第11回 地方消費者行政専門調査会 議事録

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日時

2011年2月10日(木)14:00~16:15

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 稲継座長、沼尾座長代理、奥山委員、国府委員、斎藤委員、菅委員、
 田中委員、野口委員、馬場委員、矢野委員、山下委員
【担当委員】
 池田委員、佐野委員、下谷内委員、日和佐委員、山口委員
【オブザーバー】
 池本弁護士
【説明者】
 消費者庁 林地方協力課長
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.報告書の素案について
3.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:45KB)
【資料1】地方消費者行政専門調査会報告書(素案)
【資料2】 今後のスケジュール(案)について(PDF形式:73KB)
【資料3】 矢野委員提出資料(PDF形式:309KB)
【資料4】 国府委員提出資料(PDF形式:183KB)
【資料5】 田中委員提出資料(PDF形式:115KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。
 本日は、皆様お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから「消費者委員会 地方消費者行政専門調査会(第11回)」の会合を開催いたします。
 まず、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 配付資料は、議事次第の次に留めておりますけれども、資料1として、こちらの専門調査会の報告書の素案をお付けしております。
 資料2は「今後のスケジュール(案)について」。
 資料3、資料4、資料5といたしまして、専門調査会の委員の方から御提出いただいた資料をお付けしております。
 不足がございましたら、審議の途中で事務局にお申し出いただければと思います。
 それでは、座長、どうぞよろしくお願いいたします。

○稲継座長 皆さん、こんにちは。まず、議題に入ります前に御報告がございます。
 前回のこの会議の最後に、圓山委員から辞意が漏らされました。一応座長預かりということになっておりました。その後、沼尾座長代理とともに3人でお会いして説得したのですけれども、圓山さんの辞意は固く、残念ながら翻意いただけませんでしたことを御報告申し上げます。あとの事務的な処理は事務局にお願いいたします。

≪2.報告書の素案について≫

○稲継座長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。本日は、報告書の素案について議論いたします。
 まず、事務局から、前回の議論を踏まえ本専門調査会の報告書の素案を作成いただきましたので、内容を御説明いただきます。その後、一括して御質問、御意見をお願いいたしたいと思います。
 それでは、事務局から御説明いただきます。お願いします。

○齋藤審議官 お手元に資料1ということで、「地方消費者行政専門調査会報告書(素案)」をお配りしてございます。前回の専門調査会におきましては、骨子ということで御議論いただきましたけれども、その際にいただいた御意見を踏まえまして、更に、この専門調査会においても何度か実態調査もしておりますので、その実態調査の結果も適宜補強材料として盛り込んで作成しております。また、座長の御指示もいただいた上で報告書の素案という形でまとめたものでございます。
 本日、この素案につきまして皆さん方から御意見を頂戴いたしまして、次回、2月24日におきましては、改訂案ということで更に御議論をいただきたいと考えております。
 また、ただいま素案につきましてはパブコメを実施中でございます。締切りを2月15日までとしておりますので、その結果も次回の専門調査会では御紹介し、パブコメの内容等も踏まえながら、また御議論いただければと考えております。
 それでは、素案の中身について御説明したいと思います。
 まず、2ページでございますが、「はじめに」というところでございます。最初のパラグラフにおきましては、国においてパラダイム転換が行われたということで、2つ目のパラグラフにおきましては、地方において過去10年間、予算、人員を半減してきたわけですけれども、基金の運用が開始されたということで、そういった流れもようやく反転したというような評価を書いてございます。
 その次のパラグラフで「もっとも」と始まるところでございますけれども、ここでは、地方でなかなか消費者行政に光を当ててこられなかった背景として、国の産業育成・振興政策があったということに触れております。もう一つの背景として、住民における消費者行政に対する理解が、まだ十分認識されていなかったこともあるのではないかということに触れております。
 更に消費者庁におきましては、平成21年度からの3年間の集中育成・強化期間を対象とする基金を通じての支援、「プラン」を策定したり、あるいは本部をつくって、その本部の下にいろいろな取組を行ってきたということに触れております。
 ただ、各市町村における消費者行政が十分に定着するためには、地域住民の間でいかに消費者行政が重要なものであるかということが実感される必要がありますし、また、他の行政分野との連携が根づく必要がある。そのためには、集中育成・強化期間終了後も更に数年の期間を要するという認識を書いてございます。
 3ページに移ります。国会において約90時間にわたる審議を経て、消費者庁関連三法が成立したわけですけれども、その過程の議論の中で、地方消費者行政の問題についても熱心な議論が積み重ねられました。その結果、附則や附帯決議といった中で更に検討する必要があるということで、検討を求められてきた経緯に触れております。
 その後、「他方」で始まるパラグラフですけれども、政府の今の大きな方針といたしまして、「地域主権改革」というものがありますので、そういう方針を踏まえて地方に対する支援策も考えていく必要がある。「したがって」で始まるパラグラフでございますけれども、国としては、地方公共団体が地域の実情に応じて創意工夫を発揮できるように、原則として、その後押しをするような支援に注力することが求められている。国による財政面の支援についても、「基金」のようにある程度期間を限定し、その後は、地方公共団体が自らの裁量によって推進していくのが本来の筋道であるというふうに記しております。
 以上、「はじめに」におきまして、この報告書の全体に通じる基本的な考え方が述べられております。
 4ページに移りますが、ここから本論に入ります。まず、第1章ということになりますけれども、「消費者行政における国と地方の在り方について」というところでございます。その1の「自主的かつ自発的な地方公共団体による消費者行政の推進と国の支援」、(1)で「地方公共団体が行う消費者行政事務」につきまして、消費者からの相談の受付、あっせん、事業者指導、情報収集、情報提供、消費者教育・啓発と、非常に多岐にわたるということが書いてございます。ただ、こういう事務の大半は住民からの声に応える形で発展してきたということで、これまで自治事務として位置づけられてきたものであります。
 その下に「なお」ということで書いてございますが、こうした事務のうち一定の事務につきまして、消費者安全法第8条によって義務づけられている。具体的には、相談、あっせん、情報収集、調査・分析、情報提供といったようなものが消費者安全法の第8条の中で書かれているということでございます。
 「(2)地方消費者行政に対する国による支援の基本的考え方」というところですが、消費者安全法の第8条におきまして都道府県・市町村に義務付けられた相談受付やあっせんの事務に関しましては、第9条によりまして、国が都道府県及び市町村に対して情報の提供、その他の必要な援助を行うことを義務づけております。したがいまして、こうした事務の拠点となる相談窓口ネットワークの整備につきましても、国として、一定の支援を行うことが求められております。
 また、消費者安全法第4章では、消費者事故等に関する情報の集約を図るために、国のみならず、地方公共団体にも情報の通知義務が課されております。国としては、これを迅速かつ的確に集約し、その結果をとりまとめることが義務付けられております。こうした消費者事故等の情報収集・集約事務は、この事務の本来的性格から見て、全国一律に行うことが求められておりまして、国としても責任を持って積極的に推進していく必要があるというふうに整理しております。
 5ページでございます。「地方消費者行政活性化のための地方公共団体と国の望ましい姿」ということで、「(1)地方消費者行政の位置づけ」としておりますけれども、これまでの住民の声にきめ細かに対応して行政を行ってきたという経緯などを踏まえれば、今後とも、地方公共団体の自主性や創意工夫を生かせるよう、自治事務として位置づける必要があるとしております。
 (2)で、そうは言いましても、国の関与と負担が必要となる分野がある。以下の事務や事業ということでマル1、マル2と挙げておりますけれども、そういうものにつきましては、国も責任を持ってその推進を図る必要があり、一定程度の負担や技術的支援等を検討する必要があるとしております。
 マル1といたしましては、最低限のインフラ整備として、全国どこでも、住民が身近な窓口で専門的な相談を受け、必要に応じてあっせんを依頼できるようにするためのネットワーク構築に必要な施設等の整備、相談員の育成等の事業があります。
 マル2といたしまして、全国の消費者事故等の情報を迅速に収集し、分析した上で、情報提供すること等が求められておりまして、そうした観点から、全国一律に実施すべき情報収集に係る事務や情報入力に係る研修事業について、国も責任を持って推進を図る必要があるということであります。
 「もっとも」と書いてございますけれども、国がその推進を支援していくとしても、地方の自主性を最大限に尊重し、地方公共団体の創意工夫を阻害しない形で進めることが求められております。財政負担につきましても、「基金」や「住民生活に光をそそぐ交付金」のように、地方公共団体の創意工夫に基づく裁量を発揮できるような財政措置を活用する方向で、その具体的な在り方について検討する必要があると書いております。
 続きまして、6ページでございますが、第2章「相談ネットワークの在り方について」というところでございます。
 1のところでは、現状と課題ということで、これまで行ってまいりました世論調査や実態調査を踏まえて書いてございます。(1)は「相談窓口におけるニーズ」ということで、昨年11月の「特別世論調査」を使いまして、「相談窓口を利用したことのある人」の約7割5分の人が「満足した」と答えているという内容を紹介しております。また、「今後、地方公共団体の施策に望むこと」につきましては、5割以上の人が「消費生活センターの新設など、身近な場所に消費者問題について相談できるところをつくる」ことを要望項目として挙げております。
 他方、この調査によりますと、「窓口を利用したことのある人」で窓口の対応に満足しなかった理由として、「相談の受付から助言に止まり、あっせん、紛争解決まで責任を持って対応していない」、あるいは「対応に専門性がない」といったところを挙げられております。
 (2)に移りまして、「相談窓口の実態」でございます。7ページに円グラフがございますが、これは委員会の事務局が昨年行った実態調査でございます。昨年1月の時点で、全国の自治体のセンター・窓口の設置状況を見たものでありますが、センター設置が全体の24%ある。窓口のみ設置が60%となっておりますけれども、このうち「相談員なし」が68%という状況で、専門的な対応というところで不安があるというところでございます。
 緑のところは、まだセンターも窓口も設置していないところが16%あるということで、この16%の中で、平成23年度末までに窓口設置予定があるかどうかを見たのがその右肩の絵でございます。「予定なし」というところが34%。16%のうち約3分の1がまだ残るという結果でございました。
 その下のマル2であります。「相談体制を強化したことに伴う効果」ということで、これは前回御紹介したものでございますけれども、8ページのグラフをご覧いただきますと、窓口体制を強化した前後で相談件数がどうなったか、半年間で見たものですが増加したものが6割(58%)あるという結果が出ております。やはり窓口を設けると、その結果、埋もれていた相談が掘り起こされて出てくるということが、これからも読み取れるかと思います。
 マル3に移りまして、「対応の実態」ですけれども、これにつきましては9ページのグラフをご覧いただきたいと思います。交渉が難しい事案についての基本的な対応を問うたものでございますが、あっせんまでやるとお答えいただいたところが全体の64%となっております。助言、あるいは他機関紹介といったところでとどまるところが、それぞれ9%、22%となっておりまして、あっせんまで取り組むというところはそれほど多くないということでございます。
 10ページをご覧いただきますと、これは相談の現場の方のいわば生の声ということで、巡回相談をやってこられた方々の現場のレポートをまとめたものでございますけれども、相談を受ける方々の生の声といいますか、そういうものが整理されております。1人体制で非常に不安であるとか、1人で処理をしているとなかなか解決に至らないとか、そういった声がうかがえるわけでございます。
 11ページに移りまして「(3)実態調査結果から明らかとなった相談窓口整備に係る課題」ということで整理しておりますけれども、今、述べてきたことをまとめたものでございますので、中身は省略いたします。
 2に移りまして、「望ましい相談窓口体制とその実現に向けた対応策」というところでございます。「(1)住民にとっての望ましい相談窓口の在り方」ということで、ここでは安全法の基本理念を引きながら、消費者安全法の第8条第1項とありますが、これは第2項の間違いでございます、失礼いたしました。第2項で、各市町村に相談の受付やあっせん事務を義務づけております。
 こうした点を踏まえますと、各市町村において、相談できる身近な窓口を整備する必要がありますが、その相談窓口では、正確にその相談を受け付け、専門的な知見に基づいて助言を行ったり、交渉が難しいものにつきましては、事業者との間に立ってあっせんを行ったりすることが求められているところでございます。
 その下のパラグラフでは、窓口に来なかったようなものでも関係するものについては、消費生活相談窓口につなげていく仕組みが必要になるということを書いてございます。また、消費者事故等の情報が確実に収集・集約され、そういう体制も必要であるということを触れております。
 12ページにまいりまして、各市町村は、こうした体制の下で収集された情報等に基づきまして、住民の被害の実態や関連する問題を把握し、住民に対して周知・啓発活動等の対応を的確に行っていく必要があります。また、市町村の福祉・保健部局等との連携に加えまして、消費者団体や各種NGO法人とも連携するなど、地域における消費者行政推進の拠点として機能することが期待されるとしております。
 「(2)都道府県と市町村の役割分担、国の支援」という見出しのところでございます。今、述べたような観点からは、市町村が基礎自治体ならではの特性を生かして、主体的に相談窓口の整備等を図る必要があります。しかし、現実には、個別の対応では、人員・予算等の面で困難な場合が多く、複数の市町村が広域的に連携して、効果的・効率的な対応を図ることが期待されております。
 また、先ほど御紹介した実態調査からも明らかなとおり、相談員が1人といった窓口のように、人員が限られた窓口におきましては、広域連携を行うことによって窓口の専門的な対応能力の向上も期待されるところでございます。
 この専門調査会でも、但馬地域のホットラインについて御説明したことがございます。これも、窓口には1人しか相談員がいないようなところが集まって、複数で相談を受けられるような体制をつくる中で、相談員の方の能力向上に非常に効果があらわれている事例もございました。このように基本的には市町村が単独で、あるいは連携して一時的な窓口となって、消費者に関する問題を把握できるようにすべきであるとしております。
 以上、市町村について述べたところでございますけれども、都道府県におきましても、広域的な事案に関する相談に加えて、市町村の窓口をバックアップする体制をつくることが望まれるところであります。また、都道府県が多くの消費者関係法令について執行権限を有していることも踏まえますと、都道府県が自らの窓口あるいは市町村の窓口で得られる情報を効率的に集約し、執行業務に生かす体制とすることが望ましいわけでございます。
 他方、地方公共団体が国民生活センターに対して、個別の相談事例に関して処理方法の助言等を求める「経由相談」というものが行われております。この経由相談のうち、約3割が都道府県のセンターからのものであることを踏まえますと、国としても、引き続き、こういった相談事務について経由相談等を通じて支援を継続する必要があると書いてございます。
 (3)は「望ましい広域連携の在り方」ということでございます。広域的な連携体制をどのように構築するかということにつきましては、次のページにありますけれども、さまざまな対応が想定されます。いずれの場合におきましても、各地域の経済的・地理的、歴史的な事情に応じて、自主的な判断に基づいて行われる必要があります。また、連携体制を組むどの市町村におきましても、消費生活相談を持ち込むことのできる窓口、市民相談窓口のように広範囲の相談を受け付ける、「よろず相談窓口」も含めてのことでございますけれども、そうした窓口を設け、必要な場合には、専門性の高い相談員のいる消費生活センターに直ちにつなぐことのできるような連携体制を組む必要がございます。こういった点は基本的に押さえるべきポイントではないかと考えております。
 次のページに移りますけれども、どういう連携があるかということで、一つの都道府県の中での一部地域の連携ということで、「マル1 一部地域の市町村による広域的な連携を行う場合」「マル2 一部地域の市町村が広域的に連携すると同時に、県の出先機関がその専門的知見を活かして参加する等の場合」「マル3 都道府県とその域内の市町村が広域連携する場合」、こういうふうに3つに分けたところでございます。
 こうした広域連携にはそれぞれ特徴がありまして、その利点を生かすと同時に、想定される留意点につきましては、連携に係る規約等において対応策を講ずる必要があるとしております。それぞれ別紙1、別紙2と付けておりますけれども、前回御説明したものと大きな変更はございませんので、御説明は省略させていただきます。
 「(4)上記広域連携推進のための方策」というところですけれども、以上述べましたとおり、相談ネットワークの構築の在り方についても、地方公共団体が自主的にその在り方を検討すべきものであります。
 しかしながら、留意すべき点もあるということで、小さな市町村が中核的な市に窓口事務を委託する等によって、自らの窓口を閉鎖する、あるいは規模を縮小するといった場合には、身近な専門的な窓口での相談受付体制を実現する上では望ましいとは言い難いということかと思います。また、相談を受けることで、地域住民の抱える消費者問題を把握し、地域の行政に生かすことが行えなくなるということで、結果的には地域の消費者行政が弱体化するおそれがあるということですので、広域連携を進めていく上でも留意すべき点があるということであります。
 したがいまして、消費者庁としても、消費者安全法で示された理念実現のためには、広域連携の望ましい形や、広域連携に伴って想定される問題への対処に関する複数の選択肢について、技術的助言として、一定のひな形を示す必要があります。
 また、消費者安全法で示された基本的理念を実現し、同法の制定によって市町村に課せられた義務の履行を確保するためには、国として一定程度の財政負担や技術的支援等を図ることを具体的に検討すべきであります。
 例えばひな形に沿って広域連携を進めていく自治体に対して、相談窓口のネットワーク構築に必要な施設等の整備や窓口職員に対する必要な研修等について負担支援を図ることが想定されます。
 なお、この場合でも、財政負担につきましては、「基金」や「光をそそぐ交付金」のように、地方公共団体の創意工夫に基づく裁量を発揮できるような財政措置を活用する方向で、その具体的な在り方等について検討する必要があります。
 なお、広域連携を推進するに当たりましては、参加する市町村間の分担関係の調整が進まなかったり、都道府県と市町村の責任関係が不明確化したりするとの懸念があるとされておりますので、そういった負担割合や責任関係、機能分担等について、上記のひな形で示すことが望ましいと書いてございます。
 次は14ページ、「第3 消費生活相談員の処遇の在り方について」というところでございます。1の「処遇の現状と課題」というところですけれども、(1)のマル1、相談員に対する報酬に関しましては、円グラフにございますけれども、相談員の報酬について、専門性や能力等を勘案した昇給制度が設けられていない都道府県・政令市が全体の8割近くあるという実態がございます。
 次のページに移りまして、相談員の任用期間につきましても、4分の3の地方公共団体が通算任用期間について、制限がないと回答しておりますが、残り4分の1につきましては、雇用期間の制限を設けている自治体は、年齢制限も併せて設けている自治体、右の方に分けて記しておりますけれども、ピンクのところと緑のところを合わせますと、合計106の地方公共団体において、通算任用期間の制限を設けている。いわゆる「雇止め」が行われているということであります。
 (2)は「処遇に係る課題」ということでありますけれども、消費生活相談員の方が行う事務は多岐にわたっておりますし、その事務を的確に処理するためには、専門的知見やスキルを要します。また、相談を受け付けたり、事業者とのあっせん交渉を行ったりする中で、精神的な苦痛を強いられる場合も少なくないわけですけれども、その能力に見合った報酬・任用体制にあるとは言い難い自治体が相当程度存在するということであります。
 他方で、平成21年度から平成22年度にかけて、180の自治体が相談員の報酬引上げを図るとされております。しかしながら、依然として、能力等にかかわらず一律の、また、他の非常勤職員とも横並びの報酬体系となっているという自治体が少なくないと見られているところであります。
 以上が実態でございますけれども、「望ましい処遇の在り方について」というところで、「(1)相談員が行う事務と求められる能力」と書いているところがございます。16ページの方に移りまして、マル1からマル4に挙げておりますような事務がありまして、それぞれ、その事務を担うにふさわしい能力が求められているところでございます。
 「また」というところに移らせていただきますけれども、消費者関連法が比較的頻繁に改正が行われていること、新手の手口が次から次へと登場することを踏まえますと、知識を適宜更新し、的確に事務を処理する能力を継続的に育成・維持することが必要不可欠となっております。
 また、相談員の能力が実務の経験を通じて養われていく面が大きいことを踏まえますと、経験の浅い相談員に対して、相談現場において的確な指導・助言を行うことのできる専門性の高い相談員を育成し、これを何らかの形で公的に認知する仕組みも検討する必要があるということです。
 「(2)相談員の処遇・研修等とそのための具体的な指針」というところであります。相談員が、上で述べたような事務を的確に処理していくためには、研修機会を定期的に用意する必要がありますし、いわゆる雇止めは適当ではありません。また、仕事の成果、相談員の能力を適切に評価し、その評価に見合った報酬や処遇等が用意されることが適当なことでありますし、そういったことについての地方公共団体における理解促進を図る必要があります。
 したがいまして、消費者庁としては、各地方公共団体の長にあてて、今、述べましたようなマル1~マル3の対策等が求められるとする旨の具体的な指針を示すことによりまして、消費生活相談員の適切な処遇・研修機会の確保を図る必要があると考えられます。
 なお、現在も、地域によりましては、いわゆる3つの資格を有する者、またはこれらと同等以上の専門的な知識及び経験を有する者が不足しているという実情を踏まえまして、国としても、その人材育成に必要な研修やOJTについては、一定程度の負担や技術的支援等の対応を強化する必要があります。
 更に、相談員の多様な働き方に応じて制度的な選択肢を充実するという観点から、任期付短時間勤務職員制度の要件緩和による同制度の活用等の必要がありまして、その検討を早急に求めるというふうに書いているところでございます。
 18ページに移りまして、第4の「情報の収集・分析及び情報提供の在り方について」というところであります。1の「現状と課題」というところで、(1)の「マル1 PIO-NETの設置状況」でありますが、PIO-NETの設置状況を見ますと、そこのグラフにあらわれていますとおり、平成20年度末時点で全市町村の2割にも満たないところでありますけれども、左方の絵にもありますように、平成23年度末までには設置箇所数がほぼ倍増することが見込まれております。
 マル2に移りまして「PIO-NET導入の効果」というところです。これは、前回御紹介した調査結果でありますが、約75%の自治体がPIO-NETの新設によって、相談者への助言・あっせん等の水準が向上したと回答しております。また、約46%の自治体が、事業者指導や事故情報の周知等につながったと回答しております。
 他方、19ページの青い四角の中に書いてございますけれども、具体的な声として、入力業務に関する手間、時間がとられる、負担が大きいといったような声も聞かれるところであります。
 19ページの下の方に「情報収集に関する課題」というところがございます。ここは、今、述べたようなことが書いておりますので、説明は省略いたします。
 20ページに移りまして、「国・地方に求められる情報の収集・分析及び情報提供の在り方」というところでございます。(1)の「情報ネットワークの位置づけ」というところですけれども、PIO-NETは情報の収集・集約・分析・共有のための重要なインフラとして位置づけることができる。今後とも、その利用価値向上に向けた対応を検討する必要があるとしております。また、情報収集という意味では、地方公共団体の消費者行政担当部署に、域内の福祉・保健等、他の行政部署の情報が集約される仕組みが重要であります。
 情報提供の面では、地域の消費者団体、福祉部門のネットワークを活用するといった更なる工夫が必要というふうに記しております。また、事業者向けにも、PIO-NETに蓄積された情報を整理して事業者に対して提供することも検討すべきであるということでございます。
 また、PIO-NET端末は検索機能にすぐれていることも踏まえまして、各省の保有している消費者関連情報につきましても、PIO-NET情報に載せることで、地方公共団体の窓口において、容易に当該関連情報を検索できるようにするなど、国から地方への情報提供についてもその内容の充実を図るべきであると記しております。
 「(2)PIO-NETの設置範囲の拡大」でありますけれども、PIO-NETの活用範囲が、地方の相談処理の支援のみならず、国等の法執行への活用、消費者行政の企画・立案等へ拡大していることを踏まえますと、地方公共団体の消費者行政本課等も含め設置範囲を拡大していくことが必要であります。
 「(3)入力事務の負担」に関してでございますけれども、迅速な法執行が求められている中で、消費者庁や関連省庁等におけるPIO-NETの情報に対するニーズが高まっております。それに伴いまして、入力が必要とされる情報量が増大している。あるいは、システムが高度化していることから、相談員の入力負担が増大しているということで、入力負担についての要望も寄せられているという状況がございます。
 こういった事務負担の増大は、被害事案の早期把握等、国からの要請増加に伴う面も少なくないということであります。こういった相談窓口の入力に伴う手間・費用負担や、入力に関係する研修業務負担の在り方については、既にPIO-NETを利用している相談窓口も含めて、その費用の一部について国が負担することやシステムの刷新等を検討する必要がございます。
 続きまして、22ページ、第5の「商品テストの位置づけ、人材の確保について」というところでございます。1で「現状と課題」と書いておりますが、(1)の「マル1 商品テストの実施状況」であります。商品テストにつきましては、他機関への依頼を含めて、8つの都道府県、5つの政令市が実施していないという回答がございました。また、商品テストの内容自体も、クリーニング検査等の簡易なものが多いという実態にございます。
 「マル2 商品テストの実施体制」というところでありますけれども、専門的知見を有する職員あるいは必要な機材を購入・更新する必要があるわけですけれども、年々、職員数は減少しておりますし、その職員も約4割は他の業務と兼務しているという状況にあります。また、商品テストのための機器の購入・更新等を図った自治体の数も平成20年度までは減少傾向にありまして、基金の創設によって平成21年度には増えたものの、実際に更新・購入したところは、47都道府県・18政令市のうち15、全体の2割強にとどまっているという実態がございます。
 (2)で課題ということでありますけれども、相談窓口において、相談が持ち込まれた場合、商品テストの実施体制が充実していれば、迅速にその原因を究明することができるわけですけれども、今、述べましたとおり、担当職員、施設・機器の面で実施体制は脆弱化している状況にあります。
 2に移りまして、商品テストの在り方というところでありますが、(1)で「商品テストの意義とその強化に向けた対応策」が述べられております。各地方公共団体で、自ら商品テストを行うことには、住民の相談事案への迅速な対応や、住民に対して実験を公開する等による啓発活動等一定の意義があります。
 ただ、人の面、お金の面、施設・機器の面でいろいろ制約がありますので、テスト対象については、各地方公共団体において容易に原因究明できるもの等、その範囲をある程度絞り込まざるを得ないということであります。他方、工業試験場等、域内における他の機関との連携強化、他の地方公共団体間との協力強化等の方策を図ることで充実を図ることも考えられます。
 また、国の関係機関におきましては、全国的に流通している商品や、地方公共団体で実施が難しいものに特化して行うと同時に、全国の自治体や関係機関におけるテストの実施状況に係るデータベースを作成し、情報共有化等に向けた取組を強化する必要があります。
 「(2)人材の確保、育成」でございますけれども、事故情報への対応、試験・研究機関との連携を行う上で、地方の消費者行政の部署におきまして、技術的知見を有する人材を確保し、育成することが重要と考えております。このため技術系の人材の人事ローテーション、他の地方公共団体との人事交流を進めることが考えられます。同時に、消費者行政に特有、あるいは頻発する技術的な問題についての知識やノウハウを蓄積する必要がありまして、そのための研修システムを考えることが望ましい。そうした観点からは、国の関係機関での実務研修推進を図ることも考えられます。
 25ページでございますが、法執行の位置づけというところであります。1のところで「現状と課題」を述べておりますけれども、(1)のマル1で特商法について触れております。特商法におきましては、都道府県の業務停止命令等の処分の件数が増加しておりまして、国の処分件数とも対比して都道府県の処分件数が非常に増えてきているという実態がございます。
 他方、26ページでございますが、景品表示法でも都道府県の執行事例はございますけれども、特商法ほどの広がりは見られないという実態がございます。また、国の執行件数も、このところ、少ない件数となっている状況でございます。
 28ページをご覧いただきたいと思います。「法執行の課題」というところでありますが、マル1の特商法におきましては、都道府県が法規制の実効性確保において、重要な役割を果たしているという認識を示しております。間を飛ばしまして、国のみならず都道府県の執行体制・権限も充実・強化するような一層の対応策を講ずることが望まれるとしております。
 また、景品表示法におきましても、御紹介しましたように、都道府県の処分件数は特商法ほどの広がりはないという状況があります。ただ、処分が低調化すれば、今後、問題が大きくなることも懸念されるところであります。
 2に移りまして、「都道府県による法執行体制・権限」の問題でございます。(1)で「都道府県における法執行強化の必要性」を述べておりますけれども、特商法や景品表示法では、その法目的として、消費者・購入者の利益保護を明記しております。消費者・購入者たる住民の利益保護推進の観点からは、今後とも被害が発生した都道府県において、迅速に処理する必要があります。都道府県の法執行は、以下に挙げておりますマル1~マル3のような観点から、都道府県の消費者行政推進に資することになります。
 他方、消費者庁を含め国の執行機関は、インターネット等を利用した通信販売、急速に広域的に拡大するマルチ商法や複雑な金融商品の電話勧誘等の事案を含め広域的、この広域的というのは、都道府県をまたいでという意味です、に被害が発生している事案について、迅速に対応できているとは言い難いということでありますので、必要な体制整備を急ぐ必要があります。
 「(2)地方の執行力を高めるための国の支援策」というところでありますけれども、マル1で書いておりますのは、法解釈の明確化、問合わせへの対応体制の整備、あるいは法執行のための調査を国と都道府県が共同で行ったり、都道府県の要請に応じて地方から国への出向を受け入れたりするだけでなく、国から地方に職員を派遣して、執行事務の応援・指導を行うことで、国の持っている専門的知見についての共有を推進していくことも必要であります。また、都道府県におきまして、警察のOBの活用や、他部署の職員との連携を強化することで成果を上げている事例もありますので、そういったことも参考に進めていくことが有効であるということであります。
 マル2は、執行関連の情報共有について、ブロック会議とか、特商法・割販法執行ネットとか、いろいろな形で情報共有が進められておりますけれども、今後ともその内容の充実を図る必要があるとしております。
 マル3におきましては、同一事案について、一つの行政機関が調査に着手したものの、事情によって他の行政機関が処分することになった場合の証拠等の引継ぎについて、国から先例等も含めて一定の考え方を示すことも求められるところであります。
 「(3)都道府県等の執行権限強化」というところでございますけれども、マル1の特商法につきましては、県による行政処分の効果が、当該都道府県に限られておりますけれども、次々販売のように、一つの県で処分された後、別の都道府県で営業する。そして行政処分の期間が過ぎた後、またもとの県に戻ってくるといった例が頻発していることを踏まえれば、広域的な被害防止が必要な事案について、その処分の効果を全国に及ぼすことができるものとすることが適当であると考えております。
 この場合、各個別の法律執行は、当該都道府県住民に効果を及ぼすのみならず、全国にも効果を及ぼすことになりますので、国としても技術的支援等を検討する必要があります。
 景表法につきましては、現在、都道府県の執行権限は指示のみとなっておりますので、措置命令も行えるようにすることが適当であるとしております。
 また、県の執行権限強化に合わせまして、公正取引委員会の地方事務所との連携・協力体制を強化する。また、公正取引委員会の地方事務所で措置命令の権限を担えるようにし、国としての執行体制を強化することが求められております。
 第7章では「地方消費者行政の基盤・環境の整備について」ということで、1の「現状と課題」では、この間御紹介いたしました実態調査で、「消費者が製品事故・悪質商法等の被害に遭わないよう、その安全・安心を守るための方策として必要なものは何か」とお尋ねしたところ、全体の約4分の3に当たる311の地方公共団体が「啓発・教育」を挙げています。こういう意味で基盤・環境を整備していく上で、消費者に対する教育・啓発が必要不可欠なものであるということが確認できます。
 他方、学校、大学における消費者教育や、地域社会における各層を対象とした消費者教育につきましては、鋭意行われてきておりますけれども、なかなか効果が見えにくいということで、予算が削られている傾向にあるという指摘もございます。
 (2)で、地方消費者行政の組織体制・人材育成に関して述べておりますが、地方の行政を担う正規職員が過去10年間で半減しております。また、その中で一人の担当者がさまざまな業務を兼任したり、研修期間が短くなったりといったようなことで、十分な専門的知見を身につけてこれを維持していくのが難しいという状況がございます。また、行政組織上も、消費者行政に関する事務の位置づけが相対的に低いということで、安全部門や福祉関係との連携関係が必ずしも十分ではない自治体が少なくないとされております。
 2に移りまして、「望ましい取組の在り方」ということでありますけれども、「(1)さまざまな主体による消費者教育・協働を進めるためのシステム構築の在り方」、ここでは最初に、消費者自身が、一定の知識と確かな判断力を持つこと、それによって被害に遭うリスクを低減することが重要であるとしております。また、地域の多様な主体が消費者教育の内容充実にかかわることや、学校教育以外でも、若者から高齢者に至るまで、特性に応じて、必要な知識や情報提供を行っていくことが必要であるとしております。消費者教育の担い手として、消費者相談に携わっている人、民生委員等福祉関係者などの参画も進めていく必要があります。
 また、こうした多様な主体による取組を地方公共団体が積極的に支援していくためには、消費者教育に関連する事務について法的な位置づけを明確化したり、国から関連教材等について技術的支援を行ったりすることも検討すべきであるとしております。
 また、消費者行政におきましては、地域のさまざまな主体との協働によって効果を上げている事例が多く見られます。消費者団体等の活動が行政に刺激を与え、内容をよりよいものとする力ともなっておりますので、こうした多様な主体の活発な活動が、消費者行政の効果を上げるための重要な基盤であります。国としては、モデル的な事例の紹介など情報提供の面やブロック会議の開催など、情報交換の場づくりの面で支援を行うべきである。また、適格消費者団体が消費生活センター等の行政機関から速やかに情報提供を受けられるようにするなど、適格消費者団体と行政との新たな連携も検討するべきであるとしております。また、事業者との協力関係の構築もここで触れているところでございます。
 「(2)地方消費者行政の充実強化に向けた組織体制と人材育成の在り方」というところですけれども、地方におきましても、消費者行政に関する事務を一つの課や局にまとめていく動きが見られます。しかし、なお多くの地方では、消費者行政に関する事務の位置づけは相対的に低く、消費者利益の擁護、増進という観点からは、部局横断的な連携について課題を抱えております。
 他方、消費者行政を推進するための本部の設置、計画の策定なども行われておりまして、今後、連携の核となる担当部署の格上げや体制充実を検討することが望ましいとしております。また、人材の面では、相談員のみならず、消費者行政を担う正規職員に対しても、現在、国民生活センターが行っている研修機能について、一層の充実が求められます。また、この分野の専門性を培っていこうとする職員に対しまして、将来の展望が得られるようなキャリアパスを提示することも求められております。更に、消費者行政の重要性に対する職員全般の意識を高めていくことも必要であるとしているところでございます。
 最後になりますが、第8で「今後の地方消費者行政の充実・強化の進め方について」であります。これまで述べた充実・強化策の実施に当たりましては、以下のとおり、可能な限り速やかに対応すべきであるとした上で、2つ目のマルですけれども、特段の法改正や予算対応を要しない措置、例えば、望ましい広域連携の在り方や、消費生活相談員の処遇・研修等に係る具体的な指針の策定等については、平成23年度以降直ちに対応に着手することが望ましい。
 3つ目のマルですが、よろず相談窓口を含め、消費生活相談を受け付ける窓口につきましては、平成24年度中には、全市町村で設置する必要がございます。もっとも、各市町村における消費者行政の十分な定着を図る上では、窓口での相談対応の充実や出前講座等による啓発活動等を通じて住民の間での支持・理解を深めるとともに、福祉等他の分野との連携体制の強化等を図る必要があります。そのためには、集中育成・強化期間終了後更に数年の期間を要すると考えられます。したがいまして、地域における消費者行政の定着に向けて、平成25年度以降も国として、さまざまな施策を組み合わせて対応する必要があります。
 その他、法執行の強化等に係る法令改正等が必要な事項やPIO-NETの入力事務に係る国の財政負担の検討につきましては、平成23年度以降、速やかに作業に着手し、遅くとも平成24年度には、実施されることが望ましいとしております。
 少し長くなりまして恐縮でございました。以上でございます。

○稲継座長 ありがとうございました。
 それでは、今の御説明に対し、御質問や御意見のある方は御発言をお願いいたします。
 では、沼尾座長代理、お願いします。

○沼尾座長代理 御説明ありがとうございました。具体的な質問、内容に入る一つ前の段階で、先日、今回辞表を出されました圓山委員とお話をする機会を持ちまして、いろいろお話をさせていただきました。そのときに、改めて辞意を撤回していただくようにお話をしたのですけれども、御本人の決意が非常に固いということでした。さはさりながら、前回、私が最後に申し上げましたが、ある委員の方の意見を排除したような格好で報告書をまとめるのはよろしくないのではないかということで、今の時点で圓山委員にどのようなお考えをお持ちなのかということについて一通りお話を伺いまして、それを次回の委員会の場で是非お伝えさせていただきたいということでお話し申し上げた次第です。お考え、御意見は山ほどおありのようでしたけれども、その中で「これだけは」ということをおっしゃっていただけないかとお話をさせていただきました。
 その御意見も踏まえて、私自身の見解も申し上げたいと思いますけれども、何か齟齬があってはいけないということで、文章をご用意いただきましたので、今から読ませていただきます。
 今回の素案について、4点いただいています。
 まず、1点目。「地方消費者行政の充実・強化のために国は何をすべきかを審議してきたはずです。自治体にあれこれ指示をするのではなく、国がなすべきことを提言されることを願います」。
 2点目です。「国は自治体から毎年100万件前後の苦情情報を得て、政策の立案や法執行に使ってきました。消費者庁発足後は、自治体を国の出先機関のように使ってさまざまな業務を要請しています。業務の大半は非常勤の相談員に負わされ、しかし、国の責任が免責されたままで現在に至っています。恩恵的な国の支援というスタンスではなく、現状のただ乗り的、押しつけ的な業務の対価を支払うというスタンスで、国が責任を果たす部分を提言されることを願います」。
 3点目です。「一方、素案の広域連携のところでは、今回は『消防力の整備指針』という記述が消えて、『広域連携のひな形を示す』という記述だけが残りました。国は、業務水準は示さず、連携組織のひな形を示して自治体を誘導するという意味にもとれます。自治体の組織運営面には介入を慎むべきなので、ひな形を示すなどは国がなすべきこととは思えません」。
 4点目です。「自治体には、安全、表示、取引に関するさまざまな紛争や問題が寄せられます。その解決には、消費者庁が所管する特定商取引法、景品表示法などでは足りません。事業者規制法を所管している各省庁に警察庁、国税庁なども加えて、国の省庁が総力を挙げて、紛争の予防や迅速な摘発に取り組むという決意を明確に提言されることを願います。以上でございます」。
 以上が圓山委員の御意見ですけれども、それを踏まえて個人的に意見交換もさせていただきましたので、感じたことを申し上げたいと思います。
 通常、国の方で地方の行財政に関して何か提言をするときは、地方の在り方というのも記載するわけですけれども、その一方で、国の役割、国の責務というのがまず書かれて、その上で地方が何をすべきかが挙がるということが一般的なのではないか。改めてこの素案の文章を読ませていただきますと、確かに地方がなすべきことについてはいろいろ書かれていて、それについて国がどう支援するかということは書かれているわけですが、その前提として、国として消費者行政というものにどういうふうにかかわるかというところの国の役割、国の責務が実は明示的に書かれていない。それをどこか初めに一言書いておく必要があるのではないか、というふうに思ったところでございます。
 それから、地方は確かに国の出先機関ではないので、地方が運営しやすい環境をどのように構築していくかという観点からの提言を考えていく必要があるだろうということです。
 次の、圓山委員がおっしゃった「ひな形」という文言ですけれども、この報告書の素案の中にも、例えば13ページの下から3つ目のパラグラフで、「例えば、ひな形に沿って広域連携を進めていく自治体に対して」ということで、さまざまな負担支援を図ることが想定されるというふうに書かれています。これを自治体の側から見ると、広域連携を進めたところには支援が出るけれども、そうではないところには支援が出ないのではないか。そうすると、単独で独自に頑張っている自治体もあるわけで、多様な消費者行政の運営の在り方を、ある一定の方向に誘導するものだと思われてはいけないのではないか。むしろそれぞれの地域の資源を生かした形で、その地域で必要な役割がいかにして果たせるのかという観点から、その一つの手段として、広域連携、広域連合もあり得るということにしておかないと、これでは地方の側からすると非常に抵抗感を持ってしまうのではないか。そういったことを感じたところでございます。
 4点目のところで、国の役割というところが、地方の現場で消費者行政を考えるに当たって、対消費者あるいは被害者の方とどう向き合うかということとは別に事業者に対してどのようにかかわるかという問題がある。そこがどうも地方の現場からすると、国の側は警察とか税務署とか、あるいは経済産業省とか、いろいろな省庁が縦割りにあって、そこのところが、地方の側で何かまとめてやろうと思うと非常にやりにくいという課題もある。地方の側が事業者に対して一定の対応をとりやすい形で、国レベルの連携がもう一方で模索されてもいいのではないかというようなことが、どこかに補完的に記載されてもいいのではないか。そういったところが私自身が感じたところでございます。
 総括しますと、地方の消費者行政をどういうふうに進めていくか、それを進めるための環境をどうつくるかという提言は非常に重要だと思いますが、実際にこれを受けてそういった業務を担う地方の側からしたときに、これが押しつけではないかというふうに思ってしまうのは非常にもったいない。地方の側が、これを一緒にやっていきましょうというふうに思えるような報告書としてどういうふうにつくり上げていくかということを、これからの修文の中で考えていくことが大事なのではないかと思ったところでございます。
 以上です。すみません、長くなりました。

○稲継座長 ありがとうございました。
 4点ほど、沼尾座長代理から御意見を頂戴いたしました。わたくし的には一つひとつごもっともな御意見だと思いましたが、いかがでしょうか。
 奥山委員。

○奥山委員 ありがとうございます。前回、欠席となりましたものですから、圓山委員の御発言等の真意については私もつかみかねているので、あるいは少し違ったことを勘違いでしゃべるかもしれません。まず一つは、国の役割と地方の消費者行政を、これから、より力のあるものにしていくためにもう少し国の方で何ができるかを特化すべきだという御意思も、圓山委員にはおありだったのかなというふうにも思いますけれども、私、地方の立場から拝見している限りは、今回の皆様の御議論によって作成途上のこの報告書が、地方の自主性を排除したというか、国として押しつけがましいところになっているというふうには私自身は余り感じていないところでございます。
 というのは、これは、どちらがどっちだと言ってしまってもしょうがないと思いますが、地方消費者行政については、地方が行ってきた中で地方自身の目配りが不十分であったり、認識が自分の自治体中心であったり、全国的な視野がやや欠けていたりということで、十分でなかったところも統計的に出てきたり、調査では出てきたりしているわけでございます。そういう地方のある種及んでいない部分については、はっきり指摘されることによって、地方自身も自らをきちんと客観的に把握できるということがございますので、そこを書き込んでいただくことは別に何ら不都合ではないのではないか。
 また、国として人的な支援をいただく必要がある部分、例えばセンターの調査・検査機能であるとか、また、PIO-NETの入力の経費負担のようなものについて、国と地方の負担の在り方を更に吟味する必要があるのではないかとか、そういった方向性として出していただいている部分については私も基本的に賛同いたしますし、また、これらを国で100%やっていただかなければ地方は何もできないというものでもございません。その間にフレキシビリティの幅があるのは、実務上、よいのではないかというふうな考えを持っているところでございます。
 地方としては多様な地方自治体がございますので、「かくあるべき」というふうに、例えば人口10万人に対して相談員何人であるべきとか、そこまではっきり数字的に拘束されてしまうことにはいろいろな事情が出てまいりますから、難しいものがあると思いますけれども、今回、その辺りについては御配慮をいただいて、ある方向性の幅の中で選択できる形にしていただいているところは、実際上は、よい範囲の中におさまっているのではないかと私自身は思ったところでございます。
 また、ひな形をどう受けとめるかということについては、それぞれの自治体の中で、広域的なものですから、複数以上の自治体の中で単独の自治体で決められることではありません。議論される中で、ひな形をどう受けとめるかという余地はいろいろあると思いますので、ひな形という形であることがそんなに何かを阻害するとは、これも私としては思わなかったというところでございます。
 最後に1点、これもしかとはわかりかねるのですが、消防における指針のようなものが消費者行政の中にもあった方がよいという、圓山委員のお考えだったのかなというふうにも思います。私自身は何らかの指針というのもあっていいとは思うのですが、ただ、消防における指針、いわゆる消防行政という根幹的に危機管理、火災とか、救急とか、災害というときに対して、どれほどの救助力を持っていることによって人命を救うかという行政における指針というものが持つ意味合いと、消費者行政におけるそれとは、受けとめる自治体としてはかなり違ってまいりますので、その指針というのが果たしてどの程度の範囲なのか。私は、消防の指針と同じような考え方をすることは、自治体としてはやや受けとめにくい側面があるというふうに思っております。
 以上でございます。

○稲継座長 どうもありがとうございました。
 では、斎藤委員、お願いします。

○斎藤委員 幾つか指摘したいのですが、一つは、13ページのひな形とか広域連携のお話です。先ほどの沼尾委員のお話ですと、連携したところについてだけ手当するというのはいかがかということでしたけれども、ここでの発想はそもそも、単独でできるところは単独で伸ばしていってほしい。どうしても単独でできないところについて、国で何か示して支援できないかということなので、むしろその方向性の方がいいのではないか。今も奥山委員からありましたが、消費者行政の基準みたいな形で、大小を問わずこれが望ましい姿だと示すとすれば、さっきの圓山委員のペーパーで御意見で出たところの、組織に対する介入的な側面はそちらの方が強くなってしまうのではないかと思います。どうしても単独でやれないとか、うまい連携の方法を模索したいというところに対して支援をするという意味で、連携に向けてのひな形を示すには一定の意味があるのではないかと思います。
 あえて消防関係で近いものを探すとすれば、消防力の基準よりも消防組織法第31条以下の市町村消防の広域化についての基本方針、及びそれについての国の支援という条文があります。むしろ近い面はあるかもしれませんが、先ほど奥山委員も言われましたように、行政分野の特性の違いもありますから、ここであえて消防関係の基準を出すかどうかというのは、ちょっとそういう問題もあろうかと思います。
 もう1点は、違う問題で、ここをこうした方がいいのではないかという意見ではないです。29ページから30ページの広域の法執行で、特商法について、一つの都道府県でやった処分を全国に効果を及ぼすと。私は前回も申しましたように、これは法律で要件設定をすれば可能であって、是非チャレンジしていただきたいと考えております。
 一つ、あり得る疑問としては、あるA県ならA県の自治事務なり行政というのは、県の住民のため、県の地域のためだろうと。それをなぜ隣の県に効果を及ぼすのかという疑問があり得るかもしれませんが、例えば、大きな市が近隣の町村を助ける。広い意味で助けるために協定を結んだり、そういうことはいろいろやっているわけです。それも広い意味で大きな方の地域にとって資するところがあるというので、いろいろな仕組みをやっているのですから、そこはクリアーできると思うのです。あるいは、もう少し地域の事務を狭く考えるとしても、ここで少し広域にたたいておかないと、また自分のところで被害が出るということもあり得ますから、その意味ではこれは要件化を考えていただきたいというのが2点目です。
 最後は、32ページのところで、先ほど沼尾委員からも、押しつけになるようなことがあっては受け取られ方がどうかというのがありました。それで、これを読んでいて気がついたのです。32ページの中ほど、「消費者教育に関連する事務について法的な位置づけを明確化したり」という素案になっています。これの意味ですが、消費者教育について、例えば自治体がその地域の学校や大学の消費者教育をサポートするというのであれば、別に国の法律の規定を新たに置かなくてもできるわけです。
 ですから、何かここで法律の規定を置くことによって、特別な支援スキームがあるとか、そういうことなら考えてもいい部分はあるかもしれませんが、ここも私の主張は一貫しておりまして、何か義務付ける、消費者教育を行えとか、努力義務を置くようなことになると、何度も申して恐縮ですが、北風と太陽の例えで、北風でして、かえって制約することになりますから、ここが国の法律というのを想定しておられるのだとすると疑問を持ちます。だから、自治体の条例で明確に消費者教育を位置づけることを検討してください、条例での位置づけを自主的に検討してくださいというのなら話は別だと思います。
 以上です。

○稲継座長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○沼尾座長代理 今の斎藤委員の御発言で、私自身も、縛るということについては全然考えていないのですけれども、ただ、13ページの書きぶりですと、とにかくひな形に沿って広域連携をやったところに支援するという書き方になっているので、その辺りをもう少し柔軟な書き方にしてはどうかということが申し上げたかったところでございます。

○斎藤委員 勿論、単独で行うところについて、技術的な支援であるとか、いろいろなメニューを国としてお考えになるというのは、それは別に反対いたしません。

○稲継座長 ひな形の言葉のとらえ方ですけれども、緩やかな例示みたいに我々は考えていると、ここで共通認識を持っておきたいと思います。新たな締めつけとか、枠づけになるようなことがあっては絶対いけませんので、例えば消費者庁の方で全国を調査して、ひな形に沿っていないからけしからんとか、金出さないとか、そんなふうには絶対しないようにしてもらいたいということを、ここで確認しておきたいと思います。
 では、国府委員、お願いします。

○国府委員 今の13ページのところですけれども、下から3つ目の段落、「例えば」のところ、沼尾先生もおっしゃっているところの問題です。ここは「ひな形に沿って広域連携を進めていく自治体」というふうに、パターンを特定してしまっている表現になるから、一定の方向に誘導しているように読めてしまうわけで、「ひな形に沿って窓口整備を進めていく自治体に対して」というふうに、もっと緩やかな表現で私はいいと思っております。
 今日の私の資料4、2ページの3項の(2)ですけれども、広域連携だけではなく、しんどい中で単独設置も含めて窓口整備をやっていこうといういろいろなパターンの取組みがあるわけですから、そういう地方の努力を国が支援していくんだということで、単独設置も含めた財政支援を明記していただきたいと思っています。
 それから、財政支援の在り方の問題を(2)に書いているわけですが、報告書素案では、13ページの先ほどの次の段落ですが、「『地方消費者行政活性化基金』や『住民生活に光をそそぐ交付金』のように、地方公共団体の創意工夫に基づく裁量を発揮できるような財政措置を活用する方向で、その具体的な在り方等について検討する必要がある」という記載です。私はこの記載は何を言っているのかよくわからないし、我々の方向づけがきちっと示されているようには思わないので、もう少しきちんと言うべきではないかと思っています。
 それから、「光をそそぐ交付金」のように1,000億の交付金が積まれたけれども、聞くところによると、現時点では消費者行政に回る分はそのうちの20億ぐらいしかない。これは地方交付税のときもそうだったのです。90億を180億に増やしたけれども、消費者行政には回らない。ですから、地方でいろいろな需要がある中で、国としては消費者行政にお金を使ってほしいということで交付金をつくる以上は、消費者行政に使ってもらう。その意味では裁量を制約するのかもしれないけれども、ただ、従来の補助金のように、手取り足取りいろんな規制をして、結果的に地方が使いにくくなるようなお金の出し方は具合いが悪い。
 活性化基金というのは、地方が3年間、基金を組んで使いなさいということでしたけれども、消費者行政というのは、箱モノをつくるのではなく、相談員であったり、行政職員であったり、職員が消費者のために仕事をする、事務をするというところが中心なわけです。ところが、人が少なくなっているというところから、消費者行政の疲弊ということが言われてきているわけですが、当初、活性化基金はそういったところの人件費のためには使えないということがあって、結局、使いにくい。従来の補助金が非常に使いにくいという地方からあった批判と同様の批判が、そこにはあるわけですね。だから、我々はここでこの2つの例を並べて、これが一つのモデルの例であるかのように言ってこういう書き方をしてしまうのは、やはりまずいので、活性化基金はどういう点で問題があったのか、光交付金はどういう点で問題があったのかということを、それぞれ具体的に検討することを踏まえて財政負担の在り方は書くべきです。
 もう一つは、1月24日でしたか、消費者庁の「制度WG」が出されたとりまとめ案があって、あの中で、国の財政的支援の在り方としては一括交付金方式で行くということが書かれています。そこで言われている一括交付金方式がどういうものなのか、私はちょっとよくわからないのですが、これが光交付金よりもっと裁量の幅が広いというか、使う分野がもっと不特定になると、ますます消費者行政に使いにくくなるわけですから、光交付金もしくはあれ以上に絞り込む必要もあるのではないかと思います。そうすると、一方で消費者庁のWGがああいう提案を出されている中で、我々専門調査会が意見を書くときには、ここはもう少し表現の工夫が必要ではないかなと思って、これも本日の資料4の1ページ、2項の(1)の辺りで書かせていただきました。

○稲継座長 ありがとうございます。
 財政の問題が出ましたので、沼尾委員、何かありますでしょうか。

○沼尾座長代理 財政の話については、どこまで書けるかというのが全体的な枠組みの話もありますし、全体として一括交付金化の動きの中で、ここだけ特定で、例えば目的補助金を付けていくというようなことが書けるかどうかというのは、非常に難しいと思います。そういう意味で言うと、一定の財源保障が必要だということを書いていくことは重要だと思いますけれども、それをどういう形で具体的な財源と結びつけて書くかというところは非常に慎重にするべきで、今回、財源は何を充てるかというところは特に記載されていないと思います。そこはむしろ政治判断になっていくのかなというところです。

○稲継座長 国府委員。

○国府委員 先ほど説明は省略させていただいたのですが、私は、資料4の1ページの2項の(1)のところで、せめてこんな書き方ぐらいは我々の報告書としてできないのかということで、アンダーラインを引いて報告書素案のところを少し書き直してみたつもりです。「また、財政負担についても、同様に」と。「同様に」というのは、その前段のところで、地方の自主性、創意工夫の尊重という辺りが書かれていたので、それと同様にという趣旨です。そして「財政負担についても、同様に地方の自主性、創意工夫を尊重しつつも、たしかに消費者行政に使われるような形での財政措置を講ずる方向で、その具体的な在り方について検討する必要がある」と。
 ですから、実際的な財政措置をどういう形でとらえるか。これは政府に検討していただくわけだけれども、検討していただく際に、こういう注文をつける程度のことは我々の報告書としては許されるのではないかと思って、こういう提案をさせていただきました。

○稲継座長 非常に具体的な提案が出ていますけれども、これについての御意見をどなたか。
 では、沼尾委員。

○沼尾座長代理 私自身は、こういうふうに限定してしまうのはむしろよろしくないのではないかという立場です。地方の自主性、創意工夫を尊重しながら、最終的な消費者保護や消費者行政の目的が、総合的な行政サービスの中で達成されることが重要だと思いますので、特定の窓口業務とか何かに使われる形での財政措置というものを明記するのは、いかがかなというふうに思います。

○稲継座長 では、事務局。

○齋藤審議官 事実関係のところだけ確認させていただければと思います。
 一つは、基金について、人件費に使うことはできないということでございましたけれども、当初は、新規に雇う相談員の方の人件費には使われるということでしたし、その後の見直しで、既存の相談員の方の処遇改善にも使えることになっていたと思いますので、そこはそういう御理解でいいのではないかと思います。
 消費者教育の法的位置づけに関しましては、実は消費者安全法の第4条というところがございます。「国及び地方公共団体は、啓発活動、広報活動、消費生活に関する教育活動、その他の活動を通じて、消費者安全の確保に関し国民の理解を深め、かつ、その協力を得るよう努めなければならない」ということで、消費者教育を行うということは消費者安全法の中には既に書かれております。したがって、ここで「位置づけの明確化」と書いておりますのは、新しく義務を課すということではなく、その位置づけを明確化するという意味にとっていただければと思います。

○稲継座長 ありがとうございます。
 では、馬場委員、お願いします。

○馬場委員 先ほど、国と事業者の関係をどういうふうにするかという御意見がありましたが、消費者基本法の第5条で「事業者の責務」というのがあります。それを事業者が真摯に受けとめて実行すれば、悪質業者というのは生まれてこないと思います。それができていない点が問題だと思っていますし、それはつくったけれども、余り周知されていない。今回、国民生活センターの企業研修・地域コースを全国7か所ぐらいで実施されていまして、ああいうところでも参加企業の方には説明されていますけれども、もう少し多くの事業者の方に責務の意識を周知徹底していく。また、罰則規定もないのですから、聞いてもそのままとか、まだまだ理解が足りないところがあると思うのです。ここをしっかり事業者に伝えていくということをもっと進めて、今回の地方の消費者行政の観点とは違って、事業者側からも入っていった方がいいのではないかというふうに思います。

○稲継座長 今のお話で、具体的にどこか表現を変えた方がいいというところがありましたら。

○馬場委員 すみません。今すぐ思いつかないです。

○稲継座長 では、矢野委員、お願いします。

○矢野委員 先ほど沼尾委員からありました、国の役割について何らかの形で記載された方がというところは、私も賛成です。3ページに、消費者行政の基本の考え方といいましょうか、最初のパラグラフの2行目ですが、「全国あまねく消費生活相談を受けることができ、消費者の安全・安心を確保する体制が確立するよう、万全を期す必要があり」というところが基本となすべきところではないかと思います。それに基づいて国はどういう役割を果たすのか。私は、国はまずは基本的な基盤整備をしっかりした上で、そこで地方に頑張ってもらうことが必要ではないかと思っております。
 基本的な基盤整備という部分では、主に3つ挙げられるのではないかと思います。1つは、消費者がどこにいても相談し解決できる相談窓口の整備や相談員の確保。2つ目が、悪質事業者をしっかり取り締まる法執行の権限の強化や権限の見直し。そして、消費者事故等の情報を一元化し、発信し、法改正等へ適用できる。主にPIO-NET入力事務の部分に集約できますが、その3つについてはきちんと国が役割を果たしていくというところを、4ページの「消費者行政における国と地方の在り方について」のところ、特に四角で囲んだ2つ目のマルのところにマル1、マル2とありますが、ここに、マル3で法執行の部分も入れるべきではないかと考えております。
 それから、5ページに関しまして、先ほど国府委員からも発言がありましたが、現に手当されているさまざまな財政負担についても、具体的にどういうふうに効果が上がったのか、その辺についての分析を十分踏まえた上で、消費者行政の活用に確実につながる形での措置をとる旨を明記した方がいいのではないかと思っています。そういう意味では、4ページの四角の中に「一定程度の負担や技術的支援等」と書いてありますが、先ほど、私がもう一つ加えてマル3とした、その3つに対して国が基本的な整備を図る上では、「財政支援も含めたさまざまな支援を検討する必要がある」というふうにしてはどうかと思います。
 本日、私から資料3として提出した資料がございます。これは、東京は島しょ部もありますが、島までは行けませんでしたので、東京都の53区市町村を夏と秋2回にわたって、都内の消費者団体や生協の組合員で消費者行政窓口を回り、同時にアンケートを行ったその結果をダイジェストでとりまとめたものです。以前、片山前座長から、「東京は別だよ、東京は進んでいる」ということもありましたけれども、東京都の取組自体はトップランナーとして確かに進んではいますが、具体的に区市町村に入れば、やはりさまざまなそれぞれの特色がある。しかし、区市町村は区市町村なりにしっかり頑張っているというのが、アンケートの結果部分から読みとっていただけるのではないかと思います。
 5ページは、アンケートで国や東京都への要望や意見を聞きました。非常によく頑張っている区市町村ではあるけれども、しかし、国にはこういった面はしっかり整えてほしいという期待をたくさん寄せております。そのことに応えることがこの報告書の中身ではないかと思っておりますし、沼尾委員も言われた部分に私も賛同して、国の役割もしっかり明記すべきではないかと思っております。
 基準を設置してほしいとか、いろいろありますが、5ページの下の方の「消費者行政全般」の後段部分に、「消費者庁が設置されたものの自治体内部での消費者行政に対する理解は進んでおらず、人員・予算面ともに現状維持すら難しくなっている。国、都、市町村を一体とした組織の在り方を検討する必要、消費者庁に、消費者行政の司令塔としての役割を果たしてほしい」というメッセージを寄せている自治体もあります。このように広範に国への要望がさまざま出されていることを踏まえながら、この報告書の中にそれを具体化していきたいというところで審議にかかわっておりますが、先ほどの国の役割について求められていることを今の資料提供のところで補足させていただきました。
 それから、6ページの広域連携の部分に関してです。6ページの四角で囲んだところの3つ目のマルですが、広域連携については「財政上の負担の在り方を検討する必要」と書いてあります。これだけを読んでしまうと、広域連携にはしっかり財政負担を検討するということですが、では、広域連携をしないところ、それぞれ事情を抱えながら頑張っているところに対してはどうなのかというところは、先ほど述べました相談窓口の整備というところに、一定の財政支援を含めたさまざまな支援の在り方を検討する必要があるのではないかととらえております。
 以上です。

○稲継座長 ありがとうございました。
 今、4ページの四角の中の「もっとも」の後にマル1、マル2とありますが、マル3に法執行の話も書き込んではどうかという具体的な御提案があって、国府委員のメモでもここのことが書かれています。この辺のところ、皆さんの御意見はいかがでしょうか。
 事務局、どうぞ。

○齋藤審議官 事務局から言うことではないかもしれませんが、国としての役割として、法執行をしっかりやるというのは当然だろうと思いますが、ここに書き込むと、国が地方において行う法執行について財政負担をする、というふうにも読み取れます。そこは、そういう御判断でおっしゃっておられるのか。つまり、窓口ネットワークの構築は市町村が進めていくわけですけれども、その進めていくものに対して財政負担も考えましょうということですし、事故情報の収集についても、情報収集という意味で国が一律に行わなければならないものということに鑑みて、国としても、地方に対する支援を財政的にも行う。例えば県の行政処分について、国としても応援するといいますか、国のためにもなるのだから、それは県の処分であっても国が支援する、財政的にも負担する。ここに書きますと、そういうふうな意味合いも出てまいります。
 国府委員は恐らくそういう意味合いでおっしゃっていると思いますけれども、ほかの委員の方もそういうところで御異議がないのかどうか。そこは、多少議論の余地はあるのではないかと考えています。

○稲継座長 国府委員の書かれているところで言うと財政的な負担ですけれども、矢野委員は、必ずしも財政的な負担ということではなく、技術的支援も含めてという幅広のことでおっしゃっていたと思います。どうでしょうか。

○国府委員 私のペーパーの説明を申し上げたいと思います。資料4の1ページの一番下、(2)のところです。「国としても責任をもって推進を図る必要」のある事務ということで、この報告書素案では、相談ネットワークの整備と消費者事故等の情報収集の2つが指摘されています。私は、それに法執行のことも加えるべきだと書いています。ここで書いている「法執行」というのは、都道府県をまたぐ広域的な案件の法執行ということで、従来、圓山先生が、本来そういった事務は国の事務ではないのかというふうにおっしゃっていた部分に該当するわけです。
 消費者庁の制度WGの1月24日のとりまとめを見ても、「国の行政の一端を担う事務」についてはやはり国からの支援ということが書かれていて、国の事務の一端を担うというのは、具体的にはPIO-NETの入力事務が挙げられていたと思います。府県をまたぐ広域的な案件の法執行については、国だけでは十分やれていない中で地方がそこを補充的にやっている。だから、域外効力の問題も出てきているわけです。そういったところで頑張っている府県に対しては、それなりの支援があってもいいのではないかという趣旨で書きました。
 それから、後でしゃべった方がいいのか、今、ここでついでにしゃべらせていただいていいのか、沼尾先生が言われた財政的支援の仕方の問題ですけれども、例えば活性化交付金というのは、地方の消費者行政を充実・強化するための交付金という位置づけでやられている。沼尾先生としては、この程度の縛りをすることは特に異存はないというお考えなのか、それともこういう縛りもやはり具合が悪いということなのか、その辺はいかがでしょうか。関連するかどうかわからない中で、併せてお聞きしたいのですが。

○稲継座長 では、一たん離れますが、お答えいただけたらと思います。

○沼尾座長代理 活性化交付金自体については、あの交付金がそもそも創設された経緯があって、新たに追加的な施策を行われた場合にはということで対応している。そこは交付金の出され方のこれまでの経緯があるので、あれはあれとして機能している部分があると思います。ただ、ああいう形で交付金として別途出すのがいいのか。一般財源の枠の中で、人員とか、標準的なサービスをやるための財源が確保されていることが、そもそも論から言えば重要だろうと。今、財政が非常に厳しい中で、消費者行政を推進するためにということであれば、今の情勢の中ではああいう形で、交付金で、かつ追加的なところで保障していくという形の財政支出をやらざるを得なかったのではないかなという理解をしております。だから、そもそも論からいけば、縛りがない形で地方が柔軟に使えるお金があればいいとは思いますけれども、実態としては厳しいところなのかなと思っております。

○稲継座長 山口委員。

○山口委員 どうも前提がはっきりしないので、是非、地方行政の専門家の学者の先生に御意見をいただきたいのですけれども、そもそも国の事務と地方の事務というのはどう切り分けられるのか。前提があいまいなように思います。例えば国勢調査というのは国の事務としてやっています。PIO-NETの入力業務は、今、何が問題で、どういうものについて国として施策に取り組むかということを、情報収集して、それを国民に発信するという意味では、まさに国の事務だと決めつけてもいいのではないかと思うわけです。勿論、地方の職員が入力している、これだけ見ると地方の事務のように見えるけれども、法律的にはこれは国の事務ではないか。
 例えば、地元の消費者が地元の相談窓口に行って相談を受ける、これが地方自治だというのはわかりますけれども、では、法執行というのは何なのか。これは、圓山委員とほかの委員とでいろいろすれ違いもあったけれども、そろそろ、すれ違いではなく、この最終報告書の中で、どこまでが国の事務でどこまでが地方事務なのか。それがはっきりしなければ、明確化しにくいのかもしれないのですが、その辺をどう考えるのか。
 PIO-NETの入力も国の事務だと。あるいは、法執行も複数県にまたがる。今、例えば山梨県だけで悪いことをやっているなんて業者はいませんよ。ほとんどが全国的なネットでやるわけです。それはもう国の事務、あるいは国の事務としての要素が強い。そうなれば、財政支援ではなく、圓山さんが前から言っているように、要するに国の事務だったら、国は一定程度の財政負担をするのは当たり前だと。支援ではなく、財政負担をするのは当たり前だという議論もあり得ると思うのです。どこまでが国の事務で、どこまでが地方の自治事務だというふうにとらえるのか。この辺は争いがあるところだと思いますが、この最終報告書ではどの辺に着地点をもって提言するというふうになるのか、どなたかお聞かせいただければと思います。

○稲継座長 では、事務局。

○齋藤審議官 事務局としては、消費者行政に関する事務は、国の事務ではなく自治事務です。自治事務であると位置づけて、自治事務であるからすべて地方で賄わなければいけないということではなくて、国が負担する理由があれば国が負担する。ここのマル1、マル2で挙げている窓口のところと情報収集のところは、国が負担する理由があるということで国が財政支援をすることを考えたらいいのではないか。一応頭の整理としてはそうしています。
 PIO-NETの入力事務は、経緯から振り返りますと、相談員の方々が自ら相談対応をしていく上で、ほかのところでどういう処理をしていたかということを参照するために、そういうものが始まったと聞いております。そういう中でまさに自治事務的にやられてきたのだろうと思いますけれども、ただ、最近になってその価値が広く認められて、国の政策立案にも使われるようになりましたし、法執行の一つの情報ソースにもなってきている。国としても利用する必要性が生じてきて、そのために国から入力についていろいろ注文もついてくる。そういう事情が出てきた中で、国としても負担しなければいけない理由が出てきたのではないかということで、ここでは、国もその費用の一部について負担することが求められる、検討すべきである、というふうに書いているということです。
 それから、法執行のところで、広域的なところになると国が負担すべきだという御議論ですけれども、基本的には一つの県の処分はその県の住民のために行いますし、幾つかの県がまとまって同じ業者について同時に処分しても、それぞれの県はその県の住民のために行います。別に国のために行っているわけではないということからすれば、複数の県でやると、それは国の事務だ、国が負担すべきだということで、そこで負担につながるかというと、そこの理屈はやや遠いのではないかと私自身は考えています。

○稲継座長 では、野口委員。

○野口委員 今の審議官のお話に尽きると思いますが、やはり消費者行政は自治事務だということが大前提となっている。この会議でも何度か、それを法定受託か、または国の事務かなんて話もありましたけれども、今回いただいている報告書の中にも自治事務であるということがきちっと書かれていますので、そこは前提にする必要があると思います。
 その上で法執行の点も、これも審議官のお話にあったとおりで、自治事務がいわば重なり合っている部分もあります。そこをもう少し合理的に、一つやったら、重なり合う部分について同じ処理で行けないかという話ですので、だからといって、国の事務だから国が負担という話には決してならない。話題の発端になったのは、4ページのマル1、マル2、マル3に執行の話がくっつくかという話だと思いますけれども、これは少し位置づけの異なる話で、マル1、マル2については、今の法律の仕組みの中で国も一定の責任を負うことになっている。執行の話はそうではなくて、それぞれ執行権限を持っていて、重なり合うところをどうやって効率的に処理していく仕組みがあるだろうかという話なので、これは分けた方がいいかなという気がいたします。

○稲継座長 では、国府委員。

○国府委員 報告書の中に国の役割を書き込むべきだということと、この法執行の問題は関連すると思っています。例えば、近畿圏内2府4県に広がっている被害について、近畿経済産業局が特商法に基づいて行政処分をやるという形が本来的な形で、経産局もそれをやっている。ところが、年間せいぜい数件程度なんですね。それでは広域的な事案全部をフォローできていないという中で、経産局を待っていてもなかなか動いてくれないか、都道府県としては自らの手でせざるを得ないという側面もあると思います。そういったものは、自治体がやっている事務だから自治事務なんだろうと。しかし、自治体が、国が本来やるべき内容をフォローしている側面があると見るべきだし、それを自治事務か、国の事務かというふうに言わなくても、国の事務の一端、行政の一端を担っているという位置づけができるのではないかと思いますが、こういう考えはおかしいですか。

○稲継座長 野口委員、いかがですか。

○野口委員 多分、思考が真逆になっていて、自治事務を基本と考える考え方からすると、まず、消費者行政というのは消費者それぞれの自立に委ねられている。その消費者の自立を助け消費者の安全・安心を守る一番身近な自治体が、自治事務として消費者行政の仕事をしますというところからスタートしてまいります。それが例えば広域に広がって、都道府県レベルで執行した方がいい場合には都道府県に権限を落とし、国は、いかなる形で自治体をサポートするのかというふうに考えていきますので、おかしいですかと言われると、地方自治の分権の時代ですので、「市町村ができることは市町村が」という考え方に立てば、まず国がやるべきことという話が出てくるのではなくて。

○国府委員 お伺いしているのは法執行です。だから、市町村は関係ないですね。

○野口委員 そうですね。市町村がやる法執行も当然あると思いますけれども、消費者行政の話に関して言いますと、都道府県がやるべき法執行というのは都道府県がやるものである。何とお答えしたらいいか難しいのですが、それが、なぜ国が出てきて、国に援助してもらうということになるのかというところが、よくわからないのですが。

○稲継座長 国府委員。

○国府委員 問題を余り広げないで。私がさっき近畿経産局の話を出したのも、特定商取引法の法執行という部分です。NOVAみたいに全国的な規模のものもあるかもしれない。しかし、住宅リフォームなんかだったら、大阪に本社のある会社が近畿2府4県を回ってやっているわけです。私がやった経験でも、大阪で派手に住宅リフォームで被害を負わせていたけれども、大阪府に何度言っても行政処分をやってくれなかった。とうとう滋賀県でその業者で引っかかって、滋賀県が処分したという例もあります。
 そういう例の場合、本来的には都道府県の職員に聞きますと、こんなのは近畿経産局にやってもらわないといけない件だ、何でうちがやらないといけないのかと。大阪府では、行政処分を担当している職員は2人が兼務でいるぐらいです。だから、非常に限られた人数でやっているわけですから、本来だったらやりたくない。国にやってもらいたいということだから、やはり国の事務なのではないでしょうか。

○稲継座長 今の話は、国の事務ではないけれども、経産局が積極的に動いてもらわないとならない事案だと思います。25ページの表を見ると、特商法で経産局が動いているのはごくわずかです。ここのところは、制度があるのに余り活用されていないところがむしろ問題であって、個人的に言うと、勿論自治事務なんだけれども、特商法上は経産局の権限があるので、例えば29ページの(3)のマル1のところは都道府県の話だけ書いてあります。言わずもがなだから事務局は書いておられないのですが、経産局ができるので積極的にやってもらいたいとか、そういうことを書き込めばいいのではないかなと、今、お話を聞いていて思いました。
 発想として、国の事務か地方の事務かというのは、そもそも考え方がぶつかるところで、それは致し方ないところですけれども、両者が何とか落ち着ける、消費者にとって実りのある書き方で最後おさめたいと思うのです。そういう意味では29ページのマル1に、法律上当たり前のことだけれども、実は余りやられていない経産局の処分とか、そういったところにもしっかり国は目を向けてくださいとか、そういう念押しをしておいたらどうかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国府委員 今、座長が言われた点は、29ページの上から2つ目の段落、「他方」というところで、前回も申し上げたのですが、国の執行機関は、インターネット、通販、マルチなどが書かれています。そういう特殊な類型の被害だけに限るのではなく都道府県をまたがる事案は国の役割だということで、「事案を含め広域的に被害が発生している事案について」のところを、「事案を含め都道府県をまたいで広域的に被害が発生している事案について、国が迅速に対応できているとは言い難い」と。だから、この体制整備を急ぐ必要があるという形で入れていただくと、もう少し国の役割、責任というのが明確になって、都道府県に押しつけているだけではないということがはっきりするのではないかと思います。

○稲継座長 今、具体的な修文案が出ました。29ページの上から5行目のところに、「事案を含め」の後に、「都道府県をまたいで」という挿文をするということで、これは皆さん、特に御異論はありませんね。

(「はい」と声あり)

○稲継座長 では、ここはそのように修文をさせていただくことにいたしたいと思います。ありがとうございます。
 では、菅委員。

○菅委員 どうやって伝えたらいいかちょっとわかりませんけれども、まず一つは、21ページの最後の行です。PIO-NET入力について、「その費用の一部について国が負担する」ということが書かれていますが、その上段の「既にPIO-NETを利用している相談窓口も含めて」の「利用している」というのは、どういうことなのか。設置しているということなのか。利用している窓口というと、入力しなくても検索だけという意味なのか、そこを後で教えてください。
 相談員についてPIO-NETの入力費用だけ負担してくれるということは、私としては、かなり前進したのかなとは感じておりますけれども、ただ、PIO-NETに入力するに当たって、相談員はその前段階というのは大変なものがあります。ここに費用が付くとすれば、より一層正確にやっていかなければいけないし、受けた事案についても、あっせんを含めて、きちんとその結末まで確かなものにしていかなければいけない。相談員の負担というのは、今までないがしろにしているということではなく、より一層負担が増すと思います。
 頭が重くなると思うのですが、その中で、6ページのところで、「対応に専門性がないなど、十分な対応をしてもらえない」という49.1%の数字が出ています。低い評価だと思いますけれども、専門性というものを求められている割には、16ページのところにいくと、「各地方公共団体における理解促進を図る必要がある」と。地方公共団体が考えなさいということかなと感じていますが、そこで雇止めに関しても、年度末になりましたら、私たちが一生懸命考えている中でも、来年度は人事一新するとか、再雇用はないとか、そういう声が聞こえてくるようになりました。その辺は、非常に難しいことだとは思いますけれども、もう少し自治体が認識できるような踏み込んだ方法はないかなと考えます。
 それから、後段の方で「よろず相談窓口でも」ということが出ています。私たちが市町村段階のよろず相談窓口を見ていると、消費生活相談と全く結びついていないところが多いようです。消費生活相談は「よろず相談窓口」では取り扱えるような案件ではありません。よろず相談窓口を置いて「窓口設置しました」と誤解されないような、きちんとした書き方をしてほしいなという感じがしております。
 それと、飛んですみませんが、7ページのところで、「センター・窓口」を今後も設置しないと言い切っているところがあります。ここについては、理由とか、そういうもののリサーチはされているのでしょうか。もしあれば、どういう理由なのか。わかる範囲でお願いします。

○稲継座長 まず、事務局から、21ページの利用の意味と、7ページの未設置の理由をもし調べていればという、その2点をお答えいただけますでしょうか。

○齋藤審議官 21ページの利用というところは、おっしゃるとおりだと思います。単に利用するではなく、入力しているところでないと意味が通じないと思いますので、例えば「設置している」とか、書きかえた方がいいかなと思いました。
 7ページの設置予定なしの理由がわかるかというのは、手元に資料がありませんので、もし次回までにわかるようでしたら、御紹介したいと思います。
 それから、座長から言われたところだけではなくて申し訳ないのですけれども、16ページの雇止めとか、研修とか、「仕事の成果を適切に評価し」というところで、こういったことについて、地方公共団体に理解促進を求めるだけでとまらずに何か、という御指摘です。その点につきましては、17ページで、地方公共団体の長にあてて具体的な指針を示すという形で、これも、どれだけの力があるかというところはあるかもしれませんが、もう少し進めた形で呼びかけていったらどうかということを書いているつもりでございます。

○菅委員 ありがとうございます。今度、PIO-NETの入力に関しては直接あげますと。今までの光をそそぐ交付金とか、活性化基金では、修正があって人件費にも使えますといっても、最初の部分だけで、変更になったということがどうやら都道府県から市町村の方に下りていないらしいのです。ですから、やはり届くような措置をしていただかないと、私たち相談員はいつまでも地方自治体の権限でということになってしまいますので、何とかお願いいたします。

○稲継座長 相談窓口の件ですけれども、これは個人的な意見ですが、全国の全市町村に消費生活相談窓口を必ず設置せよと、一応法律上はなっています。ただ、実際に奈良県内を見ると、5つか6つの村役場は職員が30人とか40人です。総務関係が6人で教育が3人と、そんなところもたくさんあります。そこに消費生活窓口を置けということ自体、私は自治体の現場を無視した発想だと思っています。1,800の市町村のうち400ほどは人口1万人未満です。そんなところでもあまねく必ず設置せよというふうに国が地方を縛るのはむしろ逆の話で、法律でそうなっているから仕方ないのですが、やはり地方の実態を見てもらいたいと思います。大きな自治体もあれば小さな自治体もあるので、それぞれに応じて、よろず相談窓口だって別に構わないではないかと私は思いますので、先ほど菅委員がおっしゃった、よろず相談では不十分だとおっしゃることには私は反対です。
 職員が30人しかいない村役場に消費生活窓口を必ず置けというのは、どう考えても不可能なのです。本当に地方の実態を知って国で議論されているのか、地方現場を歩いてみると非常に疑問に思うことがたくさんあります。その辺、地方の実態をちゃんと踏まえて議論を進めていただけたらと思っています。ちょっと個人的な意見になってしまいました。
 ほかに。
 山口委員、どうぞ。

○山口委員 今の座長のお話もわからないでもないですが、ずっと今の議論を聞いていて違和感があるのは、消費者庁設置あるいは消費者委員会設置の過程での国会の議論の中では、被害に遭った人たちの立場に立って消費者被害を救済する、あるいは消費者被害に遭った人たちが泣き寝入りしないような社会、安全・安心に暮らせる社会をつくるように、制度づくり、体制づくりも含めて、それは基本的には国の義務だと。それを、地方自治体への支援も含めて、相談業務をちゃんとやりなさい、あっせんや情報の収集、提供もやりなさいということで、消費者安全法に、国のなすべき業務、地方自治がなすべき業務の基本的姿勢が明記されていると思います。
 今日の議論を聞いていると、今の座長のお話もそうですが、人がいないのだからしょうがない。国がこれやれあれやれと言うのはおかしいという発想なのですが、私は逆で、被害に遭っている人たちが泣き寝入りしている社会がある。そうならないために国が、あるいは地方自治体がどうすればいいのか、どう体制をとればいいのかというところの議論ではないかと思いますが、その辺が少し方向が違わないのかなと。その辺のところで国が何をするのか、あるいはこの最終報告書で何をうたうのか、その辺の視点が何か寂しそうだなという感じがしますけれども。

○稲継座長 菅委員。

○菅委員 私は小さな村の出身ですし、3,000人ぐらいの人口のところからも自治体を越えた相談をいただきます。今、小さいところ、私など、そんなところに家があったのかというところにこそ業者は入り込んでいます。そういう相談を電話一本で受けたときに、区域が違ってもお答えするということで、お聞きして、おたくの方の役場にもそういう窓口、担当者がいるんですよと言うと、「知らなかった」というのが多いんですね。
 ひところ、それを現場でリサーチしたことがあります。行きたくなくて自分の市町村を使わないのか、知らないのかというと、やはり知らないところが多い。小さいところになると積極的な窓口の周知がない。そのときに私たちは、そこの担当者に、こういう人から相談が行くから、こういう内容だからと解決への導きを伝えます。役場職員というのは市町村民のために働こうとする意思がある。その後は、相談員と私たちといろいろやり取りをして、その一つが成功したときに役場職員も自信がついてくるので、そこはやはりやれるところでやっていただく。小さい町の住民は、電車に乗ったりバスに乗ったりしなくても、歩いて行けるところに相談したいわけですね。そこのところは県と連携をとりながら一つひとつ学んでいくと、職員ですので自信がつくと思います。市町村のセンター設置は努力義務ですので、そこのところは国が強制しているとは私は感じていないのですが。ごめんなさい、反論みたいな形で。

○稲継座長 水掛け論になってしまいますが、例えば高山市などは、面積で言うと香川県とか大阪府よりでかいんです。そこに1つ消費生活相談窓口があるといっても、これでワンカウントなのです。面積の狭い小さな村にあってもワンカウントで、1,800のうち何%が設置済みという、そういう計算の仕方がいかがなものかなと申し上げているだけで、山口委員のおっしゃったように、基本の精神は私もそのとおりだと思っております。
 馬場委員。

○馬場委員 先ほど、菅委員もおっしゃったのですけれども、こういう制度をつくっていっても、消費者といいますか、一般の市民の方がそういうものに関心を持っていただかないと、やはりまたじり貧になっていくと思います。ですから、31ページの第7章などで消費者の関心を高めるような施策を入れていく。やはり消費者と消費者センターの接点を増やしていくことが重要だと思います。今回の交付金などで、大阪市ですが、ポスターをつくったりして消費者センターの周知にも注力されていますし、また、地元であれば、例えば図書館に消費者関連の書籍のコーナーを設けて、そういうところで消費者に関心を持ってもらう。そこでは相談先の案内をするとか、接点をどうやって増やすかを考える。今、文章的にどういう表現がいいのか、すぐには思い浮かばないのですが、そういうところもここへ加えていただければと思います。

○稲継座長 山下委員。

○山下委員 沼尾座長代理が最初の方でおっしゃったこととも若干関係すると思いますが、34ページの「充実・強化の進め方」の中で、上から3つ目のマルの「また、よろず相談窓口を含め」というところの文章ですが、「24年度中に全市町村で窓口を設置する必要がある」という表現が、今までの稲継座長とか沼尾座長代理のお話を聞いていると、少し強すぎないか。もっと強くするべきだという御意見もあるかもしれないのですが、年度を区切って義務付けているような印象を、この文章だけ読むと与えてしまう可能性があります。私は、座長が先ほどおっしゃったように、現実を見て対処していく方が結果的には消費者のためになると思いますし、創意工夫は全市町村がむしろ中心となってやっていただきたいと思います。余り強い表現をここで使うのではなく、ここの文章は多分、国としてどういう支援ができるかということを書きたいのだと思いますから、そういう支援の検討の作業をするのだというニュアンスに書きかえた方がいいのではないか。ちょっと具体的な文章まで提案できませんが、そういう意見でございます。

○稲継座長 ありがとうございます。
 では、田中委員、お願いします。

○田中委員 前回のときにもお話に出たと思いますが、「はじめに」のところで、ここに至った経緯を書く必要があるのではないかという意見が出たと思います。今回の文については一部それが出ておりますけれども、地方消費者行政が弱体化したというところは大きく書かれていますが、それ以前に、消費者庁、消費者委員会ができたと。大きな消費者問題があってそういう画期的なことが行われたわけですから、そこで隠れていた消費者被害というのをもう少し書いて、私どもがこれを見るときには、なぜこれができたかという初心に帰って考えていかなくてはいけないのではないか。そこの文が、初めて見た方は、何でこれができたのかなと、そういうところでしょうから、もう少しその辺を加えていただきたいと思いました。
 それから、私は消費者団体ですから、消費者団体については32ページの2のところにいろいろ書いております。消費者団体自身はボランティアのような形で、自分たち自身が会費を払って、消費者啓発や、消費者被害の未然防止ということで、それこそ何の力も財政的な支援もなく活動して、地域の消費者への影響、あるいは消費者行政への協力をやっているような状況です。いろいろな消費者団体がありますが、適格消費者団体などもそれぞれの県に恐らくできていくと思いますし、そういうものに対する支援というか、財政的な面も見ていっていただきたい。そう思いますので、その辺は財政支援の部分を書き込んでいただきたいと思いました。
 ついでのお話で、先日、国民生活センターの商品テスト室をまた見てきました。今回、改めて国民生活センターの役割を考えたときに、例えばPIO-NETだけではなく、二重行政と言われているかもしれませんけれども、経由相談や1人体制のところでもそこに助言をいただき1人体制のところのみならず全国の相談員にとっては強い後ろ盾になっていただいているところがあります。そういうところも書いていただきたいなと思いました。
 商品テストについては、テスト室がなくなる中で、今回ちょっと見てみましたところ、商品テストがない8都道府県と5政令市ではテストが来た場合には、どのような対応になっているかというところが不明な点があります。いろいろな資料を見てみますと、相談員は、どちらかといえば契約に関しての知識は詳しいですが、科学的な知識になると乏しいということで、直接、民間のPLセンターに尋ね知識を得るというようなこともやっております。国民生活センター自体は消費者の視点での技術相談ということで、全国の消費者センターの相談員にとっても、大きな力になっている側面があるというところもお伝えしておきたいと思います。もし書き込んでいただくのであれば、国民生活センターの役割のところを書いていただければと思います。

○稲継座長 ありがとうございました。
 「はじめに」の部分については、同様の意見を国府委員のペーパーの中でも出していただいていまして、こういうことが起きたとか、そういう前提知識を書き込むというのは皆さんの共通認識ではないかと思いますけれども、よろしいですかね。それを今度までに書き加えることにしたいと思います。
 ほかに御意見は。
 では、矢野委員。

○矢野委員 12ページです。前回のところで意見を出しまして、(2)の「都道府県と市町村の役割分担」に対して、国と都道府県の役割分担も1項目起こしてほしいということを要望いたしました。(2)の最後のパラグラフのところにそれが登場しましたが、国の支援というだけではなく、国の役割として都道府県や市町村にどういうかかわりを持つのかというところでは、前回、意見をしました経由相談について、文章としてはつづられていますが、これを1つの項目に挙げて、併せて、現在は国民生活センターが果たしているわけですが、その機能として、公益性を持ったADRというところも一つの支援業務としてあると思います。都道府県や市町村で住民が最終的な解決に至らなかったところを、最終的には国に解決のところを面倒を見てもらえるという安心が担保される状況は、国の役割として、最後の砦として果たすべき部分があるのではないかと思います。そういう意味で国が都道府県、市町村に支援をする役割というところで、1項目新たに起こして整理をしていただきたいと思っております。

○稲継座長 ありがとうございます。
 下谷内委員、どうぞ。

○下谷内委員 16ページですが、(1)のマル1~マル4とありまして、4番目の一番下の段落、「なお」のところですが、ここには相談員のことが書いてあります。経験の浅い相談員に対して専門性の高い相談員を育成すると、これは確かにいいことだと思います。次の、「これを何らかの形で公的に認知する仕組みも検討する」というのは、何を指して「これを」と言っているのかがわからない。専門性の高い相談員さんのことを「これを」と言っているのでしょうか。この意味がわからない。そうすると、これと資格と、何かお考えがあるのかというふうにも考えるのですが、教えていただければと思います。

○稲継座長 これは、普通に読めば専門性の高い相談員です。公的な資格ということですね。

○下谷内委員 そうすると、専門性の浅い相談員は資格がないということでしょうか。だれでもなれるということでしょうか。

○齋藤審議官 今は3つの資格があるということは当然の前提になっています。その中でも専門性の高い相談員の方はいらっしゃるので、そういう方を何らかの形で公的に認知する仕組みというふうに読んでいただければと思います。

○下谷内委員 そうすると、現在の3つの資格を前提としてということですね。それを書き込んでいただけますでしょうか。何か違うと思うのですが。

○山口委員 それは私は反対です。今の3つの制度がいいのかどうかというのはここで議論もしていませんし、私などは個人的には一緒にしたらと思っていますけれども、現状を前提にというのは、まだここでは議論は煮詰まっていないと思いますよ。委員同士でちょっと申し訳ないですが。

○下谷内委員 ここは、非常に難しいところであるなというふうには感じております。

○稲継座長 前回、たしか菅委員からもこの話が出ていて、その辺はちょっとぼやかして書いていただいている感じですね。ですから、山口委員もおっしゃったように、意見がまだ集約できていないので、こういう書き方でそれぞれ読み取っていただくということでよろしいですか。
 ほかによろしいですか。
 ありがとうございました。いろいろ貴重な御意見もいただきました。事務局においては、本日の議論を整理の上、報告書の改訂案を私とも相談しつつ作成をお願いしたいと思います。
 また、現在、パブリックコメントをやっております。2月15日の火曜日までを期限としておりますので、次回の専門調査会では、パブリックコメントの概要も報告いただいた上で報告書の改訂案を議論したいと考えております。
 なお、その他、お気づきの点や何か御意見等ございましたら、事務局までお寄せください。
 本日の議題は以上でございます。
 最後に、事務局から次回日程等について発言をお願いいたします。

≪3.閉会≫

○原事務局長 どうもありがとうございました。
 次回は2月24日(木曜日)の午後2時からを予定しております。今、座長から御紹介いただきましたように、今日、たくさんの御意見をまたいただきましたので、できるだけそれを盛り込んだ形の改訂版をお出ししたいと思います。パブリックコメントは15日締切りですので、24日に間に合わせるように、そちらの意見の御紹介もしたいと思っております。
 事務局からは以上です。

○稲継座長 それでは、本日はこれにて閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

(以上)