく和解は成立しないのだろうと思います。そういう意味では、この和解を促進するためには、そのようなことが可能になるような基盤をできるだけ整備していくことが必要になっていくのではないかということであります。そういう意味では資料にありますように、場合によっては二段階目の手続を和解の後に使っていくことを利用して、消費者を糾合していくことも考えられていいように思いますし、大高委員が言われたように、オプト・アウトの仕組みを接続するというのはどの程度可能かというのは私も十分検討できていませんが、構想としては非常に魅力的なもののように思いました。
 最後に三木座長代理が最初に言われたA1案との関係で、必ずしもこの和解が意味がないのではなかろうかという趣旨の御指摘であったように思いますけれども、私は必ずしもそうは思っておりません。
 例えば1ページにあるように、被告が不返還特約は無効であることを確認するということが合意されるとすれば、それは無効であるということが確定力を持つわけでありまして、その点はもはや原告と被告との関係では争えなくなるという意味で、効力を持つことは間違いないと思います。その効力を個別消費者が判決と同じように援用することができるかどうかというのは制度の仕組み方の問題であり、判決と同じ援用できると考えることになれば、各消費者との関係でも有利には効力が生じることになりますが、それはそれで1つの問題だろうと思います。
 その下の方にあるような、全額の返還に応じることを確認するという返還義務の確認は、結局原告、被告間で被告がそのような要件を満たすような消費者との関係で、実体法上の金銭の返還義務を負うことが既判力と言うかどうかわかりませんが、何らかの確定力を持って確定されることは間違いないわけで、原告がそれを債務名義として間接強制等の強制執行ができるかどうかというのは1つの問題ではあろうと思いますが、少なくともそのような確定力が認められるという意味においては、意味があるのだろうと思っております。
 最後は技術的な話ですけれども、以上です。

○伊藤座長 朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 山本委員がおっしゃられたことには基本的に賛成でございますが、幾つか付け加えたいと思います。
 一つは、一段階目で和解をして二段階目を使うというのはどういったものだろうと思われている方もいらっしゃるかもしれません。例えば、先ほど山口委員がおっしゃられた、消費者が名乗り出れば事業者が一定の計算で算定をして返すという和解をしたときに、一段階目の手続の内容だけで終わってしまいますと、後で消費者が名乗り出たときに事業者が返してくれなかった場合には強制執行ができないことになります。和解の内容はそれでいいけれども、事業者が本当に返してくれるかどうかわからないというときに、和解を全部蹴って判決を求めなければならないのでしょうか。もっと訴訟費用と時間をかけ、例えば1年を費やして訴訟を続けるのかといったら、中身が決まっている訳ですから無駄なことです。
 そのようなときのために、消費者が名乗り出る手続を後ろに作っておいて、名乗り出たら給付条項を作成できるシステムを用意しておけば執行ができることになりますので、二段階目を使う場合というものもあり得ると思いますし、通知・公告に基づき消費者が名乗り出て手続追行主体に授権をした人については、二段階目でこの人に対して幾ら返すという債務名義をつくってしまうということもあり得るだろうと思います。おそらく事務局の書かれたイメージというのはそういうものであろうと思います。
 そのようなニーズがあるのであれば、理論的にはいろいろ乗り越えるべき障害があることは承知しておりますが、検討をするに値するのではないかと思うところです。それは、計算は決まっているけれども人が確定できない場合、もしくは返す約束をしつつも金額に個別性がある場合において二段階目で確定させて債務名義にしていくということがあるだろうと思います。
 二段階目を必ず使わないと和解ができないのかというと、必ずしもそうではないような気もいたします。事業者が直接適格消費者団体に払うというのが一番典型的な例ですが、世の中の集団的な訴訟における和解のスキームを見ておりましても、被告が信頼できる組織の場合には、例えば、その後どういう認定スキームをつくるかという点についても合意をし、その後はその認定スキーム、それは裁判所における二段階目ではなくて、専門家などを入れた認定スキームを作り、二段階目を使わないで一段階目の和解で解決する、というものも紛争によってはあり得るのではないかと思うところです。
 どこまでをこの集合訴訟で行うべきかは、黒沼委員のおっしゃられたことだろうと思いますが、恐らく、どの程度の法的効力を認めるのか、完全に自主的なものに任せるのがよいのかという辺りについての政策判断もしくはニーズとの絡みの問題だろうと思います。
 要するに、債務名義にするかどうかという観点を入れておかなければいけませんし、その観点から二段階目が必要となる場合が出てくるかもしれないということです。
 もう一つは、和解の合理性を確保するために裁判所がどのように関与するのかという話です。これは誰が手続追行主体になるかということにも関わってきますけれども、もし適格消費者団体ということであれば、現在の差止訴訟においては、和解をしようとするときには事前に内閣総理大臣に報告する必要があるとされており、消費者庁ではそれを監督されていて、場合によっては適格消費者団体の認定を取り消すということまでもあるのですから、その段階で1つ大きく監督がかかっているということだろうと思います。
 何が合理的かということについては、先ほど山口委員もおっしゃられましたけれども、同種の事案、被害の広がりの状況等いろいろな情報を多角的に使って判断しなければならないと思われます。本当に不合理なものを判断するのは簡単ですけれども、それ以外のものについて判断するのはなかなか難しいと思いますので、そういう意味ではそういうことについての知見を消費者庁もしくは内閣府が持っておられるのだろうと思いますので、そこで見ていただければよいのだろうと思います。それ以上に何か裁判所の方でする必要があるかどうかにつきましては、それを踏まえた上で考えていただければよいのではないかと思うところです。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 冒頭に申し上げた和解という言葉の使い方の問題が、やはり大分出てきたようでして、何人かの法律家の御発言の中にも出てくる和解というのが、どういう意味で使われているのかということは少しだけ確認しておきたいと思います。
 例として使われている1ページの幾つかの例ですが、これはややミスリーディングなところがありまして、例えば1つ目の例で山本委員も例に引かれましたが、無効であることを確認する。こういう和解条項は普通考えられなくて、和解である以上、これは勿論原告側には有利なんですけれども、被告にとっては何のメリットもないわけなので、普通、和解条項というのは被告がこういうふうに何か譲歩をすれば、その代わりという見返りの条項も入っているはずなんです。つまり、その代わり以下の債務は存在しないことを確認するとか、一切の責任を負わないことを確認するとか、そういうものがセットになった形でサンプルを出さないと議論がミスリードされている。
 先ほど私が申し上げた、実体法的にもどうなのかといったものに関連するのは後者の方でして、この形で被告側が勝手にお金を払ってくれますとか、一切責任を認めますという意味ですべて終わるのであれば、しかもそれを実際に任意で履行してくれるのであればオールハッピーなんですけれども、被告はそうではなくて、その代わり以後の責任は負わないことを求めるわけですが、その部分については授権もないのに適格団体が他人の権利を処分しているわけですので、それが法的な効力を生ずるという意味での和解なのかと言っているんです。それは実体法上も訴訟法上も和解ではないでしょうと言っているのであって、この部分だけを取り上げて和解ができますとか、望ましいという議論は望ましくないと思います。
 山口委員が出された最後の3つ目の例ですが、おっしゃるように原告消費者団体と被告の間で一括金として全員分と、お互いに納得した1億円なら1億円を適格団体に渡します。あとは適格団体の方で配ってくださいという約束をすることはできると思います。それは法的に意味がないわけではなくて、言わば民法上の契約として意味があると思います。したがって、1億円を払わなければ契約違反として訴えを起こすことが、その2者間では可能だということになります。
 ただ、繰り返しますけれども、1億円を払う代わりに以後の責任はありませんという部分は意味を持たない。和解の定義にもよりますが、冒頭に申しましたように和解というのは一方が譲るだけではなくて、相手方も譲るので和解だというのが普通ですけれども、相手方の譲る部分、この場合は原告の側ですが、それがどういう意味を持つのかというところにフォーカスを当てないと、意味がないように思います。
 同じことは山本委員の御発言にも感じました。例えば1つ目の例で被告は無効であることを確認するということの和解ができるのではないか。それはできます。しかし、それは和解ではないです。実体法上そういう契約を結んだ。どういう履行手段があるのかよくわかりません。違約金か何かがとれるのか、慰謝料はとれるのか。確認ですから少なくとも強制履行は不可能です。それを和解と呼ぶか呼ばないかは言葉の問題かもしれませんけれども、私が冒頭に申し上げた和解はできないでしょうと言った意味は、それはいわゆる和解ではないという前提で申し上げたということは、断っておきたいと思います。

○伊藤座長 余り両委員の間だけでやりとりをしてもと思いますけれども、そこは合理的な御判断でお願いします。

○山本委員 ごく簡単に。1点は互譲の要件ついては、民法上も非常に緩やかに解されていることを申し上げておきたいということと、もう一点はより実的な点ですけれども、A案において債務免除、責任がないことについての合意に効力がないというのは、三木座長代理がおっしゃるとおりだと思います。これは別にA1案だけではなくてA2案でも全く同じだと思いますが、A案の最大の問題点で、だからこそ先ほど申し上げたように和解の前提として、訴訟追行権者に被害消費者から授権がなされていくような仕組み、それは被告から見ても信頼できるような仕組みを構築することが、A案において和解を実効的にする最大のポイントだと私は思っているということです。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。どうぞまだ御発言ない方、お願いします。

○三木浩一座長代理 山本委員が今おっしゃったように、あるいは大高委員が冒頭におっしゃったように、第一段階でいわゆる本来の意味での和解をできるような制度をつくろうと思ったら、A1案でもA2案でも同じですけれども、B案のようなというか、オプト・アウト型の制度をどこかで組み合わせるか、あるいはオプト・インの制度を組み合わせるかしかない。つまり我々のD案です。それを二段階型のスキームから排除する必然性はないように思います。
 それが望ましいかというのは別の問題で、黒沼委員が御懸念のように、本来の二段階型が構想したものと違う使われ方をこの新しい制度がするのではなく、一段階目のまだ何も判断が動いていない途中で和解をどんどんしましょう。これをメインストリームと考えるのであれば、最初から二段階型をつくるのではなくて、一種のオプト・イン型の手続をつくるんだということ、あるいは実現は難しいかもしれませんけれども、オプト・アウト的な手続をつくるんだということを基調に議論していくことになるわけであって、二段階型にこだわる必要は全くないと思いますけれども、ただ、二段階型を想定した議論をしているのか、二段階型ではもはやなくなって、少なくとも途中からか頭からかはわかりませんけれども、オプト・イン型とかオプト・アウト型の制度をつくろうという議論をしているのかという点は、意識していく必要があるように思います。

○伊藤座長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 2点簡単に申し上げたいと思うんですが、どうも三木先生のは私が考えているのと少し違うのかなと思うんですけれども、私自身は裁判上の和解で事業者が適格消費者団体に一定の所定の金額を払う。したがって訴訟終了効もそこで生じるわけで、そういう裁判所の和解を考えているわけですが、それでもそれは契約に過ぎないことになるのかもしれませんけれども、裁判上の和解であることは間違いないと思います。
 なお、少し付け加えますと後ほどまた議論が出るのかもしれませんが、そこで非常に重要になるのは、事業者側が適格消費者団体に顧客名簿を出すシステムを、どこまできちんと制度化するかがかなり重要になってくると思うんです。つまり適格消費者団体はわかりました、受け取った1,000万円なり1億円でもいいんですが、これを例えばどこか学習塾の表に立てて、これを欲しい人はいらっしゃい、名乗り出るように勧誘するのか、あるいは事業者団体が名簿を適格消費者団体に提供する、あるいは自ら事業者団体がこういう適格消費者団体と和解ができた。これだけ払っているから、後は適格消費者団体に返してほしい人は名乗り出てくださいとやるのか、そこら辺のスキームがあると思うんですが、適格消費者団体は被害者にどういう人がいるのかわからないので、そこをどういうふうに周知徹底する、通知・公告を徹底する方法を和解の中で講じるかということも、ついでに問題になってくる。これは後でまた議論が出るかもしれませんが、そういうことを付言しておきたいと思います。

○伊藤座長 山口委員が最後におっしゃった点は、恐らくは次回辺りに議論をしていただかないといけないかと思います。
 大分時間が経ちましたので、一応この辺りで、先に進みたいと思いますけれども、ただいまの議論を伺って、一応の取り纏め的なものを申しますと、例えばA1案を前提にしたときに、紛争の早期解決という意味では、和解による解決の余地を認めておくことが望ましい、それが消費者と事業者双方の利益につながるという御意見が多かったように思います。ただし、そこで考えられている和解と申しましても、三木委員の御発言を踏まえると、その合意内容にはいろんな態様のものが考えられます。しかし、紛争の早期、かつ、全面的解決という視点からは、個別的な消費者の請求権のすべてといわないまでも、大部分を取り込んだ和解が望ましいのではないか、それは被告にとっても原告にとっても、和解を積極的に進めようという動機づけとしても働くのではないだろうかという御意見が有力だったかと思います。
 ただし、三木委員の御指摘のように、理論的な問題、あるいは手続的な問題を解決しなければ、そのような方向での和解の制度設計は困難であるというのも誠にごもっともでありまして、そのためにオプト・アウト型の手続まで構想するのか、それともオプト・イン、つまり個々の消費者の申し出や届出を待って、原告が被告との間で申し出た消費者の権利に関する処分を内容とする和解を実現できるような仕組みを考えていくのが望ましいのか、当該紛争に関係する大部分の消費者からの申出があれば、このような方式でも、実質的にはオプト・アウト方式と変わらないのではないか、場合によっては黒沼委員御指摘のように、二段階目の手続と連続性を持ったような内容での和解の制度を構想する必要があるのか、そういった辺りでの御議論が多かったように思います。いずれにしても、この点は次に議論いただく二段階目の手続における和解との関係もございますから、引き続き審議をお願いしたいと思います。
 そこで、よろしければ二段階目の手続における和解に関しまして、これまでもいろいろな局面での御発言があったと思いますが、それを踏まえまして加納さんから説明をお願いしたいと存じます。

○加納企画官 資料1の3ページでございます。「(2)二段階目の手続における和解について」として幾つか書いてみました。
 マル1基本的な考え方に書いておりますのは、A案、B案とも二段階目の手続といいますのは、一段階目の手続で事業者の責任原因ないし違法性等が認められた後の手続であることを踏まえますと、できる限り合意による紛争解決を促していくことが適当と思われますところでして、こうした観点から手続追行主体や審理の在り方等について検討するとともに、和解の規律についても検討することが必要と考えられます。
 手続追行主体につきましては前回の御議論の中で、一段階目の手続追行主体などができるだけ対象消費者の請求をとりまとめるというのが、1つ視点として御指摘いただいたのではないかと思われます。
 4ページマル3で審理の話、マル4で和解の規律と書いております。まずマル3の審理のことですが、二段階目の手続のイメージ図につきましては参考3で前回も示したところでありますけれども、こうした審理の過程で消費者側の手持ち資料のみで、個々の消費者が被った損害額が明らかにならないような場合。二段階目というのは基本的には損害額の確定を想定しているわけですが、例えば消費者は領収書がなくなってしまったことも多々あるだろうと思われるわけでして、金額がよくわからないという場合、ある程度事業者側の資料なども参照しながら確定していくことが必要ではないかと思われるところでありまして、ア、イと書いてありますけれども、例えば現行の訴え提起前の照会制度であるとか、当事者照会制度のような制度を設けて、当事者間で主張や証拠を交換して整理するといった仕組みがあり得るのではないか。これらの当事者照会制度等につきましては、今回の制度で特段の規律を設けなくても、現行の民事訴訟法が適用されるんだったらそれで何ら問題ないことになろうかと思いますけれども、簡易な手続ということで少し違った特殊な制度になる可能性もありますので、そうした場合には一定の措置という必要が出てくるかもしれないと思っております。
 あるいはイですけれども、何らかの訓示規定を設けることもあり得るのではないかと思います。この点について御意見を伺えればと思います。
 マル4の和解の規律についてでありまして、二段階目におきましてはA案におきましても対象消費者の請求権の処分を伴うことになりますので、その利益が不当に害されないようにするという必要性、これはもろに出てくると思います。
 いろいろ考えられるところですが、手続追行主体としてどのような者を想定するかによると思うところですが、例えばということで和解をしようとする場合に、事前に対象消費者に対して意思の確認をしなければならないこととするとか、あるいは和解も含めて手続追行主体の手続の追行について一定の注意義務を課すということで、規律を設けるのも考えられるのではないかと思うところですが、適格消費者団体のように一定の消費者の利益を擁護する役割を果たすのにふさわしい主体に限定することを前提に、特段の規律を設けないということもあり得るのではないかと考えられるところでありまして、そのようにまとめております。
 事務局からは以上でございます。

○伊藤座長 二段階目の手続における和解による解決の必要性と合理性に関しては、これまでの議論を承っていますと、それほど御異論がないところかと思います。そうなりますと、むしろそれを実現するための仕組みをどう考えたらいいのか。それから、その内容の適切性を確保するための規律としてどういうことが必要なのか、そういった辺りが中心になるかと思いますけれども、どうぞ御自由に御発言ください。大高委員、どうぞ。

○大高委員 「(2)二段階目の手続の和解について」に記載されている事項につきましては、おおむね基本的には賛同するものです。特に手続追行主体について、第一段階目の手続追行主体がとりまとめていくということ、かつ、それがある程度代表して和解をまとめていくことについては、全体的解決を確保するという観点からも非常に適切ではないかと思っております。
 ただ、最終的に和解案というか、こういう基準で二段階目を進めましょうというか、認定していきましょうという具体的に金額まで確定をして、これでいきましょうとなったときに、そういった和解を成立させるかどうかについて何らかの形で個々の対象消費者、申し出をしてきた消費者の意思を確認した方がいいのではないかと思っています。それは勿論、対象消費者の権利・利益を守るという面もありますけれども、担う側の訴訟追行主体にとっても意思確認をした上で進めた方が安心であるということから、そういうふうに思うところです。
 意思確認については一旦、訴訟追行主体がとりまとめた後の話ですので、場合によっては消極的な意思確認、異議がなければ成立させていいという形の簡易な意思確認というスキームは、あってもいいのかなと思っています。
 マル3の簡易迅速な権利救済のための審理についての督促とか手当について、むしろこれは和解のためというよりは二段階目の本則的な審理手続において、どういうふうに審理を円滑に進めるかという問題かなと思っております。ア、イとして今2つほど提案がございますけれども、アのような一定の情報を入手しやすくなるような仕組みというものが、非常に適切であろうということで導入が必要であると思っています。一方のイというのは勿論訓示規定をどういう内容にするかにもよるのですが、果たして抽象的な訓示規定だけでどれほどの意義があるのかについては、少し疑問の余地もあるように思っています。
 ごく簡単ですが、以上です。

○伊藤座長 ただいまの大高委員の御発言に関連したことでも、あるいはそれ以外のことでも結構ですので、お願いいたします。

○三木浩一座長代理 二段階目の和解については恐らく制度上、この和解に乗りたいという当事者がオプト・インしてくることを前提としての手続だと思いますが、ただ、オプト・インをしていく段階では、一般の消費者は言わば白紙委任の状態で和解を委ねるわけです。その結果、でき上がった和解案はこんなはずではなかったとか、全体としてはいいけれども、自分の権利との関係では非常に問題があるとか、さまざまなことが生じると思いますので、やはり最初に授権をしてあるので、あとはもう物を言う機会がないというのは望ましくないと思います。
 したがって、例えば和解案が成立した段階で和解内容を公示して、一定の期間を置いて、それに対して意見を言う機会を保障することは必要だろうと思います。また、単に和解案について意見を言うだけではなくて、積極的にこういう和解案の方がいいのではないかという申し入れを、勿論その申し出には従わなければいけないという効力はないでしょうけれども、申し出をする、積極的な提案をするということも認めてよいように思います。いずれにしても、そのような形で言わば最初の授権と和解案が出た段階での2度目の機会というものの双方が、保障されている必要があろうかと思います。
 それに加えて、更に三重目のチェックとして裁判所の内容面にわたる認可が要るか。これは両論あろうかと思います。やはり申し出る機会があるとは言っても、一般消費者はなかなか内容も難しいこともあって申し出られないでしょうから、サイレントマジョリティという言葉が適当かどうかわかりませんが、そうした人たちの権利は意見を言う機会だけでは十全に保護されないかもしれないわけですので、裁判所の内容の認可も必要であるという考え方はあろうかと思います。
 他方では当事者の自治の範囲で結構だという考え方もあろうかと思います。ただ、後者の考え方をとる場合でも適合性のチェックは裁判所はかけなければいけないので、私が申し上げたのは、内容のチェックについては両論あろうということであります。
 最後ですが、マル3のアとイで書かれていることですけれども、アの方も強制力はありませんので、これを訓示規定と言うかどうかは別にして、いずれにしてもアとイは大きくは変わらなくて、強制力のない形で資料の提出について規律を置くことがどうかということの御提案だろうと思います。
 強制力を置く現行の民事訴訟法の一般制度として、いわゆる文書提出命令等に加えて強制力のある制度をこの訴訟専用につくるというのは、難しい面があろうかと思いますので、置くとすれば御提案にあるように強制力のない制度ということが、1つ考えられるかと思います。強制力がないということですと、あるいはファンクションがないということですと置く意味がないかと言いますと、そうでもないかなという気はいたしております。そういう規定があればやはり手がかりにはなりますし、やはり相手の企業などにとっても一種のプレッシャーにはなりますので、規定を置くという意味は十分考えてよいかと思います。
 以上です。

○伊藤座長 中村委員、お願いします。

○中村委員 今の三木先生の前段部分につきましてはほぼ同じ意見なんですけれども、最後の照会のところなんですが、これが例えば名簿などになりますと個人情報という問題がございますので、照会に応じたことで個人情報上の問題にならない、消費者からの苦情にならないということをある意味保障する何らかの手当に関しては、ちょっと御配慮いただきたいと思います。

○伊藤座長 先ほどの山口委員の御発言にもありましたけれども、名簿等の提出については、和解の局面に限らず、それが紛争の全面的解決に必要な場面がある一方、今、御指摘のような問題がありますので、その点は改めて議論をする機会を設けたいと思います。
 今、大高委員、三木委員のお話を伺っていますと、二段階目の手続で個々の消費者が原告に権利の実現を委ねているような場合であっても、やはり和解の成立について言うと、もう一度何らかの形で、それが異議を言わないという形の消極的意思確認でいいのか、賛成するという積極的意思まで確認する必要があるのか、その辺りはいろいろ考え方があると思いますが、何らかの形での意思の確認の手続は、どうしても必要なのではないだろろうか、それに加えて裁判所がどういう形で関与するかについては、いろいろな考え方があり得るところだという御意見がございますが、ほかの委員の方はいかがでしょうか。山本委員、どうぞ。

○山本委員 特段異論があるわけではないんですが、考え方としてはそれは十分あり得る考え方で、非合理的なものであるとは思えないのですが、そういう何らかの公示通知等を和解の成立要件として考えるかどうかというのは、何か1つ問題としてあるような気はします。資料にも書かれているように、手続追行主体を一定の主体に限定するということを考え、また、2番目のポツに書かれているように一定の注意義務、善管注意義務であるとか、あるいは当事者を公平に、誠実に取り扱う義務であるとか、そういう注意義務を課しておいて、注意義務の履行の方法として追行主体に対して通知等を行うか、情報提供等をどの程度行うかということについては、手続追行主体の判断に委ねて、訴訟手続法上は必ずしもその通知等がなされるところまでは要件にしないという、規律の方式もあり得ないではないように、現在の選定当事者は私の理解ではそのような形になっているのではないかと思っておりまして、記述の仕方としてはそういうこともあるのではないかと思っています。

○伊藤座長 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 実際に私どもは相談を受けております見地からしか申し上げられませんが、今回この和解が私どもでも理解しにくいところもあるんですけれども、和解が成立して例えば幾らか支払うとか、先ほど山口委員が言われたように何千万円か支払うことになったときに、それが実際に履行されるかどうかというのは多少の不安があります。私たちは日常の相談から考えますと相手方は口頭では支払うと言うんです。それが何年にもなっているのが非常に多いものです。その約束を守られる強制力といいますか、間接強制力をどこかに入れておいていただければ、第一段階であろうが第二段階であろうが、そういうことを入れていただきたいのは1点ございます。
 先ほどの照会の件なんですが、地方の消費者被害救済委員会なんかは、なかなか書類の提出命令は条例の中に入っておりませんので、事業者が出てこなければそれで終わっているということがありますので、できるだけ個人情報に配慮した形で、多くのいろんな資料の提出命令ができるような形のものが、照会制度というきれいな名前なんですが、もう少し強いものができるように今後の議論の中で検討していただければと思います。

○伊藤座長 わかりました。下谷内委員がおっしゃった前半の問題は、まさに先ほど第一段階目の和解に関しましても、個別的な権利の取扱いを取り込んだ和解でないと意味がないのではないかという意見交換が御座いましたが、ただいまの御発言も同様の問題意識を前提にしているのではないかと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。二段階目の手続における和解に関して合理的な必要性があることについては、皆様方の間に共通の認識があるように思います。そのことを踏まえて、権利の主体である消費者の利益を害さないようにするにはどうしたらいいかという点で、一方では、当初に手続追行主体に対する授権があっただけではいけないので、和解案が具体的にかたまった段階で、異議がないことを確認するという消極的確認または賛成することを確認する積極的確認のいずれであれ、個別的権利の主体である消費者の意思を問うことが必要だという御意見と、もう一方では、実務上の運用としてはそういうことが行われるであろうし、現在の訴訟上の和解の実務でも、そういう運用がされているので、当初の授権があった以上、和解案の内容についての意思確認は、実務運用の次元の話ではないかという御意見もあったように思います。
 もしよろしければ、一応ここで一段階目、二段階目の和解について審議をいただきましたので、10分ぐらい休憩をとった後に次に進みたいと思います。

(休  憩)

○伊藤座長 それでは、審議を再開したいと存じます。引き続きまして資料1「2.管轄(土地管轄)について」を、加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料1の22ページでございます。管轄のうち土地管轄についてペーパーを作成しております。
 (1)ですけれども、3つの基準があるのではないか。1つ目は普通裁判籍でありまして、いわゆる本店所在地と言われる主たる事務所または営業所の所在地に管轄が認められているというのが、民訴法の規定にあるということです。
 2つ目は営業所管轄と言われますけれども、事務所または営業所の所在地というものでありまして、今の民訴法の規定ではその事務所または営業所における業務に関するものについては、その事務所または営業所の所在地に管轄が認められるということでございます。
 マル3の行為があった地というのは、いわゆる行為地でありまして、被告の行為があった地が管轄であるのではないかと考えてございます。これは今の団体訴訟制度の消費者契約法の中に行為地管轄が入っております。
 (2)ですが、こういう選択肢があるということでありまして、それぞれどう考えていくかということですが、被告の応訴負担であるとか申立ての便宜あるいは司法制度上の要請などを踏まえて定められるべきと思われまして、そういう観点から書いております。まず被告の応訴負担ということからしますと、主たる事務所または営業所の所在地で行うのが便宜だろう。また、事務所・営業所の所在地あるいは行為があった地という形で管轄を定めるとしましても、被告の事業活動の中核的な拠点となる比較的規模の大きい事務所または所在地が存在している蓋然性が思われる一定の大都市に限ることも、考え方としてはあり得るのではないかと思います。
 申立人の側から見ますと行為が行われた地がどこかという観点で、その主たる事務所または営業所の所在地以外にも広げる必要性があるのではないかと思われるところでありまして、特に今回の制度におきましては二段階目の手続で対象消費者がたくさん入ってくるというのを想定しておりますから、対象消費者が多く所在している地に認めるというのが対象消費者にとっては便宜だと思われますが、そうしますとそれがどこかということですが、行為が行われた事務所または営業所の所在地であるとか行為があった地というものであれば、通常対象消費者の多くが所在しているのではないかと思われますので、そういったところを管轄として認めるのもあり得るのではないかと思います。
 最後の段落ですが、司法運営上の要請からしますと、繰り返しですけれども、二段階目の手続にたくさんの消費者が入ってくるということを考えますと、非常に膨大な事務処理が生じるだろうと思いますので、そういった事件処理の適切性といいますか、迅速に処理することができるというのが、権利救済という観点からは重要だと思いますので、そういった体制が整っている一定規模以上の裁判所に限ることも、合理性があるのではないかと思われます。
 (3)ですが、こうした点を踏まえますと、これらの選択肢としては「ア 被告の主たる事務所または営業所の所在地」を基本としながら、それに付け加える形でイないしオの選択肢を組み合わせることが考えられるのではないかと思われるところでありまして、イは行為があった事務所または営業所の所在地、ウは行為があった地、エは行為があった事務所、営業所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する裁判所、オは行為地の中で高等裁判所の所在地を管轄する裁判所というのが、あり得るのではないかと思います。
 なお、そういったいろいろな地に管轄が認められる可能性があると思いますけれども、そうした場合に複数の訴訟が別の裁判所に継続する可能性は、今回の制度でないわけではない。例えば適格消費者団体を想定するとしましても、適格消費者団体が複数存在しますので、そういうことがあり得ると思いますが、そういった場合には移送をしていく必要性があるのではないかと思いまして、その点を書いております。
 37ページの参考10に、実際にどうなるのか具体的に想定して書いてみましたが、株式会社Yという予備校があって、本社は東京都千代田区である。広島、岡山、大阪に営業所があって、京都、横浜、埼玉に教室がある。これらは営業所でない教室だと仮定しまして、受講料について一括前払をしたということで一切返還をしないと契約条項の中にあった。それについて不返還特約として無効であるということで、既払い部分の返還を求めたという形の訴訟が想定されるということなんですが、これの共通争点の確認訴訟が起こった場合であります。
 2.にア~オそれぞれどうなるかということで、アは本店所在地でありまして東京地裁。
 イは営業所ということで東京、広島、岡山、大阪。
 ウは行為地となりまして、行為があった地をどう見るかというのはなかなか難しいところがありますが、教室でも契約の締結が行われると仮定しまして、その契約締結行為が行為だとしますと京都、横浜、埼玉というように広がってくるということだと思います。
 エの考え方は営業所の所在地であり、かつ、高裁が所在する地方裁判所ということでありますので、(2)で高等裁判所が所在しているということで東京、広島、大阪があるだろう。
 オは行為があった地のうちの高等裁判所所在地ということで東京、広島、大阪となるのではないかと書いております。
 本文に戻っていただきまして営業所所在地のところなんですけれども、22ページマル2で1つ説明を飛ばしましたが、営業所が幾つかある。その幾つかの営業所で同種行為が行われて、それぞれの共通争点を確認する。先ほどの参考の例で言いますと、本社は東京ですが、営業所が広島、岡山、大阪とありまして、そういった場合に広島、岡山、大阪のうちのどこに管轄を認めるのかということでありますが、被告の行為が複数の事務所または営業所において共通して行われている。そういう場合にそれぞれの事務所、営業所ごとに分けるようにするというのも考えられるところであります。
 民訴法の今の規定は業務に関するというふうになっておりますので、例えば広島で契約した人の共通争点は広島。岡山で契約した人の共通争点は岡山だという形で、分けていくことになるのかなという気もしないでもない。不当利得返還請求ということで個別の請求を立てるとそうなると思うのですが、今回は共通争点の確認と考えておりますので、そういうふうに分けるとなると、紛争の一回的解決の観点からは適切ではないのではないかとも考えられます。むしろ、共通争点というのは被告の行為に関して共通要素として認められるものであり、その確認請求をする場合、被害者ごとに比較の行為をとらえるのではなく、全体として1つのものとしてとらえて審理・判断することではないのではないか。
 そういうことで、ある事務所または営業所において、そういう行為が行われていれば、その事務所または営業所の所在地に管轄を認めるとともに、例えば広島であるとしますと岡山や大阪の分も含めて、広島において共通争点の確認を求めることもあり得るのではないかということで書いております。ちょっと技術的な話になって恐縮ですけれども、営業所の所在地についてはこういった論点もあるのではないかということで、書かせていただきました。
 事務局からは以上でございます。

○伊藤座長 私の手違いで申し訳ありませんが、今の点についての御審議をいただく前に、休憩前に、第一段階目の手続における和解に関していろいろな角度から御議論をいただきましたが、それに関連して民法といいますか、実体法の視点から御指摘があると承りましたので、窪田委員から御意見をいただいた上で、管轄の問題についての審議をしたいと思います。
 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

○窪田委員 議論を中断させるような形になって大変申し訳ございません。先ほど実体法上の問題はと座長から振られたときに、ちゃんと答えていればよかったのですが、今ちょっとお時間をちょうだいして、先ほどの議論について確認させていただけたらと思います。
 先ほどの議論ですが、かなり専門的な話も出ておりましたので、議論の図式といったものが少し見えにくいところもあったように思います。その点だけ確認させていただけたらと思います。まず第一段階において当然のように幾ら払う、幾ら払えばいいということを訴訟追行団体が和解をすることができるというのは、本来あり得ないのだろうと思います。というのは、それについての授権を受けていないからです。それは第二段階になって初めて生じることですから、本来、第一段階ではできないわけです。だからその意味で仮に和解をしたとしても、その法的効果は、あくまで個々の権利については授権されていない訴訟追行主体と被告企業との間に生じるだけであって、実際に被害を受けた消費者には及ぶものではありません。したがって、消費者が訴えを提起すればそれに拘束されないというのは、当然だということになると思います。その点を、まず確認させていただきます。
 そのうえで、いま述べたことの出発点になることが三木座長代理から発言あったところだと思いますし、また、それを踏まえた上で、授権を確保するという観点から、山本委員、大高委員から、オプト・インあるいはオプト・アウトを組み合わせるという話が出ていたのだと理解しております。つまり、第二段階までいかない段階でも、授権という仕組みを入れて、第一段階の中で財産を処分するという意味での和解を用意するということであったのだと理解しております。以上は、言わずもがなの点なんだろうと思いますが、確認だけさせていただけたらと思います。
 その上でもう一点、付け加えさせて頂きます。山口委員からも御指摘があったように、おそらく企業サイドから見ると、1,000万円払うんだからこれでおしまいにしてくれというのが一番わかりやすいのだろうと思います。企業にとっては和解のニーズとしては一番あるタイプ。これが最終的な決着として希望するところなのだろうと思います。ただ、ここで述べたことを前提とすると、授権がオプト・インによるとしても、あるいは、オプト・アウトによるとしても、すべての被害者からの授権を受けない限りは、結局、最終的な解決はできずに残る部分があるということになるだろうと思います。
 この2点だけは当然のことですが、確認だけさせていただけたらと思って時間をちょうだいいたしました。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。今おっしゃったような問題がまさに一番中核的な問題で、先ほどの第一段階目における和解を積極的に考えるべきだという立場の御意見も、何らかの意味でそれぞれの権利の主体である消費者からその行使や場合によっては、合理的基準にもとづいた処分を委ねる仕組み前提にしてということだと思います。ただ、それが第1段階目の手続における和解に関する授権なのか、第二段階的なものを第一段階でも取り込んでということなのか、その辺りはまたもう一度、進んだ段階で検討していただきたいと思いますが、御指摘どうもありがとうございました。
 そこで、先ほどの加納さんから説明があった問題に戻ります。管轄というのは、技術的な事柄のように聞えますけれども、どこの裁判所に訴えを提起することを認めるかという、本質的にはそれだけのことであります。
 確かに広く門戸を開くという意味では、訴訟を受ける裁判所を限定しない方が良いとの御意見もあろうかと思いますが、今までの御議論を伺っていますと、一段階目の手続の追行主体が二段階目の手続まで責任を持って遂行する、少額多数の被害という事案を想定したときに、やはり訴訟を受ける裁判所の範囲を、大規模な事件の処理体制が整った裁判所に限定した方が、迅速かつ全面的な権利の救済あるいは紛争の解決という意味で望ましいのではないかという考え方もあり得るところですので、御自由に御発言ください。磯辺委員、お願いします。

○磯辺委員 この制度で救済の対象となる消費者被害の状況を踏まえた議論が必要だと思います。例えば催眠商法などの場合は、ある特定の地方都市に一定の期間、仮の店舗等を事業者が置いて、その場で消費者を集めて不当に高額な値段で商品を売り付けるという行為を働いて、その臨時の店舗を閉じて次の地方に移っていくという被害の態様もあるわけでして、そういったものを考えるときには、やはり被害者が多数発生した地域できちんと訴訟が提起できることが確保されている必要があるのではないかと感じます。
 最近、通信販売でのトラブルでも多いのですが、通信販売を展開されている会社の中には人件費等の要因から地方に本社等を構えていて、全国的にインターネット等を通じて通信販売をされている。被害は全国に拡散するわけですけれども、特に被害自体は大都市部に集中するといったものがあります。そういったものも念頭に置いて管轄の議論をお願いできればと思います。
 以上です。

○伊藤座長 大高委員、お願いします。

○大高委員 今の磯辺委員に賛同する部分もありますし、それを追加する形で少し述べたいと思います。基本的には23ページ(3)にありますように、アを基本としつつイないしオの選択肢を適宜組み合わせる。その大きな議論の方向性自体に異論があるわけではないのですが、その組み合わせ方についていろいろと考えるべきであろうと思っています。
 磯辺委員からもありましたように、まずやはりこの制度は差止め以上に実際に被害を救済していく、被害者がいてそれを救済していくということで、そこでの結びつきも考えていくべきだと思います。そういうことからすると、少なくともイないしウのような被害を与える行為があった地というものに一定の管轄を認めていくことは、この制度においては不可欠ではないかと思うところです。
 それを前提にエとかオのような特定の大規模な裁判所に管轄を認めるべきかどうかということですが、23ページ(3)の上のところの「また」以下にありますように、司法運営上の要請等から一定規模以上の裁判所に限ることにも合理性があると書き出されております。この点、こういった大規模な裁判所に付加的、追加的な管轄を特に認めるということについては、勿論依存はないわけですが、ここにもし仮に限定をすべきだということであれば、やはり私としては反対であります。
 磯辺委員からもありましたように、これまでの消費者被害の場合ですと東京なり大阪の大都市に本社を置きながら地方に出かけていって、ある特定の県で大量の被害を発生させるという事案は決して珍しいものではありません。そういった事案で例えば被害が起きた都道府県の裁判所が、若干ちょっと体制が整っていないからといって遠方の裁判所でやってくれというのは、なかなか実際に被害を受けた人が二段階目に参加していく。勿論これは簡易な手続にするので、実際に調べに行くことは少ないのかもしれませんけれども、場合によっては直接事情を聞くであるとか、そういったこともあり得るわけですから、被害者が多くいるだろうということが推測される土地において、管轄を認めていく必要性は極めて高いと考えるところです。
 そういったことを考慮いただいて、管轄については御検討いただければと思っております。

○伊藤座長 中村委員、どうぞ。

○中村委員 企業の立場、被告側の立場からいたしますと、必ずしも悪徳事業者ということでもなく、中小の企業の方ということもあることからすると、一義的には当然のことながら本店所在地で訴訟をしていただけるのが一番望ましいところではございますが、消費者の立場ということで非常に多くの被害者がおられるところで営業がされたところも、考えざるを得ないのかなと思っております。
 ただ、一番問題となりますのは多数の裁判所で同時あるいは順次に起こされて、例えば原告側が勝つまでやる。勝ったところにいろんな人が乗っかってくるという形になることは、これは社会としても望ましくないことなのではないかと思いますので、後の方に書かれております移送の手続ということで、同じような事柄については1つの裁判所にまとめて、できるだけ一括で審議をしていただくような制度について御検討いただきたいと思います。

○伊藤座長 山口委員、お願いします。

○山口委員 どういう事件類型を考えるかによっても若干違うんですが、この種の訴訟の場合に販売元と卸元あるいは末端の小売店、個別の従業員という形で単に事業者単体だけではなくて、それ以外の関与事業者、従業員あるいは特に代表取締役個人を訴える場合もあり得ると思うんです。差止めの場合は個別の事業者だけが被告になるでしょうから、それほど問題にはならないと思うんですが、複数の事業者なり代表取締役なり個人を被告にするという場合にどうするかというのは、事務局はどういうお考えなのか。それほど大した問題ではないと思うんですが、一応参考までにお聞きしておきたいと思います。

○伊藤座長 加納さんの方で、現段階で何か検討の状況があればお話いただいても結構ですが、なお、難しい問題ですので今後も検討することになろうかと思いますが、いかがでしょうか。

○加納企画官 特別検討しているものはございませんので、また整理して御相談させていただきます。

○伊藤座長 山口委員、問題の御指摘ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 まず応訴の関係というものがありますから、被告の本店所在地が原則になるという点についてはおそらく御異論がないところだと思います。プラスαをどうするかということについては、何人規模の消費者被害を想定するかにもよるところで、100人規模のものを想定するのであれば、そんなに大きな問題はないだろうと思うのですが、諸外国の例などを見ておりますと、ものによっては万単位の消費者が対象となる場合がございます。対象消費者の数も一段階目と二段階目が同じ裁判所で審理することとしますと、最初の段階ではどれぐらいの数かということが必ずしもよくわかりませんので、この訴訟は1万人以上になるから初めから東京で起こしてください。100人だろうから徳島でもいいですというわけにはいかないのだろうと思います。
 そういう意味では対象消費者の数がある程度多数になるということも念頭に置きながら、そのような場合でもそれなりの対応ができるようにしておかなければいけないだろうと思うところです。
 要するに何が起きるかと申しますと、キャパシティを超えてしまいますと事件処理ができなくなるわけですから、被害救済がかえって遅れることになりかねないということです。私は、いつも破産に似ていると申し上げておりますけれども、破産法の5条というのが参考資料に出ております。これは債権者数が500人以上の場合には高裁所在地の地裁、1,000人を超えると東京地裁と大阪地裁が選択的になっておりまして、場合によってはそこに移すこと(移送)もできるという規定です。ちなみに破産法を改正したときの法制審では、競合管轄を設けることについて、日弁連の委員も含めて特段の異論が出なかったところではないかと記憶しております。事件処理を実際に行うことを考えるとこのような手当ては必要ではないかと思うところです。
 消費者被害がどこで起きるかというのはわかりませんし,対象消費者が本当に全国ばらばらになってしまうこともございますので、被害者の方が裁判所に来なくてもいいような制度、もともと負担が少ないものを作るということだろうと思いますので、その辺のところも念頭に置きながら考えていくべきではないかと思うところです。交通網も発達してきておりますし、九州の人を北海道で審理するという話ではありませんから、ぎりぎり考えなくてもよいのではないか。むしろ被害救済を早めるという意味での効率性を考えていただいた方がよいのではないかと思っております。

○伊藤座長 桑原委員、どうぞ。

○桑原委員 23ページ(3)に書いてありますようなア~オで、アを主体としつつ組み合わせるという方向性については、私もこういうことなのかなということで異論はございませんが、極端な例を申し上げますけれども、こういうことも実態としてあり得るんですという意味でお聞きしていただきたいのでございますが、例えば沖縄の離島にも事業者もいれば消費者もいる。北海道の離島にも事業者もいれば消費者もいる。
 そういうような場合、沖縄で主たる事業者が沖縄の離島にいたとしましょう。裁判所がどこにあるのか知りませんが、仮に那覇だとすると、同じ沖縄なんだから那覇まで出てこいと言って済むほど単純なことではない。事業者にとって大きな負担を伴います。特に地方の交通の便、限られた交通手段等を考慮すると、こうしたことも可能性としては起こり得るのではないかということでございます。被害が発生したときは早く救済することは当然のことでございますが、その辺をどこの裁判所に管轄をしていただくのかというルールを考える場合に、実態として起こり得るということを是非とも忘れることはできないのではないかという気が強くいたします。
 とりわけネット販売は、これからどんどん広がってくるでありましょうし、今一つ心配なのは今日の議題と少し外れるかもしれませんが、なりすましということも起こり得る可能性もあるわけでございまして、その辺のところをどう防いでいくかというのが大きなテーマになるのではないか。私のところの製品ではないけれども、それをなりすまして偽物が売られたということも起こり得るわけでございます。これは消費者にとっても困ることでありますし、生産者にとっても困ることになりましょうから、そのところも十分勘案していく必要があるのではないかという気がいたします。
 以上です。

○伊藤座長 三木澄子委員、お願いします。

○三木澄子委員 消費者側から考えますと、やはり被害のあった行為地、差止請求が大体行為地でされていることもあるので、本来はそういう行為地で裁判をしていただければいいんですが、やはり司法運営上のことから考えると、一定規模以上の裁判所というのも加味しなければいけないと思っていますので、23ページで言えば行為地があった事務所とか、エとかオはよく似ているんですけれども、管轄するある程度の規模のある裁判所、先ほどのある程度早く救済することも考えなければいけないとなれば、その管轄する高等裁判所の所在地を管轄する裁判所というのが、一般的にいいのではないかと思っております。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 結論としては今の三木澄子委員の御意見に賛成で、これは確かに非常に多数の消費者が加わる可能性があるので、管轄を比較的専門的な、あるいは大規模な審理に対応できるような裁判所に限定するということも、制度としてはあり得ることだと思います。
 私の承知しているところでは、フランスは二段階型で結局法案までしかいきませんでしたが、法案の段階ではそういう管轄集中をする前提で制度をつくっていたと思います。
 ただ、今、御指摘があったような消費者の権利の救済というところを考え、また、二段階型で、結局二段階目である程度訴訟追行主体が消費者の権利をまとめて行使することがうまくいった場合には、二段階目でそんなに消費者が現実に裁判所に出てこなくても済む。そういう意味では必ずしも多数の消費者がいっぱいばらばら出てくることにはならない可能性もあるわけで、そういうことを考えると、消費者に現実により近い地ということも考えられるだろうと思います。
 ただ、そういう意味では今、御指摘があったようにア~オの管轄が考えられてもいいのてばないかと思われるわけですけれども、ただ、朝倉さんも言われたように審理をやっている途中で岡山で訴訟が起こったんですが、実際大多数の被害は東京にいることがわかってきて、東京でやる方がこれは随分合理的ではないか。二段階目まで見通せば合理的ではないかという判断に至った場合には、訴訟の途中で裁判所を移すという移送の可能性も認めていいのではないか。民事訴訟法17条の規定で当事者の公平とか審理の適正迅速ということを考えて、裁判所を移送するという制度がありますので、そういったようなことも考えられることを前提にして、管轄を広く認めることがあり得るのかなと思っております。

○伊藤座長 大河内委員、お願いします。

○大河内委員 皆さんの意見とほとんど変わりませんが、団体訴権の検討をしたときも、行為地について大分議論をいたしまして、被害のあった行為地を入れたという経緯もありますから、皆さんのおっしゃるいろいろな懸念は含めるとしても、ウの行為があった地を外さずに選択肢として入れておくことを、お願いしたいと思います。

○伊藤座長 皆さんの御意見を伺っていますと、一方では最後に大河内委員がおっしゃられたような意味で、行為がなされた地であるとか被害が発生した地を基準として、そこの裁判所にという要請があり、他方、今までの議論で一段階目、二段階目を通じて同一の裁判所がそれを担当することを前提にしますと、特に大規模な事件を想定したときには、それなりの人的、物的設備が整っていて、迅速な処理が期待できるような裁判所にも管轄といいますか、事件を受ける権限を併せて認めるのが合理的だろうということになるように思います。少なくとも、原告にそのような選択の余地を認める必要があるということでは、御意見の一致があると理解いたしました。
 しかし、また、いったんある裁判所で訴訟が始まった後に大規模な事件であることが判明する場合もありますので、移送、移送というのは、一旦ある裁判所が受けた事件を別の裁判所に送ることを意味しますが、移送についても合理的な規律を設けて、適切に処理ができる体制を考えていくべきであろう。そういうことで皆様の認識が一致していると承ってよろしいでしょうか。
 それでは、そのような共通認識を踏まえて今後の審議を進めていただければと思います。
 次に、資料1「3.手続の手数料について」、加納さんから説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料1の42ページでございます。手数料につきまして(1)~(3)まで書いております。
 「(1)一段階目の手続」でありますが、マル1で書いておりますのは今の民事訴訟法の原則論でありまして、裁判所に手数料を納付する必要がある。それは訴額というものに応じて定められておりますけれども、いわゆる非財産権上の請求につきましては160万円とみなしまして、その手数料は1万3,000円となります。
 マル2ですけれども、今回の制度における一段階目の手続の請求をどう考えるかということでありますが、対象消費者の各金銭請求権に関する共通争点を確認するというものだと思いまして、この確認を求める請求は財産権上の請求とも考えられる。しかし、この確認を求める請求につきましては以下に述べるような特徴がありますので、それなりに規律を設ける必要があるのではないかということでありまして、1つ目は当該手続追行主体そのものが経済的利益を受けるものではなく、訴えで主張される利益は共通争点が確認されることによって、対象消費者全体が受けるべき利益であるということ。
 また、共通争点が確認されたからといって、直ちに個々の消費者の請求権が存在することになるわけではなく、その額も未定であり、対象消費者も具体的にだれかというのは特定されていないということでありまして、対象消費者に何らかの経済的利益があるとしても、それを具体的に算出するのは難しいのではないかということで、算定が著しく困難であると考えられます。
 そういうことを踏まえますと、会社法や消費者契約法の規律などと同様に、今回の第一段階目の請求に係る訴えを非財産権上の請求とみなす旨の規定を設けることが考えられるのではないかと思います。
 (2)ですけれども、二段階目の手続のうちの簡易な手続について、どう考えるかということであります。
 マル1ですが、二段階目の簡易な手続は個々の消費者の請求権の存否について判断するという手続でありますので、これは財産権上の請求であると思います。
 簡易な手続の申立てといいますのは訴えの提起そのものではありませんで、特殊な手続となるのではないかと思われます。そうしますと、この手数料の定め方につきましても別途に考える余地があるのではないかと思うわけでありまして、類例におきましては経済的利益に関わらず、一律に低額な手数料とするという例もございまして、参考14でいろいろ掲げておりますが、今回の簡易な手続につきましても被害救済の促進という観点から、訴えの提起の場合とは異なる定め方をすることも考えられるのではないかと思います。
 ただし、一律に低額な手数料を定めるとした場合でも、その額の定め方如何によってはごく少額の請求においては、かえって高額になるおそれもありますので、そこは留意する必要があると思います。
 (3)ですが、二段階目の手続で査定の決定が出されて、それについて意義を申立てて通常訴訟に移行した場合ということでありまして、マル1で書いてありますのは仮に二段階目の簡易な手続の申立てについて特別な定め方をしました場合に、異議によって通常訴訟手続に移行する場合は、他の類例も参考にしますと、通常の訴え提起の手数料との差額について追納する必要があるのではないかと思われるところです。
 マル2ですが、これに関しましてだれが負担するんですかという話ですけれども、対象消費者の請求権の存否が判断されるんだということからしますと、その対象消費者が差額について追納するというのが1つの考え方ではないかと思います。
 他方で2つの考え方を示しておりますが、1つは異議申立が不合理であることもあり得ると思いますけれども、そうした場合には一定の倍率以内の金銭の賦課をする。参考15で掲げておりますが、控訴の手数料についてそういう規律がありますので、そういったところを参考に、そういった規律を設けることも1つあり得るのではないか。
 もう一つですが、一段階目の手続で事業者側に責任原因や違法性などが認められた後の手続であることを踏まえますと、異議申立てについては、当該異議申立てをした者に手続費用を追納させることも、選択肢としては考えられるのではないかと思うところでございます。
 以上の点について御意見をいただければと思います。

○伊藤座長 これもやや技術的な問題ですけれども、「(1)一段階目の手続」に関しては、責任が認められれば、最終的には、個々の消費者の請求権が認められることにつながるわけですから、一段階目の手続における判断事項が財産上権の利益ではないというのは難しいように思われますが、しかし、例えば原告である適格団体を想定すれば、最終的に利益を受ける個々の消費者はともかくとして、原告が最終的な財産上の利益を受ける主体になるわけでもない、そういったことを考えると違った考え方もあるのではないかという辺りが、(1)の一段階目の手続に関する問題ですが、この点に関しては何か御発言はございますか。

○三木浩一座長代理 この点に関することだけではないんですけれども、全体の資料の考え方がややよくわからないところがあるので確認的に発言したいと思います。
 一段階目の手続は代表当事者が訴えを起こすわけですから、いわゆる提訴手数料になるので、あとはこれが財産上の請求なのか、非財産上の請求扱いになるのかといった話になるというところで、比較的わかりやすいんですが、二段階目の手続の手数料云々というところが私にはよくわからなかったところです。
 ここで想定している手数料の納付主体というのは、二段階目で参加してくる個々の消費者のことを言っているのか、一段階目の訴えを起こした主体にもう一遍払えと言っているのか、御説明があったのかもしれませんけれども、ちょっと私はよくわかりませんでした。
 訴訟法上の基本的な考え方からいくと、ざっくりした言い方になりますが、訴訟によって利益を享受する主体が手数料を納めるわけですから、一段階目で提訴手数料を納めている団体が二段階目でまた納めるというのは考えにくいので、利益を受けるのは個々の消費者ですから、ここで言っているような個々の消費者が届出をするときに手数料を払えという議論なのかという点は、確認をしておきていと思います。そうでないとすると、私は個々の消費者に払わせるのがいいと言っているわけではなくて、場合によって少額であったりすると大変でしょうから、なるべく優遇してあげた方がいいと思いますけれども、理屈としては訴訟で利益を受ける主体がただで訴訟手続を利用できるという制度は、訴訟救助などの問題を別にすればありませんので、そこをどういう考えで御提案されているのかという点を、後で確認的にお答えいただければと思います。
 そのこととも関係しますが、これは二段階型訴訟のつくりというか、つくり方というか、考え方によるのかもしれませんけれども、この資料を見ると2つの訴訟があって、もう一遍訴えを二段階目で起こすんだみたいな前提のようにも見えますが、当然移行して一段階目の判決というのは呼び方は別にして、一種の中間的な判決だということも当然あり得るわけでして、その辺はどうお考えで資料をつくられているのか。
 最後ですけれども、二段階目で簡易な手続を想定して議論を立てられている。そこは結構なんですが、そこで言う簡易な手続の意味です。これは前回の会議でも若干私は発言しましたけれども、二段階目の簡易な手続が目指しているのが、あるいは大多数が裁判で終わるというのだとちっとも簡易ではないわけです。二段階目の簡易な手続は、簡易な手続自体も多くは和解で終わらなければいけない。当然ある程度和解を想定した手続、和解を誘導する手続あるいは手続それ自体の主流の流れは和解。調停的な手続でなければいけない。それでまとまらなかった場合とか、一部がまとまらなかった場合に、そこは17条決定的なものを出す。どちらにしても17条決定的なものにならざるを得ないのは、異議があれば通常訴訟に移行するような最終拘束力のない手続ですから、現在の不調停で見られるような手続が、私が想定する二段階目の簡易な手続となります。
 仮にそうだとすると、二段階目の簡易な手続というのは裁判手続、調停も裁判手続だと日本では言われていますから、広い意味の裁判手続ではありますが、狭い意味の裁判手続ではなくて一種の調停手続あるいは和解手続である。そうすると提訴手数料をだれに払わせるにせよ、そこで考える手数料の意味は裁判手数料なのか調停手数利用なのか。簡易な裁判だと余り変わらないのかもしれませんけれども、訴訟と調停だと調停手数料の方が圧倒的に安いわけですね。ですから、その辺のイメージとも関係してくるかなということです。

○伊藤座長 この問題は、一段階目の手続と二段階目の手続の関係をどう考えるかということと、二段階目の手続の内容を具体的にどういうものとして想定するかというところが、まだ完全にかたまっていない、あるいは共通の認識が形成されていないので、確定的な判断は難しいと思いますけれども、加納さん、今の段階で、三木委員の御質問は、二段階目の手続の簡易な手続の申立手数料の意味が中心だと思いますので、その点の考え方だけ御説明いただけますか。

○加納企画官 まず前提として、一段階目と二段階目の関係がどうなのかというのがまだ現時点で確定的に決まっているわけではありませんので、その辺が議論の前提としてあるのではないかと思っておりますけれども、このペーパーをつくらせていただいたイメージとしては、一段階目の手続はそこで共通争点を確認し、二段階目の手続はまたそれとは別途申立行為があって、その中で一定の判断がされる。勿論和解されるということを念頭に置きながらつくったものです。
 (2)の二段階目の簡易な手続の手数料をだれが支払うのかというところにつきましては、確かにそこもいろいろ考え方はあるんだと思いますけれども、事務局としては基本的には個々の対象消費者が支払うことを前提に、このペーパー自体はつくらせていただきました。

○伊藤座長 今の加納さんの説明自体に対しても、なお御意見があるかと思いますので、どうぞ御自由に。二段階目のところまで、あるいは(3)まで含めて全体として御意見をいただきましょう。三木澄子委員、お願いします。

○三木澄子委員 今の御説明だったら、最初の非財産権上の請求としての訴額160万円に対する手数料1万3,000円は、手続追行主体が払うんだという前提でよろしいんですね。それは二段階目に行った人に、最終的にそれを払っていただくという形をとらないのでしょうか。

○伊藤座長 加納さん、お願いします。

○加納企画官 一段階目につきましては、基本的には手続追行主体がそういった手数料を支払う。それはその負担でやるんだというイメージで考えておりました。対象消費者に負担させるというものではありません。

○伊藤座長 大高委員、どうぞ。

○大高委員 意見ということで、それぞれの点について述べたいと思います。
 全体として訴訟手続手数料は技術的な問題ではあるんですけれども、金額がどうなるか如何によっては訴えのしやすさ、二段階目で言えば対象となる消費者の申立てのしやすさに大きく影響してくる問題ですので、制度をワークさせるという点からは非常に重要な問題であると思っております。
 その上で一段階目の手続についてはペーパーの結論にありますように、結論としていろいろ御議論があるところだと思いますが、非財産上の請求とみなすという規定を設けることについては、強く賛同したいと思います。理由についても基本的にはペーパーにあるとおりです。
 付け加えるとするならば、今回の専門調査会で以前に大まかな紛争利益が幾らかという議論がありましたけれども、それが仮に出るとして、それを基準にして訴額として訴訟提起手数料を算定するとなれば、大規模な事件についてはおよそ訴訟を提起することが不可能になってくることもありますので、結論として政策的にもこの結論が妥当だろうと思っております。
 二段階目についてはまさしく三木座長代理がおっしゃったように、どういう仕組みにするのかということに多分に影響される部分もあるんだろうと思いますが、私も基本的にこの手続が通常の訴訟手続とは異なった、言わば非訟的な手続になるんだという前提で考えるのであれば、もともと低額にするという必要性もあるところですし、対象消費者が手続に参加しやすくために、少額かつ低額という決まった枠にしていくことには合理性もあるのではないかと考えております。
 そうしますと問題は、異議が出て通常訴訟に移行した場合の取扱いですが、ペーパーには(3)マル2で考え方として、対象消費者が差額を納付するという考え方で異議を申し立てたものとか、3つぐらい考え方が出ておりますけれども、私としては基本的には本則的な手続の解決を促すという観点からも、異議がある方が一定の手数料を納付するという形が適切だろうと考えています。
 その額についてどうするかについてはまた細かな論点があると思いますが、ここはあくまで意見として申し上げますけれども、二段階目の訴訟というのは通常の訴訟と違って一段階目の結論については出ていて、一定程度は結論が出ているという後の手続になりますので、手数料額については通常訴訟よりも、金額に応じて決めるにしても一定軽減をすることはあってもいいだろうと思っています。
 これも制度の仕組み方によりますけれども、異議申立ではなくて職権で通常訴訟に移行させるという制度をもし導入するのであれば、その場合については当事者の意向と関係なく通常訴訟に移行されることがありますので、手数料の額についてはこれも別段の考慮があっていいのではないかと思っております。
 以上です。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 結論的にほぼ今の大高委員の御意見に賛成です。(1)の一段階目の手続はここに書かれているように、株主代表訴訟と似たところがあると思いますが、代表訴訟でも会社が請求をする場合には、その損害額自体が訴額になって算定されるわけですけれども、株主が提起する場合には非財産権上の請求で160万円とみなされるということで、この確認による経済的な利益が訴訟追行主体にどの程度及ぶかというのは、なかなか判断できないところで、算定は極めて困難ということになるんだろうと思います。
 先ほど三木澄子委員のお話ですが、二段階目に進むということは一段階目では原告が勝訴していることになりますので、その場合にはこの手数料は被告が負担するというのが民事訴訟の基本的な原則だと思いますので、この場合もそうなるのではないかと思います。
 (2)の二段階目の手続についても今の大高委員が言われたこと、資料に書かれていることで、そういうことになるんだろう。この簡易な手続で行う、司法的な手続で行うということですから、通常の訴訟とは基本的には異なる基準で手数料が算定されてよいのではないかということです。
 ただ、低額な手数料で損害賠償命令の2,000円という例が出ていますが、2,000円でも結構厳しい、かえって少額になる場合もあろうかと思います。ただ、これは訴訟追行主体がまとめてやるということになると、まとめることによるディスカウントというのは当然あるんだろう。これは民事訴訟でも基本的には訴額は積算して算定されることがあり得るところですので、そういうことは考えられて、ディスカウントによって個々の消費者の負担が軽くなる余地というのは、認められてしかるべきなのかなと思っております。
 最後の異議申し立ての場合も、私も異議申立てをした者に追納分を負担させるというのが相当ではないかと思っております。
 私のイメージは破産のときの債権査定の手続というのが、よくここでて出てきますけれども、似ているように思うのですけれども、破産の債権査定というのは第一段階で査定決定を裁判所がして、査定決定に異議がある当事者が異議の訴えを起こす仕組みになっていて、その場合には当然異議の訴えを起こす当事者がその訴訟の手数料を負担する形になっているわけです。事柄の実質としてはそれと同じように考えてもいいのではないか。破産でそういう仕組みをとっている1つの理由としては、異議申立権が乱用されるおそれがあるという点が問題になって、それで現行破産法は平成16年の改正でこういう仕組みをつくったのですけれども、やはり乱用というのは前の会合でもお話しましたけれども、この場合も懸念される可能性があって、特に被告側がどういう決定が出てもやみくもに異議を申し立てるという行動対応に出た場合には、二段階目がワークしなくなるおそれがあるわけですので、それを考えても、それはかなり政策的な配慮になりますが、異議を申し立てる側に手数料を負担させることが考えられてよいのではないかと思っております。
 以上です。

○伊藤座長 中村委員、お願いします。

○中村委員 全体の部分については特に意見はないんですけれども、最後のところで異議申立人が負担をするということについては、余り異論はないんですが、こちらの書きぶりのところで、一段階目の手続において「事業者側に責任原因、違法性等が認められた後の手続であることを踏まえ」ということが殊更に入っているので、これは異議申立人として特に事業者を想定されているのかなという感じもするんですが、これはそういうことではなく、消費者側が異議を申し立てた場合については消費者、事業者側が異議申立をした場合には事業者という形で、整理をしていただくべきではないかと思います。
 参考15に書いてございます不合理な異議申立があった場合、一定倍率の賦課ということに関しましては、ここの不合理なというところの考え方というのは、なかなか難しいのかなと思いますので、ここの部分については入れるべきではないのではないかと考えます。
 以上でございます。

○伊藤座長 加納さん、異議申立人に手続費用を追納させる云々というのは、今、中村委員が御指摘のような意味ですね。

○加納企画官 はい。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。坂本さん、お願いします。

○坂本参事官 2点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず1点目ですけれども、異議を申し立てた場合にどちらが費用を負担するかという点について、今のところどちらがいいのかについて定見があるわけではございませんが、先ほど山本委員が破産債権の査定に対する異議の訴えの例を挙げられましたけれども、訴えの前段階の手続としての二段階目の手続について、どこまで決定的な要素を強く見るのか、あるいは合意形成的な要素を強く見るのかということによって、異議の申立てをした人の負担と言い切っていいのかどうかというところが、変わってくる可能性があるのかなというところは、今、お話を伺っていて思った次第です。それが1点目でございます。
 2点目でございますけれども、先ほど大高委員から訴えになった場合でも通常より手数料を安くしていいのではないかという御意見があったかと思いますが、訴えの手数料は求める利益に応じて算出するのが基本となっていて、その例外というのは、先ほど例が出た代表訴訟のように自分の利益ではないというパターンであればともかく、そうではない限り、特則を認めていくというのは、乗り越えなければいけない山というのはかなり高いものがあるのではないかというところだけ、指摘させていただければと思います。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。そういたしますと、これも一段階目の手続と二段階目の手続のそれぞれの内容、2つの手続の関係がかたまりませんと、費用の負担に関する基本的な考え方についての確定的な議論がしにくいところがありますので、そこは留保つきということになりますし、具体的なところまで現段階で方向性をかためるというのは無理かと思います。ただ、今までの議論を伺っていますと、一段階目の手続であれ二段階目の手続であれ、手続費用という意味で当事者に過大な負担が生じて、制度の機能が損なわれるようなことは避けなければいけない、これは恐らく御異論がないところかと思います。
 二段階目の手続での異議に関する費用負担の関係で言うと、やはり当事者間の公平ということがあるので、一定の判断が出たときにそれに対して異議を言う場合には、それなりの負担を引き受けてもらうことが合理的ではないか。こういうお考えも複数の委員からおっしゃられ、他に御異論はなかったように思います。
 最初に申しましたように、一段階目や二段階目の手続の内容や相互関係がまだ十分かたまっておりませんので、よろしければ本日の段階では今、私が申し上げた程度のとりまとめにさせていただいてよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○伊藤座長 そういたしますと、本日の審議の予定事項は以上となりますが、加納さん、よろしいですか。委員の方々で特に御発言があれば、お願いいたします。

 

≪3.閉会≫

○伊藤座長 それでは、最後に事務局から次回の日程についての連絡をお願いいたします。

○原事務局長 どうもありがとうございました。次回は第9回になりますけれども、3月31日木曜日の14時からを予定しております。議題は訴訟手続に係る論点マル6として、本日取り上げたもの以外の訴訟手続に関する論点を御検討いただけたらと思います。場所は今回同様、こちらを予定しております。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 本日、御意見の中に出てまいりましたような事項も、次回になるべく広く議論をしていただきたいと思います。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。毎度御多忙のところをありがとうございました。

(以上)