第4回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2010年12月16日(木)16:00~19:00

場所

中央合同庁舎第4号館共用108 会議室

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、
 窪田委員、黒沼委員、桑原委員、中村委員、三木(澄)委員、山本委員
【担当委員】
 池田委員、下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  佐藤参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官

議事次第

1.開会
2.訴訟手続に係る論点について1
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:56KB)
【資料1】 手続の流れと論点について (消費者庁提出資料) (PDF形式:190KB)
【資料2】 学納金返還請求事件(最判平成18 年11 月27 日) (消費者庁提出資料)(PDF形式:190KB)
【資料3】 本日検討する論点について (消費者庁提出資料)(PDF形式:243KB)
(参考資料1) 消費者被害の事案の概要等について (消費者庁提出資料)(PDF形式:136KB)
(参考資料2) 前回(第3回)までの専門調査会で出された意見等の整理 (消費者庁提出資料)(PDF形式:165KB)
(参考資料3) 集団的消費者被害救済制度専門調査会今後のスケジュールについて(PDF形式:54KB)


≪1.開会≫

○齋藤審議官 本日は、委員の皆様方におかれましては、年末のお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。
 ただいまから「第4回集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。
 本日は、所用のため沖野委員より御欠席の御連絡をいただいております。
 まず、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。
 本日お配りしております資料及び参考資料は、議事次第の次のページの「配付資料」というところに書いてありますとおりでございます。消費者庁提出資料として、資料1、資料2、資料3、それから参考資料の1、2、3となっております。もし不足がございましたら、事務局へお申し出ください。
 それでは、伊藤座長、議事進行をよろしくお願いいたします。

≪2.訴訟手続に係る論点について1≫

○伊藤座長 前回、第3回の議論におきまして、当面、手続モデルのうちのA案及びB案を中心に検討を進めるということで皆さんの御了解をいただいたと存じます。そこで、それにのっとりまして、本日はA案及びB案における論点についての検討をいたしたいと存じます。
 最初に、消費者庁の加納さんより説明をお願いいたします。

○加納企画官 消費者庁の加納でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日は消費者庁からの提出資料としまして、資料1から3まで及び参考資料として1から3までおつけしておりますので、順次御説明したいと思います。
 まず、資料1でございますが「手続の流れと論点について」という資料でございます。
 1枚おめくりいただきまして、2ページですけれども、現在の適格団体による差止制度、それから民訴の通常共同訴訟制度について、訴えの提起から判決に至るまでの流れをイメージ図で描いたものでございます。
 3ページ、4ページは、A案、B案につきまして、それぞれ手続の流れと論点という形で整理を試みたものでございます。
 2ページですが、適格消費者団体による差止請求制度について、消費者契約法は幾つかの規律を設けておりまして、一番左の書面による事前請求から、四角の中に囲って書いております。この書面による請求は、あらかじめ書面による差止請求をして、1週間経過した後でなければ訴えを提起することができないとすることにより、当事者間の交渉等による解決を促進することをねらったものでございます。
 訴えの提起のところの下には、管轄、それから訴額の算定につきまして規律が設けられているということで書いてございます。
 審理のところですが、一番上の和解に関して、他の適格団体に対する通知及び内閣総理大臣に対する報告ということで規律を設けていることを書いてございます。これは、適格団体が差止請求をする際に、相手方事業者となれ合った和解をすることで消費者に不利益をこうむらせることがあってはいけないということで、他の適格団体に通知することとして、適格団体相互の牽制による適正化を図ると。それから、内閣総理大臣に対して和解について報告することで、監督の対象とする。場合によっては、認定の取消しということもあり得るということでございますけれども、そういうことで適正化を図ろうとしているものでございます。
 次の・及びその次の・のところで、移送及び併合に関する規律を書いてございまして、これは、審理の集中を図るというものでございます。
 1つ飛ばしまして一番下ですが、判決や和解に関する公表について書いてございます。これは、差止請求の訴訟を起こして、判決や和解等がやられたというときに、その成果を消費者に還元して、消費者が個別訴訟等で活用することができるようにするという措置でございます。
 最後に強制執行のところですが、間接強制に関して特有の規律を設けておりますので御紹介させていただきますと、間接強制金を定めるに当たって、「執行裁判所は、債務不履行により不特定多数の消費者が受けるべき不利益を特に考慮しなければならない」という規定がございます。これは、執行手続における債権者である適格消費者団体は、その固有の損害がないと考えられることから、強制金の金額を定めるに当たりまして、不特定多数の消費者が受ける不利益を考慮することとしたものでございます。
 下の段ですが、通常共同訴訟についてということで、現行の民事訴訟における審理の実情ということで、いろいろな文献等に書かれているところを簡単にまとめたものでございます。
 大規模訴訟におきまして、審理の充実、促進のために、いわゆる共通争点、個別争点という形で審理を区分して行うことがあるということでありまして、集団的な消費者被害事案におきまして、例えば悪質商法におきまして、当該商法ないし取引がシステムとしての違法であるというようなことが共通論点として挙げられるとか、あるいは組織性ということが共通争点として挙げられることがあるということでございます。他方で、個別争点としましては、勧誘文言など、取引の額などについては個別に審理をするということで、一段階目、二段階目という形で事実上区分されているということではないかと思われます。
 これは、現行の制度ということで御紹介でございます。
 続きまして、3ページ、4ページでA案、B案それぞれにつきまして、手続の流れと論点ということで整理してみております。
 これは前回、手続の流れと、それから論点としてどういうものが出るのか、及び具体的な事例に当てはめてどういうふうになるのかを考えてみてはどうかという御意見を多数ちょうだいいたしましたので、それに基づきまして消費者庁でつくってみたものでございます。
 一番上のところですが、一番左の訴えの提起から、共通争点に関する審理、その争点に関する判決、通知・公告、通知・公告の前までが一段階目になると思いますが、通知・公告の後、簡易な手続の申立て等をし、その決定、更に異義を申し立てて、訴訟手続に移行した場合には、給付判決から確定、最終的には強制執行に至る、こういういわゆる二段階型という手続が流れていくのではないかと思われますが、それぞれにつきまして、例えば訴えの提起であれば、対象事案であるとか、主体・法的構成という形で下の方に四角で囲っておりまして、それぞれの段階でここに掲げた論点が出てくるのではないかということで整理をしてみたものでございます。
 このうち幾つかのものにつきましては吹き出しをつけておりまして、学納金の返還請求訴訟において当てはめるとどうなるかということで考えてみたものでございます。
 ちょっと資料が飛んで恐縮ですけれども、資料2を御参照いただきたいと思います。資料2は「学納金返還請求事件」ということで書いておりまして、最高裁の判例をベースに、事案の概要や争点、裁判所の判断について整理してみたものでございます。ちょっと長くなって恐縮ですが、若干敷衍して御説明したいと思います。
 事案の概要に書いておりますが、大学はY大学であるということで書いておりまして、2段目ですけれども、入試要項の中に次のような記載があったということでありまして、2つ目の・ですが、「いったん納付された学生納付金は、いかなる事情があっても返還しない。」という特約があったということでございまして、これがかなり大きな争点となってくるということでございます。
 「さらに」というところで書いておりまして、後で若干補足させていただければと思いますが、その2つ目の・の中で「4月2日の入学式の無届欠席の場合は入学資格を失う。」というような記載も女子大学の入学要項にはあったということでございまして、これが後で効いてくるというようなことが判断されております。
 原告はX1からX6まで6名の方がいたということでありまして、X1はY大学、X2からX6はY2女子大学を受験したということでございます。X1につきましては、下線を引っ張っているところですが、学納金を支払った後、「4月2日に入学辞退をする旨を電話で通知した」という方でございます。X2、X3、X4につきましては、「3月22日までに必要な書類を提出しなかった」ということでございますが、いずれもY2女子大学でございますけれども、先ほど上で見たように、「4月2日の入学式の無届欠席の場合は入学資格を失う。」というような記載が入試要項にあったということで、ここが後で効いてくるということでございます。それから、X5、X6につきましては、「入学式を欠席した」ということでございます。
 イメージ図と書いておりますが、法律関係としましては、消費者と大学(学校法人)との間で在学契約というものが成立したと思われます。これを入学辞退などにより契約を解除すると、不当利得返還請求ということで消費者から大学側に求めるという事案であろうと思います。
 争点としましては、共通争点、個別争点それぞれありまして、共通争点としてマル1からマル6に掲げたところが挙げられようかと思います。このうち、特にマル6の不返還特約、先ほどごらんいただきました一切返還しないという特約について、消費者契約法9条1号に規定する「平均的な損害の額」を超える部分について不返還を定めていることになるかということが争われた事案でございます。
 更にちょっと説明が飛びまして恐縮ですが、ここで消費者契約法9条1号について御説明させていただければと思います。7ページをごらんいただきたいと思います。
 消費者契約法は幾つかの規定を設けておりまして、いわゆる不当条項規制というものを設けておりますが、そのうち第9条1号は次のように規定しております。「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」について「当該超える部分」を無効とする、こういう規定でございます。若干長くなって恐縮ですけれども、契約を解除して、その損害賠償の額というものが当該事業者に生ずる平均的な損害額を超えていれば、その超える部分に限って無効とするという規定でございます。
 規定の趣旨等につきましては(2)に書いてあるとおりでございまして、(3)の「平均的な損害」の意義というところについても、ここに書いてあるとおりでございます。
 8ページ、9ページに具体的な例ということで紹介させていただいております。そのうち9ページの方がわかりやすいのではないかと思いますので若干触れさせていただきますと、標準旅行業約款ということで書いております。例えば旅行契約を申し込む場合に、パンフレットの裏などで約款という形で別表のようなものが定められている。その取消しの時期に応じて幾らの取消料、いわゆるキャンセル料を取りますよというようなことで書いてありまして、例えばイ、ロ、ハ、ニ、ホの場合のような形で、旅行を開始した場合には100%であるとか、その当日であれば50%であるとか、前日であれば40%であるとか、こういうふうに段階的に定められている。
 こういうときに、例えば前日や当日にキャンセルした場合に多額を取られるのは仕方ないとしても、それより以前の段階でキャンセルしたにもかかわらず100%取られるというようなことであれば、これについては取り過ぎではないかということで、先ほどの7ページの消費者契約法の9条1号の条文によりまして、当該事業者、先ほどの例でいいますと旅行業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについては無効とするという規定でございます。
 ちょっと飛んでしまって恐縮ですが、もとに戻りまして2ページですけれども、そういう消費者契約法9条1号に定める平均的な損害の額を超える部分について、不返還を定めていることになるか、無効となるかどうかということが共通争点で争われるという事案でございます。
 個別争点としては、その契約の解除の部分や時期というものが効いてくるということでございます。
 3ページですが、裁判所の判断としましてマル1から幾つかの論点について判断したところを書いております。
 4ページですが、マル8というところで「不返還特約の消費者契約法上の効力」と書いてございます。矢印のところですが、消費者契約法9条1号の規定により、違約金条項は、「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害」を超える部分は無効とされると。
 ここら辺がかなりキーワードだと思いますけれども、「大学が合格者を決定するに当たって織り込み済みのものと解される在学契約の解除、すなわち、学生が大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点よりも前の時期における解除については、原則として、当該大学に生ずべき損害は存しないというべき」でありますが、その下の段落ですけれども、「一方、学生による在学契約の解除が、上記時点以後のものであれば、その時期における在学契約の解除は、織り込み済みということはできない」ということで、損害を大学がこうむるというような結論が示されております。
 4ページの一番下の段落ですが、「4月1日」というのが、客観的に蓋然性をもって予測される。そうすると、解除の意思表示がその前日である3月31日までにされた場合には、5ページですが、「原則として、大学に生ずべき平均的な損害は存しない」ということで書いておりまして、4月1日より前か後かということで結論が分かれるということが示されております。
 「もっとも」という段落が5ページにありまして、ちょっとこれは細かい論点になってしまうかもしれませんが、「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」という場合には、入学式に出なかった場合、欠席したことによって在学契約が黙示的に解除されることがあるということが大学の予測の範囲内であるということでありまして、そういう場合は、「原則として、大学に生ずべき平均的な損害は存しない」ということで、損害がない以上は、特約が無効であるということでお金が返ってくるという結論になっているという事案でございます。
 ここはちょっと特殊な事例だと思います。
 以上を前提としまして、結論としまして各論というところですが、5ページの(2)ですけれども、X1につきましては、4月2日に解除したということで、不返還特約は全部有効と認められ、大学は返還義務を負わないとしましたが、X2からX6につきましては、これはいずれも女子大を受験した方でありますが、「入学式に欠席した場合には辞退したとみなす」という規定が効いてきまして、契約の解除が認められるということで、不返還特約は無効であるというような結論に至ったという事案でございます。
 長くなって恐縮ですけれども、資料1に戻っていただきまして、3ページ、4ページですが、この手続の流れに即しまして今のような事例が実際どのように考えられるのかという当てはめをこの吹き出しでしてみております。
 3ページでいいますと、A案におきまして、どのような事項について確認を求めるのかということで、左のところですが、学納金の例に即していいますと、学納金の不返還特約が消費者契約法9条1号に反し無効であることの確認を求めるということになるのではないかと思われます。
 そういう確認を求めた場合にどのような判決がなされ、どういう効力が生じるのかというところが非常に重要だと思われますが、左から3つ目の四角のところですけれども、まず、どういう事項を判決とするのかということですが、先ほどの判例をベースに考えますと、3月31日までに解除した場合は、授業料に関する不返還特約は無効であるが、4月1日以降に関する部分については、請求が棄却される。
 入学金について先ほど説明を飛ばしてしまって恐縮ですが、入学金については、別の理由で返還を求めることはできないと最高裁の方で判断されておりますので、それを踏まえて、入学金に関する部分は請求棄却と書いております。
 判決の効力につきましてですが、吹き出しのところですけれども、3月31日までに解除した者については、二段階目の手続で授業料の返還などを求められるが、4月1日以降に解除した者は、別訴で独自の主張・立証をすることはできるが、二段階目で返還を求めることはできないということになるのではないかと思われます。
 この別訴でできるかどうかということにつきましては、A案とB案で結論が異なるのではないかと思われるところでありまして、4ページのところですけれども、4ページの同じような箇所で書いておりますが、B案におきましては、4月1日以降に解除した者は、二段階目でできない上に、別訴においても原則として棄却されるのではないかと考えられるところでございます。
 3ページに戻っていただきまして、以上のような請求を求める事項及び判決が考えられるということでございますが、それ以外に、この対象消費者がどうなるのか、あるいは二段階目の手続のあり方はどうなのかということにつきまして、それぞれ吹き出しで書いてございます。
 資料1及び2につきましては以上でございます。論点について、手続の流れに即して書いてみたものでございますので、論点の落ちやこの当てはめ等について御議論、御意見をちょうだいできればと思います。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 ただいま具体的な例として学納金の返還を求める紛争に即してA案、B案それぞれの手続の流れに即して、どのような判断を裁判所に求めるのか、裁判所がそれに対してどういう内容の判断をするのかということについての説明がございました。それぞれの論点についての御意見は、後ほど承りますけれども、今の段階で、ただいまの説明に即して重要な論点が落ちているのではないかとか、あるいは今後の検討において、この中の論点のうちのこれが重要であるから優先して検討すべきであるとか、論点の取り上げ方とか、議論の仕方について、御意見があれば承って、その後でそれぞれの論点について内容的な議論をしていただきたいと思います。
  いかがでしょうか。もし特段の御意見が今の段階でなければ、後に論点を補足していただいて、それを取り上げることは一向に妨げないと存じますので、今の段階の進め方としては、ただいまの加納さんの説明を前提にいたしまして、そこで論点とされているもの、大体3つぐらいが最初に取り上げるべきものかと思いますが、それらについての説明を内容とする資料3に即しまして説明をお聴きいただき、その上で内容に関する議論をしたいと思います。
 では、加納さん、よろしくお願いします。

○加納企画官 それでは、資料3のうち、まず1の一段階目の判決において確認を求める事項というところについて御説明したいと思います。基本的な考え方としまして、このA案、B案において、どういうことを求めていくのかということで書いてみたものでございます。
 集団的な消費者被害事案において、共通争点として、学納金の事案であれば契約条項の有効性、ここには出ておりませんが、個人情報の流出事件においては個人情報の管理体制など、事業者側の特定の行為や結果というものが多いと考えられるところでございます。これにつきましては、例えば学納金返還請求訴訟で言うところの平均的な損害額の意義や主張・立証責任の所在といった問題であるとか、そういった法律解釈の困難さ、あるいは学納金返還請求訴訟の場合で言いますと、入学辞退に伴い、大学に生じた損害に関する資料等といった証拠の偏在の問題など、事実上・法律上の問題がそれなりに存在していると考えられるところでございまして、個々の消費者が自ら訴えを提起する中で、こうした共通争点について主張・立証することが実際上困難なことが多いと考えられることを踏まえ、共通争点を確認することにより、多数の消費者の被害救済を図ることができるとともに、紛争の抜本的解決にも資すると考えることがでるのではないかと書かせていただいております。
 マル2のところですが、共通争点を確認する手続において、こういうメリットもあるのではないかと書いておるところでございまして、多数の消費者が当事者となる紛争について、裁判所が一定の判断を示すとすることにより、個別の訴えが次々と提起され、別々に審理される場合に比べて、1つは、裁判所における審理の効率性にも資するということが言えるのではないか。また、事業者側にとっても、手続を糾合することで応訴の負担が減少するとともに、紛争の蒸し返し防止を図ることができるのではないか。
 若干ここは敷衍でして括弧の中で書いておりますが、現行制度において多数の消費者がそれぞれ別個に当事者となり訴訟をすることになりますが、集合訴訟制度が創設された場合には、集合訴訟の判決の法的効力のいかんを問わず、事実上の影響力は非常に強いと思われるところでありまして、集合訴訟の判決と異なる結論を求め、あえて消費者が訴訟を起こすという事態は現在よりも想定しがたくなると考えるところでございまして、事業者側にとってもこういったメリットがあるのではないかと考えられるのではないかということでございます。
 (2)は具体例で、先ほどの学納金返還請求訴訟につきまして、共通争点及び個別争点としてどういうことをすることになるかということについて書いたものでございます。
 1.について以上でございます。

○伊藤座長 それでは、一段階目の判決において確認を求める事項について、共通争点である事業者側の特定の行為の違法性や契約条項の効力などに関して裁判所の確認を求めることが1つの考え方としてありうるし、それを前提として期待できる利益についても若干の説明がございました。
 そこで、早速ですけれども、こういった考え方についてどのような問題があるのか等についての自由な御意見の交換をお願いしたいと存じます。どうぞ、窪田委員。

○窪田委員 後ほど第一段階目の判決の効力との関係でも多分一定の議論が出てくるのだろうと思いますし、ここであらかじめ確定的な結論を前提として議論することは難しいのだろうと思いますが、その点を確認したうえで質問させてください。
 第一段階目の判決において確認を求める事項といった場合に、この1ページ目の一番最初の方では契約条項の有効性という形で示されております。また、 1ページ目の一番下のところでは、具体的な条項を上げた上で、当該条項について、「消費者契約法第9条第1号により、無効となるかどうか」と書かれております。恐らく、争点の設定としては、当該条項が有効であるか無効かという問題と、当該条項が消費者契約法9条によって無効となるかどうかというのは、必ずしも同じではないと思います。多分、学納金返還訴訟に関しては特に典型的だったと思うのですが、最高裁の判決があのような形で確定する前は、消費者契約法10条によって無効となるかどうとかいう論点もあり得たわけです。そうしますと、共通争点だと言っても、具体的にこの条項が有効か無効かというレベルの話と、ある一定の法律に基づいて、それに違反して有効か無効かというのは、必ずしも同じではないということだろうと思います。
 今この段階でどちらにするのだということを決定することはできないと思いますが、そうした違いがあるということは少し確認しておく必要があるだろうと思います。共通争点の決め方によっては、後でどういうふうに争うのかという部分の縛りが随分違ってくるのかなという気がいたしましたので、その点だけ確認させていただきました。

○伊藤座長 わかりました。ありがとうございます。おっしゃるとおりで、無効と言っても、例えば、極端な場合には、公序良俗違反で無効ということもあり得るでしょうし、特定の法律ないしはその特定の法律の中でも、特定の条項との関係でその効力が問題にされてくる場合、幾つかの形があることは、窪田委員御指摘のとおりだと思います。そういう意味では、この辺ももうちょっと詰めて考えなければいけないのかなと思いますが、ただいまの点に関して何か御発言ございますか。どうぞ、野々山さん。

○野々山理事長 この共通争点という概念で記載されているものですが、非常に広い概念で、ここでは事実関係なのか、法律関係なのか等々も余り明確ではないように思われます。ただ今、例示された学納金訴訟では、一応、共通争点は不返還条項の効力とまとめられていますが、学納金の事例として資料2の2ページに共通争点として6項目が上げられています。ここで共通争点としての不返還条項の効力として整理されているのは多分6番目のことだと思います。窪田委員から御指摘のあった、この不返還条項の効力の適用条文が消費者契約法9条1号になっておりまして、他にも適用条文は同法10条とか民法90条かという争点が問題となるところもあるわけですが、ほかにも資料2の2ページ記載のマル1からマル5までの争点というものが共通争点として考えられるわけです。
 更に言えば、この学納金訴訟では、例えば口頭による解除通知が有効か、あるいは入学式に欠席したことがどういう法的意味を持つのか等々の争点がありまして、それぞれその判断によって結論が異なることになるわけですね。
 そうなると、この共通争点という概念は非常に広いものがあるということで、中心的にはマル6が重要になるかと思うのですが、実際には争点整理を行って、最終的にはこれが共通争点であるということを当事者同士で決めて具体的な審理に入る、こういうような過程がやはりどこかの段階で必要ではないかと思います。共通争点として、中心はマル6ですけれども、この第一段階の訴訟では、先ほど言ったような口頭の解除が有効かどうかについては争点にするかどうかを決めていく必要がある。もし、争点としなければ、それは別途、別の形で訴訟提起すればいいわけですけれども、争点とするのであればそこも確定しておく必要です。そういう争点整理ということが、どこかの段階で必要になってくるのではないかと考えます。

○伊藤座長 共通争点といっても、その共通性をどの基準でとらえるかを考えますと、当該紛争にかかわるすべての消費者に共通するものもあるでしょうし、もうちょっと狭い範囲での共通性というものもあると思いますので、そのあたりの問題と、それから、今、野々山さんから、幾つかの争点がある場合に、何が共通争点なのかは、ある程度手続が進行しないとはっきりしてこないのではないかという問題も確かにあろうと思います。
 ただ、これは一段階目の判決において確認を求める事項ですので、訴訟の最初からその点がはっきりしていないといけないという要請もあるように思いますので、そのあたりをここで検討しないといけないかという気はいたしますが。
 それでは、三木座長代理からお願いします。

○三木浩一座長代理 何が共通争点か、あるいは共通争点をどのように扱うのかという問題は、A案を取る場合とB案を取る場合で多少違ってくる余地があると思います。B案を取る場合には、B案の場合は、第一段階目の判決の効力が有利にも不利にも、クラスのメンバーという言い方をしますと、クラスのメンバーを拘束するということです。つまり規範力が関係者全員に及ぶということになりますので、当然、その規範力の中身が何かということが確定していないといけないということになります。
 そういう意味で言いますと、窪田委員がおっしゃった例に即して申しますと、単にその契約が有効か無効かの判断だけでは恐らくB案は不十分であり、その有効・無効の根拠となった法律の条項なり、あるいは法的構成なりを明らかにした形の判決でなければならないと思います。そうでないと、この判決によって何が遮断されているのかということがわからない、あるいは何が他の当事者の、他の消費者等の有利に援用できるのかがわからないということになるからであります。
 これに比べると、相対的にはということですけれども、A案の方は、特定が理論的には若干緩やかでもいいように思います。勿論そうは言っても、A案でその辺の特定が要らないのかというと、それはそうではない。望むらくは、B案と同じ程度の特定がなされて運用されるべきだと思いますけれども、B案と同じでなければ手続として成立しないのかという点は、若干違うのかなという気がいたします。
 それから、特定の仕方ということですが、伊藤座長がおっしゃったように、争点整理までは特定しなくていいということにはなかなかならないだろうと思います。訴え、提起の段階で原告が、今言ったような意味で、どういう事項について、どういう法律構成に基づいて、どういう内容の確認を求めるのかということを明らかにし、それに対して、被告の側でそれでは特定不十分であるとか、この点は特定に加えるべきだというような反論をするというようなことで手続が始まるのだろうと思います。
 更に、裁判所の方で、両当事者が主張していなくても、特にB案の場合がそうでありますけれども、この形では判決効の内容範囲が明らかにならないと思われる点については、積極的に釈明権の行使等をしてそこを明らかにしないといけないということになるのだろうと思います。
 共通争点の中身が何かということについては、私は、事実問題、法律問題、双方が含まれる。事実問題でなければいけないとか、法律問題でなければいけないということはなくて、事実問題が共通の争点となり得る場合には、勿論共通争点として扱われるし、法律問題もまたしかりであると。事案によっては、純粋な法律問題だけが第一段階の共通争点として、法律論争として争われるという事件もあろうかと考えております。

○伊藤座長 どうぞ、大高委員。

○大高委員 基本的にはこれまでに出ました意見と共通するものですけれども、私から重ねて申し上げたいのは、恐らくこの具体的案件において何が共通争点となるかは、当事者双方の主張内容によって変化し得るものであるということは留意しておかなければいけないかなと思っています。
 例えば、まだちょっと説明がございませんが、参考資料1の個人情報流出事件で受託者の注意義務違反ということが抽象的に共通争点として記載されておりますけれども、これは、実際の事件では、恐らくこういう場合は争点として2つあり得ると思います。例えば、その前提となる事実関係そのものに争いがある場合と、前提となる事実関係には争いはないけれども、その事実関係が注意義務違反に当たるのかどうかという評価の点で争いがある場合というのがあると思います。
 具体的な案件でどちらがその事件での共通争点となるかというのは、厳密には、訴え提起の段階では一応の特定はできたとしても、やはり相手方の被告の主張を待って、突き合わせて初めて、そういう意味ではその当該事件おける共通争点が真に確定できるのではないかという気がいたします。そのことをもって、当初訴えの提起の段階で何も共通争点を示さなくてもいいということではありませんけれども、そういう意味では、真の意味で共通争点を確定するためには、やはり相手方の主張と突き合わせた上でないとできないということになると思います。
 これは先々の論点になると思いますけれども、私は、野々山理事長の意見と共通する部分がありますが、私としては、個人的には、共通争点の具体的な審理に入る前における、前回の資料であります手続追行権の審理の段階というものが前回の資料のポンチ絵のところで一番最初の段階で出ていたと思うのですが、その段階で共通争点というものを整理して、一応確定した上で共通争点の審理、具体的な証拠調べに入るというような、一段階目を更に大きく2つに分ける必要があるのではないかという印象は持っております。

○伊藤座長 わかりました。
 どうぞ、それでは、先に山口委員からお願いします。

○山口委員 今、大高さんやあるいは野々山さんが言ったことをもうちょっと敷衍しますと、訴訟の実務におきましては、例えばある人の過失責任を問うという場合に、裁判官は損害額まで関心を示すかどうかというのが、原告代理人にとっては大変切実な問題になるわけですね。とてもじゃないけれども過失が認められないという場合には、裁判官は損害論にはほとんど関心を示さないわけですよ。裁判官が損害論について釈明を求めてくることになると、おっ、これはひょっとしたら過失責任が認められるかもしれんなという具合に考えるわけですね。
 その意味では、先ほどの学納金訴訟で、例えば出席しなかったことが入学の拒否の意思表示とみなすかどうかとか、あるいはいつまでに入学しないという通知が必要かということについて裁判官が関心を示すかどうか。恐らく訴訟実務においては、原告側はそこまで一生懸命主張しようとすると思うんですよ。ところが、被告の方は入り口で、つまり、いつ、例えばある大学の公式行事に参加したかしなかったかなんて問題ではない、学納金不返還の規程は有効なんだからそんな争点なんか関係ないと、被告側は入り口で、余り奥の方の争点に入りたがらないと思うんですね。そこで裁判官がどういう訴訟指揮をするかというのが試されるわけですよ。
 これは名簿流出事件でも同じでして、恐らく名簿流出したこと自体は違法だということになると思うのですが、大きな争点としてあるのは、では、どの程度のプライバシーを侵害された人については幾らとみなすかというところで、要するに流出した情報の内容いかんで損害額が類型的に分けられるのではないかと思うんですね。
 共通争点として、損害額の考え方についてまで原告側は踏み込みたいと思うと思うんですよ。ところが被告側はそんな点にまでできるだけ踏み込みたくない。そこで裁判官はどう訴訟の指揮をするか迷うと思うんですね。だから、その点では、どういう条文だてをつくるかというのはちょっと難しいところなんだけれども、何をもって共通争点とするか、あるいはだれがどう争点を整理するか。先ほど野々山さんは当事者において決めておく必要があると言われましたが、恐らく当事者間では決まらないわけですよ。そのときにどういうルールをつくるかというのは、実務上はどうするのか工夫が必要と思いますね。

○伊藤座長 そこは、実際の訴訟の進行を想定するといろいろ難しい問題があると思いますし、また、当初に判決において確認を求める事項として掲げたものが、その後の訴訟の進行や相手方の対応によって変わるということは、あり得る話で、また、それはできない話でもないと思うんですね。ただ、一応基本的な視点といいますか、制度設計を考える前提として、何を出発点とするかというぐらいのところで、今の段階ではお考えいただければよろしいかと思うのですが、どうぞ、中村委員お願いします。

○中村委員 まず、まだ細かい条文の立て方というところまで入っておりませんので、これがいいというところまでは至らないのですけれども、共通争点を確認しなければいけない、これは、集合訴訟である限りにおいては当然のことであると思います。今いろいろ議論がございましたように、一番最初の時点で完全に確定ができるのかどうかということについては、事実上はいろいろ難しい点もあろうかと思いますが、そこの部分は、通常の訴訟でも、訴えの変更でありますとか、そういうことは裁判官の指揮を受けて変更することは可能でございますので、そのあたりはそういう形で対応することも考えられるのではないかと考えております。
 他方、事業者としての立場ということで、ここで1ページのマル2というところで、審理の効率化に資すると、ある程度まとまった訴訟が行われる、ここの部分は確かにあると思うのですが、ここは必ずしもここで全部まとめられないですが、判決効というところの中で、本当に判決効がすべてに対して及んでくるということであれば、それがそういう形で事業者にとっても応訴の負担が減少することになります。そういう効果が考えられるのですが、今、若干ありましたように、片面的効力でありますとか、そういう形ですと、そういうメリットは事業者の方にはないということになるので、双方の公平性というところの観点で見ますと、やはり共通の争点のところは、必ずしも、結果として一番初めからは若干変わるということがあるにしても、比較的早い段階でどこかのところで決めると。その上で、その中の審理に入った上で共通争点の判決をするという形で、余りにも後になってからの変更というようなことですと、対応についても苦慮する部分があるのではないかと思いますので、そのような形で整理をいただければと思います。
 あと1点だけ、共通争点の部分と次の手続とのつながりというところについて、これは後の関係になるのかもしれませんが、ちょっとわかりにくいところもございまして、仮に消費者契約法何条何号かに違反して無効であることというところの争点に対しては、実際には最後の手続、2番目の手続においては損害賠償というような形になってくるのだと思いますので、その辺の関係性の立て方というようなところについても、今後議論させていただきたいと思います。
 以上でございます。

○伊藤座長 中村委員がおっしゃった第3番目の提案は、A案やB案のような形で制度設計をしていく上で一番重要な問題になるかと思います。
 それから、共通争点と言っているものですから、従来の訴訟実務における争点という概念に引っ張られる向きがありますが、私の受け止め方としては、共通争点となるべき事項という程度のことだと思うのですけれどもね。
 それから、中村委員の御発言の中で、事業者側にとって保護されるべき利益について考えてみると、特に請求棄却判決によって、事業者側の行為に違法性がないとされたときには、他の訴訟追行主体に対して事実上の影響しかないのでは、この制度が作られることによる事業者側の利益がないか、あるいは少ないのではないかという御指摘、よくわかりました。
 どうぞ、山本和彦委員。

○山本委員 2点ですが、第1点は、今の中村委員の点に関してで、そのことは、つまり事実上の効力しかない場合には、被告側、事業者側のメリットが少ないということ自体はそのとおりだと思うのですが、ただ、この第一段階で原告が相当しっかりした十分な攻撃防御を尽くして、その結果、敗訴したということであるとすれば、事実上の影響力にとどまることは確かでありますけれども、実際上は、やはり一般の消費者が個人で再訴をしようと思うということはかなり少なくなるだろうし、また、その訴訟が起こされても、裁判所の判断においても、それは事実上の効力にすぎませんが、やはりそれは相当の影響力はあるだろうと思います。そういう意味では、事実上の効力であったとしても、実際上は、やはり相当程度、再訴の負担というものは少なくなる可能性はあるのではないかと。
 ただ、それだけでは私も事実上の片面的な効力というものを正当化することは難しいと思いますので、実際上、そういう再度の応訴というものが生じないような制度的な手当てとか、あるいはその対象範囲をある程度限定するとか、そういうような工夫は必要だろうと思っておりますが、実際上は、そういうことが言えるのではないかと思います。それが1点目です。
 2点目は、その共通争点の問題でありますけれども、私自身は、この「共通争点」という名前がついていますが、これは結局、第二段階で個々の消費者が請求するに際して、その請求権を基礎づける事由のうち、その請求を勝訴に導くような事由のうち多くの消費者に共通している事項という意味合いなのだろうと思います。それは三木座長代理が言われたように、法律上の問題であることもあるし、事実上の問題であることもあると。それはいろいろなものがあるということだろうと思いますが、対象としてはそういうものなのだろうと。だから、この資料2の2ページのところで共通争点として学納金の中で上がっているもののうち、そういう意味での共通争点になるのはやはりマル6のものであって、マル1からマル5というのは、マル6を導く、訴訟法の意味では争点でありますけれども、ここで確認の対象となるべきものは、このマル6で消費者契約法上の効力が否定されることによって、個々の消費者の不当利得返還請求権が基礎づけられるということだろうと思っています。
 そういう意味では、先ほど野々山さんが言われた口頭による解除が認められるのかどうかというのは、共通争点になり得ることなのだろうと思います。ただ、それは、先ほどの三木さんの話で言えば、クラスの単位がやはり違うので、それは口頭で解除したクラスにおける共通争点ということになるので、そういう意味では、クラス・アクションなんかで言われるサブクラスについての共通争点ということになるだろうと思います。ですから、そういうような多層的な共通争点というものをどういうふうに扱うかが一つの問題だと思います。
 いずれにしても、何がそういう意味での共通争点になり得るかというのは、いろいろな事案について個々的に検討、先ほど情報漏えいの話も出ましたが、典型的な事例について、やはり個々的に検討していって、最終的に法律の条文としてどういう現れ方になるかはともかくとして、こういったあたりが共通争点になるのだというようなコンセンサスを今後築いていくことが重要かなと思っています。

○伊藤座長 ただいまの議論で出ておりますけれども、ここで言う共通争点となるべき事項とか、あるいは、先ほど中村委員、山本和彦委員から発言がございました事実上の影響力というようなことについての考え方ですが、これは、裁判所から見たときに、何かそういった点についてのお考えがあれば聞かせていただければありがたいと思います。

○朝倉課長 事実上の影響力の話ですけれども、私は、先ほど山本委員がおっしゃられたのと同様の考えです。勿論、すごくラフな審理が行われて負けたという事案であれば、それはもう一度実質的に審理しなければならないだろうという気にはなると思いますが、そうではなくて、原告が、しっかりと攻撃防御をして、しかも場合によっては上訴までして確定したというような場合の事実上の影響力というものは、おそらく最高裁判決がある場合の事実上の拘束力と同じような話で、裁判所としましては、後の裁判官はかなりそれに配慮していくことになるだろうとは思います。
 それから、共通争点と言いますのは、今までいろいろな方がおっしゃられたように、実はいろいろな切り口がございまして、何となくイメージを考えるのは簡単なのですが、実際に審理をしようとしますといろいろな問題が出てくるというのは、おっしゃるとおりだと思います。
 今まで出たお話の中でちょっと気になった2つの問題点があります。1つは、責任論、因果関係論、損害論の部分のうち責任論の部分というのは、個々の勧誘行為を問題とするものではなくて、例えば公序良俗違反とか消費者契約法違反を問題とするものであれば比較的共通のものを判断しやすいと思いますが、因果関係論と損害論になってまいりますと、これは対象を何にするかというところとおそらく関係してきます。先ほどどなたかがおっしゃった個人情報流出のようなある程度定型的な例では、因果関係も損害も定型的ですから比較的わかりやすいと思うのですが、そうではない事案になってまいりますと、目の前にいない人の、例えばこれは適格消費者団体にとって必ずしも知らないようないろいろなパターンがもしかしたらあるかもしれないわけですから、そのパターンを全部想定して、こういうパターンの共通争点はこういう人のこういう損害であるというものを全部主張しておかないと、共通争点として出てこないわけですよね。それはなかなか難しいし、裁判官も、目の前にいない人のそういう損害論があり得るのかというものを推測で判断するのは非常に難しいのではないかと思っているところでございます。このあたりのところは、対象のことも含めて、最終的に共通争点としてどこまで判断するのかということをきちんと考えなければいけないと思っております。
 それから、もう1つ、先ほど三木座長代理から法律論と事実認定論というお話がございましたけれども、例えば事実認定論であっても、主要事実レベルなのか間接事実レベルまでいくのか。先ほどどなたかが考え方とおっしゃったのですが、考え方の共通争点は一体どのようなものなのか。弁論主義との関係でも、間接事実というのは必ずしも弁論主義の適用がありませんので、当事者が同意したものだから良いという話には必ずしもなってきませんから、主要事実レベルで整理するのかどうかという問題点も出てくるのかというあたりについても整理が必要と思ったところでございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 ほかの方で今の議論の点に関係することであれば御発言をお願いいたします。どうぞ、窪田委員。

○窪田委員 せっかく大きな議論で本題の部分を言っているときに余り個別に、具体的に上がっている例に即してお話しすべきではないのかとは思うのですけれども、ちょっと前提を確認しておきたい部分がありますので、その点だけ補足させてください。
 学納金が素材として取り上げられておりますが、そこでは、比較的単純にある条項が有効か無効かという部分に関しては共通争点になり得るというイメージなのかと思います。しかし、この問題に関する実際の判決は、当該条項が有効だとか無効だとかと言っているのではなくて、平均的損害があるかないかという問題を取り上げて、入学前だと平均的損害というのはないのだから、それを超える部分は全部無効になり、結局、結果としては特約が無効になるとしています。他方、4月1日以降に関しは、平均的損害というのは授業料相当額なのだから、それ以降については平均的損害を超える損害はないという形で結論を導いています。その意味では、一般論として特約が有効かどうかという議論をしているわけではありません。先ほど山本委員からお話があったサブカテゴリーを、ここでも前提としていて、3月31日までに入学を辞退した者と4月1日以降に入学を辞退した者で、やはり平均的損害という形で扱いが違っているということですので、前提として、その点だけ確認させていただきたいと思います。
 私は前回欠席しておりましたが、その中でも具体例に即して検討する必要があるというご指摘があったかと思います。この問題に関して言うと、いま触れたような部分は少し大事な点だと思いますので確認させていただきました。

○伊藤座長 ありがとうございます。確かに公序良俗違反によって契約条項が無効とされるような場合だと、そういう問題はないのかもしれませんが、おっしゃったようなことを考えると、共通争点そう一義的には決まってこない、検討しなければいけない点があることはよくわかりました。
 どうぞ、野々山さんお願いします。

○野々山理事長 今の点ですけれども、確かにこの最高裁判決は4月1日を基準に、いつまでに入学辞退の申し出をするかによって結論を分けているわけです。原告が取り上げていくクラスとしては、恐らくその年度において、ある大学に対して入学辞退を申し入れた人の集団ということになったときの争点だと思うのですが、となると、これは、結論としては原告は一部敗訴して一部勝訴したとことになるのではないかと思っています。
 また、共通争点ということを考えるうえでは、A案では、後で勝訴部分を消費者の方で活用するとして、どこを活用できるのかという観点も必要になってくる。だから、ある程度、この争点はこういう形になりましたねということで確定して、後でそれを活用できる形でのものにしていく必要があると思っています。
 個人的見解から言えば、私は、A案かB案かと言えばA案だと考えています。理由はまた機会があれば申し上げますけれども、共通争点の確定の関連で言えば、B案ですと、活用するだけではなくて、その判決効力が及ぶということになりますから、かなり厳しい特定性が求められてくるということで、争点の特定がなかなか難しいのではないかということを思っています。
 A案は、判決の効力が消費者に片面的というか、消費者側の敗訴は他の消費者に効力が及ぶかどうかの問題があります。効力が及ばなければ、事業者の方では勝訴しても効力としては事実的なものになる。だけど、それは先ほど山本委員とか朝倉さんがおっしゃったように、強力に事実的効力は及ぶと考えられます。この学納金判決は、判決の中で総論部分と各論部分と分かれております。この総論部分というのは、恐らくここで言う共通争点に近い判断だと思うのですね。これが最高裁まで来た後に、消費者が一部敗訴した部分が後にこれに反する解決の実態になっていません。実態としては、やはりこの総論で判断された形で全部処理がされているわけです。ほかの専門学校等も含めてそういう解決になっているわけですから、最高裁まで行って判断された争点というものは、仮に事実上の効力であっても十分機能するし、そのことから片面的効果としても、それが事業者の方にとって大きな負担になるとは考えられないと思っております。

○伊藤座長 三木座長代理、どうぞ。

○三木浩一座長代理 この資料3の1のタイトルは「一段階目の判決において確認を求める事項」となっておりまして、そこで書かれている内容それ自体は特段問題はないのですけれども、ここに書かれていないことで重要なことは、共通争点というものが対象としている当事者の範囲、どういうグループに対しての共通争点なのかという問題は、これはここでタイトルで書いている意味での確認を求める事項そのものではないのかもしれませんが、やはり一段階目の判決において共通的に審理をしておかなければいけない重要なポイントだろうと思います。それは、別な言葉で言えば、先ほど何人かの委員の方の口からも出ましたクラスという問題であります。
 とりわけB案を取りますと、B案は、一段階目は、いわゆるオプト・アウト型クラス・アクションの形を取りますので、その場合にはクラス範囲の特定というのは、これは必須のことだと思います。朝倉課長がおっしゃった、顔の見えない人まで想定して裁判所は審理をするのかという問題は、まさにそのとおりで、とりわけB案では、そういうことはあり得ないけですね。つまり、どのクラス範囲にその共通争点の判決の効力が及ぶのかということですから、当然、審理の始まる最初の段階で、原告は、自らが考えるクラス範囲を特定して訴えを起こさなければいけないですし、また、裁判所は、一段階目の判決をするときに、そのクラス範囲を特定した判決をしなければいけない。そのクラスというは、山本委員がおっしゃったように、1つの訴訟1クラスということには必ずなるわけではないのであって、大きな共通争点が全員にあっても、その中の一部については一部にしか共通争点がないというケースはよくある話ですが、サブクラスということで、クラスが更に階層的に特定されていくサブサブクラスというケースもあります。
 B案は、繰り返しになりますけれども、クラス特定というものが一段階目の審理事項、確認事項において必須であるわけですが、A案でクラス概念が全く要らないかというと、私はそうではないと思います。勿論B案と同じだけの特定が要るかと言われたら、それは理論的には緩くていいのだろうと思いますけれども、A案であっても、この共通の争点が10人の人に及ぶのか、10万人に及ぶのかというのは全く違う話になってくるし、裁判所の審理も違いますし、もっと言えば、被告の防御の仕方も違ってくる。あるいは、和解等の判断をするときに、それがわからないとできないわけですね。なので、一段階目の判決、審理においての必要な事項という意味では、その点は是非、今後こういうペーパーをつくっていただけるのであれば盛り込んでいただきたいし、また議論の前提にしていただきたいと思います。
 それから、同じくペーパーのつくりに関してのもう1点であります。マル2のところで、一段階目で共通争点を審理することのメリットのようなものが書かれています。ここに書かれていること自体に特に問題があるわけではありませんが、書かれていないものとして、和解を促進するというか、和解を調達するドライビングホースになるのだという点は、是非強調しておかなければいけないだろうと思います。
 二段階型の訴訟は、A案であろうと、B案であろうと、それ以外であろうと、何のために手続を二段階にするかというと、共通争点を審理するのはまとめてできると。しかし、個別争点を二段階目で個別に審理するのであれば、さほどの意味はないわけですね。個別争点は、定義上、個別に審理しなければいけないわけですので、事案にもよりますけれども、10万の個別争点があれば10万の審理が必要になるわけですね。そういうことでは困るので、共通争点を審理して、しかも判断を下す、上訴も認めて、手続内では確定した判断にすることによって、被告の側も和解に応じる姿勢ができる、原告の側も、原告といいますか、原告の背後に背負っている消費者たちも含めてですけれども、和解がしやすくなるということで、二段階目が主として想定したのは、やはり和解手続、これは勿論調停とかを含めてですが、広い意味の合意型の解決であるということだろうと思います。勿論、合意型の解決ですから、一方が応じなければ成立しないわけですが、実際には、諸外国の二段階型の仕組みを見ると、ほとんどが和解で成立しているし、また、和解で成立することを目指して手続が進められることが一般であります。
 更に言いますと、これは二段階型に限らないのであって、この我々の検討資料で言うC案に当たるオプト・アウト型クラス・アクションであっても、国によりますけれども、アメリカなどで言えば99.何%が和解で終わっているということで、和解調達の手段という側面を落として議論することは、本質に反しているということを強調しておきたいと思います。

○伊藤座長 黒沼委員お願いします。

○黒沼委員 和解をどういう段階でどのように認めるかというのは今日の議論の論点ではないと思うのですけれども、三木座長代理の御発言とちょっと違う趣旨のことを述べさせていただきたいと思います。
 これは、和解に対する認識が違うということがあるのかもしれませんけれども、クラス・アクションを考えていく場合に、実際にその制度がどのように社会とか企業行動に影響を及ぼすかということに十分注意を払う必要があると私は思っております。
 前回、A案、B案の概略を説明していただいたのですけれども、私は一つ十分理解できないところがありまして、A案の取るような二段階型の場合、二段階目で和解で解決するのはよいとしても、第一段階で和解をすることが私は認められないと考えていたのですが、和解をするとすれば、裁判外で和解をして取り下げると。それについて裁判所がどのように関与するかという観点が残るのだろうと考えていたのですけれども、そういう観点から見ると、私は、二段階型の第一段階では和解をさせるべきではないと思っておりまして、その点がA案とB案の大きな違いではないかと考えていました。
 私が一番危惧していることは、この制度が導入された結果、責任原因が認められないのにコスト・ベネフィット・アナリシスで企業が和解をしてしまうということが、社会に及ぼす影響が一番問題であると考えております。裁判制度は時間もお金もかかるのはわかっていますけれども、それをできるだけ簡易迅速にやっていただいて、効率よく運営することを前提にして、おかしな和解を生まないような制度にすることが重要ではないかと思っているわけです。したがって、二段階型のクラス・アクションは、和解調達の手段という側面が重要で、その点を落としてはならないという御認識とはちょっと違う認識を持っているということを発言したいと思います。

○伊藤座長 わかりました。和解の点については、また別途議論をする機会があろうかと思いますので。

○三木浩一座長代理 誤解があろうかと思いますので。

○伊藤座長 どうぞ。

○三木浩一座長代理 私がさっき申し上げたのは、一段階目の判決を受けての二段階目の和解の話をしたわけですので、ちょっと今の御発言とは趣旨が違うように思います。

○伊藤座長 黒沼委員が懸念されるように、一段階目で事業者が訴訟追行の負担に耐えかねて和解を余儀なくされるということも考えられる問題ではありますので、そのあたりもまた別に議論していただければと思います。
 判決において確認を求める事項に関して、他に御意見がございますでしょうか。
 今までのお話を伺っていますと、まず、ここでの共通争点に関して、それをいつの段階で確定するのか、その内容は何か、例えば契約等の効力とか、事業者の行為の違法性というものが考えるべき材料として提示されておりますけれども、とはいっても、その根拠に関してはいろいろなものが考えられるので、どの程度に特定を求めるかということになると、なお検討すべき問題があるという御指摘もございました。
 それから、クラスの問題と言われましたが、共通性を何を基準にして考えるのかということになると、これもさまざまなとらえ方があろうかと思いますので、そのあたりも今後の検討の課題にしなければいけないと思います。 更に、判決の効力に関しましては、共通の争点について原告の請求を認める、または認めないという判決がなされたときに、B案であればともかくも、A案の考え方に基づいた場合に、事実上の影響力に委ねるだけで勝訴した事業者側の利益保護に十分なのかどうかというあたりについての御議論もいただいたように思います。
 また二段階目の手続との関係や和解の問題などについても御議論いただいたと思いますので、大変有益な意見交換がなされたように思います。
 そこで、引き続き次回以降の場での審議をお願いしたいと思いますが、よろしければ、今回は、この事項自体については、区切りをつけて次の問題に移りたいと思いますが、いかがでしょうか。その前によろしければ10分ぐらい休憩をとりたいと存じます。

(休 憩)

○伊藤座長 それでは、審議を再開いたします。
 資料3の2、手続追行主体について、加納さんからの説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料3の3ページでございます。先ほど御議論いただいたこと、また、3.のところで判決効の話を掲げさせていただいてございます。その辺も踏まえた御議論になろうかと思いますが、A案、B案のいずれの考え方に立つにせよ、手続追行主体としてどう考えるかということについては、基本的には一段階の手続において、多数の消費者の利益の擁護を図るため、共通争点を確認するという役割を果たすにふさわしい存在は何かという観点から検討すべきと考えるところでございます。
 (2)以下で幾つかの視点としまして、各所でこれまで議論されてきたところを私どもの方で一定の整理を試みたものでございますが、まず、訴訟物をどのようにとらえるかということにもよろうかと思いますが、個々の消費者の有する請求権を訴訟物ととらえますと、その請求権の帰属主体が当事者適格を有するのが原則であることを踏まえ、当該消費者(学納金返還請求訴訟の場合で考えますと入学辞退者)とすることも考えられると思います。また、当該消費者にかわって、当該消費者から訴訟追行の授権を受けた者とすることも考えられると書いております。
 他方、共通争点たる法律関係などを訴訟物としてとらえるとしますと、その消費者とは別に、そうした共通争点を確認するにふさわしい者とすることも考えられるとしております。
 (3)ですが、また、手続追行主体が一連の手続、最終的に二段階目まで至ることを想定し、その一連の手続においてどういう役割を担うかにもよると思いますが、例えば二段階目におきましても、審理の効率性を図る等の観点から、一段階目の手続追行主体が消費者の請求を取りまとめるとした場合には、そうした役割を担える、最後まで一気通貫に当該手続追行主体が責任を持って役割を担うことが必要ではないかと考えるところでございます。
 (4)ですが、更に制度としまして2つ上げておりますけれども、1つは、制度の活発な利用を図り実効性を確保するためには、できる限り広く手続追行主体を広げていくという観点も考えられる一方、制度濫用防止を図るべきという観点も考えられるところでございます。
 (5)ですが、以上を踏まえますと、手続追行主体につきましては、訴訟物や一連の手続において担うべき役割、制度の実効性、濫用の防止といった観点を踏まえながら、多数の消費者の利益の擁護を図るため、共通争点を確認する役割を果たすにふさわしい存在とすべきと考えられるとしております。
 「なお」と書いておりますが、手続追行主体について一定の要件を満たすことを必要とした場合には、だれが、どのような場合に、どういう基準で判断のするかについても、併せて検討する必要があると考えられるところでございます。
 この点につきまして、2ページから、参考としまして、現在の適格消費者団体につきまして、どういう考え方で、どういう基準で、どういう認定をしているのかということを、若干長くなりますが、敷衍して御説明させていただきたいと思います。
 まず、参考2でございますが、適格団体につきましては、国民生活審議会における御議論を踏まえまして、このように整理したところでございます。
 第2の3.(1)基本的な考え方というところでございますが、消費者全体の利益を擁護するため、一定の消費者団体に対し差止請求権を認めるのだということを踏まえ、以下の3つの観点を基本とすべきであるということで、ア、イ、ウと書いておりまして、消費者利益代表性、訴権行使基盤、弊害排除という3つの観点から、その団体のあり方、主体のあり方を考えるということにしておりまして、(2)の適格要件の在り方として、マル1からマル7を考えたということでございます。
 この下に、括弧しましてその3つの観点と具体的な在り方の関係は以下のように整理されるとしておりまして、消費者利益代表性からは、団体の目的であるとか活動実績、団体の規模、事業者からの独立性、訴権行使基盤から、法人格や組織運営体制、人的基盤、財政基盤など、弊害排除から、反社会的存在等の排除というものが要件として導かれると整理し、マル1からマル7と整理したところでございます。
 それから、(3)の適格要件への適合性判断の在り方については、行政が判断するやり方と裁判所が判断するやり方の双方が考えられるとしておりますが、7ページですけれども、それぞれメリット、デメリットがあることを踏まえ、行政があらかじめ適格要件の適合性を公正で透明な手続のもとに判断するのがよいと整理したところでございます。
 7ページの真ん中あたりから、では、どういう要件が今あるのかということで消費者契約法の規定を書いておりますが、法人格を有していることとか、目的や活動実績などのさまざまな要件が規定されているというものを掲げております。
 7ページの一番下からは、その申請書類ということで書いておりまして、8ページですが、こうした申請書や定款などの書類を申請者から出していただいて、それを消費者庁において審査するとしております。
 9ページでございますが、適格団体の認定手続もいろいろな特徴を有しておりますので、御説明いたしますと、申請を受けてから、標準処理期間(60日から90日)以内ということで認定また不認定の決定をするとしておりまして、その間、審査をするわけでありますが、一定の手続を設けておりまして、1つは公告及び申請書類の縦覧というところでございます。これは、公告はインターネット等でもいたしますが、申請書類の縦覧につきましては、消費者庁において申請書類をどなたでもごらんいただく。更には、ホームページにおいて掲載もいたしますということで、こういう書類をごらんになった一般国民の方からの御意見をちょうだいすることを前提としております。実際の実務におきましても、この書類を見て、こういう意見があるというものをいただくことがございます。
 更に、経済産業大臣の意見や警察庁長官からの意見聴取ということをしておりまして、経済産業大臣につきましては、特商法での差止請求を行使し得ることに関し、活動実績の要件について意見を聴く、警察庁長官につきましては、暴力団の排除などの要件につきまして意見を聴くというようにしております。
 そうしまして、審査の※のところですが、縦覧に供した申請書類に関する公衆からの情報提供あるいは経済産業大臣や警察庁長官から聴取した意見などを踏まえまして、申請書類に基づき、認定要件の適合性について審査するというような実務の運用にしております。
 手続追行主体につきましては、以上でございます。

○伊藤座長 ただいま説明がございましたように、手続追行主体が、多数の消費者の利益の擁護を図るため、共通の争点の確認を求める役割にふさわしいものでなければいけない、その一般論については、恐らく御異論のないものとは思いますけれども、ただ、裁判所に判断を求める事項との関係であるとか、それから二段階目の手続との関係ですとか、そういった点との関連性を踏まえますと、いろいろな考え方が成り立ち得るところでありますし、また、かつ、このA案、B案を考える上で、かなり中心的な問題としての重要性を持っているかと思いますので、委員各位におかれましては、是非活発な御意見の開陳をお願いしたいと存じます。どうぞ、池田委員。

○池田委員 まず、事務局に感謝します。前回、全然ちんぷんかんぷんでよくわからない面が多数あったのですけれども、今回、おかげでかなりわかりやすくなりましたので、もっとわかりやすい資料になることを私としては期待したいと思います。
 この手続主体については、先ほどの論点整理でお話しされたとおりではないかと思いますけれども、やはり多数の消費者の少額被害を集合訴訟で対象としてやっていこうという検討をするわけですから、多数の消費者の信頼に足り得る組織なり人であるべきということは、大前提だと思います。そういう信頼に足り得る組織なり人だということになれば、今そういうことであるのは、適格消費者団体の説明があったということで、私は、そういう人たちをこういうものの対象にしていくのがいいのではないかと思っております。
 特に、こういう新しい仕組みをつくりますと、消費者委員として昨今のいろいろな悪質な商法の被害を見ていますと、必ずやこれを緩めると、これを利用した悪質な商法があるということは、恐らくもう100%あると思いますので、安易に対象を広げるのは非常に難しいのではないかと思います。
 ただし、どういう認可をしていくかということは改めた検討課題だと思います。やはりきちんとした調査をした上での認可したそういう人たち、組織ということであるのは当然ではないかと私は思います。

○伊藤座長 池田委員からは、事前の適格性についての審査を経た団体について、この種の手続追行の資格を認めるのが適切ではないかという御意見でしたが、今の点に関して、まず磯辺委員からお願いします。

○磯辺委員 適格消費者団体として活動しておりまして、こういうふうに期待を持って議論していただけると非常にありがたいと思っております。冒頭、そのことをまずお礼申し上げたいと思います。
 適格消費者団体の日ごろの活動から集合型訴訟制度の必要性を感じているということは、これまでも議論の中でお話を差し上げてきました。私どものところに入ってくるような少額多数の被害というのは、一人一人が訴訟を提起してまで権利回復するのは非常に困難であるということがございますので、そういった被害について、適格消費者団体としては、積極的に集合型訴訟制度を活用して救済を図っていく。そういう仕組みができることによって、悪質な事業者が、本来、権利回復を認めるべき事案についても、少額であるがゆえに相手が訴訟しないことを見越してADR手続等、あっせん手続等を拒否することを防ぐという副次的効果もあり、被害救済に結びつくのではないかと思っている次第です。
 それと併せて、二段階型集合型訴訟制度であれば、もう少し高額な被害で、現在でも一人一人が訴訟を提起しているような事案であっても、集合的に救済をすることで、訴訟が提起できない方々についても併せて救済を図ることが可能ではないかと感じています。そういった事案を想定した場合には、必ずしも適格消費者団体でなくとも、一人一人の被害者の方々が、自らの訴訟を追行するのと併せて集団的な被害も救済したいという意思を持てば原告になり得る仕組みというものがあった方がいいと思います。消費者の権利全体を擁護する立場から考えると、そういう仕組みを是非併せて実現していただきたい。そういう観点から、原告適格手続追行主体の問題は、個々の被害者についても認め得る方向で議論をしていただきたいと思います。
 ただ、そうは言っても、自らの被害を裁判所に訴えるというだけでは済まず、共通争点を主張する必要があり、訴訟手続についても通常の訴訟に比べて複雑になるかと思います。そういう点を考えると、個々人の方々が自分の訴訟を起こす際にこの制度を活用するとすれば、少なくとも弁護士さんが必ず代理人としてつくということを条件づけて、不適切な制度行使については、それで一定の制限をかけていくという対応としてはどうかと思います。
 それと併せて、適格消費者団体の数が今、全国で9つということもございます。それぞれの団体の規模も決して大きくはないということがございます。そういう意味では、集合的に発生している消費者被害は多数発生しているのが実態だと思いますので、その救済を十分図るという観点からも、手続追行主体は、被害者個人、被害者集団でもよろしいかと思いますが、併せて認めていくという議論が必要ではないかということを感じております。

○伊藤座長 今の磯辺委員の御発言の後半部分は、個人が訴訟の当事者となって、自分自身の権利の救済を裁判所に求めることに加えて、先ほどの前半の議論にありましたような共通争点に関しても、裁判所の判断を求めることも認めるべきだということになりますか。今、確定的なお考えを伺おうというわけではありません。ただ、御発言の趣旨はそういうふうに受け止めてよろしいですか。

○磯辺委員 個人の方が弁護士の代理をもって集合型訴訟制度、二段階型を活用して共通争点について判断をもらい、二段階目で自らの救済も図るということで、手続の中で当事者も救済されるということを想定して意見を申し上げました。

○伊藤座長 わかりました。
 それでは、桑原委員、三木委員の順番でお願いいたします。

○桑原委員 この資料の3ページの(4)に書いてありますとおり、この制度を活発に利用していただくのと濫用を防止する、この2つを両立させることが、この制度の運用上、非常に重要だということは申すまでもないところだと思いますけれども、とりわけ濫用防止というところを私としては是非強調していただきたい。重要なテーマだと思っております。
 だれがふさわしい団体であるか否かをだれが判断するかというところは、いろいろ御議論もあろうかと思います。行政に判断していただくのがいいのか、裁判所に判断していただくのがいいのか、現時点においては、私には判断はつきませんけれども、この制度が濫用されてしまいますと、この制度そのものの運用が反社会的なものにもなりかねないというような面もございますので、濫用を食い止めるというところが非常に重要なポイントになるのではという気がいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

○伊藤座長 どうぞ、三木委員。

○三木浩一座長代理 資料の3ページの2の(1)には、「A案又はB案のいずれの考え方に立つにせよ」と書いていますけれども、揚げ足を取るわけではありませんが、やはりA案を取るのか、B案を取るのかによって多少考え方が違うというところは押さえておくべきだろうと思います。
 相対的に言いますと、B案は第一段階目だけとはいいながら他人の権利も併せて行使するという要素がありますので、A案に比べると当事者適格はより厳しく考える必要があると。それと比較しますと、A案は、他人の権利を処分するという要素が、これもA案の構成にもよるかもしれません。A1案というのは私にはちょっと理解しにくい案ではありますけれども、A1案を取ればそういう要素が出てくるのかもしれませんが、A2案であれば、他人の権利を処分するという要素は余りないように思いますので、適格の点は、相対的には広く考えていいだろうと思います。
 我々の検討対象ではないですけれども、B案よりも更に適格を厳しくとらえるべきものはC案でありまして、全面的なオプト・アウト型であります。比較のために申し上げるのですけれども、C案に相当するのは、その最も強烈な手続はアメリカのクラス・アクションであります。アメリカのクラス・アクションは、徹頭徹尾といいますか、一段階目、二段階目を分けていないという意味で、クラスメンバー全員の権利を代表原告が行使し、処分してしまいますので、代表当事者をだれにするかという問題が、最もシビアな問題として現れてくるという手続モデルです。
 アメリカのクラス・アクションですけれども、代表当事者についてどういう要件が課されているかというと、代表当事者の適格性というか適切性を裁判所が事件ごとに判断するという手続になっています。そのときに、では、どういう判断がされているのかということです。あるいは、別な言葉で言うと、全員の権利を処分するような訴訟における代表原告として適切なものはだれかということであります。私が知る限りでは、アメリカで代表原告の適切性の判断の際の基準は、人柄でもなければ経歴でもない、そんなものは、ある意味では判断しようがないわけで、それは法律上の能力だろうと思います。つまり、適切に法的な能力、知識がないと適切に訴訟を追行できないと。それで十分な審理ができない。それによって、本来勝つべき事件で負けてしまうかもしれない等々の問題が生じるわけです。
 法的能力は、本人訴訟の場合には恐らく厳しく審査されると思います。ただ、代理人弁護士をつけている場合には、当然、弁護士がその法的能力を補ってというか、弁護士が訴訟を行うわけですので、基本的には、よほどのことがない限り適格代表性は認定されているのだろうと思います。実際に、私もすべての事件を知っているわけではありませんけれども、弁護士がついている事件であれば、どんな事件でもといいますか、ほぼその点はクリアされているように思います。
 そういうことで、一番適格認定が厳しい姿であるべきC案といいますか、あるいは全面的オプト・アウト型の場合の適格の基準というのは、法的な能力あるいは弁護士がついていることだろうと思います。アメリカは、弁護士強制制度を取られていないですけれども、その意味では、クラス・アクションに関しては、先ほど磯辺委員から、個人を当時者にする場合には弁護士強制にすべきだとおっしゃいましたが、運用上、それに近い姿が取られているのではないかと思います。
 それに比較して、B案の方が手続としては他人の権利を処分する要素が低いわけであります。B案の場合どうかというと、C案の場合以上に厳しい適格を要求するということは考えにくいので、C案と同程度かそれより緩いという程度でいいように思います。私自身は、B案が取られるのであれば、やはり法的能力を適格審査の対象にすべきだろうと思います。したがって、弁護士がついている場合には、基本的にはだれでもいいということになるのだろうと思います。
 A案は、他人の権利を処分しないので、その意味では、一番極端な姿を考えれば、現在の普通の訴訟と全く同じ基準でいいという考え方も成り立ち得るとは思います。それは、つまりだれでも訴えを起こせると。人であればというか、自然人または法人であれば起こせるという考え方もあり得ると思います。ただそれが、やはりそうは言っても事実上、共通争点をみんなのために審理するのだということを重くとらえますと、B案同等ということになるという考え方もあろうかと思います。
 先ほど桑原委員がおっしゃった、濫用が容易に起こるような制度では困るというのは、おっしゃるとおりであると思います。したがって、そういう懸念がもしあるとすれば、そういう懸念を避けるような制度設計をしなければいけないことになります。
 では、濫用というのが、今我々が検討している訴訟で、どのような手続であれば、どのような姿で起きるのかということになります。アメリカのクラス・アクションの場合は、御承知のように、濫用が非常に指摘されているわけでありますが、あれは、日本で言うC案のような全面的なオプト・アウト型であるのに加えて、更に懲罰的損害賠償であるとか、民事陪審であるとか、完全成功報酬制のような濫用の起きやすい制度とセットになっているところが問題だと思います。
 それに比べますと、そういう懲罰的損害賠償なる制度を持っていない場合のC案のような制度であるところのカナダやオーストラリアでは、これはだれでも訴えを起こせるというクラス・アクションですが、濫用の批判というものは起きていないということになります。
 それに比べると、B案は更に濫用の危険が少ないということになります。
 A案については、他人の権利を処分しませんので、普通に考えると、濫用したくても濫用がなかなか難しいというか、これで濫用してくれと私が頼まれても、仕方がなかなか思いつかないというところがあります。勿論、事実上、世間の耳目を集める訴訟になりやすいので、そういった事実上の影響を背景に、何か強力な和解を迫るとかということは全く考えられないかというと、そういうことはないと思います。そういうことを懸念するとすれば、先ほど言った、やはり弁護士をつけるというようなことは必要だという議論もあり得るのかもしれません。弁護士の場合は、当然、弁護士倫理の問題があって、違反すれば職を失いますので、基本的には、それで濫用の問題は避けられると思います。
 更に、個別的に何かこの当事者とか、この代理人について濫用のおそれがあるという要素があれば、一般条項として、特に濫用のおそれがある場合には、何かそれを排除できるというような規定を置くことは考えられるかもしれません。
 以上です。

○伊藤座長 それでは、先に窪田委員からお願いします。

○窪田委員 今、三木座長代理からお話がありましたけれども、2点、御質問になるのか、あるいは意見ということになるのかわかりませんが、述べさせて頂きたいと思います。
 1つは、最も他人の権利を処分するという性格が強いC案においても、アメリカ等におけるクラス・アクションであれば、弁護士が訴訟を追行するのであればというお話があり、そこからB案、A案というものを説明していくと三木先生のおっしゃるとおりになるのかもしれません。ただ、我々の、現在の日本の法律状態を前提とした場合に、他人の権利を処分することを正当化するのが、弁護士がついていればそれでいいのかというと、何かその出発点自体が必ずしも共有されていないのではないかという気がします。
 私自身は民法が専門ですけれども、必ずしも濫用になるかどうかという問題ではなくて、そもそも、他人の権利を処分することが、法律家がやれば正当化されるというのは、少なくとも一般論として共有されていないのではないかという気がします。その点で、それを前提として考えることが適切かどうかというのは、私自身は少し気になった点でございます。
 それと、もう1つは、濫用という問題について、A案の場合でも、事実上の影響を行使するといったことがあるのではないかという点です。先ほど黒沼委員から出たお話がまさしくそれだったのだろうと思いますが、こういう大きな形で訴えを提起すると、相手方にしてみると、この1件の100万円の訴訟だけではなくて、それが数千万円とか数億円とかという訴訟にかかわってくるという前提で争う形になると、やはりある種、そうしたプレッシャーの中での紛争処理という形になりますので、非常に簡単な形で和解を促してしまう可能性があるようにも思われます。
 そうした影響力に関して、弁護士であれば弁護士倫理の問題で対応するということであったのですが、現在の状況を前提として本当に弁護士倫理の問題で処理ができるのかなというのは少し気になります。あくまでやる人が、それはみんなの代表だという形でやるわけですし、それをあくまで不当な圧力だという形でだれも主張はしないわけですから、それを弁護士倫理の観点から本当に判断できるのかというのは、少し疑問であるように思います。
 基本的には弁護士がつけばということではあったのですが、弁護士に関して言いますと、勿論法的な専門知識という観点でここで示された一定のハードルを超えるものではあると思うのですが、その話と消費者の利益を代表してという観点が本当に一致するのか、法的な知識があればそれでいいのとかという点は、私自身はまだ少しためらいがあるところですので、もし、いやそんな濫用の可能性はない、弁護士に任せれば問題がないのだということであれば、その点について御説明いただいて、私自身が納得できるような形になればいいなと思っております。

○伊藤座長 三木委員からもいまの窪田委員の御意見に対する御発言があるかもしれませんが、いわば第1ラウンドですので、なるべく多くの方に御意見をいただいてから、更に審議を深めていきたいと思いますので、大高委員お願いします。

○大高委員 ありがとうございます。まず、私から申し上げたいのは、今回のペーパーに記載された制度内容については、基本的に違和感はないということです。特に(1)で書いてある基本的な視点については、非常に共感を覚えるところです。そういった政策的な判断からいけば、これまで何人かの委員から出ていますように、適格消費者団体というものがまず1番に出てくるチョイスではないかということも、私としても同感するところです。
 具体的には、先ほど加納さんから御説明ありましたように、現行の適格消費者団体の要件というのは、かなり厳しい訴訟追行能力の確保を求めておりますので、勿論今の条文は差止を念頭に置いて書かれておりますから微修正は必要でしょうが、基本的には、この程度の要件を課しておけば十分ではないかと考えております。
 ただ、一方で、適格消費者団体に限るべきかということに関しては、今、このペーパーに書いてある基本的な視点をもとにしても、やはり被害者であるとか被害者団体にも認めるということは、十分考えられてよいのではないかと思っております。
 ただ、一方で濫用の防止という御指摘がありましたけれども、むしろ私の方から言いますと、この訴訟は基本的に、濫用といっても、前半の共通争点の議論を見ても、そう簡単に裁判が起こせるものではなくて、むしろ何か濫用しようと思えば、相当勉強して、事案をきっちり分析をして、その上で訴訟を起こさなければ、そもそも恐らく日本の裁判所では入り口の段階でもう切られてしまう。アメリカと違って、そのあたりは日本の裁判官はきちんと審査をすると思いますので、むしろ十分な法的知識を持たない主体が、きっちりと事案を分析できないままに敗訴してしまうということの方をおそれるものです。
 特に、後半でまだ出ておりませんけれども、B案なら勿論失権効がありますし、A案でも一定の再訴禁止効をつけていくという議論は後ほど出てくると思いますが、そういった議論をするのであれば、なおさら一定の、むしろ対象となる消費者の利益を守るための観点から一定の制約というものもあり得るのかなと考えます。
 具体的には、こういうことを弁護士である私から申し上げるのは、職域を守る目的ではないかと言われそうなので非常に言いにくいですけれども、弁護士の代理をつけるということは1つのアイデアだと思います。先ほど弁護士の代理だけで足りるのではないかという御意見もありますけれども、勿論これだけで足りるというわけではなくて、さまざまなそういう正当性確保の一手段として位置づけて、弁護士委任というものを考えていけばどうか。
 また、もう一つの案としては、一定の人数要件的なものを課していくことも、アイデアとしてはあるではないかと思います。
 あと、問題になりますのは、このペーパーの3ページから4ページにかけて、具体的にどの段階でどういうふうに審査をするのかということが当然、特に適格消費者団体を主体にする場合は、ある程度事前にはっきりしておりますので、基本的には訴訟段階の審査では不要だろうと思いますけれども、一定の被害者なり被害者団体に認めていく場合には、当然、訴訟の最初の段階で審理することが必要になってくるとは思います。この点について、訴訟の段階でこの点が争いになって訴訟が遅延するのではないかという危惧もあるわけですけれども、そういったことが問題になる事案も確かにあるでしょうが、その原告になっている被害者が本当に被害者なのかどうかというのは、多くの事案ではそれほど大きな争いにならないのではないかと思いますし、そういう一部のレアなケースがあることを大きく取り上げて、事前にスクリーニングするのではなくて訴訟の段階で判断をする、ということに否定的になる必要はないのではないかと思います。
 以上です。

○伊藤座長 大高委員、念のために確認させていただきたいのですが、適格団体は別として、被害者であると主張する消費者個人、それから適格団体でない消費者団体などについても訴訟追行資格を認める余地があるのではないかというお話と理解いたしましたが、適格団体でない消費者団体についての適格性審査を経て、また個人についても、何らかの意味での適格性の審査をした上で訴訟追行資格を認めるべきだという趣旨の御発言ですか。ちょっとそこだけ確認させてください。

○大高委員 勿論いろいろな仕組みの仕方はあると思いますけれども、被害者個人に仮に認める場合にも、その被害者個人だけでいいかと。勿論、被害者個人だけでいいとなれば基本的にはそれでいいでしょうけれども、私としては、それにプラスアルファで何か必要だろうと思っておりまして、1つは、先ほどから出ておりますように、弁護士の代理を1つの要件と課してやるとか、もしくは、一定の人数の被害者が集まることを条件とする、そういったイメージで申し上げておりました。

○伊藤座長 わかりました。
 どうぞ、山本委員お願いします。

○山本委員 私もこのペーパーのまとめ自体には特に異論はないのですけれども、先ほど三木座長代理が言われましたA案、B案のいずれの考え方に立つにせよというところですが、私も、やはりA案とB案では少し問題が違うようには思います。B案は、やはりオプト・アウトがされないという場合には、基本的にはその請求権の処分をゆだねる側面があるわけで、一種の授権を擬制するという面があるわけです。敗訴してしまえば、もう、結局その請求権は行使できなくなるという意味では、C案と基本的に同じわけですから、それは、やはりそのような授権に値するようなものでなければ当事者となることはできない。そういう意味で、十分な訴訟追行の能力というものが不可欠になるのだろうと思います。
 A案の方は、恐らくどういう制度を取るかによって随分変わってくるのだろうと思います。私は、先ほど大高委員が若干言われましたように、やはり再訴は基本的にできない仕組みにならざるを得ないのではないかと思っておりまして、というのは、これは実質的には、やはり判決の効果を片面的に拡張するものですから、被告側の利益を考えれば、原告が一たんこの集合訴訟で敗訴した場合に、また他の原告がやってきて同じ集合訴訟を起こせるということが繰り返し行われることは、やはり考えにくいように思います。そういう意味では、この集合訴訟というのは、恐らくワンチャンスなのかなと思っておりまして、ワンチャンスであるとすれば、やはりそのワンチャンスを有効に生かせるものに原告を絞るということにならざるを得ないような気がしております。
 加えて、個別訴訟は別途行えるわけでありますけれども、ただ、これもやはり被告の利益を考えれば、先ほど申し上げたように、事実上の影響力でそういうことがなるべく起きないような、つまり最初の訴訟が充実した原告で、充実した訴訟追行がされて、そこでもう原告が負ければ、ほかの消費者も普通はあきらめるだろうというぐらいの原告でなければならないのかなと思っています。そういう意味では、結論としては、私は、その筋道は違いますが、やはりB案でもA案でも、十分な訴訟追行能力を定型的に持った主体というものが前提になるのだろうと思っているところです。
 そういう意味では、やはり一定の活動実績を持った消費者団体というのが最も適切であって、また、それが事前にその適格性というものが認定されていれば、訴訟手続においても便宜なものになるのだろう、訴訟手続が迅速・充実したものになり得るだろうと思っていまして、これは、多くの皆さんも前提とされていたかと思いますが、適格消費者団体が中核になるということだろうと思います。
 問題は、個々の消費者にもなおその適格を認めるかどうかということで、何人かの委員から、弁護士代理を前提として、それは整理的には弁護士強制ということになるのかもしれませんが、それであれば認めてもよいのではないかとか、大高委員から、何人かの被害者が集まれば認めてもよいのではないかという御意見がありました。
 ただ、訴訟追行能力という観点から見たときに、果たしてそれで担保として十分なのだろうかというのは、窪田委員もそういう御指摘だったかと思いますが、私もやはりやや疑問があります。この消費者の利益を守るような訴訟追行というは、単なる弁護士として求められる法律的な知識をかなり超えたような訴訟追行能力なのではないかと、非常に消費者法に専門的な知見が問題となって、ここにおられるような弁護士の先生は全く何の問題もないわけですが、3万人いる日本のすべての弁護士が、果たしてそのような能力を担保できるか、あるいは被害者が100人、200人集まったからといってそういった能力が担保できるかということになりますと、やはり私は、そこには疑問があるような気がいたしております。
 そういう意味では、この時点で完全にそういうような選択肢がないとは思いませんけれども、今のところ、私は、やはりその適格消費者団体を中核として考えていくというのが、制度構成としては穏当なのかなという意見を持っております。
 以上です。

○伊藤座長 ありがとうございました。
 三木澄子委員お願いします。

○三木澄子委員 手続追行主体を考える上において、先ほどから個人とか、適格団体、それからあと、被害者集団とか出ておりますが、それ以外として、私は、行政的な立場のところも考えていいのではないかと思っております。例えば、どういうところかといいますと、今あります国民生活センター。なぜかと申しますと、国民生活センターは、私ども行政の消費生活相談などで消費者の被害情報を集約しているところでございます。的確に被害の集約もできていますので、多数の消費者の利益の擁護をする、消費者の利益を代表できるような形で、そういうところを担えるのではないかなと。国民生活センターの機能として、そういうものも考えてはどうかなと思っております。

○伊藤座長 わかりました。大河内委員お願いします。

○大河内委員 私どもは適格でないというか、適格消費者団体ではありません、適格消費者団体がつくられるときの議論の中にもあったのですが、日本の場合、大半の消費者団体が、適格性のハードルを超えられない高い要件が求められていました。ですから、そのために、差止訴訟ができる団体を準備してつくらなければならない、というようなハードルの高い要件が設定されたのです。
 私たちは適格消費者団体の要件の議論のときも、さきほどから濫訴の話がありまけれど、訴訟をするということは、個人ではなかなかできないのと同じように我々のような消費者団体にとっても、とても負担の大きいことでありまして、ほとんどの場合は、そんなことは無理だからとあきらめてきたことなのです。でも本当にこれは訴訟を起こしても訴えたいという場合に、入り口のところから「だめ」と言われるのは、長年活動してきた先輩方のことを考えても納得できない、無視されたような気持ちになっていました。ですから、適格消費者団体だけと言われると、いざ何か、これで、例えばほかの団体の方と一緒にやりたいといったときに、それをどこかで判断していただいて、できるというような形にならないものかなということは、以前から思っておりました。
 適格消費者団体は、そのような高いハードルを超えて活動しているわけですから、そこは当然、手続追行主体として認められるべきだと思っておりますし、それに加えて、その都度の判断で、これはその訴訟にふさわしい、と認められたら訴訟が起こせるというような形にしていただきたいと思います。私たちのような適格要件を満たしていない消費者団体のためだけではなく、先ほど磯辺委員もおっしゃっていたとおり、適格消費者団体はそんなにたくさんないわけですし、財政的な負担も大きいですから、資料の中にもあったようなたくさんの少額の被害ですとか、そういう被害の速やかな救済というところには、適格消費者団体だけですと結びついていかない可能性も大きいかなと思っております。

○伊藤座長 先に下谷内委員からお願いしたいと思います。

○下谷内委員 御説明ありがとうございました。そして、皆さん方の議論を拝見いたしまして、私の団体は適格団体でありますものですから、ますます頭が痛くなったのは事実であります。
今回この3ページに書かれております手続追行主体につきましては、何ら異論はないと思っております。確かに私どもは適格団体申請に対して、非常に手続が大変な思いをしてやってまいりました。ですから、その思いはずっと引きずっておりますので、そういう面では、主体に足るものであるだろうと思っています。
 もう1点、この第二段階で和解というようなことがかなり多く考えられるのではないかと思います。そういたしますと、今、私どもが相談を受けているのは、普通の企業の方はほとんどありませんし、特にこの少額被害におきましては、悪質な商法の方たちがいらっしゃいます。そういたしますと、各センターで事案のあっせん交渉をしているときに、割と楽なところとか、ここのセンターはちょっと厳しいとかという判断をいたしまして、話し合いにおきましても、楽なところは楽なような結果、解決をしない。多少強く出るところにおいては、60ぐらいやったとして、楽なところには30ぐらいしかない。そういうことを考えますと、二段階目の和解で別な主体が参加してきたときに、私は、別な主体が、自分のところは大変なので、二段階目は別なところでもいいのかなと思っておりましたが、ただ、現実に相談を受けておりますところから考えますと、ちょっと私、表現が悪くて申し訳ないですが、第二組合的だとか、反社会的なそういうような団体が出てきまして、そのような感じで和解が進められる場合、そういたしますと、それがほかの消費者にも影響するということで非常に問題でありますし、やはりそれが権利の濫用にもつながるのではないかと、私は非常に不安感を感じております。
 だからといって、では、自分のところですべてやるというのは、もう大変だなという思いがありますので、そこをどうするかというのはまだはっきりとは、しっかり頑張らなくてはいけないな、回数が少なくなるのかなとかいろいろ考えてはおりますが、そこの二段階目については、私自身は非常に、まだ考えあぐねているところです。そういうことを考えますと、前回も申し上げましたが、行政が父権訴訟のような形で何か参画できる主体になっていただけるのも一つの方法であるのではないかと考えております。
 以上、意見でありますが、よろしくお願いします。

○伊藤座長 山口委員お願いします。

○山口委員 私にとってはこれが一番最大のポイントだと思います。この制度がどう動くのかというのは、原告適格といいますか、この訴訟主体をどこまで認めるかということが一番重大な要件だと思います。勿論、適格消費者団体を認めることは、前回も発言しましたけれども、異論がないところだと思うのですが、私は、それにとどまるべきではないと強く思っております。
 例えばプライバシーの問題とか、食の安全の問題とか、あるいは薬害の問題とか、あるいはこの議論でさんざん出ております詐欺的商法の問題とか、この種の問題に、私は、適格消費者団体はそれほど適格には対応できないだろうと思います。勿論、学納金やその他の約款の問題等には非常に適格に対応していただけるかもしれないけれども、かなり専門性のある問題や、あるいは、場合によっては身を挺して犯罪的な詐欺集団の中に飛び込んでいって被害を回復するという、その種の活動には、適格消費者団体は恐らく無理なのではないか。ということを考えますと、私は、適格消費者団体以外にも一定要件のもとで訴訟主体として認めるべきであると強く思っております。
 ただ、今日のレジュメにもありましたように、差止の場合の要件が6ページの(2)のマル1からマル7までありますが、できれば、基本的にはこのような要件を備えた団体なり集団であることが望ましいと私は思います。その意味では、法人格があるか、あるいは法人格があるに等しい主体でなければならんだろうと。なぜかといいますと、この裁判の結果としては、事案によっては相当のお金がその団体に入るわけですね。それは、団体のお金ではなくて被害者のためのお金なわけです。それを適切に配分してもらう必要があるわけですね。そうしますと、これは相当の責任能力のある、信用のある団体なり組織でないと、これを担うのは困難と思いますね。
 それから、先ほどの差止の適格消費者団体の要件の中で、警察庁長官の意見聴取が必要要件とされております。ここは何が聴かれるかといいますと、要するに暴力団との関与がないかどうか、これを聴取するということが手続の中に入っているわけですね。私は、恐らくこれは必要だろうと思います。したがって、適格消費者団体以外の主体が提訴する場合にも、警察庁長官に照会して、原告の中に、場合によっては弁護士の中に暴力団にかかわっている者がいないかということは、私は、これは照会する必要があるだろうと。恐らくこれは裁判所が照会せざるを得ないと思いますので、そこら辺の手続をどうするか議論する余地はありますが、私は必要だろうと思います。
 それから、弁護士が受任したからというだけでは大丈夫ではないと私は強く思います。アメリカの実態を聴きますと、クラス・アクションなどで勝訴の報酬が3分の1と。それを担保にして銀行から借り入れて訴訟を始めるというような実情もないことはないと聴いております。もし日本でそんなことになったら、私は、これはほっとけないと思いますね。したがって、そのチェックの方法は、私は、受任契約書を裁判所に提出する、あるいは弁護士会に提出すると。余りにも報酬を高く決めているとか、ハイリスクな何か誘引をしているような受任契約書の場合には、これは弁護士倫理違反で弁護士会でもチェックするべきだし、裁判所としても、一定の基準を決めてチェックする必要があるだろうと思います。
 その上で法人格を求めるかどうか。私は、NPO法人には、勿論一定のチェックをした上で認めていいのではないか。適格消費者団体でなくても、NPOなり、その他さまざまな法律で、消費者の利益のためにということで動くことが前提となっている団体であれば認めていいのではないかと思います。
 活動実績については、これは、例えばアドホックの被害者集団ができて、そこに私は、例えば5年以上の経歴を有する弁護士、かつ、例えば金銭トラブルを起こしたことがない弁護士というような一定の要件は必要だと思いますし、私は1人では認めるべきではないのではないかと。例えば3人とか、少なくとも複数の弁護士が受任すると。かつ、公平な、表に出しても恥ずかしくない委任契約書をオープンにさらした上で、それでアドホックの被害者集団を被害弁護団として担当すると。それはもう、要するに事業者から集めたお金については、これはもう責任を持って配分してもらうという重大な責任を持つという意味で、そのぐらいの責任と要件を持たせた上であれば、私はアドホックな被害者集団の被害弁護団、私は弁護士が受任することが当然要件にされるべきだと思います。しかもそれは、1人や2人の弁護士ではない、しかも一定のレベル以上の弁護士である。
 本当ならば、日弁連の消費者委員会のお墨付きか何かを求めたいところですが、それもあまり当てにならない感じもしますので、ちょっとそこはいろいろ工夫の余地があると思いますけれども、そういう形で是非、適格消費者団体以外のしかるべき要件の団体あるいはアドホックな被害者集団にも認めるべきであると思います。

○伊藤座長 野々山さんお願いします。

○野々山理事長 今の山口さんの見解は、第二段階をどう構成するかというか、実際にお金を集めて配分をどうするかということによって異なってくることではないかと思います。C案を取ったような場合については、今のような議論というのは一つ考えるべきと思うのですけれども、原則的に、A案あるいはB案というのは共通争点だけまず判断するということになりますので、お金の配分というのは次の問題であると思っております。
 その観点から考えますと、私は、まず第1点としては、適格消費者団体がその資格があると考えています。やれない部分があるとのご指摘ですが、私自身も適格消費者団体のメンバーとして差し止め訴訟をやってきましたが、経験していない事件については経験者を補ってやっていくというのが私たちの姿勢です。適格消費者団体が、なぜ今、約款のことをやっているかというと、差し止めの対象が、約款とか一定の勧誘行為しかないからです。立証の問題があったり、そこにしか差止権限しかないからその分野でやっているだけのことでありまして、訴訟の範囲が拡大できれば、それは、各適格消費者団体が対応していくと思っております。
 それから、第2点として、適格消費者団体に限るかというと、私は限る必要はないと考えております。特に、集団的訴訟は、その被害者の人たちの利益に関することであります。その人たちに関与する道を閉じる必要はないように私は思います。ただ、濫用とか、なれ合いとか、そういう問題があるということもありますし、原告としてふさわしいかどうかということが考えられますので、私は、個人的な見解としては、一定の被害者集団、10人程度の被害者集団が提訴するということであれば、それは、被害者集団の中の代表性というのは、形式的に一定のレベル担保されるのではないか。しかもそれは、先ほど磯辺委員がおっしゃったような、そのときに自分の権利を請求するという形ではなくて、あくまでも共通争点をやっていくということであれば、その訴訟は結構大変なことであり、それをやって行く以上は、そういう人たちが一定の代表性として担保されるのではないかと思われます。また、弁護士強制も、それにつけ加えていけばいいかと思っております。
 こういう主体の用件で実施する場合に、そういう資格をどこがチェックするのかというと、やはり裁判所にならざるを得ないかと思います。10名程度であれば、この被害者の人たちが本当に被害者なのか、この関係でのクラスの中に入っているかどうかのチェックは、現実的にはそれほど難しくはないと思っております。何ら証拠がないようなもの、どこかのスーパーで買った偽装とかそういうようなことがあったような場合で被害者であることが明確に立証ができない場合、それはやむを得ないので、棄却するなり、却下するなりという形にならざるを得ないのではないかなと考えます。その場合の集団的訴訟は、適格消費者団体がやっていくということにならざるを得ないかなと思っております。
 それともう1点、国民生活センターが主体になればいいのではないかというご意見がありました。当事者でありますので一言申し上げますと、それは非常に面白いというか、検討してもいいような提案であるとは思いますが、ただ、これは国というか、あるいは公的機関が一方の当事者として訴訟をして、しかも事業者に対して訴訟していくということ、一定の争点ではあるけれども、そういうことが理論的にも、また政策的にも許されるかどうかという非常に難しい問題があるように思います。当然、体制の問題もあります。そういうご意見も課題としてはあると思いますし、検討していただければ、私どもはまた対応させていただくということになります。

○伊藤座長 それでは、朝倉さんお願いします。

○朝倉課長 追行主体の適格性の審査は裁判所が行えばよいのではないかというお話がありましたので、私も何か言わなければいけないと思っているところでございます。
 先ほど経済界の方がおっしゃられた濫用の問題につきましては、裁判官として訴訟を見ておりますと、世の中に言いがかりのような訴訟が多いということを体験しているところでございます。そして、先ほど山口先生がおっしゃったように、世の中にはいろいろな弁護士がいるようでございます。それが訴訟の最初の段階から判明するかと申しましたら、最初の段階ではわからないことが多いのですね。そういう意味では、弁護士が代理人となっていればよいかと言われますと、それはそうではないだろうと思います。
 ちなみに、先ほど山口委員がおっしゃられた3分の1の成功報酬のためにお金を借りて訴訟しているというような問題、これは今、アメリカでは大分広がっているようでございます。先日のヘラルドトリビューンの記事によりますと、ここ数年で極めて急速に広まっているということでございまして、そのような問題は勿論出てくるだろうと思っております。
 また、黒沼委員がおっしゃられたコストベネフィットで和解をするのではないかという御懸念については、やはりそれは十分にあり得るのではないかと思っております。
 先ほど私がコメントを求められた際に申し上げました事実上の判決の影響力につきましては、山本委員もおっしゃられましたが、やはり濫訴の問題はきちんと対応しておかないと、この制度がスムーズに発足し、いわばきちんと救済すべき被害者を救済しつつ、健全な事業者には悪影響を及ぼさないという意味で、国民全体にとっていいのだという形で祝福されてスムーズにスタートすることが難しくなってしまうのではないかという懸念を持つところでございます。
 勿論、制度の発展を検討する過程ではいろいろなことが考えられるのかもしれませんが、まずは手堅いところからスタートするのがよいのではないかと思うところでございます。
 肝心の裁判所が追行主体の適格性について判断できるかどうかというところですが、先ほど大河内委員がおっしゃられた主婦連のような団体であれば、裁判官も見てわかるところがあるかもしれませんが、それがどういう団体であり、どういう人で構成され、今までどういう実績があったかというところを、裁判所は行政のように監督権限や調査権限を持っておりませんので、基本的には提出された資料で判断するということになるかと思います。勿論、警察庁等に照会を出す程度のことはできるかもしれませんが、それ以上の調査はなかなかできないということになりますと、現在消費者庁等が適格消費者団体の認定に当たって行っているような実質的な審査を裁判官ができるのかということになりますと、なかなか難しいところでございます。
 先ほどその点について問題になる例は少ないのではないかとおっしゃられたのですが、悪質な業者であればあるほど、争えるところは全部争ってくるわけでございまして、それは今までの訴訟を見れば明らかですので、本来救済すべき事案であればあるほど、その判断の段階で遅延するということになりかねないだろうという懸念を持つところでございます。
 そういう意味では、適格消費者団体でやり切れないのなら個人が行う前に行政が訴訟追行すべきではないかという御意見には、むしろシンパシーを感じるぐらいであります。個人は被害者であることだけ認定すればよいとか、10人集まればよいということだけで濫訴を防止できるのかと言われますと、個人的な見解ですが、甚だ疑問に思うところがございます。
 特に法曹人口が増加し、我が国もだんだんアメリカ的になってきているという中で、かつ実際の事件を見ましても、例えば医療訴訟を申し上げますと、昔はやはり医療問題の弁護団に入り、実績もある弁護団がそれなりにきちんと考えて、提訴すべきだというものを提訴するということが多かったように思うのですが、最近はそうでもないようですね。
 先ほどの山本委員の御発言にように、そのようなときに1回のチャンスというものを使ってしまうとしますと、これは消費者にとっても由々しき事態であろうと思うわけです。
 ですから、いろいろな面から考えて、手堅いところから行くのがいいのではないかというのが、現在のところの私の感想でございます。

○伊藤座長 では、黒沼委員お願いします。

○黒沼委員 今の朝倉さんの御発言を受けて、質問というか意見ですけれども、手続追行主体の訴訟追行能力が求められるというのはそのとおりであろうと思います。ただ、それは、手続追行主体ではなくて、代理人の訴訟追行能力といいますか、専門性や信頼性が求められるのではないか。これは、適格消費者団体が原告になっている場合でも、多くの訴訟を提起することが求められるというのであれば、同じことではないかと思います。
 その点で考えますと、朝倉さんは弁護士の能力もなかなか見分けられないのではないかとおっしゃられたのですが、私は、裁判所は弁護士の能力を見分けることができる、それを見分けることができるのは裁判所ぐらいしかないのではないかと思うんですね。もし、当事者に資料を出させて、認定できるほどの適格性がないとすれば認定をしなければいいわけで、そうするとワンチャンスはまだ残っているわけですね。その点から考えると、私は、やはり裁判所に代理人の能力、資格を認定していただければ、手続追行主体を適格消費者団体に限定する必要はないのではないかと思います。

○伊藤座長 ちょっと恐縮ですが、まだ御意見の補足や反論があろうかと思います。ただ、この議論は、いずれにしても今後続けていくことですし、本日もう一つ論点がございますので、できましたら、一応ここで区切りをさせていただいて先に進めることをお認めいただきたいと思いますが、山口委員、最後ということで御願いします。

○山口委員 野々山さんなり黒沼さんの方はちょっと誤解されているところがあると思いますので是非この段階で言っておきたいと思うのですが、私は、早期の和解というのは十分あり得ると思うんです。したがって、A案でもB案でも、早い段階で和解した場合に、それは被害弁護団なり、あるいは適格消費者団体なり、しかるべきところにお金が入って、それを被害者に配分するという手続は早い段階で必要になるときがあると私は思うんです。私はそれを前提に、当事者としての原告主体の要件を議論する必要があると思っていますので、その点だけ。

○伊藤座長 わかりました。
 ただいまの御議論を伺っていますと、適格団体に手続追行主体としての資格を認めること自体については、どなたからも御異論がなかったように思います。それに加えて、適格団体以外の団体なり個人なりに認めるべきかどうか、逆に言うと適格団体に限るべきかどうかに関しては、御意見の違いがあったように思います。適格団体以外の団体や個人について適切な訴訟追行を期待できるかどうかの判断をだれがするのかという点についても議論があったところですが、その問題を適切に解決した上で、適格団体以外の団体や集団にも訴訟追行資格を認めるべきであるという御意見も相当数ございました。個人についても、本日想定しておりますような事項についての訴訟追行の主体性を認めるべきだという有力な御意見もありました。
 私が受けた感じでは、適格団体に限るべきだという御意見が複数の委員から述べられたのに加えて、適格団体以外の団体や集団にもそれを広げることも検討に値する御意見もあり、さらに、個人についても同様の検討を行うべきであるとする有力な御意見もあったように思います。
 本日の段階では、これらの御意見を一本に集約することは難しいと思いますので、ただいま申しましたような形での議論状況の確認で特段御異論がなければ、更にそれを踏まえて、今後より立ち入った議論をしていただければと存じます。
 そこで、恐縮ですけれども、論点のもう一つのところ、一段階目の判決の効力について、加納さんからの説明をお願いいたします。

○加納企画官 資料3の10ページでございます。(1)のところですが、一段階目の判決、共通争点に関する判決が出されたとしまして、その効力に関しては、消費者被害の救済の実効性を図る観点からは、何らかの形で、一段階目の判決の結果を二段階目の手続で消費者側が活用することができることとする必要があると考えられるところでございます。これに関しましては、A案、B案という2つの考え方があるということだと思います。
 (2)で具体例として書かせていただきましたのは、冒頭、資料1で御説明しました学納金の事件におきまして、A案、B案それぞれでどういうふうな判決が出て、A案、B案でどこが違うのかということで書かせていただいたものでございます。端的に申し上げますと、A案による場合には、4月1日以降に解除した者につきまして、別訴において返還請求することについて、それはできるということになりますけれども、B案におきましては、11ページの方ですが、原則として、棄却されることになるというところが大きな違いなのかと思います。
 11ページの(3)でございますが、A案のような考え方に立った場合ということで書いておりますが、その二段階目の手続に加入した消費者が有利に活用することができることとするとしようとしますと、その正当化根拠は何なのかというのが大きな問題になると思われます。これに関しまして2つの観点から書いておりますが、1つは、一段階目の手続において、相手方は共通争点に関し、手続追行主体との間で、紛争全体を見越した上で、攻撃防御を尽くすことができた以上、二段階目の手続に加入した消費者との関係でも、一段階目の判決の結果に従わなければならないこととしても、不当とは言えないのではないかという視点でございます。
 2つ目は、一段階目の手続において共通争点に関し一定の判断がされた以上、それを前提に二段階目の手続に加入した消費者の請求の当否について判断することとしなければ、一段階目の判決をした意味が失われるのではないかということで、どちらかというと審理に関する観点で書いたものでございます。この2つの観点から根拠づけられることが考えられるとしております。
 もう一つ、「また」ということで加えておりますが、他の手続追行主体が、何度でも同一の事案に関し共通争点の確認を求める訴えを提起することができることとしますと、やはり被告の応訴の負担が大きいなどの問題があろうかと思いますので、A案のような形で制度を考えるとしますと、同一の事案に関する共通争点の確認を求める訴えの提起については、適切に制限するなどの手当てを講ずることが考えられると書かせていただいております。
 これにつきまして、参考の4と5をおつけしておりまして、現在の適格団体の制度についても同様の規律を設けてございますので、御紹介したいと思います。
 15ページですが、消費者契約法の12条の2というところで、その第1項第2号ですが、他の適格団体を当事者とする差止請求に係る訴訟等につき既に確定判決等が存する場合において、請求の内容及び相手方が同一である場合につきましては、一定の例外を除きまして、同一事件に関する差止請求はすることができないとしているところでございます。
 この規定の趣旨につきましては、15ページの下のところに書いているところでございます。
 また、15ページに戻りまして、適格団体の差止請求について、今、12条の2の第1項第2号につきまして本文を読ませていただきましたが、ただし書がついておりまして、例外と申し上げましたのは、こういう場合であるというのを条文で書いておりますが、当該他の適格団体について、第1項第4号に掲げる事由により取り消され、または同条第3項の規定により、同項に掲げる事由があった旨の認定がされたときは、この限りではないとしておりまして、34条1項4号に掲げる事由によって認定が取り消された場合には、ただし書により同一事案に関する差止請求をすることができるとしております。
 その34条がどういう規定を設けているかにつきまして、18ページでございますが、条文と規定の趣旨等について書いております。18ページですけれども、参考5というところで、不適切な訴訟等の追行を行ったと認められる場合における適格団体の認定の取り消しについてと書いてございます。
 34条1項第4号ですが、第12条の2第1項第2号本文の確定判決等に係る訴訟等の手続に関し、当該訴訟等の当事者である適格団体が、差止請求に係る相手方と通謀して請求の放棄又は不特定かつ多数の消費者の利益を害する内容の和解としたとき、その他不特定かつ多数の消費者利益に著しく反する訴訟等の追行が認められるときと書いてございまして、適格団体は消費者の利益を代表して、適切に差止請求権を行使するのが期待されているわけですけれども、相手方の事業者と通謀するなどして消費者に不利益な訴訟追行するというようなことも全くないわけではないわけでありまして、そういった場合には、適格団体の認定を取り消すとともに、そういう場合は、その場合における差止請求権の制限については、制限を解除し、同一事案について差止請求を他の団体がすることができることとするというようにしております。
 11ページに戻りまして、これは適格団体に関する差止請求に関する制限の規律でございますけれども、こういったところも参考にしながら、仮にA案のような考え方に立つとしましても、何らかの形での同一事案に関する訴えの提起に関する制限というものが必要ではないかと考えられるとしておりまして、以上の点についてどのように考えるかとさせていただいております。
 以上が(3)でございます。
 それから、(4)でありますが、B案につきましては、一段階目の判決が有利にも不利にも及ぶということですが、不利にも及ぶ対象消費者の手続上の利益の擁護をどのように図るかというところが問題になるということでございますが、これにつきましては、11ページから12ページに書いてありますような幾つかの視点に基づきまして検討すると。結局、代表者が適切であるかどうかとか、通知・公告をどうするかとか、適切な審理が確保されているかというようなところに結局は帰着するのではないかと思われますので、今後、この論点か出てくるときに合わせて検討していくこととしてはどうかとしております。
 以上でございます。

○伊藤座長 それでは、限られた時間ではありますけれども、ただいま御紹介いただいた点について意見交換をお願いしたいと存じます。どうぞ、大高委員。

○大高委員 私としては、今回のこの10ページからの記載内容については、基本的に違和感はないように感じております。特に問題になる点としては、A案を採用した場合における同一事案の訴えの提起の制限でございますが、これも、結論としては、実質的な公平とか、一回的な解決の観点から、一定の合理的な制限自体はやむを得ないものであろうと考えております。
 ただ、問題としては、この同一事案に関する共通争点の確認における「同一事案」をどう考えるかということは非常に重要な問題として残るのかなと思っております。これは、最初の論点で窪田委員がおっしゃっていた、共通争点をどのレベルで決めるのかということと非常に密接に絡む問題だと思いますけれども、例えば学納金事件で、消費者契約法9条で最高裁は判断しておりますが、仮にこの訴訟の中で10条に関する問題が一切提起されなかったような場合において、9条だけで判断された場合に、その後、10条を取り上げて共通争点とする訴えを制限すべきかどうかというのが、具体的な問題になると思うのですが、私の結論としては、これは最初の訴訟で判断されていない以上、これは同一事案に含まれない、もしくは、正確に言えば同一事案に関する同一の共通争点の確認を求めることについては制限すべきだと理解すべきであって、不当に共通争点の拘束が及ぶ範囲を広げるべきではないと思っております。
 B案の方の検討について、具体的な通知・公告のあり方にかかわるということで、これを事後議論することについても異存はございません。ただ、今後の検討において具体的に求められる手続保障の内容については、考慮要素としては、ここに書いてあること以外にも、例えば訴額の大小とかいろいろなファクターがあると思いますので、今後の検討の際には、そういった点も御考慮いただければと思います。
 以上です。

○伊藤座長 どうぞ、中村委員。

○中村委員 先ほど一番最初の議論のときに申し上げたのと同じような内容でございますけれども、特に(3)のところにありますような説明の中で、十分な攻撃防御を尽くすことができた以上、二段階目の手続に加入した消費者との間でも従わなければいけないということがございますように、そこのところでどれだけ攻撃防御ができたのか、あるいは結果を予測できたのかというようなことによって、その判決が二段階目でいろいろな消費者に対して適用されるというところの正当性が出てくるのだと思いますので、やはり一番最初のところで、どの範囲の消費者に案件が適用されて、どういう形で損害賠償等がされているのか、そのあたりのことをきちっと確定することが、ここのところの要点になると思います。
 それから、そこのどの範囲でということで、今、大高委員からございましたように、具体的に9条、10条かというところについてどうするかということについては、ちょっと私には何とも申し上げられませんが、少なくとも同じ訴訟ということに関しては、この集合訴訟を繰り返し起こすことはできないということには、是非していただきたいと思います。
 以上でございます。

○伊藤座長 三木委員お願いします。

○三木浩一座長代理 やはり11ページの同一事案の繰り返しを避ける規律をどう考えるかという点であります。先ほど大高委員もおっしゃいましたが、先ほどの当事者適格のところもそうですし、こちらの判決効のところもそうですが、どうも現在存在する差止訴訟にかなり引きずられた思考構造になっている面があるように思います。それで、我々が議論している制度とはかなり違いがあるという点がどこまで踏まえられているのかという懸念がございます。
 同一事案ということに関して言いますと、差止訴訟の方にこの種の規律があるのですけれども、差止訴訟は、約款の無効とか、かなり抽象度の高い対象を扱っておりますので、同一事案性というものが、これも実は差止訴訟でも難しい問題は種々あるのですが、それでも、この損害賠償型の訴訟に比べると単純なところが多いだろうと思います。
 それに対して現実の被害者が多数存在して、その被害回復を図るという事後救済型の訴訟におきましては、こういう規律を置いたとしても、それがどういう形で機能するのかという点はかなり問題であり、私自身は、現実には、それが望ましくないとは思っておりませんが、一定の程度は、実際には再訴が理論上は可能であろうと思います。といいますのは、先ほど大高委員がおっしゃったように、法律上の争点であれ、事実上の争点であれ、前の訴訟で扱われていなかった問題を提起するときに、それは同一事案だから再訴禁止というのはなかなか言いにくいだろうと思いますし、また、その問題に関する裁判を受ける権利の保障ということがあろうと思います。
 また、更にこの事後救済型の訴訟で問題なのは、先ほども少し申しましたが、クラス範囲の問題もありまして、前の訴訟と後の訴訟でクラスなりサブクラスの範囲を違えたときに、それは同一事案と言うことは難しかろうと思います。それがために再訴が可能な場合に、それがふさわしくないかというと、それは、前の訴訟で適切に審理されていないとすれば、そこは裁判を受ける権利の保障がどうしても必要になってくると思われます。
 現実問題の方を考えますと、これも先ほどの当時者適格の議論でも見られたところですけれども、濫用の危険があるとか、そういう抽象的な議論がしばしば行われ、差止訴訟のときにもそういう議論が行われたわけですが、現実には、それは、ためにする議論の要素も大きかったわけであります。
 先ほど大河内委員もちょっとおっしゃいましたが、日本では、むしろ裁判を起こさないことの弊害をどうするかということが問題になっている国でして、そのようなことが、再訴という形での濫用が実際どのぐらい起きるのかということは、やや疑問ではあります。制度的には、この種の規律を置くことは、不当とまでは申しませんけれども、先ほど言ったように、余り機能しない可能性がある。そして、実際には、どちらにしても、ある訴訟が追行されれば、その訴訟にほかの適格当事者が容易に参加できるような仕組みを整備することによって、実際上、なるべく事件を束ねていく、あるいはこういう制度を置いたとしても、判決確定までは別訴が起こせるわけですので、当然、複数の主体が追行したければ、別訴を起こして、それを現在の差止訴訟でもあるように、併合の仕組みというものをどう考えていくかという方を議論する方が現実的だろうと思います。
 先ほどちょっと山本委員が、こういう規定を置いてワンチャンスにすべきだと言いましたが、そのワンチャンスの言葉の意味によりますけれども、先ほど申しましたように、同一事案性とか、あるいはクラスの問題でかなりの程度、再度の訴訟が可能であるという意味では、こういう規定を置いたといっても制度がワンチャンスになるとは思えませんし、また、併合とか参加の規定を整備し、規定だけではなくて、現実にそういうニーズがあればそれを誘導するというようにすれば、併合されたという意味ではワンチャンスかもしれませんが、適格者としてはワンチャンスではないということですので、若干その辺も見据えた上で議論をしていく必要があろうかと思います。

○伊藤座長 山本和彦委員お願いします。

○山本委員 やはり(3)のところですが、2点のコメントです。
 1点目は、最初の・のところですが、実質的に一段階目の訴訟の効力が相手方に及ぶ根拠ですが、ここに書かれていることで私が重要だと思うのは、この「紛争全体を見越した上で、攻撃防御を尽くすことができた」ということだろうと思っています。ですから、相手方が敗訴した場合に、その影響がどこまで及ぶのかということを認識して攻撃防御を尽くすというのが、やはり手続保障として必要不可欠で、これが手続保障のかぎになるのだと思っております。
 ですから、そういう意味では、三木座長代理がたびたび言われていますが、クラスの特定の問題、どの範囲の消費者との関係でその効力が及ぶのか、そして、これは確定的に何円というところまで特定するのは難しいと思いますが、総額として大体どれぐらいの金額がそこに係っているのかということが、やはり事業者の側にわかっている必要があるだろうと思っています。
 そういう面からすると、この制度の対象になる事案というのは、やはりある程度限定されざるを得ないと思っておりまして、例えば契約関係の事案であれば、これは事業者側もどれぐらいの類似の契約を結んでいるのかということ、そしてその契約に係る金額といったようなものをある程度把握することができるとすれば、この制度に乗ってきやすいということになると思いますが、不法行為の関係の事案で、その損害の全体像が把握できていればいいわけですけれども、それが必ずしも十分把握できていないということになると、その共通争点で負けた場合に、その損害が1億円になるのか10億円になるかということがわからないということだと、やはりなかなかその効力を及ぼすのは難しくなる、その手続保障があったと言うのは難しくなるのではないかという印象を持っておりまして、ここの議論は、その対象の事案の特定という問題と関連してきそうな感じがしているというのが、第1点のコメントです。
 第2点は、今までの委員が取り上げられました再度の訴えの点であります。この点については、既に私自身の結論は先ほど申し上げたとおりでありまして、やはりこれは、実質的に片面的な効力が及ぶ、つまり事業者側は、負けたら対象消費者全員との関係で負けたことになり、勝ったとしても、それはそれで勝ったというだけのことだとすれば、やはり何らかの措置を考える、つまり制度上、その再度の訴えを事業者が起こされるリスクを最小化するような措置というものが、この制度のレジテマシーを担保するものだろうと思っています。それが、当事者の対等の理念からすれば、やはり理論的に必要ではないかと思っているところであります。
 そういう意味では、やはり私自身は、先ほど申し上げたように、原告となることができる適格の主体を限定して、その限定された適格主体間で情報を共有することによって、先ほど三木座長代理が言われたように、参加とか併合とかという余地を可能にしながら、一度この訴訟で終わった場合には、原告側が敗訴したような場合には、他の適格主体は再訴することはできないということが必要であろうと思っております。
 個別の消費者の再訴、個々の再訴を認めるかどうかと、これは認めるわけですが、その場合のリスクをどういうふうに考えるかということは議論がありそうな感じがいたしておりまして、先ほど私が申し上げたように、事実上の効力で十分だという考え方もありそうな感じはしております。そういうきちんとしたところが負けたのだから、実際上は、もう個々の消費者は別訴は起こさないだろうと。それで被告の保護としては十分だという見方もできるように思いますが、それで十分ではないとすると、やはり実際上、その再訴が起きないような、これもこの制度の対象の問題にかかわってくるわけですが、実際上は、やはり個別訴訟が困難な、主としてこれは少額多数被害を前提にしていることは間違いありませんが、そういう少額というか、要するに個人が訴えを起こすことが非常に困難な事案に対象を限定するということにすれば、実際上の個別の再訴も起きないだろうということになるのだと思いますが、そこは、私は議論の余地はあるのだろうと思っておりますが、この集合訴訟の再訴を抑止する方途が必要であるということは、言えるような感じがしているということです。

○伊藤座長 わかりました。この点も、今日結論が出るような性質の話ではないので、継続で議論したいと思いますが、御発言がある方がいらっしゃれば、時間内でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。山口委員どうぞ。

○山口委員 11ページの(3)の根拠づけですが、2つ追加していただけないかと思います。一つは訴訟経済です。つまり、1回やって確定したわけですから、同じことを繰り返しやるというのは、社会的にも無駄な経費ではないか。もう一つは、社会的弱者である消費者が自ら一から訴訟を起こすということについては、やはりこれは社会的弱者の保護という観点からいかがなものかという、その点だけです。

○伊藤座長 わかりました。
 いったん適格団体などによる訴訟がなされて、事業者の行為に違法性が認められないという結論で、訴訟が終了した後に、個々の消費者が自らの損害賠償請求権について救済を求めることも実質的な意味での再訴ということになるのかもしれませんが、しかし、それを排斥することは、A案の考え方からすると、やはり無理といわざるをえません。しかし、その様な状況において、訴訟当事者となった団体以外の団体が、同一の事項、その同一性の判断基準についても議論があるわけですが、について同様の訴えを起こすことについては、それを制度的に排斥すべきだという御意見と、それはあくまで事実上の問題にとどめておくべきだという御意見、両論があったように思います。したがいまして、この点も本日の御意見を事務局に整理してもらって、それを踏まえまして次回以降、更に議論を深めたいと存じます。
 そこで、予定の時間になっておりますので、本日の審議はここで終了させていただきたいと存じます。
 次回は訴訟手続に係る論点2として、更に本日の議論を踏まえて具体的な論点についての検討をお願いしたいと存じますが、事務局より次回の日程についての連絡をお願いいたします。
 大高委員、何か。

○大高委員 進行に関して。可能であればでいいのですけれども、今後の論点を、6回書いてありますが、具体的にどういうスケジューリングで割り振りをしていくのかを、勿論ここで話していただいたからこの通りやれというつもりもありませんので、今の段階で、1回か2回、回すつもりだとか、大まかな論点のスケジュールの割り振りを、何か腹案があれば教えていただけると、今後の我々の準備にもいい影響があると思いますので、お願いいたします。

○伊藤座長 わかりました。今日の御議論でもわかるように、それぞれの回での議論を踏まえて、次回の審議予定を立てることになりますので難しい面があるかと思いますが、ただいまの大高委員からの御発言は、事務局でしかるべく受け止めていただければと存じます。

≪3.閉会≫

○伊藤座長 それでは、次回の日程についての連絡をお願いします。

○齋藤審議官 本日は本当に長い間、御熱心な御議論を賜りまして誠にありがとうございました。
 次回の第5回は、年明け早々となりますが、1月6日木曜日、午後4時からということでございます。場所は従前どおり、山王パークタワー6階の消費者委員会大会議室1において開催の予定です。 事務局からは以上です。

○伊藤座長 それでは、長時間ありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
 皆様方、よいお年をお迎えになりますよう。

(以上)