本部専門員の意見・要旨(行政改革推進本部 地方分権部会)

平成6年11月18日

(本資料は、本部専門員の意見の大要を整理・集約したものである)

1  地方分権推進の基本理念

  • 我が国が成熟社会に移行しつつある中、個人や地域の主体性、個性が十分発揮できる民自律・分権型システムに転換することが必要。
  • 憲法に定める「地方自治の基本原則」(第92条)にある地方自治の本旨の実現と国と地方公共団体が対等の立場に立つことが徹底されるべきである。
  • 国・地方を含めた行政の民間への関与を減らすことが地方分権の前提。簡素で効率的な行政の実現のため、国・地方を通じた規制緩和と行政組織のリストラが必要。その上で、国と地方の役割分担を見直すということを明確にすることが必要。
  • 小選挙区制による国の基本政策について国民の選択を問う選挙制度にするためには、規制緩和とともに、地方分権とセットでなければならない。
  • 地方分権を推進する目的は、きめ細かな住民ニーズの実現、住民の自治意識の向上、政・官・財癒着構造の是正、地方公共団体の行政責任の明確化、縦割り行政の是正、中央政府の機能純化、東京一極集中の是正などである。
  • 地方分権は、地方自治の確立、行政の簡素合理化、総合性・多様性・弾力性の確保等を通じて、地域社会のみならず、活力ある国家社会を建設していくために不可欠である。
  • 2 1世紀を展望し、多極分散型国土の形成及び来るべき高齢社会に適合した地域福祉ネットワークの構築のため、国の立法権及び執行権を大幅に地方公共団体に移譲し、これを地域住民の自治に委ねることが必要。
  • 地方公共サービス、税収に関し、ナショナル・ミニマムあるいはシビル・ミニマムがある程度達成されたと思われる今日、地方分権、地方自治を推進する立場から、若干の不均一性、多様性を認めるべき。
  • 成熟社会となり、地域の実情に即した柔軟な公共サービスを提供する必要。政治参加の質の向上及び住民と政治・行政との間でより風とおしのよいチャネルの確立。権限と責任の所在の明確化による自己責任の実現。サービスとコストの選択肢の多様化。東京や中央政府を頂点とするハイエラルキー構造や思考から脱却し、みずからの地域の誇りと自信を確立。
  • 地方分権の推進により、地域の潜在成長力、独自性が発揮できるようにする。
  • 国は地球的規模の課題に応えるため、内政を地方公共団体に委ね、国家外交、安全保障など、国として果たすべき役割を担う体制を確立する必要がある。
  • 増大する国際調整業務に機敏に対応させるため、国の省庁を内政業務から解放し、その責務の重点を「対・地方」の内向きの姿勢から、「対・国際社会」の外向きの姿勢に移す。
  • 国・都道府県・市町村の間の連絡調整と協議に必要とされてきた人手と時間の膨大な浪費を省き、中央地方を通じた行政の簡素効率化を進めること。
  • 連邦国家に見られる「地方主権」的発想は、かえって混乱を招くことから、日本型地方分権システムの構築を目指すべきである。

2 地方分権推進に関する基本方針

(1) 国・地方の役割分担等の在り方

  • 国際的国内的な大変革に対応した新たな視点に基づき抜本的に見直し、国は、国際化への対応へ重点的に取り組む体制に転換し、地域に関する行政は、地方公共団体が主体的に担う体制に転換するべきである。

    国は、国家の存立に直接関わる政策に関する事務(例えば、外交、防衛、通貨、司法など)を行うほか、国内の民間活動や地方自治に関して全国的に統一されていることが望ましい基本ルールの制定に関する事務(例えば、公正取引の確保、生活保護基準、労働基準など)、全国的規模・視点で行われることが必要不可欠な施策・事業に関する事務(例えば、公的年金、宇宙開発、骨格的・基幹的交通整備など)を重点的に行うこととし、その役割を限定的なものにしていくべきである。

    このほかの事務は、地方公共団体が行うものとする。

  • これまで、全国的統一性や規模・視点が過度に強調され、事務の広域性や全国的な統一性・公平性を確保する必要を理由として国の関与が正当化されてきたが、全国的影響をもって直ちに国の役割とすべきではない。また、何らかの形で国の役割が必要な場合でも、国は極力基準の提示や制度の大枠の制定にとどめ、具体的な実施は地方の裁量に委ねるべきである。

(2) 国から地方への権限移譲等の推進

1 権限移譲等の基本的考え方及び進め方

  • 権限移譲にあたっては、行政の簡素化、規制緩和の推進の観点から当該事務そのものの必要性について徹底した検討を行うべきである。
  • 当面の地方分権は、都道府県・市町村の2層制という現行の制度を前提として推進する。その際には、国から都道府県への分権を最優先課題とする。その後、都道府県から市町村への分権を第2次的な課題として取り組む。
  • 地域に関する行政は、基本的に市町村と都道府県で完結するようにする。
  • 個別の権限ごとの移管等を検討する手法から、新たに、まちづくり、保健・福祉等のように行政分野ごとに権限の移管、国の関与・補助金の整理等を時限を区切って、一括して計画的に進める方式を導入する。

2 関与・必置規制の整理等

  • 地方公共団体に対する国の関与・必置規制は、抜本的に見直して必要最小限度のものとすべきであり、かつ法律の明文によって認められている場合のみこれを行うことができるものとする。これらの場合を除き、国の行政機関は、直接、間接を問わず、地方公共団体に対して関与してはならない。なお、関与の形態としては非権力的関与かつ事後関与とする。
  • いわゆる必置規制を始めとして、地方公共団体に対する画一的な関与を大幅に緩和し、廃止・縮減・合理化を図ること。

3 機関委任事務の廃止等

  • 機関委任事務制度は原則として廃止すべきものであり、その進め方、代替措置等については、適切な措置を検討する。
  • 機関委任事務制度は廃止する。なお国の事務として残さなければならず、かつ執行に地方公共団体の協力を必要とする事務については適切な措置を検討する。

4 国の地方出先機関等の整理合理化等

  • 国の地方出先機関については、国と地方公共団体との事務権限の再配分に合わせて大幅に整理縮小し、廃止または地方公共団体の行政組織への統合を図る。
  • 地方事務官制度を廃止する。
  • 抜本的な地方分権を進めた上で新たな中央省庁体制を検討すべきである。
  • 地方公共団体と国との事務配分の見直しに伴う国から地方公共団体ヘの公務員の再配置については、適切な対応措置をとる必要がある。

(3) 地方公共団体の財政基盤の整備

1 地方税財源の充実

  • 地方公共団体が事務事業を自主的・自立的に執行できるよう、事務配分に応じた地方税財源を安定的に確保し、地方公共団体の歳出総額と地方税収入総額との乖離を極力縮小する方向で地方税財源の確保を図るべきである。この際、地方公共団体の課税自主権が強化されることが必要である。また、サービスと負担の対応関係について納税者意識の高揚を図る。
  • 国は、地方公共団体と国との事務配分の見直しに伴い、地方交付税制度については、地域の実情に即した自主的・主体的行財政運営を行えるようその総額の安定的確保、地方公共団体特有の財政需要を的確に反映させることのできる基準財政需要額の算定等、その在り方を見直すべきである。
  • 地方債許可制度については、その制度の一層の弾力化、簡素化を図るべきであり、その運用にあたり個々の地方公共団体の起債に係る国の関与を最小限度のものとするとともに、地方債の良好な発行条件等を確保するため、地方債市場の整備育成や外債等資金調達先の多様化など地方債発行にあたっての条件整備を図ることが必要である。

2 国庫補助負担金の整理合理化等

  • 国庫補助金等が大きなウエイトを占める現在の地方財政システムは、地方公共団体の主体的な行財政運営を制約するとともに、これに要する経費は過剰な国民負担を招くことになっている。地方公共団体の事務として同化・定着・定型化しているものに係る補助金等、零細な補助金等、奨励的補助金等は、原則として廃止し、一般財源化すべきであり、その総額と総件数を削減する方策を検討する。特に、零細補助金についてはその最低額を早急に大幅に引き上げ、これを短期間のうちに全面廃止する。
  • 国庫補助負担金は、公共事業、教育、福祉等の負担金等に限定し、経常的国庫負担金については、今後とも国が義務的に負担すべき分野を厳選し、その他のものはこれを廃止する。公共事業に対する国庫負担金については、その対象を、例えば、国家的なプロジェクト等の根幹的な事業をはじめ、基本的なものに限定するなど、投資の重点化を図る。また、廃止した補助負担金相当額を地方一般財源として措置する。
  • 国庫支出金の一般財源化にあたっては、所要の地方一般財源を確保することが必要である。
  • 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の財産処分に関する規定の適用について、地方公共団体については、弾力的適用を図る。

(4) 自立的な地方行政体制の整備・確立

1 地方行政体制の整備

  • 市町村合併は、自主合併を基本とすべきであるが、自主的な合併を推進するため、市町村合併特例法に改正を加え、その時限を更新するとともに、特例措置を充実すべきである。
  • 市町村については、地方分権特例制度・中核市・広域連合等の活用を図る。
  • 市町村域及び都道府県域を越える広域的な行政需要に対応するため、新たに創設された広域連合の活用などが必要である。また、小規模町村については、都道府県などによる補完や支援の仕組みをつくることも必要である。
  • 地方の自治能力の一層の向上を図るため、自治体内での人材育成とともに、国と地方の人事交流の活性化、民間との交流をこれまで以上に進める。

2 地方行革の推進等

  • 地方公共団体は、地域住民の支持を得るため、時代に即応した事務事業、組織・機構の見直し等を行い、行政サービスの向上を図るため幅広い行政改革を計画的に推進する必要がある。その際、民間組織・ノウハウを積極的に活用すべきである。なお、地方公共団体の自主的・主体的な行政改革の推進を阻害している国の関与、必置規制について大幅に整理すべきである。

3 行政の公正・透明性の確保、住民自治の充実強化等

  • 地方行政の公正・透明性の向上や住民自治の強化を図るため、情報公開条例や行政手続条例の制定を推進し、外部監査制度を導入するほか、地方行政への住民参加を充実・強化する。また、住民に聞かれた議会活動を展開する。

4 条例制定権の拡大

  • 地方公共団体の政策の選択幅を広げるため、地方公共団体の事務処理に関し、法律等の制定が必要である場合、法律等は細部にわたる規定を設けず制度の大枠を定めることとし、制度の具体的な内容は地方公共団体の条例で規定するものとする。

3 今後の推進方策の在り方 -推進体制・推進方策-

(1) 地方分権の推進に関する法律の制定等

  • 地方分権の推進を図るため、次期通常国会において「地方分権の推進に関する法律」(仮称)を制定する。
  • 地方分権の推進に関する法律は、地方分権への計画的・集中的取り組みを促すべく、5年程度の時限立法とし、地方分権の基本理念、地方分権の基本方針、地方分権推進委員会(仮称)の設置、地方分権推進計画の作成、地方分権の推進状況の国会への報告(地方分権推進白書)、等を定めるべきである。

(2) 地方分権の推進に関する委員会の設置及びその構成等

  • 新たな独自の推進・監視機関として、地方分権の推進に関する法律制定後直ちに地方分権推進委員会(仮称)を設置する。
  • 地方分権推進委員会は、学識経験者で構成し、そのうち一定数の者は自治体関係者から推薦された者とし、委員の任命にあたっては、国会の同意を要することとすべきである。
  • 地方分権推進委員会が、推進機関として勧告・調査・分析などの期待される機能を十分発揮できるよう、十分な定員と予算を備えた独立の事務局を有するべきである。

(3) 地方分権の推進に関する委員会の任務・権限

  • 地方分権推進委員会の権限については、策定期限を明示した地方分権推進計画の具体的指針について内閣に勧告し、地方分権推進計画の策定過程において意見を提出し、さらにその進捗状況を監視し必要な意見を述べることができるものとする。また、地方自治に影響を及ぼす法令の制定改廃や予算上の措置等に関して、内閣及び国会に対し意見を提出することができるものとする。
  • 内閣総理大臣は、地方分権推進委員会の意見が提出された場合、これを尊重する。

(4) 実行機関の設置

  • 新たな独自の実行機関として、内閣総理大臣を中心とする強力な地方分権推進本部(仮称)を内閣に設置する。同本部は、地方分権推進計画を策定し、進捗状況を見ながら1年ごとに実現に向けた見直しを行う。

(5) 地方分権推進計画の作成及びその内容

  • 地方分権推進委員会が示す指針に基づき、それぞれの行政分野において、国から地方への権限移譲や国の関与の整理合理化、これらに伴う国庫補助金等の一般財源化を含む財源の移管、国家公務員の定員管理等について、その具体的な内容と措置時期を明らかにした地方分権推進計画を策定する。
  • 都道府県と市町村の関係については、都道府県は都道府県地方分権推進計画を作成するものとする。