| 一 平成12年度税制改正をとりまく状況
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| 1 最近の経済情勢等
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平成11年度税制改正においては、景気に最大限配慮して、個人所得課税及び法人課税の恒久的な減税や住宅ローン減税などの実施を含め、国・地方を合わせ、平年度9兆円を超える過去最大規模の減税を実施しました。
わが国経済は、各般の政策効果もあって、実質経済成長率が本年度上半期に前期比 1.2%のプラス成長となるなど、最悪期を脱し、緩やかながらも回復に向かっていると思われます。
ただ、依然として、個人消費や設備投資などの民需の回復力は弱く、経済が自律的な回復軌道に乗ったと言える状況には至っていません。公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、本格的な景気回復を目指すために、引き続き、景気に配慮した政策運営が求められています。また、わが国将来の発展基盤を確立するための構造改革についても一層の取組みが求められているところです。このような状況の下、本年11月には、経済新生対策がとりまとめられました。
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| 2 財政の状況
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わが国財政は、景気回復に向けた諸施策に伴う歳出の増大や大幅な減税の実施もあって、公債依存度が43.4%(平成11年度第2次補正後)にもなるなど、極めて厳しい状況となっています。平成11年度末の国債残高は 335兆円に、国及び地方の長期債務残高は 608兆円(平成11年度名目GDP見通し 496兆円の 1.2倍)に、それぞれ達すると見込まれるなど、わが国財政は危機的状況に至っており、主要国との比較で見ても最悪の状況にあります。
国税収入は、平成10年度決算において、景気の低迷や特別減税の実施などにより、昭和62年度以来、11年ぶりに50兆円を下回りました。平成11年度税収は、恒久的な減税の実施などにより、平成10年度をさらに下回り、一般会計の歳入に占める税収の比率は、51.3%と第二次大戦直後以来の極めて低い水準となっています。
現在の歳出と歳入の大幅なギャップをいつまでも放置することはできません。歳出の抑制に努めることはもちろん、歳出・歳入の両面にわたる財政構造改革は避けて通れない課題であり、景気が本格的な回復軌道に乗った段階において、21世紀のわが国経済社会のあるべき姿を展望し、根本的な視点に立って必要な措置を講じなければならないと考えます。
地方財政についても、平成11年度末における借入金残高は 179兆円に達する見込みであり、公債費負担比率が警戒ラインを超える団体が6割以上となるなど、極めて厳しい状況が続いています。地方財政上の諸課題についても幅広く確実な取組みが必要であり、地方公共団体自らも、引き続き歳出削減などの行財政改革を積極的に推進することが求められます。 |
| 3 将来の税制改革に向けての検討状況等
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当調査会は、各年度の税制改正を通じ、少子・高齢化の進展や国際化などの経済社会の構造変化等に対応して、国税・地方税を通ずる税制全般にわたる見直しに取り組んできました。最近の約10年を振り返ると、消費税の創設をはじめ、個人所得課税、法人課税についても抜本的な改正が行われてきているなど、税制の姿は大きく変化してきています。
また、近時、特に個人所得課税については、課税最低限のあり方など様々な問題点が指摘されています。税率構造や各種控除のあり方などをはじめとして個人所得課税全体についての抜本的な見直しが必要であり、これに適切に対応していく必要があります。今後、さらに経済社会の構造変化の進展に対応していくためには、個人所得課税のみならず、消費課税や資産課税をも含めた税制全般について検討していくことが必要です。 |
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(2) |
このため、当調査会としては、基本問題小委員会を設置し、個人所得課税をはじめ、消費課税や資産課税をも含めた税制全般の今後のあるべき姿について検討を進めています。また、法人課税のあり方については、法人課税小委員会を再開し、連結納税制度等の諸課題について検討を行っています。
当調査会としては、こうした検討を進め、21世紀のわが国経済社会を展望しながら、今後の税制のあるべき姿についての考え方を国民に示していく必要があると考えています。シャウプ勧告から50年が経過した今、これからの少子・高齢化の進展やストック化、国際化・情報化などの経済社会の構造変化に税制がどのように対応していくか、租税の果たすべき機能をどのように考えるかといった幅広い観点をも踏まえつつ、さらに議論を深めていきたいと考えています。 |
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少子・高齢化の進展に伴い、今後、急速に増加することが見込まれる社会保障給付の財源に充てるため、消費税を福祉目的税化すべきとの議論があります。
平成11年度予算においては、消費税収(地方交付税分を除く国分)を基礎年金、老人医療及び介護に充てることを予算総則に明記する、いわゆる「福祉目的化」が行われました。この結果、平成11年度当初予算では、一般会計税収のうち使途が特定されていない分が23.0兆円(所得税、法人税、酒税及びたばこ税の収入から地方交付税分を差し引いた分並びに相続税、印紙収入等)であるのに対して、これによって賄うべき歳出は2倍以上の54.1兆円であり、不足分は公債発行に頼っています。こうした財政の現状にかんがみると、消費税収(国分)の使途を福祉目的に限定していく場合、それ以外の歳出の規模と消費税以外の税収とをどのようにバランスさせていくのかということが大きな課題となります。
消費税を福祉目的税化するということは、予算総則による「福祉目的化」の場合と異なり、消費税の使途を制度的に福祉目的に特定することを意味していると考えられます。当調査会においては、消費税は、今後、わが国の税財政にとってますます重要な役割を果たすべき基幹税であること、目的税化は財政の硬直化を招くおそれがあること、さらには、諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらないことなどから、消費税を福祉目的税とすることについては、慎重に検討すべきであるとの意見が多数ありました。
他方、将来の税財政のあり方を考える上で、消費税の充実が必要であるとすれば、福祉目的税化も検討に値する考え方であり、その是非について十分な議論を行うことが必要であるとの意見がありました。また、仮に、敢えて福祉目的税化を行う場合には、将来世代へ負担を先送りせずに社会保障給付の増加と消費税負担との対応関係を明確にしていくのでなければ、その意義は見出せないのではないかなどの指摘がありました。
いずれにしても、この問題は、税制、財政及び社会保障のあり方に深く関わるものであり、今後、社会保障制度のあり方等についての検討を踏まえつつ、国民的な議論が行われるべきものと考えます。
なお、最近の経済情勢等を背景として消費税の滞納発生が増加していますが、税制への信頼を確保するためにも、政府全体として取り組むことを求めます。 |
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児童手当のあり方との関連で、個人所得課税の扶養控除を整理してはどうかという議論があります。当調査会は、これまで、控除制度について、経済社会情勢に応じ、その整理・合理化を検討していく必要があると指摘してきたところであり、基本的には個人所得課税の抜本的な見直しの中で、引き続き検討すべき課題です。 |
| 4 地方分権の推進と地方税財源
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平成11年の通常国会において、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」が成立し、従来の機関委任事務を廃止するなど新たな国と地方との関係が構築されることとなりました。同法においては、附則に、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保について検討すべき旨の条項が追加されました。地方税財源の充実確保については、今後の課題として検討していくことが必要です。
地方分権の進展に応じて、地方公共団体が自主的・自立的な行財政運営を行えるようにするためには、財政面における自己決定権と自己責任を確立することが重要であり、そのため、地方における歳出規模と地方税収の乖離を縮小する観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、地方税の充実確保を図ることが必要です。今後、国庫補助負担金や地方交付税など他の財源のあり方と関連させながら、地方税の充実確保の方途について検討していくことが適当と考えます。 |