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平成元年以降の税制改革
平成元年以降の経済状況と税制の変遷は次頁の(資料1)のとおりであり、昭和62・63年の抜本的税制改革を踏まえつつ、その後の経済社会の構造変化に対応した税制の見直しが進められるとともに、その時々の景気情勢に配慮した措置も講じられてきました。 |
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経済社会の構造改革に対応した税体系の改革等
平成6年の税制改革においても、少子・高齢化の進展をはじめとするわが国経済社会の構造変化などに対応するため、個人所得課税を税体系の中心に据えつつ、消費課税のウェイトを高める改革が行われました。また、バブルの生成と崩壊の過程において、土地や金融をめぐる状況の変化や企業活動の環境変化などに対応する各般の政策対応・制度改革が行われ、税制としても、これらに適切に対応する観点から様々な取組みが行われてきました。 |
| イ |
.平成6年の税制改革
この税制改革は、少子・高齢化が進展していく中で、公正で活力ある福祉社会を実現するためには、公平・中立・簡素の基本原則に基づきつつ、高齢化社会を支える勤労世代に過度に負担が偏らないよう世代を通じた税負担の平準化を図り、社会全体の構成員が広く負担を分かち合うことが重要であるという考え方に立って行われたものです。平成6年11月に関連法が成立し、国民が公平感を持って納税し得るような税体系を構築する観点からの税制改革が実現されることとなりました。具体的には、個人所得課税について、中堅所得者層を中心とした税負担の累増感を緩和するため、全体としての税率構造の累進緩和などによる税負担の大幅な軽減を行いました。消費税について、社会の構成員が広く負担を分かち合うよう、中小事業者に対する特例措置等について必要な見直しを行い、税率を引き上げることにより消費課税の充実が図られました。同時に、地方分権の推進、地域福祉の充実等のため、地方税源の充実を図る観点から、消費譲与税に代えて地方消費税が創設されました。
平成6年の税制改革は、経済社会の構造変化に対応した改革であると同時に、景気対策という側面をも併せ持ったものでした。すなわち、経済状況に配慮して、消費税率の引上げ等を平成9年4月実施としつつ、個人所得課税について、平成7年(度)以降の制度減税を行うとともに平成6年(度)から8年(度)の特別減税を組み合わせ、先行減税が実施されました。
平成9年4月から消費税率の引上げが実施されたことや個人所得課税の特別減税が平成9年(度)に継続されなかったことが、その後の景気後退の主な原因となったのではないか、との見方があります。消費税率の引上げ等は、わが国経済が緩やかながら回復を続けている中で、平成6年秋に法定(消費税率等についてのいわゆる検討条項も設けられていました。)されたとおり、平成9年4月から実施されたものです。平成9年1~3月期に消費税率引上げ前の駆込み需要が発生したため、同年4~6月期においてはその反動が現れ、民間最終消費支出の伸びがマイナスとなったことも事実です。しかし、同年7~9月期においては、民間最終消費支出は、対前期比でプラス1.6%、対前年同期比でもプラス0.5%と増加に転じており、駆込み需要の反動減の影響を脱して、緩やかながら回復傾向にあったものと見ることができます。平成9年度後半以降における経済の停滞については、様々な要因が指摘されていますが、同年秋以降の金融機関の相次ぐ破綻による金融システムへの信頼低下やアジアにおける通貨・経済危機が、バブル経済崩壊に伴う資産市場の低迷や不良債権問題の顕在化とあいまって、家計や企業の心理を悪化させるとともに、金融機関の貸出し態度を慎重なものとさせ、実体経済に影響を及ぼしたことに留意する必要があります。 |
| ロ |
.土地税制
土地については、いわゆる土地神話などを背景に平成元年12月に土地の公共性などを基本理念とする土地基本法が制定され、土地税制の見直しを含む総合的な土地政策の推進が求められました。平成3年から4年にかけて、土地譲渡益課税の適正化や地価税の創設など土地税制改革が実施されました。この改革は、土地に関する適正・公平な税負担の確保という視点と、土地の資産としての有利性を縮減し、土地投機を抑制しながら土地の有効利用等を図るという土地政策上の視点を踏まえたものでした。なお、土地税制については、その後の地価下落と景気低迷の中で税負担の軽減が図られてきており、平成10年には地価税を課税停止し、土地譲渡益課税についても平成7年度から11年度にかけての改正によってバブル期以前よりも低い税負担となっています。相続税についても、バブル期における地価の異常な高騰などを受けて、昭和63年以降累次にわたる減税が行われてきましたが、その後の地価の大幅な下落とあいまって、その負担は大きく緩和されています。 |
| ハ |
.金融税制
金融については、金融の自由化・国際化が進展し、わが国の金融システムが市場の競争原理の下で大きな変革を迫られました。こうした金融システム改革に対して、税制として時機を失することなく対応を行いました。例えば、平成10年4月の外国為替管理制度の自由化に対応して国外送金等に係る調書提出制度が創設されたほか、特定目的会社(SPC)、ストック・オプションに関する税制上の措置などが講じられました。平成11年度税制改正においては、株式等譲渡益課税の適正化と併せ、有価証券取引税、取引所税を廃止することとされました。また、円の国際化に資する観点から、一括登録国債利子の非居住者等の源泉徴収免除やTB・FBの発行時の源泉徴収免除といった措置が、代替的な適正課税の担保措置に併せ、講じられました。 |
| ニ |
.法人税制
法人課税については、昭和40年の法人税法全文改正以来、全般的な課税ベースの見直しは行われていませんでしたが、平成10年度税制改正において課税ベースと税率の両面にわたる法人税制改革が行われました。これは、法人課税について、経済活動に対する税の中立性を高めることにより企業活力と国際競争力を維持する観点から、引当金、償却制度等について課税ベースを適正化するとともに実効税率を引き下げることとしたものです。 |
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近年の景気対策と恒久的な減税等
わが国経済は、アジア通貨危機の影響や金融機関の相次ぐ破綻などにより、平成9年秋以降極めて厳しい状況に陥りました。平成9年度の実質GDP成長率はマイナス0.1%と昭和49年度以来のマイナスを記録し、翌平成10年度もマイナス1.9%となるなど、深刻な状況が続きました。このため、景気回復を図る観点から、財政・金融などあらゆる政策手段を駆使して対応することが求められ、税制面でも景気に最大限配慮することが求められました。平成10年(度)には個人所得課税について二度にわたる特別減税が実施されました。平成11年度税制改正においては、1年限りの減税では景気対策としての効果が不十分ではないかとの指摘をも踏まえ、景気に最大限配慮して、個人所得課税及び法人課税について6兆円を相当程度上回る恒久的な減税をはじめ、住宅ローン減税などを含む過去最大規模の減税が実施され、現在、これが継続されています。この恒久的な減税の一環として、個人所得課税の最高税率の引下げ、法人課税の実効税率の国際水準並みへの引下げが実現しました。恒久的な減税は、このように将来の抜本的改革の方向を一部先取りした内容を含んでいますが、景気への配慮から負担軽減となる措置のみを実施したものでした。個人所得課税や法人課税の課税ベースなどの見直しは今後の検討課題として残されました。 |