諮問・答申・報告書等
| この要約は、答申本文に盛られた事項を主な項目に限って簡潔にまとめたものであり、詳細は答申本文を御覧いただきたいと考えます。なお、括弧内のページは答申本文のページを示しています。 |
はじめに(略)(P.1)
序説
- 税制のあり方の選択に当たって
-(P.2)
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20世紀の最終年を迎え、わが国はあらゆる面で節目を迎える中、個人や企業の能力を最大限引き出しながら「公正で活力ある社会」を築いていくことが求められています。今後の経済社会を展望するとき、政府の役割や行政の手法を見直し、個人や企業の創意工夫をより尊重するための諸改革を進めるとともに、税制全般について抜本的な見直しを行い、税制全体を21世紀にふさわしいものに改革していくことが求められています。
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わが国経済が民需中心の本格的な回復軌道に乗ることが確認される必要がありますが、財政構造改革は必ず実現しなければならない課題です。財政構造改革を検討する際には、社会保障のあり方、中央と地方との関係や経済社会のあり方まで視野に入れて取り組む必要がありますが、歳出のあり方についての徹底した見直し論議と併せて、税制についても国民的な議論を避けて通ることができないものと考えます。
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税制は国民生活、経済活動、そして社会のあり方と密接に関連するものです。税制のあり方を考えることは、国のあり方をどのように考えていくかということでもあります。このため、国民一人一人が今後の税制論議に参加し、その上で、あるべき税制について選択していくことが重要です。
私たち国民は、今後のわが国税制のあり方について、どのような視点から議論を行い、そして、何を選択していかなければならないのでしょうか。
この答申では、まず、改めて租税の意義と役割を考えた上で、次のような様々な課題について検討を行っていくこととしています。
| (1) |
税制を考える場合、「公平・中立・簡素」という原則を常に念頭に置かなければなりませんが、具体的にはどういうことなのでしょうか。 |
| (2) |
様々な経済社会の構造変化が進む中、税制はどのような課題を抱えているのでしょうか。 |
| (3) |
今後の国・地方を通じたわが国財政のあり方をどのように考えればよいのでしょうか。財政構造改革が課題とされていますが、どのように取り組むことが適当なのでしょうか。また、このことと租税負担を含む国民負担の水準や税制のあり方の論議はどのように関わってくるのでしょうか。 |
| (4) |
地方分権の推進に伴い、国と地方の役割分担の見直しや地方税財源の充実確保など自立的な財政運営の確立が課題とされていますが、どのように検討していくことが適当なのでしょうか。 |
| (5) |
近年、所得課税の抜本的な見直しをはじめ、消費課税、資産課税等を含めた税制全般についての見直しが検討課題とされてきています。租税を国民皆が広く公平に分かち合いつつ、21世紀の経済社会の構造変化や今後の財政状況に対応していくためには、具体的にどのような見直しが必要なのでしょうか。 |
一 租税の意義と役割
1.公的サービスと租税(P.5)
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公的サービスは、社会を形成し、その社会を安全で安心できるものとし、経済活動などを通じて豊かなものとしていく上で欠かすことのできないものです。
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租税の基本的な機能はこのような公的サービスの財源調達機能です。
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民主主義社会では、公的サービスの費用は、社会の構成員である国民が皆で広く公平に分かち合うことが必要です。
2.租税と民主主義(P.7)
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民主主義の歴史は、租税と密接に関係しています。
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税制は、議会制民主主義の下で、主権者である国民の意思を反映して議会で決められます。国民は有権者として代表者を選出することを通じてその議論に参加するほか、様々な場で議論に参加していくことが必要です。
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公的サービスが充実してきた現代社会では、公的サービスを賄う租税を国民皆が広く公平に分かち合うことが、それ以前の時代に比べて格段に重要なものと考えられます。
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ともすれば、人は自らには多くの公的サービスを求めつつ、租税の負担はなるべく少なくしたいと考えがちですが、一定の公的サービスを賄う場合には、自らの租税の負担軽減は他の人々への負担の増加を意味することを忘れてはなりません。また、公的サービスや税制のあり方の選択は少なからず将来世代の受益と負担を決めてしまう面もあることから、税制について選択していく際には、現在投票権を行使できない将来世代のことも併せ考えておくことが必要です。
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21世紀の日本を担う子供たちにも、できるだけ早い時期から、租税について考える機会を持ってもらうことが重要です。今後、学校教育の中で租税教育がより重視され、子供たちが、租税を通じて公的サービスのあり方、社会や国のあり方を考える機会が充実されていくことを強く期待したいと思います。
3.公的サービスと国民負担
(1) 租税の十分性(P.10)
(2) 政府の大きさと国民負担(P.10)
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租税負担に社会保障負担を加えた国民負担の大きさも、社会保障給付を含めた公的サービスの大きさに一致することが基本です。一方、租税や社会保険料は基本的には個人や企業の経済活動の中から分担していくものであり、過度に大きな負担は国民にとって自分の判断で自由に使える所得を小さくし、ひいては社会全体の活力を損なうおそれがあります。
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国民負担を伴ってもなお必要な公的サービスの大きさは、最終的には私たち国民がどのような公的サービスの水準とそれに対応する国民負担の水準を選択するかにかかっています。
4.税制と経済社会との関わり(P.11)
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税制が経済社会に何らかの影響を与えることは避けられませんが、その場合でも、税制は、公的サービスの財源調達機能を十分に果たした上で、社会の活力や経済の発展の妨げとならず、個人や企業の自由な経済活動にできるだけ影響を与えないものであることが望まれます。このようなことから、税制は制度として安定していることが求められると同時に、経済社会に大きな構造変化が生じる場合には、それに対応して見直していくことが必要となります。
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税制は国の様々な制度の中でも根幹的なものであり、個人や企業が経済活動を行う上で主要な「インフラ」とも言うべきものです。したがって、税制の安定性が大切であるとともに、皆に理解しやすい仕組みとしていくことも重要です。
ニ 税制と基本原則
1.租税の種類と税体系(P.13)
2.税制の基本原則(P.15)
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税制を組み立てていく上での基本原則となる「公平・中立・簡素」は、その意義や重点の置き方は別として、21世紀においても変わらない基本原則であると考えられます。
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「公平」の原則は、税制の基本原則の中でも最も大切なものです。水平的公平と垂直的公平とがあり、近年では世代間の公平が一層重要となっています。
「中立」の原則とは、税制ができるだけ個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにするということです。
「簡素」の原則とは、税制の仕組みをできるだけ簡素なものとし、納税者が理解しやすいものとするということです。
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「公平・中立・簡素」は、常にすべてが同時に満たされるものではなく、一つの原則を重視すれば他の原則をある程度損なうことにならざるを得ないというトレード・オフの関係に立つ場合もあります。いずれにしても、税制を考えていく上では、税制全体として公平・中立・簡素の基本原則に則しているかどうかということが重要です。
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税収が一定の下では、課税ベースを広くすることによって、その分低い税率によって負担を求めていくことが、公平・中立・簡素という原則に整合的となります。
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今後とも、経済社会の活力を維持していくためには、税制全体として、国民皆が広く公平に負担を分かち合うとともに、公平・中立・簡素という基本原則に則し偏りのない税体系を選択していくことが重要です。
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税制の検討に際しては、国際的な整合性の観点にも留意する必要があります。一方、わが国の税制と各国の税制を比較する場合には、それぞれの財政状況や、税制がその国の歴史や文化、経済や社会の仕組みを反映して構築されていることも踏まえる必要があります。
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租税特別措置等については、公平・中立・簡素という基本原則に反して特定の人々の負担を軽減するものであるだけに、その政策目的自体にそもそも国民的合意があるのかどうか、政策手段として税制を用いることの適否、政策効果の有無などの様々な観点から、慎重な検討が求められます。また、既得権益化しがちであるといった問題もあり、今後、租税特別措置等のあり方を見直していく必要があります。
三 近年の税制改革の流れと現状
1.近年の税制改革の流れ(P.23)
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税制については、これまでも公平・中立・簡素の基本原則に則しつつ、少子・高齢化や国際化の進展などの経済社会の構造変化などに対応して、消費税の創設をはじめ、個人所得課税、法人課税についても抜本的な改革を行うなど、税制全般にわたる見直しを進めてきています。
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平成9年4月の消費税率引上げがその後の景気後退の主な原因ではないか、との見方がありますが、消費税率引上げは景気対策としての先行減税と一体として行われたものであること、平成9年秋以降の金融機関の相次ぐ破綻やアジア通貨・経済危機が実体経済に影響を及ぼしたことに留意する必要があります。
2.わが国の税負担の現状と国際比較(P.29)
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租税負担率は、主要先進国の中で最も低くなっており、特に、個人所得課税の負担率が諸外国に比べ低くなっています。また、地方消費税分を含む消費税率は、主要先進国中、最も低い水準となっています。租税負担率に社会保障負担率を加えた国民負担率で見ても、わが国は諸外国に比べて低い水準にあります。
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所得・消費・資産等の構成について、近年の推移を見ると、昭和63年前後の抜本的税制改革後は消費課税の比率が高まってきています。また、景気対策としての大幅な負担軽減などの結果として、所得課税の比率が低くなっています。
四 税制の検討の視点
1.経済社会の構造変化
(1) 少子・高齢化と人口減少(P.35)
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わが国社会は少子・高齢化が急速に進展し、21世紀初頭(2007年(平成19年))には総人口が減少するという新たな局面を迎えますが、勤労世代だけに過度の負担を求めることは望ましくなく、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合うことが求められます。また、社会保障制度などの公的サービスを提供するためには、景気に左右されない安定的な歳入構造を確保することが必要です。
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税制面においては、消費課税の役割は今後ますます重要なものになっていくものと考えられます。個人所得課税は、少子・高齢化の進展の下、引き続き税体系の中心を担う税として重要です。高齢化の進展に伴い、相続税については、公的な社会保障が充実してきている中で、相続の持つ意味が近年変化しているのではないかという議論があります。
(2) 国際化・情報化と企業活動(P.37)
(3) 金融取引の多様化・経済のストック化(P.38)
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金融の自由化・国際化が進展し、金融取引が多様化・複雑化している中で、制度面・執行面を通じて課税の公平性・中立性が損なわれないよう適切に対応することが求められています。
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経済のストック化の進展に伴い、資産性所得に対して適正・公平に課税を行うことが一層重要となっているほか、相続税の役割についても改めて検討していく必要があります。また、土地税制については、取得、保有、譲渡の各段階を通じた適正かつ安定的な課税のあり方を考えていくことが必要です。
(4) ライフスタイルの多様化(P.39)
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経済が発展し社会が成熟する中で、個人の価値観が多様化し、働き方、消費行動などの面で様々な生き方や生活様式が見られるようになってきており、個人の生涯を通じた生活設計のあり方も多様なものとなっていく可能性があります。
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税制は、このようなライフスタイルの変化に対して、中立性をより重視する必要があります。個人所得課税については、各種控除のあり方や退職金税制、フリンジベネフィット等に対する課税についての検討が課題となります。
消費税等については、生涯の一時期に負担が大きく偏ることがなく、消費選択に対して中立的という特徴を今後も活かしていくことが必要です。
(5) 所得分布の動向(P.41)
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経済社会の活力を維持していく観点からは、自己責任原則を重視し、市場機能を一層発揮させることがこれまで以上に重要になってきています。税制の所得再分配機能のあるべき姿はその時々の「機会の平等」や「結果の平等」に対する国民の考え方によるものであり、最終的には国民的な議論の下に選択がなされる性格の問題です。
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近年、わが国において所得格差・資産格差が拡大する傾向にあるのではないかとの指摘がありますが、現段階では必ずしも明らかではありません。いずれにしても、近年の所得分布にはかつてのような平準化の動きは見られず、今後とも税制の所得再分配機能の重要性が減少することはないものと考えられます。
2.財政の現状と課題
(1) わが国財政の現状(P.44)
(2) 国民負担率のあり方(P.46)
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わが国の国民負担率は、諸外国に比べ低い水準にあります。一方、潜在的国民負担率は、ヨーロッパ諸国に近い高い水準となっています。公的サービスと租税負担のギャップが大きな財政赤字となっており、将来世代の負担において、高い水準の公的サービスを享受しているのが実状です。
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今後、高齢化に伴う社会保障等の公的サービスに要する費用の増加が避けられない見通しであることなどを考慮すると、国民負担率は長期的にはある程度上昇していかざるを得ないと見込まれていますが、個人・企業の経済活力という観点からは、国民負担率の上昇を極力抑制していくことが必要です。
(3) 税収の状況と中長期的見通し(P.47)
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今後景気が回復すれば、税収は名目経済成長率を大きく上回って増加し、それによる自然増収によって歳入・歳出ギャップは大きく改善されるのではないか、との主張があります。
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将来の税収は、名目経済成長率がどの程度になるかということに大きく依存します。今後、経済構造改革により経済成長を目指していく一方で、人口減少などにより高い率の経済成長は期待しがたくなると考えざるを得ず、税収についても大幅な伸びは見込みがたくなります。また、税制の構造が変化し名目経済成長率に対する税収の伸びは相対的に鈍化していると考えられます。
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以上を考え合わせると、今後景気が回復すれば、中長期的に名目経済成長に応じてある程度の税収増を見込むことはできるとしても、名目経済成長率を大幅に上回る税収の伸びは期待しがたく、経済成長に伴う税収増のみでは現在の巨額の歳入・歳出ギャップを大きく改善させることは困難であると考えます。
(4) 財政構造改革の必要性(P.50)
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21世紀のわが国経済社会を健全で活力あるものとしていくためにも、財政構造改革の実現は避けて通れない課題です。わが国経済が民需中心の回復軌道に乗った段階においては、時機を逸することなく、国・地方ともに、財政構造改革について具体的な措置を講じていくことが必要です。
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そのためには、公的サービスのあり方や内容を見直すことにより歳出を減らすか、租税負担の増加などにより歳入を増やすか、あるいはその組合せしかなく、国民がどのような選択を行っていくかにかかっています。当調査会は、まずは、歳出の抑制に取り組むことが必要と考えます。このため、既存の施策・制度の効率性、有効性等を徹底して見直し、国民的な議論の上での選択が行われることが不可欠です。
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行政改革は、行政のスリム化だけでなく行政の手法などを見直すことにより、個人や企業の創意工夫によって経済の規模を拡大していけば、財政構造改革にも資するものと考えられます。
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国有財産の売却について、近年、かつてない積極的取組みが行われていますが、引き続き、国有財産の売却に努めるとともに、民間における有効利用を含む国有財産の積極的活用を図ることも重要と考えられます。
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財政構造改革は、単なる財政面の問題にとどまらず、21世紀の経済社会に対応した社会保障のあり方や中央と地方の関係まで視野に入れて取り組むべき課題です。また、高齢化に伴う社会保障経費の増大や今後の金利上昇に伴う利払費の増加が予想されることなどからすれば、歳出の徹底した節減・合理化などを行ったとしても危機的な財政状況を脱することは容易ではなく、財政構造改革は国民にとって厳しい内容とならざるを得ません。いずれにしても、財政構造改革を実現するためには歳出・歳入両面にわたる国民の選択が求められます。このため、景気回復後に財政構造改革について具体的な検討を行う際には、財政の将来の見通しなど必要な論議の材料を国民に分かりやすく示し、開かれた議論が行われることが必要と考えられます。
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財政構造改革との関連で税制全体の姿を検討することが課題になると考えられますが、公的サービスの水準をどの程度とするのが適当か、その裏付けとしての国民負担のあり方はどうあるべきか、という点について将来世代のことをも併せ考えながら十分な議論が行われた上で、国民的な選択がなされるべきものと考えます。
3.税と社会保障(P.53)
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租税と社会保険料とは、法律に基づいて国民から負担を求める点で共通の性格を有しているため、税制を検討する際には、社会保険料の負担(社会保障負担)をも勘案するとともに、両者を併せた国民負担率を一つの政策的な目安としています。一方、社会保険料は、給付と負担が強く関連付けられている点で、租税とは異なる性格を有しています。
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高齢化の進展に伴い社会保障給付の大幅な増大が見込まれる中、社会保障の給付とこれに見合う負担の水準、財源としての社会保険料と租税の組合せなどの社会保障制度そのものに関わる国民的な議論と選択が必要になります。
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社会保障、特に基礎年金の財源として、社会保険料に代えて全額税を充ててはどうかとの議論(税方式化論)がありますが、単に財源の調達の仕方の問題ではなく、社会保障の理念や制度の基本設計といった根幹に関わる問題です。予防的性格を持ち、負担の見返りとして給付の権利性が強い社会保険方式か、結果としての救済の性格が強い税方式かについては、個人の自立を基本とする社会における自己責任のあり方についてどう考えるかといった問題であり、消費税を財源とする場合には事業主の保険料負担が個人の租税負担に置き替わることや、社会保険料を廃止する分の税負担増のあり方などを含む幅広い観点から国民的な議論が行われる必要があります。
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少子化対策の観点から、個人所得課税の児童に係る扶養控除を児童手当に代替させてはどうかという考え方があります。少子化対策としての効果や給付規模に見合う具体的な財源確保の方策などについて考える必要がありますし、特に、個人所得課税の基本に関わる問題があることに留意すべきです。
4.地方分権と地方税財源の充実確保
(1) 地方分権の意義と地方税の役割(略)(P.58)
(2) 地方分権推進の経緯(略)(P.59)
(3) 地方税財源の充実確保についての基本的な考え方
(地方財政における自主性の向上)(P.60)
(地方税の充実確保と行財政改革の推進)(P.60)
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地方税の充実確保を図る場合には、地方公共団体が自立的な行財政運営を行え るよう、国と地方の役割分担を踏まえつつ、国庫補助負担金の整理合理化や地方交付税の見直しを図るとともに、国と地方の税源配分のあり方について検討することが必要です。
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地方税を充実し、国からの移転財源への依存度をできるだけ少なくすることに加えて、課税自主権を活用することにより、地方公共団体の財政面における自立度が高まり、受益と負担の対応関係のより一層の明確化が図られ、国・地方を通ずる行政改革や財政構造改革の推進にもつながるものと考えます。
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地方においても自ら汗をかき、行政改革、課税自主権の活用、市町村合併などへの取組み、行政評価、情報公開による住民の監視機能の活用が重要です。
(国・地方を通ずる行財政制度のあり方の検討)(P.61)
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国・地方を通ずる行財政制度のあり方は、国・地方の役割分担、国庫補助負担事業、地方に対する義務付け、公共投資・社会保障などの行政水準各々のあり方、国の財政政策そのものに関わり、幅広い観点から取り組むべき課題であると考えます。
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地方税財源の充実確保については、国の財政・税制と深く関わるものであり、国庫補助負担金や地方交付税を含めた国・地方を通ずる行財政制度のあり方を見直し、改革することが必要となります。しかし、現在の危機的な財政状況の下では、国と地方の税源配分のあり方について見直しを行うことは現実的でないことから、今後景気が本格的な回復軌道に乗った段階において、国・地方を通ずる財政構造改革の議論の一環として、取り組むのが適当であると考えます。当調査会としては、関係方面との連携を図りつつ、地方税の充実確保の方策について具体的な検討を進めていくこととします。
(4) 地方税財源の充実確保方策の方向(P.62)
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地方税の充実確保を図る際には、所得・消費・資産等の間における均衡がとれた国・地方を通ずる税体系のあり方等を踏まえつつ、税源の偏在性が少なく税収の安定性を備えた地方税体系の構築が重要です。
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地方税の基幹税目の中では、個人住民税はその充実が望ましいと考えられます。地方消費税は今後その役割がますます重要なものになっていくと考えられます。固定資産税は引き続きその安定的な確保に努める必要があります。
法人事業税の外形標準課税は、景気の状況等を踏まえつつ、早期に導入を図ることが必要です。
(5) 課税自主権の活用(P.63)
五 わが国税制のあり方
1.税制の抜本的改革の必要性(P.64)
2.抜本的改革の視点(P.65)
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税制の検討に当たっては、まず、租税が、社会の構成員である国民皆が広く公平に分かち合うものであることを改めて認識することが出発点となります。また、租税は国民の選択する公的サービスの水準に見合う財源を賄うのに十分でなければなりません。
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様々な経済社会の構造変化に対応し、21世紀において「公正で活力ある社会」を築いていくためには、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則は、今後ますます重要です。
特に、国民負担の増加が見込まれる中で、税制が「公平」であることが何よりも強く求められ、既存の税制を再度点検していくことが必要です。「中立」については、個人や企業の経済活動が多様化し、効率性が従来以上に求められていることから一層重要になってきます。「簡素」については、税制論議に国民が参加し選択していくためにも重要性が増してきます。「中立」の観点からも、「簡素」の観点からも、課税ベースが広く確保されることが求められます。
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公的サービスを賄う租税を国民皆が広く公平に分かち合い、全体として偏りのない税体系を築いていく観点から、所得・消費・資産等に対する課税をどのように組み合わせるかについても国民の選択が必要です。
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いわゆる「直間比率の是正」という考え方については、所得課税の負担が低くなっていること、財政状況が極めて深刻になっていることなどから、これまでのような所得課税の減税を伴う改革は行い得ないと考えられます。
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個人所得課税は、大きな規模の課税対象を持ち、国民一人一人の負担能力に応じた分担を実現できる税であり、所得再分配機能を持ち、垂直的公平に適う税です。
また、租税は「社会共通の費用を賄うための会費」の性格を有していますが、個人所得課税は、申告納税制度を基本とするものであり、社会の構成員としての意識を養うことにも役立つものです。今後、給与所得控除の見直しとの関連で、年末調整に代え、確定申告を行う途を広げることも、税制に関する国民の選択肢の一つです。
個人所得課税の現状は、近年の税制改革や景気対策としての減税もあって、その負担水準は諸外国に比べても最も低くなっています。
課税最低限は諸外国に比べて高くなっており、そのあり方について種々の議論がなされています。課税最低限は、各種の控除のあり方との関連で決まってくるものですが、公的サービスを賄うための負担は国民が皆で広く分かち合うことを基本にそのあり方を議論することも必要です。
少子・高齢化の進展や国民のライフスタイルの多様化など経済社会の構造変化が進む中で、各種の控除のあり方等について、公平性・中立性といった観点から検討することが必要です。
以上を踏まえ、今後、個人所得課税が本来持っている機能を十分に果たすことができるよう、その再構築に向けた議論が必要と考えられます。
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法人課税は、法人に公的サービスの費用の負担を求めるものであり、経済の発展と企業活動の進展に伴い、税体系において基幹的な税目の一つとなっています。
近年、企業活動の国際化が進む中で、わが国の法人課税の実効税率は、わが国企業の競争力を確保する観点から、大幅に引き下げられ、その水準は既に国際的な水準になっています。
経済活動において法人部門は大きな比重を占めており、法人課税のあり方は、企業活力の発揮や資源配分の変更を通じた経済全体の効率性の向上などに影響を与えるものであり、課税ベースの広い公正・中立な法人課税は、わが国経済社会の活力を維持していく上で重要です。
今後も、税体系全体における適切な役割を果たしつつ、国際化や情報化といった経済社会の構造変化に対応するとともに、公正・中立で透明性の高い法人税制を構築することが求められます。
特に、わが国企業を取り巻く環境が大きく変化してきていることに対応して、企業の柔軟な組織再編を可能にするための法制の整備が進められていますが、法人税制としても、企業の経営形態に対する中立性や税負担の公平等の観点から、会社分割に係る税制や連結納税制度の導入といった、抜本的な見直しが必要と考えます。
また、最近における非営利活動の多様な展開を踏まえ、NPO法人(特定非営利活動法人)等の税制のあり方についても検討していくことが必要です。
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地方税において、当面する課題である法人事業税への外形標準課税の導入については、地方分権を支える安定的な地方税源の確保、応益課税としての税の性格の明確化、税負担の公平性の確保、経済の活性化、経済構造改革の促進等の重要な意義を有する改革であることから、景気の状況等を踏まえつつ、早期に実現を図ることが必要です。
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消費課税については、これまでの税制改革の流れの中で、少子・高齢化の進展に対応し、国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資するなどの観点から消費一般に広く公平に負担を求める消費税を創設し、その後、その税率引上げ、中小事業者に対する特例措置等の抜本的な見直しを行うとともに、地方分権の推進、地域福祉の充実などの観点から地方消費税の創設を行うなど、重要な改革を行ってきました。
消費課税は、勤労世代に偏らずあらゆる世代に公平に負担を求めることができ、また、ライフサイクルの一時期に負担が大きく偏ることがないという特徴があります。さらに、消費に充てられる資金がどのような形で得られたものであっても、消費に応じて一律に負担を求めることが可能であり、水平的公平の確保に資するものと言うことができます。
今後、少子・高齢化が更に急速に進展し人口の減少が避けられない21世紀を展望し、経済社会の活力を維持していくためには、公的サービスの費用を広く公平に分担していく必要があるとともに、世代間の公平やライフサイクルを通じた負担の平準化という視点が重要です。また、安定的な税収構造を持った税体系を構築していく必要があります。これらを考えるとき、消費課税の役割はますます重要なものになっていくものと考えられます。その際、消費税の中小事業者に対する特例措置、仕入税額控除方式などのあり方について、制度の公平性、透明性及び信頼性の観点から、事業者の実務の実態なども踏まえながら、検討を行っていく必要があります。
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相続税や固定資産税をはじめとする資産課税等は、全体として偏りのない税体系を築いていく上で、あるいは、景気の動向に大きく左右されない安定的な税収を確保していく上で、重要な役割を担っています。また、相続税については、その累進構造を通じて富の再分配機能を有していますが、個人所得課税の抜本的見直しとの関連において税率構造や課税ベース等について幅広く検討していくことが必要となっています。
今後の資産課税等のあり方については、個人所得課税や消費課税が適切な機能を発揮していく中で、少子・高齢化や経済のストック化の進展などの経済社会の構造変化に対応しつつ、その機能を十分に果たしていくことが求められます。
3.税制論議への国民の参加と選択(P.68)
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公的サービスは国や社会を支えるために欠かすことができないものです。租税はそのような公的サービスを賄うために必要な財源を調達するものです。少子・高齢化、国際化、ライフスタイルの多様化など、わが国経済社会はこれまでにない大きな変化に直面しています。21世紀に向けてわが国があらゆる面で節目を迎える中、明るい展望を拓くためにも、国民一人一人が、社会を支える一員として、税制を自らの問題として捉え、その現状や諸課題について理解を深め、将来世代のことも考えながら、税制論議に参加していくことが求められます。
当調査会は、そのために必要となる判断材料を国民に幅広く提供することが重要と考えます。また、国や地方公共団体がそれぞれの行政についての情報をこれまで以上に分かりやすく提供していくことが必要なことは言うまでもありません。
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近年、財政赤字の累積が進行しつつあります。わが国財政の厳しい現状を踏まえ、さらに21世紀を展望するとき、現世代は自らが選択してきた公的サービスを賄うのに十分な負担を行ってきたと言えるでしょうか。将来世代が真に必要な公的サービスを享受できるような財政構造を築き上げていくことが必要ではないでしょうか。公的サービスを賄うための費用を将来世代に先送りすることは避けなければならないと考えます。財政構造改革は必ずや取り組まねばならない課題ですが、その際、私たち国民は、公的サービスによる便益とその費用の負担について、便益を見直すのか、負担を見直すのか、あるいはその両者を組み合わせていくのか、選択を行っていかなければなりません。
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経済社会の活力を維持していく観点から、税制は先に述べたような経済社会の構造変化に対し適切に対応していくことが必要です。まず、国民皆が広く公平に負担を分かち合うことが何よりも大切です。また、税制と経済社会との調和が保たれているのかどうかについて「公平・中立・簡素」という基本原則に照らして点検し、必要な改革に取り組んでいくことが求められます。わが国の税制は様々な課題を抱えていますが、こうした観点からどのような見直しを行っていくのか、私たち国民は選択していかなければなりません。
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以上のような税制論議への参加や今後の財政・税制についての選択を経て、所得課税・消費課税・資産課税等それぞれの機能や役割を活かしながら、社会共通の費用を広く公平に分かち合うという観点に立ち、21世紀の経済社会にふさわしい税体系のあり方について、私たち国民は責任ある選択をしていかなければなりません。
[続きがあります]
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