分権クローズアップ[地方分権改革の旗手] 第21回 茨城県

分権クローズアップ[地方分権改革の旗手コーナー]では、各地方の「地方分権改革の旗手」の方から、それぞれの地域における地方分権改革の取組や成果について紹介をしていただきます。第21回は、茨城県 総務部行財政改革・地方分権推進室の秋葉卓哉主任から寄稿いただいた記事を掲載します。


1.はじめに

茨城県は、平成28年3月に策定した新たな県政運営の基本方針となる県総合計画「いばらき未来共創プラン」に基づき、「みんなで創る 人が輝く元気で住みよい いばらき」、「イノベーション大県いばらき」を目指し、各種施策を推進しております。

これらの施策を着実に推進するためには、引き続き県民本位のサービスに徹するとともに、行政の質をより一層高める改革を推進し、効率的・効果的な行財政システムを構築することが重要であり、現在、今年度を最終年度とする第6次茨城県行財政改革大綱に代わる、第7次行財政改革大綱を策定しているところです。

第7次行財政改革大綱では、推進事項として、引き続き、地方分権の推進、市町村への事務負担の廃止・軽減等の見直しの推進等を掲げる予定であり、今回は、本県におけるこれら取り組みとして、2つの事例を紹介します。

2.事例紹介1 本県における義務付け・枠付けの見直し

地方分権一括法による法改正等を契機に、本県における課題や地域特性など、地域の実情に合わせた制度の改善を図っています。


(1)福祉施設等における災害対策に係る独自基準

従来、福祉施設等における災害対策の国の基準は、所管法律ごとに省令において基準が定められ、施設の種別によって不統一な状況にありました。このため、複数の施設を展開する法人では施設により対応が異なり複雑であったほか、東日本大震災の被災県として、入所者等の安全を確保する観点から、災害への備えを充実させることが課題となっていました。

そこで、第1次一括法及び第2次一括法による児童福祉法、老人福祉法等の改正により、各施設の災害対策に関する基準が、「参酌すべき基準」とされたことから、独自基準の設定により災害対策の強化を図ることとしました。

具体的には、平成24年12月、「児童福祉法に基づき児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例」等の19条例を制定(平成25年4月施行)し、災害設備の設置、具体的な災害計画の作成、関係機関への通報体制の整備、定期的な訓練の実施を義務規定に統一するとともに、災害時に備えた食品や医薬品等の備蓄、地域住民や他の社会福祉施設等との連携・協力体制の構築を努力義務として規定しました。


茨城県災害対策独自基準画像

これにより、各施設が災害計画の策定及び食品や医薬品の備蓄等をすべきことが明確となり、改めて災害に対する意識付けがなされた結果、災害対策への体制の確保が図られました。

また、これまで義務が課せられていなかった分野についても、条例に基づき指導することが可能となり、重点検査事項として実地検査を行い、不備があれば指摘を行っております。

さらに、「地域住民や他の社会福祉施設等との連携・協力体制の構築」を努力義務化したことに伴い、特養等の老人福祉施設においては、災害時の相互支援を主目的として職員研修や施設行事の合同開催が進んでいます。地域貢献活動の取組等を目的に、同種の施設間による協力協定(「老人福祉施設間パートナーシップ協定」)も進んでおり(現在特養の9割で締結済み)、災害対策の強化が図られています。

福祉施設協議会と県の間でも基本協定を締結し、大規模災害の発生時には、要支援施設への必要な職員の派遣等、応援・協力することとしています。


福祉施設が連携実施した防災訓練写真
複数の種別の福祉施設が連携して実施した防災訓練の様子

(2)県道の構造に係る独自基準

本県では、平地部が多いことや、工業団地周辺で大型車が多く通行するなどという地域特性から、交通の安全性や円滑な物流を確保するための道路を早急に整備することが求められていました。

そこで、従来、道路構造令に基づく平地部の道路幅員等の基準は全国一律とされていましたが、第1次一括法による道路法の改正により、国の基準が「参酌すべき基準」とされたことを踏まえ、茨城県の地域特性に基づく現状や課題を踏まえた道路整備を推進することとしました。

具体的には、平成24年12月、「道路法に基づき県道の構造の技術的基準等を定める条例」を制定(平成25年4月施行)し、茨城県の現状や課題を踏まえた独自基準を設定することにより、地域特性に合わせた道路整備を推進しております。


国の参酌基準及び茨城県独自基準画像

これにより、計画幅員を減少するなどの柔軟な運用が可能となったことから、用地補償費や工事費の節減、整備スピードのアップにより円滑な物流の確保のための道路整備が促進されています。



3.事例紹介2 市町村への事務負担の廃止・軽減等の見直し

本県では、地方分権改革が進展する中、市町村との連携・協力を推進する観点から、県から市町村への事務負担の廃止・軽減に向け、市町村から意見を募り、定期的に県の規則等の見直しを行い、改善を進めております。

第6次茨城県行財政改革大綱においても、市町村への事務負担の廃止・軽減に向けた取り組みを位置づけ、推進期間の平成24年度から28年度までのうち、昨年度までの4年間に計17事務を見直したところですので、主なものを紹介いたします。


(1)事務処理特例条例の改正に係る市町村への協議方法の簡素化

毎年、県から市町村への新規権限移譲事務の追加や、移譲元となる対象法令の改正等が生じた際、県は事務処理特例条例の改正に先立ち、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することとなる市町村の長に協議しなければならないとされています。

しかし、市町村から当該協議方法の簡素化に向けた意見がなされたことを踏まえ、平成28年度より市町村への協議方法を見直し、各市町村が条例改正に関して協議を要する条項を一覧化したことにより、各市町村は一覧表により改正箇所を一目で把握できるようになり、協議に係る事務負担の軽減が図られました。


茨城県条例改正一覧画像

(2)ヘルスロードの指定に係る市町村からの再推薦の廃止

本県では、県民が身近なところで、歩いて新たな発見と健康増進にチャレンジ出来るいばらきヘルスロードの整備を図り、ウォーキング活動の実践を支援しています。いばらきヘルスロードは、一般の公道等を歩きやすい道として指定しており、県では平成27年度末までに309コースを指定したところです。

指定に当たっては、従前、県民から新たなヘルスロードの推薦を募り、その推薦に対して、再度市町村が推薦を行い、その推薦結果を受けて県で指定する方法を採っていましたが、市町村からの意見を踏まえ、指定方法を見直し、平成26年度から市町村の再推薦事務を廃止し、指定事務の簡素化を図りました。


いばらきヘルスロード紹介画像

(3)地球温暖化防止活動推進員の委嘱に係る市町村長推薦要件の廃止

本県では、地球温暖化対策推進法第37条に基づき、地域における地球温暖化防止の取り組みを進める者として地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、平成28年12月現在で299名が地球温暖化防止活動等を推進しております。

推進員の委嘱に当たっては、従前、地球温暖化防止に関する知識を有し、地域において市町村と連携して環境活動ができる者及び市町村長の推薦を受けた者という要件を課しておりましたが、市町村の事務負担軽減の観点からの意見を受け、委嘱の方法を見直し、平成28年度から市町村長の推薦を受けた者という要件を廃止し、委嘱手続きの簡素化を図りました。


これらの取り組みにより、市町村の事務負担の軽減が図られるなど、一定の成果が上がっているところであります。また、現在策定中の新たな行財政改革大綱においても引き続きこれら取り組みを位置づけ、市町村と密に連携し、今後も絶えず見直しを図っていく予定です。

4.おわりに

急激な人口減少と超高齢化の進行等の社会経済情勢の変化などの複雑化・多様化する行政課題への対応や、厳しい状況が続く財政事情への対応など、県政を取り巻く環境に的確に対応していくため、さらなる改革に全庁一丸となって取り組んでいく必要があります。

地方分権の推進や、市町村への事務負担の廃止・軽減等の見直しの推進等は、直面する行政課題への効果的な対応策の1つであり、継続的に取り組んでいくことが重要です。

今後も、第6次茨城県行財政改革大綱及び今年度策定予定の第7次行財政改革大綱に基づき、これらの取り組みを推進してまいります。