諮問・答申・報告書等
五 平成10年度税制改正において早急に検討すべき課題
今回、当小委員会の中間報告に当たり、金融関係税制の諸課題の中から、来年度の税
制改正で検討すべきものを特に取り上げ、検討の指針を提示することとする。
1 金融取引に係る取引課税(有価証券取引税、取引所税)への対応
(1) 市場原理の働く効率的な資本市場が我が国の経済社会のインフラとして重要性を
増してきていることは、前述のとおりである。金融資本取引のグローバル化が進展
する中で、金融システム改革を推し進め、金融・資本市場を活性化させ、国際的な
市場間競争での競争力を高めることは重要な政策課題の一つとなっている。
我が国の資本市場を発展させるためには、規制緩和等を通じて市場の構造自体を
改革し、価格形成機能を高めていくことが重要である。商品の多様化、手数料等の
取引コストの低減、情報分析能力の向上等の努力が強く求められる。大口の機関投
資家にとっても使い勝手のよい市場をつくることも重要である。また、そもそも企
業の配当政策の特殊性、株式の持合いや株主総会の在り方等が、株式市場の動向に
影響を与えていることも否定できない。魅力ある市場を目指すためには、結局は日
本企業の株式を魅力的なものにするような各企業の努力が不可欠となる。
金融取引に対する取引課税である有価証券取引税や取引所税についても、こうし
た流れの中で見直しを求める意見が出されている。また、株式等譲渡益課税につい
ては、適正化の必要性が従来から指摘されている。
平成8年度税制改正において、2年間の時限的措置として、有価証券取引税につ
いては株式等に係る税率(第2種)を 0.3%から0.21%に引き下げ、あわせて株式
等譲渡益課税については適正化措置(源泉分離課税のみなし差益率の引上げ)が講
じられている。
以上を踏まえ、平成10年度税制改正において証券税制全体として議論を行ってい
く必要がある。
(2) 金融のグローバル化が進む中で、市場取引は、取引コストに対してより敏感に
なってきており、委託手数料、取引課税を含めた全体的なコストが国際的に高い水
準にあると、取引自体が海外にシフトしてしまう可能性がある。金融システム改革
を推し進め、金融・資本市場を活性化させるという観点から、取引課税を廃止すべ
きであるという強い意見が出されている。
取引課税は、理論的には、取引コストの一部となり、利回りを低下させる。また、
取引課税は税の累積を排除しない仕組みであることから、短期取引に対し相対的に
重課となり、結果的に、資産選択に影響を与え、市場の効率性を低下させることと
なる。これに関連して、取引課税には、過度なボラティリティ(価格変動)を抑制
し、資源配分の効率化に資する面もあるのではないかとの意見があったが、これに
対しては、ボラティリティ抑制のためには税以外の手段もあるのではないかとの意
見があった。
このように取引課税は、理論的には一般に取引や市場の効率性にはマイナス、ボ
ラティリティ抑制にはプラスと考えられるが、現行の有価証券取引税や取引所税程
度の税負担が現実の取引にどこまで影響を与えているかは、実証的には明らかには
されていない。また、取引課税の影響は、同程度の税収を上げるためにほかの税を
引き上げる場合との比較において評価する必要がある。
(3) 有価証券取引税や取引所税といった取引課税については、これまでの税制調査会
やOECD等での議論を踏まえれば、以下のような意義が指摘できる。(参考5)
[1] 現在の執行体制の下では、簡素で納税・徴税コストが少ない税制として、実質
的公平に資するものであり、税体系上、一定の役割を果たしていると考えられる。
[2] 有価証券取引や先物・オプション取引が法制度の下で安定的に行い得るメリッ
トに対する対価と考えられる。
[3] 所得・消費・資産で捉え切れない担税力を取引自体に求めるものと考えられる。
[4] 資産の移転に伴う税であり、資産課税の一つとも考えられる。
さらに、金融のグローバル化の中で適正な課税を確保するという観点から、外形
的に課税する取引課税の重要性が見直されつつあるという意見もあった。
(4) 有価証券取引税は、利益の有無にかかわらず取引に対し一律に課税するものであ
ることから、株式等譲渡益課税の代替税とは言えず、両者は理論的には別の税であ
ると考えられる。ただ、税体系としては、所得課税を消費課税や資産課税が補完す
るように、税目が相互に補い合って全体として適切な課税が実現されるのが望まし
い。所得課税については、所得の把握が難しいという特質があり、取引課税により
補っていくという考え方がある。制度の経緯からしても、譲渡益課税と取引課税は
同じ株式という金融資産の移転に伴う課税として、密接な関係にあることから、両
者は証券税制全体の中で検討していくのが適当と考えられる。
(5) なお、国際的には、有価証券取引税類似の税制は、イギリス、フランス、スイス
のほか、香港、シンガポール等に存在するが、アメリカ、ドイツ等には無い。また、
イギリスでは公社債やマーケットメーカー等の取引を非課税としているなど、非課
税の範囲については各国ごとに異なっている。
いずれにせよ、株式に係る課税について、取得・保有・譲渡の各段階を通した税
負担の求め方を見ると、その姿は各国で様々であると言える。
取引所税については、主要国には同様の税制は見られないが、国際的にも新しい
分野であるデリバティブに対する課税の一環として検討していく必要があるのでは
ないかとの意見があった。(参考5)
(6) 以上見てきたとおり、取引課税には税制として一定の意義が認められるものであ
り、現実の取引への影響や国際的整合性といった観点のみから、その存廃を結論付
けることは難しい。
取引課税の今後の在り方については、以上のような検討を踏まえ、次のような意
見があった。
取引課税の廃止は、他の金融・証券市場改革とあいまてば中長期的には市場にプ
ラスの効果をもたらし得るところであり、金融のグローバル化が進む中で市場取引
が取引コストに対してより敏感になってきていることや、現下の市場の動向にかん
がみれば、金融システム改革を強力に推進していく政府の意思を明らかにするため
にも、政策的な見地から、その具体的なスケジュールはともかく、思い切って廃止
の方向を示すべきであるとの意見があった。これに関連して、株式等譲渡益課税に
ついて申告分離一本化といった適正化が実現されない中で取引課税のみを廃止する
ことは適当でないとの意見があった。
これに対して、金融のグローバル化に伴い所得の捕捉が困難になっていく中では、
取引課税にはむしろ税体系及び税収面から一定の意義が認められるところであり、
税率水準次第では現実の取引への影響も少ないことから、取引課税を廃止するのは
適当ではないという意見があった。また、金融グローバル化の進展等を踏まえて、
取引課税の税負担の軽減を検討する場合にも、金融システム改革全体の動向を見極
め、税収面からの費用対効果を検証し、株式等譲渡益課税の適正化状況を踏まえて
いく必要があるとの意見があった。
(7) 当小委員会においては、取引課税の今後の在り方について、以上のとおり議論の
整理を行った。総会における平成10年度税制改正に関する審議においては、現下の
経済・財政事情、税制改正全体の中での位置付け等を総合的に勘案した上で、成案
がまとめられることを期待する。
2 株式等譲渡益課税への対応
(1) 株式等譲渡益課税の経緯
株式等譲渡益課税については、昭和63年の税制の抜本改革において原則課税化さ
れたが、その際、取引把握体制や証券市場への影響等にかんがみ当面の措置として
源泉分離選択課税方式が採用された。その後、源泉分離選択課税方式については
「利子・株式等譲渡益課税小委員会」において見直しが行われたが、把握体制、取
得価額の計算の難しさ等を考慮し引き続き現実的な対応として維持され、今日に
至っている。
(2) 今回、株式等譲渡益課税について原則課税化から約10年を経て本制度を見直し、
今後の方向を示すと以下のとおりである。
[1] 株式等譲渡益を総合課税とすべきであるか分離課税とすべきであるかについて
は両様の考え方があるが、株式等譲渡益を幅広く総合課税とする場合には利子等
も含める必要があり、そのためには納税者番号制度といった把握体制が必要であ
る。当面、そのような把握体制が整わない下では、分離課税の枠組みの中での適
正化を図ることが適当である。なお、資金の海外等へのシフトのおそれや、累進
税率の下では各金融資産の税引き後収益が納税者ごとに異なること等から、むし
ろ分離課税にメリットを見い出し積極的に評価する意見もある。
[2] いずれにしても、現行の源泉分離課税方式については、現に個人株式取引のう
ちかなりの部分がこの方式を選択している実情に配慮すべきであるとの意見も
あったが、
イ.譲渡益のうちみなし差益率を超える部分は課税対象となっておらず、所得課
税の趣旨とは外れたものとなっている、
ロ.申告分離課税との選択が認められていることから、譲渡益の大小(譲渡益と
譲渡損)に応じて意図的な税負担軽減が図れる、
ハ.フリー、フェア、グローバルの3原則による金融システム改革の理念からす
ると、税の公平性や市場の透明性を高めることが重要であるが、アメリカ、イ
ギリスにも無い源泉分離課税制度を維持することは、この方向に反するもので
ある、
ニ.地方税が非課税となっている、
といった点において問題があることは否定できない。
他方、把握体制の整備や取得価額の計算、証券市場への影響といった問題につ
いては、
イ.選択によるとはいえ申告分離課税の実績も積み重ねられてきており、株式等
譲渡益には利子等に比して把握のための大掛かりな仕組みは必ずしも必要でな
く、取引情報が集まる仕組みがあれば、申告分離課税へ一本化したとしても適
正な申告を期待できる状況になっていると考えられること、
ロ.実額により所得計算をして申告することは申告納税制度の基本であり、原則
課税化してから相当な期間を経過した現在においてみなし課税を維持すべきで
はないこと、まして、相当程度の資金の移動が伴う株式の取引についてこのよ
うな配慮は適当でないこと、
ハ.昭和63年に原則非課税から原則課税に移行した際と、原則課税化してから相
当期間を経て分離課税の枠組みの中で変更する場合とでは、証券市場への影響
についてもおのずと差異があること、
から、当小委員会としては、源泉分離選択課税方式は廃止し、申告分離課税に一
本化することが適正化の方向と考える。
しかしながら、源泉分離課税方式の廃止は、個人の株式取引に対しかなりの影
響を与えかねないため、現在の低迷している証券市場の状況や金融システム改革
の進展状況に政策的に配慮する必要があることからすれば、これを直ちに廃止す
ることは適当でないとの強い意見があった。この場合、当面、源泉分離選択課税
を維持することとなるが、課税の適正化の観点から、少なくとも源泉分離課税の
税率等を見直すことが適当である。また、課税の公平性、中立性を確保する観点
から、地方税における課税の適正化も図る必要がある。
なお、申告分離課税に一本化されれば、対象取引について本人確認及び課税資
料の提出が必要となることは言うまでもない。
[3] なお、利子と株式等譲渡益については、所得の性質、保有階層、所得の計算方
法(取得価額の控除等)等が異なるものであり、また、納税者番号制度が導入さ
れていない状況においては、両者に異なる課税方法が採られることは現実的な選
択と考えられる。これに対し、株式等譲渡益課税を申告分離課税に一本化するこ
とは、一律源泉分離課税となっている利子課税との均衡を欠くのではないか、利
子も含めた総合課税を指向すべきではないかとの意見があった。
また、株式等譲渡益課税について納税者の事務負担等から源泉分離課税の意義
を主張する意見があるが、このような見解を採るのであれば、株式の譲渡につい
ては所得課税より取引課税が適当との見解を採らなければ一貫しないとの意見が
あった。
[4] 税率構造
株式は、預貯金に比べ高所得階層が保有しており、譲渡益も相当多額になる場
合もあることから、垂直的公平の観点にも配慮する必要があり、このため、従来
は大口の株式取引等について総合課税とすべきであるという意見があったが、分
離課税を前提としつつ、譲渡益の中で高額の部分についての税率の引上げを行う
ことを検討すべきであるとの意見があった。
[5] 譲渡損失の取扱い
イ.源泉分離課税と申告分離課税が取引ごとに選択できる現行制度の下では、申
告分離において譲渡損失ばかりを申告すること等による調整ができるため、次
年度以降への繰越しや他の種類の所得との通算を行うことは適当でない。
ロ.申告分離課税に一本化された場合には譲渡損失への配慮も必要であり、例え
ば、同じ株式等譲渡益との間であれば、次年度以降への繰越しを検討してはど
うかとする意見があった。
ハ.他の所得との通算について、納税者番号制度の下で総合課税を行っているア
メリカにおいては一定額に制限されており、ほかの主要国では認められていな
い。これらの取扱いは、譲渡損失の他の所得との性格の違いや損失の発生に任
意性があること等によるとされており、こうした考え方をも踏まえると、我が
国においても他の所得との通算は認めないことが適当である。いずれにしても、
申告分離課税の枠組みの中では、所得が生じた場合には他の所得と分離して課
税する一方損失のみを通算することには問題がある。
3 ストックオプション税制
(1) 今春の第 140回通常国会において、役員・従業員に対する新株の有利発行の緩和
等を内容とする商法改正が成立し施行され、アメリカ並みに自由にストックオプ
ションが活用できる基盤が整備された。
ストックオプションの付与を受けた役員・従業員に係る現行所得税制上の取扱い
は、概ね以下のとおりである。
イ.ストックオプションの付与を受けた時点では、原則的に課税関係は生じない。
付与を受けたストックオプションを行使した時点で、取得した株式の市場価格と
払込み金額等との差額相当額の経済的利益があったものとして、ストックオプ
ションの付与の原因、会社との関係等に応じ、給与所得、退職所得などとして総
合課税が行われる。
ロ.新規事業法又は通信・放送開発法上の認定会社について、一定の要件を満たし
たストックオプションについては、権利行使時の経済的利益を株式の譲渡時点ま
で課税を繰り延べた上で、株式等譲渡益課税(26%の税率による申告分離課税)
が行われる。
(2) 今回のストックオプション制度の一般化のための商法改正は、アメリカの制度を
範としているが、アメリカのストックオプション税制は、ストックオプション付与
時、権利行使時、株式譲渡時のそれぞれにおいて総合課税を行うことを原則としつ
つ、所要の要件を満たした特定のストックオプション(「適格ストックオプショ
ン」)について、権利付与時及び権利行使時の経済的利益について株式譲渡時点ま
で課税の繰延べを認め、総合課税を行うこととしている。その際、アメリカでは、
納税者番号制度の下、株式キャピタルゲインについても総合課税が行われるが、我
が国とは株式等譲渡益課税の在り方が異なることにも留意が必要である。
(3) ストックオプションの一般化に伴い、現行法上特定の会社のみに認められている
課税の繰延べ等を、一定の条件の下に、一般のストックオプションにも適用し得る
かが問題となる。具体的な取扱いを検討するに当たっては、ストックオプションの
一般化の趣旨と適正な課税の確保の観点とを踏まえつつ、課税繰延べ等の措置が適
当であるかどうか、また、適当であるとしてもどのような要件等を満たすものを対
象とすべきであるかについて、その趣旨がいかされるよう適切な課税方法を検討す
べきである。
4 金融持株会社、特別目的会社、会社型投資信託に関する税制
(1) 第 141回臨時国会に金融持株会社の設立を可能とする法案が提出されているが、
これによる金融機関の組織形態の選択肢の拡大は、金融機関の競争促進と経営の効
率化につながり、利用者の利便の向上のほか、複合経営の場合の相互のリスクの遮
断や合併代替・業務提携の強化を通じた金融システムの安定化にも資すると期待さ
れている。
この法案において提案されている「三角合併方式」(注)による銀行持株会社の
創設に伴い、銀行の株主が銀行持株会社に対して行う現物出資に係る譲渡益に対す
る課税等が発生するが、これについては「三角合併方式」という設立形態を考慮し
つつ、銀行以外の法人が持株会社を創設する場合等との課税の公平等の観点も踏ま
えながら、適切な対応が図られることが望ましい。
(注)上記の「三角合併方式」とは、[1]金銭出資により既存銀行が銀行持株会社を、
さらに銀行持株会社が新銀行をそれぞれ設立し、[2]新銀行が既存銀行を合併吸
収し、[3]株主が新銀行株式を銀行持株会社に現物出資して持株会社化を図ると
いうものである。
(2) 企業の資金調達手段の多様化、魅力ある投資商品の提供を通じ、全体として効率
的な金融サービスを実現するとともに、担保不動産等を含めた資産の流動化を図る
ため、「特別目的会社(SPC)」の発行する資産担保証券(ABS)(注)を活
用する新たなスキームが構想されている。こうしたスキームの構想に当たっては、
債権譲渡に関する第三者対抗要件の具備の簡素化、投資家保護措置、SPCの設立
手続の簡素化といった各般の問題についての検討が行われている。
SPCに関する税制については、新たな形態で導入される予定のSPCに対して
法人段階での課税をどうするか、SPCの発行するABSについての課税をどうす
るか等について検討する必要がある。これらの点については、法制度の整備の状況
を見ながら、制度創設の趣旨がいかされるよう適切な対応が図られることが望まし
い。
(注)資産担保証券とは、資産を原債権者から切り離して媒体(特別目的会社等)
に譲渡し、その媒体が資産の信用力を背景として発行する証券のことである。
(3) 投資家の資産運用に当たっての選択肢を広げる観点から、諸外国において行われ
ている会社形態での投資信託の仕組みである「会社型投資信託」の導入が検討され
ている。
会社型投資信託に関する税制については、会社という形態を備え、投資家が株主
権を行使するという側面を持ちながら、投資信託としての機能を果たすという特殊
な性格に配意しつつ、法人段階での課税をどうするか、投資家への課税をどうする
か等について検討する必要があり、制度の具体化の状況を見ながら、適切に対応す
べきものと考えられる。
5 生命保険料控除・損害保険料控除
生命保険料控除・損害保険料控除については、税制調査会においては、(イ)制度
創設の目的は既に達成されており、制度の縮小・合理化を図る必要がある、(ロ)個
人の商品選択の裁量性を重視しつつ業態別・商品別の現行制度を改組・一本化すべき
である、(ハ)民間の年金・保険商品の活用による老後に備えた自助努力を支援する
制度として改めて位置付けるべきである等を指摘してきている。
新たに金融システム改革の実施により、各業態間の垣根が取り払われ、金融の自由
化・国際化が大胆に進んでいくといった状況の下では、金融商品間、各業態間の課税
の公平性・中立性の要請は強まるものと考えられ、生命保険料控除・損害保険料控除
の具体的な見直しについて早急に議論を進めていく段階に来ているものと考える。な
お、保険も貯蓄としての機能面に着目すればほかの金融商品とは差がない、保険にも
貯蓄性、投資性の高いものもあり、保険を一律に税制上特別扱いすることは適当でな
い、不時の出費への備え・老後への備えといった面での国民の認識には貯蓄、保険に
差はないといった意見が多かったが、保険商品の特殊性等への配慮を求める意見や、
両控除の見直しは広く国民に影響することに留意する必要があるとの意見もあった。
これとあわせて、個人年金保険に係る生命保険料控除の在り方についても、個人年
金保険とそれ以外の年金商品や金融商品との課税上のバランスをいかに図るかという
問題がある。この点は、老後生活における自助努力の位置付け、世代間・高齢者間の
税負担の公平確保の観点などともかかわる問題であるが、金融商品間の中立性、公平
性の観点も含めた総合的な検討が必要である。
6 課税繰延べ、非課税貯蓄制度
(1) 課税繰延べ商品(利払いが長期間経過後に一括して行われ、その期間中は利子課
税が先送りされる金融商品)については、元来、毎期利払いが行われる金融商品に
比べ実質的な税負担が軽減されるといった問題があり、預金の預入期間制限の撤廃
を契機に、税制調査会でもその適正化が必要であるとの観点から議論が行われてき
ており、金融・経済情勢、預金者や投資家の受け止め方等を見極めつつ、早急に適
正化の検討を進める必要があるとされている。
今後、金融システム改革が進められ、業態間の分離、長短分離が急速に無くなっ
ていくことを踏まえ、具体的な課税の適正化の方法、その対象となる金融商品の範
囲といった点について早急に検討を進めていくことが必要である。
(2) 非課税貯蓄制度
高齢者等の有する預貯金等の利子を非課税とする非課税貯蓄制度(いわゆる老人
マル優)、勤労者の老後の年金貯蓄・住宅取得のための貯蓄の利子等を非課税とす
る制度(いわゆる年金財形・住宅財形)は、一定の政策目的のために設けられてい
る制度であるが、政策的意義から制度の在り方を慎重に考えていくべきであるとの
意見がある一方、課税ベースの拡大の観点や公平性の観点のほか、金融自由化が進
む中での課税の中立性の観点も含めた見直しも必要であるとの意見があった。
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